約 2,333,976 件
https://w.atwiki.jp/vipkaede/pages/104.html
バトルメイジ 魔法職なのにHPが多い・攻撃範囲が狭いと何がしたいかよくわからない職。 転職するとスキルエフェクトが黒くなってくる かっこいい!!!! スキルレベルあした直しておきます 改行 長所 耐久力とPTスキルがあるので需要はある HP吸収スキルがやばい マジ最強 1次テレポート使える!! すごい!! じゃ・・・ジャンプ中に殴れる・・・ 改変で火力も中々あるほうになった 短所 武器によって攻撃速度変わるから使える武器が限られている 攻撃方法が1次から4次までずっと同じ 飽きやすい人は確実に飽きる 攻撃範囲が完全に戦士 魔法使いじゃない(4次になるとぐるぐる回って広範囲攻撃できるようになる) APは全部INTでいい たまったらすぐ振ったほうが身のため 武器は適当でいいがたまに変えたほうがいい 65になったらエビルウイングつけてね 100ぐらいになったら誰かに武器貸して貰いましょう永久に。 スキル振り 1次スキル ブロー振ったらテレポ MP消費が抑えられるし移動距離変わるから先がいい 確定数2以上ならブローとオーラ先でいいけど スキル MAX 説明 トリプルブロー b c テレポート b c ダークオーラ b c フィニッシュアタック b c トリプルブロー 1 ↓ テレポート 15 ↓ トリプルブロー 20 ↓ ダークオーラ 20 ↓ フィニッシュアタック 10 2次スキル 岩ガリガリテスト?! というクエストを受けたらSP6もらえるので絶対受けてください ブローとチェーン振った後はASの問題からイエロー1あるといい マスタリーが強いから優先度高 I装備つけてMP云々って人は30になった瞬間クエスト終わらせてハイウィズダム全部振ってください スキル MAX 説明 クアッドブロー b c ダークチェーン b c イエローオーラ b c ブラッドドレイン b c スタッフブースター b c スタッフマスタリー b c ハイウィズダム b c クアッドブロー 1 ダークチェーン 1 イエローオーラ 1 ↓ スタッフマスタリー 5orMAX 5だけ振った人はブースター振った後MAXにしてください ↓ スタッフブースター お好きなだけ ↓ ハイウィズダム MAX ↓ ブラッドドレイン MAX ↓ クアッドブロー MAX ↓ スタッフブースター MAX ↓ ダークチェーンMAX 正直どうでもいいです考えるの面倒なぐらい 気に入らなかったら適当にやってね 3次スキル バトメらしくなる スーパーボディー先に持ってきたのは慣れさせるため スタンスとテレマスで狩りがしやすくなります 捨てるスキルについてはリバイブかライトニング 4次でライトニング強化されるけどディレイ長すぎて絶対使わないので捨ててくだい スキル MAX 説明 デスブロー b c ダークライトニング b c バトルマスタリー b c ブルーオーラ b c アドバンスドブルーオーラ b c コンバージョン b c スーパーボディー b c リバイブ b c テレポートマスタリー b c スタンス b c デスブロー 1 テレポートマスタリー 1 スーパーボディー 1 ↓ バトルマスタリーMAX 確定数変わらないならテレマス→スタンスのほうがいいかも ↓ テレポートマスタリー MAX ↓ スタンス MAX ↓ スーパーボディー MAX ↓ この段階で使うスキルはほぼ無いんですがジャクム吸いたいとかならコンバーション。次にブルーオーラ2つ 絶対にリバイブとライトニングの両方をMAXにしないでください死にます(両方使わない上優先度低) 4次スキル やったねオーラ人形に転職です! 範囲攻撃も手に入れて戦えるほうのバトメになりました サイクロンの範囲が大きいのでボスもぼこぼこにできます スキル MAX 説明 フィニッシュブロー b c サイクロン b c ダークジェネシス b c アドバンスドダークオーラ b c アドバンスドイエローオーラ b c マジカルドーム b c メイプルヒーロー b c ヒーローインテンション b c バトルレイジ b c フィニッシュブロー1 Aダークオーラ 1 サイクロン 1 ↓ 1つずつ全部振る(Dジェネシス・MH・インテはcwでグルボスする人はいらないかも) ↓ ブローもしくはAダーク MAX(おそらく110ぐらいでMAXになる) ↓ 振らなかったほう MAX ↓ ここからはCW行くかモンパ行くかで変わります 縦わけの表を作りたい あふえwそうかな あん?なに? MHに関してはMB無い場合・パーティーに30持ちが居る場合は10振って後回しでいいです パーティー組んでいるときに同じスキルを重ねがけすると後のスキルがかかるため30→10となるのでやめてね
https://w.atwiki.jp/tekiyakusaikyou/pages/543.html
【ナチス調査船】 【作品名】BLACK LAGOON 【ジャンル】漫画 【名前】ナチス調査船with対戦車ミサイル+重機関銃 【属性】調査船+軍人100人位 【大きさ】150m位 【攻撃力】対戦車ミサイル(TWO)を3基装備(弾は十数発か)射程4km 重機関銃を1基 ナチス信望者の軍人100人前後による拳銃攻撃。 【防御力】150m級の船舶並み 乗ってる奴等は軍人並 【素早さ】20ノット位(約秒速10m) 乗ってる奴等は軍人並 【長所】対戦車ミサイルの爆撃と機関銃は強い。 【短所】乗り込まれるとまずアウト 【備考】主人公達と絵の盗り合いをして敵対、船内に居る全員が主人公達に殺害される 102スレ目 758格無しさん2019/05/01(水) 21 51 21.71ID MnTWpWJu 763 ナチス調査船再考察 単行本を読み返してみたらほぼ横にしか戦車砲撃ってないので、空から攻撃されたら詰む 作中でレヴィとダッチがやった通り乗りこまれたら何もできやせんのでとにかく乗り込む前に撃つしかない。 ~○ギャンザック 戦車砲でゴリ押しして勝ち ×ハンス 戦車砲なんぞ効かない、追いつかれてパンチで船底ぶち抜かれ轟沈 ×F117 空爆されて轟沈 ○鈴程呼 ギリギリで射程外なので突撃される前に総員で銃砲撃ち込んで勝ち ○ネビリム先生 射程外なので総員で銃砲勝ち ×根津原 全弾回避されて肉薄され乗りこまれてガスばら撒かれるわ機材破壊されるわで全員総統閣下の御許に ○0G2 開始距離が160mもあるので砲撃勝ち ゼミオス 高い! どう見てもこいつハンスの下 ×人型巨大ロボ 耐えられてしまいよじ登られて滅茶苦茶に破壊される ×ガルヴァ・ロア 速すぎて砲撃を当てられず真下からボカスカ ×ジェネシック・ダン 速すぎて攻撃当たらず接近され負け ハンス・エンゲル>ナチス調査船>ギャンザック 5スレ目 577 名前:格無しさん[sage] 投稿日:2007/08/23(木) 02 47 46 ナチス調査船with対戦車ミサイル+重機関銃 考察 150mが魅力 ×スカラベーダ 吸い込んで勝ち ○六脚移動砲台 対戦車ミサイル勝ち ○鷹月敏江 対戦車ミサイル重機関銃勝ち ○マハ・ガランヒル 数十Mなら対戦車ミサイル勝ち ×ウボォーギン 攻撃通用しない負け ○神咒萬嶽 対戦車ミサイル勝ち ○円城寺勇介 対戦車ミサイル勝ち ○黒ナナ 機関銃勝ち ○ラオウ 対戦車ミサイル勝ち ×リザードイチ メタルスキン負け ×バズ=ガイガン ギロチン負け ○勇次郎 対戦車ミサイル勝ち スカラベーダ以上は連敗 スカラベーダ>ナチス調査船>六脚移動砲台
https://w.atwiki.jp/testest-umigamedb/pages/2729.html
2022年7月4日 出題者:サッキ― タイトル:「魔法使いの弟子」 【問題】 タカフミは、複数のものを自由自在に動かすことができる。 マイは同じことをしようとしても、1つのものをゆっくり動かすことしかできない。 しかしタカフミはマイを褒めた。 いったいどういうこと? 【解説】 + ... タカフミができることはピアノ。 両手の指を素早く動かして演奏できる。 しかし子供のマイは、人差し指一本でゆっくり一音ずつ奏でる。 マイを溺愛するタカフミは、そんなマイを「上手〜天才!」と褒めちぎるのであった。 配信日に戻る 前の問題 次の問題
https://w.atwiki.jp/wiki5_aozora/pages/65.html
隣は魔法使いさん家 作品紹介 今よりちょっとだけ未来。 ロボや怪人怪獣、剣に魔法にヒーローと何でもありの世界。 結構頻発に古の神獣が現れたり、 どこぞのテロリスト集団が地球破壊ビームを持ち出したりするけれど、 誰もそれほど興味を示さない。何故ならこの世界には、 「超究極世界最強絶対無敵聖女」サマがいるからだ。 だけど、世界の“平和”を守る超究極世界最強絶対無敵聖女も、 俺の“平穏”は守ってくれない。 これは俺のご近所さんとの激闘の日々の中から、 最近の出来事(最悪の出来事非ず)をピックアップした物語である……。 主人公とヒロインがロボットに乗って戦いますよ、奥さん! 基本情報 DLページ:http //www.geocities.jp/aoiaoikokoro/SRC.html ジャンル :ファンタジーのロボット系ヒーロー風味ご近所物語 話数 :1話(完結)
https://w.atwiki.jp/atohone/pages/72.html
