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【元ネタ】史実 【CLASS】アーチャー 【マスター】 【真名】リュドミラ・パヴリチェンコ 【性別】女性 【身長・体重】172cm・59kg 【属性】秩序・中庸 【ステータス】筋力E 耐久D 敏捷E 魔力E 幸運B 宝具D 【クラス別スキル】 対魔力:E 魔術に対する守り。 無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。 単独行動:B マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。 ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。 【固有スキル】 気配察知:B 敵の気配を察知する才。 周囲の生命体、霊的存在の位置を捕捉可能。 このランクならば数百mの範囲を容易にカバーする。 気配遮断で存在を隠匿していても判定次第で見破る事が出来る。 気配遮断:C サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。 完全に気配を断てば発見する事は難しい。 指南の心得:C 数々の英雄を育て上げた者が得るスキル。指導者としての手腕。 ランクCなら自らの持つ技能であれば習得させる事が可能。 ただしその習熟度は自らの物を上限に、相手の才能に大幅に左右される。 パヴリチェンコは狙撃術の他、遊撃技術を取得している。 【宝具】 『心象の狙撃手(スナイペル・ボルザーヤ)』 ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1~90 最大捕捉:1人 実戦の中で開花した、パブリチェンコの狙撃手としての才能。 知覚した相手の心象を自らの物と重ね合わせ、その内情を覗き込む。 あくまで狙撃手の勘と観察力による物であるため初見の相手に対しては成功し難いが、 自らと同じ行動原理を持つ相手に関してはその限りでは無い。 【weapon】 『トカレフSVT-40』 アーチャーが使用するソビエト製の半自動小銃。 狙撃銃としては比較的軽量であり、女性スナイパーに愛用された。 【解説】 二十世紀前半のソビエト連邦の女性スナイパー。 対独戦において従軍し、オデッサ市やセヴァストポリ要塞などで活躍した。 戦争後期には上層部の命令で一時後方に下がり、女性スナイパーの教導に勤めた。 当時はまだ同盟国であったアメリカを訪問し、ホワイトハウスで大統領に面会した最初のソ連人になった。 この後、アメリカ海兵隊にも狙撃術を教導したと言われている。 偽装迷彩によって敵兵士をやり過ごし、後方からの長距離狙撃する戦法に長けていた。 記録される戦果は309名とされ、これは女性スナイパーの世界記録でもある。 狙撃手を逆狙撃するカウンタースナイプに優れており、先述の戦果のうち36名は狙撃手である。 【出演SS】 大祖国聖杯戦争
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―――サーヴァントを狩り殺す。 そして自分の願いを叶える。 全ては自分が騎士(じぶん)であるために。 彼の思考にあったのはそれだけだった。 純白の鎧は闇夜の中でもなお明るく輝き、凄烈な闘気は何も寄せ付けぬ雰囲気を発していた。盾と剣を持つその青年は、顔色一つ変えずに道を急いでいる。 ―――第四次聖杯戦争に招かれ、それから十年以上を現世で過ごす英霊。 ブリテンにおいてその名声を轟かせた世界で最も偉大な騎士。 サー・ギャラハッド。 それが彼の名だった。 「……出てきたらどうだ」 誰もいない闇夜に向けた言葉は、二人分の言葉で返された。 「奇襲しかけようとしたけど、失敗かよ。しゃあねえ。クイック・デッドといこうかね」 「私としてはドッグ・ファイトでもいいがな」 出てきたのは黒いテンガロンハットをかぶった金髪の男と、飛行服を着込んだ男。 英霊二騎。それを前にしてもギャラハッドは揺るがない。 むしろ、好機とばかりに剣を向けた。 「アーチャーとライダーですか。丁度いい。あなた方には死んで頂く」 殺気に人を殺す力があれば、彼等は百度は死んでいるだろう。 しかし、彼等は自然体を崩さずに立っていた。 「俺に死ねって言った奴らはとっくに墓の下でおねんねだぜ。チェリーボーイ」 アーチャー―――かつて、ビリー・ザ・キッドと呼ばれ、新大陸で悪名を轟かせたアウトローは少しも慌てずに、銃を引き抜いた。その場の誰にも知覚できない疾さで。 「頼まれて自殺するようなら、私は千度は死んでいるよ」 ライダー―――かつて、ソ連人民最大の敵と名指しで呼ばれた空の魔王の背後に、彼の愛機であったJu87が顕現した。 「音に聞こえた早撃ちの技とこの時代の騎士が乗る馬ですか。しかし円卓の騎士に挑むには役不足では?」 「知るか」 38口径の銃弾が火花を散らしながらギャラハッドに去来する。それを彼は盾で受け止めた。 ―――戦争、開始。 上空からは舞い上がったJu87が弾雨を降らせ、地上ではアーチャーが的確に弾丸を当てていく。 ―――しかし、 「おいおい、これだけ撃ち込んで顔色一つ変えねえのかよ。マジで化けモンだな」 痛みは生きる上で必要な機能ではあるが、戦いにおいてはそれが邪魔になる。 動きは鈍り、気合いを乱され、時にショック死すらあり得る。 だが、ギャラハッドにある聖霊の加護は痛覚を与えない。文字通り戦うために生まれた存在だ。吶喊してきたギャラハッドを銃弾で迎撃する。ギャラハッドがそれを盾で受けた瞬間、しかし。 「ばーか」 新たに発射した銃弾が鎧の隙間を襲撃し、血と肉片を散らした。 「小癪な!」 剣を突きの形に構えると、そのままアーチャーの頭部を狙う。 「いいのかい?クラウツのおっさんがおめえをミンチにしちまうぜ?」 ギャラハッドが筋肉の断裂で一瞬動きを止めた、ほんの一瞬。 上空からはかつて悪魔のサイレンと呼ばれた急降下爆撃の騒音が響き渡っていた。 「アメリカ人と同盟を組んでイギリスの騎士を倒すとはな」 複雑な心境に反して、今次の戦争でライダーとして召喚された彼の腕は冴え渡っていた。 思えば、あのサーヴァントは気にくわない。 何度やめろと言っても自分をキャベツ野郎(クラウツ)と呼ぶ。 作戦もへったくれもなく敵に突撃して本人曰く喧嘩を楽しむ。 衛宮士郎や間桐慎二を無理矢理引っ張ってキャバレーで飲みまくる。 自分だって生きていた頃は命令に従わなかったことはあったが、それでもあいつと比べれば可愛いものだ。 気にくわないだらけの男だが、それでも信じられる。 奴に銃を持たせれば、地上最強だ。 「そして、私がこいつにのっていれば地上も上空も最強だな」 そして、空の魔王は地上の敵を噛み砕くべく突撃した。 『空の魔王(カノーネン・フォーゲル)』 アーチャー曰く、「爆弾のばらまき」は、爆炎と大音響で剣の英霊を包み込んだ。 ひゅい。 炎の一点を見続けるキッドは興奮を抑えきれない様子で口笛を吹いた。 「やるじゃねえか」 ギャラハッドの姿は正に満身創痍だ。 全身に火傷を負っている。 片眼は潰れている。 鎧は砕け散って、鍛え抜いた身体が露出している。 だが、それでも、ギャラハッドは立ち、剣と盾を握っていた。 「かはははは、マジで化けモンだわお前。教会の地下の連中もそんな風に喰ってたのかよ」 キッドは、嬉しそうに、しかし痛烈な侮蔑を込めながら嗤った。 「貴様、あれを……」 「見たくもなかったけどな。あのクソ神父様が無理矢理見せやがった」 「相変わらずだな、コトミネめ」 「聞いてもいいかい」 銃を構えながら、アーチャーは訝しむように口を開いた。 「―――なんでだ?俺見てえな悪党なら分かる。理解はしたくもねえけどな。でもアンタは本物の英雄だしそれに……」 キッドの眼光が鋭くなる。 「お前、正気だろ」 聖杯の泥。 この世全ての悪によって湧き出したそれに当てられれば、サーヴァントでも、サーヴァントだからこそその性質は汚染され、黒化する。 前回のセイバーはそれで狂ったというのが、冬木の管理者、遠坂凜の見立てだった。 「貧乳女の言っていた通りだと、思っていたさ。だが、そうじゃねえ。殺し合いやってるからこそ分かるもんもある……お前、前回に召喚されたときから変わってねえだろ」 前回のセイバー、ギャラハッドは、銃を向ける拳銃使いを一瞥すると、苦笑するように吹き出した。 「当然だ。この身は数多の呪いを退け続けた。今更あの程度でなんだというのだ」 「宝具かスキルかは知ったこっちゃねえが、まあそれはいいとしよう。お前の目的は何だよ。聖杯の中身で世界征服でもやらかす気か?」 「……私は、私の責務を果たすだけだ。聖杯探求を」 少し苦しげに言葉を吐き出したギャラハッドの眼は、ここではない何処か遠くを見つめていた。 聖杯探求。 アーサー王の命を受け、パーシヴァル、ボールスと共にサー・ギャラハッドが成し遂げた冒険。見事聖杯を手にしたギャラハッドは天に召されたという。 ここまでが、知られた伝説であり、そしてこれからの伝説の続きは彼等しか知らない。 「……本物じゃなかったってわけだ」 「いいや、本物だったさ。その力で私は英霊の座に至った……それで終わりだ」 「それで?聖杯手に入れてめでたし、めでたしだろうが」 軽薄な言葉に対して、ギャラハッドは苛烈さを増した瞳でアーチャーを睨み付けた。 「ふざけるな!私はそれをアーサー王に献上できぬままに終わったのだ! あのお方に、キング・アーサーに!騎士が役目を達せぬ等、不忠を通り越して怠惰の域だ! だから私は永遠にこの地で聖杯を護り続ける!いつか蘇る王が帰還するその日まで! そして、それで私の聖杯探求は終わる!!」 それこそが世界で最も偉大な騎士と呼ばれた騎士の叫びだった。 伝承によれば、多くの騎士がカムランで散り、アーサー王の時代は終わったと聞く。 しかし、アーサー王はアヴァロンで眠っているだけで、いつかまた蘇るとも聞く。 アーチャーは理解した。つまりはギャラハッドの願いとは。 「おめえは、永遠にこの地の聖杯戦争で勝ち続ける気か?」 「そうだ。聖杯が呼ぶ英霊達の中にあの方が呼ばれる可能性は高い。ならば私はその日まで待ち続ける」 「魔力は……大丈夫か。お前そのためならなんだってやるつもりだろ」 「ああ、魂喰いだろうが、何だろうが、やる。私が騎士(わたし)であるために!」 「そうかい……じゃあ、止めねえとな」 呆れたように手を挙げて「お手上げ」のポーズを取るアーチャーを、今度はギャラハッドが訝しむように口を開いた。 「お前が、いちいちこの地の民の犠牲を考慮する英霊とは思えないが」 「悪党ではあっても、悪の手先じゃないんでね、俺は俺のやりたいようにやる」 銃を向けたままアーチャーは答えた。 「士郎と飲んだ店の酒は美味かった。それだけさ」 「そうか、是非も無い」 盾が昼間を思わせる陽光を発する。