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――――― チュンチュン 律「・・・」カタカタカタ 律「・・・」カタカタカタ 律「・・・」カタ・・・ッッターン! 律「…お、おわた…すっげぇ…歴代最悪を更新するレポートだけど…」 律「人間やれば出来るもんなんだな」 律「い、今・・・なんじ・・・」チラッ 律「」 律「っだあああああああ!?」 梓「うーん・・・おかしくないし」スヤスヤ 律「あ、あずさ、あずさぁ、梓ぁああ!!」 がしっ 律「おきろ!!おいこら!!幸せそうに寝てんな!!」ユサユサユサ 梓「ん・・・、あ、りつ・・・・おはよー」ボケー 律「あぁ・・・こんなときにかわいいな、こんちくしょう!? やばい、やばい!!やばいぞっ!!もう玄関出ないと電車間に合わない!?」 梓「かわいいとか・・・そんなぁ~」エヘヘ 梓「・・・」 梓「えっ!?」ガバッ 律「やっとおきたか・・・」 梓「あ!?もうこんな時間!?えっ!!あ、いつの間にか私寝てたんだっ!?」 梓「」はっ 梓「り、りつ!?れ、レポートはっ!?」 律「ふっふっふっふ」 梓「えっ!?終わらなかったの!?」 律「いや、なんでこの自信満々なリアクション見てそんなこと言うわけ?」 梓「じゃ、じゃあ・・・」 律「おう!お前が寝てからばっちり終わらせたぜ!」グッ 梓「よ、よかった・・・」ホッ 律「って!こんなのんきにしてる場合じゃないんだって!!」 梓「あぁあああ!そうだった!!支度したく!?」ドタバタ 律「いそげ!いそげっ!?」ドタバタ 梓「なんで歯ブラシもって走ってるの!?」ドタバタ 律「わからん!?もうよくわからん!?とにかく急げ、あずさ…って、ははははっお前寝癖ひどっ!!」 梓「」 梓「笑うな!」ゲシッ 律「りゃん!?」 ――――― がたんごとん 律「」ゼーハーゼーハー 梓「」ゼーハーゼーハー 律「な、なんとか間に合ったな・・・電車・・・」ゼーハーゼーハー 梓「・・・う、うん・・・レポートも提出できたし、よかったね・・・」ゼーハーゼーハー 律「お、おう・・・あぁ・・・てか・・・カチューシャ忘れてきた…」 梓「あ…ほんとだ…前髪ゴムでしばってるから違和感なかったけど」 律「くそっ…さすがに外でゴムは恥ずかしいから外すか」ホドキ ビョーン 律「…」 梓「…山?」 律「うっせ!こうやってこうやって…手でもどせば…」ググググ…パッ ビョーン 律「…」 梓「…私の帽子かぶってたらなおるよ、はい」スッ 律「うううう…優しさが妙にいたい…あんがと」カポッ 律「てか、帽子とったら今度は、梓、おまえやっぱ寝癖ひどいなぁ~~」ハハハハハ 梓「!?わ、笑うな!このばかっ!!帽子返せっ!」ガシィッ 律「それは無理なお願いだなぁ~」ハハハ 梓「…ポニテにしたらまだマシになるかな?」ホドキ 律「やってみ、笑ってやるかははははははは」 梓「うん…すっごいうざい、徹夜の人のこのテンション…」ホドキムスビ 梓「…どう?」 律「・・・うっ・・・笑ったら気持ち悪くなってきた・・・」 梓「ええぇえええ!?」 律「寝不足の状態であんだけ走ったら・・・そら・・・まぁ・・・気持ち悪くなるか・・・・」ウプッ 梓「だ・・・だいじょうぶ・・・?すごい顔色悪いけど・・・」 律「おう・・・な、なんとか・・・あとポニテすっごいかわいい」グッ 梓「…いや、こんなときにそういうのいいから」 律「てれんなてれんな」ヘッヘッヘ 梓「…ばか」 がたんごとん 梓「・・・あ、あのさ・・・」 律「ん…?」 梓「きついんなら寄りかかっていいよ?肩」 律「・・・ほんと?」 梓「うん・・・だってほんとに気分悪そうだから・・・まぁ、吐かれたら困るけど・・・」 律「吐かない!」 梓「・・・じゃあ、寄りかかっていいよ・・・」 律「おう・・・」コテン 梓「・・・」 律「・・・」 梓「・・・楽?」 律「うん・・・だいぶ、らく」 梓「ならよかった・・・」ヘヘヘ ぎゅ 梓「あ・・・手つなぐの」 律「手つなぐのひさしぶり~~」 律「なんだかんだ、行き当たりばったりだったけど、どうにかやっと梓と2人で旅行だな」ヘヘヘ 梓「だね、…まぁ、帰ってきたらものすごいごちゃごちゃな部屋の片付けがまってるんだけど」 律「あぁ…歯ブラシきっと玄関の棚の上だわ。新しいの買わなきゃ…てか、今それをいうな、今!行きの電車の中で現実に引き戻すなっ!もっと楽しいこと言えよ!」 がたんごとん 梓「たくさん楽しいことあったらいいなぁ~」 律「ん!そうそう、そんな感じ!旅行らしくなってまいりましたぁ~」 梓「あ、ファブリースしてくるの忘れた」 律「おい」 がたんごとん 梓「律のことだからはしゃぎすぎて、怪我とかしないでよね?」 律「今度はだいじょーぶ!心配ないから!」グッ 梓「へへへ・・・大丈夫大丈夫!」 律「・・・あ、でもちょっと寝かせてくれ」フアアア 梓「うん。レポートしてたもんね。私起きてるから寝てていいよ」 律「さんきゅー。じゃあ、ちょっと寝るわ・・・おやすみ、あずさ」 梓「おやすみ、りつ」 ぎゅっ がたんごとん 梓「・・・」ペラッ がたんごとん 梓「・・・」ペラッ 梓「楽しみだな~♪」 律「・・・ムニャッ」zzz 梓「あ、トンネル…」 がたんがたんがたん がたんがたんがたん 梓「…いがいと長い」 律「キャベツー…」 梓「…へへ」 がたんがたんがたん がたんがたんがたん ――――がっ 梓「・・・あ、海だ」 梓「もうすぐかな・・・前髪…治ってるかな」スッ 律「どっぐ・・・いやぁ・・・」zzz 梓「ん…よし、よかった…前髪立ってる人と歩きたくないもんね…さすがに」なでなで なでなで 梓「今日は楽しかったらいいな、ね、りつ」なでなで 律「…」 梓「・・・でも、たしかにあの雑誌折るのって犬の耳というよりネコの耳にも見えるかも」 梓「にゃんこいやー」ボソッ 梓「・・・なんてね」クスッ 律「」プークスクス 梓「」 梓「…いつから起きてた?」 律「トンネルあたり…うるさくて起きた」 梓「そう」 律「うそ」 梓「それもうそ?」 律「そう」ヘヘヘッ 梓「…もう、全然高校のときと変わってない…ばかりつ…」 律「そうかな?まぁ、自分では結構変われたかなって思ってたんだけど」 梓「どこらへんが?」 律「まぁ、…いいじゃん!さて、駅つくぞ!!忘れ物はないな~」 梓「そうやってすぐはぐらかすのは変わってないね…忘れ物はないよ」 律「ははははは…まぁ、今忘れ物してても気づけないんだけどな!」 梓「…そうだね」 律「お、着いた!じゃ、いきますか!あずさ!手!」スッ 梓「…手って、犬じゃないんだから」 律「にゃんこいやー?」 梓「ドッグイヤー!」 ぎゅ おわり 戻る
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ああああqq
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律「あたしもさ、唯ほどじゃなくても結構だらしなかったりするんだけどさ」 律「それでもいいなら、期間限定でも、憂ちゃんのお姉ちゃんになりたい」 憂「律さん・・・!」 結局勉強も手に付かず、その日あたしたちは寄り添うようにして眠った 律(ふう・・・事はそう簡単にはいかなかった) 律(憂ちゃんの隠していた願望・・・あたしじゃなくて唯に話せば一発で解決しそうな気がする) 律(唯が頼れる姉になって戻ってきたらそれでめでたしめでたしじゃないか) 律(あたしなんでここにいるんだっけ・・・?) 澪に連絡を入れる気にもなれず、あたしは眠れるまで延々これからのことに思いを馳せていた 翌朝! 憂「律さーん、起きて下さーい」 律「ん・・・?んー!おはよう憂ちゃん」 憂「さあ、朝ごはん作りましょう!」 律「おお、やったろうじゃないか!」 素直にあたしを頼ってくれるようになった・・・それは嬉しい あの笑顔、唯に向けられていたそれが今あたしに向いている・・・望んだとおりのことだ しかし何故だろう、こんなに胸がモヤモヤするのは 律憂「行ってきまーす」 二人で朝食をとった後、一緒に学校へ行く。といっても憂ちゃんは学校違うので途中までだが― ギュッ 律「?」 憂「えへへ」 律「どうしたのさ、突然手なんて繋いで」 憂「何でもないでーす」 ドクン まただ、また胸がおかしい 確かに好きな子と手を繋いで興奮はしてるけど、それだけじゃない もっと別の―― 憂「あっ、私こっちなので・・・」 律「あ、そそそそうか・・・」 憂「また後でね、お ね え ち ゃ ん」 律「!?」 爆弾を投下して憂ちゃんが去っていく 律(お姉ちゃん、か) 嬉しいはずのその言葉が、どこかに鋭く突き刺さった気がした 私と律のミッションの間は、部活は休止ということにしている 理由は律と憂ちゃんの時間を増やすためだ 唯はムギのお菓子が恋しいようだが・・・ 澪「よしよし。帰ったらまずお茶にしような」 唯「よかったー。ティータイムがないと私死んじゃうとこだったよ」 澪「そして練習だからな」 唯「うっ・・・でもギー太のためなら私・・・」 澪「そして夕食の後宿題だ、分かってるな」 唯「見えない聞こえない見えない聞こえない」 澪「こらこら、人の持ちネタを・・・って違う!」 唯「ごめんごめん。そうだよね、一つ積んでは憂のため・・・」 澪(そして私とお前と律のため・・・) 澪「わかったら帰るぞ!」 唯「うん!」 紬「REC」 憂「律さーん!こっちこっちー!」 律「おー、憂ちゃん待ったー?」 憂「いいえ、今来たとこです」 律「なんだかデートみたいなやり取りだな!」 憂「デ、デート・・・!?」 何でだろう、律さんはお姉ちゃんのはずなのに デートなんかじゃないのに 何でこんなに胸がドキドキするんだろう 律「あれ?どうしたの憂ちゃん」 憂「え!?い、いいえ、何でもないですっ!」 律「それじゃーまず何買おうか」 憂「えっと・・・そもそも今晩の献立考えてからですね」 律「そういやそうか。憂ちゃんは何食べたい?」 憂「いえ、私より律さんが・・・って」 律「・・・・・」ジー 憂「わ、私はハンバーグが食べたいかなー、なんて」 危ない危ない。律さんは私のお姉ちゃんなんだ。律さんには本音をぶつけなきゃ そう、私のお姉ちゃんなんだから・・・ 律憂「ただいまー!」 律憂「おかえりー!」 律憂「プッ・・・」 何が楽しいのか、ケラケラと二人しばし笑い転げる。 律「はあ、はあ・・・とりあえず荷物なんとかしよう・・・」 憂「は、はい」 律「さて、平沢家三分クッキングのお時間です」 律「先生、本日もよろしくお願いします」 憂「はい、よろしくお願いします」 律「さっそくですが、今日のメニューは何ですか?」 憂「今日は平沢家特製ハンバーグです」 律「それは素晴らしい!レシピはどのような・・・・・」 憂「隠し味は・・・・・」 昨日より楽しく作れた夕食は、とってもあたたかかった 律「で、今日もお風呂に入ろうと思うんだけど・・・」 憂「・・・・・」 律「い、一緒に入る?」 憂「・・・・・はい」 律「憂ちゃんって髪きれいだよなー」 憂「り、律さんこそ・・・髪下ろしててもいいのに」 律「・・・」 憂「・・・」 律「あ、ありがとう」 憂「い、いえ・・・こちらこそ」 昨日より早くあがったお風呂は、とってもぽかぽかした 憂「今日こそ勉強しましょう!」 律「おー!」 憂「・・・」サラサラ 律「・・・」カリカリ 憂「あのー律さん、ここがわかんないんですけど・・・」 律「憂ちゃんにわかんないものをあたしがわかるわけが・・・」 憂「・・・」ジー 律「わ、わーかったって!で、どこだって?」 憂「エヘヘ・・・えっと、ここなんですけど」 律「あれ、中学違うのに教科書同じの使ってんじゃん」 憂「えっ、そうなんですか?」 律「うん、うちも去年これだったな。