約 1,710,337 件
https://w.atwiki.jp/83452/pages/13371.html
唯「そ、そうだよ」 律「今言われてもなぁ」 澪(唯は憂ちゃんと・・・梓ちゃんの両方・・・///)フシュー 律「納得のいく説明してもらわないと・・・な、澪」 律「・・・澪?」 紬「大変!立ったまま気絶してる」 律「・・・」 ~10数分後~ 澪「すまない・・・」 律「そろそろ慣れろよー」 澪「うん・・・」 律「それで、どういう説明になるのかな?」 梓「えっと・・・」 唯「待って、あずにゃん」 唯「全部私のせいだから・・・」 唯「私が言う」 梓「唯先輩・・・」 唯「実はね、あずにゃんに悩みを聞いてもらってたの」 律&澪(あの唯が悩み・・・か) 唯「それで・・・なんていうか・・・」 唯「感極まってっていうか・・・」 律「そうだったのか・・・」 律「な、何か悪かった!その・・・疑ったりして」 唯「ううん、私も急に抱きついちゃったから・・・」 唯「ごめんね、あずにゃん、みんな」 梓「私は大丈夫です!」 紬「それで・・・悩みは解決したの?」 唯「あずにゃんに言ったらすっきりした・・・かな」 紬「ということは・・・解決はしてないのね?」 唯「・・・」 紬「もし良かったら、私たちにも話してみてほしいな」 紬「力になれるかわかんないけど・・・ね、みんな」 澪「あ、あぁ」 律「そう・・・だな」 唯「・・・」 梓「ちょ、ちょっと言いにくい事だったんですよ!ね、唯先輩?」アセアセ 唯「・・・あずにゃん」 唯「ごめんね、かばってくれて」 唯「でも、もう・・・」 唯「みんなに隠したくない」 唯「変だって思われてもいいから・・・」 唯「みんなに言う!」 梓「・・・わかりました」 唯「みんな、聞いてください」 唯「実は・・・」 唯「ういと付き合ってます」 シーン 唯「あ、あれ?」 唯「みんな?」 律「え?あぁ・・・」 澪「うん・・・」 唯「どうしたの!?びっくりしないの!?変だって思わないの!?」 律「び、びっくりしたよ!すごく!なぁ澪」 澪「あぁ、うん、びっくりした」 紬「・・・唯ちゃん、ごめんね」 唯「え?」 紬「前から気づいてたの」 唯&律&澪&梓「ええええええええ?」 紬「みんな気づいてないみたいだったから・・・言っちゃダメなのかなぁって」 唯「え、え?」 唯「どうしてわかったの!?」 紬「この前、憂ちゃんたちとお弁当食べたでしょ?」 紬「あの時の2人を見て、わかったよ」 紬「いつも仲良いけど、あの時は特別って感じだったし・・・」 唯「そうだったんだ・・・」 紬「うん、なんかごめんね唯ちゃん・・・」 唯「ううん、全然」 律「・・・」 律「唯、実は」 澪「律」 律「いや、いい」 律「唯だってムギだって隠さずに言ったんだ」 律「私たちもちゃんと言おう」 律「・・・梓もな」 梓「・・・はい」 唯「みんなどうしたの・・・?」 律「実は私たち3人も、唯と憂ちゃんの事は知ってた」 唯「えええええ」 律「黙っててすまん!」 澪「ごめん、唯」 梓「ごめんなさい・・・」 唯「え、う・・・ううんっ、みんな謝らないで」 唯「やっぱりみんなも・・・お弁当のときにわかったの?」 律「なんていうか・・・なぁ」チラッ 梓「えっと・・・」 梓「唯先輩、ブログやってますよね」 唯「!?」 唯「あずにゃん・・・なんで知って・・・」 梓「偶然見つけたんです」 梓「ブログの内容を見て、すぐに唯先輩だってわかりました」 梓「・・・憂と付き合うことも」 唯「・・・そうだったんだ」 梓「黙ってて本当にごめんなさい!」 唯「ううん・・・あずにゃんは悪くないよ」 唯「そっか・・・みんな知ってたんだ」 唯「隠してる必要・・・なかったんだ」ウルッ 唯「みん・・・なに・・・隠し事・・・なんっ・・・て」グスッ 唯「しちゃ・・・だめだった・・・ね・・・」ズルッ 唯「ごめんね、みんな、ごめんね」グシグシ 唯「私・・・変だよねっ」 唯「女の子と・・・妹と付き合うなんて」ウルウル 唯「悪い子だよね」 唯「みんなに隠し事してるなんて・・・」ウルウル 唯「うわぁぁぁん」 唯「私・・・私・・・」 律「唯!」 律「唯は変じゃない」 律「悪くもない」 唯「り・・・っちゃん」グスッ 梓「そうですよ唯先輩」 梓「好きな人と付き合うのが変なわけないです」 唯「あずにゃん・・・」グスッ 紬「唯ちゃんは本当に憂ちゃんが好き・・・そうでしょ?」 紬「それは悪い事じゃない、絶対に」 唯「ムギちゃん」ウルウル 澪「そうだぞ、唯」 澪「女の子を好きになる事なんて・・・」 澪「普通だよっ///」 唯「澪ちゃん・・・」ウルル 澪「私だって・・・私だって・・・」 律「ん?」 澪「な、何でもない!///」 律「変なやつ・・・教えろー」 澪「な、何でもないって言ってるだろっ///」 唯「・・・あははっ」 律「お、笑った笑った」 澪「・・・ふふ」 梓「唯先輩は笑ってるのが1番です!」 紬「そうね、唯ちゃんは笑ってないと!」 唯「・・・えへへ」 唯「みんな・・・ありがと」 唯「みんなに全部打ち明けてよかった」 カチャッ・・・ 唯「これからは絶対隠し事なんかしないよ!」 律「私もしない!」 澪「私も!」 紬「私もー」 梓「私もです!」 さわ子「・・・何か知らないけど、青春してるわね、ふふっ」 バタン 律「あれ?今誰か・・・」 唯「え?」 梓「誰もいないですよ」 澪「こ、こ、怖いこと言うな!」ガクガク 紬「私、幽霊に会ってみたかったの~」 ――――― ――― ― ~翌日、放課後の部室~ 唯「と、言うわけで!」 唯「ういを連れてきました」 憂「お、お姉ちゃん?みんな集まって・・・何が・・・」 律「よっ、待ってました!」 梓「だからお父さんみたいですって」 澪(梓も律の男らしさに・・・) 紬「憂ちゃん、こんにちは」 憂「こんにちはっ」ペコリ 唯「こほん」 唯「それでは正式に発表します!」 唯「このたび、私とういは・・・」 憂「・・・!」 唯「付き合う事になりましたっ!」 パチパチ 憂「お姉ちゃん!?」 憂「みんなの前でそんな・・・///」 律「おめでとう唯、憂ちゃん」 澪「おめでとう2人とも」 紬「おめでとう、羨ましいわ~」 律(羨ましい・・・?) 梓「おめでとうございます!」 憂「みなさん・・・」ウルッ 憂「あ、ありがとうございますっ!」ペコッ 唯「ございます」ペコッ 澪「なんか結婚式みたい」 律「さわちゃんにウェディングドレス頼めばよかったな」 紬「結婚式といえば・・・」 梓「誓いのキスですね!」 律「お、梓ノリノリだなー」 梓「なっ///」 唯「うい・・・」 憂「・・・はい」 唯「めーつむって」 憂「・・・はい」 唯「・・・」 唯「うい、大好きだよ」チュッ ――――― ――― ― 『◎月☆日 今日は、すごく良いことがありました! 私と妹、2人にとっての記念日です。 そして一緒にお祝いしてくれた大切な友達との・・・ 今、本当に幸せです。 みんな大好き!』 ――――― ――― ― 『☆月☆日 大変です! 私たちが付き合った影響かわからないけど・・・ 軽音部の人たちの雰囲気が少し変わっちゃいました! もしかしたら・・・私と妹みたいに・・・ また、今度おはなしします!』 おわり 戻る
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/1676.html
私が先鋒か。団体行動はあまり好きではないのだがな。 監督も監督だ。私以外にも先鋒に足る人がいただろうに。 「あぁ、やっぱりここでしたか。」 数多いる1年の内、聞き慣れた男子の声が聞こえる。 「監督が呼んでます。予選に向けて団体戦面子でのミーティングだそうです。」 「今行く。しかし、団体行動は苦手なんだよ。」 「またまた。そうは言っても週末の麻雀教室にはキチンと顔をだしてるじゃないですか。 それに、辻垣内先輩の教え方は上手ですから。分かりやすいですし。」 言いつつも、男子――須賀――は私の後についてくる。 「教室の子どもたちからは『おじょー』やら、『師匠』などと呼ばれるようになったがな。」 「今となっては地域の人たちにも言われてますしね。」 須賀はアハハと笑いながら言う。翌週からは教室全員から。その翌週からは地域の人たちから呼ばれるようになった私の気も知らず。 声援を送ってくれるお婆さんや小中高生たちに返答しながら歩く。 「教室に顔をだすようになったきっかけは、須賀。お前だよ。」 「あぁ、そうでしたね。他の人達の仕事もやって、人居なくってから自主練してる所見られたのが始まりですね。」 懐かしむように言う。 「それで、それを偶々見かけた私が、練習を見てやったが。何も考えずに打ってたな。最初の須賀は。」 「アハハ。懐かしいですね。先輩にいきなり、『明日時間はあるか?』なんて言われたときは吃驚しましたよ。沈められるかと戦々恐々しながら当日向かったら、連れてかれたのは麻雀教室でしたし。」 乾いた笑いを浮かべながら須賀は言うが、私の家系はその筋ではないのだが。 メグたち4人にも聞いてみたら『なんか、雰囲気がそれっぽい』と口を揃えていわれた。 言うほど雰囲気あるか? 「まぁ、初期のお前と比べたら随分と須賀は成長したよ。」 「先輩にそう言われると嬉しいですね。」 前を見ているので顔は見えないが、きっと本当に嬉しくて笑顔を浮かべているのだろう。 まもなくインハイ予選が始まる。 あぁ、そういえば…… 「どうかしましたか?辻垣内先輩。」 不意に立ち止まった私を懸念に思ったのか、走り寄ってくる須賀。 「最初で最後の夏だな、と思ってな。高校で京太郎と過ごすのは。」 「……。その最後の夏は、長く続くんですよね?智葉さん。」 「当たり前だろう。京太郎にも頂からの景色を見せてやる。」 「なら、頂に登りきるまで支えますよ。部員としては臨海を。 俺、須賀京太郎、個人としては智葉さんを。」 全くもって良いやつだよお前は。 眼鏡を掛け、髪を一つに纏める。 「行くぞ、須賀。」 「了解です。辻垣内先輩。」 カンッ 「今回の解説には、先日入籍を果し、現在は須賀の名に変わった。辻垣内プロ、改め須賀プロにお越ししてもらっています。」 「本日はよろしくお願いします。」 もいっこカン
https://w.atwiki.jp/niko2/pages/235.html
