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せく カテゴリ 漫画系 スゴマ。 キャラ マサル花中島 セクシーコマンダー。セクシーコマンド部長。 フーミン 御米粒というコードネームがる。 マチャヒコ 元柔道部部長。マサルに破壊され部員辞。廃部危機なるも。 マサルにセクシーコマンドー部改称されしまい、今部員。 キャシャリン 骨と皮、僅かな筋肉で生きてる。 榊原 下っ端料理人 榊原校長。 スーザン 榊原校長な転身。 アフロ メガネ。 トレパン諭 トレーナー愛さ。 ボナザンバ ロボモンキ。 メソ 中身がドロ。 モェ スゴく美味しい。特にモェナマアシ 主題歌 ロマンス♪ 愛に気づいてください 朴が抱きしめてあげる 窓に映る切なさは 生まれ変わるメロディ 壊れてしまった バランスが崩れた 手探り探す 指先が震えて 目を閉じてごらん どこまでもいこう 鮮やかに奪われた キミが 離れない。 愛に気づいてください 朴が抱きしめてあげる 窓に映る切なさは 生まれ変わるメロディ
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ハルヒ先輩6から 「随分、成績も上がってきたな。これだと外の学校を受験しても十分勝算があると思うが」 「外の大学なんか行かないわ」 「……この進路志望調査票なんだが、第1志望から第3志望まで『ハルヒの嫁』っていうのは?」 「あ、それ、あたしが書いたの」 「……涼宮、なんでお前がここにいるんだ? なんで一昨年と同じ会話を、おれとお前はやってるんだ?」 「だって、これ、キョンの三者面談でしょ? あたしの時と事情は同じじゃないの」 「三者ってのは、本人と親と教師のことだ。おまえは何だ?」 「キョンの嫁よ。英語で言えばベター・ハーフよ。こいつの成績に関しては、あたしも責任があるし。あと、これ、キョンのお母さんからの委任状。ちゃんと話はつけてあるわ」 「あの、先生。ハルヒにはあとでよく言っておきますんで。とりあえず内部進学を希望するということで」 「すまんな、キョン」 「なによ、あたしが悪者みたいじゃないの! キョン、別によその大学受けてもいいわよ。あたしも同じとこ受けなおすから。東大でもハーバードでも好きに志望しなさい!」 「誰もおまえを悪者だなんて言ってないし、思ってない。俺の成績がここまで伸びたのは、ハルヒのおかげだし、おれのこと心配して今日も付いて来てくれたんだろ? それより、おまえの方こそ、どこか行きたい大学とか、やりたいことはなかったのか? なんか、おれと一緒にいるばっかりに、おまえを足止めしたんじゃないかって、思うことがあるんだ。おまえはいつも言下に否定するけどな」 「このお、バカキョン! あたしはあんたのために、なにひとつ我慢してもいなけりゃ、諦めてもいないわ! 自分にとって一番大事なことを、素直に優先してきて、そうやって今があるの! あんたといるのもそう! あんたの成績が上がるように、いろいろやったのもそう! この先、何かやりたいことを思いついたら、あたしはきっと、万難なぎ倒して、やりたいことをやるわ。でも、あたしはあんたとずっと一緒にいたいから、その時はキョン、あんたを説得してでも泣き落としてでも、引きずって行くから、覚悟しときなさい!」 「わかった。楽しみにしとく」 「楽しみじゃない、覚悟よ、覚悟」 「だって、どこに行くにしたって、ハルヒ、おまえといっしょなんだろ」 「キョン……。って、これ以上、あたしを萌えさせてどうするつもり!?」 「あー、すまんが二人に行く末が決まったところで、次の奴と交替してくれないか」 「あ、すいません。行くぞ、ハルヒ」 「まちなさい、キョン。それじゃ話が逆でしょ!」 「なに、ぼーっとしてんの、キョン?」 「ああ。ただの考え事だ」 「一人でうじうじ悩むんじゃなくて、あたしにどーんとぶつけて来なさい!」 「いや、悩み事じゃないんだけどな。三者面談って進路のこと話すだろ?」 「やっぱり、あたしが行ったの、よくなかった?」 「そうじゃなくて、決めてる奴はさ、医者になりたいから医学部へ、弁護士になりたいから法学部へ、とかそういう話をするんだろうな、ってちょっと考えてた」 「ふーん?」 「進路と未来というか将来が、直結してる奴もいるってことだ。おれの場合、そういうの、ないな、と思ってな」 「ちょっと、あんた、さっきと話が違うわよ。あんたの進路と未来も直結してるわよ」 「そうだな。進路先でも将来でも『ハルヒと居る』、それは変わらない。でも、たとえば、どんな仕事して家族を食べさせていくんだろうとか、おれにはまだ、そういうの全然ないな、と思ったんだ」 「そんなの高2で決まってる奴の方が少ないわよ」 「進路はとりあえず、将来は未定、ってのも悪くないけど、おれの場合、確定してる部分が人よりでかいから、その次の話にどうしても頭が進んじまうんだ。ハルヒとの暮らしをどうやって支えていこうかとか、生活じみてるが、そういうのを。悩んでる訳じゃないから心配はするな。でも、ちゃんと考えなきゃいけないって思ってる」 「……キョン」 「いや、ハルヒ、頭は撫でなくてていい。むしろ撫でないでくれ」 「大丈夫。禿げても、あたしの愛は変わんないわ」 「そっちかよ! いや、こんな髪質だけど、禿げるとは限らないだろ!」 「……意外と気にしてたのね。まあ、あたしも考えてないように見えるだろうけど、実はいろいろ考えてるわ。ううん、ついつい考えちゃうと言った方が正確ね」 「そうなのか?」 「多分、あんたと出会ったからよ、キョン。あたしだけだったら、今でもあたしには『現在』しかなかったと思うわ。その時のあたしも嫌いじゃないけどね」 「ハルヒはどんな風に考えたりするんだ?」 「あんたと別れることになったら、とか、あんたがいなくなっちゃったら、とか」 「おい、ちょっと待て、ハルヒ」 「そういう夢を続けて見たことがあってね。大長編だったわ。あたしはあんたを、あんたとのいろんなことも、忘れようとして、長い長い旅をするの。でも忘れられなくて、なんであの時ちゃんと『好き』って言わなかったんだろう、とか、なんで素直に『行かないで』って言わなかったんだろう、とか、延々と後悔するの。……夢よ、夢の話よ。目が覚めて、夢だと気付いて、あーよかったと思ったわ。寝ながらボロボロ泣いてたから、目なんか真っ赤ね。こんな顔、あんたに見せたくないけど、そんなことであんたに会わないなんて我慢ならないから、徹夜したとか嘘ついたりしたわね」 「覚えてるぞ。なんだよ、そう言う時は、胸ん中にためたりせず話せって、お互いに言ってるだろ」 「さすがに、『夢の中で素直になれなくて、あんたと別れて泣いた』とは言いにくかったのよ。付き合い出してすぐだったし。あんたをあたしの好き勝手に引っ張り回してるけど、あんたはやさしいんでぶつぶつ言いながらも付き合ってくれてるけど、この先どうなるかわからないって、きっと内心不安だったんだと思うわ。悪夢はそういう弱みにつけ込んで来るのよ」 「確かに、そういうものかもしれないけどな」 「でもね、悪夢に泣かされっぱなしにはさせなかったわよ、キョン! 確かにあたしは不安だったわ。でもね、この不安は、あたしがキョンに『好きだ』と告白したから、今一緒にいてすごく幸せで充実しているから、はじめて感じる不安よ。悪夢が見せるような『言えなかった』『素直になれなかった』っていう後悔とは大違いよ! その後悔の前に、夢の中のバカなあたしは『告白して断られたら』とか『素直になってもダメかも』っていう不安を抱えてたんでしょうね。だから、その娘は、かつてのあたしに似てるけど、今のあたしとは全然ちがう。あたしはもう、ちがう道を歩いてるわ。夢のあたしが立ち止まった崖っぷちを、あたしは踏み切ってジャンプして渡って来たの! 悪夢もお門違いもいいところよ!」 「ハルヒ……」 「今はね! あんたと一緒に明日はどうしよう、明後日は、1年後は、10年後は、とどんどん考えが膨らんでいくの。それに、昨日はキョンとこんなことしたわね、一昨日はこれ、1ヶ月前は、1年前は……ってね。過去や未来の存在意義がようやくにしてわかってきた感じよ! 加えて、今現在も、あたし史上最高に充実しているわ……って、キョン、何、笑ってんのよ?」 「いや、ハルヒにはかなわないな、って思ってるだけだ」 「その割には、お腹抱えて笑ってるわよ、キョン!」 ハルヒ先輩8へ
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「ふたば系ゆっくりいじめ 408 お前もポールさんみたいにしてやろうか!?/コメントログ」 この作品に米がついてないだと!よろしいならばコメントだ オモシロカタヨー。こーいうのりのいいのはすきだよー。 -- 2010-09-12 22 58 44 お兄さんの語りが良いねぇ。思わずどんどん読み進めちゃったよ。 今度は全員分最後まで書いて欲しいよー -- 2010-10-09 14 43 39 >ショボイ賽銭箱の中にしょぼくれたおっさんが印刷された紙幣を捻じ込んでやった いいやつじゃねえかwww -- 2010-10-13 12 48 28 チャンピオン大好きっ子というのは分かった まさかの艶天大聖様登場で+100点だな -- 2010-10-25 08 18 49 >ショボイ賽銭箱の中にしょぼくれたおっさんが印刷された紙幣を捻じ込んでやった お兄さん善良れいむ愛しすぎだろw ゲスもアホで笑った -- 2010-10-25 14 26 51 これ前回の世にも恐ろしい虐待を受けたれみりゃのエサになった饅頭じゃね? -- 2010-11-26 19 23 53 『自分のことを美しいと思っている女は醜い』みたいなことを艶天大聖さまが ここで悟空道ネタを見るとは思わなかったw -- 2011-07-10 23 24 55 お兄さんのキャラが良すぎるww -- 2011-07-19 21 49 31 体育の授業で南斗聖拳教えるなよww -- 2011-08-02 07 43 44 ブラック「ゆっくりが出たのはゴルゴムの仕業だ!!」 RX「いや!クライシスだ!!」 カイザ「これも全て乾巧ってやつの(ry -- 2014-08-01 11 36 30 このひと文才だ -- 2019-01-13 23 35 34
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キョン 気のせいか、妙に本格的だな。 ハルヒ じゃあ、いくわよ。古泉君、スモークと照明お願い。 古泉 おまかせください、閣下。 ハルヒ さあ、よみがえれ、アイアン・ライター! キョン って長門かよ! 長門 調査結果を報告する。許可を。 キョン あ、ああ。やっちまえ。 長門 現在、日本国で流通するうち、発行部数が上位32000作品のあらすじについて分析を行い、よく読まれる物語に要求される傾向を抽出した。 キョン おう。すごいな。 長門 ストーリーに求められる得性の共通因子を、25文字以内の現代日本語で述べると次の通りとなる。すなわち「予想を裏切りつつも、期待を満たすストーリー」。 キョン なんだって?もう一度、言ってくれ。 長門 予想を裏切りつつも、期待を満たすストーリー。 キョン わかるような気もするが、もう少し長くていいから、説明してくれ。 長門 予想どおりすぎると読者は退屈する。この先どうなるかわからないからこそ、読者は続きを読もうとする。 キョン なるほど。 長門 しかしあまりに外れると、読者はついていけなくなる。オリジナリティを求めて新奇さに走るあまり、読者に反発された例は多い。人気の出たストーリーは、大筋では読者がすでに知っている定番どおりのものが多い。 キョン 裏切りつつ、裏切らないという訳か。バランスが難しいな。 長門 もっとも多い形態は、結末は定番だが、設定や結末に至るプロセスに工夫を施したもの。たとえば読者に「どうせハッピーエンドだろうが、この設定(あるいはこんな展開)でどうやってハッピーエンドにこぎつこけるのか」と思わせて読者を引きつける。 キョン なるほどな。 長門 がんばって。 キョン お、おう。 ハルヒ じゃあ、次へ行くわよ。第二の鉄人よ、出てこいや! キョン って、鶴屋さん。 鶴屋 あたしの担当はキャラクターづくりと描写のイロハにょろよ。まあ、どろ船に乗ったつもりで、安心するっさ。 キョン とても気が抜けません。 鶴屋 描写はめがっさ大事にょろよ。この話みたいに、セリフばかりで描写がないと、読者が作品世界に入って行けないっさ。 キョン そんなもんですか。 鶴屋 マンガや映画は絵や映像があるにょろ。そのシーンにぴったりの映像を撮るために、ある監督は「あの太陽をのけろ」と言ったっさ。 キョン そんな無茶な。 鶴屋 無茶しても撮りたい絵を撮るのが監督にょろよ。同じ台本、同じセリフ、同じストーリーでも、どんな絵かで全然ちがうものになるからねえ。小説には言葉しかないから、どんな風に描写するかは、マンガや映画でどんな絵で表現するかと同じくらい大切なんだよ、うん。 キョン なんか難しそうですね。 鶴屋 セリフは書けるけど、描写が苦手という人は少なくないっさ。そこで!今日は特別に鶴屋流描写の極意を授けるにょろよ。これさえあれば、描写で困らないこと、間違いなし! キョン それはすごい。 鶴屋 モデルを見つけて、その子のことを常に頭に思い描くにょろ。セリフは心に残りやすいから、むしろその子のしぐさや立ち振るまい、その子がいつもいる場所などなど、具体的に思いだすっさ! そのためには普段からよく観察するのが一番! だからモデルにするのは身近な人がいいかもねえ。普段、見過ごしているものを見るってことだね、キョン君。見ていないものは書けない、ボクシングにラッキーパンチはないということにょろよ! キョン はあ。 鶴屋 じゃあ、キョン君、がんばるにょろ〜。 キョン あ、はい、がんばります。 ハルヒ 泣いても笑っても次が最後よ。第三の鉄人よ、出でませい! みくる は、は、ふぁい! キョン 最後は朝比奈さんですか。 みくる わ、わたしは、せ、セリフについて教えますっ! ハルヒ みくるちゃん、かみかみよ。古泉君、スモークで見えないから、カンペはもっと近くに。 古泉 はい、閣下。 キョン あー、朝比奈さん、無理せずに、犬にかまれたとでも思って、そこそこに頑張ってください。 みくる はいっ、一生懸命がんばりますので、応援してくださいっ! 谷口 エム・アイ・ケー・ユー・アール・ユー、み・く・る!! キョン 谷口、こんなところで何やってんだ? 谷口 にぎやかしだ。俺は俺で満ち足りてるから、気にするな。 キョン そうか。 みくる セリフはとっても大事ですっ! キョン おわっ。 みくる どんなに思ってくれていても、きちんと言葉にして欲しいんですっ!! キョン あの、小説の話ですよね? みくる そうですっ!間違いありませんっ! キョン そうですか。 みくる 普段なら絶対に言わないようなセリフも、お話の中ではゆるされるのです! 谷口 エル・オー・ヴィ・イー、ラブリー、み・く・る!! みくる キョン君、あの、がんばってください。気持ちは必ず伝わりますっ! キョン はあ。とにかく、がんばってみます。 ハルヒ というわけで豪華講師陣によるレクチャーはここまでよ! キョン ある意味豪華という気もするが、いつものメンバーとも言えるぞ。 ハルヒ さて、あとは実践あるのみね。 と言ってハルヒは、ズンという効果音とともに、俺の視界をふさぐように前に立った。 ハルヒ 今日のレクチャーは、ほとんどあんたのために開いてあげたようなもんなんだからね。さあ、キョン、前回のリベンジよ! 全校生徒に砂という砂を吐かせて、校庭を砂丘に変えるような恋愛小説を書きなさい! キョン 無理だ。 ハルヒ こら、キョン! どこ見てんのよ!? キョン なぜ俺の前に立ちふさがる? ハルヒ 鶴屋さんが身近な人物を観察しろって言ったでしょ! 古泉 さすが涼宮さんですね。彼がどれだけ顔の向きを変えても、すぐさまそれに反応しておられる。 長門 シュートコースをふさぐ熟達したディフェンダーの動き。 みくる 涼宮さん、ガンバです! 鶴屋 おやおや、今日はブラックみくるがオチじゃないのかい? 谷口 お、俺には何も期待するなあ!「ていうか、お前らさっさと結婚しろぉ!!」じゃ駄目? 長門 駄目。
