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「おねーさんのお仕事は俺をそいつらの所に『連れていく』だけなんでしょ?じゃあ俺がそいつらの所に行ったらおねーさんとそいつらとの繋がりは無くなる。んで、俺は研究室に入ることを正式にお断りすれば万事解決!誰も損しないよ!」 昨日、透伊は自信満々にそう話していた。作戦と呼ぶのもおこがましいものだが、結にはそれしか出来ることが無いので乗っておいた。実際、研究室に入るかどうかは透伊の自由だ―――依頼人が損をするということは敢えて突っ込まないでおくが。 透伊の拒絶の言葉に、男は少々面食らった顔をした。が、その直後に頭を抱えて笑いだした。 「ハハハハハハハハハハッ!嫌ですか!ならば……」 チャキッ 男の後ろに控えていた数人の男達が、一斉にナイフを取り出す。 「力ずくで」 その言葉を合図に、ナイフを持った男が透伊に襲いかかる。 「なっ………」 結は咄嗟に後ろに下がったが、透伊は白衣のポケットに手を入れて動こうとしない。ナイフが透伊に届く、という所で ガッ 透伊が足を振り上げた。その足は男の手首にクリーンヒットし、男は痛みのあまりナイフを落として蹲った。それを見た残りの男達が透伊に向かってくる。透伊は男達の攻撃をヒラリヒラリとかわし、一人には頭に上段回し蹴り、一人には腹部に膝蹴り、もう一人は足払いで次々と倒していく。 あまりの事で思わず見入ってしまったが、よくよく考えてみればこの男達は銃刀法違反に傷害未遂、事務所で暴れられたので器物損壊も追加で立派な犯罪者である。 しかし、今の結は警官ではない。仕方なしと携帯電話を取り出し通報しようとしたその時。 「動くな!!」 すぐ後ろで、依頼人の男が声を荒げた。首の辺りに腕を回される。 取り押さえられた。 透伊が驚いた様に此方を見る。こめかみに硬い物が押し付けられた。拳銃だ。 「大人しくしていないと、この女を撃ち殺すぞ」 ぎり、と腕に力が込められ、銃を更に強く当てられる。 「……っ」 「交渉だと思っていたら大間違いですよ。そこから少しでも動けばこの女を…って」 男の言葉が止まった。結が顔を上げると 透伊が此方に向かってツカツカと歩いてきた。 「えええぇえぇぇえぇええ!?」 思わず男と声を合わせてしまった。透伊は何事も無かったかの様に歩いて来ている。 「おまっ……話聞いてなかったのか!?撃つっつってんだよ!この女を!!」 「はっはっは。撃てるもんなら撃ってみろよ。そのチャカは飾りかぁ?」 「挑発するな馬鹿あああ!」 透伊の挑発に完全に怒ったらしい。男は叫びながら銃の引き金に指をかける。 もうどうにでもなれ! 「いい加減にしろこの馬鹿者どもがああぁ!!」 結は男の襟首を掴み、そのまま勢いをつけて投げ飛ばし、床に叩きつけた。
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一方、森の中。 四匹は楽しげに魔理沙の家へ向かっていた。 蓬莱人形に案内されながら森を進んでいく。 「おねえさんのおうちにいったらゆっくりできるね!!!」 「むきゅー! みんなでゆっくりしようね!」 自分達の所へ来て、おいしいご飯を作ってくれた優しい魔理沙。 程なくして魔理沙の家へ到着した一行。 「ここがまりさおねえさんのおうちだね!!!」 「いきなりきたからびっくりするかな?」 「ゆっくりするする!!」 「う~♪」 四匹は玄関へ向かう。 どうやら呼び鈴を鳴らそうとしたらしいがたどり着けなかった。 「ゆ!?」 「いだい!」 家に近寄ったとたん、見えない壁でもあるかのように跳ね飛ばされたのだ。 これは魔理沙が仕掛けておいた泥棒除けのトラップだが、元々人間以上用にしてある為に三匹は数十メートルも飛ばされた挙句、木にぶつかってようやく止まった。 「ゆ! いたかったよ!! ぱちゅりーだいじょうぶ?」 「むきゅー、だいじょうぶ。ゆっくりできるよ」 改めて玄関を見る。 見た限りでは何も変哲のない、ただの玄関がそこにはあった。 「う~♪ とびたいとびたい!!!」 知らない人の家の為、出遅れていたれみりゃが玄関に駆け出す。 どうやら飛んでいったのが面白そうだったようだ。 自分も跳ねたくて勢いよく玄関に直進する。 「!? うーーー!!!」 しかし、物言わぬ玄関が突きつけたのは弾幕。 トレードマークの星型の弾幕だった。 段々とパワーが上がるのであろうそれは、妖怪や並以上の人間にとっては何て事のないものだ。 「うー! っえぐ、いだい。ぱじゅりー、こぁくまー、ざぐやー!!!」 人間では無いがそれ以上に弱い、ゆっくりれみりゃには大分威力があったらしい。 傷こそ付いていないが、きぐるみから出ていた顔面に弾幕が当り、鼻の上が真っ赤に腫れていた。 その泣き声を聞いて駆け寄ってくる三匹。 「だいじょうぶ? ゆっくりできる?」 「むきゅー? ぱちゅりーはここだよ!!」 「うー! ちがうちがう!! ぱちゅりーちがう!!! おせえさんのぱじゅりーなの!!!」 「まりさおねえさーん!!! れいむたちだよ!! わるいひとじゃないからおうちにいれてよ!!!」 ゆっくり霊夢がそう叫ぶ。 この時に一歩近づいたのがいけなかったのか、またトラップが発動してしまう。 今度のトラップはアリスから盗んだ五寸釘。 それがどんどんばら撒かれる。 「むっきゅーー!!!」 「ゆっぐりでぎないよーー!!!」 最初に声をあげたのは魔理沙とパチェリー、あの日五寸釘を打たれた二匹のトラウマが再発した。 「やめてね! まりさたちがゆっくりできないよ!!!」 「うー! やだー! おうじがえる!!!」 次に混濁した意識の中でそれを見ていた霊夢、釘が当って打ち付けられた木を見て威力を理解したれみりゃが続いた。 「ゆっぐりできないよ! まりさおねえさんのおうちはゆっぐりでぎないよ!!!」 「ゆっくりはやくかえろうね! でないとゆっくりできなくなるよ!!!」 「むきゅー! むきゅー! ゆっぐりざぜでー!!!」 「うあー! ざぐやー! ぱじゅりー! こぁぐまー!!!」 未だ放たれ続ける釘を避けながら、必死にアリスノ家まで森を逆戻りする四匹。 ゆっくり達の遥か上を釘は飛んでいたのだが、それには気付かなかったようだ。 息も絶え絶えに逃げ帰った。 家に帰ると、真っ先に厳寒に駆け寄っていった。 しかし、まだアリスは戻っていないようで、鍵がかかった玄関は見た目通りの重量感を醸し出していた。 「カギカカーテルヨ! アリスガカエーテクルマデ、オソトデマーテテネ!」 「お姉さん、まだまちからかえってきてないね」 「おねーさんのおにわならゆっくりできるね」 「ゆっぐりじだい! むきゅ~」 「うっ、ぐす。うぅ、うー」 何時もの木下で休む。 健康な霊夢と魔理沙も未だに息が乱れている、大分疲れたらしい。 「なんで。なんでおねえさん、ゆっくりさせてくれなかったんだろう」 「いつもおいしいたべものつくってくれたのに……」 しかし、ゆっくりがいくら話し合っても答えが出るわけも無く、無意味なおしゃべりはアリスが帰ってくるまで続いた。 「ただいま、さぁ鍵は開けたわよ。中に入りましょう」 「「「おねえさんおかえりなさい、ゆっくりはいるよ」」」 「う~。はやくはいる!はいる!」 ゆっくり達がアリスを出迎える。 街で何か良い事があったのだろう、その顔はとても嬉々としていた。 「はいお土産のおかしよ」 そういって袋を床に置く、立ち込める食欲をそそる香り。 「ゆ!こんなにいっぱい! おねえさんおかねだいじょうぶなの?」 「大丈夫よ、遠慮しないでたべなさい」 「むしゃ……! これめっちゃうめぇ!」 「むしゃむしゃ。まりさ、ぱちゅりー、おいしいね」 「ごはん!ごはん!」 「う~?」 お土産のお菓子はたこ焼き。 勿論、朝食の時同様、お腹は減っていたがれみりゃは食べはしなかった。 「あらあら、あなた達。れみりゃは食べなくってもいいみたいよ。代わりに食べていいわよ」 「うっめ!いただきます」 「これまじうめぇ。おねえさんありがとう」 「めし!めし!」 「うー! れみりゃのごはんは! おかしじゃなきゃやだー!!!」 目の前で美味しそうに食べる三匹を、終いには泣きながら眺めるれみりゃ。 早く自分のおやつが食べたいのだろう。 昨日はきちんと、小悪魔がれみりゃ用の甘いおやつを出してくれ、朝もきちんとパチュリーがプリンを作っていって帰っていったのだ。 れみりゃがそう思うもの無理は無かったが、実際は出てこない。 食べ物の匂いが立ち込める中、三匹の意地汚い食いっぷりが更にれみりゃの涙腺を刺激する。 「うーー!うーー! おがじー! おがじぐれないとたーべちゃうぞー!」 それを濁った目で見るアリス。 思いつきで始めた元手0円の副業。 思いの他上手くいったが、利益をれみりゃに還元する気は更々ないらしい。 「れみりゃが早く遊びたがっているから、食べたら遊んであげてね」 「「「ゆっくりたべたらいっしょにあそぶよ!!!」」」 「そう……。食事は楽しく食べないとね」 仲良くおしゃべりしながら食べる三匹、この調子だと三十分はかかりそうだ。 「ゆっ! おねえさん。まりさおねえさんのおうちにいったけど、ゆっくりできなかったよ」 「あら? どうして、いままでお世話になってたんでしょ?」 「おうちのまえまでいったのに、いれてくれなかったの」 「あらあら、本当に?」 「むきゅー! はじきとばされたり、ぱちゅりーのあたまをさしたぼうで、またさそうとしてきたの!」 「……、そう。やっぱりね」 肩を落としながら答えるアリス。 これは勿論演技だが、ゆっくり達には見抜けないだろう。 「どうしたの? おねえさんだいじょうぶ?」 ゆっくり魔理沙が心配そうに駆け寄ってくる。 圧倒的な身長差の為に魔理沙の方は下から見上げる形になる。 「えぇ、大丈夫よ。だからそんなに心配しないで」 そう答えるアリスの顔は満足そうだ。 顔だけでも、魔理沙に心配してもらっている、計り知れない充実感がアリスの体に満ちていく。 「実は魔理沙は悪い魔法使いでね、あなた達に人形を使って釘を打ち付けたのも、あなたの餡子を取り出して食べたのも魔理沙の魔法の力なのよ」 「「「ゆ!!」」」 信じられない、と言った表情の三匹。 だって魔理沙お姉さんは何時もゆっくり達に食べ物を作ってゆっくりさせてくれたのに……。 「それはね、一杯食べらせて太らせるためなのよ……」 どうやら声に出していたらしい。 アリスからの返答にさらに困惑する三匹。 どうもゆっくりの頭では、理解するのに数分かかってしまうらしい。 「魔理沙お姉さん、ゆっくり達のこと騙してたんだね!!!」 「ゆっくりさせて食べちゃうつもりだったんだね!!」 「むきゅー! はじりだぐない! はじりだぐないよー!!」 三者三様の反応。 しかし、三匹とも魔理沙に対しての評価がガラッと変わったのは事実。 「おーいアリスいるかぁ?」 確かめるチャンスが来た。 「はいはい。いるわよ、紅魔館に行ったんじゃなかったの?」 アリスは平然を装って対応する、片目で三匹を見ながら。 「それがさぁ、いざ始めようとした時に八卦炉忘れたのに気付いてな。昨日色々いじってそのままにしてきちまったんだよ」 「ふーん、あんたらしいわね」 「それで戻る時にお菓子を頂戴してきたんだ、ゆっくり達に食わせてやろうと思ってな」 「っ!」 今はゆっくりガ主役だと分かってはいても、自分の為にではなくゆっくりに為に家に来た魔理沙。 ゆっくりの分際で魔理沙に馴れ馴れしくする上に、お菓子まで強請るなんて……。 声に出しそうになった口を必死に閉じる。 もうすぐそれも終わるのだから。 「はらゆっくりども、魔理沙様が紅魔館から頂いてきたケーキだぜ!」 そういってゆっくり達の前にケーキを並べる、どれも色とりどりで美味しそうだ。 「う~♪ け~き! け~きた~べちゃうぞ~♪」 れみりゃがケーキに駆け寄る。 なにせ紅魔館のけーきだ、散々目の前で三匹が美味しそうに食べているのを見せられたれみりゃは勢いよくケーキへ向かっていく。 が、すでにケーキは潰れていた。 「魔理沙お姉さんの食べ物なんか要らないよ! ゆっくりできないならでていってね!!」 「いっぱい食べさせて霊夢を食べるつもりだったんだね!!」 「むきゅー!! あやまってね!!! あやまってね!!!」 ドンドンと、音を立てながらケーキを踏みつけていく。 あっという間に床のしみに成り果てるケーキ。 「おっおい! いったいどうしたんだよ……」 「出て行ってね! おねえさんのお家から出て行ってね!!」 「うわっ、わかった! わかったよ!」 勢いに押されれ逃げるように玄関から出て行く魔理沙。 訳が分からず玄関先で固まっていた魔理沙にアリスが声をかける。 「ごめんなさい。あの子達なにか勘違いしてるみたいなの、後できちんと話しておくから」 「そうか。よろしくたのむぜ、アリス。」 元気が出た魔理沙は、アリスの肩を軽く叩いて、箒にまたがって紅魔館へと飛び立った。 「おねーさん! 魔理沙おねーさん帰った?」 「れいむ、魔理沙お姉さんとはもうゆっくりしないよ!!!」 「パチュリーも!!! おねーさんとゆっくりするよ!!!」 アリスの顔から笑みがこぼれる。 「三匹とも、魔理沙には私からよく言っておくから。その時はまたゆっくりしてあげてねくれる?」 驚きとも、困惑ともつかない表情の三匹。 やっぱり、自分たちに酷いことをしてきた人を許す事は、ゆっくりでも出来ないんだろうか? そんな考えがアリスの頭を過ぎった時だった。 「……。良いよ!! おねーさんが許すんだったら魔理沙もゆるすよ!!!」 「おねーさんは優しいから!! 霊夢も許してあげる!!」 「むっきゅー!! ぱちゅりーもぱちゅりーも!!!」 「そう……。ありがとう。……良かったわ」 コイツラはやっぱり馬鹿だ、馬鹿正直に自分の演技に掛かってくれている。 アリスの本音はゆっくり達が思っているものとは違う。 しかし、ゆっくり達の本音はアリスも理解している。 だから面白い、楽しい、快感なのだ。 「それじゃあ、夕飯まで遊んでいらっしゃい。日が暮れたら帰ってくるのよ」 「」 「うん、ゆっくり帰ってくるよ!!」 「「お姉さんいってきまーす!!!」」 「行ってらっしゃい」 笑顔のまま三匹を見送る。 そのまま家の中に入る、が今度は異質の笑顔を向けていた。 「うーー!! れみりゃのけーきがぁ!! けーきがぁ!!!」 そう言いながら、地面に落ちたケーキを見て泣き叫ぶれみりゃ。 かつてのレミリアの面影は全く無いが、アリスにはそんな事関係ない。 レミリアが無様に泣き叫んでいる、そう思うと不思議のアリスの心も満たされていく。 「う~!! れみりゃのけーぎ!! ……う~♪」 あろう事か、床に落ち潰れたケーキを食べようとするれみりゃ。 「う~♪ げーぎ♪ げーぎ♪」 うつ伏せになり、顔を近づけ、正にれみりゃの舌がケーキに触れよとしたとき。 「うぇぶ!! え゛ーー!! ぎ゛ょ゛ーーーーー!!!!」 アリスの人形がれみりゃの舌を打ち付けた。 しっかりと打ち付けられた舌の所為で上手く話すことも、動くことも出来ない。 少しでも動くと舌が抜けそうな程の激痛が走る。 今まで紅魔館でぬくぬくと暮らしていたれみりゃが感じた本当の痛み。 「うがーーーー!!! じゃぐあーーー!!! じゃくがーーー!!!」 肉汁を口から溢して、必死に叫び声をあげるれみりゃ。 「だめじゃないれみりゃ、あなたは紅魔館のお嬢様なんでしょ? そんな汚いの食べちゃいけないわ」 アリスが口調は優しく語りかける。 「う~!! いだいーーー!! ざぐやー!! ぱじゃりーー!! ごぁぐまーー!!!」 何度目かも分からない助けを求める声。 生憎と呼んだ人物の中にゆっくり愛玩者は無く、ただ煩いだけの叫び声と成り果てる。 「ふふ。無様ね、れみりゃ。でも安心して、貴方と違って私はとっても慈悲深いから助けてあげるわ」 「うわーーー!!! うっ? う~~~♪」 首根っこを掴んで持ち上げる。 猫を持つような格好だが、持っているのは猫ではなく元紅魔館のお嬢様。 「う~♪ たかいたがーーい♪」 そのまま、二階まで上がり一番日当たりの良い部屋まで連れて行く。 「う~!!! もっと~~~♪ もっとたかいたか~い♪」 床に降ろされたれみりゃは、よほどさっきのが楽しかったのかしきりにもっともっととおねだりをして来る。 「……」 それを無視して、アリスはあの大きな透明な箱の中にれみりゃを入れる。 「う~? だしてーーー!!! だしてーーーー!!!!!」 防音になっているのか、その声を無視してアリスは下に降りてしまった。 「うーーー!!! あーーーーー!!!!!」 残されたれみりゃは、必死にそこから出ようともがくがそれも叶わない。 それどころか、事態は段々と悪い方向へ転がっていく。 「う!! いだいーー!!! いだーい!!!!!!」 突如れみりゃの体に激痛が走る。 「ああーーー!!!! いだーーーい!!!!」 それに驚き、飛び跳ねるとまた激痛が。 「あがが!!! しゃくやーーー!!! ぱじゅりーーー!!! こぁくまーーー!!!!」 「ぎゃーーーー!!!!」 知能の低いれみりゃに動かない、と言う選択ができるはずもなく延々と苦しみを味わい続ける。 朝、裸で外に出された事、そしてその上からきぐるみを着せられた事。 その二つが、今回もれみりゃの体中をかぶれさせた原因だった。 「あぎゃーーー!!! うぎゃーーー!!! いだいーーー!!!!」 夜中も相変わらず叫び続けるれみりゃ。 既に、アリスも他のゆっくり達も夢の中に旅立っているが、痛さで寝るどころではない。 「うーーー!!! うーーー!!!」 それでも、ずっと泣き叫んでいる事で疲労が溜まっているのだろう。 「うーー!!! ……いだい……」 徐々に、そのれみりゃも夢の中に落ちていった。 翌朝。 「う~♪ おながすいたぞ~♪」 れみりゃは空腹で目が覚めた。 「う!! いだい!!! いだい!!!」 しかし、直ぐに体中に痛みが襲ってくる。 「あが!! ううう!!! うーーー!!!」 「あら、起きたの? れみりゃ」 部屋に入ってきたアリスの腕には、美味しそうな料理が載せられていた。 「うああーー!! いだいーー!! おながへっだーーー!!!!」 「はいはい。ちょっとまってね」 箱からだし、きぐるみを脱がせる。 それで、痛みが幾分和らいだれみりゃの興味は、今度は食事の方へと向いた。 「うーー!! ごはんたべりゅーー!!!」 「ええ。どうぞ」 「うっう~~♪」 思えば、昨日の朝から食事をしていなかったれみりゃは、目の前に出された食事にがっついた。 「う!! まずいーー!! これいらない!!! おがしちょーーだい!!!」 飛び散る食事。 どうやら、この状態になっても、お菓子以外は食べたくないらしい。 「はーーやーーぐーーーおーーーーがーーじーー!!!!」 「……」 「おーーーーがーーじーーーー!!!!」 「だまれ」 「おーーー!! むぐぐ!!」 飛び散った食事を、無理矢理れみりゃの口の中に押し込んでいく。 「まったく、何時から紅魔館のお嬢様はこんなに我侭になったのかしら? ダメじゃない好き嫌いしちゃ?」 「ううーー!!! うーーー!!! まずーー!!」 「だまれっていってるのよ!!!」 「!!! ぎゃーーー!!! いだいーーー!!!! もご!!」 アリスは、れみりゃの傷だらけの肌を思い切り掻き毟る。 悲鳴を上げたくても、口には大量の食べ物がドンド運び込まれる。 「ほら、ドンドン食べてね。折角作ったんだから」 「うーー!! ぎゃーーー!!!!」 吐き出そうとすると体に激痛が走る。 そんな事を繰り返しているうちに、少しずつ喉の奥に運び込んでいくようになった。 「うーー!! ごくん!! うーーー!!!!!」 「そうそう。偉いわ」 「うーーー!!! ぜんぶたべだーーー!!!!」 