約 351,905 件
https://w.atwiki.jp/gamemusicbest100/pages/8584.html
Spirit of Fire 収録作品:ブレイブルー クロノファンタズマ[AC/PS3] 作曲者:石渡太輔 概要 『クロノファンタズマ』から操作キャラクターとして追加された、バレットのテーマ曲。 石渡氏お得意のエレキギターを主旋律に使ったロック系の曲だが、こちらはマイナー調のロックチューンによるバンドサウンド風。 クールながらもどこか切なげなメロディーラインが魅力で、さばさばした男勝りなセクシーキャラであるバレットのイメージにも合っている。 Aメロ→Bメロ→サビという歌謡曲のような明快な構成をしているが、このAメロ→Bメロ→サビを2セットを繰り返してからがこの曲の本番と言える。 そこから一気に間奏パートへ入り、約一分ほどもする力の入った間奏の後に再びサビへ突入。溜めに溜めた後で入る3度目のサビの盛り上がりは圧巻。 曲の後半が本番という徐々にエンジンがかかっていく様な構成は、ヒートアップ状態になれば一気に強くなるバレットの戦闘スタイルともぴったり。 ちなみにイントロでのピアノの音色が印象的であるが、実はピアノが使われるのはイントロ部分と、3度目のサビが終わった後の曲のラストパートだけという。 ボーカルアルバムである「SONG IMPRESSION」ではボーカルアレンジ「REVENGER」が収録。歌手はバレット役の声優である行成とあ氏。 行成とあ氏のハスキーボイスな歌声がこの曲と調和されていて、バレットのテーマとしての雰囲気がよく出ている。 過去ランキング順位 第7回みんなで決めるゲーム音楽ベスト100 894位 第8回みんなで決めるゲーム音楽ベスト100 702位 みんなで決める2012年の新曲ランキング 306位 サウンドトラック BLAZBLUE PHASE III CHRONOPHANTASMA オリジナルサウンドトラック BLAZBLUE SOUND COMPLETE BOX(ブレイブルー サウンドコンプリートボックス) SONG IMPRESSION 「SONG IMPRESSION」が収録。
https://w.atwiki.jp/soraguni/pages/318.html
ツンデレ雑談民集めてみました 飼い猫 腹黒い とあ ツンデレ スタフル よくわからん ほなみ ビッチツンデレ 奥猫 どちらかと言うとメスガキかもしれない 他のツンデレ雑談民がいたら書いてくださいよろしくお願いします
https://w.atwiki.jp/viprpg2010kouhaku/pages/77.html
とある話術の異界転移 名前 コメント すべてのコメントを見る 今日 - 人 昨日 - 人
https://w.atwiki.jp/indexorichara/pages/1817.html
ーーーーー学園都市には人々の知らぬ「闇」が存在する。 それはまるで、底の無い沼のように。 それはまるで、光の入らぬ闇夜のように。 一度足を踏み入れれば二度と戻れない。這い上がることの出来ない無間地獄。 この物語は、そんな学園都市の「暗部」を生きる、修復者(デバッカー)達の物語であるーーーーー ~~side H~~ XX年一月一日:置き去り用収容施設「ガーデン」にて 時刻は午後11時。摂氏0度。身を刺すような寒さの中意識が浮上してきた。 「・・・・ん!・・・・・さん!」 誰かの声が聞こえる。さて、微睡みの世界を泳ぐのはそろそろ終わりだ。・・意識が覚醒する。 「・・・さん!人臣さん!聞いてますか!」 ・・・?・・・ああ。どうやら少し眠っていたらしい。 そういえば覚醒薬を服用してから既に3日経つ。 そろそろ服用し直さなければならないだろう。 人臣「聞いてるよ。それで?何の話だっけ?」 聞いてないけど。 研究員「聞いてないじゃないですか・・・。今回確保できた「置き去り」は15人です。」 15人。他の研究者との競合を考えれば上出来だろう。 それだけの数があるならば、しばらくは研究にも遊びにも困らないハズだ。 人臣「ご苦労さま。それじゃ、ボク達は一足先に研究所に戻るよ。 「置き去り」達は、トラックが来たら勝手に運んでくれるから」 そういってボクは車に乗り込む。・・・と、隣の人間が何か言いたそうだ。 人臣「何か問題でも?」 研究員「いえ・・・。何も人臣さん自ら運転することは無いんじゃ・・・。 眠たそうにされていましたし、私に任せて下さっても構いませんが。」 ・・・この人間は何も分かっていない。他人の運転する車に乗ることなど ボクにとって何の価値もない。 人臣「それには及ばないよ。運転は数少ないボクの趣味なんだ。 キミはそれを奪うつもりかい?」 そう、車はいい。ボクの聞きたいことだけに答えてくれるし、 何よりも余計なことは言わないし。愚かな人間よりもよっぽど優秀だ。 研究員「いや、そういう訳ではないですが・・・。人臣さん見た目が子供だから、 運転してるの見てると不安d(ビシィ! って、痛いじゃないですか!?」 人臣「人を見た目で判断するのは感心しないねぇ。ボクはこれでも立派な大人なんだが」 自分で言うのは癪だが、ボクの見た目は10歳前後の幼子と見紛う程に幼い。 ・・・これでも成人はしているのだが。 まあ、こんな人間の戯言に付き合ってる暇もない。 ボクはアクセルに足を掛けると研究所へと車を飛ばした。 チラリと目を横にやると「置き去り」のリストが目に入った。 彼らのこれからを考える。彼らはこれからボクの実験の被験者となる。 被験者、といえば聞こえはいいが要するに実験用のマウスのような物だ。 どう考えたって無事では済むまい。心から壊れていく者もいるだろう。 ・・・・堪らない。これだから研究者はやめられない。 人は壊れていく様は、何にも勝る芸術だ。どんな人間であろうと散り際は美しく、 そして人は散りゆく過程こそが美しい。 研究の結果など二の次だ。この美しさに比べればレベル6すら些細なことでしか無い。 人臣「・・・これから、楽しくなるなぁ・・・。フフフ・・・。」 研究員「何か言いました?って、人臣さんって笑うと意外とカワイイd(ズビシィ!!」 人臣「無駄口を叩いてる暇があるなら、今回の被験者から具合の良さそうなのを見繕っていてくれ」 車は研究所へと近づく。ボクの運命を変える出来事が待っているとも知らず。 ーーーーーこの後、ボクは一人の少女と出逢う事となる。 そう、後にも先にも二度と出逢う事の無いであろう逸材と。 彼女との出逢いがボクを含む学園都市の暗部を変える事になるのをボクはまだ知らないーーーーー ーーーーーーーーーーーーーーーとある科学の問題修復(チャイルドデバック)ーーーーーーーーーーー ~~side H~~ XX年一月十五日:人臣上利の所属する研究所「名前まだ決めてねぇ」 人臣「・・・ぅん。」 ・・・どうやらまた眠っていたらしい。覚醒薬に耐性がついてしまったのかもしれない。 暇を見て、配合を変えてみる必要がありそうだ。でないと不測の事態が起きる可能性がある。 ・・・因みに、覚醒薬というのは 「脳を活性化し睡眠を取らずとも100%の機能を発揮できる」という代物だ。 研究員「失礼します。人臣さん、ご報告が・・・。仮眠中でしたか?あれでしたら出直しますが。」 人臣「それには及ばないよ。・・・それで、報告ってのは?イレギュラーでも起きたかい」 イレギュラーがあったというのなら逆にありがたい。 最近は実験の進展も見られなくなって来たところだ。何かしらの変化が欲しいところだし。 研究員「いえ、それが。実験の下準備のためにこの前連れてきた被験者達に能力開発を行っていたのですが・・・」 被験者の一人が能力を発現したような素振りを見せました。」 へぇ・・・。この短期間で能力を発現するとは。中々素質がありそうな人間だ。 素質のある人間はそれだけ成果を出しやすい。 同時にそういう人間は壊れてく様もまた様になる。 人臣「把握したよ。今後はその被験者の動向に注意していてくれ。そのうちボクも様子を見に行く」 研究員「了解しました。それでは、失礼します」 研究員の置いていった資料を手に取る。 歳は・・・6歳か。被験者の中では年齢が高い方だ。最も、そう珍しい訳でもないが。 『目で追っていた虫が何の前触れもなく落下した』 『ガラスの壁の向こうのペンがいつの間にか移動していた』 『一瞬だが、瞳が光ったように見えた』 前の二つを見る限り念動力系か・・・?しかし三つ目は何だ?視覚がトリガーとなる能力か? ・・・ここで考えても今は答えが出そうにない。次の報告を待つとしよう。 そう思い目を閉じる。案外早く眠りはやってきた。・・・少し疲れていたのかもしれない。 XX年二月十五日 人臣「これは・・・。」 一ヶ月後。再びボクの所へ報告が上がってきた。 『同室にいた被験者が何の前触れもなく吹き飛ばされるという事案が発生。 原因は室内で発生した原因不明の強風によるものであり、 また、彼女のみ被害に遭っていないことから彼女の能力が発現した結果と思われる。』 人臣「空気使いか・・・。 いや、しかし発現からまだ間もないのに人を吹き飛ばすような強風を起こしたのか? だとすれば、条件次第ではレベル5にもなれる器かもしれないな・・・」 ・・・これは、一度実物を見ておく必要がありそうだ。 そこまでの能力者であるならば、安易に他の被験者と同じプログラムを課すのは愚策だ。 高位能力者が対象ならば、今までと違う結果が出るかもしれない。なにより・・・。 きっとこの「おもちゃ」ならボクを満足させてくれるに違いない。 そんな期待がどこかにあった。・・・根拠もなく。 XX年二月十六日:被験者収容室 研究員「おや。人臣さんが出てくるなんて珍しい。・・・例の被験者についてですか?」 人臣「ああ。少々気になることがあってね。一度実物を見ておこうかと」 そういって収容室の中を見る。 例の事態が起きた後で、再発を防ぐため個室が与えられたらしい。 肝心の被験者は・・・。どうやら奥の方で俯いているらしくここからでは顔が見えない。 人臣「中に入っても構わないかい?」 研究員「え!?危ないですよ!さっきあんな事があったばかりなのに」 人臣「問題ないよ。危険があるならさっさと引き上げるさ」 そういってドアを開錠する。部屋の中に入っても特に変わった様子はない。 奥にいる被験者の元へと近づく。・・・動く気配が無いようだが、これはまさか・・・。 ???「・・・スゥ。・・・スゥ。