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偽りの星霊王(コードエンジェル) バージンロード VR 闇文明 (8) 進化クリーチャー:エンジェル・コマンド/アンノウン 13000 ■進化-自分のエンジェル・コマンド1体の上に置く。 ■自分の他の進化ではないコマンドが破壊される時、墓地に置くかわりに、裏向きにして新しいシールドとして自分のシールドゾーンに加えてもよい。 ■自分のシールドが墓地に置かれた時、それが闇のコマンドであれば、墓地からバトルゾーンに出してもよい。 ■T・ブレイカー 作者:焼きナスオ フレーバーテキスト 闇に堕ちる悦び、すべてとはいかないが、あなた方にも教えて差し上げましょう。--偽りの星霊王 バージンロード 収録 DMA-07「アナザーエピソード2 リベリオン・ステイト」2/55 参考 評価 名前 コメント
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160 :やんき~?の人 ◆k6xAlD3ocI :2008/03/17(月) 20 43 21.09 ID +iZH3Ys50 安価:ロストバージン 女体化してから5年、私は男だったころから随分と変わってしまった。 最初は興味本位で弄繰り回した体も今では体を洗う以外には週に1度触れるか触れないか。 化粧も随分と上達したし、歩き方もぐっと女性らしくなった。 食べ物の好みも変わり、髪を伸ばし、スカートをはく。 そんなことが当たり前になっていた。 もう、自分のことを私と呼ぶのになんら抵抗はない。 そして今夜私は… 「何、考えてるんだ?」 「ううん、なんでもないの。 ただ、やっぱり痛いのかな、って。」 「そりゃ痛いんじゃないか? 俺にはわからないだろうけど…」 一生男を愛することなど無いだろうと思っていたが、ついに私には彼氏が出来た。 そして今夜、私たちは結ばれることになった。 正直言って怖い。 他人に体を触らせるのはこれが初めてだし、第一破瓜の痛みなんて想像すら出来ない。 「まあ、出来るだけ優しくするよ。」 「…一応だけ、期待しておくね?」 「期待してくれ…」 「…ん…」 そっと唇が重ねられた。 互いの唇を重ねるだけの単調なキス。 それだけのことでこの胸は高まってしまう。 触れる指、這う舌、吹きかけられる吐息。 その全てが、私を未知なる快楽へと導いてくれた。 そしていよいよ、私が彼を受け入れる瞬間が来た。 161 :やんき~?の人 ◆k6xAlD3ocI :2008/03/17(月) 20 44 13.58 ID +iZH3Ys50 「じゃあ、いくぞ。」 「…う、うん…」 秘裂に熱いものが押し当てられる。 それが私の肉を掻き分けて徐々に進んでくる。 その痛みといったら、まるで焼けた槍で体を貫かれているようで。 泣くどころか声すら出せなかった。 「…ッ……ハ……!?」 「もう少し…だからな…」 彼はそう言ってから私にキスをして、ぎゅっと抱きしめてくれた。 痛みは変わっていないはずなのに、何故か心は安堵することができた。 瞬間、何かが切れるような感覚と共に、彼の物が私のお腹の中の一番奥に当たる感じがした。 私はやっと女になれたのだ。 愛しい人の手によって、やっと、やっと… そう思うと嬉しくて、痛くて、やっと涙が出てきた。 彼は私の涙をキスでぬぐった後、約束どおり優しく私を愛してくれた。 ……夜が明けるまでも。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 以上になります。 何故か今回だけ作風を少し変えてみました。 意図は別に無いですけど。
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発売日 2013年8月30日 ブランド みなとカーニバル タグ 2013年8月ゲーム 2013年ゲーム みなとカーニバル キャスト かわしまりの(辻堂愛),桃山いおん(片瀬恋奈),加賀ヒカル(腰越マキ),小鳥居夕花(乾梓),楠上ありか(武孝田よい子),神谷たたみ(長谷冴子),神代岬(辻堂真琴),住田左斗志(辻堂誠),橘桜(北条歩),高草木幸(板東太郎),美月(葛西久美子),水島ナナ(一条宝冠),桐谷華(田中花子),嶋和成(我那覇葉),飯田空(城宮楓),民安ともえ(片岡舞香,片瀬胡蝶),あずまゆい(烏丸美唯),安藤トロ和(組野英),逢坂良太(松田南),三根剣一(次藤比良戸),富士爆発(水戸角助),上原麻里子(山本相模) 我妻鉄生,矢羽薫,月見歌丸,岩源次郎,森谷実園,藤堂謙三,ロバート小谷,山田希奏実,秋山樹,弦道アキラ,飲鳥筆,小原高志,丸井エリザベート,三つ葉,MIONA,佐藤涼樹,中田樹ユロヒカ,水簾,丈隆志,一一,松岡武丸,星野うさぎ,佐伯冬,河村眞人,縞馬男爵,成江太郎,東慎,上夫甲辛,各邑辛多狼,藤富兵吉,桔梗,野☆球,有栖川みや美,月野きいろ,深川緑,若宮修一,葵海人,佐和真中,一文字系,日ノ渡真也,由貴恵,百瀬ぽこ,西野玖海,,水崎来夢,卯衣,おぼれ谷リアス,滑川菊太郎,運道開,桜川春仁,鯨井宏平,葉月沙耶,とがわ,上福岡ぴー太,瑞貴静,加々良真央,こまわりみけ,きのしたくるみ スタッフ 企画・製作総指揮:タカヒロ シナリオ:さかき傘 原画:みこしまつり CG:MA-KUN,野分,108,石丸康弘,ARIDESIGN株式会社,スタジオナレッジ,鴉 広報:エスズ,グレン 進行管理:ジョーカー,たいたん,角煮 プログラム:とむねこ スクリプト:雪月陽花,角煮,アマミ,桜華,もぐたん,折畑啓助 音響制作:松岡超(株式会社バックアップ),鈴木久美子(株式会社バックアップ) 音響演出:森下広人(株式会社叶音) 音声収録:ワルのへりょうへい 音声編集:はぐれコアラ5000人前,たまころりん,やまなかけんじ,矢文あずま,ながいともきち,伊能恵瓊 収録スタジオ:Brave Hearts OPムービー制作:谷本篤史 楽曲製作:ALVINE 音響効果:秘密結社四谷あたり ロゴ製作:木緒なち 背景製作:シンイチロウ デザイン:夕凪デザイン チップ、コンフィグ製作:株式会社ハイレベル エフェクト製作:たいたん デバッグ:株式会社アクア 「愛 SでMAKE LOVE!!!」 作詞:AN☆ 作曲:uz 編曲:吉田穣 歌:F9 「夜露死苦ブレイブ・ハート」 作詞・作曲:琉姫アルナ 歌:KEiNA 「PRIDE」 作詞・作曲:琉姫アルナ 編曲:ALVINE ヴァイオリン:TAM 歌:KEiNA 「ノンストップ☆バージンロード」 作詞:松井洋平 作編曲:藤枝三信 歌:真崎エリカ
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《人名/は行》 +出典 『Sea Tree』 『Sea Tree』 (準備中) ⇒SeaTree Wiki
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宝石姫JEWEL PRINCESS いつもの衣装 進化前立ち絵 進化後立ち絵 3D 花嫁 進化前立ち絵 進化後立ち絵 3D 宝石姫Reincarnation デフォルト衣装 R18版立ち絵 一般版立ち絵 3D 花嫁 R18版立ち絵 一般版立ち絵 3D 宝石姫JEWEL PRINCESS いつもの衣装 進化前立ち絵 進化後立ち絵 3D 花嫁 進化前立ち絵 進化後立ち絵 3D 宝石姫Reincarnation デフォルト衣装 R18版立ち絵 一般版立ち絵 3D 花嫁 R18版立ち絵 一般版立ち絵 3D