高位北国人+犬妖精2+魔法使い+船乗り 高位北国人+犬妖精2+魔法使い+船乗り★真アイドレスで行こう!★ 一般性能開示チェック用URL 海へ行こう。夏の海へ。 雪の積む王宮を後にし、冬の街角を抜け、 頭環なんて放り投げて。 海へ行こう、そう海へ! ――仕事に感けて婚期を逃したある犬妖精の手記 「……というわけで、今回は海です」 ★真アイドレスで行こう!★ 外伝:『個人着用アイドレス、高位北国人+犬妖精+魔法使い+船乗り』 今回は外伝という事で、ボクこと深夜と、アシスタントのじょり丸様でお送りします。 「わんっ」 はい、こちらこそよろしくお願いしますね。 ええと、それで今回は、個人着用アイドレスの『高位北国人+犬妖精+魔法使い+船乗り』ですね。 船乗りという事で、我らがほねっこ男爵領が誇る練習用帆船ボーンズ号にお邪魔して、海の上からお送りしています。 う~ん、潮風が肌に纏わりついて、何とも言えない臭いが鼻につきますね。 船も揺れるし、ちょっと、その……ボク……気分が……す、すみません……う゛! (大変お見苦しい所をお見せしています) (ナビゲーターの体調が落ち着くまで、じょり丸様のダンスをご覧下さい) ~小一時間後~ すみません、お見苦しい所をお見せしました。 「わん?」 はい、もう大丈夫です。出すもの全部出したら、大分楽になりました。 心配してくれて、ありがとうございます、じょり丸様。 ……っと、『高位北国人+犬妖精+魔法使い+船乗り』の紹介でしたね。 う~ん、亜細亜ちゃん関連のACEやイベントばっかり取得していた我が藩国も、 とうとう尻に火が点いた……もとい、戦力強化に本腰を入れ始めたようです。 「わぅん?」 船乗りアイドレスは、-の評価が一つも無い、強力なアイドレスなんです。 これで今まで苦手としていた詠唱戦も、大丈夫です! ……その分、特殊能力が上位アイドレスとしてはちょっと物足りない気がしますが。 「う~……」 あ、でもでも、船の上なら燃料消費なしで評価+2なんですよ。無敵ですっ。 それに、物資の緊急輸送もできますし、長丁場の時に便利そうです。 派手な活躍は難しいですけど、その分縁の下の力持ちって事で。 ん~、慣れてくると、海も結構良いですね。 ほら、うちの藩って、ちょっと前まで内陸国で、 船って言えば、鳴駒の湖の遊覧船くらいだったじゃないですか。 だから、こういう何処までも何も無い風景も、良いなぁって……新鮮ですよね。 臭いも、慣れちゃえば気になりませんし。 「わんわんっ」 あはは、じょり丸様もそう思います? 何処までも広がる海原を見てると、自分の小ささとか、 それでも海に向かっていく勇気の尊さとか、色々感じます。 だからでしょうか、船乗りの皆さんの目はキラキラとして、 子供のような純真さが宿っています。 改易も、悪いことばかりじゃないですね。 お陰で内陸地から沿岸地に移れたわけですし。 禍福は糾える縄の如し、です。 さて、そんなこんなしてる内に、顎湾、そして潮の里埠頭が見えてきました。 もう少しで練習用帆船ボーンズ号ともお別れです。 ちょっと寂しい気もしますが、船乗りアイドレスが正式に配備されれば、また何時でも帰ってこられる…… というか、海が職場になるわけですから、そんな事も言っていられませんね。 今度は気分が悪くならないように頑張らなくちゃ。 それでは皆さん、またどこかでお会いしましょう。 ナビゲーターは、ボク、深夜と、アシスタントのじょり丸さまでした。 「わんっ!」 ……え? 一回くらいお尻に噛み付いておかないと★真アイドレスで行こう!★の気分がでない? 「わぉん」 こ、困っちゃったなぁ……それ、セクハラですよ、じょり丸さま。 「くぅん……」 幾ら王犬でも、ダメなものはダメですっ……う~ん、困ったなぁ。 う~んう~ん……あ、ちょうど良いところにユーラさんと南天先輩が。 じょり丸さま、あの人たちでも良いですよね? 「わんわんわんっ」 ごめん、ユーラさん、南天先輩……ボクは、自分の保身のために…… (走り去る足音と、それに少し遅れて二つの悲鳴が上がって、幕) 船乗り(画像) 設定文:深夜 イラスト:南天 一般性能開示 L:犬妖精2 = { t:名称 = 犬妖精2(職業) t:要点 = 犬耳,尻尾 t:周辺環境 = なし t:評価 = 体格4,筋力4,耐久力3,外見5,敏捷4,器用5,感覚6,知識4,幸運5 t:特殊 = { *犬妖精2の職業カテゴリ = 基本職業アイドレスとして扱う。 *犬妖精2はコパイロット行為ができる。 *犬妖精2は追跡行為ができる。この時、追跡の判定は評価+3され、燃料は必ず-1万tされる。 *犬妖精2は白兵戦行為ができ、この時、攻撃、防御、移動判定は評価+2され、燃料は必ず-1万tされる。 } t:→次のアイドレス = ぽちファンクラブ(職業),強犬妖精(職業),オペレート犬(職業),帝國メード(職業) } /*/ L:魔法使い = { t:名称 = 魔法使い(職業) t:要点 = 婚期を逃した,純真そうな顔 t:周辺環境 = 街角 t:評価 = 体格0,筋力-1,耐久力-1,外見0,敏捷-1,器用1,感覚2,知識2,幸運0 t:特殊 = { *魔法使いの職業カテゴリ = ,,派生職業アイドレス。 *魔法使いの位置づけ = ,,理力系。 *魔法使いの詠唱戦闘行為 = ,,詠唱戦闘行為が可能。#詠唱戦闘評価:可能:(知識+器用)÷2 *魔法使いの詠唱戦闘補正 = ,条件発動,(詠唱での)攻撃、評価+2、燃料-1万t。 *魔法使いの身上話能力 = ,任意発動,5m先までの目標に自らの人生を語ることで、<魔法使いの身上話>を付与する。 } t:→次のアイドレス = 大魔法使い(職業),風を追う者(職業),海法紀光(ACE) } L:魔法使いの身上話 = { t:名称 = 魔法使いの身上話(定義) t:評価 = なし t:特殊 = { *魔法使いの身上話の定義カテゴリ = ,,能力補正。 *魔法使いの身上話の能力補正 = ,,感覚、評価-4。 *魔法使いの身上話の特殊効果 = ,,人間相手なら泣かせて前を見えなくさせることができる。 *魔法使いの身上話の効果制限 = ,,魔法使い、アラダである場合は効果がない。 *魔法使いの身上話の効果時間 = ,,戦闘が終わるまでの間。 } } /*/ L:船乗り = { t:名称 = 船乗り(職業) t:要点 = 髪を隠す帽子か布,艦剣,膝までのズボン t:周辺環境 = 帆船 t:評価 = 体格1,筋力2,耐久力0,外見2,敏捷2,器用3,感覚3,知識1,幸運0 t:特殊 = { *船乗りの職業カテゴリ = ,,派生職業アイドレス。 *船乗りの位置づけ = ,,{パイロット系,コパイロット系}。 *船乗りのパイロット資格 = ,,搭乗可能(艦船系)。 *船乗りのコパイロット資格 = ,,搭乗可能(艦船系)。 *船乗りの緊急輸送能力 = ,,ボートで2万tの物資を緊急輸送することができる。 *船乗りの艦上補正 = ,条件発動,(位置づけ(艦船系)の乗り物の艦上で活動する場合での)全能力、評価+2。 } t:→次のアイドレス = 赤鮭(ACE),青カモメ(ACE),海の魔女(職業),海賊(職業),冒険家(職業) } /*/ L:高位北国人 = { t:名称 = 高位北国人(人) t:要点 = 涼しげな服装,白い肌で美しい人材,白い髪,頭環 t:周辺環境 = 雪の中の王宮 t:評価 = 体格2,筋力2,耐久力0,外見2,敏捷0,器用0,感覚1,知識1,幸運0 t:特殊 = { *高位北国人の人カテゴリ = ,,高位人アイドレス。 *高位北国人の根源力制限 = ,,着用制限(根源力:25001以上)。 *高位北国人のイベント時食料消費 = ,条件発動,(一般行為判定を伴うイベントに参加するごとに)食料-1万t。 } t:→次のアイドレス = 呪術師(職業),吟遊詩人(職業),船乗り(職業),藩王(特別職業) } チェック用URL HQボーナスと適用範囲
https://w.atwiki.jp/nwxss/pages/97.html
6話 すべきこと、したいこと -青い果実+真っ赤な誓い=『 』- 赤。 まどのそとには、朱いそらと紅いつきがうかぶ。 いえのなかは赤がべったりとそこらじゅうにあふれかえっている。 ゆかにねているのはまま、ぱぱ、せるじゅおにいちゃん、えれな。 どうしてみんなねているの? みんなこたえてくれなかった。 わたしのまえにたってるのは、うちでかってるねこ。 わたしよりもおおきなおおきな、ぱぱよりおおきなまっしろのねこ。 ゆきのひにわたしがひろったまっしろいちいさなねこは、 いまは、真っ赤にそまってた。 わたしはねこのなまえをよぶ。 「……あんじゅ?」 『シェリー……』 ねこは、そのこえをきいて―――わらった。 硬質なもの同士がこすれるような甲高い音が月匣の内に響き渡る。 魔剣と結界のいく度めかの衝突は、やはり間に火花が散るだけに終わった。 しかし、それに対して感慨を抱く暇はない。結界の内側にある<血の文書>には、自身に近づくものに対する防衛攻撃術式も内包されている。 ぱらぱらと数枚のページがめくれ、ぴたりとそれがおさまったページに書かれている文章が、小さく光を放つ。 もしもそれを読める位置にいるものがいたなら、それが攻撃魔装<ディストーション・ブレイド>の回路文であることがわかっただろう。 柊の感覚が、自分の近くの空間が歪むのを感じ取る。虚属性の魔法の発動の前触れだ。 以前ある任務で裏界第二位の大魔王に遊びでイヤというほど叩きこまれた覚えが無駄にそんな感覚を強くしてしまったという哀しい経緯があるが、今はそれが彼の命を救う。 後ろに軽くバックステップし、効果範囲から逃れる。一瞬前まで彼のいた空間が見えぬ刃によって切り裂かれるのが、ぐにゃりと歪んだ光景という形で見えた。 しかしそれに安堵している場合でもない。 「蓮司、右!」 後ろに立つノーチェが声を上げる。 その声に体が反応して右に跳ぶと、彼の左側に銀色の雨がバケツをひっくり返したように降り注ぐ。水属性の<シルバーレイン>だ。 ノーチェの助言でそれを辛くもかわした柊は、離れた距離をつめるために走る。 小さく口の中で魔剣に魔法の炎を纏わせる呪文を呟いた。彼の知る少ない魔法は、違わずその効果を発揮する。 炎を纏った魔剣を担い、裂帛の気合とともに振りぬく。 「おっ、らああぁぁっ!」 侵魔の王すら切り裂くその刃は、しかし結界の前に無力だった。 結界に傷一つつけることはできず、間に火花が舞う。 けれど、その結果に彼は一つの確信を持つ。 柊が全力ではないとはいえ、それなりに高レベルの魔剣使いの一撃にまったく意味をなさないこの防御力は異常だ。 ノーチェの魔法も柊の剣も通さず、炎も風も存在への干渉すらもまったくの無意味。そんなものが人間に作れるのなら、<血の文書>が廃れることはないはずだ。 それに、結界に斬りつける度に妙な感覚を感じていたこともある。 それらが合わさり、彼の抱いた疑念は今確信に変わっていた。 しかし、<血の文書>は剣を振り抜きそれ以上身動きのとれない柊を容赦なく襲う。 再びページがめくれ、今度は三つの節が輝いた。 同時に生まれるのは渦巻く水の奔流と、それを取り巻くいくつも連なる炎の珠。 水属性の魔装<ウォータースパイラル>と火属性の魔装<ファイアボール>の融合。対になる属性同士の魔力を、相殺させずに上手く融合させたそれが柊を襲う。 体勢上回避は不可能と判断、即座に魔剣を盾に覚悟を決める。 プラーナの開放はしない。 ただでさえこの本に半分食われた状態なのだ、一滴たりとも無駄には使えない。そんなことに使う余裕はない。それ以上に、彼は共にこの場に立つ仲間を信じている。 着弾の直前、可愛らしい声が戦場に響いた。 「<ダークバリア>!」 ノーチェの声とともに、柊の傍らに黒い球が生まれた。その球は魔法を吸い寄せ、柊への攻撃の威力を削ぐ。 もちろん、そう長くもつものではない。その球は、あまりの威力にすぐに許容量を超えぱちんと弾けた。 残った融合魔装が柊を襲う。