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ぜんかいのあらすじ 人間の文化を模倣するアームヘッド達の国で崇拝されていた"カセットさま"が、古代のゲーム機の身体を得て復活した。 だが、目覚めた彼の目的は、レイル・レーラビへのリベンジだった。 アームヘッド・ストーリー:リターン・デイズ 第04話「カセットの国②」 「リベンジ...一体どういう事だぜ」 レーラビは2Pコントローラのマイクに問い詰める。 [レイルレーラヒ゛あなたを はかいする こと それか゛わたしの うけた にんむ こんと゛こそは・・・] 「任務ぜ...まさか、"あの時"の?」 "カセットさま"は、一万年前の任務に未だ縛られていた。 『しかし!カセットさま...もう我々が戦う理由など無い筈!』 [とめないて゛くた゛さい。 ...わたしは たたかうために つくられた そんさ゛い。にんむ こそ か゛わたしの そんさ゛いいき゛] 例え意思を持っても、旧式のファントムは自らの存在意義に逆らえない。 『...承知、しました』 それを理解した家臣達は、その言葉に従う事にした。 [さあ レイルレーラヒ゛ わたしと ケットウ しましょう] ーーーーー ...翌日、特設コロシアム! 観客席はファントムの国民達で満席だ。 「レーラビくん...本当にやるの?」 「...これは奴の意地の戦いだぜ、断る訳にはいかないのだぜ」 レーラビが大型ライフルを担ぎ出場! 『『『カセットさま!カセットさま!カセットさま!』』』 観客が一気に盛り上がる! 彼らの王"カセットさま"はファミリーヘッド...ゲーム機を接続した人間サイズのボディ(本来は玩具)で出場! [システム コンハ゛ット モート゛] "カセットさま"はローラーダッシュ突撃!レーラビはライフルで迎撃! 正確な狙いだが、執念の覚醒壁で弾道を逸らされた!「なっ」 だがライフルを地面に突き刺し、棒高跳びの要領でレーラビは上空へ退避! そのまま背後に着地したレーラビは鋭いチョップで後頭部破壊を狙う! だが"カセットさま"の上半身が回転、真後ろを向いてロボアーム迎撃! チョップとロボアームがぶつかり合い、火花が散る! レーラビが反動で後ろに吹き飛ぶ!永い時を経てファミリーヘッドの筋肉が強化されている...? ゴーグル型カメラアイが、待ちわびた闘いに歓喜するように発光! 互角の闘いに、会場の熱気は最高潮に達した! [これて゛!]「きめるぜ!」 再び激突する両者!互いに展開したアームホーンですれ違い様に斬りつける!! 「レーラビくん...!」 ...決着。ファミリーヘッドは倒れ伏し、背部からカセットが排出された。 ーーーーー [そうて゛すか わたしは まけたのて゛すか] 試合終了後、排出された"カセットさま"はアルカの手(息)によって再起動した。 「これでお前のミッションは終了だぜ...あとは自由に生きるぜ」 [そうて゛すね それも わるくない かも しれません] 決闘を終え、握手するレイルレーラビとファミリーヘッド! 『カセットさま!ウオオオ!』 会場は万雷の拍手(金属音)に包まれたのだった...!! ...その後二人はこの国を後にし、旅を続ける事にした。 アルカは王専属のアームヘッド医にならないかと引き止められたが、カセットに息を吹きかける技術しか持たないので丁重に断った。 「こ、これで一件落着なのかな...?」 「多分...ぜ?」 「カセットの国」終わり。 次回、第05話「土くれの怪人」に続く。 ファミリーヘッド(NA) 人間サイズの旧世代型ホビーアームヘッド(玩具)。 ネクストエイジでは人工筋肉が成長し、戦闘用アームヘッドに引けを取らない程のパワーとスピードを得ていた。 カセットの国 古代ファントム「カセットさま」を王とする、旧リズ大陸に存在するアームヘッド達の国。 人間との友好度は低いが、旧世代を知る王が復活した事により...? 次の話へ もどる
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「行くぞ、野郎ども!」 激しい音をたてて戦場にイナゴの大群、その第二陣が飛び込むのだった。派手に、すべての注意がそちらに向くように。 私は城の背中側からそれを確認する。親衛隊の四機は確かにイナゴの数を減らしながら、しかし手一杯の様子で、つまり城の護衛は本当に薄くなっていた。 ここで起動させたままのライオンハートの調和を発動させる。小さな廃材がゆったりと地を這いながら表の護衛のものに迫り、彼らが気付いた時には鉄くずが拘束具となり動きを封じていた。 それを確認して防塵マスクで顔を覆った男性が予定通り五人、城に入っていくのを見て、そちらに合流すべく裏から城の内部へ入るのだった。 城自体が非常に簡素な構造だったのもあって距離はあっても迷うような心配はなく、一階に降りて指示した柱に着くとすぐに合流できた。 中央に建つ大きな、まるでそれ自体が簡素な建物のような大きさの柱。ここを集合場所として指示したのだった。 「無事潜入できたようで。早速ここからのことについてお話ししたいのですが、ボルドーさんからは何か聞いていますか」 「いえ、それが、赤い服を着た黒髪の女性が誘導してくれるはずだからそれに従え、と」その点でボルドーに期待はしていなかったのでそのまま続ける。 「……やはりそうですか。では、掻い摘んで状況を説明しますが、王は今、深い眠りの中にいます。この状況になっても王が表れないのは眠りのため。眠りは調和能力のためです。 王のライオンハートが持つ調和能力は複製。眠りの中でインプット、起きているときにアウトプットを行います。今、王はアンキャストの能力をインプットしているから眠っています。 この能力を使って完全な複製をするには相応の時間、具体的にはひとつきほどを必要とするため、あと十日ほどはわずかな衝撃では起きることもないでしょう」 それを聞いてボルドーの遣わせた男たちがざわめく。その中の一人がそこを襲撃すれば、などと言っている。 「いいえ、それは違います。私たちは殺すことを目的とはしない。そもそも、王の調和が発動している間は何物も王に近づくことはできません。 