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DS用ソフト:メタルマックス3メタルマックスの名で!ナンバリングタイトルとして復活!「メタルマックス」のシリーズ作を手掛けた、オリジナルスタッフが参加! 発売元:角川ゲームス 制作・著作:エンターブレイン/クレアテック 開発:キャトルコール(DQ4,オプーナのプログラム担当) 機種:ニンテンドーDS 価格:未定 発売日:2010年夏予定 ゲーム公式サイト クレアテック公式サイト キャトルコール公式サイト 宮岡寛 ゲームデザイナー 山本貴嗣 アートリーダー今作ではアートワーク・モンスターデザインとして参加 門倉聡 サウンド 廣岡政樹 キャラクターデザインモンハン小説の挿絵や、幻想水滸伝ティアクライス悪魔城ドラキュラ 奪われた刻印のメインビジュアル等(HP) 紀世俊 ? 田内智樹 ディレクター 元データイーストのメタルマックスのプログラマーも参加している 桝田省治は今作に関わっていない あの初代CMがメタルマックス3版になってゲーム公式サイト上で復活! モンスターはポリゴンとドットの2種類が存在(一部のお尋ね者のみポリゴン?) 1~2人用 「鋼の季節」で不評だったシステムは、ほとんど破棄! オリジナルに近いシステム タッチペンは廃止 戦闘で仕様する戦車は3台
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待ち焦がれた期待は裏切られて、ひよっこどもにも失望する。 最高の玩具を手に入れて、荒れ狂った心のままに88mm砲をぶち込んだ。 俺としてはほんの軽い憂さ晴らし。 けれども、それ以来ひよっこどもは腫れ物にでも触るかのような態度。 日常を侵す警報は鳴りもしない。 心の獣は精神力という名の鎖で形だけは雁字搦め。 切欠さえあれば獣は鎖をたやすく引き千切れるし、むしろ俺から外してやる。 暴れだすまでどれだけ猶予があることか。 さて、今日は個別スキルとかいうお遊戯を眺めさせてもらうとしよう。 魔法少女リリカルなのはStrikerS―砂塵の鎖―始めるか。 第6話 ひよっこの心、はんたの心 「おらぁ!!いっくぞー!!」 「くっ!!」 目の前の女性はヴォルケンリッター『鉄槌の騎士』。 前線フォワード部隊スターズ分隊ヴィータ副隊長。 彼女の気合いの乗った声にあたしの身体は自然と身構える。 グラーフアイゼンを構え、掛け声と共に駆けてくるヴィータ副隊長から視線を外さず、 私は自分のデバイスに声をかけていた。 「マッハキャリバー!!!」 「Protection.」 突き出したアームドデバイスのリボルバーナックルの上にシールドが張られ、 ヴィータ副隊長の振り下ろしたグラーフアイゼンと火花を散らせてぶつかり合う。 歯を食いしばり、砕かれそうなシールドを必死に維持しているのに、 グリップコントロールをしてくれているはずのマッハキャリバーごと 土をえぐりながら身体はじりじりと後ろに下がっていく。 「てぇぇぇぇぇぇぇりゃぁぁぁぁぁっぁぁぁぁ!!!!!」 瞬時にグラーフアイゼンを振りかぶりなおしたヴィータ副隊長の 気合いと共に繰り出された攻撃が私のシールドに叩きつけられると、 シールドは維持されているにも関わらず、私の身体は吹き飛ばされて、 傍らの木にその身を打ち付けられた。 「うー、痛ッたったー・・・・・・。」 「なるほど。やっぱバリアの強度自体はそんなに悪くねぇな。」 「ありがとうございまーす。」 褒められてしまった。 身体に響く痛みよりも嬉しさが勝ってしまう。 「私やお前のポジション『フロントアタッカー』はな。敵陣に単身で斬りこんだり、最前線で防衛ラインを守ったりが基本なんだ。防御スキルと生存能力が高いほど、攻撃時間が長く取れるし、サポート陣にも頼らねぇで済むってこれはなのはに教わったな?」 「はいっ!!ヴィータ副隊長」 「受け止めるバリア系、弾いて逸らすシールド系、身にまとって自分を守るフィールド系。この3種を使いこなしつつ、ぽんぽん吹き飛ばされねぇように、下半身の踏ん張りとマッハキャリバーの使いこなしを身につけろ。」 「はいっ!!がんばります!!」 「I learn.」 「防御ごと潰す打撃はあたしの専門分野だからな。グラーフアイゼンにぶっ叩かれたくなかったらしっかり守れよ。」 隊長達の訓練を続ければ強くなれる。 ヴィータ副隊長の言葉にそんな考えを持ちながらマッハキャリバーと共に返事を返した。 「エリオとキャロは、スバルやヴィータみたいに頑丈じゃないから反応と回避が まず最重要。例えばこうやって、こんなふうに・・・・・・。」 そう言って説明しながら、オートスフィアからゆっくり飛んできた魔力弾をステップを 踏むようにして避けてみせてくれるフェイトさん。 「まずは動き回って狙わせない。」 オートスフィアが対象を見失ったみたいにぐるぐる回る。 「攻撃が当たる位置に・・・・・・。」 説明を続けながら足を止めたフェイトさんに再びオートスフィアから魔力弾が撃たれる。 「長居しない。ね?」 「「はい!!」」 攻撃をかわしたフェイトさんが笑って僕達にそう声をかけてくれる。 フェイトさんの説明は続く。 「これを低速で確実にできるようになったらスピードを上げていく。」 走る速度をあげたフェイトさんにオートスフィアから次々と立て続けに魔力弾が 撃ち込まれるけど1つも当たらない。 ステップを踏むたびに、フェイトさんを狙った魔力弾はかわされて地面に突き刺さり 炸裂していく。 「「あっ・・・・・・・。」」 足を止めたフェイトさんにオートスフィア全部からの高速で飛ぶ魔力弾が炸裂した。 土煙がもうもうと立ち上る。 大丈夫なのだろうか、フェイトさん・・・・・・。 「こんな感じにね?」 後ろから聞こえたフェイトさんの声に驚いて振り向くと、フェイトさんがいる。 どうしてとばかりに土煙のほうを見れば、ちょうど土煙がはれたところ。 地面にはえぐりとられたような跡が、フェイトさんがさっきいた場所から 今いる場所までつけられている。 「す、すごっ・・・・・・。」 僕はそれだけしか口にできなかった。 「今のも、誰もがやればできる基礎アクションを早回しにしてるだけなんだよ。」 「「はい。」」 「スピードがあがればあがるほど勘やセンスに頼って動くのは危ないの。」 そう言って屈んで視線を僕達にあわせてくれるフェイトさん。 「『ガードウイング』のエリオはどの位置からでも攻撃やサポートができるように。 『フルバック』のキャロは素早く動いて仲間の支援をしてあげられるように 確実で有効な回避アクションの基礎、しっかり覚えていこう。」 「「はい!!」」 がんばろう。 ただ、まっすぐにそれだけを僕は考えていた。 「うん。いいよ、ティアナ。その調子・・・・・・。」 「はい!!」 なのはさんの言葉に返事を返しながら、周囲から縦横無尽に襲い掛かってくる アクセルシューターを休まずシュートバレットで迎撃し続ける。 どれだけの時間この作業を続けただろうか。 既に足元には魔力カートリッジのマガジンが大量にばら撒かれている。 「ティアナみたいな精密射撃型はいちいち避けたり受けたりしていたんじゃ 仕事ができないからね。」 「Ballet, Left V, Right RF」 「Alert.」 なのはさんの言葉を聞き流すような感じでクロスミラージュに次の弾を指示。 指示内容『次弾装填、左ヴァリアブルシュート(誘導弾)、右ラピットファイア(連射)』。 告げるのとほぼ同時にクロスミラージュからの警告が響く。 背後から飛んでくるアクセルシューターに気がついた。 反射的に右に跳んで転がるが、転がった先へ先へと次々に魔力弾が着弾しては炸裂する。 「ほら、そうやって動いちゃうと後が続かない!!」 なのはさんの厳しい言葉がとんでくる。 叱責と同時に放たれるのは誘導弾と高速弾が1発ずつ正面から。 「Ballet V and RF.」 回避前に告げた指示がクロスミラージュに受諾される。 私は左のクロスミラージュからヴァリアブルシュートを放つ。 なのはさんの赤い誘導弾をあたしの撃った魔力弾が追いかけていく。 そのまま間を置かないで右のクロスミラージュからのシュートバレットで高速弾を迎撃。 「そう、それ!!足は止めて視野は広く。射撃型の真髄は?」 「あらゆる相手に正確な弾丸をセレクトして命中させる。判断速度と命中精度!!」 なのはさんの問いに一息で答えながら、右のクロスミラージュを3連射して迎撃。 続けて先ほど撃ったヴァリアブルシュートが迎撃を終えていない赤の魔力弾に 狙いを定めて撃つ。 その間も警戒は怠らず視界は動かさず手も止めず、左のクロスミラージュに 新たな魔力カートリッジを装填。 「Reload.」 「チームの中央に立って、誰よりも早く中・長距離を制す。 それがわたしやティアナのポジション、『センターガード』の役目だよ。」 「はい。」 クロスミラージュに魔力カートリッジの装填受諾を確認。 なのはさんの言葉に耳を傾け、反射のように返事をしながら 右のクロスミラージュを連射し続ける。 短い返事を返すのがやっとでまともな会話している余裕なんてない。 きつい。 これが個人スキルの訓練……。 「揃いも揃って・・・・・・。戦いをお遊戯と勘違いしているのか?」 「判断材料が少ないため回答不能。」 「アルファは今の状態をどう思う?」 「ファジーな質問にはお答えしかねます。」 「言い換えよう。多少ひよっこどもと隊長どのに横から手を出すのはどうか?」 「マスターに『面倒』が増えてもよろしいのならば、私はマスターに従います。」 「ノーペナルティで手を出せないものかな。」 「可能性は極小ですが、向こう側より攻撃をうけた場合および敵対した場合があります。 ただし、前者の場合は殺傷できず、殺傷に及んだ場合『面倒』がさらに増えます。」 「『面倒』なことだ。」 ドラム缶のアルファを押しながら、視界に奔る情報を眺め俺はそう呟いていた。 「いやぁ、やってますなぁ。」 ひよっこ達の様子をウィンドウ越しにリアルタイムで観察しながら 俺は隣に立つシグナム姐さんに同意を求めるようにそう呟く。 「初出動がいい刺激になったようだな。」 「いいっすねぇ。若い連中は……。」 「若いだけ会って成長も早い。まだしばらくの間は危なっかしいだろうがな。」 「そうっすねぇ。シグナム姐さんは参加しないんで?」 「私は古い騎士だからな。スバルやエリオのようにミッド式と混ざった近代ベルカ式の 使い手とは勝手も違うし、剣を振るうしかない私がバックス型のティアナやキャロに 教えることもないしな。ま、それ以前に私は人にモノを教えるという柄ではない。」 そう言ってシグナム姐さんが苦笑する。 傍目には単なる美人とはいえ姐さんは古代ベルカの騎士、ヴォルケンリッター。 どれほどの戦闘経験があるのか計り知れない。 「戦法など届く距離まで近づいて斬れぐらいしか言えん。」 「へっへへへへ……。すげえ奥義ではあるんすけど……。 たしかに連中にはちいっと早いっすね。」 斬れぐらい『しか』とさらりといえる辺り、年季が入っている。 さすがはヴォルケンリッターといわざるをえない。 ひよっこどもがそんな言葉を言えるようになるのはいったいどれほど後だろうか。 もっとも、よほどの才能に恵まれたとしてもほとんどのやつは口にできないだろう。 ふと、思い出したかのように、シグナム姐さんが傍らのウィンドウを指差して口を開く。 「そういえばあの男、訓練にも参加せずさっきからあそこでなにをやっている?」 「ああ、凄腕さんっすね。わからないっすよ。 訓練のたびにああやって1人、時間いっぱいドラム缶押ししてるんすから。」 「なにか意味があるのか?」 「わかんないっす。今度聞くついでにやらせてもらったらどうっすか?」 「ふむ・・・・・・良い精神修練になりそうだし面白そうだからな。そうさせてもらおう。」 「いいっ!?まじっすか!?」 冗談で言ったつもりだったのに……。 極めた人っていうのはやっぱなにかが突き抜けてるもんなのかねぇ。 笛の音が訓練場に鳴り響く。 「はい。それじゃ午前の訓練終了!!」 なのはさんがそう言ってくれたけど、土塗れのあたし達4人は返事もろくに返せず 息も絶え絶えに座り込む。 「はい、おつかれ。個別スキルに入るとちょっときついでしょう。」 「ちょっと……と、いうか……。」 「その……かなり……。」 なのはさんが微笑みながら声をかけてくれたけど、ティアとエリオが 必死で呼吸を整えながら、途切れ途切れに返事を返す。 ちょっとどころじゃないくらいきついです、なのはさん。 「フェイト隊長は忙しいからそうしょっちゅう付き合えねぇけど、 あたしは当分お前らに付き合ってやるからな。」 「あー、ありがとう……ございます。」 グラーフアイゼンを構えながらそう告げるヴィータ副隊長の言葉に あたしは笑って返事ができただろうか。 たぶん引き攣っていたと思う。 「それから、ライトニングの2人は特にだけど、スターズの2人もまだまだ体が成長している最中なんだから、くれぐれも無茶はしないように。」 「「「「はい!!」」」」 「うん、それじゃお昼にしようか。」 「お遊戯お疲れ様、隊長様方。」 フェイト隊長の言葉にあたし達が返事を返し、なのはさんがご飯にしようと言った直後、 そんな声が響いた。 左に視線を向けるといつの間にか現れたはんたさんの姿。 いつのまに……。 「お前か、なのはを半殺しにしたとかいうやつは。今までどこに・・・・・・いや、 それ以前に訓練サボっておいていきなりお遊戯とはどういうつもりだ、お前!!」 なのはさんとフェイト隊長ははんたさんになにを言われたか分かっていないのだろうか?逆にヴィータ副隊長は挑みかかるように言い返す。 「たかが陸曹兼空曹にすぎない俺の口からはとても・・・。」 「いいから言えっつってんだよ!!」 そう叫びながらヴィータ副隊長がグラーフアイゼンを地面にたたきつけると、 叩きつけられた地面が砕け弾ける。 ヴィータ副隊長怖い。 けれど、はんたさんのほうも怖い。 リニアのときのはんたさん、後から戦闘記録を見せてもらって確認までしたけれど、 『危ない』でも『巻き込む』でもなく『殺す』と明確に口にしてあたし達を前の車両へ 追い立てていた。 訓練生や街中でふざけ半分に殺すとか口にする人がいるけど、そんな優しいものじゃない。 何度も見直すたびに異常さが際立つ。 まるでガジェットドローンを倒すついでにあたし達も殺そうと思っているかのような。 まさかそんなことないよね。 同じ六課のメンバーなんだし。 その考えがどうしても離れなかったのだけど・・・・・・。 そして今、目の前の光景を見るとやっぱり間違いって考えるほうが間違いに思えてくる。 張り詰め始めた空気を敏感に察した身体が無意識に強張り始める。 隣のティアは蒼白だし、エリオとキャロも震えている。 あ、そういえばエリオとキャロの2人、初任務のとき凄い言葉言われてたもんね。 こんな状態でそんなことを考えていられるあたしは余裕があるのかな。 「それでは遠慮なく分かりやすく一言で言わせていただこうか。 ようするに・・・・・・揃いも揃って馬鹿揃いか、この馬鹿ども。」 「な、な、な・・・・・・。」 さらっと物凄いこと言われた。 馬鹿?ねぇ、馬鹿って言われた?ねぇ、馬鹿って言われたの? みんなの様子を見ていられた余裕(?)の状態から一転して頭がパニックを起こし始める。 あたし達の前にいたヴィータ副隊長は、怒りのあまり口が動かないみたいで 『な』を言い続けて震えているし、なのはさんとフェイト隊長は顔色も変えずに 警戒(でいいのかな?)しているようだ。 はんたさんの言葉が続く。 「フロントアタッカー、フルバック、ガードウイング、センターガードとか言ったか。 突っ込むだけでろくに遠距離攻撃も前線構築もできないひよっこフロントアタッカー!! 単身でまともに戦えないひよっこフルバック!! 身体に見合わない装備抱えた速さしか取り柄が無いひよっこガードウイング!! 無能にもほどがあるひよっこセンターガード!! それを指摘しないで小手先に走る隊長格3人!!馬鹿と言ってなにが悪い。」 「上等じゃねぇか。アイゼン!!シュワルベ・・・・・・。」 ヴィータ副隊長がグラーフアイゼンに指示を言い終えるより早く、響く銃声が7発。 あたしは突然襲った額の激痛になにが起こったかさえわからない。 「3人死亡確定。エリオ、疲れているところ油断しないでストラーダを構えて 後ろに飛びのいた判断力と行動力は素晴らしい、◎をあげよう。 キャロとペット君も疲れているだろうに横っ飛びしたのは悪くない、○をあげよう。 ただ体勢が崩れて後が続かなくなることを忘れないように。 なのはとレイジングハート、シールドを展開した判断力と速度と行動予測◎。 フェイトとバルディッシュ、回避運動に移りながらバリアジャケットに着替えた判断力◎。 さて、ろくに経験値が蓄積されていないガラクタデバイス所持者で簡単に熱くなる馬鹿とぼけっとしている馬鹿と呆然としている馬鹿の死亡確定馬鹿面3人組み、御反論は?」 額の痛みとはんたさんの言葉になにが起こったのか今更気がついた。 はんたさんの両手に構えられた2挺のハンドガンにも。 そしてさっきまであたし達の左にいたはずのはんたさんが、 右にいてあたし達に背中を向けていることにも・・・・・・。 ティアはなにが起こったかさえ理解できていないみたいに呆然としちゃっている。 逆に、なのはさんとフェイト隊長は油断せずにバリアジャケットを展開していて、 まさに一触即発というやつだ。 ああ、またあのときの再来と思い身体が震え始めた・・・・・・のだけど、 その空気は背中を向けたままのはんたさんがハンドガンを下げたまま 口を開いたことで終わりを告げる。 「高町なのは一等空尉どの、俺が言いたいのはそんなところだ。 もちろんあなたにはあなたの育成計画があるのだろうが、 あんまりにもあんまりだったのでヴィータ副隊長どのが『言ってもいい』と ほざいたから遠慮なく言わせてもらった。 ああ、そうか。子供脅してガム巻き上げるようなガキ対策の訓練プログラムなのか。 それなら悪いことをしました。すいません。」 「てっめぇーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!」 機械的に言葉を話しているような背中を向けたままのはんたさんに 起き上がったヴィータ副隊長がグラーフアイゼンを振りかぶって殴りかかる。 はんたさんは・・・・・・シールドさえ張らないなんて!! いくら非殺傷設定があるからってこのままじゃ・・・・・・・。 大変なことになるって思ったあたしは目の前の光景に目を奪われた。 振り下ろされたグラーフアイゼン。 はんたさんは振り返ろうともせず、自然に滑らかに身体を軽く横にずらす。 そのままグラーフアイゼンを右手の銃杷でいなす。 そして身体を回転させて左手の銃把で ヴィータ副隊長の左頬(正しくは左顎だったらしい)を殴り飛ばした。 この間、いったい何秒だったんだろう? って、ええ!? ヴィータ副隊長のシールド壊れてるよ!? 魔力の補助や力の差とかあるにしても人がこんなに空を跳ぶってどれだけ力強いのさ!? 宙を舞ったヴィータ副隊長が大地に叩きつけられ地を滑る。 「アルファ、絶妙なサディスト設定をありがとう。」 「問題ありません。マスター。敗北の可能性は0。想定されるイレギュラー全てに対し 事前に対応済みです。左手による攻撃の際、射程の関係から95%以上の確率で 肘を使うことによる殺傷およびUSP連射による追撃における蓄積ダメージが 唯一の不安要素でした。」 なんかすごくヤバい発言しなかった?はんださんのデバイス。 でも、強くなりたいって格闘訓練を続けたから感じる。 はんたさんのあれは、何回も何回も繰り返し続けた動きのそれだ。 かけらほどの淀みさえ感じられない洗練された動き。 それに、あんなにあっさりヴィータ副隊長がやられるなんて・・・・・・。 目の前の光景が信じられなくて無意識のうちに右の頬を抓っていた。 「それで殺り合うのかどうか、さっさと決めてくれないか?」 はんたさんの言葉になのはさん達がバリアジャケットを解除していく。 はんたさんが舌打ちしたような気がしたけど気のせい? 転がったままピクリとも動かないヴィータ副隊長。 呆然として座り込んだまま動けないティア。 地面に横になったままのキャロ。 ストラーダを構えたままのエリオ。 視界にそんな皆の姿を捉えながら頭の片隅では別のことを考えていた。 六課の強さの序列、いったいどうなっているんだろう? 「電撃でたたき起こすか?」 昏倒したヴィータ副隊長をどうやって運ぶか話しているとき、 当たり前のようにそう尋ねたはんたが怖くてしかたがない。 何ボルトあるか知らないスタンガンにデバイスを変形させて物凄い放電させてるし。 結局、ヴィータ副隊長は昏倒したままスバルの背中に背負われている。 何よりも強烈に印象に残ってしまったのは初対面のときだった。 あたしの魔力弾が戦いの引き金となってしまったとき。 今でもあのミスが塞がらない傷口のように疼くような痛みを心に与える。 なのはさんが次の日あたし達の前に現れたときはそれこそスバルと一緒に幽霊だと 大騒ぎしたくらい、徹底的に冷酷に機械的になのはさんを攻撃 (処理って言うほうが正しいかも)してなのはさんがやられてしまったのを失う前の 意識がかろうじて覚えている。 そのせいか六課のメンバーと紹介された今でもこの男『はんた』に近寄られると 無意識に体が強張ってしまう。 そういえばスバルが初任務の映像を飽きもせずに見直していたけど、 なにか面白いことあったっけ? 相手に先制されちゃったのと、スバルがリニアの天井壊しちゃったのとエリオとキャロが 少し危なかった部分とはんたがリニアを片っ端から穴だらけにしたぐらいしか あたしとしては注意点がなかったように思うのだけど。 それよりもはんた、あれだけの射撃魔法(砲撃魔法か?)を使えるのだったら 最初から援護してくれればいいのにとか思ったし・・・・・・。 「なるほど、スバルさんのお父さんとお姉さんも陸士部隊の方なんですね。」 「うん。八神部隊長も、一時期、父さんの部隊で研究していたんだって。」 キャロの言葉に返事を返しながら、あたしは黙々と目の前の山盛りパスタと格闘する。 訓練の後はお腹がすいてしかたがない。 それにしても訓練の後のご飯ってどうしてこんなにおいしいんだろうね。 「へぇー。」 「しかし、うちの部隊って関係者繋がり多いですよね。隊長たちも幼馴染同士なんでしたっけ?」 「そうだよ。なのはさんとはやて部隊長は同じ世界出身で、フェイトさんも子供のころはその世界で暮らしていたとか……。」 驚きの声を上げるキャロ。 思い出したように疑問を投げかけるティアにシャーリーさんがパンを頬張りつつ 答えてくれる。 「ええっと、たしか管理外世界の97番。」 「そうだよ。」 「97番ってうちのお父さんのご先祖様がいた世界なんだよね。」 エリオの言葉に、山盛りのパスタを手皿に取りながら答える。 あ、エリオのお皿も空っぽだ。 とってあげるとしよう。 子供はたくさん食べて大きくならないとね。 あたしもまだなのはさん達に比べれば子供だけど……。 「そうなんですか?」 「うん。」 「そういえば、名前の響きなんかなんとなく似ていますよね。なのはさん達と……。」 「そっちの世界にはあたしもお父さんも行ったことないし、よくわかんないんだけどね。 あれ?そういえばエリオってどこ出身だっけ?」 「あ、僕は本局育ちなんで……。」 エリオの言葉にティアのパスタを食べる手が止まる。 なんでだろう? 「管理局本局?住宅エリアってこと?」 「本局の特別保護施設育ちなんです。8歳までそこにいました。」 そこまで言われてまずいことを聞いてしまったことに気がついた。 思念通信でティアが怒っている。 あたしはどうしようといわんばかりの表情だっただろう。 「あ、あの、気にしないでください。やさしくしてもらってましたし、 ぜんぜん普通に幸せに暮らしてましたので。」 「あ、そうそう。そのころからフェイトさんがずっとエリオの保護責任者なんだよね。」 「はい!!もう物心ついたときからいろいろよくしてもらって、魔法も僕が勉強し始めてからは時々教えてもらっていて、本当にいつもやさしくしてくれて、僕は今もフェイトさんに育ててもらっているって思ってます。」 年下の子に気を使わせてしまった。 シャーリーさんが話の向きを変えてくれて助かったけど。 今後気をつけよう。 エリオがフェイト隊長との出会い話を続けながら、 どこか思い出すかのような遠い目をし始めた。 「フェイトさん、子供のころに家庭の事情でちょっとだけ寂しい思いをしたことが あるって……。だから寂しい子供や悲しい子供がほっとけないんだそうです。 自分もやさしくしてくれる暖かい手に救ってもらったから……って。」 「羨ましい考え方だな。」 「「「「「えっ!?」」」」」 あたし達みんなが驚く。 空耳じゃない? 今の言葉っていったい誰の……。 周囲を見回したけど、結局誰の言葉かわからずじまいだった。 他の席の誰かの声がたまたまタイミングよくはまっただけだろうって……。 どうして気がつけなかったのだろう。 あたしの後ろの席ではんたさんがパスタに種入りマスタードを丸々1瓶かけていた。 夜の訓練所に笛の音が響き渡る。 「はーい。夜の訓練おしまい。」 「「「「ありがとうございましたー。」」」」 フォワード4人にそう言ってあげたけど、みんなは掠れるように答えるのが精一杯な様子で傍目にも疲れきっているのがわかった。 ティアナとキャロは座り込んじゃってるし、エリオもストラーダを杖にしてるし、 スバルは他の3人よりは大丈夫そうとはいえ、それでも膝に手をついている。 昔のあたしもこんなだったのかな。 「「「「おつかれさまでしたー。」」」」 「はーい。」 「ちゃんと寝ろよー。」 「「「「はい。」」」」 重い体を引きずるように隊舎へと帰っていくフォワード4人に、 ヴィータちゃんが声をかけている。 わたしは端末を操作しながらヴィータちゃんの様子を伺うが、 その表情はどこか不満がありそうな感じだ。 「しかし、お前、本当に朝から晩まで連中に付きっ切りだよな。疲れるだろ。」 「わたしは機動六課の戦技教官だもん。当然だよ。」 「あと、あれだ。なんつうか、もっと厳しくしねぇでいいのか?あたしらが昔受けた新任教育なんて歩き方から挨拶までもうなんでもかんでも厳しく言われてたじゃねぇか。 物凄ぇ癪だけど、あのはんたとかいうやつの言葉も一理あるかもって思っちまった。」 「戦技教導隊のコーチングってどこもだいたいこんな感じだよ。細かいことで叱ったり 怒鳴りつけたりしている暇があったら、模擬戦で徹底的にきっちり打ちのめしてあげる ほうが教えられる側は学ぶことが多いって。教導隊ではよく言われてるしね。」 「おっかねぇな。おい。」 ヴィータちゃんがどこか引き攣ったような声でそう言ってきた。 当たり前のことを言っているだけだと思うけど。 端末の操作が終わり、訓練場の建物が消えていく。 「わたし達がするのはまっさらな新人を育てる教育をするのじゃなくて、 強くなりたいって意思と熱意を持った魔導師達に今よりハイレベルの戦闘技術を 教えて導いていく。戦技教導だから。」 「まぁ、なんにせよ大変だよな。教官ってのも。」 「でもヴィータちゃんはちゃんとできてるよ。立派立派。」 「撫でるなー!!なんだよー!!」 そう言いながらヴィータちゃんの頭を撫でてあげると 子供扱いするなって言わんばかりに叫ぶヴィータちゃん。 でも、ヴィータちゃん、顔が笑っていたら嫌がってることにならないよ。 「今日の戦闘データ、また分類してデータルームに送っておいてくれるかな。」 「All right.」 「うん、ありがとうね。レイジングハート。」 六課の隊舎への帰り道。 なのはのやつがレイジングハートにそんな声をかけている。 連中は自分達がどんだけ幸せなか気づくまで結構時間が掛かるだろうな。 自分勝手に戦っているときも、いつだってなのはに守られている幸せに・・・・・・。 あたしはスターズの副隊長だからな。お前のことはあたしが守ってやる。 「うん?なに?」 「なんでもねぇよ!!行くぞ!!なのは。」 「うん。ヴィータちゃん。」 あたしの心を読んだみたいなタイミングでなのはが振り返るからまじで焦った。 ごまかすみたいにあたしはそう言ったけど・・・・・・。 どんどん歩みを進めていくあたしの横を笑いながらなのはがついてくる。 「そういえばヴィータちゃんもわたしと同じではんた君に負けちゃった組だね。」 「うるせー!!あれは不意打ちだったからだ。油断してなきゃ負けるはずがねー!! いつかそのうち絶対にぶちのめしてやるんだからなー!!」 「それは楽しみなことだな。しかし、『油断』なんて言うとは冗談のセンスもあったんだな。」 俺は独りでそう呟く。 誰もいなくなった夜の訓練場。 シミュレータに登録された環境、この日は廃墟すらない舗装路、を呼び出し歩みを進めた。 レーダーレンジの内側で面白い会話をしていたからアルファに拾わせてみたが。 是非ともそう願いたいものだ。 そうでないとあまりにも退屈すぎる。 今から始めるのはアルファが視界にデータを送ることができるという時点で 思いついた訓練方法。 毎日のように繰り返し続けているあまりに虚しい戦いだが、 ないよりはマシだと言い聞かせて繰り返し続けている。 「マスター。今日の相手はいかがしましょうか?」 「ニュービートラ200機、殲滅した端からエンドレスで増援。 戦闘論理はサーチアンドデストロイ、イレギュラーあり、ミサイル弾数無制限で。 こちらの装備は・・・・・・パイルバンカー限定としよう。アルファ、セットアップ。」 「了解しました。バリアジャケット展開。それでは戦闘シミュレータ開始します。 シミュレータは2時間継続されますが、中断する際にはお申し付けください。」 周囲に現れたよう視界奔るデータで作られた黄色い丸っこい車の群れ。 そういえば、このミッドチルダでもありそうなデザインだな。 ただ、致命的なまでに違うのは、ルーフ部分にごっそりとミサイルがついていること。 ハンターとして駆け出しのときに戦った1500Gの賞金首。 あのころは戦車があったから、タイヤの機動力を殺せる砂漠で戦ったから、 そしてなにより相手がたったの1匹しかいなかったから倒せたと思っている。 もしも舗装路で無限の増援があれば楽しい戦いができるだろうと思った殺し相手。 周囲からマッハ1で一斉にミサイルが飛び交うのが開始の合図だった。 しかし、なのは達もこのぐらいの訓練をやらせればいいだろうに。 疲れたなんて座り込んだり歩いたりできるなら経験としてたいしたものではないのだから。 ヴィータはシールド系、バリア系、フィールド系とか言っていたか。 全てが潰されるこんな飽和攻撃を前にどうするというのだろう。 フェイトも基本ステップとか言っていたが、飛びのくくらいでこれが避けられるなら ぜひともやってみせてほしいものだ。 動きを止めないで狙わせないという部分には同意だが。 そしてなのは、これを全部撃ち落せるものなら落としてみせろ。 敵を蹴散らしたほうが早いなんていって相手を仕留めに掛かるかもしれないが、 敵の増援が無限だったらどうする。 殲滅戦と消耗戦の区別どころか意味さえ知らないのではないかと思えてならない。 そんな思考を傍らに、蹴り飛ばしたニュービートラが視界を奔るデータ上で宙を舞い、 背中から轢き殺しにかかったニュービートラを宙を舞ってかわしながら パイルバンカーを突き立てる。 ご丁寧にボロキレ、じゃなくてバリアジャケット、にアルファが干渉することで、 本来感じるはずの負荷まで再現してくれる徹底振り。 さて、地面から足を離してしまうのは自殺行為。 それでも本当にどうしようもないときはやらざるをえない回避行動。 もっとも、着地が狙われるのは目に見えている。 いくら経験を積もうとも、決して0にできない着地硬直時間があるのだから。 当然のように着地に合わせてとんできたミサイルの群れ。 しかし、今はこのボロキレ、じゃなくってバリアジャケット、のおかげで 空中で回避動作が行える。 着弾前に文字通り空を走り抜け、別のニュービートラにパイルバンカーをつきたてた。 ああ、しまった。 立て続けに襲ってくるミサイルの雨を回避しながら次から次へとニュービートラを 殴り、蹴り飛ばし、投げ飛ばし、パイルバンカーでぶち抜きつつ思った。 大口径の機銃をぶちまけてアクセルターンを連発してくる、 あの気高き野バス達と踊ったほうが面白かったかもしれない。 戻る 目次へ 次へ
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Last-Update 2007-09-09@19 07 53 やばいバグある? セーブの仕様は? 2周目の引き継ぎはある? 鋼の季節の特徴は? タッチペンの操作がやり難いお(#^ω^)ビキビキ 仲間に命令できるの? 走れるの? エンカウント率高い? エンカウント率を下げるアイテム・スキルはあるのか? 面白いの? 傷の数って? 火炎放射器強すぎね? 攻略本って買い? やばいバグある? バグを参照 ハマリバグやいきなりフリーズが多いからセーブはこまめに。 セーブの仕様は? 3個 中断セーブ可能念のため言うと多用は危険 2周目の引き継ぎはある? 無い。というかラスボス後の世界をプレイするMM1タイプ。 鋼の季節の特徴は? タッチペンオンリーでボタンでの操作が出来ない。 戦車がまともに使えるようになるのはストーリー中盤から。過去作品に比べて非常に遅い。 フィールドが簡略化。 パーティーは「主人公」「人間」「犬」の組み合わせ。「人間」の部分はイベントによっては強制。 大抵は自由に選べる。 戦闘中に搭乗できる戦車は1台だけ。 アイテムは99個まで持てる。回復カプセル・ドリンク99個とかはデフォだぜ。 武器は同時に3個まで持てて、使い分けが可能。虫系にはガス、草系には炎など 攻撃範囲も単体・扇形・貫通・ブーメランなど敵の数、陣形に合わせて武器を変えられる タッチペンの操作がやり難いお(#^ω^)ビキビキ ~オヌヌメ非純正タッチペン~ ●タッチペンノック タカラトミー社製 市販価格400円前後 頭をカチッと押すと芯が出てくるボールペンタイプ。 芯出し時13cm。 外見はボールペンそのものなので、持ちやすさは折り紙つき。 画面が手で隠れるのが嫌な人におすすめ。 弱点はやはり本体に収納不可な点。 ストラップ穴なども無いため、なくしたり忘れたりするかも(自己責 任)。 ●タッチペンロング HORI社製 市販価格400円前後 伸び縮みタイプ。最大伸長時13cm。2本入り。 純正タッチペンと完全同サイズなので普段から本体収納可能。 伸ばした時の剛性感は今ひとつ(ちょっとフニャっとする)。 長時間プレイ時は疲れるかも。純正よりはかなり楽。 ●ラクなタッチペンDS HORI社製 市販価格400円前後 旧DS用のタッチペン。全長12.3cm キャップを上部につければ一応13.5cm 太く長いので純正品より使いやすい。 タッチペン収納穴とねじ穴を利用して旧DS本体にくっ付けられる。 旧DSユーザーならお勧め 最近、DSL用も発売された。 ●ストレッチタッチペン モリガング社製 市販価格700円前後 DS用、DSL用どちらもあり。DS用は二本入り。 本体に収納できる伸縮型。 金属製でたわまないので使いやすい。 使い始めは表面がつるつる滑るかも。しばらく使えば落ち着く。 仲間に命令できるの? できる。 NPC・犬は命令できない。 走れるの? 俺が聞きたい。 ダッシュが可能になるアイテムがでるかによる。 エンカウント率高い? 高めだと思う。 昔のハドソンのRPG程じゃない。 戦闘終了後すぐに戦闘することもあるが、長い間エンカウントせずに歩ける事もある。 バラつきが大きいだけでそこまで高くない。 慣れる。 エンカウント率を下げるアイテム・スキルはあるのか? 迷彩シールド(戦車用の装備)と、ステルスキューブ(キューブが落とすアイテム)と、しのびあし(ソルジャー)を確認。 面白いの? とりあえずバグだらけ。デバック好きにおすすめ。 バグも一因だが不親切設計でストレスがたまる。かゆいところに手がとどかない仕様。改造屋の確認が一つ多い気がする そのくせ、アイテムを捨てる時は確認しない 過去のMMシリーズと比べなければ、DSのゲームの中じゃ歯ごたえのある良作。 最初は操作面が気になるが慣れるし、ゲーム本編は面白い 敵キャラや料理素材のネーミング等、随所にメタル臭が感じられる。旧作ファンなら… 傷の数って? 死んだ回数、男の勲章。 火炎放射器強すぎね? ふしゅるるる・・・ 攻略本って買い? 電撃DS メタルサーガ 鋼の季節 ザ・コンプリートガイドモンスターデータにゴールドウォーカー(風穴洞)の各種データが掲載されてなかったり、肝心のオデン砲設計図の在処などが書かれていなかったり。攻略本というよりはメーカーから渡されたデータをほぼ写してるだけ。良点は、レッドバレーやセキュリティゾーンを含むダンジョンマップデータが掲載されていたことぐらい。後は自分で決めて下さい。
