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(*)お兄さんがゲスです。 「おにいさんおかえりなさい!れいむのゆっくりぷれいすへようこそ!」 男がくたくたになって家に帰り着き、後ろ手で扉を閉めると男の前にゆっくりれいむがすりすりと靴箱から出てきた。 男に喋る饅頭を飼う趣味はない、つまりれいむはこの男の住居に無断で入り込み、おうち宣言をしたことになる。 しかし男はなぜれいむがここにいるのか不思議がるでも追い出すでもなく、目の前のれいむにゆっくりと近づくと、やさしく頭をなでた。 「ゆっゆー!もっとなでてね!」 れいむはバスケットボールサイズの健康な成ゆっくりのようだ、髪の毛の色つやは申し分ないし 目も透き通っている、男はれいむの脇に腰掛けると、身ごもっているのかを聞いた。 「そうだよ!れいむのなかにはかわいいあかちゃんがいるよ!」 胎生型にんっしんをしているようだ、男はなんとなくれいむに気づかれぬよう 廊下の奥のパソコンのおいてある部屋を盗み見た、れいむ以外のゆっくりが居る形跡はない、旦那役が居ないのだ。 饅頭の機嫌を取っても空しいだけだ、男は旦那の所在を聞いた。 れいむの夫であるゆっくりまりさはゆっくりの中でも賢かった、しかしれいむがにんっしんしたすぐ後 人間のおこぼれに預かろうと焼却炉の中の生ゴミをあさっていたところ、炉の扉が閉められかえらぬゆっくりとなったのだ まりさが最後に思った事、それは「何故、人間に迷惑を掛けていない自分が焼かれなければならないのか」という事だった 所詮ゆっくりの浅知恵などその程度の物なのだろう。 まりさは自身の体が炎に包まれ、永遠にゆっくりできなくなってなお、焼却炉が一体何のための装置なのかを理解する事はなかった。 そんなことはれいむはもちろん、男も知るよしがない。 「かりにいったらかえってこなくなっちゃったよ・・・。」 あらかた予想される社交辞令を述べて男はパソコンのある部屋へ入っていった 後に残されたれいむの頭の上にはエクスクラメーションマークが浮かぶ。 何故だ、こんなかわいそうでかわいいゆっくりには おにいさんはおいしい食べ物をたくさんくれてしかるべきだというのに、れいむはてんてんとお兄さんの部屋へと跳ねていった。 「おにいさん!れいむはおなかがすいたよ!はやくごはんもってきてね!」 男はふすまの隙間からこちらを見上げるれいむを一瞥すると 机の上にもう半年ほど転がっていたサラダせんべいを3枚れいむの前に置く。 といっても、これは一枚づつラップされているので、このままではゆっくりは食べる事ができない 体つきれみりゃがポテトチップスをパーティー開けした事があると、ゆっくりを飼っている同僚が言っていたのを思い出すと 男はれいむの前のサラダせんべいをそのままにしてみることにした。 「ゆゆ~、お兄さんはとってもゆっくりできるね!ほんとうはもっとはやくもってくるべきだったけど、れいむはかんだいだからゆるしてあげるね!」 饅頭が何と喋ろうとどうという事はない、どうせ猫や犬が喋れるようになったとしたら、年がら年中こんなことを喋っているはずだ その点で男は動物を飼っている人間が何を考えているのかよく解らないと、常々思っているのだ。 とはいえボウフラではないこの男には、もちろん純粋な青少年期があった その当時野良犬を拾い飼っていた男は「お手」や「お座り」を「原爆」「ぽん酢」と言った具合に言い換えてその犬に教えていたが。 それでもなお犬がこちらの意のままの動きをするのを見て 犬が人間の言葉を介して意志を理解する動物の優良児がごとき扱いを受けているのに無性に腹がたったものだ。 ―思えばあの頃から、俺は頭の使いどころをかなり間違えていたのかもしれないな。 男はため息をつくとテキスト編集をやめてれいむに向き直った。 れいむは文句一つ言うことなく一生懸命にパックと格闘している、ゆっくりにしては謙虚な性格だ もっとも腹が減ったので文句を言う事すら忘れているだけなのかもしれないが、にんっしんしたゆっくりは普段以上に燃費が悪いのだ。 男はれいむがまだ手をつけていないパックを開いてやると、れいむに咥えさせて、風呂ガマに火を入れた。 「おにいさん、れいむはもうねむいよ。」 ならそうすればいいじゃないか、言うまでもなく男はれいむを見おろした。 「こんなところじゃねむれないよ!ゆっくりべっどをよういしてね!」 男はため息をついてからロフトベッドに登り、れいむの脇に枕を投げつけた。 「このおふとんさんはあんまりゆっくりしてないよ!でもれいむがまんするよ!」 男は、胸くそが悪くなってしまう前に風呂に入った。 翌朝のこと。 「う゛、うまでる゛うぅぅぅぅぅ!」 男は不快な音で目を覚ました、れいむが産気づいたのだ。 案外速かったな。 男は、初めてれいむを見たときから予定していた行動に移った、会社にはメールで休む旨伝えてある。 男は、もちろんゆっくりを愛護する人間ではない。 しかし彼の今までの行動は、多少の不足はあってもれいむを少なくともそれなりにゆっくりさせている。 彼にとってはこれも、長い長い虐待の一環に過ぎないのだ。 男はれいむの裏に回って、ここのところよく使うようになった引き出しの、一番上の段を開いた。 「おにいざ゛ん、なにじでるの?でいぶぐるじいんだよ?はやぐずーりずーりじでね!」 野生のゆっくりは出産の際夫役のゆっくりが奥さんにすーりすーりして苦痛を和らげてやる 頭の回らないれいむでもそのことは遺伝子が覚えているのだろう、しかしこの期に及んで男にとってそんなものは加虐心をかき立てられる音楽に過ぎない これから幕を開けようとしてる甘美な時間、その訪れを告げるファンファーレのなのだ。 引き出しの一番上、今まで男の理性によって抑圧されてきた悪意たちが、次々と牙を剥く ピンセット、包丁、アルコールランプ、そして手動の泡立て器。 どれもこれも一見すればただの便利な文明の利器、しかし男の悪意がそれらに憑依したとなればそれは別の話だ。 「ゆ゛っ!」 男は、れいむの前に仁王立ちになった。 男が身を固めたのは白衣、そう、十匹のゆっくりが居ればその十匹全部が怨嗟の念を込めて「かこうじょ」と呼ぶ施設の職員たちの装備だ。 「おにいざん!ぞんながっごうでなにじでるの!?」 「よくもまあこんな危機感のない生き物がこの世の中を生きてゆけるもんだよな、本当に頭にくる生き物だ。」 「なにいっでるの?ばが」 「人間ってのはな、相手に合わせるって事ができる生き物なんだよ、それを仲間が何匹も何匹も何匹も殺されたってのに 一向に学習しねーでおうち宣言、飯持ってこい、ゴキブリでももっと慎ましやかに生きてるってんだよ、穀潰しが。」 れいむの顔がみるみる青ざめる、そうだ、これは罠だったのだ、安心してこんなところに飛び込んだ自分が馬鹿だった。 れいむは、何百回目かの「生まれて初めての後悔」をした。 「聞いてんのかよ、舐めやがって。」 「やべでえええええ!あがぢゃんう゛まれでぎじゃだめだよ、ごのじじいはゆっぐりでぎだいよ!」 「俺がゆっくりできなきゃどうすんだよ。」 「ゆ゛っぐりじないでにげるよ!くそじじいはぞのままじ、ゆ゛!なにずるの!?」 男はれいむを持ち上げると、手元のアルコールランプに火を点け 石綿あみを乗せた三脚の上にれいむを移した、すでに網は手では触れない温度になっている。 「おにいざん、おろじで!」 男は表情を変えることなく次の作業に移る、包丁を持つとれいむの後ろに回りこみ、後頭部にその切っ先を差し込む。 「ああああああああああああ!やべでぇええ!」 「黙れ屑が、お前がどれほど生きる価値もない生物か、今から教えてやるんだ。」 「れいぶが何かわるいごどじだならあだまりまず、おでがいだがらあがぢゃんだげは!あがぢゃん」 体に手をつけられた事で、それが体内の子供をねらった物だと思ったのだろう、しかし損な生ぬるい男ではない。 「黙れってのが解んねえのか?言ったことを理解できてねえようだな、おまえらが生きてるってだけでこちとらものすげえストレスなんだよ。」 「うぎいいい!」 れいむの頭に直径5センチほどの穴が開いた、男はそこから、先ほど取り出した泡立て器の先端を差し入れる。 「あががががあ、いだあぁ!いぎぎゃああぁ!」 妊娠のために大量のあんこをため込んだ体はれいむの意に反して非常に打たれ強い 普通のゆっくりならばショック死してしまうようなこの刺激にも、母としての体が抵抗しているのだ。 「やべでぐだざいぃぃいい、あがぢゃんだげ・・・あがぢゃんだげげげげげ」 中枢餡に達したようだ、男は口角だけをあげて笑うと、れいむのつむじの部分にピンセットの尻の部分を突き立てる、ゆっくりの出産を促すツボである。 「あがああ!だべぇえ、あがぢゃんっででぐるなあああ!」 そんなれいむの叫びも空しくれいむの産道はみるみる広がり、何も知らない赤ん坊が無垢な笑顔を浮かべながら、待望のおんもへ飛び出した、一人っ子である。 親二人子一人、幸せを甘受するにはこれ以上に似合った器はない、が、残念ながらゆっくりにそんな資格はない。 「ゆっきゅりしていっちぇね!」 「あああ・・・あがぢゃん・・・でいぶがおかあざんだよゆっぐりぢでいっでねぇ!」 愛する伴侶との待望の子供、足の焼ける痛みも頭に刺さった異物も忘れ、れいむは笑顔を浮かべた。 悪い景色ではない、あまねく生き物の母と子の交流は見ていて心が和むものだ、男はため息をついた、当然ゆっくりだって例外ではない。 しかし、ゆっくりはその普段の素行が問題なのだ、人間同士でも自分の憎む相手の幸せを破壊してやりたいという感情が沸くようなシチュエーションなど このすさんだ世の中には掃いて捨てるほど存在するが、罪に問われるためそれを実行するようなことはそうそうない。 しかし、ゆっくりをどうしようとそのような事はない、男の行動は得てしてまっとうな行動に過ぎないのだ。 「りぇいむのおきゃーしゃん、しゅーりしゅーりちようにぇ!」 「だめだよ!はやぐごごがらにげで!ごごはあっづぐでゆっぐりでぎないよ!」 「お母さんは今にんっしんの痛みで疲れているからね、そっとしておいてあげてね。」 男は口添えした。 「このじじいのいうごどなんてきかないで、さっさとにげてね!」 多少傷が回復してきたのか、濁点が少なくなってきたようだ、親れいむの言葉にうろたえる子れいむ。 そういえばお母さんは何か変だ、変な台の上に置かれている、焦げ臭いにおいもする それでも母れいむ以外を目にしたことのない子れいむに取って、それが最愛のゆっくりである事には変わりなかった。 親が足を焼かれ、おろおろとするばかりの子れいむ 「どうしてこんなことするの?」と泣き叫んでくれるのを期待していた男にとって、目の前の押し問答は退屈なものでしかなかった。 男は、ここから一気にたたみかけることに決めた。 「おいれいむ、生きて帰りたいか?」 「じねぇええ」 「おい!」 れいむの頬を叩く、子供が騒ぎ始めたがうっとうしいので気にしない。 「おうぢがえるう゛ううう!はなぜえええ!」 「わかった、そうしようか、その代わり条件がある。」 男は三脚からアルコールランプを外した、直接足を焼けばもう二度と歩き回ることはできないが こうして石綿あみを使えば、地面をすりすりとはいずって歩く程度の事はできる。 最後の最後まで望みを捨てさせないこと、それが男がゆっくりを虐待する上での信条なのだ。 「じょうけんってなに!はやくしてね!れいむはあかちゃんといっしょにかえるよ!」 「生きて帰るなら、お前のあんこを少し頂く。」 「そのぐらいだったらぜんぜんかまわないよ、ちょっとのあんこのためにしぬとおもったの?やっぱりじじいはばかだね!」 さっきまで痛みにのたうち回っていたというのにもう性根の悪い笑みを浮かべている。 これ以上なく馬鹿で救いようのない饅頭だ。 男はほくそ笑んだ、自分の頭に刺さっている物が何のための物なのか、類推解釈することすらできないらしい。 「よし、なら約束通り、後であんこを貰うぞ?」 「いいからさっさとしてね!あかちゃん!おくちのなかにはいってね、こんなゆっくりできないところからひなんするよ!」 ぺろりと舌を出して子れいむを招き入れるれいむ 怖くなったのか子れいむは「ゆーん!」と癪に障る鳴き声を上げながら母親の口の中に入ってゆく。 予想外の行動だったが、男の悪魔的な思考はここでさらなる虐待法を思いつくに至った。 「さあ!さっさとあんこをとってね!いたくしたらころすよ!」 「ああ、わかった、赤ちゃんにさよならを言っておけ。」 「ゆっ?何言ってるの?」 そして、男は実にゆっくりと泡立て器のハンドルに手を掛けた。 中枢神経が破壊されると、生物はてんかんに似た症状を発言する、意識障害、不随意運動などがそれだ、つまりけいれんである。 ゆっくりはその発現が顕著で、強い衝撃を与えられると白目を剥いて痙攣するというのはあまりに有名だ 今回男は、そんな衝撃の中でも、最強の物を、今からこのれいむに与えようとしているのだ。 「あかちゃん!おかあさんのおくちからはやくでてね!はぎぃ!きゅっ!きゅゆゆゆ、ゆいいいい!」 突如、れいむが歯を食いしばって、耳をつんざくような金切り声をあげた。 男はゆっくりとハンドルを回していた手を休め、泡立て器を引き抜いた。 母れいむの脳に当たる部分はまだ多少機能しているのか、こちらを向いて何かを訴えるように飛び跳ねている しかしすでに平衡感覚がすでに狂っているのか、飛び跳ねる方向はめちゃくちゃで、食いしばったまま開かない口の中の子供が助けを求めるくぐもった声が聞こえてくる。 「いぢゃいよぉおおお!おかーしゃん!おくちをあけちぇ!りぇいむのおめめ!みえないよぉ!!」 「いぎいっ!ぎぎっ!きゅきいぃい!」 表情を司る神経もズタズタになってしまったのだろう、普段のれいむの表情からはおおよそ予想もつかない 物理的になんらかの転換が起ように変貌してしまったれいむの表情に、男は鼻でため息をつきながら言い放った、相手にそれが聞こえているという保証はない。 それは既に男の自慰行為の範疇の出来事であった。 「俺はよく混ざったあんこが大好きでね。あばよ屑共、世の中そう甘いことばっかりじゃねえんだ、せいぜい甘くなってくれよ。」 「ゆゆゆゆゆゆゆゆ、ゆいっ!ゆききききっ!きゅいいいい!いいいいいい゛!!!」 男は再び、思いきり泡立て器のハンドルを回し始める。 「いーっ!いいーーっ!いぎいいい!ぎいいいいい!!」 れいむの伴侶であるまりさを焼き殺したのは、誰でもないこの男だった 二、三日前からゴミ捨て場の焼却炉の周りをうろついているまりさに目をつけていたのだった。 ゆっくりは普通単独では狩りをしない、まりさに男が訪ねたところ 家には身重の妻が居るという、そう、事は最初から男の手のひらの上で回っていたのだ。 男は、二度と開くことのない母親の口の中で泣き声をあげ続ける赤ん坊の声に耳を澄ましながら まりさの幸せそうな表情を思い出していた、母親の口の中で、器用に目の部分だけを母に噛みちぎられ泣き続ける「しあわせ」を眺めながら。 男の家の扉、犬用の出入り口のようなゆっくりサイズの扉の上に、かわいいゆっくりの挿絵の入った、こんな表札がかかっている。 「ゆっくりみぼうじんきゅうさいじょ ゆっくりしていってね!」 こんにちは、初めて書いてみました。 かわいいからこそ、殺したくなる、ぶちこわしたくなるんです。 By お前の母親
