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前へ 暗い暗い闇の中。 僕はずっとその中を泳いでいた。 いや、正確には僕は泳げないから、漂っていたと言った方が正しいかな。まぁそれはどうでもいいけどね。 ところで、僕はどの位の距離を、何時間、何日、いや何ヵ月泳いでいたのだろう。 それは僕には、全く分からなかった。 見当もつかなかった。 ただ、あの忌まわしい記憶は残っている。 シジマさんや海パン野郎達を躊躇無く殺していった事を。 僕は突然、言いようもない感じ(罪悪感って言うのかな)に襲われ身震いした。 何故あんなことをしたんだろう。 心が痛くなった。 その時だった。 突如目の前の闇を突き破り、一筋の光が差しこんだ。 その光は形を変えてゆく。 それは人の形をしている。僕の大好きな人。 僕はそれが誰か知っていた。 「しっ、しずかちゃん!」 僕は叫びをあげ、しずかちゃん元へ無我夢中に泳ぐ。正確にはもがく。 しかし泳げども距離は縮まらない。僕は自分の水泳の才能を呪ったが、そんな事はどうでもいい事だった。 しずかちゃんは言った。 しずか「………たさん……びたさん……のび太さん。」 のび太「しずかちゃぁぁーーーーん!」 彼女の囁きで、僕はもがきのペースを早めた。 いつのまにか涙が溢れ、顔はぐちゃぐちゃになっていた。 しずかちゃんはそんな僕に、一瞬微笑みを浮かべると僕の方へ(まるでタケコプターでもついてる様に)飛んで来た。 のび太「しずか……ちゃん?」 僕は囈の様に言う。 すると、しずかちゃんはもう一度僕に微笑みを投げ掛け、耳元で一言囁いた。 しずか「のび太さん……。 皆を……皆を……助けてあげて……。」 しずかちゃんはそう言うと僕の元から離れ、上の方へ(闇の中で言うのもなんだけど、まぁ僕の頭がある方が上だろ。常識的に。)飛んでゆく。 のび太「しずかちゃぁぁーーん!」 僕は懸命にしずかちゃんを追いかける。 のび太「しずかちゃん! 皆を……皆を救うってどういう事!? ねぇ!しずかちゃん! 待ってよぉー。ねぇったらぁ!」 僕はかつて無い程の必死さでしずかちゃんを目指す。 涙と鼻水で化粧された顔は、かなり不細工なものになっていたであろう。 しかし僕は泳いだ。 しずかちゃん目指して。 僕の心の一つの輝き、そして光。それを目指して。 僕は光を求め、重いまぶたを開いた。 舞台は戻って自然公園。 のび太「………うーーん……。」 今にも起き上がろうとするのび太にゲンガーは唖然とする。 ゲンガー「な……何故こんなに早く起きれるんだ……。」 ドラえもん「僕は始めから思ってた。 君を捕まえる事は出来ないってことをね。 だから、ボールを囮にして『はっかのみ』をのび太君に投げ与えたんだ かなりリスキーな作戦だけど成功して良かったよ」 ドラえもんの言葉を聞き、ゲンガーはぎょっとする。 ここでわざわざのび太を起こしたということは、次に来る策はただ一つ。 ゲンガー『俺をボールに回収する気だなッ!』 ヤバイ、これはマジでヤバイ。 奴があの眼鏡猿を起こしたのは、自分の『所有者』であるのび太に自分をボールに回収させる為だろう。 ボールの中に入れば如何に自分のレベルが高かろうと無力な存在。 眼鏡猿の所有権は解除してしまったから、もう一度、あのルールを満たさない限り奴を操る事は出来ない。 故にボールに収められたらもう終り。 絶対絶命のピンチだ。 しかし、まだ希望が潰えた訳では無い。 ノートのルールにより、のび太はここに至るまでの過程の記憶が全く無い。 故に、今すぐこの状況を理解する事は到底不可能だろう。 奴の単純な性格は、タンバまでの追跡、数日間を共にした日々で良く分かっている。 自分の話術なら、『かなしばり』が解ける残り数十秒位なら上手く時間を稼げるだろう。 解けたら即、あぼーんさせれば良い。 ゲンガーは簡単に作戦を立てると、まだ寝起きたばっかりののび太の元へと近づいた。 ゲンガー「おい、のび太!ヤベエぜ、お前がタンバで人殺したのがバレてんぞ。皆俺達を許さねえって言ってるぜ。どうするよ?」 とりあえず、今の状況を誤魔化す為に嘘の情報を流さなければ。 安い策だが、寝起きのまだ働いてない脳味噌には効果抜群だろう。 それを見たジャイアンはヤバイと思い、のび太に指示を飛ばす。 ジャイアン「おーい!のび太!騙されんな!早くそいつをボールに戻「アーーーーー、アーーーーー。 なんて言ってるのか聞こえないなぁ。アーーーーー。」 ジャイアン「あの野郎……。 ワザと大声を上げて、俺の声をかき消してやがる……」 ジャイアンは唇を噛む。 単純だが、時間を稼ぐには最良の手だ。 成程、最初にのび太に接近したのもこの為か。 ジャイアン「おーい!のび太!聞こえるだろうよぉーッ!のび太ぁぁ!」 ゲンガー「ワーーーーー、ワーーーーー。キシシシシシ。あのデブゴリラ。無駄なのによぉ。」 尚も声を上げるジャイアンを見てゲンガーはあざ笑う。 ゲンガー『さて、そろそろ『かなしばり』が消えるな。 そしたらまず眼鏡を消し去って……。ん?』 そこまで考えて彼は気づいた。目の前の少年の顔に。 涙でぐしゃぐしゃになり、憎しみを込めてこちらを睨んでいることに。 そして、一番ゲンガーの精神を揺さぶった事は、彼の手にモンスターボールが握られていた事だった。 ゲンガー「テメエッ!何を!」 のび太「何をって……?見たら……見たら分かるだろ…… 時間犯罪者……お前を……封じ込める!」 有り得ない。この状況で奴がこんな行動をとれるのは有り得ない。 第一、ここに至るまでの記憶は無いし、ジャイアンの指示も全て聞こえなくした。なのに何故…… のび太「僕は……夢を見た。 しずかちゃんの夢を。君が……君がしずかちゃんをッ!だから……君は……僕が封じ込めてやる!」 のび太はモンスターボールをゲンガーの方へと傾ける。 ゲンガー「ガキがぁぁーーーー!調子に乗るんじゃねぇーーーーッ!」 ゲンガーの激昂が天に轟いた瞬間、彼の肩がすぅっと軽くなった。 ドラえもん「ヤバイ!『かなしばり』が解けた!」 ドラえもんも叫ぶ。 ゲンガー「食らえッ!シャドーボールッ!」 のび太「戻れ、ゲンガー!」 凄まじい光が辺りに発生する。 その光に驚き、ゲンガーは目を瞑る。 そして彼は光が消えると、再び目を開いた。 目の前に、あのにっくき眼鏡猿は居ない。 ゲンガー「キシシシシシ。 キシシシシシ!」 ゲンガーの笑いが響く。 彼は辺りを見回すが、回りには最早誰もいない。 ゲンガー「みんな……みんな消し飛びやがったぁッ! キシシシシシ!雑魚共めッ!」 ゲンガーは笑った。笑う事しか出来なかった。 何故なら……彼は今檻の中の『無力な存在』だから。 あの瞬間……、始めに光弾を放ったのはゲンガーだった。 しかし、それがのび太にぶつかるかぶつからないかの瞬間、『あなをほる』で回りこんだジャイアンのイノムーが、二人の間に割って入ったのだ。 イノムーが吹っ飛ばされた次の瞬間……ゲンガーは無事ボールに回収されたのである。 舞台は戻る。 時間は止まっていた。 誰もすぐには動かなかった。 本当に終わったのか?そんな考えが皆を包んでいた。 しかし、しばらく時が経ち、ゲンガーが飛び出して来ない事を確信すると、スネ夫はヘナヘナとその場に腰をおいた。 スネ夫「……お……終わった……」 スネ夫に釣られたか、皆緊張の糸が解け、その場にヘタリ込む。 ジャイアン「勝ったのか……? 勝ったのか?俺達は?」 ドラえもん「勝ったよ……僕達は……」 ジャイアン「そうか………」 ジャイアンもすっかり骨無しになっている。 するとヘタリ込む三人の前に、目を赤くした少年がやって来た。 そいつは言った。 のび太「皆……皆……ごめん……本当にごめん…… 今まで何が起こってたか分かんないけど…… タンバの……タンバのシジマさんを殺したのは……僕なんだ……」 ジャイアン「なんだっ(ry」 思わず叫ぼうとしたジャイアンの口をドラえもんが塞ぐ。 そしてドラえもんは言った。 ドラえもん「それは本当かい?」 ドラえもんの問いに、のび太涙を拭き無言で懐から小さい何かを取り出す。 それは紛れも無く、タンバジムバッジ、ショックバッジだった。 のび太は続ける。 のび太「……誰にも……勝てなくて……僕が……泣いてた時……ノートを拾ったんだ…… そして……僕は……」 ドラえもん「それ以上言わなくていい。」 ドラえもんはそう言い、のび太にハンカチを差し出した。 ドラえもん「大丈夫だよ、のび太君。僕らは……君を許すよ」 のび太「ドラえもぉぉぉん!!」 のび太はドラえもんに抱きつき、体を任せた。 溢れる涙を止める事は出来なかった。拭えど拭えど止まらない。 ジャイアン「泣かせやがる………」 スネ夫「うん……」 二人も貰い泣きしていた。 その時、 ?「いやぁ、友情という物は美しい物だねえ」 見知らぬ男がこちらを見て拍手をしていた。 その姿はピッチリとしたスーツに包まれた、さながら戦隊もののヒーローのようだった。 スネ夫「誰だい?君は……?」 男「君に答える義務があるかい?」 スネ夫は素直な疑問を述べたが、男に即打ち消されてしまった。 その言葉にカチンときたのか、ジャイアンが男に詰め寄る。 ジャイアン「オイオイ…… お前が何処の誰だか知らないけどさ、何様のつも……」 ジャイアンの言葉はそこで止まった。 男の拳がジャイアンの体に当て身を食わせたのだ。 のび太「ジャイアン!」 驚きを隠せない一同に、一方男はトランシーバーのような物で誰かと会話する。 男「アー、こちら……。これから容疑者の確保に入る。 作戦開始!」 次の瞬間、 スネ夫「プギー!」 謎の光線に当たり、スネ夫が倒れた。 ドラえもん、のび太「スネ夫ーッ!」 のび太とドラえもんは反射的に光線の出どころを見る。 そこには、男と似たような格好をした女がそこに立っていた。 手には光線銃が握られている。 ドラえもん「一体これは何……」 男「おやすみ。」 男は光線銃を取りだし、その引金を引いた。 その場に二人の人間が倒れた。 男「よし、回収だ。」 男はのび太の元へと歩み寄り、その手から乱暴にモンスターボールを奪い取る。 のび太は薄れゆく意識の中、必死に意識を保ち彼らの話を聞いていた。 男「えー、もしもし? タイムパトロールですか?たった今容疑者を確保しました。 時代と次元は……」 のび太『タイムパトロールだって!?』 のび太は驚く。 女「待って、この子まだ意識があるわ!」 ヤバイ。 のび太の血の気が引く。 男「じゃあ、もう一発撃って早く眠らしちゃいなよ」 ビビビビビビビ。 それはのび太の聞いた最期の言葉になった。 ボールを回収し終えた二人は、迎えのタイムマシーンに乗り元の時代へと引き返していた。ついでにノートも回収してきた。 女が言う。 女「あの子達はどうしたの?」 計器を確認しながら男は言う。 男「別の班が動いてる。 記憶と時間を少々操作して現実世界に返してやるんだってさ。 多分彼らが次に目覚めるのは彼らの寝床だよ。」 女「そう。」 女は一息つく。 男「それにしても、最後にアイツを封じ込めたあのボールは凄かったな。 23世紀の科学顔負けだよ。 『モンスターボール』って言ったっけ? 同じ名前の秘密道具があった気がするけど」 男はゲンガーの入ったモンスターボールを手に取り、呟く。 女「時間犯罪者の記憶の操作は?」 女は再び疑問をぶつける。 男「『ゲームの記憶』だけ消し去ってるよ。 後、暴れないように力を弱くしておいた。 奴も23世紀に戻れば裁かれるんだろうな おっと……」 突如、タイムマシーンの機体が揺れ動く。 女「どうしたの?」 男「時間の乱気流にはいっちまったみたいだ。大丈夫、すぐに……おわっ!」 女「きゃあああああ!」 機体が大きく傾き二人は壁に体を叩きつけられた。 しかし一息つくと、また逆に叩きつけられる。 まるで箱の中に入れられて振り回されているようだった。 女「きゃあああああ!」 男「慌てるな!すぐに収まる!」 数分後、男の言う通り機体の揺れは収った。 二人はホッと一息つく。 女「イタタタタ……。 あんな時の乱気流は久しぶりに体験したわ。」 女は肩を押さえながら呟く。 男「そうだな……。くそっ、俺は膝をうっちまった……。ああああッ!」 男は突如すっとんきょうな声を上げた。 女「どうしたの?」 女の問いに、男は無言で計器を指さした。 女はそれを見て真っ青になる。 なんと計器がメチャクチャに壊れていた。 これでは航行不能だろう。 男「畜生!ここまで……ここまで来たのに……!」 女「嫌よ!私死ぬの嫌よ! ねぇ!どうするのよぉ!」 男「慌てるなッ! あ…………機体が……崩れてゆく……」 女「きゃあああああ!」 二人の健闘も虚しく、二分後船は時間と次元の波へと飲まれていってしまった。 「うーん……、はっ、ここは?」 明るい陽射しを浴び、『彼』は目を覚ました。 ここが何処かは分からないが、何とか自分が生きている事は分かる。 タイムマシーンが途中航行不能に陥った事は覚えている。 それと、自分が23世紀で犯罪を犯し、逃げてきた事も。 とりあえず、彼は意識をはっきりさせようと、顔を洗いに近くの水場へと足を運んだ。 「ん?やけに体が軽いな」 彼は自分の身の軽さに違和感を感じつつも、顔を洗いに水場へ顔を寄せる。 その瞬間、 「なんじゃこりゃあああああああ!!!!」 水面に映った自らの姿を見て、彼は100デシベルに達するか達しないかの声を張り上げた。 「え?え?どうなっちまってるんだ?」 彼は水面を除き込む。 その姿は幽霊や死神の様な類の姿をしていて、お世辞にも人間と呼べる様な物ではなかった。 「何だよコレマジで。こんなんじゃあまともに外も歩け……イテッ。」 すると、失意に沈む彼の上から何やら冊子の様な物が落ちてきた。 「イタタタタ、なんだよコレ……。」 彼は反射的にそれを見て拾いあげた。 黒いノートだ。 彼はこのノートをパラパラと捲り呟く。 「俺……このノート知ってる……。 使い方も……ルールも……。」 『彼』は呟く。『彼』は知らない事だが、どうやら「ゲームの記憶」を消されても「ノートの記憶」は残っていたらしい。 そして、自分は今『宿主』になる人間を探さなければならない事も何となく知っていた。 ?「よーし、ケーシィしか居ないけど頑張るぞー 僕が一番乗りで現実に帰るんだ!」 ヤベッ、誰か来る。 『彼』はノートを掴み、そそくさと物陰に隠れる。 数秒後、『彼』の前を如何にも頭が悪そうな少年が音痴な鼻唄を歌いつつ、通り過ぎていった。 現実?帰る?意味が分からない。 「あのガキは……とりあえず、跡をつけてみよう。 現実に帰るとか気になる事を言ってたし……。 頭悪そうだから……もしかしたら利用出来るかもな!キシシシシシ。」 彼はこっそりとのび太の跡をつける事にした。 彼がタンバでのび太少年にノートを与えるのはまだ未来の話。 そして、彼が今までこのシチュエーションを何度体験してきたかは、最早誰も知らない事であった。 そして彼は知らない。自分は今、無限の時の中で同じ事を無限に繰り返している事を。 そして舞台は現実世界に戻る。 ピピピピッ、ピピピピッ、ピピピピッ、ピピピピッ。 のび太「うーん。」 今日もけたたましく鳴るアラームの音。 のび太はそれを止めるべく、手を伸ばした。 カチッ。 スイッチを押された目覚まし時計は急におとなしくなる。 のび太「おやすみ……」 のび太は再び夢の中へとGO BACKする。 のび太は気づいていないが、今は8時。小学校ではとっくに遅刻の時間だ。 そして彼はまた気づいていない。目の前の鬼に。 「のぉびぃたぁ……!」 鬼が怒りを浮かべた声を上げるが、のび太は のび太「うーん、行けっ、ケーシィ…… ああ、テレポートばっかしないで戦ってくれよぉ。」 ママ「のび太ぁぁ!!!!」 のび太「うあああああああああ!」 ママの雷が落ち、のび太はトーストをくわえ家から飛び出した。 ドラえもん「やれやれ……のび太君は……」 ドラえもんは小さくため息をついた。 のび太はすすきヶ原町を学校目指し、爆走する。 のび太『最高速度で……この角度を……曲がるッ! のび太、いっきまーす!』 しかし残念ながらアムロ・のび太は角を曲がりきることは出来なかった。 突如、横から来た誰かにぶつかったからである。 「オフッ!」「スップリングッ!」 のび太はその衝撃で吹き飛ばされた。 のび太「イタタタタ……。誰だよ……。 ん?ジャイアン?」 のび太の顔が青ざめる。 ジャイアン「のび太ぁぁ!」 のび太「ひいいいいッ!」 のび太は死を覚悟した。 その時、 出木杉「やぁ、野比君に、タケシ君じゃないか。」 ジャイアン「出木杉ィ。」 ジャイアンは思わずのび太への攻撃を止めた。 ジャイアン「出木杉が遅刻なんて珍しいな。」 出木杉「今日は起きるのが遅くてね。 変な夢も見たし。」 ジャイアン、のび太「変な夢?」 のび太とジャイアンは気になり、訊く。 出木杉「いやぁね、皆でポケモンの世界に行くって夢さ。 余り覚えてないんだけど。」 ジャイアン「なんだぁ、その夢w」 ジャイアンは笑い出す。 出木杉「まぁいいよ、笑ってくれても、所詮夢だし。ああ、それと野比君」 出木杉はのび太の方を向く。 出木杉「僕の後ろからやす夫君とはる夫が来るんだ。どうせ遅刻するんだし、もう少し待ってようよ!」 スネ夫「まさか、優等生の出木杉がそんなことを言うとはね。」 嫌味な言葉と共に現れるスネ夫。 のび太「スネ夫!」 スネ夫は続ける。 スネ夫「ちなみに僕の後ろからはしずかちゃんが来るよ」 ジャイアン「なあんだ、皆遅刻してんじゃねえか。」 ジャイアンの言葉に、今度は皆が笑った。 そして数分後。 ジャイアン「よーし、皆揃ったな。じゃあ、学校目指してしゅっぱーつ。」 総勢七名の遅刻者は学校を目指し歩き始める。 誰もゲームの事を覚えていない。 学校には遅刻しているが、皆はこのふとした日常に幸せを感じていた。 のび太も、そんな日常がいつまでも続けばいいなと思った。 『キシシシシシ。』 のび太「ん?」 のび太は何か聞こえた気がして立ち止まった。 ジャイアン「おーい、のび太、何してんだよ置いてくぞ~」 スネ夫「全くのび太はノロマだな。」 のび太「待って、今行く~」 のび太は走り出した。 のび太『気のせい……かな?』 こうして青い空の下、彼らの日常はまた静かに過ぎてゆくのであった。 ―ポケモンとのび太とノートと完― あとがき 605 名前:ポケモンとのび太とノートと ◆C1aEnJaUS2 [sage] 投稿日:2007/06/01(金) 22 12 05 ID ??? これでポケモンとのび太とノートは終了です。 たびたびの猿さんには焦りましたが、最後まで投下出来て良かったです。 この作品を書き終えれたのも、単に初心者である自分を助けてくれた皆さんのお陰だと思います。 本当に今までありがとうございました。
