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131 :ヒナヒナ:2012/02/29(水) 21 58 36 薄暗い洋館のような内装。窓がないことからして地下室のようだ。 広間と呼ぶには手狭な部屋は、光量を抑えられたランプや燭台に照らされており、 壁には幾何学模様の書かれたタペストリー、棚には羊皮紙製の洋古書の類が並んでいる。 部屋の中央には円卓が一つ。卓を囲むように椅子に掛けているのは4人。 フードつきのローブの様なものを被っているので顔はうかがい知れない。 全員を睥睨する様に上座に座っていた男がゆらりと立ち上がる。 「皆、それぞれの任務(さだめ)の中、此度の召集に応じてもらってご苦労だった。 ではここに第32回、大日本帝国聖魔封印結社秘密集会を開催する。」 バッと、フードつきのローブを取り去ると、 そこにいたのは金モール付き階級章のついた軍服を身につけた陸軍軍人。 夢幻会一の邪気眼の使い手、富永だった。 ○邪気眼派の休日 「ふっ、原罪の開放(アメリカ風邪)とはソドムの民(旧アメリカ人)もやってくれるじゃないか。」 「くっくっく、そして、原罪を解放しようとした罪深きゴモラの民(メキシコ人)は ラピュタの雷……いやインドラの矢(核)によって裁かれた。 危ない所であったが、原罪は再びソドムの地に封印されるだろう。」 「そうなると、今世のラグナロク(世界大戦)は回避できたということか?」 「すでに第二の封印(核実験とメヒカリの分)まで解き放たれたが、 俺の右手の第三の力(メキシコシティの分)を使うには至らなかったようだな。」 全員、ノリノリだった。 ちなみにここは東京都某所にある邪気眼派の人員(独身)の自宅地下だ。 怪しさ満点の作りだが、地上部は普通の日本建築だ。 隠し扉のカラクリを作動させて地下への階段を出現させると、この地下へ入れる。 廊下の奥のカラクリ階段から降りると土塀から石塀へと代わり、 実用性のないように見えて実は複製が困難なつくりをしているという 意味不明な大型の鍵を使って入るこの部屋は、邪気眼派のサロンになっているのだ。 彼らはあまり人目を気にしなかったが(気にするようなら真の邪気眼ではない)、 彼らの趣向からして、一般人の目から隠れて活動する超人的な設定が好まれたので、 周囲からみれば、独り言が多くて偶に言動が少し怪しくなる人達という認識になっている。 ちなみにこれは邪気眼でなくとも逆行者には比較的多い性質の人間だ。 我らが帝国宰相も、傍から見ると独り言が多く(辻やアホ議員への呪詛)、 多分に妙に確信的に行動を起こす(未来知識のため)。 それはともかく、何かを知っている様な素振をしてみせるだけではつまらない。 そのため、彼らはこのような同じ趣味の人間で集まり、堂々と妄想 (前世設定だったり、封印された力だったり、所属する秘密組織だったり…) を語る場として定期集会が実施されているのだ。 まあ、そもそも逆行者であるという事実や、 夢幻会という秘密組織の構成員であること自体が、すでに中二的ではあったが。 しかし、すでに彼らはそんな物は超越し、更なる設定を求めていたのだ。 互いに役に成りきり妄想を語り、それを自分なりに咀嚼して話を発展させ、 一つの世界観を作り出していく様子は、パッと見TRPGっぽかったが、 (ちなみにこのメンバーでTRPGをやると超展開ばかりで一向に収束しなかった) 内容は核攻撃だの、戦争だのと焦げ臭いことこの上なかった。 また、陰謀的なイメージからか、邪気眼保持者は陸軍軍人になるものが多くを占めた。 富永を筆頭に常に思わせぶりなセリフを吐き、周囲を引かせている彼らだが、 本気の邪気眼トークは内容が内容なだけ(核とか)に表では話せないのだ。 もちろん彼らとしても、自重して話していい事と悪い事はより分けてはいるが。 132 :ヒナヒナ:2012/02/29(水) 21 59 08 「さて、この場は我々がそのエターナルフォースを解放して、情報を交換する会であるが、 ここで一つ議題を提起したいと思う。」 その富永が大きな身振りで注目をひきつけた後おもむろに口を開いた。 「皆知っているが、未来の記憶を持つ者は比較的多いが、 その中で我々の様に力(邪気眼)を持つ者は一握りだ。 我々はその強大な力故に衰退の道を歩んでいるように思われる。 しかし、この力を絶やしてはならない。この力こそ非情な敵(現実)から、 同胞を守ることができる唯一の力であり、我々の真の定めだからだ。」 「力を絶やさずに守り続けると? ふむ、他の未覚醒の能力者(非邪気眼派の逆行者)の引き込みを?」 「いや違う。今まで非能力者(この時代の人)として捉えていた中から、 封印された才能の種を見つけ出すのだ。」 「しかし、我らは少数精鋭。新たな人間は必要ありますかな。」 「ラプラスの悪魔(未来を知ることの出来る思考実験上の存在)を使役できない民に、 我らと同じ力を目覚めさせた所で、上位組織(夢幻会)への貢献にはならないのでは?」 「現状では俗世のパトスに囚われて、真の力を解放できる者は少ない。 よしんば、瞳を解放できても我々と肩を並べられる者は少ないのでは。」 面倒なやり取りであるが、富永の言う事は、 もう夢幻会からじゃなくてこの時代の一般人を、邪気眼にしてしまおうぜ。 ということなのだが周囲は困惑気味だ。 同じような価値観がないと白けてしまいかねないからだ。 「そうだな、諸君らの言うことももっともだ。 しかし、私はただ能力者を目覚めさせようとしている訳ではない。 我らが女神の下僕を増やすため、アニメを作り共鳴したものを引き込むのだ。」 「女神?アニメ?……まさか!?」 「そう……ゼ○魔だ。」 「おお、聖典か!?」 「女神クギミーのしもべを作りだすと?」 「これならばアニメ派の支援も受けられる。なにより我々の仲間となりうる下地を作りだし、 なおかつ我らが女神の信者を増やすことができる。」 奇妙な笑い声や歓声が響き渡る部屋。 それは確かに彼らが設定した通りに、怪しい雰囲気を醸し出していた。 邪気眼派=クギミー派という訳ではないのだが、 ここに集まった人間は粗方、富永に染められており、 クギミー至上主義に目覚めていたのだった。 そして、彼らの聖戦が始まる。 (了)
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730 :ヒナヒナ:2012/01/05(木) 23 23 55 とある農水省課長の憂鬱 195×年 農水省 「技術を篤農家の聞取りをまとめて、来週試験場に提示しろ!」 「はい……課長、日曜日って何でしたっけ?」 「お前は、月曜までに素案もってこい。」 「今週中にセンサスをまとめるとか死ぬ。」 「あと外務省とも調整をつけて置け。」 「睡眠時間を……」 濁った目をしたスーツ姿の男達がデスクにかじりついてワープロを打ち、 決済を受けるためにスタンプラリー(決済印を各上司に貰い歩く)を実施し、 書類を持って部屋を行き来する。 農水省の庁舎では、戦時の軍部かと思うほど活気付いていた。 日本の農業の舵取りを行う彼らにとっては今が戦時なのだ。 加速度的に増えてきている農薬の、適正な使用方法の指導 米やジャガイモの基幹品種が開発されれば作型の策定 過度に都会に流れる人手を農家に繋ぎとめるための政策 それでも人手が足りないため、機械導入に向けた区画整理と農道整備 外務省と連携した国外農業改良への梃入れ 和食離れを防ぐために教育庁と連携して食育の推進 農業機械購入補助の資金の手配などなど…… どれもが今やらなければならない案件だった。 逆行者である課長としては、 自給率がカロリーベースで40%という史実日本は悪夢だった。 数値が低く出やすい統計法であるカロリーベース値で危機感を煽ってなお、 平成の日本政府はまったくアクションを起こさないどころか、 日本農業にとって致命的ともいえるTPPを認証する始末だった。 国家として、ある意味農業を諦めていた史実日本のようにはできない。 何故なら大日本帝国は今や列強筆頭。 致命的な弱みを国外に見せるわけにはいかない。 食糧を自給できない国(植民地を含めて)になれば、外交は不利になる。 異常気象のたびに飢饉が起こり、餓死者がでる国では、国としての信用を失う。 農水省ではこの見えない戦争を、「緑の戦争」とひそかに呼んでいた。 731 :ヒナヒナ:2012/01/05(木) 23 24 55 もちろん、すべての食料を国内で賄うことは物理的に不可能である。 日本列島は農業気候的にはそれなりに恵まれていたが、 増え続ける人口を養うには農業可能地が小さすぎた。 日本ではこれ以上農地を増やす事は難しいので、とりあえずは農地保護政策を推進した。 