光が収まった場所には、白騎士が立っていた。 「この騎士によってお前が手こずっている間に、私は貴様の首を取らせてもらう」 「まあ、こいつの火力だけじゃそうなるな」 アーチャーは自分の手の中にある拳銃を見て、少し苦笑した。 「だがよ」 跳躍。 瞬発力の限界を超えたのではというほどにアーチャーは跳んだ。 「……予定通りだな。爆弾で仕留められなかったのは痛いが」 ライダーの眼中には跳躍したアーチャーと、降りたところを狙うつもりでいるであろうギャラハッドと白騎士がいた。 「お前が銃を持てば、最強だ。だが、銃の威力と性能に限界が生じれば、そこがお前の限界になる。だから、私はお前に貸すだけだ」 精神を集中させる。 「受け取れ、悪漢王!!」 アーチャーがそれを手に持つと言うより、アーチャー自身がそれの付属品のように見える。 それほどに、アーチャーと飛行機が一瞬交差した夜空に出現したそれは圧巻だった。 「けけけけけ!!来たキタキタァ!!!GAU-8 Avengerガトリング砲だあ!!いっぺん撃ってみたかったんだよこれ、簡単に死んでくれるなよ騎士様ァ!!」 呵々大笑したアーチャーは空中で砲身を向ける。そして何らかの操作をしたようにギャラハッドには見えた。 銃声ではなく、砲声。弾丸ではなく30mmの砲弾が、白騎士とギャラハッドを喰らいにきた。 GAU-8 Avengerガトリング砲。 ゼネラル・エレクトリック社製のそれは、アメリカ軍の航空機搭載火砲の中で最強を誇り、主に対戦車攻撃に使用される。 搭載されている航空機は主にA-10だが、これはライダーが召喚することのできる航空機の一つだった。彼自身が開発に参加したこれは、一部の部品だけでも顕現させる事ができる。 機関砲だけを顕現させ、それをアーチャーが使うという作戦こそが、ギャラハッド迎撃の肝だった。 「どうした、セイバーよお!俺はここだぜぇ!!!」 毎分3900発、口径30mmの対装甲用焼夷徹甲弾と焼夷榴弾がまさに鉄の暴風雨として放たれ、剣の英霊に襲来する。もはや音は意味を成さなくなり、眼は光を識別するだけの器官になっていた。白騎士は既に消滅していた。 それでも、ギャラハッドが即死していないのは片手に持つ赤十字の白盾と、一瞬の遅れもなく振るう選定の剣によって弾雨を斬り落としているからだ。 それでも、鉄の暴風雨はあまりにも強大だ。手は感覚が無くなりかけている。 意識は弾雨を防ぐだけで精一杯であり、一瞬でも気を抜けば容易くギャラハッドは落命するだろう。 だが―――。 「退けぬ……」 端整な顔立ちは既に鬼の貌に変貌し、全身に刻まれた傷と共に凄みを見せている。 正に危機というとき、しかしギャラハッドは獰猛に歯を食いしばっていた。 「故国(ブリテン)の滅亡と、騎士達の絶望が私を捕まえて離さない」 剣戟が更に疾く、鋭くなった。 「この底無し沼のような闇から逃れ出るには、あの方に引き上げてもらうしかない」 盾を無理矢理に前へと出す。聖盾は猛攻の前に少しずつだが弱っているのが分かった。 「この程度で、私を殺せると思うな。アーチャーァァァァァァ―――!!!」 咆吼。盾は遂に轟音と共に砕け散った。いや、ギャラハッドが砕いたのだ。 壊れた幻想(ブロークン・ ファンタズム)。 それがもたらした爆発は砲弾の雨を一瞬、数時間にも感じられる一瞬を遅らせることに成功した。 ギャラハッドは跳躍した。 先ほどアーチャーが行ったよりも更に高く、早く、跳んだ。 「キング・アーサーァァァァァァアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」 一閃する剣戟に、機関砲を上に向けるには間に合わない。 しかしアーチャーは全く怯えていなかった。文字通り悪戯小僧(キッド)のように笑うと、いつの間にか銃弾を装填した愛銃―――サンダラーM1877を抜いた。 「根性あるじゃねえの!喧嘩はこうじゃねえとなあ!!」 銃声。 頭骨を砕く音が、響き渡った。 「ハアッ、ハアッ、ハア……」 肩で息をつくギャラハッドの片手は綺麗に無くなっていた。 壊れた幻想(ブロークン・ ファンタズム)の爆発は、片手を根刮ぎに削ぎ取ったのだ。 「けっけっけ、片腕貰ってやった。俺も消えるが、まあいいか」 軽薄な声は背後から聞こえてきた。 頭蓋を砕かれ、霊核を破壊されていながら、それでもアーチャーは笑っていた。 ふてぶてしくも、地面に大の字に転がって星を眺めている。 そんなもう間もなく消えるであろう弓兵を、ギャラハッドは一瞥し、剣を地面に突き刺した。アーチャーの笑い声が止まる。 「聞け。私は貴様が嫌いだ。その軽薄な態度も、我欲まみれの行いも、騎士道をまるで理解しようともしない態度も全てが気に障る」 だが、と言葉を区切った。 「貴様は間違いなく、本物の英雄だったよ」 その言葉に、アーチャーは無言を貫き、にやりと不敵に笑って消えた。 それだけを見ていたギャラハッドの上空を、Ju87が飛んでいく。爆撃する気は無いらしい。盾を失い、片手を失ったことを自分のマスターに報告しに行くのだろう。それは痛手だが、仕方が無い。 「立ち止まって、いられるか」 剣を地面から引き抜くと、ギャラハッドは歩き始めた。 東の空が白み始めている。今日の聖杯戦争は終わった。 夜明けをほんの少しだけ見ていると、ギャラハッドは再び歩き始めた。 全てはブリテンのために、アーサー王のために、何より騎士にしかなれない自分のために。 暁をJu87は飛び続ける。マスターの元に聖杯戦争の情報を届けなければならない。 ライダーはエンジンが焼け落ちても飛び続けるつもりでいた。 ふと、独り言が口から出た。 「ギャラハッドの片腕をもいだなんて、『座』で自慢ができるぞ。ウィリアム=H=ボニー」 夜明けがJu87の機体を照らしていく。 「いや、ビリー・ザ・キッド、お前は正に地上最強の英雄だったよ。ガンマンの時間は終わった。これからは正義の味方が征く時間だ」 何故か、あいつはあの少年を気に入っていた。笑って消えたのも、あの少年を信じたからだろう。おもむろに片手を上げて、敬礼をした。 「Sieg Heil(勝利万歳)!!」 朝日は既に燦々と輝いていた。 ……太陽が見える。風が吹いている。 これは、あの新大陸の陽光と風だ。そこを竜巻のように駆け抜けた者だけが、これを感じることができる。そうだ。俺はここに帰ってきたのだ。 あのいまでも思い出す喧噪と熱気が溢れる国へ、自由の大地へ。 彼は昔と同じように、テンガロンハットを被り、コートを着て、銃をホルスターに収めた。これで恐い者無しだ。そして馬にまたがり、荒野を目指し、駆けた。 アメリカのある墓の前の石碑にはこう記されている。 真実と経歴。21人を殺した。少年悪漢王 彼は彼らしく生きて死んだ。 ウィリアム・H・ボニー 『ビリー・ザ・キッド』
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黄金の王―――すなわち英雄王ギルガメッシュは、彼にしては異例とも言える忍耐力をもって、 大橋―――冬木大橋に佇んでいた。王である彼を待たせるなど……本来ならば、冷笑一つ浮かべ ずに、その不逞者を滅ぼしに行くだろう。 だが、彼は目を閉じ、ただ静かにそこに居た。 理由は、多々ある。 いざ七騎の英霊を殲滅せんと、己の倉より武具を呼び寄せた時に、一人の男が放った流体金属 に捕らわれた事がまず一つ。 彼の持つ宝物と比べれば、塵芥と呼べるものであり、実際彼は瞬きを一度する間にそれを打ち 破ったのだが―――。 余りにも鮮やかな逃走により、七騎の姿を見失ったことも一つ。 今思えば、その気配はまだ周囲にあった。だが、相手はこちらの死角を巧みに移動していたのだ。 もっとも、彼はそれをどうとも思わない。慢心こそ彼の王たる証である。 ……最後に、僅かであるが―――愉悦を得たこと。 かつて、彼が聖杯戦争を戦った時。 その時は、強大なる個、それら一騎ずつとの戦いであった。しかし、今はどうだろうか。 七騎全てのサーヴァントが結託し、己に牙を剥く。 しかも、その何れもがかつての聖杯戦争の参加者と同じほどの実力を持っている。 かつての友には及ぶべくもないが、しかし長き倦怠に対する僅かな刺激となるだろうと、彼は考え た。そうして、僅か半日ではあるが、彼らに猶予を与えたのだ。 その半日の猶予も、後僅かである。 ゆっくりと上る日が、彼の影を短くしていき、 「―――来たか」 元の長さ、その半ばとなった所で、彼は呟いた。 同時に、 ポリュ エイドス 「『黄金の―――手綱』!」 叫びと、爆音。 水柱を上げながら、水中より一つのモノが飛び出す。 全体的な見た目は、ムカデに近い。黒く細く長い胴部が節によって繋がれ、その胴部からはこれ もまた細く長い数十の歩肢が飛び出している。一見すれば、不釣合いなバランスのソレは、しかし 長大であった。一つの胴部が、家一軒の高さよりも長い。歩肢もまた、同じほどに長く……そして なによりも、その全長は―――。 「―――700ケイ……というやつらしい。この国を縦横無尽に走る、速き騎乗物だ。 さて、英雄王……待たせて悪かったな。醜きバケモノ相手ではあるが―――。 存分に楽しまれよ!」 凡そにして、400m。日本の作り上げた、移動手段の一つ『新幹線』であった。 『新幹線』……否、もはや獣の頭頂部に立つ彼、ベレロフォンは、ありとあらゆる騎乗物を 『魔獣』として使役する宝具を持っており、それを用いて『新幹線』を全長400mの『魔獣』へと変 えたのである。 質量と速さ……両方を兼ね備え、容易に手に入る騎乗物は、ベレロフォンに取って最強の相棒とな るのだ。 「なるほど……確かに前座としては、悪くない。どれ、あがいて魅せよ」 ギルガメッシュが、その『魔獣』へ向けて、指を向ける。 「行け」 瞬間、放たれるのは数にして十六の武具。 剣が八。槍が二。槌が三。斧が二。球が一。 螺旋を描きながら、ベレロフォンと、『魔獣』へと突き進む。 一つでもあたれば、即座に死を齎すに等しい一撃だ。 だが、ベレロフォンは冷静である。 静かに、手綱を動かし、一気に『魔獣』を加速させる。 次の瞬間……水面から塔の如く聳えていた『魔獣』の姿は掻き消え、武具は空を切った。 「ほう……中々素早いではないか」 ギルガメッシュが、顔を上げる。 『魔獣』は、その巨体を一瞬にして空へと浮かせていた。 ベレロフォンの宝具は、地とレールを走るだけのモノを、空を自由に飛びまわらせる領域にまで持ち 上げたのだ。 「行くぞ英雄王! 我の鉄槌、受けてみよ!」 かつてのように、天に昇るベレロフォン……だが、今から地に落ちるのは自身に対する裁きによって ではなく、明日を掴む為のものだ。 手綱に魔力を込め、一瞬にして最高速度へ。音を置き去りにしながら、全長400mの『魔獣』はギルガ メッシュへと向かう。 「ふん……我の上に立つとは、不敬であろう」 しかし、天が堕ちる勢いで迫る『魔獣』を見ながら、ギルガメッシュはただ冷淡に、一つ指を鳴らす だけであった。 