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LSS/W45-047 カード名:“ダイスキだったらダイジョウブ!”高海 千歌 カテゴリ:キャラクター 色:赤 レベル:1 コスト:0 トリガー:0 パワー:4500 ソウル:1 特徴:《音楽》? 【自】このカードが手札から舞台に置かれた時、あなたは自分の《音楽》?のキャラを1枚選び、そのターン中、パワーを+1500。 レアリティ:U
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がさがさと音を鳴らしながら、1匹のタブンネが草むらから顔を出し、あたりの様子を確認する。 安全あると確認できたのか、おそるおそる草むらから這い出し、大急ぎで別の草むらの中へと身を隠す。 このタブンネは人が住む街を目指している。 生まれ故郷である森を出て、住み慣れた土地を捨ててでも彼は人のいる場所を目指した。 ふわふわとした尻尾が草むらの中に消えていくと「ミィッ」という声がすると、 草むらが大きく揺れ、そのまま静かになる。 おそらく、待ち構えていた肉食ポケモンに襲われてしまったのだろう。 自然界におけるタブンネというポケモンはひどく弱い立場にある。 武器となる爪や牙をもたず、攻撃手段もほとんど持っていない。 そのため野生の肉食ポケモンにとって格好の獲物となってしまう。 草むらに生息する野生のポケモンの中で比較的大きめの体。よく目立つピンク色の体毛。 それらは身を隠すことにも向いていない。 動きは鈍く、空を飛ぶこともできないため、一度見つかってしまえば逃げることすら困難だ。 常に外敵に襲われることに震えながら、タブンネたちは生きている。 そんなとき、タブンネたちの間にある噂が広がった。その噂がどこから広がったのかはわからない。 ただ、一部のタブンネたちが人間のもとに行くことを決意する。 野生のポケモンに襲われることなく、安全な寝床が確保されるという人間のもとに。 あるものは草むらを揺らし、人の前に飛び出すようになった。 あるものは人の家の近くに巣をつくり、そこで暮らすようになった。 あるものは外敵のいない暮らしを夢見て、街を目指した。 ほとんどのタブンネが失敗して命を落とす結果となった。 それでも、ごく一部のタブンネのなかに成功するものが現れた。 これから始まるお話は、幸運をつかむことのできたごく一部のタブンネたちのお話。 …… ………… …………………… 日が沈み、街の色が夜に変わろうとする時間。 その時間になるのを待っていたかのように1匹のタブンネが目を覚ます。 ここはとあるマンションの外に設置されている、鍵がかかるタイプのゴミ置き場。 このタブンネはマンションとゴミ置き場のわずかな隙間に体をねじ込んで巣にしている。 街に住む多くの野良タブンネは昼の間に活動する。 だが、このタブンネは、夜に活動したほうがいいと経験から判断していた。 明るい時間というものは人が活動している時間であり、ただ歩くだけでも人目に付いてしまう。 街に来た当初はそのことがわからず、飲食店のゴミを漁っているところを店の人間に見つかったり、 保健所の人間から駆除されそうになったりと散々な思いをしたものだ。 また、気候的な意味でも夜に活動した方がいいと学んでいた。 気温の高い夏の昼間に外で活動するのはひどく体力と水分を消耗してしまい、命を落としかねない。 逆に、気温が低い冬の夜に眠るということは、眠ったまま凍死してしまう可能性がある。 そのため、このタブンネは夜に活動することを選んだのだ。 それがほかのタブンネとの交流を絶つことになると知っていても。 タブンネは巣にしている隙間から這い出すと、近くの公園に向かって歩き始める。 体についた汚れや、寝ている間にぐしゃぐしゃになってしまった毛並みをきれいにするためだ。 公園に入ろうとしたタブンネだったが、そこは無人ではなかった。 公園には仲のよさそうな親子と、そのペットである飼いタブンネがいた。 タブンネが舌打ちをすると、飼いタブンネがその音で存在に気付いたのか、タブンネの方に手を振ってくる。 同じタブンネとしての仲間意識だろうが、野良であるタブンネにとって人に飼われているタブンネは敵だ。 自分が手に入れられなかった幸せを手に入れたやつと仲良くするつもりはない。 その感情は、敵意ではなく嫉妬という感情であることをタブンネは知らない。 飼いタブンネが手を振っているのを見て、飼い主の女の子がタブンネに気付いた。 「ダメだよ。あんなのに近づいたらタブンネまで汚くなっちゃうよ」 そう言うと、飼いタブンネと母親の手を引いて公園から出ていった。 飼いタブンネがチラチラとこちらを気にしているようだったので、歯を見せて威嚇する。 何はともあれ、公園からは誰もいなくなった。 タブンネは水道へと向かい、慣れた手つきで蛇口をひねる。 口をつけて水を飲むと、じょろじょろと出てくる水を浴びて、体についた汚れを落としていく。 季節は秋になろうとしており、水道の水も心なしか冷たい。濡れた体がぶるりと震える。 タブンネは体を震わせて水を飛ばすと、もう一度だけ水をのんでから蛇口をひねって水を止めた。 水浴びを終えたタブンネは今日の食事を確保するために公園を出て歩き出す。 このタブンネの普段の食事は24時間スーパーの廃棄食品になることが多い。 スーパーの夜のシフトに入っているアルバイトの人間が何かをくれることが多いからだ。 1年以上ご飯をもらいに行っていることもあって、タブンネのことはすっかり覚えられている。 もちろん、人によってはご飯をくれなかったり、追い払われることもある。 それでもこのスーパーが食料事情としてはもっとも安定している。 形の悪い唐揚げや、期限切れのパン。運が良ければ、ステーキ肉の切れ端をもらえることもある。 餌を求めてゴミ箱をひっくり返していた時期に比べれば、天国のような食事環境だ。 それでも、オレンやオボンを食べたくなる時がある。 2年以上食べていない木の実の味が懐かしくなる。 そんな時は、オレンやオボンを狙った仲間のことを思い出すようにしている。 今の自分がどれだけ恵まれているかを思い出すのだ。 スーパーの裏にある商品搬入口。 暗闇の中で明るく照らされたその場所がタブンネが普段、食事をもらう場所なのだが…… 「またお前か!」 そこにいたアルバイトがタブンネの姿を見た途端、大声で怒鳴りながらタブンネの体を箒で何度もたたいてきた。 今日はご飯をくれないアルバイトの日だったようで、タブンネは耳をガードするように押さえながら、 あわてて背を向けて退散した。 名残惜しそうにスーパーの方に目を向けるが、アルバイトはタブンネの方をじっと睨んでいる。 食い下がったところで、あのアルバイトはご飯をくれない。ならば、ほかの店をあたったほうがいい。 タブンネは頭の中で、近くで食事を確保できそうな場所を思い浮かべる。 廃棄をくれるコンビニ、ミィミィバーガーのゴミ捨て場、ゴミが捨ててある公園…… 二度あることは三度あると言うように、タブンネにはまたもや災難が訪れていた。 餌場に向かっているとガラの悪い格好した少年たちに囲まれてしまった。 タブンネは知っていた。彼らが不良という存在で、不良は二種類いることを。 タブンネに餌をくれるか。タブンネをいじめるか。 目の前にいるのは後者のようで、タブンネを見てニヤニヤといやな笑い方をしている。 一人がタブンネの体を軽く蹴飛ばす。体格差もあり、タブンネは地面に転がってしまう。 タブンネが倒れたのをみて、不良たちは集団でタブンネに蹴りを入れ始める。 タブンネは抵抗しようとも逃げようともしない。 頭を抱えて丸くなってひたすら耐える。 頭を踏まれても、耳をつかまれても、お腹を蹴られても、ただ耐える。 抵抗すれば、生意気だと言われてさらに痛い目に会わされてしまい、 逃げれば、おもしろがって追いかけてきておもちゃにされる。 相手が飽きてどこかに行くまで我慢するのが一番いい。 この街に来てタブンネが学んだことの一つだ。 しかし、タブンネのそんな様子が不良たちには不服だったようで 「もっといいリアクションしろよ」 そう言うと、それまで以上に容赦なくタブンネの体を痛めつけ始める。 顔をつま先で蹴飛ばされ、何か固いもので殴られ、尻尾をつかまれ引きずられる。 そんな暴行を耐え続けることなどできるはずもなく、やがてタブンネの意識は真っ暗になってしまった。 タブンネが目を覚ましたとき、最初に見えたのは何もない真っ暗闇だった。 次に、何か生ものが腐った時の臭いが鼻に入ってきて「ウェェ…」とえずく。 タブンネは積み上げられたゴミ袋の山に頭から突っ込まれていた。 そこから何とか出ようと思ってもがく。動くたびに全身にズクンズクンと鈍い痛みが走る。 痛みをこらえながらゴミ袋の山から脱出したタブンネ。 そのまま、路上に倒れ込みあおむけになる。 首を動かして空を見ると、遠くの空が少し明るくなっているのがわかった。夜明けが近いのだ。 明るくなる前に巣に帰らなくては。そう考え、痛む体にムチを打ち立ち上がる。 そのとき、捨ててあったゴミ袋がやぶれて出てきたのか、目の前にあるものを見つけた。 それはオボンの実だった。 誰かの食べ残しをすてたものなのか、ほとんど皮の部分しか残っておらず、しかも腐りかけだった。 しかし、タブンネはそれを信じられないという顔で見ると、おそるおそる口に入れる。 二度と食べることはないだろうとあきらめていた懐かしい味が口の中に広がる。 故郷の森での暮らしていたときの思い出が次々とよみがえってくる。 タブンネは泣いた。 肉食のポケモンに襲われることにおびえながらも、仲間や家族とすごした温かい日々を思い出して。 ほかのタブンネとの交流を絶ち、日々の食事を探すだけのみじめな自分の現状を思い知らされて。 タブンネがマンションにたどり着いた時には、街は朝の姿になろうとしていた。 会社に向かうサラリーマン。箒を動かす女のひと。ジョギングする若い男性。 タブンネはマンションとゴミ捨て場の間に体をつっこみ目を閉じる。 二度と手に入れることができない日々に思いを馳せながら。 「あー、これか」 とあるマンションのゴミ捨て場。老年の男が面倒くさそうにつぶやく。 「はやく片付けちゃいましょう」 老年の男の言葉に若い男性が答える。 この男たちはこの街の役所からの連絡をうけてやってきた清掃局の人間だ。 2人の視線の先にはマンションとゴミ捨て場に上半身を突っ込んでいるタブンネの死骸がある。 2人は手袋をつけてタブンネの体を引っ張り出す。 「うわー、ひどいなこりゃ」 引っ張り出したタブンネは全身にアザと傷があり、耳は片方がちぎれかけている状態だった。 尻尾は切り取られており、ハート形の肉球もズタズタになっていた。 「悪ガキにでもやられてここに逃げ込んだんですかね?」 「さあなぁ」 2人は回収用の袋に動かなくなったタブンネを入れ、清掃局のバンの荷台に放り込む。 荷台のドアを閉めると2人は掃除を始める。 掃除を終えると2人はバンに乗り込んで、マンションから去っていく。 そこにタブンネがいた痕跡は何も残っていなかった。 …… ………… …………………… 人間のもとに行くという幸運をつかみとった一部のタブンネたち。 しかし、彼らの幸運は永遠のものではない 一度つかんだ幸運は彼らの手をすぐにすり抜けていってしまう。 それでもタブンネたちは人のもとを目指す。 そこには幸福な生き方が待っていると信じて。 (おわり)
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ちっさーが男の子だとわかった日、あの日は私にとっても特別な日になった。 私たちはメンバー同士で頬っぺたにキスをする程の仲のいいグループだけれど、口と口ではしたことがなかった。 しかもステージ上でされるとは予想外だった。 リハーサルでも昼公演でもそんな事はなかったのに、夜の公演でちっさーが突然私の唇を奪っていった。 『YES!しあわせ』、この曲には歌詞の中に『キスしてる』というフレーズがある。 そこの振り付けに私とちっさーが向き合ってキスをする振りをするところがあって、そこでちっさーからキスされたのだ。 最初はびっくりして何をされたのか一瞬わからなかったけれど、ちっさーがしってやったりって顔で笑っているのをみて あぁキスしたんだと実感が湧いた。 私は照れ臭くて、すぐに顔を逸らしてしまったのだけれど、思えばそうして正解だったのかもしれない。 あの時点では知らなかったとはいえ、私はあろうことか男の子とキスをしてしまったのだから。 もしも、男の子とわかっていたらきっととんでもなく緊張してステージどころじゃなくなっていたと思う。 ちっさーは男の子だし女の子を好きになるのは当然のことなのに、その相手が私なのは意外過ぎて現実味がない。 私たちは家族みたいに強い絆で結ばれていると思っていたから、あの子が私を異性としてみているのが不思議だった。 私はちっさーを意識して男の子としてみた事はないけれど、ずっとボーイッシュな子だとは思っていた。 それがまさか本当に男の子だったから、驚きもしたし同時にやっぱりと頷いてしまう部分は少なからずあった。 フットサルをしている時のちっさーは活き活きしていて、グラウンドで駆け回る姿には好きなんだなと微笑ましくみていた。 ドリブルでボールを捌くテクニックは私たちの中でも抜き出てセンスがあるって監督も言っていたし、 ちっさーが℃-uteの活動をしていなかったならサッカー選手になれたかもしれない。 ちっさーのフットサルをしている時の横顔、それを思い出すとちょっぴりカッコイイなぁと何故だか私が照れてしまう。 まだ男の子って知ってから日が浅いし、年下でまだ子供なちっさーを意識しているとは思えないのにこの気持ちは何? 「舞美ちゃん、今度のバスツアーでちっさーと同じ部屋にしなよ」 これは名案とばかりに目を細めてうっとりした笑顔で提案してきた愛理。 彼女はちっさーが男の子って知らない筈なのに、キスをしてからは面白半分でやたらと二人にしたがる。 それだけならいいのだけれど、ちっさーをちらっとでも見ていると「見てたでしょ」とからかってくる。 確かに最近は撮影の合間の休憩時間はついちっさーを目で追っていることも多い。 でも、それはちっさーの秘密が皆にバレないように私も気をつけているからであって、決して好きとかではない。 と、自信ないけどそう思っている。 愛理にはそのからかった後の私の慌てっぷりがみたいから言っているような節がある。 結構、愛理も落ち着いているようでいて子供な面があるのには少しだけ安心させられる。 「えぇぇぇ~何でよぉ。ちっさーちっさー言うなら愛理が一緒になればいいじゃん」 「私は栞菜と同じ部屋になるからいいよ。えりかちゃんはなっきぃと一緒で、舞ちゃんは私たちと一緒でもいいし」 「何、もう勝手に部屋割り決めてるの。やだなぁ~私にも選ぶ権利あるでしょ」 「選ぶ権利はあるけど、皆にも意見きいてみてからでも遅くないよ。たぶん多数決でこれで決まりかな」 ここまできたら、部屋割りは愛理の案が通ったも同然だろうな。 皆も私が慌てる様子をみたら、これは面白そうって事になってどんなことしても決定になる。 舞ちゃんは特に私が慌てる様子をみて「面白い」って声をあげて調子に乗るタイプだし、嫌になっちゃう。 そういえば、舞ちゃんはあれだけ仲が良くて一緒にいるのに気づかないなんて鈍いなぁ。 ちっさーが男の子だって知ったらうるさそうだし、舞ちゃんは知らない方がいいかもしれないな。 そうだね、秘密を守るって意味でも私が一緒になるのが一番かもしれない。 「へへん、いいよ。私がちっさーと一緒の部屋になるよ」 「どうしたの?いきなり物分りよくなっちゃってさ」 「ま、まぁいいじゃん。ちっさーの面倒をみてあげようかなってね。あははは」 「もう気まぐれなんだから。わかった、えりかちゃんたちにはお仕事で会った時に話しておくね」 「はぁい。愛理もBuono!の活動も頑張るんだよ。じゃあ、お休み」 「うん、お休み」 電話を切ると、私は疲れが出たのかベッドに倒れこんだ。 ファンクラブのバスツアー、そこでは私とちっさーがあれから初めて二人きりになるのか、と思うとドキドキしてきた。 いくら男の子だって意識していなくても、キスをした事はまた別なのだ。 ちっさーは私を異性としてみているのか、だとすると今度お話が出ている写真集なんてどうなんだろうな。 年頃になってきたわけだし、私の水着姿みておぉとか言って興奮するのかな。 うちには二人のお兄ちゃんがいて、小さい頃にはよくキャッチボールをして遊んだこともあって、今でも仲がいい。 小さい頃にはお風呂にも一緒に入っていたし、お互いに裸は見慣れていたのに大きくなると違和感を覚えた。 華奢だった体つきは筋肉が浮き出てゴツゴツしてきたし、声も太くなってきた。 そうなると、私にはお兄ちゃんが私のお兄ちゃんじゃなくなった気がして複雑になった。 その違和感を決定づけたのが、お兄ちゃんが一人でエッチな事をしている所をたまたま目撃したことだった。 お兄ちゃんたちも大きくなると、こそこそしてエッチな本みていたりしてるってお母さんが言っていた。 部屋の掃除にいくと、エッチな本が散らかっていたりしたらしい。 私は初めは不潔だとか抵抗があったけれど、男の子なんだし当たり前だと思うようになって、気にしないようになった。 でも、あの光景だけは今でも忘れられない。 お兄ちゃんが部屋でこもって、一人エッチな本を開いてあそこを弄っていた日のことを。 しばらくはあの光景が頭から離れず、ようやくオナニーって言うことを知った時には皆そんなものかって割り切っていた。 それでも、私はちっさーにはそんな事してほしくない。 別に今まで女の子だと思っていたからとかじゃなく、ちっさーには穢れてほしくなんかない。 私が好きなら、これからグアムに行って撮影する写真集はどんな気持ちで見るんだろうなぁ。 「舞美ちゃん、もうすぐバスツアー始まるんだからぼけっとしてないで」 「ぼけっとなんかしてないってば。ちょっと考え事してただけだよ」 「舞美ちゃんでも考え事するんだね、安心した。妹としてはお姉ちゃんの進歩が嬉しいな」 「舞ちゃ~ん、言ったなぁ~このこの」 私がモヤモヤした気持ちを抱えたまま、とうとう気づけばバスツアーの当日になっていた。 バスガイドさんの衣装を着ての写真撮影があったりと企画が盛りだくさんのツアーだ。 ファンの人たちとも触れ合って、日頃の応援に感謝して恩返しが出来たらいいな。 だけど、私にはやっぱりちっさーの事が気がかりだった。 「考え事してるっていうよりもぼけっとした顔だよ。舞美ちゃんには考え事は無理だって」 「言ったな~妹。私はそんな育て方した覚えないよ」 「また言ってる。本当の事いっただけなのに」 「くすぐったい~それは禁止だよぉ。きゃはははは」 ぼけっとしてるなんて私らしくないし、ファンの人たちに失礼だよね。 いつだって全力投球がモットーなんだから、今だけはちっさーの事忘れなきゃ。 今だけは・・・ ←前のページ 次のページ→