死に物狂いで、全ての料理を平らげたれみりゃはその泣き顔でじっとアリスを凝視した。 「ええ。今度から食事はきちんと食べるのよ」 「うーーー!!!」 口答えする気も起きないらしく、ただただアリスの言う事に頷く。 「そうだ、体痛いでしょ?」 「う? うーー!! いだいーー!!!」 どうやら、今まで忘れていたらしい。 思い出した今は、しきりにイタイイタイとアリスに叫ぶ。 「これがいけないのよ? こっちを着なさい」 「あああーーー!! きぐるみがーー!!! どーじでーーー!!!」 目の前で着ぐるみを完全に灰にしたアリス。 そして出されたのは、れみりゃの服だった。 「う~~♪ きぜで~~~♪ びぎゃ!!!」 「自分で着れるでしょ?」 「うーーー!!!」 痛い体に鞭を打って、必死に服を着ていくれみりゃ。 「うっぎゃ!!」 「そこはそうじゃないでしょ?」 「う? う? うっぎゃーーー!!! いだいーー!! いだいーー!!!!」 「ほら、きちんと着なさい」 「うーー!!! うーーー!!!」 この痛みから逃れるためには、はやく服を着てしまうしかない。 この服を着る時も痛みがあるだろうが、アリスに蹴られるよりは痛くはない。 何度も蹴られながら、それでも必死に、そうして何とかきちんと服を着ることができた。 「そう。やればできるじゃない」 「う……、う~~~♪」 「じゃあまたそこに入っていなさい」 「うーーーー!!!!!! だじでーーー!!! だじでーーー!!!!」 またしても、アリスはれみりゃの叫びを無視して行ってしまった。 それから一週間、れみりゃは毎日同じ生活を続けた。 食事は一日三回、お菓子などは一切出てこない。 服は朝、一度脱がされる、そして着替えさせられる。 一度だけ、そのまま過ごしていたことが有ったが、その時は体中に唐辛子を塗りつけられた。 一方の三匹は、その一週間をゆっくりと過ごしていた。 朝は可愛らしい人形に起こされ、朝食を取り森に出かける。 そしてお昼に帰ってきて昼食を取り、今度は家の庭で遊ぶ。 夕食後は、庭か自分達のベッドで遊ぶ。 ゆっくりとした一週間。 三匹が気になった事といえば、今まで遊んでいたお友達がめっきり来なくなってしまった事だけだった。 ―― そして一週間後。 その日の朝は、何時も通り始まった。 「ホーライ!!」 「ゆゆ!! おにんぎょ~さんおはよう!!」 「今日も霊夢たちはゆっくりするよ!!」 「むきゅむきゅ!! きょうも元気にすごすよ!!!」 人形に連れられ、家の中に入る三匹。 三匹は気付いていたのだろうか。 家の人形達は、全て修理を終えていた事に……。 「「「おねーーさん!! おはよう!!」」」 「おはよう。さぁ朝ごはんよ」 何時も通りの朝の挨拶。 そう言ってアリスが食事を出してくれる事も何時も通りだった。 「いっただきま~す!!」 「むっきゅ~~!! おいし~~~!!!」 「むっしゃ!! うめぇ!! めっちゃうめ~~!!」 ガツガツ!! ムシャムシャ!! 辺りには、モノを咀嚼する音だけが響く。 そして、ニコニコと美味しそうに食べる三匹を眺めるアリスの姿。 「むっぐもぐ……? ……?」 最初に、異変に気付いたのはゆっくり魔理沙だった。 「……おねーさん。このあんこどーしたの?」 「ゆゆ?」 「むきゅ?」 他の二匹も、食べる口を留めて魔理沙のほうを向く。 「どういしたの魔理沙? ゆっくりおいしーよ」 「そうだよ!! おいしーよ!!」 「だって!! だってこのあんこおかしいよ!!!」 小刻みに、魔理沙の体が震え出す。 自分は、以前にもこの味を食べたことがあった。 「美味しいでしょ? いままで遊んでいたお友達の餡子よ?」 「ゆ? なにを言ってるのおねーさん? 霊夢にも分かるようにせつめいしてね!!」 「むっきゅ~~~?」 「今まで仲良く遊んでいたお友達は、皆加工場に連れて行って餡子になっちゃったのよ」 クリクリした瞳を向けて尋ねてくる二匹に、アリスは端的に言い放った。 「!!! やっぱりおねーーさんがやったんだね!!」 ゆっくり魔理沙が、アリスの下に駆け寄ってくる。 「ゆ!!!」 しかし、多くの人形達にそれは阻まれてしまう。 「ええ。貴方達が加工場の中で楽しくゆっくりしていた時に、全部捕まえてあげたのよ」 「ゆー!! おねえさん!! どうしてそんなことするの!!」 「むっきゅーー!!!」 「どうしてって、あんた達が私の家をメチャクチャにしたからでしょ。折角魔理沙一緒に暮らすために、一緒に魔法の研究をしようと綺麗にしていたお家を……」 押し黙るアリス。 ボソボソと、魔法使い特有の早い口調で言葉を続ける。 「でもね、あなたたちはころさないであげたのよ。せっかく魔理沙が気に入ってたしね。魔理沙は優しいのね。でもね!!!」 「「「!!!!」」」 「でも、あんた達三匹は折角魔理沙が持ってきたお菓子を台無しにしただけじゃなくて、魔理沙を悲しませる事を行ったりして。それが許せなかったのよ!!!」 アリスの独白が終わると、家中の人形が三匹を取り囲んだ。 「ゆゆ!! おねーさん!! おねーさんが魔理沙おねーさんはゆっくりできないっていったんだよ!!!」 「私がそんなこと言うわけないじゃない!!! 魔理沙は、魔理沙は一緒に居るだけでゆっくりできるのに!!!!!」 「ゆゆーーーー!!!!!!」 「れいむーーーー!!!!!!!!」 一体の人形が、霊夢の頭に釘を突き刺す。 深く、深く突き刺さった釘が、霊夢の体に痛みを伝える。 「ゆーー!! いだいよーー!! ゆっくりさせてよーーー!!!」 「やめて!! やめておねーーさん!!」 「むっきゅーー!! やめてあげてね!!! やめてあげてね!!!!」 「……忘れたのかしら?」 「!!! ぶげっ!!!!」 魔理沙の顔面にアリスのつま先がめり込む、余りの痛みに、ヨタヨタと転がりまわる魔理沙。 「返事は、だぜ! っておしえた筈よ?」 「ゆ!! ゆるしてほしいんだぜ!! ありす!!!」 「そう。それで良いのよ。魔理沙」 「ゆ!! ゆぐぐ!! ゆーーー!!」 魔理沙は泣いていた。 今までの一年間は夢だったのだろうか。 三匹が仲直りして眠りについて見た夢だったのだろうか。 「ゆぶ!!」 霊夢を掴みあげ、釘を引き抜く。 「ゆぎーーー!!!!」 そのまま、頭の後ろに大きな穴を開ける。 「貴方は、毎朝美味しい餡子を出すのよ。だから今まで通りゆっくり過ごしてね。もし不味くなったら、お友達が困った事になるかもしれないわよ?」 「ゆゆ!! ゆっくりすごす、……ぜ? ぶげら!!!」 「何を言っているのか分からないんだけど、貴方ってそんな喋り方だったかしら?」 「ごめんなぜい!!! ありすおねーーざん!!!!!」 「うん。それじゃあ毎朝よろしくね」 「はい!! はい!!!」 霊夢を床に降ろし、パチュリーの元へと近づいていく。 「むきゅ? むきゅーーー!!! ごめんなざいーー!!!!」 「なんで謝るのかしら、貴方は何か悪いことしたの?」 「むきゅ!! まりざおねーざんに、わるいごといいまじた!!!!」 パチュリーが、自分に出せる精一杯の声でアリスに話す。 「そうだったわね、でも正直に言ったから許してあげる」 「むきゅ~♪」 「でも、貴方も体が弱いのに、家のゆっくり魔理沙と遊ぼうとしてたわよね? おかげで、魔理沙はゆっくり出来なかったのよ」 「むぎゅ!!!」 パチュリーは魔理沙のほうを見るが、そこには必死に顔を横に振っている魔理沙が居るだけだ。 「でも安心して、これからも、魔理沙と遊んで良いわよ。ただし」 「むきゅ?」 「毎朝、きちんと走って体を鍛えてね。人形を一体付けてあげるから」 「むぎゅーー!!!! むぎゅーーーー!!!!!」 「ふふ。それじゃーね。……さて」 「!!!!!」 再び、魔理沙の前に立ったアリス。 その顔は笑ってはいるが、これは本当の笑いではないと、魔理沙の眠っていた記憶が教えている。 「貴方、私の首を思いっきり突き飛ばしたわよね?」 「ゆ!!!」 「その前に、自分で自分は幸せですって言ったわよね?」 「ゆー!!!」 「それなのに、どうしてそんな事したのかしら?」 「ゆゆゆ!!!!……」 「どうなの?」 「ゆ……ゆーー!!!」 「答えられないの? だったらそこのお友達も加工場に連れて行かないとね」 「!!! まっで!! 魔理沙が悪かったです!!! おねーさんからにげようとしまじた!!!」 「それで?」 「ごめんなざいーー!! もうぜっだいにじまぜんからーー!! ぱじゅりーーとまりざをゆるじでーーー!!!!!」 「私が聞いているのは、そんな事じゃないの」 「ゆ?」 「今、幸せかどうか聞いているの」 「!! はい!! 魔理沙はいまどっでもしあわせです!! だいずきなアリスとくらぜてしあわせd……だっぜ!!!!」 「嬉しい!! やっぱり魔理沙はゆっくりでも魔理沙ね!!!」 「ゆーー!! 好きだぜアリズ!! アリズーーー!!!」 やっぱりあれは夢だった。 笑顔で頬を寄せ合う一人の魔法使いと一匹のゆっくり。 そして、二匹のお友達。 四匹の幸せな日々は、何時までもゆっくりと続く事だろう。 ~koumakan part~ 「うーー!! さぐやーー!!! ぱちゅいーーーー!! こあぐまーーー!!!」 既に一週間の殆どを箱の中で過ごしていたれみりゃは、今まで自分を大事にしてくれた紅魔館の人のことを考えていた。 「うーー!! ぱじゅりーーー!!! こあぐまーーーーー!!!!」 「呼んだかしら? レミィ」 「!!!!! ぱじゅりーーー!!!! ぱじゅりーーーー!!!!!!」 そこには、嘗て自分を大事にしてくれたパチュリーの姿があった。 「はいはい、どうしたの?」 箱かられみりゃを出してやり、胸に抱き寄せ優しく尋ねる。 「うーー!!! ごごいやだーーー!!!! おうじかえるーー!!!!」 「そう。おうちにかえりたいの?」 「うんーーーー!!! かえりたいーーー!!!」 余程辛かったのだろう、滝のように涙を流し続けるれみりゃ。 「それなら、帰りましょうか?」 「う!! いーのーー!!!」 「ええ、でもね」 「う?」 「帰っても、貴方は前のように生活できないわよ? お菓子も出ないわよ?」 「ぞれでもいーーー!!! おねがいーーーー!!! がえらぜてーーー!!!!!」 この一週間、普通の食事をしていたれみりゃにとってそれはもう苦労でもなんでもなかった。 「そう。それじゃあ帰りましょう。そうそう、お友達を連れてきたわ」 「う? おともだち?」 「これですよ」 隣に立っていた、小悪魔の後ろから顔を出したモノ。 姿形は、れみりゃに良く似ているが、服と羽が大きく違っている。 「うーーー!! ゆっくりしねーー!!!」 それは、紛れもなく、あの怖かったお姉さんそっくりのゆっくりだった。 「うーー!! ゆっくりs!!! いだいーーー!! いだいーー!!!」 そして、このゆっくりも体中に湿疹や汗疹の痕が有った。 「この子も、今日加工場から引き取ってきたの」 幾ら今まで風評が良かったとしても、ゆっくりになっては意味がない。 「さて、帰りましょうね。帰ったら、二人とも仲良くお風呂に入りましょう」 「うーーー!!! うーーー!!!!」 「うーーー!!! うーーー!!!!」 今までは、折り合いが悪かった姉妹だったが、これからは仲良くメイド達のイジメに絶えながら生活できる事だろう。 紅魔館。 現在はスカーレット血縁者が途絶えたため、前当主・前々当主の友人であるパチュリー・ノーレッジが党首の座についている。 「小悪魔。さっさと帰るわ。これをお風呂に入れないとね」 「はい。パチュリー様。そうだろうと思って出かける前にメイドさんに言っておきましたよ」 しかし、殆ど図書館に篭りっきりの当主に代わって従者でも有る司書が屋敷を纏めているらしい。 The end このSSに感想を付ける
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※「発狂」の続きです 迷い竹林の中、えーりん実験室の地下にはすっきりルームというものがあった そこにはゆっくりたちが集められていた 「決めれるお部屋」と可愛らしい文字で書かれた部屋に 八意永琳は入っていく ここはゆっくりたちの欲望に対する限度を見る施設 ゆっくりたちは地上の実験室で何かしら良い事をした事の褒美としてここに連れて来られる 「ちかのへやにはたべものがいっぱいもらえる」 ゆっくりたちの宿舎でそんな噂を少し流してやると 噂には尾が付き鰭が付き、ゆっくりたちにとって地下の部屋に連れて行かれる事は最大の喜びとなっていた 「はい、今日からあなたがここの王様よ」 永琳はゆっくりれいむをその部屋に通した 部屋は芝生が敷き詰められまるで天然の絨毯のよう 小さな小川が流れてはいるが、底は限りなく浅く水を飲むのにとても適している 天井は空を映し出し、どこからともなく風が吹く ゆっくりれいむは"部屋"だと聞いていたが、実は外に出たのではないかと思ったぐらいだった 「さ、何か望む物はあるかしら?あなたは決める事ができるのよ」 「ゆっ?ごはん」 ゆっくりれいむがにっこり微笑む 「分かったわ。じゃあ、取って来るからあなたを降ろしていいかしら?」 「ゆっくりおろしてね」 「ええ、いいわよ。あなたが決めるんですもの」 永琳はゆっくりれいむを芝生に置くと部屋から出て行ったと思うとすぐに戻ってくる お盆の上には細かく切られた野菜がたくさん、ふだんは硬くて食べられない芋なども蒸かしてあるので簡単に食べれる 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー」 「足りなかったら言ってね」 「うん、わかった、おねーさん」 永琳は部屋の隅に置かれたリクライニングチェアに座り、ゆっくりれいむを眺めている 「何か決めたい事があったら、言ってね」の言葉に 「うん」とゆっくりれいむは答える。答えたらすぐに目の前の食事に向かった ゆっくりとした時間が流れる 永琳はうどんげが作った書類に目を通す、除湿機やらの見積書を見ると頭が痛い 「おねーさん、あそぼ」 「あら、遊んで欲しいの?私でいい?ゆっくりまりさなんかも呼べるわよ」 「ゆっ?よんでよんで、まりさにあいたい」 ゆっくりまりさなら誰でもいいのかしら?と思いつつ永琳は無線で指示を出す すると妖怪兎がゆっくりまりさを抱えてやってくる 「一匹でいい?もっと?」 「もっともっと」 ゆっくりれいむが永琳の言葉に飛び跳ねて答える 「次もまりさがいい?」 「ゆー・・・、パチュリーがいい」 妖怪兎はゆっくりまりさを置くとすぐに部屋を出てゆっくりパチュリーを連れてきた 「これでいいかしら、もっと連れてきましょうか?あなたが決めていいのよ」 それからゆっくりれいむは快適に過ごしていた ボールが欲しいと言えばボールが用意され、眠いといえば毛布が用意され部屋が夜になった お歌を歌って欲しいといえば永琳は進んで歌を歌った ある日 「まりさとはゆっくりできなよ!!!」 珍しくゆっくりれいむとゆっくりまりさが喧嘩する声がした 原因はゆっくりれいむが取っておいたお菓子をゆっくりまりさが食べてしまったらしい 「れいむはもってきてもらえるじゃん。ゆっくりたのめばいいよ」 そう、ゆっくりまりさがいくらゆっくりれいむのようにお菓子を持ってくるよう永琳に頼んでも永琳は一切動かなかった 食事だけじゃない。玩具も、仲間も、天候も全てゆっくりれいむが決めていた 一時、ゆっくりちぇんがいたが、ゆっくりれいむのお気に入りにお皿をひっくり返すと ゆっくりれいむが怒って「ゆっくりでていってね」と言うと妖怪兎にすぐ外へ連れて行かれた ゆっくりまりさはゆっくりれいむに嫉妬していたのだ。何もかも思い通りにできるゆっくりれいむに 「まりさなんかゆっくりしね!!」 ゆっくりれいむがその言葉を放った瞬間、妖怪兎が部屋に飛び込んできた ゆっくりまりさを押さえつけて緑色の液体を注射器で注入する 「ゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆ」 壊れたようにゆっくりまりさが鳴きだす。妖怪兎は注射器をもって出て行ってしまった 「お、おねーさん、たいへんだよ。まりさがおかしくなっちゃったよ」 「ええ、その子はこれからゆっくり死ぬのよ」 「なんで?なんで?ゆっくりせつめいしてね」 あなたがさっき決めたじゃない。と永琳は笑うと、さきほど注射した薬の成分や効能を説明した もちろん、そんな事、ゆっくりれいむに理解できるはずがない 「簡単に説明するわね。その子はあなたに"ゆっくり死ね"と決められた」 ゆっくりれいむの顔が青ざめる 「ここはあなたが決める事のできる部屋、その子は決まったの。だから三日間かけてゆっくり死ぬわ」 「いやだ。まりさしなないで、まりさをたすけて」 「決めていいの?」 「ゆっくりきめたよ。はやくたすけてね」 すると永琳は黄色の液体を注射器でゆっくりまりさに注入する 「すっきりー」 ゆっくりまりさはそれまでの奇声が嘘の様に理性を取り戻す 「まりさー、ごめんね。ゆっくりゆるしてね」 ゆっくりれいむはゆっくりまりさに擦り寄ろうとする でも、ゆっくりまりさは一歩下がり、怯えるような目でゆっくりれいむを見ていた 「れいむ、ごめんね。まりさがわるかったよ。あやまるからゆっくりでいいからゆるしてね」 「ゆ?うん」 それ以来、ゆっくりまりさも傍で見ていたゆっくりパチュリーもゆっくりれいむを避けるようになった おいかけっこでも遠慮しがちに走り、今までゆっくりまりさに勝った事がなかったゆっくりれいむだったが その日以来、負ける事がなくなった ゆっくりパチュリーは知識を自慢する事がなくなり、前にゆっくりれいむが自分に教えてもらった事をあたかも自分の知識のように自慢されても すごいね。博学だね。と褒め称えた みんな、ゆっくりれいむを恐れていた ゆっくりれいむも自分が避けられている事を感じていた そして、ストレスが爆発した かろうじて理性が保たれていたのか、出て行けという命令しかしなかった ゆっくりまりさとゆっくりパチュリーは何のためらいもなく出て行った わざわざ妖怪兎が回収するまでもなく永琳がドアを開け出て行くように言うと喜んで出て行った それからゆっくりれいむはずっと一人で過ごしていた つまらない。そう考える事が多くなった だけど、ゆっくりれいむの頭では何かいい退屈しのぎを考えられる事ができなかった そこで、ゆっくりれいむは再びゆっくりまりさたちを呼び戻す事にした 「別の子たちも用意できるのよ?」という永琳の言葉にも 「ゆっくりなかなおりするよ!!」と笑顔で返した そして、嫌がる二匹を部屋まで連れてきた ゆっくりれいむはそれまでの横暴な振る舞いを謝罪し、恐れないで欲しいと願った 「う、うん、ゆっくりしようね・・・」 「むきゅん、ゆ、ゆっくりしましょう」 二匹は引きつった笑顔で答えた 結果は同じ、二匹は今までと同じようにゆっくりれいむと距離を置いて接している ゆっくりれいむは孤独の中にいた 「ゆっくりしんじゃえ」 再び緑色の液体を注射されるゆっくりまりさ、ゆっくりパチュリーも同じようにされる しかし、ゆっくりパチュリーはその日の夜に動かなくなり ゆっくりまりさは三山ゆっくりれいむに罵られながら餡子を吐いて死んだ 「ゆっくりしね!!ゆっくりしね!!」 興奮が冷めないのか、死んでいるゆっくりまりさを何度も踏み潰す そして、ゆっくりれいむは最高の暇つぶしを思いついた 「あのね。ゆっくりをつれてきて」 「あら、いいわよ。どんな子がいいかしら?今度は仲良くできるといいわね」 「だれでもいいよ」 「誰でもいいの?じゃあ、手軽な所でゆっくりまりさでいいかしら?」 「いいよ。