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・ゆ虐度数はC-(ぬるめ)です。 バケツまりさ 「昨日は雨さんが沢山降ってきたけど 今日はご飯さんが沢山降ってこないかな」 雨上がりの朝、町で過ごすゆっくりまりさは餌を探していた。 水溜りを避けるため道路を右往左往しながら。 目的は餌場でありその場所を目指してはいたのだが 場所の当ては何もなくたださまよっているに等しかった。 雑草のひとつでも生えていれば口にでも突っ込むのだが 町で住むゆっくりにとって雑草はお気軽な食料で 見付けられる様な場所にある場合すぐ食べられてしまうし 人間さんが作った道路の近くではそれすらもあまり生えてこない。 はぁ~と、ため息をついてるとまりさの全身に衝撃が走った。 「ゆがっ!!」 まりさはぼいんぼいんと鞠のように弾みながら吹っ飛ばされる。 一旦飛ばされると、途中で踏ん張る等の防御方法はまったく取れない。 まりさは吹っ飛んだ後もそのままごろごろと転がっていき 奥にあったゴミ捨て場に突っ込むことでようやく止まった。 「んあ、ゆっくりか。 蹴っちまったな、わりーわりー」 携帯電話を片手に持った人間がうっかりした表情で まりさの方に話しかける。 「ぐーるぐーる」 「おーい、ゆっくり大丈夫かー?」 目が回っているまりさには、それを聞き理解するのは困難だ。 人間はまりさを見てふき出し、携帯電話のカメラでまりさを撮った。 ぴろりろりん。 「ぷはwwwコリャ傑作だわ」 人間は先ほど撮った携帯電話の画像を見て もう一度まりさを見ると笑いながらその場を去っていった。 「ぐーるりぐーるり」 人間の持つ携帯電話には目を回したまりさの画像が映っていた。 そのまりさの頭の上部にはいつもある黒い帽子ではなく 緑色をしたプラスチックのバケツがズッポリはまっていた。 そして、まりさはしばらく起きることが出来なかった。 我に返ったまりさは自分の住みかに戻ってくることが出来た。 口には戦利品がくわえられている。 そしてバケツはまだ頭に被った状態のままであった。 まりさがたどり着いたそこはまりさのゆっくりプレイスであり 空き地にコンクリート製の土管が3本積み重ねて置いてある。 生まれたすぐ後からこれまでずっとその上で生活を行ってきた。 土管の中は空洞になっていたので、中でよく雨風をしのいだものだ。 「やれやれ、今朝はなんだかひどい目に遭ったよ う~ん。まだ調子悪いのかな。肩さんがとても重いよ でも、そのおかげか、ご飯さんが降ってきたから運がいいね」 まりさはありもしない肩がさもあるかのように首を左右にかしげる。 まりさがご飯さんと呼ぶ戦利品のコンビニ弁当だが 先ほどまりさが突っ込んだゴミ捨て場にて見付けたものだ。 半透明のゴミ袋の中から丸見えだったため簡単に探すことが出来た。 久しぶりにありついた豪勢な食事を一生懸命口にする。 満足な食事をしながら、頭上に広がる澄み切った青空を満喫していた。 「今日はなんだかいつもよりお空さんが沢山見えるよ きっと雨さんが晴れたからお空さんもゆっくりしているんだね まりさもとってもゆっくりしているよ」 まりさは空を見上げたままゆっくりと眠りについた。 「むきゅーーーーーん たじゅけてーーーーーー」 昼寝をしていたまりさはゆっくり出来ない声で目が覚めた。 「おがあじゃん、目をさましてーーーー!!」 まりさは声の方向へ走る。 なにかしらの影が見えたので、まりさは飛び込んでいった。 「まりさのなわばりでゆっくり出来ないことは許さないよ!」 飛び出したまりさはそこでの散々な有り様に目を疑った。 潰れたゆっくりが1体。ぱっと見て助からないことがわかる。 ゆっくりの中身である餡子が止め処なく流れ出していた。 そして追いかけるものから走り逃げるゆっくりが1人。 逃げているゆっくりはピンクの帽子をかぶったぱちゅりーであった。 その逃げるぱちゅりーを追いかけている、片手に棒を持った人間が1人。 人間さんの大きさで比較すると小さい方に見えるが それでもバスケットボールぐらいのゆっくりの5倍はある。 「ひゃはー、ぎゃくたいー!」 「むきゅきゅーーーー 誰かだじゅけてーーーーーーー」 まりさは一度こういう場面を遠くから見たことがあった。 だから潰れたゆっくりは人間がやったことだとすぐわかった。 人間にはゆっくり出来ないそんな悪い人間がいる。 そして、とてもゆっくりしているゆっくりが妬ましいのか襲い掛かる。 まりさは普段から腕っ節が良いほうで 子供ゆっくりにすっきりをしようとしたレイパーや 縄張りを荒らすゆっくりを幾度も追い払ったことがあった。 人間がゆっくりを潰そうとしたときも まりさはその悪い行為を制裁するため駆けつけたのだが 人間は事が終わると煙の様にその場から消え去っていったため 人間にやられ事切れ残されたゆっくりしか見たことは無かった。 だからこそ、まりさはまだ生き残っているゆっくりを見て駆けつけた。 これ以上の被害は出してはいけないと。 人間が手持ちの棒で逃げるゆっくりに殴りかかる。 「あぶない!」 まりさは走るが、まだ遠い。 このままでは棒がぱちゅりーに当たる。 ブン!! 人間が棒を振り下ろしたがそれは当たらず 逃げるぱちゅりーのピンクの帽子を吹き飛ばすだけで済んだ。 ほっとしたのも一瞬、キッと目を細めるまりさ。 「これは勝機だよ!」 まりさは空振りしたことによりたたらを踏んでいる人間に 真横から思いっきり体当たりをした。 バランスを崩していた所を横から押されたため簡単に転ぶ人間。 まりさはあっけなく倒れた人間を見て相手の力量を悟った。 「よし、もう一度体当たりをすればヤレル!」 まりさは力を入れるため思いっきりためを作る。 人間は、転んだままくるっとまりさの方を向いて棒を握りなおした。 「むきゃ! 油断はきんもつよ!」 逃げていたと思ったぱちゅりーがまりさに向かって叫んでいた。 その声を聞いたまりさはフッと笑った。 「ゆっくり見てるんだぜ、ぱちゅりー まりさはこれまで悪いゆっくりを9体もたおしてきたんだぜ 今、目の前にいる悪い人間さんも制裁してやるのぜ ぱちゅりーは悪党10体制裁の祝いをどうするか心配するのぜ」 ためた力を一気に開放し人間へ跳躍するまりさ。 人間は転んだ体制のまま棒を使ってまりさに殴りかかった。 ガイィーーーン!!! 「ゆげ!!」 「うわぁ!」 ゆっくりと人間の声が重なった。 頭から一刀の元にやられた!! まりさは考えていなかったその結果自身に絶望した。 人間の動きは早く、まりさの頭天辺へ棒の一撃が綺麗に決まったのだ。 まりさはそのまま死を覚悟した。 くちおしや、まりさも今まで人間にやられて来た中の1人になるなんて。 ぼいん。 衝撃はあったものの地面にまっすぐ落ち、まりさは驚いた。 さほど痛くない。 殴られたらしき頭は無事のようだ。 やはりこの人間は強くない。勝てる。まりさに負ける要素が無い。 「なんだこいつ!! バケツなんかかぶりやがって!!」 人間もまたまりさのタフさに対して驚いているようだ。 しかも、今のまりさの一撃で人間は持っていた棒を落としたようだ。 「なんだかチャンスなんだよ まりさが人間さんなんかに遅れをとるわけないでしょ?」 「むきゅ!!すごい!人間さんが悲鳴を上げたわ! このまま人間さんなんてやっつけるのよー!!」 人間は起き上がったが、まりさがその足へ体当たりを仕掛けた。 「いったーーー! 脛に当たるなんて卑怯だぞ!!」 「戦いにひきょうもひほうもないんだぜ!」 まりさは人間へそう言い切った。 「そのバケツをとってやる!!」 人間が突然ジャンプし、上から全身でまりさに覆いかぶさった。 まりさはその重みで潰れるかと思った。 「うぶっ、体だけは大きいなんて人間さんは本当に汚いね こらー、まりさを離してね!離してねー!!」 人間はまりさへのしかかっていた体重をあっさり引き離す。 それと一緒に、まりさが被っていた帽子は人間に引き剥がされた。 美まりさの象徴である大切な帽子を。 それをこんなよわっちい人間なんかに! 「やめてーーー まりさの帽子を取らないでねーーー! すぐ返してねーーーー!!!」 まりさは今にも泣きそうな目で人間に訴える。 だが、まりさが人間の手に取ったバケツを見て驚いた。 「バケツさん?」 なんだ、まりさの帽子は取られてないじゃないか。 「ぷふ、人間さん、今頃新しい武器を出しても遅いよ 最強のまりさにびびりまくってるのが一目瞭然だね」 「何言ってんだ、これはお前のものだろ」 人間はまりさにバケツを投げつける。 「あだっ まりさの頭に傷がついたらどうするの!! ・・・って、あれ?? 帽子さんがないよ???」 まりさは気がついた。 素の頭に衝撃があったことで気がついた。 やっぱり、まりさの帽子がない。 「人間さん!!! まりさの帽子さんをどこにやったの!!!」 「ばーか、そこに転がってるだろ」 そう言って、転がったバケツを指差す人間。 「これはバケツさんでしょーー!!」 まりさはきょろきょろして帽子を見つけた。 慌てて駆け寄ったが、色が違う。 先ほど逃げていたぱちゅりーが飛ばされたものだった。 「まりさの帽子さん、こんなところにあったよ! って、違うよ!! こんなド派手なピンクの帽子さんじゃないよ! しかもちょっと小さいし!」 「これはぱちゅりーのお帽子さんよ!! ゆっくりかえしてね!」 まりさを見て近くによってきたぱちゅりーがその帽子を拾い そのまま被ると帽子はぱちゅりーにぴったりとフィットする。 それを見てまりさは自分の帽子がないことを再認識する。 「まりさの帽子さんは?? まりさの帽子さんは??? どこいったの?まりさの」 「うるさいな! 返せばいいんだろ! お前の帽子また被せてやんよ!」 人間はバケツを両手で掴むや、まりさの頭にずぽっと被せた。 「ゆんやぁーーー!! こんなのゆっくりできないーーー!!!」 その時、遠くから別の人間の声がした。 「こらーー! 糞ガキーー!!」 目の前にいる人間の倍の大きさはあるだろうか。 それほど大きさに違いがある人間がもの凄い勢いでやってきた。 「やば、カミナリオヤジ来た!」 まりさにバケツを被せた人間はビクッと立ち上がった。 「むきゅきゅきゅきゅきゅきゅ! 人間さんが仲間を呼んだわ! あ、あれは大人の人間だわ!! もうだめだわーー!! 捕まって殺されるーーー! えれえれ・・・」 周りが騒がしくなってきていたが バケツを被ったまりさは直接は見えない頭上のバケツを見ようと 目玉がひっくり返るぐらい上向きになっていた。 「帽子さん帽子さん まりさの帽子さん? そういえば、つばがないよ?? バケツさんがまりさの帽子さんなの?? まりさの帽子さんがバケツさんなの???」 呪文の様に呟くまりさにしがみ付くため ぱちゅりーは自分で流れ出した中身をじゅじゅじゅと吸う。 「むきゅきゅ・・・じゅる・・・! ぱちゅりーとまりさ、人間さんに挟み撃ちになっちゃったわ? まりさどうじゅるる?? さすがの・・じゅる・・・けんじゃにもわからないわーー!!」 人間がもう1人近づいているにも関わらず まりさ達はそれに対処できず、その場にいることしか出来なかった。 「バケツのお前、覚えたからな!」 そう言うと子供の方の人間はくるっとまりさに背を向けると走っていく。 「こらーーー!! 道路にゆっくりを撒きちらかすんじゃないぞーー!! 掃除していかんかーーー!!!!」 「むきゃーーーー!! 潰されるわーーーーーー!!」 大人の人間はまりさ達は眼中になく子供の方を真っ直ぐ見ていたため まりさ達の存在を意識していなかった。 「そうだ、帽子さんをゆっくり脱いで確認するよ・・・」 まりさは帽子であるバケツをはずしてみる。 そのとき丁度まりさの顔面ぎりぎりを、大人の人間の足がかすめる。 大人の人間はまりさがはずしたバケツに足を突っ込む形になった。 「ゆ゛??ゆ゛??ゆ゛??」 踏み込んだ足はそのままバケツによって後ろの方へ大きく滑り込む。 「ぐもぉぉぉぉぉぉおおおおおお」 大人の人間は思わぬ事態に対応できず派手にその場に倒れこんだ。 大人の人間は咳き込みながら立ち上がる。 子供の人間も咳き込んでいた。笑いすぎたらしい。 「やーい!ばーーかぶぁーーーか! ゆっくりで転んでんなよ!! だっせーんだよ!!超うける!」 「このガキャーーーー!!!」 転んだ理由はまりさだったのだが、大人は怒り沸騰子供しか見ていない。 そのまま子供の人間を追いかける形で大人の人間は走っていった。 二人の人間はあっという間にその場からいなくなった。 「む、むきゅーー!!すごいわ!! まりさはすごすぎるわーーーー!! 人間さんを2人ともやっつけちゃったわ!!」 あまり元気のないまりさの隣では 中身を完全に食べなおしたぱちゅりーがはしゃいでいたが とても一緒に喜ぶ気にはなれなかった。 まりさは人間に踏まれて飛んでいったバケツを拾いなおす。 「ゆう・・・」 まりさはバケツを脱いだり被ったりしながらその感触を確かめていた。 「ぴったりくるし、しっくりくるよ 産まれたころから被っているからこそわかるよ このバケツさんこそまりさの帽子さんなんだよ まりさの帽子さんはバケツさんになっちゃったよ」 落ち着きを取り戻したぱちゅりーがまりさに近づいてくる。 ぱちゅりーはバケツを取ったまりさをゆっくり見たことで まりさがまりさ種であることにやっと気づいた様だ。 もっとゆっくり見たならばまりさの頭上部の形がバケツの形に 変形していたことがわかったのだろうが、そこまでにはいたらなかった。 「まりさはまりさだったのね 帽子さんがそんなんだからわからなかったわ でも、とってもゆっくりしているわね」 「ゆ?」 「まりさは人間さんも倒しちゃうし 何も出来ないぱちゅりーと違って とってもゆっくりしたゆっくりなのだわ」 「ゆ?そうかな?」 「そうだわ! 帽子さんも硬くて強そうだわ! いいえ、それはけんじゃのちしきだと兜だとおもうわ えらばれしゆっくりだけが手に入る兜なのだわ」 「このバケツさんはかぶとなの? まりさはえらばれしまりさなの?」 「そうよ、まりさは伝説のえらばれしゆっくりなのだわ!! 大人の人間さんもなぎ倒すなんて普通は出来ないわ! 伝説のゆっくりがいるなんてけんじゃですらわからなかったわ」 「ゆっへん!! ぱちゅりーは実に幸運だよ! 伝説のまりさがたまたま通ったことにね!」 「ほんとだわ!! ぱちゅりーは町のみんなに 伝説のゆっくりが現れたこの出来事を伝えていくわ」 「てれるぜ・・・ほどほどにしてくれよな」 その後、ぱちゅりーの母親であるゆっくりの亡がらへ黙とうすると まりさとぱちゅりーはそれぞれの住処へと分かれた。 「どこでまりさは選ばれたんだろう・・・」 夕方、まりさは1日の行動を振り返ってみた。 昨日はもう、雨のことしか覚えていなかったけど おとといはまだバケツが帽子だった様な気がしたからだ。 今はすごい強いかぶととして頭の上に乗っかっているとはいえ まりさはまりさを象徴するお飾りである黒い帽子に未練があった。 「まず ご飯さんを食べたいなーと思っていたんだ」 そう考えながらまりさは町の中をぶらつく。 朝は溜まっていた水溜りもすっかり無くなったようだ。 「ひそひそひそ・・・」 「くすくすくす・・・」 「ふふふふふ・・・・」 ふと、すれ違う人間がまりさを見てにこやかな顔になっていた。 まりさはなんだろうと考えた。 今日は悪い人間さんもやっつけてとてもゆっくりしたんだ。 そうだ、ゆっくりしたまりさを見ると人間もゆっくりするんだ。 伝説のまりさを見て、人間がまりさにびびりまくっているのも それはそれで気持ち良いものだとは思ったが まりさはゆっくりした人間を見るのも悪くないと思った。 「途中にまりさの帽子さんは落ちてなかったな・・・」 どこをどう歩いてるか、自分でもわからなくなってきたころ 既にゴミが回収されていたゴミ捨て場にたどり着いた。 「それから・・・ えっと? 気づいたらここでご飯さんが降ってきたんだ」 まりさは頭のバケツを脱いでその場に置くと すぐさま上に乗っかり周りを見渡した。 バケツに乗って上から見下ろせば 普段ゆっくりに見えないものも見つけられるはずだ。 だが、ゴミが捨ててあった場所やその周りには何もない。 まりさはバケツの上でため息をつく。 後は何をしただろうか。 「そして、おうちでご飯さんを食べたら眠くなって・・・」 あれ??? その後は悪い人間からぱちゅりーを助けて そこでバケツを被ってることに気づいたんだよ! 「選ばれるってのは突然なのかな・・・ もしかして・・・帽子さんが突然へんけいしたのかな このバケツさんはまりさが産まれたころから ずーと被っている帽子さんなんだよね」 無理矢理自分を納得させたまりさは さっき助けたぱちゅりーを思い出した。 「ゆ! こんなことで落ち込んでいられないよ まりさは最強のかぶとさんからえらばれたゆっくりだからね! 悪い人間さんがいても追い払えるんだからね」 その時まりさは「お巡りさん」と呼ばれる人間が通っていくのを見て 悪い人間を捕まえる「お巡りさん」がいることは聞いて知ってはいたが ゆっくり殺しをした人間を捕まえなかった話を聞いていたので なんて役に立たない人間なんだろうとまりさは思っていた。 まりさは「そうだ」と言うと、バケツの上からぴょんと飛び降りた。 「まりさはパトロールをするよ! 伝説のまりさが治安管理をすれば この町はゆっくりも人間さんもみんなゆっくり出来るよ! これはえらばれしまりさにしか出来ないことだね!」 そう言うと、まりさはバケツを被り直し夕焼けを背に歩き出した。 ところで、まりさが最後にいたゴミ捨て場だが そのゴミ捨て場の金網で出来たフェンスの上の方に コンビニ袋に入ったある黒いものと紙切れが挟んで置いてあった。 紙切れにはこう書いてある。 「帽子が落ちてました 雨に濡れないように袋に入れてあります」 だが、その中身を取りに来るものは一向に現れなかった。 今日も緑色のバケツを被ったゆっくりが 町中をぽよんぽよんと元気に巡回している。 おわり あとがき 4作目っす。前回は書き足りないSSですいませんでした。(作品は消してます) 今回は反省して書けるだけ書いてみましたが、いたらなかったらすいません。
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「ゆっ! ゆっ! ゆっ!」 一匹のゆっくりまりさが大急ぎで跳ねていた。 「ゆゆーっ! ぱちぇは!? ぱちぇはいるのぜ!?」 公園に駆け込んできたまりさは、そう言いながら周囲を見回す。 そこかしこにある段ボールのおうちからゆっくりたちが出てくる。 「ゆ? ぱちぇなら、おうちにいると思うけど、どうしたの?」 れいむがゆっくりしてない様子のまりさを不思議がって言った。 「とってもゆっくりできそうな話を聞いたのぜ! でも、ほんとうにゆっくりできるかど うかぱちぇに聞きたいんだぜ!」 「ゆゆっ!」 れいむばかりか、その場にいた他のゆっくりたちも「ゆっくりできそうな話」という言 葉に反応する。 まりさを先頭に連れ立ってぱちゅりーのおうちへと殺到、と言っていい勢いで跳ねてい く。 「むきゅ? どうしたの?」 ぱちゅりーはおうちにいた。押しかけてきたまりさたちに驚いた様子は無い。それとい うのも、元飼いゆっくりで今やこうえんのけんじゃと言われるぱちゅりーの所へ相談にや ってくるゆっくりは珍しくないからだ。 「ゆっ! まりさは、にんげんさんの話を聞いたのぜ」 まりさの言うところによると、餌を探してゴミ捨て場を漁っていたところ、人間がやっ てきた。慌てて隠れたまりさに気付かず、人間はその上にゴミ袋をぶん投げて去って行こ うとしたが、そこへ別の人間がやってきた。 その人間たちは知り合いのようで、挨拶をしてから世間話を始めた。 ゴミ袋に圧迫されながら、まりさは出ていくわけにもいかず、じっと動かずにいた。 そこで聞くともなしに、人間の話を聞いた。 「そういえば、こないだ火事になった湯栗さん!」 「ああ、おうちが全部燃えちゃったんでしょう、大変ねえ」 おうちが燃えた、という言葉に、まりさは震えた。 ゆっくりはとにもかくにもゆっくりすることを至上とするが、そのために自分の住居、 すなわちおうちに対する執着が強い。 「そりゃ大変だったでしょうけどね、保険がおりて、むしろ焼け太りらしいわよ」 「へえ、そうなの」 「ええ、そのお金で新しい家建てて、それでも余るって」 「まあ、うらやましいわねぇー、でもだからって今住んでる家が焼けるのは嫌だけど」 「そうよねえ、燃えたら二度と戻らないものもあるしねえ」 まりさの中でその話をなんとか整理した。 その結果、つまりはおうちが焼けるというとてもゆっくりしていないことがあったにも 関わらず、ほけんというものがおりたおかげでむしろ前よりも新しいおうちを手に入れる ことができて、その上にまだあまあまが余るということらしい、という結論に達した。 なんだか結果を聞くと凄くゆっくりしている話である。しかし、どうしてもおうちが焼 けるというゆっくりしていない事態から、なぜそうなるのかがわからない。 どうも、ほけんがおりる、というのがポイントのようなのだが……。 まりさの話を聞いて、ゆっくりたちもまりさと全く同じ疑問を抱いてあれこれと議論を 始めた。しかし、やはりわからない。 ここは、けんじゃのぱちゅりーの意見を聞きたい、と皆がキラキラした目をしながら頼 むと、ぱちゅりーは誇らしげに「むきゅん」とそっくり返った。 「保険っていうのは、おうちが燃えたり、損した時におりるものよ。損した分よりも多く のものが貰えることもあるわ」 飼いゆっくりだったぱちゅりーにはその程度の知識ならあった。言い換えれば、その程 度の知識しかなかった。 そもそも、街の公園に住むここの野良ゆっくりたちは、元飼いゆっくりというだけで、 なにやら自分たちが知らぬ人間の知識を持っている賢いゆっくりであると崇拝するところ があった。それがぱちゅりー種となれば尚更である。 ぱちゅりーは、飼い主の人間の生活が苦しいのを見かねて自ら家を出たかのように野良 になった経緯を話していたが、実際はただ単に捨てられただけである。 ぱちゅりー種にしてはあまり賢くないのに失望した飼い主が、無責任にも捨てたのだ。 その際にぱちゅりーは自分のプライドを守るために、最近餌の味が落ちたことから、飼い 主の生活が苦しくなったためだ、と思い込んだ。実際は、失望しかかった段階で餌のグレ ードを落とされただけである。 公園のそばに捨てられたぱちゅりーは、すぐにこの公園にやってきて、そこにいた野良 ゆっくりたちに自分は元飼いゆっくりで人間のところで勉強してとても知識があるとハッ タリ(とは当のぱちゅりーは思っていないが)をかまして、けんじゃと持て囃されるよう になった。 「ゆゆっ! それなら、おうちに火をつけて燃やせば、ほけんがおりてゆっくりできるん だね!」 まりさが言うと、みんながざわめいた。 「むきゅ! ……そ、そうよ!」 ぱちゅりーは、一瞬戸惑ってから断言した。 こうえんのけんじゃたるもの、無知蒙昧なぼんくらゆっくりどもの質問にはたちどころ に答えなくてはならぬ。 一瞬の戸惑いは、さすがにそんなうまい話があるだろうかと思ったからだが、飼いゆっ くり時代に、やはり家が燃えてしまったが保険がおりて却って儲かったという話を聞いて いたのがこのぱちゅりーの断言を後押しした。 「やけぶとり……そうよ! やけぶとりよ!」 聞きかじった言葉を口に出す。 「ゆゆ! そういえば、まりさが話を聞いたにんげんさんも、そんなようなことを言って たのぜ!」 「やけぶとり、っていうのは、やけてふとる、っていうことよ」 「ゆゆ! やけぶとりはゆっくりできるんだね!」 「やけぶとり! ゆっくりしないではやくやけぶとろうよ!」 「むきゅ、それには火をおこさないと……だれか、ライターかマッチを持ってないかしら」 ぱちゅりーに言われてゆっくりたちは各自のおうちに帰って、自分たちの宝物を持って きた。 ゆっくりは、珍しいものなどを「ゆっくりできるたからもの」などと称しておうちに持 ち帰ることが多い。 「むきゅ……むきゅ……むきゅ! これはライターだわ!」 とあるれいむが持ってきたのが、まさにライターであった。 喜び勇んで着火しようとするが、ゆっくりにはライターをつけるのは極めて難しかった。 噛んでつけようとすると、目の前に火が出現してしまうために誰も彼もついた瞬間にゆわ ぁと悲鳴を上げてライターを放り出した。 途中から、これは無理だと思ったぱちゅりーは、さらに宝物の山を漁り、とうとうマッ チの箱を見つけ出した。 一匹のゆっくりがマッチを口にくわえ、別のゆっくりが箱の上に乗って固定する。 勢いをつけてこすると、マッチに火がついた。 「ゆわああああ! やったあ!」 「ゆっゆっ! これでやけぶとりだよ! ゆっくりできるよ!」 しかし、マッチについた火はすぐに消えてしまった。 「ゆゆぅ……」 「ぱちゅりー……」 「むきゅ、まかせなさい」 ぱちゅりーはあれこれ考えて、可燃性のものを集めてそれにマッチの火が消えぬうちに 火を移すことを思いついた。 「むきゅぅぅぅぅ、そうだわ!」 さらに、少し離れて置いてあった段ボールのおうちを移動させてびっしりと密集させる ことを指示した。 「こうすれば、火はおとなりのおうちに燃え移るわ」 「ゆわぁ、さすがぱちぇ!」 「さすがこうえんのけんじゃだね!」 「むきゅきゅきゅ」 みなに褒め称えられて、ぱちゅりーはそっくり返った。 「それじゃあ、やるよ。じゅんびはいい?」 マッチをくわえたまりさが言うと、ゆっくりたちは今一度おうちの中に誰か残っていな いか、おうちの中から宝物やごはんは運び出したかを確認し合う。 「ゆっくりもういいよ!」 「ゆん! それじゃあ、いくよ!」 まりさがマッチをすり、生じた火をおうちの塊の傍らに積み上げられた落ち葉の山に着 火する。 ぼわっ、と火が燃え上がると、まりさは大急ぎで後ろに跳ねて距離をとった。 火は、落ち葉の山から接触していたおうちへ、そして、その隣、また隣へと計画通りに 燃え広がっていく。 「ゆゆーん! これでやけぶとりでゆっくりできるよ!」 「やけぶちょり! やけぶちょり!」 「まりしゃ、あたらしいおうちたのしみだじぇ」 「もえてね! ゆっくりしないでもえてね!」 歓声を上げておうちが燃えていくのを眺めているゆっくりたち。 「あ! なんだなんだ!」 そこへ通りかかった男が、燃え上がる炎に驚いて立ち止まり声を上げた。 「とりあえず燃え移らないように」 男が駆けてきて、燃え上がる段ボールの塊の周囲をぐるりと周った。 