「ぬっ―――させん!」 さらなる攻撃の動きと見たベレロフォンは、宝具である手綱を翻し、『魔獣』を制御する。 螺旋の動き。質量、速度を備えたそれは、並大抵の攻撃を跳ね返し、一撃でギルガメッシュを叩き潰 すはずであった。 激突の、轟音。 しかし、ベレロフォンは攻撃の失敗を悟る。 激突の音はした。だが、橋が壊れる音も、水が爆ぜる音も聞こえなかった。 そう……『魔獣』の全てを賭した破壊槌は、容易に受け止められていたのだ。 中空に生えた、巨大な黄金の手の平によって―――。 ※ 「こ、これは―――!!」 ギシ、ギシ、と『魔獣』の突撃を受けた手の平が軋む。だが、それだけだ。ベレロフォンが手綱を 振るい、重圧をかけても、ピクリとも動かない。 「ぬうっ!」 ただ突撃を受け止めていただけの黄金の手の平が動く。 その五指が、魔獣の頭を掴んだのだ。その指先が、頭部に乗っていたベレロフォンを掠める。 「―――ちいッ!」 たまらず、ベレロフォンは跳躍する。着地する場所は、頭部と繋がっている胴部だ。 再び手綱を振るい、全力で『魔獣』を引き戻す。 ブチブチと、嫌な音と血の臭いを撒き散らしながら、黄金の手の平につかまれた頭部が引きちぎられる。 『魔獣』となった『新幹線』にとって、頭部はあまり関係がない。なぜなら、胴部の任意の部分を頭部へ と転ずることが出来るからである。 「なんだ、コレは―――!」 新たな頭部に騎乗し、あの手の平の正体を見極めようとした時……ベレロフォンは眼前の光景に戦慄した。 黄金。 それは、黄金の鎧であった。あらゆる鎧に似、しかしどんな鎧でもない。 あらゆる鎧の原典、と呼べるであろうソレには、豪華絢爛なる宝石と、緻密にして美を凝縮した彫刻がな されている。兜は獅子をモチーフとしているのか、金の糸が鬣として備わっている。 その兜を被るのは、金剛石の瞳を持つ、黄金で出来た顔の像だ。良く見れば、ギルガメッシュに似ている のが分かる(もっとも、実物の美しさには敵うべくもないが)。 そして、何より、巨大である。 ベレロフォンが今乗っているのも、相当に大きい。頭部を失ったが、今だ350m以上の全長を持つだろう。 ただし、それは細長いが故、だ。 だがその黄金は、人のカタチをしながら、20……否、25m近い大きさを持っているのである。 「―――かつて、我の民が余興で作った我の像だ。 自立して動くのだが……我より弱いのでは意味がない。 ほとんど使うこともなく、倉の番人として埃をかぶらせておいたのだが……。 手加減をするには役に立つものだな」 そう。コレは、ギルガメッシュの持つ『守護像の原典』である。 故に、ベレロフォンの『魔獣』の突撃を容易く受け止める程度の力は当然持っており……。 そして、その本懐を果たす為に……守護像の両目に供えられた金剛石が金色に光りだす。 「コレで手加減とは……全く底知れぬ……! ポリュエイドス ―――『黄金の手綱』!!」 ベレロフォンが、手綱に魔力を流し込む。『魔獣』の持つ、全ての力を引き出す為だ。 何が来るかは分からないが、出し惜しみをすれば死に繋がるということだけは確かである。 敵の攻撃、そのタイミングを知る事に全力を尽くす。 この『魔獣』の元である『新幹線』は、最高で時速340km程であるが、今は実に4倍近い速度を出すこと が出来る。その巨大さを差し引いても、回避には十分すぎるほどであると、ベレロフォンは思っていた。 そして、一度攻撃を回避すれば、あの巨像が守るべき主は隙だらけとなる。 その瞬間を捕らえんと、一瞬の膠着状態が生まれる。 それを打ち破ったのは、眩い輝きであった。 巨像の全身に備わった宝石が、それぞれ様々な輝きを放つ。 全身に刻まれた彫刻に、光が走る。 巨大な獣が唸るかのような重低音が、大気を振るわせる。 ベレロフォンの手綱を握る腕に、力が篭る。 そして、巨像の輝きが最高潮に達したとき―――。 「どれ―――死ぬなよ?」 ―――先ほどこの巨像を呼び出したときのように、ギルガメッシュが指を鳴らし。 光が、爆発した。 それは、流星であった。 黄金の巨像の全身に供えられた宝石から、まさに瀑布となって光弾が放たれたのだ。 その光弾は、自由自在に軌道を変えながら、ベレロフォンの操る『魔獣』へと向かっていく。 「うおぉぉッッ!」 ベレロフォンも、必死で『魔獣』を動かす。音速を越え、衝撃波を伴いながらその巨体が動くが、巨像 から放たれた光弾に比べればあまりに遅い。瞬く間に全身を食い荒らされ、血と肉の雨を降らしながら、 その速度に耐え切れずに自壊していく。幾つもの胴部を連結することによって生まれる、生命力の強さ。 それこそがこの『魔獣』の強さの一つであったが、それすらも塗りつぶしながら、光弾が次第に頭部へと 向かっていき。 「く―――すまぬ。ここまでか!」 ベレロフォンの姿もまた、眩い光の中へと掻き消えていった。 ※ 黄金の巨像が、ギルガメッシュに覆いかぶさるように身を屈める。 討ち滅ぼした『魔獣』の血肉の雨から、その身を守る為である。 「ち―――無粋な獣の臭いしかせぬな。 まぁ、短いが充実してはいた。流石は神の血を引く英雄の一人。 さて、次は如何なる手で攻め込まれるのか……」 ククク、と黄金の王が笑う。 今の『魔獣』を繰る男は囮だ。と、ギルガメッシュは考える 巨体によって目晦ましとし、真の狙いへと気付かせない為の。 だが、その狙いまでは思考しない。 何故なら、そのような事をすれば楽しみが一つ減るからだ。 「慢心せずして何が王であるものか。 ―――存分に楽しむとしよう!」 fate/Greek Mythology (2) 了
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単独行動:A+ マスター不在でも行動できる能力。 単独行動:A マスター不在でも行動できる。 ただし宝具の使用などの膨大な魔力を必要とする場合はマスターのバックアップが必要。 単独行動:B マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。 ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。 単独行動:C マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。 ランクCならば、マスターを失ってから一日間現界可能。 単独行動:D マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。 ランクDならば、マスターを失っても半日間は現界可能。 単独行動:E マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。 ランクEならば、マスターを失っても数時間は現界可能。 【EXランク】 スルト、木曽義仲 アシュヴァッターマン(GO)、パリス(GO)、超人オリオン、杉谷善住坊 ジーク、 光のコヤンスカヤ 【A+ランク】】 エウリュアレ、オリオン(GO)、ジェームズ・モリアーティ、浅上藤乃 (Grand Order)、 グレイ アンチキリスト ギルガメッシュ(第5次) ゲイ ビーシュマ ペーネロペー アリスタイオス ノレア フライング・ダッチマン 楠木正成(キャスター) 【Aランク】 ギルガメッシュ(第4次) ロビンフッド アタランテ(APOCRYPHA) ケイローン(APOCRYPHA) 紅閻魔、 アルジュナ(GO)、ビリー・ザ・キッド、エミヤ〔オルタ〕、巴御前(GO)、ウィリアム・テル、清少納言、プトレマイオス、雑賀孫一 ラグナル・ロズブローク 沖田総司(帝都聖杯寄譚)、アストライア、アムール〔カレン〕、ジェームズ・モリアーティ(裁) パリス 源為朝 呂布 イリヤー・ムーロミェツ 坂本龍馬 ピロクテテス キルロイ コンラ 崇徳上皇 トム・サム メアリー・フリス ウィリアム=H=ボニー 項羽 藤原秀郷 シンギュラリティ ハイク・ナハペト 船坂弘 ヨシュア 百合若大臣 アビマニュ 雑賀孫一 逢蒙 パビルサグ 源為朝(リメイク) ラクシュマナ 磐司磐三郎 エウリュトス&クテアトス、イリヤー・ムーロメツ(リメイク)、ヒッポリュトス、エーカラヴィヤ、イシュマエル、クスコ、エサウ、ガウタミープトラ・シャータカルニ 【B+ランク】 ロムルス=クィリヌス、周瑜 【Bランク】 エミヤ、アストルフォ(APOCRYPHA)、ニコラ・テスラ、俵藤太、トリスタン(GO)、クロエ・フォン・アインツベルン (Grand Order)、ゼノビア(GO)、源為朝(FGO)、高杉晋作 宇津見エリセ、 山の翁、サムソン、キングプロテア、 アルジュナ ナポレオン ルノー・ド・モントヴァン 織田信長 オリオン クリシュナ 坂上田村麻呂 ハディング 白縫若菜姫 羿 応神天皇 リュドミラ・パヴリチェンコ キルデアの聖ブリギッド 六条御息所 ピタゴラス マルフィーザ リー・ハーヴェイ・オズワルド エドワード黒太子 イスファンディヤール ナポレオン(リメイク) インドラジット(リメイク) 狄青 バハラーム5世、アルダシール1世、アル=ジャザリー 小碓命 フランシスコ・ピサロ、夏目吉信、 【C++ランク】 コンスタンティノス11世 【Cランク】 斎藤一、 ナポレオン(GO)、織田信勝、ドゥルガー メドゥーサ パッションリップ、 アン・ズォン・ウォン エウロペ トリスタン アタランテ ペコス・ビル ハンニバル・バルカ ニムロド エノク シルヴィウス・ブラボー プトレマイオス一世 エルナン・コルテス マンサ・ムーサ スカサハ テオゲネス ヤン・ジシュカ クルシュ 源頼朝 フレグ 長髄彦 【Dランク】 ラーマ カスパール ラシード・ウッディーン・スィナーン ナタ 源頼政 徳川家康 カサンドラ サラディン、リチャード・ジョーダン・ガトリング 【Eランク】 吉備津彦命 【E-ランク】 単独行動:EX (ジーク) 憑依サーヴァントの亜種。 戦闘行動を取る際は魔力が必要だが、それ以外の一切において、通常の人間と変わらぬ存在となる。 本来であれば、年齢も人間とほぼ同等のはずだったが…… 単独行動:EX (アシュヴァッターマン(GO)) マスター不在でも行動できる能力。 憤怒の化身が継続されている限り、アシュヴァッターマンはどこまでも敵を倒しに向かう。 単独行動:EX (パリス(GO)) 本人の単独行動スキルは存在しないが、守護霊みたいなアポロンは勝手に動いてくれる。 単独行動:EX (超人オリオン) グランドアーチャーの適正を得たことで規格外のランクに上昇している。 単独行動:EX 木曽義仲 本来はアーチャーのクラススキル。 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。 EXランクではマスター不在でも行動出来る。 