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保安官エヴァンスの嘘 コメント 栗山ミヅキ先生による漫画作品。『週刊少年サンデー』に掲載。 デカグース:エルモア・エヴァンス ライチュウ:フィービー・オークレイ マッスグマ:テッド・ホール アブソル:アビー・アーブ マッギョ:マクスウェル・クエイド ゲンガー:カイリー・ディクソン コメント 名前 コメント すべてのコメントを見る
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『あたしの研究は、決して無駄じゃないってことよ♪』 本名…ラノ・エヴァース 性別…女性 年齢…16歳 身長…153cm 体重…52kg 使用武器…腕輪(+精霊からの魔力) 一人称…あたし 精霊…ルナ<光> 外見…少し青めの黒髪ポニーテール。 瞳は青色。 服装はTOVのリタ+白衣っぽい上着…みたいな? 16歳という若さながら、人間と精霊の関係について研究をしている人物。 自身も光の精霊<ルナ>を宿しており、自分自身を実験台にすることもある変わり者である。 研究者によくあるような性格はしておらず、とにかくタフで明るい。 時折、異常なまでに冷静なしゃべり方をするときがある。
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125 名前:maTsu[sage] 投稿日:2009/10/15(木) 00 31 55 ID ??? 投下します。 ・長い。無駄に長いです。 ・直接的な表現はあまりありません。 ・直球LASが好きな人にはあまり向かないかも ぶっちゃけ、前作の方が上手くいった感があります 心の広い人、寛容な人呼んでくれたら嬉しいです。 NGワードは maTsu でお願いします。 126 名前:maTsu[sage] 投稿日:2009/10/15(木) 00 33 44 ID ??? 「シンちゃん」 朝食後、食器の後片付けをしていると、ミサトさんが話しかけてきた。 「悪いけど、ひとつお願いしたいことがあるの。」 「何ですか?」 タオルで手を拭きながら答える。 「今日学校に行ったらさ、レイにリツコのところに行くよう言っといてくれない?」 「リツコさんのところですか?」 「うん、研究室にね。何の用か知らないけど、言えば分かるって言ってたわ。」 なんだろう、とは思ったが特に断る理由もなかったので 「はい、分かりました」と答えた。 エプロンをとり、カバンを手に取ったところで、 「シンジ!遅い!」 と、玄関からアスカの怒鳴り声が聞こえた。 「ゴメン、すぐ行くよ」 カバンを肩にかけ、玄関へ向かう。 「いってらっしゃい。んじゃ、よろしくね。」 「はい」 振り返って返事をした。 「シンジ!」 「ゴメン」 靴を履き、玄関を出る。 不機嫌そうな顔をしたアスカが、腕を組んで立っていた。 127 名前:maTsu[sage] 投稿日:2009/10/15(木) 00 34 54 ID ??? 学校に着き、靴を履きかえる。 アスカの後を追い、階段を上る。 アスカが教室のドアを開け、入る。続いて、自分も入る。 「おぉ、今日も二人仲良く登校かぁ」 ケンスケの席のそばにいたトウジがいつものように絡んできた。 「どういう意味よ」 いつものようにアスカが返す。 僕は苦笑いをしながら、自分の席に着く。 (毎日毎日、よく飽きないよなぁ) アスカとトウジのやりとりを横目に、ひとつ息をついた。 128 名前:maTsu[sage] 投稿日:2009/10/15(木) 00 35 46 ID ??? 僕はカバンを開け、S-DATを取り出した。 イヤホンを耳に着け、電源を入れる。 聴き慣れた曲が流れ出したとき、右耳からイヤホンが剥ぎとられた。 「シンジ!」 視線を右に移すと、アスカが訝しげな顔をして立っていた。 「アンタも黙ってないで何か言ってやりなさいよ!」 「・・そんなこと言われても」 トウジの顔を見る。 「こういうんを夫婦ゲンカいうんやろうなぁ」 トウジがまた悪態をつく。 「だから!」 アスカが机を両手でバンッと叩いた。 「鈴原!」 アスカのそばにいた洞木さんが突然大声を出した。 トウジは小さくゲッ、と言い、顔を引きつらせている。 洞木さんはトウジのもとへつかつかと歩いて行き、いつものように説教をし始めた。 アスカはふふん、と小さく笑って自分の席に戻って行った。 129 名前:maTsu[sage] 投稿日:2009/10/15(木) 00 36 49 ID ??? そういえば、と思い窓際に目を向けてみる。 窓際の後ろから2番目。綾波の席。 だが、誰も座っていない。 カバンも掛けられていないので、まだ来ていないようだった。 (・・休み?) 綾波が休みの場合はどうすればいいんだろう、などと考えているとチャイムが鳴り始めた。 自分の席に戻るクラスメイト達。 しばらくすると教室のドアが開き、担任の教師が入って来た。 そして、ホームルームが始まった。 ホームルームが終わり、1時間目の授業が始まっても、綾波は来なかった。 また少し振り返り、綾波の席を見る。 (・・ネルフに行ってるのかな) しばらく眺めていると、「・・碇君?」と前から声が聞こえてきた。 正面を向くと、先生がこっちを見ていた。 クラスメイト達の視線が、一斉に自分に向けられている。 「どうかした?」 「・・なんでもないです、すいません。」 周りからは、クスクスと笑い声が聞こえてきた。 僕は自分の顔が赤くなっていくのを感じ、下を向いた。 130 名前:maTsu[sage] 投稿日:2009/10/15(木) 00 37 42 ID ??? 結局、その日綾波は学校に来なかった。 そして、放課後。 カバンを机の上に置き、帰る支度をしていた。 「早く帰りましょ」 ふと顔をあげると、帰り支度をすませたアスカが立っている。 僕は少し考えて、言った。 「ゴメンアスカ、今日は帰りに寄らないといけないところがあるんだ。」 寄る場所というのは、もちろん綾波の家のことだ。 「・・ふうん」 ゴメン、と言う。 すこし間を空けて、言った。 「・・ついて行ってあげてもいいけど」 僕はえっ、と小さく言い、 「あ、あのさ、ホント大した用事じゃないから」 ムッとした表情をするアスカ。 「すぐに僕も帰るよ」 アスカは僕の顔をじっと見ている。 「ふぅ」と息をつき、分かったわ、と言った。 そして、アスカは一足先に教室から出て行った。 131 名前:maTsu[sage] 投稿日:2009/10/15(木) 00 38 56 ID ??? 靴を履き替えて、校門を出る。 学校から綾波の家までは20分ほどの距離があるため、少し早足で歩く。 時計を見ると、3時半を回っていた。 (ネルフに行ってたんだったら、リツコさんやミサトさんに直接聞いてるかもなぁ) そんなことを考えながら、歩く。 下校時間ということもあり、同じ制服を着た生徒もちらほらと見かけた。 しばらく歩いていると、古いマンションが立ち並ぶ団地が見えてきた。 マンションを見上げ、屋上近くに書いてある数字を見る。 (えっと、4棟だったよな・・) マンション横の歩道を少し歩く。 『4』と書かれたマンションを見つけ、入った。 綾波の部屋は、402号室。 エレベーターが無いので、3階分階段を上った。 そして、部屋の前に行く。 ドアの上の表札には、 『402 綾波』 と書いてある。 132 名前:maTsu[sage] 投稿日:2009/10/15(木) 00 39 50 ID ??? 女の子の家、いや、他人の家のドアをノックするのは少し勇気がいる。 ほかの人はどうか知らないが、少なくとも自分にとっては。 (綾波の部屋の呼び鈴が壊れているのはもちろん知っていた) 「ふぅ」 ひとつ息をはき、ドアを叩く。 ・・反応がない。 もう一回ドアを叩いた。 がちゃっ、とカギを開ける音がして、ドアが開いた。 そして、綾波が出てきた。 右手でドアノブを持ったまま、左手で目をこすっている。 「・・なに?」 僕は半歩後ろに下がって、 「・・ゴメン、寝てた?」と言った。 「・・明け方まで本部にいたから」 「そうなんだ。・・ゴメンね」 「何の用?」 133 名前:maTsu[sage] 投稿日:2009/10/15(木) 00 40 59 ID ??? そうだ、と思い綾波に事情を説明した。 綾波は小さくあぁ、と言って頷いた。 「もしかして、もう行ったとか?」 「ええ」 僕はやっぱり、と言って苦笑いをした。 綾波は表情を変えずに、ジッと僕の顔を見ている。 「ゴメン、それだけなんだ。寝てるとこ悪かったね。」 じゃあ、と言ったところで綾波が言った。 「帰るの?」 「え?」 「・・・少し、上がって行けば?」 僕は再びえっ、と小さく言った。 少し考えて、 「・・うん、じゃあお邪魔しようかな」と言った。 134 名前:maTsu[sage] 投稿日:2009/10/15(木) 00 41 56 ID ??? 靴を脱ぎ、綾波の後について部屋に入って行く。 「・・座ってて」 綾波が言った。 部屋にひとつだけあった椅子に座り、横にカバンを置く。 そして、辺りを見渡した。 (相変わらず殺風景な部屋だなぁ) 部屋にはベッドやチェスト、小さな冷蔵庫があるだけで、目を引くものはほとんど無かった。 普段なにしてるのかな、などと思いながら台所に立っている綾波に目をやった。 綾波は、僕が前に来た時に教えたやり方で紅茶を淹れている。 しばらくして、2つのティーカップを持ってこちらにやって来た。 そして、ベッドに腰掛け、 「はい」 と、カップを1つを渡された。 135 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/10/15(木) 00 49 55 ID ??? 携帯から失礼します maTsuです まだ途中なんですが、書き込みすぎで規制されてしまったので少しお待ちください スイマセン(__) 139 名前:maTsu[sage] 投稿日:2009/10/15(木) 14 58 31 ID ??? maTsuです 続き投下します。 140 名前:maTsu[sage] 投稿日:2009/10/15(木) 15 07 04 ID ??? 濃い茶色をした紅茶が、湯気を放っている。 「ありがとう」 そして紅茶を一口飲む。 気持ちが落ち着いたところで、聞いてみた。 「ところで、朝までネルフで何をやってたの?」 綾波はカップを持った手を膝の上に置き、 「シンクロテストとか、色々」と言った。 僕はそうなんだ、と言い、再び紅茶を口に含んだ。 「赤木博士のところには今朝行ったの」 「へぇ、それじゃあ僕が伝えに来ることなかったね」 綾波はふふ、と笑いながら紅茶を飲んだ。 しばらく話しこんで、時計を見てみると5時を少し回っていた。 「そろそろ帰らないと」 と言って、ゆっくり立ち上がる。 そう、と言い綾波も立ち上がった。 カバンを肩にかけて、玄関に向かう。 靴を履いて、玄関を出た。 綾波も、玄関まで来てくれている。 141 名前:maTsu[sage] 投稿日:2009/10/15(木) 15 15 43 ID ??? 「上がりこんじゃってゴメンね」 「いいの」 僕はじゃあ、と言って綾波の部屋を後にした。 階段を下りて、マンションから出る。 太陽はすでに傾きかけていた。 そして、家路につく。 夕食の食材を買うため、途中でスーパーマーケットに立ち寄った。 自宅に着くころには外は薄暗くなっていた。 ドアを開けて、部屋に入る。 おかえり、とミサトさん。 リビングで座りながらテレビを見ていた。 もちろん、テーブルの上にはビールの缶が置いてある。 僕は買い物袋をテーブルの上に置き、遅くなってすいません、と言った。 そして、台所で手を洗いながら聞いてみた。 「アスカは?」 「部屋にいるわよ」 僕はへぇ、と言って買ってきた野菜を袋から出した。 「シンちゃん、私お腹ペコペコだわ~」とミサトが言った。 「すぐに作ります」 鍋に水を入れて、コンロの火を点けた。 142 名前:maTsu[sage] 投稿日:2009/10/15(木) 15 27 05 ID ??? 夕食をすませ、食器を洗う。 最後の1枚を洗い終えて、タオルで手を拭いた。 夕食の後、ミサトさんはすぐに自分の部屋に戻って寝てしまった。 よほど疲れてたようだ。 アスカはリビングで寝っ転がって本を読んでいる。 (・・風呂に入るか) そう思い、僕は自分の部屋に戻った。 着替えを持って、風呂場に向かう。 「お風呂?」 リビングでアスカが声をかけてきた。 「うん」 アスカはふーん、と言って再び視線を本に戻した。 なんだろう、とは思ったがとりあえず風呂場に向かうことにした。 143 名前:maTsu[sage] 投稿日:2009/10/15(木) 15 35 21 ID ??? 体を洗い、湯船に入る。 ゆっくりと腰を下ろし、ふぅ、と息をついた。 「・・・・」 天井を見上げる。 視線の先では、電球が1つ、鈍い光を放っていた。 しばらくボーっとしていると、風呂の外側から物音がした。 「シンジ?」 僕はぎょっとして、風呂の扉の方を見る。 扉のガラスの向こう(もちろん中は見えないようになってるが)、アスカのシルエットがわずかに見えた。 「ア、アスカ?」 さすがに戸惑う。 少し間が空いて、 「・・・あのさ」とアスカが言った。 「え?」 「・・今日の放課後、どこに行ってたの?」 「放課後?」 「うん」 僕はあぁ、と思った。 そして少し考えて、言った。 「・・トウジ達とゲームセンターで遊んでたんだ」 144 名前:maTsu[sage] 投稿日:2009/10/15(木) 15 50 14 ID ??? 正直に綾波の家に行ってたと言えば、アスカのことだ、きっと良く思わないだろう それに、色々と悪態をつかれるのは目に見えていた ただ、そう思って僕は嘘をついた。 本当に、他意はなかった。 「・・そう」 アスカは小さくそう呟くと、リビングの方へ戻って行った。 (アスカ?) どうしたのかな、と思い、風呂からあがることにした。 体をタオルで拭いて、パジャマを着る。 仕切り扉を開いて、洗面所から出た。 しかし、アスカの姿は見えなかった。 どうやら部屋に戻って行ったらしい。 「ふぅ」 僕は、ゆっくりと椅子に座った。 145 名前:maTsu[sage] 投稿日:2009/10/15(木) 15 59 24 ID ??? 次の日の朝。 ピピピッとアラームが鳴り、目を覚ます。 「・・う・・」 枕元に手を伸ばし、目覚ましのスイッチを押した。 ゆっくりと体を起こし、しばらくボーッとする。 小さくあくびをしながら、ベッドから出た。 のそのそと部屋から出ると、ミサトさんがいた。 台所の椅子に座り、テレビを見ている。 「おはよ」 「・・おはようございます」 いつものように、朝食の準備に取りかかる。 エプロンを着けて、手を洗う。 ミサトさんはテーブルに頬杖をつき、テレビをボーッと見ていた。 「アスカは?まだ寝てるんですか?」 「あぁ、アスカならもう出たわよ。」 僕は手を止めて、えっ、と言った。 「やらないといけない宿題があるんだってさ。朝ご飯はいらないって言ってたわよ。」 「宿題?」 そんなのあったかな、などと考えつつ、調理を進めた。 146 名前:maTsu[sage] 投稿日:2009/10/15(木) 16 02 26 ID ??? 朝食をすまして、食器を洗っていると、 「あ、そうそう」とミサトさんが言った。 「昨日はありがとね、レイのところにわざわざ行ってくれたんでしょう?」 「えっ、知ってたんですか?」 「そうじゃないけど。昨日の朝、本部に行ったらレイがいたから。」 それに、とミサトさんが言った。 「帰りが遅かったしね。」 「あんまり意味なかったですけど」 と、苦笑いしながら返した。 ミサトさんはふふっ、と笑いながら 「ありがとう」と言った。 そして一通り家事をすました後、支度をして家を出た。 149 名前:maTsu[sage] 投稿日:2009/10/15(木) 16 30 59 ID ??? 学校に着き、靴を履き替える。 階段を上がり、教室に向かう。 ドアを開けて、教室に入ると、トウジとケンスケが近くに来た。 「なんや、どうしたんや、碇」と、トウジが言った。 