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今俺は病院のベッドの上で点滴を受けている。 何のことはない。 ちょっとしたストレス性のなんとかかんとかで、胃の一部が溶けただけだ。 何が原因かと言えば、まぁ、色々原因は思い当たりすぎて何とも言えない。 クラスでの俺の扱いが、色々な事件の末に妙な風になっていること。 隠していた秘蔵AVの配置がズレていたこと。 妹に、知らなくて良い余計な予備知識が増えていたこと。 後は、来年に控えた大学進学に関してが少々重荷だったことくらいだろうか。 そんなこんなで、ともかく今俺は病室で安静にしたいわけだ。 「おい、ハルヒ」 「なによ」 「俺は今から横になって、ゆーっくり休みたいんだ」 「あらそう」 「だから、いいかげん俺のベッドの横でくつろぐのは止めてくれ。胃に悪い」 だが、この女……涼宮ハルヒはそんな俺を一向に構う様子もなく、 来て早々「倒れた団員を気遣うのは団長の務めよ!」と言ったきり、横に居座り続けて、 お見舞いの品を勝手に食ったり、俺が休んでいた間のSOS団での事件を勝手に報告していたりする。 看病というのか病人をオモチャにしにきたのか、ハッキリ言って区別はできない。 「なによ。せっかく人がお見舞いしに来ているんだから、もっと丁寧に扱いなさいよ。 だいたいちょっとしたストレスで胃に穴が空くなんて、軟弱過ぎるの! そんなんじゃあ現代社会で生きてけないわよ!」 ベッドの横の椅子でふんぞり返るハルヒ。 こいつの小言を聞いていると、冗談抜きで胃がキリキリと痛む。 なまじ頭だけは良いから、妙に重々しいことを言ってきて精神衛生上よろしくない。 「これからは、社会に出ても恥ずかしくないくらいSOS団総出でビッシビシしごいてあげるわ! 覚悟して……」 「やめろ」 思わず、吐き捨てるような口調になる。 「………誰のせいでこうなったと思ってるんだ……」 「なによ。あたしのせいだって言うの?」 「あ………その、いや…………」 これは、明らかに俺の失言だった。 無論この胃潰瘍はハルヒのせいではない。 あいつらとの活動に、俺が負荷を感じたことがないと言えば嘘になるが、 まさか胃に穴が空くようなレベルじゃあない。 「そんなことは全然、まったくない……が…………」 俺の言葉は尻すぼみになった。 ハルヒが下から睨め付けるように俺を見ていたからだ。 ある意味、ヘビに睨まれたカエルの気分……というのがこの心境を表すのに適している。 「あたし、帰る」 「ちょ、ハルヒ! 待て! 待ってててて痛てててて………ッ」 急にかかったストレスで、俺の胃は悲鳴を上げた。 ハルヒはそんな俺を振り返ることもなく、椅子を蹴って立ち上がると、 一目散に病室から出て行ってしまった。 無論、胃痛で動けない俺は、その後ろ姿を見送ることしかできなかったわけだ。 思えば、これがあのドタバタした1日の伏線になっていたわけなのだな。 後々から考えてみれば。 ◆◆間◆◆ あれから一週間ほどして、俺は学校に復帰した。 胃に空いた穴もほとんど回復し、長門、朝比奈さん、古泉のお見舞いのお陰もあって、フィジカルもメンタルも絶好調となったからだ。 しかし問題は一つ。 あれ以来、俺は涼宮ハルヒとは会っていないし、一秒たりとも会話をしていない。 「よ、よう」 「………………」 復学早々朝一番の挨拶にも、ハルヒは反応してこなかった。 「まだ怒ってるのか?」 「………………」 返事をしないのも予想の内だ。 今までのハルヒの行動を念頭に置いて考えると、一度キッチリ頭を下げておけば、 どんなにつむじの曲がったハルヒでも、帰りにSOS団の部室に行く頃には機嫌を直してくれると予想はついている。 俺は席に着くと、早速机に手を突いてハルヒの顔を真っ直ぐに見た。 「すまなかった。あの件については俺も」 「いいの。謝らないで」 「悪……ん?」 言葉を途中で切られて、俺はかなり怪訝な顔をしていたと思う。 「な、なんだって?」 「謝らなくていいの。気にしないで」 この時の俺はかなり動転した顔をしていたと思う。 あの涼宮ハルヒともあろう者が、相手に謝罪もさせずに物事を許したことがあったか? いやない(反語)。 「一体どんな風の吹き回しだ。俺はちゃんとこうやって謝罪を」 「いいのよ。それより聞いてくれるかしら?」 涼宮ハルヒが大人しい。声を荒げたり茶化したりすることなく、 むしろ冷静に俺に語りかけてくる。あまりに……そう、あまりに不気味だ。 以前どこかで巻き起こった猛烈な勢いの台風が、町を丸々ぶっ潰しておきながら俺の家だけを無事に残しておく時くらいに有り得ない状況である。 視線を時折外に向かわせたり、教室に戻したりと挙動不審気味なのが尚更におかしさを煽る。 「な、なんだよ」 「………何でも言うこと聞いてあげる」 「は?」 「あたしが、何でも言うこと聞いてあげる」 何の冗談だ、と笑い飛ばそうとした。 笑い飛ばそうとしたのだが、ハルヒの目は本気だった。 茶化すには余りにも真っ直ぐにこっちを見ていたのだ。 「…………ど、どういうことだ?」 「ッ!」 ガタン! と椅子を蹴って立ち上がると、ハルヒはドタバタと駆けながら教室を出て行ってしまった。 「おい、待てハルヒ!」 俺が声を上げたことで、教室中の視線が俺に向いた。 俺は気まずい思いをしながら、視線から逃れるように席に戻るしかなかった。 「何でも言うことを聞くだと………どういうことだ?」 ◆◆間◆◆ ハルヒはその後、1限から5限までの授業を丸々ボイコットした。 鞄を机に置きっぱなしだったから部室にでもいるのかと思ったが、 ガチャッ 「…………」 「なんだ。長門しかいないのか」 放課後部室に入ってみれば、居るのは定位置で読書にふける長門の姿だけだった。 ハルヒどころか、我らがメイドの天使様であらせられる朝比奈さんも、どうでもいいが古泉もいない。 「どうやら、ハルヒは完全にフケちまったみたいだな。何か知らないか?」 「知らない」 「そうか」 長門の回答は簡潔だった。恐らく全く心当たりがないのだろう。 それなら仕方がない、とばかりに俺はオセロを引っ張り出して一人オセロで暇を潰すことにする。 ハルヒが部室にないとなれば、これ以上探そうにも探しようがない。 となれば、いつも通り部室にいてハルヒが来るのを待った方が得策というわけだ。 そして、暇を潰すにも、よっぽどのことがなければ長門の読書を邪魔しないという暗黙の了解がある。 お茶も、朝比奈さんが来てから淹れて貰った方が美味しい気がするしな。 取り敢えず、まずは白と黒の駒を盤の上に並べて、さっそくオセロを……。 「……伝えることがある」 「うぉ!?」 俺はびっくりして手に持っていた駒を取り落とした。 いつの間にか、読書を止めた長門が右隣に立っていたのだ。 しかも顔の位置が近いぞ。 「なんだ。驚かしてまで伝える内容なのか」 「そう」 「どんな内容なんだ」 「あなたの言うことを、なんでも聞く」 「………なんだと?」 「あなたの言うことを、なんでも聞く」 聞き覚えのあるセリフだ。 「長門、それはハルヒに何か吹き込まれたんだな」 「肯定する。涼宮ハルヒが一限開始前に通達してきた」 「『俺の言うことを何でも聞くように』……てか?」 「そう」 ハァ、と思わず溜息が漏れた。 長門を巻き込んで、あいつは一体なにがしたいんだ。 あいつの思いつきは毎度毎度突拍子もないが、今回も突拍子がなさすぎてわけがわからん。 「気にせんでもいいぞ。どうせハルヒの戯れ言だ」 「そうはいかない」 「ん?……そうなのか?」 「そう」 長門が更に一歩前に出てきた。 互いの顔が数センチという近さで、これはちょっと近すぎる。 思わず目を逸らしてしまう。 「な、なんだ。そんなの本気にする必要はないんだぞ。だいたいいつもの気まぐれじゃないか。 てきとうにやって話を流しちまえばいいんだよ。そんなにいちいち真面目くさってやってたら大変だ」 そこまで一気に喋って、チラ、と長門の方へ視線を一瞬戻したが、 長門の顔は依然として超至近距離にある。 「だいたいだな、俺が言うことを何でも聞くって言ったら……例えば、俺がココでキスをしろなんて言ったら……」 「キスを実行する」 俺が視線を戻した時、既に、長門との距離はほとんどゼロだった。 ふっ、とお互いの息がかかり、そのまま長門のくちびるに俺のくちびるが触れ……そして、すぐに離れた。 「終了する」 ほんの1秒未満だったが……これは、確実に………その………。 「な、長門?」 「問題ない。わたしは命令を実行しただけ」 長門はいつもの定位置まで戻ると、鞄に本を仕舞い、それを持ってドアの所まで行った。 「長門……もう、帰るのか?」 「…………………」 長門は答えず、そのままドアを開けて廊下の方へ出て行ってしまった。 終始無言のままの長門だったが、その無表情には微かに別の表情があった。 長門の表情を見分けるのには、俺にも一家言ある。 あれは………確かに、少しだけ、長門の顔は赤かった。 ドタン バタバタバタバタッ 遠くで誰かが階段から落ちたらしい音が聞こえる。 程なく、我らが天使朝比奈さんがやった来たが、彼女によると、 「いきなり長門さんが階段から滑り落ちてきて、びっくりしちゃいました……。 あんなに慌てた長門さんを見るのは初めてですよ。 顔だけはずっと冷静な顔だったのが、ちょっと面白かった……なんて言ったら失礼ですけど」 だそうである。 ハルヒのヤツ、長門に無駄にエラーを蓄積させるとは、まったくけしからんヤツである。 本当にそう思う。 キスできてラッキーとか、そんなことは全く思わないわけではないが、ともかくけしからんヤツである。 ◆◆間◆◆ 朝比奈さんが来て、つつがなく着替え終わった後、 俺は、定番のメイド服に身を包んだ天使の淹れたお茶を美味しく頂戴していた。 今日のお茶はナントカカントカというお茶で、あつ〜い温度で作る渋〜いヤツなのだそうだが、 俺には彼女が淹れてくれるというだけで全てが甘露なので、ともかくおいしく頂戴するわけだ。 「いや〜、まいどまいどすみません」 「いいんですよ。これもオシゴトですから」 別段、必ずSOS団に従事しなくてはならないわけでもないのに、それに全力を注ぐ彼女のなんと健気なことか! 俺は感涙を禁じ得ず、ついでにお茶をもう一杯所望してしまうのである。 「そう言えば、またハルヒが妙なことを思いついたらしいですね。 朝比奈さんは何か聞いていませんか?」 「あ、朝ホームルームが終わった後で聞きました。 その……キョンくんの言うことを、必ず聞くようにって言われてます」 やっぱりか。 「いったいどんなつもりなんでしょうね。 さっきも長門が……その……よくわからないことを言っていて、びっくりしましたよ」 先程のことを思い出し、俺が渋い顔をしていた時、 バァン! と勢い良くドアが開いた。 「やほー! みんなげんきにょろ?」 ドアから飛び込んで来た、このハルヒ並のハイテンションなお嬢さんは、何を隠そう鶴屋さんだ。 SOS団の準団員にして常識派の筆頭。そして古泉の組織のパトロンの家系のお嬢様という、 肩書きでも中身でもテンションでも、全てにハイの付く朝比奈さんの同級生だ。 「どうしたんです? 朝比奈さんならそこに……」 「いやいや。今日はみくるに用事じゃなくて、キョンくんの方に用事があるかなっ」 「お、俺ですか?」 鶴屋さんと言えば朝比奈さん。 そういう図式が頭の中でできていた俺には、それだけで十分不審な空気を感じ取ってしまう。 「いったい、どんな御用です?」 「今日は、キョンくんの言うことをなんでもきいちゃうよっ。ハルにゃんとの約束だからねっ」 ビンゴだ。 「またそれですか。どんなことでも、って言われても困りますよ」 「どうしてかなっ?」 「俺だって心身ともに正常な青少年です。そういう所を配慮していただかないと……」 話半ばで、俺の手は鶴屋さんにガシッと掴まれた。 「つ、鶴屋さん?」 「つまり、キョンくんがしたいのはこういうことにょろ〜?」 鶴屋さんが手を引っ張り、そのまま朝比奈さんの……その、胸部に俺の手を押し当てた。 「ふぇ、ふぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?」 「ちょ、つ、つ、鶴屋さんこれは!?」 「ふっふっふっ……めがっさ柔らかいにょろ?」 三人の声が交錯する。 その間、俺の右腕は……その……たっぷりとした重量を手の平に感じていた。 柔らかさはマシュマロ、固さはゴム鞠、そんな二律背反が混在した感触だ。 コンピ研の部長が以前この状況になったことがあったが、これは確かに万死に値する価値がある。 「やや、やめてください鶴屋さん!」 俺はそう叫んだ。さすがの俺もずっとそうしているわけにはいかない。 鶴屋さんの手を振り払い、天使のバストから無理矢理手の平を引き剥がす。 「何のつもりですか! いくらハルヒからの命令だって言っても、これはひどすぎます! 朝比奈さんだって、ほら、何か言ってやってくださいよ!」 俺が憤慨しながら声を上げると、 「でも……涼宮さんの命令だから……」 「しかたないかなっ。