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第四話/ /第五話*② 第五話 執筆者:クワトロ大尉(偽) 人類を襲った未曾有の危機、『アーセナル・ハザード』により世界が荒廃して5年。 世界は混迷を極めていた。 企業は己の利権を広げようと躍起になり、政府は政治主導を企業に乗っ取られるのを危惧して勢力の立て直しと拡大にのみ力を注いだ。 誰も自分の手に余る世界などというものを救おうとはせず、ただ己の幸福を追求した。 結果、企業や政府に係り合いのない多くの人々は虐げられ弱肉強食の分かりやすい理論が横行していた。 金のない人間は常に古代兵器の襲撃に怯え、金のある人間は安全な場所で豊かな暮らしを約束された。 コロニー『エデンⅣ』。各企業がしのぎを削る商業区画の隣に位置する居住区画。 快適な環境のマンションが立ち並ぶ居住区画だが、その中でもひときわ快適な高級マンションの一室で、若い男が通信用マルチコンソールに向かって何者かと会話していた。 「この情報は確かなんだろうな。信頼できるソースなのか」 企業の重役が座るようなチェアにもたれかかりながら男がコンソール越しに話しかける。 「各方面からの情報を整理した結果だ。各企業の機密情報からネットの掲示板書き込みまで色々とな。その中でも特にミラージュの情報は信頼できる。何せ主催者だったんだからな。まあ信頼度は80%といったところかな」 コンソールの向こう、ジャーナリスト風の30代の白人男性が資料を片手に自慢の顎鬚をさすりながら答えた。 「ほう。あんたが80%と言うからには、自信があると思っていいんだな、ジェイスン」 端正な顔立ちをした二十代後半と見られる男が口元を少し緩ませながらコンソールの向こう側の情報エージェント、ジェイスン・ランバートに語りかける。 友人に語りかけるような砕けた口調だったが、その目は真剣だった。猛禽類を思わせるような鋭い眼光は歴戦の戦士のそれだ。 「当然さ。これでメシを食ってるわけだからな。それに、お前相手に嘘はつかないよ。凄腕のレイヴン、ソリテュードに喧嘩売れるほどの度胸は持ち合わせていないんでね」 それを聞いて、ソリテュードと呼ばれた男はやっと表情を緩ませた。 「オーケー、やっぱりアンタは一流だ。じゃあ、今回の依頼はこれで完了ということにしよう。報酬はいつもどおり口座に振り込んでおく」 表情と同時に口調も柔らかいものへと変わる。 「そいつはありがたい。ちょうど美味いものが食いたいと思っていたところなんでね。そうだ、今後についてはどうする。引き続き調査しようか」 「いや、これ以上突っ込んでも今は何も出ないだろう。後は当事者に聞くさ」 「了解だ。じゃあ次の依頼を待っているよ。まあ、しばらくは食うのに困ることは無さそうだからな」 すっかりリラックスムードのジェイスンの片手にはウィスキーのグラスが握られていた。 「好きなだけ飲んで食ってくれ。また必要になったら連絡する。次は直接会って一杯やろう。じゃあな」 そう言って、コンソールを切ると、ソリテュードは短く切った黒髪をかき上げながら、ジェイスンからの情報を自分の頭の中で整理した。 「なるほど、そういうことだったか」 ジェイスンからの情報でソリテュードの頭を占めていた疑問のほとんどが解消された。 しかし腑に落ちない点があるのも事実だ。これはもう自分で解決する以外ないだろう。 どのみち近いうちに会うことになるだろうから、その時に確かめればいいことだ。 コンソールの脇に置いてあったコーヒーを手に取ると、椅子から立ちあがって窓際へと足を運んだ。 窓から見える作り物の空を見上げながら一人つぶやく。 「しかし・・・サンドゲイルとは意外だったな。