草に燃え移りそうなところを見つけると、段ボールを蹴って草から離す。 「……これで、延焼の危険はないかな……にしても、誰だ。こんなことしたのは」 なおも燃えている炎を見て、男が呟く。 「にんげんさん! なにしてるの!」 「ん? ここに住んでたゆっくりか……あ、これ、おまえらの家か」 よくこの公園を通るその男は、燃えている段ボールがなんなのかに思い当たった。 「いったいどうしたんだ。悪い人間にやられたのか」 まず思いついたのが、虐待好きの人間の仕業ではないかということだ。男はゆっくり愛 護家というわけではないが、このように火をつけたままどこかへ行ってしまうような行為 はゆっくり虐待の範疇を超えて、人間に対しても危険な行為であり、憤りを感じていた。 「ちがうよ! これはまりさたちが自分で火をつけたんだよ!」 「……は?」 だが、思わぬ言葉を返されて呆然とする。 「なんで? 家がないと困るだろ……なんで?」 まったく見当のつかない男は疑問符だらけの顔である。 「むきゅ、それはぱちぇが説明するわ」 ぱちゅりーがえらっそうに前に出てきた。その間にもおうちは燃え続け、それをゆっく りたちが大人も子供も嬉しそうに囃し立てている。 「……と、いうわけなのよ」 ゆっへん、とそっくり返ったぱちゅりーとその後ろでニヤニヤ笑っているゆっくりたち に、心底哀れんだ目を向けつつ、男はため息をついた。 段ボールは燃え尽き、火は小さくなっていた。 「ゆわーい! おうちがぜんぶ燃えたよ! これでほけんがおりるよ!」 「やけぶとろうね! ゆっくりやけぶとろうね!」 「やけぶちょり! やけぶちょり!」 狂喜したゆっくりたちが跳ね回っているのを見て、もう一度ため息をついた。 「いったいどうしたんだい」 そこへ、後ろから声がかかった。年配の男を筆頭に、近所に住んでいる人間が何人かや ってきていた。 「いやぁ……それが」 男が説明すると、案の定と言うべきか、近所の住人たちはこれでもかというぐらいに呆 れた顔をしてそれを見合ってから、はしゃぎまくっているゆっくりたちを見て、一斉にた め息をついた。 「ゆわーい、ゆわーい」 「ゆっくりできるよ! やけぶとりだよ!」 「やけぶちょり!」 「ほけんさんはゆっくりしないではやくおりてきてね!」 なおも喜び続けるゆっくりたちには、人間たちのため息はもちろん、年配の男が呟いて 他の者をハッとさせた言葉も全く聞こえていなかった。 「あいつら、火が使えるのか……」 「ゆぅ……ほけんはまだおりないの」 「やけぶとりはまだなの……」 「おうちがないとゆっくりできないよ……」 「ゆぅぅ、ぱちゅりー……」 さて、数時間もすると喜びも去り、いつまで経ってもほけんがおりてやけぶとりできな いことに不平と疑問の声が上がっていた。保険に入ってなどいないゆっくりたちに保険が おりるわけもないのだから当たり前だ。 「むきゅ! ほけんがおりるには時間がかかるのよ!」 ぱちゅりーは自信満々に言った。いつか聞いた家が焼けて焼け太りになった話も、ほけ んがおりるまでにはかなり時間がかかったという話であった。 「ゆぅ、とりあえずむーしゃむーしゃしようか」 「ゆん、そうだね、ほけんがおりればゆっくりできるよ」 おうちから運び出しておいた備蓄の食糧に口をつけようとしたその時、 「いたぞ、あいつらです」 「よし、まかせてください」 先ほどの年配の男が、ゆっくりたちを指差していた。そして、その周りには作業着姿の 男たち。 「よーし、やっちまうぞぉ」 袋を持って軍手をして、大きなトングを持っている。 もはや言うまでもあるまい、ゆっくり駆除業者の人間である。 「むーしゃむーしゃ、しあ」 そこまで言ったれいむが、トングで掴まれて袋に入れられた。 「ゆゆゆ!」 「な、なんなの! にんげんさん!」 「れいむになにするの! ゆっくりできないよ!」 慌て始めるゆっくりたち。だが、仕事で駆除をやっている人間たちは、ゆっくりの言葉 にいちいち反応しないようになっている。 次から次へとテキパキとトングを操ってゆっくりたちを袋に入れていった。 「むきゃぁぁぁ! なにずるの! ぱちぇはこうえんのけんじゃなのよ!」 「……」 そっくり返ったその姿勢が気に食わなかったのか、ぱちゅりーはトングで掴み上げられ て一度地面に叩きつけられてから、もう一度掴んで袋に入れられた。 「やべでええええ! れいむたち、なにもわるいごとじでないよぉぉぉ」 「やけぶちょり! やけぶちょりなのじぇ! にゃ、にゃんでぇぇぇ!」 「やけぶとりでゆっくりできるはずなのに、どぼじでごんなことにぃぃぃぃ!」 おうちを焼いたら保険がおりて焼け太りできる、などというしょうもない動機などどう でもよかった。 ゆっくりが火を使った、という事実が問題であった。 火は文明への第一歩だ。 だが、同時に使い方を誤れば恐ろしいものである。 それをよく知る人間たちは、ゆっくりのような後先考えない、或いは考えるだけの知能 が無い連中がそれを使うことを許さなかったのである。 ゆっくりが放火をするかもしれない――。 そんな恐るべき噂は広がっていった。 人間の家をおうち宣言してから、おうちを焼いて焼け太りしようなどと考えて火をつけ るのでは……そう思ってゾッとしない者はいなかった。 全国的に野良ゆっくり駆除が行われ、公園や空き地に、いわばおめこぼしで住むのを黙 認されていたものたちも次々に駆除されていった。 多くは、焼却処分された。 終わり また似たような話(半端な知識でひどい目にあう)を書いたのはのるまあき。 10kb前後の小ネタは乗ってしまえば二時間ぐらいで書けてしまうから続く 時は続くなあ。 そして、この手の話で賢くない方のけんじゃの便利さは異常。 過去作品 anko429 ゆっくりほいくえん anko490 つむりとおねえさん anko545 ドスハンター anko580 やさしいまち anko614 恐怖! ゆっくり怪人 anko810 おちびちゃん用のドア anko1266 のるま anko1328 しょうりしゃなのじぇ anko1347 外の世界でデビュー anko1370 飼いドス anko1415 えーき裁き anko1478 身の程知らず
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続々ゆっくり研究 20KB 虐待-普通 制裁 愛で 観察 考証 差別・格差 妊娠 飼いゆ 野良ゆ 姉妹物 透明な箱 独自設定 続々ゆっくっり~ *いやぁ~ちょっと趣向を変えてみたが不評でした。 *今回は一作目と同じ設定に独自のニュアンスを絡め、話が単調にならないように展開を多めに入れてみました。 *厳しい意見はとってもためになり次回作の意欲に繋がるので大変感謝です。 *でも、あんまり怒られると凹む乱筆乱文の作文野郎ですが生暖かい目で見てやってください。 *そんではどうぞ~♪ 十一目 本日は他のゆっくり研究員達数名と朝からディスカッションをしていた。私の研究成果の中途報告をしたところ様々な意見が出た。 ・研究の手法としては概ね問題は無いが、ゆっくりを追い詰める姿勢に問題がある。ゆっくりへの虐待はゆっくり研究では不可欠だが 少し感情移入が多く無いか?それに伴って研究視野が狭まってきてはいないか。 少々耳が痛い質問であったが反省すべき点に気づかされたので大変感謝した。 ・研究するには個体数が少なすぎではないか?蔓を採取した親ゆっくりごと捕獲したら良かったのではないか? これに対しては私が考える研究計画から大きく外れるのでそれに関してはコメントを控えると伝えた。 ・ゆっくり研究をするのなら是非一度食してみるべき。 可でもなく非でもないが苦笑いで応対した。 最後にこれからの私の研究のマイルストーンに少しだけ触れた。 ・現在の個体の中でブリーディングを成功させ、野良ゆっくりが野性の中でどれだけの種類の個体と交配を重ね、その遺伝子を 継ぐ遺伝子餡を保有してるかを検証する。 ・最終的にはクラスAを常時1~2匹、クラスBを常時3~4匹、クラスCを常時10匹前後、クラスDを10匹以上保有すること。 ・そして最後にクラスSSとなる一般放し飼いの個体に金バッジ認定以上の上位教育を施し知能の限界を試す 私はディスカッションで得た意見等を参考に新たな研究姿勢を模索しつつ夕方近くに研究室に赴いた。 クラスCの水槽を覗きこんでみると長女のれいむと次女のまりさがボーっとクラスCの水槽を見下ろしてた。その一方、三女のぱちゅりは 水槽の角で蹲っていた。 三女のぱちゅりにどうした?と尋ねたら、なんでもないと一言言うだけなので例の監視カメラの録画記録を確認してみた。 餌の事でかなり虐げられたようだ。 もう一度三女のぱちゅりに、他の二匹に餌の事で苛められたのか?と聞いたら、いきなり口からクリームを吐き出した。確かどこかの 論文で「ぱちゅり種は過度のストレスによって体内の内容物を吐き出して弱ってしまう。」と、書いてあったのを思い出した。 ちょうど良い機会なので三女のぱちゅりを隔離するべくクラスBにランクアップさせることにした。 クラスBの水槽に移動した三女のぱちゅりは、激しく動揺してさらにクリームを吐いた。私は焦りながら三女のぱちゅりを説得した。 ・ここにはおしおきのために入れたのではない。・優れた個体だから入れた イマイチ「優れた」という意味が伝わらなかったようだが、まぁ良しとして私は簡単に水槽の説明をした。そして新しい設備の 二倍に薄めたオレンジジュースが滴下される皿の事も。 とりあえず薄めたオレンジジュースを舐めさせてみたところ非常に喜んでいる。しきりに感謝の言葉を投げかけてくるので早速 クッキーを与えた。ちゃんとクッキーの前で制止して私の言葉を待っているので焦らさずあっさりと食べることを許可した。 折角の餌を残すほど嫌がってたクッキーをガツガツと食べながら、美味しいとか感謝の言葉とかを投げかけながら笑顔で食べている。 これは人間である私に媚へつらって言っているのか?もしくは本当にそう思って言っているのかは暫く様子を見て見極めねばならない。 そして最後の一欠けらに差し掛かったところで残りの餌を保存したいと願い出た。クラスCで見たボトルキャップに詰められた餌は 三女のぱちゅりの仕業だったのかとわかった。 私が快諾すると三女のぱちゅりは水槽に転がしておいたアイテムの中からまたボトルキャップを選び出してそこに残りの一欠けらを 入れ巣の中の奥にしまいこんだ。 指先で戯れてやってると食後の便意をもよおしたらしく排泄用の穴から便を下に落とした。落ちた便はまっすぐ下のクラスDの水槽に 落ちた。クラスDの水槽でぐったりしている四女のちびれいむと五女のありすはそれを餌だと思い、力なくその便に近づき食べようと したが、臭い臭いと言ってそれが便である事実に愕然としていた。三女のぱちゅりは排泄用の穴から悲しそうに下を覗き込んでいた。 次にクラスCの水槽に移ると相変わらず節操無く餌の要求を繰り返しているが、さすがにいつもよりは元気が無い。とりあえず クッキーを二枚置いて焦らしてみる。次女のまりさは固く強張りながら良し!の号令を待っている。長女のれいむは唸るような表情で 号令を待っているのでさらに焦らした。 1~2分焦らしたところで良し!と号令をかけた。二匹ともクッキーに飛びついてを必死に喰らっている、既に味の事なんか二の次で、 瞬く間に餌を喰らい尽くした二匹は、しつこく遊んでくれとねだってきたので遊んでやっていると。不意にこう質問してきた。 なぜ三女のぱちゅりは、あんなところに居るのだ?さっきからぱちゅりが舐めているあれは一体なんだ?と聞いてくるので二匹に こう説明した、三女のぱちゅりは言うことをちゃんと聞いて良い子にしているから。すると自分達もちゃんとゆっくりしていると 反論してきた。 個体達がしきりに使う「ゆっくり」の意味が少しだけわかったような気がした。次にあの舐めているものはなんだ?と言う問いに 実際に一滴づつ口の中に垂らしてやって理解させた。 飛び上がるほど喜んでさらに寄越せと騒ぐので菜箸の先で弾き転がしてから、お前達はまだまだダメだ!という旨を伝えた。 二匹は黙ってうらやましそうに自分達が居るクラスCの水槽の上の段にあるクラスBの水槽でで快適に過ごしてる三女のぱちゅりを じっと眺めていた。 最後にクラスDの水槽に移り観察していたら、ぐったりする四女のちびれいむと五女のありすがやってきて餌の催促を力なくする。 餌ならさっき落ちてきたアレがあるだろと言ったら、あれは食べ物じゃない!と猛烈に抗議してきたが、私はその抗議を遮り、 餌はアレだ!と冷静に伝えて続けて放たれる戯言を一切無視した。 二匹の前日の傷口をよく観察すると餡の流出こそは止まっていたが、皮の再生は思いのほか進んでいない。五女のありすに至っては 次女のまりさに噛まれた歯型の通り丸く皮が切り取られ、その切り取られた丸い皮は一部だけ体の皮と繋がって、まさに皮一枚で プラプラとぶら下がってた。 過酷な環境の元では再生能力も格段に下がると思われる。 十二日目 本日は少し遅めの午前10時に研究所に赴いた。 まずは手始めにクラスBの水槽に歩みを進め三女のぱちゅりの様子を観察。起床時間だったのかちょうど巣穴から出てきて 例の挨拶から始まった。挨拶を交わしてやると非常に喜んで跳ねて回った。本日も例のクッキーを与えたが相変わらず何の不満も 言わずニコニコしながら感謝の言葉を絶やさず食べ、昨日と同じく私の許可を貰ってクッキーの一欠けらを咥えて巣穴の奥に 消えていった。 巣穴の奥を覗き込んでみると、寝床にハンドタオル、食料庫にペットボトルの蓋、使い道は謎だが金属製の光った栓抜き、使い切った ボタン電池、どこかのメダルなどが綺麗に並べられていた。 滴下されたオレンジジュースを随時舐めずに溜めて置いたらしく受け皿いっぱいになったオレンジジュースを食後のデザートと 言わんばかりに一気に飲んで満面の笑みだ。 だが、少し気がかりなのは、笑みの向かう先は下のクラスCの水槽に居る二匹の兄弟に向けられていたことだ。 次はクラスCの水槽に近づき観察してみると、長女のれいむと次女のまりさは既に起きておりその視線はクラスBの水槽でであった。 二匹はなぜあっちのクラスBの水槽に行けないのか?みんな一緒に居ないと楽しく出来ないなどと訴えてくるがダメなものはダメと 言い聞かせた。二匹はいつも通りにガツガツとクッキーを噛み砕き水分も取らずに咳き込みながら食事を済ませた。 しばし長女のれいむと次女のまりさと指先で戯れていたが、しきりに次女のまりさがみんなと一緒に居たいと訴えてきた。 クラスDの水槽に居る二匹の傷の治りが遅いのは隔離してることが原因なのかもしれないと思った。 早速クラスDの水槽を覗きこんだ。四女のちびれいむと五女のまりさはお互いもたれ掛かるようにして虚ろな目で空を見ている。 二匹の傷口の具合は相変わらずだ。体内の餡の水分が減ったのか、餡自体が減ったのかは定かではないが少しやつれているようだ。 三女のぱちゅりが落とした便には口を付けていないらしく落ちてきた状態のままだった。 監視カメラの録画記録をチェックしてみるとそこにはなんとも笑ってしまう現実が写っていた。 お互い先に眠った方の傷口から餡を相手に舐め取られていたのだ。舐め取られた方はそれに気付いて相手を叱責している。 そんなことをお互い交互に繰り返しているものだから体内の餡は二匹とも減っていたのだ。 一見仲良さそうに見えた光景だが本当は至近距離で相手が眠るのを待っていただけだったのだ。 なんとも間抜けな事実を知って疲れたので本日は別室にて少し遊ぶことにした 水槽は無防備に蓋もされず置いてあったが中の野良れいむはしっかりと足を焼かれていたので脱走することも出来ずに水槽の中で 長細くなって横たわっていた。肛門付近には多量の便がありそれから身を遠ざけるための措置らしい。 眠ってるのか起きているのか解らないので顔面をライターで軽く炙ってみると絶叫を上げてビタンビタンと身をくねらせた。 なんで酷いことするの?とか便が臭くてゆっくりできないとか母親の所に帰してとか口やかましく言うので焼いた足の部分を カッターナイフで何度も執拗にに切り付けライターで炙った。もはや奇声のような声を上げてキューっと身を縮めて痛みと戦っている。 涙声でなんでこんな酷いことするの?と言うのでニッコリと笑ってから焦げて硬くなった足の部分を握り潰してやった。 余りにも強烈な痛みに絶叫も出ず喉の奥から餡を吐き出して痙攣し始めた。 この程度で死なれてもつまらないので普通濃度のオレンジジュースを注射器で100mlほど注入して水槽に蓋と重石を載せた。 そうだ今度空気や食塩水を注射器で注入してみようとアレコレ考えながら本日の活動を終えた。 十三日目 本日は午後から研究室に赴いた。 早速餌のクッキー片手にクラスBの水槽を覗きこんだ。三女のぱちゅりは寝床の巣穴にはおらずクラスCの水槽が見下ろせる壁に へばりついて下のクラスCの水槽を覗きこんでいた。どうしたのだ?と問いかけると、下の水槽が大変だというのでチラっと 目をやると長女のれいむの額から蔓が伸びてるではないか!私は良しの号令はいいからとクッキーを水槽に放り込んでクラスBの 水槽に移動した。 クラスBの水槽では長女のれいむとそれに寄り添うように次女のまりさが傍に居た。私を見た二匹は、赤ちゃんができたと喜んでおり 次女のまりさは嬉しそうにピョンピョンと跳ねて私に報告してきた。長女のれいむは私のあかちゃん、私の赤ちゃんと終始笑顔である。 さっそく餌のクッキーを広場に置き、良し!と号令をかけたら長女のれいむはクッキーを見るや否やこれじゃ足りないと怒鳴ってきた。 赤ちゃんが出来たのだからもっと美味しい餌を寄越せだの、量が足りないから二倍持って来いだのかなり酷く増長していた。 咄嗟に次女のまりさが自分の分もあげるのでとなだめているが長女のれいむの生意気な発言は次から次と連発して出てくる。 私は長女のれいむを鷲づかみで持ち上げ蔓を観察した。一番先頭の個体は今にも生まれ落ちそうなくらい成長してた。 先頭から種類を確認すると、れいむ種が続けて二つ、続けてまりさ種が二つ、最後にぱちゅり種が一つの合計5個体が生っている。 観察の間、延々と罵倒してきたので私はそのまま長女れいむをクラスDの水槽の真上に持ってきた。あまりわがままを言うとここだぞ! と脅したが長女れいむはさらに罵倒してきた。 私は黙って先頭の個体を毟った。 長女のれいむは悲しみの断末魔の叫びを上げ返してと叫び続けた。私は一旦、長女のれいむをクラスCの水槽に戻し、掌の上で 母を捜して泣いている生まれたばかりの個体を水槽のガラス越しに長女のれいむに見せた。 長女のれいむは泣き叫びながら返せと喚く。私は泣きながらガラス越しの母に助けを叫んでいる個体を手のひらの上で 真っ二つにカッターナイフで切り分けた。 長女のれいむは気が狂ったように叫びを上げた。まだ騒ぐのなら残りの赤ちゃんもやるぞ!と脅したらボロボロと涙を流して 口をつぐんだ。 私は手のひらで二つに切り分けられた個体をクラスDの水槽に放り込み。 それを食ったら戻してやるぞと四女のちびれいむと五女のありすに言った。一部始終見ていた二匹は目の前に置かれた真っ二つの 新しい兄弟を眺めながら硬直していた。 ほら食べたらみんなの所に帰れるぞ!と食うことを薦めた。二匹は空腹で視線が定まらない目で真っ二つになった兄弟を見つめ、 おもむろに食べ始めた。 すると二匹は凄く美味しいと貪るように食べて喜んでいるではないか。私は二匹に装飾品を返してやってクラスCの水槽に戻した。 長女のれいむは赤ちゃんを食べた二匹を叱責すると思いきや、どんよりと疲れた顔で巣穴の中に消えていった。次女のまりさは 長女のれいむの罵倒を詫びて、その事を許してやってくれと哀願してきた。発情を迎え、性別がオスに固定された次女のまりさは もう次女とは呼べなくなったようだ。 元次女のまりさは長女のれいむが食べなかったクッキーを渡してくると言ってクッキーを咥えて長女のれいむの後を追った。 長女のれいむは個室の奥でポケットティッシュで作った寝床を柔らかく盛りまとめて、その上に蔓が来るように座り込み 元次女のまりさにクッキーを食べさせろと口やかましく命令していた。 私は早速別室にて水飴処理の準備と小細工の準備をした。まず人間用の睡眠薬をすり潰して水に溶き、水溶液を作った。 それを角砂糖に染み込ませ、特製の角砂糖を作った。次に水飴を注射器に入れ、痛み止めのオレンジジュースを用意した。 深夜になってから私はそっと研究室に戻り全員眠ってるのを確認してから長女のれいむをそっと巣から掴み出した。 掴み出された長女のれいむは、どうしたの?離して!と騒ぎ出しそうになったので、お前は妊婦なんだから特別な餌を与えようと 誤魔化して机の上のタオルの上に移動した。 そこで先程作った睡眠薬が染み込んだ角砂糖を一つ食べさせた。凄く美味いとガツガツと一気に食ってしまった。もっと寄越せと 言いたそうであったが先刻の事があったので、おいしかったよと言ってきた。 長女のれいむに睡眠薬が効きだすまで、赤ちゃんを眺めてて良いか?と下手に出てお願いしたら、偉そうに少しならいいよと了承 してきた。真っ二つにされた個体の次の個体は既に生れ落ちそうな状態だったのでヤバイヤバイと焦ったが睡眠薬が効いたらしく 長女のれいむはやっと眠った。 角砂糖を与えたせいか成長が目に見えて早くなった。さっそく一匹目が生れ落ちた。予想通り落ちた瞬間から例の挨拶をしてきたの だが、それに答えると後々面倒になりそうなので無視を決め込んでたら泣き出した。 うるさいのでクルリと後ろ向きにして何が起きた?と動揺する個体の背後からブスリと注射器の針を刺した。いきなりの激痛に 白目を剥いて硬直してるので面白い。 水飴の注入を終えて針を抜くと火がついたように泣き出したので傷口にオレンジジュースを塗ってやる。前に読んだ論文の実験風景の ようにすぐに痛みが消えたらしく少しの間混乱してたがすぐに忘れてその辺を飛び回るのでティッシュを敷いたタッパーに入れた。 そのようなことを繰り返して全員水飴処理を終わらせ長女のれいむの方を見ると既に蔓は抜け落ちていた。 私は眠る長女のれいむを巣穴に戻し、あたかも今抜けたように目の前に蔓を置いた。それから生まれた子供達を巣穴に放り込み 眠る長女のれいむを揺り動かして起こそうとしたが一向に起きない。仕方が無いので額に針を突き刺してやったらギャーと叫んで やっと起きた。 ほら、赤ちゃんがもう生まれているぞ!と言ったら、怪訝そうな顔でまだ生まれないはずなのにと不思議そうにしてたが、自分の 子供達を見たらそんな考えも吹き飛んだらしく、大喜びで自分が母だと言って蔓を食べさせていた。 子供達はやっと母親を認識したらしく頬を摺り寄せて甘えている。そうこうしてたら父親のまりさが起きだして感動しながら自分が 父だと説明して子供達と挨拶を何度も繰り返していた。 本日は夜も遅いのでこの辺にして惰眠を貪ることにした。 十四日目 本日は新しい研究対象が出来たことなので朝から研究室に赴く。 まずはクラスBの水槽に向かい三女のぱちゅりの様子を見た。既に起床していたらしく、小皿に溜まったオレンジジュースを舐めていた。 この水槽に移動してからは毎日機嫌もよく、うるさい位に挨拶をして甘えてくる。指先を甘噛みさせたり、頬を撫でて可愛がってると 長女であり今は母親のれいむの子供達の一人が自分と同じだ。一人だけ両親と同じ姿じゃないので苛められてる。と寂しそうに 打ち明けてきた。 私は餌のクッキーを与えてから、下に行って子供達を見たいか?と尋ねると行きたいと猛烈に頼み込むので、餌が食い終わるのを 待って、下のクラスCの水槽に一時的に下ろしてやった。 三女のぱちゅりが巣の前に向かうと巣の前で中に入れてもらえない四女のちびれいむと五女のありすが居た。 なんでも子供達を食べた二匹を意地でも近づけさせないように長女のれいむが巣の奥で威嚇している。 あんまり兄弟に冷たくしてると子供達を全部取り上げるぞ!と脅したら、しびしぶ巣穴から出てきた。 私は母親のれいむに一枚、子供達に一枚、父親のまりさに一枚、四女のちびれいむに一枚、五女のありすに一枚と餌のクッキーを 与えた。父親のまりさは子供達に餌を食べる時のルールを教え子供たちは以外に素直に従った。当の母親である長女のれいむは 相変わらず餌の前で険しい表情で号令を待っている。 私は号令を焦らして子供たちの様子を伺ったがみんな父親のまりさのように黙って餌の前で並んでいた。そしてやっと良し!の号令を 出した。父親のまりさと子供たち以外はガツガツとみっともなく餌に噛り付いた。 食事を終えた全員は早速排便をもよおして排泄用の穴から排泄し始めた。そこでも父親のまりさは排泄のルールをしっかりと 子供たちに教え込んで排便の手助けをしていた。 発情期を終えすっかり真面目になった父親のまりさを見て、ここでやっと性格の固定が済んで自分の役割に目覚めるのだなと確信をした。 食事と排便を済ませた母親のれいむと父親のまりさ達は仲良く子供達と戯れ、子供達も両親に甘えている。発情を終え真の性格が 固定された長女のれいむは餌が足りないから父親のまりさに追加の餌を私から貰って来いと口汚く罵っている。 かなり我がままな性格に固定されたようだ。 父親のまりさは私に非常に気を使いながら餌の追加を頼んできたがダメと一言言って話を終えた。その結果を長女のれいむに報告 するや否や長女のれいむは酷く父親のまりさを罵り追い詰めていた。 落ち込んでいる父親のまりさを元気付けようと泣きながら頬擦りして例の挨拶を繰り返してるのは一番最後に生まれた、ぱちゅり種の 個体のだった。 母親の方で生まれた子供たちみんなで頬を摺り寄せる遊びみたいなのが流行って、ぱちゅり種の個体も乗り遅れてはならないと言わん ばかりに、てんてんっと跳ねて母親のれいむの傍に擦り寄った。 二~三度、頬擦りしたあたりでその子は他の子に弾き出された。母親のれいむはそれを見ても何の関心も示さない。それどころか 泣きじゃくるその子に泣いてばかりでうるさいと怒鳴りつける始末だ。私は一体どういうことなんだ?と責めたら、その子は父親にも 似てない母親である自分にも似てないダメな子。と決め付けそっぽを向いている。 私は、この母親になったれいむは頃合を見計らってさっさと隔離しないと研究の邪魔だと悟った。 そんな、ぱちゅり種の子を優しく呼んで可愛がるのは同種である三女のぱちゅりである。自分が姉だよと優しく頬を摺り寄せ 目に涙を浮かべながら可愛がっている。 