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『僕は野菜が嫌いだ』 26KB 制裁 自業自得 野良ゆ ゲス 現代 虐待人間 野菜嫌いはゆっくりに笑われるぞ!みんな野菜を食べよう! 気ままあき 僕は野菜が嫌いだ。 肉は好きだが、でも野菜……特に生野菜はどうしても食べる気がしない。 調味料で味を加えて茹でたり焼いたり炒めたりした野菜は嫌いじゃないんだけど……生だけは絶対嫌だ。 まったくあんな味のしない物を喜んで食べる連中の気が知れない。 日々の食卓で、給食で、たまに家族とファミレスに行ったときにサラダが山盛りで出てくるとうんざりする。 だから僕はいつも野菜だけ残すんだが、そのたびに親に怒られるから渋々食べるんだ。 ドレッシングなんて酢っぱいだけでとてもかけられたもんじゃないから、 僕の場合はサラダにトンカツソースや焼き肉のタレをぶっかけてようやく食べられるようになる。 重ねて言うが僕は野菜が嫌いだ。 健康にいいから食べろと大人達はみんな言うけれど、 現在育ち盛りで充分健康な小学生である僕には理解不能もいいところだ。 あんなものを食べるくらいならフリカケごはんだけで夕食を済ませた方がまだマシだと思う。 だいたい野菜なんて好んで食べるのはあいつらくらいしかいないんじゃないか? そうあいつらしか…… 「むーしゃ!むーしゃ!しあわせー!」 「おやさいはゆっくりできるね!みんなでいっぱいむーしゃむーしゃしようね!」 「むーちゃむーちゃ!ちあわちぇぇぇぇぇっ!ゆっくちー!」 「なかなかとかいはならんちさんね!」 「おきゃあしゃん!あっちにもおやしゃいしゃんがありゅよ!」 「ゆっ!ほんとうだね!いっぱいあるよ!まっててねおちびちゃん! いまおかあさんがほうれんそうさんをじめんがらひっこぬいて、たべさせてあげるからね!」 「むきゅきゅ。やはりくそにんげんはまいにちこのはたけさんにくるわけじゃないようね! いまならおやさいさんはたべほうだいよ!けんじゃなぱちゅのおもったとおりだわ!」 「おやちゃいしゃんはとっちぇもゆっくちれきりゅよ!」 「おやさいさんはとってもとかいはだわ!」 「ぱちゅりーにふしゃわしいあみゃあみゃだわ!」 「「「「「ゆっくり~~~~♪」」」」」 ある日、僕が小学校から歩いて家へと帰っている途中でその光景を見てしまった。 とある畑に野良ゆっくりの一団が入り込んで野菜を食い散らかしているのを。 その畑は住宅地の中にあってそれほど大きなものじゃないから どこぞの人が趣味でやっている家庭菜園という奴だろうか? 喰い散らかしているのはまりさとれいむ、ありすとぱちゅりー……これらが親と子を合わせて全部で10匹ぐらいいる。 そこらの公園に住んでいる野良かな? 野良ゆっくりといえば野菜泥棒の被害が酷いという話を以前聞いたことがあるけれど…… あれも野菜嫌いな僕にとってはあまり共感できない話だ。 ゆっくりがそんなに野菜が好きならば、せめて野菜クズぐらいは食べさせてやればいいじゃないか……と思う。 人間だって野菜を全部残さず食べているわけじゃない。 調理する段階で根とか葉っぱとか不味い部分は切って捨てているんだ。 それらのほとんどは当然使い道のない生ゴミになる。 生ゴミとして捨てるくらいならくれてやればいいんじゃないか? 畑で野菜を育てている人のほとんどは腐って人間が食べられない廃棄野菜ですら ゆっくりには決してあげないというんだから、大人はなんとも心が狭いなあ……と子供心に僕は思うんだ。 しかしそれにしてもこいつら、あちこちに喰いカスを撒き散らせて……とにかく非常に汚い食べ方してる。 だけどその割にはみんなすごく嬉しそうで。僕は眺めているうちに段々と興味が湧いてきた。 畑からひっこ抜いたばかりの土まみれで洗っても切ってもいない不味そうな野菜を これほど心底幸せそうに食ってるとは面白い連中だなと思ったんだ。 僕はふとした好奇心で畑に近付いていった。 「ゆ……ゆゆっ?くそにんげんのちびがこっちにくるよ!」 「きっとおやさいはにんげんがそだてているとかへりくつをこねて、ぱちゅたちのゆっくりぷれいすをうばうきね!」 「なんてゆっくりしていないのかしら!このいなかものっ!」 「にんげんのちびならこわくはないのぜ!さいきょうっのまりささまがせいさいっしてやるのぜ!」 「やっちゃえおとうしゃん!」 「にんげんのくちょちびなんきゃころちてにぇ!」 「れいみゅ、ぷくーしゅるよ!ぴゅくー!」 なんか畑に近付いただけでえらい言われようだ。 僕はただ聞きたいことがあるだけなのに。 「おいおい僕は別に君たちに何もしたりはしないよ。なんでそう威嚇するんだい」 「だったらさっさとここからきえるんだぜ!にんげんのちびはそこにいるだけでめざわりなんだぜぇぇぇぇっ!」 「そう言うなよ。ちょっと君達に聞きたいことがあるから来ただけさ」 「ゆっ?なんででいぶがくそちびのしつもんにこたえなきゃいけないの?ばかなの?しぬの?」 「なあ、お前ら……」 「けんじゃなぱちゅのけいこくにしたがいなさい!はやくきえないとまりさにこうげきさせるわよ!」 「それ美味しいの?」 「……ゆっ?」 僕が指差した先には今しがたこいつらが食い散らかされた野菜たちの無残な姿が転がっていた。 ゆっくりどもは僕が何を言いたいのか、初めのうちはよく分からなかったようだが しばらくするとやや頭がいい(らしい)ぱちゅりーが口を開いた。 「それって……もしかしておやさいさんのことかしら?」 「うん。そのお野菜さん」 「なんでそんなことをぱちゅたちにきくの?」 「いや……そんな洗っても湯がいてもいない生の野菜を食べて本当においしいのかなーと思ってさ。 僕は野菜食べられないし野菜嫌いだからさ。ふと疑問に思ったんだ」 「……」 しばらくゆっくりどもはぽかんと口をだらしなく開いたまま僕を見ていた。 なんだ?そんなに変なこと言ったか僕は? 「……ばかなの?しぬの?」 「え……」 「ばぁぁぁぁぁかっなのぜぇぇぇぇっ!おやさいさんはとってもゆっくりできるんだぜぇぇぇぇっ!?」 「ゆぷぷ!にんげんのちびがこんにゃにばきゃだとはれいみゅ、しらなかっちゃよ!」 「おやさいさんはときゃいはよ!やわらかくちぇ、しゅごくたべやしゅいわ!」 「ざっそうしゃんなんきゃより、はるきゃにあみゃあみゃなんだじぇ!」 「おやしゃいしゃんはしあわしぇーなあじがしゅるごちしょうしゃんなんだよぉぉぉぉっ!」 「え?でもそれにしても生を丸かじりって……」 「はああああああっ?まるかじりがいちばんとかいはなたべかたでしょぉぉぉぉっ!?」 「やめるのぜありす!」 「まりさ……!?」 「にんげんのくそちびにはとかいはなでぃなーのさほうっなんてわからないのぜ!」 「ゆふんっ!そうだよ!でいぶたちはじょうりゅうかいきゅうっだからね!」 「げせんなしょみんにきぞくのしょくじはりかいできないのよ。むきゅきゅ」 「ありちゅはときゃいは!」 「まりちゃもときゃいはのなのじぇ!」 「おやしゃいがきりゃいなにんげんのくそちびはいにゃかもにょだけどにぇ!ゆぷぷぷぷっ!」 「げらげら!こんなにあまあまなおやさいさんがきらいだなんて、このくそちびはまったくゆっくりしてないね!」 「まったく……けんじゃなぱちゅともあろうものが、あまりにていぞくっなしつもんに おもわずあっけにとられてしまったわ」 「おやさいさんがたべられないだなんてこのちびは、したがおかしいにきまってるんだぜ!」 「おちびちゃんたちはあんなすききらいするいなかものになってはだめよ!」 「「「「「ゆっくちりきゃいちたよ!」」」」」 あからさまな侮辱に僕は頭からサーと血の気が引く思いがした。 好き嫌いを怒られたことはあっても、好き嫌いがあるをここまでバカにさあれたことはかつてなかった。 それも人間より遥かに格下であるはずの野良ゆっくりごときに……! 「ゆあ~~ん?なんなのぜそのかおは~~?まりささまにずぼしをさされたからおこったのぜぇ~~?」 「ぎゃくぎれっしてれいむたちにぼうりょくっをふるうきなんだね!まったくゆっくりしていないまけいぬだよ!」 「むきゅきゅっ!わらわれたくらいではらをたててぱちゅたちにぼうりょくっをふるい、 それでじそんしんっをみたそうとするなんてあわれすぎるわね!」 「いくらじぶんがいなかものでなさけないからって、ありすたちにあたらないでちょうだいっ!」 こいつら……!こいつら……! 気が付くと僕はゆっくりどもに背を向けて駆け出していた。 「ゆんっ!にんげんのくそちびがにげていくよ!」 「まりささまのつよさにおそれをなしたんだぜ!」 「おやさいがきらいなにんげんさーん!すききらいはとかいはじゃないわ~~♪」 「むきゅ!ああいうのをおろかなまけいぬというのね!ぱちゅはああはなりたいないわ!おおっあわれあわれ……」 ちくしょう! ちくしょうっ! ちくしょうっっっっ! この日、僕はあのゆっくりどもに復讐する事を誓った。 あの場でゆっくりどもを踏み潰すのは容易かったが、それでは僕の気が収まらない。 暴力で圧倒してもあいつらは僕を見下すことをやめないからだ。 あいつらにとって僕は「ゆっくりできるお野菜を恐がっているバカなガキ」だ。 ならその野菜嫌いを克服してやる! 僕があいつらにリベンジできるのは僕の弱点がなくなった時だけだ。 僕はまずお母さんに頼んで切ってもらった山盛りのキャベツの千切りに挑戦してみることにした。 ゆっくりに美味しく食べられて、僕に食べられない道理はないんだ…… 僕は覚悟してキャベツを口にした。 シャクシャクシャク…… 「……まずい。なんか全然味がしないよ……どこが甘いんだこれ?」 シャクシャクシャク…… シャクシャクシャク…… シャクシャクシャク…… それから数日、僕は朝晩と不味い山盛りキャベツを食べ続けた。 でも……やはりダメだ。どうしても好きになれない。 ゆっくりに食べられてなんで僕には食べられないんだ……?僕はゆっくり以下なのか?と悩んでいると 見るに見かねたのかお母さんが声をかけてきた。 「としあき、あんたそんなドレッシングをなにもかけないキャベツじゃ美味しいわけないでしょ?なにかかけたら?」 「でも……うちにある青じそのドレッシングは僕好きじゃないし…」 「ああ、青じそは私好みのだからね……ならいまから買い物ついでにあんた用のドレッシングを買いにいく?」 「ええーあんなのどれも同じでしょ?」 と思って母と一諸にスーパーに行ったら……あるわあるわドレッシングが山のように。 金胡麻、チーズ、たまねぎ、バルサミコ、オリーブ、ガーリック、梅しそ…… ドレッシングひとつにこんなに種類があるとは思わなかった。 僕はとりあえずためしにいくつか買ってもらうと、さっそくキャベツにかけて食べてみた……が。 「……やっぱりまずい」 それでも嫌々ながら生野菜を食べ続けて一週間…… 僕はある日、父さんにふと言われた。 「としあき。お前最近いつもサラダをポリポリ食べてるなあ」 「え?ああ……いつのまにか癖になったみたいでさ。気が付いたらポテチ感覚でいつも食べるようになっちゃった」 「野菜嫌いのお前が全部残さず食べてるし」 「んーかっぱえびせんみたいな感じ?やめられない止まらないみたいな……」 「……変わったなお前」 「そう?」 そういつのまにか僕は普通に生野菜を食べるようになっていた。 最初は味にこだわっていたけれど、だんだんそれはどうでもよくなってきた。 それよりもきゅうりやレタスやキャベツのあのシャキシャキとした歯ごたえが病みつきになっていった。 ドレッシングの味もだんだん分かってきたっていうのもあるのかもしれない。 気が付けば海草サラダや漬け物の味も理解できるようになっていた。 復讐の時は案外はやく来たのかもしれない。 「むーしゃむーしゃ!しあわせー!」 「うにぇ!こりぇまじうめぇ!ぱねぇ!」 野良ゆっくりどもはあの日のように畑に入り込んで、汚らしく野菜をかっくらっていた。 よく今まで生きていたものだ野良のくせに……でもその無駄に逞しい生命力と悪運に感謝するよ。 だってあのとき侮辱された借りをこうして返せるんだからね。 「むーじゃ!むー……ゆゆっ!ゆっくりしていないくそにんげんがこっちにくるんだぜ!すぐににげるんだぜ!」 「まちなさいまりさ!あのにんげんのちびにはみおぼえがあるわ……むきゅ!おもいだしたわっ! いつかのおやさいがきらいなていのうっのちびよ!」 「ああ、あのくそちびね!おちびちゃんたちのだいこうぶつがきらいなかっぺまるだしのいなかもの!」 「ゆぷぷ~!なんなのそのこわいかおは?またおやさいがたべられないのをれいぶにわらわれたいの?」 僕の姿を確認するなり、好き勝手なことをほざきまくるゆっくり達。 しかし今の僕の心には苛立ちは微塵もない。こんな低俗な連中の挑発などなにもこたえない。 僕はランドセルからビニール袋を取り出し、その中に入っていたキュウリを1本取り出して キュウリをゆっくりどもに見せつけてた。 ゆっくりどもは「それをよこせ」だの「食べられない糞ちびに変わってとかいはなありすがたべてあげてもいいのよ!」とか 好き勝手に喚いている。僕はそんなゆっくりどもをニヤっと笑って… 「むーしゃむーしゃ!しあわせ――――――っ!」 いきなりキュウリを一本、丸かじりに一気に食べた。 それにしても食べながらしあわせーって叫ぶのって難易度高いねえ。 「「「「「ゆっ……ゆゆゆゆゆっ!?」」」」」 いやあ美味い!この瑞々しさとしゃきしゃきとした食感がたまらない。 僕は今までなんでこんなおいしい物を食わず嫌いしていたんだろう! 野菜万歳!いま僕は野菜の味に目覚めたっ! 「……というわけで、僕には野菜嫌いという弱点を見事に克服したよ!もう君達に侮辱されるいわれはないね!」 「ゆっ、ゆゆっ……!?だ、だからどうしたっていうのぉぉぉっ!?くそちびがおやさいをたべられるようになろうが そんなのれいぶたちにはなんのかんけいっもないで…」 「せぇいっ!」 「ゆげぉぉぉぉっ!」 僕は手始めに唾をまきちらして怒鳴り散らす野良でいぶに蹴りをくれてやった。 こうサッカーボールを蹴るような感じでね。 「で、でいぶぅぅぅぅぅっ!?」 「おきゃあしゃぁぁぁぁんっ!」 「ど、どぼじでごんなひどいごとずるのぉぉぉぉっ!?ごのいながものぉぉぉぉぉっ!」 「理由はふたつ。ひとつ、君らはこの前僕をひどく侮辱した」 「む、むきゅ?た、たったそれだけのことで……?じじつをいわれたからってすぐぼうりょくっにうったえるなんて にんげんというなまものはほんとうにやばんね!けんじゃなぱちゅにはりかいできないわ!」 「僕は最初から暴力を振るう気なんてなかったよ?ただ聞きたいことがあったから平和的に聞いただけでさ…… いい気になって先に僕に罵詈雑言を浴びせてきたのは君らじゃん」 「そ、それがどうしたっていうの!ばかなくそちびをわらっただけのことでしょっ!」 「ふ~ん……でも暴力って言うならさ、先に言葉の暴力をふるってきた野蛮なナマモノはそっちじゃないか」 「むきゅっ!?」 「言葉だろうが力だろうが暴力は暴力だろ?僕が最初に君らにやられたから僕はやり返しただけ。 それのどこが悪いんだ?」 「く、くちでいうのとけるのとではぜんぜんちがうでしょぉぉぉぉぉっ!」 「同じだよ。あの日僕はそこでのた打ち回っているでいぶ以上に心に傷を負ったんだ。君らの心無い言葉の暴力でね」 「む、むきゅぅぅぅぅ……!?」 利口ぶっているもりけんの屁理屈には屁理屈で返してやる。 穴だらけの屁理屈でも一応は理屈が通る会話をしておけば、餡子脳のゆっくりに反論なんて思いつきっこない。 特にこのもりけんのような中途半端に頭が回る奴にはなおさらだ。 僕は必死に反論を考えているぱちゅりーをほっといて、子ゆっくりを両手に一匹づつ摘み上げた。 「ゆっ!?おしょらとんでるみちゃい!」 「くろいいなずま!そらとぶまりちゃなのじぇ!」 そしてゆっくりと力を込めてありしゅとまりちゃを握りつぶしにかかった。 「ゆっ!ゆぶぶぶぶっ!」 「く、くるちいのじぇぇぇ……!」 「や……やめなざい!ごのいながものぉぉぉぉっ!ありずのおちびじゃんがいたがっでるでしょぉぉぉぉっ!?」 「おばええええっ!まりさにのおちびになにじでるんだぜぇぇぇぇっ!?」 「何って子ゆっくりどもを握りつぶして殺そうとしているだけだけど、それがなにか?」 「なにがじゃないでしょぉぉぉぉっ!どぼじでぞんなひどいごとずるのぉぉぉぉっ!」 「だってこいつらも言葉の暴力で僕を傷つけたもの。だから制裁だよ!ゆっくり理解してね!」 「りがいなんででぎるがぁぁぁっ!なにがせいさいっだごのにんげんのくそちびぃぃぃぃっ! ごうなっだらさいきょうっのまりざざまが、しつけがなっでないくそちびをがこらしめでやるんだぜぇぇぇぇっ!」 「は、はやぐ……たずげちぇぇぇ……とがいば……とかいばぁぁぁぁ……」 「おちょうしゃ……まりしゃちゅぶれ……ゆびぃぃぃぃっ!」 「おねえちゃぁぁぁんっ!」 「やべでちょぉぉぉぉっ!まりちゃいたがっでるよぉぉぉぉっ!」 「ゆううううっ!もうおこっちゃのじぇ!おねーちゃんをいじめるにんげんのちびはまりしゃひっさつの ぷくーっでころしゅのじぇ!ぷく――っ!ぷくく――――っ!……なんでしにゃにゃいにょぉぉぉぉぉっ!?」 僕は怒り狂うまりさや、ぎゃーぎゃー泣き叫んでいる他の子ゆっくりどもの悲鳴なんかどこ吹く風で両手に力を込める。 大丈夫……まだひと思いに君達を握りつぶしたりなんかしないさ。今はまだ…… 「や、やべろぉぉぉぉっ!これいじょうばりざのおちびにひどいごとずるなぁぁぁっ!ゆあぁぁぁぁぁぁっ!!」 「ありずもとがいはなおちびちゃんをたすげるわ!ゆっくじじないでたずげるからおちびじゃんまっででねぇぇぇっ!」 「あ、そうだ。理由二つめをまだ言ってなかったね?僕が君らを制裁するもうひとつの理由は……」 「ゆがぁぁぁぁぁっ!ゆっぐじじねぇぇぇぇっ!」 「だから理由は……て、ああもうゆっくりは話を聞かないから嫌なんだよ……なっ!」 僕は足元に落ちていた比較的大きめの石を、 半狂乱で僕に向かって突進してくるまりさに向かって思いっきり蹴った。 僕のすぐ足元にまで迫っていたまりさは石を避けられず、その大きな口の中に石が見事突き刺さる。 「ゆぐっ!?ゆげごおおおおおおおおおおおおっ!!?」 「ば、ばりざ……?どうじだのばり………な、なんでいしさんなんかたべてるの……? い、いしさんはゆっくりできないわ?ね、ねえ……」 「ゆが……ゆががが……が……」 「ま、まりさぁぁぁっ!?どぼじでおへんじしてぐれないのぉぉぉぉぉっ!?」 石を食わされたまりさは白目を剥いて気絶したみたいだ。 ありすはどうしていいのか分からずまりさのそばでウロウロするばかり。 僕はすかさず、そんなありすの頭の上に足をのっけた。 「な、なにをするのっ!このきたないあしをありすのあたまからどけなさい!このいなかも……ゆぐぶぶぶぅぅぅぅっ!?」 「改めて言うね?君達を制裁するもう一つの理由はね。こんなに美味しい野菜が、君ら野良ごときに 汚く食い散らかされるのが我慢できなくなったから、さ」 「や、やっぱり……おやさいをひとりじめずるぎ……なのね!」 「独り占めも何も大人の人達が地面を耕して、肥料くれて、種蒔いて……て作ってるものだし」 「またぞのへりくつなの!ごのいながものっ!おやさいさんはがっでに……ゆごぉぉぉぉっ!?」 「君達の屁理屈も大概だと思うけどね。まあ別に理解してもらいたいわけじゃないし、そろそろ潰すよ」 「や、やべ……ろぉぉぉぉ……!ご、のいなが……いながものぉぉぉぉぉっ!」 「じゃあね。ばいばい」 僕はそのまま体重を込めてありすを踏み潰そうとした……と、その時! 「むきゅっ!おまちなさい!それいじょうのひどうはこのけんじゃなぱちゅがゆるさないわっ!」 「あれ立ち直ったの?でも今はありすの制裁で忙しいんだ。もりけんの始末は後で必ずしてあげるから そこで大人しくしててよ」 「ゆぶっ!ゆぶぶぶぶぶぶぅぅ……っ!た、たずげ……ぱちゅりー……」 「むきゅっ!そうはいかないわ!くそち……にんげんさんはひとつ、おおきなまちがいをおかしているのだからね!」 「……間違い?」 僕が怪訝な顔をしてぱちゅりーの方を向いたことに脈ありと思ったのだろうか。 もりけんぱちゅりーは得意げになって僕の間違いとやらを指摘してきた。 「おやさいはゆっくりしているわ!それはく…にんげんさんもゆっくりりかいしたわよね?」 「まあね」 「ゆっくりできるおやさいはみんなでわけあうべきなのっ!みんなでなかよくむーしゃむーしゃしてこそ ゆっくりできるのよ!」 「はあ……で?何が言いたいの?」 「まだわからないの?これだからていのうっなくそちびはこまるのよっ! いい?ゆっくりできるおやさいさんはみんなのものなの!けしてひとりじめにしていいものではないわっ! おやさいさんのゆっくりにめざめたちびにんげんなら、ぱちゅのいってることがりかいできるはずよっ!」 「えーと……」 「ゆっくりりかいしたら、おちびちゃんとありすをはなしなさい!そしてくそちびがやばんにもけがをさせた まりさとれいむをちりょうっしてごめんなさいをするの!どげざでいいわっ!すぐしなさい! そうしたらしなないていどのせいさいっでゆるしてあげなくもないわ!むきゅっどれいにしてあげてもいいわよ!」 「……」 まいった……屁理屈で返された。 こういう場合はどう言い返せばいいんだろう? ドヤ顔してふんぞり返っているもりけんを問答無用で潰してもいいけど、 それじゃ口で勝てないもんだから逃げたんだと他のゆっくりどもに思われそうでなんか嫌だ。 「さあっ!ぱちゅのしんりっをりかいしたのなら、はやくぱちゅのいうとおりにしなさい!このぐず!くそちび!」 「む、むう~~~」 もりけんは僕に屁理屈の反論を考えさせる時間を与えないつもりらしい。 次から次へと大声でギャ―ギャ―怒鳴ってくる。 どうすればいいんだ……こんな場合の反論のお手本なんて小学校のゆっくり安全教室じゃ教えてくれなかったぞ。 そして僕が思わず、うかつな一言をつい言おうとしたその時ー 「悩むな少年っ!君の信念はそんなゆっくりの戯言でゆらぐものではないッッッ!」 突如、背後から聞こえた大人の人の大声。 思わず僕が振り向くと……そこには鍬を担いだ、ただのお兄さんが立っていた。 「むきゅっ!なにものっ!?」 「この畑の持ち主ですがそれがなにか?」 「むきゅぅぅぅぅぅっ!?」 「なーにがみんなのものだよ。お前らは他人のモノだって知った上でコソ泥同然に俺の畑に入り込んで 野菜を食い散らかしていたくせに。舐めた事抜かすなや」 「お、おやさいはみんなのものなのよ!だ、だからぱちゅたちのものでもあるのよぉぉぉぉっ!?」 そうだ。そこを崩せないと潰しても、もりけんの意見が正しいものになってしまう。 痛めつけても殺しても正論を不当な暴力で弾圧したと、こいつらはそれを心の拠り所にして死んでいく…… ダメだよ。こんな連中にわずかなゆっくりでも感じさせたらダメだ。 徹底的に絶望させなきゃ意味がないんだ。 僕がわざわざ野菜嫌いを克服してからリベンジしにきた理由もそこにある。 でもお兄さんは、そんな僕の考えていることをおおよそ読み取たのか、僕に向かってにっこり微笑んでこう言った。 「君は子供のくせに生真面目な考え方するんだな」 「え、わかるんですか?僕の考えていること……」 「なんとなくね……こういうのはそんなに難しく考える必要はないんだ。所詮はゆっくりの戯言…」 「むきゅぅぅぅっ!きいてるの!おやさいはみんなの……」 「そうだよ!みんなのものだよっ!」 「むきゅっ!?わ、わかってるんじゃない!そうよおやさいは……」 「お野菜はみんなのものだよ!……でも糞饅頭、てめーは駄目だ」 「ぱちゅたちのものでも………は?はああああああああっ!?」 「お前らの言う『みんな』はゆっくりだけが対象だろ?ゆっくりが人間や犬や猫、カラスに食い物を分けるか? 『みんな』の中に入れているってのか?え?」 「ゆうううううっ!?ぞ、ぞれ……は……」 「それと同じように人間の言う『みんな』は人間だけが対象なのさ!だから人間同士でお野菜はわけるよ! みんなで一諸に食べてゆっくりするよ!でもゆっくりは『みんな』の中に入ってないからわけてあげないよ!」 「む、むきゅ?むきゅきゅ……?むきゅぅぅぅぅぅぅっ!?」 あーなるほど……そうやって返せばいいのか。勉強になるなあ 確かにゆっくりがゆっくり以外の他の生き物に食べ物を分けてあげるなんて事はまずない。 ぱちゅりーにとっては痛い所を突かれたって感じなんだろうな。 「ぞ、ぞんなぁぁぁぁっ!ず、ずるいよにんげんばがりいいいいいいいっ!でいぶたちだっておやざいたべだいっ! たべだいっ!たべだいっ!たべだいよぉぉぉぉっ!」 「おやざいは……ばりざのごはんざんなの……ぜぇぇぇ……よこどりずるやつはゆっぐじ……じねぇぇぇ……」 「うっせえよ」 「ゆぎゃらばぁぁぁぁっ!」 お兄さんがいつのまにか起き上がってたまりさを蹴飛ばした。 口の中にまだ入っていた石と、折れた歯を吐き出しながら飛んでいく野良まりさ。 「お前らは見つけた物を手当たり次第になんでもかんでも独り占めにしようとするじゃねえか。 自分のことを棚に上げていっちょ前に人間様のやることに文句つけてんじゃねえよ」 「ゆっ!で、でいぶはにげるよ!ちびどもはゆっくりおとりになっていってね!」 「にゃ……にゃにしょれぇぇぇっ!」 「いやらぁぁぁっ!おきゃーしゃんきゃわいいれいみゅをおいてかにゃいでぇぇぇぇっ!」 「うるさいよ!あしでまといのくずどもはしね!やくたたずのばりざやありずといっしょにしねっ!」 あらら比較的ダメージが低いでいぶが子供を見捨てて逃走を開始したみたいだ。 さすが自分勝手な性格に定評のあるでいぶ。汚い。実に汚い。 ヒュンヒュンヒュン………! と、その時なにか風を切る音が聞こえた。 音がする空中を見ると、お兄さんが投げた草きり鎌が放物線を描いてゆっくりとでいぶの方で飛んでいくのが見えた。 そして狙ったようにでいぶの目の前の地面にざくっ!と突き刺さる。うーん何気に名人芸だね。 「ゆ、ゆぴょぉぉぉぉぉっ!?」 「まさか……逃げられるなんて思ってないよな?ここまで俺の畑を荒らしておいて……なあでいぶさんよォ~?」 「ゆっ、ゆっ、ゆあ……ゆああああああ……」 でいぶはおそろしーしーを滝のように噴出して、もみあげを上下にせわしなく振っている。 あまりの恐怖に体が動かない、頭がまっ白でなにも考えられないって感じだ。 「なあ少年、君はこいつらをどう制裁するつもりだったんだい?」 「え?どうって……普通に踏み潰してゴミ箱に捨てるつもりだったんですけど」 「うーん、それじゃあ足りないなあ……よければ俺に制裁をまかせてくれないかい?野菜の恨みもあるし」 「ええ、まあ……別にそれはいいですけど…」 「ありがとう。じゃあ任せてもらうよ」 お兄さんは僕にお礼をを言うと、でいぶに向かって歩いていく。 そしてでいぶを両手で掴んで顔を自分に向けさせると、いい事を思いついたとでも言わんばかりの笑顔でこう言った。 「……決めた。お前たち全員胴付きにしてやるよ♪」 僕はそのお兄さんを見て、凄まじく底意地が悪そうな怖い笑顔だなあと思いました。 「やあみんなおはようっ!今日もみんなで仲良くゆっくりしてるかい?」 「ご……ごろじ……で…もうごろじでぇぇぇぇ……」 「どぼじ……で…」 「ゆべぇぇぇ……」 「いだいぃぃぃ……いたすぎるのじぇぇぇぇ………!」 「もうやらぁぁぁ……」 「ごんなのとがいばじゃないぃぃぃ……」 「むぐぅぅぅ!むぐぐぅぅぅぅ……!」 僕は通学路の途中にあるあの畑に休みの土日以外、毎日顔を出している。 その畑には胴付きのゆっくりが「10本」立っているからだ。 それはかつてこの畑で野菜泥棒をしていた野良ゆっくり達のなれの果て。 お兄さんは竹ざおでゆっくり達の底部から串刺しにして竿ごと地面に突き刺した。 そしてゆっくり達の下の部分に横に棒を組み合わせて、その上に古着と軍手で胴体らしく見えるようにしたんだ。 まあ要するに案山子なんだけど、この姿は確かに胴付きと言えなくもないよね。 自ら動くことはできないし串刺しにされてるからものすごく痛いだろうけど。 さらに畑に放置でしょ?一月はものすごく寒いし夜は特に地獄なんじゃないかなあ。 お兄さんが最低限の延命処置をしているらしいけどよく死なないよね。 丈夫な竹の棒をしっかりと地面に突き刺しているから野良ゆっくりが身じろぎした程度じゃ 倒して逃れることはできないみたい。 もりけんぱちゅりーは口にガムテープを張って生クリームを吐かないようにしている。自殺防止なんだってさ。 お兄さんは一思いには殺さずとことんまで苦しめてから殺すつもりなんだ。 精魂込めて育てた野菜を無残にも食い散らされた恨みは相当なものみたいだね。 あれから5日……はじめの内はギャ―ギャ―元気に騒いでいたゆっくり案山子どもも 今ではこうして自ら死を懇願する有様だ。 ところでみんなは案山子をなんの為に置くのか知ってるよね? そうカラスなどの害獣避けのためさ。でもこのゆっくり案山子はどうかな……? お、ちょうど都合よく向こうからカラスが4~5羽飛んできたよ。 「ゆっ……?や、やべでね……?からすさんごっちごないでね!」 「がらずざんはゆっくじでぎないぃぃぃぃぃっ!」 「ごないでね!ごないでね!まりちゃぷくーっちゅるよ!ぷきゅー……ゆぴやぁぁぁっ!あんよがいだいぃぃぃっ!」 「もういやらぁぁぁぁっ!」 「いだいっ!やべっ!ありずをたべないでぇぇぇぇっ!ごんなのとかいばじゃないわぁぁぁぁっ!」 「もうやだ!おうちかえりゅぅぅぅぅっ!」 最初のうちはゆっくり案山子が騒ぎ立てるんでカラスも畑に近寄らなかったんだけどね。 声の主が無力なゆっくりだと分かるとカラスがクチバシでつつきに来るようになったんだ。 おかげでカラスどもはゆっくりを痛めつけて食べるのに夢中で畑の農作物には見向きもしなくなった。 これはこれで案山子としての役割は果たしている事になるのかな? 串刺し+毎日カラスによる攻撃でゆっくりどもはもう虫の息。 雨でも降ればさっさと楽になれるんだろうけどねえ…… あいにく最近は晴れてばかりで雨が降る気配はまったくないんだなこりゃ。 「おにーざん!おにーざん!ばりざだちをたずげてぐだざいっ!」 「ひどいごといっでごべんなざい!でいぶだちがげすでじた!ゆっぐりはんぜいじでいまず!はんぜいじで…ゆぎゃあああ!」 「ありしゅもゆっくちはんせいっちたきゃらぁぁぁぁっ!」 「むぐーっ!むぐぐぐぐ~~~~~っ!」 「ゆんぎゃああああ!まりしゃのこのよをみとおすせんりがんっなおめめがぁぁぁぁっ!」 「やだぁぁぁっ!もうごんなのいたいいたいのはいやだぁぁぁっ!」 おっといけない、いつまでも見物していたら学校に遅れてしまう。 名残惜しいけどもういかないとね。ゆっくりのせいで遅刻なんて洒落にならないよ。 じゃあねゆっくり案山子くん達。生きていたら下校時にまた会おう♪ 「あああああああっ!いがないでいにーざん!ばりざをだずげでぇぇぇぇっ!」 「とがいば!とかいばぁぁぁぁぁっ!」 「おうち!ゆぎゃっ!おう……ゆぎぃぃぃ!おうちがえるぅぅぅぅぅっ!がえらぜでぇぇぇぇっ!」 「むぐぐ~~~~!むぎゅぅぅぅぅぅぅぅっ!」 僕は背後から聞こえる心地よい悲鳴を後に、小学校に向かって駆け出していった。 まったくいい気味だ。ざまあみろと言ってやりたい……けど。 嫌いな野菜を食べられるようになったのはやはりゆっくりにバカにされたおかげかな? ま……そこだけはほんの少し感謝してあげてもいいか。 お野菜が大好きな野菜泥棒の野良ゆっくり達、ゆっくりしていってね! 「「「「「ゆっくりでぎないぃぃぃぃぃぃっ!」」」」」