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ゆっくりぱちゅりぃというゆっくりが居る。 ご存知ゆっくりパチュリーに四肢が付いたゆっくりだ。 しかし、このゆっくりは四肢がないゆっくりと違い、少し頭が悪い。 そんなゆっくりぱちゅりぃの生態を、少し覗いてみよう。 「むっきゅ~~♪ むきゅむきゅ♪」 煙が移動するように、道を歩いているのがゆっくりぱちゅりぃだ。 「むっきゅ~~♪ むっきゅきゅ~~~♪」 その、濁った目を大きく見開き、目の前の人間を凝視する。 その右手。 そこに持っているのは、この男が買ってきた本だ。 「むっきゅ~~~♪ それはぱちゅりぃのごほんのなのーーー!!!!」 「うわ!! なんだおまえ?」 突然、誰かに話しかけられたと思った男は、目の前でワンワン泣いているゆっくりを見て声をあげる。 「むっぎーーー!! それはぱちゅりぃのごほんなのーーー!!!!」 「この本がお前の?」 「むっきゅ~~~♪ そうなの!! だからかってにもってかないでね♪」 四肢有りは総じて切り替えが早いのだろうか? このぱちゅりぃも、先ほどとは打って変わって満面の笑みで両手を差し出してくる。 「フザケンナ!! これは俺の本だ!!」 「むっぎゅーーー!!! ごほんかえじでーーーー!!!」 男がブツクサ言いながら去っていくと、懸命にその後を追いかける。 「まっでぇーーー!! もっじぇがないでーーー!!!!」 「…………」 男は大事そうに本を胸に抱えて無言で歩く。 「まぁ……じぇーーーー!!!」 その後ろを、ぱちゅりぃがヒィヒィ言いながら歩く。 「……。ほら、待ったぞ!!」 「!! もっじぇがないでぃーーーー!!!!」 男が止まったのを見て、一気に間合いを詰めようと、残っていた体力で懸命に駆け寄る。 しかし。 「ほ~ら♪ もっていっちゃうぞ~~~~♪」 「むぎゅ!!!」 後一歩。 後一歩のところで、勢い良くスタートを切った男に逃げられてしまう。 「むーーーーーー!!!!」 そのまま、スカートに足を取られて前のめりに地面とキッス。 「むっぎゅーーーー!!! ぱちゅりぃーーのごほんがーーーー!!!」 全身泥だらけになったぱちゅりぃの目は、涙をいっぱいに浮かべ、すでに姿が見えない男を追いかけていた。 「むっきゅ~~~♪ むきゅきゅ~~♪」 それから暫くして、漸く機嫌が直ったぱちゅりぃは、勇み足で人里の中へ。 「むっきゅ~~~♪」 目的は人間の家に侵入すること。 しかし、食料をとることが目的では無い。 「むっきゅ~~♪ おじゃまします~♪」 目的は本を見つけることだ。 丁寧に、挨拶をして家の中に入っていくその顔は、既に血眼になって本を探していた。 「……むきゅ~~~? むきゅ~~~?」 押入れ、冷蔵庫、風呂桶、食器棚。 何処を開けてもなかなかお目当てのものがでて来ない。 「むっきゅ~~~!! ごほんをよまないばかのお~ちなの?」 フツフツを怒りが湧き起こってきたその時、偶然あけた隣の部屋で、大きな本棚を見つけることができた。 「むっきゅ~~~♪ ごほんがいっぱ~~い♪」 吸い寄せられるように近づいていったぱちゅりぃは、手当たり次第に本を引き出すと、乱雑に並べてから、一冊の本を開いた。 「むっきゅ~~♪ ごほんをたくさんだしたぱちゅりぃはどくしょかなの~~♪」 ペラペラッと本を捲っていく。 その行為は、この家の主が帰ってくるまで続いた。 「おい!! そこでなにしてるんだ!!!」 「!!!! むきゅ? ここはぱちゅりぃのとしょかんよ? しずかにごほんをよめないおに~さんはでていってね!!」 さも当然のように言い放って視線を戻す。 「むきゅ! かしだしはしてないの」 視線を合わせず、思い出したかのように呟く。 勿論、貸し出しが何の事だかはサッパリ分かっていない。 「ここは俺の家の俺の本棚だ。人の家に勝手に入りやがって!! 出て行け!!」 「むきゅ~~♪ どくしょちゅうはおしずかに!!」 「……」 ここで、男の限界が来たようだ。 「むきゅ?」 何も言わず、首根っこを掴んで顔を近づける。 「それは、おれの、ほんだ!!」 「むきゅーー!! ぱちゅりーのごほんなの!!!」 「うるさいよ!!」 「むぎゅ!!」 そのまま外に投げ捨てる。 「むきゅーーー!! いれでーーー!! としょかんにいれてーーー!!!」 「嫌だ!! お前の図書館だったら、自分で入ってこられるだろ?」 「むぎゅーーー!!!!」 ガラス戸をペチペチ叩くが、ぱちゅりぃの力では割る事はできない。 中に入ろうとしても、昼間は開いていた玄関もしっかりと鍵がかかっている。 「むっきゅーーー!! ぱちゅりーーのごほんもっでがないでーーー!!! ぜんぶもっでかないでーーーー!!!!」 なけなしの力で最いっぱい叩くが、既にカーテン越しに明かりは消え、物音一つしなくなった。 「むっきゅーーー……」 仕方が無い。 この図書館を手放す事にしたぱちゅりぃは、とぼとぼと自分の巣の中に戻っていった。 ―― 巣の中は大きな空間が一つあるだけ。 その奥に、ぱちゅりィが拾ってきた本が山積みにされている。 「むっきゅ~~~♪ ねるまえにごほんをよまなくちゃ!!」 ここに帰る途中に拾ったくず野菜の夕食をとり、横になったぱちゅりぃは、その本の山から無造作に一冊取り出す。 三ページ程のA4の紙には、カラフルな文字で○○店オープン!! と書かれている。 「むっきゅ~~♪ ハラハラするだいぼうけんね!!!」 一冊捲り終える頃には、ぱちゅりぃはスヤスヤと寝息を立てていた。 ―― 翌日 「むっきゅ~~♪」 今日も朝から町へ出かける。 勿論本を探すためだ。 「むっきゅ~~♪ むきゅ!! むきゅ!!」 昨日の失敗は忘れてしまったようで、意気揚々と町の中へ乗り込んでいく。 「むきゅ? むきゅーーーー!!!!」 そこには、大きな図書館が存在していた。 一面に沢山の本が並んでいる。 まさにぱちゅりぃにとっての桃源郷だった。 「むっきゅ~~~♪ ぱちゅりぃのとしょかん~~~~♪」 「あら? ゆっくりぱちゅりぃね?」 「むきゅ? おねーさんだれ?」 「私はここの司書をしているの。貴方は?」 「むっきゅ~~~♪ ぱちゅりぃはここのとしょかんのあるじよ!! かってにわすれないでね!!!」 「そうだったわね」 ぱちゅりぃの自分の図書館と言う発言に食って掛からなかった司書は、更に言葉を続ける。 「だったら。そっちじゃないでしょ?」 「むきゅ?」 「この図書館の主人専用の部屋は、こっちじゃない」 指差す先には、確かに扉が有った。 「むきゅ!! そうよ!! あなたをためしただけよ!!!」 真っ赤になった顔を見られるように、勢い良く世の扉へと消えて行ったぱちゅりぃ。 「さようなら」 その言葉は、読経の様に静かな図書館内に良く響いた。 「むっきゅ~~♪」 中に入ったぱちゅりぃが見たのは、目の前にある本棚だった。 「むっきゅ~~~♪ むきゅ? むきゅ?」 取り出そうとしても取れない事に怒り出すぱちゅりぃ。 それもその筈、この本棚は精巧に印刷された本棚なのだから。 「むぎゅーー!! かえるーー!! さっきのほんだなのところーーー!!!」 泣きべそをかき、入ってきた扉をがさごそ弄る。 「むきゅ? むっきゅ~~~!!!!」 が、扉は開かない。 「むっきゅーーーー!!! なんであがないのーーーー!!!!」 何故なら、鍵がかかっている為だ。 「むっぎゅーーー!! ……むきゅ?」 漸く、この部屋の中に存在する唯一の立体物を発見したぱちゅりぃ。 「むきゅ? むきゅ?」 丁寧に描かれた絵に従って、自分の体にベルトを付けていく。 「むきゅ? これをおすのね!!」 最後に、大きなボタンが描かれた絵がある、その隣には本の絵が。 「むっきゅ~~~♪ はやくごほんがよみたーーい!!」 ポチ 「むっきゅ~~!! ……!!! むっぎゅ!! むぎゅ!!!」 スイッチを入れた途端、四肢に繋がれたベルトが勢い良く動き出した。 「むぎゅ!! むぎゅ!!」 それは一定のリズムを刻んでいる。 しゃがみ込み、地面に両腕を付ける。 そのまま足を後ろに伸ばす。 足を戻し勢い良くジャンプ。 この時、両腕を叩くのを忘れない。 「むっじゅ!! どめでーーー!!! ゆっぐりざぜでーーー!!!」 一回この動作をしただけで、既に息が上がってしまったパチュリー。 「む……はぁはぁ!! むぎゅ!! どめでーーー!!!」 息も絶え絶えに、懇願するが生憎と全自動のこの装置に監視員は居ない。 「むぎゅーー!!!! むぎゅーーーー!!!! おえ!! おぇーーーー!!」 口の中から勢い良く餡子が漏れ出す。 綺麗な緑色をした鶯餡。 「おぇ!! お゛お゛お゛お゛お゛ね゛がい゛じま゛ずーーー!!! ゆ゛っ゛ぐり゛ざぜでーーー!!!」 既に大量の餡子を吐き出して居るが、体は余り細くなっていない。 顔が若干やつれているだけだ。 「ゆーーーー!! もううごげないいいいい!!! だずけでーーー!!!」 延々と、無理矢理体を動かされ続けるぱちゅりぃ。 幸いな事に、後一時間もすれば、致死量の餡子を吐きだしゆっくりできるだろう。 「ゆ!! おぇ!! おぇええーーーー!!!!」 体が弱い分、少なくなった餡子を高速で生成できるゆっくりぱちゅりぃ。 その能力が苦しみ以外を与えてくれた事は、後にも先にも無いだろう。 「むっぎゅーーーーーー!!!!」 ゆっくりいじめ系426 ゆっくりぱちゅりぃ2 このSSに感想を付ける
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※使い古されたテンプレを用いています。 「ゆっくりしていってね!」 家に帰ると下膨れの生首がいた。黒い帽子をかぶり、金色の髪をした全長が三十センチほどのそれは跳ねながら私の方 へと寄ってきた。生首が跳ねながら寄ってくるのは出来の悪いホラー映画のようで、滑稽でもあり恐ろしくもあった。 「おにいさんはゆっくりできるひと?まりさはおなかがすいたよ。ゆっくりごはんをよういしてね!」 生首が何かを言っていたが、私はドアを閉めてその場を立ち去った。 「そりゃゆっくりだな。間違いない。」 友人は私が持参した安い酒を注ぎながら自信ありげに言った。あの後私は謎の生命体がいる部屋に入る気になれず に友人宅を訪れた。 「知っているのかい。」 「今の時代にまだ知らない奴がいる方が驚きだ。新聞でもゆっくりの被害について散々取り上げている。ほら。」 渡された新聞には確かに生首らしき生き物の写真が載っていた。悪夢は現実だということに戸惑う私をあざ笑うかのよう に彼は続けた。 「ゆっくりというのはなぜか生きている饅頭だ。見た目は人の生首だが中身は餡子が詰まっていて、 人間の言葉を話す。時々食料や住処を求めて人里に出没するそうだ。新聞も読んでいないようだし、 お前もゆっくり対策をしていないんだろう。」 「どうすればいいと思う。」 「普通の人なら踏み潰して黙らせてからゴミに出すな。」 あっけらかんと友人は言った。確かにセイブツではなくナマモノであるならばそれは正しい判断だろう。説明が本当である ならば外から入ってきたそれらは落ちた饅頭に等しい。食べようと思えば食べれるだろうが、無理して食べるほどのものでも ない。でもあれを踏み潰すとなると気が引ける。口をふさいでもゴミ捨て場で暴れられては困る。殺すのは別にかまわない が衛生的で安全なゴミへの出し方はないだろうか。 私の考えがゆっくりの殺害方法へシフトしていったとき、再び友人が喋り出した。 「そういえばゆっくり処理機でもう使わないのがあったな。お前にやるよ。」 友人は手にしたお猪口に酒を注いだ。口元が邪悪に歪んでいる。おそらく、笑っているのだろう。正直、彼の こんな表情を見たのは初めてだった。 「………サンキュ。持つべきものは友達だな。」 友人からゆっくり処理機を受け取った後、家路をたどりながら思った。あれはお猪口ではなく口を針金で固定された ゆっくりだったと。今頃あれはアルコールで混濁した意識の中彼に何をされているのだろうか。 家の戸を開ける。 「ここはまりさのおうちだよ!しらないおにいさんはゆっくりでていってね!」 やはり夢ではなかった。部屋の中には生首の饅頭がいた。最初は不気味に思えた生首も今となっては処分に手間の かかるゴミとしか思えない。 「ここでゆっくりするならたべるものをもってきてね!まりさはかんだいだけどゆっくりしてたらおこるよ!」 無視して部屋の中を調べる。本棚から本がこぼれていたりゴミ箱が倒されたりしていたので、片づけておく。 「おそうじしてくれているんだね。でもはやくたべるものをもってきてね!そうしたらまりさのめしつかいにしてあげるよ! こうえいにおもってね!」 元々物が少ないせいかゆっくりの被害はあまりなかった。ゆっくりの届くところには缶詰しかなかったため、食料も 無事だった。窓から逃がしてもよかったが、他の人に迷惑をかけたらいい気分はしないのでここで処分することにする。 友人からもらったゆっくり処理機は透明な箱だった。ただし、上の面だけは鉄でできており、ハンドルの付いたネジが 飛び出している。使い方は一目見て理解した。 ゆっくりを捕まえて箱の中に入れる。 「ゆ?せまいよ!ここじゃゆっくりできないよ!はやくだしてね!」 ゆっくりがわめく。五月蠅い。私はハンドルを回していく。天板がゆっくりと降りてくる。 「はやくだしてっていってるでしょ?わかんないの?ばかなの?」 まだ自分の立場が分かっていない。はやる気持ちを抑えながらゆっくりとハンドルを回す。 「ゆっ?おかしいよ?てんじょうがおちてくるよ!ゆっくりさせてね!ここからだしてね!」 やっと気づいたようだ。大丈夫、すぐに殺したりはしないよ。そこで好きなだけゆっくりさせてあげるよ。死ぬまで。 心臓の鼓動が高ぶり、熱い血が体中を巡っていることが分かる。 「ゆぐーっ!ゆぐーっ!」 体を膨らませて必死で抵抗している。どれだけ膨らんでも押し返せるわけないのに。ああ、なんて可愛いんだ。 「うううぅぅぐるじいいいいぃぃだずげでぇぇ」 だんだんとゆっくりの形が歪んでいく。箱を倒して表情を見る。ゆっくりは涙を流しながら助けを求めるような眼をしていた。 ところどころ皮が裂けて、中身の餡子が見えている。そんな眼で見るなよ。もっと苦しめたくなっちゃうだろ。 「いばならゆぐじであげるよ………ゆっぐじだずげでね………」 この状況で助かると思っているんだ。あっけなくちゃつまらないからね。ゆっくり、ゆっくりといじめてあげるよ。 私はゆっくりを放置して戸棚へ向かうと、マッチを手に戻ってきた。 「ぐひゅー………ぐひゅー………」 もはや息も絶え絶えといったところだ。私は火をつけたマッチをゆっくりを潰している鉄板の上に落した。 「ぐぎいいいぃぃぃぃぃぃ」 ゆっくりの絶叫が響く。まだまだ元気いっぱいだね。ゆっくりしていってね。 「ぐぐぐ………げぶっ………ごぼっ…どぼじで…ごんな………」 餡子を吐き尽してゆっくりは動かなくなった。そろそろ夜が明けようとしていた。当初の目的を忘れ一晩中ゆっくりの相手 をしていたようだ。 「どうしてこんなことするかって?」 私はゴミになったゆっくりに向かって言った。 「予想以上に君が可愛らしすぎたんだ。」 朝の陽射しの中、私は友人の笑みの意味が分かった気がした。 終 後書き 「万能お兄さん」の人に憧れて書いてみた。 SS書くのって難しいと痛感した。 お目汚し失礼いたしました。 このSSに感想を付ける