水の流れが圧力を伴って体を叩き、時折弾けて撒き散らされる高い熱量と爆風が内側にまでダメージを与えて彼を吹き飛ばした。 転がり、ノーチェのそばまで吹き飛ばされた柊に、彼女は叫ぶ。 「蓮司!」 その声に、意外に元気そうに跳ね起きる柊。 「おう。ナイス援護、助かった」 「……意外に元気そうでありますな?」 「あの程度でへたばれるかよ。こっちは日頃魔王相手にしてんだぞ?」 「普通、魔王級と相対するのは一生に一回あるかないかだと思うでありますが……」 「うるせぇよっ!?」 とはいえダメージがないわけではない。というか、割と深刻だ。 ノーチェは黒い本を睨んだ。 <血の文書>は二人にとどめを刺すためなのか、結界によって自分に攻撃が届かないと知っているように強力な発動魔法の準備に入っていた。 柊がぼやく。 「三種類の属性に複数魔法の同時発動……あれもこれもって手出しすぎるのは器用貧乏になるもんだけどな」 「魔術師と陰陽師は同じルーンマスター系であります。魔法戦士やるよりは器用貧乏にならないでありますよ。むしろお互いの短所を補いあう分強力になるであります」 「そんなモンか。って言っても魔装つけすぎだろあれ。まともに近づくのもかなりキツいんだが」 「金に飽かせてありったけ魔装つけてるんでありましょうな。 魔法の記憶容量については、あれはもともとが『記録する』ための本でありますからページの許す限りできるのでありましょうし」 「貧乏人からするとすっげぇ腹立つ。……とはいえ、とりあえずあの結界ぶっ壊す方が先だろうな」 腹立たしいが、確かにあの結界は固い。それさえなければ、今すぐにでも<血の文書>を破壊しに行けるのだが。 だからノーチェは隣の男に聞いた。 「壊せそうでありますか?」 柊はそれに平然と答える。 「俺じゃ無理だな。魔器開放使っても壊せる気がしねぇ」 「どうするでありますかそんなのっ!?」 あっさりと無理だと言った柊が、この場で一番攻撃に特化している。 最大火力が通用しないのならあの結界を破壊する術などあるはずもない。 けれど、柊は言う。 「あれな、どうも攻撃の当たる場所に結界の構成密度を集中させるように作られてるらしい」 「と、いいますと?」 「攻撃が当たる瞬間に、あのドームみたいな結界作ってる―――なんて言うんだっけか」 「結界の構成要素でありますか?」 「あぁ、それ。それが集中するようになってる。 俺は剣で叩き斬るしかできねぇから、俺がやろうとするとよっぽどの威力叩き出さなきゃならねぇわけだ」 面の防御に見えて、実は点の防御であるため魔力を均等に張っているわけではないらしい。 それはつまり、一点の攻撃しか出来ない柊では破壊することが実質不可能であるということ。 そして、それはつまり。 「攻撃が全面から襲う範囲魔法なら、あれを壊せるということでありますな?」 「そういうことだ」 範囲に対する攻撃手段を持つノーチェなら、結界を壊すことができるということだ。 しかし、ノーチェは顔を曇らせた。 「蓮司、問題があるであります」 「なんだ?」 「わたくしが使える範囲魔法、発動魔法しかないのでありますよ」 発動魔法は、魔装と異なり呪文を詠唱して発動させる魔法だ。 その呪文の詠唱中、他の魔法を使用することはできない。つまり、防御魔法を使用することができないのだ。 そして、<血の文書>は今魔法の詠唱中。どれだけ頑張っても詠唱時間を短くする術を持たないノーチェよりも、<血の文書>の魔法の方が先に完成する。 ただでさえ妖怪を狙ってくる相手が、吸血鬼が魔法の詠唱なんて隙だらけのことをしているのを知って、狙わないはずがない。 柊が囮になるという手もあるが、相手が殺す気で放つ威力増強の限りを尽くして他人から奪ったプラーナを突っ込んだ一撃に、防御魔法のない状態で耐えられるかは疑問だ。 どうするかと柊が思案していると、これしかないか、とノーチェが呟いた。 「あんまり使いたくなかったのでありますが……蓮司もベホイミもメディアも命はってるのでありますから、やるしかないでありましょうな」 「ノーチェ、なんか考えでもあんのか?」 「一応、一個だけ方法があるであります。ただ、一つ約束してほしいでありますよ」 真剣な様子のノーチェに、柊もまた真剣な表情で頷く。 「何があっても、何が起こっても、わたくしのことを信じてほしいでありますよ。 わたくしのこれからすること、全部に意味があるであります。無駄にしないでほしいでありますよ」 「……正直よくわかんねぇが、わかった。お前を信じる」 不敵に笑って、ノーチェは言った。 「さぁ―――勝ちにいくでありますよっ!」 「おう、当たり前だ!」 「どぉりゃああぁぁぁぁっ!」 女の子としてどうなのかと思う気合の声とともに、炎を纏うベホイミの拳が重い音を立て<ミリオン>の右膝に打ち込まれる。 通常のウィザードがまともに食らえばダメージ必至のその一撃は、しかし鋼の装甲に何度も何度も打ち込まれようとも、まともに効いたようには見えない。 ベホイミはさらにそこに膝蹴りをおまけで打ち込むも、やはり巨人は揺らぎもしない。 お返しとばかりに足を持ち上げる<ミリオン>。そのままなら7mの巨人に踏み潰されることになっただろう。 しかし、彼女は一人で戦っているわけではない。 「ベホちゃん!」 後ろから走りこんでいたメディアが、ベホイミの制服を掴み―――上に投げ飛ばす。 足とすれ違いながら、ベホイミは上へと向かう。 しかしベホイミのいた場所に今いるメディアには、振り下ろされる鉄の塊を避ける方法はないはずだ。 わずかな遅滞もなく振り下ろされた鉄塊は、華奢な彼女の体を無情にも押し隠す。 ずずん、と重い音とともに砂煙が舞い上がる。 やがてその砂煙が落ちそこにあったのは、少女の無惨な姿―――ではなく、いつもの笑顔で<ミリオン>の顔を見てたたずむメディアだった。 メディアはウィザードのクラスで区分すると忍者だ。その特殊な鍛錬で可能になる体のこなしは、奇術にも見まごうほどである。 必殺の一撃をかわされ、<ミリオン>を操るブランシェリーナに動揺が走ったのか。ベホイミの行動に気がつくのに一瞬遅れた。 彼女は、<ミリオン>の拳にあるわずかな出っ張りに足をかけて、ブランシェリーナのいるコクピットに向けて巨人の表面を蹴り登っていたのだ。 漢前な雄たけびを上げ、ベホイミはコクピットに向かう。 それに気づいたブランシェリーナはベホイミが今登りつつある<ミリオン>の右腕を跳ね上げた。 足場がいきなり動いたことで、ベホイミは地面から10メートルほどの高さに放り出される。 ウィザードはこの高さから落下した程度で死んだりすることはない。 が、空中で戦闘機動ができるほど自由な動きをする能力はベホイミにはない。 つまり、空中に放り出されれば彼女は的でしかない。 その的に対して、<ミリオン>は容赦なく拳を突き出した。鋼の圧倒的な質量が、無抵抗の少女に撃ち込まれる―――その刹那。 がんがんがんっ、とけたたましい音を立てて、<ミリオン>の腕に向けて飛来したものが突き立ち、わずかに軌道がそれた。 その突き立ったものを見れば、事情をよく知らない者は誰であれ目を丸くしただろう。 錬金術の粋を尽くして作り上げられた<ミリオン>。 その腕に突き立つのは―――食事用の、磨き上げられ銀に輝くフォークとナイフ。 そんな珍妙なものを武器として投げたのは、先ほど<ミリオン>の攻撃を避けたメディアだ。 曰く、「メイドの武器はハウスキープに使うもの全部ですよ♪」とのことだ。 その、仲間の作ったチャンスを、ベホイミは逃さず掴み取る。 軌道のそれた巨大な拳に足をかけ、ブランシェリーナのいる頭に向けて駆け下りる。 その速さはまるで矢のごとく。解き放たれた矢は、後ろを向くことなく一点を見据えて駆け抜ける! 「うおおおぉぉぉぉぉっ!」 腕はすでに拳を握り、大きく振りかぶられている。 その一撃で全てぶち抜くと言わんばかりの気迫とともに、彼女はその拳を振り――― ―――ばしゅんっ!と頭の真ん中にある穴から放たれた光の筋が、彼女の体を凄まじい勢いで撃ち抜いた。 その光の勢いと威力に抗えず、ベホイミは叩き落とされるように地面に突っ込んだ。 メディアがその光景を見てさすがにあわてた。駆け寄ろうとする彼女の背に声がかかる。 『行かせると思うか?』 足を止め、メディアはしっかりと<ミリオン>と相対した。 彼女はベホイミのために時間を稼ぐため、問う。 「ブランシェリーナさん。一つ、お聞きします。 あなたがそれほど妖怪と人間の隔離にこだわるのは―――あなたのご家族が、妖怪に殺されたからですか?」 返事には、少しだけの間があった。 『……よく調べているな、ニンジャ』 「色々、顔の利く知り合いがいるもので。 リヴァル家は、20年前一夜のうちにたった一人の女の子を残してみんな亡くなっているんです。 その女の子の名前がブランシェリーナ=リヴァル。つまり、あなたです」 『その通りだ』 感情の見当たらない平坦な声が返る。 それでも今の注意はこちらに向いているようだと判断し、メディアは話を続けた。 「リヴァル家は、自分達の飼っていた猫の妖怪に侵魔が乗り移ったものに一夜の内に4人が殺されたと聞いています。 それが、あなたがこの町を壊そうとする理由ですか」 罪を突きつける審問官のように問うメディアに、相手はやはり冷淡な声で答えた。 『ちがう』 あまりに意外なその一言に、メディアがえ?と呆けたように声を漏らした。 ブランシェリーナは淡々と告げた。 『確かに、あの夜が今の私のはじまりだった。 けれど私は、妖怪に恨みを持っているからこの場にこうして立っているわけではない』 「どういう、意味ですか」 『あの夜―――私がはじめて紅い月を見た、あの静かな血の夜。 あの子は、私が拾ってきた白猫のアンジュは。私を助けたのだ』 そうして彼女は語りだす。 町の片隅で箱に入れられた白い猫との出会い。 その猫と、家族で育んだ絆。 家族もまた、その白猫が人外の存在であることを知っていながら暖かく迎えたこと。 そして―――アンジュと彼女に名づけられたその猫が、第三天使の喇叭によってもろくなった世界結界を通り抜けたエミュレイターによって『憑かれしもの』となったこと。 アンジュはエミュレイターによって自由を奪われ、その体を好き勝手に使われた。 大切に接してくれた家族達をその手で殺し、その真っ白な体を赤く血で染め、プラーナをすすり、そしてブランシェリーナの前に立った。 けれど、小さな猫は最後の最後で抗った。 自分を拾ったその小さな手を、自分の手で傷つけることだけはしたくなかった。 だからアンジュは―――自分の血で自分を赤く染めた。 ブランシェリーナは、押し殺した声で言う。 『わかるか、あの子の覚悟が。 出会ってしまった大切なものを、その手で傷つけたくないと願い、私の名を呼び、笑って死んでいったあの子の覚悟が。 ―――そんな出会いがあったから、私達は苦しい思いをした。侵魔につけこまれることになった。 繋いだ手が切り離されるという苦痛は、手が差し伸べられないよりも苦しい。 手を繋ごうとしたことが苦しみに変わるのなら、最初から繋がぬ方がいい。 妖怪は自分の場所から出ず、人間は自分の場所を守りさえすればいいのだ。そう難しいことではあるまい』 「世界中の人間の町に住む全ての妖怪を、あなた一人で全部追い出す気ですか?」 『私にそれほどの器がないことはわかっている。 だが、このような事件が何回かあれば、妖怪は人間に不信を抱く。それだけでいいのだ、ただそれだけでいい。 不信が起きればそれが広まっていくのは必然だ。その結果、妖怪と人間は己の住処に戻ることになるだろう』 だから私の邪魔をするな、とブランシェリーナはそう言った。 大切な相手がいなくなることは悲しい。だから、そんな思いをしないように私達は分かれているべきなのだと。 確かに喪失は苦しいものだ。それを味わったものならば、誰もが理解できる感情だろう。 けれど――― 「ふざけんな」 ―――その言葉に異を唱える者が、ここにいる。 少女は汚れていた。地面に叩きつけられて砂だらけで、光にやかれてところどころ焦げたようになっている制服。 けれど、その眼光はまっすぐにただ目の前の鋼鉄の箱の中にいる女を貫く。 「お前には、この町のみんながいがみあうように見えるのか」 一歩。 「お前が絆を断ち切らなきゃ、傷つけあうように見えるのか」 二歩。 「みんながみんな出会わなきゃよかったと考えると思うのか」 三歩。 メディアと肩を並べる。 「お前のやってることは、ただのテロだ」 『……なんだと』 「同情はしてやる。大事な奴が消えたら悲しいっていうのは、皆がわかるけど皆が同じ思いを抱いてるかはわからない。 けど、お前のやろうとしてることは、お前とアンジュが分かれるきっかけになったエミュレイターと同じだ。 この町のみんなの絆を、自分勝手な理由で断ち切ろうとしてるだけだ。 みんなが笑ってる今を、勝手に崩そうとしてるだけだ」 彼女は、叫ぶ。 「お前には、本当にわからなかったのかっ!? たとえ一時とはこの町で暮らしたんだろっ!この町のみんながどれだけあったかいか、どれだけ笑顔で暮らしてるか、見えなかったわけじゃないだろうっ!?」 しゃべるウサギと、一緒に歩くちびっこ教師がいた。 化け猫を、文句を言いながらも居候させる喫茶店の店主がいた。 人に慣れていないジュゴンに、優しくしてやっている高校生がいた。 水がないとたまに動きの止まるオオサンショウウオに、笑顔で水をかける少女がいた。 精霊界から来たと名乗る怪しいトカゲの言うことを聞き、魔法少女をやっている女の子がいた。 他にもたくさん、たくさん。 この何の変哲もない町の中で、妖怪と人間の絆が結ばれている。 「お前だって自分のやってることが間違ってることくらいわかってるんだろっ!? 自分がどれだけ悲しかろうが、どんな理由があろうが他人にその痛みを押しつけていい道理なんかどこにもないってことくらいっ!」 傷ついているはずの少女が出す声は、とてもそうとは思えなかった。 ただただ、この町のことを信じている少女が、この町を壊そうとする悲しみで道を外れた女の心に、打ち抜くように言葉をぶつける。 「みんな今笑ってる!未来なんかどうなるか誰にもわからない!お前が、この町のみんなの未来を勝手に決めるな! この町を―――なめるなっ!」 自身の信念を真っ向から否定され、ブランシェリーナは―――揺らいだ体を、持ち直した。 『黙れ。すでに計画ははじまっている、お前ができることなど何もない。お前の拳でできることなど何もない』 そう言って、ブランシェリーナは敵を見据えた。 『すぐに終わらせてやろう、私の敵。私の信念は、積み重ねた年月は、お前の甘言ごときに崩されはしない』 ベホイミは、自然体でその宣言に応える。 「確かに、私にはアンタを救ってやることはできない」 そう告げて、彼女は―――自身の最大の武器である拳を握る。 固く、固く握り締める。 「私にできるのは、この拳に信念を込めて握るだけ。 握った手のひらで何かが『すくえる』と思うほど、私も世間知らずじゃない」 けど、と彼女は続ける。 「握りこんだ(こんな)拳にだって、できることがある。 道に迷って泣き続けて、道を外れたと思い込んでる子供を、元の道に殴って戻すくらいはできるつもりだ」 そう言って、彼女は不敵に笑う。 目の前の鉄の塊を、道を外れた迷子であると言って。 そう侮辱する眼前の敵に、それまで凍ったようだったブランシェリーナの声に、熱がこもった。 『―――やってみろっ』 ノーチェは、魔法の詠唱を開始する。 彼女が詠うように唱え紡ぎ、力を持った言葉達が周囲のプラーナを感応させて隷属させる。 一言で事象を起こす言葉を積み重ねることで、段階を踏み、自身の望む事象へと昇華させる。それが、魔法だ。 銀の髪の一房一房が揺れ動き、月光をはねかえして楽譜のように踊る。 その美しい光景に―――<血の文書>が気づいた。 もともと妖怪に対しての攻撃を最優先させるこの魔導具が、そんな絶対の隙を見逃すはずもない。 今までその吸血鬼への攻撃を邪魔してきた魔剣使いの妨害はない。ならば、<血の文書>たる『アンジュ』がやることは一つ。 最も優先すべき命令である、それの存在理由は―――妖怪の排除に他ならない。 『アンジュ』は、用意が完了した詠唱魔法を、吸血鬼に向けて解き放つ。 ―――<フレイムレイジ>、と記された一節が、最後に光を放った。 それと同時に生み出されるのは、炎。 近くにある酸素を奪うように食らい、炎はあっという間に巨大な竜のごとくに成長する。 青い世界に突如現れた朱色の竜に、周囲の空気がわなないた。それは竜のいななきのように響き、月匣を震わせる。 炎の竜は、指定されたたった一人の少女に対して空気を焼きながら疾駆する。 そして、少女は抵抗することもなく炎に飲み込まれた。 一人にそこまでする必要がどこにあるのかわからないほどの熱量が叩きつけられ、火の粉が舞う。 あまりのエネルギーに巻き添えをくらった地面から土煙が巻き上げられたほどだ。 その力に、たかが一ウィザードが耐え切れるはずもない。 はずがない、のに。 ごう、と風が吹く。 風が、全ての砂煙を取り払う。 そこにあったのは、月を映す鏡だった。 いや、鏡というには平面ではなく波立っている。 それは、鏡と見まごうほどに美しく長く伸びて広がった銀の髪だった。 髪を括っていた二本の黒いリボンが、月を映す銀の鏡の後ろへと流れていく。 ばさりと広がったただでさえそう短くはない髪が、地面に落ちるほどに、落ちた後もさらに進むように伸び続け、やがて止まった。 赤い瞳が、らんらんと紅玉のごとくに輝きを放つ。 そこにいたのは、美しい月夜の女王だった。 彼女の祖先は、かつて人の手では倒せず、この世界そのものの力を使ってようやく倒しきれたとされる伝説の吸血鬼だ。 その吸血鬼の血は、彼女にも色濃く受け継がれている。 しかしあまりに強い力に先祖のように慢心することのないよう、彼女の一族は生まれてから死ぬまで自身の力を押さえつける枷、<拘束術式>をつけるのが掟だった。 女の髪には強い魔力が宿るとされる。ゆえに、ノーチェはその術式をリボンの形に加工し、それで髪を縛ることで自身の力を抑制していたのだ。 そもそも彼女は吸血鬼だ。 その内でも太陽の下に出ても大丈夫とされる高位の吸血鬼である。「不死の王(ノーライフ・キング)」という異名を持つ吸血鬼が、この程度で死ぬはずもない。 満月の月の光を奪うように、銀の長い髪が煌く。 彼女の手の中にある空間のゆがみが、煌きに呼応してより大きく渦巻きだす。 術式によって拘束を受けていた限界が一気に開放され、その力はゆがみをより大きく強力なものへと変えていく。 最後の一節が、紡がれた。 「―――<ディメンジョンホール>」 同時。ゆがみは虚空を渡り、標的である『アンジュ』の上へと一瞬のうちに転移する。 ノーチェの手の中で外に出るのを抑制されていたゆがみは、その檻がなくなったことで一気に開放された。 存在そのものを否定するゆがみが、周囲にあるもの全てを飲み込むために広がり、近くにあるものから存在の力を貪欲に食らっていく。 その場にあるもっとも大きく存在の力を内包する結界は、ゆがみの格好の餌だ。 ぐにゃりと。ゆがみは効率的に結界を飲み込もうと全ての方向から吸い込む方法を取った。 一点には強いものの全方向からの攻撃に、拡散された構成要素では対応し切れない。 『アンジュ』に防御用の魔法が組みこまれていたのならそれを使うことがあったのかもしれないが、なまじ厄介な結界がはれるだけにそれ以上の防御魔法を持っていない。 結界は悲鳴を上げ―――澄んだ音を立て、割れる。 ゆがみは、結界の消滅と同時に喪失が補填されきったのか、そこで消滅する。そして――― 結界が消滅すると同時に、結界を展開していた魔法陣の外縁を踏み抜く者があった。 この場にいるもう一人のウィザードは、厄介な結界がなくなったことでその力の本領を存分に発揮できる。 相棒を携え、力強く地を蹴り、一秒でも早く『アンジュ』を叩き斬るためだけに疾駆する。 そう、柊が今の今までノーチェの盾になることもなく、囮になることもなかったのは、ただ彼女の言葉を信じてこの瞬間を待ち続けたゆえに。 力強く、前へ、前へ、前へ、他に小細工を考えることもなく、ただ前へ。 振り返る意味はない。躊躇う必要もない。刃の存在意義はただ斬ることのみ。ならば、一秒でも早く。一歩でも速く。 その在り方はまさに風。そしてその在り方そのままに、彼は地面を蹴り疾駆する。その刃をもって敵を斬る、ただそのためだけに。 その脅威を感じて、思考はあれど感情はないはずの<血の文書>は、確かに戦慄した。 ブランシェリーナは結界を破られることを想定していなかった。『アンジュ』には、自身を守る術がない。ならば、この脅威に対抗する方法は脅威そのものを消すことのみ。 『アンジュ』の内の一節が輝き、迫る柊に闇の飛礫が放たれた。虚属性の魔装<ヴォーティカル・ショット>だ。 今ノーチェは自分の魔力を使いきり、柊への援護ができる状況ではない。魔法への抵抗力は低くなる。 しかし、彼の相棒はただの剣ではない。 運命を断ち切り、神すら殺してみせた、世界の危機に立ち向かい続ける一振りの刃―――すなわち、魔剣である。 柊は前より襲いくる闇の飛礫を、一薙ぎで叩き斬る。魔剣に魔法が切れないという道理はない。彼らもまた、常識の外の存在だからだ。 そして、ただ愚直なまでに前に進むその剣の担い手はその程度では止めることはできない。 その前へ進もうとする意思は、ついに一足一刀、彼の独壇場へと『アンジュ』を取り込む。 ならばやることは一つ。 プラーナを開放できるだけ開放、裂帛の気合とともに下からすくいあげるように斬撃を放つ。 