王の調和能力が発動している間は、アウェイクニングバリアと物理の壁を層として展開します。イナゴしか持たない様子の貴方たちで突破することはかないません。 まあ、そこを私の能力で通すことになるんですが、ここで王を殺したとしても、国が滅び、文化が回らなくなるだけです。あくまで私たちがすべきなのは王に話し合う機会を設けさせることなんです。 ですから、貴方たちにお願いしたいのはアンキャストの少女を奪取すること。王の計画の絶対条件である彼女をこちらの手中に収めれば、対話のテーブルに着くこともできるでしょうから」 あくまで、王を説得すための手段として。私が今言ったことも嘘は何もない。ただ自分が少女を救いたいと思っただけのことに端を発した計画であることはお互いのために伏せることにした。 彼らもこの説明に納得した様子で、防塵マスクを縦に振っていた。ひとりの、他と比べるとぐっと背の低い人を除いて。 「それは、女の子を交渉の材料として人質にとるってことですか」その背の低い男性が言った。 「そう、捉えてもらって構いません」できるだけ毅然と、堂々と、淡々と返す。その男性は、マスク越しに私の発言する様子をじっと見つめていた。 「早速ですが、少女はこの中にいます」と、柱に手を当てながら言う。 そう、この柱こそが王の調和能力によって作られる物理の壁。その内側はアウェイクニングバリアが展開してあり、この二重構造がさらに何層にも重なっている。ひとつの建物のような、ではない。実際に一つの堅牢な建造物として、王の眠りを護っているのだ。 「この柱は、私の調和能力の対象に置かれた廃材から作られています」調和能力を発動させる。 私のライオンハートの喉を通った無機物は、その支配下に置かれ、自在に動かすことができる。少しずつ、少しずつ、堅牢な柱を解いて、通路を構築していく。 緩慢な動きであるため、アウェイクニングバリアによる障害も発生しない。じっくりとではあるが着実に道ができていく。 予定より時間がかかったように感じるものの、なんとかそれは王の元へつながった。それにしても、なんという厚みの層だろうか。巨大な柱に開けた通路は、王の元へ向かうトンネルのようになっていた。 「私は外部からの衝撃から皆さんを護るために外にいます。次の動きのための準備もありますので。だから、少女を、お願いします。助けてあげてください。その、交渉に使えますから、丁重に」 そこにいた五人は、私の言葉の歯切れの悪さを感じてか笑った。その後各々が統率の取れてない動きで承諾の意を示して列を作ってトンネルの中へ入っていく。 最後にトンネルへ入ったのは一番背の低い男性。その男性が一度こちらを振り向いた。顔を防塵マスクで隠しているせいでどこを見ているのかはっきりとはしないが、きっと私を見た。 「人助け、行ってくる」 そう言って再び前を向くとトンネルの中へ入っていった。 ――人助け。 しばらくぼうっとしていた。ともかく、じきに少女を助け出してトンネルの中から五人が返ってくるはずだから、それを待っていると、城の正門があった方向からボルドーが歩いてきた。 「親衛隊を二人潰したんだが、一緒に自分のイナゴもやられちまった」 「半分を倒したなんて、とてもすごいではないですか。他の方は?」 「ジリ貧ではあるが、残りの親衛隊くらいはつぶせるだろうよ」 「安心しました」 おう、と気持ちのいい返事を返すと男は煙草をくわえてマッチに火をつけた。 「ところで、ネエちゃんは今何をしてるんだ」 「え、ええ。じきにアンキャストの少女が保護されて戻ってくるはずなので、次の動きの準備をしていたのです」そうして柱に空いた穴を指さすと、男は頷いた。 「次ってことは、なにをする」 「少女を助けることができれば、次にやることは一つしか残っていないでしょう。王に考えを改めさせるのです。あんな夢物語に、人々を付き合わせるわけにはいきません」 男は目を丸くして煙草を地面に落とした。地面に落とした煙草の火をぐりぐりと足で消してから新しい煙草を取り出す。 「急にすっきりしたもんだな」 「もう目を逸らすわけにはいかないだけです。王の計画は最初から破綻している。王は最も大事なところから目を逸らしている。目を覚ましてもらわなくてはいけないのです」 「ふうん、そういうもんかい。俺には難しいことは分かんねえ。嫁と離婚して、娘と会えなくなって、それからはもう自分以外の都合を考えなくなっちまった」 「娘さんが、いらっしゃるんですか」 「ああ、多分ネエちゃんみたいなべっぴんになるぞ。なんせクソみてえな父親から離れて育ってるからな。今年で十歳になる。女々しくも数えちまうんだよな、こればっかりは」そういって頭をポリポリとかいてみせた。私はというと、ネエちゃんみたいな、に気をよくしていた。 「愛しているんですね」 男は驚いた様子でせき込んで、そりゃあな、と小声で言った後、目を逸らして黙って煙草を吸っていた。 しばらくは黙々と煙草に意識を集中させていた男だったが、しかし沈黙に耐え切れない男は、三本目に火をつけた時に自分から口を開いた。 「で、今まで王様の計画自体に文句を言ったことなかったネエちゃんがいきなり異を唱えるようになったのにはなんか理由でもあんのか。乙女を隠し切れない面してよ」してやった、という顔。煙草をくわえる口元が、私を見下ろす目つきが、ニタニタといやらしく笑っている。 「そ、それは!じゃ、じゃあ」 「気にならねえんじゃ、しょうがねえよな」勝ち誇ったような顔で私の言葉を遮り、煙を目一杯吸う。しゃべらないぞ、という意思表示を私の知る限り最も嫌味ったらしくしてくるのだった。 「あ、あなたって!」それが悔しくて珍しく声を張り上げてしまった。 「あー、おら、戻ってきたぞ、自分で聞けよ」 柱の方向を見ると五人が戻ってきていた。今度は少女を加えて五人。なぜだか崩れかかったトンネルを走ってきたようで、息も絶え絶えであった。長い距離を一気に、死に物狂いで走ったのだろう。 男性のうち一人が、しっかりと少女を抱きかかえていた。まだ息をしている。まずはそこだ。この子を救うことを何よりも優先しなくては。私が気になっていることは今じゃなくてもいい。 「この子、ですよね。