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かわいいゆっくりゲットだぜ!!永(ゆっくり型ホタルの行方) 俺設定満載です。 今更ですがちるのの⑨設定を容認できない人は帰ってください それでもよければ読んでください では本文開始 PM 11:00 ゆっくり牧場入り口 ここはゆっくりがたくさん住む場所、人間の里の霧の泉側のはずれにあるゆっくり牧場と呼ばれる場所 そこが今回、小規模な怪異の中心となった場所だった。 持ち主の男性は最初、数匹のゆっくりの風邪だと楽観視をしていた だが感染力の強いその病気は気付いたときには牧場中に広まっていった 結果、謎の病気の発生により牧場内のゆっくりの大半が倒れて動けなくなってしまった。 動けるゆっくりは持病の喘息になれたぱちゅりー種のぱちぇと離れた場所に住んでいたゆっくり達。 そして、牧場主である彼は病気の治療以来のために旅に出ることを決意した。 ゆっくりとした月が空にある夜。ここはゆっくり牧場の玄関 そこでは二人の人間と数匹のゆっくりが立っていた。 「それじゃ、私たちは出発するから後は頼んだよ。だいちゃんにれてぃ…それにぱちぇ」 「わかりました。こちらは私達に任せてください」 「できるだけのことは頑張るから早く帰ってきてほしいくろまく」 「むきゅ、ゆっくりエンザにかかっていなければ私も行くのだけど…」 名残惜しそうに私のほうに視線を向けるぱちゅりー種のぱちぇに私は頭を下げながら説明をした。 「ぱちぇ、君は数少ない体を動かせるゆっくりだ。残ってみんなの面倒を見ていてくれ」 「むきゅ、わかったわ。私も頑張ってみんなの面倒を見るわ」 「よろしく頼むよぱちぇ…それからメイド長にはこんな夜遅くに呼び出して本当に申し訳ありません」 私は目の前にいる紅魔館のメイド長に丁寧に頭を下げた。 彼女のほうが移動スピードが速い気がしたが真の主の呼びかけを考えるとあまり館からは離れないそうだ。 それならばとれみりゃ種とふらん種の面倒とゆっくりの看病を彼女に依頼した。 「まあ、仕方ないから面倒を見てあげるわ。できるだけ早く帰ってくるのよ」 「ええ、そのつもりです。それじゃちるの出発をしようか」 「あたいてっばゆっくりね。あたいにまかせればだいじょうぶよ!!」 『めーりんさんも倒れましたからあっしは門番でも頑張りますぜ。』 ちるのを連れて行く理由…それはゆっくりの中で一番元気だからだ もしかしたら彼女がゆっくりエンザにかからなかったことが今回の鍵になるのではと思い同行者として選んだ。 私は遠くからの視線を背に受けながら人間の里の中心地向けてと歩き始めた。 そして30分後、人間の里の中心に向けて歩く二つの影があった。 それは水色の髪に薄い色の羽、氷精を模したゆっくりであるゆっくりちるのと人間の男性だった。 人間のほうは外の世界で懐中電灯と呼ばれるものを装備している。 手回しをすれば充電をされる機能やラジオ機能を持った緊急対策用のものだった とある理由で彼らは目的の場所に向かい夜道を歩き続けていた。 幸い人間の里内ということもあり妖怪に出会う可能性はほとんどない。 「あたいはさいきょーなのね♪ あたいってばゆっくりなのね♪」 「…(おてんば恋娘にあわせて歌ってるのか)」 「おほしさまきらきらしているなんてさいきょうねー!! あたいのつぎにさいきょうかもねー!!」 「…」 「おつきさまがホットケーキみたいね!たべてあげるわね!!」 そういうとちるのは空にある月を目指して飛ぼうとしているようだ 耳の周りでうろうろ騒がれるぐらいなら我慢をできるがどこかにいかれては困ってしまう。 そう思った私は同行者のゆっくりちるのに話しかけることにした。 気がたっていたのか声を荒げてしまう自分に驚いた。 「待たないかちるの! 君は私達が何のために永遠亭を目指しているのか忘れたのかい?」 「なにってあたいたちはみんなのびょうきをなおしに…えいなんとかをめざししているのよ」 「わかっているのならいいんだ。少しは緊張感を持ったらどうだ」 「きんちょうかん…それてさいきょうっぽいわね」 「はあ、もう勝手にしやがれ…とりあえず私から離れないようにしてくれ。なぜか道がいつもより暗いからな」 そんな会話をしながら歩いている二人組みをじーっと見つめる瞳があった。 その物体はこそこそと人間達のあとを追いかけていった そして少し離れた場所から人間達の様子を見ていた 「あたいってばくたくたねー! それにはらぺこよー!」 「歩き始めて30分~40分、だいたい里の中心まで半分というところか…わかった。ちるのは私の頭の上にのりなさい」 「ここはたかいわねー! さいきょうのあたいにぴったりよー!」 「食事のほうはもう少し我慢をしてくれ…里についたら何か買ってやるから」 「あたいはさいきょーなのね♪ あたいってばゆっくりなのね♪」 牧場を出るときに自分とちるのの夜食を持っていないことに気付いたが今更戻る気はしない とりあえず村に着けばちるのの分ぐらいの食事はどうにかなるだろうと私は考えていた。 そしてちるのを頭にのせて私は歩き始めた。彼女の体は氷枕代わりに私の頭を冷やしてくれた。 そうすると自分の対応が大人気なかった気がしてしまい彼女に謝ろうと思った 「あのな、ちるのさっきは声を荒げてしまって悪かったよ。」 「あらげてってからあげのこと? とてもおいしそうねー♪」 「唐揚げか油っぽいからあまり体にはよくなさそうだがみんなの快気祝いに作ってみるのもいいかもな」 「おいしいものをつくれるあんたは、にばんめにさいきょーよ!」 ちるのとはなしているとなぜだか自分の気持ちが落ち着いていくのを感じた。 もしかして彼女は私のことを落ち着かせるために歌を歌ったりしていたのだろうかと考えた。 自分は最強と頭の上で歌っている彼女を見てそれは無いかと心の中で笑った。 その時だった。ブーンという羽音の音ともにひとつの丸い物体が目の前に現れた。 緑の髪と頭に生えた2本の触角とが特徴的だった。 大きさはちるのよりも小さめなバレーボールを一回り小さくしたぐらいの大きさだ。 ゆっくりにとってお約束の挨拶を彼(?)はしてきた。 「ゆっくりしていってね!!」 「ゆっくりしていってね!!君は誰だい?」 「私はこの近くの川で住んでいるりぐるよ」 「そのりぐるが私に何のようだい?」 「頭の上のちるのと友達だから気にになったのよ」 そういうと彼女はちるののほうに向きを変えると散るのに声をかけ始めた。 ちるのは相変わらず歌を歌っていたが目の前にいるりぐるに気付くと懐かしそうに返事をした。 「りぐるじゃない。ゆっくりしていってね!!」 「ゆっくりしていってね!! 最近見なかったと思ったらちるのは何で人間といるの?」 「れてぃとだいちゃんといっしょにこいつのうちにすんでいるのよー!!」 「ちるの…そこは安全でごはんとかはあるの?」 「まいにち、カリカリのあまいご飯をたべているわー!!」 ちるのが言ったカリカリとはゆっくりフードのことだろうと私は考えていた ゆっくりフードとは私が考案したドッグフードのゆっくり用のもので成体ゆっくりが一日100グラムですむ優れものだ ゆっくりに必要な甘味と栄養を含んでおりゆっくり達の主食として使用している食料だ。 その答えを聞いたりぐるはそうするかを悩んでいるようだった。 「りぐる。君もよければうちの牧場に住むかい?今は急用で出かけているが牧場に来れば食住の保障はするよ」 「私もそれを悩んでいるところだったの最近は竹林のほうの群れが食料探しにきて困っているから…」 「だったらあたいたちといっしょにすめばいいのよー!!」 竹林のほうに住む群れという言葉が引っかかった。 竹林とは人間の里の反対側にある迷いの竹林のことだろう。 そこから食料調達にくるゆっくりがいるということは何を意味するのだろうか? まあ、これは私自身の考えすぎかもしれないので忘れることにした。 「りぐる。すまないが私たちはその竹林を目指しているんだよければ道案内をしてくれないか?」 「かまわないわ…後よければ私の友達も牧場に同行させたいのだけどかまわないかしら?」 「それは問題ないがそのゆっくりはどこにいるんだい?」 「ここから人間の住む里の途中に住んでいる私とちるのの友達よ」 そういうと彼(?)は人間の里の方向に向けて飛び始めたので私はあとを追いかけた。 ここら人間の里まで1時間はかからないはずだ。 そこで迷いの森の案内人を探すつもりだがどうなるのだろうか? 