農地税率の保障と農業放棄地への課税。農家への保障制度の充実。 それでも伸び続ける食料需要の所為で、農水省は安心できないでいた。 「最近カリフォルニア共和国で稲の供給が増えています。外務省からの情報です。」 「日系法人が増えている所為か?」 「ええ、それもありますが、カリフォルニアでは邦人が増えた影響で、 旧米国人の間でも日本食が広がり、米の消費が伸びている模様です。 まあもともと米作地帯で農家もノウハウを持っているので増産も楽なのでしょう。」 「あの地域は晴天率が良いから炭酸同化率も高い。生産効率は日本より良いだろう。 良食味米は難しいかも知れんが、アジアが不作であったときの予備として使える。」 「水不足が無きゃ、本当にいい土地なのですけどね。」 ほぼ属国化している半島、中国沿岸地域は混乱が続き既に食料を持ち出せる状態ではない。 その点カリフォルニアは有望であった。 ある程度の生活水準を持っているので政情が安定すれば工業製品が売れる。 (ただし今は武器の需要が高かった) その対価として、日本は農産物を買い取れる。 ただカリフォルニア共和国には現在、難民が押し寄せていた。 特にナチスドイツ支配下での苛烈な統治から逃れるために、 最低限の人権は保障されるカリフォルニア地域に詰め寄せていた。 食料が消費され、カリフォルニア政府が輸出にまわす分の食料が目減りしていた。 こればかりは、軍や外交の力に頼るしかない。 アジア以外での大事な米の産地ではあるので、稲作については梃入れもしているし、 緑の革命(まだそんな名前は付いていないが)のためにカリフォルニアに設置した、 国際トウモロコシ・コムギ改良センター(CIMMYT)で、 周辺の友好州では小麦、トウモロコシの農業生産を強化していた。 ある程度政情が安定すれば農業生産地としても良い付き合いが出来そうだった。 732 :ヒナヒナ:2012/01/05(木) 23 25 33 「予算があれば、複数同時進行で調査や事業ができるのに。軍部の金食い虫め……」 「そういうな。軍が国を守って、農業者や農業技術者を無傷で返してくれたから、 我々も真っ当に仕事が出来るのだ。軍に農業者を取られっぱなしの国は悲惨だぞ。」 「ソ連とかソ連とかソ連ですね。」 「ドイツもだな。しかし、ソ連を思うと、わが国の指導者層がまともなのは救いだ。」 ちなみに夢幻会上層部の中で、農水省の一番の理解者はなんと辻だった。 予算の鬼、大蔵省の魔王などと揶揄されることの多い辻だが、 ことに各省庁の中堅からは信頼されていた。 (辻と直接交渉する上層部にとっては、やはり胃痛の種だった) 必要な所にはどんなことをしても予算をひねり出して付けるし、 予算の足りない分は精神力で(ry などと言わないため、 予算が本当に執行されるのか……といった余計な心配が無く職務に邁進できたのだ。 もちろん、予算はギリギリに絞られるので、常に過労状態ではあったが。 「東北地方も農地の整備がだいぶ進みましたし、総研様さまですね。」 「国内農業でも大変なのに、今度は国外も手を出すのか。睡眠時間が減るな。」 「うちは不夜城と化していますからね。もっとも何処の省庁も大体同じですが。」 「来月には国会で事務次官が答弁に立つからな。資料も用意しないと。」 「面倒ですね。目先しか見えない近視眼議員どもが。」 そんな背景をそれぞれが脳裏に描きながら、農水省の会議が進められた。 すでに農業政策は農水省だけでなく国家事業になりつつあったのだ。 それは国会議員らが口出ししてくるということであり、 一部の職員は苦い顔をしたが、課長らはそれについてよい兆候であると考えていた。 三大欲の一つに直結する食料事情について無関心であるより、よっぽどいい。 「それはいいとして、次は北米で農業指導ですか。仕事量ガガガ……。」 「まだ、旧米国人は字が読めるだけいいだろ。資料作って配布という手段が使える。」 「ああ、東南アジアでは上層部が漫画資料(もやし○ん風)を作って配布して、 やっと何とかなりましたからね。学がないと農業も出来ない時代になるなんて。」 「……。(夢幻会のやつらあれだけは嫌だって言ったのに農水省の黒歴史を作りやがって)」 「しかし、米国の穀倉地帯があれば、もうちょっと楽できたかもしれませんね。」 「北米の穀倉地帯は中東部だぞ。ロッキー山脈の向こう側だ。 あんな広大な地域を確保するなんて言ったら、陸軍が反乱起こすんじゃないか?」 課長は課内では自分にしか通じない皮肉を言って頬を歪める。 史実では大陸確保にハッスルしていた陸軍が、 主に上層部にいる逆行者の所為で大陸嫌いになっていたのだから。 それはともかく、旧米国は適地適作で大規模農業を営める国だった。 適した地で適した産業だけを行っていれば、ほとんど自給できてしまうのだ。 それは農業に限らないから性質が悪い。 まったく米帝様はこれだから……などと呟きながら、 課長は部下達の報告をまとめて、次々と指示を出してゆく。 手早く終えないと今日も徹夜になってしまう。 もっとも、すでに午前様は確定していたが。 米国の傘下というぬるま湯に浸っていた史実日本と違って、 列強筆頭として一つ一つに重責が伴う世界だ。 その中を泳ぎきるためには軍事だけでない力がいる。 ここで自分達が戦後世界の基礎を作り違える訳には行かないのだ。 今しばらくは、軍人達が主役の時代であるが、 それが終われば、彼ら閣僚や民間が主役の時代が来るのだから。 (了)
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538 :ヒナヒナ:2012/01/09(月) 22 15 28 ネタでは良く憂鬱日本のその後としてレールガンが出てきているので。 ○レールガン式撲殺兵器 さて、ここはとある料亭の奥座敷。そこに夢幻の重鎮が集まっていた。 第二次世界大戦を駆け抜けた嶋田、辻を筆頭とするメンバーだ。 しかし、新作カップラーメンを啜る様子は、 とても昭和の元老などと呼ばれている人間とは思えない。 会が始まるまで和やかな談笑…… 実際には、萌えや燃えについての主張をして嶋田のやる気を殺いでいたのだが、 時間になると、誰ともなしに黙って会合が開催される。 嶋田が会議の司会をしようとしたそのとき、近衛が開口一番爆弾を投げ込む。 「さて、レールガンでも作ろうと思うのだが。あ、辻の賛成も得ているぞ。」 はぁ? という声が唱和される。嶋田に至っては固まっている。 横で辻がうんうんと賛成しているように見えるのも混乱に拍車をかけた。 チートで技術的優位を確立しているとはいえ、 まだレールガンは夢物語に近い欠陥技術だった。 そういうものを作りたがるのはどちらかと言えば、 前世のアニメを実現させんとするアニメや軍オタ達だった。 (近衛はぶっちゃけ此方側だったが) 辻は大日本帝国の健全(?)な発展に力を注ぎ、 そういう戯言をいう輩を切って捨てるのが常だったからだ。 近衛はともかく、辻がボケたのかと思った。 打たれ強さに定評のある嶋田が真っ先に復活し、辻に問いかける。 「つ、辻さん。どうしたんだ一体。まさか認知しょ……」 「おや嶋田さん、何を勘違いしているのです。誰がホンモノを作ると言いましたか?」 「……。(この野朗ども、絶対誤解させようとして言ったくせに)」 この問答で全員の凍結が解けた所で、近衛が話始める。 「国策映画を作ろうと思う。ただし、外国向けのメッセージをこめた作品だ。 目的は技術のミスリードその他だ。」 近衛と辻が語ったのは、 何故かは不明だが、2010年以降からの逆行者は殆どいないこと。 このまま現状に胡坐をかいていては、 今までチートで築いてきた技術大国の地位が揺らぐ恐れがあること。 そのために、日本人に史実の昭和時代のような、怒涛の技術開発を促すこと。 諸外国に、到底実現しえない技術方針を提示し、研究・開発資源の浪費を誘うこと。 レールガンは架空技術代表としての例えであり、 大陸間弾道ミサイルは日本が技術を独占していたが、 各国で秘密裏に研究が続けられている。 人材不足でなかなか研究がはかどらないが、独ソに迂闊に手を入れられない今、 ICBMが独ソで別途完成し配備される恐れもある。 レールガンなどの架空技術に少しでも 人材資源や研究資金をつぎ込ませれば儲け物だと。 539 :ヒナヒナ:2012/01/09(月) 22 16 00 「だから、特殊映像加工技術満載の架空兵器が出てくる映画を作って、 日本帝国軍監修でクレジットを入れて真実味を出して、独・ソの研究を誘導しようと?」 「ええ、ここに来てコンピュータ分野はかなり発展しています。 この前完成したスーパーコンピュータ‘億’をさらに並列にして使用すれば、 この時代の人間なら簡単に編集やCGで騙せます。