その一撃は、『アンジュ』のページを掠めた。ばさり、と舞い上げられる紙。 浅い。それでは『アンジュ』の機能を完全に止めることはできない。だから『アンジュ』は一節を輝かせて炎を生み――― しかし、柊はその光景に不敵に笑った。 彼の一撃に対し、『アンジュ』自身に防御する術はない。それが今、示された。 特大の一撃はかわされたら終わりだ。これなら安心して投入できる。 柊自身のこれまでの経験が、鋭く周囲を知覚する。 『アンジュ』は魔装を放とうとする寸前。ノーチェは援護に入れない。 魔剣に本当の力を使わせてやるのなら、ここで魔法を食らうわけにはいかない。防御も回避も攻撃が遅れる。ならば、今この瞬間にしかチャンスはない。 だからこそ、全ての常識を無視し、彼は今こそ魔剣を振るう。 流れる血を介し、魔剣に自身の生命を食わせる。慣れた感覚に、さらに猛りが加速する。 残るプラーナを全部突っ込み、風が舞う。ともにある風に、さらに肉体が歓喜する。 相棒に大量の力の渦を開放させる。終わりへの予感に、さらに気分が高揚する。 ―――終わりだ。 「くらええええぇぇぇぇぇぇぇっ!」 凄まじいまでの力の渦を伴った剣は、今度こそ、生まれはじめていた炎ごと<血の文書>を両断し。 ある少女の20年の妄執と、この町の危機を力の渦が容赦なく消し飛ばした。 柊はノーチェのもとへと駆け寄る。声をかけると、彼女は不満そうな表情で腕を組んでいた。 彼女は今、戦闘が始まる前とはまったくの別人のようだった。 身に着けていたゴシックロリータの服はところどころ焦げていた。 そして、そんなことがどうでもよくなるくらいの変化がある。彼女の銀の髪は、もともとあった量の二倍ほどの長さまで伸びていた。 柊がそれに素直な感想を漏らした。 「……すっげぇなそれ。リボン外しただけでそんな伸びるもんなのか」 「わたくしのリボンは拘束術具の一種でありますからな。 伸びたら伸びっぱなしなのがイヤだったから外すのにためらったのでありますよ、わざわざ切ってからもう一度リボンで括らないといけなくなるでありますからな。 髪の毛切るお金がもったいないでありますし」 「俺らの命は床屋代と天秤にかけられたのかよっ!?」 「だから最終的には外したでありましょうっ!?」 一瞬でも躊躇われたのは事実なわけだが。 柊はため息をつき、言った。 「ノーチェ、手ぇ出せ」 「はいでありますよ?」 不思議そうな表情で差し出される小さな手。ぱん、と乾いた音を立てて、手と手が打ち合わされた。 ベホイミは、駆ける。 この世界の不条理を、20年の妄執を、目の前の馬鹿を、ただその拳で殴り飛ばすそのためだけに。 鈍重な<ミリオン>はそれに反応できない。右膝に、炎を纏った左のジャブが叩き込まれる。しかし、それではゆるぎもしないことはこれまでも同じだ。 『無駄だ』 そう言って、<ミリオン>は左足でベホイミを踏み潰そうとする。それを受ければ、いかに彼女といえど再び立つのは難しいだろう。 しかし、ブランシェリーナの手足のごとくに動くはずの己の僕にして傀儡、<ミリオン>は、ぴくりともしなかった。 突如失われた制御に何が起きているのか把握しようとすると―――月光に照らされて出来た<ミリオン>の月影に、いくつものナイフとフォークが突き立っていた。 メイドが、笑う。 「私のことも、忘れないでくださいね」 メディアの用いた忍者の秘術の一つ、<影縫いの術>だ。時間は短いが、相手の動きを封じることができる。 彼女はベホイミに呼びかける。 「ベホちゃん今です!」 「うおおおぉぉぉぉぉぉっ!」 援護を受け、全身全霊の力を込めて彼女は今までなんの反応もなかった鋼にもう一度右の拳を叩きつける。 拳で鋼を打ち抜くことは不可能だ。それが非常識と常識の対決ならばともかく、非常識同士がぶつかり合ってその条理が崩れるはずもない。 けれど、それが積み重なったとしたら話は別だ。 雨だれですらぶつけ続ければ岩に穴を穿つ。千畳の堤もアリの空けた穴から崩壊することがある。 だから彼女は諦めない。何度でも、何度でも、これが失敗しても、いつか訪れるその時まで、拳を打ちつけ続けるだろう。 そのいつかがこの時起きただけのこと。だからそれは必然。ベホイミの思いが、鋼の巨人の足を今こそ打ち砕く! 右足が砕かれ、大きくバランスを崩す<ミリオン>。 地面に崩れ落ちようとするその巨人の上を、ベホイミが走りぬける。 頑なに自分の内に閉じこもる馬鹿を殴り飛ばすために、ただひたすら駆け抜ける。 それを認識したブランシェリーナが、不安定になっているコクピットの中で、ビーム用のトリガーを手探りで探す。先ほどベホイミを吹き飛ばした例の兵器だ。 もともと狭いコクピット内だ、すぐにそれは見つかった。そして彼女は確信する。 ―――こちらの方が、早い。 当然といえば当然だ。 コクピットまで行って拳を振りかぶり相手を殴り倒すよりも、トリガーに手をかけて引く方が断然早い。 それは、幾多の戦場を渡ってきたベホイミにも直感的に理解できた。 そのままでは届かない。その拳は、思いは、届かないまま終わる。 そんなことが、認められるか。 認めてたまるか。認めたりしない。認めてなんかやるもんか。 湧き上がった想いが、彼女をさらに加速させる。 ウィザードとしての全てをつぎ込んで加速する彼女の拳は―――やはり、それでも一歩届かない。 どれだけの思いをつぎ込もうとも、どれだけの力をつぎ込もうとも、やはりそれは届かない。 それが彼女の限界だ。全ての力をつぎ込んでも届かない、それが限界と呼ばれるものだ。 (限界<おまえ>は、) 限界にぶち当たった時、人は諦める。そこに絶望を抱く。 けれど彼女は知っている。 諦めたくないものがある。代わりのきかないものがある。大切な輝けるような日々を。 (邪魔だ) 今ベホイミの前に立ちはだかるのは鋼の巨人ではない。ブランシェリーナでもない。 彼女の行く手を遮るのは、彼女自身の限界のみ。 ウィザードとしての全力では届かない。 (そこから、) けれど彼女は諦めたくなんかない。目の前を覆う壁に向け、全力のその先を求め続けた。 (私の目の前からっ―――) だからこそ、その指先は彼女の限界の壁に届いた。 触れられるのなら壊せるも道理。 彼女のクラスは竜使い、己の体に眠る力と意思を信じて拳を握り、全てをぶち抜く魔法使い。魔法使いが、たかが自身の常識(げんかい)を超えられぬはずはない。 「ど、けええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」 その意思が、彼女の纏う制服―――コンバットスーツにかけられていたリミッター(げんかい)を吹っ飛ばした。 ベホイミの体のことを考えてかけられているリミッターが消えたことで、彼女は彼女の体を破壊しながらもさらなる力を手に入れる。 その彼女の覚悟こそが。意思で限界をねじ伏せた覚悟こそが、届かぬはずのその一歩を埋める―――! 『な』 ブランシェリーナがトリガーに指をかけそれを引くよりも、突如おかしい加速を見せたベホイミに驚くよりもなお速く。 固く握り締められた拳がコクピットを一撃で破砕し―――中にいた女を、思い切り殴り飛ばして背後の壁を突き抜けながら空を舞わせた。 こうして、この町は守られた。 そして、間違えて歩き続けた女は、この町を守る魔法少女にぶっとばされてここでその歩みを止めた。 それだけの、お話。 ← Prev Next →
https://w.atwiki.jp/legends/pages/4376.html
………ひらひら ひらひらと 漆黒の蝶が現れるのは、カラミティが現れる、合図 どこからか、その蝶が現れ、それに気づいた直後 蝶は一か所に集まり、そして、カラミティの姿へと変わっていく ……この様子を見るのにも、ずいぶんと慣れてしまった気がする 「あ、影守と希もいたか。ちょうどいいな」 「……あぁ、なんだか嫌な予感がして、美緒さんのところに来ていて良かったよ」 美緒の部屋に姿を現したカラミティ それを軽く睨みつつ、影守はやや美緒を庇うような位置に立つ そんな影守の様子に気づいているのかいないのか、カラミティはいつも通りの気楽な様子である ……この大魔法使いに、「恋人がいる女性の部屋に鍵がかかっていようが平気で入りこむは色んな意味で問題」と言っても無駄である 俺様な上にお子様だから 「カラミティ、調べると言っていた事、調べがついたのですか?」 「あぁ、ちゃんと調べさせてきたぞ!」 「自分で調べたんじゃないの?」 本日は腕だけの状態の希の言葉に、あぁ、とカラミティは頷いた それはもう、あっさりと 「腕の立つ情報屋が知り合いにいるからな。黄金たっぷり与えたらたっぷり調べてくれたぞ」 「これだから成金は」 「…カラミティの金銭感覚に関してはいつか修正するとして。とりあえず、調べてきたという情報は?」 「あぁ、これだぞ」 つい、とカラミティが杖を振る すると、ぽんぽん、と小規模な花火が発生し、それと同時に紙束が出現した ぱさぱさと、それらは美緒と影守の手に納まる 「…もうちょっと、普通に出せないのか?」 「えー、そんなのつまらないだろ?魔法ってのは地味に使うもんじゃなくて、派手に使うもんだって師匠達も言ってたぞ」 「あなたの師匠にはいつか一言言ってやらなきゃいけない気がするわ」 ぱらぱらと、カラミティが持ってきた「情報」に目を通し始める美緒と影守 希も、腕だけの状態ではあるが、影守が手にしている資料を覗き込む 相手の外見、本名、二つ名 現在わかっているだけの能力、そこから推定される正体 ……本当、よく調べがついたものだ もし、個人レベルの情報屋ならば、何らかの都市伝説と契約している可能性を疑いたいどころだ (それこそ、「アカシックレコード」の契約者か………とでもな) 小さく苦笑し、無駄な考えを追い払う そして……うん?と、とある資料を見て、手を止めた 「…おい、カラミティ」 「ん、何だ?」 「その……一人、見覚えのない人物が混じっているように見えます。いえ、目元を隠されているうえ、顔に札を大量にはられた姿ではありますが……以前、あなたが鏡に映しだした中には、いなかったかと」 美緒も、気づいた …そう カラミティが持ってきた「13使徒」の資料の、中に まったく、見覚えのない人間の姿があったのだ いや、人間と呼んでいいかどうかすら、怪しい その外見は、美緒が口にした通りなのだから \「あぁ、そいつか?そういえば、前は棺桶しか映らなかったからな。外に出てなかったから」 「……!そういえば、一人、棺桶を担いでいた男の方がいましたね」 「あの棺桶の中にいた、と…?」 その者のデータに目を通す 「ジャバヴォック」 サミュエル 推定される能力は…炎熱関係の攻撃能力、広範囲へのほぼ同時攻撃…これは、配下となる何かを召還している可能性有 目撃例から、推定される正体は…… 「……待て、これはちょっと、シャレにならなくないか?