・・・ぅん」 寝ている・・・。この状況で昼寝が出来るとは、なかなか図太い神経の持ち主のようだ。 何にせよ、ここまで来たからには顔位は見ておきたい。 人臣「君、起きなさい」ユサユサ 肩を揺する。揺すりながら思う。 この状況は他人から見ればかなりシュールではないのだろうか。 自分は既に成人しているが、見た目の年齢はこの被験者とそこまで変わらない。 十歳に満たない幼子が二人並んだこの状況で、 片方が「君、起きなさい」と肩を揺すっている。 ・・・まるで何かのごっこ遊びのようだ。 そんな事を考えている内に目の前の被験者が目を覚ます。 ???「・・・ぅ。あなた、だあれ?」ムクリ 顔を上げる。その顔を見て、まず思ったことは・・・ 人臣「猫・・・」 そう、猫である。何もそのままの意味ではなく その顔立ちや髪型が猫を連想させる、というだけの話だが。 大きな瞳に整った顔立ち、そんな顔面から視線を上げれば猫の耳と見紛うような癖の付いた黒髪。 ・・・そんな事はどうでもいい。被験者など所詮ボクのおもちゃに過ぎない。 彼女もこれからボクのおもちゃになると思うと楽しみで仕方ない。 人臣「ボクは人臣上利。この施設の責任者だ・・・と言っても伝わらないか。」 ???「・・・?ひと、おみ。それがあなたの名前?」 人臣「そうだ。 ・・・要するにキミは、これからボクの言うことを聞かなくてはならない。分かるかい?」 この研究を続けてきて思うことは子供の扱い難さだ。 無知な子供たちはボクの言うことを理解できず、 かといって間違った事を言えばそれもしっかりと覚えてしまう。 不必要なものが多すぎるのだ。 ???「そっかぁ・・・。あなたも私に痛いことするの?」 人臣「・・・ああ。痛いことも苦しいこともするつもりだ。キミ達にとってボクは絶対なんだ。 キミ達はボクのおもちゃなんだから。」 ???「いやだ、っていってもやめてくれないの? ・・・くれないんだね。ひとおみっていじわるなんだね。」 意地悪とは、また妙な言い方をするものだ。 自分の命を奪うかもしれない相手に対する言葉にしては随分軽い。 まぁ、6歳の幼子にこんな事を言っても仕方ないが。 ???「わたしの名前もいわないとね。・・・しほ。しほう しほ(四方 視歩)だよ。」 「四方 視歩」か。・・・いや、なかなか大していい名である。 というか、書類にも書いてあっただろうにそれを確認してなかったのか。 そこまで集中力に欠けていたのだろうか。そろそろ少し休暇を取るべきか。 そんな事を考えていて、ふと気づく。なぜこの子はこちらに向けて掌を向けているのか。 嫌な予感と共に彼女の口が開く。 四方「わたしね、すごいことに気が付いたの。こうやって手を向けて・・・。 『飛べ』って思うとホントに飛んでいくんだよ。」 人臣「ッ!?」 迂闊だった。能力が発現したのならこう言う可能性も考えるべきだったのだが・・・。 だがこんなことは初めてである。 置き去りの子供たちが明確にボクに敵意を向ける事はこの時点では多くない。 幼さゆえに自分がされている事が理解でき無い。 ボクという現況に危害を加える、という発想に至らないのだ。 その時起きた事は至って簡単である。 彼女の能力で生み出されたのであろう強風でボクが吹き飛ばされただけのことである。 ・・・だが、その威力は単純では済まなかった。 吹き飛ばされたボクは壁に打ち付けられ、尋常ではない衝撃を受けた。 四方「あれ?ひとおみ、どうしたの?・・え、ひと・み。ねぇ・・・ば!」 まずい、意識が遠のいてきた。 不覚をとった自分への憤りと共に自分がどこか歓喜を覚えていることに気がつく。 こんな子は初めてだ。恐らく彼女にはボクに対する敵意は無い。 にも関わらずボクに対して能力を躊躇なく使ってきた。 それが異常な事だとは微塵も思わず、さも当然のように。 ・・・きっと彼女もボクと同じ「異常者」なのだろう。 その事実が何よりもボクを歓喜させたのだ。 「異常者」が「異常者」を壊す。これ以上なく滑稽且つ、愉快ではないか。 ボクの全力をもってこの子を壊してみせる。 そうすれば、ボクは今までにない何かを掴めそうな気がする。 怒りと喜びが混ざり合った複雑な感情を抱きながら、 さながらTVの電源が切れるようにボクの意識が消失した。 ーーーーーこの出会いは、それこそ「運命の出会い」だったのだろう。 この話は、ここから紡がれる彼女たちの物語の序章の始まりに過ぎない。 この英雄譚というにはあまりに不格好で稚拙なこの物語の序章は、 不肖このボクを語り部として進んでいく。ーーーーー
https://w.atwiki.jp/vipyakyu/pages/463.html
レポは麻生とあべが書いたので分割します 千葉対外試合 あべレポ 千葉対外試合○宮戦レポ by麻生 千葉対外試合○宮戦 裏話 by2号
https://w.atwiki.jp/shinatuki/pages/243.html
銀騎士とあか その3『あかになる』 紅魔館の廊下。遠くから地響きがするのは吸血鬼の妹が暴れているせいだろうか。 涙にくれる妖夢を見下ろしながら、小町はふとそんなことを思う。 「泣いてちゃわかんないよ。事情を説明しな」 小町の言葉に、嗚咽交じりに妖夢は答える。 「私、チャリオッツの過去を、見たんです」 俯いたまま、先ほど見た光景を思い出す。また、涙がこぼれた。 「守りたい、と願って。でも、守れなくて」 『守る』という思いは、『守りたい』という願いは彼女にはよく理解できた。 彼女にも守りたいもの――主、西行寺幽々子――がいるのだから。 その守りたいものを守れなかったら? 失ってしまったら? そう考えると胸が張り裂けそうになってしまう。 「可哀想な、チャリオッツ」 しくしくと泣く彼女を、小町は睨むようにして見下ろす。 「……で?」 普段の彼女からは想像出来ない程、冷たい声音。 「可哀想だ、って泣いて。それで、どうにかなるのかい? それで、あいつが止められるのかい?!」 膝を突いて、妖夢の顔を覗き込む。 妖夢は言葉に詰まり、涙を湛えた青い目をそらす。 「甘ったれたこと言ってんじゃないよ!」 パァン、と乾いた音がした。激高した小町が妖夢の頬を叩いたのだ。 「まるで、不幸なのがアイツだけだとでも言いたげだね。 冥界に住んでるから、そんな狭い考えはしてないと思ったけど」 怒りを込めた目で彼女を見据える。 「よせ、小町。スタンド使い同士の戦いは彼女には未知のことだったんだ。 混乱してしまっても仕方ないだろう」 リゾットがなだめるが、小町は止まらない。 「ただ哀れむだけってのは、死者に対する最大の侮辱なんだ。 傍からみりゃあ不幸でもねえ、幸せだったって笑ってられる死者は大勢いる!」 友を家族を師を殺され、ようやく結ばれた初恋の相手を生かすために、 宿敵の頭抱えて海に沈んだ男だって、いる。そんな状況でも、笑って、死んだ」 小町たちから遠く、フランドールを止めんとする咲夜とDIOの胸が、不意に痛んだ。 その違和感に一瞬首を傾げる。しかし、レミリアとの戦闘では悩む暇などない。 飛んでくる弾幕を避け、反撃の機会を伺うことに集中した。 「火事で行方不明になった恋人の子を産んで、死の直前、娘を独りにしたくなくて、 恋人を探して探して探して、それでも見つからずに、志半ばで死んだ女がいる! でも、彼女は笑っていたんだ! 娘が、父親に会えることを、 幸福に暮らせることを、信じきって!」 「……笑って、たんだ」 ドッピオが心当たりに、眉をしかめた。 感傷など、過去など捨てなければいけないのに、痛んだ胸が不快で。 「笑っ、て」 妖夢が、震える声で言葉を発した。 「そうだ、彼も、笑ってた。妹を殺されても、友を殺されても、 それでも、彼、笑ってたんだ」 きっと、あの過去を知らなければ、フザけていると思っただろう。 けれど、今思い出しても、その笑顔に悲しみしか見出せない。 「笑っていた、か。強いな、そいつは」 「え?」 リゾットが口を開いたのに驚く。 「オレ、の、知り合い。そう、知り合いだがな。その知り合いも大切な人を亡くした。 殺されたんだ。法で裁かれはしたが、命で償われはしなかった。 許せなかった。まだ、ガキだったから、復讐のために力が欲しいと思った。 力を手に入れるためなら、修羅の道に落ちてもかまわない、と」 リゾットが語りだしたのを、小町は黙って聞いている。 その『知り合い』が一体誰なのかを、知っていたから。 「その男は、笑うのが苦手になってしまった。大切な人を亡くしたから。 だから、笑っていられたというなら、あの、チャリオッツといったか、 あいつの本体は……強かったんだろうな」 ハッとした。あの笑顔は、彼の強さだ、と。 妖夢がそう思った、次の瞬間。 ずん、と大きな地響きが館を襲った。 「フランが能力を使い出したみたいね……館本気で壊れるかも」 パチュリーが若干顔色を青くする。 その言葉は一部が現実になった。天井の一部が、衝撃に耐え切れず落下してくる。 「あ……」 天井が落ちた先には、チャリオッツの姿が、あった。 がらがらと崩れるガレキの中に、チャリオッツの姿が消える。 「やったか?!」 「何てこと言うんですか!」 ドッピオが叫んで、妖夢は怒りも露に言葉を返す。 確かに、ガレキはチャリオッツの身をずたずたに壊していた。 しかし、チャリオッツはその歩みを止めはしない。 その体が修復しない内から、這うようにして前に前に進む。 「いつ、まで」 彼を見ながら、妖夢が涙交じりの声で呟く。 「いつまで、戦うんですか。もう、いいじゃないですか」 目元をぐいっ、と拭い、彼をその青い目にしっかと捉える。 「私が、止める」 もう、傷つけさせはしない、と決めた。 「……出来るんだね?」 「やるんです」 小町の問いに、しっかりとした声で答えた。 「そう。やれる、と思うことが大事なのさ。力を使うのに大切なのは認識すること。 その心の強さが、『幻想郷』では力になる!」 だん、と床を蹴って飛び出した妖夢の背中に小町が叫ぶ。 突っ込んでくる妖夢に対し、半霊が刀を構える。 けれど、常時より速く動いたため、反応できなかった。 その脇をすり抜け、刀を構える。チャリオッツが、その気配に振り向いた。 ――あなたは、守りたいものを亡くした―― ――半身と分かたれて、帰る場所も無くした―― ――でも、私がいる! 幽々子様もいる! あなたの傍らに!―― ――あなたの、帰る場所になるから! だから!―― 「正気に戻れえええええ、『シルバーチャリオッツ』ゥウウウウウ!」 妖夢のその想いを乗せた刃が、チャリオッツの迷いを、叩き斬った。 