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3000 アジアなベッド 3004 アジアなタンス 3008 アジアなクロゼット 300C アジアなベンチ 3010 アジアなイス 3014 アジアなテーブル 3018 アジアなミニテーブル 301C アジアなランプ 3020 アジアなスクリーン 3024 アジアなバンダヂ 3028 カントリーなベッド 302C カントリーなタンス 3030 カントリークロゼット 3034 カントリーなソファL 3038 カントリーなソファS 303C カントリーなイス 3040 カントリーなテーブル 3044 カントリーなつくえ 3048 カントリーなほんだな 304C カントリーなたな 3050 シックなベッド 3054 シックなタンス 3058 シックなクロゼット 305C シックなイス 3060 シックなソファ 3064 シックなテーブル 3068 シックなほんだな 306C シックなローテーブル 3070 シックなビューロ 3074 シックなふりこどけい 3078 ロイヤルなベッド 307C ロイヤルなタンス 3080 ロイヤルなクロゼット 3084 ロイヤルなイス 3088 ロイヤルなソファ 308C ロイヤルなテーブル 3090 ロイヤルなランプ 3094 ロイヤルなとけい 3098 ロイヤルなほんだな 309C ロイヤルなドレッサー 30A0 あおいベッド 30A4 あおいタンス 30A8 あおいクロゼット 30AC あおいイス 30B0 あおいベンチ 30B4 あおいテーブル 30B8 あおいほんだな 30BC あおいキャビネット 30C0 あおいとけい 30C4 あおいチェスト 30C8 リゾートなベッド 30CC リゾートなタンス 30D0 リゾートなクロゼット 30D4 リゾートなイス 30D8 リゾートなソファ 30DC リゾートなテーブル 30E0 リゾートなランプ 30E4 リゾートなラック 30E8 リゾートなドレッサー 30EC リゾートなスクリーン 30F0 みどりのベッド 30F4 みどりのタンス 30F8 みどりのクロゼット 30FC みどりのイス 3100 みどりのながイス 3104 みどりのテーブル 3108 みどりのデスク 310C みどりのランプ 3110 みどりのカウンター 3114 みどりのチェスト 3118 ログベッド 311C ログチェスト 3120 ログクロゼット 3124 ログチェア 3128 ログソファ 312C ログソファL 3130 ログテーブル 3134 ログソファテーブル 3138 ログほんだな 313C ログはとどけい 3140 モノクロベッド 3144 モノクロタンス 3148 モノクロクロゼット 314C モノクロチェア 3150 モノクロソファL 3154 モノクロテーブル 3158 モノクロデスク 315C モノクロローテーブル 3160 モノクロボード 3164 モノクロランプ 3168 カラフルなベッド 316C カラフルなタンス 3170 カラフルなクロゼット 3174 カラフルなソファ 3178 カラフルなイス 317C カラフルなテーブル 3180 カラフルなビューロ 3184 カラフルなほんだな 3188 カラフルなとけい 318C カラフルなコンポ 3190 ラブリーベッド 3194 ラブリータンス 3198 ラブリークロゼット 319C ラブリーチェア 31A0 ラブリーソファ 31A4 ラブリーテーブル 31A8 ラブリーローテーブル 31AC ラブリードレッサー 31B0 ラブリーキッチン 31B4 ラブリースタンド 31B8 ロボベッド 31BC ロボタンス 31C0 ロボクロゼット 31C4 ロボソファ 31C8 ロボチェア 31CC ロボテーブル 31D0 ロボコンポ 31D4 ロボテレビ 31D8 ロボクロック 31DC ロボランプ 31E0 ゆきだるまベッド 31E4 ゆきだるまタンス 31E8 ゆきだるまクロゼット 31EC ゆきだるまチェア 31F0 ゆきだるまソファ 31F4 ゆきだるまテーブル 31F8 ゆきだるまれいぞうこ 31FC ゆきだるまテレビ 3200 ゆきだるまクロック 3204 ゆきだるまランプ 3208 きのこのベッド 320C きのこのタンス 3210 きのこクロゼット 3214 マッシュルームチェア 3218 さるのこしかけ 321C きのこのテーブル 3220 きのこサイドテーブル 3224 きのこのランプ 3228 とうちゅうランプ 322C きのこテレビ
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ねこしか(id hosicawa) 2012年7月22日現在:高校2年(16) 初代UMGの優勝者の一人。 冷静沈着で、慌てることはほとんど見かけない。 しかし夢幻開催中に主催者たちとのトラブルにより、ゲームから姿を消した。 それ以降ゲームには1度も参加していない。 各ゲームでの成績 ゲーム名 成績 備考 UMG1 優勝 UMG2 決勝進出 UMG3 1回戦 UMG4 2回戦進出 UMG5 未参加 TRICKERGAME UMG復刻版 ADG LDG 夢幻1 夢幻2 Betrayer s AWG SDG1 SDG2 SDG3 SDG4 BLG