その光景を見ていた母親のれいむはあんなの自分の子じゃないと二人に向かって罵声を放ってきた。子供の前だからと自制してたが いい加減その生意気な口調を直せと母親のれいむを掴み上げ子供たちに見えないよう背を向けて力いっぱい指で数十発弾いてやった。 ようやく涙目になりながら、もうしないと言ったので水槽に戻してやった。子供たちは不安そうに母親に擦り寄り、どうしたの? と心配して腫れてる部分を小さな舌で舐めている。 私は三女のぱちゅりをクラスBの水槽に戻す際、のけ者にされていた、ぱちゅり種の個体もクラスBの水槽に移した。父親のまりさが 何故?と聞いてきたが、ここで苛められるよりマシだろと言ったら素直に納得していた。 クラスBの水槽に来たぱちゅり種の個体は最初母親が居ないと激しく動揺して水槽の中を探し回っていたが三女のぱちゅりがちゃんと 下の水槽に居るよと教えて少し落ち着いた。 三女のぱちゅりがクラスBの水槽の設備を優しく説明して最後に滴下されるオレンジジュースを舐めさせた。喜んで舐めるぱちぇり種の 個体、子ぱちゅりを眺めて微笑んでいた。 十五日目 本日は昼過ぎに研究室に赴いた。 私は資料の整理をしてからゆっくりとクラスBの水槽に近づき三女のぱちゅりと母親のれいむのぱちゅり種の個体、子ぱちゅりの様子を 見た。二匹は既に起きてて、水槽に転がしておいたパチンコの玉で遊んでる子ぱちゅりとそれを優しく微笑みながら眺める三女の ぱちゅりが居た。 相変わらずの例の挨拶を投げかけてきたので挨拶を返し、三女のぱちゅりに昨夜はどうだった?と聞いたら少しだけ夜泣きは したものの問題無かったと返答があった。 餌のクッキー一枚と1/5のクッキーを並べて置いて、一枚の方に三女のぱちゅり、子ぱちゅりはこっちと1/5の方に並ばせた。 子ぱちゅりは何の文句も言わずにニコニコと1/5のクッキーの傍でちゃんと号令を待っていた。 相変わらずこの種の行動には感嘆させられる。たいして焦らしもせず良し!と号令をかけてクッキーを食べる子ぱちゅりを確認してから クラスCの水槽に移った。 水槽の前に移ったとたんに昨日あれだけ制裁した母親のれいむが早く餌を寄越せと口汚く罵っている。父親のまりさは一生懸命それを 制止していたがどうにもならない様子だ。しかも子供達まで幼い口調で早く餌を寄越せと言い出している。私は黙って水槽の広場前に 母親のれいむに一枚、父親のまりさに一枚、子供達に一枚、四女のちびれいむに一枚、五女のありすに一枚と並べて号令を焦らした。 すると母親のれいむがもう待ってられないと食べ始めてしまった。父親のまりさはあっと声を上げたが時すでに遅しで子供たちまで 母親の真似をして食べ始めてしまった。父親のまりさはしきりに謝罪をして母親れいむと子供達を許してやってくださいと哀願してきた。 四女のちびれいむも五女のありすまでも、どこで覚えたのか解らないが身を器用に折り曲げ頭を下げて自分達は餌抜きでいいから許して やってくださいと訴えている。 私はここで感情的にならずならず黙って水槽を離れた。 そしてその夜深夜、私は静かに研究室に向かった。 私はクラスCの水槽の巣穴の奥に眠る母親のれいむの口を手で塞ぎ、静かに巣穴から取り出した。 巣穴から取り出した母親のれいむを別室に連れて行き、お前はあの水槽よりこっちの水槽の方がお似合いだ!と例の水槽に放り込んだ。 その中で大量の便と共に倒れている自分の姉にあたる姉のれいむを見て、汚い臭いを連発していた。 姉のれいむは少し考えてから罵倒してくる同じれいむ種が自分の妹だとわかった。自分が実の姉だよと妹であり現在母親のれいむに 訴えたが、そんな臭くて汚いのは姉なんかじゃない!子供達はどうした?ここは何処だ!と罵詈雑言の応酬を浴びせてきた。 そんなに汚くて臭いのが嫌なら今からいっぱい餌をやるのでそれを食って排便をしてさらに汚くなれ!と伝えて、私はその水槽に 大量のクッキーを投入して元通りに蓋と重石を水槽に乗せた。 二匹は不意に与えられた大量の餌を後先考えずに貪り食べ続けてた。 つづく・・・ トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る 観察系は結構好き。 投稿SSだから誤字脱字は気にしないけど、 三女ぱちゅりーと子ぱちゅりーは、叔母と姪の関係じゃない? 元次女まりさと四女れいむと五女ありすは調教が成功してきたw -- 2018-01-05 15 15 23 こういう研究の経過も面白いなぁ -- 2010-11-21 21 15 07 楽しいなぁ -- 2010-06-18 02 34 01
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『プレイス・ブレイク 前編』 19KB いじめ 不運 差別・格差 仲違い 日常模様 自然界 人間なし 創作亜種 独自設定 うんしー ドロドロな群れの争いはゆっくりできます 「プレイス・ブレイク」 前編 羽付きあき ・三本構成です ・幾つかの独自設定を使っていますご注意を ・ドロドロな派閥争いがメインですご注意を X月X日、とある山岳へゆっくりの「観察」に訪れた私は一体のゆっくりまりさを保護した。 私が見つけた頃にはかなり衰弱していたらしく、寒天の右目は喪失し、飾りである帽子も何かに「噛み千切られた」様にボロボロになっている。 砂糖細工の髪も何かに引っ張られて引き抜かれた様に一部が抜け落ちていた。 そして小麦粉の体の背部には多数の切り傷や刺し傷の数々・・・ 当初私はこのまりさがドスの群れの「おきて」を破ったことによる追放を受けたのではないかと推測した。 この山岳には「くいーんありす」が率いるありすを中心とした群れと、「ドスまりさ」が率いるれいむ、まりさを中心としたゆっくりの群れの二つがいたからだ。 大きくすり鉢状になった場所があり、そこに二つの「ドス」は共存していた。(その形状のため、すり鉢状の"ゆっくりプレイス"から出るには、段差が大きすぎる為ドスに運んでもらうしか方法が無い) 通常のゆっくりでは容易に出られない「ゆっくりプレイス」ドスまりさとくいーんありすが選んだ格好の場所なのだろうが、それはドスまりさとくいーんありすがいる事によってのみ成り立つのである。 秋から冬にかけての間か、それ以前かもしれない。(まりさの証言から秋の初め~中頃と推測される) ドスまりさとくいーんありすが越冬用の食料をため込むため、すり鉢状のゆっくりプレイスの外へ出たきり帰ってこなくなった。 すり鉢状のゆっくりプレイス内でも、ありす種とまりさ、れいむ種を合わせて有に400体を超えるゆっくり達の台所事情すらも賄えるほどの草や木の実、水場等がある。 だが、それも限りがあるし、貯蓄に回すには心細い。 その為、毎年ドスまりさとくいーんありすがゆっくりプレイスの外に出て食料を調達するのが通例となっていた。(後の調査によると、ドスまりさとくいーんありすは、ゆっくりにとっては薬にあたるあまあま・・・いわゆる"ハチミツ"をとるために、断崖絶壁に近づいた所、そろって落下したのではないかという結果が出ている。いずれにしろ、発見時には尖った岩に小麦粉の体をぶつけて大量の餡子ないしカスタードクリームを飛び散らせて突っ伏したまま潰れていた。即死と思われる。) 問題が残されたゆっくり達だ。 まりさの証言によると、そのゆっくりプレイスの中で凄惨なまでの争いが起きたと言う。 まりさの追憶と、それに伴う私の推測も合わせて、まりさが私の所に来るまでに何があったのかを紐解いていこうと思う。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ・・・ドスまりさとクイーンありすがいなくなって三日後、留守を預かっている「もりのけんじゃ」であるぱちゅりーがその異変に気付く。 「むきゅ・・・どすとくいーん・・・おそいわ・・・まさか・・・」 ぱちゅりーの胸中には嫌な予感がよぎっていた。通例とはいえ、三日も開ける事はなかった。 ドスとクイーンは、いくつかの食料を洞窟の「ちょぞうこ」に入れてゆっくりプレイスの外を出たり入ったりを繰り返しているのだ。 そのスパンは約半日。つまり半日を超えて戻る事はまずありえないと考えていいだろう。 「ちょぞうこ」に入っている食料は、せいぜい50体分程度のゆっくりが越冬できる量だ。350体近く分も不足している。 「もりのけんじゃ」であるぱちゅりーは、もしドスとクイーンに万が一の事態があった場合、群れの統率役を継承すると言う取り決めがなされていた。 しかしドス種ですら二体で分けてようやく統率できる程の巨大なゆっくりの群れを、ぱちゅりーのみが統率するなど不可能に等しい行為である。 ぱちゅりーは悩みに悩んだ末、ある一つの決断を下した。 それは「群れの細分化」である。 決断と言うよりは確実にそうなると見こしての一種の「予測」であろう。 ドスまりさの率いた群れのゆっくり達はぱちゅりーをリーダーにする事に異議はないのだろうが、クイーンありすの群れが率いたありす達の意見は違う。 当然ありす種からリーダーに立候補するゆっくりがいるだろう。 すり鉢状の「ゆっくりプレイス」の中にある限られた食料をいかに貯蓄に回すか、それを考えなければならない時にリーダー決めで無駄な時間を過ごしている訳にはいかない。 ・・・このぱちゅりーの決断が悲劇の始まりであると言う事を知っているゆっくりはいなかった。 ・・・・・・ ・・・ 「むきゅ!みんな!きいてちょうだい!」 ゆっくりプレイスの中央・・・大きく開けた場所にある岩の台の上に乗ったぱちゅりーが、集まったゆっくり達に声を上げた。 「どすとくいーんがもどってこないわ!きっとなにかあったのよ!」 それを聞いた途端にゆっくり達から声が上がった。 「れいむたちのえっとうようのごはんさんはどうなっちゃうの!」 「どすがしんぱいだよ!さがしにいってね!」 「そうだぜ!どすやくいーんをさがしにいくんだぜ!」 「くいーんやどすをみすてるなんてとかいはじゃないわ!」 ・・・大方予想はついた。しかしぱちゅりーは知っている。このすり鉢状のゆっくりプレイスから出られる術はもうない。と 「むきゅ!おちつくのよ!みんな!そこでぱちぇからていあんがあるわ!むれをいくつかにわけるのよ!」 「「「ゆゆ!?」」」 あれやこれやとぱちゅりーをそっちのけで議論をしていたゆっくり達が一斉にぱちゅりーの方へと向いた。 ぱちゅりーは間髪いれずに捲し立てる。 「いまはかぎられたごはんさんをいかにせつやくしてえっとうをするかということにあるわ!りーだーはくいーんのむれとどすのむれでべつべつにきめて、まずはえっとうにそなえるのよ!まずはぱちぇについてごはんさんをちょぞうこにためてえっとうにそなえたいというゆっくりはぱちぇのところにきて!」 「ゆゆ!れいむはついていくよ!」 「まりさもだぜ!」 「でもどすが・・・」 「なにいってるの!どすがいなくなったときにりーだーになるのはぱちゅりーってどすがきめてたんだよ!」 「ゆ!そうだぜ!いまはとにかくえっとうをどうするかをかんがえるんだぜ!」 ぱちゅりーに答えてついて来たゆっくりは約150体。その殆どがこのすり鉢状の「ゆっくりプレイス」に移る前からドスに従っていた古参のゆっくり達である。 ・・・残りの50体はどうか? 「でもやっぱりれいむはどすがしんぱいだよ!どすをさがしにいくよ!」 「れいむも!」 「まりさもだよ!」 「そうだよ!どすがいなかったらえっとうようのごはんさんのたくわえなんてできるわけがないよ!」 「まだふゆまでじかんがあるんだぜ!まりさたちはどすとくいーんをさがしにいくんだぜ!」 一体のれいむの呼びかけにより、ドスとクイーンを探しに行くと言ってきかないゆっくり達。 「ありすもだわ!」 「くいーんがいないなんてとかいはじゃないわ!」 「ありすたちもれいむについていくわ!」 そしてありす側から100体・・・つまりクイーンの群れの約半分が「れいむ派」に合流した。 ぱちゅりーにはある程度の算段があった。 少々予想より多いが、150体程度に「絞られた」 あと越冬用の食料は百体分だけで良い。 そう、ぱちゅりーは自分の意図に反する「ドスまりさ派」に属していたゆっくり達の一部を切り離したのである。 そしていわずもがな、クイーンありす派のありす達・・・ありす種全てもである ぱちゅりーが従っていたドスまりさは「ゆっくり達をゆっくりさせる」為に動いていた。 それは勿論ゆっくり達も承知だったが、ドスまりさは、自身がいなくなった時の事や、「狩り」で不在の間に群れを統率するためにぱちゅりーを置いた。 逆にクイーンありす達は、元々クイーンありすが「おおきくてとかいは」と言う理由で付き従っているにすぎない。 クイーンありすはクイーンになって日が浅かったためか、自身が全てのありす達を「とかいは」に日々を過ごさせる為にワンマンで頑張り続けていたのだ。 もしクイーンが居なくなった時は、ドスまりさの群れに合流する。そう言う取り決めではあった。 これはクイーンとドス、そしてぱちゅりーだけが知る事である。いわば「密約」だ。 ぱちゅりーはこの密約を反故にした。多少自身で「狩り」をする能力があるとはいえ、所詮はありす種。何の実にもならない「とかいはな何とか」と言ったゴミを量産されてもぱちゅりーとしては困るのだ。 また、ドスにおんぶに抱っこの一部の「ドスまりさ派」も越冬には必要ない。 ぱちゅりー・・・つまりドスまりさの意思に付き従うゆっくりだけで越冬をしようと言うのがぱちゅりーの考えであった。 独裁を考えている訳ではない。多少余裕が出れば切り捨てたゆっくり達の一部も収容しようとは考えている。 ・・・こうして「ぱちゅりー派」はドスまりさのいたゆっくりプレイス北側にある大きな洞窟と、その中にある「ちょぞうこ」と五十体分の食料を増やすために行動を開始した。 ・・・・・・・・・ ・・・・・・ ・・・ ドスまりさとクイーンありす捜索の為に離れた「れいむ派」 ドスまりさの意思を継いで越冬の為の準備を開始した「ぱちゅりー派」 残された百体のありすは一体どうなったのか? 「ありすたちはどうすればいいの・・・?」 「ゆゆ・・・えっとうようのごはんさんもたくわえなきゃいけないわ・・・」 「でもくいーんもしんぱいよ・・・」 ・・・この時点ではまだ何も決まっていない。 問題点を一つに絞らなければならないのにありす達は「くいーんとどすをさがす」「えっとうようのしょくりょうのちょうたつ」「りーだーぎめ」を出来ないでいた。 「みんな!きいてほしいの!」 悩みを抱えるありす達の群れの中で、一体のありすが声を上げた。 「いまはとにかくりーだーをきめるべきだとおもうわ!ありすからていあんがあるの!まずくいーんのおちびちゃんをひとまずりーだーにたてて、だいひょうのありすたちでほうしんをきめましょう!」 「ゆゆ!?くいーんのおちびちゃんを!?」 「で、でもくいーんのおちびちゃんはまだちいさいわ!りーだーになってもなにもきめられないとおもうわ!」 ・・・当然ありす達から疑問点と戸惑いの声が上がる。 声を上げたありすは最初に言った事をありす達に説明するために矢継ぎ早に話を始めた。 「だからありすたちがくいーんのおちびちゃんをささえるのよ!ありすたちできめたことをくいーんのおちびちゃんをとおしてそれをいけんとするのよ!」 「ゆゆ!それはとかいはなあいでぃあだわ!」 「くいーんのおちびちゃんをささえるのはとかいはだわ!」 ・・・こうして建てられた骨組みは、どんどんと肉づけされて行く。 まず百体のありす達から代表で3体のありすが選ばれた。 最初に提案を唱えた「はなかざりありす」とクイーンありすの次に美ゆっくりでとかいはな「とかいはありす」そしてクイーンありすの群れに最初に加わった「おけしょうありす」である。 この三体の話し合いの結果、ひとまずの目標は「越冬用の食料の調達」そして「クイーンとドスの捜索」だ。 後者に関しては、貴重なゆっくりを裂く訳にもいかないため、「はなかざりありす」の提案である「れいむ派」への支援と言う形で取り決まった。 クイーンありすの子ゆっくりは、まだ赤ゆっくりより一回り大きいと言うサイズである。これはクイーンありすがドス化する直前に生まれた子ありすであり、クイーンありすは群れのありす達と平等に「とかいはなあい」を注いでいた。 ひとまず団結と方針の決定に成功した「ありす派」はクイーンありすの元いた「南側の林」周辺を拠点に、「れいむ派」の支援と食料の調達を開始した。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「ゆ!ゆ!まりさがんばるよ!」 「ゆ!ゆ!れいむもがんばるよ!」 「ありすもがんばるわ!ゆ!ゆ!」 ほんの少し平たい形の木の枝を口にくわえて、「ゆっくりプレイス外郭部」の絶壁を、スコップの様に木の枝を使って必死に掘るゆっくり達。 「れいむ派」の代表であるれいむは、「おうちづくり」を参考としたゆっくりプレイスの壁を掘り抜いて外に出ると言う方法を考案した。 ・・・普通に考えれば下から上へと掘り進むため非常に困難である。崩れるのを防ぐために、緩やかな角度で徐々に斜め上に行くように掘らなければならない。 現在の角度から行くと、ゆっくりプレイスの外側へ出る為に掘り進まなければならない距離は約1000m れいむ派が総動員して掘ると、時速2cm程・・・(バスケットボールサイズよりやや大きめの穴を掘らなければならないためより遅くなる) 気が遠くなるような数値だ。 木の枝のスコップを一回地面に突き刺して取れる土の量は数十グラム程度。それを紐のついた葉っぱを使った「トロッコ」に載せて土を運ぶ。 「ゆ!ゆ!」 「おも・・・い・・わ・・・!ゆ!ゆ!」 「ゆひ!ゆひ!」 土はトンネルを掘っている少し離れた場所の外郭部の壁に運ばれた。 「ゆゆ!みんな!つちさんはここにあつめてね!とんねるさんをほったつちさんをここにあつめて"かいだん"をつくるよ!」 「れいむ派」のリーダーであるれいむが指示を出す。 並行して掻き出した土を土盛りすることにより「階段」を作ると言う試みもしている。 実はれいむにとってはこちらが本命であった。 「壁」の高さは4m程。2mサイズのドスまりさやクイーンありすが全力でようやく飛び越えられらる高さである。 だが1000mも掘り進むより、僅か4mの壁に階段を作る方が遥かに容易であった。 「れいむ!」 「ゆゆ!?ありす!どうしたの!」 「れいむたちのためによびのすこっぷさんやとろっこさんをもってきたわ!ごはんさんもあるからうけとってほしいの!」 「ゆゆ!ありすゆっくりありがとうね!」 早速「ありす派」からの支援物資が届く。 食料調達は現在は秋の為困らない。しかしれいむ派を悩ませていた問題は「掘削道具」の不足である。 例えば、木の枝は出来るだけ丈夫な物を選ばなければ固い土を掘る時にすぐ折れてしまう。実際、れいむ派の所有している木の枝スコップの半分以上が破損してしまっていた。 「とろっこ」も「すこっぷ」も制作に時間がかかるのだ。出来るだけ人手を裂いて生産はしているが、追いつくはずがなかった。 ありす派はその問題を補うべく、ありす派の半分を道具の製作の為に裂き、量産体制を整えてれいむ派の支援の為に赴いたのである。 「ありすたちはここまでのことしかできないわ・・・でもできるだけれいむたちをたすけるわ!」 「ゆっくりありがとうね!」 掘削は続く。だが、その間を縫って「ぱちゅりー派」が突出し始めていた。 ・・・・・・・・・ ・・・・・・ ・・・ 「むきゅ!みんな!いそぐのよ!」 「ゆっくりわかったよ!」 「ゆ!ゆ!」 ぱちゅりー派のリーダーとなったぱちゅりーは群れの子ゆっくり達までもを総動員して食料の調達にあたっていた。 「きのみさんややわらかいはなさんやくささん!きのこさんをゆうせんしてとるのよ!」 「ゆっくちわかっちゃよ!」 「ゆゆ!まりしゃがんばりゅよ!」 「れいみゅもがんばりゅよ!」 子ゆっくり達の群れの中に、まりさはいた。 当時はまだハンドボール程のサイズだったまりさは、何故こう言った事態になったのか、なぜぱちゅりーが焦っているのかを理解するには幼すぎた。 ただ周りの子ゆっくりに負けたくない・・・そういった「ゲーム」の様な感覚で狩りにいそしんでいたと後に回想している。 ぱちゅりー派のゆっくり達は、ありす派の拠点である南側の林にまで足を運んで食料の調達に精を出している。 栄養価の高い食料は、たくさんあると言っても限りがある。それらを出し抜いて全て取ってしまおうと言うぱちゅりーの考えであった。 唯一食料調達でライバル関係になると思われた「ありす派」も、その半分をれいむ派の支援に回して、50体ほどでしか「狩り」が出来ていない。 しかも、クイーンありすを中心にして狩りをおこなっていたため、「とかいはなたべもの」しか知らないのだ。 つまりぱちゅりーが狙っている草花や木の実、木の樹液が固まった物やキノコなどを主な食糧としているため、それらを取ってまわられると不都合が生じる。 それらは越冬のための保存がきく食料になりうる(虫等を重要視していないのは冬の直前までいるし、ありす種は食べ物としてそもそも認知していないからである) 南側の林は特に念入りに採取の対象となった。 ぱちゅりーの考えでは、食料調達に困れば、ありす派は確実にぱちゅりー派に支援を求める。その際に僅かな食糧をダシに越冬用のバリケードや「べっどさん」等を作らせようと言う腹だ。 「おうち」の整備に関してはありす種が一番得意としているため、それを利用しようと考えている。 その為に布石として、南側の林にある食料は念入りに調達された。 育ち切ってない小さな物もその対象である。とにかく全ての食料はぱちゅりー派によって採取されてしまった。 「ぱちゅりー・・・」 「むきゅ?どうしたの?」 「ありすたちはれいむたちをてつだってるよ!まりさたちもどすやくいーんをさがすれいむたちをたすけたほうがいいとおもうよ!」 「むきゃきゃ!しんぱいいらないわ!えっとうをじゅうようししていないれいむたちがあんなことをつづけられるのはふゆさんにはいってちょっとたったくらいまでよ!」 「ゆゆ?どういうこと?」 「れいむたちはえっとうにかくじつにしっぱいするわ!そのときははるになるのをまってぱちぇたちがそれをひきつげばいいのよ!それまでほっときましょう!」 「ゆゆぅ・・・わかったよ」 「あとまりさにおねがいがあるわ!」 「ゆ?」 「ありすたちがかわいそうだからそこにあるのとおなじくささんだけはのこしてるの。でもありすたちはそれをごはんさんだとしらないわ!しょくりょうちょうたつをしてる"とかいはありす"におしえてあげるのよ!」 「ゆゆ!ゆっくりわかったよ!」 日が沈む頃には南側の林には殆ど食料らしき食料は無くなっていた。 たった一日でありす派達は、重要な食糧調達地を失った訳である。 ・・・そしてぱちゅりー派が残した「プレゼント」はそれだけではなかった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「どぼじでどがいばなごばんざんがないのおおおおおおおおお!?」 「ゆ・・・!ゆ・・・!あ、あさまではあったのに・・・どうして・・・?どぼじでええええええ!?」 「はなさんがないわああああ!ありすたちがそだてたはなさんがああああああ!」 「ぎのござんもなぐなっでるわあああああああ!」 「ごんなのどがいばじゃないいいいいいいい!」 南側の林でありす達の叫びが響いた。 朝までは余るほどあった木の実や花等が綺麗さっぱり無くなっていたのだ。 それまで派閥に分かれる前まで共有の狩り場だった場所で狩りをしていたありす達は面喰った。 拠点近くの食糧地は最後に取っておこうと言う考えだったからだ。 「きっとぱちゅりーたちのしわざよ!」 「ゆるせないわ!」 「しかえしにいきましょう!」 いきり立つありす達の一部に対して、食料調達を任されていた「とかいはありす」が必死に宥める。 「ま、まつのよ!いまここでさわぎをおおきくしてもむだなじかんをすごすだけだわ!みんなおちつくのよ!」 「でもごはんさんがないわ!」 「そういえばぱちゅりーたちはごはんさんをいっぱいもってるわ!」 「それをうばいましょう!」 全く言う事を聞かないありす達に「とかいはありす」はある提案を始めた。 「このくささんはちょっとおいしくないけどたべられるのよ!これはいっぱいあるからきょうはひとまずこれをあつめてたべましょう!」 「ゆ!でも!」 「いまおこったところでなんにもならないのよ!まだあきもはじまったばかりだからはなさんやきのこさんはまたなるわ!」 「ゆゆぅ・・・」 「とにかくきょうはこれをたべましょう!」 ・・・何とか収める事に成功した「とかいはありす」。 渋々と「とかいはありす」の下についていたありすが言われた草を集め始め、食べ始めた。 「む~しゃむ~しゃ・・・あんまりとかいはじゃないわ・・・」 「でもないよりましね・・・む~しゃむ~しゃ・・・」 「とかいはありす」も草を食べるが、量は少ない。皆に申し訳ないと言う念からだろうか、今となっては定かではない。 その日は渋々と戻った食料調達隊であるが、悲劇はその夜おとずれた。 ・・・・・・ ・・・ 「ゆぐぅぅううう!」 「うんうんがどばらないわああああああ!」 「ずっぎりぃぃぃ!ゆぎぃぃ!ぐるじいわぁぁ!」 「ゆぐっ!ゆぐっ!ゆげぇぇぇええ!げぇえええええ!」 「みんなどぼじだのおおおおおおおおおおお!?」 「とかいはありす」がフラフラと調子が悪そうに小麦粉の皮を動かしながら叫んだ。 驚くのも無理はない。突然「草」を食べたありす達がカスタードクリームを吐き出し、草混じりのカスタードクリームの液状のゆるいうんうんをまき散らしながらもがき苦しんでいるからだ。 草を食べたのは「とかいはありす」と共に食料を調達していたありす達。その数は約30。(ありす派は百体のありすをそれぞれ三つに分けているため) 少しでも食料を節約するために、共有する狩り場で取った食料は、「とかいはありす派」以外に与え、貯蔵に回したため、他のありす達は何とか無事だ。 だが、草を食べたありす達は全く持って無事ではなかった。 クイーンありすが木の枝や葉っぱを使って組み上げた自身の「べっど」の中は、あっという間に吐瀉物と汚物にまみれ、苦しみのた打ち回りながら汚していく。 「げぇえええええ!ゆげぇぇぇえええ!ぐるじっ!ぐるじぃわおぼっ・・・!げぇええええええ!」 「ゆぎっ!ゆひっ!ゆひっ・・・!ゆ”・・・!ゆ”・・・!」 やがて30体のありすの殆どが寒天の白目をむいて痙攣を始めた。 カスタードクリームを出しつくしたためだ。 致死量を超えた吐餡のさらに限界を超え、痙攣しながらもなお口からカスタードクリームを吐き出し続けてあるありすは動かぬ饅頭となり果てた。 痙攣して突っ伏したあるありすは、蛇口を捻った水道の様にあにゃるからうんうんをだらだらと流しながら動かなくなっていった。 「みんなぁぁああ!どぼじでえええええええ!ごんなのどがいばじゃないいいいいいいいいいい!」 「とかいはありす」の声が辺りに響き渡る。 必死に「ぺーろぺーろ」等で看病していた他のありすや、大きな「べっど」に飛び散ったうんうんやゲロを掻き出していたありす達が茫然としてそれを見つめている。 ・・・こうしてありす派は、その三分の一を失う事となった。 クイーンありすが編んだ「巣」の片隅には、ゆっくりにとっては遅行性の毒草がポツンと積み上げられている。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ・「れいむ派」→ゆっくりプレイス脱出を図る一派。ありす種、れいむ種、まりさ種で構成される。ゆっくりプレイスの西側にある森が拠点。数は150体 ・「ぱちゅりー派」→ぱちゅりーを頭目として越冬を目標とする一派、ぱちゅりー種を除いて全てがれいむ種とまりさ種。ゆっくりプレイスの北側にある洞窟が拠点。数は150体 ・「ありす派」→残ったありす達がクイーンありすの子ありすをリーダーに据えて団結した一派。約30体づつを三つの派閥にわかれる。ゆっくりプレイスの南側にある林とその端にあるクイーンありすが編んだ巨大な巣が拠点。数は現在約70体