人間でいえば額に当たる部分に、白楼剣の刃が当たる。 そこから、ぴしり、と音を立て全身にヒビが入る。 まばゆい銀の光を漏らしながら、そのヒビはどんどん大きくなる。 ぱりん、と何かが割れる音がして、一瞬の後。 そこには、呆けたように立ちすくむシルバーチャリオッツが残された。 「シルバー、チャリ、オッツ?」 二人の青い目が、視線を交わした。 「う……うわああああん、シルバーチャリオッツぅうううう!」 妖夢は握った刀を取り落とし、彼に抱きついた。 「よかった、戻って、くれたん、ですね」 わあわあと声を上げて、妖夢は泣く。 シルバーチャリオッツは、彼女の背中を、ただ優しく撫でるだけだった。 「あー、やっと戻れたわ」 その光景を見ながら、元の体に戻ったパチュリーがごきごきと肩を鳴らしていた。 「んもう。あんたが無駄に動くから体が痛いじゃない。 あーあー、明日は筋肉痛になるわね」 隣に座り込んでいる男に声をかける。 「ああ、戻った」 ぽつりと、男は呟く。自身の胸元で、ぐっと拳を握る。 「戻った、戻った、ここに、ここにいる……」 無くしていた、あの日捨ててきたものが、戻った。 男は、ディアボロは、奥歯を噛み、嗚咽をこらえていた。 「……はれ? お姉さま? 咲夜? それにDIOも?」 別所では、金髪に異形の羽を持った吸血鬼の少女、フランドールが首を傾げていた。 「どうやら、元に戻ったみたいね。ああ、折角のセットが台無しだわ」 水色がかった髪の埃をはたきながら、紅魔館の主レミリアがため息をつく。 「はぁ、修理するのに何日かかりますかねえ。 あなたも手伝ってくださいよ、あそこら辺の壁、あなたが壊したでしょう」 むっとしながら、咲夜がDIOを睨みつける。 「う、うむ」 彼は半ば上の空で返事をした。先ほどまで、咲夜の体だったのだが、 その時、妙な感覚があったのだ。歯車が、ほんの少しだけ、かみ合わないような。 『他人』の体で、全くかみ合わないというのは納得ができる。 だが、どうして少しだけ、かみ合わなかったのだろうか。 悶々と悩むが、その答えは今の彼女からは見出せそうになかった。 「終わった、ね」 小町が自分の体に戻ったのを確認しながらやれやれ、と息を吐く。 「早く戻って、映姫様に今後のことについて聞かねばな。 これが、二度ないとは言い切れない」 「そっちはあたいがやっておくよ、だから、あんたはもう一つの仕事を」 それだけ告げると、ふわりと小町は浮かびあがる。 早く帰りたいのだろう。そのまま外へ向かって飛んでいった。 「『地獄の魂は地獄へ返せ』か」 託された伝言の内容を思い出しながら、リゾットはレミリアの下へ向かう。 彼女の客人であるDIOを、裁かれるべき地獄へ返すために。 白玉楼。そわそわしていた幽々子は玄関から聞こえた物音に慌てる。 玄関へ出た幽々子は、帰ってきた二人を見て、ほっと安堵した。 二人とも、随分とボロボロの姿だが笑っている。 どうやら、やはり向こうで何かがあったらしい。 けれど、それを問うのは後回しにしよう、と思った。 自分が言うべき言葉は、一つだ。 「おかえりなさい、妖夢、シルバーチャリオッツ」 その言葉に、妖夢は微笑み、チャリオッツも何処か嬉しそうだった。 「ただいま帰りました!」 銀騎士とあかその3「あなたのかえる場所になる」 予定は未定な次回予告 あの事件の後始末。地獄へ落ちる神様に告げられた真実。 語られるのは、メイドの忘れた昔話。 「あの子、母親を吸血鬼に食われたから、ハンターになったのよ」 「サクヤとは、新月(Crescent-MOON)の夜のこと」 運命を変えられないのは、外での話。幻想ならば、それは可能。 死神は長靴の国の夜明け前亀の中。 「分かった、信じよう」 銀の髪の隻眼の男が、自らの運命を受け入れて、一人。 桜舞う階段。男は一人の少女を見る。 その傍らに立つのは、かつて己が傍らにいたもの。 次回「銀騎士と彼」
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/917.html
前ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある幼馴染の超電磁砲 とある幼馴染の超電磁砲<レールガン>とイヤホン 「だぁぁぁあ!補習が長引いた~」 急ぎ足で待ち合わせ場所に向かう。 そう、今日は絶対に外せない約束があるのだ。 普段の授業に+補習というのは、いつもの事だ。 いつもの事ではあるが、今日は予想以上に長引いた。 勿論、とっくに待ち合わせの時間は過ぎている。 これはまずいと思って、メールを送ったが返事は来ない。 (こりゃ、相当怒ってるよなぁ……) 正直、補習も常にあるような身で放課後に時間を作るというのは厳しい、だから部活動も行ってない。 それでも幼馴染に付き合う理由。 「いや~悪い、遅くなった!」 ベンチに掛けているのを見つけ、慌てて駆け寄り すまんと手を合わせて、内心ビクビクしながら様子を窺う。 「おーい、美琴……もしもーし?」 しばらくしても反応が返ってこない。 不思議に思って、目の前で手を振ってみる。 「あっ当麻…」 今、気付きましたよといった具合で目をぱちくりさせ 「ごめん、聴き入っちゃってて…思いっきりスルーしちゃった」 と言いながら美琴は音楽プレイヤーの停止ボタンを押して、イヤホンを外す。 その軽薄な態度に少しだけムッときて余計な一言をぽろりと出してしまう。 「上条さんは、補習でへとへとなのですよ~。それでも来た事に、ねぎらいの一つも掛けてくれてもいいと思うのですよ~」 遅れた事を棚に上げ、自ら墓穴を掘りにいっている事に気付いた時は後の祭り。 「どの口が言うのよ、遅れたくせに…」 とジト目で突っ込まれ 「しょうがないじゃない、大体あんたがい・つ・も待ち合わせの時間に、来ないから悪いのよ!」 待つのも疲れるんだと美琴は主張する。 「うっ!いや、それは……」 「それは?」 美琴にじーと見られること数秒――いよいよ降参、白旗を上げた。 「悪い、悪かった、だから…!」 と許しを請う。その様子に美琴は、はぁ~とため息をつき 「まっ、でもいつも当麻に付き合ってもらってるし、いいわよ、別にもう…」 と少し照れた口調で、今回だけだからねと付け加えた。 「ところでさ、何を聴いてたんだ?」 機嫌が直った事に、ほっと胸を撫で下ろし――先ほどから気になってた事を口にした。 「ん、ああこれ?」 と美琴は、膝に置いてある音楽プレイヤーを持ち上げる。 「そそ、いや…珍しいなと思ってな」 「ちょっと、それどういう意味よ!」 またもや暗雲が立ち込めそうな流れに、待て待て続きを言わせてと、美琴をけん制し告げる。 「その…美琴が曲聴いているのって、何か新鮮でな。ほら、普段聴かないだろ?だからどうしたのかと思ってな」 思わぬ返答に、美琴は少しだけ思案し理由を話す。 「えっと、佐天さんに勧められて…ちょっと気になったから」 「佐天さんつーと、この間話してた後輩だよな?」 「うん、中学は違うけど、何回か遊んで…これもその一つかな」 そう言って、音楽プレイヤーを指す美琴。 「なるほどな」 どことなく嬉しそうに話す美琴の様子を見て、友達が出来たんだなと素直に喜ぶ。 上条当麻が幼馴染に付き合う理由。 ――それは以前、自分の隣が一番自然でいられると言われたことがあるからだ。 学園都市に7人しかいない、レベル5の第三位、常盤台のエースである幼馴染はその能力の 高さ故、輪の中心に立つことはできても、輪の中には入っていけない。それでもそれが当然の 事だと分かっている。いやむしろそう思うことで、友達というものを諦めてきていた様にも感じる。 クラスでデルタフォースと呼ばれる内の一人で、バカばっかりやってる自分からすると、 それってどうなのと心配していたが、ただ話を聞く限りでは、最近は変わってきたようだなと思う。 今は、一度しかない。いくらレベル5と言ってもまだ14歳の少女なのだ。普通の女の子として過ごして欲しいと願う。 その願い通り、幼馴染の少女の周りに新しく場所が出来つつあり、そろそろそのお役はご免だろうかとふっと考える。 その時、脳裏によぎったのは寂しいという言葉、きっとそれは、自分も例外なく隣にいるのが当たり前だからかもしれない。 喜ばしい事なのに、どこか腑に落ちない感情の渦に入ったような――そこで名を呼ばれてる事に気付き、思考は中断した。 「ねぇ、ねぇってば!」 いつの間にか、どこか遠くへ行ってしまった幼馴染に向けて呼びかける。 「………お、おう?」 ようやっと戻ってきたかこのバカと、こつんとデコピンをかます。 「ちった~人の話を聞けやぁぁ!」 「いってぇ、いきなり何をする!?」 「はぁ…あのねぇ勝手に話を振っておいて、無視すんじゃないわよ!」 「……はて、どこか飛んでました?」 「思いっきりよ!とぼけるフリして話をそらそうとするなっ!」 当麻の何か言いたげなその目を無視して、無理矢理話を進める。 (そりゃ、飛んでたのはお互い様かもしれないケド…でもそれとこれとは話が別!) 「それでさ、聴く?」 「聴くって?」 だからこれよこれ、と音楽プレイヤーを当麻に見せる。 「何を聴いてるの?って言ってたじゃない」 「そうだったか…な?」 「そっ、だから…はい」 と片方だけイヤホンを当麻に渡し、もう片方は自分の耳に付ける。 並んでベンチに座っていても、少し距離がある為、イヤホンは引っ張られる。 「当麻、もう少し近寄ってくれないと届かないから…」 改善のため、もっとこっちに来いと隣の位置を手でパンパンと叩く。 (一緒に聴かなきゃ意味がないんだから…) 好きな人と何かを共有したいという思いは誰にだってあるもの。 美琴の場合、同じ曲を一緒に聴く時間を共有するというものだった。 待つ間、どうやって切り出そうかとずっと考えていた。 もともと佐天さんから勧められた曲、それをどうしても当麻にも聴いて欲しくなった。 こういうのが好きなのも、御坂美琴っていう幼馴染の女の子なのだと、当麻に知って欲しいただそれだけ。 今、その計画は着実に実行されようとしている。 「あの…みっ美琴さん?」 「………あ、えっとその」 密着する肩、触れ合う手、そこから感じる体温。 「「…………」」 勿論、再生された曲は二人の耳には全く流れてこない。 互いに奏でる、ハートビート、そんな二人の幼馴染の放課後。 前ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある幼馴染の超電磁砲