さすがに細かいとこは違うとは思うけど」 憂「へー・・・」 昨日よりはかどった勉強は、とってもたのしかった 律「ん~っ!もうこんな時間か」 憂「ふわぁ~あ・・・もうそろそろ寝ましょうか」 律「そうしよっか」 憂「それじゃ・・・おやすみなさい」 律「おやすみ、憂ちゃん」 憂「・・・・・」 律「・・・・・」 律「いや、自分の部屋に戻らないと」 憂「そ、そうなんですけど・・・もうちょっとだけ」 律「仕方ないなぁ・・・ほら、こっちきなよ」 憂「エヘヘヘヘ、ありがとう、お姉ちゃん」 律「ッ~~~~!」 昨日より近づいた距離は、とってもおおきかった でも。 律(お姉ちゃん・・・なんだよな) 憂(お姉ちゃん・・・なんだから) その距離は、とってもとおかった そして。 憂「律さーん、起きて・・・ってあれ?」 律「おはよう憂ちゃん」 憂「今日は早いんですね」 律「ああ、なにしろ今日は休日だからな!休日を満喫するためなら早起きなど朝飯前よ!」 憂「変わった考え方ですね・・・うちのお姉ちゃんは休日は昼まで寝てますよー」 律「さすが唯・・・さて、朝飯作ろっか」 憂「はーい」 律「さて、朝飯後なわけだが」 憂「これからどうしましょうか?」 律「憂ちゃんはどっか行きたいとかない?」 憂「うーん・・・律さんと一緒ならどこでも・・・」 律「ちょっ///そういうこと真顔で言わない///」 憂「あっ・・・すみません///」 律「あ、そうだっ!」 憂「ど、どうしたんですか!?」 律「澪んちに行こうぜ!」 憂「えっ・・・でも澪さんの家って今お姉ちゃんが・・・」 律「そう、唯がいるな。でも、来ちゃ駄目とは言われてない」 憂「そうなんですか・・・?」 律「そうなんだな。今気付いたんだけどさ。で、どうする?ここ数日で唯が変わったかどうか、見てみたくない?」 憂「そうですね・・・」 怖くはあった。もし仮に、お姉ちゃんが既に真面目人間さんになっていたら。その時私はどんな顔でお姉ちゃんに会えばいいのか? 律さんにしたように、甘えてみせればいいんだろうか。ん?律さんにしたように・・・? 律「で、結論は!?」 憂「ひゃい!い、行きます!」 確かめてみよう、この気持ちを。もし同じようにできてしまったら、その時は―― 律「ぴんぽーん」 唯「はーい」 澪「開けるな唯!それは律の罠・・・」 唯「え?なに?」ガラガラ 律「おっじゃまっしまーす!」 澪「お、遅かったか・・・」 憂「こ、こんにちは・・・」 唯「おお憂ー!なんだか久しぶりー!」 憂「ほんとだねお姉ちゃん。たった数日なのに・・・」 律「はっはっは、あたしを止められるとでも思っていたのかい、秋山澪ちゅわん?」 澪「くっ・・・!」 唯「まあまありっちゃん。憂も、ひとまず上がって話そうよ」 律「お、おう・・・」 憂「う、うん・・・」 お言葉に甘えて、上がらせてもらうことにした お姉ちゃんがてきぱきとよく動く姿は、嘘のようだった 唯「どうぞ、粗茶ですが」 澪「ってうちのお茶だ!」 律「ほお、これはよいお手前で・・・」 唯「オホホ、恐縮でございますわ」 澪「・・・・・」 唯「こちら、手前が直々に焼きましてございます」 律「おおー、パンケーキとな!」 澪「たくさん練習した成果だ、味わって食べるんだぞ」 唯「な、なにもバラさなくても・・・憂もどうぞ~」 憂「う、うん、ありがとう・・・」 お姉ちゃんがそつなく接客をする様は、夢のようだった 唯「とりあえずここ数日の特訓の成果を見てよ!」 澪「ああ、唯のギターは本当にうまくなったよ」 律「へー、楽しみだな憂ちゃん」 憂「は、はい・・・」 人の気も知らないでこの人は・・・ これが終わったら、全部元通り・・・ううん、お姉ちゃんが今の律さんの立場に戻るだけ でも・・・ 『期間限定でも、憂ちゃんのお姉ちゃんになりたい』 ―そう言って受け止めてくれた律さんを。そのままお姉ちゃんに挿げ変えるなんて真似、できるわけなかった 憂「・・・ッ!」ダッ 律「あ、憂ちゃん!?」 唯「え、え?何、どうしたの?」 澪「薬が効きすぎたか・・・どうするんだ、律?」 律「もちろん、追っかけるに決まってんだろ!」 澪「ああ、行って来い行って来い。やれやれ、とんだ茶番じゃないか」 唯「まあまあ澪ちゃん。私はけっこう楽しかったよ?」 澪「唯がそういうんならそれでいいか・・・」 唯「ふふっ、でもどうせ二人から連絡があるまでまだ時間あるでしょ」 澪「そうだな・・・せっかくだから寸止めされたセッションでもするか」 唯「イェーイ!私の歌を聞けー!」 律たちが来る少し前。 prrrrrrrr 澪『ん、律からメールだ・・・なになに?』 『これから第三段階に入ろうと思う。唯と準備して待っていてくれ』 澪『まだ早いだろ!って言って聞くような奴じゃないか・・・仕方ない』 澪『ゆいー、お茶の用意だー』 唯『はーい!』 ハァ、ハァ・・・ どこまで走ってったんだ、あの子は? ん?あの後ろ姿は・・・ 律「やっと見つけた!」 憂「ひゃっ!」 唯に似ている、だけど見間違えるはずもない背中 律「髪、解けてるよ」 憂「えっ・・・?夢中で走ってきたから気づきませんでした・・・って!」 律「へへー、捕まえたー」 憂「は、離して下さい!」 胸がズキッと痛んだ。そういや憂ちゃんに本気で拒絶されたのは初めてか・・・ 律「なあ、もう終わりにしよう。唯がちゃんと進歩してたのは見ただろ?唯なら受け止めてくれる。あとは唯に― 憂「嫌です!」 律「なんで・・・!」 憂「それじゃ律さんがお姉ちゃんの代わりみたいじゃないですか!」 律「そう、代わりだったんだよ!」 律「今回の件は、ただ二人を姉離れ、妹離れさせるためだけのものじゃなかったのさ」 憂「どういう・・・ことですか?」 律「あたしが、姉離れした憂ちゃんの寂しさに付け込んで仲良くなろう、って・・・そんな計画だったんだ」 憂「嘘ですっ!」 律「嘘じゃない!」 律「この後、家に戻った唯の一人立ちした姿を見て、憂ちゃんは寂しさを覚えて」 律「そこをあたしが・・・って計画だったんだ」 憂「そ・・・んな・・・」 ああ、もう終わったな・・・ やっぱりこんなの最初からやめときゃよかったかなぁ・・・ でも、あたしはけじめをつけなきゃいけないんだ 律「ごめんね憂ちゃん・・・憂ちゃんの気持ちも考えないで」 律「でも、短い間だったけど、本当に妹ができてうれしかったなぁ」 律(本当はお姉ちゃんじゃなくて、ずっと一人の女の子として接したかったけど) 憂「本当ですよ・・私の気持ちも考えないで・・・」 律「ああ・・・どんなに謝っても足りないけど・・・ごめん」 憂「私がどんな思いで妹として接してきたか・・・」 律「本当にごめん・・・」 憂「勝手に私の中に入ってきて!勝手に作り変えていって!挙げ句勝手に出ていくつもりですか!」 憂「そんなの許しませんよ・・・」 律「ごめ・・・ん?」 憂「責任を取って下さい」 律「え?」 憂「お姉ちゃんとしての責任じゃありません」 憂「律さんとして責任を取って下さい」 これは・・・どういうことだ?憂ちゃんは何を言っている? 律「えーっと・・・それはどういう・・・?」 憂「わかりませんか?」 律「皆目」 しばし憂ちゃんはうーんと考えていたが、やがて。 憂「えいっ」チュッ 律「な!?」 何だ?今、キスを、された、のか? 律「な、何考えてるんだ!私は憂ちゃんに酷いことを・・・」 憂「確かにびっくりしましたけど・・・それ以上に嬉しかったですから」 律「嬉・・・しい?」 憂「はい!考えてみたんですけど、律さんが本当の計画をバラすメリットって無いですよね」 律「む・・・」 憂「私と仲良くしたいなら、黙って慰めればいい。違います?」 律「う・・・」 憂「そうしなかったのはどうしてかなー、って考えたんですけど」 憂「律さんは誠実でありたかった、んじゃないですか?」 参ったな・・・これは敵わないや 律「降参だよ、その通りだ。あたしは憂ちゃんに嘘をついていたくなかったんだ」 律「だから姉でいることが辛かった、もちろん嬉しくもあったけど」 律「やっぱり一人の女の子として付き合いたかったからさ」 憂「律さん・・・」 憂「私も、ですよ」 憂「私にとってお姉ちゃんはやっぱりお姉ちゃんで、律さんは律さんだったんです」 憂「お姉ちゃんにはあんなふうに甘えられる気は・・・しないんですよね」 憂「結局、律さんはお姉ちゃんの代わりなんかじゃなかったんですよ」 律「憂ちゃん・・・ありがとう」 憂「お礼を言うのはこっちの方です。この数日、とっても楽しかったです」 ああ・・・確かにもう終わりだったみたいだ 律「それじゃ・・・帰ろうか」 憂「はい・・・」 憂「さようなら、お姉ちゃん」 憂「大好きです、律さん」 律「あたしも大好きだ、憂」 おしまい 戻る
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6,スタートライン 果たして中庭で待っていた古泉は開口一番に、 「緊急事態です」 と言った。微笑み、手には湯気の上がる紙コップの安コーヒーを二つ持って。一つを俺が受け取ると、少年はテーブルを挟んで対面に座った。 その様子と台詞が余りに俺の中で食い違う。「藪から棒に何を言ってやがるんだ、お前は」なんて言葉を俺は寸での所で飲み下して、ソイツの二の句を待つ。古泉はまるで焦っている様子も無く、のんびりとコーヒーに息を吹きかけてから口に運んだ。 「ゆったりコーヒー啜ってられる間は緊急なんて言葉を使うな。その内に俺が意味を履き違えるようになったらお前の責任だぞ」 「おやおや、これは責任重大だ。再来年のセンター試験で緊急の意味を問う問題が出ない事を祈りましょう。……まあ、」 少年は右手でカップを握りこんだままに遠くを見つめた。人差し指を伸ばす。 「このままでは今年度のセンター試験はおろか来年すら一生訪れませんけど……ね」 「はあっ!?」 古泉の流し目と人差し指の先を俺は咄嗟に振り返る。ああ、そこにはやはりと言うべきか…………いや、「やっぱりお前か」以外に出てこない。えーっとだな、まあ、その眼と指は当然と文芸部室に向けられている訳だ。 どこに行った、意外性。おい、マジでどこ行った。戻って来い。 そこに居るのは……そうだよ、ハルヒだよ。他の誰だともお前らだって思ってないだろ。俺だってそうさ。前科が有るからこそ疑惑の眼を向けちまう。それが偏見だとも分かっちゃいる。 それでも、二度有る事は三度有る。夏の時は何回だった? 一万五千回くらいだったと思うんだが。そりゃもう一回有っても一つもオカしくない。だが! そんなんで納得出来るか? 出来ないよな? な? 「いえ、結論から言いますと十二月二十五日以降の時間が」 古泉は俺に向けて笑った。 「長門さん曰くどうやら途絶しているそうでして」 「……またか」 古泉のような爽やかな笑みなどまさかまさか浮かべられる筈も無い俺は空を仰いだ。未来を相談しようと言ったヤツが、未来を断絶してどうすんだよ、ハルヒ。 まったく、神様の真意とやらはいつだって雲の上である。 「頭が痛くなってきた。アイツは反省って言葉を知らんのか?」 つい今朝方「涼宮ハルヒの口から反省なんて言葉が出るなんて」と感動したはずなのだが。一歩進んで二歩下がるって有名なフレーズが今の俺ほど似合うヤツもいないだろう。――ちっとも嬉しくない。 「どうでしょうね。それと、貴方は『またか』と仰られましたが初めてのケースですよ。恐らく昨年の夏の終わり、エンドレスサマーを思い返しての発言ではないかと思われますが」 「違うのか?」 「その時との最大の違いはループしていない、という点です。いえ、ループが確認出来ないと言うべきですね」 どういうことだ? 古泉は言い直したが、その前後に何の違いが有るのか俺には正直よく分からない。 「僕も最初に長門さんに時間の断絶を言い渡された時に『あの』八月を思い出しました。