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272 名前:シイ[sage] 投稿日:2009/10/19(月) 22 45 22 ID ??? 「日直」 人が行き交う廊下で、唐突にくたびれた足を止めると、すっかり摩耗してしまっていて、もはや滑り止めとして機能していないに等しいスリッパの底のゴムがきゅっ、と辛うじて悲鳴を上げた。 そのすぐ後ろで胸をのけ反らせたアスカが思わず唸る。 「急に止まんないでよっ、…って、何つっ立ってんのよ?」 その場で踵を返し、歩いてきた方へと駆けてゆくシンジの背中に向かって呼び掛けた。 「先、帰ってて!、今日日直だった!」 273 名前:シイ[sage] 投稿日:2009/10/19(月) 22 46 59 ID ??? * 「って、言った筈なのにな、」 「良いじゃない!、ひとりで帰っても、つまんないのよ。」 教室の片隅の、一つの机で向かい合っているシンジとアスカは、そんな他愛もない問答を幾つか繰り返す。 頬を若干膨らませたアスカが頬杖をついた。不意に広げた学級日誌に影が出来る。 シンジがそれに気付き、おもむろに顔を上げると、非常に近い距離にアスカが居て、それからまた、ぱっ、と羞恥故に顔を逸らした。 暫時、沈黙が二人を包んだ。しかし、そんな静寂も何故か心地良いものだとシンジは思い立った。 彼が紙上を滑らせているシャープペンシルの、ひそやかに擦れ合う音以外に、漸く人の声音が教室に反響する。 「…シンジ、さ、」 「ん、」 常に勝気なアスカには珍しく、やけに弱々しく掠れた声で、 「好きな人、…居るの?」 276 名前:シイ[sage] 投稿日:2009/10/19(月) 22 49 20 ID ??? 「んー、ん?…えっ、」 それまで曖昧に相槌を打って居たシンジは、降ってきた何にも脈絡の無い問いに素頓狂な声を上げた。 「何よ、その反応…。」 「いや、その、…アスカは?」 吃音混じりに返すと、はぁ、と大袈裟にアスカは溜め息を吐いてから、 「あんたバカァ?、本人に言える訳ないじゃないの。」 呟くように紡いだ言葉に、はっ、とアスカが息を飲んだ刹那、空気が凍り付く。 「…へ、どういう、」 「いやその、あの、…もう帰るわよ!」 「あ、待ってよ、アスカ!」 顔を夕焼けと同じ色に染め、教室を出て行く彼女の背を、シンジは慌てて追いかけた。 * お目汚し、失礼致しました。
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544 名前:DESTINY 1話[sage] 投稿日:2009/09/07(月) 23 14 04 ID ??? 「なあ、碇。惣流って彼氏いるのかな?」 「そんなこと知らないよ。自分で聞いてみたら健介」 「冷たいこと言うなよ。お前ら長い付き合いなんだろー」 「たまたま小中高が一緒なだけでそんなに親しくないよ」 「なあ、それとなく聞いてもらえないかなー、頼むよ。俺達親友だろ!頼む!」 「今度な、気がむいたら」 司書室での放課後ティータイム。 ドアを開けるといつもの笑い声と甘いお菓子の匂いが出迎えてくれる。 「真嗣、健介遅いじゃない」惣流は二人の間に割って入る。 「今日のケーキ当番は綾波よ。どう感想は?」 惣流からの質問に答えようとする真嗣は綾波のまっすぐな瞳を感じていた。 「とってもおいしいよ。この間の惣流のに比べたらすごくおいしいよ」 「あんですってー!」惣流が真嗣に詰め寄る脇で健介が裏返った声で叫んだ。 「ボ、ボクは惣流さんの方がおいしかったですー!」 「あ、ありがと・・」あっけにとられる惣流。 「…ありがと。碇君」綾波が紅くなった顔を見られまいとうつむき答える。 「なんや、ええ感じやな、真嗣と綾波。新しいカップル誕生やな!」 「やめなさい鈴原!」そういうと洞木は惣流をチラッと見る。 「冬治は陽と付き合いだしてから、なにかとカップリングしたがるにゃー」 「真木波の言う通り!これ以上この司書室でのカップル誕生は先生が許しません!」 葛城は心中(33歳で独身、彼氏なしの私を差しおいて許せん!)と絶叫していた。 「ええじゃやないですか、センセー。互いに惚れあったモン同志が助け合い、励ましあう幸せというもんをこいつらに教えてやりたいんですよ」 冬治がこぶしを奮って力説する隣で陽が真っ赤になり拳を振り上げた。 そんな他愛もない高校生活。 鈴原と洞木以外は恋人関係に発展することなく僕らは卒業していった。 僕は父親との確執から大学に進むことなく、卒業と同時に家を出た。 父親から手切れ金同然に渡された金で古いアパートを借り一人暮らしを始めた。 家を出る時に父親名義のケータイは置いていき手元にはSDカードだけ残った。 一人暮らしを始めて2年、彼らとは音信不通になっている。 ようやくケータイを購入した僕は健介に電話をした。 545 名前:DESTINY 2話[sage] 投稿日:2009/09/07(月) 23 16 15 ID ??? 「真嗣か?今迄なにやってたんだよ!みんな心配してるんだぞ!」 久しぶりの健介の声に僕はうれしくなる。 「とにかく会おうぜ。みんな集めるからさ」 それから3日して飲み会が開かれることになった。 遅れてきた真嗣は店員に通された小部屋に懐かしい顔ぶれを見る。 冬治、洞木、真希波、綾波、惣流、健介。 「まずは細かいことは抜きや!真嗣生存を喜ぶ会はじまりやー!カンパイ!」 皆それぞれ言いたそうな雰囲気を察した冬治はジョッキ片手に立ち上がり、 カンパイを叫ぶと一気に飲み干した。 「かんぱーい」綾波が同じくジョッキを一気飲みしようとして盛大にむせる。 「綾波、あんた、お酒飲めたっけ?」惣流と真希波に背をさすられる綾波。 「碇くんとかんぱいしたくて練習した」 「お酒は練習するもんじゃないの。勢いで飲むもんにゃ!」 真希波は綾波のジョッキを取り上げグイッと飲み干した。 