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前へ のび太「なんだ、なんだ、なんだ!?」 ドラえもんが驚いていると、ドアからのび太が飛び出してきた。 外ではサイレンが鳴っている。 センターの人達も様子を見に行ったようだ。 ドラえもん「突然、外で爆発音がしたんだ。 まさか…………」 のび太「時間犯罪者!?」 のび太が叫ぶ。 ドラえもん「いや、まだ分からない! とにかく、もしそうだとしたら、奴はエンジュに居る僕らを 直接狙っているということになる」 ドラえもんが言った瞬間、 「ドカァァァァァァン!!!」 また、爆発音が聞こえた。 のび太「ドラえもん!! 行ってみよう!」 のび太が急かすが、ドラえもんは少し間をとる。 このまま、いぶり出されるように行くのは、正直危険。 だが、行けば時間犯罪者の姿を確認できる可能性が高い。 虎穴に入らずんば虎児を得ずだ。 ドラえもん「よし!行こう!!」 のび太「うん!!」 ドラえもんとのび太は部屋を飛び出した。 一方、エンジュの焼けた塔前でのこと。 この街のジムリーダー、マツバは重要文化財である焼けた塔を 爆破している男を止めるべく、現場に駆け付けていた。 現場には町中の住人が野次馬となって来ていた。 マツバ「何だって言うんだ? 一体?」 マツバに聞かれたジムのトレーナーは無言で指を指す。 「うぐ、うぐぐぐぐ、爆!漠!縛!幕!博!莫!」 その方向には、まさに常人の精神を持っているとは言いがたい人物がいた。 マツバ「狂ってるとしか言いようがないな…… しかし相手は奴一人だ。 何故とり押さえない?」 マツバが聞いた瞬間、 狂人「しねラァァァ!! だいばくはつ!!!」 二体のイシツブテが飛んでくる。 マツバ「伏せろ!!!」 「ズワアアアアアン!!!!」 凄まじい爆音が響き渡る。 狂人「もどりぇ、イシツブテ」 変質者はイシツブテを手元に戻し、元気の欠片を使う。 マツバ「くそっ………! 危険すぎる!!! しかもこれなら、何度でも爆発が可能ってことか!」 マツバが言うか早いか、変質者は第二撃を開始した。 狂人「氏ねねねね。」 マツバ達の方にイシツブテが飛んでくる。 マツバ「ゲンガー!! 止めろ!」 マツバはゲンガーを繰り出したが、間に合わない。 イシツブテから光が発され始めた。 「ピジョン!でんこうせっか!!」 その時、どこからともなく、ピジョンが飛んできて、イシツブテを弾き飛ばした。 遠くで爆発音が聞こえる。 マツバ「誰だい…………?」 マツバが後ろを向くと、見覚えのない冴えないメガネと、 見覚えのある青い狸が居た。 のび太「大丈夫でしたか?」 のび太が聞く。 マツバ「ああ、誰だか知らないが、ありがとう。 もう一人、君はドライモン?だっけかな?」 マツバに名を間違えられたドラえもんはすぐさま、それを正す。 ドラえもん「ドラえもんです。 ところで、マツバさん。 なんなんですか? あの爆発は?」 マツバは黙って指を指す。 そこには何処かで見たような顔があった。 ドラえもん「あ、あなたは!?」 のび太「船乗りのヨシト!?」 そう、のび太達の目の前には、アサギの灯台でのび太と戦ったヨシトがいたのだ。 しかし、あの時の面影は全くない。 のび太「ヨシトさん……… なんで……?」 のび太が歩み寄ろうとする。 しかし、ヨシトはまだ笑っている。 マツバ「伏せろぉ!!!」 マツバはのび太にのしかかった。 ヨシトの投げたイシツブテが爆発する。 のび太「マツバさん、ありがとう………」 のび太がそう言うと、マツバが訊いてきた。 マツバ「知り合いか?」 のび太は少し躊躇った様子で答えた。 のび太「前にバトルをして……… まさか………こんな……」 知り合いだというのび太の様子を察したのか、マツバが言う。 マツバ「わかった。 それなら、少々危険だが、無傷でとり押さえる。」 のび太「どうやって!?」 のび太の問いにマツバが答える。 マツバ「奴はだいばくはつを使わせた後、ポケモンを戻して、 元気の欠片を使うという、三つの動作を行う。 そこで、敢えてだいばくはつを使わせ、 三つの動作をしているスキを狙って取り抑える。」 マツバの言葉に、のび太は少し間を開けて言う。 のび太「……囮作戦ですか?」 マツバは頷く。 マツバ「だいばくはつを使わせる囮役は僕がやる。 君は彼を取り抑えてくれ。」 マツバの言葉にのび太はこくりと頷いた。 マツバ「よし、いくぞ! 作戦開始!!」 ヨシト「氏ね市ね史ね施ねえええ」 「グワーーン!!」 ドラえもん「くそっ! ヌオー!」 マツバとのび太が作戦を立てている間、ヨシトからの攻撃は ドラえもんが足止めをしていた。 しかし、だいばくはつを連発する相手に、流石のドラえもんも押され気味である。 すると、 マツバ「おい!貴様! 何でこんなことをする!!」 ヨシトの注意を引くため、マツバが叫んだ。 しかし、ヨシトは訳の分からない言葉をしゃべって話にならない。 ヨシト「えへえへえへえへ」 マツバは恐怖を感じたが、作戦の為に囮としての役目を果たさねばならない。 マツバ「こい!この低脳の基地外野郎!!」 ヨシト「ん~~? 施ね史ね市ね氏ね市ね氏ね イシツブテェ! だ・い・ば・く・は・つ」 マツバの方へイシツブテが飛んでくる。 マツバ「ゲンガー!! さいみんじゅつで止めろ!!」 ゲンガーのさいみんじゅつでイシツブテのだいばくはつが中断される。 そして、当然の如くヨシトはイシツブテを戻し、なんでもなおしを使おうとする。 マツバ『今だ!!! メガネ少年!!』 ヨシトから見えない影からピジョン、フーディン、ブーバーを従え のび太が飛び出す。 しかし、なんということか。 のび太は少し飛び出すのが遅れてしまった。 ヨシト「うわああああああああくるなああああああ」 のび太に気付いたヨシトは、のび太に向けてイシツブテの入った ボールを投げつける。 ドラえもん「のび太君!!!」 イシツブテがボールから飛び出し、光だす。 ドラえもんが叫ぶ。 のび太「うわああああああああ!!!」 「ドガーーン!!!」 辺りを揺るがす激しい爆発が起こり、それがのび太を包む。 ドラえもん「のび……太……君…?」 周囲は砂塵に支配され、静寂が響く。 ドラえもんはのび太の無事を願った。 しかし、そこは何もかもが跡形もなく吹っ飛んでいた。 ドラえもん「のび太君が……跡形もなく……」 ドラえもんは呆然とし、思考は中断した。 しかし、また、ある声で動き出す。 ヨシト「ひっ、ひっ、人が……吹っ飛んだ……跡形もなく…… 俺が……やった?」 ヨシトも呆然としているが、やがて、 ヨシト「うがああああああああ!!! 人をおおお人をおおお!!!」 ヨシトは完全に発狂し、自らの周りにイシツブテを二体、 クヌギダマを一体繰り出した。 それらはやがて、光をおびはじめる。 マツバ「まさか……………。 ヤバい!! 皆!!伏せろぉぉぉ!!」 マツバが叫んだ瞬間、ヨシトの周りで凄まじい爆音が轟いた。 その頃―ワカバタウンで、不審な男女二人組がいた。 別に、この時間帯でうろつくのは、田舎町のワカバタウンでも おかしいことでもないし、その二人が挙動不審なことをしていた訳でもない。 ただ、その服装は、未来の服を思わせ、胸には大きな赤い拳のマークがある。 そのうちの一人、男の方が言う。 男「…………此所に、辿りつけたのは、俺達だけか………。 他の奴らは…………。いや、考えるまい。」 男はしみじみと周りを見回す。 一体、この世界はどんな世界なのだろう。 女「町の外を見てきたわ。 見たこともない生物がいる。 やはり、ここは異次元空間ね。 何故、この時代にあるのかはわからないけど。」 女は言った。 こちらの心を見透かすように。 男「なんにせよ、任務の為、この世界の情報は必要だ。 それに、ここは恐らく誰かに創られた次元。武器や、通信機器、 特定の道具が全て消えてしまった。 それに、お前の能力は情報収集に向いているからな。」 男の言葉に女が頷く。 すると、女は何処かへ行ってしまった。 男「この仕事に失敗は許されない…… 何故なら、この為に俺達は生まれてきたようなものだからな……」 そう呟くと、男は犠牲になった友人達に祈りを捧げた。 マツバ「うえっ……、酷いな……」 ヨシトの体の惨状は凄まじいものだった。 それを書くのは気が引けるので、ここでは省略させてもらうが。 そして、ドラえもんはショックの余り、立ち尽くしていた。 この世界の死、則ち現実の死ではないことは分かっているが、流石に気がめいる。 それより、ジャイアンとスネ夫に、作戦前にこの事を伝えなければならないのは 考えただけでも辛かった。 マツバもそれを察したようで、 マツバ「………君は、もう帰ってもいいよ。 話は明日聞くから……」 と、言ってくれた。 ドラえもん「わかりました………」 ドラえもんは重い足を、ポケモンセンターに向かわせた。 ああ、なんで、頼まれたからといって、皆をこの世界に連れて来たんだろう。 僕のバカバカバカバカバカ。 ドラえもんが失意に陥っているとき、目の前から人影が現れた。 その人影は近付くにつれ、鮮明になる。 そして、それは自分が最も安否を気遣う人物だと解った。 ドラえもん「のっ、のび太君………?」 のび太「ドラえも~ん!!」 ドラえもんはのび太に抱きつく。 ドラえもんの目からは、涙が出てきた。 ドラえもん「のび太君! なんで無事だったの?」 ドラえもんは泣きながら聞いた。 のび太「話せば短いんだけど、実はビリリダマが爆発したとき、 フーディンのテレポートで逃げたんだ。 それで、ここまで来るのに時間がかかっちゃった。」 ドラえもん「あっ………」 成程。 確かにのび太が爆発で死んだのなら、跡形もなくなるのはおかしかった。 のび太より明らかに強い爆発で死んでいたヨシトは、まあ、あれではあったが 体はちゃんと残っていた。 少し考えれば分かることだが、自分としたことが、動揺して考えつかなかった。 ドラえもん「まあ、良かったよ。 とりあえず、ポケモンセンターまで帰ろう。」 ドラえもんは、そう言うと歩きだした。 無事だったのはいいが、のび太がまだ警戒する存在であることに変わりはない。 この世界では自分達、プレイヤーが干渉しない限り、人が死ぬことはない。 それ故、ヨシトの死も、ゲーム内の誰かの干渉によるものだろう。 それの元凶は恐らく99%、時間犯罪者。 だとしたら、常に自分が監視していたのび太が黒である可能性は低い。 しかし、しずかの時といい、奴は遠隔で人を殺せる。 それがある限り、警戒を緩めるべきではないが、 ヨシトの死は見る限り、どうひいきめに見ても自殺。 故に殺されたとは考えにくい。 だとしたら、のび太ではない人物が直接ヨシトに催眠術などの、なんらかの操作を施した可能性が高い。 しかも、もしのび太が時間犯罪者としたら、わざわざ、自分の前に現れるだろうか? 死体がないことから、のび太=時間犯罪者だとバレても、フスベで待ち伏せ作戦を採った方が得策ではないのか? ここで、自分が殺されるということも考えられるが、手持ちのレベルや、相性からいって恐らく無理。 それに、もし能力で殺すのなら、やっぱりわざわざ自分の前に現れる必要がない。 やはり、のび太はシロなのか? 考えれば考える程、深いループにはまっていく。 ドラえもんが、その様な思索に耽っている内に、 二人は再びポケモンセンターに着いていた。 ドラえもんとのび太はフロントで部屋の鍵を受取り、各々の部屋へ向かう。 そして、二人がそれぞれ、部屋に入ろうとしたとき、ドラえもんが言った。 ドラえもん「のび太君、ヨシトさんの事は明日話すよ。 今日は、色々あったから、明日の為にゆっくり寝た方がいい。」 のび太「うん、そうする。おやすみ。」 ドラえもん「おやすみ。」 二人は、そう言い合うと部屋へ入った。 ドラえもんは部屋に入った瞬間、またポケットから蚊メラを取り出す。 やはり、疑いは若干晴れたとはいえ、完全にシロとは言えないし、 もし、この状況でのび太が時間犯罪者なら、自分が殺される。 多分ないと思うが、あのタイミングからいってヨシトの凶行は のび太の挿し金の可能性もある。 自分の身を守る為にも、ここで妥協するわけにはいかない。 ドラえもんの盗聴は朝まで続いた。 のび太は部屋に入るとすぐにベッドの上で横になった。 こみあげる笑いをこらえながら。 のび太の策は、ドラえもんがチェックインの時に書いていた名前を見る (書いていた時に名前を見れなかったのはのび太最大のチョンボだったが)という 単純な策であった。 しかし、それには問題があった。 あの忌々しい青狸の盗聴である。 部屋から出るのは、単独行動になり、青狸のお付きがつくので不可。 それに、わざわざ名簿を見せてくれと言うのはあからさまに妙だろう。 それ故、フロントの名前を見るには、センターの職員及び、 糞狸達をセンターから引き離すことが必要だった。 そこで今回、ノートの隠された力を使わせてもらった。 このルールは、メガネにも話していないが、実はこのノート、 対象者の死の前の状況、死因、命日をある程度操作することが出来る。 ノートに記入したのは以下の通り。 名前【ヨシト】 死因【爆死】 手持ち【ニョロゾ・メノクラゲ・ドククラゲ】 死の前の状況【ショップで出来るだけ多くの元気の欠片を買い、 アサギから自転車でスリバチ山へ向かい、 時間に間に合うようできるだけ、じばくの使えるポケモンを捕獲。 その後、発狂しながら、エンジュの重要文化財を襲撃。 襲撃中、人を殺したと思い込み、200×年×月×日午後7時30分自殺】 まず人の目につき、この町のシンボルである文化財を破壊することにより、 ポケモンセンターの職員を引き離す。 青狸も当然現場に向かう。 その時点でポケモンセンターはもぬけのカラ。 何故、人を殺したと勘違いするという条件をつけたのかは、 自然な形でテレポートを使い、ポケモンセンターに戻るため。 戻れば無人のポケモンセンターで優々と名簿を見ればよい。 しかし、これも、実行するにはネックがあった。 それは、青狸の監視の可能性。 もし、監視されていた場合、これを実行すれば殺害方法もバレ、 確実にアウトだろう。 しかし、盗聴のみならノートを使い、これを実行することは極めて容易。 だから、青狸が監視をしているか、していないかを確かめる為に このポケモンを使った。 それはラッタ。 この一週間、一緒にいたお陰で、俺は奴がなぜか、ネズミのたぐいが嫌いで、 見たら発狂しだすことを知っている。 だから、敢えて部屋の中でラッタを繰り出し、 視覚のみの情報を送り続けることにより、奴の反応を確認。 全てのポケモンを繰り出したのは、ラッタだけ出すと余りにも不自然で後々、 疑われる可能性があるから。 そして、奴の反応から少なくとも監視はしていないと判断し、この計画を実行した。 しかし、奴は計画の為には今は殺せない。 いや、殺すと策の成功率が低くなると言った方が正しいか。 とりあえず、明日はあの女に腕をみせつける日だ。 もう、起き続けてる理由もないし。 寝よう。 のび太は修行の疲れを癒すべく、床についた。 次へ
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前へ 一方ドラえもん達はコウに遭遇し、逃走を試みていた。 フラッシュの光が辺りを包む。 コウ「クッ!何も見えない……。」 ドラえもん「よし!うまくいった。 早く逃げよう!」 作戦通りコウの目をくらます事ができた。 後はラジオ塔に駆け込むだけだ。 しかし、物事はそう簡単には進まない。 コウ「こっちの目が見えないなら君達の視界も奪うまでだ! 行けッ!リザードン!えんまく!」 コウは目が見えないながらもリザードンを繰り出し、えんまくで辺りの視界を奪う。 ドラえもん「くそっ! 僕達も何も見えない!」 ドラえもんが叫ぶ。 のび太を探すも、辺りは黒い煙で全く見えない。 ドラえもん「のび太くーん!!!」ドラえもんがのび太の名を呼んだ。 すると、すぐに返事が帰ってきた。 のび太「ドラえもん!聞こえる!? これじゃあ、お互い何も見えない! だからここは一気にラジオに向かってそこでおちあおう!いいかい!?」 のび太にしては賢明な判断だ。 ドラえもんはそう思った。 賢明過ぎる気もするが。 だが、確かにここはのび太の意見に従った方がよい。 ドラえもん「分かった!無事でね!」 のび太「うん!」 ドラえもんは方向感覚を頼りにラジオ塔へと走った。 しかし、のび太はその場を動かない。 のび太『ばかめ……。まんまと策に引っ掛かりやがったな。キシシシシ。』 のび太はコウと共にえんまくが晴れるのを待った。 スネ夫はコガネ百貨店の五階でキキョウを待ち伏せていた。 スネ夫『しかけてこない……。やはり逃げたか?』 スネ夫が五階のフロアに入ってから10分程経つ。 その間、敵からの攻撃の気配は全くない。 逆に不気味である。 スネ夫『逃げたなら新しい策を考えなきゃな……。』 スネ夫がそう思った瞬間だった。 階段の方から黒い気体のようなものが溢れ出てきた。 スネ夫「はん!読み通りくろいきりで来たか。 戦術が浅いんだよ!ノータリン!」 スネ夫が気体に向かって言う。 別に今能力をリセットされたとしても、全く問題ない。 この五階の商品はまだいくらでもある。 元に戻されたならまた上げればいい。 その間に攻撃が飛んでくるだろうが、こっちには二階で入手した回復アイテムがある。それらを駆使すれば、こちらがやられるより先に奴のくろいきりのPPが無くなるだろう。 スネ夫はニヤケながら徐々に部屋に侵入してくる煙と相対する。 しかし、様子がおかしい。 ポケモン達が煙に包まれるが、何故か全く変化が現れないのだ。 スネ夫「ん?なんで?」 スネ夫は首を傾げ、真相を確かめるべく不用意に煙に近づいた。 しかし、それがいけなかった。 煙を吸い込んでしまったスネ夫はその場で嘔吐した。 スネ夫「オエロウおろオロォロ!!!」 スネ夫は口から汚物をぶちまける。 違う。これはくろいきりじゃない! スネ夫はそう思った。 これは恐らく「どくガス」か「スモッグ」。 これなら火災報知器に引っ掛からず直接自分を狙う事が可能。 普通に襲うより、遥かにてっとり早く確実な手だ。 ガスは容赦なくこの部屋に侵入してくる。 スネ夫「くそっ! このままじゃ死んでしまう!」 充満するガスの中、スネ夫はハンカチで口と鼻を塞ぎ、階段の方へ走り出す。 スネ夫「階段を……、階段を登って屋上へ出れば……」 しかし、スネ夫の希望は無惨にも打ち砕かれる。 クモの巣が幾重にも重なり、屋上までの道を塞いでいたからだ。 スネ夫「これじゃあ外へ出れないじゃないか!」 スネ夫が悲痛な叫びを上げる。 屋上を封じられたスネ夫は他の脱出方法を考えるべく五階に戻る。 五階は既にガスが充満していた。 スネ夫は姿勢を低くし、脱出方法を探る。 通気口もプロペラがクモの巣にからめられていて、空気の入れ換えが出来ない。 窓には分厚そうなシャッターが下りている。 スネ夫「ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ! こうなったら……。」 スネ夫は壁を睨んだ。 最後の脱出口は最早ここしかない。 スネ夫「オオタチ! ずつきで壁を砕くんだッ!」 スネ夫のオオタチのずつきが壁にヒットする。 しかし、壁はびくともせずヒビすら入らなかった。 スネ夫「おかしい!オオタチの攻撃力は限界まで上がってるハズ! こんな壁など砕けない訳が…………」 そこまで言ってスネ夫は喋るのを止めた。 「くろいきり」の存在を忘れていた。 こんな、同じような色のガスが充満している中では気付くハズが無い。 スネ夫「最早ここまでか……?」 どくけしをいくらか持っているが、所詮は消耗品。 いつかは尽きる。無駄なあがきだ。 スネ夫はガックリと頭を下げた。 キキョウは既にラジオ塔の外に出ていた。 キキョウ「残念ね。もう少し賢いコだと思ったのに。」 キキョウが呟く。 アリアドスには全ての脱出経路を塞げと言ってある。 百貨店からは、屋上のクモの巣の隙間から漏れたガスが空へと登っていた。 見ていたが、脱出した様子や気配は全くない。 マタドガスとアリアドスが帰ってくる。 あの百貨店の様子を見ると、上手くやったようだ。 キキョウ「お疲れ様。 あのコはどうしたのかしらね? もう、死んじゃったかしら? まあ念の為、あと五分程待つわ。」 五分の時が過ぎたが、あのキツネ顔の脱出してくる姿は捉えられなかった。 キキョウ「終わったわ……。 チョロいもんだったわね……」 キキョウが百貨店から背を向け、立ち去ろうとした瞬間だった。 彼女の目に有り得ない映像が映った。 スネ夫「誰がチョロいんだって?」 突如現れた、ここにいるハズの無い男。 キキョウは驚かずにはいられなかった。脱出した様子は全く無かったのに。 キキョウ「なんで!?なんでアンタがここに居るの!?」 キキョウが叫ぶように言う。 スネ夫「簡単さ。テレポートで脱出したんだよ。 さっきまですっかり忘れてたな。 しかもチョンボでポケモンセンターに行っていたのは良かったよ。 すぐに、ここまで来れるしね。エンジュに飛ばされちゃたまったもんじゃなかった。」 スネ夫が肩をすくめる。 キキョウ「なによ! くろいきりでアンタのポケモンの能力がリセットされた今、 戦力はあたしの方が圧倒的に上よ! 行けッ!ラフレシア、ようかいえき!」 スネ夫「浅いねえ。浅いよ。 オオタチ、ずつき。」 キキョウのラフレシアより圧倒的に早くオオタチが動く。 そして、オオタチとは思えない程のずつきをラフレシアにかます。 ラフレシアは一発で倒れた。 キキョウ「えっ……?くろいきりが効いてるハズじゃ……。」 キキョウは驚く。 あの強さは明らかにアイテムの恩恵を受けている。 しかし、自分はどくガスを流した後、同時にくろいきりを流し込まさせていた。 効いてないハズがない。 スネ夫「さて、借りは返させてもらうよ。」 スネ夫が言う。その足はジリジリとキキョウの方へと歩み寄る。 