触れているとバチバチと電気のようなものが生じるんですけど」背の高い男性が少女を抱きかかえたままに問う。あの時と同じ黒い電気のようなものが時折少女を襲っていた。 「ええ、それは――そうですね。ボルドーに預ければおさまるはずです。渡してあげてください」 「いきなり何言ってやがる、聞いてねえぞ」 「いい年して独り身なんでしょう、育ててあげたらいかがですか」 アンキャストという種の性質が私の思う通りのものであれば、少女がこの世界で自分の役割を明確に持ち、ヘヴンの種のために必要な存在であると認められれば、世界から生じる斥力は弱まるのではないかと考えてのことだった。 「いいじゃないっすか!ボルドーさんいつも寂しがってすぐ俺たちのことばっか連れまわすから」 「そっすよ!女の子でも育てて少しはデリカシーってもんを持てばいいんすよ!」 防塵マスクの男性たちが予想外の盛り上がりを見せて少し面食らっていた。ボルドーはふざけんな!と戸惑っている。押し付けられた少女を大事そうに抱きかかえながら。生じる黒い電気の勢いがかなり弱まっているようだった。 「あ、ていうかお二人とも聞いてくださいよ!スラーヴァ王のやつ、着いた時には目を覚ましてたんです。それ見た途端一人が殴りかかっていって!通ってきた道が崩れかかってたのもあって女の子だけ連れて逃げてきたんですけど」 それを聞いて頭を整理する。トンネルに入っていったのは五人。帰ってきたのは少女を加えて五人。 五人。 足りないのは、背の低い、あの――。 「その人は、中にいるんですね!」 調和能力を使って崩れかかったトンネルを再び道にする。さっきよりずっと大味な道は、焦りを自覚させた。形が悪くても気にしない。そこを全力で駆ける。王のもとに近づくほど、道を安定させていられなくなる。 柱に穴をあけるという段で予定より時間がかかったのも、本来調和能力が完成するまでの間には目を覚ますことがないはずの王が、辿り着いた時点で調和を解き、既に目を覚ましていたのも、今この道が崩れていっているのも、もし、さっきの背の低い彼が。彼が――なら! 走り抜け、暗い道を抜ける。光りが見える。 ベッドが離れて二つ用意されているだけの空間。本来そこにいるはずの少女はもういない。代わりに、そこには男が二人。 一人はスラーヴァ王。それが、常に身に着けている純白のコートとシャツを脱ぎ捨て、上半裸で立っている。息を切らし、眼を鋭くし、顔面を赤く腫らして、拳を構えて立っている。 向かい合うのも男。防塵マスクを捨てて顔を露わにし、破れたズボンから機械の右足を露出させている。身長が少し高くなり、長く伸びた髪を結っているが、変わらず優しげな顔。その顔を険しくして王に拳を構えている。 その二人が、足音に反応して一瞬こちらを見る。 王はすぐに視線を向かい合う青年に戻し、青年は一瞬こちらに微笑んで手のひらで「少し待ってて」と合図した後、再び険しい顔で王に視線を合わせた。 「次は取り逃がさん」 「もう負けない」 勢いよく突き出される拳。二つの拳。双方の整った顔に拳がめり込んだ。
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――雪那。 思わず確認した。 まだ機能しているレーダーは、俺の娘の生体反応と、その機体が撃墜されていない現実を示していた。 その瞬間、俺は全身の力が抜けてしまった。安心だったのか、それとも諦観なのかは解らなかった。 ああ。そういえば、聞いたことがあった。 人は自分が死ぬと本当に理解した瞬間、全ての景色がスローモーションで見えるようになる、と。 別に、スローモーションな世界自体は見慣れてない訳ではなかった。セイントメシアの調和には、高速移動がある。 しかし、調和を発動せずに見るこの世界は、思いの外……なんというか、綺麗だった。 しかし、自分自身でひとつ理解したことがある。 それは、人の脳は最期の瞬間はなるべく安らかに逝けるように努力する、ということだ。 それでなければ、あの黄金の神の腕によって機体ごと貫かれて下半身と上半身が分かれた今の自分が、こんなにも苦しみを感じずにいれるわけがない。 痛みを感じたのは、ほんの僅かな一瞬だった。 それはそれは凄まじい痛みで、人生の中で感じたどんな激痛を上回る、とんでもないものだった。 だがその痛みは、俺の頭のなかで『ぶつん』という音が響いたのと同時に、綺麗さっぱり無くなってしまった。 ひとつ気持ち悪いことがあるとすれば、なまじ下半身がなくなったせいで、妙に身体のすわりが悪いことか。 半分なくなっているのに「身体のすわりが悪い」も何もないはずなのだが、そうとしか表現しようがない。 世界の全てが、遥か彼方に流れていく。 世界の全てが、俺を尻目に容赦なく進んでいく。 世界の全てが、終わりかけの俺を置いていく。 ――ああ。 やっぱり、俺は死ぬのか。 そう思うと、なんというか、複雑な気持ちになった。 思えば、アームヘッド戦闘で負けたのは、これが初めてだったような気がした。 となれば、伝説の英雄「血染めの翼」の物語も、これで終わりを迎えることになる。 ……正直、安心してしまった。 いつだったか、コピーメシア事件の時に目立ったアイツに「自殺願望がある」と言ったことを思い出した。 思えば、あの言葉は俺が自身に向けたものだったのかもしれない。 俺はもしかしたら、血染めの翼として戦い続ける自分の役目から、開放されたかったのかもしれない。 そうでなければ。 いくら苦しみがないとはいえ、こんなにも眼前に迫っている自分の「死」に、涙を零すほどに安堵と歓びを感じるはずがない。 涙でぼやけた視界を、右手で拭った。最期くらいは、しかと自分の生きた世界を見たかったからだ。 モニターに映しだされている、コクピットハッチの向こうに広がる世界は、本当に綺麗だった。 地面がどんどん迫ってきているが、それもスローモーションなのだ。俺自身の時間からすれば、まだ余裕はある。 遠く広がる頁高原の地平。その向こうにわずかに見える海。 その水平線を境界として、どこまでも済んだ青い空。 そして、その空の中で一際目立つ、遠くに見える巨大隕石。 ――俺が、これからいなくなる世界。 