日本の研究方針については、 暴走しそうだったら総研経由のテコ入れで修正・誘導すればいいでしょう。」 「のってくるか?」 「何のために、今まで散々総合火力演習などで兵器類を見せてきたのです。」 「まあ、また日本が悪乗りしていると思ってくれるかもしれんが。」 「それでレールガンか、少なくとも史実2010年までの技術では 実用不可能との結果が出ているし、この時代の技術で成功する恐れはまず無い。 ついでになまじ理論が正しいから、独ソは飛びつくかも知れんな。」 辻は対外牽制として予算も付けることを確約する。 アニメで「とある○学の超電磁砲」を作ろうぜ!という意見もあったが、 目的が目的だけに、リアルに作る必要があったので却下となった。 夢幻会の反応としては。 「これは参加しない訳にはいかない。」 「レールガンはもちろん大陸間弾道だよな。 作り付けの鈍重なのじゃなくて、台座を可動式にして360°旋回可能にすべき。」 「敵役で巨大潜水はでるよな?」 「宇宙戦艦……はさすがに現実味がなくなるが、超戦艦は必須。轟天ご……」 「却下。ドリルはやりすぎ。」 「とりあえず、物を選ばないと完全な空想映画として取られるから、調整しないと不味いな。あとリアルすぎるのも没な。マジものの技術を教えてもしょうがない。」 この場でまとまるわけは無いので、 運営委員会を作り、夢幻会から代表者を立てて指揮、経過報告をさせるといった いつもの形式に落ち着いた。 試写会会場 「「「こっ、これは……」」」 異様に素早い旋回性能。 黒光りする長大な砲身は戦闘機の激突にも耐えられるほど頑丈だ。 東欧地域に建造されたそのレールガンは、正確無比なAA-GUNに守られている。 どうみても最強の鈍器、‘撲殺’兵器バラ○ールだった。 バラウ○ルを破壊するべく、謎の巨大潜水空母シンファ○シから発進するのは、 なぜか戦闘機ヴィルコ○ク……通称イカ。 主人公は超性能管制機E-767を駆って、常に最前線で友軍を叱咤激励するゴース○アイ。 レールガン式鈍器“バ○ウール” 巨大潜水空母“シ○ファクシ” びっくり機動戦闘機“ヴィル○ラク” どうみてもエースコ○バットであった。 「敵味方混じりすぎ。なんでシンファ○シなのだ。」 「誰だ! 企画まとめ役にエスコン厨を入れた奴!」 「なんで、轟天号がいないんだ!」 「よりによって戦闘機がイカとか。そこはハリアーだろ! それよりラプターだせよ。」 「ゴー○トアイだと? ツンデレ管制のサ○ダーヘッドこそ至高だ。」 「内容はごった煮過ぎるが……この名曲をフルオーケストラ音源で聴けるなら本望だ。」 540 :ヒナヒナ:2012/01/09(月) 22 16 36 夢幻会での試写会でそんな怒号が響きわたった。 隠れエースコンバ○トマニアが監修総まとめとして着任していたための事件であった。 重度のエスコンマニアで構成された裏痛い子中隊の面々が喜び勇んで介入し、 戦闘機や空戦の監修に協力してほくそ笑んだのは公然の秘密だった。 因みに、ラプターやハリアーなどの機体が出ない理由は下手に史実機体をだして、 他国のブレイクスルーの原因を作ってはたまらないという理由であった。 もっとも、戦闘部分はCGでの再現なのでやばい部分は隠せるのだが、 一応、実機ではなく架空機で誤魔化しておいた。 もちろん、その他の内容としても、 宇宙開発のミスリードとして吊り下げ式の軌道エレベータがあったり、(ネタ1 274) 某かくれんぼゲームを彷彿とさせるステルス迷彩スーツがあったり、 超戦艦「日○武尊」が力の入ったCGで再現されていたり、 一度聞いたら、爆発して自己消滅する指令テープがあったり…… CGの出来が素晴らしく、一部ミスリードを引けそうな内容も見受けられたが、 逆行者からみると、懐かしのネタ総集編のような内容となっていた。 一部、内部から不評を買った場面もあったが、結局は封切りされてしまった。 本家痛い子中隊の面々が、「ヒャッハー、次は俺達の時代だぜ!」といって、 アイ○ス映画を作ろうと息巻いていたが、 既にオタク成分は民間に十分普及しているとして、却下を食らって、 自主制作という名の同人活動を繰り広げたり、 嶋田がその様子を聞いて「もうやだ、この国」と鬱に入っていたのは、 比較的どうでも良い話だった。 何しろ、この映画を見て燃えてしまった国内科学者が周囲(逆行者)の忠告を振り切って、 レールガンの研究を始めてしまい、その変態的熱意を持って研究を続け、 80年代には実用化に漕ぎ着けてしまうのだから。 もちろん、手間を惜しまずCGを多用したり、大掛かりなセットを使用した撮影は、 この時代の人が見れば実写と代わらない迫力の映像を生みだした。 (史実21世紀からみれば不自然な点などが多数見受けられ、CGであると分かる。) これを見た一部の国は恐慌状態となった。 ソ連は恐慌状態だ。 映画の様なレールガンが出来上がれば、一番割りを喰うのはソ連だった。 スターリンが怒りで真っ赤になると、粛清を恐れた軍人や技術者が真っ青になった。 しかしさすがに、これ以上人材を失うわけにはいかないことが分かっていたスターリンは、 怒りながらも、ベリヤに尾崎ルートで夢幻会から情報を引き出すように命令した。 独逸では総統が青筋を浮かべるのを見て、高級軍人らがやはり青くなっていた。 影の薄いデーニッツ提督がシンファクシを見て、「これからは潜水艦の時代だ」と嘯いたり、 宣伝相が「またやられた!」と闘志を燃やしたりしていたりと、 ある意味前向きな反応もあった。 英国も探りを入れた。直接軍備に回す予算がつけられないのは分かっていたが、 情報だけでも手に入れなくては大英帝国の名の折れだった。 さすがというべきか優秀な英国情報部は一部真実にまでたどり着き、 映画内での技術の多くが未だ構想段階であることを突き止めた。 (しかし、今までの日本の技術からいつかは実現するつもりと考えた) 英国首相の「あんなもの(国家予算を付けた映画)を作って喜ぶ変態どもが」 と核心をついた呟きは幸い誰にも聞かれなかった。 カルフォルニア共和国は虎の威をかる様に周囲に喧伝した。 規模は縮小したとはいえ、カルフォルニア財界には新聞王ハーストを中心に、 マスコミの力を知り世論操作に長けた者が多かった。 日本の技術力を押し出し、降りかかる災いを減じようというのだった。 フィンランドなどの友好国は、市民レベルにおいては、 あの友邦は頼りになるが変な事をするなぁ。という認識であった。 もちろん国のトップや高級軍人は青くなり、 日本と敵対してなくて良かったと胸を撫で下ろし、 改めて自国との技術上のギャップについて考え、諦めに似たため息を吐いた。 542 :ヒナヒナ:2012/01/09(月) 22 18 21 この裏で、日本は国際的なスパイの展示場のようになった。 各国がスパイを送り込んできたり、すでに潜伏しているスパイが動き出したのだ。 技能のお粗末な者も多く水際防御も可能であったが、日本は彼らを国内に入れた。 「各国の密偵どもには、お土産をお持ちいただけ。」 もちろん、この好機を逃すまいとして、 村中大佐を中心とする戦後に強化された情報部が、手薬煉を引いて待ち構えており、 パッと見重要技術情報に見えるトンデモ情報をお土産に持たされた。 レールガンの技術書類と思った物が良く見ると全くの嘘だったり、 設計図と思って持ち帰ってみると微妙に数値がデタラメで役立たずだったり、 ビデオテープがデッキ内で爆発したり(テープに爆薬が仕込まれていた)…… スパイにとっては踏んだり蹴ったりであった。 しかし、意外にも軍に正面から取材を申し込んだ強者は、 格納庫内を案内付きで見させてもらえる(型落ち機ではあるが)など、 日本はスパイの墓場と呼ばれ諜報関係者から恐れられた。 (了)