キキョウ「クッ!こないで! 何故効かなかったのかは分かんないけど……。 こうなったらヤケクソよ! マタドガス!くろいきり!」 マタドガスは口を大きく開き、口からくろいきりを噴射しようとした。 しかし、マタドガスは過呼吸を起こしたかのように苦しそうな表情を浮かべる。 出したいのに出ない。そんな風な感じ。 キキョウ「マタドガス?マタドガス? どぉして!?」 キキョウの悲痛な叫びが響く。 スネ夫はケラケラ笑いながら言った。 スネ夫「残念~。 実はくろいきりが来たときにスリーパーとエレベーターで一階に行って、マタドガスにかなしばりをかけていたんだよ。 だから、そこでくろいきりはストップ。 その後、ちょっと苦しかったけど、また五階に戻りアイテムを使ったんだ。 無駄に時間はかけてないさ。 あの場に居なかったのがアンタの敗因。」 キキョウは唇を噛む。 安心しきっていた。 エレベーター前にクモの巣をはってたから攻撃は受けないとタカをくくっていたが、まさかかなしばりとは……。 キキョウの頭の中に敗北の二文字が映る。 しかし、キキョウはそれを頭の隅においやり目を見開いた。 キキョウ「でも、まだ勝負はついてない! マタドガスのかなしばりが解ければ十分勝ち目はあるわ! マタドガス……!」 スネ夫「ちょっと待った。」 スネ夫がキキョウの行動を制する。 スネ夫「実は僕は君に最後の罠を仕掛けてるんだ。 上を見てごらん。」 キキョウ「!!!」 キキョウは反射的に上を向く。 すると、地面からバクフーンが飛び出し当て身をくわせた。 スネ夫「あ、間違えた。下だったよ。」 キキョウ「ひ………きょう……な……」 キキョウはそのままその場に崩れ落ちた。 スネ夫「じゃあね。」 スネ夫は服の汚れを払い、その場を後にした。 スネ夫がキキョウとの闘いを終える少し前、我等がドラえもんはラジオ塔目指し走っていた。 煙幕のせいで周りが全く見えない。 のび太がちゃんとついてきているのかも分からないし、コウが追ってきているのかどうかも分からない。 ドラえもん『確か、このまま真っ直ぐ進んでいけばラジオ塔に到着する。 まあ、方向が本当に合っているかどうかは分からないけど。』 ドラえもんは心の中不安を漏らす。 しかし、その不安は杞憂に終わる。 ドラえもんは煙幕を抜け、その眼前にはラジオ塔がそびえ立っていた。 雨はだんだん小降りになってきている。 煙幕を抜けたドラえもんはのび太を探すため、辺りを見回す。 しかしのび太の気配は全く無い。 ドラえもん『どうしたのかな……? 待つか……。』 ドラえもんは手頃な建物の陰に隠れ、のび太を待った。 しかし待てども、待てどものび太は来ない。 結局、15分近く経ってものび太はその姿を現す事は無かった。 そしてそののび太は、いまだ煙幕の中に取り残されたままだった。 いや、厳密には取り残されたという言い方は正確な表現ではない。 自分の意思で残ったのだから。 「解せませんね……。」 暗闇の中から声が聞こえる。 コウとかいう奴だろう。 コウ「一人残っているのは分かってます。 青狸か眼鏡かは分かりませんが。 片方が私の足止めをして片方がほぼ無人のラジオ塔を叩く、そういったところでしょうか。 やはり解せませんね……」 のび太の返事は無い。 しだいに煙幕も晴れてくる。 小雨の中、二人の姿が晒けだされた。 両者は会話も無く、睨み合う。 静寂を破ったのはコウだった。 コウ「殺す前に聞かせて下さい。 何故残ったのですか?」 のび太「お前にに話す義理は無い。」 のび太が答える。 更にのび太は訊く。 のび太「なんでそんなに余裕を見せられるの? 正直に言うと、アンタと僕の力はほぼ互角。 サシなら勝負はどっちに転ぶか分かんないんだよ?」 のび太が疑問をぶつける。 コイツは三週間前から自分の実力が変わってないと思ってるのだろうか。 ナメてるとしか思えない。 のび太の頭にそんな考えがよぎる。 するとコウが含み笑いを見せ、話し始めた。 コウ「確かに……。 私と君の間にさほど大きな差は無いでしょうね。 しかしそれは勝敗とは別の話……。 君は闘わずして負けている……。」 コウの言葉にのび太が首を傾げた瞬間だった。 コウが指をパチンと鳴らすと、周りの建物の中から続々とロケット団員達が現れた。 そして、それはズラリとのび太とコウの周りを取り囲んでゆく。 そしてのび太とコウを中心とした円が完成した。 コウは高らかに笑う。 コウ「ハハハハハハ! どうですか!?この50人にも及ぶ戦力の差は!? トシミツ様の命令に従わず隊をコガネ内に残しといてよかったよ!!!」 のび太「…………………。」 のび太は喋らない。コウが続ける。 彼は熱くなると敬語が消える。 コウ「ビビって声も出なくなったのかい!? まあ、落ち着きたまえ。 このまま君をブチのめす事も出来るんだがその前に一つ、人望についての話をしてあげようじゃないか。」 のび太『人望……?』 怪訝な顔をするのび太。何故突然そんなことを話すかは分からないがとりあえず聞いた方が良さそうだ。 コウ「人望はどのような物を持つ人が得るか分かるかい? 分からないだろ。 それを得るには三つの物を兼ね備える必要がある。 一つ目は知性! これは当然だね。 無能な上司、先輩は見下される。学校、会社、その他全てに言えること。 君だって頭の悪すぎる奴の下につくのは嫌だろ? 二つ目は性格とビジュアル。 どんなにいい奴でも不細工で最近の流行も知らない奴は社会から取り残される。 逆もまた然り。まあ例外も有るけどね。 そして三つ目は力。 頼もしく他を威圧し絶対的な力! 自分に反対する者を問答無用で潰せる力だ!」 のび太「ゴチャゴチャ無駄話の多い奴だな。」 のび太は皮肉を言った。 コウはそれを無視し話を続ける。その顔は恍惚としていた。 コウ「さっき言った三つの要素。 僕は既にさっきの内の二つを示した! 一つ目はあのトシミツ様も気付かなかった君達の侵入を読み団員達を残したという知性! そして二つ目は見ての通り僕のルックス!!!」 コウは銀の髪をかきあげる。 完全ならナルシストだ。 コウ「そして三つ目の「力」はこれから見せる事になる。 一対一で君を倒す事によりね。 悪いが君には僕が次の選挙で更に上に行くための踏み台になってもらう! 雨の中長い話を聞いてもらって悪かったね。 さあ、始めようか。」 コウがそう言い、身構えた瞬間だった。 周囲にいた部下の内の一人がやってきてそっと耳打をした。 耳打が下手な為、二人の会話が微かだが聞こえる。 コウ「……はい……ええ……正体不明?……何ですかそれは?……ちょっと出して……」 のび太『正体不明!?まさか………』 そのまさかだった。 団員達が次々と黒く平べったいポケモンを出してゆく。 その数は少なくはない。 のび太はそれに見覚えがあった。 アンノーンだ。 どのような経緯でバレたのかは分からなかったが、それは確かに今まで使ってきたアンノーンだった。 その体はぐったりとしている。どうやら既に瀕死であるようだ。 コウはそれを指で摘むようにして観察する。 コウ「これは……? 何処かの神話やおとぎ話で聞いた事がある……。 何故こんなに沢山ここに……? しかしなんだったっけ……?」 コウが必死に記憶の糸を辿っている。 するとのび太が突然叫びだした。 のび太「おい!アンノーン!!! おい!みんなやられちゃったのか!! 他にいるんなら返事してくれ!!!」 のび太の叫びが響くが全く返答は無い。 コウ「アンノーン……。そうだ幼少の頃、絵本にあったアンノーンだ!!」 コウは拳で掌を叩き、成程のポーズをする。 名前が分かった所でコウはボールを取り出し言った。 コウ「まあコイツらが何であろうとどうでもいいこと。 呼んでも来ないということは全滅したようだね。 まあ作戦は騙し打ちを食わせるといった所かな。 さあ、覚悟はいいかい?」 ボールからはエアームドとクロバットが飛び出す。 そしてコウはジリジリとのび太に歩み寄る。 しかしコウはのび太に近づくにつれ、あることに気づいた。 笑っている。 絶対絶命のこの状況で笑っている。 コウはのび太に言いようもない不気味さを感じ、後ろに飛び退く。 のび太が言った。 のび太「キシシシシシ……。そうか。あのアンノーン共は全滅したか……。 好都合、いやなんというラッキー! これで俺を監視する奴は居なくなった訳だな。」 のび太はニヤニヤ笑っている。 コウはその顔と少年のかもしだす異様な空気に心理的な圧迫を感じる。 余りの薄気味の悪さに、周りの団員も思わず後退りする。 コウ「な、なんだコイツは……? さっきとは全然違う……。」 コウの心臓は恐怖により凄まじいスピードでビートする。 のび太はまた話しだす。 のび太「いやいや、「本性」を出すのはマジで久しぶりだ……。 最近あの忌々しい黒文字野郎のせいで満足にノートも使えねえ。 ええと………?使うストックは20人位で足りるかな?」 のび太はダルい授業が終わった学生の様にけのびをする。 するとバッグをあさりだし、黒いノートを取り出すと何かを書き始めた。 コウと団員達はのび太の行動を呆気にとられて見ている。 辺りをまた静寂が包む。 響くのはシャーペンの音と小雨だけ。 しかしその静寂はコウによって破られる。 コウ「僕は何をビビっているんだ……? 勝てる相手じゃないか……。 エアームド、クロバット!二人でつばさでうつ!!」 コウは我に帰り、ポケモン達に攻撃命令を出す。 しかしそれは、追い詰められた鼠が猫に立ち向かう。そのような感じだった。 のび太「邪魔だな……。」 のび太は落ち着き払ってボールを投げる。 ボールからはゲンガーが飛び出した。 ゲンガーは二体の攻撃を喰らいダメージを受ける。 そしてゲンガーは吹き飛ばされた。 それを見て自信回復したのか顔がひきつりながらもコウは笑いだす。 コウ「………はは、ハハハハハハ! やっぱりビビることは無いじゃないか! 所詮ハッタリか!びっくりしたよ……」 のび太少し苦しそうな表情をした後、吹き飛ばされたゲンガーにチラリと目をやり言った。 のび太「痛えじゃねえか……。」 苦しがりながらのび太はパタンとノートを閉じる。 のび太の視線とコウの視線とがぶつかる。 コウは思わず目を反らした。 のび太「まあ待ちやがれ……。 後5秒程だ……。」 のび太はコウに掌を見せる。 その場が緊張で凍りつく。 のび太「4……。」 まず親指が曲がる。 のび太「3……。」 瓦礫からゲンガーが立ち上がる。 のび太「2……。」 余りの迫力に団員の一人が腰を抜かし地面に尻餅をつく。 のび太「1……。」 残りの指が人指し指だけになった。 カウントが0になった時どうなるのだろう? コウを含め全員が思った。 命を奪われる。そんな感じもした。 そしてカウントは0を迎える。 のび太「0………」 のび太の手が完全な拳になった瞬間だった。 側にいたゲンガーの体がドス黒い光に包まれた。 次へ
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前へ 荒筋 ドラえもん達はコガネのイベントをクリアするため、 各々の力を上げようと、別れ別れになった。 ジャイアンは、チョウジタウンのヤナギの元に、 氷の抜け道でとけないこおりを入手することを条件に弟子入り志願をする。 そこで、ブリザードに大苦戦の末、機知により逆転。 ヤナギに弟子入りを認めてもらった。 ドラえもん達が、エンジュから離ればなれになってから丁度一週間が過ぎた。 今までは、ジャイアンとスネ夫達の行動しか語っていなかった。 しかし、だからといって、その間のび太とドラえもんが 何もしていなかった訳ではない。 二人は、ちゃんとコガネでの決戦に使えそうなポケモンを集めていたし、 レベル上げもしっかり行っていた。 まあ、その修行や旅は、別に特筆すべきものではなかったので、 このように割愛した訳である。 しかし、修行最終日のこの日は話のスポットを彼らに向けてみたいと思う。 二人は修行最終日の今日は体を休めようということで、 ポケモンセンターで早めの宿を確保した。 ドラえもん「のび太君、よく今までの修行を堪えたね。 僕は嬉しいよ」 ドラえもんが言う。 のび太「うん! しずかちゃんを助けるためだからね!」 のび太『んなわけねぇだろwww』 ドラえもんはのび太の心内などつゆ知らぬ様子で、言った。 ドラえもん「じゃあ、今日は特別だ。 スイートに泊まろう。」 ドラえもんはそういい、受付にスイートルームのチェックインを始めた。 のび太「えっ、ドラエモン……、スイートってあのとんでもない高い所?」 のび太が驚く。 しかし、ドラえもんは明るい表情のまま答える。 ドラえもん「うん、今日くらいはゆっくりしなきゃ! あっ、個室二つで。」 のび太「えっ、なんで二つなの?」 またのび太が聞く。 ドラえもん「言ったでしょ。 今日くらいはゆっくりしなきゃって。 修行を堪えたご褒美だよ。 淋しいのなら大丈夫。隣だから。 じゃあ、明日に備えてゆっくりしよう。」 ドラえもんはそう言い、鍵を取った。 のび太「成程、じゃあゆっくりするかな。」 のび太もそう言い、二人は各々の部屋の前へ向かった。 ドラえもん「じゃあ、おやすみ。」 のび太「おやすみー」 二人は、その後、部屋に入り、扉をしめた。 ドラえもん『……やっぱり何か、おかしい。』 ドラえもんは部屋に入った後、ベッドの前の椅子に腰を降ろし、溜め息をつく。 ドラえもん『この一週間……やっぱり何か違和感を感じた……』 実はドラえもんは、イベントクリアの為にコガネへ向かう時から、 もしかしたら、自分らの中に時間犯罪者がいるのかも知れない という考えを抱いていた。 根拠はいくつかある。 例えば、時間犯罪者の殺人が自分達の周辺のみでしか起こっていないこと。 タンバのシジマ、後になって知ったが、アサギのミカンや、 灯台のトレーナーも何人か死んだらしい。 始めは、自分らを追跡しているが故だと思っていたが、 自分達をイベントクリアに利用するのならば、時間犯罪者が 自分らを追跡する利点が全くない。 すぐにでもフスベへ向かい、自分達がイベントクリアを遂げるのを待てばいい。 しかし、フスベに居る出木杉達はトレーナーが死ぬのなど 全く見たことが無いと言っている。 故に、時間犯罪者はフスベにはいない可能性が高い。 ならば、何故、利点の塊であるフスベ行きをせず、自分らを追跡しているのか。 答えは、恐らく、それが出来ないから。 何故できないのか。 考えられるのは、奴自身が身動きのとれない立場にいること。 そこでドラえもんの頭にあることが浮かんだ。 内部犯である。 しかし、自分達の誰かがそんな事をするとは考えにくい。 だが答えはすぐに頭の中に浮かんだ。 味方がどこかで、奴とすりかわってしまった可能性があることである。 それなら、全てのつじつまが合う。 ミカンには全員が会ったし、灯台も全員で通った。 更に、自分達の一行に潜めば、自分達について行かざるを得ない。 では、最も怪しいのは誰か。 のび太である。 本人によれば、所持バッジは0、会った時には、何故そこに来れる? と、首を捻るようなメンバーだった(ゲンガーを除いて)。 それに、死んだ、ミカンと最後に接触したのは彼だった。 かといって、確信や、証拠は無いし、皆の前で内部に犯人がいる 可能性があると、言った場合、結束が崩れる可能性がある。 それはなんとしても避けたかった。 そこで、皆に気付かれぬよう、のび太の監視をするために、 今回の解散を提案したのである。 ドラえもんやがて、腰を上げ呟いた。 ドラえもん「一週間………全く、証拠はつかめなかった。 のび太君が時間犯罪者であるのかも、ないのかも。 でも、何か、何て言うか分からないけど……。 仕方ない………これだけはしたくなかったけど………」 ドラえもんはそう言い、自らの腹のポケットをあさりだした。 のび太『やっぱり、アイツ、俺を疑っていやがった。』 のび太はスイートルームのおっきなカビゴンの上にのしかかりながら考えていた。 あの青狸と過ごした一週間、全く奴は自分に対し、 なんのアプローチも仕掛けて来なかった。 恐らく、この修行の旅も、自分を監察するためのものだろう。 それならば、この後に控えているイベントの為にも少なくとも奴は、 この旅で自分がクロかシロかの証拠を掴まねばならない。 だとしたら、恐らくこのスイートルームは青狸の罠。 大方、盗聴でもしているのだろう。 いや、下手したら監視もしているのかも知れない。 だとしたら、この中での言動は控えた方がよいだろう。 しかし、おとなしく時が過ぎるのを待つ訳にはいかない。 自分がこの旅の途中に考えた目的を達成せねばならない。 そう、それは奴の名前を知ること。 青狸は、皆からドラエモンと呼ばれている。 しかし、前タンバで奴の名前を書いたが死ななかった。 奴の正体は分かる。あのデザイン、腹の袋からして、約一世紀程前の猫型ロボット。 何故この時代に居て、耳が無く、メッキが剥げているのかは知らないが。 だがこのノートはこの世界ならロボットであっても、効果を発揮する。 だから、奴がロボットであるのは理由にならない。 やはり、名前が違うのか。 だが、奴がスイートに泊めてくれたお陰で、名前を知る方法が出来た。 しかし、奴の盗聴、監視、どちらか分からない限り、それは作戦のネックになる。 どうしたものか……? のび太は考えを巡らす。 一方、ドラえもんは部屋から蚊メラを外に放った。 スパイ衛生もあるが、室内は映しきれない。 かといって蚊メラを直接、のび太の部屋の中へ入れるのは無理だろう。 蚊メラは見た目は普通の蚊だし、恐らく即叩かれて終了だ。 しかも蚊メラは機械製だから、破壊されたら確実に監視していたことがバレる。 だから、蚊メラを外に待機させて、せめて、中の状況を聞くことが精一杯だった。 ドラえもん『頼むよ………蚊メラ……』 そう思い、ドラえもんは蚊メラを外に放した。 のび太「…………………」 のび太は一言も喋らず、部屋の中で思考を巡らせていた。 やはり、監視、もしくは盗聴されてることは、 これが最後のアプローチのチャンスということから考えて必死。 奴には、いつも「単独行動はやめてね」と口を酸っぱくして言われていた。 だから、部屋外への移動は監視、盗聴されているのなら不可能。 だから、手持ちポケモン、及び、部屋にあるもので奴が監視しているのか、 それとも盗聴のみなのかを確認しなければならない。 この一週間で俺のメンバーも大分変わった。 ブーバー、ラッタ、フーディン、ピジョン、そして、俺、ゲンガー。 ……………。 そうだ、こいつを利用して…………。 のび太はそう思い、モンスターボールから全てのポケモンを解放した。 ドラえもんは部屋で蚊メラの音を聞いていた。 ドラえもん「あれから音沙汰無いな……… どうしたのかな………?」 蚊メラからの連絡は全くない。 一度ポケモンを出した音がしたが、気にすることはないだろう。 すぐ戻していたし。 蚊メラの集音機能は二十二世紀仕様なのでかなり高い。 それが、一時間の間何の音も拾う事が出来ないのだ。 ドラえもん「まさか、僕の思い過ごし……………?」 ドラえもんにそのような考えが浮かんだ瞬間だった。 「ドガァァァァァァン!!!!」 突然、大きな爆発音がなり響いた。 次へ