タイムリミットが定まっているという共通項、そして幾重にも上書きされた記憶のインパクトがそこへと思考を自然に誘導したのでしょう」 「いや、俺はあの時と何が違うんだと聞いているんだ」 「言った通りです。ループが長門さんのお力をもってすら確認出来ていません」 つまり、どういうことだ? 今回は八月が一万五千回続いたあの時とは訳が違うのか? 勝利条件が明示されてるだけでも気の持ちようは大分違ってくるんだぜ。 「考え方としては二通りです。今、この時がループの一回目である可能性。これならば長門さんのお力でもループを確認出来ない説明が付きます。なにしろ前回が無いのですから。 もう一つは可能性は低いですが、長門さんにも確認出来ない高次の力を涼宮さんが発揮しているというもの。まあ、僕個人としてはこれは無いと思っています」 「その根拠は?」 「簡単な話です。長門さんは十二月二十五日がタイムリミットだと気付いていらっしゃる。そんな方がループの方には気付けないと思いますか? 気付かないのならば両方ともであるのが、この場合の筋です」 古泉は眼に見えて生き生きと話し出す。テーブルの上に身を乗り出して肘を突き、おい、顔近いぞ。離れろ。 「であるならば、これがループの一回目であると僕は考えますね。……さて、何か思い当たりませんか?」 古泉の言いたい事はここまでくれば俺にも理解出来るってなモンで。 「果たして本当に『ループ』なのか、だな?」 「ええ、その通りです」 おいおい、少しづつ話が厄介になってきたぞ。だっていうのに、そんなのにもどこか「いつも通り」だって感想を抱いちまう俺。 我ながらどうかしてるとしか思えないね。 ループでは無い。つまり「次」が無いってことだ。そうなっては緊急性は一気にグリーンからレッドに達する。悠長な事は言っていられないし、世界の終わりも割と現実味の有る話になってきた。 「以上より、ループではないという前提で僕らは行動するべきでしょうね。まあ、具体的に何をすれば良いのかは分かりかねますが。幸いにも時間は有ります。こちらでも地道に探りを入れてみますよ」 こちらでも。つまり俺の協力を当たり前だと思っている訳だ。一年半も付き合っていれば、それが自然になってくるか。でもって俺にだって断る理由は無い。別に世界の為になんて格好良い事を言う気は無いが。 そりゃまあ、えらく現実味の薄い話だがそれでも誰よりもこの俺が動かない訳にはいかんだろう。 「っつーかさ、古泉」 「はい?」 「なんでお前、そんな事知ってるんだ?」 あはは、と小さく笑っても俺は誤魔化されんから大人しく白状しろ。それとも俺には言い出し難い情報源なのか、超能力者? 「いえ、そんな事は。……そうですね、ちょっとした引っ掛かりです。最近の長門さんはどうにも素っ気無い気がしまして。心ここに在らずとでも言いましょうか」 ああ、猫の話か。バックグラウンドで走らせてる分身の術が相当メモリを食っているらしいからな。そりゃ古泉への応対もおざなりにならざるを得ないだろうよ。 どうやら猫と古泉との間における関心の不等号が長門の中で食い違っていないようで俺としちゃ一安心だ。 「それで少し探ってみたのです。いえ、問い詰めてみたと言いましょうか。ああ、勘違いなさらないで下さい。乱暴な事は決してしていません」 いや、そこは疑ってない。大体、古泉では長門によって返り討ちにされるに決まっている。アイツはSOS団最強だからな。地域限定超能力者ではどう足掻いても相手にはならん。 「で、長門がそう言ったのか? 未来が無い、って?」 「……ええ。但し、疑念が二つ。なぜ長門さんは僕らに言い出さなかったのか。そしてもう一つ」 十二月二十五日よりも先が無い。それに気付いた時点で真っ先にアラートを出さなきゃいけないお方が、眼を真っ赤に染めて泣きながら俺に抱き着いて来なければおかしいあの先輩が、しかし何のアクションも起こしていない。 「朝比奈さんの時空通信デバイスとも言うべきそれが、どうやら通信途絶を起こしていないようなのです」 「……は?」 なんだそれ? 未来が無くなっているんじゃなかったのか? 矛盾してるだろ。 「長門さんと朝比奈さんのどちらかが嘘を吐いているというのも考えました……が、そんな事をしてもあの二人に何のメリットも有りません。しかし、何かがおかしい。僕らの認識の何かが確定的に間違っている。そんな気がしませんか?」 古泉は笑顔を崩さない。どちらかと言えば推理を楽しんでいるような節さえ見受けられる。俺は紙コップの中の冷めたコーヒを一息に呷った。 「分からん」 推理小説で言うなら証拠が出揃ってない状態に感じる、あのモヤモヤ。多分、まだ全貌が見えてくるのは先なんだろう。長門が動いていないこと、朝比奈さんが泣き付いてこられないこと。それはつまり、時期尚早って意味なんだと思う。 「つまり、静観なさるおつもりで?」 俺は頭を掻いた。 「こっちもやる事が有るんでな。端的に言えば忙しいんだ。だから、そっちはお前に任せた。信じてるぜ、副団長」 「やる事、ですか?」 紙切れを一枚ポケットから取り出して古泉に見せる。言うまでもないだろうが件の進路調査票だ。実はこれについての相談をこの休み時間にしたかったのだが、まあ、こればっかりは仕方ない。 「この字、涼宮さんですか」 筆跡鑑定人か付き纏い(ストーカ)の二択しか出てこない観察眼を披露された。古泉は生き方をそろそろ見直す段階に来ているんじゃなかろうかと個人的には思う。 未来をよりによってのこの俺に危ぶまれるほど可哀想な超能力者は、真剣そのものの顔で暫しの間ハルヒの字を見つめていた。やがてもう五時限始めのチャイムが鳴ろうかという頃、古泉はようやく口を開いた。 「……ふふっ、なるほど」 だから、どうしてどいつもこいつも説明を省略しようとしたがるのか。推理モノの探偵だったら即クビだぞ、クビ。 「それほど悪いことは起こらないのではないかと。そう思いまして」 はあ? なんだそりゃ? 楽観論も度が過ぎると単なる怠惰になっちまうが、その理解でお前はいいのかい? 「根拠を問われると苦しいところですが。しかしながら状況証拠も量によっては証拠能力を有するものです」 状況証拠? それってのは長門や朝比奈さんがまるで危機感を抱いていない点か? いや、まあ確かに妙と言えばそうだが。 あの絶望と希望の入り混じった十二月を越えて以降、長門に対して俺は全幅の信頼を寄せてはいる。昔ならば何もかもを一人で背負い込んじまっていたあの宇宙人少女ではあるが、今はもう違う。 多少ではあっても頼りにして貰えているんじゃないか、などと――これは自惚れではないと思いたい。 だから何かが有れば俺にも荷物を山分けしてくれるはずなんだ。しかし、今回はそれがない。一人で苦も無く背負える量なのか、それとも最初からその背には荷物なんて載ってはいないのか。出来れば後者だと信じたい。 今度、長門とちゃんと話してみようか。 「ただ、この時期に何も無いとは俺には思えないんだよなあ……」 頭を掻きながら、そうボヤく。と、午後の授業開始五分前を告げる鐘が鳴り、古泉は立ち上がった。聞きたい事は山と有るが、どうやらこの場ではタイムアップらしい。 「そう構えなくとも大丈夫ですよ、きっと」 「無責任な言い方だな。お前らしくも無いぞ、古泉。ついに職務放棄(ストライキ)でも決行する気になったか?」 「ふふっ、まさか」 古泉は顎をしゃくって俺に起立を促す。膝に手を付いて立ち上がる時に「しょっ」と掛け声が出た事はどうかそっとしておいて頂けたら幸いだ。 「僕は信じているんですよ」 「信じる」ねえ。そりゃ良い言葉だ。信じるものは救われるとも言うしな。だが、その対象が俺としちゃどうにも気になる。放棄した責任は一体どこの誰の肩に乗っけたんだよ? あまり長門ばかりに頼るのもどうかと思うぜ、俺は。 「いえ、長門さんでは……と、急ぎましょうか。授業が始まります」 「だな」 未来に本気になると言っておいて、授業に遅刻してちゃ論外だ。次の授業は化学だったか。センター試験で取らない俺にはどうでもいい授業。 いつもならば教科書を目隠しに机に突っ伏す時間でも、今日からは違う。内職に、と佐々木から受け取ったプリントをこなさねばならない。 「涼宮さんが待っていますよ」 別れ際に優男が瞬き一つして(止めろ、気色悪い)言い放った一言は俺の胃の中に何かモヤモヤしたものを植え付けるのに十分なものだった。 咄嗟に反論が口から出て来なかった事が悔やまれる。ぐるぐるした腹ん中は一体どこに吐き出せば……って、あ。 「あーあ……昼飯食うの忘れた」 なるほど、そりゃ腹も落ち着かないってもんだ。 佐々木から貰ったプリント三枚をどうにかこうにか終わらせた所で授業終了まで十分余った。もう一枚やろうかとも考えたが、いや待て。一枚終わらすのに大体十五分弱掛かってるんだから、今からやっても中途半端になるか。 ならばと思考を転換。俺はポケットから折り畳んだ紙片を取り出して睨み付けた。朝から俺を悩ませ続ける紙切れを、俺は勉強をする事で思考から無理矢理に追い出してきた訳だが。 短期目標、中期目標、長期目標……か。よくよく考えれば俺が目を背けているのは自分自身の未来で、つまり自分そのものである。 そんなもんも直視出来ないとはなんともまあ情けないもとうとう極まってきた感が有る。これがまあ、他人が進路に悩んでいるってんなら思わず応援したくなる話にもなってくるんだろう。だが残念、こればっかりは客観的にとはいかないのが現実だ。 流され体質を自認するも吝かではない俺であるが――っつーか、これはSOS団に在籍している時点で否定のしようが無い――流石に自分の未来まで他人に決めて貰うのは違う気がする。いや、「気がする」じゃない。絶対的に間違ってんだ。 そこまで決定力の無い人間は、乱暴な話だがそれはもう人間なんて呼んじゃいけない気すらすんだよな、個人的に。考えなければナイル河に生える水草と大差無いとパスカル先生も言っていらっしゃる。含蓄の有るお言葉だ。 さて、前置きはここまで。なら本腰を入れて考えよう。見つめてみよう、今の自分ってヤツを。 特技は無し。成績も下から数えた方が大分早い。夢なんてご大層な代物は当然と持っておらず、まあ、持っていればもう少し授業や日々の生活にも身が入っていたと思うが。こればっかりは仕方が無いか。無い袖は振れん。 気が滅入るばかりであるが自己分析はまだ続く。家は普通のサラリーマンだから家業を継ぐという裏技は最初から無く、趣味にしたって漫画やゲームといった男子高校生のテンプレート。見事なものだと自分でも思うくらい、多数派から逸脱した記憶がない。 これが俺の現在地、スタートラインである。 やりたい事を探しもせず、自己の根源欲求と向き合いもせず、ただ漫然と生きてきたそのツケは「何者でも無い自分」という至極当たり前に落ち着く。 ――ハルヒの言う通りだった。 俺は適当に適当な大学へと進学し、これまた適当に適当な会社に就職しようと考えている、ザ・適当だ。 いや――ザ・適当「だった」。過去形にするにはいささか以上に気は早いし、そもそも千里の道における一歩を踏み出したくらいで何を大袈裟な、とは自分でも思う。 しかしだ。しかし、それに気付けた今はチャンスなんだ。千載一遇ってのを今使わないでいつ使うってくらいの。 変わろうとするのは、決して悪いことじゃないと思うから。思いたいから。 あと一ヶ月で自分はどうなっていれば良いのか。この学校を卒業する時に俺はどうなっていたいのか。どんな自分でありたいのか。 自分に問い掛ける。決まっている。恥ずかしくない自分でいたい。 それは誰に対して? 親? 妹? そりゃ勿論だろう。家族が自慢できるような「お兄ちゃん」に、なれるんなら俺だってなりたい。顔を合わせては溜息を吐かれるのにだってもう飽き飽きだ。でも、それはそこまで強い欲求じゃない。 そうじゃなくって。 家族じゃなくって。 