僕はなんのことか分からず、は?と返した。 トウジは右手の親指で、自分の斜め後ろを指す。 その方向に目をやると、アスカがいた。 アスカは、洞木さんと楽しそうに話している。 「一緒に来ないなんてめずらしいなって言いたいんだよ」 と、ケンスケが言う。 「はあ」 「ケンカでもしたんか?」 「そんなことしてないよ」 「・・じゃあ、どっちかが浮気したとか?」 僕は二人の顔を見て、 「・・どういう意味だよ」と言った。 興味津々な2人を押しのけて、自分の席に着く。 「はぁ」 そして、ひとつ息をついた。 150 名前:maTsu[sage] 投稿日:2009/10/15(木) 16 38 54 ID ??? アスカを見ると、相変わらず洞木さんと談笑している。 しばらくすると、綾波が教室に入って来た。 「・・おはよ」 綾波は僕の席の前を通る際、小さな声でそう呟いた。 「あ、おはよう」 綾波は特に返事もせず、自分の席に着いた。 その後すぐにチャイムが鳴り、先生が教室にやって来た。 その日は特にアスカと話す機会もなく、最後の授業も終わった。 放課後、帰る支度をすまし、辺りを見渡すがアスカの姿が見えない。 (・・いつもなら急かしにくるのにな) 変だな、とは思ったが、その日はトウジ達と帰ることにした。 151 名前:maTsu[sage] 投稿日:2009/10/15(木) 16 47 23 ID ??? この日もスーパーマーケットに立ち寄り、食材を買って帰った。 トウジ達も各々好きなお菓子を買っていたようだ。 マンションに着き、トウジ達と別れた。 部屋の前まで行き、ドアノブを握って、回す。 しかし、途中までしか回らない。 カギがかかっているようだ。 カバンからカギを取り出し、そして開けた。 靴を脱いで、部屋に入る。 ・・誰もいない。 買い物袋をテーブルの上に置いて、電気を点ける。 (アスカ、どこかに寄ってるのかな) 水道の蛇口をひねる。 水の流れる音だけが、部屋の中に響いていた。 152 名前:maTsu[sage] 投稿日:2009/10/15(木) 16 53 45 ID ??? しばらくして、玄関のドアを開ける音が聞こえた。 先に帰って来たのは、アスカ。 「おかえり」 「・・ただいま」 「遅かったね、どっか行ってたの?」 「・・・」 何も言わない。 そして、そのまま部屋に行ってしまった。 (・・なにかあったのかな) 少し心配になり、聞いてみることにした。 タオルで手を拭き、アスカの部屋の前に行く。 数回ノックした後、聞いてみた。 「・・アスカ?」 少し間を置いて、何、と小さく返事が返ってきた。 「何かあったの?」 「・・・」 返事がない。 もう一回ノックする。 「・・なんでもない」 「・・え?」 「・・なんでもないから」 そう言うと、もう返事が返ってこなくなった。 153 名前:maTsu[sage] 投稿日:2009/10/15(木) 17 03 04 ID ??? ミサトさんが帰って来た後、3人で夕食を食べた。 食事の間も、アスカはあまり口を開こうとしなかった。 食事の後、いつものように食器洗いに取りかかる。 夕食後、アスカはすぐに風呂に入ってしまった。 ミサトさんは、リビングでビールを飲みながらテレビを見ている。 「ミサトさん」 「・・ん?」 振り返ってこっちを見る。 「・・あんまり飲みすぎたら体に悪いですよ。」 「もージジくさいこと言ってんじゃないの。こんくらいじゃ飲んだうちにも入らないわよ。」 「・・はぁ」 視線を食器に戻す。 「そういえばさ」 「え?」 再び食器を洗う手を止める。 ミサトさんが、風呂場の方に目を向ける。 「なんかあったの?」 少し間を置いて、答えた。 「よくわかんないんですけど、何かあったんだと思います」 「・・ふーん」 ビールを一口飲んで、言った。 「まぁ、仲良くしなさいよ」 僕は苦笑いをして、わかりました、と答えた。 154 名前:maTsu[sage] 投稿日:2009/10/15(木) 17 08 11 ID ??? 次の日の朝。 目を覚まして自分の部屋から出ると、やはりアスカの姿はなかった。 靴もないので、どうやら今日も先に学校に出かけたらしい。 ミサトさんは、まだ起きていないようだった。 とりあえず軽く朝食を摂り、ミサトさんの分も用意した。 学校に行く準備をして、家を出る。 「ふぅ」 (・・ホントにアスカどうしたのかな) そんなことを考えながら、学校へ向かった。 学校に着き、教室に入る。 席に座ると、洞木さんが近くにやって来た。 「碇君。」 「?」 洞木さんの顔を見る。 「・・あのね」 チラッと後ろを振り返る洞木さん。 何かを言いたいんだな、ということだけはなんとなく分かった。 「・・・」 「・・ゴメン、なんでもない」 そういうと、洞木さんは教室の後ろの方に歩いて行った。 155 名前:maTsu[sage] 投稿日:2009/10/15(木) 17 14 33 ID ??? しばらくして、今度はトウジ達がそばに来た。 「おい、なんやさっきの、碇。」 僕の首に腕をかけてくるトウジ。 「え?」 「さっき委員長と話してたやろ。」 僕はあぁ、と思って頷いた。 「なんの話や?」 そばで、ケンスケがにやにやしている。 「なんでもないよ」 「他の人には言えん話か?」 首にかけた腕の力が少し強くなった。 「勘弁してやれよ。」 ケンスケが言った。 「悪いな、碇。ヤキモチ焼いてるみたいなんだ、トウジ。」 「コラ!勘違いすんな!」 「まぁまぁ」 そう言うと、ケンスケはトウジが着ているジャージの首元を掴んで、自分の席の方へ引っ張って行った。 156 名前:maTsu[sage] 投稿日:2009/10/15(木) 17 30 06 ID ??? そういえば、と思い教室を見渡す。 アスカは、教室の後ろの方で洞木さんと話していた。 こうして見る限りでは、いつものアスカだ。 (・・わけがわかんないや) 少しの間考え込んでいると、チャイムが鳴り始めた。 先生が教室に入ってきて、ホームルームが始まった。 4時間目の授業が終わり、休憩時間。 トウジ達は購買に行ったようだ。 後ろを振り返り、アスカの方に目を向ける。 アスカはカバンを机の上に置いて、何かを探しているようだった。 隣には、洞木さんが座っていた。 (・・昼食、買って来たのかな?) 157 名前:maTsu[sage] 投稿日:2009/10/15(木) 17 35 12 ID ??? アスカに、声をかけてみることにした。 席を立ち、近くに行く。 「アスカ」 パンの袋を開けかけていたアスカが、ぎょっとした表情でこちらを見る。 「・・なに」 「・・パン、買って来たの?」 「・・・」 下を向くアスカ。 「・・アスカ?」 「・・・いいでしょ」 「え?」 「別にどうだっていいでしょ!!」 アスカはそう言うと、がたんと立ち上がって教室から出て行った。 「え・・・・」 何も言えず、ただアスカが出て行ったドアの方を見つめていた。 教室にいた生徒の視線が、僕に向けられていた。 158 名前:maTsu[sage] 投稿日:2009/10/15(木) 17 41 39 ID ??? 「碇君」 「・・・」 「碇君!」 はっ、として後ろを振り向く。 洞木さんがなにやら泣きそうな顔で立っていた。 「・・追いかけて」 「・・え」 「アスカを追いかけてあげて!はやく!」 「う、うん」 そう言って、僕はドアの方に走り出した。 「多分屋上にいると思う!」 後ろで、洞木さんが言ってるのが聞こえた。 159 名前:maTsu[sage] 投稿日:2009/10/15(木) 17 44 18 ID ??? 階段を、1段飛ばしで上る。 屋上に着くころには、息が切れていた。 扉を開けて、屋上に出る。 するとすぐに、アスカが目に入った。 アスカは、手すりに肘をかけて向こうを向いていた。 息を整えて、言った。 「アスカ」 反応がない。 「・・アスカ」 もう一度言った。 少し間を開けて、 「・・・何よ」とアスカが言った。 「ホントにどうしたの?」 アスカはゆっくりとこちらを向いた。 160 名前:maTsu[sage] 投稿日:2009/10/15(木) 17 50 03 ID ??? 「・・・かんないの?」 「え?」 「ホントに分かんないのって言ってるの」 ―しばしの沈黙― 「・・・」 考えてみても、やはり答えは見つからなかった。 ただ、自分が悪い、ということだけは自覚した。 アスカは僕の顔をじっと見ている。 ひとつ溜息をつき、アスカが言った。 「・・もう、いいわ」 そして、僕の後ろの扉に向かって歩き出した。 「アスカ」 僕は、アスカの腕を掴んだ。 アスカは、こちらを見ない。 「ゴメン、僕が悪かったんなら謝るよ。ホントにゴメン。」 161 名前:maTsu[sage] 投稿日:2009/10/15(木) 17 52 39 ID ??? 続けて、言った。 「僕、アスカに何かしちゃったかな。」 僕の顔をジロッと見るアスカ。 「嘘」 僕はえっ、と小さく言った。 「嘘ついたじゃない!」 「・・嘘?」 「・・鈴原達と遊んでなんかなかったんでしょう!?」 僕はすぐに状況を理解した。 おととい、綾波の家に行った時の― 「・・レイの家に行ったことは別にいいわ」 少し間が空く。 「・・知ってたの?」 再び僕の顔を睨む。 「・・ミサトから聞いたの」 僕は下を向き、 ゴメン、と言った。 162 名前:maTsu[sage] 投稿日:2009/10/15(木) 18 00 03 ID ??? 「何で嘘ついてレイの家に行ったのよ」 「い、いや、ホント深い意味はないんだよ」 「・・次嘘ついたら殺すわよ」 腕を組むアスカ。 「ホ、ホントだって」 「・・レイの家で何をしてたの?」 「何って・・」 「正直に言いなさいよ」 「・・頼まれた伝言を伝えに行って」 アスカはまだ僕の顔を見ている。 「少し紅茶を飲んで、話しただけ」 「それから?」 「い、いやホントにそれだけ」 「次嘘ついたら・・・」 「ホントにホント、絶対」 163 名前:maTsu[sage] 投稿日:2009/10/15(木) 18 03 33 ID ??? ―少し沈黙― 「・・・」 「あのさ・・ホントにゴメン」 「・・許さない」 「え?」 僕の腕を振りほどくアスカ。 「謝ったからって許されると思ったら、大間違い」 ―何も言えない。 悪いのは、完全に僕だ。 164 名前:maTsu[sage] 投稿日:2009/10/15(木) 18 07 07 ID ??? アスカは、階段に向かってゆっくりと歩き出した。 そんなアスカをじっと見ている僕。 「―なんでもするよ」 思わず、口をついて出た。 小学生みたいな謝罪の言葉だ。 だが、アスカの動きは止まった。 振り返るアスカ。 にやっと笑って、言った。 「・・なんでも?」 正直しまった、と思ったが、もう後には引けなかった。 次に嘘をついたら殺されるのだから。 「やるよ」 アスカはふふっ、と笑い、 「言ったわね」と言った。 165 名前:maTsu[sage] 投稿日:2009/10/15(木) 18 15 09 ID ??? アスカの命令は、午後の授業をサボって遊びに行くことだった。 言うまでもなく、、僕も道連れらしい。 後になって怒られることは目に見えていたが、断れるわけがなかった。 教室に自分とアスカのカバンを取りに行き、階段を下りる。 途中、先生に見つからないように警戒しながら。 下駄箱に着くと、アスカが腕を組んで待っていた。 「遅い」 「・・ゴメン」 「あ、アタシの荷物はそのまま持っててね」 「え」 「・・なにか文句でも?」 僕の顔をジロリと睨むアスカ。 「・・いえ」 周りの目を気にしながら、校門を出る。 「あー昼間っから堂々と学校を抜けるのってなんかいいわー」 両手を伸ばしてアスカが言った。 166 名前:maTsu[sage] 投稿日:2009/10/15(木) 18 18 37 ID ??? 「シンジ」 え、と言ってアスカの顔を見る。 「嫌なの?」 「い、いやそんなことないよ」 アスカはニコッと笑い、言った。 「んじゃ、明日も明後日もその次も。」 ―げっ、と思ったが・・何も言えない。 「あ、し明後日は土曜日だから、月曜日もね」 (・・ミサトさんにも怒られるだろうなあ) 「とりあえずゲーセンでしょ、服も見たいし、あとハンバーガーも食べたいわ。」 楽しそうなアスカを横目に、ひとつ溜息をつく。 結局、その日家に帰ったのは夕方の6時過ぎだった。 商店街や大型百貨店を連れまわされ、クタクタになっていた。 アスカの機嫌もどうやら直ったらしい。 ただ、今月支給されたお金はほとんど消えてしまったが。 167 名前:maTsu[sage] 投稿日:2009/10/15(木) 18 23 53 ID ??? 「シンジ」 リビングで戦利品(もちろん買わされたもの)を眺めていたアスカが、言った。 「え?」 水道の蛇口をひねり、アスカの方を見る。 「今回はこれくらいで許してあげるけど」 ゆっくりと僕の顔を見るアスカ。 「・・・今度嘘ついたら、ホントに殺すから」 「わかってるよ」 「はい?」 「・・わかりました」 アスカはにやっと笑い、よし、と言った。 (END) 168 名前:maTsu[sage] 投稿日:2009/10/15(木) 18 29 07 ID ??? 以上です。 駄文長文スイマセン(_ _) つーかいま読み返してみると完全に育成展開ですねコレ・・orz ホントパクったわけじゃないんですゴメンナサイ デキに納得はしてません、正直
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※投稿の第一レス番を基準にソートしています。 「○○スレ目レス番号-LAS2」 14スレ目 14スレ目935-LAS2「荒野掌篇」※短編3作 15スレ目 15スレ目26-LAS2 15スレ目36-LAS2 15スレ目65-LAS2 15スレ目92-LAS2※短編2作 15スレ目98-LAS2 15スレ目102-LAS2 15スレ目104-LAS2 15スレ目108-LAS2 15スレ目111-LAS2『すれ違い』 15スレ目117-LAS2 15スレ目122-LAS2 15スレ目129-LAS2 15スレ目131-LAS2 15スレ目138-LAS2 15スレ目144-LAS2 15スレ目153-LAS2※LAS小説投下総合スレ17に移動? 15スレ目168-LAS2 15スレ目170-LAS2 15スレ目182-LAS2 15スレ目187-LAS2 15スレ目188-LAS2 15スレ目227-LAS2 15スレ目263-LAS2 15スレ目273-LAS2【Blue Days】 15スレ目278-LAS2 15スレ目280-LAS2 15スレ目286-LAS2 15スレ目291-LAS2 15スレ目294-LAS2「203X年冬」 15スレ目320-LAS2※葛城家シリーズ 15スレ目341-LAS2「キズアト」 15スレ目349-LAS2 15スレ目352-LAS2 15スレ目353-LAS2 15スレ目369-LAS2※葛城家シリーズ 15スレ目389-LAS2『Motion Picture Soundtrack』 15スレ目398-LAS2『雨雲』 15スレ目421-LAS2「再び・・・」 15スレ目435-LAS2「Handy Tiger Strike!」 15スレ目450-LAS2『ロビンソン』 15スレ目521-LAS2 15スレ目544-LAS2「DESTINY」 15スレ目564-LAS2 15スレ目607-LAS2「帰らざる彼」 15スレ目648-LAS2 15スレ目708-LAS2 15スレ目737-LAS2「アスカのポジティヴあさごはん」 15スレ目769-LAS2 15スレ目784-LAS2「起動実験準備室」※未完? 15スレ目810-LAS2 15スレ目829-LAS2※短編2作 15スレ目836-LAS2 15スレ目838-LAS2『spece oditiy』※未完 16スレ目 16スレ目14-LAS2「eat me/side s」 16スレ目20-LAS2「eat me/side a」 16スレ目23-LAS2「title undefined」※未完? 以降、LAS小説投下総合スレに合併?