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作詞:牢獄P 作曲:牢獄P 編曲:牢獄P 歌:初音ミク 翻譯:pumyau 發狂Lost Virgin 和我在一起的你總是有血的味道 你只有在想要SEX的時候才會叫我的名字 明明平常都只會用代名詞叫我的 只有在想要SEX的時候才會叫我的名字 我從一開始就瞭解了 我不過是個免費的道具 對那孩子來說是無法XX的 生物實驗的道具 會就這樣子持續給予 卻連一次也沒有被愛過的結束嗎? 已經累了 已經累到極點了 『已經回不去了嗎?回到輕浮的人潮中』 『已經看不見了嗎?殘酷的孩童之夢』 『已經無法沉浸其中了嗎?那沒有理由的狂熱漩渦』 『已經無法構築了嗎?在這之上的,新的意義......』 你總是執著於形而上 雖然你尋找著"理由" 不過真正重要的事 卻始終都不明白 連去明白都不願 永遠都不會明白 為什麼我會 喜歡你呢? 喜歡你呢? 和你在一起的我總是有血的味道
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歌手 野坂昭如 リリース レーベル 作詞 作曲 編曲 放送禁止理由 豆知識 曲を聴く方法 (注) 実際の視聴は行っておりませんので、問題箇所が修正されている可能性があります。 参考(リンク) カオスの本棚 - 放送禁止歌・・・ part4 歌詞 名前 コメント
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エクストラブースター「辻堂さんのバージンロード」 2014年1月17日発売。 この弾に収録されているカード キャラ TJ-046 純愛ロードの向こうへ「辻堂 愛」*未作成 TJ-047 甘々な時間「辻堂 愛」*未作成 TJ-048 江乃死魔 血まみれの「片瀬 恋奈」*未作成 TJ-049 江乃死魔 二人で登校準備「片瀬 恋奈」*未作成 TJ-050 ケンカ一匹狼「腰越 マキ」*未作成 TJ-051 休日の過ごし方「腰越 マキ」*未作成 TJ-052 目が離せない小悪魔ギャル「乾 梓」*未作成 TJ-053 江乃死魔 ルールを破る「乾 梓」*未作成 TJ-054 守りたい二つの日常「武孝田 よい子」*未作成 TJ-055 頼りになるお姉さん「武孝田 よい子」*未作成 TJ-056 男の意地「長谷 大」*未作成 TJ-057 江乃死魔 怪力無双「一条 宝冠」*未作成 TJ-058 江乃死魔 マスコット的存在「田中 花子」*未作成 TJ-059 家では我が儘な「長谷 冴子」*未作成 TJ-060 度が過ぎた世話好き「北条 歩」*未作成 TJ-061 諜報活動「葛西 久美子」*未作成 TJ-062 友への信頼「片岡 舞香」&「烏丸 未唯」*未作成 TJ-063 一流の武道の腕前「片瀬 胡蝶」*未作成 TJ-064 湯上りハプニング「辻堂 真琴」*未作成 TJ-065 強者への挑戦「我那覇 葉」*未作成 TJ-066 八州連盟結成「水戸 角助」*未作成 TJ-067 阿頼耶識解放「山本 相模」*未作成 エクストラ TJ-068 宣戦布告「辻堂 愛」&「腰越 マキ」*未作成 TJ-069 朝からにぎやか「腰越 マキ」& 江乃死魔 「片瀬 恋奈」*未作成 TJ-070 二人だけの世界「辻堂 愛」&割り込めない 江乃死魔 「片瀬 恋奈」*未作成 TJ-071 幼なじみ 妹分「武孝田 よい子」&姉貴分「長谷 冴子」*未作成 TJ-072 文化祭 共同戦線「片瀬 恋奈」&「片瀬 胡蝶」*未作成 TJ-073 助っ人参上! 江乃死魔 「田中 花子」&「我那覇 葉」*未作成 TJ-074 幼少からの絆 江乃死魔 「乾 梓」&「我那覇 葉」*未作成 TJ-075 まるでいじわる姑「長谷 冴子」*未作成 TJ-076 パジャマ姿の「辻堂 愛」*未作成 TJ-077 江乃死魔 ドSなメイド「片瀬 恋奈」*未作成 TJ-078 可愛い女の子服の「腰越 マキ」*未作成 TJ-079 江乃死魔 センパイの声が聞きたい「乾 梓」*未作成 TJ-080 江乃死魔 スイッチが戻らない「良子」*未作成 イベント TJ-081 総災天500人抜き伝説の真相*未作成 TJ-082 勝負のメイド喫茶*未作成 TJ-083 辻堂さんのバージンロード*未作成 TJ-084 仲間の為に…決死の戦い*未作成 TJ-085 二人の未来*未作成 TJ-086 痛くない!*未作成 セット TJ-087 10円の駄菓子*未作成 TJ-088 ショウの仮面*未作成 TJ-089 ウェディングドレス TJ-090 幼い頃の思い出
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※57話カマイタチと悪戯な春風の後の没作 禁忌『スク水バージン』◆tF8w7KK0cU ──現状、三宮紫穂は全裸である。 理由は簡単だ。ネギの魔法を受けた。 (全身タイツと、『えう゛ぁ』と書かれたスクール水着が私の着衣。 神社を探せば他にもあるかもしれないけど、可能性はそれほど高くないわね…… まともな衣服がないのは単なる偶然、それとも……ジェダの趣味?) 境内を探しても衣服がある可能性は低いし、仮にあった所でジェダのセンスは信用ならない。 そも、彼女はバベル以下のセンスの服を求めてなどいなかった。 三宮紫穂が望むのはセンスのいい着衣、ただそれだけだ。 タイはない。 帽子もない。 制服は花びらに姿を変え、魔法と共に死んだ。 ミニスカから覗く下着さえ空気に溶け去り、自身の花びらを晒した彼女はもう、全裸だ。 親友、明石薫発案の元にバベルが作成した制服は、三宮紫穂の超能力を活かす制服でもある。 皆本を除く大きいオトモダチに、あの制服がどう見られていたのかは、能力で知っていた。 今になって思えば、「肉を切らせて骨を断つ」などというエロサイコキノの浅慮さえ懐かしく感じられる。 先程の戦いで、名も知らぬ魔法使いの底力を見た。 先程の戦いで、見た目幼い少年の計り知れぬ知力を感じた。 けれど、サイコメトラーとして千億の暗闇を知り尽くした紫穂には、彼らと闘う能力がったはずだ。 膨らまない胸元が、青い果実の魅力を惹きたてる。 肩幅に近いベレー帽が、ロリ好きの心を奪い去る。 いけない物がチラリと覗くミニスカは、男の息子を奮い立たせる。 もしもあの時、制服の力を自分が最大限に発揮していたら、戦闘の勝者は入れ替わっていたはずだ。 今になって失ったものの大きさに気付く。 自身の能力、制服の特性、発案者の性格。失う前に気付けるファクターは多かったはずなのに。 制服を失うまで、その有用性に気付かなかった理由は1つ。 『単純に恥ずかしかったから』 どれ程人の闇を覗いてきたとしても、紫穂は高々10歳の少女。 ごく稀に例外的なエロオヤジも存在するが、アレはアレなので置いておくとして。 まっとうな10歳の少女が、チラリズムやエロリズムを戦闘にイカせるはずもない。 特に相手が男2人の場合、最終的にヤれたとしても、その途中でヤられる可能性が高い。 男の下半身に理性はないということを紫穂は10歳にして知っているし、10歳ゆえにその身だけは穢れを知らない。 だからこそ、制服の有用性、活用方法には気付けなかった。 けれど、これからの戦いではそんな甘えは許されない。 『不意を突く』必要性をコナンとネギから学んだ。 不意を突くために必要な短刀も手に入れた、普段使い慣れている銃器も手に入れた。 あとはサイコメトラーとして、より高みを目指さなければならない。 ふと思う。 このような決意ができたのだから、一度ぐらいの全裸も悪い事ではなかったと。 ある意味で、使い慣れた銃を手にしてしまった事は甘えに繋がる道でもある。 先の戦いで馬鹿正直に剣を使ったのも『剣は武器だから』と言う思い込みがあったからだ。 だからこそ武器に甘え、サイコメトラーとしての能力を活かす術を考えようともしなかった。 その結果は、惨憺たる敗北だ。 今も、銃や仕込みナイフを手にしている。 自分が服を着たままであれば、反省せずに同じことを繰り返しただろう。 そして、いつまでも国内唯一のレベル7サイコメトリーを単なる『マニュアル代わり』にしか使わなかったのではないか。 『マニュアル代わり』なら、何のためのレベル7か。 レベル7とは、単に6より上というだけではない。もう一つ、上限がないという意味も持っている。 超能力区分に、レベル8は存在しない。 