宝具の使用についても何とか自力で発動可能だが、マスター不在であれば大きな負荷となる。 単独行動:EX (光のコヤンスカヤ) 驚くべき事に、そして恐るべき事に、光のコヤンスカヤはマスターを必要としない。 マスターの命令に従う理由はただ一点。『人間とは違い、約束(契約)は破らない』というプライドだけである。 単独行動:A+ (浅上藤乃 (Grand Order)) 孤独を好む訳ではないが、なんとなくひとりでぶらつく悪癖がある。 尾行とか得意。魔力切れを起こして本人はとても辛い筈なのだが、痛覚が薄いため気付いていない。 単独行動:A+ アンチキリスト マスター不在でも行動ができる能力 『獣の数字の刻印(ゲマトリア)』の能力により、現世とのパスをつなげ続けることが可能である。 単独行動:A+ (楠木正成(キャスター)) マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。 キャスターの場合、マスターを失っても1週間は現界可能であり、また『金剛山千剣破城』の内部では外因がない限り現界が保証される。 単独行動:A+ (アリスタイオス) マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。 各地を放浪した事からアーチャーは高ランクの単独行動を有する。 単独行動:A+ (ノレア) マスターの不在や魔力供給がなくとも長時間現界できることを示すスキル。 アーチャーは『プレローマ』スキルによりマスターからの魔力供給なしでも行動が可能である。 単独行動:A (沖田総司(帝都聖杯寄譚)) 抑止の守護者として単独での行動が可能。 絶望的な状況下に顕現させ、単騎で目標を殲滅、もしくは相打ちでの消滅を目的として調整されたため高ランク。 単独行動:A (ウィリアム・テル) マスターの不在や魔力供給がなくとも長時間現界できることを示すスキル。 山の中、そして動かずに獲物をじっと待っているような状態であればより効果は上昇する。 単独行動(自己中):A (清少納言) マスターから離れて行動が可能。 Aランクなら数日以上、マスターを失っても現界し続けることが出来る。 ただ清少納言の場合、自分がより「エモい」と思った方へ動くため、指示通りに別行動をとってくれるかは非常に危うい。 単独行動:A (アムール〔カレン〕) 『愛の伝道師』でもあるカレン・C・オルテンシアにとって、仕えるべき主人はマスターだけではない。 主の御心、人々にたくさんの愛を届ける使命のもと、彼女はマスターの事情に囚われない。 フリーダム。 単独行動:A トム・サム 妖精の女王の加護。マスター不在でも行動できる。 ただし宝具の使用などの膨大な魔力を必要とする場合はマスターのバックアップが必要。 単独行動:A ロビンフッド マスターからの魔力供給を断っても自立できる能力。 ランクAならば、マスターを失っても一週間は現界可能。 単独行動:A ヨシュア マスター不在でも行動できる。 ただし宝具の使用などの膨大な魔力を必要とする場合はマスターのバックアップが必要。 偵察任務を遂行し、カナンの地に入る事を約束されたアーチャーは高いランクを有する。 単独行動:A- ザッハーク マスター不在でも行動できる。 人間の脳を媒介にすることで現界し続けられる。 ただし、媒介にされた脳は一日もすれば負荷に耐えられず使用不可能になる。 単独行動:B+ (ロムルス=クィリヌス) 本来、主神にして最高神を縛り得る者は地上に存在しないのだが、ロムルス=クィリヌスは敢えて自分でランクを下げている。 単独行動:B+ パラシュラーマ マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。 ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。 またマスターが騎士・王族など戦士階級に該当する相手に殺害された場合、 このスキルはランクアップする。 単独行動:A シンギュラリティ 人類不在でも行動できる。 電力を魔力の代用として利用することができるが、 宝具の使用など膨大なエネルギーを用いる場合は相応の電力が必要。 単独行動:A+ ゲイ マスター不在でも行動できる能力。まさに、野に放たれた野獣である♂ 単独行動:B+ 周瑜 アーチャーのクラススキル。 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。 Bランクであれば、マスターを失っても二日間は現界が可能となる。 こちらも先述の『騎乗』と同じく船に乗り続ける限り、倍加のボーナスを得る。 単独行動:B (クロエ・フォン・アインツベルン (Grand Order)) マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。 Bランクならマスターを失っても2日間は現界可能。 魔力を生成出来ずともある程度行動可能であるのは、このスキルの恩恵だろう。 単独行動:B (宇津見エリセ) マスターから離れて行動できるスキル。 これまでのケースから、生者からサーヴァントになったことで獲得したものと思われる。 単独行動:B (山の翁) マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。 本来であればアーチャーのクラス別スキルとなる。 肉を削ぎ、内臓をかきだすほどまで純粋な信仰に到達したこの剣士は、自らの意思だけで自由行動を可能とする。 単独行動:B (キングプロテア) 強力な魔力炉であるプロテアはマスターがいなくとも自身の霊基を維持できる。 プロテアにとってマスターとは『自身が限界するために必要な要石/魔力供給源』ではなく『自分を召喚したもの』にすぎない。 もし聖杯戦争でプロテアの召喚に成功したマスターがいた場合、そのマスターには『サーヴァントに魔力供給をする役割』がなくなるだろう。それを有利とみるか窮地とみるかはマスター次第。 単独行動:B サムソン 本来はアーチャーのクラススキル。 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。 Bランクならば、マスターを失っても二日間は現界可能となる。 単独行動:B (小碓命) マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。 アサシンは父に疎まれ、西征を始め幾度となくわずかな従者のみで征伐に送り出された。 単独行動:C (パッションリップ) マスターの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。 Cクラスならマスター不在でも1日は現界していられる。『ある存在の別側面』として存在するアルターエゴはマスターなくしても単独で活動できるが、リップは燃費が悪い為ランクは低めになっている。 単独行動:-(EX)碓井貞光 マスター不在でも行動ができる能力 。 固有結界“極楽浄土”が維持されてる限り、無制限に現界し続けられる。
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注)この作品は『ラーヴァナvsバートリー』の、自覚的な「悪役」として行動するラーヴァナ、という設定のパロディです。 ラ「フハハハハ! なんと素晴らしいことだ! 時空を超えて各地から現れる英雄たちと矛を交えられるとは! 余を華々しく散らせてくれる機会もより取り見取りに違いないわ! どういう死に様がよいだろうか。やはり花形たるセイバーの剣で一刀両断にされるのが悪党の末路らしいかのぉ」 神武天皇「すまん、今回のセイバーは朕だ。貴公も困るであろうが、正直朕も勝ち目がなくて困っている」 ラ「orz ……まあよい、まだ他のクラスが残っておる。バーサーカーが余の怪力を腕っぷしでねじ伏せる展開辺りも悪くない」 バトラズ 「■■■■■ーーー!」 ラ「帰れーーーーっ! 神性:A+などというやつの顔も見たくはないわあっ!」 ラ「うむ……、人型の英霊に期待したことが間違いじゃった。そもそも英雄とは神の子孫などという設定が付き物なのだからな。 だが、ここは聖杯戦争。何かの拍子で反英雄や獣の一人や二人くらいは来てもおかしくない。 不満がなくはないが、そのような者どもで我慢するとでも……」 悟空「ムヒー」 プテさん(牛化)「モー」 ラ「クソッ、畜生ごときが神になるとはなんて酷いご時世じゃ! 獣ならば獣らしくせんか!」 悟空「ムヒッ(いやいや、あんた生前に猿の神様と出会ってるじゃないか。つーか、あんたの故郷じゃ象頭の神様もいるって聞いてるけど)」 ラ「なんということだ……。余を殺せる者はおらんのか?! はっ、殺す? そうじゃ、神ともなれば暗殺などという卑劣な手段は取らんじゃろう。この際アサシンでも……」 セミラミス「……ご愁傷様。それと、暗殺なら北欧の最高神は平気でやるわよ」 ラ「戦争オワタ\(^o^)/ ……そ、そうだ。まだアーチャーのクラスが残っておる。 こういう時こそ我が宿敵ラーマが来るはずだ。再び雌雄を決する、という燃えるシチュエーションをやつならば逃すはずはない。 そうだ、来てくれるに決まっている! だから余は泣くものか! 待っておるぞ、ラーマ。頼むから来てくれ。でなくば、余は、余は……」 クリシュナ「あ、どーも。前世でお会いしましたっけ? それとも来世でしたっけ? いやー、化身があまりにも多いもんでして記憶があいまいなんですよ」 ラ「おまえじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇ! ラーマで来い、ラーマで!」 ラ「ま、まさかここまでどうしようもない面子だとは……。……いや、英雄に倒される、と思い込んでいた余が悪かったのだ。 今時のマスターはかのバビロニアの英雄王やアイルランドの光の御子、はては他者を石化させる怪物とさえも善戦できる剛の者が揃っておると聞く。 うむうむ、取るに足らんはずの人間にやられる余、という展開は実によい。これならば満足できるぞ!」 龍之介「ちっす、クールなタトゥーが浮かび上がった殺人鬼っす」 イリヤ「やっちゃえバーサーカー!」 みこと「勝たなきゃ、他の人たちを犠牲にしてでも、私が勝たなきゃ……」 夏海「……望みなんてない死者と契約しちゃっただなんて、早まったかなぁ」 ファナ「えぐえぐえぐ……、なんでルイスさんがいない時に私がマスターになるんですか……」 慎二 プスプス・・・・・・ ←プテサンに手を出して雷を落とされたアホ ラ「はぁぁぁぁ??! まさかの戦闘力皆無なマスターぞろいだと?!」 ラ「ひ、ひどい、ひどすぎる……。攫ったシーターに拒まれた時でもここまでの屈辱は感じなかったというに! もはやこんな聖杯戦争やってられん! おい、余のマスター! とっとと令呪で余を自害させよ、でなくば……」 崇徳上皇「まあ、その、なんだ……。すまん、儂が手駒として呼んでしまったんだが。 ちなみに、儂を喚んだどこぞのトマスタァはとうの昔に廃人にしてしもうたわ」 ラ「………………ぐすん」 崇徳院「ああもう、泣くでない! いい年こいたバケモンが涙目になってどうする、怪物萌えなんてないのだぞ! 萌えキャラ化と縁のない儂が言ってるのだから真面目に聞け! わかった! 限界まで話が盛り下がったら『血書大乗経』使ってみんなの神性反転させてやるから泣くのやめんかこのバカ!」 (『血書大乗経』:対象の持つ地位・血統に由来する全ての加護・能力を反転させる。神性は地位・血統に由来するものが多い) ラ「……マジで?」 崇徳院「マジで」 ラ「マスター、感謝するぞ! あなたが余を倒してくれる英雄だったのだな!」 崇徳院「とんでもねぇ、わたしゃあ神様だよ」←神性:C おしまい