今……この今を並んで立っている友人と、未来も卑屈になる事無く付き合っていけたらと俺は願うんだよ。変かも知れない。人によってはそんなものは夢でもなんでもないと言うだろう。俺もしょうもないとそう思う。けど、仕方ないじゃないか。 ああ、つまり。 俺の望みってのは。 SOS団と、そしてこの一年半に集約されていたんだな。 7,クリスマス戦線異常アリ 「起立、礼――」 日直が号令を掛けて、本日の授業も終わる。日が暮れるのも早くなって、後一時間足らずで夕暮れが始まるだろう。時間は巻き戻らないなんて常識を俺が儚んでアンニュイになっていると後ろからハルヒに首根っこ掴まれた。 「ぐえっ」 「ちょっと用意が有るから、アンタは少し時間潰してから部室に来なさい。十分くらいでいいわ」 耳元に掛かる少女の吐息は艶かしい。座椅子の後ろ足だけという不安定がもたらす吊り橋効果は鼻で笑い飛ばすとしても。顔のすぐそばにハルヒの顔が有る、その事実。さらさらとした髪が頬に当たる、そんな僅かな感覚が俺に教えること。 涼宮ハルヒは異性である。それもトビッキリの。 それでもコイツは、なんて言葉では誤魔化せないのは距離のせいだろう、きっと。顔が近いのは超能力者の持ち芸じゃなかったのか。そんな抗議を俺がするよりも早くハルヒは離れた。 「そんじゃ、おーばー」 鞄とコートを両手に抱えて少女は教室を飛び出していく。その様に空母から離陸する戦闘機の勇姿を幻視せずにはいられない。きっと廊下はカタパルト加速。周りに衝撃を撒き散らすとこまでそっくりだぜ。 「なんだか、涼宮さん機嫌良さそうだね。良い事でも有ったのかな?」 俺へと近付いてそう言った国木田に向けて首を横に振る。いや、思い当たる節が無いのは本当だ。昨日の今日で機嫌を直しているのがそもそも俺にはクエスチョンなのだから、だったらアイツが上機嫌の理由なんて俺に思いつくものかよ。 「仏頂面がデフォルトの彼女が――廊下を走ってく時の顔見たかい、キョン? すっごい満面の笑みなんだよ。楽しいこと見つけた、って顔中に書いてあった。だから、僕はてっきり君が関わっているとばかり思っていたのだけど」 「お前、俺をアイツの付属機器かパワーアップキットだと思ってんだろ」 「どうかな? その辺りは自分の胸にでも聞いてみたほうが良いんじゃない?」 まるで取り調べでも受けている気分だった。まったく、ドイツもコイツも俺とハルヒの間柄を誤解するのに余念が無いらしい。そんな下らない事に心血を注ぐよりももっと優先するべき事項が有るだろうに。具体的には自分自身の恋愛とか。 「玩具扱いの域をいまだもって出れちゃいないと俺は思っているが」 「いや、遊び友達でしょ」 一体、その前後で何が違うのか。なぜだかオランウータンと人間の遺伝子の差異が一パーセント程しか無いって話を思い出した。だからどうしたってんでもないけどな。論ずるまでもなく猿と人の間には深い溝が有る訳で。 「遊び友達は選べるけど、遊び相手は選べないんだよ。言ってる意味、分かる?」 国木田が言っているのは俺なりに要約するとつまり扱いの差であろう。オブジェクトとして見られているか、ヒトとして見られているか。まったく、何を物騒な事を言っていやがるのか、この友人は。ああ、しかしそうは言っても玩具と友達の違いを説明するにはコイツの発言内容は確かにしっくりとくる。 そうだな。俺もからかわれる側にはなりたくはない。 「ま、ハルヒが俺をどう思っているのかなんざ分からんよ。興味も無い」 「割に良好な関係を築けていると思うけどね。少なくとも傍から見るとさ」 ああ、国木田。そりゃあアレだ。 「ハルヒと他のクラスメイトとの距離が余りに絶望的だから、相対的に俺との関係がマシに見えるだけだろ」 言っても入学し立ての頃とは違いハルヒも結構丸くはなってきている。クラスの女子とも普通に話すようになっているし、俺を通してハルヒに伝言をするなんてのも最近はとんとご無沙汰だ。 友達と呼べそうな関係にはまだ誰も至っていないが、それにしたって時間の問題だろうと俺は勝手に見ている。特に阪中。彼女はどうやらハルヒの事が気になっているらしく何かとよく話しかけていた。ハルヒもそう邪険にしておらず、このままならそう遠くない未来、二人は打ち解けることが出来るだろう。 晴れてハルヒにも普通の友人が出来る訳だ。そうなれば必然、俺の負担も軽減される事だろう。喜ばしい話だ。赤飯の準備をしなければならないくらいにな。 「そうかなあ……ううん、キョンの言う通りかもね」 「ああ、そうだ。なんせ人間ってのは本質的に相対評価しか出来ない悲しーい生き物だからな。落差が大きければマシに見えても無理からぬ話だろ。クラスも部活も同じだから周りがそれを勘違いしたくなる気持ちはまあ、百歩譲って俺にも分からなくはない」 しかもその部活ってのが得体の知れない少人数のクラブだった日には尚更懐疑も深くなろうというものだ。 「だが、それだけだ。誰かが俺とハルヒがデートしてる場面でも目撃したか? 決定的瞬間でもフライデーされたか? いやいや、そんなもん有る筈が無い。以上、証拠不十分で不起訴なんだよ、この案件は」 否定材料は揃っている。人気の無い場所でキスしたとかは……まあ、悪夢って事でアレはノーカウント。誰にだって気の迷いは有るものだからな。 SOS団についてよく知らない人から見れば、そりゃまあデートに見えなくも無いような事も度々している訳だが、しっかし不思議探索のどこに桃色幻想が幅を利かせる余地が有ったと言うのか。 何も無い。そりゃもう呆れ返るほどにな。 「ねえ、キョン。さっきから気になっていたんだけどさ」 国木田が口を開く。ほほう、まだこの俺に恋愛模様を期待するか。無駄だから止めとけと、ああ、一年の頃から何回言っても聞かない奴だ。アサガオの鉢植えを眺めて観察日記に毎度毎度「変化なし」と書き込む時のあの味気無さと良く似たものがこうなると俺の胸に去来する訳で。 「なんでそんなに向きになって否定するのかな?」 「あ?」 向きになってなんていない。そう言おうとしたのだが、口から出てきたのはスモールエーとスモールイーが背中合わせに寄りかかった発音記号でしかなかった。否定の言葉が喉元から先へ出て行かない。それくらいに俺は動転してしまっていたらしい。 「キョン、一つ良い事を教えてあげるよ」 中学から続く友人はお前のことはお見通しだと言わんがばかりにくすりと笑って。 「二重否定は肯定なんだ」 なんて言われてしまった日には俺としちゃ押し黙る他にもう打つ手は残されていなかった。まったく、腹立たしい。 「まあ、全部そうだったら面白いなあっていう僕個人の希望なんだけどね。でも実際キョンだって涼宮さんのことは嫌っていたりしないんだろう? っていうか、多少好意的に見てるよね」 ……ノーコメントだ。どうしても知りたけりゃ司法解剖して心臓を取り出し、矯めつ眇めつしてみてくれ。谷口の顔みたいに油性マーカで落書きしてあるかもしれんぞ。 国木田の追及はそこで終わり、俺はこれ以上傷口を広げてなるものかと教室から退散した。夕暮れにはまだ早い廊下は冬のこの時期であれば壁に凭れ掛かって談笑するような生徒の数も少ない。当たり前だな。誰だって寒いのはゴメンだ。 教室の有るだけマシってなストーブ周辺は人気スポット過ぎて場所取りに苦労するし、部活動をやっている奴なら部室に秘密裏に持ち込んだ暖房器具を利用する。そして俺はもっぱら後者だった。とは言え部室には遅れて来いと言われているんで、どっかに良い時間潰しは無いかと思っていたところ偶然に長門が通り掛かった。 「よう、長門。今帰りか?」 「……そう」 立ち止まり、無表情に俺を見上げる少女。いつもと変わらぬ三点リーダはなんとなく俺を安心させてくれる――って、いやいや。何をころっと忘れているんだ。和んでるんだ。 世界の危機。未来の途絶。ワールドエンド・クリスマス。 長門に聞きたい事は山のように有るじゃないか。ここで会ったがなんとやら。幸いにも人通りは他に無しとなれば、後は寒さに耐えるだけだ。 「あーっと、その聞きたい事が有るんだが」 さて、どう話し始めたものか。いつもならば聞いてもいないのにスラスラと日本語ギリギリのスペース・ミステリを披露するってのが多かっただけに、もしくは解説役の超能力者が同行していた為に、こういうのに悩むってのは珍しい体験だった。 「……何?」 クリスマスに世界が終わるって聞いたんだが、なんてストレートな切り出しでいいのだろうか。それとも「最近どうだ」みたいな外堀から埋めていく感じにするべきか。誰に聞かれているかも分からない場所柄を考えると後者だな。 いや、流石に聞き耳防止策くらいは長門の事だから講じてくれているだろうが。 「最近、どうだ? 何か変わった事はないか?」 時節柄だろう。なんとなく長門に引け目と言うか負い目と言うか、注意して見ててやらないとな、って思いが無かったとは言わない。コイツは人知れず悩むのが常な上に、表情を隠すのが古泉並に得意だ。 去年はSOSを見逃した。だから今年こそは二の轍は踏むまいと決めている。 「貴方は古泉一樹から現状を聞いたはず。それが今の私に教えることの出来る全て」 宇宙人少女は抑揚無く言った。それは確かにいつも通りではあったかも知れない。でも、引っ掛かった。 今の私に教えることの出来る全て――ってのはつまり教えられないことが有るという意味じゃないのか。それに隠し事を教えたくないのならば「貴方は古泉一樹から現状を聞いたはず。それが全て」で済んだだろう。ならばなぜわざわざ長門は言葉を足した? それは「私は隠し事をしていますよ」とそれとなく俺に伝えるためだ。するとまた別の疑問が浮かぶ。なぜこんな回りくどい真似をするのか、って点だ。 長門に制限を掛けられる相手ってのはそう多くない。というか俺は一人しか知らない(果たしてそれを一人とカウントしていいのか分からないが)。 情報統合思念体――長門の親玉だ。 なるほど、つまりこの件には宇宙人の思惑も関わっているとそういう事か。はあ……どうやら古泉のヤツもここ最近めっきり平和ボケしてきたらしい。ったく、なーにが「それほど悪いことは起こらないのではないか」だ。しっかり長門に緘口令敷かれてるっつーの。 「俺に話せない事が有る、って感じか?」 長門は何も喋らなかった。どうやらこれ以上のヒントはコイツの口からは出せないらしい。そんな風に思ってソイツの顔をよくよく見てみれば、いつもと変わらぬ無表情の中にも歯痒さがどことなく混じっている気がする。もしくは焦り。 勿論、こんなのは俺の気のせいかも知れない。人は見たいように見るらしいからな。宇宙人少女の表情学における第一人者を自称するもやぶさかではない俺では有るが、さりとてそれが長門の顔を見て十を知ることが出来るかと言えば、当たり前だが無理な話だ。 谷口みたいに顔に油性マーカで落書きしてあるのとは訳が違うのだ。繊細さもな。 「そっか、分かった」 さてさて、返答も応答も無いせいで、少女の前で独り言をぶつぶつ呟いている怪しい人みたいに俺はなってしまっている――客観的に見れば。 会話とはキャッチボールで成り立つものなのだとしみじみ思う。剛速球でもいい、逆に飛距離が足らなくったっていいから拾ったボールを逐一俺に向けて投げ返してはくれないものかね、コイツも。正直言って間が持たん。 捕り易く、また投げ返し易い球を投げるべきか。 「それじゃ切り口を変える。長門、俺は何をしたらいい? 何をするべきなんだ、教えてくれ」 目的語はあえて省いた。それは言わなくても分かるはずだし、また間違えようもないからだ。 SOS団の今後の為に。それとも俺自信の未来の為に。もしくはクリスマスの破滅を回避する為に。 ほらな、穴埋め候補のどれを目的語に持ってこようと結局、俺が聞きたい肝心要は一緒だろ。でもって、もし目的語を省かなかった場合――長門の口から出る回答には情報規制がかかってしまう可能性が生まれる。