けだものとのそうぐう ◆lbhhgwAtQE (非登録タグ) パロロワ ニコニコ動画バトルロワイアル チーターマンⅡ ニコロワ初の脱出者 勿 第九十五話⇔第九十六話 第九十六話⇔第九十七話 「……アリスよ」 彦麿が立ち止まって私に声を掛けてきたのは唐突だった。 今まで黙々と、歩いていたというのに急にどうしたのだろう? 「何よ?」 「山には古来より神が棲んでいると言われている」 「……そうね」 「そして、それと同時に、山には魑魅魍魎も潜んでいるのだ」 その通り。 というか、それは幻想郷は当たり前のことだ。 ついこの前も、魔理沙や霊夢が山の神やら天狗やらに会ってきたとか、そんな話をしていたし。 でも、それが今の状況とどういう関係にあるのだろう? 「魑魅魍魎は、我らに害をなそうとする存在。つまり、山に入ってきた我らに様々な悪さをしてくるのだ」 「まぁ、そうでしょうね」 「そして、今! 我々はその魍魎共から知らず知らずのうちに悪事を受けてしまったようだ!」 もう何が何やら。 そんなこと大声で言われも、私には何のことやらだ。 「……で、つまりはどういうことなの?」 私は、ついに耐えかねて、そう尋ねてしまう。 すると、彦麿は一言で、こう言った。 「……道に迷った」 ……私は、深く溜息をついた。 思えば最初から不安だった。 ストーム・ワンなる老人の頼みを引き受けた彦麿は、頼みである老人の仲間の捜索に躍起になっていた。 そして、躍起になりすぎた為か、彼はやや奇妙な行動に出たのだ。 ――「む、彼らがいるのは、こっちか!?」 ――「どうして分かるのよ……」 ――「心の闇に怯える者の声がかすかに聞こえたのだ」 と、こんな感じで彦麿は、時には道なき道を歩きながらも、私(と涼子)を先導していった。 そして、そうすること数十分。 その結果はこれだった。 「……で、どうするの? このままじゃ山を下ることすらままならないんじゃない?」 「うむ、その通りだ。アリスよ」 「って、迷っておいて妙に落ち着いているわね」 「私は闇を祓う陰陽師。いつ何時も平静であるべきなのだ」 ……だったら、山道を歩く時ももっと落ち着いてきちんとした道沿いを歩いて欲しいのに。 やはり、黒い帽子を被った人間には碌なのがいない。 このままじゃ、老人の仲間が持つという人形を見れないどころか、遭難すらしてしまいそうだ。 「…………はぁ」 「アサクーラ…………」 私が改めて溜息をつくと、そんな私の顔を見たのか、涼子も太い眉をハの字にしてショボンとしていた。 単に私の顔を真似しているのか、操り主である私の気持ちを察してくれたのか。 後者であるなら、やはりその自我は私の理想の終着点に近いものだろうな、と考えていると。 「……む、何かが聞こえるぞ」 いきなり、彦麿は明後日の方向に向き直った。 「聞こえる……って、また心の闇を持つ人間の声とかいうやつのこと?」 「うむ、その通りだ。……だが、これは怯える声とは少し違う。これは…………歌か?」 怯える声の次は歌声? 冗談も程ほどに……と思う私であったが、その時それは私の耳にも届いた。 「本当。……歌声がかすかに聞こえる」 木の枝を揺らす風に乗って、かすかに聞こえる歌っているような女性の声が聞こえてくる。 しかし、その歌声に私は何か違和感を感じた。 「ねぇ。あれ、何だか音が外れていない?」 「うむ、そのようにも思えるな。……恐らくは、歌っている者が闇に怯えながらも、助けを求める為に歌っているのだろう。だから外れているのだ」 「なるほどね……」 「どちらにしても、向こうにそのような者がいるなら助けねばならない。それが陰陽の道であるのだからな!」 再び彦麿は躍起になった。 ……というか、最初からずっと躍起だったのかもしれないけど。 自ら進んで動くことをあまりしない私からすれば、その行動原理はあまりに不可解。 だけど、今はそんなことを言ってられないだろう。 どのみち、私達だけで行動してたら、山中で無駄に時間を浪費しそうだし。 もしかしたら、歌声はストーム・ワンの仲間のもので、人形を見つけられるチャンスなのかもしれないし。 「そういうわけだ。行くぞアリス!」 「ま、そうする他なさそうね」 私は、歌声のする方角へ足を進める彦麿の後についていくように歩き出した。 その横に、涼子を引き連れて。 ……だけど、この時は夢にも思わなかった。 まさか、この直後にあんなことになるなんて。 ◆ それは、迷える歌声のする方向へ歩き出して間もなくの事だった。 「……何、これ?」 アリスは驚いたような、呆れたような声を出した。 無理もない。 何故なら、今私達の目の前には、目を疑いたくなるような物体がいたのだからな。 「うむ、あれは猿の仲間か何かのようだな」 「いや、それは何となく分かるけど……どうみてもただの猿じゃないでしょ、あれ」 その通り。 目の前にいるソレは、ただの類人猿には見えなかった。 二足歩行しているところ、しかもその二足で珍妙なステップを刻んでいるところ、そして何より、その凶暴な顔つき。 そう、それはまるで―― 「魑魅魍魎だ」 「……え?」 「あれこそが魑魅魍魎、人の心の隙間に入り込む物の怪の類よぉ!!」 そもそも、この殺し合いとやらをするように命じたのは、ピエロのような二匹の悪霊。 ということは、今目の前にいるような物の怪を、この場に送り込んできていても何ら違和感は無い。 そうやって奴らは、我々を怯えさえ、心を容赦なく闇に染めようとしているのだろうからな! 「というわけで、アリス。ここは私に任せておけ。奴を退散するのはこの陰陽師の使め――」 「って、彦麿、前! 前!」 私がアリスを後ろに下がらせようと彼女の方を振り向いた時だった。 彼女が何やら慌てたように指差すものだから、私はその猿の物の怪の方へ首を向け直した。 すると―― 「――ぬぁに!?」 振り返れば、そこには奴がいたではないか。 何故だ? 先ほどまである程度の距離があったはずなのに……! だが、そのような思考をしている間に、私は何らかの措置を講じておくべきだったのだ。 奴は、硬直した私目掛けてその腕を振り落として―――― ◆ 「彦麿!!」 涼子を操ろうとした時には遅かった。 彦麿は、猿の怪物の振り下ろした腕に殴りつけられ、横に吹き飛ばされていた。 飛ばされた彦麿は近くの樹にぶつかり、そのまま動かなくなる。 猿、彦麿、私と涼子。 この順に並んでいたところで、猿が彦麿を除去したとなると、奴が次に目を付けるのは確実に私だ。 だけど、私も猿如きにただやられるだけなんて真似は勘弁願いたいところ。 だから私は命じる。 横にいる新たな人形に。 「涼子! 防壁をお願い!!」 「コ-セ-ノーバクアップー!」 涼子は、迫り来る猿と私の間に割り込むと、すぐに見えない光の壁を構築する。 すると、猿はその壁に激突、後退を余儀なくされる。 ……よし、間合いは広げた。 近接戦にならなければ、あの猿の脅威も薄れるはず。 私は、そのチャンスを狙い、涼子に更なる命令を出す。 「涼子、次! 礫符『ストーンダストレヴァリエ』!」 「マユゲー!」 涼子は、命じられると周囲にあった無数の小石を小さい弾に変換し、猿へと飛ばした。 それは、彦麿と同じように身勝手な彼女の得意とする弾幕の一つから名前を借りたスペル。 まぁ、彼女だって私の本を今まで散々借りていってるんだし、少しくらいこっちが名前を借りても罰は当たらないわよね? ――と、それはともかく。 その無数の小弾による弾幕は、猿目掛けて正確に飛んでいった。 しかし。 「う、嘘ぉっ!?」 猿の能力は私の予想の斜め上を行っていた。 なんと、奴は絶対回避できないと思っていたその弾幕を、奇妙で、しかも素早いステップで全て避けきったのだ。 カスりすぎってレベルじゃないわよ!? そして、猿はそのまま私へ近づいてゆく。 このままでは、再び近接戦に持っていかれてしまう――それを回避するべく私は、次の命令を涼子に。 「槍符『スピア・ザ・ブランチ』!!」 「デカタヲミルー!」 落ちていたいくつかの枝を拾い上げ、槍状に変換すると、涼子はそれを猿目掛けて投擲する。 しかし、それらも悉くチョン避けされてしまい…… 「な、何なのよ、あの運動性……!」 と、呆気に取られている場合ではなかった。 猿は僅かな間にどこまでも間合いを詰めて迫ってきている。 私は涼子に再び防壁を作らせようとする。 だが。 「コユビデギュ-!」 それより前に、涼子は私の前へと飛び出していた。 それは主である私を守ろうとする本能からくる行動だったのだろう。 だけど、私が特別に命令を出していない以上、彼女は基本的な動作でしか動けないはずで―― 「アラクーラッッッ!!」 予想通り、猿のその豪腕により、涼子は彦麿同様に横に飛ばされてしまった。 ……これで、私と猿を遮るものは何もなくなった。 さて、どうするか? このまま逃げる? ……いや、この猿の素早さを考えると無謀。 ならば、戦って、撃退するなり倒したりするしかないだろう。 近接戦は苦手だけど、一応、私個人でも弾幕は作れるし、鬼が起した霧の騒動の時はそれなりに頑張った。 だから、今回だって……。 「おいで猿男……遊んであげる」 私は迫り来る猿を見据えて、身構える。 そして、猿がその腕を三度振り上げながら飛び掛ってくると―― 「悪霊退散! ぶるぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」 「……へ?」 突如そんな叫び声が聞こえてくると、その直後。 ――コイーン! そんなマヌケな音が鳴ったかと思うと、猿はその腕を私に振るうことなく前のめりに倒れた。 そして、倒れた猿の向こうから姿を現したのは…… 「大丈夫だったか、アリス!」 そこにいたのは片手に濃茶のブロックを持つ黒衣の胡散臭い男。 先ほど吹き飛ばされたはずの陰陽師、矢部野彦麿その人であった。 ◆ 猿の物の怪の一撃で倒れてしまうなど、陰陽師として一生の不覚だった。 物の怪を祓うことがあっても、逆に返り討ちにされてしまうなど……琴姫や僧侶たちに知られたら笑い者にされてしまう。 ……いや、私が笑われるだけなら別に構わない。 だが、私が倒れてしまった後、悪霊に苦しむ人々はどうすればいいのか? 奴らが科学で解明できない存在である以上、陰陽師である私が何とかしないといかんというのに。 そう、このようなところでいつまでも倒れているわけにはいかないのだ! 私がそのような思いを胸に目覚めると、まさにアリスが物の怪に襲われそうになっていた。 そして奴は彼女の使役する朝倉を弾き飛ばすと、アリス目掛けて腕を振り上げていた。 ……それを見て、私の体はごく自然に動いていた。 アリスが人間ではない別の存在であろうと関係ない。 心に闇を持たぬ者を魑魅魍魎が襲うのであれば、私はそれを討ち祓うのみ! 私は持っていたブロックを振り上げると、奴の背後に一気に迫り、そしてそれを頭部目掛けて振り下ろす! 「――というわけだったのだ」 「なるほど……ね」 物の怪を気絶させてすぐに、私達は奴から離れた場所に移動し、木陰で先ほどの戦闘で出来た傷の手当をしていた。 傷の手当を受けるのは私、治療するのはアリスだった。 また、物の怪の攻撃を受け、気絶したままの朝倉も私の横で寝ている。 「しかし、あの物の怪……私の力で祓えぬとは、一体どういうことなのだ?」 「さぁね。そっちに関しては私は専門外だしさっぱり。……というか、殺しておいたほうが良かったんじゃないの、あんな厄介な敵なら」 「物の怪は単純に殺しただけではすぐに転生する。その悪しき魂を清め、祓うことが大事なのだ」 本来なら、祓っておきたかったというのに、あの物の怪は退治することが出来なかった。 あれはやはり、私の修行不足のせいなのだろうか? だとしたら、あの猿を祓う為にも、この地にて一層の修行を積まなくてはならない。 そうしなければ、奴は再び人を襲うだろう。 それだけは、何としても避けなくてはならないのだ! 「アリスよ。私が物の怪の一撃ごときで倒れたせいで、お前を危険な目にあわせてしまったようだ。すまない」 「べ、別に危険な目には遭ってないわよ。あの時もあなたが来なくてもきっと何とか――」 「私は一層精進しなければならないようだ。あの猿を祓う為にも、他の人々の心を救う為にも、この殺し合いを考えた悪霊どもを退散する為にも、そしてお前を守る為にも!」 私がそう高らかに宣言すると、アリスは何故か顔を少し赤くした。 「……どうした、アリス? 熱でもあるのか?」 「な、何でもないわよ!」 ……一体どうしたというのだ。 私がアリスの様子を訝しんでいると、横で寝ていた朝倉が目を開いた。 「あ、涼子も目が覚めたのね」 「……アサクーラ?」 「うん、問題はなさそうね……。