「あんたはジュースで我慢しなさい」ジュースをグラスに注ごうとする惣流に 「いや、お酒飲むの」と綾波が掴もうした瓶ビールを真嗣が手に取り綾波に差し出した。 「ボクに注がせてよ」「・・・はい」差し出されたグラスにビールが注がれる。 「うれしい」「ゆっくり飲んでね」綾波は一口くいと飲みおいしいと呟いた。 「なあ真嗣。オレ今、惣流と付き合ってるんだ」惣流の体がビクッと揺れる。 「やだ、・・・健介。今そういうこと言わないでよ」 「いいじゃないか。どうしても碇に教えたかったんだ。俺たち親友だぜ!」 健介がこれ以上ない笑顔で真嗣に笑いかける。 「なあ、碇も喜んでくれるだろう」 「ああ、よかったな健介!おめでとう!」 「ありがとう!碇!」 その日、連絡先を交換して飲み会はお開きとなった。 「また、近いうち集まろうぜ」 べろべろになった冬治に肩を貸して歩いていく洞木。 同じく一人で歩けなくなった綾波を担いだ真希波。 手をつないで去っていく健介、惣流を見送り僕は帰路についた。 546 名前:DESTINY 3話[sage] 投稿日:2009/09/07(月) 23 24 51 ID ??? 新着メールが2通。 真嗣。二人だけで会いたい。ちゃんと話がしたいの。お願い。返信ください。 明日香 Re:健介と一緒ならいつでもOKだよ。 碇 碇くん、昨日は会えてとても嬉しかった。碇くんを見ているとポカポカした気持ちになれるの。 また、会いたい。お返事待っています。 綾波 Re:綾波さん、いま、仕事が忙しくて中々時間が取れないけど、いつか必ず会えるようにします。ごめんね。 碇 その日の夜、健介からメールが来た。 真嗣。おまえの家に遊びに行くぞ。次の休み教えてくれ。 Re:うちは招待できるような所じゃないよ。古くて汚いし。外で会おうよ。次の日曜日ならOK。 Re:Re:みずくさいぞ真嗣。そんなの気にするような仲じゃやないだろ!つもる話もあるしさ、ゆっくり話がしたいんだよ。 Re:Re:Re:わかったよ。○駅に着いたら電話してくれ。迎えにいくよ。 Re:Re:Re:Re:OK。楽しみにしてるぜ。 547 名前:DESTINY 4話[sage] 投稿日:2009/09/07(月) 23 32 15 ID ??? 次の日曜日、案の定、健介と惣流、それに予想外に綾波も来た。 健介が気を利かしたつもりだろう。 僕のアパートは古い木造の2階にある。 目の前が公園で日当たりが良いのが唯一の取柄だ。 6畳一間、風呂は無い。 「なんだ、以外とキレイというか、なにも無いんだな」 部屋にはベッドと本棚、小さなテーブルがあるだけでテレビ、冷蔵庫などの家電は無い。 食事はコンビニ弁当ばかりなので、台所のコンロは一度も使用したことがない。 綾波はなにか作るつもりで食材の入ったスーパーの袋を持っていたが、 置き場所に困っていた。 「ごめん、綾波さん。ここで料理は作れないんだ」 包丁、まな板、食器さえない。マグカップが1個あるだけの流し場。 「碇、来る道にスーパーあったよな。ちょっと買出しに行ってくるよ」 健介が惣流を連れて買出しに出ようとするが、惣流は嫌そうな顔をして綾波を見る。 綾波は惣流から目をそらしうつむいた。 惣流は仕方なしと立ち上がり、健介と部屋を出て行く。 548 名前:DESTINY 5話[sage] 投稿日:2009/09/07(月) 23 33 52 ID ??? 「碇くん、ごめんなさい」 ふたりが居なくなるとか細い声で綾波がしゃべり始めた。 「どうしても会いたかったの」 「卒業式の日、突然いなくなって、ケータイも繋がらなくて、家に訪ねていったら出て行ったと言われて・・・」 「座りなよ」 綾波は手にした袋を落とし、真嗣に抱きついた。 「会いたかったの。恋人同士じゃないのにおかしいけど、忘れられなかった。碇くんの笑顔が見たくてこの2年ずっと苦しかった。」 綾波にこんな激しい一面があるとは真嗣は気づかなかった。 「もう、だまってどこかに行ったりしないで!お願い!」 悲痛な叫びが真嗣の心を揺さぶった。 綾波の顔が涙に濡れている。 「わかったよ。もうだまってどこかに行ったりしない」 「約束よ」「約束する」そう言うと真嗣は微笑んだ。 綾波は背伸びをすると真嗣に唇を合わせた。カツッと歯と歯が当たる。 あまりにとっさの出来事に真嗣は硬直する。 「約束の印。・・・好き」 真嗣は返す言葉が見つからなかった。 「碇ー!帰ったぜー!」 わざとらしく声を上げてドアを開ける健介。 二人は両手いっぱいにポリ袋を下げている。 「生活必需品を買ってきたんだ。遅くなったけど引越し祝いだ。受け取ってくれよ」 背を向けて涙を拭き取った綾波は健介からポリ袋を受け取り、惣流と一緒に台所に向かう。 一瞬、真嗣を見た惣流の顔がひどく悲しそうに見えた。 549 名前:DESTINY 6話[sage] 投稿日:2009/09/07(月) 23 38 28 ID ??? 小さなテーブルいっぱいに置かれた手料理。 次々と空けられるビールの空き缶。半分以上は健介が飲んでいる。 とうとう酔いつぶれた健介は眠ってしまう。 「真嗣、今日泊まらせてもらっていい?」 綾波もスースーと寝息を立てている。 「これじゃ仕方ないね」 真嗣は綾波を抱き上げてベッドに運んだ。 「真嗣・・・零にはやさしいのね」 悲しそうな目で真嗣を見上げる明日香。 「あたしにはちっとも優しくなかったね」 「惣流には健介がいるじゃないか」 「やめて・・・健介とはそんなんじゃない」 「なに言ってんのさ。健介が付き合っているって」 「違うの。あたしは健介を利用しているだけなの」 明日香は健介が寝入っているのを確認して続ける。 「健介のそばにいれば、真嗣と連絡とれると思って・・・それで付き合うことにしたの、別に健介のこと好きでもなんでもない」 明日香は真嗣を押し倒し、耳元に唇を近づける。 真嗣は押し付けられた柔らかな胸から激しい鼓動を感じていた 「ねえ、真嗣。ほんとにあたしの気持ちに気づいてなかった?あたしの視線を感じていなかった?あたしいつでもあなたを見ていたのに。あたしの気持ちが届くように思いをこめていたのに」 明日香の熱い吐息が真嗣の唇にかぶさり、柔らかな唇が吸い上げる。 音を立てて真嗣の唇に吸い付き、舌を絡ませる明日香。 唇を離しチロッと舌なめずりした明日香は真嗣にささやいた。 「零には渡さない。真嗣はあたしもの」 僕は明日香と秘密を持ってしまった。 その秘密は健介を裏切り、零を傷つける最低の秘密だ。 明日香を抱いてしまった、それも二人がいる部屋で。 明日香は痛みに耐えていたのに、僕は自分の快楽に溺れていた。 明日香を好きなのかわからない。 ただ、やさしくしてくれる誰かを求めていただけかもしれない。 僕は・・・最低だ。