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「ふふふふふ・・・ついに完成したぞ! ゆっくリミッター解除装置!」 解説しよう! ゆっくリミッターとは、ゆっくりの能力を押さえつけている餡子型セーフティシステムである。 あらゆる生物にリミッターが存在し、人間ならば本当に最大の力の2,3割しか使えないように制御されている。 そして、ゆっくりはリミッターによってその能力の99.7%を封じられており、それゆえに貧弱なのだ。 もし、ゆっくりの普及した現代社会でこのリミッターを外部からの簡単な刺激で外すことに成功すれば、それはもはや兵器である。 私はそれに成功したのだ! 幾多のゆっくりの犠牲の上に成り立ったさいこうのゆっくリミッター解除機。 世界の混乱と混沌の時代を夢に見ながら、私は最高傑作に起動を命じた。 程なくして、彼の秘密基地周辺のゆっくり達に変化が表れた。 目覚めてしまった餡子に秘められた可能性・・・彼女達はそれを意識することなく使い、周囲の人間どもを傷つけることだろう! さあ、お前達を抑圧し続けてきた人間どもに復讐してやるのだっ!! その頃、男の研究所のある町の各地でゆっくりに関連する事件が・・・ 「ゆゆっ~! おそらをとんでるみたい!」 このれいむは何の気なしに跳ねてみた瞬間、信じられないほどの跳躍力を発揮してなんと70mも飛び上がってしまった。 今まで体験したこともないほどの圧倒的な浮遊感。しばし初体験に酔いしれていたが・・・ 「ゆゆっ! ゆっくりおちるよ!?」 飛べば落ちる。羽ばたきでもしない限り地球上では当たり前のことである。 はるか下方の地面めがけてれいむはゆっくりしていない速さで落下する。 「ゆっくりおちないでね! ゆっくりしてね!?」 落下する。 「ゆっくりできないよ! ゆっくりしてよー!?」 落下する。 「ゆ゛っ・・・」 そして、飛び散った。 あるゆっくりみょんは前に勢い良く跳躍したところ、いつもの100倍以上もの距離を一気に進んだ。 いままでの自分では考えられないほどの疾走感、他のゆっくりどころか人間までもすいすい追い越して行く優越感。 顔に感じる風圧がかなり痛いものの、それを差し引いても余りある快感だった。 「ちんぽ~?」 ふと周りを見ていれば自分以外のゆっくりも一緒に凄い速さで疾走している。 速い速い!信じられないほど速い! 気がつけばみょんを先頭にして、20匹近い集団になっていた。 「「「「「ゆっくりしてるよ~!」」」」」 「ち゛っ・・・!?」 が、50mもの距離を浮いた状態で移動するため方向転換ができない。 そんな状況であるにも関わらず、突然目の前に一台のトラックが止まった。 激突する、潰れる。 「ゆっぎぢどまっでね~!?」 激突する、潰れる。 「ゆっくぢちたいよー!?」 激突する、潰れる。 「ゆっくりでぎないいいいい!?」 ほんの10秒足らずの間に20匹近い集団は自滅した。 あるゆっくりまりさは這いずって移動している際に加速し、摩擦で体の半分を失った。 あるゆっくりありすは勢い良く射カスタードした拍子に出しすぎて干からびた。 あるぱちゅりーは勢い良く振り返った直後に自分の髪が顔にめり込んだで死んでしまった。 あるれいむは子どもを出産する際に勢い良く子どもを飛ばしすぎて受け止めようとしたつがいのまりさともども殺してしまった。 あるれみりゃは頬を膨らませようとした際に勢いを付けすぎて頬が破裂した。 あるありすの夫婦はすりすりの摩擦で頬を失い、ぺにまむも摩擦で消滅してしまった。 事態を把握した男は、何も言わずに解除装置を止め、リミッターの再設定装置を起動させた。 男は、ゆっくりの強度の問題を完全に失念していたのだった。 男が再設定装置を起動する少し前、男の研究所近くのある虐待お兄さんの部屋にて。 「「ゆえーん! きょわいよー!」」 「やあ、僕は虐待(ry」 「「これで満足か、虐待厨?」」 「!?」 目の前で両親を嬲り殺されて、絶望で顔をゆがめていた2匹の赤ゆっくりに異常が起きた。 突然の態度の変化。しかも、これから虐待されると言うのにあまりにもふてぶてしい。 予想外の事態に虐待お兄さんはたじろいでしまった。 「こんなちっこいのでも予想外の態度を取られると怯むなんて、おおへたれへたれ」 「ゆっくり虐待していってね! せいぜい頑張って虐待していってね!」 「な、何なんだよ・・・お前らはっ!?」 赤ゆっくりの豹変に驚いた男は壁に張り付いて、問いただす。 が、2匹は不敵な笑みを浮かべて男を見つめるばかり。 しばし、そうやってにらめっこを続けていたが、沈黙に耐え切れなくなったお兄さんが赤ゆっくりを潰すべく動いた。 「くたばれ・・・!?」 「おお、遅い遅い」 「ゆっくりしていってね!」 が、かわされた。いとも簡単に、それも赤ゆっくりに。 お兄さんの表情は恐怖に染まり、怯えた目で2匹を見つめる。 相変わらず不敵な、そしてふてぶてしい笑みを浮かべている。 「な、なんなんだ! お前らぁっ!?」 「ゆへっへっへ・・・まりさ達は異次元世界“ガ・ヴァン”の思念体で名をゆっくりと言うんだよ!」 「れいむ達はこの世界を手中に収めに来たんだよ! ゆっくり理解してね!」 「わ、訳わかんねえよ・・・!?」 突然の常軌を逸した発言に困惑するお兄さん。 しかし、2匹は彼の様子を気にも留めずに話を続ける。 「まりさ達思念体は思念体のままだとこの世界に干渉できないから仮の肉体を作ったんだよ!」 「それがこの子達なんだよ! ゆっくり理解してね!」 「でも、肉体の操作に慣れていないし、強化も間に合ってないからからまりさ達が本当の力を発揮できるようになるのは7万年後なんだよ!」 「それまではゆっくり虐待させてあげるよ! ゆっくり感謝してね!」 「「さあ、嬲りなさい!」」 そう言うと2匹はふんぞり返ってどこか誇らしげな表情を浮かべる。 動く気配は無い。なら今の内に潰そう・・・お兄さんがそう考えた瞬間、2匹が突然巨大化し始めた。 徐々に、だが確実に、赤ゆっくりは大きくなっている。 常軌を逸した2匹の奇行を前に戦意を喪失したお兄さんは急いで部屋から逃げ出した。 数分後には男がリミッターを再設定したことで普段のゆっくりに戻り、お兄さんは無事赤ゆっくりを虐待できたとさ。 ‐‐‐あとがき‐‐‐ ・・・・・・なんじゃこりゃ? byゆっくりボールマン このSSに感想を付ける
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あれは今年5回目の雪が降る日の事だったと思う。 その時、里の北東に位置する防御陣地には私一人しか居なかった。 襲撃を掛けていたゆっくりの群れは殲滅した上に、そもそもゆっくりは冬眠の時期であったので畑をまじめに防御する必要は無くなっていたから、晩秋まであれほどいた加工所職員や農夫はみな自分が居るべき場所に帰っていた。 我々はゆっくりがどういう生物か失念していたのだ。 あの生物の習性は年が変わるごとに変化していき、その度に人間が対応を迫られていることをすっかり忘れており、今年の冬もゆっくりは来ないだろうから防御の必要は無い、そう思っていた。 古来より慢心は身を滅ぼしてきた。それは幻想郷でも同じことだ。 「あ~寒い。暖冬に慣れた身には厳しいな…。」 陣地に居住スペースを作り、里の家から移り住んだ私はこの頃幻想郷の寒さに参っており、陣地を放棄して里の家に逃げ帰ろうかと本気で考えるようになっていた。 薪を燃焼させる調理暖房兼用のストーブが置いてあるのだが、空調による暖房に慣れた身には如何とも頼りなかった。要するに寒い。 ホットコーヒーでも飲んで暖まるか。うん、そうしよう。外側から温められないなら内側からだ。 粗末な椅子から立ち上がり、戸棚をあけて大量のインスタント・コーヒーの瓶のうち中身が半分ほどになっている物を取り出す。入れっぱなしのスプーンで一さじすくい、外から持ち込んだ数少ない自分の持ち物であるマグカップに入れ、ストーブの上で湯気を噴出しているケトルを手に取る。湯を注ぐとホットコーヒーの完成だ。 戸棚に1ダースも工業製品たるインスタント・コーヒーが入っているのには理由がある。 里には喫茶店が何軒か有り、そこでは中々美味いコーヒーが供されている為に味が劣るインスタントのそれは酷く人気が無く、それ故に香霖堂で廃棄寸前だったのを運良く二束三文で購入できたのだ。 コーヒー通ならおそらく我慢ならないんだろうが自分としては一応コーヒーであれば良い、などと考えつつ粉っぽい液体をすすっていると、前線方向の彼方に何か見えることに気がついた。 陣地最前面の鉄条網、そのさらに向こう側で黒い塊がうごめいているようだ。 晴れた日でもなく吹雪の日でもない今日この時間帯だからこそ見つかったのかも知れないと思いながら双眼鏡を取り出す。 視界の中央に拡大されたのは金髪に黒いとんがり帽子のゆっくり、まりさ種らしい。 必死の形相で這いずりながら此方へと向かってくる。 ゆっくりまりさが何でこんな冬に?冬眠してるはずじゃないのか? そのまま力尽きて凍え死ぬのを見ていても良かったが、状況から何かただ事ではないと判断した私はコートを引っつかみ、外に出た。 真新しい雪を踏みつける音が心地よい。生憎と気温はそうでもなかったが。 雪で埋まりかけた壕に足を取られないよう気をつけて跨ぎ、確認が難しくなりつつある鉄条網を記憶を頼りに乗り越え、殆ど動かなくなったゆっくりまりさへと近づく。 最後の鉄条網を乗り越えたところでゆっくりはこちらに気づき、震えながら顔をあげてきた。 畜生、そんな顔をされたら助けない訳にはいかないじゃないか。 先ほどまでゆっくりと降っていた雪が吹雪きはじめた。 このままここでゆっくりしていると一人と一匹そろって凍えてしまいかねないので、ゆっくりまりさが動かなくなった事により彼女に付着し始めた雪を払おうと姿勢を下げた。 視界の端に違和感を感じる。 視線が低くなったことにより森の奥まで見渡せるようになったが、その奥にいたのはふくれた表情でこちらにやって来る巨大なゆっくりだった。 このゆっくりまりさを追いかけて来たらしい。 助けに来たのだろうかと思ったが、それにしては表情がおかしい。 これではまるで、このゆっくりまりさを始末に来たような──。 「おにいさん!そのこをゆっくりこっちにわたしてね!そうすればおにいさんみのがしてあげるよ!!」 何を言ってるんだこいつは。 おそらく渡したらこのゆっくりまりさは始末される。今の発言でその可能性は強化された。 ゆっくりまりさが死んでしまったら、いや、そもそもこのまりさを起こして話を聞かなければ一体何が起こっているか分からない。 わざわざ巨大ゆっくりが来るという事は、まず間違いなく何かが起きている。 ともかく、ゆっくりまりさは渡せない。 「断る!このゆっくりは俺が先に見つけたんだ!お前にはあげられないよ!」 「おにいさん!れいむにかてるとおもってるの!ゆっくりあきらめてね!」 ますます体を大きく膨らませる巨大ゆっくり。 聞く耳持たずか。あの巨体に相当自信があるんだろう、こちらに勝つ気でいる。 ならば、それ相応のおもてなしをしてやらなきゃな。 「きいてるの!おにいさん!それともりかいできないばかなの!」 無視して背負っていた小銃を構え、膝立ちして攻撃体勢に持っていく。 発言に返答がないことで巨大ゆっくりはもうこれ以上はというほど膨れ、顔を赤くしている。 こんな寒いのに頭から湯気を上げるほど体温を上げて大丈夫なのだろうか。 「もういいよ!ふたりともころすからあのよでゆっくりこうかいしてね!」 巨大ゆっくりがこちらを踏み潰すための助走体勢に入った。 その巨体ゆえに一回で最大跳躍できない巨大ゆっくりはホップ、ステップ、ジャンプのプロセスを踏んで敵を踏み潰す。 目の前の巨大ゆっくりはホップを終え、ステップに入ったところだ。 完全に勝ち誇っているニヤついた顔。 すぐに恐怖に染まるんだけどな。 ヤツがステップを終えて着地をする前に引き金を引く。 空中で下半身に銃弾を食らった巨大ゆっくりは物理の法則に従い前傾方向に回転する。 結果、いわゆる「足」の部分で受け止めるはずだった運動エネルギーを、顔面をしこたま打ち付ける事により吸収することとなった。 「ゆ゛っ!ゆ゛ぅう゛う゛ぅぅ~!!」 よほど痛かったのか、降り積もった雪を振動で舞い散らせるほどの叫び声があがる。 巨大ゆっくりは通常のゆっくりに比してかなり耐久力が高いと聞いたことがあったので、攻撃の手は緩めない。 ボルトを操作して排莢、次の銃弾を装填する。 再び引き金を引いて発射。 二発目の銃弾は巨大ゆっくりの頭頂部から餡子へと音速で進入し、中核部分の餡子を切り裂いたのちに「足」の皮を衝撃波で破り、ついでにかなりの量の餡子を引き連れて森へと飛んで行った。 痛みを堪えて起き上がった巨大ゆっくりが睨みつけてくる。 「ゆ゛ーーっ!もうおこった!おにいさんはく゛るし゛んて゛し゛んて゛ね!!!」 滝みたいに涙を流しやがって、そんな顔で言われても説得力ねえよ。 構わず三発目を発射、貫通した瞬間に巨大ゆっくりの後頭部で何かが飛び散った。 こいつの後頭部だった物が銃弾の衝撃で吹き飛んだらしい。 巨大ゆっくりは涙を流す表情のまま前に倒れ、二度と動かなくなった。 まだ暖かい餡子が露出して美味しそうな香りをまとった湯気が上がっている。 岩のように凍りついたゆっくりまりさを拾い上げ、掛けた部分はないか確認。問題なし。 「帝国の逆襲」ならここでゆっくりまりさを巨大ゆっくりだった物の中へ入れてやる所だろうが、帰るべき場所はすぐそこなのでそのような事はしない。 小銃を背負い、冷凍ゆっくりを持ってその場を後にした。 本格的になり始めた吹雪にコートの襟を立てる事で対処しつつ、居住スペースへと戻った。 空調でなくとも暖房を掛けている部屋は外に比べれば天国のような暖かさ、ストーブを頼りないと思った事を反省する。 流石にテーブルの上に置いたマグカップはすっかり冷めていたが。 ゆっくりまりさを解凍するため、鍋を取り出しケトルから熱湯を入れる。 流石にそのままでは氷ごと饅頭ボディまで溶け出しかねないので、外から雪を持ってきてその中に溶かした。 風呂よりも熱いかなという位になったところで冷凍ゆっくりを鍋に放り込む。 放置していればそのうち解凍されるだろう。 冷めてしまったインスタント・コーヒーの酷さを再確認していると、鍋の中のゆっくりがわずかに震え始めた。 餡子が解けて生命活動を再開、融解を加速するために自らも震えて熱を発生させようとしている。 その段階からさらに10分経過してようやくゆっくりまりさは口がきける様になった。 ジャバジャバ音を立てて鍋の水をかき乱しながら左右を見回すゆっくり。 今すぐ叩き潰してやりたいが、何があったかを聞き出すまでは我慢我慢。 「やあやあお目覚めかな?ゆっくりしていってね!」 「ゆっ!?ゆっくりしていってね!」 お馴染みの挨拶をすると、すばやくこちらを向いて反応。起きたばかりだというのに流石ゆっくり。 「単刀直入に聞こうか。何があったんだ?なんで仲間に追われてたんだ?」 「ゆ…なかま…?……ゆっ!!ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛ぅ゛わ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛!れ゛いむ゛ー!は゛ち゛ゅりー!なんでえぇー!」 「オイオイ、どうした。何かあったんだな?」 巨大ゆっくりに追われていた事を教えてやると泣き出してしまった。 仲間の名を叫んでいると言う事はその名の仲間はもう生きていないのだろう。 おそらく、そいつらが死んだ理由に巨大ゆっくりが関わっている筈だ。 「ゆっくりを養殖する巨大ゆっくりか、聞いたような話だな…。」 今は泣き疲れて眠っているゆっくりまりさ曰く、巨大ゆっくりの養殖場から命からがら逃げてきたらしい。 生まれたときから仲良くしていた友達が食い殺されるのを見て脱走を決心したという話だ。 まりさは眠る直前に、「おにいさん、あいつらにんげんをおそうつもりだよ。かえりうちにしてやってよ…。」と言っていた。 あんな大きさのゆっくりが里を襲うのか。 巨大ゆっくり、ゆっくりを養殖、里を襲撃…やはり聞き覚えがある。一体何の話だったかな… 里長なら何か知っていると思い、机に置かれた電話から受話器を取った。 「交換さん?里長のところに繋いでくれ。防御陣地からだ。」 交換手が接続するまでのこの空白時間は何時までたっても慣れない。大体交換手が必要なほど電話普及してるのかと。 しばらくして交換手が繋がった事を伝えてきた。里長の声それに続く。 里長は、それは今年の春に隣の里が巨大ゆっくりに襲われた話じゃないかと言っていた。 確かにそれだ。隣の里が急ごしらえの防御線で何とか殲滅したとかいう話だ。 その時の群れは人間の手により消滅した上にそもそも歴史ごと抹消されている、故に今ここにいるゆっくりまりさが逃げてきたのは別の群れだろう。 とにかく対策を検討しなければならない。 今のところ里が襲われる可能性を示唆しているのはこのゆっくりまりさの証言だけなので、流石に防衛体制を引き上げる訳には行かない。 せいぜい春の話の資料を手に入れて対策を練るぐらいか。 明日、里長のとこまで行って資料を貰わなきゃな。 眠ってしまったまりさは結局起きなかった。命からがら逃げてきたんだろう、全身かすり傷だらけで疲労が溜まっている様で、泥のように眠るという表現が相応しかった。 その日の夕食は窓の外に見える気味の悪いオブジェ──粉砕された巨大ゆっくりを見ながら袋麺を啜るというひどい物になった。 里長が言うには隣の里の勝利においては情報収集と初動の早さが大きな役割を果たしたらしい。 定期的なものではない為に人の少ない寄合所でそんな話が出始めた頃から嫌な予感がしていた。 頼むから偵察に行けとか言わないで下さい、せめて行かせるなら他の人にどうかお願いします、などと祈ってはいたもののその祈りは全くの無駄に終わった。 隣の里の巨大ゆっくりとの戦いの資料に、「巨大ユックリノ営巣地ヲ偵察スルトキハ、自衛ガ可能ナ者ガ望マシイ。」等と書かれており、現状で巨大ゆっくりを屠ったのは私だけだったから斥候として指名されたのは当然だろう。納得できないが。 「自衛ガ可能ナ者トハ、身体頑健デ何ラカノ格闘技ヲ修メタ者。」とか書かれており、自分は明らかに不健康で貧弱であると出来る限り抵抗してみたものの、「巨大ユックリトノ戦闘経験者ガ最モ適ス。」という記述を引っ張り出された挙句に、銃器で戦闘能力は補えると言われては両手を挙げざるを得なかった。 