網の目をすり抜ける言葉をもって、危機回避の手段をご教授願おうって腹だ。 平たく言や、婉曲表現で回りくどく、核心には触れないように攻めていくしか手は無いってこったな。……今なら爆弾処理班の気持ちの数分の一くらいは分かりそうだ。果たして長門は俺の期待通りにその小さな口を開いた。 「貴方にして貰いたいことが一つ有る」 赤のコードと青のコード、どっちを切るか選んでくれとかそういった内容でないといいのだが。ああ、そんなのは去年の十二月でお腹いっぱいだから、今年は謹んで辞退させて頂きたいモンだ。 「十二月二十四日の午後六時に会って欲しい」 それはもしかしてデートのお誘いかなどと考える間も、赤面する暇も俺には与えられず長門は二の句を次いだ。 「貴方と接触させたい人物が居る」 「接触させたい人物? お前じゃなくてか?」 長門はほんの少しだけ頷いた。ああ、そりゃもうほんの少し。極めて僅か。ここに居るのが俺じゃなければ見逃していたに三千点。 「……そう」 「誰だ?」 「……言えない」 それも口止めされているのかと聞きたかったが、恐らく口止めの事実から口止めされているであろう長門に聞いたところであの気まずい沈黙が廊下を更に寒々しくするだけかと考え至って止めた。これ以上気温が下がったらいつぞやのハルヒを笑えない事態に陥りかねないしな。 しかし、そうは言っても俺だって健康的な高校生男子の類に漏れないのであるからしてこれは大いに気になる。日時の指定がクリスマスイブの午後六時ってのも俺の好奇心に拍車を掛けた。 「えーっと、それは……それってのは」 と、ちょっと待て。これは果たして口に出していいものなのだろうか? 誰かからのデートの申し込みなのか、なんて。気にはなる。気にはなるがしかし、これで長門から「……デートって、何?」とか聞かれたら俺は窓ガラスに全力体当たりして中庭に飛び降りるだろう。 多分、頭から。意識の混濁は願ったり叶ったり。 果たしてそんな危険を侵してまで俺は長門に聞くべきか。いや、普通に考えたら聞いておくべきなんだ、それは。だって、クリスマスだ。しかも本番の、中でも一番「いい」時間帯だ。テレビで言えばゴールデンタイム、日本史で言えば関が原。極々極々個人的な天下分け目で誠に恐縮ではあるが。 「……何?」 少女の瞳は真っ直ぐに俺を見つめてくる。何の躊躇いもなく。昔ながらの奥ゆかしい日本人にはちょっと出来ないその無遠慮な――素っ直な眼差し。 「あー、その……」 当然だが先に眼を逸らしたのも、 「……すまん、なんでもない。男か女かだけ気になってな。その、俺が会った方がいいって人がさ」 ついでに話を逸らしたのも俺だ。だが、大筋は逸らしてないから安心して欲しい。それにここで男だって言われればまあ、十中八九古泉で間違いないだろう。 本音を言えば折角のクリスマスイブにまであのニヤケ面に会いたくはないのだが。 だが、そんな俺の不安と、やっぱりそんなオチだよなって具合の意味不明な安心をもたらすであろう言葉は長門の口からは出て来なかった。 「性別は女性」 顔色一つ変えず言う長門とは対照的に俺は全身にカーっと血が回っていくのを感じていた。いや、仕方ないだろ。クリスマスイブで午後六時に異性と出会えって言われて、これに恋愛的ななにがしかを期待せずにいられるようならソイツはきっと頭がオカしいから病院に早急に行くべきだ。 「お、女?」 「そう」 「ちなみに、そこには長門も一緒に居るんだよな?」 そうだ、二人きりなら何事かも妄想しようが、事これが三人になってしまえばなぜだかは知らんがそんな事は起こりえないのがこの世界のルールであり、不文律である。今だけはそこに感謝しよう。 「……なぜ?」 おや、情報の伝達に齟齬が発生しているぞ、長門。 「いや、だってお前が連れてくるんだろ、誰だか知らないけど、ソイツ。その、俺が会うべき人っての」 「違う」 「え? それはどういう」 「彼女と貴方が出会うその時間、私は別の事を行っている。言い換えるならば――忙しい」 って事は何か? 待ち合わせでもしなきゃならんのか、俺は。誰かも分からん相手と? 俺の認識ではそこに「デート」の三文字がどうしてもピタリと嵌まり込んでしまう。せめて事前に相手くらいは知っておきたいんだが。 情報統合思念体とやらは本当にロクな事をしやがらないな。 「なあ、『それ』って本当に必要なのか?」 「必要」 こう言い切られちまっては、SOS団一の事情通を信じない訳にはいかない俺としては、ああ、初クリスマスデートの相手くらいは自分で選びたかった。それとも選ぶ権利が有るとでも思ってんのか、って皮肉屋の運命の仕業だろうか。 それだけはないと信じたい。
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桜ヶ丘高校 律「さ、今日も練習始めようか!」 梓「あ、あんな事があったのにですか?」 澪「て言うか、普通学校だって早退くらいにはなるだろ……」 律「気にしない、気にしない! にしても……あの人もロッカー部の人かな?」 紬「そうかもしれないわね。今までと同じ学生服を着ていたし……」 さわちゃん「へえ、そんな事があったんだ。にわかには信じられないけど……」 唯「……」 唯「そもそも、どうしてロッカーから色んな人が出てくるんだろうねえ?」 梓「このロッカーに、何か秘密があるんですかね?」 ガラリ。 神山「それには僕がお答えしましょう」 全員『!』 さわちゃん「き、君は確か……今朝警察に連れていかれた……」 神山「神山です。けいおん部のみなさん、初めまして」 全員「……」 神山「ん、どうしましたか?」 律「いや、なんか」 澪「礼儀正しいなあ、と」 神山「初対面なんですから、当然です。挨拶をしなければ話すきっかけも生まれませんからね」 唯(……朝はすごいきっかけだったけどなあ) さわちゃん「そ、それで。どうして君が学校のな、なかに……?」ブルブル 律「さわちゃん、震えすぎ」 唯「……マジックだったんだ~」 梓「なるほど、それなら納得ですね」 澪「いや、それだけで納得するのもどうかと思う……」 紬「あ、あの。そのマジック見せてもらえませんか!」 唯「……え?」 律「いいねえ~、面白そうじゃん!」 澪「お、おい律」 神山「僕は構いませんよ。その方が勉強した甲斐もあったというものですから」 律「いやった~♪」 さわちゃん「……でも、いきなり人が消えるマジックは怖いわねえ」 神山「あ、でしたら、まずは他の物から試しましょう」 唯「物から?」 神山「そこで髪を垂らしているあなた」 律「……」 唯「りっちゃん、髪止めないと私そっくり!」 律「どこかに落としちまってさ……それで、髪がどうしたんだよ!」 神山「まま、落ち着いて下さい。いいですか、この箱の中をご覧下さい」 紬「なにも、なにも入っていないわよ!」わくわく 梓「ムギ先輩、はしゃぎすぎです」 神山「はい、ここに布を被せて……ハイッ」 パッ。 唯「こ、これは!」 神山「はい、出てきました」 律「……これは確かに私のカチューシャだけどさあ」 カチューシャ(ボロボロ) 律「何で、あちこちに噛んだ痕があるんだよ!」 神山「……あ、すいません。ゴリラが噛んだのを忘れていました」 紬「ふふっ、お茶目なゴリラさんなのね」 律「……いや、でも、さすがにこれはさぁ」ボロボロ 唯「ねえねえ、新しい物は出せないの?」 神山「やってみましょう。では、そのカチューシャを箱の中に」 澪「物々交換みたいなものなのかな?」 さわちゃん「ち、ちょっと興奮するわね」 神山「では、いきます。ワン、ツー、スリー」 パッ 律「お……おお?」 神山「ふふっ、どうですか?」 さわちゃん「す、すごい! 確かに、これはりっちゃんのカチューシャとは違う!」 澪「……でも、何これ?」 律「なんか、頭の部分にアンテナが生えてるような」 神山「……え?」 神山「……あ」 神山(これは、高橋先輩の……『アレ』じゃないか) 梓「これ、本当にカチューシャなんですか?」 神山「……とりあえず、頭に付ける物ではあります」 律「なんだその曖昧なの~」 その頃。 林田「なあ最近よ、高橋先輩のヤツ変わったと思わねえか?」 子分「ああ、何て言うか……頭からオーラが出てるよな」 高橋「……」ボロボロ 林田「俺たちも早くあんな貫禄出せるようになりてえよな!」 メカ沢「ああ、全くだぜ」 前田「……」 ベンチ 前田「ゴリラ噛んでたじゃん……」 高橋先輩の出番は、ここだけ。 律「ん~……とりあえず、装着!」スチャッ 澪「おおっ、行った」 唯「ど、どう?」 律「……あ、なんだろう、これ。ちょっとつけ心地いいかもしれない」 梓「本当ですか~?」 紬「ふふっ、りっちゃん可愛い~」 律「えへへ~、似合う似合う☆」 神山「……ま、いいか」 神山「と、言うのが僕のマジックになります」 澪「いや、小さく、まいいかって……」 神山「さ、他には何かありませんか!」 澪(うわあ、一番まともだと思っていたのに……) 唯「はい、はい! 私、ゴリラさんのいる世界に行きたい!」 神山「えっ、本気ですか?」 唯「うん、私たちもそのロッカーを使って違う場所に行きたい!」 さわちゃん「だ、大丈夫? 変な場所に飛ばされちゃったりしたら……」 神山「大丈夫です。僕のはマジックに毛が生えた程度の物ですから、危険はありませんよ」 澪(……いや、実際ゴリラが飛んできてるわけで) 唯「じゃあ、やるやる!」 神山「では、ここに入って下さい」 スッ 唯「えへへ~」 神山「……はいっ!」 ファサッ。 全員『あ……』 唯「あ、あれ? 何にも変わってないよ~!」 澪「し、失敗?」 神山「……」 梓「本物の唯先輩ですか?」 唯「うん、なんにも変わらないよ~、あずにゃん」 神山「もしかして、こっちから向こうには行けないのかもしれません」 澪「……ちょっとガッカリ」 律「な~」 さわちゃん「んん~、残念。この布で隠すだけで違う世界に行けるなんて、ちょっと楽しみだったんだけど……」スッ 律「まあまあ、実際は世の中そんなうまくは……」 ファサッ。 ……。 律「……さわちゃん?」 澪「さ、さわちゃんが消えた!」 澪「ど、どうするんだよ」 神山「慌てないで下さい。マジックの布ですから……」 唯「そ、そっか。じゃあロッカーからさわちゃんが!」 ガタガタ 梓「あ、久しぶりにロッカーに反応が!」 神山「ほら、所詮はマジックですから。さあ、さわちゃん先生の登場で……」 ガチャッ。 ゴリラ「ンゴ」 全員『……』 ベンチ 律「さわちゃんどこ行ったんだよ……」 神山「以前もこんな事がありました」 澪「やっぱりダメじゃん……」 部長じゃないのに、ね。 神山「では、僕はそろそろ帰る時間ですので、これで」ガチャリ 律「……無責任すぎるだろ」 ゴリラ「ンゴ」 澪「またゴリラか……」 唯「あの時のゴリラさん」 ゴリラ「……」コクッ 唯「よかった、また会えたね!」 梓「で、でも先生は一体どこへ……」 律「まあ、さわちゃんなら大丈夫さ~。別の場所でも元気に先生やってるよ」 澪「職業上は同じだけど、男子高校だからなあ」 紬「先生なら大丈夫よ、ふふっ」 ゴリラ「ンゴ」 律「……なんだかゴリラが嫌に馴染むなあ」 クロマティ高校 神山「ただいま~」ガチャリ 北斗「む、遅かったな、神山よ」 神山「いやあ、ゴリラと入れ違いになったら警察に捕まっちゃって」 林田「……相変わらず無茶をする奴だ」 神山「……ところで、このロッカーから誰か出てこなかったかい?」 子分「いや、今日出てきたのは神山だけだぜ。ゴリラもいきなり消えちまったしよ」 神山「……」 林田「何か、気になる事でもあったのか?」 神山「……」 神山「いえ、特には何も」 林田「そうかあ~」 部長「なあ、神山よ。次は俺をマジックで消してくれないか」 副部長「え、部長も行くんですか!」 