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「全く。往来が激しい場所で人の悪口なんてよく言えるわね。腹が立つよりも先に呆れた」 「い、いやあ、これはこれは委員長。どうしたんですか。いつもはもう教室に着いておられる頃だと思うのですけど」 妙な敬語の隆二をジト目で見る委員長。 「……そういう態度を取るなら、こちらもそれなりに対応するけど、その方がいいなら続けなさい」 「うひい!」 隆二の方が5センチくらいは高いはずなのに、なんだか背負っているものが鼠と龍くらい違うように隆二は震え上がっていた。 これは隆二の気が特別弱いわけではなく、うちのクラスの男子ほとんどがこう。その原因はそれぞれ違う。委員長の目つきが見る人によってはそれなりにキツくて見えるのが原因だったり、喋り方が断定的であるのが苦手だったり。 とにもかくにも隆二にとっては唯一の天敵と言っていいと思う。 「向井君」 「は、はい」 唐突に名前を呼ばれて、僕も思わず敬語になってしまう。 「ちょっと来て」 「……はい」 少し離れた路地へ一足先に入った委員長は上半身だけ通路に戻し、ゆるりと眉を上げてじっと俺を見る。どう見てもその様子は「早く来い」と急かしている。 「頑張って来い。骨は拾ってやる」 既に念じるようにして目を瞑った隆二。 「縁起の悪いことを言わないでよ」 お小言はある程度覚悟しているけど、それでもちょっと行きづらい。かといって行かなければどうなるかは想像に難くない。 前門の虎後門の狼。 意を決して委員長が呼んだ路地へ赴くと、腕を組み片足に体重を掛けて委員長が待っていた。 「あの……さっきのは……」 「時間が無いから手っ取り早く用を済ませたいの。いいかしら」 「う、うん」 少しずれた眼鏡を右手人差し指で元の位置に戻しつつ即座に委員長が言う。 「家の鍵、貸してくれないかしら」 「家の、鍵?」 「数学の教科書忘れて取りに戻ったんだけど、鍵が開いてなくて。さっき見つけてようやく追いついたの」 溜息をついた委員長の姿を見て、僕もつられて溜息をつく。今からこってり絞られるのかなと思ってたから、この溜息は安堵の溜息。 たまに鍵を植木鉢の下とか、郵便受けの中とかに置いているのをドラマとか本で見るけど、いつそれが見られて勝手に家へ侵入されるか分からないから、ああいう共有の仕方はお母さんには許せないそうだ。だから家族1本ずつ鍵を持つようにして、それ以外のスペアキーは無い。 「そ、そうだね。良かった、今からお小言を貰うのかと思ってた」 「言ったでしょう。時間が無いの。お望みとあれば帰ってからゆっくりするけど」 「遠慮したいかな……あはは」 「そうね。あたしもそんな無駄なことに時間を割きたくないわ。それに……」 一旦目を閉じてから僕から目を逸らし、 「もうこれ以上、そういうキャラとして見られるのは御免だわ」 と再び溜息。ごめん、委員長。「そんなキャラに思われてないよ」と否定できない。 儚げな印象すらも儚く、委員長は再び良く通る声で尋ねた。 「とにかく家の鍵、借りれるかしら」 「うん、いいよ」 昨日委員長が僕に数学を教えてくれたとき、忘れていったのかも。 家の鍵だけ取り外そうとして、キーホルダーからなかなか抜けなかったからそのまま委員長に渡す。 「普段はちゃんと入れたか確認するのに、昨日に限って忘れたの。……なんて言い訳してる時点でまだまだね」 「夜遅くまで付き合わせちゃったから。ごめんね」 「悪いと思うのならそこを謝まる前にもっと授業に集中しなさい」 「そうするよ」 鍵を受け取った委員長はそれを握り締めて、 「放課後……帰り際に渡せばいい?」 と尋ねる。 「そうしてもらえると助かるかな」 皆が残っているうちに、学校内で堂々と渡されると委員長がうちに居ることがバレちゃうかもしれないから、なるべく人が居ないときの方がいいんじゃないかなと思う。 「今日は多分クラス委員の仕事は無いはずだからすぐに帰れると思うわ。そうしたら昨日の続きを」 「続きって……勉強?」 「私があなたの家に居ることで、それ以外に役立つことがあるのかしら」 昨日のことを思い出したのかは分からないけど、また溜息をついた。平均すると一言ごとに溜息を吐いているんじゃないかな。 「……夜じゃ駄目かな」 「私、普段は11時に寝るようにしてるの」 「そうなんだ」 昨日は朝の2時くらいまでやってたから、普段よりも3時間くらいは遅かったってことを暗に批難してるのかな、やっぱり。 「遅く始めたら遅く始めた分、私の睡眠時間が遅くなるから」 「分かった。帰ったらすぐで」 「理解が早くて助かるわ」 学校から帰ってすぐに勉強なんて今までやったことないけど、委員長がせっかくやってくれると言うのだから僕も見習わなきゃ。 鍵を受け取った委員長はくるりと踵を返し、通学路の方へ戻らずにそのまま路地を進もうとする。 「あれ、委員長。そっちからだと遠回りになっちゃうよ」 背中しか見えていなかったけど溜息を吐いたのは聞こえた。 「……あなたはすぐに忘れるのね。私が今、あなたの家に居候しているってこと。多くの生徒の通学路である、そこの道を逆走してそのままあなたの家に向かったらどうなる?」 「あ、そっか」 なるべく他の生徒に見つからないように、タイミングを見計らって。これが鉄則。 「もう1つ、委員長」 「何? もうかなり走らないと間に合わないんだけど」 腕時計に目を落とす委員長。 「もしかすると昨日僕の部屋に教科書置き忘れてるかもしれないから、自分の部屋に無かったら僕の部屋も探してみて」 「ん」 小さく頷いて委員長は駆け出し、あっという間に路地を通り過ぎて曲がっていった。確か委員長って帰宅部だった気がするけど、足速いなあ。昔は陸上部とかやってたのかもしれない。今度時間があったら聞いてみようかな。 通学路まで戻ると、隆二が神妙な顔つきで僕を見ていた。 「だ、大丈夫だったか誠一」 「うん、何とか」 「な、何とか……だと……! 何をされたんだ誠一! まさか改造手術をこの時間だけで!? おのれ怪人委員長!」 「大丈夫大丈夫。何もされていないから。後、怪人委員長ってなんかすごく変だよ」 いい加減に返事をしたせいで、奇妙なことを言い出したから慌てて言い直す。 「いや、あれは危ない。実はあれはだな……」 隆二の特撮的想像設定を聞きながら、僕らはゆっくり学校を目指した。