続く いつものやつ 「男の子っぽいゆっくりりぐるゲットだぜ!!」 次回のゆっくり紹介 「赤っぽい髪に天辺に羽の生えた帽子をかぶって特徴的な耳の生えたゆっくり誰だ?」 なきごえ『ゆっくりちんちんしていってね!』(性的な意味ではありません) 次回も、ゆっくりゲットじゃぞ byゆっくり博士 PM 12:00 人間の里へ向かう道 続く 【あとがき】 作者名無しです。 企画の方を作っていてあげるの遅くなってすみませんでした。 あと、ゆっくりりぐるはGではなく蛍型ゆっくりです。 時計に関しては原作と同じようにAM5:00までに着くのが目標です。 主人公が足早に移動するのでゆっくり達とのエピソードとかは少ないかもしれません …ウソです。最近、ゆっくりとの出会いの方法が思いつかなくなってきました 気付けば20話以上書いているのでネタ切れなのかもしれませんorz 続ききたぁぁぁ! ずっと気になって待ってました!! ワクワクが止まらない! -- かわいいゆっくりゲットだぜ!!ファンの人 (2009-05-21 00 31 21) もう少しヒントのレベルを上げても大丈夫なような気がしますね。 -- 通りすがり (2009-05-22 00 40 43) 待ってましたぁ!! 続きが見たくてワクワクしてます!!!! 気になるよぉー -- 名無し (2009-05-22 03 36 09) ヘルプミー!スキマなう。 -- 名無しさん (2012-07-30 15 18 39) 名前 コメント
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「…はあ」 今日も一人、あまり気の乗らないまま学園へと足を進め、教室に入る。この春から一年生、高等部へと進学した。 …までは、よかったけれど。クラスの空気にどうも馴染めず、一人ぼっちの毎日を過ごしている。 「はあ、嫌だなあ」 無意識に、溜め息と共に言葉が漏れてしまう。そこまでいじめられている訳では無い、ただ気まずく居づらいのだ。圧迫されている様な感じがして、すぐにでも帰りたい。 「おい、りぐる! 机にぽつんと座ってて、面白いのか?」 「…ふん」 クラスで騒いでいる馬鹿どもが僕に話しかけてきた。僕は軽くあしらい、席に座り鞄の中に入っている本を取り出して読み始める。 馬鹿どもの一人が僕が使っている机の上に手をバンと叩く様に置き、僕を脅してくる。しかし、僕は気にもせず読書を続行する。 僕は、他の奴みたいに馬鹿どもに躍らされるほど愚かではない。ましてや、同じ様に馬鹿騒ぎするなんてもっての他だ! こんな奴らに屈したりなどはしない、しないが…。 …素直になれるのであれば、教室で身を小さくして過ごすのではなく、のびのびとした生活がしたい。 早く、時間が過ぎて欲しい…! 「おい、お前たち。りぐるくんは嫌がっていますよ、やめたらどうです?」 「…善人面、しやがって」 クラスの人の鶴の一声によって、あいつらは僕の周りから去っていった。…正直、助かった。目が泳いで、読書どころでは無かったからだ。 声をかけた人が近付いてくる。この人は僕の名前を知っている様だけど、僕は誰一人名前を覚えていない。 何だか、情けなく思う…。 「…全く。人をからかって、自分たちだけが楽しければ良いと思っているのでしょうか。怖くて行動出来ない人もいるのに、相手の立場を尊重してあげたらどうでしょうかね。 …私、楽器をやっているんですよ。一緒に、やりません? いずれセッションなどもしませんか」 「…え、えっと」 「別に無理には言いませんし、趣味があるのなら全然構わないですよ。それは、りぐるくんが決めて下さい。でも、なんというか。憧れません、バンドって?」 「…確かに、格好いいと思う。でも、僕なんかに出来るのかなあ」 「…コツは、臆さないこと。見返してやりません? 見返すとまではいかなくても、見せ付けてやりましょうよ」 「…ごめん、あなたの名前は?」 正面を向いて、瞳にはどこか炎が宿っている彼女。彼女が、口を開いた。 「東風谷、さなえ。よろしく!」 東風谷さなえのロックバンド! お疲れ! -- 名無しさん (2009-05-07 00 52 34) もっと続いて欲しかった。素直にそう思えた作品です。 ともあれ、お疲れ様でした!次回作を楽しみに待ってます。 -- 名無しさん (2009-05-08 01 25 48) 名前 コメント
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※『ふたば系ゆっくりいじめ 411 明日に向って飛べ!』 の微妙な続編です。希少種はいろいろな意味で優遇されています ※現代設定(?)です ※独自設定があります ※ネタ被りがありましたらご容赦ください ※人間側の描写が多いです 「……それで、せっかくアメリカまで研修に行ったのに、皆から頼まれてたお土産を買うのを忘れちゃってて。 挙句、『俺が元気な体で帰ってきたことが何よりのお土産です』なんて言うもんだから、どつかれてたわ」 「あはは、そりゃそうっすよ」 2人の男が談笑している。 「そういうおにいさんも、わりとほんきでなぐってたわ」 いや、訂正しよう。2人と1匹だ。 彼らがいるのは、上空100メートルを飛行するヘリコプターの中。 窓の外では、山の稜線を朝日が照らすところだった。 操縦桿を握る男は森林管理署の署員で、先ほどから聞き役に徹している。 その隣に座り、同僚の笑い話をする男の膝の上にはゆっくりゆうかが抱かれていた。 「あいつはああ見えて頑丈だから、大丈夫なのよ」 そう言ってゆうかに微笑むと、男は眼下に広がる森を見渡した。 この地域一帯は自然遺産に登録されている国立公園だ。 1週間前から降り始めた雪が広大な森林を覆い、緑と白の対比が大地に美しいコントラストを描いていた。 彼の職業は、対ゆっくり専門の「自然保護官」であり、ゆうかは仕事の相棒である。 今日は森林管理署のヘリに同乗させてもらい、定期的に行う監視活動に従事していた。 「今日は付き合わせちゃって、ごめんなさいね」 「いいっすよ、どうせ俺も暇でしたし。 それに保護官の皆さんにはお世話になってますから」 同じ自然保護を仕事とする者同士、それぞれの機関は協力関係にある。 ゆっくりは森林地帯にその多くが生息し、希少な植物を食い荒らすこともあるため、森林管理署にとっても悩みの種であった。 この時期、野生のゆっくりの多くは冬眠、あるいは永眠している。 例外として活発に活動するのは、れてぃやちるのなど一部の希少種だけだ。 ついでに言えば野生動物もその多くが活動休止中。 つまりこの監視は形式だけで、特に神経を尖らせるような仕事でもないのだ。 とはいえ、雑談に興じつつも保護官とゆうかは地上への注意を怠らなかった。 「この地域のゆっくりたちは、まだ生態系を破壊するには至っていないのよね?」 「ええ、大人しいもんっすよ。このまま静かに暮らしてくれれば一番なんすけどね……」 異常はどこにも見当たらない。 まるで遊覧飛行をしているかのような、気楽な時間が続く。 1時間ほどで予定のコースを周り終え、帰還する旨を本部に連絡したとき、「あら?」と保護官が声を上げた。 地上に何か蠢くものが見えたような気がした。 「高度を下げてちょうだい!」 「えっ、はい」 指示されるまま、操縦士はヘリを地上から30メートルのあたりまで降下させる。 しかし、地上には動くものなど何も確認できなかった。 聞こえてくるのはヘリ自身が出す爆音と木々のざわめきだけ。 「何かいたんすか?」 操縦士の問いかけには答えず、保護官はあたりを見回す。 やはり、小動物の1匹さえ見えない。 ―普通に考えれば“あれ”が今の時期に現れるはずがないのよね……。 ―錯覚? でも……。 「だいじょうぶ? おにいさん」 ゆうかの声で我に返ると、保護官は操縦士に答えて言った。 「……ごめんなさい、見間違いだったみたいだわ……。戻りましょう」 そう言う保護官の顔はどこか晴れない。 心配したゆうかが声をかけようとした瞬間、 「あ、そういえば」 それまで相槌を打つだけだった操縦士が、唐突に喋りだした。 「俺、実は基地に恋人がいるんすよ」 「「……え?」」 突然の話題に驚く保護官とゆうか。 操縦士は彼らの怪訝な表情に気付いているのかいないのか、構わずに続ける。 「戻ったらプロポーズしようと」 「ちょ、ちょっと……」 「花束も買ってあったりして……」 「ちょっと! なんでいきなりそんな話始めるのよ?」 