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【元ネタ】史実 【CLASS】キャスター 【マスター】 【真名】大原五郎大夫安綱 【性別】男性 【身長・体重】161cm・55kg 【属性】中立・中庸 【ステータス】筋力D 耐久D 敏捷E 魔力D 幸運C 宝具A 【クラス別スキル】 陣地作成:D 自らに有利な陣地を作り出す。 しかしキャスターが作成するのは、ただ鋼を鍛えるための"鍛冶場"である。 道具作成(偽):D+++ 魔力を帯びた器具を作成する。 本来魔術師ではないキャスターはこのスキルを持ち得ないが、宝具の性質によりこのスキルと同等の能力を得ている。 ただしキャスターは基本的には自身の宝具のためにしかこのスキルを用いない。 【固有スキル】 一意専心:B 一つの物事に没頭し、超人的な集中力を見せる。 キャスターの場合、金属の鍛造といった行為に対して発揮される。道具作成スキルに対するプラス補正として働く。 【宝具】 『血吸(ちすい)』 ランク:C+ 種別:対人宝具 レンジ:1~2 最大捕捉:1人 キャスターの生前の傑作。正確にはそのものではなく、サーヴァントとしての現界後に彼が鍛えた刀剣のうち最も完成度の高い一振りが宝具としてこの銘を受け継ぐことになる。 斬った相手の魔力を吸収し攻撃力に加算する効果がある。 『童子切(どうじきり)』 ランク:A 種別:対魔宝具 レンジ:1~4 最大捕捉:1~6人 上記宝具の更なる解放形態、後年に改銘された対魔剣としての側面。 魔性特性を持つ者に対して絶大な特攻効果を発揮する。また所持者にDランク相当分の「対魔力」を上乗せし、物体に掛けられた呪術そのものを物理的に切断することでそれによるバッドステータスをキャンセルすることが可能。 更にこの銘の所以である使用者に由来して、この宝具自体が最大でAランク以下の「魔力放出(雷)」と同様の効果を発揮する。 【Weapon】 『鍛治道具一式』 【解説】 平安中期、伯耆国の刀工。 日本刀がそれ以前の直刀から現在思い起こされる湾刀へと移行し始めた頃の人物。一説には彼が反りのある日本刀を発明したとも。 大江山の鬼退治で源頼光が酒呑童子の首を切った時に使ったという「童子切」は彼の作品として知られる。 また、渡辺綱が一条戻橋に現れる鬼の腕を切ったと伝えられる「鬼切(髭切)」もまた、彼の作である。(ちなみにこの時斬ったとされる宇治の橋姫の逸話が羅生門の鬼、延いては茨木童子にまで混同されているのは後世の謡曲の影響による。) 逸話によればこの両振りは坂上田麻呂に奉じられ、鈴鹿御前との戦いに振るわれる。その後伊勢に奉納され、のちに参詣した源頼光の手に渡り、鬼切は渡辺綱へと授けられた。 その後源氏代々の宝刀となるが、それからも天下の名物として多くの者の手を渡り歩くこととなる。 特に鬼切は伝承に伴って呼称にも混乱が見られ、別の刀の逸話も含めて次々と逸話が付加されていった形だろう。 安綱とされる人物は数代いたとされるが、サーヴァントとして現れるのはその内のいづれか一人。各々人格は異なるが、継承された技術は統合されている。 ある並行世界で観測された同じ刀工のサーヴァントとは違い、クラスも相まって彼自身はあくまで刀を打つ事以外は専門外である。どうにかマスターが戦うか、他に戦力の確保が必要となる。
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【元ネタ】Fate/EXTRA CCC 【CLASS】アルターエゴ M 【マスター】BB 【真名】パッションリップ 【性別】女性 【身長・体重】156cm・1t 【属性】秩序・中庸 【ステータス】筋力A+ 耐久A 敏捷C 魔力B 幸運E 宝具C 【クラス別スキル】 トラッシュ&クラッシュ:EX id_es(イデス)と呼ばれる、アルターエゴたちが生まれながらに持つ特殊能力。 スキル『怪力』から進化したチートスキル。 どれほど巨大な容量であろうと“手に包んでしまえるもの”なら何であれその爪で潰し、 圧縮する事ができる。 圧縮されたものは五センチ四方のキューブとなるが、その質量は圧縮前の十分の一ほどしか 軽量化できない。 圧縮したものは、以後ダストデータとして扱われる。 圧縮できるものはリップの手より小さいものだけ―――ではなく、彼女の視点上において “手に収まるもの”なら対象として扱われてしまう。 たとえば、対象が『アリーナ』といった巨大構造体(メガストラクチャ)であった場合、 アリーナを一望できる場所にいれば条件は成立してしまう。 遥か遠方の、小さく一望できるアリーナに手をかざし、その手の上にアリーナの全体像が すっぽりと収まった時点でリップは『捉えた』と認識し、圧縮を可能とする。 遠近法を無視した平面的な物理干渉だが、さすがに大きなものほど圧縮には時間がかかるようだ。 【固有スキル】 気配遮断:A+ 姿を隠して行動するスキル。 アサシンのクラスが基本能力として持つスキルだが、 その性格からか、パッションリップも取得しているようだ。 その臆病さ、慎重さから優れた気配遮断を発揮するが、 巨大な爪が邪魔をしてすぐに発見されてしまう。 爪さえなければ優れたストーカーになっただろう。 余談ではあるが、誰も気づかなかっただけで早い段階から岸波白野を尾行し、 陰から監視・見守っていたとかなんとか。 被虐体質:A 集団戦闘において、敵の標的になる確率が増すスキル。 マイナススキルのように思われがちだが、強固な守りを持つサーヴァントが このスキルを持っていると優れた護衛役として機能する。 若干の防御値プラスも含まれる。 Aランクともなると更なる特殊効果が付き、攻撃側は攻めれば攻めるほど冷静さを欠き、 ついにはこのスキルを持つ者の事しか考えられなくなるという。 【宝具】 『死がふたりを分断つまで(ブリュンヒルデ・ロマンシア)』 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人 BBがアルターエゴに与えた宝具。 対象への愛情が深ければ深いほど、命中精度とダメージ数値を増していく宝具。 たとえそれが一方通行のものであったとしても、愛した相手は決して逃さない。 材料になったサーヴァントは『ヴォルスンガ・サガ』に登場するワルキューレ、ブリュンヒルデ。 自分を裏切り、その名誉を傷つけた夫シグルズへの復讐のために振るわれた愛憎の槍。 厳密には、槍そのものではなく、ブリュンヒルデのシグルズに対する深い愛情と憎悪が 槍の形を取ったもの。 『ヴォルスンガ・サガ』において、恐れを知らぬ英雄シグルズ(ジークフリート)は、 炎に囲まれて眠るブリュンヒルデを妻とする。 しかしその後、シグルズは彼女を裏切り、義兄弟の妻として差し出してしまった。 ブリュンヒルデは当初、シグルズが記憶を失う酒を飲まされたためと考え、 運命だから仕方がないとそれを受け入れた。 だが、後に実際にはその時、シグルズはすでに記憶を取り戻していた事を彼女は知ってしまう。 結果としてブリュンヒルデは、この世で最愛の夫を陰謀の末に殺害し、 自らもまた己の命を絶ってその後を追ったという。 【キーワード】 【ブレストバレー】 単なるトラッシュボックス。 不必要なデータファイルを一時的に収納し、保管する機能。 ごみ箱とも。 パッションリップの場合、そのアイコンがなぜか胸の中心に設定されている。 端的に言ってしまえば、ゴミならいくらでもため込める虚数空間ポケット。 パッションリップが潰したダストデータであるなら、どんな容量であろうと無限に収納できる。 矛盾しているが、リップ本人のメモリ量を越えるモノすらこの谷に棄てる事ができるようだ。 