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第壱話「使徒、襲来」 第弐話「見知らぬ、天井」 第参話「鳴らない、電話」 第四話「雨、逃げ出した後」 第伍話「レイ、心のむこうに」 第六話「決戦、第3新東京市」 第七話「人の造りしもの」 第八話「アスカ、来日」 第九話「瞬間、心、重ねて」 第拾話「マグマダイバー」 第拾壱話「静止した闇の中で」 第拾弐話「奇跡の価値は」 第拾参話「使徒、侵入」 第拾四話「ゼーレ、魂の座」 第拾伍話「嘘と沈黙」 第拾六話「死に至る病、そして」 第拾七話「四人目の適格者」 第拾八話「命の選択を」 第拾九話「男の戰い」 第弐拾話「心のかたち 人のかたち」 第弐拾壱話「ネルフ、誕生」 第弐拾弐話「せめて、人間らしく」 第弐拾参話「涙」 第弐拾四話「最後のシ者」 第弐拾伍話「終わる世界」 最終話「世界の中心でアイを叫んだけもの」 劇場版 新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生 新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に
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【名前】ラト・エヴァレット 【性別】男 【年齢】23 【所属】なし(自称,エヴァレット総合事務所所属) 【容姿】 少し色素の薄い黒髪。170cm台中盤の身長で細身。 夏場の服装は無地のシャツかTシャツにスラックス、というのが大抵の場合。 スーツは一着だけ安物を揃えているが、嫌いなので必要に迫られなければ着ない。 【性格】 年齢相応の気さくな性格。近所を歩けば一日に数回は声を掛けられ、行きつけの店では店主と会話が弾む程度に社交的。 仕事であれば清濁併せ呑む気はあるが、それでも割り切れない一線は有しており、失敗を招くこともしばしばある。 過去のとある経験から軽度の女性恐怖症で、特に同年代の女性に対しては、余程のことがない限り、自ら関わりを持とうとはしない。 そうはいっても、一度関わりあいになれば普通に話すし、交友関係を築けば普通に友人づきあいは持つ。ゲイではない。 【異能力】 気体の流れを操る。早い話が風使い。 真空の刃──いわゆる「かまいたち」を操る程度は可能だが、竜巻規模の空気の流れになると制御が効かず、自分も巻き込まれかねないので滅多に使用しない。 「紅い満月」の影響によるものか、真空の刃は紅色の可視状態で現出する。更に瞬間的に消滅、殺傷力も防刃素材を破れる程ではないので、使い勝手は決して良くない。 それよりも、自らの身体を風の流れに乗せ、跳躍の高さや距離を伸ばしたりする方向での使途が多いものと思われる。 もちろん身体の強度は常人並みなので、無理すると骨は折れるし捻挫もする。 身体能力は上の下といった程度で、一般人相手なら、能力抜きの素手でも対処できる程度の技能は有している。 なお、メタ的に言えば「かまいたち」が真空の刃というのは迷信らしいが、それこそが迷信であると考えることにする。 【概要】 “溝浚いからテロリスト対策まで”──との謳い文句の下、「エヴァレット総合事務所」を営む。 総合事務所とは名ばかりで、実体は何でも屋。舞い込む依頼は大体が庭の草むしりや迷い犬探しといった程度。 らしい仕事といえば、稀に「企業」から、どうしても手が足りない場合に、治安部隊の下請けで施設警備を受けるぐらい。 儲けは殆どが事務所の賃料で消える。そもそも所員は彼一人。事務所を名乗ることすら疑問に思える状態── そうであるにも関わらず、彼がこの職にこだわるのは過去に理由があったりなかったり。 その辺のヘビーな話題よりも、明日の飯が食えるかどうかの方が問題なので、彼は今日もアーストンを駆けるのであった。
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竜の聖者 エヴァルソン C 光 (2) クリーチャー:イニシエート/竜の一族 2000 ■自分のターンの終わりに、このクリーチャーをアンタップする。 作者:翠猫 DMAE-13「激爆誕!ギガフレア!」収録。イニシエートルの竜の一族。 ターンの終わりにアンタップされるウィニー。 名前はリサ・マークルンド作のミステリー小説「爆殺魔 ザ・ボンバー」の登場人物「エヴァート・ダニエルソン」から。 収録エキスパンション DMAE-13「激爆誕!ギガフレア!」 関連 《竜の聖者 エヴァルソン》 《竜の電脳 スチュアート》 《竜の勇騎 エアレー》 評価 名前 コメント