単純な考えで見れば、レベル6より上は全て7であり、同じレベル7でも上と下では1と6以上の差もありえる。 紫穂はそのレベル7に属する。自分がそこの上位に入るか、下位に入るか、彼女はまだ知らない。 けれど、世界最強である可能性を秘めた少女ではある。 だからこそ、『マニュアル代わり』の能力からは卒業すべきだ。 さて、そう考えるとこれからの着衣選びは慎重に行わなければならない。 にもかかわらず、まっとうな衣類は紫穂に与えられていない。いや、むしろ…… 「……ある意味、まともなのかしら……」 スク水も、全身タイツも決して着たいと思うような服ではない。というか、燃やして捨てたい服だ。 けれど、上のような決意をした以上、実のところ、このような服こそが紫穂にとって必要なのかも知れない。 「でも、嫌なものは嫌なのよ」 どこの世界に、スク水を着て陸を歩き回る子供がいるのか。 どこの世界に、全身タイツを着て殺し合いをする子供がいるのか。 紫穂が求める『マニュアル代わりでない』能力の活用とは、例えばセンスのいい服を着て誘惑するとか、そういうことだ。 もちろん、そこにエロリズムがあればなお良しだが、ストレートなエロは望むところではない。 チルドレンにおけるエロの権威、明石薫はチラリズムを制服に応用した。 そう、応用するのはチラリズムでいいのだ。スク水やタイツまで行くと行き過ぎている。 しかし、さりとて…… 「ここに他の服はないわけで……」 結局のところ、どれ程悩んでも無駄に時間を費やすのみ。 それであれば、今すぐにでもこれらの服を着たほうがよいというものだ。 紫穂は全身タイツをとる。 平仮名で名前の書かれたスク水はさすがに恥ずかしすぎる。 まだ、こっちの方がマシと思ってこれに全身を通すのだ。無論、これは一時凌ぎに過ぎない。 すぐに、まっとうな服を手に入れて着替えるつもりだ。 彼女が袖を通した全身タイツは、大人用のものだった。長すぎるために、四肢に大きな皺を作ってしまう。 「でも、スクール水着よりはマシね」 そう考えて、スク水の方をランドセルに仕舞い込む。そして、いつもの癖で全身タイツを読む。 「これは……犯罪者が使ったものね」 殺人者が着用していた服。悲壮な決意で完全犯罪を志したにも関わらず、眠りの名探偵にあえなく敗れていった敗北者の服。 けれど、これは紫穂にとって敗北の証にはならない。 「私なら、絶対に負けないわ」 どんな探偵だろうと、ノーマルである以上自分を超える事はできない。 だから、この服を着ていても特に気にする事はなかった。次の記憶を読むまでは。 「え……何? これ、この映像は……」 慣れ親しんだサイコメトリーの力により、流れ込む景色。犯罪以外の全身タイツのもう一つの使用方法。 俗に『コスプレ』と呼ばれる用途にこの服は使用されていた。プレイ名称は『逮捕しちゃうぞ』。 婦警に扮した女性と、犯罪者に扮した男性のあられもない遣り取り。 * * * 突然ですがここでお知らせです。 都合によりこれ以降は音声及び効果音描写だけでお伝えします。 健全な回想をお楽しみ下さい。 * * * 「ん……」 不自由な拘束衣で、もがく声が聞こえる。 カチャカチャと、手錠を外そうとする音が聞こえる。 その音を遮るように、チュパチュパと唾液のはじける音がする。 「動いちゃ駄目、君はスピード違反をしたんだから」 逮捕された男の上を、婦警の指がピアノを弾くように動く。 時に激しくフォルテシモ。時に優しくピアニシモ。 全身タイツと言う黒い鍵盤の上を踊るように動くピアニストに、タイツの下の小さな観客がスタンディングオベーション。 ピアニストは、彼の喝采に答えるべくさらに演奏を強めていく。 ピアニストの指と、観客の頭は一枚の薄い布に遮られながらも、触れ合い、寄り添って、愛情を深めていく。 そして…… * * * 気がつくと、三宮紫穂は全身タイツをズタズタにしていた。彼女は再び全裸だ。 短刀を手にしたその表情には、怒りと悲しみが浮かんでいる。 「皆本さん、私……汚れちゃった……」 こんなものを支給したジェダは決して許す事ができない。皆本にのみ許されたはずのアレが、こんな形で散らされてしまった。 もちろん、彼女自身の体は全くの無事なのだが、そんな気分ではない。これは精神的な問題なのだ。 心の陵辱、言い換えればセクシャルハラスメント。 大切な、二着のうちの一着はズタズタになったが、これは不可抗力の事故として諦めよう。 そして、こんな辱めを与えたジェダ、コナン、ネギの3人は絶対に許さない。 「あの3人は、ただ殺すだけじゃ足りないわね……」 もはや、エスパーだとか、ノーマルだとか、そんなレベルの話ではなくなった。 一人の女子として、最大限の屈辱を受けてしまったのだ。その怒りは頂点に達している。 どんな手を使って堕としてやろうかしら……と、一瞬考えて振り切る。 あの3人も許せないが、今は何より服が大事だ。そう、彼らに対する復讐は、彼らに会ってから考えればいい。 「でも、その前に……」 念のために、水着をサイコメトリーで確認する。 着る前に中身を見ておけば、安心できるというものだ。 「これの持ち主は……変わった人ね。いや、人じゃないみたい……」 だが、たとえどんな生物であったとしても、紫穂に辱めを与えるような生き物ではなさそうだ。 こちらの着衣には害はない。 そう判断して、紫穂はスクール水着を着ようとした。その時である。 「あれ、ちょっと待って。これも制限されている」 この世界における一つのルール、『制限』。 ゲーム開始時にジェダが説明していたし、自分自身も能力の制限を感じている。 しかし、ジェダは能力を持った子供たちに有利すぎるから、と言う理由で制限をかけていたはずだ。 目の前のスクール水着に制限をかけられる理由は無い。 けれど、現実にスクール水着には制限がかけられているのだ。 「全く……どこまで変態なのよ……」 スクール水着にかけられた制限とは、吸光係数の制限。 この世のあらゆる物質は、大なり小なり光を吸収する。その吸収の仕方によって、物質は白く見えたり、黒く見えたりするわけだ。 本来、光の吸収とは物質の電子の振る舞いによって変わってくるものだが、そんな事紫穂は知らないし、 ジェダだってその法則に従って吸光係数を制限したわけではないだろう。 ともかくも、ジェダは超能力でさえも説明のつかない『何かの力』を使って、スクール水着の吸光係数を制限した。 結果としてスクール水着は、可視域の光に対し吸収が悪くなり、透過性が強くなるという変化をした。 354 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/03/30(金) 00 39 04 ID TrBRMxcF ………… まじめに書いてて恥ずかしくなるが、要は透けて見える水着なのだ。それも、微妙にほんの僅かだけ。 「でも、これを着るしかないのかしら……」 この水着を着たとしたら、自分の乳首はほんのりと輪郭を晒す事になるだろう。 そりゃ、今みたいに完全シースルーと言う状態よりは見えにくくなる。だが、より一層エロくならないか? しかし、どれ程文句を言ったところで、自分にある服はこの一着のみ。 もはや、これを着るほかに選択肢はなかった。 「これも、薫ちゃんの言った『肉を切らせて骨を断つ』と思えば気が楽かしら……」 最初に決意した、サイコメトリーの活用。 それを思えば、透ける水着はある意味で適任かも知れない。 無論、だからと言って、これを着続けるつもりはない。だって、透けてたらチラリズムじゃないから。 着用した水着の胸元を確認する。 目を凝らしてみると、僅かだが輪郭がのぞいている。 「早く他の服を探さないとね……」 日本最強エスパーの一人、三宮紫穂はそう呟くと何処かへと歩いていった。 【C-4/神社の境内/一日目/昼】 【三宮紫穂@絶対可憐チルドレン】 [状態]:少し疲労。怒り。 [装備]:ワルサーPPK(銀の銃弾7/7)@パタリロ!、七夜の短刀@MELTY BLOOD [道具]:支給品一式×2、デスノート(ダミー)@DEATH NOTE [思考]:新しい服が欲しい。 第一行動方針:真正面からの戦闘に限界を感じ、ステルスor扇動マーダー路線を目指す。 第二行動方針:そのために利用できそうな仲間を探す。 第三行動方針:コナンとネギの2人は殺すだけじゃ済まさない。 第四行動方針:ジェダも許さない。 基本行動方針:元の世界に帰るために最後の一人になる。 [服装]:スクール水着@魔法先生ネギま! [備考]:スクール水着はジェダの制限により透けて見えるようになっています。