ゆっくりつれてきてね」 妖怪兎がゆっくりまりさを芝生の上に置く すると、ゆっくりれいむは間髪いれずに「しんで」と言う 妖怪兎は少し困惑したが、永琳に"やりなさい"と言われるとすぐにゆっくりまりさを踏み潰して見せた キャッキャ笑う、ゆっくりれいむ 「おねーさん」 「うん」 「なんでもきめれるってたのしいね」 「そう?」 「うん!!」 それからもゆっくりれいむはゆっくりたちの命を弄んだ 肢体を?がれたゆっくりれみりゃを流れる水の中に放置したり ゆっくりまりさの親子を共食いまで追い込んだり 今は木にゆっくりたちを吊り下げて餓死させるのに凝っている 「なんだか、あのゆっくりれいむ凄いですね」 「そう?」 「今まであんな結果出なかったですよ」 「ふぅん」 興奮気味の鈴仙に対して永琳はどこか冷めていた 「こういうのは長く続かないのよ」 そう言うと永琳は部屋に戻っていった 「つぎは・・・パチュリーをゆっくりつれてきてね」 妖怪兎がゆっくりパチュリーを連れてくる ゆっくりパチュリーは息苦しそうに咽こむ 「こほ、こほ、むきゅん、こんにちは、ゆっくりさせてね」 ゆっくりれいむは言葉を失う 他のゆっくりと違う頬は少し扱け、ほっそりといた身体に 初めて見るような澄んだ瞳、髪は風に揺れて花の香りがするようだった 「ゆっ、ゆっくりしていってね!!」 永琳はあとで妖怪兎を叱ろうと思った。いつもなるべく元気で寿命の長いのを連れてくるように言っていたが 今日に限って、連れてこられたのはあと一週間も持たない寿命が尽きかけているゆっくりパチュリーだったからだ 「こほ、こほ、むきゅー。これが草なのね」 「や、やわらかいよ。ゆっくりころがってみてね」 コロコロとゆっくりれいむは芝生を転がってみせる 「上手ね。こほこほ、私はちょっと疲れてるからゆっくり見させてもらうわね」 "見る"その言葉にハッとした 「パチュリー、ここにいてね。うごいっちゃだめだよ。あぶないからゆっくりそこにいてね」 幸い、ここからならよく見えない そう、この部屋の奥には最初のゆっくりまりさ、ゆっくりパチュリーを初めとした ゆっくりれいむが殺してきたゆっくりたちの死骸が積んである 「おねーさん、アレ片付けて」 「アレって?」 「うごかなくなったゆっくりまりさとか」 「良いの?お山を作るんだ!って言ってたじゃない。ゆっくり頑張ってきたのに」 「いいの、かたづけて!!」 妖怪兎たちが何匹も入ってきて一輪車で死骸を運び出す 「楽しくなくなったの?」 「パチュリーにはみせられないよ」 「そういう自覚はあったんだ」 永琳はニコニコしながらゆっくりれいむをゆっくりパチュリーの所に連れて行く 「大丈夫よ。すぐに終わるから、見られないように二人でパチュリーの相手をしましょう」 「うん、ゆっくりごまかすよ!!」 それから妖怪兎が永琳の所に作業終了の報告に来るまで永琳とゆっくりれいむは 歌を歌ってゆっくりパチュリーを楽しませた ゆっくりれいむとゆっくりパチュリーは仲良くなった ゆっくりれいむは風になびく髪を綺麗だ綺麗だと良く褒めていた 外の世界を良く知らないゆっくりパチュリーは芝生や小川、木々をゆっくりれいむから教わった 二匹は自分に足りないものを埋めあうように惹かれあった 「おねーさん、おねーさん」 「どうしたの?」 「パチュリーが、パチュリーがくるしそうなの。ゆっくりできるようにみてあげて」 ゆっくりれいむとゆっくりパチュリーはしばらく一緒に過ごしていたが 次第にゆっくりパチュリーは弱っていった ゆっくりれいむは必死に元気付けたり、顔を舐めてあげたり、食事を運んだが ゆっくりれいむが期待していたほどの効果は無かった 「むきゅ?おねーさん、ゆっくりみなくていいわよ」 聴診器を当てようとした、永琳にゆっくりパチュリーが答える 「私はもう長くゆっくりできないのは私が知ってるよ」 「なにいってるの?パチュリーゆっくりしようよ」 「れいむ、ゆっくりできる時間は決まってるの。私はそれがれいむより少し短いの」 「いやだ。いやだよ。ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!」 「むきゅー・・・れいむ、れいむを一人にしないように私、少しでも長くゆっくりするね」 「うん、ゆっくりしよ!!ゆっくりしよ!!」 「れいむ、疲れたから少しゆっくり眠らせて、ちゃんと起きるから」 そう言ってゆっくりパチュリーは目を閉じた 「うん、ゆっくりまってるよ」 「無理よ」 「え?」 「死んだわ」 永琳は聴診器を当てて確認する 「ゆっ?!いきかえってね!!ゆっくりいきかえってね!!」 「決めていいの?」 「いきかえらせてね!!」 「いいわよ」 永琳はポケットから赤色の液体の入った注射器を取り出し、ゆっくりパチュリーに注射する ゆっくりパチュリーは目を覚ます。自分の周りをゆっくりれいむが飛び跳ねているのが分かる ああ、約束を守れてよかった。ゆっくりパチュリーはそう思った しかし、数回に及ぶ薬物での蘇生は確実にゆっくりパチュリーを蝕んでいた 皮はガサガサになり、目も良く見えない。真っ赤なリボンをやっと見つけられるぐらい 髪も風になびかなくなった。もちろん前のような花のような香りはしない 「あのね。れいむ、お願いがいいの」 「なに、パチュリー。なんでもいって」 「あのね。れいむ、死にたいの」 「ゆ・・・」 「見て、あなたが褒めてくれた髪ももうガサガサ」 「で、でも、れいむはパチュリーとゆっくりしたよ!」 「むきゅー・・・お願い」 それでもゆっくりれいむはゆっくりパチュリーとゆっくりする事に決めた 「むきゅーむきゅーみきゅー」 「パチュリー、きょうもいいおてんきだね。ゆっくりできるね」 「むきゅーむきゅーむきゅー」 ゆっくりパチュリーの頬は痩せこけ、皮は所々ひび割れを起こしていた 髪はバサバサになり、蒸れてすっぱい臭いがする 喋る言葉には知性の欠片も、それどころかまともな言語すら喋れなくなっていた 「パチュリー、なにかたべる?」 「むきゅー」 「パチュリー、ゆっくりでいいかられいむのことばにこたえてね」 「むきゅん?・・・・むきゅー」 「はぁ~・・・・」 永琳は大きくため息をつくと、ゆっくりれいむが殺してきたゆっくりたちの総計を見る 「こんな結果でこの出費とは・・・」 「おねーさん」 「はい?」 「パチュリーがおかしいよ。またあのおくすりでなおして」 「もう無理よ。たぶんあの子はあなたより長生きするわ。けど、あの状態から治る事はないわ」 「じ、じゃあ、パチュリーを・・・ゆっくりしなせてあげて」 「・・・あの薬をかなり使ったから、かなりゆっくり死ぬ事になるけどいい?」 「いたくしないであげてね」 「ええ、眠るように」 永琳はゆっくりパチュリーに少量の水を注射した 「じゃあ、この子はゆっくり死んでいくから、あなたが見守ってあげて」 そう言って、永琳は部屋を出た 「鈴仙、鈴仙」 「は、はい」 「煩わしいから、あの部屋にガスを注入して」 「よろしいんですか?」 「あの部屋はしばらく封鎖よ。出費ばかりでたいした結果が出ないのよ」 永琳はイライラしているようだった ゴオオオオオオオ 部屋の送風機の出力が上がる 「ゆっ、なんだかいきぐるしいよ」 「むきゅ?!むきゅー!!!!」 ゆっくりパチュリーが苦しみ出す、吐き出した生クリームは酸っぱい臭いがする。腐ってる 「いたいの?おねーさんやめて、パチュリーがいたがってるやめて!!」 目から口から生クリームがドロドロと流れる、髪も風に吹かれてドンドン抜ける 「おねーさんやめて、ごほっ!!」 自分も餡子を吐き出してしまう 「ゆ?ゆっくりできないよ!!おねーさんやめてゆっくりさせて!!」 「むきゅん、むきゅん」 「パチュリー、だいじょうぶ?おねがい、おねーさん、れいむきめるよ。やめてやめてね」 永琳はこの実験をやめる事にした このSSに感想を付ける
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どこかの街でゆっくりブリーダーがおはぎを作っていた頃。 ここでも、一つのゆっくり一家が無事ブリーダーの元から卒業する事ができた。 「ゆ!! おじさんいままでありがとー♪ これからもれいむたちはゆっくりするね!!」 「おじしゃんありがとーー!!!」 一匹の親霊夢とその子供達の霊夢と魔理沙。 去年の冬からブリーダーの元で育てられ、今ではキチンとした行いが出来るまでに成長していた。 「うん。おじさんも君たちを育成できて良かったよ。それじゃあこれでお別れだけど、また何時でも遊びにおいで」 そして、その成果をしみじみと実感するブリーダー。 「ううん! おじさんはほかのゆっくりたちをきちんとするんでしょ? れーむたちがくるとおじさんのおしごとのじゃまになるから」 「そんなことないよ。だからたまには遊びにおいでね」 遠慮という、ゆっくりからすれば一番の対極にある言葉が出てくるまでに成長したこの一家にブリーダーは諭すような口調で提案する。 「ゆ~。わかったよ!! こんどあそびにくるね!! それじゃあおわかれだね!!!」 「おじさんいままでありがとーーー」 「「「「「さよーならーーー!!!」」」」」 「さよなら。元気でな!!」 こうして、人々が仕事に取り掛かり始めた頃、一家は男の家を後にした。 「ゆ~♪ これからどうしようか?」 「ほかのにんげんのおうちにいっておてつだいする?」 「でも、ゆっくりたちはにんずうがおおいから、めいわくがかかるよ!!」 キチンと育成されただけあって、こうすればどうなるという事を考えられるようになっているこの一家は、これからの自分達の進退を必死になって考え始めた。 「ゆゆ!!! おかーさんにいいかんがえがあるよ!!!」 閃いた!! と言わんばかりの声をあげお母さん霊夢が子供達に説明を始める。 「ゆゆ!! おかーさんあたまいい!!」 「それにゃらゆっくりできるね!!!」 どうやら、どうやって食べていくか、決まったらしい。 いそいそと、近くのゴミ捨て場から大きな缶詰の空き缶を拾ってくるお母さん霊夢。 ご丁寧に小豆の缶詰を拾ってきたらしい。 「それじゃあ、おかーさんとあかちゃんたちはここでするから、おねーちゃんたちはむこうでしてきてね!!!」 「うん!! ゆっくりがんばってね!!!」 お母さん霊夢と赤ちゃん、お姉さん達に分かれて行動する事にした一家。 しばしの別れの挨拶をした後、それぞれ人の多い場所に消えていった。 「ゆ~~♪ ゆ~~♪ ……ゆ!! ここにしようね!!!」 「ゆくりしゅるよ!!!」 「ゆっくりちようね!!!」 「ゆ!!」 人通りの多い一角で足を止めたゆっくり達は、お母さん霊夢の指示で立ち位置に立った。 そして、お母さん霊夢が、息をスウッと吸って歌を歌いだした。 「ゆ~~~っくり♪ ゆっくり~していってね~~~♪」 「ゆっくり~~~♪ ゆゆゆ~~~~♪」 「ゆゆゆ~~~~~~~~♪」 それに負けじと、子供達も必死でバックコーラスに徹する。 そして、目の前には先ほどの空き缶。 どうやら、芸をしてお金を集める方法を選んだようだ。 「ゆっくり~~~♪ ゆ・ゆ・ゆっくり・ゆうっくりぃ~♪」 「お! なんだなんだ?」 次第に、疎らだが人が集まり出した。 普通のゆっくりならここでペースト出荷されるが、ブリーダの所から出されたゆっくりはリボンか帽子に縫い付けられたワッペンのおかげで、完全ではないが安全は保障されているのだ。 「ゆゆ!! れーむのおうたをきにいったら、すこしでいいからおかねいれてね♪」 「おかーしゃんはおうたじょーずだよ!!」 「いっしょうけんめーうたうよ!!!」 確かに、そのゆっくりの歌声は唯の騒音ではなく、音痴なメロディ~であった。 その馬鹿さ加減が受けたのか、チャリンチャリンと小銭が空き缶に吸い込まれてゆく。 「!!!! ゆっくり~~~ゆっゆっ!!!!」 それで気分をよくしたゆっくり達は、更に気持ちを込めてご自慢の歌を熱唱していく。 一時間程たっただろうか? それまで違う場所でお金を集めていたゆっくり達が帰ってきた。 「ゆゆ!! むこーでもらってきたよ!!!」 一番はやく母親の元へきたゆっくり魔理沙が自慢げに千円札を見せた。 ブリーダーに飼われていた一家には、その金額の価値がはっきりと分かる。 「ゆゆ!!! すごいね!!!」 「おねーちゃんたちすごいね!!!」 「ゆ!!」 母親や妹達からも褒められて、このゆっくり魔理沙は上機嫌だ。 「それじゃあ、たべものをかいにいこうか!!」 自分達の缶の中にも硬貨が沢山入っている事を確認したお母さん霊夢が子供達に尋ねる。 「「ゆっくり~~~♪」」 二つ返事で賛成されたので、一家仲良く近くのお店に足を運んだ。 「こどもたちはここでまっててね!! みんなではいるとめいわくだからね!!!」 「「はーい!! ゆっくりまってるよ!!!」」 子供達に念を押して、一人で中へ入ってゆくお母さん霊夢。 以前、ブリーダーのおじさんと来た事があるので、大体の内装は把握していた。 奥にある大きな台に飛び乗って一言。 「このおかねで、ゆっくりできるおいしいたべものちょうだいね!!!」 店員の女性は、一瞬呆気に取られたが、ここはよくブリーダーの人がお使いさせるために利用する店なので速やかに値段分の食べ物を出してくれた。 「はい。これはお釣りだよ。大事に取っておいてね」 残ったお金を一緒に袋に入れて、地面に降りた母親の口元に運ぶ。 「ありがとう!! はむ……」 お礼を言い、袋の箸を紐で咥えて店を後にしたお母さんゆっくり。 外にでると、キチンと言いつけを守り待機していた子供達が一斉に駆け寄ってきた。 「うわぁーー!! いっぱいあるね!!!」 「ゆくりたべれるね!!!」 「ゆくりできりゅね!!!」 袋の中を見た子供達は大興奮。 そして、ゆっくり食べるべく、新しい家を探して街の中を再度彷徨う。 お釣りは、一番年長のお姉さん魔理沙が、重ねた空き缶の中へ入れて運んでいる。 「ゆっくり~♪」 それは、先ほど千円札を持ってきた魔理沙だった。 役に立っている自分が余程嬉しいらしい。 魔理沙の鼻歌が引き金となり、瞬く間に一家全員に広がっていく。 気が付くと、一家は街の外れの方まで足を運んでいた。 「ゆ~、なかなかみつからないね!!!」 「もうちょっとさがそうね!!!」 CASE:01 「ゆっくりさがそうね!!!」 母親が活を入れ家探しを続行する。 まだ、日は高く上っているのでさほど心配する事でもないだろう。 一家も、それが分かっているようでのんびりと探し回っている。 「ゆゆ!!! おかーさん!! ここはどう!!!」 先ほどの魔理沙が、母親を呼び止めた。 「ゆ~~?」 そこは十メートル四方ほどの大きなくぼみだった。 人工的に作られたようで、天井は透明な板に覆われ中から見上げれば、透き通るような景色を見れるだろう。 また、上部には所々穴が開いており、更に階段が下まで伸びている。 作りもしっかりしており、何よりも開閉式の蓋もあるそこは、十分家として機能するものであった。 「ゆゆ!! ここはだいじょうぶそうだね!! でも、にんげんがでていけっていったらすぐでていくよ!!!」 「うん!! わかってるりょ!!!」 「ゆっくりしようね!!!」 「「「「ゆっくりしようね!!!!」」」」 新たな住処の確保に成功した一家は、先ほど買った袋から食べ物を引っ張り出し、ささやかな宴を始めた。 「ゆ!! おいしーね!!!」 「うん!! おしたもいっぱいうたっていっぱいたべよーね!!!」 「「「「ゆっくりがんばろーーね!!!!」」」」 日が落ち始めても、一家の楽しい宴は終わりを見せない。 「ゆっくり~♪ ゆっくり~していってね~♪」 「おかーしゃんじょ~ず~♪」 「ゆゆ!! あめがふってきちゃよ!!!」 「だいじょうぶだよ!! ふたはきちんととしめたから!!!」 そう言って上を見上げるお母さん霊夢。 透明な天井には沢山の雨が弾け飛ぶ様子が断続的に映される。 「ゆっゆ♪ すごいね!!」 「たのしいね!!!」 本来ならば見ることが出来ないその光景を、一家は食い入るように見つめている。 きっと晴れた日には満天の星空が見えることだろう。 ここでの生活はきっとすばらしいものになる。 一家の誰もがそう思っていた時、悲劇は突然起こった。 「ゆ!! おみずだよ!! おみずがながれてくるよ!!!!」 「どうして!!! どうしてこんなにおみずがでてくるの!!!」 「!!! 、そういえばさいごにおじさんがいってたよ!!!」 この街には雨が降ったとき、川がゆっくり流れるように一時的に雨を貯めておく所がある、そこに入ってはいけないよ。 危ないから。 「ゆゆ!!! たいへんだよ!! はやくでようね!!!!」 「みんないそいでね!!!」 しかし、思い出したとしても時既に遅し。 上部に開いた穴から大量の水が流れ出し、階段を上ろうとする一家をことごとく下に押し返していく。 「ゆぎゃ!!」 一匹の赤ちゃん霊夢が地面に押し付けられた衝撃で、餡子を飛び散らせ絶命した。 「ゆゆゆ……」 上がっても、ここに居ても自分達が死ぬ事は避けられない。 残った方法は助けを呼ぶ事くらいだ。 「ゆっくりできないよーーーー!!!!! だれかーーーーたすげてくださいーーーー!!!!!」 「ゆっくりーーーー!!! だれかーーーーー!!!!!」 「しんじゃうよーーーーーー!!!!!!」 しかし、非常に激しい雨の中、出歩いている人も無く、一家の声を聞くものも居ない。 「ゆぶぶぶ!!!」 とうとう、容量いっぱいに水が溜まったようだ。 「あぶぶ!!! うぐぐ!!!」 水の進入は止まったが、全面水で満たされたこの状態では蓋を開けることも、ましてや息をする事さえも叶わない。 「ゆ……」 「ぐり……」 一匹、また一匹と餡子を流しながらゆっくり達が死んでゆく。 初めの方に死んだゆっくりは、既に完全に水に溶けてしまっていた。 「おがーしゃん……ぎょめん……」 最年長のゆっくり魔理沙が、母親に何かを訴えかけるような目をしたまま命を落とした。 「あばばばばば!! りぇーみゅのこどもだじーーーー!!!!」 そして、最後まで残っていたのは、やはりお母さん霊夢だった。 窒息の苦しみと、溶け出す体。 そして、混ざってゆく子供達の惨状を見ながら、ゆっくりと息を引き取った。 全ての水が流された後、そこに残っていたのは数十円のピカピカの硬貨だけであった。 CASE:2 その後、へとへとになるまで探したが、森の中とは違い一向に巣に適した場所を見つけることは出来なかった。 「ゆ~、みつからないね!!!」 川辺で、先ほど買った食事を取りながらこの後の計画を話し合っていく。 既に、近くで遊んでいた子供達は居なくなり、どうしようもない焦燥感が一家に襲い掛かっていた。 「どこか、にんげんのおうちにいそうろうさせてもらおうか?」 「そうだね。ゆっくりさがそうね」 これ以上探しても意味が無い。 そう感じた一家は、取り敢えずの間、人間の家に居候させてもらう事にした。 しかし、ここでただ家にお邪魔するほどブリーダ卒のゆっくりは馬鹿ではない。 「そうだ! おじゃまするんだから、れいむたちがおうちをきれいにしよう!!!」 「うん!! おじさんのところでもがんばっておそうじしたもんね!!!」 「かってに住んでいるだけじゃわるいもんね!!」 食べ物を食べている間、自分たちが出来る事を考える。 ただで家に居るのはいけない事。 それもブリーダに教わった事だった。 食事を食べ終え、幾分元気を取り戻した一家は、家を求めて街へと戻っていった。 しかし、誰某の家を探していたわけではない。 適当な家の前に到着した一家は、大声で門に向かって喋る。 「こんにちは!! ゆっくりさせてください!!!」 これが、礼儀というものだ、そう教えられた。 程なくして、人間が一家を出迎えに現れた。 「ああ、ゆっくりか。丁度良いところにきたな。まあ、中に入れ」 「おじゃまします!! おねーさんゆっくりさせてね!!!」 