それは、どこまでも美しかった。 でも。 俺がいなくなった後も、この世界には、まだ雪那がいる。 雪那と、行幸と、マキータと……ついでに、親父もいる。 あいつらは、これからどうなるのか。 俺を残して、まだ遥か上空で戦い続けているであろう雪那達は、どうなるのか。 俺のようにここで堕ちて、世界と共に終わっていくのだろうか。 それが、この世界と俺達の結末なのだとしたら。 俺の、雪那の、そしてマキータの戦いは、なんの意味もなかったのだろうか。 雪那と、あの子がいるこの世界は――。 ――こん、こん。 ……人生最期の聞き間違いだろうか。 コクピットハッチを、外側から叩く音がした。 いや、聞き間違いなのだろう。何しろ、このセイントメシアフルフォースは今この瞬間も墜落し続けている。 俺から見える世界がスローモーションなのであって、世界そのものがそうなっている訳ではないのだ。 聞き間違いではないのなら、それはきっと不幸にもこの機体にぶつかった鳥か何かだ。ご愁傷様、としか言い様がない。 俺は改めて、モニターに映しだされた外の世界を見つめ続けた。 ――こん、こん。 いや、違う。これは聞き間違いなどではない。 確かに、コクピットの向こうに「何か」がいる。 だが、だとすればその「何か」は一体何だというのだろうか。 前に空想科学雑誌か何かで、飛行機やそれに類するものに取り付いて事故を引き起こす『グレムリンドラゴン』などという未確認生物の話を聞いたことがあったが、まさか本当にいるとでもいうのだろうか。 ――こん、こん。 ああ、いいさ。 どうせ俺の命は、あと数秒で終わる。 最期に未確認生物なるモノをこの目に焼き付けてみるのもまた一興だ。 俺は残された力を少しだけ振り絞って、操作パネルの赤いレバーを引いた。 がこん、という音が響いた。 外の世界に繋がる鋼鉄の扉が開かれ、真正面から風が入り込み、俺の髪の毛を無茶苦茶に引っ掻き回した。 一思いの外明るかった外の世界に目が眩み、視界が真っ白になった。 ――妙だ。 眩しすぎて、目を開けられない。 確かに向こう側から「何か」の気配はする。それは確実にそこに居る。 だが、俺の下半身はない。足がないから、身を乗り出すこともできない。 ならば。 俺は気配だけ近づいてくる「何か」を一刻でも早く把握するべく、右手を伸ばした。 「――え?」 それは、俺の感覚が間違っていなければ。 ――俺の右手の指の間を縫うように、優しく絡ませて握られた、女性の左手。 視界が、戻る。 俺の伸ばされた右手を握っていたのは、やはり紛れも無い女性の手だった。 その、左手の薬指には――銀の指輪。 顔をゆっくりとあげた俺の視界に、その女性の顔が写る。 それは、それは。 黒の、長い髪。 聖母のような、穏やかな微笑みを投げかける口元。 そこまでも透き通った、優しい瞳。 「――」 下半身に加えて、言葉まで失った俺の身体が、彼女に優しく抱きとめられる。 それは、俺が昨日見た夢の、続きのような光景。いや、文字通り夢にまで見た感覚。 失ったあの日から、一度たりとも忘れたことのなかった、暖かな温もりだった。 『――雪ちゃんのこと、守ってくれたんだね、幸君。 もうこれからは、ずっと一緒だよ――』 新光皇歴2010年1月17日。 大御蓮帝国の伝説的英雄"血染めの翼"こと村井 幸太郎は、 頁高原における地球圏統一帝国軍迎撃作戦において撃墜され、その生涯に幕を下ろした。 ――ただ、奇妙なことに。 愛機であったセイントメシアフルフォースの残骸から奇跡的に原型を留めた状態で発見されたその遺体は、 まるで安堵したかのような、安らかな微笑みを浮かべていたという。
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ここは「N.E.S.T.」。 突然現れた怪獣「バイオニクル」と戦う防衛組織の本部基地だ。 イブ隊長「ヨシダ隊員・・・」 ヨシダ隊員「何です隊長?」 イブ隊長「人間は死んだ後、どうなるんでしょうか」 ヨシダ隊員「他の生き物同様、肉体は土に還るだろう」 イブ隊長「では、精神は?」 ヨシダ隊員「三途の川を渡り、天国か地獄に行く事になる・・・というのは無難すぎる答えか」 イブ隊長「私は、一度死んだ精神は永遠の暗闇の中に閉じ込められると思うのです」 ヨシダ隊員「随分ネガティブな発想だな?」 イブ隊長「もしも死後の世界が夢のような理想郷だったら、皆よろこんで死ぬと思います。 だから本当の死後の世界は、永遠に、孤独に暗闇を見ているだけのものだと思うんです」 ヨシダ隊員「何かあったのか?」 イブ隊長「いいえ、私はずっと前からそう思ってました」 この会話から数日後である。 突然、ヨシダ隊員が行方不明になった。 隊員達は総力を尽くしてヨシダ隊員を捜索したが、何処にも見つからなかった。 ヨシダ隊員の無線に通信を図る。なんと繋がった。 しかしそこから聞こえてきたのは、不気味な電子音と 「・・・ミッ・・・グーン・・・」 という途切れた謎の音声だけであった。 更にその数日後・・・ N.E.S.T.基地のレーダーに不気味な影が映った。 基地の真上、大気圏外から巨大な物体が迫っていた。 ゼロ隊員「いっ隕石か!?」 カンタ隊員「あれが落ちたらこの基地は・・・いやこの国はクレータになって壊滅してしまうぞ!」 ニトロ隊員「表面温度2兆度wwwwwwww」 マトア隊員「遂に、地球は終わるんですね・・・」 イブ隊長「なんて事でしょう・・・ヨシダ隊員も見つかっていないというのに」 謎の巨大物体は高速で基地へと落ちてくるだろうと思われた。 だが基地との距離1000M辺りから急に減速して、まるで正確に基地の中心を狙うかのようにゆっくりと飛来してきた。 イグ隊員「あれは、隕石じゃない・・・!?」 ダーヌ隊員「まさか・・・」 シグレ隊員「バイオニクル・・・!」 突起に囲まれた卵型の巨大物体は遂にN.E.S.T.基地に墜落した。 それは基地より一回り小さかったが、中心部から基地を倒壊させるのには十分な大きさだった。 突然、巨大物体が光を放ち、縦に八つに割れる。 卵型の物体はまるで花のようにゆっくりと開いた。 激しい煙が辺りを包む。 煙が晴れ、卵があった場所には、顔の前で手を合わせるバイオニクルの姿があった。 