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【元ネタ】Fate/Grand Order 【CLASS】アサシン 【マスター】 【真名】光のコヤンスカヤ 【性別】女性 【身長・体重】168cm・55kg 【属性】秩序・悪 【ステータス】筋力D 耐久A 敏捷A 魔力A 幸運A 宝具A 【クラス別スキル】 騎乗:B 時代・流行に乗る女としてそれなりにイケてる。 単独行動:EX 驚くべき事に、そして恐るべき事に、光のコヤンスカヤはマスターを必要としない。 マスターの命令に従う理由はただ一点。『人間とは違い、約束(契約)は破らない』というプライドだけである。 単独顕現:C SPYとしての証。ドリフター能力。 ビースト属性を持つコヤンスカヤはいかなる異世界・異常識であろうとお邪魔できる。 ビースト幼体だったコヤンスカヤはこのスキルでロストベルトだろうと白紙化地球だろうと気軽に転移できたが、現在は大きくランクダウンした為、前ほどお気軽に転移はできないようだ。 変化:A 本来は防御力をあげるものだが、コヤンスカヤはSPY活動の為にこれを愛用する。 女神変生(銃):B 【固有スキル】 NFFスペシャル:A イノベイター・バニー:A 繁栄の為に編み出されたシステムをよりよく使い、人類のみを苦しめる(酷使させる)循環を創り上げる権能……とドヤ顔で語るが、ただの趣味、才能である。 殺戮技巧(人):A 数学の祖のひとり、アルキメデスが保有しているスキルの亜種。 アルキメデスは本人が望まぬまま『その時代の技術水準以上の殺戮兵器』を創り出してしまったが、コヤンスカヤは望んでこのスキルを手に入れた。 その時代にある人類の兵器を自在に使い、威力は『人類が使う場合より数倍のものになる』というスキルで、自然の因果応報のサイクル(本来はゆるやかな、数百年かけて行われるもの)を瞬間的に行使したもの。 元ビースト幼体のスキルに相応しく、理論上、『その時代の人類では太刀打ちできない』事を示している。 とはいえ所詮は人類にマウントとる為のスキルなので、サーヴァントやモンスター相手ではそこまで絶対性のあるスキルではない。 【宝具】 『霊裳重光・79式擲禍大社(イズトゥーラ・セブンドライブ)』 ランク:C 種別:対界宝具 レンジ:1~9999 最大捕捉:一都市 漢字の読みは『れいしょうじゅうこう・ななじゅうきゅうしきてきかたいしゃ』。 NFF傘下の企業・タマモ重工が誇る優秀兵器、NF-79式制圧戦術車両を召喚し、敵を殲滅する。 NF-79式は車両でもあり、同時にコヤンスカヤを奉る社でもある。 放たれる膨大なミサイルは『擲果満車』の故事に倣ってのもの、と本人は語っている。 畏れ多くも大社の名を持ってはいるものの、これはコヤンスカヤ本人の神徳を示す為ではなく、神徳を損なう、あるいは神聖なる者の敵対者である事を示している。 【解説】
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FateMINASABA 23th 00ver 「――!」 慎二は叫んだ。だがそれは声にならない。 ただ、そのままの勢いで頭を掻き毟(むし)り、上体を跳ね起こす。 喘ぎながら肩で大きく息をする。その呼吸音が部屋に響き、耳に届き始める。 慎二は、ようやく自分の状態に気づき、冷静に自分自身を観察し始める。 額から流れる汗が顎を伝い、滴(したた)り落ち、一つ、二つと服の布地に吸い込まれていく。 体中が脂汗で湿っていた。 部屋の冷気が痛い。 風が窓を叩く。 窓枠の中を、雲が川のよう流れていく。夜空に輝く星々は、雲の波がつくる飛沫のようだ。 月は川底に沈む玉のように雲間に現れては消え、その度に、ひんやりした床が蒼白く浮かび上がった。 ベットを出る気力はなかった。 あれは脳に残された英霊の記憶情報のゴミなのだろうか。 記憶情報に残るゴミは断片的なものであり、いずれ劣化し、忘却の海へと沈められていく。 だがあれだけ鮮明なゴミが存在するのだろうか。 慎二自身、割り切れない何かを感じていた。 そしてあの夢を見た瞬間から、脳全体が何かに包まれたような感覚があった。これもあの夢のせいなのだろうか。 慎二は自分自身に問い返す。 ――、一体、僕は何を見たんだ? マスターの夢は実際に起きた英霊の記憶の再現だと爺は言っていた。 そうであるなら、あれは実際に起きた出来事の一幕ということになるのではないか。 しかし、英霊は空想から人間の意志によって昇華され。精霊に近い霊格とカタチを得る場合もある。 もしこれが、擬似記憶であるとするならば、余りにもリアルすぎた。 漂う空気の匂いも、体の震えも、隣にいた彼女の死も、 そのすべてがエンターテインメントとして成立させようという意思はまるで感じられなかった。 ただリアルなだけ――現実にあった出来事を再生しているとしか思えないのだ。 ランサーが慎二に見せていた夢は、ただのリアルな出来事の再現記憶でしかないと言っていた。 ランサーが実在の人物だとしても、やはり彼らを夢幻の幽霊などではないということだと認識を改めなければならない。 しかし、問題はそこじゃない。 いま現在、僕に影響を及ぼしているこの不思議な状態はなんなのか。 ランサーが僕に意図的に精神攻撃を仕掛けているのだろうか? だがそれはあり得ない。 慎二に対して、そのようなものを仕掛ける理由がない。 今のところ、関係はそれほど悪いワケでもないし、戦況もこちらに不利な状況でもない。 ましてや、家族間・衛宮たちとの問題も口うるさく忠言を挟んでくるが けして踏み込んで干渉してくることはなかった。 ランサーも僕に対してある程度の忠節を見せているし、その点は僕も理解はしているので 数々の無礼や行動の自由もかなり寛大に見ている。 ランサーが仕組んでないとするならば、あの記憶そのものは無意識に感情や想念も含めて僕に流れていったものだということになる。 だとすれば人が選ぶのではなく、夢が人を選ぶというのだろうか。そして見た者に、何かを伝えようとしているのだろうか。 慎二は夢が伝える答えを渇望した。何か、知りたかった。そう強く望んだとき、夢の中の人影が意識の中に現れた。 ランサーだ、と慎二は思った。 姿はない。 ただそこにいるということだけがわかっていた。懐かしさにも似た何かが意識の中を過(よぎ)る。 どこか中性的な不思議な青年だ――不可視の姿であるのにそれが伝わってくる。 記憶情報が混濁しているだけなのかもしれない。だがその存在感だけは、あの夢を見たときと同じように、リアルなものだった。 慎二は声を出してみる。実際の空気を震動させる音声によるものではない。意識の、思念の声だ。 「お前は何なんだ?」 青年はゆっくりと慎二を指差す。言葉はなかった。 「お前は僕なのか?」 肯定も否定もない。何の揺れも感じられない。 「僕がお前なのか?」 そのとき、意識が白い光へと浮上していく感覚が慎二を包み込む。 慎二が目を開けた。 目の前には、ランサーの顔があった。 ランサー「あ、目え開いた」 慎二が天井を見る。 横を見ようと、首を捻ろうとしたが、頭が動かなかった。 何かで固定されているような感じがしていた。 触ろうと、手を伸ばそうとするが、その手も動きはしなかった。 身体すべてが鎖で縛られているような、そんな感じがしていた。そして、息苦しくもあった。 すべてが重かった。 重力が三倍、四倍になってしまったんじゃないのか。そう思いたくなるような気分だ。 慎二「あ――」 そう言葉に出そうとしたのだが声にならない。実際に出たのは音ですらない吐息だった。 ――何だ、これは。 そう慎二が感じたとき、ランサーの顔が再び頭上に現れた。ただ、それは暗く、色もどこか褪(あ)せて見えた。 ランサー「変な時間に爆睡した後に、二度寝するから金縛りにあってるみたいだな ふん、どれ――」 その声も遠くに聞こえている。 僕の身体をを押し上げて、水の入ったコップを差し出す 寝ぼけ眼で、ゆっくり水を口に含み、ようやく一息つくと 慎二はようやく自分がどこにいるのかを認識していた。状況はまだわかっていない。 カーテンと共に窓が開け放たれ、新鮮な空気が飛び込んで来ていた。 少し肌寒くもあったが、僕は寒いぐらいが好みだから、特に煩(うるさ)くは言わなかった。 閉めろと言っても揉めるのが目に見えているし、それは時間の無駄でしかない。 ランサー「調子が戻ったか?」 なんとも情けない話だが、疲れていた僕は教会から家に戻って夜まで熟睡していたようだ。 険しい表情の僕に向かって、ランサーが怪訝な顔を見せた。 ランサー「どうかしたか? 何か問題が?」 慎二 「いや、いい。それより何か変わったことあったのか?」 ランサー「まあな。お前が起き次第話して、茶でも飲みながら状況報告でもと思っていたところだ」 慎二 「そうかよ、じゃあ、とりあえず僕にも茶をくれ。喉が焼けるくらい熱い奴がいい」 ランサー「それでは風味が台無しではないか」 慎二 「じゃあ熱湯でもいい。気分転換だよランサー。味は二の次だ。 嫌がらせをしたいなら沸かした小便でも構わないよ。分かったな? さあとっとと用意してくれ」 つまらなそうに言うと、ランサーは渋々といった様子で返事をした。 ランサー「分かった。少し待っていろ」 言うなりランサーはキッチンへと向かった。 程なく茶が運ばれてきた。一口飲むと、苦さと甘さを孕んだ液体が喉を焼いていく。 痺れにも似た快感を感じつつ、胃に落ちたところで、 ランサー「話していいか?」 ランサーはキッと態度を改めて 完全に僕とは蚊帳の外で、もう日が暮れる前に完結した、ある事件を口にした。 ───────Interlude emiya side ─────── 整備された国道から離れること数分。 初見にして見覚えのある森の入り口は、日中だというのに朝靄(あさもや)のように白ばんでいた。 立ち込める霧と木々に遮られた陽光が、森から時間の感覚を奪っている。 士郎 「……はあ。