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826 :ヒナヒナ:2012/02/17(金) 23 20 33 ○駆逐艦スペンスの最期 かつて南国の海で大海戦があった。 ハワイ沖海戦だ。 この海戦には多くの意味がある。 史上最大の水上戦 日米軍が砲火を交えた最後の戦闘 アメリカの落日を決定付けた海戦 戦艦の最後の主戦場 この海戦を語る人間の数だけ表現があった。 多くの人間がこの歴史に興奮し、落涙し、研究を重ねた。 ハワイ沖海戦で沈んだのは三十余隻。 そのうち、駆逐艦4隻を除く、全てが米海軍の艦艇だ。 殆どが航空戦のあった海域と艦隊決戦の場であったハワイ沖に 艦隊司令であるパイ提督とともに沈んでいる。 ―1943年1月19日 太平洋ハワイ沖 駆逐艦スペンス ハルゼー率いる第5任務部隊に属するフレッチャー級駆逐艦スペンス艦橋の上空では、 次々に空母から飛立った攻撃隊が飛び立っていた。 ハワイに向けて進軍する日本艦隊を捕捉したためだ。 朝日を受けながら飛立つ攻撃機の群れ。 「見張りを強化しろ。発艦中に空母がやられたら一大事だ。」 艦長に発破をかけられて、海面下の恐怖である潜水艦と魚雷を警戒する見張り員たち。 空はこれだけの航空機の目があれば、そうそう日本軍機も接近できまい。 ということで、空は彼らに任せて、今は魚雷を警戒するべきということだった。 見張り台で二人の若い海兵のグレイとジョナサンが、 背中合わせに双眼鏡を覗き込みながら話している。 「ジョニー、この前話していたジャップの魚雷は追っかけてくるって話は本当なのか?」 「ああ、いろんな艦がやられている。生き残りの話じゃ雷跡も殆ど見えなかったってよ。」 「大丈夫かな。くそっ。こっちは朝日が反射して、海の中なんて見えやしない。」 「もう少ししたら場所を代わろうグレイ。朝日の方をずっと見てたら目がやられちまう。」 「津波で船も飛行機も新しく作れない。ここで、艦を沈められたら終りだな。」 「……グレイ、それ、士官には聞かれないようにしろよ。」 自軍の劣勢や祖国に起きた天変地異の話が蔓延し将兵の士気を下げる。 艦長から二等兵まで生死を共にすることになる艦上生活においては、 未だ決定的ではないが、統制は確実に緩み、その戦力を低下させていた。 艦隊行動に遅れた軽巡洋艦ジュノーの操船ミスを見れば明らかだった。 偵察機が飛んできた以外は、駆逐艦スペンスにとっては何事も無く時間が立った。 しかし、その間に空母エンタープライズを発艦した機が次々と通信を絶っていた。 そして、 「おいありゃ……。日本軍機か?」 827 :ヒナヒナ:2012/02/17(金) 23 21 03 その後、日本軍機の攻撃が始まったが、大型爆弾や魚雷を搭載した攻撃機は 空母レキシントンや、戦艦に攻撃が集中したため、 スペンスは何発かの小型の爆弾が命中したが撃沈を免れた。 しかし、その主砲と対空火器の一部が破損し、戦力としてはほとんど無力となったため、 艦載機を失ったエンタープライズとともにハワイに下げられることとなった。 オザワ・タクスフォースはパイ提督の戦艦部隊が押さえてくれる。 心配なのは潜水艦だ。ハワイ近海だからと言って安心は出来ないのだ。 エンタープライズと、その外周を警護するスペンスを含む艦隊はハワイを目指した。 潜水艦を極度に警戒する艦長からは、絶対に見逃すなと命令がでている。 幸いにも今日は満月に少し足りないだけなので、深夜まで照らしてくれる。 夜でも目を凝らせば、あるいは何か見えるかもしれない。 「なあ、ジョニー。残った奴ら無事かな? 俺達ハワイまでたどり着けるかな?」 「……何も考えずに海を見るんだ。」 駆逐艦スペンスの見張台で右腕を吊ったグレイがジョナサンに問いかける。 もちろん、グレイもジョナサンも殿部隊が無事だとは思っていない。 「実はさ、俺いい子がいてさ。ハワイの原住民の血が入った子なんだけど可愛いんだ。」 「そうか。」 「両親が絶対に白人じゃなきゃダメな人だから、その場だけにしようと思ってたけど、 もしハワイにまで帰れたら両親に手紙を書いて説得してみようと思ってるよ。」 「そうだな。」 「親子の縁を切られるかもしれないけど。 でも生きてハワイまでたどり着けたなら、なんでもできる気がするんだ。」 「できるかもな。」 「? ジョニー、どうしたんたんだ?」 「……俺の兄貴がサウスダコタに乗ってる。旗艦乗務だって喜んでいたのに。」 「それは……」 会話が途切れる。 行きは空元気でも威勢良かったが、ハワイへの帰路は沈黙が支配していた。 スペンスだけでない。帰路についた艦はおしなべてそんな感じだ。 他の艦からの通報を含めれば、帰路についてから潜水艦によって2回は攻撃された。 この艦隊が潜水艦自体に捕捉された回数はもっと多いだろう。 今のところ何とか凌いでいるが、そのうち何れかの艦がやられるのではないかと、 みな不安に思っている。 さらに1回潜水艦の接近報告があったあと、夜明けを迎えた。ハワイはもう近い。 仮眠後に再び見張りに付いたグレイとジョナサンは、薄明のなか空と海を覗く。 「おい、ジョニー、ハワイが見えたぞ。」 「まだ、俺たち生きてるよな。」 雨雲が晴れ、煙っていた大気が透明に戻ると、ハワイの島々が見えた。 見張台にいると気づかなかったが、意外と近くまで来ていたようだ。 周囲でも明るい顔をするもが多数いる。生きて帰れるという事を実感したのだ。 そのとき、先行する軽巡ジュノーより信号があった。 「え? 魚雷?」 「あそこだ! 左舷、2時に雷跡だ。艦橋に報告しろ。」 グレイが艦橋に伝えるか伝えないかのうちに、 駆逐艦スペンスは回避行動を取り始めた。 ジュノーからの報告の時点で舵を切り始めていたのかもしれない。 しかし、スペンスの船体に引き寄せられるかのように、控えめな雷跡が弧を描く。 「これが、ジャップの誘導魚雷か!」 「当たるぞ!」 誰かが叫んでいる。 直ぐに艦を揺るがす衝撃が走った…… 828 :ヒナヒナ:2012/02/17(金) 23 21 36 ―197×年1月 太平洋布哇(ハワイ)諸島 常夏のハワイであるが、さすがに1月は雨季のため、 さすがに望んで泳ぐ様な気温でもない。もちろん客足は遠のく。 しかし、代わりにカリフォルニア共和国から軍艦が頻繁に来港するようになる。 現在、ハワイは日本帝国領布哇県であるが、毎年この1月19日近くになると、 太平洋演習と称してカリフォルニア海軍がハワイに集まる。 かつて国に殉じた1万以上の戦友を弔うためだ。 流石に、アメリカの国歌は流れないが、献花などを行う。 カリフォルニア政府は下手をすると日本批判に繋がり、 両国の関係に罅を入れかねないこの行事を止めさせたかったが、 州軍に吸収合併された陸軍と違い、海軍は米海軍がそのまま収まったため、 頑なにこの慰霊祭を続けた。 日本帝国海軍も旧米海軍の戦友を弔う気持ちを無碍にはできず、 (特に実戦派かつ、敗者の気持ちも理解できる逆行者から同調者が出た) 同盟軍の演習と言うことで領内での航行を許し、それが今にまで続いている。 ハワイにしては涼しいが、すでに気温は20℃になるなか 乗組員は長袖の礼装を着て甲板に整列している。 艦隊司令がこのハワイ沖海戦での戦没艦を読み上げる。 多くの艦が読み上げられる中、最後には駆逐艦スペンスの名前があった。 その後、午後にもなると、カリフォルニア海軍の艦艇の何隻かはハワイに停泊し、 何日かは上陸したカリフォルニア海兵が街に見られるようになる。 海兵は娯楽産業にとってはいいお客であるのだが、 ハワイの目玉であるダイビングやクルージング業者は休業するのがお決まりだった。 とあるビーチにあるダイビング企業の持ち桟橋には 「本日休業―Closed―」と書かれた看板がかかっている。 桟橋の袂にあるハワイ風を意識した小屋にも薄いカーテンが引かれ来客を拒否している。 そこに日に焼けた50近くになる壮年の男が歩みより、看板を無視して小屋に入り込む。 中には、同じく良く日に焼けたアロハシャツの50男がハンモックで寝ていた。 「よう、ジョニー久しぶりだな。探したぞ。」 「……グレイか。休みの日に無粋な奴だな。 海戦記念日(日本の記念日1月20日)は観光業者にとって休みなんだ。」 文句を言いながら固く握手する男達。 「グレイ、お前去年乗艦任務から外されたって言ってなかったか?」 「兄貴の墓参りでもあるからな。無理言って輸送艦に乗せてもらった。 お前、嫁さんはどうした?」 「……昨日喧嘩して、家を叩き出された。」 「それで、こんな所で寝ていたのか。しかし、どうせまた迎えに来てもらえるんだろ。」 「アイツはまだ拗ねているだろうさ。…でもそろそろ子供達が迎えに来てくれるはずだ。」 「ふん。駆け落ち紛いに結婚して、ハワイで日本国籍まで取りやがったクセに。」 「お前だって、海軍枠で帰化して今やカリフォルニア人だろ。」 ハワイ沖海戦の帰路、駆逐艦スペンスは日本の潜水艦に雷撃され、 2本の魚雷の内1本が命中し突き刺さったが、幸運にも不発であった。 しかし、刺さった魚雷を抜く暇もなく、港に逃げ込むために最後尾を進んでいたが、 じきに港という所で、神の悪戯か魚雷が抜け落ちた。 そして、その衝撃で信管が作動したのか、抜けた魚雷が海中で爆発したのだ。 抜け落ちただけなら浸水を止められたのかもしれないが、 少し距離があいたとはいえ、至近で爆発した魚雷は船底の穴を拡大した。 結局、スペンスの艦長は母港の目と鼻の先で、総員退艦命令を出すはめになった。 こうして駆逐艦スペンスはハワイ沖海戦で最後に沈んだ艦となった。 この30年の間に、海草や小さなサンゴが着床し岩礁のようになり、 今ではハワイでも人気のダイビングスポットになっている。 駆逐艦スペンスは艦としての一生を終えた後、 たまにダイビング客を迎えながら、魚達とともに静かな眠りについている。 (了)