「え、いや、なんとなくしなきゃならない気がして……」 その時だった。 ヘリの後方の木々の間から一条の光線が放たれ、テイルローターを掠めた。 猛烈な火花を噴き上げ、破片を撒き散らしてテイルローターが吹き飛ぶ。 バランスを失ってたちまち制御不能に陥るヘリ。 自らの生み出す抗いがたい力に掴まれ、ゆっくりと旋転しながら降下し始めた。 操縦士がマイクに向かって叫ぶ。 「メイディ、メイディ、メイディ!! ブラックホークダウン! ブラックホークダウン!」 「これのどこがブラックホークよ?! ベルじゃない! 本部、こちらっ……!」 「アイムイジェクティン!」 「出来るわけないでしょっ!! 黙っててよ!!」 「ふたりともおちついてっ……!」 そんなやり取りの間にも、ヘリはどんどん高度を下げる。 回転翼が空しく大気を切り裂く。 地面はすぐそこまで迫ってきた。 保護官はゆうかを強く抱きしめ、衝撃に備える。 そして、 「きめぇ丸ーっ!!」 「ゆうかっ……!」 「おにいさっ……!」 ズズン……。 三者三様の悲鳴を飲み込む鈍い音と共に、ヘリは墜落した。 ◇ ◇ ◇ 人間が生み出した鋼鉄の鳥が身を捩るようにして苦しみ、咆哮を上げて落ちていく一部始終を見ていたものがいた。 先ほどヘリのテイルローターを破壊した怪光線、「ドススパーク」を撃ったドスまりさである。 「ゆふ、ゆふ、ゆふふふふ……」 ヘリの撃墜を確認すると、不気味に笑いながらドスまりさは森の中へと消えていった。 ◇ ◇ ◇ 俺の仕事は自然保護官だ。 今日は同僚と一緒にこの国立公園の監視にやってきたのだが、 ジャンケンに負けた俺はパートナーのゆっくり共々、管理署の施設でデスクワークをするハメになった。 ちなみに俺の横で報告書の資料を仕分けしているのが相棒の「かなこさま」である。 冬眠した「すわこさま」とその世話を頼まれてくれた「さなえさん」は家で留守番している。 「少し休憩するか……」 「そうだね、お兄さん!」 報告書の作成が一段落つき、背伸びする。 せっかく自然遺産にまで来たというのに、朝から活字ばかり見ている。 外の景色でも眺めようかと席を立ったとき、内線の電話が鳴った。 同僚の保護官とゆうか、それに操縦士の乗ったヘリが消息を絶ったとの報せを受け、俺たちは通信室に飛び込んだ。 数人の職員が慌しく動き回り、ヘリとの通信を試みていたが繋がる気配はない。 その内の1人から詳しく事情を訊くと、現在の状況はこんな感じらしい。 ―最後の通信内容から、機体に何らかのトラブルが発生したことは間違いなく、恐らくは墜落したものと思われる。 ―山向こうの天候が悪化しており、駐屯地から救難隊が到着するには何時間かかるか分からない。 ―そして管理署に常駐する職員は少なく、救難隊や自治体との通信の必要もあって捜索に乗り出すことは出来ない。 ならば、俺たちの出番だ。 「そんな、無茶ですよ! 何が起こったのかも分かっていないのに……!」 「だからこそだ。俺たちはこういった時の訓練も受けてるし、経験もある。 今は危険な野生動物はいないし、無茶もしない。頼む、行かせてくれ」 職員を説得し、俺たちは出発の準備を始めた。 俺は素早くライディングスーツに着替え、かなこさまにも耐寒・雪中装備を施す。 装備を整えた俺は、管理署のスノーモービルに跨り、かなこさまを後ろに乗せた。 予測されるヘリの遭難地点は、ここから6キロほど北上した所だった。 直径およそ500メートルの円の中のどこかに、同僚たちがいるはずだ。 「行くぞ!」 「いつでもいいよ、お兄さん!」 天候が変わらないうちに、なんとしても発見しなければならない。 俺たちは鬱蒼とした森の中へと入っていった。 ◇ ◇ ◇ 墜落したヘリの中で、最初に意識を取り戻したのはゆうかだった。 保護官の屈強な体に包まれ、奇跡的に軽傷で済んだのだ。 自分を守ってくれた保護官に、必死に呼びかける。 「おにいさんっ! しっかりしてっ! おにいさんっ……!」 ややあって、「う……」と目を開ける保護官。 だが次の瞬間、その顔は苦痛に歪む。 「……ッ! 足が折れてるみたいね……。ついてないわ……」 むしろその程度で済むことが凄いのだが。 隣を見ると操縦士が計器に頭を突っ込んで気絶していた。 保護官が体を揺すっても、目覚める気配はない。 もとより、引っこ抜けそうになかった。 異臭がするので、ゆうかが後方をチェックすると燃料が漏れていた。 しかし雪が積もっているので大事には至らないだろう。 実際のところ、墜落時の衝撃を吸収してくれたのも雪だった。 「……でもその雪が、今はネックなのよね……」 通信機器は完全に壊れ、人間2人は移動不可能。 唯一動けるゆうかは、雪の上を長時間跳ねることなど出来ない。 「助けが来るのを待つしかないわね……。でも……」 墜落の直前に見たあの光。あれは恐らくドススパークだ。やはり見間違いではなかったのだ。 どうしてこんな時期にドスまりさが活動しているのか、何故いきなり攻撃してきたのかは、皆目見当もつかない。 本部に報告できなかったことが悔やまれた。 保護官はゆうかを抱き上げる。 ドスまりさがこのヘリを発見しないこと、そして救難者たちがドスまりさに遭遇しないことを祈りつつ、 彼らは静まり返った森の中で、体力の消耗を抑えるしかなかった。 ◇ ◇ ◇ スノーモービルで森を突き進む俺とかなこさま。悪路を何とか突っ走る。 木々の間を斜めに差し込んでくる陽の光は、常緑樹の葉に濾過されて眩しさを感じさせない。 その光によって、森の中の空気はどこまでも透き通っているようだ。 出発してから5キロほどの地点だった。 何かしらの手がかりはないかと周囲に気を配っていたら、不意に横合いから白い物体が2個、飛び出してきた。 バレーボールくらいの大きさだ。 「うぉっ!」 轢きそうになったので、慌ててスノーモービルを停止させる。 よくよく目を凝らすと、雪にまみれた黒帽子のゆっくりまりさに猫耳二尾のゆっくりちぇんである。 まりさとちぇんは俺たちの姿を見るや否や、 「……! にんげんさんっ?! たっ……たったったすけてぇぇぇぇぇぇ!」 「わからないよぉぉぉぉぉぉぉ……!」 必死に助けを求めてきた。 俺たちは困惑するが、まりさたちはそれ以上に恐慌をきたしていた。 雪道を跳ね続けたせいで、体もふやけていた。 とりあえず携行していたタオルで包んでやると、何とか話せる状態まで落ち着いた。 俺はまりさに訊ねる。 「一体何があった? 冬篭りはどうしたんだ?」 「……まりさたちは……」 まりさは自分たちの身に起こった出来事を話し始めた。 ◇ ◇ ◇ まりさたちの群れはとてもゆっくりした群れだった。 賢く強いドスまりさの庇護の下、秋の早い段階から越冬のための食料も充分に集めることが出来た。 慢心して、新たに子供を作るゆっくりたちもいなかった。そして何よりみんな仲良しだった。 絵に描いたようなゆっくりプレイスで、まりさたちは冬の到来を迎えた。 「みんな、はるになるまでゆっくりしていってね!」 「むきゅ! まりさたちもゆっくりしていってね」 「は……はるになったら、げんきなかおをみせなさいよね!」 群れの全てのゆっくりが春に再会することを信じて疑わなかった。 みんな笑顔でそれぞれの巣穴へと入っていく。 まりさは番のゆっくりれいむと、子まりさと子れいむが1匹ずつの家族と一緒に巣穴に入り、入り口を塞いだ。 中は真っ暗だったが、子供たちの賑やかな笑い声と、れいむの歌声のおかげでとてもゆっくりできた。 「おちょーしゃん。はるしゃんはいちゅきゅりゅにょ?」 「まりしゃ、はやきゅありしゅたちとあしょびちゃいよ!」 「おちびちゃんたちがゆっくりしていたら、すぐにきてくれるからね!」 「そうだよ! それまで、おかあさんといっしょにおうたのれんしゅうをしようね!」 「ゆぅん、ゆっきゅりりきゃいしちゃよ!」 「おうたはゆっきゅりできりゅね!」 暗闇に家族の明るい声が満ちて、楽しい時間が過ぎていった。 それは突然に起こった。 冬篭りを開始してだいぶ経った頃、眠っていた一家は親れいむの呻き声で目を覚ました。 「……? れいむ……? どうしたの……?」 「……ぐぅ……! ぎゅ……ぎょぉ……!」 母親のただならぬ様子を感じ取ったのか、隣で寝ていた子供たちがれいむに擦り寄った。 「おきゃーしゃん? どうしちゃにょ?」 「ぽんぽんいちゃいにょ? ゆっきゅりしちぇにぇ? しゅーりしゅーり」 懸命に呼びかける子供たち。 