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36 名前:パッチン[sage] 投稿日:2008/08/17(日) 22 25 40 ID ??? 2025年 ネルフが超法規的特務機関から、科学研究所となった。 僕碇シンジが24歳になり、ネルフ職員となった。 そして、惣流アスカラングレーが『碇アスカ』…つまり僕の奥様になった。 そんな、ある日のネルフ研究所にて 『電話あい』 「碇く~ん、お電話入りましたよ」 「あっハイ!」 デスク上の書類に目を通していた僕は一旦その作業を中断し、受話器を取る。 その様子を楽しそうに眺めている、電話を教えてくれた先輩の女性研究員さん。 「ふふ、奥さんからですよ♪ごゆっくりね」 「えっ…アスカから、ですか…」 思わずボタンに伸ばした手を止めてしまう が、さすがに出ないワケにもいかないので、「はぁ…」という溜め息と共に、電話を繋いだ。 「もしもし?」 『あ、シンジ…。今大丈夫よね…?』 受話器の向こうから聞こえるスゴく聞き慣れた声。 「うん、一応大丈夫だけどさ。会社の電話で話すのって恥ずかしいから、出来ればやめてほしい…です」 そう言いながら僕は、上司であり元保護者のミサト課長を見やる。 ほら…ニタニタ笑いながら、両手でハートマークなんか作ってる。 『し、仕方ないでしょ!ネルフって携帯の電波入らないんだからさぁ!』 37 名前:パッチン[sage] 投稿日:2008/08/17(日) 22 27 11 ID ??? 「で?用件は何なの?」 ミサトさんからの好奇の視線にグッと耐えながら、僕は受話器を両手で握りしめてコソコソと話す。 『うん。夕飯は何がいいかな?・・・とか思ったりして…』 「は?」 僕は思わず素っ頓狂な声をあげてしまう。 「ま、まさかそんな理由で電話かけてきたの?」 『え!あ…いや…』 リビングで、子機片手に焦っているアスカが目に浮かぶ。 『それだけじゃないわよバカ!そのぉ…えっと…』 「・・・今日カレーでいいよ。バイバイ」 そう言うと、僕は通話終了のボタンに手をかける。 『ま、待ちなさいよ!切っちゃダメ! あっ!今日ミライが幼稚園で粘土作ったらしいのよ!』 「その話は夜、ミライ本人から直接聞くからさ。じゃあバイバイ」 僕は再び通話終了ボタンに手をかける。 『ヤダっ!切っちゃダメって言ってるでしょぉ!!』 「もぉ…だって用事無いんだろ」 もう一度僕は、ミサトさんの方をチラリと見る。 すると、先程までコチラを眺めてニタニタしていたミサトさんは、 何故か今はイヤホンを耳にぶら下げて、両手で顔を覆うようにして必死に笑いを堪えていた…。 ・・・間違いなく盗聴されている。 38 名前:パッチン[sage] 投稿日:2008/08/17(日) 22 28 42 ID ??? 『アンタは今日何かあった?』 「イヤ何かはあるけど、会社の電話で話さなくていいでしょ…」 『・・・ねぇ。・・・そんなにアタシと話すのイヤ?』 そんな弱々しい言葉の後に、ズズッという鼻をすする音が聞こえる…。 「ちょっ、ちょっと泣くことないだろ」 『だって、すんごい鬱陶しそうな感じじゃないのよぉ… ミライもお昼寝中でヒック…アタシすっごい寂しかっエック…たんだからぁ…』 「ぷくくっ!」 完全に泣き虫モードに突入し、変な泣き癖までついてきたアスカ。 そして、そんな彼女の意外な一面を垣間聞いてしまったミサトさんは、デスク下の足をバタバタさせながら、声を出して笑うのを必死で堪えている。 「わ、わかったよ。わかったから、とりあえず一旦電話切っていい?談話室の公衆電話から、かけ直すから…」 『やっヤダぁ、ダメよダメ!!シンジ絶対電話かけない気でしょ!! 大体なんでソコじゃダメなのよ!談話室だって人多いでしょぉ!』 「だ、だって…」 まさか盗聴されてるなどと言えるワケが無いので、僕はそのまま押し黙ってしまう。 当の盗聴犯は、逆探知してる刑事さんのように、話を伸ばすジェスチャーなんかを僕にして、凄く楽しそうだ。 39 名前:パッチン[sage] 投稿日:2008/08/17(日) 22 30 25 ID ??? 『ね、ねぇ…もしかしてアタシからの電話が不都合な理由とかが ・・・あるの?』 「え…」 自分がかけた電話を迷惑そうにあしらう僕に、アスカは少しイラついてきたのか、今度はダークサイドに片足入れたような声で僕に問いかけてきた。 「いや、僕は会社でプライベートの電話はちょっと…と、思って」 『じゃあさっきの女誰よ!!』 うわぁ、かなりキテる…。 「さ、さっきのは先輩の研究員さんだよ」 『なによその女!!いっつもアンタの近くにいるの!? まさか、さっきまでソイツと乳繰り合ってたんじゃないんでしょうね!!』 その言葉と同時に、メキメキッという破壊的な音が受話器から聞こえた。 ヤバい…このままでは子機がアスカの握力に耐えられない…! 『電話出た時だって「あっ碇君の奥さんですね。今代わりますから、ちょっと待ってて下さい」 とか何とか言っちゃって!どんだけヤラシイ女なのよソイツ!!』 さっきの応対内容のどこにヤラシさが含まれていたのかがよくわからないが、とにかくアスカが暴走モードに入ったことは、ハッキリとわかった。 一方そんな修羅場を盗聴しているミサトさんは、『えらやっちゃ♪えらやっちゃ♪』と呑気に踊っている。 40 名前:パッチン[sage] 投稿日:2008/08/17(日) 22 32 10 ID ??? このままでは通話を終わらせるどころか、僕の人生すら終わらせかねない…。 僕はヒステリック満載の声を発し続ける受話器を耳にあてながら、コソコソと自分のデスク下に入っていく。 これで、課内の人達には僕の声が聞こえないハズ。 ・・・まあ盗聴してる人には丸聞こえだけど、この際仕方ない。 「ねぇアスカ…?」 『なによ浮気不倫の馬鹿男!!』 「あ、愛してるよ…世界で一番」 『ぅあ!?』 10年一緒にいるから知ってる、アスカが一番大好きな言葉。 「アスカは僕のこと嫌いになったの?」 『あ、アンタ馬鹿ぁ!?』 ・・・なんで僕、職場でこんな会話してるんだろ… 「ねぇ、僕がアスカ以外の人とそんな関係になるようなヤツだと思ったの?アスカは僕のこと信じてないの?」 『だ、だってアタシっ!アンタが…その…』 「心配してくれたんだよね?」 『あ、いやっ!その… ・・・うん』 机の下という世界の外から「キャーキャー背中が痒いわ~んっ♪」などの声が聞こえるが、ここはグッと耐える。 「落ち着いた?」 『うん、あのぉ疑って・・・その・・・』 「ごめんね」 『う、うんっ!アタシも…ごめんね』 41 名前:パッチン[sage] 投稿日:2008/08/17(日) 22 33 47 ID ??? アスカもだいぶ落ち着いたようなので、僕はゆっくりデスクから這い出し、自分の椅子に座った。 さっきから急にデスク下に潜り込んだり、出てきたりと、かなりおかしな行動をとっていた僕だったが、職員の人達(盗聴犯以外)は全く気にした様子が無く、自分の仕事に各自没頭している。 僕そんなに影薄いのかな? 『…ねぇ、ねぇシンジ?』 「ん?なに?」 ちょっと気持ちが凹みかけていた僕だったけど、やっぱりアスカの声を聞くと少し安心してしまう。 きっとこういうのを家族っていうんだろうね。 『なんかありがとね…アタシちょっと馬鹿だったわ』 「ううん、もういいよ。わかってくれたんならさ」 『・・・・・』 スッキリした様子のアスカだったけど、今度は何故か黙り込んでしまう。 ホントにこの人は何を考えてるのかわからない… 『・・・ねぇ、明日休みだよね?』 「ん?まあね」 『そっか…休みなんだよね』 電話のむこう側で、なにか言いたげにモゴモゴしてるアスカ。 でもこちら側はこちら側で変な雰囲気。 だって、課内の職員さんみんなが無言で机に向かっていて、喋ってるのは僕だけという状況なわけで・・・。 さすがにそろそろ終わらせた方がいいかな…? 42 名前:パッチン[sage] 投稿日:2008/08/17(日) 22 35 37 ID ??? 「ねぇ、そろそろ…」 『わ、わかってるわよ!今言うから、ちょっと待ちなさいよ! その…明日休みなのよね?』 「そうだよ。さっきも言ったじゃないか」 「ほほほっ…それもそうね」 「まさか、またどっか行きたいの?この前遊園地行ったばかりなのに」 「そ、そうじゃなくてぇ…。簡単に言うと…」 「・・・なに?」 「久しぶりにさぁ…」 「・・・ん?」 「せ…!・・・その…せせっ…!」 静まり返った課内。 僕の耳に入るのは、いつもよりオドオドしたアスカの声だけだったのだが… 次のアスカの一言によって 「せせせ?」 次の一言によって・・・ 「・・・せ、セックスしない?」 「ば、馬鹿…!」 ミサトさんに盗聴されてることに気が焦る僕の声をかき消すように… 「「「「「「うおーーーーー!!!!」」」」」」「「「「「「きゃーーーーー!!!!」」」」」」 ・・・課内全体がお祭り騒ぎとなった 43 名前:パッチン[sage] 投稿日:2008/08/17(日) 22 38 21 ID ??? 「シンジ君やるじゃないか!!」 「今夜は寝かさないよ?ってか!?おい」 「ふ、不潔よシンジ君!!」 「え…?え!!」 いきなりの課内丸ごと大フィーバーに、僕は目を白黒させながら周りを見渡す。 ・・・そして見えたのは、ハシャぎ倒す先輩職員さん達の耳にぶら下がるイヤホン。 ま、まさかっ!? 『ちょっと何よ!後ろの騒ぎは!』 「ご、ごめんアスカ、電話が…その…盗聴されてたみたい…」 まさかの課内全員に・・・ 『な゛っ…!?』 あまりのことに絶句するアスカ。受話器の向こうで彼女の顔が赤くなっていく音が聞こえた気がした。 「アスカ~?今晩は可愛がってもらっちゃうのよぉん♪」 僕の背後からニュ~っと顔を出して、ミサトさんが大声を出す。 『み、ミサトまで聞いてたの!?』 「ごめん…」 『バカ!信じらんないわよ!なんでアンタは・・・』 『ママぁ、声おっきいよ』 『み、ミライ!起きてたの!?』 あぁ・・・もう、なにがなんやら・・・ 『ねぇセックスってなに?』 『あ、アンタいつから起きてたのよ!! とりあえずシンジ!アンタ帰って来たら酷いんだから、覚悟しときなさいよね!!』 「ちょっ、ちょっと待っ・・・」 ガチャン!! 44 名前:パッチン[sage] 投稿日:2008/08/17(日) 22 39 32 ID ??? 「あぁ・・・」 電話がきれた後も祭りが終わらない課内で、1人死んだような目で受話器を下ろす僕。 「あら~どうしたのよシンちゃん?せっかくアスカからのお誘いがあったのに♪」 「うぅ…」 職場のどこに隠していたのか、何故かえびちゅを片手に装備し、ガハハと笑うミサトさんの声。 その声から逃れるように僕は両手で頭を抱える。 ぷるるるっ と、その時、僕のデスクの電話が内線ランプを点滅させながら騒ぎ始めた。 「あ…?」 僕は一瞬ためらいながら、再びゆっくりと受話器を手に取った。 聞こえてきたのは、アスカの声とは真逆をいくように低い声。 『シンジか』 「と、父さん!」 『ミライは俺が預かるから、安心して今日は早退しろ』 「は…?」 『次は男の子がいいな。一姫二太郎ともいうしな』 「ま、まさか父さんも盗聴してたのかよ!?」 『問題ない』 「なにがだよぉ!!」 その日、仕事を早退した僕がネルフとアスカのご希望に答える『お仕事』をしたのは、いうまでもないことでした…。 おわり
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836 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2010/07/01(木) 14 09 17 ID ??? では、調子に乗らせて頂いて……。 -- 「ふむ、今日はシンジの誕生日なのね」 「い、いや、気をつかわなくてもいいよアスカ」 アスカ、ひと思案の末、形の良い自慢の胸をグイッとシンジに突き出した。 「よし、アタシのおっぱいあげる」 「ちょっ……あ、あの」 思わず顔が引きつるシンジ。真に受けられる筈がない。 「あ、え、えーと、ボクCDが欲しいな。パッヘンベルの三千円くらいで……」 「アタシの胸が三千円にも劣ると言いたいのかしら」 シンジ、仕方ない。アスカのジョークにつきあってやれ。 どうなるか判っているとしても。 「ほら、シンジ? あんたのおっぱいなんだから、もむなり、はさまるなり、お好きにドーゾ」 「……じゃ、じゃあ触るよ」 「ご遠慮なく」 と、シンジはおそるおそる手を伸ばす。 シンジの心境、熱せられたアイロンを試しに触れようとするかのごとく、あるいは、 もしかしたらこのリーチアクションは当たるかもしれない、という淡い期待感というところだろうか。 思わず、ゴクリと生唾を飲み込み、あと少しでその右手が触れる、その刹那。 ばきっ! はい、アスカのハイキックがシンジの顔面にクリーンヒット。 シンジ、お疲れ様でした。 「あっはっは、ゴメンねシンジ。この右足はアタシのだから」 「ですよねぇ……あはは」 (続く?) 837 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2010/07/01(木) 14 25 15 ID ??? で、続き。 -- で、1年後。 「よし、今年はアタシの好きな部位を選ばせてあげよう。どこが欲しい」 「……」 思わず、うんざり顔になるシンジ。結果はわかっているのだ。 さて、なんと答えよう。 「じ、じゃあ、右下肢」 「成る程、まるまる1本ね。足といったら膝蹴り喰わせようと思ったのに」 「あ、あはは……」 「さあどうぞ。去年のおっぱいでも、この太ももでも、お好きなだけスリスリしてみれば?」 と、ドンとテーブルの上に右足を投げ出すアスカ。 さて、どうなるだろう。 いや、そうなるだろう。 ばきっ! 今度は華麗な右フックがシンジの頬を直撃。 「アハハ、この右手ちゃんってば焼き餅焼きだから」 「ぐ、ぐう……やっぱりこうなるのですか、アスカさん」 「コンプリート目指して頑張ってね」 「……え?」 そう、全身全て完成すれば良い訳である。 「それまで、良いコにしてれば……ね?」 「は、は、あはは」 ガンバレ、シンジ。そして、油断するなよ、シンジ。 上下肢全て揃っても、最後にはヘッドバットが待ってるぞ。(完)