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「玄関入ってすぐ左手にあるここがお風呂と洗面所で、入らずに真っ直ぐ行くとトイレだよ」 「お風呂、結構広い上に綺麗なのね」 浴室を見渡してから委員長が呟く。 「お母さんが拘ってて、この前改築したんだ。改築してすぐにお父さんについていっちゃったからほとんどまだ使ってないんだけど」 単身赴任も急な話だったから、仕方が無いかな。 「廊下を進んだ先がお父さんとお母さんの部屋。さっきのリビングの隣になるね」 「あら、ご両親の部屋は1階?」 「そうだよ。最初は2階だったんだけど、お父さん帰ってくるのがいつも遅いし、階段の音が響くだろうからっていう理由と、単身赴任とかも多いから 帰ってきてから2階まで上がるの疲れるだろうからっていう理由で2階の和室から1階のこの部屋に移動したんだ。僕はあまり気にならないんだけど、お父さん はそういうところ気にする人だから」 細かいところまで良く気づいてほとんど怒らないお父さんだからか、性格が対極に近いお母さんと上手くやってるみたい。なんだかんだでああやって単身赴任に付いていっちゃう辺りなんかを見ると、いい夫婦なんだなと思う。息子としては置いていかれるのが複雑な気分だけど。 「ってここまで話す必要は無かったかな」 「聞いてて面白いから構わないわよ」 「そういえばお母さんには会ったことがあるの?」 素っ気無く委員長は答えた。 「無いわ。私に決めたのは学校長と学校の教師だから。でも多分連絡は行ってるはずね」 「なら突然帰ってきても何も言わないかな」 僕がそう言うと怪訝そうな顔で委員長は尋ねた。 「突然……って帰ってくるときに連絡してこないの?」 「電話してくるときもあるけど、基本的にお母さんが運転してる間、お父さんは寝てるって言ってたから」 「でも運転前に電話1本くらい入れてくるものだと思うわ」 「そういうものなのかな? 帰ってくるのが0時とかになったりするからかもしれないけど」 良く考えると今まで帰る前に連絡を入れてきたことは無かったと思う。普段、0時くらいならまだ起きてるから、連絡してくれれば帰ってくる時間を見計らってご飯作るんだけど。 「……まあ本人が構わないならいいのだけど」 階段を上がって2階へ案内する。 「目の前にある扉はトイレの扉。向かって右手側は昔お父さんとお母さんが使ってた和室で、今は別に誰の部屋って訳でもないかな。逆側の小さな部屋は物置になってるよ」 1階も2階も階段周りを廊下がぐるっと1周するようになっているため、今説明した和室側を先に回る。 「和室の隣は空き部屋。向かい側にあるのが僕の部屋で、その隣も空き部屋なんだ。とはいってもあっちはちょっと倉庫みたいになってるんだけどね。 荷物はそんなに多くないからいざとなれば荷物の移動はすぐに済むと思う。それでこの空き部屋のどっちかを委員長に使ってもらおうと思うんだけど……」 「どっちでも構わないわ。でもあなたの部屋の隣よりは向かいの方が静かに使えるだろうし、いちいち荷物を運ぶのも面倒だからこっちを使わせてもらおうかしら」 「うん、分かった」 委員長が使いたいと言った部屋の扉を開ける。中は窓があるだけで他には何も無し。委員長が泊まりに来るとは思っていなかったから、空き部屋は月に1階くらいしか掃除はしていないため少し埃っぽい。 「待っててくれれば掃除するよ」 「箒と塵取り、雑巾くらいがあればいいわ。何でもかんでもあなたにやってもらってたら、どっちが面倒見られてるか分からなくなるし」 「了解」 「ああ、後!」 物置に行こうとした僕を引き止める委員長。 「何?」 「テーブルとか無いかしら。勉強机代わりになるもの」 「んーと、もう1つの空き部屋の方にあるかもしれないからちょっと中を見ておいてくれる?」 「勝手に開けていいの?」 「見られて困るようなものは置いてないからね」 言って、僕は物置の扉を開ける。掃除機や大まかな掃除道具はリビングの一角にも置いてあるけど、物置にできる部屋が2階にしかなかったからそれ以外のほとんどが2階に置いてある。 必要な掃除道具を見繕って委員長の部屋に置いてから、先に行ってもらうように行った僕の部屋の隣にある空き部屋へ入る。 「どう? 見つかった?」 「これは使っていいの?」 委員長の人差し指の先には足の畳めない木製の古びた机があった。大きさは半畳より少し大きいくらいの机。 「使ってもいいけど、それ足が畳めないから寝る場所考えると不便だと思うよ。こっちとかはまだ新しいと思う」 「これでいいわ。使わないときは立て掛けておけばいいし」 僕が指差した割と新しい金属製の足の付いた机に首を振って、1人で机を持ち上げようとする。 「重……っ」 「さすがにそれを1人で持ち上げるのは無理だよ。手伝う」 「お願い……。ここまで重いとは思ってなかったわ」 2人で部屋まで机を運び、その後で今度は来客者用の布団も同じ部屋から運び出す。 「まだ時間があるし、しばらく窓から外に干しておいた方がいいかも」 「そうね」 頷いて委員長は僕から布団を受け取って窓の外へ半分ほど出した。
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「起きなさい!」 「うわあ!」 後から思い出すと、凄く情けない声だと思ったけど、せっかくゆっくり休んでたところを唐突に起こされたら、きっと誰でも多少はこんな声が出てしまうと思う。だから別にこれは僕のせいじゃないんだ。 眠い目を擦りながら僕は昨日干したばかりの布団ごと上半身を起こすと、肩を激しく揺さぶられて一瞬で意識が戻る。 で、鼻先が触れ合うくらいのところに委員長の顔があって、僕はまた「あうあ!」って変な声を出してしまう。 最近思ったんだけど、委員長って冷静なときはもちろん凄く冷静だけど、何か思い込んだりやらなきゃいけないことを見つけたらのめり込んで周りが見えなくなるタイプなのかも。後、あまり僕を男として認識してない気がする。もうちょっと考えて欲しいかな、いろいろと。 