とりあえず一安心ってところかしら」 朝倉の体を調べながら、アリスは笑みをこぼす。 ふむ、朝倉の意識が戻ったのなら、そろそろ動くべきだろうな。 「……では、行くとするかアリス」 「え? あ、あぁ、あの歌声の方向にってこと?」 「そうだ。物の怪に邪魔をされて時間は経ってしまったが、まだ彼女らがいる希望はある。何としても合流するのだ!」 「そ、そうね……」 歌声の聞こえた方向には、闇に怯える人間がいる。 私には、あの物の怪は祓えなかったが、人間の心を闇から救うことは出来るはずだ。 だから、行かなくてはならないのだ、何としても。 「……ところで、さっきの猿、あんなに大声上げてたのに何で気付かなかったんだろう。 正面からの攻撃はあんなに機敏に避けてたのに……」 「ふむ……。正面に注意が向く余り、背後に関しては無防備なのかも知れぬな」 【C-3 山道/一日目・昼】 【矢部野彦麿@新・豪血寺一族 -煩悩解放 - レッツゴー!陰陽師】 [状態]:全身に打撲によるダメージ(中) [装備]:孔明ブロック(小)(使用済)@スーパーマリオワールド(友人マリオ) [道具]:支給品一式、ネギ@ロイツマ、孔明ブロック(中・大)@スーパーマリオワールド(友人マリオ) 、長門の首輪 コイン@スーパーマリオワールド [思考・状況] 基本.主催を含む悪霊退散 1.ストーム1の仲間達を探す。ひとまず歌声の聞こえた方向へ 2.琴姫を探す 3.悪霊退散の為の修行を積む 4.猿の物の怪を改めて退散する 【アリス・マーガトロイド@東方Project】 [状態]:健康、魔力中消費 [装備]:朝倉涼子 [道具]:支給品一式、プラスパワー*6@ポケットモンスター レヴァンティン@くらっとけ!スターライトブレイカー(魔法少女リリカルなのはシリーズ) [思考・状況] 基本.しょうがないので異変解決 1.彦麿と一緒にとりあえず歌声の聞こえた方へ 2.涼子のため……じゃない、生き残るために少しやる気を出す 3.涼子の力でブレインな弾幕を作る方法を考える 4.いさじという人から人形を貰う 5.お気に入りの人形とグリモワールオブアリスを探す 6.レヴァンティンは……使うことも考える ※春香の歌声は聞こえましたが、彼女らのいる洞窟の位置が正確に分かった訳ではありません。 【朝倉涼子@涼宮ハルヒの憂鬱】 [状態]:人形、ダメージ小 [装備]:なし [道具]:支給品一式 [思考・状況] 1:アサクーラ 2:マユゲー 3:コーセーノーバックアーップ ※朝倉涼子 死亡扱いです。首輪はついています。 命令がなければアリスを自動で守ります。 アリスの魔力が尽きない限り、表情もあり、人間と区別がつきません。 魔力が尽きた状態で数時間放置すると死体になり、二度と操れません。 朝倉涼子の情報改変能力は、暗黒長門の半分以下まで落ちています。 ※弾幕について 【礫符『ストーンダストレヴァリエ』】 地面に落ちている小石を情報改変し、小さい弾にして弾幕を張る。 規則性は無く、ばら撒き系の弾幕に位置づけられる。 魔力の消費量によって、弾幕の厚さ(easy~lunatic)は決定する。 【槍符『スピア・ザ・ブランチ』】 地面に落ちている木の枝を情報改変し、槍にして飛ばす。 槍はビーム状の弾の類となり、弾幕の形は自機狙いの奇数弾。 魔力の消費量を増やすことで、槍の数が増えたり、周囲にばら撒き弾を発生させることが出来る。 ◆ 殺し合いという名のゲームが続けられている中。 そのゲームを管理している者達が根城にしている地にて。 「……おいマルク」 ピエモンがマルクの背後から声を掛ける。 「何なのサ?」 「先ほど監視装置の映像を見たのだが……何なのだ、あの低脳そうな猿は」 「あぁ、あれ? 結構面白いと思ったんだけど――」 「そうではない。あれは、私が呼び出したデジモンとは違う存在のようだが……」 その顔には不満そうな表情が浮かぶ。 自分の知らないところで、イレギュラーな存在を発見したことが癇に障ったのだろう。 「……何故だ? デジモンだけでは不満か?」 「そういうわけじゃないサ。でも、偶然拾ったから、使わない手はないかなぁ、と思ったのサ」 「偶然拾った……だと?」 マルク曰く、あの猿は参加者を見繕っている途中、時空の狭間で身動き取れずにいたのを回収したものらしい。 「参加者にしようにも知能が低いからねぇ、監視役に使ったのサ」 「しかし……役に立つのか? 知能が低くては監視など……」 「まぁ、仕事はあいつに埋め込んである監視用のカメラが勝手にしてくれるサ。 というか監視っていうよりも、あいつが暴れて参加者達を驚かせるのが本当の目的だったりするのサ!」 そう言ってキャハハハと笑うマルクに、ピエモンは呆れる。 「下らないな……」 「まぁまぁ。アイツらも団結したりしてるし、その輪を掻き乱す為にもいたほうが便利なのサ。 ――と、こんな事を離してる間にもうすぐ時間なのサ! 放送の準備準備~♪」 マルクはそう言うとせわしなく走り去っていった。 時間を見れば、確かにそろそろ2回目の放送をする予定の12時になろうとしていた。 「やれやれ……せわしない奴だ」 ピエモンは呆れたようにそう言うと、その場を離れた。 一方その頃。 猿はといえば、目を覚まし、活動を再開していた。 彼は得意のステップを刻みながらひたすら前へ前へと歩いていった。 その歩みを止める者は誰もいない。 そして…… 気付けば、彼は殺し合いの舞台として用意された地から消え去っていた。 まるで最初からいなかった如く。 【エイプマン@チーターマンⅡ 脱出】 sm95:ぼくんちのニコロワ(後編) 時系列順 sm97:Traumatize sm95:ぼくんちのニコロワ(後編) 投下順 sm97:Traumatize sm83:STORM 矢部野彦麿 sm117:震える山~歩くような速さで~ sm83:STORM アリス・マーガトロイド sm117:震える山~歩くような速さで~ sm65:貴女は奈落の花じゃない マルク sm131:黒の預言書 sm00:本日は──動画にごアクセス頂き ピエモン sm104:第二回定時放送
https://w.atwiki.jp/83452/pages/494.html
律「澪~」 澪「律!」 二人のやりとりを、いつもの様に眺める 本当に仲が良い、羨ましいな 軽音部に入ったのも、こうやって二人を見て決めたんだ 女の子同士が仲良くしてるのが好きな私だから、二人をもっと見てみたい、とか、結構軽い気持ちだったのかも知れない だけど、入部してみると本当に軽音部が楽しくなって…… みんなと音楽をやるのは凄く楽しいし、澪ちゃんとりっちゃんを見てるとすごく幸せな気分になれた 見てるだけでよかったのに…… … 律「どした、ムギ?」 紬「……えっ?な、なに?」 律「いや、ボーっと私の方見てたから……」 ……しまった、まただ 紬「なんでもないわ、りっちゃんかわいいなぁ、って思って」 適当に誤魔化す ……本音が入っちゃったけど 律「えぇ?なんだよー、照れるなぁ」 澪「バカ、調子に乗るな!」 ポコッ、と澪ちゃんぎりっちゃんのオデコを叩く 律「いてっ、ひでぇ!ムギ~、澪がいじめるよ~」 泣きマネをしながら、りっちゃんが私に抱きついてくる ……冷静に、冷静に 紬「よしよし、今お茶を淹れてあげるね」 澪「ムギ、私のも頼むよ」 紬「うん♪」 ……まったく、りっちゃんたら いきなりあんなことして、心臓が壊れたらどうするの 律「私ミルクティー!」 紬「わかったわ」 今にも飛び出しそうな心臓を鎮めるように、ゆっくりお茶を淹れる ……あぁ、もう 紬「はい、おまたせ」 律「さんきゅー!」 そういって笑うりっちゃん なんて可愛いのかしら 今すぐ抱きしめて、頬擦りして、〇〇〇して××××してあげたい ……でもそんな事はできないから、妄想だけに終わらせる 澪「あぁ!」 突然、澪ちゃんが声をあげる びっくりしてカップを落としそうになったけど、なんとか落とさずすんだ 律「どした?」 紬「びっくりしちゃったわ……」 澪「唯と和と、お茶行くの忘れてた!」 真っ青になった澪ちゃんは、ごめん!帰る!と言い残し行ってしまった ……部室には、りっちゃんと私の二人だけ 律「なんだよ澪のやつ……」 紬「まぁまぁまぁ」 急に行ってしまった澪ちゃんにりっちゃんが怒ってしまった 律「最近は和、和ってさ~、わたしゃ寂しいよムギ~」 そういって私にもたれかかってくる 嬉しい、けど やっぱりりっちゃんは、澪ちゃんがお好きみたい 律「まったく、私もムギに浮気しようかしらん」 作ったような拗ねた顔で、私の胸に指で『の』の字を書く ……そんな事言われたら、されたら 本気にしちゃうからね? 紬「いいわよ」 律「え?」 りっちゃんが頭の上に『?』マークを浮かべた一瞬で、私はりっちゃんの唇を奪った きょとん、と何が起きたのか理解できていないりっちゃん、可愛い 律「え、ムギ、今……?え?」 少しの間があって、理解したのか ホンの少し、頬をピンクに染めたりっちゃん 紬「キスしたわよ」 さらっと言う私に、りっちゃんは更に少しだけ頬を染める 律「き、キスっておま、そんな……」 紬「あら、りっちゃんが浮気しようって言ってきたのよ?」 律「あ、あれは!その……」 知ってる、冗談だってことくらい だけど、りっちゃんがそれを言う前にもう一度キスをする 律「……!む、ムギ!」 紬「……私は」 紬「私はりっちゃんのことが好きよ」 言ってしまった それも勢いまかせて……最低 あぁ、りっちゃんの顔から笑顔が消えたわ おしまい、何もかも 律「……むぎ」 りっちゃんが何か言う前に、私は逃げ出した 怖い怖い怖い怖い 壊れる、壊してしまった たった一言で、りっちゃんとの関係を 楽しいしティータイムを、軽音部を 急に目の前に壁が現れ、私は体を叩きつけてしまい 意識を失った …… 柔らかい、なんだろう 温かい、気持ち良い 目を開けると、目の前にりっちゃんの顔があった 律「おい!ムギ!大丈夫か!?」 なんだかよくわからないけど、りっちゃんが必死に私を呼んでる 応えないと 紬「りっちゃん……」 律「ムギ!?起きたが?」 意識がはっきりしない 何が起きたんだろう 紬「えっと……」 律「ムギ、急に走り出してドアに派手にぶつかったんだよ、ケガはないようでよかった……」 あぁ、そうか りっちゃんに好きっていっちゃって、そして…… ……あわわ 紬「……!」 逃げなきゃ、逃げなきゃ 律「ムギ!」 りっちゃんに捕まっちゃった きっとぶたれるわ 目を瞑って、歯を食い縛らなきゃ あぁ、でもなんだか体に力が入らない 律「……ムギ」 紬「……」 律「……あのさ」 嫌、聞きたくない 耳を塞ぎたいけど、片手を掴まれてるから片耳しか塞げない 律「あのな、ムギ」 言わなくてもわかる ごめん、ムギの気持ちは受け取れないよ 私には好きな人が 律「浮気じゃないけど、付き合ってくれないか?」 ほらね、わかってるわ、やっぱり澪ちゃんが好きなのねってえっ 律「あの、ムギ?」 紬「……りっちゃん、好きよ」 律「え?うん、私も」 あぁなんだ、夢か そうよね、きっと私はまだ気絶してるのよ だから眉毛を抜いても全然痛くなんかって痛っ! 律「む、ムギ?」 紬「……夢じゃないの?」 律「現実だけど?」 現実ってことは さっきりっちゃんが言ったことは あれ? 律「……で、どうなんだよ」 紬「え?」 律「だから!その……付き合ってくれるかってこと……」 ……どういうこと? りっちゃんは澪ちゃんを好きで 澪ちゃんもりっちゃんが好きで それで…… 律「な、なぁムギ!」 紬「あ、あの……りっちゃんは澪ちゃんと付き合ってるんじゃないの?」 律「へ?」 やだ、りっちゃん間抜けな顔 律「な、なんでそうなるんだ!」 紬「だって……すごく仲良いし」 律「み、澪はただの幼なじみだ!」 あれ? ってことは 紬「……じゃあ、りっちゃんが好きなのは私だったの?」 律「ま、まぁ……そういうことかな……」 顔を真っ赤にしてゴニョゴニョと呟くりっちゃん、最高に可愛い でもなんで私を……いや、理由なんてどうでもいいわ とにかく今日、その可愛いりっちゃんは 紬「……うふふ」 律「?」 私の恋人になった 終わり 戻る