まったく物好きなヤツらだ」 ―サンドゲイル― どの勢力にも所属しない遊撃隊で、傭兵というよりは何でも屋に近い性格をしているが、保有ACとレイヴンの実力は噂になっている。 ジェイスンの調査で現在の主力は4機のACで、しかもそのうちの2機は少年と少女が操縦しているらしい。 まあ今の時代、特に珍しいことではない。世界が荒れるほど兵士の年齢は若くなっていくものだ。 しかし、それならばむしろ納得のいく話だ。若いレイヴンならばそういう行動もあり得るだろう。 コーヒーを一口飲むと、ジェイスンから送信された調査資料を手に取り、目を落とす。 そこには、まだあどけなさが残る少年の顔写真と経歴、そして搭乗ACのスペックまでもが詳細に記載されていた。 「マイ・アーヴァンク、か。・・・少年、その拾い物はいささか君の手に余るぞ」 いずれ戦場で相まみえることになるだろう、若いレイヴンに届かない言葉を投げかける。 少し冷めた残りのコーヒーを一気に飲み干すと、資料をファイルに仕舞い、再びマルチコンソールへ向かう。 メールをチェックすると、企業からのパーツモニターの依頼や政府からのくだらない称賛のメール、アリーナのファンレターなどが確認するのも面倒なほど受信されていた。 それらに一通り目を通しながらメールを処理していると、軽快な電子音が耳に入った。 重要メールの受信ボックスに新着メールが届いたことを知らせるメロディ。 レイヴンにとっての重要メールとは無論、仕事についてのメールに他ならない。 作業の手を止め、すぐにメールを開く。 差出人はミランダ・キリシマ。ソリテュードの専属オペレーターだ。 ―レイヴン、緊急の依頼があります。依頼を受ける場合は3時間以内に専用ネット経由で返信、もしくは連絡してください。依頼の概容は以下の添付ファイルの通り。以上、緊急依頼の報告でした。― 相変わらず簡潔で分かりやすい内容だ。 今年で10年の腐れ縁だが、今も昔も仕事のスタイルは変わらない。 俺がレイヴンとなったのと同じ時期にミランダもオペレーターとなり、お互い新人の頃から今までやってきたが会ったことなんて数えるくらいしかない。 それに俺と同い年なのに、二児の母ってのが笑っちまう。こちとらまだ独身だってのに。 そんなことを思いながら添付ファイルを開き、概容をチェックする。 依頼は政府からだった。 エデンⅣの管理局が難民受け入れを拒否したことにより、テロリストの報復予告を受けたらしい。 すでに管理制御区の一つへ侵入の痕跡があり、難民受け入れと多額の賠償金の支払いがなければ攻撃を断行するとのことだ。 エデンⅣの管理制御は各ブロックによって独立しており、多数のバックアップもある。 それに中枢制御装置が破壊されない限りエデンⅣのシステムはダウンしない。 管理制御区の一つが破壊されたところでエデンⅣ全体には何の支障もないが、絶対的な安全性を売りにしているエデン管理局としては自分たちのセールスポイントに傷が付くことは何としても避けたいのだろう。 しかし、政府は本当にバカ揃いだ。 たかだかテロリスト相手に侵入を許すとは政府軍の警備部隊もたかが知れている。 自分たちの手に余るからとレイヴンを雇ったのでは、自分たちに力が無いと言いふらしているようなものだ。 まあ、政府軍にはロクなAC乗りがいないし、テロリストがレイヴンを雇っているか、もしくは保有している可能性だって十分考えられる。むしろそう考えた方が自然だ。 エデンⅣのセキュリティシステムは中々のものだし、MTぐらいなら、いくらなんでも警備部隊で何とかできたはずだ。 報酬は緊急の依頼だけあって上々だ。仮にACを相手にしたとしても十分釣りがくる。 ――悪くない。 そう判断したソリテュードは、すぐにグローバルコーテックス専用のネットワークで依頼受諾のメールを送信した。 