ふんわりと、優しい香りがして再び少しだけ呆けていたら、 「向井君!」 「は、はは、はい、御免なさい、御免なさい!」 もう何が何だか分からなくなって、とりあえず謝ってみる。何も悪いことをした覚えはないけど、こんなに掴みかかってくるくらいなんだから、きっと何かしたんだ。 「何で謝ってるの」 「えっと…………なんでだろ」 素直に言うと、むしろ僕の方が「何で?」って聞きたい。「何でそんなに慌ててるの?」って。 僕の、自分で言うのもなんだけど、奇行のお陰か、委員長も一旦は落ち着きを取り戻したようだったけど、それでもまだヤジロベエみたいにふらふら と落ち着きが行ったり来たりしているみたい。肩を怒らせて僕を押し倒す勢いでベッドに膝を立ててきた。っていうか実際、僕は再びベッドで仰向けにならざる を得ないくらいに、委員長は僕に接近していた。 何というか、ここだけ見ると見る人によっては酷く誤解されそう。特に話をややこしくする同居者がこんなタイミングで現れたら―― 「あら。お楽しみタイムだったのかしら。せっかくのところ、お邪魔して悪かったわ。後は若い者に任せて、オバサンは退散……ふふふ」 ――これはきっと「ですよねー」って言うタイミングなのかも。住倉さんならやると思ってた。 「向井くん」 「……何?」 もう僕は覚悟を決め、目を伏せてから委員長の声に耳を傾ける。もうどうにでもしてください。 「ややかをあなたの隣の部屋に移動させて頂戴」 「…………え?」 ビンタとかそういう方法に来るのかと思いきや、全く別方向の申し出に僕は思わず激しく瞬きを繰り返し、それと同時に頭の中にクエスチョンマークを量産し始めた。 どういうことだろう、と頭を巡らせてみるけど分かるはずもなく、そもそもその疑問を確実かつ素早く解決する方法があるんだってことに気づいた。 「あの、どういうこと?」 「とにかく!」 「は、はい!」 疑問、解決ならず。 有無も言わせぬ委員長の言葉に、僕は激しく首を縦に振ってから慌てて部屋を飛び出し、 「……はあ」 僕、何でこんなことになってるんだろう、と委員長から伝染したみたいに溜息を漏らした。 隣の空室に置いてあった家財道具等々を僕の部屋に運び終え、やや不服そうな住倉さんと眉を吊り上げて戻す様子のない委員長の間で肩身の狭い思い をしながら、ひとまず自分の部屋に集めた。というのも、未だに委員長が僕の隣の部屋に無理やり住倉さんを引っ越しさせた理由がさっぱり見えないから。 壁際にいろいろモノを寄せてはみたものの、若干物置のようになりかけている僕の部屋の中心で、昨日委員長と勉強会をしていたテーブルを三人で囲む。委員長がまだ落ち着かないようだったから、ココアとバウムクーヘンを持ってきた。 ココアを一口飲んで、ようやく本当に落ち着きを取り戻したらしい委員長が静かに話し始めた。ここに落ち着くまで、結局30分近く掛かったわけだけど、まあ最終的に事情が聞けるだけ良かったとした方がいいかも。反論して、これ以上話がこじれたら嫌だしね。 と思っていたのに。 「……」 何故か沈黙。 「あ、あの……?」 「…………ちょっと待って。ちゃんと話してあげるから」 何かとてつもなく言いづらそうな様子。それを見て、大抵いつでも助け舟にならない助け舟が現れた。 「トイレに入っている間に、話し掛けられただけでそんなに腹を立てなくても良かったと思うのだけど」 バウムクーヘンの四分の一カットを、せっかく持ってきたフォークを無視しつつ、リスか何かみたいに両手で持ってもさもさ食べてた住倉さんがちらりと横目で委員長を見る。 あー。なんとなく今の言葉だけで、誰が原因なのかは良く分かった。 「あんなところで話し掛けられるなんてこと、普通は無いわ! それも実況中継みたいなこと!」 されたんだ。それはまあ、うん。今の状況も分かるかも。 「ま、まあ、委員長落ち着いて……」 「これが、これが落ち着いていられるわけないでしょ!」 うわ、駄目だ。完全に委員長が壊れてる。 なんだか、住倉さんがさっきの携帯での件を仕返しをしているように見えるけど、多分そうなんだと思う。 「でもトイレで話し掛けられるってどういうこと?」 トイレの扉の前に立ってた、にしては反応がおかしい気がする―― とここまで考えてすぐに「ああ、そっか」と自分で納得してしまった。 二階のトイレの隣は物置。つまりさっきまで住倉さんが住処にしていたところ。 トイレと物置の間の壁は非常に薄いから、僕も経験があるんだけど、トイレに入っているときには物置で何か探しているときにはごそごそと大きな音がする。つまり逆に、物置に居る人はトイレの中の音がほぼ筒抜けになってるってこと。 「理解したようね?」 口角をほんの少し上げる、住倉さん独特の笑い顔。 「うん」素直に答えた。「何となく想像できちゃった」 「想像しないでくれるっ!?」 僕の向かいに座っていた委員長が、ちゃぶ台返しでもするかと思ったくらいに突然上半身を起こしたから、僕はびくりとした。 「はあ……疲れた。とにかくややかは今日から隣の部屋を使いなさい」 「嫌だと言ったら?」 「あなたの親に連絡して、今すぐ引き取りに来てもらうから」 携帯を掲げる委員長。 「ぐっ、卑怯よ」 「分かった?」 「……分かったわ」 相変わらず両親が弱点な住倉さんはなんとか、しぶしぶ、一応頷いた。 そんなこんなをしているうちに夕食の時間。 食べ終わったら、お風呂。で、また委員長が僕の部屋に来て勉強会。住倉さんは僕のベッドの上で、ただ漫画を読んでいただけだったけど。 とにもかくにもようやく一日が終わった。 な、長い一日だった。ほんの二、三日前まで一人暮らしだったのに、何故か、いつの間にか、あれよあれよという間に三人共同生活になってしまったけど、何とか僕は元気です。