https://w.atwiki.jp/yuiazu/pages/686.html
「やっぱりこっちが良いんじゃない?」 「えぇ~、ちょっと……派手じゃない?」 「このくらいの方が可愛いって~」 「そうかなぁ……」 「あ、すみませーん。ちょっとフィッティングお願いできますか?」 「かしこまりました。では、サイズを測りますのでこちらへ……」 うぅ……知らない人に胸のサイズを測ってもらうのって嫌なんだけど……仕方ないか……。唯やさわちゃんなら構わないのに……。 はぁ、クーラーさえ壊れなければ、今頃みんなと海で遊んでたのになぁ……。 ♪My Favorite 『○○』♪ 「あ~ちゅ~い~」 フローリングに寝転がって、唯がそんな事を言っている。 「ねぇ~、あずさぁ~、電気屋さんっていつ来るの~?」 「ん~?わかんな~い……出来るだけ早く来るって言ってたけど……」 そう言う私も、唯と同様フローリングに寝転がっている。……だって、暑いんだもん……。 「はぁ~、今の温度ってどんくらいなんだろ……あずさぁ~」 「ん~?ここからは見えないよぉ~。ゆいのところからならよくみえるでしょ~……」 「あ、そっかぁ~。どえどれぇ……うぉっ!38℃!!……はぁ、見るんじゃ無かった……」 暑さの原因はクーラーが壊れてしまったから。 洗濯を終えて窓を閉め、出かけるまで室内バカンスを楽しもうと思ったら……。 「まさか、あのタイミングで壊れるとはねぇ……」 主電源を入れ直しても、コンセントを抜いてしばらくしてから同じ事をしても、クーラーからの返事は全く無かった。 「『アイス片手にバカンス気分を先取り!』の予定だったからねぇ~。……お!そうだよ!アイス!!アイス食べようよ!!それで少しは涼しくなるよ!!」 あ……そうかも……。 「じゃぁ、アイス持ってくるね~」 私はノロノロと身体を起こし、冷蔵庫へと向かった。 ★ 「お待たせ~」 冷蔵庫には悪いけど、冷気で少し暑さを紛らわしてからグラスに盛りつけたアイスを手に居間へと戻った。 唯はさっき居た場所から少しだけズレてフローリングの『ひんやり感』を味わって……あぅ……。 「ゆーいー、その恰好はどうかと思うんだけど……」 「ほえっ?」 多分、涼しい場所を求めて転がりまくったんだろう。スカートがはだけて下着が丸見えだ。 「……水色のパンツ、丸見えだよ」 「えっ!?あっ!……いやん、梓のエッチ……」 なっ!? 「エ、エッチって……唯がそんな恰好で居るから見えちゃったんでしょう?」 「そりゃ、まぁ、そうだけど……」 全く……自分がいけないのに、そんな事言うなんて……。そうだ! 「じゃぁ、今のは唯が悪いって事で、アイスは没収ね」 「そ、そんな!」 ふふっ、折角アイスを持ってきたのにそんな事を言った罰だよ。 「いただきまーす……んー!ヒンヤリしてて美味しい!」 唯はというと、指をくわえて恨めしそうにこちらを見ている。……ちょっと、かわいそうかな? 「あずさぁ~、もうあんな事言わないから~」 「……本当に?」 「うん!約束します!」 はぁ……まぁいいか……。あんまりやると後で色々と言われるし……。 「しょうがないなぁ~。約束だよ?はい、どうぞ」 「おぉ~!アイス~!ありがとう~!!……はぁ~、ヒンヤリするねぇ~」 唯はアイスの入ったグラスを両手で包み、ヒンヤリ感を楽しんでいた。 「唯……溶けちゃうよ……」 「はうっ!早く食べてあげないと……あれ?スプーンは?」 ん?……あ! 「ごめん……忘れてた。今持ってくるね」 ★ 「持ってきたよ~。……って、何してるの?」 唯お気に入りの『くまちゃんスプーン』を持って居間に戻ると、唯は床に寝転がったまま、目の前に置いたアイスを見つめていた。 「……アイスが『溶ける前に早く食べてー』って言ってる感じがするから、『スプーンが来るまで頑張れ!』って念を送ってるの」 ……はぁ……なんだかなぁ~。 「……で、アイスは溶けずに済んでるの?」 「えへへ~、やっぱり無理みたい」 私の問いに、いつものほんやりとした笑顔で答えた。 ……いつ見ても、この笑顔には癒されるなぁ~。 「あずさ~、スプーンは~?」 はっ!!いけないいけない。唯の笑顔に見惚れててスプーンの事忘れてたよ。 「はい、どうぞ……って、受け取る時位立ち上がってよ~」 「別にいーじゃん、ありがと。……ん?」 「な、何?このスプーンじゃないほうが良かった?」 スプーンを受け取った唯は、そのままの姿勢で私をジーッと見ている。 「ど、どうしたの?」 アイスが溶けるのも構わず、上半身を起こした姿勢のままで。 「梓……あのさぁ」 「な、何?」 えっ?一体何を言われるの?実はバニラアイスじゃなくてチョコアイスが食べたかった? 私があれこれと考えを巡らせていると、唯は私の顔を見つめて意外な言葉を発した。 「その恰好ってさ、もしかして……『私のイチゴもトッピングしてね』って意味?」 ∵ ……一瞬思考がフリーズしていたらしい。 「ご、ごめん。よく……わからないんだけど……」 「えぇ~、あんな恥ずかしい台詞をもう一回言うの~?」「あ、台詞もそうだけど恰好って……そんなに変かな」 「えー、だってさぁ……」 そこまで言うと、唯は再び私を見つめた。 私の恰好ねぇ……。変な所、あったっけ……? 「別に何時もと同じ恰好だけど……へっ!?あっ!!にゃぁぁぁ!!!」 この時期、家事をこなすと必ず汗をかく。 汗をかいたら気持ち悪いので、必ずシャワーを浴びる。 だから、当番の日の朝は、ほぼ必ず『ノーブラ』&『動きやすい服』だ。 因みに今朝はかなりゆったりサイズのTシャツと短パンを着用している。 その恰好で前屈みになったのだから……。 「うーん……良い眺めだねぇ~」 私は慌ててシャツの胸元を押さえ、しゃがみ込んだ。 「も、もぉ!唯の方がエッチじゃない!」 「まぁいいじゃん、おあいこって事でさ……よっと」 唯は掛け声と共に起き上がり、床に座り込んだ。 「『おあいこ』って……下着と生身じゃ釣り合わないじゃん……」 「ほらほら~、ぶつくさ言ってないでさ、溶ける前にアイス食べちゃお。電気屋さんも来るだろうし」 「……むぅ……」 私は不承不承ながら唯の言葉に従った。 「なーに?不満そうな顔しちゃって……」 そりゃ、不満だよ。当たり前じゃないの。 私がむくれていると、不意に唯が顔を近づけ耳元で囁いた。 「じゃぁ、デザートに『さくらんぼ』、食べてみる?」 「んなっ!!!」 な、何をいきなり……。 てか私がむくれていたのは『下着』と『生身』が釣り合わないって思っていたからなだけで。 別に『さくらんぼ』が食べたいって訳じゃなくて、でも食べられるなら食べたいなぁー。 あ、でもまだ昼間だよね、やっぱり明るいうちからってのはまずいよねぇ。んー、でも明るいと色々と見ることが出来てそれも良いかも。 「唯の『さくらんぼ』自然の光だといつも以上に美味しそう」「梓の『イチゴ』も同じくらい美味しそうだよ」とか言ったり。 「唯、『あずき』には蜜をたっぷりかけて食べてね……」「梓……美味しく食べてあげるからね」とか言っちゃったりして……。 あ、でも部屋だと暑いからお風呂場ってのも良いかもね。 お互いにシャワーをかけながら「ほら、梓の『イチゴ』が水に濡れて美味しそう」「唯の『さくらんぼ』だって、今すぐ噛み付きたいくらいだよ」なんて耳元で囁きあったり。 ぬるいお湯を張った湯舟に入って「あ、『さくらんぼ』が浮かんでるよ」「『イチゴ』は沈んだままだねぇ」「……イジワル……」「でも、触って軟らかさを確かめる事はできるよ」 なーんて、なーんて!むきゅー!ひゃぁー!うきゃー! 「あの~、梓さん?……アイス、食べないんですか?」 「はっ!!!」 しまった……妄想が大暴発してた……危ない危ない。 「……大丈夫?」 「あ、あぁ、うん。大丈夫……だよ……あはは……」 「そぉ?なら良いんだけど……ほら、溶けてきてるよ」 その言葉にグラスを見ると、アイスが半分位溶けて下に溜まっていた。 「私のアイス……。もぉ……唯が変なこと言うからだよ」 「変な事って……確かに言ったけど、その後の『妄想』は梓が勝手にしてただけじゃん」 ……へっ!? 「エット……ワタシ……ナニカイッテマシタカ」 「んもぉ……別に何も言っていないよ。……ただ……」 「……ただ!?」 「ただ……真面目な顔だったのが、急ににやけだして、かと思えばボーッとなって、次の瞬間には『にへ~』って笑って、おまけによだれまで口の端に浮かべてたら……」 「はい!OK!わかったから!それ以上は言わないで!お願い!!」 「まぁ……妄想するのも悪くはないけど……アイス溶ける程に妄想し続けるのはどうかと思うよ」 「はい……以後、気をつけます……」 はぁ……自業自得とは言え……恥ずかしい……。 「……で、どうする?」 一足先にアイスを食べ終えた唯が変な問いかけをしてきた。 「どうするって……何を?」 僅かに残った『固形』のアイスを食べつつ、質問を返す。 「え~、……電気屋さん、まだ来ないよね」 「……多分ね」 すると唯はグイッと私に顔を近づけて、こんな事を言ってきた。 「じゃぁさ……『デザート』、食べない?自然の光に照らされた『イチゴ』って、……美味しそうな気がするんだよねぇ……」 !!!!?な、な、何をいきなり……!? 「ねぇ……梓は……どうする?」 そ、そんな、艶っぽい声色で言われたら……。 はっ!!ダメダメ!!これは唯の作戦よ!!引っ掛かってなるもんですか!! 「そ、そんな声で言ったってダメだよ!暑いんだし、電気屋さんが来る前にシャワー浴びて着替えるんだから!」 私はそう言い放つと、二人分のグラスとスプーンを手に持ち台所へと向かった。 「シャワーねぇ……。あ……濡れた『イチゴ』ってのも美味しいかも……」 ……その一言に動揺して、ドアのレールに足を引っ掛けて転んだのに、持っていたグラスを落として割らなかった私を、誰か褒めて下さい……。 # 「では、失礼致します」 『ありがとうございましたー』 あの後、取り敢えず唯に『ウメボシの刑』を与え、シャワーを浴び、新しい服に着替えて……勿論ブラも着けて……少ししたら電気屋さんがやってきた。 どうやら原因は電源部の基盤にあるらしく、そこを交換したらすぐに動き出した。 「電気屋さんも大変だねぇ~」 「そうだね~」 汗だくになっていたので、冷えた麦茶と一口チョコを幾つかお盆に乗せて持って行ったんだけど……。 「やっぱり、この猛暑で故障が相次いでいるみたいだね~」 この後何件か設置と修理に行かなくちゃならないと言って、麦茶だけ一気飲みをして慌ただしく車に戻っていった。 「で、これからどうする?」 居間に戻り、手をつけなかったチョコを食べながら、唯がそんな事を聞いてきた。 「どうするって……特に予定は……晩御飯の買い物くらいかなぁ~」 「そっか~。あ~あ、クーラーが壊れてなければ……」 唯が残念そう呟いた。