いや、「終末の火」 レティ・ルーニーとやらの推定正体も十分シャレにならないが」 「そうか?そいつくらいなら、俺様の素敵な魔法でどうにかなるぞ?」 「…なんでも自分基準で考えないでよ」 希が突っ込む …影守の言うとおりなのだ サミュエルの契約都市伝説、正直、シャレにならない …いや 「13使徒」はほぼ全員、シャレにならない存在と契約している そう言ってもいいだろう ヴァレンタインとニーナは除くが 「この、ゲルトラウデと言う女性のみ、能力の詳細がわからないのが不気味ですね…」 「前線に全然出てこねぇんだと、そいつ。影に隠れていて、何やってんのかわかんねぇんだろ。まぁ、もうちょっと探らせてみるけどな」 「……まさかだが、明日も来る気か」 「?また情報手に入ったら、すぐ来るぞ?」 駄目なのか?と首をかしげるカラミティ この男、これでも美緒と影守の恋愛を応援している 心から応援している ただし、気遣いが足りないうえに、デリカシーと呼べるものはほぼ持ち合わせていない 悪魔に育てられた男にそんなもん期待するのが間違っているのかもしれないが 「まぁ、大丈夫だぞ。どんな奴が出ようとも、俺様が素敵な魔法で殺してやるから!!」 「甘ったるい殺し方は勘弁してよ?血の匂いは平気だけど、それにお菓子のにおいが混じるとあんなにひどいとは思わなかったわ」 「そうなのか?あれ、面白いぞ?」 「やめろ、快楽殺人鬼と殺しをためらわない魔法使いの会話とか、グロカオスの予感しかしない」 己の契約都市伝説と空気読まない魔法使いの会話が嫌な方向に流れるのを押しとどめつつ 影守は真剣に、資料に目を通していく …この中に、己が戦うべき相手はいるかどうか それを、さらにさらに、見極めるように to be … ? 前ページ次ページ連載 - 我が願いに踊れ贄共
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8461.html
前ページ次ページルイズと夜闇の魔法使い ほぼ一日中グリフォンを走らせていたこともあり、ルイズ達は陽が沈みきった頃合に港町ラ・ローシェルに辿り着くことができた。 幻獣を世話できる貴族御用達の宿で手続きを済ませると、三人はアルビオン行きの船を都合するべく『桟橋』へと向かう。 『桟橋』の窓口でワルドがその旨を伝えると、返ってきた答えはこうだった。 「……船が出せないだと?」 ワルドが眼を細めてそう言うと、いかにも事務職らしい、細表の男は僅かに怯えた表情を見せた。 「は、はい。少々事情がありまして」 「スヴェルの夜だというのだろう? その分の料金は上乗せする。言い値でも構わん。今すぐ出せるフネを手配してくれ」 凄むようにデスクを指で叩き、ワルドが促した。 しかし男は首を左右に振ると、申し訳なさそうに口を開いた。 「いえ、それとは別に事情がありまして。とにかく、来週……次の虚無の曜日にならないとどのフネも出せません。……というか、」 出さないでしょう、と彼は萎縮交じりに漏らした。 「ちょっと、どういう事なのよ。来週までフネが出ないなんていくらなんでもおかしいわ」 隣に控えていたルイズが身を乗り出して男に詰め寄ると、同じ貴族とはいえ女の子を相手にしたためかいくらか緊張を和らげた男が頭をかきながら答える。 「……『凶鳥(フレスヴェルグ)』が出るんです」 「『凶鳥』?」 ルイズはワルドを見上げるが、彼はルイズに眼をやると肩を竦めて見せる。どうやら知らないらしい。 改めて彼女が男に向き直ると、彼は嘆息しながら語り始めた。 ――約三ヶ月ほど前から、アルビオンを行き来するフネが消息を絶つという事件が相次いで発生した。 そしてその一週間ほど後から、そのフネの航路上にある山野やトリステイン沿岸で消息不明のフネの残骸や積荷などが発見されだしたのだ。 乱気流などが起きるような天候の変化はなかったし、フネを酷使して整備が不十分だったという事もない。 事故が起こる要因はほぼ存在せず――何よりもそれが起こる件数が多すぎる。 つまりは、アルビオンに向かう……あるいはアルビオンから来るフネを狙って襲撃する『何か』が存在しているのだ。 「それが『凶鳥』とやらか。空賊の類か?」 ワルドが顎に手を添えて呟くと、受付の男は力なく首を振って否定する。 「おそらくないでしょう。その、不謹慎な言い方になりますが、陸の盗賊と違って海賊や空賊は『紳士的』ですから」 空や海ではその乗るフネが沈めばその乗員が助かる可能性は限りなく低くなる。 そんな場所で生きる『船乗り』の矜持とでもいうのだろうか、海賊や空賊は他のフネを襲撃し略奪はしても沈めることはほとんどないのだ。 かつてトリステイン・ガリア間の航路を荒らし船舶を沈めていた悪逆極まった海賊が、別の派閥の海賊達によって沈められるという事例すら存在している。 ゆえに通常では、航海中に賊の類に襲われた場合はよほど防衛に自信がない限りは、大人しく捕まってしまった方が命を守る観点で言えば陸上のそれよりも安全なのだ。 「そもそも、ソイツは略奪だとか要求だとかは一切ないらしいですよ」 空の上で行なわれる凶行ゆえに生存者はほとんどいないが、奇跡的に生き残ったメイジの話によるとソレは唐突に現れてただ一方的にフネを襲撃し、そして一方的に蹂躙したのだという。 混乱した状況ゆえにソレが具体的にどのようなモノであるのかも杳として知れない。 ただ、生き残ったメイジが沈んでいくフネの中から、不可思議な光の尾を曳いて飛び去るソレの姿を見ていたそうだ。 ゆえに付いた字名が『凶鳥(フレスヴェルグ)』なのである。 「……飛び去る?」 奇妙な言い回しにルイズが首を捻ると、男は小さく首を振って肩を竦めて見せる。 「らしいです。もっとも、そのメイジは精神的にかなりキてたそうで……いくらメイジとはいえ地上数千メイルに身一つで放り出されたんですから無理もないですが」 「確かにぞっとしないな……」 「アルビオンで反乱起こしてる貴族派……レコン何とか言う奴等の新兵器なんじゃないかって噂ですけど。 どっちのフネもお構いなしらしいですから、手の打ちようがありません」 「……どちらも? それは貴族派にも物を流しているという事か?」 ワルドが眼を光らせて言うと、男はあっと呻いて顔を青ざめさせた。 無言で睨みつけるワルドに男はせわしなく視線を彷徨わせたが、やがて開き直ったように上擦った声を上げた。 「と、とにかく! 他の港はともかくここのフネは週一で船隊を組んで動かすことにしてるんですよ! 軍が護衛をよこしてくれりゃあそんな事せずにすむんですけどね!」 なかば逆切れのように男がワルドに向かって叫ぶと、所属はともかく軍に身を置く彼は忌々しげに舌打ちするだけで男から眼を切った。 「どうしよう……来週まで待ってたら間に合わないわ」 つい先日週が明けたばかりなので、次の虚無の曜日はあと四日ほどもある。 それまで足止めされていては柊達に追いつくどころか王党派自体が戦争に敗れなくなってしまいかねない。 ルイズが不安げに漏らすと、それまで脇に控えていたエリスがおずおずと声を上げた。 「あ、あの……私達が乗ってきたグリフォンではアルビオンに行けないんですか?」 エリス個人としては足止めされるのはむしろ願ったりといった所なのであるが、三人の総意としてアルビオンに行くことが決まっているのでとりあえず案を出してみる。 それを聞いたルイズは期待交じりにワルドに視線を向けたが、彼は軽く肩をすくめて首を振った。 「グリフォンでは無理だな。アルビオンから降下するのならともかく、あの高度まで上る事ができるのは竜種ぐらいだろう」 ルイズは落胆も露に肩を落とす。 ワルドはそんな彼女を宥めるように彼女の肩に手を置くと、二人の少女に向かって言った。 「二人は先に宿に戻っていてくれ。一日中飛び続けて疲れているだろうし、食事もまだ取っていないからね」 「……ワルド?」 「停泊しているフネの方に直接かけあってみるよ。ここで息巻いていても話にならない」 「え。いや、しかしそれは……」 話を聞いていた受付の男は僅かに尻込みしながら呻いたが、ワルドは彼を睨みつけた後これ見よがしに腰に差した杖に軽く手を置いてみせる。 顔面を青くして凍りついた男に、彼は低い声で漏らした。 「あいにく我々は物見遊山でアルビオンに渡る訳ではないのだ。さっさと案内してもらおう」 ※ ※ ※ その後ルイズとエリスはワルドに押し切られる形で『桟橋』を後にすることになった。 宿に戻って食事を取り、二人は部屋へと上がる。 ワルドの計らいで二人は相部屋だったが、状況や経緯もあいまって二人はほとんど会話をしなかった。 エリスはソファに座り込んでただじっと床を見続け、ルイズは窓際の椅子から町並みをじっと見続けていた。 お互いに顔をあわせることはほとんどなかった。 ただ、互いに互いを気にはしているようで時折ちらちらと相手の様子を疑い、稀に視線が合ってしまい慌てて目をそらすという気まずい空気が充満していた。 一種の拷問にも近い時間がどれほど流れたのだろうか、その空気に耐えられなくなったのかルイズが大きく嘆息してエリスに声をかけた。 「……まだアルビオンに行くの、反対なの?」 エリスははっとしてルイズを見やり、僅かに視線を彷徨わせた後ぽつりと返す。 「正直に言えば、反対です。私達が追いかけなくても柊先輩ならちゃんと任務を果たしてくれますから……」 それを聞くとルイズは端正な眉を軽く持ち上げ、やや表情を硬くする。 「……わたしは、貴女ほどヒイラギに信頼を寄せている訳じゃないの。そりゃあ確かに、フーケのゴーレムを倒したりして強いっていうのは認めるけど。 でもこの国の将来を左右するほどの任務をアイツ一人に任せる事なんてできないわ」 「けど、王女様――王女殿下は、柊先輩に任せるっていってたじゃないですか」 「う」 ルイズは言葉を詰まらせてしまった。 エリスの言う通り、王女たるアンリエッタの判断がそうであるならその臣下たるルイズが異を挟むことなどできようはずがない。 彼女にそうするよういったフール=ムールも王家と浅からぬ仲にあり常人を越える存在である事はわかっている。 論議をこねるとルイズの方に分がなくなってしまうのだ。 ルイズは苛立たしげに眉根を寄せどうにか反論しようとするが、上手い言葉を見繕えず口をぱくぱくと動かすことしかできなかった。 じっとこちらを見つめてくるエリスの視線から逃げるように明後日の方向を見やり、ぐっと唇を噛んで――ルイズは諦めた。 「……水のルビー」 「え?」 「姫様がヒイラギに渡した指輪。貴女も見たでしょ?」 「はい。それは見ましたけど……?」 なぜ今になってそれが出てきたのか分からずエリスは首を捻ってしまった。 ルイズは眼をそらしたまま唇を尖らせて言葉を続ける。 