https://w.atwiki.jp/index-ss/pages/1371.html
(……さすがに能力を使わねェとしんどいな) 一方通行が搭乗しているのは『超音速旅客機』。時速七〇〇〇キロオーバーで大空を滑空するという学園都市オリジナルの馬鹿みたいな化け物飛行機のことである。 だが、強力なGのせいで乗っている間は終始、内臓が圧迫されるような不気味な圧力が人体に容赦無く襲い掛かる。ベクトル変換でも使えば楽になるかもしれないが、『仕事』のためにバッテリーは温存しておく必要がある。 (マッハ5、75で高速飛行する『旅客機』か……。こりャ、『外』の奴らが学園都市に追いつくのは不可能なンじゃねエか?) 『減速します。何かに掴まっておいてください』 パイロットの緊張感の無い声が無線を通してコックピットから伝わってきた。 一時間半も経ってないのにもうイギリスか。相変わらずアホみたいな速さだ。 一方通行は、ようやく通常の旅客機並の速度に減速した超音速の飛行機のドアのレバーに現代的なデザインの杖を支えにして手を掛け、首筋のスイッチを「ON」の状態にし、ドアを勢いよく開け放つ。常人なら投げ出されてしまうほどの強風が機内で暴れまわるが、反射を適用している一方通行には関係の無いことだ。 そのまま体を傾け、一方通行は高度二五〇〇mから何気ない顔で落下し、十秒程経ってから一方通行は地響きにもなる轟音とともにロンドンの裏通りに着地した。 (誰もいねェか。つか、街中にこんなクレーター作っていいもンなのか?) 一方通行は足元にある自分で作った直径五m弱のクレーターを見ながら適当に呟く。 そして、周りを見渡し先ほどと違う風景が目に留まった。 「……いきなり大歓迎だな。イギリスってのは歓迎パーティーとか頻繁にやるタイプの国だったか?」 一方通行の周りには全身黒服の背の高い男達が二十人程いることに気づいた。 そして、その全員が殺傷能力の高い手動マシンガンを構えている。 (『外』の安っぽい銃器を使用している。……て、ことは外部の裏組織か) 海原のクソ野郎から「外部の馬鹿共に邪魔される恐れがありますから気をつけてください」と聞いた憶えがあるが間違ってはいなかったようだ。 一方通行がそれだけ考えると、それと同時に周りを囲む二十以上のマシンガンが火を噴いた。 爆音が鳴り響く。一つの銃を発砲するなら「うるさい音」だがそれを二十倍以上の量にすると「鼓膜が破れそうな音」になる。そして、その銃撃を受けた者は当然銃一つでは計り知れない威力を受け止めることになる。二十のマシンガンが生身の人間に発砲したのだ。当然、目の前の人間はよく分からない肉片になっているだろう、と発砲した内の一人、即ち黒服の男の一人は当たり前の事を考える。 が、しかし。眼前の少年にはそんな常識は通用しなかった。 このままでは殺されるかもしれない。本来目の前の白髪が僅か以上に思わなければならない言葉のはずなのに自分達が嘘偽り無くそう思っているのはどうゆう事なのだろうか。 全身黒服の男はその答えが導き出せない。その手にある手動マシンガンが『自分の撃った散弾で』大破していることなど気にして居られない。恐怖より疑問ばかりが浮かんでくる。 なぜ、この少年は無傷で立って居られるのだろうか? 少年は笑っていた。前に垂れた白銀色髪で彼の目は見えない。だが、彼の口元は裂けたような壮絶な笑みに包まれている。やがてその不気味な口前が言葉を発する。 「そういや、『外』の奴らは能力の知識が「こっち」に比べて劣ってたっけなァ。」 目の前の少年は俄かに笑い出す。それを合図に黒服の仲間達は使い物にならなくなった手動マシンガンをレンガ道に放り投げ投げつけ落とし、慌ててその場から抜け出そうとする。恐ろしさに声を上げて間抜けに転び出す奴さえ居た。 自分もそうした方が幸を呼ぶかもしれない。抑えきれない悲鳴を僅かに声に出して謎の少年に背を向けようとしたが、 「おいおい。遺言にしては随分間の抜けた御言葉だな。遺族の方々をあンまり ガッカリさせちゃァ駄目なンじゃねェのか?」 笑い混じりの少年の声が聞こえた所で、男の意識は永久に途絶えた。 ロンドンの旧市街のさらに人の少ない裏通りと言ってもいいレンガの歩道を三人の東洋人の男女が目的地に向けて歩を進めていた。 その内のただ一人の女性が手元の地図を拝見しながら隣の少年に話し掛ける。 「この先のアパートメントに『原石の能力者』が居るはず……って、一体どうしたのですか? 上条当麻」 上条当麻と呼ばれたツンツン頭の少年はいかにも気持ち悪そうに背を丸めて歩いている。 「……ふざけんなっ!! あんな空飛ぶトラウマ製造機(及び音速旅客機)に乗せられてピンピンしてるお前らのほうがおかしいんだ!! あんなもんに乗ってたら内臓の位置が おかしくなること間違い無しだろうが!! 」 騒ぎ出したツンツン少年(被害者)に対し、一歩後ろを歩く金髪サングラスの長身の男が気の抜けた声で火に油を注ぐ。 「まー、カミやんにとってはあれ(音速旅客機)に良い思い出は無いしな。満身創痍の状態でイタリアから『それ』で連れて来られたり、『それ』に乗ってアビニョン上空から突き落とされたたり、色々大変だったからにゃー」 「半分以上御門のせいだぞそれ!! 」 土御門と呼ばれた金髪でアロハシャツを着た少年は「ああ、ごめんごめん」と適当に批判の声を受け流す。上条はさらに犬歯を剥き出しにして土御門を睨みつけた所で、 「……土御門。もうすぐ『接触対象』の家なのですから、真剣に物を言ってください。」 地図から目を離さずに神裂火織が真面目な注意をした。 上条当麻、土御門元春、神裂火織。 この三人は今、ロンドンに居るという『原石』に「接触」及び「調査」するため、三人揃ってロンドンまで『仕事』をしに来ていた。 超能力と魔術を同時に扱うと言われる『原石』を調べる仕事に。 「能力と魔術ねぇ……。そんなもんどうやったら一緒に使えるようになるんだ?」 上条が素で呟く。 「ですから、今からそれを調べに『その人』に会いに行くのですよ」 着いたアパートメントは築五十年ぐらいの寂れた建物だった。入り口はとことん汚れていて、壁、床、天井全てが荒れ放題の廃墟みたいな家屋だった。 「では、私と上条当麻が『原石』のいると思われる部屋に行ってきますから、土御門はここで待っていてください」 主題の『原石』は「超能力と魔術が同時に使える」という謳い文句のせいで沢山の組織(土御門が言うには『研究者気取り』)に 追われる羽目になっているらしい。(上条はその研究者気取りがスターゲート計画の残党であることは知らない)そこで、危険がある前に学園都市とイギリス清教が共同で保護することになったらしい。 何故、上条が仕事を手伝う羽目になったかは、神裂や土御門も存じてないようだが。 「なぁ、神裂。なんで土御門はアパートの前で待機しているんだ?」 ギシギシと心配な音を立てる階段を上りながら、神裂が質問に答える。 「いまから会う『原石』は世界中の組織から狙われる立場にあるのですよ。だと言うのに金髪サングラスアロハシャツの土御門が会いに行けば確実に警戒されます。ですから、せめて普通の格好の私達が会いに行かなければならないでしょう」 神裂の格好が普通かどうかはツっこんだら負け、と自分で決着を着けた上条とそんなことは露知らずの神裂は目的の部屋に辿り着いた。簡単に蹴破れそうなドアには、 『YURI AYAKARI』というプレートが貼ってあった。 ドアを三回ノックする。僅かに返事が聞こえ、ボロボロのドアのカギが開けられ、中の住人が姿を現した。 「どなたさまです?」 出てきたのは上条より二歳ほど年下の少女だった。肩辺りまで伸びる漆黒の髪とそれに反してアクアマリンのような透き通った水色の目が印象に残る少女で、上条が一番驚いたのは、少女が日本人であったことだ。確かにプレートには「あやかり ゆり(またはゆうり)」と書いてあった気がするが。 「私達はイギリス清教の者です。少しお話伺ってもよろしいですか?」 単刀直入だなーと上条が適当に考えていると、 「あ、はい。よろこんで」 少女は割と簡単に許可を出した。 「綾狩 優李と申します。で、お話というのは?」 外の廊下に反してかなりピカピカに整理された部屋に三人の男女がテーブルを跨いで座っていた。その内一番背が高い神裂が勝手に自己紹介した目の前の蒼目黒髪の少女に質問する。 「あなたが超能力者兼魔術師であるという噂……はもうご存知ですか?」 直球すぎるだろと上条が何となく考えても、 「はい。やっぱりその話だと思いましたよ」 綾狩と名乗った少女はまたもや即答。 「では最初に聞きますが、その噂は本当ですか?」 「ええ、本当ですよ」 結論はとても速かった。さすがにこれには神裂も驚いたようで目を丸くして動揺が隠せない様子だった。 無理して言葉を選んでいる神裂の代わり上条が質問してみる。 「どうやって?超能力と魔術を同時に使うなんて……」 「無理だと思いますよね?でも、私はそれができますから。」 笑顔で解答。なんか信用できない気がする。綾狩が言葉を続ける。 「ええっと、説明より観てもらったほうが速いと思うので……」 そう言って綾狩は懐から一本のナイフを取り出した。神裂が一瞬身構え、上条も 攻撃されるのではないか、と眉間に皺を集めたが、 綾狩は取り出したナイフで自分の手首を切りつけた。 「「 っ!? 」」 上条と神裂は一瞬怯んだように動きを止めたが、 「……あれ?」 上条が間抜けな声を出したときには、綾狩の手にたった今付けられたはずの傷は綺麗サッパリ無くなっていた。切り付けた際に飛び散った血液を覗いて。 「これで、分かりました?」 わかりました?と言われても、上条にはよく分からない。傷が一瞬で無くなる……それも幻覚ではない。ちゃんと、流れ出た血は彼女の服に残っている。上条には疑問詞 しか思い浮かばないが、隣の神裂は何か歴史を変えるような物を観てしまったというような顔をして、完全に硬直していた。 「 ? 神裂、何か解っ……」 「……!! 高Lvの肉体再生(オートリバース)……!!! 」 上条の声は神裂の怒号にも似た叫びに遮られた。綾狩が笑いながらこちらに首を傾げるのが横目で見えた。 当の神裂はそれを見ても顔の硬直が解れない。 「……神裂。それって……、」 「えぇ…。綾狩 優李、と言いましたか。彼女の「能力」は『肉体再生』。それも体の外傷を一瞬で完治する位……同じ『肉体再生』の土御門とは比べ物にならないほど驚異的な再生能力だと思います…」 「あら、酷いですね。