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禁忌『エキストラバージン』 ◆CFbj666Xrw ――結局、ヴィクトリアはウサミミの少年を見送った。 理由は簡単だ。接触するメリットが無い。 (ウサギずきんと、手に持っていた立て札が彼の支給品。 他にもう一つ引いているのかもしれないけど、可能性はそれほど高くないわね。 怯えていなかったのは状況判断が出来てないのか、それとも……力があるのか) 交渉してまで欲しい物を持っている可能性は低いし、有能で有るのかも疑わしい。 開始直後の参加者が持っている情報にも意味は無いだろう。 そも、彼女は仲間を求めてなどいなかった。 「…………私はひとりでも生きていける」 母を見取る時に手向けた言葉を口にする。 ヴィクトリアが望むのは生き残る事、ただそれだけだ。 その事に理由なんて無い。敢えて言うなら“死ぬ理由が無い”。 夢はない。 希望も無い。 希望は不完全に満たされて絶望と共に死んだ。 父ヴィクターと同じ怪物となりゆく錬金の戦士ムトウカズキは父と共に月に消えた。 100年を共に生きた母とも死に別れ、彼女はもう、独りだ。 未練さえ無いと言えば嘘になる。 人としての生き方に未練は有る。 恵まれた家庭に未練は有る。 幸せな事に未練は有る。 100年もの間、御嬢様学園を潜伏場所に選び、幸せに巣立っていく御嬢様達を見つめていた。 その理由の一つに未練が含まれていないと言えば嘘になる。 だから、ジェダの言葉にも本当は動揺した。 “生き残った者の願いを一つだけ叶えよう” ……もし人に戻れたらどんなに良いだろう。 もしあの純粋無垢だった少女時代に戻れたらどんなに良いだろう。 誇り高い父親と優しい母親と共に幸せに生きて安らかに死ぬ事が出来たらどんなに良いだろう。 錬金術なんて無い世界に生きる事が出来たらどんなに良かっただろうか。 だけどそれは、たった一つの願いで叶う事ではない。 ヴィクトリアが幸せに生きるための願いは一つや二つではまるで足りない。 人に戻れた所で無惨な人生は取り消せず、気高く優しかった両親はもう居ない。 両親を取り戻した所で父も自分も化け物で母親は肉体を失っている。 不幸の元凶である錬金術を滅ぼした所でそれにより生き長らえている少女は滅ぶだけ。 無惨な人生をやり直せた所で錬金術有る限り悲劇は再び訪れる。 たった一つ叶えられた所で何一つ救われない。 ――そう思うと少しスッとした。この島でも自分は何一つ変わらない。 そもそもジェダはたった一つでもあらゆる願いを叶える事が出来るのだろうか? ジェダは本当に願いを叶えるつもりが有るのだろうか? 仮に最後の一人まで生き残れると仮定してもこの有様だ。 生き残りを目指すなんてバカバカしいにも程がある。 望む事はただ一つ、生き残ること。それだけだ。 ジェダに願いを叶えてもらう必要なんて無いし、意味も信用も有りはしない。 そして、一番生存率が高い手段は必然的に導き出された。 (極力生存を重要視して立ち回って、このふざけたゲーム盤を脱出、あるいは破壊する事。 その為に必要な事は四つ。 『ジェダの意図を読みとって、その手札を暴くこと』。 私達を殺し合わせて何を得るつもり? 逃げ回る臆病者が生き残ったら何を得るつもり? それが判れば何かが見えてくるはず。情報を集める必要が有るわね。 『信頼できる手勢を集めること』。 殺し合いから身を守るにも情報を集めるにも人手が多いに越したことは無いけれど……後でも良いわ。 裏切りで殺される危険の方が高い。 元の仲間が殺されても願いを叶える為に殺し合いに乗ったりしない者が望ましいわ。 どうやら私と違って仲間ごと連れて来られたのも居たようだったし。 『この空間を脱出する、出来ればジェダの下に辿り着く手段』。 最終的には脱出しなければならない。出来ればジェダを殺して禍根を断っておきたい所ね。 でもこれも後で良い。他の条件を満たしてから、最後で良いはずよ。 それよりもまずは…………『首輪を外すこと』) 首輪を外さなければこの殺し合いから逃れる事も、止める事もできはしない。 その為にはまず、解析出来る首輪が必要だ。 言い換えれば他の参加者の死体から首輪を集めなければならない。 ヴィクトリア個人的には、出来るだけ新鮮な死体であれば尚望ましい。 目立たない為には自ら殺す必要は無いだろう。死体だけを集めれば良い。 三人殺す度に与えられるご褒美については、敢えて考えないことにした。 ヴィクトリアにとって、幸せに生きる子供達は僅かな憧れと未練の対象なのだから。 ……視界の端に何かが映って、ヴィクトリアは空を見上げた。 「……あれは?」 ウサミミの少年が歩いて来た方の方角、町の西の空を仰ぐ。 そこには…………。 * * * 「速く! もっと速く飛んで、ヨンヨン!」 焦る少女の声が空に響く。 ククリは跨るヨンヨンを必死に急かし立てる。 しかしヨンヨンの速度は殆ど変わらない。既に最高速度なのだから。 背後を振り返ると、地上の道を凄い速さで走ってくる少年の姿が目に映った。 グルグルにより呼び出される奇怪な飛行物体ヨンヨンは別に遅いわけではないのに、 舗装された真っ直ぐな道とはいえ地上を、空を飛ぶより速く駆けてくる少年の姿。 一度は完全に振り切てたと思ったのに、たまたまククリが逃げた方向を当てたらしい。 少年は恐ろしいスピードで走ってくる。 無惨にも切り裂かれた死体と共に居た少年の姿が、徐々に迫ってくる。 「待って……! ……かい……だ……!」 何かを叫んでいる。その声は僅かながらに届いていた。 だけど言葉は届かない。 (こわい。こわい、こわいこわいこわい! 聞きたくない!) 手はヨンヨンにしがみついていたけれど、恐怖がククリの耳を塞ぐ。 「おねがい、もっと速く……!!」 あと少し飛んで町に入れば障害物が少年を阻むはずだ。 ククリは怯えてヨンヨンを急かしただひたすらに直進する。 怯えるククリは後ろを、それも下ばかりに注意して前や横への警戒を怠った。 空を飛んでいるのだから、それは当然かも知れない。 「ねえ、あそびましょ」 「…………え?」 だけどそれは迂闊だ。 恐怖に駆られる少女にそんな事まで要求するのは酷だけれど、やっぱりそれは迂闊だった。 空にだって敵は居る。 ハッと前を向いたククリの前方には奇妙な少女が飛んでいた。 金色の髪、パタパタと動く羽に見えない奇妙な羽、手に握った金色の杖。 奇妙な少女が空に居た。 「な、なに!?」 「ひろいお空で弾幕ごっこ!」 それを遊びへの問いだと思い込み、少女は迷わず遊びを始めた。 「まずは通常弾幕からね」 「え? え? ええ!?」 悪魔の妹フランドールはその手から無数の弾幕を解き放つ。 ククリに事態を把握する間は無くて、ヨンヨンの旋回性能では避けることも出来はしない。 ククリの乗るヨンヨンは初弾に直撃した。 「きゃあああああああああああああああああああ!?」 * * * 「くそ!」 ゴンは見た。ククリの乗るヨンヨンが被弾し錐揉みに回転しながら墜落していく場面を。 そのヨンヨンが地上ギリギリで僅かに減速し、ククリを上にして落ちていく瞬間を。 空に現れた奇妙な少女フランドールがそれを追って地上に落ちていく姿を。 ククリ――ゴンは名前も知らないが――は不幸にも生じた誤解に怯えて逃げ出した。 そのせいで生まれた焦りと隙のせいで撃ち落とされた。 (このままじゃあの子は殺される) 自分を殺人鬼だと勘違いしそれを触れ回るだろう少女。 戦う力を持ってはいるだろうけれど、結果としては自滅した少女。 それでもあの子は何か殺される程に悪い事をしただろうか? (そんな事、してない。運が悪かっただけだ) 運が悪い。