「あの指輪が、わたしが虚無の系統に目覚めるために必要なの……多分」 あれが出てこないまま王女の委任、という事になっていればルイズも憤懣やる方ないまでも同行するのを諦めていたかもしれない。 しかし、普通に生活を送っていればまず接触する機会がないだろうそれを眼前に出されてしまった事で引く事ができなくなってしまったのだ。 その情報源が奇しくもアンリエッタが訪れる発端となったフール=ムールなのだから、なおさらその信憑性が高まってしまった。 これが彼女の言の通りの『巡り合わせ』なのだ、絶対に逃すわけにはいかない。 「な……だったら何でそう言ってくれなかったんですか!?」 ルイズの言葉を聞いたエリスは思わず立ち上がり、彼女に一歩詰め寄った。 するとルイズは気圧されたように身を反らし、エリスに眼をあわせないままばつが悪そうに漏らす。 「だ、だって、これはわたしの問題だし……」 今までずっと一人でそうやってきたのだ。 他人に頼るのは彼女の矜持が許さなかったし、そもそも『ゼロ』と呼ばれ嘲られてきた彼女にはそんな風に頼れる相手など実家にいる姉以外に誰もいなかった。 「それならなおさらあの時言ってた方がよかったじゃないですか! それなら柊先輩だって反対しませんでしたよ!?」 「そ、そんなのわかんないわよ!」 「わかります! そういう事情があるんなら柊先輩だって、私だって反対はしません!」 「えっ」 物凄い剣幕で迫るエリスが放った言葉に、ルイズは思わず呆気に取られた声を出した。 眼を丸めたルイズを見て少し落ち着きを取り戻したのか、エリスは大きく息を吐いてルイズの手を取った。 「ワルドさんの言ってた貴族の誇りとかは正直まだよくわかりませんけど……ルイズさんが魔法を使えるようになりたいっていうのは先輩も私もちゃんとわかってます。 だから……反対なんてする訳ないじゃないですか」 「……」 ルイズは言葉に詰まってしまった。 詰まったのは喉に言葉が引っかかっただけではなく、胸の奥にも言葉にできない何かが詰まってしまったからだ。 真摯に見つめてくるエリスの眼がなんだか妙に直視しにくい。 そういう視線を向けられた事があるのは、実家にいる姉のカトレアに見つめられた時ぐらいだ。 彼女にそうされた時は大抵無性に抱きつきたくなってしまうのだが、同年代のエリスにそうするのは流石に恥ずかしかった。 ルイズは困ったように眉根を寄せて視線をさまよわせ、逃げるように眼を反らした後口を尖らせた。 そして努めて平静を装って声を絞り出す。 「ま、まあ、何も言わなかったことについては謝ってあげるわ。でも、あんた達に言ったところで何かわかるとも思えなかったし……」 「それは……確かにそうですけど」 ハルケギニアの事をろくに知らない柊やエリスがそれを打ち明けられても満足に応えられることはないだろう。 実際に水のルビーがでてくるなどという事態を想定する事などできるはずもない。 お互いになんだか気まずくなって沈黙が漂ってしまった。 そんな空気を誤魔化すようにエリスは口を開いた。 「と、とにかく、そういう事情があったんなら私はもう反対しません。ルイズさんにとってもチャンスなんですから」 「エリス……」 ようやく同意が得られてルイズの顔に少しだけ喜色が浮かんだ。 そんな彼女に向かって、エリスは手を差し出した。 「ですから、とりあえず柊先輩に連絡を取りましょう」 「え?」 差し出された手が没収した0-Phoneを要求している事に気付いてルイズは反射的に懐に手を伸ばした。 しかしそれはエリスに0-Phoneを渡すためではなく―― 「そ、それはイヤ」 「えぇ!?」 ルイズは後ずさってエリスから距離を取り、身を隠すように背を丸めた。 「なんでですか!? 事情を話せば柊先輩は反対しないって言ったじゃないですか!」 「い、今更アイツにおもねって合流したいとか言うの!? イヤよそんなの、恥ずかしい!!」 「は、恥ずかしいとかそんなんじゃなくて! 黙って追いかけるよりも連絡取って合流した方が早いし安全ですし!」 「そんな事しなくたってワルドも一緒にいるし、目的地も同じなんだし、大丈夫よ!」 「合流した方がもっと大丈夫ですよ!」 「ダメ! 絶対いやーっ!!」 子供のような駄々に焦れてエリスが詰め寄ると、ルイズは猫のように逃げ出しそうとする。 反射的にエリスは手を伸ばしてルイズの纏うマントの端を掴み、お互いに引っ張られる格好になってもつれるようにベッドに倒れ込んだ。 「ルイズさんが話せないなら私が話しますから! 0-Phone返してくださいっ!」 「いやだったら――ひゃん!? どこ触ってんのよぉ!!」 「ご、ごめんなさ……きゃあっ!?」 二人して奇妙な悲鳴を上げながらベッドの上で押し合い圧し合いを繰り返す。 そんな風にしていると不意にやや強い調子でドアが叩かれた。 絡み合ったルイズとエリスは飛び上がらんばかりに身体を強張らせると慌てて身体を離しドアに眼を向けた。 少しだけの静寂の後、ドアの向こうからワルドの声が聞こえた。 「……すまない。少しいいかな」 「は、はいっ!」 エリスがわたわたとベッドを降りてドアを開けると、帽子を目深に被ったワルドが所在なさげに立ち尽くしていた。 「一応ノックはしていたのだが……取り込み中だったかな」 「い、いえ、大丈夫です……!」 二人は頬を赤く染め、慌てて乱れた服や髪を整え始めた。 頃合を見計らうとワルドは気を取り直すように深呼吸し、話を切り出した。 「フネの件は話がついたよ。少々荒っぽくなってしまったが」 「あ、荒っぽくってまさか……」 「流石に刃傷沙汰を起こすことはないよ。ただまあ、恫喝と言われれば反論の余地はないがね」 不安そうに見つめるルイズとエリスに彼は肩を竦めて苦笑を漏らした。 安堵の表情を浮かべた二人にワルドは続ける。 「とにかく、フネの手配はできた。明日の夜明けと共に出航するから、今の内に休んでおいた方がいい。向こうに着いたらゆっくり休める保障がないからな」 「……わかったわ」 頷いたルイズにワルドは満足気に一つ頷くと、次いでエリスに眼を向けた。 そして彼は帽子を脱いで胸に当てると、恭しい態度で彼女に言う。 「ミス・シホウ」 「は、はい」 「すまないが、少々御主人を借りてもよろしいかな?」 「……えっ?」 「ワ、ワルド?」 「婚約者との十年ぶりの再会を祝う暇もなかったからね。少しゆっくりと話をしたいんだ」 「えっ、と。わ、私は構いませんけど……」 僅かに頬を染めてエリスがルイズを振り向くと、彼女はエリスに更に輪をかけたように顔を紅潮させ視線をあちこちに彷徨わせた。 そういう流れだとルイズがそう考えるのも無理はないし、実際エリスもそう考えてルイズとワルドを交互に見やる。 するとワルドは闊達とした笑いを上げて大仰に手を広げてみせた。 「ちょっと話をするだけさ。式も挙げないうちに手を出して君の御両親に殺されたくはないからね」 「わ、わかったわ」 砕けた調子で言うワルドに、ルイズは少し恥じ入ったようにそう言うとエリスに眼を向けた。 「それじゃ、エリス……」 「は、はい。行ってらっしゃい」 二人の事なのでエリスがどうこうする権利もなく、彼女は半ば呆気に取られたように返すしかなかった。 ワルドは礼に則った態度でエリスの手を取り甲に口付けると、しきりに髪を撫でつけながら歩いてきたルイズを促して部屋を後にした。 エリスは二人が退出した後も、閉じられたドアをしばしぼんやりと見つめ続けていた。 ※ ※ ※ ワルドの部屋に通されたルイズは、窓際のテーブルにある椅子に腰掛けて夜空を眺めていた。 スヴェルの夜が近い事もあり半分ほど重なり合った双月をぼんやりと見つめていると、コトリと軽い音が響く。 顔を巡らせると対面に座したワルドがテーブルに置いたグラスにワインを注いでいた。 月明かりに照らされているからだろうか、彼の落ち着いた仕草は普段接する同級生や教師、柊にもない『大人』を感じさせてルイズは思わず頬を染めて俯いてしまう。 落ち着かない気持ちで膝元の手を見つめた後、改めてワルドに眼を向けた。 するとワルドは嬉しそうに眼を細めてグラスを手に取り、ルイズも彼につられるようにグラスを手にする。 「二人に」 夜の静寂にグラスを重ねた音が沁み入るように響く。 普段なれた動作であるはずなのに、ルイズは少しだけぎこちなくワインで唇を濡らした。 正直味はまったく分からなかった。 「本当に久しぶりだね、ルイズ」 「……そうね。十年ぶり……くらいかしら」 「こうやって落ち着いて話ができたのはそれくらいだね。会っただけなら、僕が二十歳になった時が最後だったか」 「お父様から正式に管理を継いだ時だったわね」 ワルド家の爵位と領地は先代が戦死してすぐに彼が継ぐ事になったのだが、その当時ワルドはまだ若年で爵位はともかく領地の管理を一人で担いきる事は難しかった。 そこでルイズの父親であるヴァリエール公が後見となる事で彼に代わって領地の管理を行なっていたのだ。 そういった意味では彼が正式に『ワルド子爵』となったのは二十歳の時といえたが、これは事情を鑑みてもトリステインでは少々遅いくらいなのである。 「衛士隊に入ってひたすらに軍務をこなしていたからね。後見時代は勿論あれからも結局管理はジャン爺に任せっぱなしさ。 名目こそ僕のものであっても、実質的には彼こそがワルド子爵と言っても過言じゃない」 おどけたように、そして少し自嘲気味にそう言ってワルドは肩を竦めた。 思わず苦笑を漏らしてしまったルイズにワルドも同じように苦笑い、そして彼は瞑目して己が胸に手を添える。 「……だが、そのおかげで僕は今こうしてグリフォン隊隊長という地位を手に入れることができた。家格に拠ってではなく、僕自身の力に拠って。 そう誇れるくらいのことはしてきたつもりだ」 「……貴方は立派だわ」 ルイズは揺ぎ無く語る彼の姿が眩しくて、知らず顔を俯けてしまった。 目の前にいるワルドにしろ、深く語りはしないものの柊やエリスにしろ、揺ぎ無く言葉を紡げる者達は自分の中に確固たる何かを築き上げているのだろう。 だが、ルイズにはそれがなかった。 誇り高くあろうとしていても、それによって何かを成し遂げた事は一度もない。 まるで鳥の卵のようだ。殻だけが固くて、中身は酷く弱くて脆い。 それを理解できないならまだ救いがあったかもしれないが、彼女はそれを理解できていた。 だからこそ一層そういう人達に対して劣等感を抱いてしまう。 ルイズは手にしたグラスを口に付け、出かかったうらやみの言葉と一緒にワインを飲み干した。 一気に飲み込んだアルコールのせいか、体に火が付いたような熱さを感じた。 それを見届けてワルドが口を開く。 「立派ではないさ。何しろ子爵としての義務も婚約者としての責任も全て放り出した結果なのだからね」 「……やめて」 ルイズは眉を歪めて吐き出した。 親の口約束でしかない婚約者を持ち出した事ではなく、そんな台詞を言ってしまえる彼が少し不快だった。 