メール送信後、ACガレージのアセンブリ画面を開き、機体の確認をする。 整備状況は万全。 パーツアセンブリも機動戦重視のオーバードブーストタイプでレーザーライフルとブレード、ミサイルのいつもの組み合わせで問題ないだろう。 最終確認終了、起動待機のコマンドを実行し、アセンブリ画面を閉じた。 アセンブリを終了したのと同時に、グローバルコーテックス専用通話回線を通じてコールが入った。 コンソールのパネルをタッチすると通信回線と画像が開く。 相手はオペレーターのミランダだった。 「先ほど依頼の受諾を確認しました。先方には連絡済みです。速やかに依頼を履行してほしいとのことですので、1時間以内にガレージまでお越しください。レイヴンが到着し次第、ミッションを開始します。何か質問はございますか」 整った顔立ちと栗色のショートヘアーが特徴的な美人だが、つとめて平静に、かつ無表情で必要事項だけを淡々と述べる。 声も綺麗で口調も丁寧だが、一切の感情が込められていない。 だが、それで構わない。彼女はプロなのだ。 そして俺もプロだ。余計な感情は必要ない。 「いや、特にない。今からすぐに出る。30分後には着けるだろうから、作戦内容と状況を整理しといてくれ」 「了解しました。お待ちしております。では」 通信回線が切れると同時に画像ウィンドウも閉じる。 マルチコンソールを待機モードにすると、ハンガーに掛けてあったフライトジャケットを引っ掴み、袖を通す。 多少の現金と各種認証カードが入ったサイフをズボンのポケットにねじ込み、部屋を後にする。 リビングを横切り、玄関に向かおうとしたとき、不意に隣の部屋のドアが開いた。 そこからひょっこり顔を出したのは年端のいかない少女だった。 「どこいくの、ソリッド」 少女らしい幼い声でソリテュードに語りかける。 その細い腕には大きなウサギのぬいぐるみが抱かれていた。 「ああ、これから仕事に行ってくる。急な依頼でね。悪いがいつもみたいに留守番しててくれ、アリス」 「しごと?」 トテトテとソリテュードに近づき、首を傾げる。 アリスと呼ばれたその少女は、今の時代に不釣り合いな格好をしていた。 まるでおとぎ話にでてくるようなゴシック調のドレスを身に纏い、小さな頭には大きなリボンが結ばれている。 「なに、簡単な仕事さ。すぐに戻ってくる。腹が減ったらケータリングでも頼むといい。好きなものを食べていいぞ。注文の仕方は知ってるだろ」 アリスはソリテュードを見上げると一拍置いて口を開いた。 「また、ころすの?」 何気ない一言だったが、その口調にはまるで感情が込められていなかった。 アリスは物凄い美少女であるが、その表情には喜怒哀楽の一切が無く、何を考えているか分からない。 まるで生きている人形のようだ。 ソリテュードは感情というものを与えられなかった少女に向き直り、大きく澄んだ赤い瞳を見ながら言いきった。 「ああ、殺す。それが俺の仕事だからな」 それを聞いた少女は納得したようにコクンと頷いた。 「じゃあ、いっぱいころしてきてね」 そう言ったアリスは、殺すということに何の疑問も抱いていないような様子だった。 しかし、それの言葉を聞いたソリテュードは、さすがに少し顔をしかめた。 「なあ、アリス。そういう時は『がんばってきてね』って言った方がいい。その方が、複数の意味が含まれていて便利だからな」 自分の予想とは違った答えにアリスは少しだけきょとんとした表情になったが、すぐに無表情に戻り、再びコクンと頷いた。 「わかった、メモリーする」 それきりアリスは黙ってしまった。 もう話すことは無いという彼女の意思表示なのだろう。 いつもの事とはいえ、彼女の妙な言い回しにソリテュードはもう一言くらいツッコみたい気分だったが時間が無い。 