部長「ああ、俺もちょっとけいおんにハマって……行きたいと思うんだ、神山よ」 神山「わかりました。じゃあ次は部長に行ってもらいましょうか。ではここに……」スッ 部長「うむ……」 神山「はいっ」ファサッ 副部長「おおっ、消えた」 林田「で、でもよ……以前はゴリラが出てきたけど……今回は」 ガタガタ ガチャリ 神山「む……」 さわちゃん「もう、一体ここはどこなのよ~、って、あれ?」 全員「……」 その頃部長。 王様「おおっ、マワシの戦士ブチョーよ……再びこの地に現れるとは……」 ブチョー「……」 四角い土俵 実況『おおーっと、現役チャンピオン、ブチョー強い! その姿はまるで何かを求め続ける野獣のようだ!』 ブチョー「どうして俺だけここなんだ!」 ディフェンディングチャンピオン、ブチョー! 神山「ええ、では今の状況をまとめてみましょう。まず、マジックでさわちゃんが消え、ここにいます」 北斗「ふむ」 子分「お、ほ、本物だ!」 フレディ「……」コクッ さわちゃん(この雰囲気、これが本当に高校生なの? なんかおっさんみたいな人もいるし) 神山「そして、今はゴリラと部長が向こうにいっているはずです」 林田「なるほど……交換留学みたいなもんな」 前田「林田、自信満々で言ってるが頭の良い発言ではないぞ」 神山「いえ、もしかしたらその考えは正しいのかもしれませんよ」 さわちゃん「ど、どういう事?」 神山「とりあえず、図で説明しましょう」 さわちゃん←→部長、ゴリラ 林田「なあ、神山よ。俺たちはけっして頭がいいわけじゃない。だから聞くが……これはどういう意味だ?」 神山「……つまり、今彼女がここにいるのは、部長とゴリラが向こうにいるから、となります」 北斗「ふむ、何らかの均衡がとれている状態なのだな」 神山「おそらくは。つまり、ゴリラか部長がこちらに戻ったら、さわちゃんはまた消えてしまうかもしれません」 さわちゃん「ま、また暗い場所に行くの!?」 神山「ご安心を、とりあえずはゴリラも部長も向こうにいるでしょう。心配ならさわちゃんは向こうに帰っても大丈夫だと思いますし」 さわちゃん←→部長、ゴリラ 林田「う~ん……」 神山「林田君、どうかしたかい?」 林田「いやよ、この図……足し算みたいにできねえかなって思ってよ」 前田「足し算?」 林田「ほら、さわちゃんの部分を合計にして、部長とゴリラを数字にしてみれば……」 3=1+2 子分「あ、ああっ、しっくり来るぞ」 神山「林田君にしては冴えてるね」 北斗「うむ、見直したぞ林田」 林田「へへっ、もしかしたら、こっちと向こうはこんな関係なのかもな」 さわちゃん「……」 神山「じゃあ、名前に戻してみよう。何か謎が解けるかもしれないからね」スッ 子分「謎が解けたら、林田のお手柄だな!」 林田「いやあ、照れるぜ」 さわちゃん「……あのさ、そのまま足し算にしたら変な事に……」 さわちゃん=部長+ゴリラ 全員『……』 さわちゃん「……」 ベンチ さわちゃん「だから、私言ったのに……」 イジメだよ、これ。 次の日 子分「あっ、ゴリラさんおはようございます」 さわちゃん「……」 林田「部長、おはようっす」 さわちゃん「……じゃ、ない」 神山「やあ、ゴリ部長、おはようございます」 さわちゃん「変な名前で呼ぶなー!」 神山「一体、何を怒ってるんですか?」 北斗「まったく、ゴリちゃんはワガママだな」 子分「本当っすよー、わっはっはー」 さわちゃん(な、何よ、この学校……雰囲気も悪いし、バカばかりじゃないの!) 神山「早く、ゴリラと入れ替わってゴリラの世界に帰らないんですか?」 さわちゃん(特にこの神山って子……まるで悪意が無いみたいに人をバカにするから、余計に傷つくは……) 神山「……そうだ、今日は先生に紹介したい子がいるんですよ」 さわちゃん「紹介したい子~?」 ガラガラッ 神山「やあ、伊東君」ポンッ 伊東「あ、か、神山さん、なんか用ですか?」 神山「……いや、理由もなくこの先生を君に紹介したくなってね」 伊東「へえ、び、美人な人じゃないですか」 さわちゃん「ま、美人だなんて……!」 神山「紹介します、こちらゴリラと部長のハーフのさわちゃん先生です」 さわちゃん(誰がハーフよ! て言うか、何か酷くなってる……) 伊東「ゴ、ゴリラ? またゴリラ絡みですか、勘弁してくださいよ」 さわちゃん(しかもまたなんだ……) 18
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ディレイスタンディングって何!? 具体的にどういう効果なの?強制ダウン技って何? じゃあ、起き攻めされる時に毎回やっていいの!?ディレイスタンディングが読まれた時のリスクについて ディレイスタンディングって何!? ディレイスタンディングとは、ウル4で追加された「被起き攻め側」がダウン中に出来る行動です。 具体的にどういう効果なの? 操作方法強制ダウン技( クイックスタンディング 不可の技)を受けてダウンした際に、いずれかのボタン2つ同時押しする。 クイックスタンディング とは違って、ダウンする直前か直後に「レバーをに入力」では出ない。 効果コマンドが成立した場合、ダウン状態から起き上がるまでのフレームが「11F」遅くなる ビジュアル効果「ディレイスタンディング」入力時、「TECHNICAL」という文字が表示される。このため、相手からも自分からも「ディレイスタンディングした」ことは視認、確認できる。 強制ダウン技って何? 屈大K、投げ、コマ投げなどの「ダウンを誘発するが クイックスタンディング 出来ない技」のこと。要約:スパ4AE2012まで「セットプレイ」の起点となっていた技のほとんどが強制ダウン技。関連事項 仰向けダウン、うつ伏せダウンなど。 うつぶせダウン誘発技も参照。 じゃあ、起き攻めされる時に毎回やっていいの!? 起き上がりに【ディレイスタンディングを毎回やった】場合、読まれていれば普通に起き攻めをされてしまいます。ディレイスタンディング自体は起き攻めのタイミングをずらす強い行動ですが、通常起き上がりとの使い分けをしないと、ただの「セットプレイしやすいだけの甘え行動」になります。 ディレイスタンディングが読まれた時のリスクについて リスク1:普段より起き上がる感覚が遅いため、リバサ行動がやりにくくなる(経験で防げるが) リスク2:遅らせたために、普段は成立しにくい起き攻めが間に合ってしまう特に飛び道具を重ねた起き攻め、ディレイを意識しためくりやすかし投げなどが間に合ってしまうことも。 リスク3:相手に白ダメージ部分が回復する時間を与えてしまう。エレナのウルコン2も体力を回復する技。 名前 コメント すべてのコメントを見る 、
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その日の朝は、いつになく爽やかな目覚めだった。 お日様の陽気も心地よく、今日は何か特別なことが起こるかもしれない。こなたはそんな予感を感じていた。 スキップでもしそうな上機嫌で校門に辿り着いたこなたは、前方にみゆきの後姿を見つけた。 「おっはよー、みゆきさん」 上機嫌なまま、みゆきに挨拶をするこなた。みゆきがその声に振り返り、こなたに挨拶を返す。 「ういっす、泉」 一瞬、こなたは人違いだと思った。しかし、再度見直しても、目の前にいるのはみゆきに他ならなかった。 でも、泉って呼び捨てされてるぞ。そもそも「ういっす」ってなんだ。いつからみゆきさんはこんな砕けたキャラになったんだ。 こなたは混乱する頭で、みゆきに問いかけた。 「えっと…みゆきさん…だよね?」 「そうよ。他の誰に見えるって言うのよ…大丈夫、泉?また徹ゲーとかしてたんじゃないの?」 「…えーっと…なに?かがみの物真似?」 特別なこと起こっちゃった。 とりあえずこなたは、今日一日爽やかには過ごせない予感をひしひしと感じていた。 - なんだかおかしな日 - 「ホントに大丈夫なの?熱とかない?」 冷や汗をだらだらと流しながら立ち尽くすこなたの額に手を当てながら、みゆきがそう言った。 「…いや、熱がありそうなのはむしろ貴女の方なんですが」 こなたは、かがみが来て突っ込んで欲しいと心底思っていた。 「…おはよう、こなちゃん、ゆきちゃん」 そこにつかさがやってきて二人に挨拶をした。 「お、おはよう。つかさ」 まさに天の助け。つかさがいると言う事は、かがみも来ているはずだ。 こなたは期待を込めてつかさの方を見た。つかさの声になんとなく元気がないのが気になったが。 「つかさ。おはよっ」 みゆきが軽快に挨拶する。それを見たつかさが、盛大にため息をついた。 「…そっか…ゆきちゃんがこうなってたんだ…」 「…え?」 つかさの言葉に、こなたは嫌な予感がした。 そして、つかさの後ろにいたかがみの姿を見て、嫌な予感は的中したことを悟った。 柔らかく微笑んでいるのだ。かがみが。なんというか、みゆきっぽく。 「おはようございます。こなたさん。みゆきさん」 「おはよう。かがみ」 「…お、おはよう…かがみ」 これまたみゆきっぽく挨拶するかがみに、軽快に挨拶を返すみゆきと怯えたように挨拶を返すこなた。 「…あの、こなたさん、どうかなされましたか?なんだか顔色が悪いようですけど…」 かがみがこなたの顔を覗き込んでそう言った。 「そうなのよ。ちょっと様子が変なのよね…ま、日頃の不摂生が原因だとは思うけどね」 みゆきがそう答えた。 「そうですか…つかささんも今朝から様子がおかしいですし…」 と、かがみ。 「…うーん…だらしないのに移る新手の病でも流行ってるのかしらね…」 と、みゆき。 「…や」 と、こなた。 『や?』 かがみとみゆきがこなたの方を向いて、同時に首を傾げた。 「ややこしいわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」 多数の生徒の集まる校門前で、こなたは盛大にぶちキレた。 「…なにやってんのよ、あんたは?注目集めまくって、ホント恥ずかしかったんだからね」 教室の自分の机に突っ伏しているこなたに、みゆきが呆れ顔でそう言った。 「…ほっといてくだちぃ…」 校門前での出来事が話題になっているのか、クラス内でもこなたの方を見てヒソヒソと話す生徒が何人か見受けられた。 「ホントにもう…しっかりしてよ?」 そう言いながらみゆきは自分の席へと戻って行った。そして、入れ替わりにつかさがこなたの傍へとやってきた。 「…こなちゃん」 「…つかさ、かがみは朝からあんなだった?」 突っ伏したまま、首だけをつかさの方に向けて、こなたがそう聞いた。 「う、うん…朝起きたらああだったの…まつりお姉ちゃんなんか、頭が痛いって大学休んじゃったし…」 「どーなるんだろねコレ…」 一方その頃の隣のクラス。 「…あやの、アレはホントに柊か?」 「…だと、思うんだけど」 変わり果てた友人の姿に、みさおとあやのは動揺を隠し切れないでいた。 「あの…わたしの顔に何か付いてますか?」 少し控えめにそう聞いて来たかがみに、みさおとあやのはブンブンと首を振って否定した。 「だと、いいのですが…どうしてでしょう?なんだか今朝は随分注目を集めてる気がするんです」 それはそうだろうなーと、みさおは心の中で突っ込んだ。 「泉、つかさ。お昼にしましょう」 昼休み、みゆきがそう言いながら、こなた達のところにやってきた。 「あ、みゆきさん。わたしちょっとトイレ先行ってくるよ…行こう、つかさ」 みゆきにそう断り、こなたはつかさの腕を掴んだ。 「ふえ?わたしも?」 「さっき漏れそうだって言ってたじゃん。いいから行くよ」 「い、言ってないー」 「いちいち言わなくていいから…早く行きなさい」 つかさを引き摺って教室を出て行くこなたを見ながら、みゆきはため息をついた。 