私がここに居ないみたいにそちらの殿方とだけ楽しく談笑だなんて」 綾狩はくすくすと笑う。嘲笑うかのようにも見える。 「もう一度、言います。『これで、分かりました』? 」 そして、上条はすべてを理解した。 実際、簡単な話だったのだ。超能力者が魔術を使えば体が拒絶反応を起し、体の内部から破壊されていく。実際、海の家の一件で土御門が無理に魔術を使用し、絶命寸前まで追い詰められたことを上条は知っている。だが、それでも土御門が死ななかったのは、彼が微弱ながらの『肉体再生』を持っていたからに外ならない。つまりそれは、『超能力者が魔術を使用した際の副作用は「肉体再生」によって治すことができる』という事になる。 そして、綾狩はその『肉体再生』を高Lvにて所持している。 それはつまり、 「……綾狩 優李。あなたはつまり『能力者が魔術をしようした時の拒絶反応』を自身の「肉体再生」により一瞬で再生、完治することができるということですか。なるほど、それなら納得です。痛みを感じる前に傷が完治するなら、魔術を連続で使用することも可能。それこそ『通常の魔術師と同じように』。……どうやら、噂は本当だったようですね」 代理で語ってくれた神裂に、上条が新たに生まれた疑問をぶつける。 「でも、いまの『傷が一瞬で治った』ってのも魔術の一つかもしんねぇし、綾狩…さんが本当に能力と魔術を同時に使う証拠にはならないんじゃないか? もしかすると、『肉体再生』は本物で魔術は全く使えませんかもしれないし」 「いえ、それは無いでしょう。彼女からは魔術を使った形跡も気配も全く感じ取れませんでしたから」 それを聞いた綾狩が適当に手を振った。すると、テーブルの上に小さな水の玉が浮かび上がる。「魔術も使えますよ」と言うことなのだろう。上条が横目で神裂を見ると、 「……ええ、魔術の使用痕跡がありますから、間違いなくそれ(小さな水玉)は魔術でしょうね」 『肉体再生』は本物。今使った魔術も本物。 結論から言うと、彼女の「超能力と魔術を同時に使える」という 突拍子の無い噂は、『本物』。綾狩 優李という人物は紛れ無くイレギュラーな存在だった。 そして、綾狩がもう一度、 「分かってもらえましたか?」 笑顔で言った。
https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/55075.html
【検索用 かんそくしゃとほくのとあるひ 登録タグ UTAU mia子 か 名前のないこ 曲 曲か 草声ネム】 + 目次 目次 曲紹介 歌詞 コメント 作詞:mia子 作曲:mia子 唄:草声ネム コーラス:名前のないこ 曲紹介 気付いたこと、自分なりの応援歌です。 曲名:『観測者とぼくのとある日』(かんそくしゃとぼくのとあるひ) アルバム「Yürümek」収録曲。 歌詞 (動画歌詞より転載) また今日も 試されるぼくら 朝は何時に起きて 何食べるかな また同じことを 繰り返すかな 夜に描いた今日を 過ごせるのかな 今日は 思うように 扉開けるかな 足を踏み出せば どんな事が起こるかな うずくまるなら 何を想うのかな 時を埋めるのか 時に埋もれるのか いつでも やりたいことができて 描けるのなら その道だって 自由に組み立てて 飾り付けて その足で 歩けるだろうって 言うけど また今日も 忘れかけたぼくら 雨がやむ頃は 空を見上げるかな 虹に気付いたなら 心動くのかな そしたら どんな力に変えるかな いつでも 自分で選んできて 迷いながら ここまでやってきた まっ白に できないのは その全てが パーツだから 消せない 消せない ものたちを抱えた 今が 夜ならば ひざを抱いて眠ろう ねえ いつかまた 対になれるかな? って 聞くのはやめて また明日に進む 消えない 消えないものが 多くなった 蝶は 殻を捨て 跳ねるように舞うから ねえ そこから見た ぼくは どんな形? って 耳すませて 飛びこんだ 朝 コメント 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/index-ss/pages/1227.html
とある二人の恋愛物語 1日目 9月某日 PM7 30 「……で、なんでこうなってんだ?」 「なによ、男だったらつべこべ言わないの。」 あれから上条と美琴は少し歩いた繁華街にあるファミレスに来ていた。最終下校時刻が過ぎているので開いている店はあまりないがそれなりに人が溢れていた。 「あんたが言ったんじゃない。さっきの侘びに晩御飯奢るって。」 「半ば強制的でしたけどねぇ!!壁に追い込んで電撃十二回もぶっ放されたらそんな和解策でも出さない限り収集つかねえだろうが!」 「男に二言はないって言うでしょ?自分が言った言葉には責任取りなさいよね?」 当初の上条の予定ではその辺の安いファーストフード店にでも入ってハンバーガーでも奢ろうと思っていたのだが、そんな上条の浅はかな考えを踏みにじるように、店の前に吊るされた看板には無慈悲な文字が綴られていた。 『改装工事中』 ―――というわけで仕送り日前にもかかわらずファミレスで外食という上条的には贅沢な食事をとる羽目になってしまった。 (不幸だ……。) とはいえ、美琴の言うとおり自分が言った言葉に責任は感じているようで、それ以上のことは言わなかった。 「仕送りあと幾ら残ってたっけな…。あんまり高いのは勘弁してくれよ?」 「わかってるわよ、さすがにそこまで酷な事はしないって。」 上条はため息をつくと携帯電話を取り出し、会計アプリを起動させた。 「なにしてんのよ?」 「ん?家計簿。少ない仕送りで遣り繰りすんのもなかなか大変なんだよ。」 「あんたって意外とマメなのね…。」 意外とはよけいだっての、と上条は軽く流す。こういった面に関しては彼は小心者なのだ。 「どうでもいいけどさ、お前門限とか大丈夫なのか?常盤台ってそういうとこ厳しいだろ?」 「あー、まあ少しやばいけど多分その辺は黒子がなんとかしてくれるでしょ。」 軽く言っているあたり、美琴の門限破りはもはや日常茶飯事のようだ。妹達とかの件もあったが、それを除いても私用でしょっちゅう抜けている事が多いのだろう。 「まあ俺が言えた口じゃねえけどさ、夜遊びもほどほどにしとけよ。いくら超能力者(レベル5)だからって常盤台中学のお嬢様が一人で町を出歩いてるってだけでも悪い虫に絡まれるかもしんねぇしさ。」 「そんなの日常茶飯事よ。つかあんたが一番分かってるでしょうが。」 「?」 それはいつの話だろうかと上条は考えていた。少なくとも今まで美琴が不良に絡まれている光景を見た覚えはない。記憶を失う前の話なのだろうか。だがここで何も返事をしないのは怪しまれるので差しさわりのない返事を考えていると、店員がオーダーを聞きにきた。 「この店で一番安くて腹にたまるメニューでお願いします!」 「は、はい?」 上条のウェイターの営業用マニュアルには載っていないであろうあまりにイレギュラーな注文に店員は少し戸惑った。まあとうぜんだが。 「ア、アンタなに恥ずかしい注文してんのよ!どんだけお金にこだわってんのよこのバカ!!」 「バカとは何だ!貧乏学生にとって、仕送り日までの残り一週間弱をどう効率よく切り抜けるかは死活問題なんだ!常盤台のお嬢様にはわかるまい!」 「少しは一緒にいる私の気持ちも考慮に入れなさいよ!恥ずかしくて今度からこの店使えなくなるじゃ…な…い?」 「? どうしたんだ?」 「な、なんでもないわよ!」 (そういえば前にもこんな会話したような…。確かあの時は――。) 『貧乏学生にとって、特売品を手に入れられるかどうかは死活問題なんだ!常盤台のお嬢様にはわかるまい!』 『こっちだって大変だったんだから!汚れたスカート脱ぎだすわ、しょうがないから洗ってあげるわ、挙句の果てにツン―――!!?』 『…ツン?』 (………な、なんて事思い出してんのよ!そしてなんで赤くなってんのよ私はあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?) 「おい大丈夫か?なんか顔赤いけど熱でもあるんじゃ…」 上条はテーブルから身を乗り出して自分の額を美琴の額に重ねた。 「!!?」 美琴はあまりの状況変化に言葉が出ず、口をパクパクさせた。 「んー、ちょっと熱いような…ってなんで、お前、なんで全身ビリビリっつーかバチバチいってんの!?俺またなんか悪いことしましたか!!?」 はっとようやく正気に戻ったのか、美琴はただでさえ赤かった顔をさらに赤く染めて俯いてしまった。 「? なんなんだ?」 「あ、あのー、ご注文の方は……?」 すっかり忘れてた。ずっと蚊帳の外に置かれながらも、それどころか電撃だって巻き込まれてたかもしれないのにしっかりとさっきと同じ姿勢で立っている事に上条は感心した。単に固まって動けなっただけかもしれないが。仕方ないので俯いてしまった美琴の代わりに何か手ごろな女の子向けの料理を探し始めると――。 「あ、あの、ただいまキャンペーンを実施しておりまして、こちらの期間限定カップルメニューからお選びいただきますとドリンクバー無料で二割引になっておりまして、さらにご会計後にゲコ太キーホルダーをプレゼントさせていただいてます。」 「え!?ゲコ太もらえるんですか!じゃあそれに……!!」 「おぉ、復帰した、って二割引?しかもドリンクバー付で!?しかもお手ごろ価格じゃねぇか!」 「………」 「………」 「「はあ!!?」」 「カッカカカカカカカカカップルてぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?」 上条は店内という事も忘れて叫んだがショックがでか過ぎたのか呂律が回らない。そんな上条たちに店員はこの人たち何!?みたいな顔で少し引いている。だがそんなのは関係ない。 「え、ええ。あ、まさか違ってました…?」 「違うも何も俺とこいつはそんな――!」 (ん?待てよ……?このまま弁解してしまうと二割引はパァになり、余分に支払わされるだけだ。しかし、御坂を彼女ということにしておけば料金も安くなって、御坂の欲しがっているなんだかカエルみたいなマスコットももらえるらしい。それは御坂の機嫌も良くなることにも繋がる。ということは―――。) (一石二鳥じゃねぇか…!) 「そ、そうなんですよぉ!俺たち付き合い始めたばっかりでまだ実感が沸いてないんですよ!」 「なっ!!?」 美琴がなんか喚いてるが上条は気にせず続ける。 「いきなり言われたんでちょっとてんぱっちゃって、な!みさ…美琴!」 