「れーむたちは、きょうぶりーだーのおうちからでてきたの!!」 「あたらしいおうちをみつけるあいだ、ここでゆっくりさせてもらっていいですか?」 「もちろん、きちんとおてつだいもするよ!!!」 「れーむたちはおそうじもとくいなんだよ!!」 「そうか。それなら、ちょうど手伝ってほしい事があるんだ」 こっちに来てくれないか? 女性に言われて着いた所は竹林の中。 既に日も沈み、おぼろげな灯がより一層竹林を栄えさせている。 「ゆ? きれーだね!!」 「すごいね!!」 「おーい。こっちだこっち!!」 竹に見とれている間に女性は奥のほうへと進んでしまったらしい。 慌てて追いかけるゆっくり達は、そこに更に二人の女性が居る事に気が付いた。 「あら、それはゆっくり?」 「なんでここに連れて来るんだ?」 「こんばんは!! ゆっくりさせてください!!!」 「こんびゃんは!!」 「おばんです!!」 一家は、少し怪訝そうな表情をする女性二人に臆することなく挨拶をする。 「まぁ、そう言うな。……お前達は親子か?」 「うん!! そうだよ!!」 「おかあしゃんはおうたがうまいんだよ!!!」 「それにものしりだよ!!」 「ああ。それはよかったな!」 「「「「ゆっくりーーー!!!!」」」」 ブチ。 ブチブチブチ。 「あぎゃあ!!」 ブチブチブチ。 ブチブチブチ。 ブチブチブチ。 「「「おがーしゃーーん!!!」」」 ブチブチブチ。 ブチブチブチ。 「ゆっゆ~♪」 ブッチ!!!! 「ゆ~♪ !! ゆゆ!!!」 連れて来てくれた女性が、一気に子供達を踏み潰した。 ブリーダーに育てられて、少し油断もあったお母さん霊夢は、全ての子供が潰されるまで暢気に構えていた。 「ああああああ!!!!! れーむのあがじゃんが、こどもたちがーーーーーー!!!!」 「ああ。私が全部潰した」 淡々と、真実のみを告げる女性。 月が隠れてしまって表情をうかがい知る事は出来ない。 「どーーじで!!! どーじでれいむのこどもたじにごんなごとするのーーー!!!!!」 「さぁ、な」 女性は動機を答えない。 否、この霊夢には関係のない事なのだろう。 「ゆーーー!!! ごめんねーーーー!!! もっどゆっぐりじたがったよねーーー!!!!」 「私が憎いか?」 「ゆ!!! ゆっくりしんでね!!! おじさんは、むやみやたらにゆっくりをころすひとはわるいひとだっていってたよ!!! だからゆっくりしね!!! こどもたちをこんなめにあわせたおねーさんはゆっくりしね!!!! しねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしね!!!!!!!」 大量の涙を流し、目の前の女性に向かって機械のように言葉を発するお母さん霊夢。 「……もういいだろ」 「ゆっくりしね!!! しn……ぶぎゃら?!! ……い、いだいよ!! ゆー、ゆっぐりじだがったよ!!」 暫くそれを眺めていた女性は、一言だけ呟いて踏み潰した。 残ったのは大量の餡子、竹林の香りと融合し、お世辞にも良い香りとは良い辛い。 そして、後ろで呆然と眺めていた二人に向き直り、強い口調で言い放った。 「ほら、見ての通り憎しみは憎しみしか生まん。お前達もそろそろお互いいがみ合うのはやめないか? 勿論、暇つぶしに殺し合いをするくらいなら良いだろう。ただし周りには気をつけろよ。今回は饅頭だったが、これが人間がだったら大変な事になるからな」 「ふーん? まぁいいわ。飽きてきたし、まぁいい運動にはなるんだけど」 かたや興味はなさそうに呟く黒髪の女性。 「まー、輝夜と合わせると癪だけど、いつの間にか唯の暇つぶしになってたしな」 かたや面倒くさそうに呟く銀髪の女性。 「それよりもお腹が減ったわ。こんなに甘い匂いが立ち込めてるんですもの」 しかし、どちらも腹の内は同じらしく、少々ぎこちないがいたって普通の会話が形成されていく。 「そうだな。私達も夕飯にするか? 慧音」 「ああ。折角だから輝夜の家で頂くとしよう」 最後に、水色の髪の女性が返事をし、連れ立ってこの場所から去っていった。 上白沢慧音。 最近は、ブリーダ上がりのゆっくり家族を使い、命の授業を行うという。 生徒の親からの評判は上々である。 CASE:3 「あら? 貴方達そんな所でどうしたの?」 声のした方向へ振り向くと、そこには一人の女性が立っていた。 「れいむたちは、ぶりーだのおうちからでてきたんだけど、あたらしいおうちがみつからないの」 「このたべものはじぶんたちでおかねをかせいでかったんだよ!!」 人間が必要としている事を簡潔に説明する。 これも、ブリーダーから教わった事である。 「そうだったの。 だったら家に来ない? 貴方達みたいに躾ができているゆっくりなら大歓迎よ?」 「ゆゆ!! ほんとう?」 「もちろん!! 嫌だったなら無理にとは言わないけど……」 「ううん!! おねーさんのおうちにいかせて!!」 「きちんとするよ!! おねーさんありがとう!!」 「おてつだいしてほしいことがあったらなんでもするよ!!!」 「そう。ありがとう。私の家はこっちよ」 「「「「ゆっくり~~~~♪」」」」 このゆっくり達は幸運だった。 新しい家、それも人間の家が約束されたからだ。 そして、以前住んでいた見慣れた森の中、その奥に女性の家はあった。 「ここが私の家よ。さぁ、中に入って」 「「「「おじゃまします!! ゆっくりさせてね!!!」」」」 家の中に通された一家。 出迎えたのは沢山の人形。 その愛くるしい人形達は、ゆっくりを簡単に魅了した。 「わー!!」 「にんぎょうさんがいっぱーい!!」 「これおねーさんがつくったの?」 「ゆゆ!! うごくよ!!!」 「すごーーい!!」 「ふふふ。そうだ、お腹減ったでしょ? 今食べ物を持ってくるわ」 自分達で買ったお菓子があると言う一家に、それじゃ足りないでしょ、と言い残してキッチンの奥へと消えていった女性。 時間にして数刻だろうか? 思いの他早く大きな皿を携えて戻ってきた。 「はい。どうぞ、好きなだけ食べていいわよ!」 「ありがとうおねえさん!! ゆっくりいただきます」 「「「いただきまーす!!」」」 「ぱく!! おいしいよ!! とってもおいしいよ!!」 「ほんと!! おいしい!! おねえさんありがとう!!!」 皿いっぱいに盛られた甘くて美味しい食べ物を、口に付かないように注意しながら食べていく。 そんな食べ方でも、大量にあった食べ物は直ぐに綺麗サッパリ無くなった。 「けふ! おねいさんありがとう、おいしかったよ!!!」 「「「「ありがとーーーおねーさん!!!!」」」」 目をトロンとさせて、頬を赤くした顔で女性にお礼を述べる。 その表情は、野生のそれと一緒だが、本当に幸せな証拠なのだろう。 「ふふ。どういたしまして。そんなに美味しかった?」 「「「「うん!!!」」」」 「ゆっくり達の餡子だったのに?」 「ゆ?」 「ゆゆ!!」 そういえば、自分達の中身は餡子だとブリーダーから教えられていた。 そして、この一家は食べたことが無かった。 それゆえ、先ほどまで美味しく食べていたそれが、自分達の中身だと分かった時のショックは大きかった。 「ゆゆ!! おえっ!! おえーーーー!!!!」 「あらあら。戻しちゃダメよ?」 「むぐ!! むぐぐ!!!」 人形を操作して、今まさに吐き出そうとするゆっくり達の口を塞ぐ。 それでも懸命に吐き出そうとするが、ゆっくりの力は人形の力にも及ばないようだ。 抵抗に諦めたゆっくり達は、吐き気がおさまるまでじっと耐えるしか選択肢は残されていなかった。 「ゆーーー。 おねーさん!! ひどいよ!!」 「うそをついちゃだめだよ!!!」 「ともぐいはいけないことなんだよ!!!」 漸く、吐き気が収まったゆっくり達は、口々に非難の言葉を浴びせかける。 「そんな事無いわ。貴方達だって美味しいって食べてたじゃない?」 「「ゆ!!」」 痛いところを疲れた一家は、反論できずに押し黙る。 「おねーさんありがとーー!!! って必死になって食べてたじゃない?」 「「ゆゆゆ!!!」」 そのまま、女性はどんどんと一家を攻め立てる。 「幸せそうに食べてたじゃない?」 「ゆ……」 「何であんた達はそんなに幸せそうなのよ!!!」 「ゆぐ!!!!」 突如罵声とも取れるほどの声をあげ一家を驚愕させる。 怒りに任せ、一匹の子供霊夢を踏みつけた。 悲鳴を上げるゆっくり霊夢。 「ゆーー!! ゆっぐりでぎるよ……」 しかし、周りに餡子が飛び散ったが幸いにして命に別状は無いようだ。 「ど、どうしたのおねーさん!! ゆっくりs「うるさいわね!!!!」」 「!!!!!!」 またしても、一家は黙るしかなかった。 「私は上手くいかないのに、……なんであんた達はそんなに幸せなのよ!!!」 理性を失った女性は、人形に指示を出し、次々とゆっくりに五寸釘を打ち付けていく。 「いい!! いだいよ!!」 「おねーさん、れーむたちなにかわるいことした?」 「だったらあやまるよ!!!!」 「ごめんにゃしゃい!!!!」 「うるさい!! 私は幸せそうなあんた達自体にムカついてるの!!!!」 生かさず殺さず。 急所を外しながら、刺しては抜くを繰り返す。 針山に針を刺すように、何の感情もなしに延々と繰り返させる。 「なんであんた達だけ。何時も魔理沙と仲良くしてるのよ!!」 「ゆゆゆっぐりざぜでーーー!!!!!」 「魔理沙も魔理沙で、なんでそんなに霊夢と幸せそうにしてるのよ!!!!」 「い! いだいよーーー!!!!!」 釘は次々を刺さっていくが、餡子が漏れないので意識はしっかりと残っている。 そんな、一家にとっては地獄の時間が、漸く終わりを迎えた。 「はぁ、はぁ。ふぅ。そ、それじゃあ、約束どおり家に住まわせてあげるわ!」 「いいでずーー!!! じぶんだじでおーじざがじまずーー!!!!!」 「おねーーざんありがどーーー!!!」 「ゆっぐりがえるーーーー!!!!」 「あら。言葉が悪かったかしら。私は、家に住みなさいって言ってるのよ?」 全ての人形に臨戦態勢をとらせ、優しくしかし有無を言わさぬ口調で一家に話しかける。 「ゆゆ!! わがりまじだ!! おうじにいさせでくだざい!!」 「ゆっぐりぎでいぎまず!!!」 「おねーざんのおうtんぎゃ!!!!」 「アリス、よ」 「「「「ありすのおーじにずっといざせでくだざい!!!!」」」」 「ええ! みんなで仲良く暮らしましょうね!!」 ブリーダー卒のゆっくり達は、その後の生活は比較的幸せになるらしい。 CASE:4 「あら。あんた達こんな所でなにしてんの?」 「ゆゆ!! れーむたちはきょうぶりーだーのおうちからでてきたの!!!」 「このたべものもじぶんたちでおかねをあつめてかったの!!!」 「おねーさんはどうしたの?」 「私? 私はあんた達がずっとウロウロしてるから気になっただけよ」 「ゆ~~。れーむたちまだおうちがないの!!」 「だから、おうちをさがしてたの!!」 「何だそんな事か。ついてらっしゃい、良い所があるわ」 「「「ゆ♪」」」 親切そうな女性の後ろを付いていく一家。 見れば自分や子霊夢達と同じ、綺麗なリボンを付けているではないか。 「ゆっゆ♪」 自分の真似をしてくれている人間が居た事で、お母さん霊夢はすっかり幸せそうな表情になった。 街を抜け少し歩くと、いつの間にか大きな神社が目の前に存在していた。 「ゆゆ??」 突然の事に戸惑う一家だったが、パンパンと手を鳴らした女性がそれを制止した。 「ここの敷地内だったら何処に居てもいいわよ。それに、さっきの道を通れば直ぐに街へ着くわ。ただし、建物の中には勝手に入らない事。自分達の食べ物以外は勝手に食べないこと。他のゆっくり達が来たら、自分達で対処しないで必ず私を呼ぶ事。分かった?」 「うん!! わかった!! ゆっくりさせてもらうね!!!」 「「「「おねーさんありがとうね!!!」」」」 「どういたしまして。そうだ! あんた達が稼いだお金、一回私の所に持ってきなさい。ゆっくり達じゃ買えないような美味しい食べ物を買ってきてあげる」 自分達では買えない美味しいもの。 この言葉は、いかにブリーダーによって教育されたゆっくりと言えども抗う事の出来ない魔法の言葉だった。 「ゆゆ!! おねーさんありがとう!!!」 「おかねはおねーさんにわたすよ!!!」 「私の名前は霊夢よ」 「ゆっくりおぼえたよ!! れーむ、ゆっくりさせてもらうね!!!」 次の日から、ゆっくり達の新たな生活が始まった。 一家の寝床は住居の軒下に決まった。 雨風を防げるここはなかなか住み心地が良いらしい。 そして朝、朝食を食べて街へ向かう。 昼を過ぎた頃に神社へ戻り、霊夢にお金を渡す。 夜、霊夢が買ってきた美味しい食べ物を一家で食す。 「今日は甘い食べ物よ」 出されたのはカラフルな甘いペースト状の食べ物だった。 「おいしい!! れーむおねーさんおいしーよ!!!」 「今日はこんなの買ってきたわ」 出されたのは、カスタードケーキだった。 「あまい!! すっごくおいしい!!!!」 時々、霊夢も縁側で食事を取ることがある。 その時は皆で一緒に楽しくご飯を食べる。 「頂きます」 「「「「いっただきまーーす!!!!」」」」 しかし、楽しい事ばかりではない。 「うっう~♪ れみりゃ☆だどぉ~♪」 「ゆ?」 「うっう~♪ れみりゃはこーまかんのおぜうさまだっど~♪」 それは、紅魔館の主が従者を引き連れてここに来る時に、従者が引き連れてくるゆっくりれみりゃだった。 「ゆ! ゆゆゆ!!!」 一家はこのゆっくりが自分達にとって危険なものである事は理解していた。 ブリーダーに教えられた事と、先ほど言った通り従者が引き連れてくるからである。 「だいじょうぶよ!! れみりゃさまはとってもグルメなんだから。プディングしかお召し上がりにならないわ」 「う~♪ れみりゃはぷっでぃ~んしかだ~べないどぉ~♪」 そう言って、その従者にれみりゃと遊ぶ事を強制させられていることも。 食べないといっても、捕食種のゆっくりと遊ぶ事は危険な事に変わらない。 「うっう~♪ た~べちゃ~うぞ~♪」 「う~♪ れみりゃはつよいんだどぉ~♪」 そう言って噛み付かれたり、殴られたりしていたのだ。 去り際に、ゆっくり霊夢の飼い主が文句を言っても、子供同士のおふざけです。 そう言って話すら聞かないで帰ってしまうのだ。 「うっう~♪」 それがまた目の前に居る。 従者の姿は見当たらない、おそらく一人で抜け出してきたのだろう。 それを確認して、一家はさっさとこの場から逃げ出そうとした。 「ゆ! そこでゆっくりしててね!!」 「ゆ~!! だめ~~~!!! れみりゃとあそぶの~~~~~!!!!」 しかし、長い事人間と暮らしていた一家は、同じく飼われているれみりゃから逃げる事はできなかった。 狙いを付けられた一匹が、頭の上からのしかかられ両手で頬を引っ張られる。 「うっう~~♪ れみりゃはつよいんだどぉ~~~♪」 「やめふぇね!!! ゆっふりふぁなしふぇね!!!!」 必死にれみりゃに対して懇願するゆっくり霊夢だったが、プディンしか聞き分けられないスカスカ脳みその肉まんには何を言っても無駄である。 「うっう~~♪ がぁお? !!!」 「ゆ?」 突然、頭の上にあった重みが消え、口も自由に動かせるようになった。 何事かと上を見上げると、そこにはれみりゃの羽を掴んだこの神社の主の姿があった。 「ゆゆ!! れいむおねーさんありがとう!!」 「いいのよ。きょうはあのくちやかましいロリコンも居ないし」 そう言って、れみりゃを持ち替え顔を正面に向ける。 「ううーーーーー!! はなさないとさくやにいいづけるどぉーーー!!!!」 両腕でお腹を押さえられているれみりゃは、自分の両手を首元まで持ってきてぶりっ子のポーズを取りながら、若干涙が滲んでいる顔を女性に向けて言葉を吐き捨てた。 「ああこわいこわい!!」 「ぎゃっは!!! うう!! あっぎゃ、かは!!」 掴んでいた腕から、握りつぶすように力を込めていく。 「これは私が退治するから、あんた達はそこでゆっくりしてなさい」 「「「「ゆっくりしてるよ!!!!」」」」 「うーーーー!!!! ざぐやーーーー!!! どぉごーーーー!!! はやぐれみりゃをだずげろーーーーー!!!!! あっぎゃーーーー!!!!!!!」 戻ってきた霊夢は、一家に怪我がない事を確認するとご馳走を作るからといって家の中へ消えた言った。 その日の夕食には、美味しい肉まんと、餃子と、よく出しの取れたお吸い物が並んだ。 「ゆっくりいってくるね!!!!」 今日も、ゆっくり一家は街へお金を稼ぎに出かけていった。 「これは良い方法だったわ。クズ野菜なんかに砂糖を混ぜて出せば美味しいって言ってくれるんだから。無い時はそこら辺のゆっくりで良いし。お金もいっぱい溜まるし、やっぱり後を付けていって正解だったわね」 満面の笑みを浮かべて見送る霊夢は、ボソッと一言呟いて掃除を再開した。 「さてと、今日の夕飯はすき焼きが良いかしら、それとも奮発してお刺身でも買おうかしら?」 このSSに感想を付ける