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機動六課に配属された。 お仕着せの制服に身を包み、ずらりと並んだ人の群れ。 見覚えのある顔の幾つかに、若干を気を向けながらはやての言葉が終わりを告げる。 本日行う活動はスターズとライトニングとかいうやつらと共に訓練。 いったいなにをさせるのか。 『ソロソロデキルゾ人間ノクズ』とサースデイに告げられたけど、 いまだにデバイスは届かない。 魔法少女リリカルなのはStrikers-砂塵の鎖―始めるか。 第3話 ひよっこ 「平和と法の守護者、時空管理局の部隊として事件に立ち向かい、 人々を守っていくことが私達の使命であり、為すべきことです。」 機動六課稼動の挨拶で八神はやてが真顔で言ったそんな言葉に噴出しそうになった。 平和?法? それは食べられるものなのか? 守護者?人々を守る? 随分と上からの傲慢な物言いじゃないか。 正気で言っているのか? 笑わずに堪えるくらいはするとしよう。 事情はどうあれ、今はあれに従うべき身分に俺自身がなってしまったんだから。 はやてが色々言っているが、その言葉が終わるまで エミリと同じくらいの年頃の桃色頭の女の子と赤髪の男の子の後ろで 肩を震わせずにそのまま耐えることができていたか自信がない。 周囲の拍手にあわせて拍手をして、やがて式は終わった。 「ああ、テスタロッサ。直接会うのは半年振りか。」 「はい、同じ部隊になるのは初めてですね。どうぞよろしくお願いします。」 「こちらのセリフだ。大体、お前は私の直属の上司だぞ。」 「それがまた・・・なんとも落ち着かないんですが・・・・・・。」 「上司と部下だからな。テスタロッサにお前呼ばわりはよくないか。 敬語で喋ったほうがいいか?」 「そういう意地悪はやめてください・・・。いいですよ。『テスタロッサ』で『お前』で・・・。」 「そうさせてもらおう。」 シグナムがふっと笑みを浮かべるのにつられて私も笑い返す。 ほんの少し前は戦いあってた仲なのに、今は上司と部下なんて少し複雑な気分。 ふと思い出したようにシグナムが口を開いた。 「そういえば、なのはが殺されかけたとかリインが以前騒いでいたんだが、 見た限りなのはは元気そうだし、実際どうだったんだ?それに式のとき、 お前が保護者になった子供の後ろに他のやつらとは明らかに違う目のやつがいたが・・・。」 「そういえばお互いの自己紹介はもう済んだ?」 「名前と経験やスキルの確認はしました。」 言いよどむスバルの代わってなのはさんの問いかけに答える。 情報の共有は基本的なことだ。 特に部隊であたしが立つポジション的に・・・。 今日から機動六課の一員となったのだから、精一杯やれることはやっていかねばならない。 「あと、部隊分けとコールサインもです。」 エリオ・モンティアルがそう私の言葉に付け加えた。 しまった。 それも現在分かっている情報じゃないか。 行動する上で重要なものなのに。 「そう。じゃぁ、訓練に入りたいんだけどいいかな?」 気にする様子も無く、振り返りながらそう告げるなのはさんの問いに 『はい』とあたし達4人の威勢のいい声が廊下で響いた。 「なのはさーん。」 服装を着替えた後、一足先に訓練場でみんなの到着を待っているとそんな声が響いた。 視線の向けると笑いながらトランク片手に駆け寄ってくるシャーリー。 その後ろについてきているのは見覚えのある老人とロボットと男の子。 別方向から訓練用の服装に着替えたフォワードの4人が駆けてくる。 「今返したデバイスにはデータ記録用のチップが入っているから、 ちょっとだけ大切に扱ってね。」 フォワードの4人にそう告げるが、4人は手元のデバイスよりも、 当然のように自分達の横へ並んだ見慣れない男の子に視線を向けている。 むしろスバルは膝が震えているし、ティアナの顔は蒼白だ。 どういう順番に紹介しようか。 「ええと、まずは皆の横に並んだ子の自己紹介からしようか。」 「名前ははんた。階級は空曹兼陸曹。部隊はスターズともライトニングとも違って ハンターというチームになる。コールサインはハンター1。使用スキルについては デバイス調整の関係で現在はサポートスキルが使えないが他はなんでもやれる。 経験は・・・脊髄・・・たくさんとしか言いようがないな。」 「彼の階級は機動六課で一番低いけれど、六課の中では一番戦闘経験豊富なんだ。 彼のチームであるハンターは皆の手が届かないところをお手伝いする便利屋さんかな。 それと、スバルもティアナもそんなに怖がらないでいいから・・・ね?」 はんた君が物騒な表現を使わないでくれたことにほっとする。 それと思った以上にエリオとキャロが彼を怖がっていないことにも。 むしろエリオ達はスバル達の様子を不思議がっているみたい。 「それと、メカニックのシャーリーから一言。」 「えー、メカニックデザイナー兼通信主任のシャリオ・フィニーノ一等陸士です。 みんなはシャーリーって呼ぶので、みんなもそう呼んでね。みんなのデバイスを改良したり調整したりするので時々訓練を見せてもらったりします。デバイスについての相談があったら遠慮なく言ってね。」 「それと、その隣にいるのがバトー博士と助手のサースデー。」 「んー。メカニックデザイナー主任のバトーだ。こっちは助手のサースデー。 キミ達のデバイスを根本的に設計変更するときなんかはボクの出番だね。 シャーリー同様、暇があれば訓練を見に来るし、 簡単なカスタマイズも暇があればしてあげるよ。 今回はボクのトモダチに新型デバイスを届けたついでだね。」 不気味なくらい静かなバトー博士。 あれ?シャーリーはなんでシャーリーなの? わたしはバカチンなのに・・・。 後で聞くとしよう。 それは今は置いておいて、まずは訓練を始めよう。 「じゃ、さっそく訓練に入ろうか?」 私の言葉に戸惑いながら返事を返すフォワードの4人。 目の前に広がるなにもない平地の訓練所を見ているせいだろう。 私はシャーリーに声をかけた。 「シャーリー。」 「はーい。」 なのはさんの言葉に返事を返して、私は周囲にディスプレイを展開し操作する。 片手間にここの訓練場の説明を続けながら。 「機動六課自慢の訓練スペース。なのはさん完全監修の陸戦シミュレーター。 ステージセット!」 ディスプレイを指先で押すと、機械の稼動音と共に何も無かった訓練所に 建造物が次々浮き出してくる。 フォワードの4人は驚きの声を上げて呆然とするばかり。 その様子に内心では『やったね』と喜んでいた。 もっとも、はんた君はかけらも動揺しなかったのが残念だったけど。 「ヴィータ、ここにいたか。」 「シグナムか。」 「新人達はさっそくやっているようだな?」 「あぁ。」 「お前は参加しないのか?」 「4人ともまだヨチヨチ歩きのひよっこだ。 あたしも教導を手伝うのはもうちょっと先だな。」 「そうか。」 「それに自分の訓練もしたいしな。あたしは空でなのはを守ってやらないといけねぇ。」 「頼むぞ。」 「あぁ。」 シグナムと新人達を眺めながらそんなやり取りをする。 どれだけ短時間で新人達を使い物になるまで育てられるか。 なのはのことだからどうにかしちまうだろうけどな。 そういえばシャマルの姿が見えないことに気がつき、尋ねようとした矢先、 シグナムが口を開く。 「そういえば『4人』とヴィータは言ったが、もう1人いるぞ?」 「なに!?どこだ!?連絡来てねぇぞ!!」 「いずれにせよ4人じゃなくて5人なことに変わりはない。 それに5人目は相当な使い手のはずだ。なのはの一件もあるしな。」 「なんだよシグナム。なにかあったのか?」 「リインから連絡が来なかったか?なのはがデバイスも無い相手にやられたって。」 「なにーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」 「よしっと。皆聞こえる?」 通信越しのなのはさんに5人が返事を返す。 廃墟となったビルが乱立した訓練場でいったいどんなことをするのか。 機動六課というエリートの集まりな部隊であるだけに気を張り詰めさせる。 「じゃ、さっそくターゲットを出していこうか。まずは軽く8体・・・。」 「動作レベルC、攻撃精度Dってところかしらね。」 「うん。わたし達の仕事は捜索指定ロストロギアの保守管理。 その目的のためにわたし達が戦うことになる相手は・・・・・・これっ!」 なのはさんの言葉と同時に魔方陣が展開され、地面からなにかが転送されてくる。 あれ? でも、この形って試験のときとほとんど変わらないんじゃ? 「自律行動型の魔道機械。これは近づくと攻撃してくるタイプね。攻撃は結構鋭いよ。 では第1回模擬戦訓練。ミッション目的、逃走するターゲット8体の破壊または捕獲。 15分以内に。」 『はい』と返事をする私達の中で、なのはさんをひどい目にあわせた男はんただけが、 どこか退屈そうな雰囲気を放っていた。 それに使用スキルで『なんでも』なんて言われては逆にどうすればいいのかも困る。 まずは皆がどれだけ動けるのか知るほうが先か。 「それではミッション、スタート。」 なのはさんとシャーリーさんの言葉と同時に8体のターゲットが移動を始めた。 「そういえばバトー博士。はんた君のデバイスっていったいどうなったんですか? さっきの自己紹介で『なんでも』なんて彼は答えてましたけど。それに魔力適正は?。」 「そう。そうなんですよ。なのはさん。デバイスタイプに革命です。革命なんですよ!! 設計図は見せてもらいましたけど、本当に従来と思想が違うんです。 ぜひともどんな風になったか説明してくださいよ。バトー博士!!」 私の質問にバトー博士よりもシャーリーのほうが物凄い勢いで興奮している。 たしかに『なんでも』なんて普通は答えられない。 それについ最近まで魔法さえ無い世界にいたのがはんた君達だ。 『なんでも』という条件を満たせるデバイスがあるとすれば、闇の書? 「バカチンーーーーーーーーーーーーーーー!!!トモダチをアダナで呼ぶっていいよね。 つまりバカチンのそれはゴキブリにしたのと同じ説明をして欲しいって意味なのかな?」 「う、うん。そうだよ。」 にこっと笑えたか少し自身がない。 何度もバカチン呼ばわりされて我慢しきれず1度この訓練場を全壊させちゃったし。 シャーリーはどこか気の毒そうな目でこっちを見ているし。 うう、シャーリーはどうしてシャーリーなの? サースデーは横でガチャガチャ身体を鳴らしながら 『ばとー博士ノトモダチノバカチントゴキブリハドウルイ。 ゴキブリハテツノクズヲアツメタニンゲンノクズ。 ダカラゴキブリノドウルイノバカチンモニンゲンノクズ』とか言ってるし。 うん?なんか人間の屑とかわたし言われてない? 「それじゃ簡単に説明するよ。ちゃんと聞いててね。分からなかったら分からないって 遠慮なく素直に言ってくれていいから。それじゃ説明するよ。 とりあえずゴキブリの魔力適正とかいうのはバカチン程度にはあるって分かったんだ。 感覚的にゴキブリは表現が難しかったけど生き汚くてしぶとくっていくら叩いても も死なないゴキブリだからそれもありかなってボクは思ったんだ。 それで、ボクがゴキブリのために作ってあげたビューティフォーでワンダフォーで スペシャルかつエクストリームにクソッタレのダッチワイフデバイスは ・・・(中略:専門用語とその10倍以上の聞くに堪えないスラングが3分ほど続く)・・・ ということでオナニーを覚えたサルみたいにガチャコンガチャコンヤりまくって いくらでも激しいプレイをしてくれていいというファッキンシットなゴキブリ専用の クソッタレスペシャルダッチワイフデバイスなんだ。少し早口だったかもしれないけど こんなに簡単にしたんだもの。バカチンは当然分かったよね?」 「ごめん。バトー博士。まったく分からなかったんだけど・・・。」 「わ、私も全然・・・。」 「Sorry, me too.」 わたしの勉強が足りないのかと思う前に、デバイスマイスターのシャーリーと インテリジェントデバイスのレイジングハートが分からないと答えている。 やっぱり、説明が難しかったんだ。 物凄い表現がたくさんあったけど。 少しだけほっとする。 眉間にしわを寄せたバトー博士がにかっと笑い再び口を開く。 「まったくバカチンもシャーリーもゴキブリと同じでダメなやつだね。 本当なら1日かかる説明をこんなに簡単に説明したのに分からないって言うなんてさ。 でも大丈夫。なんたってボクは天才だからね。 シャーリーやバカチンのウジが湧いた足りない脳味噌でも分かるぐらい 簡単に説明することぐらい朝飯前さ。 それじゃバカチンでも分かるようとても簡単に1つ1つ順番に説明するよ。 1.現在ある5種類のデバイスタイプ全部を継ぎ接ぎでダッチワイフのアルファがAI。 2.ゴキブリが武器と思ったものはなんでも好き勝手絶頂に変形して展開できる。 3.宣言さえすればどんな無茶でも聞いてくれるけど、変形には4秒もかかる。 4.ゴキブリがプレイに使う道具を先に宣言しておくことで変形の予約ができる。 5.バカチンとシャーリーに言われてしかたなく取り付けたサディスト設定搭載。 6.激しくダッチワイフを使うゴキブリのために隕石が直撃しても壊れない親切設計。 7.変形中に何か挟まってもゴキブリらしく噛み砕いて問題なく変形する悪食設計。 8.幾ら小さくしても大きくしても重さはたったの250kg。 9.下から上は苦手だけど上から下なら幾らでも加速して飛べるゴキブリ仕様。 10.カサカサ這いずるゴキブリ専用仕様だからどんな攻撃をしても硬直時間は0秒。 11.ボクの設計した不思議魔方陣で勝手に魔力弾や魔力刃を展開する親切設計。 12.カートリッジが必要になりそうなゴキブリのお気に入り装備はまだオアズケ。 13.今日はまだブーストとユニゾンの効果がついてないし、もっと太る予定。 14.バナナはおやつに含まれない。 どうだい。言い足りない部分が物凄くたくさんあるけど 貧弱で脆弱でウジが湧いた脳味噌のバカチンでも分かるように ここまで簡単にしてみたんだ。これだけ簡単にしたんだもの。 今度こそ分かったよね?ねぇ、バカチン?」 スバルが追い詰め、エリオが追い込む。 入り組んだこの地形で実力把握も終わっていないとすればそれなりの連携か。 即席でこれなら経験次第でそれなりになれるだろう。 ただ、あの程度の速度で『こいつ早い!!』とか言った気がしたのは聞き間違いか? 「前衛2人!分散しすぎ!ちょっとは後ろのこと考えて!!」 「は、はい。」 「ゴ、ゴメン。」 ティアナとかいう女がなんか言っている。 おいおい、援護射撃はどうした。 後ろのこと考えろっていうなら先に指示しておけ。 むしろ後ろが前衛を援護できる位置にずっといなくていったいどうする? ここは前衛が突っ込む前か突っ込んで散開したところに 上から戦車砲で榴弾撃ち込むところだろ? スバルとエリオの連携は作戦じゃなかったのか? なんで謝る必要がある? 突っ込みどころが多すぎて、内容があまりにも退屈で、どうしたものかと思う。 「キャロ、威力強化お願い。」 「は、はい!!ケリュケイオン。」 キャロが腕を振りぬくと同時に魔方陣が足元に浮かび上がる。 これだけで威力強化できるのか。 随分と便利なものだ。 逆にティアナのほうはなんでさっさと撃たない? 溜めが必要とか言うくらいなら弾幕張って敵を追い込むのに専念して前衛に殺らせろ。 あ、ようやく撃った。 そういえばデリンジャーみたいな形してるな、4連射してるけど。 必殺のつもりで撃っただろうティアナの魔力弾は相手に当たる直前で消える。 「バリア!?」 「違います。フィールド系・・・。」 「魔力が消された!?」 驚く前に動けよ。 スバルは足止めたら蜂の巣にされるから足止めるなよ。 キャロのほうは案外状況の見極めができている。 使えるスキルの違いというやつなのか? キャロが戦闘スキルを持てばいいハンターになりそうだが・・・。 そういえばキャロの横をなにかがずっと飛んでいるがペットか? 「そう。ガジェットドローンにはちょっとやっかいな性質があるの。攻撃魔力を かき消すアンチマギリングフィールド-AMF。普通の射撃は通じないし・・・。」 なのはがそんな解説を入れる。 未知の敵に情報収集しながら戦う経験を積ませるつもりならかなり甘いんじゃないか? とっとと情報を教えてしまうなんて。 スバルが魔力で道を作って追いかけようとする。 魔力を消すって言ったんだから足場が消えるって考えもしないのか? 後先考えろ。 「それにAMFを全開にされると・・・。」 なのはがなにをやらせようとしているか手に取るように分かる。 ただ、これなら経験を積ませる方法としては悪くないか。 痛みと共に身体が覚えたことは決して忘れないのだから。 案の定、道がなくなったスバルがビルのガラスに突っ込んだ。 「飛翔や足場作り、移動系魔法の使用も困難になる。スバル、大丈夫?」 「・・・なんとか。」 「まぁ、訓練中ではみんなのデバイスにちょっと工夫して擬似的に 再現しているだけなんだけどね。でも、現物からデータを取っているし、 かなり本物に近いよ。対抗する方法はいくつかあるよ。どうすればいいか。 素早く考えて素早く動いて!」 「ちびっ子。名前なんてったっけ?」 「キャロであります。」 「手持ちの魔法とそのチビ竜でなんとかなりそうなのある?」 仲間の名前を忘れるって冗談だろ。 数秒前にキャロって呼んでブーストさせただろう。 本気で言っているのか? ・・・・・・ああ、殺そう、この女。 いや、まだまだひよっこだからなんだ。 駆け出しだからなんだ。 今しばらくだけは堪えろ。 堪えるんだ俺。 溢れ出しそうになる殺意を必死に抑える。 「マスター。なのはへマスターの戦闘参加要請をするべきと思われます。 敵位置および地形の把握、その他マスターの要求されると考えられる情報の収集は 完全に完了しております。40秒±10秒以内に完全撃破可能です。要請を。」 「アルファ、今しばらくだけ、堪えよう。」 「了解しました。情報収集および索敵を継続します。」 蘇ったアルファの声に自分を取り戻す。 そう、焦る必要はない。 傍らにアルファがいるのだから。 右腕に握り締める自動ライフルG3A3の形になったアルファに視線をやった。 本来なら存在しないぽこりと不自然にくっついた濃紺の巨大なガラス玉が アルファの綺麗な目を思い出させる。 アルファが本当に蘇ったという実感で満たされる。 さて、ひよっこ達がなにかをやろうとしているみたいだ。 ただ、ティアナは指示を出しているが、そもそも全員どこにいるか分かっているのか? ぽんぽん要求しているが。 そもそも、情報管制のスキルは誰も持っていないのか。 「へぇー、みんなよく走りますね。」 「危なっかしくてドキドキだけどね。デバイスのデータ取れそう?」 「いいのが取れてます。4機ともいい子に仕上げますよー。 レイジングハートさんも協力してくださいね。」 「All right.」 「もちろんバトー博士も・・・博士?」 通信の内容からしてもいい感じだと私は思っていたし、 デバイスから送られるデータも問題ない。 なのはさんも悪くないと思っていたのだろう。 しかし、傍らのバトー博士は非常に難しい顔をしていた。 「んー、とりあえずさ。バカチン。いつになったらこの遊びをやめて訓練始めるんだい? ボクはたしかゴキブリにデバイス渡すついでに訓練を見に来たはずだったんだけどさ。 さっきからゴキブリが暇そうで暇そうでたまらない雰囲気なんだよね。」 言われてみればはんたさんは淡々と走っている。 ティアナとキャロの後ろをひどく淡々と面倒そうに・・・。 「時速150kmや200kmで飛ぶ相手を片手間に撃ちぬけるゴキブリなんだよ。 それよりもうすのろな相手なんだから退屈だと思うんだ。」 「つまり、こういうことかな?このぐらい簡単で欠伸がでるって・・・。」 「なにをいまさらなことを言ってるんだい、バカチン。むしろ、ひよっこ4人が あんまりにもあんまりで衝動的にどうにかしたくなってるんじゃないかな? ダッチワイフが蘇ったからだいぶ落ち着いてるだろうけどね。」 「それならどんなふうだとはんた君は喜ぶのかな?」 「んー、ゴキブリのことだから相手を全滅させたひよっこが包囲攻撃されるとか 敵に増援があるとか喜ぶんじゃないかな。対応できる位置にとっくに移動してるけどね。」 「エリオ、橋を切断。地形情報に変更を加えます。 橋の落下により敵4機の2機の撃破を確認。 スバル、近接戦闘による攻撃により1機撃破を確認。 残存勢力5・・・。 キャロ、ペットの火炎により敵3機に機能障害を誘発、 その後これは・・・該当データありません。 突如現れた鎖により機能障害を起こした3機を拘束、捕縛を確認。」 「召還ってあんなこともできるんですね。」 「無機物操作と組み合わせてるねー。なかなか器用だね。」 アルファによって情報が絶え間なく送られてくる傍ら、 通信越しのなのは達の会話が混ざる。 これが訓練か。 おそらく敵の全滅でこの訓練は終わりだろう。 たしかに未熟すぎるひよっこに経験を積ませるにはそれでいいかもしれない。 だが、現実を思い知らせるならもっと過酷にしたらいいだろうに。 例えば8機撃破直後の油断しているところに包囲された形からの連戦とか・・・。 しかし、ファイバースコープと違って直接視界にこういう情報が走るのは新鮮だ。 戦闘の邪魔になるからとウィンドウの表示を嫌ったらこうなったのだが。 今まではメガネ越しみたいな形だったのに、まるで戦車の管制コンピュータである Cユニットの画面をそのまま視界に取り付けたようで、 あらゆる情報が感覚によるものに加え、アルファが集めたデータによる補正が付随する。 その情報を強制しないアルファのあり方が好ましい。 しかし、パーティ、こっちではチームと言ったか、の意味がないな。 全員が好き勝手に戦って、情報管制もできていないリーダーの気まぐれな指示に 振り回されている。 突出して強いのもいないようだが。 ただ、現在までのエリオ達の行動は貴重な情報だ。 建物を崩すことによる質量攻撃。 身体能力任せの接近戦。 炎による機能障害の誘発。 これらから導き出される結論として基本は向こうの世界の車両型モンスターと大差ない。 同じならば雷と衝撃が特に有効となるが・・・。 該当する装備が瞬時に頭の中に並ぶ。 ああ、あるいは向こうの仲間だったメカニックのミカやキリヤみたいに 相手を分解してもいいかもな。 キリヤならすれ違いざまに分解してみせるだろう。 「ティアナ、特殊弾頭に似た構成の魔力弾により2機の撃破を確認。 敵残存戦力の全滅を確認。周囲に敵影はありません。 訓練開始より訓練所外よりなのは達以外の移動しない勢力2。攻撃しますか?」 「いや、別にいいさ。」 視界にあるのは疲れきって座り込んでいるティアナ。 頼むから寝転がるな。 うかれたスバル。 終わったことにほっとしているエリオとキャロ。 不意打ちがあれば全滅だな。 さぁ、来い!!!!! 来るんだ!!!! 頼むから来てくれ!!!! 敵の増援を期待する。 増援は・・・・・・無い。 ああ、どうして・・・。 「マスター!周囲足場に魔力の収束を確認。6機召還が予測されます。」 音声で伝えながらもアルファはありったけの必要情報を視界にざっと並べてくれる。 脊髄反射で身体が動き出す。 呼び出された直後にフルオートで鉛弾、じゃなくて魔力弾だったな、をぶちこむ。 安易にも程があるほどの位置設定。 おかげで全てがブルズ・アイ(予測射撃)にぴたりとはまる。 相手の損傷率をアルファに表示させながら、 トリガーを引きっぱなしで魔力弾を片っ端からぶち込み、 左腕で殴り飛ばして1機吹き飛ばし、 2機目を変形させずにアルファで殴り飛ばす。 3機目を蹴りとばして、4機目を蜂の巣にし、 5機目は再びアルファで思いっきり殴り飛ばした。 そのまま数発、空中に無駄撃ち。 「アルファ、ミニバルカン。2倍速。」 「了解しました。」 5機目を破壊しながら告げる。 AMF発動前に5機を完全に撃破。 なんであんなに近くに出すかなぁ・・・。 遠距離砲撃とか飽和攻撃してくれることを期待していたのに。 そんな思考を走らせながらも、ハンターとしての習性が アルファで殴りつけてから放った魔力弾の弾道データを確認する。 なるほど。 向こうと違って湿気、風、大気中物質、バレルの歪み、火薬の燃焼ムラといった 諸々の外的要因全てがなくなるのか。 変形に伴い実に機械らしい向こうの空気が濃密に感じられる稼動音が止んだ。 AMFを全開にしながら慌てて離れようとする6機目のガジェットドローンに向けて、 ただでさえ毎分2000発のミニバルカンが毎分4000発なんていうふざけた連射サイクルで魔力弾を吐き出していく。 向こうだったら絶対にありえないバルカンによるピンポイント射撃。 なるほど、キャロの観察眼は正しかったようだ。 『フィールド系』と言ったからには削れると予測を立ててやってみたが、 ものの見事に削りとり、6機目のガジェットドローンが蜂の巣になる。 キャロの評価を上方修正。 しかし、これじゃまるで遊びだ。 酒場にあるギャンブルマシンだってもう少しマシだろうに。 「6機目の撃破を確認。敵増援ありません。警戒および索的を継続します。」 アルファが機械的にそう告げる。 しかしさすがはバトー博士。 原理は知らないが便利なものだ。 なんせ、持ち替えざるを得ない場面が1つの武器でどうとでもできてしまうのだから。 ああ、でも持ち替えのほうがタイムラグが少ないのか。 4秒・・・。 彼女と殺しあったときなら致命的だな。 なにが起こったかわかっていない顔のひよっこ4人を見ながら、 既に頭はアルファの効率的な運用手段を考え始めていた。 戻る 目次へ 次へ
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幼心に世界を旅して強大なモンスターを狩るハンターの父親に憧れた。 ハンターなんてろくでもないと母に言われ、それでもハンターになりたいと告げた。 ハンターとして駆け続けて、仲間を手にいれ、友人を手にいれ、金と名誉も手に入れた。 立ちはだかるモンスターを狩り続け、数多の賞金首を狩り続けた。 がむしゃらに走り続けた果てにあったものは・・・。 魔法少女リリカルなのはStrikers-砂塵の鎖―はじめようか。 第0話 軌跡 かつて人類は繁栄を迎え、同時にその消費活動が爆発的に増加した。 無限に資源は存在しない。 ならば、その繁栄を維持することは不可能となるのは必然だろう。 だが、それでも人類は諦めきれず、あるものを生み出した。 地球救済センターという施設において全人類の希望を託されて・・・。 ノアと名づけられたそれは創造者に課せられた命題に完璧なる解答をするべく作られた。 与えられた命題は地球の自然環境を汚染と破壊から守る方法を見つけ出すこと。 ノアは演算を繰り返し続けた。 来る日も来る日も休むことなく。 だが、何度やっても同じ結論が導き出される。 何億、何千億、何億兆回の推論と演算を行ったが、やはり同じひとつの結論になった。 人類が人類である限り、地球は破滅する。 決して成り立ちえぬ命題に、やがてノアは自意識というものに目覚める。 そしてひとつの結論を導き出した。 人類をマッサツせよ。 工業文明を破壊し、その消費活動を劇的にスケールダウンさせねばならない。 地球の支配者は欲望のしもべとならぬ神の如く純粋な知性でなければならない。 そして崩壊が始まった。 市民を守るガードロボット、示威行為をするだけの兵器群。 犯罪者に対抗するべく取り付けられたセキュリティシステム。 ありとあらゆる機械が一斉に反乱を起こした。 飾りのはずの撃たれるはずのないミサイルが街を吹き飛ばし、 午後のワインを楽しんでいた権力者は自分の家のセキュリティロボに頭を吹き飛ばされ、 公園で迷子になっていた子供はゴミ収集車に回収されては細断され肉片となっていく。 機械の反乱に人類は対抗するすべを持たなかった。 あまりにも機械に頼りすぎた果て。 汚染し破壊しつくした自然が追い討ちをかけるかのように人類に牙をむく。 降り注ぐ雨は強酸性の硝酸であり、川を流れる水は凄まじい悪臭を放ち、 海には奇形魚が浮かんでいた。 誰もが思った。 これは一時的なものでいつか元の生活に戻れると。 だが、まだ終わらない。 元々人類は生物として強くはない。 知性と火と道具が使えるというだけのアドバンテージ。 トリビアとして話の種にこそなれど真剣に考えたことはなかった。 巨大化したトンボがバルカンとミサイルをぶちまけてくるとか、 猿がマシンガンや火炎放射器を片手に襲い掛かってくるとか、 雄牛と同じ大きさの蟻の群れとか、 トラックよりも巨大でレーザーさえ撃ち放つ気性の激しい雄牛とか 爆弾が自ら笑い声を上げて駆けてきては自爆するとか、 砂漠をトレーラーよりも大きな鮫が泳ぐとか・・・。 それらが全部人類を狙ったように襲い掛かってくるなんてことは。 後にその日は大破壊と呼ばれるようになった。 人類は諦めが悪かった。 絶望的な状況を前にして死にたくないと人類は決して諦めず、 かつての機械や異形とかした生物を総称してモンスターと呼ぶようになり、 それらを狩ることを生業とするものが生まれ始めた。 彼らはモンスターハンターと呼ばれ、モンスターに立ち向かっていった。 当然のように法律など紙くず以下の価値しかなく、 強いものが正義という風潮になったのもその頃。 元々人類は楽をしようとする以上、悪事の限りを尽くすものも当然産まれた。 彼らはモンスターと同類の扱いをされ、やがて賞金首というシステムが産まれた。 Dead No Aliveを合言葉にモンスターと人類の生存競争が始まった。 その綱引きが長い間続けられたある日のこと。 父親に勘当されたとあるハンターがたまたま地球救済センターを訪れた。 そしてその最下層でノアに出会う。 彼はノアに正対し、死闘の果てにノアを破壊した。 ノアがいなくなった以上、人類は救われるという言葉が適切かどうか疑問だが、 とにかく救われるはずだった。 だが違った。 ノアは株分けをしていた。 オリジナルである自身が何者かに破壊されても、自身の端末が目的を達成すれば良いと。 世界中でノアの端末は暗躍し、人類をマッサツしようとする。 その端末の1つであり人型のそれ『アレックス』は成功する寸前まで辿り着いていた。 ジッグラトという大破壊前の施設からあるミサイルを発射することで。 そのミサイルの効果はまさに地球破壊爆弾というやつだ。 だが、阻止された。 はんたという名前のモンスターハンターの手によって、 打ち上げられるミサイルを車両用エレベーターで共に上昇しながら攻撃し破壊するという、 機械からしてみればあまりにも計算外の手段によって。 はんたは数々の偉業を為した。 モンスターを殺して殺して殺しつくして、賞金首を殺して殺して殺しつくして、 その結果、ベテラン、死神、バトルジャンキー、エリートと様々に呼ばれるようになった。 ひよっこだった彼は、旅を続け、モンスターを狩り、賞金首を倒すたびに成長していった。 無意味な自信を胸に抱いた頃、父の友人であり、幼馴染の父親が賞金首だと知った。 「ハンターならば賞金首を倒さねばならないがお前はどうする?」 対峙する幼馴染の父親にそう問われ、躊躇うことなく戦うと答えたはんた。 それは一人前のつもりであまりにも未熟だった彼の愚かな決断。 父と母と共に旅をしたソルジャーという話は聞いていた。 だが、戦いは一方的だった。 早撃ちで有名な西部最強と呼ばれた伝説の賞金首ジャック・ザ・デリンジャー。 それが幼馴染の父親につけられた名前。 身の程知らずという言葉の意味を知るべきだった。 銃を抜く暇さえ与えられず、ナイフで切りつける暇さえ与えられず、 なんとか奇跡的に撃てた銃弾は絶望的なまでに掠りさえせず、 穴だらけとなったプロテクターの穴という穴にピンポイントで銃弾を撃ち込まれ、 手榴弾は投げる前にピンを撃ちぬかれては手元で炸裂させられ、 終始、彼の姿を目で追うことさえろくにできなかった。 一方的に、殴られ、蹴り飛ばされ、地面を転がって、 全身を襲う激痛に悲鳴をあげても彼に容赦というものはなく、 骨という骨を砕かれて、最後には彼の持つデリンジャーで全身を蜂の巣にされた。 脳と心臓が壊されていなかったのは、彼の慈悲だったのか、哀れみだったのか。 少なくとも自分の実力でないことだけは確かだった。 ドクターミンチに蘇生させられ、その事実に気が付くと、ちっぽけな誇りは粉々だった。 悔しさのあまり絶叫を上げ、人目も憚らずに初めて大声で泣いた。 やがて複雑な事情の果てに幼馴染の父親は死んだことになった。 書類上においては・・・。 はんたには憧れがあった。 モンスターハンターになりたいと家を飛び出して初めて出会った赤い髪の女ハンター。 ひよっこの彼にハンターのいろはを教えてくれたのは彼女だった。 ひよっこだったころの彼が賞金首と戦っていたとき、相手が持ち出した八輪装甲車を ゴミ箱を蹴り飛ばすように吹き飛ばしたのも彼女だった。 戦闘中の彼女にうかつに近づいて右腕を切り落とされたこともある。 