そうだよね……今頃は海で思いっ切り遊んでいたはずだもんね……。 「むぅーん……お!そうだ!ねぇ、買い物行こうよ!」 「へっ!?今から晩御飯の買い物に行くの?」 「そうじゃなくて……まぁ、それも買うけど……。梓、最近ブラがきつくなってきてない?」 「んー、そうじゃないのも有るけど……きつい方が多いかな?……ってなんでわかったの?」 「えー、だって……着けてあげる時、たまにきつい感じがするから……」 「それもそっか……って!恥ずかしい事を素で言わない!」 「別に良いじゃ~ん、誰も居ないんだし。よし!という訳で、これからブラを買いに出かけるよ!ついでにランチも食べに行こう!ブラ&ランチ、略して『ブランチ!』」 「……別に通販で良いじゃん……てかその略し方はどうなの……?」 ブラとランチが逆じゃん……という言葉は敢えて飲み込んだ。 「通販も悪くはないけどさぁ、たまにはちゃんと測って買うのも良いよ~。絶対に『着け心地』が違うから~」 『着け心地』ねぇ……。 「……それにしても珍しいよね。唯がこんなに外出したがるのって」 「……だってさ……今日は朝から『外モード』だったから……」 それもそうか、みんなと遊ぶのをあんなに楽しみにしてたんだもんね……。 「よし!じゃぁ、行こうか!あ、そのかわりランチは唯のおごりね」 「オッケー!任せといて!この間食べて美味しかったお店があるんだよ。次は梓と一緒に行こうって思ってたんだ~」 「それじゃ、エスコートお願いしますよ、ゆ・い♪……ふふっ」 「かしこまりました。梓様!……えへへ」 ……二人でランチかぁ~、久しぶりだなぁ。 # 「美味しかった~、ごちそうさま」 「どう致しまして。ね、良いお店でしょ?そんなに込んでないし」 「そうだね~。また来たいなぁ~」 良かった……『私のお気に入り』、気に入ってもらえたみたい。 「さて、じゃぁ次は……買い物……かな?」 「そだね~。んーっと、こっちだよ~」 さて、次の『私のお気に入り』はどうかな?梓も気に入ってくれるかな? ★ 「いらっしゃいませ……あら唯ちゃん、久しぶり~」 「店長さん、お久しぶりです~」 「丁度良かったわ~。唯ちゃんの好きそうな新作が、先週出たばかりなのよ~。ねぇ試してみ……あら?……唯ちゃん、あそこでこっちをジーッと見ているのって……」 店長さんが指差す方向を見てみると……おぅ、本当だ。……誰かさんがディスプレー棚の陰に隠れてこっちを窺ってる。 「あずさぁ~、そんな所に居ないでこっち来なよぉ~」 私の呼び掛けに、「う……うん」と小さく返事をして、トコトコとまるで子供のような足取りで歩いてきた。 「あ、やっぱり梓ちゃんだ。初めまして、店長の水野です」 「は、初めまして。えと、中野梓です。今日はよろしくお願いします」 「よろしく……?あ、じゃぁ今日は唯ちゃんじゃなくて……」 「そぉでーす。今日は梓の下着を買いに来ましたー」 「へぇ……梓ちゃん、こういったお店は初めて?」 「はい……高校生の頃から通販で済ませていたので……」 「んー、通販も悪くは無いんだけどね~。出来ればきちんと測って自分に合った物を着けた方が良いわよ。着け心地の良さだけじゃなく肩凝りが良くなったりするんだから」 「唯にも同じ様な事を言われたんですが、やっぱりそうなんですか」 「そうよ~。それじゃ、まず始めに梓ちゃんのカルテを作るわね。えっと……ここに腰掛けてもらって……この用紙に氏名・生年月日・住所・電話番号……」 梓がカルテに記入し始めたので、私は店長が言ってた『新作』をチェックし始めた。 おぉ、ピンクの花柄……カワイイなぁ、こっちは……レース付きのライトブルーか……ちょっと派手かなぁ……ん?これは……。 「店長さーん、やっぱり私も買いますね~。フィッティングお願いしま~す」 私がそう言うと、梓の相手を他の店員さんに任せて私の方へやってきた。 「あらそう、気に入ったのが有ったの?」 「はい、これなんですけどね……なんだか、気に入っちゃって……ほら、前に店長さんが『これだと思った時が買い時』って言ってたじゃないですか」 「よく覚えてたわねぇ、そんな事……。それじゃ、フィッティングしましょうか」 そう言うと、店長さんは私の選んだブラをチェックしてフィッティングルームに向かった。 「あずさぁ~、先にフィッティングしてるから~」 「わかった~」 ★ フィッティングを終えて部屋を出ると、梓がブラの選定をしていた。 「お待たせ……どぉ?気に入ったの有った?」 「うーん……いっぱい有りすぎて目移りしちゃうよ……はぁ~、どんなのが良いんだろ……」 「そうだなぁ~、やっぱりこういったのは『これだ!』って感じた物を選べば良いんじゃない?」 「それが難しいんじゃない……。むぅ……」 随分と悩んでいるなぁ……あ、でも私も最初はそうだったなぁ~。よし!ここは一つ見立てでもしてみますか。 「これなんかどうかなぁ」 私が選んだのはクリーム地に苺柄でフリルが付いている物。私の見立てではかなり梓に似合うとおもう……けど……。 「うーん……私って、そんなイメージ?」 「うん、こんな感じだと思うんだけど……じゃぁこれは?」 次に選んだのは白の総レース。薔薇の柄が大人っぽさを醸し出している。 「総レースは……ちょっと……恥ずかしいよ……」 「んじゃ、これならどぉ?」 私のお気に入りでもあるライトブルーのシンプルなブラを差し出した。 「……これって、唯が持ってるのと一緒じゃん……」 「あ、ばれた?下着で『ペアルック』ってのも良いかなぁ~って思ったんだけど」 「……流石に、それは、どうかと……」 そっか……じゃぁ。 「やっぱりこっちが良いんじゃない?」 そう言って差し出したのは、最初に選んだ物。 「えぇ~、ちょっと……派手じゃない?」 「このくらいの方が可愛いって~」 実際、梓によく似合うと思うんだけどなぁ~。 「そうかなぁ……」 よし、それじゃぁちょっと強引に……。 「あ、すみませーん。ちょっとフィッティングお願いできますか?」 「かしこまりました。では、サイズを測りますのでこちらへ……」 不承不承ながら、梓は店員さんの後をついていった。 どうかな~、気に入ってくれるかな~。 ★ 「あ、支払いはカードでお願いします」 「かしこまりました」 ふふっ……やっぱり私の見立ては間違っていなかったみたい。 「それでは、商品はこちらになります。お手入れの仕方を書いた紙もいれておきますね……。お買い上げ、ありがとうございました」 梓が購入したのは私が最初に選んだ物だった。フィッティングルームで実際に着けてみて、自分に似合っている事を実感したみたい。 「それじゃ、唯ちゃん、梓ちゃん、また来てね……っと、いけないいけない。それでは、またのご来店をお待ちしております」 「店長さ~ん、わざわざ言い直さなくても大丈夫ですよ~。私達相手なんですから~」 「あら、そうはいかないわよ。『一応』お客様なんだし……」 『一応って言われた!?』 あぅ……酷いよ店長さん……思わず梓とハモっちゃったじゃない……。 「ごめんごめん……でも、けじめとして最後はきちんとしないとね」 店長さん……変にこういった所で真面目なんだよなぁ~。ま、そのギャップのおかげでこのお店が人気なんだけどね~。 「んと、じゃぁ、また……来ますね」 「おぉっ!梓、今の本当!?」 「うん。お店の雰囲気も良いし、店長さんだけじゃなく店員さんも良い人ばかりだからね~」 「そ?ありがと。じゃぁ改めて……。本日は、お買い上げいただきありがとうございました。またのご来店をお待ちしております。……それじゃ、またね」 『はい!』 ★ 「ねぇ、梓。さっきのって、本当?」 「さっきの……?何の事」 お店を出てしばらく歩いたところで、梓にお店の事を聞き直してみた。 「さっき、お店を出る時に『また来ますね』って言ってたでしょ?それの事」 「あぁ、それね……。うん、本当だよ。……唯に感謝しなきゃ、あんなに良いお店を紹介してくれたんだから……、ありがとね、唯」 「えへへ……どういたしまして」 良かった……また一つ、『私のお気に入り』を気に入ってくれたみたい……。 「あ、所でさぁ、唯は一体どんなのを買ったの?」 「……見たい?」 「な、何を……こんな所で見るわけにはいかないでしょ?」 「まぁね~。買ったのはね……サクランボ柄のブラだよ。帰ったら見せてあげるね」 「いや……別に……見たいわけじゃないんだけど……」 ふふっ……あんなに顔を赤くしちゃって……あ!そうだ!赤くなるついでに……。 私は梓のそばに近づき、近くに人が居ない事を確認して小声でこう伝えた。 「なんなら……私の『さくらんぼ』も、見せてあげるけど?」 「なっ……こっ……こんな人通りのある道の真ん中でそんな事言わないの!」 「別にいーじゃーん、聞いてる人なんか居ないんだし。……さ、次は晩御飯のお買い物にレッツゴー!」 さーてと、今日の晩御飯は何をつくってもらおうかな~。……あれ?梓は? 不思議に思って振り向くと……。 「ゆーいー!そっちじゃないよー!!もぉ……先行ってるからねー!!」 あれ?もしかして……間違えた!? 「あぁん……待ってよぉ~!!」 私の叫び声が、午後の町中に響き渡った……。 ★ 「ふぅ、おなかいっぱーい……ごちそうさまでしたぁ~」 晩御飯を食べ終えた私はソファーに横になった。 「はい、おそまつさまでした」 今夜のメニューは梓特製の『ハヤシライス』。……これも、『私達』のお気に入りだったりするんだけどね。 「ゆーいー、お腹落ち着いたら先にお風呂入ってて良いよ~」 「そ~お~?……じゃぁもう少ししたら入るよ~」 珍しいなぁ……何時も必ず先に入るのに……。 ★ 「ふぃ~、気持ち良いなぁ~」 今日は朝から色々と大変だったからねぇ~。しっかりと身体をほぐして疲れをとらないと……ん? 湯舟に浸かってリラックスしていると、磨りガラスになっているお風呂のドアに人影が見えた。 「……梓?どしたの?」 「……」 梓からの返事は無かった。代わりに、服を脱ぐ衣擦れの音がお風呂場に響いている。 「ねぇ~、あずさぁ~」 「ゆ、唯……入る……ね……」 そう言って入ってきた梓は、どことなく色っぽくって……普段と変わらないはずなんだけど、何故かそんな雰囲気を漂わせていた。 「梓……ど、どうした……の?」 思わず私は上半身を湯舟から乗り出してそう聞いた。 「あのね……朝、唯が言ったでしょ……『じゃぁ、デザートに『さくらんぼ』、食べてみる?』って……。私……その時から……おなか……すいちゃってたみたい……」 「え、あ、確かにそう言ったけ……んむっ」 私の抗議の声は、梓の唇によって中断させられた。 湯舟の中と湯舟の外、今までに無かったシチュエーション。 今、私の身体が熱いのは、きっとお湯に浸かっているから……だよね……。 「ねぇ……わたし……『さくらんぼ』……食べたい……な……」 唇を離した梓は……そんな事を言っている……みたい。なんだか……身体が……ふわふわしてきた……。 「水に濡れて美味しそう……ねぇ……唯……良いでしょ……?」 「んぁっ……」 私が……良いって言う前に……梓……『さくらんぼ』……たべはじめちゃった……。 「……おいしいよ……唯……」 「んふぅ……ふぁ……」 ふわふわ……ふわふわ……なんだか……ボーッとしてきたな……。 でも……私も梓に……言いたい事が……あるんだよね……。 「んんっ……あ、あずさぁ……」 「……な~に?」 「わたしも……おなか……すいちゃっ……た。