「え!?あの、その…は、はい。」 「そ、そうですか。で、では改めましてご注文の方をどうぞ。」 「じゃあオススメAセットで、みさ…美琴は?」 「お、同じので……。」 「かしこまりました。出来上がり次第お持ちします。」 そう言ってウェイターは水とお絞りを置き、メニューをさげて厨房に戻っていった。 「よし!これで残りの仕送り日まで何とかつないで行ける…ってどうしたんだ御坂?」 「な、なんでもないわよ!……バカ!」 (…?変なやつ。) 一日目 PM7 50 注文を終えてから料理は案外速く運ばれてきた。運んできたのがさっきと同じ店員さんだったので、大変気まずい思いをした上条だったが、美琴はさっきから黙ったままだ。さっきとっさに彼女扱いした事に腹を立てているのだろうか。それとも知らぬ間にまた何かしてしまったのだろうか。 「おい、どうしたんだ?」 「………。」 「さめちまうぞ?」 「………。」 返答がないので一旦席を立ち、美琴側のテーブルに回り込んで顔をのぞいた。どうやらなにか考え事をしているようだ。 「おーい、御坂さん?」 「…に………な…私。」 「ん?なんか言ったか?」 「!!?な、なななななななにやってんのよそんなところで!」 美琴は驚いて思わず上条に思いっきりビンタをかましてしまった。 「へぶし!?」 上条は急の衝撃に耐えられず後ろに沿って床に頭をぶつけてさらに悶えた。 「はっ!ご、ごめん!大丈夫!?」 美琴は自分のビンタで床に転がった上条を抱き起こした。 「み、御坂さん…なぜ…?」 「ご、ごめん!で、でもアンタも悪いのよ?あんなデリカシーのないこと…!!」 「うぅ、スマン…。」 なんだか理不尽のような気がしなくもないが、確かに自分にも非があると思うので素直に謝る。上条はビンタされたところを擦りながら席に戻り、美琴もそれに続いた。 「ねえ…。」 「ん?なんだ?」 「さっきさ…私を彼女扱いにした時――。」 「あ、わりぃ、気に障ったんなら謝るよ。俺はただ御坂があのマスコットが欲しかったみたいだし、それに――。」 「そ、そうじゃなくて!」 「?」 「そうじゃなくて……さっき、私の名前を美琴って呼んでくれたじゃない…?」 「ああ。呼んだけど?」 『呼んだ』ではなく、『呼んでくれた』と言っているのだが、そのニュアンスが意味することどころか、ニュアンスの違いにすら鈍感な上条は気づかない。 「せ、せっかくの機会だしさ、これからはずっとそれで呼んでくれない?」 「え?」 「い、いや、たいした意味はないのよ?ほら私ってさ、普段同級生相手でも御坂さんとか、堅苦しい呼び方されるからさ、下級生にいたってはお姉さまよ?だからタメで呼べる相手ってあんまりいないのよ。あんただったら別に気を使う必要もないし軽く話せるからいいかなって、それだけ。」 「……一応俺も年上なんだが?」 「それがどうかした?」 「オイ。」 思わず突っ込んでしまったが、もう正直どうでもよかった。 「まあお前ががそうして欲しいってんならそうするけどな。美琴。」 「!!」 「? どうした?」 「な、なんでもない。じ、じゃあ冷めないうちに食べましょう?」 すこし不審に思った上条だったが特に追求せず、料理に手をつけようとしたところで携帯がなり始めた。 「ん?悪いみさ…美琴。先食べててくれ、ちょっと電話してくるから。」 「え?う、うん。」 上条は席を立ち、お手洗いの方へ足を運んだ。急に呼び方を変えろといわれてもしばらくは慣れそうにない。いままでも時々美琴と呼んでしまった時もあったが、それは無意識に呼んでいたから特に気にしてなかった。まあ本人が望んでるのでその通りにすることにする。 上条は、お手洗いにはいってから携帯を取り出し、通話ボタンを押した。 PM7 55 上条がお手洗いに入っていったのを見てから、美琴は大きく溜息をついた。 「はぁ…どうしちゃったんだろ私」 あの馬鹿と一緒にいるとどうも調子が狂う。いつもなら一発電撃をおみまいして終わらせるのだが、なぜかそれができない。さっき彼女扱いされたとき、そんなに嫌な気分ではなかった。むしろ少し嬉しく感じでいる自分がいた。この気持ちはどこから来るものなのだろう。妹達の事件以降、私のあいつに対する思いが変わった…そんな気がする。あいつが一方通行との戦いの時に殺されるかもしれない境地に立たされたとき、私は超電磁砲の標準を一方通行に向けていた。打ったら自分がどんなことになるか理解していたはずなのに、あの時確かに思った。 私はどうなってもかまわない。だから、私たちのために戦ってくれているこの少年を助けてください。と……。 つい先日も海原に変装していた能力者(学園都市の書庫には幾ら探しても載っていなかったが)と戦っていた。なにか会話していたようだったが美琴には理解できないところが殆どだった。だが、わかったことが一つだけある。彼らは私、御坂美琴という少女のために戦っていたということを…。 「…なにやってんだろうな私、すごく助けられてるのに。なのに…。」 美琴はぼそっと口に出した。 こんな感じで軽く思いにふけっていると、店の入り口から二人組みのお客が入ってきた。そのご飯時なのでそれ自体は珍しくないが、美琴が気になったのはその二人の顔だった。 「(ん?あの二人…どっかで見たような……?)」 「はい、もしもし上条ですけど。」 『あ、カミやん?やっとつながったわー。』 「なんだ青髪か。何の用だ?」 『今、メシ食いにきとるんやけどカミやんもどや?』 「悪いけど俺も外食中だ。」 『ん?自炊派のカミやんが外食とは珍しいわな。いったいどういう風の吹き回し…ってちょっとまってな。』 後ろの方から「代われ」という声が聞き取れた。少し雑音が混じり、その声の主が出た。 『はぁーい、カミやーん。元気かにゃー?』 「土御門か。お前も一緒だったのか。」 『だにゃー。親友二人の誘いを断るって事はまさか女の子と仲良くお食事なんて素敵イベント中だったりするのかにゃー?』 ぶはぁ!と土御門の言葉に上条は思わず吹き出した。 「なななななにを言っていらっしゃるのですか土御門さん??この不幸の塊の上条さんにそんな素敵イベントが起こる幸運なんて持ち合わせてるわけないじゃないですかー?」 『にゃー。なんで敬語かつ最後が疑問形なんだ?まさか本当に…。』 「そんなわけないだろ!第一仕送り日前の上条さんの家計には余裕の文字なんて存在しないのですよ?」 『そうだにゃー。幾ら節操なしのカミやんでもそんなことないわなー。』 そのあと小さな声で(おそらく青髪ピアスに聞こえないようにするための配慮だろうが)ぼそっと『(大方、禁書目録にでもねだられたんだろ?)』と言ったその言葉に適当に相槌を打って誤魔化す。ちなみにインデックスは小萌先生のところにお泊りに行っている。なんでも姫神も呼んで焼肉パーティをやるらしい。できれば自分もご相伴に預かりたかったが、さすがに小萌先生に悪いし、なにより女三人の中に男一人というのも居心地が悪い。だからインデックスが居ない分、食費が浮いてラッキーと思っていたのだが。 「(結局、美琴に奢る羽目になちゃって、俺自身の値段も含めるといつもとあんまり変わらないんだよな……。)」 『しっかし、旗男のカミやんが抜けるとなると今夜も無理かにゃー?』 「あぁ?なんのことだ?」 『ナンパに決まってるぜよー。』 「………は?」 今この変態シスコン野郎は一体なにを言いやがりましたか? 『ナンパぜよ、ナ・ン・パ』 できれば聞き違いであって欲しかった。自分の数少ない友人達が悲しい境遇に苛まれている事を知ってしまうから。いや、いまさらか? 『にゃー、ここ連日この相棒と街中でいい女を見つけてはアタックしかけてたんだが、これがなかなかうまくいかないんぜよ。店にはいった今も探してるんだけどにゃー?』 「念のためにお聞きしますが、それと俺が一体どういう関係があるってんだ?」 土御門から携帯を受け取った青髪ピアスが言う。 『そんなのきまっとるやん。クラスの女の子やおろか、常盤台のお嬢様までもカミやんの手に堕ちた今!カミやんのその女の子属性を逆手にとって、一緒に行動することでおこぼれを頂戴するというナイスな作戦やで!?』 ちなみに考えたのは俺だぜよ?と、後ろのほうから土御門が答える。もうここまで言われると物も言えない。どうでもいいが、それって自力では彼女なんて作れませんって敗北宣言掲げてるのとニュアンス的に同じなのでは……? 『というわけでカミやん!親友の頼みを聞いてくれ!俺達に春を!青春を!!希望を!!!愛を!!!!正義を!!!!!優勝を!!!!!!ぎゃっ。ブッ ツー、ツー、ツー、ツー、』 これ以上聞いていられなかった。 「はぁ…、なんかさらに疲れた。早いとこ美琴のとこ戻って飯を食おう。」 とある二人の恋愛物語 1日目 PM8 02 美琴はさきほど店内にはいってきた二人の会話を聞いてた。否、聞こえてしまっていた。彼女も聞きたくて聞いているわけじゃない。ただ彼らの声が少々大きかったから嫌でも聞こえてきていた。彼らのテーブルは美琴たちのテーブルの二つ向こうで、しかも店内もそれなりにがやがやしているにもかかわらず、これだけ聞こえるということはよほど大きい声で喋っているのだろう。無視もできたが、上条も帰ってこないし、先に食べているのなんか嫌だったので暇つぶしに聞いていた。先ほどから繰り広げられている会話に美琴はドン引きしていた。一応、美琴は忘れているが一度彼らに会っている。そして彼らは上条の知り合いだったりする。 「あれ?もしもし、カミやん?切られてもうた。」 それはガラの悪そうな二人だった。一人は髪の毛を青く染めていて、耳にピアスを付けてる。服装は上条の制服に良く似ていた。青髪ピアスはツー、ツーとなる携帯を折り畳み、もう一度開いて掛けなおしたが繋がった様子はない。どうやら相手に電源を切られたようだ。 「にゃー、カミやん抜きとなるとやっぱり自力で何とかするしかないぜよ。」 もう一人は短めの金髪をツンツンに尖らせ、薄い青のサングラスを掛けている。服装は地肌にアロハシャツ。下にはハーフパンツをはいている。おまけに首からは金の鎖をぶら下げている。いかにもな不良っぽい格好をしていた。 「せやかてここ1週間、一つも収穫がなかったんよ?どうすりゃええねん。」 金髪サングラスはうーん と顎を右手で押さえて考え始める。青髪も一緒に考え始めた。 「やっぱりアプローチの仕方に問題があったんじゃないかにゃー。今どき『僕達とそこでお茶しない?』なんて切り出し方はないにゃー」 「じゃ、どうすりゃえーねん?」 