「じゃあ、行ってくる」 そう言うと、アリスに背を向け今度こそ部屋を後にする。 ドアが閉まるまでアリスはリビングに立ちつくしたままだったが、その視線だけはソリテュードを見送っているようだった。 マンションを出ると、大都市の喧騒が少し耳障りだった。 エデンという名が示す通り、ここに争いは無い。 実際にはエデンⅣ内部でも、今回の依頼のように戦闘が行われることがある。 しかし、人々がそれを知らなければ無いのと同じだ。 街を行き交う人々は自分たちに紛争や古代兵器の襲撃など関係が無く、どこか遠い世界の出来事だと思っている。 おめでたいヤツらだと思う反面、ソリテュードにとってはどうでもいいことだった。 他人の人生などに興味は無い。 あるのは自分が今のこの世界でどうやって生きていくかということ、それだけだ。 マンションから歩いて3分もかからない所に、エデンⅣ全体を網羅するリニアモーターカー、通称『リニア』のターミナルがある。 リニアは移動速度が車より圧倒的に速いので住民の交通機関の要になっている。 リニアのターミナルには一般車両の他に専用車両と専用路線があり、専用路線は主に政府関係者や企業の重役、それに俺たちのような特殊な職業むけに作られていて、当然グローバルコーテックス専用路線も存在する。 俺たちレイヴンはグローバルコーテックス本社にはまず用が無いので、行き先は自分のACガレージがアリーナになる。 専用路線には隔たるものが何もないので、数キロ離れたガレージへも10分もかからず到着できる。 しかも直通路線になっているので、乗り込んだ後は座っているだけで、自分の愛機が待つガレージへとたどり着くことができるのだ。 人々が行き交うターミナルの改札をくぐり、人の流れとは別の方向へと足を向ける。 専用路線のゲートはがらんとしていて人はまばらだった。 ゲートから出入りする数少ない人たちは皆スーツ姿で俺のようなフライトジャケットとジーンズというラフな格好のものは皆無だった。 俺に怪訝な視線を送る人間は、俺の行き先がグローバルコーテックス専用ゲートだと気付くと途端に目を逸らす。 当然の反応だ。今この世で一番物騒な職業の人間が自分の近くを歩いていたら誰だって距離を置く。 まあ別にどうということはない。むしろ余計な干渉をされないので好都合だ。 専用路線のゲートの前まで来ると、カードスロットに認証カードを滑らせる。 間抜けな電子音がした後、ゲートが開き、地下路線特有の淀んだ空気が鼻をくすぐった。 ターミナルへ入ると、自動的に隣接する格納庫から一人乗り用のリニアが運び出され、ドアを解放し、俺を迎え入れた。 いくら所属が同じといえども、レイヴンはミッションで協同する以外は敵でも味方でもないため、リニアも無用なトラブルを避けるために乗り合いではなく一人乗りが用意されている。 まあ、この専用路線を使うには、ある程度レイヴンランクが必要なのだが。 リニアに乗り込むと、認証カードをスロットに通し、コンソールに表示された行き先を確認してコンソールのエンターにタッチする。 後は機械任せだ。黙って座っていればいい。 リニアは音もなくゆっくりと滑り出すと、ものの10数秒で時速500キロ以上に達し、弾丸のように地下道を疾走していった。 リニアに乗り込んでから数分でグローバルコーテックス本社地下階層にあるガレージへと続くターミナルにたどり着いた。 リニアから降りて、ガレージへと続く専用通路を歩いて行く。 通路を行く途中、数度のセキュリティチェックをパスし、最後の隔壁の前で複数の生体認証とチェックコードをパスすると重々しいゲートが解放され、やっとガレージに到着した。 自宅のマンションを出てから約25分。まるで学生が学校に通学するような手軽さだ。 手荷物は何も持ってきていない。