……『いちご』……たべたい……な……」 「……良いよ……じゃぁ……お風呂出たら……たべよっか……」 「……うん……」 その晩……私達の寝室からは……。 「ぅん……『さくらんぼ』……おいしい……」 「ひぁっ……ぁあっ……い……『いちご』……も……おい……しい……よぉぉっ!」 そんな声だけが……響いていた……。 # 「ただいまー」 「おかえりなさーい……あら?お土産?」 「うん、スタッフの人に、絢音がウチに来て丁度一年だって言ったら、絢音にプレゼントだって~。……ところでその当人は?」 「あ、歯磨きしてるよ」 ほぅほぅ、それは好都合……。 「あーやーねっ!」 「あ!ママ~!おかえりなさーい」 「ただーいま。……歯磨きは終わったかな?」 「うん!今終わったよ!……な~に?手に持っているの……?」 「絢音へのお土産、歯磨き終わったのなら、食べても良いよ~」 「あ、イチゴだ~。ママ、ありがと~」 「どういたしまして……。食べたらちゃんと寝るんだよ」 「はぁ~い」 ★ 「よく寝てるよ……。疲れているのかなぁ?」 「あぁ、そう言えば帰ってきていきなり『はぁー、今日は体育で疲れたー!』って言ってたから、そうかもしれないわね」 ふぅん……。じゃぁ、今夜は目を覚ます事、無いよね……。 「ふぁ……私もちょっと眠いかな……。唯は?まだ起きてるの?」 「ん?あぁ、私も寝るよ……歯磨きして、苺を食べてからね」 「あ、私も歯磨きしたら食べておこーっと」 ★ 「お休み、唯……」 「お休み、梓……」 寝る前には必ず、梓にお休みのキスをしてから眠る……んだけど……今日は……特別に……。 「ん……ちゅ……んむ……」 「んん……ぷはぁ……。ど、どうしたの?唯……」 「梓……『いちご』が食べたいんだけど……良いよね……」 「え?あぁっ……ん……んんっ……」 「『いちご』……おいしいよ……。ねぇ……『さくらんぼ』……食べる?」 「ふぁっ……はぁっ……んくぅっ……た……んあっ……たべ……たい……な……ぁあんっ……」 ふふっ……じゃぁ…… 「一緒に……『デザート』……食べよう……ね……」 おしまい!! 何この隠語の群れw -- (名無しさん) 2010-08-24 19 13 23 この〜子持ちのラブラブ妻妻め! -- (あずにゃんラブ) 2013-01-17 19 32 12 名前 感想/コメント: すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/p_ss/pages/753.html
Side N それにしても、このままじゃ、あ〜ちゃんの家にも帰れんし。 ゆかちゃんが言うように、仕事だって出来ん。 とりあえず今日は泊まる予定だったから、良いとして。 明日…も幸いなことにオフだから問題ないね。 ちゅうことは、明日中になんとかしなくちゃいけんいうことか。 ちびあ〜ちゃんも目を覚まして、今はゆかちゃんと遊んでる。 というか、何か話してる。 やっぱり気は合うらしい。まぁ、見た目が変わっただけで、あの子はあ〜ちゃんだもんね。 それにしても、目を覚ました時の、ちびあ〜ちゃんの反応はなんだったんだろ? なんか起きそうだなと思って、顔を覗きこんでんたんけど。 まだ眠そうに目を擦って、ふっと視線が合ったら、しばらく動きが止まって。 で、急に持っていたクマさんのぬいぐるみを、ばふっと顔に押し付けられて。 何事かと思ってる間に、そのまま、ゆかちゃんの後ろへと隠れちゃったんだよね。 さっきまで、膝の上にあった温もりがなくなって寂しいです…。 なんて、しょぼんとクマさんとイジイジしてたら、またトコトコやってきて。 「ちょっと、あ〜ちゃんびっくりしたんょ。ごめんなしゃい。」 ちょっと言い難そうにしながらも、でも謝ってくれて、今度はあたしの手にあったクマさんで撫で撫でしてくれた。 うぉぉおおwwなんてカワユイんだw 抱きしめたい衝動に駆られてると 「…あ〜ちゃん?」 ゆかちゃんが呼ぶ声。それに反応してちびあ〜ちゃんが振り返る。 「えっと。一応はじめまして。わたし、ゆか。ヨロシクね?」 「ゆかたん?」 「そ、ゆかたん。」 おぅ。ゆかちゃんの笑顔が眩しいです。 そして、同じようにニコッと笑うちびあ〜ちゃんの笑顔も、最高じゃないっすか! しかも…ゆ、ゆかたんっ!なんか良いかも…。 試しに呼んだら怒られたぁ…。可愛いのにぃ。 ……とまぁ、そんな感じで今に至るわけで。 クマさんに視界を遮られる直前に見えた、ちびあ〜ちゃんの表情はビックリというか、 なんか照れたように見えたんだけどな〜。 でも、目が覚めて、あ〜ちゃんちの風景と違ってビックリしたってのもあるだろうし…。 うぅww分からん! 一人で、う〜、とかあ〜って唸っていたら、近づいていたちびあ〜ちゃんに気付かなくて。 「にょっち!」 勢い良く抱きついてきたちびあ〜ちゃんに負けて、床に倒れてしまった。 しかも、にょっちって…。 「テテ・・。あ〜ちゃん、なんでにょっちなん?」 軽く打った頭を撫でながら聞いてみる。 「う?ゆかたんが、その方がにょっち喜ぶ言ぅちゃけぇ。」 「ぇえ?ちょっと、ゆかちゃん。変な呼び方教えんでよ〜。」 「だって、ちびあ〜ちゃんが言うと可愛いじゃん?」 ま、そうですけども。 「…にょっち、ぃやなん?」 悲しげな表情で見てくるちび〜ちゃん。 「いっ、ぃや!そ、その、ね?あ〜ちゃん。そういう訳じゃなくてじゃな?」 そ、そんなうるうるなお目目で見つめないでぇw 「…にょっちって呼んでくらはい。」 「にぇへへぇ。にょっちじゃにょっちぃ〜♪」 あたしの上で足をぱたぱたさせて喜んでる。 負けた…。 お父さん、お母さん…のっちは完敗しました。今日からにょっちになります…。 ぷぷって笑うゆかちゃんの声。 「のっち、ホンマちびあ〜ちゃんに弱々じゃね〜。」 「しょうがないじゃろ?こういうあ〜ちゃんには慣れとらんのよぉ。も〜。」 「?あ〜ちゃん?」 あ〜ちゃんという名前に反応するちびあ〜ちゃん。 「ん?そうだよ?あ〜ちゃんよりもっとお姉さんのあ〜ちゃんの事。」 「おりゅの?」 「うん。あ〜、でも今は会えないけど。」 「しょうなん?」 「ふへへ、そうなの。」 「おっきあ〜ちゃんどんな人ぉ?」 とりあえず起き上がって、再びちびあ〜ちゃんを膝の上に座らせる。 「一言で言ったら可愛いに尽きるんけど…。」 そう話し出すと、なぜか恥ずかしそうにしてるちびあ〜ちゃん。 名前が同じだからね。てか実際は本人だけど。 「あと気配りが凄いし、料理が上手い。それからよく泣くんだけど、にょっち的には笑顔に負けんくらい泣き顔も可愛いと思っとる。」 本人を目の前にしてるけど、記憶が無いおかげでスラスラ言葉が出てくる。 なんかもう、言いたいこと言っちゃお。 「…んでぇ、にょっちはそんなあ〜ちゃんがだ〜い好きなんよ。」 きっと、本来のあ〜ちゃんには伝わらないけど。 目の前のちびあ〜ちゃんに、最高の笑顔を送る。 ちびあ〜ちゃんは、恥ずかしそうにクマさんをギュッて抱きしめて、ぼそっと何かを呟いた。 「ん?何?あ〜ちゃん。」 「なっ!にゃんでもにゃい!」 よく聞こうと思って耳を近づけた所に、思いっきり叫ばれて耳がww そんなあたし達のやり取りをみて、さっきから笑ってるゆかちゃん。 も〜、他人事なんだからぁ。 あぁ、でも、この感じ。やっぱあ〜ちゃんだな〜。 ぐぅ〜・・・・。 ん? 音のした方へ視線を向けると、そこには顔を赤くしてあたしを見上げるちびあ〜ちゃん。 「にょっちぃ…おなかしゅいたぁ。」 「あ。」 ちびあ〜ちゃんの言葉に、買出しを忘れてたのを思い出した。 「うわ〜。やっばい。買出し行っとらんけぇ、何もないんよ…。」 「うそぉ。マジで何もないん?」 「ん〜、かろうじてカレーが作れるくらいじゃと思う。」 そう言うとちびあ〜ちゃんが、あたしの膝から立ってトコトコ台所へと歩いて行く。 そして、いつもあ〜ちゃんがするみたいに、冷蔵庫をがバッと開けて中を確認。 指差し確認が終ると。こっちへ向き直り。 「カリェーともぅ一品、あ〜ちゃんちゅくっても、ぇえ?」 「ぅん・・・。ん?ちょちょちょ、待った!あ〜ちゃん危ないけぇ、にょっちがちゃんと作るけぇ。 あ〜ちゃん待っとってよ。ね?」 なんの違和感もなく言ってきたちびあ〜ちゃんに、なにげなく返事したけど。 慌ててちびあ〜ちゃんに駆け寄って、部屋へと連れ戻す。 「ぇえ?あ〜ちゃんちゅくるぅwちゅくりたぃw」 「ぃや、でも危ないしぃ…。」 ジタバタするちびあ〜ちゃんを必死に抑えながら、助けを求めてゆかちゃんに視線を送る。 「のっち、折角だし作ってもらえば?」 「ゆ、ゆかちゃ〜ん。でも〜。」 なんでよ!何故ちびあ〜ちゃんの味方なんよ? 「あ〜ちゃんの手作りじゃよ〜?何の問題があるんよ?」 「そりゃ、美味しいのは折り紙付きじゃけど…。」 「心配なら、のっち手伝えば良いじゃろ?」 まだ迷いながらちびあ〜ちゃんの方を見ると…。 あ、ダメだ。 めっちゃおねだりな目で見られてたぁ。 「ぅ〜わっかりましたよぅ!にょっちも手伝うけぇ、あ〜ちゃんにお願いします。」 「わーい!やったぁ〜。ゆかたんありがとぅ。」 手をぱちぱちしながら喜んでるちびあ〜ちゃん。 そんなちびあ〜ちゃんは椅子を台にしながら、あたしの心配を余所にチャキチャキと料理が進んでいって。 ん〜〜。あたしはいるんだろうか?と悩んでみたりして…。 ちびあ〜ちゃんに指示されながら、あたしは野菜を切る担当に…。 そんな感じで、あっという間にカレーを煮込むだけになり…。 はや…。 「にょっち、どぅしたん?」 軽く落ち込み気味のあたしに声を掛けてくる、ちびあ〜ちゃん。 「心配いらんかったな…と思って。ちゃっちゃと終ったし。」 「しょれは、にょっちが手伝ってくれたけぇに。」 Side K のっちとちびあ〜ちゃんがカレーを作ってる間、あたしは一人テレビを見ながら待っていた。 そろそろかな〜と思いながら、台所を覗いてみると、なぜかしょぼくれてるのっち。 きっと、あ〜ちゃんの手際が良すぎて、しょぼくれとるんかな。 あ、のっち頭撫でられてる。 あ〜ちゃん、あんなにのっちデレデレにしちゃって…。 普段やってあげたら、もっと喜ぶのにぃ。まぁ、出来たらとっくにしてるかぁ。 天真爛漫で、誰とでもワイワイして、『カッコイイ!』とか『可愛い!』『大好き!』っていろんな人に言ってるけど。 好きな人となると話は別らしく。途端に、そう言うことが出来なくて、逆に悪態をついてしまう。 特にのっちとは昔から一緒に居るからっていうのもあってか、そうなり易いみたい。 あたしもそうだけど、あ〜ちゃんののっちに対するソレには敵わないと思う。 のっちはのっちで、あ〜ちゃんとは反対に、聞いてる方が恥ずかしくなるなるようなことをポンポン言ってあ〜ちゃんに怒られる始末。 お。あ〜ちゃんが戻ってきた。 「カレーできた?」 「ぁと、にょっちが煮込んでくれるけぇ、もぅちょっとだよ?」 預かっていたクマのぬいぐるみを渡すと、大事そうに抱えて隣に座ってくる。 「それにしてもさ〜。のっちデレデレし過ぎだけどさ〜…。」 途中で止めると「ん?」て顔で見てくるあ〜ちゃん。 「あ〜ちゃんものっちに甘すぎじゃない?」 途端にボンッて音が出そうなくらい真っ赤な顔になって、手元のクマさんに顔を埋めるあ〜ちゃん。 「だ、だってぇ、いちゅものあ〜ちゃんじゃぁ出来んけぇ…。ちびっちゃい内なら良ぃかにゃってぇ…。」 つまり、ホントはいつもしたいと…。いやぁ〜、のっちちゃんと愛されとるねぇ〜。 クマさんの手をクイクイいじりながら、恥ずかしそうに言ってる姿が異様に可愛い。 のっちじゃなくても萌えるよコレ? 「じゃけぇ、にょっちには絶っっっっ・・・対!あ〜ちゃん記憶あるのにゃいしょにしとってね??」 必死な顔でお願いされちゃった。ちびあ〜ちゃん良いかも…。ってあたしはのっちかい! そうは思ったけど、勝手に口が動いちゃって…。 「じゃあ、代わりにあ〜ちゃん抱っこさせてぇ?」 なんてお願いしたら、なんだかよく分からない顔をしながら「ええよぉ?」って言ってあたしの膝の上にちょこんと乗っかってきた。 ゃん♪あ〜ちゃん可愛ぃぃ♪ やっぱ、あ〜ちゃんの抱き心地良いわ〜。 …あ。そうそう、そうなんよ。あ〜ちゃんの記憶。 実はちゃんとあったりなんかして。 だから、のっちには悪いけど、今までのちびあ〜ちゃんに関する、あ〜ちゃんとあたしの台詞と行動はほとんどお芝居だったんよね〜。 —つづく—