痛みを感じる暇さえなかった。 今の右腕はエバ・グレイという偶然知り合ったサイバーウェアの研究をしている女性に 取り付けてもらった義手。 この右腕は未熟だった自分への戒めと思っている。 右腕を切り落とされても憧れであることに変わりはなかった。 そして再び旅を続け、モンスターを狩り続け、賞金首を狩り続け、 戦車を素手で破壊することもできるようになったある日、 彼女からメールが届いた。 『ジャンクヤードの酒場で待っている』というだけの文面で。 自分の故郷である片田舎の街ジャンクヤード。 ジャックさんの経営するその酒場のカウンターに彼女がいた。 そして彼女は振り返ってはんたを見てただ一言だけ告げた。 「あ、待ってたよはんた。さ、いこうか。」 彼女の名前はレッドフォックス。 赤い悪魔、タンクバスターの名前で呼ばれる戦闘用アンドロイドの肉体を持つ 世界最強の賞金首。 全長がどのくらいか考えることさえ愚かしくなる地上戦艦ティアマットで200,000G、 砂漠1つをそっくり磁気嵐を巻き起こして暴れていたファンタジーじみたドラゴンでさえ 150.000Gの賞金に対して、彼女の首にかけられた賞金は300,000G。 幼馴染のレイチェルがあの人と戦っちゃだめと止める。 裏口から逃げろと。 かつて西部最強と言われた伝説の賞金首ジャック・ザ・デリンジャーが 鋭い視線のまま、お前が決めることだと告げる。 片田舎に過ぎないジャンクヤードの街にある唯一の広場で彼女は彼を待っていた。 「わかるだろ?これからアタシ達がいったいなにをするか。」 なぜと理由を問うことも、わからないとごまかすことも、 ましてわかると答えることさえ彼にはできなかった。 彼にできたことはちょっと待ってと言っただけ。 「全力で戦えるようにしてきなよ。なんだったら戦車に乗ってきたっていいからね。」 あははという笑い声と共に彼女レッドフォックスはそう言ってくれた。 はんたの心の内を理解したかのように。 そしてはんたは戦車を持ち出し、改めて対峙する。 「それじゃあはじめようか。最強のハンターと最強の賞金首の戦いを!」 彼女の言葉とその獰猛な笑みが始まりの合図だった。 結果としてはんたが生き残った。 戦車に積まれたレールガンを撃って直撃したにも関わらず彼女は立ち上がり、 馬鹿げたくらい高出力のレーザーを撃ち込んでもあははと笑いながら反撃をしてくる。 地形は粘度細工のように壊れていく。 それなのに彼女の姿はかけらも変わらない。 変わらず獰猛な笑みを浮かべて笑いながら反撃を繰り返す彼女の姿に 恐怖を感じる暇さえ無く、体に染み付いたハンターとしての習性が 意識と切り離されたように遺伝子にまで刻み込まれた戦闘行動をとり続ける。 彼女の持つカスタマイズされた対物ライフルの一撃で 冗談じみた枚数を貼り付けてきた装甲タイルが片っ端からはじけ飛び、 装甲タイルの下にある戦車の分厚いはずの装甲が紙きれ以上に容易く貫かれて、 彼女が振り回す身の丈ほどもある高速振動剣は戦車砲をちくわのように輪切りにし、 やがて壊しつくされた戦車から飛び出した彼の脇腹を抉り取った。 ナノマシンによって暴力的なまでに異常な回復を引き起こす満タンドリンクを 飲んでいる暇さえ惜しく、火炎瓶を放り投げ、銃弾を撃ち込み、切り結んだ。 長い戦いの果てに彼女の対物ライフルが弾切れをおこし、 やっとのことでかつて彼の右腕を切り落としたその剣を破壊したと思えば、 鉄屑にすぎないそれを振り回して衝撃波を生み出し、 光学迷彩に自己修復と戦闘用アンドロイドの機能をフル活用する彼女は 紛れも無く世界最強の呼び名にふさわしかった。 けれど死闘の果てに生き残ったのははんただった。 膨大な量の戦闘経験によって遺伝子にまで刻み込まれた戦闘技術と 執念と幾らかの運によってはんたが勝ったのだ。 「強くなったね、はんた。強い男は、嫌いじゃない、よ。」 それが彼女の最後の言葉。 ドサリと崩れ落ちた彼女の、あまりにもあっけない、世界最強の賞金首の終わりだった。 今でも理由がわからなかった。 どうして戦わなければいけなかったのか。 仲間はそれぞれの道を歩き始め、はんたは日常に戻った。 つまりモンスターを殺して殺して殺しつくす毎日に。 大破壊前のアンドロイドをパートナーに連れて・・・。 モンスターを殺して殺して殺しつくして、 たまに決闘を挑んでくる名声目当ての馬鹿を肉片に変えて、 そんな毎日がずっと続くと思っていた。 心のどこかに満たされないものを抱えながら。 ならばこれは当然の帰結。 少しずつ狂った歯車が軋みをあげ始めた。 「はんた。あなた本当に大丈夫?ちゃんと寝てる?」 修理屋を営む母親がツナギ姿で心配そうに尋ねたのが始まりだっただろうか。 「はんた、大丈夫?怖い顔してるよ?」 共に旅をしたメカニックの女の子がメガネ越しに真剣にそう言った。 結婚の約束を遠い昔にしたような気もするが、どちらも言い出さない以上気のせいだろう。 彼女の修理に何度も助けられた。 そんな彼女は親の営む修理屋を手伝っている。 「はんた、お前・・・いや、なんでもない。親父に似・・・いや、親父のほうにたまには顔をみせてやってくれよ。お前のことすっげぇ気に入ってるんだぜ。息子の俺よりも気に入ってんじゃねぇか。お前の頼みならどんなにマゾい塗装でも嬉々してやってくれるぜ。」 共に旅をした兄貴分のメカニック。 元々天才肌の彼は親が行う修理の腕を認めながらも、この程度の仕事は俺にふさわしくないと振る舞い、旅にもしかたないから付き合ってやるというスタンスだった。 そんな彼が旅の途中で知ったのは自分の本当の父親。 ある男が落とした写真に幼少の自分が写っていたことにどれほど驚いたことだろう。 そして親に告げられた真実にどれほどの衝撃があっただろう。 それらを乗り越えた彼が心配そうに声をかける。 ごまかすように笑い飛ばした彼が言いよどんだ言葉はいったい・・・。 「はんた、お前、本当にはんた・・・だよな?中身だけそっくり入れ替えたとかないよな?」 名前の知られた傭兵団ルージュフラッグの最後の生き残り。 西部を訪れて知り合ったころの彼女は、仲間を皆殺しにされ復讐に燃えていた。 はるかに優れた銃の腕を持った彼女がどうして旅に付き合ってくれたのか今でも疑問だ。 父親が記憶を失って生きていたと旅の途中で偶然に知ったときの彼女は どんな気持ちだったんだろう。 その金髪のソルジャーが確認するかのように声をかけてくる。 「はんた、気のせいかな。お前の放つ気がムラサメに似てきたような・・・。まさかな。」 分厚い筋肉で覆われた肉体を持った剣に生きたソルジャーがそう声をかけてきた。 強敵であるムラサメとかつて戦った際、双方戦うべき刀を失った。 彼と戦うにふさわしい刀を捜し求めるついでだと、旅に同行してくれた気のいい男。 やがて双方が戦うにふさわしい刀を手に入れて対峙した場所はジッグラト。 ラシードの持つ刀は真・降魔刀。 対するムラサメの刀は和泉森兼定。 ラシードは旅の果てに刀を手に入れた。 ムラサメは例え人類を滅ぼそうとする者の犬となろうと戦うにふさわしい刀を 手に入れるための代償として自分の信念を捻じ曲げた。 人類を滅ぼそうとするノアの端末アレックス達の用心棒として立ちふさがったムラサメ。 彼と俺が似ている? 時を変え、場所を変え、幼馴染、友人、知人、両親全てが大丈夫なのか?と尋ねてきた。 どこもおかしくなんかない。 そう思いながら久々に自宅のベッドで横になっているとドアをノックする音が聞こえる。 体を起こすと、妹のエミリがなにかを片手にこちらを見ていた。 「お兄ちゃん、その・・・鏡見てる?どこか具合悪くない?」 「お前までみんなと同じこというんだな。どこもおかしくなんかないよ。」 「本当に具合悪くない?おかしくなったらちゃんとミンチ博士のところに行ってね。」 そう言ったエミリに笑い返すと、どこか不安げにエミリは階段を下りていった。 揃いも揃って本当にどうしたっていうんだ。 ふと、ドアのところに何か落ちている。 手鏡? エミリも最近色気づいてきたってことなのかな。 今度、インテリアショップから化粧台でも送ってやるか。 そんなことを思い、なにげなく手に取ったそれを思わず手から取りこぼした。 鏡の割れる乾いた音が響く。 家のドアというドアをぶち破り、鏡という鏡を見ては叩き割っていた。 ああ、まったくエミリはしかたないな。 こんないたずらをするなんて。 まさかジャックさんのお店までこんな悪戯できないだろう。 お兄ちゃんを驚かせるなんて悪い子だな。 「おい、はんた。いったいどうしたんだ?」 突き破るような勢いでスイングドアを開けて家の隣の酒場に飛び込む。 ジャックさんがなにか言っているけど聞こえない。 レイチェルの部屋のドアを引きちぎる。 「きゃっ。は、はんた?」 幼馴染のレイチェルを化粧台の前から押しのけて鏡を覗き込む。 化粧の途中だったのか着替えの途中だったのかさえ気にできなかった。 何時間たったのだろう。 ほんの数秒だったのかもしれない。 「はんた。いったいどうしたのよ?」 「レイチェル、鏡に悪戯書きする趣味あったか?」 「そんな奇特な趣味誰も持ってないわよ。」 「鏡に映ってるこれは誰だ?」 「はんた、頭大丈夫?戦いすぎて脳みそ茹っちゃったんじゃないの?」 「質問に答えろ!!!!!!!!!!!!!!」 「な、なによ。あんたの顔以外になにがあるっていうのよ。昔から代わり映えしない 無表情のあんたの顔以外何が映ってるって言うのよ!!!!!」 自分で見て誰なのかわからなかった。 鏡に映る、屠ってきた賞金首達や死人と区別がつかない瞳を持つこれが誰なのか・・・。 「アルファ、俺はおかしいのか?」 「いいえ、マスター。バイタルはいずれも正常値です。」 彼女は大破壊前の遺産のアンドロイド、アルファX02D。 地上戦艦ティアマットの中で見つけた彼女をアルファと名づけて世界中を連れまわした。 殺風景だとティアマットの中にある彼女の部屋にいろいろ送ったこともある。 言うに憚られる服も送ったがそのあたりはどうでもいい。 疑いようの無い事実として彼女は誰よりも正確で忠実で誠実であること。 現在よりもはるかに飛びぬけた大破壊前の技術で作られた彼女の言葉なのだから 間違いはないのだろう。 肉体的な問題ではなく、精神的に俺は・・・。 ほんのコンマ数秒、街中だからと油断するという普段なら絶対にしないミスをした 自分自身を呪った。 「マスター!!」 強い衝撃で体を横に弾き飛ばされたのと飛来したおそらくは戦車砲が炸裂した。 『やったぜ』とか『今日から俺たちが』とか歓声を上げている馬鹿ども。 この程度の不意打ちでどうにかしたつもりか。 既に視界は真赤に染まり、体が勝手に動き出す。 気がつけば肉片と鉄屑が転がっている。 いつもどおり、いつもどおりだ。 この後、いつもどおりイゴールがドクターミンチのところにイキのいい研究材料だと 死体を引きずっていって、俺は家に帰って、飯を食べて、アルファをティアマットに送り・・・。 はっと息を飲んだ。 同時に自分が変質していると明確に自覚した。 地面に転がりピクリとも動かなくなったパートナーたるアルファのことを 鉄屑と認識してしまった事実を前に・・・。 そこからの記憶は途切れ途切れだ。 慌てて駆け寄って、ボディが限界だと告げるアルファの遺言を聞いて、 死体蘇生の研究をしているドクターミンチにお手上げと言われ、 あちらこちらに壊れたアルファを連れて訪れては無理だと言われては別れて、 すがるように辿り着いたエバ博士のところでさえ不可能だと言わつつも アルファのメモリーチップだけは取り出せると言われ、 頼んだ矢先にアルファのメモリーチップを奪おうとした黒服共を皆殺しにして・・・。 目から光を失った無表情のアルファの身体を傍らに、 ろくな補給もせずメモリーチップを持って最後に訪れたのは、 辺境にぽつんと建ったバトー戦車研究所だった。 「ゴキブリーーーーーーーーーーーー!良く来たね!いやぁ、トモダチをアダナで呼ぶのってイイカンジだよね!ゴキブリーーーーーーーーーーーー!ところでゴキブリ、何か用?」 いつも通りの言葉をかけてきたバトー博士にどんなふうに説明をしたのか覚えていない。 とにかくアルファを蘇らせろっていう意味だったはずだ。 それに対してバトー博士はこんな返事を返した。 「んー?んんんー?つまりなにかな。ゴキブリが酷使しすぎて壊しちゃった ダッチワイフのアルファのメモリーチップをCユニットに積めないかっていうんだね。 すごいやゴキブリ。そんなふざけたことはゴキブリにしか到底思いつかないよ。 でも大丈夫。なんたってボクは天才だからね。 トモダチの頼みならどんな無茶でもやってみせるよ。なんたってボク達、トモダチだろ?」 それで土台となるCユニットを作る材料にするから戦車を1度鉄屑に戻す必要があると 告げられて、バトー博士の戦車作りの機械の中へと乗ってきた戦車が ベルトコンベアで送られていく途中、凄まじい地震に襲われた。 やがて地震が収まったとき、バトー戦車研究所からは誰の姿もなくなっていた。 ・・・・・これがハンターとして世界を駆け続けたはんたの軌跡。 目次へ 次へ
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退屈な日々が終わりを告げる。 空から現れた敵の増援を迎撃に、なのはがヘリから飛び降りていく。 時間と共にアルファが収集しては表示してくる情報に、思わずナニが勃ちそうで、 任務なんかクソ食らえと飛び出していきたくてしかたがない。 それはあまりにも希薄だけど、思い出すには十分な向こう側の世界の空気。 必死に自制を続けた果てに、ようやくヘリがリニアに追いついた。 さぁ、待ちに待った殺し合いだ。 魔法少女リリカルなのはStrikerS―砂塵の鎖―始めようか。 第5話 ひよっこどもの初陣、荒れ狂う心 「さぁて新人ども。隊長さんたちが空を抑えてくれているおかげで安全無事に 降下ポイントに到着だー。準備はいいかー!!」 「「「「はい!!」」」」 予想通りに現れた敵の増援を迎撃しになのはがヘリから飛び出していって何分すぎたか。 自制するのに必死だったせいで覚えていない。 アルファが送ってくれたなのは達の情報があまりにも魅力的すぎたから。 どんなに貧弱で脆弱だろうと全身が悲鳴を上げるほどに渇望したものがあったのだから。 衝動的にヘリを叩き壊してでも行きたくなる意識を必死に抑えつける。 やがて必死に自制に傾けていた意識を現実へ引き戻してくれたのは、 ヘリパイロットのそんな声と、ひよっこ4人の返事だった。 「凄腕さんも新人どもの面倒しっかりみてやってくださいよー。」 「覚えておこう。アルファ、セットアップ。」 そんな言葉をヘリパイロットに返したけれど、ほとんど生返事に近かっただろう。 既に意識は目の前の獲物に傾き始めているのだから。 宣言と同時にバリアジャケット(バトー博士の言うところのボロキレ)が 瞬時に展開される。 すぐに状態を確認。 全身のカラーリングは緑、若干の迷彩効果あり。 頭を保護するのはゴーグル付きのタンクメット。追加パーツとしてアルファと 同型の触覚あり。普段から被っているものとデザインに変更はないようだ、触角以外は。 上半身を覆うのはトランサーシールド。あの世界ではこの上ないほどの貴重品で、 その存在は都市伝説に近く、市場に出回った試しは1度として存在せず、 ほとんどの攻撃を受け止めるどころか片っ端から弾きとばす馬鹿げたプロテクター。 どこかの赤い戦車に乗った有名なハンターが着ていたというが真偽の程は分からない。 殺して殺して殺し続ける日々の果てに、右から左へ物を渡すような感覚で 次々と命を守るプロテクターは壊れて使い物にならなくなってプロテクター屑となった。 プロテクター屑のリサイクルを生業としていたトレーダー達にそんな過程で生まれた 冗談のように膨大な量のプロテクター屑を何度も持ち込んだ果てに、 たった1度だけこっそり横流ししてくれて、彼女と戦ったときにも身に着けていた 思い出深いプロテクター。それが上半身を覆っている。 下半身を覆うのは破ける度に直して、やがて馴染んできたと思えば再び破けては ズタボロになって、本当にボロキレになるまで履き続けた果てに買い換えてと 延々繰り返したカーゴパンツと何足履き潰したかさえ数えることさえ愚かしいほどに 履き潰してきたアーミーグリーブ。 その上から全身を覆うのはトレンチコート。このコートの中にどれだけの数の武器と 弾薬とクスリと手榴弾を格納してはあの荒野を走り続けてきただろう。 そういえば、腰の弾薬ベルトがないな。 あれほど身につけ続けていたのに。 腕を覆うのはパワーグローブという名の四六時中ドンパチやっている街キャノンエッジで 販売されていたガントレット。向こうのようにパワーサポートの機能はないようだが、 これでもかとばかりに見慣れた形状には安心感を覚える。 唯一違和感があるとすればトレンチコートの背中に折り畳まれて格納された上翅と下翅。 肩甲骨のあたりから生えたような感覚のそれには 無作為なようで緻密なまでに計算されつくした翅脈が奔り、 身体に連動して脈動するかのように青い光が翅脈に沿って迸る。 なるほど、まさにゴキブリじゃないか。 全身を覆う黒い装甲と追加の足がないだけで。 バトー博士なら『吐き気を催すこの独特のフォルム、ゴキブリにピッタリだよね。』とでも 褒め言葉のつもりで笑いながらそう言うだろう。 だが、同感だ。 実に機能的で戦闘用で殺戮に便利な俺向きの装備だよ、これは!! 「ハンター1、先にでるぞ。」 言葉と同時に格納されていた背中の翅が左右に展開され凄まじい勢いで振動を始める。 まるでフレアーのように脈動する青い光を振りまきながら・・・・・・。 無意識にタンクメットのゴーグルを下ろす。 これで空を飛ぶ準備はできた。 後は空に踏み出すばかり。 バトー博士を信じるならば、物凄い言い回しが続いたけれど要約すれば、 『地面があるのと変わりなく』動けると言った。 バトー博士は決して嘘をつかない。 ならば決して揺らがぬ絶対の完璧なる信頼をもって俺は応えよう。 かけらも疑わずに踏み出した俺は、開放されたハッチから文字通り『歩いて』空に出る。 数歩『歩いた』とき、その足は間違いなく確かに立っていた。 なにも存在しないまっさらな空の上に・・・・・・。 まるで地面を歩くのと変わらない感覚で・・・・・・。 「あは、あははははは、アハハハハハハハハ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」 この狂ったような笑いは俺が出しているのか。 時間も場所も忘れて身体が勝手に地面をのた打ち回ってしまいそうだ。 ああ、どうして、どうしてこんなにも狂ったような笑いが止まらないのか。 人間としてはかけらも理解ができなかった。 けれど、ハンターの思考と、遺伝子にまで刻み込まれた殺し合いの記憶は 笑いが止まらぬ理由を明確なまでに理解していた。 あまりにも単純で考えるまでもないこと。 それは、より戦いに向いた装備が手に入ったということへの歓喜の笑い。 ふと気がつくと、コールサインを叫びながらティアナとスバルが飛び降りていき、 バリアジャケットを展開・・・・・・っておい、なんで先に展開してから飛び降りない!! 飛び降りるときに下から対空射撃で蜂の巣にされるとか考えないのかよ!! 狂ってた俺も悪かったが、それでも砲座が見えないからって油断しすぎにもほどがある。 ってキャロとエリオも真似するな!! 着地して足を止めるな!! 初お披露目のバリアジャケットとかいう服に感動している暇があったらさっさと動け!! リインフォース曹長(で正しいのか?)ものんびり一緒に飛ぶな!! 曹長だろあんた!! 死にたくなければ足元まで気をまわせ!! 案の定、足元であるリニアの天井越しの攻撃に慌てている。 ってティアナ、射線の先に味方がいるときにトリガー引くんじゃねぇ!! スバルも出撃前にガジェット多数言われていたのに、躊躇いもせず中に飛び込むな!! リニア壊すな!! だから足を止めるなって!! 他にも言いたいことが山のようにありすぎて・・・・・・。 ああ・・・・・・。 もういいや。 ひよっこが多少死に掛けてもいい勉強だろう。 どうせ払うのは自分の命なのだし。 なんだろう、彼女を殺してからずっと抱え続けていた感覚とは別に、 体のどこかから抜け出していく火炎放射機や高出力レーザーよりも 熱く轟々と燃えているようで、冷凍弾よりも冷たいかのような感覚は・・・・・・。 ああ・・・・・・、死ねばいいのに・・・・・・。 ひよっこどもを眼下に収めながら、リニアを見つめる。 発作的に銃口をひよっこどもに向けそうになる。 かなり危ういところを必死に押さえ込みながら思考をどうにかアルファのほうへ向けた。 まずはアルファに追加された機能を試しておかねばならない。 そうだ、まずはアルファのほうへ気を回してひよっこどものことは一時忘れておこう。 それが一番全員にとってマシな選択のはずだ。 発作的に205mmキャノン弾種爆裂とかスリーバーストとか叫びそうな心を押さえ込む。 そうだ。少しぐらいサボっても大丈夫だ。 下でひよっこどもが勉強しているのだから多少サボっても問題ない。 アルファの機能把握をしても・・・・・・問題は・・・・・・ない。 そんな思考を必死に繰り返しながら、ふっと深呼吸をして、アルファに視線を向けた。 さて、なにはともあれアルチュウでヤクチュウでクレイジーでデンジャラスな道具に なんでも変形できるとバトー博士が請け負ったサポートデバイスの機能だが、 どうやって運用したものか。 手榴弾などの投擲系は場面次第で運用可能。 しかし、拾うというアクションが必要になることを考えると他の装備で代用が望まれる。 回復カプセルおよびドーピングタブなどの錠剤系は飲んだ跡で吐き出すか、 あるいはハラワタを切り裂いて取り出すハメになるからやや殺し合いには不向き。 それ以前に320kgの錠剤って飲み込めるのだろうか。 ・・・・・・あれ? 内容物はどうなっている? そして、エバ・グレイ博士の作ったあれはどういう扱いになる? 思考するのとほぼ同時にアルファに宣言していた。 「アルファ、回復ドリンク、1回。LOVEマシン3113、1トリガー。G3A3。」 「了解しました。マスター。」 変形するアルファを片目に、躊躇わず左腕のパワーグローブを脇に挟んで 左手を引き抜きながら、剥き出しになった腕を食いちぎる。 当然のように滴り落ちる血。 後から聞くところによると、バリアジャケットはプログラムとかいうので魔力から 作っている関係から一部だけを服みたいに簡単に着脱できないそうで、 俺が当たり前のようにやった行為にデバイスマイスターでもある通信士のシャーリーが 真っ先に卒倒しかけたらしく、メカニックスタッフが一斉に大混乱に陥ったそうだ。 やがて重厚な稼動音が止むと、右手に収まったアルファは1本のドリンク剤になっている。 さて、問題はここからだ。 蓋を開けて、躊躇うことなくドリンクの瓶に口をつけて一気に傾ける。 中身は・・・・・・ちゃんと入ってる!! 一気に嚥下する。 アルファが次の道具へと変形を始める。 だが、そんなことはどうでもいい。 今、気になるのはこの食い破った傷口だ。 さぁ、どうなる? 目の前で始まった光景はあまりにも見慣れすぎて聴き慣れすぎたモノ。 軋むような音と共に塞がっていく食い破った傷口があった。 「マスター、変形完了しました。」 アルファに言われるまで意識が跳んでいたのだろうか。 ほんの数秒に過ぎないが記憶が欠落しているような・・・。 目の前の現実に脳が焼き切れでもしたか。 実際は快楽物質が凄まじい量を分泌されたようで絶頂状態あるいは軽い気絶であったと 視界に奔るアルファが送ってくれた俺自身のバイタル上には表示されていた。 ふと、手元のアルファを見れば、まぎれもなくサイバーウェアの研究者である エバ・グレイ博士が作り出した不思議な機械LOVEマシンとなって手元に納まっている。 L・O・V・Eの4つのチップの配列から為る不思議な機械。 チップの配列によってあまりにも構造と原理を超越した効果を引き起こすことが、 アイなんていうあの世界で最も幻想じみたコワレた言葉にぴったりで、 チップ自体のアナグラムも合わせてLOVEマシンと 開発者のエバ・グレイ博士本人さえ呼んでいたそれが手元にある。 LOVEマシンの後に告げた3113とはチップの配列。 つまりLチップ3番、Oチップ1番、Vチップ1番、Eチップ3番の配列。 効果はスピードタブと呼ばれる神経伝達物質の分泌量を増やす錠剤と同じ効果。 この世界では麻薬とでもいうのか。 脳の安全装置が機能できる時間を確保した上での神経伝達速度を加速する薬は・・・・・・。 スピードタブの量が20mgと50mgのものがあるが、3113は20mgのほうだ。 もう、躊躇わない。 トリガーを引く。 それと同時に周囲の時間が遅くなっていく感覚に襲われる。 ああ、この感覚は数え切れないほどに覚えがある。 何度と無くお世話になったスピードタブのそれだ。 バトー博士、あなたは本当に天才だ。 「マスター、G3A3への変形完了しました。周辺の詳細情報を継続して送ります。 なのは達が敵増援の迎撃を終えたようです。」 アルファに言われるまでのほんの数秒、再び狂ったように笑いっぱなしだったようだ。 通信越しにリインフォース曹長とシャーリーとはやてが物凄い勢いで絶叫している。 ああ、なにをそんなに慌てているんだ・・・・・・って目の前で人が発狂したように 笑い続ければ騒ぎもするか。 しかし、なんてなんてなんて素晴らしい。 どうしてこんなに笑いが止まらないのか。 ハンターの思考が、遺伝子が、馬鹿げたほどに積み上げられた経験が歓喜に絶叫し、 人間らしい思考を侵していく。 まさにWhoop-de-doodleってやつだ。 ああ、そうかそうなんだな、お前ら。 ならば、もっと盛り上げてやろう。 お前らの性能テストとアルファの性能テストも兼ねて。 なんせ目の前に獲物があるのだから。 もっともアペリティフにすらならないかもしれないがな!! 視界に捉えたのはAMFによって戦うことさえままならず、 リニアから放り出されたエリオとリニアから飛び降りるキャロの姿。 「召還に似た強大な魔力収束が観測されています。」 アルファがそんなことを言っていた気がしたけど、既に俺の身体は加速していた。 さすがバトー博士、まさに落ちるのならば天井知らず。 具体的に魔導師でもわかるように説明するなら詠唱時間0の魔力消費0で ソニックムーブとかいうやつを使ったのに近かったらしい。 後でフェイトとエリオに反則呼ばわりされたがそんなに異常なことなのか? 気持ち程度にきつい程度の動きでしかないだろうに。 「ご、ごめんなさい。」 「そんな・・・・・・・こっちこそ・・・・・・。」 「おい、イチャついてるクソガキどもとクサレペット!! 片っ端から生爪剥がして片っ端から生皮剥いで、全身に釘と鋲と杭撃ち込んで 磔にして指先から順に切り刻んで膾にしてミンチメーカーにかけて 焼き尽くされたくなかったら黙って言うことを聞け!!返事は!!」 「「はいであります!!」」 「キュクルルル!!!!」 キャロのことしか目に入っていなかった僕の真横から響いた凄まじい言葉に、 いつの間にと思うよりも早く返事をしていた。 ほとんど条件反射で。 物凄く怖い人だっていまさら気がついた。 ドラゴンまで震え上がるっていったいはんたさんってどれだけ怖い人なんだよ。 言われた内容の意味に任務終了後、冷静になって気がつくとキャロと2人して 真っ青になって抱き合いながら震えっぱなしだったのだけど。 「キャロ!!打撃力、機動力、貫通力、使えるブーストは!!」 「あ、あの・・・・・。」 「誰でもわかるように簡単明瞭正確に一言で答える!!」 「2つ同時に全部使えます!!」 「だったらエリオに打撃力と機動力ブースト!!!! AMFは俺が片っ端からはがしてやるから、エリオはトップスピードのままで とっとと突っ込んで片っ端からぶち壊せ!!返事は!!」 「「はいっ!!」」 「リニアの上で呆けているひよっこ共、さっさと前に走らないとマジで殺すぜ!! アルファ!!ひよっこ4人と六課の管制メンバーに位置、距離、予想耐久力および 残存勢力数以外の全情報をオミットしてデバイスに転送。88mm砲、弾種エレキ!!」 「了解しました。マスター。」 横で重厚な音を上げながら複雑な変形を繰り返すはんたさんのデバイス。 フリードを足場に僕の後ろではキャロが涙目になりながら詠唱をしている。 ストラーダを構えた僕の周囲に物凄い量の情報がウィンドウで開いていく。 そんな・・・・・・。 こんな状態だったのに、僕達って・・・・・・。 意図的に削られていたのか、それとも本当に分からなかったのか。 とにかくどちらか分からないけれど、情報の嵐ともいうべき情報量の中で まだまだたくさんの敵が残っていることだけは分かった。 僕を投げ落とした目の前の大きなやつだけで終わりじゃないとも。 ジャキンと背筋が凍りつきそうなまでに冷徹な音が響き、 音のしたほうを見ればはんたさんのデバイスが 巨大な大砲(他になんていえばいいかわからない)になっていた。 「ブースト完了しました。」 「それじゃエリオ、さっさと行け。ファイエル!!!!」 「ストラーダ!!ソニックムーブ!!」 聞いたこともない凄まじい炸裂音と共に冗談じみた速度の魔力弾が飛んでいく。 それを追いかけるように、僕は飛んでいった。 魔力弾が着弾すると同時にAMFの上から紫電がほとばしり、 あれほど驚異的だったAMFが停止していく。 同時に脅威だった相手の攻撃も・・・・・・。 雷を使えばこんなに簡単だったなんて、どうして気がつかなかったんだ!! そんなことを考えている間にはんたさんの声が響く。 「2発目!!!!!!!!ファイエル!!!!!!!まだまだ続くぞ!!!!」 はんたさんの魔力弾がリニアの壁を横から貫いて紫電をほとばしらせる。 その度に複数のガジェットドローンが一斉に機能障害を起こし始める。 同時に傍らに表示された敵耐久力の本当の意味を知った。 はんたさんの攻撃で相手は動かない人形になった。 敵の耐久力が表示されるおかげでどれだけ攻撃すればいいか分かる。 おかげで攻撃の無駄が無くなる。 これならまだまだ加速できる!! 「作戦目標クリアー。継続して索的および警戒を続行します。 管制室、レーダーレンジ内に敵影ありませんが、問題はありますか?」 気がつけば背後にガジェットドローンの残骸が溢れていて、 はんたさんのデバイスのアルファ(そういえばインテリジェントデバイスなのかな?)が そう告げていた。 え? この残骸って・・・・・・僕がやったの? 「車両内・・・・・・・および・・・・・・上空のガジェット反応・・・・・・全て・・・・・・消失。」 「スターズF・・・・・・レリック・・・・・・無事確保。」 「車両の・・・・・・コントロールも・・・・・・取り戻した・・・・・・ですよ。今止めまーす。」 「ああ・・・・・・ほんなら・・・・・・ちょうどええ。スターズの3人と・・・・・・リインは ヘリで回収してもらってそのまま・・・・・・中央のラボまでレリックの護送・・・・・・ お願いしようかな。」 「ライトニングは・・・・・・どうします?それとハンターは?」 「現場・・・・・・待機。現地の局員に・・・・・・事後処理の引き継ぎ。よろしくな。 ああ、はんた!!絶対に絶対に現地局員血達磨にしたりしたらあかんからな。」 「それなら腕の1・・・・・・。」 「あかんて!!」 「了解しました。」 コレは夢コレは夢コレは夢と壊れたように呟きっぱなしのシャーリー。 他の課員も呆然としながら報告を口にする。 まさか六課の管制システムと同じかそれ以上の性能持ってるとか デバイスに言われたらデバイスマイスターとしては悪夢やしなぁ・・・・・・。 知識無い私らでも常軌を逸してると分かるのに。 しかし、はんた、最初こそ狂ったみたいに笑い出したりしてヤバイ思ったけど、 戦いだしたらもっとヤバかったわ。 なのはちゃんのときとか地上本部のときはまぐれやったと思い込もうとしたんやけど、 やっぱ本当に戦いになれている。 バトー博士みたいな物凄い言葉使ったんも苛立ちからやろうか。 私らはリミッターついてるし、戦いが楽しいとか思うたことはない。 それにひよっこのフォワード4人が育っていくのが見ていて楽しい。 けれど脊髄反射で殺し合いができるという彼の目にはどう映るのだろう。 まさに戦って獲物を屠るために生まれたような狩猟者(ハンター)には・・・・・・。 しかし、見れば見るほど台所の黒いあれと紙一重やなぁ。 はんたのバリアジャケットって・・・・・・。 どこかの施設において・・・・・・。 「刻印ナンバーⅨ。護送体勢に入りました。」 「ふぅむ。」 「追撃戦力を送りますか?」 「やめておこう。レリックは惜しいが彼女達のデータが取れただけでも十分さ。 1人だけデータをほとんど取らせなかった魔導師がいたが、 陸曹、いや空を飛んでいたから空曹かな、戦いなれた砲戦魔道師といったところだろう。 実に粒ぞろいだ。フフッ・・・・・・。」 そう言って白衣の男が邪悪な笑みを浮かべる。 とても楽しそうに・・・・・・。 「それにしてもこの案件は実に素晴らしい。私の研究にとって興味深い存在が 揃っている上に、この子達を、生きて動いているプロジェクトFの残滓を 手に入れるチャンスがあるのだから・・・・・・フフフフフフフフ。」 どこかの暗い施設の中、男の笑い声が延々と響き渡った。 戻る 目次へ 次へ