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『とてもたくさん(300)』 19KB 制裁 戦闘 同族殺し 共食い 群れ 希少種 自然界 人間なし 7作目 ネタ パロディ? 「赤いリボンが妬ましいわ……」 その奇妙なゆっくりの口からそんな言葉が放たれた。 とてもたくさん(300) 人里離れた森の中、いや近くには人間の勢力範囲は存在せず、ただ雄大な自然のみが広がっている。 そんな森の中は様々な動物植物が生息していたが、ゆっくり達の楽園にもなっていた。 ゆっくりと気ままに暮らしていた彼女達だが、数が増えれば当然の流れとして様々なゆっくり間の争い、揉め事がおきしばらくすると小規模~中規模のまとまり、群れを作るようになっていた。 これはそんな群れの一つのお話である。 その群れの長は他のものより一回り大きなれいむだった。 「ゆぷぷ、れいむほどゆっくりしたゆっくりはいないね!」 ここでは彼女の事を「れいむだす」と呼ぶことにしようと思う。 れいむだすは単独で暮らしている頃から、他のゆっくりより恵まれた体躯を生かして周辺のゆっくりの間で好き勝手に生きていた。 お腹が減れば他のゆっくりのおうちへ行って置いてある食料を奪い取る。 眠くなれば他のゆっくりのおうちのへ行ってそこにあったおふとんを使って眠る。 珍しいあまあまな木の実を手に入れたものが居れば、そのゆっくりの所へ行って強請り取る。 そんあ生活を続けるれいむだすは、 「れいむ!それはまりさのごはんなのぜ、れいむもむーしゃむしゃしたいなら、じぶんでかりにいくのぜ!」 「ゆう、なんでありすのつくったとかいはなべっどさんがなくなってるのぉ、あ、れいむあなたねかえしなさい!」 「むきゅれいむ、あなたきょう、まりさのおちびちゃんのもっていたきいちごさんとったわね、かえしてあげなさい!」 そんな生活に諫言してくれる周囲のゆっくりを無視する。 「ゆ、なにいってるの?まったくみんなゆっくりしていないね、みんなれいむをみならってね!」 そんなれいむだす周りには、同じような考えを持つれいむ達が集まりだしていた。 集団になってさらに周囲への被害を広げるれいむだす達、周りのゆっくりむ堪忍袋の尾が切れかかるが。 その時期森のゆっくり達はそれぞれの地域ごとに集まり群れを形成しており、バラバラでいるとの危険性に気が付いたため。 れいむだす達の集団も含めた群れの設立を考えることになった。 しかしそれが命取りであった、元々ある程度の集団を形成していた勢力が、新しく創る群れの中に既に存在しているのである。 その集団の勢力が大きかったことも災いし、地域のゆっくり達の群れはすぐさま乗っ取られ、事実上のれいむだす達れいむ種の群れになってしまった。 「すぱゆた」新たに群れの長となったれいむだす、彼女はその新しい群れにそんな名前をつけた。 反感を持つゆっくり達もその時には既に周辺地域では群れが創られており、そちらに今から行っても新参者として扱われることが分かりきっていたため逃げることすら出来なかったのだ。 れいむだすは、それまでの自分の生活を変える気は、群れの長となってもさらさら無かった。 彼女達の価値観は基本的にゆっくりすることであり、そのためならば他の事を犠牲にしてもなんら問題視する事は無かったのである。 「ゆぅ、みんなはやくでいぶのゆっくりをみならってね、まったくえらくってごめんね!」 こんなれいむだすの言葉で、何もしないでただゆっくりしているだけのれいむ達が重用され、真面目に群れのことを考え掟の整備食料をの備蓄を考えるぱちゅりーや道具の製作に優れるありす、身軽で探索に適したちぇんなどが省みられることは無かった。 群れの掟はただれいむ達がゆっくりする事だけを考えて作られ、他のゆっくりをその為に働かせ、自分だけがゆっくりしてその事から「自分達はゆっくりしている、だから偉い」などと言い放つれいむ達に嫌気が差したのか、群れからぱちゅりー、ありす、ちぇん、みょんなどが逃げ出していく。 唯一の例外がまりさ達だった、れいむと同様に群れの中では最大規模の数を持つまりさ達だが、彼女達もれいむには苦しめられていた。 しかし、まりさ達の多くはれいむを番にしていたのである、特に子供が居れば逃げることは出来ない。 しばらくすると、すぱゆたはれいむとまりさの群れになっていた、他はれいむを番にしていたごくごく少数だけである。 その頃は母にもなっていたれいむだすは、群れの教育制度にも手をつけ始めた。 「ゆ、ゆっくりしているでいぶがおちびちゃんをきょういっくするよ、ははのたつじんでごめんね!」 そう言って群れの子ゆっくりを集めだす、一箇所に集められた子ゆっくりが教えられるのは、 「ゆぅ、でいぶににたおちびちゃんはとってもゆっくりしているよぉ、おちびちゃんたちはゆっくりしていてえらいから、ゆっくりすればいいからねぇ!」 「まったくやくたたずのまりさににたおちびちゃんはゆっくりしていないね、でいぶはかんだいだからゆるしてあげるよ、はやくかりにいってでいぶたちをゆっくりさせてね!」 これだけであった、それ以外の子ゆっくりについては、ゆっくりしていないと言う理由で森のにあった穴に連れて行き落してしまったのである。 「わきゃらないよーやめちぇねやめちぇねたきゃくてきょわいよ!」 「いやよぉ、こんにゃところいにゃかものよぉ!」 「むきゅ、やめちぇえ、エレエレ!」 「ゆぷぷ、ゆっくりしていないおちびちゃんは、しんでゆっくりしたでいぶになってからうまれてね!」 そんな事が続き、群れは完全にれいむとまりさだけの群れになってしまう。 しかしそんな二種のゆっくり達の待遇は大違いであった、食料を独占に普段はゆっくりだけするれいむ達は醜く超え太り。 毎日ひたすら狩りに走り回らされ、持って来た戦果を奪い取られそれでなお文句を言われるまりさ達はやせ細っていった。 「もうがまんできないのぜ、まりさはこんなむれからでていってやるのぜ!」 そんな不満がまりさ達から上がるのも不思議ではなかった。 この群れでは夕食は全てのゆっくりが一堂に会してする決まりになっていた、ある日そんな夕食の席でその不満をあらわにしたまりさが居たのである。 このまりさはれいむを番にしてしまい、子供が生まれたかため逃げられなくなっていたが、常日頃からのれいむ達の態度には鬱憤が溜まっており。 さらに自分のまりさ種のおちびちゃんが、れいむ達によって酷い目に合わされていることを知ってしまったため、このよううな態度に出たのである。 「ゆぅ、なにいってるのでいぶさまにひきいるすぱゆたにもんくがあるっていうの?」 「あたりまえなのぜ、れいむたちばっかりゆっくりして、まりさたちはぜんぜんゆっくりできないのぜ!」 「あたりまえでしょう、でいぶたちはとってもゆっくりしたせかいのしほうたるゆっくりなんだよぉ!」 「ゆっくりできないまりさたちも、とくべつにつかってやってるんだよ、かんしゃしてね!」 「それにおちびちゃんがいるんだから、まりさたちがかりをするのがあたりまえでしょ!!!」 「そんなのれいむがいっているだけなのぜ、まりさたちはまりさににたおちびちゃんといっしょにでていくのぜ!」 凄まじい表情でまりさを睨むれいむだす、その視線に真っ向から対峙するまりさ、後ろのまりさ達も同意するかのような表情をしている。 するとれいむだすはそれまでの表情を急に緩め、優しげな声で言った。 「ゆぅ、わかったよまりさたちのこともちゃんとかんがえるよ、つよいまりさはゆっくりしているしね!」 「ゆぅ、わかってくれたのかぜ!」 まりさ種はれいむ種より身体能力に優れている、その事にれいむ達が恐れをなしたのか矛を収める様子に満足するまりさ。 「そうそう、じゃあつよいまりさはれいむとおんなじにするよ、つよいまりさはまえにでてね!」 「「「ゆぅ、それならまりさなのぜ!」」」 数匹のまりさが前に出る、その顔は自分の強さへの自身と、これでゆっくり出来ない生活が終わると言う希望に満ちていた。 「ゆぅ、うっくりできないまりさはさっさとしんでね!」 途端にれいむだすの体当たりが先頭のまりさを捉えた、弾き飛ぶまりさは近くの木に激突する。 「ゆぎぃ!」 「ゆあぁ、なにをするのぜ!」 「うるさいよ、やっぱりまりさはゆっくりできないね!」 仲間のまりさが攻撃されたことに驚きを隠せないまりさ達、続けてれいむだすの体当たりがそんなまりさを打ちのめす。 その頃には他のれいむ達も参加しだし、前に出た数匹のまりさはあっという間に餡子の塊にされてしまった。 「ゆぷぷぷ、やっぱりでいぶがさいっきょうのゆっりなんだね、ゆぷぷ、ゆ、これはあまあまだよ!」 「でいぷもたべるよぉ、し、しあわせ~!」 「でいぶにもたべさせてね、うめめっちゃうめ、まりさもすこしはやくにたつね!」 そんな狂気の宴に群れのまりさ達はおそろしーしーを流していた、まりさ達の反乱はこうして失敗に終わることになった。 「すぱゆた」はこうして群れとして安定することになる、ひたすらにゆっくりを追求するれいむたち、それを支えるまりさ達によって、ある意味歪んだ安定を勝ち取ったのである。 一見即座に破綻しそうなこの群れも、おうちの建造に優れるありす種や道具を使いこなすみょん種がいない事から、大きなおうちを作ることが出来ない事と、ぱちゅりー種が居ない事もあって備蓄の概念を持たなかったことから。 食料はその日に集めたものをその日に食べるを繰り返しており、食料が常にギリギリな事からすっきりーをする番が通常の群れより少なかった事から、危うい天秤の上に乗っていたのである。 そんな生活がしばらく続いた頃、森に住むゆっくり達に一つの噂が広まった。 森の外にある大きな群れが、この森の群れを襲うようになったと言うのである。 他の群れとはほとんど付き合いの無い「すぱゆた」にもこの噂が流れてきた事から、非常に広まっている噂であると考えられた。 森の様々な群れはそれぞれこれに対する対策として、相互補助の同盟を結ぶ事が多く、れいむだすの元にもその使者が訪れていた。 面倒くさがるれいむだすだが、何かあったときは使えばいいとその同盟を結ぶ事になる、その内容は森の外からの侵略があった場合相互に援軍をだすと言うものだった。 (ゆぷぷぷ、ばかだねそんなのくるはずがないよ、まぁきたとしてもむてきのでいぶがまけるわけないね!) れいむだすは内心そんな事を考えていたのである。 これまで平和だった森に侵略者など来るはずが無い、きっと誰かが不安から言い出した事だろうと…… そんな考えはあっさりと外れる事になる。 ある日れいむ達が森で日向ぼっこに興じていると、騒がしい声が聞こえる。 「ゆぅ、うるさいねひなたぼっこのじゃまだよ、しずかにしてね!」 まどろんでいるれいむだすの元に駆けてきたのはあの隣の群れの使者のちぇんであった。 「たいへんだよー、てきだよ、てきがきたんだよー"どうめい"によってえんぐんをようせいするよー!」 慌てた使者ちぇんが話したことによると、例の森の外からの侵略者が来たそうである、最初は降伏勧告の使者が来たが。 それを追い払うと「とてもたくさん」のゆっくりが攻めて来たと言うのだ。 「ちぇんたちのむれよりたくさんだよー、れいむたちもきょうりょくしてねー!」 必死に訴える使者ちぇん、しかしれいむだすはそんな言葉を煩わしそうに聞いていた。 それまで日向ぼっこをしていたれいむだすは眠かったのである。 「わかったよ、でもいまからだととちゅうでれみりゃがでるから、あしたのあさしゅっぱつするよ!」 適当に答える、使者ちぇんは不満そうだったがしばらく悩むと自分の群れへ戻っていってしまった。 「まったくゆっくりしていないちぇんだよ、でいぶはゆっくりぽかぽかさせてもらうよ!」 そんな事で昼寝に入ってしまったれいむだすは、コロっとこの事を忘れてしまい、数日が経ってしまった。 群れのまりさから、使者ちぇんの用件が何だったのか聞かれて初めて思い出し、 「よわいとなりのむれが、ないてたのんできたから、みんなでたすけにいくよ!」 そう言ってれいむだけを引き連れて隣の群れに向った、すると途中に明らかにゆっくりの争いが起きたと思われる場所が見つかった。 死体こそ片付けられたのか見当たらないが、あたり一面にゆっくり出来ない臭いが充満している。 他のゆっくりならすぐさま逃げてしまっただろう、しかしれいむだす達は違った。 「ゆぅ、これならきっと、あったよぉぺーろぺろ、あまあま~!」 以前のまりさの反乱でゆっくりの味に目覚めていたのである、群れのゆっくりを殺して食べる事こそ無かったが、野生では貴重なあまあまである。 直ぐにれいむ達は木や地面に残るあまあまをなめ始めた、餡子、チョコ、カスタード、生クリーム様々な甘みが感じられる。 特にれいむ達も見た事が無いあまあまは強烈な甘みでれいむ達の餡子を揺さぶった。 辺りに飛び散った割合から見れば、これが侵略してきた敵の中身なのだろう。 「ゆぷぅ、もりのそとにはすごいあまあまがあるんだね!」 その日はそれで満足しておうちに戻ってしまい、森の外からの侵略者はれいむだすの頭から忘れられる事になる、ただ強烈な甘みの記憶を残して。 それから再びゆっくりな生活を送る「すぱゆた」に奇妙なゆっくりが現れたのはそれからしばらくしてからあった。 「赤いリボンが妬ましいわ……」 ありすともまりさとも異なる色の金髪、顔の横には尖ったもの、緑の目を持つゆっくりは開口一番にそんな言葉を口にした。 分かりづらいがこれが降伏勧告であった、このゆっくりこそ森の外からやってきたゆっくりだったのである。 そんな言葉に対するれいむだすの返答は拒否であった。 「ゆあぁ、なにいってるのそっちがれいむたちのどれいにしてくださいっていうなら、とくべつにしてあげるよ!」 激昂してそのゆっくりを叩き潰すれいむだす、つぶれてしまったそのゆっくりからは、あの時味わったあまあまが流れ出していた。 「ゆぅ、あのあまあまはこれだったのだね、むーしゃむしゃしあわせー! 他のれいむ達も集まってきてむさぼり喰らう、直ぐに足りないと文句が上がる。 「ゆゆゆ、こうなったらさいっきょうのでいぶたちで、このてきをやっつけてあまあまをむーしゃむしゃするよ!」 「「「「「「ゆっゆおー!!!」」」」」」 そうして士気を上げたれいむだす率いる「すぱゆた」のゆっくり達は森の外からの侵略者を撃退に向った。 総兵力はエリートれいむ300匹、槍(木の枝)まりさ200匹、数としては多くは無いがれいむ達はエリート化(でいぶ化)した体の大きなゆっくりである。 敵の情報も何も知らないれいむだす達はただ森の外の方角を目指した。 れいむだすは以前に使者ちぇんが言っていた敵の群れの名前を思い出していた、その群れは「ぱるしあ」と言った。 しばらく進んだ先でれいむだす達はこちらに進んでくる敵を発見した。 誰とも無くそれが敵である事が分かった、なぜなら敵は全てあの奇妙なゆっくりであったからである。 森の木々の先があの金髪で埋め尽くされている、まるで暗闇から黄金が湧き出してくるかの様な、そんな光景に目を取られたれいむだす達、我を取り戻し吼える。 「ゆぉぉ、みんなあれがあまあまだよぉ!いまこそれいむたちのさいっきょうをしょうめいするよ!」 「「「「「「ゆっゆおー!!!」」」」」」 (ちょちょっとおおいね、てきがたくさんだよ……でもれいむたちだってとてもたくさんだよ) 眼前を埋め尽くす敵に一瞬恐れおののくれいむだす、しかし直ぐに自分の仲間たちをを見て、自分達の数も多い事に安堵する。 「「「「「「ぱるぱるぱるぱるぱるぱる……」」」」」」 前方からはあのゆっくりが何かを呟きながら進んでくる、れいむ達は知らなかったがこの時の「ぱるしあ」の総兵力は100万を超えている。 ゆっくりの数の概念では比べる事すら出来ない戦力差があった。 士気軒昂なれいむだす達だが、明らかに眼前を覆う敵に突撃する事は出来なかった、そのために一箇所に固まり敵を迎え撃つ事になる。 れいむだす達には一つ幸運があった、森で闘いに入った事によって木々が邪魔をして完全に包囲されることが無かったのだ、不意の会敵にも関わらず有利な戦場であった。 「ゆあぁ!」 「ゆっくりしないでさっさとしね!」 木によって作られた十字路のような場所で、その一方から来る敵を体当たりで撃退する、これまでの生活によって得た大きな体は質量と言う攻撃力を有していた。 動けなくなった敵にはまりさ達が木の枝で止めを刺していく。 「ゆがぁ、どうだぁでいぶのつよさ、おもいしったかぁ!」 しかしそんなれいむだす達の反撃にも敵の侵攻が止まる事は無い、既にある程度の損害は出ているはずなのに、表情を変えずただひたすらにれいむ達めがけて進んでくる。 その様子はとても戦いをしているようには見えない、攻撃をするでもなく、大きな声で吼えるでもない、唯ひたすらに何かを呟きながら定められた事の様に前進してくる。 「「「「「「ぱるぱるぱるぱるぱるぱる……」」」」」」 「ゆがぁ、どうじでにげないんだだぁ!」 「さっさとあきらめてよね、いますぐでいいよ!」 「でいぶもうつかれたよ、はやくかえってね!」 仲間達も疲労が溜まってきているようである。 そのうち今まで敵の来ていた前方以外左右からも敵が現れるように成り、れいむ達は後退を余儀なくされた。 敵が積極的に攻撃するのでは無く、唯ひたすらに前に進むだけであるため、ゆぱるた側の損害は少ないが。 このままでは永遠にゆっくりするものが出るのは時間の問題である。 「ゆぎゃあ、まりさのおぼうしが!」 左翼に居たまりさがやられたようだ、倒れたまりさに奇妙なゆっくりが集っていく。 「「「「「「ぱるぱるぱるぱるぱるぱる……」」」」」」 「いやだぁ、やめてね、もみあげさんひっぱらないでね!」 「黒い帽子が妬ましい……」 「綺麗な金髪が妬ましい……」 「可愛いリボンが妬ましい……」 「おしゃれなもみ上げが妬ましい……」 あっという間に作られた奇妙なゆっくりに山、その山にまりさが埋もれる。 「ゆぅ、なになんなのあれ……?」 その様子にれいむ達の間にも動揺が広がる。 「「「「「「ぱるぱるぱるぱるぱるぱる……」」」」」」 そんな様子にもお構い無しに湧き出す敵。 「ゆがぁ、さっさとやっつけるよ、ゆっくりしたれいむたちなららくしょうだよ!」 士気を鼓舞するれいむだす、しかしその努力もれいむ達の後方、唯一敵の居なかった方角に、謎の敵が現れると無に帰す。 それはとても奇妙な敵だった、敵は元々奇妙なゆっくりであったが、それを上回る。 ツルリとした楕円形で、多くのゆっくりのようにお飾りも髪の毛も存在しない、いや体全体を何かのお飾りで包んだような外見、その顔には大きく釣りあがった形の目とその周りに炎の縁取りが施されている。 この場に人間が居れば、それをプロレスの覆面の様だと表現しただろう。 彼らこそ「ぱるしあ」最強の軍団、その名も「不死隊」である。 特殊な覆面を被り、たとえ損害が出てもその覆面を受け継ぐ形で常に総兵力の1万が維持されるこの部隊の名前の由来は、「愛は死するが嫉妬は不死である!」という言葉である。 その精鋭部隊がゆぱるたのれいむ達のの背後に回りこんでいたのだ。 「「「「「「ぱるぱるぱるぱるぱるぱる……」」」」」」 「ゆあぁ、もうだめだぁ、でいぶはにげるよ、まりさはおとりになってね!」 「ゆがぁ、にげるな、たたかえでいぶこそさいっきょうなんだ!」 「いぎぃふまないでね、でいぶもにげいぎゃぁぁぁ!」 士気が崩壊し、逃亡しようと集団を離れたものから黄金の津波に飲み込まれる。 最前線で指揮を執るれいむだすは何とか立て直そうとするが、すでに背後から迫る覆面の敵が自分の後ろまで来ていた。 逃げるしか無い……苦渋の決断をして木々の隙間に飛び込むれいむだす、この判断は正しく何とか包囲を突破する事に成功したのである。 「ゆぎぃ、どぼじで……でいぶのむれが……どっでもゆっぐりじでいたのに……」 ボロボロになって逃げ出してれいむだす、怒りを感じようにも脳裏にはあの奇妙なゆっくりの波に飲み込まれる仲間達の最後が映る。 「ゆぐぐぐ……ゆ、そうだよ"どうめい"だよおとなりのむれにいれてもらえばいいんだよ!」 今になっていきなり以前の同盟を思い出すれいむだす。 そうだ、お隣の群れに行けばいい、そこでまたゆっくりしたれいむの群れを作ろう、そしてあの奇妙なゆっくりに復讐するのだ。 れいむの中に希望の火がともる、既に夕方が近く薄暗い森の中を隣の群れの方向に走る。 その時、何かが聞こえる、それは暗闇に静かにざわめくようで、とてもゆっくり出来ない物に感じられた。 「ゆ、なんだかうるさいよ、ゆっくりしないでしずかにしてね!」 その音に文句を言おうと振り返ったれいむだすは見てしまう。 暗くなった森の中に輝く黄金の津波、あのゆっくり出来ない言葉を呟き、緑色の目を輝かせた、あの奇妙なゆっくり達が向って来ることを。 「ゆあぁ、こないでね、れいむはみのがしてね!」 逃げ出すれいむだす、しばらく逃げたところで後ろが気になって振り向き、捕まってしまう。 「「「「「「ぱるぱるぱるぱるぱるぱる……」」」」」」 「ゆがぁ、はなぜぇ、こうきなでいぶになにをずるんだぁ、いや、やめてね!」 「「「「「「ぱるぱるぱるぱるぱるぱる……」」」」」」 「黒くて綺麗な髪が妬ましい……」 「大きな体が妬ましい……」 「つやつやのお肌が妬ましい……」 「二本のもみ上げが妬ましい……」 「赤いリボンが妬ましい……」 「ゆびぃ、ゆぎぃ、ゆー!」 れいむだすの居たところにできる、奇妙なゆっくりの塊、大きな悲鳴が聞こえて静かになった。 「と、こんな感じの映画とか……どうだ?」 「いやどうだって……どう見てもパクリじゃねぇか!」 狭いアパートの一室で二人の人間が胡坐を組んで酒を飲んでいる。 「いや、作ろうと思えばつくるよな、でいぶなんてそこらで捕まえてもいいし、ぱるすぃはこれ一匹であとはCG合成で……」 そう言って自分の足の辺りに手をやる男。 「そもそも何でそんな話になったんだよ、ぜんぜん脈絡が無いじゃないか!」 対面の男はそう言うと手にした缶を呷る。 「いや、お目が言い出したんだろ、飼ってるありすがむくつけき肉体の屈強なカルタゴ兵数百人に輪姦される夢を見たとか!」 「忘れろ、それにどうしてカルタゴがスパルタになるんだよ!」 「いや、それはなぁ、カルタゴ→ローマ→ギリシアとなって色々な……」 むにゃむにゃと言い訳をする男、その足元から声がした。 「お兄さん、ぱるすぃが居るのに他のゆっくりの話をするなんて……妬ましいわ……」 後書き 「胴付きありすがカルタゴ兵に輪姦される」をネタに即興を書こうと思っていたら、 何がどう変化したのかこんな感じに成ってしまいました、自分でも何がどうつながったのか良く分かりません 基本的にギャグなので、実際の歴史とかは考えないでください、全部ネタですので突っ込みをお待ちしています。 ここまで読んでいただき、ありがとうございました。 そういえば、ゆっくりぱるすぃの中身って何なんでしょう? このSSでは 人の不幸は蜜の味+パルスィート=砂糖の三倍甘い にしているのですが。 もう一つ前作anko2814 黒い穴へご意見ご感想もありがとうございました。 ゆっくりポイントが200を超えたのは初めてです、地味に嬉しかった。 誤字や句読点などまだまだ足りないところが多いですが、少しずつ勉強しようと思います。 またこれを上げる直前に気づいたのですが、挿絵を描いてくださって方が居るようです。 ありがとうございます、これを励みにこれからも頑張ります。 過去作品 anko2700 そして新記録 anko2703 ゆっくり公民 ~奴隷制~ anko2720 ゆっくり公民 ~カースト制~(前編) anko2721 ゆっくり公民 ~カースト制~(中編) anko2722 ゆっくり公民 ~カースト制~(後編) anko2764 ゆっくり公民 ~農奴制~(春) anko2765 ゆっくり公民 ~農奴制~(夏) anko2766 ゆっくり公民 ~農奴制~(秋) anko2767 ゆっくり公民 ~農奴制~(冬) anko2802 ゆっくり公民 ~奴隷解放~(前編) anko2803 ゆっくり公民 ~奴隷解放~(中編) anko2804 ゆっくり公民 ~奴隷解放~(後編) anko2814 黒い穴
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シュガースナッフ・メロウスイート 38KB 虐待 都会 虐待人間 嬉々として虐待です シュガースナッフ・メロウスイート セットするのは大変だけれど、出来上がった物を見るのはやっぱり楽しい。 ショーウインドーに映る結いあげてシニヨン風にまとめた自分の髪を見ながら少女は思った。 季節は初夏、のどかな休日の午後。柔和な笑顔を浮かべる少女の腕には、 散歩の途中で立ち寄った花屋で購入したネメシアメロウの鉢植えが抱えられている。 スイートシフォンと呼ばれるごくごく薄く色づく紫の花色が、少女のチュニックに良く映えていた。 気持ちよさそうに風を受ける少女は目を閉じて、スイートシフォンの名前通り甘い香りを吸い込む。 そして幸せそうな笑みを浮かべると、足の向くままに歩きだした。 「「「「ゆっくりしていってね!!」」」」 少女がしばらくのんびりと散策していると、いきなり足元から声をかけられた。 視線を下に向けると、そこにはゆっくりの一家がいた。ゆっくりしていってね、という言葉とは裏腹に、 4つの饅頭はこの機を逃したらもうおしまいだと言わんばかりに必死だ。 少女は小首を傾げると、とりあえず挨拶を返すことにした。 「ゆっくりしていってね」 「「「「ゆゆっ!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!!」」」」 その言葉を聞いた瞬間、家族の顔がはじけるように咲く。ぴょんぴょんとその場でジャンプを繰り返し、 子供2匹などは涙さえ浮かべている。 「どうしたの?私に何か用?」 しゃがみこんで親ゆっくりの頭を撫でてやると、黒帽子の親ゆっくりがゆんゆん泣きながら喋り出した。 「にんげんさんはゆっくりできるひとだよね!?まりさたちをたすけてほしいよ!」 「助けてって、どう言う事?あなたたち野良ゆっくりなの?」 「まりさたちがおやまさんでいっぱいゆっくりしてゆっくりしてたら、ゆっくりしてないにんげんさんが きて、まりさたちをくらいくらいしたんだよ!」 まりさがそこまで言った所で、紅白リボンを付けた黒髪のゆっくりが言葉を引き継ぐ。 「にんげんさんはれいむたちにぺっとになれっていったんだよ!ゆっくりできないことを いっぱいいってきて、いやだよっていったらいたいいたいしたんだよ!! れいむたちはゆっくりできないから、にんげんさんからがんばってにげたんだよ!!」 「そう・・・・・・。大変だったのね」 いたわりと少しの同情をこめて頭を順番に撫でてやると、ゆっくりの家族は猫のように目を細めた。 なるほど。この子たちはどうやら、ペット用に山から連れてこられた野生のゆっくりのようだ。 ペットショップの管理がずさんだったか、もしくは売られた後で逃げ出したかどちらかなのだろう。 少女はそう当りを付けた。 「にんげんさんにおねがいがあるよ!」 しばらくの間家族は少女に撫でられるがままだったが、つと親まりさが顔を上げ、 眉毛をきりっとさせて言ってきた。 「ん?何?」 「にんげんさんのもってるおはなさんをたべさせてほしいんだよ!まりさたちおなかが ぺーこぺーこなんだよ!!」 涎をだらだらとこぼしながらキラキラした目で要求を伝えるまりさ。 どうやら少女に話しかけたのは、ネメシアメロウの香りにつられてのことだったらしい。 「でもこれは私が今買ったお花で、とても気に入っているのよ」 少女は少し困ったように鉢植えを抱え直す。 「おねがいだよ!れいむたちとってもこまってるよ!きさんがないからかりもできないし、 あついあついでみんなのどもかーらかーらなんだよ!!」 親れいむもぴょんぴょん飛び跳ねながら必死におねだりしてくる。 「「おにゃかすいちゃよー!ゆっくりしゃせちぇー!!!」」 まりさとれいむ一匹ずつの赤ゆっくりは、感極まったように叫びだす。 「うーん・・・・・・。じゃあとりあえず、私の家に来ない?」 「「「「ゆゆっ!?」」」」 「あなたたちが困ってることは良く分かったわ。でも、今このお花をあなたたちに 上げても結局何の解決にもならないでしょう?だから、私のお家に来たら良いわ。 今後のことはそれから考えましょう?」 その言葉を聞いたゆっくりたちは、家族全員泣きだしてしまった。ただし、喜びで。 「ありがとうね!ありがとうね!!」 「やっぱりにんげんさんはゆっくりできるにんげんさんだったんだね!!」 「「ゆっくりしちぇいってね!ゆっくりしちぇいっちぇにぇ!!」」 「じゃあ私についてきてね。お家に着いたらおもてなしするわ」 天使のように笑った少女は、ゆっくりがついてくることができる程度の速度で、軽やかに歩き始めた。 ゆっくりの足に合わせたため、結構な時間をかけて少女たちは家にたどり着いた。 少女の家は、いっそ屋敷と言って良いぐらいの立派な一軒家だった。 「いらっしゃい。ゆっくりしていってね」 ミュールから室内履きに履き変えた少女は、全員のあんよを濡れタオルで拭いてやった後、 家族を一階の一室に案内した。全員が入った後、少女は扉を閉める。 がくんっ、と、普通のドアを閉めるより重い音がした。 少女がゆっくりを招き入れたのは、10人以上が入っても狭苦しさを感じさせることは無いだろう 広々としたフローリングの部屋だ。壁には琥珀色をした前面ガラス張りの木製キャビネットが 置かれており、そこには楽譜やクラシックのCDなどが収められている。 部屋の一角は一段高くなっており、そこにはグランドピアノが鎮座していた。 ここは少女のピアノレッスン室なのだろう。室内には暖かな色の間接照明に満ちており、 長時間居続けてもストレスを感じさせない作りになっている。 ごつり、ごつり。 靴を鳴らしながら少女は家族を残してグランドピアノに近づくと、ネメシアメロウの鉢植えを 段差の上に置いた。鈍い足音がする原因は、少女が履いている靴だ。 不可思議な事に、少女が履いている靴は、室内履きと言うにはあまりに無骨な安全靴だった。 「少し、ゲームをしましょう」 少女がゆっくりに向かって微笑むと、家族は少し困惑したような顔になった。 「にんげんさん!まりさたちおなかがぺーこぺーこなんだよ?」 「あそんでくれるのは、ごはんさんのあとにしてね!」 「ゲームって言うほどのものじゃないわ。軽い食前の運動みたいなものよ」 少女は鉢植えの横に優雅に腰かけると、 「ほら、ここにあなた達が欲しがってたお花さんがあるでしょう? あなたたちはここの段差を越えて、お花さんを食べてくれたら良いの。簡単でしょう?」 そう言って鉢植えを指差した。 「ゆっ!それならいいよ!かんたんだよ!!」 「そう?それは良かった」 少女は鉢植えを手のひらで示すと、どうぞ、と言った。 家族は一斉に鉢植えに群がって行った。あまあまな匂いのおいしそうなお花さんを ゆっくりたべるよ!!そんな思いで懸命に走るが、少女と鉢植えに近づいていくにつれて、鉢植えは 視界から消えてしまう。その代わりに現れたのは、高い高い障害物。30cm弱の段差は人間には 一足だが、体高が30cmのゆっくりにとっては。ましてやピンポン玉サイズの赤ゆっくりにとっては それは断崖絶壁にも等しいものなのだった。 「ゆっ!ゆっ!おはなさん!まりさにたべられてね!!」 「れいむもたべるよ!おはなさんはそこでゆっくりしていってね!!」 「「たべられちぇね!おはなしゃんはゆっくちたべられちぇね!!」」 お花さんをむーしゃむーしゃできる。その思いだけでただただ盲目的に段差の前でジャンプし続ける 家族と、それを楽しげに眺める少女。二、三分の間それが続いた。 「おねーさん!ここたかすぎるよ!!」 最初に根を上げたのは親まりさだった。自分では届かないということに最初に気付いたという点では 頭が良いのかもしれない。事実、残りの家族は無意味なジャンプを繰り返しており、 赤まりさは断崖を登ろうとしているのか、壁にかりかりと歯を立てている。 「えー、これぐらい登れるでしょう?」 「のぼれるにきまってるでしょ!でももうまりさはつかれたよ!いいからにんげんさんがとってね!!」 からかうように少女が言うと、まりさは反論する。花は食べたいが、出来ないと言う事を認めるのは 嫌らしい。 「頑張れば取れる高さなんだから頑張ってよ。ほら、もうちょっとで届きそうじゃない?」 少女は親まりさの頭をくしゃりと撫でると、 「ワックスが剥げると困るから、齧るのは止めてね」 そう言って、かりかりと壁を齧り続ける赤まりさにでこぴんを見舞った。かん高い鳴き声を上げて ころころと転がっていくその時に、赤まりさの帽子が脱げた。 「おぼいちいいぃぃ!!!まりしゃのおぼうししゃんぬげにゃいでねええぇぇぇ!!」 赤まりさは狂気のような勢いで帽子を追いかけ、食らいつく。ものすごい執着心だ。 いきなり聞こえてきた赤まりさの声に我に返ったのか、それとも跳ぶことに飽きたか。親れいむも 少女に文句を言い始めた。赤れいむはでこぴんにも負けずに再び無駄な跳躍を繰り返し始める。 「にんげんさん!かわいいおちびちゃんになんてことするの!?」 「ゆっくりあやまってね!!あやまったらまりさたちにおはなさんむーしゃむーしゃさせてね!!」 やいのやいのと自分を糾弾してくる親ゆっくりを無視し、少女はお帽子との劇的な再開を喜ぶ 赤まりさに声をかけた。 