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言葉という無限の刃(前編) ◆lDZfmmdTWM 「これは……?」 充電を終えた首輪探知機を起動し、そのディスプレイをみたその矢先。 レイは、映し出されている光点の位置に声を出してしまった。 その様子に、スザクと一方通行の背にも緊張が走る。 この駅の周辺に誰もいないのであるか、もしくはいたとしてもだ。 ただ周囲に反応があっただけでは、当然ながらレイがこの様な声を出すわけがない。 つまり、それが意味する事は……明らかにおかしい反応があったという事。 「……スザク、一方通行。 お前達はこれをどう思う?」 レイは二人に探知機を見せ、その意見を伺った。 ディスプレイに映し出されている光点……その一つが、西方より真東へ。 すなわち、自分達のいるこの駅へ向かい真っ直ぐに向かってきているのだ。 そのスピードを見る限り、歩きにしては少し早すぎるが、乗り物を扱っているにしては遅いというレベル。 考えられるとすれば、自転車の様な物を使っているか……あるいは。 「駅に向かって、走ってンのか?」 一方通行が答えた様に、走ってきているかだ。 現状ではまだ断言こそできないものの、もしもそれが事実だとすれば……考えられる事は一つ。 この駅へと、急いで向かわねばならない用件があるということ。 そして……現状から考えられる、その用件は一つだ。 「この人……万が一放送を聞き逃していない限りは、 僕やセイバーさん達の事を知っている誰かの可能性が高いかもしれません」 この反応の人物は、駅に自分達がいる事を知っている人物だ。 何せこの駅は、もうじきに禁止エリアへと指定される危険地帯。 そこへ好き好んで向かってくる者などまずいるわけがない…… 故に、この人物は目的があるからこそ駅に敢えて向かってきている。 そして、現状における目的とは……この駅にいる誰か。 駅を集合場所とし、合流を約束していた誰か相手に他ならないのだ。 この情報を知っているのは、この場にいる三人と既に死亡した者達を除けばたったの三人。 両儀式とデュオ・マックスウェル、阿良々木暦のみとなる。 だとすれば、この内の誰か―――この場合、最もあり得るのは単独で動いていると予想される阿良々木―――か。 もしくは一方通行の様に、駅に対主催派として行動する者達が集っている事を、誰かから聞かされた者だ。 「だがよ、隣のエリアにも二つの反応があるぜ。 まさかこっち目当てだってのは……いや。 それなら、普通に考えりゃ駅を迂回して上なり下なりから行きやがるか」 また、隣のD-7にも―――探知機の範囲上、残念ながらエリア全体の様子は見られないものの―――二つ程反応がある。 この人物を目指して直進しているという可能性もなくはない……が、それはかなり低いだろう。 禁止エリアとなる駅を突っ切るのは幾らなんでもリスクが高すぎる。 「……この二つの反応は、彼女達と見て良さそうですね」 また、三人には現状における最大の問題がもう一つある。 この二つの反応が、先ほど交戦したあの魔眼を駆使する二人である可能性がある事だ。 彼女等はあの時、東の方面へ走り逃亡していった。 無論、それなりに時間が経っている為、二人は既に遠方へと逃れておりこの反応は別人という事もありえる。 しかし……自分達同様に、一定時間体を休めているというパターンも否定できない。 いや、ダメージの具合からすれば寧ろそちらの方が十分にあり得る。 だとすれば、相手が消耗している今この時を突く事こそが得策なのだが…… 「……このままでは、奴等に回復の時間を与えてしまうだろう。 しかし戦力が増える可能性があるのであれば、結果的にはそちらがいいかもしれんな」 「そうですね……この駅が禁止エリアになるまではまだギリギリ時間がありますし、 僕もこの人を待つ事は賛成です」 「チッ……まあ、誰が来るかが分らねぇ以上は仕方ねぇか」 三人の意見は、この場での待ちに一致する。 一方通行はやや不機嫌そうではあるものの、誰が来るかが分らぬ以上は文句が言えなかった。 強力な戦闘能力を持つ者か、首輪を外す役に立つ技術の持ち主が来る可能性も否定はできない。 ならば今は、ただ向かってくる相手を待つのみだ。 しかし、一応の念入れはしておく。 スザクとレイはそれぞれの得物たる銃を、一方通行は缶コーヒーを手に取り。 「……来たぞ」 そして、それから一分程経った頃か。 ようやく三人の前に、その反応の持ち主―――赤毛をした、一人の男が現れた。 「おい、スザクって奴はいるか! 式から、ここに仲間がいるって聞いたんだよ!!」 ◇◆◇ 「ったく……あの色黒野郎といい、おっかねぇのが多すぎるぜ」 さて、話は少しばかり遡る。 両儀式、デュオ・マックスウェル、張五飛の三人が六天魔王との遭遇を果たした直後。 その圧倒的な威圧感に気圧され、かつ逃げろと促された事もあって一目散に逃げ出してから。 戦争屋アリー・アル・サーシェスは、駅へ向けて一直線に走っていた。 目的は当然、そこにいるであろう誰かとの接触を果たす事。 (とにかくここまで逃げりゃ安全だろうが、それでもまだ休めねぇな。 なるべく駅までは急いで行かねぇと、間に合わなくなっちまう……!) しかし、サーシェスにも一つだけ危惧がある。 それは今し方、D-6のエリアを禁止エリアに指定されてしまった事だ。 さすがにこうなってしまっては、駅から人が離れるのは自明の理…… 故に彼は、安全圏に逃れた今も足を休めはしなかった。 禁止エリアとなる前にどうにかたどり着けば、駅にいる誰かと接触できるかもしれないのだから。 (これで誰もいなけりゃ、ただの走り損だがな…… まあその時は、テメェも頼りの援軍が来ねぇんだから諦めるこったな、式よぉ?) これで誰もいなかった場合、駅に仲間がいるといった式に怒りをぶつけたい所だが、そこはお互い様だ。 彼女や五飛達とて、自分が駅の仲間に知らせて助けに行かせるという手を潰される。 あの男に酷い目に合されるのは間違いないし、運が悪ければそのまま死ぬだろう。 サーシェスとしては、利用できる相手が減るのは残念だが、参加者が減るという点でどうにか相殺できる。 どちらにしても、優勝を目指す立場からすれば構いはしないのだ。 「さてと、どんな奴が出てくるか……名前は確か、スザクとか言ってたな」 やがて、サーシェスは駅を視界に捉える。 望遠鏡で眺めたとおり、その姿は見るも無残だ。 後はここに、式が言っていた仲間がいるか否か。 また、その相手がどの様な者かでも大きく今後の振舞い方が変わる。 サーシェスは速度を少しずつ緩め、駅からやや離れた地点で停止する。 接近戦は言うまでもなく、飛び道具の類を用いられても真正面からなら、ギリギリで回避が効く位置。 相手がお人良しならいらぬ用心だが……ここは何が起きるかがまるで分らぬ戦場だ。 万が一、片倉小十郎やアーチャーと接触を果たした相手がいたとしたら、狙われる危険とてゼロではない。 故にこの場でのベストは、この安全地帯から声をかけることだ。 「おい、スザクって奴はいるか! 式から、ここに仲間がいるって聞いたんだよ!!」 サーシェスは駅に聞こえるよう、やや張り上げた声を上げた。 それもただ呼びかけるだけではなく、相手に一片の不信感も抱かれぬよう、最初に式の名前を出して。 先手はこれで打てた、後は声に反応して出てくるかどうか……サーシェスは警戒しつつ、出方を待つ。 そして、現在……駅より、彼の来訪を既に知っていた三人が姿を現したのだった。 ◇◆◇ 「アァ……? あいつも、俺と同じ境遇かよ」 サーシェスの姿を見て、最初に声を出したのは一方通行。 式に言われて駅にやってきたというならば、まるで自分と全く同じではないか。 だとすれば、殺し合いに乗っている人間ではない……少なくとも、式はそう判断した相手だ。 ならば手の武器をしまっても問題はないと、そう考えるのが普通だろう……しかし。 「……待て。 あの男の髪の色……」 「ええ……赤い色をしています。 アーチャーさんが言っていた……」 三人は武器をしまえなかった。 その原因は、サーシェスの髪の色が『赤』だったから。 朝方に情報交換をしたアーチャーの話では、彼は赤い髪をした男に襲われたと言う……つまり。 目の前の相手は、殺し合いに乗っている可能性がある。 故に警戒を解くわけにはいかなかった……が。 その先には進めない。 出来るのは、あくまでもそこまででしかない。 「ですが……アーチャーさんが言っていた相手とは、どことなく特徴が違います」 そう、ここに来てサーシェスの弄した策が思わぬ効果を生んでいた。 髪型を変え、不精髭も剃り、服装も目立つパイロットスーツから至って普通のそれに代えるというイメージチェンジ。 それが三人に聞いた話との僅かな食い違いを覚えさせ、迷いを抱かせてしまったのだ。 唯一共通するのは赤毛の男という点だが……それだけでは決定打になりえない。 髪の毛の色が同じ相手など、他にいても全くおかしくはないのだ。 現状、相手がアーチャーを襲った相手であるという確信は何一つ持てない。 よって……三人には、サーシェスへ攻撃行為を加える事は不可能。 「接触する以外に、手は無いか」 ならば、直接接触して情報を交換し、何者かを確かめるほか無い。 式の事を知っている以上は味方であるかもしれないし、何より彼女の現状における情報は欲しい。 デュオ共々、待ち合わせの時間に間に合わなかった理由が知りたい。 スザクは二人へ無言で顔を合せ、その意思を確認……相手の要望に応えて名乗り出る。 「ええ、僕がスザクです。 あなたは、式さんの仲間ですか?」 ◇◆◇ 「ああ……俺はアリー・アル・サーシェスだ。 禁止エリアになる前に、会えて助かったぜ……」 スザクが声をかけると共に、戦争屋は歩み寄る。 その最中も、相手の観察はもちろん忘れない。 数は三人、その内の二人が手に銃を握っている。 そしてどういうわけか、残る一人の手にあるのは缶コーヒーだ。 まさかそれを投げて攻撃するつもりかと呆れそうになるも、正直油断はできない。 大量の電撃を放出する刀や異様な破壊力のある短剣といった、想像を絶する兵器を見てきたではないか。 あの缶コーヒーだって、実は見た目を偽装した手榴弾の類とかいうオチは十分ありえる。 (しかし……こいつ等、俺の姿を見てからもしばらくは武器を下さなかったな。 警戒してるってのは間違いねぇが……まさか?) ここでサーシェスに引っかかったのは、この三人がすぐに警戒を解かなかったことだ。 仲間である式の名前を出せばあっさりといくかと思ったが、念を入れての用心だろうか。 いや、それにしては長すぎる……何せ彼らは、未だにその手から武器を離していないのだ。 ならば、考えられる結果は一つしかない。 サーシェスにとって、ありえてほしくなかった最悪の可能性……それがあり得るという事に他ならない。 (こいつ等、小十郎かアーチャーかに接触してやがるのか……? それともまさか、クルジスのガキの仲間か……!?) そう、彼等は既に自分の特徴を知っているかもしれないのだ。 ならば、この用心の長さにも納得がいくと同時に、あのタイミングで容姿を整えた自分の幸運に感謝せねばなるまい。 彼等がここまでの警戒をしており、かつ攻撃を仕掛けてはこない理由は、それが原因に違いないからだ。 もしも身なりに一切の手出しをしていなければ、今頃とっくに蜂の巣だ。 そして、恐らく彼等が接触したのは…… 「サーシェスさんですね、よろしくお願いいたします。 それで、式さんの事ですが……」 やはり、アーチャーだ。 その証拠が、名前を出した瞬間に襲われなかった事。 サーシェスは小十郎にこそ名乗ったが、アーチャーには己が名を一言も告げていない。 ガンダムの乗り手に関しては、もはや論外だ。 ならば、少なくとも今は安全……迂闊に口を滑らさぬ限り、襲われる可能性はないわけだ。 そうと分かれば行動は早く、早速サーシェスは口を開く。 「それなんだが、いきなりですまねぇがあいつ等を助けにいっちゃくれねぇか? 駅に行けば仲間がいるって、俺を逃がしてくれたんだよ!」 「何……!?」 開口一発、三人の表情が険しくなった。 彼等は、サーシェスが走ってきているのは単に禁止エリアとなるからだと思っていた。 しかし実際はそれだけではない…… どうやら、彼は『走らなければならない』厄介な状況にあったという事だ。 兎に角、これは話を聞いてみねばならないだろう。 「サーシェスさん、詳しく聞かせてください!」 「ああ……俺は隣のD-5で式とデュオって奴に会って、軽い情報交換をしてたんだ。 そうしたら、いきなり妙な野郎が来て……ありゃ直感でやばいって感じたぜ。 式の奴だってそれが分かったから、俺に逃げろって言いやがったみてぇだしな…… 残念な事に、相手の姿はよく見えなかったんだが……いや、待てよ?」 ここでサーシェスは、自分が見た人影の姿をよく思い出してみる。 距離にして200メートルも離れた相手の姿というのだから、本当にぼんやりとしか見えてはいなかった。 だが、サーシェスとて一流のモビルスーツのパイロット……その視力は十分なものだ。 さらにはあの時、相手が徐々に近づいていた事も手伝って……彼は僅かながらといえど、特徴を捉えていた。 「そうだ……確か、何か随分と派手な鎧っぽいのを着ていたぜ。 首からは、マントっぽいのもあったが……」 サーシェスは、覚えている限りで男の外見を口にする。 一種の防護服だろうか、何か随分と見た目に派手な鎧らしきものを身につけていた。 そして背には、単なる飾りなのかどうかは分からないが、マントらしきものも。 残念なのは、顔が全く見えなかった事ではある……が。 「鎧にマント……? まさか、信長か……!?」 その特徴だけで、レイには十分に伝わっていた。 サーシェスが畏怖を抱いた相手―――織田信長と、一度交戦した彼には。 同時に、彼はサーシェスの意見に同意を覚えた。 確かにあの男相手ならば、直感で判断するのも分かる……あれは理屈抜きで危険だ。 「おい、その信長ってのはそンなにやべぇ奴なのか?」 「さっきの二人組を相手にしても、一人で勝ちかねない……そんな奴だ」 「……そいつは、まあ確かにおっかねぇな」 これは、少し厄介な事になった。 サーシェスから色々と素性を聞くどころの話ではない。 信長を相手に戦っているのであれば、まず無事では済まない。 助けに行くならば、この場にいる三人―――サーシェスも戦闘が可能ならば四人―――で行くぐらいの必要がある。 しかし、そうなればライダー達を仕留めるチャンスを逃す事にもなる。 メンバーを分断して両方に挑むか……いや、それは一番危険だ。 どちらも、下手に戦力を割けて勝てる相手ではない。 (式とデュオという奴には悪いが、ライダー達を討つか。 それとも、助けに行って信長を討つか……) レイは考える。 リターンが大きいのは、やはり仲間を救出できる可能性がある信長の方だ。 あの信長を相手に足止めを申し出るというなら、それなりに実力のある者だろう。 無事に合流できれば、殺し合いを止めるのには十分益となる。 一方、ライダー達を野放しにする事にはなるが、彼女達は現在進行形で誰かと戦っているわけではない。 加えて手負いという状況を考慮すれば、危険度は信長よりも下だ。 それに……何より、隣の男がいる。 「……レイさん、一方通行。 式さん達を助けに行きましょう」 やはりと言うべきか。 スザクは、レイが予想をしていた通りの言葉をかけてきた。 彼は仲間を見捨てられるほど、非情な性格ではない。 ここでライダーを討つと言っても、反対されるのは目に見えていた。 