必要なものは全てガレージのロッカールームに保管されている。 ガレージに入ると、隔壁が閉じる少し前に照明が常夜灯モードから全点灯に切り替わる。 明るく照らされた巨大な空間。 その中心には鋼鉄の戦士がそびえ立っていた。 俺の愛機、『ブリューナグ』。 やや白に近いライトグレーのACは主が乗り込むのを待ちわびているようだった。 愛機を横目に見つつ、ロッカールームへと足を運び、パイロットスーツに着替える。 パイロットスーツを身に纏ったソリテュードの顔つきはすぐに歴戦の凄腕レイヴンのものへと変化する。 猛禽類を連想させる鋭い眼光に射抜かれたものはそれだけで戦意を喪失するだろう。 ソリテュードはこの瞬間、死を運ぶ魔鳥の化身となった。 全ての準備を整え、ヘルメットを片手にブリーフィングルームの通信用コンソールを操作し、回線を開いた。 「こちらソリテュード。準備完了だ。作戦内容の最終確認を頼む」 すぐにコンソールから返答が返ってくる。声の主はミランダだった。 「了解しました。作戦課からのミッションデータを転送します」 コンソールにミッションエリアと確認されている敵戦力、侵入経路の複合3D映像が映し出される。 「今回のミッションエリアは東地区の第一管理制御区、制御棟地下3階。制御装置が設置されている階層です。構造自体は単純ですが、通路が狭く回避スペースにあまり余裕がないようです」 ミランダが捕捉説明を入れる。 コンソールからは声だけしか聞こえない。 ミッション用の通信コンソールに通話映像など必要ないので機能がカットされているからだ。 「なんだよ、最深部まで侵入されているじゃないか。まったく、どれだけ役立たずなんだ、政府軍は」 「一応それなりの損害を与えているようですが、所詮足止めにもならなかったようです」 俺のボヤキにも捕捉を入れるミランダ。 どうやら政府軍が役立たずという考えは共通しているらしい。 「それで、敵勢力は」 「確認されているのは重装MTが6機、二個小隊のようです。それからアンノウンの高熱源体が1機。作戦課は85%の確率でACと判断しています」 なるほど。奇襲作戦を実行するのには、おおむね理想的な戦力だ。 となると金目当てのゴロツキではなく、少なくとも組織形態を持ったテロ集団とみたほうがいいだろう。 「敵勢力の組織は判明しているのか」 「犯行声明はテログループ『パニッシャー』として出されています。ただ、真偽のほどは定かではありませんが」 ――パニッシャーか・・・。 パニッシャーは名の通った筋金入りのテログループで、難民の救済を名目に、富裕層が住むシェルター都市やコロニーに難民受け入れを強要し、相手が突っぱねるとテロを実行して多額の金を要求する。 正に今回の手口そのものだ。 ただ、今回のやり方は規模が小さいように見える。 ヤツらの組織の規模なら同時多発テロも実行できたはずだ。 となると名を騙り手口をまねた模倣犯か、組織の末端が独断で行ったかのどちらかだろう。 まあどちらにせよ、殲滅することに変わりは無い。 状況は把握できた。 後は実行するのみだ。 「オーケー、ブリーフィングを終了する」 「了解しました。では出撃をお願いします。ミッションエリアまではサービストンネルを通じてAC運搬用リニアで輸送します。ゲート解放後、5番ACターミナルまで移動してください」 「了解すぐに出撃する」 通信用コンソールをシャットダウンすると、ヘルメットを被り、ブリーフィングルームを後にした。 タラップを上がり、コクピットへと滑り込む。 既にリモート操作でアイドリング状態になっていた愛機を起動するため、OSにパスコードを入力し、スリープを解除する。 OS起動と同時にジェネレーターから膨大なエネルギーが機体各所を駆け巡り、鋼鉄の戦士が目を覚ます。 