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どこかの街でゆっくりブリーダーがおはぎを作っていた頃。 ここでも、一つのゆっくり一家が無事ブリーダーの元から卒業する事ができた。 「ゆ!! おじさんいままでありがとー♪ これからもれいむたちはゆっくりするね!!」 「おじしゃんありがとーー!!!」 一匹の親霊夢とその子供達の霊夢と魔理沙。 去年の冬からブリーダーの元で育てられ、今ではキチンとした行いが出来るまでに成長していた。 「うん。おじさんも君たちを育成できて良かったよ。それじゃあこれでお別れだけど、また何時でも遊びにおいで」 そして、その成果をしみじみと実感するブリーダー。 「ううん! おじさんはほかのゆっくりたちをきちんとするんでしょ? れーむたちがくるとおじさんのおしごとのじゃまになるから」 「そんなことないよ。だからたまには遊びにおいでね」 遠慮という、ゆっくりからすれば一番の対極にある言葉が出てくるまでに成長したこの一家にブリーダーは諭すような口調で提案する。 「ゆ~。わかったよ!! こんどあそびにくるね!! それじゃあおわかれだね!!!」 「おじさんいままでありがとーーー」 「「「「「さよーならーーー!!!」」」」」 「さよなら。元気でな!!」 こうして、人々が仕事に取り掛かり始めた頃、一家は男の家を後にした。 「ゆ~♪ これからどうしようか?」 「ほかのにんげんのおうちにいっておてつだいする?」 「でも、ゆっくりたちはにんずうがおおいから、めいわくがかかるよ!!」 キチンと育成されただけあって、こうすればどうなるという事を考えられるようになっているこの一家は、これからの自分達の進退を必死になって考え始めた。 「ゆゆ!!! おかーさんにいいかんがえがあるよ!!!」 閃いた!! と言わんばかりの声をあげお母さん霊夢が子供達に説明を始める。 「ゆゆ!! おかーさんあたまいい!!」 「それにゃらゆっくりできるね!!!」 どうやら、どうやって食べていくか、決まったらしい。 いそいそと、近くのゴミ捨て場から大きな缶詰の空き缶を拾ってくるお母さん霊夢。 ご丁寧に小豆の缶詰を拾ってきたらしい。 「それじゃあ、おかーさんとあかちゃんたちはここでするから、おねーちゃんたちはむこうでしてきてね!!!」 「うん!! ゆっくりがんばってね!!!」 お母さん霊夢と赤ちゃん、お姉さん達に分かれて行動する事にした一家。 しばしの別れの挨拶をした後、それぞれ人の多い場所に消えていった。 「ゆ~~♪ ゆ~~♪ ……ゆ!! ここにしようね!!!」 「ゆくりしゅるよ!!!」 「ゆっくりちようね!!!」 「ゆ!!」 人通りの多い一角で足を止めたゆっくり達は、お母さん霊夢の指示で立ち位置に立った。 そして、お母さん霊夢が、息をスウッと吸って歌を歌いだした。 「ゆ~~~っくり♪ ゆっくり~していってね~~~♪」 「ゆっくり~~~♪ ゆゆゆ~~~~♪」 「ゆゆゆ~~~~~~~~♪」 それに負けじと、子供達も必死でバックコーラスに徹する。 そして、目の前には先ほどの空き缶。 どうやら、芸をしてお金を集める方法を選んだようだ。 「ゆっくり~~~♪ ゆ・ゆ・ゆっくり・ゆうっくりぃ~♪」 「お! なんだなんだ?」 次第に、疎らだが人が集まり出した。 普通のゆっくりならここでペースト出荷されるが、ブリーダの所から出されたゆっくりはリボンか帽子に縫い付けられたワッペンのおかげで、完全ではないが安全は保障されているのだ。 「ゆゆ!! れーむのおうたをきにいったら、すこしでいいからおかねいれてね♪」 「おかーしゃんはおうたじょーずだよ!!」 「いっしょうけんめーうたうよ!!!」 確かに、そのゆっくりの歌声は唯の騒音ではなく、音痴なメロディ~であった。 その馬鹿さ加減が受けたのか、チャリンチャリンと小銭が空き缶に吸い込まれてゆく。 「!!!! ゆっくり~~~ゆっゆっ!!!!」 それで気分をよくしたゆっくり達は、更に気持ちを込めてご自慢の歌を熱唱していく。 一時間程たっただろうか? それまで違う場所でお金を集めていたゆっくり達が帰ってきた。 「ゆゆ!! むこーでもらってきたよ!!!」 一番はやく母親の元へきたゆっくり魔理沙が自慢げに千円札を見せた。 ブリーダーに飼われていた一家には、その金額の価値がはっきりと分かる。 「ゆゆ!!! すごいね!!!」 「おねーちゃんたちすごいね!!!」 「ゆ!!」 母親や妹達からも褒められて、このゆっくり魔理沙は上機嫌だ。 「それじゃあ、たべものをかいにいこうか!!」 自分達の缶の中にも硬貨が沢山入っている事を確認したお母さん霊夢が子供達に尋ねる。 「「ゆっくり~~~♪」」 二つ返事で賛成されたので、一家仲良く近くのお店に足を運んだ。 「こどもたちはここでまっててね!! みんなではいるとめいわくだからね!!!」 「「はーい!! ゆっくりまってるよ!!!」」 子供達に念を押して、一人で中へ入ってゆくお母さん霊夢。 以前、ブリーダーのおじさんと来た事があるので、大体の内装は把握していた。 奥にある大きな台に飛び乗って一言。 「このおかねで、ゆっくりできるおいしいたべものちょうだいね!!!」 店員の女性は、一瞬呆気に取られたが、ここはよくブリーダーの人がお使いさせるために利用する店なので速やかに値段分の食べ物を出してくれた。 「はい。これはお釣りだよ。大事に取っておいてね」 残ったお金を一緒に袋に入れて、地面に降りた母親の口元に運ぶ。 「ありがとう!! はむ……」 お礼を言い、袋の箸を紐で咥えて店を後にしたお母さんゆっくり。 外にでると、キチンと言いつけを守り待機していた子供達が一斉に駆け寄ってきた。 「うわぁーー!! いっぱいあるね!!!」 「ゆくりたべれるね!!!」 「ゆくりできりゅね!!!」 袋の中を見た子供達は大興奮。 そして、ゆっくり食べるべく、新しい家を探して街の中を再度彷徨う。 お釣りは、一番年長のお姉さん魔理沙が、重ねた空き缶の中へ入れて運んでいる。 「ゆっくり~♪」 それは、先ほど千円札を持ってきた魔理沙だった。 役に立っている自分が余程嬉しいらしい。 魔理沙の鼻歌が引き金となり、瞬く間に一家全員に広がっていく。 気が付くと、一家は街の外れの方まで足を運んでいた。 「ゆ~、なかなかみつからないね!!!」 「もうちょっとさがそうね!!!」 CASE:01 「ゆっくりさがそうね!!!」 母親が活を入れ家探しを続行する。 まだ、日は高く上っているのでさほど心配する事でもないだろう。 一家も、それが分かっているようでのんびりと探し回っている。 「ゆゆ!!! おかーさん!! ここはどう!!!」 先ほどの魔理沙が、母親を呼び止めた。 「ゆ~~?」 そこは十メートル四方ほどの大きなくぼみだった。 人工的に作られたようで、天井は透明な板に覆われ中から見上げれば、透き通るような景色を見れるだろう。 また、上部には所々穴が開いており、更に階段が下まで伸びている。 作りもしっかりしており、何よりも開閉式の蓋もあるそこは、十分家として機能するものであった。 「ゆゆ!! ここはだいじょうぶそうだね!! でも、にんげんがでていけっていったらすぐでていくよ!!!」 「うん!! わかってるりょ!!!」 「ゆっくりしようね!!!」 「「「「ゆっくりしようね!!!!」」」」 新たな住処の確保に成功した一家は、先ほど買った袋から食べ物を引っ張り出し、ささやかな宴を始めた。 「ゆ!! おいしーね!!!」 「うん!! おしたもいっぱいうたっていっぱいたべよーね!!!」 「「「「ゆっくりがんばろーーね!!!!」」」」 日が落ち始めても、一家の楽しい宴は終わりを見せない。 「ゆっくり~♪ ゆっくり~していってね~♪」 「おかーしゃんじょ~ず~♪」 「ゆゆ!! あめがふってきちゃよ!!!」 「だいじょうぶだよ!! ふたはきちんととしめたから!!!」 そう言って上を見上げるお母さん霊夢。 透明な天井には沢山の雨が弾け飛ぶ様子が断続的に映される。 「ゆっゆ♪ すごいね!!」 「たのしいね!!!」 本来ならば見ることが出来ないその光景を、一家は食い入るように見つめている。 きっと晴れた日には満天の星空が見えることだろう。 ここでの生活はきっとすばらしいものになる。 一家の誰もがそう思っていた時、悲劇は突然起こった。 「ゆ!! おみずだよ!! おみずがながれてくるよ!!!!」 「どうして!!! どうしてこんなにおみずがでてくるの!!!」 「!!! 、そういえばさいごにおじさんがいってたよ!!!」 この街には雨が降ったとき、川がゆっくり流れるように一時的に雨を貯めておく所がある、そこに入ってはいけないよ。 危ないから。 「ゆゆ!!! たいへんだよ!! はやくでようね!!!!」 「みんないそいでね!!!」 しかし、思い出したとしても時既に遅し。 上部に開いた穴から大量の水が流れ出し、階段を上ろうとする一家をことごとく下に押し返していく。 「ゆぎゃ!!」 一匹の赤ちゃん霊夢が地面に押し付けられた衝撃で、餡子を飛び散らせ絶命した。 「ゆゆゆ……」 上がっても、ここに居ても自分達が死ぬ事は避けられない。 残った方法は助けを呼ぶ事くらいだ。 「ゆっくりできないよーーーー!!!!! だれかーーーーたすげてくださいーーーー!!!!!」 「ゆっくりーーーー!!! だれかーーーーー!!!!!」 「しんじゃうよーーーーーー!!!!!!」 しかし、非常に激しい雨の中、出歩いている人も無く、一家の声を聞くものも居ない。 「ゆぶぶぶ!!!」 とうとう、容量いっぱいに水が溜まったようだ。 「あぶぶ!!! うぐぐ!!!」 水の進入は止まったが、全面水で満たされたこの状態では蓋を開けることも、ましてや息をする事さえも叶わない。 「ゆ……」 「ぐり……」 一匹、また一匹と餡子を流しながらゆっくり達が死んでゆく。 初めの方に死んだゆっくりは、既に完全に水に溶けてしまっていた。 「おがーしゃん……ぎょめん……」 最年長のゆっくり魔理沙が、母親に何かを訴えかけるような目をしたまま命を落とした。 「あばばばばば!! りぇーみゅのこどもだじーーーー!!!!」 そして、最後まで残っていたのは、やはりお母さん霊夢だった。 窒息の苦しみと、溶け出す体。 そして、混ざってゆく子供達の惨状を見ながら、ゆっくりと息を引き取った。 全ての水が流された後、そこに残っていたのは数十円のピカピカの硬貨だけであった。 CASE:2 その後、へとへとになるまで探したが、森の中とは違い一向に巣に適した場所を見つけることは出来なかった。 「ゆ~、みつからないね!!!」 川辺で、先ほど買った食事を取りながらこの後の計画を話し合っていく。 既に、近くで遊んでいた子供達は居なくなり、どうしようもない焦燥感が一家に襲い掛かっていた。 「どこか、にんげんのおうちにいそうろうさせてもらおうか?」 「そうだね。ゆっくりさがそうね」 これ以上探しても意味が無い。 そう感じた一家は、取り敢えずの間、人間の家に居候させてもらう事にした。 しかし、ここでただ家にお邪魔するほどブリーダ卒のゆっくりは馬鹿ではない。 「そうだ! おじゃまするんだから、れいむたちがおうちをきれいにしよう!!!」 「うん!! おじさんのところでもがんばっておそうじしたもんね!!!」 「かってに住んでいるだけじゃわるいもんね!!」 食べ物を食べている間、自分たちが出来る事を考える。 ただで家に居るのはいけない事。 それもブリーダに教わった事だった。 食事を食べ終え、幾分元気を取り戻した一家は、家を求めて街へと戻っていった。 しかし、誰某の家を探していたわけではない。 適当な家の前に到着した一家は、大声で門に向かって喋る。 「こんにちは!! ゆっくりさせてください!!!」 これが、礼儀というものだ、そう教えられた。 程なくして、人間が一家を出迎えに現れた。 「ああ、ゆっくりか。丁度良いところにきたな。まあ、中に入れ」 「おじゃまします!! おねーさんゆっくりさせてね!!!」 「れーむたちは、きょうぶりーだーのおうちからでてきたの!!」 「あたらしいおうちをみつけるあいだ、ここでゆっくりさせてもらっていいですか?」 「もちろん、きちんとおてつだいもするよ!!!」 「れーむたちはおそうじもとくいなんだよ!!」 「そうか。それなら、ちょうど手伝ってほしい事があるんだ」 こっちに来てくれないか? 女性に言われて着いた所は竹林の中。 既に日も沈み、おぼろげな灯がより一層竹林を栄えさせている。 「ゆ? きれーだね!!」 「すごいね!!」 「おーい。こっちだこっち!!」 竹に見とれている間に女性は奥のほうへと進んでしまったらしい。 慌てて追いかけるゆっくり達は、そこに更に二人の女性が居る事に気が付いた。 「あら、それはゆっくり?」 「なんでここに連れて来るんだ?」 「こんばんは!! ゆっくりさせてください!!!」 「こんびゃんは!!」 「おばんです!!」 一家は、少し怪訝そうな表情をする女性二人に臆することなく挨拶をする。 「まぁ、そう言うな。……お前達は親子か?」 「うん!! そうだよ!!」 「おかあしゃんはおうたがうまいんだよ!!!」 「それにものしりだよ!!」 「ああ。それはよかったな!」 「「「「ゆっくりーーー!!!!」」」」 ブチ。 ブチブチブチ。 「あぎゃあ!!」 ブチブチブチ。 ブチブチブチ。 ブチブチブチ。 「「「おがーしゃーーん!!!」」」 ブチブチブチ。 ブチブチブチ。 「ゆっゆ~♪」 ブッチ!!!! 「ゆ~♪ !! ゆゆ!!!」 連れて来てくれた女性が、一気に子供達を踏み潰した。 ブリーダーに育てられて、少し油断もあったお母さん霊夢は、全ての子供が潰されるまで暢気に構えていた。 「ああああああ!!!!! れーむのあがじゃんが、こどもたちがーーーーーー!!!!」 「ああ。私が全部潰した」 淡々と、真実のみを告げる女性。 月が隠れてしまって表情をうかがい知る事は出来ない。 「どーーじで!!! どーじでれいむのこどもたじにごんなごとするのーーー!!!!!」 「さぁ、な」 女性は動機を答えない。 否、この霊夢には関係のない事なのだろう。 「ゆーーー!!! ごめんねーーーー!!! もっどゆっぐりじたがったよねーーー!!!!」 「私が憎いか?」 「ゆ!!! ゆっくりしんでね!!! おじさんは、むやみやたらにゆっくりをころすひとはわるいひとだっていってたよ!!! だからゆっくりしね!!! こどもたちをこんなめにあわせたおねーさんはゆっくりしね!!!! しねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしね!!!!!!!」 大量の涙を流し、目の前の女性に向かって機械のように言葉を発するお母さん霊夢。 「……もういいだろ」 「ゆっくりしね!!! しn……ぶぎゃら?!! ……い、いだいよ!! ゆー、ゆっぐりじだがったよ!!」 暫くそれを眺めていた女性は、一言だけ呟いて踏み潰した。 残ったのは大量の餡子、竹林の香りと融合し、お世辞にも良い香りとは良い辛い。 そして、後ろで呆然と眺めていた二人に向き直り、強い口調で言い放った。 「ほら、見ての通り憎しみは憎しみしか生まん。お前達もそろそろお互いいがみ合うのはやめないか? 勿論、暇つぶしに殺し合いをするくらいなら良いだろう。ただし周りには気をつけろよ。今回は饅頭だったが、これが人間がだったら大変な事になるからな」 「ふーん? まぁいいわ。飽きてきたし、まぁいい運動にはなるんだけど」 かたや興味はなさそうに呟く黒髪の女性。 「まー、輝夜と合わせると癪だけど、いつの間にか唯の暇つぶしになってたしな」 かたや面倒くさそうに呟く銀髪の女性。 「それよりもお腹が減ったわ。こんなに甘い匂いが立ち込めてるんですもの」 しかし、どちらも腹の内は同じらしく、少々ぎこちないがいたって普通の会話が形成されていく。 「そうだな。私達も夕飯にするか? 慧音」 「ああ。折角だから輝夜の家で頂くとしよう」 最後に、水色の髪の女性が返事をし、連れ立ってこの場所から去っていった。 上白沢慧音。 最近は、ブリーダ上がりのゆっくり家族を使い、命の授業を行うという。 生徒の親からの評判は上々である。 CASE:3 「あら? 貴方達そんな所でどうしたの?」 声のした方向へ振り向くと、そこには一人の女性が立っていた。 「れいむたちは、ぶりーだのおうちからでてきたんだけど、あたらしいおうちがみつからないの」 「このたべものはじぶんたちでおかねをかせいでかったんだよ!!」 人間が必要としている事を簡潔に説明する。 これも、ブリーダーから教わった事である。 「そうだったの。 だったら家に来ない? 貴方達みたいに躾ができているゆっくりなら大歓迎よ?」 「ゆゆ!! ほんとう?」 「もちろん!! 嫌だったなら無理にとは言わないけど……」 「ううん!! おねーさんのおうちにいかせて!!」 「きちんとするよ!! おねーさんありがとう!!」 「おてつだいしてほしいことがあったらなんでもするよ!!!」 「そう。ありがとう。私の家はこっちよ」 「「「「ゆっくり~~~~♪」」」」 このゆっくり達は幸運だった。 新しい家、それも人間の家が約束されたからだ。 そして、以前住んでいた見慣れた森の中、その奥に女性の家はあった。 「ここが私の家よ。さぁ、中に入って」 「「「「おじゃまします!! ゆっくりさせてね!!!」」」」 家の中に通された一家。 出迎えたのは沢山の人形。 その愛くるしい人形達は、ゆっくりを簡単に魅了した。 「わー!!」 「にんぎょうさんがいっぱーい!!」 「これおねーさんがつくったの?」 「ゆゆ!! うごくよ!!!」 「すごーーい!!」 「ふふふ。そうだ、お腹減ったでしょ? 今食べ物を持ってくるわ」 自分達で買ったお菓子があると言う一家に、それじゃ足りないでしょ、と言い残してキッチンの奥へと消えていった女性。 時間にして数刻だろうか? 思いの他早く大きな皿を携えて戻ってきた。 「はい。どうぞ、好きなだけ食べていいわよ!」 「ありがとうおねえさん!! ゆっくりいただきます」 「「「いただきまーす!!」」」 「ぱく!! おいしいよ!! とってもおいしいよ!!」 「ほんと!! おいしい!! おねえさんありがとう!!!」 皿いっぱいに盛られた甘くて美味しい食べ物を、口に付かないように注意しながら食べていく。 そんな食べ方でも、大量にあった食べ物は直ぐに綺麗サッパリ無くなった。 「けふ! おねいさんありがとう、おいしかったよ!!!」 「「「「ありがとーーーおねーさん!!!!」」」」 目をトロンとさせて、頬を赤くした顔で女性にお礼を述べる。 その表情は、野生のそれと一緒だが、本当に幸せな証拠なのだろう。 「ふふ。どういたしまして。そんなに美味しかった?」 「「「「うん!!!」」」」 「ゆっくり達の餡子だったのに?」 「ゆ?」 「ゆゆ!!」 そういえば、自分達の中身は餡子だとブリーダーから教えられていた。 そして、この一家は食べたことが無かった。 それゆえ、先ほどまで美味しく食べていたそれが、自分達の中身だと分かった時のショックは大きかった。 「ゆゆ!! おえっ!! おえーーーー!!!!」 「あらあら。戻しちゃダメよ?」 「むぐ!! むぐぐ!!!」 人形を操作して、今まさに吐き出そうとするゆっくり達の口を塞ぐ。 それでも懸命に吐き出そうとするが、ゆっくりの力は人形の力にも及ばないようだ。 抵抗に諦めたゆっくり達は、吐き気がおさまるまでじっと耐えるしか選択肢は残されていなかった。 「ゆーーー。 おねーさん!! ひどいよ!!」 「うそをついちゃだめだよ!!!」 「ともぐいはいけないことなんだよ!!!」 漸く、吐き気が収まったゆっくり達は、口々に非難の言葉を浴びせかける。 「そんな事無いわ。貴方達だって美味しいって食べてたじゃない?」 「「ゆ!!」」 痛いところを疲れた一家は、反論できずに押し黙る。 「おねーさんありがとーー!!! って必死になって食べてたじゃない?」 「「ゆゆゆ!!!」」 そのまま、女性はどんどんと一家を攻め立てる。 「幸せそうに食べてたじゃない?」 「ゆ……」 「何であんた達はそんなに幸せそうなのよ!!!」 「ゆぐ!!!!」 突如罵声とも取れるほどの声をあげ一家を驚愕させる。 怒りに任せ、一匹の子供霊夢を踏みつけた。 悲鳴を上げるゆっくり霊夢。 「ゆーー!! ゆっぐりでぎるよ……」 しかし、周りに餡子が飛び散ったが幸いにして命に別状は無いようだ。 「ど、どうしたのおねーさん!! ゆっくりs「うるさいわね!!!!」」 「!!!!!!」 またしても、一家は黙るしかなかった。 「私は上手くいかないのに、……なんであんた達はそんなに幸せなのよ!!!」 理性を失った女性は、人形に指示を出し、次々とゆっくりに五寸釘を打ち付けていく。 「いい!! いだいよ!!」 「おねーさん、れーむたちなにかわるいことした?」 「だったらあやまるよ!!!!」 「ごめんにゃしゃい!!!!」 「うるさい!! 私は幸せそうなあんた達自体にムカついてるの!!!!」 生かさず殺さず。 急所を外しながら、刺しては抜くを繰り返す。 針山に針を刺すように、何の感情もなしに延々と繰り返させる。 「なんであんた達だけ。何時も魔理沙と仲良くしてるのよ!!」 「ゆゆゆっぐりざぜでーーー!!!!!」 「魔理沙も魔理沙で、なんでそんなに霊夢と幸せそうにしてるのよ!!!!」 「い! いだいよーーー!!!!!」 釘は次々を刺さっていくが、餡子が漏れないので意識はしっかりと残っている。 そんな、一家にとっては地獄の時間が、漸く終わりを迎えた。 「はぁ、はぁ。ふぅ。そ、それじゃあ、約束どおり家に住まわせてあげるわ!」 「いいでずーー!!! じぶんだじでおーじざがじまずーー!!!!!」 「おねーーざんありがどーーー!!!」 「ゆっぐりがえるーーーー!!!!」 「あら。言葉が悪かったかしら。私は、家に住みなさいって言ってるのよ?」 全ての人形に臨戦態勢をとらせ、優しくしかし有無を言わさぬ口調で一家に話しかける。 「ゆゆ!! わがりまじだ!! おうじにいさせでくだざい!!」 「ゆっぐりぎでいぎまず!!!」 「おねーざんのおうtんぎゃ!!!!」 「アリス、よ」 「「「「ありすのおーじにずっといざせでくだざい!!!!」」」」 「ええ! みんなで仲良く暮らしましょうね!!」 ブリーダー卒のゆっくり達は、その後の生活は比較的幸せになるらしい。 CASE:4 「あら。あんた達こんな所でなにしてんの?」 