「じゃあちょっと変えて『僕達とそこでいいことしない?』のほうがいいんじゃないかにゃー?」 「おぅ、斬新やなぁ!なんだか刺激的な感じがするで!」 だろ?と金髪サングラスはキリッとサングラスを掛けなおす。他人から聞いたら如何わしい事をされるのではないかと誤解されかねないアプローチ方法だ。下手したら風紀委員か警備員を呼ばれかねない。だが突っ込み不在のこの会話に歯止めは聞かない。美琴は知る由もないが彼らの問題点はもっと根本的なところにある。 金髪サングラスこと土御門元春は顔自体そんな悪い方ではないが、見ての通りの性格なので自分からチャンスを逃している節がある。先日も少しうまく行きかけていたことがあったが『僕の妹になってください』発言で自ら破滅を招いていた。(去り際に思いっきりビンタされていた。) 青髪ピアスにいたっては、頭がお花畑(抽象的表現でなく)になっている黒髪ショートヘアーの中学生くらいの少女に話しかけたところ、ちょっと会話しただけで泣きながら逃げられていた。しかも一緒にいた常盤台中学の制服を着たツインテールの女の子に痛い目にあわせられ、風紀委員(ジャッジメント)の詰め所に連行されかけた。(彼らは後知ったが、二人とも風紀委員だった。)そんなこんなで二人は変体発言を連発していると店員がオーダーを聞きにきた。 「い、いらっしゃいませ。ご注文は―――。」 顔が若干引きつっているのは先ほどからの変態トークを聞いてしまったからだろう。二人は気づいていないようだが。 「僕(俺)の彼女をください!いや、なってください(にゃー)!!」 「は、はい?」 「にゃー!抜け駆けは許さないぜよ!!」 「それはお互い様やろ!いくら相棒でもゆずれないちゅーの!!」 今日は変な人たちばっかり!イヤー!!と店員は心の中で絶叫していたが、そんなこと露知れず金髪サングラスと青髪ピアスは にゃー!! シャァー!!と、まるで獣のように威嚇しあっていた。 止めに入ろうと思ったが、すぐに店長が来て二人は静かになった。 この光景に美琴はさらにドン引きしたが、それとは別にほかの事を考えていた。 「(つかあの二人、やっぱどっかでみたような気がするよのね……)」 どこだっけ?と、考えたところでちっとも思い浮かばない。こんなインパクトが強い二人、普通なら忘れない。美琴はしらないが、彼らをみた日はさらにインパクトが強いことが立て続けに起こったので彼らの印象が無意識に薄まってしまったのだ。そんなおぼろげな記憶の中を探っていると、あの馬鹿がやっと帰ってきた。 PM8 06 「遅い!10分近くも待たせるなんてどういうことよー!!」 お手洗いから帰ってきたら美琴にいきなり怒られてしまった。あの後ついでに用も足したとはいえ、どうやらさきほどのあほあほトークに以外にも時間を取られたようだ。普段からあほあほトークをしている上条にとってこれは以外だった。自分がしている時はそんな時間は経っていないように感じていたのだが、他人から見るとそうでもないらしい。ということは自分はこんなしょーもない会話で青春という時間を浪費しているのかと思うと少し鬱になった。 「? 何落ち込んでんのよ?」 「いや、わりーわり!思ったより話が長かったんですよー!」 「ったく、すぐ帰ってくると思ってご飯に手を付けないで待ってたのにアンタってやつは!」 「だから悪かった……って、あれ?先に食べてていいって言わなかったけ?それで手を付けずに10分近く待っててくれたのか?そりゃ、まあ、悪かったな。」 「………!?」 美琴はビクッと肩を震わせた。 「ち、違っ……あ、あれよ!ちょ、ちょっと気になる輩がいて気になってただけよ。べ、別にアンタのために待ってたわけじゃ……!」 「じゃあ俺待ってないじゃん。何で俺が怒られなくちゃなら…ってなんで美琴センセーはバチバチ体の周りに帯電させてんのー!?」 「もう!いいから座んなさいっ、早く食べるわよ!」 だからなんで怒ってんのー!?と上条は心の中で叫んだが、これ以上何か言うと電撃の槍が飛んできそうなので、素直に従う。上条が座るといただきますと言って、なぜか不機嫌な顔で勢いよくバクバクと食べ始めた。 「も、もしもーし。み、美琴サン?そんなに急いで食べたら咽ますよー?」 「うるさいわね!もぐもく、あんたもさっさと食べなさい!もぐもぐ」 ものを食べながら喋るんじゃありません。と突っ込もうと思ったがやめた。良く分からないが、こういうときは下手に突っ込まない方がいいと経験上分かっているので、上条は習って先ほど取ってきたウーロン茶を少し飲んでから食べ始めた。ファミレスにしてはなかなかうまかった。だが本来、これはカップル向けで分け合いながら食べるものらしい。一人分にしては量が多いし、フォークとナイフとスプーンが二つずつあった。美琴も同じのを頼んだので実質3、4人分くらいあるはずだ。良くメニューを見ずにとっさに決めたのが完全に裏目に出た。 「(まいったな……俺は食えないこともないけど美琴には多すぎるんじゃ。)」 ……予想通り、前半は飛ばして食べていた美琴も、後半に差し掛かるとなんだか無理しているのがわかる。 「み、美琴?別に無理して食べる事ないんだぞ?」 「う、うるさい…!こ、これくらいどうってこと……。」 美琴はまた食べるのを再会したが、勢いよく掻きこんだせいで咽返った。 「………!!」 苦しそうに胸をどんどんたたいている。 「ほら、言わんこっちゃない。」 上条は美琴が飲んでいた水をとって飲ませようとしたが、うっかり手を滑らして通路にこぼしてしまった。 「あ、ヤベッ…!」 全部こぼしてしまったので新しいのを取りに行こうと思ったが、美琴は水を催促している。 「しょうがねえ、ほら。」 上条は自分が飲んでいたウーロン茶を差し出すと、美琴はそれを奪い取るように、全部飲み干した。 「だから言っただろ、無理して食べる事ない……ってどうした?」 美琴は顔を赤く染めて上条を睨んでいる。 「これ…さっきあんたが飲んでたやつ?」 「ああ、悪い。お前のうっかりこぼしちまったんだった。代わりになんか取ってくるわ。」 上条はこぼして空になった美琴のコップを取り、ドリンクバーのほうへ歩いていく。 「………だから、ちょっとは気にしなさいよ。……ばか。」 あまりに小さな言葉に上条は気づかなかった。 PM8 32 結局、美琴は全部は食べ切れなかった。もったいないからと、上条は残りを平らげようとしたが何故か美琴にかたくなに拒否された。無理やり食べようとしたら美琴にアッパーカット(適度なビリビリ入り)を喰らった。 「1487円になります。、あとこれ、キーホルダーです。よかったらどうぞ。」 店員が渡してきたのはカエルのキーホルダーだった。確か『ゲコ太』とかいうキャラクターだった気がする。 「ほれ。」 キーホルダーの袋を美琴に差し出す。 「え?いいの?」 「いいもなにも、お前これが欲しかったんだろ?」 「……あ、ありがとう。」 美琴はキーホルダーの袋を受け取ると、嬉しそうにギュっと抱きしめた。 「(嬉しそうだな……最近の女の子ってこういうのが好きなのか?)」 それは単に美琴がファンシーな趣味の持ち主というだけなのだが上条は知らない。 「(ま、こいつが喜んだならそれでいっか。)」 上条は財布を取り出し、二千円札を取り出しトレイにおき、店員からお釣りを受け取ろうとしたところでなにか背後から殺気を感じた。美琴ではない。彼女は上条の右側にいる。 では誰か? 上条はおそるおそる後ろを振り返ると血に飢えた獣達がいた。 「つ、土御門、青髪…?」 え、こいつらアンタの知り合い?と、美琴は聞いてきたがそれどころではない。 「カミやーん……親友の頼みを断っておいて自分は常盤台のお嬢様と楽しくお食事ですか。けっこうな身分やなー………?」 口調こそいつも通りだが目が笑ってない。おまけに声もいつもよりずっと低い。 「にゃー…カミやん。俺達、義兄弟の誓いを忘れたのかにゃー……?」 サングラス越しでもわかる。今のこいつの目は獲物を狩る目だ。 「お、お二人さん?ここは一つ穏便にですね……?」 「裏切り者には死、あるのみじゃー(にゃー)!!!!!!!!!!!」 弁解の余地もなく、二人は上条めがけて飛び込んできた。 「ふ、不幸だぁぁあああああああああああああああああああああああああ!!!!」 とある二人の恋愛物語 一日目 PM8 53 上条は日常的に美琴がご厄介になっている自販機がある公園にきていた。迫りくる野獣達か ら命からがら逃げてきた上条は意気消沈気味だった。 (うぅ、不幸だ……。なんだってあいつらピンポイントであのファミレスで食ってんだよ。 しかもあいつらに襲われたおかげでお釣りもらい損ねたし…) 確か、二千円札をだしたから大体五百円くらいだろう。かといって、今からファミレスに戻 っても土御門達と鉢合わせになる可能性が高い。しかし後日言ったところでレシートも受け 取ってないし、毎日大勢の客を相手にしているのだからそんな瑣末なこと覚えていないだろ う。そうなると、上条の元に五百円が戻ってくるのはもはや絶望的である。 (不幸だ…。しかもとっさのことで美琴置いてきちまったし、あいつ怒るかな…起こります よねやっぱり) 「ちょっと!いきなり走って置いてくなんて酷くない!?」 (そうそう、きっとそんな感じに今度あった時罵倒されるかもな…) 「ちょっと?ねえってば。聞いてるの?」 (はぁ…やっと機嫌もなおったのに。やっぱり不幸だー) 「だから…、無視すんなって言ってるでしょこのボンクラァァァアアアアアア!!」 上条はその叫び声でようやく美琴の存在に気づく。そして彼女の前髪から電撃の槍が飛んで くるのもほぼ同時だった。上条はなんとかそれを右手で受け止める。あまりの不意打ちに上 条は少し涙目だ。 「あ、あぶねえじゃねえか!たまにはもう少しやさしく呼びかけるとか肩を叩くとか、そう いう普通の選択肢を美琴センセーは持ち合わせていないんでしょうか!?」 「うっさい、あんたが無視すんのがいけないんでしょうが!あーもう、ムカつく!たまには 素直に喰らってなさい!」 「死ねって事ですか!?」 ぎゃああ! と二人はいつも通りの言い争いを始める。しばらくしてお互い不毛に感じたの か、二人してため息をつき近くのベンチに座り込んだ。 「つか、あいつらが追っかけてこなくなったのはまさかお前の仕業か?」 「そ。まあアンタの知り合いっぽかったし、手加減はしといたわ。って言っても改造スタン ガン押し当てられたときぐらいの衝撃は感じたでしょうけど、まあ死にはしないでしょ?」 「…なんで最後が疑問系なんだ?」 