「さてと、つかさ。なんだかややこしくなってるわけなんだが…」 「う、うん」 こなたとつかさは廊下を歩きながら、今朝からの異常について話し合っていた。 「最初はね、漫画とかに良くあるような人格入れ替えだと思ってたんだけどね…微妙に違うみたい」 「どういうこと?」 「かがみもみゆきさんも、自分は自分だって認識してるみたいなんだよね」 「え、えーっと…どうしてわかるの?」 「わたしの呼び方。みゆきさんは名字で、かがみは名前でちゃんと呼んでる」 「あ、そっか」 「だから、みゆきさんはみゆきさんのまま、かがみはかがみのままで、性格だけが入れ替わってるみたいなんだよ」 つかさは、うーんと唸りながら考え込んでしまった。 「や、ややこしいよ、こなちゃん」 「だよねー…」 「…でも、なんでこんなことになったんだろ?」 腕を組んで考え込みながら、つかさがそう呟いた。 「それはさっぱりわかんないよ…昨日二人が衝突したって事もなかったし」 こなたもまた、腕を組んで考え込み始めた。 結論らしい結論が出ないまま、トイレの前まで来たこなたはそのまま中に入っていこうとした。 「あ、おトイレはホントに行くんだ」 「そだよ、つかさは行かないの?」 「わ、わたしはいいよ…」 「じゃ、ちょっと待ってて」 「う、うん」 ひらひらと手を振ってこなたはトイレに入って行き、ふと何かを思いついたように立ち止まって、つかさの方を振り向いた。 「つかさ…なんだったら、してるとこ見る?」 「見ないよ!」 「おまたへー」 教室に戻ってきたこなたとつかさは、席を準備して待っていたみゆきと、隣のクラスから移動してきたかがみに手を振りながら、自分達の定位置に座った。 「思ったより早かったわね」 「そ、そう?」 かがみ口調のみゆきに未だ慣れないのか、こなたの返事がどもりがちになる。 「…あ、あの、つかささん…その、おトイレで何かありましたか?」 その横では、かがみがつかさに非常に言い難そうにそう聞いていた。 「え、特になかったと思うけど…どうして?」 「その…先ほどクラスのお友達に、『柊の妹ってのぞき趣味でもあんのか?』って聞かれまして…」 その言葉に、つかさは先ほどのことを思い出した。 「こーなーちゃーんー」 つかさが前にいるこなたを睨みつけた。こなたが思わず「うひゃっ」と声をあげ、後ずさった。 「つ、つかさ…なんだか萌えキャラがしちゃいけない顔になっているザマスわよ…よ、よかったじゃん、なんか話題になれて」 「よーくーなーいー」 「…ご、ごめんなさい」 とうとう迫力負けして謝るこなた。それを見ていたみゆきが、ため息をついてこなたに言った。 「あんたも『覗かれる趣味でもあるんじゃない?』って噂になってたわよ」 「うそぉっ!?」 「あ、あの…そろそろ食べ始めませんか?」 遠慮がちにそう提案するかがみに、三人が頷いた。 「…あの…こなたさん…あんまり見ないでください…」 自分の弁当を凝視するこなたに、かがみが照れくさそうにそう言った。 「今日のお弁当。作ったのかがみ?」 「はい、そうですが…」 弁当箱の中の質素なおかずを見たこなたは、ふむと頷いた。 「…性格がみゆきさんになっても、家事下手はかわらないのか」 「はい?」 「いや、なんでもないよかがみ」 弁当を見るのをやめて、チョココロネにかぶりつくこなた。そのこなたの横顔を見て、かがみが何かを思い出したように「あっ」 と声をあげた。 「そう言えばこなたさん。昨日お貸した本は、もう読まれましたか?」 「…う」 こなたの食べる動作が止まった。 確かに昨日かがみにオススメのラノベを借りた…というか押し付けられていたが、読んでいないどころか鞄から出してすらいない。 「ちょ、ちょっと昨日は忙しかったから…」 「そうですか…残念です。今日はその事についてお話しようと思ってたのですが…」 「も、申し訳ない…」 普段のかがみへの反応とは違い、本気で罪悪感めいたものがこなたの中に湧き上がってきていた。 「とても読みやすい文章ですから、小説に慣れていないこなたさんでもすんなり入り込めると思いますよ。わたしなどはうっかり徹夜で読みふけってしまいまして…次の日が大変だったことがありましたから」 「そ、そうなんだ…」 とりあえず、家に帰ったら読んでおこう。こなたはそう心に誓わざるを得なかった。 「ゆきちゃん、鮭の皮まで食べるんだね…」 「うん、そうだけど…なにか変?」 「う…ううん、全然」 思わず頷きかけて、つかさはブンブンと首を振って否定した。そして、少し横を向いてボソリと呟く。 「…でも、ゆきちゃんのイメージじゃないよね」 「ん?なんか言った?」 「ううん、なんでも」 再びブンブンと首を振るつかさ。 みゆきはなんとなく納得のいかない表情をしたが、すぐに元の表情に戻った。 「あ、そういえばつかさはこれ知ってるかな?水戸光圀っているじゃない…えーっと俗に言う水戸黄門ね」 「うん」 「その人の大好物が、鮭の皮だったそうよ。なんでも周囲の人たちに、1㎝くらい皮の厚さがある鮭がいればいいのにって漏らしてたらしいわ」 「へー、それは知らなかったよ」 「さすがはみゆきさんですね」 素直に感心するつかさとかがみ。しかし、こなたは何故か渋い顔をしていた。 「こなちゃん、どうしたの?」 「ん、いや…この口調で雑学披露されると『なに、この知ったかは』って気分にならない?」 「…なんか、文句あるのか?」 「い、いえ、何も…」 みゆきに睨まれ、こなたは首をすくめた。 帰り道。こなたとつかさは、ちょっと二人で寄りたい所があるからとかがみとみゆきに断り、連れ立って歩いていた。 「…どうしよっかー」 「…どうなっちゃうんだろー」 今日の異変について話し合うつもりだったが、口を突いて出る言葉はそんな程度のものばかりで、なんの進展も見出せなかった。 「もしかしたらさ。願いが叶っちゃったのかな?」 そんな中、つかさがポツリとそう呟いた。 「願い?」 「うん、昨日お姉ちゃんが言ってたじゃない『ちょっとは、みゆきみたいなお淑やかさも欲しいわね』って」 「あー、そう言えばそんなことも言ってたような…」 ちょっとした雑談の中で出た言葉だったので、こなたはすっかり忘れていた。 「それでその後ね、ゆきちゃんが『わたしは、かがみさんのような活発さが欲しいですね』って呟いてたの聞こえたんだ」 「ふむー…それでお互いが入れ替わった?」 「かも」 こなたは考え込んだ。そんなこと思った程度でこんなことが起こりうるのか?起こりうるなら、何故みゆきさんの胸やら尻やら背丈やらをちょっと欲しいと思ったときに、大きくならなかったのか? 「…こなちゃん、なんか別のこと考えてない?」 「いえ、考えてございませんよ?…ってーか、なんとなくな理由が分かっても、なんの解決にもならないね」 「…そだね」 二人して、大きなため息をつく。 「まあ、明日になってまだこのままだったら、改めてなんか考えよっか?」 「うん、そだね」 結局、こなたがそうまとめ、つかさがそれに頷いた。 「…で、つかさ。どこまで付いてくるつもりなの?」 「…へ?」 こなたはつかさに向かい、自分の目の前にある『泉』と書かれた表札を指差して見せた。 「もう、わたしんちなんだけど」 「ほぇーっ!?早く言ってよこなちゃん!」 「いや、普通に気がつこうよ…」 家に入ったこなたは、折角だしちょっと寄っていくと家に上がってきたつかさに飲み物でも出そうと、とりあえず台所に向かった。 その途中にある居間を覗いてみると、父のそうじろうがテーブルに突っ伏しているのが見えた。 「なんだ、お父さん寝てるのか…後で起こしてあげないと」 そう呟いて、こなたは台所に入った。 「おかえり、こなた」 「うん、ただいま」 台所で声をかけられ、答えながらこなたは冷蔵庫を開けた。 「つまみ食い?晩御飯まで我慢できない?」 「ううん、違うよ。つかさが来てるからなんか飲み物出そうと思って…」 と、そこでこなたは違和感を感じた。確か父親は居間で寝てたはずだ。だったら、今わたしと話してるのは誰だ?こなたは声の方向を向いた。 「そう。でも、あんまり遅くまで引き留めちゃだめよ?」 「え…あ、あれ?…」 自分と同じような体型と容姿を持った女性が、晩御飯の準備をしていた。 写真でしか見たことのない、いや見ることが出来ないはずの人。 「…お、お母さん?…え、ちょ…えぇぇぇぇぇぇぇっ!?」 「ちょ、ちょっとこなた、声が大きいわ。そう君が起きたらどうするのよ…」 「あ、お、お父さん…お父さーん!」 こなたは慌てて台所を飛び出し、居間で寝ている父の元に走った。 「あ、待ってこなた!」 その後を、こなたの母親…すでに他界しているはずのかなたが、追いかけた。 「お父さん!のんきに寝てる場合じゃモガッ…」 こなたがそうじろうを起こそうとしたところで、かなたが後ろからこなたの口を塞いだ。 「ダメだってばこなた…ふう、自然に溶け込もう作戦は失敗だったわね」 そう言ってため息をつくかなたを、こなたはジト目で見つめていた。 「な、なにかしら?」 慌ててこなたの口から手を離し、かなたは苦笑いをした。 「いや、もうなんか色々アレなんだけど…とりあえず、なんでお父さん起こしちゃダメなのさ?」 「うん、そう君がいるとなんだかややこしいことになりそうだったから、とりあえず寝ててもらったの」 こなたは父の方を見た。 「…お母様、お父様の後頭部にやたらデカイたんこぶらしきものが見えるのは、ワタクシの気のせいでありましょうか?」 「そ、それは…若い人にだけ見える幻影ってヤツなのかも…」 胡散臭そうなものを見る目で見つめるこなたから、かなたは冷や汗を垂らして目を背けた。 「こなちゃん。何かあったの?」 騒がしい物音を聞きつけたのか、こなたの部屋にいたつかさが、居間に入ってきた。 「え?あ…な、なんでもないよ…」 「ふーん…ねえ、こなちゃん」 「な、なに?」 つかさは、テーブルに突っ伏して寝ているそうじろう覗き込んでいた。 「おじさん。呼吸して無いっぽいんだけど、大丈夫?」 『うそぉっ!?』 つかさの言葉に、こなたとかなたは同時に声をあげた。 なんとかそうじろうを蘇生させ、自室のベッドに寝かせた三人は、こなたの部屋に移動していた。 「…ふう、危うくそう君を連れて逝っちゃうところだったわ」 「いや、まあなんか色々とアレなんだけど…まあ、いいや…」 爽やかに汗を拭う動作をするかなたを、こなたは諦めの境地の表情で眺めていた。 「ねえ、こなちゃん。さっきから気になってたんだけど」 「なに、つかさ?」 「この人、誰?なんだかこなちゃんに似てるんだけど…」 つかさが、かなたの方をチラッと見ながらそう言った。 「誰って、わたしのお母さん…ってーかつかさも写真見たことあるじゃん」 「あ、そっか」 「初めまして。こなたの母でかなたと言います。こなたがいつもお世話になっているみたいで…」 つかさにかなたが深々と頭を下げる。それを見たつかさが、それに負けずに頭を下げた。 「あ、こちらこそ初めまして。柊つかさです…って…あれ?」 感じる違和感。つかさは自分の記憶の糸を手繰り、ある会話に辿り着いた。 「…えっとさ、こなちゃん…こなちゃんのお母さんって確か…」 「うん、死んでる」 「…えーっと…その…ほ…ほぇぇぇぇぇぇぇっ!?なんで死んでる人がここにいるのぉっ!?」 「驚くのおそっ」 「あら、今度は気付かれないかと思ったのに」 「あーまあ、落ち着いてつかさ」 とりあえずこなたは、なんだか得体の知れない驚きの動作を繰り返すつかさを、なだめにかかった。 「とりあえず、害は無いからね?…はい、深呼吸」 「…害なんてあるわけないじゃないの」 素直に深呼吸して、落ち着きを取り戻しつつあるつかさを見ながら、かなたはそう呟いた。 「そう言えば、こなた。今日は何か変わったことが無かったかしら?」 