「ゆゆ!! れーむたちはきょうぶりーだーのおうちからでてきたの!!!」 「このたべものもじぶんたちでおかねをあつめてかったの!!!」 「おねーさんはどうしたの?」 「私? 私はあんた達がずっとウロウロしてるから気になっただけよ」 「ゆ~~。れーむたちまだおうちがないの!!」 「だから、おうちをさがしてたの!!」 「何だそんな事か。ついてらっしゃい、良い所があるわ」 「「「ゆ♪」」」 親切そうな女性の後ろを付いていく一家。 見れば自分や子霊夢達と同じ、綺麗なリボンを付けているではないか。 「ゆっゆ♪」 自分の真似をしてくれている人間が居た事で、お母さん霊夢はすっかり幸せそうな表情になった。 街を抜け少し歩くと、いつの間にか大きな神社が目の前に存在していた。 「ゆゆ??」 突然の事に戸惑う一家だったが、パンパンと手を鳴らした女性がそれを制止した。 「ここの敷地内だったら何処に居てもいいわよ。それに、さっきの道を通れば直ぐに街へ着くわ。ただし、建物の中には勝手に入らない事。自分達の食べ物以外は勝手に食べないこと。他のゆっくり達が来たら、自分達で対処しないで必ず私を呼ぶ事。分かった?」 「うん!! わかった!! ゆっくりさせてもらうね!!!」 「「「「おねーさんありがとうね!!!」」」」 「どういたしまして。そうだ! あんた達が稼いだお金、一回私の所に持ってきなさい。ゆっくり達じゃ買えないような美味しい食べ物を買ってきてあげる」 自分達では買えない美味しいもの。 この言葉は、いかにブリーダーによって教育されたゆっくりと言えども抗う事の出来ない魔法の言葉だった。 「ゆゆ!! おねーさんありがとう!!!」 「おかねはおねーさんにわたすよ!!!」 「私の名前は霊夢よ」 「ゆっくりおぼえたよ!! れーむ、ゆっくりさせてもらうね!!!」 次の日から、ゆっくり達の新たな生活が始まった。 一家の寝床は住居の軒下に決まった。 雨風を防げるここはなかなか住み心地が良いらしい。 そして朝、朝食を食べて街へ向かう。 昼を過ぎた頃に神社へ戻り、霊夢にお金を渡す。 夜、霊夢が買ってきた美味しい食べ物を一家で食す。 「今日は甘い食べ物よ」 出されたのはカラフルな甘いペースト状の食べ物だった。 「おいしい!! れーむおねーさんおいしーよ!!!」 「今日はこんなの買ってきたわ」 出されたのは、カスタードケーキだった。 「あまい!! すっごくおいしい!!!!」 時々、霊夢も縁側で食事を取ることがある。 その時は皆で一緒に楽しくご飯を食べる。 「頂きます」 「「「「いっただきまーーす!!!!」」」」 しかし、楽しい事ばかりではない。 「うっう~♪ れみりゃ☆だどぉ~♪」 「ゆ?」 「うっう~♪ れみりゃはこーまかんのおぜうさまだっど~♪」 それは、紅魔館の主が従者を引き連れてここに来る時に、従者が引き連れてくるゆっくりれみりゃだった。 「ゆ! ゆゆゆ!!!」 一家はこのゆっくりが自分達にとって危険なものである事は理解していた。 ブリーダーに教えられた事と、先ほど言った通り従者が引き連れてくるからである。 「だいじょうぶよ!! れみりゃさまはとってもグルメなんだから。プディングしかお召し上がりにならないわ」 「う~♪ れみりゃはぷっでぃ~んしかだ~べないどぉ~♪」 そう言って、その従者にれみりゃと遊ぶ事を強制させられていることも。 食べないといっても、捕食種のゆっくりと遊ぶ事は危険な事に変わらない。 「うっう~♪ た~べちゃ~うぞ~♪」 「う~♪ れみりゃはつよいんだどぉ~♪」 そう言って噛み付かれたり、殴られたりしていたのだ。 去り際に、ゆっくり霊夢の飼い主が文句を言っても、子供同士のおふざけです。 そう言って話すら聞かないで帰ってしまうのだ。 「うっう~♪」 それがまた目の前に居る。 従者の姿は見当たらない、おそらく一人で抜け出してきたのだろう。 それを確認して、一家はさっさとこの場から逃げ出そうとした。 「ゆ! そこでゆっくりしててね!!」 「ゆ~!! だめ~~~!!! れみりゃとあそぶの~~~~~!!!!」 しかし、長い事人間と暮らしていた一家は、同じく飼われているれみりゃから逃げる事はできなかった。 狙いを付けられた一匹が、頭の上からのしかかられ両手で頬を引っ張られる。 「うっう~~♪ れみりゃはつよいんだどぉ~~~♪」 「やめふぇね!!! ゆっふりふぁなしふぇね!!!!」 必死にれみりゃに対して懇願するゆっくり霊夢だったが、プディンしか聞き分けられないスカスカ脳みその肉まんには何を言っても無駄である。 「うっう~~♪ がぁお? !!!」 「ゆ?」 突然、頭の上にあった重みが消え、口も自由に動かせるようになった。 何事かと上を見上げると、そこにはれみりゃの羽を掴んだこの神社の主の姿があった。 「ゆゆ!! れいむおねーさんありがとう!!」 「いいのよ。きょうはあのくちやかましいロリコンも居ないし」 そう言って、れみりゃを持ち替え顔を正面に向ける。 「ううーーーーー!! はなさないとさくやにいいづけるどぉーーー!!!!」 両腕でお腹を押さえられているれみりゃは、自分の両手を首元まで持ってきてぶりっ子のポーズを取りながら、若干涙が滲んでいる顔を女性に向けて言葉を吐き捨てた。 「ああこわいこわい!!」 「ぎゃっは!!! うう!! あっぎゃ、かは!!」 掴んでいた腕から、握りつぶすように力を込めていく。 「これは私が退治するから、あんた達はそこでゆっくりしてなさい」 「「「「ゆっくりしてるよ!!!!」」」」 「うーーーー!!!! ざぐやーーーー!!! どぉごーーーー!!! はやぐれみりゃをだずげろーーーーー!!!!! あっぎゃーーーー!!!!!!!」 戻ってきた霊夢は、一家に怪我がない事を確認するとご馳走を作るからといって家の中へ消えた言った。 その日の夕食には、美味しい肉まんと、餃子と、よく出しの取れたお吸い物が並んだ。 「ゆっくりいってくるね!!!!」 今日も、ゆっくり一家は街へお金を稼ぎに出かけていった。 「これは良い方法だったわ。クズ野菜なんかに砂糖を混ぜて出せば美味しいって言ってくれるんだから。無い時はそこら辺のゆっくりで良いし。お金もいっぱい溜まるし、やっぱり後を付けていって正解だったわね」 満面の笑みを浮かべて見送る霊夢は、ボソッと一言呟いて掃除を再開した。 「さてと、今日の夕飯はすき焼きが良いかしら、それとも奮発してお刺身でも買おうかしら?」 このSSに感想を付ける
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48 :無名武将@お腹せっぷく:2007/11/19(月) 19 39 41 廖化当先鋒。 常駐ネタスレでの俺の状態。
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茶色い地面を黒く耕す。 今年から開墾した土地の土作りを粗方片付けた男は、疲れた体に鞭打って自宅への道を急いだ。 出来上がれば去年の倍の野菜が取れる、そうすれば趣味に使えるお金も増える。 固い土が付いている所為で、錆付いて見える鍬を小屋にしまい、親から譲り受けた屋敷の玄関をくぐる。 「ゆっくりーーー!!!」 「ゆっゆ♪」 自分の家の中から聞こえてくる鳴き声。 ヤラレタ!! その声が聞こえた事で、男は家の中にゆっくりが忍び込んだことを理解した。 同時に、きちんと本が取れるかどうか、心配になった。 「ゆ!! おじさんおかえりなさい!!!」 幸か不幸か、家に忍び込んでいたのはゆっくりアリスと。 「むっきゅ~!! ぱちゅりーはしずかなおうちでほんをよむの!!!」 ゆっくりパチュリーであった。 男の顔にわずかだが安堵の色が見える。 ゆっくりアリスはとかいはのゆっくりだと聞いている。 対するゆっくりパチュリーも、馬鹿に馬鹿をかけて無限倍したほど馬鹿なゆっくりの中で、比較的頭が良いと聞いている。 「今日は。悪いけどここはおじさんのお家なんだ。君達にご飯をあげることは出来ないから、ゆっくり帰ってくれないかな?」 努めて、努めて冷静に男はゆっくり達に問いかけた。 幸い、部屋はまだ荒らされていない。 この分ならコイツラを追い返すだけで良い。 あまり食べ物を殺す事は好きではないこの男は、加工場へは連れて行かずこのまま帰ってもらう選択をした。 しかし、この場合のゆっくり達の行動は、知性のあるモノでは理解できない事がある。 「むっきゅーーー!!! ここはぱちゅりーのおへやなの!!!! たくさんごほんがあるし!!! しずかだからどくしょするにはちょうどいいの!!!!」 「はぁ?」 「ぱちゅりーがそういうんだったらしょうがないね!! おじさん!! ぱちゅりーはからだがよわいの!! だから、ゆっくりどくしょさせてあげてね!!」 開いた口が塞がらない。 ここはこの男の家である。 それを勝手に荒らしているのはこの二匹だ。 幾ら温厚と言われているこの男でも、流石に限界のようだ。 「おいお前達、そんなに本が読みたいなら良いところがあるぞ!!」 「むきゅ? どこ? どこにあるの?」 「としょかんだよ」 「ゆ? おじさん!! としょかんってなに? とかいはのありすにもわかるようにせつめいしてね!!!」 「おかしいな、都会には沢山図書館があったと思ったんだけど、君知らないの?」 あくまでも聞き返すように男はゆっくりアリスに話しかける。 「ゆ!!! ……しってるよ!! ぱちゅりーーとしょかんはゆっくりほんがよめるんだよ!!」 「むきゅ? ほんとう?」 「ああ、アリスの言うとおりだよ!!」 「むっきゅ!! いきたい!! としょかんいきたい!!!」 頬を真っ赤にしながら興奮するパチュリー。 その様子は、このままほおっておけば直ぐに死ぬんじゃないかと思えるほどだ。 「わかったよ!! 明日案内してあげるよ」 「むっきゅーーー!!! はやくあんないしてね!! あさいちばんであんないしてね!!」 「しっかりありすたちをえすこーとしてね!!!」 じゃあ早く寝ろ。 男が一声かけると、急いでテーブルの下にもぐりこみ寝息を立て始めた。 それを見て、男は遅い夕飯をとる事が出来た。 翌日。 「むっきゅーーー!! はやくおきてね!!! はやくあんないしてね!!!」 日も明けきっていないうちにパチュリーの騒音で目を覚ました男は、チャッチャと朝食を済ませ約束どおり二匹を図書館まで案内する事にした。 とは言っても実際は紋が見える場所まで。 「良いかい? 合図したらあそこまでいって本を読ませて下さいっていうんだよ?」 「わたったよ!! あぽいんとをとるんっだね!!」 「むっきゅーー♪ ごほん♪ ごほん♪」 喚く饅頭は放っておき、再度門へと目を向ける。 暫く待つと、門の近くに一人の女性が姿を現した。 「ほら! いまだよ!! ゆっくりしてきてね!!」 合図が出た。 二匹は勢いよく門へと駆け出して行く。 「さて、朝食の餡子でも取って帰るか」 ―― 一方、小悪魔は驚いていた。 朝、優雅に今日一日パチュリーに出す悪戯を考えていたら、ゆっくりが声をかけてきたからだ。 「こんにちは!! とかいはのありすをとしょかんにいれてね!!」 「むっきゅーー!! はやくほんをよませてね!!!」 突然こんな事を言い出す二匹のゆっくり。 しかも、何故か図書館の事を知っていた。 「いいですよ!! あんないしますね♪」 色々と引っかかる事はあったが、今日の小悪魔は機嫌が良いのですんなりと中へ入れてやることにした。 「ねぇ小悪魔、れみりゃ様達を見なかった? 昨日から全然居ないのよ」 途中で、目の下に隈を作った咲夜が小悪魔にれみりゃの事を尋ねてきた。 大方徹夜で探して居たのだろう、昨日は珍しくレミリアが長時間図書室に居座っていたから。 「いえ? 存じ上げませんねー♪ またお散歩じゃないんですか?」 「今までは一匹くらい残っていたんだけどねぇ。……それ、どうするの?」 床に居た二匹のゆっくりを指差して尋ねる、既に彼女の頭の中ではれみりゃは散歩中ということになっているらしい。 「ゆゆ!! おねーさんひとにゆびさしちゃいけないんだよ!! そんなのいなかもののすることなんだよ!!!」 「むっきゅーー!! きょーよーのないひとはゆっくりできないよ!!!」 「私今お料理にはまってるんですよ♪」 「そう。そういえば昨日作ってくれたギョーザも美味しかったわ。それも、後で食べさせてね」 二匹に一瞥をくれた後、気品を漂わせながら奥へと消えて行った。 「は~い任せてください♪ それじゃあこっちにきてくださいね、今図書館へ案内しますよ!!」 「「はやくあんないしてね!!!」」 ゆっくりは切り替えが早い、既に先ほど何故怒っていたかは綺麗サッパリ忘れてしまったようだ。 長い長い廊下を歩いて行く間中、二匹はしきりに本、本と連呼していた。 それこそ、れみりゃがプリンと喚くように。 「着きました。ここが図書館ですよ」 大きな扉を開けた中には見渡す限りの本の壁。 圧倒的な本を目の前にした二匹は、ゆっくりの癖に押し黙る。 「むきゅ~!!」 最初に言葉をあげたのはゆっくりパチュリーだった。 いまだアリスが黙っている中、勇んで本棚に近づこうとしている。 「♪ むっきゅ!! きゅきゅ!!」 本まであと少し、という所で見えない壁にはじき前された。 突然の事に、その場で呆然と本棚を眺めるゆっくりパチュリー。 目を白黒させながら、口をパクパクさせている。 「あらあら。済みません、言うのを忘れてましたけど。この図書館の本は手続きを踏んだ人しか利用できないんですよ」 「!! わかったかんいんせいだね!! ありすたちはびっぷなかんいんだね!!!」 「むきゅ? だったらはやくてつづきしてね!! ぱちゅりーははやくごほんがよみたいの!!!」 漸く我に返った二匹が、小悪魔に擦り寄る。 しかし、小悪魔は本を見せる気はさらさら無い。 大事な本に涎でもつけられたら大変だからだ。 「そうですね。すぐにおわりますよ。こちらにきてください」 図書館を通り過ぎ、奥にある給湯室へ連れてゆく。 「取り合えず、こちらでシュークリームをお出ししますから、少し待っていてください」 一礼して、奥にある材料を確認してゆく小悪魔。 「ゆゆ!! ありすもてつだうよ!!! とかいはのありすはしゅっくりーむだってかんたんにつくれるよ!!!」 どうしても、自分を立てないと気がすまない性格なのだろう。 煩わしいほどの大声でシュークリーム作りに参加させろと喚き散らすゆっくりアリス。 「ええ。無論、そのつもりでしたよそれじゃあこちらでお手伝いしていただけますか?」 「かんたんだよ!! おねーさんもびっくりしてきぜつしないでね!!」 足元まで走ってゆき、角砂糖と唐辛子を持ち出して床にぶちまける。 「ゆゆ!! ざいりょうはありすがだしてあげたよ!! はやくきじをかきまぜてね!!!」 「はいはい。それじゃあ、待っている間はそちらにいらして下さい」 「ゆ♪」 促されるまま、キッチンの高い台の上、その上にある木製の台の上に載せられる。 「それじゃあこれから作っていくので、そこでじっとしていてくださいね?」 「ゆ♪」 「それでは、えい♪」 「ゆ!! ゆゆゆ!!!!!」 マニュアルどおりに、頭の上を切断する。 「なにずるの!!!! ありずのしっぐであれがんどなかみがざりがーーーー!!!!!!」 そこからスプーンで中身を掻き出す。 「ゆゆ!! やめてよ!! とかいはのありすにこんなことするなんておねーさんはいなかものだね!!!」 「そんなことないですよ? ……地下ってモノが走れましたっけ?」 「ゆゆゆ!!! ばっかだねおねーさんは!! じめんのなかをはしれるわけないじゃん!!」 「いいえ。都会では走ってますよ」 同時に、掻き出す勢いを強くする。 「ゆ!! いだい!! ぞんな!!! ありずはいながものなのーー??? いだい!!! やめでーーー!!!」 「はいはい。田舎モノですから大人しく食べられてくださいねー♪」 「いやだーーー!!! まだまりさどのあいのごをつぐってないもんーーーーー!!!!」 「そんなにゆっくり魔理沙さんとの子供が欲しいですか?」 「!! うん、まりさもれいむも、ありすのこといっぱいあいしてるんだよ!!!」 「この前嫌いだって言ってましたよ」 「!!! ゆっぐりーーーーーー!!!!!!!」 ボールが満杯になったところで、丁度アリスの中身もなくなったようだ。 辺りには、カスタードの良い匂いが立ち込めている。 「むっきゅ!! むっきゅ!!!」 女性なら、至宝の空間のはずだが、一匹だけ取り残されたパチュリーにとっては地獄でしかない。 「むきゅーーー!!! ぱちゅりーはかえるよ!!! さっさとげんかんをあけておくりだしてね!!!」 長年アリスと一緒に生活していたからであろうか。 元々、毒の有るその口調により一層磨きが掛かっている。 「そんな事言わずに、これから鶯パンを作るんですよ。良かったらご一緒に作りませんか?」 既にまな板の上に上げておいて疑問形で聞くのは甚だおかしいことではあるが、今のパチュリーにそんな事を気にしている余裕はない。 「むっきゅーーー!! げほっ!! げほっ!! かえる!! おうじがえるーーーー!!!!」 「だめですよ~。おそとはサンサンと太陽が輝いてますから、直ぐに熱射病にかかって死んでしまいますよ」 「むっきゅーーー!!! しぬのはいやーーー!!! ゆっぐりしだいーーーー!!!」 「じゃあ、ここで一緒に鶯パンを作りましょう♪」 「むっきゅーーー!!! つぐるーー!! ゆっぐりつぐるーーー!!!!」 先ほど、ここで親友がどうなったのか既に忘れてしまったらしい、やはりゆっくりはゆっくりだ。 それともずっと隠れて過ごしていたからか、こういう場合に対する知識が欠如しているのかもしれない。 「はい。それではいきますよ!」 「むっきゅーー!! はやくつくって、かよわいぱちゅりーにたべさせてね!!!」 今度はマニュアルどおりに切ったりはしない。 「ゆぐ!!! めがーーー!!! ぱちゅりーのおめめがーーーー!!!!!!」 片目を潰し、そこから穿り出す。 「むぎゅーーー!! めがーーー!! めがーーー!!!! あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」 残っている片方の目からは、自分に突きつけられているスプーンがよく見えていることだろう。 「あんまり動かないでくださいね。ここからだとなかなか掻き出し辛いんですよ」 「あっぎゃーーー!!! むきゅむきゅむっぎゅーーーん!!!!!」 どうやら最深部まで到達したようで、今までとは比べ物にならない絶叫をあげ、体を痙攣させて泣き喚くゆっくりパチュリー。 「あぎゃ!! むぎゅ!! ゆっぐりざぜでーー!!! あああああ!!!!! …………」 体が弱いせいか、体の餡が完全になくなる前に絶命したようだ。 「あ~あ。もう終わりですか。やっぱりれみりゃさまの方が面白いですね……」 「……貴方は私に何か恨みでもあるのかしら?」 「!!!」 小悪魔の後ろでは、正真正銘のパチュリーが、なにやら呪文を唱えながらにこやかに微笑んでいた。 尚、完成したシュークリームと鶯パンは咲夜に渡し。 紅魔館には新たなれみりゃが住み着いたという。 このSSに感想を付ける
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54 :無名武将@お腹せっぷく:2007/11/20(火) 14 57 08 衆寡敵せず、論功行賞 39 総角の好って、晋書の何劭伝が出典とかいうけど