「おぼうししゃんすーりすーり!ゆっ!まりさのきれいですてきなおぼうししゃんなんだじぇ!! よかったのじぇ!!」 「まりさはそのお帽子がとっても大事なんだね」 「おりぼんしゃんがまっちろでかっこいいおぼうししゃん!ゆっくりまりさにかぶられてね!」 赤まりさは全く聞いていない。 「そんなに大事なら、私が脱げないようにしてあげるね」 無視された少女は髪に手をやると、シニヨンを留めている黒いヘアピンを一本抜き出した。 「ゆんっ!これでまりさのおぼうしもとどおりなんだじぇ!」 そして満足そうに帽子の被り心地を確かめる赤まりさの脳天に、そのヘアピンを 帽子の上から突き刺した。 「・・・・・・ぴぃ?」 いきなり頭部に現れた灼熱感。あまりに強い感覚を許容しきれないまりさは、きょとんとした顔で、 小首をかしげるように体を傾けた。 そしてきっちり三秒後。咆哮を上げる激烈な痛覚が爆発する。 「あ・・・・・・い・・・ちゃい・・・・・・?まりちゃ・・・・・・いちゃいのじぇ・・・・・・?」 目からは勝手に砂糖水の涙がこぼれ、下からはしーしーが零れだす。 「いちゃいいいぃぃぃぃぃぃいいいぃぃぃぃ!!!!いっちゃあああああぁぁぁぃいぃぃぃい!!!」 思い切り天を仰ぎ、絶叫。 体の中でヘアピンがよじれ、さらに体内を掻き回す。 「ぴいぃぃぃー!!いちゃいぃいいーー!!だじゅげでぇ!!ばりじゃをだじゅげでえぇぇぇ!!」 「「おちびちゃん!?」」 いきなり叫び出した我が子に血相を変えて走り寄る両親。だが、両親が赤まりさにたどり着くことは 無かった。少女が赤まりさを摘み上げ、段差の上に乗せてしまったからだ。 「おちびちゃああぁぁぁぁぁん!!」 「かえすんだぜ!おちびちゃんをかえすんだぜえええぇぇぇぇ!!」 必死の形相でジャンプを繰り返す親ゆっくりたち。その姿を見下ろす少女の笑みが深くなっていく。 「大丈夫だよ。まりさはただ、驚いちゃっただけだから」 「なにいってるのおおおぉぉぉ!!おちびちゃんいたがってるでしょおおおぉぉ!?」 「かえしてね!おちびちゃんをかえしてねええぇぇぇぇぇ!!」 「それはだめ。ほら、頑張って登ってくればおちびちゃんに会えるよ?」 「あああぁぁぁぁぁぁ!!!ばっででねおちびぢゃん!!いますぐいぐがらねえぇぇぇぇ!!」 「すぐにだずげであげるからねえぇぇぇぇ!!!」 親ゆっくりはたちは目の前の壁を睨みつけると、自分の体高と同じ高さの段差に身を押し付け、 にじり、飛び跳ね始めた。 「あひいいぃぃぃぃ!!いちゃいいいぃぃぃぃ!!!」 少女と同じ高さに連れてこられた赤まりさ。少し跳ねれば甘い香りのする花を思う存分 むーしゃむーしゃできる位置にいるにも関わらず、まりさはそんなものには一顧だにしない。 「とっちぇえええぇぇぇ!!いちゃいいいいぃぃ!!まりしゃのあたまがいちゃいよおおぉぉ!!!」 ひたすらに泣きわめき転がり回り、それによって生まれる痛みにまた涙を流している。 「そんなに元気に動き回るんじゃ、一本じゃ足りなかったかなぁ?」 そんなまりさを熱っぽい目で見ていた少女が、呟くように言った。もう一度髪に手をやり、 ヘアピンを抜きだす。 「ほら、もう一本プレゼントだよ」 横になって転がるまりさの即頭部から、垂直に差し込んだ。 「あっぴいいいぃぃぃぃぃぃ!!!!!!」 体を十文字に貫かれたまりさが魂を抜かれるような叫びを上げる。目を剥いて、舌を突き出して。 「やめちぇ・・・・・・まりしゃにいちゃいいちゃいしにゃいでぇ・・・・・・」 過呼吸を起こしているように浅い呼吸を繰り返しながら、まりさはずりずりと這ってこの場から 逃げ出そうとする。しかし、少女がそんなことを許すはずもない。 少女の編み込まれた髪が、少しずつ解けて行く。 少女の髪が解けるたびに、赤まりさの肌に黒い墓標が突き立てられて行った。 「やべろおおおぉぉぉぉ!!!!」 「おぢびじゃあああああぁぁぁぁぁぁん!!」 壁を超えることを諦めた親ゆっくりたちは体をのーびのーびさせ、 なんとかして攫われた赤ゆっくりの姿だけでも見ようとしていた。 「ねぇれいむ、まりさ」 少女がそんな親ゆっくりに話しかける。 「自分だけで登ろうとするから駄目なんじゃないかな?協力して、例えば片方が下で 踏み台になって、もう片方がその上に乗る。そんな風にすれば、登れるんじゃないかな?」 「「!!!」」 目を剥いてその素晴らしい思い付きに感動する親ゆっくり。しかしそれも一瞬のことで、 即座にその思い付きを実行に移す。 「まりさ!したになってね!!れいむがおちびちゃんをたすけにいくよ!!」 「まりさがいきたいよ!!れいむがしたになってね!!!」 ・・・・・・かと思いきや、どちらが下になるかで喧嘩を始めてしまった。 少女はその姿を見ながら、さらに赤まりさを貫き続ける。 「これだけ刺せばもう、どれだけ動き回っても帽子は脱げないよ」 ウェーブのかかった髪を肩に垂らした少女がいとけなく笑う。 何度となくやったように、髪からヘアピンを引き抜いた。 「これが最後の一本。どこに刺してあげようか?」 もはやまともに動くこともできなくなったまりさの顔を正面から見ながら優しく聞いた。 「あ・・・・・・ひ・・・・・・?」 段差の隅に追いつめられた赤まりさはもう、それに答えることもできない。 「あああぁぁぁぁぁ!!!もうやぢゃあああぁぁぁぁぁ!!!おうちきゃえりゅううぅぅぅぅ!!!」 逃げたい。ただただその一心でまりさは少女に背を向け、力を振り絞って跳ねる。 着地するはずの地面は、どこにもなかった。 「「・・・・・・ゆ?」」 二段重ねの饅頭が、自分たちの真横を落下していく何かをぽかんと見つめる。 助ける?どうやって?受け止めようか?この体勢から?無理かな?無理じゃないかな? じゃあ舌を伸ばせば?そうだ舌を伸ばせば届くかもしれない舌を伸ばしておちびちゃんを助け かつん。 やわらかい饅頭のはずのまりさ。それなのに、響いたその音はとても硬く、高く響いた。 「ゆっ!ゆぷっ。えっぷぇ・・・・・・」 落下の衝撃で、全身に埋まるヘアピンが体を抉った。皮のあちこちからヘアピンを覗かせた まりさは、死に至る痙攣を始める。 「「おちびぢゃああぁぁぁぁぁぁん!!」」 両親はもみくちゃになりながらこけつまろびつまりさに跳ね寄り、必死にぺーろぺーろする。 しかし献身的な看護も甲斐は無く、まりさの痙攣は止まらなかった。 ぺーろぺーろは確かに外傷にはある程度の効果がある。しかし今の場合、体内の異物を取り除く こともせずにただ舐めればそれは、体外に露出したヘアピンを通してまりさの体内を滅茶苦茶に 掻き回しているだけのこと。 両親の必死の看護は、かえってまりさを苦しめる結果になっていた。 「ひきっ・・・・・・もっちょ・・・・・・ゆっくりしちゃかっちゃぁ・・・・・・・・」 最後に一度、引き攣るように体を震わせると、赤まりさはその短いゆん生を終えた。 「「あ゛あ゛あああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!!!!!!!」」 喉が破けるような慟哭。 「「どぼじでごんなごどずるのおおおぉぉぉぉぉーーーーーーー!!!!!」」 炎のような激情を宿した瞳で少女を糾弾する親ゆっくり。 叩きつけられる感情の熱量を冷然と受け流すと、少女は片手で解けた髪を掻きあげた。 柔らかな髪をしどけなく体の前に垂らした少女は、透徹した青色の笑みを浮かべて言った。 「何故かって?何故かと言えばそれは、私があなた達を泣かせたり虐めたり殺したりして遊ぶのが、 とっても大好きだからだよ」 「「なにいっでるのおおおおおおぉぉぉぉぉ!?」」 「あなたたちは、ネメシアメロウの香りに釣られて私に誘拐されたの。これから全員痛い思いをして 信じられないぐらい痛い思いをして、ボロ雑巾みたいになるまで痛い思いをした後私に殺されるんだよ」 「「おうぢがえるうううぅぅぅぅぅぅ!!!!!??」」 「一緒に楽しく遊ぼう?ゆっくりしていってね!」 「「ゆっぐりじでいっでねえええぇぇぇぇぇ!!」」 こんな時でも挨拶をされたら挨拶を返さずにはいられないゆっくり。少女はその「ゆっくりしていってね!」に 満足げに笑うと、家族を置いてキャビネットに向かった。 キャビネットの中には様々な音楽関連の物品に加えて一つ、一抱えほどもある大きな箱が入っていた。 少女がそれを開けると、その中身が露わになる。 ホッチキス。ガムテープ。チャッカマン。割りばし。鉛筆。ビニール紐。下敷き。栓抜き。絵具。 雑多な・・・・・・統一性のない雑多な物の数々。ひたひたと這い寄るような悪意の波動を放つ それらの中から、少女は全長30cmほどのナイフを掴み取った。 「これにしようかな」 うっとりとナイフを眺める少女は、呟きと共に刃に指を滑らせた。 少女の指は落ちない。良く見ればナイフのように見えたそれは、実際には料理用の木べらだった。 ただし少しばかり加工が施してある。木べらを彫刻刀か何かで削り、片刃のナイフのようにしてあるのだ。 小学生の工作の方がマシといった風情の、玩具にしか見えないそれを二、三度確かめるように振ると、 少女は上機嫌に家族の元に戻って行った。 「おちびちゃん!?ここからにげないといけないんだよ!?」 「おはなしゃん!れいむおはなしゃんたべちゃいぃぃぃー!!!」 「ゆぅーん!いまはそれどころじゃないんだよ!こわいこわいにんげんさんがきちゃうんだよ!!」 両親の叫び声も兄弟の死すらも、赤れいむの白痴のような集中力を乱すことは無かったらしい。 ひたすらにひたすらに壁の前でジャンプを繰り返していた赤れいむを、両親が説得しようとしている。 「ただいま。最初に虐められたいのは誰かな?」 少女のその言葉に親ゆっくりたちはびくりと全身を震わせた。しかし一瞬で目くばせを済ませると、 まりさがれいむを庇うように前に進み、れいむは赤れいむを舌で絡め取った。 「かぞくにはてだしさせないんだぜ!まりさのぷくーでこわがっていってね!!!」 「おちびちゃんはこれであんっぜんっだよ!!にんげんさんはどこかにいってね!!!」 まりさが前でぷくーをし、れいむが後ろで赤ゆっくりを口の中に隠す。ゆっくりにできる最大の攻撃と防御。 少女はそれを見ると、まりさの前で膝立ちになった。 「わぁ、怖い。ぷくーってするのを止めてよまりさ」 「ぷくーーーーっ!!!」 「止めてくれたらあまあまあげるよ?」 「ぷくぷくーーーーっ!!!」 「止めてくれないの?れいむと赤ちゃんが大事なんだねまりさ」 「ぷくぷくぷくーーーーっ!!!」 「じゃあ、この帽子とならどっちが大事なのかな?」 「ぷくぷくぷくぷっ・・・・・・ぷしゅるるおぼうしいぃぃ!!!まりさのおぼうしいぃぃぃぃ!!!!」 帽子を取りあげられた途端、一瞬でぷくーを止めたまりさ。少女は間髪いれずにそれを、部屋の隅に放った。 「おぼうしさん!まりさのおぼうしさんゆっくりまってねええぇぇぇぇぇ!!!」 まりさは脇目もふらずに帽子を追いかけて行き、少女の眼前には口をつぐんで膨れた親れいむが残された。 「まりさ、行っちゃったね?」 「・・・・・・・・・・・・・っ!!」 口を開ければ子供が危険に晒される。それを理解している親れいむは何一つ喋らない。 不甲斐ないまりさへの呪詛や少女への反論、百万語を呑み込みながら少女を睨みつけるだけ。 「これからあなたの皮を斬っていきます」 れいむの前で正座した少女が、突然宣告した。 「私が持っているこのナイフで、あなたの皮を斬っていきます。すごく痛いよ。でも口の中の赤ちゃんを 助けたいんなら、絶対に口を開けたらいけません。分かった?分かったらお返事してね」 「・・・・・・・・・・・・」 親れいむは答えない。少女を睨み続けている。 「偉い偉い。ちゃんと私の言うことが分かってるんだね」 少女は膝立ちになってれいむににじり寄ると、左手でれいむの頭を撫でる。 「じゃあ、始めるね」 そのまま撫でていた髪を掴み、そして右手に持った木べらをれいむの唇の端に当て、引き切った。 「~~~~~っ!!!!!」 金属で無い、石器ですらない木製のナイフは、れいむの皮を斬ることは出来なかった。 表現にすれば削る、が一番近いだろうか。凹凸の激しいナイフの表面はれいむの皮を抉り、 抉れた部分が刃に巻き込まれ、巻き込まれた部分がさらに回りを巻き込んでいく。 結局少女の一太刀は、れいむの皮に醜い傷跡を付けるにとどまった。 「っ!!!っ!!!!」 だがそれは、れいむにとって決して幸せな事では無いだろう。 切れ味の良い日本刀より、切れ味の鈍い鋸で切られた方が痛覚はより刺激されるに決まっている。 そして少女の持つ刃は、まさしく木製の鋸と言った風情なのだから。 「このナイフはね、私が自分で作ったんだ」 少女はヴァイオリンの弦を操るように優雅に、木べらをれいむの肌に滑らせる。 二往復させた所で、れいむの餡子が露出した。 「よく斬れるように、でも斬れないように。わざと木の棘が残るようにしたり、凸凹をつけたりね。 刃にぎざぎざを付ける時にちょっと手を怪我しちゃったもしたなぁ。それでも君たちに楽しんで もらうために、頑張って作ったんだよ?」 露出した餡子に木べらの先端を突き込み、そこから傷を真横に切り広げていく。 れいむは涙を零しながら痛みに耐え続けている。 「このままぐるり一周切り裂いてあげる。痛かったらいつでも声を上げていいんだよ?」 少女はれいむの髪を掴んで目を合わせると、穏やかに言った。 「まりさのおぼうしさん!すーりすーり!!しんっぱいっしたんだよ!!よかったよー!」 そして部屋の片隅で、まりさが帽子を取り戻していた。 切り裂く、突き刺さる、削る、押し潰す、破る、引き裂く、抉る。 一本の木べらはその悪夢のような性能を十全に発揮し、万華鏡のような痛みをれいむに与え続けた。 「大丈夫だよ、ちゃんと皮だけを切ってるから。れいむが声を上げない限り、 私はあなたのおちびちゃんには何も出来ないからね?」 少女はれいむに労るように声をかけ、髪に絡ませた手指を酷薄に引き絞る。 「気が紛れるように、他のゆっくりを虐めた時のお話をしてあげようか?ゆっくり聞いてね」 歌うように少女が言ったその瞬間。まりさが今自分の置かれている状況を思い出した。 きょろきょろと周りを見渡し、少女と少女に甚振られているれいむを発見する。 「でいぶううぅぅぅぅぅ!!!いまだずげるがらねえぇぇぇぇぇ!!!」 半狂乱になりながら走り寄るまりさ。しかし少女は一顧だにしない。正確さと繊細さを併せ持った 手つきでれいむを開封しながら、鈴を転がすような声で凄惨な物語を語り始める。 「そうだなぁ。じゃあこのナイフを初めて使った時のお話にしようかな?」 「ばりざゆっくりじないでいそぐよ!?いとしのはにーをゆっくりしないでたすけるよ!!」 「あなたたちと同じまりさとれいむのつがいだったんだけど、あの時は、れいむの方が植物型の にんっしんっをしてたんだよね。私はにんっしんっしてるれいむの額から生えてる茎の、周りだけを 切り取ってあげたの。それから『動いたら赤ちゃん落ちちゃうよ』って言って、れいむの目の前で つがいを虐めて虐めて虐めてあげたんだ。あの時のれいむも我慢強かったなぁ。 まりさの髪を毟っても、飾りを破いても、斬っても突いても踏みつけても叩いても叩いても叩いても 何をしても、れいむは動かなかったんだよ」 れいむと同じで、子供のことがよっぽど大事だったんだね。 そう言うと少女はれいむの髪から手を放し、少女の傍らにたどり着いたまりさの帽子を取りあげると、 先程とは反対の方向に放った。 「ばりざのおぼうじいいいぃぃぃぃぃぃぃ!!!」 泣き声をあげて帽子を追うまりさには目もくれず、少女はれいむの開封を再開する。 「結局れいむは、まりさが死ぬまでその場を動くことは無かったな。立派なお母さんだね。 私はれいむを放してあげることにしたよ」 口の横から始まった開封は半分が終わり、今はちょうど後頭部を切っている所だ。 れいむはそれでも口を開かない。 「良かったねって言って頭を撫でてあげて、最後に御挨拶をしたんだ。もちろんれいむは元気に 御挨拶を返してくれたよ。ゆっくりだからね。でもね、元気に挨拶したせいで、あんなに頑張って 守った子供が落ちちゃったんだ」 声を落とし悲しそうに・・・・・・表情は穏やかな笑顔のままに、少女は続ける。 「返せ戻せってうるさかったから、れいむのリボンを取って、れいむの餡子をリボンで包んでそこに 茎を挿してあげたの。ほら、木の苗とか買ったらそんな風じゃない?これで大丈夫だよって言って、 まだ何か言ってきたからナイフで喉を滅茶苦茶に突いてあんよを削ぎ落して、赤ちゃんの苗と一緒に 庭の隅に置いておいたの」 四分の三が終わった開封。少女は慎重に木べらを動かしながら、れいむを押さえつける。 「三日ほどたったかな?見に行ってみたのね。そうしたら、残念。れいむも子供も死んじゃってたよ」 可哀そうだね。そう言って少女は口を閉じると、れいむの口に最後の一太刀を入れ、切り開いた。 「上手に出来ました♪」 あはは、と笑うと少女は、持っていた木べらを無造作に放り投げた。そして熱の籠った視線を れいむに向ける。少女に見つめられる眼前のれいむの姿は、悲惨の一語に尽きるだろう。 口裂け女のように頬まで裂けた口は、れいむの姿をとんでもなく醜悪に見せている。 その裂け目はぐるり後頭部にまで達し、言うなればれいむの皮はカプセルトイのカプセルのように、 二つに分かれてしまっているのだ。 「最後まで頑張れたね。えらいえらい」 少女はれいむを視点を合わせ、その目を覗きこんだ。 「良く頑張ったからご褒美上げるね。もう口を開けてもおちびちゃんには何もしないよ」 そう言って少女は、敵意が無いことを示すように両手を上げた。 「っ!?」 二、三度体を動かそうとした後、れいむは絶望的な顔をした。 「あぁ、なんだ。やっぱり皮を一周切っちゃったら口、開けられないんだ。ゆっくりって餡子が 本体だと思ってたけど、皮も無いと駄目なんだ。面白いね」 両手を上げたままの少女が手を下し、れいむの切り口を覗きこんだ。 れいむは声を出そうと、上顎部より上を動かそうとしているのだろう。だが実際に動いたのは 下の部分、あんよや下膨れだけ。 「声も出せない?ほら、喋っても良いんだよ?」 「~~っ!!??」 かくんかくんと頷くように伸びをするれいむ。だが声を発することは一切なく、顎部より上は 下半身の動きに合わせぐらぐらと揺れるだけ。きょときょとと動く目が困惑に揺れている。 「あ、あんまり激しく動かない方がいいよ。だって今動いたら多分、ぱっかり割れちゃうからね」 少女はそう言うとなだめるようにれいむの頭に手を置き・・・・・・揺すった。 「ほら、こんなに脆い。抜けかけの乳歯を触ってるみたいだよ」 ゆらゆらと揺らされるたびに、れいむが目を剥く。人間で言うなら内臓をまとめて捩られ 引き延ばされるような、そんな感覚なのだろうか。 「ぐちゅぐちゅ言ってる。中のおちびちゃんをうっかり噛んじゃったりしないようにほら、しっかり 踏ん張ってみなよ。皮が無いとそれも出来ないかなぁ?」 「っ~~!!!!」 「なにやっでるのおおおおぉぉぉぉぉ!!!!」 そうやって少女がれいむと遊んでいると、ようやくにしてまりさが戻ってきた。 大事な大事なお帽子はツバがぴんと張り、位置もばっちり決まっている。 「まりさのはにーにひどいことしないでね!!ゆっくりできないにんげんさんはせいっさいっだよ!!」 まりさは少女に何を言う暇も与えず、いきなり体ごとぶつかっていった。 「ゆんっ!」 ぽむん、と少女の腰にぶつかるまりさ。 「いたいでしょ!?まりさのたいあたりはすごいんだよ!! どんなゆっくりもいちっげきっでごめんなさいするんだよ!」 「全然痛くないよ」 得意顔で体当たりを続けるまりさの髪をつかみ、少女が立ち上がった。 「ごめんなさいなんかしてあげないよ、まりさ。人間はそんなことじゃ、倒せないんだよ」 立ち上がった少女はそのまま、持ち上げたまりさを放り投げた。 「おぞらをとんでるみだゆぎぃっ!?」 テンプレートな台詞の途中で頬から着地したまりさは、したたかに打ち付けた頬の痛みに涙を流す。 「人間はね、あなたたちゆっくりよりとっても強いの。だから、そのままじゃ勝てないんだ」 「ぞんなごどないよ!?ばりざはどっでもづよいんだよ!!いまのはまぐれで」 ごん! 「ぴぃ!?」 少女が安全靴を履いた足を、強く床に打ち付けた。 「まぐれだと思うなら、かかってくると良いよまりさ。硬そうな音がしたよね?痛そうな音がしたよね? この音がまぐれだと思うなら、遠慮なくかかってくるといいよまりさ」 反撃するけどね。少女はそう言うと手を後ろで組み、体を揺らしながら楽しそうに笑った。 ちょろろろろ・・・・・・・・・ かたかたと震えながらしーしーを漏し始めたまりさに向かって少女はさらに言葉を重ねる。 「あ、でも勘違いしないでね、まりさ。そのままじゃ勝てないとは言ったけど、でもそれは、 ゆっくりが人間に絶対に勝てないってことじゃないんだよ?」 「・・・・・・ゆ?」 「人間も非力だからね。私はれいむの皮を切るために、道具を使わないといけなかったの。 まりさもちゃんとした道具があれば、私に勝てるかもね」 そういえばあのナイフ、どこにやったかな?今気付いたかのように言うと、少女はきょときょとと 周りを見回し始めた。 恐怖に体を痺れさせているまりさは、逃亡のタイミングをひたすらに計っていた。だが、ふと 自分のすぐ横に、棒のような何かがあることに気付いた。 これは、ひょっとすると・・・・・・? 「ゆゆっ!?これはもしかして、にんげんさんのつかってたないふさんなんだぜ!?」 まりさはその棒に全力で飛び付いた。 「あ!それは!!」 血相を変えて叫ぶ少女。その姿を見たまりさは、この棒こそがないふさんで、人間を打倒しうる 凶器なのだと確信する。 「このないふさんはまりさのものにするんだぜ!これさえあれば、にんげんさんもいちっころっなんだぜ!!」 さっきまでしーしーを漏らして震えていたとは思えない自信満々な表情を浮かべるまりさは、 木べらを口に咥えながらゆっへっへ、とふてぶてしく笑った。 「そんな危ないものは仕舞いましょう?それをこっちに渡して?」 「だまるんだぜ!!!」 少女が伸ばしてきた手を拒絶するように強く木べらを薙ぐと、まりさは少女に突進していった。 「おちびちゃんをずっとゆっくりさせてはにーにもひどいことをしたにんげんさんは、ぜったいに ゆるさないんだぜ!!まりさのないふさんのさびになるんだぜええぇぇぇぇぇ!!!!」 体を低くひしゃげさせ力を貯める。伸びあがる力をゆんっと推進力に変えて、 まりさは乾坤一擲の一撃を繰り出した。 「口に物を咥えて喋るなんて、器用なんだねー」 そんなまりさの渾身の一突きを、少女は危なげもなく横に動いて躱した。 「・・・・・・ゆ?」 驚いたのはまりさだ。ひっさつっの一撃を喰らっていちっげきっでやられてしまうはずの少女が、 いきなり見えなくなってしまったのだから。 まりさのいちっげきっがすごすぎて、跡形も残らずに吹き飛んでしまったのだろうか・・・・・・? きょろきょろと周りを見渡しながらお花畑な結論を導き出しそうになった時、真後ろから声をかけられた。 「こっちだよまりさ。まりさの攻撃、とっても遅くて避けやすかったよ」 「ゆゆっ!!??」 慌てて振り向くとそこには、まりさのいちっげきっでそくししたはずの人間さんが、 変わらぬ姿で立っているのだった。 「ばりざのざいっぎょうっのこうげきどぼじでよげられでるのおおおおぉぉぉぉぉ!!??」 「まりさ。強い武器を持ってても、それを使いこなさなきゃダメだよ。 ただ振りまわすだけじゃ、人間は倒せないよ」 「うるざいうるざあああぁぁぁぁぁぁい!!ばりざのこうげきはひっさつっなんだああぁぁぁぁぁ!!!!」 「まりさの悪い所をアドバイスしてあげるからさ、だからほら、元気を出してもう一回かかっておいで? れいむとおちびちゃんのために、頑張って私を倒しちゃおうよ」 「いまのはまぐれだあああぁぁぁぁぁ!!!ゆっぐりじねええぇぇぇぇぇ!!!」 少女の言葉を聞いているのかいないのか。まりさはぎりりと木べらを噛みしめると、 目を見開きものすごい形相で、再び少女に飛びかかる。 「ほら、飛びかかる前にタメを作ったらタイミングがばれちゃうでしょ?」 軽く一歩下がる。 「ちゃんと相手を見ないと駄目だよ。飛ぶ瞬間に目をつぶっちゃってるじゃない」 足を交差させ、半身になる。 「武器は真っすぐ咥えないとだめだよ。そうそう、目は開けたままでね」 片足を上げ、手を後ろに組んだままピルエット。 そうやって少女は、踊るようにまりさの攻撃を避け続けた。 「ゆひー・・・ひぃ、ぴぃぃ・・・・・・」 数分後。そこには変わらず無傷の少女と、疲労困憊で全身を上下させるまりさがいた。 「んー、ちょっとは良くなってきたけど、まだまだかな」 「どぼじで・・・どぼじであだらないのぉ・・・・・・」 積み重なった疲労に押しつぶされるように平べったくなったまりさが、 少女を恨みのこもった視線で見上げ、睨みつける。 「なんでかって言われたらそれは、まりさが弱くてナイフの使い方が下手くそでお馬鹿さんで 存在そのものがちっぽけだからじゃない?」 「うっがああぁぁぁぁぁぁ!!!ばりざはよわぐないいいいぃぃぃぃぃ!!!!」 少女の言葉に激昂したまりさ。体を饅頭型に戻すと木べらをぎちりと噛み締め直し、 猛烈な勢いで少女に吶喊していった。 「んー、じゃあそろそろ、最後のレッスンにしようか」 最初より僅かにに切れ味の増したまりさの攻撃を満足げに眺めると、 少女は右の爪先でごつんと一つ床を叩いた。 「武器は真っすぐ咥える。相手を見る。タイミングを読む。良い感じだよまりさ」 嬉しそうに言うと少女は、まりさの攻撃に向かって真っすぐに立ち、ぐんと一歩踏み出す。 「あだれええええぇえぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」 「でも私だったら、そもそも口に棒を咥えたまま何かに突進するなんて馬鹿なことはしないかな♪」 そして右足を大きく振ると、安全靴の質量と硬度を、ハンマーのようにまりさに叩きつけた。 「だって噛む力が足りないと、逆に自分に刺さっちゃうでしょ?」 あはは、と、少女は楽しそうに笑った。 銃を思い浮かべてほしい。弾丸が発射されるプロセスを思い浮かべてほしい。 と言っても、専門的な知識が欲しいのではない。極々単純な、初歩のもので十分。すなわち、 撃鉄が雷芯を叩く。 着火された火薬は爆発的な圧力で弾丸を押す。 そして押された弾丸は、銃身の導きに従って飛ぶ。たったこれだけだ。 少女のハンマーのような蹴りは、火薬とのハンマー(撃鉄)の役割を同時に果たした。 爆発的な圧力を受けた弾丸・・・・・・木べらは、まりさの口を銃身として、一直線に吹き飛ぶ。 弾丸は強度の足りない銃身を破壊しながら、まりさの喉に思い切り突き刺さった。 「おぼええぇぇっぇええっふぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」 大口を開けて叫ぶまりさ。前歯が上下共にごっそりとヘシ折れていた。 「あびいいぃぃぃいいひいいっひいいいぃぃぃぃ!!!」 錯乱してその場でぐるぐると回りだすと、貫通した木べらの柄が尻尾のように踊った。 「ふいでええぇぇぇぇぇぇぇ!!ごれぬいでええええっぇぇぇぇぇっぇ!!!!」 叫び声を上げ続ける口内に見えるへらの部分。まるで、舌が二枚に増えたようだった。 銃身を口に咥えて引き金を引いたに等しい今のまりさ。 端的に言えばそれは自殺行為で、しかしゆっくりはそんなことでは死なない。 その代わりにまりさは、涙も出ないほどの痛みを味わう羽目になるのだった。 「おっげええぇぇぇぇぇ!!!!うげぇぇぇぇ!!いぢゃい!!ぬいでで!!ででいっでね!!! ばりざのおぐちがらででいっでねえぇぇぇぇぇ!!!」 自分の尾を見ようとするかのように回り、飛び跳ね、えづき、体を揺らし、また飛び跳ね。 まりさは刺さった木べらを抜くためにあらゆる動きを試した。が、それらは全て無駄骨に終わった。 「無理だよまりさ。まりさ一人じゃそれは抜けないよ」 少女はしばらくまりさの一人上手を鑑賞していたが、まりさの動きが鈍った所でひょい、と 持ち上げると、れいむの方を向けて置き直した。 「ゆっくりには人間みたいに手も足も無いんだから、助け合わないとね」 「でいぶううううぅぅぅぅぅぅ!!!!!」 この痛みから逃れたい。何でも良いから助かりたい!!ただその一心でまりさは走った。 「でいぶううぅぅぅぅ!ごれぬいでええぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 れいむの元にたどり着いたまりさはれいむに体当たりのようなすーりすーりをする。 「!!」 しかしやられた方のれいむにはたまったものではない。今のれいむは少しの刺激でも餡子に 響き、吐き気がするほどの痛みが走るのだから。 「ねぇでいぶうぅぅぅ!!ごれぬいでよおおぉぉぉ!!!どぼじでうごいでぐれないのおおぉ!! かわいいかわいいでいぶのばりざがいだがっでるんだよおおおおぉぉぉぉぉ!?」 れいむの事情を知らないまりさはれいむにすーりすーりし続ける。力を込めたすーりすーりは、 見る者にはれいむを転がそうと体当たりしているのと、ほとんど区別がつかない。 「ゆびえぇぇん!!おへんじじでえぇぇ!!どぼじでばりざをだずげでぐれないのおおぉぉ!!」 「~ぃ!!」 押されるれいむが、ズレ始めた。 「ごんなにばりざぐるじんでるんだよおおおぉぉぉ!?でいぶとおちびぢゃんをだずげるだべに がんばっだめいよのふしょうなんだよおおおおぉぉぉぉぉ!!??」 みり、みり、みり、みり。 「げずなのおおぉぉぉ!?でいぶはげすだったのおおおぉぉ!?なにがいええぇぇぇぇ!!」 ぶち切れたまりさがれいむにまごうこと無き体当たりを喰らわせた瞬間。 ぱかり、と、れいむがまっ二つに割れた。 「!!!!!!!!!!!!!!!!」 分かれて落ちたれいむの上半分。うにうにと蠢きながら何か探すように動き回るがもう、 自力で向きを変える力もない。びくびくと震えながら、逆さまになった目から涙を排泄し続けるばかり。 「・・・・・・・・・・・・でいぶ?」 これはまりさ。軽く。そう本当に軽く、親愛の挨拶ぐらいの強さですーりすーりしただけなのに? どうして?これれいむはどうなっちゃってるの?え?死んじゃうの?れいむ死んじゃうのなんで どぼじでいとしのはにーいたいこれぬいてくれないのまりさはなにもしてない 「ゆみゅぅん・・・・・・。ゆ?れいみゅもうおそとにでちぇもいいにょ?」 錯乱し始めたまりさに、ずっと親れいむの口の中にいた・・・・・・今は親れいむの下半分をベッドにした 赤れいむの、暢気な寝起きの声が届いた。どうやら眠ってしまっていたらしい。 体に刺さりっぱなしのないふさん、真っ二つに割れたれいむ。れいむの上に乗ったおちびちゃん。 状況は二次曲線のようにカオスの度合いを増大させていく。まりさの小さな処理回路が 破裂しそうになった瞬間、まりさの後ろに回った少女が、まりさの後頭部から尻尾のように 生えている木べらの柄を掴んだ。 「おはよう、れいむ。ゆっくりしていってね」 「ゆぅ~ん、ゆっくりしちぇいっちぇね!!」 「ひぎぃっぐりじでいっでね!!」 「起きてすぐこんなことを言って悪いとは思うんだけど、大切なことだからゆっくり聞いてね?」 掴んだ柄を掻き回すように動かしながら赤れいむに向かって少女は言う。 「あなたのお父さん、まりさは狂った・・・・・・ゆっくりできないゆっくりになっちゃったの。 まりさはあなたのお母さんを殺して、今度はあなたを食べようとしてるんだ」 「だにいっでるの、ばりざはおげえぇぇうえげえぇえへええぇぇぇぇ」 「ほら見て、どう見てもまともじゃないでしょう?早く逃げないとれいむ、食べられちゃうよ?」 そう言うと少女は、木べらの柄を掴んだまま木べらの開けた穴を押し広げ、 めりめりと拳をまりさの体内に侵入させた。 「ぎゃおー、たーべちゃうぞー・・・・・・ってね」 押し出されるようにまりさの口から飛び出した木べらは、見ようによっては舌のようにも見えて。 「ゆっぴいいぃぃぃぃぃぃ!!!おとうしゃんがれいみゅをたべようちょしゅるううぅぅぅぅぅ!!!! たしゅけちぇおきゃあしゃああああああぁぁぁぁぁん!!!!」 「お母さんはもう死んじゃってるよ。ほら、下を見てごらん?れいむは今、まりさに真っ二つに されちゃったお母さんの上に乗ってるんだから」 「ゆわああああぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!」 認識した途端地面から立ち上る、濃密な死臭。れいむは、少女の言葉が真実だと認識する。 「泣いてる時間はないよ。早く逃げないと、本当にお父さんに食べられちゃうよ」 「れいみゅおうちきゃえりゅうううぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!」 弾かれたように跳ね始める赤れいむ。それを満足げに見下ろすと、 「狂っちゃったまりさ。おちびちゃんを殺したくなかったら、お口はちゃーんと、閉じておこうね? ひょっとしたら、まりさの噛む力の方が、私の腕の力より強いかもしれないし、ね」 そう言って、手首をまりさの体内で一回転させた。 「ゆぴいいぃぃぃぃ!!こっちこにゃいでええぇぇぇぇ!!」 ぺたん、ぺたん、ぺきぱきん、かつん。 「どぼじちぇきょんなこちょしゅりゅにょおおおおぉぉぉ!?」 ぺたん、ぺたん、ぺきぱきん、かつん。 「ゆるちてええぇぇぇぇ!!!れいみゅいいこににゃるきゃらああぁぁぁぁ!!!」 ぺたん、ぺたん、ぺきぱきん、かつん。 赤ゆっくりがあちらこちらに逃げるたびに、追いかける舌・・・・・・木べらでまりさの歯が折れる。 少女は赤ゆっくりが逃げられる程度の早さで、しかし決して余裕は与えない。そんな意地の悪い 速度を維持しながら、赤ゆっくりの周りの床を叩き続けた。 「ゆぴいいいぃぃぃぃ・・・・・・ちゅかれちゃよおおおぉぉぉ・・・・・・」 「おひぃひひゃんは・・・・・・はりはは・・・・・・・・・・・・」 そうしてしばらくの時間が過ぎ、限界が訪れた。 赤ゆっくりはその柔らかい皮と少ない餡子を限界まで酷使した所為でもう、何をされるまでもなく 倒れそうで。 白目を剥いた親まりさは歯の半分以上を抉られている上に、体には少女の腕が二本は入って しまいそうな大穴が開いて、こちらももう長くは無いと一目で分かるようで。 「そろそろかな」 糖蜜のような背徳遊戯の終わりを締めくくるように、少女はまりさの体から木べらを引き抜くと 腕を大上段に上げ、赤れいむに向けて一気に振り下ろした。 「どしゅうううううううううううううううううぅぅぅぅぅぅぅぅ」 がちん。 赤ゆっくりが潰れる音はとてもちっぽけで儚く、少女の耳にそんなものは届かない。 「・・・・・・ドス?」 その耳に届くのは、興味深い赤れいむの末期の台詞だけ。 「ねぇまりさ。もしかして、あなた達が住んでいた山にはドスがいたの?」 少女は木べらを再び無造作に放り出すと、親まりさに詰め寄った。 「ね、ね、教えてよまりさ。あなた達はドスを知ってるの?ドスの群れにいたの?答えて?」 ぽんぽん、と頭を叩くと、穴があいて浮き輪のようになっていたまりさは、凹の形にべっこりとへこんだ。 「あ・・・・・・やりすぎちゃったかな。まりさ、生きてる?」 揺らしてみたり突いてみたり、少女は少しの間まりさが痛がるような事を色々と試したが、 まりさはついにぴくりとも動かず、一声すらも上げなかった。 「ちぇ、死んじゃってるか」 詰まらなさそうに言うと少女は立ち上がる。上機嫌に部屋の真ん中に歩くと爪先立ちになり、 両手を広げてくるくると回り始めた。 「ドスまりさかぁ。私より大きくて、重くて、強いんだろうなぁ」 くるくると、くるくると、 「人間より強い本物のゆっくりの『武器』。武器を持ったゆっくりは、どんな風になるんだろうなぁ」 くるくると、くるくると、 「私がこうやって手を広げて回るよりきっとまだ大きいんだよ。ドスの頭を切り開いて、 その上で踊ってみたいなぁ」 くるくると、くるくると。 「今年の夏休みは楽しくなりそう」 くるくると回りながらくすくすと少女は笑い、とりあえず練習として、次のゆっくりを虐める時には 本物のナイフを使おうことにしようと考えるのだった。 END あとがき ゆっくりを虐めるだけSS第二弾でございます。 今回は虐待派の人間による純粋な虐待です。実はこれまでに虐待をホビーとして楽しむ人間 と言う物を書いたことが無かったため、今作は結構な難産になりました。いかがでしたでしょうか? 少しでも楽しんで頂けたら幸いです。 次のSSの予定はまだ未定です。何が出るのか自分でも分かりません。一番文章量的に 進んでいるのは希少種が出る物語なんですけど・・・・・・予定は未定。 投稿頻度は相変わらず低いと思いますが、次のSSでお会いできたら嬉しいです。 それではここまで読んでくださったあなたに感謝をささげつつ、今日はさようなら。 by ゆンテリアあき