ならば、後は一方通行の意見となるが…… 「ハッ……あの女を助けろって? 冗談がきついぜ」 彼の言葉は否定的だった。 それも当然、先程の式との交戦―――とよべるほどのものでもないが―――で、彼は彼女に軽い嫌悪感を抱いた。 式の側もまた似たようなものであるらしく、お互いに合わないと意見は一致している。 助けに行く義理が、彼にはない。 当然、スザクはそんな態度に反論する。 「一方通行、そんな事を言っている場合じゃ……!!」 「だが……あの女の力は、ここで消しちまうにゃ惜しいな」 しかし、その途中で一方通行は新たな意見を出した。 彼からすれば、確かに式は気に入らない相手だ。 だが……式が持つ謎の力に関してだけは、気になっているのも事実。 どういう原理かは分からないが、彼女は反射を打ち消すというまさかの真似をしてみせた。 それに対しては「力を殺した」という、いまいちピンと来ない返答しかなく、また深く考えようともしなかった……だが。 「もしもあの女が、本当に力だのなんだのを消せるっていうなら…… ここで借り作っといて、どうにかすンのも悪かねぇよなぁ?」 今の今まで能力の使用制限を受けた事が、彼に意識の変化を生ませていた。 そう、一方通行の脳裏にふと思い浮かんだのは、式ならばこの厄介な制限を『殺せる』のではないかと言うことだ。 勿論、すんなりと何もかもが上手くいくとは思っちゃいない。 主催者だってそこら辺は考えて、対策を立ててきているだろう。 しかし、やってみる価値はある……それに何より。 「気に入らねぇ相手に借りを作られるってのも、あいつからすりゃ地味に効きそうだしな」 式に借りを作っておくというのも、中々悪くないものだ。 「……気に入らない、か……」 その一方通行の言葉を受け、レイは先程の信長との一戦を思い出す。 あの時……確かに自分は、信長に対して気に入らないという感情を抱いた。 だがその胸中を大いに占めていたのは、カギ爪の男への復讐心。 あの男を始末するためならば、他の相手などどうでもいいと思える程にそれは色濃いものだった。 故に、信長が気に入らないと言えど、倒そうなんていう感情はあの場を離れればすぐに消えた。 ただあの場では、カギ爪を殺す為の障害であるが故に挑んだのだ。 ……では、そのカギ爪が死んだ今ではどうだろうか。 もはや障害ですらなくなった信長を、倒そうと思える気持ちは沸くだろうか。 今もなお、あの男を気に入らないと呼べるだろうか? ……答えなど、言うまでもない。 「決まりだな……信長を討ちに行くぞ」 自分は、スザクの結果を見届けるためにもう少しばかり生きてみると決めた。 だから、その邪魔を……生きる邪魔を信長がするというのであれば、迷わずに討つ。 怒りだとか憎しみだとか、そんなものではない。 理由と言える理由もなく、ただシンプルに…… 「俺も、あの男は気に入らない」 気に入らないからだ。 ◇◆◇ 「サーシェスさん、あなたはどうしますか?」 三人の方針が固まった今。 唯一の問題となるのは、サーシェスの行動方針だった。 この駅が禁止エリアになる時が目の前まで来ている以上、残るという選択肢は当然取れない。 ならば、ついてくるか否かになるが…… 「いや……悪いが、俺は一人で行動させちゃくれねぇか? 一応武器もあるにはあるんだが、精々普通の奴相手に護身が精一杯…… あんたらには悪いんだが、どうも助けになれそうにねぇよ」 サーシェスは同行を否定。 自身の力では、戦いの足手纏いになりかねないという最もな意見だ。 スザク達からすれば単独行動は危険だと言いたいところだが、何せこれから向かう場所こそが最大の危険地帯だ。 本人が同行を志願したならともかく、否定された以上は一緒に行こうなんて、絶対に言えるわけがない。 ならば、彼にはどこか安全な場所でしばらく身を隠してもらうほかにない。 そして後に、改めて合流するのが最善の方法だろう。 「わかりました……それじゃあサーシェスさん、あなたはしばらくどこか安全な場所にいてください。 僕達はこっちが片付いたら、第三放送前にE-3にある『象の像』へ向かいます。 そこで僕達以外にも、何人か仲間が集まる手筈になっています」 サーシェスへと、対主催派の人間が象の像に集まる旨を伝える。 彼との詳しい情報交換は、その時に改めて行えばそれでいい。 後は、右隣のエリア……D-7にだけは向かわない方がいいと忠告するだけだ。 「隣のD-7には、間違っても向かわないでください。 あそこには、この殺し合いに乗った人……ライダーに藤乃という二人組の女性がいます。 今はまだ動いていないようですから、安全でしょうが…… もしも彼女達と遭遇したら、間違っても視線を合わせないでください。 あの二人は、視界に入った相手に対して何か特殊な力を働かせて攻撃をしてきます」 「……それはおっかない話だな、肝に銘じとくぜ」 サーシェスは軽くため息をつきつつ、スザクの忠告を受け取る。 何とも、危険人物の周囲に多いことかと、思わずにはいられない。 「あんた等が、式達と一緒に無事戻ってくることを祈ってるぜ」 「ええ、サーシェスさんもお気をつけて」 [D-6/駅前/一日目/午後] 【枢木スザク@コードギアス 反逆のルルーシュR2】 [状態]:疲労(大)、左腕骨折(処置済み)、「生きろ」ギアス継続中 [服装]:ナイトオブゼロの服(マント無し) [装備]:ベレッタM1934(8/8)、GN拳銃(エネルギー残量:中) 、鉈@現実 [道具]:基本支給品一式、ノートパソコン@現地調達、赤ハロ@機動戦士ガンダムOO、9mmショート弾(22発) 救急救命セット@現実、柳刃包丁@現実、工具一式@現実、雑誌@現実×多数、首輪 [思考] 基本:この『ゲーム』を破壊し、ゼロレクイエムを完遂する。 1:D-5に向かい、信長と交戦中の式達を助ける。 2:首輪を外せる技術者を探したい。 3:ルルーシュに危険が及ぶ可能性のある要素は排除する。 4:神原さん……。 5:第三回放送時に『E-3・象の像』へと向かう。 6:明智光秀、織田信長、平沢憂、バーサーカー、ライダー、黒服の女(藤乃)に用心する。 7:確実に生きて帰る為の方法を探す。 [備考] ※ラウンズ撃破以降~最終決戦前の時期から参戦。 ※主催が不思議な力を持っていることは認めていますが、死者蘇生が可能という点は全く信じていません。 ※もしかしたら『敵のアジト』が『黒の騎士団のアジト』ではないかと少し疑っています。 ※三回放送の前後に『E-3 象の像』にて、信頼出来る人間が集まる、というゼクスのプランを政宗と神原から聞きました。 ※政庁で五飛が演じるゼロの映像を見ました。また、ビデオメールの送信元と受信時間を確認しました。 ※アーチャーとC.C.が行動を共にしていることを知りました。 ※政宗、神原、レイ、アーチャー、一方通行と情報を交換しました。 ※飛行船についての仮説を一方通行から聞きました。 ※神原は絶対遵守のギアスの影響下に類似した状態にあると推測しました。 ※ライダーの石化能力と藤乃の念動力についての分析を一方通行から聞きました。 ※サーシェスが、アーチャーの接触した赤毛の男なのかどうかを判断しかねています。 【レイ・ラングレン@ガン×ソード】 [状態]:疲労(大)、肋骨を数本骨折(処置済み)、左肩に銃創(処置済み)、脇腹に浅い銃創(処置済み)、ツッコミ属性獲得? [服装]:武士のような民族衣装(所々破損) [装備]:レイ・ラングレンの銃@ガン×ソード [道具]:基本支給品一式×1、デイパック、ドラグノフ@現実(10/10)、 GN首輪探知機@オリジナル、平バール@現実、 麻雀牌@咲×31個、ユンケルスター@現実×8、パチンコ玉@現実×大量、コンビニの商品多数(内容は後の書き手さんにお任せします) [思考] 基本:もう少し生きてみる。 1:D-5に向かい、信長を討つ。 2:枢木スザクの『結果』を見届ける。 3:あるものは使う。 [備考] ※参戦時期は第8話~第12話のどこかです。 ※ブラッドチップ・3ヶ@空の境界は円形闘技場に置いてきました。 ※三回放送の前後に『E-3 象の像』にて、信頼出来る人間が集まる、というゼクスのプランをスザクから聞きました。 ※スザク、神原、アーチャー、一方通行と情報を交換しました。 ※飛行船についての仮説を一方通行から聞きました。 ※ライダーの石化能力と藤乃の念動力についての分析を一方通行から聞きました。 ※サーシェスが、アーチャーの接触した赤毛の男なのかどうかを判断しかねています。 【一方通行@とある魔術の禁書目録】 [状態]:健康 [服装]:私服 [装備]:なし [道具]:基本支給品一式、缶コーヒー×12、ランダム支給品×1(確認済み)、パチンコ玉@現実×多量、缶コーヒー各種@現実×多数 [思考] 基本:このゲームをぶっ壊す! 1:信長と戦い、式に借りを作っておく。 2:強敵との連戦を懸念。 3:何か武器が必要か……? 2:第三回放送時に『E-3・象の像』へ行くまではスザク、レイと行動を共にする。 5:スザクがゼクスの言うリーダーに相応しい人物か少し気になる。 6:打ち止めを守る(※打ち止めはゲームに参加していません) 7:缶コーヒーの新規開拓でも……。 8:機会があればプリシラの遺言を伝える。 [備考] ※主催側で制限を調節できるのではないかと仮説を立てました。 ※飛行船は首輪・制限の制御を行っていると仮説を立てました。 ※ゼクス、政宗、神原、プリシラ、スザク、レイと情報を交換しました。 ※ライダーの石化能力と藤乃の念動力の制限を分析しました。 ※式の力で、首輪の制限をどうにかできる可能性があると判断しています。 [補足] ※D-6の駅周辺ではハロが制御する建設重機が多数、瓦礫撤去及び線路復旧作業を行っています(当然工事現場並みに騒がしいです)。 建設重機には操縦席が無くハロ以外では動かせません。 またこれらのハロは工事作業以外のことが出来ない様プログラムされています。 ※D-6の駅前ロータリーに面したビルの一室に真田幸村の死体があります。 時系列順で読む Back 旋律の刃で伐り開く(後編) Next 言葉という無限の刃(後編) 投下順で読む Back 旋律の刃で伐り開く(後編) Next 言葉という無限の刃(後編) 184 スザク、戦いのあと 枢木スザク 191 言葉という無限の刃(後編) 184 スザク、戦いのあと レイ・ラングレン 191 言葉という無限の刃(後編) 184 スザク、戦いのあと 一方通行 191 言葉という無限の刃(後編) 178 『傷跡』 浅上藤乃 191 言葉という無限の刃(後編) 178 『傷跡』 ライダー 191 言葉という無限の刃(後編) 180 「無題」じゃあ今いち呼びにくい! このシュトロハイムが名づけ親になってやるッ! そうだな……『メキシコに吹く熱風!』という意味の「サンタナ」というのはどうかな! アリー・アル・サーシェス 191 言葉という無限の刃(後編)
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299 名前:そのいち []:2006/09/02(土) 13 32 50.86 ID fpx+3O2E0 僕には、一つ年上の幼馴染が居る。僕らはいつだって一緒だった。 学校へ行くときも、家へ帰るときも、出かけるときも。 家が隣同士だったせいでもある、と思う。 いつだって一緒だ。多分これからもそう。 「ねぇ、お前もそろそろ時期的にアレでしょ?」 「え?あ、うん…」 「そっか」 僕の部屋は家の二階で、エアコンなんてない。 部屋の窓はどれも開けられていて、外からセミの混声合唱が聞こえていた。 開け放たれた窓の枠に腰掛けて、れいちゃんはガリガリ君を美味そうにかじる。 黒いキャミソールとスカートと長い髪。青白い肌とそれらが対照的だった。 れいちゃんは日焼けするのが嫌で、いつも日陰に居るんだ。 学校へ行くときも日傘を差してる。元々そんなガラでもないくせに。 302 名前:そのに []:2006/09/02(土) 13 50 30.76 ID fpx+3O2E0 「てゆーか、コータ。相手は見つかった?」 れいちゃんは僕の答えが分かっているクセに、最近こればかり聞いてくる。 コータ は僕の名前だ。 「…居ないよ!」 れいちゃんは足をばたばたさせながら、心底面白そうに笑う。 ずっと睨んでいたら、足をばたばたさせているせいでれいちゃんのパンツが見えた。 僕は、なんだか悪いような、そんな気がしてうつむいた。 それに気づいたみたいで、れいちゃんはスカートを手で押さえた。 「こら、パンツ見るな。バカ」 「だって、れいちゃんが足…」 僕がももごもごと口篭もっていると、れいちゃんはいつの間にか窓から降りて 僕の顔を覗き込んでいた。にまにまと笑いながら。 僕が少し驚いて体を引くと、同じぶんだけれいちゃんは顔を近づけてきた。 そしてこう言った。 「もっかいパンツ見たい?」 顔は笑ってはいたけれど、どこか真剣そうな口調でそう言った。 セミの声が聞こえなくなった気がした。僕は、少し考えて、うなずいた。 305 名前:そのさん []:2006/09/02(土) 14 03 56.83 ID fpx+3O2E0 「じゃ、見せてあげよっかな~」 れいちゃんは立ち上がってスカートの裾を指先でつまむ。楽しそうな、でもなにか 違う、もっと別のものを考えているような表情だった。 少しづつ、そろそろとれいちゃんはスカートをまくる。 僕は、それを食い入るように眺めながら、これは別におかしいことじゃない。 そう自分の頭の中で何度も何度も繰り返した。 僕の生きているこの世界は、15、6歳までに童貞を喪失しないと 男は女になってしまうんだ。昔、昔、ずぅーっと昔女がほとんど居なかった時代に 繁殖するため、男はある程度の年齢までに女と交わらないと数の不足を補うために 男が女に性転換してしまうように人間の体が進化した、それが定説らしい。 れいちゃんは元々男だった。 れいちゃんは元々男だった。男同士なんだ。そうなんだ。 そう言い聞かせないと、僕はおかしくなってしまいそうだった。 それくらい、女になったれいちゃんはきれいだ。 311 名前:そのよん []:2006/09/02(土) 14 18 30.91 ID fpx+3O2E0 暑い部屋の中で、スカートをまくる女の子とそれを何故か正座で見つめる男。 知らない他人が見たらそう見える。 でも、実際は男が二人居るだけなんだ。そうなんだ。 そう考えても、何度れいちゃんを男だって頭の中で繰り返し言いつづけても 僕の勃起は収まらなかった。れいちゃんから見たらまるでハラペコなのに 餌の目の前でおあずけをされている犬のようだろう。 「コータ、勃起してるね」 れいちゃんはどこかうっとりとした表情でそう言った。 スカートの黒いフリルの間から、縞のパンツがちらりと見える。 「だめ。まだだめ~」 あんまり僕が顔を近づけたせいだろう、れいちゃんはいじ悪そうな顔を しながらつまんだスカートの裾を離す。 ふぁさり、と軽そうな薄い生地がれいちゃんの足を膝まで隠した。 少し残念な気持ちになった。 「…な、コータ?おれね、いいこと、考えたのね。聞いてくれる?」 今までのいじ悪そうな表情から、少し困ったような顔を浮かべて れいちゃんは言った。なにかしら決意めいたものも感じられた。 僕は唾を飲み込んで、うなづいた。 「コータの相手にさ、おれは、だめ、かな…?」 331 名前:そのご []:2006/09/02(土) 14 39 06.49 ID fpx+3O2E0 今れいちゃんが言ったことを文章にしてもう一度頭の中でなぞった。つまり、こういうことだ。 「れ、れいちゃんが、僕の、ど、ど…」 これから先は言えなかった。僕は自分がどうしようもなく情けない男に思えて、泣きそうになった。 れいちゃんは、いつまでたっても童貞を捨てられない僕のためにそんなこと まで考えてくれていたなんて、そう考えたら。 放っておいたら男はほとんど女の子に性転換してしまう世界だ。 だから政府は童貞喪失を専門にしてくれる人を派遣してくれる。 公営風俗、というヤツだけど、僕はそういうものに抵抗があって もう15だというのに、まだダイアルしていない。 それで童貞を喪失する男なんてこの世界で何万、何十万も居るけど、でも僕は嫌だった。 好きな人としたかったから。僕の唯一の、ちっぽけなプライドだった。 「な、コータ…。おれのこと、嫌い?」 れいちゃんは、僕がいつまでもうつむいて答えないからこんなことを聞いてきた。 寂しそうな声が、耳ではない、もっと深いところに届いた。 「そんなワケないじゃん!れいいちちゃんのこと、僕、僕…」 「好き」と言えば良かったのに、たった一言なのに、それが言えない。 言ってしまったら、何かが壊れてなくなりそうな気がした。 「好き?」 れいちゃんは、ただ一言そう、小さく言った。 僕は、答える代わりにうなづいた。何度も、何度も。 下を向いて、壊れたおもちゃみたいに何度も首を縦に振る僕の手に れいちゃんのあったかい手が触れた。僕は、それを勇気を出して握った。 343 名前:そのろく []:2006/09/02(土) 14 52 05.10 ID fpx+3O2E0 「これでOK―かな」 れいちゃんは、家中の鍵を閉めて回った。 一階の玄関、窓、全て閉めて回る足音を僕はベッドの上で聞いていた。 