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前へ 「ズズズーーーーーーン!!!!」 凄まじい爆発音が鳴り響き、ラジオ塔が崩壊してゆく。 その衝撃や惨状はコガネゲート前にいた人々や、今だクモの巣をかきわけているスネ夫にも容易に観測出来た。 ある人々は驚き、またある人は余りに衝撃的な光景に目を疑う。 しかし、ここに一人例外がいた。 しとしと降る雨にうたれながらも、その顔は狂喜で歪んでいる。 のび太「計画通り………。 そして、時間通り……正確だ。」 のび太は時計を見ながら微笑みを浮かべた。 「計画通り」「時間通り」「正確だ」 この三つは何を意味しているのだろう。 それはこれから順を追って説明せねばならない事になる。 と、いう訳で時間を少しばかり巻き戻してみよう。 時はドラえもんがラジオ塔に侵入した時、すなわち、コウがのび太に騙し討ちをしようとした時間まで遡る。 コウを追い詰めたのび太。 一方コウはのび太に不意打ちを食わせようと、クロバットとエアームドをのび太の背後に忍ばせていた。 雨のせいか、後ろの二匹に全く気づかないのび太は言う。 のび太「安心しろ。死ぬ運命は避けられないが、苦しくはない。 大人しくしてろよ……。」 コウ『言っとけ………。 あと2m………。』 鼻血を出し、地面に叩きつけられ惨めな姿になっても、コウは今だ最後の望みに全てを賭けている。 のび太に迫る二つの影。 まだ気づかれてはいない。 コウ「後少し……もう少し……。」 そして二匹は、完全にのび太への射程距離内に侵入することに成功した。 完璧に気配を殺し、エアームドがその鋭い刃の羽を振り上げる。 コウ『今だッ!!!殺せぇぇッ!!!』 鋼の翼がのび太の勁動脈に襲いかかる。 のび太「!!!!!」 人間の神経系を駆け巡るインパルスの中でも、最速のものは18m/sの速さを記録するらしい。 それが速いと思うか、遅いと思うかはここでは置いておこう。 ともかく、のび太への攻撃は通常、上で挙げた常人の反射の速さでは到底防げるものではなかった。 しかし、エアームドからの斬撃はのび太の首を少しかすめただけで、完璧にかわされたのである。 コウ「ば………バカな……タイミングは完璧だったのに……。 よ、避けられる訳が……。」 最後の策も尽き、コウはうめく様に言う。 のび太「ハア……ハア……ハア……。 野郎……死ぬとこだったじゃねえか……。」 のび太はそう言いながら自分の首筋を触る。 指には微かに血が滲んでいた。 のび太「血……。このオレが血を……。 ………このクソ鳥共がぁああああ!!!!」 のび太は逆上し、それに合わせるかの様に、ゲンガーがエアームドとクロバットにシャドーボールを雨霰の如く浴びせる。 二羽が完全に動かなくなった後もそれはしばらく続き、一分後、シャドーボールのPPが切れてやっとそれは中断される。 二体のその姿は、目もあてられない様なものになっていた。 それを見たのび太は、満足そうに指についた血をしゃぶり、荒い息を整え始める。 一通り感情も爆発し終えて、気分も落ち着いてきたようだ。 のび太「ふぅ……。危なかった。 雨で音は消えていたし、気配は完全に消されていた……。 下手したら、マジで死んでたかもしんねえ……。」 のび太は言い、またコウヘ一歩踏み出す。 その顔に不気味な笑みを浮かべながら。 コウ「ヒイイイイイ!!!! なっ、なっなっ、何故ぇぇッ!」 コウは怯えながらも騙し討ち失敗の原因を聞こうとする。 発狂寸前。口からはだらしなく涎が垂れている。 のび太「ん?何故俺がお前の不意打ちに気づいたか知りたいのか? いいだろ。教えてやる。」 のび太はコウの、言葉にならない言葉を汲み取り言った。 のび太「お前の体には俺の背後を映し出す物が一つだけあった。 そして俺はそれで偶然気づいた。それだけだ。」 コウ『じっ、自分の、かっ、体?そっ、そんなものは………。』 コウは半狂乱の頭で考える。 映し出す……。鏡……。光? まさか! コウは反射的にその部位を押さえた。 のび太「そう!!正解だ!お前の瞳にあの鳥が映っていたんだよ!」 のび太はそう言い、コウの頭を掴む。 のび太「これから言う質問に答えたら、無事に逃がしてやる。 お前の手持ちポケモンを全て言え。 ええと、なになに………。」 のび太はコウのポケモン達を黒い冊子のノートに書き込んでゆく。 一通り書き終えた所で次の質問に入った。 のび太「お前のコウという名前は本名(フルネーム)か?」 コウは無言で頷く。 のび太「そうか……。」 のび太は冊子に次々と何かを書き込んでゆく。 そして二分後。 「パタン!」 のび太は何かを書き終え、冊子を閉じて言った。 のび太「お疲れさん。 これは餞別だ。親が変わるから進化するかもな。 まあとにかく頑張れよ。」 のび太はコウにモンスターボールを渡し肩を叩く。 モンスターボールの中身は誰にも知らせていないアイツだ。 コウは突然の恐怖からの解放され、渡されたモンスターボールを手にポカーンとしている。 のび太「早く行けってんだよカスが!!!」 のび太はコウの尻に蹴りをかました。 その勢いで彼の体は一回転し、水溜まりに叩きつけられる。 コウ「うわあああああああ!!!」 水溜まりの水を撒き散らし、恐怖の叫びをあげながら、コウの姿は雨の中へと消えてしまった。 降り頻る雨の中、残されたのび太は一人呟く。 のび太「よし、これが上手くいけば、脱出にかなり有利になれる………。 デキスギとかいう奴らも出し抜けるぞ!」 のび太は再びノートを開き、そこに細部を書き込み始めた。 その内容は以下の通り。 名前【コウ】 死因【爆死】 手持ち【クロバット・エアームド・リザードン・オニドリル・ゴローニャ】 死の前の状況【コガネシティのラジオ塔に向かうが、途中で体の汚れが気になり、近くの無人の民家で体を洗い服を着替える。 その後再びラジオ塔へ向かい、首領を倒そうとするも他人から貰ったゴローニャが言うことを聞かず、200X年 X月X日 午後4時44分、自らのポケモンの爆発に巻き込まれ死亡】 のび太は満足そうな表情をし、ノートを閉じた。 のび太は自らの勝利を揺るぎない物と確信していた。 それからの展開は早かった。 ドラえもんとトシミツは通り抜けフープにより、間一髪爆死の危機を免れ「ドンブラ粉」を使い地面への衝撃も防ぐことが出来た。 その後、トシミツは破壊されたラジオ塔を見て、抵抗する事を断念。 数分後、ラジオ塔に駆け付けたコガネのトレーナー達に自ら身柄を引き渡した。 ドラえもん達もスネ夫、のび太、そして生存が確認されたジャイアンと合流することに成功し、ジャイアンの無事を一人を除いて心から喜んだ。 ちなみにその時、幹部のカホウ、キキョウは身柄が拘束され、後にラジオ塔の三階からコウの物と見られる爆死体が発見された。 コガネの住民はすぐにでも我が家に帰りたいという意思を示したが、雨の為の事故、大人数の移動による大混乱を引き起こす可能性があり、それは却下。 次の日から少しずつ移動することに取り決められた。 色々とあってあっけない幕切れの様だが、今回の事件は一応の解決を見る事になる。 しかしある人物達の戦いは、まだ終わってはいなかった。 ジャイアン「ブハァ!うめえ!」 ジャイアンはペットボトル一杯のサイコソーダを一気に飲み干す。 現在はラジオ塔の事件解決の宴の真っ只中。 家に帰れない住民達が、せっかくだからと良心で取り繕ってくれたのだ。 ジャイアンは山の様に積まれた料理を鬼の如く食い荒し、一方スネ夫は今回の事件でのエピソードを、色々と肉をつけて住民達に話し、いい気分に浸っていた。 ドラえもんに至ってはまさに「溺れる様に」、どら焼きを貪り続けている。 皆楽しそうだ。 しかし、全員がそうであった訳ではない。 「そいつ」の中では、まだ事件は終わってはいなかった。 アカネ「なんや、あんまり楽しそうやないなあ?」 アカネは「そいつ」に近づき、顔を覗き込む。 アカネは「そいつ」の席の隣に座った。 アカネ「なんか、まだ難しそうな顔してんなあ。 事件は終わったっちゅーのに。 まだなんかあるんか?のび太。」 アカネはのび太に訊く。 のび太はコップの飲み物で少し喉をうるわすと静かに言った。 のび太「例の物は……。例の物は用意したかい……?」 のび太に言われ、アカネはポンと手を叩く。 アカネ「ああ、アンタの言っとった「アレ」か。 一応用意しといたで。」 アカネは胸ポケットから小さなディスクを取り出す。 のび太「ありがとう。」 のび太はそれを受け取り、一礼した。 アカネ「でもなあ、アンタそれ、何に使うん?」 アカネは好奇心からか聞いてくる。 のび太はそれを軽く受け流した。 のび太「これから一番大切な事……さ。」 のび太はアカネに見えない角度で薄気味の悪い笑みを浮かべる。 ラジオ塔の爆破も、ディスクを手に入れた事も、ジャイアン達を始めその他のトレーナー達が自分の言うことを守ってくれたのも、全て自分の策通り。 あとは仕上げだけ。 いうなれば画竜点睛。 竜の絵に瞳を入れるのは自分! のび太はそう確信していた。 ドラえもん「ウップ、ウップ。食べ過ぎた……。」 すると、そこに腹に大量のどら焼きを抱えた奇妙生物が二人の目の前を通り過ぎようとした。 アカネ「ああ、ちょっとそこの青狸君、待ちいや。」 ドラえもん「僕は狸じゃない!」 アカネはドラえもんを呼び止めた。 アカネはドラえもんに言う。 アカネ「アンタ、誰か忘れたけど呼ばれよったで。 向こうのテントで待ってるやて。」 テント?ドラえもんは頭を捻る。 これから誰かを呼ぶつもりだが、誰かに呼ばれるような記憶は無い。 ドラえもんが必死に大きな頭を抱えていると、彼が探していた少年が視界に飛込んできた。 のび太はドラえもんに気づいてか気づかずか、しらんぷりをしている。 ドラえもんはそれに近づく。 のび太の計画では今日は何も起らないハズだった。 しかし耳元で囁かれたドラえもんの言葉は、のび太の計画そのものに危険をきたすものであった。 ドラえもん「僕の用事が終わったら、君と二人っきりで話がしたい。 場所は作戦会議用のテント。時間は20分後。 遅れないようにね。」 のび太『何ッ!?』 ドラえもんはそう言い、その場所を離れてゆく。 のび太「…………あいつ……。」 残されたのび太は、ただ呆然とその後姿を見送る事しかできなかった。 ―のび太がドラえもんとの約束終えた10分後― ガチャ。 例の部屋の中に一人の人影が立ち入る。 「キョロ、キョロ。」 その人影は辺りを見回すと、まだここには誰も居ない事を確認した。 のび太である。 ドラえもんに呼び出されたのび太は、これからの事態に対処すべく、約束の時間よりも少し早い時間にきていた。 のび太「さて……。これからどうするか……。」 のび太はノートを開き呟く。 のび太はドラえもんの名前を知っている。 殺ろうと思えばいつでも殺れる。 しかし、ここでヘタに殺す訳にはいかない。 奴は、多分仲間に「のび太は時間犯罪者だ」とまでは言っていないだろうが、「僕が不自然に死んだらのび太を疑え」というような「保険」をかけてる可能性がある。 ジャイアンとスネ夫はすぐに動き出すだろう。 そうなれば策を実行する時間が無くなる上に、デキスギ達との戦いが有利に進まなくなる。 だが、場合によっては殺す事も考えなければならない。 のび太は事前にその準備をするためにここに来たのである。 のび太は、シャープペンシルを取り出しノートにいそいそと何かを書き始めた。 記入内容は以下の通り 名前【トラえもん】 手持ち【ヌオー・キマワリ・デンリュウ・エイパム】 トラえもんは間違いではない。 非常事態に備えての策である。 必要な時、いつでも濁点を入れて名前を完成させる事が出来る。 ノートは切り取ってポケットの中に入れておけば話ながら自然に奴を殺せる。 のび太「よし……。 これで準備は整った……。後は奴がどのように攻めてくるか……」 のび太は呟き、ふと時計を見る。 時計の針はいつの間にか10分の時が過ぎた事を告げていた。 部屋にはカチカチと秒針が時を刻む音が支配し、他の音の存在を許さない。 しかし、すぐに静寂は破られる。 目の前のドアがギィと開き、そこから大きな青い球が顔を出した。 ドラえもん「待たせたね……。」 次へ
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のび太(出展:ドラえもん 原作:なし ) □プロフィール(暫定) 別名スリーピングスナイパー 元人間。現在はモノクマに改造された改造人間。射撃の腕は某ヘイへ並み □キャラ情報
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前へ 一行はその後、エンジュと自然公園を抜けた。 ジャイアン「おい!ドラえもん! まだコガネには着かないのか!?」 スネ夫「ベッドで寝たいよ……ママァァン!!」 スネ夫とジャイアンが口々に文句を言う。 ドラえもん「今が35番道路だから……… うん。あと少しだよ。」 と、ドラえもんはたしなめた。 ジャイアン「全く…… ん?」 ジャイアンが何かに気付いた。 ドラえもん「どうしたの?ジャイアン。」 ドラえもんが訊いた。 ジャイアン「人が……人がたくさんいる……。」 ドラえもん「なんだって?」 ドラえもんは遠くを見つめた。 確かにコガネのゲートの前に何かいる。 とりあえずそれは、人間の様だった。 ドラえもん「誰だろう……?」 スネ夫「まさか、ロケット団!?」 スネ夫がそう言い身構えたがすぐにジャイアンに否定された。 ジャイアン「いや、あれはロケット団じゃねぇ。」 ジャイアンの言う通り、ゲートの前でたむろってる連中は、黒装束を身に纏っていない。 どうやらただの一般人のようだ。 ドラえもん「何故あんなところに?」 ドラえもんが疑問を抱いたが、即座にジャイアンにかき消された。 ジャイアン「考えても仕方ねぇ! ロケット団じゃねぇなら行ってみようぜ!」 スネ夫「待ってよ。 もしかしたら、奴らは一般人に化けた敵かもしれない。 もう少し様子を見た方が良いよ。」 スネ夫が意見したが、既にジャイアンは行ってしまっていて、この場に居なかった。 ドラえもん「全く……… 僕らも行くよ。」 スネ夫「危ないと思うんだけどなぁ。」 のび太「…………」 三人はジャイアンの後を追い、ゲート前の人だかりへ走り出した。 ジャイアンは他の三人よりいち早く、ゲート前に到着した。 怒り狂う人々もいれば、泣きわめいている子供もいる。 それにしても、人の人数が半端ではない。 ざっと、10万は超えているだろう。 ジャイアンは、近くにいた髭面のおじさんに事情を聞いてみた。 ジャイアン「なあ、おじさん。 なんでここに人がたくさんいるの?」 髭は、なんだ?こいつは?と、いった面持ちでジャイアンを見てきた。 おじさん「なんでって、追い出されたからさ。」 ジャイアン「誰に?」 ジャイアンは再び訊いた。 おじさん「ロケット団に決まってるじゃないか!!!」 ドラえもん「ロケット団!!!」 ジャイアンの後ろにはドラえもん、スネ夫、のび太の三人が居た。 スネ夫「と、言うことは、ここに居る人々は、町を追い出された人全員ですか!?」 髭面はゆっくりと、又、口を開いた。 おじさん「ああ、しかし、正確には半分だな。 南の方にもう半分の住民達がいる。 なんてったって、奴らはこの町を乗っ取ったんだからな」 ジャイアン「スゲェな。 リアルだとやっぱりこんなにスケールがでかくなるのか。」 おじさんの説明にジャイアンが感心した。 スネ夫「まあ、問題はどうやって奴らを潰すかだけどね。」 スネ夫の言葉を訊いた瞬間、明らかに髭の目が変わった。 まるでそれは、何か奇異なものを見るような目付きだった。 おじさん「何言ってるんだ! ジムリーダーのアカネちゃんでも無理だったんだぞ!」 ジャイアン「ダイジョブ、ダイジョブ。 俺ら強いんだぜ!」 ジャイアンが言った。 ドラえもん「とりあえず、行ってみる?」 おじさん「行くって何処へ!?」 おじさんは目を丸くした。 スネ夫「ロケット団を潰しにだよ。 じゃあね。おじさん。 よかったね。お家に帰れるよ。」 そう言い、四人は行ってしまった。 残された髭おじさんはただ、呆然としていた。 おじさん「大変だ………。 アカネちゃんに知らせなきゃ! 彼らは、黒の三人衆を知らないんだ…… このままでは彼らは殺されてしまう!!」 四人は、ゲートの前にやってきた。 ジャイアン「よし、行くか。」 そう言ってジャイアンが不用意にゲート内に入ろうとするのを必死で止めた。 ドラえもん「何やってんだ!! ゲートには見張りが居るに決まってるだろ! 見付かったら仲間呼ばれてワサワサ来るだろ!! これはゲームと違うんだぞ!」 ドラえもんが逆上する。 のび太『キシシシシ。 こいつらおもしれぇなあwww』 面白がる、のび太を脇目に、スネ夫がある提案をした。 スネ夫「そうだ! 奴らに化けていこうよ。」 ドラえもん「どうやって?」 ドラえもんは疑問に思った。 作戦としてはいいが肝心の服がない。 スネ夫「着せかえカメラを使うんだよ!」 ジャイアン「成程!」 三分後、スネ夫がロケット団の制服の絵を描き、四着の黒装束がカメラから出てきた。 その後、ロケット団の制服を着込んだ四人は、ゲートの前で侵入の最終確認をしていた。 ドラえもん「とりあえず、侵入できたら、僕らは偽者だという事がバレるような会話はしてはならない。 なんてったってここは、敵の本拠地。どこで話を聞かれてるか分からないけどね。 だから、侵入後の段取り、その他はここで話をしておく。」 他の三人は無言で頷く。 ドラえもん「今回の目標は、局長室へ向かい、地下の鍵を入手すること。 そのためにはなるべく、したっぱとの戦闘を避けなければならない。 何故なら一人と戦うと、あっと言う間に囲まれてしまうからね。 地下の鍵を入手したら……のび太君。」 のび太「ああん、……あっ、はい?」 のび太『あー、あぶねぇ、あぶねぇ。』 ドラえもんはのび太の行動を不審に思ったが、まあ、ぼーっとしていたのだろうと、解釈した。 ドラえもん「地下の鍵を入手したら、のび太君のフーディンのテレポートで、エンジュのポケモンセンターに逃げる。 ここまでが作戦の概要だけど、何か質問は?」 ドラえもんが訊いた。 すると、ジャイアンが突然意見をぶつけてきた。 ジャイアン「なんで、逃げるんだ? そのまま地下通路へ向かえばいいじゃねぇのか? もし、一度逃げてしまったら、今度はコガネへの再侵入が難しくなるんじゃねぇの?」 今回はジャイアンにしては、的を得た質問である。 しかしそれにもドラえもんは冷静に答えた。 ドラえもん「確かに、ジャイアンの言ってる事は合ってるけど、それだと、地下の鍵を入手した瞬間逃げ場のない、ラジオ塔の最上階で囲まれて、あぼーんだろ? リスクとメリットと、成功確率を考えた結果、これがベストだと思った。 鍵を手にしても全滅してしまっては意味がないしね。 他に質問は?」 すると、次はスネ夫が口を開いた。 スネ夫「最後だけど、地下の鍵を奪って逃げたのがバレたら、今度は地下通路に守りが固められないか?」 スネ夫の質問も的を得ている。 しかしまた、ドラえもんの策はさらにその上をいっていた。 ドラえもん「そうだね。 だから、これで、地下の鍵をコピーして何も奪われてないように見せかけるのさ。」 そう言い、ドラえもんはポケットからフエルミラーを取り出した。 スネ夫「………成程。」 スネ夫はドラえもんの策に感心した。 最後にドラえもんが訊いた。 ドラえもん「何か質問は? 作戦に異議は?」 一同「異議なーし!!」 全員が元気よく答えた。 ドラえもん「それでは作戦開始!!!」 四人はゲートの中へ入っていった。 四人がゲートの中に入ると、以外にもそこには誰も居なかった。 好都合な事であったが、この無防備さが逆に不気味さを感じさせた。 のび太『なんかあるなこりゃ。キシシシシ。』 四人は最初の打ち合わせ通り、一言も喋らず町へと侵入した。 町に入ると、そこには人っ子一人居なかった。 ドラえもん『妙だな……… まさか、誘ってるのか?』 ドラえもんがそう考えたとき、後ろで 「おいっ!何をしている!?」 という声がした。 ジャイアン『ヤバイ。見つかった!』 四人は自然と身構えた。話しかけられた以上、上手くかわさない限り戦闘は避けられない。四人は作戦の失敗も覚悟した。 しかし、団員の言うことは意外な事だった。 したっぱ「何ここでさぼってんだ! 早く会議へ行け!!」 ジャイアン「へ?」 カイギの意味が分からなかったが、団員の様子からすると、まだバレてないようだ。 ドラえもん「会議?」 ドラえもんが聞くと、突然団員は怒りだした。 したっぱ「貴様ら、話を聞いてたのか? 今日はラジオ塔の最上階で、トシミツ様達が、今後の計画について話してくださる重要な会議があるではないか!」 団員の剣幕に、スネ夫が少し動揺する。 スネ夫「あのぉその………」 スネ夫の様子を見ると、したっぱは一転してやれやれといった顔付きになった。 したっぱ「話を全く聞いてなかったんだったな。 まさか合言葉も聞いてなかったんじゃないのか?」 スネ夫『合言葉……?………チャンスだ!!』 団員の言葉にスネ夫は合言葉を聞き出すチャンスだと感じた。 スネ夫「……すみませ~ん。合言葉、忘れたんですぅ。」 それを聞き団員は呆れた表情になった。 したっぱ「ホンット呆れるなあ。 まあ良かった。あのまま行ってたら、しょっぴかれるとこだったしな。 合言葉は「サカキ様万歳」だ。 