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『冬のゆっくりキリギリス』 54KB 観察 パロディ 自業自得 引越し 番い 野良ゆ 子ゆ 都会 よろしくお願いします。長いです [冬のゆっくりキリギリス] 秋が深まるにつれて、街もしだいに色彩豊かになってくる。緑一色だった街路樹も鮮やかに紅葉し、大通りを通る人々が思わず見上げたくなるほどだ。 どこかにぎやかな雰囲気を感じさせる、そんな季節だ。住宅地からやや離れた公園も、落ち葉やどんぐりで色とりどりになっていた。 そんな静かな公園の、切り整えられた植え込みから、一匹のゆっくりまりさが飛び出した。 ゆっくりぴょんぴょんするよ! と宣言して、落ち葉の絨毯の上を、ゆっ、ゆっ、と跳ねて進む。 「ゆわあぁ……ゆっくり……ゆっくりだよぉぉ! ゆっくりした、たいようさんだよぉぉっ!!」 涼しい秋風に吹かれ、暖かな陽射しに包まれたまりさは、じーんと感動したような顔になり、空を見上げて叫んだ。 よほど嬉しいのだろう。うっすらと目に涙さえためながら、ぽいんっぽいんっと飛び跳ね、喜びを全身で表現した。 昨日は雲さんが意地悪をして、ゆっくりした太陽さんをずっと隠してしまっていた。 そのうえ一昨日は怖い怖い雨さんがずっと降ってきて、狩りにさえ行けなかった。 ゆっくりは雨に打たれ続ると死んでしまう。まりさだけに限らずゆっくり全てにとって、雨の日にできることはあまりにも少ない。 結局その日は、寒さと溶けるかもしれない恐怖に震えながら、ゆんゆん泣くおちびちゃんたちを慰めつつ、ひたすら晴れ間を待つだけで一日が終わってしまった。 ゆっくりできなかった日々の反動で、餡子のなかが「ゆっくり」でいっぱいになったまりさ。よほど感極まったのだろう、ゆっくりしていってね! と天高らかに声をあげた。 「ゆーっ! ……ゆゆっ! れいむ、おちびちゃんたち、ゆっくりでてきてね! きょうはまりさと、『ぴくにっくさん』にいこうねっ!」 久しぶりのゆっくりできる日。ゆっくりはゆっくりするからゆっくりであり、こんな日に思う存分ゆっくりしないなんて有り得ない。 餡子の底から湧き上がるそんな考え。居ても立っても居られず、まりさは半ば衝動的に口を開いていた。 (ゆ? でも、まりさはかりにいかなくちゃ……ゆゆっ!? すごいよぉぉ!! ゆっくりしたごはんさんが、いーっぱいはえてきているよっ!) 思いつきで宣言をしてから、自分は狩りをしなくてはならない、と思い直しそうになったまりさ。 しかし秋は、実りの季節。公園には赤い木の実も、葉っぱさんもちらほらと見えて、そこらじゅうに生えている。 草さんもたくさん生えているし、大きな大きな木の下には、どんぐりも生えていた。 固い固いどんぐりさん。そのままではとても噛めたものではないが、割れて中身がとれるようになったものもたくさんあるはず。 これだけのごはんさんがあれば、ちょっと狩りに出ただけでおぼうしの中がいっぱいになるに違いない。 そう考えはじめると、まりさの餡子の中はあっという間に、先程思い描いた「ゆっくり」でもう埋め尽くされた。 「ゆっくり! まりさはきめたよ! きょうはかりにいかなくても、ゆっくりしたごはんさんがいっぱいあるよ! きょうは、みんなでゆっくりしようね!!」 振り返って呼びかけると、植え込みからゆっ? ゆゆっ?と声が上がり、やがてそれは嬉しそうな歓声に変わる。 少しすると、みかんサイズの子ゆっくりが二匹、植え込みのおうちから元気に姿を現した。 「ゆわぁぁい! ぴくにっく! ぴくにっくしゃん! ぴくにっくしゃんはゆっきゅりできりゅよ! ゆっきゅりしちぇっちぇにぇ!」 「ゆっくち! ゆっくち! まりちゃ、おしょとでゆっくちしゅるのじぇ! ゆんゆーん! ゆっくちしちぇいっちぇね!!」 笑顔でもみあげさんをぴこぴこさせている、れいむ似のきゅーとなおちびちゃん。ふっくらとしたほっぺに、くりくりのおめめが愛らしくて仕方がない。 得意そうに眉をキリッとさせる、まりさ似の凛々しいおちびちゃん。同じまりさとは思えないほど賢く、数だってたくさん! 以上に数えられる。 油断すれば卒倒しそうになるほどの、あまりにも可愛らしいえんじぇるたちだった。 ぽーかぽーかした陽射しの中、ずーりずーりと這ってくるその姿は、まりさの何よりも大切なたからものだ。 「ゆっ! ゆっ! れいむは、けっかいっをはったよ! れいむとまりさのおうちは、これであんっぜんっ! だよ!」 おちびちゃんたちに遅れて顔を出したのは、まりさの番のゆっくりれいむ。 まりさが狩りに出かけるときも安心して留守を任せられる、とてもゆっくりしたゆっくりだ。 背の低い植え込みに、ビニール袋と草の屋根を編みこんだまりさたちのおうちは、れいむのけっかいっにより、完璧に姿を隠している。 生まれた時から一緒に過ごしてきた、幼馴染みのれいむ。巣立ちと同時につがいになり、ちゅっちゅをし、らぶらぶすっきりーをした。 常にまりさと共にあった、かけがえのないパートナーだ。 最初の頃は失敗もあったけれど、いまはすっかり一人前の主婦ゆっくりだと言わざるを得ない。 そんなれいむの、いちばん得意なのがこの「けっかいっ」である。 枯れ葉や木の枝で作った見事なカモフラージュには、子ゆっくりの頃から大人ゆっくりがが舌を巻くほどだった。 まりさまで誇らしい気持ちになり、餡子さんがぽーかぽーかしてくるのだった。 「ゆゆっ、おきゃーしゃん、おとーしゃん! しゅーりしゅーりしちぇにぇ!」 「ゆぅっ! まりちゃも! まりちゃもしゅーりしゅーりしちゃいのじぇ!」 「ゆふふ、おちびちゃんたちはあまえんぼうだね! ぴくにっくさんのまえに、ゆっくりすーりすーりしようね!」 「まりさのおちびちゃん! おとーさんとおかーさんで、だぶるすーりすーりだよ! すーりすーりすーり!」 「「ゆわぁぁい! ゆわぁぁぁい!!」」 おでかけの前におねだりをして、思う存分のしあわせー!を堪能したおちびちゃんたち。 頃合いを見計らったまりさがうながすと、また元気に這いずりはじめた。 キラキラした目で前進する後ろの地面、うれしーしーの跡が点々と続いている。 まりさはれいむと顔を見合わせて、しょうがないね!と無言で笑いあうのだった。 「ゆっ、ゆっ……まりさ、ひさしぶりのぴくにっくさんだね! れいむ、とってもたのしみだよ!」 「まりさもだよ! さいきんはかりさんでいそがしかったからね! でもきょうは、ゆっくりしたごはんさんがいーっぱいだから、ゆっくりできるね!」 「ほんとうだね! きっとゆっくりしたおちびちゃんたちにたべてもらいたくて、はえてきてくれたんだね!」 そんなことを話しながら、可愛らしいおちびちゃんたちを見守りつつ進む。 餡子の底からぽーかぽーかする日差しを感じながら、ゆふふ、ゆっくり、とまりさとれいむは笑いあった。 向かう先には、短くてふさふさな芝が広がる大草原――人間の視点では、公園の広場がひろがっている。 通りに面したその広場で、まりさがゆっくりついたよ! と宣言をする。 待ちきれなかったと言わんばかりの活発さで、子まりさと子れいむははしゃぎはじめた。 「れいみゅ、ゆっくちきょーそうしゅるのじぇ! ゆぅぅぅ、ゆっくちー! ろけっとすたーとしゃんなのじぇー!!」 「ゆぅっ! おねーしゃん、しゅごいよ! れーみゅも! ろけっとしゃんで、ゆっきゅりおいかけりゅよ!」 さっそく競走をはじめて思い思いに駆け回るおちびちゃんたち。 見守るまりさの小麦粉の肌に、れいむが「ゆんっ♪」とほほを寄せた。 「ゆっくりだよ……まりさたち、ゆっくりしてるよ……!」 「まりさ……れいむ、しあわせーだよ。こんなにゆっくりしてて、いいのかな……?」 「ゆふふ……いいんだよ! だってまりさたちは、ゆっくりなんだからね……!」 すーりすーりをしてくるれいむに、まりさもすーりすーりを返す。 子供の頃から思い描いていた、ゆっくりした家庭がここにある。 そんな実感に包まれた、圧倒的な「しあわせー」の真っただ中にまりさたちはいた。 昨日や一昨日のように大変なときもあるけれど、それを乗り越えればゆっくりには、こんな最高のゆっくりが約束されているのだ。 こんな時が永遠に続けばいいと、まりさは餡子の底から思っていた。 れいむもきっとそれは同じだろう。まりさにはそんな確信があった。 しかしまりさやれいむがそうだったように、おちびちゃんたちはおちびちゃんのままではいられない。 いつかゆっくりしたゆっくりになるべく、日々ゆっくり成長しているのだ。 つい最近赤ゆっくりを卒業し、子ゆっくりと呼べるサイズになったところだ。これからは少しずつ、ゆっくりしたゆっくりになれるように教育していかなければならない。 ただゆっくりさせているだけでよい赤ゆっくりの時期とは、また違った子育てが求められるのだ。 ゆっくりはいつしか、変わっていってしまうものである。 しかしそれは悲しいことではないのだと、れいむとまりさはおちびちゃんたちを見つめながら思うのだった。 「ぴょーんぴょーんしゅるよ! …………ゆゆっ? これにゃーに?」 そんなゆっくりした、ぴくにっくさんの最中。ぴょんぴょんと跳ねていた子れいむがふと、体をかしげて声をあげた。 何かを見つけたらしい。子まりさも跳ねるのをやめて、子れいむの方にずーりずーりと這い、何事かと顔を突っ込む。 「おにぇーちゃん、みちぇ! ありさんが、ゆっくりわっしょいしちぇるよ!」 「ゆっ? ……ゆわぁぁぁ、ほんとーなのじぇ! ありしゃんが、ばったしゃんをわっしょいしてりゅのじぇ!」 ありさん。ばったさん。まりちゃとれーみゅ。 単純な思考のゆっくり、まして等しく自己中心的な子ゆっくりたちである。 状況を餡子脳に照らし合わせて、導き出された答えはひとつだった。 「ありしゃんが、ごはんしゃんをもってきてくれちゃよ! れーみゅたちが、ゆっきゅりしてりゅからだにぇ!」 「しょーなのじぇ! これは、れーみゅとまりちゃへの、みちゅぎものなのじぇ! ゆっくちー!」 それを聞いて肝を冷やしたのはまりさとれいむだ。 バッタさんはいい。バッタさんはゆっくりできる、ゆっくりのためのごはんさんだ。 しっかりした歯ごたえと柔らかさ、口の中に広がるジューシーな風味は、子れいむと子まりさの好物のひとつだ。 だがアリさんは駄目だ。アリさんは、ゆっくりできない。 まりさとれいむは小さい頃、おうちを抜けだして遊んだことがある。 そのとき一緒にアリさんを食べようとして、仲良く舌を噛まれてしまったのだ。 勝手におそとに出たことに大目玉をくらうわ、ひーりひーり、ずーきずーきとした痛みがなかなか引かないわ。その時の記憶は大変ゆっくりできないものとして残っている。 そんなことを思い出している間に、おちびちゃんたちは今にもバッタさんに、アリさんごと食らいつこうとしている。 まりさとれいむは肝を冷やして顔を見合わせ、慌てておちびちゃんたちのもとへ跳ねていった。 「おちびちゃんまってね! ありさんはちーくちーくしてゆっくりできないよっ! ゆっくりはなれてね!」 「ゆっ? しょーにゃの? ……よくみちゃら、ありしゃんはゆっきゅりちてないにぇ!」 「ちーくちーく……ゆううう? ありしゃん! まりちゃ、ばったしゃんたべちゃいのじぇ! どーちて、いじわるしゅるのじぇぇ!」 「おちびちゃん、あんしんしてね。ありさんがもってきてくれたごはんさんは、おとーさんがとってあげるよ!」 「「ゆゆっ!?」」 体をかしげたおちびちゃんたちの前に躍り出ると、まりさはバッタを運ぶアリの群れに向かって、おさげを勇ましく突き出した。 そうして器用にバッタを掴むと、ぱっぱっと何度も素振りをした。振り払われたたくさんのアリが、放物線を描いてどこかへ飛んでいく。 最後にバッタを地面に落として、おさげを箒のように使い、取りきれなかったアリを払いのける。 やがて綺麗になったバッタを、アリが残っていないか確かめてから、二つにちぎっておちびちゃんたちに差し出した。 「……ゆ、ゆわぁぁい! ばったしゃん! おちょーしゃん、ありがちょぉぉぉ!!」 「ゆうううう!? しゅごいのじぇぇ!! まりちゃのおとーしゃんは、ゆっくちさいっきょーなのじぇぇぇ!!」 鮮やかな手際を見せられてぽかーんと呆けていたおちびちゃんたちは、差し出されたバッタを見、まりさの顔を見て、大喜びで跳び上がった。 子れいむはしーしーをうれしゅっきり! し、子まりさは父親を尊敬のまなざしで見上げている。その様子にまりさも満足して、ゆっくりした笑顔で返した。 「ゆふふ、それほどでもあるよ! さあおちびちゃん、ゆっくりめしあがれ!」 「おちびちゃん、おとーさんにゆっくりかんしゃしようね!」 「「ゆわぁぁい!! おちょーしゃんありがちょー!! むーちゃ、むーちゃ! ……し、し、しあわしぇぇぇええ!!!」」 ゆっくりしたバッタさんをたべて、しあわせー! でいっぱいのおちびちゃんたち。 れいむが寄り添ってきて、一緒にその様子を見守るまりさ。何度かのむーしゃむーしゃを経て、バッタさんはおちびちゃんのぽんぽんにおさまった。 「ありしゃんはゆっくちしてにゃいけど、ありしゃんのごはんしゃんはゆっきゅりしちぇるにぇ! ……ゆゆ?」 「おちょーしゃん、おかーしゃん。どーちてありしゃんはゆっくちしてにゃいのじぇ?」 バッタさんを食べ終わった子まりさと子れいむは、体を左右に折り曲げてれいむとまりさを見た。 バッタさんは、美味しいごはんさんだ。それに比べて、アリさんはゆっくりしてない。 さっきのようにごはんさんをもってきてくれるアリさんは、ゆっくりできる存在のように思えた。だが現実は、ゆっくりしてない。 ゆっくりしてるけど、ゆっくりしてない。そのことが不思議で、子まりさと子れいむはゆんゆん唸りはじめた。 「ゆぅ……」 まりさは感動と、一抹の寂しさを感じながら、おちびちゃんを見つめた。 ゆっくりしていればそれでよかった、純真そのものの赤ゆっくりだったおちびちゃん。 そのおちびちゃんたちが今、世界のいろんなことについて知ろうとしている。ゆっくりにとってゆっくりできる、ゆっくりした成長。その一端を窺わせる、わずかな変化であった。 だがそれは、おちびちゃんたちがおちびちゃんを卒業し、ゆっくりした大人になりはじめた証であり―― まりさは振り返る。嬉しそうな顔のどこかに、れいむもわびしいような、なんともいえない感情をにじませていた。 視線を交わして、まりさは向き直る。その隣に、れいむが跳ねてきた。 そうして、まりさたちは教えはじめた。いつかおとなになるおちびちゃんたちのために、ゆっくりできる世界の真実を。 「それはね、おちびちゃん。ありさんが、ゆっくりじゃないからなんだよ」 「「ゆゆっ?」」 「おちびちゃん、ゆっくりは、ゆっくりできるよね。でもありさんは、ゆっくりじゃないから……だから、ゆっくりできないんだよ」 「ありさんは、ひなたぼっこでぽーかぽーかもしないし、ぴくにっくさんもしないよね?」 「まいにち、いちにちじゅうはたらいてばかりだよね? ゆっくりできてないよね? ……かわいそうだけど、しかたないんだよ。ありさんたちは、ゆっくりじゃないから……」 子れいむと子まりさは、少ない餡子脳で、ゆんゆんと過去に思いをはせた。 この子ゆっくりたち、アリを見るのは初めてではない。 いつもせかせかと外をうろついて、ごはんさんを探しまわっているアリさん。 おとうさんとおかあさんの言う通り、とてもゆっくりできるとは言い難かった。 「だから、ゆっくりできないありさんのかわりに、まりさたちがゆっくりしてあげるんだよ! それがせかいの、せつりっ! なんだよ!」 「ありさんがどんなにゆっくりしてても、ゆっくりよりゆっくりはできないんだよ。ありさんは、ゆっくりがうらやましくてしかたないんだよ」 「さっきのありさんたちは、おちびちゃんたちがゆっくりしてるから、ちょっとだけゆっくりできるようになったんだね。おちびちゃんたちゆっくりりかいできるよね?」 ゆっくりしてるゆっくりを見れば、みんながゆっくりできる。 ゆっくりが世界でいちばんゆっくりできる。だからゆっくりはゆっくりしなければならない。 そうすればみんながゆっくりできて、しあわせー! になれる。 まりさとれいむが紡ぐ言葉は、古くからゆっくりの餡子に受け継がれてきた、世界の真実そのものだった。 「……ゆっくりりきゃいちゃよ! れーみゅ、ゆっくちしゅるにぇ!」 「ゆっくちりかいしちゃのじぇ! ゆっくち! まりちゃはゆっくちだから、ゆっくちできりゅのじぇ!」 そのゆっくりできる教えは、餡子脳にうっすらと残っている記憶に結びつきはじめた。 キリッとりりしく眉をつり上げた得意げな表情で、子まりさはぷるぷると震える。 子れいむはニコニコとした満面の笑顔で、ゆらゆらと体を振りはじめた。 その様子を、まりさとれいむは懐かしいものを見る目で見つめた。 かつての自分たちも、そうやって両親から真実を教わったのだ。あの時の自分たちはどうだったっけと、こっそり視線を交わして笑いあうのだった。 「ゆゆっ! おとーしゃん、あっちににんげんしゃんがいるのじぇ!」 ふと、体を振っていた子れいむが気付いた。 まりさたちのいる公園の広場は、比較的敷地のすみっこにある。見ようと思えば、通りから公園を、あるいは公園から通りを覗くことは容易だった。 それでも夏までは、植えられた低木の葉が遮って、子ゆっくりたちから通りの様子は窺えなかった。 だから公園の外の様子を眺めるのは、子まりさと子れいむにとって初めての経験であり。せかせかと通りを抜けて行く人の流れを見るのは、ゆん生初の経験であった。 「ゆぅぅ……なんだか、ゆっくちしてにゃいのじぇ……」 「おちょーしゃん、おかーしゃん。にんげんしゃんも、ゆっきゅりできにゃいの?」 子れいむと子まりさは、可哀想なものを見る目であわただしい人の波を見た。 れいむとまりさはそんな様子を見て、残念だけど、その通りなんだよ。という憐みさえ含んだ声色でゆっくりと答える。 「そうだよ。だからにんげんさんは、ゆっくりにしっとして、たまにいじわるをするんだよ。かわいそうだね……」 「ほんとうはゆっくりにうまれたかったのに、ゆっくりになれなかったから……みてごらん。ぜんぜんゆっくりできていないよね? むしさんより、ゆっくりしてないよね?」 「ゆぅ……」 「ゆっくち……」 子れいむと子まりさはもう一度、行き交う人の群れを眺めた。 時計を覗きながら速足で歩いて行くお兄さん。電話に向かってしきりに話しかけるお姉さん。落としてしまった通勤かばんに書類を詰め込んでいるおじさん。 誰もかれもが、みんなゆっくりしていなかった。今までにも見たことのないくらい、ゆっくりしていない生き物。それが人間なのだ。 人間はゆっくりしてない。ゆっくりはゆっくりしてる。両親からのその教えは目の前の光景と合わさり、自然なものとして受け止められた。 子れいむと子まりさの若い餡子にしっかりと刻み込まれ、自然の摂理として吸収されていく。 「「ゆっくりりかいちたよ!!」」 そうして高らかに、元気な声で宣言するのだ。 先ほどよりも自信に充ち溢れた声色に、れいむとまりさは、ゆんゆん! とうなずいた。 「ゆゆんっ! じゃあおちびちゃんたち、みんなでいっしょにゆっくりしようね!!」 「おなかがすいたら、おひるにしようね! おちびちゃん、ゆっくりしていってね!」 「ゆわぁぁい! おきゃーしゃん、しゅーりしゅーり!」 「ゆうぅっ! まりちゃも! まりちゃもぉぉ!! ちゅーりっ、ちゅーりっ!」 ほんの少しおとなになり始めた、可愛い可愛いおちびちゃんたち。 その成長に確かな「ゆっくり」を感じながら、まりさとれいむはすーりすーりを繰り返すのだった。 寒い寒い冬の休日、粉雪の舞う冷たい朝のこと。 久々に夜更かしをした俺は、乗る予定のバスを寝過ごした。ものの見事に寝過ごした。 念のために二つセットした目覚まし時計を、二つとも止めて二度寝をするという徹底振りであった。我ながら惚れ惚れするような寝過ごし方である。 旅行に出ている親がもし家に帰って来ていて、親切心を発揮して起こしてくれていたたとしても、それさえスルーして三度寝を決めていたかもしれない。 とはいえ用事は大したものではなく、後回しにしてもさして問題はない程度であった。なんといっても、今日は休日なのだ。 最近寝不足気味だった頭は、今はとてもすっきりしている。寝過ぎてしまったことにまったく後悔はなかった。休日さまさま、二度寝万歳と言えよう。 「……おに……じゃ……だじゅ…………げ……」 「ちゅぶ……れ…………じゅ…………びゅ…………びゅ……」 「あーあ。どうせ二度寝するなら、目覚ましなんてセットしなくてよかったか。まったく」 加工所のゆっくり新商品、アラームに最適な『目覚ましまりちゃ』。 時刻とともに針でつつかれて悲鳴を上げさせられたまりさ種の子ゆっくりは、寝ぼけた俺がボタンを押したときから今に至るまで、平べったく圧迫され続けている。 咽喉をうまく圧迫することにより発声をほとんど止められた量産品ゆっくりは、よくよく耳をすますとかすかに悲鳴を上げていた。 休日の油断と布団恋しさで、とうとう土をつけてしまったことになるか。しかし友人に勧められて、この時計を使い始めてから、平日の用事を寝過ごしてしまったことは一度もない。 無力、脆弱、馬鹿と三拍子揃った役立たずであるゆっくりを人間の役に立てることにかければ、加工所の右に出るものはまだまだ現れそうにない。 その知恵をもっと別の方向に……と思わなくもないけれど、こうしてその恩恵にあずかっている以上は何も言えないか。 さて昼食には微妙に早いが、俺にとっては朝食に遅すぎない時間である。 潰れたカエルのようになっている目覚ましは放っておいて、人気のない家の階段をとんとんと降りる。 冬の朝は寒くてしょうがない、と心の中で愚痴りながら、降りて歩いて、ガスストーブの前に立つ。ボタン一つで気持ち良い温風が吹きだした。一生ここにいたいと心から思う。 とまあそんなわけにもいかず、のそのそと歩いて歩いて、台所へ。 休日にまで仕事が入らないよう、全てきっちり片づけてやっと得られた休日だ。何にも邪魔されずに……と思うとなんだか気分もノってきて、食べものもいろいろ食べたくなった。 食パンを一切れ、オーブントースターに放り込む。ダイヤルを回して放っておき、その間に卵を割って溶いておく。 油を熱したフライパンに注いでかき回せば、あっという間にスクランブルエッグの出来上がりだ。 思わずケチャップで模様なんかを描いたりして、赤と黄色が目に映える。とんとん。 そういえばレンジでチンするだけで飲めるスープがあったな。癖でパチンと指を鳴らして、冷蔵庫を覗きこむ。 マグカップに注いで温めれば、あっという間にコーンスープの出来上がりだ。 横着者の俺には最適だ。こういう便利な商品は是非とも開発を進めていただきたい。とんとん。 白い湯気が立ち上るマグカップを傾け、とんとん、少しだけ味見をしてみる。温めすぎたかとも思ったが、このくらいでちょうどよかった。 あとは残りものの野菜サラダがある。とんとんとんっ。レタスをちぎってミニトマトを乗っけただけだが、とんとん。とんとん。ぽゆんっ。まあ朝にはこれでいいだろう。ぽいんっぽいんっ。 食卓の一番奥の席、ストーブのすぐ前に陣取ると、丁度トーストがいい具合に焼けていた。ぽゆん。ぽゆんっ。とんとん。 それをぽんぽん、並べぽいんぽいん、いただきまゆっゆっ、ゆっゆっぽゆんぽゆん!! うるっさいなあ。 さっきから華麗にスルーしていたが、いいかげん鬱陶しいので目線だけ向ける。 食卓から見える窓の向こう。はらはらと降る雪を背景に、4匹のゆっくりの姿があった。大まりさ、大れいむ、小まりさ、小れいむという組み合わせだ。 食卓のすぐわきにある窓は、ゆっくりが覗くこともできないような高さにつくられているのだが。 しかしよくよく思い返すと、そういえばあの位置にはエアコンの室外機があった。 そこらへんのものを踏み台にして室外機の上にのぼり、そこから覗きこんでいるのだろう。 野良ゆっくりの例にもれず、4匹は薄汚い饅頭そのものといった風貌をしている。 特に小さいまりさとれいむの方は、ひどく頬がこけていた。薄汚い饅頭がさらに惨めな汚饅頭になっているという有様だ。 こちらから向けた視線に気付いたのか、成ゆんらしき汚らしい饅頭たちがこちらを見て、汚らしく唾を飛ばしながら汚らしく何かを訴えている。 小さな方は、薄汚れて褐色になったリボン付きがなにやらぐったりしている。飢えのために弱っているのだろう。 また、ゴミのついた汚帽子の方は、汚らしい涎をだらだらと垂らしている。その目は食卓にくぎ付けだった。 先程からとんとん、とんとん、としていた音は、大まりさと大れいむが、おさげやもみあげを窓ガラスにぶつけている音だったらしい。 ぽんぽん、ぽゆんぽゆん、という間抜けな音は、こいつらの窓硝子への体当たりの音であった。 「めんどくさいなぁ。汚いし、外は寒いし、汚いし、汚いし……」 しきりに何かを訴えているらしい大饅頭たちから視線を外し、俺はふぅとため息を吐いた。 このゆっくりたちが人間の家を乗っ取ろうとやって来たのか、それとも単に通りがかった飢えゆっくりなのかは分からない。 だがいずれにせよ、同じことだった。日本の標準的な窓ガラスは、ゆっくりが絶対に割ることができないように出来ているからだ。 ゆっくりが出すことのできる力、使い得る道具。多くの検証で得られたデータを元に、ガラスの耐久度は法律により定められている。 もっともゆっくりたちがその数字に与えた影響も、本当は微々たるものらしい。 実際はそういう質の低いガラスを作る業者が自然と淘汰されただけだ、と聞いたことがある。 なるほど確かに、と思ったものだ。「ゆっくりに割られるガラスの製作所」という評判は、ガラス工場からすれば「悪質業者」の四文字に等しい。 なので問題は目下、外に出ること。その一点にある。 季節は冬。寒い寒い冬である。しかもゆっくりゴミの回収BOXまでは近くない。 億劫なのだ。ただそれだけ。 「……あ。ま、いいか」 すっかり面倒な気持ちで胸がいっぱいになった俺だが、そんな気持ちも十数秒で晴れた。 どうせ窓ガラスを汚す以外、何もできやしないのだ。加えて庭には、ゆっくりに汚せるものは何も無い。荒される心配もゼロだろう。 それに汚れた窓ガラスも、さして気にならない事に気付いた。 ゆっくりによる汚れにもよく聞くと評判のクリーナーを、先週買ってきたばかりだったのだ。 何ならこの際、窓ふきくらいやってしまってもいい。 午後には少しくらい暖かくなっているだろう。どうせ暇で、やることは無いのだ。ちょっと早めの大掃除も悪くない。 それに今、俺の目の前には、美味しい美味しい朝ごはんがある。 さらに窓の外には、いかにもお腹がすいていますと言わんばかりの害虫が4匹、寒い雪の中で踊っている。 空腹は最高のスパイスと、偉い人は言った。 しかしその空腹とは何も、食べる当人に限った話ではないのだ。 初冬。 秋にはしあわせー! で一杯だった、ゆっくりできるまりさたちの家庭。 それが今は、おちびちゃんの泣き声で一杯であった。 「ゆえええん!! しゃむいよおお!! おなかしゅいたよおおお!! ゆっくちできないよおおおお!!」 「ゆっぴぃぃぃ!! もういやなのじぇぇぇ!! ゆっくりしちゃいのじぇぇぇ!! ゆじぇぇええん!!」 「ゆぅぅ……! ごめんね、おちびちゃんたち……すーりすーり、すーりすーりだよ……」 「ごめんね……ごめんね……もう、ごはんさんがないんだよ……ほんどうにごべんね……!」 お腹がすいた。寒い。ゆっくりできない。 その三つを訴え続ける子れいむと子まりさに、両親であるれいむとまりさはすーりすーりをして慰めることしかできない。 「まりざぁ、どうしてごはんさんがないのぉ……?」 「ゆぅぅ……こうえんさんにもはえてないし、ゆきさんでそとにでられないんだよぉぉ……!」 まりさは目に涙さえ浮かべて、番いのれいむに答えるしかない。 まりさ一家の食事は、一家の大黒柱であるこのまりさの「かり」の成果に完全に依存している。 