全く微動だにせず、静止している。 その漆黒の体は黒光りし、顔の黄緑色の発光器が不気味に光る。 頭の銀灰の鎌のような角が展開し、かつて基地のあった場所には不気味な電子音が鳴り響いていた。 そしてゆっくりと腕を動かし、腰の横へ下ろした。 史上最強のバイオニクル・最強怪獣ミグダスの降臨。 ゼロ隊員「・・・ふうっ!」 隊員達は隕石の落ちる前に緊急脱出機で基地を出ていた。 しかし基地崩壊の激しい爆風に飲み込まれて脱出機も瓦礫の下敷きとなっていた。 何とか脱出機から脱出した隊員たちが見たものは、最悪の光景であった。 瓦礫の山となった自分達の基地と、そこに聳え立つ黒い悪魔。 兵器格納庫もばらばらになって、NESTの売りであった超最新兵器類も全て破壊されていた。 そしてもう一つ、驚愕の事実があった。 ゼロ隊員「・・・居ない!」 カンタ隊員「ヨシダ隊員なら、数日前から居ないだろ?」 ゼロ隊員「違う!イブ隊長だ!イブちゃんが居ないんだよ!」 基地に居る人間全てを乗せたはずの脱出機の中に、隊長の姿は無かった。 最強怪獣ミグダスはそこから一歩も動かず、脱出機の方を向く。 そして両手を前に突き出し、脱出機に向けた。 その時、白く眩い光が基地周辺を包んだ。 脱出機の前には、白い巨人・ビオナイクラーが膝立ちになって現れていた。 ビオナイクラーは急ぐようにミグダスの両手を掴む。 ミグダスは腕だけを動かしそれを弾き飛ばした。 ビオナイクラーはミグダスに向けて拳を振るう。 ミグダスは片腕でそれを受け止めた。 ビオナイクラーはすかさずローキックを繰り出す。 ミグダスは下に向かって手を翳し防いだ。 続けてビオナイクラーはハイキックを放った。 ミグダスは両腕をあわせてそれをガードすると、そのまま両手でビオナイクラーの体を突き飛ばした。 ビオナイクラーは自分の身長ほど吹っ飛ばされ倒れる。 ミグダスは体の前で腕を組んだ。 ビオナイクラーが起き上がって、カッター光刃を放った。 するとミグダスが消え、ビオナイクラーの死角に現れる。 ビオナイクラーが振り向くと、今度は後ろに回っていた。 正真正銘のテレポート移動である。 ミグダスは片腕だけを振ってビオナイクラーの後頭部を殴る。 よろけるビオナイクラーの背中をもう一方の腕で突いた。 前のめりになり倒れるビオナイクラー。 ミグダスは追い討ちをかけず、テレポートをして間合いを取った。 もう一度カッター光刃を放つビオナイクラー。 ミグダスはそれを片手で弾き飛ばした。 すかさずビオナイクラーがリターン光線を発射する。 ミグダスはバリアーを張り完全に防いだ。 驚くビオナイクラーを尻目に、ミグダスは発光器の上部からクラッシュ光弾を連続して放出する。 ビオナイクラーもバリアーを張ったが、光弾はバリアーを突き抜けてビオナイクラーに直撃した。 よろめく白い巨人と、全く動じない黒い悪魔。 ビオナイクラーはすぐに指先から水を噴射した。それは強力な水流カッターへと変化した。 そのまま居合いの刀のように構え、ミグダスに向かって切りかかる。 ミグダスはそれを腕だけで止めた。水流カッターを受けても全く動じない。 ビオナイクラーはもう一度拳で殴りかかった。ミグダスも同時に拳を放って、ビオナイクラーの拳を潰した。 急いでビオナイクラーが膝蹴りを放つ。ミグダスも同時に膝を上げて止めた。ミグダスが足を動かしたのはこの時が初めてである。 衝撃で隙が出来たビオナイクラーの首を、ミグダスが片手で掴んで持ち上げた。 そのまま格納庫の方へ放り投げる。 力なく倒れるビオナイクラー。 ミグダスは移動せずゆっくり振り向くだけだ。 立ち上がったビオナイクラーが腕を×字型に構える。 そして今までで最も強力なニクリウム光線を放った。 ミグダスは全く動かずニクリウム光線を受ける。 それどころか胸の吸収器官で高濃度のニクリウムを吸収した。 ミグダスが両腕を前に伸ばす。そして手首をクロスさせた。 手から発せられる波状光線・アルティメットビームはビオナイクラーの胸に命中した。 ビオナイクラーは苦しそうにもがいた後、静かに地に膝をついた。 その様子を見たミグダスが、ゆっくりと歩みだす。 そして動きが停まったビオナイクラーの前で静止した。 ミグダスはビオナイクラーの胸にある点滅した宝石の近くを手で突き、穴を開けた。 ビオナイクラーに空いた穴からは、体の中でせわしなく動く歯車と、人サイズのカプセルを見ることが出来た。 それは即ち、ビオナイクラーもまたバイオニクルであるという証拠だった。 そしてミグダスはビオナイクラーの宝石を掴む。 ビオナイクラーは既に抵抗できなかった。 ミグダスが、ビオナイクラーの心臓ともいえる宝石を、握って粉砕した。 ビオナイクラーの目の光が消える。 ビオナイクラーの体は泡状に溶け、地を流れた。 そして残ったカプセル。 ひびが入り、砕けて煙が噴出す。 中に入っていたのは、イブ隊長だった・・・。 意識は無く、ただ瓦礫の上に倒れるだけだった。 一同「隊長!!?」 その時だった。 突然ミグダスが苦しみ、もがいた後に泡状に分解した。 泡になったミグダスから落ちるカプセル。 そのカプセルにもひびが入ったかと思うと、 突然蓋が吹き飛び、 中からヨシダ隊員が倒れ出てきた。 自力で起き上がり、ヨシダ隊員は倒れたイブ隊長の姿を見た。 ヨシダ隊員「・・・イブ隊長!?」 隊員たちは突然の出来事に呆然としていた。 イブ隊長がビオナイクラー!? ヨシダ隊員がバイオニクル!? 全員、驚かずには居られなかった。 ・・・ただ一人を除いては。 づ・・・づ・・・く? あと二話で終わり!! wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww 名前 コメント
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エイブラハム・ダッカー・・・アプルーエ十二貴族ダッカー家の十三代目当主。そしてリズ・ダッカー家の開祖。彼には五人の息子がおりひとりはノンケであとはホm(ry ヒレー・ダッカーとジャック・ダッカーは彼の孫である。 ダッカー家の集まるパーティで子供の頃、彼らは非常に仲が良く、出来てるのではないか?とさえ言われていた。 ある日二人が同時にはトイレに入り、なかなか出てこないという事件があり、一族を震撼させた。 ちなみにふたりとも食べ物にあたっただけであった。