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173 名前:+A(nother) 第1話[sage] 投稿日:2009/09/18(金) 21 48 44 ID ??? 「それでは、1stチルドレンとリリス融合の儀式を執り行う」 セントラルドグマ最深部リリスの間には、祭司と4人の黒衣の者、護衛の戦自攻撃部隊員20名が全裸の綾波レイを括りつけた十字架の周りを囲っている。 「はじめよ」 祭司の号令に黒衣の物たちはのっそりと囲いを狭め、十字架を担ぎ上げる。 「いや!やめて!イヤー!」 レイはあらん限りの力で縛めを解こうとしてモガクがまるで効果がない。 十字架の上で暴れるレイをものともせず、黒衣の者たちは赤く染まった水の中に歩を進める。 「イヤァァァァー!助けて!碇クーン!!」 レイは絶叫し泣き叫んだ。 「間に合った!」 秘匿エレベーターから3人の人影が飛び出す。 「葛城、いくぞ!マリ、援護を頼む!」 「ウニャ!」 マリはロケッランチャーを担ぐと迷うことなく戦自攻撃部隊に発射する。 騒ぎに気づいた隊員達の半数は3人を確認する間もなく爆散した。 残りの隊員めがけ加持と葛城は脱兎のごとく自動小銃を乱射しながらに突っ込んでいく。 マリは獲物を狙撃銃に持ち替え隊員を次々に撃ち抜いていく。 葛城は弾丸を撃ちつくした自動小銃をナイフを構えた隊員に投げつけ、両手のハンドガンで射撃、隊員の脳漿を撒き散らし蹴散らしていく。 奇襲に混乱した黒衣の者たちは十字架を投げ出し、思い思いに反撃の体勢を取るが、葛城と加持の正確無比な射撃の前に次々と撃ち倒されていく。 最後の司祭を加持が射殺するまで、わずか3分を経過しただけだった。 174 名前:+A(nother) 第2話[sage] 投稿日:2009/09/18(金) 21 52 47 ID ??? 「レイ!」 加持と葛城は浮いている十字架の元に駆け寄り、縛めを解いてレイを解放した。 「ミサトさん!」 レイはミサトにしがみつき感情を爆発させて泣いた。 「怖かった。もう碇くんに会えないと思うと、とても怖かった」 「レイ。もう大丈夫よ。シンジくんのところへ帰りましょう」 「帰る。碇くんのところへ帰るー!」 加持は着ていた上着をレイに羽織らせた。 「さあ、急がないと帰れるものも帰れなくなっちまうぞ」 3人はマリの待つ秘匿エレベーターに駆け出したその時、黒衣の物たちがむっくりと起き上がった。 「なに?!こいつら!」 黒衣の者たちの体が急激に拡大して黒衣が破れ落ちる。 3mを越す真っ白な巨体に異様な頭部。目鼻が無く、大きく真っ赤な唇だけの顔。 その唇がニィと笑い、大きな歯がむき出しになる。 「こいつが噂の人間と使徒とのハイブリットか!」 「なにそれ?!」 「ゼーレのやつら、EVAの量産実験に本物の人間を使用した。らしい。詳しい話は後だ。とにかく逃げるぞ」 3人が駆け出したと同時に使徒人間は翼を生やして空へ舞い上がる。 それをマリが狙撃するが全くダメージを与えられない。 「早くして!手持ちの武器じゃ、こいつら倒せない!」マリが叫ぶ。 使徒人間の1匹がマリに気がつき急降下で襲いかかるが、間一髪でそれを避ける。 マリを助け起こすミサト達の周りを4匹が囲んだ。 「ちょっち、まずいわね」 「いーえ、かーなーりまずいと思うにゃ」 「こりゃ、絶体絶命だな」 4匹はじりじりと間合いを詰め、今にも飛び掛ろうと力を貯めているように見えた。 175 名前:+A(nother) 第3話[sage] 投稿日:2009/09/18(金) 21 59 40 ID ??? 同時刻。 ネルフ松代支部地下格納庫で実験機EVA8号機にエントリープラグが挿入されようとしていた。 搭乗員は碇シンジ、式波アスカの2名。 シンジは意識の無いアスカを背中から抱えてシートに座っている。 「これより、アスカ奪還作戦を開始します。覚悟はいい?シンジくん」 「はい、リツコさん。これはボクが望んだことです」 リツコはフッと笑い、すぐさま口元を引き締めた。 「作戦開始!」 「「了解!」」 マヤ、マコト、シゲルが応える。 マヤの手がすばやくコンソールパネルを操作する。 「プラグ深度を最下層点に設定完了、プラグ沈降開始」 「深度200オーバー、パイロット肉体形状が崩壊します」 「深度最下層400到達。パイロットの精神パターン青に変わりました」 「精神パルス同期しました!」 「完全に融合です」 「シンジ君、がんばってね」 リツコはイスに深く腰かけ、タバコに火をつけ深く紫煙を吸い込んだ。 ボクは今アスカとひとつになった。 作戦前にミサトさんがボクに話してくれたアスカの生い立ち。 幼い頃EVAの実験で母親を失い、ヨーロッパ戦役の最中、父親を失い孤児となり、 ネルフユーロ支部でEVAパイロットとして訓練に明け暮れる日々。 孤独に耐え、人に甘えず、自分の力だけを拠りどころにした孤高の魂。 そのアスカの心を踏みにじり無理やり犯した使徒。 今なお精神汚染を続ける使徒の殲滅が今のボクの使命だ。 ヤツは絶対に許さない! 181 名前:+A(nother) 第4話[sage] 投稿日:2009/09/19(土) 16 48 28 ID ??? 目の前に青く輝く光が見える。 シンジはその光に向かって潜っていく。 すると突然光がスパークして目がくらんだ。 視界が元に戻ると青空が広がっていた。 シンジはうつむきながら1段1段を確認しながら横断歩道橋の階段を上がっている。 夏の日差しは容赦なく照りつけシンジのシャツは汗で肌にべったりと張り付いている。 人の気配に気がつき頭を上げると制服のスカートとすらりと伸びた細い足が目に飛び込んできた。 「うわっ」シンジは接近しすぎたことに驚き、3段ほど下がった。 金髪、碧眼、ミルク色の肌をした美しい少女だった。 (あれ?どこかで会ったような) シンジはそれを思い出したくて少女の顔を見つめた。 少女はシンジの視線に機嫌を悪くしたらしく、にらみつけてくる。 そして、シンジの脇を通り抜けざまに、はっきり聞こえるように一言洩らした。 「気持ち悪い・・・」 シンジの頭の中に一瞬、赤い海と包帯だらけの先ほどの少女の顔が浮かんだ。 シンジは耐えようの無い罪悪感と喪失感に襲われる。 途端、足元が崩れ去り奈落に落下していった。 「精神パルスに異常!」 「使徒からの精神攻撃と思われます」 「やっぱり来たわね。」タバコをもみ消し立ち上がるリツコ。 「まずいですよ。心理グラフが崩壊寸前です」マコトの声が動揺で震える。 「かなり厳しい攻撃だな」シゲルが数値の詳細を計算し始める。 クッと爪を噛みなにかを決心したように面を上げるリツコ。 「ちょっと早いけど奥の手を使うわよ、マヤ。」 「了解です。ロック解除」 魂の座から小さな布の袋が解き放たれゆっくりと降下していき消えた。 182 名前:+A(nother) 第5話[sage] 投稿日:2009/09/19(土) 16 50 56 ID ??? 「ボクは最低だ。アスカにひどい事をしたのはボクだ。ボクが1番の罪人だったんだ。」 シンジは血と精液にまみれた両手を見つめていた。 幾たび輪廻を繰り返しそのたびにアスカを傷つけ苦しめてきた。 抱きしめてあげるだけでよかったのに。 好きと一言伝えるだけでかったのに。 なぜ、ボクはそれができない。 弱虫だから、意気地なしだから、傷つくのがこわいから。 でもアスカは違う。 傷つき血を流し、心が張り裂けてもボクのそばに居ようとした。 ボクにアスカのような真似ができるだろうか。 ・・・やっぱり・・・怖い。 もし、そんなことをしてアスカに嫌われてしまえばボクは一人ぼっちになってしまう。 いやだ。いやだ。いやだ。いやだ。いやだ。 それならば何もしないほうがいい。 そうすれば、また次の輪廻でアスカと一緒に居られる。 コンッ! シンジの頭に何かがぶつかった。 それを拾い上げる。 小さな布袋の中には小さな弁当箱。 フタの面には三つ☆と「アスカ」と刻印してある。 「いい!アタシのお弁当は毎日三ツ星クラスのお弁当にするのよ!でなければ食べてあげないんだからね!」 そしてアスカは毎日残さずきれいに食べつくした空の弁当箱をシンジに見せ付けては、 今日は味付けが、嫌いな野菜がと文句をつける。 「でも、全部たべるんだね」 「当たり前でしょう!お腹が空いていればなんだっておいしいのよ!・・・ところで今日の晩ごはんなに?」 「・・・ひさしぶりにハンバーグにしようか」 「ヤッター!手伝うよシンジ!」 その晩のごはんはとてもおいしかった。 183 名前:+A(nother) 第6話[sage] 投稿日:2009/09/19(土) 16 54 31 ID ??? 助けるんだ。何を迷ってんだ。 アスカを取り戻すために来たのに何してるんだオレ! シンジは立ち上がり空間の一角を両手で掴んだ。 「ウオオオオオー!」 シンジは渾身の力で空間を引き裂く。裂け目から眩い光があふれ出た。 「アンタ誰?」 その声にシンジは振り返った。 そこには黒い眼帯を付け、プラグスーツに身を包んだアスカが仁王立ちをしていた。 「アスカ!」 シンジはすぐさま立ち上がりアスカの肩に手を掛けようとしたその瞬間、 「馴れ馴れしい!」 一閃、シンジは足を蹴られて転倒した。 「アスカ、何をするんだよ!」 「アンタ、バカ!初対面のくせに人の名前呼び捨てにすんな!」 「ボクがわからないの?」 「アンタなんか知らない」 「ボクは碇シンジだ。思い出してよアスカ!」 「碇・・・シンジ・・・?」 アスカは頭を抱えて座り込んだ。 「あなたが碇シンジ・・・?」 「そうだよ、思い出してくれた?」 なお、アスカは頭を抱えて苦しそうにしている。そしてブツブツ呟きだした。 「碇シンジ。アタシを殺そうとしたリリン。」 「殺しにきた。アタシを殺しにきた。イヤダ、コロサレテタマルカ・・・」 「コロシテヤル。コロシテヤル。コロシテヤル。コロシテヤル。コロシテヤル・・・」 心配したシンジがアスカに触れようとしたそのとき、アスカの手がシンジの首をガッと絞めた。 184 名前:+A(nother) 第7話[sage] 投稿日:2009/09/19(土) 16 57 53 ID ??? 凄まじい力で首を絞められたシンジはたちまち窒息しそうになる。 「やめて・・・アスカ・・・」 なおも力を込めてシンジの首を絞めるアスカ。 ゴリュ!シンジの器官が音を立てる。 堪らずシンジの手が無意識にアスカの眼帯を剥ぎ取った。 眼帯の下には漆黒の闇が広がり、赤い光を放つ瞳が隠れていた。 「そ・こ・に・いた・のか・・・!」 消えかけていたシンジの瞳に光が戻り赤く燃え上がった! 「お前は絶対に許さない!」 シンジはアスカの手を掴み、ガッと引き剥がし自分の顔をアスカの顔に近づける。 バキィン!二人の顔の間にATフィールドが展開する。 ATフィールドはシンジの額を切り裂き、血しぶきが飛び散る。 それを構わずシンジはなおも顔を近づける。 使徒の赤い光点が一際大きく輝くと一条の触手がシンジの右目を貫いた。 「うがあああ!」 途端シンジの脳裏にシンジではない男に抱かれ歓喜するアスカがフラッシュバックする。 それは、加持であり、トウジであり、ケンスケであり、ゲンドウであった。 時に激しく愛し合い、陵辱され、複数の男と交じりあう。 「アンタ ナンカイラナイノヨ アンタノ カワリハ イクラデモ イルワ」 「ダカラ シンデ」 「だまれ」 低く重いシンジの声が空間を揺るがした。 「これ以上アスカを苦しめるな」 「アスカー!!」 シンジの叫び声にアスカの体がビクンと震える。 「アスカはこんな奴の自由になるほど弱くない!」 「オレは知っている。本当のアスカを!本物のアスカの強さを!」 「アスカ!帰ってこい!」 シンジはアスカの手を離し腕ごと抱きしめた。 185 名前:+A(nother) 第8話[sage] 投稿日:2009/09/19(土) 16 59 31 ID ??? 