一家の主食は公園の植物、木の実。それに動きの遅い昆虫やその死骸、あとは人間が時おり捨てて行くゴミなんかであった。 秋までは豊富だったどんぐりや木の実、色とりどりの草花も、いつの間にかすっかり姿を消してしまっていた。おまけに、時折降って来る白くて怖い「雪」の恐怖。 日本人なら「ああ、今年も冬だなあ」という程度の、当然起こる季節の変化だ。 だがまりさには、どうして食べものがないか分からない。 まりさもれいむも、生粋の野良ゆっくりである。 野良れいむと野良まりさの間に初春に生まれ、夏に独立し、秋に子を作ってここまでやってきた。 だから寒い冬など知らない。分かるはずもないのだ。 『おちびちゃん。ふゆさんはゆっくりできないから、あきさんのうちに、ごはんさんをいっぱいためておくんだよ』 『ゆっくりりかいしたよ!』 実のところ、まりさの親であるゆっくりまりさは、若ゆっくりだったころのまりさに、しっかりそう教えていたはずなのだが。 ゆっくりできること以外は、三歩跳ねれば忘れるのがゆっくりである。おちびちゃんが出来る頃には、そんなものはすでに忘却の彼方だった。 秋に生えてきた、たくさんのごはんさん。これだけあれば大丈夫、と目先のゆっくりを優先して、狩りをおざなりにしてしまった結果がこれである。 現在、植え込みのおうちの中に食糧の備蓄は無い。ほんのわずかな苦い草と、捨ててあったポテトチップスのカスがひとつまみだけ。 おちびちゃんたちの成長も遅れており、まだ舌っ足らずな赤ゆっくり言葉が抜けきっていない。成長に必要な栄養が、餡子に足りていないのだ。 「ぴぃぃっ! しゃむいぃぃ! もうやぢゃああ! しゃむいのやぢゃやぢゃやぢゃああ!!」 「しゃむいのじぇぇぇ!! ゆじぇぇぇん! ゆじぇぇええん! ゆっぐちぃぃぃ!!」 枯れ葉で作ったベッドさんも、冬の寒さには敵わない。 冷たい風がびゅうびゅう吹くたびに、子れいむと子まりさは悲鳴を上げた。 いつもゆっくりできた植え込みのおうちは、風を遮るものが何もない。ひっきりなしに吹く北風に、子ゆっくりが耐えられるはずもなかった。 (ゆうっ……どうしてゆっくりさせてくれないの? このままだとまりさたちも、おちびちゃんも、ゆっくりできなくなっちゃうよ……) 公園で餌が取れないのなら、公園の外のゴミ捨て場に――という発想は、まりさには無い。 防鳥を兼ねたネットや、倉庫のように作られた堅いドア、コンクリートブロックの厚い壁。 つくりは様々だが、どれもゆっくりが荒すことは決してできない。ゆっくりに長年悩み続けた、この国の対策の一環である。 日本という国に、ゆっくりの狩り場となるゴミ捨て場は、もうほとんど残っていなかった。 過去ゴミあさりを繰り返すゆっくりたちがいた時期もあったが、現在ではそうした害は滅多にない。 餌の取れないゴミ捨て場に行く習慣は、野良ゆっくりたちからはとうの昔になくなっていた。 ただでさえ都合の悪い事を忘れやすいゆっくりである。食べものが生えて来なくなった狩り場のことを、いつまでも覚えている個体の方が少ない。 まりさもその例に漏れなかった。まりさにとっての狩り場は、この公園の敷地内だけなのだ。公園に餌が無いとなれば、その時点で完全に手詰まりなのであった。 「れいむ……おちびちゃん……ゆっくりしていってね……」 「ゆぅぅ……まりさぁ、このままだとおちびちゃんが、おちびちゃんがぁぁ……」 「ゆっくり……だいじょうぶだよ。きっと、たいようさんやごはんさんが、ちょっとつかれちゃっただけだよ。すぐにまた、もとどおりになるよ」 「ゆっ……そうだね。あしたはおちびちゃんも、ゆっくりできるよね……」 今日はゆっくりできなくても、きっと明日は必ずゆっくりできる。 根拠の欠片も無い希望的観測を口にするまりさに、れいむはゆっくりを感じて微笑んだ。 「ゆ……ぐ……おど、じゃ…………おにゃか……しゅいた……ゆっぐぢ……」 「おぢびぢゃんじっがりじでええ! おがあざんだよ! おがあざんがごごにいるよっ!!」 「ぺーろぺーろ! ぺーろぺーろぺーろおおお!!」 しかし現実はそう優しくなかった。 公園に捨てられたゴミと、わずかな苦い草でなんとか食いつないでいたまりさたち一家。一か月と経たず、まず子れいむが体調を崩した。 目を半分も開けていられず、ぐったりと枯れ葉の上に横たわっている。 「いもーちょ、ゆっくち……ゆぅぅ、しゃむいのじぇぇ……まりちゃ、おなか、ぺーこぺーこなのじぇ……」 「ゆっ! おちびちゃん! おがーさんがすーりすーりしてあげるよ!」 「ゆぅぅ? い、いやなのじぇ……おかーしゃんのほっぺしゃん、ちゅめたいのじぇ……ゆっくち……」 「ゆぐっ……ごべんね、ごべんねぇぇ……!」 まりさ種はれいむ種よりも、活動的であることが多い。そんなまりさ種であるおちびちゃんの方は、まだ子れいむよりもマシな状態だ。 だが、もう丸一日なにも食べていないのは、子まりさの方も同じことだ。頬はこけ、訴える声にも元気が無い。 まりさもれいむも食事を抜きはじめて二日になるが、子ゆっくりの餡子の貯蔵はそれ以上に少ないのだ。 「ゆぐっ……まりざぁ、どうじよう……」 れいむは悲しさと不安で、まりさを見上げた。 れいむには、何もわからない。 今までは子供たちを守っているだけで、他のことはすべてまりさに任せれば上手くやって来れた。これからもそうだと、ずっと信じてきていたのだ。 救いを求めるような番いの視線を受けて、まりさはぐっと唇を噛んだ。 「……れいむ、おちびちゃん、よくきいてね。ここはもう、ゆっくりできないよ。ごはんさんもないし、とってもさむいさむいだよ」 そして、ぐいっと帽子をかぶり直すと。潤んだ目をおさげで払って、静かにそう切り出した。 「ゆっ……」 「ゆっくち……」 「だから、ゆっくりおひっこしをしようね。あたらしいゆっくりぷれいすを、さがしにいこうね」 「ゆぅぅ……ゆっくり、りかいしたよっ……! おちびちゃん、がんばってね!」 「お、かー、しゃ……ゆっきゅり……」 「まりちゃ、ゆっくちできりゅのじぇ……? ゆっぐ……ゆっくちしちゃい、ゆっくちしちゃいのじぇ……」 そうしてまりさたちは、住み慣れた公園を後にした。まりさの帽子の中に子供たちを入れて、思い入れの深いゆっくりぷれいすを、とうとう後にしたのである。 公園の外に出たのは初めてだった。 敷地内からは見たこともない、びゅんびゅん走る巨大なすぃー。 思わずしーしーを漏らしそうになりながらも、れいむとまりさは公園のすぐ外を、外周にそってずーりずーりと這う。 帽子の中におちびちゃんたちを入れる、という選択は正解だった。寒い寒い北風も、帽子をひとつ隔てるだけでだいぶ楽だ。 それでもときおり、帽子からは「しゃむいよぉぉ」や「おにゃかしゅいたのじぇぇ」といった声が聞こえてくる。 ゆっくりできていないおちびちゃんのために、まりさとれいむはただひたすら、ゆっくりせずに進み続ける。 (ゆぅぅっ……にんげんさんは、どうしておなかがすいたり、さむそうにしてないの? ゆっくりしてないにんげんさんなのに……) 途中、まりさはふと思った。休日のため人通りはまばらだが、見上げればそこかしこに人影がある。 首におかざりを巻き付けた人間さんや、手を何かで覆った人間さん。 相変わらずゆっくりしないで行きかっているが、寒さで凍えたり、飢えで苦しんでいる人間など一人もいなかった。 (ずるいよ……どーして……まりさたちのほうが、ゆっくりしてるのに……ゆゆっ! そ、それどころじゃないよっ、いそがないと……!) 理不尽さを声に出して訴えたかったが、そんなことをしていればまりさのおちびちゃんたちが危ない。 ゆっくりせずに、まりさは跳ねた。跳ねて、跳ねて、すぃーに驚き、跳ねて跳ねて、跳ね続けた。 「ゆっ、ゆっ、ゆっ……ゆゆっ? なに、これ?」 「ゆっ……おっきなはこさんだよ……」 横断歩道を渡る事も知らないしできないゆっくりたち。通ることのできる道は少なく、たどり着く場所もほぼ限られていた。 見たこともない色の壁にかこまれた、大きな大きな、人間の家。 二階建ての一般的な家屋も、ゆっくりたちの目にはお城のように映る。 まりさとれいむはぽかんと口をあけて、しばらくその家を見上げていた。 お帽子がずれそうになり、慌ててまりさは顔を戻した。そしてれいむと顔を見合わせる。 「ゆぅっ! まりさ、このおうちなら……!」 「ゆぅ、れいむ……でも、こんなおっきなおうち、だれかがつかってるにきまってるよ……」 「ゆっ、で、でもぉ、でも、まりざぁ……」 そんな事は言っていられない、切羽詰まった状況なのはまりさにも分かっている。どうするべきか分からず、ゆんゆんと唸り始めた。 しかし事態に拍車をかけるものが現れた。 まりさとれいむの目の前に、白くて冷たいそれが、はらはらと降り始めたのだ。 「ゆゆっ! ……ゆきさんだああああ」 「ゆわぁぁっ! ゆきさんはこないでね! れいむ、ぷくーするよ!」 「ゆわぁっ……ゆきしゃん……いやなのじぇぇ……まりちゃ、きょわいきょわいなのじぇぇ……!!」 「ゆぴ……しゃむいの、やぢゃ…………もう、やぢゃぁぁ……っ」 雨で溶けてしまうように、雪もゆっくりにとっての数多い天敵のひとつだ。 公園でも雪の降る日はガタガタと震えるしかなかった。だがおうちでは幸いなことに、ビニール袋や落ち葉の屋根がほとんどを防いでくれていた。 だがここは公園の外、屋根などない。雨宿りできるような場所も、右にも左にも見当たらない。 「ゆきさん」という言葉に、帽子の中のおちびちゃんたちにも恐慌が走った。子まりさの悲鳴と、子れいむの嘆きの声が上がる。 可愛い可愛いおちびちゃんたちの声が、ようやくまりさの背中を押した。 「し、しかたないよ! れいむ、このおうちであまやどりしようね!」 「ゆっ! ゆっくりりかいしたよ! それがいいよ! だれもつかっていなかったら、ゆっくりおうちせんげんをしようね!」 「ゆん! だれかがすんでても、ゆっくりしたおちびちゃんをみせたら、いえのなかにいれてやすませてくれるよね!」 「そうだね! ゆっくり!」 怖い怖い雪が降る中、まりさとれいむはそんなことを言いながら、おちびちゃんとともに敷地内へと侵入する。 普段は門が堅く閉じられていて、入ることなど不可能なのだが。しかしこの家の持ち主は、息子を置いて旅行中。 要するに車庫が開いていたのだ。まりさとれいむにも運が残っていた。 しかしその幸運も、ここで売り切れ。店じまいになってしまったらしい。 「ゆーしょ! ゆーしょ! ……どーしてはいれないのおおお!!??」 「とうめいなかべさんがじゃまずるよぉぉ! ゆっぐりいれてね! ゆっくりさせてねえええ!!」 「ゆ……まぢゃなのじぇ? まりちゃ、おうちにはいりちゃいのじぇぇ……ゆじぇぇぇぇん……」 「ゆぴ……ゆっぐぢ……ゆっぐぢさせで……」 家に入ろうにも、透明な壁が立ちはだかる。家の中の光景は見えるものの、どんなに進んでも入ることができない。 雪は先程から、徐々に勢いを増し始めている。粉雪だった白い粒は、粒の大きいぼたん雪へと変わりつつあった。 こうしてはいられない、と慌てに慌てる。バケツからエアコンの室外機に昇り、そこでおちびちゃんを外に出した。 そしてまだ試していない窓から、先程以上に力を入れてぐいぐい進もうとする。しかし一向に状況は変わらなかった。そのための窓ガラスなのだ。 「ゆっぐ……どぼじで……まりざぁ、どぼじではいれないのぉぉ……?」 「ゆぅぅっ、いじわるなかべさん、ゆっくりどいてね、まりさたちを、おうちに…………ゆっ?」 「ゆゆっ?」 そこで、まりさたちは見つけた。 おうちのなかを不意に、人影が横切ったのだ。 「に、にんげんさん……」 「ゆぅぅ……ここはやっぱり、にんげんさんのおうちだったんだね……」 まりさが先程言った通りである。こんな立派なおうちに、誰も住んでいないわけがないのだ。 このおうちは人間が先に住んでしまっていた。まりさたちより先に、おうちせんげんを済ませていたのだろう。 もしかしたら……と思っていたれいむとまりさは、がっかりと落胆した。 しかし。少しすると、ふつふつと心が沸いてくる。 「ゆぅっ! ずるいよ! にんげんさん!! ゆっくりしてないくせに、こんなおうちにすんでるなんて!!」 「ゆゆっ! ……そうだよ! れいむたちのほうがゆっくりしてるのに! こんなのおうっぼうっだよ! ゆっくりぷんぷん!!」 まりさからすれば当然の主張であり、れいむもすぐに追従した。 中の人間には声が届いていないらしく反応が無かったが、それでもまりさたちは止まらなかった。 ゆっくりはゆっくりしている。人間はゆっくりしてない。それが世界の摂理であるはずなのに、どうして人間の方がゆっくりしているのだ。 人間からしたら失笑ものの主張である。いちいち耳を貸すのは暇人か、よほどの物好きくらいだろう。 しかしそんなまりさとれいむの叫びは、強制的に中断された。 家の奥から戻って来た人間が、いくつもの皿をテーブルにならべたのだ。 「ゆわっ……ゆわわわわ! なにあれ! なにあれ! なにあれええええっ!!」 「ゆわぁぁ!! にんげんさんのごはんさん、すっごくゆっくりしてるよおおおおお!! れいむ、あんなのみたこともないよおおお!!!」 「ゆゆっ! ……ごはんしゃんなのじぇ? ゆわあああっ! ごひゃんしゃん! ごひゃんしゃんがいっぴゃいありゅのじぇえええ!!!」 「ゆっ……ごひゃん…………れーみゅ、……むーちゃ……むーちゃ、しゅるよ…………」 トーストにスクランブルエッグ。鮮やかな黄緑のレタスのサラダ。湯気の立ち上る、暖かいスープ。 今までのゆん生で見たこともないもの。しかし本能で、それらが人間の食事だと、ゆっくりたちにはわかるのだ。 ゆっくりは、ゆっくりできることだけを餡子に受け継いでいる。空腹と目の前の光景が、餡子の中でピタリと結びついたのである。 「れいむ、おちびちゃんたち! きょうはにんげんさんに、ごはんさんをもらおうね!」 「ゆっくりりかいしたよ! おちびちゃん、もうすこしまっててね!! もうすぐだよ! よかったね!!」 異を唱える者がいるはずもない。子れいむに至っては空腹と寒さでぐったりしている。 寒くて寒くて仕方のないのは他の三匹も同じだが、ゆっくりしたご飯さんをしっかりと目に焼き付けている。 俄然やる気を出しており、疲れも寒さもなんのそのだ。 「ちょうだいね! ちょうだいね! まりさたちに、ごはんさんちょうだいね!」 「人間さん! れいむたちはゆっくりしてるでしょ? ゆっくりしたゆっくりに、ごはんさんをちょうだいね!!」 「まりちゃ、むーちゃむーちゃできりゅのじぇぇ……! しあわしぇーなのじぇ……!」 「ゆっくち……ごひゃんしゃん……ゆっくち……」 おさげでとんとんと叩く。ぽんぽんと体をぶつける。一歩下がって反動をつけて、透明な壁さんに体当たりをする。 口の中いっぱいによだれを溜めながら、まりさとれいむのアピールはしだいにエスカレートしていく。 家のなかの人間さんはまだ気付いていないようで、こちらを見てもくれないのだ。もっと強く、もっと激しく、音を立てなければならないのが分かる。 子まりさは家の中の光景に目が釘付けだ。口からよだれをだらだらとたらして、キラキラしたおめめに涙さえ浮かべている。 丸一日何も食べていない状況は、子ゆっくりにはそれほど辛いのだ。こけてしまった頬も、にっこりとほほ笑みに吊りあがっていた。 そして子れいむはというと、ぐったりと横たわったままだ。だがごはんさんが目の前にあるのは、親や姉の会話からわかる。 うわごとのように食事を催促しながらも、心なし口元には笑みさえ浮かんでいた。 「ゆっ? ……にんげんさん?」 「ゆゆっ! にんげんさん! れいむたちにごはんさんをちょうだいね! ちょうだいねぇぇ!!」 「にんげんさん! おちびちゃんがおなかをすかせているよ!! はやく、ごはんさんをちょうだいね!!」 そこで、待ち望んだ人間からのリアクションがあった。 家の中から視線を向けて、たしかにまりさとれいむを、お腹をすかせたおちびちゃんを見たのだ。 ゆっくりしてない人間が、ゆっくりしているゆっくりにご飯を差し出すのは当然。 餡子の底から響くそんな考えに、アピールと繰り返していたまりさとれいむはますます色めき立った。 「…………ゆ?」 「…………ゆゆ?」 しかし人間は、ふとほほ笑んだかと思うと。 そのまま視線を外し、食卓に座ってしまった。 いっただっきまーす。 窓越しにでも聞こえるほど、元気よくそう言って、トーストをつかみ上げたのだ。 「ゆっ!? にんげんさん!? きこえてるんでしょっ!? にんげんさぁぁん!? はやくここをあけてねえええ!!」 「にんげんざん!? おちびちゃんがさきっででしょおおお!!? なにやっでるのおおおおぉぉ!?」 「ゆぅっ!? どーちて、くれにゃいのじぇ!? にんげんしゃん! まりちゃもむーちゃむーちゃしちゃいのじぇ!! ゆっくちちょうだいにぇ!!」 ぱりぱり。さくさく。もっちもっち。そんな音さえ聞こえてきそうな、ゆっくりとした食事風景が目の前で繰り広げられる。 バターとジャムを塗り、もぐもぐと頬張っていく人間さんは、ニコニコと幸せそうに笑っている。 美味しい美味しいごはんを食べているのだと、「しあわせー!」の一声がなくてもはっきりわかる。 「ゆうううっ!! にんげんざん!! どうしてあけてぐれないの!!? ゆっぐりざぜてね!! ゆっぐりざぜでよおおお!!」 「ちょうだいにぇ! ちょうだいにゃのじぇ! まりちゃにごひゃんしゃん! ……ゆじぇぇぇん! どーちてくれないのじぇええっ!!」 「おぢびぢゃんがおながをすかせてるでじょぉぉおお!? どうじでなのおおっ!! は……はやぐあげろおおおっ!!」 「まりざたちはゆっくりしたいんだよ!! ゆっくり……ゆううううっ! まりさ、ぷくーするよぉぉ!?」 サクサクのトーストも。しゃきしゃきのサラダも。ほかほかの卵やスープも。 起きぬけでお腹のすいている男の腹に、どんどんと消えて行く。 まりさたちが知る由もないが、目の前の人間は生まれてこの方、朝食だけは抜いたことがなかった。 おかげで朝から体はフル稼働。今年の秋も冬も、季節の変わりはじめの風邪とはとんと縁のない生活を送っていた。 「ゆ゛う゛う゛う゛っ!! ゆ゛う゛う゛う゛う゛う゛っ!! ……ゆ? …………ゆ゛ゆ゛う゛う゛う゛う゛うっ゛!?!?」 「ゆ゛っ……ゆ゛あ゛あ゛あ゛あああ!!! どぼじでごはんざんがないのお゛お゛お゛お゛おお!?!? どぼじでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え!!!!」 「ゆ……ぁ……ま、まりちゃの……まりちゃのぶんは……? ……ゆ、ゆじぇぇぇん!! ゆじぇえええええん!!!」 無駄な努力を尻目に、もくもくと朝食を平らげる男。終始笑顔であった。 ごちそうさま! の声を高らかに上げると、すっきり食べつくされた食卓を見て、三匹は嗄れんばかりの声で叫んだ。 「れー、みゅ……ごひゃん……しゃん…………もう……にゃい…………ゅっ………ゅ………」 「ゆっ!? ゆ、ゆわぁぁぁっ!!」 「おぢびじゃん!! じっがり! じっがりじでねえ゛え゛え゛ぇ!!」 「……にゃん、で……ごひゃん……しゃん…………だべ……ちゃ……ぃ…………………………………………」 「おぢびぢゃあ゛あ゛あああああ゛あ゛あん! おでぃびじゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん!!!」 「ゆあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ああああ!!! あ゛あ゛あ゛っ!! あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 目の前にあった食事が無くなったのを知ると、子れいむは絶望を顔に貼り付けて死んだ。 ごはんがたべたい。ごはんがたべたい。それだけを訴えて、訴え続けて死んだのだ。 大粒の雪が降りしきる。もう二度と動かなくなった我が子を前に、れいむとまりさは慟哭した。 「あっ、死んだ。片づけが一つ楽になったわ」 ゆっくりの視線をスルーしつつ食事を終えて、少しすると一際うるさい叫び声が聞こえてきた。 食事中に向けなかった目をそこでようやく向けてみると、子汚いリボン饅頭がころん、と完全に倒れていた。 こいつらの子供なのは一目で分かる。 子ゆっくりを失って叫んでいるあたり、子を見捨てるゲスではないようだが。それでもこちらにとっては、同じことだ。 さっきまで「ちょうだいね!」と叫んでいたのも、ちゃあんとこちらには聞こえていた。 寒い上に空腹で苦しんでいるのも、言われなくてもすぐに分かった。 だが俺は何もしなかった。 当たり前だ。害虫に施しなどあるはずもない。 庭に侵入し、厚かましくも食事を要求し、あまつさえ窓を汚すような存在に、くれてやるものなど何もないのだ。 こいつらの悲鳴をBGMにした朝食はいつも以上に、それはそれは美味しく感じられた。ああうまかった。 「おでぃびじゃあああああん!! な゛んでえ゛え゛え゛ええ!!!」 「どぼじでええええ! どぼじでどぼじでどぼじでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!!」 ふぅ満腹。と一息ついたところで、さすがにやかましくなってきた。 台所の流しに食器をおいて、ついでにゴム手袋と、大きなゴミ袋を取って来る。 車庫をしっかり締めておかなかった以上、この糞ゆっくりどもの害はうちの責任だ。自分でしっかり始末をつけねばならない。 そうして窓を開けた。すぐに網戸でゆっくりの侵入を防ぐ。 雪の降る冬の空気が、顔や腕に冷たく吹きつけた。つべたい。 「ゆう゛う゛う゛う゛う゛!!! ゆ゛う゛う゛……ゆ゛!! に、に゛ん゛げん゛ざん゛!!」 「ゆ゛ゆ゛う゛!! どぼじで!! どぼじであげでぐれながっだの゛!? おぞずぎるでじょお゛お゛!!」 「にゃんで……まりちゃに、ごはんしゃんくれにゃかったのじぇ……? どーちて、まりちゃをゆっくちさしぇてくれにゃいのじぇ……?」 「に゛ん゛げん゛ざん゛!! に゛ん゛げん゛ざん゛のぜいで! おぢびぢゃんが!! おでぃびぢゃんがぁぁおぢびぃぃ……!」 「れいぶにのおぢびぢゃん……どぼじでぇぇ……どぼじでぇぇぇぇえぇえぇ……」 「ゆ……? ま、まりちゃの、まりちゃのいもーちょがぁぁ!! どーちて、ゆっくちしちぇるのじぇぇぇ!!??」 害虫がなんか言ってら。 というか小さい黒帽子の方は、妹らしい子リボンの死体に今更驚いているのが何とも。 正直さっさと駆除して、ストーブの前に陣取りたいところだ。害虫とおしゃべりする趣味は無い。 だがこうまで俺のせいだ、お前が悪いと言われると、こちらとしても何となく気分が悪い。 「お前らにやるものなんて、この家には何もねーよ。何勝手なことほざいてんだか」 「ゆ゛っ……ゆ゛う゛う゛う゛!!?」 なんで。とかどうして。とか、そういうものを全部ひっくるめた顔をする親ゆっくり。 しかし野良ゆっくりって、本当に汚いな。臭いを嗅いだらキツそうだ。顔を近づけるのも遠慮したい。 「まりざだちのほうが、ゆっぐりしてるでじょおおお!??」 「ゆっぐりしてないにんげんは、ゆっぐりじてるゆっくりをゆっくりさせなきゃいけないんでしょおおおお!?」 はぁ。と俺はため息を吐いた。 ゆっくりとは話が通じない。だから絡まれたら、さっさと回収ボックスへ。加工所がお引き取りします。 そんなことは小学校でも教えているほどの常識だ。しかし俺は生まれてこの方、まともにゆっくりと話した事が無い。 ここまで絶望的に話が通じないとは。異文化コミュニケーションってレベルじゃぁねえぞ。 「知るか。どうせ冬になって、食い物が無くなって困ってたってクチだろ。なんで恵んでやらなきゃいけねーんだ」 「まりさたちはゆっくりだよ! ゆっくりはゆっくりしてるから、ゆっくりなんだよおっ!!」 「ゆっくりしてたら、ごはんさんがはえてこなくなったんだよ!! ゆっくりさせるのは、とうっぜんでしょおお!?」 のんびりしてたら飯が無くなるなんて、当たり前のコトだろう。 そう言ってやりたいのは山々だが、なにしろこいつらは話が通じない。 どうせ訳の分からんゆっくり語で、意味不明な言い訳をするのだろう。そう思うと自然と、ため息も出る。 どうにかして、こいつらの自業自得ぶりを分からせられないだろうか。 いつかこいつらの言語の翻訳機が出来たなら、試してみたい、と思わなくもない。 多分1回試して、すぐリサイクルショップ行きだろうが。 「ゆっくりしてる方がえらい、ってか。怠けてサボってるお前らの方がえらいのか? 飯も満足に集められないのに」 「ゆぐっ……で、でぼぉ! にんげんざんもさっき……」 「俺は集めてるぞ」 「ゆっ!」 「ゆ……ぇ……?」 「俺は毎朝休まず仕事に行って、夜は遅くまで働いてる。そうやって食いものにありついてんだ。お前らみたいなごく潰しと一緒にすんな」 理解できるかどうか分からないが言ってやった。 正直、社会に出て、仕事に就いた人間としては当たり前のことだ。誇ったり偉ぶったりするような話ではないのだが。 「ゆっくち……ゆっくち……」 「でも……にんげんさん。ま、まりさたちは、ゆっくりなんだよ……?」 「そ……そうだよっ。ゆっくりは、ゆ、ゆっくりするんだよ……? りかい、できる……?」 俺はため息を吐いて、窓に手をかけた。 ゆっくりは現実逃避が大好きな生き物と聞いたけど、ここにきてまで俺のせいにするその性根が理解できない。 世の中にはこいつらを好き好んで虐待する人もいる。物好きもいるものだと思っていたが、なんとなく理由がわかった気がした。 とにかくこいつらは厚かましく、あさましい。そして何より、絶望的なほど馬鹿だ。 もう会話をする気にはなれなかった。窓をするすると閉めながら、俺は言ってやった。 「そんなに言うなら、ゆっくり見てけよ」 「ゆっ?」 「ゆゆっ……?」 「今日は頑張って頑張って、ようやく取れたお休みなんだ。それに引き換え、お前らはただの、怠け者のキリギリスだ」 本当は日曜日だから家にいるだけなのだが。まあ嘘は言っちゃいまい。 親まりさはそれを聞くと、おずおずを俺を見上げて体をかしげた。きたねえ。 「まりさたちは、ゆっくりだよ……?」 「うるせえ。ただのたとえだ。働き者のアリの生活を見せてやるから比べてみな。ガキが死んだのも、自業自得だって分かるだろうよ」 子まりさに言われて気付いた。自分で自分を「働き者のアリさん」だなどと、子供っぽくてしょうがない。 自分のことを働き者だなんて、今までに思ったことは無いのだが。「そういやアリとキリギリスってこんな話だったな」と思って、気が付いたら口に出していたのだ。 「ゆっ……? ありしゃん……?」 「おう。アリくらいは見たことあるだろ?」 なんとも言えないむず痒さを覚えた俺は、子まりさにそう言ってから奥に引っ込んだ。 子まりさは何かが引っかかるのか、昔の記憶を思い出そうとしているように見えた。だがそれも、俺の知ったことではなかった。 人間が奥に引っ込んでから、少しするとまた食卓へと戻って来る。 そしてその言葉通り、三匹の観客の前で、「働き者のありさん」の生活ショーが始まった。 コーヒーを片手にチョコレートを食べる人間さん。 ふかふかのクッションに座り、流行りの携帯ゲーム機をいじる人間さん。 ストーブの前を占領し、胡坐をかいてのんびりする人間さん。 それらのコンビネーションが延々と繰り返されるだけのショーだ。だが自動リピートつきのその光景は、まりさ一家にとって衝撃的だったらしい。 「ゆぅぅ……まりざぁ……にんげんさん、どうして、あんなにゆっくりしてるの……」 「わ、わからないよぉ……ゆっくりのほうが、ゆっくりじでるのに……どぼじて……」 ゆっくりはゆっくりしてる。 人間はゆっくりしてない。 だが目の前の人間は、どう見てもまりさたちよりゆっくりしていた。 ゆっくりとしての根幹が、少しずつ揺らぎ始めている。それでも、目を離さずにはいられない。 ゆっくりするために生まれたゆっくりは、ゆっくりした光景から目を外すことなどできないのだ。 「ゆっくち……ゆっくち……」 特に子まりさは顕著だった。 窓の向こう側、人間さんのゆっくりした雰囲気から、まったく目が離せない。瞬きすら忘れるほどに、子まりさは見入っていた。 見たこともないあまあまさんやふかふかさん。ほかほかと湯気をたてる飲み物さん。 どこまでもゆっくりした様子の、人間さんのあの表情! あれが人間の生活なのか。人間の、ゆっくりした。自分を「ありさん」だと言った、人間の…… 「ゆっく、ち、ゆっ…………ゆ、ゆわぁぁぁっ!!!」 そのうち子まりさは、突然大きな声を上げた。 ぎょっとした目を向ける両親に向き直り、小さな口を限界まで開けて、大きな声で叫びたてる。 「うしょちゅきぃぃ! おちょーしゃんのうしょちゅきぃぃいい!!」 「ゆゆううううっ!!??」 突然の嘘つき呼ばわりに、何がなんだか分からないと言った顔で、まりさは飛びあがる。 そんなまりさに向かって、子まりさは叫んだ。 「ありしゃん!! ありしゃんなのじぇぇぇ!! どーちてぇぇ!! まりちゃ、どーちてありしゃんじゃないのじぇぇぇ!!」 「ゆぅっ!? おちびちゃん、おちついてね!」 「ゆっくりおちついてね! なかないでね、おちびちゃん……おちびちゃん?」 良く分からないことを喚き散らすおちびちゃんに、れいむも寄って来て慰める。 まりちゃ。ありしゃん。ゆっくち。どーして。そんな単語の羅列が続いて、まりさとれいむはほとほと困った。 人間が聞いても伝わるかどうか分からないゆっくり語だが、同じゆっくりであるまりさたちにも、その意図がつかめなかったのだ。 しばらく時間がかかったけれど、子まりさの言いたいことが概ね正しく伝わったのは、ほとんど偶然に近い確率であった。 「ありしゃんのほうがゆっくちしてるのじぇ! はたらきもののありしゃんは、とーってもゆっくちしてるのじぇぇ! ゆじぇええええん!!」 その叫び声が、まりさとれいむの餡子脳に結びついた。 働きもののアリの生活さん。ありさんのくらしは、ゆっくりしていた。 働き者のありさんは、ゆっくりしないで働いている。何故なら、ゆっくりすると、ゆっくりできなくなるから。 だからゆっくりは、ゆっくりできない。ゆっくりはゆっくりするから、ゆっくりなのだから。 そんな風に現実を正しく認識できた子まりさは、ゆっくりの中でもかなり賢い部類の餡子脳の持ち主だったのだろう。 ゆっくりはゆっくりしている。そんな理論に反する現実を、直視することは普通できない。 親であるまりさとれいむは、本来後者に属するゆっくりだった だが、それを口にしたのが子まりさであったことにより、二匹の餡子は冷たく硬直する。 「ゆっ……」 「ゆ……おちびちゃん……」 昔、まだ寒くなかった頃。おちびちゃんたちと出かけた、ゆっくり楽しかったぴくにっくさん。 その時教えた言葉を逆手に返されて、まりさとれいむは絶望の淵に叩きこまれた。 ゆっくりは、ゆっくりするもの。世界の真実だったその言葉は、何よりも大切な我が子によって、バラバラに砕かれた。 まずまりさの体から。続いてれいむの体から、ゆっくりとしての大切なものが消えて行く。代わりに得たのは、後悔ばかりだ。 「ゆっくちしてたら、ゆっくちできなくなるのじぇぇ! どーちてぇぇ! どーちてゆっくちしてちゃのじぇぇぇ!!!」 「ゆ…………おちびちゃ……」 「…………ごべ……んね…………ごべん、ね…………」 なおも叫び続ける子まりさに、すーりすーりをしようとするれいむ。しかしそんな力も抜けていき、寄せようとした体は動かなくなっていく。 そんなれいむを見て、まりさはぽろりと涙をこぼした。 流し始めると、もう止まらなかった。すぐにれいむも、ぼろぼろと泣きはじめる。 力の入らない体の代わりに、涙だけがとめどなく流れる。 (……おちびじゃん……ごべんね………………れいむは……) (まりさ、ありさんじゃなくて……ごめんね…………ゆっくりしたから……ごんなことに……) ゆっくりを奪われた体が、急速に力を失っていく。冷たい風が雪をまとって吹き付けると、二匹はあっという間に冷たくなった。 「……ゆっぐりじた……けっかが…………これだよ……」 最期に涙交じりにまりさが言うと、二匹そろって動かなくなった。 すっかり夢中になって読書に励んでおり、男は窓の外の様子を忘れてしまっていた。 ふと思い出して、もうずっと静かになっているそこを、男はそっと覗いてみた。すると新たに親ゆっくり二匹も動きを止め、声も完全に止まっている。 結局現実逃避から醒めたのかどうか、わからずじまいになってしまった。 だがそれも、男にとってはもうなんだかどうでもよかった。死んでくれたぶん、手間だけは省けた。この国に住む人間にとって、基本的にゆっくりとはその程度の存在なのだ。 死んでくれた。こいつぁラッキー。とばかりに、ゴミ袋を片手に窓を開ける男。 その顔に向かって、弱弱しい声がかけられた。 「ゆ……にんげんしゃん……」 「あ?」 子まりさが、カチカチになりかけた体を起こして見上げている。 親ゆっくりたちが動かなくなった後も、まだ生き残っていたのだ。 「ゆっくりはゆっくりしてない」という現実を知った子まりさが、何故絶望に死にゆかないのか? その理由は子まりさ自身の口から、目の前の人間に向けて語り始められた。 「ゆっ……きいちぇね。まりちゃ、まりちゃ……」 子まりさは話した。 昔連れて行ってもらったぴくにっくさんで、アリさんをみつけたこと。 そのアリがバッタの死骸を、わっしょいわっしょいと運んでいたこと。自分たちに、みつぎものをしてくれたこと。 そのみつぎもののバッタを、自分と妹で、仲良く分け合って食べあった、ゆっくりした思い出を。 「…………」 男の方は「なに言ってんだこいつ」から、徐々に険しさすら孕んだ視線で子まりさを見ていたのだが、語るのに夢中な子まりさはついぞ気付かなかった。 思い出を語り終えると、子まりさは続ける。 「ありしゃんは……ゆっくちしてるのじぇ……ゆっくちしてたから……みちゅぎものを、くれたんだじぇ……!」 これこそ、子まりさの餡子が、生きることを選んだ理由であった。 ありさんは、ゆっくりできる。その認識は子まりさの記憶と結びつき、子まりさの中に希望を見出したのだ。 「まりちゃに、みちゅぎものをくだしゃいっ……なのじぇ!」 ゆっくりできるありさんは、ゆっくりにみつぎものをしてくれるのだ。だからこの、ゆっくりしていた人間さんも! 子まりさは、そう確信したのだ。 「何が貢物だよずうずうしい。お前のそれはただの泥棒じゃねえか。蟻が『どうぞ、召し上がれ』だなんて言ったか? ああ?」 「ゆ…………?」 「自然ならまあその方が賢いのかもしれねーけどな。まあでも、ここは人間の家だから。薄汚ねーコソ泥にやるものはねえよ。そのまま苦しんで死ね」 ぺっ、と子まりさに唾を吐きかけてから、男はぴしゃっと窓を閉めた。 「ゆっ……ゆっくち…………ゆっくち…………」 冷たい雪風が吹いている。 子まりさの弱弱しい声以外に、庭には物音ひとつしていない。 雪は音を吸う。子まりさの声を聞くものは、何一つない。 家の中の人間も、子まりさに興味を無くしたのか。今は手の中にある携帯電話をいじるのに夢中だ。 声はおろか、視線さえ向けてくれない。 「にんげんしゃん…………たしゅけて……くだしゃい……おねがいしましゅ…………おねがい……しまちゅ…………」 子まりさは家の中を見つめながら、男の背中に向かって小さく助けを求め続けていた。 しかしそんな都合のよい救いの手など、男は持ち合わせてなどいない。 「ゆ…………ありしゃん…………ごめんにゃしゃい……ごめんにゃ…………しゃい……」 人間は助けてくれない。 そう悟った子まりさの餡子脳には、いつかのアリたちのことが思い浮かんだ。 目の前の光景が見えなくなり、アリたちで頭がいっぱいになる。バッタさんをわっしょいしていたアリさん。 そのアリさんがまりさの目の前にバッタさんをちらつかせる。かと思うと、そのまま遠い彼方に連れ去ってしまう。そんな光景が浮かんだ。 「もう、ばかにしましぇん……ごはんしゃん……もう、どろぼーしましぇん……たしゅけて……」 働き者のアリは、溜めた食糧で冬をゆっくりと生き延びる。 怠け者のキリギリスは、冬の寒さと飢えで死んだ。その子供も、例外ではない。 「しゃむいよぉ……おにゃかしゅいたよぉ……たしゅけて…………ありしゃん……どぼちて…………たしゅけ……たしゅ………………た…………」 最後にひとつ痙攣する。 そして子まりさの声は、永遠に止んだ。 その上に真っ白な雪が、風に吹かれて積もっていった。 ある冬の休日、静かな昼のことだった。 >おしまい< 半年ぶりくらいで新参がふらっと失礼しました。 最近寒いですね。みなさん体には気をつけて。 お読みいただき有難うございました。