つかさが落ち着いた頃を見計らって、かんたがこなたにそう尋ねた。 「え?変わったことって?」 こなたの頭に、今朝からのみゆきとかがみの事が浮かんだ。 「そうね、例えばお友達の感じがちょっと変わったとか」 「…うん、そう言えば性格がいつもと違ってたのがいたけど…」 なんとなく、こなたは嫌な予感がした。 「あら。じゃあ上手くいったのね」 「…なに?上手くいったって?」 「うん、こっち来る時にね、なんだかお互いの性格に憧れてるみたいだから、ちょっといじってみたんだけど…どうだった?」 なんだか軽い口調でそう言うかなたを、こなたとつかさはなんともいえない表情で眺めた。 「…害…あったよこなちゃん」 「…うん…わが母ながら何処から突っ込もうか」 自分を見つめるこなたとつかさの視線が妙に痛く、かなたは冷や汗を垂らした。 「…えーっと…ダメだった?」 「ちょっと感じが変わったどころか、丸々性格が入れ替わってて非常に厄介なので、早急に元に戻すことを所望しますよ、お母様」 「…ごめんなさい」 少々の怒気をはらんだこなたの言葉に、かなたは小さくなって謝った。 「…何処を間違えたのかしら…」 「最初から全部」 かなたの呟きにも、容赦なくこなたの突っ込みが突き刺さる。 と、こなたの部屋のドアがノックされた。 「こなた。帰ってるのか?」 そうじろうの声がする。それを聞いたかなたが慌てて立ち上がった。 「やっばい、そう君だ」 そのまま窓の方に向かい。 「じゃあ、こなた。私はこれで。そう君には内緒よ?」 窓を開けて出て行った。 「…窓からって」 「…間男ですか。アンタは」 それを、つかさとこなたが呆れ顔で見送った。 「こなたー?」 「あ、うん。どうぞ」 再びノックとそうじろうの声が聞こえ、こなたは返事をした。ドアを開けてそうじろうが部屋に入ってくる。 「すまんな。今日は俺の当番だったのに、晩飯作らせて」 「え?…あ、いや、うん」 「しっかし、なんでベッドに寝てたんだろうな…なんだか後頭部が痛いし」 「えっと…帰ってきたらお父さん居間で気絶してたんだよ。それで、たまたま一緒にいたつかさとベッドに運んどいたんだ。晩御飯の仕度もまだっぽかったから、ついでにやっといたんだよ」 こなたの説明に、そうじろうが頷いた。 「そうか…それはすまなかった。しかし、気絶時の記憶が全くないな…記憶が飛んだんだろうか?」 「うん、そう。きっとそう…頭打ったんだし、ご飯食べたらゆっくり休んだほうがいいよ」 「ああ、そうさせてもらうよ」 そう言いながら、そうじろうは部屋を出て行った。 こなたがほっとしたようにため息をつく。 「なんでフォローまでわたしがしなきゃいけないんだ…」 「う、うん…」 ブツブツと文句を言うこなたに、つかさが苦笑いを返す。 「ついでだし、つかさも晩御飯食べてく?」 「え?いや、わたしはいいよ。なんだか解決したみたいだし、そろそろ帰るよ」 「じゃ、駅まで送るよ。つかさ一人はなんだか物騒だし」 「えー、そんなことないよー」 文句を言いながらも、結局つかさはこなたに送ってもらっていた。 次の日の朝。こなたはつかさと一緒に登校していた。 「かがみは元に戻ってた?」 「うん…だけど、なんか頭が痛いって言って、今日はお休みするみたい」 「…後遺症かなんかかな…いい迷惑だ」 「ゆきちゃんもお休みしてそうだね…」 「うーむ…」 二人して大きくため息をつく。 ふと、こなたは自分たちが視線を集めているような気がした。見渡してみると、何人かの生徒が自分たちの方を見てヒソヒソと話をしている。 「…こなちゃん…なにか、おかしくない?」 「う、うん…なんだろう?」 こなたとつかさは良く耳を済ませて、みんなが何を言ってるのか聞き取ろうとした。 「…ほら、泉さんと柊さん。やっぱりそうなのよ…」 「…今日は同伴出勤ってところなのかしら…」 「…昨日、泉さんが柊さんに…おトイレしてるところ見せようとしてたって噂が…」 「…泉さんの家に二人で入っていくの見た人が…」 「…え、じゃあもしかして、そのまま一晩過ごして?…」 聞こえてくる、間違いはないんだけど勘違いされまくってそうな会話に、こなたとつかさはダラダラと脂汗が流れてきた。 「…こなちゃん、これって…」 「…わたし達にも後遺症出てたか…とことん迷惑な…」 その日一日、こなたとつかさは噂の火消しに奔走する羽目となった。 - おしまい -
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@参加方法 開催時間1時間前までに管理人に手紙を出す {例:○○○じゃんけん大会に参加します(○にはそのイベント名を)} 人数が多くなった場合AブロックとBブロックに分けます 分かれた場合はAブロックかBブロックかを手紙でお知らせします @進行順序 参加者が全員集まるか5分たったら開始されます 開始されたら手紙に書いてあった番号順で【@じゃんけん】 そして勝った人がまたじゃんけんをして 「優勝」と「準優勝」を決めます そして商品を渡し終了です A・Bブロックに分かれている場合はBブロックは30分後に開催されます
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注意 「」はゆっくりの発言です。 『』は人間の発言です。 ここに親れいむ1匹と子供れいむ1匹、子まりさ1匹がいる。 親れいむはもともと飼いゆっくりだったが、野良落ちした。 何故野良落ちしたか、なぜ親まりさがいないかは割愛する。テンプレ通りである。 「おなかすいたのじぇ! あまあましゃんがたべたいのじぇ!」 「あまあましゃん! あまあましゃん!」 空腹のあまり泣き叫ぶ子供たち。その反応にれいむは困った顔をする。 まりさがいなくなり、備蓄の食べ物も食べつくし、昨日は仕方なく狩りに出たれいむ。 しかし、生粋の飼いゆっくりだったれいむが食料を得られるはずもなく、 持って帰ってきたのは、人間が噛んだガムだけだった。 もちろんそんなんで、子供たちのお腹がいっぱいになるわけがない。 悩むれいむ。しかしここで餡子脳に1つの名案が浮かぶ。 「おちびちゃんたち、きょうはみんなでかりにいくよ! そしてみんなであまあましゃんをたべるよ!」 こうしてこの日は全員で狩りに出かけることにした。 「にんげんさん、かわいいかわいい、れいむのおちびちゃんたちをみせてあげるよ! だから、あまあまさんちょうだい! すぐでいいよ!」 れいむは人間たちのいる歩道に出てそう叫ぶ。 自分のおちびちゃんを人間に見せてゆっくりさせる→人間がお礼にあまあまさんをくれる →みんなでむーしゃむーしゃ の方程式である。 もちろん大抵の人間はスルーである。絡むだけ損なのである。 「にんげんさんはゆっくりしていないねぇ。」 れいむはスルーされる原因を人間にあると思っている。 そんななか― 『なんだなんだ?』 人間の青年が近寄ってきた。間抜けそうな人間だが贅沢はいってられない。 「れいむのおちびちゃんをみせてあげるから、かわりにあまあまちょうだいね。」 『おちびちゃんを見せて くれるのかい?』 「そうだよ。おちびちゃんをみせてあげるよ。おなじことなんかいもいわせないでね。」 『わかったよ。』 「おちびちゃん でばんだよ。」 というとれいむは自分のもみあげを使って、二匹の子供を自分の頭の上に移動させる。 「れいみゅは ゆっくりかいのしぇんたーだよ!」 「まりしゃの さたでーないとひーばーだじぇ!」 打ち合わせ通り子れいむは良くわからない歌を歌い、 子まりさは体をくねくねさせて踊りを踊る。 青年は子れいむと子れいむを手に乗せるとしげしげと見つめる。 二匹とも「れいみゅはとりしゃん!」「まりしゃはちゅばさをてにいれたのじぇ!」 と興奮していたが、すぐに青年の手のひらで歌ったり踊ったりしている。 『あはっ、なかなか芸達者でゆっくりしたおちびちゃんたちだね。』 「れいむのじまんのおちびちゃんだよ! わかったらあまあまちょうだいね! すぐでいいよ!」 『よしわかった。あまあまをあげよう。でもここだと、れいむがあまあまさんを運ぶのが大変だろう? だから、家まで運んであげるよ。』 「たしかにそれはそうだね。ふん、どれいにしては きがきくじゃないか。」 青年と3匹はれいむの家まで歩いていく。 子れいむと子まりさは青年の手のひらで、 「ひこーきさん! ひこーきさん!」「ふぉっくすつー ふぉっくすつー だじぇ!」 と喜んでいる。 やがて、れいむの家についた。 「おうちについたよ! あまあまさんちょうだい!」 『ちょっとまっててくれ。』 そういうと青年はそのままれいむに背をむけた。 「ひさしぶりに あまあまさんをたべられるよ!」 れいむは今から貰えるであろうあまあまの味を妄想し、口の中の涎が止まらなくなっていた。 マリシャノオボウシサン リボンシャントラナイデエ 『はい。あまあまさんだよ。』 やがて、れいむの前においしそうな黒い塊が置かれる。 「おいしそうなあまあまさんだね。おちびちゃんたちとたべようかな? い、いや、どれいが どくをいれているかもしれないよ。 だからおかあさんがあじみをするよ!」 というと、れいむはガツガツと目の前の黒い塊を食べ始めた。 「むーしゃむーしゃ!し、しあわせーーーー!!めちゃうめぇ!!まじぱねぇ!!!」 どう見ても味見の量じゃありません。本当にありがとうございます。 「このまるっこいのが くちのなかでぷちっとつぶれて うめぇ! そしてこのしかくくて ちょっとはごたえがあるのが またうめぇ!」 『満足してもらえたかな。それじゃお兄さんは帰るよ。』 あまあまさんに夢中になっていたれいむだが、肝心なことを思い出した。 「ちょ、ちょっとおちびちゃんをかえしてね!」 『え? おちびちゃん? くれるんじゃないの?』 「そんなこといってないよ! はやくかえしてね!」 『だって、「みせて あげるよ!」っていわなかったっけ? だから俺も「みせて くれるの?」って聞いたんだけど。』 「はぁああああああああああ!?」 『まあいいや、そんなことだと思ったし。 結論からいうとね。もう返しているんだよ。』 そういうと青年はポケットからおちびちゃんの帽子とリボンを取りだし、 れいむががつがつ食べていた黒い塊の上に置いた。 れいむの動きが止まる。青年も何もいわずじっとしている。 ゆっくりは、お飾りで個体を判断する。 だから、お飾りの取れた子供を親は自分の子供と判断できない。 同時に、ゆっくりは人間よりも思い込みが強い生物(?)だ。 だから、例えばゆっくりが口に含んだものを他者が「それは毒だ!」と指摘すれば、 体が拒絶しダメージを負ってしまう。たとえそれが本当はおいしいものでも。 自分の娘たちである証明が自分が食べているものの上に置かれる。 あれ? これはおちびちゃんたち? あまあまだと思っていたモノの上に乗っていたつぶつぶ。 これはおちびちゃんの目玉? その目玉がれいむを見つめる。 ドウシテタベチャッタノ? 「うげぇええええええええええええ!」 れいむは食べていたものを吐き出す。体が受け付けなくなったのだ。 人間で例えると、レストランに行って出された料理を食べていたら、シェフが来て、 「実はそれはあなたたちの子供なんです。」 といわれるようなものか。 大抵の人間は真に受けないだろうが。 「るるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるる」 恐らく食べたもの以上の分を吐いているだろうが、れいむはそれどころではない。 そしてれいむは自分しかいなくなった自分の家で大量の餡子を吐き出し、 誰にも見守られることなく、死んでいくのだった。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 初投稿です。駄文乱文申し訳ありません。