僕の部屋の窓も、れいちゃんがすべて閉めた。 体中に汗をかいていた。窓を閉めきったせいかも知れないし 別の理由かもしれない。 「れいちゃん、あのさ―」 「うん?」 さらさらの髪の毛をふわりと躍らせながら、れいちゃんは振り向いた。 「お風呂、入ってからが、いいんだよね。やっぱり?」 「…かな?おれ汗くさいから、そのほうがいいかも」 「一緒に入ろうか?ん?」 僕の答えを待たないで、れいちゃんは僕の手を引っ張った。 その流れに身を任せるようにして、僕は階段を降りた。 354 名前:そのなな []:2006/09/02(土) 15 06 51.78 ID fpx+3O2E0 「…入るね」 電気のついていない、薄暗い風呂場に入る。 先に入ったれいちゃんは、湯船に肩までつかって僕に背中を向けていた。 電気を消して入ろう、といったのはれいちゃんだ。 たぶん、恥ずかしいんだろう、そう考えた。 湯に足を浸けると、ちょうどいい温度だった。僕の家の風呂は24時間保温されているのだ。 「…失礼します」 湯船の中で、膝を抱えた格好のままれいちゃんは僕が入るスペースを空けてくれた。 背中合わせになって、僕も湯船の中で膝を抱えた。 時々、蛇口から水がしたたる音とか、かすかに聞こえるセミの鳴き声以外には 何も音はしない。僕も、れいちゃんも、ただ黙って背中合わせのままだった。 こういう時に女の子と何を話せばいいんだろう。 そればかり僕は考えていた。 しばらく考えていたら、れいちゃんがくすくすと笑った。 「何が、おかしいの?」 「イヤ、だってさぁ…。ふふっ」 笑いながら、れいちゃんは湯船から上がって体を洗い始めた。 風呂場に充満する石けんの香りをかぎながら、僕も少しだけ笑った。 だって、ちらりと見たれいちゃんが体を洗う様子が、 まだれいちゃんが男の体の時と同じがさつな洗い方だったから。 373 名前:そのはち []:2006/09/02(土) 15 34 05.09 ID fpx+3O2E0 れいちゃんが体を洗うのを、ちらちらと僕は盗み見た。 れいちゃんもそれがわかってるみたいで、僕に前がみえないようにしながら体を洗う。 ふいに、れいちゃんの手が止まる。しばらくしても動く気配がなくて、声を かけようとした、その時だった。 「な、コータ?…洗って?」 れいちゃんは右手に握った泡のついたスポンジを、自分の背中に回した。 どうしよう。そう思ったけど、僕が受け取らないときっといつまでもそうしている。 そう思って湯船から上がって、れいちゃんの背中をスポンジでこする。 すべすべしていそうな背中。垂れた泡に半分隠れたつるつるのお尻。 どこを見ればいいのか分からなくなって僕は下を見た。 自分でも気がつかないうちに、僕は勃起していた。 心臓の鼓動が、耳の近くで聞こえるくらいに激しくなっていた。いつの間にか。 「ねぇ、れいちゃん?」 「…なに?」 「前も、洗ってあげる。…腕、上げて」 れいちゃんは言葉で答える代わりに、腕をゆっくりと上げてくれた。 380 名前:そのきゅう []:2006/09/02(土) 15 44 38.28 ID fpx+3O2E0 脇腹をゆっくりとこする。腋の下は、元々なのか剃ってるのか、毛は無かった。 少し前に体をずらしてれいちゃんの肩の後ろから、れいちゃんの体の前を覗き込んだ。 れいちゃんの顔をちらりと見ると、れいちゃんは僕から目を逸らして下唇を舐めた。 「れいちゃん、おっぱい、小さい、ね」 「…う、ん。コータは、おっきいのが、いいか?」 ううん。れいちゃんのおっぱいは小さくても好き。そう言うと、顔を少しほころばせた。 右手でおへその辺りまで洗いながら、空いた左手で、軽く胸に触ってみた。 んっ、とれいちゃんは驚いたように小さく声を出した。 驚かせないように、今度はゆっくりと指で撫でた。 右手のスポンジは、いつの間にか取り落としていた。 れいちゃんの体は、胸も、お腹も、足も、柔らかでとても気持ち良かった。 れいちゃんが、僕の手に自分の手を重ねる。 384 名前:そのじゅう[まだまだ続くけどおk?]:2006/09/02(土) 15 57 13.14 ID fpx+3O2E0 「そ、そろそろ、交代、しね?」 れいちゃんと僕は入れ替わって、今度は僕が洗ってもらう番だった。 れいちゃんは、スポンジがあるのに、何故か自分の手に石けんをつけて 僕の体を洗ってくれた。おかげで、れいちゃんの手が触れるたびに僕は こすばゆくて仕方がなかった。でも、がまんする。 れいちゃんは、僕の体を優しく洗ってくれた。 「!れ、れい、ちゃん、そこは…」 「…勃起してる、ね。コータ」 先を、指の腹でこすりながら、れいちゃんはいたずらぽく笑った。 触られたら、すぐに射精してしまうかと思ってたけど、まだ大丈夫っぽかった。 気持ちいい、とかそういうんは良く分からなかった。どうしてか足が震えた。 「緊張してるね、コータ…?」 れいちゃんの口調が、完全に女の人のもので、僕は背筋に寒気を覚えた。 れいちゃんは今度は僕のを両手で手で握って、上下にさすり始めた。 背中にれいちゃんの体が押し付けられているのが分かった。 彼女の荒い息遣いが僕の顔の横で感じられた。 393 名前:そのじゅういち []:2006/09/02(土) 16 06 58.06 ID fpx+3O2E0 「ねぇ、精子って、どんな味するの?」 れいちゃんは僕のをさすりながら、そんなことを聞いていた。 「わ、わかんないよ…」 もう、まともな受け答えを出来る自信は無かった。自分がなにを話しているかも なんだか離れた場所の出来事みたいに感じられた。 「じゃ、コータの精子の味、確かめてあげる。…こっち向いて」 「…けっこう、おっきぃ、のかな?」 僕の足元にかがんで、れいちゃんはしげしげと僕のを眺める。 すでに自分からはなくなってしまったものを懐かしんでいるみたいに思えた。 れいちゃんの頭を撫でると、れいちゃんはうれしそうに笑って、そして、口に それをゆっくりと咥えた。 「んっ」 れいちゃんの舌が、僕のを撫で回す。あったかくて、ねとねとしていた。 口で息が出来ないのか、時々離して肩で息をしながら、続けてくれた。 されている最中、僕は、ずっとれいちゃんの頭を撫でてあげた。 濡れた髪の毛が指に絡みついていた。 401 名前:そのじゅうに []:2006/09/02(土) 16 24 49.01 ID fpx+3O2E0 薄暗い風呂場の中に、れいちゃんが頭を動かすたびに小さい音が響く。 時々、れいちゃんは動くのを休んで「気持ちいい?」「どう?」とか 聞いてきた。僕はそのたびにれいちゃんの頭を撫でてあげた。 「いっ…!」 それは突然だった。自分でする時みたいにゆっくりと湧き上がるのではなくて 火山が噴火する時みたいに、突然だった。 体の中から何度もポンプで吸い上げられるみたいだった。 れいちゃんもいきなりでびっくりしたみたいで、少し頭を引いていた。 それでも、頭を離さずに、僕の精子を口で受け止めてくれた。 はっ。はっ。 心臓の音がさっきよりもずっと早く、激しい。 れいちゃんは、根元から搾り出すように僕のを強く握って尿道口に向かってこする。 先っぽに口をつけたまま、ちゅるちゅると音を立てて残りの精子を全て吸い出してくれた。 そうして時間をかけて僕を気持ちよくしてくれた。射精した後の、くすぐったいような 感覚がじんじんと体の奥で回っていた。 「…ヘンな味。ニガい、しょっぱい。鼻水みたい…」 「ごめんね、れいちゃん?」 僕がそう言うとれいちゃんは、ごくり、とノドを鳴らして飲み込んで見せた。 そして、照れくさそうに笑ってうつむいた。 411 名前:そのじゅうさん []:2006/09/02(土) 16 40 28.20 ID fpx+3O2E0 風呂を出てから、体を拭きあいっこして、僕とれいちゃんは 二階の僕の部屋へ戻った。降りる時はれいちゃんに手を引かれていたけど、 今度は僕がれいちゃんの手を引いて部屋へ戻った。右手で僕と手を繋いで、 左手は体に巻いたタオルが落ちないように胸元にあった。 僕と目が合うたびに、れいちゃんは恥ずかしそうにうつむいた。 二人分の服は、僕が持った。 部屋のドアを開けて、れいちゃんを入れ、ドアを閉め鍵を掛けた。 父さんも母さんも、仕事で帰るのは夕方以降だった。 部屋の壁掛け時計を見あげると、二時半を少し回ったところだった。 「ね、おいで、よ…?」 れいちゃんは、いつの間にか僕のベッドに腰掛けていた。 僕は部屋のカーテンを全部閉めてから、れいちゃんの横に座った。 417 名前:そのじゅうよん []:2006/09/02(土) 17 04 41.40 ID fpx+3O2E0 二人で並んで座ったまま、しばらくの間、ただそうしていた。 僕は僕でこんな経験がなくてどういうふうにすればいいのか分からなかった。 れいちゃんも、そうだと思った。れいちゃんは余計にそうなんだろうな、とも思う。 元々、れいちゃんは男で、それなのに、男の僕に、女になってしまった体を晒しているんだから。 男が、女の体になれば戸籍の性別がされるのが普通だ。 元男が男と結婚してもわりと普通なことである世界ではあるけれど。 でも、れいちゃんを心の底から女だとは思えない。 小さい頃からずっとれいちゃんは男だったってことを知ってるから。 一緒に立ちションだってしたことあるんだ。 「コータ?おれ…あたしとするの、イヤ?」 「違うよ、違うよ。でも」 前触れも無く、れいちゃんが僕に抱きついてきた。 肩が小さく震えていた。 ごめんね。ごめんね。あたしが最初から女の子だったら、コータに こんな思いさせなかったよね。 何度も何度も、消え入りそうな声でそう言いながら、れいちゃんは泣いた。 僕は、何も言わないで、れいちゃんをぎゅっ、と抱きしめた。 僕の行動が意外だったのか、れいちゃんは泣きはらした顔をあげ、僕の顔を 見上げた。ほっぺたに何本もついた涙の跡を拭いて上げてから僕はれいちゃんにキスをした。 れいちゃんは僕のキスに応えるみたいに僕の体をベッドに引き倒した。 424 名前:そのじゅうご []:2006/09/02(土) 17 32 38.03 ID fpx+3O2E0 「ね、コータ。もっと、いっぱいちゅーして、ね?」 れいちゃんは、ベッドの寝転んだまま甘えた声で言う。 れいちゃんにおおいかぶさって、僕はその声に応える。 男の僕には、どうやったらこんなかわいい声が出せるんだろう、分からなかった。 暑い、閉めきった部屋で僕とれいちゃんは何度もキスをした。 キスしながら、目線を下に、れいちゃんの体に向けた。 れいちゃんが体に巻いた大きな黄色のバスタオル、それがずれて小さな乳首が 見えていた。風呂場で見た時よりも、膨らんでるような気がした。 「タオル、取るね?」 れいちゃんが黙ったままうなづく。いつか貰った外国のお土産の高級な菓子、 それの包み紙を解いたときと同じように、ゆっくりと、壊さないように れいちゃんの包み紙を取り除いた。カーテンの隙間からわずかに差し込む光。 風呂場の時よりは明るいけれど、それでも暗くてくっきりとは見えない。 れいちゃんは、恥ずかしいのか、足を閉じたままだった。 「ヘ、ヘン、じゃない?お…あたしのハダカ」 「うん。すごく、キレイだよ。れいちゃん」 れいちゃんはうなづいて、それからゆっくりと足を広げた。 「い、いいよ、コータ」 れいちゃんの足を持って、勃起したちんちんをれいちゃんのあそこに軽く当てた。 れいちゃんは、目をかたく瞑ってバスタオルの端をぎゅっと噛んでいる。 そういえば、ビデオとかだと入れる前に舌とかで…。 思い出して、れいちゃんの足の間を手で軽く撫でたら、ぬるぬるが指の腹にまとわり付いた。 430 名前:そのじゅうろく []:2006/09/02(土) 17 53 35.81 ID fpx+3O2E0 「―コータ?」 れいちゃんのぬるぬるを親指と人差し指でこすり合わせたりしてると、 れいちゃんが目を開けた。 僕は体を引いて、れいちゃんの股の間に顔をうずめた。 「い、いいよぅ、そんな、汚いから、ねっ?や…」 れいちゃんは嫌がって僕の頭を手で押しのけようとしたけど、構わずに 舌で割れ目をなぞる。僕の頭を押しのけようとする力がだんだんと弱くなる。 左右の親指で、肉を押し分ける。薄い毛に隠れて、小さな突起が見えた。 足の丁度まん中あたり、お尻の穴の少し前くらいには、まだ開ききっていないような 小さい穴が見えた。 僕は、ビデオや本を思い出しながら、れいちゃんの小さな突起を指で撫で上げる。 ふぁ。れいちゃんのかわいい声が聞こえた。タオルを噛んでいるせいでくぐもって聞こえた。 もっと聞きたい。僕は何度も突起を指で撫で上げる。 ん、んっ。かわいい声が指動かすたびに聞こえた。突起がむくむくと固くなる。 そのたびに、れいちゃんのお腹がひくひくとケイレンするのが指に伝わってきた。 続けているうちに僕の指は、れいちゃんのぬるぬるで少しふやけた。 444 名前:そのじゅうなな[もうすぐ終わる予定]:2006/09/02(土) 18 26 12.77 ID fpx+3O2E0 「いい、よ」 僕はゆっくりと体を起こして、れいちゃんの足を持って折り曲げる。 ちょうど、しゃがんだ時のような格好になった。 「れいちゃん、いく、よ…?」 こくりとうなづいたれいちゃん。目をゆっくりと閉じた。 突起の辺りに爆発しそうな幹の先を押し付けた。 そのまま、ゆっくりと下へ滑らせる。ぬるぬるのおかげでするすると動く。 「そ、そこ、だよ?」 れいちゃんが言ったところで止めて、少し強く押し付けると、先が少し肉に埋まった。 いい?僕が聞くと、れいちゃんはまたゆっくりとうなづいた。 二回深呼吸をして、押し込んだ。 「ひ、痛、待ってぇ、まっ…」 れいちゃんの声は、みちぃ、というれいちゃんの体の中から響く音にかき消された。 れいちゃんのなかは、温かくて、しっとりとしていた。 繋がっている部分を見ると、れいちゃんと僕はぴったりとくっついていた。 「れいちゃん、大丈夫?動かないから、ね?」 僕が言うと、れいちゃんは小さく何度もうなづく。口元がタオルで覆われていて 表情はよく分からない。それでも、れいちゃんが泣いているのは分かった。 447 名前:そのじゅうはち []:2006/09/02(土) 18 40 23.00 ID fpx+3O2E0 れいちゃんが痛がるのを僕はあまり見たくなかったので、 それからしばらくは胸や首筋にキスをしたり、風呂から上がって 乾かしていないせいでくしゃくしゃの髪の毛を撫でてあげたりした。 れいちゃんも、痛くなくなってきたのか、タオルから口を離してキスをしてくれた。 舌をからませるキスもした。れいちゃんの唾液は、僕のと違ってなんだか とても柔らかい味がした。 「…動いてもいいよ?」 れいちゃんがそう言った。僕は黙って、ゆっくりと少し奥まで入ったそれを引く。 少し苦しそうな顔のれいちゃん。心配で、また動きを止めると、口の形だけで 声に出さずに「だいじょうぶ」そう言った。 もう一度、キスをして、今度はまた押し込む。 腰を引いて、押し込む。ゆっくりゆっくり何度もれいちゃんのお腹の中をこする。 「あっ、僕、出そうっ、出そう」 さっきみたいに、突然湧き出そうになるのを下腹に力を入れて堪える。 でも、僕には長くは堪えられそうになかった。 「いい、よ。お腹の中、出し、て…?」 れいちゃんがそう言い終わるのが早いか、僕はれいちゃんの一番奥まで 押し込んで、射精した。何回も、脈打つように溢れ出すのが自分で分かった。 れいちゃんは、僕のことを、強く、強く、抱きしめてくれた。 453 名前:そのじゅうく []:2006/09/02(土) 18 57 19.67 ID fpx+3O2E0 それから、日が暮れるまで、二人で向かい合って寝ながら、おしゃべりした。 れいちゃんの股の間は、血で汚れていたからティッシュで拭いてあげた。 れいちゃんもおなじようにしてくれた。 シーツに染み込んだ血は、僕が鼻血を出したということに決まった。 れいちゃんは、僕の家で夕飯を帰って、九時くらいに帰った。 すぐ隣だったけど、送っていった。れいちゃんの家の前で、少し話をした。 「おれとあたし、一人称はどっちがいい?」 れいちゃんが好きなほうでいいよ。そう答えた。 「うん。あのね……あたしね、ずっと前から、コータのこと、好きだったんだ」 僕もれいちゃん好きだよ。そう答えると、れいちゃんは笑った。 「そういうんじゃないの。ちゃんと、コータを男として好きだったの。 …だからね、あたしね、童貞捨てなかったんだよ? コータと、その、付き合い、たかったの。それで、だから…」 「ありがとう、れいちゃん」 僕は少しだけ考えて、れいちゃんにキスをした。 誰かに見られるかもしれなかったけど、そんなことはどうでも良かった。 だって、僕は男で、れいちゃんはもう女の子なんだ。だからいいんだ。 「ありがとう、コータ。…これからも、ずっと、ずぅーっとよろしくね?」 れいちゃんは泣きながら笑っていた。 「うん。…れいちゃん。僕からも、よろしくね」 【おわり】