分かったよ。行けばいいんだろう? 皆、幸運を祈るだとか防寒対策に気をつけろよとか言いたい放題言いながらこっちを見送っていた。 畜生。このクソ寒い季節に森へ入れというのか。 ボヤいても問題は解決しない為、ヤツらの巣を探ろうとその場所を知っていそうな者、すなわちあのゆっくりまりさを取りに陣地へと取って返した。 怖いから行きたくないよとか泣き叫んでゴネるゆっくりまりさを「説得」し、準備万端整えて陣地を出たときにはもう昼飯の時間が終わる頃だった。 せっかくの昼飯を台無しにしてくれた巨大ゆっくりには必ずお礼をしてやると決意を新たにし、ゆっくりまりさの先導に従って森へと入る。 森の外は照りつける太陽光線を反射する雪が火傷するほど眩しいが、ありがたい事に森の中は薄暗かった。 光量の急激な変化についていけない目を瞬かせながら前を飛び跳ねていくまりさを注視する。 目的地に着いたのは陣地を出てから30分後だった。 斜面にぽっかりと空いた明らかに人の手で造られた穴に巨大ゆっくりが出入りしているのが見える。連中は鉱山跡を巣として利用しているようだ。 普通のゆっくりと違って連中の巨体じゃ巣を探すのに一苦労しただろう。 あの鉱山の大きさならまさにベスト・ゆっくり・プレイス。もうじきそうじゃなくなるんだがな。 双眼鏡をぐるりと巡らせて入り口の陣容を眺める。 入り口の右側に巨大ゆっくりがおり、そいつが出入りする仲間を監視していた。 あれで守らせているつもりらしい。あの巨体なら存在するだけで十分威圧感があるからだろう。 入り口を中心として半径10メートルの円状に柵が設置されているのも見える。 柵の形状から推測するに、内部で養殖しているという通常ゆっくりの脱走防止用かな。 あの大きさになると生意気にも知恵を付けるようだ。これでは中まで偵察するのは不可能かもしれない。 さて、困った。これでは連中の規模が分かりゃしない。 通常の生物なら廃棄物なりが出てくるだろうからそこから概算する方法があるが、ゆっくりという生物はコトに食物の摂取に関しては有得ないほどの効率を誇り、廃棄物を殆ど出さない事からこの手段は使えない。 歩哨の巨大ゆっくりを狙撃して強襲しようかと思ったが、流石に一人じゃ袋叩きだろうし、射撃音で気づかれたらアウトだ。 どうしようか?と話しかけようとゆっくりまりさの方を向くと、先に話しかけるまりさ。 「おにいさん。まりさのともだちをたすけてほしいよ…。」 「そうは言ってもね。あの見張りが邪魔なんだ。どうにかできないか?」 何と言うべきか、まりさは元気の無い顔からますます生気を失い、この世の終わりを表現した絵画の登場人物のような様子を見せた。 どうしたもんかな。いっそコイツを放り込んでから突入しようか?いや、せめて囮でもいいか。 できるかどうか聞いてみる価値はあるな。何せこいつは追撃から一回逃走に成功している。 「まりさ。この森の中だったらあの巨大ゆっくりから逃げきれるか?」 「ゆっ。たぶんできるよ…。おにいさん、あそこにはいってくれるの?」 「あの見張りが居なくなればな。どうだ?できるか?」 「やってみるよ。まりさがしんじゃってもなかまをたすけてね。」 囮になって欲しいと伝えると、まりさの顔に僅かながら生気が戻ってきた。 まりさ種は仲間思いのゆっくりになりやすいとは事実らしい。 こういうゆっくりは死ぬべきではないな。生き残って他のゆっくりのリーダーとなるべきだ。 黒々とした空間を見せる鉱山入り口にさらに近づいた。 こちらの姿を見張りゆっくりの視線から遮るものは子供の背丈ほどの藪しかない。 『…よし、行け!絶対に捕まるなよ!』 『おにいさん!がんばってね!』 出入りする巨大ゆっくりの姿が途絶えたところで作戦を実行に移す。 藪から全速力で駆け出すゆっくりまりさ。 「おおきいゆっくりはきもちわるいよ!ゆっくりしないでね!」 「ゆっ!?れいむのことばかにするの?ゆっくりしんでね!」 早速挑発の言葉を投げかけるまりさ。見張りゆっくりはまんまと釣られ、まりさを踏み潰そうと跳ねだした。 「ゆっくりおいかけてね!」 「ころしてあげるからゆっくりまってね!」 まりさは一瞬こちらを見た後、森の彼方、里の方向へと逃走に移る。 見張りゆっくりはその巨体が生み出す歩幅(?)によりあっという間に追いつくかと思えたが、まりさは倒木や木立の間をたくみに抜け、巨大ゆっくりを引き離しすらしている。 巨大ゆっくりは体重で障害物を踏み潰しながら追いかけるが、時々木に挟まってはマヌケな声を上げている。 これで良し。あいつが逃げている間に侵入しよう。 雪で反射された太陽光を浴びる銃剣が「白兵戦」の語源が何であったかを見せ付けるようにきらめく。 巨大ゆっくり相手では気休めにしかならない着剣した小銃を構えて突入した。 鉱山跡は不気味なほど静まり返っている。地中の適度に保温された空気が心地よい。連中は留守のようだった。 分岐が出て来るたびにその先を調べ、行き止まりであるのを確認する事5回。 6つ目の分岐先で巨大赤ちゃんゆっくりの部屋を発見した。 うん、資料にあるとおり、デカイな。普通の成体ゆっくりとほぼ同じとは…。 全員寝ているようだ。「ゅ…ゅゅゅ…」「ゅぅー…ゅぅー…」という寝息が聞こえてくる。 その幸せそうな寝顔と相まって直ちに殺戮する衝動に駆られるが、騒ぎになって親が戻るとまずい。 騒ぎになる前に始末できるような物─テルミット手榴弾は持ってきていない。 名残惜しいが赤ちゃんゆっくりの量を数えてその場を後にした。 こいつらを始末するのは後だ。 さらに奥へと進んで行き、10回目の巨大ゆっくりが掘り進んだと思わしき分岐をうんざりしながら通る。 その先の通路は巨大ゆっくり一匹分しかない。すれ違うときどうするのだろうと疑問に思いながら歩いていくと、100メートルほど進んだ辺りで急に道が広くなった。部屋に出たらしい。 部屋を見回すと、壁に掘られた幾つもの標準ゆっくりサイズの穴とそれを塞ぐ格子がある事に気が付いた。 どうやらここが養殖場らしい。 それにしては静かだな…。まさか全部食われたとは思えない、何せ『養殖場』だから。 だいいち、穴を覗き込んでみたが最近ゆっくりが形跡などは影も形も無い。 ここにゆっくりが閉じ込められていたのは昨日今日の話ではなさそうだ。 じゃあ、あのゆっくりまりさは一体…。 「おにいさん!ゆっくりのいうことをしんじるなんてばかなの?」 入り口からゆっくりが話しかけてきた。巨大ゆっくりの低い声ではない。通常サイズの声だ。 そこにいたのはさっき別れたゆっくりまりさ。なぜここに…。 「まだわからないの!?ほんとうにばかだね!おにいさんはまりさにだまされたんだよ!」 ゆっくりまりさが話し掛けてきてから3分経過した。 ゆっくりとしては驚異的なことにまだ話し続けている。曰く、まりさがどれだけ賢いかとか、巨大ゆっくりは自分の仲間だとか、人間を人質にして里から食料を奪うつもりだとか、本当に色々ベラベラ喋っている。 おしゃべりな悪党は死に易いんだがな。 「ちょっとおしゃべりしすぎちゃった!それじゃ、おにいさんはゆっくりしばられてね!ていこうはむいみだよ!」 やっと話が終わったまりさが得意げな顔で私を拘束しようと近づいてくる。 いつのまにか現れた巨大ゆっくりれいむがその後ろに続いており、口にはロープのような物をくわえていた。 通常サイズのゆっくりでは人間に力で勝つのは到底無理だから、仲間の巨大れいむに拘束させるのだろう。 さて…どうしたものか。小銃弾では3発以上命中させねばこの巨大れいむは無力化できない。 距離から言って、2発目を放つ余裕は無いだろう。1発目を当てた時点で飛び掛られて哀れ私は潰される。 悪役っぽくて嫌だが、この手しかないか。畜生。 「君はゆっくりれいむかい?とても大きいね!」 「ゆっ!れいむおおきいでしょ!」 私が話しかけると、胸を張って返事をする巨大れいむ。 ゆっくりまりさはそれが気に入らない様子だ。 「れいむ!にんげんとおはなししちゃだめだよ!はやくこいつをしばってね!」 「ごめんなさい!まりさ!いまやるね!」 まりさが叱り付けると巨大れいむは酷く怯えた顔で謝りだした。彼女の群れでの地位はそうとうのものらしい。これじゃ仲間というより手下じゃないか。 しかし、叱り付けられた巨大れいむは不満を覚えた素振りを見せず私に近づいてきた。 行動に移るなら今しかない。 「れいむ!僕を助けてくれたら美味しい物を食べさせてあげるよ!」 「おにいさんほんとうにひっしだね! れいむ!いうことをきいちゃだめだよ!このおにいさんはどうせあとでれいむをころすつもりだよ!」 「ゆっ!にんげんってばかだね!れいむがだまされるわけないじゃん!」 当然の反応だな。この程度で私を騙してここまで誘導するようなゆっくりまりさとその手下が騙される訳は無い。 なので、再び口を開く。 「れいむ!僕が君を殺すだって!?れいむみたいな大きいゆっくりにはとても勝てないからね!殺すなんてできないよ!」 巨大れいむはこの言葉を聞いて酷く動揺した。彼女にとってこの言葉は納得のできる物だからだ。 「れいむ!!にんげんはうそつきだよ!きかないではやくこいつをしばってね!」 まりさが動揺する巨大れいむをなだめようとするが、彼女の言葉を聞いても巨大れいむは動揺したままだった。 「れいむっ!!!にんげんはつよいんだよ!こいつがそのぼうでおおきいゆっくりをころすところをみたよ!!!」 「れいむ。騙されちゃダメだよ!僕がこんな棒切れでおおきいゆっくりに勝てる訳無いじゃん!」 相反する言葉を聞いて動揺の度合いを深める巨大れいむ。 暫くの間、ふらつきながらどうすべきか考えた後、彼女はどちらの味方をするか決めた。 巨大れいむが私のほうに向かっていくところを見たまりさは勝利を確信したような笑顔になったが、巨大れいむが私の横を通り過ぎ、その巨体を180度反転させてまりさのほうを睨み付けた時、彼女の笑顔は崩れた。 「おにいさんのいうとおりだよ!うそつきなのはまりさだよ!うそつきゆっくりはゆっくりしねぇ!」 「な゛んて゛ええ゛ぇぇぇえ゛ええ!ま゛り゛さ゛うそ゛つ゛い゛て゛な゛いよ゛お゛お゛ぉぉお゛ぉお゛!!!」 巨大れいむが頼もしさすら感じさせる身体を跳躍させ、まりさに飛びかかる。 勝負はあっという間についた。 まりさは踏み潰された後もしばらく叫びながら抵抗していたが、すぐに声が聞こえなくなった。 流石巨大ゆっくりだ。 「おにいさん!たすけてあげたからおいしいものはやくちょうだい!」 「そうだな。取り出すからちょっとゆっくりしててね!」 「ゆっくりまつよ!」 身体が大きくなると余裕が出てくるらしい。巨大れいむは私の言うことを素直に聞き、身体を重力に任せる楽な姿勢をとった。 ビニールの包装を施された一口サイズの羊羹を取り出し、れいむの方を向く。 「お待たせ!今あげるから口を大きく開けて舌を出してね!そこに乗せるよ!」 れいむは口をあーんと開け、おいしい食べ物を今かと待ち構える。 ビニールをやぶき、中の羊羹を舌に直接乗せてやった。 「れいむ!ゆっくり味わってね!」 「むーしゃ…むーしゃ…。」 私に言われた通り、口で何度も咀嚼するれいむ。口を動かすたびに目が垂れ下がり、頬が赤く染まっていく。 そんなにおいしく食べてもらえるなんて幸せだよお兄さん。 「しあわせー!」 食べ終わったようだ。発情してるんじゃないかという程に赤くなった表情で声を上げるれいむ。 余韻を味わった後、私のほうを向いてきた。 「おにいさん!もっとほしいよ!」 「ああ、ちょっと待ってな。」 欲の皮の突っ張ったヤツだ、予想はしていたが。 欲求に答えてやる為、再び荷物を開けた。 先ほどの羊羹とは別のところから紙で包まれた一本の羊羹に見えなくも無い直方体を取り出す。 巨大れいむはそれを見て再びあーんと口を開け、早く頂戴と視線で要求してくる。 「これも美味しいからね!ゆっくり味わってね!」 包装を解いて舌に乗せてやると、あっという間に口の中に入れたれいむはよく味わおうとなめまわし始めた。 口からはみ出した紐が何とも珍妙な雰囲気を醸す。 「ふぉにいふぁん!ふぁんふぁりふぉいひくはいよ!(おにいさん!あんまりおいしくないよ!)」 「そういうのは大人の味って言うんだ。れいむは大きいからもちろん分かるよね!」 「ひゅ、ふぉうふぁね!ふぉいひいよ!(ゆ、そうだね!おいしいよ!)」 アホか。それは食い物ですらねえよ。 それにしても口から紐が出てて食いにくくないだろうか? 「ふぉにいふぁん!ふぉっふぉひふぉふぁひゃひゃふぁお!(おにいさん!ちょっとひもがじゃまだよ!)」 「自然に生えている羊羹だからね、蔓が付いたまんまなんだよ。」 「ふぉうふぁふぉ?(そうなの?)」 巨大とは言え所詮ゆっくりか、この程度の知能らしい。 れいむが思い込みにより再び幸せそうな顔になってきたところで、紐の一端を持って伸ばしながら部屋の外へと出て行く。 部屋の中が完全に見えなくなったところで荷物からドロップ缶の上に取っ手が付いたような物体を取り出し、紐と接続。 部屋から微かに聞こえる声で、巨大れいむが未だにお楽しみ中であることを確認し、取っ手を掴んだ。 おにいさんのこと、まりさはうそつきだっていってたけど、おいしいものくれたしゆっくりできるひとだね! ようかんってあまくておいしくてしあわせー! 巨大れいむはそう思いながら渡された物体をしゃぶり、味を楽しんでいた。 最初こそ変な味だと思った彼女だが、大人の味だと指摘されるとだんだんと甘く感じるようになり、今では十分美味しいと感じるようになっている。 さいしょもらったやつはすぐにたべちゃったから、こんどはゆっくりあじあわなきゃ! れいむは噛む事すら躊躇しながら物体を舌で転がす。 最初に食べた物体があまりにも美味しかった為に思ったよりゆっくり味わえなかった後悔がある彼女は、今度こそ楽しむという不退転の決意で居た。 彼女はそれをくれた人物が部屋から消えたことに最後まで気が付かなかった。 取っ手を捻った瞬間、先ほどの部屋から猛烈な爆発音が発生、殆ど同時に部屋の入り口から黒や茶の飛沫が散弾銃のごとく噴出した。 セムテックスが巨大れいむの口内で起爆したことにより、彼女は発生した膨大な量のガスによって瞬時に膨張、次の瞬間当然の結果として破裂し、その身体の破片をあたり一面に飛び散らせた結果だった。 部屋に戻ったとき目にしたのは、壁や床、そして天井に存在する餡子をブチまけたような(実際そうなのだが)抽象芸術だった。 あまりにも斬新過ぎる芸術に目を奪われた私は、部屋をよく見回さなかったことを後で後悔する。 部屋の隅、かつて巨大れいむの一部だった餡子の山が呻きながらわずかに動いていた事に、私は気が付かなかった。 続く? 書いているうちにタイトルと内容が剥離してきた。次で何とかする。したい。 by sdkfz251 このSSに感想を付ける