ただそれだけの理由で…… 「死なせるもんか!!」 足の回転を速める。走る。駆ける。ひた進む。 ゴンがその場所に辿り着いたのはククリの墜落からわずか数十秒後だった。 街の入り口からすぐ、通りの角を曲がったその場所にヨンヨンは墜落していた。 投げ出されたククリはぐったりとなっていて、ゆっくりと小さな胸が上下している。 悪魔の妹フランドール・スカーレットはその脇に居た。 屈み込み、何か興味深いものでも見たようにククリの頬を指でつついていた。 ふにふにとまるいほっぺたが柔らかく揺れる。 フランドールはくすりと楽しげに笑うと、そのほっぺたをつまみ……むにっと引っ張った。 「ひゃあ!?」 朦朧としていたククリの意識が覚醒する。 視界に映るのは金髪の少女。ヨンヨンを撃ち落とした少女、フランドール。 「おはよう」 フランドールはにこりと笑った。 恐怖が吹き上がった。 「い、いやああああああああああああああああああ」 ククリは必死に這いずって逃げようとする。 とてつもなく怖ろしかった。 恐くて恐くてたまらなかった。 「やだ、やだあ……!」 怯えて、怖がって、必死に這いずって逃げようとして……目の前に別の足が映った。 恐る恐るその足の元を見上げた。 そこに居たのは……あの、死体と共に居た少年の姿だった。 ゴンが追いついて来たのだ。 「~~~~!!」 背後には怖ろしい少女が居て、目の前には人殺しの少年が居る。 逃げ場所が無い街角の釜の中で恐いという感情が見る見るうちに煮え立つ。 「や……やぁ…………!」 ころさないで。 そう訴えようとしたか細い声を、力強い声が遮る。 「やめろ! オレが相手だ!」 「………………え?」 ククリは気づいた。 少年はいつの間にかククリを背にする様に立っていた。 恐る恐る覗き込んでみると、その目は怖ろしい少女の方を睨んでいる。 声は少し怒りを含んでいたけれど、それもククリに向けられてはいなかった。 「あなたが遊んでくれるのかしら?」 「そうだ、オレが相手をする」 少年はそう答えてから、そっとククリに声を掛けた。 抑えた、だけど真剣な声で。 「逃げて。オレが相手をするから」 「え………………」 答えを待ってはくれなかった。 「私はフランドールよ。あなたは?」 「オレはゴン。ゴン・フリークス!」 ゴンは答えて走り出す。 「こっちだ!」 「はーい」 フランドールも迷わずゴンを追いかけて飛び立った。 ククリはその場に取り残される。 「ま、ま……!」 待って……と言おうとして口をつぐむ。 引き止める隙はおろか、考えを整理する時間だってなかった。 俊足で駆けるゴンと空を飛ぶフランドールはあっという間に視界から居なくなった。 やがて、遠くから連続した破壊と爆発の音が聞こえ始めた。 もう戦いが始まったのだ。 彼女を守ろうとした少年と、不思議な少女の二人が。 「……どうして?」 ククリはすぐには判らなかった。 どうしてあの少年は自分を守ってくれたのだろう。 あのゴンという少年は殺し合いに乗っていたのではないのだろうか? ……そう考えたところで思い違いに気が付いた。 ククリはゴンが少年を殺す所を見たわけじゃない。 ゴンは返り血を浴びたりはしていない。 死体の側に居るゴンを見ただけだ。 本当にゴンがあの少年を殺したのだろうか? 「もしかして、ぜんぶわたしの……」 息を呑む音は、新しく聞こえた静かな足音と重なった。 * * * 「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」 狂ったように甲高い笑い声が響きわたる。 笑い声の数だけ無数の魔力弾が放たれた。 銃弾よりはゆっくりと、しかし強大な破壊の力を秘めた弾幕がゴンを押し包む。 如何なる方向にも逃げ場なんて無い。 (よけられない!? ――いや、違う!) だけどゴンは敢えて動かなかった。 その目前で弾幕が花開き道が生まれる。 ゴンはそこに飛び込んだ。 背後で弾幕は散弾へと変わり広い範囲に破壊を撒き散らす。 もしも直撃を恐れて逃げようとすればそれこそ避けられなかったはずだ。 (わかってきたぞ、この攻撃の避け方。次は……!) 次に迫る破壊の力を前に、ゴンは完全に立ち止まった。 破壊の弾幕が目前に迫る。それでもゴンは動かない。 弾幕は目前で引き裂けて、両脇を膨大な力が駆け抜けていった。 ――そう、弾幕の基本は動かない事だ。 正確に言えば“無駄に動かない事”。 フランドールの好む弾幕ごっことは無差別に放たれた弾幕ではない。 その裏側で緻密な計算が為されたある種の芸術品だった。 例えば一つの塊を放ち終わるまで常に目標を照準にした弾幕がある。 この塊を放ち終わる前に動いてしまえば照準も動き、形は崩れ無作為な塊となるのだ。 そうなってしまえば回避は一気に困難になってしまう。 だが裏に隠された法則に気づいて対処すれば、ほんの一歩動くだけでこの弾幕は横を擦り抜ける。 この弾幕に言うならば用意された避け方をパターン避けと呼ぶ。 そのコツを理解すると共に、ゴンはフランドールをうっすらと理解した。 フランドールが遊ぶと言ったそのわけを。 これが遊びのそのわけを。 「……きれいだ」 フランドールの弾幕は楽しかった。 絶対に避けられないように見えてその実抜け道を用意された弾幕。 それは無数の波紋を浮かべ幾つもの模様を描き出していた。 花火のような美しさを持つ一瞬の美。 その中を潜り抜ける死の危険と背中合わせの極上のスリル。 一つ一つの弾幕を抜ける爽快感と達成感。 それは本当に、遊びと言えるのかもしれない。 例えばその過程で命を落とす危険すら有るゲーム、グリード・アイランドのように。 命さえも賭けた極上のゲームだ。 物好きな奴らは喜んで自らの命を賭けるだろう。 ……だけど。 「どうして」 目の前で割れて両脇を通り過ぎていく無数の魔力弾が、途切れた。 開けた視界に映るのはこの弾幕の主、フランドール。 「どうしてあの子を巻き込んだんだ!?」 少女に怒りをぶつける。叫びを叩きつける。 フランドールの不条理な遊びに言葉を投げつける。 「オレはキミの相手をすると言った。だけどあの子はそうじゃない! なんでこんな遊びに人を巻き込むんだ!?」 フランドールは不満げに答える。 「そんな事を言ってたら誰も遊んでなんてくれないわ。 お姉様だって滅多に遊んでくれないのに。 紅白が仲が良いのはお姉様だし、魔理沙だってしょっちゅう来てはくれないもの」 フランドールの持つ力はありとあらゆるものを破壊する程度の能力だ。 彼女が何をしようと加減は出来ず、人など血の一滴残らず消し飛ばす。 弾幕ごっこという遊びでは特に顕著な事だが、その本質は何をしていても変わらない。 だからずっと外に出してはもらえなかったし、遊んでだってくれなかった。 そもそも遊び終わって生きていられる存在が居なかった。 紅白の巫女と霧雨魔理沙は数少ない例外だったけれど、巫女が仲が良いのは姉の方だし、 霧雨魔理沙は他のみんなにも引っ張りだこらしく遊びに来れる事は多くない。 ほんの少しだけ人と接点が生まれたけれど、それでもフランドールはまだ“ほとんど”独りぼっちだ。 ……別に不幸せには思わない。 フランドールは緩やかに幸せだ。多くを望む事は無いのだから。 独りぼっちでも、姉に地下に閉じこめられていても、それでも彼女は幸せだ。 だけどつまらないと思う気持ちは有って、それを抑える気持ちはまるでなかった。 そんな彼女にとって。 「オレが遊んでやる」 その言葉だけでも楽しい鼓動が胸を打つのに。 「オレが友達になってやる!」 続けて放たれた少年の言葉はたまらない程に強かった。 言葉は胸に突き刺さり幼い心を揺るがせる。 駆け抜ける衝撃を感じる。 フランドールは茫然とゴンを見つめ、その単語を繰り返した。 「…………トモダチ……?」 「そうだ、友達だ」 それは初めて与えられた概念だった。 言葉の意味を知らなかったわけじゃない。 例えばフランドールが外に出ようとすると雨を降らせて邪魔をする魔女は、姉の親友だ。 悪魔だろうと吸血鬼だろうと友達を作る事は出来る。 だけどフランドールにはそれが自分にも出来る事だとは思えない。 