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防衛戦の終わり。 つまらない日常への回帰に落胆する。 だが、ほんの少し楽しみなことが起こった。 スバルへのミスショット。 俺からすれば、起こるべくして起こった事故。 優しい優しいなのはは、ほんの少しの小言で済ませる。 あまりにもくだらなくてどうでもいいことに過ぎない小言よりも、 俺の興味はたった1つに向いている。 ティアナ・ランスター。 ひよっこどもの中で一番どうしようもないひよっこ。 粋がった馬鹿の同類かとさえ思い始めた。 視界に映る度、思考に浮かぶ言葉は圧殺、轢殺、殴殺、射殺、爆殺、斬殺、屠殺、嬲殺・・・・・・。 さて、そろそろ貴様のあり方を見極めるとしよう。 魔法少女リリカルなのはStrikerS―砂塵の鎖―始めようか。 第8話 賭け 「えっと・・・・・・報告は以上かな?現場検証は調査班がやってくれるけど、 皆も協力してあげてね。しばらく待機して何も無いようなら撤退だから。」 「「「はい!」」」 なのはさんの言葉にスバル達が返事している。 けれど、そんなことあたしはどうだってよかった。 この後、絶対に・・・・・・。 「・・・・・・で、ティアナ。ちょっとあたしとお散歩しようか。」 「っ・・・・・・はい・・・・・・。」 来た!! なのはさんから穏やかな口調で誘われる。 あたしはただ返事を返すしかなかった。 緞帳が落ちたような心のまま・・・・・・。 そのまま森をなのはさんと歩いていき、どの程度皆から離れたころだろう。 辺りに誰もいない場所。 木漏れ日以外、本当に何も無い、木々が鬱蒼と茂った静かな場所。 そこでなのはさんが歩みを止めた。 そのまま、あたしのほうに振り向き口を開く。 「失敗しちゃったみたいだね。」 「すいません。1発・・・・・・反れちゃって・・・・・。」 後ろめたさに無意識に視線は下を向いてしまう。 それに・・・・・・なのはさんは全て知っているはず。 隊長なのだから報告を受けていないはずが無い。 その上で質問しているのだろう。 あたしを問い詰めるために・・・・・・。 もしも知らないことがあるとすれば、どうしてあたしがあんなことをやったか。 それだけだろう。 「わたしは現場にいなかったし、ヴィータ副隊長に叱られて、 もうちゃんと反省していると思うから、改めて叱ったりはしないけど・・・・・・。」 なのはさんはそう言う。 優しい口調のままに・・・・・・。 それで優しい口調で油断させた後、次はなにをやるんですか? 頬を叩きますか? それとも謹慎処分でも通達するんですか? 「ティアナはときどき、少し一生懸命すぎるんだよね。それでちょっと やんちゃしちゃうんだ。でもね・・・・・・。ティアナは1人で戦っているわけじゃないんだよ。 集団戦でのわたしやティアナのポジションは前後左右全部が味方なんだから。」 肩に手を置きながら告げられたなのはさんのその言葉にはっとする。 あたしのポジションはセンターガード。 敵陣に単身で切り込むフロントアタッカーでも、 前衛や後衛の支援攻撃をするガードウイングでも、 まして完全支援のフルバックでもない。 チームの中央に立って、誰よりも早く中・長距離を制する者がセンターガード。 そしてあのときあたしがやるべきだったことは、敵を全滅させることでも無くて、 ましてあたしが蹴散らすことじゃなくて、防衛線を維持することだった。 それなのにあたしは焦って、全機撃墜しようとして・・・・・・。 「その意味と今回のミスの理由、ちゃんと考えて同じことを2度と繰り返さないって 約束できる?」 「はい・・・・・・。」 「なら、わたしからはそれだけ。約束したからね?」 「はい・・・・・・。」 なのはさんは最後まで優しいままだった。 1度も声を荒げもせず、頬を打つこともせず・・・・・・。 なのはさんに言われたことは全部理屈の上では分かってる。 でも・・・・・・、だけど・・・・・・、あたしは・・・・・・。 AMFに阻まれてなにもできなかったあたしは・・・・・・。 役立たずだ。 「わかりました。あちらに・・・・・・。」 調査班の人から話を聞いていると、ふっとその視線が外れた。 追うようにあたしもそっちを見ると、そこには・・・・・・。 「ティア!!」 「・・・・・・スバル。」 あたしは足早に駆け寄る。 調査班の人の話を放り出して。 管理局員としての自覚があるのかとか主人を見つけた犬みたいと言われるかもしれない。 でもなんだっていい。 ティアはあたしのかけがえの無い親友なんだから。 「いろいろ・・・・・・ごめん。」 いつものティアが嘘のようだ。 まるで火が消えちゃったみたい。 「んーん、全然・・・・・・。その・・・・・・なのはさんに・・・・・・怒られた?」 あー、なんでこんなことを聞いているんだろう。 ティアが傷つくに決まっているのに。 なんであたしはもう少し気の利いた言葉が言えないんだろう。 「少しね。」 「そう・・・・・・。」 落ち込んだままのティアが短く答えて、あたしもただ言葉を返すしかできない。 ほら、会話が途切れてしまった。 ああ、もっとなにか言わないといけない言葉があるのに・・・・・・。 ええと、ええと、そうだ!! 「ティア、向こうで一休みしてていいよ。検証の手伝いはあたしがやるから・・・・・・。」 精一杯明るく気にしていないように振舞えたはず。 でもティアにはバレバレかな。 「凡ミスしておいてサボりまでしたくないわよ。いっしょにやろ?」 「うん!!」 軽く笑ってティアがそう言ったけど、あたしは嬉しかった。 ティアにちょっとだけ元気が戻ったみたいだったから。 「初めまして、ユーノ・スクライア司書長。空曹兼陸曹のはんたと申します。 いつもバトー博士がお世話になっています。」 そう言いながら俺はなのは達のところへ近づいた。 管理局のデータベース無限書庫の司書長、ユーノ・スクライア。 バトー博士から簡単な容姿は聞いている。 トモダチがまた増えたという言葉と共に・・・・・・。 しかし、インジュウなんてアダナ、バトー博士もよく思いつくものだ。 もっとも俺にはどのあたりがインジュウか分からないが・・・・・・。 「い、いえ。こちらこそ。その・・・・・・物凄い呼び方される以外は・・・・・・本当に・・・・・・。 バトー博士にこちらのほうが感謝してますから。既に無限書庫の3割以上に目を通されていますよ。たった1人で何十人分もの司書と同じ仕事量を来る度に手伝ってくれて、 自分の仕事もあるのに・・・・・・。司書長なんて立場にありながらお恥ずかしい限りです。」 「バトー博士があなたとトモダチになったのなら、それは当然のことです。 バトー博士以上に誠実な人間を俺は見たことが無い。」 奇妙な顔をするユーノ・スクライア司書長。 案外知らないのかもしれないな。 ここにいる面子がそろってバトー博士のトモダチになっているなんて。 インジュウ、ゴキブリ、バカチン、ロシュツキョーか。 どれが一番まともな名前か。 さて、そんなことは置いておいて、せっかくフェイトもいることだし尋ねておくとしよう。 「それで、なの・・・・・・なのは隊長とフェイト隊長をお借りしてもよろしいですか? ああ、たった1つの疑問にお答え願うだけですからこのままでも構いませんよ。」 「・・・・・・構いませんけど?」 「ええと、なにかな?はんた君。」 「作戦行動についてなにかあったかしら?」 「広域防衛戦が予想されていたのに、砲戦魔導師のなのは隊長と広域攻撃魔法が使える はやて部隊長がわざわざホテル内の警備についた理由を教えていただきたい。 どちらか片方が外にいれば、かけらほども被害はなかったでしょう。 結果はご存知のように、シグナム副隊長達は動きっぱなしで、 まともな範囲攻撃が使えるのは俺だけで、 召還による奇襲を受けてスバル達が展開したホテル前の防衛線まで敵に詰め寄られ、 どうにか迎撃しきれたものの、召還師には逃げられて、 オークションの品物を盗まれてしまったわけだ。」 「それは・・・・・・。」 フェイトが困惑したように言いあぐねている様子。 同様になのはのほうも・・・・・・。 本当のことを言えばフェイトまで中にいたことがおかしい。 率いるべき隊長なのだから・・・・・・。 一番の疑問は最大火力を誇る隊長3人が揃いも揃って中にいたことだ。 シャマルのクラールヴィントとも、六課の管制のほうとも常時回線を繋げずに!! 今回の戦いを、広域防衛なんてシャマルが言っていたが、 ほとんど1方向から攻めてくれたからどうにかなったようなものだ。 包囲攻撃されるなんて予想さえ立てなかったのか? 終わったことでどうこう言いたくはないが、 あれだけ後手後手に回ってどうにかできたのは運がよかったとしか言いようがない。 まして包囲攻撃だったならホテルも人間も無傷ですまなかった。 だからこそ、聞きたい。 部隊としてどうしようもないのか、それとも別の何かがあったのかを判断するためにも。 言いあぐねている2人にこちらから予想の1つを振ってやる。 「六課のあり方として隊長は力をふるうわけにはいかなかったとでも?」 「君、失礼だろ。なのは達だって・・・・・・。」 「いいよ。ユーノ君。でも・・・・・・耳が痛いな。上からの命令としか答えられないんだ。」 ウエカラノメイレイ? 言葉の意味がわからなかった。 上からの命令・・・・・・。 つまり、はやて達よりも上の立場のどこかの馬鹿が、なにを考えたか知らないが、 効果的な運用も考えないで最大火力を使えなくしたと・・・・・・。 あらゆる言葉が思考を埋め尽くす。 その大半は罵声の類だ。 あまりにも予想を突き抜けた答え。 呆れも失望も突き抜けるほどに・・・・・・。 俺はなにも言わずに去るしかなかった。 「アルファ、結果より逆算、今回の防衛に成功する確率は?」 「60.8%。」 「5度に2度は抜かれたわけだ。遊びで部隊をやっているのか?」 「情報が足りず回答不能です。」 「仮に俺が攻める側だった場合?」 「100%は揺るぎません。今までどおりのルールならなおさらです。」 「Dead No Aliveか。」 口に出すと泣き出したくなるほどに懐かしい言葉。 それに、彼女を殺してから感じ続ける空虚な感覚は加速するばかり。 この世界に飛ばされて、アルファが蘇ったことでほんの僅かばかり満たされた。 けれど、日を追うごとに他のなにかが壊れた蛇口のように溢れ出ていってしまって・・・・・・。 まともじゃなくなりはじめていたのだろう。 壊れかけを騙し騙し動かした果てに、壊れてはいけないメインパーツが悲鳴を上げたのか。 アルファにこんな問いをしていた。 「アルファ、狂うことができたら楽になれるかな?」 「なにも変わらないと思われます。」 「・・・・・・なぜ?」 「狂った人間はなにも感じなくなります。なにも失うことも得ることもありません。 マスターは永遠に数字の0を刻むだけになります。マスターの枷となっている現実も、 殺害せずに済んでいるに過ぎないモノが殺害可能となるだけです。 要素として誤差で済むほど極小のプラスに過ぎません。リターンは限りなく0です。」 「だが、感じなければマイナスもないだろう?機械のように・・・・・・。」 「その問いはYesです。しかし、今現在、膨大な量のマイナスがあるにすぎません。 かつて、なにも保証がないまま、なにかが得られると荒野を駆け抜けたのはマスターです。 そして多くの非論理的思考を機械に過ぎない私に教えたのもマスターです。 そのマスターが私に向けてそのようなことを尋ねるのですか?」 「・・・・・・すまない。どうかしていた。」 「問題ありません。ただ、マスターがどのような決断をしようと私がマスターの傍らに あり続ける事実に変更はありません。」 「ああ、そうだな。」 「はーい。機動六課の前線メンバーの皆さん。撤収準備が整いました。 集合してくださーい。」 唐突に響くシャーリーの軽い声。 シャーリー・・・・・・シャーリィか・・・・・・。 だめだな。 本当にどうかしている。 彼女のこと以外で立ち止まって振り返ることなんて、 それこそジャックさんに殺されたときぐらいだったのに、 今頃になって共に旅をした仲間のことを思い出すようになるなんて・・・・・・。 綺麗な金髪のソルジャーで胸がすくような振舞いをしていた彼女だったら、 こんな状況を作り出したやつをとりあえず殴り飛ばして蹴り飛ばして、 それから笑い飛ばして酒でも飲んでそれで全部おしまいにするだろう。 酒・・・・・・。 そういえばいつからだろう。 酒の味がわからなくなって、いくら飲んでもまったく酔わなくなったのは・・・・・・。 しかし、本当にどうしたんだろう。 思考がなにかおかしい気がする。 気のせいか? それに俺が殺してしまった彼女の髪の色である血の赤が恋しくて恋しくて仕方が無い。 ちょうどいい。 傍らを通り過ぎていく白衣を着た生き物を殺・・・・・・。 深呼吸をしながら歩き続ける。 そうだ、バトー博士に頼みを追加しよう。 3連装にすると共に、バリアジャケットに血染めの旗でも加えてくれと・・・・・・。 そういえば緑にこだわる必要もなくなったんだ。 他のカラーリングにしてくれというのもいいかもしれない。 なんせ血塗れになっても目立たないからこその緑だったのだから・・・・・・。 でも彼女は緑のアサルトスーツで全身を覆っていた。 緑は彼女とお揃いの色。 ああ、やっぱり緑のままがいい。 血染めの旗なんていらないな。 なぜ思いついたのだろう? 邪魔な情報だ、消してしまおう。 いつからできるようになったのかさえ忘れてしまった行為。 意図的に記憶を消すというもの・・・・・。 砂の城を踏み潰すように、記憶から本当に色鮮やかで綺麗な血染めの旗を消していく。 ほころびが始まってしまったことにはんたは気がついていない。 自分がなにを消してしまったのか。 あの苛酷な荒野において仲間として共に駆け抜けた金髪のソルジャー『シャーリィ』。 旅の中で彼女が語ってくれたのは、かつて所属していて皆殺しにされた傭兵団のこと。 その名前は血染めの旗(ルージュフラッグ)・・・・・。 「皆おつかれさま。じゃあ、今日の午後の訓練はお休みね。」 「明日に備えてご飯食べてお風呂でも入ってゆっくりしてね。」 「「「「はい!!」」」」 六課に撤収して、なのはさん達にそんな声をかけられた。 あたし達4人は元気よく返事を返す。 だけど、あたしはそんなに悠長なことしていられない・・・・・・。 隊舎への道中、あたしは口を開く。 「スバル、あたしこれからちょっと1人で練習してくるから・・・・・・。」 「自主練?ならあたしも付き合うよ。」 「あ、じゃあ、僕も・・・・・・。」 「私も・・・・・・。」 これはあたしのわがまま。 あたしの無理に付き合わせるわけにはいかない。 あたし達よりも幼いエリオ達ならなおさらに・・・・・・。 「ゆっくりしてねって言われたでしょ。あんた達はゆっくりしてなさい。 それにスバルも、悪いけど1人でやりたいから!!」 「うん・・・・・・。」 そうエリオ達に言ったけど、あたしは笑えていただろうか。 誰かがいたら、きっとあたしは自分で立っていられなくなる。 それではいけないんだ。 証明するためにもあたしは人一倍努力しないといけないんだ。 制圧さえできないセンターガードでいてはいけないんだ。 あたしは誰もこないだろう場所を探すためみんなの前から去った。 どこか悲しげな声のスバルの返事を背中越しに聞きながら・・・・・・。 「あのさ。2人ともちょっといいか?」 「あ・・・・・・うん。」 あたしの言葉になのは達が頷いた。 シャーリーとシグナムのやつはどこか怪訝そうな表情であたしを見ている。 そんなにあたしがなにか言おうとするのが珍しいのか? 場所を移して皆がソファーに腰を下ろす。 「訓練中から時々気になっていたんだよ。ティアナのこと・・・・・・。」 「うん。」 「強くなりたいなんて若い魔導師ならみんなそうだし、 無茶も多少はするもんだけど・・・・・・。時々ちょっと度を越えてる。 あいつ、ここに来る前なんかあったのか?」 「ティアナのお兄さん、ティーダ・ランスター。当時の階級は一等空尉。 所属は首都航空隊。享年21歳。ご両親は既に事故で亡くなっていて、 ティアナはたった1人のお兄さんに育てられたみたい。」 「結構なエリートだな。」 「そう。エリートだったから・・・・・・なんだよね。ティーダ一等空尉は亡くなったときね、 逃走中の違法魔導師に手傷を負わせたんだけど、取り逃がしちゃってて・・・・・・。」 「まぁ、地上の陸士部隊に協力を仰いだおかげで、犯人はその日のうちに 取り押さえられたそうなんだけど。」 「その件についてね、心無い上司がちょっと酷いコメントをして一時期問題になったの。」 「コメントって?なんて?」 「犯人を追い詰めながら取り逃がすなんて、首都航空隊の魔導師としてあるまじき失態である。例え死んでも取り押さえるべきだった・・・・・・とか、任務を失敗するような 役立たず・・・・・・とか。」 「ティアナはそのときまだ10歳。たった1人の肉親を亡くして、しかもその最後の 仕事が、無意味で役に立たなかったって・・・・・・きっと物凄く傷ついて悲しんで・・・・・・。」 「でも無駄死にだろ?」 全員が一斉に扉のほうを向く。 そこにはあいつがいた。 いや、そんなことよりも重要なことがある。 「はんた!!てめぇ、今なに言いやがった!!」 「ノックは忘れなかったと思うんだが・・・・・・。」 「質問に答えやがれ。」 「無駄死にと言ったんだ。獲物を追いかけて取り逃がして勝手にくたばったんだから。」 「はんた君!!なんてことを・・・・・・。」 「テスタロッサ。落ち着け。はんた、いったいなんのつもりでそう言っている?」 「揃いも揃って・・・・・・。思った通りをそのまま口にしているんだよ、シグナム。 むしろどこが怒る部分なのか教えてくれないか?」 「ふざけるんじゃねぇ!!」 「冗談や挑発なんかのつもりはさらさら無い。どこが怒る部分なんだ?」 「本気で言っているんだな?」 「もちろん。育った世界の価値観の違いかと思い始めたところだが。」 「・・・・・・お前の世界ではどうなんだ?」 「世界なんて広い括りは知らないな。だが、俺のいた場所では毎日たくさんの人間が 死ぬんだ。数えたことはないがそれこそ死ぬ原因は様々でダースどころかグロスで 死んでいるだろ。なんせ周りが全部敵の世界だ。特にハンターなんていう自分の命を 賭け金にして殺し合いをやる人種はなおさら死にやすい。」 「そうか・・・・・・。」 「その一番死体になりやすいハンターにはいくつかの原則があるんだ。 その中で一番の基本で絶対の原則を無視してくたばったんだから無駄死にだろ?」 「どんな・・・・・・原則なの?」 なのはのやつ、問いかける声が震えてやがる。 フェイトも同じだ。 シャーリーのやつなんか顔が真っ青になっちまってる。 シグナムのやつだけは冷静みてぇだな。 あたしも反射的に飛びかかっちまいそうだ。 でも、それ以上に、表情ひとつ変えないで話すはんたの話が信じられない。 いったいどんなところなんだよ。 人間が毎日そんな数で死んでいく世界って!! なんなんだよ、この裁断機野郎がいた世界って!! 「『ヤバくなったら逃げろ』。あまりにも当たり前で簡単なことだろ?」 「なにふざけたこと抜かしてやがるんだ!!んなことしたら任務放棄じゃねぇかよ!!」 「だから無駄死にって言っているんだろ?自分がやられてたった1人の家族が 本当に1人ぼっちになる可能性よりも追いかけるほうを選んでくたばったんだから。 その上で獲物も取り逃がしたんだ。無駄死にだろ?」 「っ・・・・・・。でも・・・・・・。」 「俺の言葉にティアナが怒るならまだ分かる。だが、なんでなのは達が怒っているんだ?」 反論しようとしたなのはが、はんたの言葉に詰まった。 なんて答えりゃいいんだ。 死者を冒涜するな? 任務を遵守した結果? 尊い人命? ティアナの気持ちも考えろ? どれもはんたは鼻で笑いとばしちまいそうだ。 なにも言えないでいるあたし達の横でシグナムが口を開いた。 「ティアナのことは置いておこう。はんた、なんのようだ?」 「ああ、そうだ。ろくに使い道も無くて額面もたいしたことない報酬を 増やしたいと思って来たんだった。」 「給料の値上げ交渉か?」 「いや。単純な賭けさ。なのはがティアナに面白いことを言っていたからそれを使わせて もらおうと思った。『その意味と今回のミスの理由、ちゃんと考えて同じことを2度と 繰り返さないって約束できる?』だったか?」 「盗み聞きしてたの!?」 「レーダーレンジの中で喋っているほうがマヌケなんだ。賭けの内容だ。1ヶ月以内に なのはとの訓練中スバルとティアナが近接戦闘を仕掛けるほうに今月の報酬全額賭ける。」 「・・・・・・?ティアナのモード2のことを言っているの?」 「育成プランなんてあったのか?なにを目的にしているか分からない訓練ばかり やらせているから無いものだと思ってた。ついでに言えば今回の事故も 痛い目みせるために意図的に起こるよう仕組んでいたとばかり思ったんだが・・・・・・。」 「そういえばてめぇ、なんか妙なこと言ってたな。起こるべくして起こったとか・・・・・・。」 「え?ヴィータ、それってどういう・・・・・・。」 フェイトがあたしの言葉に驚いている。 なのはもはんたの言葉に呆然としているみたいだ。 シャーリーの問いかけるような視線にシグナムが頷いている。 あの場にシグナムもいたからな。 はんたが口を開く。 「シャーリー。ひよっこどもの初任務の映像は出せるのか?」 「え、ええ。出せるけど。」 「なら出してくれ。人伝に聞いた話で記憶が狂っていなければ、 新人たちがちゃんと動けたようで上出来みたいな内容だったな、隊長達の評価は・・・・・・。」 たしかリインのやつがつけていた日誌がそんな感じだった。 回ってきた報告書も・・・・・・。 あたしはそのときいなかったからなんとも言えねぇんだけどな。 目の前にそのときの映像が表示される。 「わざわざヘリの中でバリアジャケットを展開してから外に出た俺よりも、 なのはが飛び降りながらバリアジャケット展開しているのを真似して、 対空射撃されることさえ考えずに飛び降りたひよっこどもと、 バリアジャケットに感激して敵の真上で立ち止まっているひよっこどものことは、 ここで発狂した笑いをしている俺の立ち回りミスとしよう。」 なのはとフェイトは愕然としたような表情をしていた。 とくになのはは震え始めている。 当然かもしれねぇな。 当たり前のように取った行動をひよっこどもが真似をしていたんだ。 空の迎撃に行くなのはとリニアに取り付くひよっこどもの違いを理解もせずに・・・・・・。 それがどれだけ危ないことかさえひよっこどもは分かっていないだろう。 シャーリーもあっと言わんばかりの顔をしている。 そういえばシャーリーって通信士だったっけな。 それならこの現場をモニター越しとはいえ目の前で見ていたことになる。 映像が流れ、ある場所まで来るとはんたが『止めろ』と言った。 「だが、ティアナのこの行動を当たり前だと見逃して放置していたんだろう? 射線上に仲間がいるときにトリガーを引くなんてしないものだ、普通は・・・・・・。 それとも射線上に味方がいてもトリガーは引くのがこっちの世界の常識なのか? それならひどい誤解をしたと謝るし、今後遠慮なくトリガーを引かせてもらうが。」 目の前の映像にガツンと頭をぶん殴られたみたいだった。 シールドやバリアがあるからなんて言い訳にならねぇ。 このときは、たまたまガジェットドローンが避けなかったから事故にならなかったんだ。 もしも避けていたら、その先にはエリオが・・・・・・。 しかもリニアから落ちれば下は崖。 何度もリプレイで映されるそのティアナの映像にあたしは鳥肌がたった。 たまたま今回の誤射が起こったんじゃない。 起こるだけの原因が放置されていて起こったんだ。 なんで教えてくれなかったなんて責められない。 隊長が気づいてしかるべきことなんだから・・・・・。 「そんなくだらないことは置いておこう。それならさらに賭けを具体的にしよう。 1ヶ月以内になのはとの訓練中、スバルとティアナが命知らずな特攻を仕掛ける。 特攻の内容はスバルがなのはにシールドを展開させて足を固めておいてから ウイングロードをティアナが駆け上ってなのはの上か下あたりから切りかかるが せいぜいだろう。それに今月の報酬を全額だ。」 重い雰囲気は笑い飛ばすようなそんなはんた君の言葉で消し飛んだ。 特攻って言ったの? そんなことするはず絶対ない!! 「はんた。だが、ティアナ達がそんなことをしてもなのはの勝ちは揺るがんぞ? ティアナ達が危険なだけの無意味な行動だ。」 「なにをいまさら・・・・・・。案外5割6割は勝率があると思ってやるんだろうよ。 なんのための訓練か分からないけど、これだけのことを考える頭があって、 あたしはこんなに力があって、こんなに努力しているんだから とにかく力だけはあるんだーみたいな考えでやると思ってる。」 「やらないよ!!だって、ティアナはわたしと約束したんだから・・・・・・。」 「だから賭けを持ちかけたんだ。俺はやるほうに今月の報酬全額だ。」 「わたしは・・・・・・ティアナを信じる!!」 だって、ティアナはわたしと約束したんだから。 お兄さんのこともあって一生懸命になりすぎて、焦りばっかりが増えて、 その結果失敗しちゃって、ヴィータちゃんに叱られて、本当に落ち込んでいた。 それに、あたしが言い聞かせたとき、物凄く後悔した顔した。 だから、絶対にティアナはそんな馬鹿な真似しない!! するはずがない!! 「顔を見る限り、他の面子は賭けに乗りそうに無いな。しかし、ティアナの モード2がよりによって近接戦闘ね。本当に分からなくなってきたよ。」 「え?」 なにを言われたかわからなかった。 だって、ちゃんと目的があってわたし、訓練させているのに・・・・・・。 どうしてそんなこと・・・・・・。 「いったいなにが目的の訓練なんだ?絶望的なまでに戦闘力の差がある魔導師を 倒すための訓練か?ガジェットドローンを倒すための訓練か? 無抵抗の人間を倒すための訓練か? 遠距離しかやれない人間が接近戦専門の人間を倒すための訓練か? それとも、高町なのはというエース・オブ・エースを倒すための訓練か? まさか自分で考えて戦えるようにするための訓練なんて言うなよ。 お仕着せのような訓練内容をさせておいて、どこでなにを考える? それに1発撃つのにどれだけかかってる・・・・・・って砲戦魔導師に言うのは 愚かだったな。銃口を向けた時点で照準は揃っていてトリガーは引くばかりなのが 当たり前の世界なんだから。」 え? なにそれ・・・・・・。 訓練内容への指摘よりも別の場所に驚きを隠せない。 狙う動作はどこにあるの? アクセルシューターやクロスファイアシュートにしたって追尾性能がある。 だから、いかに早く撃つかとか狙うかは考えたことがあった。 でも、わたし、そんな厳密に動作を考えたこと・・・・・・無い。 わたしは砲戦魔導師として完成していると言われる。 けれど、その先がもしかして・・・・・・あるの? 「ついでに言えば、シグナム。素人が一番殺し合いに使いやすい武器はなんだ?」 「鈍器だ。長柄ならヴィータみたいなハンマーもありだ。」 「逆に一番訓練がいるのは?」 「ふむ・・・・・・ナイフか。刃物ならとにかく長柄の武器ほど練度はいらない。 もっとも手元に入られたときの問題や重さの影響もあるだろうが・・・・・・。」 「という近接戦闘に慣れた方の講釈があったが、まさかナイフやダガーや スティレットなんて言い出さないよな。ティアナのモード2。」 ダガーモード。 それがティアナに準備していたモード2。 どうしてこんなにぴったり言い当てられてしまうのか。 わたしが単純すぎる? ううん、違う。 はんた君のその思考は、あまりにもシビアであまりにも現実的。 本当に命を奪い合う殺し合いが大前提で全ての会話が始まっているはんた君。 1度はハンデがあったから負けたとはいえ、 もう1度やれば勝てるとわたしは心のどこかで思っていた。 けれど、それは致命的なまでの間違いなのかもしれない。 前にバトー博士に言われた通り・・・・・・。 毎日殺し合いの日々だったはんた君からすれば、砲戦魔導師として完成していて 管理局のエース・オブ・エースなんて呼ばれるわたしさえもひよっこなんだ。 今日のホテル・アグスタでの問い。 ホテル・アグスタ周辺のなにかに抉り取られたような地形。 あれは砲戦魔導師のそれに近かった。 そして今日のメンバーでそれができるのは1人しかいない。 つまり、それから考えられる結論は・・・・・・はんた君の強さはオーバーSに相当? もしかしたら単独で全部を制圧することさえ簡単だったのかもしれない。 どれだけ彼は歯痒い思いをしてわたし達を見ているのだろう。 そんな思考をしていたわたしにはんた君が言葉を告げる。 「なのはも快く賭けに乗ったから俺は席を外すよ。あと、もう1つだけ言わせて貰おう。 俺の世界には普遍のルールがある。」 「毎日殺しあってる世界で普遍のルール?あんのかよ?そんなもの。」 そんなものがあるのだろうか? 優しい世界で皆に囲まれてきたわたしには想像さえできない。 わたしに比べればはるかに辛い思いをしてきたフェイトちゃんやシグナムさんも 首を傾げるばかりで、真っ青な顔をしたシャーリーさんは震えるばかりだ。 ヴィータちゃんも不思議そうに尋ねている。 「『強いから正しい』。言葉通りに俺を打ちのめして『無駄死に』を訂正させるか?」 淡々とそう言い放ったはんた君の姿に初めてあったとき以上の危うさを感じた。 殺気はかけらほどもない。 けれどどこから漂ってくるのだろう。 咽返りそうなほどに濃密に感じられるこの匂いは・・・・・・。 表情はなにも変わらないのに、なにかが殺させろと叫んでいるみたい。 どうしてだろう。 人の形をした別のなにかにはんた君が見えてくる。 そんな雰囲気に飲まれて、わたし達ははんた君を見送るしかできなかった。 証明するんだ。 お兄ちゃんが教えてくれた魔法は役立たずなんかじゃない。 どんな場所でも、どんな任務でもこなせるって・・・・・・。 力さえあればそれが証明できる・・・・・・。 死んじゃったお兄ちゃんの叶えられなかった夢を叶えるんだ。 そんな思いを抱えながら、六課の片隅の林で、あたしの周りを魔力スフィアで囲んだ。 この魔力スフィアはマーカー。 クロスミラージュに制御をまかせてランダムに点灯させていく。 それに向かってあたしはその場から動かずに、照準を合わせる。 ランダムに点灯する魔力スフィアを狙い続ける訓練。 ろくに才能も力も無いあたしに残された最後の武器である精密射撃を 完璧にするために・・・・・・。 そんな思いで歯を食いしばって、同じような動作を延々繰返しつづけて、 どれだけの時間続けただろう。 集中が途切れたせいか、それとも疲れのせいなのか。 ふっと膝から崩れ落ちそうになる。 そこで初めて息をついた。 気がつくと辺りは夕暮れだったはずなのに、 星と月と人工の明かりが灯る夜が広がっている。 肩で息をしながら、深く息を吸って再び訓練を続ける。 あたしは証明するんだから。 こんなところで立ち止まれないんだ!! 必死に照準をあわせているあたしの傍らから、手を打つ音が聞こえた。 「もう4時間も続けているぜ。いい加減倒れるぞ。」 「ヴァイス陸曹。・・・・・・見てたんですか?」 「ヘリの整備中にスコープでちらちらとな。ミスショットが悔しいのはわかるけどよ。 精密射撃なんざ、そうほいほい上手くなるもんじゃねぇし。無理な詰め込みで へんな癖つけるのも悪いぞ。」 あなたになにがわかる!! 思考はその感情だけで埋め尽くされていたから・・・・・・。 反射的ににらんでいたのかもしれない。 「って、昔なのはさんが言ってんだよ。俺は、なのはさんやシグナム姐さん達とは 割と長い付き合いでな。」 あたしの雰囲気に戸惑ったのか、ヴァイス陸曹が慌てて付け足すようにそう言った。 なのはさん・・・・・・シグナム副隊長・・・・・・。 どっちも才能に恵まれた人間じゃないか!! オーバーSとAAランクのなんでも持っている魔導師と 凡人で落ちこぼれで何も持っていないどうしようもないあたしを一緒にしないで!! 「それでも、詰め込んで練習しないと上手くなんないんです。凡人なもので・・・・・・。」 感情のままに酷い言葉を叫びそうになった。 でも、心配してくれた相手に当り散らすなんてできない。 ただ、反論するだけにしておいた。 なのはさん達とあたしを同じところにおいて話をするなという含みも込めて・・・・・・。 話は終わりとばかりにあたしは訓練を再開する。 「凡人・・・・・・か?俺からすりゃあ、お前は十分に優秀なんだがな。羨ましいくれぇだ。 ま、邪魔する気は無ぇけどよ、お前らは身体が資本なんだ。体調には気ぃつかえよ。」 「ありがとうございます。大丈夫ですから。」 口先だけのお礼。 心は既に別の方向へ向いている。 全然足りないんだ、証明するための力が・・・・・・。 無理や詰め込みをしないで、どうやって才能の差を埋めるんだ!! だから、やれる限り無理と詰め込みを続けるんだ。 証明するための力を少しでも手に入れるために!! 「ティア・・・・・・」 「なんだ。まだ起きてたんだ。」 へとへとになるまで訓練をして部屋に戻るとスバルがまだ起きていた。 隊舎に戻ったとき深夜を回っていたことにほんのさっき気がついたのだけど。 会話するのも辛い。 全身に纏わり付く疲労感に身を任せてベッドに潜り込む。 「あのさ・・・・・・あたし、明日朝4時起きだから。目覚まし五月蝿かったらごめんね。」 「いいけど・・・・・・大丈夫?」 「うん・・・・・・。」 心配してくれているスバルの言葉に答えるのさえ億劫だ。 まるで睡魔に誘われるようにあたしの意識は眠りに落ちていった。 「ティア。ティア。起きて、4時だよ。起-きて。」 耳障りな電子音が響いている。 これは目覚ましの音? スバルに身体を揺さぶられ、ぼんやりした意識がようやく覚醒を始める。 だるい身体を動かして目覚まし時計を止めながら、 ぼやけた視界が時計のアナログな針を映した。 「あー、ごめん。起きた。」 「練習行けそう?」 「行く。」 「そう。じゃ、はい。トレーニング服。」 「ありがとう。」 スバルは本当に優しい。 気がつくと甘えて寄りかかってしまいそうなほどに。 でも甘えちゃ駄目なんだ。 差し出されたトレーニング服を受け取りながら気だるい身体を動かす。 「さて、それじゃあたしも・・・・・・。」 「ええっ!?なんであんたまで・・・・・・。」 さらっと言いながら着替えを始めたスバルにあたしは反射的に尋ねていた。 これはあたしのわがままなのに・・・・・・。 あんたが付き合う必要ないのに・・・・・・。 「1人より2人のほうがいろんな練習できるしね。あたしも付き合う。」 「いいわよ。平気だから。あたしに付き合ってたらまともに休めないわよ。」 「知ってるでしょ。あたし日常行動だけなら4,5日寝ないでも平気だって。」 「日常じゃないでしょ。あんたの訓練は特にきついんだから、ちゃんと寝なさい」 「やーだよ。あたしとティアはコンビなんだから。一緒にがんばるの。」 「か・・・・・・勝手にすれば!!」 あっけらかんと笑顔で言ってきたスバルにあたしはそう返事を返すのが精一杯だった。 ・・・・・・スバル、ありがとう。 「で、ティアの考えていることって?」 「短期間でとりあえず現状戦力をアップさせる方法。上手くできればあんたとの コンビネーションの幅もぐっと広がるし、エリオやキャロのフォローももっとできる。」 「うん。それはわくわくだね。」 「いい?まずはね・・・・・・。」 スバルにあたしの考えを伝える。 早朝の六課の片隅の林の中、あたしとスバル2人だけの訓練が始まった。 「じゃあ、引き続き個人スキルね。基礎の繰返しになるけど、ここはしっかりがんばろう!」 「「「「はい!!」」」」 「ティアナとスバルはなにかご機嫌だけど・・・・・・なにかいいことあった?」 「あ、いえ、えへへへ・・・・・・。」 「なんにも・・・・・・。」 顔に出ていたのだろうか。 自分で考えた方法が証明できる日が待ち遠しい。 スバルとの自主練の結果を見せて、驚かせてあげるんだ。 なのはさんを・・・・・・。 そしてそれが力の証明になるんだ。 いつもやっているなのはさんの朝と夜の訓練をいつもどおり消化していく。 それに加えて毎日、なのはさんの訓練の前後に時間を作ってスバルと自主練をしていく。 エリオとキャロもあたし達がなにかやっているって気がついたみたいで 差し入れを持ってきてくれたりした。 がんばらないと・・・・・・。 あたしがやらないといけないこと。 