その優しさを嬉しく思いながらも、れいむを心配したまりさが口を開こうとしたときだった。 「おぐぉ」ミチリ。バリバリッ。「おきゃーしゃ……?」グチャッ。グッチャッグッチャッ。ゴキュ、グキュ。 「ゆう? れいみゅ? れいみゅどうし……?」ズグシュ。ズチュルズチュル。ジャク、ジュプ、ギチャ。 何かとてもゆっくりできない音がした。 「れいむ……? おちびちゃ……?」 言いかけてまりさは口を噤んだ。 凄まじい悪臭が漂ってきたのだ。ゆっくりの忌み嫌う死臭に似ていた。 そして、れいむたちがいたはずの所から、ズル…ズル…と“何か”が近づいてきた。 「なに……? どうしたの……? れいむ? おちびちゃん? へんじをしてね!」 悪臭を放ちながら近づいてくる“それ”は無言のまま、にじり寄ってくる。 視覚に頼ることが出来ない闇の中で、恐怖だけが膨らんでいく。 大自然に暮らすゆっくりの生存本能が、まりさに告げた。 逃げろ、と。 「う……うわぁあああああああああああああっ!!」 弾かれたように跳び、“それ”の脇を素早くすり抜け、まりさは入り口を塞ぐ「けっかい」をぶち破った。 久しぶりの陽の光に目が眩んだが、必死に巣穴から離れる。 家族を残してきたことに罪悪感がないわけではない。 それを上回る感情がまりさを突き動かしていた。 雪の冷たさなど感じなかった。一刻も早くこの場から逃げなくては。 まりさ以外にも悲鳴を上げるゆっくりがいた。 「わっからないよぉおおおおおおおおおっ!!」 「ちぇ……ちぇえええええん!」 ちぇんも同じく“何か”に襲われそうになり、巣穴から飛び出したところでまりさと合流した。 2匹はひたすらに逃げ続け、今に至る。 「ふむ……」 保護官としては極めて興味深い話だが……今の俺たちは捜索隊だ。優先すべきことがある。 俺はまりさたちに質問する。 「ところでお前たち、大きな音を出して空を飛んでいくものを見なかったか?」 ヘリの行方を掴む手がかりがあるとすれば、森に棲むゆっくりだ。 本当はれてぃなどを探していたのだが、こいつらも何か見ているかもしれない。 「みたんだよー! こっちにとんでいったんだよー!」 ちぇんが示す方向は、奇しくもちぇんたちの群れの巣がある方角と一致した。 結局、行くしかない、か。 俺はまりさとちぇんをそれぞれ腹と背中にくくりつけ、スノーモービルに乗り込んだ。 俺たちは再び森の中を疾走する。 「すごい! はやいよ、にんげんさん!」 「きもちいいよー!」 さっきまでの泣き顔が嘘のようにはしゃぐまりさとちぇん。 ゆっくりらしいといえばゆっくりらしいが、俺はそんな2匹のことをどこか微笑ましく思った。 仕事柄ゆっくりを駆除することが多いとはいえ、俺個人としては善良なゆっくりは嫌いではないのだ。 雪の上に500メートルほど轍をつけたところで、木々に囲まれた広場のような空間に到着した。 自然のカーテンが途切れ、太陽が直接俺たちの顔を照らす。 「「「「え……?」」」」 そこはゆっくりプレイスなどではなかった。 純白の雪は、餡子、カスタード、生クリームその他諸々で染め上げられ、散らばっているのは色とりどりの飾り。 そして、バラバラに引き裂かれ、原形も保っていないゆっくりの死骸がその隙間を埋め尽くす。 ざっと100匹はいたのだろうか。異様な臭気が漂ってくる。 僅かに残った頭髪や、瞳の色からおおよその種類が判別できるが、それに何の意味があるのか。 巣穴の悉くが破壊されており、中にいたゆっくりたちが引き摺り出されたようだった。 「う……うわぁあああああああああああああ!! みんなぁあああああああああああああああ!!」 「わからないよぉおおおおおおおおおおおおおおお!!」 悲痛な叫び声を上げるまりさとちぇん。 その瞳はいっぱいに見開かれ、止め処もなく涙が溢れ続ける。 「これは……」 「……」 俺も凄惨な光景に圧倒され、しばらく動くことが出来なかった。かなこさまも絶句している。 ようやっとスノーモービルのエンジンを切り、かなこさまを降ろした。 かなこさまの底部には、タイヤをキャタピラに換装した特別製のすぃーが装着されている。 かなこさま寒冷地仕様、通称「がんきゃなこ」だ。これなら雪も怖くない。 俺1人で2匹を抱えるのは無理なので、ちぇんをかなこさまに乗せる。 俺たちは広場に足を踏み入れた。 出来る限り死骸を踏まないように歩を進める。 2匹の泣き声が痛々しかった。 周囲を警戒しつつ、俺は考える。 捕食種はもちろん、熊なども今は冬眠中だ。 それ以外でこれだけの数を屠る存在は…。 駄目だ。考えても埒が明かない。 正体不明の“何か”がいるのは間違いない。俺はかなこさまのオンバシラを見る。 俺もライフルを持ってくるべきだったか。 広場の中央付近まで入ったところで、かなこさまが声を上げた。 「お兄さん! あそこで何か動いているよ!」 それはゆっくりぱちゅりーだった。 死骸の山に埋もれて、苦しそうに喘いでいる。 「ぱっ……ぱちゅりぃぃぃぃぃぃぃ!!」 俺の腕の中でまりさがもがき、スポンと抜け出した。 そのままぱちゅりーのもとへと跳ねていく。 「まりさ! 待つんだ!」 慌てて止めようとするも、俺の腕は虚空を切るだけだった。 まりさはぱちゅりーに擦り寄り、必死に呼びかける。 「ぱちゅりー! まりさだよ! ゆっくりしてね!」 「……むきゅ……、まり……さ……? ……にげ……て」 ぱちゅりーが言いかけたときだった。 巣穴の一つから、ゆっくりが這い出してきた。 それを見たまりさが叫ぶ。 「れ……れいむぅううううう!! ぶじだったんだね! よかったよぉお!!」 どうやらまりさの番のれいむらしい。 喜びの涙を流すまりさ。 だが、ちょっと待て。まりさの話が事実なられいむは…。 “れいむ”はまるで感情のない能面のような顔でまりさを見やると、「ゆ」とだけ呟いた。 緩慢な動作でぱちゅりーに向かって言う。 「たべのこしがかえってきたよ。ぱちゅりーにあげる」 ミチリ。バリバリッ。 ぱちゅりーが「むぎゅ」と短い悲鳴を上げると、その顔の中心からアルファベットの「X」を描くように亀裂が走った。 そこから一気にぱっくりと裂ける。まるで蕾の花がパッと咲いたように。 裂けた中からは触手?のようなものが2本伸びていた。 呆然とするまりさと俺たち。 “ぱちゅりー”はブジュル、ブジュルと白い液体を撒き散らしながら、とまりさに近づく。 「……! まりさ逃げ……!」 間に合わなかった。 「ぱ―」 それがまりさの最後の言葉になった。 “ぱちゅりー”はまりさの顔面に飛びつくと、ゴシャグシャ、という咀嚼音を響かせた。 「うわぁああああああああ! まりさぁあああああああああ!!」 「畜生ッ!!」 ちぇんが叫び声を上げると同時に、俺は駆け出していた。 全力で“ぱちゅりー”を蹴る。 予想以上に重い感触が伝わり、“ぱちゅりー”は放物線を描いて宙を飛んだ。 “ぱちゅりー”が離れると、まりさはピクンと痙攣して、仰向けに倒れた。 まりさの顔は跡形もなく消えて、黒い餡子が覗いていた。 「まりさぁああああああ……! どうしてぇえええええええええ?! わからないよぉおおおおおおおおお!!」 一方“ぱちゅりー”はドチャッ、と音を立ててゆっくりたちの死骸の上に落下する。 生クリームが飛び散った。 だがまだビクン、ビクンと震えている。 そして、“ぱちゅりー”の中から“それ”は現れた。 緑の髪に2本の触覚をもち、底部には簡略化された蜘蛛の足のようなものが生えている。 ゆっくりりぐる。 りぐるは成体でも体長が5センチに満たない極めて小さいゆっくりであり、 通常は他のゆっくりに寄生して、おこぼれに与ることで生きていくことで知られている。 その見返りとして、りぐるはゆっくりにとって害となる毒虫などを排除する。 いうなれば共生生物みたいなものだ。 だが、俺たちの前にいるこいつは何だ? 一体何の冗談だ? 宿主を変形させ、意のままに操り、ゆっくりを捕食する? おまけに体長は20センチ近くある。 突然変異にしたって変わりすぎだ。 「このぱちゅりーはもうつかいものにならないよ」 そう言いつつ、りぐるはぱちゅりーの皮を脱ぎ捨てた。 雪の上に敷かれた醜悪なモニュメントの仲間となるぱちゅりー。 「ひどいよぉおおおおおお……! わからないよぉおおおおおおおおお……!」 ちぇんが泣き叫ぶ。 そのとき別の巣穴からゆっくりが出てきた。ゆっくりありすだ。 ありすはやつれた顔で、何かを懇願していた。 「おねがい……。