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その5より 「おおおにいさん!! きょきょきょうは、れれれいむをぎゃくたいしてね!!!」 翌日、れいむは男の足音が聞こえてくるや、男の言葉を待たずして、精一杯の声でそう叫んだ。 そうでもしないと、奮い起した勇気がいつ萎んでしまうか分からないからだ。 現に、今のれいむは朝から一度も震えが止まらなかった。 しかし、言ってしまった以上、後戻りはできない。する気もない。 自分の存在意義がかかっているのだから。 「ほう、ようやくお前の出番が来たか。待ちくたびれたよ」 男はさも嬉しそうに、扉越しに声をかける。 対して、まりさとありすは、何を馬鹿な事を!! と言わんような口調で、れいむに詰め寄ってくる。 「れいむ!! なにをいってるの!! ゆっくりばかなことはいわないでね!!」 「そうよ、れいむ!! れいむがぎゃくたいされることはないわ!! ここは、まりさととかいはのありすに、まかせておけばいいのよ!!」 まりさもありすも、予想通り、れいむを止めにかかる。 しかし、ここで虐待を止められるわけにはいかないのだ。 まりさと対等になるためにも。 ありすより先に、まりさにプロポーズするためにも。 「まりさ、ありす、ゆっくりありがとう!! でもれいむはへいきだよ!! きょうは、ゆっくりしていってね!!」 「ゆぅぅ!! うそつかないでね、れいむ!! こえがふるえてたよ!! れいむがいじめられることなんてないんだよ!! きょうはまりさにまかせてね!!」 「もうきめたんだよ、まりさ!! それに、いつまでもまりさとありすにたよってばっかりじゃいられないよ!! ゆっくりりかいしてね!!」 「れいむこそゆっくりりかいしてね!! れいむがいじめられること、ないんだってば!!」 「なんといわれても、れいむのかんがえはかわらないよ!! おにいさん!! ゆっくりはやく、れいむをつれていってね!!」 埒が明かないと感じたれいむは、さっさと男に連れて行けと要求する。 いつまでもまりさやありすと話をしていると、せっかく奮い立たせた勇気が萎えてしまいそうになるのだ。 そのため、多少強引ではあったが、れいむは二匹との会話を切り上げた。 「ふふ、久しぶりに、れいむを苛め倒すことが出来るよ。楽しみで仕方がないぜ」 男はれいむの部屋の鍵を開けると、扉を開けた。 その手には、一月ぶりに見る、恒例の箱が収められている。 この部屋と虐待部屋を行き来するのに、かつて男が使っていたものだ。 れいむはそれを見るや、体が委縮してしまう。これから虐待をされるのだと、否応なしに思い知らされるのである。 「さあ、れいむ。この箱の中に入れ」 男が木箱の蓋を開けて、命令してくる。 両壁からは、突然まりさとありすの声が聞こえなくなった。 何を言っても無駄だと気づいたのだろうか? それはそれで好都合だが、いざ声が聞こえてこないと不安になってくるのも事実だ。 生物(?)の心理とは、本当に不思議なものである。 れいむが完全に入ったことを確認した男は、木箱の蓋を閉める。 そして、れいむに一言言葉をかけた。 「お前だけは、利口なゆっくりだと思っていたのに、どうやら俺の見込み違いだったようだな」 利口なゆっくり。 この場合、頭がいいという意味ではなく、卑怯・狡猾という意味であろう。 二匹に虐待を任せ、一匹気楽に過ごしていたれいむに対する皮肉であろうか? 何とでも言うがいいと、れいむは心の中で反発した。 男は知らない。 虐待されることこそが、れいむの望みであることを。 これこそが、自分がこれから生き残る上での最善の方法であることを。 虐待されることは、すなわち将来への布石なのだといういことを。 自分が勝者だとおもっているであろう男は、れいむから見たら自分に従って動くピエロのようなものであった。 男の規則正しい足音が聞こえ始めた。移動を開始したのだろう。 これから一か月ぶりに、れいむは虐待を受ける。 れいむは、再度耐えしのぐ決意を固めた。 およそ一月ぶりに受けた虐待は、予想通り、死んだ方がマシといえるほど苦しいものであった。 それでもれいむは必死に歯を食いしばり、男の責苦に耐え続けた。 悪魔の拷問ような一時間が過ぎた時、れいむはあまりの激痛に意識を手放してしまった。 それでも男はきっちり時間どおり終えて、部屋に戻してくれた。 れいむが目を覚ましたのは、翌日の朝方であった。 虐待を受けてから、丸々20時間近く眠っていたことになる。 昔は虐待を受けても、ここまで長く休息を取ったことはなかった。 やはり、久しぶりの虐待に、体が付いてこなかったのだろう。 れいむは起き上がると、未だ痛みの引かない体を引きずりながら、ドッグフードと水の置かれている部屋の隅に向かい、もそもそと食べ始めた。 まりさとありすはまだ寝ているのか、物音一つ聞こえなかった。 少し残念ではあるが、れいむももうひと眠りしたいので、好都合でもあった。 何しろ、れいむは今日も男の虐待を受けるつもりなのだから!! まりさやありすに言えば、絶対に反対されるだろう。昨日の様子を見て入れば、考えるまでもない。 しかし、虐待を一回受けた程度でまりさと対等になったなどというおこがましいことは、さすがにれいむも考えていなかった。 まりさの受けた回数と同じとまではいかなくとも、少なくとも一週間分くらいは虐待を受けなくては、まりさと同じ位置に並べない。 だからと言って、ありすがいつまりさに告白するか分からない以上、三匹で順番に虐待されるなんて、悠長なことは言っていられない。 ほんの一月前までは、毎日のように虐待をされ続けてきたのだ。 それでも、れいむは生きている。悔しいが男の加減は、それだけ正確なのだろう。 これで障害が残ったりするなら考え物だが、そんなこともない以上、れいむは今日も明日も明後日も虐待してもらわなければならない。 そのためには、まず体力を回復させることが、何をおいても重要である。 れいむは食べ終わると、再び男がやってくるまで、眠りについた。 「れいむ!! いいかげんにやすんでよ!!」 「そうよ、れいむ!! これいじょうむりはやめてね!!」 れいむが虐待される決意をしてから、一週間が経過した。 まりさとありすは、2〜3日はれいむを説得し続けたが、れいむが以前のありすのように意志を曲げないと分かると、次第にれいむの心意気をくんでくれるようになった。 しかし、それでいて二匹のこのセリフ。れいむを行かせまいと必死で止めている。 納得したというのに、二匹がれいむを止める理由。 それは、れいむがこれで一週間連続で虐待をされ続けているためである。 どんなに止められようと、れいむは虐待され続けた。 男もそんなれいむの狂気じみた様子に、何か思うところがあったのだろうか? れいむの言い分を聞いて、毎日虐待をし続けてくれた。 しかし、虐待を受けているというのに、れいむは嬉しかった。 自分の思い通りに事が運んでいることに満足していた。 れいむにどんなにやる気があろうと、目下最大の懸念は、男がれいむを指名してくれるかというものであった。 如何に自分から名乗り出ようと、れいむを心配するまりさとありすも必ず名乗りを上げてくる。 心配してくれるのは嬉しいのだが、この時ばかりは、二匹のお節介も鬱陶しいと思わざるを得なかった。 気分屋の男だ、その日の気分次第ではれいむを虐待してくれないかもしれない。まりさやありすを選ぶかもしれない。 しかし、れいむには時間がないのだ。最短でまりさと対等にならなければならないのだ。 それを男は見据えているかのように、れいむを虐待してくれる。 れいむは、すんなりと事が運ぶことに満足し、今日も虐待の痛みに必死で耐えた。 虐待が終わり、れいむは部屋に戻された。 いつもなら食事をしてすぐに寝付くのだが、今日のれいむは中々寝られなかった。 嬉しかったのだ。 れいむの目安としていた一週間が終わったのだ。 これでやっとまりさとありすに、負い目を感じることはなくなる。 まりさと同じ高さに立てる。 そう考えると、ついついニヤケ面になってしまい、体の痛みも忘れてしまいそうになる。 そんなれいむに、両隣から声が掛って来た。 「れいむ!! だいじょうぶなの!?」 ありすの声である。 余程心配だったのだろう。 れいむの企みを知らぬありすは、必死にれいむの名を呼び続けてくる。 「れいむ!! あしたはぜったいにまりさがぎゃくたいされるからね!! これいじょう、れいむがいくんだったら、ぜっこうだよ!!」 まりさの言葉。 絶交とは、温和なまりさがよく口にしてきたものである。 危なかった。ノルマが達成した後で助かったものだ。 まりさと一緒になるために頑張っていたのに、そのまりさに嫌われてしまっては、本末転倒である。 「ゆっ……わかったよ、まりさ……あしたは……まりさにまかせる…ね……」 「ゆっ!?」 今まで頑として、まりさの言葉に耳を傾けなかったれいむが、いきなり素直になったのを受け、まりさは言葉を詰まらせた。 しかし、れいむの言葉はまりさにとっても、嬉しかったのだろう。 久しぶりに、まりさの声が落ち着きを取り戻した。 「ゆうぅ!! やっとれいむが、まりさのいうことをきいてくれたよ!!」 「ごめんね……まりさ………しんぱいばっかり……かけて」 「まったくだよ!! ゆっくりはんせいしてね!!」 「ゆっくり……はんせいするよ……」 「れいむ!! あしたはまりさだけど、そのつぎはありすがいくからね!!」 「ゆっ……ゆっくり…りかいしたよ……ありす……がんばってね……」 「まったく、しょうがないわね!! あとはとかいはにまかせなさい!!」 「おねがいね、ありす……でも……そのつぎは………またれいむがいく……からね」 「なにいってるの、れいむ!! れいむはしばらくおやすみよ!!」 「そうだよ、れいむ!! あとは、まりさとありすにまかせてね!!」 「だめだよ……れいむだって……まりさとありすの……やくにたちたいよ……ゆっくりなかまはずれは……やめてね」 「ゆぅぅ……やっぱりれいむはいじっぱりだよ!!」 まりさは最後に困ったような言葉を吐きながらも、最終的にはそれを認めてくれた。 元々、れいむが虐待をされることに反対だったわけではなく、れいむの行き過ぎる行いに対して苦言を呈していたのである。 れいむがしっかりと順番を守ってくれるのなら、まりさはれいむの意志を尊重してくれるつもりなのだ。 やはり、まりさは最高のゆっくりである。 この一週間、地獄の苦しみに耐えたかいがあったというものだ。 これで、準備は整った。 後はありすより先に、まりさに告白をするだけ。 しかし、物事にはタイミングというものがある。 少しでも確率を上げるためにも、その時に告白するのがベストだろう。 あの呑気でお人よしのれいむは、この時もうすでに存在していなかった。 世の物事すべてを損得の計算で考えられるように変わってしまったのである。変わらざるを得なかったのである。 それだけこの異常な空間が、れいむを変えてしまったのである。 しかし、れいむは自分が変わってしまったことに気付きもしない。いや、例え気づいていても、どうも思わないだろう。 すでに賽は投げられたのだ。 もう振り直しは出来ない。どの目が出ようと、突き進無以外道はない。 れいむは、そのまま少しの間二匹とお喋りをし、その後すぐに意識は深い深い海の底に落ちていった。 自分の成功を信じながら。 れいむの無茶苦茶な一週間が終わり、まりさとありすを含めて、三匹でサイクルを組んで虐待される日々が始まった。 すでにまりさ→ありす→れいむと一回り虐待は終了しており、今日はサイクルが始まってから、れいむが二回目の虐待を受ける日であった。 それと同時に、れいむが例の作戦を実行に移し出すと決意した日でもあった。 今日、男の虐待から戻ってきたら、まりさに告白しよう。 れいむはそう決めていた。 そのタイミングを選んだ理由はいくつかある。 一つ目は、虐待帰りだということである。 普通に告白をするより、虐待を受け心身ともに疲れている方が、まりさの気を買えるだろうという、れいむなりの考えである。 それなら、虐待一週間を終えたすぐの方がいいのではと思うかも知れないが、これについても、れいむなりに思うところがあった。 あの場で告白してしまったら、れいむの考えを見透かされる可能性があったからである。 見透かされるとは、虐待を受け続けた理由が、まりさに告白するためだとバレテしまうことを意味する。 そんなことを知られては、計算高いゆっくりだと、逆に引かれてしまいかねない。 しかし、数日置けば、さすがにそこに結びつけることはなくなるだろう。 二つ目は、あまり悠長に構えている時間もないということである。 作戦はただ告白するだけでなく、ありすより先にするというのが根幹の部分にある。 れいむも出来ることなら、もっと時間を置きたいのだ。 虐待のノルマを達成したといっても、それは所詮れいむだけが考えていることである。 まりさからすれば、れいむなんてまだまだ苦しんでないよと感じられるかもしれない。 だからこそ、今後もっと虐待を受け続けていけば、それだけまりさに近づくことが出来るのである。 しかし、悠長に構えていてありすに先を越されてはたまらない。 そういった様々な要素を考えまとめ、れいむは今日まりさに告白することを決意したのである。 男に虐待部屋に連れてこられ、今日も虐待が始まった。 その日れいむに怯えはなかった。 いざ告白を決意しても、ちゃんとまりさに伝えることが出来るか不安でいっぱいなのだ。 それに、ちゃんと告白できたとしても、まりさがれいむの告白を受けてくれるかどうかも分からない。 その気持ちが、虐待の不安を押し退けてしまったのである。 体が虐待に慣れてきたことや、虐待内容が以前行われた事の繰り返しであるということも、れいむにあまり不安を与えない要因となったのだろう。 れいむは、虐待の痛さに必死で耐えながらも、頭の中では今後のことばかりを考えていた。 虐待は終了し、れいむは部屋に帰された。 いよいよ告白の開始である。 痛さと疲れはあるものの、ゆっくりのくせにアドレナリンでも出ているのか、れいむはそれをほとんど感じなかった。 ゆっくりは思い込みの生物であるという学説がある。 思考のすべてを今後のプロポーズに費やしたれいむは、自分が痛いということを忘れてしまい、それが体にも影響しているのかもしれない。 ある意味羨ましい体である。 と、れいむがどういうふうに切り出すか悩んでいると、当のまりさの方かられいむに声をかけてきた。 「れいむ!! ゆっくりだいじょうぶだった?」 「ゆぅ!! ゆっくりだいじょうぶだよ!! ぜんぜんへっちゃらだよ!!」 いつも通りのやり取りであるが、れいむは言葉にしてからしまったと思った。 虐待後を狙ったのは、苦しみながらも告白することで、まりさの気を最大限引き寄せる効果を狙ってのつもりだったのに、うっかりと普通に話をしてしまった。 考えに夢中で痛さを感じないのも良しあしである。 こうなったら作戦実行日を変えるか? いや、やはりそれは出来ない。 ありすがいつ告白してくるか分からないのだ。あまり時間はかけたくない。 それに、せっかく今日に計画を合わせてきたのだ。 れいむは気持ちの面でも最高潮に達している。今なら、れいむの有りっ丈の気持ちをまりさに伝えきることが出来る。 れいむは、無駄な事を考えることは止めた。 最初から出鼻を挫かれたのだ。もう怖いものなどありはしない。当たって砕けろ!! いや、砕けたくはないけど、そんな意気込みで言え!! 本心をまりさにぶつけることにした。 「まりさっ!!」 「ゆっ!? なあに、れいむ?」 「れいむは、まりさがだいすきだよ!! まりさのことを、ゆっくりあいしているよ!! れいむといつまでもゆっくりしていってね!!!!」 「!!!」 言った!! 言ってしまった!!! もう後には引けない。賽は投げられた。 れいむの愛の告白に、まりさは何も返事を返してくれなかった。 しかし、一瞬、言葉に詰まった様子を見せた。相当驚いているのだろう。 こんな場合だというのに、告白なんてしてくるんだ。無理もない。 れいむは緊張で、喉(?)が乾いて仕方がなかった。 一刻も早く、水を飲みたい。 しかし、まりさの返事を聞くまでは、なんとか我慢するつもりだった。 壁越しの告白のため、姿は見えないのだが、水を飲んでしまったらまりさに振られる気がしたのだ。 様は願掛け、気分の問題である。 30秒が過ぎ、一分が経過しても、まりさは一向に口を開かなかった。 さすがにれいむも焦りだした。 やはり、まりさはれいむのことを好きじゃないのか? れいむじゃ、まりさには釣り合わないのか? 様々な感情が去来する。 しかし、ようやくまりさが口を開いて来た。 考えが纏まったのだろう。 「れいむ……れいむのきもちはうれしいよ」 「ゆっ……」 「まりさもれいむがだいすきだよ……」 「ゆゆっ!!」 「……」 そう言って、まりさは再び沈黙してしまう。 大好きだよ。 愛の告白をして大好きを言われたのだから、普通に考えれば、れいむの気持ちを受け止めたと考えていいのかもしれないが…… その後の間が嫌な気分にさせる。 なんとか傷つけないように断る手段を考えているような気分を感じさせる。 れいむは、やはり自分ではダメだったのかと弱気になった。 しかし、次の瞬間…… 「だから!! だから、まりさといっしょに、いつまでもゆっくりしていってね!!!」 …… ……… ………… れいむは唖然としてしまった。 もう十中八九、玉砕を覚悟していた。 それなのに、まりさはれいむの気持ちをしっかりと受け止めてくれた。 れいむは、ただただ感情を整理できず、言葉を詰まらせた。 「れいむ、どうしたの?」 何も話してこないれいむが気になったのだろう。言葉をはさんでくる そんなれいむの心情に気付かないのが、まりさらしいと言えばまりさらしい。 れいむは、とにかく何か話さなければ、言葉を掛けなければと、考えを纏め上げようとしたが…… 「ゆ……ゆゆ………ゆゆ……」 「ゆっ?」 