一見すると便利な機能に見えるが、ダストデータは元のカタチには戻らないため、 まったくもって無意味な機能。 パッションリップは感情を内に溜め込み、自壊/自傷するタイプの少女像である事から、 このような特殊構造を獲得したと思われる。 【複合神性】 アルターエゴは英霊複合体として創造されたハイ・サーヴァントである。 BBはムーンセルのサーヴァントアーカイブにアクセスし、 その中からエゴと適合する女神を選び、データを再現。 アルターエゴを女神の複合体として成立させた。 パッションリップに組みこまれた女神は三体。 一神目はインドにおける美の女神パールヴァティー。 盲目的に、そして献身的に夫である破壊神シヴァを愛した女神である。 二神目は戦いの女神ドゥルガー。 パールヴァティーの側面とされるドゥルガーは、十本の神授の武器を持っている。 パッションリップの巨大な爪はその十の剣を具現化したもの。 三神目は北欧の戦いの女神ブリュンヒルト。 恋した勇者と結ばれず、哀しみから破滅を呼んだ女王。 ワーグナーの楽劇においてはブリュンヒルデとされ、 死者の魂を天界に送る戦乙女(ワルキューレ)として登場する。 言うまでもなく、こちらの顛末も愛に絶望し、愛する者をその手にかける悲劇だった。 【認識障害】 多くの人間は自分を客観視する事ができない。 それは精神的なものだけでなく、肉体においても起こりえる事だ。 人間は自分を見る事ができない。 いや、正しくは“偽りのない自分の姿”を直視し、受け入れる公平さに乏しい。 人間は知恵あるが故に、目の前の現実から都合のいい情報だけを真実とする。 情報の取捨選択ばかりでなく、情報のねつ造、改変まで無意識のうちに行う事もある。 パッションリップの認識障害はその最たるものだ。 彼女は自らの両手のカタチを認識できない。 醜い自分の姿から“脳”が目をそらし、いたって普通の少女の腕として脳内変換している。 彼女には自分の爪は「普通のもの」にしか見えていないのだ。 このため、リップは“自分がなぜ怖がられるのか?”の理由が分からない。 自分の体が醜いから、という理由が分からず、それを指摘されても首をかしげるばかりだ。 「どうしてそんな嘘を言うんですか?」 「嘘をついてまだわたしをいじめたいんですか?」 ◆ 巨大な爪と認識障害に関しては、パッションリップは完全な被害者だ。 認識障害が逃避から生まれたものだとしても、彼女の心には欺瞞も嘘もないのだから。 誰しも、自分の醜い部分と向き合うのは難しい。 鏡を見た時、そこに映った自身の姿を本当に正しく、脳は観測してくれているだろうか? 【愛憎の果て】 BBの「求愛欲求」「愛憎」から作られたエゴ。 男性が劣情をもよおさずにはいられない、蠱惑的で清純な少女像。 両手の爪は“男性に狙われやすい”自分を守るための心が具現化したものと思われる。 ◆ ある理由で岸波白野に好意を持っていたが、迷宮内での対話をきっかけにより深い好意を抱く事になった。 近くにいたい、触れあいたい、話したい、と願っていたが、彼女の性格的にそれは一度もかなわなかった。 話しかけたいけど(なぜか怖がられるので) 話しかけられない、 近寄りたいけど(なぜか逃げられるので) 近寄れない、 愛してほしいけど(どうしても嫌われるので) 愛してもらえない。 そんなジレンマから愛情はより深化していくが、岸波白野の拒絶によって愛情は哀しみに転化。 感情の負荷に耐えられず、その原因を敵視・憎む事で、かろうじて精神の崩壊を防ぐ事になった。 正気では耐えられない現実に向き合う心の働き――― 即ち、狂気による暴走である。 ◆ この世界でただひとり好きだった相手が、ただひとり優しい言葉を投げかけてくれた。 その奇蹟を、パッションリップは永遠に抱き続ける。 ……たとえその後に、心を砕くほどの絶望が待っていたとしても。 【元ネタ】Fate/EXTRA CCC 【CLASS】アルターエゴ 【マスター】 【真名】パッションリップ 【性別】女性 【身長・体重】156cm・1t 【属性】秩序・中庸 【ステータス】筋力A+ 耐久A 敏捷C 魔力B 幸運E 宝具C 【クラス別スキル】 対魔力:C 単独行動:C マスターの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。 Cクラスならマスター不在でも1日は現界していられる。『ある存在の別側面』として存在するアルターエゴはマスターなくしても単独で活動できるが、リップは燃費が悪い為ランクは低めになっている。 気配遮断:A+ アサシンクラスの基本能力で、姿を隠して行動するスキル。 その臆病さ、慎重さからスキルランクが非常に高いが、巨大な爪が邪魔をしてすぐに発見されてしまう。 爪さえなければ優れたストーカーになっただろう。 女神の神核:C 生まれながらにして完成した女神であることを現すスキル。 精神と肉体の絶対性を維持する効果を有する。あらゆる精神系の干渉を弾き、肉体成長もなく、どれだけカロリー摂取しても体型が変化しない。 ハイ・サーヴァント:A 複数の神話エッセンスを合成して作られた人工サーヴァント。パールヴァティー、ドゥルガー、ブリュンヒルデの要素を持つ。 【固有スキル】 ブレスト・バレー:A 単なるトラッシュボックス。 不必要なデータファイルを一時的に収納し、保管する機能。ごみ箱とも。 パッションリップの場合、そのアイコンがなぜか胸の中心に設定されている。端的に言ってしまえば、ごみならいくらでも溜め込める虚数空間ポケット。 パッションリップが潰したデータであるならどんな容量だろうと無限に収納できる。 一見すると便利な機能に見えるが、ダストデータは元のカタチには戻らないため、まったくもって無意味な機能。パッションリップは感情を内に溜めこみ、自壊/自傷する タイプの少女像である事から、このような特殊構造を獲得したと思われる。 被虐体質:A パッションリップのイデススキル。 集団戦闘において、相手の敵意(ヘイト)を自分に集め、攻撃対象になる確率を増す。 トラッシュ&クラッシュ:EX イデス。『怪力』から進化したチートスキル。 どれほど巨大な容量であろうと“手に包んでしまえるもの”ならその爪で潰し、圧縮する事が出来る。 圧縮されたものは一センチ四方のキューブとなるが、その質量は圧縮前の十分の一ほどしか軽量化できない。圧縮したものは、以後ダストデータとして扱われる。 圧縮できるものはリップの手より小さいものだけ──ではなく、彼女の視点上において“手に収まるもの”なら対象として扱われてしまう。 遠近法を無視した平面的な物理干渉だが、さすがに大きなものほど圧縮には時間がかかる。電脳空間ならではの騙し絵的な圧縮技法(コーディック)。 リップは破壊に特化しており、相手が動かないもの……地形や建物ならBB以上の破壊力を発揮する。 もっともサーヴァントやマスター相手だと、すぐに危険を察知されてリップの視界から離脱→鈍重なリップは追いつけない、というオチになるのだが。 【宝具】 『死が二人を別離つとも(ブリュンヒルデ・ロマンシア)』 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ: 最大捕捉:10人 アルターエゴたちの宝具は正規の宝具を違法改造したもので、材料になったサーヴァントは『ヴォルスンガ・サガ』に登場するワルキューレ、ブリュンヒルデ。自分を裏切り、その名誉を傷つけた夫シグルズへの復讐のために振るわれた愛憎の槍。 パッションリップの宝具もその性質……相手に抱く愛が深ければ深い程強力になる……を持っていたが、それは過去の話。 