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あれから数日経つ。 あの場を通りかかった優しい民に拾われたりはしていない。動くこともできなかった。 まず、やはり目が見えなくなっていた。そもそも俺の目は既にあの時死んでいる。そしてカハタレが世界の様子を見せてくれる余裕がない以上、これは仕方のないことだった。 何も見えないまま、服にしまっていたわずかな食糧で生きながらえていた。今、凡俗のおかれている状況はこうだった。 だが、卑しくも生きながらえようとするに足る希望はあった。 心臓が裂けそうなほどに運動している。 敗者は今はただ、後のために生き延びることだけに徹していた。 勝者の方は、そうシンプルにはいかなかった。 エスカベッシュ・グラードに対して少なからず憎悪の念を抱いていた。 だから、その男から部屋に呼び出され、催しのことを聞いた時には我を忘れそうな自分を抑えることのほか何もできなかった。 私が、あの村の人々に誓ったのだ。それなのに、私はあれを殺し切れなかった。あと少しのところで、私の宣誓は守られなかった。 しかし、しかしそれでも、忠義の先にあの黒い蝶を壊せるのであれば良いと言い聞かせた。それなのに。 それが、催し?あれが生きている?あってはならない。あってはならないのだ、そんなことは。 「だから、貴様には今夜の作戦行動中、私の護衛に立ってもらいたいのだ」書類とともに言い放った。上官命令。卑しい顔をしている。ならば。 「今度は私がそれを打ち倒すのを邪魔しないと、そういうことですよね」きっと私も怒りに狂い醜悪な目をしていた。それでも、これだけは認めさせなくてはならなかった。 「当然だ。打ち倒してもよい等と言ってはいない。打ち倒せと言っている。あれは、そのお前を打破して私に刃向わねばならない」 私の信条をして、本当に許せない男だ。だが、今はこの言葉だけでいい。 村の惨状を脳裏に浮かべ、今度こそは黒い蝶を、と誓う。 「では、失礼します」目も見ず、通り抜け様に言い捨てた。後ろではエスカベッシュがそれを笑っていた。 何万通りとシミュレーションを繰り返す。 たしかに黒い蝶に乗るドロップは私の知るのとは技量の桁が違っていたが、しかし腕では劣らない。問題はあの尻尾の手。空間を捻じり切るあれだ。 シミュレーションを繰り返すほど、先日の勝利が奇跡に近かったことを思い知る。圧倒したのだということはわかっている。しかしあれはやはり奇跡だった。 それに、最後の一撃はあの男の剣だ。あの男の剣を受ける前の蝶は少しばかり様子が違った。調和能力だろうか。そう考えればあの一戦も必ず勝てていたかどうか。 だが、あの村に誓って、私の正義に誓って。 私の忠義の在り処はどこだろうか。 この作戦はあの男の意思のみによって成立している。ここに忠義はない。ならば、これは私用である。忠義はない。 私カヌレ・クロインの知るドロップ・ルインは、とても優しい男だった。自分を薄情と罵ることができるほど。 だからどうしても思ってしまうのだ。なんで、お前は私の敵となっているのだ、と。 操縦の腕はまるで駄目だったが、あの優しさには私も襟を正して臨まねばならなかった。 それを、殺す。 理由を聞く気はない。きっとこの未熟な自分では刃が鈍るから、聞けない。 どんな理由があれ、人が死んだ事実さえ消し去るようなことはあってはならないと考えるからだ。 卑しくも人の死で食いつないでいるからこそ、人の死を弄んではならない。 それが、私があれを許せない理由だった。 だから言い訳など、意味など求めない。 有無を言わさずに、殺す。 そのドロップの死も、私が背負うだけだ。 つぶれてしまいそうな自分を奮い立たせる。夜は近い。
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俺は、しばらく退屈だった。強すぎた。 このバヴェット・ゲルドラスは最強だった。 その上、俺にはティアーズがあった。エクリプス・ディザイアだ。無敗だった。 四年前にヒルドールヴ社でデカイごたごたがあったと知った時には大層悔しかった。それほどの戦いなら俺の相手になるものもいたのでは、と思ったのだ。 だが、そんなものに参加する必要はなかった。 打ち負かされた。アームヘッドで負け、肉弾戦ではもはや戦いになりもしなかった。鮮烈な女だった。 彼女を源千代という。彼女を想う。これはやはり、恋慕の情だろうか。 するとつまずいた。道路の真ん中でつまづき、屋台に突っ込みそうになった。突っ込みそう、でおさまったのは幸運だった。 「大丈夫ですか」浅黒い男がいた。 屋台でサンドウィッチと豆、それとコーヒーのセットを御馳走した。 屋外のパラソルが店の飲食スペースということになる。土地柄もあり、尋常じゃなく砂の味がする。 彼は随分満足してくれたらしかった。タンクトップで頭に布を巻いている。この日の強い地でこんな恰好をしていたらそれはこんなに肌も焼けよう。 「さっきは男を助けるなんて切ないことをさせてしまって申し訳ない」 「いえ、そんな。みな、助け合いですよ」 「そうは言うが、俺だったら女ならともかく、自分と同じような体格の男の手を引いて助けてあげたいとは思わないからな、しかし屋台にも迷惑をかけずに済んだので感謝している」 「はは、助けられるものは助けたいでしょう」その顔は、いまいち正気に見えなかった。 食べ終わったが、なんとなく興味があったので少し呼び止めた。 「時間があるなら、これから少し付き合ってもらえないか」 「え、えぇ。夜から仕事ですが、しばらくは大丈夫ですよ」 「あ、そうなのか、ならいい。昼の疲れが夜出ては悪いしな」 「あぁ、なら――」 土を固めた家は意外と頑丈で、立地のおかげで少し寒いくらいだった。 旅人である俺の家ではない。彼の家だ。 「肌の色でこのあたりの人ではないと思っていましたが、なるほど、旅の人でしたか」 「戦争の時にたんまりと稼いだもので」俺は傭兵をやっていた。