上条は土御門と青髪ピアスの冥福を心よりお祈りしていると、 「あ、そうそう。はい、これ」 美琴はスカートのポケットに手を突っ込み、いくらか小銭を取り出す。大体五百円ぐらいか と上条は見積もる。 (ん?五百円?……!ま、まさか……!!) 「み、美琴さん??ましゃか、ましゃか…?」 「? なんで幼児言葉になっんてんのよ。アンタお釣り受け取らないで逃げちゃったから代 わりに受け取っといたわ。感謝しなさいよね……って、何泣いてんのよ?!」 「美琴…おまえ…やっぱ良い奴だなぁ……グス」 「い、言っとくけど!べ、別にアンタのために受け取ったわけじゃないんだからね!?えっ と…そう!ただ、アンタに貸しを作っといたほうがなんか後々役立つと思っただけ…ってち ょっと、人の話ききなさいよっ!地べたに這いつくばって土下座すんな!」 美琴は思わずスカートを抑える。どうせ短パンで見えないはずなのだが気分的な問題がある ようだ。美琴は上条の頭を軽くひっぱたいて正気に戻すとお釣りを上条に渡した。。 「つかそもそもアンタはなんで逃げていた訳?」 「それを話すとあいつ等の人権に関わってくるから深く突っ込めねえけど、要は俺とお前が 楽しそうにいちゃいちゃしてた(ように見えた)のが気に食わなかったんだとさ」 「………!?」 美琴の顔がに一気に真っ赤に染まっていく。頭からは煙が出てるように見えた。 「い…いちゃいちゃってななななな、なに言ってんのよこのド馬鹿!」 ズバチィ!と凄まじい音がしてさっきよりはるかに強いであろう電撃が上条を襲う。それも なんとか受け止める。正直さっきの不意打ちの時にこれをかまされていたら受け止められた 自信がない。そう思うと上条はゾッとした。 「い、今のはマジであぶなかった…。こらビリビリ!さっきといい、俺を殺す気か!」 「うっさいわね!やっぱアンタムカつく!ここで半殺しにしてやるからじっとしろ!」 「それがわかっててジッとしている馬鹿なんているわけねぇだろうが!」 ぎゃああ!とまたもや言い争う。上条は気付いていないがここは公園だ。何も知らない人が この部分だけ見たら常盤台のお嬢様と高校生のカップルが痴話げんかしているようにも見え るわけで、その証拠に先ほどから上条たちをチラ見してはひそひそ話をしているのがわかる 。そのことに美琴は気付き、恥ずかしくなったのか素直に再びベンチに座り込んだ。 「ふぅ…なんかどっと疲れたわ」 「こっちの台詞だっつーの……」 なにをう?と美琴は軽く睨んできたが上条はスルーする。上条はポケットから携帯電話を取 り出し画面を開く。気付けばもう9時を回っていた。 「美琴、もう遅いし送っていくよ。」 「え?べ、別に良いわよ。子供じゃないんだから一人で帰れるって!」 「いいよどうせ途中まで帰り道だし、常盤台の寮から俺んちだったらそんな遠くないしな」 「い、いやでも…」 「遠慮すんなって、らしくないぜ?おまえが遠慮なんて」 「…し、しょうがないわねえ、素直に送られてやりますか」 「なんだそれ?」 上条は少し苦笑して、ベンチから腰を上げた。チラッと後ろを見た時の美琴の顔がなにか嬉 しそうだった。上条は少し首を傾げたが特に気に止めず、前に向き直った。 「あ、ちょっとまって。喉乾いちゃったからジュース取ってくるわアンタもなんか飲む?」 「あ?いいよ別に」 「こういうときは遠慮すんなっていったでしょ?すなおに奢られなさい」 (やれやれ…こういうことに関しては意地っ張りだよなこいつも…ん?とってくる?ま、ま さか…!) 上条の嫌な予感は的中した。美琴は自販機の前まで行き、息をすぅー と吐くた。そしてち ぇいさーっ!というふざけた掛け声とともに自販機の側面に上段蹴りを叩きこむ。ここまで はいつも通り。だが今日の自販機はとても不機嫌だったらしくジュースが出てこなかった。 そのかわり――― 「あれー?この自販機じゃなかったっけ、おっかしいなー?ってちょっとなに!?」 上条は美琴の手を取り、一目散に自販機から離れた。後ろから聞こえてくる夜の公園の静け さをかき消すような自販機の絶叫と、先ほどまで上条たちが立っていたあたりに警備ロボが 数台群がってくる音が聞こえるが上条は決して振り向かなかった。 PM9 26 上条と美琴はしぶとくついてくる警備ロボの追跡を振り切り、なんとか帰路についていた。 二人で並んで歩いているので傍から見たらカップルに見えなくもないが、今の上条は気にす る余裕などなかった。警備ロボを美琴が操っていなかったら上条は今頃、警備員(アンチス キル)のお世話になり、どうみてもよくて小学生にしか見えない担任教師の小萌先生を泣か せ、後日クラスメイトたちにタコ殴りにされるという結末を辿っていたことだろう。 とはいえ―― 「はぁああああ……、やっぱり不幸だ」 「なにさっきからため息ばっかりついてるのよ。なんか嫌なことでもあったの?」 「そのセリフまじめに言っているんだとしたらその理由、意見、感想を含めて三時間は語り つくす自信がありますよ!ハイ!!」 「むぅ…悪かったってば、まさか失敗するとは思わなかったんだもん……」 美琴は少し俯き加減になって落ち込んでしまった。彼女もいつもやっている事なので失敗す るとは思わなかったのだろう。上条は思わず「うっ!」と怯む。こんな事されたら許さない わけにはいかないじゃないか、こういう時って本当に女の子ってずるいと上条は思った。 「はぁ…もういいよ、わざとじゃなかったんだろ?ならこの話は終わり。だから――」 上条は美琴に慰めの言葉を掛けようとしたら、 「あ、でもアンタの顔はバッチリカメラに撮られたと思うわよ。細工はしたけど私の所だけ 映らないように細工したから」 「俺の慰めの言葉を返せえぇぇぇえええええええええええええ!!」 「くっ、あはははは!!バーカ、冗談よ冗談。なに本気にしてん………くくっ、あはは!! ってジョーク!ジョークだってば!臨戦モードで間合はかんなって!」 「ったく、人がせっかく心配してやったってのに。こいつは」 「あはは、ごめんごめん。でも礼は言っとくわ」 「あ?」 すると美琴は上条の前に回りこみ、 「わたしのこと、本気で心配してくれてありがとね」 それは普段の彼女からはみられないとても柔らかな笑顔で、上条の心を大きく振るわせた。 ドクンと鼓動が高鳴るのが胸にてを当てないでも伝わった。 (………や、やべっ中学生相手になに動揺してんだよ俺、しかもあの美琴だぞ!気を確かに 持て!) 「クスッアンタ、今ドキッっとしたでしょ?いつもの私らしくないって」 「なっ!?」 図星だったので返す言葉が出てこない。うまく回らない頭で言い訳の言葉を考えていると、 「ははっ確かに今のは私らしくなかったかな、でもずっとお礼言いたかったの。良く考えて みたらちゃんと言えてなかったし」 「? なにがだ?」 「妹達(シスターズ)の件やその他諸々のことよ。今更だけどさ私だけではどうにもならなか った。アンタが助けてくれなかったら今頃私はここにいなかった、一方通行に返り討ちにあ って殺されてこの世にすらいなかったはず。今、ここでこうして普通の日常を送っていられ るのもアンタのおかげ、ありがとう」 「ん……まあ……どういたしまして?」 上条は照れ隠しに頭をガシガシと乱暴にかいた。こういうことを面と向かって言われると結 構恥ずかしい。面と向かって直接本人の口から感謝の言葉をかけられるのはこれが始めてで はないが、こういったことは幾ら言われても慣れるものじゃない。 「アンタってホントおせっかいよね、思えば始めて会った時からそう、関わらなくてもいい ような問題に首突っ込んで怪我をするなんて馬鹿のすることよ」 「馬鹿ってお前な…」 「ねえ―――」 「もしまた私が危ない目にあったらさ、たとえ地獄の底でも救い出しにきてくれる?」 上条はこの時強烈なデジャブに襲われた。そう、過去に似たようなことを誰かに言われたよ うな気がした。記憶のない上条にはそれがいつの事だったのかわからない。しかし心はこの 言葉には真面目に返事すべきだと叫んでいる気がした。 「……さあな、俺はただのおせっかいな人だからな」 「………」 「でも、もしもお前がそんな状況になったとしたら迷わず俺は絶対助けにいく。漫画の中の ヒーローみたいにうまくいくかはわかんねえけど、絶対助けにいく。どうにかならなくても どうにかしてみせる。そんな誰かが不幸にならなくちゃならない物語があるんなら、そんな つまんねえ幻想はおれがぶち壊してやる」 上条は自分の右手を一瞥して強く握り締め、上条は笑った。その言葉は何の根拠もなく、乱 雑な言葉だったが、なにか重い信念のようなものを感じた。まるで、なにがあってもこの少 年ならばどうにかなってしまうのではないかと思うほどの力強さが込められていた。たとえ 明日世界が終わるとしても諦めないと言うかのように―――。 上条の言葉を聞いてから、美琴の顔は真っ赤に染まっていた。夏休み最後の日に聞いたあの 言葉と今の言葉が同時に頭の中を駆け巡る。胸の鼓動は上条に聞こえてしまうのではないか というくらいに高鳴っていた。 「な、なななななに言っちゃってくれてんのよアンタ……!ち、ちょっとした冗談だっての に……」 「別に俺は冗談言ったつもりはないぜ?さっきの言葉は大マジだ。いつでもヒーローみたい に駆けつけて、なにがあっても守ってやるよ」 それはある魔術師との約束でもあった。 「――――!そ、そっか…。じゃあ今の言葉、忘れないことね。破ったら背後から超電磁砲 お見舞いしてやるんだから、まあせいぜいがんばんなさい」 それは恐ろしいと上条は思う。あんなもの人体に当たったらそれこそ肉片すら残るまい。い くら幻想殺しで無力化できるとはいえ、右手に当たらなければ意味がない。よって奇襲とい うのは一番怖い。 「じゃあ、はい」 美琴はかばんから袋を取り出し、さらにその中から二つのビニールの小包装を取り出す。さ っきファミレスでもらった『ゲコ太』キーホルダーだ。その内の一つを上条に渡す。 「? さっきのキーホルダー?」 「そ。アンタと私、同じセット頼んだから二個もらえたの」 「これがどうかしたのか?」 「それを肌身離さず持ってなさい。絶対無くさないでよ?約束を交わした証みたいなもなん だから、なんかロマンチックじゃない?こういうの」 「約束の証か、わかった。絶対になくさねえから心配すんな」 そう言うと目の前にいる少女は、 「……ありがとね」 またにっこりと笑った。上条はこの瞬間、『この少女のこの笑顔は絶対に守る。』そう心に 誓った。