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『ねこっかぶりと太陽に向く花(後)』 33KB 愛で 自業自得 飼いゆ 野良ゆ 姉妹 現代 愛護人間 6作目 らんしゃま…そんなのウチにはないよ… 「いやあああああ! しゅしゅしゅしゅ、しゅっきりーーーー!!」 「すっきりーなんだねー! わかるよおおおおお!!」 バスケットボール大にまで成長したちぇんに後ろから組み伏せられたれいむは、その胎内に熱い精子チョコを吐き出されがっくりと額を地面につけた。 ハンドボール大くらいしかない子ゆっくりであるれいむの頭から萎れた茎がにょきにょきと生え、対照的に体がまむまむの部分から黒ずんでいった。 涙を流したれいむは、最後にお決まりの言葉を残した。 「もっと……ゆっきゅり……」 「うわあああああまりさのおちびちゃんがあああああああ!!」 れいむの親であるまりさが、我が子の悲惨な死に絶叫した。そのまりさ自身もあんよから餡子を漏らし、帽子は原型もとどめないほど噛み破かれており到底無事とは言えない有様である。 れいむの死体からぺにぺにを抜き出したちぇんは、退屈そうにあくびをした。 「それなりーなんだねー。れいむはちからがよわくてむりっやりれいぽぅしてもつまらないんだねー。わかるよー」 「ゆあああああどぼしてそんなこというのおおおおお!! まりさにはなにしてもいいっていったのに、どぼしておちびちゃんずっとゆっくりさせてそんなこというのおおお!!」 「ちゅうこのまりさなんかにきょーみないんだねー。やっぱりしょじょがいちばんしまりがいいんだねー。わかれよー」 ちぇんはそう言い捨て、まりさにはもう見向きもせずその場を後にした。まりさは身動きの取れない体でいつまでもちぇんに呪いの言葉を吐き続けていたが、どうせそのうちうるさいと怒った人間に潰されて死ぬだろう。ちぇんは経験上、それを知っていた。 生後から九ヶ月。少女たちの庇護の下、無事冬も越しほぼ完全に成体ゆっくりとなったちぇんに敵う野良ゆは、この町に存在しなかった。定期的にシャワーを浴びせてもらったりタオルで拭ってもらったりする体も野良ゆにしては小奇麗なものである。 ここで愚かなゆっくりであれば、自分は選ばれたゆっくりであり、地上最高にして至高、究極の存在なので何をしても許されると勘違いし、手早く現実の厳しさに淘汰されるであろう。しかしちぇんは身の程についてはわきまえていた。 「ちっ、抜き打ち小テストなんて聞いてねーぞ。あーやだやだやだやだやだ。なんかいいことねーかなぁ……」 学生服を着た少年が道路を歩くちぇんの向こうからやってきていた。その不穏な態度を敏感に察したちぇんは周囲に、誰かゆっくりとした人がいないか探すが昼下がりの歩道は人通りが少なく、この場には少年とちぇんしかいなかった。 暗い気分で下を向いて歩いていた少年は、逃げることもできずにいたちぇんを見つけた。いい八つ当たり対象を見つけたと、目に喜色を浮かばせた少年は足を振り上げる。 「ごめんなさいなんだねー! わかるよー! ちぇんがわるかったんだねー!」 「……あん?」 少年が靴底を振り下ろす前に、ちぇんは額をアスファルトにぶつける勢いで即土下座した。出鼻をくじかれた少年はさらにその事実に苛立ち、気を取り直してちぇんを踏みつける。 だがちぇんはその素早さを生かし、寸前の所で踏みつけをかわした。かわりに残された帽子が地面と少年の靴の間に挟まる。 ゆっくりは帽子に対して強い執着心を抱くということを知っていた少年は、取り上げた帽子をダシにちぇんをいたぶろうと、帽子を拾おうとした。しかしそこで帽子に取り付けられた銅バッジに気づく。 舌打ちした少年は、帽子をアスファルトに投げ捨てた。 「ガン飛ばしてんじゃねーぞ、クソ饅頭がッ」 「ありがとうなんだねー! おにいさんはいのちのおんじんなんだねー! やさしいんだねー! わかるよおおおお!!」 へこへこ頭を下げ、ちぇんは少年が見えなくなるまで謝り倒した。もちろん本当は自分が何も悪いことなどしていないことくらいわかっているが、命には何ものも替え難い。 すっかり靴跡がついた帽子をしゅんと尻尾を垂れ下げて眺めたちぇんは、ため息をついた。 「さいなんだったんだねー。すっきりー! してからおねーさんにおぼうしをきれいきれいさんにしてもらうんだよー。わかるよー」 ちぇんはその後ゴミ捨て場に住む野良ゆ一家を襲撃し、子ゆっくりの前で親ゆっくりをなぶり殺しにしてからすっきりをし、ほくほくとした表情で住処である公園に向かった。 公園には、ちぇんの飼い主である三人の少女たちが既に集っていた。三人はいつでも一緒というわけではなく、ちぇんが放置される日も珍しくはなかったし世話を見る少女はその時次第でまちまち、気分次第である。 それでも三人一緒に会うのはゆっくりであるちぇんの記憶力では久しぶりという気がしたので、ちぇんは全速力で少女たちに駆け寄った。 「おねーさんたち! ゆっくりしていってね!」 「あ、ちぇん。お散歩してたの?」 「もう、おそいよー。ちぇんのためにポッキー残してたんだよー」 「あらちぇん。おぼうし、誰かに踏まれたの?」 眼鏡のズレを直しながら、友達Aがちぇんの帽子の異変に気づいた。 ちぇんはポッキーをちらつかせた少女に目もくれず、友達Aの膝に飛び乗った。すりすりと頬を少女の胸元に摺り寄せ、ゆっくりした笑顔を浮かべる。 「わかるよー。めがねのおねーさんはちぇんのしんぱいをしてくれたんだねー! でもちぇんはすりきずひとつだってつけてないよー!」 「ならいいけど。ちぇん、今晩はウチで泊まってきなさい。その間におぼうし洗濯しといてあげるから」 「わかるよー! めがねのおねーさんちはゆっくりできるんだよー!」 「え、わたしが洗うよ?」 「あんたのウチじゃちぇん匿えないでしょーが。帽子の無いゆっくりを外にほっぽり出すとかあんたちぇん死なせたいの?」 「う……」 「ごめんなさいんなんだねー。おねーさんのいえはねこさんがいてゆっくりできないんだよー。わかってねー」 ちぇんを拾った少女はむくれるが、そんなことも気にせずちぇんは眼鏡の友達Aに甘え続けた。 九ヶ月も世話になっていると、ゆっくりでも人間関係というものが把握できる。この少女三人組の中でもっとも力を持っているのは、眼鏡をかけた少女であった。 何かとちぇんの異変にいちはやく気づくところがあるように、彼女は観察力が鋭い。その力をもって彼女はグループを仕切ることが多かった。 それに気づいてから、ちぇんは重点的に眼鏡の少女に甘えるようになった。人間は全てちぇんより強いが、その中でも特に強い人間を味方につけておけばよりゆっくりできるとちぇんは考えているのである。 その日、ちぇんは眼鏡の少女の家に泊まった。もちろん家の中では眼鏡の少女の両親により強く従い、悪い感情を抱かせないよう細心の注意を払う。 翌日の朝登校する眼鏡の少女と共にちぇんは外へ出ると、いつものようにあちこち遊び歩くことにした。 「ゆふふ~ん♪ さっきのありすはなかなかだったんだね~。よすぎてれんぞくでごかいもすっきりー! しちゃったんだよー。ぜつりんでごめんねー」 性欲発散しきったちぇんは、運動の後の昼寝でもしようかとねぐらの公園へと向かった。ちぇんのねぐらはこの町に三箇所あるが、今日はたまたまちぇんを拾った少女のマンションの傍にある公園が位置的に近かったので、そちらを目指す。 すると、ちぇんのおうちである段ボール箱が入れられた滑り台ドームにもたれかかって、少女が携帯をいじっていた。 ちぇんに気づいた少女は携帯をポケットに仕舞って、駆け寄ってきた。 「待ってたよ、ちぇん!」 「おねーさん、ありがとうなんだねー」 「ねえちぇん。今日はちょっと二人でお話しない?」 「ひみつのおはなしなんだねー。わかるよー」 「んー。ま、そういうこと。じゃ、行こっか。自転車乗るから気をつけてね」 少女はちぇんを抱え、自転車の前籠に乗せた。子ゆの時分に乗せた時は中身を吐くほどの症状に見舞われたものだが、立派に成長したちぇんは既に小学生が漕ぐ自転車如きの速度で酔うほどやわではなくなっていた。 ちぇんを乗せているので少女は安全運転を心がけ、たっぷり半時間以上自転車を走らせた。 ゆっくりにしては広い行動範囲を誇るちぇんだが、さすがに自転車の足には敵わない。縄張りから遠く離れた見知らぬ土地にちぇんはなんだかわくわくした。 少女が自転車を止めたのは、住宅街の真ん中に作られた公園だった。 車の通りも少なく、また時間帯が時間帯だからなのか人通りもやはり少ない。これなら誰にも邪魔されることなく思う存分遊べそうだ。 「ふぅ。ここなら校区も違うし、鉢合わせすることはまずないよね」 「ゆー? ハチさんはゆっくりできないよー?」 「そのハチじゃないよ。ちぇん、源氏パイ食べる?」 「パイさんはゆっくりできるんだねー! わかるよー!」 ベンチに座った少女は、パイ菓子はむしゃむしゃ食べるちぇんを見つめていた。やがてちぇんがパイの最後のひとかけらをごくりと飲み下すと、少女はおもむろに口を開いた。 「ねぇちぇん。最近、わたしに冷たくない?」 「ゆにゃん? そんなことないよー?」 「そうかな……ねぇちぇん。この前、クラス替えしたって言ったじゃない。覚えてる?」 「わすれちゃったんだねー。ごめんなさいなんだねー」 「ま、ゆっくりだから仕方ないね、そのへんは」 少女は何か言おうとしたようだが、話題のとっかかりを失ったのか中々それ以上続けようとはしない。 新年度が始まり、新しいクラスに編入され、今までと違った人間関係が構築される。そんな人間の営みなどちぇんは全く興味が無かったし、教えられてもすぐに忘れた。 だが、あらゆる出来事は連続しており、無関係ではいられない。ちぇんの飼い主である少女たち三人は、それぞれ別のクラスに編入された。 今はまだ、放課後それぞれちぇんの世話をしていられる。だがそれも長くは続けられない。 薄々感づいていたことだが、今日の昼休み、ついに少女は眼鏡の友達からこの話を持ちかけられたのだ。 「ねえちぇん。あなたがめがねのおねーさんって呼んでるあの子なんだけど」 「わかるよー。きょうはめがねのおねーさんのおうちでゆっくりしたんだよー。とってもゆっくりできたんだよー」 「うん……あの子が、さ。正式に、ちぇんを飼おうかって言ってるの」 「ゆにゃん? わからないよー?」 それは純粋な疑問だった。事の経緯はちぇんのあずかり知らぬところで進んでおり、知るよしもなかった。 しかし、それは少女にとってわずかな希望となる言葉だった。 「そうだよね。いきなりちゃんとした飼いゆになれって言われても、難しいよね」 少女はこのところ、ずっとちぇんが自分より眼鏡の友達を優先していることに気づいていた。 ちぇんの飼い主は三人全員。そう決めたものの、拾ってきたのは自分であり、ちぇんがもっとも懐くべきであるのもやはり自分。少女はそうでない現実にままならないものを感じており、今回の件で少しばかり眼鏡の友達に反発してしまったのだ。 だが、理性的な彼女はちぇんの安全や将来を問うて、完全室内飼いと半野良状態の危険度の違いを説明し、理屈詰めで事を押し切ろうとした。 それがなんだか、ちぇんを取り上げられるような気がして、少女はやるせなかったのだ。 ――だがちぇんは、ゆっくりの物差しでしか、世の中を見られなかった。 「わかるよー。めがねのおねーさんがいっているならしかたないんだねー。ちぇんはめがねのおねーさんのかいゆっくりになるよー」 「……なんで?」 「わからないよー? めがねのおねーさんのいうことはきかなきゃいけないんだよー?」 「……ちぇんはわたしよりあの子の言う事を聞くの?」 「わからないよー? おねーさんもめがねのおねーさんのいうことをわがらな!?」 人間に媚を売って生き延びてきたちぇんだが、細やかな人間関係まで読む技術があるわけではなかった。今、ちぇんは完全に地雷を踏んだ。 少女はちぇんをはたいた自分の手を、信じられないものかのように見つめる。だが少女の中には歴然と、ちぇんに対する怒りがくすぶっていた。 同じ年齢。同じ学年。同じクラス。同じ性別。しかし人間関係の上下まで同じとは限らないし、それを第三者からはっきりと指摘されるのは面白いことではない。 ましてや、お前はあいつより下だから言うことを聞くべきと、自分よりはるかに劣る存在に言われて心穏やかでいられる人間は、大人でも少ない。 「……嫌い! ちぇんとなんか絶交! ひとりでおうちに帰りなさい!」 「わからないよおおおお!? どうしてそんなこというのおおおおお!?」 自転車のスタンドを蹴り上げ、少女はペダルを踏み込んだ。いくらゆっくりとしては素早いと言えど、所詮ゆっくり。激昂した少女の全速力に追いつけるはずもなく、ちぇんが公園から出る頃には少女は既にちぇんの視界の中にいなかった。 ちぇんはさすがに自分が失態を犯したことに気づいた。こんな見知らぬ場所に放置されて家に帰ることなどできるはずがない。少女がまだ自分の声の届く範囲にいることを願い、ちぇんは大声で泣き叫びながら、無我夢中で道路に飛び出した。 「ごめんなさいいいいいいい! おねーさん、ごめんなさいいいいい! なにがごめんなさいなのかわからないけど、ごめんなさいいいいいいいいい!!!」 電柱の陰に自転車を止めた少女はそんなちぇんの様子を伺っていた。 一瞬頭に血が昇ったものの、ペダルを一回転する頃にはやりすぎだと気づいたのだ。しかしのこのこと謝るのも嫌で、少女はちぇんがひとしきり反省してから迎えにいこうと考えた。 何が悪かったのかは理解していないようだが、少女はちぇんにそこまでは求めていなかった。ちぇんがあそこまで慌て泣き喚くことなど、拾ったあの時にしか見ていなかった。 そう、何があってもちぇんを拾ったのは自分なのだ。例え飼い主が変わろうと、その事実は変わることがない――少女はそう考えながら、自転車でちぇんを追った。 そして、ちぇんとの距離が三メートルほどまで縮まった時、少女の耳は側面からアスファルトを噛むタイヤとエンジンの駆動音を捉えた。 運悪く、そこは十字路だった。無我夢中で少女を追っている気になっているちぇんは車の接近に気づいていない。車のドライバーも気づいているか怪しい。一瞬で様々な要素が少女の頭の中に飛び込み、そして二種類の選択肢が脳裏に弾き出された。 つまり、ちぇんを見捨てるか助けるか。 ゆっくり如きのために危険に身を投げ打つ必要は無い。少女の頭の中で、そんな声が響いた。 だが、そもそもちぇんを危ない目に遭わせたの自分の責任だ。結局少女は、その後者の後ろめたさに体を突き動かされ、ペダルを強く踏み込んだ。 「ちぇん、危ない!」 そう叫んで声をかけると、ちぇんは確かに止まった。だが少女の見立てでは、恐らく車のタイヤはちぇんを轢殺するコースを描いていた。 少女は自転車のバランスもへったくれも捨てて、左足を振り抜いた。 「わがらなっ!?」 ちぇんは蹴っ飛ばされ、車の進行ルートから弾き出された。 そして、急ブレーキの音と、自転車のひしゃげる音がほぼ同時に鳴り響いた。 車のドライバーは、原型をとどめないほど歪んだ自転車のフレームと、道路に投げされた少女の姿を見て肝を冷やし、速攻で現場から逃げ出そうとした。 「おねえさあああああああん!? わからないよおおお! しっかりしてえええええ!!」 だが、アクセルを踏み抜こうとしたその瞬間、ちぇんが少女に向かって走った。その帽子に銅バッジを認めたドライバーは、ぞっとする可能性に気づく。 もし、このちぇんに車のナンバーを読まれていたら? ゆっくりはアラビア数字も読めない個体がほとんどだが、切迫した状況に混乱したドライバーはそんなことなど考えもしなかった。すぐさま車から出て、現場で殺す手間も惜しく喚き散らすちぇんを抱えて助手席に放り込み、アクセルを踏んで逃走する。 助手席で体勢を整えたちぇんは、脂汗をだらだら流しながら住宅地を疾走するドライバーを見上げた。そのゆっくりできない表情、少女を撥ねた車の持ち主であろうこと、そして自分がなぜ連れ去られたのかなどという色々な情報をちぇんはチョコ脳でなんとか考え、整理し、答えを導き出そうとした。 本能的に、ちぇんはドライバーが自分に殺意を向けていることを察していた。だから助かる道を必死で考えた。先ほどの少女とのやりとりの一件も踏まえて、迂闊な言葉一つが次の瞬間自分を殺すことになるとちぇんは悟っていた。 「お、おにいさん……わかるよー……ちぇんはなにもみていないんだねー」 苛々と信号が変わるのを待っていたドライバーは、ちぇんのその一言を聞いて、血走った目を向けた。 体の中のチョコレートが冷えるような恐怖をこらえ、ちぇんは強張った皮を歪ませて笑顔を形作る。 「おにいさんはなんにもしてないんだよー……ちぇんはゆっくりだから、おにいさんのかおなんてすぐわすれるんだよー……わかってねー……?」 ――細かいところは抜きにして、ちぇんはドライバーの考えをほぼ正確に読んだ。臆病で、小物で、後先考えない似通った性格の持ち主同士であるからこそかもしれない。 一刻も早く逃げたいのに、赤信号はいつまでたっても変わらない。後ろから今にもパトカーのサイレンが聞こえてきそうで、周囲の車が全部自分を見つめているようで、非難しているようで、ドライバーはがちがちと歯を鳴らした。 「ちぇんはあのおねーさんのこともなんにもしらないんだよー……? だからだれにもなんにもいわないんだよねー……? わかるよー……」 「黙れ!!」 囁くように、自分の機嫌を伺うように話しかけてくるちぇんの声がわずらわしくて、ドライバーは叫び散らした。 今、彼の脳裏は自分の将来はどうなるのかという思いでいっぱいだった。子供を轢いた。ましてや轢き逃げをしてしまった。今思えばあの子供は血を流していたか? すぐさま110番しておけば、罪は軽くなったはずでは? いや、今からでも遅くない。自首するべきだ。いや、だが逃げ切れるかもしれない。でも、どこへ逃げる? それにテレビでやっていた轢き逃げ追跡では自転車に付着した車の塗料や傷を照合して調べるなんてこともやっていたはずだ。バレる。どうやってもバレる。いやいや、あんなに手のこんだ捜査なんてテレビが付いていたからやっただけに決まっているさ。それにあの子供が死んでいなかったらそこまで警察は動きたがらないはずさ。逃げよう。やっぱり逃げよう。でもでも、バレたら? バレたら? バレたら? 「おにーさ――」 「くそったれ!!」 自分がなぜこんなうるさい糞饅頭を連れてきたのかすら忘れて、ドライバーは窓を開けるとちぇんを外へと放り投げた。とにかく、全てから彼は今逃げ出したかった。 道路に放り出されたちぇんは疾走し右往左往する車から逃げ出し、中央分離帯に登った。目の前を何度も何台も車が行き過ぎてゆくのをぞっとしない気持ちで見つめ、一命を取り留めた事実にちぇんは大きく息を吐いた。 「ちぇんはいきているんだねえええええ!! わかるよおおおおおお!!」 全く知らない土地に一人置かれ、排気ガスが充満し、触れれば一瞬でゆっくりなど跡形もなくバラバラにする車が高速移動しまくる死地ではあったが、張り詰めた車内に比べればずっとゆっくりできる環境だった。 ……ちぇんは、自分が犯した過ちに当然気づいていなかった。そんなものは後から状況を知った者だけが言えることで、事件の真っ只中にいた者はゆっくりであろうと人間であろうと把握していない事実だった。 ドライバーが考えた可能性通り、近所の住民が呼んだ救急車に連れられた少女は頭をアスファルトに強く打ったものの、脳損傷までには至らず、重傷ではあったが死ぬことは無かった。 ちぇんは、少女が生きている可能性に賭けてドライバーを説得し、警察に出頭させるべきだった。その過程で殺される可能性は高いものの、少女を殺したかもしれない事実に怯えきったドライバーは、過失ではなく自覚した行動で以って、あどけない声で人語を解す生き物を殺せたかどうか怪しいものであった。 全ては過ぎ去った選択肢であり、可能性であった。 生き残った喜びに打ち震えるちぇんは、まだ気づいていない。 