かつて『死が二人を分断つまで』と叫んでいた心は、いま『死が二人を別離つとも』と願うに変革した。 別れは必ず来るもの。それが破局であれ裏切りであれ、愛そのものを否定はしない。 「どんな別れであっても、それまでの愛は真実で、永遠だと信じます」 そんなリップの願い通り、愛するものを憎むのではなく、愛するものを守るための力となった。 正に純粋無垢かつ大人な聖女パワー。 『その愛楽いたみは流星ほしのように(ヴァージンレイザー・パラディオン)』 ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:10~1000 最大捕捉:1個 女神アテナの槍を模した、パッションリップとメルトリリスの合体宝具。パッションリップという弓で、メルトリリスという槍を撃ち出す女神の槍。パラディオンの勝利の槍。 城門を超えて都市の中央まで飛来・着弾し、都市を破壊する光の槍。 パッションリップのトラッシュ&クラッシュの空間圧縮を射出装置(カタパルト)とし、流体変化により全身を宝具と成したメルトリリスを撃ち出す超遠距離狙撃宝具。 パラディオンとはギリシャ神話において、城塞都市トロイを守護していた女神アテナの像のこと。 この像があるかぎりトロイは不落とされたが、敵軍の策略によって像は奪われ、トロイは陥落したという。 『都市を守るもの』として強力無比だったパラディオンは、その実、失われれば都市は滅びるしかないという運命を提示するものだった。 【解説】
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「―――そう、穂群原学園だ。被害は甚大……そうだ。不発弾の爆発でそうなったということにしよう。では、そのプランに沿って頼む」 事後処理を行う教会のスタッフに電話で連絡をした後、神父である男は受話器を置いた。 そして、教会の入口に目を向ける。そこにはスーツ姿の女性が立っていた。 「良く来てくれた。バゼット・フラガ・マクレミッツ」 「お気になさらずに、言峰綺礼」 聖堂教会の人間と、魔術協会の人間、決して歩み寄らない両組織の人間が邂逅した。 「―――前回の聖杯戦争は陰惨を極めた。殺人鬼がマスターとなり、本来の監督役であった私の父は死亡、そしてあの大火災、 秘密裏に行われるはずの戦争が世間にこうまで被害を与え、神秘の隠匿という大前提を崩壊させる寸前まで行われたことは、実に憂うべきことだ」 言峰は首を振り、悲観した風に締めくくった。 「君にはこの聖杯戦争で前回のように狼藉を働くマスターとサーヴァントを狩る事に協力してもらいたい」 「ええ、私もそのつもりで来ました」 言峰の言葉に、バゼットは快く応じた。 ―――バゼットは気づかない。言峰綺礼が彼女の令呪が刻まれている左手を見ていることを。 「私はアサシンを召喚しました。彼ならマスターの情報を集める事にも、危険な存在の排除にもうってつけでしょう」 「アサシンか、それは好都合なサーヴァントを召喚したものだ」 満足げに頷く言峰は―――決定的な一言を口にした。 「ああ、ところで『それ』のことだが」 「?」 バゼットの視線が、言峰が指差した先、祭壇の上の十字架に向けられる。 何の変哲も無いホーリーシンボルに、バゼットは首をかしげた。 その隙を、言峰綺礼が見逃すはずも無い。 一瞬で黒鍵の刃を顕現させると、女の左腕を穿ちにかかる。殺気に気がついた女が振り向いたときにはもう遅い。 バゼットの表情、驚愕と哀哭がない交ぜになったそれを見て、言峰綺礼は嗤った。 「ああ、そうだ。その表情が見たかった」 言峰の奇襲は完璧に近い。もし、この場にバゼットの味方である第三者がいたとしても、普通の人間では対応すらできないだろう。 ―――あくまで、普通の人間ならば。 ドアを金槌で叩くような音がした瞬間、鉛弾は直線の弾道を描き飛んでいく。 教会の扉を撃ち抜いた一発の火線は、即座に刃物を持つ腕に命中した。 防弾機能と防護の術式が編まれた僧衣は大した威力でも無い銃弾を通さなかったが、衝撃まで殺しきることはできず、黒鍵は甲高い音を立てて床に転がり、言峰はバゼットに体勢を立て直させる暇を与えた。 バゼットは、奇襲を仕掛けてきた本人を見やりながら、距離を取る。 「念のため、鍵穴から中を覗いておいて正解だったな」 銃撃した当人は素早く扉を開けて入り、ポツリと呟いて銃口を神父に向けた。 「―――ク。暗殺者の英霊相手に騙し討ちは分が悪かったか」 獣のような笑みを浮かべる神父にアサシンは無言で銃を撃つ。銃創が神父の額に穿たれ、仰臥して斃れた。 「……」 無言で立つバゼットの額には冷や汗が浮かんでいた。 それはアサシンを奪われそうになる程、自分が弱いことに気がついたからだ。 言峰がかつてと比べて更に研鑽したのか、そうでないのかは、バゼットに知るよしもない。しかし、これだけは言える。 言峰にはバゼットと戦う意思があり、自分には言峰と戦う意思が無かった。 だから、簡単に騙され、殺されかけた。アサシンがいなければ、自分は早々に脱落していた。 その事実に、屈辱と恐怖が涌き上がってくる。 「バゼット、退くぞ」 アサシンの言葉にようやくバゼットは我に返った。 正当防衛だったとはいえ、自分達は監督役を殺害したのだ。早々に立ち退かなければ厄介なことになる。 「まだ調べたいことはあるが、諦めろ。下手をすれば敵が増えかねない」 「……ええ、確かに」 アサシンの先導でバゼットも教会を出る。一度だけ振り向いて言峰の遺体を見やった。そしてすぐに踵を返すと、教会を出ていった。 誰もいなくなった教会で、しかし動くモノはあった。 言峰綺礼の遺体、その額の穴から湧き出るように吹き出す物体―――黒い汚泥は、ゆっくりと言峰綺礼の傷口を埋めていった。やがて完全に傷口が塞がった時、今まで死体だった『何か』が立ち上がった。 「突然の危機を想定し、常に警戒を怠らず、引き際も素晴らしい。良いサーヴァントを引き当てたな。バゼット・フラガ・マクレミッツ」 笑う。それは嘲笑か、それとも祝福の笑みか。立ち上がった死人は、澱んだ眼で背後の空間を見た。 「それだけに手に入れられなかったことは惜しい。が、『お前』から見ればどうだ。手こずる相手か」 返ってきた言葉を聞き、言峰は笑いを深めた。 それはおぞましい、全てを冒涜するような笑みだった。 衛宮邸の茶の間。普段は明るい声が響く茶の間で、しかし現在は緊張が支配していた。 黒衣のキャスターは掌を由紀香の頭にかざし、精神を集中させて何かを詠唱している。 それが終わり、琥珀色の双眸を開いたキャスターに、マスターである士郎が期待を込めて口を開いた。 「キャスター、何とかできそうか?」 「……残念だけど、無理ね。これをやったのは現代の魔術師じゃ無い。これは宝具によるものよ」 その言葉に沈黙が陰鬱な物に変わる。キャスターの眼前には犬の耳が生えた由紀香の頭があった。 学校での戦闘後、一行はこれからをどうするべきかで話をした。 ともかくも遠坂凛が説明をする事になり、その場所として衛宮士郎が自分の家である衛宮邸を提供した顛末だ。 遠坂凛の口から出てくる説明に、それを聞く者達は驚く以前に呆然としていた。 魔術。 サーヴァント。 聖杯戦争。 いずれもライトノベルやアニメのような話であり、そしてそれが現実である事は先程の光景で証明されている。おまけに、自分達はそれに無理矢理な形で関わらせられようとしていることを聞かされた。 「大体は分かったが……とにかくもこれをどうにかして貰えないだろうか」 鐘は自分の背中から生えている翼を手に取って引っ張った。 由紀香の耳は帽子を被れば何とかなるだろうが、鐘の翼や楓の手足は誤魔化しようが無い。これでは日常生活を送る事すら出来ないだろう。 