もぅ……ころしてぇぇぇぇぇぇ……」 直後、ありすの顔面が真っ二つに裂け、りぐるがズルリと出てきた。 「こわれちゃった」 そう言ってこちらにやって来る。 ……寄生され、操られても意識は残るのか。 俺はりぐるに訊いた。 「お前たちは、いつからこの群れに寄生したんだ?」 「りぐるたちはゆっくりしてるよ」 “れいむ”の中にいるりぐるも答える。 「そうだよ。りぐるたちはゆっくりしてるよ。 りぐるたちだけじゃなくて、みんなゆっくりしてるよ」 会話が噛み合わない。りぐるたちの目は焦点が合っていなかった。 俺の後ろにいるかなこさまたちに、その虚ろな視線を移す。 「おいしそうなゆっくりがいるね、ぱちゅりーだったりぐる」 「おいしそうだね、ありすだったりぐる」 「ゆっくりしようね、れいむのりぐる」 「「「みんなでいっしょにゆっくりしようね」」」 カサ……カサカサ……カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサ……。 3匹の声に呼応して、巣穴から一斉にゆっくりが出てきた。 れいむ、まりさ、ありす、ぱちゅりー、みょん、ちぇん……。 皆一様に生気のない顔をして、足を生やしていた。 その数は10匹。 初めからいた奴を合わせて、全部で13匹のゆっくりが俺たちを取り囲んだ。 りぐるたち―その殆どはりぐるが寄生したゆっくりたち―の目はみな、かなこさまとちぇんに注がれている。 俺はかなこさまに目で合図する。頷くかなこさま。 ガタガタと震えるちぇんに向かって叫んだ。 「ちぇん! かなこさまから離れるな!!」 叱咤すると、一番近くにいたれいむを蹴り飛ばす。 衝撃に耐え切れず飛び出すりぐる。 そこにかなこさまがオンバシラを撃ち込んだ。 パン、という発砲音と共に赤い火線がほとばしり、硬い飴玉がりぐるを砕く。 黄土色のゲルのようなものをぶち撒けてりぐるは絶命した。 仲間の死にも動揺した様子はなく、りぐるたちは無表情のまま群がってくる。 ゆっくりらしからぬ俊敏な動きで。 「ゆっくりしようよ」カサカサ「たすけて……」 「ゆっくりしてよ」カサカサ「やめてぇ……」 「ゆっくりぐる」カサカサ「いやぁぁ……」 微かに残ったゆっくりたちの意識が助けを求める。だがどうしようもない。 「クソッ!」 完全に狂っていた。 俺とかなこさまはりぐるたちを宿主ごとひたすらに蹴り、踏み潰し、撃つ。 グチャッ。カササ。パパパン。ブチュ。 広場に、湿った打撃音と乾いた発砲音が木霊した。 最後の1匹を仕留め、俺たちは周囲を見渡した。 どうやらもう残ってはいないようだ。 緊張を解いたとき、背後の茂みから何かが飛び出した。 「!! まだいたか!」 反射的に回し蹴りの体勢をとる。が、次の瞬間、 「おにいさん……! かなこ……! たすけにきてくれたのね!!」 それは俺たちを見て嬉しそうに言った。 同僚の相棒のゆうかだ。 片足を上げた微妙な姿勢で固まる俺。アホなことをやっている場合ではない。 俺はゆうかを抱き上げた。懸命に跳ねてきたのだろう、全身傷だらけだ。 再会を喜ぶのもそこそこに、応急処置をしつつ、ゆうかに何があったのかを詳しく訊ねた。 ゆうかは、ドススパークによってヘリが撃墜されたこと、同僚たちも負傷はしているが無事であること、 そしてオンバシラの発砲音を聞いてここまでやって来たことを話してくれた。 ヘリはここからそう遠くないところに落ちたらしい。 全員の生存が分かり、ひとまず安心するものの、悪い報せもあった。……ドスまりさ、か。 俺はちぇんに訊く。 「ちぇん、お前たちの群れのドスはどこで冬篭りしているんだ?」 「もりのなかの、どうくつだよー……」 泣き腫らした瞳は真っ赤だったが、ちぇんは気丈に答えてくれた。 「りぐるたちとはいつから一緒に暮らしていたんだ?」 「ちぇんたちのむれにりぐるなんていなかったよー。ちぇんははじめてみたんだよー……」 ちぇんは力無く体を横に振った。 最悪の可能性も考えていた方が良さそうだ。 俺はゆうかを抱え、ちぇんを乗せたかなこさまを連れて、同僚たちのもとへ向かった。 ◇ ◇ ◇ ヘリは数本の木を薙ぎ倒し、ローターを大地に突き立てる格好で墜落していた。 急いで駆け寄り、同僚たちの無事を確認する。 ゆうかとちぇんを機内に乗せて、かなこさまには見張りを頼んだ。 同僚は足を骨折していたが、命に別状はない。 俺たちの姿を見て、驚きと安堵のため息をついた。 「まさかとは思ったけど、やっぱりあなただったのね。…恩に着るわ。 かなこちゃんも、ゆうかも、本当にありがとう……」 「安心するのはまだ早いぞ。動けそうか?」 「そうしたいのは山々なんだけど、彼を動かせないのよ……」 そう言って同僚が指し示す操縦士は、計器類のパネルに頭をめり込ませいた。 「……本当に生きてるのか?」 「ええ、脈があるもの」 同僚が操縦士の腕を取り、俺も確かめた。なるほど、生きてる。 引っこ抜こうとするもビクともしない。……工具がないと駄目だな、これは。 とりあえず管理署を通じて救難隊に俺たちの現在位置と状況を伝える。 ドスまりさという単語を聞いて驚いていたが、あと1時間ほどで到着するとのことだった。 通信を終え、俺は同僚にりぐるたちのことを話した。 「……そうなると、あたしたちを攻撃してきたドスまりさも、 りぐるに寄生されている可能性が高いのね」 「恐らくな。今の俺たちじゃ対処できんから、救難隊が」 「お兄さんっ!」 かなこさまが叫んだ。 ヘリから飛び降り急いで駆けつける。 ヘリから10メートルほど離れた木立の中に、“それ”がいた。 粘液に濡れ、ヌラヌラと照り輝くドスまりさが俺たちを見つめていた。 ヘリの中の同僚も息を呑む。 「ゆうかたちを連れて逃げて……!」 「出来るかっ!」 そんなつもりなど毛頭ないし、第一この距離では逃げ切ることなど不可能だ。 俺はヘリを背にしてドスまりさと向き合った。 「ドスまりさ……いや、りぐるか? 立派な鎧を手に入れたな」 「なにをいってるの? どすはどすだよ。あんなむしけらといっしょにしないでね」 その声は怒気を含んでいたが、ドスまりさの目には確かに知性が感じられた。 ひょっとすると、りぐるに寄生されていないのだろうか? 僅かな希望を見出し、言葉を発しようとしたとき、ヘリからちぇんが飛び出した。 「どすぅううううううう!! あいたかったよぉおおおおおおおおお!! むれのみんながぁあああ……!」 歓声を上げながらドスまりさに跳ねていくちぇん。その顔は喜びでいっぱいだった。 ちぇんの姿を見た瞬間、ドスまりさは豹変した。 「ゆっがぁあああああああああああああああああああああああああああああああっ!! もういやだぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」 半狂乱になりながら、ドスまりさはちぇんを跳ね飛ばした。 「にゃあぁっ?!」 大木に叩きつけられゴプッと餡子を吐き出し、そのまま動かなくなるちぇん。 一体何が起こっているのか分からないという表情だった。 巨体をくねらせ、ドスまりさは奇声を上げる。 「ゆひぇひぇひぇひぇひぇひぇひぇひぇひぇ! どすはじゆうだよ! むれのみんなのことなんかしらないよ! しるもんか! ゆひゃひゃひゃひゃひゃひゃ! だからもうどすはつらくないよ! かなしくないよ! ゆっくりできるよ! あああ! でもいるんだよ! たくさんたくさんいるんだよ! まだまだまだまだ、あっちにもこっちにも! たくさんたくさんたくさんたくさん、いるんだよ! みんながどすをよんでるんだよぉおおおおお! まっててねみんな! どすがたすけてあげるからね! まもってあげるからね! だれにもてだしなんかさせないよ! このもりにはいってくるやつはみんなどすがころしてあげるからね! だからみんなもさっさとしんでね! ゆぎょひょひょひょひょひょひょひょひょ! ゆ~♪ ゆっくり~♪ しんでいってね~♪ ゆぎゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!」 その言葉、その表情が、このドスまりさが正気ではないことを物語っていた。 ヘリを撃ち落したのも、ただ単に森に近づいたというのが理由だろう。 あの群れの惨状を見て発狂したのだろうか? どうして洞窟から出てきたのか、などと考えている余裕は無さそうだ。 ひとしきり叫んだあと、ドスまりさはゆっくりとこちらを向いた。 憤怒に満ちた目で俺たちを睨みつける。 