これはこれで面白いしね!」 と頬を赤らめたり、ケラケラと笑っていたりする。 ダメだ。真意が読めん。 「今、キョンくんがして欲しいというなら、あたしで良ければキッスくらいしてあげるよん?」 「待って下さい。俺はキスをして欲しいとも身体を触りたいとも思っていません」 「おりょ。キョンくんはお堅いな〜」 「お堅いお堅くないじゃないんです。変だと思いませんか? そんな命令?」 思わず二人に対して声を張り上げてしまう。 この時ばかりは、俺もちょっとばかり腹が立っていたのだ。 「それは……涼宮さんがキョンくんのことを思って、のことですよ」 「どういうことですか、朝比奈さん?」 「だって、キョンくんが倒れたのはストレス性の胃潰瘍だったという話で、 涼宮さんも、それでとっても悩んでいたみたいでしたし……」 「あの時のハルにゃんは、長いこと悩んでいたからね〜。それでみんなで人肌脱ごう、ということになったのさっ」 つまり、これは俺にストレスが溜まらないように……という対処ということなのか。 逆に気をつかってストレスが溜まっている気がしてならないがな。 「だ、か、ら。遠慮しちゃダメにょろ〜。 あたしので良ければ、今ならめがっさ格安で! ちょっとだけ体験させてあげてもいいかなっ」 鶴屋さんが俺の手を取って、そっと胸元に押しつけてきた。 朝比奈さんとは違って、こう、良く締まった身体の上に乗ったソレのアレな感触がジンワリと伝わってくる。 「だ……」 「だ? 何にょろ?」 「ダメです!!」 俺は乱暴に手を振り払った。 「あららら、嫌われちゃったかな?」 「そういうんじゃありません! 俺は……その……」 上級生二人が、俺の次の言葉を微笑をしながら待っている。 「す、すみません! ちょっと失礼します!」 顔を真っ赤にした俺は、全力で駆け出してぶち当たるようにドアを開けると、 廊下を駆け抜け、裏庭の方へと走り込んで行った。 ◆◆間◆◆ 「はぁ………はぁ………」 普段しない運動をしたものだから、肺がぜいぜい言っている。 ちょうど良いところに裏庭用のイスとテーブルが設置してあったので、そこにどっかりと腰を据えた。 なんだ。この状況はいったいどこのエロゲーだ。 いや、俺自身全くエロゲーをやったことがないわけではないので、思い当たるタイトルはいくつかあるが。 「まったく……ハルヒのヤツも変なことばっかり、考えやがって……」 「いや、いいんじゃないですかね。あながち間違った策でもないと思いますよ」 独り言のつもりだったのだが、背後から返答があった。 「どうです。そこのコーヒーですが一杯飲みませんか?」 紙コップを二つ持ってきたのは、いつものうさんくさい笑顔を貼り付けた古泉だった。 俺は無言でカップを受け取って、一口グイと煽る。 「部室では大変だったみたいですね」 「……見てたのか」 「いいえ。しかし、あなたの声は裏庭にも聞こえましたからね。大体予想はつきます」 冷たいコーヒーをもう一口あおり、火照った身体をクールダウンさせていく。 「ハルヒの思いつきも、ここまでくるとちょっとばかり迷惑だな。 さっきお前は間違った策じゃないとか言っていたが、本当にそう思うのか?」 「思いますね」 「何故だ」 「そうですね……簡単な話ですよ」 両手を方の高さに上げて「やれやれ」のジェスチャーをした古泉が話を続ける。 「あなたは今回、潜在的に受けていたストレスによって胃潰瘍になったわけです。 それを完全な形で回復させるには、あなたが何に潜在的ストレスを感じていたのかを特定し、 それが二度とあなたにストレスとならないようにしなければなりません。 専門家でもない我々は、怪しいと思われる可能性を、一つ一つ潰していかねばならないわけですよ」 「………なるほど」 一応、筋は通っているように思える。 「で、その対策の一つが『何でも言うことを聞く』なわけか」 「そうです。あなたは基本的に涼宮さんに行動を制約されていますからね。 一度、あらゆる制約からあなたを開放してみよう、というのが今の涼宮さんの考えだと思われます」 ふむと唸って俺はコーヒーをもう一口飲んだ。 「古泉。お前はハルヒに何か言われたのか?」 「えぇ。『決してあなたには逆らわないように』と申し使っていますよ」 「やっぱりか。まぁ、お前なら特に気兼ねもないからその点は安心だな」 「そうでもありませんよ?」 その時、俺は古泉の目が、普段のニヤけた目とは違う形をしていたのを見ていた。 何か……アマゾンや熱帯雨林の特集をやる動物番組で見たことのある、エサを目の前にした肉食動物の様な目をしている。 「ど、どういうことだ古泉」 「あなたが僕に対して、無意識下でストレスを感じていないとは言えません。 それを確かめるだけです」 明かにおかしな雰囲気を感じ、俺は即座に立ち上がろうとしたが……立てない。 何故か足に力が入らない……なんだこれは? 「古泉……いったいこれは……」 「組織の方から支給された物でして。依存性はありませんし副作用もありません。 ちょっとの間身体に力が入らなくなるだけです」 古泉が一口も口を付けなかったカップを置いて、俺の目前に移動してくる。 「可能性は全て潰しておかねばなりません。 例えば、あなたがわたしに性的な興奮を潜在的に感じていたという可能性も。 これは致し方ないことなのですよ。涼宮さんのため、と思って少々ガマンして頂きましょう」 あのニヤニヤした顔が俺の、目と鼻の先にある。 ヤツの鼻息が俺の顔にかかってきてこそばゆい。 待て。それは明らかに近すぎる距離じゃあないか。 「まさか……古泉、お前まさか………」 「大丈夫。優しくするから身を任せてください、キョンたん」 キモイ! あの古泉がキョンたんなどと言ってくる、この状況が気持ち悪い! それに何だ、何故俺のネクタイをゆるめてシャツの中に手を入れてくるんだ。 やめろそこは違う断じてそんな所にストレスは感じていないズボンの中に手を入れるなちょアッー! 「アナルだけは! アナルだけは!」 思わずそう言って俺は泣いた。 童貞だけど処女じゃない。 そんなアンビバレンツなキャラクターをこれから一生背負っていく自信は、俺にはない。 「やめろ……やめてくれ……」 「そんなに嫌がると燃えちゃいますね。可愛いですよキョンたん」 「ひぃぃぃぃ………誰か………誰か!」 その瞬間、ゲ泉の手がパッと俺から離れた。 俺の可哀想な菊の花も、侵攻から開放されてやっと通常運行になる。 「しくじりましたね。完全に人払いはしたと思いましたが……そちらが干渉してくるとは予想外です」 ゲイは裏庭に植えられた木の下を見つめていた。 そこにいたのは、現生徒会書記であり旧SOS団依頼人だった喜緑さんだ。 両手を後に組んで、一人静かにこちらを見つめていた。 いつの間に現れたんだ! 「なんのつもりですか? 穏健派のTFEI端末が独断で動くとは初めて知りましたよ」 「涼宮ハルヒに急激な変化を起こされては困るの。あなたの趣味で涼宮ハルヒを暴走させて欲しくないだけよ」 そのまま、喜緑さんが何事か……長門の『呪文』のような物を唱えると、 急に俺の萎えていた手足に力が戻ってきた。 手も……もちろん足も動く! 「う、うわぁあぁぁぁぁーーーーーーーーッ!」 「キョ、キョンたん! ぐッ!?」 俺がゲイ野郎を突き飛ばしてその場を飛び退くと、ゲイはそのまま後にぶっ倒れて尻餅をついた。 俺は後も見ずに裏庭からの脱出にかかる。 「これはしてやられました」 「あなたは尻をやるつもりだったのでしょう?」 「つまり、これはそういう意味合いにおいてはあいこ、ということでしょうかね。 僕とあなたはお尻あい、と」 「そうなりますね」 「フフフフ……」 「うふふふ……」 バカのような会話を背後に聞きながら、俺はその場を駆け去っていった。 ◆◆間◆◆ 「はっ………はぁ………はぁ…………」 俺は息も絶え絶えになりながら、商店街を歩いていた。 寒い冬の最中であるのに、商店街まで一気に駆けていた俺の身体は異常な熱を持っている。 今ならきっと頭の上に湯気が見えるぞ。 なにせ、学校から商店街までほぼノンストップで駆けてきたんだからな。 「はぁ……はぁ……………はぁーーーーーーーーーーー……」 大きく溜息。 ハルヒは俺のストレスを開放する、などと言っていたが、開放されてるのは他のヤツばかりじゃないか? 俺自身が解放されている気がちっともしない。 「これは……早急に手を打つ必要があるな。直に発生源を叩く必要があるぞ」 呑気に相手の気が変わるのを待っているわけにはいかない。 普段SOS団の活動で使う喫茶店を前に、俺は携帯電話を取り出した。 ◆◆間◆◆ 「なによ」 「なにじゃない。俺が呼び出した理由くらい、もうわかってるだろ?」 俺は携帯電話でハルヒを呼び出した。 最初はゴネていたハルヒだったが、俺が「言うことを必ず聞くんだろ?」と言った途端、 即座に「わかったわよ」と言ってココまでやって来た。 そして現在、SOS団御用達の喫茶店で、テーブルを挟んでこうして俺とハルヒが向かい合っているわけだ。 「理由って?」 「みんなに言って回ったんだろ。『俺の言うことを何でも聞くように』ってな」 「そうだけど、それがなによ?」 くちびるをアヒルの口みたいに尖らせて、ハルヒは不満げな声を上げる。 「あんたの体調が悪いって言うから、ストレスにならないようにやったことよ。 あたし悪くないもん」 「別にお前が悪いとは言ってない。ただ、そのせいで周りが色々騒がしくてかなわん」 「あたしにどうしろって言うのよ」 「簡単だ。即刻前言撤回すればいい。そうすりゃ丸く収まる」 「嫌よ」 フン、と鼻を鳴らすと、ハルヒは窓の外に目線を投げて言葉を吐き出した。 「絶対嫌」 「………おい、ハルヒ」 「嫌だったら嫌。絶対ヤダ!」 「俺の言うこと聞くんだろ?」 自分で作り出した矛盾にはまったハルヒは、苦り切った顔をして窓の外を見ていた。 恐らく、古泉は今頃組織のバイトが急増して大変なんだろうな。 「ハルヒ。これは俺の命令だ。みんなに言った言葉を撤回するんだ」 「………………」 ハルヒはだんまりを決め込んでいる。 「その代わりだな……」 「………聞こえない! 全然聞こえないわ!」 いきなりそう言うと、ハルヒはガタンとテーブルを蹴る勢いで立ち上がった。 一口も口を付けられていなかったコーヒーがひっくり返り、テーブルに黒いシミが広がっていく。 この騒動に、周囲の目線も一気にコチラを向く。 「待て、落ち着けハルヒ」 「いいわよもう! あたし帰る!」 怒鳴るようにそう言うと、ハルヒは早足にその場を去っていった。 周囲の視線や、こぼれたコーヒーのこともあって俺が一瞬躊躇していると、 ガッシャァーーーーz________ン!! と、隣の席に四輪駆動のごっつい車が突っ込んできた。 「な………」 細かく砕けた窓ガラスが飛び散って、俺の背後を掠めていった。 喫茶店内も悲鳴やわめき声に包まれる。 「ハルヒ……!?」 慌てて入り口の方を見たが、ハルヒは持ち前の駿足でもって駆け去った後のようだった。 まるでタイミングを見計らったような事故っぷりじゃあないか? 俺は呆然とするレジ係を急かして会計を済ませ、急いで外に駆け出す。 ガシャン ギャー ドスンッ ドカ ハルヒを行方は捜すまでもなかった。 まるで道しるべでも作ったかのように、道なりに事故が多発している所がある。 なんだ……あいつはついに世界の崩壊でも願ったのか? その時、ポケットに入っていた携帯電話が鳴った。 「もしもし、キョンたんですか? 古泉です」 「切るぞ」 「冗談ですよ。それより、涼宮さんの状況がかなり悪いことを理解しているか心配で電話したんです」 「黙れゲ泉。貴様の声を聞くと耳が腐る」 「やはり理解されてなかったようですね。今、その辺りで事故が起こっているはずです」 「そうだが、そうだったとしても貴様は黙して語るな」 「その理由は、おわかりですか?」 「ハルヒが世界の崩壊でも願ったのか? それより他のヤツに代われ。貴様は死ね」 「あの……いいかげん、僕も泣きますよ?」 ゲイの声が軽く泣きそうになっていた。 「よし、死ね。それで事故とハルヒが願ったことと、どういう関係がある」 「……………………」 「言え、さもないと貴様がゲイだと学校中に言いふらして回るぞ」 「涼宮さんは『死にたい』と思ったんですよ。あなたのためにやったことが裏目に出て、更に怒られてしまった。 穴があったら入りたい。恥ずかしい。死んでしまいたいと思った……その結果が、今巻き起こっている事故の嵐です」 「つまり……それに巻き込まれて死んでしまいたい、ってことか」 「あなたなら上手くまとめてくれると思ったんですがね。どうやらそうもいかなかったようで」 「切るぞ。時間がない」 「ところで、今これを教えて上げたわけですから僕の……」 通話を切った。 「余計なこと考えやがって……」 俺は事故の起こった通りを急いで駆けていった。 途中、電柱の後で「死にたい……」とベソベソ泣く茶髪のゲイがいたような気がするが、恐らく気のせいだったのだろう。 ◆◆間◆◆ 転倒、転落、衝突、居眠り運転、うっかり、よそ見、物を落としたり、放り投げたり、火を付けたり、 その他考えられる限りの事故を起こした商店街を駆け抜け、 俺はついに商店街を抜けて住宅街に入ってしまった。 住宅街でも、犬が吠えて駆け抜け、自転車が電信柱に突っ込み、猫がひっくり返り、通り一面阿鼻叫喚の地獄絵図の様相を呈していた。 俺は息を切らして足を止め、ここで一つの事実に気が付くわけだ。 「お……追いつかない……」 持久走、短距離走、障害物走でもトップを誇る涼宮ハルヒの駿足に、運動不足の俺が追いつくわけがない。 いつ事故に巻き込まれてケガをするかもわからないこの状況で、ウサギとカメの昔話を実践している場合じゃないんだ。 この状態になったハルヒが居眠りをしてくれるとも限らないし、居眠りの代わりが事故だったら尚更実践できるわけがない。 「ドラ○もんみたいな扱いで悪いが……ここは一つ長門に……」 そう思った時、見計らったようなタイミングで携帯電話が鳴った。 「も、もしもし?」 「涼宮ハルヒの追跡経路をナビゲートする」 長門だった。 「長門か!? どうしてこんなタイミング良く……」 「急がないと間に合わないから」 「そうだな。今はどうこう言っている場合じゃねぇ。じゃないとハルヒが事故にあっちまうからな」 「それだけとも言えない」 「? どういうことだ?」 「見つければわかる」 「で、どうやってハルヒを見つけるんだ」 「あなたと涼宮ハルヒの体内に位置探知用のナノマシンは注入済み。ナビゲートは簡単」 い、いつの間にそんな物を仕込んだんだ。 今日は手首を噛まれた思い出もないぞ。 「あなたには部室で」 部室……あの時のキスはそう言う意味があったのか! 流石長門だ。この時の事を想定して既に手を打ってあるとは。 