遠坂凛と衛宮士郎は、キャスターに解呪を依頼した。 ―――だが、芳しくは無かった。 「分かっていることは、これをしているのは魔術では無く宝具。それも相当に霊格の高い宝具によるもの。本来の担い手ならともかく、私に手が出せるものじゃないわ」 「それなら、遠坂がやったみたいにこの令呪でキャスターをパワーアップしたらどうだ?それなら……」 士郎の縋るような言葉に、キャスターは首を横に振った。 「出力が足りないとかそういう話じゃないの……わかりやすく説明するわ。ねえ、貴女」 話を黙って聞いていた少女にキャスターは話しかける。 「は、はい。何ですか?」 由紀香の視線を真っ直ぐ覗き込むキャスターは、口を開いた。 「何か、おかしな気分はしないかしら。例えば、できるはずの無い事をできたとか、それとも、あるはずの無い記憶を持っているとか」 「あの、そう言えば、何か変なことが。私の名前は三枝由紀香って言うんですけど、他にも名前がある気がするんです。それから、そのもう一つの名前の持ち主のやったことも覚えているような気が……」 「そういえば、アタシも操られてた時に何か夢みたいなもの見てた気がするな」 思い出したように言う楓に、鐘も反応した。 「……お前もか?蒔の字。私も何か戦うような夢を見ていた気もするが」 「ああ、それそれ。伽和羅(かわら)身につけて、剣持って戦うんだよ。自分の事じゃない筈なのに、妙にリアルな夢でさ」 その言葉に、キャスターはふうと溜息をついた。 「……本人の精神と、外部からの精神、つまりはその宝具によるものが、融着している。下手に引き離したら本来の精神にも悪影響が出るかも知れない」 キャスターの分析に、士郎は歯を食いしばって呻いた。 「……そんなことを、三人はされたのかよ」 「今は冷静に解決策を考える時よ。士郎」 怒りを募らせる士郎を宥めるキャスターだが、その表情は固い。楓が慌ててキャスターに詰め寄る。 「ちょ、ちょいまち。じゃ、このままこの姿で生きていけってのか?」 キャスターは無言でおもむろに楓の腹部に手をかざし、口を開いた。 「少なくとも姿はどうにかなると思うけど。貴女達が持っている以上、ある程度は自分で運用できる筈だから」 「ほ、本当?う~ん。戻れ、戻れ、戻れ、戻れ、戻れ……」 由紀香が手を合わせ、拝むように念じた。すると、犬耳が髪の中に吸い込まれるように引っ込み、見えなくなる。 「おお、戻ったぞ。由紀香!」 「えっ……本当!戻ってる!」 鐘の言葉に手鏡を覗き込んだ由紀香は、自分の頭上から犬耳が綺麗に消えていることに歓声を上げた。 「強く念じれば、元に戻るのか」 「よし!メ鐘、アタシらもやってみよーぜ!」 そのまま、二人して手を合わせて念じる。 「「戻れ、戻れ、戻れ、戻れ、戻れ、戻れ、戻れ、戻れ、戻れ、戻れ、戻れ、戻れ」」 二人で目を固くつぶって、一心不乱に唱えている姿は危ない新興宗教のようでなかなか不気味だったが、効果はあったらしい。 楓の手足は人間のそれに戻り、鐘の背にあった翼もうっすらと消えていった。 「「戻ったー!!」」 「これで少なくとも、外見はどうにかなるという事が分かったわね」 冷静に呟くキャスターの隣に座る士郎は、暫くつぐんでいた口を開いた。 「キャスター、聖杯なら三人の身体を完全に戻すことができるのか?」 士郎の言葉に、今しがた喜び合っていた三人が視線を向けた。 「聖杯が言葉通りの物なら、ね」 事も無げに言うキャスターの言葉で、衛宮士郎は表情を決意に固めた。 「……なら俺が聖杯を手に入れて、三人の身体を元に戻す」 その言葉に、三人は驚愕し、由紀香が真っ先に口を開く。 「待って、衛宮君!聖杯戦争って危険なんでしょ?」 「承知の上だ」 「承知の上だって、お前……分かってんのかよ。バカスパナ!」 「いくらなんでも、無茶だ。考え直せ」 楓に続き、鐘も士郎を止めるが、士郎は首を横に振る。 「もう、俺は巻き込まれているんだ。キャスターのマスターとして。今更引き返す道なんて無い」 士郎は淡々と話を続ける。 「俺は聖杯なんていらない。キャスターが使う分と、三人が元に戻るために使う分さえあればそれでいい。」 「だが!校舎をあんな風にしてしまう連中が相手なんだぞ?」 「なら、尚更だ。サーヴァントに敵うのがサーヴァントだけなら、俺が聖杯を手に入れるしか無い。それしか氷室達の身体を元に戻す方法が無いのなら、それを選ぶのが当然だ」 士郎の言葉に、その場の全員が言葉を失った。 この少年は、知り合いとは言え他人のために戦うと、剣の一振りで鉄筋造りの校舎を焼くような怪物達の闘いに身を投じると言ったのだ。 三人のいずれもがなにか言おうとしてやめた。この少年が戦って、聖杯を手に入れてくれれば自分達は元の日常に帰れるという考えを誰もが抱き、 すぐにそれが少年を死地に追いやることである事に気がつき、そんな考えを抱いた自分が醜くて仕方が無かった。 悲壮な雰囲気が漂った空間は、一人の少女が立ち上がったことで、沈黙が終わる。 「じゃあ、私は帰るけど、衛宮君。話したいことがあるからちょっと来てくれない?」 優等生の皮を脱いだらしい遠坂凛は、こちらの方が素であろう態度で士郎を呼んだ。 「正直なところ、私も聖杯で叶えたい願いは無いのよ」 凛の言葉に、士郎は驚愕した。 「じゃあ、何だってこんな闘いに参加したんだよ。俺みたいに偶然召喚したわけじゃ無いんだろ?」 「まあ、それは置いといて。聖杯を三枝さん達のために使うって本当?」 真剣な顔で聞く凛に、士郎は少したじろぐも、はっきりと答えた。 「ああ、そうしようと思う」 「キャスターはそれでいいの?」 凛の言葉にもキャスターはいつもの感情の起伏に乏しい表情を変えなかった。 「士郎に従うわ」 「そう。それなら約束して。どちらが最後まで残って、聖杯を手にしても、三枝さん達のために使うと」 「本当か!?」 万能の願望機を、自分と同じく他者のために使う人間がいたことに、今度は士郎が驚いた。 「別に深い意味は無いわ。ただ冬木の管理者として、こんな風に一般人を好き勝手されて気に入らないだけ」 「えっ、遠坂ってそんなに偉い人だったのか?」 「衛宮君、どれだけこっち側のものを知らないのよ……」 士郎の無知に、凛は額に指を立てて首を振った。 「とにかく、三枝さん達のことはできるだけ他のマスターにもばれないようにしましょう。宝具を取り出せない以上、先手を打って彼女達を攻撃しようなんて連中がいないとも限らないわ」 「とりあえず、当面は犯人のサーヴァントとマスターの捜索だな。分かった。遠坂ありがとう」 「お礼はいいわ。いずれ戦う相手だもの……ああ、そうそう」 「なんだ?」 「……やっぱりやめといた方がいいわね。それじゃあ、衛宮君、キャスター。また戦う日までね」 そう言うと、遠坂凛は怪訝な顔をした士郎とキャスターを残して去って行った。 家路についた凛は、既に自宅である遠坂邸の正門前に立っていた。 「そりゃそうだ。万が一のことを考えれば、綺礼には連絡しない方がいいわね」 遠坂凛は独り言を呟きながら、先程自分の頭に浮かんだ考えを反芻する。 ―――教会による三人の保護。 一瞬浮かんだ考えは、すぐに否定された。教会は正義の味方では無い。巻き込まれた人間の記憶を消して日常に返すぐらいのことはするだろうが、それは神秘を秘匿するという仕事をしているにすぎない。 おまけに現在の監督役は魔術協会とも繋がっているあの兄弟子だ。 もし協会にでも知られたら、三人の身柄がどうなるかわかったものではない。 宝具を身に宿した一般人だ。最悪、保護という名の実験材料化なんてこともありうる。 衛宮士郎は、家に人を招くことを躊躇しないような殆ど一般人、注意を払っておけば問題は無いだろう。 