ホンット求人難とはいえ、こんなに団員の質が下がるとは…… もう少し考えて雇って……ブツブツ……」 そう言うと団員はいってしまった。 ジャイアン『ロケット団って大変なんだな………』 ジャイアンはしみじみそう思った。 のび太『やっぱりこいつらアホだな。キシシシシ。』 とにかく合言葉を手に入れる事が出来てよかった。 もし、このままラジオ塔へ向かえば確実に一網打尽にされてただろう。 ドラえもん『よし、ラジオ塔へ向かうぞ。』 四人は、ラジオ塔へ向かった。 入り口で見張っているしたっぱに合言葉を聞かれるのかと思ったが、ただ怒られただけだった。その結果、容易にラジオ塔へ侵入することができた。 ドラえもん『調子狂うなあ。』 まさか、最悪の事態を考えに考え対策を立てたドラえもんは肩すかしを食らった形になった。ここまでロケット団が間抜けとは思ってなかったのだ。 しかし、ラジオ塔内部には団員で溢れていた。 ジャイアンはその数に驚いた。 階を増す毎にその数は増えていく。 ジャイアン「あぶなかったな。無計画にいったらソッコー囲まれてアウトだったな……。」 ジャイアンがそう思ったとき、 「きゃあ!やめて!」 と、誰かが助けを求める声が聞こえた。 声の方を見てみると、メガネを掛けた娘が必死にロケット団員に懇願している。 クルミ「やめて!! こんなことをして楽しいんですか? 何がしたいんですか!?」 したっぱB「うるさい!!!!」 したっぱはそう言い、クルミの頬をはたいた。 ジャイアン「あんのやろう………!」 俺はジャイアン、ガキ大将。 ここで助けなきゃ男がすたる。 ジャイアンは腕捲りをし、戦闘体制に入った。しかし直前でドラえもんの言葉を思い出した。 『目の前で何が起ころうと我慢するんだ。 下手に動いても、誰も救えはしない。』 俺はジャイアンガキ大将。 しかしガキじゃない。 ここは大人の心で自省した。しかし、 ジャイアン『ロケット団………絶対ブッ潰してやる!』 ジャイアンの中で確かな闘志が産まれた。 その後、腹が立つことは色々あったが、一行は一度も戦闘することもなく、最上階へついた。 そこには空間の中に所狭しと、黒装束でぎっしりとしている。 とりあえず、四人はその中に溶けこんだ。 すると、前方に四人の人影が現れた。 すると、真ん中の少し白髪混じりの男が、話を始めた。 白髪「諸君。ごきげんよう。私が、ロケット団仮総師のトシミツだ。」 ジャイアン『あのオッサンが………』 ジャイアンはそう思った。声は低いが、人相はそこまで極悪な感じを得られない。 トシミツ「今回ラジオ塔をのっとったのは他でもない。理由は二つ。 一つ目はサカキ様の帰還。 もう一つは、このラジオ塔から怪電波を流し、全国のポケモンを意のままに操ることだ!!!」 なんだ、おもいっきりゲーム通りじゃないか、スネ夫はそう思った。 のび太『果たしてテメェらみたいな間抜けな組織にそんなことが出来るかな? キシシシシ。』 二人の反応はこんなものだったが、ただ一人この男は違った。 ジャイアン『チクショウ……… そんなこと、させてたまるか!』 彼はゲームの台詞は余りよく読んでないようだ。 各々の思惑とは別に、トシミツの話は進んだ。 トシミツ「三週間!!! 怪電波が完成し、各地のポケモンを意のままに操る時までに必要とする時間だ。 諸君には、その間、此所、コガネで籠城戦をしてもらいたい。」 ドラえもん『成程……、ラジオ塔だけでなく町ごとのっとったのは、コガネデパートを押さえ、籠城戦に必要な物資を確保するためか。 幹部の方はよく考えてるな………』 ドラえもんはそう思った。 トシミツ「三週間!! それを耐えれば我等の勝ちだ! この計画の浮沈は君達の士気にかかっている!!」 「オオオーーー!!!」 全員が勝どきをあげた。 トシミツ「諸君、ありがとう。 次は少し、コウ君から話があるようだ。聞いてくれたまえ。」 そう言い、トシミツは、隣の背の高い銀髪の男にマイクを渡した。 すると、男はゴホンと咳払いをした後、こう言った。 コウ「サカキ様万歳………」 ドラえもん『サカキ様万歳………? あれは確か……』 ドラえもんがそう思う前にコウと呼ばれた男が合言葉を言うと、今までうじゃうじゃしていた黒装束達が一斉にその場に座りこんだ。 その中で立っていたのは唯四人。 ドラえもん、ジャイアン、スネ夫、のび太だった。 コウ「おやおや、まさかと思って号令をかけたら、ネズミが四匹も忍び込んでいるとは。」 コウが笑う。 ドラえもん『やられた………。 この方法ならいちいち一人ずつ合言葉を聞かなくても、大勢の中から敵を探ることができる。 数の弱点を克服する良い手だ。』 ドラえもん達は身構えた。もはや、戦闘は避けられない。 コウ「さあ、どうやって料理しましょうか……」 ドラえもん達に緊張が走る。 そのときコウの横に居た、背は高くないが体格のいい男が言った。 「おい、こいつらは俺に殺らせろよ。」 コウ「カホウさん……。見つけたのは私でしょう?」 コウが男に反論する。 二人の間に、ピリピリとした空気が流れる。 すると、その間に、誰かが割って入った。 それはまだ、18にも満たないであろう若い女だった。 女「さっきね、コウさん町で暴れたからここは先輩の顔を推して、カホウさんに譲ってもいいんじゃない?」 二人はそう言われ、身構えるのをやめた。 コウ「………わかりましたよ、キキョウさん。 ここはカホウさんに譲りましょう。」 カホウ「ヘッヘッへ、そう来なくちゃ。」 そう言うとカホウはゆっくりとのび太達の方へ歩いてきた。 のび太『ちっ、俺の勘が言ってる、コイツはヤベェ。』 のび太がそう思った時、ドラえもんが小声でのび太に囁いた。 ドラえもん「これはかなりヤバい状況だ……。 のび太君、僕が今からモココのフラッシュで奴らの目をくらませる。 目がくらまないよう、目を瞑ってくれ。 これで奴らにスキができる筈だから、ジャイアンとスネ夫を連れてテレポートで逃げよう。 ジャイアンとスネ夫ちょっと遠くてこの作戦は伝えられない。 彼らも目がくらむだろうからフォローしてやってくれ。」 そう、のび太は言われた。 のび太は無言で頷いた。 カホウがゆっくり歩いてくる。その先のロケット団員は皆、さける様によけていく。 のび太達とカホウの間に大海が裂けたような道ができた。 カホウ「一瞬で掃除してやるぜ。 行けっ、スターミー。」 カホウがスターミーを繰り出した。 その瞬間、 ドラえもん「行けっ、モココ!フラッシュだ!!」 ドラえもんもモココを繰り出した。 カホウ「ふん!遅い!! スターミー、なみのり!!」 そのとき、スターミーから強烈な水流が発生し、水はのび太達全員を呑み込んだ。 のび太「アゴボババ」 ジャイアン『くっ、苦しい!』 ジャイアン達がそう思ったとき、 「パリーン」 ラジオ塔の窓が破れ、中から水が滝の様に流れる。 もちろんその中ののび太達も、窓から投げ出された形になった。 スネ夫「しっ、死ぬ!」 確かに冗談ではなく死んでしまう。 しかしそのとき、 ジャイアン「がぼばびぶ、ばいりびー、ぶろらいぶ、ぼべばびぼぶべぼべぼ(オーダイル、ストライク、カイリキー、俺達を水流から助け出せ!)」 ジャイアンはボールを水流外へ出した。 カイリキーは、のび太を受け止めオーダイルは水の中からジャイアンを救いだし、ストライクは俊敏な動きでドラえもんとスネ夫を救出した。 ドラえもん「がはあ、はあはあ、ありがとう。ジャイアン」 ドラえもんがそう言った瞬間上から声が聞こえた。 カホウ「油断するのはまだ早いぜ……」 その声がしたほうからみると、上空から、カホウとスターミーが凄まじい勢いと水流と共にラジオ塔から滑走してくる。 あの水流に巻き込まれたらひとたまりもない。 ドラえもん「みんな!逃げろ!!!」 ドラえもんが言うが早いか、全員は水流の落下ポイントから離れた。 「グアシャーーン!!!」 地面に水が叩きつけられる。逃げ遅れた、ジャイアンのポケモンと、ドラえもんのモココは一撃で全滅してしまった。 さらに、水の余波を受け全員は建物の壁に叩きつけられた。 スネ夫「うぐぐぐぐ………。 あいつ異常だ……」 ドラえもん『逃げなきゃ……… のび太君は…………』 のび太は今一行から離れたところにいた。 ドラえもん『クッ、これじゃあテレポートで逃げられない!』 もう、ドラえもん達に残された道は戦うことしかなかった。 スネ夫「行けっ!マグマラシ、スリーパー、オオタチ!!」 スネ夫は手持ち全てを繰り出した。 ドラえもん「こっちも、ビリリダマ、ヌオー、エイパム!」 のび太「ポッポ、フーディン、ゲンガー」 のび太(ゲンガー)『やっぱり、おれが直々に戦わなくちゃなのか………』 カホウ「ほう、これだけ差を見せても立ち向かってくるか。 面白くねぇな。 30秒。30秒でカタをつけてやる!」 そう言い、カホウとスターミーがまた高い波を作り出した。 「ぐぐぐぐぐ……」 勝負は一瞬だった。 カホウのスターミーのなみのりはその場にあった全てを呑み込みつくし、一瞬で全てのポケモンが戦闘不能にしただけではなく、トレーナー本人達にも、立ち上がる事さえ不可能のダメージを与えた。 カホウ「つまらなかったな。 まあ、楽に殺してやるとは言わん。 最も苦しい殺り方、つまり溺死で殺してやる。 ギャッハッハ」カホウは狂ったように笑った。 のび太『チクショウ………俺がこんなとこで……』 そう思ったとき、のび太の目の前が真っ白になった。 スネ夫「な、なんだ………」 スネ夫の目の前も真っ白になっている。 ジャイアン、ドラえもん、それにカホウも例外ではなかった。 カホウ「くそっ、何だ!?」 ドラえもん「フラッシュ? 一体、誰が……?」 ドラえもんがそう考える暇もなく、誰かがドラえもんの手を引いた。 のび太はその状況が全く呑み込めず、ただ目がくらみ、呆然としていた。 すると、何かが自分に向かってくる、そんな気配を感じた。 のび太「誰だ……?」 のび太が訊いたが、向こうはのび太の問いに答える代わりに別の事を訊いてきた。 ?「アンタのフーディンテレポート使えるか?」 のび太「へ?」 ?「使えるんかと訊いとるんや! 使えるんやったらはよせい!!」 のび太『何だ?こいつは………』 のび太は疑問に思ったが、うっすら目の前には、青いボディが見える。 遠くにいる筈の、青狸だ。 ジャイアンとスネ夫らしき物も形だけうっすら見ることができた。 のび太『コイツが誰かは分からないが、青狸どもを連れてきてくれてることから、敵ではなさそうだ。それに……』 この最悪の状況。この助けを受けない手はない。 逃げることができれば、名前と一匹だけだがポケモンが分かっているのでカホウとかいう奴を殺せる可能性もある。 ?「はよう、ウチの手をつかめや!!」 のび太は無言で目の前の、手らしきものを掴んだ。 カホウ「待てよ、貴様ら!!!! スターミー!なみのりだ!」 カホウの視力が回復したらしい。 水が迫ってくる音がする。 のび太「テレポート!!!」 のび太がそう叫ぶと、のび太達はその場から消え、なみのりを回避した。 テレポートによって、その場から離脱したのび太達はエンジュのポケモンセンターの前にいた。 ドラえもん「助かった………」 ドラえもんは一息ついた。 ?「あんたら感謝しいや。 ウチが助けに来んかったら、今頃全滅やで。」 全員がとっさに声のしたほうを振り向いた。 スネ夫「あっ! あんたは……!」 ドラえもん「コガネジムジムリーダー、アカネ!!!」 驚いている全員をよそに、アカネは話を続ける。 アカネ「そこのメガネ以外はどっかで見たような顔やな。 ジムにきたやろ。」 のび太を除く全員が黙って頷く。 アカネ「あんな、ジムに挑戦できるようなトレーナーつって、よう、しゃしゃらん方がええで。命を無駄にしたらあかん。 ここはウチらに任しとき。」 アカネが言った。 助けて貰ったとはいえ明らかに自分を見下しているような発言にジャイアンが憤慨した。 ジャイアン「言っとくけどな!俺ら(のび太以外)はお前に勝ったんだぞ! そんな偉そうな口をきいてもらいたくねえ!」 と、ジャイアンが言った。 ドラえもん「ジャイアン……… 言い過ぎだよ……」 そう言われたアカネはやれやれといった様子でため息をついた。 アカネ「アンタ、何も判っとらんようやね。 ほなポケセンで回復してき。 ちょいと相手になるで。」 ジャイアン「望むところだ!!!!!」 一方、コガネではのび太達に逃げられたカホウがいた。 カホウ「ちくしょーう!!!畜生!!畜生!!」 カホウは激仰した。 コウ「獲物を譲ったと思ったら何です? カホウさん。このザマは。」 ラジオ塔上空からエアームドに乗り、長身の男が降りてきた。 カホウ「コウ……… 俺は今、イライラしてるんだ……。 殺すぞ」 カホウは静かに、しかし凄まじい剣幕でコウを見た。 コウ「イライラしている? それは私の方ですよ。 私なら逃がさず一網打尽にできたのに、どっかの馬鹿に譲ったせいで逃げられてしまったんですよ? 馬鹿も休み休みして欲しいですねぇ。」 カホウ「なんだと…………?」 二人の間にまた緊迫した空気が流れる。 今にも殺しあいが始まりそうだった。 しかし、 キキョウ「はーい。終了、終了。 トシミツ様の御前だよ。 そんなことしていいの?」 ラジオ塔から、若い女と、白髪混じりの男が出てきた。 カホウ「ふん。運が良かったなカスが」 コウ「単細胞の相手は疲れますね……」 二人は皮肉を言い合い、間を離れた。 トシミツ「まあ、コウ君が侵入者を見つけたのは功績。 カホウは逃げられたとはいえ侵入者を撃退したのは事実。 評価に値する。 しかし!」 トシミツが声を荒げた。 凄まじい威圧感が回りにのしかかる。 トシミツ「これからの籠城戦、結束が崩れるのは不利だ。 優先すべきはロケット団……これを忘れるな。」 カホウ、コウ「はい。」 やはり、この人はヤバい。 二人はそう思った。 また、一方エンジュでは、全員がポケモンの回復を終え、ジャイアン×アカネ戦争が勃発していた。 ジャイアン「ポケモンの数くらいは決めさせてやるぜ!!」 スネ夫が訊いた アカネ「ポケモンの数? 笑わせんなや。 奴らとのバトルは言わば喧嘩や。ルール無用や。 まあ、今回は「参った」というたら負けっちゅーことで。」 アカネが言った。 俺はジャイアン、ガキ大将。 売られた喧嘩は買わねばならぬ。それが女であってもだ。 ドラえもん「ジャイアン、やめたほうが………」 スネ夫「行けっ、ストライク!!!」 ドラえもんが言うか早いか、ジャイアンはをストライク繰り出した。 アカネ「ほー。ストライクか。前より強うなっとるようやな。 ほな、いくで。」 アカネは身構えた。 スネ夫「なに? あいつ。 ポケモン出さないよ。やる気あんの?」 スネ夫が不思議がった。 アカネ「ええよ。ガキの戦いに本気出すまでもないんやから。」 アカネはすましている。 スネ夫「ジャイアン、あんなこと言ってるよ! やっつけちゃえ!」 ジャイアン「どうなっても知らないからな! ストライク!でんこうせっか!」 ストライクがアカネを襲う。しかし、 アカネ「ミルタンク!! まもるや!!」 アカネはとっさにミルタンクを繰り出し、まもるを命じた。 ストライクの攻撃が無効化される。 ジャイアン「くそっ! きりさくだ!」 アカネ「遅い!!ミルタンク、ころがるや!」 ストライクが切りかかるが、圧倒的なミルタンクの回転力にそのカマは弾かれ、そのまま潰されてしまった。 ジャイアン「ああっ! ストライク戻れ!! くそっ!カイリキー目にもの見せてやれ!」 アカネ「やから動作が緩慢なんや!!」 ジャイアンがカイリキーのボールに手をかけた瞬間、転がっていたミルタンクがジャイアンに激突した。 ジャイアン「ぶごっ!」 ドラえもん「なんてことするんだ!!」 ドラえもんが言ったが、すぐにアカネに言い返された。 アカネ「最初に言うたやろ。 これは対ロケット団を想定しとるんや。 当然トレーナーへの、直接攻撃もある筈や。」 のび太『キシシシシ。良いこと言うじゃねえか。』 しかしミルタンクに撥ねられ、もう立てないかのように見えたジャイアンは立ち上がり、怒りを爆発させた。 ジャイアン「女とはいえ、もう許せねえ! 行けっ!カイリキー!」 ジャイアンはカイリキーを繰り出した。 ジャイアンは考えた。 ジャイアン『恐らく、奴はまた、俺がスキを見せたとき、ころがるで直接攻撃してくるだろう。 だから、ここはパワーに優れたカイリキーでダメージ覚悟でミルタンクを受け止め、回転を止める。 そうしたら状況はタイプの関係で俺が有利になる。よし。それでいこう。』 ジャイアンにしては中々のアイデアだった。 アカネ「ぼーっとすんなや! 行け、ミルタンク!!」 ジャイアン「カイリキー、受け止めろ!!!」 ジャイアンがそう言った瞬間、アカネは読んでいた、とばかりに次の指示を出した。 アカネ「ミルタンク! やっぱ、当たらんでええ! 回転数を落とさず、周りをころがり続けるんや!!」 その瞬間、ミルタンクは方向転換し、ジャイアンとカイリキーの周りを回り始めた。 砂ボコりがまきおこる。 その、砂ボコりは、ジャイアンの視界を奪った。 ジャイアン『くそっ! 何も見えねえ!! しかたねぇ、カイリキー、俺を守れ!!!』 パワーで勝るカイリキーに守られていては、手が出せない。 ミルタンクのころがるが終わり、砂ボコりが晴れてきた。 ジャイアン「今だ!! カイリキー!!クロスチョップ!!!」 ジャイアンがここぞとばかりに放ったクロスチョップがミルタンクの急所に当たり、一撃でミルタンクを沈めた。 ミルタンクが倒れた今、アカネを守るポケモンはいない。 ジャイアン「カイリキー、あの姉ちゃんをギャフンと言わせろ!! 殺すなよ!!!」 カイリキーの手刀がアカネの首筋に当たった。 アカネは地面に倒れこんだ。 ジャイアン「ちょっとやりすぎちゃったかな? 姉ちゃん、大丈夫か?」 ジャイアンがアカネに歩み寄ろうとした瞬間、後ろから声がした。 アカネ「プリン!! あのガキにかなしばりや!」 ジャイアンの体は動かなくなった。 ジャイアン「な………んで………」 アカネ「簡単や。 前を見てみい。」 ジャイアンの首が強制的に前に向けられた。 カイリキーの手刀で倒した筈のアカネが、どろどろに溶け始めた。 ジャイアン「あれはまさか………」 アカネ「せや。あれはメタモン。 通常かなしばりはかなり命中率の低い技や。 それを決めるために、アンタに隙を作った訳や。」 アカネは気絶したメタモンを回収し、ジャイアンに歩み寄る。 アカネ「さあ、もうアンタの負けや。 参ったは?」 アカネは馬鹿にするように言った。しかし、ジャイアンはそう簡単に降参するような男ではなかった。 ジャイアン「そんなの……するはずねえじゃねえかよ……」 ジャイアンは言った。 アカネ「そうか、残念やな……」 アカネは肩をすくめた。 アカネ「生意気なガキにはお仕置きが必要やな。」 アカネはそう言い、ジャイアンに向かってボール投げた。 ジャイアン「むぎゅ!!!」 アカネのボールからカビゴンが飛び出し、ジャイアンの上にのしかかった。 ドラえもん「ジャイアン!!! アカネさん!!やりすぎだ!!」 ドラえもんが言った。 しかしアカネに悪びれた様子は全くない。 アカネ「それもそうやな。 戻り。カビゴン」 アカネはカビゴンを回収した。 スネ夫「ジャイアン!!!」 スネ夫がジャイアンにかけ寄ったが、ジャイアンは既に気絶している様だった。 アカネ「つまらんバトルやったな。 分かったやろ、これでアンタらの実力が。 文句あるならかかってきてもええで。」 アカネが言った。 現在、最も戦闘力の高いジャイアンが、眼前であっさりやられたのだ。 残りの三人は動けるはずもなかった。 アカネ「根性が無いとは言わん。 それが正しい選択や。 まあ、コガネの方はウチらにまかせえ。」 アカネはそう言うと、その場から去ろうとした。 ドラえもん「待ってよ。 僕らも、ロケット団を倒したいんだ。 協力させてくれ。」 ドラえもんが言った。 しかし、アカネの返答は冷たかった。 アカネ「答えはNOやな。 正直言おか。アンタらは戦力外、足手まといや。 それでもこの件に首つっこみたかったら、ウチを倒してからにせえや。」 アカネはそう言うと、去っていった。 ジャイアン「チクショウ………」 ジャイアンの目に涙が溢れる。 女にしてやられ、あれ程コケにされたのだ。 悔しくない筈がない。 ジャイアン「追い掛けて再戦してやる!!!」 ジャイアンがアカネを追おうとしたとき、ドラえもんが止めた。 