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2007年9月1日に公開され、全4部作のうち、序章的な位置づけにあたる。本作のベースとなったのは、TVシリーズのうち第壱話から第六話まで。14歳のシンジ少年が汎用ヒト型決戦兵器・人造人間エヴァンゲリオンに乗って正体不明の敵性存在「使徒」と戦い始める契機と、自分の暮らし、友人、街など身近なものを認識する過程が、丁寧なタッチで再び語られ、1本の映画として再構成されている。クライマックスは、国家規模のオペレーションを描いた「ヤシマ作戦」。日本中の電力を箱根の一点に集め、シンジのEVA初号機が狙う陽電子砲の起動エネルギーとする大プロジェクトだ。自在に変形と攻撃を繰り返し、ネルフ本部へ侵入しようとする使徒。人類すべての運命が自分の双肩にかかったとき、シンジの心中に芽生えたものは・・・。 新世紀エヴァンゲリオン画像検索 新世紀エヴァンゲリオン動画検索 新世紀エヴァンゲリオンクチコミ #bf 新世紀エヴァンゲリオン関連ブログ検索1 #blogsearch 新世紀エヴァンゲリオン関連ブログ検索2 #blogsearch2 名前 コメント
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99 名前:マリン@marine[sage] 投稿日:2009/10/12(月) 21 57 27 ID ??? 何気ない日常 今日も2人はいつものように、学校が終わったらネルフに行き、シンクロテストをし、帰る途中に買い物をして夕日を背に自宅へと向かっていた。 「今日も疲れたね」 「そうね。いつもシンクロテストばっかで嫌になっちゃうわよ。たまには休みが欲しいわ」 「ははっ」 そんな雑談をしているうちに2人は自宅のマンションについた。 ところが、いつもなら2人は自宅までエレベーターを使うのだが、今日は定期点検で使えないらしい。 「なんなのよこれ!」 「アスカ落ちついて!」 地団駄を踏んで若干暴れ気味のアスカを、なんとかシンジがなだめて、2人は階段で行くことにした。 100 名前:マリン@marine[sage] 投稿日:2009/10/12(月) 21 59 22 ID ??? しかし、何も持っていないアスカと比べ、カバンと買い物袋を持っているシンジは、階をあがるごとにキツくなっていく。 いや、この場合は持たされている、という表現の方があっているのかもしれない。 「はぁー疲れたよアスカ」 階段の途中でシンジは嘆く。 「もう少し頑張りなさいよ!男の子だったら」 「はぁ…」 「ほら早く!」 疲れているシンジをお構いなしと言わんばかりに、アスカは一段ぬかしでどんどん進んでいく。 シンジは疲れながらもなんとかアスカについて行く。 そして自宅まであと2階という所まで登ってきたとき、アスカは階段でつまずいて転んでしまった。 心配になったシンジは急いでアスカのもとへ駆け寄る。 101 名前:マリン@marine[sage] 投稿日:2009/10/12(月) 22 01 36 ID ??? 「…っつー!痛っ…」 「アスカ大丈夫?」 「だ、大丈夫よ!」 「あ、膝から血が出てる!無理しちゃダメだよ!」 「これくらいどうってことないわよ!うっ…」 アスカの膝にズキっと痛みが走った。 「ほらやっぱりダメだってば!…よいしょっと」 そういうとシンジはアスカに背を向けてしゃがんだ。いわゆる、おんぶのポーズをとっている。 「ほら、アスカ!早く帰って消毒しよう!」 「な…ちょ、ちょっと!アタシをおんぶするってこと!?」 「そうだけど…」 「は、恥ずかしいわよ!」 「誰も見てないから大丈夫だって!さ、ほら」 102 名前:マリン@marine[sage] 投稿日:2009/10/12(月) 22 04 08 ID ??? シンジはいつもの優しい顔でアスカを見ていたが、その先にあるシンジの心配している眼差しを受け取ったアスカは、 なぜかこの時ばかりはプライド云々を捨て、シンジに甘えてみる選択をした。 「じゃあ…頼んだわよ」 「あ、ごめん買い物袋だけは持ってね…よいしょっと」 「しょうがないわね!」 そういうとシンジはアスカをおんぶした。 この時のアスカの顔はシンジには見えないが、真っ赤に染まっている。その原因は夕陽の影響だけではないだろう。 そして、アスカはシンジの背中に、優しい温もりを感じた。 103 名前:マリン@marine[sage] 投稿日:2009/10/12(月) 22 06 11 ID ??? (一応…男の子なんだもんね。でも…この感じ…落ち着くなぁ…ずっとこうしていたいかも…) そう思うと、アスカはシンジを背中越しにぎゅっと抱きしめた。 一方の鈍感なシンジは、それに気づいているのかは定かではない。 程なくして2人は自宅についた。アスカにとってはとても短く、名残惜しい時間だったのは言うまでもない。 自宅の鍵を開け、シンジはアスカをリビングのソファーに座らせると、急いで救急箱を取りに行き、アスカに応急処置を施した。 104 名前:マリン@marine[sage] 投稿日:2009/10/12(月) 22 07 44 ID ??? 処置をしてもらったアスカは珍しくシンジにお礼を言った。 「ありがと。シンジ」 「ど、どういたしまして」 シンジは驚いたような顔をしていたが、2人は目が合うとにっこりと微笑んだ。 その後、アスカがわざと転んで、シンジにおんぶをねだるようになったのはまた別の話である。 105 名前:マリン@marine[sage] 投稿日:2009/10/12(月) 22 12 37 ID ??? 相変わらずヘタクソですみません。 今回は甘々というか、ほのぼのというか… やっぱりこういうものの方が書きやすいですねw ではでは今回はこの辺で… あ、LAS日記も色々書いたのでよろしくお願いします。
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14 名前:eat me/side s:2010/08/24(火) 12 30 03 ID ??? 「おかえり、おそかったんだね。」 「まぁね。」 「テスト長引いたの?」 「まぁね。」 颯爽と歩いてお玉を片手に持っている僕の前を通り過ぎていく彼女。 扉を開けてドリンクを取り出し、冷蔵庫にもたれかかる彼女。 「今日のごはん、何?おなかすいた。」 「もうすぐできるよ。今日はシチューにしたんだ。」 「ふーん。じゃあ、着替えてくるわ。」 「うん。」 鍋の方に向きなおす僕。 背中に彼女が去っていくのを感じる僕。 知ってるんだよ。 嘘ついてるの。 だって、するはずのないタバコのにおいがしたんだもの。 ねぇ、アスカ。 どうして何も言ってくれないの。 どうして何も話してくれないの。 どうして何も教えてくれないの。 この鍋の中身と一緒にこの気持ちも溶かしてしまおう。 そうすれば、こんなに切ない痛みを感じなくてすむだろうから。 ごめんね、アスカ。 今日はきっと、おいしくないよ。