キャスターにしても、その衛宮士郎に忠実らしい。多分、大丈夫だ。 「問題は、明確なルール違反を犯したサーヴァントとマスターか」 一般人を操って他の陣営を襲わせる。神秘の漏洩にも繋がりかねないそれは、冬木の管理者としても遠坂凛としても許せそうにない。 「これでますます負けられなくなったわね。バーサーカー」 「◆◆―――◆」 凛は霊体化している従者に話しかけた。聞こえてきたのは相変わらずの唸り声だが、同意しているらしい。 「じゃあ、帰りますか。明日からが大変よ」 決意を新たに凛は玄関から自室へと向かった。 それは一見したところでは何の変哲も無いワンボックスカーだった。 誰が知るだろうか。それを根城にしている二人の内の一人が、人間では無いことを。 『……宝石は、まだあるわね。でもバーサーカーの維持にも使うから、今度は少し多めに……』 車内に積み込まれた機材から聞こえるのは、現在遠坂邸にいる少女の声だった。 敵マスターの声はかなり鮮明に聞こえる。技術の進歩を感慨深げに実感していたサーヴァントは、車に近づく気配を察知し、銃を手に取る。 召喚当初に所持していた狙撃銃ではなく、現代で用意したサブマシンガンである。 一定のリズムで叩かれる車のドアに、アサシンは銃口をそのままに、ただ口を開いた。 「バゼットか」 「ええ、戻りましたアサシン」 そのまま車内に入ってきた自分のマスターに、アサシンはようやく銃を下ろした。 「現在、遠坂凛は家の中だ。狙撃地点は幾らか確保しているが、学校があの状態になったのは痛いな」 「行動のパターンが読みにくくなりますからね。それでも、聖杯戦争である以上彼女が外に出ないことはあり得ない。仕留めるにはその時です」 ああ、とアサシンが首肯する。 「バーサーカーは燃料を食い荒らすアメリカ車のようなものだ。ガソリンタンクが空になれば自ずと停車する」 アサシンの中でバーサーカー陣営の攻略法は既に出来上がっているらしい。 敵の工房がある筈の遠坂邸の情報を得るために盗聴器という科学の産物を使う提案をしたのはアサシンだ。 魔術師らしく、科学との縁が薄いバゼットにとっては不安が残る提案だったが、それの有効性は目を見張る物がある。 魔術的な要塞は、英霊の気配遮断と魔力を欠片も有しない機械装置には無力だった。 遠坂を初めとする陣営の情報を断片的にでも手に入れることができるアドバンテージは大きい。 車内に設置した機械を操作しているアサシンを見ながらバゼットは召喚直後の彼の台詞を思い出していた。 『俺は弱い英霊だ。多分殴り合いならマスターの方に分がある。だが、負ける気は無い。協力してくれ』 アサシンは確かに弱い英雄だ。パラメーターの殆どがEランクという脆弱さは、この戦争に参加したサーヴァント中最弱だろう。 それでもバゼットはアサシンを恐ろしい英霊だと思う。彼は弱いが、それは決して弱点になり得ない。文明の利器を惜しげも無く使い、その力を利用し、更に発揮する。 自分の弱さを知っているという事は、自分の持つ機能と性能を理解しているということだ。 執行者として数多の魔術師を狩ってきたバゼットにとって、もし相手取るならアサシンのような輩がもっともやりにくい。反面、味方にできればこれほど頼もしい相手もいなかった。 バゼットはアサシンについて不満は何も無かった。ただ問題があるとすれば。 「ほら、各種機器のマニュアルだ。読んで覚えろ」 アサシンが手渡した分厚い紙の束に、バゼットは僅かに身じろぎした。 「こ、これら全てを覚えるのですか……」 はっきり言って、バゼットは細かい操作が苦手だ。当然機械に関しても同じ事が言える。 「アサシン。魔術師という物は機械の扱いが不慣れでして……」 「じゃあ、練習して苦手を克服すべきだろう。俺にしても機械の扱いは専門家というわけでは無いんだ。バゼットにもできるようになって貰わなければ困る」 一分の隙も無い正論に、バゼットはなすすべも無くマニュアルを受け取った。 「戦いは情報の有無で幾らでもひっくり返る。そのあともまだ勉強して貰うことはあるからな」 聖杯戦争が終わるまでにどれだけの学習をさせられるのか、想像したバゼットは溜息をついた。 夜の繁華街は、会社帰りのサラリーマンや水商売に関わる人間で賑わっていた。 その中で、変わった装丁の本を持つ少年が虚空に話しかける。 「ライダー、これで冬木の大体の場所は回った。何か質問はあるかよ?」 『ない。しいて言えば、儂の最終宝具が使える場所が少ないな。こうも建物が密集していては』 返ってきた言葉に、慎二は再び問いを口にした。 「そんなに強力な宝具なのか?」 『うむ。もっとも、それを一度使えばしばらくは大幅に弱体化するという欠点もある』 「そうか、対策を考えておかないとな」 間桐慎二に魔術回路は無く、よってサーヴァントに供給できる魔力も無い。 しかし、本人が保有する魔力炉心と宝具によって魔力は普通に戦う分には全く困ることは無い。 最終宝具も多少無理をすれば放つことができるというのが本人の弁だ。 「勝てる。勝てるぞ。ライダー、そして僕とお前の願いを叶えるんだ」 『勝てるのでは無い、勝つのだ。儂は負けぬ』 一種傲岸とも言える強気な答えに、慎二は召喚時の光景を思い出していた。 『関羽雲長、騎乗兵の位を得て顕現したり―――喜べ。貴様らの勝利よ』 蟲倉の蟲を全て吹き飛ばしそうな豪風と共に出現したサーヴァントは、不遜な態度で周囲を見回した。 その眼光が、肩で息をしている召喚した本人に向かう。 「お前が儂を呼んだのか?」 「待て!よ、呼んだのはそいつだけど、マスターは僕だ」 多少震え声で話す慎二に、ライダーは一瞥すると、口を開いた。 「よろしい。この戦いに参加するには、かりそめとは言えマスターは必要。お前をマスターと認めてやる」 思いっきり下に見られながらも、こうして間桐慎二の聖杯戦争はスタートした。 「そこでだ、お前の宝具は……」 その時、肩同士が触れ合う衝撃を感じる。 「何だ。テメエ?」 話に集中する内に、人にぶつかってしまったらしい。振り返ると、明らかにチンピラ然とした男が立っていた。 「何独り言ブツブツ言ってんだ。電波かアァ?」 慎二の態度が気にくわなかったのか、チンピラはますます突っかかってきた。 チッと舌打ちして、小声で背後のサーヴァントに声をかける。 「ライダー、お前の戦闘力を見るぞ。こいつを半殺しにしろ」 虚空からの声は、慎二にのみ小声で伝えた。 『嫌じゃ』 「ハ?」 サーヴァントの声色は先程までと少しも変わらず、ハッキリと拒絶した。 「何言ってるんだよ。ご主人様のピンチだぞ!?」 『鶏を捌くに牛刀は用いぬ。この程度の輩に力を奮うなどしたくない』 なおも言い募ろうとした慎二だったが、側頭部への火花が出るような衝撃に受身を取る暇も無く昏倒した。 「バーカ!気持ち悪いんだよ。間抜け!」 大笑するチンピラは、倒れた慎二を何度も踏みつけた。周囲の人間も巻き込まれることを恐れてか、手を出そうとはしない。チンピラはそのまま慎二の懐に手を入れ、財布を抜き取る。手際からして慣れているのだろう。財布から一万円札を全て抜き取ると、そのまま去って行った。 「何で助けないんだ!この大馬鹿野郎!!」 ようやく立ち上がった慎二はビルの間にある路地裏に入り込むと、思い切りライダーを怒鳴りつけた。 実体化したライダーは、涼しい顔で慎二の怒鳴り声を聞いている。慎二が怒鳴り疲れて肩で息をすると、口を開いた。 「馬鹿たれ、あの程度の輩を退けられぬようでは仮とは言え、儂のマスターたる資格など無い」 「な、なんだとお……」 顔を紅潮させる慎二は、その時手に持っている物に気がついた。 サーヴァントを隷従させる偽臣の書、これは無理な命令で無い限り、サーヴァントを御することができる物。 