まさか留守だったなんて、その上、お茶までご馳走になっちまうなんて……」 セイバー「―――泣き言は失礼だ少年。彼女たちは、聖杯を得るために競いあう敵たる我々にこうして賓客として 迎い入れてくれたのだ。我々も誠意と貞節を持たなければ」 ふう、と嘆息して俺を嗜めるセイバー。 時刻は三時を過ぎたあたり。 イリヤの“眼”から見た時、城まではざっと四時間ほどだった。 タクシーに乗って移動した後、俺と遠坂はそれぞれセイバーとキャスターに背負われて森の中を駆け抜け イリヤスフィール・フォン・アインツベルンの居城へと辿りついたというわけである。 リズ 「気にしないで、シロウ。イリヤもシロウに会うの、とても楽しみにしてたから」 入口の門を叩き、俺は、いざ正念場だと緊張を圧し留めて気持ちを引き締めた。 すると、白くアンティークで個性的な姿をしたメイドさんが出てきて リズ 「シロウ?ぐーてんだーく、こんにちはシロウ、トオサカ、あとみなさん」 士郎 「ぐ、ぐーてんだーく・・・?」 いきなり出鼻を挫かれてしまったのだった。 リズ 「お茶のおかわりはいる?」 凛 「ええ、いただきますわ」 リズ 「シロウは?」 士郎 「え!?・・・あ、ああ俺ももらおうかな、えと……」 リズ 「リズ。わたしの名前はリズ」 士郎 「ああ、リズっていうのか。うん、とてもいい名前だ」 くすっと名前を呼ばれたリズは微笑み、空いたティーカップにお茶を手馴れた手つきで淹れていく。 俺たちはサロンに案内され、用意された席に座った。 いかに戦意がないといってもここは敵地だが 先のセイバーの言葉のように、こちらは彼女に助力を願い出る身の上だ。 相手の誠意には失礼があってはならない。 セラ「彼女の名前はリーゼリットですエミヤ様。節操なく略称を使わないでください」 すると、扉からお茶菓子を持ってもう一人のメイドさんが、刺すような眼で辛辣に俺に口を挟んだ。 士郎 「あっ、えと、ごめんなさい……。」 リズ 「シロウ、気にしないでいい。セラは仲間ハズレにされて寂しいだけ。 あと、自分は愛称つけられないからひがんでる」 セラ 「黙りなさいリーゼリット。……エミヤ様。 今のはリーゼリットの戯言です。あまり真剣に受け取らぬように」 士郎 「はあ、わかりました」 彼女たちとは初対面のはずだが、どうにもあちらさんには自分のことをイリヤから 聞き及んでいるのか随分と忌憚なく言葉を交わしてくる。 しかし、二人は見た目は似ているが性格は正反対のようだ。 あと、ボリュームとか。 士郎 「あの、じゃあセラさんって呼んだ方がいいかな?そっちのが愛称らしいし」 セラ 「お黙りくださいエミヤ様。 セ、セラさんなどと、そのように愛称などで気安く呼ばれる関係などではありません!」 怒られた。 「セラ」と呼び捨てにするより「セラさん」と呼べた方がこっちは気が楽なのだが。 横では遠坂がジト眼で睨んでいるし、少し当てが外れた反動で気が少し弛んでいるようだ。 セラ 「……コホン。失礼いたしましたエミヤ様。トオサカ様。 なにぶん立て込んでいたもので、満足にお出迎えもできませんで。 ―――それで、どういった御用向きでしょうか? お嬢様から留守中にエミヤ様が訊ねられた場合、丁重にお迎えするようにと仰せつかっておりますので 火急の用事であれば、私からお嬢様にご連絡差し上げますが―――」 凛 「ええ、至急イリヤスフィールさんに取次ぎ願います。 現在冬木市内で起きている事件について監督役と 私、管理人(セカンドオーナー)から停戦及び協力の要請にこちらへ参りました。」 セラ 「かしこまりました。しばらくお待ちください」 そう告げるとセラは奥の扉へと消えていった。 秒針の音がやけに大きく感じて、壁にかけられた時計を見上げた。 時刻は三時過ぎ。 学校はそろそろ終わっている頃合いだ。 「………………」 「………………」 沈黙が痛い………。 無理もないか……… 全身に圧し掛かる重圧と疲労感、連戦が続いている現状下だ。 のろのろと辺りを見渡した。何かを耐えるように目を瞑る遠坂。 セイバーとキャスターも外見は平常に見えるが、傷もまだ癒えていないはずだ。 5分ほど経ったあたり、セラは戻ってきた。 「お待たせしました。エミヤ様。トオサカ様。 お嬢様は少し小用を済ませてからお帰りになるそうです。 お急ぎのところ申し訳ありませんが、ご用件のほどは直接お話になりたいそうなので 今しばらくご留意願いたいとのことです」 ◆◆◆ 離陸してから一時間、『天星船(アマノツツフネ)』は上昇を終え水平飛行に入った。 桜 「せめて窓があればなぁ……」 桜は何もない壁に目をやり、つぶやいた。 構造上の問題で、客室にも窓がついていないのであった。。 身だしなみをととのえて客室を出ると、廊下は人の姿もなく静まりかえっていた。 間もなく、血に塗れた晩餐会(ばんさんかい)がはじまるのだ。 聖杯戦争と魔力補給のための食事、もう自分は止まることはできない。 ジャンパーを羽織って甲板に出た。 空は霧のため、半分も見えなかった。 船首の近くまで行って、船壁に触れてみる。 冷たい。 冷たい風。 それこそ、地上とは比べものにならないくらいの冬の風が、そこにはあった。 凍った空気が渦を巻いていた。 むき出しの顔を、耳を、ジャンパーの裾(すそ)を、切るような突風が吹き抜けていく。 桜 「寒い……」 思わずうわずった声が口をついて出てしまうような、そんな寒さだった。 無意識のうちに、真っ赤になっているに違いない両耳を覆った。 時折気まぐれで風が弱くなるが、それでも寒いことには変わりない。 そしてまたすぐに、屋上を駆け抜ける風が、遠慮なしに私の周りを吹き抜けては、どこかに去っていく。 私は、風に流されるように船上を歩いた。 アーチャー「やあサクラ!ご機嫌はいかがかな?」 軽薄な調子で顔色を覗う北欧の王。 朗々と親しみを込めて金髪の好青年はこちらへ歩を進める。 私はこのサーヴァントと共闘の道を選ぶことになった。 胸に巣くう祖父。 身体を刻一刻と蝕むこの世全ての悪(アンリマユ)の呪い。 救いも助けもなく、ただ死を待つだけの自分の下へ彼はやってきた。 そしてもたらされる救いの手。 無論、はいそうですかと信じられるものではなかった。 …………だが他に頼る者もいないのだ。 苦渋ではあるが、私はこうして藁をも縋る思いで彼の提案に乗った。 だがやはり、今一度この男の思惑を確認しておかなければ。 彼はサーヴァントの中では好戦的な部類に入る男だ。 戦えるならなんでもいい、と喜んで今の状況に適応しかねない アーチャー「うん?そうだよその通りさ!闘争は人に様々な恩恵をもたらしてくれるからね。 そうそう、さっき見た魔法少女まとか☆マギナなんだけど、すごいなアレは! いや~パッケージに騙されてしまったよ。ひだまり系かと思ったらまさかあんな猟奇的魔法少女なんてさ! ………あーいやいや、冗談だよ。姫君(プリンセス)。 ―――それじゃあ、そろそろ本題に入ろうか」 社交界の王子様のように、優雅に一礼して私の手を取り、彼の相棒である北欧の主神オーディンから授かった弩。 大空を羽ばたく『大神翼弩(ラヴナグズ・クロスボウ)』 に乗るよう誘いかける。 ………いちいちまどろっこしいが、話が進みそうにないし、断る理由もないので渋々アーチャーの手をとり 共に翼弩に乗る。 私たちは、『天星船(アマノツツフネ)』に併空するようにゆっくりと飛び、少しずつ距離を離しながら 大空を羽ばたく。 アーチャー「敵に捕捉されないように雲の中を潜っていたからね。 ここは視界が悪いし、ロマンチックじゃない。少し上昇するよ?」 翼弩の羽音がハーモニィになって心地良い。 さらにそのサウンドが風切り音に攪拌(かくはん)され、途切れ途切れに聞こえる。 雲の中を抜ける。 広がる蒼穹の空。 澄み切った空。 リラックスして、力を抜いて、 間桐の家も、聖杯戦争も、怖い人たちも。 じっと、静かにして。 音もなく、望みもなく、光もなく、目的もなく。 ただ、どこまでも拡がる蒼天の世界。 外側にいる自分を、私の背中が感じた。 私は、私から抜け出して、 私は、この冬木市から抜け出して、 私は、社会からも、地球からも、抜け出して、 ずっとずっと遠くに浮かんでいるのだった。 そんな幻想が、私の背筋を寒くする。 私の肩に、誰かの手が軽く触れて、 優しい口調で囁いた。 アーチャー「さあて、どうだい?」 その息遣いが耳もとに感じられたときだった。 アーチャー「きみは、自由だ。 見てごらん?眼下に君と苦楽を共にした街が見えるよ」 下に視線を向けると、私がこれまで暮らしてきた冬木の街並みが一望できた。 雑多な風景。 私を縛った箱庭。 ―――ああ、ここはなんて 桜 「眩しい…… なんて眩しい光なんだろう…… あんまりにも眩しすぎて、 何もかも真っ黒に見えちゃうなあ…… ほんと、 誰も彼ものっぺらぼうな影絵みたい…… くすくす……薄っぺらでカンタンで、 ふらふら揺れるだけの紙人形 そんなの、 いてもいなくても同じだよね? どうせ紙クズなんだもの 目障りだから、ひと思いに 握りつぶしてあげちゃおうかなあ?」 ―――綺麗でキレイで小さいんだろうか。 アーチャー「私は戦いが大好きなんだ」 空を舞う王は語る。 アーチャー「別に戦狂いのバルバロイ(蛮族)なわけではないさ。 ただ、人間の持ちうる無限の可能性に魅かれていてね」 桜 「それが……私に力を貸してくれる理由?」 アーチャー「「他者との競争」。これこそが人間をより強く遥かな高みへと導く最も効率的な手段でね。 聖杯はあくまで過程(プロセス)を短縮する手段にすぎない。 競争があるからこそ、より良いもの、より優れたものが選別され将来に受け継がれていくのさ」 桜 「わ……私は、」 アーチャー「うん。縛られたり操られるのがイヤなんだろ? そんなことはしないさ。君は、君の望むがままに動けばいい。 私は、きみが幸せを勝ち取るために。君を縛る鎖と檻を引く大鷲となろう」 私が言おうとすることを優しく先んじる。 アーチャー「かつて私が信仰する戦の神オーディンは、グラズヘイムにあるヴァルハラという宮殿に、 戦死した勇者(エインヘリャル)をワルキューレによって集めラグナロク(神々の黄昏)に備えた。 ―――それは、戦いは万物の父であり万物の王である。 それはある者を 神々として、ある者を人間として示し、ある者を自由人に、ある者を奴隷とする。 熾烈な生存競争に揉まれた人間の強靭な意志と力にこそ、真の叡智と力を得る可能性が出来るのだと考えていたからだ」 公的存在に高められるべき存在性、これは実存性を有しないからであり 逆に言えば、「闘争本能」や「生存本能」といったもにに由来する「他者との競争」がなければ、 人類は発展もできず、生存も危ぶまれる。 競争があるからこそ、より良いもの、より優れたものが選別され将来に受け継がれていくのだ。 現在でも、企業間の闘争や、個人での出世や、見栄、エゴといったものは確実に存在し、 それらの全くない人間はまず存在し得ない。 