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新スレがほしい、と思ったらこれを使ってください。 ずれていますが問題ないはずです。 お好きなほうをお使いください。 パターン1 ,. -一……ー- 、 / { / ‐- 、 丶 \ / /´ ̄ ̄__\、 l,. -―、 / // /  ̄、 \ ヽヽ≦、ス=、、 / / |,.イ l 丶 \ X ', ヽ、 ヽハ ',ヽ f´ ̄! l _|_|\ \--/,r=ミ| lヾく l ', | | ヒア_| l | N,≧ミ、トゝ ハ心}! K ヾニ二ヽ ただの人間には興味ありません。 ,r=ヽレ| | l |{ ト心 `'" ! | !', |ハ ! ` この中に宇宙人、未来人、異世界人、 // | | ハ!、 ヾゝゞ'′ _'_,.ヘ / / |_! l リ 超能力者、波紋使いにスタンド使いがいたら // !ハ//| | ヽ 丶、__丶 _ノ/| /イ ハヘ!ヽ_ あたしのところに来なさい。以上 L! /ヘ | |ミニ='⌒ (⌒ヽ´ _ !イノl/ | ! ! !L_ 〈_{ ヾ.,!/ , ´ \ ∨,.‐、| l | |ノ ! __!\ / __ム V⌒! ! ! ! ハ /__レ-〈 / f´ ヽ. '. __! //./-‐ '´ / ヽ! |r' \l__ V/ /-‐ / 「 ! { `\_f_ノ∠ミヽ! / / ヽ`ヽ.二ニァ'V∠二ハ ,!- / ヽ---/´/レ!ト-- /‐ / / ̄ヽ二ノ´l ヽノ_ r‐! / l / `ヾ==、ー-- 、 / ̄| ヽ./ 〃 /人 `ト、 \ , / ,!\ |l \ / \ 〈 | ′ / | ` | ! / ` L.__ / ! ! ヽ / ! ` iー---一 Tー-∨-r‐ ´ | }} 前スレ もしジョジョキャラがハルヒのSOS団に入ったら part3 http //anime3.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1189945405/ まとめ http //www12.atwiki.jp/jojost/pages/11.html パターン2 ジョジョキャラがもしハルヒのSOS団に入ったらというクロスSSスレです __ __ _. _ , '"´ ,. _ ___`丶、 / ` / /´-‐ァー-ヽ \. / /下7 ..///. . / . . ト、 ヽ ただの人間には興味ありません。 / └イ_j/ . //;へ、/!. . / .}ヽ ', ,' ///!l . j. lイ仔くヽ/,.イ,.ム .', l , '〈/f`| l l`' ゞゾ '´ rャjノ .l . | この中に未来人・宇宙人・異世界人・超能力者・ | l l ! {、| l | マソハ | | スタンド使い・波紋使い・回転使い・吸血鬼・ | l l i个| l l! l⌒ヽ′} . } .l l 柱の男・究極生命体がいたら私のところまで来なさい。 | lハ l { ', {、 ヽ.ノ /. / .l l l ! | ', ', ヽ ヽ\._ /. / /l ;!. ', { {、 ヽ\ \;ゝ `「 フ´! /; / 〃. ヾハj>''´ ヽ ト、_..上くイ { { {/ |ヽ | |_ 「 〉 /⌒ヽ、\ ` \-ー ̄\ヾ ⊥ 人_ _|_ |/ / ヽ \\ \´ ̄`ヽ、 O. l ', \\ \ __| \. | ', \`ヽ、 ∨n| } ト、 前スレ もしジョジョキャラがハルヒのSOS団に入ったら part4 http //changi.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1203844253/l50 まとめ http //www12.atwiki.jp/jojost/pages/11.html 注意書き ,、,、,、 /^Yニニニヾヽ 団員規則です、初めに読んでください。 ! { {八{从)} ! ・荒らしはスルーしましょう。 ノ ,イリ ゚ヮ゚ノリ八 ・次スレは490KB頃には立てておきましょう。 ( ( ⊂)孚iつ )) ・日本語は正しく使いましょう。 /く_{__} ヽ あと、メール欄には基本「sage」でお願いします。. じフ _ , ^ `ヽ 投下後何らかのアクションがもらえると イ fノノリ)ハ 作者たちは嬉しい。 リ(l|゚ -゚ノlリ 新作投下の場合、名乗り出てもらえば誰も邪魔はしない。 /つ{⌒l^0 恐れずに挑戦して欲しい。あなたの投下を待つ人がいる。 ただ、空気は読むこと。 ☆SOS団団員名簿☆ 団長:涼宮ハルヒ!! 名誉顧問:鶴屋さん 空条承太郎(徐倫のお父さんね) 副団長:古泉くん 一般団員: 有希 みくるちゃん キョン 億泰(杜王町に知り合いが居るの) 汐華初流乃(団員候補生!日本まで来てくれたわ!) 徐倫 アナスイ ウェザー エルメェス(アメリカ支部支部長よ!) ディアボロ(娘と親友を探してるらしいわ) 花京院くん(意外とゲーマーなのよ) 広瀬くん(背が小さいわ) ジョニイ(足が悪いから車椅子に乗ってるわね) 億泰(ジョニイの友達、だったかしら?) フーゴ(イタリアからの転校生、頭が良いわ) プッチ神父(名誉郊外団員!) ミキタカ(変人……よくわからないわね) ペット:セッコ(地底怪獣もぐらすよ)
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#blognavi 結局あれこれ考えて インテリアに障らないような仏壇を探すのを断念し 今までアクセサリーを置いていた棚を パッと見ではわからないようなルルの仏壇に変えました。 線香立ては置かず、お香立てで代用。 アイアンの入れ物にお香と線香、ライターを収納。 さすがに毎日号泣はしなくなったけれど いまだって毎日何かのおりにふっと思い出しては涙ぐんでます。 先日実家に帰った際、 朝起床したら母が 「ルルとはぐれる夢を見た」 って朝から落ち込んでるし。 49日の喪が明けたので 実家でプードルを飼うことになりました。 もちろん色はホワイト。名前はルル。 現在厳選中。 カテゴリ [合掌] - trackback- 2007年05月01日 21 27 18 名前 コメント #blognavi
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714 代打名無し@実況は実況板で 2008/02/23(土) 01 35 46 ID 3Wu6E+yW0 2/22付 ニッカン「貫」より 野球の話になった時、岡田は時々、クイズを出してくる。それも難しい問題が多い。 間違ったり、答えられなかったら、岡田はシラッとして「そんなん、わからんのん」と突き放す。 だからこちらも必死になる。 「さあ、きょうの練習で一番重要な練習をしてたん、誰かわかる?」。突然来た。20日の練習が終わり、 夜に一緒になった時だった。僕の顔を見てニヤニヤしている。 「オレな、驚いたわ。こいつら、凄いなって思ったよ」。(正解はブルペンでの藤川・久保田) 「あくまでオレの見方やけどな。久保田の負けん気と自信、それと球児に対するライバル心がそうさせたんやろな。 森田にオレの球も味わえ、オレの球はこれくらいのものや、とわからせたかったんやろ」。 「久保田は自信をつけたよな。球児も自信はあるだろうが、久保田の負けたくないという気持ちが、集約されたブルペンやったよ」 「ジェフも含めて、あの3人は何の心配もいらん」。
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前ページ次ページラスボスだった使い魔 「う゛~~~~……」 ルイズは部屋の中で一人、唸り声を上げていた。 「う゛う゛う゛~~~~~……」 納得いかない。 どうしていきなり長姉がやって来て、自分の使い魔を強引に連れて行ってしまうのか。 どうしてあの馬鹿は、それに対して抵抗らしい抵抗もせず、ただ黙ってついて行ったのか。 姉が自分に対して命令口調で説明を行っている時、銀髪の男が黙って部屋の中を掃除していた記憶が頭をよぎる。 最近になって、自分の中で使い魔に対しての羞恥心が猛烈に湧き上がってきたので、洗濯や身の回りの世話はルイズが自分でやるようになっていた。 なので、使い魔の仕事が朝起こすことと髪を梳くこと、それと掃除くらいしかなくなってしまったのだ。 とは言え、残ったそれらの仕事に関しても、ルイズは微妙な気恥ずかしさを感じていたりするのだが……。 閑話休題。 ……あの無表情を思い出すと、ムカついてくる。 いや、まあ、長姉に逆らえないのは自分も同じだし、苦手意識がかなり深いところに根付いてしまっているから、思わず『は、はい』と言ってしまったけれども。 よくよく思い返してみれば、あの馬鹿からも……なんだか諦めてるような空気が出てたけれども。 それにしたって、どうして姉はよりによって自分の使い魔なんかを連れて行ったのだろうか。 確かに『研究者』としては……優秀、だろう。 実はこっそり使い魔の書いたレポートを読んでみたことがあるのだが、なんとも斬新な―――と言うか、珍妙な視点からハルケギニアの魔法についての考察を重ねていた。しかも、それがいちいち的を射ているのである。 あれなら、エレオノールが一目置くのも分かる。 では、『戦う人間』としては……そんなに強くもない、とは思うのだが……。 (仮にもワルドに勝ったらしいし……) 自分がその光景を見たわけではないし、どうせ奇をてらった戦いをして不意打ちに近い勝ち方をしたのだろうが、少なくとも『弱い』ということはないだろう。 「……………」 こうして考えてみると、なんだか自分の使い魔ってけっこう凄いのでは? という気がしてきた。 「いやいや、ちょっと待ちなさいルイズ」 その能力は高くても、人間的に問題がかなりある。 無愛想だし。 いちいち理屈っぽいし。 何を考えてるのかよく分かんないし。 生意気だし。 そもそも貴族に……って言うか、御主人様に対する敬意もないし。 必要以上の会話をしようとしないし。 同じ部屋で寝なくなったし。 なんだか最近、わたしにかまってくれてないような気がするし。 「う゛う゛う゛う゛う゛~~~~~~~…………!」 また唸り始めるルイズ。 本当は差し迫るアンリエッタの結婚式に向けて、詔(ミコトノリ)を考えなくてはならないのだが……こんな正体不明のモヤモヤした気分を抱えたままでは、とても出来そうにない。 「う゛~~~~……」 でもやらなきゃいけないことなので、取りあえず机に向かって、ボンヤリと詔に関係あることないことを考えたりするルイズなのであった。 数十年の時を経て、荒れ果ててしまった寺院跡。 かつて開拓されかけ、しかし『ある理由』からその開拓を途中で放棄されてしまった場所である。 その寺院跡に、一人の男が立っていた。 男の狙いは、かつての寺院の司祭がこの地から離れる際に置き去りにしてしまった『秘宝』にあったのだが、それを手に入れるには1つの……しかし強大な障害を解決しなくてはならない。 ここでこうして立っている分には、平和でのどかな平原でしかないこの場所に、一体どのような障害があると言うのか? 男はその『障害』に思いを馳せ、身震いした。 後方では、自分をサポートするために仲間が控えている。イザとなれば、必ずや自分を助けてくれるだろう。助けてくれるはずだ。助けてくれるに決まっている。助けてくれないと困る。 そして、何故に自分がこのような場所にいるのかを考える。 (……気が付いたらここにいた、ということしか分からない……) あの高慢でプライドばかり高そうで、そして胸がほとんどない金髪眼鏡の女性は、さも当然とばかりに自分に命令を下す。 くそう、家が名門だからってそんなに偉いのかよう。 ……偉いんだよなぁ。 そうして男は―――ギーシュ・ド・グラモンは、ガックリと肩を落としたのだった。 「って言うか、何で僕が前衛なんだ!?」 普通に考えれば、ユーゼスが前衛で、自分はワルキューレなどで後方支援、そしてほとんど攻撃魔法が使えないエレオノールが物陰からちょこちょこサポートをする……となるはずだ。 なのにユーゼスが前衛だったのは最初の戦闘くらいで、以降は全部この自分が前衛なのである。 ギーシュも1~2回目くらいまでは『まあ、ユーゼスもワルキューレで色々と試してみたいことがあるんだろうな』と快く引き受けていたのだが、さすがに6回目ともなると不満が爆発してしまう。 そりゃあ、最初から最後までずっと孤立無援というわけではないし、ユーゼスも本当に危なくなった場合は援護してくれた(エレオノールは本当に何もしなかったが)。 ……しかしユーゼスに関しては、秘宝が目当てではなくて『実験』の方が重要なんじゃいかと思っている。 人の魔法を使って実験なんかしないでくれ、と言いたい気持ちもあるにはあるが、何だかんだ言って役に立っているのは事実なので、そう大っぴらに文句も言えない。 「ぐぬぅ……。……っ!?」 そんな感じにギーシュが悩んでいると、いきなり爆発音が響いた。 自分が先日『錬金』で作った爆発物が、エレオノールの『着火』によって爆発したのである。 ……その爆発音によって、この村跡が打ち捨てられてしまった『ある理由』が飛び出してきた。 「ふぎぃ! ぴぎっ! あぎっ! んぐぃぃいいいいいッ!!」 オーク鬼の群れである。 あんなのが大挙して押し寄せて来ては、開拓民たちも逃げ出すしかないだろう。開拓民たちはオーク退治を領主に訴えたらしいが、その訴えは却下されたらしい。ハルケギニアでは、そんな話はよくあることだった。 そして自分はオーク鬼の群れから逃げ出したいけど、逃げられない。ギーシュはエレオノールに逃亡と今回の宝物の探索の取り止めを何度も訴えたが、その訴えは却下された。毎回そんな感じであった。 「ええい、くそっ……!」 バラの造花を振り、その花びらからマントを羽織ったゴーレム……ワルキューレを5体ほど造り上げる。 敵の総数は……目測で20よりは少ない。 ギーシュはまずワルキューレを1体だけ前に出し、ユーゼスが言っていた『実験技』を繰り出してみることにした。 この『実験技』は当たりもあればハズレもある、半分バクチのようなものなのだが、今回はどうなることか……。 「……!」 考えている間にも、オーク鬼の群れは迫ってくる。 とにかく、やってみないことにはどうにもならないので、実行に移す。 ワルキューレに拳を作らせ、その腕を前方に突き出し、拳を対象にして更に『錬金』をかける。 どうにも自分のセンスからは外れている技の名称だが、イメージがしやすいのでギーシュは技の名称を叫んだ。 「無限パーーーーンチ!!」 突き出した拳に『錬金』がかけられ、その拳が変化して新しい手首となる。 新しい手首の先には、また拳がついていた。 そしてその拳に、更に『錬金』をかけ……これを延々と繰り返す。 伸びていった腕は、見る見る内に敵であるオーク鬼へと伸びて行き……、やがてその中の1体に、ゴガン、とぶつかった。 「よ、よし……!」 ユーゼスが言うには、このまま拳で持ち上げて、更に地面に叩き付けるのだとか。 取りあえず言われた通りにやってみるか、と手首の角度を変えて体長2メイルほどもあるオーク鬼の身体を持ち上げようとして……。 ベキリ、とワルキューレの腕が途中で折れた。 「ええっ!?」 ギーシュが仰天していると、更にバランスを崩したワルキューレが伸びた腕の重みで転倒してしまう。 「何だそりゃああああ!?」 唖然とするギーシュだったが、攻撃されたオーク鬼たちの方は激怒し、興奮し、いきり立った。 おまけに厚い皮と脂肪を鎧としているオーク鬼には、生半可な拳の打撃など大して効果がないらしい。 つまり結果だけ見ると、精神力を無駄遣いしてオーク鬼を怒らせただけだった。 「ああもう、何でこうなるんだぁ~!!」 転倒したワルキューレの腕にもう一度『錬金』をかけ、伸びた腕を切り離して普通の長さに戻す。 しかし、オーク鬼十数匹に対して、こちらの戦力は装甲が厚めのワルキューレ5体、プラス自分。 1体分の精神力は無限パンチで使い果たしてしまったし、『最後の手段』のためにラスト1体分の精神力はキープしておかねばならない。 何とも、心もとない布陣である。 そして剣や槍で武装したワルキューレたちは、真正面からオーク鬼にぶつかったが……。 「よ、弱い……」 それなりに善戦はしているのだが、やはりオーク鬼にはちょっとやそっとの切り傷など何もしていないのと同じである。 ワルド戦で使った『ディスタント・クラッシャー』を使えばそれなりにダメージを与えられはするのだが、あくまで『それなりのダメージ』であって致命傷には至らない。奴らを戦闘不能に追い込むためには、最低でも2発は食らわせる必要があるようだ。 だが、ワルキューレの『ディスタント・クラッシャー』は火薬を仕込んだ単発武器。そしてワルキューレの腕は2本だけで、場に出しているのは5体。 ……オーク鬼を4体ほど倒した時点で、ワルキューレたちに打つ手はなくなってしまった。 あとは個々の能力と、何よりも数が物を言わせ―――それでも1体だけオーク鬼を倒したが―――ワルキューレは全滅してしまう。 「あ、あわわ、あわわわわわわ……!」 もはや丸裸同然のギーシュは、ガクガク震えながらたった1人で10匹前後のオーク鬼と対峙する。 そして、ギーシュの頭脳はこれまでの17年間の知識を総動員しながらフル回転し、ある1つの行動を主人に導き出した。 逃げよう。 