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委員長が出て行ってから食器を洗って、日課になっているニュース番組の占いを見る。 「ふたご座は10位かあ」 恋愛運が☆2つ、仕事運が☆1つ、金運が☆2つでラッキーカラーが赤。 「委員長って何座なんだろう」 そういえば委員長のことって全然知らないんだよね。昨日から今日に掛けて少しずつ分かってきてはいるけど。 誕生日くらいは聞いてもいいのかな、なんてことを思いながらテレビの画面に表示されている時間を確認してから消す。 この占いコーナーが終わる時間が8時20分。学校の朝のHRは8時50分からだから、ここから制服に着替えて歯を磨いて……と身支度を整えると大体8時半になってて、そこから学校へ向かうのがルーチンワーク。 身支度を済ませて家を出て鍵を掛けると、後ろから威勢の良い青年の声が聞こえてくる。 「よーう」 振り向くと玄関前の門の陰からひょっこりと顔を出した隆二が居た。 「ああ、隆二。来てたんだ」 「おうとも。今日は久しぶりに早起きしたからな」 「早起きって普通の時間じゃない?」 「俺にとって5分も早く出てくるのは早起き以外のなにものでもねーよ」 確かにいつもならば登校途中で会うことはほとんどないから、早起きの部類に入るのかもしれない。 委員長、早めに出てて正解だったよ。もしこの時間に出て行ってたら隆二と鉢合わせるところだった。 心の中で呟き、僕は隆二と並んで登校経路を歩く。 「この時間ってことは今日も占い見てきたのか?」 「うん」 「占いが別に好きでもないのに見てて楽しいのか?」 「楽しい楽しくないっていうか、生活の一部みたいなものだから。ほら、いつも右足から家を出ると幸せになれるとかいうジンクスなんかがあるよね。あれと同じ」 「良く分からんな」 腕を後頭部辺りで組みながら鞄を持って隆二は言う。2人で並んで歩いていると15センチくらい身長が違うから、私服で遊びに行ってたりするとた まに兄弟と間違えられる。1番酷いときには高校生なのに「小学生の弟さん?」と間違えられたことも。ちょっとというよりかなり複雑。 「占いなんか見てる暇があったら、特撮見ろよ、特撮」 「んー……僕はあまり好きじゃないから」 「なんでだよ! おもしろいじゃねえか、特撮」 鼻息荒く、拳を握って僕の隆二。 「こう、スカッとするんだよな。展開は割とありがちなものが多いけどよ、それでもその王道を通ってくる安心感とカッコよさ。負けても立ち上がる不屈の闘志。そこが特撮の最大の良さだぜ」 もちろんそれだけでもないんだが、と付け加えて再度前を向く。本当に好きなんだなあ、特撮。 ……でも「占いなんか」っていうのはどうかと思うな、やっぱり。 「見たくないなら見なくてもいいが、せっかく朝早くから起きてるんだったらテレビつけっぱなしにしておけばいいじゃねえか」 「あはは。お父さんが行儀悪いから食事中はテレビ点けない方が良いって。お母さんもなんだかんだでお父さんに弱いし」 「お前んとこは両親仲が良くていいよなあ。うちは喧嘩ばっかりだぜ」 「一時期は両親の喧嘩が酷いからって僕のうちに泊まりに来てたもんね」 僕の隣の部屋は、今でこそ倉庫になっているけど昔は隆二の部屋になっていた。大喧嘩の場合は翌日の朝に家へ帰ったりするから、うちでお風呂入るために着替えとかも置いてあったし。 「ああ。さすがにこの年になって親が喧嘩してるからって泊まりにいくわけにもいかないからな。あれが許されるのは小学生までだぜ」 「でもそれだけ喧嘩して離婚しないってことは何だかんだで仲良いんじゃないかな」 「どうだか。特に母さんの方は委員長そっくりでお小言が多すぎんだよ」 突然委員長の名前を出されてびくっと反応する。 「親父もだらしねえが、何かにつけて注意ばっかりする母さんもいけねえや。俺だったらとっくに離婚してるぜ」 「隆二のお父さんのことを考えて注意してるんじゃないかな」 「そうにしたって細かすぎなんだよ。靴下を洗濯機の中で裏返して入れるなとか、タバコは火を消してもゴミ袋の中に入れるなとか」 「靴下を裏返すなっていうのは単に洗濯で裏返したまま洗濯するとあまり綺麗にならないからじゃないかな。後、タバコも消した直後はまだ熱いから発火……するのかは知らないけど、それを防ぐためだと思う」 「とにかくだ!」 声を張って隆二が言う。 「隆二」 「……分かってる。でもそれだけじゃないんだぜ。理不尽なことも言ってる。そりゃ母さんだって父さんが嫌いだからあんなこと言ってるとは思わないけどよ。ちょっと言い過ぎだと思うし、言い方も気をつけるべきだと思う」 「それは……そうだね」 自分で分かってることでも、他人に指摘されると嫌なことだってある。それがコンプレックスになっているようなところだったら尚のこと。だから言 葉は選ばなきゃいけない。だからどんなに大きな喧嘩しても絶対に言っちゃいけないところは言わないんだ……なんてことをお母さんが言ってたっけ。そこをお 互い分かってるから、たまに喧嘩しても別れないんだってことも。 「うちのいいんちょもそうだよなあ。俺が馬鹿なのは仕方が無いとして、それをいちいち馬鹿馬鹿言うなっての。つーかあいつ、俺の名前すら覚えてないんじゃないのか?」 「あはは、かもしれないね」 昨日本人が言ってたけど、全然隆二の名前覚えてなかったよ。心の中でそう答えておく。 「あれは絶対年を取ったら口に小じわが出来まくる、五月蝿い意地悪バアさんにしかならんな」 「意地悪バアさんで悪かったわね」 僕と隆二が慌てて振り返ると、何故か先に家を出て行ったはずの委員長が綺麗な眉を吊り上げ、僕らを睨んでいた。