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動画(youtube) @wikiのwikiモードでは #video(動画のURL) と入力することで、動画を貼り付けることが出来ます。 詳しくはこちらをご覧ください。 =>http //atwiki.jp/guide/17_209_ja.html また動画のURLはYoutubeのURLをご利用ください。 =>http //www.youtube.com/ たとえば、#video(http //youtube.com/watch?v=kTV1CcS53JQ)と入力すると以下のように表示されます。
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320 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/07/19(日) 03 57 43 ID ??? それはただ、同じ空間を共有しているだけにすぎなかった。 始まりを迎えた時こそ笑い声や他愛も無い会話、そんな当り前の日常が転がっていた。 けれどそれは、時を重ねる毎に消え、何時しかただそこにお互いがいるだけ。 それ以上でもそれ以下でもない空間へと変貌したのだ。 何が悪いのか、何が良くなかったのか、その過程など今更どうでも良いのかもしれない。 そうなったという結果だけが、転がっているのだから。 「アンタ見てると、ホンットイライラすんのよねっ! 鬱陶しいったらありゃしない!」 「……ゴメン」 少女の心を抉る罵声に少年の内罰的な謝罪。 そして女性は、この惨劇を知り得ながら家を空けるか、眠り扱けるだけ。 こんな形だけの家族に、終焉が訪れるのは時間の問題であり、修復など不可能である。 そんな中、少し遅れた梅雨に晒された日曜日。 その日がやってきた。 「偶には三人で買い物にでも行きましょーか」 発端は何てことはない女性の一言から。 一時でも『家族』であることを認識させるが故の行動か、それとも己が欲する一時の悦楽を与えてくれる甘美な美酒を得るが為だったのか。 『今』となっては知る由も無い。いや、知る必要も無い。 「三人で……ですか?」 そんな女性の提案に困惑した表情を浮かべる少年。 少年にとって女性と少女はもはや他人でしかない。それは『象徴』とも言えるほど。 『家族』などと言う枠に抑え込みながら、その実、『他人』よりもその距離が近いだけ、一層の孤独を与えることにしかならないとは何とも皮肉な話であり、 その分、心の痛みが増すだけだ。 そんな自分を傷つけるだけの存在に何故今になって行動を共にしなければならないのか。 大体、少女が承諾するわけもない。少年は心からそう思った。 当然と言えば当然である。あれだけ少年を忌み嫌い、何かと『暴』の矛先とし、お互いに傷付け合う存在。 少年だって出来うる限り行動を共にしたくない、と思っているのに少女が思わないわけがない。 321 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/07/19(日) 03 58 51 ID ??? だから、結局、女性とふたりだけで買い物に行くことになるだろうと踏んでいた。 「……そうね、別に良いわよ」 だが、結果は予想と大きく掛け離れたものとなる。 少女がそれを良しとしたのだ。 生活必需品を少年ではなく、己が手で購入しなければ汚れていると感じるためか、ただの気紛れか。 これもまた『今』となっては知る由もなく、知る必要も無い。 こうして久方ぶりに『葛城家』の面々は、ペンギン一羽に留守番を頼み、出掛けることになったわけである。 しかし、共に行動したところで何も変わらない。 車中、誰も口を開かず、言葉を発さず。 聞こえてくるのは車が道路を走る音だけ。 女性は運転に集中し、少女は顎に手を掛け窓から移り行く景色を眺め、それぞれに心の壁を造り出す。 だから嫌だったんだ……、誰に言うわけでもなく、自分の心に言い聞かせる。 結局、人と人が分かち合えることなど困難を極め、分かち合えたところで無意味であることを示す、何てことは無いどこにでも転がっている物語なのだろうか。 否、そうではない。それならば、この日を選ばず、別の日に目を傾ければ良いだけのことなのだから。 では、何故この日だったのか。 それはまだ自覚していなかった少年の、ある『スイッチ』が鍵を握る。 そのスイッチは自動ドアを潜り、少年が店内へと足を踏み入れたときに『ON』になる。 何時もの買い物と変わりなければ、それもまた平凡な一日でしかない。 だが今は傍らに、女性と少女が共にしている。 偶然と呼ぶか、奇妙と呼ぶか、はたまた奇跡と呼ぶか、それはそれぞれの自由であるが、それも結局『過程』を彩るオブジェでしかない。 起きたからこそ意味がある。何事にも『始まり』があるように。 程なくして目的地に到着。面々は店内へ。 少年は『習慣』という言葉がぴったりなほど慣れた足付きでカート前へと移動し、慣れた手付きでそれを利用する。 今日のメニューは何にしようか、などと先ほどまでのどんより雰囲気はどこ吹く風。 特売のポップが記されたレタスを左右の手に携えながら品定め中。 322 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/07/19(日) 03 59 39 ID ??? そんな時、どさどさどさっ、と聞き慣れない音。 