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前編より 「美味しいね!すっごくゆっくり出来るよ!」 「ゆっくり!ゆっくり!」 「オイオイ…何だよこりゃあ…」 場面は変わり村の畑の中。 仲良く農作物を齧る3匹のゆっくりの前に男が立ち尽くしていた。 男は人の言葉を解するこの生物の事を他所の村人から聞いてはいたものの 見るのは初めてな事もあって、どうしたものかと頭を抱えていた。 「「む~しゃ!む~しゃ!しあわせ~♪」」 そうとも知らずに食事を続けるゆっくり達。 いい加減止めない事には始まらないと考えた男は 三匹のゆっくり達の近くにしゃがみ込んでまず食事を止めさせた。 「オイ、お前等な」 「ゆ?人間さん?」 「「「ゆっくりしていってね!!」」」 それを聞いて『話に聞いた通りだ』と眉を顰める男。 ゆっくりー中身は餡子だが、基本的に草食で畑に姿を見せる事もあり、 何かに遭遇すると大きな声で『ゆっくりしていってね!』と叫ぶこの生き物。 どうして森の餌にならないでここに来れたのか、実に不思議だ。 だが、その辺の説明は賢い人が上手い事見つけ出せば良い。 俺の仕事は野菜を育てる事とそれを守る事なのだからな。 男は困った様な表情で 人の言葉を解すると言うゆっくりに説明する事にした。 これはお前等の食っていいものではないと。 「どうしたのオジさん!ゆっくりしていってね!」 「あのなぁお前等、これは…」  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 「やっぱ死んでるんじゃねーかな?」 「いいや、息してるよ」 「ゆぅ…ゆぅ…」 場面は変わり、4匹のゆっくり達がいるのはある小さな廃屋の中。 元々は誰かの倉庫だった様だが、少年達が産まれた頃から誰も使っておらず 今では少年達の秘密基地として活用されている。 廃屋とは言え綺麗好きな少年達の手によって掃除が行き届いている為 中は綺麗なものである。 ぱちゅりー達は秘密基地に行く途中の この少年達に見つかって気絶し、連れて来られたのだった。 「ゆっくりって何食うんだろ?」 「そんなの知るワケないだろ… りんごでも食わせ…オイ、起きたぞ!」 「………?」 横たわっているぱちゅりーは気絶から目覚めた時、 何か暖かいものの上に自分の体があるのを背中に感じた。 何だかゆっくり出来るもの、いつかの母の頬の様な暖かいもの。 ふと視線を動かすと他の3匹も寝ているのが見えた。 柔らかい毛布の上でゆーゆーと寝息を立てて寝ている。 「急に動かなくなったから死んだかと思ったな」 「っていうか今でも動いてない」 その視線が少し上を向いた時、ぱちゅりーは恐怖に凍りついた。 見下ろしているのは数人の人間。 自分達を殺そうとした人間達よりもかなり小型だが、同じ姿をした生き物。 ぱちゅりーは余りの恐怖から声も出なくなった。 「…………!!」 「何で動かないんだろ?つまんねぇな」 「やっぱコレ、怪我だったんだろうな」 そう言ってぱちゅりーを持ち上げてひっくり返す少年。 凍りついたまま動けないぱちゅりー。 ぱちゅりーの底部には包帯が巻いてあった。 顔まで覆わない様にと、下膨れの部分に不器用に何重にも巻いてあるそれは ぱちゅりー達を持ち運ぶ際に一人の少年がぱちゅりーの怪我を見つけ、 治療のつもりで巻いたものだった。 「○○、もういい加減暗くなるから帰ろうぜ おれ薪割り手伝わなきゃいけねーんだ」 「おお」 「コイツ等どうするの?」 「……放っておくか、持って帰るわけにもいかないし」 そう言って二人の少年達はぱちゅりー達を一瞥すると 鞄を肩にかけると廃屋から出て行き、民家の方へと夕暮れの道を歩いて行った。 「…………」 ぱちゅりーは最後まで口を開く事が出来ず 震えながら少年達の背中を見送る事しか出来なかった。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ぱちゅりーが少年達に出会った次の日。 4匹のゆっくり達はまだ廃屋の中に居た。 廃屋の扉は開かれていた。 昨日の少年達がゆっくりが出て行ける様にと開けておいたからだ。 しかし4匹が出て行かなかったのは、ぱちゅりーがまだ動けないからだった。 「ゆっくり食べていってね!」 「早く良くなってね!」 「むきゅ…れいむ、ありがとう…ごめんね」 動けないぱちゅりーにご飯を用意する3匹。 ぱちゅりーは巻かれた包帯のせいで 今までの様にまりさの帽子の上に乗せられても、直ぐに滑り落ちてしまう。 それが包帯のせいだと中々気付けない4匹は、 やはりぱちゅりーを見捨てられず、人間の巣の中で過ごす事を余儀なくされた。 「…!? オイ!○○!昨日のゆっくりまだいるぞ」 その日の夕方近くになってから、また昨日の少年達は姿を現した。 少年達が驚いたのは、この4匹のゆっくりが きっと一晩の内に何処かに行ってしまうだろうと考えていたからだ。 (当然の事ながら少年がぱちゅりーに包帯を巻いたのは 不器用ながら善意からのものだった、 少年はそのせいでゆっくりが廃屋から出られなくなるとは想像していなかったのだ) 「「「「……………」」」」 そんな事も知らない4匹にとっては絶体絶命の状態。 何しろ違う個体とは言え、 自分達の群れを滅ぼそうとしたのと同じ生物が5人も集まったのだ。 当然4匹は恐怖で震える筈であった。 だが、ぱちゅりーは昨日の件から今まで何も考えずに過ごして来たわけではない。 人間達が昨日、何故自分達に対して何もしなかったのか。 それを考えていたのだ。 一晩掛けて考えたその結果、 ぱちゅりーは『何も喋らなかったから人間は自分達に危害を加えなかった』 そう解釈するに至った。 思い返してみればあの日、群れが滅ぼされた日に人間に向かって 色々話しかけてから急に人間は暴れ始めたのだ。 食い扶持を減らされた事もあったのだろうが もしかしたら人間は自分達ゆっくりの喋り方が嫌いなのかもしれない、と。 ぱちゅりーは他の3匹のゆっくりにも 人間が来たら決して口を開かない様にと釘を刺しておいた。 口を結んで少年達を見上げる4匹のゆっくりの前で 話に聞いているゆっくりとは随分違うな、と首を傾げる少年達。 実際の所、これは身動きの取れなくなるという窮地に立たされたぱちゅりー達が、 殆ど自分を安心させる為に考え出した無茶苦茶な作戦であった。 「やっぱ紫のだけじゃなくて他のも喋んないね…」 「おかしいよな…ゆっくりって喋るんじゃないのかよ?」 「「「「…………………」」」」 だが、この的外れな思い込みこそが 後にぱちゅりー達を救う事になる。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 「帰れ!この饅頭もどき!!」 「「「ゆわーーー!!!」」」 男がゆっくりに農耕について説明してから20分後、 そこには畑から放り出されて宙を舞うゆっくりの姿があった。 比較的我慢強いところのあるこの男も ゆっくりに農耕を概念を説明する事を諦めたのだ。 べたべたっ、と音を立てて土の上に落ちるゆっくり達。 「ゆっぐり”でぎないぃぃいぃ!!」 「ゆ”ぐうぅうぅ!! オジさんもゆっくり出来ない人なんだね!大っ嫌いだよ!」 「帰れ帰れ!二度と来るな!バカ饅頭!」 「ゆん!ありす!まりさ!もう行こ!」 そう吐き捨ててプンプンと山の方へと跳ねて行く三匹のゆっくり達。 全くゆっくりしていない。 結果的にこの様な形になってしまったが、 短い時間の中で男は畑のものは自分達が育てた物だと言う事を ゆっくりに懸命に教え込もうとした。 種を野菜の赤ちゃんと例え、 土の中で太陽の光と、自分達の与える水と栄養を食べて成長する事も。 そして自分が母親代わりとなって何ヶ月も世話をする事で ようやくこの様な姿になって、自分達の食べ物になってくれるのだと。 そこまで育てた自分達にこそ食べる権利があり、 だからこそゆっくり達はこれを食べてはならないと。 『オジさんは赤ちゃんを食べるの?』 『そんな事よりゆっくりしていってね!』 『このご飯は勝手に生えてくるんだよ!!』 『おじさん!嘘はゆっくり出来ないよ!』 『む~しゃ!む~しゃ!しあわ』 ゆっくりに野菜の事を教える事は、実に難しい。 だがあんな目に遭わせてやったんだからもう来ないだろう。 去って行くゆっくり達を青筋を浮かべて見送りながら、男はそう願った。 「おぉーい!!○○!今のゆっくりだろ!?」 そこに男の友人が訪ねて来た。 それは男と同じく畑を耕す者。 「おお○○3日ぶり、聞いてくれよ 初めてゆっくりを見たんだが キャベツ齧られたんで今追い出したところなんだ」 「途中から遠くで見てたよ 災難だったな、お前も」 「でも、痛い目に遭わせてやったんだから もう来ないだろ……『お前も』?」 「…あのゆっくり達、今お前がやったみたいに 一昨日俺が痛めつけてやった奴等と同じなんだ…」 「え?」 「一昨日は俺のところに来たんだよ あいつら、そんなに頭は良くないんだってさ …○○サンなんてとうとう畑で見つけ次第殺すようになったぞ」  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 結果から言うとぱちゅりーの立てた作戦は成功した。 少年達は喋らないぱちゅりー達に対して暴力を持って干渉する事は当然無く、 それどころか少年達がオヤツにと家から持って来た煎餅やキュウリまで与えてくれた。 それに対して、4匹のゆっくりは警戒心から中々口をつけなかったが 少年の中の一人が自分の分の煎餅に口をつけると 4匹は安心して目の前でいい匂いを放つ煎餅に口をつけ始めた。 (細かく砕かれた煎餅はカケラも残さず美味しく食べたが 過去のトラウマから、野菜であるキュウリだけは決して手をつけなかった) 少年達は自分達で塩を付けながらキュウリを食べると、 廃屋の中でドタバタとチャンバラ遊びを二時間程してから また昨日の様に、扉を閉めずに家へと帰っていった。 初めは内心恐怖でどうにかなりそうだったぱちゅりーも、 ありすも、れいむもまりさも勝ち誇った顔つきで確信していた。 自分達が喋らなければ人間はゆっくりしてると。 何故なら少年達が無口な自分達に対して危害を加えない事に加えて 少年達の中の一人が連れて来ていた、4匹のゆっくりと同じ様に口を利かない子犬が 少年達に大切そうに扱われているのを見たのだ。 それを見た4匹のゆっくりは最早、間違いない、 喋らなければ自分達は怖い人間達ともゆっくり出来る、そう確信した。 だが、少年の中の一人が帰り際に言ったこの台詞。 「じゃーなゆっくり!ゆっくりしてけよ!」 「「「「ゆっくりしていってね!!」」」」 4匹はそれを言った瞬間死を覚悟した。 しかし『やっぱそれだけは言うんだな』と笑って廃屋から出て行く少年達を見て ぱちゅりー達は『ゆっくりしていってねだけは言っても大丈夫』と認識した。 この廃屋に少年達以外の、 あの日ぱちゅりー達の群れを滅ぼした人間と 同じサイズの人間が来るのはこの次の日の事だった。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 「どうじでごんな”ごどずるのぉおぉぉお!!?」 場面は移り、いつかゆっくりを放り投げた男の畑の中。 男の目の前には頬を蹴られて泣くゆっくりありすとゆっくりまりさ。 そしてそれぞれの口から吐き出されたキャベツのカケラ。 この二匹のゆっくり、かつて男に放り投げられたゆっくり達と同個体である。 その顔を真っ赤に染めて男は次の様に言った。 「お前等!二度とここに来るなと言っただろうが!」 「どぼじでえぇえぇ!? ばでぃざもあでぃずもゆっぐりじだがっただけなのにいいぃぃ!!」 「…………」 それを聞いた男は少し頭を冷ました様で、泣きわめく2匹のゆっくりに対して また1から、野菜は自分の育てたものでゆっくりのご飯では無い事を、 そしてここに来るのはお互いの為に良くないと説明しようとした。 「…いいかお前等、この前も言った事だがな ここにある野菜…いや、ご飯は俺が作ったものでな」 「…ゆ!まりさぁ!こっちだよ!」 「まりさ!こっちに来て加勢して頂戴!」 話を聞けと怒ろうとした瞬間、男は 二匹の視線の先に随分大きなゆっくりまりさが跳ねているのを見た。 そのゆっくりまりさは二匹の声に気付くと 怒った様にこちらに向かって急いで跳ねて来た。 それを見て畑の主である男は嫌な予感しかしなかった。 大きなゆっくりまりさが2匹の元に辿り着くと 男をまるで敵の様に睨んでから叫ぶ様に言った。 「ゆ”!人間さんがまたご飯を独り占めしてるんだね! いい加減ゆっくりさせてね! ご飯を守るよみんな!」 「「「えいえいゆー!!」」」 そう言って男を囲んで攻撃して来る3匹に増えたゆっくり。 2匹の体当たりは大した事は無いが、 大きなゆっくりまりさの体当たりは当ったところが少し痛むくらいの衝撃がある。 「オイお前等!やめろ!!」 急な展開に驚き、ゆっくり達から少し距離を取った男は 後ずさりながらなんとか冷静さを取り戻し、 こちらに向かって跳ねて来るゆっくり達を見ながら 前々から考えていた事を頭の中で纏めようとしていた。 「ゆっくり!ゆっくり!」 「…………」 そうする事は悪い事なのだろうか? 目の前のゆっくりを殺す事は悪い事なのだろうか? 山に住むゆっくりは人間と違って山の中のルールに従う野生動物と同じだ。 俺が稀に殺す機会のあるその野生動物と目の前のゆっくりを区別している理由は何だろう? 同じ言葉を使う?それは何の意味があるだろうか? 数瞬の内に生まれた疑問に対して、男は ゆっくりまりさからのふくらぎへの噛み付きの痛みの御陰で 強引ながらも答えを出せた。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 男の視線の先にあるのは広がった餡子やカスタードに段々と集っていく、蟻の行列。 そして痙攣する大きなゆっくりまりさ。 激情にかられてやってしまったと少し嫌な気分になったが それも大したものでは無かった。 「ゆ”っ……ゆ”っ……ゆ”っ」 「………………」 痙攣している大きなゆっくりまりさはまだ生きている。 いっそのこと楽になって貰おうかと男は思ったが、 かつて他所の村から来た男に聞いた話を思い出して止めた。 『近くの山の中のどっかに群れがあるんだよ どこかって?見つけるのは簡単だ 捕まえた一匹を群れまで道案内させりゃいいんだからな』 その言葉を思い出してから男は一つ後悔した。 それは小さな方のゆっくりを殺さずに残しておけば良かったと言う事。 コイツでは大き過ぎて持ち運びに苦労する。 そんな事を考えていた男がふと、廃屋のある方向に目を向けると このゆっくりよりも小さそうなゆっくりが廃屋の周りで跳ねているのが見えた。 縛る事で動けなくなるのかどうかは疑問だったが、 男は縄を用いてボロボロのゆっくりまりさを縛って倉庫に置くと ゆっくりと廃屋の方向へと歩いていった。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 「ゆっくり!ゆっくり!」 「ゆっくりしていってね!」 廃屋の前の野原で追いかけっこをして遊ぶゆっくりありすとゆっくりれいむ。 口を開かないというのもゆっくり出来ないと感じる4匹のゆっくりは 許された只一つの言葉『ゆっくりしていってね』だけは喋る様になっていた。 それは不思議な感覚だった。 まるでそれが元々の自分達の言語だったかの様に、 最近ではその言葉だけで4匹の間では大体の意思疎通が出来る様になっていたのだ。 「ゆっ?」 「「ゆゆ?」」 二匹はその体に影がかかった事に気付き、その視線を上げた。 その先に居たものは知らない人間。 それも成体の人間、先程の男である。 「「ゆ”ゆ”ーーーー!!」」 「あっ!おい、待て!」 ゆっくりれいむとゆっくりありすは今度は恐怖から 男が驚く程の叫び声を上げると廃屋の玄関へと跳ねていった。 4匹のゆっくり達が今まで少年達に対して、それ程怖がらずに相手出来ていたのは かつて群れを滅ぼした人間よりもずっと小さかったから。 そういう所もあったのだ。 あの群れの崩壊の日から、久しぶりに成体の人間を見た2匹は 男から何かゆっくり出来ないモノを敏感に感じ取り、 ぱちゅりーとまりさが昼寝している廃屋の中へと、 そして少年達のいる廃屋の中へと入っていく。 それを追って男も廃屋に入っていった。 「……? こんなトコで何やってんだお前…」 「ちゃ…チャンバラごっこ… 父ちゃんこそ何やってんの?」 「「………………」」 「ゆっ…ゆっ…」 父親に秘密基地とチャンバラごっこを見られた少年と ゆっくりを追って子供達の秘密基地に入って来た、その父親との気まずい空気の中 ゆっくりれいむとゆっくりありすの泣き声だけが静かに響いていた。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 「コイツ等はそんなのと絶対そんなのと違うって 野菜も食わないし、それに人間の言葉だって喋んないじゃん」 「つってもなぁ…」 「ほら見て、野菜食べない 最初からこうだったんだって、そうだろ皆!」 差し出されたキュウリから逃げる様に顔を背けるゆっくりれいむ。 そして少年の言葉に頷く周りの少年達。 この時、既に4匹のゆっくりは少年達の秘密基地のマスコット的存在となっており、 少年達は自分達の秘密基地であるこの廃屋に住み着いた (と言ってもぱちゅりーが動けないだけだが)4匹のゆっくり達と 『秘密を共有している』という意識から仲間意識を持つ様になっていた。 男がこのゆっくりを捕らえようとしていると知ったその息子は 4匹のゆっくりを守る様に父親を説得し始めたのだ。 「ホントだ…ゆっくりってのも色々あるのかね?」 「でしょ?」 先程のゆっくりだったら迷わずキュウリを口に含んだ事だろう。 それに廃屋の玄関で会った時から今に至るまで 4匹のゆっくり達は怯えた視線を男に送るばかりで何も喋らない。 目の前でゆっくりはまるで先程のものとは別生物の様だ。 そう思った男は 何もこんなにゆっくりを保護しようとしている息子から 無理にゆっくりを捕らえる事も無いと考え、 先程の2匹のゆっくりに向かってごめんなと謝ると 今度は唯一他のゆっくりと姿の異なるぱちゅりーが気になって目を向けた。 「………」 「ゆっくりしていってね…?」 無言でこちらを見つめる男に怯えながら 取り敢えずの挨拶を済ませたぱちゅりーは、 返事をしない男に対する恐怖でまたその身を強張らせた。 「何だよアレ?包帯? お前等、あんなのをゆっくりに巻いてたら動けなくなるんじゃねぇの?」 「あぁ、それは怪我してたみたいで… でももう治ってるかも ちょっと解いてみようぜ」 少年の手がぱちゅりーを素早く持ち上げて包帯を解き始めた。 何重にも巻かれた包帯が床に落ちてとぐろを巻いていく。 「む…きゅ?」 「怪我、もう治ってるみたいだな」 そう言って少年はぱちゅりーを床に置いた。 数日ぶりに露になったぱちゅりーの口から下の体。 包帯から解放されたぱちゅりーは開放感と共に、 その裂けかけていた底部が既に治っている事を実感した。 「ゆ…ゆ…」 「ん?」 「ゆっくりしていってね!」 久しぶりに言った本心からの『ゆっくりしていってね』 この少年がぱちゅりーの怪我を治したわけでは無かったが、ぱちゅりーは 目の前の少年がいつからか自分を縛る様になった鎖を解いてくれた様な気がしたのだ。 その喜びからぱちゅりーは少年に言いたくなったのだった。 ありがとうという意味の『ゆっくりしていってね』を。 その意味を理解したのか、していないのだろうが 少年は頭を掻くと父親に耳を引っ張られながら 畑仕事を手伝いの為に廃屋から連れ出された。 そしてその後ろを子犬がトコトコと付いていった。 この日を境にぱちゅりー達は少年達にだけは信頼を置く様になり、 夕方に来る彼らに対して『ゆっくりしていってね』と歓迎する事さえする様になった。 結局4匹のゆっくりは、ぱちゅりーの底部が治る事で いつか見つけたゆっくりプレイスに戻れる事も出来る様になったが それはせずに廃屋の中で暮らす様になった。 廃屋に来る人間はゆっくりしてるし、この廃屋も雨風も通さず、 ご飯も周りにあり、4匹全員で住める立派なゆっくりプレイスだと分かったからだ。 4匹は少年達以外の、成体の人間に対しても、 いくつかの事件を通じて段々と心を開く様になっていくが、それは別の話である。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ それから数日後の山の中。 村の男達は数人で山道を歩いており、 その中の一人が縄で縛られた大きなゆっくりまりさの縄を掴んで乱暴に揺すっていた。 「ゆぎいいぃいぃぃ!!だずげで!! ゆるじでえぇえぇ!!」 「うるさいな全く… ホレ、次はどっちだ?」 「ごご!ごごの広場に皆がいる”よ”!!」 「おぉ、アレか? 本当だ居た居た オイ皆!こっちだこっち!」 「ゆ?皆!人間さんが来たよ! ゆっくり挨拶してね!」 「「「ゆっくりしていってね!!」」」 「…………」 男達は冷めた目つきで挨拶をするゆっくり達を見渡した。 ぱちゅ達の抜けた時点ではまだ20数匹は居た群れの ゆっくり達の数は既に10匹ちょっとまで減っていた。 『狩り』に行った際に段々と始末されていったからだ。 「オイ、お前等全員これを見ろ」 そう言った男が手の中で暴れるゆっくりまりさを 集まっているゆっくり達に向かって放り投げる。 「「「ゆ…?」」」 ズザーッと音を立てて着陸する大きなゆっくりまりさ。 実はこのゆっくりまりさ、この群れのリーダー的存在だった個体だ。 「「「まりざああぁあぁ!!?」」」 「「どうじでええええぇえぇえぇ!!?」」 ゆっくり達の悲鳴に眉を顰めた男は 今度は背負った籠から齧られたキャベツを取り出す。 かつてゆっくりに齧られたキャベツだ。 「ゆ!人間さん!それをれいむにゆっくり頂戴ね! そうしたらおじさんの事ゆっくり許してあげるよ!」 そのキャベツを見てポンポン跳ねて男に近づいて来るゆっくり達。 そのゆっくり達に教え込むように男は説得を始めた。 「…いいか、そこのゆっくりまりさはこの野菜を食べたからこうなった これから俺等人間の元に来てこの野菜を食べる奴は」 「ゆぴ」 男の説得が終わるまで待たずに 一人の男が集まって来たゆっくりを一匹踏み潰した。 説明を始めようとしていた男は驚いた風も無く ゆっくりを踏みつぶした男に顔を向けた。 「ゆ”ゆ”!?」 「もういいだろそんなマネは とっとと終わらせて戻ろうぜ」 「れいむぅぅぅうぅぅうぅ!!?」 「この前2匹も殺しておいてなんだが 丁寧に長い時間かけて恐怖を絡めながら教えれば きっといつかは聞く様になると思うんだがね…」 「どぼじでごんなごとずるのぉぉおおぉおおぉお!!?」 「来る前に決めていた事だろ? …それにそんな時間掛けても俺等には何の得も無い」 「ゆっぐりでぎない人間はゆっぐりしねえぇぇえ!!」 「全部踏みつぶせば解決する事なんだからな」 この群れのゆっくり達にとって、それは気付きようも無い事だった。 人の言葉を理解出来なければゆっくりまりさは 人間に群れの場所や情報を教える事も無かった事に。 人と同じ言葉を話さなければ人を怒らせる事も無かった事も。 この日群れは壊滅し、以来この村は 畑を荒らす他のゆっくりの群れに対しても 他所の村がそうする様に群れ単位で責任を取らせるようになった。 ゆぎゃああぁあぁぁあぁ!!! 「ゆっくりー! ゆっくりしていってね?」 『れいむ、今何か聞こえなかった?』 「ゆっくり!ゆっくりしていってね!」 『分かんないよ!ゆっくりしていってね!』 その頃4匹のゆっくりは廃屋の中で、どこまでもゆっくりしていた。 いつしか4匹の喋る言葉は『ゆっくりしていってね』の中の10文字だけとなり、 それだけで会話をする様になっていた。 不思議な事に、かつて使っていた言葉を使って話す事はもう出来なくなってしまったが、 そんなものはもう4匹のゆっくりにとってどうでも良い事だった。 日が昇ってからゆっくりと廃屋の外に出て、 その辺りに生えている雑草をついばみ、たまに『お煎餅』を貰う。 たまにあの少年やおじさん達がくれる『お煎餅』は凄くゆっくり出来る。 お腹が膨れたら4匹揃って横になってお昼寝をする。 そしてお昼過ぎに起きては皆で遊んで、 夕方になったら廃屋の中で少年達と遊んで、帰っていくのを見送ってから また巣で食べる為のご飯を口の中や帽子の中に詰めて廃屋の中へ持ち帰るのだ。 どこまでも争いの無い平和な廃屋の中。 4匹のゆっくりは皆、幸せ一杯に暮らし、 どんな時でもゆっくり出来るようになった。 ー完ー ーーーーーーーーーーー後書きーーーーーーーーーーーーーー 前作がゆっくりボールマンさんの作品と余りに被ってて恥ずかしかった… ボールマンさんすいませんでした。 このSSに感想をつける