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227 :ヒナヒナ:2012/10/15(月) 20 53 46 ※超ネタです ○今日もドイツは平和です 「逆行者? 精神だけ時間をさかのぼってきた? 寝言は寝てから言いたまえ」 夢幻会の情報チートを支える秘密は時間とともに情報通たちの間には微妙に漏れだしていた。もっともそれを聞いた殆どの人間は上記の様な事を言って「はいはい、ワロスワロス」と流していた。国家運営を担う彼らとて暇ではないのだ、主に日本から絶え間なく与えられる経済・政治圧力の所為で。 しかし、これを幸か不幸か残念か、半ば本気にしてしまう人々が居た。ドイツ帝国である。総統ヒトラーからして史実末期ほどではないにしろ、神秘主義に傾倒しているのだ。一部部下たちがそういう色に染まっているのは十分に考えられる事態だった。 そこだけ煌びやかに整備されたとある古城の城内で、金髪碧眼の男たちが話し合っていた。 「日本人はアジアの変異種である。その変異の謎を解けば、この欧州の地で我々アーリア人の優越を完全なものに出来る」 「我々が直接指導している以外は、周辺に碌な国がありませんからな」 「紳士気取りのジョンブルや、未だに人数だけは立派なイワンども、問題を起こすしか能のないフランス人、女と酒にしか興味のないイタリア人……」 「その話はもういい、それより日本人の秘密が我々アーリア人に適用できるのなら、試してみる価値はある。で、何故か聞き出せたその秘密とは?」 「夢幻会は、未来から信託を受け、精神だけ時間をさかのぼってきた人間ということだ」 「…………」 「いや、しかし」とか「流石にそれは」とか「ねーよ」とかいう声は聞こえるが一部の出席者はちょっと目がやばかった。神秘主義傾向のある騎士団員はちょっと信じても良いかな。などと考えてしまった。 不味い事にその話を聞いた総統は、小康状態であった中二病をこじらせてしまったのだ。日本が何らかの霊的技術を習得しており、それにより今までの躍進が説明できるのではないかという考えだ。その背景には、それこそもはや神がかりではないかというような巧みで悪辣な経済政策や、津波を起きる事を予見していたかのように原因である島を手に入れていることがあった。霊的な結論にでも飛びつきたい気分にもなる。とりあえず、その日はヒトラーが自分語りを始めてしまい、騎士団会合はそれでお開きになった。しかし、興奮冷めやら総統は自らに忠実なSS親衛隊長ヒムラーを呼び出し、この件について相談した。 228 :ヒナヒナ:2012/10/15(月) 20 54 17 「日本には逆行という霊的概念があるそうなのだが……」 「霊的な顕現ならば失われた古代アーリア教にもヒントがあるに違いありません」 「ほう、何かあるのかね?」 「黄色人種の変り種である日本人ですが、我々も白色人種の中で最優なアーリア民族であり、霊的な加護についても決して劣るものではありません。アーリア人は古代より欧州に栄え、霊的・精神的にも……(中略)……なかでも聖杯は、キリスト教がより古い歴史を持つ古代アーリア宗教から強奪した物であり、必ず我らアーリア人が見つけ出して取り戻さねばならぬものです。国中の古城にキリストの聖杯を探させましたが、残念ながら発見はできていません。これはアーリア人に霊的加護を与えるものであり、人類の文化財たる秘宝は我らが優秀なるアーリア人が管理すべきです。」 「……う、うむ、では任せたヒムラー(こいつやべーよ)」 「はっ、ではSS親衛隊の中から精鋭フォーゲル大佐の部隊を連れて行きます。」 ハイルヒトラーと、腕を斜めに捧げて敬礼した後、ヒムラーは意気揚々と探検の準備に出て行ってしまい。自分より数段各上の中二病患者の底力を垣間見て、ドン引きして素に戻ったヒトラーだけが残された。逆行者云々の論旨がすり替わり、霊的な何かを探しに行くことになっていた事にヒトラーが気がつくのは、だいぶ後になってからのことであった。 さすがに霊的な解釈という話を表に出すのは憚られたのか、ヒトラーはヒムラーを秘密裏にドイツ帝国の霊的な加護を齎すためにひっそりと探索隊として送り出した。そして、史実でも屈指の中二病患者であったヒムラーはSSを引き連れて、国外まで不老不死の霊的秘法を求めて聖杯を探しに行ってしまった。 それを鼻で笑いながら見送ったラインハルト・ハイドリヒは、ユダヤ人の隔離とアメリカ大陸への輸送、混血児の処理・隔離地の選定、純潔アーリア人の保護など、現実的な人種問題解決法の検討を行っていた。 ヒムラー達が回転床暖炉のある部屋や、トルコ南部の砂漠地帯でドンパチを繰り広げたかは定かではない。 ○あとがき 夢幻会員は逆行者という話が某国首脳部に伝わったら……という話。ここらで一本、頭の悪いネタ話を書きたかった。反省はしない。 ヒムラーや金髪の野獣さんを出してみたのだけれど、史実より倫理観がダメダメなので普通に見えてしまう不思議。
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121 :ヒナヒナ:2012/01/24(火) 01 34 59 ○ラシュモアの頂 サウスダコタ州。 肥沃な大地を抱え、ダイナミックな景観を見せるアメリカ中部の州だった。 北アメリカ有数の河川、ミズーリ川によって東西に分かれており、 ロッキー山脈とミズーリの恵みを受けた肥沃な農業地帯グレートプレーンズの一部を担う。 かつて先住民族との抗争を物語るように、未だにネイティブアメリカンと白人との溝は深い。 そして、先住民族スー族の聖地であるラシュモア山にアメリカ人が、 ダイナマイトで山肌を削り、4人の偉大な大統領の胸像を掘った事は、 抑圧された先住民族の反感を買うのに十分なできごとであった。 さて、完成まで1927年から1941年、14年かかったこの巨大石像は今や見向きもされない。 何故なら、「偉大な大統領」達の国は既に滅び、新しい支配者を迎えようとしていたからだ。 ここまで進軍してきたのは強力な戦車を中心とした、精強な陸軍を誇るドイツ軍だった。 もちろん、東海岸からここまで来るのは並大抵の苦労ではなかった。 貴重な油を多く食う、戦車を引き連れての進軍は取りやめられ(ロンメルは渋った)、 周囲を制圧しながら鉄道や銀輪部隊によって何とか進撃速度を上げていったのだ。 殆どの戦車は後から輸送された。 自警団(という名のゴロツキ)が物資を狙って来る他は、組織だった反抗はなかったことが幸いし、 英伊と協力し破竹の勢いでこの大地まで漕ぎ着けたのだ。 前述の通り、血の沸くような戦闘もなく、ただただゴロツキに気を配りながら、 西進する毎日であったが、そんな旅にもようやっと終りが見えてきた。 何故ならロッキー山脈から西は、あの忌々しい日本の勢力範囲である。 ただし、日本はこれ以上東進してくる事はなく、アメリカ風邪に対する防衛線を張っている。 此方が、刺激しなければ彼らと事を構えることにはならないだろう。 そんな事を考えながら、親衛隊の士官はラシュモア山を見上げる。 親衛隊の一部隊はこの地が「政治的に有用」だとして留まっていたのだ。 岩でできた4人の大統領達には工兵が取り付き何か作業を行っていた。 そう、ナチスドイツの支配の象徴としてラシュモアの大統領像を破壊しようとしているのだ。 士官が号令を下すと、乾いた発破音とともに、4人の顔が欠けて大きな岩が崩れていった。 ことの起こりはドイツ総統の一言だった。 「偉大なるアーリア人の功績をあの野蛮人からなる大地に刻みつけよう」 周囲の閣僚はまた始まったのかとぽかんとしたが、 宣伝相は直ぐに相槌を打った。 「そうですな。そういえば中部のサウスダコタには巨大な石像があるそうです。 亡国の支配者には勿体無い。そこに新たに総統閣下のご尊顔を彫られてはいかがでしょう」 「ふむ、しかし」 「中東の石仏は文化が滅びてなおその形を残します。より雄弁に後の世へアーリア人優越を語るでしょう。 歴史に残りましょうな。(ついでに映画の費用を……)」 歴史だとか、美術といったヒトラーの好きそうな単語を散りばめる宣伝相。 「世紀の美術品として残すか。ありだな。」 「「「……(ネーヨ)」」」 その場にいたその他大勢(主に軍人)は茶番に鼻白みながら心の中で突っ込みを入れた。 しかし、ここで無駄に総統の不興を買うのは避けたかったので、 沈黙という逃避を選んだのだった。 こうして、4人の合衆国大統領の居た形跡が取り払われ、 ラシュモアの頂にはヒトラーの立像が作られる事となった。 これだけなら喜劇であるが、悲劇であったのはスー族などの先住民族であった。 彼らにとってアメリカ合衆国は住みやすい国とは言えなかったが、ある一定の権利を与えていた。 しかし、新しく彼らの聖地を軍靴で踏み荒らしたのは自身の血筋を絶対とする民だった。 自分的に反抗的な態度をとる下等民族を、ドイツ軍は徹底的に弾圧した。 その結果、サウスダコタの象徴であったラシュモア山は鉤十字が翻る山となった。 ちなみに、 自分の体型などにコンプレックスを持つヒトラーが、『写実的に』彫刻せよとのたまったことから、 体型をもっと筋肉質にしたり、少しでもアーリア人ぽくしようと、 細い顎と高い鼻に不自然にならない程度に細工するという無駄な努力が行われた。 完成後、その石像はラシュモアの頂から下界を睥睨していたが、 知っている人間から見ると、あまりヒトラーには似ていなかった。