https://w.atwiki.jp/chibichat8888/
ちびちゃとの総合wikiが潰れていたみたいなので、最近少し出没するようにもなった古参が立ち上げたwikiです。 喧嘩師リストであったり、どういった人物かということについて書いていきたいと思います。
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『豆れみりゃ』 突然変異により生まれたと思われる、捕食種・れみりゃの亜種。 性質は通常のれみりゃと変わらず、ただ大きさが異なるのみである。 通常1m弱のれみりゃ種(胴付き)だが、豆れみりゃ(胴付き)は10cm前後。 手のひらサイズであるため器物や人畜へ被害をもたらす危険が少なく、初心者にも飼いやすいとされる。 野生の豆れみりゃ by 十京院 典明 (旧名 ”ゆ虐の友”従業員) 豆れみりゃはこーまかんで目を覚ました。まぶしい朝の光が全身を包んでいて気分がいい。 「うっうー!」 両手を高く上げ、誰にともなく威嚇のポーズをとる。 こーまかんとはれみりゃ種の自らの住居に対する呼称である。ちなみにこの豆れみりゃのこーまかんは一本の若木だ。 お気に入りのべっどである、根本に近いところに生えている葉から身を起こすと、朝のだんすを踊る。 おぜうさまたるもの、常にだんすの練習はおこたらないのだ。 「うっうーうあうあ!」 だんすが終わると、茎にしがみついて地上へと降りていく。 うっうー!きょうもいいてんきだどぉ!ぷっでぃんたべたいどぉ! おぜうさまはぁ、とってもぐるめなのぉ~。 えれがんとなぷっでぃんじゃなきゃいやなの~。 地面に降り立った豆れみりゃは、ぷっでぃんを求めてあたりをうろつきはじめる。 「うーうー!ぷっでぃんどこぉ~」 今までで一番おいしかったぷっでぃんは、道端に落ちていた黒くて甘い餡子。 「わせいすいーつだどぉー!」と喜んで食べた。 次においしかったぷっでぃんは、ひらひらの綺麗なちょうちょ。 「とってもえれがんとだどぉ~!」と、そのよろこびを踊りで表現した。 普段は地面から生えている雑草や、地面をうごめく虫を食べている。 「へるしーなさらだだどぉー!」 だけど、実はあんまりえれがんとじゃない。 おいしくないし、ちくちくのむしさんはおぜうさまのおはだを傷付けることもある。 だから、れみりゃは常にぷっでぃんを求めているのだ。 できれば黒くて甘いすいーつ(一度しか食べたことはないが)、それが駄目ならちょうちょを食べたい。 「うっう~うあうあ~」 上機嫌で鼻唄など歌いつつ、豆れみりゃは草むらを行く。 * * * * この日は幸運なことに、ちょうちょさんを見つけることが出来た。 「うっうー!たーべちゃーうどー!」 ぎゃおーと威嚇のポーズを取り、ちょうちょに向かって飛ぶ。 「とったどぉー!」 ひらひらのちょうちょさんは、こーまかんのおぜうさまにふさわしいえれがんとな味わいだった。 夕刻になって、豆れみりゃは道に迷うことなく自分のこーまかんに戻ってくることができた。 沢山食べて沢山踊って、今日はとってもいい一日だった。 「おやすみにはまだはやいどぉ~!うー!」 葉っぱの上でうあうあと踊る。 その時、額にむずむずとした感触が走った。 「あう?」 短い手を額に当てるが、むずむずは治まらない。 「へんだどぉ~どうしちゃったんだどぉ~」 しばらく気にしていたれみりゃだったが、やがてやってきた睡魔にあっけなく降伏した。 * * * * 次の日豆れみりゃが目を醒ますと、額からゆ木(ぼく)が伸びていた。その先にはゆっくりのつぼみがついている。 「おぜうさまにあがちゃんできたどぉ~!」 豆れみりゃは喜んだ。 充分に育ったれみりゃ種は、とてもゆっくりした環境におかれることでその身に子供を宿す。豆れみりゃも例外ではない。 ”せーじゅくしたおとなのみりょく”を持ち、”とってもえれがんとな(安全な環境にいる=子供を育てるのに適した)” ゆっくりれみりゃだけが子供を持つことができるのだ。 おそらく、かなりの好日であった昨日のうちに”えれがんとさ”が溜まり、そのために子供ができたのだろう。 「う~!おぜうさまはまんまぁになったどぉ~うれちいどぉ~」 れみりゃがぼよんぼよんと踊るたびに、額の上でゆ木が揺れる。その嬉しさで、またゆ木が育ったように思えた。 れみりゃはぷっでぃんさがしに出かけた。いつでもごきげんなれみりゃだが、今日はいっそうごきげんだ。 誇らしい気持ちと、親になったという責任感が原動力となり、れみりゃは力強く空を飛ぶ。 「おちびちゃん~♪おいちいぷっでぃんいっぱいたべさせてあげるど~♪」 * * * * 「ゆっきゅちちていってね!ゆっきゅちちていってね!」 「あう?」 割れるような大声が聞こえて、豆れみりゃは誘われるようにそちらへと向かった。 しばらく飛んでいくと、やがて草をかきわけて幼いゆっくりれいむが姿を現す。 「あうー?」 この豆れみりゃが他のゆっくりを見るのは初めてのことだった。子ゆっくりとはいえ、豆れみりゃの何倍も大きい。 豆れみりゃの狭い生活圏には他のゆっくりは存在していなかったのだが、今日のれみりゃは子供を得てテンションが上がっている。 そのため、普段の行動範囲よりも遠くまで来てしまっていたのだ。 相手の大きさに一瞬ひるんだ豆れみりゃだが、肉饅に刻まれた記憶が「この相手は自分達の獲物だ」と告げている。 いつか食べた黒くて甘いものがこの中に入っていると、れみりゃ種の本能で理解する。 「ぎゃーおー!たーべちゃーうぞー!」 いつものようにまず両手を上げて威嚇し、それから相手に向かって飛ぶ。 相手もこちらを認識したようで、こちらに顔を向けてくる。 「ゆゆ?!ゆっきゅりちていってね!むしさんれいみゅにたべられてね!」 当の子れいむはとてもゆっくりした表情で動きもしない。 「おいちいあまあまだどーー♪」 豆れみりゃは子れいむの腹部にうー!と突っ込んだ。 しかし、 「あうーーーー!!??」 「ゆ?」 もっちりとして弾力のある肌に弾かれて大きく跳ね返ったのは豆れみりゃの方だ。 「ゆゆゆ!!ぽんぽんがくしゅぐったいよ!ゆっくりやめてね!」 「うう……?」 状況がよく理解できないものの、襲撃が失敗に終わったことだけは理解する豆れみりゃ。 プライドを傷付けられた豆れみりゃは再び突撃する。 「うっうー!」 しかし、やはり効果は望めない。 「むしさんゆっくりやめてね!れいみゅはむしさんとはすーりすーりしないよ!」 「あううううう!!??どーじでたべられないんだどーー!!」 その言葉を子れいむが聞きとがめる。 「ゆゆ?これからゆっくりたべるよ?むしさんれいむのぽんぽんでゆっくりしていってね!」 「ぢがうどーー!おぜうざまがおまえをたーべちゃーうのー!!」 その時、まったくかみ合わない会話に割り込むように黒い影がよぎった。 起こった風に豆れみりゃは吹き飛ばされそうになる。 「おぢびぢゃーーーん!!!ゆっぐりにげでぇぇぇぇーーー!!」 影は、親れいむだった。 豆れみりゃからは見上げるような大きさと地鳴りのような声。 さしものれみりゃも恐怖に凍りつく。 親れいむの巨大な体が、恐ろしい速度でこちらへと迫ってきてれみりゃは目を回しかけた、が―― 「おねがいでずぅぅぅぅぅ!!!!がわいいでいぶとおちびぢゃんをみのがしてくだざいぃぃぃぃぃ!!」 それは親れいむの渾身の土下座(?)だった。 れみりゃ種の脅威を知る親れいむの態度に、豆れみりゃは俄然活気付く。 「おぜうさまはえらいんだどぉー!」 「わがっでまずぅぅぅぅ!!ゆっぐりりがいじでまずぅぅぅぅ!!」 「わかればいいんだどぉ~。おちびちゃんもいるんだどぉ~♪おぜうさまのおちびちゃん、かわいいどぉ~」 その時、ゆ木が大きく揺れた。 自分よりもずっと大きい親れいむを屈服させたことによる充足感で、またもゆ木の生長が促進されたのだ。 「う゛…う゛…う゛まれるどぉぉぉぉ!!!!!」 ゆ木の先のつぼみがぐむぐむとふくらみ、 「うーうー?」 子れみりゃが産声を上げた。 初めての子れみりゃの声に、豆れみりゃは感激する。 「すっごいどぉぉ~~!!まんまぁだどぉ~!まんまぁがまんまぁだどぉ~!」 自分の額を見上げるようにして、夢中で子れみりゃに言葉を浴びせ続ける。 「……ゆ!」 親れいむはこれを好機と悟った。 「ゆゆ!おちびちゃん、ゆっくりにげるよ!」 親れいむが子れいむを促すが、子れいむはわけがわからないといった表情。 「ゆぅ?れいみゅむしさんたべたいよ?」 「どぼじでわがっでぐれないのぉぉぉぉ!!??れみりゃはゆっくりできないんだよぉぉぉぉ!!??」 「おまえたち、なにしてるんだど?」 「ゆひぃぃぃぃ!!!!!」 言い争っているうちに豆れみりゃが気づいてしまう。 「だがらいっだのにぃぃぃぃぃ!!!!」 大きな瞳から滂沱の涙を流す親れいむ。そんなれいむに豆れみりゃは言った。 「うっうー! きょうはとくべつなひだからぁ、いのちだけはたすけてあげるど♪」 額の子れみりゃをみせびらかすように胸を張り、豆れみりゃは尊大に言い放った。 「ゆゆぅぅーーーん!!ありがどうございまずぅぅぅぅぅ!!!!」 「そのかわりぃ、そのおりぼんちょうだいだどぉ♪おちびちゃんへのしゅっさんいわいだどぉ♪」 「ゆうっ!?」 多くのゆっくりに見られる傾向として、自身の装飾品を大切にするという習性がある。 このれいむもその口のようで、結局のところ豆れみりゃの要求のレベルはほとんど変わらない。 「ゆぐぅぅ……それだけはゆるじでぐだざい……」 歯を食いしばり、体を左右にねじっていやいやをする親れいむ。 「だめだどぉ♪おりぼんでこーまかんをもっとえれがんとにするんだどぉ♪とっととよこすどぉ♪」 「ゆああああ……!」 そのとき、額の子れみりゃが笑う。 「うーうー!」 「しゅっごいどぉ!またわらったどぉーー!!」 豆れみりゃは、額にぶら下がってなかなか視界に入らない子れみりゃを見上げ―― べこん * * * * 気がつくと、地面にめり込んでいた。 「うっうーいだいどぉ……どーじたんだどぉ……?」 何とか身を起こし、すると眼前には二匹のれいむがいる。 「あう!そーだどぉ! とっととおりぼん……」 しゅるん、と子れいむの舌が伸びてきて、豆れみりゃの二枚の翼を絡め取る。 豆れみりゃは痛みに絶叫した。 「あ゛う゛ー!!はなぜぇぇぇーー!!」 親れいむがずいと這い寄ってくる。 「よくもいままでれいむをおどかしたね!」 先ほどまでと全く違う、怒りと攻撃性に満ちた顔が、動けない豆れみりゃを見下ろしている。 「ゆゆん!れいみゅのゆーとおりだったでちょ!むしさんはこわくなんかにゃいんだよ!」 「ゆぅぅ……さすがはれいむのおちびちゃんだね!とってもゆっくりしてるね!」 先ほど豆れみりゃを地面に叩き付けたのは、子れいむの舌による一撃だった。 その一撃で豆れみりゃは地面にめりこんで昏倒し――親れいむの”思い込み”が解けてゆく。 今、我が子の舌で地面に撃ち落された相手はあの恐ろしいれみりゃではない。 あるいは、れみりゃであっても見るからに小さく、取るに足らない存在である。 そう認識してしまえば、恐れが怒りへと変わるのは一瞬だった。 * * * * 親れいむは回想する。 「おぢびぢゃぁぁぁぁぁぁんんん!!!!ゆっぐりぢでぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 「うっうーうあうあ☆もっとにげるんだっどぉ~♪」 親れいむの一匹目の赤ちゃんは、れみりゃに狩り殺されていた。 偶然が味方し自らの命は取り留めたものの、ひどく傷付けられた初児は二度と還らなかった。 あまりにも天敵は強大で、逃げることさえもかなわないそれは、通常種のゆっくりにとって命の行き止まり―― れみりゃに意地悪く追い回された数十分間の記憶は、いまだに親れいむの餡子に大きな傷跡を残している。 れいむは豆れみりゃを見下ろしている。 あの時の自分と同じ思いを、こいつにも味わわせてやる。 * * * * 豆れみりゃは翼を拘束されたままこーまかんへの道のりを案内させられていた。 「うっうーおぜうさまのこーまかんはりっぱなんだどぉー!」 「……」 やがて二匹のれいむと豆れみりゃはこーまかんにたどり着く。 「じゃん☆これがおぜうさまのこーまかんだどぉー! こっちがべっどでぇ、こっちがだんすほーる……」 まだ自分の立場を理解していない豆れみりゃは、二匹のれいむに熱っぽくこーまかんの美点を語る。 二匹のれいむはこーまかんの方を向いている。大きな塊が覆いかぶさっているので豆れみりゃにはこーまかんが見えない。 「あうー!おぜうさまのおかえりだどぉー!」 豆れみりゃは二匹れいむの間を割って、こーまかんへと向かおうとした。 この二匹にこーまかんのすばらしさを見せてやるのだ。 だが次の瞬間、豆れみりゃは我が目を疑った。 「むーしゃ、むーしゃ……それなりー」 「ふつうのくささんだにぇ!」 ずっと暮らしてきた、世界一立派な自分のこーまかんが二匹のれいむに食べ散らかされている。 巨大な二匹のゆっくりは、すでにれみりゃのこーまかんであった若木を根本近くまで食べてしまっていた。 「ぎゃぉぉぉぉぉ!!!だめだどぉぉぉぉぉーーー!!」 おぜうさまの大事なこーまかんが。これからおちびちゃんが暮らす大切な住処がなくなってしまった。 それどころか二匹のれいむはあたりの草花をも食べ進んでいく。 親れいむは思う。 (れいむもだいじなおうちをこわされたんだよ。そのせいでゆっくりできなくなったんだよ) 「ゆーん!あんまりゆっくちできなかったよ!」 「おぜうざまのごーまがんがぁーーー!!!」 不満をかこつ子れいむをぺーろぺーろしながら、泣きじゃくる豆れみりゃに目を向ける。 「うー!おまえらゆるざないどぉー!!」 舌でべちん。 「いだいぃぃぃぃぃぃ!!!」 「おかーさんれいみゅむしさんたべたいよ!」 「ゆ~、おちびちゃんもうちょっとまってね」 この段になって、ついに豆れみりゃも格の違いを思い知る。 「も、もうでびりゃをゆるじでほしいんだっど?」 舌でべちん。 「いだいのやだぁぁぁぁぁ!!!!」 「ゆくく、じぶんのことよりおちびちゃんのしんぱいをしたほうがいいよ」 親れいむは残酷に言い放った。 「あう?……おぢびぢゃん?」 激変した状況から来るプレッシャーか、子れみりゃの成長に欠かせない”えれがんとさ”が減ってしまった結果か。 まだゆ木から切り離されていない子れみりゃは目を閉じて、ぐったりとしている。 「おぢびぢゃんしっかりするどぉーー!まんまぁがいまだんすをおどってあげるどぉー!」 「ゆくくく……せいぜいやってみるといいよ、にげたらべちんだよ」 「ゆー!おかーさんおにゃかすいたよー!」 「うっうー、うあ☆うあ」 「ばかなの?しぬの?」 「ゆっくちちんでにぇ!」 豆れみりゃは子れみりゃを励まそうと必死に体を動かす。 しかし、前と後ろに陣取る二匹から常に罵声が浴びせられ、子れみりゃはどんどん生気を失っていく。 「れみ☆りゃ☆うー!」 「ばかじゃね」 「つまんにぇ」 「ううううーーーー!!!じゃまずるのなしだどぉーー!!」 豆れみりゃが怒るが、一瞬の後「べちん」の恐怖に身をすくめる。 だが「べちん」は飛んでこなかった。その代わりに親れいむは澄まして言う。 「ゆゆゆ?れいむはゆっくりしてるだけだよ?」 「しょうだよ!はやくむしさんがちんだらもっとゆっきゅりできるよ!」 「ぐやじいどぉぉぉぉーー!!おぢびぢゃんんーー!おぢびぢゃんんーー!」 どうすることもできない豆れみりゃを尻目に、二匹のゆっくりはいつものアレをはじめた。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆゆ!おかーしゃんゆっくちちていってにぇ!」 「じょうずだよおちびちゃん!ゆっくりしていってね!」 「ゆゆーん!ゆっくりちていってにぇ!」 「うるざいどぉぉぉぉーーー!!おぢびぢゃんがじんぢゃうどぉぉぉぉぉーー!!」 「ゆっくりしんでね!」 「ゆっくりちんでにぇ!」 「やだぁぁぁぁぁぁ!!!!おぢびぢゃんんんんーーーー!!!」 ゆ木がしなびて顔の前に落ちて来た。 豆れみりゃの、草の実のように小さなおちびちゃんはもはや息も絶え絶えだ。 「うー……まんまぁ~……まんまぁ~……」 「おぢびぢゃん!!??おぢびぢゃん!!??」 「まんま……」 「「ゆ っ く り し て い っ て ね !」」 そのか弱い声をかき消すようなゆっくりしていってねが最後の一押しになったのか、 「まん……まぁ……」 子れみりゃはついにその短い生涯を終えた。 「ううううううーーーーー!!!!」 「ゆっゆっゆっゆ!」 「むしさんたべたいよ!もうがまんできないよ!」 「そうだね、もうおかーさんもゆっくりできたよ!ゆっくりむーしゃむーしゃするよ!」 悲嘆に暮れながらも、豆れみりゃは自らの命の最終通告を聞きわけた。 散り散りになった思考でも、その意味するところを理解する。 とってもえれがんとなおちびちゃんは、この大きな存在に苛められて殺された。 そして悲劇はこれで終わりではなく、これからわが身へと降りかかってくるところなのだ。 「うわあああああああ!!」 豆れみりゃは半狂乱になって飛んだ。 「うーうー!ざぐやー!ごあいどぉー!!おぜうざまはまだじにだぐないどぉぉぉぉーー!!」 こーまかんを失った悔しさも子れみりゃの無念も忘れて、死から逃れようと力いっぱいにもがく。 「だずげでぇぇぇぇぇ!!!!ざぐやーー!ざぐやーー!」 火事場の馬鹿力――生命の危機を前にした潜在能力で、豆れみりゃは今までで最高のスピードで飛ぶ。 「ざぐや……!」 しかし、その足に子れいむの舌が難なく巻きついて、豆れみりゃを地面に引きずり下ろした。 END
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『は?っていうぐらい強いドス まりちゃ編』 4KB いじめ 愛情 不運 妊娠 越冬 戦闘 群れ 野良ゆ 赤ゆ 捕食種 自然界 人間なし 初投稿です読んでいただければ幸いです。 「ゆぎいいいい!いたいいい!」 「がんばるのぜ!れいむ!」 このれいむはどうやら胎生妊娠のようだ、。苦しんでる姿がおもしろい 「ゆう・・・ゆっくりかわいいまりちゃがうまれるよ!」 ぽーん 謎の擬音が出るのはゆっくりの不思議なので気にすることはない 「おとうしゃん!おかあしゃん!まりさはまりさだよ!ゆっくちしていっちぇね!」 「ゆっくりしていってね!まりさ(れいむ)のおちびちゃん!」 とある平凡な山のごく平凡な群れの一家にいずれドスになるまりちゃが生まれた。 は?っていうぐらい強いドス 長い長い冬が明け、春の陽気が差し込む中、群れ中ですっきりをしまくっていた といっても冬にすっきりして自滅した家族がほとんどだが。 どのゆっくりもゆっくりしていた。 このまりちゃだが、他のゆっくりとほとんど能力的に変わらない平凡な個体だった。 とある事件があるまでは。 「きょうもおちびちゃんのためにゆっくりかりをするよ!」 「まりさ!がんばってね!」 「それじゃいってくるのぜ~」 「おちびちゃんたちもいってらっしゃいをおとうさんにいおうね!」 「おとうしゃんゆっくちいっちぇりゃっしゃい!」 「ゆー♪たいっりょうなのぜ~」 「うー!うー!」 「ゆ?ゆゆ?れ、れみりゃだあああ!」 「あまあまさんだどぅ♪いただきますなんだどぅ♪」 「まりさはゆっくりしないでにげるよ!」 「そうはさせないんだどぅ!」 10分後・・・ 「つかまえたんだどぅ♪やっとたべられるんだどう♪」 「ゆんやー!まりさをたべないd」 「こんどこそいただきますなんだどぅ!」 「すわれるううううう!」 「ふう・・・まんぞくなんだどぅ♪」 「まりさは・・・れい むとおちび ちゃんの もと へ・・・かえるの・・・ぜ・・・」 「ただいま・・・なのぜ・・・」 「まりさあああああ!どうしたのおおおお!」 「ゆんやー!おとうしゃんが・・・おとうしゃんが・・・」 「さいごに2ゆんをみれてしあわせだったのぜ・・・」 「まりさああああ!そんあこといわないでええええ!」 「もっと・・・いっしょに・・・いたかった・・・」 「おとうしゃあああん!」 最愛の父のが死んだ事でまりちゃはとても悲しかった。それと同時に自分の無力さを語った。 そこでまりちゃは心の中で呟いた。もう失いたくない、失ってたまるものか、と。 そこからまりちゃは赤ゆっくりとは思えないほどの特訓をした。親であるれいむは狩りに勤しみながらもまりちゃを気遣うと同時に心配していた。 群れの援助が幸いにも受けれたので食料にはあまり困らなかった。しかしまりちゃは食べる時間削ってでも特訓に時間をまわしていた。 「ゆうぅ・・・おちびちゃん・・・すこしはやすんだらどうなの・・・」 「だいじょうぶなのじぇ、おかあしゃんはしんぱいしなくてもだいじょうぶなのじぇ。」 「おちびちゃんはしんだまりさにちかってれいむがまもるからだいじょうぶだよ!だからあしただけでもやすんでね!」 「・・・わかっちゃよ、あしたはゆっくりやすむのじぇ!」 「じゃあきょうはもうゆっくりおやすみなさい・・・ゆわぁ・・・」 「おやすみなしゃいなのじぇ・・・」 「ゆっくちおはようなのじぇ!」 「おはよう、おちびちゃん!」 「おかあしゃん・・・」 「なあに?おちびちゃん?」 「きょうはやすむってきめちゃけどぐちゃいちぇきになにをしゅればいいにょかわからないのじぇ・・・」 「ゆーん・・・そうだ!むれなかでもおさんぽしてきたらどうかな?ゆっくりしながらしておさんぽしたらたのしいとおもうよ! 「ゆっくちわかっちゃのじぇ!じゃあいってくるのじぇ!」 「ゆん、ゆーん♪たまにはおやすみもわるくないのじぇ~♪」 「おい!そこのちびゆっくり!」 「ゆゆ?」 「なーんかきにいらないのぜ、ひまだからせいっさいなのぜ!」 「どういうりくつなのじぇえええ!!」 まりちゃVS子まりさ 「くらうのぜえええ!」 ひょい。残念ながら鍛えているまりちゃには子まりさの攻撃など避けるのは簡単だ。 「ゆ?かんたんによけれたのじぇ?」 「なんでよけれるのぜええ!あたるのぜええ!」 ひょい。ひょい。 「そっちからこないならこっちからいかしてもらうのじぇ」 ぼすっ!ちなみに普通の子ゆっくりの体当たりの音は「ぽよん」だが鍛えているまりちゃの体当たりなら「ぼすっ!」なる。 「ゆぎゃああああ!いだいいだいいだいいいいいい!」 「ゆ・・・?そんなにちからはいれてなかったじぇ?そんなにいたかったのぜ?だいじょうぶなのじぇ?」 「だいじょうぶなわけあるかあああああ!もうおうちかえりゅうう!」 「・・・なんだったのじぇ」 それからまりちゃは子まりさになるのですが、それは次のお話しで・・・ 子まりさ編に続く・・・ あとがき 初投稿でしたがどうでしたか?個人的にはかなり頑張ったのですが・・・ もっと上手く書けるように精進していきたいと思います。
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『電車を待ちながら』 30KB 制裁 いたづら 自業自得 野良ゆ 現代 13作目ましてこんにちわ、キャンセルあきです。 「いやあ、ありがとうございました」 「本当にまあ、危うく出発時間が遅れてしまうところだったね。ありがたいね。これ、お礼ね」 猛烈な残暑も過ぎた九月の終わり、人気の少ない田舎の駅の、そのホーム。 お兄さんと駅員のおじさんは、甘い珈琲を差し出して、ゆっくり対策課の駆除係に心から、 お礼の言葉を述べていた。 電車の待ち時間、線路上にたむろしている野良ゆっくりに気付いたお兄さんが 連絡を入れると、その駆除係は取るものも取り敢えず飛んできてくれたのだ。 線路の上に陣取って、電車を相手に「つうこうりょう」を要求していたまりさの親子は今、 ホームの喫煙コーナーで黒いシミにジョブチェンジしている。 「それじゃあ、野良ゆっくりどもの後始末はお兄さん達に御願いしますよ」 「私はゆっくり対策課じゃないんですが……まあいいです、承りました」 お兄さんは再び電話を掛けて、対策課の応援を頼む事となった。 そして、ホームのベンチに落ち着き、ホットのブラックコーヒーを啜っていた時の事だ。 「おにいさん、ちょっとれいむのはなしをきいてほしいよ!」 ベンチの下から、バスケットボール並みのサイズがある薄汚れたれいむと、そのおちびちゃんらしき 子れいむ、子まりさが合わせて1ダースほど、こーろこーろと現れた。 「ゆーんゆーん!」「おかあしゃーん、あみゃあみゃまだにゃにょ?」「ゆっくちしないではやきゅしちぇね!」 「おかあさん、このにんげんさんはゆっくりできるのぜ?」 中には、赤ゆ言葉もすっかり抜けた成体に近い子まりさまでいる。 どこをどう見ても、野良のしんぐるまざー一家であった。 電車を待ちながら キャンセルあき ■HR 議題:あいさつはだいじだよ! お兄さんの隣に座っている駆除係が、「処理しましょうか?」という目を向けてきたが、 お兄さんは軽く断ってれいむの相手をする事にした。 「どうかおにいさん、れいむたちをかい――」 「まあまあ話を聞く前に、まずは駆けつけ一坏からどうぞ」 じょぼじょぼ、と手にした「クソ苦いコーヒー」を親れいむに垂らすお兄さん。 「ゆ……?」 一瞬、何をされたかも分からずに固まる親れいむの表面に、ぞわりと血管のようなシワが浮く。 待つこと三秒。 「――ゆっぎぇえええええええええええっ!」 びったんびったんびったんびったん。 「お、おきゃあしゃんどうちたにょ!?」 「おかあしゃん、ゆっくちちてね! れいみゅがぺーろぺーろしてあげりゅからねええ!」 饅頭肌におぞましい浮腫を作ってのたうつれいむに、子ゆっくり達が駆け寄ったが、お兄さんの 飲んでいた「クソ苦いコーヒー」は、成体のれいむですら瀕死になる程のにがにがだ。 「ぺーろぺー……ゆぎゃ!」 「ゆ……れいみゅ? にゃんでれいみゅがえいえんにゆっくちしちゃってるのおおお!?」 コーヒーの染みた親れいむの肌をぺーろぺーろした赤れいむは、餡子を吐いて即死した。 「ゆっげ! おじびじゃ! おにいざん! どぼじでごんなごどをずるの!」 「挨拶も無しにいきなり要求から入るなんて、ゆっくりしていないゆっくりですから」 「ゆ、ゆがーん!」 ゆっくりしていないゆっくり――それはゆっくりにとって最大級の侮蔑の言葉である。 多大なショックを受けたれいむは、しばしの間、体を冒すにがにがの事も、最愛の おちびちゃんが永遠にゆっくりしたことも忘れて激昂した。 「れいむはれいむだよ、ゆっくりしていってね! ほらほら、れいむはゆっくりしてるでしょ! ゆっくりしてないゆっくりだなんていわないで、ゆっくりていせいしてね、ぷんぷん!」 「お兄さんはお兄さんです。ゆっくりしていって下さいね。本当にゆっくりしたゆっくりなら、 私に向って"のーびのーび"してくれますか?」 「ゆゆん! そんなことあさめしまえっ! だよ!」 れいむは体をうねらせてのーびのーびをした。 その間に、お兄さんは餡子を吐いてた赤れいむの残骸をナマモノ用のゴミ箱に放り込み、 代わりに甘いゆっくりフードを幾らか、子ゆっくり達に向ってばらまいた。 たちまち、ゆっくりできる匂いに群がる赤ゆっくり達。 「ほら、れいむはゆっくりしたゆっくりでしょおおぉ? おにいさんはていせいしてね!」 「……それなりにゆっくりしたゆっくりですね。認めますよ」 「それから、えいえんにゆっくりしちゃったおちびちゃんの、"しゃざい"と"ばいしょう"を ようっきゅっするよ!」 「その前によく見て下さい。おちびちゃん達はみんな、ゆっくりしてるじゃないですか」 「ゆ……? おちびちゃんたち?」 後を振り返ると、 「どうしたのおかあさん? まりさゆっくりしてるよ?」 「おそらからあまあまがふってきたのぜ! みーんな、まりしゃのものなのぜ!」 「むーちゃむーちゃ、ちあわしぇええええ!」 殆ど成体の長女まりさを筆頭に、れいむの子ゆっくり達はみなゆっくりフードへと群がって、 幸せにむーしゃむーしゃしている。 「ゆゆーん、みんなゆっくりしてるよおお!」 「そうですね、どなたか、大変な目にあったおちびちゃんは残っていますか?」 「いち、にい…………たくさん! おちびちゃんたちはみーんなそろってるね! みんなゆっくりしてるよ! おにいさんもゆっくりしたにんげんさんだね! ゆんゆゆーん」 思い込みの激しさが体調にまで表れるゆっくりのことである。 