今から生きる場所は、自分のことを脅威ともなんとも思っていないゆっくりしかいない土地だということ。 美味しい食事や安全な寝床、定期的に清浄してくれ、庇護してくれる存在が失われたということ。 何より、ただでさえ命の次に大事な帽子が、ドライバーに投げ捨てられた時に車の中に残ったままで、銅バッジが無くなったということも。 おかざりの欠けた、完全な野良ゆっくりとして生きていく未来を、その過酷さを、まだちぇんは理解していなかった。 「ふ~しょくのはな♪ かきわけてはえ~ば♪ きょ~しょくをはぐの~♪」 首と一緒に麦藁帽子を揺らしながらゆうかは花壇に如雨露を傾けていた。 初夏の強い日差しは容赦なく土壌から水分を干上がらせる。しかしその断水期間もまた必要な植物も決して少なくはなく、また梅雨の近いこの時期は水のやりすぎもそれはそれで問題ではあった。 しかしゆうかは、そのあたりの加減を本能的にわきまえていた。ゆうか種は希少種の割りになんら特殊な能力を持たないゆっくりではあるが、花の管理能力に関しては天性のセンスを生まれながらにして保持している。 そんなゆうかの後ろで肥料や土壌を詰めこんだ一抱えもあるほどの真新しいプランターが、どさりと庭の芝生に降ろされた。 玄関からそのプランターをえっちらおっちら運んできた少年は、肩でぜえぜえ息をしていた。 「あらおにいさん。ごくろうさま」 「くっそ暑いうえにくそ重いもん運ばせやがって……」 「つちさんをいれたりするのもおにいさんはてつだうのよ? それくらいでへばっていちゃあだめじゃない」 「ふざけんな! 胴付きだからってゆっくりのくせに人間様をこき使うなよ!」 額の汗を散らして上半身を跳ね上げたお兄さんはびしりとゆうかを指差す。そんな彼の後ろからお母さんとお父さんが揃ってやってきて、お兄さんの肩をとんとんと叩いた。 「まぁまぁ。ゆうかが庭を綺麗にしてくれるんだから、お前も手伝いくらいはしてあげなさい」 「そうよー。ゴールデンウィークって言ってもどうせ家でごろごろするだけなんだから、少しくらい体を動かしたってバチは当たらないわよ?」 「わかったよちくしょう! ゆうか、何をどうすりゃいいんだよ!」 「おにいさん、ゆっくりしてないわねぇ」 「主にお前のせいなんだよ!!」 「まぁおにいさんもおはなさんをそだてているうちに、すこしくらいはゆっくりできるようになるでしょう。それまでゆうかがおはなさんのついでにめんどうをみてあげなくもないわ」 「ああっ、上から目線が異様にムカつくっ! なんでこんなもん叔母さんは寄越したんだくそったれ!!」 胴付きに進化し、虐待お兄さんの手から逃げて四ヶ月。ゆうかは匿ってくれたおばさんの妹夫婦に預けられ、その家の飼いゆっくり、という形に落ち着いた。 家族構成は今この庭に集っているもので全員。お父さんにお母さんに息子のお兄さんが一人。そこにこの冬からゆうかが加わった。 ペットショップで売られていた時、飼いゆっくりはゆっくりしていないとゆうかは思っていた。自分のゆん生を例えどんな存在にであろうと握られ、左右されるのは面白くないからだ。だから自分をじろじろ珍しく見るだけの人間なんぞに飼われてたまるかと、ゆうかは全ての人間に刺々しく当たっていた。 だが虐待お兄さんに買われ、逃げ出し、今この家族と一緒に暮らしてゆうかはその考えを改めつつある。 「ゆうか、プランターの位置このあたりでいいか?」 「もうちょっとこっち」 「こそあど言葉で説明されるとわかりにくいんだよ」 「スプーンさんをもつおててのほうで」 「それは右っていうんだ。覚えておけ」 なぜなら、このお兄さんはよくゆうかを「ゆっくりのくせに」と罵倒するが、その実よくゆうかと遊んでくれる。思い通りにならないからと言って暴力は決して振るわないし、学校帰りにはゆうかの好物であるお菓子をおみやげに買ってくることもたくさんある。 お父さんはゆうかが庭を掃除し花を植えるたび褒めてくれ、お母さんはゆうかのためにお洋服や花の苗や種を一緒に選んで買ってくれる。 そこに共通するものは、ゆうかへの無償の愛情だった。 その愛情に報いること。それが飼いゆっくりというものなのだとゆうかは悟った。 ゆうかの認識はバッジ試験を取り仕切る日本ゆっくりペット協会では、まだ甘いと採点され、銅バッジから昇格していない。なぜなら協会の求めるゆっくりとは人間に牙を剥かない従順なゆっくりを基準としているからである。 一方ゆうかは、注がれた愛情にさえ裏切らないように心がければ、自分は人間と同格の存在だと心底の部分で未だに信じきっているからだ。そこを試験では見抜かれ、銀バッジを取得することすらできていない。 だが、ゆうかはこの家族を悲しませる行為をできはしない。それは絆によって縛りつけられる内なる規律だ。思い込みの激しい生き物であるゆっくりにとって、自分の内から生じる『ゆっくりできない行為』は外から押しつけられた規律よりはるかに強い拘束力を発揮する。 プランターに土を入れ終えたお兄さんは、額の汗をぬぐって一息ついた。 「ふぅ。ざっとこんなもんか。じゃ、俺は自分の部屋でポケモンやってるから」 「あ、ダメよおにいさん。きょうはあそこのこうえんのかだんさんのおせわもするってやくそくしてたじゃない」 「一人で行けよ。面倒くさい」 「コラッ、ゆうかを一人で出歩かせちゃダメだって言ってるでしょ? 胴付きは価値があるからって攫ったりする悪い人が世の中にはいるんだから」 「わーってるよもう面倒くせー。ゆうか、出かける時になったらちゃんと呼べよー」 お母さんに注意され、お兄さんは不機嫌そうに家の中に入っていった。 ゆうかはそんな風景を片っぽだけ残った赤い瞳で見つめると、苗を植える作業に入った。 まだ、ゆうかがこの家に来て月日は浅い。だからゆうかが植えた花々が芽吹き蕾を咲かせる日は遠い。 しかしゆうかにはその日をゆっくり待ち侘びるだけの幸せが、もう既にここにあった。 ちぇんは、ずりずりと地面を這って歩いた。その速度は赤ゆのずーりずり移動とさほど変わらず、亀のように遅い。そのくせわずか一センチ移動しただけで体中がずきずきと痛み、命の素が流れ出し行くのを実感する。 早朝の歩道を照らす朝焼けの日差しは、刷毛で乱暴に塗られたかのようなチョコレートの跡を照らした。それは遥か向こうの曲がり角からちぇん自身の足下まで続いており、今なお距離を伸ばしている最中である。 「わか……らないよー……どうしてちぇんが……こんなことになってるんだよー……ちぇんは……ゆっくりしてるのに……どうしてにんげんさんも……ゆっくりも……わからないよぉ……」 ぶつぶつと恨み言をうわ言として呟いている。 ちぇんの瞳は既にとろんとして焦点が進行方向と微妙に合っていない。チョコを漏らしすぎて思考能力低下を招いているのだ。 それでもちぇんは、なぜこんなことになったのか思い返した。色々な原因があったように感じたが、やはりケチの付け始めはあの事故からだった。 ちぇんはあれから、どうにかして家に帰ろうと努力した。最初の最初は親切そうな人間さんの前に飛び出し 『わかるよー! おねーさんはゆっくりしてるんだねー! だからちぇんをおうちにかえしてね!』 と、堂々とお願いした。しかしそのおねーさんは怪訝な表情をして、ちぇんにたずねたのだ。 『帽子もバッジもないのにどうやって? あんた捨てゆでしょ?』 ちぇんは、そこで初めて何を犠牲に払ってでも守り通さねばならないおぼうしとバッジが無くなったことに気づいた。 ちぇんはめげなかった。眼鏡のおねーさんは、ちぇんがもし行方不明になった時のために秘策を授けていたのである。 『わからないよー! ちぇんはすてゆじゃないんだねー! いまからいう《ばんごー》さんに《おでんわ》さんしてね!』 そして、ちぇんは意味も知らない丸覚えしただけの単語を叫んだ。それは眼鏡の少女の家に繋がる電話番号だった。 おねーさんはさらに怪訝な表情をした。 『あんた、それ番号言っているつもり? どっちかというと呪文に聞こえるんだけど』 ちぇんには結局、おねーさんの言葉の意味が現在でも理解できなかった。 眼鏡の少女はゆっくりの記憶能力の低さを甘く見すぎており、また非常手段は定期的な監査が必要であることも知らなかった。ちぇんは番号を音でしか覚えておらず、月日の経過でその正確な音すら忘れた。 やはり捨てゆかと考えたらしいおねえさんは、ちぇんを見捨てて去って行こうとした。慌ててちぇんは思考を切り替え、おねえさんの踝に縋りついた。 『わかるよー! おねーさんはゆっくりしているんだねー! だからちぇんをかいゆっくりにしてねー! ごはんさんとねるところとバッジさんさえくれればもんくはいわないんだよー! ちぇんはにひりすとさんなんだねー! わかるよー!』 『そんな半野良近所迷惑になるだけでしょうが。保健所連れていくのも面倒だから見逃してあげる。とっとと離れないと潰すわよ?』 殺意ですらない、害虫を潰すのは当然と言わんばかりの、ちぇんに全く価値を見出していないその凍れる瞳に気圧され、ちぇんは逃げ出した。 それからちぇんは当てずっぽうで歩き通し、家を目指した。ちょっとでも見覚えがあるような気のする風景があれば、そこで飼い主のおねーさんたちを呼んだ。すぐにうるさいと人間にものを投げられた。 腹を空かせて疲れてしまったので、弱そうな野良ゆを襲い、すっきりー! してから食い殺した。満腹になって寝ていると、食い殺された死体の番がちぇんに襲い掛かってきて慌てて逃げ出した。 警戒心を強めたちぇんは、より弱くより仲間のいなさそうな野良ゆを狙って襲うことにした。しかしそんな都合の良い獲物がそうそう転がっているわけもなく、ゆっくりの死臭を洗い流しもしないまま徘徊する帽子無しのちぇんを見て、地元の野良ゆが捨て置くはずもなかった。 ちぇんは追われた。野良ゆっくりに、人間に追われた。逃げ込んだ臭くてじめじめしてゆっくりできない下水溝のほとりで、同じように傷だらけで帽子を無くしたまりさを見つけた。 ちぇんは枝を口に咥えて襲ってきたまりさを説き伏せた。自分を殺してはいけないと言い、なぜだと問われれば殺せば損になると言い、なぜだと問われれば自分はまりさの味方だからだと答えた。 口から次々に出まかせが出て、ちぇんはついに『溜まっている』と言ったまりさにまむまむを差し出してすっきりした。産まれた実ゆと茎を食べるまりさのたくましさやすっきりのテクニックの上手さ、そして強さを褒めちぎりに褒め殺した。 いい気になったまりさの奴隷になったちぇんは、二匹で役割分担して野良ゆを襲おうと作戦を立てた。 それはお家でゆっくりしている野良ゆをちぇんが囮になっておびき出し、空っぽもしくは留守番している弱いゆっくりしかいなくなったお家をまりさが襲撃して、落ち合う場所で戦利品を山分けしようという作戦だった。 それはまことに上手くいった作戦だった。だが何度も繰り返すうちに野良ゆたちは警戒を高め、ちぇんたちは逆に罠に嵌められた。 昨夜襲ったお家は、一見弱そうな一家だった。いつもの手はずでちぇんが夫と思われるまりさを挑発しておびき出し、そこを相棒であるまりさが襲撃した。 だがお家の周りに隠れていた野良ゆの集団が、一斉にまりさに襲いかかった。 ちぇんに助けてと叫ぶまりさを当然助けるわけもなく、ひたすらちぇんは逃げた。 逃げた先で待ち構えていた集団に襲われ、傷を負った。それでもとにかく逃げに逃げ、ついに振り切った――と思われるのが、今現在だ。 「……まりさの……やくたたず……ちぇんを……たすけろよぉ……わかれよぉ……」 もはやちぇんは、昨夜と比べてその大きさが半分ほどにまで萎んでいた。余った皮がだぶついており、既に一ミリ足りとて前進できていないことにちぇんは気づいていない。 朝陽が昇る。その朝陽の向こうから、小さな人間のシルエットが浮かんできた。 もはや人間から逃げ切れる体力は残っていない。死の戦慄にちぇんは震え、その人間の細い足がちぇんの視界から太陽を完全に隠した。 眩しすぎる光が抑えられ、視界が晴れてくる。足を止めた人間を、ちぇんは見上げた。 「……おね……さん?」 ちぇんを拾った少女が、どういうことか目の前に立っていた。 体の奥から湧き上がってくる喜びを声にして、ちぇんは少女に話しかけた。 「おねーさん……! ちぇんだよー……っ。おねーさんがかってた……ちぇんだよー! わかるよねー……? おねーさんにあいたくて……かえってきたんだよぉ……?」 当てずっぽうで向かった先が、本当にあの町に続いていたのだ。 今までの苦労をちぇんは少女に話そうと思った。いや、今は何より命を助けてもらうのが先だ。おねーさんのことだ、今すぐオレンジジュースを初めて会った時のように買ってくれるに違いない。 「嫌だよ」 少女は冷たい目で言い捨てた。その声にはわずかながら怒りすら含まれている。 「わからない……よぉ……? おねーさんは……ちぇんをたすけなきゃ……いけないんだよー……? わかれよー……! 『かいぬし』さんなんだろぉー……っ!」 「そんなことばっか言って、わたしのちぇんを汚さないでよ」 「にゃ……?」 退院した少女はちぇんがいなくなったのを嘆き悲しんだ。自分の過失のせいで野良にさせてしまったと親や友達に零したが、眼鏡の少女がそれは違うとはっきりと言った。 彼女はちぇんが帰ってくる方法を授けていた。しかしちぇんを保護したという電話はいっこうにかかってこない。だから眼鏡の少女はきっとちぇんは轢き逃げ犯に殺されてしまったのだろうと、少女を慰めた。 本当は、眼鏡の少女も自分の授けた方法が欠陥だったのではないかと察していた。しかし事の真実よりも友達の精神安定の方が大切だった。 ちぇんは、つまり眼鏡の少女に見捨てられたのだ。 ただ、それだけなら何も問題はなかったかもしれない。 「あんたら野良ちぇんって、だいっきらい。わたしがちぇんを可愛がっていたからって、あのちぇんがいなくなったからって、ちぇんの真似して飼ってもらおうなんてしないで」 ――暴君がいなくなった町で、その空席をかっさらおうとする野良ちぇんが続出したのだ。 少女は眼鏡の友人から聞かされた言葉を信じている。だからバッジ無しの野良ちぇんがどれだけ言葉を重ねても耳を貸したりはしない。 ましてや、帽子まで失い傷だらけの泥だらけになって、体積まで縮んだちぇんを識別しろと言っても、どだい無理な話だった。 ちぇんは、何かの間違いだと思って、精一杯ゆっくりできる声で少女に話しかけた。 「わか……るよぉ? おねーさんは……おこってるんだねー……? ちぇんがわすれるっていったから……」 「黙りなさいよ」 「わぎゃっ!?」 汚いものは触りたくないと言わんばかりに、少女は脇に落ちていた小石を拾い、ちぇんの口に投げ込んだ。 「わかるわかるわかるわかるって、そればっか。あんたらは何もわかっちゃいない。わたしがどれだけ痛かったか、どれだけリハビリがんばったか、ちぇんがいなくなってどれだけ辛いか何一つわかってないくせに、わかるわかるわかる! 媚を売ってこないで! 近寄らないで! 気持ち悪い!」 吐き捨てると、少女はそのままちぇんを置いて歩き去って行く。 ちぇんは口が小石で傷つけられて動かせなかった。だから目だけで少女を追った。 少女は二度と振り返らなかった。 「ぎにゃ! わぎゃ! あがあにゃああ!」 言葉にならない声を漏らす。そのたびチョコレートが飛沫となって口から漏れた。 蝿の羽音が聞こえた。 皮を這う虫の足のおぞましい感触にちぇんは絶叫を上げた。 誰もちぇんを助けなかった。 その日の午後、蝿がたかっているちぇんの死体を近所の住民がゴミ袋に入れて捨てた。 anko2009 anko2010 足りないらんと足りすぎるちぇん(前後) anko2227 anko2228 保母らん(前後) anko2295 ブリーダーお兄さんの一日 anko2356 anko2357 浮気(前後) anko2402 飛び魚のアーチをくぐって ゆうかが口ずさんでいた歌→ http //www.youtube.com/watch?v=QATidIEujhc 今回はあとがきありです。興味無い人はブラウザバックして、読みたい人は無間の鐘でも聞きながらダウンスクロールしてください。 この先、二千年自由落下 ↓ 本スレでは前回のタイトルについてやや談義があったようです。確かにエアロスミスのNINE LIVESの動画リンク貼るくらいならこっちの方がよほど貼るべきだ。 ついでなので、感想返信にかこつけた諸々など。 感想スレ 347 それにしても、ちぇんらんだけでここまで連続してアイデア出るってすごいですね。 むしろみんなよくれいむとまりさだけであんなに出てくるもんだと思います。 仙狐思念の攻略方法を聞いたら夢と現の呪って難しいよなって返すくらい微妙に話ズレていることは自覚しています。 私の場合、読んだり見たりするうえではどの種がどんな目に合おうが楽しめますが、他種虐待とちぇんらん虐待を比べたらミステリアスビームの稼ぎ量に対するテストスレイブとビッグクランチの稼ぎ量の比率に匹敵するくらいどうでもよくなります。 でもゆ虐作品で一番好きなのはばっちゃの野良一家。読み返すと泣くので読み返せない。 感想スレ 349 作者さん、らんに恨みでもあんのかw 感想スレ 350 いやいや、このちぇんがらんを恨んでるってだけだろう。 作者さんはすっごい大好きだと思うぞw どちらかというと大嫌いです。でもゆ虐の大嫌いって必然的にひいきして虐待することだから大好きと同義語じゃん?って思います。んほおおおおおつんでれなのねぇぇぇぇ。 原作の八雲藍と橙はどうでもいいというかむしろ永夜抄であれだけ藍様こき使ってお世話になっておきながら嫌いとか都合良すぎるじゃんと思いますが、二次の藍&橙が大嫌いです。その反動というか風刺というかガス抜きをゆ虐でやってるつもりです。 ちぇんについては今回の作品が私が抱いているちぇん種のイメージの表現だと思っていただければ。 れいむやまりさは酷い目に合わせるのに、ちぇん愛でがオチというSS多いですよね。アレのアンチテーゼのつもりです。 そもそもちぇんってゆ虐の中でやや特殊な発展の仕方をしたと思うんです。基本種たちがマイナス要素を付加されてゆく中、ちぇんだけはむしろプラス要素を付加されたような。ちぇん種はゆ虐の中で愛でポジション担当するために生まれたんじゃないかと見ています。そのポジション最強格はゆうかにゃんですが、ちぇんは基本種でありながら愛でを得られた。これが大きい。 でもそのポジションの説得力の高さを訴えるために、なんかちぇんって人間に対して媚売ってね?必然的にゆっくりのくせにゆっくり見下してね?聞き分けがよすぎて気持ち悪い、という印象を色んなSSから感じてきたので、そこらへんの不満圧縮が今回のテーマかと認識していただければ。 ここらへん、私が猫飼っているのも大きいと思います。猫って人間に対してはあまり媚を売らない動物なんです。甘えてきたとしてもちぇん語で訳すと「ちぇんはかわいいんだよー。なでなきゃなんないんだよー。わかれよー」っつー態度。でも猫は喋らないし人間のルールが通用しないし可愛いから許す。ちぇんは猫の可愛いとこだけ取って、都合が良いとこだけ抽出した不自然さを覚えます。 ってーも、これも二次の橙が正にそういうキャラクター付けされている怒りから来ているのが最大級の理由なのですが。原作の橙はあんなに気まぐれで奔放で憑きたてのほっかほかだというのに…… 最後に、名前について。 10作品溜まるまでになんかテキトーな呼び名ついたらそれでいいじゃん?と思ってます。そもそも10作品行くのかどうかわからないし。とりあえずスレで呼ばれた「式神あき(仮)」がなるほどと思ったので候補の一つに入れたいかと。名前募集中!! あとゆ虐SSはしばらく休みます。東方のSSこんぺ大会の執筆期間に入ったので、しばらくはそっちに専念します。 挿絵:にとりあき