実際に「血」を流すかどうかはさておき、競争自体はなくなることはないのだ。 アーチャー「神々は、迫る巨人族との戦争に脆弱な我ら人間族の力を強く求めた。 神は単一で完成された至高の絶対的な存在であるが、 それ故に確約された運命を克服しうることができないんだよ。 なればこそ、希望は少なかれど――― 儚くも強く運命に立ち向かい生き足掻く、英雄英傑の魂を集ったのさ。 ―――まあ、結果は君も知っての通りなんだけどね」 北欧神話の最大の特徴は、ラグナロクという最終戦争によって神々が世界もろとも滅び去ることにある。 …バルドルの死によって世界は光を失い、3年もの間冬が続いた。 太陽と月はフェンリルの子の狼に飲み込まれ、あらゆる封印は吹き飛び 解き放たれたロキは巨人族を、ヘルは冥界の亡者を、スルトが炎の巨人たちを率い、 フェンリルとヨルムンガンドもアースガルドに押しよせたのだ。 そしてヘイムダルの吹く角笛によって敵襲を知った神々とヴァルハラの戦士たちは、 アースガルドの前にひろがるウィグリドの野に出撃し、最後の戦いがはじまる。 オーディンはフェンリルに飲み込まれたが、息子ヴィダルがフェンリルの口を引き裂いてかたきを討つ。 また、トールはヨルムンガンドを撃ち殺したが、その吐き出した毒を受けて倒れた。 チュールは地獄の番犬ガルムと、ヘイムダルはロキと相討ちになり、宝剣を失っていたフレイはスルトに倒され そしてスルトが投げつけた炎の剣によって世界は火の海につつまれ、海の底に沈んでいった。 しかしその後、新しい陸地が浮上し、新たな太陽が生まれ、バルドルもよみがえった。 ヴィダルなど数名の神は生き残り、アースガルドの跡地に住まいを建て直し また男女1組の人間が森の中で生きのび、彼らの子孫が地を満たしたのだという。 アーチャー「だが主が認めた人間の最も重要で究極である個のポテンシャルは、既に世俗化されてしまったこの現代社会では 著しく低下してしまっている……。 神々が現世を離れ、人間たちは新しい環境を手に入れても、生物としての業を払拭できず 自らの新天地たる大地さえも私欲の道具に使った成れの果てがこのザマさ」 訥(とつ)々と語る言葉は、歴史の真実を紐解くものだった。 アーチャー「其の英雄英傑は特殊な種類の存在を前提としている。 生命なきもの、価値乏しきもの、無価値なもの、低劣なものは 代表されえず 不透明な時代を乗り切るには、先見性を身につけていかねばならない。 そして、その先見性は、外に求めても得られず 自分の技術、自分の経験など、 自分の周辺にあらゆる可能性を追い求めていくのが人間族の最も優れた長所だ。 時代がどう変われ、自分の足下を見つめ、 自己の持てる可能性を限りなく追求していくことが、革新に至る王道であり 絶望と困難に満ちた運命を切り開く剣なのだ。 ―――主神オーディンの遺した言葉だよ」 返答はない。 やはり、彼女は闘いを望まないか弱い乙女なのかな? 汲みきれない微かな後悔を抱いて頭を下げたアーチャーに、桜はひどくやさしい微笑を返した。 桜 「あなたにはある?全部投げ捨ててもう一度やり直したい 生まれ変わりたい。……そんな時が」 と尋ねた穏やかな声は、目前の少女を十歳も大人びたものに見せた。 アーチャー「……今のお嬢さんは、そう見えるよ」 アーチャーは思った通りに答えた。 意外なものを見つけたというふうな顔をした後、もとの微笑みを取り戻した桜は、こちらに背を向けて宙に向き直った。 桜 「考えていたんです。お爺様のこと……」 夕陽が緩く波打つ白髪を輝かせ、長い影を壁に映した。 恋を失った女の背中、という表現が不意に立ち上がり、アーチャーは知らぬ間に一歩彼女の側に踏み出していた。 桜 「お爺様は、蟲の技術で何百年もの時を超えて生きてきたんだそうです。 でもそれは、なにもない時間の積み重ね……。生きているのか死んでいるのかわからない、 無意味な年月だったと思うんです」 その重さを知り、虚しさを全身に受け止めた人の声と聞こえた。 桜 「お爺様は、きっと永遠を欲しがったのでしょう。 いつか腐敗した肉体を棄てて、もういちど不自由なく大地の上で暮らせるようになるまでには、 膨大な時間が必要だとわかっていたから。それを待つには、人の一生はあまりにも短い。 永遠を手に入れられると信じなけれぱ、十年、百年の単位で語られる時の重みに、 押し潰されてしまうと知っていたから……」 奈落に引きずり込まれそうな体を支えるように、桜は翼弩の縁に両手をついた。 陽光を微かに反射した表面は曇っており、その表情を映すことはなかった。 アーチャー「広大無辺な宙(そら)を前にすれば、人は塵以下の存在に等しい。 そう、主は諦めなかった。 自分の寿命で足らなければ、後の生命に想いを託してまで世界の安寧を案じたんだよ。 無為に五百年以上の時を超えてなお生き足掻く蟲の王と、連綿と続く命の繋がりに望みを繋いだ主神オーディン。 そのどちらが、生命の在りようとして正しいのかな……?」 答えられなかったし、その資格があるとも思えなかった。 これはアーチャーらしい悔恨なのだろうと理解して、桜は紅いマントに包まれた細い肩の線を見つめた。 アーチャー「終わりがあるからこそ、生が輝く。 それを一人でも多くの人にわかってもらうために、 主は多くの英雄の魂を集い、ラグナロク(神々の黄昏)へと臨んだのかもしれない。 我が望みは太陽がその寿命をまっとうして、この星系が虚無に引き戻される前に、 我々の叡知(えいち)を恒久的に正しく使う方法を手に入れさせることだ」 独白のようなアーチャーの声が、広大な大空の中に吸い込まれていった。 アーチャーはもう振り返りはしなかった。 アーチャー「さすれば、永遠を手に入れられずとも、後世の知的生命体に我々の存在を知らしめる術も見つかろう。 それが今日までの礎(いしずえ)となった全ての英霊たちも、また報(むく)われる。 そう、外世界に飛び出していった神たちと決別し、発祥の地に残った我々人間族の、それが使命というものだ」 死の床につきながら、なお生を希求してやまなかった老人を想起させる繰り言。 そうでもしなければ、ただ発生し、ただ滅んでゆくだけの人はあまりにも寂しいと訴えるアーチャーの声は、桜の頭を素通りした。 アーチャー「人は何かを捨てなくては前に進めない。泥に飲まれ、暴力に酔う君もまた間桐桜だ。 異なる人格を用意し、間桐桜は悪くない、などと言い訳をする必要はない。 君は君の欲するがままに喰らえばいい。 もう、後戻りする気はないのだろう?」 微笑に歪(ゆが)められた唇が、返答だった。 赤い瞳を隠し、 黒い顔貌(がんぼう)を天に向けた桜の真意を測るのを中断して、アーチャーは眼下の街に目を戻した。 お互いの利害を観察する二人には、それぞれの思想も思惑も興味はないからだ。 膨らみ始めた闘争の喜悦が、冷えきった身体に熱い血を注ぎ込んでゆくのを感じて、アーチャーは幾千年ぶりに武者震いをした。 ―――これが、地上で行う最初の私の聖杯戦争になる。 テンノサカヅキに至れとアーチャーは言った。 アインツベルンの秘宝、第三魔法・天の杯(ヘブンズ フィール)。 その名を冠する冬の娘は、初めから全てのカラクリを知っていた筈だ。 正規の聖杯である彼女を触媒とし、かつて祖父が企んだ高次生命体への肉体に乗り換える。 ―――同時刻。 冬木市新都。スクランブル交差点中央。 通常は、多くの人々が行き来する活気のある街並みも 現在は対峙する五人のみの伽藍とした静けさが満ちている。 桜 「イリヤスフィール」 声をかける。 恐れと諦観から、今の自分は感情が欠如している。 「………………」 返答はない。 もう少し近寄ろうと足をあげる。 イリヤ「大丈夫、聞こえてるからそこにいて。 こんにちはマキリの紛い物さん。わざわざ会いに来てくれたの?」 「――――――」 足を止める。 どうやら、事は手早く済みそうだ。 桜 「ええ、哀れなお人形さん。 本当はもう少し待ってから戴こうと思っていたのですけど あまりに、お気楽なあなたを見て我慢できなくなっちゃいまして ふふっ、ほんと小さぁい…踏み潰しちゃおうかな?」 イリヤ「蛆虫から誘いにくるなんて珍しいね。 それで、どんな話かしら? できれば明るい話にしてほしいけど。 せっかくのパーティーなんだもの。どうせなら楽しまなくっちゃ勿体ないでしょ?」 癇に障る。 私のことを彼我にもかけないその余裕な態度が鼻につく。 桜 「っ……わたし、貴方の そういうところ、大嫌いです。 それと、私は蛆虫なんかじゃありません 単にわたしも、 貴方の事が邪魔で邪魔で しょうがないだけなんですから!」 紹介は簡潔に済んだ。 イリヤは名乗る必要がなく、桜は少女の名前に関心がなく、 イリヤは桜の背後に付き従う二人の英霊の名前はおろか素性、能力まで把握していたからだ。 アーチャー「ふむ……。ようやく因習と規範に縛られた、 なにひとつ面白味のないパーティーから脱却できそうだ」 アーチャーは戦闘態勢を整えつつ、ライダーにだけ聞こえる声で言った。 ライダー 「長い間、守り抜かれてきた伝統には、それなりの意義があるとお考えにはなりませんか?」 と、黒く汚濁してなお凛と美しく佇む彼女はあえて反対の論陣を張ってみた。 ライダー 「エチケットと呼ばわるものは生活の仕方ですから、 これは生きる上で参考になりますし、遵守(じゅんしゅ)されるべきです。 しかし因習や規範という言葉には、これを教義化して人を狭くする性質がひそんでいるように思いますが?」 辛辣な言葉も嫌味に聞こえないのは、育ちの良さがなせる業(わざ)なのだろう。 影が躍る。 間桐桜の足元から、夥しいまでの黒色が周囲を蹂躙していく。 咄嗟に危機を察知した敵サーヴァントは顕現と同時にイリヤを抱え距離をとる。 アーチャー「人々が規範にこだわる理由を知っているかい? そうでもしなければ、社会的な存在など消えてなくなってしまうとわかっているからだ。 脆弱(ぜいじゃく)なんだよ、基本的に僕ら人間はね」 ライダー 「…………」 アーチャー「私は、新しい時代を生きる者だと自負している。 自らの保身・虚栄心を優先する余り実問題を後回しにしてきた責任は私が清算し 聖杯の力によって社会システムを統括させ、一時的に全人類の進化を促す 私の願いは君の望みとは相反することになるが、これも敗者の勤めだということで納得してくれ」 ライダー 「同一の意思で構成されたシステムは、どこかに致命的な欠陥を持つことになるわ 国も人間も同じ 特殊化の果てにあるのは、ゆるやかな死……それだけですよ?」 「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■―――――!!!」 桜から離れることおよそ150メートル。 二人の少女の間で猛け吼えるサーヴァント。 その禍々しい兇暴な容貌と剥き出しの殺意の波動。 間違いなく狂乱の位階(クラス)、バーサーカーに間違いなかった。 イリヤ 「――――英霊の魂で満ち足りた聖杯。 それを以って門を開くのが彼らが目指した奇跡だけど ……まさか、開けてもいないのに中に棲んでしまうモノがでるなんて」 滑稽ね、とイリヤは呟く。 こうなってはアインツベルンの悲願も何もない。 またも彼らは失敗する。 これから起きること、これから生まれるものは彼らが望んだものとはかけ離れた“災厄”である。 アーチャー「よくわかってるね。そう、既に歴史と成熟した暦学がそれを証明してしまっているんだよ。 なればこそ、願わくば成長した彼らが、 将来個のポテンシャルを上げて我々の出せない答えを見つけ出してくれることを祈るばかりだ…」 ライダー 「……私も、代わり映えのしない学問をするよりは、実社会で学ぶべき時代になったと存じております」 アーチャーの言葉に思うところがあるのか熱くなり、ライダーはらしくもなく声が上ずるのを自覚した。 イリヤ「それじゃあ行くわ。 さあ、見せ場よバーサーカー! 遠慮はなし、立ち塞がるのはみんな壊して、貴方の強さを見せつけなさい!」 「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■―――――!!!」 主人の言葉と同時にバーサーカーの凄まじい魔力の波動が物理的な衝撃と錯覚するほどの 旋風となって三人を巻き込む。 狂王は少女の導くまま、黒い雪原を突き進む。 向かうは源泉。 辿り着く保証もなく、偽りの聖杯を破壊するため そして、少女は危なっかしい弟を彼女から護るために。 ……たとえ、その目的が果たせずとも。 自分たちの行動が、今度こそ飛沫ではなく、波紋となって大局を揺るがすようにと。