右目に食い込む触手をものともせずアスカの額に己の額を引っ付けた。 触手はシンジの後頭部を貫き、血しぶきが噴出す。 シンジの左目は光を失ったアスカの右目を見据える。 アスカの目から涙がこぼれ落ちた。 シンジの瞳が赤から青に変わったそのとき、アスカの体が液状に崩れ落ち使徒の本体が姿を現した。 その姿は人になりきっていない胎児に似ていた。 「うおおおおおおおー!」 シンジは渾身の力を込めて触手を引き抜き、使徒を振り上げ地面に叩きつけた。 グシャ。鈍い音を立てて頭部が爆ぜる。 貫かれた右目は一瞬で復元されマブタの下から碧い瞳が現れる。 シンジはピクピクと痙攣する瀕死の使徒を躊躇なく踏みにじった。 アオォォォォォォォォン・・・ 使徒は断末魔の悲鳴を上げて雲散した。 「赤木博士、使徒のパターンが消滅しました!」 「成功です。使徒殲滅を再確認!」 「やったわね。シンジくん」 指揮ルームは一時作戦成功の歓喜につつまれた。 「喜ぶのはまだ早いわよ」 「これより、コア固定化計画を開始します」 「二人は・・・8号機の魂になるんですね」 マヤは悲しそうにつぶやいた。 「悲観しないでマヤ。これが成功すれば二人ともきっと帰ってこれるから」 リツコはマヤの頭をポンと叩いた。 「作戦開始!」 3人は再び作戦遂行のために作業に取り掛かる。 (ミサト、こちらは1段落よ。はやくレイを、8号機パイロットを連れてきて) リツコはタバコが空になったことに気が付き、新しい箱の封を切った。 190 名前:+A(nother) 第9話[sage] 投稿日:2009/09/20(日) 19 50 55 ID ??? 「無駄だとは思うが、無駄な抵抗でもしてみるか?」 「加持、冗談になってないわよ」 「クッソー!EVAさえあればこんな奴らちょちょいのちょいなのに」 加持、ミサト、マリはレイを中央に置き背中合わせに円陣を組んだ。 使徒人間は卑猥な口元からヨダレを垂れ流しながらジリジリと近づいてくる。 「こいつらお腹が空いてるのかにゃ」 「食べられるのはゴメンだな」 「ねえ加持」 「なんだ葛城?」 「こいつらに喰われるくらいなら、いっそアナタが撃ち殺して」 「おいおいえらく弱気だな。君らしくないぞ」 「本気で言ってるのよ!」 ミサトが加持の手をギュッと握り締める。 「そんなことはできないね」 「どこの世界に愛する女を殺せる男がいるんだ」 加持はミサトに振り向いた。 「君と同じ場所、同じ時間に死ねるなら悔いはないさ」 加持はミサトを引き寄せ、唇を合わせた。 「愛してるよ、ミサト」 「わ、わたしも愛してるわリョウジ!」 今まさに使徒人間が飛びかかろうとしたその時、 アーーーーーーー 独特の駆動音が頭上から降り注いでくる。 使徒人間は動きを止め頭上を見上げる。 ガシュン!ニードルが1匹に突き刺さり、体を真っ二つに切り裂いた。 残りの使徒人間はニードルを避けようと飛びのいた。 「EVA・・Mk-6?」ミサトは呆然と頭上を見上げていた。 「アダムとリリンの間に生まれし呪われた者たちよ。僕は君らの存在を許さないよ」 カヲルの表情は憤怒の色に染まっていた。 191 名前:+A(nother) 第10話[sage] 投稿日:2009/09/20(日) 19 54 17 ID ??? ズン!Mk-6は着地するやいなや使徒人間を蹴散らし始めた。 「なんてタイミング!空気が読めるイカス奴じゃにゃいか」 「褒めるのは後だ、行くぞ!」 ミサトに手を引かれ走り出すレイ。 リリスに振り返り小さくつぶやいた。 「ごめんなさい。もう一人のワタシ」 (イッテラッシャイ) リリスの目が微笑んだ。 4人はエレベーターに向かって駆け出した。 ズズン 地鳴りにも似た衝撃音が鳴り響き、地面が揺れた。 4人が振り向いた先に信じられないものを見た。 使徒人間が更に巨大化してMk-6とほぼ同じ大きさになっている。 「なんてこと!あれではEVAそのものじゃないの!」 「クソッ!量産型はすでに完成してたのか!」 エレベーターに乗り込み扉が閉まる瞬間、Mk-6が3体の量産型に押し倒されるのを見た。 高速で上昇していくエレベーターは地下格納庫で停止した。 「ミサト、2号機で出るわ」 「なんですって!」 「このままMk-6がやられてしまったら奴らに追いつかれるの必至だわ,少しでも時間稼ぎをしなくちゃならない」 マリはミサトの手を握りじっと見つめる。その目に決死の覚悟が見えた。 「わかったわ」 「でも約束しなさい必ず生きて帰ること。いざとなったらEVAを放棄してでも」 にっと笑うマリ。 「それは得意とするところだにゃ」 「行ってきます」 マリは3人に敬礼をして走り去っていった。 192 名前:+A(nother) 第11話[sage] 投稿日:2009/09/20(日) 19 57 53 ID ??? 「さーて2号機、もう1回だけがんばってね」 ゼルとの戦闘後応急処置を施され、放置されていた2号機。 片腕は欠損し、頭部・腹部はむき出しで包帯が巻かれ痛々しい。 自己治癒能力を作動させるためにアンビリカブルケーブルが装着されたままだ。 「内臓電源はMAX、ダメージは60%か。きびしいにゃー。ええい、ままよ!」 バン!アンビリカブルケーブルを外した2号機はセントラルドグマに降下を開始した。 内臓電源タイマーがめぐるましくカウントする。 眼下では激しい戦闘音が聞こえてくる。 「やられないでよMk-6。今いくからね」 「やはり僕ではこの子の真の力は引き出せないか」 外部拘束具が6割方引き剥がされ、体のあちこちから激しい出血をしている。 一方、受けたダメージをモノともせず不死者のごとく立ち上がる量産型。 ニードルは全て使い切り、手にしたプログレッシブナイフの刃は半分折れている。 「こんなに傷だらけにしたらシンジくん怒られてしまうかな」 ガー!1匹がむき出しの腹にかぶりついてくる。 避けようとしたところにもう1匹が体当たりをかましてくる。 ゴフゴフ。腹の肉の一部をかじり取られる。それを美味そうに咀嚼する量産型。 更に1匹が左肩に拘束具ごとかぶりつく。 右手のナイフで脳天を勝ち割るがナイフが砕け散る。 脳漿を撒き散らしながら、なお左肩を食いちぎろうとする。 もう1匹がMk-6の背後から頭にかぶりつき引き倒す。 「やれやれ、万事休すかな」 3匹目が腹に食いつこうとしたその時! 193 名前:+A(nother) 第12話[sage] 投稿日:2009/09/20(日) 20 01 15 ID ??? 赤いケダモノが量産機の首にかぶりつきその首をねじっ切った。 首を失った胴体からおびただしい量の血が噴出し、ビクンビクンと2度大きく痙攣して動かなくなった。 「あれは2号機。そうかこれが獣化形態だね」 カヲルは途切れそうな意識を奮い立たせる。 2号機は瞬く間に次の獲物の首をねじ切り、最後の1体と対峙する。 「残り、90秒!なせばなるぅー」 半ば獣と化したマリは喜びの笑みを浮かべてレバーをガンと押し込む。 それに呼応してザ・ビーストは量産型に牙を剥いて飛び掛る。 ガー!獣と使徒との殺し合いは凄惨を極めた。 その牙で爪で互いの肉を引き裂き喰らいあう。 「超!痛気持ちぃー!!」 マリの腕はあたかもそこに目標がいるかのように獲物を捕らえようと空を切る。 「ガウ!」 マリの口が大きく開かれ獲物に噛み付いた。 2号機の牙が量産型の咽元に食い込む。 歯が肉が食いちぎる感触を感じたマリは絶頂に達した。 のど笛を食いちぎり体を引き裂く2号機の姿は悪魔そのものだった。 カヲルは機外へ抜け出し2号機のパイロットが現れるのを待った。 プシュー。2号機のエントリープラグが排出されマリが姿を現す。 緑に輝いたままのマリの瞳は眼下のカヲルを見つめる。 「ガッ・ピィー・・マリ・・脱出成功・・・」 無線から途切れ途切れにミサトの声が聞こえてくる。 「良かった・・・」 クシュン。マリはひとつクシャミをした。 200 名前:+A(nother) 第13話[sage] 投稿日:2009/09/21(月) 21 56 03 ID ??? 「リリスによるサードインパクトは失敗した」 「量産型4機の損失、Mark.06の裏切り、我々に不都合なことばかり起こるな、碇ゲンドウ」 「キサマが手引きしているのではないのか?」 モノリスの前でゲンドウはうなだれている。 イスに手錠をかけられ拘束され、顔には尋問の際の生傷が見て取れる。 「監禁された私になにができる?」 不敵な笑みを浮かべるゲンドウ。 「ねずみが忍び込んでいるのは判っているぞ。まあいい」 「今日ここに来てもらったのは他でもない。初号機によるサードインパクトを再び行う」 「そこで君に協力願いたのだが。いやとは言わせんよ」 「3rdチルドレンがいないのにそれは不可能だ」 ふんと鼻をならすゲンドウ。 「代わりはいるよ。君だ、碇ゲンドウ」 なっ?!驚き面を上げるゲンドウ。 「量産機製造の過程で色々おもしろいデーターを得ることができた」 「そのひとつが擬似的に魂を製造する方法だ」 「ダミープラグ、君の提案だったな」 「近親者をプラグに乗せ、擬似的に適合者と同じ魂にすり替えEVAをだます」 「幸いにも君は碇シンジの父親だ」 「期待しているぞ碇ゲンドウ。次こそは我々の念願を果たそうではないか同志よ」 自室に戻ったゲンドウはベッドに座り、ふうと一息つき天井を見上げた。 「計画は順調だ。ユイ、もう少しで君に会える」 201 名前:+A(nother) 第14話[sage] 投稿日:2009/09/21(月) 21 58 25 ID ??? 「碇がプラグスーツを着る事になるとはな」 「冬月、笑いたければ笑え」 「笑いやせんよ」 見張りに聞こえないように近づく冬月。 「これが最後の機会だな」 「ああ、問題ない」 ゲンドウは冬月に向き直った。 「冬月先生、長いことお世話になりました」 ゲンドウは冬月に深くお辞儀をした。 「必ずユイを連れて帰ります」 「ああ、待っているぞ」 「それと、子供たちをよろしくお願いします」 「任せろ、碇」 「時間だ」 部屋を出る間際、不敵な笑みを漏らしたゲンドウを冬月は見送った。 (学生の頃初めて出会った時の顔にそっくりだな) ゴポポ。グハッ!LCLにむせるゲンドウ。 (シンジも最初はこうだったな) 甲高い駆動音がプラグ内に響きわたり、ダミープラグアームがレバーに固定される。 「なにも見えないとは心細いものだな」 魂の座が降下を始めた。 「始まったか・・・」 深度が深くなるにつれて様々な記憶がフラッシュバックを始める。 前方の漆黒の闇の中に小さな光が見えてくる。 「ユイ」 徐々に意識が薄れていく中でゲンドウは信じられないものを見た。 「ち、違う!これはユイではない!キサマは・・・アダムか!」 202 名前:+A(nother) 第15話[sage] 投稿日:2009/09/21(月) 22 01 36 ID ??? ウオオオオーン!初号機が咆哮する。 ゲージ内拘束装置をたやすく破壊すると天井に一閃、天井の全ての隔壁は蒸発した。 背中から光の翼が伸びると一気に高空まで上昇する。 眼下に見えるユーロネルフ支部。 後から9機の量産型が上がってくる。量産型は初号機の光の翼にかじりついた。 初号機は何重にもATフィールドを展開するとそれをユーロ基地に向けて放った。 「神の鉄槌」 激しい爆発と熱光に包まれユーロ基地は消滅した。 後には「浄化された地」が残った。 初号機と量産機の編隊は日本に向かって飛び始めた。 冬月を乗せたVTOLが離陸後1時間しての出来事だった。 「碇はさぞかし驚いていることでしょう」 「よもやコアが入れ替えられていたとは思ってもいまい」 「全てはこの四海文書外典の予言通りだ」 「前世での失敗は碇ユイの魂が初号機に残ったことが原因だ」 「碇ユイの取り込まれたコアをMark.06に移し替え、アダムを取り込んだコアを初号機に乗せる」 「ユイを失った碇ゲンドウが1週間失踪することも、赤木ナオコが協力することも全て予定通りに進んだ」 「碇と一体化したネブカドレザルの鍵、アダム、そしてリリス」 「全ての鍵は揃った。楽園への扉がじき開かれる」 「「全ては人類補完計画のために」」 211 名前:+A(nother) 第16話[sage] 投稿日:2009/09/22(火) 08 34 29 ID ??? 「赤木先生!碇くんはどこ!」 「レイ、落ち着いて聞いてちょうだい」 本部から脱出して1時間後、松代支部作戦指揮ルームに3人が到着した。 「シンジくんはあそこにいるわ」 リツコはフロントガラス越しに見える8号機を指さした。 「シンクロテストですか?」 「いいえ、シンジくんはね、8号機のコアになったの」 「!」 レイの目が大きく見開き驚愕の表情に変わる。 目から大粒の涙がぼろぼろと溢れだし、顔をクシャクシャにして泣き始めた。 「碇くん・・・ズビッ・・ぞんなぁ・・・ヒグッ・・イヤア・・・ウワアアアア!!」 ミサトがレイを抱きしめる。 「レイ、シンジくんは自分から望んで志願したの」 「じきに初号機を使ったサードインパクト計画が始まるわ」 「それを阻止するためには戦力が必要よ。時間的に余裕がない状況ではこれがベストの選択なのよ」 リツコは取り出したハンカチでレイの涙を拭き、鼻水をチンッさせる。 