https://w.atwiki.jp/legends/pages/2722.html
「ところで、翼」 話し合いが、無事終わったところで 詩織が、くいくい、と翼の服の裾を引っ張って、尋ねる 「翼は、親と仲直りしたんなら…これからは、そっちと一緒に暮らすの?」 「いいや」 きっぱり 翼は、即答する 「お前等の事心配だし、今まで通りだよ」 「…別に、心配されなくても平気よ?」 望は、そう言うのだが 翼は、更に続ける 「……あえて言うなら、家事方面が心配なんだよ、主に料理」 翼の言葉に、つつ、と視線をそらす望と大樹 ……大分、望に料理を教えてきたつもりだし そろそろ、望も恐ろしい食材はあまり、使わなくなってきたが まだまだ、油断はできない 今でも、時々油断すると、虫料理とか作ってくるし 「ほんとに、そいつらの事が大事なんだねぇ?」 マドカの、その言葉に あぁ、と、翼は誇らしげに、笑った 「俺は、大樹達の事が好きだから。大切な家族だからな」 きっぱり、はっきりと言い切った翼 その言葉には、一切の迷いは、ない …若干の誤解を含んだ視線が翼に向けられたのだが、翼はそれに気付いていない 「……そうか…それなら、それでいいのだが」 「?爺ちゃん、どうしたんだ?」 何か、色々と達観した様子の宗光の言葉に、首をかしげる翼 本当に、何も気付いていない いや、何も、と宗光は言って……ため息をついて、顔をあげた 「………すまないが……私と千鶴で、少し、マドカに話があるので、席をはずしてくれるだろうか?」 「??あぁ」 黒服達と共に、立ち上がる翼 …この、瞬間 望のポケットの中で、ノロイが何かを感じたように、ごそごそと落ち着きを失っていた 「…あぁ、話し合いは終わったかい?じゃあ、こちらに」 す、と 襖が開き、薫が顔を出す 翼達を伴って、部屋を出て …そして、部屋にはマドカ、宗光、千鶴の三人が残される 「…翼は、本当に。あの大門 大樹と言う青年に惹かれているのだな」 「……あぁ……小学生の頃に会って以来、ずぅっと懐きっぱなしさね」 「そうか……その頃から、か」 遠い目をする宗光 何か、悟ったような表情だ 「マドカ……その頃に、翼をその道から、引き戻す事はできなかったのか?」 「そりゃ、あたしだって同性同士はどうかと思ったから、どうにかしようと思ったけど…「あ、道踏み外してそう?」って気づいた時には、遅かったんだよ」 …当人達がいないからと、誤解全開の会話である 翼がいれば、突っ込みに忙しくなりそうな現状だ 「そう、何とかしようとはしたのですね。面白がるのではなく」 「……ちょいと、母ちゃん。あたしを何だと思ってるのさ?」 「そう言う娘だと思っていますよ?」 ……沈黙 やや、空気が気まずくなる 「そりゃあ…あたしは、どう言う娘だと思われているのかねぇ?」 「考え無しの直情娘だと思っているが」 「男を見る目がない事は、秀雄さんの件で十二分にわかっていますよ」 「秀雄をあたしの見合い相手に連れて来たのはあんたたちだろうがっ!?」 流石に、反論するマドカ が、宗光達も、その点に関しては視線を逸らしつつも、それ以外を否定する気は一切合財、ないようで そして、マドカとしても、そこまで言われて、怒らない訳がなく 「……翼がいる前じゃあ、喧嘩する気にもなれなかったけど…やっぱり、あんたらとは、一回決着つけないといけない気がするよ、糞爺に鬼婆……!」 「あらあら、相変わらずですこと」 ころころと、千鶴が笑う ……が その手元には、いつの間にやら、薙刀が 「少しは丸くなっているかと思ったが、そう言う事もなかったか…」 「あんた達だって、人の事は言えないだろう?」 マドカに睨まれている宗光の手にも いつの間にやら、一振りの、日本刀が 親子は、静かに睨み合い…… 次の、瞬間 「っの、馬鹿娘がぁ!!!息子一人道が外れるのを止められないかっ!!」 「あんたたちが言えたことじゃないだろうっ!?子育て云々だけは口出されたくないよっ!!」 「あらあら、困った娘です事。翼さんのためにも、少しは矯正しないといけませんねそうですね」 部屋の、中は 一気に、戦場へと変わったのだった 「……っちょ!?何か、凄い音が聞えてくるんだけど!?」 「あぁ……大丈夫、父さんたちが元気になった証拠だから」 聞えてきた物騒な音に、思わず戻ろうとした翼を押し止め、苦笑する薫 ……何が起きているのか、何となく、理解して 頭痛と胃痛を感じ始めた黒服を、望が慌てて気遣うのだった そして その、壮絶なる数年ぶりの親子喧嘩は 「……えーっと」 こっそりと、隣の部屋から和解の様子を見ていたTさんと舞、リカちゃん それに、龍一と花子さんにも、ばっちりと目撃されていて どうコメントしたらよいのかわからず、固まるまい Tさんは、そっとリカちゃんの目を塞いでおき そんなリカちゃんは、花子さんと一緒に「みー?」と首を傾げていて そんな、中 龍一は一人、冷静に携帯電話を取り出して 「…あぁ、親父?……ん、宗光さん、大丈夫。もう体調崩す事もないと思う。娘さんと和解したんだし」 「っちょ、あれ、いいのか!?和解できたって言うのか!?」 「………昔と変わらない親子喧嘩だから、問題ないと思う……色々と突っ込みたい事実ではあるが」 舞の突っ込みにも、冷静にそう答えて 龍一は、どこか呆れたように、ため息をついたのだった 今度こそお仕舞い 前ページ次ページ連載 - 悪意が嘲う
https://w.atwiki.jp/p_ss/pages/2563.html
Side K 「なんかごめんね?」 またのっちに謝られた 「何が?」 「その〜、なんていうか〜。あたしがゆかちゃんに『告白しないん?』とか言うたんに、、なんか、こういうことんなって?」 こういうことってw 「あ〜ちゃんと恋人になれたこと?」 「う、うん。まぁ、そういうこと」 照れちゃってぇ、か〜わいw 「そんなん、謝ることじゃないじゃろ?」 「でも、ゆかちゃんも言うタイミング計ってたんじゃないかって思って…」 確かにそうだったけど 「何でそう思うん?」 「そりゃ、宣戦布告されてたし、、それに、、うちら似とるし。ゆかちゃもツアー終わってからとか、思っとったんじゃない?」 ありゃー、のっちにしては良い感してるねーw 「まぁ、ちょっと考えとったけどねw」 「やっぱそうじゃよね…」 しょげてるのっち 「なんであんたが落ち込むんよw」 「だってさー。ゆかちゃんの気持ち、あ〜ちゃんに知ってほしかったんじゃもん」 「…」 「すぐ側に、ずっとあ〜ちゃんを想ってくれとる人がおるんじゃよって、知ってほしかったんよ」 はぁ、やっぱりのっちは優しい あ〜ちゃんがのっちを好きでいたことは、間違いじゃない だから私は、その優しさに安心して、のっちにあ〜ちゃんをお願いできるの のっちと付き合ってて、そう思ったんだから、、間違いない Side N 「けど、あ〜ちゃんがOKだしてくれると思っとらんかったけぇ…。すごい変なタイミングで中途半端に気持ちが漏れちゃってさ。ダメなら何時言ったって変わんないやと思って、我慢できんで言っちゃったんよ」 あの微妙な空気に耐え切れなくて、自分の気持ちばっかり考えちゃったんだ 「私は予想できたよ?」 「へ?」 「あ〜ちゃんはのっちの告白、断らないって」 「何で?」 だって、一年も経ってて、あんなコトもあったのに、どうして? 「言ったじゃろ?あ〜ちゃんは相当なのっちラブの持ち主じゃー言うてぇw」 あぁ、ゆかちゃん前に言ってたね? ホント、あたしなんかより、あ〜ちゃんのことよく見てる やっぱりなんだか申し訳ないなって、自分まだまだだなって、思ってしまう 「だからね?のっち」 「ん?」 「もっと自信持って良いんよ?」 「え、、?」 「あ〜ちゃんにそう想ってもらえる自分に、自信持って良いんじゃよ」 「ゆかちゃん…」 んー、やっぱりタイミング間違えちゃったな〜 だって勿体無い こんなに優しい想いが伝わらないなんて、勿体無い そう思うけどやっぱり… 「まぁ、次はないけぇwそれだけ覚えとってw」 「うん、忘れんよ」 譲りたくはないな ごめんね? —つづく—
https://w.atwiki.jp/jewelry_maiden/pages/408.html
レ「お弁当?」 黒「はい、マスターがどうしても必要だというので」 レ「ずいぶんといっぱい買ったのね」 黒「マスターは男性ですから、これぐらい作らないと」 レ「ふーん……」 それは寝耳に水というか何というか、とりあえず唐突だった。 主「弁当作れぇ?」 レ「そ、お弁当」 主「……お前さ、俺が朝どれだけ忙しいか分かって言ってるか?」 レ「寝癖頭も直す暇なく、朝食抜きでご出勤。原因はマスターの寝坊ってところ?」 ……読まれてる。本当のことなだけあって言い返せないのが悔しい。 レ「別に仕事のある日じゃなくていいのよ。今週末ちょっと出かけるから」 主「休みぃ? なおさらやだよ、寝てたいし」 レ「休日は眠って過ごす、なんかおじさんみたい」 こいつ、人に物頼む態度を知らないのか? そんなこと言われて弁当作る奴なんて普通いないぞ。 主「お前、普通頼みごとがあるときはだなぁ……」 レ「あぁ、作るときはマスターの好きな物で作ってね」 主「もっと礼儀を……は? 何で俺の好物なんだよ」 レ「別にいいでしょー。マスターの朝ご飯だって確保できるんだから」 まぁ、それはそうなのだが。しかし、いつも俺の飯に文句つけるこの小娘がなぜ突然……もしかして何か嫌なこと企んでるのか? いや、さすがにそこまで性根の腐った奴ではない。それはさすがに分かる。 レ「健康的に新しい朝を過ごそうとか、思わないの?」 主「そうは言うがな、睡眠は大事なんだぞ」 レ「マスターは寝過ぎ。で、作ってくれるの? くれないの?」 なんかお願いというより命令じゃないか、これ? 主「そんな言い方されて作ろうとか思う奴が――」 レ「……ダメ?」 どーしてそういう男をくすぐるようなおねだり視線を送ってくるんだ? つーかこうしてみるとベリルもなかなか可愛いな……って、何見とれてるんだ俺は!? 相手はあの毒舌娘だぞ!! 主「しゃーねぇなぁ、そこまで言うんだったら……」 レ「やった♪」 って、俺何言ってるんだー! 口っ、勝手に動くな馬鹿野郎!! 口が勝手にしてしまった約束を守る。なんか納得いかないが、ここで破ったらベリルに何を言われるか。 という訳で土曜日。せっかくの休みに俺は早起きするハメになった。午前6時……ちくしょーっ、ねみぃよ! レ「手が止まってるわよ?」 ……こいつ、意外と早起き慣れてるタイプか。それだったら俺の代わりに飯作ってくれたって……。 レ「立ったまま寝ぼけてる?」 主「違うっつーに。