「……ちょっとアスカ。何コレ?」 「…………ふん」 レタスの重さを比べていた少年が目の当たりにしたのはカゴの中のお菓子の山。 当然、運び出したのは少女である。 だが、少女は悪びれた様子を見せるどころか質問に答えるつもりもないらしく、またどこぞへと足を運ぶ。 「どこ行くんだよ、コレは何?って聞いてるじゃないか」 「……うっさいわねぇ! 黙ってアンタはそれを買えば良いのよ! それとも何? アンタ、私に文句でもあるわけ?」 ぶわっ、とどす黒い雰囲気を醸し出し、何時ものように『暴』を剥き出しにする少女。 内容だけ見れば陳腐なもので、お菓子の買い過ぎ、という事なのだが、もはや修復不可能なこの『家族』にしてみれば、 たったそれだけのことでも、ガラスを釘で引っ掻くか如く、大きな傷を心に付ける出来事。 少しの小言を漏らしさえするものの、こうして凄んで見せれば何時もの様に内罰的な『ゴメン』が出るに決まっている。 少女はそれが判っているにも関わらず、その事にどうしても苛立ちを隠せなかった。 ホラ、言うんでしょ、また、『ゴメン』って。で、結局流されるだけなのよね、アンタは。 その決まった流れに少女はうんざりとし、そしてそれしか言わない少年と、それを言わせる自分に更に苛立ちを覚える。 だから、決まったその台詞を聞く前に少女は踵を返し、その場を後にしようとした。 だが、既にその『スイッチ』は入っている。 「あるに決まってるだろ!」 ぎょっとして後ろを振り返る少女。 謝罪の言葉を述べ、俯き加減に子犬の様な眼を向けるだけの少年がいるものと疑わなかったが、そこには眼と眉を吊り上げ、明らかに怒っている少年の姿。 まさか言い返してくるとは思っていなかっただけに少々たじろいてしまう。 「もう、こうやってお菓子ばっかり買って! ご飯前に食べないで、って言ってるのに食べる気なんだろ!?」 323 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/07/19(日) 04 00 21 ID ??? 「……べ、別に私の自由でしょーが!」 「しかもスナック菓子ばっかり……。こんなのばっかり食べてお腹膨らませて、ちゃんとした食事を取らないなんて許せるわけないだろ」 クスクス、と周りのお客から笑い声が漏れる。 少年は特に気にもしていない様子だが、少女は頬が暑くなるのを感じ、それを振り払うかの如く、更に険しい言葉を投げ掛ける。 「黙れ、黙れ、黙れ!! 訳判んないこと言ってんじゃないわよ! アンタは黙って人形のように言う事聞いてれば良いの!! 人にすがるだけのアンタにはお似合いだ!」 声を荒げ、憎悪の感情を隠そうともせず、全身全霊で少年にそれをぶつける。 何時だったか、これと似た事を前にも言った気がする。 その時の少年の目。純粋な漆黒、それでいて光をまったく宿さない瞳、それを思い出す。 アンタはそうやって、他人は愚か自分さえも見ようとしないのよ。……この、私も……。 だが、光を宿さない瞳。それは少年だけではなく、少女も同じであることに気付いてはいないのだろう。 こうして行われる一方的な『暴』。 これが葛城家の出来事ならば、またお互いに傷を造る一幕でしかない。 だが、ここは店内であり、既に少年は『スイッチ』が入っている。 そう、無敵の『主婦モード』の『スイッチ』が。 「コラ! お店の中で騒いじゃ駄目だろ! 大体、お菓子ばっかり食べてちゃんとした食事を取らないから太ったりするんだよ!」 純粋で漆黒、それでいて光を宿さない瞳、どころか、明らかにお怒り的な炎を浮かべる瞳。 てっきり今度こそ何も言い返して来ないだろうと思っていた少女は、『体重』という予想外の話題に一気に頬を発火させる。 「な、な、な!!」 「食べなければ太らないわけじゃないんだよ? 大体、そんなので体重落としたとしても ちゃんとした食事、ちゃんとした栄養を抑えた上で、始めて健康が成り立つものなんだから、意味無いよ?」 「なんで、アンタが!」 「この際だから言わせてもらうけど、お風呂上がりにバスタオル一枚でうろつくのも止めなさい」 「ぐっ!」 「年頃の女の子が、まぁ、はしたない」 324 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/07/19(日) 04 01 19 ID ??? 「ち、ちらちらと横目で見てる癖に、なにをえらそーに!」 「欲情の目ではなく、落胆の目で見てるんだよ、もうっ。で、その後にはコップも使わずに牛乳をパックでラッパ飲み――――」 「わ、判ったわよ! 戻して来れば良いんでしょーが!」 少女の叫びとも言える言葉に、一時は身を顰めるギャラリーではあったが、少年の、まるで母親が子供を叱るかのような物言いに、またしても笑い声。 流石に自分が叱られている状況、そしてそれを笑う人々の声、それらに少女は耐えかね、顔を真っ赤にしたままカゴの中に収められていたお菓子の山を再び手にした。 未だ嘗て味わったことの無い屈辱と敗北感。 それをよもや少年から与えられるとも思っていなかった少女ではあるが、シンクロ率を抜かれたあの時、憎悪を感じ取ったあの時とは違う感覚に戸惑う。 恥ずかしいったらありゃしない! ……でも、何で『腹立たしい』だとか『憎い』って感情じゃなくて、『恥ずかしい』って思うんだろ。 ……ん~、違う。それもしっくり来ない。……見返す? あっ、『見返してやりたい』って思ってる? そうではないか、という答えは導き出せた。しかし、ではなぜそう思うのかが理解出来ない。 ふと、何となしにちらり、と振り返って見る。そこには、やれやれ、と言わんばかりに困った表情を浮かべる少年。 ……ふ~ん、ちょっとは……見てて……くれてたんだ。 自分の食事事情、乙女の体重事情、そしてそられを含めて怒ってくれたこと。 何となしに、そこから生まれるのは『嬉しい』という気持ち。 その感情が生まれたことにも、何でかな?