歪んだ笑みを浮かべて、慎二がそれを手に取ろうとしたとき、ライダーの低い声が響いた。 「それで使える命令はせいぜい一回。こんなくだらん事に使う気か?」 その言葉に、一気に頭が冷える。確かにそうだ。こんなことに使うべきでは無い。 だが、殴られた痛みと受けた屈辱は自身を苛む一方だ。 「畜生……」 その時、壁に立て掛けてある『ある物』に気がついた。 その男は、街の鼻つまみ者だった。 自分より弱い人間をいたぶって、自分が強いと錯覚する感覚を愛していた。 必然的に中学生の時から恐喝で金を稼ぎ、一時の遊興の代価に当てた。 文字通りの街のダニのような人間だが、かと言ってヤクザになろうとも思わず、このまま一生を人から金銭を脅して手に入れて中途半端に生活できると本気で思っていた。 先程の少年からくすねた戦利品を数えているとき、後頭部に痛撃が走るまでは。 余りの痛みに意識を手放しそうになるが、後ろを振り返ったときに顔面を靴のような物で蹴られて、意識は無理矢理繋ぎ止められた。 「よくもまあ、やってくれたね。まずはさっき僕からくすねた金を返して貰おうか」 首筋に突き出された鉄パイプを前に、その男は今まで自分が傷つけた人々がしてきたように、地面に這いつくばって、こくこくと頷いた。 「ようやった。やられればやりかえせばよいのだ」 相変わらず尊大な態度でライダーは慎二を(一応は)褒めた。 「やかましい!大体僕に何かあったらどうするつもりだってんだよ!」 「その時はその時よ。どのみちあの程度できなければ、お前は死ぬだけだ」 あっさりと自分が死ぬと断じたサーヴァントは、もう一度霊体化する。 『さて、屋敷に帰って鋭気を養うとするか。なあ、マスター』 「帰るのかよ」 『儂を呼んだ場所で休めば、儂の魔力も戻りやすい』 「……わかったよ。その代わり今後は僕の指示に従えよ」 『だが断る。悪手を打とうとすれば、当然儂は拒否するぞ』 「そこは、承諾するところだろうが!!」 傍目から見れば、慎二一人でギャーギャーと騒いでいるようにしか見えない主従は、そのまま夜の街を家路についた。 第三話まで書くと、やっぱり自分が長編書いてるんだと実感が湧いてきます。 何とか書き上げましたが、本音を言えばひむてんで出てくるようなネタギャグの数々を書きたいです。 以下、没小ネタ ~凛が三人娘に聖杯戦争の概要を説明したあと~ 「―――以上が聖杯戦争の概要よ」 誰もが黙っている中で、一人が口を開いた。 「あのさ、ちょっといいか?」 蒔寺楓がしきりにキャスターの方を向きながら、凛に尋ねた。 「何かしら。蒔寺さん」 「遠坂がさっき言ってた英霊だけどさ。いや、分かってるぞ。霊なんて全部プラズマで説明できる嘘っぱちだし、アタシは平気だし、大丈夫だし、だけど、本当に、本当に、本当にキャスターさんって……ゆ・う・れ・い??」 楓の縋るような問いかけに、キャスターはきょとんとしながら答えた。 「?ええ、そうよ。私は一度死んだことがあるもの」 ―――時が止まった。 「勝利への脱出!」 「蒔の字、人の家の障子を突き破るんじゃない!」 蒔寺楓、心霊耐性E(超ニガテ) 実際に書いてみたかったのですが、話の雰囲気上どうしても割愛せざるを得ませんでした。 今後はギャグも入れてみたいなあと思います。それでは皆様ご機嫌よう。
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蒐集:A+ 弁慶が行った太刀狩りの逸話の具現。 サーヴァントに付随する武具がその所有者を失ったとき、 弁慶が自身の魔力を消費して現界させ続ける事ができる。 【A+ランク】武蔵坊弁慶 【Aランク】 【Bランク】 【Cランク】 【Dランク】 【Eランク】
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【元ネタ】シャーロック・ホームズの冒険 【クラス】セイバー 【マスター】衛宮士郎 【真名】シャーロック・ホームズ 【性別】男性 【身長】184cm 【体重】69kg 【属性】中立・中庸 【ステータス】筋力B 耐久C 敏捷B 魔力C 幸運B 宝具A 【クラス別スキル】 対魔力:C 第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。 大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。 騎乗:D 騎乗の才能。大抵の乗り物を人並みに乗りこなせる。 【固有スキル】 変装:C 変装の技術。 Cランクなら親しい者でも騙し通せるレベルで変装できる。 指向碩学:C ある目的の為に蓄えられたジャンルの違う複数の学識。 植物学、地質学、化学、解剖学、犯罪学、法学 その他多岐に渡る学術スキルについて、Cクラス以上の習熟度を発揮できる。 ただし内容の偏りは激しい。 高速思考:A 物事の筋道を順序立てて追う思考の速度。 特に論理的思考や犯罪捜査などにおいて大きな効果を発揮する。 千里眼(偽):D 推理と予測により遠隔地の出来事を「まるで見ているかのように」語ることがある。 精神汚染(偽):E たまに麻薬に手を出してまともな意思疎通が成立しなくなる。 セイバーのこれは「退屈」が発動条件なので聖杯戦争中はさほど問題にならない。 星の開拓者:E 人類史においてターニングポイントになった英雄に与えられる特殊スキル。 あらゆる難航、難行が“不可能なまま”“実現可能な出来事”になる。 娯楽作品としては世界で最も読まれている小説の主人公であることから得たスキル。 さすがに効果はごくごく微量。 【宝具】 『靴の飛沫の名残でさえも(ディテクティブ・オン・ディテクティブズ)』 ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:6人 私立探偵と、それを扱った探偵小説のまさにエポックメイキング的存在だったセイバーを象徴する宝具。 他のマスター・サーヴァントの生活跡や戦闘跡などありとあらゆる「痕跡」を目にすることで 非常に高い確率での素性・性格・行動方針・本拠地・真名等に看破の判定が発生する。 対象を直接目視した場合は更に高い確率でセイバーに“全て”知られてしまう。 『神秘なるかな東方武術(バリツ)』 ランク:C++ 種別:対人宝具 レンジ:1~5 最大捕捉:1人 セイバーが会得していたという東方武術の秘奥。 ステータスが同レベルのサーヴァントと「高所」で戦闘時に使用可能となる宝具で 対象のみを一方的に落下させ、高度相応の与ダメージを発生させることが出来る。 高度はあくまで与ダメージの判定条件であり サーヴァントが受けるダメージは落下の位置エネルギーによるものではない。 また、対象のダメージの多寡に関わらずこの宝具を使用したセイバーはその瞬間 戦闘からほぼ100%の確率での離脱が可能(必須ではない)。 【Weapon】 『無銘・剣』 フェンシング用の剣サーブル。 【解説】 知名度補正の高パラメータと 調査→高所に誘い出す→フェンシング&バリツで与ダメージ→離脱※以降繰り返し のハメ技でアグレッシヴに戦うホームズ氏。 士郎もわりとノリノリでそれに付き合う。 バリツの見た目はすごく大仰な巴投げ。対象は流星の如くド派手に輝きながら大地に叩きつけられる。 ビジュアルイメージはそれでもやっぱりジェレミー・ブレット。
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軍師の本懐:A (陳宮) 裏切りの英雄・呂布と共に戦場を駆け抜けた陳宮。 冷酷・冷徹な陳宮だが、そんな彼にも武人としての信念、情熱は備わっている。 「この主君の為に死ぬ」「この主君と共に死ぬ」という魂の誓い。即ち、軍師の本懐なり。 バーサーカークラスのサーヴァント限定で行える『英雄作成』である。