その凄まじい形相に気圧されて、俺とかなこさまはジリジリと後退った。 背中がヘリにくっつく。 ドスまりさはその場から動かない。 そのとき俺はある臭いに気がついた。この臭いは……。 ドスまりさはゆっくりと口を開け、ドススパークを撃つ体勢に入った。 万事休す。 最早これまでかと覚悟したときだった。 ドスまりさは突如「ゆぐぇえええっ……!」と大量の餡子を吐き出した。 餡子にまみれて出てきたのは、りぐるの死骸だ。 体を支配するには至らなかったものの、体内を食い荒らしていたらしい。 冬篭りをしていたドスまりさが目覚め、狂うわけだ。 俺たちがこんな目に遭う原因となったりぐるに、最後の最後で助けられるとはな。 一瞬の隙に俺はしゃがんで、起死回生の一撃を握り締めた。 姿勢を立て直し、再度ドススパークの発射を試みるドスまりさ。 その口めがけて、俺は足下の雪を固めて作った雪玉を投げ入れた。 俺の意図を測りかね、ドスまりさは構わずドススパークを撃とうとした。 その刹那、ドスまりさの口から炎が噴出した。 ヘリの航空燃料がたっぷりと染み込んだ雪が、ドススパークによって引火したのだ。 「ひゅごぉおおおおおおっ……?!」 口内から溢れ出た炎はドスまりさの顔面をなめ、豊かな金髪と黒帽子に燃え移った。 俺はさらに雪玉を投げつける。あっという間に火達磨となるドスまりさ。 「今だ! かなこさま!」 「わかったよ!!」 焼け焦げて脆くなった表皮に、かなこさまのオンバシラが命中する。 ボロボロと分厚い皮が剥がれ落ち、膨張した目玉がバチュンと破裂する。体中から餡子が流れ出てきた。 オンバシラの連射により下半分の支えを失い、遂にドスまりさは倒れた。 「いひゃひゃひゃひゃ! ゆっくりぃいいいいいいいいいいいいい……!」 哄笑しながら崩壊していくドスまりさ。 その狂った笑い声は、ドスまりさが完全に燃え尽きるまで森の中に響き渡った。 ◇ ◇ ◇ 俺たちの頭上に、1機のヘリがホバリングしている。 UH-60J―ブラックホークを改修した救難ヘリコプターだ。 降下してくるヘリを見上げながら、俺は同僚に訊ねた。 「……どうしてりぐるたちはあんな変異を起こしたんだろうな」 「さあね、放射線でも浴びたんじゃない? ゴジラみたいに。 あるいは宇宙からやって来た生命体と融合したのかもね」 「……まあ、考えるのは学者の仕事か」 交換研修とやらで日本にやって来た各国のゆっくり研究者・専門家たちは仕事熱心だ。 彼らの嬉々とした顔を思い浮かべる。 救難ヘリからロープが降りてきた。 俺は腕の中で眠るちぇんを見る。 ドスまりさに吹っ飛ばされたちぇんは、俺が持ってきていたオレンジジュースで一命を取り留めた。 独りぼっちになってしまったちぇんをどうしたものか。 ゆっくりらんを飼っている知り合いに打診してみようか。 まあ、俺自身も家族が増えるのは問題ないか。 地上に降り立った救難隊が、同僚と操縦士を搬送するのを見ながら、俺はそんなことを考えた。 再び空を見上げると、いつの間にか雪が降り始めていた。 * * * * * * * * * 森の奥深く、未だ人が訪れたことのない場所に、ドスまりさが棲みかにしていた洞窟があった。 内部には、数万年の時をかけて成長した鍾乳石や石柱が連なっている。 その洞窟の奥でりぐるたちは生まれ、ドスまりさとその群れを襲った。 そしてそこからさらに奥深く、光すら届かない場所に“それ”はいた。 「うにゅん…」 青白く発光する“それ”は、楽しい夢でも見ているかのような笑顔で、静かに眠り続けていた。 (了) あとがき 最後までお付き合いいただきありがとうございます。 作者はジョン・カーペンターが大好きです。 やりたい放題やってしまいましたので、次があればまた違った話に挑戦したいと思います。 書いたもの 『ふたば系ゆっくりいじめ 392 お前たちに明日はない』 『ふたば系ゆっくりいじめ 411 明日に向って飛べ!』 『ふたば系ゆっくりいじめ 430 幸せ』
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「ふたば系ゆっくりいじめ 463 フォレスト・オブ・マッドネス/コメントログ」 面白ぇ。ゆっくりたちの特性を生かした良作に仕上がってる。 -- 2010-07-18 04 42 24 エイリアンかと思った!こえぇ…ゆっくりでホラー作品を読めるとは… 面白かったです -- 2010-10-11 17 31 05 つまり同僚の言ってた通り、りぐるはうにゅーの放射能を浴びておかしくなったのか(´Д`) -- 2011-08-02 20 33 22 エイリアンかと思ったらりぐるでしたか(‐_‐) -- 2013-07-18 08 10 52
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リグル・ナイトバグ〔りぐる・ないとばぐ〕 作品名:東方永夜抄 作者名:[[]] 投稿日:2008年8月6日 画像情報:640×480px サイズ:84,917 byte ジャンル:[[]] キャラ情報 このぐぬコラについて コメント 名前 コメント 登録タグ 2008年8月6日 個別り 東方永夜抄
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ゆかリグ 東プロ用語 用語集トップへ戻る / 頭言葉が「ゆか」ではあるが紫ではない点に注意。 風見幽香とリグル・ナイトバグによる夏コンビ(花+虫的な意味で)。 通称夏フェスの幻想郷プロレスフェスティバル 08メイン主催者とアシスタントの関係として登場。 ドSゆうかりんとドM(とされている)りぐるんのハーモニーはその筋の方にはたまらないらしい。 本来ヒールユニットO.D.Sリーダーと、特にヒールベビー抗争には関与していないチルノ軍というかバカルテットメンバーの まさかのカップリングだがイベント進行を卒なくこなし、表立った波風も立たず遺恨もうまれずと、 案外うまくやっていたらしい。 そのイベントマッチ内で、公式シリーズではなかったとはいえ初敗北を喫した幽香を身を挺して間接的に慰めたのはリグルだったり、 その幽香が思い出し爆発しそうな所を危機一髪制御したのがリグルだったりと カップリングというよりもどちらかというと安全装置扱いであるが それでも何とかやっていたことから今後のシリーズでのタッグ参戦が期待されている二人でもある。 強硬派ファンには『りぐるんみたいなかわいい子が女の子なわけないじゃないか、だからその相手はゆうかりんこそ相応しい』 と思っている方もいるとかいないとか。なんだかんだで界隈では有名になったカップリングだとか。 なお当のゆうかりんは早苗様にある意味でお熱になっていたが、それに危機感を覚えたのかどうかは判らないが、 リグルは第37回大会で新技として、どう見てもゆうかりんの技であるデイジーカッターを繰り出してみせ、見事に勝利する。 いつの間にか水面下では技を伝授されるほど仲良くなっていたのか、とファンの間でも和やかな空気になっていたが、 試合が終わってから満面の笑顔のゆうかりんが登場し、実は無断借用だったことが判明した。 その後はお約束の「公開・超必殺技伝授」が行われ、ファンはそれを微笑ましく見守った。 参考動画 このページを編集