でも、それならいつもみたいに手首を噛むだけでも良かったんじゃないか? 「進路方向、次の角を左」 無視か。今はそんなことを言っている場合でもないしな。 俺は即座に駆け出して左に曲がった。 ◆◆間◆◆ 「ハルヒ!」 驚いたことに、ハルヒは商店街から住宅街へ出ると、そのまま住宅街をグルリと回って再び商店街へ戻ってきていたらしい。 長門の説明では何だかんだの心理作用がナントカカントカの回帰を起こしたらしいのだが、 ともかく、俺は長門のナビゲートによって、再び商店街へ戻ってきたハルヒの進路方向へ先回りしていた。 「っ!!」 「こら、逃げるんじゃない!」 商店街中程の店の軒下に隠れていた俺は、商店街の大通りに駆け込んできたハルヒの前に奇襲的に登場し、 抱きつくようにして無理矢理ハルヒの足を止めさせた。 聞いたところによると、ハルヒはスピードを微塵も落とさずに走り続けていたらしい。 遠くから声をかけようものなら、あの駿足であっという間に遠くへ逃げられてしまう。 というわけで、俺は商店街の入り口にあった本屋(自転車が突っ込んで片づけで忙しそうだった)で立ち読みをするフリをしていたわけだ。 「放して! 放しなさいよ!」 「放してたまるか! 絶対に放さないからな!」 この寒い中、お互い汗を撒き散らしながら取っ組み合う。 こっちだって命懸けだ。 あいつが呼び寄せていたものが、やっと見えてきたわけだからな。 /´〉,、 | ̄|rヘ l、 ̄ ̄了〈_ノ _/ (^ーヵ L__」L/ ∧ /~7 /) 二コ ,| r三 _」 r--、 (/ /二~|/_/∠/ /__」 _,,,ニコ〈 〈〉 / ̄ 」 /^ヽ、 /〉 ´ (__,,,-ー ~~ ̄ ャー-、フ /´く// `ー-、__,| タンクローリーだ。 『危険物注意』の看板のひっついたガソリン満タンのタンクローリーが、商店街の向こう側に見える。 どうやら妄想は一人事故にあって痛い思いをするというレベルを越えて、周囲を巻き込んで盛大に散るというレベルになったらしい。 こいつをネガティブに暴走させ続けると、どっかの国が打ち落とした人工衛星の破片さえ呼び込みかねんぞ。 「命令だ! 俺の話を聞け! まずはそれからだ!」 「嫌だったんでしょ? だったら命令なんて聞かない! 聞いてやらない!」 ちくしょう、こいつ完全にヘソ曲げてやがる。 しかも本気で暴れるから、いつ振りほどかれるかわかったもんじゃない。 今逃げられたら、後に迫ったタンクローリーにペシャンコにされた上に大爆発だ! 「ハルヒ……いいか、命令だ!」 「嫌よッ!」 「ハルヒ、俺にキスをしろ!」 「いや……何?」 ハルヒがやっと暴れるのを止めて、俺の目を見た。 「お前が俺にキスするんだ」 「な、なんでそんなこと……」 「他の誰も俺の命令を聞かなくてもいい。お前だけに聞いて欲しい」 俺の目線は、ハルヒを真っ直ぐに見ていた……わけではなかった。 実のところはその先に見えるタンクローリーを見ていた。 タンクローリーは、既に、ハルヒの背後百メートルを切った所にあったのだ。 「キョ……バ、バカ! 何言ってんのよ!」 「ハルヒ」 俺はそれだけ言うと、ハルヒの胴に回していた手を解いて、手を顔に添えた。 「バカ……バカキョン………」 タンクローリーはグングンとその距離を縮めていた。 もうハルヒの背後五十メートルの所にあった。 追記すると、ハルヒの目は潤んでいたと思うような気がする。 「お前がするんだぞハルヒ。命令なんだからな」 「………わかったから、目を瞑ってなさいよ」 「丁寧に言ってくれ」 「目を瞑って。おねがい」 タンクローリーはすぐそばに迫っていた気がする。 だが、その後どこでタンクローリーが止まったかまではわからない。 それから数分、俺は目を瞑りっぱなしだったからだ。 ---- 「キョンさ。あたし今日掃除当番だから、先に部室行っててくれる? 後で行くから」 「おう、わかった。掃除サボんなよ」 「サボらないわよ。あんたも活動サボらないでよね」 「おいおい、他に言うことがあるだろ?」 「……楽しみにしているんだからね」 俺はそう言って、ニヤニヤしながら教室を出た。 今のハルヒの一言に、教室中の人間が仰天していたようだ。 谷口は目も口も全開で仰天していたし、あの国木田でさえも目を剥いていたんだからその衝撃の具合もわかるってもんだ。 「きょ、キョンくん?」 「朝比奈さんじゃないですか。どうしたんですか、こんな所で?」 教室を出た所で、ドアの脇に立っていた朝比奈さんに気が付いた。 二年生であり、全校生徒の憧れの的でマドンナで天使の朝比奈さんがこんな所にいるのは、確かに不思議と言えば不思議だ。 「うん………あの……キョンくんを待っていたんだけど……」 うん。明日俺の下駄箱にカミソリ入りの呪いの手紙が入っていてもおかしくないセリフだ。 今の俺には微塵も怖くない所だがな。 「あの……これって、本当にキョンくんと涼宮さん?」 そう言って見せられたのは、携帯電話の画面だった。 画面には、タンクローリーの乗り入れられた商店街を背景に、抱き合ってキスしている俺とハルヒの姿が写っている。 「どうしたんですか、これ?」 「あのね、これが学校中にメールで出回っているらしいの。その……『涼宮ハルヒ熱愛発覚!!』って」 「なーんだ、そんなことですか」 俺はアッハッハと笑い飛ばした。 朝比奈さんも、それにつられてエヘヘと笑う。 「そうですよね。怪文章の類ですよね、こんなの」 「いえいえ。ただの事実だから笑ったまでですよ。 な、ハルヒ? 俺達ラブラブだよな?」 朝比奈さんと廊下の生徒達、そしてクラス中が再び仰天するのを感じながら俺は堂々と胸を張った。 「そ、そうだけど、それがなによ……」 「もっと他に言うことがあるだろ?」 「ら……ラブラブよ! あたしはキョンが大好きッ! これでいいでしょ、もうっ!」 ふふ、と俺は笑って肩をすくめた。 「何の問題もありませんよ、本当」
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■第六迷宮 桜ノ立橋 ・B1F 漆黒の獣に導かれし空の道 ・B2F 天空に浮かぶ夢幻は彩の奇跡 ・B3F 悍ましき嬌声が天まで響く決戦場 世界樹の迷宮Xに登場する飛泉の水島にある樹海。 出典元:世界樹の迷宮II 諸王の聖杯(DS)新・世界樹の迷宮2 ファフニールの騎士(3DS)第四階層(16F~20F) アーテリンデやクロガネjrと遭遇する。可愛い 3Fでこれまでにも増して敵編成の殺意がマシマシになっているように感じた。逆にFOEは復活早いのも考慮されてか弱く調整されてた印象だが 全ての冒険者を虜にし続ける美しき迷宮。桜と共にに舞う鳥たちの協奏、そして地を這う牙に要注意。 石化とカマイタチと雷から逃げながら謎解きは大変だった… 桜ノ立橋の美しさは、旧1の四層が桜ノ立橋とは真逆の寂れた枯レ森だった事と、2の春夏秋冬の冬景色から一気に満開の桜の花が舞い散る空間に投げ出される事にあったので、Xのただ桜ノ立橋がありましたって展開は正直がっかり。新2から見ても登る程に円形の階層がどんどん小さくなって、世界樹の頂が近づいていくのがわかるって演出がなくなってて微妙だし ストーリー性が一切ないただの通過点だよね(表では唯一?)。でも立橋があってこそあの小迷宮が生まれたわけだし、古跡ノ樹海へと繋がるというのも趣がある ビックモス強い、イモムシ強い、ハルピュイア... サイもやっぱり落っこちていくけど、あの空間って空なのか水場扱いなのか…… ↑カマイタチのクエストでは、落ちたら落ちたで負傷で済んだ冒険者がいたりもしたし…案外底が浅い場所が点々とあるのかも 新2ではサイが異空間に飲まれるように消えてたけど、Xではまんま落ちて消えるのは笑った カマイタチにコカトリス、ライチョウにドレイクと状態異常や雷を使う敵が多い。石化の仕様が変わった代わりにみんな石になっちゃって鳥さんにツンツンされるととても痛い思いをすることに。 桜ノ立橋にもう一度行けただけで嬉しかったけど あの小迷宮は二度と行きたくないです 釣りが行われるから水場のはず このあたりから1Fの時点で元の迷宮の構造に似せなくなってくる。とくに浮遊板のギミックは二枚以上の板を上手くくっつけて進むようになったので地図とにらめっこしながらパズルを解くことになる なんか釣りを始めた……。水面だったのか…… 次の階に進むのが下り階段というのがなかなか違和感。下るからこそ次の迷宮があるとも言えるが 水面ということが判明したが、鎌鼬のクエストによりよくわからないことになっている。水面突き抜けて下の階に落ちるのか? というか鎌鼬お前は水中に潜んでたのか? ↑見えないだけで釣りポイントには池でもあったんじゃない?新2は空中でも構わず釣り糸たらしてた気がするけど 空中でもあり、水場でもある。エーテルでも満ちているのか? 雲海なんでしょ(適当 ↑行ってきまーす(サルベージャー) 空中に糸を垂らして枝を釣り上げていたボウケンジャーはついに桜ノ立橋に雪辱を晴らした(魚を釣るとは言ってない) 今回の調子乗りナレーションはここ 魚は空に鎌鼬は水に…。そうか……そういうことか…。この桜ノ立橋こそが、まっくら森の正体だったんだよ!! マジレスすると、上でも言われてるけどあの穴が水なんじゃなくてあのポイントに池があったんだろ。3でも周り見た目壁なのに温泉湧いてたし 確かに演出的には桜ノ立橋のインパクトは薄れた気はするが、それを補って次の迷宮が古跡の樹海であるという所が粋。考えれば考えるほど感動する 1Fに1日1回限定休憩エリアがあるので採掘して石化のお香の素材をおみやげに回復するという宿代もケチる冒険者は自分だけじゃないと思っている あれ?このカバンどこかで… 何度も巡った迷宮なのに、何度辿り着いても感動する。最高に綺麗な場所。 何か演出不足という意見が出てるが、正統派な緑の樹海群が連なる一の島を抜けて、さあ新天地だぞ!って盛り上がりに合わせてあの桜ノ立橋が開かれるのは、それだけで非常な感動に満たされたよ俺は ワールドマップ見たときからそこにあるのわかってたからやっと辿り着けた…!って感じだった 桜花天空楼よりここの3F北西のパズルのほうが苦戦したかもしれない。 左上のFOEパズル、個人的には過去最高難易度だったぞ… 左上の足場パズルは一番上の1個見落としてて、解法のないパズルを延々とやってました SSQ2やってないから初見だったけど戦闘BGMいいっすね。好きだわ 2(ハイ・ラガード)の樹海は四季折々で風情の整った名所(あらゆる意味で)ですのよ?個人的にその最たる場所が4階層桜ノ立橋でして。BGMがお気に召したならぜひぜひ。SSQ2でFM音源も楽しんでくださいな。 3F北西のパズルだけどうしてもわからなかった。FOEを脳筋してとっぱしたけど悔しかった…… ここは下りていくことにどうも違和感を感じる ホントそれ上がって欲しかった 桜舞い散る迷宮、落下するサイ、そしておハルさん。細かい部分は違えども、すべてがなつかしい……。 ↑聖の翼にあたる翼人がいないからね ↑なるほど!↑2を書いた者ですが、ありがとうございました! 3Fのサブタイトルは、ボスも同じなのにどうしてここまで過去作から変わってしまったのか……。他の迷宮は変わってないところが多いのに。 クリア後もインゴット稼ぎの為採集組がお花見に来る場所 一部では香の材料を求めて足繫く通うギルドも散見される模様 いやほんと好き 天然のスウィーツだ!(照) 迷宮BGMも通常戦闘BGMも味があっていいが、FOE戦BGMは迷宮の雰囲気に対して地味に感じる。2の迷宮全体で共通の曲だから仕方無いけどさ。 うわー初めて見たけどきれいだな~。お花見したいなー→鳥にぶつかりhage 上段ブシドーや跳弾ガンナーにとっては神器とも言える必中ゴーグルがしれっと配置されている。彼らがいるならこれから長い付き合いになるだろう。 難所である真南ノ霊堂を抜けてほっと一息…つく間もないこれまた難所。特に後半は硬い痛い追加効果も厄介な奴らが群れを成して襲ってくるうえエンカウント率も高いので消耗がすさまじい。何度桜の木の養分に成りかけたことか それまで緑緑緑だったのが急に桜景色になったのと、ここら辺から突如難易度が上がったこともありクロスの復活迷宮の中では印象に残ってます。新含め2はエアプだけどとても好き。 インペリアルにとってもゴーグルは神器だった。TP+50により急に世界が変わったわ ここのイベントでタイムカプセルが埋めてあったってのあるけど一体誰がどうやってそんなもん埋めたんだ...内容も見せてくれないし 迷宮化する前にも来る手段があった可能性?昔はどこかの庭園だったとか (Xの迷宮構造、由来からは目を逸らす) 海の一族の先遣隊が全滅した所は強制イベント。一週目の時点では気づきにくいが、兄ブロートが彼らを始末させたのだろう(おそらくレムリアと海の一族のバッティング時期を調整するため) 何それ怖… コメント