ダッ、と全速力で後ろへと駆け出すギーシュ。 当たり前だが、オーク鬼たちは怒り狂って追いかけてくる。 (お、追いつかれたら、死ぬ……!) 『命を惜しむな、名を惜しめ』という父の言葉が一瞬だけ頭をよぎったが、こんな戦いに名誉も誇りもあったもんじゃない。だから今は命を最優先だ。 しかしオーク鬼のスピードは、人間よりも明らかに速かった。 逃げ惑うギーシュへと迫り来るオーク鬼の棍棒。その大きさは人間1人分ほどもある。当たれば良くて大怪我、普通で即死、悪ければ苦しんだ末に死ぬだろう。 「ひっ……!」 オーク鬼の荒い息遣いが聞こえ、黒い影が自分を覆う。 ギーシュは必死の逃亡もむなしくオーク鬼に追いつかれ、棍棒に強打されてその短い人生を閉じようとしていた。 (も、) もうダメだ、と思う間もなく棍棒は振り下ろされ、 赤い血が草原を染め、 ギーシュはまだ走っていて、 僕は死んでるはずなのに何でまだ走ってるんだ、と思ったギーシュがふと右を見ると、 銀髪の男が遠くから鞭を振るっている光景が見えた。 「……やはり駄目だったか」 長い鞭を飛ばしてオーク鬼の首をはね飛ばしたユーゼスは、ポツリと呟いた。 ワルキューレに転用が出来そうな攻撃方法はないものか……と、クロスゲート・パラダイム・システムを使って様々な次元世界を覗いてみたのだが、『無限拳』は無理があったようだ。 そもそもアレは『アクエリオン』というロボットだからこそ可能な技であって、外見だけ真似できるからといってそうそう上手くいくわけがないのである。 しかし出来ないと99.9%理解していても、残りの0.1%を検証せずにはいられないのが研究者や科学者という種類の人間なのであった。 ……ギーシュに聞かれたら殴られても文句が言えないが、言うつもりなど全くないので特に問題はない。 それに、このトレジャーハントの旅の途中で、ワルキューレについては色々と試した。 成功例としては、ワルキューレの腕を弓にした『ゴーガン』(弓を武器にも転用出来たので採用された)や、身体の一部を始めから刃にしておいて戦闘時に取り外して武器にする『スラッガー』などがあった。 他にも『ディスタント・クラッシャー』の時に使う鎖を、『ディスタント・クラッシャー』に使わずにそのまま敵の動きを束縛するのに使ったり、その鎖の先に鉄球を付けて武器にしたりした。 また、目くらましや動きをさえぎるカーテン程度にしか役に立たないと思っていた『マントを羽織らせる』というアイディアはギーシュがえらく気に入ったようだ。何でも見栄えがグッと良くなるらしい。 ……アイディアの元は海賊のガンダムから頂いたことは、黙っておこう。 ワルキューレの足に車輪を付けてみる、というアイディアもあったのだが、これはスムーズに動けるようになるまで少し習熟期間を要するため、保留となっている。 そして、成功例があれば失敗例も数多くあった。 ワルキューレの身体を一度バラバラにして、もう一度合体して再構成を――― とギーシュに話したら『無茶を言うな』と言われてしまった。やはりゴーレムに飛行機能が付加出来ない以上、『手の平サイズで空を飛ぶ』ことが大前提のビット兵器のようなものは無理らしい。 ……では他の方法で飛行する方法はないものか、と考えはしたのだが……。 極限まで軽量化して、鳥の骨格を模して飛ばせるのはギーシュが鳥について徹底的に熟知する必要があるので無理。 背中にジェットやロケットのような物を付属させるのは、ワルキューレが弾丸になるだけなので駄目(これはこれで良い攻撃方法ではあったが)。 それなら詳しくは知らないが『LFO』という機体のようにボードに乗せてみてはどうかと一瞬思ったが、よくよく調べてみたらあれはトラパー粒子とやらが存在しないと飛べないと判明したので口には出していない。 結論、ワルキューレを飛行させることは不可能である。 ……他にもワルキューレを人型から獣形態に『錬金』を使わずに変形させようとしたが、人型形態か獣形態のどっちかが、どうしてもイビツになってしまうので駄目だった。 ならば始めから獣形態ならどうか……と、ユニコーン型、ライオン型、ヘビ型、竜型、イノシシ型、牡牛型の6種類のゴーレムを作らせてみたのだが、『やっぱり人型の方が動きのイメージがしやすい』ということで没。 上半身が人型のままで、下半身を馬のような四足歩行にした『パーンサロイド』も試してみたが、やはり違和感を感じるらしい。 だったらこれはどうだ、と複数体のワルキューレを物理的に合体させようとしたが、変形と同じ理由で駄目だった。 結論、ワルキューレは人型で単体のままが一番。 ……ワルキューレそのもののバージョンアップがこれ以上無理なら、使わせる武器を考えようともした。 まず最初に『ドリル』を付けようとしたのだが、あのスパイラル状の形状はともかくとして、『回転させる』機構を『錬金』のワンアクションで再現するのは無理だ、と言われたので断念。 ワルキューレの全長を上回るほどの巨大な斧や、巨大な剣……『使い勝手が悪すぎる』と不評だったので断念。 ワルキューレに銃や大砲を付けてみる……ドリルと同じく機構の再現が出来なかったので断念。 両手に剣を持たせ、高速で横回転させて攻撃する『シュトゥルム・ウント・ドランク』はどうかと思ったが、『高速で横回転』がどうしても『ただ踊っているだけ』に留まってしまうため断念。 やはり機体の能力はともかくとして、ガンダムファイターの『技』を再現させるのは不可能であった。 結論、普通の武器で普通に戦った方が良い。 と言うか、ここまで来るとワルキューレの運用方法よりも、ギーシュの『操り方』の強化をした方が良いのではないだろうか? そんなことを回想しつつ考えながら、ギーシュがオーク鬼から逃げる光景を眺めていると……。 「……む」 ギーシュが逃げる方向をこっちに向けた。 (あれでは私も巻き添えを食ってしまうな) そんなことはご免こうむるので、とっとと逃げ出すことにする。 するとギーシュは、物凄い形相で何かを叫びながら自分を追いかけてきた。 (足止めをしたいのならば、青銅のトラップでも仕掛ければ良いだろうに……) そう思いはしたが、錯乱しかけているギーシュにそんなことを言っても無駄だろう……と結論づけて、ともかくユーゼスは逃げる。 ……取りあえずはモグラのヴェルダンデが掘った穴まで、あのオーク鬼たちを誘導しなければなるまい。 「も、もう、もう嫌だぁぁあああああああ……!!」 『戦利品』である真鍮製のネックレスやイヤリングを見て、ギーシュが嘆く。 ……あの後、どうにかこうにかオーク鬼たちを迎撃しつつ落とし穴まで誘導し、落としたオーク鬼たちに用意しておいた油を浴びせ、更に火薬を満載させた最後のワルキューレを1体放り込んで『自爆』させて事なきを得た。 結果としてオーク鬼たちは全滅し、ユーゼスは『自爆させるくらいなら、頭や下半身をミサイルのように飛ばせば……』などと考えたりしていたが、ギーシュの精神はかなり参っていた。 ギーシュは切実かつ切迫した様子でユーゼスに訴える。 「……も、もう、もう魔法学院に帰ろう!? そもそも、僕たち3人だけでこんな危険なことをするってこと自体が間違いだったんだよぉ……!!」 「確かに3人で、というのは少々厳しかったな」 出発する直前、他について来てくれそうなメンバーに声をかけようとはした。 最初にキュルケの所に行こうとしたのだが、『ミス・ツェル―――』と言いかけた時点でエレオノールに物凄い形相で睨まれた。そう言えばヴァリエール家とツェルプストー家は物凄く仲が悪かった、と思い出してキュルケは諦めた。 次にタバサに声をかけようとしたが、部屋まで行ってノックしても返事がない。どうやらどこかに出掛けているらしく、何でもタバサはたまにこうやって学院からいなくなることが多いそうだ。 ではダメ元でモンモランシーはどうかという話になり、『ならば僕に任せてくれたまえ』と自信満々でギーシュが向かったが、10分後に頬に赤い手形をつけて戻って来た。 他にも色々と声はかけてみたのだが、返事は全てNO。 まあ、あるかどうかも分からない宝を探して、大怪我どころか命すら危ない道中に身を投じるために授業をサボタージュするような酔狂な人間はそういるまい。 しかも実際に命が危なくなったのだから、ギーシュが嫌になるのも無理はなかった。 「大体、直接的な戦闘に向いている人間が一人もいないって時点で……!」 と、必死になってユーゼスに帰還を呼びかけるギーシュだったが、今回の宝探しの『そもそもの元凶』の出現によってその口は閉ざされる。 「……泣き言を言うのはそれまでにしておきなさい。それでも元帥の息子?」 「ミ、ミス・ヴァリエール……!」 苦手意識どころか、もはや軽い怯えすら見せてエレオノールから後ずさるギーシュ。 『もうやめましょう』、『もう帰りましょう』、『もう諦めましょう』と言う度に徹底的に言い負かされ、自分の意思を無視され、そして強引に……と言うか無理矢理にここまで付き合わせた女性である。 なお、このエレオノールとの一件によってギーシュには『年上の女性』が少々トラウマになりつつあるのだが、本筋とは関係がないので割愛する。 そんなギーシュはなけなしの勇気を振り絞って、エレオノールに上申した。 「ミス・ヴァリエール、もう7件目です! この1週間……いえ、もうそろそろ10日になりますが、あなたがどこからか手に入れた地図を頼りに行ってみても、見つかるのはせいぜい銅貨が数枚! 地図の注釈に書かれた『秘宝』なんて、カケラもないじゃないですか!」 「フン、最初から失敗を恐れてるようじゃ、成功は望めないわよ」 「限度がありますよ!! いくら何でも!!」 (……確かにな) ユーゼスは道中でのエレオノールの言動や行動を見るに、彼女は『宝探し』よりも別に目的があると考えていた。 特に先ほどのような戦闘中は、自分に視線が向けられていることを感じる。 (目的は……『私』か?) ガンダールヴの能力の見極めか、あるいは自分という人間を判断するためか。 妹を預けるような形になっている以上、心配することは理解が出来ないでもないが……。 ともあれ、さすがに10日間というのは長い。 「その辺りにしておけ、ミス・ヴァリエール」 「……何よ、ユーゼス。あなたも文句があるの?」 ジロリとこちらに視線を向けるエレオノール。 ちなみに一週間を越える時間を経て、彼女のユーゼスに対する呼び方は単なる『ルイズの使い魔』とか『平民』から、『ユーゼス』に変わっていた。 「持って来た保存食料も底をつき始めた。それに夜具やテントも使い込んで調子が悪くなりつつあるからな、いい加減に切り上げ時だろう」 「……むう」 確かに、一理ある。 体力も辛くなってきたし。 そろそろテント生活が耐えられなくなってきたし。 何より、肌がどんどん荒れてきたし。 「…………なら、最後にあと1件だけ行ってみて、それで終わりにしましょう」 そのエレオノールの言葉を聞いて、ギーシュの顔がパッと明るくなった。しかし直後に『まだあと1件あるのか……』と落ち込み始める。浮き沈みの激しい男である。 「最後の1件か。……どのような場所にある、どのような宝なのだ?」 「場所は……ラ・ロシェールの向こうにあるタルブって村ね。名前は……『銀の方舟』だとか」 「……『銀の方舟』?」 聞き覚えのある名前だった。 アレは確か……。 「話は道中でも出来るでしょう。それじゃ、早速出発するわよ」 ユーゼスが思い出している途中だったが、それに構わずエレオノールは馬車に乗り込む。 (出来ればアレは放置しておきたかったのだが……) 口でエレオノールに勝てるとはとても思えないし、他の人間ならともかくこの女性に対して嘘をつき通せる自信もない。 取りあえず『現物』を見てから考えよう、とユーゼスはギーシュを引っ張って馬車に乗り込んだのだった。 その日の夜。 街道の脇で馬車を止めて、一行は野宿することにした。 近くには手頃な村もないので、こうするしかないのである。 馬車を操る御者はその馬車の中で休んでおり、ギーシュは自分の使い魔のヴェルダンデと抱き合いながらテントの中で眠っていた。 ユーゼスは転がっていた丸太に座って焚き火の見張りをしながら、何をするでもなく星を眺めていたのだが――― 「……雰囲気の暗い男ね。そうして火に照らされていると、危ない人間にしか見えないわよ?」 エレオノールが横に置いてあるもう一つの丸太に布を敷いて、その上に腰掛ける。 そんな彼女を一瞥すると、ユーゼスはぞんざいな口調で『それで構わん』と呟いた。 ……暗い人間だとか、危ない人間だとか言う評価など、別に問題ではない。 むしろ、自分を的確に表現していると言えるだろう。 しかし、言われた彼女の方は自分の言葉に納得がいかないようだった。 「この道中、あなたとはそれなりに関わってきたけど―――何だかあなた、人とあまり関わろうとしていないのね」 「ふむ」 少し驚く。 ただ頭ごなしに命令するだけかと思っていたが、意外と人のことを良く見ているものだ。 ……いや、自分の観察に重きを置いていたようだったから、その程度のことは分かって当然か。 「いかにもその通りだ。……私は、人との関わりを避けている」 「……………」 「どうした、そんな驚いた顔をして。お前の見立ては間違いではなかったのだぞ?」 「……いえ、普通はそこで『そんなことはない』って言うんじゃないの?」 「否定しても意味がないだろう。同様に、人と積極的に関わることも意味がない」 意味のないことは、極力しない主義だ。 それにこの女性は自分と話をしたいようであるし、ここで否定しては話が途切れると考えたので、あえて肯定してみた。 まあ、無意味と言うのなら、この会話こそが無意味ではあるが。 「『無意味なことに意味がある』……なんて哲学的なことを言うつもりはないけど。あんまりそうやって効率を重視したり簡潔すぎたりすると、息苦しくなるわよ?」 「特に問題はないな。息苦しさなど、昔からずっと感じていたことだ」 「……………」 呆れた視線でエレオノールはユーゼスを見る。 ……そんな目を向けられても、自分の人生はこれまでずっと息苦しさを覚えるようなものでしかなかったのだから、仕方がない。 ずっと何かに追い立てられていた。 ずっと何かに焦っていた。 ずっと何かに苦しんでいた。 ずっと何かを求めていた。 ずっと……何かと戦っていた。 今となってはその『何か』の正体も分からないが、そんな状況で息苦しくないわけがない。 ユーゼスにとって、『息苦しさ』とはもはや日常であった。 「しかし、『息苦しい』と言うのならば……」 そうしてユーゼスは、ゆっくりとエレオノールを見つめる。 「……何よ?」 いぶかしげな様子で、今度は自身がユーゼスの視線を受け止めるエレオノール。 だが次に彼が放った言葉によって、彼女の表情は固まった。 「いや、『息苦しさ』ならば、お前も感じているのではないか?」 「…………な」 『そんなことはない』、と否定しようとして―――だが、エレオノールはその言葉を否定しきれない。 貴族として。名門ヴァリエール家の長女として。アカデミーの主席研究員として。 物心がついた時から両親には厳しく躾けられ、常にトップであることを義務づけられ、なまじ才能があったばかりに――― 「……っ」 強引に思考を打ち切る。 このことについて、深く考えては駄目だ。 止めないと……何かが、止まらなくなる。 エレオノールは少しわざとらしく咳払いをして、話題を転換した。 「……そんな抽象的な話はともかく……」 「お前から話を振ってきたはずだが」 「うるさいわね! ……ともかく、もうこの話はやめましょう。それこそ息苦しくなってくるんだから」 「そうだな」 転がっていた小枝を薪として焚き火に放りながら、ユーゼスは同意する。 ……ある程度の期間を一緒に過ごして分かったのだが、どうにもこの男には『主体性』というものが見えにくかった。 とにかく受動的と言うか、意志の強さが感じられないと言うか……。 あのグラモン家の四男のゴーレムにあれこれ注文を付けている時は、そんなものも見え隠れしていたが、一旦『研究』から離れるとすぐ元に戻ってしまう。 まるで人生全てを諦めているような、あるいは人生でやるべきことを全てやり尽くしてしまった後のような、そんな印象をエレオノールは感じていた。 (見た目は若いわよね……) どう見ても自分と同年代程度にしか見えないこの男が、そんな密度の濃い人生を送っているとも思えない。 何かの呪いか、あるいは魔法で不老にでもなったのかしら―――とも思ったが、それなら『ディテクト・マジック』に何らかの反応があるはずである。 ……そこまで考えると、この銀髪の男が妹に召喚される前のことが気になった。 よくよく思い返してみれば魔法学院の生徒や、主人であるルイズですらユーゼスの過去は知らないようであるし。 興味本位でそれを尋ねてみると、 「……人に語って聞かせるような、立派なものではない」 アッサリと、そう返された。 そして逆に尋ねられる。 「では、お前のこれまでの経歴はどうだ? 人に物を尋ねるのであれば、まずは自分から語るのが道理だろう?」 「え……」 そう言われても……それこそ、語って聞かせるようなものではないような気がする。 だが、まあ、立て続けに自分から話を振っておいて、自分で話を打ち切るのはどうかと思ったので、簡単にではあるが『自分の経歴』をユーゼスに話した。 ヴァリエール家の長女に生まれたこと。 