ドラえもん「待って! ジャイアン!! 今、君が行っても、アカネさんには勝てない。 いや、もし、今の実力で下手にアカネさんに勝ち、戦線に参加したとしてもあの、カホウっていう奴に勝てると思うのかい!?」 そう言われ、ジャイアンは口をつぐんだ。 スネ夫「アイツ……………半端じゃなかった………」 それを聞いたスネ夫が身を震わせる。 他の一同もそれを思い出し、沈黙が流れた。 数十秒後、ドラえもんが口を開き、静寂を破った。 ドラえもん「…………強くなろう。 アカネさんが言ってたじゃないか! 強くなったら相手をするって!! 負けたのは誰のせいでもない!! 僕らが弱かったからなんだ!!!」 全員は、ドラえもんの言葉に聞きいっている。 全員の反応を見るように周りを見回した後、ドラえもんは続けた。 ドラえもん「そして僕は考えたんだ。 強くなるために何をしたらいいか。 一つ目は、当然ながら、ポケモンの強化。 これは、絶対必要条件。 先程のバトルでは、完全にレベルで負けてたからね。 もう一つは………」 そこでドラえもんは声を高くした。 ドラえもん「新しいポケモンの捕獲………!!!」 ドラえもんの言葉にスネ夫が納得する。 スネ夫「確かに、新しいポケモンの捕獲はいいかもね。 戦いにバリエーションが増えるし、トレーナー戦と違って、奴らとの戦いはルール無用だから、ポケモンは居れば居るほど有利だしね。 アカネさんが言ってたけど。」 ジャイアン「俺も賛成だな。 あの、水野郎と姉ちゃんをギャフンと言わせてやるぜ!」 ジャイアンが拳に力をいれる。 ドラえもん「そこで、僕らの目標は、具体的に言うと平均レベルを15上げる事と、新しい戦力を最低でも、二体は作るということ!!!!」 ドラえもんは言った。 スネ夫「15は正直キツイな………」 ジャイアン「15でいいのか?」 のび太『俺は15じゃ足りねぇな、多分』 各々の思惑が交錯するなか、ドラえもんが信じられないことを言った。 ドラえもん「ちょっと、言いにくいんだけどね……… その目標を達成するために、僕らは一度、それぞれ別れた方がいいと思う」 突然ドラえもんの口から飛び出した仰天発言に、一同は驚いた。 スネ夫「正気かい!? 僕らの本当の敵を忘れていないだろうね!?」 スネ夫が言った。 以前、離ればなれになるのは危険だと言ったのは、自分じゃないか。 スネ夫はそんな疑問を持った。 ドラえもん「ああ、忘れてないよ。 時間犯罪者さ。」 ドラえもんは、答えた。 スネ夫「だったらなんで!?」 スネ夫が必死で問いつめるのを、遮るようにドラえもんは言った。 ドラえもん「確かに、危険だと言ったよ。 しかし、今は状況が違う。 奴は僕らを殺せないよ。 このイベントをクリアさせる為にね。」 しかし、スネ夫が反論する。 スネ夫「そんな、クリアさせる為って…… 僕らが殺されない保証には全くならない!!」 スネ夫は必死だ。 無理もない。この青狸は殺される確率が最も高い選択をしようとしているのだ。 しかし、当の青狸は続ける。 ドラえもん「そんなことは、百も承知だ。 でもね、そうしなきゃロケット団を倒し、前に進めない。」 ドラえもんは淡々と進める。 スネ夫「でも!!!!!!」 スネ夫はまだ、納得がいかない様子だ。 ドラえもん「こんな状況になってしまったら、多かれ少なかれ命を賭けなければ、先には進めない。 しかし今は、奴は僕らにイベントをさせる為に殺さない可能性が高い。 だから、今が個々が各地を回り、多様な戦力を手に入れる最後のチャンスなんだ!!!!」スネ夫「そんなこと………」 スネ夫はやはり尻込みしていた。しかし、 ジャイアン「俺はやるぜ。」 ここで、ジャイアンが小さく答えた。 スネ夫「正気かい!?ジャイアン!!」 スネ夫がすぐさま言う。 ジャイアン「ああ。 俺には、なになにだから殺せない、とか難しいことは、全く分からねえ。 だけどな………」 ジャイアンはドラえもんの頭に手を置いた。 ジャイアン「俺は、コイツが言うから正しいと思うんだ。 ドラえもん……… 俺はお前に従うぜ。」 ドラえもん「ジャイアン………」 ドラえもんの目が何かで霞む。 スネ夫「…………。分かったよ。 でも、これでなにかあったらドラえもんのせいだからね!」 のび太「僕もいいよ。 奴らを倒 そして、翌日。 四人は、ポケモンセンターの中で一夜を明かし、ポケモンセンターの前に集合していた。 ドラえもん「お互いに連絡は定期的にとり合おう。 期日は二週間と言いたいとこだけど、奴らは計画完成まで三週間と言っていた。 だから、皆、一週間以内で条件を整えて欲しい。」 ドラえもんが言う。 ジャイアン「おう! まかされよ!!」 スネ夫「じゃあ、僕はこれで………」 スネ夫はそう言い、去り、やがて、ジャイアンも去っていった。 二人は明るい希望を持ち、去っていったが、唯一人、全く違う面持ちの人間がいた。 のび太は考えていた。 こいつら、マジで別れやがったww 臭い友情でも見せやがって。 確かに、イベントクリアの為に、こいつらは全滅はさせられない。 全滅は、だ。 イベントクリアさえしてしまえば、こいつらは邪魔なだけ。 何人か駒が残れば、いい。ただ、それだけ。 あのスネオとかいう奴でも殺してやる。 そして、こいつらの、虫酢のはしる、信頼とやらをぶち壊してから、殺してやる。 青狸。 テメエは俺を野放しにするという、最もしてはならない事をしたんだ! キシシシシ。 のび太はこの世の物とは思えない程の邪悪な顔をした。 さて、そろそろ行くか。 のび太は、 のび太「じゃあね、ドラエモン。」 と言い、その場を去ろうとした。 しかし、ドラえもんからはのび太の予想外の言葉が帰ってきた。 ドラえもん「のび太君……… 僕らは一緒に行動しよう。」 のび太『何っ?』 のび太は予想外の言葉に驚いた。 しかし、折角のチャンス。 動揺して簡単に無にしてしまう訳にはいかなかった。 のび太「何故だい? 僕一人じゃ不安かい?」 計画の為になんとか、この青狸を払い除ければならない。 しかし、その青狸はまたも食い付いてくる。 ドラえもん「うん。不安さ。 だから付いていかせて貰うよ。」 のび太『くっ、こいつ、何故だか知らないが、完全に俺の事を疑っている。』 のび太は、次の手を打つため、何かを言おうした瞬間、先にドラえもんの口が動いた。 ドラえもん「いや、不安と言っても、君がじゃない。 僕の方がさ。僕のポケモンは全体的にレベルが低いからね。 君に守って貰おうと思って。」 何気なく思えたドラえもんの一言が重くのび太にのしかかる。 のび太『チッ、こいつ………巧い。 これで俺が奴から自立することを理由に離れる口実を使うことが出来なくなった。 もし、このまま保護を求めてすり寄ってくる奴を不自然に拒絶すれば、完全に黒にされる確率が高くなる。 もし、疑ってる訳でなく、マジで言ってる場合、無理に追い払おうとすれば確実に、奴との仲が不仲になる。それに…………』 まだ、ここで明かす事は出来ないが、のび太の策は、まだしばらくドラえもん達の仲間であり続ける事が絶対必要条件の一つ。 今、彼らの信頼を失う危険はなるべく、犯したくなかった。 のび太「仕方ないなあ、ドラエモンは。僕が君を守ってあげるよ。」 のび太は苦渋の決断の末言った。 ドラえもん「ありがとう。 のび太君!!」 青狸は自分の前を歩き出す。 それを後ろから見つめるのび太の顔は、屈辱に歪んでいた。 次へ
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のび太 職業:キング・ブラッドレイの養子、ホムンクルス 説明 キング・ブラッドレイ夫婦の養子(原作通りなら) ハガレンでのプライドポジション。本多透にブラッドレイの子が出来たことをお父様に報告している 顔芸が達者
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前へ 一方、ゲート前にはのび太とジャイアン、及び大量のとけるを使った みがわりドーブルが待機していた。 そこにアンノーンが飛んできて、見張りを消したことを知らせる。 のび太「突撃OKだって。 もう行く?」 のび太が聞いた。 ジャイアン「行くか………。」 ジャイアンも同意する。 のび太とジャイアンは静かにゲートを開けた。 やはり中には誰もいない。 のび太とジャイアンはそそくさとゲートを抜け、 ドーブル数匹とアンノーンに先を偵察に行かせる。 五分後、アンノーンとドーブルが帰ってきた。 ドーブルは二匹程減っていた。 のび太が先に進んでいいか聞くとアンノーンはよいと答えたので そのまま先に進むことにした。 コガネ内部にもやはり雨は降っている。 そこには誰も居なかった。恐らくドーブルに消されたのであろう。 今回二人に突入させたのは最終決戦の戦いを有利に進めるため。 故に奴らに人の侵入がバレるのは得策ではない。 ここ一週間のドーブル作戦もこの侵入の為の布石。 人員を削るのはオマケにすぎない。 二人は建物の影に隠れながら先を進む。 雨と緊張の為か疲労が大きい。 ここ数日の連続戦闘もたたっているのだろう。 ジャイアン「そろそろラジオ塔の前だな………。」 ジャイアンが小声でのび太に言いのび太は頷く。 ジャイアン「俺はここでもしもの為に待機する。 のび太、とりあえず行ってこい。 何かあればすぐ駆け付けるから。」 のび太「うん。」 のび太はそう言い二人は別れた。 多分スネ夫にしても、ここまで誰にも見付からず侵入できているのは 計算外のラッキー。 もしかしたらスネ夫の報告以上にロケット団の連中は熱中症で 倒れてるのかもしれない。 ここまで上手くいくからには最後まで完璧にしたほうがいい。 雨の降り頻る中、ジャイアンは息を殺していた。 大量のドーブルと一緒にいると目立つのでそれらは路地の死角に全て隠してある。 ジャイアン『のび太と別れてからもう10分程………。 塔の中からは誰も出てきていないな………。』 ジャイアンの役目は、突入のサポートするためラジオ塔の動きを監視すること。 ただ監視するだけならアンノーンにも出来るが この任務は場合によっては敵の足止めもしなければならない。 そこで適任を考えた結果、一行の中で最も戦闘能力の高い ジャイアンが選ばれた訳だ。 しかし、悲しいかな、ジャイアンは飽きっぽい。 この単調な作業に飽きてきた。 余りに変化のない状況に欠伸をした時だった。 ジャイアンの2.0の視力はラジオ塔から二つの人影が出てきたのを捉えた。 ジャイアン「あいつらは…………。」 ジャイアンは必死に記憶の糸をたぐりよせた。 ジャイアン『確か男がコウ。 女の方はどっかの町の名前だったな………。 ヒワダだっけか?』 ジャイアンは監視を続け近所の子供達にも「地獄耳」と 恐れられる驚異の聴力で二人の話を聞く。 コウ「……部下からの連絡が途絶えました。 また消されたようですね。」 コウが耳から通信機のような物を外し言う。 キキョウ「あんたやトシミツ様の言う通りあのドロドロは町中に侵入してきたようね。」 ジャイアン『ドロドロ………? あ、スネ夫のドーブルの事か。』 ジャイアンは素早く思考を働かせ考えた。 しかし、話を聞くのを怠った訳ではない。 とりあえず、ラジオ塔から幹部の二人が出てきたのをアンノーンに伝え、 のび太に伝令させる。 コウ「しかし、トシミツ様の言う事に間違いはないんでしょうね? もし間違っていれば連中の駆除どころか私らが消されかねない。」 コウが心配そうに言う。 キキョウ「大丈夫よ。 トシミツ様の言うことに間違いはないわ。 とりあえず駆除に向かいましょ。」 ジャイアン『ヤベエな…… もう気付きやがった……。』 ジャイアンは唇を噛む。 奴らの言動から考えるに、ドーブル駆除ということはこれから町に 繰り出すのは間違いない。 その場合のび太とは高い確率で遭遇するだろう。 足止めしようにも、まさか幹部クラスが二人も来るとは思い浮かばなかった。 連中も幹部ならあのスターミー野郎と同じくらいの力量を持っているに違いない。 自分がいかに強くなっていたとしてもカホウ二人分には恐らく勝てないだろう。 しかし、このままではその戦力をもろにのび太が受けてしまう。 行くべきか、黙するべきか。 思考より体が先に動くジャイアンも、この葛藤に悩まされていた。 コウ「まあ、やるだけはやってみましょう。 キキョウさん、行きますよ。」 コウはそう言い歩きだした。 ジャイアン『ヤベエ! こっちに来た。』 ジャイアンは息を潜め気配を殺した。 ぴちゃぴちゃ。 コウとキキョウの足音が聞こえる。 ジャイアン『くそっ! 見つからねえでくれ!』 ジャイアンは強く念じお祈りのポーズをとる。 ジャイアンの願いが通じたのか、その足音は次第に遠くなってゆく。 ジャイアン『助かったか………?』 ジャイアンはホッとした。しかし、 「ピルルルルルルル。ピルルルルルルルル。」 雨の中に渇いた電子音が響き渡った。 ジャイアン『な、なんだ!?』 ジャイアンはあわてて自分のポケットを見た。 そして、音の発生源が自分のポケギアであることが解り、すぐに電源を切った。 ジャイアン『ヤベエ! 絶対見つかった………』 あれほど大きな電子音が響いたのだ。 奴らが気づかない筈はない。 ジャイアンは恐る恐る、物陰からコウ達がいた所を見た。 ジャイアン『あれ………?』 奴らは居なかった。 ジャイアン『もしかして、雨で奴らにはこの音が聞こえずに、 先に行ってしまったのか? まさか俺様ラッキー!?』 ジャイアンはそう思い、ホッと胸を撫で下ろした。 しかし、ジャイアンの安心感は無惨に崩れ去る事になる。 誰かの手がジャイアンの肩に触れたからだ。 コウ「こんにちは。」 コウ「君はあの時の………。 まさかこの戦線に参加していたなんてね。」コウがジャイアンの肩に 触れながら不気味に笑う。 ジャイアン「うおあああああ!!」 ジャイアンはコウの手を振りほどき、反射的にその場から逃げ出した。 ジャイアン『ヤバイ……! ここは逃げるしかねえ!』 慌てて逃げるジャイアンを見てコウが言う。 コウ「つれないですね………。 ねえ、キキョウさん。」 キキョウ「逃がさないわよ………。 アリアドス!くものす!」 ジャイアンの退路にクモの巣ができ、逃げられなくなる。 キキョウ「これで逃げられない………」 キキョウは冷たく笑う。 ジャイアンは絶望的な危機に頻していた。 だがジャイアンにはスネ夫に言われたこういうときのための 最後の策が用意されている。 ドーブルのテレポートだ。 ジャイアン『ドーブル達がこっちに来るまで時間を稼がねえと……』 ジャイアンは思考をフル回転させた。 ジャイアン「ちょっ、ちょっと待て! 取引しねえか?」 キキョウ「取引?」 ジャイアン「ああ、取引だ。」 上手い具合いに乗ってくれた。 後は時間を稼ぐだけ。 ジャイアン「あのドロドロの正体を知りたくねえか?」 ジャイアンは会話で時間を稼ごうとする。 ドーブル達とはクモの巣を隔てているが、 液体状になってる連中なら突破出来るだろう。 ドーブル達もこの状況に気づいたかゆっくりとこちらへ向かってくる。 ジャイアン「そもそもな、お前らが………」 ジャイアンは無い頭を必死で駆使し、時間を稼ぐ。 奴らは雨の視界の悪さでドーブルには気づいていないようだ。 ドーブルとジャイアンまでの距離は確実に短くなる。 あと30m 20m……… ジャイアンが絶対絶命のピンチに頻しているとき、 のび太はコガネのポケモンセンターにいた。 のび太は口元を弛め、センター内に用意してある公衆電話の電源を切り、 辺りを見回す。 ジャイアンを見て来いと言ったので、周りにアンノーンはいない。 のび太『これで厄介な奴が死んでくれた。』 のび太の顔が醜く歪む。 ジャイアンのポケギアを鳴らしたのは彼である。 そもそも、のび太にとって、ジャイアンの存在は、最も邪魔であり厄介であった。 まず、奴らの中でドラえもんは、名前を知っていてラクに殺せる。 スネ夫は、ポケモンの応用力、戦術力は高いがかなりのレベル不足。 スネ夫が団員を拉致している間、のび太達は、送られてきたロケット団相手に、 経験値、及び戦闘経験を積んでいた。 正直、現在戦闘という面では自分より圧倒的に弱い。 故に奴はノートで殺せなくても、問題は、なんらない。 だが、問題はジャイアンである。 明らかなる偽名(というかニックネーム)により、ノートでは殺せない。 しかも、奴は、完全なるバトルマニア。 手持ちの強さなど足下にも及ばない。 故に、コイツを殺すにはチャンスと安全な策が必要。 ノートや戦闘で殺せないなら違う方法を採ればいい。 それは、ジャイアンをハメて、コガネで戦死させる事である。 のび太「奴と幹部………。どっちが勝っても得をすんのは俺。 決行まで、いい案が思い浮かばず、小手先の策となったが、 まさか、ここまでうまくいくとは思わなかったぜ。 確実に流れは俺の方へ向いてるな。キシシシシ。 もう、キツネ顔の注文も済ませた事だし、この街に用はないな。」 のび太はそう呟き、うすら笑いを浮かべながら、ポケモンセンターを後にした。 一方、のび太の策に、まんまとハマったジャイアンに視点を戻す。 ジャイアン「それでな、その青狸がな………」 ジャイアンは相変わらず、時間稼ぎをしていた。 しかし、生まれつきの頭の悪さか、まともな会話ができていない。 黙って話を聞いていたキキョウも、流石に不信感を抱く。 キキョウ「あんた………、何か話を先伸ばしにしようとしてない? なんというか、時間を稼いでるような………」 目を細めてキキョウが訊く。 ジャイアン「そそそそ、そんなことねえよ!!」 ジャイアンは慌てて誤魔化す。 ジャイアン『バレたか………。 まあいい。 ドーブルまで後10m程だ。 この間合いなら、女の方の攻撃は受けても、男の方は間に合わない。 要は逃げれりゃいいんだ。』 ジャイアンはドーブルの方をチラリと見る。 もう、すぐそこだ。 ジャイアン『ふん。俺の勝ちだな。』 しかし、ジャイアンが勝ちを確信したときだった。 ボンッ、と音がして、液体状だったハズのドーブルが、本来の姿をさらけだした。 ジャイアン「なんで!? 何故液体化したドーブルが……」 予期せぬ突然の事に驚くジャイアン。 その様子を見て、コウがクスクスと笑いだした。 コウ「くくくくく…………。 流石はトシミツ様。 歳の功とは恐ろしい……。」 キキョウ「しかし、危なかったわ………。 全然気付かなかった。 ありがとう。コウ。」 雨の中で、コウと、キキョウの会話が飛び交う。 ジャイアンはただ呆然としていた。 ジャイアン「何故だ……?」 意気消沈とするジャイアンに、コウが言い放つ。 コウ「何が起こってるか分からないのかい。 なら、向こうを見るといいよ。」 コウは、そう言いドーブル達の方を指さした。 ジャイアンはそれに従い、指さされた方を見る。 ドーブル達の「とける」が次から次に解除されていっている。 ジャイアンはしばらく、それに目を奪われていたが、じきにドーブル達の上に、 黒いモヤがかかっているのに気付いた。 ジャイアン「あれはまさか………。 くろいきり?」 コウ「ハッハッハ! そうだよ!まさに、その通り! ちなみに上を見てごらん。」 コウが笑いながら、今度は上空を指差す。 ジャイアン「あれはクロバット!」 キキョウ「その通りよ。」 キキョウが言った。 そしてコウが説明を始める。 コウ「あなた達の攻撃が、「とける」を使ったポケモンということは 予測はついていました。 (まあ、トシミツ様は水の中で生きれる事からシャワーズか、 ベトベター推測してたんですけど。) だから、それを解除させる為に上空からクロバットにくろいきりを散布させながら 飛ばしたんですよ。」 コウの言葉にジャイアンは唇を噛む。 ジャイアン『くそっ! 雨のせいでクロバットにもくろいきりにも気付かなかった……。 恐らく今までいた見張りも、地上に注意を向けさす為の布石……。 奴らはだから安心してあまごいをしたんだな……。』 ジャイアンはチラリとドーブル達を見やる。 ドーブル達とは「くものす」で分断されている。 「とける」を解除されたドーブル達は「くものす」を抜けれず、 最早どうしようもない。 絶望にうちひしがれるジャイアンに、コウが笑いかける。 コウ「さあ、とりあえず君をどうしようかな。」 キキョウ「決まってる。」 そう言い、キキョウが身構える。 ジャイアンにはもはや、戦闘しか道は残されてはいなかった。 ジャイアン「畜生!