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『人間の世界でゆっくりが見た夢(下)』 五、 ゆっくりたちが夜の路地裏を這いずり回る。それは希望に満ちた行進であるはずだった。状況を飲み込めていない多くのゆっ くりたちはともかく、ぱちゅりーたちの表情は暗い。曲がり角の向こう側。電柱の陰。自分たちの視界に映らない場所のそこか しこに脅威が潜んでいるような気がしてならなかった。堤防への道筋は何度かちぇんが群れのゆっくりたちに教えていたので、 向かう方向だけは統一されている。しかし、足並みは揃わない。 だが、考えようによっては不幸中の幸いとも言える。有事の際、固まって行動していたら一網打尽にされるかも知れない。暗 がりの中を進むぱちゅりーたちは街灯の明かりだけを頼りにあんよを進めていた。 「ゆぅ……くらくてよくみえないよ……」 「わかるよー……。 なんだかいつもとちがうばしょにむかってるようなきがするんだねー……」 もちろんそれは夜の闇が見せる錯覚だ。ゆっくりたちは確実に堤防へとあんよを向けている。しかし、昼と夜の風景の違いが まりさやちぇんの感覚を狂わせているのだ。不安な気持ちがあんよを鈍らせてしまう。何度も何度も後ろを振り返りながらずり ずりと移動することになった。その分、ぱちゅりーとありすは周囲の様子に気を配る事ができる。 刹那。 「ゆ゛っぎゃあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」 「?!」 湿った空気を切り裂く叫び声。ゆっくりたちが思わずあんよを止めた。 「れみりゃだぁぁぁぁ!!!!」 「……ッ!?」 夜はれみりゃの時間だ。それは以前ぱちゅりーも語っていたことである。人間の動きにばかり気を取られていたせいか、捕食 種の存在にまで頭が回らなかった。 れみりゃは笑顔で固定されたような表情を浮かべ空を飛び回り、地を這うゆっくりを貪り食らう夜の帝王である。辺りが暗い せいでれみりゃが何匹いるのか、どこにいるのか、それさえも把握できない。 「い゛だい゛ぃぃ!! やべでぇ!! ありずはお゛い゛じぐないわ゛ぁ゛!!!」 れみりゃがありすに牙を突き立てたようだ。泣き叫ぶ声がぱちゅりーたちの元にまで届く。暗闇の中、散り散りになって逃げ 惑うゆっくりたち。出発してから一時間と経過しないうちに群れは離散してしまった。れみりゃは三匹ほどで路地裏の上空を旋 回している。動きの遅いゆっくりを狙って急降下し一撃で柔らかい皮を食い破っていく。 「ゆああ!! こっちこないでね!! ぷくー……んっぎゃあああああ!!!!」 「れいむのがわいいちびちゃんがあぁぁぁ!!!!」 ゆっくりの叫び声に気づいた付近の住民が家から飛び出してきた。事態は最悪の展開へと変化していく。しかし。れみりゃも 人間もゆっくりたちを深追いする事はなかった。 雨が降り始めてきたのである。日中は薄曇りで冷たく湿った風が吹いていた。不幸は終わらない。路地裏にゆっくりが雨を凌 ぐような場所はなかった。何匹かのゆっくりは意を決して人間の家の庭に入り込んだり、植え込みの中に顔をねじ込むような形 で雨を遮っている。突然降り出した雨に対応できなかったゆっくりたちは体の小さな赤ゆを中心に次々と溶けていった。ふやけ た皮から中身の餡子が漏れていく。 「ゆあああ! まりさのなかみさん!! ゆっくりしないでもどってね!!!!」 「もっちょ……ゆっくちしちゃかっちゃ……」 「ちびちゃん! おかあさんのぼうしのしたにはいってね!!!」 「あんよがうごきゃにゃいよぉぉぉぉぉ!!!!」 「だずげでぇぇぇぇ!!!!」 四方八方からゆっくりたちの泣き叫ぶ声が上がる。絶叫と悲鳴による荘厳なオーケストラをバックミュージックにぱちゅりー たちはガタガタ震えていた。 ぐずぐずに溶けて動けなくなったゆっくりが雨に打たれ続けその命を散らしていく。あまりにも儚い命だ。人間に追われ、捕 食種に狙われ、雨に打たれても消えてゆく。これ以上に脆弱な存在が果たしてこの世に存在したであろうか。それでも、ゆっく りたちは生きる事を願う。世界は自分たちに対して決して優しくはなかった。 「まりさ……」 ちぇんが見ている方向に顔を向けるとそこには街灯に照らされたゴミ捨て場があった。堤防付近に設置されていたものである。 それに気づいたのかまりさとちぇんが顔を見合わせて「ゆっくり~!」と歓喜の声を上げた。ぱちゅりーたち四匹のゆっくりが 休んでいるのは路上に駐車していた車の下だ。水は近くの側溝に流れていくためにあんよが水に濡れることもない。落ち着いて 避難場所を探すことのできたゆっくりたちの大半は降り続く雨を見つめながら互いに身を寄せ合っていた。 「もう、おくちのなかからでてきてもいいよ」 一部のゆっくり親子は赤ゆを口の中に避難させることで難を逃れたようだ。 口の中に入ったまま親ゆが溶けて死んでしまい、そのまま一緒に溶けて命を落とした赤ゆも決して少なくはない。側溝の下に 潜り込んで雨を凌いだつもりが流れ込んできた水によって命を奪われたゆっくりもいた。 「ぱちゅの……せいだわ……」 「とかいはじゃないわ! ぱちゅりーのせいじゃないわよ!」 「そうだよ! すぐにでもしゅっぱつしないとにんげんさんたちにゆっくりできなくさせられちゃうところだったよ!」 「そうだねー……。 あかるくなってからかわさんをめざしてもにんげんさんにみつかってしまったとおもうよー……」 本心でかけられた言葉がぱちゅりーの心を熱くさせる。 「ゆっくり……ありがとう」 その一方で、黒服と所長は大きめのモニターに映し出された街の地図とその中で点滅するマークを見つめていた。点滅してい るのはぱちゅりーに付けられた発信器の位置を示している。ぱちゅりーが夜のうちに移動を始めたことは保健所サイドに筒抜け であった。 「――――おそらく、野良ぱちゅりーと一緒に廃材置き場に住み着いていたゆっくりの殆どが……あるいは全部が行動を共にし ているでしょう」 「危険を察知でもしたのか……?」 「そこまではわかりません。 しかし、あの野良ぱちゅりーたちはどうやら川を遡って森に帰ろうとしているらしいですね。 どうしてなかなか知恵が回る」 「じゃあ明日の駆除は……」 「街の中心部と河川敷を中心に行えば問題ありません。 詳しい作業場所の説明は当日行うとしましょう。 私は野良ぱちゅり ーの動きを見ておきます。 あなたは先に休んでいてください」 「……わかった」 所長が部屋を出て行く。金バッジぱちゅりーは既に眠りについていた。 「どこか一箇所に追い詰める必要があるな……」 黒服、いや公餡のやり方は徹底されているようだ。ゆっくりを対等な存在と見て対策を練っている。事実そこまでしなければ 野良ゆを全滅させることはできないだろう。この街の実情を見ていればそれが理解できる。黒服が注目したのは川に架かる三本 の橋。 「……討ち漏らしたゆっくりは、ここで死んでもらうとするか……」 早朝。 小鳥の囀りに目を覚ましたぱちゅりーが寄り添う三匹をそっと起こす。雨は上がっていた。通り雨だったようである。気がつ けばずりずりとあんよを這わせる別のゆっくりたちがちらちらと視界に入ってきた。ぱちゅりーたちも無言のまま、車の下から 這い出す。そして堤防へ向かってぴょんぴょんと飛び跳ね移動を開始した。アスファルトの階段を登って河川敷を見下ろす。大 きな川が下流に向かって流れていた。ぱちゅりーたちが堤防を上流へと向かって動き始める。気がつけば数匹のゆっくりが同じ 方向へあんよを這わせていた。川の流れる方向とは反対へ進むという事は記憶していたのだろう。再三ぱちゅりーが語って聞か せていたおかげと言える。 「みかけないゆっくりもいるね」 廃材置き場に住むゆっくり以外のゆっくりも同じような行動を起こしていた。おおかた、何匹かのゆっくりが街で見かけたゆ っくりを脱出に誘ったのだろう。川沿いに百匹に僅か足りないほどのゆっくりたちが集まってきている。一様に上流へと向かっ てジャンプをしていた。 時計が午前七時を示している。 街の中心部に集められた保健所職員とボランティアの一般参加者に拡声器を使って一日の方針を伝えるのは所長だ。傍らには 黒服が控えている。 「――――であるからして、我々は一刻も早く野良ゆっくりを一匹残らず駆除しなければならいのであります!!! それでは、 街の中心部と河川敷に別れて作業を開始してください!!」 説明が終わると同時に一斉に人間が散開し始めた。手にはゴミ袋と火挟みが握られている。街の要所要所にゆっくり回収専用 のトラックが停車していた。普通の野良ゆであればまだ活動を開始していない時間である。 「おい……」 一人の参加者が木の下に不自然に積み上げられた枝やビニール袋を発見した。忍び寄りそれをひと思いに取り払う。突然おう ちの天井部分を破壊されたまりさ親子は飛び起きて叫び声を上げた。 「ゆわぁぁぁ!!!」 「や、やめてねっ! れいむたちのおうちをこわさないでねっ!!!」 「おきゃーしゃん、きょわいよぉぉぉ!!!!」 「ぷきゅー!!」 無言で火挟みを二匹の親ゆっくりに突き立てる。引き裂けんばかりに口を開いて絶叫する親ゆを執拗に殴打する人間たち。二 匹の親ゆはすぐに死んでしまった。三匹の赤ゆはわけもわからずガタガタ震えている。小さな瞳からぽろぽろと涙をこぼす赤ゆ たちを人間たちは容赦なく踏み潰してゴミ袋の中に放り込んだ。 「ゆんやぁぁぁ!!! こっちにこないでねっ!! どうしてついてくるのぉぉぉ?!」 逃げ惑う数匹のゆっくりを追いかけて殴りつける。 「ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛っ、……」 全身を駆け巡る激痛に息を漏らすれいむ種が動きを止めた瞬間、揉み上げを掴まれアスファルトに叩きつけられた。顔の半分 が潰れたれいむ種は即死である。壊れた饅頭をゆっくり回収車の中に投げ込んだ。 「ごわいよ゛ぉぉぉ!!」 成体ゆっくりも子ゆっくりも、目の前で繰り広げられる虐殺劇に怯え震えている。ゆっくりが必死に作ったおうちはいともた やすく破壊され、その中で泣きながら命乞いをするゆっくり親子を一匹残らず叩き潰す。物陰の奥に隠れて叫び声を上げるゆっ くりも引きずり出して息の根を止めた。公園の敷地内を逃げ回る赤ゆも一匹ずつ追い詰めて正確に潰して回る。草の根をかき分 けてまで生き残りのゆっくりを探す人間たちの行動が、いかに本気で一斉駆除を行っているかを窺わせていた。いつもならばや り過ごせていたはずのゆっくりも隠れ場所を暴かれて絶望しながら死んでいく。 「どぼじでごんな゛ごどずるのぉぉぉ??!!!」 悲痛な問いかけに答える人間は誰一人としていない。 「だずげでぐだざい!! おでがいじばずぅぅぅ!!!!」 赤ゆたちを庇うように前に出て額を地面にこすりつけるゆっくりの頭をそのまま踏み潰す。目の前で絶命した母親ゆっくりを 見て泣き声を上げる前に二匹の赤ゆは潰されてしまった。街中のゆっくりたちが悲鳴を上げながら蜘蛛の子を散らしたように逃 げ惑う。人間たちはどこまでも追いかけてきた。どこに逃げても人間たちが待ちかまえている。ボランティアの参加者の中には バールや鎌などといった個人の“道具”を持参している者もいた。それぞれの凶器が振り下ろされゆっくりが次々と弾け飛ぶ。 何を言っても聞き入れる様子のない人間たちに、野良ゆたちは恐れ慄いていた。恐怖でしーしーを漏らす成体ゆっくりも淡々と 潰されていく。駆除から逃れようと交差点に飛び出したゆっくりが四トントラックにはねられて爆散した。草むらに顔だけ突っ 込んで尻をぶるぶると震わせているゆっくりのあにゃるに鎌を突き刺して引きずり出すと、痛みに泣き喚いてのたうち回るその ゆっくりを動かなくなるまで徹底的に殴打し続けた。バラバラに砕かれる歯。千切れる皮、揉み上げ、髪の毛、伸ばした舌。そ こにゆっくりという生き物が存在した痕跡そのものを完全に消し去ろうとせんばかりの勢いで叩き伏せる。 「もう、やめてくださいぃぃぃ!!! まりさたち、ゆっくりしてただけなのに……どうしてこんなことするのぉぉぉぉ?!!」 街のあらゆる場所からゆっくりたちの声が上がった。もう、全てが手遅れだった。ゆっくりたちは人間を完全に敵に回してし まっていたのである。 叫び声は風に乗って河川敷にまで微かに届いていた。河川敷、堤防の上、堤防脇の道路。それぞれのルートでゆっくりたちが 逃げ続けている。ゆっくりたちの全力疾走は、人間が早歩きをする程度のスピードしかない。逃げ切れる道理はなかった。事実、 ろくに隠れるスペースもない河川敷ではあらゆる場所でゆっくりが激痛に身を捩らせ叫び声を上げている。地獄絵図だった。河 川敷に散らばるゆっくりの残骸。飛び散った餡子。転がる目玉。千切れた体を必死に動かそうともがき続ける赤ゆ。パニックに 陥り川の中に飛び込んで逃げようとしたゆっくりたちの飾りが下流に向けて流されている。それでもなお、駆除活動は続いてい た。顔面がボコボコに凹んでいながらもかろうじて生きている野良ゆが人間の目を盗んでその場を逃れようとしている。人間た ちはそれさえも見逃さなかった。まともに動くことすらできないゆっくりの顔に何度も何度もハンマーで叩きつける。殴られる たびに揉み上げをびくんと動かし、「ゆ゛っ」と短く呻き声を上げた。 「もうやだぁぁぁ!!! おうちかえるぅぅぅぅ!!!!!」 在りもしない居場所に帰ると叫ぶ野良ゆを二人がかりで押さえつけて殴り続けた。 「ゆ゛ぶっ!! ゆぼぉっ?! ゆ゛げぇッ!!! ゆ゛ぐぅっ!!! ゆ゛んぎい゛い゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!!! ……い、い゛ だい゛よ゛ぉ゛ぉ゛!!!!!」 一斉駆除の説明を受ける際に、ゆっくりは完全に死ぬまで殴り続けるように言われた。体の小さな赤ゆを一匹ずつ踏み潰すの は面倒になってきたのか、摘み上げられた赤ゆが次々と川の中に投げ込まれていく。 「おしょらをとんでりゅみちゃ……ゆぴゅぇッ?! ゆんやぁぁぁ!!! おみじゅしゃんはゆっくちできにゃいぃぃぃぃ!!!! ……ゆ゛ぶぶぶぶぶぶ……」 「ゆっくりにげるよ!!! そろーり! そろーり!! どぼじでにんげんざんがいる゛の゛ぉぉぉぉ?!!」 河川敷を逃げ回るゆっくりたちはほぼ完全に包囲されていた。それでも駆除は追いつかない。街の中心部から逃げてきた野良 ゆたちが次々に合流していくからだ。駆除に参加していた人間たちにも疲労の色が見え始める。 (信じられん……。 こんなにたくさん……いやがったのか……) ゆっくりの数は人間たちの想像していた絶対数を遙かに上回っていた。一体これほどの数のゆっくりがどうやって街の中に潜 んでいたのだろうか。人間たちは苦情の件数やニュースで見かける野良ゆの集団などでしかゆっくりの総数を把握してなかった。 表舞台に現れて世間を騒がせていた野良ゆは全体のほんの一部に過ぎなかったのである。 駆除に参加した人数は約七十人。それだけの人数で野良ゆを全滅させるのは物理的に不可能だった。保健所所長ががっくりと 肩を落とす。 「全滅させるのは無理だ……数が多すぎる……」 「今日一日で全滅させる必要はありません。 大切なのは一般市民にゆっくりが駆除すべき対象である事を知らしめることです よ」 「……どういうことだ?」 「今、この街の市民にとってゆっくりを駆除することは“常識”になりつつあります。 その風潮はやがて“見かけたゆっくり はまず潰す”という意識に変わっていくでしょう。 街のあちこちにゆっくり用のゴミ箱を設置するといい。 ゆっくりは動き 回るゴミでしかないという考え方を植え込んでいけばいいんです。 ……ゆっくり、とね」 黒服が冷たい笑みを浮かべた。 なおも続くゆっくりたちの絶叫。ボランティアの一般参加者も粘り強く駆除に当たっていた。思惑は成功していると言えるの かも知れない。これまでのように泣きすがるゆっくりに慈悲をかける者はいなくなった。 「どこににげればいいのぉぉ?! ゆっくりしないでおしえてねっ!!! しんじゃうよぉぉぉ!!!!」 「おきゃーしゃあああん!!! どきょぉぉぉ?!! ひちょりにしにゃいでぇぇぇ!!!」 「ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛っ……」 駆除開始から既に二時間が経とうとしている。休日とはいえそろそろ街が動き始める時間帯だ。街の中心で一日中駆除を行う 事はできない。駆除の舞台は街の中心部から河川敷へと移っていった。あれだけ潰したにも関わらず河川敷では今もなお百をゆ うに越えるゆっくりたちがぴょんぴょん飛び跳ねて逃げ続けていた。ゆっくり回収車も堤防脇の道路に縦列駐車で停まっている。 川の下流に流れていくゆっくりの飾りの数もどんどん増えていく。 「ゆんやぁぁぁ!!! おきゃーしゃんもいっしょじゃにゃいちょ、いやぁぁぁぁ!!!」 「ちびちゃん。 ゆっくりりかいしてね。 ちびちゃんだけでもゆっくりにげてね!!!」 一匹のまりさ種が自分の帽子の中に二匹の赤ゆを入れてそれを川に浮かべていた。このまりさ種は命の次に大切とされる帽子 を犠牲にしてまで我が子を守ろうとしていたのだ。そこへ人間が迫ってくる。 「……ゆっくりしていってね!!!」 まりさが口でついと、帽子を川に向けて押しやる。岸から離れていく帽子。その中から赤ゆたちが飛び跳ねてまりさに助けを 求めていた。だがまりさは一瞬で人間によって叩き潰されてしまう。まりさの死骸はそのまま川に蹴り込まれた。 「ゆんやああぁぁぁ!!!!」 長い棒きれを帽子に引っかけて止める。 「や、やめちぇにぇっ!! やめちぇにぇっ!!!」 何をされるかの予想はつかないが嫌な予感だけはするのだろう。必死になって懇願する赤ゆたちの入った帽子を棒きれで傾け て転覆させた。それからしばらく何か喚いていたが、赤ゆたちが水面から顔を出すことは二度となかった。 「ゆはぁっ、ゆはぁっ……!!」 ぱちゅりー以下三匹のゆっくりたちはあえて路地裏の中を通って川に並行するような形であんよを動かしていた。数多の仲間 が次々と目の前で潰されていくところが瞼に焼き付いている。涙目のまま、無心でひたすらアスファルトの上を跳ね続けた。 「ゆっくりがいたぞ!!!」 自分たちの遙か後方から人間たちの声が上がる。四匹とも死を覚悟しながらもあんよを止めることだけはしなかった。足音が どんどん近づいてくる。後方を移動していたまりさとありすはお互いの顔を見合わせて頷くと、あんよを止めて迫る人間へと向 き直った。ぱちゅりーとちぇんが二匹に向かって何か叫んでいる。それをかき消すかのようにまりさとありすが大声で叫んだ。 「ぱちゅりー!!! まりさたちにごはんさんをむーしゃむーしゃさせてくれてありがとう!!!」 「ありすたちはとかいはなぱちゅりーたちのことを、ずっとずっとわすれないわ!!!だから……」 「「ゆっくりにげてね!!!!」」 「むきゅぅぅ!!! だめよ!! みんなでいっしょにもりにかえるっていったでしょぉぉ?!」 「わからないよー!!! まりさもありすも、いっしょににげるんだねー!!!!」 「ぱちゅりー……。 にんげんさんにみつかったら、なかまをおいてでもにげなきゃいけない、ってぱちゅりーがおしえてくれ たんだよ」 「そうだわ。 ありすたちは……ごはんさんのおれい、これぐらいしかできないから……」 ぱちゅりーが泣きながら叫ぶ。 「いっしょにゆっくりできることのほうがだいじだわっ!!!!」 ちぇんがぱちゅりーの髪の毛を咥えて引っ張った。ぱちゅりーがずりずりと引きずられる。ちぇんはまりさとありすの決意に 応えようとしていたのだ。 「むきゅ!! ちぇん!!! はなして……っ!! おねがいよっ!!!!」 「ちぇん……ぱちゅりー……!!! まりさたちのぶんまで、たくさんたくさんゆっくりしていってね!!!!」 ぱちゅりーはそれ以上何も言わなかった。二匹があんよを蹴る。振り返ることもしなかった。後方から、まりさとありすの絶 叫が上がる。涙が溢れて止まらない。ちぇんも、ぱちゅりーも必死になってあんよを動かし続けた。まりさとありすの分まで絶 対に生きてみせる、という強い意志の下。 長い長い路地裏を抜けた。目の前に再び堤防が現れる。その更に前方。大きな橋が見えた。その橋の向こう岸に街の中では見 たことがないような緑色の世界が広がっている。 「……もりだわ……っ!!」 確証はなかったが確信があった。野生で暮らしていた母親ゆっくりから受け継いだ知識がそう答えを告げている。逃げ切った ゆっくりたちも同じ場所を目指しているようだった。その数はもはや三十匹にも満たない。人間たちもここまでは追ってこない ようだ。逃げ切った。どのゆっくりもがそう思っていた。 「ぱちゅりー……っ!!」 「ちぇん……っ!!!」 二匹が顔を見合わせる。目指した場所はもうすぐそこだ。自然とあんよを蹴る力が強くなった。 「なんだと?! 橋を封鎖するとはどういうことだ!! 聞いてないぞ!!! 私たちの判断だけでそんなことができるわけが ないだろう!!!」 保健所所長が語気を荒げて黒服に怒鳴りつけていた。黒服は鬱陶しいと言わんばかりの表情を浮かべ、一瞥する。 「三本ある橋の一本だけです。 それに既にこちらから話は通してあります。 あなたたちはそのまま駆除を続けてください」 「馬鹿かお前は!! ゆっくりがどの橋を渡るかなんてわからんだろうが!!! 自然に帰すのはマズイと言っていたのはお前 だろう!!!」 「わかりますよ」 「……何?」 「ゆっくりが渡る橋は……いや、“渡ることのできる橋”は一本しかありません」 「くっ……」 「私たちもそろそろ行きましょう。 駆除はもうすぐ終わりです。 あの野良ぱちゅりーにつけた発信器も回収できるなら回収 しておきたい」 どこまでも冷静な黒服に苛立ちを隠しきれない保健所所長は顔を真っ赤にしながら、車に乗り込んだ。 三本の橋。それは街の境目を流れる一級河川に架かる巨大な橋だ。当然、交通上重要な役割を果たしている。それを三本とも 封鎖などしたら様々な方面から苦情が来るだろう。公餡に依頼を出しているとは言え、作業の責任は保健所側が担うことになっ ていた。それなのに公餡からやってきた黒服の若造は平気で橋を封鎖するなどと進言してくる。大々的に報道されていたおかげ で街の住人たちは今回の駆除に注目をしていた。下手に失態などを見せてしまえば批難の矢面に立たされるのは間違いない。 (ゆっくりが……っ!!! ゆっくり如きが……ッ!!!!) 拳を握りしめる保健所所長の横顔を横目で見ながら黒服が小さく笑う。 「以前、テレビ局の人間にも言ったんですがね……」 「なんだ?!」 「――――あなたたちはゆっくりの事を知らなさすぎる」 黒服たちの乗ったライトバンが一本の橋の前で止まった。既に橋は封鎖されているようだ。しかしこの付近に人員は配置され ていないようである。 「人間をあえて配置しないことでゆっくりたちにこの橋を渡るように仕向けるという事か……子供騙しな」 「いえ……。 無駄な人件費を削減しただけですよ」 飄々と答え続ける黒服の態度に保健所所長が突っかかろうとした時だった。 「来ましたよ」 「なに?」 ぱちゅりーとちぇんを先頭にゆっくりたちが逃げてくる。真っ直ぐに黒服たちの方向へと向かっていた。あれから生き残りが また合流したのか数は五十前後にまで増えているようだ。橋はもう目の前に迫っている。 「ぱちゅりー!! もうすこしだよ!!!」 「むきゅ……ッ!! むきゅ……ッ!!!」 体力的にも精神的にもぱちゅりーは限界が近づいていた。そんな中でもぱちゅりーの思考が止まることはない。橋を見かけて 人間が追って来なくなったときには嬉しくてはしゃいでいたが、それに対して違和感を覚えていたのだ。 (どういうことかしら……? あんなにたくさん、にんげんさんがいたのに……おいかけてこないなんて……) 目の前の橋にも疑問符が打たれる。一台も車が通っていない。 (にんげんさんのすぃーが……ひとりもいないのだってなんだかおかしいわ……) ぱちゅりーが目を見開いた。それからあんよで地面を蹴りながら叫ぶ。 「みんなっ!! “このはしはわたってはいけないわ!!!”」 「どぼじでぞんなごどい゛う゛の゛ぉ゛ぉ゛?!!」×約50 「ぱちゅりー! ちぇんにもわからないんだねー。 せつめいしてほしいよー」 「にんげんさんも、すぃーもいないなんてへんだわ!! まるでぱちゅたちにこのはしをわたらせようとしているみたいだもの!」 「……ッ!!」 「それに……すぃーのなかのにんげんさんはぱちゅたちをおいかけてきたりはしないわっ! いままでだってそうだったはずよ!」 道理だ。わざわざ車から降りてまでゆっくりを駆除しようとする人間はいないだろう。それどころかそんな事をすれば大事故 に繋がる危険性だってある。逃げ続けるゆっくりたちがぱちゅりーの事を口々に賞賛した。あの橋は間違いなく罠だ。人間が自 分たちを捕まえるためにわざと渡らせようとしているに違いない。 「あのはしをわたるひつようはないわっ! つぎのはしをわたりましょう!!!」 「ゆっくりりかいしたよ!!!」×約50 ぱちゅりーたちが無人の道路を横切ろうとする。その様子をライトバンの中から見ていた保健所所長がついに咆哮を上げた。 「この役立たずが!!! 見ろ!!! ゆっくりどもが通り過ぎて行くぞ!!!! お前の頭はゆっくり以下か!!!!!」 保健所所長に耳元で怒鳴りつけられた黒服はたた一点を見つめて動かない。静まり返る車内の空気に耐えられなくなったのか、 保健所所長が黒服の見る先へと視線を向けた。開いた口が塞がらなくなる。 「馬鹿……な」 ぱちゅりーたち総勢五十匹ほどのゆっくりたちが道路の中央で立ち止まっている。まるで見えない壁でも立っているかのよう だった。全てのゆっくりが道路を横切ることができないでいる。遅れて追いついてきたゆっくりたちの反応も同じようで、それ 以上進もうとしない。 「どういう……事、だ……」 黒服が静かに答える。 「“死臭”ですよ」 「死臭……?」 「保健所のガス室に初めて入るゆっくりが、なぜ“ここはゆっくりできない場所”だと分かるのか……考えた事はありませんか?」 「まさか……」 「ゆっくりは、死ぬとゆっくりにしか分からない臭いを放ちます。 