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「今からでも無かったことにしてください」 「うーん、それはちょっと無茶な話なんですよ」 校長室。生徒会長室よりは想像に近くて、木製の大きな机と椅子が奥にあって、手前にソファと机が置いてある。その横にいろんな賞状や盾が飾ってある棚。あ、盆栽みたいなものも置いてある。叔父さんにこんな趣味あったっけ? 想像と違うのは、部屋をぐるりと取り囲むようにして、何故か歴代の校長の写真が飾ってあること。小学校の頃って、校長室って歴代校長の写真なんか飾ってあったかな? 後は大型テレビが置いてあること。もしかしてみんなが授業中にテレビ見てたりするのかも。いいなあ。 そんな、普段入るようなことのない部屋の中で、僕は学校長の叔父さんにある相談をしていた。 ……っていちいち ある なんて言葉で隠す必要も無いよね。僕が今、叔父さんに話すことなんて1つしかないし。 「委員長……辻川さんを、何で家に返してあげられないんですか」 ここだけ切り取ると、凄く誤解されそうだけど、ずっと話題になってきたことだから、きっと分かるよね。委員長がうちにもう来なくて良くなるよう に、取り計らってくださいっていうお願い。委員長が来るのが嫌だってわけではないんだけど、やっぱり同世代の女子と生活を共にするのは、ちょっと落ち着か ないし。委員長もきっと同じこと思ってるだろうから。 特別難しそうな話ではないのに、校長先生は首を横に振ってくれなかった。 「こっちも彼女を向井君の家に送るのに、いろいろ手を尽くした後なので、今更無かったことには出来ないんですよ。最低でも一年はこのままでお願いします」 あはは、と苦笑いで答えた叔父さん、条桜院高校の校長である大橋孝之叔父さん。まだ40代のはずだから、異例の若さの校長先生だって言ってた気がする。 「一年って……卒業までってことですか? 僕達、三年なんですよ? 入試のために勉強をしなきゃいけないですし……」 「うん。もちろん、知ってる」コーヒーを啜りながら(校長室は飲食禁止とかではないのかな?)、僕を見る。「だからこそ、だよ」 「だからこそ?」 「そうそう。あれ? そこはもう、辻川さんから聞いていないかな?」 「……あ、はい。そういえば聞いてます」 僕が勉強だけに集中出来るよう、お母さんが取り計らってくれた。でもきっとそれは口実で、実際はやっぱり一人で置いていくのは心配だった、ってことかな? 僕の家に派遣する子を決めるとき、危ないことにならないようにって、選ぶ人は誰にするか、慎重になってたって委員長が言ってたっけ。何か、そういやあのときに委員長、怒ってたような。 「でも……」 「まあ、ほら。女の子と一緒に生活できるなんて、良いことじゃないかな?」 やった事が無い人にはそう思えるのかも。実際、僕も最初はそう思ってたから。 実際に共同生活をやってみるとそんなこと、言ってられないんだけど、ね。特に委員長と住倉さんとは……。 あ、そうだった。1つ予想外だったこともあったんだ。 「あの、今……委員長以外の女の子も居るんです」 「……へ?」 クエスチョンマークを、クリスマスの三角帽子みたいに、見るからに頭に載せたその人は、僕の言葉に目を丸くした。 どういうこと? そう言いたげな瞳に、僕はその一部始終を説明した。 言い切った僕の話に、やはり相変わらずの疑問符を残した校長先生は言った。 「なるほど。姉さんがあんなことを言い出さなければ、その住倉さん? も来なかったんですね」 「まあ、そういうことになります」 もちろん、あの住倉さんだから、何かのきっかけで押しこみで僕のところに来るって可能性はゼロではないけど、少なくともその時期は大幅に遅らせることができたと思う。多分。 後、委員長が帰れば、一緒に帰ってくれる、気がする。 自信がないのは、住倉さんという人物を少しでも知ってしまったから。多分、住倉さんも住倉さんで一人暮らししてるんだろうから、そう考えると委員長が帰っても居座るかもしれないなあ、なんてちょっと思った。 それはさておき。 「こんな状況になったんですから、校長権限で――」 「いや、さっき言ったみたいに、いろいろ手を尽くした後だから、今更無かったことにはちょっと出来ないんだよね」 やっぱり話が堂々巡りになっちゃうんだなあ。うーん。 「その内にきっと、そういうにも慣れると思うよ? ちょっとくらい何かが起こっても、ほら、どうにかするから」 「起こりません」 何でそういう方向に持って行こうとするかなあ。 「あはは。まあそうしてくれると助かるけどね。一応姉さんには話しておくけど、あまり期待はしないでくれるかな」 「……分かりました」 もうこれ以上話をしていても、良い方向に話が転びそうにはないから、僕も諦めた。それにもう下校時間。早く帰らないと、夕食の準備が待ってるし。 「状況がよくなりそうだったら教えてください」 「そうするよ。多分、無理だろうけどね」 最初から諦められると、ちょっと困るんだけどなあ。 校長室を出てから「失礼しましたー」の言葉と共に一礼して、部屋を後にする。 はあ、何も収穫無しかあ。仕方がないけど、我慢するしか無いよね。 「あれ?」 今、慌てて大きな足音を立てて、校長室の前から走り去ったような。 ……聞かれてたとか? ううん、きっと気のせいだよね。 若干腑に落ちない気持ちを溜息にしながら、僕は鞄を提げて帰途についた。
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さるの♪ ゆきこ♪(ユキメノコ)のリングネーム 多分、さるの→ちるの→チルノ。何か違う気もする。