それよりお前、早起き慣れてるんだな」 レ「うん」 当然といわんばかりにうなずく。 主「それなら俺の代わりに飯作ってくれよ」 レ「ぅ……遠慮しておく」 ん、なんだ今のぎこちない反応……あぁ、なるほど。 主「へぇ、そうか。遠慮しておくのかー。ふーん」 レ「な、何よぉ、いきなりニヤニヤして。気味悪い」 主「おっと、にやけてたか。これはすまないな、はっはっはー」 レ「……なーんかむかつく」 小一時間経過。 主「おし、できた」 レ「お疲れさま。で、朝ご飯は?」 主「弁当の残り」 レ「手抜きだぁ」 主「お前がそうしとけばいいって言ったんじゃないか……」 納得いかねぇ……今に始まったことではないけどさ。 レ「ん、まぁいいわ。それじゃああたし出かけてくるからー」 主「え? 飯いらないのか?」 レ「ちょっと急いでるから。じゃあいってきまーす」 と、こちらを振り返りもせずに玄関に向かうベリル。そしてドアの閉じる音……何なんだよ、ホントに。 レ「……意外とマスターって、料理上手」 黒「そうですねぇ。私もちょっと勉強になります」 レ「何もお弁当にこんな手の込んだことしなくても……」 黒「それだけレッドベリルちゃんが大切なんですよ、きっと」 レ「そ、そんなこと無いもん。いっつもあの人文句ばかりだし」 黒「仲がいいんですね。じゃあ、そろそろ練習始めますか?」 レ「……内緒、だからね。誰にも」 黒「はい、分かりました。お互い美味しいお弁当作れるように、頑張りましょうね」 レ「……うん」 レ「ただいまー」 夕刻ごろ、ベリルの声が玄関から聞こえる。 主「おぉ、おかえり。朝飯も食わずにご苦労なことだな」 レ「休日はもっと有意義に使わないと。マスターも見習ってよね」 主「はいはい」 俺の横を通り過ぎ、飛んでくるのは相変わらずの毒舌。ま、いつものことだけどさ……。 レ「あ、マスター」 と思ったら、突然改まってこちらに顔を向けてくる。 レ「……お弁当、美味しかった」 主「は? あぁ、そりゃどうも」 レ「……それだけ」 何だ? いつもに増して変な奴だな。普段はわざわざそんなこと言わないくせに……ま、悪い気分ではないけどさ。 主「そっか。じゃあまた作ってやるよ、今度はお前の好物で」 レ「ふーん……期待しないで待ってる」 口が悪いのは変わらず、まぁ相変わらずのベリル。だが、今日はなんだか嫌な気がしない。何でだろうな……ま、いっか。減るモンじゃないし。 レ「……いつか追い越すんだから」 主「なんか言ったか?」 レ「べ、別にー」
https://w.atwiki.jp/cowardlygirl/pages/33.html
t02-024 :名無しさん@ピンキー:2010/01/12(火) 01 57 27 ID Nd81zjxq 1/3 久々に戻ってきた故郷は賑やかだった…まぁ今日は年に一度、街が若い活気で満ち溢れる日 そう成人の日だから仕方ないともいえるかもしれない。 会場である市民会館には各地に散り、あるいは地元に定着していた同窓達が集っている。 よう、久し振りだな…うわー、すご。ねぇ写真とろーよ…お前、始まる前から酔っ払うって何事よ!? …カオス溢れ出るとは正にこのことを言うのだろう…そんな喧騒の中を適当に挨拶を返したりしながら通り抜けて会場に入る 会場である大ホールも外に負けず劣らずの騒ぎとなっており、正直、少し早すぎたかと思ったりもした だが今から外に出るのもまた億劫である。指定された席で携帯でも弄りながら時間を潰すことにした。 「なぁ、席交換しね?」 「別に構わんが、どうしたよ?」 「いやぁ、化粧っ気がどうにも苦手でな、気分悪くなりそうだから女子の隣は避けたいんだ。それにお前ならなんとかあしらえるだろ?」 腐れ縁が話しかけてきた。こいつは結構いい奴なんだが、鼻が敏感で人の多いところはあまり得意ではなかった。 せめて気が合う知り合いが多い場所に移りたいという言外の訴えのようだったので聞き入れることにした 「あぁ、いいけど、C-09だな?」 「恩にきる!」 入り口で渡されたどーでもいい資料が入った封筒を抱えて席を移った。しばらくすると喧騒の主達がどんどんと会場内に入ってきた。そろそろ開始するようだ 郷土の伝統芸能の披露の後、ハゲや狸、狐どもの胡散臭い挨拶合戦が始まった 流石にニュースで流れるようなKY成人の騒ぎは起きないものの、会場内の実に8割の人間がうんざりしていたことだろう 適当に話を聞き流すのも疲れ、携帯を取り出しゲームでもしようとした時、左手の裾を軽く引かれていることに気付いた。 俺の隣席に座っていたのは派手とは言えずともあでやかに着飾った女の子、無論知った顔であった 小、中学時代の成績は文系傾倒で中の上、物静かでいつも文庫本を片手に机に座っている、そういうイメージの子だったが 流石に今日ばかりは着飾らざるを得なかったようだ。 俺の裾を引く手は若干震えているし、これだけの事にもかなりの勇気を注ぎ込んでいるようだった 「……何?」 「……ぁ、ぇと…」 とりあえず意識せずに用件を問うと彼女は自分の携帯のディスプレイを向けてこう切り出してきた 『御久し振り、です。』 「久しぶり。って別に話しかけても問題ないような気もするんだけど」 周囲でもこそこそと世間話がなされているし、気にすることもあるまい、そう思ったので提案してみたのだが 『面と向かって話すのは、その…苦手と言うか、緊張しますので…』 とのことらしい。 「分かった。んじゃ、俺だけ喋るのもあれだし、そのやり方いただき。」 こうして彼女との言葉の無い会話が始まった 『高校、●△だったよね?卒業してから何やってるの?』 『調理資格を取るために専門学校に入ったんです。そちらは●商から■○の大学に行ったと伺いましたが…』 『あぁ、講義とバイトで充実、というか忙しい日々だよ』 『今夜の飲み会、出るんですか?』 『そのつもり、去年辺りから飲んでたし、今夜はオールになるかも…』 『へぇ…私は行けても二次会まで、ですかね…』 『飲めない口?』 『いえ、飲めるんですけど、あまり酔わない体質なので…』 『へぇ、何だか意外だね…』 と、取り留めないことをタイプし続けていた。 『っと、そろそろ終わりみたいですね。』 気が付くと式典は終盤に入り、家族の話やこれまでの生活をネタに一部の新成人が生贄に捧げられる魔の時間に差し掛かっていた 『そうだな、しっかし…弄られてるなー;』 例年がどうなのかは知らないが今年は凄いことになっている 幼馴染の男女を見守ってきた両家の親が結婚を迫ったり、実の妹が兄コレクションを持参で愛を告白したり 数人を孕ませたイケメン(笑)が結婚詐欺容疑で集団訴訟起こされたり、挙句の果てには高校時代に学生結婚した伝説の夫婦が七つ子引き連れて惚気である。 …もうやだこの街。 そんなハイなテンションに乗せられたのか、物静かな隣人はこう言ってきた 『あ、あの…』 『ん?何?』 『アドレス、交換しません、か?』 『おっけ、その機種赤外線使えるよね?』 『はい。少々お待ち下さいね…』 彼女は何故か顔を赤くしていた t02-025 :名無しさん@ピンキー:2010/01/12(火) 01 58 32 ID Nd81zjxq 2/3 市民会館での式典を終えた新成人たちは貸衣装から着替えたり、家に戻ったりして適当に時間を潰して飲み屋街に出没した 人によってはこれからが真の成人式であろうし、俺もそのつもりだった。 主に中学の卒業時のクラス分けで集まった数十人単位の集団が居酒屋に大いなる収入と忙しさを与えていく 俺もその中に入り時に声高々に乾杯の音頭を上げ、時に級友達の近況に耳を傾けた 1次会が終わり、次の会場に移動する際。また彼女と隣になった 「随分飲んでたけど、大丈夫か?」 「…えぇ、その。なんて言いますか…飲みたい気分ですから、ぁぅっ」 「?…まぁいいか……今日は目一杯楽しもうな」 「は、はぃ…」 会話が続かないのはまぁ、着替えた彼女が地味ながらも綺麗だったのもあるし、若干飲みすぎたってのもある。 あとはあれだ。彼女がおどおどとして会話出来る感じじゃなかった、そういうことにしてくれ… 2次会はカラオケが出来る店だった。 改めて乾杯をすると幹事がこう言い出した 「みんないい感じに出来上がってきたし、一人一曲は歌ってもらうぞー!」 ……そんなわけでレパートリーが先に歌われていく絶望感と戦いながら歌う曲を選んでると 「んじゃ、次は…おぉ!○○さんですかー!」 彼女の番となった。 定番というか、少し昔のラブソング。耳に心地いい声で彼女は歌っていく。 なんだか俺に視線を向けながらだったのはきっと酔った勢いでの自意識過剰に違いない… ちなみに俺が歌った当たり障りの無いPOP’sは評判が芳しくなかった 「んじゃ、帰る奴は御疲れさん!」 元気な奴が三次会へと出撃する中、若干自棄酒を飲んだ俺は離脱することになった… 離脱するのは俺の他に彼女と他数名、家の方向が同じため俺と彼女は相乗りでタクシーに放り込まれた 「…みんな、元気だったなぁ」 「………そですね。」 夜の街を走るタクシー、中は少し静かな空気に包まれていた 「…変わってなかったなぁ」 「…………です、ね。」 俺の取り留めの無い会話に相槌を打つ彼女は何処か寂しそうだった タクシーが住宅街の一角に止まる。料金は俺が支払い、彼女と人気の無い公園を歩く 「…大丈夫、ですか?」 「ん?あぁ、少し酔いがまわってきたのかもな」 丁度ベンチもあるので休むことにした t02-026 :名無しさん@ピンキー:2010/01/12(火) 02 00 59 ID Nd81zjxq 3/3 「…………」 「…………」 ……会話のネタが尽きた。 手持ち無沙汰になった俺は携帯を弄ると、メールが着信してることに気付いた 届いたのは二次会の最中、確か彼女が歌ってた頃だ 『題名: テスト送信、○○です 本文: アド交換をしたのに送信テストを忘れてたので送ります カラオケはあまり好きではないのですが、丁度いい機会 なので、貴方の為に想いを込めて歌おうと思います。 ちゃんと「好きです」が、届きますように…』 思わず横に座る彼女を見る、今にも泣きそうな顔で俺と携帯をじっと見つめる彼女が居た 「……いつ、から?」 「……2年の春、からです。」 震える声は、怯えが原因なのだろう 「どうして俺?」 「優しさに、惹かれました…」 だが、その声は芯の通ったものだ 「今まで、ずっと?」 「その、臆病、でしたから……、……答えて、くれますか?」 震える手を胸の前で握り、俺の言葉を待つ彼女は…弱々しいながらも、凛とした美しさを持っていた 「ありがとう」 「……え?」 「好きになってくれて、ありがとう」 「……それって、どういう…!?」 彼女を包むように抱き締める 「君なら、大歓迎しますって意味で…」 「ぅぁ…え?…はぅ!?」 いきなりの抱擁に驚く顔を愛しく見やる 「じゃぁ、恋人の証ってことで…」 「え?ぇえ?…あ」 顔を、正確には唇を重ねる 柔らかく、暖かい感触が触れる 時間にして数秒の接触だったが、脳内物質の働きでとても長く感じたのは言うまでも無い 「これから、よろしくね?」 「あ、ぁ……よ、よろしきゅう」 ん?急に彼女の力が抜けた…どうやらキスは刺激が強すぎたらしい。文字通り目を回している 「おい、しっかりしろー」 これからのことを思うと少し先が思いやられる そんな苦笑を浮かべながら、俺と彼女の成人式は終わりを迎えたのだった この後、一向に目を覚まさない彼女を家で介抱して翌朝に家族共々妙な誤解をされたのだが、瑣末なことなので省くことにする