れいむはいつの間にか、クソ苦いコーヒーが体にしみこんだ事すら忘れて、ゆっくりし始めた。 「それで、私に何か用事があったんではないですか?」 「ゆゆ――! そうだよ! おにいさんにおねがいがあったんだよ!」 危うくそのままひなたぼっこを始めてしまう所だったれいむは、慌ててお兄さんに向き直った。 「どうか、れいむたちを――「勿論駄目ですよ」――"かいゆっくり"に!?」 「……」 「……れいむをかいゆっくりに――「お断りします」――どぼじでぞんなごどいうのおおおおっ!?」 ■道徳:うそつきはどろぼうのはじまりだよ! 「貴方を飼いゆっくりにした所で、私はゆっくりできそうもないです。ゆっくり理解して下さい」 「なんで!? どぼじで!? りゆうをゆっくりおしえてね、おにいさん!」 「うしろを見て下さい」 「ゆん?」 振り向けば、おちびちゃんたちが、 「はやくまりしゃをゆっくちしゃせるのじぇ!」「じじいはあみゃあみゃもっとよこちてにぇ!」 などと言っていた。 「飼いゆっくりは、"人間にゆっくりさせてもらう"ゆっくりではなくて、 "人間をゆっくりさせる"ゆっくりで有ることくらいは分かりますよね?」 「あれはおちびちゃんのいうことでしょおおおお!?」 「子は親の鏡ですよ。そもそも、どうして飼いゆっくりになりたいんですか?」 「それは……れいむは"かり"がへただから、おちびちゃんたちをゆっくりさせてあげられないんだよ。 だから"かいゆっくり"に――」 「だったらなおさら駄目ですね……」 「どぼじでえええええ!? れいむが"のら"だから? "しんぐるまざー"だからあああ!?」 「どちらも違います」 "飼いゆっくり"としてやっていけるぐらい人間と付き合えて、価値観を共有できるならば、 "野良ゆっくり"でも食い詰める事は無いからである。 人間が捨てるゴミでも、ゆっくりならば食べたり利用できたりする物は多々あるので、 人間と"交渉"する概念を身につけた野良ならば、地域によっては快適に暮らせるのだ。 「しんぐるまざーでも、ゴミ拾いと草刈り、物乞いで、立派に子育てするれいむは居ますからね」 「はああああああっ!?」 そうしたゆっくり達は、人間との力関係を理解しているので、時には人間に拾われる事もある。 しかし、人間と親しい野良ゆは決して、「かいゆっくりにしてください」とは言わない。 「自分は人間と交流する能力ないよ!」という宣言に等しいからである。 「かいゆっくりにしてください」は死亡フラグ。懸命に野良をやって、人間の目に止まるのを 期待するしかない――それは今や、野良ゆにとってすら常識であった。 しかるに、このれいむはどうだろう? 「いやだあああああ! もうなまごみさんも、にがにがなくささんもたべたくないんだよ! むしさんはすぐにぴょんぴょんでにげちゃうよ! れいむはもう"かり"にいきたくないよ!」 「なつさんはあつくてゆっくりできなかったのぜ!」 「だんだんしゃむくなってきちぇ、おうちもゆっくちできないよ!」 「だからじじいは、まりしゃをゆっくちしゃせてにぇ! いましゅぐでいいよ!」 「ほらほら、おにいさん、おちびちゃんはゆっくりできるよね? おうたもうたえるんだよ? れいむたちなら、おにいさんをたくっさんっ! ゆっくりさせてあげられるよおおおおおっ!」 「おかあさん、ゆっくりしてね、まりさがすーりすーりしてあげるよ!」 「おかあしゃんをいじみぇるな! れいみゅぷきゅーしゅるよ! ぷきゅううう!」 「"ビキィっ!"」 「すいません、ちょっとだけ落ち着いて下さいね。あくまでこの場は、私がれいむと話します」 親子の様子に"きた"駆除係が飛びかかろうとしたのを、お兄さんは優しく宥めた。 線路に入った野良まりさ達は、死臭すら出すことなく処理された。 そのため、れいむ親子は、駆除係に気付いてすら居ない。 それどころか、眼中にはいってもいないようだ。 「それでれいむ、貴方はどうやって、私をゆっくりさせてくれるんですか?」 「ゆん……れいむは……れいむはきんばっじさんになれるよ」 「ほう……金バッジですか」 「ゆ――そうだよ! きんばっじさん、きんばっじさんだよ!」 "金バッジ"という言葉が、お兄さんの興味を引いたとあって、れいむは必死で連呼した。 「れいむのおかあさんは、きんばっじのかいゆっくりだったんだよ!」 「本当ですか?」 「いまおもいだしたんだからまちがいがないよ! だかられいむも、すぐにきんばっじさんになれるよ!」 それは、餡子脳の中で発生したでたらめにすぎなかった。 が、次の瞬間には、本ゆんも気づかないうちに、れいむの中で真実にすり替わっていた。 ゆっくりの思い込みは、自身の記憶など容易くゆがめるのである。 「もしそれが本当なら、確かに私にとってはゆっくりできますね……」 「おちびちゃんたちだって、おにいさんにかいゆっくりにしてもらえれば、みんなみーんな、きんばっじさんだよ!」 「それでは、テストをしてあげましょう」 「ゆゆ!? てすと?」 「このテストに全て合格出来たら、貴方たち全部を私の飼いゆっくりにしてあげます」 「ゆ……ほんとうなの、おにいさん! れいむはてすとをするよ! ゆっくりしないではやくしてね!」 「ええ。……ただし」 と、お兄さんは優しげな笑顔に真剣な光を宿らせて、れいむを見た。 「もしもれいむが、出来もしないことを"出来る"と言い張るような嘘つきでしたら、 絶対にゆっくりできなくなります。私が保証しますよ」 「ゆ、れいむ、いたいいたいなてすとさんはゆっくりできないよ?」 「安心して下さい」 落ち着いた声が、れいむに届いた。 お兄さんの声は、とてもゆっくりできる。 「テストが終わるまでは、私はれいむを決して傷つけません」 「ゆん、とうっぜんっだね!」 「そして同時に、テストに合格するまでは決して貴方たちを手助けもしません」 「にんげんさんのてをかりなくても、れいむはりっぱにやりとげてみせるよ!」 「結果は最後に言いますが、もしも途中で不合格だったとしても、テストは最後までやりますか?」 「ゆーん……やるよ! れいむはさいごまでてすとさんをうけるんだよ!」 「おちびちゃんたちにもテストを手伝って頂きますが、それで良いですね?」 「ゆっくりりかいしたよ! いいよね、おちびちゃんたち! えいえい、ゆー!」 「「「「えいえい、ゆー!」」」」×11 「ええ、了解しました……それではテストを始めましょう」 ■社会:おかざりはだいじだいじだよ! 「まずはれいむに質問です。お飾りが無くっても、自分の家族や大切なゆっくりを区別出来ますか? これは金バッジゆっくりになるためには、とても重要な事なんです」 「ゆ……おかざりがなくっても?」 れいむは背後でゆっくりしている、沢山のおちびちゃん達を見た。 みんなゆっくりしていて個性的で、我が身にも代え難いおちびちゃん達だ。 この中の誰一人が居なくなっても、れいむは中枢餡を切られるような悲しみに駆られることだろう! 母性(笑)溢れるれいむが、例えお飾りが無くとも、おちびちゃんを見間違えるわけ無いじゃないか! 「ゆん! できるにきまってるよ! やっぱりれいむはきんばっじにふさわしいおかあさんだね!」 「本当ですね? ならばテストしましょう」 「ゆん? おにいさんまりさになにをするの!?」 「れいみゅ、おしょらをとんじぇるみちゃい!」 言うが早いかお兄さんは、れいむのおちびちゃん達の中から、一番大きな子まりさと、 一番小さな赤まりさをつかみ取った。 「おちびちゃんたち! おにいさん、いったいなにをしてるのおおぉぉぉ!?」 「すこし、お飾りを借りますね。ひょいひょい、と」 「やめてね! まりさのおかざりさんかえしてね!」 「れいみゅ、おかじゃりしゃんがにゃいとゆっくちできにゃいよ!」 そして、れいむに見えない所で二体のお飾りを奪ってしまう。れいむの前には、外されほかほかの おぼうしとおりぼんさんが置かれた。そしてお兄さんが、れいむに向って右手を差し出す。 「それでは、はい。私の手に乗っているゆっくりを、ちゃんと区別ができますか?」 「……ゆ!?」 お兄さんの右手の上。れいむの目の前。 そこには、お飾りのない、ゆっくりしていないゆっくりが置かれていた。 「お……おちびちゃん?」 お飾りが無いため、そのゆっくりは、全く特徴のない"のっぺらぼう"に見える。 だが、お兄さんの右手に乗っているゆっくりは、たった今れいむの足下から奪われたばかりの、 最愛のおちびちゃんに違いないのだ。 「ゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆ……」 「さあ、このゆっくりは誰でしょう? ちなみに、声を出せないように口は押えてあります」 「ゆんゆゆゆゆゆゆんゆんゆんゆんゆん……」 れいむはそのお饅頭――じゃなくてゆっくりをにらみ続ける。 子まりさはさらさらのきんぱつさんだ。でも、赤れいむの髪もさーらさーらしていて区別出来ない。 子まりさのおめめはおそらのようなあおいいろだ。でも、赤れいむの瞳もおんなじくらいきらきらだ。 今のれいむにとって、おちびちゃんを区別することは、無改造の虐待鬼威惨がヒグマとタイマンを 張るくらい難しいことだった。 せめて、れいむに似て罪な程の美ゆっくりで有ること以外に、区別出来る所があれば! 「ゆ……そうだよ! まりさちゃんはいちばんうえのおねえちゃんだよ、だかられいむとおんなじくらい おおきいんだよ」 「ほうほう、それで?」 「れいむはいちばんあとにうまれたんだよ! だかられいむのおくちにはいるくらいちいさいよ!」 つまり、お兄さんの手に乗っているのは――れいむとおなじくらいに成長したゆっくりは、 「そのゆっくりはれいむのまりさちゃんだよおお!」 ぽふん。 れいむは、子まりさの外された帽子を、お下げで掴んで乗せた。 するとのっぺらぼうだったお饅頭はたちまち、金髪のゆっくりした"おちびちゃん"として見える。 「ゆゆーーん! やっぱりれいむのおちびちゃんはゆっくりしてるよおおお!」 「……まあ、色々と言いたいことはありますが、ひとまずこの場は正解にしておきましょう」 「おにいさん、こんないたずらはやめてほしいよ」 「我慢して下さい。テストが終わったら、特別にご褒美を上げますから」 「おちびちゃんはつらかったよね、だけどいいんだよ。れいむはおちびちゃんがもどってきて くれただけでだいまんぞくっ! だよぉ!」 お兄さんの手から降ろされるなり、ジト目で人間を睨み付けるのをすーりすーりで宥めながら、 れいむは勝利の美酒に酔った。 だが、余韻にひたってばかりもいられない。 「さあおにいさん! れいむはみごとにせいかいしてみせたよ! これでれいむはきんばっじ――」 「では、次のテストに行きましょうか」 「ゆゆ! まだあるのおおお!?」 「テストはあと一、二、"沢山"ありますからね。……嫌なら止めても良いんですよ?」 「わかったよ! はやくつぎのてすとさんにいこうね、おにいさん!」 ■算数:さんよりうえまでかぞえようね! 「それでは次の質問ですが、れいむは"二"よりも大きな数を数えられますか? 金バッジを目指すなら、二桁の足し算くらいは暗算でやってもらわないといけないのですが……」 「ゆゆ……かず?」 金バッジではなくて銀バッジであれば、"12"まで数えるのが最低ラインと言われている。 理由は時刻。 「十二時に帰る」という言葉が理解出来なければ、留守番をさせられないのだ。 「例えば、れいむは自分のおちびちゃん達の数を数えられますか? 先程から数が減ったり増えたりはしていませんか?」 「ゆん?」 言われてれいむは、おちびちゃん達を見回した。 数をかぞえる。いち、に、たくさん。 再度確認する。いち、に、たくさん。 「おちびちゃんたちは"たくさん"いるよ! おにいさんはへんなこといわないでね!」 れいむは、数を数えるのに極限まで集中した。 あまりに夢中で、言い返す頃には、れいむは直前にされたテストの内容など全てすっかり忘れていた。 お兄さんに隠された赤れいむ? 赤れいむは犠牲になったのだ。ぼせい(笑)の犠牲に。 「はあ、これは駄目かも分かりませんね。それではれいむ、"二"の次の数は何ですか?」 「ゆ……"に"のつぎのかずは……えーと……えーと」 「せめて、"五"までは数えて欲しいですね」 野生ゆっくりでもぱちゅりーなら、それなりの確率で"十"まで行ける個体はいる。 だが、普段からいい加減なナマモノであるれいむには、これはかなり厳しい問題と言えた。 「かず……かずは……えーと」 「"二"のつぎは何でしょう? "五"は何番目でしょう?」 「に……ご……。"ご"? そうだよ、れいむはおもいだしたよ! "かず"は、いち、に、さん、し、ごだよ!!」 「……ほう? もう一度御願いします」 お兄さんの顔に、これは素直に感心の色が見えた。 顔色をうかがうれいむは、"きんばっじ"という言葉に反応した時と同じく、これだ、とひらめく。 「ぱちゅりーがいってたんだよ。かずは、いち、にい、さん、し、ごなんだよ、あってるでしょ!?」 「では、"三"の次は何ですか?」 「ゆ……いち、に、さん、し、ご。いち、に、さん、し、ご……さん? さん?」 だが、そこまででれいむは固まってしまった。 このれいむ、どうやらかつて一緒にいたぱちゅりーが"五"まで数えることは出来たらしい。 しかしながら、ぱちゅりーが数えている場面を、理解するでもなく見ていただけなのだろう。 「私の指は今、何本ありますか?」 お兄さんが指を三本立ててれいむに見せた。 「えーと……いち、に、たくさん。あれ? いち、に、たくさん。ゆ……ゆううううううっ!」 物体が三つ存在するという概念と、"さん"という言葉が全く結びついていない。 「本当に数を分かっているんですか? 嘘つきはゆっくりできませんよ?」 「ゆ、れいむはゆっくりりかいしてるよ! かずはいち、に、さん、し、ごなんだよ! ぱちゅりーがいったから、まちがいないんだよおお! ばかにしないでね、ぷんぷん!」 「……分かりました、まあいいです。それでは次のテストに行きましょうか」 ■音楽:ゆっくりおうたをうたおうね! 「それでは次のテストです。れいむには、おうたを歌って貰います」 「ゆ――! ゆわーい。おうたはれいむもだいすきだよ。ゆぷぷぷぷぷ、おにいさんもようやく、 れいむをかいゆっくりにするきになったみたいだね! ゆっくりしてるね!」 れいむは、自分の得意分野が出題された位で得意になっている。 「ただし、私が"止め"と言ったり、手を叩いたり、あるいは何か特別な事が起こったら、 直に歌うのを止めて下さいね」 「ゆっくりりかいしたよ!」 「金バッジならば、おうたを歌ったりしていても、周囲の危険に気づきますし、 人間の指示を受け取ることもできるのです。れいむはちゃんとできますか?」 「もちろんだよ、れいむはゆっくりうたってあげるよ!」 「本当ですね?」 れいむは勘違いしているが、このテストは要するに、『おうた』の最中であっても周囲の 様子に気を配ることが出来るのか、指示が聞けるのか、というものである。 「おちびちゃんたちも居るので、一緒に歌って貰いましょう」 「おちびちゃんたち! ゆっくりりかいしたよね? それじゃあおかあさんといっしょに、 おうたをうたってあげようね! さん、はい!」 「「「「「「「「ゆっくり~のひー♪ まったり~のひー♪」」」」」」」」 一斉に、饅頭達が雑音を垂れ流し始めたのにもめげず、お兄さんは静かに一分待った。 「はい、ストップ」 「ゆん! こんなかんじでいいんだね、おにいさん!」 「まあいいですけど、これだけじゃわかりませんね。もう一度御願いします。 今度は私が号令を出しますからね、さん、はい!」 「「「「「「「ゆっくり~のひー♪ まったり~のひー♪」」」」」」」 一分。お兄さんは、今度は手を鳴らして合図した。 「ゆっくり~の――ゆっ! おちびちゃんたち、うたうのをゆっくりやめてね! どう、おにいさん? れいむたちゆっくりしてるでしょ?」 「ええ、たしかにゆっくりしています。でも、少し声が小さくなってきましたね」 「おちびちゃんたち、かいゆっくりになるために、もっとおおきなこえでおうたをうたうんだよ! さん、はい!」 「「「「「「ゆっくり~のひー♪ まったり~のひー♪」」」」」」 一分。お兄さんが足を踏みならす。 「ゆん! おちびちゃんたち、うたうのをやめてね!」 れいむが指示を出すと、おちびちゃんたちはぴたりと歌うのを止めた。 「……ゆふん」 ドヤ顔でお兄さんを見上げるれいむ。 歌声は秋空へと綺麗に響き渡っていたし、注意深く周囲を警戒したれいむはお兄さんの 合図を見逃すこともなかった。 そのうえ、おちびちゃんたちはれいむの指示に段々素早く反応するようになって、 ざわざわと騒がなくなっていった。 これはもう、合格以外あり得ないおうただっただろう、そういう自負がれいむにはあった。 「……まあいいでしょう。次のテストが最後ですよ」 「ゆゆゆ……ゆわーーーい!」 やった、合格だ! れいむは喜びのあまりちょっとうれしーしーをもらしつつ、きりっとした顔で おちびちゃん達に自分の姿を見せてあげた。 ――みんな、れいむのすがたをみて、おかあさんみたいなきんばっじさんをめざすんだよ! れいむの餡子な脳内では、既に金色に輝くバッジが赤いおりぼんさんに付けられている。 さあ、いち、に、たくさんのおちびちゃんたちと一緒に"飼いゆっくり"の玉座に着くのはもうすぐだ! ■体育:みんなおくちにはいってね! 「それでは最後のテストです」 「ゆん! いまのれいむはむてきだよ! どんなてすとさんでも、どんとこい、だよ!」 「「「「どんときょい、じゃよ!」」」」 小さいおちびちゃん達までが、れいむの真似をしてふんぞりかえっている。 「危険なものが迫っている時、お母さんはおちびちゃんを守ってあげなければなりませんよね?」 「ゆ、そうだね! それでれいむはどうすればいいの?」 「小さなゆっくりのみなさんを、お口に入れて守って下さい。理解出来ましたか?」 「……ゆっくりりかいしたよ」 「おちびちゃんたちきこえた? まずはいちばんおおきなおねえちゃんのおくちに、はいれるだけ はいるんだよ! のこったおちびちゃんたちはおかあさんのおくちにはいってね!」 「「「ゆっくちりかいしちゃよ!」」」 母れいむがゆっくりならざる即断即決を下すと、おちびちゃんたちはこーろこーろと転がって、 先ずは大口を開けたおねえちゃんゆっくりのお口に入っていった。 「ゆゆ? のこったのはれいむだけなの?」 「しょうだよおきゃあしゃん!」 お口に入りきれなかったのは、なんと赤れいむが一体だけだった。 「ゆゆーん、いつのまにか、おねえちゃんもおおきくなってたんだねえ!」 我が子の成長を喜ぶ母れいむ。 「あかちゃんれいむは、おかあさんのおくちにゆっくりはいってね!」 「ゆっくちおかあしゃんのおくちにはいりゅよ!」 これで、残った子ゆっくり達はみんな、大きなゆっくりのお口に入った。 「…………」 「…………」 「……もう出しても大丈夫ですよ」 「おちびちゃんをぺー、するよ!」 「こーろこーろ、でりゅよ!」 「どう、おにいさん! これでれいむのてすとさんはぜんぶおわったんでしょ?」 「ええ、テストは全て終了ですね」 「ゆふん!」 ようやくだ。やっとここまでれいむはこれた! 「やくそくだよおにいさん! れいむたちをかいゆっくりに――「勿論、しませんよ」……ゆ?」 ■採点:うそつきさんはふごうかくだよ、りかいしてね! 「ゆゆゆゆゆゆゆ? いま、おかしなことがきこえたよ? れいむはかいゆっくりになれ――」 「――貴方が飼いゆっくりになることは有り得ません。ゆっくり理解して下さい」 「は……はああああああ!? おかしいよおにいさん! れいむはさいごまでてすとさんを うけたでしょおおおおおっ!? ごうっかくっ! なんでしょおおおおおおおぉぉっ!?」 「れいむは最後までテストを受けましたが、途中で不合格が決まってましたから」 あれだけのテストを受けて、今更不合格だったとは納得できないれいむだが、 れいむとお兄さんは確かに、約束していたのだ。 ――結果は最後に言いますが、もしも途中で不合格だったとしても、テストは最後までやりますか? ――ゆーん……やるよ! れいむはさいごまでてすとさんをうけるんだよ! 不合格であっても、最後までテストはやると。 「どぼじでぞんなごどいうの!?」 しかし、れいむは納得ができない。 「れいむがいつ、どのてすとさんにふごうかくだったっていうの! ゆっくりせつめいしてね!」 テストに合格していた思い込みが、テストの全てを完璧にこなしたというプライドに転化されて、 不合格を認めることができない。 「れいむは最初から、全てのテストに不合格でしたよ?」 そんなれいむに、お兄さんは死刑宣告にも等しい採点結果を、告げた。 「……はああああああああ!?」 「まずは、最後のテストからいきましょう。『危険なものからおちびちゃんを守れるか?』という テストでしたが、れいむはおちびちゃん達を守り切れていません。ですから不合格です」 「なにいってるのおにいさん! れいむのおちびちゃんたちは、このとおり、いち、に……あれ? いち……に…………」 「れいむ、貴方のおちびちゃんは、どれだけ残っていますか?」 「……"に"だよ」 れいむは、周囲をきょろきょろと見回している。 「おちびちゃんたちが"ふたり"いるよ……」 だが、"たくさん"いた筈のおちびちゃんが、どれだけ確認しても、二体しか居ない。 「……どうして、どうしておちびちゃんたちが"ふたり"しかいないの?」 「それはれいむが、貴方たちにとって危険な物から、守ることが出来なかったからです。 続けてその前にやった、おうたのテスト結果ですが、これも不合格ですよ」 「おちびちゃ……なんで? どおして?」 れいむは、れいむたちは、とてもゆっくりした"おうた"を歌えたはずだ。 「あのテストは、『お歌の最中に周囲が見えているか?』です。歌いながら気を配っていれば、 おちびちゃんたちが"減っている"事にも気付いた筈です。よっておうたのテストも不合格」 そしてさらに、とお兄さんは言葉をつなげる。 「あるいは、れいむが本当に『三以上を数える事が出来る』のなら、途中でおちびちゃんの 数の変化に気付いた筈なのです。つまり、数のテストも不合格」 採点は続けられる。 弾劾は、続いている。 「おちびちゃん……そうだよ!」 そこで、れいむは気付いた。 「さいごのてすとさんで、おちびちゃんたちはおねえちゃんのおくちにかくれたはずなんだよ! なーんだ! おねえちゃんがまだおくちに、いれたまんま……じゃ」 そして、疑問を覚える。 どうして一番上のまりさおねえちゃんは、まだお口におちびちゃん達を入れたままなんだろう? と。 れいむの"おちびちゃん"は、困惑したれいむを、冷たい瞳で見下ろしていた。 「ゆ……?」 ……見下ろす? 「どうしてれいむのおちびちゃんが、れいむより大きくなってるの?」 「そして、一番最初のテストで『お飾りが無いゆっくりを区別出来て』いれば、そのゆっくりが そもそも、貴方のおちびちゃんですら無い事に気付いていた筈なんです」 よって、最初のテストも不合格。と、小さなつぶやきがれいむのテスト結果を"零点"と宣告。 「もういいですよ、"ふらん"」 お兄さんは、れいむの眼前に居る"まりさ"からおぼうしを取り去った。 「ほんとうに、こんないたづらはにどとこんてにゅーしないでほしいよ、お兄さん」 お飾りをとられても身じろぎどころか、嫌がる素振りすらしない"のっぺらぼう"は、 大きく口を開け、「げぷ」と"ゆっくりの死臭に満ちた吐息"をれいむに浴びせかける。 その赤い口。 鋭く尖った砂糖菓子の牙。 殺意に満ちたとげとげしい眼光。 七色に輝く飴細工の羽。 もはや、特有のお飾りを付けていなくても分かる。 それは、野良ゆっくりが遭遇する中でも、最大級に禍々しい捕食種のひとつ。 「ふ……ふらんだあああああああああああああああああああああっ!」 「うー……死ね!」 「お、おかあしゃあああああん! ゆげっ! いちゃいよ、ゆっくちできにゃいゆっくちめ! ゆびゃ! やみぇちぇね! れいみゅいちゃいいちゃいはいやじゃよ、ゆぎゃ!」 硬直するれいむの目の前で、ゆっくりふらんは悠々と赤れいむを嬲り始めた。 苦痛を味合わせて甘くする、ふらん種の本能だ。さっきまではれいむの背後で"手早く" 子ゆっくり達を食っていたので、鬱憤を晴らすかのようにハッスルしている。 「や……やめてよ。れいむにのおちびちゃんがいたがってるでしょ? おにいさん?」 「私は、『テストに合格するまでは手助けしない』と言いましたよ?」 「ほ、ほかのおちびちゃんたちはどこにいったのおおおおっ!?」 「とっくの昔に、ふらんのお腹の中です」 「うそつき! おにいさんはうそつきだよ! てすとさんがおわるまでは、れいむたちに いたいいたいをしないっていったでしょおおおお! どぼじでふらんをつれてきたのおおおっ!」 「いいえ、ふらんは最初から居たんです。れいむが気づかなかっただけですよ」 「……ゆ?」 「お飾りを付けていなかったので、れいむは気づきもしませんでしたが、最初から私の 隣に居たのです。線路に入り込んだまりさ達を駆除して、もらうためにね」 お兄さんが、ゆっくり対策課に電話連絡を入れるや否や、洗濯中のお飾りを付けもせずに、 文字通り飛んで――というよりお姉さんにぶん投げられて――来たのがふらんだった。 「ゆっべ! おがああじゃああ! だずげ! れいみゅをだずげでねえええ、おかあじゃあんん! どぼじでだずけないの!? れいみゅをだずげりょおお、こにょ、くしょおやあああ!」 「う……うそつき。うそつきうそつきうそつきうそつき! おまえはうそつきだああああ、 このげす、くそどれい! くそじじいいいぃぃぃぃ!」 「……ほう?」 ふらんは飽くことなく、昏い情熱を燃え上がらせて赤れいみゅを嬲る。 その悲鳴を背後に、親れいむはお兄さんを"下衆"と詰る。 お兄さんの目に、危険な光が宿った。 「そうだよ、れいむはゆっくりしたおかあさんだから、れいむはきんばっじさんなんだよ! てすとさんは、ぜんぶぜんぶ、ぜーーーーんぶ、ごうかくしてるにきまってるんだよおおおおおっ! れいむはごうかくだよ! れいむはきんばっじだよ! おまえだけがうそつきの、くそじじいなんだよ! さっさとれいむをゆっくりさせろ、この……くそどれいいいいいいいいいいいぃぃぃぃいぃ!!」 「……お兄さん。こいつ、ツブそうか?」 尖った歯で、痙攣する赤れいみゅの中枢餡を"こりこり"しつつ、ふらんが言う。 「いいえ、それには及びませんよ。……れいむ、私は"飼いゆっくりになりたい"という貴方の為に、 最大限のチャンスを提示しましたよ」 「あたりまえだああああっ! れいむはしんぐるまざーなんだよ! じじいはやさしくしなきゃいけないんだよ、 それがていっせつっなんだあああ!」 「ふらん」 「ぶちいっ!(もっちょ……ゆっくちしちゃかっちゃ……)」 ふらんの口の中で、れいむ最後のおちびちゃんが永遠にゆっくりした。 「ああ……これでしんぐるまざーでもなくなりましたね」 「だったらなんだっていうのおお!? ぜんぶじじいがうそつきだからわるいんでしょおおおお!? ばかなのおおおぉ? しぬのおおおおぉぉぉ!?」 「私は貴方との約束を破ってはいません。それでも私を、"嘘つき"と言いますか!」 「そうだああああっ! おまえがうそつきなのがわるいんだあああっ! しゃざいしろ、ばいしょうしろ! れいむをっ! ゆっくり……させろおおおおおおっ! そしてれいむを"かいゆっくりに"――」 「――分かりました」 厳かな声が、れいむの中枢餡を打った。 「ゆ……? ゆふふふふふ! ようやくじじいもれいむのいだいさがわかったみたいだね! さあ、くそどれいは、このれいむさまにびゆっくりのまりさをつれてきてすっきりーさせるんだよ!」 「れいむがそう思うのなら、私は嘘つきなのでしょう、れいむの中では……。 なので私はせめて少しでも嘘つきから離れるために、自分の言葉を守りたいと思います。 『出来もしないことを出来ると言い張るような嘘つきは、絶対にゆっくり出来ない』と、 私は確かに言いました」 そう、テストは既に終わっているのだ。 お兄さんがれいむをどうしようが、既に約束の外。 「ゆふふふふふ。れいむはきんばっじさんだよー! ゆっくりしたけっかがこれなんだよー」 お兄さんはおもむろに、懐からおもむろにピーラーを取り出した。 この皮むき器、ゆっくりの餡子を傷つけずに皮だけを剥くための特別製で、 商品名も少し変わっている――すなわち、『謝罪と賠償』。 ■放課後 「オラァ! 居るなら返事しやがれ……って、あれ? アイツが居たんじゃ無かったのかよ、ふらん?」 数分経って、ゆっくり対策課駆除班のお姉さんが駅に着いた。 そこで目にしたのは、綺麗に掃除された無人のホームと、日向でうとうとするふらんの姿だけだ。 「うー……おにいさんなら、おっきなすぃーにのっていったよ。 おねえさんにでんごん、"すこしはせがのびましたか?"だって」 「野郎……次に会った日を命日にしてえらしいな、おい」 お姉さんの身長は、九年前から四尺八寸――現在の単位に直して148cm――で変化が無い。 ちょっと物足りないと感じているのをわざわざつつく命知らずは、お兄さんくらいのものだ。 踵を浮かせて背筋を伸ばし、精一杯見栄を張った体勢で辺りを見回していると、奇妙なオブジェが 目に付いた。 「……なんだこれ?」 喫煙コーナーの灰皿代わりに置かれているそれは、表面をニスで塗り固められた、黒い餡子玉だ。 時折蠕動している所を見るに、まだ生きているようである。 「このぴこぴこの形からみるに、元はれいむっぽいがよ……」 「おにいさんがつくったよ。ふらんはまずそうだからたべないけど」 「……そうだな、れいむなんざどうなったっていいや、放っておこう。ほれ、帽子だ」 「うー、おねえさんありがとう!」 ゆっくりんぴーすのメンバーが聞いたら怒り出しそうな台詞だが、命の価値が違うんだから仕方ない。 お姉さんとふらんが仲良く駅を去って、黒い餡子玉はちょっと蠢くオブジェとして、 駅のホームに取り残された。 ――れいむは―― 二度とゆっくりはできなかった……。 餡子とゆっくりの中間の不思議物体となり、中枢餡が非ゆっくり症で脳死するまで、 駅のホームに佇むのだ。 そして死にたいと思っても餡子が無くならないし。 餡子むき出しの激痛に、考えるのも止められなかった。 ~おわり~ ■あとがき 鬼威惨がまたヒグマさんにむーしゃむーしゃされました。三人目です。 加工所謹製『謝罪と賠償』シリーズ。 対ゆっくり駆逐用品のブランド。 玄翁、のこぎり、鉋などの大工用具から始まり、キリライター、半田ごて等の工具、果ては包丁や、 作中でお兄さんが使ったピーラー等の料理器具に至るまで、幅広いラインナップを誇っている。 自殺願望のあるゆっくりの『謝罪と賠償』要求に応えるべく、「一撃で行動不能になるが決して即死はしない」 使い勝手を目指して常に改良が続けられている。 ――が、本来の用途においてもかなり"使える"事が、加工所の技術力に対する評価を高めている。