話しかけられるほどに、何の落ち度もない彼を不快に思う自分が惨めになってくる。 だからだろうか、ルイズは少し胡乱気な仕草で頭を揺らすと漏らすように呟いた。 「……わたしは、貴方につりあうような人間じゃないわ。貴方も知ってるでしょう? わたしが昔どんな子だったのか。今どんな子なのかも、聞いた事があるんじゃないの?」 「……」 ルイズの言葉にワルドは僅かに眉を寄せて黙り込み、そんな彼を見てルイズは自嘲じみた息を漏らした。 魔法が使えない『ゼロ』のルイズ。 そんな噂が全く外に漏れないなどという事はありえない。 人の口に戸は立てられないというのは貴族の子弟が通う魔法学院でも例外ではなく――否、それゆえにむしろ広まるのは確実といってもいい。 なぜならとかく貴族と言うものは往々にして醜聞を好むものだから。 ましてそれが名門中の名門と言われるヴァリエール家のモノならば尚更、表向きにはともかく眼の届かない場所ではそれなりに広まっているだろう。 無論実家にもそれは伝わっているだろうが、なまじ事実であるだけに騒ぎ立ててもヴァリエール家自身の品格を損なうだけだ。 「……他者を貶めて悦に入る連中のことなど、気にすることはないさ」 黙りこんでしまったルイズに、ワルドは静かに声をかけた。 彼は真っ直ぐにルイズを見据えたまま、更に言葉を続ける。 「そんな噂を耳にしたことは確かにある。君が姉君達と比べられてデキが悪いと言われてたことも、知っている。 そんな時いつも中庭の池にある小舟でいじけていた事もね」 「……」 その頃の事を思い出して、ルイズは僅かに羞恥を覚えて頬を染めた。 幼い頃、ワルドの言うように姉二人と比べられては逃げ出して拗ねていた。 そんな時に決まって迎えに来てくれたのは、すぐ上の姉であるカトレアと目の前にいるワルドだった。 カトレアは自分も魔法に目覚めたのは貴女ぐらいの時だったと優しく慰めてくれた。 ワルドも優しく、しかし力強く自分の手を取って共に屋敷に戻り、親に取り成してくれた。 家族であるカトレア以外に自分を励ましてくれた唯一の青年だったワルドに、少なからず憧れと好意を抱いていたのは確かだった。 ――あの頃の記憶と同じように、目の前にいるワルドがルイズに手を差し伸ばした。 「だが、僕はあの頃からずっと感じていた。君には他人にはないモノを持っている、と。 そして君と再会した今、その予感が正しかった事……そして僕のやってきた事が間違いではないと確信した」 「え……貴方がやってきたことって……?」 「もちろん、君に相応しい男になることさ。いずれ偉大なメイジになるだろう君と共にいられるようになるために。 ――そう、例えるなら始祖ブリミルとその傍にあったガンダールヴのように」 「……!」 思わずルイズは眼を見開き、身体を強張らせてしまった。 そんな彼女の様子を単に驚きと受け取ったのか、ワルドは僅かに首を傾げて口を開く。 「知らないかい? かつて始祖ブリミルが用いたと言う伝説の使い魔の事を」 「え、ええと、それは知ってるわ。いきなりそんな大きな話を持ち出されて驚いただけ……」 内心の動揺を必死に抑えながら、しかし完全には隠すことができずルイズは少し上擦った声でそう答えた。 自分が実際にその虚無の担い手である……かもしれない事をワルドが気付いているという事はないだろうが、唐突にその話を出されて驚いたのは事実だ。 ワルドはそんなルイズの心境に気付いた風もなく、彼女を真摯に見つめたまま語りかけた。 「僕は使い魔にはなれないが、君を共にあり君を守りたいという想いは本当だよ。そのために僕はこうして力を手に入れたのだから。 君が未熟だというなら、僕が守りそして導こう。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールが在るに相応しい場所へ」 「……ワルド」 ルイズの胸の奥がジンと熱くなり、その熱が身体を巡るような感触がした。 彼は今まで一度としてルイズから眼を離す事なく、そして差し出した手を引くことはなかった。 自分を見据える視線もその言葉も力強さも偽りなく純粋なものだった。 かつての憧憬と尊敬がそのまま具現したかのような彼の姿に、喜びのような感情が湧き上がる。 ルイズはどこか熱に浮かされたようにおずおずと手を伸ばし、そして差し出された彼の手に添えた。 軽く握り返してきたその手はやはり力強く、頼もしい。 僅かに手を曳かれて彼女の身体が前に傾いだ。 なんとはなしに浮かんだ予感に彼女はほんの僅かに眉を寄せ、しかし瞳を潤ませてワルドを呆と待ち受ける。 月明かりに照らされた二つの影がゆっくりと近づき―― 「……!」 ルイズははっと眼を見開き、同時にワルドから手を離し慌ててその場から後ずさった。 彼女は椅子を蹴倒したことにも気付かず、驚きに眼を丸くしたワルドをしばし見やってから、顔を真っ赤に染めて呻く。 「あ、ご、ごめんなさい。けど、その、やっぱり、久しぶりに会ったばかりだから、まだ早いんじゃないかって……!」 どこか呆気にとられている風のワルドに見つめられてルイズは更に取り乱し、手をばたばたと動かした。 「早いと言えば明日も早いし、エリスも待ってるから、その、えと……だから……!」 混乱して上手く言葉を出せずに右往左往する彼女の姿を見て、ワルドは苦笑を漏らした。 「……そうだね。再会してその日に、ではいくらなんでも早すぎたかもしれないな。無粋な事をしてしまった」 彼は席から立つとゆっくりとルイズに歩み寄った。 僅かに身を強張らせた彼女に、しかしワルドは優しく彼女のピンクブロンドの頭を撫で付けると宥めるように言う。 「だが僕の気持ちは正真正銘本物だよ。だから、君も考えてくれると嬉しい。この任務を終えたら、もう一度聞こう。今度はちゃんとした形式の言葉でね」 「……」 その言葉がどういう意味であるかを理解したルイズの顔が再び朱に染まった。 彼女は逃げるように彼の元から離れると、そのまま入口の方に駆けていく。 淑女らしからぬ品のない動きだったが、今の彼女はそんな事を気にしていられる心境ではなかった。 「おやすみ、ルイズ」 「お、おやすみなさい、ワルド」 部屋を出る間際に投げかけられた声に反射的にそう言うのが精一杯だった。 ルイズはワルドの顔を見ることさえできずに部屋を後にした。 ルイズが去り一人になった部屋の中でワルドはしばし彼女が出て行った扉をじっと見つめていた。 そして彼はふっと息を吐くと踵を返し、今まで二人が座っていたテーブルに歩を進める。 置きっぱなしになっていた自分のグラスを手に取り一気にそれを飲み干すと、次いで彼はルイズが空けたグラスに眼を移した。 「……まだ早い、か」 そんな呟きは彼以外に届くことはなく、窓から落ちる月明かりと共に消えていった。 前ページ次ページルイズと夜闇の魔法使い
https://w.atwiki.jp/hengtouhou/pages/825.html
モンスター/人間 普通の魔法使い『霧雨 魔理沙』/Kirisame Marisa (L.Dark p; ) === Num 1227 Lev 1 Rar 3 Spd +0 Hp 1 Ac 10 Exp 10 彼女は通常地下 1 階で出現し、普通の速さで動いている。 この人間を倒すことは1 レベルのキャラクタにとって 約3.33 ポイントの経験となる。 彼女は空を飛んでいる。 彼女は弾幕を放って攻撃することがある。 彼女はドアを開け、ドアを打ち破ることができる。 彼女は破邪の耐性を持っている。 彼女は進化しない。 彼女は侵入者を見過ごしがちであるが、 100 フィート先から侵入者に気付くことがある。 彼女は 1d1 のダメージで攻撃する。 雑感 階層に応じた強さになるユニークの一人。詳細は→霊夢と魔理沙 名前
https://w.atwiki.jp/daydawn/pages/1100.html
重要人物 5王国と魔法使い連盟所属の重要人物。 重要人物エルム・ハリス=シェローニ エオル・ブラムス=ロンベキア 長谷川 和人(はせがわ かずと) アズマ・クリフト キャラテンプレート(名前) エルム・ハリス=シェローニ 性別:男性 年齢:28 種族:魔族 立場:フェクス大蔵院の賢人の一人 「貴様達には荷が重かろう。どうしてもやるというのであれば、止めはせぬが。」 「なるほど、凡夫にしては良い働きをする。評価を訂正しておこう。」 ランデルと共同で認証結界装置を作成した、フェクス大蔵院所属の賢人の一人。 才気溢れる人物であり技術面の信頼は厚いが、性格面に難が有り才無き者を見下す傾向にある。 その為現地で魔法使いになった人間をあまり信用していない。 同時に、才を見せれば認める人柄でもある。認めた相手に対しては相応の態度で接する。 基本的にはランデル本部にいる。 エオル・ブラムス=ロンベキア 性別:男性 年齢:29 種族:魔族 立場:魔法使い連盟所属の人事担当官 「要件は手短に頼もう。仕事がまだ残っておるのでな。」 「老けて見える?ハッハッハ、そう見えておるのならばそれで良い。」 魔法使い連盟所属の人事担当官。主に魔法使いの登録に必要な手続きを請け負っている。 一度見た人間の顔は忘れない強固な記憶能力を保持しているが、全ての人間に目を通せているわけではない。 老けて見えるが歳は29。本人曰く『老け顔だからな』との事。 常に仕事に奔走しており、ランデル本部と支部を行き来している事が多い。 長谷川 和人(はせがわ かずと) 性別:男性 年齢:24 種族:幻想種 立場:魔法使い連盟所属の事務担当官 「うーっし。その物資は本部に、こいつは聖楼総合病院にだ。後は適当に。」 「っつーわけで依頼だ依頼。パッパと終わらせて暖かい布団で眠るとしようや。」 魔法使い連盟所属の事務担当官。物資の輸送や管理といった事務的な仕事を主体としている。 魔導教練支部で座学の講師をする事もあるが、基本的に仕事に対して一定以上のやる気は出さない。 PC達に対しては割とフランクに接しつつ、必要とあれば依頼を行っている。 魔導教練支部とランデル支部のどちらかにいる事が多い。時々物資集積所に顔を出している。 アズマ・クリフト 性別:男性 年齢:26 種族:人間 立場:バリエル探究会所属の研究者 「プレイライトの技術を研究するためにきたんだ。」 「申し訳ないんだが、この依頼を受けて貰えないか?」 非常時故にバリエル探究会から派遣されてきた魔法使い。 情報収集とプレイライトの技術の研究を主体に「ロゴス」に関連する仕事を一手に引き受けている。 また、魔獣と異界についての研究にも携わっているのもあり、その手の依頼をすることもある。 行動範囲が広く、ランデル支部や天文台、ランデル本部等を主体に行動している。 キャラテンプレート(名前) 性別: 年齢: 種族: 立場: 「せりふ」 説明