「それにアスカを助けるためにもこれしか方法がなかった」 「2号機の子も一緒なんですか?!」 「そうよ」 レイの目つきが変わる。 「碇くん戻ってこれますよね。あたし達が戻ってこれたように」 「もちろん。全てが終わったあとにね」 「あたしをすぐに8号機、いいえ、碇くんに乗せてください」 レイの瞳には静かなる炎が燃え上がっていた。 212 名前:+A(nother) 第17話[sage] 投稿日:2009/09/22(火) 08 35 39 ID ??? そのとき、緊急事態を告げる警報が響きわたる。 「葛城司令、ユーロ支部の消滅を確認!」日向が叫ぶ。 「なんですって!」 「さらに消滅地点から複数の飛行部隊を確認、ネルフ本部へ向かっています」青葉が続く。 「予測よりかなり早い行動ね・・・レイ、頼んだわよ」 「リツコ、8号機搭乗準備急いで!」 「まかしなさい。レイ行きましょう」二人は駆け足で指揮ルームを出て行く。 「さて、俺はなにをしたらいいかな司令?」 「あなたはここで私を支えてちょうだい」 「了解」 「EVA8号機改めコードネーム「シンカ」起動プログラム開始!」 「「了解」」3人のうちひとり日向は涙目で呼応した。 白を基調とした新型プラグスーツに身を包んだレイはリツコの説明もそこそこにプラグ内に飛び込んだ。 「碇くんの匂い、2号機の子の匂い・・・」 「レイ、用意はできた?これから起動させます」息も絶え絶えのリツコ。ゲージから指揮ルームまで走ったのだろう。 「はじめてください」プラグ内に極彩色の光が満ち溢れる。 「シンクロ率、すごい!いきなり200を突破しました。まだ上昇します」 リツコの女の感がひらめく。 「レイ!だめよ!あなたまで融合したら誰が操縦するの!」 「だめなの、止められないの。心が制御できない!碇くんと一つになりたい!」 レイの悲痛な叫びがスピーカーから響きわたる。 ミサトはマイクボリュームを最大まで上げて大声で叫んだ。 「アスカ!レイがあなた達を邪魔しにいくわよ!なんとかしなさい!」 ギン!シンカの目が青い光を放ち覚醒した。 「8いえシンカ起動!」 「シンクロ率300で停止!ええっ?200まで下降。・・・なんで?」マヤが小首をかしげる 「女の嫉妬は怖いもんだよ」加持がふーとため息を漏らす。 「いいトリオね、あなた達。その調子で地球を救ってちょうだい」 「シンカ!リフトオフ!」 最大加速でリニアレールから射出されたシンカはそのまま空高く飛び上がり、光の翼を広げネルフ本部へ飛翔を始めた。 213 名前:+A(nother) 第18話[sage] 投稿日:2009/09/22(火) 08 36 50 ID ??? 「どうやら最後の使者がお出ましのようだよ」 「もう、あとちょっとなのに空気の読めない奴ら!」 マリはカヲルの上から降りるとプラグスーツを着込んだ。 「どう、人間の女も捨てたもんじゃないでしょ」 「ああ、どうやら僕は君を気にいってしまったようだよ」 「続きはあいつら全部ぶっとばしてからね」 リフトに乗り引き上げられていくマリはカヲルに質問した。 「ところであんたはスーツ着ないの?」 「僕に元々スーツは必要ではないんだよ」 カヲルは裸のまま、プラグ内に飛び込んだ。 「あたしも次は裸で乗ってみようかな」 逢魔ヶ時。 ネルフ本部上空で初号機は停滞し再び「神の鉄槌」の準備を始める。 ATフィールドが展開し鉄槌が下されるそのとき、地上から2条の光が放たれた。 ピシュン!「イチイバルの矢」は幾層にも重なったATフィールドを軽々と突きぬける。 ガシュン!その間隙をぬって「グングニルの槍」が初号機のコアを打ち抜いた。 「グングニルの槍」は突き刺さったまま軌道を変え、初号機もろとも大地に落下して串刺しにした。 量産型がすぐさま落下地点に降下し始める。 それをMark.06が「イチイバルの矢」で次々と打ち抜く。 もんどりうって地面に落下する量産型を「グラムの剣」で斬りつけていく2号機。 量産型の装備する「ロンギヌスの槍」の死角に飛び込み、両腕を叩き切り返す刃で頭頂から股間まで両断する。 背後からの槍の突きを回し蹴りではじき、振り向きざまに首を切断する。 瞬く間に2機を仕留めた2号機が3機目を定めた瞬間、背後に強く引き倒された。 2機の量産型がケーブルを掴み引っ張り倒した。 「うかつ!」 ずるずる引きずられる2号機を上空から槍をかざした量産型が迫ってくる。 キシュン!キシュン!キシュン!3本の矢が放たれ、上空とケーブルを引っ張る量産型を打ち抜く。 「サンクス!カヲル!」 「どういたしまして。しかし、これで矢は尽きたよ」 Mark.06は先の戦闘でダメージが大きく近接戦闘が難しい状態になっている。 214 名前:+A(nother) 第19話[sage] 投稿日:2009/09/22(火) 08 38 03 ID ??? 2号機はMark.06の元に戻りすがら2機の量産型を切り刻んだ。残り5機。 「もう奇襲は通用しない」 「それにニセモノも復活したようだね」 量産型が初号機に突き刺さった槍を引き抜くと初号機は再起動した。 ズン!初号機の足音が大きく響く。 体の発光部が赤く輝き威容な姿が闇夜に浮き出ている。 その姿はさながら「魔神」のように見えた。 ガハァ!灼熱の息は真夏の大気をも水蒸気に変える。 「「来る!ATフィールド全開!!」」 ビカッ!初号機の目から発せられた閃光は二人のATフィールドをやすやすと切り裂いた。 「ギャアアアー!」 左肩から股間にかけて両断された2号機が凄まじい声で絶叫する。 「マリ!」 カヲルが呼びかけるが全く反応がない。 ガコッ!閃光によって切断された地面がジオフロント内に崩れ落ちる。 Mark.06と2号機は崩落に巻き込まれて落下していった。 大量の土砂で埋もれるジオフロント。 初号機は空中に浮上し「神の鉄槌」を下した。 一瞬で土砂とネルフ本部は蒸発し爆光の引いた後「浄化された地」現れる。 全てが消滅したかに見えたその中心部の漆黒からATフィールドの光が発せられた。 むき出しになったセントラルドグマに2機のEVAをかばうようにリリスが立ちはだかっている。 アダムとリリスの対峙。 ウオオオン!!一際高く咆哮した初号機は目から数発の閃光を放つ。 ドギィーン!全ての閃光がATフィールドで中和される。 ガアアアアー!初号機はリリスに向かって突進した。 幾層にも展開したATフィールドを次々と破壊してリリスに肉迫する初号機。 最後の1枚に手が届いた瞬間、初号機は光の槍に貫かれた。 215 名前:+A(nother) 第20話[sage] 投稿日:2009/09/22(火) 08 39 02 ID ??? 「どけえええ!!!」 高速で突入するシンカはレイの叫びに呼応しATフィールドの槍を次々に放つ。 量産型が一斉に「ロンギヌスの槍」をシンカめがけて投擲する。 「そんなもの無駄よぉー!!」 シンカは突入速度を緩めることなく両手を水平に振りかざす。 ATフィールドがくもの巣のごとく光の糸と化した。 光の糸は槍を絡めとり量産型を肉片に変えた。 「さすがアスカね、戦闘のセンスは抜群だわ」 衛星からの望遠映像で戦況を見届けているミサトは感嘆した。 「レイにあの発想はないわね」 「すごい。圧倒的ですね。でもコアになった人にそんなことできるんですか?」 「愚問ねマヤ。暴走状態になったEVAを何度も見ているでしょう。今あの子たちは一心同体。無敵のチルドレンってところかしら」 「問題は初号機戦よ。なんの援護もできないのが口惜しいところね」 ミサトは腕を組んでじっとモニターを見つめている。 量産機を一掃したシンカは初号機との距離を詰める。 槍を受けた初号機は一時ひるんだもののすぐに態勢を立て直し続けざまに閃光を放つ。 シンカは左手のATフィールド最小限に絞り込んだ盾で閃光をはじき飛ばす。 はじき飛ばされた閃光は着地地点で大爆発を起こし周囲を火の海に変える。 凄まじい閃光の発射に近づくことが容易でないシンカ。 すると、リリスが後ろから初号機の首を締め上げた。 「お母さん!」レイの口から思ってもいない言葉が無意識に漏れる。 閃光が止まる。その間隙にシンカは初号機に取り付いた。 「これで終わらせる!みんなが幸せになる世界を!そして碇くんを取り戻す!」 右手から光のランスを繰り出し初号機のATフィールドを中和させ、胸部装甲を剥ぎ取り、コアに狙いを定めたそのとき、コアにゲンドウの顔が浮かび上がった。 「碇司令!!」 ランスがコアの直前で止まる。 216 名前:+A(nother) 第21話[sage] 投稿日:2009/09/22(火) 08 39 47 ID ??? 「レイ!騙されてはダメよ!やりなさい!!」ミサトが叫ぶ。 「だ、ダメよ!できない!!」 コアのゲンドウがニッと笑う。 光の触手がシンカの両手・両足を切り払う。 「いぎいい!!」レイが絶叫する。 ズズン。四岐を切断されたシンカが地面に落下する。 ドクン!初号機の体が大きく脈動すると頭部拘束具が四散する。 瞬く間に巨大化した頭部がシンカを丸呑みにした。 ズズズ。体全体の拘束具を弾き飛ばした漆黒の本体がみるみる巨大化していく。 「な、なんてこと!」目を見張るリツコ。 「形象制御のリミッターが!サードインパクトの前兆です」マヤの悲鳴にも似た報告。 「あれは・・・アダム!」南極での記憶がフラッシュバックしてがっくりとヒザを落とすミサト。 「もう打つ手無しね」ドスンとイスに座り込んだリツコは振るえる手でタバコに火をつける。 「りっちゃん。俺にもいいかな」 リツコはスーと紫煙を深く吸い込むと、火のついたタバコを加持に渡した。 「悪いなりっちゃん」加持はそれを受け取るとこの世の名残を惜しむかのようにスーと吸い込んだ。 「・・・博士・・・形象制御が、反発する力が発生しています」 「「な?」」ミサトとリツコが日向のモニターを覗き込む。 「どういうこと?リツコ」 「わからない。もう未知の領域よ」 「司令、あれを見てください!」青葉が叫んだ。 モニターに純白の巨人が写し出されていた。 「リリス!」 ぐんぐんと巨大化していくリリスは成層圏を抜けアダムと同じ大きさになる。 アダムとリリスが対峙したとき双方の容姿が変化した。 「碇司令!ユイさん!」リツコが驚愕する。 リリスはアダムが巨大化すると同時にMark.06と2号機を取り込み、2機のコアを触媒に覚醒した。 二人は互いの両手を組み合わせ激突した。 ドオォーン!!!大気が激動し地球が震えた。 217 名前:+A(nother) 第22話[sage] 投稿日:2009/09/22(火) 08 41 00 ID ??? 「レイ、レイ・・・」 アダムに取り込まれて気を失っていたレイは自分を呼ぶ声で目を覚ました。 「碇指令・・・」 「レイ、すまないことをした」 「碇指令どうしてここにいるんですか?」 「・・・ユイを取り戻そうして間違いを犯した。今までユイと思っていたのはアダムだった。私はまんまと騙されたわけだ」 「碇指令、もうダメなのですか?地球は、全ての命は滅んでしまうのですか?」 「まだ、生き残る可能性はある」 「それは?!」 「私はネブカドレザルの鍵を持っている。この鍵は全ての魂を器から開放するものだ」 「今、全ての生命の父なるアダムと母なるリリスが諍いを始めた」 「この鍵の力を解放すればそれに触れているもの全ての器が連鎖的にLCLに還る」 「肉体を持つアダムとリリスの魂が開放されるが、それは全ての生命がいや地球そのものがLCLに還ることを意味する。それはEVAとて例外ではない」 「このままでは地球自体が崩壊しかねない。そうなれば全てが無に帰してしまう。魂とLCLが残れば生命の復活は可能だ」 「全てがひとつに・・・どうしたらいいですか碇指令」 「私の元まで来るのだ。私は今エントリープラグに囚われている。急げレイ時間がない」 「碇くん、起きて!」 再起動を試みるレイ。しかし反応がない。 「お願い、碇くん、2nd、目を覚まして!」 レバーをガチャガチャと動かす。 「起きて、起きて、起きて、起きて、起きて、起きて、起きて、起きて!」 「どうして起きてくれないのよ!・・・この!バカシンジ!バカアスカァー!!」 ユラ。闇の中に赤と青の炎が揺らめいた。 プラグ内にまばゆい光のシャワーが降り注ぎ、モニターが生き返る。 「シンジ!アスカ!」 レイはレバーをグッと握り締めキッと前方を睨み付ける。 「シンジ、アスカ行きましょう!碇指令の元へ!!」 ウオォォォン!光の翼がはためかせシンカは急上昇を始めた。 218 名前:+A(nother) 第23話[sage] 投稿日:2009/09/22(火) 08 41 48 ID ??? ブゥオオオオオ!! キュアアアアア!! アダムとリリスは咆哮しながらせめぎあいを続けている。 両者の咆哮は地球上全ての人々の耳に届いた。 「リョウジ、あなた何て聞こえる?」 ミサトがモニターを見ながら加持に質問する。 「あ、その、なんだ“女遊びが過ぎる”って聞こえるな」 加持をギロッと睨みつけるミサト。 「つまり、浮気でしょ」 「君こそどうなんだ?」 「あ、あたしは“家事をもっとまじめにやれ”かな。