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469. ヒナヒナ 2011/12/08(木) 22 07 20 ネタ短編その3です。 408 のコミケネタと 428 のネタ振りが化学反応を起こしたらこうなった。 古畑ネタですが、正直、嶋田元帥像をだしたかっただけ、今は反省している。 きっと天国で嶋田さんが泣いているな。CM前の語りはカットです。 警部補 古畑任三郎 in 憂鬱世界 潮の匂いのする深夜の広場で、二人の男の言い争う声が聞こえる。 かなり興奮しているようだ。 「ちょっと待て、何で分からないんだ!」 「放せよ、田畑。俺は俺の萌え道を進むんだ。お前の考えは古いんだよ。ともかく俺はやるからな!」 「おい、待て……待てよ!」 肩を引っ掴んで思いっきり壁に叩きつける男。鈍い音がして相手の男が崩れ落ちる。 近づいて、倒れている男を揺する。 「死んでる? え……冗談だろ、アレだけで? ……このままじゃ、今度の撫子たんの同人が手に入らなくなる……どうにかしなきゃ。隠す? でもどうせ見つかるし……どうにかして疑われないようにしなきゃ。」 田端は周囲を見回す。目に止ったのは数年前に増築されたお台場ビッグサイトの新館、そして嶋田繁太郎像。 (暗転) パトカーが大量に止っている。集まってきたオタク達を押し戻しながら警官が通路を作っている。その通路を自転車に乗った黒いコートの男がやってくる。 「古畑警部補、お待ちしていました。」 「お疲れ様。で?」 「被害者は名取大祐、24歳、死亡推定時刻は昨夜の24時から1時までの間、死亡原因は後頭部の強打です。」 部下の西園寺刑事が上司の古畑に報告する。 名取大祐はコミケのスタッフで明日から開催予定だったコミケの準備で昨日から徹夜で各作業を行っていたが深夜に殺害された。しかも今朝の7時にビッグサイト新館の屋上から死体が落とされた。複数の人間がそれを目撃されている。など細かい状況を古畑に伝える。 「つまり、犯行現場は特定できたけれど目撃者はいない。犯人を見つけるには今朝、死体遺棄を行った人間を探し出さなくてはならない。」 西園寺刑事が補足するには、死体が落とされた屋上やそこまでの通路は警備員が巡回しており、直前まで異常がなかったことを確認している。などなど、西園寺と古畑が条件を絞っていく。そして、最後に西園寺がまとめに入る。 「まとめますと、犯行時間はどの容疑者もアリバイはありません。次に死体遺棄時刻ですが、警備員の巡回で直前に死体が運び込まれたことが分かっています。血痕から死体が朝まで置かれていたのはこのビッグサイト新1号館倉庫です。ここから死体が遺棄された新3号館へは、このルートで行くと30分以上かかります。他のルートは作業中の人がいて無理です。つまり死体遺棄前までの30分間にアリバイがなければ犯行……死体遺棄ですが、が可能ですが該当者はいません。しかも屋上へと登る階段への入り口はここにあるのですが、当時は複数の人が作業していて目撃されずに、ここを通過するのはまず不可能です。」 「作業中の人?」 「ええ、この嶋田元帥像前のステージを飾り付けていたそうです。」 古畑が嶋田元帥像を見ると、背中に「萌神」と書かれた軍服……のようなものを着せられ、足元には「コミケ神・嶋田大明神」と書かれた板と何故か賽銭箱が設けられている。 周囲には早くも薄い本が供えられている。周囲にはスタッフらしき人がいる。容疑者だろうか。 「さすがに嶋田元帥さんだけあって人気ですね。」 「いやこれは止むに止まれぬ理由があって……」 尋ねる古畑に、微妙な顔をするスタッフ達。皆何故か目をそらして挙動不審だった。 470. ヒナヒナ 2011/12/08(木) 22 08 28 古畑は手がかりを探して新館中を見て回る。コミケの来場者数が明らかにビッグサイトの許容量を超えたため、数年前に改・増築が行われている。昭和の時代からこのコミケ会場を見渡していた嶋田繁太郎元帥像を新1号館の玄関ホールに据え、新1〜6号館が増築されていた。 さて、死体が遺棄された新1号館の屋上に登る階段への昇り口は玄関ホールに設置されていて、ホールの真ん中には同人の神様である嶋田元帥像が立っている。ホールの天井には足場が組まれて様々な飾りつけや照明が設置されていた。死体遺棄時刻、ここには人が沢山いたのでこのホールを通るのは不可能だろう。非常に遠回りだが、他の階段を人に見つからない様に経由してくるしかない。 ふと嶋田像に近づく古畑。 台座に上ってまじまじと見ると、何かを発見し微笑んで、そばにいたコミケスタッフを呼びつける。 「そこの方、ちょっと。……ええと、名前をお聞きしても?」 「スタッフの田畑ですが。なんでしょうか。」 「この嶋田元帥さんについている黄色いペンキ。何でこんな物が付いているの?」 「あ、その、実は誰かが悪戯したんらしいですよ。今朝、ペンキを上からぶちまけた奴がいたんです。」 「元帥さんに? 酷い人がいたものです。田端さんはご覧になっていた?」 「いいえ、僕は他の館で作業をしていましたから。僕はスタッフ仲間に聞いたんです。」 「そうですか。何故みな黙っていたのでしょう?」 「嶋田元帥といえば帝国の英雄ですから、誰かがペンキをぶちまけたなんて事になって、このビックサイトを使用禁止なんてことになるのが怖かったんですよ。」 「なるほどそれで、服を着せたり、軍帽をかぶせたりしてペンキを隠したのですね。」 「ええ、ペンキが落ちなかった所は、会場運営が帰ってからばれない様に誤魔化そうと考えていたのですが。」 古畑が嶋田像の軍帽と軍服もどきを脱がすと、黄色いペンキがべったりと付いていた。 471. ヒナヒナ 2011/12/08(木) 22 09 48 それからも古畑は周囲を捜索しながら、証拠や証言を集めていき、犯人に目星をつけて一気に追い込んだ。 そして、ついには容疑者を集めた。 「犯人はこのエリアで作業をしていた人のなかにいる。そして、7時に屋上から被害者の死体を突き落とせる人物です。ちなみに、血痕から新3号館から新1号館に死体を運んだことが分かっています。さて、新3号館で作業していた方は……」 「僕を疑っているんですか、古畑警部補さん? でも死体が隠して合ったらしき場所からは人に見つからないように屋上に行くには、どんなに急いでも30分かります。僕にはアリバイがあります。」 「そうですね。今朝は作業をしているスタッフが沢山居ました。それを掻い潜って死体を運ぶのは難しい。このルートでは30分以上係るでしょう。」 「なら……。」 人の悪い笑みを浮かべて、周囲を見回す古畑。そして今泉巡査を呼びつける。 「さて、ここで実験をしたいと思います。今泉君。」 「え、僕ですか?」 「いいからつべこべ言わずにやる。はい。」 死体代わりの重石袋を担いで新3号館から走る今泉と、ストップウォッチを片手にそれを見張る西園寺。 今泉は10分で駆け抜ける。新1号館の嶋田元帥像のあるホールの手前まで走り抜けた。 「古畑さんこのルートでは無理です。このホールの中には早朝とはいえ、人がいなくなることはないはずです。ホールを迂回したら間に合いません。僕はどうやって、時間内に屋上に登ったのですか?」 不敵に笑う田端。 それに微笑んで合図を出す古畑。影にいた西園寺が携帯でどこかに掛けると、突如、上から嶋田像に真っ黄色の液体がかかる。プラスチックのバケツまで降ってきたギョッとしてその場の人々が騒然となる。 「「「「!! なんて事をするんだっ!」」」」 田端と古畑、西園寺ら以外の全員が黄色くなった嶋田元帥像に集まって、雑巾を持ち出したりしている。 「はい、そこまで。それは水性塗料ですので水拭きで落ちます。……今泉君!」 はーい、と声がして、屋上への扉の方から姿を現す、今泉。