「無理だと思うわ」 「どうして」 「だって人間って簡単に壊れちゃうんでしょ? お姉様がそう言ってたもの。 私が見た事が有るのは変に強い人間ばかりだけれど、本当は脆いのが普通だって言うし、 この島で出会った人間は壊れやすいのばかりだもの」 「オレだって、弱くない」 「………………」 フランドールは考える。 (この人間は本当に強いのかもしれない。お試し用の弾幕なんてあっさり避けられちゃったし。 この人間なら紅白の巫女や魔理沙の様に……) 本当に自分を打ち倒すかも知れない。 勝つか負けるか判らない全身全霊でぶつかり合う。 そしてその後で――――本当に“トモダチ”になれるのかもしれない。 それはとても愉快な事に思えた。 「……本気で行くね。レイジング・ハート」 『Yes my temporary master.(はい、仮マスター)』 これまでになく強く握り締めた手の中で、彼女の中の杖が答えを返す。 「来い!」 ゴンは切り札をいつでも使えるように構える。 ――本気の弾幕ごっこが始まった。 * * * 「――人間って、判らないわ」 ロボットの少女リルルはククリに話しかけた。 「ねえ、さっきの子はどうしてあなたを助けたの? 敵だったのでしょう?」 現れた少女に……ククリは動揺した。 動揺して、どう答えれば良いか判らなかった。だって。 「ま、まっぱ、まっぱだか……!?」 目の前に現れた少女リルルが何一つ衣服を纏っていなかったからだ。 裸である。 全裸である。 真っ裸である。 フルヌードである。 すっぽんぽんである。 生まれたままの姿である。 より正確に言うならばそれにランドセルを背負っただけの姿である。 ぶっちゃけ裸ランドセルである。 ――しかしリルルはそれを気にする様子も無い。 「あなたにわたしの事なんてどうでも良いでしょう? やっぱり人間は変ね。 行動の優先順位が取れていないもの」 確かに理屈で言えば命の危機がまだ近くに有り、更に敵か味方かも判らない相手が目の前に居るこの状況は、 見た目や身だしなみがどうとかを気にする余裕なんて無い状況かもしれない。 それでもやっぱり普段日常生活のタブーに全力で抵触している存在はあっさりとは受け入れがたい。 「で、でもやっぱりダメー! 女の子がそんな姿で居ちゃいけないの!」 「わたしは人間じゃないから体温調節や防護の衣服は不必要なの。 それに汚れた衣服を纏っている方が不快だわ」 仕方無しにリルルは答える。 「さあ今度はあなたが答え……」 「人間じゃない……? 汚れたって、どうして?」 「サトシ君の血よ。人間ってとっても壊れやすいのね」 「こ、壊れ、え、え、そ、それって……」 血。人間って壊れやすい。さっき見た死体。その近くに居ただけかもしれない返り血を浴びていない少年。 限られた情報はあっさりと結びついた。 「あ、あなたが……殺したの……!?」 「そういう事になるわ。まさかお腹を切っただけで死ぬなんて思わなかったの。 思考回路は頭部、動力回路は胴部に有るそうだから動きが止まるだけだと思ったのに」 「い、いやあああああああああああああ!!」 飛びすさって杖を握り締めるククリ。 怯える少女にリルルは怪訝な表情を浮かべてしばらく考え込む。 「…………もしかして、あなたは彼の仲間だったの? それならごめんなさい」 「しらない、しらない! 殺さないで、おねがい!」 リルルは首を傾げた。本当に判らない。 「あなたを殺す気は無いわ。人間は大切な労働力だもの」 「だ、だってあの男の子を殺したんでしょ!?」 「殺す気は無かったの。サトシ君のことは本当に気に入ったから、とくべつに扱うつもりだったわ」 「だ、だって、だって……!」 十分な情報は伝えられたが、ククリにはすぐにはそれを受け止められない。 考えを整理する時間が足りなかった。 リルルはククリの不理解の理由が理解できなかった。 「思考回路にバグが有るの? わたしの行動と会話に矛盾は無いはずなのに、あなたの思考から論理性が失われているわ」 リルルは考えて、気づいた。 (もしかして、わたしの与える情報の正確性が疑われているの? わたしは地球人の中に紛れこむために人型という虚偽情報を持っているわ。 でもわたしの言葉を論理的に判断すればウソじゃないって判るはずなのに) そこまで考えて、更にもう一つの事に気づいた。 「そう、あなたはさっきの少年……ゴン君がサトシ君を殺したと誤解したのね」 「え……そ、それじゃやっぱりわたしのせいで……!?」 「誤った情報で敵と誤解されただけだから、彼は情報を訂正すればあなたは敵でないと考えた。 だから訂正するだけの情報を与えておいて、それを壊されないために敵との戦闘に入った。 彼は論理的な思考だわ」 「わ、わたしの……わたしのせい!」 跳ね起きたククリは慌ててゴンが消えた方に走っていこうとする。 リルルはその前に立ち塞がった。 「あなたの判断能力は彼のそれよりも低いわ。より上位の決定に従うべきじゃないの?」 「じょ、じょういのけってい……?」 「『逃げて。オレが相手をするよ』――彼はそう指示を出していたでしょう?」 「でも、でも! ぜんぶ、わたしのせいだもん! 止めにいかなきゃ! もしかしてあの子だって、わたしのせいでゴン君に誤解されただけかもしれない!」 「その可能性は低いと思うわ」 ゴンが、フランドールが人を殺そうとしていると考えた理由は倒れたククリを弄っていたせいだ。 しかしそれを抜きにしてもフランドールが問答無用の弾幕でククリを撃墜したのは事実である。 だけども、ククリはフランドールがゴンと戦っているのも自分のせいに思えて仕方なかった。 「でも行かなきゃ……!」 必死にリルルの脇を走り抜けようとするククリ。 リルルは通り過ぎ様にそのククリの首筋を指差した。 「きゃっ――――」 バチンという音がして、ククリはどさりと倒れこむ。 その体をリルルがしっかりと抱き留めた。 「行ったら死ぬわ。 あなたの非論理的行動はわたしが人間のことを知るのに役立つ。 だから行かせるわけにはいかない」 「………………」 「意識が、無い?」 リルルは慌ててククリを道路に降ろして容態を見る。 すぐに安堵とした。リルルには人間の容態はよく判らないが、脈も呼吸も有る。 かなり乱れてはいるが、止まっているわけではないのだから大丈夫だろうと判断した。 「でも、どうして?」 威力が落ちているこの電撃をサトシに使った時は少しヤケドを負わせただけなのに。 確かにククリはさっきのサトシと違って女性で、肉体的により脆弱な年代だろう。 その上に防御も出来ず直撃したとなればかなりダメージは大きいかもしれない。 それでもダメージの量が計算に合わないと思えた。 もしかすると、サトシの方が特別頑丈だったのだろうか? ふと見落としていた情報に気が付いた。 『へっ……電撃には慣れてんだ。こ……こんなの、何とも……ない!』 「そういえばサトシ君は電撃に強いと言っていたわね。失敗したわ」 判断を誤らないロボットのはずの自分が続けざまにミスを冒している。 リルルはその事に苛立ちを感じていた。 「とにかくこの少女を保護して隠れないと。地球侵略の為にはもっと人間の情報が必要だわ」 その事は、まだ変わらない。 リルルはククリを抱き上げてその場を離れようとして……違う声に出会った。 「止まって。そして、その子を放して」 目の前に現れたのはウサミミの少年だった。 片手に立て札を握った少年は目の前の光景を見つめて。 宇宙人と戦う超能力少年ネスは、地球侵略を企む鉄人兵団の一味リルルに問い掛けた。 「地球侵略って、キミはギーグの手下なの?」 * * * 「アクセルシューター!」 『Accel Shooter.』 フランドールの掛け声にレイジングハート・エクセリオンが唱和する。 それは無数のレーザーが放たれたかのようだ。 (正面から!?) ゴンは身構え……すぐに視野を拡散させる。 高速で放たれた12の弾丸は周囲に散ったのだ。 弾幕ごっこは対処の暇を与えた後でその対処を圧し潰す。 一瞬の後に高速で突撃してきたスフィアは斜め右前方から三発、斜め左前方から三発。 ゴンはコツを掴んでいた。 (この狙いは正確で、避ける隙間は必ず有る!) だから正確に半歩だけ横に動いた。 6発のスフィアが生み出す菱形の網目の隙間を潜り抜ける。 中央の弾丸はさっきまでゴンの居た場所の中心を正確に貫いた。 だが休む隙など無い。網目の中から次の弾幕を見極める。 次の弾幕は前後左右。これもまだ避けられる。 次も網目、だが弾道は螺旋状。辛うじて隙間を掴み取る。 次は押し包む弾幕。隙間が生まれた瞬間に駆け抜けた。 その次は軌跡にムラのある塊。これは大きく避けて凌ぐ。 大きく避けようとする道中を別の弾幕が待ち受ける。事前に見極めて隙間を把握するのが正解。 それをし損ねたせいで無理矢理潜り抜ける事になり肩を腹を死のスフィアが掠めていく。 「くそ……!」 避けたスフィアさえも一定範囲で慣性を無視するかのように急激に反転。再びゴンに襲い掛かる。 ゴンは近づく事も出来ずに翻弄されていた。 (これじゃ保たない! どうやって制御しているんだ? ……いや違う、制御じゃない。さっきの弾幕はこの練習だ! すぐには見極められないけど“似たパターン”が含まれてる!) ――アクセルシューターは12の弾丸を全て制御する強力な誘導操作弾だ。 相手の攻撃を撃ち落とす事さえ可能な攻防一体の魔法。 しかし、杖の支援を得ても尚、全てを自在に使いこなすのは至難の業だ。 術者への負担は大きいし、飛び回るなど他の行動と同時に行う余裕もない。 それに長けた高町なのはならばともかく、フランドールに同じ芸当は為し得ないだろう。 だがフランドールにはフランドールの技術が有る。 それは、パターンだ。 弾幕は複雑怪奇な軌道を作り出す。しかし一つ一つの弾丸は一つの式で現される。 フランドールはアクセルシューターの殆どの弾丸を数式による自動操作に任せていた。 たった一つの数式が、一定範囲外に出た時に反転する式と目標の位置情報を計算に含む事、 そして見分けの付かない他の弾と群をなす事でその解読を極難度に跳ね上げる。 通常弾幕の時と比べればその弾数は遥かに少ない。 速度と威力は上だが、12のスフィアは弾幕と言えるか怪しいだろう。 それでも温い練習でしかない弾幕とこの少ない弾幕の難度の差は圧倒的だった。 弾幕の怖ろしさはその数でも単純な密度でもない。 その裏に潜んだ無数の試行錯誤の上に築かれた数式こそが最大の脅威だ。 (一度距離を取るしかない!) アクセルシューターのスフィアは高い威力と貫通性を維持して飛び回っている。 この世界に大幅に制限されているはずだが、使用者の攻撃性と魔法の威力が高すぎる。 以前、“手加減などできない”程度の威力を保たれていた。 近くの建物に立て篭もった所で意味が無い。 というより、気づいてみれば周囲の建物は蜂の巣になっていた。 家屋の柱が破壊されて崩れ初めている建物まで存在する。 距離を取ればスフィアの制御にもムラが出ると判断したゴンは大きく跳躍して距離を取った。 ……しかしレイジングハートの魔法は誘導操作弾だけではない。 突如、フッとアクセルシューターのスフィアが消え去った。 「え……!?」 ハッとゴンはフランドールを振り返り、その目に念を集めて“凝”視した。 ゾッとする程の力が集まっていた。 構えた杖の先端に凝無しでも目視できる三つの光点が生まれ、そこから光が集中していく! (まずい……!) 気づいたゴンは、敢えて再びフランドールに向かって疾走した。 直感を信じ、逃げるのではなく逆に距離を詰めた。 フランドールが魔力充填を完了しその一撃を発射する。 「ディバインバスター・エクステンション!!」 『Divine Buster Extension.』 その瞬間も尚、ゴンは斜め前方へと跳躍していた。 放たれた強力な光線は一瞬で宙を貫き、ゴンの足先を焦がして飛び去った。 家屋を貫く。壁も柱も凄まじい速度と貫通力で貫いて、粉砕して、破壊しつくした。 ――長い、轟音が響いた。 「ハァ……ハァ……すごい。これも避けちゃうのね」 本来はカートリッジを2個も消耗する魔法を発動した為に粗い息を吐きながら、 フランドールはゴンの選択を賞賛した。 そう、ゴンの行動は正解だった。 ディバインバスター・エクステンションは超長距離を狙い撃つ精密高速の狙撃魔法だ。 少しくらい距離を広くした所で狙いは外れないし、その貫通力は並の防御では防げない。 更にフランドールは放ったレーザーなどを放ちながら安定して振り回せる強靱な肉体を持っていた。 通常のディバインバスターに比べればこの狙撃魔法の狙いは殆ど動かせないが、それでも少しは動く。 例えば撃ちながら射撃角度を5度かそこら変えるくらいはできたのだ。 その時、遠距離にいれば振れ幅は広くなり捕まってしまう。 逆に言えば極端な話、至近距離の周囲を走り回ればこの魔法の狙いは絶対に定まらない。 発動までの隙に全力で距離を詰めて横に動く。それがこの攻撃の狙いを外す最善手だった。 もっともゴンはそこまで考えたわけではない。 「距離を……開けたら撃ってきただろ……? それってつまり、近距離だったら当たりにくかったりするんじゃないかって思ったんだ」 ゴンは単純な思考で最も大切な要点だけを掴み取った。 その肉体は掠めた弾幕の傷こそ無数にあれど、全て軽傷。ただ疲労が溜まっていた。 一方のフランドールも豪快に魔力を消費していたが、負傷は無かった。 (だけど次は避けられない。もう距離は取れない) 実を言うとゴンにはまだ切り札が残っていた。 だがその切り札が通用するのは、おそらく一度だけだ。 (この子は頭が良い。二度目は対策を立てられる。そうしたら……勝てない。 フランドールはオレより強い) だから次で決着しなければならない。 自分より格上の相手という事は勝てない相手という意味ではない。 平均して十の力を持つ者と七の力を持つ者。 それでも十の者が八の力しか出せなかった瞬間九の力を引き出すことが出来れば、勝てる! フランドールも笑みを浮かべ、レイジングハートを構えた。 決着を感じたのだ。 「……行くよ。アクセルシューター!」 『Accel Shooter.』 杖が唱和すると共に再び放たれる12のスフィア。 それは周囲に散開しゴンへと狙いを付けた。 「行け!」 叫びと共に襲い来る12のスフィア。最初の6発を避け、次の6発を最小限の動きで凌ぐ。 掠める魔弾。 それが一定範囲外に飛び出て反射して再び襲い掛かってくるまでの僅かな時間。 ゴンはそこに隙を見出した。 「最初は、グー!」 ゴンの右手に膨大なオーラが集中する。 ジャンケンのグー、チョキ、パーの三種に派生するゴンの必殺技。 チョキとパーは決定力に欠けるがグーの破壊力は絶大で、その直撃を受け止めた者など誰も居ない。 だが欠点も有る。 グーの射程は通常のパンチの射程でしかない。叩き込まなければ意味が無い。 消費も大きい。技を起動させるだけでかなりの力を消費する。 そしてなにより、隙が大きい。 オーラを溜める僅かな時間、ゴンは完全に隙だらけになってしまう。 弾幕の合間に見出した僅かな時間だけではまだ足りない。 四方八方から迫る12のスフィアは弾幕となり完全にゴンを包み込んだ。 だからゴンは、左手でもう一つの切り札を取りだした。 赤い布。 それは小柄なゴンの体を包み込み、次の瞬間12のスフィアがゴンに直撃した。 本来ならそれで終わりだ。 攻撃面において破壊的に突出したフランドールの魔法が直撃すれば制限下でも人間など砕け散る。 だが12のスフィアは範囲外に出た時の様に、慣性も全て無視して反転した。 四方八方に飛び散ったスフィアは周囲の建物を貫いて四散した。 「うそ……!?」 ひらりマント。 マントに触れたベクトルを完全に反転し全ての飛び道具を跳ね返す、対飛び道具最強の盾。 ゴンの支給品だった。 結果、オーラの充填は完了した。 散ったスフィアがまた戻るまでの僅かな時間、弾幕にも隙間が生まれた。 ゴンはひらりマントを置き捨てて、その直中を疾走する。 もはや遮るものは何も無い――! * * * ヴィクトリアはひたすら姿を現そうとしなかった。 隠れ忍ぶのが彼女のやり方だ。 群衆の中に。あるいは隠し部屋の中に隠れて生き延びる。 彼女は大体の経緯を観察していた。 