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「……ここは…」 場所が変わった。 道が、くらい。 窓がある。 向こうは、明るい。 暗い場所から明るいところはよく見える。 明るいところから、暗い場所はとても見えにくい。 まるで、この世界をそのまま表しているかのようだ。 きっと、向こうから、アタシの姿は見えていないんだろう。 長い廊下が続いている。光は、見えない。どこまでこの廊下が続いているのか、わからない。 …………。 でも、歩こう。出口があるかはわからないけれど。 ここで立ち止まっていたって何も始まらない。進むしかないんだ。 ぱちゃ ぱちゃ ぱちゃ ぱちゃ ぱちゃ ぱちゃ ぱちゃ ぱちゃ ぱちゃ ぱちゃ ぱちゃ ぱちゃ ぱちゃ ぱちゃ ぱちゃ ぱちゃ ぱちゃ ぱちゃ ぱちゃ ぱちゃ ぱちゃ ぱちゃ ぱちゃ ぱちゃ 水が、靴を舐める音だ。 アタシが今立っている場所はどうやら濡れているみたい。 …どれだけ、歩いたかな。今、歩き出して何歩目ぐらいなんだろう。 体力に自信はあるけれど、そろそろ疲れてきた。 …あ。 ずっとずっと先に、光が見えてきた。出口かな。 歩く度に、光が近付いてくる。 光。 出口? ここから出れるのか。 よし。 ………あれ。 でも、このまま光があるところに進んじゃっていいのかな。 あの場所から逃げ出してはきたけれど…。 ここを進んだ先にある、光が溢れるところは、本当にいいところ? 足が動かない。 (ユウイ、わたしと親友じゃなかったの?) 近くにあった窓の向こうから親友の声が聞こえてくる。 違うよ、アタシは貴方を嫌ったりなんかしていないよ。嫌いなんかじゃないよ。 違うの、違うの。貴方は、アタシのたった一人の親友。 待ってて、すぐに―――。 『そっちじゃないわ』 窓に触れようとしたら、あの白い女性に腕を掴まれた。 近くで見て改めて思う。髪も、肌も、服も、白。本当に、真っ白だ。 頭に付けている赤い髪飾りと耳に付けている虹色のピアスが一際目立っていた。 窓から向こうの部屋が見えた。自分と親友が談笑している。 アタシが「死ぬ」前に、当たり前だった風景。酷く懐かしい風景。 何も変わらない、ただ幸せだったあの頃。あぁ、戻れるならあの頃に帰りたい。 …ただ、一つだけ気になったのは、自分の背中が真っ赤に染まっていたことだ。 その、なんと不気味なことか。 『あなたが進むべき道はこっちじゃない。真実に背を向けてはいけないわ』 「…背を、向けて…?」 どういうことだろう。真実って一体何なんだ? …あぁ、そうか。 この光は「真実」。アタシは今までずっと逃げ続けてきた、「真実」で溢れかえっているんだ。 だから行きたくないんだ。 きっと、ここにいればさっきみたいな「望んでいた世界」にいることが出来る。 そこでは、殺し合いなんてものもなくって、ミユも、リオトも、ゆーちゃんも、トキコも、みんな楽しそうに笑っているんだ。 それに比べて、この光の先はどうだろう?アタシを「殺したい」と言う、幽霊となった親友がいて、恐い顔をした幼馴染みや弟がいる。 どちらかを選べ、といわれたら迷うことなく前者を選ぶだろう。 ………でも。 赤い背中の人間になるのは、嫌だ。 背中を焼かれるぐらいなら。正面を焼かれてやる。 その方が、何倍もマシだ。 「ありがとう、アタシ、行くよ」 『ええ、貴方なら、大丈夫』 「……そうだ、ずっと聞きたかった。 あんたの、名前は?」 そう聞くと白い女性は少し言いにくそうに目を伏せたが、やがてアタシを見て優しく微笑むと。 『…ミハル。それが、私の名前よ。美しいに晴れと書いて、ミハル』 「ミハルさん、か…アタシは榛名 有依っていうんだ。 あと、それから…あんたが言う、「ヤハト」っていう人は、アタシの知ってる人、なのか?」 今更、お互いの名前を交わした後、アタシが一番気になっていることを彼女に問いかけてみた。 『……それは、もう貴方も気が付いているでしょう?』 「――そうだな、聞くだけ、無駄だったかも」 開いた口を隠すように片手を軽く口元まで持ってきて。うふふ、とお互いに、同じように笑ってしまった。 暫く無言の時が続く。そろそろ、行かないと。戻って、「ヤハト」さんやみんなに会いに行かないと。 アタシは「あの頃」と比べて、強くなれているかな?――だったら、少し、嬉しい。 「なんだろうな、もっとあんたと話をしていたいのに、言葉が出てこないや」 『私もよ。ずっと話していたいという気持ちは確かにあるのに、言葉にすることができないの』 「なんだか、他人のような気がしないよ」 『――実は、私も。貴方は私…私は貴方に、よく、似ている気がするわ』 でも、アタシはあんたほど女子力高くないよ。 そう返すと、おもしろいことを言うのね、と上品に彼女は笑って。 貴方、短気でしょ?私もなの。ついでに「彼」も。すぐにカッとなっちゃうのよ。なんて、返してくれた。 それから「短気四人組」でお話でもしてみたかったわね、なんて言葉も付け加えて。 アタシと、ミハルさん、それからゆーちゃんと…「あの人」そんな風には見えないんだけどなぁ。意外。 「…待ってて。必ずアンタと、「ヤハト」さんを救うから」 少し恥ずかしかったけれど、ミハルさんを真っ直ぐ見据えてそう言うとミハルさんは目に涙を浮かべながらゆっくり縦に頷いた。 それから、アタシは振り返らずに光の中へと飛び込んだ。背後で、「ありがとう」という小さな声が聞こえたような気がした。 眩しい、何も見えない。おもわず目をぎゅっと閉じた。開けていられない。体中が熱い。まるで焼かれているかのようだ。 それでも負けない。目が悪くなりそうだ、と思ったが、嫌がる瞼を無理矢理開けて。 前へ、歩き出す。 思い出せ。 逃げるな。 駆けろ。 記憶を、辿れ。 アタシはもう、迷わない―――!! 《ユーイちゃんっ》 《この瞬間から、私はあなたの味方になった》 《――あぁ、もう、へいきだ》 《本当に行ってないか不安になって、来てしまった》 《お友達なのですから、他人行儀にならずアオイと呼んでくださいな》 《今日は家族でお出かけなんだ!》 《…不思議な子だな、キミは》 《どうしたんだよ、姉貴らしくねーな》 《生きていれば…》 《――カンよ、カン わたしのカンは結構当たるの》 《オレは"お前の"味方だから》 心の奥に響く記憶 (それは、言葉ではとても言い表せないほど) (素晴らしく、そしてうつくしいものだった)
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※「時系列……文化祭→サウンドアラウンド後 CD曲パラレルdaysのオマージュ(?)有り」 こ…この歌は… 「えぇ…、まさに…」 ハルヒそのもの…だな… 現在部室内では諸々の事情によりハルヒが一人アカペラでその歌声を部室内に響かせている―― これよりちょっと前の事―― 前の文化祭のあとに、団でバンドを結成して割と真面目に練習したりしてビデオテープだったか、(ここのとこ記憶が曖昧なんだが…原因はハルヒに振り回されて疲れているためとしよう。決して老化などの類ではない。) まぁ演奏した曲を録ってそういうのをなんかのオーディションに投稿したりした訳だが、努力も空しくあえなく落選した。 だが我が団長は諦めきれないのか、その後も持て余す情熱のほとぼりが冷める事もなく、目標が曖昧な練習を始めたり、歌詞を作ってきたりと、非常に意欲的な活動を絶賛持続中である。やれやれ…いつまで続くのやら… さて、現在部室にはハルヒ以外の団員皆が揃っており、今見てるのは例によってハルヒが持って来た歌詞を古泉と将棋ついでにいつものように見ていたのだが… 「曲名はパラレルDaysですか…」 古泉は歌詞の題を読み上げる。よく意味のわからない名だ。 しかしなんというか…これ、ハルヒそのものを唄った歌詞にしか感じられんのだが。 というか、むしろここまで自分で自分の心情を表現出来る事に驚嘆すら感じせざるを得ない。 「どうしたんですかぁー?」 俺と古泉が二人してハルヒの作ってきた歌詞について得体のしれない感心を抱いていると、横から朝日奈さんが可愛らしく参入してきた。カチューシャがピョコンと揺れる。 ハルヒが今日持って来た歌詞を見せると、朝比奈さんは暫く真面目な(しかし可憐な可愛さが欠ける事ない)顔で歌詞を注視する。 大変カワいくてよろしい。 「ふふ…ここの『パラソル パーッと開いたりね』の部分が気に入りました」 そこの部分を細い指で示しながら天使も羨むような微笑を浮かべる朝比奈さん。 そっちですか?とツッコミが口から出かけたが止めた。 まぁ確かに…パラソルを開いて空中浮遊を連想させるここの部分はなんとなく朝比奈さんが好みそうだし…、実際、その穏和な風景を朝比奈さんと照らし合わせて想像すると、脳内で素晴らしく可愛い絵が完成する。 「しかしながら、その後に『東?南?知らないわ』ときていますね。」 古泉が、朝比奈さんから流れ出た微笑ましさ溢れる空気をまるで無視するかように何やら歌詞の論評を始めた。 一体なんだよ 「恐らくみなさんは、ここの部分で空中浮遊を連想させたと思いますが…さて、ここの部分ですが、僕たちの…つまりSOS団の動向を表してるとは思いませんか?結局は行き着く先がわからず、そのさまはまるで、空中を緩やかに落下しているようだと…ね」 コイツは一体何を言いだすかと思えば……作品に対する個人の解釈は自由だがな古泉。言わせてもらうが、それは飛躍し過ぎだ。 お前の言い方だとまるで俺達のやってる事が全て落下に向かってるみたいな言い方じゃないか。 そりゃ、俺達の行動はハルヒの気まぐれで決定されるからこの歌詞と似たようなものだし、実際その通りだと思うとこはまあ、ある。 だがな、現実世界でやること成すこと何もかも結局は落下に向かってるって言われちゃたまらんぜ。ハルヒの奴は確かに変態だが、んな悲観的な事を考えるような頭してないだろ。誰がみてもよ。 「ふふ…涼宮さんがどのようなつもりで書いたかはわかりませんが…、 ですがこれは案外、この世の理というやつかもしれませんよ?」 横を見ると朝比奈さんがおろおろとしていた。 古泉の度が過ぎた解釈によるものだろう。 その姿は庇護精神を大きく揺さぶられるがここは押さえる。 「大体この歌詞自体、お前が言ったように暗く出来てない。空中浮遊で着陸した先は『まさかのモノリス』だ。恐らくハルヒの事だ、自分の銅像にでも着陸したんじゃないか? しかもその後に続く歌詞で『妄想』だと認めてるじゃないか。つーかどうしたらそんな解釈に至るんだよ。 大体お前だって困るんじゃないか?ハルヒがそんな引きこもりがするような考え方したらよ」 「えぇそうですね。そこを引き合いに出されると、僕としても打つ手はありません。…まぁ涼宮さんの意思とは関係なしに、暗くなるように虚無的な解釈を無理矢理考えてみるというのも面白そうですが…とりあえずここいらで止めておきましょう。 冗談のつもりが、段々と険悪な雰囲気になっていくというのは僕の好むところではありませんし」 …逆だろ? 「…涼宮ハルヒが書いたの?」 突然発せられた声は長門のものだった。 古泉と険悪な(古泉の腹の内はわからないが少なくとも俺は何故か微妙な腹を立てていた)空気が立ち込めようかと思われた時、いつの間にか、向かいの席の古泉の隣に長門が立っていた。 「あ、あぁ…そうだ。またハルヒの奴が例によって書いてきたんだよ。みるか?」 長門は数ミリうなずくと差し出された紙を受け取り、表情の無い顔で暫く紙と見つめあう。 「…わからない」 長門は起伏のない口調で静かに言った。 「…なにがだ?」 「これの文体が」 しばし、俺は長門の言うところの意味が理解できなかった。長門の口からわからない、などという単語が出てくるなど俺の現実逃避の際に繰り広げる妄想にも出て来ないぞ。 「文章の展開が唐突過ぎる。しかも短い。これでは意味が明確に伝わらない。」 …つまるところ、どうやら長門はまだこういう歌詞といったものの文化については未開拓だったようだ。 歌詞の文が、本のそれと違うのは当たり前なのだが… というか、長門にとってバンドでのハルヒの歌は音の一つとしてしか捉えられていなかったのか。 今更にもほどがある、ここにきてようやく歌詞には音以外の意味があることに気付いたらしい。 「歌詞ってのはそういうものなんだよ。 まぁ確かに、歌詞の文みるだけじゃわかりづらいだろうな。ハルヒが実際にこの歌詞を歌ってるときに理解しようとして聞いてみたら、長門も自分なりの歌詞の解釈というのが出来るだろうさ。こればっかりは自分の感覚だからな」 「…そう」 俺が諭すように言うと、長門が物分かりのいい子供のような瞳の色を一瞬浮かべたかと思ったのは俺の錯覚だろうか、3ミリほどうなずいて音もなく席に戻った。 「ところで」 それから微妙な間が出来たところに依然としてニヤケ面の古泉が声を発した。先ほどの長門効果により、険悪となりつつあった空気はすっかり霧散されていた。 なんだよ? 「個人的にBメロ部分の『遠い空間の果てが~』の部分、最初目にした時は正直驚きました。この部分はこれまでの内容とは、とりわけ意味深ですから」 …まぁ…その歌詞の部分に対しては、多分、古泉と同じような事を俺も思っただろう。なにせこちらとしてはあの趣味の悪い灰色空間しか思い浮かばないからな。 ハルヒが一体なぜこのような文節を書いたのか唯一、まったくもって意味が理解出来ない。まぁ今に始まったことじゃないが。 すると突然、部室のドアが蹴破られたように勢いよく開いた。 「イヤッホー!みんな居るわねー!」 こんな入り方する奴は決まってハルヒであり、今の様に元気溢れる姿であれ不機嫌な姿であれ、ドアを蹴破るというのはもはや規定事項なのか。 「それ、なによ?」 入って来るなりハルヒは歌詞の書いた紙を指さしている。 これはお前に今日渡された歌詞だよ。 「あぁそういえばそうだったわね… で?どうだった?」 は?いきなりどうって言われてもなあ… ハルヒが歌詞の感想を聞いてくるなんぞ今までなかったもんだから、些細ではあるものの想定外の質問に俺は次の言葉を出すまでに暫く時間を要した。 「うーん…今まで恋愛系のやつばっかだったけど、なんでまた今日のは違うんだ?」 「うっ…」 ボディブローを思いがけずもらってしまったボクサーのような声を出すハルヒ。 今のはなんだ?…うめいたのか? 「ふ…ふんっ!いつもおんなじ様な歌詞じゃつまらないと思ったからよ。何でも変化が必要ってこと!」 見るからに動揺しているのは果たしてなぜだろうかな。 「今までの歌詞もとても素晴らしい出来栄えでしたけどね」 微笑を浮かべながら古泉は言う。 そういや恋愛は精神病の一種だと豪語するハルヒだが、なぜそのコイツが今まで恋愛系の歌詞をポンポンと書いてくる事が出来たんだろうか?内容もひねくれてなかったし… 「あーもう!!今までの歌詞の事なんてどうでもいいのよ! アタシが聞きたいのは今日書いてきた歌詞がどうだったかって事!」 なぜ今日に限って意見を求めるんだろう? …まぁ見たとこ、いい加減怒りそうな雰囲気だったから余計な詮索はしない事にするが。 「うーん…実にハルヒらしさを表してる歌詞だと思う」 「…ふーん」 …反応それだけかよ 「古泉君は?」 「僕も彼と同じ意見です。大変よろしいかと」 「そう。じゃあ、みくるちゃんは?」 「え?私ですか?」 どうやらハルヒは全員に意見を聞くようである。 「パラソルパッと~の辺りが好きですね」 「あぁ、あそこね。確かにあそこはみくるちゃんが好みそうな部分ね。じゃあ次は有希」 「…歌を聞きたい」 …この長門の言葉が部室内の時間を一瞬凍らせたかのように思われた。 淡々と流れるようにそれぞれの意見を聞いてたハルヒだが完全に固まってしまったようにみえた。目がまん丸になってるぞ。 「え?」 想定の範疇を大きく外れた長門の言葉に対し、ハルヒがようやく出した言葉はたったのこの一文字だけ。 「この歌が聞いてみたい」 繰り返し長門は起伏のない声量で喋る。が、何か形容し難い気迫が迫る感じだ。 「え…えぇ。もちろんいいんだけど…今日は音楽室、軽音部が使ってるのよね」 …思えばこの言葉が、ハルヒの戦略的不利な状況を一気に作り上げたんだと思う。 曲はまだ出来てないとか言えばその場を退けられただろうに。 「…歌を唄うだけならば音楽室を使用する必要性と必然性は無いと思われる」 初めてみる長門の積極的な態度にハルヒはすっかりペースに乗せられているのかいつもの様な傲岸不遜な態度はさっぱり見られない。