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(テンプレート) その台詞は言わせない3 ~『きょうていをむすびにきたよ!』編~ このSSは、 anko1508 その台詞は言わせない2 ~うんうんするよ!編~ anko1481 その台詞は言わせない ~おそらをとんでるみたい!編~ と同じ人も登場しますが、時間的な前後関係はありません。 また、実験的に、小ネタのチャプターを前半に挟んでいます。 ■1 ~りぐるの使い道~ ある日、お兄さんが自宅の縁側でゆっくりしていると、膝の上に六脚のゆっくり――りぐるが乗ってきた。 「りぐるはりぐるだよ、ゆっくりしていってね!」 「お兄さんはお兄さんです。ゆっくりして行って下さい。今日は何かありますか?」 「ゆっ! りぐるのむしのしらせだよ! ふたつあるよ!」 お兄さんはポケットからおもむろに角砂糖を二つ取り出すと、りぐるの前に差し出した。 「ゆっくりあまあまをたべるよ!」 「その前に、虫の知らせを聞かせてください」 「ゆっ! かわさんのほうから、まりさがちかづいているよ! ゆっくりさせてあげてね!」 「まりさですね。はい、先ずはお一つどうぞ」 お兄さんの膝の上で角砂糖をむーしゃむーしゃしたりぐるは、"しあわせー!"の一声でお兄さんのズボンに 砂糖水をこぼし、デコピンを一発喰らった。 「次は何でしょうか? 食べる前にどうぞ」 「ゆっぐじりがいじまじだ! やまさんのほうから、"どす"がちかづいているんだよ! ゆっくりさせてあげてね!」 「ふむ……」 それを聞いたお兄さんは、サービスでりぐるの前にもう一つ、角砂糖を放ってあげた。 まりさはともかく、ドスまりさの接近情報は有益である。 『むしのしらせ』によって、情報交換を行うりぐる種は、『かぜのたより』を得意とするきめぇまるに準じる 情報伝達速度を持っている。遠くの情報はなかなか伝わってこないが、ゆっくりの接近情報を得るためには有用だ。 角砂糖二個を腹にいれたりぐるは、一個を抱えてお兄さんの膝から降りた。 「ああ、それから私の家のお座敷には上がらない方が……」 「りぐるはゆっくり"おざしき"をとおっていくよ!」 「聞いていませんね。お座敷の方には――」 「ゆっ! りぐるはりぐるだよ、くもさんこっちこないで――ゆぅっ!」 「――軍曹が居たのですが……」 「もっと……ゆっくりしたかった……」 お兄さんの視界の端で、アシダカグモに捉えられたりぐるが断末魔の声を漏らしていた。 ■2 ~お兄さんの挨拶~ 数分後、お兄さんが縁側でお茶をすすっていると、ニタニタ笑いを浮かべる薄汚れたまりさが庭に入り込んできた。 お兄さんの様子をチラチラと伺いながら、縁側に飛び乗った。ねちゃ、と湿気た音が床を汚す。 お茶をすするお兄さんの無関心な様子を、隙だと感じたのか、虫歯だらけの汚らしい口を大きく開いた。 「まりさはここがきにいったのぜ! いまからここをまりさのおうちに「させませんよ」――ゆ!?」 「お兄さんはお兄さんです。ゆっくりして行って下さい」 「……ゆっくりしていってね! まりさはまりさなのぜ!」 "ゆっくりしていってね"の鳴き声を返すのは、ゆっくりとしての本能である。 が、お兄さんの次の台詞は、まりさの本能にはインプットされていなかった。 「まりさがゆっくりしているまりさなら、"のーびのーび"をしてくれますか?」 「まりさはゆっくりしているのぜ? もちろん"のーびのーび"はできるのぜ、でもするひつようはないのぜ!」 「まりさが"のーびのーび"してくれると、私がゆっくり出来るのですが……」 「ゆ……? ゆぷぷぷぷぷぷぷ! ゆっくりしてないにんげんさんのために、わざわざ"のーびのーび" をしてあげなくちゃいけないのぜ?」 まりさの餡子脳内では、『人間がのーびのーびでゆっくり出来る』イコール『現時点ではゆっくりしていない』 とつながったようである。途端に"ゆっくりしていない"人間に対する態度が横柄になった。 「ゆっくりしてないにんげんさんこそ、ゆっくりしているまりさのためにあまあまをもってくるのぜえ!」 「"ゆっくりしていってね!"」 「ゆ――! ゆっくりしていってね!」 「……」 「な……なんなのぜ?」 「話が通じているのか、言葉が通じている"だけ"なのかを確認しただけです。 あまあまなんですが、シュークリームで良いですか?」 しゅーくりーむさんはゆっくりできる。 言葉の前半は理解出来なかったが、後半を餡子脳で解釈したまりさは、目をとろけさせて尊大な笑みを浮かべた。 「ゆへへへ、きがきくにんげんさんなのぜ。とくべつにまりささまのどれいにしてあげてもいいのぜ?」 「丁重にお断りいたします。それではまりさ、ゆっくり……」 お兄さんは傍らの"透明な箱"からおもむろに――「んほおおおおおおぉぉ!」――発情したありすをとりだした。 「れ、れいぱーだあああああ!」 「……ゆっくりして逝ってください。それと、今から貴方の言う全ての台詞へ、あらかじめ返事しておきます。 『はいはい、鳴き声鳴き声』――です」 まりさを押さえつけるお兄さんのお茶請けは、出来たての饅頭とシュークリームに決定だった。 ■3 ~どすへの応対~ お兄さんが縁側で、甘味のする茎を囓りつつ日に当たっていると、山の方から地響きが聞こえてきた。 「……来ましたか」 山から降りてきた小山のような図体は、お兄さんに影を作って止まった。 「どすはどすだよ! ゆっくりしていってね!」 「お兄さんはお兄さんです。ゆっくりして行って下さい。所で、ドスがゆっくりしているドスでしたら、 "のーびのーび"をしてくれませんか?」 「ゆ! お兄さんに"のーびのーび"を見せるよ! ゆっくりしてね!」 全高3m超のドスがさらにのーびのーびをすると、お兄さん宅の屋根より高くなる。 「ええ、有り難うございます。ところでドスさん、今日はどちらまで?」 「ドスは人間さんと"きょうてい"をむすびに行くんだよ」 多少年のいったドスが、漢字交じりで語った所による"きょうてい"の内容は、以下の通りである。 1,ゆっくりは人間を虐めない。人間はゆっくりを虐めない。 2,ゆっくりが人間のテリトリーに入る時は、人間のリーダーから許可を貰う。 人間がゆっくりのテリトリーに入る時は、リーダーのドスから許可を貰う。 3,協定を侵したゆっくりはドスが裁く。協定を侵した人間は人間が裁く。 沢山,協定の証として、ゆっくりと人間は毎年秋、お互いの食料を半分ずつ交換する。 「ふむ……これが通ったら、ゆっくりの皆さんにとってはバラ色の未来でしょうね」 「ゆふふふ! お兄さんもそうおもうでしょ! ドスがかんがえたんだよ! これで人間さんもゆっくりも、おたがいにゆっくりできるよ!」 正直、目的は最後の項目なのが明らかだが、死にたいとしか思えない内容だ。 「まあ、かといってドスが(永遠に)ゆっくりしたいのを止めるほど、野暮じゃあ無いですが」 「だからお兄さん! ゆっくり人間さんの"おさ"をつれてきてね! いますぐでいいよ!」 「無理ですね」 「ゆ――!?」 「私は町長から少し……かなり嫌われているのです。葬式か火事でもなければ、何もしてくれません」 「ゆぅ……それはゆっくりしてないよ」 「ですが安心して下さい。町にはちゃんと、貴方たちゆっくりが来た時のための、専用の機関があります。 ドスにも慣れた方が沢山居るので、連絡をしてあげましょう」 電話を掛ける間これでもどうぞ――と言ってお兄さんは、黒ずんだ皮だけの饅頭をドスに差し出した。 「むーしゃむーしゃ。ちょっとすくないけど、まったりとしてこくがあって……しあわせー!」 「はいそうです、ドスです……大きさは3m20って所ですね。……帽子抜きでですよ。……キノコですか? 少々お待ちを。ドスさん! ドススパーク用のキノコは幾つ持ってますか!」 「むーしゃむーしゃ……ゆ? キノコ? 一、二……ドスは二つもってるよ! ゆっくりしてるでしょ!」 ドスは帽子を脱いで、額に生えたドススパーク用キノコをでん、と自慢気にさらした。 「聞こえましたか、二つだそうです。……はいはい……ええ!? ……わかりましたよ、それじゃあ切ります。 ドスさん、話はつきましたよ。これから町まで歩いて行くなら、シュークリームを食べませんか?」 電話を切ったお兄さんは、半分に割ったシュークリーム――ちょっと皮がぬらぬらしている――を持って、 ドスの方に行った。 (ゆっ……ゆっ……ゆっ……) 上下にすっぱり割れたれいぱーありすは、中枢餡を晒す断面がまだ蠢いている。 「あまあまはゆっくり出来るよ! 早くどすにちょうだいね!」 「おっと、お待ち下さい。人間とゆっくりは、お互いの食料を半分ずつ分け合う"きょうてい"でしょう?」 「そうだよ! どすたちが草さんや虫さんをはんぶんあげるんだよ!」 「それで人間からお野菜さんを半分貰う訳ですね…………。では、その練習と行きましょう」 お兄さんは、ドスの額に生えた二本のスパークキノコを指さした。もうすぐれいぱーが死ぬ。 甘味が少し足りないかもしれないと考えたお兄さんは、露出した中枢餡を指で軽く弄った。 (ゆ゛っ! ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛) 「……キノコさんは"きょうてい"をむすびにいくのにじゅうっようっ! だよ……。 でも……あまあまさんは……」 (もっど…………) 「町長に会うなら、お腹が減っているのも問題でしょう? それにキノコは一本あれば十分ですから。 好きな方を選んで下さい。