コクピット内のすべてのディスプレイ、スイッチ、パネルその他諸々に火が灯り、コクピット内を妖しく照らし出す。 すべての機能が立ちあがり、メインディスプレイにカメラアイからの画像が映し出されると同時に搭載AIのボイスが準備完了の旨を告げる。 『システム、通常モードにて起動』 自分でもコクピット内すべての計器類に目を走らせチェックする。 問題無し。 「よし、手早くすませるか」 そう自分を鼓舞するように口に出すと、コントロールレバーを握り、スロットルを吹かした。 それに呼応するように、鋼鉄の戦士は重々しくその一歩を踏み出す。 ゲートから出ると、ミランダの指示どおりAC専用連絡通路を通って5番ACターミナルへと急ぐ。 ACターミナルとはACをガレージから発進させた後、適切な輸送方法にて迅速にミッッションエリアまでACを運ぶための施設だ。 地下に設営されており、輸送機や輸送ヘリ、今回使われるAC運搬用リニアなどが格納されている。 ターミナルに着くと、すでにリニアが用意されていた。 ミランダから通信が入る。 回線を開くと、いつのも淡々とした調子で指示を送ってくる。 「リニアに搭載、固定を確認後すぐに射出します」 「了解」 ACをリニアの荷台部分に乗せると、オートで脚部が固定され、抵抗を減らすために膝立ちの状態になる。 一拍置いて、ガクンと大きな振動がコクピット内に伝わってくる。 「固定完了しました。10秒後に射出、ミッションエリアまで輸送します」 リニア線路上のゲートが解放されるのと同時に、AC駆動音とは別の重低音が響いてくる。 リニアを高速射出するために電力を充填している音だ。 「カウントダウン開始します。10・9・8・・・・」 ミランダの規則的な声に耳を傾けつつ、射出の衝撃に備える。 「・・4・3・2・1、発進」 直後、レールガンの発射音のような轟音と共に、背後からの凄まじい圧力に襲われる。 リニアは時速500キロ以上でトンネル内を疾走していく。 民間用リニアのように、Gキャンセラーは付いていないし、OB用のGキャンセラーも今は機能していない。 強烈なGを感じながら目を閉じ、ミッションエリア到達までの間、頭の中でブリーフィングの情報と、これまでの戦闘経験を基に戦術をシミュレートをする。 イメージは大事だ。漠然と戦っていたのでは、いつか行き詰る。 まだ見ぬ敵をイメージし、その殲滅方法を頭にトレースする。 →Next… ② コメントフォーム 名前 コメント
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第十話/ /第十一話*② 第十一話 執筆者:CHU 曰く――幾多の大企業の本社ビルが置かれ、常に権謀術数が渦巻く坩堝。 曰く――他者を少しでも出し抜き、甘露にありつこうとする狸共の巣穴。 あらゆるシェルター都市を凌駕した堅牢な都市防衛機能――最早要塞とも呼べるレベルのそれを備えたエデンタイプコロニー。それがこの〈エデンⅠ〉だ。 グローバルコーテックスもまた、他の巨大軍需企業と相違無く〈エデンⅠ〉に本社を置いている。 そのコーテックス本社ビルの地下三階から地下九階は、『自衛と自社占有利益の確保』を標榜する《特殊技術戦力開発局》の研究棟となっている。完璧な防音処理が施された研究棟の一室で、今まさに密談が始まろうとしていた。 一人は青いロングコートに身を包んだ若い風貌の男――グローバルコーテックス専属レイヴンのスワローだ。 そしてもう一人は、特殊技術戦力開発局の局長であるディタ・エイジアだった。 本来、秘匿回線を用いれば『直接会う』必要はどこにもない。高度に量子暗号化された通信は、傍受される恐れもほぼ無い上、何より直接出向く労力も省けるのだ。にも関わらず、スワローはこういったミーティングの際に、相手方に直接出向く手法を執っていた。 