その様は、従順な妹に突如として反抗されて困惑する姉のよう、とでも言えばいいのか。 「そ、それは今ここで唄えって事かしら?」 「…おおむね」 …お…おいおい。 長門よ…あのハルヒが完全にうろたえているぞ。ハルヒは自分の意思を表明をせず、もしくは長門の液体ヘリウムの真っ直ぐな瞳に圧倒されていて出来ないのか、とにかく言われるがままではないか。いったい長門はなにやってんだろう。 「ま…まぁ有希の頼みなら仕方ないわね… ……なんでこんな事に?…ていうかどっちかっていうとこれってみくるちゃんの役回りじゃないの?」 最後のは明らかに愚痴だが…ぶつくさ言いながらもハルヒは俺から歌詞を受け取った。 ハルヒは歌詞を暫く見つめ、独言を拝見する限り、アカペラとはいえ結構真剣にやるようだ。 「じ、じゃあ唄うわよ…」 心なしかハルヒは緊張しているような面持ちで…ってなに顔を隠してんだよ。おい。 ハルヒは歌詞が書いてあるB5サイズの紙を丁度俺らの視線とを隔てるように被せやがった。 「うるさいわね!いいじゃないのよ!伴奏ありで唄うならともかく…そもそもアカペラに向いてないのよ!この歌は!」 どうやらハルヒにも羞恥心とやらがあるようで、男子の前で平然と着替えたり平気でバニー姿になったりとか色々とするのに、ここで何故恥じらうのか甚だしく疑問なんだが…、顔を紅くさせながらも歌唱中は顔を隠すことを皆に強制的に了承させた。 「じゃあしきりなおして…行くわよ」 「そのかわり歌詞の最後まで歌わないとダメ」 長門のとどめの一言にハルヒはまた低いうめき声を上げたが、たまにはハルヒのこういう姿も見物である。 まもなくしてハルヒ作詞兼作曲兼歌のパラレルDays(アカペラver)が唄われた。 ―― ハルヒは、歌う前までは恥ずかしがってはいたものの、その歌声は歌い手の照れというものを一切感じさせない元気で堂々としたものだった。 それに歌い方と歌詞の内容とが見事に合致しており、もはやそれはやはり、ただ見事としか表現しようがない程だった。 …ただ歌ってる時に、顔を隠し、足で少しリズムを取る以外はまるで微動だにしないというのはちょっと…お前それって。 数分後…、やがて、ハルヒの歌が唄い終わり… 「って、あ!おい! ちょっと待て!どこ行くんだハルヒ!」 歌を終えるやいなや、ハルヒは猛然とした勢いで部室から出て行ってしまったのである。 「え?え?す、すす涼宮さんどうしたんでしょう~?」 朝比奈さんはあたふたとしながら聞いてくる。 いや、俺にもさっぱりなんですが… 「やはり恥ずかしかったんだと思いますよ」 微笑の古泉がいつもの調子で言う。 あぁ…そうなるか。やっぱ。 「まぁ、僕もどうやらバイトが入ってしまったようなのでこの辺りで失礼します」 微笑な表情を一切変えずに古泉はまるで普通のバイトがあるかのように普通な言い方で言った。 同情してやらなくもないが俺が労いの言葉かけたって状況が変わる訳でもない。何せ俺は自他ともに認める普通の一般人だからな。だから俺は古泉に言ってやった、 「そうだろうな。」 「…私のせい。…ごめんなさい」 …この声は長門のものである。なんというか…これは珍しいとかの生易しい事態ではない。受け取りようによってはちょっとした事件になるのではないか。 で、長門に謝られる対象となった古泉はというと、さすがに虚を突かれたのか少し丸くした目で長門を凝視している。古泉のこういうナリも至って珍しい。 「はは…気にしないで下さい。長門さん。閉鎖空間といっても、彼絡みのモノと比べればたいして大きい規模のものではありませんから」 …俺を引き合いに出すんじゃない 「それに、長門さんのおかげで涼宮さんの素晴らしい歌声が聞けましたしね。むしろ礼を言います。まぁ閉鎖空間に関してはそのお礼の代わり、とでも思って下さい」 「…申し訳ない」 再び発せられた長門の短い謝罪を聞くと、ニヤケ面の古泉はさらに三割増しの微笑を浮かべたあとに、「それでは」と一言、言ってから部室を退出した。 そうして部室には俺、長門、朝比奈さんの三人が残された。 …そういやハルヒはどこ行ったんだ? 「…既に校舎内からはいない。恐らく自宅に向かったと思われる」 つまり帰ったわけか… 長門は4ミリほどうなずく。 「キョン君、これからどうするんですか?」 なぜだか朝比奈さんは俺に指示を仰いできたが、まあ…やることもないし… とりあえず…俺らも帰りましょうか。 ふと窓の外を見ると日は地平線に沈むか沈まないかの位置におり、外はオレンジ色の光に染まっていた。 「なぁ長門」 「なに」 現在、俺は長門と二人ゆっくりとした歩調で校舎内を歩き、下駄箱に向かっている。 朝比奈さんはメイド服から着替えるため遅くなるので、まあ俺らにはそのうち後から追いつく事だろう。 「そんなハルヒの歌聞きたかったのか?」 「そう」 長門が自分から人にものを頼むなんてのは大変珍しい事であり、ましてやさっきの様にあのハルヒに対して歌うよう頼んだという事はこれは結構スゴい事なのである。 なので、なんで長門がそこまでしてハルヒの歌が聞きたかった理由は実はすごい気になるわけだが、その答えはたったの二文字で完結されてしまった。 なんだかわからんが長門は、あまりしつこく聞いてくるなというのを態度で示しているのか、それとも単なる俺の過ぎた思い込みか、とにかくそれ以上同じ質問するのは何か聞き辛い。 「じゃあ…ハルヒの歌、聞いてみてどうだった?」 「…」 沈黙が生まれ、感想を聞くのはやはり無理かと諦めかけた頃… 「あの歌詞の概要がわかったような気がする」 え?どんな風に? 長門のようやく出した返事に、俺はつい反射的にものを考えずにまた質問してしまった。 それから廊下を数歩歩いたところで長門は再び口を開いた。 「…涼宮ハルヒが現状を楽しんでいるということ。正確な言語伝達が出来ないけれど……共感する部分を感じた。 言語では表しようがない不可思議な感覚」 そういうと長門は鞄から本を取り出し、歩きながら本を読み始めた。 …共感とは…数ヶ月前の長門からは考えられない言葉だな… しかしながら俺もさっきのハルヒの歌を直に聞いたら何か不思議な感覚になった。ハルヒの歌を聞く前に、俺はハルヒの歌詞に目を通していて既に曲に対してはそれなりの解釈を持ってはいたが、実際に聞いてみるとまた違う解釈が生まれた。 そういうのは往往にしてよくある事なんだろう。 これは多分長門と同じようなものだと思う。…まぁしかし長門も言うように、言葉で表現出来ないので俺と感じとったものが一緒だとは確認しようもないが。やれやれ…言語表現とは難しいものである。などと妥協する。本当ダメなやつだなオレ。 それでもまぁ一応言っておく、 「長門、不可思議な感覚とやらは俺も感じた。断言は出来ないがたぶんお前と同じようなものだと思う。こう思うんだがあの場でハルヒの歌を聞いた団員は皆が皆、何か一つ同じものを共有出来たんじゃないかな。このSOS団にいるものにだけしかわからないものが。 そう俺は勝手に思ってる」 何を論拠に、とツッコミ入れられたら答えようがない。具体的に表現出来ないんでな。よくある事だ。うん。 長門は聞いてんのか聞いてないんだかわからない感じだったが、(いやまあ、そんな長門だからこんな恥ずかしい事言えるんだが) 7~8歩あるいた所で、 「そう」 とだけ言っていた。 …個人的にハルヒが今日歌った歌詞の中で気になった部分があった。 …みんなたまに喜んでるね……か… この歌詞をハルヒがどういうつもりで書いたのかわからないが…実際その通りだな… (厳密には喜ぶとは違う種類の感情かもしれないが…まぁ似たようなもんでいいだろ) もし、それを知ってて書いたのだとしたら、自分が楽しめりゃそれだけでいい的な事だけしか考えてないと思われたハルヒも、実はアイツはアイツなりに俺らの事を見ている…ということになるのだろうか… しかし…まぁ、さすがにハルヒもアカペラであの歌はキツかったろうな… …我ながらメリハリの無い感慨にふけっていると、やがて朝比奈さんも俺達に追いつき、俺の不毛な思考も朝比奈さんとの会話のために一時中止された。 団長、副団長が不在の状態という点を除いて、俺達はいつもの帰り道を途中まで共にし、やがてそれぞれの家へと別れていった。 明日もまたハルヒはなにかしでかすのだろうか。あの太陽フレアに負けず劣らずの輝かんばかりの笑顔が浮かぶ。 ハルヒの持ち込んでくる気まぐれに思い立っただけのまるで計画性のない無意味な提案は、表面的には朝比奈さんと俺に、裏方では長門と古泉に甚大な迷惑をかけるのだが、その一方でどういう訳か不思議と俺は楽しんでいたりするのだ。確かに。 …オレンジ色の夕日の空を見上げつつ、明日ハルヒがどんな事をしでかすのか、そんな意味もない妄想をしながら俺は今日の帰り道を歩いていった 終わり
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ハルヒ先輩5から 「ちょっと待て、ハルヒ。なんだ、その格好は?」 「あんたの高校の体操着(女子用)よ」 「なんで、おまえがそんなものを着てる?」 「加えて言うなら、あたしの母校でもあるわ」 「それは知ってる。尋ねてるのは理由だ」 「どこかの誰かさんみたいに、卒業後、使用済みの制服その他を売り捌いたりしてないの、あたしは」 「思い出は心に、衣類はタンスにしまっておけよ」 「普段はしまってあるわよ」 「今日もしまっておけよ」 「そうはいかないわ。今日はいつもと違うもの」 「何が違うんだ?」 「あんたの誕生日でしょ」 「それって、まさか……」 「そ。『プレゼントはあたし』ってやつよ」 「まてまて。それは一旦置いておくことにしよう。だが、なんで、よりにもよって体操着なんだ?」 「あんたの、その反応がすべてを物語っていると思うけど」 「あう」 「どうしても、あたしの口から聞きたいっていうなら、聞かせて上げるわ」 「うわ、待て。やっぱ、いい」 「もう遅い。あんたのスケベな心臓は、今ロック・インしたわ」 「おれを殺す気か?」 「せめて気持ちよく昇天させてあげるわ。ひとーつ、あんた、まずブルマ萌えね」 「ぎゃふん!」 「ふたーつ、そして、体操服のすきまからのぞく、おへそ萌え」 「ぎゃふん、ぎゃふん!」 「みーつ、元々あたしがあんたに気付いたのは、そのエロい視線で体操着姿のあたしを視姦してた時だったわね」 「きゅうううん」 「あ、死んじゃった」 「……言い直せ。視姦じゃない。見とれてただけだ」 「あたしが、つかつか近づいて行って、他の一年坊主たちが、蜘蛛の子散らすように逃げ去ったのに、あんただけは、じっとあたしを見てた、目もそらさずに」 「おまえに凝視されて、視線を外せる奴なんかいるもんか」 「2〜3メーターの距離ならともかく、20センチ近くになっても」 「ヘビににらまれたカエル状態だったんだ」 「あたしの唇が、あんたの口をふさいでも」 「どうせ見納めなら、死ぬ間際まで、焼き付けとこうと思ったんだ!」 「あたしゃ、メデューサか?」 「ほんとに腰が抜けて立てなかったんだ」 「別のところは、立ってたけどね」 「わー、わー、全年齢対応!」 「正直、あんなに至近で見つめ返されたのは、あたしも初めてだったわ」 「見たこともないような、どえらい美人が、マクロレンズでなきゃ撮れない近さにいるのなんて、俺だって初めてだった」 「ま、というわけで、出会いのシーンを演出してみました」 「いや、ものすごくやばいぞ、ハルヒ」 「去年まで普通に着てたもの着て、何がやばいのよ?」 「確かに物理的にはそうなんだが、今は本来着るはずのないものを着てるってだけで、社会的にというか心理的に、ものすごくイケないことをしてる感じがする。これがコスプレの真の威力か? というか、おまえだって狙って着てるんだろ?」 「まあね」 「だいたい、その体操着、ちょっと小さくなってないか?」 「胸の分だけね」 「そ、育ってるの?」 「そ、育てたんでしょ、あんたが……」 「は、反則だぞ、ハルヒ。今までオラオラ・モードだったくせに、急に顔真っ赤にしてうつむくなんて」 「確かに今、真芯をとらえた感覚があったわ」 「ま、まじに心臓が痛い」 「といいながら、うれしがってるでしょ?」 「さっきまでなら、部分的にイエスだったが……今はピンク色に白濁した脳みそに生理機能が付いて来れない」 「わかりやすく言いなさい。妄想がエロすぎて、心臓が持たないんでしょ?」 「そ、そのとおりだ。こんな企画なら予告してくれ。体操抜きで寒中水泳するようなもんだぞ」 「任せなさい。この夏、ライフセーバーの資格を取ったから、人工呼吸も心臓マッサージもお手の物よ」 「また、そんな、無駄スキルを……」 「わかってるわよ、あんた専用だからね。どんないい男が溺れてても見殺しにするから、妬かないように」 「だから無駄スキルだと……」 「それにしても、体操着だけで、こんなに引っ張るとは思わなかったわ。まだオードブル(前菜)に過ぎないわよ、キョン」 「いや、マジやばいから、一旦『わっふる』を入れてくれ」 「いいけど、『わっふる あけ』したら、もっと飛ばすわよ!!」 わっふる、わっふる、わっふる 「キョン、誘惑を免れる道はただひとつしかないわ。誘惑に負けてしまうことよ。byオスカー・ワイルド」 「格言に見えて、それ自体が誘惑になってる!」 「少しは落ち着いた?」 「こうやって背を向けてれば、なんとかしのげ……るか!? おまえの腕が、もうおれの首の前まで来てる!」 「二人でいるのに、離れてるなんて、おかしいでしょ?」 「いや、人間は『人の間』と書くのであって、時と場合に応じた距離というものが……っておい!」 「なによ?」 「この感触は……なに?」 「わかってるでしょ?」 「わかってるとも。だ、だが背中にのしかかるな」 「別にいいじゃないの」 「普通の状態ならかまわんが……、こりゃいくらなんでも反則だ。おまえ、体操着の下に『着けてない』だろ!」 「さすが、エロキョン。背中に目があるかのごとし」 「目がなくてもわかるわ! この、なんというか、ぷにっとも、ぼよおんっとも、表現がつかない感触が、他の何だって言うんだ!?」 「キョン、鼓動が敵襲を知らせる早鐘のようね」 「くっ……のわあ! 押し付けたまま『の』の字を書くな」 「ふっ、なかなか手強いわね」 「いや、もう籠絡されてる、陥落してるぞ。むきゅう」 「あら。じゃあ、いただきます」 「そんな、カマキリの雌みたいな……って、いきなり剥くな!」 「つまらない。少しは抵抗しなさい!」 「いいのか、ハルヒ?」 「え?」 「自分にとっての体操着のまばゆさに、なかなか気付けなかったが……」 「やっと気付いたのね、ニブキョン」 「ああ。これ以降は、エロキョンでいかせてもらうぞ」 おれは、すでに体操着の上からでも、はっきりとわかるまでに固くなったハルヒの胸の先端をこするように、二本の指で撫でた。むろん二つの胸、両方をだ。 「あ…あん。いきなり、それ?」 「こんなに立たしてたら、当然だろ」 「あんたの背中にこすりつけたら、こうなったの!」 「エロハルヒ。そんなので感じてたら、もたないぞ」 「言ってくれるじゃないの」 「ああ、言ってやる。だけど、もう言うだけじゃない」 おれは再び、指での攻撃を再開した。今度は両乳首を倒すようにふにふにと柔らかく押す。ハルヒはコレに弱いのだ。 「ああ……ああん、こ、こら、キョン!」 それから人差し指と中指の間に挟むようにして、左右リズムを変えて震わせる。 「あんた、さっきから、そこ……ばっかり。……だ、だめ!」 「ハルヒが教えたんだぞ、これ。ほんと、気持ちよくなることにどん欲だよな」 「あ、あ、わ、わるい? ああん!」 「ちっとも悪くない。ハルヒに教えてもらったこと、全部返すからな」 右胸への指の攻撃をつづけたまま、おれはハルヒの左胸に体操着越しにキスをする。そのまま固くした舌で跳ね上げ、こすり上げる。一度口を離し、今度は強く吸い上げてやる。 「服の上からなんて! へ、へんたい! でも、気持ちいいよお」 「そうか。じゃあ、ずっと体操着の上から、してやろうか?」 「フェチキョン。もう限界。脱がせて、ちゃんとして」 「なんだって?」 聞き返しながら、手と舌の責めは休まない。 「はっきり言わないとわからないぞ」 「ああ……ああん。じ、じらす気ね? わかったわよ。言って上げる。あんたの大好きな体操着をはぎ取って、直に舐めて!」 ハルヒ先輩7へ