と首を傾げてしまう。 それはまだ、感じたことのない『家族』としての感情。 「……アスカ」 突然、少年に呼び止められる。 今度は、ちらりと覗き見るようにではなく、体ごと向き直して少年を見やる。 はぁー、っと溜息を零しながらも、ほんの少し柔らかい笑みを浮かべる少年。 それがどこか懐かしく、少し暖かかった。 「三個までね」 「……えっ?」 325 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/07/19(日) 04 02 14 ID ??? 「三個までなら、買って良いから」 その言葉を理解した瞬間、何故だか判らないが少女も笑みを零す。 久しく忘れていた、暖かい笑顔を。 「ケチ。どうせならキリ良く五個にしなさいよ」 「ダーメ。三個まで」 「むぅ~、じゃあ間取って四個!」 「…………もうっ! その変わり食事前には絶対に食べない、って約束だよ」 「おっけぇ! 交渉成立ね!」 ……なんだ、まだ私、笑えるんだ。……コイツも、まだ笑えるんだ。 時間で言えばそれほど経っていないが、既に遠い過去に置き去りにされた記憶を遡れば、陳腐な『家族』でも笑っていられた映像が頭の隅に残っている。 最近ではそんな余裕なんて一切無かったというのに、それでも今、またその時のように話し、笑い合っている。 たったそれだけでも、単純に嬉しい。 それが、今、少女の素直な気持ちだった。 「じゃあ、どれにしようかなー」 「……そういえば」 「んっ?」 「ミサトさんは?」 「ミサト? さぁ、知らないわよ、別に一緒に行動してたわけじゃないし」 「……じゃあ、何処にいるかも知らないってこと……?」 「そうなるわね」 「………………」 「?」 「それでは、カードをお預かり致します」 「はい、どうぞ」 「はい、ありがとうございます。それでは、そちらの機械に親指をお乗せ下さい」 「はいはい、っと」 326 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/07/19(日) 04 03 19 ID ??? ふんふふ~ん♪と鼻歌などを奏でながら女性はご機嫌であった。 レジの棚に置かれた缶ビールのケースを愛おしそうに撫でている。 だが、突然、その指が動きを止める。 『朝から飲酒は良くないですよ?』 『まったく、そんなんだから加持さんにも愛想尽かされるのよ』 何時からだろう、そんな自分を心配する声が聞こえなくなったのは。 何時からだろう、そんな自分に軽い悪態を吐かなくなったのは。 何が悪い?と聞かれれば、それは間違いなく自分。 でも、もうどうしようもない。どうしたら良いかも判らない。 だからこそ、なのか、もう見て見ぬ振りをするのは。 我ながら卑怯だとは思うが、既にバラバラなのだ、『家族』は。 「あの……お客様?」 「あっ、えっ? ……あ~、ごめんなさいね、ちょっち考え事してたものだから。カードの返却ね」 店員に呼ばれている事にも気付かず、考え事に没頭していたようだ。 慌てて差し出されていたカードに手を伸ばし、受け取る。 「それで、お客様……」 「んっ? どうかした? えっ、もしかしてカードの有効期限が切れてた?」 何とも居た堪れない表情を女性へと向ける店員。 それを感じ取った女性は何らかのあってはならないトラブルが起きたのではないかと推測する。 「いえ、そちらは問題有りません」 「じゃあ、指紋が本人の物と認識されなかったとか?」 「いえ、そちらも問題ございません。葛城 ミサト様、ご本人と認識されておりますし、お支払も既に済んでおります」 「あっ、そっかそっか! ごめんなさいね~、さっさとレジからどかないと次の人に迷惑だもんね~」 「あっ、いえ、そういうわけでもなく……、あの、お呼びですよ?」 327 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/07/19(日) 04 04 40 ID ??? 店員の訳の分からない言い分に、誰が?との台詞を吐こうとした瞬間、どうして店員がこうまで居た堪れない表情を出していたのか。 どうして言い難そうにしていたのか、女性は理解した。理解せざるを得なかった。 『――改めて迷子のご連絡です。葛城 ミサトちゃん、葛城 ミサトちゃん。碇 シンジ様がお待ちですので至急五階の迷子センターまでお出で下さい』 そんな館内放送。 その内容が全て告げられた時、かたーん、と女性の右手に握られていたカードが地面との協和音を奏でる。 女性は既に耳まで真っ赤。 その事態を目の当たりにし、更に居た堪れない気持ちが湧き上がるものの、店員は心を鬼にして、更に一言漏らす。 「あの、お呼びですので、急いでお向い下さいませ……」 「おっ、来た来た」 少女の目線の先、そこにはビールケースを抱えながら顔を真っ赤にした女性の姿。 怒りから来ているのか、それとも羞恥心によるものか。 まぁ、多分その両方を携えてるからこその真っ赤な顔なのだろうな、とどこかのんびりと考えてしまう。 あれだけの事をされたのだ、きっと怒鳴り込むに違いない。 けれど、何となく判る。それが良い意味で上手くいかないことを。 ずんずん、と力強く歩を進める女性。 このような事態へと陥れた張本人を補足。そして、大きく息を吸い、その名を呼ぶ。 「ちょっとシンジ君! どーいう―――」 「ミサトさん、何処行ってたんですか!!」 だが、それは少女の予想通り、全て発せられる前にそれ以上の怒号で遮られる。 きょとんとする女性。そしてそれを見、ほーらね、などと小声を漏らし、肩を小刻みに揺らしながら笑う少女。 「てっきり一緒にいると思ったのに、気付いたらいないんですよ!? 心配するじゃないですか!!」 「……いや、あの……」 328 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/07/19(日) 04 06 08 ID ??? 