あなたのことじゃないわよ」 「炊事洗濯掃除もろもろでしょう。なにもできないものね」リツコがちゃちゃを入れる。 「うっさいわねー、リツコあなたはどうなのよ?」 「“タバコをやめろ”って言ってるわ」 「あら、やめられんの?」 「そんなこと言う男はこっちから願いさげね」 指揮ルームでは何と聞こえたか各自の報告が始まった。 「結論として“夫婦げんか”ね」 「「ハアー?!」」 「それしか考えられないもの」リツコは眉間に手を当てハーと息を吐いた。 「アダムとリリスの思念が聞いた者の一番やましい部分を表現化しているのよ。多分」 「私たちは今、宇宙規模の“夫婦げんか”と遭遇しているようね」 「なんて大迷惑!!」ミサトはコブシをグッと握りしめた。 219 名前:+A(nother) 第24話[sage] 投稿日:2009/09/22(火) 08 42 58 ID ??? 漆黒の空間を飛翔するシンカの目前に巨大なコアが出現する。 「エントリープラグはどこ!ギリギリまで近づきましょう」 高速でコア表面スレスレまで近づくと、魂を吸収された人々の顔が無数に浮かびあがっているのが見える。 「鈴原くん!洞木さん!相田くん!」 一瞬だったが確かに3人の顔が見えた。 グゥオオオーひときわ高く咆哮したシンカは更にスピードを上げる。 「どこ?どこなの?碇指令!教えてください!!」 「ここだ、レイ」 声に導かれるまま首を向ける。 一条の白い円柱が見えた。 「あれ!」 シンカは急旋回をして円柱めがけて突進する。 「でも、どうやって破壊するの?!」 ガキン!ガキン!歯を鳴らすシンカ。 「噛み砕く?わかったわ。やってみる」 ドズン!!勢いそのままにコアにめり込みながらエントリープラグをくわえ込もうとする。 クワッ!ハグッ!レイの口がプラグをくわえる。 バキィィン!!レイはプラグを噛み砕いた。 「それでいい。ありがとうレイ」 コアに飲み込まれていくゲンドウ。 その数秒後、飲み込まれた辺りから猛烈な勢いで形象崩壊が始まる。 それは瞬く間にシンカを包みこみコアを崩壊させた。 プラグ内の明かりが消える。 消え入りそうな恐怖の中でそのときが来るのをじっと耐えるレイ。 「もう少しでシンジとアスカに会える」 そう信じて。 220 名前:+A(nother) 第25話[sage] 投稿日:2009/09/22(火) 08 46 00 ID ??? 形象崩壊はアダムを通じてリリスに伝染する。 二体の巨人がLCLの塊となったとき地球の全生命はLCLと化した。 崩れ落ちる巨大な水柱は地表全てを飲み込み地球を赤い水玉に変えた。 自転が止まり、全てが静止した。 1日目 アダムとリリスは地軸と自転を戻し昼と夜が出来た。 2日目 アダムとリリスは大気と雲を再生した。 3日目 アダムとリリスは大地と海とを隔て、植物を再生した。 4日目 アダムとリリスは空を覆う雲を掃い分け太陽と月と星の光を大地に降り注がせた。 5日目 アダムとリリスは魚と鳥を再生した。 6日目 アダムとリリスは獣と家畜と、人の再生を約束した。 7日目 アダムとリリスは宇宙に去っていった。 ザザーン 赤い海辺の波打ち際に少年と少女がいた。 原初の大気はどこまでも澄み渡り宇宙の色が見えてくるようだ。 心地よい風が少年の髪をなでる。 少年は隣で寝ていた少女が目覚めるのを感じた。 「おはようレイ」 「・・・カヲル」 「すべては終わったよ。アダムとリリスは新しい星を求めて旅立っていった」 「二人が原初の地球に来たときはとても仲むつましかった。 そしてこの星でぼくらの兄弟達を生み落としていった。 変わったのは僕が生まれてからだ。アダムは僕を小さく弱い者としてたいそう嫌った。 でもリリスは兄弟の仲で1番僕をかわいがってくれた。 そうしてアダムとリリスは仲たがいをしてしまい、リリスは君らリリンを身ごもって出奔してしまった。 リリンは僕と良く似た兄弟だ。彼らは特別な力はなかったけど生きる力はどの兄弟にも負けていなかった。 あっというまに地球の支配者として君臨してしまったからね。 これにはアダムも驚いたが他の生命を犠牲する所業が許せなかった。 リリンを滅ぼそうとしたが結果はこの通り」 「去る間際にこう言い残したよ。地球で生まれた生命は地球に帰すべきだと。 君らが使徒と呼んでいた14人の兄弟もコアとして残していったよ。 別の神の脅威からリリンを守るようにとね。いつかそのときが来れば彼らは復活するよ」 225 名前:+A(nother) 最終話[sage] 投稿日:2009/09/22(火) 21 03 38 ID ??? 「そして、ぼくらとリリンは新たな種として生まれ変わった」 カヲルは晩秋の高い空に手をかざす。 「どう変わったかはわからないけど、僕らは「補われた」とだけ教えてくれた」 「そして、特別に僕ら二人の望みをかなえてくれたよ」 「レイ、君の髪の色は赤みかかった金色で目の色はこの空と同じ青色だ。君が最も望んだ姿に変えてくれたんだ。ところで僕はどうかわったかな?」 「黒い髪、黒い瞳、シンジと同じ色」 「良かった。うれしいなぁ」カヲル心底うれしそうに笑った。 バシャン!海から少女が一人現れた。 「クシュン!おお、寒い!」 カヲルは急ぎ立ち上がると海に駆け込んでいき、少女を抱きしめた。 「マリ、会いたかった」 「へへ、ただいま。…カヲルあったかいニャ」 マリを皮切りに次々と人々が帰ってくる。 ミサト、加持、リツコ、マヤ、日向、青葉、冬月、手をつないだゲンドウとユイ。 ゲンドウの本物の笑顔を見てレイはとてもうれしくなった。 そして・・・ シンジとアスカが。 二人に手を引かれているのはアスカの母親だろう。 レイは思わず走りだした。 「シンジ!アスカ!」 「「レイ!」」シンジとアスカは満面の笑みで両手を広げた。 レイは二人の腕の中に飛び込んだ。 (この先がどうなるかなんてわからない。でも、なにがあってもこの暖かな気持ちを私は忘れない。ずっと) 海の色が次第に赤から青に変わっていくのをアダムとリリスは見つめていた。 「いつかまたこの宇宙でめぐり会える日まで。青い星の子供達の未来に祝福あれ。」 そう言い残すと二人は虹色の航跡を残して宇宙の深遠へと去っていった。 終劇 230 名前:+A(nother)[sage] 投稿日:2009/09/24(木) 16 06 55 ID ??? ROMに戻ると言ったものの、 これを書かないと自分の中で 物語が終わらないのでUPします。 まあ、蛇足とは思いますが勘弁。 231 名前:+A(nother) エピローグ①[sage] 投稿日:2009/09/24(木) 16 08 41 ID ??? あれから9ヶ月、季節は巡り夏が来た。 「冬もいいけどやっぱり夏がいいわー」 汗をかいたグラスの中身をググッと飲み干すミサトはプハーと一息つき、 サマーベッドの上でゴロンと横たわる。 蒼い空、純白の雲、澄み切った青い海。 白い浜辺に咲くカラフルなビーチパラソルの花々。 波打ち際ではしゃぐ若い妊婦達。 「あんた、お腹の子に悪影響じゃなくて?」 隣のベッドでくつろいでいたリツコがつぶやく。 「一杯だけよ。久しぶりなんだもん。勘弁してよ先生」 「ほんと、仕方ないわね」 あきれ返りフウとため息をもらす。 「“まごころ”ってほんと便利よねー」 「相手に伝えたい気持ちをうそ偽りなく直接心に訴えかけるコミュニケーション手段。 不器用な私たち人類への神様からの贈り物。」 「これが補完なのかしらね」 「どうかしら。まだ色々と隠された能力があるとマギ2は予測しているわ」 「新しく生まれてくるこの子達にその能力の開花確立が高いのね」 あと1ヶ月もすると“まごころベビー”の出産ラッシュが始まる。 リツコの抱える担当妊婦だけでも、ミサト、アスカ、レイ、ヒカリと第3新東京市立第壱中学校の生徒、 ネルフ職員併せて20人を超える。 そのリツコをサポートするのはマヤと碇ユイ、式波キョウコ。 ほとんどの医学的資料が失われているいま、経産婦であるキョウコとユイの知識が リツコ、マヤの参考書となっていた。 232 名前:+A(nother) エピローグ②[sage] 投稿日:2009/09/24(木) 16 12 03 ID ??? 「ユイさん、キョウコさん、分娩時の会陰切開なんですけど、 ほんとに麻酔無しでハサミでジョキンなんですか?!」 隣のパラソルでユイ、キョウコに分娩のレクチャーをされていたマヤが驚きの声を上げた。 「いっ!?」 ミサトが飛び起きて隣のパラソルの話を聞きにいく。 「痛いですよね!そんなこと私できません!」 マヤの顔が真っ青になってペンを持つ手がブルブル震えている。 「大丈夫よ、マヤさん。妊婦さんは陣痛でそんなもの気にもならないから」 キョウコがコロコロと笑い飛ばす。 「シンジの時は難産だったわ。結局3日間陣痛で苦しんだもの。 あの子中々お腹から出たがらなかったのね。」 「「そうなんですか、お義母さん!」」 アスカとレイは双子のように同時に驚きの声を上げた。 いつまにか、ユイとキョウコの周りには若い妊婦達が集まっている。 「そ、それよりもハサミでジョキンって本当なんですか?」 ヒカリが身を乗り出してたずねてくる。第壱中学校の生徒達も口々に不安を漏らした。 「ふふ、そんなに怖がらなくても大丈夫よ。私達には子供を産める力があるの。 その力を信じて、自信を持ちなさい」ユイはヒカリの頭をなでる。 「ユイさん、キョウコさん。出産の話もっと詳しく教えてください」 ミサトが真顔で二人に詰め寄った。 「そうね。それじゃアスカが・・・」 若い妊婦達は驚きと感嘆の声が波の音に負けない位大きく響きわたる夏の日の一日だった。 完
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340 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2010/09/25(土) 21 35 49 ID ??? 適当に浮かんだことを初投稿してみます 【何も無い日の午後】 「ふ~んずいぶんとレトロな雰囲気の建物ねぇ」 「おっ蜘蛛の巣発見!」 「半壊してる上にエレベーター無しとはエコ住宅の極限って感じがするねワンコくん」 「いや多分違うと思うけ…」 「おっここかぁ」 カチッカチッ 「あれっ?」 「あぁやっぱりまだ壊れたまんまなんだ…」 コンッコンッ 「綾波?…入るよ?」 ガチャ 「……」 341 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2010/09/25(土) 21 37 50 ID ??? 「えっと…あっ!ちょっと靴は…」 「ふ~ん。何にも無いにゃ…」 「……」 「えっと綾波この人は…」 「一応初めましてになるかしら?二番目の子の代わりに修復された弐号機に乗ることになりました真希波・マリ・イラストリアスです。よろしくね。」 「あの時は爆発から逃がしてくれて助かったにゃ。」 「で大丈夫なの?貧血って聞いたけど?」 「…ええ…もう平気…」 「そうだこれ…」 「おっワンコくん優しいんだね」 「ところで二人で一ヶ月も初号機の中で何してたのw?」 342 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2010/09/25(土) 21 40 21 ID ??? 「えっ?そんなの覚えてないよ…」 「自分の感覚が戻ったと思ったらまた天井が目に入って来て…」 「そう私はこの一番目の子が出て来れなくなっちゃうんじゃないかって勝手に心配してたんだけどねぇ」 「綾波レイか…」 …… 「私は私…」 「えっ綾波?」 「そうあなたが綾波レイ 一度ちゃんと顔を見ておきたかったんだ まぁ月から来た子も含めて近いうちに私達は召集されるはずだし、二番目?の子も多分間に合うんじゃない?」 「えっ?召集って…」 「……」 「じゃ私は行くわ。案内ありがとうワンコくん。迎えの車が待ってるから悪いけど一人で帰ってね。 じゃ。」 「あっちょっと…」 「……」 「綾波ゴメン…」 「いいの私も会えて嬉しかった…」 343 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2010/09/25(土) 21 44 18 ID ??? 「………」 「久しぶりね。挨拶は無いの?ゼーレのワンコくん」 「あぁ久しぶりだね。うらやましいよ碇シンジ君と直接会っているなんて」 「ふ~ん。女の子よりも男の子に興味があるのかにゃ?」 「ふふ…それも悪くないね」 「駒は揃った…我らの究極の目的まで後少しだ…」 「待って。僕のお母さんは?逢わせてくれる約束だよ」 「そうそう私もお母さんに会いたいにゃ」 「ああその願いもいやいにしえの生物全ての願いがもうすぐ叶う」 「ふ~んならいいけど今度は僕の願いは叶えさせてもらうよ」 「碇ゲンドウ…あの男の手の中にネブカトレザルの鍵 そして我らにはもう一つの鍵がある 二本の鍵が揃って始めて希望への扉が開かれる」 「人を勝手に鍵にしないで欲しいなおじさん」 344 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2010/09/25(土) 21 50 00 ID ??? 「老人達は苛立っているな ネルフの直接占拠も辞さない構えを取ってきている」 「碇…時間が無いどうするつもりだ?」 「Mark06、リリス、ネブカトレザルの鍵 どちらにしろパイロット達が揃わないと扉は開かない」 「約束の時だ」 「………」 「冬月先生…後はよろしくお願いします」 「あぁユイ君 そして惣流・アスカ・ラングレーによろしくな」 完 ありがとうございました