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「キョン! 何か出た!」 何もかもが灰色になった妙な部室で呆然としていたら、あいつが眼を輝かせて入ってきた。 確かに出ていた。股間からスカートを突き上げるように。 「なにコレ? やたらでかいけど、怪物? 蜃気楼じゃないわよね」 股間から棒状の突起がそそり立ってスカートが持ち上がりチラリと純白の下着すら見えている。 輪郭がはっきりと見えるからそりゃ蜃気楼じゃないだろうなというか俺よりでかいじゃないか怪物と言って差し支えはないだろうよ畜生。 「宇宙人かも、それか古代人類が開発した超兵器が現代に蘇ったとか!」 宇宙人……長門ならこんなこともできるかもな。んでもって、ある意味では超兵器だ、ソレ。 「これさ、襲ってくると思う? あたしには邪悪なもんだとは思えないんだけど。そんな気がするのね」 「わからん」 襲うかどうかや邪悪か否かは持ち主次第というかお前のそういった欲求の対象はどっちなんだ。ホモかヘテロか。どっちにしても俺は願い下げだ。 「何なんだろ、ホント。この変な世界もこの巨根も」 お前なら作り出せるかも知れんが、いったい何考えてるんだ。 と、そんなとき。 「キョンちゃん起きろー!」 などと言って妹はわたしをふとん越しにぼすぼす叩きベッドに飛び乗ってとび跳ね怪力で引きずり出した。 しばし呆然とした後、頭を抱えた。 なんて夢を見たのだろう。 見知った、いや、見覚えがない女の子と二人だけの世界に紛れ込んだ上に、その女の子の股間に男のアレが生えてるわそれが怪物並みの代物だわソレをわたしは冷静に見つめてるわ、しかも夢の中でわたしの一人称は俺になっていた。 つまりわたしは男になっていたということだ。 フロイト先生が引きつった笑みを浮かべそうな、そんな変態的な夢をわたしは見ていたのか。 頭が痛くなってきた。 わたしの深層意識はいったい何を考えてるのだろう? 妹とともに洗面所で歯を磨くと、鏡に映るは無造作に縛られたポニーテールにクラスの男子谷口くんが言うところのAランクである割と整った顔。 Aランクの女子はフルネームで覚えたとか言ってたが、彼もわたしをキョンとしか呼んでくれないのはなぜだろう? 「朝起きたら女の子になっていました」 などと、なに訳のわからないことを呟いたんだろうねわたしは。なっていたもなにも、わたしは元から女だ。 ちなみにキョンというのはわたしのことだ。 最初に言い出したのは叔母さんの一人だったように記憶している。 何年か前に久しぶりに会った時、「まあキョンちゃん綺麗になって」と勝手にわたしの名をもじって呼び、それを聞いた妹がすっかり面白がって「キョンちゃん」と言うようになり、家に遊びに来た友達がそれを聞きつけ、その日からめでたくわたしのあだ名はキョンになった。 全く、それまでわたしを「お姉ちゃん」と呼んでいてくれてたのに。妹よ。 その後、何食わぬ顔で身支度をし、登校する。 「よっ、キョン。今日はな……」 わたしの真後ろの席に陣取った男子の奇妙奇天烈な思いつきに振り回される非日常的な日々があいも変わらず展開される。 何かおかしい。 なんだろう、この夢の続きみたいな変な感覚は。 SOS団なる団体を結成してわたしを巻き込み、合宿やら推理劇やら映画撮影やらでわたし達を振り回した団長、涼宮ハルキは、今日も今日とて栗拾いがしたいなどと言い出し、都合よく鶴屋先輩が所有する山林に栗林があるとかでそこに向かった。 そしてイガがついたままの栗でキャッチボールをおっぱじめる始末。 「ただトゲトゲ生やすだけじゃ能がない、触れたら周囲にトゲを飛ばすようなアグレッシブな進化をしてもいいだろうホウセンカを見習え」 などと物騒なことを言い出した。栗は対人地雷じゃないしホウセンカが種飛ばすのは獲物を仕留めるためではなく子孫を広範囲に広める戦略だ。 まあ、カニは人間が食べやすいよう進化すればいいのになどと以前にのたまっていた記憶があるから、それよりはマシかもしれない。 喰われやすくなるためではなく、喰われまいとするのが生き物の進化だと、生き物それぞれの都合があるのだと理解しただけマシだと。 ウシ、ブタなどの生き物は神様が人間の食べものにするために作ったなどという傲慢な教義を信奉する某一神教の連中ほどには自己中心的ではなくなったようだ。 朝比奈さんが悲鳴を上げてうずくまり長門さんが淡々と受け止める異様なキャッチボールを遠巻きに眺めながら、古泉くんと共にハルキの困った世界改編能力について話す。 バカハルキはロクな思いつきをしないが、それでも楽しそうに笑っている今は充分に平和だという。この世を揺るがすことはしないとのこと。 だといいんだけど。 古泉くんはわたしがわざとらしく溜息をついたのをどう取ったか、軽く鼻を鳴らすように笑い……。 その時、彼は奇妙な表情をみせた。 見慣れない表情、つまり薄ら笑い以外の顔つきになった。眉を寄せるような仕草。 わたしの「どうしたの」という問いに珍しく言い淀んでいたが、すぐに微笑をとりもどした。 脳の情報伝達に小難しいプロセスの齟齬があったのかも。 そんな涼宮ハルキは今、わたしの愛車に跨り栗林からの帰り道をチェーンも切れそうな脚力で漕いでいる。 「ほらほらキョン、もっと力込めてしがみつけ、振り落とされるぞ」 振り落とさんばかりに激しく動くアンタに言われたくはない。 と言うかさ、健康な男子なんだから背中に伝わるわたしの胸の感触に戸惑ったりしないのかね? 朝比奈さんほどじゃないがわたしにもあるんだぞ、それなりに。 って、なにを腹立ててるんだろうねわたしは。 さてはて、今ハルキに漕がれているわたしの愛車は悲鳴を上げてるのか本来のスペックを出せると歓喜の声を上げているのかどっちだろう。 もっとゆっくり走ってというわたしの要望は、「古泉に抜かれてる。負けてたまるか」とあえなく却下された。 なんとか無事に行きつけの喫茶店へと辿り着き、反省会の後に解散。そしてしばらくしてハルキ抜きで再集合した。 困惑しきりの朝比奈さんは古泉くんに促され、おずおずと話し始める。 「未来に情報送るための『禁則事項』で涼宮さんに初めて部室に連れてこられたときの記憶を映像化していたら、身に覚えのない光景がいくつか出てきて」 ひょっとしてその禁則事項ってのは放送禁止用語か何かなのかしら。 「でも『禁則事項』で検証してみたらまぎれもない現実で、その映像の中では団長である涼宮さんが女性で、あたしの胸を『禁則事項』……はううう言えません~!」 顔を赤くして連発されるとますます放送禁止用語に思えてくる。 前にもTPDDとかいうタイムマシンのようなものがなくなったと言ってたことがある。 今回はそういった器具が不調をきたしたんだろうか。パソコンで例えるなら、インストールされたソフトの設定を間違えて自分の経験を溜め込むフォルダと映画かなんかの情報を溜め込むフォルダを入れ替えてしまったような。 「いえ、どうも涼宮さんは自分の性別を変えてしまってるようです」 今、なんと言いましたか古泉くん? 「かつての涼宮さんは、自分を取り巻く退屈な状況は自分が女であるためだという発想に至ったようです」 だから性別変えたって? いつから? あいつは出会ったときからずっと男だったはずだ。 「前にも言ったでしょう? 涼宮さんは言動こそエキセントリックですが、ああ見えて常識というものをよく理解してると。だから、男になれればなあと考える一方で、簡単かつ完全に性別が変わるなんてありえないと考える常識も持っている。それらがぶつかりあった結果、はじめから自分が男として生まれたものとして世界を作り変えてしまったようです。もちろん、自分自身の体と記憶も含めて」 長門さんが引き継いだ。 「わたしの観測対象である涼宮ハルヒが自らを過去情報に至るまで全て改変し再構築した異性同位体、それが涼宮ハルキ。該当する個体が受精した瞬間にまでさかのぼり、本人だけでなく周辺情報も全て、自分が男性として生まれたという前提で世界を再構成している」 まさかそこまでデタラメだとは。 だが、言われてみれば時折抱く違和感は全て性別に基づくものだった。 その違和感があった情況を掘り下げて考えると、あるはずのない情景が自らの経験という形で浮上する。 わたしの脳をパソコンのハードディスクに例えるなら、『ハルキという男子』と名づけられたフォルダに、なぜかハルヒという女子に関する記憶が大量に格納されていた。 ハルヒという女子が、まだ教室に男子が残ってるうちに無造作に着替えを始め、同性であるはずのわたしが慌てて教室を飛び出す光景。 他にも、長門さんに呼び出され自分やハルキ……いや、ハルヒ? の正体について説明するため呼び出されたとき、女同士のはずなのに色々と戸惑った記憶もある。 そもそも、ハルキの思いつきや発見の中でも最もロクでもないもの、SOS団の結成を授業中に思い付いたとき、真後ろにいたあいつはわたしの襟首を掴んで引っ張り、机の角に後頭部がぶつかって刻の涙を見た記憶がある。 ポニーテールが邪魔になって掴みづらいはずだし、多少はその房がショックを軽減してくれそうなものなのに。第一、男子が女子にあんなことしたら流石にクラスにあいつの居場所などなくなるはずだ。 他にもおぼろげながら色々な記憶が浮上してきた。 その女子は、わたしが知るハルキという男子よりずっと奔放に過ごしていたようだ。 とくに朝比奈さんへの行為はものすごく、自分の手で朝比奈さんの制服を剥いて着替えさせたり胸揉んだり写真撮ったりする光景が蘇った。そりゃ禁則事項にもしたくなるか。 そのハルヒってのは女同士なら許されるじゃれあいと認識してるんだろうか。いや、女同士でもどうかと思うけど。 同じ女として同情を禁じえない。 泣き崩れる朝比奈さんを抱きしめ頭を撫でてやる。この人のほうが先輩なのにな。 古泉くんは肩をすくめる。 「どうやら、今の涼宮さんは男としては許されないとわきまえ、自重しているようですね」 あれでも自重してるの? だったら男としてやりたかった事をさっさとやって満足して、元に戻ればよさそうなものなのに。 「そうもいかないのですよ、そもそも、その願望は女性として生まれ育った故に抱いたもののようです。だから、男として生まれ育ったことになっている今の涼宮さんはその願望を抱きようがない。したがって、仮に実行していても満足することはない。試しに、この前の不思議探索パトロールで彼と二人組になったとき連れション……おっと失礼、とにかく男性でないとできないことをやってみたわけですが、現状はこの通り。もちろん、女性としての涼宮さんがやってみたいと思ったことがアレとは限りませんが」 わたしと朝比奈さんが赤面する一方で、長門さんが口を開いた。 「そういう方向でのアプローチは無意味となる可能性が高い。女性である涼宮ハルヒも、幼少期に野外で遊んでいた際は男子に混じって堂々と排尿を行っていた。彼女にとって女性であることが制限となる要素はあまりない」 この年齢になっても平然と男子の前で着替えていたとしたらソレもあり得る……のかな? わたしと朝比奈さんをよそに、長門さんは淡々と、更にものすごいことを言い放つ。 「女性には生物学的に不可能な方向で考える必要がある。その一つが射精」 ちょっと待てちょっと待て待ちなさい宇宙人に作られたインターフェースだか人造人間だか知らないけど年頃の乙女なんだから少しは恥じらいを持ちなさい。 「しかし既に、睡眠時の淫夢で数回。更に各種情報媒体や自分の記憶を用いたイマジネーションの喚起によって自発的かつ定期的に行われているため、その線の可能性も低い。あるいは、ただの射精ではなくパートナーを伴う……」 とうとう耐え切れず、わたしと朝比奈さんとで口を塞ぐ。様々な意味で、その先の発言は聞きたくないし考えたくなかった。 苦笑した古泉くんが肩をすくめる。 「……まあ、こうして日々を過ごしているうちに、また似たような願望を抱くようになります。今の退屈な状況は男として生まれ育ったためだとね。このようにして性別の変更をかれこれ10回は行っているようです。本人も、周囲も気付かないまま」 いつだったか夏休みの後半を何度もループしてたことがあったが、あの時と同様に何度も記憶を消されるというか書き換えられているうちに耐性のようなものがついて、その結果書き換えられずに残ってしまった記憶を朝比奈さんがほじくり出してしまったらしい。 実害はあまりない。それどころか男として自重してる分、まだハルヒよりはハルキのほうがマシみたい。朝比奈さんの平穏のためにも、今のままのほうがいいか。 「あなたがそれで構わないんでしたら」 わたしが? 古泉くん、どういうこと? 「違和感がある記憶を照らし合わせて気付きませんでしたか?」 そんな返事に困惑するわたしを長門さんが見つめて冷徹に言った。 「過去情報だけではなく肉体も改変された異性同位体はもうひとり存在する。それが、あなた」 いやその、薄々とは感づいてたんだけどさ。 そんな衝撃の事実を告げられた数日後。 「妹汁って、知ってます?」 普段接してる朝比奈さんよりもっと未来から来た、綺麗な大人になった朝比奈さんに会った時、赤面しながらこう聞かれた。 そしてわたしは、知ってしまっていた。 