ククリを守る為にゴンがフランドールと戦いを決意する瞬間も。 ククリの前にリルルが現れたのも。 会話の後にリルルの電気ショックにククリが気絶するのも。 その場にネスが現れたのも。 そこまでを手出しせずに観察した末に、ヴィクトリアはその場所を離れた。 今、彼女が居るのは桜の樹の下だった。 「……ここがこの北東の騒動の発端という事になるのかしらね」 桜の樹の下に埋められていた少年の死体。 野性の動物に食い荒らされてしまうと心配したゴンが埋葬した少年の死体だ。 ヴィクトリアはその墓を暴いていた。 ゴンの意志を踏み躙り、そしてその下に有った死体を取りだしていた。 「割と良い状態ね。無惨だけど、人として死ねた分だけまだマシかしら。 ……それも今さっきまでという事になるけれど」 流石に罪悪感も感じなくはなかったが、すぐにそれを振り払う。 “化け物”に罪を感じる権利など有るのかどうか。 そもそも、これは決意の元に選んだ事だった。 「それじゃ……悪いわね」 一度だけ謝罪を手向けた。そして。 ヴィクトリアは少年の遺体を――貪り喰らった。 ヴィクトリアは人型ホムンクルスだ。 事故によりまた別の怪物とされた父親を狩り立てる為に、ヴィクトリアは怪物に作り変えられた。 その主食は……人肉。 ホムンクルスは抑え込まれた人間の部分の本能的な未練により、皮肉にも人肉を求める。 ヴィクトリアは人間への未練が捨てきれないが為に、人を喰らわなければ生きていけないのだ。 それでも元の世界は……大体は、なんとかうまくやっていた。 百年に渡り、研究設備で培養した母親のクローン肉を主食にして生きてきた。 だがこの島にそんな物は有りはしない。 腹が減れば、人の肉を喰らわなければ生きていけない。 頭皮を剥ぎ取り頭蓋骨を砕いて灰色の脳細胞を喰らい尽くす。 苦痛に硬直していた顔面の肉を喰らい尽くす。 柔らかい首筋を。鍛えられた腕から背中の筋肉を。細い神経と血管を。残った固い骨までも。 強靱な化け物の顎で噛み砕く。 血を飲み内臓を引きちぎり貪り喰らい足の一辺腕の指先すらも残さない。 残ったのは大きな血溜まりと僅かな食べ残しだけだった。 ヴィクトリアは衣服を汚す事もなく、遺体を丸々喰らい尽くした。 「…………ごちそうさま」 残った首輪を拾い上げる。 これでヴィクトリアはしばらくの腹の足しと、首輪の両方を手に入れた。 (この少年……サトシと、埋葬したであろうゴンには悪い事をしたわね) そう思いながらもヴィクトリアは止まらない。 生きる為に。脱出のために。 ヴィクトリアはゴンの意志とサトシの亡骸を踏み躙った。 * * * 迫るゴンの姿。 フランドールは全力で考えた。 ゴンが辿り着くまでにまだ僅かな時間が存在する。まだ何か手は無いか? アクセルシューターは? ダメだ。制御して呼び戻すにも再び発動するにも時間が足りない。 ディバインバスターは? 話にならない。長いチャージ時間の間に辿り着かれる。 防御は? 防御は無理だ。格闘戦ならきっと彼の方が上だ。もし止められても組み付かれた時点で負けだろう。 フランドールには姉ほどの身体能力は無いのだから。 回避は? 蝙蝠変化なら逃げきれるんじゃないだろうか? ……ダメだ。今それをするのはきっと何かが許されない。 ありとあらゆるものを破壊する程度の能力も同じ事だ。 そもそも制限を受けているのを感じるけれど、使えたとしても使っちゃいけない。 全力を出す事と手段を選ばない事は全く違う! それなら……スペルカードなら? フランドールが本来持つ弾幕は多種多様だ。 禁忌「レーヴァテイン」で炎の剣を振り回せば近接戦も挑む事が出来る。 禁忌「フォーオブアカインド」で4人に分身すれば咄嗟に本体は見分けられまい。 禁忌「カゴメカゴメ」で無数の網を作れば相手の動きを封じ込める。 禁忌「恋の迷路」を使えば過密な弾幕は盾のように機能する。 禁忌「禁じられた遊び」を使えば無数の刃が近づく敵を切り刻む。 秘弾「そして誰もいなくなるか?」に至っては姿を隠ししばらく一方的に攻撃できる。 手段は有る。無数に有る。 …………だけど。 (レイジングハートで遊びたい) 殺されてしまうかもしれないほどのオーラが集中したゴンの拳を見て、尚フランドールはそう思う。 これまでずっと一人だった。 だけどトモダチになると言ってくれたゴンが居て。 意志を持つ遊び道具であるレイジングハートともトモダチになれたなら。 きっと何かが変わる気がした、だから。 フランドールはレイジングハートの術式の中から手段を選び出す。 「レイジングハート。……プロテクションEXで行くよ」 『……Yes my temporary master.』 それは本来発動しっこない魔法だ。 防御が苦手なフランドールに高位の防御魔法を発動できるわけがない。 そもそも防御魔法を発動した所で、接近されれば勝つのはゴンだ。 どちらにしろ勝負は決まった。 それでもフランドールは思った。 (受け止めたい) 目の前の少年の拳を。その言葉を受け止めたい。 何かが変わるだろうか。 『おまえはもっと外を見た方が良い』 そう言ってもらえた事が有った。 外を見た今なら。目の前の少年とも出会った今なら何か変わるのだろうか。 それは嬉しくて楽しい事なのだろうか。 幼い心でもそれを信じ迎え撃つ。 激突の時が近づく。 ゴンが迫る。 フランドールが迎え撃つ。 レイジングハートがそれに答える。 「ジャンケン、グー!!」 「プロテクションEX!!」 『ProtectionEX.』 そして、激突した。 * * * ……それからしばらくして。 ヴィクトリア=パワードは物陰に潜みながらその場所を訪れていた。 そして思わず……絶句していた。 「……なんて力。デタラメじゃない」 そこは圧倒的な破壊の力が吹き荒れた戦場だった。 機関銃を振り回したような風穴がそこら中の家屋を蜂の巣にしていた。 だが弾道が奇妙だ。おそらくこれは、曲線を描いている。 「遠隔操作された球状の弾丸……それが周囲を飛び回ったの?」 家の壁を貫き中を無茶苦茶に荒らし回りながら無数の魔球が嵐となって吹き荒れた。 そういう事なのだろう。 また、一ヶ所は対戦車ライフルでもぶっ放したような破壊の風穴が複数の家屋を貫通していた。 そして、三種類目の破壊の形。 それは奇妙な、小さなクレーターだった。 他と比べれば大したことが無い、小さくて狭い破壊の跡。 「何かしらね、これは」 形からしてその猛威の範囲はせいぜい直径数mがせいぜいだろう。 手榴弾なぞ半径50m近くに破壊を撒き散らすわけだから効果範囲は現代兵器を大きく下回る。 だがその破壊の密度は……とてつもない力に思えた。 滑らかに削られた地面に不安を覚えながらも、ヴィクトリアはその場を離れる事にした。 それ以上その場に居続けても、得られる物は無いと思えたから。 ただ小さな胸騒ぎだけが残っていた。 * * * フランドールはよろめきながら、とある家屋の裏口に辿り着いた。 右手はレイジングハートを持っているから左手で開けようとして、動かなかったから右手で開けた。 仮にもお屋敷暮らしのお嬢様であるせいか、選んだのも割と豪勢な家だ。 台所を通り過ぎ、リビングを通り過ぎ、寝室の一つに狙いを付ける。 フランドールは分厚いカーテンの降ろされたそのベッドに倒れ込んだ。 ふかふかと柔らかいベッドが小さな体を受け止める。 カーテンに遮られた日差しは害もない程度だったけれど、少し煩わしかった。 「地下室が有れば良いのに」 不満げに呟いて、だけどそれを捜しに行く気力もなかった。 衣服の左肩は大きく破けて白い肌が露出している。 その左肩の骨は外から見て判るほどに粉砕されていた。 吸血鬼の再生力でもこの島じゃ治るのにいつまで掛かるか見当がつかない。 もっとも、フランドールはそんなこと気にしてもいなかった。 衣服はバリアジャケットだから再構成もできたけれど、直したり隠すのも後で良い。 とにかく少女は……疲れていた。 そして大きな充足感と、少しの不満を感じていた。 「…………楽しかった。ほんとに楽しかった」 でも、と思う。 一つ不満だった。だって――――。 「……嘘吐き。やっぱり、壊れちゃったじゃない」 後半