人間に感知することができない臭いなので、一種のフェロ モンのようなものと私たちは考えていますが……それを死臭と呼んでいるんです」 「じ……じゃあ……」 「あの一帯にはゆっくりの死臭をかなりの濃度で散布してあります。 どれだけ知恵の回るゆっくりであっても、本能から逃れ ることはできません。 反射的に挨拶を返すのと同じ理屈で、あの向こう側へは絶対に進むことはできないんです」 「信じられん……」 しかし、道路の中央で右往左往して困ったような顔を浮かべるゆっくりたちを見る限りでは信じざるを得なかった。 ぱちゅりーたちはどうしても道路を横切ることができない。 「ゆあああ!!! ゆっくりできないにおいがするよぉぉぉ!!!」 「ゆゆっ! こっちのみちはとおれないよ!!!」 死臭は十字路の二カ所を塞ぐような形で散布されていた。ぱちゅりーたちが選択可能な道は二つしかない。一つは元来た道を 引き返す道。そしてもう一つは罠の危険性が高いこの橋を渡る道。そのとき。数台のゆっくり回収車がぱちゅりーたちに迫って きた。これまでの出来事であの車がどういう役割を果たしているかは十分に理解できている。 「れいむははしさんをわたるよ!!! ゆっくりもりにかえるよっ!!!!」 一匹のれいむがぴょんぴょんと橋の上を飛び跳ねて行くのを皮切りに、全てのゆっくりたちがその後に続いた。取り残された のはぱちゅりーとちぇんの二匹だけである。ぱちゅりーは唇を噛み締めていた。橋を見れば理解できる。あの上に自分たちの逃 げる場所はない。しかし、もはや引き返すことも叶わなかった。選択肢は全て潰されてしまっている。ゆっくり回収車から下り てきた人間がゆっくりと歩み寄ってきた。ライトバンからも保健所所長と黒服が下りてくる。 「……む、むきゅぅぅ!!!」 ぱちゅりーと黒服は初対面ではない。大人しいぱちゅりーが黒服を相手に威嚇を始めた。ちぇんも黒服の事を覚えているのか、 睨みつけたまま動かない。しかし、優先すべきは命だ。あらゆる選択肢が失われたとは言え、逃げ続ければ別な選択肢が生まれ るかも知れない。それに賭けて、二匹は橋へとあんよを蹴った。その後ろを悠然と歩いてついてくる人間たち。 橋の中央。必死に逃げ続けるぱちゅりーたちの前で一歩も動けないでいるゆっくりたちの姿があった。 「そんな……ゆっくり、できない……」 ゆっくりたちの更に向こう側に“白衣の悪魔”が待ち構えていた。後ろを振り返ると、先ほどの人間たちが少しずつ詰め寄っ てくる。橋の上のゆっくりたちはガタガタ震え始めた。挟み撃ち。橋の上でゆっくりたちはとうとう王手をかけられたのである。 橋の上を風が吹き抜けた。あまりにも静かだ。表情を見ればわかる。ここにいる全てのゆっくりたちは、間違いなく死を覚悟し ていた。 「もう理解できただろう? お前たちは街から出ることはできない。 森に帰ることもできない」 黒服が冷たく言い放った。視線が向けられた先にはぱちゅりーがいる。黒服はぱちゅりーに向かって先の言葉を紡いだようだ。 「どうして……?」 「…………」 「ぱちゅたちは、にんげんさんにつれてこられて……っ! すてられて……っ! まちでひっしにいきようとしても、じゃまも のあつかいされて……っ!! だから、みんなでもといたばしょにかえろうとしていただけなのに……っ!!! どうしてこん なことするのっ?!!」 感情をむき出しにしたぱちゅりーが叫ぶ。ぱちゅりーの言葉にゆっくりたちはぼろぼろと涙を流していた。黒服が淡々と答え る。 「簡単だ、ぱちゅりー。 それはな。 私たちが“人間”でお前らが“ゆっくり”だからだよ」 「ひどい……ひどいわ……っ! ぱちゅたちは……ぱちゅたちは……っ!!!!」 「お前たちはな。 “生きている”という夢を見ているだけの存在でしかないんだ。 夢はいつか醒めるものだろう?」 ゆっくりたちに黒服の話を理解することはできなかった。人間たちが一斉に詰め寄る。ゆっくりたちから絶叫が上がった。ぱ ちゅりーは泣きながら黒服に威嚇を続けている。ぱちゅりーに歩み寄った黒服は、取りつけた発信器を外すとそれ以上何も言わ ずに後ろを向いてしまった。その背中に思いつく限りの呪詛を浴びせる。ぱちゅりーの言葉もゆっくりたちの気が狂ったような 悲鳴で掻き消されてしまった。 次々と叩き潰されてゴミ袋の中に投げ入れられる野良ゆたち。中には逃げようとした橋の下に転落し、水面に叩きつけられて 即死してしまうゆっくりもいた。逃げる場所はどこにもなかった。身を隠す場所もない。八方塞がりで泣き叫ぶことぐらいしか 抵抗のできないゆっくりたちの命が一瞬で消えていく。ここまで必死に生きていたのは何故だったのだろうか。自分たちには夢 を見ることすら許されていないのか。 森に帰りたかった。草の上を跳ね回り、家族と一緒に頬を寄せ合い安心して眠ってみたかった。人間と仲直りをして一緒にゆ くりしたかった。ゆっくり。ゆっくりしたかった。ただ、それだけなのに。 「ちぇん……」 虐殺劇の中央。絶叫と悲鳴。水しぶきのように飛び散る餡子だけが視界に映し出される世界の中で、ぱちゅりーは想いを寄せ るゆっくりの名を呟いた。ちぇんは既に潰された後だ。ぱちゅりーの呟きには答えない。視界に人間の足が映った。見上げる。 そのまま、長い長い夢は終わりを告げた。 六、 「ゆゆっ? にんげんさん! ゆっくりしていってね!!!」 歩道を歩いていた青年と路地裏から出てきた野良のまりさが鉢合わせた。まりさは嬉しそうな笑顔でゆらゆらと揺れている。 挨拶を返してもらうのを楽しみに待っているようだ。青年は無言でまりさを抱き上げるとそのままコンクリートに勢いよく叩き つけた。笑顔のまま顔がぐちゃぐちゃになって潰れたまりさをゴミ箱の中に投げ入れる。そのゴミ箱には“ゆっくり”との文字 が書いてあった。 あの一斉駆除以来、街を這い回る野良ゆはほとんど見かけなくなった。相変わらず路地裏の奥にまで出向いて野良ゆを駆除す るようなモノ好きはいなかったが、表通りに現れた野良ゆはほぼ例外なく叩き潰されている。野良ゆ関連のニュースもめっきり 減っていた。一頃に比べて野良ゆの絶対数が少なくなっているのだろう。 泣きながら物乞いを続けていた野良ゆたちは今とな っては都市伝説のような扱いを受けていた。 突然現れた謎の生物・ゆっくり。人間と同じ言葉を喋り、見ようによっては愛嬌もあるゆっくりたちはペットとして人間たち に乱獲された。ある時期、人間とゆっくりは仲良く過ごしていたのだ。やがて人間はゆっくりを自分たちと同じような存在のよ うに勘違いをしていく。そこから生まれた悲劇は数知れない。価値観の違い。生態の違い。初めから自分たちと異なる存在だと 割り切っていれば起きなかったであろうすれ違いが、両者の間に大きな溝を作った。飽きられたゆっくりたちは街に放り出され る。 空前の飼いゆっくりブーム。そこから一斉に生まれた捨てゆ。それらが繁殖の末に生みだした野良ゆ。なぜ、野良ゆたちはす ぐに街を離れようとしなかったのか。ゆっくりもまた勘違いをしていた。自分たちゆっくりと、人間は同じ価値観を持った仲間 なのだと。今は嫌われていても、いつか必ず自分たちの事を分かってくれる。仲直りをしてくれる。そんな淡い夢を抱き、街か ら……いや、人間から離れることができなかったのだろう。人間を恐れながらも、人間を頼ろうとするのはそんな気持ちが根本 にあったからなのかも知れない。 一連の事件の発端は、人間とゆっくりによる互いの理想の押し付け合いから始まったのだという考えは、一連の事件が終わっ た後だからこそ浮かんだのだろうか。 程なくして、二度目の飼いゆっくりブームが起きる。一度目ほどの勢いはなかったが、それでもペットショップでゆっくりを 買って行く客は少なくないそうだ。いつしか、ペットショップに並ぶゆっくりたちには虚勢と避妊が義務付けられるようになっ た。飼いゆが野良ゆに無理矢理子供を作らされるのを防ぐため。そして、飼いゆが野良ゆと子供を作り、人間の知識を受け継ぐ 野良ゆが生まれるのを防ぐため。ゆっくりを本当に好きな飼い主たちはこの義務に心を痛めた。だが、過去の事件を振り返れば 異論を唱えることなどできなかったのである。 ゆっくりは、生物としてではなく、物として扱われることで、初めて幸せになれるのだ。飼いゆは、生きていると言えるのだ ろうか。飼いゆっくりは何不自由なく飼い主と過ごし、そのゆん生を終える。生きるということがどういうことかを知らないま まに。それは、夢を見続けているのと同じ事である。決して醒めることのない夢。 今日も、飼いゆっくりたちは夢を見る。……人間の世界で。 おわり 日常起こりうるゆっくりたちの悲劇をこよなく愛する余白あきでした。 あとがき 今回のお話は飼いゆっくり保護法成立過程その2ということで“去勢”を施されるに至った理由を語るものでした(駆除がメイン になってしまった感が全開ですけど……)。 人間と同じような知恵を持った野良ゆが増えるのを防ぐというのが最大の目的です。 実はまだこの段階では“飼いゆっくり保護法”自体は成立しておらず……その3でお話しする予定のバッジ制度が採用されて初め て完成となります。 御察しの方はいらっしゃるかも知れませんが、公餡に所属するゆっくりの証明である金バッジが余白世界のバッジ制度の走りです。 もっと言ってしまえば、“飼いゆっくり保護法”を作ったのは公餡です。 『俺が、ゆっくりだ! 2』で俺れいむが自分を“金バッジゆっくりで野良ゆを捕まえるための~”とか言ってたのはこういう事 なわけでした。 それでは最後まで読んでくださった方ありがとうございます。いろんなご意見・ご感想・ツッコミなど書いていただけるとありが たいのですが、感想スレのリンクの貼り方がわかりません……。だ……誰か教えてくれても、いいのよ(チラチラッ 最後に“公餡”設定を使わせていただいた絵本さん、本当にありがとうございました。 2010.06.01 余白
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『境界線 後編その3』 39KB 制裁 自業自得 駆除 群れ ゲス ドスまりさ 希少種 独自設定 ナナシ作 完結です *注意 anko3083 境界線 後編その2 の続きです。 この物語はフィクションであり、実在の人物、団体、国家とは一切関係ありません。 独自設定の希少種が出ます。 人間が犯罪行為を犯す場面が出てきます。 いつも通り過去作品の登場人物や世界観が出ますが読んでなくても大丈夫です。 「ゆっゆっゆー!ゆっくりー!」 今、山の山道を鼻歌を歌いながら呑気にゆっくりとした速度で下っているゆっくりがいた。 ドスまりさ(本物)とその帽子の上に乗った幹部ぱちゅりーだ。 「むっきゅう!まったくこのけんじゃのぱちぇと、どすをさしおいて、みんなでさきにいくなんてどういうつもりなのかしら!」 「まあまあぱちゅりー!どすはそのくらいべつにかまわないよ!」 ご機嫌なドスとは違い、やや不機嫌な様子の幹部ぱちゅりーをなだめるドス。 群れ総出で出発したはずなのに、今のドスの周りには頭の帽子に乗っかっている幹部パチュリー以外のゆっくりの姿は見当たらなかった。 何故かといえば理由は簡単で、ドスは移動しているゆっくりたちの集団の最後尾にいたからだ。 通常、大勢のゆっくりたちと共にドスがどこかへ移動する場合、ドスの居場所は必然的に先頭か最後尾になる。 何故なら迂闊に行軍の真ん中などにドスが居座られると、その巨体ゆえに移動時に他のゆっくりを踏み潰してしまう危険性があるからだ。 故に今回の群れを率いての大移動は、はじめはドスを先頭にしてその後ろにゆっくりの集団を配置しての進軍の予定だった。 がしかし、えいっゆうまりさの集団が先走って前に出てしまい、それに釣られる形で大勢のゆっくりたちが、 我先へと憧れのお野菜プレイスを目指したため、現在ドスは最後尾に陣取ることになってしまったのだ。 そういったわけで、ドスは前にいるゆっくりたちを急かすことのないように、わざとゆっくりと前進し、 結果として前の一団とは大きく距離が空いてしまっていた。 今ドスの周りに、帽子に乗った幹部ぱちゅりー以外のゆっくりが一匹もいないのはそういうわけだ。 きっと今頃は、全てのゆっくりが目的地であるお野菜プレイスに到着している頃合だろう。 「むっぎゅー!こんなかってなまねをしたのは、きっとさいきんちょうしにのっているあのまりさね! どす!こんなことはゆるされることではないわ!くそにんげんとのけんにかたがついたら、 ただちにあのばかまりさを、せいっさいするべきよ!」 「まあまあぱちゅりー!そんなにかっかしないで!」 命令違反をしたえいっゆうまりさを制裁すべきだとドスに主張する幹部ぱちゅりー。 幹部ぱちゅりーとしては、最近勢力を強めているえいっゆうまりさは自身の地位の維持のためにもなるべく早い内に潰しておきたい相手。 そういった下心からの進言だったのだが、それを知って知らずかドスはまったく取り合わなかった。 「ぱちゅりー!そんなちいさなことで、せいっさいなんてゆっくりできないよ! どすはね、ほんとうはだれもせいっさいなんてしたくないんだよ、それがたとえ、くそにんげんであってもね!」 「むぎゅ!いったいなにをいってるのどす!くそにんげんたちは………」 「わかってるよ!ぱちゅりー!くそにんげんはるーるをやぶった! だからせいさいしなければならない!あやまちは、おおいなるただしきそんざいが、あらためなければならない! それがいだいなそんざいである、どすの、ぎむだってことはね! ふぅ……でもね、わかってはいてもつらいものだよ!おろかなそんざいをせいっさするのはさ! おうはね、つねにこどくなんだよ!ゆふふふふふ!」 遠い目をしながら、わけのわからないことを口走るドス。 実際のところドスは、本気で人間を制裁するのを辛いと思っているというわけではない。 それは昨日意味なく男を土下座させて、悦に入っていたことからも明らかだ。 結局のところこの行為は、見当違いの自己憐憫により、自らは特別な存在であるという優越感を感じて自分に酔っているに過ぎない。 まあ、要するにこれは新しい遊びというやつなのだ。 名づけて「つよーいドスは誰にも理解されなくて孤独なんだよ、かわいそうでしょ」ゴッコである。 無論本人にはそんな意識は毛頭ないが。 「むぎゅ!どすはきっとやさしすぎるのね!いいわ!そのぶんこのけんじゃのぱちぇが、きびしくゆっくりとにんげんをみちびいていくわ! なんといっても、ぱちぇはいだいなけんっじゃだからね!」 「ゆゆ!そうだね!たよりにしてるよぱちゅりー!」 そして幹部ぱちゅりーもまたドスと同じように酔っていた。 愚民を導かなければならない、偉大なけんっじゃという自分の立場に。 にやにやと笑い合う両者。 そんな両者の間にはなにか奇妙な一体感があった。 それは多分、集団で集まって誰かの悪口を言い合うときのアレだ。 自分以外の全てを劣として見下す笑みだ。 結局人間もゆっくりも、皆で集まって誰かをバカにしたり、見下しているときが一番ゆっくりできているのかもしれない。 「ゆう!そろそろぷれいすにとうちゃくするよ!」 そんな気持ち悪いやり取りをしながら進んでいくと、やがて木々が薄れ、目の前の視界が開けてきた。 目的地のお野菜プレイスはもうすぐそこだだろう。 先行したゆっくりたちはみなどうしているだろうか? もしかしたら群れのみんなはもう既に、人間たちを制裁してしまっているかもしれない。 もしそうならば、止めるつもりだった。 何故ならば制裁は絶対者たるドスの役目だからだ。他の何者にも裁く権利は無い。 そして制裁を止めたドスは、さっきぱちゅりーに言ったことを、群れのゆっくりたちと人間どもにも聞かせるのだ。 強大さゆえのドスの苦悩を知ったみなは、きっと感動するに違いない。 人間などはドスのあまりの偉大さと慈悲深さに涙することだろう。 ああ、なんだろう、そのときのことを想像すると、何故かとてつもなくゆっくりできる。 はっ、はやく!はやくその瞬間を味わいたい!ゆっくりしたい! そんな妄想を加速させながら、ドスはわきめも振らず、畑へと飛び出した。 「またせたね!みんなのすーぱーりーだー!どすさまのとうっじょうだよおおおおおお!」 「むきゅ!てんっさいけんっじゃのぱちゅりーもいるわよおおおおおおお!」 満面の笑みで、勢いよく飛び出したドスと幹部ぱちゅりー。 しかしその笑みは、広場の惨劇を見た瞬間にこおりつく。 その場に広がっていた光景は、ドスの予想とは違いゆっくりが人間を制裁している物ではなかった。 いや、確かに制裁はされていた。 ただし、それはまったく対象が逆で、人間がゆっくりに対して行なっていたのである。 それはドスたちが想像だにしていない光景。 プレイスの所々には黒い染みが四散しており、各所には苦悶の表情をしながら事切れているゆっくりたちの死体が大量に転がっている。 まだ息のあるゆっくりは全員ネットに押し込められ、泣きながら一箇所に集められてた。 そして、畑の中央にいる人間の女が、今手に持っていびっている物体は……。 「ゆっ……が……どす、だずげで……」 れいむ?だろうか。 全身をズタズタにナイフで切り刻まれ、ほとんどの髪は無理やり引っこ抜かれ、目も片方抉り出されている。 かろうじて残る黒髪が、かつてれいむだった名残を残すのみで、もうほとんど気味の悪いハゲまんじゅうと成り果ていた。 「あらんドス、やっとごとうちゃくぅ?あんまり来るのが遅いもんだから、おねいさん先に少し遊んじゃったわぁん」 そう言っておねいさんは、手に持っていたれいむらしきものを、ヒョイ、とドスの方へ向かって無造作に放り投げた。 ベチャ! 「ゆがべ!」 全身を切り裂かれていたせいで餡子が流れてでいたれいむは、落下の衝撃に耐え切れずあっけなくドスの足元で自壊する。 「なっ、なっ、なんなのおおおおおおおおおおお!これはわあああああああああああああああ!」 「むっきょおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」 あまりに自身の妄想とかけ離れた光景を前にして、ドスと幹部ぱちゅりーの絶叫が周囲に響き渡る。 「あらあら、どうしちゃったのぉ?突然そんな大声出してぇ?」 驚愕にわななくドスと幹部ぱちゅりーに対して、何気ない風に話しかけるおねいさん。 今広がっているこの光景の、一体どにに不自然なところがあるのか?と言わんばかりである。 もちろん不自然なところなど何所にもない。 人間がゆっくりを虐待しているのも、ゆっくりたちが虐待されているのも、ごく自然な光景である。 むしろ今まで異常だった展開が、ただ正常に戻っただけ。それだけのことである。 だがドスにはそんなこと理解できようはずもない。 「ふざけるなあああああああああ!おまえらじぶんのしたことがわかってるのかあああああああああ!」 怒りのままに咆哮するドス。 しかしおねいさんは涼しい顔だ。 「ああん、そうそう、一応言っとかないとねぇ。あんたたち、うざいんで一斉駆除することになったからん。 で、私は一斉駆除するついでに、こうして今までの鬱憤を虐待で晴らしてるってわけよん。 自分で言うのもなんだけど、おねいさんはとっても小物でねぇ。 たとえゆっくりだろうと、売られたケンカは残らず買い取るし、やられたことはきっちりやりばっちり返す主義なのよん。 それでこういう状況になっているわけよ。おわかりいただけたかしらん?」 「わかるかあああああああああああああああああああ!」 大声で怒鳴り返すドス。 挑発的とすら言えるおねいさんの言動に、ドスの怒りはとどまることを知らない。 「どすううううう!はやくあのくそにんげんをせいっさいしてねええええええ!」 「どすすぱーくで、はやくやっつけてえええええええ!」 「あのくそにんげんが、むれのなかまたちおおおお!ゆるせないよおおおおおおおお!」 「わかるよー!どすがきてくれたからもうあんっしんなんだねー!あやまるのならいまのうちだよー!」 そんな中、ゆっくり捕獲用ネットによって一箇所に固められている他のゆっくりたちが、必死にドスに声をかける。 目の前で凄惨な虐待を見せつけられて、次は自分の番かと今までの絶望の泣き顔をしていたゆっくりたち。 しかし一転、ドスが来てくれたという希望が、捕まっていたゆっくりたちを活気づけた。 もしかしたら助かるかもしれない、いや助かるべきなのだ!何せあの無敵のドスが来てくれたのだ! きっと人間を土下座させた上に制裁してくれるに違いないんだ!ざまあみろ! 「むっ、むっきゅ!そうよどす!もうこれはきょうていいはんとか、そういうじげんのもんだいじゃないわ! くそにんげんは、おろかではじしらずにも、じぶんたちのつごうがわるくなったから、ぼうりょくにうったえるきよ! そんなことはむだだということを、しらしめるためにも、あのくそにんげんをかくじつにせいっさいするひつようがあるわ! それでどすにさからうことのおろかさを、くそにんげんども、にいちどみせしめるのよ!」 周りのゆっくりたちの叫びにより、ショックから立ち直った幹部ぱちゅりーがドスに進言する 「いわれるまでもないよぱちゅりー! いくらかんだいなどすでも、むれのなかまをこんなにした、くそにんげんをゆるすことはできない! そう!てんがゆるしても、このどすがゆるさない!これは、してきなせいっさいではないよ! いだいなどすによる、せいっぎのさばきだああああああああああああ!」 そう言い、キノコを口に含みながら大きく口を開けるドス。 ドススパークの体勢だ。 が、おねいさんは、自分の足元にあった物体をドスに見せるつける様に乱暴に持ち上げ、言い放った。 「おおっと!そこまでよぉん!これを見てもドススパークを撃てるかしらぁん!」 「ゆ?」 目を見張るドス。 おねいさんの手に握られていたもの。 それは、 「どすううううううう!たすけるのぜええええええええ!」 えいっゆうまりさだった。 腹部からあんよにかけて、やや大きめのクギのようなものが貫通しており、痛々しい姿を晒している。 しかし、クギが栓になって傷口から餡子が漏れ出るのを防いでいるようで、苦痛こそ感じているものの命の別状はないようだ。 それが証拠に、今も痛みに涙を流しながらも大声でドスに助けを訴えている。 「ゆうううううううう!どすうううううううう!はやくこのむれのえいっゆうである、まりささまをたすけるぜえええええ! それから、このくそにんげんを、せいっさいするのぜええええ!はやくしろおおおおおおおおおお!」 「ちょっとうるさいわよん、まりさちゃん。今おねいさんが話してるところでしょお!」 手もとでやかましく騒ぐえいっゆうまりさを、腹部を貫通しているクギをぐりぐりと上下に動かすおねいさん。 「ゆぐああああああああああああ!いだいいいいいいいい!やめでえええええええええ!ぐりぐりしないでえええええ!」 「まりざあああああ!」 「やめてあげてね!いたがってるよ!」 「おいいい!このくそにんげん!いいっかげんにするみょん!」 その様子を見て騒ぎ出すその他のゆっくりたち。 だがそんなゆっくりたちに対しておねいさんは、 「お前らもいい加減、うるさいわねん」 おねいさんは、ブン!と、懐から取り出したクギを無造作にネットで拘束されているゆっくりたちの集団に向かってぶん投げた。 ブチョ! 「ゆぎゃああああああ!わがらないよおおおおおおおおお!」 クギはネットに内にいるちぇんの目に命中した。 「ひいいいいいいい!」 「あ、あああ……」 ちぇんの隣にいたゆっくりたちは、目にクギが突き刺さり、痛がるちぇんの様子に戦慄を覚える。 「やべろおおおおおおお!なにやってんだおまえええええええええ!」 それを見て、再び怒りの叫び声を上げるドス。 しかし、おねいさんはまったくペースを崩さずに言う。 「あらん、おほほほほ、ごめんなさい、ちょっと話しが逸れちゃったわねん。 それじゃ話を戻すけど、要するに今手に握ってるこのまりさはゆん質よん。 あなたが私の言う事を聞かなかったら、こいつの命は保証できないわぁん。 そしてそれは同時に、ドススパークを私に向けて撃ったらこいつの命もないってことねん。 理解できたかしらん?」 「ゆあああああああああああ!ちからでかてないからって、そんなのひきょうだよおおおおおおおおおおお! このひきょうものおおおお!くそにんげんはあくだよ!はきけをもよおすじゃあくだよおおおおお!」 「ほっほっほぉ!なんとでも言いなさいな。 あーやっぱり、ゆっりは面白いわぁ、この茶番じみた行為を本気でやるバカバカしさが面白いわぁ」 歯を食いしばって悔しがるドスに対して、余裕の笑みを浮かべるおねいさん。 それにしてもこのおねいさん、ノリノリである。 「むきゅ!どす!おちついて!ひとじちならこっちにもいるわ! あのくそにんげんと、まりさをこうかんするようにいうのよ!」 ドスとおねいさんの対応を見ていた幹部ぱちゅりーが、ドスに提案する。 「ゆっ!ゆゆっ!そうだよ!そうだったよ!こっちにだってくそにんげんのひとじちがいるんだよ! わかったらさっさとまりさをはなしてね!それからおとなしくどすにせいっさいされてね!すぐでいいよ!」 幹部ぱちゅりーの進言により、自分たちの側にも人質がいることを思い出したドス。 これで状況は五分だと急に強気になるが、しかしおねいさんは余裕の表情をまったく崩さない。 「え゛何それ怖い、人間の人質がいるなんて話、今はじめて聞いたんですけどぉー。 何のことだか、おねいさんさっぱりわからないわぁー」 おちょくるように言うおねいさん。 「なにいってるのおおおおおおお!きのういったでしょおおおおおおおお! そんなこともおぼえてないの!ばかなの!しぬのおおおおおおお!」 話しがかみ合わずヒステリックにドスが叫ぶ。 「そ・ん・な・事実は…………なかった! 私たちは、そんな話は聞かなかった! つまりはそうゆうことよぉん」 「むっきゅううううううう!さっきからなにわけのわからないことをいっているの! ごちゃごちゃいってないで、さっさとまりさをはなしなさい!ひとじちがどうなってもいいの!」 おねいさんのふざけた態度に業を煮やしたのか、幹部ぱちゅりーが人質を引き合いに出す。 しかし、 「どうやって?」 「むぎゅ?」 「今群れのゆっくりたちはこの場に全員いるのよぉん、 それなのにどうやってこの場にいない人質に危害を加えるつもりかしらん? まっ、もっともぉん、人質なんて『いない』んだからそもそも何の心配もないんだけどぉん」 「むっ、むぎゅ!そ、それは……」 思わず言葉に詰まる幹部ぱちゅりー。 「ふふふふふ、ようやく自分たちの置かれた立場が理解できてきたみたいねぇ。 それじゃあまず手始めに、あんたたち二匹には土下座して『人間に逆らってごめんなさい』してもらいましょうか。 