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「……」 「うわ、無言で携帯取り出すのやめて!」 「……ふふ」 スカートのポケットから取り出した赤い角ばった携帯をチラつかせながら住倉さんは不敵な笑みを漏らす。そんな強攻策に出るとは思わなかった……こともない。なんたって住倉さんだし。 「もし駄目というなら私の友達全員にメールを送るわ」 「ぐっ……」 結局は学校側の都合だったというのに、何で僕がこれほどまでに追い詰められなきゃいけないんだろう。委員長もとばっちりだし。元々はうちのお父さんとお母さんのせいなんだよね、よく考えると。後で連絡しなきゃ。 それはそれとして、今のこの状況はどうしよう、どうすべきなんだろう。 教師側は既に全員知ってて緘口令が敷かれているから周りに漏れてきていないんだろうけど、生徒にまで緘口令を敷くことは学校側もできないはず。 つまり誰かに知られたら、色水をコップの水に落としたかように拡散する。インターネットの発達は必ずしも良い結果を生まないという好事例かもしれない、と 思う。 「……分かった。住んでも良いよ」 奇怪な思考パターンを持つ住倉さんをなだめすかす方法はこの結論以外に無い、かな。 「美少女が新たに住むのに『良いよ』は無いと思うのだけど?」 「美少女であるかどうかよりも、同居人として負担になる人かならない人かの方が僕にとっては大事なんだよ」 「つまりあなたの平穏を掻き乱すようなことをすればいいのね」 「…………」 「冗談よ」 住倉さんが言うと全くギャグには聞こえないんだけど。さらっと自分のことを美少女と言っていたところにも突っ込もうかと思ったけど、やめた。確 かに変わった部分だけを除けて見れば、十分に他称で美少女と付けられてもおかしくない。それくらいの人ではある。あるけど、やはり何を考えているのか全く 分からないから、その呼称には誰もが頷くであろう顕著な違和感がある。 ツンとした表情の住倉さんは残っていた牛乳を喉も鳴らさず飲み干した。 「じゃあ交渉成立。報酬は……そうね。私の体で払うわ」 「……」 「ギャグはちゃんと突っ込んでもらわないと困るのだけど」 「それを僕に求められるのも困るかな」 「くす。いいわ、その反応。あなたとは合いそうね」 「僕はそう思わないけど」 「あなたも変わっているから」 「住倉さんに言われたら終わりだよ」 「さらりとそういう酷いことを言える辺りとかも、私譲りだわ」 「いつから僕は住倉さんの息子になったの」 「こう見えて私はもう三十路前なのよ」 「29歳と考えても、僕を13歳で産んだことになるんだけど」 「確か『14才の母』だったかしら。そんなドラマがあったくらいなんだから不思議ではないわ。海外では5歳半の少女が出産したという事例がある わ。極々稀なことではあるわね、もちろん。でも初経が始まった後なら妊娠することなんて別段不思議なことでも無い。だから13歳の頃に産んでいても全く不 思議ではないわね。でも不満なら……そう、あなたの可愛い妹になってあげる」 「自分の家の前で寝そべって、人の厚意に付け込み強行に人の家に乗り込むような妹は要りません」 「好む好まないに限らず生まれてくるのよ、人は。好む好まないに限らず、ね。もう1度言った方がいいかしら? 重要なことだから。ねえ、お兄ちゃん」 「要りません。後、お兄ちゃん呼称も要らないです」 「そう。クールなのね」 なんだか実にどうでもいいことで問答したような気がするけど、どっと疲れが出て、それもどうでもいい気がしてきた。とにかく住倉さんを住まわせることは、半分脅しがあったとはいえ自分で結論を出したことだし。 テレビの前に置いてあるソファに座ろうとしたところで住倉さんが「ああ、そうだわ」と思い出したように言うから、さすがに無視もできなくて振り返る。これから一応、頻繁に顔を合わせることになるから。 「さっきここに住まわせてくれなかったら携帯で友達に連絡するって話をしたわね?」 僕を見据える住倉さんの瞳は普段よりも好奇心や喜びが漏れ出ているようにも見える。 「住んで良いって言ったのに周りに連絡するの?」 「いいえ。私は約束は守るわ。本気で持ちかけたものはね。だからここに住みたいと言ったのは本当」 「嘘だと嬉しかったんだけど」 「残念だわね。本当よ」 「じゃあ、何?」 「電話帳を見てみるといいわ」 言い終わるか終わらないかの内に赤い何かを投げてきて、気を抜いていた僕は慌ててそれをキャッチする動作を取ったものだから足を滑らせ、その場で強かにお尻を打った。 「いたた……」 「ナイスキャッチだわ。落としたらわざと弁償させようと思ったのに」 「……」 「そろそろ本気と冗談の区別を付けた方がいいわ」 「今のは半分くらい本気だったでしょ」 「あら、気づいてたの?」 「徐々に慣れてきた」 「ふふ」 同時に疲れてきた。 今受け取ったのはどうやら住倉さんの携帯電話だったみたいで、開くと―― 「うわ」 「くすくす」 「この壁紙はちょっと……」 「刺激的だわね。ボーヤには」 「同い年でしょう」 「実は三十路前で――」 「はいはい」 住倉さんの場合は話を途中で無理やり切った方がいいとようやく分かってきて、また話がループする前に電話帳のボタンを押す。『あ』行には誰の名 前も連なっていなかった。さっきのキャッチの衝撃でデータが消失したかと心配になったが、『さ』行に入ってようやく2人名前があってほっとする。書かれた 名前の名字はどちらも『住倉』であり、名前からおそらく両親であろうと予想が付く。続いて『た』行へ続いて、『辻川友香』という見覚えのある名前が出てき た。後はまた空白のみが続いている。 「お父さんとお母さん以外だと委員長のみ?」 「そう。だから友達に送ると言っても友香くらいにしか送れなかったという訳」 「なるほどね」 「怒らないのね」 「感情に割り振るエネルギーを消耗しきったからで怒る気にもならないよ」 「あなたの天使が癒してあげる、とでも言った方がいいかしら」 「もっと疲れるからやめて欲しいかな」 「分かったわ。じゃあもっとしてあげる」 「もう、好きにしてください」 「ふふ」 委員長との共同生活でさえ危うかった僕がミステリアスを原液で飲み干したような住倉さんとまで住む生活に耐え切れるか自信、無いなあ。