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深夜、衛宮邸。 士郎の寝室。 「うう……ん……?」 眠っている部屋の主は呻き声を発する。 妙に狭苦しい、まるで両側から圧迫されているような感じ。 その感触によって眠りを中断された士郎はゆっくりと目を開ける。 まず目に映るは天井。 次に視線を布団に移す。 そうしたら不自然に盛り上がっている。 状況を整理する士郎。 左右からの圧迫、自分に掛かる圧力は女の子二人分くらい、不自然な布団の形。 「まさか……!?」 思わず布団を撥ね退けると、左に金髪の美女、右に銀髪の美女が一糸纏わぬ姿で気持ちよさそうに眠っていた。 「ライダー、ランサー、なんでさ……」 「で……一体どういうつもりなんだ?」 ジト目で目の前の二人を睨む士郎。 目の前には全裸の美女二人がバツの悪そうな表情で正座中。 朱眼の金髪の美女はライダーのサーヴァント、マザー・ハーロット。 蒼眼の銀髪の美女はランサーのサーヴァント、ブリュンヒルド。 どちらも士郎がマスターとなっている。 本来サーヴァントはマスターに対して一人だけが常識である。 しかし士郎の場合様々な状況が重なった結果、その常識から外れる事になった。 聞くところによるとサーヴァントを二人維持するのは士郎ではかなり無理があるという。 話し合った末、片方は性行為で魔力を補充したほうがいいという結論になった。 マスターである士郎の意思を無視して、ライダーとランサーで勝手に決められたものであるが。 しかしここでどっちが抱かれる担当になるかで意見の対立が発生。 ライダーランサーとも譲る気はなく、隙を見つけ次第士郎を襲うつもりだったらしい。 で、布団に潜り込んだ所を士郎に発見されたというわけだ。 ちなみにライダーが裸なのは服を着るのが面倒臭いから。 ランサーのほうは魅了スキル持ちのライダーに対抗するために全裸で迫ろうとしたから。 布団に潜り込んだまではよかったが、そのまま寝てしまったらしい。 今のランサーとライダーだが、ライバルを蹴落とすため、自分をアピールするのに躍起になっていた。 士郎の抗議は当然無視。 「我(わたし)のほうがいいわよねえ~? ランサーは清純な戦乙女だからこういうのは苦手みたいだし」 「私(わたくし)のほうがいいですわよ。殿方の相手をするのも戦乙女の心得ですわ。ライダーは面倒臭いのは嫌いなようですし」 そこまで言って二人は勢いよく立ち上がると真正面から睨み合う。 その際当然何も着ていないので、男を惑わす蠱惑のメロンクラスの乳房4つがプルルンと揺れ動く。 思わず鼻を押さえる士郎。 ランサー、ライダーとも腰を手に当てると胸を張り出す。 至近距離で突き出された双方の胸は密着し、ムニュムニュと形を変えてゆく。 バスト100センチに達する胸の押し付け合いは壮絶の一言に尽きる。 それを見た士郎の、押さえた鼻の隙間からはポタポタ鼻血が零れていく。 「なによ! 清純な振りして戦う時は男を誘惑するようなビキニアーマーなんか着てるくせに!」 「なんですか! 貴女だって戦う時はおっぱいも股間も隠さない露出狂みたいな衣装しか着てないじゃありませんの!」 二人の睨み合いはエスカレートする一方、激突し合う視線で火花まで飛び散る。 胸同士だけでなく、おでこ同士もぶつけ合い、睨み合う。 だがそこで二人は一旦離れる。 そして空気が変わる。 「こうなったら……」 「どっちが士郎に抱かれるか……」 ライダーは頭にベール、上半身には前開きの小面積の上着、 首手足の装飾以外全裸同然の衣装。 ランサーは羽の生えた兜にビキニアーマーという肝心な箇所以外は露出した戦闘装束を身に纏う。 「「勝負!!」」 ライダーは『溢れる邪淫(ルクスリア・チャリス)』 からワインの鞭やカッターを作り出す。 ランサーも『神戦誘う戦姫の槍(ロギ・ヴァルキュリア)』を構える。 「ま、待ったあーー!!!」 二人が行動に移る寸前。 思わず立ち上がり両者の激突を止めようとする士郎。 二人の間に割り込み両腕を伸ばす。 「二人ともやめてくれ! こんな所で暴れたら家が、いやそれ以前にケンカ自体ダメ……?」 そこまで言って両腕に、マシュマロのように柔らかいものを掴んでいる感触がするのに気付く。 思わず掌をゆっくり動かして掴んでいるものを揉んでみると、 「……もお、どっちか片方じゃなくて二人とも欲しいなんて……エッチなマスターね」 「ああっ……マスター。そ、そんなに動かさないで……ビキニの金具部分が喰い込んでしまいますわっ」 と、艶かしい声が返ってくる。 ギギギ……と音を立てながら首を回して左右を確認した結果……。 士郎の掴んでいるものはライダーとランサーのたわわに実ったおっぱい。 「人生オワタ……」 ケンカ止めようとしておっぱいタッチ ↓ 激怒した二人の宝具攻撃 ↓ ヘブンズゲート直行便 思わず死を覚悟した士郎だったが、事態は意外な方向に向かった。 それ以前にマスターが死ぬとサーヴァントも消えるからその可能性は低いのだが。 二人は自分の乳房を掴んでいる士郎の腕を掴むとニッコリと微笑む。 「そうよね。ケンカはいけないわよね♪」 「そのとおりですわ。でも女性の胸を触ってただで済むと思ったら大間違いですわよ♪」 「だから我達二人を満足させることで許してあげる♪」 「そうそう。女の子に恥をかかせちゃダメですわ♪」 その言葉は士郎にとっては死刑宣告であるわけで、 「な……なんでさーーーー!!!」 次の日の朝の食卓、枯れ果てた士郎とツヤツヤの肌のランサーとライダーの姿があったのは……当然の結果。
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山田丸:B (山田朝右衛門吉利) 人間の脳髄、肝臓、胆嚢などといった臓器から精製される秘薬。 服用することでサーヴァントであれば高純度の魔力リソースとなり、マスターであれば魔術回路を賦活化させる。 倫理的な問題から明治政府によって禁止されたものであり、セイバーは処刑した罪人からこの秘薬を精製する。
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【元ネタ】史実 【CLASS】ライダー 【マスター】 【真名】ヤークップオール・フズル 【性別】男性 【身長・体重】181cm・74kg 【属性】中立・悪 【ステータス】筋力D 耐久D 敏捷D 魔力D 幸運B 宝具B 【クラス別スキル】 対魔力:D 一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。 魔力避けのアミュレット程度の対魔力。 騎乗:D 騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み程度に乗りこなせる。 ライダーのサーヴァントであるものの、彼が得意とするのは艦船の扱いである為、騎乗スキルのランクはさほど高くない。 【固有スキル】 嵐の航海者:A+ 船と認識されるものを駆る才能。 集団のリーダーとしての能力も必要となる為、軍略、カリスマの効果も兼ね備えた特殊スキル。 仕切り直し:C 戦闘から離脱する能力。 また、不利になった戦闘を戦闘開始ターン(1ターン目)に戻し、技の条件を初期値に戻す。 道具作成:D 魔力を帯びた器具を作成できる。 艦船の修理や整備に長けている。 【宝具】 『遍く在りし赤き王(バルバロス・ハイレディン)』 ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人 赤髭の海賊王が同時に複数の戦場に姿を現したという逸話の再現。 