「もうっ、ビールを買うんだったらそう言って下さい! 大体、ちゃんとその事も考えてましたよ!?」 「……え~と、その……」 「重い荷物は最後に買うようにしないと! そんな重いの持ってたら、いろいろ見て回るのも大変じゃないですか!」 「……はい、すいません……」 「はい、判ってくれればそれで良いです。一度、ビールを車に置きにいきましょう。重いでしょ、僕が持ちますよ」 「……うん……ごめんね、シンちゃん」 「もう良いですから、ほら行きましょう」 ビールのケースを受け取り、歩き出す少年。 その後ろ姿を呆然としながらも見つめる女性は、今、起きた出来事がまだ良く理解できていなかった。 「ミサトちゃん、怒られちゃったー」 クスクス、と笑い声が聞こえる。 ぐぅっ、となんとも言えない声を漏らしながらも、笑い声を発する少女に女性は耳打ち。 「……ねぇ、シンちゃん、どったの?」 「さぁ? ここに来てから、急にあんな風になったのよねぇ」 私も怒られたしね、と苦笑気味。 「もしかしてシンちゃん、買い物する時、完全に『主婦』に成り切ってる?」 「可能性あるわね、アイツ、単純バカだし」 「…………なんとなく、お母さんに怒られた、って感じがしたわ」 「……同感。実際には、そんな経験、ないのにね」 どこか懐かしむように遠くを見つめる少女の瞳。 ぽろっ、と零した一言だったが、女性は、その一言が少女にあらぬ想いを持たせてしまったかもしれないことに少し複雑になる。 「でも、この雰囲気、って言うのかしら? 『こんな風』に話すのって、何だか久し振りだわ」 「そうね。……でも偶々、よ。そう、偶々。続いたとしても今日までで、明日になれば、また何時もの日常に戻るだけよ」 「……かもしれないわね……。あ~あ、やっぱり私の責任よね……」 329 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/07/19(日) 04 07 34 ID ??? 「なーに言ってんのよ。ミサト、アンタ自分が神様にでもなったつもり? 誰が悪かったとか、どれがいけなかったとか、関係無いのよ。結局はなっちゃったんだから」 そう、幾ら過去を振り返ろうとも、全ては『後の祭り』なのだ。 過程など、結果の前ではただの彩るオブジェでしかなく、ただの言い訳。 現状を無しになど、誰にも出来ないことだから。 「二人とも~、早く行きましょうよ~」 「「は~い」」 そして、未来もそう変われるものじゃない。 結局そのままズルズルと引き摺られるかの様に、前に進むしかない。 そう簡単に、現状を打破できるなら、人間何にも困りなどしないのだ。 「ねぇねぇ、シンちゃん。私、今日は生姜焼きが食べたいな~」 「迷子になったミサトが権限あるわけないでしょッ! シンジ、今日はハンバーグしなさい、ハンバーグに」 「え~、良いじゃん別にぃ~!」 「良くない!」 「はいはい、喧嘩しない。売り場を見ながら考えましょ」 でも、特別な、たった一日でも、特別な今日も無しには出来ない。 これから、どんな事が待ち受けていようと、どれだけ悲しもうと、どれだけ苦しもうと、どれだけ傷付けられようとも、この日を無くすことは出来ない。 そして、これが大切な第一歩とも成り得る可能性も。 これからも、こんな日が続く日常を得られる時が、来るように。 それだけを願いながら。 そんな『昔の』葛城家。 「という事があったんですよ」 「へぇ~、そうだったのか」 330 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/07/19(日) 04 08 43 ID ??? 三人で買い物には良く来るのか、という男性の質問に答えるうち、何時しか思い出話に花が咲いたようである。 にこやかに、あの日が多分、原点だったんだと思います、そう答え、思い出の中と同様、レタスを品定めする。 「それよりも、加持さん。最近良く、飴、食べてますね」 「ん? ああ、これ?」 男性が口に銜えるそれ。所謂、キャンディー。 何重にも束ねた紙をスティック状にし、その先端に飴玉がある持ちやすい形式のタイプ。 「禁煙中で、何か口に咥えて無いと落ち着かなくてな。大体、スーパー内で吸うわけにもいかないし」 「禁煙中じゃなくて、完全に止めたんですよね?」 「うっ、そうだな……」 ギラリと光る少年の眼光。それに少し気負いされながらも即座に肯定の言葉を述べる。 「うんうん、それが一番です」 「ははっ、まったくシンジ君は……」 「はい? 何ですか?」 「いや、完全に――」 男性が続けて言葉を述べようとした矢先。 どさっ、と大きな物音がひとつ。 その音がする方向、即ち、先ほど少年が用意したカート。それに備えつけられているカゴ。 そちらに目を向けて見れば。 「何やってるんですか、二人とも……?」 「……あ、あはは」 「……い、いやぁ、これも買ってもらおうかなって……」 少女が両手一杯に抱えるはお菓子の山。 女性が両手一杯に抱えるは缶ビールの山。 親が見ていない間に、カゴの中へお目当ての物を黙って混入させる子供そのものである。 331 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/07/19(日) 04 10 03 ID ??? 「へえぇぇ……」 少年の頭に久しく見ぬ、大きな♯マークがひとつ。 相変わらず苦笑を浮かべることしか出来ない女性と少女。 「今直ぐ、返してきなさーい!!」 「「はーい!!」」 慌てて逃げ出す女性と少女、そして握り拳をつくった右手を大きく天に翳す少年。 そんな光景を目の前にし、男性は、くっくっく、と声を漏らし笑いながら、先ほど述べようとした台詞を誰に聞かせるわけでもなく、放つ。 「本当、お母さん、だな」 まぁ、そんな風に役割が変わるのも有り、かもな。 ピコピコ、と飴玉から延びるスティック状の白い棒を上下に動かしながら、この平凡で素敵な世界に乾杯、と思う男性であった。 そんな『今の』葛城家。