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「ごちそうさま」 「お粗末さまでした」 「それにしても……」 皿洗いくらいは自分がすると言うので委員長に任せて、テーブルを拭き終わったら一息入れることができるようにとお茶を淹れていた。前にお歳暮で貰ったという緑茶で、大分暖かくなってきたこの時期にはちょっと熱いかもしれないけど。 「あなた、本当に1人でも別に困ってないのね」 「うん、大丈夫。たまに掛かってくる電話でもお父さんとお母さんにいつも言ってるのに……」 「仕事とはいえ、大切な1人息子を家に置きっぱなしともなれば心配にもなるでしょう」 「かな?」 ようやく全てが終わって椅子に座ってから、ようやくこの状況の奇怪さを思い出した。 「忘れてたけどそういえばなんで委員長は僕の家に来たの?」 「…………あなたがそれを聞くの? 私を馬鹿にしてる?」 「え? 何で?」 「まさか教えられてないの?」 「何を?」 「…………」 「…………」 疑問符の掛け合いに飽きて、特大の溜め息の後、委員長は夕食のときと同じように僕の向かいに座って答える。 「あなたの叔父さん、母方の叔父さんが条桜院(じょうおういん)の学校長なのは知ってるわよね」 「うん、もちろん」 条桜院とはうちの学校、条桜院高校のこと。男女共学の進学校で成績はある程度良くないと入れない。自分でも良く入れたなあって思ったよ。 「もしそこから話さなきゃいけないなら私は今すぐここを出て行くところだったわ」 それはそれでありがたいような。 口には出してないはずだけど、心を読まれたのかじろっと睨まれてからすぐにまた溜め息を吐いて続けた。 「で、そのあなたの叔父さんである学校長があなたの母親に様子を見て欲しいって言われたそうなのよ。今年は高校3年生で大学入試もあるから、自分が居ない間に色々と疎かになってはいけないってことみたいね」 「でも委員長も今年受験だよね」 「当たり前よ。だから本当はこんなことしたくなかったわ。でも学校長直々にそんなこと言われたら断れないでしょ」 きっと叔父さんはお母さんに頭が上がらなかったって言ってたし、今回も逆らえなかったんだろうなあ。そしてその叔父さんに委員長が断れなかったと。お母さん、皆を巻き込みすぎだよ……。 お母さんは普段、家事ができない代わりに自宅で出来る翻訳家としてうちの家計を支えてる。パソコンと本があればいくらでもできる! ってことで 始めたんだっけ。気楽にできるから自分に合ってるとか言ってたけど、本当は結婚しても家事がまともに出来ずに落ち込んでたお母さんが、お父さんに悪いか らってせめて家計の手助けくらいはしたい、でも家に帰ってきたときに出迎えてもあげたいからと探して見つけたことを知ってる。でもお母さんが必死に隠して るからこの経緯についてはお父さんには秘密。きっとお父さんのことだから分かってると思うけど。 「最初は学校長自らが住んで逐一様子を伝える、というのも考えたらしいわ。でもさすがに親の実家で会うくらいしか顔を合わせていない自分が突然家 に住んだらあまりいい気はしないだろうって。そこで学校長は自分よりも年の近い、親しみやすい人間を派遣しようって考えたそうよ」 「別に叔父さんでも良かったと思うんだけど」 「だったら私に言わずに本人に言いなさいよ!」 ガタンと椅子をひっくり返すほど勢いよく立ち上がった委員長。その拍子に少し湯飲みの中身が零れる。 「あ、ごめん」 「いえ……あの、私もごめんなさい」 バツの悪そうな顔で椅子を立て直して、委員長は再び座って僕から受け取った台拭きで机を拭く。 「親しみやすいと言っても男の子じゃ駄目。お昼に言ったみたいに食事や洗濯みたいな世話が必要になるから。私は男子だから女子だからという考え方 は嫌いだけど、実際にそういう傾向があるのも事実。事実に目を背けて自分の考えだけを押し出すのは嫌いだから学校長の話に頷いたわ」 「そうなんだ」 「かといって単に女子を住まわせるというのもまた問題。若い男女が1つ屋根の下で暮らすにはそれなりの条件が必要なのよ。襲われる可能性が無いとも言えないから。この条件を満たした私に白羽の矢が立ったと……実に腹立たしいわ」 「何で?」 「あなた、鈍いってよく言われるでしょう」 「?」 「……いい、あなたに言ったって仕方が無いし。私があなたのことを好きだとか勘違いして襲ってきたりしなかったのだけは安心した、と同時にやっぱり腹が立ったわ」 誰だって突然あんなことされたら驚くのが先だと思うんだけど、委員長はそうじゃないんだろうか。それに関わりあいもプリントを渡すときくらいし かないのに、恋愛感情なんて沸くような展開は無くて当たり前のような。それと何でさっきからそんなに腹を立てているんだろう。よく分からない。 不満げではありながらも湯飲みを傾けて中身を飲み干してから委員長は言った。 「何にせよあなたには必要なかったみたいだけど、一旦請け負うと言ったからには期限までは約束通り行動するつもり。とにかくそういうことだから、しばらくここに泊まることにするわ」 「事情が事情だから仕方が無いね。明日にでも叔父さんに1人でも大丈夫だって掛け合ってはみるけど、お母さんが背後に付いているんじゃなかなか難しいかな。……あれ、じゃあ最初に自分を買えとか雇えって言ってたのは?」 「冗談に決まってるじゃない」 委員長も冗談なんて言うんだ、なんて言ったら怒られるだろうか。友達は教科書と六法全書を合わせて人間にしたような人だって言ってたし、悪いけれど僕もそれに近いことを考えていたから。 「っていうかあんなに素で返されたらこっちが恥ずかしいでしょ!」 「わ、分かったから落ち着いて!」 もう既にお茶は飲み終わってるみたいだけど、今度は湯飲みを落としたりするかもしれないし。フローリングとはいえ、さすがにテーブルの高さから落ちたら割れないとも限らない。湯飲みの代用品はいくらでもあるけど、委員長が怪我するのは良くない。 「ぐっ……」 皆が皆、クールだとか冷血だとか好き勝手に呼んでたけど、いつもは皆が居るからなんだかんだで怒りを押し留めているだけで結構委員長って熱くなりやすいのかも。 「とにかく事情は分かったよ。1つ部屋が余ってるから、そこを利用すればいいかな。布団も来客者用のものがあるから使って。今から家の中と部屋までを案内するよ」 「ありがとう。お世話になります」 やっぱりこういうところは非常に礼儀正しいんだなあ、委員長って。