幼い頃から『立派な貴族であるように』と、さまざまな教育を受けたこと。 トリステインの魔法学院に入学し、優秀な成績を残し続け、首席で卒業したこと。 卒業後はアカデミーに鳴り物入りで入所し、以後は様々な業績を残して主席研究員にまで登りつめ、現在に至ること。 「……………」 ユーゼスは、黙ってエレオノールの話を聞いていた。 「……まあ、こんな所かしら」 語り終わって、何だかむなしくなった。 何と言うか―――意外に早く、自分の経歴を語り終えてしまったのである。 もちろん細部には色々なエピソードがあるし、努力もしたし、壁にぶつかったことも一度や二度ではない。 プライドの問題があるため言わなかったが、恋だって少なからず経験がある。……全部破れたが。 だが、こうして簡潔にまとめてみると……『簡潔にまとめてしまえる』ことに、何だか落ち込んでしまう。 「ふむ、なるほど」 自分の話を聞いていた銀髪の男はそう言って頷くと、 「私もそれと大差がないな」 唐突に自分のことを語り始めた。 おそらくエレオノールが過去を語ったので、自分も語る気になったのだろう。 ユーゼスは『子供の頃など、もはや全く覚えていないので省くが』と前置きした上で、自分の過去を語り始めた。 「……学術機関に在籍していたのは、そちらと同じだ。そこで自分の決めた研究テーマに打ち込み、それなりに結果も出した」 「研究テーマ? ……どんなことを研究してたのよ?」 「汚染された大気や自然環境の浄化、だな」 「?」 何よそれ、とばかりにエレオノールは首を傾げる。 無理もない。 このハルケギニアでは『環境汚染』などという概念は、あまり馴染みがないのだから。 「……何と説明すれば良いか―――そうだな、『空気や水を通して世界中に広がる毒』を除去する、とでも考えてくれ」 「はあ……」 まだ得心がいかない様子のエレオノールだったが、ユーゼスは概要はおぼろげながら理解したと判断して話を進める。 「その後は……あまり多くは語りたくないのだが」 「何よ、気になる言い方ね」 「そうかね? ともあれ詳細は隠させてもらうが、分不相応な野望を抱いて、それに破れた。破れた直後は何をするでもなく一人でいたが、そうしている内に御主人様に召喚され……後は知っての通りだ」 「……肝心なところが隠されてるから、いまいち要領を得ないけど……。その『野望』って言うのは何なの?」 「語りたくない、と言っただろう?」 「それは気になる言い方だ、とも言ったわね」 「……………」 「……………」 沈黙する二人。 そのまま少しの間、そうしていたが―――やがて焚き火の中の枝がパチンと弾け、ラチが明かないか、とユーゼスは根負けしたように自分から口を開く。 「……笑われるか呆れられるかされることを、覚悟で言うが」 「言ってくれなきゃ、反応のしようもないでしょう」 そしてユーゼスは、さも言いたくなさそうに、まるで『自分の恥部』を告白するかのように、言った。 「神になろうとした」 「…………え? 何ですって?」 思わず聞き返すエレオノール。 よく聞き取れなかった……と言うか今、この男の口から凄い言葉が出たような気がする。 主人から『無愛想で何を考えているのかよく分からない』と評された使い魔は、ハルケギニアに召喚されてから初めて苦々しげな表情を浮かべ、もう一度その言葉を口にした。 「……神になろうとした、と言ったのだ」 「…………神ぃ?」 エレオノールは唖然とした。 神? この理屈や理論を何よりも重視し、不確かな存在など一切認めないとでも言わんばかりの、このユーゼス・ゴッツォが? 『実際には神とは違うのだが……』などとブツブツ言ってはいるが、例え話にしても『神』とは……。 「何と言うか……」 吐息と共に、言葉が漏れる。 それを聞いたユーゼスは額を指で小突きながら、 「……だから言いたくなかったのだ」 と、深い溜息と共に小声で言うのだった。 「ふぅん……。まあ、確かに壮大すぎると言うか、身の程知らずと言うか、馬鹿みたいな考えねぇ……」 「……………」 やはり言うのではなかった、と後悔してももう遅い。 これ以降、この話を元に自分が散々からかわれたり馬鹿にされたりする光景を思い浮かべて、ユーゼスは少し落ち込んだ。 ……落ち込むような精神がまだ自分に残っていた……いや、そんな精神が新たに芽生えていたことに、驚きも感じていたが。 そしてエレオノールは、ユーゼスに蔑みやあざけりの言葉を、 「でもまあ、それも良いんじゃないの?」 「?」 ……そんな言葉は、放たなかった。 まさかそのようなリアクションが返って来るとは思わなかったので、思わずユーゼスは疑問を顔に浮かべる。 その疑問に、エレオノールは答えた。 「何だか安心したわよ。……悪いけど、私は今まであなたに対して『人間味』みたいなのをあまり感じてなかったから、そういう『願望』みたいなのがあったって分かるとね」 「そういうものか?」 ユーゼスとしては、どうにも信じがたい理屈である。 「そういうものよ。たまにあなたのこと、ゴーレムかガーゴイルかって思うこともあったし。 ……その内容はいただけないけど、でも……」 エレオノールは、軽く笑みを浮かべた。 「あなたもちゃんと『人間』なんだって、安心した」 「……………」 「……何よ、その絶滅したはずの幻獣を見たような顔は?」 「…………お前が笑っている所など、初めて見た」 ユーゼスが言った言葉に、カチンと来るエレオノール。 その言い方では、まるで自分が笑い方を知らないようではないか。……いや、確かに他人に笑顔などを見せるのは随分と久し振りなような気がするが。 「悪い? 人間なんだから、怒りもすれば笑いもするわよ」 って言うか、笑わないのはそっちも同じじゃないの……と、拗ねたような顔をして、ユーゼスに言う。 そして次の瞬間、今度はエレオノールが驚いた。 「フッ……、そうだな。結局、私は―――どこにいようと、どこまで行こうと、どれだけ時が経とうと、人間でしかない……」 「……………」 「……何だ、そのありえない現象を目撃したような顔は?」 「…………あなたが笑ってる所、初めて見たわ」 その言葉を聞いて、ユーゼスは自分の顔を右手でペタペタと触る。 だがすぐに気を取り直すと、エレオノールに向けて反論を開始した。 「悪いか? 人間なのだから、怒りもすれば笑いもするだろう」 金髪の女性は、銀髪の男の言葉にキョトンとして――― 「……フフ、そうね」 ―――もう一度、軽く笑う。 つられたユーゼスもまた、もう一度軽く笑った。 「それじゃあ、もう寝ましょうか。明日も早いんだし、もしまた何かの亜人や幻獣がいたら寝不足じゃ対応しきれないわよ?」 「そうだな」 ユーゼスはギーシュと同じテントに、エレオノールは専用の少し豪華なテントに向かう。 意味があるのか無いのか、よく分からない話はこれで終わりだ。 明日には、最後の秘宝があるというタルブ村に着くだろう。 それに備えて、睡眠をとらなくてはならない。 「朝にはちゃんと起こしなさいよ?」 「起こしたのならば、きちんと目覚めることだ」 就寝のあいさつ代わりに、言葉を交わす。 二人はそれぞれ違う場所で毛布を被り――― (……そう言えば……) (……あれ以前に最後に笑ったのは、いつのことだったか……) ―――全く同じことを考え始める。 しかし記憶を漁ることに疲れ始めると途中で切り上げ、やはり二人ともほぼ同じタイミングで眠りに入ったのだった。 前ページ次ページラスボスだった使い魔
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前ページ次ページラスボスだった使い魔 「おお……」 コルベールは浮遊していく。 肉体が、ではない。 意識が身体を離れ、空に浮かんでいるのだ。 「……これが『死ぬ』ということか?」 そう呟く間にも、コルベールの意識は浮遊を続けた。 自分の身体や、それを剣で突き刺しているアニエスを見下ろし。 食堂の屋根をすり抜け。 トリステイン魔法学院の上空を通りすぎて。 雲の高さまで上昇してもなお止まらず。 あげくの果てにはトリステインどころか、ハルケギニアの形が分かるほどの高度に達する。 「む……止まったか」 ようやく止まってくれたことにホッとしつつ、コルベールはこれからどうしようかと首をひねった。 自分は先程、アニエスに刺された。 そしておそらく死んだ。 それはいい。 だが、それからどうすればいいのだろう。 「しかし、ヴァルハラ……いや、地獄とは意外にあっけないところなのだなぁ」 ヴァルハラ。 『天上』などと形容されることもある、死後の世界。 清く正しく生きていれば死んだ後にはそこに召されるらしいが、あれだけの罪を犯した自分がそんな場所に行けるわけがない。 つまりここは、いわゆる『地獄』という場所のはず。 「うぅむ……」 しかしその『地獄』らしき場所で、自分はただプカプカと浮かんでいるだけだった。 ある意味、予想外である。 「…………どうしたものか」 さすがに死んだ後のことまでは考えていなかったので、途方に暮れるコルベール。 と、そこに聞き覚えのある声が響いた。 「―――今のところはどうする必要もない」 「何?」 声のした方に振り向いてみれば、そこには虹色をした半透明の四角い箱のようなものに包まれた、 「ゴッツォ君……?」 「……こうしてじっくりと話をするのは初めてか、ミスタ・コルベール」 ユーゼス・ゴッツォがそこにいた。 「? なぜ君が……い、いや、ちょっと待ってくれ。どういうことなんだ?」 コルベールは右手で額を押さえながら状況を整理しようとするが、どうにも理解が追いつかない。 自分は死んだのではなかったのか。 それとも何だ、実はこのユーゼス・ゴッツォという男は地獄の水先案内人とでも言うのか。 「混乱しているようだな」 「……当たり前だ」 まあ無理もないか……などと呟きつつ、ユーゼスは『虹色の箱』に入ったままでコルベールに語りかける。 「お前がミス・ミランに刺された瞬間に、お前の精神を一時的に肉体から切り離し、位相が微妙に異なる空間に移したのだ。……私がこの空間にいるのも同じ理屈だな。ちなみにこの間、通常空間では全く時間が経過していないので安心しろ」 「は?」 「む、理解が出来ないか?」 「…………おそらくハルケギニア中を探しても、今の言葉を理解出来る人間はいないと思うよ」 「そうか。まあ理解したところで、今の状況ではあまり意味がないのだが」 「……………」 プカプカと浮きながらハルケギニア大陸を見下ろしつつ、コルベールは困惑する。 理屈はサッパリ分からないが、この現象はユーゼスの仕業によるものらしい。 ……いくら始祖の使い魔とは言え、これはガンダールヴの能力ではあるまい。確実に自分の―――ハルケギニアの理解を超えた力によるもののはずだ。 この目の前の白衣の男が、なぜそんな力を持っているのか。 その力はどれだけのことが可能なのか。 そして何より解せないのは、 「これだけのことが出来るというのに……君は、どうして……」 今までほとんど何もしてこなかったのか。 そんなコルベールの強い疑問に対して、ユーゼスは無表情に答える。 「……確かにハルケギニアという世界において、私のこの力は異質すぎると言えるだろう」 「そうだろう、ならば……」 「だが人々が生きている世界に、超絶的な……神のごとき力など不要だ」 「何?」 「そんなものなどなくても人々は生きているし、世界は存在し続けている。……むしろ突出した力を持つ存在は、世界に無用な混乱を撒き散らしてしまうのだ。その精神や行為の善悪に関わらずな……」 「……ゴッツォ君?」 コルベールは四十二歳である。 決して長く生きたとは言えない年齢だったが、それでも軍人として、隊長として、教師として、若者に何かを伝える人間として、『それなりに』人生経験を積んできたという自負はあった。 そのコルベールが今のユーゼスに抱いた印象は……。 (……まるで老人だ) しかもオールド・オスマンのような『老いてなお盛ん』というタイプではなく、『やるべきことを全てやり尽くしてしまった』タイプのそれだった。 少なくとも自分よりは若く見えるこの男に、そんな印象を抱くとは。 いや、もしかするとこの男の年齢は……。 「……いかんな。久し振りにシステムを本格起動させたせいで、思考まであの頃のパターンをなぞりつつある」 ユーゼスは首を振ると、あらためてコルベールに向き直る。 コルベールもそれを見て、今は余計な詮索はするまいと正面からユーゼスの視線を受け止めた。 「それで、この現象が君の……その、力によるものだとして、一体何が目的なのだ? こんな形で私と会話をすることに何の意味がある?」 ユーゼスは端的に呟いた。 「お前に選択権を与えに」 「選択権?」 「そうだ。お前の肉体は、このままでは確実に死ぬ」 「……それは……」 まあそうだろうな、とコルベールは思う。 何せさんざん殺しに慣れていた自分が『これは死んだ』と思ったほどなのだから。 しかし『選択権』とは何だろう。 「何を私に選択させるつもりなのかね?」 「簡単なことだ。……このまま通常空間に復帰して死ぬか、それとも新たな命を得て再びの生を歩むか。それを選ばせるために私はこの場を用意した」 「『選ばせる』? なぜそんなことを?」 「火の塔近くでメイジと戦闘した時、お前の助けがなければ私は死んでいたからな。その借りを返しに来たのだ」 「…………なるほど」 律儀と言うか、変に義理堅いと言うか。 コルベールはある種の感心を覚えると同時に、 (今の口振りからすると、彼は生命すら自在に操ることが出来るのか……) このユーゼスという男に対して、軽い畏怖すら抱き始めた。 だが、この男は『自分の力を積極的に使いたくはない』と言い、自分の力を忌避しているようにさえ見える。 まるで『火』を人殺しに使いたくはない、と言っていた自分のように。 ……いや、自分は『火』の平和的な利用方法を模索していたが、ユーゼスは自分の力そのものを嫌っているのか。 この男の過去には、一体何があったのだろう。 「……このような選択をさせずに、問答無用で生き返らせてもよかったのだが……ミス・ミランに刺される直前に杖を捨てたことからして、お前は自分から死を選んだように見えたのでな。……死にたがっている人間を、無理矢理に生き返らせるわけにもいくまい」 「……………」 自殺でもされてはあまりにも意味がない、とユーゼスは言う。 そう、確かに自殺に意味などはない。 ないのだが……。 「……ダングルテールの一件以来、私は研究に打ち込んだ」 「む?」 コルベールはゆっくりと語り始める。 「多くの罪なき人々を焼き払った……その罪の償いをしようと、一人でも多くの人間を幸せにすることこそが私に出来る贖罪だと考えた。そうして私は、誰もが使えるような新しい技術の開発を目指した」 「傲慢だな。……そんなことをしようと死んだ人間は生き返ったりなどしないし、過去が消えるわけでもない」 「その通りだ」 ユーゼスに指摘されたことに動揺することなく、むしろ肯定すらするコルベール。 「どれほど人の役に立とうと考え、それを実行しても……私の大きすぎる罪は決して赦されることは決してない。罪は消えぬ。いつまでも消えぬ。この身が滅んでも、罪は消えぬ。『罪』とは、そう言ったものなのだ」 「……………」 「だから、これは『義務』なのだと。生きて世の人々に尽くすことが私の『義務』であり、死を選ぶことも赦されぬと、私はそう思った。……いや、今でもそう思っている」 「ならば生きることを望むか?」 「―――いいや」 「?」 ユーゼスは首を傾げ、怪訝な顔でコルベールを問い質す。 「……明らかに矛盾しているぞ。『死を選ぶことが赦されない』と言うのに、『生きることを望まない』とはどういうことだ?」 「それは……あのアニエス君だ」 「……………」 「私にとっては、死を選ぶことすら傲慢だが……唯一、私の死を決定することが出来る人間がいる。彼女だ。あの村の唯一の生き残りであるアニエス君だけが……私が焼き尽くした彼らの慰めのために、私を殺す権利を持っているのだ」 「ふむ」 ユーゼスは無感情な目でコルベールを見る。 その内心は呆れているのか、笑っているのか。あるいは全く別の感情を抱いているのか。 表情の動きからそれを窺うことは出来なかったが、やがて小さく息を吐いて言葉を紡いだ。 「……お前がそれで納得すると言うのなら、私としても構わんが」 するとコルベールは、照れくさそうに頭を掻き始める。 「いや……こうして格好のいいことを喋ってはみたが、本当のところは死に場所を探していただけだったのかも知れん」 「そうなのか?」 「ああ。彼女に殺されて何となく肩の荷が下りたと言うか、ホッとしているのも事実だしな」 「……因果の鎖から解き放たれた、か」 少し感慨深げに言うユーゼス。 一方、またいきなり理解の出来ない単語が出て来たのでコルベールはキョトンとした顔になった。 「どういう意味かね?」 「……何、ただの独り言だ。気にする必要はない」 「むう」 そういう言い方をされると、むしろ余計に気になってくる。 もっとも、気になるのはユーゼスの言動だけではなく、素性や能力や正体に関してもそうなのだが。 「まあ、今更惜しい命でもないからなぁ。未練はそれなりにあるし、『火』の新しい使い道のヒントくらいは見つけたかったが、『死に場所』に遭遇してしまってはどうしようもない」 「『往生際が良い』というやつか?」 