いけっ、ヘラクロス、オーダイル!」 ジャイアンは、そう言いポケモンを繰り出した。 キキョウ「そうこなくちゃ!」 キキョウも腰のモンスターボールに手をかける。 だが、ただ一人コウだけは動かない。 キキョウ「コウ? どうしたの?」 不審に思ったキキョウが訊いた。 コウは笑いながら答える。 コウ「キキョウさん。 こいつは僕達が戦うまでもありません。 巻き込まれないように、避難しましょう。」 キキョウ「は?」 コウはそう言い、キキョウを半ば強引に連れラジオ塔の方へ歩いて行く。 ジャイアン「なんだ!?逃がしてくれんのか!?」 ジャイアンが訊く。 ジャイアンにはコウの行動の意味が解らない。 尚も、コウとキキョウはラジオ塔を目指し歩く。 そして、ラジオ塔の入口の前に行った時、コウが言った。 コウ「逃がす?そんな馬鹿な。逃がしはしませんよ。気付いて下さい。 今は雨ですよ? ねえ、カホウさん。」 ジャイアン「なっ!?」 ジャイアンが気付いた時にはもう遅かった。 ラジオ塔の頂上からカホウとスターミーと、大量の水が流れてきた。 スターミーのなみのりは、ジャイアンとドーブル達、 及びそこにあった物全てを跡形も無く洗い流した。 ジャイアンがカホウの水に呑み込まれてから一時間後、 アンノーン達はその事をスネ夫に報告していた。 アンノーン「ジャイアンがやられた。 津波に呑み込まれて行方が分からない。」 スネ夫「なんだって!?」 スネ夫はアンノーンの報告に驚きを隠せなかった。 スネ夫は暫し黙っていたが、やがて口を開いた。 スネ夫「わかった………。 とりあえず、ジャイアンを捜索してくれ。」 スネ夫はそう言い、アンノーン達を追い出した。 スネ夫「くそっ!」 スネ夫は机にやるせない気持を全てぶつけた。 アンノーンの話では、あの一撃はジャイアンを死においやるには 十分な威力だったという。 確かにそうかもしれない。 前回は、雨が降っていなくて、しかもポケモンが盾になってあの威力だったのに、 今回は雨の中でモロになみのりを食らってしまっていたらしい。 ここまで響いてくるあの音から想像するに、 アンノーンの言うことに間違いはないだろう。 一番の戦力であったジャイアンを失ったのは大きなディスアドバンテージだ。 しかし、言い方が悪いがジャイアンは死んでも作戦になんら問題はない。 余りこんな言い方はしたくないがむしろ、人質にならない分、死んだ方が好都合。 本当に死なれて困るのは、のび太だ。 ドーブルの正体は奴らに見破られた。 まあ、これは計算通り、というより好都合か。 しかし、のび太に死なれてしまうと、全ては台無し。 ジャイアンの死も、ドーブルの能力が知られたのも、全て無駄になってしまう。 スネ夫「のび太が生きていれば……。 でも、ゲームを脱出すれば生き返るとはいえ、ジャイアン……。 くそっ!」 やっぱり策より、友達。 策は幾等でも後で変更できる。 今はただ二人に生きていて欲しい。 スネ夫はさっき、少しでもジャイアンの死を好都合と考えた自分に、 腹が立ってしかたなかった。 次へ
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前へ 一行はアサギに着いた。 スネ夫「どうする? 今すぐ皆で灯台に行くかい?」とスネ夫は訊いた。 もちろん、他にすることは無かったし、のび太にとっても全くデメリットは無かったので、そのまますんなり行くことは決まった。 ジャイアン「なかなか長い灯台だな。」 スネ夫「ジャイアン、ここに寄らずにタンバに来たの?」 ジャイアン「ああ、町の端っこにあるし忘れてた。」 ドラえもん「僕も初めて来たよ。」 スネ夫「と、いうことは、ここを通ったのは、僕だけ、もしくは僕としずかちゃんだけか……。みんな!ちゃんと僕に着いて来てよ!!」 スネ夫は以前灯台を登ったことがあることを良いことに、勝手にリーダーシップを取っていた。 スネ夫「ところでのび太は?」 と、スネ夫が訊いた ドラえもん「あれ、のび太君がいない!」 ジャイアン「大方息が切れて休んでるんじゃないか?」 スネ夫「のび太らしいねwww」 二人の間でいつも通りのやりとりが行われる。 ドラえもん「いや、単独行動はやっぱり危険だ。時間犯罪者の攻撃があるからね。 戻ってのび太君を探そう。 」 ジャイアンとスネ夫は、ドラえもんの言葉で、今の危険な状況を思い出し、文句も言わず、もときた道を引き返した。 三階程下に降りたとき、一行はすぐにのび太を発見した。 のび太は船乗りに絡まれていた。 スネ夫「戦いそびれたトレーナーがいたのか」 ジャイアン「あのバカ!」 のび太『ちっ!奴ら来たのか。これじゃあノートで殺せないじゃねぇか。』 船乗り「俺は船乗りのヨシト! メガネのボウズ!勝負だ!」 と、言うとうむをいわさずニョロゾを出してきた。 のび太『面倒だな……。こっちの手持ちはポッポとケーシィ。 ここで俺が直々に戦うのも避けたいしな。 まあなんとかするか。』 のび太「行けっ!ケーシィ!」 のび太はケーシィを繰り出した。 ヨシト「ケーシィか……。 ニョロゾ!!みずでっぽう!」 ニョロゾはみずでっぽうを放った のび太「テレポート!!」 のび太が指示を出した瞬間、ケーシィは消えみずでっぽうをかわした。 ヨシト「ちくしょう……。またみずでっぽうだ!」 しかしまたも、ケーシィはテレポートでかわした。 ヨシト「ちょこまか、ちょこまかしやがって!」 気が短いようであるヨシトは、みずでっぽうを乱射させた。 しかしそれもテレポートにかわされる。 ジャイアン「イライラするなあ。俺が一発で終わらせてやろうか。」同様に気が短いジャイアンもイライラしてきた様である。 ドラえもん「まあまあ」 そんなジャイアンをドラえもんがたしなめた。 依然みずでっぽうをテレポートでかわし続けるケーシィ。 ケーシィのテレポートに翻弄され続けニョロゾにも明らかに疲労の色が見えていた。 16回目のみずでっぽうをかわされたとき、あることがヨシトの頭の中に浮かんだ。 ヨシト『こいつまさか、テレポートしか使えないんじゃ…… しかしテレポートしてるだけじゃ勝てない。何を考えてるんだ?』するとヨシトはあることを閃いた。 ヨシト『わるあがきだ……。 成程。奴がテレポートで技をかわし続けるのはニョロゾの疲労を誘うと同時に自らのPPを削り、奇襲するため。 疲労しているニョロゾならば傷薬の大量使用で頑張れば勝てるかもってとこか? それなら、こっちだって手はある。 奴は最期のテレポートからすぐにわるあがきに繋げるに違いないから、一発はわざと食らって、逃げれなくなったとこを捕まえて、おうふくびんたで連続攻撃。 傷薬など使う暇を与えない!』 ニョロゾは、20回目のみずでっぽうを放った。 当然のようにケーシィはそれをテレポートでかわした。 そして、ケーシィはニョロゾの背後に現れた。 ヨシト「計画通り!!! 一発はわざと食らって、おうふくびんた!!!」と、ヨシトが言った。しかし、のび太の一言は、ヨシトが全く予期せぬものだった のび太「ケーシィ!ずつき!」 ケーシィはそのまま頭突きをかました。ニョロゾは疲弊していたのでそれをまともに食らった。 ヨシト『なにっ!こいつテレポートしか使えないんじゃなかったのか!?』 ヨシト「くっ!いや、ニョロゾ!落ち着け!そのまま捕まえておうふくびんただ!」 と、ヨシトは言ったがニョロゾは、今の攻撃でひるんだ。 のび太「ケーシィ!そのままずつきだあ」 何発もの頭突きが命中し、ニョロゾは倒れ、戦闘不能に陥った。 その瞬間ケーシィは体を小刻に振るわせ、体が光り始めた。 突然の事に、今だ驚きを隠せないヨシトに向かってのび太は言った。 のび太「テレポートしか使えないと思って油断したんだね。 それは、ただ一つの攻撃技、「ずつき」を受けさせる為の罠だったのさ。」 その後の展開は、一方的だった。 ヨシトのメノクラゲとドククラゲは進化したユンゲラーのねんりき一発ずつで沈んだ。 ヨシト「完敗だ! まさかあれ程のレベル差を知恵で覆すなんてな! また戦おうぜ。」 のび太『キシシシシ。次なんてねぇけどなwww』のび太は既に、ヨシトの手持ちと名前を知っている。もうヨシトの命はのび太の手に握られていた。 ジャイアン「遅いぞ!のび太!!!」 のび太「ごっ、ごめ~ん。」 のび太『今、ここで殺る訳にもいかないか。』 一行は、また頂上に向かった。 途中、またのび太が何人かのトレーナーに絡まれたが、なんとか撃退し、頂上へ着いた。頂上には必死にデンリュウの看病をする一人の少女がいた。彼女が言わずも知れたアサギジムリーダー、ミカンだった。 ミカン「あっ、秘伝の薬を持ってきてくださったのですね。」 そう言われたスネ夫は薬をミカンに手渡した。薬を使われたデンリュウはみるみるうちに元気を取り戻した。 ミカン「みなさん。ありがとうございます。これで安心してジムに戻れます。」 彼女はそう言い、灯台から降りて行った。一行はそれを見届けた後、相談を始めた。 スネ夫「ミカンは鋼タイプの使い手だったよね。」 ジャイアン「ああ。」スネ夫「僕がいくよ。マグマラシがあるから、上手く行けば一匹で完封出来るだろう。」 ジャイアン「俺に戦わせろ!!」 ジャイアンがいきり立ったが、すぐにドラえもんに鎮められた。 ドラえもん「今はそんな状況じゃない。 とにかく、先にバッジを取ることを優先させるべきだ。 もたもたしてたらまた、ジムリーダーを殺されてしまう。」 ドラえもんの一言もあり、結局一行はセオリー通り、炎タイプのポケモンが主力であるスネ夫で挑戦する事にした。 一行はアサギジムにやってきた。 ジム内には、唯一人、少女が立っていた。 ミカン「さっきはありがとうございました。 でも勝負となると、話は別です。さあ、誰が私と戦うのですか?」 スネ夫「僕だ!!! 鋼ポケモンなんて炎で一撃さ。」 スネ夫は鋼ポケモン使いに対してかなり失礼な発言をしたがミカンは眉一つ動かさず言った。 ミカン「わかりました。 勝負は3対3でいきましょう。 いきなさい。レアコイル!」 ジャイアン「ゲームと違うじゃねぇか!」ジャイアンは予想外のポケモンに驚いた。 スネ夫「そんなこと何度もあったさ。 所詮鋼。炎で一発! 行けっ!マグマラシ!」 スネ夫は速攻で勝負を決めるため、マグマラシを繰り出した。 ミカン「マグマラシ……。 早速弱点ですね。レアコイル、でんきショック!」 レアコイルから大量の電撃が放たれ、それがマグマラシを襲う。 マグマラシはそれをまともに食らったがなんともないようだった。 ミカン「まもる……ですね?」 ミカンがそう呟いたとき、既にスネ夫はマグマラシにかえんぐるまの指示を出していた。 豪火がレアコイルを襲い、レアコイルは倒れた。 ミカン「戻って、レアコイル。」 ミカンはレアコイルを戻した。 スネ夫「どんなもんだい!!」 ジャイアン「弱点をせこく突いてるだけなのにな。」 スネ夫は喜んだが、戦えなかったジャイアンは冷たく言い放った。 ミカン「やはり弱点は辛いですね。」 スネ夫「どんな奴が来たって燃やしちゃうよ。」 スネ夫は勝ち誇ったかのように言った。 ミカン「そんなことないですよ。 今までアサギには山ほどの炎ポケモン使いが訪れてきました。 私だって、学習するし、成長します。 次のポケモンは、その炎ポケモンに対する回答です。 いきなさい、ハガネール。」 そうミカンが言うと、とても巨大な鋼鉄の蛇が現れた。しかしスネ夫はそれを見ても落ち着いていた。 スネ夫「なあんだ。ハガネールか。ゲームと一緒じゃないか。 それじゃあまり変わらないよ。 マグマラシ、かえんぐるま!!」マグマラシの豪火がハガネールを襲う。しかし、 ミカン「いわおとし!」 ハガネールが尾を振ると無数の岩がマグマラシの前に落ち、炎を遮った。 スネ夫「くっ!炎が届かない! それなら、でんこうせっかで肉弾戦だ!」 マグマラシは素早い動きで岩の回りを回りこみ、ハガネールに激突した。しかし、ハガネールには全くダメージがなく、長い体で捕まってしまった。 ミカン「愚かな……。 ハガネールの防御力は絶大。並の攻撃ではびくともしません。 ハガネール、いつものを。」 ミカンがそう言うと、ハガネールはその大きな体でマグマラシを包みこんだ。 一ミリの隙間もない程に。 スネ夫「マグマラシ!」 ミカン「こうなってしまってはどうしようもありません。 投了を勧めます。」 ミカンがそう言うと、スネ夫は不敵に笑った。 スネ夫「くくく…… 逆にさ、包まれたことで的に近くなったと思わない? マグマラシ! 奴の体の中でかえんぐるまだ!!」 ドラえもん「スネ夫君、なんて無茶するんだ! それじゃ、マグマラシも燃えちゃう!」 ドラえもんが叫んだ スネ夫「大丈夫。マグマラシは炎ポケモン。炎技は効果がいまひとつ。 先にハガネールがやられるさ。」 ミカン「投了しませんか……。残念ですね……」 スネ夫の指示通り、マグマラシはかえんぐるまを放った。 ハガネールの顔は苦痛で歪んでいる。 ジャイアン「効いてるみたいだぜ」 スネ夫「へへっ。どうだ!」 スネ夫が言った瞬間、ハガネールの様子がおかしくなった。苦痛で歪んでいた顔がまた平然となっている。 ミカン「……ハガネール。 もうそろそろ止めてください。」 そう言うと、ハガネールは、マグマラシを包んでいた体を元に戻した。 ハガネールの中からは、ぐったりしているマグマラシが出てきた。 スネ夫「マグマラシ! なんで………」 スネ夫はマグマラシに駆け寄った。 体には火傷はおろか、外傷の痕も全くない。 ミカン「確かにあなたのマグマラシは、自らの炎に耐えました。 しかしあのびっちりと密閉されているハガネールのしめつけるの中は、空気を通す隙間もありません。 あなたのマグマラシの炎は、その中の酸素を全て燃やし尽し、酸欠状態に陥ったのです。」 マグマラシは最早、戦闘が出来る状態ではなかった。 唯一の炎ポケモンであり、スネ夫の主力であるマグマラシを失った今、スネ夫はもうミカンのハガネールに、手も足も出なかった。 五分後、スネ夫はハガネールに完封されてしまい、一行はアサギジムを後にした。 スネ夫「あのハガネール、炎が効かないなんてずるいよ~」 ドラえもん「どうする、早く倒さないと、また時間犯罪者に先を越されてしまう……」 のび太『殺って奪おうにも、最後の一匹がわからない……。』 三人は頭を悩ませた。 そこで唯一人の悩まない男、我等がガキ大将が口を開いた。 ジャイアン「やっぱりここは俺にまかせろ!」 スネ夫「ジャイアン、勝算はあるの?」 スネ夫が訊いた。 ジャイアン「は?勝算? なんだ。それは?」 ジャイアンは答えた。 スネ夫『……………。』 スネ夫は昔の事を思い出していた。 ああ僕は今までこいつの無茶に何度苦しめられてきたことだろう。危ないといっているのにラジコンの無理な操縦でかみなりさんの家のガラス割ったり(僕が謝りにいった)、こないだもも、 スネ夫「見て、ジャイアン、ウソッキーの体力があと僅か。捕まえられるよ♪」 ジャイアン「どれどれ、ちょっと貸せよ。 あっ、もう少し弱らせられるな。えーと、はかいこうせんかな?」 スネ夫「あああああっっっっっっっ!!! ………ちくしょう」 余談だがスネ夫はウソッキーをじわじわ弱らせる行程に三時間程、時を費やしていた。 スネ夫『きっと、即負けて、時間犯罪者に先を越されて現実に帰れなくなるんだ……』 スネ夫が悲観に暮れているとき、突然、ドラえもんが閃いたように言った。 ドラえもん「あるっ! 炎以外でミカンの鋼ポケモンに対抗できる手が!」 ドラえもんが言った。 スネ夫「なにさ、それ。」 スネ夫は怪訝そうな顔で訊いた。 ドラえもん「それはね、ちょっとのび太くん…………」 ドラえもんの説明で時間が数分経った。 スネ夫「成程……」 のび太「僕にとってもいい話だね。」 ジャイアン「その通りにすればいいんだな。」とジャイアンは訊いた。 ドラえもん「うん、不確定要素はミカンの最後のポケモンだけど、ハガネール、レアコイルは確実に倒せる!」ドラえもんは言った。 ジャイアン「成程!腕が鳴るぜ!」 ドラえもん「とりあえず準備だね。 僕とスネ夫君は砂浜で、例のポケモン捕まえてきてジャイアンに貸すから。 のび太君とジャイアンは、例の事をしておいて。」 三人「わかった!!」 のび太『キシシシシ。 これでまた俺も戦力アップだ。』 さあジャイアンは、ミカンに勝つ事が出来るのか、そして、ドラえもんの作戦、のび太の企みとは!? 次の日、一行はまたアサギジムにやってきた。 ジャイアン「たのもー」大柄な少年は勢いよく扉を開けた。つい最近掃除したらしく昨日に比べてジム内は綺麗になっていた。 ミカン「またいらっしゃったんですか?今日はどなたが相手をして下さるのですか?」 ジャイアン「俺だ!!俺は昨日の奴が一万光年修行しても勝てないレベルだぜ!!」 ジャイアンはどこかで訊いたような言葉を吐いた。 ミカン「勝負の形式は昨日と同じでよろしいですか?」 ジャイアン「問題ねぇ!!!」ジャイアンは即答した。 ミカン「わかりました。いきなさい、レアコイル!!!」 ミカンはレアコイルを繰り出した。 それを見たジャイアンはお見通しだとばかりに、ニカーとしている。歯に海苔がついている。 ジャイアン「やっぱり、そいつで来たな! 行けっ!カイリキー!」 ジャイアンがそう叫ぶと四本腕の筋肉質のポケモンが出てきた。 昨日のうちに、のび太と通信進化をしておいたのだ。同様にのび太のユンゲラーはフーディンになっていた。 ミカン「カイリキーですか…… レアコイル、10まんボルト!!」 ジャイアン「カイリキー!!クロスチョップ!!」 レアコイルの電撃が、カイリキーに命中した後、カイリキーはレアコイルにきつい一撃をお見舞いした。レアコイルのボディにヒビが入り、レアコイルは倒れた。 ジャイアン「やったぜ! 見たか!鋼の弱点は炎だけとは限らない!」 ミカン『成程……カイリキーの攻撃力ならレアコイルを一撃で倒すことも不可能じゃない………』 ミカンはレアコイルをボールに収めた。 ミカン「多少対策はしてきたようですが、そんなに私が甘いものと思ってもらっては困ります。 いきなさい、ハガネール。」 昨日に続いてまた、巨大な鋼の蛇が現れた。しかしジャイアンは動じない。 ジャイアン「そいつの対策もバッチリさ。」と、ジャイアンは不敵に笑った。 ミカン「そうでしょうか?残念ながらハガネールは鉄壁の防御力を誇ります。 弱点であろうと、物理攻撃ではほとんど有効なダメージを与えられませんよ。」とミカンが言った。しかしジャイアンは、 ジャイアン「だから対策はバッチリだっていってるだろ。 戻れ!カイリキー。 そして、行けっ!ストライク!」 ミカン「ストライク………。 私の話を聞いていたのですか? 物理攻撃は効果が薄いと言ったでしょう。 これならまだ弱点をついている分、カイリキーの方がマシです。」 ジャイアン「何度もいわせんな!対策してきたと言ってるだろ! 俺はこいつでいい。 行けっ!でんこうせっかだ!」 そうジャイアンが指示をするとストライクは凄まじい早さで距離を詰め、ハガネールに斬りかかった。 しかし 「ガチッ!」 虚しいことに、ストライクの一撃は全くハガネールにダメージを与えることなく、逆に捕まってしまった。 ミカン「だから言ったでしょう。 ハガネール!またあの時のようにしめつけなさい。」 そうミカンが指示を出すと、ハガネールはストライクを包むようにして、また、あのしめつけるの状態に入った。 ミカン「どうしょうもないでしょう。 このまま、中の酸素を吸い付くし、酸欠になるまで待たせてもらいますよ。」 ハガネールの中では、ガチッ、ガチッとストライクが、斬りかかっている音がする。 ジャイアン「ところでさ。俺たちが助けた、デンリュウって今、元気か?」突然のジャイアンのバトルに関係のない質問に、ミカンは戸惑ったが、 ミカン「今はバトル中です。終わったら話しましょう。」 ジャイアン「いや、今知りたい。」 ミカン「後で、と言ってるでしょう!!」 ミカンが大声で返答したとき、ハガネールの様子が突如、おかしくなった。 体を振るわせ顔は苦痛で歪んでいる。 ミカン「なっ、なんで!」ミカンは珍しく取り乱した。 ジャイアン「ストライクに中で、れんぞくぎりをさせているのさ。」ジャイアンは言った。 ミカンは、はっ、とした ミカン『成程…… 当たる度に威力が二倍になるれんぞくぎり…… 高い防御力を誇るハガネールといえど、何度も何度も斬られたら、ダメージを受けることは、明白……。 