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バベル外伝 4話 ~~都内のビルの一室 前アーチャー「ブーンブーン、カーセブーン」 コンコン 前アーチャー「ブーンブーン……誰だ、俺様が機関車で遊ぶのを邪魔する、すっとこどっこいは? おら、入れ!」 ルヴィア「失礼しますわ。求人を見て来たのですけれど」 前アーチャー「求人?」 ルヴィア「サーヴァントを狩る年若い淑女を募集していると聞きましたわ」 前アーチャー「ああ、そうだったそうだった……募集、終わったけどな」 ルヴィア「え! もう終わったんですの!? 何で?」 前アーチャー「募集かけてすぐに応募があったからな。俺様は遊ぶのに忙しいから、それじゃ……」 ルヴィア「待って、納得がいかないですわ。どんな人が来たんですの?」 前アーチャー「やけに熱心だな、お嬢ちゃん。それじゃ、紹介してやろうじゃねーか。 新たなる戦闘淑女、クラン☆カラティンだ!」 クラン☆カラティン「……狩リノ時間ダ」 ルヴィア「ちょっと待って! 突っ込みたいところがいっぱいあるんだけど……何で鉄仮面被ってるの!?」 前アーチャー「自前だそうだ」 ルヴィア「まあ、それはいいとして……どう見ても男じゃないの!」 前アーチャー「まあ、性別に関しては俺も考えた。だが経歴を考慮して、特例にした」 ルヴィア「経歴?」 前アーチャー「多数の戦場で狩りの前歴があるらしい」 クラン☆カラティン「竜(モンスター)ナラ1500匹ハ狩ッタ……女王モダ」 ルヴィア「竜(モンスター)って……」ゾクリ 前アーチャー「お前、竜(モンスター)狩り程度の経験とかはあんの?」(ホジホジ) ルヴィア「……無いですわ」 前アーチャー「えっと、採用が決まったら電話するから」 ルヴィア「電話番号も聞いてないのに、追い返そうとしないで! どう見ても不採用じゃない!」 前アーチャー「だって、経験者が居るしさ」 クラン☆カラティン「………」(シャキン) ルヴィア「どう見てもあれ、人間じゃないじゃないですの! いいんですの、戦闘淑女がそれで!?」 前アーチャー「いや、まあエロ専門と狩り専門は別でいいんじゃねーのか」 ルヴィア「納得いかないですわ!」 前アーチャー「おいおい、面接希望者にゴネられても、俺は困るぞ」 ルヴィア「サーヴァントを狩る戦闘淑女には、私こそが相応しいですわ!」 前アーチャー「じゃあ、1対1でどちらの腕が上か勝負するのはどうだ?」 ルヴィア「いいですわ、受けて立ちますわ!」 クラン☆カラティン「………」 前アーチャー「ちなみに、あいつは自前で魔術光学式迷彩とか、GAU-8 アヴェンジャー(ガトリング砲)を装備してるから」 ルヴィア「が、頑張りますわ」 ~~二週間後、学校の屋上 イリヤ「アーチャー、かまぼこ食べる?」 前アーチャー「おう、食うぜ……うめーうめー」(もっちゃもっちゃ) クロ「じゃあ、私はハンペンあげるわ」 前アーチャー「遠慮無く頂くぜ……そういえば、何か忘れてる気がするな」 ミユ「アーチャー、お弁当まだあるからね」 前アーチャー「おう、食うぜ食うぜ……うめーうめー、ミユの弁当は最高だ」 ミユ「ありがとう……照れちゃうわ」(ポッ) ~~同時刻、南米 ルヴィア「な、なかなか決着がつきませんわ……というか、これって帰れるのかしら?」 クラン☆カラティン「………」(チュドーン!) ルヴィア「ど、何処から撃ってきてるの!? きゃー!」
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拷問技術:A++ (イヴァン四世) 破格の拷問技術。 拷問器具を用いた場合、ダメージを向上させると共に敵のCONを大幅に削減する。 イヴァン四世の場合、人民、貴族、部下を牢獄に送り様々な拷問具に掛けたり、 火薬や温度変化による苦痛を与え悶え狂わせたり、時には多種多様な拷問をショーとして開催しており 拷問の才能と残虐性と芸術性は常軌を逸する。 クラス能力により理性を失ってる間は能力を発揮できない。 拷問技術 (エリザベート・バートリー(EXTRA)) ランクAに該当。卓越した拷問技術。 拷問器具を使ったダメージにプラス補正がかかる。 このサーヴァントの場合、捕まえた人間をアイアンメイデンに閉じ込めて血を絞ったり、 指折り器や拘束器具で苦しめて狂わせたり、時には思いついたように 指や腕、首筋、乳房に噛みついてそれを食いちぎったりと、その残虐行為は多岐にわたる。 【A++ランク】イヴァン四世 【A+ランク】 【Aランク】 エリザベート・バートリー(EXTRA) 【Bランク】 【Cランク】 【Dランク】 【Eランク】
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【元ネタ】「酒呑童子絵巻」、御伽草子など 【CLASS】セイバー 【マスター】 【真名】伊吹童子 【性別】女性 【身長・体重】133cm(全長200cm)第一再臨 180cm(戦闘時300cm)第二および第三再臨・??kg 【属性】混沌・善 【ステータス】筋力A+ 耐久C 敏捷C 魔力EX 幸運D 宝具A+ 【クラス別スキル】 対魔力:A 騎乗:B+ 【固有スキル】 竜種:EX 山河の膂力:A+ 蛇神の神核:A 神性スキルを含む複合スキル。 八岐大蛇の分霊にして子である伊吹童子は、例外的に本スキルを高ランクで有する。 鬼として零落した姿ならば、本スキルは低ランクの神性へと置き換わる。 八脈怒濤:B 八岐大蛇が有する神としての側面のひとつ、洪水神としての性質が受け継がれたもの。強烈な攻撃性を伴った不変の肉体があらゆるものを破壊する。 ケガレの指先:A 純粋性の喪失、名誉の欠落、そして死。伊吹童子の指先が触れた者は不浄とされ、神前や人の前に在ることを許されない。 攻撃系スキルとして分類されるが、死霊、魔獣、零落した神々などを対象とした非戦闘時の会話に際してもプラス効果を得る。 【宝具】 『神剣・草那芸之大刀(しんけん・くさなぎのたち)』 ランク:A+ 種別:対軍/対城宝具 レンジ:1~60 最大捕捉:500人 記紀のスサノオ神話に曰く、高天原を追放された素戔嗚尊は出雲の国に降り、生贄である奇稲田姫(くしなだひめ)を救い、巨大な怪物を退治したという。 この怪物こそ八岐大蛇、八頭八尾を有した赤眼の怪───八つの谷と峯にわたる長大さを誇る、巨大な蛇。日本最大の災害竜であった。 素戔嗚尊はこの大蛇(竜)を打ち倒し、その尾から一振りの神剣を得た。 剣の名は草那芸之大刀。別名を草薙剣、天叢雲剣、都牟刈の太刀。のちに熱田神宮に奉納され、三種の神器のひとつとして定められたという。 伊吹童子は、父たる八岐大蛇が身の裡に有していたこの神剣を宝具として操る。 真名解放の一斬たるや、八つの谷と峯を切り拓き、八つの大河を新たに生み出す程に恐るべきものである…… が、伊吹童子曰く、これは神剣のほんの僅かな輝きを一時のみ借り受けたもの。真価はこの程度ではすまない、とのこと 【解説】 【元ネタ】「酒呑童子絵巻」「御伽草紙」など 【CLASS】バーサーカー 【マスター】 【真名】伊吹童子 【性別】女性 【身長・体重】180cm(戦闘時300cm)・不明 【属性】混沌・夏 【ステータス】筋力B+ 耐久B 敏捷C 魔力EX 幸運C 宝具B+ 【クラス別スキル】 狂化:E 竜種:EX 蛇神の神格:A 【固有スキル】 真夏の女神:B 何が夏っぽくて、何が夏っぽくないのか─── 水着霊基の伊吹童子は「夏っぽい」か否かを判断する。 水着に着替えた伊吹童子は、自らを「夏を司る女神」と定義しているためだ。 ちなみにこの女神、けっこう恐ろしい。荒御霊である。 サマー・チアリーダー:C 水着の伊吹童子は、夏の女神であると同時に真夏のチアガールでもある。 夏を楽しもうとする者すべてを彼女は言祝ぎ、がんばりなさいと応援もしてくれる。 運が良ければ水着霊基の一種であるチアガール姿(ハイスクールチアガールスタイルと本人は言うのだがこんなゴージャスなハイスクールのチアはそういないと某カルデア職員は呟いたという)を目にする者もいるだろう。 ビーチ・アポカリプス:A+ 伊吹童子が真夏のビーチを楽しむ時、世にも恐ろしい終末が訪れるでであろう。 夏の装いへと変わった伊吹童子のもたらす破壊力はもはや黙示録級。 あのすごい美人のお姉さん、すっごい……すっっごい深酒しているぞ! みんな逃げろ! 【宝具】 『伊吹御霊・八脈怒涛(いぶきのみたま・はちみゃくどとう)』 ランク:B+ 種別:対軍宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:300人 自らを「夏の女神」と定めた伊吹童子が獲得した宝具。 八度に亘る連続攻撃が生み出す、地上の万物を砕き尽くす猛烈な八連水撃。 八頭の大蛇が如くうねり、轟音を上げ、怒涛となって押し寄せる真夏の海水は、まさしく神の荒ぶる一面そのものである。 通常のセイバー霊基時にも似た素手攻撃を行うことが時折あるものの、 水撃ではなく、宝具としても成立していない。 あくまで本宝具は、水着霊基の際にのみ備わるモノである。 伊吹童子としては、霊基の調整に際して、特に洪水神としての側面が強くなっているような自覚があるらしい。 【解説】