私も好きな方のキノコを選びます」 「わかったよ! それじゃあドスはこっちをもらうよ!」 (ずっぎり…………じだ) 「むーしゃむーしゃ……しあわせーーっ!」 息を引き取りかけたれいぱーありすの上半分が、ドスの巨大な口に消える。 死臭を発する直前の、苦しみに苦しみ抜いた甘いクリームが、ドスに最大級のしあわせーをもたらした。 「それじゃあ、私はこっちのキノコを――」 ぶちぶちっ! ドスの"しあわせー"の隙に、お兄さんはドスのスパークキノコを二本とも引き抜き、 「おっと、両方抜いてしまいましたね――」 と言って、おもむろにポケットから取り出した唐辛子スプレー(痴漢撃退用)を吹き付けると、 「こっちだけ貰いましょう――」 一本だけ、ドスの額に植え直した。 大体三秒程度の早業である。ゆっくりドーナツ屋の店員ならば、もっと早いという噂だ。 「ゆふん。おいしかったよお兄さん! お兄さんはゆっくりしている人間さんだね!」 「ドス程ではありませんよ」 「それじゃあ、どすは"きょうてい"をむすびにしゅっぱつするよ! お兄さんはゆっくりしてるね!」 「ええ、有り難う御座います」 「人間さんの"おさ"まで、どすはあるいていくよ! ゆっくりしているお兄さん!」 「……」 「……」 「……よろしければ、もう半分もどうぞ」 「ゆっくりいただきます!」 ■4, ~先輩襲来~ 「う~! はなすんだど~! れみぃはこうまかんのおじょうさまなんだど~!」 「おねえさま……おいしそう――ジュルリ」 一時間ほど後、お兄さんが縁側で肉まんを解体していると、一頭のゆっくりふらんがお兄さんの 頭上を飛び回りはじめた。ふらんの白い帽子には、バッジが金色の輝きを放っている。 「このふらんは……不味い人を呼び寄せてしまいましたね」 お兄さんが冷や汗を流す暇もあらばこそ。 「オラァっ! 居るのか居ないのか返事しやがれ!」 庭の方から、とてつもなく大きく、耳が痺れる程甲高く、そしてゆっくり出来ない声が響いた。 「聞こえています! 勝手に入って……と言うわけにも行かないんでしょうね」 お兄さんは、急いで庭先に出た。 「お久しぶりです、先輩。少しは背が伸びましたか?」 「あ゛ぁ? 手前の粗末な○○○じゃねえんだ、んなホイホイ身長が変わるかよ!」 「でしたら、相変わらず148cmなんですね」 「150だ。アタシは……最近測って居ないが……150はきっとある! 二度と間違えんなボケェ!」 身長ネタで和ませるつもりが、すっかり怒らせてしまった。身長を常に2cmさば読みする先輩は、 小学生並みの低身長と、OL然としたスーツ姿と、口調とのギャップに定評がある。 「ゆううう! ゆっくりでぎない! ごべんなざいおねえざん! あやばりばずがらゆるじでぐだざい!」 「手前の何が悪かったのか、50字"以上"で説明できたら離してやるぜ――ほれ、言え。 三つ指着いて謝ってみろ、右から左に聞き流してやっからよお!」 そんなお姉さんが、倍も高さのあるドスを有刺鉄線でぐるぐる巻きにして引きずっているのは、 一種芸術的な異様さがあった。 「ゆあああああ――!」 ドスは全身をボコボコにされていて、有刺鉄線の突き刺さったところどころから餡子を垂らしている。 引きずられた後に残る水たまりは、痛みの余りに漏らしたしーしーだろう。 「手前、このドス素通ししただろうが。ご丁寧にキノコに細工までしやがった癖によお。 ドスぐらい、手前なら素手で解体出来るってーのに何やってんだ――あ゛ぁ?」 「あの、先輩。ドスが締まってますよ?」 「締めてんだよ! いくらアタシでも、此処まで連れてくんのは大変だったんだからな?」 先輩が有刺鉄線を引っ張る度に、ドスが「ゆんやー!」と悲鳴を上げている。 身長差二倍。体重差はひょっとしたら20倍でも効かないかも知れないが、他の生物種を "ゆっくりさせない"事にかけては、人間の右に出る存在はそうそう無い。 「ここは、一つ貸しで御願いします」 「貸しだってんなら、とっととウチの部署に来いよ。何時まで待たせやがんだ?」 「私が村八分にされてることぐらい、先輩だって知っているでしょう?」 「知るかよ、『ゆっくり対策課』は現場主義の実力主義だっての。で、考え直してはくれねえわけか?」 「ですから、返事を待ってくれる事も含めて、貸しと言うことで一つ」 お兄さんが手を合わせると、先輩は舌打ちを一つ、とてつもなくゆっくりしていない形相となった。 「ゆわあああっ! お姉さんこわいよおおお!」 と、次の瞬間、突如として事務的な顔になったお姉さんが、理性的な声で言った。 「17時43分、管理用地を抜け出したドスまりさを、管理責任者に引き渡します。 以後、このような脱走事件の無きよう、管理責任者に一層の努力を望みます」 「はい、了解しました」 「ゆ――どおしてお兄さんとお姉さんがなかよくしてるのおおぉぉぉ!?」 「実はですね、ドスさん。さっき電話をかけた所なのですが……」 と、ここでネタばらし。実はターゲットのドス以外全員仕置き人。 お兄さんの先輩は、町役場に勤めるゆっくり対策課の駆除お姉さんだったのだ。 「ま、私が一応管理するという事で、ドスの命は助けてもらいました」 お兄さんがうなづくと、先輩はドスに巻いた有刺鉄線をほどいた。 「ゆ……ゆわあああああん! たすかったよおおぉぉっ!」 安堵の涙を流すドスに、「ピーピー泣くんじゃねえよ」とオレンジジュースをぶっかけ、 先輩は相棒の金バッジフランを肩に乗せ、有刺鉄線を引きずって行った。 山の方に向かって。 「先輩、どちらへ?」 「決まってンだろ、そのドスの群れ、ちょっくら間引いてくるんだよ」 ドスが手ごたえ無かったので、食べ足りない先輩だった。 「それともついてくっか? アタシは野外プレイもいける派だぜ?」 「……残念ですが、遠慮しておきます。北の方角、ぱちゅりーの群れは消さないで下さいね」 「ゲスいのから適当に間引くだけだよ。じゃあ、またそのうち弟と遊んでやってくれや」 そう言って山に向った先輩によって、その晩、ドスの群れはほぼ壊滅状態に追いやられたという。 幸いにも、全滅は免れたそうだ。 三日後―― お兄さんの家には、収束ドススパークで大木を切り倒すドスの元気な姿が! 「お兄さんにはかんしゃしているよ! もうにどと、きょうていをむすぶなんていわないよ!」 「それが良いでしょう。むしろ、人間にはなるべく近づかないことをお薦めします」 「でもお兄さんは、ドスにあまあまをくれるよ。ゆっくりしてるお兄さんだよ!」 「饅頭とシュークリームとチョコで良ければ、幾らでも取ってきてあげられますから。 ……感覚的には、車にガソリンを入れているような感じですけれどね」 「ゆ……?」 役に立つ"モノ"は、比較的大切に扱うお兄さんだった。
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autolink TH-0276 カード名:リグル・ナイトバグ 読み:りぐる・ないとばぐ カテゴリ:キャラクター 属性:日 EX:日2 コスト:日 登場位置: ●●- ●●- AP:2 DP:1 SP:1 特殊能力: 隠蟲「永夜蟄居」このキャラを破棄する。 自分のゴミ箱のカードをランダムに2枚、持ち主のデッキの一番下に置く。 性別:女 レアリティ:C illust:とんび
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変態博士「あと3分で沸騰するよーん!!がんばればでれる!がんばれば上の蓋開くから!ファイトだリグルたそーっ!(大嘘) -- 1 (2011-11-13 23 12 10) りぐるちゃん「おごっ!だべが!だずげで!あづい!ゆ゙うがざんっ!!あぢゅい!やだあああ!だじでええええあがないよ;おお」 -- 1 (2011-11-13 23 13 48) 名前 コメント
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【種別】キャラ(人名・精霊名) 【フルネーム】シーヴァル・リグルス 【読み】しーう゛ぁる・りぐるす 【CV】 【詳細】 凰都ヴィレニス最大手の神曲事務所リーマ&グレイス・カンパニーに所属する神曲楽士。その才能、実力は折り紙付き。 クルナによると血が繋がった兄弟ではないらしく、実際見た目は似ていない。 兄に執着するフレーラと契約したい意志があるらしく、実力で彼女を振り向かせて見せると公言。その実力はフレーラも認めてはいる。