恐らくさっきの会話も、時間を稼ぐと共に、れんぞくぎりを悟らせないためのもの。』ミカンは焦っていた。 ミカン「仕方ないです! ハガネール!もっと高圧でしめつけなさい!」 指示通り、まるでストライクを圧縮するかのようにしめつけた。 ミカン「本当はハガネールのボディにも負担をかけるためしたくなかったのですが…… しかし、れんぞくぎりは途絶えました。 これで終りです!」ミカンがそう言ったが、しかし、ジャイアン達の作戦はまた、その上をいっていた。 ジャイアン「そんなこともあろうかと、もう一つの作戦だ! ストライク! 手筈通りに……」 ミカン「? 何をする気?」 ジャイアンが何かを確認するとドラえもんが叫んだ! ドラえもん「ジャイアン、今だ!」 そしてミカンは、信じられない言葉をきくことになった。 ジャイアン「だいばくはつ……!」 ミカン「だっ、だいばくはつですって!!!!!」 ミカンが、そう言った瞬間、 「ドガーーーーン!!!」 と、いう音と共に、ハガネールの腹部から想像を絶する、爆発が起きた。 ミカン「な、何故……」 信じられないといった顔付きで、事態を目のあたりにしているミカンに、ドラえもんが言った。 ドラえもん「確かに、ただのだいばくはつでは、圧倒的高さを誇る、ハガネールの防御力を看破することなんて出来ない。 だからこちらも頭を使わせてもらった! 普通、物体が爆発するとき、爆発は四方に広がるが、物体を圧縮することによって、威力は収束し、爆発力を増す! ハガネールの高い圧縮力を逆に利用させてもらった!」そうドラえもんは言ったが、ミカンの疑問は全く晴れなかった。 ミカン「私が驚いているのはそんなことではありません! それくらい想定の範囲内ですし、相手が爆発系の技を使うときは、警戒して、しめつけるを使いません! 私が驚いているのは、何故ストライクがだいばくはつを使うことが出来るのかということです!」 と、ミカンはまくし上げたがその謎をすぐに明らかになった。 そのやりとりの内に、砂煙は消えていった。 そこには、ハガネールが倒れていた。腹部の損傷が激しく、戦闘はもう、出来そうになかった。 ミカン『やはりやられてましたか………』 しかし、よく目を凝らしてみると、ハガネールの横で何かが倒れている。 赤と白の丸いボディ。どこからどう見てもストライクには見えなかった。 ミカン「ビリリダマ!?」 ミカンは叫んだ。 スネ夫「種明かしをしようか?」 スネ夫が言った。 スネ夫「最初から僕達はハガネール対策用だいばくはつ作戦のみを計画していた。 しかし僕達は考えた。もし、素でビリリダマを使った時、しめつけるを使わずに地面技で一撃でやられるおそれがある。 なら相手を警戒させず確実にしめつけるを使わせ成功率を上げるために、何かもうひと捻りする必要があった 。そしてある技を選らんだんだ。」 ミカン「まさか!」 スネ夫「そう。バトンタッチさ。」 ミカン『バトンタッチ…… バトンタッチは普通、補助効果の伝達の為に使われる。 しかし忘れがちなある利点は、ポケモンの変更が不可能な時も、ポケモンが自ら入れ替わってくれること。 まさかこんな使い方もあったとは…… すごい……』 確か、ストライクはバトンタッチを通常、覚えない筈だが、大方タマゴ遺伝等で覚えさせたのだろう。 ミカンはジャイアン達の戦術を称賛するとともに自らの戦術が完全に上をいかれていた事実に気付いた。 これはジムリーダーとして最も屈辱的なものだった。 ミカン「戻りなさい。ハガネール。」 ミカンはハガネールをボールに収めた。 ドラえもん「ジャイアン!! あと一匹だよ!」 ジャイアン「おう! さあ、最後のポケモンを出せよ!」 ジャイアンが急かせた。 ミカン「わかりました。 本当はこの子を出したくはなかったのですが仕方ありません。 いきなさい、アカリちゃん」 そう言うとミカンはデンリュウを繰り出した。 ジャイアン「そっ、そいつって……」 ジャイアンが驚いたがミカンは淡々と答えた。 ミカン「そうです。 この子はあなたがたに救って頂いたデンリュウです。その節はありがとうございました。しかし、勝負となると話は別です。さあ、あなたもポケモンを繰り出してください。」 デンリュウは灯台の時が嘘のようにハツラツとしている。 ジャイアン「いいのか? 怪我しても、薬はもう取りに行ってやらねぇぞ。怨むなよ。 行けっ!ストライク!」 ジャイアンは再びストライクを繰り出した。 スネ夫「ドラえもん…。どうしてジャイアンは先にストライクを出したの? 弱点なのに。」 と、スネ夫が訊いた。 ドラえもん「恐らく、かげぶんしん、こうそくいどう、つるぎのまいを、した後に、またバトンタッチを決める気だろう。 病みあがりで動きの鈍いデンリュウは、高速で移動しながら、かげぶんしんをする標的に攻撃を、当てるのはさぞ難しいだろうからね。」 そしてドラえもんの予想通り、ジャイアンはストライクにかげぶんしん、こうそくいどうを命じた。 たくさんのストライクが高速で移動している。 ミカン「厄介ですけど仕方ないですね…… アカリちゃん!眠りなさい!」 予想外のミカンの一言にジャイアンは驚くというより寧ろ憤慨した。 ジャイアン「やる気あんのかよ!! 起こして勝負しやがれ!!」 と、ジャイアンは言ったがミカンはひょうひょうとしている。 ミカン「実は、アカリちゃんは今、病み上がりでコンディションが優れないのです。体調回復も立派な戦い。それにあなたの戦術は読めてます。 今の内にいくらでも補助効果を積んでください。」 このミカンの挑発ともとれる一言にジャイアンの怒りが爆発した。 ジャイアン「ストライク! かげぶんしんとかこうそくいどうとか止めろ! つるぎのまいつるぎのまいつるぎのまいつるぎのまい………防御は性にあわねえ!」 ジャイアンは無茶苦茶にただつるぎのまいを繰り返させた。 ストライクの攻撃力が最大まで上がったとき、アカリちゃんは目を覚ました。 ミカン「補助効果は積み終わりましたか。 じゃあ始めましょうか。」 ジャイアン「終わったな。 一撃で倒してやる! ストライク!バトンタッチ!」 ストライクのバトンタッチが決まり、フィールドに、カイリキーが立った。もちろん、ストライクの補助効果を受け継いでいる。 スネ夫「すごい!ジャイアン! 当たれば一撃で倒せるね」 ジャイアンの作戦を賛美するスネ夫にミカンがクスリと笑いかけた。 ミカン「当たれば……ですけどね?」 ジャイアン「何いってんだ!? 目にもの言わせてやれ! カイリキー!からてチョップだ!」 カイリキーの凄まじい威力の手刀がデンリュウに襲いかかる。 しかしミカンは落ち着いて対応した。 ミカン「アカリちゃん……フラッシュ」 ミカンがそう指示を出した瞬間、デンリュウの体から目が潰れんばかりの光が放出された。 「バガーーン!」 音からしてカイリキーのからてチョップは地面に命中したらしい ジャイアン「くっ、何も見えねえ!」 ミカン「アカリちゃん。でんきショック。」 ビリリッという音と共に、カイリキーの鳴き声が聞こえた。 まともにヒットしたらしい。 ドラえもん「バカな!フラッシュをしながらでんきショックを放っただって!」 ドラえもんが驚いた。 デンリュウの体からは常に強い光が放出されていて目も開けられない。 ミカン「通常フラッシュは、一瞬だけ強い光をだし、目をくらます技です。 しかし、灯台の光として特殊に訓練された、アカリちゃんは、フラッシュの光をずっと出し続ける事が出来るのです。」 そう言って、ミカンはサングラスをかけた。 ミカン「アカリちゃん!またでんきショック!」 それはまた、カイリキーにヒットした。 ジャイアン「くそっ!全く見えねえ!」 デンリュウのフラッシュはカイリキーだけでなく、ジャイアンやドラえもん、スネ夫、のび太のミカン、デンリュウを除く全員の目をくらまさせていた。 ジャイアン「くそっ!目も全く開けられねぇ。 仕方ない!カイリキー!あたりに攻撃をしまくれ!」 カイリキーは身の周りのものを殴りまくった。 しかし、それは一発もデンリュウにヒットすることはなかった。 ただ砂埃がたち岩がパラパラと舞うだけ。 ミカン「どんなに高い攻撃力もあたらなければ意味がないです。 さあ、止めです。」 ジャイアン『ヤバい。やられる…… なんとか、奴の場所を探る方法は…… そうだ!カイリキーのパワーを利用して……』 デンリュウはカイリキーに止めを刺そうと、電気を溜め始めた。 ミカン「今です!でんきショック!」 デンリュウの電撃がカイリキーに飛んだ。 ジャイアン「今だ!いわくだき!」 通常、いわくだきはあまり威力の高い技ではなかったが、攻撃力補助を受けていてしかも元の攻撃力が高いカイリキーが放てば話は別。 空中に大量の石が舞い、カイリキーを電撃から救った。 電撃により砕けた石がパラパラと舞い、カイリキーに当たった。 ジャイアン「今だ! 石がぶつかった方へこわいかお! そして、クロスチョップだ!」 カイリキーのこわいかおに、デンリュウは一瞬体が固まった。 そして、カイリキーのクロスチョップをまともに食らってしまった。 ミカン「アカリちゃん!!!」 攻撃を受けたデンリュウは壁にたたき付けかれもう動けない状況に陥ってしまった。 ミカンは暫し、呆然としていたがやがて口を開いた。 ミカン「私の負けですね。 では約束通り………」 そう言うと、ワンピースのポケットの中からバッジを取り出した。 ミカン「スチールバッジを差し上げたいと思います。」 ジャイアン「うおっしゃあああー!!」 ドラえもん「凄いよ!ジャイアン!」 スネ夫「見直した。」 のび太「…………」 ジャイアン達は歓声を上げている。 そこにミカンがやってきて言った。 ミカン「お見事でした。 用意周到な作戦、機転のきいた戦い、近年で最高の戦いです。 旅の成功をお祈りします。」 とミカンが言った ジャイアン「ありがとな!!! 達者でよ。」 そう言い、ジャイアンはミカンと握手を交し、去ろうとした。 しかし去る直前で、ドラえもんが言った ドラえもん「ああ、言い忘れていたけど、実はタンバのシジマさんが死んだんだ。」 ミカン「知っていますが何か……?」 ドラえもん「実はシジマさんは事故で死んだんじゃない。 殺されたんだ!」 ドラえもんがそう言うと、ミカンは驚いた。 そして、ドラえもんは、シジマを殺した奴の目当てがジムバッジであること、不思議な力で、直接手を下さずとも命を奪うことが出来ることを話し、ジムを後にした。ミカンはドラえもんの話を信用してくれ、警戒し、ジムを一時閉めてくれることになった。 ジャイアン「ミカンちゃん大丈夫かな……?」 ジャイアンは心配そうに呟いた。 ドラえもん「大丈夫さ。少しジムを閉鎖するって言ったし。」 と、ドラえもんが言った。 のび太「あっ」 スネ夫「どうした?のび太?」 のび太「ジムに忘れ物してきちゃった。」 ミカン「ここで最後ですね。」 ミカンは、四人が去った後、ジムを閉鎖し、先程のバトルの跡の修復作業にあたっていた。 しかし今、考えると、素直にあの青狸ポケモンの言うことを聞いてジムを閉鎖してよかったのか心配になってくる。 確かに、自分もシジマの死に何か普通では無いものを感じていたが、それなら、何故わざわざ海の向こうのシジマさんを先に狙ったのだろう。 順序からいって先ず自分ではないか。 しかもシジマさんはいつも、平気で二十四時間特訓とかしている人だ。何かの弾みで心臓が止まったりしても仕方がない。 そもそも、直接手を下さずに人を殺せる能力なんてポケモンの世界でも聞いたことがないし、非科学的である。 ミカン『私、騙されたのかしら?』 と、思いながら最後の床の穴を塞いだ瞬間、ジムのドアを叩く音が聞こえた。 今、考えていた事が考えていた事だけに、ミカンの背筋に冷たい物が走った。 しかし、 「すみませ~ん。忘れ物をしましたぁ~。あけてくださ~い。」 と、冴えない声が聞こえてくる。 しかも、何処かで聞いたことのある声だったので、恐る恐るドアを開いてみると、さっき、ジム戦に来ていた(付き添いではあったが)眼鏡を掛けた冴えない少年だった。 のび太「すみませ~ん。忘れ物したんですけど入っていいですか?」 少年は言う。 この少年がシジマを殺した犯人な筈が無かろうし、立ち入りを拒否する理由も無かったので、 ミカン「そうですか…… ではどうぞ」 と、快く中に入れてあげた。 のび太「すみませんね、ホント、んじゃお邪魔しま~す」 ミカン「いえいえ。」 少年はバッグをあさりながら色々聞いてきた。 のび太「もうジム戦はやらないんですか?」 ミカン「まあ、長くはないと思いますけど。」 のび太「ジムバッジ持ってませんか? ついでにジム戦もしたいんですけど。」 と少年は言ったが、今はそれどころではない。そもそも、忘れ物を取りに来たのではなかったのか。 ミカン「バッジは持ってますが、ジムは閉鎖するのでジム戦は出来ませんね。」 のび太「へぇー、そうですか。 ミカンさんの本名はミカンでいいんですか?」 ミカンは、何だか変なことを聞くなあ、と思ったが、別に答えてもどうってこと無かったので、素直に、はい、と答えた。 そこでミカンは少年の異変に気付いた。 何かを書いている。 その何かは何だか分からなかったが。 ミカンはこの少年にかつて無いほどの薄気味の悪さを感じた。 のび太「これで終わりましたよ。」 ミカン「忘れ物、みつかったんですか?」 のび太「いやいや、待ってくださいよ。あと10秒程です。」 10秒?この少年が何を言ってるのか分からない。しかし何だか……… 「ドクン」 ミカン「ツッ!?」 ミカンは胸の痛みを感じ、その場に倒れた。 ミカン「はあはあはあ………」 苦しい。体も麻痺している。 目の前の少年はこちらを見て笑っている。今までに見てきた人の顔の中で、最も禍々しい顔で。 ミカン「ま……さか、あなたが……ジジマさ……んを……した……人…」 ミカンは精一杯声を出したつもりだが、声が出ない。 少年は近付いてくる。 ミカン『いや……来ないで……』 ミカンは少年の接近を制しようと、力一杯声を出そうとしたが、やはり声は出なかった。 のび太「ああ、今から忘れ物を取らせて貰うぜ。先ずバッジと……」 と、少年は言いミカンのワンピースの中を探ってバッジを入手した。 その後、去り際に少年は、 「お前の命だよ。キシシシシ。」 と言い、ジムを出ていった。 最後の言葉はもはやミカンには聞こえてなかった。 ドラえもん「のび太君……まだかな?」 のび太「みんな~、ごめ~ん」 のび太はジムを後にしたのち、また一行と合流した。 スネ夫「遅いぞ!のび太! このノロマ!!」 いつもの如く、スネ夫が文句を言ってきた。 のび太「ごめん。」 『こいつウザい。絶対名前割り出して殺す。』 のび太は殺意を覚えたがとりあえず目的の為に抑制した。 今はそんな事より大切な事がある。 そう、最後のバッジについてだ。 最後のバッジを誰が取るかはこの世界の脱出にかなり重要な要素になってくる。 確か出木杉とかいう奴がフスベのバッジを入手するためには、あるイベントをこなす事が必要で、それに必要なアイテムはこの世界でひとつしかないと言っていた。故にバッジを手に入れた瞬間独占した状態になると。 もし、奴らが先にバッジを手に入れた場合、自分は最後のバッジを入手する手段がなくなるため、奴らを殺して奪うしか方法がなくなる。 しかしそれはかなりリスクが高い。 殺す条件を満たす為に、行動すれば足がつくかも知れないし、力づくで奪うにはやはり戦力が足りない。 それに出木杉達の手持ちも不明。 戦うのは得策じゃない。 だが逆に俺が最後のバッジを手に入れられたとしたらどうだろう。 ジムリーダー死亡のため、もう入手不可能になってしまったバッジは自分は両方所有している。裏を返せば、その他のバッジは、自分が所有していないその他のバッジは、これからいくらでも入手出来るということだ。 もし、そうなれば奴らと行動を共にする必要もなくなる。 折りをみて行方不明にでもなればいい。 その後は各地のジム破り、そして、脱出。 奴らは一生自分を探し続ける。 想像しただけでも笑えた。 とにかく、そのような状況を作るには少しでも最後のバッジの情報が欲しかった。 そこでのび太は切り出した。 のび太「ねぇ、出木杉達は今、何してるの?」 (月) 17 16 25 ID ??? のび太の一言に全員が顔を見合わせた。 ドラえもん「確かに、定期的に連絡をとると言った以上、そろそろ連絡しなきゃいけないかもね。 安否も気になるし。」 ドラえもんは頷き、四次元ポケットからポケギアを取り出そうとした。 その時、突然ドラえもんのポケギアが鳴りだした。 ジャイアン「誰からだ?」 ジャイアンが神妙な顔付きで訊いた。 ドラえもん「大丈夫、丁度よかった。出木杉君からだよ。 もしもし……」 ポケギアからはつい数日前に聞いた声が聞こえだした。 出木杉「あっ、ドラえもん君、無事かい?」 ドラえもん「ああ、無事だよ。」 ドラえもんは自分達と出木杉達の安否を確認すると、ポケギアの音量をめいいっぱい上げた。 ドラえもん達は、出木杉達の無事に安心を覚え、ホッとした。 しかし、その安心感は次の出木杉の一言に掻き消されることになる。 出木杉「あのね……。 ちょっと困ったことになったんだ………。 ジムが開いてない。」 「なんだって!?」 その場にいた全員が全く予想だにしなかったことに驚いた。 しかし、出木杉はそのまま話を続けた。 出木杉「いや、ジムが開いてないと言うより、入れないんだ。変な男がとうせんぼしてる。」 信じられない出木杉の言葉にスネ夫が言った。 スネ夫「何故……何故開いてないんだい?」 すると出木杉は落ち着いた様子で言った。 出木杉「僕らも始めは気になったけどね。 ラジオをつけてごらん。」 それを聞いたジャイアンは無言でラジオのスイッチをつけた。 すると、いつものクルミの声ではなく、変な男のダミ声が流れだした。 「あーー。われわれは――」 スネ夫「まさかこれは……」 出木杉「そう、ラジオ塔がロケット団にのっとられるイベント。 確かフスベのジムが開く条件は、そのイベントクリアだった気がする。」 全員はこのイベントのことを忘れていた。 時間犯罪者の事で手一杯になっていたからである。 全員に沈黙が走ったが、またそれを出木杉が破った。 出木杉「とにかく、僕らは、ジムに入れないことは事実。 だからこれからの事について話そうと思って、連絡した訳さ。」 ドラえもん「成程……。 君はどう思うんだい?」 ドラえもんが訊いた。 出木杉は少し、言うのをためらった。 五秒程経ち、また出木杉は口を開いた。 出木杉「……僕達は、フスベに残り、君達にイベントクリアを任せた方がいいと思う。」 ドラえもん「僕もそう思った。」 ドラえもんは同意した。しかし、スネ夫がそこで口をはさんだ。 スネ夫「えぇぇっっーー!! 時間犯罪者の攻撃もあるのに、危険すぎるじゃないか! ただでさえ、ルール無用のロケット団との戦闘は危険なのに…… ここは総力戦であたろうよ。」 と、スネ夫が反論した。 ドラえもん「いや、逆にひとまとまりになっていると、一気に皆殺しにされてしまう恐れがあるし、イベントクリア後、すぐにジムに挑戦するために、出木杉君達にフスベで待機してもらった方がいい。 それに、奴は現段階では、僕らを殺せないし、もし、殺せるとしても、イベントクリアまでほっておくだろう。 クリアしたら、出木杉君達がフスベにいる限り、先手を取ることが出来るからね。」 と、ドラえもんは言った。 ジャイアン「よくわからないけど、要するにロケット団をぶっ潰せばいいんだろ。 早くコガネに行こうぜ。」 ジャイアンが言った。彼はまた移動の支度をしている。 出木杉「そうは言ったものの本当にいいの? 僕らは、まだ時間犯罪者の攻撃を受けてないけど、君達は目の前でそれが起こったんでしょ。 それに、ヤドンの井戸の時の奴らを見ただろ。 ゲームとは違って、奴らの数は半端じゃない。 チョウジのアジトは楽だったけど、幹部がコガネの為の準備って言っていたから、かなり大規模になると思うよ。」 ジャイアン「大丈夫、大丈夫。まかせとけって!」 ジャイアンの頼もしい一言に安心したのか出木杉はクスリと笑った。 出木杉「わかった。 コガネは君達に任せるよ。 無事でいてね。」 ドラえもん「そっちもね。」 と、言い、ドラえもんはポケギアの電話を切った。 そして、一行はコガネに向かった。 次へ