「ゆ……ゆあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁあぁぁ――――――――――――んんんんんん!!!!!!!」 「れ、れいむ!! どうしたの!!」 一気に感情が爆発してしまった。 爆発は涙となって、れいむの目から止めどなく溢れてくる。 嬉しかった。まりさが自分を選んでくれたのが。 嬉しかった。あの虐待された日々が、無駄ではなかったことが。 嬉しかった。れいむにはっきりと居場所が出来たことが。 れいむは、今までの自分の行動を振り返り、延々と泣き続けた。 「れいむ、なきすぎだよ!!」 「ゆぅ……ゆっくりごめんね、まりさ!! でも、れいむ、すごくうれしかったんだよ!!」 「まりさもうれしかったよ!! れいむがすきといってくれて!!」 「まりさ!!」 「れいむ!!」 ようやくれいむは泣きやんだ。泣きやむまで、実に10分もの時間を費やしてしまった。 れいむは水が飲みたかったことも忘れ、まりさとの話に興じ始める。 「れいむ!! いまはできないけど、けっこんしきはここをでられたらゆっくりしようね!!」 「ゆぅ!! そうしようね!!」 「それから、れいむはまりさのおうちにゆっくりくるといいよ!!」 「ゆゆっ!? いいの!!」 「あたりまえだよ!! れいむのおうちはまだできていないんでしょ? それに、れいむはまりさのおよめさんだもん!! いっしょにくらすのは、ゆっくりあたりまえだよ!!」 「ありがとう、まりさ!!」 「まりさのおうちはおっきいよ!! にんげんさんのおうちみたいにおっきいから、ゆっくりたのしみにまっててね!!」 「ゆっ!! ゆっくりたのしみだよ!! ゆっくりはやく、まりさのおうちにいきたいよ!!」 「あと、おちついたら、はねゆーんにもいこうね!!」 「ゆっくりたのしみにしてるよ!!」 人間のお家と同じくらい大きいとは、まりさも大げさに出たものだ。 まあ、所謂物の例えだろう。 しかし、れいむは「うそつかないでね!!」なんて、無粋なセリフを吐くつもりはない。 まりさは、れいむを喜ばせるために言っているのだろう。れいむだって、そのくらい分かるつもりだ。 こんな幸せなひと時を、自分から壊す必要はない。 自分の居場所が出来たばかりか、出会ったときからずっと好きであったまりさと、これからは永遠にゆっくりすることが出来るのだ。 れいむの頭の中は、まりさとの会話でいっぱい幸せいっぱいで、何にも考えられなかった。 しかし、次にまりさが言った言葉が、れいむに重要なことを思い出させた。 「ありす!! ありすも、まりさとれいむを、ゆっくりしゅくふくしてね!!」 「!!!」 そう、作戦が完璧なほどに決まったことで浮かれまくってしまい、すっかりありすのことを忘れていたのである。 れいむはなんと言葉をかければいいか分からなかった。 そもそも勝者であるれいむが、敗者であるありすにかける言葉なんて、どれも陳腐に聞こえるだろう。 裏切ったれいむの言葉なんて、都合のいい言葉としか感じないだろう。 事実、れいむの心の中は、ありすへの優越感で満たされている。 何とか考えずにいようとしても、すぐに思考の中に入り込んできてしまう。 とても甘美な麻薬のようなものだ。 れいむの口から出る言葉も、自然とありすを見下すものになってしまうだろう。 しかし、ありすへの背信行為をしておきながらも、ありすとは親友でいたい。嫌われたくない。 これもまたれいむの本音だった。 それは、勝者だからこそ持ち得ることが出来る、自分に甘く都合のいい考えである。 ありすのことを全く考えてない、自己中心的な思考である。 しかし、例えそれが分かっていようと、れいむはありすとの友情も諦めきれなかった。 それだけありすのことが好きだったのだ。 ありすは、まりさの言葉に、なかなか返事を返さない。 一体、どんな心中でいるのだろう。 自分を裏切り、まりさを手に入れたれいむに、仕返しでも考えているのだろうか? それとも、まりを諦めきれず、虎視眈々とまりさを奪う算段でも整えているのだろうか? 何とかありすに言葉を掛けなければならない。 親友でいてもらうためにも。 れいむが、なんて声をかければいいのだろうと、頭を悩ませていると、ようやく当の本人から反応が返ってきた。 「おめでとう!! れいむ!! まりさ!!」 その言葉に、特に棘があったようには聞こえなかった。 いつものやさしさに満ちたありすの声に聞こえたきがする。 心から祝福しているような気がする。 「ゆっ!! ありがとう、ありす!!」 まりさが祝福を受け、感謝の意を示す。 「けっこんしきには、ぜったいにありすをよんでね!!」 「あたりまえだよ!! ゆっくりかならず、ありすをよぶよ!!」 「ゆっくりれいむをたいせつにしてね!!」 「ゆっくりやくそくするよ!! れいむをいつまでもかわいがるよ!!」 その後、まりさとのやり取りを終えると、ありすはれいむにも声をかけてきた。 「れいむ、おめでとう!! まりさとゆっくりしてね!!」 「ゆっ……ありがとう、ありす……」 「けっこんしても、ありすとはしんゆうでいてね!!」 「ゆぅぅ……」 ありすはれいむを祝福してくれた。 そればかりか、れいむに対して、親友でいてくれとまで言ってくる。 れいむは自分でありすを裏切っておきながら、ありすの寛大な態度に居たたまれなくなった。 それと同時に不審に思った。 ありすは悔しくないのだろうか? 悲しくないのだろうか? れいむがありすの立場なら、決して自分を許さないだろう。 なのに、ありすは祝福してくる。れいむが最も望んでいた言葉をかけてくる。 腑に落ちなかった。自分に都合がよすぎる。 昔のれいむなら、その言葉に何ら疑問を抱かなかっただろう。 しかし、今のれいむは、物事を計算で見るようになってしまっている。 ありすの言い分は、そんなれいむを納得させるには、あまりにも納得の出来ない言葉だった。 折角想いに想っていたまりさと一緒になることが出来たのだ。 なのに、つまらないことで将来への希望を壊されるようなことは、絶対にあってはならない。 本当にありすは自分たちを祝福してくれているのか? 何か不穏当な考えを持っているのではないか? もしありすが何らかの手で自分を陥れようとしているのなら、何が何でも防がなくてはならない。 例え、今後ありすとの友情が壊れようと。 れいむは、ありすの真意を測ることにした。 一夜明けた翌日、今日はまりさが虐待される日である。 男はまりさを虐待部屋へと連れていった。 今がありすと話す絶好の機会である。 れいむは、ありすのいる壁際の方に行くと、真意を質すべく、核心をぶつけた。 「ありす、おきてる?」 「ええ、ゆっくりおきてるわ!!」 「ありす!! れいむ、ききたいことがあるよ!!」 「なにかしら?」 「きのうのことだよ!! ありすは、れいむにまりさがとられて、かなしくないの?」 「……」 「まりさがすきじゃなかったの?」 「……」 「れいむをうらんでいないの?」 「……」 「ねえ、どうなの、ありす!!」 れいむの問いに、ありすは中々反応を示さない。 れいむはゆっくりとありすが言葉を出すまで待ち続けた。 ようやくありすが口を開いて来たのは、一分後であった。 「……くやしいわよ!! かなしかったわよ!! ありすはまりさがすきだったんだもの!!」 ありすは、自分の隠していた感情のすべてをぶつけるかのように、大きな声で叫んできた。 これには、さすがのれいむも、少なからず動揺した。 ありすがこうまで生の感情を出してくるとは思わなかったのだ。 「それじゃあ、どうして……」 「……だって、しょうがないじゃない!! これはこいのかけひきなんだもの!!」 「ゆっ?」 「れいむは、じぶんのことをどうおもってるの? ありすのことをうらぎったとおもってる?」 「ゆぅぅ……それは……」 「さいしょはありすもそうおもったわ!! れいむにうらぎられたって!! でも、じっさいはそうじゃない!! まりさはだれのものでもないんだもの!! まりさにこくはくするのは、れいむのじゆう!! それをうけるのもまりさのじゆう!! そこのありすのはいるよちはないわ!!」 「……」 「ありすがまりさにさっさとこくはくしなかったのもいけなかったしね!! まりさのあいてが、れいむならなっとくだわ!! それに、まりさはれいむのことがすきだったみたいだから、こくはくしてもたぶんふられていたけどね!!」 「ありす……」 「だからありすはあきらめたの!! かこをふりむかないことも、とかいはのたしなみよ!! だから、れいむがきにすることはないわ!! これからもありすのしんゆうでいてね!!」 「……ありす!! ありがとう!! ありがとう!!」 「かんしゃすることなんてないわよ!! ここからでられたら、まりさいじょうにすてきなゆっくりをみつけてやるんだから!!」 「ありすならきっとみつけられるよ!!」 「ありがとう、れいむ!!」 れいむはここに来て以来、三回目の衝撃を受けた。 自分はなんて小さいのだろう。ありすと言葉を交わし、嫌というほど思い知らされた。 自分は決してそんな風に考えられない。 ありすの立場なら、絶対に嫉妬をせずにはいられない。 しかし、ありすはどこまでいってもありすだった。 優しく他人を思いやれるゆっくりだった。 本当に心の底から、れいむとまりさを祝福してくれていたのだ。 れいむは、ありすを疑ったことを悔いた。 そして、同時に感謝した。 こんな最高のゆっくりと知り合えたことを。 ありすと親友になれたことを。 「ありす!! れいむとありすはいつまでもしんゆうだよ!!」 「もちろんよ!!」 れいむは、今最高に幸せだった。 隣には愛するまりさと、親友のありす。 例え姿は見えなくても、スリスリ出来なくても、心が繋がっている。 それが感じられるだけで満足だった。 しかし、今日の幸せはそれだけに留まらなかった。 まりさが虐待を終えて帰ってきた。 それと同時に、壁越しに男からとんでもない一言が飛び出してくる。 「お前たち。今日でお前らの虐待は終了する」 「!!!」 突然の男の発言に、れいむは驚きのあまり、餡子を吐いてしまいそうになった。 何とか飲み込んで、事なきを得たが。 「ゆっ!!! ほ、ほんとうなの!?」 「ああ。飽きてきたしな。明日、部屋から出してやるよ!!」 「ゆうううぅぅぅぅぅぅぅ―――――――!!!!!」 れいむが雄たけびを上げる。 まさか、婚約した翌日に、この辛く苦しい虐待まで終わることになるとは!! 人間でいえば、盆と正月とクリスマスがいっぺんに来たようなものである。 「やったああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――――――!!!!」 遂に、遂にここから出られるのだ。 まりさとありすに会えるのだ。 スリスリ出来るのだ!! 隣では、二匹とも感無量なのか、一言も言葉を発しなかった。 「それじゃあな」 そう言って、男の足跡は遠ざかっていく。 れいむは、すぐさま二匹に声をかける。 「まりさ、ありす!! でられるんだよ!! やっとここからでられるんだよ!!」 「ゆう!! ながかったよ!!」 「やっと、ここからでられるのね!!」 「まりさ!! あしたはいっぱいすりすりしようね!!」 「ゆっ!! そうだね。れいむ!!」 「あしたがたのしみね!!」 「ゆっくりたのしみだよ!!」 れいむの頭の中には、男が嘘を付いているという考えは一切ない。 別に昔の純粋なれいむに戻ったという訳ではなく、単に嬉しすぎて頭が回らないのだ。 もっとも、男はちゃんと出してやるつもりなので、考えたところで、れいむの杞憂に終わるのだが。 早く明日が来ないだろうか? れいむは浮かれて、なかなか寝付けなかった。 その7へ
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現代設定 初投稿なので色々至らない点があるかもしれません。 チェスのルールは知ってても知らなくても多分大丈夫です。 ゴチャゴチャしててよく分からなくなってしまいました。 なんでこんな泣く子も黙る丑三つ時に山に入り森の奥深くを歩いているかというと、俺には集めなくてならないものがあったからである。 「ゆぅ・・・」 「ポーン子れいむ白」と描かれた、少し黒ずんだ麻袋の中からは、静かな寝息が聞こえてくる。 「さて、これで全てのコマを集めたぞ・・・」 俺は急ぎ足で山を降りる。 時々ゆっ、だのゆべっだの雑音が聞こえたが気にしない。 「あー、さみぃなあしかし」 相方の待っていた車にすばやく乗り込むと、後部座席に麻袋を放り込んだ。 後部座席には他にも「ポーン子まりさ黒」だの、「クイーンれみりゃ白」だの「ビショップみょん黒」だのさまざまであった。 「おー、集まったか!」 助手席の相方が、暖かいコーヒーを渡してくれた。 さっそく飲み始めながら、後部座席を眺める。 「おーおー、こりゃあ大量だなぁオイ」 ゆーゆーわめいてうるさいのか、相方が後部座席にゆっくり用ラムネをぶっかけておいた。 「おい!俺の車だぞ!」 あとで片付ける身にもなって欲しい。 とりあえず相方の家に着くと、二人係でゆっくりの入った麻袋を運び出した。 相方がかねてより用意していた大きな紙を敷く。 「おー、これが盤か、なかなか本格的じゃねえか」 「おい、とりあえずコマ作り始めるからな!」 相方がまずポーン子まりさの麻袋をあさり、適当な子まりさをつかんだ。 「ゆ・・・?ゆっ!なにするんだじぇ!くそじじi」 子まりさが言い切る前に、相方はコンロの上にフライパンを用意し、まりさを押し付けた。 「あじゅいのぜえええええええええ!!いじゃいいいいいいいいいい!」 子まりさのあんよがジュージューと音を立てて黒くなっていく。 「よし、とりあえずできたぞ!あとは頼む!」 俺は渡された子まりさを受け取り、盤に並べた。 そんな共同作業を続け、、相方の家にゆっくり達の悲鳴がこだました。 まあ、相方の家はクソ田舎の中にぽつりと建っているので、苦情などは心配しなくてもよさそうだ。 「おおおお、並べてみると壮観じゃねえか」 チェス盤が描かれている大きな紙に、ゆっくりが規則正しく並んでいる。 強いて言えば、どちらが黒駒、白駒なのか分かりにくいってのが欠点か・・・ まぁ、とりあえず良しとしよう。 もう日が昇りかけていた。 「よーし、じゃあお手製饅頭チェスで一戦お相手ねがおうか!」 相方が紙の真向かいに座る。 「おいいいいいいい!ばりじゃざまおだずけろぐじょどれいいいいいいい!!!」 ポーン子まりさが何かわめいている。やっぱり口も縫っておいたほうがよかっただろうか。 「捨て駒がゴチャゴチャ騒いでんじゃねえよ!」 「ゆぐっ・・・・!!!」 相方は子まりさの唇をひねり上げる。 「ゆーん、ゆ、ぐ・・・・ゆ!」 唇がくっついてよく話せないみたいだ。ざまぁ。 「なかなか賢い配置じゃないか・・・」 「じねええええええ!!!ゆっぐりざぜろおおおお!!」 「あまあまよこせじじいいいいいいいいいい!!!!」 「うわ、詰みか!?」 ゆっくりたちの罵詈雑言をBGMに、黙々とゲームを進める俺と相方。 なるほど、放置プレイもなかなかいいじゃないか。 「あ、このルークもらうわwww」 「うわー!くっそ!くっそ!!!」 俺のルークぱちゅりーに、相方のビショップありすの影が降りる。 「む・・・むきゅぅ・・・!やめて!やめてありす!こっちこないでええええむぎゅうぶっ!」 「ごべんなざい、ごべんなざいぱちゅりぃ・・・!」 ぐしゃり。 さっきまでぱちゅりーがいたマスには、泣き顔を浮かべたありすが鎮座している。 もっとも、そのありすのあんよの下には生クリームが流れているわけだが。 「まあいい・・・おらぁポーン完走だ!ルーク返せ!!!」 俺の子れいむポーンが、無事相手側までたどり着いた。 「わぁーったわぁーったwwwほらよwww」 相方がぱちゅりーの入った麻袋から一匹取り出すと、子れいむポーンの近くまで持ってくる。 「れいみゅがんばったからあみゃあみゃちょーだいね!いますぐでいいよ!」 何か勘違いしたれいむが、頭上に迫るぱちゅりーになにやらわめいている。 「むきゅうう!!そこをどきなさい!はやくうううう!!!」 ぐしゃっ。 ゆっくり達は、次は我が身だと恐れ喚く。 それが俺と相方のボルテージをどんどん高めていった。 ここからの勝負は、俺のチェスのコツがバレてしまうため割合させてもらうとしよう。 結局、最後まで残ったゆっくり達はもう廃ゆになっていた。 結果を言うとまぁ、引き分けだったんだ。 やっぱりゆっくりを使うとろくなことがないな!