今も貯蓄が底をつきそうな時にたまにやっている。 「この土地ははじめてで?」 「そうなるな。湿度が低いおかげで思ったより過ごしやすい。それでもやはり暑いが」それと、衛生面がやや気になった。元傭兵、耐えられないわけは勿論ないが。 団扇をぱたぱたとさせる。すると、彼は水を出してくれた。普段なら頂くところだが。 「いや、この土地で水分は貴重だろう。遠慮するよ。どうせ近いうちこの町は出ていくからな」 「さっきコーヒーをごちそうしてもらった分です」ん、そういわれると断りづらい。 「すまない、いただく」ゴトトっと、カップを置く音がした。 水を飲みながら気になっていたことを聞いた。 「助けられるものは助けたい、と言ったな。正直、俺にはその気持ちが分からないんだ。それで、ひきとめてしまった」 俺は強い。千代以外に負けることはないだろう。アームヘッドならばわからんが、少なくとも腕っぷしなら自信がある。 だが、その力はすべて自分のためにしか行使しない。だからわからなかった。何を言っているのかわからなかった。 なぜなら彼の声は見返りを求めていなかった。俺だって千代がつまずいていたらそれは助ける。好感度が上がるから。まぁあの女にそれはないだろうが。 だがこの男は違う。 「すごく鋭い目をされているんですね。実は、街の人からも気味悪がられてて」彼が向かいの椅子に座った。 「気味が悪いとまでは言わないが、なんというか、まるで善人に見える」我ながらよく意味が分からないことを言ったと思う。 「まさか。ぼくはただ、謝りたいだけなんです。誰になのか、わかんないんですけど」誰にかわからない? 「どういう意味だ」 「記憶がないんですよね」 「へぇ~、記憶、ない感じなの?」言いたいことは同じなんだが、なんだか俺の言葉ではない。なんだ。 横を見ると源千代が居た。 「な、ななななんでお前が」 「おいおい動揺しすぎだろういい年した男がさあ」 「先ほどからいらっしゃいましたよ」よく見るとからのコップがみっつあった。 「え、いや、え、そんなところから?」 「余の話でもしないかなーと思ってたんだけど、残念じゃん」つっつかれる。危なかった。心の声が漏れていたら危なかった。 「ま、このアホは置いといて、余から質問。いつくらいから記憶ないの?」 「えぇ、ここ百年ほど」 「なるほどねぇ~」なるほど。 「「は?」」声が揃った。 「えぇ、気味悪がられるんです。百年こうなので」そりゃそうだろう。 隣で源千代は口に手を当ててなにかを考え始めたようだった。 それが、彼の次の一言で違う顔になった。確信を掴むような顔に。 「名前がしんっていうことしか覚えていなくって」
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◎◎◎ 呼び出しのあったカフェテリアに行くと、中年の男が先にいた。もともと金髪だったように見える白髪を短く刈り、顎には無精ひげ。清潔感の欠片もないやつれた男だ。 「きみがシャティヨン?」 男は私を見る。 「……そうだ」 「おれはラスト・サンライズ」 ラストはカフェテリアの外に置かれた二人掛けの円卓についており、私に座るようしぐさで促した。 プロトデルミスの全身鎧を身に着けている私への周囲の視線と注目が集まったのがわかる。 「いや、ここでいい。すぐに終わる」 「ヒリングデーモンに戻る気は」 「無い」 そうか、と男はうつむき、すぐに頭を上げて再び私を見た。 「……理由を聞いても?」 「私に勇気が無いのさ」 彼に二度と会う事はないだろう。そう思った。 踵を返して私はカフェテリアから出る。 ◎◎◎ ――夜明け。ヒリングデーモンのエース、エンシューの操る機体である鬼童丸を、私の任されたアームヘッド部隊が取り囲んだ。 『動くな。エンシュー』 鬼童丸はすでにアームヘア製の網で機動性を奪われていた。すでに、詰んでいる。 ロバート・ラスターの死からヒリングデーモンは弱っていた。分裂をゆるし、反ヒリングデーモンの組織、カッティングから攻撃され続ける日々。 夜、小規模な戦闘を北と南で起こし、それぞれにカッティングの幹部を置けば二人しかいないヒリングデーモンの幹部がそれぞれ北と南の戦闘にあたる。 そうなれば戦力を分断でき、分断したヒリングデーモンの片方にグランジの傭兵を大量に投入すれば天才と呼ばれたパイロットも物量の前に疲労するはずだ。 そうなれば隙もできる。 ――ふと、私は背後に気配を感じた。 高いアームコア反応である。 『よくやったわ、シャティヨン』 後方から、一体のアームヘッドが現れた。 十八個のジャベリンを持つカッティングの幹部ノト・ノアが操る機体、ヴィカラーラである。 『……どうも』 『あなたは下がりなさい』 私が一歩下がると、ヴィカラーラは何も言わずそのジャベリンで鬼童丸の四肢を切りさいた。 べしゃりと胴体部のみが腐った果物のように地面に落ちる。 ヴィカラーラのジャベリンはさらに胴体部をえぐり、ナイフで肉の骨を除くようにコックピットだけを残して器用にそぎ落とした。 『あなたを殺す日を夢見ていたわ』 次はジャベリンがコックピットを貫く。 かと思えば真っ二つに切断し密閉されたコックピットの中にいる少女が現れた。 カッティングの歩兵たちは外になったコックピットの中にいる一人の少女に銃口を向けながら腕を掴んで外へ引きずり出し拘束する。 それに対応するようにヴィカラーラが跪きコックピットの中から純白のドレスをまとった少女が現れた。 私も大型装備アームヘッド、ジェヴォーダンとの同期を切り、地面に着地すると二人のもとに向かった。 手足を縛られた鬼童丸の搭乗者、エンシューは湿地に座らさせられ、それを歩兵ら、アームヘッドから下りたパイロットらが遠巻きに見つめるというかたちになる。 「あなたを殺して、デッドマンを私のものにする」 「僕を殺せば、彼が手に入るわけではないでしょ?」 「手に入れてみせるわ。とりあえず、手足をもいで檻に入れるのよ」 「相変わらず、狂ってますね」 呆れるようにため息をついたエンシューを、不思議そうにノト・ノアは小首を傾げて見つめた。 「とりあえず、死んでからお話ししましょ?」 