ハルキがコンピ研から強奪したパソコンのハードディスクを何気なく漁っていたとき、様々なアプリが格納されたフォルダの中にやけに容量を喰っているフォルダを見つけた。 女のカンなのか、本来の性別である男としての経験によるものなのか、そこを探っているうちにインストールされていたゲームに辿り着いてしまった。 元々そういう仕様なのか、コンピ研のメンバーがインストールの仕方を工夫していたのかはわからないけどゲームのディスク無しでも起動したソレは、って、なぜ本来はディスクなしでは起動できないって知ってるんだろうね。やっぱりわたしは本来男だったようだ。 とにかくそれは、Hな画像とストーリーで構成されたいわゆるエロゲーであり、その中の一つが「妹汁」だった。 困った状態になったときその言葉を思い出して欲しいとか何とか言ってたけど、困った状態なら今も継続してるんだけど。 大人バージョン朝比奈さんによれば、詳しく言えないがそのとき傍にあいつが傍にいるとの事。これ以上困ることがあるんだろうか。あるんだろうな。 相変わらず違和感を感じる日常が続く。今のわたしは女である。ということは相変わらず改変されたままなのか、それともあいつは一旦は元に戻ってまた女としての生活に飽きたのか。 知覚はできていないがどうにもこういうループってのは気分が悪い。どっちかにしてほしい。 って、わたしは本来の男に戻りたいと思ってるんだよね? でもまあ、朝比奈さんがハルキの無理難題で困り果てたときわたしに抱きついてくるときの柔らかい感じ、特に互いのほっぺや胸が当たるふにふにとした感触が結構気に入ってるわけで。 他にも女としての楽しい思いをしているわけで、こうして女として固定されて生きていくのも悪くはないなとか考ることが多くなった。 他の仲間も変ではあるけど面白い人達で、そこそこ非日常な感じがして楽しい。 こんな時間がずっと続けばいいと思っていた。そう思うでしょ? 普通。 でも、思わなかった人がいた。 決まっている。涼宮ハルキだ。 夕食や入浴、明日に備えた予習を終え、長門さんから借りた本をある程度読み進めて眠りに落ち……。 ブレザーの制服姿のハルキに叩き起こされた。わたしはわたしで寝巻きがわりのスウェットではなく、セーラー服がわたしの身体をまとっていた。 おまけに、ここは学校だった、見覚えのある静寂と薄闇に支配された状態。ああ勘弁して欲しい、閉鎖空間だった。 ハルキは男として女であるわたしを支えなくてはと思ってるのか、勤めて冷静に振舞っている。 でもベースがあのハルヒなせいなのか、この状況ではかなり弱気になっている。そう、改変される前の本来の世界の記憶が蘇りつつあった。 行く当てがないので部室に向かった。そこで一休みしたあと、ハルキは探検してくるとかいって立ち上がる。 「お前はここにいろ。すぐ戻るから」 言い残してさっさと出て行った。そういうところはハルキもといハルヒらしいなと思っていたらやっと彼が現れた。 赤玉モードの古泉……君。むぅ、君をつけるのも呼び捨てにするのも違和感が出てきた。 などという戸惑いをよそに、この状況について話し合う。 ハルキもといハルヒは現実世界に愛想を尽かし新しい世界を創造することにしたらしい。 男として自重する生活が想像以上にストレスだったみたい。 「それでわたしがここにいるのはどういうわけ? そもそもどうしてわたしとあいつだけが性別を改変されてるの?」 「本当にお解りでないんですか? あなたは涼宮さんに選ばれたんですよ。こちらの世界から唯一、涼宮さんが共にいたいと思ったのがあなたです。そして、あなたは涼宮さんにとって異性でなくてはならないのですよ」 わたしはこめかみを押さえるべきかどうか迷ってから、やっぱり押さえることにした。 世の中にはああいった感情を同性に抱いたり男女の区別なしに抱く人もいるようだが、あいつはその点でも普通の思考もとい嗜好だったようだ。 その結果がコレか。 考え込んでいるうちに赤玉の古泉……君の光度は落ちていた。 「こんな灰色の世界で、わたしはハルキと二人で暮らさないとならないの?」 「アダムとイヴですよ。産めや増やせばいいじゃないですか」 「……殴るぞ、お前」 ああ、この言い方、しっくりくるようで違和感が根強く残ってる。 世界と性別、どちらもハルキが元に戻ることを望めば何とかなるとか古泉くんは言うが、さてどうしたものか。 そうこうしているうちに、古泉くんは朝比奈さんの謝罪と長門さんからの『パソコンの電源を入れるように』という伝言を残して消えてしまった。 よくわからないが伝言に従いスイッチを押したが、いつまでたってもOSは起動せずモニタは真っ黒のまま、カーソルだけが点滅していた。 OSが壊れたかと冷や汗掻いたとき、カーソルが動き出し文字を紡ぎ出した。 YUKI.N みえてる。 しばしほうけた後、わたしはキーボードを引き寄せた。指を滑らせる。 『うん』 YUKI.N あなたの下着、水色のストライプ。 噛み合わない返答にしばし困惑し、お尻に伝わる冷気で我に返った。慌てて立ち上がりスカートの裾を直す。 無造作に座った際に椅子のひじ掛けに裾が引っかかり捲れあがっていたようだ。 そして案の上と言うかなんと言うか、定位置のパイプ椅子に長門さんはいなかった。 YUKI.N あなたの女性としての記憶や経験は数度に及ぶ改変で劣化し、本来の男性としてのソレに侵食されつつある。時折抱く違和感や今のような失敗もそのため。 『何とかならないの? 時折どころか、今ではずっとそう。このままってのは色々な意味で辛いよ』 TVなどに出てくる性同一性障害の人みたいな悲壮感はないが、正直言ってしんどい、この状況。 こうしてデタラメなこの世界や現状についてのややこしいチャットが続いたが、最終的に長門さんとしても親玉の情報統合思念体としても戻ってきて欲しいだのわたしに賭けるだのと言い出した。 モニタの文字が薄れてきて、カーソルはやけにゆっくりと文字を生む。 YUKI.N Xchange そこで普通に見慣れたOSのデスクトップが出た。 「どうしろってのよ。長門さん、古泉君」 そこで、何気なく見上げた窓の枠内を青い光が埋め尽くしていた。 呆然としていたらハルキが飛び込んできた。 「キョン! なんか出た!」 興奮した口調であれこれまくし立てる。先ほどの悄然とした様子が嘘のよう。不安など感じていないように目を輝かせている。 古泉君の話では、あの巨大な人型の青い光はハルキもといハルヒのイライラが具現したものであり、周りを破壊することでストレスを発散させているとのこと。 つまり……!! 咄嗟にハルキの手を取り部屋から飛び出す、と同時に轟音。 攻撃の対象となった部室棟から脱出し、その際わたしが負った擦り傷の手当てをすべく保健室へ向かった。 横目でうかがったハルキの顔は嬉しがってるように見える。とんでもない事態だというのに、それを無自覚とはいえ引き起こした張本人なのに。 「何なんだろ、ホント、この変な世界もあの巨人も」 アンタが生み出したものらしいわ、ここも、あいつもね。それよりわたしが聞きたいのは、なぜわたしを巻き込んだかということ。アダムとイブ? バカみたい。そんなベタな展開をわたしは認めない。認めてたまるもんですか。 ハルキに元の世界に戻るよう諭すも、聴く耳をもたない。 つまらん世界にうんざりしてなかったか? もっと面白い事が起きて欲しいと思わなかったかと問うてきた。確かにそう思ってはいた。 だが、実際に世界は面白い方向に向かっていた。アンタが知らないだけで、ね。 そのことを理解させるにはどうしたらいいか? そしてこの、自分の性別に違和感がある厄介な状況に終止符を打つにはどうしたらいいか? 長門さんは言った、「進化の可能性」と。朝比奈さんによると「時間の歪み」で古泉くんに至っては「神」扱い。ではわたしにとってはどうなのか。涼宮ハルヒ、その異性同位体である涼宮ハルキの存在を、わたしはどう認識しているのか? 小難しい理屈でごまかすつもりはない。 わたしにとって、ハルキはただのクラスメイトじゃない。もちろん「進化の可能性」でも「時間の歪み」でもましてや「神様」でもない。あるはずがない。 思い出して。朝比奈さんはなんと言ったか、その予言を。 それから長門さんが最後にわたしに伝えたメッセージ。 妹汁、Xchange。両者に共通することと言えば何? わたし達が今置かれている状況と合わせて考えてみたら答えは簡単だ。 強奪したパソコンにインストールされていたあのゲームは、どちらもいくつかのエンディングや要所要所の直前のセーブデータが保存されており、何となくいじっているうちにいくつかの展開を見てしまった。 複数ある結末の一つとして、または冒頭からという違いこそあるものの、どちらも主人公の男が女になり、Hして悶えて男より女の方が気持ちいいと感じる場面があった。 そしてハルヒもといハルキには願望を現実化するデタラメな能力がある。 なんてベタなの、ベタすぎるわ、朝比奈さん、そして長門さん。それ何てエロゲってな展開をわたしは認めたくはない。絶対にない。 わたしの理性がそう主張する。しかし人間は理性のみによって生きる存在にあらず。 わたしはハルキの手を振り解いて、ブレザーの肩をつかんで振り向かせた。 「なんだよ……」 「わたし、実はポニーテール萌えなんだ」 「なに?」 「いつだったかのアンタのポニーテールはそりゃもう反則なまでに似合ってたわ」 男としてのわたしの本来の記憶が蘇りつつある。 あいつの奇矯な振る舞いの片鱗、その一つだった。アレはどこから見ても非の打ち所がなかった。 「バカじゃねーの? ポニーテールにしてるのは今のお前じゃ……!?」 怪訝な顔をした。こいつもまた、男としての記憶や経験は数度に及ぶ改変で劣化し、本来の女としてのソレに侵食されつつあるのだろう。 その隙にわたしは強引に唇を重ね、さらにベッドへと押し倒した。 こういう時は男にリードさせるのが作法なのでわたしはそれに則った。ゆえに、ハルキもといハルヒだったらどういうやり方を望むかは知らない。 本能に従い身体を開いているのか、今のわたしのように相手に合わせリードさせているのか、今にもぶん殴ろうと手を振りかざしているのか、わたしに知るすべはない。 だがわたしは殴られてもいいような気分だった。賭けてもいい。誰がハルキにこうしたって、今のわたしのような気持ちになる。わたしはハルキの肩にかけた手に力をこめる。しばらく離したくない。 遠くでまた轟音が響き、巨人がまた校舎に殴る蹴るをしているんだろ、とか思った瞬間、わたしは初めてのはずなのに不意に無重力のようなふわふわとした心地になり、身体は反転し、左半身を嫌と言うほどの衝撃が襲って、いくら何でもコトを終えたら後戯どころかベッドから放り出すことはないだろうと思いながら上体を起こして目を開き、見慣れた天井を目にして固まった。 そこは部屋、俺の部屋。床に直接寝転がっており、着衣は当然スウェットの上下、下着は当然ながら男物のトランクス。そして、畜生、中身である男のシンボルはこれでもかと言わんばかりに元気になってやがる。 夢か? 夢なのか? 見知った女と俺、双方の性別が逆転している状態で生活して、二人だけの世界に紛れ込んだあげくにSEXまでしてしまうという、フロイト先生が引きつった笑みを浮かべそうな、そんな変態的な夢を俺は見ていたのか。 ぐあ、今すぐ首吊りてぇ! よりにもよってハルヒとは、おまけに性別が変わってるとは、俺の深層意識はいったい何を考えてるんだ? ぐったりとベッドに着席し頭を抱えた。夢だったとすると、俺はいまだかつてないリアルなもんを見たことになる。 汗ばんだ右手、それに唇と股間に残る温かくて湿った感触。 とどめに、下腹部には自分にはあるはずのない器官の疼きと、ある意味では慣れ親しんだ熱く硬い物体がソコにねじ込まれ出し入れされ熱い何かを注ぎ込まれる快感の余韻まで残ってやがった。 いったいどうなっているのか? ここは既にもとの世界でないとか。ハルヒによって創造された新世界なのか。 だったとして、俺にそんなことを確かめるすべはあるのか。 結局、そんなことを考えて一睡もできなかった。 這うようにして今日も不元気に登校。校舎は何もかもがそのまま正常だった。 教室では窓際、一番後ろの席に、ハルヒはすでに座っていた。 そう、男のハルキじゃない。女のハルヒ。そして俺は……自分を俺と呼称して違和感を抱かない俺はちゃんと男だ。 ハルヒは俺を見て、視線を下に移し、なにやら未練がましい目で俺の股間を見つめ、あわててそっぽを向いた。 後ろでくくった黒髪がちょんまげみたいに突き出していた。ポニーテールには無理がある。 元気かとか話しかけりゃ悪夢を見たとの返答、そりゃ奇遇だ。まさに悪夢、さっさと忘れたい。 表情が解りにくい。顔だけは上機嫌ではなさそうだ。 「ハルヒ」 「なに」 「似合ってるぞ」 エピローグ 古泉とは休み時間に廊下で出会った。 「世界は何も変わらず、涼宮さんは女性として、あなたは男性としてここにいる。いやいや、本当にあなたはよくやってくれましたよ。シモネタじゃありませんよ? まあ、この世界が昨日の晩に出来たばかりという可能性も否定できないわけですが。とにかく、あなたと涼宮さんにまた会えて、光栄です」 長い付き合いになるかもしれませんね、と言いつつ、古泉は俺に手を振った。 古泉を違和感なく呼び捨て出来ることに俺は安堵していた。 昼休みに顔を出した文芸部部室では、長門がいつもの情景で本を読んでいた。 「あなたと涼宮ハルヒもといハルキは三時間、この世界から消えていた」 第一声がそれである。そしてそれだけだった。 色々戸惑って、説得試みて、行為に移って……妥当な時間か。生々しー。 放課後の部室にいた朝比奈さんはセーラー服姿で、俺を目にするや全身でぶつかってきた。 「よかった、また会えて……」 互いのほっぺたが擦れ合うことなく俺の胸に顔が埋まる。 身長が違ってしまっているんだな、もう。 朝比奈さんは涙声で、もう二度とこっちに戻ってこないと思ったとしゃくりあげる。 その後のかけあいの最中に、あいつが来た。 「なにやってんの、あんたら?」 戸口のハルヒが呆れたように言った。 提げていた紙袋を持ち上げ、着替えの時間だと宣告し朝比奈さんを取り押さえ、制服を脱がせにかかった。 ものすごく見物していたかったが、今の俺は正真正銘の男なので失礼して部室を辞し、扉を閉めて合掌した。 朝比奈さんには悪いが、女性ということで遠慮がなくなったハルキもといハルヒの暴挙に振り回される日常の復活が嬉しかった。 ただ、あのおかしくなった世界を元に戻したことに後悔はない。だが、少しは未練も残ってるんだ。 朝比奈さんに抱きつかれたとき、身長が同じくらいになってて、互いに胸やほっぺたを押し付け合いふにゅふにゅしあう感触が、さ。 完