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※俺設定 ※東方オリジナルの設定をほとんど無視します ※人間が出ます ※ゆっくりが賢い(?)です ※虐待は少しだけです ※作者は低学歴なので、日本語がおかしいです ゆとり乙と罵ってください ※前編、後編に分けます ※前編を見てから、後編を見てください 長寿と繁栄を・・・後編 ゆっくりは・・・。 人語を話す饅頭やシュークリームということなので、 法律上、物という定義が当てはまる。 これは猫や犬と同じく動物も物になる。 しかし、動物とゆっくりの違いは愛護法の有無である。 動物には動物愛護法があるが、 ゆっくりには、ゆっくり愛護法なんていうモノは存在しない。 つまり、ゆっくりをどう扱おうが、何の罪にも問われないのである。 彼ら、ゆっくり製菓に勤務するゆっくりたちは、ゆっくり製菓の所有物となっている。 社員のゆっくりたちをどう扱おうが、それはゆっくり製菓の勝手なのである。 あまりにも残酷である。 仕事に失敗したれいむだけならまだしも、 家族のゆっくりたちも加工所に送られてしまうなんて・・・。 だが、これは、ゆっくりたち自身が選んだ道なのである。 ゆっくりは弱い。 雨、風、日照り、雪・・・。 ありとあらゆる自然災害の被害を受ける。 動物やれみりゃやふらんといった捕食種・・・。 彼らからすればゆっくりは安全に狩れ、かつ、高カロリーで、 一度狙われたら、必ず食されてしまう。 ゆっくりを虐待することに命を賭ける人種・・・。 ご存知、虐待鬼意山たち。 ゆっくりたちからすれば、想像もつかない虐待で、無惨に殺されていく。 こんなゆん生は嫌だ!!! ゆっくりたちはゆっくりするために生まれてきたのに、 世の中はゆっくりさせてくれない!!! どうしてゆっくりさせてくれない!!! ゆっくりをゆっくりさせろ!!! そうじゃないと、おかしい!!! ゆっくりはこんなにゆっくりしているのに!!! 神は一体何をしているのだ!!! 殺してやる!!!ゆっくりをゆっくりさせない世の中を作った神なんて殺してやる!!! 制裁だ!!!ゆっくりの名の下に制裁だ!!! と、今までは、自身の弱さを省みず、むしろ、ゆっくりが生物の頂点を思い込み、 自らを尊大な存在だと勘違いしていたゆっくりばかりであろう。 しかし、ゆっくりたちも"進化"したのだ。 『次世代ゆっくり』と言われるゆっくりたちの登場だ。 ゆっくりにとって、その”進化”は革新的だ。 ゆっくりが何かモノを作り出した・・・!? 違う。所詮は饅頭。 人間に出来ないことが饅頭如きに出来るはずもない。 ゆっくりが肉体的に何か得たのか・・・!? 違う。所詮は饅頭。 旨くなるか不味くなるかその程度だろう。例えそうだとしても。 その”進化”とは、 過去のゆっくりたちの概念を捨て去ること・・・。 そして、新しい概念を受け入れること・・・。 ゆっくりはゆっくりするために生まれてきた!? 違う。 ゆっくりの存在理由なんて・・・。存在しない。 ただ生まれてきただけ。それだけの事実。 じゃないとおかしい。 ゆっくりがあまりにも弱すぎることが・・・。 という思考を『次世代ゆっくり』たちはするようになった。 何世代をも傲慢かつ無知な思考を繰り返していたが、 ついに、自らを客観的に見ることが出来るようになり、 自身の弱さを受け入れたのだ。 でも、ゆっくりはゆっくりしたい。 じゃあ、どうすればいいのか? ゆっくりできないモノを排除すればいいのだ。 ありとあらゆる自然災害・捕食種・虐待鬼意山を排除した場所で生きていけばいいのだ。 では、一体どこにそんな場所があるのだ? と疑問に思っていた矢先・・・。 人間たちが、ゆっくりに提案してきたのだ。 その場所は、人間が用意しようと・・・。 この人間たちこそ、ゆっくり製菓の経営陣である。 ゆっくり製菓は、昨今のゆっくりブームの人気にあやかり、面白半分で、 ゆっくりに仕事を覚えさせて、やらせてみた。 すると、実は人間と対して変わらないくらいの仕事をこなしていたのだ。 最初は客寄せパンダとしか思っていなかったが、 次第に人間よりも仕事が出来る様になってきた。 しかも、ゆっくりの給料なんて、人間の給料と比べて、タダみたいなものである。 食事もそこらへんで拾ってきた虫とか草とか花とかをやればそれだけで喜んだ。 中には菓子や人間と同じ食事を望んでくるゆっくりもいたが、 人間とゆっくり、どちらが強いのか、体で教えてやれば、次からはケツを振って厭らしい顔で、 気持ち悪い声を出しながら、媚びを売り、人間の顔色を伺う連中ばかりだった。 そのため、経営陣は、社員の9割を一斉にリストラし、ゆっくりを社員にした。 その結果、会社の利益は数十倍も増え、ゆっくり製菓は名だたる大企業へ発展したのだ。 しかし、面白くないのは・・・。ゆっくり製菓をリストラされた人間や、虐待鬼意山である。 『人間がゆっくりに劣るっ!?許せないっ!!!』 ゆっくり以下とレッテルを貼られた元・社員、ゆっくりが人間より優れているという事実に腹立つ虐待鬼意山。 ゆっくり製菓で働くゆっくりたちを虐待するのは当然のことだった。 その結果、人手不足になってきたゆっくり製菓。 しかし、ゆっくり製菓は、あることを思いついた。 ゆっくりというゆっくりを、すべてゆっくり製菓が買い取るということ・・・。 ゆっくりをゆっくり製菓の所有物にした場合、 ゆっくりを虐待したら、それは器物破損罪が適応される。 そうなれば、人間たちはむやみやたらにゆっくりを虐待できなくなる。 大体、リストラされた人間など、裁判を起こされたらどうなるか、わかっているだろう・・・。 ただでさえ、家計が苦しいのに、賠償金請求などされてしまったら・・・。 虐待鬼意山とて、基本的には資産を持っているような輩はいない。 どちらかと言えば、貧乏人が多い。 そんな奴らが、資金が潤沢している大企業にわざわざ裁判を起こされて負けるようなことはしてこない。 虐待に命を賭けるといっても、それは言葉のあやであり、ホントに命を賭けるような輩は少ない。 ゆっくり虐待なんて、ただの暇つぶし。 中には、破滅願望を持った虐待鬼意山が、それでもゆっくり製菓のゆっくりたちを虐待しに来ることは、 しばしばあった。 しかし、一度、そういう輩を器物破損や営業妨害で訴えてしまえば、 多大な賠償金を取ることができるし、払えなければ、借金苦に自殺をする輩ばかり、 再犯すれば、実刑を食らい、数年くらいは刑務所に入れられるので、取るに足らない問題だ。 そういう問題をクリアしたゆっくり製菓の経営陣たちは、 さらなる利益追求のために、安定した労働力の確保のため、ゆっくりたちを保護することにしたのだ。 ゆっくりたちの求めるモノ、それは安全に暮らせる場所。 人間たちの求めるモノ、安い労働力。 互いに、求めるモノを提供し合うことで、 ついに人間とゆっくりの共存が成り立ったのだ。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 「だずげでぇえええ!!!!みんなぁああ!!!だずげでぇええ!!!!!」 加工所に送られることになったれいむが、同僚のゆっくりたちに助けを求める。 『こら!!動くな!!!』 『ジタバタするな!!!』 黒服を着た人間たちは、れいむを押さえつけようとするが、 必死にもがくれいむの抵抗が激しく、力が緩んだところで、れいむが逃げ出した。 『待て!!!』 と、人間たちは叫んだ。 ポヨンポヨンと体を弾ませ、同僚のゆっくりたちのところへ駆け寄るれいむ。 「ばでいぃざぁあああ!!!!だずげでぇええ!!!!おどもだぢでじょぉおお!!! おざななじみでじょぉおお!!!だずげでぇええ!!!だずげでよぉお!!!!」 まりさの前にれいむは立ち塞がり、涙を流しながら、助けを乞うれいむ。 まりさと、このれいむは、確かに親友であった。幼馴染であった。 だが、ゆっくり製菓に入社してから、互いに違う業務を行なう内に、接する機会が次第に減っていき、 ここしばらくの間、話しをすることがなかった。 「ばでぃざばぁああ!!!こんげづばのるまをだっぜいじだんでじょぉおお!!! ずごぢでいいがらぁああ!!!!ずごぢでいいがらぁああ!!! でいぶにぞのぜいぜぎをゆずっでよぉおおおぉお!!!!!!!」 成績の悪いゆっくりの損失を、成績の良いゆっくりの利益で補ったら、加工所に送られなくても済む制度はある。 が、しかし・・・。 「ゆぅ・・・。そんなことできないよ・・・。まりさだって・・・。 こんげつはぎりぎりたっせいしたんだから・・・。そんなことしたらまりさも・・・。」 みな余裕がないのだ。 だから、そんな制度はあってないようなモノ。 「みんなのぜいぜぎがらぁあああぁあ!!!!ずごぢずづでもぉおぉ!!! でいぶののるまにだぜばいいでじょぉおおぉお!!!!! ばがなのぉおおお!!!じぬのぉおおお!!!!」 れいむの言うとおり、ここにいるゆっくりたち全員が少しずつでも成績をれいむも譲れば、 助かる可能性はある。 だが・・・。 「みんなよゆうがないんだよぉお!!!そんなことしたらぁぁああぁ!!! ちぇんまでリストラされちゃうよぉおおぉおお!!!!!! わからないのぉおぉお!!!!」 と、ちぇんが叫んだ。 今月は黒字だったとしても、来月は赤字かもしれない。 ここにいるゆっくりたちはそう思っている。 だから、ここでれいむを助けたとしても、来月はさらに状況が悪くなったら、 今月の貯金もなくなり、自分もリストラの対象になる可能性が非常に高い。 「ぢぇんんんん!!!!!!おまぇええぇえ!!!!! だれにじごどをおじえでもらっだどおもっでるんだぁああああ!!!! でいぶにおんをがんじでいないのがぁああああ!!!!! じねぇえええええ!!!!!じねぇええええ!!!!! おまえばじねぇええええええぇええええええ!!!!!!!」 ちぇんは、このれいむから仕事を教わったのだ。 ちぇんは物覚えが悪かった。 そんな中、このれいむは、ちぇんは友達だからと言って、仕事の仕方を教えてやった。 もし、自分が教えていなかったら、この場で泣いているのは、 ちぇんの方だった。 なのに、れいむは恩を仇で返された。 抑えられない怒りがれいむを駆り立て、ちぇんに向かって飛びかかった。 「ゆっぐりでぎないぢぇんばじねぇえええぇえええええええ!!!!!」 バゴッ!!!! れいむは、ちぇんに飛びかかろうとした瞬間、 壁に叩きつけられた。 「ゆ゛っ・・・ゆ゛っ・・・」 白目を向き、小刻みに痙攣をし、餡子を少し吐いているれいむ。 『ふぅ~。危ない危ない。』 人間が汗をかきながら、ため息をつく。 れいむは、人間に蹴られて、壁に叩きつけられた。 「にんげんさん!!!あぶないよ!!! まだここにいるゆっくりたちはまだかちがあるよ!!! きずついたらどすのせいになっちゃうよ!!!!」 『ああ、すまんすまん。』 「そんなしゃざいはいらないよ!!! ゆるしてほしかったら、あまあまさんをもってきてね!!!」 ドスと人間が、そんな会話をしていると・・・。 「どぼぢで・・・どぼぢで・・・」 れいむが苦しそうに声を上げていた。 「もう!!!しごとのじゃまだよ!!! このごみをかたづけて!!!ふゆかいだよ!!! どすはこんなにがんばっているのに!!!!! こんなかすばかりしかぶかにいないなんて!!! せかいでいちばんかわいそうだよ!!!どすは!!! ひげきのひろいんなんだよ!!!!まったく!!!! しね!!!!ごみはしね!!!おまえなんかゆっくりじゃない!!! ごみだ!!!!むのうだ!!!おまえのそんざいそのものがめいわくだ!!! きえろ!!!!うまれてきたことがまちがいなんだよ!!! このくそまんじゅう!!!!」 ドスがれいむに唾を吐き、汚いモノを見るような目で見下す。 それを最後にドスは、れいむの方を向かなくなった。 れいむは、悔しそうに同僚たちを見つめながら、 台車に乗せられて運ばれていった。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ゆっくり製菓は、ゆっくりたちを保護することにした。 だが、ゆっくり製菓はさらなる利益追求のため、 ゆっくりたちにノルマを課した。 ノルマを達しなかったゆっくりは・・・。 加工所へ売られる。 そこで、ノルマからの差分を補うのだ。 こうすれば、死にたくないゆっくりたちは、 能力の限界まで働くのだ。 そんなことをすれば、ゆっくりたちは、 こんなゆっくり出来ない場所から逃げるのでは? と思う読者もいるだろう。 ゆっくり製菓は賢い。 ゆっくり製菓がゆっくりたちを保護するという条件を出したとき、 以下の11つの条件で、ゆっくりたちの保護を約束するとした。 第1条 ゆっくり製菓はゆっくり製菓に勤務するゆっくりの家族を保護する。 保護の範囲は、自然災害、野生動物や捕食種、人間からの虐待。 第2条 ゆっくりの巣は、ゆっくり製菓が用意せず、ゆっくり自身が用意する。 ただし、ゆっくり製菓が認めない場所に巣を作ったら、保護は適応しない。 第3条 自然災害にあった場合、巣の復旧やゆっくりの身体の負傷については、ゆっくり製菓が全面支援する。 ただし、ゆっくり製菓に勤務するゆっくりが死亡した場合は支援しない。 第4条 野生動物や捕食種、人間からの虐待を受けた場合、ゆっくり製菓は全面的に報復をする。 ただし、ゆっくり製菓に勤務するゆっくりが死亡した場合は報復しない。 第5条 ゆっくり製菓は成績が著しく悪いゆっくりに対しては、リストラを行い、 リストラを行なわれたゆっくりは加工所へ送られる。 第6条 ゆっくり製菓に勤務するゆっくりの家族を傷つけたゆっくりは、 どんなゆっくりであろうとも、強制的に加工所を送られる。 第7条 ゆっくり製菓に勤務するゆっくりの家族は以下の3点を満たすこと。 ?番のゆっくりは、巣から半径50m以内から出ないこと。 もし出た場合、家族全員で加工所へ送られる。 ?子のゆっくりは、毎日、「がっこう」へ行く。 テストの成績が良くないゆっくりは、家族全員で加工所へ送られる。 ?第5条が執行された時、家族にいるゆっくりは、家族全員で加工所へ送られる。 第8条 一度、社員になったゆっくりは、永遠にゆっくりするまで勤務するしなければならない。 辞める事は許されない。途中で辞める意思を表明したら、加工所へ送られる。 第9条 ゆっくり製菓はそれ以外のことは感知しない。 第10条 第1条を聞いた時点で、ゆっくり製菓の社員になり、この条件が適応される。 第11条 第1条~第10条を理解していないと、加工所へ送られる。 姑息である。 なぜこのような条件にしたのか・・・。 ゆっくり製菓の企みはこの通りである。 第1条:自然災害、野生動物や捕食種、人間からの虐待のみ保護。後は知らん。 第2条:ゆっくりのために社員寮なんか作れるか。なんとなく安全そうなところをお前らが探せ。 人間の目から見ても安全だなぁ~って思う場所なら保護してやる。 第3条:自然災害で傷ついたなら、助けてやる。でも死んだら知らん。 遺族の面倒は見ない。 第4条:被害に合ったら、報告してきてくれ。報復してやる。でも死んだら知らん。 遺族が訴えてきても知らん。 第5条:仕事出来ないヤツは、加工所でおまえ自身が売り物になってくれ。 第6条:家族で揉め事を起こされると面倒だ。傷害事件を起こしたら、お前ら死んでくれ。 あと、お前らの家族もお前らの失敗で売るつもりだから傷つけるなよ。 第7条:番は家の付近で、餌でも探していろ。でも逃げ出したら殺す。 子供は人質だ。よこせ。あと優秀な次の社員を作るため育成してやる。出来が悪かったら殺す。 旦那の失敗は家族の失敗だ。お前ら全員で償ってくれ。 第8条:途中で辞められたら、お前らに投資した金がもったいない。 死ぬまで働け。嫌なら、すぐに投資した金を回収する。 第9条:保護だけしてやる。後は知らん。 第10条と第11条 :ゆっくりは3つまでしか覚えられないんだっけな?なんかウザイな。 あとで知らないとか言うとウザイから、知らなかったら、加工所へ送る。 っていうか、そういうバカは社員になっても脚引っ張るだけだから、 今のうちに売る。 要は、保護をすると言っても、金がかかる。 そんな金をゆっくりにかけたくない。 それが本音である。 ゆっくりを汚させないような安全な住処を、社員寮みたいな建屋を作る金がもったいないと、 人間は感じた。 さらに、野生動物や捕食種、人間からの虐待を未然に防ぐには、 それなりのパトロールが必要だ。 では、ゆっくり自身に探してもらおう。そういう場所を。 ゆっくりたちからすれば、本末転倒である。 ゆっくり出来る場所を提供するという約束で、人間に協力を求めたのに、 ゆっくりする場所を自身で探せとは??? おかしな話である。 しかし、ゆっくりは受け入れた。 強要されたのではなく、自ら受け入れた。 その結果・・・。 自然災害、野生動物や捕食種、人間からの虐待に合わない場所を、 自ら探し出せて、家族全員が出来がよいゆっくりのみ、ゆっくり製菓の社員になり、 それらを満たすことが出来ない、 具体的には、3つまでしかモノが覚えられない一般的なゆっくりは、 みな加工所へ送られ、優秀なゆっくりのみ残った。 ゆっくり製菓は、思惑通り、 最小限の費用で優秀なゆっくりと豊富な原材料を得ることが出来た。 『次世代ゆっくり』と言われるゆっくりたちも、 旧世代の貧弱・無知・傲慢の三拍子揃ったゆっくりたちのせいで、 群れを絶滅されたことを遺伝子に刻んでいたのだろうか、 ゆっくり製菓の理不尽な約束に自ら進んで従ったのだ。 この程度のことが出来ない無能なゆっくりは、 消えてほしいと思っていたので、理不尽と知りつつ、 無能なゆっくりをこの理不尽な約束で粛清したのだ。 結局のところ、ゆっくりは人間に良い様に扱われてしまっているが、 ゆっくりはそれもそれで受け入れていた。 なぜなら・・・。 無能なゆっくりは、加工所へ売りさばかれるが、 優秀なゆっくりに対しては・・・。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 「ゆっくりただいま!!!」 「ゆっくりおかえりなさい!!!」 「「「ゆっくちおきゃえりにゃしゃい!!!」」」 まりさは仕事を終え、巣に帰ってきた。 「ゆっくりしてた?みんな?」 「ゆゆっ!!!れいむはゆっくりしてたよ!!! おちびちゃんたちもゆっくりしてたよ!!!」 「「「ゆっくちぃ!!!!」」」 今日の昼休み、あんな光景を見たまりさは、 記憶の片隅にも置いておきたくなかったのか、 嫌な思い出をかき消すように、家族とふれあいに微笑んだ。 「おちびちゃんたち!!!おかあさんのとってきたばんごはんさんはおいしい?」 「「「む~ちゃ!!!む~ちゃ!!!ちわあちぇ!!!!!」」」 れいむが一日懸けて、集めてきた草や虫をおいしそうに食べる子供たち。 「ゆ~ん!!!れいむはしあわせだよ!!!こんなにかっこいいまりさと!!! こんなにかわいいおちびちゃんたちにかこまれて!!!!」 「「「ゆっ!きゃわいくてごみぇんにぇ!!!」」」 キャッキャと騒ぐ子供たち。 まりさに擦り寄るれいむ。 その光景を見て微笑むまりさ。 そこにはゆっくりたちが望むゆっくりがあった。 しかし、まりさは笑いながら、思い出していた。 昼休みのれいむが加工所へ連れられて行く光景ではない。 いや、昼休みの光景を見たから思い出したのであろう。 以前、ゆっくり製菓の幹部の人間が、まりさを呼び出して聞かせた話を・・・・。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 仕事が終わるチャイムがなる数十分前。 まりさは、ゆっくり製菓の幹部の人間に会議室に呼び出された。 まりさは、自分が何か悪いことをしたのかと、 ビクビクしていた。 大抵、呼び出されると言う場合、嫌なことしかないのだから・・・。 しかし、まりさとは対照的に、 人間はにこやかな顔でまりさに話しかけてきた。 『まりさ。君は優秀なゆっくりだ。ゆっくりにしておくのはもったいないくらいだ。 君が人間ならば、即、私の片腕にしてるところだ。』 「ゆっ!!!ありがとうございます!!!」 まりさは、意外にも褒められるとは思っていなかったから、 つい、笑みが漏れてしまった。 『ところで・・・君は出世には興味あるかね?』 「ゆっ!!!ゆっくりできるなら、ゆっくりできないたちばになってもがんばります!!!」 愛するれいむのため、愛する子供たちのため、 自身がゆっくり出来なくなっても、出世をすれば、家族はゆっくり出来る。 そう思い、その意欲を口に出すまりさ。 『いい心掛けだ!!!ホントにゆっくりなのかと疑いたくなるよ!!! 君みたいな優秀なヤツは人間でも少ないよ。』 「ゆゆっ!!!おほめのことばありがとうございます!!!」 『実は・・・。君の上司のドスまりさ・・・。 彼ね・・・。あまり評判がよくないんだよね・・・。 人間の社員に対して、役職が上だからって、 上から目線で話すからねぇ~。 人間の社員の間で、密かに彼の虐待計画が持ち上がるくらいなんだよ。 まあ、そういう人間は・・・。然るべき制裁をしたから、 何も問題はなかったんだけどね・・・。 ただ・・・。いやね、うちの会社は実力主義だから、 ゆっくりだからとか人間だからとかって差別してないんだけど、 やはり、そういう風に思われるようなゆっくりを上の立場には置いとけないんだよねぇ~。 大体、うちの会社はゆっくりのおかげで持っている様なモンだから、 気に入らないゆっくりは、虐待するなんてことだと、 社員のゆっくりがみんな逃げちゃう可能性があるんだよねぇ~。 まあ、逃げ出しても簡単に捕まえられるんだけど、 一度に全員とかって一気に逃げられちゃうと・・・。 さすがに困っちゃうかなぁ~ってねぇ・・・。』 確かにあのドスまりさは、ゆっくりの中でも嫌われている。 仕事はしないくせに、威張り散らす。 部下の手柄を横取りするくせに、自身の失敗は部下に擦り付ける。 それを指摘すれば、ゴミだとか無能だとか罵ってきて、 アンチゆっくり派や虐待派が多く住んでいると噂される、 注文が取りにくい地区へわざと配属させたり、 受付の美ゆっくりのありすに、人間からもらった 高級菓子を餌にして、すっきりしようと企んでいたり、 客先と癒着して、売り上げの一部から、 ゆっくりフードや高級菓子に変えて、隠し持っていたりとか・・・。 どうしようもないゲスだったりする。 「ゆぅ・・・。まりさはにげだしませんよ!!! かわいいれいむとかわいいおちびちゃんのために、 ゆっくりはたらきます!!!」 『いやぁ~君は素晴らしい!!! そんな君だからこそねぇ~、君をリーダーにしようと思うんだ!!!』 「ゆっ!?」 『いきなりだから、びっくりしたかね?』 「ゆぅ・・・。まりさはびっくりしました・・・。」 『そうだろう、いきなりでびっくりしただろう。』 「でも・・・。まりさはゆっくりがんばります!!!!」 『そうかそうか!!! それはよかった!!!私も君なら引き受けてくれると思ったんだ!!! ただ・・・。 ちょっと問題があってね・・・。 言い難い事なんだけど・・・。』 人間は、ある書類を取り出した。 その書類には、まりさの子供たちの成績が書いてあった。 そして、その成績を見た瞬間、 まりさは、真っ青になり、口元がピクピクし始めた。 『君の子供たちはねぇ~。 模擬テストの結果が著しく悪いんだよ・・・。 生後1ヶ月だよねぇ~。この時期になると・・・。 数を100個くらい数えられるくらいの認識力が平均的なんだけどさぁ・・・。 まだ、2個までしか数えられないんだよ。 それ以上だと・・・。たくさんだって言い張るんだよね・・・。 いろいろと、私らも、優秀な君の子供だっていうことで、 特別に、普段は、こういうことをしないんだけど・・・。 先生たちにお願いして、彼らのためだけに、補習とか特別授業を開いてるんだけど、 ゆっくりさせろ~とか、あまあまさん持って来いとかねぇ~。 あと、至る所でうんうんをするんだよ。 なんだっけ?そのぉ~。スーパーウンウンタイム?だっけ? アレする度に、すごく厭らしい顔になってねぇ~。何か人間を小馬鹿にしたような・・・。 先生たちは額に血管を浮かべるくらい怒り心頭で、 中にはその血管が切れて、血が出る先生もいるみたいなんだよ・・・。 ひどい先生なんか、血の涙を流して、歯を噛み砕くほどの怒りを持つほどらしく・・・。 あと、かわいくてごめんねってのが口癖みたいで・・・。 先生たちはもう・・・。我慢の限界らしいんだよ。 いつ叩き潰すかわからないって言っているんだよ。 あ、安心してね。そういうことを言った先生たちにも然るべき制裁をしたから。 でもねぇ~。いろいろとそういうことを子供たちにも辞めさせようと、 私らも努力したんだが・・・。 その度に、ゆっくり死ねって言って来るんだよ。 そして、これが一番良くない。 まだ赤ちゃん言葉だよね。もうこれは生後10日くらいでクリアしてなければならない問題なのに、 1ヶ月経ってこれなんだね。 子供たちも・・・。これが可愛さの秘訣だとか言い出して、直す気は全くないんだよね。 このままだと、あと1ヵ月後のテストで・・・。どうなるか・・・。』 ゆっくりの『がっこう』では、次期社員になるべく、 ゆっくりの子供たちを教育している。 人間との約束の項目の中にも、あるように、テストの出来が悪いゆっくりは、 家族ごと、加工所を送られてしまうのである。 「ば・・・ば・・・ばでぃ・・・ばでぃざば・・・・」 口をパクパクとさせながら、呆然とし、視線がどこかに向いているまりさ。 『落ち着きたまえ。 今すぐ、君たち家族を加工所へ送ることはしないよ。 不安にさせて悪かったよ。』 「じゃ・・・じゃああ・・ばでぃざだぢば・・・」 『う~ん。でも~。このままじゃ・・・。』 「おねがいでずぅううう!!!! ばでぃざのおちびじゃんだぢをずぐっでぐだざいぃいい!!! ばでぃざのでぃぶもずぐっでぐだざいぃいいい!!! ばでぃざばぁあああ!!!どんなごどでもじまずがらぁあぁあああ!!!!!」 まりさは泣き叫んだ。 見栄も外聞も忘れて、無様に涙と涎と汗を撒き散らしながら。 『すまない・・・。私の力不足だ。 こればかりはどうにもならないんだよ。 彼らには、次世代ゆっくりとしての資質がなかったんだと思うよ。 すまないが、君ら家族は加工所でゆっくりしてくれ。』 「どぼぢでぞんなごどいうんでずがぁあああ!!! ばでぃざのおちびじゃんばぁああ!!!! がわいぐでぇええええええ!!!! ゆっぐりじでるんでずぅうううううう!!!! でぃぶばぎれいでゆっぐりじでるんでずぅううう!!! おねがいでずぅううう!!! だずげでぐだざぃいいい!!!!! ゆんやぁあああぁあああ!!!がごうじょいやぁぁぁああああ!!!!」 『残念だ。非常に残念だ。 ただ・・・。君も失うというと・・・。 それはどんな手段を使ってでも防がなければならない。 君だけは助けなければならない。』 「ゆ゛っ!?」 泣き叫ぶまりさは、驚いた。 『実はさ・・・。受付のありすがさぁ・・・。 君の事を気に入っているらしいだ。 でね・・・。今なら、れいむと子供たちを捨てて、 ありすと家庭を持つっていうのなら・・・。 君だけは助けることが出来るんだよね・・・。』 「ぞ・・・ぞんなぁああああ!!! ばでぃざにうらぎれどいうのでずがぁああああ!!!!!」 『君が家族思いなのはよく知ってるよ。 だけど・・・。このままじゃあ・・・。』 「ぜめでぇえええ!!!!でぃぶだげでもおぉおおお!!!」 まりさは叫んだ。 子供たちの成績の悪さで、何も悪くないれいむも加工所へ送られる。 せめて、れいむだけでも、れいむだけでも助けたい。 『よく考えてごらん。 君は優秀なゆっくり、君の子供は・・・。その・・・なんだ・・・。 言いにくいんだけど・・・。そうじゃないゆっくり。 君の子供は優秀なはずだと思うんだよ。私は。 何せ優秀な君の子供なんだから・・・。 でも、そうじゃないってことは・・・。 君の奥さんのれいむに・・・。その・・・。問題があるってことじゃないかな?』 「ゆ゛っ!? でぃぶばぁあああ!!!でぃぶばぁああ!!! ぜがいいぢゆっぐりじでるゆっぐりでずぅううう!!!! ぞんなごどぉおおお!!!ぞんなごどぉおぉおお!!!!!!」 『まあ、あれだ。君にも思うところがあるのだろう。 だから、しばらくの間、考える時間を与えるよ。 その間にゆっくりと考えてくれたまえ。 君は家族を大切に思っているいいゆっくりだ。 そして、優秀だ。 私はすごく君のことを買っているよ。 だけど・・・。 君が長生きして、長くゆっくりして、 そして、君の子供や家族をたくさん作って、孫やひ孫まで作りたいと思うなら・・・。 私の下に来た方が確実だと思うんだけどね・・・。』 「ゆ゛っ・・・。」 『もしかしたらだよ・・・。 君の子供たちが、あと1ヶ月で成績がすごく良くなって、 君の家族が救われるっていう可能性もないわけじゃない。 優秀な君の子供たちだ。ポテンシャルは高いはずだ。やれば出来るかもしれない。 やれば出来るかもしれないんだが・・・。 私がゆっくりとの関わりを持って、君たちからすれば、 気が遠くなるような年月の間で、見てきた中で・・・。 いくらそういう高いポテンシャルを持っているゆっくりとて・・・。 今の状況を打破するようなゆっくりは皆無だった。 そうだな。みんな無惨に・・・。そう・・・。 まあ、君の子供たちが、 私の経験則を破る第一号になる可能性もあるかもしれないからねぇ~。 何ともいえないよなぁ~。 だけど、そういう限りなく低い可能性にかけるより、 確実に目の前にある幸せを選ぶっていうのも、 またこれは・・・。優秀じゃないのかな? 私はそう思う。』 「ば・・・ばでぃ・・・ばでぃ・・・ばでぃざば・・・」 まりさは、番のれいむが、可愛い自分の子供たちが、 大好きだ。彼らを助けられるのなら、命とて捨ててもいい。 しかし、命を捨てず、彼らを捨てた場合、 会社で一番の美ゆっくりと噂される受付のありすと、夫婦になり、 会社の中でも、人間よりも上に立つくらいの役職にもつけ、 明るい将来を約束されているという事実。 そんな誘惑に惑わされるか!!!! 自分の命より家族の命の方が重い。 それは絶対の決意。絶対の思い。それもまた事実。 迷ってはいない。迷ってはいないのだ。 迷っていないのだが・・・。 なぜか・・・。言えない。言えないのだ。 この先の言葉が・・・。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 「ぴゃぴゃ~!!!れいみゅはぴゃぴゃとねりゅぅうぅう!!!」 「ゆ~ん☆まりちゃもぉおぉ!!!!」 「ゆゆん!!!ぴゃぴゃはれいみゅだけのぴゃぴゃだよ!!! ゆっくちりきゃいしちぇね!!!!」 「あらあら、おちびちゃんたち!!! ぱぱはままやおちびちゃんたちのものよ!!!」 「「「ゆゆ~ん!!!」」」 まりさたちはみな集まって、す~りす~りしながら、 寝床へ入った。 「あしちゃはもっちょゆっくちできりゅひがくりゅね!!!」 「あさっちぇももっちょゆっくちできりゅひがくりゅよ!!!」 「あしゃちぇのちゅぎももっちょゆっくちできりゅひがくりゅよ!!!」 「おちびちゃん!!!まりさ!!!ゆっくりおやすみなさい!!!」 「「「ゆっくちおやちゅみなちゃい!!!」」」 まりさも笑顔で床に就く。 しかし、その笑顔の裏には、 確実に迫り来るゆっくり出来ない日が近づいているという恐怖に震えていた。 恐怖から逃げるため、家族を捨て、 長寿と繁栄の道を選ぶか・・・。 それとも愛する家族と共に滅びの日を迎えるか・・・。 あとがき また長すぎた。 あと無駄に設定が多すぎた。 他の作品 ふたば系ゆっくりいじめ 149 鞭打 ふたば系ゆっくりいじめ 155 糞饅頭 ふたば系ゆっくりいじめ 159 ユグルイ その1 ふたば系ゆっくりいじめ 162 ユグルイ その2 ふたば系ゆっくりいじめ 168 ユグルイ その3 ふたば系ゆっくりいじめ 169 ゲス愛で派 ふたば系ゆっくりいじめ 173 ユグルイ その4 ふたば系ゆっくりいじめ 187 頭でなく心に訴える ふたば系ゆっくりいじめ 188 ユグルイ その5 ふたば系ゆっくりいじめ 192 長寿と繁栄を・・・前編
https://w.atwiki.jp/eeelmmm/pages/142.html
白銀君インタビューのインタビューコーナー にょろ<ようこそ。 白銀<どーも(´・ω・`) にょろ<何歳ですか? 白銀<13の中学1年(´・ω・`) にょろ<毎度聞きますがそれは「しろがね」ですか?「はくぎん」ですか? 白銀<しろがねのつもり(´・ω・`)b にょろ<なぜその名前に? 白銀<妹から付けられた。由来、ポケモンの白銀山らしい(´・ω・`) にょろ<ところでちびちゃとはいつからしてますか? 白銀<今年の6月ぐらいからですかね(´・ω・`) にょろ<タイピング早いですね^^喧嘩師ですか? 白銀<ぇ、違うよWWW オレタイプ遅いよWW にょろ<一時期ちゃっとに来てなかったみたいですが何かありましたか? 白銀<アク禁WWWW にょろ<ちびちゃとの友達は誰が居ますか? 白銀<にょろちゃん、、以下省略w にょろ<あなたのそのかっこいい顔を見せて頂きたいのですが・・・。 白銀<かっこよくないよ>< にょろ<僕のことってどう思います? 白銀<(´・ω・`)むっちゃ優しい人だぬ にょろ<白銀君は彼女居るのですか?リア充ですか・・・? 白銀<彼女はいるが、リア充と非リア充の真ん中ぐらいですかね(´・ω・`) にょろ<ご趣味は。 白銀<サッカー にょろ<将来の夢は? 白銀<医者とかほざく(´・ω・`) にょろ<ご協力ありがとうございますた。 白銀<どーも(´・ω・`)インタビューさんくす(´・ω・`)b