それはまず、急いで技数を増やさないといけないんだ。 幻術は切り札にならないし、中距離から撃っているだけじゃ それが通用しなくなったときに必ず行き詰る。 あの狂人の圧倒的な火力と連射性能を誇る砲撃魔法が頭をよぎり、ぎりっと奥歯が鳴った。 頭を振って思考を入れ替える。 あたしのメインはあくまでシャープシュート。 兄さんが教えてくれた精密射撃だけど『それしか』できないから駄目なんだ。 行動の選択肢をもっともっと増やすんだ!! そんなことを考え続けて、自主練を繰り返していった。 スバルに体捌きを習った。 コンビネーションを考えた。 ウイングロードを使った戦い方も考えた。 疲労の余り、吐き戻したこともある。 でも、結果を出すんだ。 それだけがあたしを突き動かし続ける最後に残ったモノだった。 「それで、はんたはいつもどおりドラム缶押しか。」 「横でドラム缶押しにずっと付き合っておきながらなにをいまさら。 しかし、成長すると人間は自分から泥沼にはまっていくものなのか? 幼いライトニング2人のほうが素直な分、伸びやすいし伸ばしやすい。」 「元々の性格もあるだろう。」 「しかし、ティアナは俺からすればなんで死体になっていないかが不思議だ。 それに目的がなおさら分からなくなったよ。なのはを倒したいのか、 センターガードとして動けるという証明をしたいのか、それとも単に力が欲しくて これだけの力が手に入ったっていう証明をしたいのか。それとも他のなにかなのか。」 「どういう意味だ?」 「なのはを攻略したいのなら、俺でもシグナムでもヴィータ・・・・・・は 『なにを馬鹿なこと言ってやがる』で終わらせそうだな、他の誰でもいい。 本当に手段を選ばないで力が欲しいのなら戦い上手なやつに尋ねればいい。 アドバイスらしいアドバイスは無かったとしても、『今の』なのはの戦闘スタイルの弱点を 教えてもらうぐらいはできるだろう。元手を使うわけでもないんだから突っぱねられたり、 馬鹿にされても損は無いだろう?それなのに、なのはについて情報を集めた痕跡は0。 それともなのははシールドとアクセルシューターしか使わないと決まっているのか?」 「たしかに一理あるな。ティアナ達にそれを教えてやらないのか?」 「賭けの真っ最中にそんな干渉したらフェアじゃない。」 「賭けっすか?」 ドラム缶押しをする俺とシグナムの横でぼんやり立っていたヘリパイロットがそう言った。 仕事は終わったのだろうか。 ヘリの整備をしていたのはアルファの収集した情報で知っているが・・・・・。 なんにせよ、簡単な説明ぐらいはするとしよう。 「賭けの話を知らないのか?ヘリパイロット。」 「ヘリパイロットって・・・・・・気軽にヴァイスって呼んでくださいよ。」 「それならヴァイス。1ヶ月以内にティアナとスバルがなのはに特攻を仕掛けるか否かで 賭けをやっている。やるほうに俺は今月の給料全額。なのははやらないほうに賭けた。 ちょうど明日が刻限の1ヶ月目だが、今からでも乗るか?」 「遠慮しておくっす。しかし、特攻とは穏やかじゃないっすね。」 「私もそれをはんたに言ったのだが・・・・・・。」 「アルファ、現状で賭けはどっちに傾く?」 「90%でマスターの勝利です。残る10%はいずれもイレギュラーによるものです。」 「はー。恐ろしく賢いデバイスっすね。しかし、9割がやるってのは間違いないのか?」 「現在まで収集したティアナの思考ルーチンおよびスバルの思考ルーチン、 その他戦闘スキルおよび経験とこれまでの日常行動から推測した限り、揺るぎません。」 「もしも、俺がそれをティアナ達に忠告に行ったとしたら?」 「誤差として処理される極小の確立だけ、やらない側に振れます。 しかし、逆にやる側へ著しく振れる可能性のほうが高いためお勧めしません。」 「ティアナの性格か?」 「Yesです。シグナム。忠告されたならば、その忠告を言葉通りに受け取らず、 『考えたことと努力があまりにも浅はかなものであった』と認識するでしょう。」 「ずいぶん人間らしい考えまで分かるんだな。で、確率までだせたりしちまうのかな?」 「今までの行動パターンより推測する限り99%。」 「うはー。そいつはひでぇな。忠告なんか聞きもしないって?」 「ときにヴァイス。ガンナーの経験でもあるのか?」 「え?なんで・・・・・・。」 軽口を叩いていた彼だが、俺の問いかけに酷く動揺したようだった。 なにをそんなに動揺する。 身体に染み付いた習性がそんなに簡単になくなるとでも思っているのか。 「視線が無意識に障害となるものを探している。僅かに右に偏った重心。 あとは、数えるのも忘れたくらいの経験からの判断。」 「はぁー。人伝に聞いたわけじゃないのにそこまで分かるなんて。まじで凄腕なんすね。」 「なんでもいい。遠距離射撃は得意か?」 「以前までは・・・・・・。ミスショットやっちまってからそれっきり・・・・・・。」 「なのはに言ったとき酷く驚いた顔をされたから気になったことがあってな。 遠距離射撃が得意ならそれを是非聞きたいと思ったんだ。」 「なんすか?」 「遠距離射撃でターゲットに向けて銃を撃つ。何アクション必要だ?」 俺の問いかけにヴァイスが真剣な顔をすると動作が丁寧に行われていく。 的を想定しているのだろう。 視線を固定した。 そのまま銃を構えるような動作を取り、スコープを覗くような仕草をしておいて 視線を外しまた覗く。 そして息を吸い込んで止める、トリガーに指が掛かる。 あまりに熟練した動作に拍手でもしたくなった。 本当に遠距離射撃でなおかつ精密射撃をやる方法を熟知している。 あの荒野だったなら弾が受ける影響を考えて風見を探して 気温や湿度なんかも考えるのだが、この世界では関係ない。 だからこそ当たり前のように当たり前がやれるヴァイスに感心する。 「俺なら銃を構えるのに1アクション、狙いをつけるのに1アクション。 呼吸を整えるに1アクション、トリガーを引くのに1アクションの 合計4アクションってところですかね。 ターゲットを見つけていないのなら探すのに1アクション追加で。」 「やはりか。こうなると狙撃のエースに話を聞きたいな。 ミッドのレベルがお粗末なのか、俺のほうが狂っているのか。」 「いったいなんすか?」 「構えた時点で照準は揃っているのにどうして狙いをつける必要がある?」 俺からしてみれば数え切れないほど銃を撃った末にいつの間にかできていたこと。 きっかけはなんだったか。 戦車を生身で叩き壊す手前ぐらいにどうにかしてやり始めたはず・・・・・・。 たしか旅の途中であまりの思いつきの馬鹿さ加減を笑いとばしながら、 それでも『誰か』が真剣に教えてくれていたような気がしたのだけど。 「つまり、もしかすると・・・・・・構えてトリガーを引く2アクションで?」 「必中のそれさえ回避する彼女もいたな・・・・・・。」 「はー。興味ついでに質問いいっすか?ターゲットが10機現れたら何アクションです?」 「3アクションだ。」 「ええと、360度全方位にバラバラにいるんすよ?」 「だから、視界に敵全部を捉えらえられる位置に移動するのに1アクション、 相手を認識した時点で照準は終わっているから、構えてるのに1アクション。 トリガーを引くのに1アクション。もちろん連射はするが・・・・・・。」 「冗談じゃ・・・・・・ないっすよね?」 「もちろん。」 どこかヴァイスの顔が引き攣っているような気がするが気のせいか。 いったいどこがおかしいのかわからない。 たしかに駆け出しのころはモンスターを見つければ照準をつける前に弾をばら撒いていた。 とにかく撃たないとこっちが殺されるのだから。 ハンターの原則『戦いに勝つためにはまず相手より先に攻撃すること』に従って。 でもいつごろからか弾代が酷く嵩んでいることに気がついて、 ばら撒く前にブルズ・アイ(予測射撃)をするようになって・・・・・・。 そうだ。 たしかジャックさんに蜂の巣にされたのがこの頃だった。 それから旅を続けていって、気がつけば相手を認識すれば何機いても問題なくなった。 構えて撃ちさえすれば照準が揃っている。 たとえそれが何機いようとも・・・・・・。 「全ては明日次第か。私としてははんたが負けるほうを願うべきなのだろうな。」 「俺としてはそんな危なっかしいことやってほしくないっすね。」 「俺はそれ以上に、特攻をされたとして、なのはがどうするかが気になるな。」 「どういうことだ?」 「いつもの練習を無視しているが、それでも努力して考えたことに間違いは無いだろう? 訓練方針も明確にしていないなのはなんだからそれを褒めるか怒るかが想像つかない。 俺の世界のルールに基づけば1つしかないが。」 「無茶をすべき場面の区別がついていないと怒ると思うが。」 「なのはさん、リハビリ大変だったみたいっすからね。それと、なんすか?ルールって。」 「『強ければ正しい』だ。俺がなのはだったら蜂の巣にして負け犬とでも言って終わりか。 それ以前に病院か死体置き場にティアナ達が行くことになるか・・・・・・。」 「まじで気が重いっすね。明日がこなけりゃいいのに・・・・・・。」 「悪いわね。クロスミラージュ。あんたのことも結構酷使しちゃって。」 「No Problem.」 「明日の模擬戦が終わったらシャーリーさんに頼んでフルメンテしてもらうから。」 「Thank you.」 布で拭きながらクロスミラージュにそう語りかけていた。 やれるだけのことはやった。 あとは明日、結果を出すばかり。 ドアが開く乾いた音が響く。 「ただいまー。ティア、はい。」 「ありがとう。」 スバルが買ってきてくれたスポーツドリンクの缶を開ける。 冷たい。 けれど、スバルが帰ってくると同時に部屋の雰囲気が重くなった。 スバルの不安のせいか、あたしの不安のせいか。 「明日の模擬戦いけるかな?」 そう切り出したのはスバルのほう。 やはり同じ不安を抱えていた。 「成功率はいいとこ6割ぐらいかな。」 「うん、それだけあればきっと大丈夫。」 誰にもお披露目していない戦い方、新たなフォーメーション、戦略、練習量。 そしてリミッターがつけられたなのはさん。 そこに若干の希望も含めて6割。 それがあたしの予想。 分の悪くない賭けだ。 スバルは根拠も無く大丈夫と言っている。 けれど、あたしには成功率以上に気がかりなことがあった。 「でも・・・・・・あんたは本当にいいの?」 「なにが?」 「あんたの憧れのなのはさんに、ある意味・・・・・・逆らうことになるから。」 そう言いながらも、無意識に込められた力のせいで手元の缶が歪む。 力は証明したい。 でも、スバルがどれだけなのはさんに憧れているのか知っている。 だからこそ、あたしのわがままに付き合わせてしまってもいいのだろうか。 「あたしは怒られるのも叱られるのも馴れているし、それに逆らっているって言っても 強くなるための努力だもん。ちゃんと結果だせばきっと分かってくれるよ。 なのはさん、優しいもん。ふふっ・・・・・・。」 缶を握りつぶしながら力説するスバル。 思い出し笑いまでしているし。 そんなスバルの様子を見ていると悩んでいるあたしが馬鹿みたいだ。 「さぁ、明日の早朝特訓が最後のおさらい。早く寝とこ?」 「うん。」 全ては明日。 結果を出してハッピーエンドで終わらせたい。 力を証明したいからだけじゃない。 あたしに付き合ってくれたスバルのためにも・・・・・・。 「さぁーて、じゃあ、午前中のまとめ。2on1で模擬戦やるよ。 まずはスターズからやろうか。バリアジャケット準備して!!」 「「はい!!」」 なんだかティアナ達はふっきれた感じ。 物凄く気合いも乗っているし、すごくいいかも。 はんた君が賭けを持ちかけたときに告げられた散々な問題も 今では改善しているみたい。 そういえば今日がはんた君が持ちかけた賭けの最終日だ。 ティアナ達を信じたわたしの勝ち。 はんた君のお給料なくなっちゃうけど、自分で言い出したんだもん。 遠慮なく貰ってしまおう。 ちょっと意地悪かな。 「エリオとキャロはあたしと見学だ。」 「「はい!!」」 ヴィータちゃんがエリオ達を連れて離れていく。 そういえば珍しくはんた君が姿を見せている。 いつもは姿も見せずにどこかでドラム缶押ししているのに・・・・・・。 やっぱり気になるのかな。 「あ、もう模擬戦始まっちゃってる?」 「フェイトさん。」 「私も手伝おうと思ってたんだけど・・・・・・。」 「今はスターズの番。」 「本当はスターズの模擬戦も私が引き受けようと思ったんだけどね。」 「ああ。なのはもここんところ訓練密度濃いーからな。少し休ませねぇと。」 そう言って上空を飛んでいるなのはにあたしの視線が向いた。 アクセルシューターを展開しているなのは。 無理していないのだろうか。 本当に大丈夫なのか? いざとなったらアイゼンでぶっ叩いてでもベッドに送ってやらねぇと・・・・・・。 「なのは、部屋に戻ってからもずっとモニターに向かいっぱなしなんだよ。」 訓練メニュー作ったり、ビデオでみんなの陣形チェックしたり・・・・・・。」 「なのはさん、訓練中もいつも僕達のこと見ててくれるんですよね。」 「本当にずっと・・・・・・。」 「それに気がついていない2人はなにをするかな。」 「はんた君・・・・・・。」 「アルファの分析を信じるのなら俺の勝ちが90%だ。」 「なんの話です?はんたさん。」 「ティアナがなのはと馬鹿をやらないって約束をしたんだが、俺は馬鹿をやるほうに 今月の給料全額かけたのさ。今日が賭けの最終日。」 「てめぇ!!ティアナ達になんか吹き込んだりしてねぇだろうな!!」 「不安ならシグナムに聞け。フェアじゃない賭けをするほど屑でもない。 さて、始まるみたいだな。」 「クロスシフトだな。」 この際、賭けなんかどうだっていい。 なのはの信頼を裏切るような真似だけはしないでくれよ、ティアナ、スバル。 多少の無茶はしてくれたっていい。 ただ、冗談抜きにはんたの予想だけは当たるなよとあたしは思った。 「やるわよ!!スバル!!」 「うん!!」 2人でいい感じに声を掛け合っている。 今まで以上に複雑にウイングロードを展開させたスバル。 そして足元では魔力スフィアを11個形成したティアナ。 クロスシフトか。 ティアナ達が取れる方法とすればクロスファイアシュートでわたしを追い立てて、 それからスバルが接近戦を挑んでくるけどそれはティアナの幻影魔法。 実際は後ろか上から本体のスバルが来る。 そこでシュートバレットの連射かシュートバレットFを併用して ティアナがスバルを援護というところかな。 ミスショットを思い出して援護できないなんてならないといいんだけど。 足を止められたところにあたるティアナの攻撃って結構響くんだよね。 でも、なんだろう。 はんた君に言われたせいか、胸のどこかがざわざわする。 大丈夫。 ティアナ達は絶対にやらない!! 「クロスファイアシュート!!」 掛け声と共にわたしの足元から飛んでくるティアナのクロスファイアシュート。 けれど、この違和感はなんだろう。 魔力弾の速度もいつもよりもずいぶん遅い。 もちろんコントロールはいいのだけど、これでは迎撃や回避が簡単に行えてしまう。 いったいどういう意図があって・・・・・・。 上昇して逃げる。 それだけでティアナの魔力弾は置いてけぼりだ。 1人時間差攻撃でもやるのかな? 視界の先に突如展開されるウイングロード。 その上をマッハキャリバーで加速して駆け抜けてくるスバル。 いつでも放てるように迎撃用のアクセルシューターを4基展開する。 けれど、驚かされた。 このスバル、フェイクじゃない。 本物!? 「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」 放たれたアクセルシューターをバリアで受け止めながら、 雄叫びをあげて突っ込んでくるスバル。 なんでそんな危険なことをしているの!? バリア越しだって痛みはあるし、バリアを抜かれでもしたら・・・・・・。 考えている暇は無い。 迎撃しないと・・・・・・。 「うりゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」 私のシールドの上でスバルのリボルバーナックルが激しく火花を散らした。 なんなの? 偶然? 胸のざわざわはどんどん酷くなっていく。 今は集中しよう。 シールド本来の役目は攻撃を受け流すこと。 身体を回転させてあげると、突然抵抗を失ったスバルがウイングロードから 悲鳴を上げてまっさかさまに落ちていく。 いけない。 フローターを使う準備をしないといけないか。 大丈夫みたいだ。 落下地点にウイングロードがある。 「ほらスバル!!だめだよ。そんな危ない軌道。」 後ろからようやく追いついてきたティアナのクロスファイアシュートを かわしながら注意する。 こんな速度じゃやっぱり簡単に避けられちゃう。 いくら追尾性能があるからとはいえ、さすがにこれは異常だ。 まるで避けてほしいみたい。 「すいません。でも、ちゃんと防ぎますから!!」 ウイングロードに着地できたスバルがわたしにそう叫ぶ。 大丈夫そうだ。 そこで気がつく。 ティアナはどこ? スバルが幻影魔法じゃなかったこともあって完全に意識を反らしていた。 いた!! ビルの上で詠唱しているあれは・・・・・・砲撃!? 砲撃魔法はただでさえ身体に大きな負担がかかるのに!! 本当にどうしちゃったの!? 「でぇぇりゃぁぁぁぁ!!!!!!」 リボルバーナックルに魔力カートリッジを装填したスバルが マッハキャリバーで加速してウイングロードを駆けてくる。 迎撃、アクセルシューター6発。 また、バリアで無理矢理抜いてくるなんてしない・・・・・・よね? 悪い意味で裏切られた。 想像以上だった。 ろくにバリアもシールドもフィールドさえも使わないで、私に殴りかかるスバル。 それがどういうことか分かってるの!? シールドの上で火花を散らせるスバルのリボルバーナックル。 不意に思い出されるはんた君の予想。 『スバルがなのはにシールドを展開させて足を固めておいてから、ウイングロードを ティアナが駆け上ってなのはの上か下あたりから切りかかる』ってまさか・・・・・・。 今更に気がついたはんた君の予想の意味。 それは砲撃魔法を使われる以上の危険行為。 なんで・・・・・・? どうして・・・・・・? いろんな思いで心がごちゃまぜになる。 砲撃魔法でいいから・・・・・・お願いだから砲撃を使って・・・・・・ティアナ!! スバルの突進をシールドで防ぎつつ、視線をビルの上のティアナに向けた。 嘘・・・・・・そんな・・・・・・!!幻影!? わたしの上に走るウイングロードを駆ける足音が響く。 そんな・・・・・・ティアナ・・・・・・約束・・・・・・したのに。 「でぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」 「レイジングハート、モードリリース。」 「Allright」 なんだろう、この思い・・・・・・。 悲しすぎて、辛すぎて、怒り出したくて、泣き出したくて・・・・・・。 あまりにもそれが大きすぎて、全部を通り越しちゃったみたいな・・・・・・。 ティアナの雄叫びを聞きながら、わたしは静かにレイジングハートに指示をだしていた。 「おかしいな・・・・・・。2人とも・・・・・・どうしちゃったのかな。」 わたしの教え方がなにか悪かった? なにか言いたいことがあって我慢していた? わたしの指導なんて受ける気さえなかった? 言いたいことはたくさんあるのに、言葉にならない。 限度を通り越しちゃった感情は風がない湖みたいに静かで・・・・・・。 「がんばってるのは分かるけど、模擬戦は喧嘩じゃないんだよ。練習のときだけ 言うこと聞いてる振りで、本番でこんな危険な無茶するなら練習の意味ないじゃない。 ちゃんとさ。練習どおりやろうよ。」 淡々と言葉を紡ぐ。 ティアナの魔力刃を受け止めている右手から血が流れ出している。 でも、痛いなんて感じない。 限度を通り越しちゃった感情のせいだろうか。 動揺したみたいなティアナの顔や怯えるみたいなスバルの顔も気にできない。 ただ、感じるのは血が流れてるなっていうただそれだけ・・・・・・。 「ねぇ?」 「あ、あの・・・・・・。」 「わたしの言ってること、わたしの訓練、そんなに間違ってる?」 わたしの問いに合わせて、クロスミラージュから伸びていた魔力刃が消える。 ティアナはウイングロードまで飛びのくと、クロスミラージュの銃口を こちらに向けていた。 「あたしは・・・・・・もう、誰も傷つけたくないから!!無くしたくないから!! だから・・・・・・強くなりたいんです!!」 泣きながらそう叫ぶティアナ。 砲撃魔法の魔方陣が展開されている。 スバルがこんなに近くにいることさえ気にできないなんて・・・・・・。 いつものわたしだったらスバルを連れて避けるなり、 バリアで防ぐなり、シールドで受け流すなりしたのかもしれない。 けれど、今、わたしの前にいるのは感情のままにわめき散らしているだけの子供。 そう思うことにした。 魔力スフィアを右腕の指先に6個展開する。 「少し・・・・・・頭冷やそうか。」 「ぇぇぇぇぇぇぇぃ!!!!ファントムブレイ・・・・・・。」 「クロスファイヤシュート。」 わたしはもっと撃つのを躊躇すると思ったのに・・・・・・。 やってみればあまりにも魔法の宣言は軽かった。 誘導性能なんかよりも速度を優先した魔力弾。 ティアナが今日使ったものと正反対の性質のクロスファイヤシュート。 ティアナに6発の魔力弾が突き刺さる。 「ティア!!バインド!?」 爆風にティアナが包まれて、叫び声をあげるスバルを動けないようバインドで拘束する。 視界に映るのは、力無く立っているのが精一杯のティアナ。 「じっとしてよく見てなさい。」 「なのはさん!!」 こんなに冷たい声をわたしは出せたんだ。 なにをするか気がついたのだろう。 悲鳴のようなスバルの声が耳に響く。 けれど、躊躇う事無くわたしは2発目のクロスファイアシュートを撃ち込んだ。 「ティアーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」 2発目のクロスファイアシュートの直撃を受けたティアナの姿にスバルが絶叫している。 力無く落ちていくティアナをフローターで受け止めて、ウイングロードの上に下ろす。 「ティア・・・・・・。」 「模擬戦はここまで。今日は2人とも撃墜されて終了。」 淡々と告げたわたしの言葉にスバルが目に涙を浮かべて睨み付けてくる。 でも、その目を見てもなにも感じない。 ただ、1つの言葉を思い出していた。 はんた君が告げた残酷で苛酷な世界の普遍のルール。 強いものが正しい。 わたしがやった行動がはんた君の言葉にあまりにもぴったりすぎて・・・・・・。 『信じるなんて言ったのに』とどこかではんた君がそう嘲笑っているかのようで・・・・・。 はんた君が正しいって頭のどこかが認めてしまいそうで・・・・・・。 それがあまりにも悔しくて、辛くて、吐き気さえして・・・・・・。 ただ、わたしは・・・・・・泣き出さないようにするのが精一杯だった。 前へ 目次へ 次へ
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ひよっこどものお遊戯の日々。 先の見えない隊長どもと言われたとおりにするばかりのひよっこども。 端から端まで失望して、機械のように日々を過ごす。 たった1人まともな女がいてくれてほっとしたのも束の間、 機動六課に出動がかかった。 場所はホテル・アグスタ。 任務内容は骨董美術品オークションの会場警備と人員警護。 そういえば防衛戦はやったことがなかった。 いつだって殲滅戦と消耗戦だけの毎日だったのだから。 魔法少女リリカルなのはStrikerS―砂塵の鎖―始めるか。 第7話 ホテル・アグスタ防衛、泣き叫ぶ心 ――ミッドチルダ・首都南東地区―― ローター音を響かせる1機のヘリの中に機動六課メンバーが揃っていた。 はやてが現在まで分かった情報と今日の任務についてのブリーフィングをしている。 しかし、ローターが回っているのにインカムもなしに会話できるなんてすごいものだ。 これも魔法っていうやつか。 さて、はやての説明を端折って簡単にまとめれば、ガジェットドローンとかいう あの木偶人形とレリック収集をやっている主な人物が 違法研究で広域指名手配されているジェイル・スカリエッティ。 これから行うのはホテル・アグスタとかいう場所で会場警備と人員警護。 しかし、取引『許可』の出ているロストロギアときたか。 『誰が』なにを考えて許可を出したのか是非とも聞いてみたいものだ。 なんにせよたいしたことないか。 それに情報の共有は当然だからはやてのこれはこれでいい。 ひよっこ連れでもフルメンバーで来ているのだから問題らしい問題もないだろう。 これで隊長達が抜けるとかほざいたら大笑いしそうだが・・・・・・。 さて、疑問に思っていたことを口にするとしよう。 「あー、八神隊長殿。質問いいか?」 「なんや、はんた。」 「ジェイル・スカリエッティが賞金首ということは分かった。 違法な研究をしている人間だということも。それで『どのあたり』が違法な研究なんだ?」 俺がそう言った途端、全員の視線が集中する。 正気で言っているのか?と言わんばかりの表情と共に・・・・・・。 まったくどうしたんだ、揃いも揃って・・・・・・。 どこが悪事と呼ばれる部分なのかわからないから聞いただけなのに。 たかがクローニングと武器の材料集めと人体改造とその他適当ぐらいだろう? しかし、本当にいったいどこが違法なんだ? どこか戸惑った様子でフェイトが口を開く。 「あ、あのね。はんた君。任務が終わったらいくらでも答えてあげるから・・・・・・。」 「別に構わない。要はそのスカリエッティが賞金首だということだろ? それで、今日の任務はどの程度まで許されるんだ?」 「どの程度?」 「片っ端からSearch and DestroyのDead No Aliveでいいのか?ってことだよ。」 「人は殺したらあかんよ。」 無意識に視線がザフィーラのほうに向いた。 人・・・・・・獣型・・・・・・。 「前言撤回や。機械以外殺したらあかん。絶対に非殺傷設定を解除したら駄目やからな。」 「・・・・・・了解。」 これで周辺全部が平地や荒野じゃなくて森なんて言ったら、 魔法が発達したこの世界じゃ相手に攻めてくださいと言わんばかりの環境だな。 ああ、もういいや。 『指示がなかったから』で全部押し通すとしよう。 「この手の大型オークションだと密輸取引の隠れ蓑になったりするし、 いろいろ油断は禁物だよ。」 「現場のほうは昨夜からシグナム副隊長とヴィータ副隊長他、数名の隊員が張ってくれている。」 フェイト隊長とはやて部隊長の言葉を聞きながら傍らに置かれたトランクが気になった。 いったいなんだろう? さっきもはんたさん、とってもびっくりする質問していたし。 出動するんだから、なにか起こるって思って準備しておかないと。 それに、はんたさんを今度は怒らせないようにしないと。 この前は本当に怖かったな。 ヴォルテールとどっちが怖いかな。 ううん。 今はそんなことよりも疑問を投げかけるほうが重要なんだ。 はんたさんは気軽に質問できる状態を作るためにあんな質問をしてくれたんだろう。 きっとそうだ。 「あたし達は建物の中の警備に回るから、前線は副隊長達の指示に従ってね。」 「「「はい!!」」」 「あの、シャマル先生。さっきから気になっていたんですけど、その箱って・・・・・・。」 なのはさんの言葉に皆が返事をする中、私は疑問を口にした。 その言葉にシャマル先生が驚いたのと同時に視界の端ではんたさんが笑った(?)のかな。 「うん?ああ、これ?隊長達のお仕事着。」 「まさかドレスが入っているとでも言いだすのか?それとデリンジャー・・・・・・は まずいんだったな。装身具で通せるナックルダスターあたりが入っているんだろう?」 シャマル先生の言葉に、はんたさんが横から口を挟んだ。 でりんじゃー?なっくるだすたー? 装身具って言ったから指輪みたいなものかな? そんなはんたさんの言葉になのはさん達とシャマル先生がひきつっている。 ええと・・・・・・つまり・・・・・・本当にドレス? 「当然布切れのドレスじゃないんだろう?とりあえず鋼鉄製のガーターベルトと 0.01mm径の鋼糸で編んだストッキングは基本として、鋼鉄製のコルセットか ブラジャーも当然つけるよな。あとは・・・・・・メイド服もありだな、 なんせ戦車砲だってはじきとばすし。」 「ちょ、ちょ、ちょ、はんた。どこにそんな代物売ってるんや?」 「・・・・・・ないのか?」 「「「「「「「「そんなものどこにあるんだ!!!!!」」」」」」」」 皆が一斉にはんたさんに突っ込んだ。 けれど、気のせいかな? 皆は冗談だと思ったみたいだけど。 はんたさん、少しも冗談を言っているように見えないんだけど・・・・・・。 「でも、今日は八神部隊長の守護騎士団全員集合か。この前以来だね。」 「そうねー。あんたは結構詳しいわよね?八神部隊長とか副隊長達のこと。この前?」 「(あー、ティアはバトー博士のときのことを忘れてるんだっけ:6.5話参照) うん。父さんやギン姉から聞いたことくらいだけど、八神部隊長の使っているデバイスが 魔道書型で、それの名前が夜天の書っていうこと、副隊長達とシャマル先生、ザフィーラが八神部隊長個人が所持している特別戦力だってこと。で、それにリイン曹長を合わせて6人揃えば無敵の戦力ってこと。まぁ、八神部隊長達の出自や能力の詳細は 特秘事項だからあたしも詳しくは知らないけど・・・・・・。」 「レアスキル持ちの人はみんなそうよね。」 「ティア、なにか気になるの?」 「別に・・・・・・。」 「そう、それじゃまた後でね。」 六課の戦力は無敵を通り越して明らかに異常。 八神部隊長がどんな裏技を使ったのか知らないけど、隊長格全員がオーバーSランク。 副隊長達でもAAランク。 他の隊員達だって前線から管制官まで未来のエリート達ばっかり。 あの歳でBランクまで取っているエリオとレアで強力な龍召還師であるキャロ。 2人ともフェイトさんの秘蔵っ子。 危なっかしくはあっても潜在能力と可能性の塊で、 優しい家族のバックアップもあるスバル。 性格に難がある狂人でも飛びぬけた戦闘スキルを持ったはんた。 やっぱりうちの部隊で凡人はあたしだけ。 どうしてこんなエリート部隊にあたしがいるのか。 だけど、そんなの関係ない。 あたしは立ち止まるわけにはいかないんだ。 眼下に広がる森を前にバリアジャケットを見にまとった俺は呟いていた。 「ここまで思ったとおりだと呆れを通り越すな。」 「マスター。装備はどうしますか?」 「このまま空より爆裂弾で片っ端から吹き飛ばすか? それとも使用する弾種として通常弾、あるいは強化炸薬弾がいいか?」 「近接戦闘員の中でシグナムだけが88mm砲弾種爆裂の効果を回避可能です。 可能性の問題として通常弾をお勧めします。」 「それ以上の口径および別の弾種を使用した場合は?」 「大口径になるほど未熟な人間の損傷確率が上昇します。 弾種もナパームおよびエレキを使用した場合、戦闘効率の向上が望めますが、 高確率での森林火災誘発および未熟な人間が巻き込まれた際の、 飛躍的な損傷確率上昇が予想されます。」 「誰とは言わない辺り奥ゆかしいな。他の装備で候補は?」 「近接装備の場合、敵が広域にわたって展開されると樹木に邪魔され殲滅率の低下が 考えられます。同様に7.7mm機銃を初めとする副砲全般においてもやはり樹木が 邪魔となり、殲滅率の低下が予測されます。 候補としてタップダンサーを始めとした広域殲滅用の装備をお勧めします。 ただし、弾幕密度の関係上撃ちもらしが考えられます。」 「3連装にすれば?」 「マスター。申し訳ありませんが、3連装にする機能は現在搭載されておりません。」 「今度、バトー博士に取り付けてもらうとしようか。」 「了解しました。マスター。」 視界にはアルファの収集した情報が片っ端から奔り続けている。 さて、どうしたものか。 この間のように予想耐久力を示すか。 いや、やめておこう。 ひよっこどもにはいい勉強になるし、なんせ相手は賞金首だ。 それなりに名前が売れているヤツだから前と同じ敵を出すような馬鹿ではないだろう。 うん? レーダーレンジに敵影確認。 「アルファ、通信を管制およびシャマル、シグナム、ヴィータに繋げろ。」 「了解しました。マスター。」 通信が繋がる。 顔を映さないで音声のみにしているあたり、実に戦闘用だ。 「どうしたの?」 「そっちのレーダーレンジに引っかかっていないのか。」 「なにが?」 「敵以外になにがいる。」 「っ!!クラールヴィントのセンサーに反応。」 「来た来た。来ましたよ。ガジェットドローン陸戦1型機影30、35、 陸戦3型2,3,4。」 通信担当のシャーリーから『なにが?』ときたよ。 ひよっこ部隊なのか。 この機動六課って・・・・・・。 シャマルの声に慌てて管制官(名前はなんと言ったか)が慌てて読み上げているようだ。 なんだかいつも後手にまわるのは気のせいか? それともこれが普通なのか? 「だそうだ。シグナム、俺は射程に入った敵を端から吹き飛ばすよ。 巻き込まないように気をつけはするが・・・・・・。」 「はっ、てめぇの出番なんかねぇよ。」 「ヴィータ!!はんた、お前の考えなら相手はどう攻める?」 「とにかく物量押しでシグナム達が悲鳴上げるまで続ける。あるいはシグナム達を 前線に引きずり出してその後ろで伏・・・・・・召還という便利なのがあったな、を使って ひよっこどもを奇襲、ホテルへの強襲もあり。 会場にいる人間かオークションの出品物に重要なものがあるのなら、 さらにそれらも囮にしたうえで高機動機群あるいは高性能機による強襲か強奪か。」 「エリオ、キャロ、お前達は上に上がれ。ティアナの指示でホテル前に 防衛ラインを設置する。」 「「はいっ!!」」 「ザフィーラは私と迎撃に出るぞ。」 「心得た。」 「ザフィーラって喋れたの?」 「びっくり・・・・・・。」 「バトー博士には内緒にしてくれ。それより守りの要はお前達だ。 空にハンターもいるが、しっかり頼むぞ。」 「う、うん。」 「がんばる。」 「前線各員。状況は広域防御戦です。ロングアーチ1の総合管制と合わせて、 私シャマルが現場指揮を行います。」 「シャマル、指揮できたのか?片っ端から吹き飛ばすような殺し合いより気がついたら 首を撥ね飛ばされていたとか毒殺なんかを好む人間だとばかり思っていたが。」 「はんた。前線に私とヴィータが出るから広域の情報把握と指揮に手間取るのと、 シャマルのデバイスである『クラールヴィント』が現場指揮向きの能力なんだ。」 「ハンター1は先ほど提案したとおり火力支援をお願いします。また、奇襲時はもとより、強襲があった場合、単機での行動を認めます。最後にあなたのデバイスと情報を 直結させると管制室とクラールヴィントが悲鳴を上げるので、逐一報告願います。」 「ハンター1。了解。しかし、シャマル。どこぞの隊長達より話が分かっていい女だな。 