上手にできたら、このまりさちゃんを放してあげてもいいわよぉん」 「ゆなっ!」 「むぎゅ!」 昨日の交渉時の意趣返しとでも言うべきおねいさんの要求に、声を上げるドスと幹部ぱちゅりー。 「ほらほらぁ、はやくしないとこのまりさちゃんが永遠にゆっくりしちゃうわよぉ」 楽しげに言いながら、えいっゆうまりさに突き刺さったクギをグリグリといじくりまわすおねいさん。 「ゆべががががば!やべでえええええええええ! どすううううううう!なにじっどしてるのおおおお! さっさとどげざじろおおおおおおおお!えいっゆうであるまりささまがどうなってもいいのおおおおおおお!」 自身を貫く痛みにたまらずドスに向かって土下座を催促するえいっゆうまりさ。 その様子を見て唸るドス。 「ゆぐ!ゆぐぐぐぐぐ!」 (こんな!こんな卑怯で下等な生き物であるクソ人間に、こうっすいな存在であるこのドス様が土下座なんてできるわけないよ!) ドスは思っていた。 偉大な存在である自分が人間に頭を下げることなどあってはならないと。 そんな世界の真理を無視した行いが許されるわけがない。 こんな!こんな……。 「むきゅ、どすおちついて」 憤るドスに、幹部ぱちゅりーがおねいさんに聞こえないような小さな声で話しかける。 「ゆうう!ぱちゅりー!いったいどうすれば…」 「かんたんよどす!あのおんなを、まりさもろともどすすぱーくでふきとばせばいいのよ!」 「ゆゆ!」 幹部ぱちゅりーの驚愕の提案に驚くドス。 なんとあのえいっゆうまりさを見捨てて、人間に攻撃を仕掛けろというのだ。 「で、でもそんなことしたらまりさが」 「むきゅ!いいどす!あなたはゆっくりのおうなのよ!そんなちいさなことにこだわっていて、たいきょくをみうしなってはいけないわ! ここでゆっくりのとっぷであるどすが、くそにんげんなんかにあたまをさげたら、それこそにんげんのおもうつぼよ! くそにんげんは、ゆっくりよりもおとったそんざいだという、しぜんのせつりをくつがえしてはいけないわ! これはどすだけではなく、ゆっくりぜんたいのもんだいなのよ!」 「ゆっ、ゆゆ!そうだね!そのとおりだよぱちゅりー!」 幹部ぱちゅりーの説得にあっさり応じるドス。 というかぶっちゃけた話、ドスとしては土下座を回避できるのなら別の何でもよかったというのが本音だった。 そして、そんなドスの様子を見て幹部ぱちゅりーはひそかにほくそ笑む。 (むっきょきょきょきょ!ちょろいもんだわ! あのバカまりさがゆん質に取られたときは一瞬驚いたけど、よく考えてみればこれは好都合ね。 もともとあのバカまりさは、ことが終わった後で消えてもらうつもりだったわけだし。 むしろどうやって自然な感じで始末をしようかと悩んでいたところだわ。 そこにきて、このバカまりさがゆん質に取られるという展開。 これを利用しない手はないわね。 バカまりさには人間と一緒に消えてもらいましょう。 これで邪魔者を始末できると同時に、クソ人間たちへの見せしめにもなる。 皆が見ている前でドスがバカまりさを始末するのだから、自身に責が及ぶこともまったくない。 まったく一石二鳥とはこのことね。むっきょきょきょきょ) 幹部ぱちゅりーがそんなことを考えてる間にも、ドスはキリッとおねいさんの方に向き直り、ガバッと大口を開けた。 ドススパークの体勢だった。 「かくごしてね、くそにんげん!これからどすがおまえをせいっさいするよ!」 一片の戸惑いもなくおねいさんに言い放つドス。 そんなドスに対しておねいさんは、いささかわざと臭い、大げさな仕草で驚いて見せる。 「え゛え゛ええええ、ちょっと本気なのぉ? こっちにはゆん質がいるのよぉん。それでも撃つ気なのん?」 「どすううううううう!なにがんがえてるのぜえええええええ! まだまりささまがつかまってるのぜええええええ!せいっさいするのはまりささまを、たすけたあとにするのぜええええええ! ただたんに、どげざすればいいだけのはなしでしょおおおおおおおお! このくず!げどうがああああああああああ!」 自分もろともドススパークで吹き飛ばしてしまうという、ドスの考えを悟ったえいっゆうまりさもまた叫びだす。 「そうだ!そうだ!この外道!人でなし!あら、こういう場合はゆっくりなしって言うのかしらん?」 茶化すようにまりさの叫びに追従するおねいさん。 「だまってねええええええ! どすはおうなんだよ!いだいなんだよ!ゆっくりのだいひょうなんだよ! どすは、あくにくっするわけにはいかないせきにんがあるんだよおおおおおおお! そのためには、ちいさなぎせいはやむをえないんだよおおおおおおおおおお!」 そんなことを口走りながら、標準をおねいさんに固定するドス。 どうやら撃つ気なのは間違いないらしい。 「きゃあーーー!いやーーーー!」(棒読み) 「ゆあああああああ!やめるのぜえええええええ!」(迫真) ドススパークの発射態勢を前にして、 うさんくさいおねいさんの悲鳴と、えいっゆうまりさの緊迫の絶叫が周囲に響き渡ったその瞬間。 ヒュッ!と何かが風を切る、鋭い音が聞こえ、 ブスッ! 「ゆぶぇえ!」 今まさにドススパークを発射せんとしていたドスに、矢が突き刺さった。 「ゆっ!がっ!あがががががががが!ふがげげげげげ!」 突然襲った激しい痛みに訳がわからず唸り声を上げるドス。 「なっ、なにが……、ゆっぐう、ゆがああああああああああああああああ!」 訳がわからない状況のドス。 だがしかし、はじめは矢が刺さった部分の一点だけだった痛みが、何故か全身にまでまわりはじめて、苦痛の悲鳴をあげることしかできない。 もちろんドススパークなど撃てるはずもない。 「むっ、むぎゅう!なにやってるのどす!そんなちいさなやがつきささったくらいで! はやくどすすぱーくであのくそにんげんたちをふきとばすのよ! どうしたの!はやくしなさい!このぐず!」 ドスの無様な様子に、幹部ぱちゅりーが苛立ながら叱責する。 確かにドスの体積からすれば、小さな矢が突き刺さっただけでのこの痛がりようは少々異常だった。 「ゆぐぐぐう、ど、どすのからだが……どじで…」 先ほどからまったく身動きできずに唸るドス。 と、そこへ、 「ああ、いくら足掻いても無駄だよ。その矢には対ドス用の特殊な薬品が塗ってあるからね。 それをくらったからには、ドススパークはおろか、二三日まともに動く事すらできんよ」 今まで死角に隠れていた先輩が、ボウガンを抱えながらドスたちの前に姿を現した。 「むっ、むぎゅ!なんですって! ひっ、ひきょうよ!ひきょうだわ!こそこそかくれていて、とつぜんふいうちするなんて! くそにんげんには、せいせいどうどうとたたかおうっていう、ぷらいどがないの!」 「卑怯とは失礼だな。 相手の注意を引いておいて、そのスキに側面から攻撃するのは戦術の基本だよ。 相手が攻撃する瞬間こそ、もっともスキができるものだからね。 次からはもっと周りにの様子にも注意を払うべきだな。 まあもっとも………」 先輩はてくてくとドスと幹部ぱちゅりーのところまで歩いていくと、幹部ぱちゅりーの顔面を無造作に蹴り飛ばした。 「むっぎょっばああああああああああ!」 無様にコロコロと転がっていく幹部ぱちゅりー。 「君たちに次はないんだけどね。 まっ、正直な話、君たち程度の相手にここまで念入りに下準備する必要はまったくなかった。 でも今回は万に一つの失敗も許されない状況だったんでね。 念には念を入れさせてもらったというわけだ。 そしてこれは最後の仕上げだ」 それだけ言うと先輩は、隣で身動きできずにプルプルと震えているドスに、入れ物から取り出した矢を突き刺した。 「ゆっがぶがあああああああああああああああああ!」 身動きできない状況にて、さらに薬が塗られた矢を追加され、絶叫を上げるドス。 これで完全にドスの動きは封じられた。 もう何をどうやっても動くことはできないだろう。 「作戦完了っと」 ボソリと先輩が呟いた。 こうして畑に集まったきた群れのゆっくりたちは全て制圧された。 今や群れの大半のゆっくりは潰され、畑のそこかしこに散乱している。 潰されずに残った生きているゆっくりたちは全て、ゆっくり捕獲用ネットによって一緒に集められており、 頼みのドスは先輩によって完全に無力化させられてしまった。 今のところ唯一捕まってないのは、ゆっくり中で最も運動能力の低い幹部ぱちゅりーのみだが、 それも先ほど先輩に蹴飛ばされ意識を失っている。 もっとも起きていたとして、何ができるというわけでもない。 完全に詰みだ。この状況を絶望と言わずして何と言おうか。 「あっ、ああ、そんな、うそなのぜ……」 えいっゆうまりさは目の前の光景が信じられなかった。 ドスが自分もろとも、ドススパークで人間を吹き飛ばそうとしたのも信じられなかったし、 そのドスが、いつの間にか死角に隠れていたもう一人の人間に、何もできずにあっさりやられてしまったことも信じられかった。 この光景は果たして現実のものなのか、それすらもあやふやな状況だ。 「ゆぎぎいいいいい!」 しかしそんな漠然とした意識は、身を貫く激しい痛みによって強制的に現実に引き戻される。 おねいさんがまりさを貫いている大きめのクギを掻きまわしたのだ。 「あらん、どうしちゃたのまりさちゃん。 ぼーっとしちゃってさ」 「ゆがあああ!こんなばかなことがあるはずないんだぜえ! むれのえっゆう、であるこのまりささまが、こんなめにあうはずが! これはなにかのまちがいなのぜえええええ!」 必死に現実を否定するえいっゆうまりさ。 今のまりさには、もうそれくらいしかできることがなかった。 「ふーん、群れのえいっゆうねぇ。 でもおねいさんの見立てではぁ、あなた今回の主犯というよりは、ただ単に利用されただけのザコって感じなのよねぇ。 まあ、せいぜい調子に乗ったチンピラってとこかしらん? どこの群れにもいるような、取るに足らない、居ても居なくても別に誰も困らない存在ってことねん」 「ちっ、ちがう!まりさは、まりささまは、むれのえいっゆうなんだぜえええええええ! ざこなんかじゃないいいいいいいい!とくべつなそんざいなんだぜえええええ! いずれはどすになって、むれも、にんげんもしはいして、それから!ずっとずっとゆっくりするんだぜええええ!」 「へー、まっ、どっちでもいいわん。もうあんたみたいな小物には用はないから殺してあげる。 それじゃあねぇん、哀れな道化のえいっゆうさん」 おねいさんはえいっゆうまりさに突き刺さったクギをグッと握ると、 それをメリメリと横に動かしはじめた。 「ゆがああああああああ!どうしてえええええええええええ!こんな!こんあはずじゃあああああああああ! ゆがぼげがはばああああああああああああああああ!」 おねいさんがクギを動かすことによって、今まで塞がっていた傷口が抉れ、どんどん広がっていき、そこから大量の餡子があふれ出す。 中身が出るにつれ、みるみるえいゆうまりさからは生気が失われていき、やがえて身体の半分くらいが裂けた頃になると、 「もっど、ゆっくり……」 小さな断末魔を残し、えいっゆうまりさは永遠にゆっくりした。 「ふん、ただの雑魚が語るには、随分と不相応な夢だったわねぇ。 一時でも夢を見なければ、もっと楽に逝けたかもしれなかったのにねん」 おねいさんはグチャグチャになった物体を、地面に放り投げながら言う。 「やれやれ、まあなんと言うか、哀れなヤツだったね」 その様子を見ていた先輩もまた、手に持ったボウガンを分解しながら呟く。 「まっ、別に自業自得だからいいけどねん。さーて、お次は誰の番かしらん」 「「「「「ゆひいいいい!」」」」」 おねいさんの視線がネットに捕まっているゆっくりに向けられたのを見て、恐怖する群れのゆっくりたち。 もはやゆっくりたちは抵抗しようという気力はなく、ただ怯えるばかりだ。 「お、おでがいです!だずげてくだざい!れいむがまちがってましたあああ!」 「わがるよおおお!もうにんげんさにさからったりしないよおおお!だからたすけてねええええ!」 「どすがああ!どすがわるいだよおおお!まりさははんたいしたのに、むりやりここにつれてこられたんだよおおおお!」 「そっ、そうよ!ありすたちは、ただどす、やぱちゅりーのしじにしたがっていただけよ!だからわるくないわ!」 「みょおおおん!しにたくないみょん!たすけてみょん!」 何とか助かろうと、次々と反省や無実を訴えるゆっくりたち。 「ふーんそっかぁ。反省している上に、無理やりやらされたってんじゃしょうがないわねぇ。 それじゃあ許しちゃおっかなぁ」 「「「「ゆ、ゆるされた!?」」」」 そのおねいさんの一言によって、パアッと明るい顔になるゆっくり一同。 が、 「ゴメンやっぱり許さない」 「「「「ゆあああああああああ!そんなああああああああ!」」」」 またもやおねいさんの一言によって、絶望の表情になるゆっくり一同。 「はっきり言ってさぁ。もう許すとか許さないとかそういう段階はとっくに過ぎちゃってるのよねぇ。 せめてもう少しそれがはやければねぇ。 でもまあ、あなたたちは基本的に何もしてないから、楽にサクッと殺してあげるわん。 まっ、恨むなら自分たちのトップを恨むことねん」 そう言いながらおねいさんが、恐怖に慄くゆっくりたちに向かって歩き出したそのとき。 「むきゅ!そこまでよ!くそにんげん!」 いつのまに復活したのだろうか? 先輩に蹴り飛ばされてて気絶していた幹部ぱちゅりーが、おねいさんに向かって声を上げたのだった。 「あら、ぱちゅりーちゃんどうしたのかりしらん? 心配しなくてもあなたは後でおねいさんがたっぷり可愛がってあげるわよん。 おねいさんの見立てでは、今回の件のゆっくり側の首謀者はあなたみたいだからねん」 ニヤリと笑うおねいさん。 しかし幹部ぱちゅりーは臆することなく言い放つ。 「いいかげんにしなさい! こんなごくあくひどうなこういが、ゆるされるとおもっているの! きょうっていいはんからはじまり、けんじゃのぱちぇのていあんをうけいれないばかりか、あまつさえむさべつなぼうりょくこうい! こんなしゃかいてき『あく』は、せけんがみとめないわ! いまならまだおそくないから、はんせいして、おとなしくこのけんじゃのぱちぇのどれいになりなさい!」 「………はぁん?」 この後に及んでいったい何を言っているのだろうか、このクソ袋は? 流石のおねいさんも、この幹部ぱちゅりーのトンチンカンな言動の意図を察しかねた。 「ほぉ、世間とは……なかなか面白いことを言うね君は」 だが困惑するおねいさんとは対照的に、面白そうな顔をしながら幹部ぱちゅりーに近づく先輩。 「それで?君の言う事を聞かないと、我々はどうなってしまうのかなぱちゅりー君?」 「む、むぎゅ!だ、だからいったでしょう!こんなことせけんがゆるさないわ! なっんったって、さいしょにきょうっていをやぶったのは、そっちなのよ! そうよ!『せいぎ』はぱちぇたちのほうにあるのよ!あななたちは『あく』なの! せけんは『せいぎ』をおうえんするわ! ぱちぇたちをころせば、きっとくそにんげんたちは、せけんてきせいさいをうけることになるわ!」 「バカだね君は。 先ほども彼女が言ってたが、君たちが今ここで全滅したら、誰がそのことを世間とやらに伝えるのかな」 「そっ、それは、そう!そうよ!にんげんさんよ! ぱちぇたちのばっくには、にんげんさんがいるのよ! ぱちぇたちになにかあったら、そのにんげんさんが、きっとそのことをつたえるわ! これでわかったでしょう!『せいぎ』のぱちぇたちを、おうえんしているにんげんさんもいるのよ! わかったら、さっさとひざまずきなさい!いまならまだ、はんごろしのうえに、うんうんどれいでゆるしてあげるわ!」 勝ち誇ったようなドヤ顔の幹部ぱちゅりー。 そんなぱちゅりーの目に先輩は、グチョリ!と、無造作に人差し指を突っ込んだ。 「むぎょおおおおおおおおお!ぱちぇのおめめがああああああああああああ!」 突然の行為に悲鳴をあげる幹部ぱちゅりー。 先輩は無言で目に差し込んだ人差し指をグリグリと回すと、そのまま目玉を引き抜いた。 「あんぎゃあああああああああ!どじでえええええええええ! さっきのはなしをきいてたのかあああああああああ! けんっじゃのぱちぇにこんなことして、ただですむとおもってるのかああああああああああ!」 「ああ、もちろん聞いていたさ。そしてもう大方知りたいことは聞き終えた。 だからもう死んでいいよ」 「あああああああああああ!なんなのおおおおお!どういうことなのおおおおおお!」 「うるさいなぁ。まあめんどくさいけど冥土の土産に教えてやるよ。 私たちにとっての最悪の事態は、人間とゆっくりが手を組んでいる場合ではなく、 本当にゆっくりが人間の人質を取っている場合だったのさ。 普段ゆっくりに関心がない連中でも、人命が関わってるとなれば血相を変えるからね。 だから混乱をさけるためと、それと私的な理由で、とりえずそんな事実はなかったことにしたのさ。 で、今の君の話によって、我々の予想通り、ゆっくりと人間が結託していたことがわかった。 人質は自演で、バカな人間がゆっくりを先導して、なにかやらかそうとしているだけだったと判明したわけだ。 後は、はじめに人質を取ったと宣言したゆっくり連中を残らず始末して、人質宣言をなかったことにしてしまえば、 人間がゆっくりと組んで迷惑行為をしていたという事実のみが残るというわけだ。 ゆっくりと人間が結託して、我々の妨害行為を行うことは、たまにある事だしね。 多少ゴタゴタしたところで、たいしたお咎めはないのさ。 ああ、そうだ、今となってはどうでもいいが、君の言う協力者の人間の目的が何なのか聞いてないかい?」 「むっきゅううううううううう!こんな!こんな!『あく』がゆるされるわけないいいいいいいい!」 唸る幹部ぱちゅりーに溜息をつく先輩。 「やれやれ、さっきから悪だの正義だのくだらない。 それじゃ聞くがね、君にとっての正義とはなにかな?」 先輩が幹部ぱちゅりーに質問する。 「むきょおおおお!そんなのゆっくりが、ゆっくりすることにきまってるでしょおおおおおお! そんなせかいのしんりもわからないのおおおおおおおお!ばかなの!しぬのおおお!」 「では悪とは?」 「ゆっくりをゆっくりさせないくそにんげんにきまってるでしょおおおお! この『あく』があああああああ!なんでもかんでもひとりじめしてえええええええ! だいたい、くそにんげんも、ほかのだゆっくりどもも、どすだって、そうだよおおおおお! おまえらぜんいん、おとなしくこのけんっじゃのいうことをきいていればいいんだよおおおおお! それこそが『せいぎ』なんっだよおおおおおお! このけんっじゃにさからうものは、みんな『あく』だああああああああああ!」 「そうかい」 幹部ぱちゅりーの叫びに短く答えた先輩は、入れ物から矢を取り出し、 それをブスッ!と幹部ぱちゅりーの脳天に突き刺した。 「むっびょええええええがばああああああああああああ!」 体中を何かが弾け回るような痛みに、声にならない絶叫を上げる幹部ぱちゅりー。 先輩が刺した矢は、対ドス用の薬が塗られたものだ。 それを普通の、しかもゆっくりの中でもっとも身体の弱いぱちゅりーがくらうとどうなるか。 「むぎょ!がべぱはっ!えれえれぐばあぁああああぁあぁあ!」 突然口から、そして中身を抉り出されて、穴のあいた目から中身を吐き出しはじめる幹部ぱちゅりー。 それを無感動に見下ろす先輩。 「自分の行動に正義があると思い込むのは、まあいいよ。人間だって似たようなものさ。 だがそれが全ての存在にとっての、共通の正義だと思わないことだね。 ああ、ちなみに私たちは君が言ったように悪さ。 なにせ君を殺すのは正義のためなんかじゃなく、自分たちの都合のためなんだからね そしてその悪が許せないというのならば、遠慮なくかかってくるといい、いつでも相手になろう。 ただしこれだけは言っておく。ゆっくりの正義では人間の悪には絶対に勝てないよ」 「むっ……がっ」 最後の先輩の言葉は、果たして幹部ぱちゅりーに聞こえただろうか。 しかし聞こえていたところで意味はないだろう。 そこには自身の薄っぺらい正義を全て吐き出して、ぺちゃんこになった気持ち悪い物体があるだけだった。 「うーむ、少し……大人気なかったかな。つい偉そうに説教などしてまって…」 ふと我に返ったように、先輩は少しバツの悪そうな表情でカリカリと頬を掻く。 「いやー、よかったんじゃないのぉ。 そりゃ、私らだって決して誉められた人間じゃないけどさぁ。 いままで散々やりたい放題やっといて、 都合のいいときだけ正義だ世間だ言って、ドヤ顔するようなクズゆには遠慮は無用よん」 そう、おねいさんが先輩をフォローする。 「さぁて、それじゃあ群れの雑魚共は後でまとめて処分するとして、残る最後の先導者はドスちゃんだけねぇ。 いよいよ大ボスって感じかしらん。 ていうかぁ、あんたさっからずっと黙ってるけど、どうしちゃったのぉん? もっとこう、ほらさ、ゲスッっぽくバカだの死ねだの暴言を吐いててもいいのよん? そのほうが、こっちもやる気出るからん」 おねいさんがドスに向かって挑発的に語りかける。 確かに彼女の言うとおり、ドスはさっきっから一言も発していない。 えいっゆうまりさが真っ二つにされたときも、幹部ぱちゅりーが中身を全て吐き出したときもだ。 いくら薬で全身が動かないとはいえ、喋ったり叫んだりはできるはず。 しかしドスはうつろな目をしながら、ただピクピクと痙攣しているだけだ。 ドスは昔を思い出していた。 そう、それはまだドスになる前の、ただのまりさだったときの記憶。 あのときの自分は気弱でいつもオドオドしていた。 自分よりも大きな人間に逆らうなんて、もってのほかだと思っていたはずだ。 そしてその考えは、ドスになった当初もかわらなかったはず。 むしろ、何かと人間の悪口ばかり言っていた幹部ぱちゅりーと違って、 自分はちゃんと人間のと付き合っていこうと思っていたはずだ。 それが、一体なぜこんなことに? どうして自分は人間に逆らうなんてバカな真似をしてしまったのだろう? 何故自分は世界一強いと勘違いしてしまったのだろう? 何かがおかしい。 どうしてこんな……。 「おいぃ、さっきからなに黙って余裕ぶってんのよ、このタコォ!」 ドカッ! 「ゆぶぇえ!」 ずっと黙ったままのドスに腹に、おねいさんのケリが炸裂する。 薬で痺れ、体が敏感になっているドスにはたまらない痛みだった。 「ちょっとぉ、あんたしっかりしなさいよぉ。 一応この群れの長のドゲスでしょうがぁ。 なーんか、さっきから覇気がないわねぇ」 怪訝な表情をするおねいさんにドスは小声で何かを呟く。 「……さぃ」 「あぁん?」 「ごべんなざぃいぃいいいいいいいいい! どすがちょうしのっでまじだあああああああ!」 「………はぁ?」 急に大声で泣きながら謝罪しだすドス。 「お前……いまさらなんなのぉ」 呆れた表情で言うおねいさん。 「ちがうんでずううううううう!ほんとは、どすはにんげんさんにさからうきなんてなかったんですうううううう! それなのに、むれのみんながあああ!ばじゅりいがああああ!あのおねいざんがあああああ! にんげんをゆるずなっでいったんでずうううううう! だから!だから!どすはしかたなくうううう!」 涙を滝のように流しながらドスは語る。 しかしその言葉を聞いて群れのゆっくりたちは黙ってなかった。 「ゆあああああ!なにいってるのどすうううううう!れいむたちのせいにしないでねええええ!」 「んほおおお!ほかのゆっくりのせいにするなんて、とかいはじゃないわああああ!」 「わがるよおおおお!どすがいちばん、にんげんのとちをのっとるのに、せっきょくてきだったよおおおおお!」 「くそにんげをどげざさせたって、じまんげにはなしてのを、まりさはきいたんだぜええええ!」 自分らの責任にされてはたまらないと、口々に叫びだす群れのゆっくりたち。 「だまれええええええええ!ぜんぶおまえらのせいだろうがああああああ!どすはわるくないいいいいい!」 「黙るのはテメェだよ、このカス!」 思わず興奮して乱暴な言葉を吐き捨てながら、おねいさんが長めのクギをドスに突き刺す。 「ゆぎいいいいいいいいい!いだいよおおおおおおおお!」 涙を流しながら金切り声を上げるドス。 「チッ、まったく、白けるわぁん」 「なんというか、流石にこれは醜いと言わざるを得んな」 「ほんともう、なんかどうでもよくなってきたわん。 さっき殺った、えいっゆうまりさはチンピラで小物だったけど、コイツはそれ以下のクズね。 こんなヤツに、力を尽くした虐待をするのもアホらしくなったわん」 「なんだ?もしかして助ける気か?」 「んなわけないでしょバカね、予定をはやめるのよ」 そう言うと、おねいさんは置いてあった自分の荷物をゴソゴソといじりだした。 「おねがいですうううううう!たすけてくださいいいいいいい! これからはこころをいれかえますうううう!もうけっしてにんげんさんにはさからいませんんんん! げすゆもきちんとせいっさいしますううううう!だからああああああ!」 なおも続く懇願を無視しておねいさんが取り出したもの、それは……。 「ちょ!おまっ!それは」 思わず声を上げる先輩。 そんな先輩を無視しておねいさんは、勢いよくドスに、黒くて臭くてよーく燃える液体をぶっかけた。 「そぉら、くらえぇい!」 「ぶひゃあああああ!なにごれくさいいいいいいい!」 自身にかけられた、危険極まりない液体の性質を知ってか知らずかドスはその臭いに不快を訴える。 「おい!お前そんなもの一体どこで調達した!」 「今朝、民家のおばちゃんからゆずってもらったのよん」 「正気かおい、ここは一様、私有地の畑だぞ」 「昨日、罠を仕掛ける際に何やってもいいって持ち主に許可もらったでしょう。 大丈夫、大丈夫、大した量じゃないからさ、終わったあときちんと片付けるわよん。 それにこの虐待はなかなかやる機会がないのよぉ。 室内はもちろん、主にドスが生息する森の中でも危険極まりないしね」 「どこでやっても危険極まりないわ、バカ者」 「まあまあ、いいからいいから」 「な、な、な、なんなのおおおおおお!いったいどすをどうするきなのおおおおおおおお!」 先輩とおねいさんの会話に不吉なものを感じ取ったのか、ドスが堪えきれない様子で叫びだす。 「あぁん、それはねぇ」 おねいさんはポケットからマッチ箱を取り出し、シュッと擦り火をつけると、 「こうするのよ!ヒャッハー!点火だぁ!」 それをドスに向かって放り投げた。 マッチは動けないドスへ命中し、そして、 「ゆぎゃあああああああああああああああ!あち!あち!あずいいいいいいいいいい! なにごれええええええええええ!あついいいいいいいいいいいいいい! だずげでええええええええ!あばばばあばあばああああああああ!」 一瞬にして身体全体に炎が燃え広がり、もだえ苦しむドス。 薬で全身を麻痺させられているため転げまわることもできない。 全身を一気に焼かれる苦しみは、通常の足焼きなどとは比較にならないだろう。 「うんうん、さっすが、ゴミクズはよく燃えるわぁん。 そんじゃ、ついでに残った連中も処理しちゃうとしますか」 そう言うと、おねいさんはネットに拘束されているゆっくりの一匹を外に取り出した。 「ゆゆ!おそらをとんでるみた…」 そしてそのまま、そのゆっくりを炎に包まれ、悲鳴を上げているドスの口にヒョイと投げ込んだ。 「ゆばがああああああ!あじいいいいいいいいい!がらだがもえるうううううううう!」 当然のことながら、投げ込まれたゆっくりも地獄の業火に全身を焼かれることになる。 唯一の救いはドスほど身体が大きくないため、すぐに焼き尽くされ永遠にゆっくりしてしまうことだろうか。 「さぁて、どんどんいくわよぉ」 「ゆひいいいいい!やめてえええええ!」 「ああああ、いやだあああああああ!」 「わがらないよおおおおおおおおお!」 次々に燃え盛るドスの口内へとゆっくりたちを投げ入れるおねいさん。 「しねええええ!このくそどすがあああ!ぜんぶおまえのせいだああああ!ゆあづいいいいいいいいいい!」 「なんでまりさがこんなめにいいい!このやくたたずがあああああ!」 「ばかああ!どすのばかああああ!おまえさいいなければこんなことにわあああああ!もえるううううう!」 ドスの口内で焼かれるゆっくりたちは、みな最後にドスへと恨み言を吐きながら散っていく。 そして皮肉にも、口の中に次々と投げ込まれるゆっくりたちが栄養分となり、ドスの余命を、即ち苦しむ時間を長くしていく。 「ゆがばばあああああ!もうやべでええええ!もうあついのいやだあああああああああああ!」 ドスは泣いていた。 熱のせいで、涙はどれだけ流しても一瞬で蒸発してしまうが、それでもドスは泣いていた。 自身を焼く炎の痛みに、口の中で消えていく群れのゆっくりたちの憎悪に、そして自身の運命に。 そして果ての無い後悔の末に、ついにドスは永遠にゆっくりしたのであった。 その後…。 「ふう、終わったみたいねん」 「なんともまあ、壮絶な光景だった」 「ふふ、楽しかったでしょう」 「別に」 「あら、つれないわぁん」 焼け残った物体を前にして語り合うおねいさんと先輩。 こうしてこの付近の群れは一匹残らず全滅した。 そして彼女らは知る由もないが、今頃は山中にて男が女を倒している頃だろう。 「まったく、わかってるのか?面倒なのはこれからなのかもしれないんだぞ?」 「あの女のこと言ってるの? だったら平気よん、きっと彼が上手くやるわん。 そもそも女とゆっくりが手を組んでるってわかったんだから、 人質の件さえもみ消しちゃえば、後は女が何言っても、知らぬ存ぜぬで通しちゃえばどうとでもなる話だしねん」 「まあ確かにそうなんだけどな。 しかし、結局あの女の目的は謎のままだからなぁ、どうなることやら……」 「やぁねえ、心配性。 どうせ大した目的じゃないわよん。 大方、世界平和とかそういう夢想の類じゃないぉ?あの手のキチガイのやることってさ。 それにね、たとえ世界の誰かが、ゆっくりでどんな企みをしようとも、確実に言えることが一つだけあるわん」 「んん?なんだそれは?」 「ふふん、それはね、この世におねいさんがいる限り、ゲスゆは必ず制裁されるってことよ!」 グッと親指を立てると、おねいさんは誰にともなくウインクをしたのであった。 おしまい。 後書きと、過去作品は容量制限のため省略。 そんなわけでまた次の機会によろしくお願いします。 ナナシ。