自身の霊殻をコピーし、周囲の亡霊に被せて使役する。 亡霊は被った霊殻の影響で擬似的にサーヴァントとして扱われ、聖杯からのバックアップを得る。 核となる亡霊にも左右されるが、コピーは平均的なサーヴァントとしてのポテンシャルを獲得できる。 なお、聖杯からのバックアップがあるとはいえ、現界に必要な魔力は彼のマスターが供給する必要がある為、 使役する亡霊の数が増えれば増える程、消費魔力も増大する。 『天命を以て征服す(カプタン・パシャ)』 ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:500人 海賊王にして帝国海軍総督としての指揮権の行使。 武器を召喚し、宝具『遍く在りし赤き王』で使役する亡霊に供給する。 供給可能な武器は長剣や小銃などで、これらはE-ランク相当の宝具として扱われる。 また、必要な人員数さえ確保できたのならば、軍艦やそれらを結集した艦隊すら召喚できる。 【解説】 地中海世界にその名を轟かせた海賊王。通称、バルバロス・ハイレディン。 オスマン帝国領レスボス島の出身。諸説あるが、父はティマール(知行地を与えられて帝国に仕える戦士)であったとされる。 弟達と共に水夫などの海上交易に携わっていたが、海賊稼業を行っていた兄ウルージに従い、これに加わった。 スペインと争って兄が戦死した後、海賊団を継承。スペインに対抗すべく、オスマン帝国の庇護下に入る。 当時のオスマン帝国の海軍力は粗末なもので、彼らとしてもバルバロス海賊団の協力は必要なものであった。 皇帝からアルジェ太守の地位とハイレディン(篤信者の意)の名を賜った彼は、造船所の改革や水兵訓練の合理化を推進。 彼自身が鍛えた海軍を率いて、スペインらオスマン帝国と敵対する国家を相手に暴れまわり、地中海に覇権を打ち立てた。 1538年、ジェノヴァの大提督アンドレア・ドーリア率いる神聖同盟艦隊を相手としたプレヴェザの海戦に勝利。 その後もオスマン帝国の内海となった地中海において無敵を誇ったが、プレヴェザの海戦から8年後の1546年にこの世を去った。
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【元ネタ】史実 【CLASS】ルーラー 【マスター】 【真名】ヘラクレイオス1世 【性別】男性 【身長・体重】190cm・100kg 【属性】秩序・中庸 【ステータス】筋力B 耐久A 敏捷C 魔力C 幸運B- 宝具A+ 【クラス別スキル】 対魔力:EX 揺るぎない信仰心によって高い抗魔力を発揮する。 ただし、魔術を逸らして(かわして)いるだけなので、広範囲魔術攻撃の場合、助かるのはルーラーだけである。 教会の秘蹟には対応しない。 真名看破:C ルーラーとして召喚されると、直接遭遇した全てのサーヴァントの真名及びステータス情報が自動的に明かされる。 ただし、隠蔽能力を持つサーヴァントに対しては発揮されない。 神明裁決:B ルーラーとしての最高特権。 聖杯戦争に参加した全サーヴァントに一回令呪を行使することができる。 他のサーヴァント用の令呪を転用することは不可。 【固有スキル】 環境戦略:A 土地の性質を利用し、それを自らの戦術に組み込む。 このスキルは戦場で使用する場所を深く理解する事によって初めて効果を発揮する。 一例を挙げるならば、ルーラーの場合はニネヴェの戦いを征した際に利用した濃霧が発生する場所も利用できる。 発生した霧は敵軍が放つ遠距離攻撃に回避判定を与え、成功すれば攻撃を回避する。 逆に霧に包まれた敵軍は自らの居場所を把握する事は出来ず、軍略系スキル、軍勢系の宝具を使用する際にファンブルの確率が高まってしまう。 皇帝特権:B 本来所有していないスキルを短期間獲得することができる。 騎乗、剣術、芸術、カリスマ、と多岐にわたるスキルを習得できるが、 宝具『聖十字の祝福』の真価を発揮するには一時的に本スキルを封印する必要がある。 十字の加護:B 聖十字架を宝具として持った事による恩恵のスキル化。 ルーラーの回復を助け、またルーラーへの守護を強めている。 ハギア・ソフィアの祈り:B(C-) ハギア・ソフィア大聖堂の守護を獲得する。 本来さほどの効果は期待できなかったが、十字の加護によりランクが向上している。 開かれし棺:A ルーラーの死後三日間は棺に封をしない事を遺言した逸話からのスキル。 霊核が破損するレベルのダメージを受けた場合、棺を召喚、自らをその中に保存する。 棺の中に入った後は外部から魔力を注ぎ込む事で宝具『聖十字の祝福』の効果も合わさり、蘇生を遂げる事が可能。 但し必要魔力は膨大であり、また棺の中に入ってから三日が経過するとそのままルーラーは消滅する。 【宝具】 『聖十字の祝福(スタヴロス・コイネー)』 ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000人 かつてゴルゴダの丘にて、かの者の磔刑に使われたとされる十字架。 復活の象徴であり、病を癒し、死者を蘇生させる等といった伝説を持つが故に宝具としての主な効果は癒しの力となる。 真名解放せずともルーラーの肉体を活性化させ回復を促進する。 そして真名解放を行えば自陣営全体の傷を癒し、更に自らの皇帝特権スキルを封印する事で自陣営全体を包む防壁を発生させる。 【解説】 東ローマ中期の皇帝にしてヘラクレイオス朝の開祖。 アルメニア人貴族にしてカルタゴ総督の父とユスティニアヌス1世の妹ウィギランティアの曾孫の母を持つ。 彼が皇帝に即位したきっかけは当時暴政を行っていた東ローマ皇帝フォカスに父が反乱した事にある。 ヘラクレイオスは首都コンスタンティノポリスへ艦隊を率いて攻める事で、婚約者を人質に取られる事態もあったが2日で首都は開城し、フォカスは処刑された。 そしてコンスタンティノープルに入城したヘラクレイオスは皇帝として任命された。 しかし当時東ローマ帝国は滅亡の危機に瀕していた。 大地震、ペスト大流行、ユスティニアヌス1世の相次ぐ遠征や建築事業などによる財政破綻や軍事力の低下、そしてササン朝ペルシアの侵攻。 シリア・パレスティナ、次いでエジプト・アナトリアを占領され、首都間近にササン朝軍が迫ってきていた。 更にかの者の磔刑に使用されたとする十字架、聖十字架をササン朝に奪われ、帝国の権威は地に墜ちた。 ヘラクレイオスはしばらく何も手を打てず、一度カルタゴへの逃亡を図ったが、奮起し自ら軍を再建。 6年もの間ほとんど首都を離れて親征を行った。 そして627年にニネヴェの戦いでササン朝に勝利、翌年に自らササン朝首都クテシフォンへ侵攻して勝利を収める。 更に同年ササン朝ではホスロー2世の暗殺により和平派が台頭、カワード2世と和睦し領土と聖十字架を奪い返すことに成功した。 首都コンスタンティノポリスヘ凱旋したヘラクレイオスは、従来の皇帝の称号「インペラトル」ではなく、 「キリスト信者のバシレウス(ササン朝など周辺諸国の「王」を示すものだった言葉)」と名乗った。 以後バシレウスが東ローマ帝国における皇帝の称号として定着することになった。 しかしアラビア半島でイスラム教を信仰するアラブ人が勢力を拡大し、シリアへの侵攻を開始した。 ヘラクレイオスは自ら軍を率いて撃退しようとしたが、ヤルムークの戦いでアラブ軍に敗れてシリア・パレスティナを失い、敗戦の衝撃で病に倒れた。 病に倒れた後は、後継者問題や、宗教対立などに苦しみながらもイスラムに対する防衛線を構築するのに尽力した。 そして641年2月11日に没した。