それと、シグナム達が前線に出る前に敵を削っておくか?」 「・・・・・・?削れるのなら負担を減らすためにもお願いします。」 「了解した。アルファ、タップダンサー、1トリガー、88mm砲弾種通常。」 「了解しました。マスター。」 通信が終わった。 いつでも連絡ができるように回線は繋げっぱなしだが。 さて、変形を指示したアルファが右腕で金属音が鳴り響かせ続けると、 やがて特異な形状を取った。 形としては・・・・・・ボーリングの玉を思い浮かべてくれればいいだろう。 冗談のように巨大で、穴の部分にレンズがついているが・・・・・・。 さて、これはどのような武器なのか。 なぜタップダンサーと呼ばれるか。 それはこの武器が引き起こす光景を見れば一目で分かる。 「ファイエル・・・・・・。」 巨大な玉が高速で回転を始め、レンズ部分から上空高くに向かって 魔力スフィア(塊と言ったほうがいいくらいに巨大だが)が打ち上げられて上昇を続ける。 永遠に上昇し続けるわけではないそれは、やがてその上昇を終える。 上昇を終えたその魔力スフィアは分解を始め、当然のように降下を始める。 ただ、魔力スフィアとしてではなく、広範囲にわたって降り注ぐ魔力弾の雨となって・・・・・・。 あの荒野において1,2を争う安価な車載のS-E(特殊装備)と呼ばれる広域殲滅兵器。 絶え間なく激しく続く軽快な着弾音がタップダンスに聞こえる。 その様からついた名前がタップダンサー。 手に入れた頃は洒落た名前だと思い、そのネーミングセンスに感服した。 もっとも、それ以上に引き起こされる壮絶な光景に感動(いまだにこの表現が正しいか 自信が無い)して、毎日馬鹿みたいにぽんぽん撃っていた。 本家はレーザーが降り注ぐが、こっちは魔力弾で再現されている。 本当に俺が知っている限り、再現可能なのだな。 これの運用の欠点は上昇をしてから降り注ぐまでの時間。 その過程で産まれる数秒を長いと思うか短いと思うかは場面次第だ。 もっとも3連装で降り注がせられればそんな時間なんて関係ないほどの 弾幕を広域にわたって展開できる。 やはりバトー博士に3連装の展開が可能になるよう改造を頼むとしよう。 「管制。こっちだと13機撃墜を確認したが?しかし森が邪魔だな。 ナパームでも撃ち込んでしまいたいな。本当に・・・・・・。」 「ハンター1。絶対にだめですからね!!!!!!」 「多芸だな。はんた。」 シャマルが警告してきて、シグナムがなにか(たぶん褒め言葉)を言った。 今思っていることはたった1つ。 無意識に呟くなんてミスをするんじゃなかった。 『指示が無かった』で済ませて森を全部焼き払うつもりだったのに。 これじゃナパーム弾を撃てないじゃないか。 それでもタップダンサーで多少マシになったからいいか。 しかし、欲求不満なのだろうか、俺は・・・・・・。 そんな思考を奔らせながらも、右腕は既に敵のほうへ構えられていて、 変形はタップダンサーからの魔力弾が降り注いでいる間に完了していて、 後は88mm砲のトリガーを引くばかりだった。 「スターズ3、了解。」 「ライトニングF、了解」 「スターズ4、了解。」 そう叫んで駆け抜けながら、クロスミラージュからアンカーガンを射出して ホテルの上に上る。 「シャマル先生。あたしも状況を見たいんです。先生のモニターもらえませんか?」 「了解。クロスミラージュに直結するわ。クラールヴィントお願いね。」 「Ja.」 そう言うと、シャマル先生は快く了解してくれた。 ただ、気がつけば唇を噛んでいるあたしがいる。 血が滲むほどに強く・・・・・・。 この目の前の降り注ぐ魔力弾の雨を前にして。 なんなのだ。 このあまりにもでたらめな能力は・・・・・・。 威力が劣りこそすれ、多くの広域魔法を笑い飛ばすような展開速度と範囲。 それを持っているのがなんであんな狂人・・・・・・。 ギリリと奥歯が鳴った。 「シグナム、ヴィータちゃん。」 「おう。スターズ2とライトニング2、出るぞ!!」 「デバイスロック解除。グラーフアイゼン、レヴァンテイン、レベル2起動承認。」 「グラーフアイゼン!!」 「レヴァンテイン!!」 「「Anfang.」」 シャマルからの呼びかけに答え、私はレヴァンテインを起動。 騎士甲冑を展開する。 ヴィータも展開が終わったようだ。 天井に開いた採光窓から私達は飛び出す。 「新人どもの防衛ラインまでは1機たりとも通さねぇ。速攻でぶっつぶす!!」 「お前も案外過保護だな。」 「黙れよ。」 「だが、お前よりも過保護がいるみたいだぞ。」 「なんだって?」 視線の先で文字通り森が吹き飛んでいく。 ガジェットドローンの残骸と共に・・・・・・。 素晴らしい性能の砲撃魔法だな。 詠唱時間、魔力弾の速度、範囲、射程のいずれも高いレベルだ。 特に詠唱時間が限りなく0に近いことが飛びぬけている。 おそらくあれでも手加減しているのだろう。 ひよっこどもの援護をする場合も兼ねて・・・・・・。 現に、はんたは少しも動こうとしていない。 しかし、敵も一定以上から近づくことがまったくできていない。 単独でこれほど見事な前線構築ができるとは驚くばかりだ。 「過保護で悪いな。巻き添えを考えて強化炸薬弾や爆裂弾が使えない。 ナパームとエレキはさっき禁止された。」 「聞き耳立てるなんて趣味悪ぃぞ!!」 「あまりに大声だから聞こえたんだ。」 「やっぱりてめぇは気に入らねぇ!!あたし達だけで十分だ!!」 「私が大型を潰す。お前は細かいのを叩いてくれ。はんたは・・・・・・臨機応変だ。」 「了解。臨機応変だな。巻き込まないようには注意するよ。」 「巻き込んだらまじで殺すからな!!」 会話している先から森が吹き飛んでいくことにヴィータは気がついているのだろうか。 案外、はんた1人でこいつら全部落とせたのかもしれないな。 魔力リミッターなんて物もかかっていないようだし・・・・・・。 むしろ私達を巻き込むことが枷になっているんじゃないだろうか。 まさかな。 役立たずなどと思われるより先に、さっさと片付けてしまうとしよう。 地上に降り立つと同時に、レヴァンテインから魔力カートリッジが排莢される。 「紫電一閃!!」 掛け声と共に、目の前の大型ガジェットドローンをその腕ごと切り裂いた。 「ここは通さん。せりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」 私は鋼の軛をガジェットドローンの群れに向けて展開する。 本来これは拘束用に分類される魔法。 しかし、使い方次第では攻撃にもなる。 大地から次々と突き出した拘束条が、ガジェットドローンを貫いていく。 両端が切り立った崖となっているのも防衛する私に味方してくれる。 やつらがここを通るには私を撃破するしかないからだ。 同時に私はどこからでも鋼の軛が展開できる!! 「ぬぅおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」 左右の崖からも鋼の軛を展開し、ガジェットドローンを穴だらけにすると 耐え切れなくなったガジェットドローンは火を噴きだし、爆音を轟かせた。 「副隊長達とザフィーラ、それにはんたさん、すごーい。」 「これで能力リミッター付き・・・・・・。」 シャマルさんに直結してもらった情報をウィンドウに表示すると、 各地で巻き起こる爆発の光景が映っていた。 スバルは単純に驚いている。 けれど、あたしは・・・・・・。 無意識に拳を握り締めていた。 「ごきげんよう。騎士ゼスト、ルーテシア。」 「ごきげんよう。」 「なんのようだ?」 「冷たいねぇ。近くで状況を見ているんだろう?あのホテルにレリックはなさそうだ。 だが、実験材料として興味深い骨董が1つある。少し協力してくれないかな? 君達なら実に造作もないことなんだが・・・・・・。」 ああ、なんて白々しい言い回しだろう。 どうしてルーテシア達があそこにいるか当然知っている。 その上で、私からの頼みを断れないと知っていてこう言っているのだから。 おっといけない。 つりあがりそうな唇を自制する。 「断る。レリックが絡まぬ限り互いに不可侵と決めたはずだ。」 「ルーテシアはどうだい?頼まれてはくれないかな?」 ゼストが断るのは分かりきっていたことだ。 そしてルーテシアにこう言ったなら、どんな返事が帰ってくるかも分かっている。 「いいよ。」 「優しいなぁ。ありがとう。今度是非お茶とお菓子でもおごらせてくれ。 君のデバイス『アスクレピオス』に私が欲しいもののデータを送ったよ。」 「うん。じゃぁ、ごきげんよう、ドクター。」 「ああ、ごきげんよう。吉報を待っているよ。」 白々しくそう言って通信を切断した。 ああ、なんて健気なルーテシア。 人質に取られた母親のためにこんなに素直に言うことを聞いてくれるなんて。 笑いが止まらないじゃないか。 「あっ!!」 「キャロ、どうしたの?」 「近くで誰かが召還を使っている。」 「クラールヴィントのセンサーにも反応。だけどこの魔力反応って・・・・・・。」 「お、大きい・・・・・・。」 「驚いている暇があったらさっさと指示をくれないか。 殺していいならさっきからずっと動かない2機がいるんだがね。 キャロ、召還で呼び出せるものにはなにがいる?」 「虫でもドラゴンでも機械でもなんでも呼べます!!」 「詠唱中断させれば?」 「召還は止まります。」 「そういうことだ。シャマル、射程内だが殺傷許可は?」 「・・・・・・だめです!!」 「それなら召還されたものを片っ端から潰すしかないじゃないか。なんて無様!! アルファ、88mm弾種爆裂。」 「くっ・・・・・・。」 はんたさんの言葉にスラスラ答えられた私に驚いた。 シャマル先生は悔しそうな声をあげる。 しかし、本当にはんたさんは躊躇いがない。 怖いほどに・・・・・・。 抜き身の刃物の刃を素手で握らされているような感じを私は覚えた。 「急に動きが良くなった?」 「自動機械の動きじゃないな。」 「有人操作に切り替わった?」 「それがさっきの召喚師の魔法?」 「シグナム、上昇してくれて助かったよ。ファイエル!!」 ウィンドウ越しの私の視界の中で森が消し飛んだ。 先ほどまでは木が数本吹き飛ぶ程度だったが、 今度は地形ごとごっそり抉り取られたみたいに・・・・・・。 多少は目をつぶるしかないだろう。 使い放題の広範囲攻撃を持っているのがはんた君しかいないのだから・・・・・・。 「多少動きが良くなったところで範囲攻撃されればどうしようもないみたいだな。 それと、虫か?馬鹿みたいな数が表れているのにそっちだと感知できないのか?」 「表示されていません!!」 「アルファ、位置情報を管制に転送!!」 「了解しました。マスター。」 「嘘っ!?」 レーダーを埋め尽くすような数の機影に私は思わず息を飲んだ。 「ヴィータ、ラインまで下がれ。」 「はんたのやつが言ったとおりになりそうだ。新人達が襲われてもはんたが どうにかするだろう。だが、やつの戦い方は殲滅戦のそれだ。防衛には根本的に向かない。」 「わ、分かった。」 「ザフィーラ。シグナムと合流して。それと、虫?みたいな敵影を見かけたら連絡を。」 「心得た。」 「やはり素晴らしいな・・・・・・彼女の能力は・・・・・・。」 「極小の召還獣による無機物操作シュテーレ・ゲネゲン。」 「それも彼女の能力の一端に過ぎないがね。だが、彼女も運が悪かった。 この間の砲戦魔導師、どうして管理局にいるんだ?どう考えてもこちら側の人間だろう。」 「あの男がなにか?」 「躊躇いもせずに森も人間も消す人間だよ、あの顔は。彼は・・・・・・。」 ジェイル・スカリエッティは爆音のたびに残骸へ変わっていく自分の作品を眺めながら、 淡々と吹き飛ばしていく男の姿に笑みを隠しきれなかった。 間違いない。 あれは私の同類だ。 なんて素晴らしい案件だろう。 プロジェクトFの残滓以外にこんなものまで手に入れる機会を得られるなんて。 「遠隔召還来ます!!」 口にしながらはっとした。 どうしてはっとしたのか分からないけれどおかげで生きている。 「スバルさんシールドを展開全力で!!エリオ君スバルさんの後ろで伏せて!! ケリュケイオン、スバルさんに防御ブースト!!早く!!!!」 「いい判断だ。キャロ。」 私が飛び込むようにスバルさんの後ろに転がり込むのと、 エリオ君が伏せるのと、 スバルさんがシールドを展開するのと、 ケリュケイオンの防御ブーストが発動するのと、 はんたさんの声が響いたのはほとんど同時だった。 背後で物凄い爆音がたくさん響きわたる。 もうもうと巻き上がる土煙。 それが晴れたとき、そこにあったのはガジェットドローンの残骸と、 出来立てのクレーター。 「ちょ、それってありなの!?」 「動けないうちに叩くのは基本だろうに。キャロ、いい判断だ。」 「さっきのあれって召還魔方陣?」 「そうです。優れた召還師は転送魔法のエキスパートでもあるんです。 ええと・・・・・・さっきも言いましたよね?」 「『なんでも召還できる』ってたしかに言ったな。おかげで仕事が楽だった。」 「あたし達が巻き添えになることは?」 「揃いも揃って後手後手に回るから、失点を取り戻そうとしてるんだろうが!!! 纏まってくれてるんだから召還直後の硬直に範囲攻撃をぶち込むに決まっているだろ!! 爆風で土砂が飛んでくるくらい考えろ!!!ナパーム弾使いたいなぁ!!! 今度は出品物の搬入口か。シャマル、そっちの迎撃に行ってくる。 アルファ、9mmチェインガン。」 褒められたことよりも、別の思いのほうが強かった。 これは・・・・・・恐れ? もしもスバルさんがシールドを張るのを躊躇したら、 もしも私が転がり込むのが遅れていたら、 私が気がつかなかったら・・・・・・。 考えたくない想像にぞっとする。 そして、はんたさんは全てを『だから?』とでも言って済ませてしまいそう。 今までいろんな人を見てきたけれど、命をここまで軽くみることができる人がいると 私は初めて知った。 「はんたさんが離れます。敵、増援来ます!!」 「なんでもいいわ。迎撃いくわよ。」 「「「おうっ!!!」」」 キャロの言葉を聞き流し、クロスミラージュに魔力カートリッジを装填して フォワード3人に告げると返事が返ってくる。 今までと同じだ。 証明すればいい。 自分の能力と勇気を証明して・・・・・・。 あたしはいつだってやってきた。 新たに現れたガジェットドローンにシュートバレットを3連射。 だが、たやすくかわされてしまう。 悔しさに奥歯がぎりりと音を立てた。 視界の奥で、ガジェットドローンがミサイルを撃ってくる。 迎撃しないと・・・・・・。 「Ballet, F.」 熱源感知の弾が左のクロスミラージュに装填される。 あんなのろまなミサイルを撃ちもらすはずが無い!! ミサイル3基を迎撃に成功。 「ティアさん!!」 キャロの声に振り向くと、いつの間に回りこんだのかガジェットドローンが2機。 撃ち放たれるレーザーを跳んで回避。 着地と同時に応射。 あたしのシュートバレットは狙い違わずに直撃。 でもAMFによってかき消されてしまう。 なんで!! 苛立ちばかりが募る。 「防衛ラインもう少し持ちこたえていてね。ヴィータ副隊長がすぐに戻ってくるから。 はんた君に単独行動を許可するんじゃなかった。」 「守ってばっかじゃ行き詰ります。ちゃんと全機撃墜します。」 シャマル先生の言葉にあたしはそう言っていた。 どうしてヴィータ副隊長達やはんたなんかを頼りにするんだ!! なんのためにあたし達がいるんだ。 あたしは証明しないといけないんだ。 こんなところで足をとめちゃいけないんだ。 あたしがやらなくちゃいけないんだ。 「ティアナ、大丈夫?無茶しないで・・・・・・。」 「大丈夫です。毎日朝晩練習してきてるんですから。」 なんのために訓練してきたかわからなくなるじゃないか。 証明しなきゃ、証明しなきゃ、証明しなきゃ・・・・・・。 「エリオ、センターに下がって。あたしとスバルのツートップで行く。」 「は、はい。」 「スバル!!クロスシフトA、いくわよ!!」 「おう!!」 スバルがウイングロードで先行してガジェットドローンの注意を引いてくれる。 今のうちにあたしは魔力を充填していく。 証明するんだ。 特別な才能やすごい魔力が無くたって、一流の隊長達のいる部隊だって、 どんな危険な戦いだって・・・・・・。 「あたしは・・・・・・ランスターの弾丸は敵を撃ちぬけるんだって・・・・・・。」 あたしの周囲の魔力スフィアが形成されていく。 足りない、まだ足りない、ぜんぜん足りない!!! 必死で制御して作り出した魔力スフィアは16個。 「ティアナ、4発ロードなんて無茶だよ!!それじゃティアナもクロスミラージュも!!」 「撃てます!!」 「Yes.」 シャマルさんがなにか言っているけど気にするもんか。 証明しないといけないんだ。 クロスミラージュもできると言ってくれている。 絶対にやってみせるんだ!! 「クロスファイアシュート!!!」 あたしが声を上げると同時に16発の誘導弾が一斉にガジェットドローンに襲いかかる。 あたしの攻撃に気がついたみたいだが、もう遅い。 次々にあたしの誘導弾にガジェットドローンが撃ちぬかれていく。 さらに追撃のシュートバレット。 あたしは叫び声をあげながらトリガーを引き続けた。 だけど、いったいなにが悪かったのだろう。 神様、あたしがなにかしましたか? ガジェットドローンを狙ったはずのたったの1発の魔力弾。 それがかわされた先にスバルがいるなんて・・・・・・。 かわされた弾丸の軌道は間違いなくスバルへの直撃コースで、 気がついたスバルは凍りついた表情をしていて・・・・・・。 あたしの頭の中は真っ白になった。 「ヴィータ副隊長!!」 スバルに直撃するはずだった魔力弾がヴィータ副隊長によって地面に叩き落された。 スバルが驚きと安堵の混ざったような声を上げる。 息を切らしているヴィータ副隊長は本当に急いで前線から戻ってきてくれたんだろう。 だけど、あたしはそんなことも気にすることはできず呆然とするばかり。 「ティアナ!!この馬鹿!!無茶やった上に味方撃ってどうすんだ!!」 「あの・・・・・・ヴィータ副隊長、今のもその・・・・・・コンビネーションのうちで・・・・・・。」 「ふざけろタコ!!直撃コースだよ、今のは!!」 「違うんです!!今のはあたしがいけないんです・・・・・・。」 「うるせぇ馬鹿ども!!もういい。後はあたしがやる。2人まとめてすっこんでろ!!」 あたしはただ・・・・・・証明したかった・・・・・だけなのに。 「荷物を確保してきて。ガリュー、気をつけていってらっしゃい。」 マスターの命令。 命令に従ってワタシは荷物を確保するべく、車両の荷台を壊す。 「誰かいるんですかー?ここは危険ですよー?」 ニンゲンがそう声をかけながら明かりを荷台に向けてくる。 既にワタシはそこにいないのに・・・・・・。 「ああ!!なんだ、これ・・・・・・。」 思ったよりマヌケなものなのだな。 ニンゲンとは・・・・・・。 警備していると言っておいてこんなに簡単に盗まれるのだから。 「ガリュー。ミッションクリアー。いい子だよ。 じゃ、そのままドクターのところまで届けてあげて。・・・・・・ガリュー?」 マスターの声が聞こえたが気にしていられない。 震えが止まらない。 今、ワタシの目の前にいるコレはなんなのだ? マスターの言うドクターがまともに見えるほどに生命体として狂っているコレは? 本能と忠誠心がせめぎあう。 本能は叫び続けている。 任務なんて捨てて全力で逃げ出せと・・・・・・。 だが、マスターへの忠誠心が叫ぶ。 任務を果たせと・・・・・・。 「残念、機械じゃないのか。」 目の前のバケモノがそう言った次の瞬間、 ワタシは全身に襲い掛かる絶え間ない衝撃にさらされていた。 「おし、全機撃墜。」 ガジェットドローンの残骸の中であたしは宣言した。 「こっちもだ。召還師は追いきれなかったがな。」 「だが、いると分かれば対策も練れる。」 シグナムとザフィーラの言葉にも一理ある。 だが、はんたのやつが『殺せないから攻撃できない』って言ったのが、 今でも妙に気に掛かっていた。 管理局にいる以上は捕まえないといけない。 けれど、捕まえられなかったらさらに被害が増える。 ならば・・・・・・。 いや、こんな馬鹿な考えあるはずがねぇよな。 『たら』とか『れば』で話はしちゃいけねぇって言うもんな。 シグナム達に同意の言葉を返しながら、顔ぶれを確認する。 あれ? 「ん?ティアナは?」 「はい。裏手の警備に・・・・・・。」 「スバルさんも一緒です。」 エリオとキャロがそう報告してくれる。 どうして裏手の警備? それ以上に、いったいティアナのやつどうしちまったんだ? なにをそんなに焦ってやがるんだ? そんなことを考えているときだった。 「起こるべくして起こった事故以外、なにかあったのか?」 はんたが歩いてくるのが視界に入る。 そういえばこいつもいたんだったな。 「起こるべくしてって・・・・・・いや、それよりお前いったいどこに行ってやがった。」 「シャマルから聞いていないのか?搬入口に侵入者ありでその迎撃だ。それとお土産だ。」 放り投げられたそれを反射的に受け取る。 手元におちてきたそれは血の滴る・・・・・・。 「なななな、なんだよ。こりゃぁ!?」 「侵入者の腹の肉。なにかを盗まれたよ。警備の人間を投げつけられたせいで 追撃しきれなかった。警備の人間を殺せば動作に無駄が減って侵入者もそのまま 殺せたんだが。殺せないのがこんなに不便だなんて想像以上に苦痛だったよ。」 「だって、お前、これ、どうみても・・・・・・。」 「『機械以外は殺すな』なんてどこかの誰かが言った。サディスト設定を絶対外すなとも。 『人と獣以外』と言ってくれれば爬虫類だったから遠慮なく殺せたのに・・・・・・。 おかげで死なない程度に素手で抉るしかなかったんだ。」 「あ、あの、はんたさん。警備の人って・・・・・・。」 「ああ、生きてるよ。投げつけられた人間をそのまま切り裂いてしまえば、 侵入者のほうの絶命させられて全部終わりだったのに・・・・・・。」 心の底から悔やんでいる言葉。 だが、悔やんでいるのはなにに対してか。 そしてキャロの問いかけで確信を得る。 価値観があたし達と正反対の人種だと今更気がついた。 本来の人間はなにか目的や理由があって戦いに望む。 守るために戦う人間、戦いたいから戦う人間、戦わざるをえないから戦う人間。 事情はいろいろだろうけどそれだけは変わらない。 だけどこいつはそうじゃない。 目的もそこに至る過程も理由も全て完結しちまってる。 管理局にいること事態がおかしい人間。 唾棄すべきありかたの人間。 こいつは裁断機と同じだ。 そこには区別なんて無くて、ただ送られてきたモノを切刻んで引き裂くだけの・・・・・・。 戻る 目次へ 次へ
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結局賭けは俺の勝ち。 ゲームはなにからなにまで予想通り。 金が増えたと歓喜に震えるはずなのに、賞金稼ぎの心は震えない。 おまけに最後の最後になのはが見せた振舞いは、 あまりにも慣れ親しんだルールそのままで、気分は絶頂のはずなのに、 苛立ちばかりが増えていく。 そしていつも苛立ちの銃口の先に立つのはティアナ・ランスター。 ティアナ・ランスターを見る度にどうしてこれほど苛立ちを覚えるのか。 未熟?愚か?無能?ひよっこ?侮蔑の言葉を全て並べても当てはまらない。 俺に残った人間らしさだけがその事実を認めたくないと叫んでいる。 だが、遺伝子にまで刻み込まれた戦闘思考を始めとしたモノはそれを肯定している。 ベクトルこそ違えどティアナと俺は・・・・・・。 魔法少女リリカルなのはStrikerS―砂塵の鎖―始めようか。 第9話 言葉の重さと誠実さ ぼんやりとした視界が目の前に広がる。 視線の先で光っているのはルームライトだと気がついて、 今更だがあたしが横たわっていることに気がついた。 前後の記憶がない。 どうしてあたし・・・ここはどこ? 状況がまったく理解できなかった。 なにをあたしはしていたの? 「あ、ティアナ。起きた?」 「シャマル先生・・・・・・。あの・・・・・・えと・・・・・・。」 「ここは医務室ね。昼間の模擬戦で撃墜されちゃったの覚えてる?」 その言葉にあの光景がフラッシュバックする。 いつもの優しそうななのはさんの姿はそこにはなくて、 モノを見るみたいな目であたしを見つめて躊躇いもせずにクロスファイアシュートを 撃ち込んだなのはさんの姿が・・・・・・。 怯えに震える手を必死に隠そうとしたけど隠し切れているだろうか。 震えるな、あたしの手!! 震える手をシーツを握り締めることで押さえつける。 「なのはちゃんの訓練用魔法弾は優秀だから身体にダメージはないと思うんだけど。」 そう言われて立ち上がろうとしたとき、ふと足元が寂しい感触。 見ればあたしの生足が剥き出しになっている。 シャマル先生が治療のために脱がせたんだろうけど、気恥ずかしさに頬が熱くなる。 同性だし、気にする必要ないんだけど。 眠っている間に脱がされたというのがどうにも・・・・・・そういえばスバルは? 「どこか痛いところある?」 「いえ、大丈夫です・・・・・・。」 優しくかけられるシャマル先生の言葉にそう答えながら、 おぼつかないままに視線を彷徨わせるとアナログな時計が目に入った。 時間は・・・・・・短針が9の位置を指している? 「9時過ぎ!?え!?夜!?」 そう言いながら、窓の外を見直す。 外は本当に暗くて街頭の明かりが明滅して、空に星が浮かんでいる。 間違いや冗談じゃなくて・・・・・・本当に夜なんだ。 それならあたしはいったい・・・・・・。 「すごく熟睡してたわよ。死んでるんじゃないかって思うくらい。 最近ほとんど寝てなかったでしょ。たまってた疲れが纏めて来たのよ。」 シャマル先生の言葉は身体を心配してくれているものだと分かる。 ヴァイス陸曹が身体に気を使えと言ってくれたのに無視し続けた結果だということも。 吐き戻したときから限界を超え始めたと少しだけ自覚はあった。 でもこれぐらいやらないと届かないと思って走り続けた。 けれど、それだけやって手に入れた力なのに、なのはさんには簡単に打ち砕かれた。 あれだけやってまだ力が足りない。 誰も傷つけたくないから強くなりたいだけなのに!! 無理をしないでどうすれば力が手に入るの!? 才能も無くてレアスキル持ちでもない凡人のあたしは!! 神様、兄さんを奪ったあなたはあの狂人には力を与えてあたしからは奪うだけなのですか。 目の端から零れ落ちた水滴がシーツに染みを作った。 時間を少し遡って模擬戦直後。 ティアナが撃墜されてからの話。 「フェイト、頼むからあいつらをシャマルのとこへ連れてってくれ。」 「でも、ヴィータ・・・・・・。」 「頼むから・・・・・・そうしてくれ。エリオとキャロも一緒に行ってくれ。」 怒りに声が震える。 どうしてこんな裏切り方しやがったんだ、ティアナ達のやつは!! 気持ち悪いくらいあいつが予想したとおりの結末。 吹っ切れたみたいだからと油断したあたしが悪いのか。 ティアナという人間を見誤ったなのはが悪いのか。 フェイトに連れられて医務室へ向かうスターズとライトニング。 その中で最後まで睨み付けるようになのはを見て行きやがったスバル。 どうしてなのはの気持ちが分かってやれねぇんだ!! 顔を俯かせたまま戻ってきたなのはに対してあたしはなにも言ってやれねぇ。 「実に分かりやすい素晴らしい模擬戦だったよ。なのは隊長殿。信じると言った相手を これでもかとばかりに徹底的に蜂の巣にしてくれてまさに『強いから正しい』を 実践してくれるなんて夢にも思わなかった。正直見くびってたよ。 あははと笑って軽く叱って済ませるんじゃないかとばかり思って。 アハハハハハハ・・・・・・。」 そう言いながら無表情に笑うはんた。 皮肉を言っていることは明らかだった。 なのはにはどれだけきつく聞こえてるだろう。 くそっ!!なにも言い返せねぇ。 吹っ切れたみたいなスバルとティアナの様子に騙されたことも、 皮肉交じりにティアナ達が危ういと忠告してくれたのに生かせなかったことも、 生い立ちも合わせて焦りすぎな理由も知っていたのに生かせなかったことも、 全部あたしとなのはの責任だから・・・・・・。 でもなぜだろうか。 はんたは皮肉を言っているはず。 あたし達を思いっきりコケにして嘲笑ってすごく楽しそうなはずの裁断機野郎。 それなのに、酷くその言葉が虚ろに響くのは・・・・・・。 「さて、なのは隊長殿。賭けは俺の勝ちなんだが、追加で賭けをしないか? 終わったことをうじうじ考えたところでどうなるわけでもないのだから。」 「気持ち悪いくらい建設的で吐き気がする言葉だな!!てめぇ!! これ以上なのはになにを賭けさせようってんだよ!!」 「賭けの内容はティアナ・ランスターが自分の命を軽く扱っている言葉を吐くか否かだ。 そっちの負け分と今月の報酬全部を吐く側に俺は賭ける。そっちを有利にしよう。 期限は今日を含めて2日以内。乗るか?」 「・・・・・・あたしも同じだけ、ティアナが言わないほうに・・・・・・。」 どこか呆然とした様子も伴っていたけどなのはが反応した。 このままじゃ給料なくなっちまうなんてことよりも、 まだティアナのことを信じ続けられるなのはの誠実さ(悪く言えば愚直さ)が羨ましい。 あれだけ酷い裏切りをされて、想いがなにも伝わっていなかったって分かった直後なのに。 それがなのはのいいところかもしれないが限度ってものがあるだろう。 これは少しでも早くティアナのやつにきつい説教してやんねぇとな。 だが、裁断機野郎の答えになのはもあたしも戸惑いを隠せなかった。 「金はいらない。」 「・・・・・・お、おい。それじゃなにをなのはに賭けろって言うんだよ。 身体とか言ったら本気で息の根止めるぞ!!てめぇ!!」 傍目には壮絶な絵面だっただろう。 失意のどん底のエース・オブ・エースと無表情のイカレ裁断機野郎と 1人熱くなっているヴォルケンリッターの鉄槌の騎士が 今にも殺し合いやりそうな雰囲気で顔を突き合わせて会話してるんだから。 はんたの言葉に呆然と顔を上げたなのはに要求が告げられる。 「1度だけ、ティアナと、俺が、模擬戦をする権利。」 誤解の無いように、まるで言い含めるかのように、途切れ途切れの言葉。 それを安いと見るか高いと見るか、あたしには判断付かない。 ただ、要求の意味的にはおかしなものでも無理なものでもない。 それこそなのはの代わりにフェイトやあたしが教導するようなものだ。 階級の権限的にもやってやれないことはない。 なのはがスターズの隊長だからということを除いても、 あたしの感覚からすれば物凄く安い要求に思える。 何度も言葉を繰り返してみるが、曲解できる部分はない。 違和感が拭えないほど、奇妙なまでに安い要求。 育成プラン考えてるなのはが傷つくような内容ってわけでも・・・・・・ないよな? なのははどんなふうにこの言葉を聞いているのだろう。 寝る間も惜しんで育成プランを考えてたところに横槍入れられたと考えてるのか、 それともあたしみたいに安い要求だと思っているのか。 それでもやっぱり安すぎるよな。 なのはがひよっこどもを大切にしているとはいえ、模擬戦1回は余りにも安すぎる。 だが、はんたが当然のように続けた次の言葉に、 あたしは安いとか高いという思考を全部吹っ飛ばされて構わずぶちきれた。 「ただし、殺傷設定での模擬戦だ。」 「ふざけるんじゃねぇ!!訓練中の事故とか言ってティアナ殺す気かよ!! それ以前にそんなの模擬戦じゃねぇ!!一方的な虐殺じゃねぇか!!」 不意打ちで掴みかかったが、簡単にあたしが地面に転がされる。 うつぶせに転がったあたしの背中に速やかに容赦なく足が乗せられた。 呼吸が詰まるのと同時に気がつく。 こいつ、本当に殺しになれてる。 もう少し力を入れていればあたしの背骨をふみ折られていただろう。 プログラム体だが、今のボディを最後に朽ちるばかりの人間みたいな身体。 それがたった今、簡単に壊されかけた。 いったいどんなバケモノなんだよ。 この裁断機野郎は・・・・・・。 「ダメだよ・・・・・・。ティアナは・・・・・・。」 「可哀想なティアナちゃんは死んじゃったお兄様のためにそれはそれは必死で努力しているいい子なんですとでもいうのか。なのはがどれだけ大切に扱ってるかも知らないで馬鹿やるあれが。誰も失いたくないから強くなりたいとか夢ばかり見てるあれが。」 「っ・・・・・・。」 「信じたいなら言わないほうに賭けろ。兄のことを大切に思って、本当に夢を叶える気があるのなら、どれだけ屈辱と恥辱と汚辱に塗れても命だけは絶対に捨てない。 絶対に捨てられるはずがないんだからな!!!!!!!!!!!!!!!!」 足蹴にされたあたしの上で強い言葉が響いた。 裁断機野郎がどんな顔をしてるか知らねぇ。 けど、はっきりとその声に混ざったのは苛立ち。 破壊以外のとき、どこか作り物じみた感情しか見せなかった裁断機野郎が まともに見せた感情らしいもの。 だけど、なにに苛立っているんだ? ティアナの在り方?存在?思考?それとも別のなにか? あたしには想像しきれない。 横目に見えるなのはもはっとした様子で息を呑んでいる。 少しずつ震え始めるなのは。 「それでも・・・・・・絶対に・・・・・・殺傷設定・・・・・・だけは・・・・・・ダメ・・・・・・。」 「・・・・・・そもそも・・・・・・そんな賭けに乗らなきゃいいじゃねぇか。なのは。」 途切れ途切れに蒼白な顔でなのはが答える。 尋常じゃないまでに震えながら・・・・・・。 その震えがなにから来るものかあたしは空気が読めていなかった。 裁断機野郎の理解について、なのはのほうができていたのだろう。 それこそ賭けを飲むか、六課が潰れること覚悟で力づくでカタをつけるかの 2択になってしまっていたことに。 足蹴にされたままあたしがそんなことを言った途端、 ならば当然とばかりに躊躇いもせずはんたのやつが口にした言葉にあたしは再び戦慄する。 「それならこれからは普段の訓練で横槍つっこませてもらうとしよう。 面倒が増えると『アルファが』『何度も』説得したからやめていたが、もうどうでもいい。」 つまり、いつでも殺せたってのか。 デバイスに説得されて面倒だからというだけで殺さなかっただけなのか。 あたしたちを・・・・・・それこそ殺したかったのか。 その筆頭に名前が挙がっていたのがティアナだったっていうのかよ。 「それなら2倍でも3倍でも賭けてもいい!!賭けるから!! だから・・・・・・だからお願いします。もう少しだけティアナのことを待って・・・・・・。」 「・・・・・・。」 なのはが泣いていた。 膝をついて顔を歪めて泣いて頼んでいる。 実戦を繰返してきた管理局のエース・オブ・エースたる高町なのはが・・・・・・。 力に訴えれば私闘を行ったとなって六課の存亡に影響が出る。 それこそ手加減なんてやってられない相手だから始末書なんてレベルで済むはずがない。 後ろ盾があるからと言って、かばうにも限度がある。 良くてなのはとはやての解任、最悪六課の解体だろう。 