ノト・ノアがどこからともなく包丁をとりだす。巨大な出刃包丁。 エンシューは昇ったばかりの太陽に照らされて鈍色に輝くそれを眺める。ただただ、今を受け入れているその顔は、誰かに似ていた。 ――誰かに――、誰に。 私は誰だろう、と思った。それがいけなかった。 ――力を貸して、シャティヨン。 心臓が高鳴った。私にそんなものはないのに。 そして息苦しくなる。そんなものは必要ない。 ――いざとなったら、あなたが駆けつけてね。 包丁が掲げられ、振り下ろされ―― 「ノア!」 ――止まった。 怪訝そうな顔でノト・ノアは私を見る。 「……なによ」 「彼女は捕虜にすべきだ」 「えぇ?」 ノト・ノアは見るからに嫌そうな顔をした。 「捕らえたほうが、カッティング全体のためになる」 「グランジのアナタが私に指図するつもり?」 「私たちは互いに良い商売関係でありたいのでね」 嫌そうな顔のまま、ノト・ノアは包丁を持っている手をだらんと下げてからエンシューに近づく。 「……そうね、どうせ殺すのなら、最ッ高の恥辱を味あわせてやる」 ノト・ノアはにたりと笑いながらエンシューのパイロットスーツに包丁で切れ込みを入れそこから一気に切り裂いた。 一気に漂い始めた下種な空気を感じ取ったグランジのパイロットたちがいち早くノト・ノアとエンシューに近づき始める。 「ノア、国際条約違反だ」 「ンなモン今の時代にどれほど意味があるの!?」 私の声に、ノト・ノアが金切声で返した。 「だいたいアンタね、金で動くグランジのくせに煩いのよ! 雇い主は私よ!? わ・た・し!!」 ノト・ノアは歩兵たちに指示を出す。 「せっかくだから、ビデオでもまわそうかしら。デッドマンにも見てもらわなくっちゃ」 それを止めようとした私の前に、グランジの傭兵たちが現れた。 「あんた、バカまじめだな」 エンシューが、道をふさがれそしてそれを振り払う勇気すらないみじめな私を見つめている。 「……シャティヨン。ありがとう」 彼女は人に阻まれ見えなくなった。 私は人間ではない。感情によって動かされることはない。ファントムなのだから。 ――いざとなったら、あなたが駆けつけてよね。 気が付けば、私は道を阻む者を文字通りなぎ倒してエンシューとノト・ノアの間に割り込んだ。 「シャティヨン……、あなた、なにして――」 ノト・ノアが言い終わる前に私はエンシューを抱きかかえる。 少し離れた場所でジェヴォーダンと同期し、その場から飛び立った。 「エンシュー、無事か?」 装備型とはいえサイズは通常のアームヘッドと大差なく、中に人がはいるスペースもある。 「ど、どうして……」 「さて。そんなことより、この機体は空中戦にむかなくてね」 瞬間――衝撃。 数キロほど離れた次の瞬間、私のアームヘッドをレーザーが貫いた。 「スナイパーか。思ったよりはやいな。……捕まっていてくれ」 破損した部分をパージするものの、うまく飛べない。器用に飛行系統に当てられたらしい。 「っく、まずいな」 「だ、大丈――」 さらに追撃。 大破した私たちはただ墜ちていった。 「掴まれよ」 私はエンシューを抱きしめ、空中で半回転して背中を下にする。 ――次の瞬間、地面にぶつかった。 「……うご、けるか?」 抱えたままのエンシューに聞く。 私は人間型ファントムだから、ある程度の衝撃は大丈夫だと踏んでいたがどうにも体が動かなかった。 「なんとか……」 エンシューの拘束を解いてやり、私は鎧からから四角い板のようなメインコンソールをとり出す。 私の鎧は装備型アームヘッド、ジェヴォーダンの制御デバイスであり装着時の仲立ちをするものだ。 「これをもって逃げろ。グランジの追跡班は有能だ。すぐに追いついてくる」 「これって……」 コンソールを操作してからエンシューに無理やり持たせる。 「私の個人用の連絡装置だ。ヒリングデーモンへの極秘の救助信号を出している」 「貴方は、どうするつもりですか」 「私の事は気にするな。行け」 試してみたがどうやっても私の体は無理そうだ。 脳裏に、人工知能の再起動警告が流れる。 「でも……!」 「もう一度、デッドマンに会いたいだろう」 私が言うと、エンシューは泣きそうな顔になった。 「……卑怯ですよ」 「またどこかの戦場で会おう」 笑う。エンシューは泣きじゃくりながら一歩後ろへ下がり、そして走りだす。 (ジャンヌ……) そして、私の意識はシャットダウンした。
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あの人は急に私を誘った。 『ちょっと。ウィノナさん。Blind alleyで話をしない?』 別に断っても良かったのだが、ミステリアスなアイリーンについて気になることもあったし、誘いに乗ってホイホイ付いていくことにしたのだ。 アイリーンはペペロンチーノを食べながら、私に話しかけた。無邪気なその行動に反して深刻な質問を彼女は投げかけた。いやこれも無邪気な質問ではあったのかも知れない。 『アームヘッドのあなたが、人間に与しているのはなんで?』 お前もそうだろうが、という言葉を飲み込む。少し思案をしていると続けて投げかけてきた。 『やっぱり、あの子のせい?』 『そうじゃない、人とアームヘッドとのわだかまりを…』 アイリーンはニヤニヤしながら聞いている。 『ふーん、それで、あなたって最終反乱に参加していたんでしょう?どうだった?』 『どう?っていうと?』 何が聞きたいんだ、こいつ? 『全領域支配皇のこと』 『え・・・?』 そういえば、アイリーンと彼女は似ている…。今気づいた。 『エクジクトさま…?』 かつての主の名をつぶやく。 『エクジクト・ナウ・・・、エクジコウは現存する…ね…』 アイリーンの表情が少し曇る。 『どうかしたの?』 『あいつはもういないよ…』 『え?』 『エクジコウはもういなくなったんだ…。もう必要ない』 アイリーンはそれっきり話を逸らし続けた。でも何かアイリーンのことが少しだけ分かった…様な気がする。
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●Anny, with you. 第0話 リヴドへ 第1話 アニー