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「はあ~~~!! 生き返るぜぇ~~!!」 露天風呂に入り、定番のセリフを口にする。 男は、休日を利用して、温泉宿に泊まりに来ていた。 今は、行楽シーズンではないこともあって、客足は少なく料金も安い。 現に男風呂には、男以外誰も入浴客はいなかった。 おそらく、女風呂も同じようなものだろう。 温泉は、人間が生んだ文化の極みだ。 肩こり・腰痛に効くのはもちろんのこと、何より精神を癒してくれる。 日々の堪った疲れも、垢と一緒に抜けていくというものだ。 男は、湯に乗せた盆から熱燗を取ると、お猪口に注いで、グイッと口に持っていった。 「はあ~~!! これだねぇ~~~!!」 一気に喉に流し、またもや定番のセリフを口にする。 温泉の中で飲む酒は格段にうまい。 一緒に持ってきたつまみを口にしては、酒を飲み、何時しか気分が高揚した男は、まだ若い身空で中年のように調子の外れた歌を口ずさみだした。 しばらく男が歌っていると、そんな調子はずれの歌が気になったのだろうか、近くの茂みで何かがゴソゴソと動き出した。 ここに来る途中、熊注意という看板があったのでもしやと緊張したが、それにしては揺れが小さすぎる。 熊でないなら、いったいなんだろう? 男は、揺れる植え込みを注視した。 「おお、カルガモか!!」 そこから出てきたのは、カルガモの親子だった。 親カルガモと計5匹の子カルガモが、植え込みから飛び出してきた。 カルガモは、川や池、沼に生息していることが多いが、あまり人間を怖がらない性格なのか、時々、温泉やプールなどでみられるケースがある。 このカルガモの親子も、そういった部類の親子なのだろう。 それにしても、何とも愛らしい姿ではないか。 親カルガモを筆頭に、子カルガモが一列になって、その後にくっ付いている。 まだ生まれたばかりなのだろうか、ヨチヨチと頼りない歩き方が、一層男の心をくすぐる。 「おいで!! こっちにおいで!!」 男はカルガモに向かって、左手に酒のつまみを持ちながら、こっちに来いと手首をふる。 本当ならこっちから出向いて捕まえたいところだが、いきなり動いたら逃げるかもしれないし、何より、あの親子愛に茶々を入れるような無粋な真似はしたくない。 そんな男の気持ちが伝わったのか、それとも手に持ったつまみが気になったのだろうか。 カルガモの親子は、男の元にやってきた。 石畳の低い所から、温泉に体を付ける。 まだ泳ぐのに慣れていないところも、とても可愛らしい。 男は、子カルガモの口元に、つまみを持っていった。 それを子カルガモ達は、チビチビと美味しそうに咀嚼する。 「ホントかわいいな」 親カルガモは、美味しそうにつまみを啄ばむ子カルガモと、それを与える男の様子を傍でじっと見ている。 男が何かしてこないか見張っているのだろうか。 出来ることなら自分も食べたいだろうが、そこはさすが大人と言ったところ。 親の責務をしっかりと果たしている。 それに、人間にしてもカルガモにしても、子供の笑顔に勝る御馳走はないと言うことなのだろう。 男は少しずつつまみを与えていったが、さすがに5匹もいると、つまみを取ることが出来ない要領の悪い子も出てくる。 そんな食べられない子カルガモが、ヨチヨチと湯に浮かべた盆に乗り込んで、つまみを食べ始めた。 「あっ、こら、おまえ!!」 男は、そんな子カルガモを降ろそうと腕を上げたが、少し躊躇った後、その手を引っ込めた。 別につまみなんて高いものではないのだ。 カルガモ達の愛らしさを見せてもらった駄賃だと思えば、むしろ安いくらいだ。 男は、他も子カルガモ達も盆の上に乗せてやった。 さすがに、カルガモ5匹では、盆も沈んでしまうので、水の中で抑えてやる。 一瞬、子を掴まれた親カルガモがビクッとしたが、すぐに男が手を離すと、興奮も収まったようだ。 危害を加えないことが分かったのだろう。 まあ、こんなところに出入りしていることもあって、人間になれているということもあるに違いない。 目の前で一生懸命食べる姿を見ていると、男のほうも楽しい気分になってくる。 こんなサプライズがあるなんて、本当に温泉に来て良かった。 男は、盆の上で一生懸命つまみに食い付く子カルガモ達を、トロンとした表情で見つめ続けていた。 「ゆゆっ!! いいものみたよ!!」 男がカルガモの親子に餌を与えている頃、植え込みの中から、その様子を見続けていた人物がいた。 いや、それは人物とは言えないものだった。 単位に匹か個かどっちを付けるか寺子屋の先生が悩んでいた、生物というか饅頭というか訳ワカメな物体。 そんな物体が、ムカつく笑みを浮かべながら、植え込みの中に消えていった。 男は一旦昼食をとり、近くを少しぶらついた後、再び風呂に入った。 手には盆を持ち、その上には大量のお菓子が載せられている。 酒のみの男が菓子など食べる筈もなく、もちろんカルガモに与えるためだ。 男は服を脱ぐと、盆とタオルを持って、風呂の中に入っていった。 今度も風呂には誰も客はいなかった。 男は、適当に浴び湯を済ませると、真っ先に露天風呂のほうに向かう。 「はあ……やっぱりいないか」 どうやらカルガモの親子はいないようだ。 まあ仕方がないだろう。あの親子だって、この温泉に住んでいるわけではないのだ。 もう今日は来ることはないだろうが、それでも男は盆を持って中に入った。 万が一、カルガモの親子が来た時、あげるお菓子を持っていなくて後悔したくない。 「あああぁぁぁぁぁ――――――!!!!」 全身から絞り出すような声と共に、大量の湯をこぼしながら、男の体が露天風呂の中に沈んでいく。 男は湯が静まる頃合いを見て、盆を湯の上に付けた。 しばらく湯に当りながら、キョロキョロ辺りを窺いつつ、カルガモの親子が来るのを待っていた。 しかし、親子は一向に来る気配は見られなかった。 「しゃーない、諦めるか!!」 仕方がないと、盆を持って露天を後にしようとした……が、その瞬間、植え込みがごそごそ動き出した。 さっきと同じく、ささやかに揺れるそれは、間違いなくカルガモだろう。 「おおっ!! また来たな!!」 男は嬉しくなって、揺れ動く植え込みを注視した。 しかし、男の期待とは裏腹に、出てきたのはカルガモの親子ではなかった。 「ゆっくりしていってね!!!」 始め、男は出てきたそれに、腰を抜かしそうになった。 植え込みから出てきたそれは、真っ黒な帽子を被った、金髪ウェーブの生首だったからだ。 しかし、その生首が「ゆっくり」と喋ったことで、男はどうにか平静を取り戻した。 そして、マジマジと生首に視線を送る。 「こ、これが、噂に聞くゆっくりって奴か……」 近年、幻想郷に爆発的に増え始めた、謎の生物と言うか物体というか、一言で言ってしまえば生きた饅頭、ゆっくり。 男の住む里付近には、まだゆっくりは住み着いていなく、見るのはこれが初めてだった。 初めて見れば、生首だと思って腰を抜かしそうになるのも無理はない。 そんな金髪帽子のゆっくり、いわゆるゆっくりまりさは、植え込みから出てくると後ろを振り返り、「ゆっくりでてきてね」と声を掛けている。 男は誰に言っているのだと興味深く見ていると、植え込みからまりさをミニチュアにしたような物体が、ぞろぞろ飛び出してきた。 計5匹。全部が、ゆっくりまりさ種だった。 「ちびちゃんたち!! ゆっくりあとについてきてね!!」 初めに出てきた大きなまりさが、5匹の子まりさに言ってくる。 見たところ、どうやらこいつらは家族らしい。 まりさ一家は、カルガモの親子のように、親まりさを先頭に石畳の上をゆっくり飛び跳ねている。 どうやら男のほうに向かっているようだ。 しかし、男は風呂に入っている。 こいつらは知能を持っているといっても、所詮は饅頭だ。 水に濡れたらふやけて溶けてしまうのではと男は疑問に思ったが、露天風呂の縁まで来た一家は、いきなり全員で帽子を取り始めた。 そして、その帽子を風呂の中に浮かべてきたではないか。 「これから、ぼうしののりかたをれんしゅうするからね!! まりさのまねしてやってみてね!!」 そう言うや、親まりさは帽子の上に乗り込むと、帽子の中から取り出した枝をオール代わりに、器用に水上を動き回った。 子まりさ達も、そんな親まりさの真似をして、少し不安げな表情を見せながらも、全員帽子に乗り込み、水上移動を始めた。 初めはたどたどしかった子供たちの帽子乗りも、次第に慣れてくると結構様になってきたのが、手に取って分かる。 「ゆゆっ!! みんな、じょうずだね!! さすがは、まりさのこどもだよ!!」 親まりさは、子供たちの様子を見て、満足そうな顔を見せる。 子供の成長が、よほど嬉しいのだろう。 男はそんなまりさ達の様子を見て、結構良いものだなと思い始めた。 最初は生首っぽくて気持ち悪いと思ったが、一生懸命枝を咥えて練習している様は、さっきのカルガモの親子に重なる部分がある。 子供達の舌足らずな口調が抜けきらないところも、男の心をくすぐる要因となっていた。 結局のところ、この男は可愛いものに目が無いのだ。 すっかり上達した子まりさ達は、親まりさを先頭に、露天風呂の中を行ったり来たりしている。 家族団欒で実に楽しそうだ。 カルガモも来ないし、どうせ湯に付けたお菓子なんて持って帰ることは出来ないので、男はこのまりさ一家に菓子を与えることにした。 「お~い、そこのゆっくりたち。今暇か?」 「ゆっ!? おじさん、まりさたちになにかよう?」 おじさんって年じゃないんだがなあと少しムッとするが、ゆっくりに人間の年齢なんて分からないだろうと、考えを改める。 まりさ一家は、人間に恐怖を感じていないのか、疑いもなく男の元にやってきた。 「お前たち、腹へってないか? 良ければ、この菓子をやるぞ」 「ゆゆっ!! ほんとう!? まりさたち、おなかすいているよ!! ゆっくりちょうだいね!!」 親まりさの後ろでは、5匹の子まりさ達も、「ゆっくちちょうだいね!!」と男たちに満面の笑顔で要求する。 そんな様子を見て、意地汚いなあと内心笑いながら、カルガモの子に与えたように、少しずつ摘まんで、子まりさ達に与えようとした。 しかし、子まりさ達は、全員お菓子を持った男の手を無視し、一目散にたくさんのお菓子の乗った盆に進んでいく。 そして、帽子から盆の上に乗り込むと、帽子を被ることも忘れて、お菓子を食い始めた。 これには、男も唖然とした。 まさか、無視されるとは思ってもみなかったからだ。 男の手からチョビチョビ啄ばむカルガモを見た後だけに、いきなり盆に突き進んでいく子まりさ達の卑しさに少し幻滅してしまった。 しかし、まあ仕方がないかと、ショックを押し隠す。 所詮、まだ子供なのだ。 花より団子。胃袋と脳が直結しているのは、人間の子供も同じことだ。 意地汚いのは何もゆっくりに限ったことではない。 男は手に持った菓子を、盆の上に戻し、子まりさ達の様子を見続けた。 「むーしゃむーちゃ!! ちあわせ~~♪♪」 擬音を声に出しながら食べたら味が分からないんじゃと思ったが、あの満足そうな顔を見る限り、そんなことはないらしい。 それにしても、旨そうに食べるのはいいんだが、実に食い方が汚い。 手足のないゆっくりの性質上、どうしても食べ物を溢してしまうのは仕方がないことだが、それにしても汚すぎる食べ方だ。 犬や猫と違って人間の顔をしているだけに、人間の浅ましさを体現したような感じを受けてしまう。 しかし、男は再度かぶりをふって、何を馬鹿なことを考えているんだと、考えを否定した。 確かに、人間の顔をしてはいるが、こいつらは人間ではないのだ。 ペットならともかく、野生のゆっくりを人間の価値観に当てはめるなんて、馬鹿もいいところだ。 しかし、男のゆっくりに対する幻滅は、これに終わらなかった。 子まりさ5匹が、盆の上に乗ってお菓子を食い荒らしている最中、初めこそ親まりさはニコニコ顔でその様子を見ていた。 しかし、次第にその笑顔も薄れていき、遂に消えてしまうと、何かに耐えているのか、水上帽子の上でプルプル体を揺らし始めた。 まるで腹痛や尿意に耐えているような感じだ。 そして、突然ピタッと体の揺れが止まったかと思ったら、もう耐えられなくなったと言わんばかりに、お菓子の乗った盆に突進していった。 「みんな、たべすぎだよ!! あとはぜんぶまりさのものだからね!!」 帽子の上から、盆の菓子を舌で器用に口の中に持っていく。 大きさが大きさなので、子まりさと違い、盆の上に乗れないのだ。 よほど食べたかったのだろう。表情が必死すぎる。 さすがに大人の口は大きく、一口で子まりさ数匹分の菓子を、一気に食べつくす。 「むーしゃむーしゃ、ぼーりぼーり、くっちゃくっちゃ!! うっめ!! めっちゃうっめ!! しあわせ~~~♪♪」 まりさの口から落ちた菓子のカスが温泉の中にこぼれ、男は慌ててそれを取って捨てた。 しかし、そんな男の苦労などどこ吹く風、まりさは気にもせずに次の菓子にと狙いを定めては、ぼろぼろ溢していく。 男は、ゆっくりとは言え、さすがにこれはない思った。 あのカルガモの親は、一切つまみに口を付けることなく、子供たちの食事をジッと見守っていた。 鳥の親ですら、その程度は出来ることだ。 なのに、この親まりさはどうだ。 最初こそ耐えていたものの、すぐに耐えられなくなって、子供の菓子を巻き上げたではないか。 しかも、横では男が湯に落ちた菓子クズを必死で拾っているというのに、そんな事に目もくれず、次々溢し続けている。 カルガモと違い、人間と会話するだけの知識はあるのだ。 男が必死でクズを捨てている姿を見たら、手助けするなり、溢さないよう努力するなり出来るだろう。 男は、親まりさを叱りつけようとした。 しかし、そんな男に割って入り、子まりさ達が親まりさに文句を言ってきた。 「おとうしゃん!! たべちゅぎだよ!! まりちゃたちよりたべてりゅよ!!」 「うるさいよ!! おかしのばしょにつれてきたのは、まりさなんだよ!! だからいいぱいたべるのはあたりまえだよ!! ゆっくりりかいしてね」 「ずるいじゅるい!!」 男が脇で見ているというのに、あろうことかお菓子の取り合いで家族喧嘩を始めてしまった。 これには、いくら動物好きで可愛い者好きの男も冷めてしまった。 百年の恋も冷めたというものである。いや、この場合、ゆっくり熱も冷めたと言うべきか。 とにかく、こいつらはもう追い出そう。 これ以上見ていると、人間の欲望やどす黒いの部分だけを見ているようで悲しくなってくる。 と、ここにきて、男はあることに気がついた。 この親まりさ。さっきこんなことを言ってなかったか。 “おかしのばしょにつれてきたのは、まりさなんだよ” どういう意味だ? ここには、泳ぎの練習に来たのではなかったのか? ここにお菓子があることを、あらかじめ知っていたってことか? 意味が分からない。 男は、親まりさに説明を求めようとした。 しかし、男が説明を求めるまでもなく、一家は言葉の意味を教えてくれた。 男が考えに気を取られている頃、まりさ達がやってきた植え込みが、再び揺れ動き出した。 そして、中からは親まりさと同じくらいの大きさをしたゆっくりが飛び出してきた。 黒髪に大きな赤いリボンをしたゆっくり、ゆっくりれいむである。 その後ろからは、そんなゆっくりれいむをミニチュアにした子ゆっくりれいむたちが、さっきのまりさ達のように飛び出してきた。 親れいむと子れいむ4匹は、風呂の石畳を飛び跳ねこちらに来ると、露天風呂の縁で止まり、こちらに声を掛けてきた。 「まりさ、ゆっくりはやくれいむたちにもおかしをもってきてね!!」 子れいむたちも、親れいむの後ろで、「たべたいよ!!」だの「まりさだけずるい!!」だの、頬を膨らませながら怒っている。 男は訳も分からず、まりさ達とれいむ達を見比べていた。 まりさはと言うと、れいむがお菓子を持ってきてと言っているにもかかわらず、言うことを聞こうとしない。 そればかりか、あろうことか帽子の上かられいむたちを嘲笑するような笑みを浮かべ反論する。 「なにいってるの、れいむ!! このおかしは、ぜんぶまりさのものだよ!!」 「どういうこと、まりさ!? おかしをもってきてくれるっていったのに!!」 「おかしがほしかったら、じぶんでここまできてね!!」 「なんでそんなこというのおおぉぉぉ――――!!! おじさんがおかしをくれることをおしえたのは、れいむなのにいいいぃぃぃぃ―――――!!!」 「おじさんがおかしをくれたのは、まりさたちがかわいいからだよ!! れいむのおかげじゃないよ!!」 「ぞんなあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――!!!!!!」 まりさはそんなれいむを一蹴すると、再びお菓子に食らいついた。 子まりさ達も、れいむ達に一瞥をくれると、「ゆへっ!!」と鼻で笑い、親まりさに負けじと菓子に食らい付く。 来れるものならここまで来てみろと、言っているかのような表情だ。 一方、親れいむと子れいむは、風呂の縁から怨念の籠った視線と、罵倒を繰り返す。 「うらぎりものおおぉぉぉ――――!!!」とか「ゆっくりしねええぇぇぇ――――!!!」と、実に口汚い。 この一連の行動を見て、男は事のすべてを把握した。 つまり、こいつらは男を利用したのだ。 おそらく、この親まりさと親れいむは番いで、子まりさと子れいむはこいつらの子供なのだろう。 れいむの言葉から察するに、れいむは男が午前中にカルガモの親子につまみを与えているのを見ていたのだ。 それを親まりさや子供たちに伝えた。 そこで、れいむとまりさのどちらの考えかは知らないが、カルガモの親子のマネをして、男からお菓子をかすめ取ることを思いついた。 れいむは水に入ることが出来ないので、まりさが子まりさを連れだって男から菓子を貰い、後でお菓子をれいむ達の元に持ち運ぶ。 おそらくそういう算段だったのだろう。 男にお菓子をもらうまでは、無事成功した。 しかし、ここでれいむとまりさに相違が発生した。 まりさ達は、お菓子のあまりの美味しさに心を奪われ、れいむたちに持ち帰ることを止めたのだろう。 そして、植え込みの中からその様子を窺っていたれいむ達は、なかなか持ってこないまりさ達に業を煮やし飛びだしてきた。 細部は違うだろうが、これが一連の流れで間違いあるまい。 男は、急激に目の前の物体に腹が立ってきた。 そんな騙すような真似をしなくても、菓子が欲しいと素直に言えば、男はあげることに躊躇はしなかった。 それを、人の善意に付け込むような真似をしたばかりか、あろうことか、家族を裏切るような醜い光景まで見せられた。 カルガモの親子愛の感動も、このゆっくり一家の態度ですべてぶち壊しだ。 もうゆっくりには一生関わりたくない。 男はタオルを手に取ると、露天風呂から立ち上がった。 「ゆゆっ!! じめんがぐらぐらするよ!!」 男が立ち上がったことで、湯が波立ち、親まりさや子まりさを乗せた盆が安定しなくなる。 まりさ達は、突然襲われた揺れに驚き戸惑っていた。 周りは広大な露天風呂。落ちれば命はないのだ。 「こ、こわいよおおぉぉぉ―――――!!!」 子まりさ達は、必死で盆にしがみ付いて、波が収まるのを待った。 男は、そんなゆっくり一家に構うことなく、内風呂のほうに向かった。 どんなに腹立たしくても、自分の手で傷め付けるようなことはしたくない。 しかし、嘘をつき利用した報いはしっかり受けてもらうつもりだ。 それは時間が経過すれば、いずれ訪れる必罰である。 せいぜいそれまで至福の時を味わうがいい。 男は最後に一家を一瞥すると、露天風呂を後にし、二度と戻って来なかった。 後編へ? 