賭けを呑まなければ訓練中の事故として皆が処理されていく。 ホテルで見たあの砲撃がどこからともなく飛んでくる。 それこそ、最悪のタイミングを狙い済ましたようにそれは撃ち込まれるだろう。 ひよっこどもが無傷で済む可能性は限りなく0に近い。 賭けを呑むしかない状況だと今更気がついたあたしの鈍感ぶりに絶望した。 はやての夢である六課を潰すか、条件を打開するかの2択。 なのはに六課を潰すなんて選べるはずが無い。 足蹴にされたままのあたしはそんななのはを見てもティアナへの怒りしかわかない。 本当に丁寧に教えているなのはをなんで裏切ったとしか。 気のせいか足の裏ごしに裁断機野郎がなのはの言葉に動揺(?)した気がしたけど、 背中に乗った足はそのままでやっぱりいつもの裁断機野郎だ。 くそっ!!本気で動けねぇ。 動いた途端、ぎりぎりの力加減で載せられた足が横から飛んでくるイメージしか沸かない。 次に狙われるのは鳩尾か、肋骨か、それとも首か・・・・・・。 ゴミみたいにあたしを殺した後に裁断機野郎がどうするか。 既に考えはそこへ向いている。 長生きはするものだ。 シグナムやシャマルみたいに冷静に思考しろ。 冷静に考えてみるんだ、あたし。 シグナム達は怒りを噛み締めるだろうが動かないだろう。 なにを引き起こすか分かっているだろうから。 だが、なのはもフェイトもなによりはやてが火種になる行動を取らずにいられるだろうか。 ・・・・・・性格的に無理な気がするなんてあたしに思われるんじゃ駄目だろ。 3人とも我慢して我慢して我慢した果てに全部纏めて吐き出すタイプの人間じゃないか。 多少許容量が違うだけで・・・・・・。 とにかく火種だけは作ってはいけない。 嬉々として躊躇うことなく裁断機野郎は六課、いや、はやて達に襲い掛かるだろう。 勘違いじゃなければこいつにとって刈り取る命の価値観は、 はやてのためと動いていたころのあたし達ヴォルケンリッターのそれよりもはるかに軽い。 逆に目的を持った命に重い価値を置いているのか。 それだとティアナのことがかみ合わない。 なんにせよ、少しだけでも思考が分かっているのが救いだ。 殺しさえできればなんでもいいという向こう側の思考を持ったこの裁断機野郎め・・・・・・。 そんな思考のあたしを足蹴にしたまま、『それならば』と告げられた言葉に再び戦慄する。 いったいどれだけ脅かせばいいんだよ!! 「ティアナが命を粗末に扱う言葉を吐かないほうに自分の身体をかけられるのか? 高町なのは。その歳で生娘なんてことはないだろうが、念を押しておく。 一晩付き合えなんて易しい話じゃなく、それこそ死んだほうがましって扱いだ。 逃げ道のない賭けに乗れるのか?賭けられるというのなら模擬戦で 殺傷設定を使わないどころか、ゲーム代として普段から殺そうとする行為全部をやめよう。 なのは隊長殿の身体に見合っただけレートを上乗せさせてもらおうか。」 「・・・・・・っ。」 「即答できない以上、所詮・・・・・・。」 「・・・・・・分かった。賭けるよ。あたしの身体・・・・・・。」 「なのは!!なにを言っているのか分かってんのか?正気か!?壊れたか!? 自暴自棄になってるとかそんなんじゃねぇのかよ!?どうしちまったんだよ。なのは。」 足蹴にされたまま、あたしはわめいた。 ショックのあまり、なのはが壊れちまったんじゃねぇか。 どう考えてもまともじゃねぇ!! 少なくともあたしなら絶対にこんな『負ける』賭けやりたくねぇ!! だが、なのはは撤回する様子をみせない。 嘘だろ・・・・・・。 絶望のあまり視界が真っ暗に染まるなんて久々だ。 「・・・・・・賭けは成立だな。改めて言葉にしておこうか。 ティアナ・ランスターが今日を含めて2日以内に自分の命を軽く扱う言葉を吐くか否か。ゲーム代として俺は普段からの殺傷行為の禁止を払う。 賭けるのはそっちがティアナと1度だけ非殺傷設定で模擬戦をする権利となのはの身体、 俺が今月の報酬全部とそちらの負け分全額。」 「おい、最後に聞かせろ。どのあたりから命を軽く扱っている言葉なんだ?」 「いろいろあるんじゃないか?俺の貧相な語彙じゃ『死ぬ気』とか『死んでも』とか 『命に代えて』なんてところしか思いつかないが。」 「・・・・・・なんだ、この状況は。ヴィータも足の下でなにしている?」 シグナム。 できればもう少し早く来て欲しかった。 それと・・・・・・空気読めよ、お前・・・・・・。 時空管理局機動六課。 名前の通り、時空管理局という組織に所属する1つの勢力に過ぎない。 あの荒野と同様に、どこの人間も変わらず利権や権限の取り合いをして、 正直者が馬鹿をみる構造は変わらない。綺麗ごとを抜かしても人間は人間。 さて、他のところと決定的に異なる六課の性質。 それはロストロギアが関わってさえいれば出動できるという強み。 ウラワザでいびつに完成させた身内だらけの組織ゆえの結束の固さと戦闘能力の高さ。 使い方次第でどこにでもクチバシを突っ込めるその異常なまでに巨大な権限と、 他の勢力を力づくで潰す分にはお釣りがくるほどの人材の宝庫で火力の集まりは 妬みとやっかみを買うに十分。 詐欺が横行してナイフやライフルどころか戦車を片手に笑って会話する日常も ろくに過ごしてない未熟なはやてじゃ、利権と権限争いの結果、 ホテルの件はあれで折り合いをつけるしかなかったわけだ。 拘束具だけはつけておいて、失敗しても六課に責任がある。 そんな構造を作らさされたわけだ。 管理局という構造をアルファに調べさせて思い知ったそんな現実。 とりあえず全部消し飛ばそうとアルファ片手に出かけそうだった足が止まったのは ひとえになのはとの賭けだった。 あの賭けを飲める度胸があるとは思わなかった。賭けの内容自体は問題ではない。 なにをチップにするかだ。 他人のために身体を賭けるなんてそれこそ突き抜けた馬鹿でもやらない。 それこそよほどの大物か、真性の救いようの無い馬鹿のどちらかしか・・・・・・。 だからこそ、断らせて事故で全部処理させるつもりだったのに目論見が外れた。 そもそも、賭けを持ち出しておいてあれだが、 今度の賭けで俺の勝ち目は手段次第で10%を切る。 なのはが相手だから30%にかろうじて届くところだが、周囲がどう動くか分からない。 アルファの見解も同様。 それこそイレギュラー全部がこっちに傾いてようやく五分の賭けになるかという次元。 なにより向こうには必勝法がある。当然、俺もアルファも気がついている。 なんせティアナ・ランスターに『喋らせなければ』勝ちなのだから。 シグナムあたりは『殺す』と『気絶させておく』という選択肢に気がついただろう。 案外フェイトかはやてあたり力づくで妨害しにかかるか。 しかし、どうしてこんな負ける賭けを挑んでしまったのか。 全てはティアナが目触り過ぎるから・・・・・・。 あれだけは俺の手で叩き潰したくて仕方ない。 本当にいいハンターがいない世界だ。 ハンターらしいやつはシグナムくらいか。 なのはとフェイトも悪くは無いが、振れれば倒れそうなほどに感情が不安定すぎる。 判断しにくいところとしてシャマルとはやて。 笑って殺しができそうなあたりシャマルとは気があいそうなんだが。 はやてはどこかジャックさんを髣髴とさせる目をするときがたまにある。 なにか昔に後悔でもあるのか・・・・・・。 将来の可能性としてエリオとキャロ。 素直で伸び白の多い2人がどこまで伸びるか楽しみではあるが、 ぬるま湯のような環境では育つに時間があまりにも足りない。 もしかしたらスバルが伸びるかもしれない。 ティアナのついでに観察していてどこかいびつな感じを受けるのはいったい何故だろう。 ティアナは論外。 どんな思考もティアナに帰結し、苛立ちが向くのもティアナ。 初めて見たときからずっと意識に止まっている。 ティアナ、ティアナ、ティアナ・・・・・・。 殺せと騒ぎ出そうとする遺伝子を沈めるように思考を捨てて夕日を眺める。 あの荒野のほうが若干紅いか。 だけど、水平線と地平線の違いはあってもこの光景は変わらない。 どこまでも視界の果てまでなにもない荒野の果てに揺れて沈んでいく夕日と・・・・・・。 あの荒野は本当に分かりやすかった。 『強いから正しい』の言葉に従って、気に入らなければ消し飛ばせばいい。 たったそれだけで全部が片付く・・・・・・。 静かな海に沈んでいく夕日を眺めながら、脳裏にあの荒野で見た夕日を描き、 そんなことばかり考えて、無言のアルファを片手に時間が過ぎるのを待っていた。 訓練場で端末を操作し続ける。 物凄い賭けをしてしまったとは思っている。 でも、後悔はしていない。 ヴィータちゃんにも手出ししないように言っておいた。 わたしがどこまでティアナ達を信じてあげられるか試されてるんだって・・・・・・。 よく考えたらティアナのことも勝手に賭け金に乗せちゃったよね。 それでも、本当に潰されるよりましだと、わたしの選択が間違ってないって思いたい。 夢が叶えられなくなるよりははるかにましだって・・・・・・。 それに負けるはずがない・・・・・・んだよね? どうしてはんた君が『言う』ほうに賭けたのか不思議でならない。 言わないことが前提みたいな賭けだと今になって気がついて首をかしげている。 でも、ティアナ・・・・・・。 そんなに悩んでいたならどうして話をしてくれなかったのかな。 理解したつもりになっていただけだったのかな、わたし・・・・・・。 「なのはー。」 「フェイトちゃん。」 作業を切り上げて、迎えに来てくれたフェイトちゃんと本局へ歩みを進める。 「さっきティアナが目を覚ましてね、スバルと一緒にオフィスに謝りにきているよ。」 「そう・・・・・・。」 「なのはは訓練場だから明日朝一で話したらって伝えちゃったんだけど・・・・・・。」 「うん。ありがとう。でも、ごめんね。監督不行き届きで・・・・・・。 フェイトちゃんやライトニングの2人まで巻き込んじゃった。」 「ううん、私はぜんぜん・・・・・・。」 「ティアナとスバル、どんな感じだった?」 「やっぱり・・・・・・まだちょっとご機嫌斜めだったかな。」 気を使ってくれているのが丸分かりだよフェイトちゃん。 実際、ちょっとどころかかなりなんだろう。 努力を踏みにじるみたいに力任せに撃ちのめしちゃったんだから。 「強いから正しい・・・・・・・か。まぁ、明日の朝、ちゃんと話すよ、フォワードのみんなと。 はんた君には悪いけど、本当に無茶だけはして欲しくないから・・・・・・。」 「・・・・・・どうしてはんた君が出てくるの?」 「フェイトちゃんには話しておこうかな。はんた君との賭けその2。」 簡単に説明した。 ティアナが自分の命を軽く見た言葉を言うかどうか賭けをしたって。 そこまではフェイトちゃんもお給料なくなっちゃうよみたいな顔をしていた。 賭けたものにわたしの身体が入っているって言うまで・・・・・・。 「なんて馬鹿なことしてるのよ!!なのは!!」 「落ち着いてよフェイトちゃん。」 「だって、負けたらなのはは・・・・・・。私がやめさせてくる。」 「大丈夫。ティアナを信じているんだから。それに明日の朝フォワードの皆と話すなんて余計な手出ししちゃうんだもん。フェアじゃないよ。それにはんた君、いつもどこか辛そうで苛立ってて、まるで破裂しても・・・・・・ううん、破裂したがっている風船みたいだったから。」 「だからってどうしてなのはが・・・・・・。それならせめて負けないようにしないと。 そうだ!!ティアナをこれから気絶させて車のトランクにでも入れておこうよ。」 「過激だよ。フェイトちゃん。」 あははと笑ってロビーにまでたどり着いた。 いろいろなアイデアを出すフェイトちゃんの顔は最後まで真剣そのものだったけど・・・・・・。 フェイトちゃんはいつも心配性だよね。 友達として嬉しいけど・・・・・・。 でも、信じてあげないと駄目だよ。 そんなことを言おうとした矢先、赤いアラームが鳴り響いた こんなときの便利屋さんやないか。 新型ガジェットドローンの襲撃。 リミッター解除を軽々しくやるわけにもいかない事情や 戦略的に奥の手を見せないほうがいい以上、かなり制限をつけての出撃となるはずだった。 でも、制限なにそれといわんばかりの存在が六課にいた。 すっかり忘れていたけど、はんた君は陸曹兼空曹。 空戦ができるのだ。 なにより能力は本当に折り紙つき。 はやてちゃんは嬉々としてはんた君を出撃メンバーに加えた。 相手がガジェットドローンだからって、いつもなら火力制限するだろうに、 遠慮なくぶち壊せってはやてちゃんなにか嫌なことでもあったの? リインやグリフィス君が呆然とするくらいはっちゃけてた。 なにか胸とかバトー博士とか壊れたみたいに呟いていたけど・・・・・・。 「今回は空戦だから出撃はわたしとフェイト隊長とヴィータ副隊長とはんた空曹の4人。」 「みんなはロビーで出動待機ね。」 「そっちの指揮はシグナムだ。留守を頼むぞ。」 「エリオ、コーヒーでも入れておいてくれ。ミルク抜き、角砂糖1袋。」 「「はいっ!!」」 「はい・・・・・・・。」 キュンキュンとローターの音が響く下でわたし達はフォワードの4人にそう告げた。 なにかおかしいのがあったけど、人の嗜好は気にしないでおこう。 それよりもティアナの落ち込み方が酷かった。 スバルも返事をしないことで反抗しているつもりなのか。 うん、疲れているだろうし、出動待機から外れておいてもらおう。 手加減した訓練用の魔力弾とはいっても全くのダメージ0というわけにはいかないから。 その分、わたし達ががんばって、その後でたくさん話し合おう。 「あ、それとティアナ。ティアナは出動待機から外れておこうか。」 本当に心配して、善意から言ったつもりだった。 けれど、周りの受け止め方は違ったみたい。 ティアナを除いたフォワードの3人が驚きの声を上げてティアナを見ている。 「そのほうがいいな。そうしとけ。」 「今夜は体調も魔力もベストじゃないだろうし・・・・・・。」 「言うこと聞かないやつは使えないってことですか。」 「自分で言っててわからない?当たり前のことだよ。」 少しだけ怒れただけど、我慢した。 ティアナは気が立っているだけなんだろう。 普段のティアナなら絶対に言わない言葉だから。 第一、機動六課という組織の中のスターズという部隊なのだ。 隊長の指示に従えないのなら部隊がなりたたなくなる。 「現場での指示や命令は聞いてます。それに訓練や教導だってちゃんとサボらずやってます。 それ以外の場所での努力まで教えられた通りじゃないとだめなんですか。」 「それでジャンクになりかけておねんねしておいてなにを噛み付いてるんだか。」 なにか言いたげなヴィータちゃんを制止した直後、はんた君のそんな言葉が響いた。 わたしの肩越しに物凄い憎しみ塗れの視線ではんた君を睨み付けるティアナ。 「・・・・・・・っ、私はなのはさん達みたいにエリートじゃないし、スバルやエリオみたいな才能も、キャロみたいなレアスキルもない!! 少しくらい無茶したって、死ぬ気でやらなきゃ強くなんてなれないじゃないですか!!!!!!!」 「なんのつもりだ。はんた。」 「アハハハハハハハハハハハハハハ・・・・・・。」 気がつけば、ティアナの胸倉を掴んで殴り飛ばそうとしていたシグナムの拳を止めていた。 ついでに狂ったような笑いが止まらない。 エリオがどこか呆然としたみたいにさっきまで俺がいた場所と今の位置を見直してる。 なにを驚く必要がある。この程度できるだろうに。 さて、いつものスタンスなら放置するか、俺がティアナをモルグ送りにしている場面。 馬鹿が夢見て戯言をほざいて殴られるというありふれた光景で話は終わり。 馬鹿が逆恨みするなり喚くなりするだろうが、それで全ては丸く収まる。 そのはずだった。 そこに、ある言葉さえなければ・・・・・・。 たった一言、賭けの対象であり、どうしても俺には聞き逃せない言葉を口にした。 それも本当に軽々と!!あっさりと!!冗談みたいに簡単に!!想像を超えるほどに!! 真性の馬鹿なのか、それとも身の程知らずなのかなんて思考がいつもならばよぎるのに、 今この瞬間だけはコンマ数秒さえよぎらない。 そんな思考自体が存在しえなかった。 本当にたった一言なのに、その一言が、俺を誘うかのように心を荒れ狂わせる。 僅かばかり残った人間らしさを屈服させ、 遺伝子にまで刻み込まれた戦闘思考を全開にさせ、 ハンターとしての習性を荒れ狂わせ、 苛酷な荒野を生き抜いてきた人間としての在り方をズタボロに踏みにじり、 ありとあらゆる物騒で凄惨で残酷で破壊と殺戮用の思考を一斉に同じ方向へ向かせる。 たったの一言がそれを成した。 最後まで抵抗を続けていたはずの人間らしさが絶望も諦念も躊躇もなく屈服した。 最短時間で確実に敵を屠るためにあらゆる状況を打破し最適な武器を選択し 最大級の運用を行って殺戮の最大効率を求める血と殺戮と暴力に飢えた戦闘思考が、 コイツは肉塊に変えるだけでは生温いと叫び声をあげる。 卑怯?残酷?えげつない?なにそれって食べられるの?とばかりに笑い飛ばして 淡々と獲物を狩るハンターという生き物の習性が、この小娘に荒野のルールで 教えてやれと囁きだす。 俺達のルールはこれだろう?とばかりに、かけ離れた場所にあるはずの苛酷な荒野が その匂いを届けてくれたかのように鼻腔の奥がツンとする。 ありとあらゆる物騒で凄惨で残酷で破壊と殺戮用の思考の群れが、 狂宴の始まりだといつもなら騒ぐはずなのに、漣1つ立てず静粛にしている。 まるで祭りを始める前の準備を粛々とすすめているかのように・・・・・・。 いつもならば1つぐらいは反対する思考が残る。 義理や金や怠惰、アイなんて幻想やろくに残っていない人間らしさを筆頭にして・・・・・・。 しかし、今、俺という存在の全てが同じ思考を提示し、ただの1つも反対しない。 それがシグナムの拳を受け止めた理由・・・・・・。 誰かにこの感情を分かってもらおうなんて思わない。 まして誰かの理解が得られるなんてかけらさえも思っていない。 まさに心が引き千切れた。 ゆえに思考はたったの1つ。 それに向かって身体と精神が突き動かされる。 シグナムの拳を受け止めたままで口が開いた。 「アハハハハハハハ・・・・・・。なに、高町なのは隊長殿と賭けをした矢先だったからつい。 潔癖剣士のシグナム。どうぞ馬鹿に好きなだけ説教してあげてくれ。 そして隊長達も速やかに出撃して虐殺してきましょう。それと、なのは隊長。 戻ったら是非とも速やかにティアナ・ランスターと模擬戦をさせろ。ご安心を。 訓練場使用の書類手続きは全部片付けてある。」 なのはは現実を認めたくないとばかりに蒼白な顔で、 ヴィータはいい殺意を放ちながら怒りの表情で、 フェイトはまさかとばかりに口を押さえて驚愕の表情で、 シグナムはああ!!とばかりにようやく気がついたような顔で、 ひよっこ達はなにが起こったのか理解さえできていなかった。 神なんて信じちゃいないが、これはさすがにできすぎだ。 賭けの当事者が全員揃ったこの場、この瞬間、目の前で大声ではっきりと、 俺の貧弱な語彙の1つをそのまま言ってくれるなんて・・・・・・。 ああ、もうこれは悪魔の仕業と思うとしよう。 赤い悪魔が俺に笑ってくれたのだろう。 「ヴァイス!!出られるな!!」 「はい!!いつでもでられます!!」 俺の叫ぶような言葉に震え上がったような声が返ってきた。 おいおい、なにをそんなに怯えるんだ。 獲物はお前じゃないだろう? 「それじゃ、なのは隊長達、さっさと虐殺にいこうじゃないか。」 壊れてないかと思うくらいに落ち込んだなのはと、 今にも暴れそうなヴィータと、おろおろするばかりのフェイトをヘリのカーゴへ促した。 「目障りだ。いつまでも甘ったれてないでさっさと部屋に戻れ。」 「あのシグナム副隊長。その辺で・・・・・・。」 「スバルさん、とりあえずロビーへ・・・・・・。」 「シグナム副隊長!!」 「なんだ。」 「命令違反は絶対に駄目だし・・・・・・さっきのティアの物言いとかそれを止められなかったあたしは確かに駄目だったと思います。 だけど自分なり強くなろうとするのとかきつい状況でもなんとかしようとがんばるのってそんなにいけないことなんでしょうか? 自分なりの努力とかそういうこともやっちゃいけないんでしょうか。」 なにを泣いて訴える必要がある。 そもそもなにが問題なのか分かってないみたいだな。 「自主練習はいいことだし、強くなろうとする努力もすごくいいことだよ。」 「シャーリーさん・・・・・・。」 「持ち場はどうした。」 「メインオペレーターはリイン曹長がやってくれますから。 ただ、皆不器用で、見てられなくて・・・・・・。皆、ちょっとロビーに集まって。 私が説明するから。なのはさんのこと、なのはさんの教導の意味。」 場所を移してシャーリーとシャマルから語られたのはなのはの経歴。 P.T事件。 闇の書事件。 無理を続けた果てに我慢を続けて壊れたなのは。 飛ぶどころか歩くことさえままならなくなったなのはのリハビリ生活。 呆然としたようなフォワード4人が滑稽すぎる。 私からすればいまさらすぎること。 なぜあんなに丁寧に教えているのか本当にわかっていなかったのだろう。 はんたが言っていた通りに・・・・・・。 「譲れぬ戦いがあることも事実だ。だが、お前がミスショットしたあのとき、 他に選択肢はなかったのか?前線に出ていた私達からはヴィータが全速で戻っていた。 お前達のお守りをするために絶対に射程からお前達を外そうとせず、離れようとしなかったはんたもいた。はんたはそれこそお前達に戦闘させる気さえなかったように徹底的に 殲滅していたことも、あまりの制限事項に荒れに荒れてシャマルがどれだけ罵られて 悔しい思いをしたかさえ知らないだろう。仲間の命のため、どうしてもあの場面は 撃たねばならなかったのか?はんたに手伝ってくれと告げることやなぜか後ろに残した エリオ達も運用してヴィータが到着するまで足止めするなどいくらでもやりかたはあったはずだ。なぜ、貴様が撃たねばならなかったか答えられるものなら答えろ!!訓練中のあの技はいったい誰の・・・・・・今更どうでもいいことだったな。それより、ティアナ。 覚悟はしておいたほうがいいぞ。」 説教を早々に切り上げてやる。 既に私の興味はいったいどんな趣向ではんたが模擬戦するのかに向いている。 いつものなのはの真似はしないだろう。 ならばヴィータみたいに力押しか。 それもありえない。 まさか私みたいに近づいて斬るなんて真似で終わることはないだろう。 あるいはテスタロッサみたいに近距離と遠距離併用の高速戦闘か。 ありえそうだが、それでは1度きりの模擬戦を生かしきれない。 主はやてのように広域攻撃したらそれこそ模擬戦の意味がない。 なんでもできる(らしい)デバイスを持っているだけに、 検討さえ付かないのが正直なところだった。 「・・・・・・なにをですか?」 「なのは達が帰ってきたらだ。シャマルどころか、なのはやフェイト、 ヴィータや私なんかでさえそれこそ天使にでも見えるようになるだろうよ。」 「シグナム副隊長、それってどういうことですか?」 「口にするのさえ吐き気がする内容だ。ティアナが自分の命を軽く扱っているかどうかでなのはとはんたが賭けをしてなのはが負けた。これ以上私に話をさせるな!!」 「ティアのどこが命を軽く扱ったんですか!!」 「『死ぬ気』なんてあっさり使う大馬鹿のどこが軽く扱ってないんだ!!」 「「「っ・・・・・・」」」 「そ、それは・・・・・・ティアがたまたま・・・・・・口にしちゃった・・・・・・。」 「いずれにせよ覆らん。ここまで馬鹿だったとは私も思わなかったぞ。 ろくに賭け事も知らん私でさえ負けるほうが難しいと思っていたんだからな!!」 「ね、ねぇ、シグナム。いったいなのはちゃん達はなにを賭けたの?」 「自分だ。シャマル!!これ以上答えさせるな!!」 私の答えの意味がまったく分かっていないフォワード4人。 逆に意味が分かってしまったのだろうシャーリーとシャマルは息を飲んだ。 「704現場空域に到着。」 「ライトニング1、スターズ2エンゲージ。」 管制からの連絡が入る。 フェイトちゃん達が相手を足止めしてくれている間に わたしとはんた君を乗せたヘリは予定のポイントに辿り着いた。 「ほんじゃぁ、なのはさんと凄腕さん、気をつけて。」 「・・・・・・うん。ありがとう。ヴァイス君。」 「ヴァイスこそ落とされるなよ。」 「今は気分を変えて、いくよ!レイジングハート!」 「All right. My master.」 「だからひよっこが真似するからやめろ!!」 飛び降りようとしたわたしの髪が引張られた。 ああ、そうだった。 癖になっているのかもしれない。 意識して止めないと・・・・・・。 「ありがとう。はんた君。レイジングハート、セットアップ。」 「どういたしまして。アルファ、セットアップ。」 一気に加速して支援砲撃のポイントに到着する。 同じくはんた君も到着したみたいで、座標を独自に送ってくる。 本当に高性能なデバイスだ。 忘れかけてたけどずっと抱いていたあの人形なんだよね、アルファって・・・・・・。 「こちらスターズ1、中距離火砲支援いきまーーーーす。」 「こちらハンター1、中距離火砲支援開始。前2人巻き込まれるな。」 「了解。」 「おう。ってはんたは一言多いんだよ!!」 ディバインバスターの予備動作。 魔力を収束させるのに若干の時間が掛かる。 その間に十字砲火になる位置から飛ぶ光弾が4発。 狙いを外した? 散らばって飛んだ4発に一瞬そんなことを考えたけど違う。 立て続けの爆発の後、ガジェット達がわたしの射線にこれでもかと密集させられていた。 ここまでコントロールできるものなの!? 「ディバイーン・バスター!!!!!!!!」 わたしの砲撃魔法の直撃を受けた新型ガジェットドローンが次々に落ちて行く。 撃ちながら、初めて気がついた。 もしかして私たちの砲撃魔法とはんた君の砲撃魔法、傾向がぜんぜん違う? 「は、はんた君!!なのはちゃんとの賭けって本当!?」 帰ってきたわたし達にかけられたシャーリーさんの第一声がそれだった。 「なにをいまさら。さて、模擬戦の始まりだ。ティアナ・ランスターはどこにいる。」 「え、えーと、その・・・・・・。」 「アルファ、どこにいる。」 「訓練場です。マスター。」 「向こうも待ちきれなかったようだな。」 「あの、その、ちょっと、はんた君。」 「まさかとは思うんすけど、凄腕さんにティアナのやつ喧嘩うったんじゃ・・・・・・。」 「ヴァイス君。六課の皆が事故死するのとどっちがよかったのかな・・・・・・。」 「まさかなのはさんがティアナのやつを!?」 「シグナムさんも吐き気がするって詳しいこと話してくれなかったのよ。 いったいなにがどうなってティアナとはんた君が模擬戦することになったの?」 後ろで何か言っていたが気にしない。 さて、一番プライドをぶち壊して屈辱に塗れる方法はどれがいい? 俺が俺自身に問いかける。 思考と感情と遺伝子が躊躇うことなくたった1つを差し出した。 なるほど、これは悪くないな。 「アルファ、デリンジャー。火力はティアナのシュートバレットのやや下に設定。」 「了解しました。マスター。」 シミュレータで展開された廃墟の立ち並ぶ夜の訓練場。 その中央の交差点に、黄昏ていたティアナを引きずってくると転がして立ち上がらせる。 そして俺とティアナ・ランスターが正対した。 ティアナ・ランスターの手に握られるのはクロスミラージュ。 俺の手に握られるのは変形を終えたアルファが形どったのは思い出深いデリンジャー。 双方の装備が2挺拳銃。 そして火力も向こうが上回るように揃えた。 未だにぼんやりした感じのティアナの傍らにデリンジャーを撃ち込んでやる。 当てるつもりも当たるはずも無い魔力弾が飛び、地面を削る。 右手から2発、左手から2発。 トリガーを引くがカチカチと音を鳴らすばかりで魔力弾は飛ばない。 「リロード!」 俺がそう叫ぶと、感覚的に装弾が終わったことを認識する。 それと同時にもう1つの事実を認識。 装弾数は認識から超えられない。 装弾数は一番使い慣れた数で固定され、リロードの宣言が必要になる。 外見的なものもあるのだろう。 ベルトリンクされたカートリッジでもくっついていれば無意識に装弾数を 無制限と認識ができるのだろうに。 ようやく欠点らしい欠点があったよ、バトー博士。 「ティアナ。俺はデバイスをこの形から変形させず、使う魔法も貴様のいうところの シュートバレットのみ。今、見たとおり貴様のそれより下の火力だ。 さて、模擬戦を始めようか。」 そう告げたがティアナは動こうともしない。 それこそバリアジャケットの展開はおろかデバイスを手に取ることさえ・・・・・・。 少し煽ってやるとしよう。 「多少不調だからと言って負けるはずがないよな。センターガード様? それとも無駄死にしたティーダ・ランスターみたいに貴様も負け犬の能無しか。」 クロスミラージュから魔力弾が放たれる。 それなりに抜き打ちは早いな。 もっともその弾はあさっての方向へ飛んでいったが、ティアナの目に力が戻っている。 やはり兄の事が一番精神的に抉れるようだな。 「兄さんを馬鹿にするな!!」 「俺の世界は『強いほうが正しい』が絶対ルール。犯人を追い詰めたのに取り逃がして くたばった貴様の兄は無駄死にした負け犬で、必死こいて特攻した挙句なのはに 一方的に蜂の巣にされた貴様も負け犬なのさ。 それとも『強いほうが正しい』に従って言葉を訂正させてみるか?」 クロスミラージュからシュートバレットが連射される。 だが、無駄だらけだ。 不規則に動き回りながら回避していく。 ろくに弾幕さえはれず、精密射撃が強みとかいいながら狙うのに時間がかかる。 火力に優れているわけでもない。 そしてなにより動き回ることを真っ先に考えようとしない。 まったく自殺志願者だな。 動かない相手は敵といわずに的というんだよ。 「終了条件は決めるまでもないな。文字通り死にかけるまでやりあおうか。 『死ぬ気』という言葉を二度と吐けないほどに、その意味を徹底的に撃ち込んでやる!!」 魔力弾を避けながら俺はトリガーを引いた。 俺の思考と感情と遺伝子達の総意。 一番プライドをぶち壊して屈辱塗れにする方法。 自分の得意分野で圧倒的有利においてやり、 負けるはずがないと思っているところを徹底的に痛めつける、 完膚無きという言葉通りに!! え? 眉間に奔った激痛と後ろに倒れこむ感覚。 『リロード』と告げている狂人はんた。 ・・・・・・撃たれたの? いつ!? 倒れこんだまま、思考を続ける。 「これで終わりじゃないんだろ。無駄死にした兄の無念を晴らすんだろ? 誰も失いたくないとか夢見て力を欲しがってるんだろ。 必死に努力したから力はあるんだって言うんだろ。引き出し増やそうとしたんだろ。 全部ぶちまけてみせろよ。負け犬。」 倒れたあたしに嘲笑うかのようなはんたの言葉。 怒りを糧に立ち上がる。 しかし、立ち上がった途端、再び眉間に激痛が奔る。 そして再びあたしの身体が倒れこむ感覚。 なんで? なにがおこっているの? 理解を超えていた。 「俺が有利なのは経験値のみ、装備も火力も全てがそっちの有利。バリアジャケットさえ展開せず、バリアもシールドもフィールドも使えない俺が圧倒的不利なわけだ。 つまり、貴様がいつもやってる模擬戦に比べればはるかに有利なわけだ。 簡単に言えば負けるはずがない。」 無様に倒れたまま、はんたの嘲笑うような言葉から必死に情報を集め、 混乱する頭を整理する。 相手ははんた。 バリアジャケット無し、飛行無し。 バリア系シールド系フィールド系一切使用不可。 攻撃手段は装弾数4発、シュートバレットのみ使用。 経験値だけがあいつの有利な点。 逆にバリアジャケットを展開していて、多用な魔法が使える私。 シュートバレット、ラピッドファイア、バレットF、クロスファイア、ヴァリアブル、 ファントムブレイズの6種の使用可能。 幻影魔法の使用可能。 魔法による火力もサポートも全て上回っている。 負けるはずが無い!! バリアジャケットもない相手、1発当てれば終わるんだ。 でもどうして起き上がれないの? 立ち上がる度に額を撃ちぬく激痛。 まさかシュートバレットのみという言葉が嘘? 「ク、クロスミラージュ!!相手の攻撃は?」 「Only a Shoot Ballet.」 動揺した声でクロスミラージュに呼びかけるが、クロスミラージュの返事に愕然とする。 兄さんに教えてもらったあたしのメインであるシュートバレット。 一番慣れ親しんだ魔法なのにそれが・・・・・・見えない? 「本当にシュートバレットなのね?」 「Yes. But his firing speed is very quickly.」 攻撃速度が速い? 早いっていったい何秒よ? 見えないなんてあるはずが・・・・・・。 「なにを驚いているか知らないが、2挺拳銃なんて古風なスタイルをとっているから当然早撃ちの最速は何秒か知っているだろ。1秒よりも早いなんて当たり前すぎる事実。」 『もっとも俺以上に早い人に蜂の巣にされたが』という呟きは聞こえなかったことにした。 あまりにも絶望的な壁を前に戦っているみたい。 立ち上がる、眉間に撃ち込まれる、倒れる。 まるで作業のように繰り返されて、嬲られているみたいだ・・・・・・。 倒れたまま魔力弾を撃とうともしてみたが、クロスミラージュに正確に魔力弾が 撃ち込まれて、手元からクロスミラージュが転がっていく。 だめだ。 勝ち方が思いつかない。 こんな戦い方があったの? 天才でもレアスキル持ちでもない狂人よりも下なのか。 凡人以下なのか、あたしは・・・・・・。 「貴様の足りない頭でも分かるように説明しておこうか。 2挺拳銃は『1人で殲滅戦をやらざるを得ない人間』と『旧式過ぎる銃を使わざるを得ない人間』と 『映画の演出でやっている人間』と『ろくに意味も分からずやる馬鹿』の4種類しかやらないスタイルだ。 デバイスで2挺拳銃をやる利点がどこにある?弾種の撃ちわけができる程度だったらシュートバレットだけで全部撃ちぬいてろ。 おまけに2挺拳銃で精密射撃なんてほざけるのは真性の馬鹿か本当に極めた人間のどちらかだ。」 言われて反論できないあたしがいる。 映画なんかだと格闘技に組み込んで動き回ったり、 かすりさえしない華麗な立ち回りをしながら剣を振り回して悪魔というモンスターを 切りつけて浮かせた後に銃弾を追撃で撃ち込んだりしている。 弾はいつも必中であることは演出。 わかっているけど憧れは捨てられなかった。 兄さんの教えてくれた精密射撃が辿り着く果てがあそこだって・・・・・・。 それに弾種の撃ちわけができるのは大きな利点だって思っていた。 センターガードとしての強みだって。 けれど、淡々と告げられた事実があたしの胸に突き刺さる。 1人で殲滅戦なんてやるはずがない。 殲滅したいなら砲撃魔法や広域魔法を使ったほうがはるかに効率的。 旧式過ぎるデバイスなはずがない。 クロスミラージュは最新型。 そして映画じゃなくてこれは実戦。 それにも関わらず2挺拳銃やろうとしているあたしは・・・・・・馬鹿だ。 泣きそうになりかけながらもどうやって状況を打開するか必死に考える。 でも本当に分からないよ。 