「いいや、ただ単に見切りをつけるのが早いだけだよ」 と、ここまでユーゼスと会話して、コルベールの中で一つの好奇心が首をもたげてきた。 この短い会話の中で生まれた、数多くの疑問。その中でも最も強いもので、そしてコルベールが『もしかしたら』と思っていることがある。 それは……。 「―――ゴッツォ君、最後に一つだけ聞かせてくれ」 「何だ?」 「君はもしかして……その……、いわゆる『神』なのか?」 「………………『神』だと?」 ユーゼスの目が見開かれる。 予期していない質問をぶつけられたせいで、驚いたのだろうか。 「―――――」 ユーゼスは沈黙して何かを考え込む。 そして十秒ほどそうした後、ためらうような口調でコルベールに回答を告げた。 「……あいにくと人間だ。他人の目にはどう映るか知らんがな……」 「そうか」 それならそれで、別に構わない。 コルベールは疑問の一つが解けたことに充足感を感じていた。 一方そんな様子のコルベールを見て、ユーゼスは少し惜しそうに言う。 「もう少し早くこうして話をしていれば……いや、お前の研究対象が私の主義と真っ向から反するものでなければ、あるいはお前を友と呼べていたかも知れんな」 「そうだな……。色々と心残りはあるが、一番の悔いはそれかも知れない」 分野こそ違うが、何だかんだ言っても同じ研究者同士だ。 たとえ主義や信念が異なるものだとしても、前からもっと意見をぶつけ合わせるなりしていれば、今とは違った関係になっていた可能性は十分にあっただろう。 と、言うか。 「しかし、私の研究内容が君のお気に召していなかったとは初耳だな。そうならそうと言ってくれればよかったものを」 「言う必要性を感じなかったものでね」 「……そういうところは直した方がいいと思うぞ」 「考えておこう」 「考えておくって……君なぁ……」 ……さて、そろそろ語るべきことも無くなってきた。 あとは『もういい』とでも言えば、コルベールの意識はすぐに魔法学院の食堂にある身体へと戻り、次の瞬間には死を迎えるのだろう。 「……………」 「……………」 だがコルベールは何も言わず、ユーゼスもまた沈黙をもって相対する。 体感時間にしてみれば、わずか数秒ほどのこと。 そして。 「さらばだ、ジャン・コルベール……」 「……ああ。君も達者でな、ユーゼス・ゴッツォ」 最後の最後に『ミスタ』も『君』も付けずにフルネームで呼び合って、二人は別れたのだった。 「ぅ……っ、ぐ……」 「…………!」 ズ、とコルベールの胸から剣を引き抜くアニエス。 その身体にはコルベールから流れ出た血がベッタリと付着してしまっているが、それを気にした様子はない。 「―――――」 倒れこむコルベールの身体はアニエスの身体をすべり、床へと崩れ落ちていく。 「っ」 アニエスはうずくまっているような体勢のコルベールを蹴飛ばし、強引に仰向けにさせた。 そしてまた剣を突きつけ、強い口調で問いかける。 「……なぜ、杖を捨てた!? お前は刺される直前、やろうと思えば私を倒せたはずだ!!」 どうしても納得が行かない、と彼女の全身が告げている。 そんなアニエスに対し、コルベールは息も絶え絶えに話しかけた。 「き、君には……私を、殺す……権……利が、ある……」 「何だと!!?」 「わ……私を、ここで、殺すのは……別に、構わない。……だが……、これを最後に、もう……人を殺すのは……、やめて……くれ」 「貴様……何をぬけぬけと!!」 激昂し、もう一度剣を構えてコルベールに突き刺そうとするアニエス。 コルベールはそんな彼女から視線を離さずに喋り続ける。 「……あの時、初めて……罪に、気付いた。……命令に従うのが、正しい……こ……と、だと、思っていた……」 アニエスの憎き仇、そして魔法学院の教師でもある男。 彼は最後の力を振り絞り、何かを訴えかけようとしていた。 「だが……! たとえ、どんな正当な……理由が、……あっても、人を……殺すのは……罪、だ……!」 対するアニエスは、憎悪の表情のまま。 とてもコルベールの言葉が届いているとは思えない。 「だ……、だから……」 しかしコルベールはそれでも喋り続けようとして、 「っ……――――」 そのまま動きを止めた。 「……………」 冷ややかな目でそれを見つめるアニエス。 彼女は目を開けたまま微動だにしなくなったコルベールの肩を突き刺し、更に身体をまた蹴り飛ばしまでしてから一つの結論を下す。 「やった……」 20年越しの仇討ちは、今ここに果たされた。 彼女は人生の宿願を果たしたのだ。 しかし。 「…………終わった、のか」 呆然と呟くその言葉には、不思議と力がこもっていなかった。 (『死に場所』か) ユーゼスはコルベールが息を引き取る瞬間を見守りながら、特殊空間で聞いた彼の言葉を思い出していた。 (私の本当の死に場所は、一体どこなのだろうな……) 人の命を奪うことが罪だと言うのならば、ユーゼスも罪を犯している。 それもコルベールとは比較にならないほどの数をだ。 直接ではないが……自分の行為が原因で都市の10や20は軽く壊滅させてしまったこともあれば、歴史を捻じ曲げたりもしたし(最小限度に抑えるように尽力はしたつもりだが)、あとは組織を乗っ取るために因果律を操作して邪魔者を排除したりもしたか。 しかしその罪と引き換えという訳でもないだろうが、自分は二度ほど死んでいる。 身体の大部分と、本来の顔を失った一度目の死。 イングラムとガイアセイバーズによって打ち倒された、二度目の死。 しかし二度の死を迎えてもなお、自分はこうしてここに生きている。 コルベールの言葉によれば、死んだところで決して罪は消えないし、赦されないらしいが……。 (……まさか私は、永遠に死と生を繰り返すのではないだろうな) ある意味、地獄である。 ……いや、いくら何でもそれはないか。 (『ユーゼス・ゴッツォ』という存在が全ての並行世界から完全に消滅することはないにしても、『この私』の終わりはあるはず……) あるいは、自分は本当に死ぬためにこのハルケギニアという世界に存在しているのかも知れない。 いや、それならそれで別に構わないが、だったら二度目の時に素直に死なせてくれれば良かったものを。 『宇宙の意思』……確かどこかの世界では『アカシック・レコード』とか呼ばれていたモノは、一体『このユーゼス・ゴッツォ』に何をさせたいのやら。 まあ、少なくとも『贖罪』という線はあるまい。 今更そんなことをしたところで、何の意味もないのだから。 (……まったく) 何にせよ、よく分からないことだらけである。 だが……。 (少なくとも、それは今考えることではないか) 自分の存在意義や生存理由など、真面目に考え始めたら一生かかってしまう。 そんなことはそれこそ死に際にでも考えればいい。 「やれやれ……」 溜息をつきつつ、食堂のある本塔から出るユーゼス。 ただでさえ戦闘で疲れているのに、これ以上疲れることを考えたくはない。 取りあえず部屋に戻って、睡眠でも取ろう。 そう思って寮へと足を向けると、 「……む?」 物陰からコソコソとこちらを窺っている人影を発見した。 そろそろ白み始めてきた空のおかげで、その人影の特徴である見事なブロンドやら眼鏡やらが、キラリと光っている。 ……と言うか、顔をほぼ丸ごと壁から出してしまっていては『物陰に潜んでいる』意味がなくなってしまうのだが。 おまけに寒さ対策のためか、寝巻き姿の上にマント(おそらくどこからか持ってきたのだろう)を羽織るという格好をしているため、ヒラヒラしていていて隠密性もへったくれもない。 まさに素人丸出しの隠れ方だった。 「…………何をやっているのだ、お前は」 呆れつつ、顔見知りのその人影に話しかけるユーゼス。 するとその人影はビクッと反応し、おそるおそると言った様子で返事をしてきた。 「だ、だって……あの連中が、まだいるかも知れないでしょ」 「……私がこうやって無防備に外に出た時点で、おおよその察しはつくのではないか?」 「伏兵とかがいる可能性だってあるじゃないの」 「…………その伏兵以外の戦力が全滅しているのでは意味があるまい。仮にいたところで、撤退していると私は見るが」 「そうかしら?」 「そうだろう」 まあ、素人判断ではあるのだが。 ともあれその物陰に潜んでいた人影は、おっかなびっくり姿を現す。 ユーゼスはそんな彼女に内心でほんの僅かに苦笑しつつ、取りあえず不安を払拭させるために声をかけた。 「安心しろ。仮に敵がいたとしても、その時は……」 「その時は?」 「……二人で戦えば何とかなるはずだ」 「………………あのねえ、ユーゼス。そこは『私が守ってやる』とか、そういうセリフを言うべきだと思うんだけど?」 「利用が出来るものは可能な限り利用する、というのが私のスタンスでね」 「……前に『私は戦闘に向いてないから戦闘メンバーから除外する』とか言ってなかったかしら?」 「非常事態だ。仕方があるまい」 サラッと自分を戦力に組み込んだユーゼスに対して、金髪眼鏡の美女はジロリと白い目を向ける。 だがユーゼスは気にした風もなく、 「しかし……意外と臆病だな、エレオノール」 「……慎重と言ってちょうだい」 目の前のエレオノールに対して、そんな指摘をする。 エレオノールは何となくバツが悪そうにそっぽを向くが、ユーゼスは構わずに彼女に話しかけた。 「御主人様は無事か?」 「ええ、ルイズならいつでも学院から逃げられる場所に置いてきたわ。何だかやたらと落ち込んでたって言うか、辛そうだったみたいだけど……」 「あれだけのことがあったのだ、無理もあるまい」 「ただでさえあの年頃は色々と微妙でもあるし……変な影響とかが出なければいいんだけど」 「『あの年頃』か」 精神年齢68歳くらいのユーゼスとしては、10代後半の頃などはもう遠い彼方である。 あまりにも遠すぎて、もはや何も思い出せないほどに。 一方、エレオノールはその言葉を曲解したらしく、ジト~ッとした目をユーゼスに向けていた。 「……何が言いたいのかしら?」 「特に他意はない」 本当に他意はないのだが、納得いかない様子のエレオノールはユーゼスに視線を注ぎ続ける。 すると、不意にその目が『チクチクと刺すようなもの』から『心配そうなもの』へと変わった。 「何だ? 外見的にそれほどおかしい点はないと思うが」 「……いえ、けっこうボロボロよ、あなた」 「む?」 言われてユーゼスが自分の身体や衣服を確認してみると、確かにボロボロだった。 無理もない。 食堂に入る前にはメイジ二人と交戦し、その後にはメンヌヴィルの炎にあぶられ続けていたのだから、特殊加工も魔法もかけられていない普通の白衣がボロボロにならない方がおかしいだろう。 もちろん、そんな普通の白衣の下にある普通の身体にもダメージはあるわけで。 「……そう言えば火傷も各部に出来ているな。当然と言えば当然だが」 「『そう言えば』って、他人事みたいに言うんじゃないわよ! ああもう、顔についたススくらいは拭いておきなさい!」 言うなり、指でユーゼスの右頬のススをぬぐうエレオノール。 「……やっぱりちゃんとした布で拭いた方がいいわね。これだと私の手も汚れるし。それじゃあ、取りあえず……」 そして医務室にでも連れて行くつもりなのだろう、そのままユーゼスの腕を掴むと、 「ところでエレオノール」 不意にユーゼスから声をかけられる。 「何よ? ……まさか『大した火傷でもないから放っておけ』とでも言うんじゃないでしょうね?」 「いや、倒れてもいいだろうか」 「え?」 その言葉の意味を問い質すよりも早く、ユーゼスの身体がエレオノールに向かってフラリと倒れこむ。 エレオノールはその倒れてくる男の腕を掴んでいるので避けるわけにもいかず、わたわたしながらもユーゼスの身体を抱きとめてしまった。 「……………」 「は? え? ちょ、ちょっと……えっ、ええぇ!!?」 たちまち顔を紅潮させて混乱する金髪眼鏡の美女。 だがしどろもどろになりながらも、何とか状況の説明だけは要求する。 「なっ……ななな、なっ、何するのよ、いきなり!? こっ、こういうことは恥ずかしいから、外にいるときじゃなくって部屋の中で……じゃないっ! とにかく、何事よ!!?」 唐突に抱きつかれてドキドキ状態、その上いっぱいいっぱいな様子のエレオノールだったが、抱きついているユーゼスは割と落ちついている様子で質問に答える。 「……先程のやり取りで完全に気が抜けたというか、緊張の糸が切れてな。一気に身体の力が抜けてしまった」 「は、はあ?」 実を言うと、ユーゼスは心身ともにもう限界に近かった。 いくらガンダールヴのルーンで強化されているとは言え、ユーゼスは宇宙刑事のようにコンバットスーツを身にまとっている訳でもなければ、ガンダムファイターのような戦闘用の身体でもない。 火の塔近くでのメイジ二人との戦いと、メンヌヴィルとの戦いとの連戦は『本職が研究者』であるユーゼスにはかなり厳しいものがあったのだ。 特にメンヌヴィルとの戦いは最初から最後までかなりギリギリの展開だったし、その間は精神が張り詰めたまま、体力は消耗しっぱなしだった。 そんな状態でいきなり気が緩んだりしたら、こうなるのも仕方がない。 とは言え。 「……一人であんな危険な相手に向かっていくような無茶をするからよ、まったく」 「その危険な相手に一人で食って掛かっていった、お前にだけは言われたくないセリフだな」 「あ、あの時は何て言うか、反射的にそうしちゃったんだから、仕方がないでしょう!」 「だろうな。私もそうだ」 『倒れこんでいるユーゼスとそれを抱きとめているエレオノール』という構図なので、傍から見ているとこの二人は抱き合っているようにしか見えなかったりする。 もっとも、二人の内の片方にそんな自覚は全くないのだが。 「ん……」 と、ここでエレオノールが軽くよろめいた。 どうやらほぼ脱力しきっているユーゼスの身体が重いようだ。 「……どうでもいいけど……いえ、よくないけど。仮にも男が、いつまでも女の私にしがみついてて情けないとか思わないの?」 「思わん」 「……………」 呆れるエレオノール。 こうまで相手が冷静と言うか、何にも感じていないようだと、ドキドキするのも間が抜けているような気がしてきたらしい。 そして『もうその辺に放り出ちゃおうかしら』などということを本格的に考え始めたあたりで、 「それに意外と悪い気分でもないしな」 「んなっ!!?」 いきなりそんな爆弾が投下された。 たちまちエレオノールの心拍数は跳ね上がり、ドキドキが再加速し始める……が、そのドキドキさせている張本人は涼しい顔。 「どうした、いきなり狼狽などして。何か問題でもあったか?」 「っ、問題だらけよっ!」 「?」 エレオノールは無自覚な彼に腹を立て、ユーゼスはそんな彼女に首を傾げる。 ちなみにアレコレ言い合いつつも、お互いに抱き合っている身体を振りほどこうとはしていない。 「まったく……! 大体ね、もう何度も言ってる気がするけど、あなたはもう少しデリカシーというものを…………って、あれ?」 「―――――」 ユーゼスほどではないにせよ『マトモな恋愛経験』が皆無に等しいエレオノールは、それに気付かないままユーゼスに不平不満をぶつけようとして、そのユーゼスに起きている異変に気付いた。 力の抜けきった身体。 閉じられた瞳。 ゆっくりと繰り返される呼吸。 つまり、ユーゼスは。 「―――――」 「ユーゼス、あなた……」 「―――――」 「…………もしかして、寝てる?」 「―――――」 エレオノールにもたれ掛かりながら、睡眠に突入しているのであった。 まあ、一晩中どこかに(ユーゼスがカトレアの屋敷にいたことをエレオノールは知らない)出かけていて、学院に戻って来たと思ったらいきなり前述のような緊張状態が続き、しかもその緊張の糸が切れれば睡魔に襲われて当然ではある。 「……………ぅぅう」 当然ではあるのだが、エレオノールはどうにも納得がいかない。 「ね、寝るって……。いきなり何の脈絡もなく、寝るって……。いえ、そりゃあ休ませてあげたい気持ちも少しはあるけど……それにしたって、いきなり寝ることはないでしょ……」 細い身体にズッシリとのしかかるユーゼスの重みにまたよろめきながら、ブツブツと文句を呟くエレオノール。 「……………」 「―――――」 改めてユーゼスの顔を覗き込んでみると、何ともまあ無防備な顔で眠りこけていた。 いつも難しい顔をしていたり、斜に構えた態度を取ったりするユーゼスのこういう一面を見るのは、ある意味で貴重なような気がする。 エレオノールはそんなユーゼスを見ていると、何だか胸の奥がチクチクするような、締め付けられるような、どうにも上手く言い表せない気持ちになってきた。 「ぁぅ……」 今更ながら、『自分とユーゼスは抱き合っている』という自覚が芽生えてくる。 少し耳をすませば自分と密着しているユーゼスの呼吸音と、それよりも大きな自分の心音が響いている。 そして頭の中をグルグルと巡るのは、 ―――「あの男に『近付かれる』以上の事はされなかっただろうな?」――― などというユーゼスのセリフである。 とは言え、本人に『そういう自覚』があるのかどうかは定かではなく、その真意は分からない。 「………………もう、馬鹿」 拗ねるような口調でポツリと呟く。 幸か不幸か、そんなエレオノールの呟きはユーゼスの意識に届くことはなく。 また、彼女の唇が彼の右頬に触れたことにも、気付かれることはなかった。 前ページ次ページラスボスだった使い魔