いつの間にか階段を上っていたらしい。 「さて、この瞬間、全員が色水を浴びた嶋田元帥像に注目していました。これでは今泉君がホールの隅を横切って身を隠したのも分からなかったでしょう。そう、犯人は天井の足場からペンキを嶋田元帥像に引っ掛けて皆の注目を嶋田元帥像に集め、その隙に屋上へ向ったのです。ここからなら、5分で死体遺棄現場の屋上の端までいけます。そして、十分に遺体遺棄の時間に間に合います。バイブ付きの携帯電話が二台あればそう難しいことではありません。夜のうちに仕込めるでしょう。そう、犯人は日本人なら、コミケ参加者なら決して行わないこと、つまり嶋田元帥像にペンキを掛けると言った暴挙に出ることで、不可能に思えたショートカットを可能にしました。これでアリバイが崩れました。……さて、このなかにひとりだけペンキのついた携帯をもっていた人物がいます。」 笑みを浮かべて古畑は犯人を指し示す。 「あなたが犯人です。田端さん」 田端は俯いていたが、やがてペンキのついた携帯を放り投げる。 「仕方なかったんだ。名取の奴スタッフであることをいい事に調子に乗ってて……あいつ、艦魂の18禁誌を出展するサークルを出そうとして、いや、18禁誌だけなら許せるけれど脱がそうとしやがったんだ。艦魂は軍服や和服を着ていてこそ艦魂なのに。遂には自分の好きな同人を書く団体だけをブースに入れようとしていたんだっ! 僕にはそれが許せなかった……僕にとってコミケは人生なんだ。それでついカッとなって……」 「田端靖男さん、あなたを逮捕します。」 田端は悄然としてただ頷く。 制服警官が田端の両手に手錠を掛けて連れてゆく。そのとき古畑が後ろから田畑に声を掛けた。 「あなたのしたことはコミケを思う心からでていても、コミケ……いや同人界をもっとも侮辱することです。」 とうとう、泣き出す田畑。 制服姿の警官が田端を連行してゆく。その背中を送るのはコミケスタッフと黄色く染まった嶋田元帥像だった。 (了) 472. ヒナヒナ 2011/12/08(木) 22 10 22 あとがき ああっ石を投げないで! なんだこれ、コナンの犯行動機より酷いw 嫌な世界です。 てか、テンパったら普通に死体を海に捨てる気がするwwトリックも無理やりすぎ。 現実の古畑は「ちなみの家」でマンガを読まないことを露呈していますが、 憂鬱世界ならばこういう話が普通に、夜9時からのドラマで 受け入れられるのではないかと思って書いてしまいました。 うん、疲れてるんだな俺。 483. 名無しさん 2011/12/08(木) 23 05 14 嶋田さんの扱いになんとなくモノリス大明神が頭をよぎった。
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801 :ヒナヒナ:2012/02/09(木) 23 05 30 ○エニグマ暗号を巡る物語 第二次大戦初期のドイツ軍の快進撃を語る上で、無くてはならないものがある。 ギリシア語で「謎」という意味の言葉を冠されたエニグマ暗号機だ。 第一次大戦後すぐの1918年にその原型が開発され、 ドイツ軍に正式に採用された。 タイプライターの様な形状をしたこの暗号機は、「鍵」にしたがって設定した後、 平分をタイプすると、複数の文字変換機構を通して、暗号文を即座に帰してくる。 また、暗号文を平文に戻すときも、暗号化したときと同じ設定にして、 暗号文をエニグマに打ち込むと、平文が帰ってくる。 暗号として強固なだけでなく、使い勝手が非常に優れていたのだ。 複数ある部品の組み合わせ、また「鍵」と呼ばれる初期設定を変えることができ、 平文を非常に強固な暗号に変換する。 この「鍵」を特定しようにも、設定数が多く膨大な鍵候補が存在するので、 第一次大戦までのような、紙とペンによる暗号解読をほぼ不可能にした。 最悪、エニグマ本体が鹵獲されても「鍵」が無ければ解読は難しかったのだ。 (セキュリティの強固さはもちろん大幅に下るが) もちろん、人間のつくったものに、絶対というものは存在しないということで、 エニグマ暗号は史実では第二次大戦中に完全に破られることになる。 まず、地勢学上ロシアとドイツの争いに巻き込まれかねないポーランドが、 踏み潰されることを恐れて、死ぬもの狂いで解読の糸口を掴み取り、 初期型コンピュータの原型と言える機械式の暗号解読器ボンバを作成、 ロータの数が少ない(鍵も少ない)初期型のエニグマ暗号の解読に成功する。 その後ポーランドは結局ドイツに踏み潰されるのだが、 その解読方法と暗号解読器ボンバの複製品はイギリスとフランスへと渡った。 情報戦は大英帝国のお家芸だ。もちろんドイツも暗号をエニグマ強化するが、 イギリスの数学者アラン・チューリングはボンバを基にして、 改良型の暗号解読機ボンブを作成し、 ドイツの暗号をあの手この手で突きくずし、解読していった。 イギリスはこのUltraと呼ばれる情報を持って、 バトル・オブ・ブリテンなどドイツの攻勢を凌ぎきった。 ―憂鬱世界 1940年 「これだけクラウツの暗号文が飛び交っていて、何故解読の手がかりが掴めない!? アジアの黄色人種に出来ることが、何故、我々にできないのだ!」 英国諜報部ではそんなことが叫ばれていた。 英国は趨勢が悪いとはいえ、諜報において最先進国だ。 諜報戦において、ドイツや日本などに遅れを取ると言うのは耐え難いことなのだ。 大英帝国はすでにエニグマ暗号機のいくつかのバリエーションや、 重要部品であるロータを手に入れていた。 ただし肝心の「鍵」を見つけられなかったのだ。 もっと言えば、膨大な「鍵」候補から正しい「鍵」を探し出す手段が無かったのだ。 この世界のイギリスは、経済的に余裕が無かったことから暗号担当の人数が足りず、 国外での会議に出席できなかったので、ポーランドから情報を受け取れなかったのだ。 イギリス欠席の中、フランスはワルシャワでの会議に参加し、 暗号解読機ボンバを受け取ったのだが、 史実と同じくフランスはボンバを重要視しなかったのだ。 この結果、イギリスは日鍵が載っているコードブックが手に入ったり(非常に難しい)、 地道な諜報戦により日鍵が手に入った特定の日にしかドイツの暗号を解読できなかったのだ。 802 :ヒナヒナ:2012/02/09(木) 23 06 02 「暗号情報を伝えて恩を売れるのは良いのだが…… あちらさんの諜報部はヤキモキしているんだろうな。」 日本遣欧軍に暗号担当として欧州まで来ていた陸軍士官の釜賀が気の毒気に呟いていた。 1932年から始まった第二次五ヵ年計画の中で開発されたコンピュータ関連技術は、 大方の予想より若干早く1939年には初期型が完成した。 本土ばかりではなく、航空工作艦「龍驤」を始めとする特殊艦に試験的にいくつか搭載され、 フィンランド義勇軍やBOBを裏から支える力となったのだ。 BOBに合わせてコンピュータ搭載艦が派遣されており、暗号解読が行われていた。 (釜賀は陸軍士官であるが暗号の専門家という事でここに詰めていた) 生真面目なドイツ軍の定時通信や、通信のクセ、被害報告といったものから、 クリブと呼ばれるヒントを見出して、可能な限り「鍵」候補数を絞り、 コンピュータで総当りして正しい「鍵」を探すといった、かなりの力技を使った。 日本の持つトランジスタコンピュータと、史実暗号解読器の性能差はあったが、 史実イギリスの解読方法をなぞったやり方で日本は暗号を解読していた。 何にせよ一回「鍵」を導けば、その日は暗号が解読し放題なのだ。 日本は秘密裏に持ち込んだコンピュータに暗号を解読させていたのだが、 これは現段階では、他国には漏らせないので機密扱いであった。 今更イギリスに暗号解読器ボンブをつくり、解読者を育てる体力は無い。 なので、解読した「鍵」のみを日本からイギリスへ渡すといった状態になった。 まあ、暗号解読には解読法だけでなく枢軸軍通信の傍受が必要だったので、 イギリスの諜報網は重要には違いなかった。 下請けばかりで、自国で暗号が解読できないイギリス諜報部は怒っていたが、 しかし、イギリスにトランジスタコンピュータを渡すわけには行かないので、 日本の諜報最前線では淡々と情報を解析し、情報を流す作業が続けられていた。 只でさえ、大恐慌による影響と日本が八木アンテナを手放さなかったことで、 レーダー網の整備が遅れており、日本にレーダーの売却を打診してきたのだ。 それにさらに、諜報戦での手痛い遅れが加わった。 その後も日本が補助するとはいえ、それらの準備が出遅れた感は否めず、 反撃の手立てを見出せず、そのままずるずるとドイツとの講和に持ち込まれてしまった。 その後、イギリス首脳部はお家芸であった情報戦での遅れを重く見た。 このことを教訓として、その後、戦後の財政難の中にあっても、 落ち目の海軍やもともと微妙であった陸軍をしり目に、 諜報部門だけは肥大化することとなった。 ちなみに、エニグマを過信したドイツは戦後も暫くエニグマ暗号を使い続け、 北米に展開する諜報組織にキャッチされて、日本に情報を提供し続けることになる。 後にコンピュータが民生化されるに当たって、 世界はこの複雑な電算機が優秀な暗号解読機であることに気が付かされる。 世界各国の防諜関係者は自国の暗号さえも安全でないことを知ると、 真っ青になって新たな暗号システムの開発に躍起になった。 この件でもっとも被害を受けた暗号の名前を取って、 後にエニグマ・ショックと呼ばれることになる事件だった。 (了)