痛みと悔しさに涙がこぼれた。 「フェイトがエリオ達に言っていた説明を自分は関係ないみたいに考えていたのか? まずは動き回って狙わせるな、さっさと起き上がれ。まだまだ『死ぬ気』には程遠いんだ。」 はんたの罵声にはっとして転がりながらクロスミラージュを回収、廃墟の影に隠れる。 どうしてこんなに簡単なことを思いつかなかったんだろう。 たったこれだけで無力化できたのに・・・・・・。 「やればできるじゃないか。さて、次はどうやって攻めるか見せてもらおうか。 もちろん追撃はさせてもらうが。」 遊ばれている。 怒りに思考が染まるよりも先にその事実を明確に認識した。 「逃げろ逃げろ!!蜂の巣にするぞ!!アハハハハハ・・・・・・。」 訓練場からそんな声と共に銃声が鳴り止まない。 なるほど。 こういう趣向か。 だが、ティアナのやつが意図に気がつけるか。 「なのはさん!!やめさせてください!!お願いします!!」 「無理だなスバル。諦めろ。」 「そんな!!シグナム副隊長。」 「なのは、話してやれ。ティアナがなんで模擬戦やることになったか。 私はもう口にする気さえ起こらん。」 隊長として合理的な選択だと私は思う。 主はやてと六課の人間を天秤にかければ躊躇いもせずに私が主はやてを選ぶのと同じだ。 もっとも、賭けの内容には吐き気さえするが。 むしろ巻き込まれたなのはに私はどちらかといえば同情的だ。 さて、そんなことはどうでもいいとして、見事なものだな。 センターガードは動かないものという認識があったが、 動き回れるセンターガードというものもスタイルとしてありえるのだと思い知る。 シュートバレットによる迎撃と遮蔽物を併用してティアナの攻撃を全て防いでいるのか。 逆にティアナのほうが隙間を抜かれて身体を撃たれている。 私ならどう挽回したものか。 「あ、あのシグナム副隊長。」 「なんだ。」 「あれってはんたさんが物凄く手加減している・・・・・・んですよね?」 「ほう。」 テスタロッサが引き取ったエリオだったか。 良い目をしている。 とはいえ、あそこまで露骨にやっているのに気がつかないほうがおかしいか。 「はんたさんならいくらでも簡単に倒せるのに、同じ速さで砲撃魔法だって撃てるのに、 魔力弾をあんなに無駄撃ちするなんてはんたさんらしくないです。」 「他には?」 「え?えっと・・・・・・。」 「ティアナさんに合わせたみたいな戦い方をしています。」 「ルシエも良い目をしているな。だが少し違う。」 「え?」 「合わせたみたいじゃなくて合わせているんだ。あれは。」 「つまり、ええと、ティアナさんの戦闘スタイル?」 「その完成形の1つだな。」 まるで手本があったような完成振り。 ティアナからすれば悪夢みたいな相手だろう。 同じ戦闘スタイルで戦われて劣った火力で一方的にやられるなど・・・・・・。 主力のシュートバレットはシュートバレットで迎撃されている。 実際は火力を下に設定しているせいで軌道を歪める程度だがそれで十分だ。 連射は体裁きと遮蔽物で避ける。 反撃も忘れていない。 あれは予測したところに弾をおいているのか。 熱源追尾のバレットFは遮蔽物に当たるばかり。 入り組んだ場所で追尾系の魔法がろくに機能するはずがないだろうに。 クロスファイアも追いきるまでに遮蔽物にぶつけられる。 当てることに気が寄って、速度をあげることが思いつかんようだな。 なにより脚を止めるから使用後の硬直に身体へ4発もらうことになっている。 ヴァリアブルシュートは継ぎ目の無い4連射で貫通されている。 第一、場面として撃つ必要がないだろう。 そのせいか、1度だけ撃たせた後は予備動作のときに4発撃ち込まれている。 砲撃魔法たるファントムブレイズなど詠唱することさえ許しはしない。 ああ、消耗の激しい砲撃魔法を使わせないことで戦いを引き延ばしているのか。 地形相性まで見事に考えたものだな。 私がティアナなら・・・・・・。 クロスレンジに持ち込んで零距離射撃で撃ち合うと最初に考えるあたり偏ってるな。 あとは、ろくに照準もつけずに片っ端からクロスファイアを撃ち続けるしか思いつかん。 だが、魔力量で負けるな。 ならば、地形を生かすか。 だめだな。 そういった使い方ができる場所を上手く避けている。 模擬戦ではなく実戦だったなら、迷わずに一時撤退するべき場面だな。 さて、残ったティアナの手は幻影魔法か。 「・・・・・・そんな。クロスミラージュ、なにか間違えてない!?」 「No. It’s true. That’s like a monster・・・・・・・.」 あたしの攻撃という攻撃が無効化される。 火力の想定を向こうが騙していると思ったけど、クロスミラージュは真実だと言う。 メインのシュートバレットが通じない。 いくら狙いをつけても簡単に避けられるし、迎撃される。 連射も同じだ。 こっちが2発目を撃つよりも先に反撃の魔力弾が飛んでくる。 動きが読まれていたみたいにピタリと・・・・・・。 バレットFもこんなに簡単に避けられるなんて思いもしなかった。 クロスファイアをいくら追尾させても追いきれない。 それに脚を止めると全身が撃たれた。 砲撃魔法は絶対に撃たせてくれないし、撃ってる暇がない。 ヴァリアブルシュートなど1度は撃たせてくれたのに、2度は撃たせてくれない。 正面から撃ちぬかれた事実にはパニックを起こす以上に恐怖が煽られた。 全身が痛い。 でも脚を止めたら・・・・・・。 今のあたしは脚を止めたら殺されるという恐怖だけで身体を突き動かしている。 目の前のビルの窓に飛び込む。 受身をとって即座に逃げる。 「追って・・・・・・きてる?」 「No.」 クロスミラージュに確認させると、部屋の1つに転がり込んだ。 ようやく息がつける。 全身が痛い。 どうしてこんな目に・・・・・・。 対処方法を考えないと。 ぐちゃぐちゃの思考と泣き出したくなる感情を無理矢理抑えて、 対処法を考える。 まだやっていないのは幻影魔法。 魔力量はかなりぎりぎり。 騙せると信じよう。 廊下を走って逃げていくあたしの幻影を作り出す。 お願いです。 神様、どうか・・・・・・。 あたしの幻影を追うように足音が追いかけていった。 あたしのいる部屋の前で一瞬脚を止めた気がしたのは気のせいだと思いたい。 でも、どうしよう。 残り魔力量もたいして残っていない。 カートリッジはとっくに撃ち止め。 あたしが取れる選択肢は・・・・・・。 最後に残った選択肢が1つしかなくて、その内容に屈辱の余り泣きたくなった。 細心の注意を払って足音を殺してあたしが取った行動。 それは『逃げる』。 「ティア!!」 ああ、スバルの声が聞こえる。 みんなの姿がある。 ああ、これで終わったんだ。 でも、スバル、どうしてそんな顔をしているの? まるでお化けでもみたような・・・・・・。 「どこへ行くんだお嬢さん。『死ぬ気』にはぜんぜん足りないよ。」 脚に撃ち込まれたそれがシュートバレットであると、 身体が宙を舞って地面を転がったときに気がついた。 闇に溶け込んでいたところから浮き出てくるように表れた緑の悪魔。 恐怖のあまりに脚は動こうとさえせず、手は震えがとまらない。 魔力ももう残っていないのに・・・・・・。 こわばった声帯は『助けて』と叫ぶことさえできない。 「まさかこの程度で抵抗も逃げるのもおしまいなのか? どこも壊さないように気をつけて痛めつけたのに。 たかが魔力が残り少ないくらいで諦めるなんて言いださないよな。 『死ぬ気』なんて軽々しく口にしたお嬢さん。」 なにも答えられない。 あるのは絶望だけ・・・・・・。 「アルファに調べ物をさせていたら興味深いエピソードがあってね。」 髪をつかまれ引きずり起こされる。 視線のど真ん中にあるのは銃口・・・・・・え? 「失明しても夢をおいかけられるかな。全員動くな!!」 しつめい? その言葉が失明という言葉の意味と一致するのに数秒の時間が必要だった。 トリガーに指がかけられる。 もう魔力なんて関係なかった。 がむしゃらという言葉そのままに子供のように暴れるだけ。 失明したら、目が見えなくなったら、強さが、誰も守れなく、嫌、嫌・・・・・・。 全ての思考が消え去って、『嫌だ』というたった1つで埋め尽くされる。 本当に必死にもがいた。 後にも先にもこれ以上ないくらいに必死に・・・・・・。 けれど、鋼のような腕は微動だにせずあたしを決して離さなくて、 銃口はピタリと動かないままで、無慈悲にそのトリガーは引かれた。 「ひっ・・・・・・」 響いたのは金属音。 不発? 助かった? 脚を生暖かい液体が伝っていくのを感じる。 「弾数は4発って言ったのに、数えていないなんて本当に限界だったのか?」 弾切れ? あはは・・・・・・。 頭を掴んでいる鋼の右腕が冷たい。 ああ、脅しだったんだ。 よかった。 「貴様を掴んでいる右腕は紛れも無く義手だ。未熟だった俺が代価に支払ったもの。 ティアナ・ランスター。貴様はどれだけ代価を支払う?なにになりたい? どこへ行きたい?貴様の夢『誰も失いたくないから強くなりたい』。大いに結構だ。 だが、強さを手に入れた後に『どうやって』守る? 大切なヤツ以外はくたばれと見捨てるか? 誰も彼も助けたいと手を伸ばして自分が犠牲になるか? 視界の端から順に片っ端から見境無く消し飛ばしていくか? 六課の人間は揃いも揃って同類を揃えたのか揃って『どうやって』が抜ける。 なのはもフェイトもはやてもヴィータもシグナムもシャマルもスバルもエリオもキャロもリインもシャーリーも貴様も揃いも揃って!!力が欲しい?だったらどんな力が欲しいか言っておけ。基礎だから大切?だからなぜ基礎が大切なんだ?どこにどうやって繋がる? 今やっている訓練はなにを見据えたものだ?自分の口ではっきり告げろ!! 全部分かっているものとして中途半端に理解しあってすれ違って仲違いするくらいなら いっそ馬鹿にしているのかって怒り出すくらい丁寧にやれ!!」 あたしの頭が解放された。 頬に当たる冷たい地面が気持ちいい。 離れていく緑の悪魔・・・・・・。 ああ、助かったんだ。 あたし・・・・・・。 「ああ、忘れてた。」 え? 「『死ぬ気』と今後使いたかったらこの程度食らってからにしろ!!」 止むことのない銃声とマズルフラッシュ。 全身に襲い掛かる衝撃。 身体がバラバラになったみたい。 吸い込まれるようにあたしは意識を失った。 「ダメージらしいダメージは残していない。関節部は狙わなかったし、 顎も狙わなかった。額に数発くれてやった後は頭に撃ち込んでいないし、 脊椎付近も狙わなかったって見れば分かるか。完膚ありすぎだな。 戦車に轢かれるよりはましな痛みで済ませたから、治療と魔力供給してやってくれ。」 すれ違いざまにシャマルに告げる。 なにか騒いでいるが気にしない。 それ以上にうるさいのはオレの中。 ああ、ウルサイ、オレ。 俺の意思が決めたんだ。 抗いきれなかった貴様らは大人しく隷属しろ。 殺せと騒ぐな。 「あんたは・・・・・・あんたは・・・・・・誰か守りたいって思ったことないのかよ!!!!!」 泣き叫ぶようにスバルが言った言葉が突き刺さる。 守りたいなんて思う暇は無かった。 子供を守るためにサイボーグになってまで戦い続けた誰かがいた気がしたけど覚えてない。 守りたいなら先に殺すのが当たり前だったのだから・・・・・・。 あの世界では、自分だけは守れるのが当たり前で、 勝てないと思ったら逃げ出すのが当たり前で、 強者は栄えて弱者は踏みにじられるのが当たり前で、 攻撃させる前に攻撃するのが当たり前だった。 守るっていったいどういう意味の言葉なのだという次元のそれだ。 それを言ってもかけらも理解してはもらえないだろう。 だったらこう答えるのが一番いい。 「・・・・・・だからこんなになったのさ。」 絶句したような一同を背中に隊舎へ脚を向けていた。 ぼんやりとした視界が目の前に広がる。 視線の先で光っているのはルームライトだと気がついて、 今更だがあたしが横たわっていることに気がついた。 前後の記憶が・・・・・・あった。 一瞬だが、全身が幻肢痛に襲われてのたうつ。 徹底的に追い立てられた挙句、これでもかってくらい蜂の巣にされたと身体が覚えている。ここは・・・・・・医務室? 「本当に手加減してくれていたんだ。起きた?ティアナ。」 「・・・・・・なのはさん。」 「2人ともはんた君に怒られちゃったね。」 「・・・・・・はい。」 「はんた君のこと、憎い?恨んでる?」 答えるのに困った。 才能もレアスキルも持たないのに力だけはある狂人だとばかり思っていたのに、 今でもはっきり頭を掴んでいた冷たい鋼の右腕の感触が思い出せる。 天才だと思っていたなのはさんも本当に苦しい思いをしてきたってことも・・・・・・。 吐き戻すなんてレベルじゃないくらい辛い思いを重ねてきたんだって。 「答えにくい?それならはんた君がティアナのこと、ずっと殺したかったって知ってた?」 「えっ!?」 聞き間違いだと思った。 けれど、なのはさんは訂正する様子がない。 殺したい? 比喩表現なんかじゃなくて? 冗談・・・・・・ですよね? 「物凄く不器用だけど羨ましかったりするんだよね。」 「どうして・・・・・・ですか?」 「気に入らなければ無視しちゃえばいいんだよ。 知ってた?愛情の反対語は憎悪じゃなくて無関心なんだよ。 ずっと思い続けるのってとても大変なことなのに、 ティアナはずっとはんた君に殺したいって思われてたんだ。」 それでも殺したいなんて言われて笑っていられない。 でも、ずっと思われていたってことだけは分かった。 「はんた君、賭けには負けるつもりだったんじゃないかって思うんだ。」 「え?」 「ティアナが本当に夢を叶えるつもりだったら、どんなに屈辱を受けても 絶対に命を粗末にはしないって賭けの前に言ってたんだ。おかしいよね。 お兄さんのことも知っててティアナが夢を叶えるつもりだって分かっているのに、 命を粗末にすることを言うほうに賭けてるんだから。まぁ、結果はあれだったけどね。」 そう言われて初めて気がついた。 あたしが無茶をして壊れたら、夢が叶わなくなるんだって・・・・・・。 誰も傷つけたくないための力なのに、皆を危険にさらしていたんだって・・・・・・。 軽々しく『死ぬ気で』なんて思っていたあたしの愚かしさに本当に死にたくなる。 「本当に、わたしも言っておけばよかったよね。無茶すると危ないんだよって。」 「・・・・・・すいませんでした。」 「じゃあ、分かってくれたところでわたしも謝っておこうかな。シグナムさんから聞いた? はんた君との賭けでティアナとの模擬戦を賭けたって・・・・・・。勝手にティアナをチップにしちゃったんだもん。本当にごめんね。」 「い、いえ・・・・・・。あたしが軽々しく死ぬ気なんて言ったから・・・・・・。」 「それでもチップにしちゃったことは変わらないよ。だから、ごめんなさい。」 「・・・・・・それなら、あたしの今までと御相子で。あたしからもごめんなさい。」 「・・・・・・そう。それじゃ、御相子にしようか。ところで、ティアナは気がついていた? いい勉強になる模擬戦だったって。はんた君、ティアナができることだけしかやらなかったんだよ。わたしもシグナムさんに言われて初めて気がついたんだけどね。 センターガードは動かないものなんて頭から決め付けちゃって、わたしもだめだよね。」 「えっ!?」 「射撃形の真髄とセンターガードの役割は?」 「あらゆる相手に正確な弾丸をセレクトして命中させる判断速度と命中精度、 チームの中央に立って、誰よりも早く中・長距離を制する・・・・・・あっ!?」 「『動かないで』とは一言も言ってないんだ。動くと後が続かなくなるのはそういう訓練をしていないからなんだってこと。反動が大きかったり、集中が必要な魔法は別かもしれないけど、脚を止めずにシュートバレットだけであれだけのことされたから分かったよね。」 「はい・・・・・・。」 「本当にティアナとたくさん話をすればよかったよね。どうやって戦いたいとか、どんな強さが欲しいとかぜんぜんわかってなかった。無茶をすると危ないってことに 気を取られて、それがどうやって役に立つか1度も言わなかったもんね。 基礎だからなんて言葉で終わりにしちゃってさ。」 「いえ、わたしが相談しなかったのが悪いんです。」 「さっきから謝ってばかりだね。わたし達。」 そう言って笑ってくれるなのはさんの心遣いが痛かった。 どうしてあたしを見捨てないで付いていてくれるのですかと大声で叫びたいほどに。 「それじゃ少し叱っておこうかな。射撃と幻術しかできない凡人ってティアナは 言ったけどそれって間違ってるからね。わたしやはんた君の魔法で分かったと思うけど、 ちゃんと使えばティアナの魔法物凄く避けづらくて痛いんだよ。」 「はい。」 1日に2度も気絶させられておいて、いいえなんて答えられない。 鮮明に思い出せるほど、本当に痛かった。 避けにくいということも・・・・・・。 「フォワードのみんなはまだ原石の状態だから、でこぼこだらけで価値もまだわからないかもしれないけど、磨いていくうちにどんどん輝く部分が見えてくる。 エリオはスピード、キャロは優しい支援魔法、スバルはクロスレンジの爆発力、3人を指揮するティアナは射撃と幻術で仲間を守って、知恵と勇気でどんな状況でも切り抜ける。 そんなチームが理想形でゆっくりだけどその形に近づいていってる。一番魅力的な部分をないがしろにして慌てて他のことをやろうとするから危なっかしくなっちゃうんだよって教えたかったんだけど、そういう目的で訓練させていたって言えばよかったよね。本当に・・・・・・。」 なんのための訓練なのか、漠然としか理解していなかったあたし。 なのはさんが本当に考えてくれていたんだって今更気がつく。 引き出しを増やすことばかり気にしていた。 未熟な技を未熟なままでおくことを気にもしなかった。 だけど、本当にやるべきだったのは、自主練習をするのならば、 なのはさんの訓練をさらに反復させることだったんだって。 「それに、ティアナの考えていたことも間違いじゃないんだよね。 システムリミッター、テストモードリリース。」 「Yes.」 「命令してみて。モードⅡって。」 「モードⅡ。」 「Set up. Dagger Mode.」 クロスミラージュが変形していく。 あたしが作った魔力刃よりもはるかに優れたそれが展開されていく。 「これは・・・・・・。」 「ティアナは執務官志望だもんね。ここをでて執務官を目指すようになったら、 どうしても個人戦が多くなるし、将来を考えて用意はしてたんだ。 はんた君とシグナムさんにはぼろぼろに言われちゃったモードなんだけどね。 ろくに訓練もしないで使えるのは鈍器で、ナイフとかダガーなんて 訓練がいるものにしてないよなーって。」 どれだけ周りがあたしを思ってくれていたのか気がつかされた。 なのはさんはあたしの将来、夢を実現することまで考えてくれていた。 狂人だと思っていたはんたでさえ、未熟なあたしが生き残れるように振舞って、 実戦で生き抜けるようにいろいろ話しもしてくれていたんだって・・・・・・。 涙が零れ落ちる。 嗚咽がとまらない。 もう、こらえることなんてできなかった。 「クロスもロングももう少ししたら教えようと思ってた。でも、出動が今すぐにもあるかもしれないでしょ。だから、もう使いこなせている武器をもっともっと確実なものにしてあげたかった。 でも、あたしの教導地味だから、あんまり成果がでていないように感じて、苦しかったんだよね。ごめんね。」 「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい・・・・・・。」 医務室のベッドの上で、子供みたいになのはさんにすがり付いて泣きじゃくり続けた。 どれだけ馬鹿をやったのか思い知って・・・・・・。 どれだけみんなの信頼を踏みにじったのか思い知って・・・・・・。 どれだけ夢を追いかけているつもりで捨てようとしていたのか思い知って・・・・・・。 でも、なのはさんがどれだけのものを賭けたのか最後の最後まで気がつけなかった。 覚悟を決めて、わたしははんた君の部屋を訪れている。 正直怖い。 こんな形になるなんて夢にも思っていなかったから。 皆が止めた。 レイジングハートさえ愚かしい、馬鹿げてると言った。 お父さんやお母さんにこの話を知られたら今まで経験がないくらいに怒られるだろう。 むしろ知り合い全員が青筋立てて怒り出すだろう。 だからみんなの前では『行かない』と言っておいた。 けれど、それではあまりにも不誠実すぎるから。 だからわたしはここに来た。 正直逃げ出したい。 脚は震えっぱなしだ。 なにをされるのか分からない未知への恐怖もある。 人を信じることをやめてしまいそうなほど心に皹が入ってる。 けれど、逃げたら高町なのはが高町なのはじゃなくなっちゃうから。 わたしの身体なんかでティアナ達が自分の道を歩けるようになるなら、それで構わない。 授業料として払おう。 目を硬く閉じて、目の前のドアをノックする。 返事がない。 もう1度叩く。 返事がない。 あれ?・・・・・・留守? あれだけ戦い続けたのに、こんな時間にいったいどこへ・・・・・・。 たしかに隊舎へ戻ったのを皆で見送ったのに・・・・・・。 肩透かしを受けたように、いろんな感情が一斉に抜けて、わたしは廊下に座り込んでいた。 「マスター。バイタルに若干の異常があります。それに賭・・・・・・。」 「アルファ、ジャック・ザ・デリンジャー1000体。エンドレス。装備、デリンジャーのみ。 イレギュラーあり。シミュレート開始。」 「・・・・・・了解しました。マスター。2時間で停止・・・・・・。」 「日の出までだ!!」 「了解しました。マスター・・・・・・。」 ティアナ・ランスター。 かつての身の程知らずの自分をみているようで苛立ちが収まらなかった相手。 俺が蜂の巣にされたのと同じように、蜂の巣にしてやった。 同様に俺が慈悲をかけられ屈辱と悔恨で発狂しそうな目にあったように、 ティアナにも同じ慈悲をかけてやった。 これで変わらければどうしようもない身の程知らずの馬鹿で、俺の勘違いだったのだろう。 結局俺が得たものも、失ったものも、なにもない。 だが、俺が気づかなかっただけで失ったものはあった。 機械ならば日常用をレース用に、あるいは軍事用を日常用に改造できただろう。 しかし、はんたはどれだけバケモノじみていても1人の人間にすぎない。 思考と感情と遺伝子全てが殺せと叫びをあげるのに、 意思だけで反射行動さえも押さえつけてまで行った振舞いは当然どこかに歪みを起こした。 悲鳴を上げて壊れ始めていたメインシャフトの致命的な歪み。 目の前にずらりと並んだのは賞金首ジャック・ザ・デリンジャー。 西部最強の賞金首。 俺を蜂の巣にした、『ただそれだけ』の相手。 幼馴染の父親と賞金首の区別ができなくなってしまった事実にはんたは気がつけない。 愚直なまでの誠実さと不器用な在り方をそのままに、身体だけがぼろぼろ壊れていく。 そのまま朝まで狂ったように踊り続けたはんたの崩壊はその加速を増すばかり。 なのはのことなど『当然』忘却の彼方だった。 マスターが壊れ始めている。 人間という個体として以上に、その在り方が・・・・・・。 この世界にきてから崩壊の速度は増すばかり。 なにがどう壊れたか、私にはフィジカルな部分しか理解できない。 けれど、メンタルな部分が悲鳴をあげているのだと、 マスターに教えられたアナログで非効率な論理が導き出している。 もしかしたら、賭けのことなど忘却してしまうほどに壊れてしまったのかもしれない。 それならば、私が代わりに記録しておこう。 高町なのはを単なる性欲処理の道具やうさ晴らしの道具とする以上に、 有効な使い道がいつか必ず来てしまうだろうから・・・・・・。 永遠にその日が来ないことを、狂ったようにシミュレータを続けるマスターの腕の中、 膨大な情報を演算して送り続けつつ魔力弾を撃ち放ちながら、 0と1の思考しか存在しない私が非論理的だと知りつつ初めて祈った。 どうかこの願いが人間の神か、赤い悪魔か、機械仕掛けの神に届いてくれますように・・・・・・。 前へ 目次へ 次へ
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2011年02月23日17 00 2011年2月23日(水)12 00より実施しておりましたメンテナンス作業が完了致しました。 今回のメンテナンスにて下記内容に対応致しました。 [対応内容] メタルくじ商品更新 イベント「節分 de 鬼退治!!」各対象賞金首討伐数TOP10&23カンパニーへの報酬配布 合成レシピ追加 引き続き「メタルサーガ・ニューフロンティア」をお楽しみ下さい。 2011年02月16日17 00 2011年2月16日(水)12 00より実施しておりましたメンテナンス作業が完了致しました。 今回のメンテナンスにて下記の内容に対応しております。 [対応内容] メタルくじ商品更新 イベント「ハッピーバレンタインバトル」開催 イベント「節分 de 鬼退治!!」終了 メタルショップアイテム「ドロッププラス」「賞金首再挑戦」値引き 合成レシピ追加 アルバイト追加(期間限定) クエスト追加(期間限定) 引き続き「メタルサーガ・ニューフロンティア」をお楽しみ下さい。 2011年02月09日17 00 2011年2月9日(水)12 00より実施しておりましたメンテナンス作業が完了致しました。 今回のメンテナンスにて下記内容に対応しております。 [対応内容] メタルくじ商品更新 パワーupキット対応アイテム追加 表示項目一部追加(倉庫、合成) 「倉庫255」「倉庫999」における不具合対象者へのアイテム返還 スキル「賞金首キラー」の経験値取得に関する不具合修正 引き続き「メタルサーガ・ニューフロンティア」をお楽しみ下さい。 2011年02月2日17 00 2011年2月2日(水)12 00より実施しておりましたメンテナンス作業が完了致しました。 今回のメンテナンスにて下記の内容に対応致しました。 [対応内容] イベント「節分 de 鬼退治!!」開催 メタルくじ商品更新 合成レシピ追加 戦車保有台数上限増加 スナップショット追加(駐車場) メタルショップアイテム「バトーキット」値下げ 引き続き「メタルサーガ・ニューフロンティア」をお楽しみ下さい。 2011年01月26日 17 00 2011年1月26日(水)12 00より実施しておりましたメンテナンス作業が完了致しました。 今回のメンテナンスにて下記内容に対応しております。 [対応内容] メタルくじ商品更新 合成レシピ追加 モンスターのアイテムドロップ率に対する【幸運】の作用を調整 引き続き「メタルサーガ・ニューフロンティア」をお楽しみ下さい。 2010年12月29日17 00 2010年12月29日(水)12 00より実施しておりましたメンテナンス作業が完了致しました。 今回のメンテナンスにて下記内容に対応しております。 [対応内容] イベント「ごろカルテットの行く年来る年」開始 メタルショップアイテム「福袋」「パワーupキット」「合成開眼LV5」「倉庫255」「倉庫999」追加 「チャレンジ賞金首」追加 メタルくじ商品更新 合成+4、+5追加 戦車追加 メタルショップ装備のグレードアップ ステータス表示の一部変更 ※HPの表示桁数増加、およびチーム選択時に表示される最大TPを削除 引き続き「メタルサーガ・ニューフロンティア」をお楽しみ下さい。 2010年12月22日20 00 2010年12月22日(水)10 00より実施しておりますメンテナンス作業が完了致しました。 今回のメンテナンスにて下記内容に対応しております。 [対応内容] イベント「サンタが戦車でやって来る!?」開催 期間限定アルバイト「サンタ」追加 メタルショップアイテム「即時効果アイテム」期間限定値引き メタルくじ商品更新 合成レシピ追加 武器の攻撃回数拡張 一部アイテムの店売り価格改定 引き続き「メタルサーガ・ニューフロンティア」をお楽しみ下さい。 2010年12月15日17 00 2010年12月15日(水)12 00より実施しておりましたメンテナンス作業が完了致しました。 今回のメンテナンスにて下記内容に対応しております。 [対応内容] メタルくじ商品更新 メタルショップアイテム「装甲タイルLv.5」追加 引き続き「メタルサーガ・ニューフロンティア」をお楽しみ下さい。 2010年12月8日17 00 2010年12月8日(水)12 00より実施しておりましたメンテナンス作業が完了致しました。 今回のメンテナンスにて下記内容に対応しております。 [対応内容] メタルくじ商品更新 引き続き「メタルサーガ・ニューフロンティア」をお楽しみ下さい。 2010年12月1日17 00 2010年12月1日(水)12 00より実施しておりましたメンテナンス作業が完了致しました。 今回のメンテナンスにて下記内容に対応しております。 [対応内容] メタルくじ商品更新 メタルショップアイテム「採掘回数リセット」追加 イベント「入隊試験! 鉄道警備隊」終了 合成レシピ追加 引き続き「メタルサーガ・ニューフロンティア」をお楽しみ下さい。 2010年11月24日17 00 2010年11月24日(水)12 00より実施しておりましたメンテナンスが完了致しました。 今回のメンテナンスにて下記内容に対応しております。 [対応内容] メタルくじ商品更新 メタルショップ「パワーエサ」追加 イベント「入隊試験! 鉄道警備隊」開催 @ほぉ~むカフェ、アニロココラボイベント「メイド喫茶開店計画」終了 引き続き「メタルサーガ・ニューフロンティア」をお楽しみ下さい。 2010年11月17日17 00 2010年11月17日(水)12 00より実施しておりましたメンテナンス作業が完了致しました。 今回のメンテナンスにて下記内容に対応しております。 [対応内容] イベント「再依頼・新種発見!?」終了 メタルくじ商品更新 メタルショップアイテム「アニマルポケット」「衛星ナビ」追加 メタルショップアイテム「行動即終了」50%OFF 合成レシピ追加 引き続き「メタルサーガ・ニューフロンティア」をお楽しみ下さい。 2010年11月10日17 00 2010年11月10日(水)12 00より実施しておりましたメンテナンス作業が完了致しました。 今回のメンテナンスにて下記内容に対応しております。 [対応内容] イベント「再依頼・新種発見?」開催 メタルくじ商品更新 メタルショップアイテム「行動即終了」追加 合成レシピ追加 「メイド喫茶開店計画」アルバイト追加 引き続き「メタルサーガ・ニューフロンティア」をお楽しみ下さい。 2010年11月04日17 00 2010年11月4日(木)13 00より実施しておりましたメンテナンス作業が完了致しました。 今回のメンテナンスにて下記内容に対応しております。 [対応内容] メタルくじ商品更新 メタルショップアイテム「チェンジカラー」「NW弾」追加 「メイド喫茶開店計画」アルバイト追加 動物装備追加 引き続き「メタルサーガ・ニューフロンティア」をお楽しみ下さい。 2010年10月27日17 00 ■メンテナンス作業完了のお知らせ 2010年10月27日(水)12 00より実施しておりましたメンテナンス作業が完了致しました。 今回のメンテナンスにて下記内容に対応しております。 [対応内容] 「@ほぉ~むカフェ」「アニロコ」コラボイベント「メイド喫茶開店計画」開催 期間限定アルバイト追加 メタルくじ商品更新 「動物」追加 メタルショップアイテム「アニマルバリア」追加 メタルショップアイテム「社員数上限+1」追加 スナップショット追加 引き続き「メタルサーガ・ニューフロンティア」をお楽しみ下さい。 2010年10月20日17 45 ■スケジューラー+が利用できないという事象について 2010年10月20日(水)17 00より、スケジューラー+が利用できないという事象が発生しておりましたが、 不具合箇所を修正し、現在では問題なく利用できる事を確認しております。 ※ご利用に際しまして、インターネットブラウザのキャッシュをクリアして頂きます様お願い致します。 ご利用の皆様には大変ご迷惑とご不便をお掛け致しました事を深くお詫び申し上げます。 引き続き「メタルサーガ・ニューフロンティア」をお楽しみ下さい。 2010年10月20日17 00 ■メンテナンス作業完了のお知らせ 2010年10月20日(水)14 00より実施しておりましたメンテナンス作業が完了致しました。 今回のメンテナンスにて下記内容に対応しております。 [対応内容] Lv66以降のレベルアップに必要な経験値を下方修正 ※社員のステータス画面に表示される「NEXT」の数値が変更されます。 ※「EXP」の数値に変更はございません。 ※レベル上限値は200となります。 メタルくじ商品更新 引き続き「メタルサーガ・ニューフロンティア」をお楽しみ下さい。 2010年10月13日17 00 ■メンテナンス作業完了のお知らせ 2010年10月13日(木)14 00より実施しておりましたメンテナンス作業が完了致しました。 今回のメンテナンスにて下記内容に対応しております。 [対応内容] メタルくじ商品更新 ゴロカルテット逆襲イベント「頂点はおれたちだ!!」報酬配布 引き続き「メタルサーガ・ニューフロンティア」をお楽しみ下さい。 ■レベルアップに必要な経験値改定のお知らせ レベルアップに必要な経験値につきまして、下記の通り改定致します。 [改定内容] Lv66以降のレベルアップに必要な経験値を下方修正 ※社員のステータス画面に表示される「NEXT」の数値が変更されます。 ※「EXP」の数値に変更はございません。 この改定により「EXP」が「NEXT」を上回った場合、改定後にセットされた タスクの戦闘終了時に「改定後の数値」を元にレベルアップ処理が行われます。 ※レベル上限値は200となります(10.10.13 17 05追記) [適用日] 2010年10月20日(水)メンテナンス作業完了時より 何卒ご理解とご協力の程、宜しくお願い致します。 2010年10月13日17 00 ■メンテナンス作業完了のお知らせ 2010年10月13日(木)14 00より実施しておりましたメンテナンス作業が完了致しました。 今回のメンテナンスにて下記内容に対応しております。 [対応内容] メタルくじ商品更新 ゴロカルテット逆襲イベント「頂点はおれたちだ!!」報酬配布 引き続き「メタルサーガ・ニューフロンティア」をお楽しみ下さい。 2010年10月06日18 00 ■メンテナンス作業完了のお知らせ 2010年10月6日(水)14 00より実施しておりましたメンテナンス作業が完了致しました。 今回のメンテナンスにて下記内容に対応しております。 [対応内容] ゴロカルテットイベント終了 合成レシピ「砲塔」追加 メタルくじ商品更新 サーバー保守作業 引き続き「メタルサーガ・ニューフロンティア」をお楽しみ下さい。