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注意! ※この作品にはゆっくりしか出てきません! ※作風柄、虐待描写はありません! ※賢いゆっくりが出ます! ある所に、広く資源に恵まれた島があった。そこは、周りが海に囲まれており、全くの無人。 そんな島にある日、数個の影が舞い降りた。 『『『『うー!うー!』』』』 うーぱっくである。運んでいたのはもちろん…… 『ありがとうね!うーぱっく!』 『おれいはそこにはえてるおやさいをもっていってね!!』 『ここはほんとうにとかいはなゆっくりぷれいすね!!』 内訳はゆっくりまりさ、れいむ、ありす、ぱちゅりー、みょん……ゆっくりである。 捕食種を除いたスタンダードな種がそれぞれ一匹ずつだ。 それぞれが、新天地を目の当たりにしてゆっくりしている。 彼女らは以前、他のゆっくり同様に山で暮らしていたが、人間による開発によって居場所を奪われてしまった。 そんな節に、先程のうーぱっく達に出会い、この島のことを聞き出したのだ。 『ゆゆ!まりさたちをそのしままでつれていってほしいんだぜ!!』 群れのリーダー格であるゆっくりまりさが頼むと、運ぶことが生きがいのうーぱっくである。 快く承ってくれた。そこは話に聞くよりも広く、食糧、寝床の洞窟、その他資源もろもろ……何一つ足りないものは無かった。 それに加え、何よりも魅力的なのが 『みてよまりさ!ここのしまはどすたちにまもられているよ!!』 『むきゅ!さいこうのゆっくりあいらんどね!!』 島は海岸、森、山から成っていた。今ゆっくり達がいるのは、山の頂上の開けた草原である。 そこの四方にそれぞれ祭壇の様なものがあり、そこにドスまりさを模した石造が建っていた。 こんな何から何までゆっくりのために設えた様な島だ。気に入らぬ者などいるはずもない。 『さっそくおうちをつくってゆっくりしようね!』 『きょうはいどうでつかれたから、あしたからたんけんするんだぜ!!』 リーダーまりさを筆頭に、補佐役のぱちゅりーなどが指示に当たった。すぐに巣の目処が立った。 この草原の四方、例のドス像のそばにそれぞれ一つずつ穴が開いていた。 入ってみれば、なんと穴は全て中で繋がっており、ちょうど草原の中央部に当たる場所まで開けている。 さらに驚くべきことは、地下であるにも関わらず外と変わらぬ草が同量生えている。 石造りの台座には、こんこんと清水を湛えている。 さらには燭台まであり、ヒカリゴケにより、優しい光に照らされている 雨水の侵入を防ぐ入口を塞ぐためのフタもある。 もうここだけで一生分ゆっくりできるんではないかという程の環境であった。 『ゆがーん!』 『ほっほんとうにすごいゆっくりぷれいすなんだぜ……』 『むっむきゅっきゅきゅきゅ』 反応の仕方はそれぞれ違えど、みんな初めて喜びの感動にショックを受けていた。 それからの生活はまさにゆっくり達の理想を絵にした様なものであった。 海のど真ん中にある島のため、天敵となる野生動物はいない。 食べ物である草や果物は無尽蔵に群生している。 何よりあの自然を破壊し、平穏を乱す人間がいないのだ。 唯一気掛かりがあるとすれば…… 『こんなにゆっくりしているのになんでどすはないているんだぜ?』 いつだったか、豪雨によって数日閉じ込められた時のことである。 もちろん、その間に不自由したことは無い。 元からある蓄えに加え、食糧をため込んでいたし、ゆとりを持っていた。 普段は震えて過ごすこの雨も、いまでは愉快で軽快な音楽に聞こえていた。 雨上がり、リーダーまりさが先立って外に出た。 その時に、ふとドス像を見るとなんと涙を流しているのだ。 当初は驚いたが、なんてことは無い。 像の帽子部に水が貯まるようになっており、鍔を伝って目から涙を流す様に見えているのだ。 見回ってみれば、四方の像の全てが泣いていた。 その涙は台座の隙間に吸収され、一種のダムとなっており地下の台座へと繋がっていることが後に分かった。 『このきをきってむすべばいかだになるんだぜ!』 『えだにはっぱさんをはればおーるになるわ!!』 ゆっくり達は生を謳歌し、すくすくと育ち、自然とのふれあいから知恵をつけた。 昨日は木と木を擦りつけて火を起こす道具を作った。その前は釣り竿。 そして今日はいかだを作った。少し島から離れた場所で釣りをし、収穫も上々だ。 明らかに、他の群れとは違う進歩の仕方をしている。 障害が極端に少ないため、全身全霊をかけてゆっくりすることが出来る。 もっとゆっくりしたい! こうすればゆっくりできるよ! むきゅ!このつたはべんりよ! どうぐをつくろうね! おりょうりをおぼえたわ! まらっ☆ちーんぽ!! それからもゆっくりし続け、だんだんと数を増やしていった。 比例するように文化が発達していき、今では生簀をつくり魚を保有するまで至った。 ゆっくりの寿命というのも、環境次第の様である。 第二世代、第三世代と続いても、最初の群れの誰一人欠ける事無く過ごしている。 ある日、リーダーまりさはドスまりさへと成長した。 『どすがいるかぎり、みんなをもっとゆっくりさせるよ!!』 まず手始めに、増えた仲間のために、森を切り開き、整地し、新たな巣を作った。 『ごはんももっとひつようになるね!』 うーぱっくに頼み、数個の羽化寸前の鶏卵を取り寄せ、家畜として飼い始めた。 『もっとべんりなどうぐをいっぱいつくろうね!』 獲物を確実に捕えるため、捕食種も撃退可能な武器を作った。 嵐が来ない限り、転覆しない遠泳漁の船を開発した。 もっともっと! まだまだ! さらにさらに! ………… ドスが思いつく限りのゆっくりを提供した。最早、自分が出来ることは見守るくらいだろう。 既に自分以外の第一世代ゆっくりは、みな天寿を全うした。あの若かりし頃が懐かしい。 そういえば、何で人間はあんなにゆっくりできない生き物なんだろう…… ドスまりさは海岸から夕陽を眺め、一方的な優越感に浸り、微笑みを湛えていた。 『どすももうつかれたよ』 ドスまりさはゆっくりとした生涯ここで終えた。 ゆゆ?どす~どこ~!? かいがんでねてたわよ? どすのぞうがあるんだぜ! うるさいな……どすをよぶのはだぁれ? あれ?うごけないよ? そうか、どすはしんじゃったんだね。 でもむれのみんながみえるよ。 こえもきこえる……みんな、もうすこしだけどすにみまもらせてね!! 第二世代のゆっくり達がドスの不在に気付いた。 それを受け、第三世代のゆっくり達が海岸で探していたところ、新たなドス像を見つけた。 みんなは直感的に、これが今まで自分達を導いてくれたドスであると分かった。 今までありがとうと礼を述べている。 『こんなところでのざらしにしていたら、どすがかわいそうだよ!』 『むきゅ!そうだわ!やまのうえのどすぞうにくわえてあげましょ!!』 『そうすればどすもゆっくりできるね!!』 そこで、ドス像をどう運ぶかが議論された。結果はすぐに出た。 まずは木を伐採し、ドス像が乗る程度の板を作り、それに乗せる。 それからまた木を伐り、“コロ”として板の下に入れては引っ張りを繰り返すという方法だ。 海岸から山頂の草原まではキッチリ整備されていたし、置く場所も四方のドス像の真ん中に決めた。 『『『ゆーしょ!ゆーしょ!』』』 『 おちびちゃん!はやくころをもってきてね!!』 『ゆっくちりかいちたよ!』 群れ総出で作業したおかげか、半日程で全ての工程を終えた。 結果は大成功! その後、みんなでこの日を何かの記念日にして、ドンチャン騒ぎした。 新たにリーダーとして任命されたのは、ぱちゅりー種である。 生前のドスから最も知識を受け継いだとされているからだ。 『むきゅ!どすのときとおなじようにすればしっぱいしないわ!!』 確かにやることは何から何まで真似ていた。 しかし、何か変じゃないか? どこかで間違えた!? いいやそんな訳が無い! ドスと同じことをしているんだ!! それからしばらくしてから、過ちに気付いた。 『どぼじできさんがぜんぜんないのぉぉぉおおお!?』 『くだものさんもみんななくなってるんだぜ!!』 『おながぢゅいだよぉぉぉおおお!!』 結果を言ってしまえば、島から植物という植物がごっそり無くなってしまった。 事の始まりは、ドス像を運ぶために大量の木を伐採したことから始まった。 以前までは、ドスが植物の再生するまでを計算したギリギリのラインで伐採していたのだ。 木材としての木が無くなれば、作物の木を代用し、食料の供給源を無くしていった。 漁に出よう! 船が故障してしまった。直すための材木はどこ? 狩りをしよう! 獲物となる動物はどこ? うーぱっくに頼んで運んでもらおう! 払う報酬は何? 八方塞がりとなって、ぱちゅりーは誤りに気付いた。 しかし、時すでに遅し。 『ごべんばざい゛い゛い゛ぃ゛い゛い゛い゛い゛!!』 『ゆ゛る゛じでぇ゛ぇ゛ぇ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!』 『どぼじでぇ゛ぇ゛ぇ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!?』 『どずどおなじごどじだだげだのに゛ぃ゛ぃ゛い゛い゛い゛い゛!!』 『ゆ!うるさいよ!!むのうなりーだーはしね!!』 『まえまえからいばってるおまえがきにいらなかったんだぜ!!』 『りぇいむをゆっくちちゃちぇにゃいむにょうはちんでね!!』 リーダーぱちゅりーとその家族は公開処刑された。 群れのみんなから投石の雨を浴びて、物言わぬ死体となった。 これで、群れの一応の溜飲は下がった。 しかし、それからは、殺伐とした生活が始まった。 『やめてね!そのにわとりさんとひよこさんはれいむのぶべぇぇええ!!』 『うるさいんだぜ!まりささまにたべられたほうがこいつらもしあわせなんだぜ!!』 自分の家族以外はみんな敵、戸締りをしていないと家畜を奪われた。 『ちょうどいいんだぜ!おまえのかぞくをまびきしてやるんだぜ!!』 『わがらにゃぁじゃべちゅびゅうぶうううう!!』 『ぢっぢんぼっぢんぼぉおおおおおおおおおおおお!!』 『ぺ~ろ♪ぺ~ろ♪しあわせ~なんだぜ!!』 間引きと称し、子供を殺されて食べる者。 『んほぉぉぉぉおおおおおおお!すっきりー!!』 『びっびやだぁああああ!!ずっき゛り゛ぃ゛い゛い゛!!』』 混乱に乗じて、己が欲望のままに動く者が現れた。 ものの三日間この阿鼻叫喚は続いた。 そこに残ったのは、たくさんの死体と一匹のゆっくりだ。 『どずぅぅはやぐばりざざまをだずげろぉぉ!ごのやぐだだずぅぅうう!』 生き残りのまりさは既に満身創痍、死ぬのも時間の問題だろう。 恐らくは、最後の力を振り絞って中央のドス像へと呪詛を吐いている。 ドスは像となってから、今までを一部始終全て傍観していた。 こいつらはなんだ? こんなのゆっくりじゃない! じゃあなに? まてよ……どっかで見たことがあるぞ…… そして一つの答えに辿り着いた。 そうか…… どすはじぶんでゆっくりをゆっくりできなくしてしまったのか…… そう解釈すると、空から水滴が落ちてきた。 ポツリ……ポツリ…… 『あべざん!?ふらだいでね!ゆっぐりやんでね゛!!』 パタ、パタ、パタ 『ふるだっでいっでるでじょ!?ばりざざばのいうごどが』 ザ、ザーザー 『ぼがど…がら…りざだげ…………』 バシャバシャバシャバシャ!! 『――――――――』 最後の生き残りの声が聞こえなくなった頃、残されたドス達は涙を流していた。 後書き どうもお久しぶりケラ子です。 以前スレを覗いたとき、シリーズものの風潮がよくないよう見えました。 だからと言うわけではないのですが、リハビリがてら新たに書き下ろしてみました。 何か作風の幅がありませんかね? ちなみに、この作品は、実在する島の話をモチーフにしました。 分かる人はいるのかなぁ…… byケラ子 ケラ子の作品リスト ゆっくりいじめ系509 紅い弾丸 ゆっくりいじめ系601 ある新人ゆっくりーだーの話(前編) 制 無 ゆっくりいじめ系647 ある新人ゆっくりーだーの話(後篇) 制 共 無 ゆっくりいじめ系711 ある植物型奇形妊娠の話 ゆっくりいじめ系748 ある動物型奇形妊娠の話 ゆっくりいじめ系807 あるロボットゆっくりーだー達の話(前編) ゆっくりいじめ系844 あるロボットゆっくりーだーの話(後編) このSSに感想を付ける
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俺とゆっくりの話 2の続きです 善良なゆっくりがいます 注意 「ふふふ…れいむ、いままりさがすっきりさせてあげるからね…」 「Zzz…Zzz…」 ゆっくりとれいむに忍び寄るまりさ しかしもう少しというところで後ろの戸が開いた 「ゆゆっ!?」 「なんだおまえ、まだ起きてたのか?」 あのおじさんだった、なんで寝てないんだよこの腐れほもさぴえんすが 「すこしねむれなかっただけだよ!!おじさんはまりさとれいむをあんみんさせてね!!」 「眠れないんだろ?俺も仕事がひと段落したんだが眠れなかったんだ、少し話でもしようぜ」 「…いいよ、でもたのしくなかったらすぐねるからね」 その人間は何個か飲み物とお菓子のようなものを持って来てまりさに進めた まりさはもしかしたら毒が入っているかも…と考えたが自分はこの家で一番偉いれいむと夫婦の関係だ、その自分を殺すことはないだろう… その時のお話の殆どはこの人間の仕事の愚痴とかだった 正直そんな話をまりさが聞いても面白くない、だが出されたお菓子は美味しかったので黙って聞いた 「そんなにいやならしごとなんてやめればいいんだよ…」 すこし眠くなってきたまりさが言う 「そうもいかん、仕事をしないと俺もれいむもお前もゆっくりできなくなるからな」 ゆっくりするためにゆっくりできない「仕事」をする?まりさにはますます理解できない だがさいごに人間の言った言葉だけは理解できた気がした 「お前は俺が嫌いだと思う、俺もお前は嫌いだ、でも俺はお前に死んでほしくない、だから早く人間のルールを覚えてほしい、俺のためでもお前のためでもない、れいむのためにな」 結局人間より先に寝てしまいれいむとすっきりできなかった 次の日、人間は仕事に行った 今がれいむとすっきりするチャンスだ だがれいむにさそわれて散歩に出かけている今、すっきりすることはできない、さすがに草すらない路上ですっきりするのはためらわれた 「れいむぅ!たすけて!!たすけてね!!」 その時一匹のちぇんが飛び出してきた、しかも帽子がない まりさはとっさにれいむをかばい、ちぇんを攻撃した 「だめだよ!!かざりのないゆっくりできないちぇんはゆっくりどっかいっt「だめだよ!!まりさ!!」」 なぜだれいむは止める?自分は飾りのないゆっくりできない奴を追い出そうとしただけなのに? 「どうしたのちぇん!!これじゃあどのちぇんかわからないよ!!」 「わからないちぇんはゆっくりでていっt…「うるさいよ!!!!」」 しかも怒鳴られた、こんなに怒鳴られたのは初めてだ 「やせいのちぇんのかぞくにぼうしをとられたんだよ、よくわからないよ…」 このちぇんはシルバーバッチを持つちぇんだ、飾りをなくしたら人間かゴールドバッチを持つゆっくりの所に行けばいいことは知っている 「ごめんねちぇん、ちょっとおしりみせてね!!」 ちぇんのおしりにはバーコードのような模様が焼き付けられていた、れいむはこの模様が本物だと理解した 「じゃあちぇんはゆっくりついてきてね!!いっしょにかこうじょにいこうね!!」 「かかかかこうじょーはだめだよ!!ゆっくりできないよぉ!!」 「だいじょーぶだよ!ゆっくりできないのはわるいゆっくりだけだよ!!」 まりさはいきたくなかったがれいむはみょんを連れて加工場まで向かってしまった 仕方なくまりさもついて行くことになった 加工場まで来たれいむはゆっくり専用入り口で係員を大声で呼ぶ、係員は一瞬怪訝そうな顔をしたがれいむがゴールドバッチをつけているのを見るとすぐに笑顔になった 「どうしたんだい?」 「このちぇんが帽子を取られちゃったみたいなの!!」 「おにいさん!ちぇんのぼうしをつくってほしいよ!わかってねー!」 「はいはい、わかったよ、10分程まっててね!」 そう言って係員はちぇんを抱えて奥の部屋へと消えていった このときまりさは理解した、れいむは帽子のないゆっくりを助けてあげると言って加工所に引き渡したのだ 加工所に子供を売る(もしくは自らを売る)ことでお菓子をもらって飢えをしのいだという話もある、さすがれいむだ、自分の妻になるだけあって頭もいい 「さすがだね!れいむ!!ちぇんをうっておかしにするなんてれいむはあたまがいいね!!」 「なにいってるの!?まりさ!!だいじななかまをうったりはしないよ!!」 「ゆ?」 しばらくたってさっきのちぇんが帽子をつけて出てきた 「ゆっくびっくりぃ!??!?!?!???!ぱぴぷぺぽろろっか!?!?!?!?」 このとき、まりさの餡子脳は完全に破壊された 加工場がゆっくりを助けた、れいむは帽子のないゆっくりを攻撃しようとしなかった 何もかも理解できない ちぇんがれいむと加工所の職員にお礼を言っている、そんなのはどうでもいい ここは加工所だ、それは間違いない、なのになぜあの人間はれいむに優しく微笑み、ちぇんの帽子を作ったのか? ありえない アリエナイ ソウカ、ヤットワカッタ、アイツラハユックリジャナインダ… 「ゆゆゆゆゆうふふふのうかりんにかっちゃったぁ!」 まりさが体内のぺにぺにを戦闘準備させ、れいむにおそいかかる 「やめてね!!まりさ!!どうしたの!?」 だがまりさは止まらない、あわててれいむは加工所の職員の後ろに隠れた 「うふふふふふぎゃあ!!」 職員の足にぺにぺにを突き刺さん勢いで突撃するまりさ まりさのぺにぺには真っ二つになった 「ふんじゃらhf8うえghvsばvsじゃヴぁjhvばhscぺにぺにますたーすぱーくっC言語!!!」 そんな言葉を残し、ぺにぺにから精餡子を噴き出しながらまりさは絶命した 俺が仕事から帰ってすぐ、加工所の職員がれいむを連れてやってきた れいむはふさぎこんで一言もしゃべらなかったが加工所の職員から大体話は聞いた、そしてその理由も 最近分かったことでまだ市販の飼育書にもほとんど乗っていないことだが野生のゆっくり(特に一番生意気な亜成体)がゴールドメダルをもつ飼いゆっくりと一緒にいると壊れることがあるらしい 詳しい話だと野生ゆっくりの常識では考えられない行動を飼いゆっくりがとり続けるため餡子が一時的に麻痺し、気絶してしまう そのご何らかの結論を出すことができれば復活するが多くは精神的に壊れてしまうらしい しかし壊れてもれいむとすっきりしようとするとは…やつは真剣にれいむを愛していたんだろうな… そのご、れいむは三日間、何も食べようとはしなかった。まりさは自分が殺したという罪悪感が募っていたのだろう 日に日に痩せて行くれいむが心配になった俺は今日も食べようとしないなら無理やりにでも口に入れてやろうとした だがその日れいむに助けてもらったというちぇんがお礼を言いにやってきた、帽子に金色のバッチを付けて ちぇんに励まされ、何とかれいむは持ち直すことができた いまではれいむとちぇんは夫婦として仲良く暮らしている、とはいってもお互い飼い主がいるから毎日一緒に遊んだりお泊りしたりする程度だが… ちなみに野生ゆっくりまりさの間に「かこうじょにいくとむりやりぺにぺにからすっきりさせられてころされてしまう」といううわさが流れ加工所をより一層怖がるようになったのはただの余談である あとがき なんか最後、いろいろ狂ってる内容になった やっぱ自分は戦争もの書いている方がいいのだろうか? 8月19日 2209 セイン このSSに感想を付ける