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夕日の中を木枯らしが吹き抜け枯葉を巻き上げる。 晩秋から初冬への境 豊饒の季節はもうすぐ終わりを告げる。 この季節はゆっくりたちがもっともゆっくりできない、否ゆっくりしてはいけない季節である。 なぜなら冬篭りの準備をしなければならないから。 皆準備の為に跳ね回り食料と資材を集める。 今年生まれた子供たちも母親と同じ仕事が出来るほどに成長し 姉妹達を率いて下草を集めたり、木の実を埋めたりと忙しい。 食料を集め、下草を敷き、入り口を塞ぐ頃には冬が来る。 「まつんだど~」「みゃ~て~」 「ゆ!ゆ!ゆうぅぅぅぅぅ…」 日に日に三日月に近づく月の下 ご多分に漏れず冬篭りの準備に急ぐのは体つきのれみりゃの親子 ただし彼らの準備は食料集めではない。 食いだめである。 冬の間に外に出るゆっくりは少ない。 必然的にれみりゃの餌も少なくなる。いくら狩りに出ても十分な食料は得られない。 したがってれみりゃ種は冬眠するゆっくりとなった。 冬の訪れまでに出来るだけ沢山の栄養分を蓄え、後は眠るのだ。 春先と盛夏に生まれた二匹の子供たちも狩りの仕方を覚え、多くのゆっくりを狩った。 体は指先まで丸々と太り、パンパンに張った血色の良い肌は白桃色に輝いている。 「やったどぉ~ごはんだどぉ~」 捕まえたゆっくりを抱えて巣に戻るれみりゃ親子 少々飛行するのに支障が出ているらしく がさがさと木の枝に体を擦っているが、この程度でなければ冬は越せない。 今回の冬眠場所は大きな木の下に掘った穴の中 入り口は残雪の心配の少ないよう東向き しっかりと下草を敷いたので寝心地は抜群 春まで快適に過ごせるだろう。 「お~いし~どぉ~」「う~」「さいごのでなーだどぉ~」 れみりゃ親子は今年最後の食事となるゆっくりありすを食べていた。 このありすは少々ゆっくりしすぎたの。 この季節の夜に外を出歩いていたのだから。 寒さに強くないゆっくりは晩秋の夜にはけして出歩かない。 夜はれみりゃの時間だからだ。 おそらくこのゆっくりしすぎたありすは 皆が巣を塞ぎ始めるのを見てあわてて冬篭りの準備を始めたのだろう。 食料になるものは殆どとり尽くされた森の中を彷徨い 冷たい秋風に吹かれ動きが鈍ったところをれみりゃに襲われたのだ。 たっぷりと栄養を取った健康なれみりゃは少々の寒さにもへこたれない。 秋風の中を自在に飛び、獲物を狩って冬に備える。 知能は消して高くないれみりゃが今日まで生き延びている理由は このあたりにあるのかもしれない。 「うぅ~はぁっぱぁ~ぱぁっぱぁ~はぁっぱぁっぱぁ~」 ばさばさと落ち葉や枯れ草、小石や小枝を巣の入り口に撒くれみりゃ 遊んでいるのではない。巣穴を偽装して隠しているのだ。 捕食種といえど油断は出来ない。長い眠りに付く冬眠中は尚更だ。 「うぅ~いぃしをつぅんでぇ~すぅきぃまぁをつぅめぇてぇ~つぅちぃをぉぬぅってぇ~」 親子代々伝わる歌のようなものを呟きながられみりゃは内側から穴を塞いでゆく。 巣穴の入り口に石と土と小枝を積み上げ、草や苔を隙間に詰め込む。 さらにその上から土をぺたぺたと塗りつければ封鎖完了だ。 「かんせいだどぉ~」 「やったどぉ~」「これであんしんだどぉ~」 入り口を塞いだらあとは眠るだけだ。 下草の上に親子三匹、川の字で寝転ぶ。 「う~!ふゆどをこすどぉ~!!はるまでぐっすりだどぉ~」 「はるまで~」「ぐっしゅり~」 おそらくもう数日で初雪が舞う。 この一家はそれすらも知らずに眠り続けるのだろう。 暖かい春の日差しが雪を溶かすまで となるはずであったのだが。 「うぅ~」 …ックザッ… …ックザック… 「う~?」 ザック…ザッ… 「うううぅ~!?」 ザクッ 「よしやったぞ!!」 「うー!!」 突然巣の中に光と寒気が流れ込んでくる。 飛び起きたれみりゃの目に白銀の世界と黒い二つの影が飛び込んできた。 「おし、大当たり!れみりゃだ。」 「やりましたね兄貴!!」 男たちはれみりゃを縛り上げると次々と袋の中へ放り込んでゆく。 「みゃあみゃあ!!」 「あがぢゃあああぁぁぁぁん!!あがぢゃあああぁぁぁぁん!!」 泣き叫ぶれみりゃたちを無視して袋を荷車に放り込む。 「ゆっぐりじねぇぇぇ!!」「だぜえぇぇぇ」「う~う~う~!!」 荷台には既にいくつもの袋が並んでいる。中身はすべて体つきのれみりゃかふらんである。 「こいつらは高く売れるからな。これで首が繋がったぜ。」 「兄貴が闘ゆっくりで有り金全部スっちまった時はどうなるかと思いましたけどね。 こんな特技があったんですね。兄貴って。」 この二人は人里に住む与太者たち。金策の為に一稼ぎしに来たのだ。 「死んだ親父がゆっくり取りの名人でな。俺もよく一緒に取りに行ったもんさ。」 「しかし饅頭なんざいつでも一緒じゃないんですかね?なんで今だけ高くなるんです。」 「ばーか、ゆっくりだって旬ってのがあるんだよ。れみりゃやふらんは今ぐらいの奴一番だ。 冬を越すためにたらふく食って油が乗ってるからな。質が違うんだよ。 知ってるか?なんでこいつらに体がついてるのか。」 「いえ、知りませんね。人間みたいに動けるからですかい?」 「それが違うんだよ。こいつらは道具を使える頭がねえからな。 栄養を蓄えるためなんだよこいつらが体つきなのは。」 「へえ、じゃあ兄貴の下腹といっしょですかい。」 「おめぇあとで覚えてろよ。まあそんなもんさ、冬眠中に困らないようにそうなったんだろうな。 同じ肉まんでも頭と体じゃ味も値段も違うんだ。」 荷車をがらがらと引きながら歩く二人 荷台には二十匹ほどのれみりゃとふらん。 「じゃあこないだのれみりゃに自分の子供で肉まん作らせてた店。 だから高かったんですね。」 「そうさ、あの店のは本物の親子だからな。体は取っても死なないってわかってるから体で作るんだ。 赤の他人のれみりゃに作らせると頭も体も関係なしに…おっとまたあったぜあそこだ。」 「よくわかりますね。俺にはぜんぜんわからねえや。」 「年季がちがうさな。年季が」 男はそういいながらスコップでざくざくと雪を掘っていく。 数十センチ掘ればぼこりと土がへこみその向こうには体つきの 「むきゅうぅぅぅ…ごほん……」 紫色の奇妙な物体。そして大量のチラシや新聞紙 一瞬ゆっくりぱちゅりーのようにも見えたが微妙に違う。 もやしのように細いが体がついているのだ。 「ありゃ、違ったぜこいつは」 「なんですこの紙くずまみれのは」 「こりゃあぱちゅりぃだな。体つきのゆっくりぱちゅりーだよ。 穴の塞ぎ方が似てるから間違えたんだ。」 「案外兄貴もあてになりませんね。」 「うるせえな久々なんだから仕方ねえだろ」 男達の会話をよそに冬眠中の巣穴を暴かれたぱちゅりぃは 大量の紙屑に囲まれて眠ったままだ。 いや、反応が薄いだけで起きてはいるのかもしれない。 どちらにせよ頭に霞が掛かっていることに代わりはないが。 「で、こいつは売れるんでしかい?兄貴 こいつの体も油が乗ってるんでしょ?」 「こいつの体はなぁ…ちょっと違うんだよ。」 「と、いいますと?」 「こいつは食うモンがなあ…ああ、見ろよほれ。」 むきゅむきゅと寝言を呟きながら手を伸ばすぱちゅりぃ その手が掴んだのは干からびた野菜くず。 ではなくなんと紙屑の山の中のチラシだった。 「えっと兄貴、まさかこいつ。」 「そのまさかだ。見てろよ。」 チラシを掴んだぱちゅりぃは 「むきゅうぅん。むきゅうぅん。」 それをそのまま口に運んだ。 しばらくの間もしゃもしゃと咀嚼したあとゆっくりと飲み込む。 この間なんと35秒、驚異のゆっくりっぷりである。 よく見てみれば紙屑だらけのぱちゅりぃの巣に食料はほとんどない。 あるのは紙屑ばかりである。 防寒材としては優秀かもしれないが普通なら食料にはならない。 それを食料にしてしまうのが歩く紫もやしことぱちゅりぃである。 虚弱でありながら妙に頑丈な肉体を持つ彼女は 生き延びるために驚異の消化力を身につけたのだ。 「こいつってこんなもんばっかり食ってるんですかね?」 「らしいな。弱くてまともな餌は取れないからこんなもんを食うんだろうが。 栄養も殆どないだろうからな。だから弱いのかもな。」 「卵が先か鶏が先かみたいな話ですね。で、こいつは食えますかね?」 「筋だらけだろうさ。やめとこう。」 その時男たちは下から見上げる視線に気づいた。 いつのまにかぱちゅりぃが目を覚ましていたのだ。 独特のどろりと濁った目で男達を見つめるぱちゅりぃ 常にもぐもぐと動き続ける口をゆっくりと開くた。 「ごほんはどこ?」 「は?」 「むきゅぅ、もってかないでぇぇ…」 蚊の鳴くようなか細い声で喋るぱちゅりぃ 白い雪と黒い土、灰色の紙屑と紫色のぱちゅりぃ 前衛芸術家かなにかなら喜ぶかもしれないが男たちにはもう限界だった。 「はいはいごほんね、ごほんだよ」 そういってちり紙代わりの天狗の新聞をぱちゅりぃに押し付ける。 「むきゅぅぅぅごほん、ぱちゅりぃのごほん」 嬉しいのだろうか上体を陽炎のように揺らすぱちゅりぃ 「あーはいはいよかったねごほんだね。おやすみね。」 「春までねむってようなぁぱちゅりぃ」 「むぎゅうううぅぅぅぅ!!」 ぱちゅりぃの体を紙屑の山に押し込むと そのまま土をかけて埋めもどす。 少々手荒すぎる気もするがなに紙を食べて生き延びられるゆっくりだ。 これくらいはどうということもあるまい。 「しかしあんなゆっくりもいるんですね。兄貴」 「わからんもんだな。案外と」 荷車を引きながら人里を目指す男達 荷台のれみりゃ、ふらんの体力も尽きたらしく静かなものだ。 冬を生き延びようとゆっくりを食べたこのゆっくりたちは 冬を彩る肉まんアンまんとして人々に食べられる。 なんとも因果な事ではないか。 「おそくなっちまったな。しかし」 「晩飯にこいつらでも食いましょうか。」 「馬鹿言うんじゃねえよ。まったく」 このSSに感想を付ける
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【MBAACC】フルムーン赤主秋葉 基本コンボムービー CC YouTube https //www.youtube.com/watch?v=lBfMrJ7NOYs nico http //www.nicovideo.jp/watch/sm16791333 フルムーン赤主秋葉 コンボムービー「Hesitation Snow」 CC YouTube http //www.youtube.com/watch?v=oT0aNzFF3OU (xW7YeVt6C6k) nico http //www.nicovideo.jp/watch/sm17499000 【MBAACC】ゲストコンボムービー CC YouTube http //www.youtube.com/watch?v=tdbPAKC-6RY nico http //www.nicovideo.jp/watch/sm18410927 ゆきちさん達の合同ムビです。 【MBAACC】赫訳・誘凪解説動画【F赤主】 CC YouTube http //www.youtube.com/watch?v=2N5RHC2Metc nico http //www.nicovideo.jp/watch/sm18737023 【MBAACC】F赤主秋葉 2ndコンボムービー「last fortune」 CC nico http //www.nicovideo.jp/watch/sm19076908 F赤主秋葉 3rdコンボムービー「sister s noise」 CC imageプラグインエラー ご指定のURLはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLを指定してください。 YouTube https //www.youtube.com/watch?v=yTstqNKvMfA nico http //www.nicovideo.jp/watch/sm21402563
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ご立派さまとゆっくり 8KB ギャグ パロディ 小ネタ 自滅 自然界 人間なし ぺにまむ 第二作目となります、一部ぺに注意をば。 まずは最初に、感謝の言葉を述べさせていただきます。 前作、『ふたば系ゆっくりいじめ 872 横バンジー』におきまして、閲覧・コメント等を下さった皆様に対して、 この場を借りてお礼申し上げます。 今作において、皆様にご指摘いただいた箇所を活かせることが出来ていれば幸いです。 また、今作を書くにあたり、きっかけと先陣を切って下さいました、 ゆっくりメガテンSS作者様に、無上の感謝を。 一部、悪魔の台詞部分の括弧などを引用させていただいております。 それでは、暫し稚拙な文にお付き合いいただけましたら、之幸い。 ――― 「ゆっ!ゆっ!ゆっ!ゆっ!!」 一匹のれいむが、懸命に跳ねている。 ゆっくりならば、ゆっくりとしていて当然であろうに、 何がそこまでれいむを急がせているのだろうか。 ふと、れいむが後ろを振り返ってみると、 「んほおおおおおお!!とかいはなれいむねええぇぇぇ!!! ありすがとかいはなあいをあげるわああぁぁぁ!!!」 れいぱーありすの集団に追われているではないか。 「ゆひぃー―!!れいぱーはゆっくりできないよおぉぉ!!!」 捕まればゆっくりできない目に遭わされる。 本能でそれを理解している以上、決して立ち止まるわけにはいかない。 「だれかれいむをたすけてよぉー!!……ゆっ?」 ふとれいむが前方を見ると、樹の下の陰に、小さく簡素なドアがあり、 中から微かにゆっくりの声が聞こえる。 「ゆゆっ!なかからゆっくりのこえがするよ!ゆっくりいそいで なかにひなんするよ!!」 れいむは持てる力を振り絞り、先程までの1.2倍のスピードで 樹の下のドアに向かって跳ねた。 やっとの思いでドアに飛び込んだれいむは、背後かられいぱーが 迫っていないか、耳(?)をすませてじっとしている。 しばらくそのままの体勢でいたが、れいぱーの声が聞こえないことに気付くと、 「ゆふぅー…れいぱーはいなくなったみたいだよ。 やっぱりれいむがとくべつだから、たすかったんだね! かわいくってごめんねっ☆ミ」 安心と同時に、誰も見ていないにもかかわらず、 媚びたポージングもしてみせた。 一通りの戯言を終えた後、れいむは現状確認をする。 「ゆぅん…それにしても、ここはどこなの?くらくてずいぶんゆっくり してないし、さっきこえがきこえたゆっくりはどこにいるの? れいむがせっかくきてあげたのに、気がきかないね!ぷんぷん!」 れいぱーに追われて逃げ込んだことなど、既に忘却の彼方だ。 今では、わざわざ遠方から来てやったことになっている、さすがは餡子脳。 「ゆっ……したのほうからゆっくりのこえがするね、ゆっくりいってみるよ!」 れいむはぽよんぽよんと、ドアを入った奥、地下に到る道を跳ねていった。 れいむが下に潜って少し経つと、開けた空間が目前に広がった。 地面には木の枝で描いたのであろう円のようなものがあり、 部屋の最奥には、葉っぱの上に芋虫が乗せられたものが4つ並んでいる。 その芋虫が置かれた前の位置、円の外周面に、1匹のゆっくりぱちゅりーがいる。 周りを見回してみると、ありすが2匹、ぱちゅりーから少し離れた位置に並んでいた。 ありすが先程のれいぱーの仲間かもしれないと思い、一瞬身体が強張ったが、 「ゆっくりしていってね!!」 口の動きだけは、れいむの意思に反して、勝手に言葉を紡いでいた。 「ゆん?ゆっくりしていってね!!」 「むっきゅっきゅ、ゆっくりしていくといいわ…。」 幸い、普通に返事をした所を見ると、どうやられいぱーではないらしい。 一安心して、れいむはこの3匹が何をしているのか尋ねる。 「れいむはれいむだよ!ありすやぱちゅりーはここでなにしてるの?」 「ありすはありすよ!ありすたちはぱちゅりーにおねがいして、 れいぱーをたおす『あくまさん』をしょうかんしてもらおうとしてるのよ!」 「ぱちゅはぱちゅよ……むっきゅっきゅ。」 肯定の意なのか、挨拶の後にぱちゅりーが含み笑いをする。 悪魔の意味は分からなかったが、れいぱーを倒すときいて、 れいむは自然とテンション高めで、目を輝かせながら話に飛びついた。 「ゆわあぁぁ…!れいぱーをたおすなんて、『あくまさん』は ゆっくりしてるんだね!」 「そうよれいむ!そこにきづくなんてなかなかとかいはね!! わかったら、れいむからもぱちゅりーにおねがいしてくれないかしら?」 このありす達、れいぱーと同じありす種という理由だけで群のゆっくりに迫害され、 ついには群を追放されてしまったのだ。 あてもなく森を彷徨っていると、通りすがりのちぇんから、 「すごいちからをもったゆっくりがいる」という噂を聞き、 こうしてぱちゅりーのもとを訪れたという訳だ。 「ゆん!れいむからもおねがいするよ!! ぱちゅりーははやく『あくまさん』をしょうかんしてね!! それとれいむにあまあまちょうだいね!たくさんでいいよ!!」 どさくさに紛れて自分の要求もしっかり言っているところが、 れいむらしいといえばらしいのであろう。ゲス素質が見え隠れしているが。 「そうよそうよ!はやく『ごりっぱなあくまさん』をしょうかんしてね!! ……ありがたやー。」 3匹に頼まれ、ぱちゅりーは少し目を閉じて考え込み、そして言った。 「………むっきゅっきゅ、さっきからいってるように、まだ 『あくまさん』をしょうかんするときじゃないのよ。 あの『あくまさん』は『ごりっぱなあくまさん』……かんっぺきっな ときにしょうかんしないと、おそろしいことになるのよ。」 ぱちゅりーのやんわりとした否定の言葉に、ありす達が怒り狂う。 「なにいってるのお゛お゛お゛!!! はやくしょうかんしなさいっていってるでしょお゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!! ありすとおなじれいぱーなんて、1びょうもいきてちゃ いけないことをりかいしなさい!!このいなかものお゛お゛ぉ゛ぉ゛!!!」 「ほら、れいむもはやくおねがいして!『ごりっぱなあくまさん』をしょうかんして、 れいぱーたちをえいえんにゆっくりさせてって!!」 れいむは少し考え込み、すぐにれいぱーに追い回されたことを思い出し、 ぱちゅりーに早くするよう催促する。 「ゆううう!ぱちゅりーはさっさと『ごりっぱなあくまさん』をしょうかんしてね!! ぐずはきらいだよ!!」 「ほら、れいむもこういってるわ!ぱちゅりーははやく 『ごりっぱなあくまさん』をしょうかんしてちょうだい!!」 れいむの発言に少しイラッとしたが、ぱちゅりーは不適に笑いながら告げる。 「……むっきゅっきゅ、どうなってもぱちぇはしらないわよ?」 そう言うと、ぱちゅりーは呪言の詠唱を始めた……。 「えるえろひむえろほえろひむさばおとへいおねいえちあぎえれえかあどないじゃあ しゃだいてとらぐらまとんしゃだいあぎおすおせおすいすくひろさたんとん… あぐら…あーめん…きえぇえぃ!」 ぱちゅりーの最後の叫び声と同時に、雷が円(魔方陣)の中央に落ち、 皆が待望の『ごりっぱなあくまさん』…マーラ(様)が召喚された。 …が、 【…ウジュル………ウジュルジュル……ググ……ギギ………】 予想していた『ごりっぱ』な姿ではなく、ふにゃふにゃの頼りない姿であった。 予想外のマーラ(様)の姿に、これにはありすも大激怒。 「ばぢゅりいい゛ぃ゛ぃ゛!!これはどういうごどなのお゛お゛ぉ゛ぉ゛!!!」 左右に振り回され、クリームを吐きつつパチュリーは答える。 「えれえれえれ……むきゅ、どうやらあわててしょうかんしちゃったから、 かんっぺきっじゃない『あくまさん』をしょうかんしちゃったみたいね……えれえれえれ。」 ありす達の希望の光とも言うべき悪魔、マーラ(様)が失敗作と聞いて、 自分達の悲願を達成できないと知ってしまって、 そして、目前の『ごりっぱ』ではない失敗作を恐れ、怯えた。 「「「ゆ、ゆわあああああああ!!! きもちわるいあくまさんはかえってねええぇぇぇ!!!」」」 勝手に召喚した挙句、今度は気持ち悪いから帰れとは、なんと自分勝手な。 その感情を口にするべく、マーラ(様)は口を開く。 【ググ………ギ………オマ…エラ……ヨク…モ……!】 そこまで言って、マーラ(様)は突如身体を伸ばし、 一時的に『ごりっぱ』な姿を取り戻した。 すると今度は身体を縦横無尽に振り回し、狭い空間にいるゆっくりたちを 押し潰すべく、暴れまわりだした。 「ゆんやあぁぁー――!!れいむはかわいいからゆるしぐべらっ!」 話の途中で、入り口付近にいたれいむは、上半身を吹き飛ばされた状態で即死した。 「「あああ、ありすはとかいはなのよ!きもちわるい『あくまさん』でも、 ありすにかかればとかいはなこーでぃねーとをぶぎゅっ!」」 マーラ(様)を再度挑発してしまったことで、ありす達はまとめて カスタード塊に変えられてしまった。 自分以外のゆっくりがすべて永遠にゆっくりさせられたことで、 召喚主たるぱちゅりーは、焦りながらもマーラ(様)を説得しようとする。 「む、むきゅー!ぱちゅは『あくまさん』をしょうかんしたしゅじんさんなのよ! わかったら『あくまさん』はぱちゅのいうことをえぶふぇっ!」 不完全な姿で召喚した者の言うことなど聞く必要はないとばかりに、 ぱちゅりーはマーラ(様)の突進をまともに受け、爆ぜた。 悪魔を召喚する以上、対価は必要になる。 供物として芋虫を用意したはいいが、その程度でかの魔王は満足しなかったようだ。 犠牲になったゆっくり4匹程度でその穴は埋められたのだろうか。 それは、彼以外誰にも分からないのであった…。 完 ――― 少しの後書き いかがだったでしょうか、少しでも楽しんでいただければこれ以上の喜びはありません。 とはいえ、ターゲット層を絞った作品ではありますが…。 最後に再度、ゆっくりメガテンSS作者様に感謝を。 もし迷惑でしたら、コメントに気付き次第削除させていただきます。 それでは、ありがとうございました。 トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る ナニが御立派かって? カリにも魔王マーラ様だぞ? お釈迦様でもない限り誰にも勝てんよ。 -- 2018-01-05 18 32 15 カリにも魔王だぞ? 許すわけないだろう・・・ -- 2014-08-04 15 03 29 マーラ様は瞬殺派らしいな。 -- 2013-05-30 00 01 51 マーラさんは、ゲス野郎4っつと、芋虫4匹で許すって…心が広いな -- 2010-12-11 16 17 30