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388 :ヒナヒナ:2012/05/29(火) 20 16 51 ○缶詰【ブラックネタ】 ※ネタですネタですネタです。ついでに超ブラックジョークです。 急に電波を受信したので書きました。分かる人だけ笑ってやってください。 1947年 旧米国のとある工場 「ったく、やってらんねーよ。」 40歳過ぎの工員が本日何度目かの悪態をつく。 汚れた作業着に油の染みた皮手袋 いつの時代も低賃金の代表格といえば工場勤務工達である。 単純労働、必要スキルなし。必要なのは飽きずに続けられる忍耐力だ。 「おいジャック、ぼやくなよ。いいだろう?去年の冬は世界的大寒波だったんだ。 食べる物を確保できるだけマシだろう?」 奥のほうに配置された工員が叫ぶように返してきた。 機械油と工員らの痰などが掃除もされぬままになった床は、 元の色など創造できないほど黒々としていた。 粘度の高い汚れで床はベトベトとしており、うっかりすると靴を脱がされそうになる。 工員同士で「こんな場所で作った缶詰なんか、金出して食うもんじゃねぇ」と言い合うほどの環境だ。 そんな状態でもこの缶詰工場勤務は羨まれた。 雀の涙ほどの給料の他に現品支給でこの工場製の缶詰が得られる為だ。 1946年末から1947年に掛けての冬は大寒波が北米を襲ったのだ。 史実では同年に欧州、特にイギリスを襲った寒波であったが、 気候が変動したためか、欧州ではなく北米大陸を強襲していた。 西海岸の海岸沿いはそれでも海が近いため、まだマシであったが、 少し内陸に入ると強烈な寒波が襲った。 人間はまだ暖を取る事ができたが、これにより多くの家畜が死亡した。 また、冬期に道路網が寸断されたことにより、 一部の集落では食料が不足し餓死するといった悲惨な事態も発生した。 それでも、遅めの春が来て雪解けが進んでいった。 この経験から、人々の間で保存食である缶詰の需要が高まったのだ。 「っち、やってらんねーよな。肉煮る臭いが臭いし。機械はすぐぶっ壊れるし。なあニック。」 「いいだろう。賃金は安いけど、今年の冬はこの缶詰配給で乗り切れたんだ。知ってるか? 15マイル向うの山中の集落では子供とジジババが全員飢え死にしたんだぜ。」 「だけど、こんな収容所も近いところで働くなんて、危険手当でも上乗せしろってんだ。」 「ジャック、考えてみろよ。食えるって大事だぜ。俺たちが前に働いていた あの牧場の因業親父の野郎なんて、寒さで牛が皆死んじまって真っ青になっているって話しだ。」 「ニックの言うとおりだ。ジャック。いつもはもっと金稼いでこいって言う うちのおかぁが今年の冬ばかりは優しかったからな。おかげでまたガキが増えちまう。」 品のない笑い声が響き、サボるなという現場監督の怒鳴り声が響きわたる。 工員達はしぶしぶと言った体で、動きの怪しくなったラインを修理したり、 缶詰をまとめた箱をトラックの荷台に運んだりしだした。 “Soylent社”と緑のインクで印字された箱がトラックで何処かへ運ばれていった。 (了) ああ、石投げないで!
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6 :ヒナヒナ:2012/05/30(水) 21 18 24 ○バードマン達の熱い夏 「そうだ、琵琶湖へ行こう!」 「お父さん、いい加減に年を考えてください。」 「三菱だって負けませんぞ、倉崎の。」 未だに飛行機製作の現場に顔を出し続ける倉崎重蔵と、それを諌める倉崎潤一郎。 そして、対抗心を燃やす三菱陣営というすでに見慣れた光景が続けられていた。 しかし、今回は何処か軽いノリだった。 今回、航空機関係者が集められての集会で話し合っていた内容が原因だ。 彼らの後ろに掲げられた妙に気合が入った墨字の横断幕には、こう書かれていた。 “鳥人間コン○ストを開催する会” * 日本中のバードマン達を熱狂させる夏 日本最大の湖である琵琶湖で行われる祭典 それが鳥人間コン○スト選手権大会。 日○レの番組として1977年に始まったこのコンテストは、 人力飛行機でプラットホームを飛び立ち、最後に水面にダイブするまでの距離を競う競技だ。 諸事情により中断することもあったが、史実日本での空への夢を育んできたイベントだ。 が、例のごとく、逆行者達は待ちきれなかった。 夢幻会の一部では、これから官民で需要が予想される航空機関連技術を持った人材を確保するため、 民間、特に若年層からの取り込みを図ることにした。 第二次大戦勝利での喧伝に加えて、少年誌などへの飛行機漫画の連載や、 飛行士が主人公の映画の作成し(イタリアが舞台の赤い飛行艇乗りの話が混じっていたりした)、 その中の一つとして、空への夢を抱かせる企画として持ち上げたのが、この企画だった。 * 「ゴッサマーアルバトロスが飛ぶより先に琵琶湖を横断するぞ。」 「今の情勢でドーバー横断は無理でしょう。てか琵琶湖横断って何キロあると思っているんです?」 「まだ琵琶湖大橋もできていないから、折り返し飛行なんていけずをしなくても済む。」 「人の話を聞いてください。……死人がでるようなのはやめて下さいね。」 航空技術者(前世)かつ、空海立体戦術の先駆者という経歴を持つ嶋田は、 勝手に周囲にこの企画について責任者にされてしまった。が、やはり倉崎と三菱が暴走していた。 すでにやる気モードに入ってしまった倉崎老に忠告することを諦めて 嶋田は周囲を見回して言った。 「作成期間もありますし、行き成り民間から募集は掛けられませんので、 今回はプレ大会としますから余裕のある倉崎と三菱で機体の作成をします。 一応記録はとりますが、くれぐれも宣伝ということを忘れないでください。」 倉崎と三菱の関係者を集めた集会でなんとか取りまとめた嶋田だが、すでに皆自分の世界に入っている。 「今まで暖めてきた、二重反転プロペラを人力で……」 「おっと、うちの班もかませて貰おう。ここで、ケツプロペラ機の有用性を」 「俺も飛びたいから二人乗りを作ろう。」 「地面効果を効果的に使えば…平均高度は1.5mくらいを設定しよう。」 「カーボンが使えないから重い。あと翼の強度が足りないぞ。」 「既存の自転車パーツは重過ぎる。自前で作ろう。」 そこは目がイっちゃっていたり、設計図を持ち出してニヤニヤしている変態達の巣窟だった。 「機密を持ち出さなければいいや。もう勝手にやってくれ……。」 こうして、自重しない第一回(プレ)鳥人間コ○テスト選手権大会が開催された。 * 史実では一部例外はあるものの、大体が最長人力機記録保持機ダイダロスに習った構造 の機体が大勢を占めるようになったが、この時代にはそんなセオリーはなかった。 二重反転プロペラ機、人力双発(二人乗り)機、ケツペラ機、無尾翼機など…… こうして真面目な変態機のオンパレードとなっていく。 果たして第一回を終えたが、軍の航空関係者からすら 「お前らやり過ぎ」とか「こんなものを飛ばして喜ぶk (ry」などとドン引きされ、 倉崎や三菱など大規模航空企業の主要開発部門はマークされ、書類審査を課すようになった。 そして、当初の予定通り両者がスポンサーとなり、次年以降は主催者側にまわることとなった。 また、後には出場チームへの大型企業の参加は禁止され、 個人グループや町工場からの参加、高校大学生たちアマチュアが主流になる。 また、後年には外国勢も参加するようになり、 お茶の間を熱狂させる長寿イベントとなっていった。 全国のバードマン達が燃えあがる熱い夏が今年もやってくる。 (了) こんな、早くに人力飛行機が出来るわけがない。 いや、倉崎なら、という思考がありました。 まあ、年代については想像にお任せします。 7 :ヒナヒナ:2012/05/30(水) 21 19 58 しまったあああ。 ネタssの方に投稿しようと思ったのに…… ……もう、このままでいいや