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272 名前:シイ[sage] 投稿日:2009/10/19(月) 22 45 22 ID ??? 「日直」 人が行き交う廊下で、唐突にくたびれた足を止めると、すっかり摩耗してしまっていて、もはや滑り止めとして機能していないに等しいスリッパの底のゴムがきゅっ、と辛うじて悲鳴を上げた。 そのすぐ後ろで胸をのけ反らせたアスカが思わず唸る。 「急に止まんないでよっ、…って、何つっ立ってんのよ?」 その場で踵を返し、歩いてきた方へと駆けてゆくシンジの背中に向かって呼び掛けた。 「先、帰ってて!、今日日直だった!」 273 名前:シイ[sage] 投稿日:2009/10/19(月) 22 46 59 ID ??? * 「って、言った筈なのにな、」 「良いじゃない!、ひとりで帰っても、つまんないのよ。」 教室の片隅の、一つの机で向かい合っているシンジとアスカは、そんな他愛もない問答を幾つか繰り返す。 頬を若干膨らませたアスカが頬杖をついた。不意に広げた学級日誌に影が出来る。 シンジがそれに気付き、おもむろに顔を上げると、非常に近い距離にアスカが居て、それからまた、ぱっ、と羞恥故に顔を逸らした。 暫時、沈黙が二人を包んだ。しかし、そんな静寂も何故か心地良いものだとシンジは思い立った。 彼が紙上を滑らせているシャープペンシルの、ひそやかに擦れ合う音以外に、漸く人の声音が教室に反響する。 「…シンジ、さ、」 「ん、」 常に勝気なアスカには珍しく、やけに弱々しく掠れた声で、 「好きな人、…居るの?」 276 名前:シイ[sage] 投稿日:2009/10/19(月) 22 49 20 ID ??? 「んー、ん?…えっ、」 それまで曖昧に相槌を打って居たシンジは、降ってきた何にも脈絡の無い問いに素頓狂な声を上げた。 「何よ、その反応…。」 「いや、その、…アスカは?」 吃音混じりに返すと、はぁ、と大袈裟にアスカは溜め息を吐いてから、 「あんたバカァ?、本人に言える訳ないじゃないの。」 呟くように紡いだ言葉に、はっ、とアスカが息を飲んだ刹那、空気が凍り付く。 「…へ、どういう、」 「いやその、あの、…もう帰るわよ!」 「あ、待ってよ、アスカ!」 顔を夕焼けと同じ色に染め、教室を出て行く彼女の背を、シンジは慌てて追いかけた。 * お目汚し、失礼致しました。
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544 名前:DESTINY 1話[sage] 投稿日:2009/09/07(月) 23 14 04 ID ??? 「なあ、碇。惣流って彼氏いるのかな?」 「そんなこと知らないよ。自分で聞いてみたら健介」 「冷たいこと言うなよ。お前ら長い付き合いなんだろー」 「たまたま小中高が一緒なだけでそんなに親しくないよ」 「なあ、それとなく聞いてもらえないかなー、頼むよ。俺達親友だろ!頼む!」 「今度な、気がむいたら」 司書室での放課後ティータイム。 ドアを開けるといつもの笑い声と甘いお菓子の匂いが出迎えてくれる。 「真嗣、健介遅いじゃない」惣流は二人の間に割って入る。 「今日のケーキ当番は綾波よ。どう感想は?」 惣流からの質問に答えようとする真嗣は綾波のまっすぐな瞳を感じていた。 「とってもおいしいよ。この間の惣流のに比べたらすごくおいしいよ」 「あんですってー!」惣流が真嗣に詰め寄る脇で健介が裏返った声で叫んだ。 「ボ、ボクは惣流さんの方がおいしかったですー!」 「あ、ありがと・・」あっけにとられる惣流。 「…ありがと。碇君」綾波が紅くなった顔を見られまいとうつむき答える。 「なんや、ええ感じやな、真嗣と綾波。新しいカップル誕生やな!」 「やめなさい鈴原!」そういうと洞木は惣流をチラッと見る。 「冬治は陽と付き合いだしてから、なにかとカップリングしたがるにゃー」 「真木波の言う通り!これ以上この司書室でのカップル誕生は先生が許しません!」 葛城は心中(33歳で独身、彼氏なしの私を差しおいて許せん!)と絶叫していた。 「ええじゃやないですか、センセー。互いに惚れあったモン同志が助け合い、励ましあう幸せというもんをこいつらに教えてやりたいんですよ」 冬治がこぶしを奮って力説する隣で陽が真っ赤になり拳を振り上げた。 そんな他愛もない高校生活。 鈴原と洞木以外は恋人関係に発展することなく僕らは卒業していった。 僕は父親との確執から大学に進むことなく、卒業と同時に家を出た。 父親から手切れ金同然に渡された金で古いアパートを借り一人暮らしを始めた。 家を出る時に父親名義のケータイは置いていき手元にはSDカードだけ残った。 一人暮らしを始めて2年、彼らとは音信不通になっている。 ようやくケータイを購入した僕は健介に電話をした。 545 名前:DESTINY 2話[sage] 投稿日:2009/09/07(月) 23 16 15 ID ??? 「真嗣か?今迄なにやってたんだよ!みんな心配してるんだぞ!」 久しぶりの健介の声に僕はうれしくなる。 「とにかく会おうぜ。みんな集めるからさ」 それから3日して飲み会が開かれることになった。 遅れてきた真嗣は店員に通された小部屋に懐かしい顔ぶれを見る。 冬治、洞木、真希波、綾波、惣流、健介。 「まずは細かいことは抜きや!真嗣生存を喜ぶ会はじまりやー!カンパイ!」 皆それぞれ言いたそうな雰囲気を察した冬治はジョッキ片手に立ち上がり、 カンパイを叫ぶと一気に飲み干した。 「かんぱーい」綾波が同じくジョッキを一気飲みしようとして盛大にむせる。 「綾波、あんた、お酒飲めたっけ?」惣流と真希波に背をさすられる綾波。 「碇くんとかんぱいしたくて練習した」 「お酒は練習するもんじゃないの。勢いで飲むもんにゃ!」 真希波は綾波のジョッキを取り上げグイッと飲み干した。 「あんたはジュースで我慢しなさい」ジュースをグラスに注ごうとする惣流に 「いや、お酒飲むの」と綾波が掴もうした瓶ビールを真嗣が手に取り綾波に差し出した。 「ボクに注がせてよ」「・・・はい」差し出されたグラスにビールが注がれる。 「うれしい」「ゆっくり飲んでね」綾波は一口くいと飲みおいしいと呟いた。 「なあ真嗣。オレ今、惣流と付き合ってるんだ」惣流の体がビクッと揺れる。 「やだ、・・・健介。今そういうこと言わないでよ」 「いいじゃないか。どうしても碇に教えたかったんだ。俺たち親友だぜ!」 健介がこれ以上ない笑顔で真嗣に笑いかける。 「なあ、碇も喜んでくれるだろう」 「ああ、よかったな健介!おめでとう!」 「ありがとう!碇!」 その日、連絡先を交換して飲み会はお開きとなった。 「また、近いうち集まろうぜ」 べろべろになった冬治に肩を貸して歩いていく洞木。 同じく一人で歩けなくなった綾波を担いだ真希波。 手をつないで去っていく健介、惣流を見送り僕は帰路についた。 546 名前:DESTINY 3話[sage] 投稿日:2009/09/07(月) 23 24 51 ID ??? 新着メールが2通。 真嗣。二人だけで会いたい。ちゃんと話がしたいの。お願い。返信ください。 明日香 Re:健介と一緒ならいつでもOKだよ。 碇 碇くん、昨日は会えてとても嬉しかった。碇くんを見ているとポカポカした気持ちになれるの。 また、会いたい。お返事待っています。 綾波 Re:綾波さん、いま、仕事が忙しくて中々時間が取れないけど、いつか必ず会えるようにします。ごめんね。 碇 その日の夜、健介からメールが来た。 真嗣。おまえの家に遊びに行くぞ。次の休み教えてくれ。 Re:うちは招待できるような所じゃないよ。古くて汚いし。外で会おうよ。次の日曜日ならOK。 Re:Re:みずくさいぞ真嗣。そんなの気にするような仲じゃやないだろ!つもる話もあるしさ、ゆっくり話がしたいんだよ。 Re:Re:Re:わかったよ。○駅に着いたら電話してくれ。迎えにいくよ。 Re:Re:Re:Re:OK。楽しみにしてるぜ。 547 名前:DESTINY 4話[sage] 投稿日:2009/09/07(月) 23 32 15 ID ??? 次の日曜日、案の定、健介と惣流、それに予想外に綾波も来た。 健介が気を利かしたつもりだろう。 僕のアパートは古い木造の2階にある。 目の前が公園で日当たりが良いのが唯一の取柄だ。 6畳一間、風呂は無い。 「なんだ、以外とキレイというか、なにも無いんだな」 部屋にはベッドと本棚、小さなテーブルがあるだけでテレビ、冷蔵庫などの家電は無い。 食事はコンビニ弁当ばかりなので、台所のコンロは一度も使用したことがない。 綾波はなにか作るつもりで食材の入ったスーパーの袋を持っていたが、 置き場所に困っていた。 「ごめん、綾波さん。ここで料理は作れないんだ」 包丁、まな板、食器さえない。マグカップが1個あるだけの流し場。 「碇、来る道にスーパーあったよな。ちょっと買出しに行ってくるよ」 健介が惣流を連れて買出しに出ようとするが、惣流は嫌そうな顔をして綾波を見る。 綾波は惣流から目をそらしうつむいた。 惣流は仕方なしと立ち上がり、健介と部屋を出て行く。 548 名前:DESTINY 5話[sage] 投稿日:2009/09/07(月) 23 33 52 ID ??? 「碇くん、ごめんなさい」 ふたりが居なくなるとか細い声で綾波がしゃべり始めた。 「どうしても会いたかったの」 「卒業式の日、突然いなくなって、ケータイも繋がらなくて、家に訪ねていったら出て行ったと言われて・・・」 「座りなよ」 綾波は手にした袋を落とし、真嗣に抱きついた。 「会いたかったの。恋人同士じゃないのにおかしいけど、忘れられなかった。碇くんの笑顔が見たくてこの2年ずっと苦しかった。」 綾波にこんな激しい一面があるとは真嗣は気づかなかった。 「もう、だまってどこかに行ったりしないで!お願い!」 悲痛な叫びが真嗣の心を揺さぶった。 綾波の顔が涙に濡れている。 「わかったよ。もうだまってどこかに行ったりしない」 「約束よ」「約束する」そう言うと真嗣は微笑んだ。 綾波は背伸びをすると真嗣に唇を合わせた。カツッと歯と歯が当たる。 あまりにとっさの出来事に真嗣は硬直する。 「約束の印。・・・好き」 真嗣は返す言葉が見つからなかった。 「碇ー!帰ったぜー!」 わざとらしく声を上げてドアを開ける健介。 二人は両手いっぱいにポリ袋を下げている。 「生活必需品を買ってきたんだ。遅くなったけど引越し祝いだ。受け取ってくれよ」 背を向けて涙を拭き取った綾波は健介からポリ袋を受け取り、惣流と一緒に台所に向かう。 一瞬、真嗣を見た惣流の顔がひどく悲しそうに見えた。 549 名前:DESTINY 6話[sage] 投稿日:2009/09/07(月) 23 38 28 ID ??? 小さなテーブルいっぱいに置かれた手料理。 次々と空けられるビールの空き缶。半分以上は健介が飲んでいる。 とうとう酔いつぶれた健介は眠ってしまう。 「真嗣、今日泊まらせてもらっていい?」 綾波もスースーと寝息を立てている。 「これじゃ仕方ないね」 真嗣は綾波を抱き上げてベッドに運んだ。 「真嗣・・・零にはやさしいのね」 悲しそうな目で真嗣を見上げる明日香。 「あたしにはちっとも優しくなかったね」 「惣流には健介がいるじゃないか」 「やめて・・・健介とはそんなんじゃない」 「なに言ってんのさ。健介が付き合っているって」 「違うの。あたしは健介を利用しているだけなの」 明日香は健介が寝入っているのを確認して続ける。 「健介のそばにいれば、真嗣と連絡とれると思って・・・それで付き合うことにしたの、別に健介のこと好きでもなんでもない」 明日香は真嗣を押し倒し、耳元に唇を近づける。 真嗣は押し付けられた柔らかな胸から激しい鼓動を感じていた 「ねえ、真嗣。ほんとにあたしの気持ちに気づいてなかった?あたしの視線を感じていなかった?あたしいつでもあなたを見ていたのに。あたしの気持ちが届くように思いをこめていたのに」 明日香の熱い吐息が真嗣の唇にかぶさり、柔らかな唇が吸い上げる。 音を立てて真嗣の唇に吸い付き、舌を絡ませる明日香。 唇を離しチロッと舌なめずりした明日香は真嗣にささやいた。 「零には渡さない。真嗣はあたしもの」 僕は明日香と秘密を持ってしまった。 その秘密は健介を裏切り、零を傷つける最低の秘密だ。 明日香を抱いてしまった、それも二人がいる部屋で。 明日香は痛みに耐えていたのに、僕は自分の快楽に溺れていた。 明日香を好きなのかわからない。 ただ、やさしくしてくれる誰かを求めていただけかもしれない。 僕は・・・最低だ。