有り体に言えば、スワローのナンセンスな行動は全て趣味だった。そうしたいから、単にそうするのである。 ただ、相手の都合を良く踏まえているため不満が出ることは稀で、むしろ女性相手には受けが良かった。 ディタもまたその一人である。 湯気の立つコーヒー(容物は実験用のビーカーだったが)を丁度二人を間仕切るように配置されたテーブルに置き、ディタが割合上機嫌な声色で口を開く。 「こうしてわざわざ会いに来てくれたのはいつ以来かしら?最近は新人のオペレーターさんにご執心な様だから――会えて嬉しいわ、スワロー」 「ボクもだよディタ。確か前に会いに来たのはICS導入実験の時だったかな?……いや、その前にディナーをご一緒した方が先か」 スワローが宙に視線を彷徨わせながら記憶を遡り応えた。 二人は仕事上の付き合いだけではなく、プライベートでも男女の付き合いがあった。 コーヒーで口を湿らせながら、ディタの目がスワローの左腕に向けられる。 「あら、怪我はもういいのかしら?」 先の作戦――クレストの新型ACとの交戦によって、スワローは重傷と言って差し支えない傷を負った。 異常速度による戦闘機動をGキャンセラー無しで行ったことに加え、ICSの特性上、機体ダメージの幾らかがパイロットにフィードバックされてしまうためだ。 スワローをガレージで出迎えたスタッフの中に、医療チームと担架が用意されていた事を考慮すれば、今ここにスワローが何食わぬ顔で座って居る方が異常なのだ。 常人なら良くて意識不明の重体、普通は死んでいてもおかしくはないダメージだった。 本来ならば包帯でミイラのようにぐるぐる巻きにされ、病室のベッドで絶対安静にせねばならない程の損傷を、スワローは一週間で完治してみせた。 それはこの男に施された強化手術に依る恩恵だった。 骨格の八割をセラミックとチタンの複合強化骨格に置き換え、体内にある何百億ものナノマシンが代謝機能や自然治癒力を数十倍にも高めている。内臓も全て人工器官に変え、強化筋繊維があらゆる衝撃に対して強い抵抗性を発揮している。 そういった、真っ当な人間としての生を捨て去った代償に得た報酬だ。 スワローは昨日までギプスで固められていた左腕をぐるりと回して見せる。 「この通り。もう大丈夫だ」 「そう、なら良かったわ」 ディタもスワローの身体の事は重々承知している。要するに彼女なりの軽口だった。 お互いに軽い挨拶を済ませ、仕事の顔付きになる。 口火を切ったのは、つい昨日発生した〈エデンⅣ〉へのパルヴァライザー進攻についてだった。 「既に貴方の耳にも届いていると思うけど、昨日の早朝に〈エデンⅣ〉が統制されたパルヴァライザーの襲撃を受けたわ。丁度アリーナの予備大会決勝中だったこともあって事態は相当深刻なようね」 「そのようだね。ボクもコーテックスのお偉方に引っ張りだこだったよ。どこのセクションもてんやわんやの大騒ぎ。寝る間も惜しんで報告書に目を通さなくちゃならなかった」 「あらあら、妬けるわね。大した人気じゃないの色男さん?」 「茶化さないでくれよディタ。鎮圧したとは言え、重軽傷者死亡者合わせて二六〇人――死亡者の内レイヴンは二名。都市機能は完全に麻痺し現在も復旧作業中。外壁には巨大な風穴が開けられて、これに至ってはまだ手付かずだ。コーテックスにとって今回の襲撃は、致命とも言える計り知れない損害さ」 「大変だったのは良く分かっているわ、ごめんなさいね。でも、貴方の関心は別の所でしょう?」 スワローは痛い所を突かれたといったように大仰に肩を竦めた。 「っま、その通りさ。今回の一件で幾らの損失額が出ようが余り興味は無い。それよりもパルヴァライザーを指揮していた『赤いAC』。……ボクにはこちらの方が重要だ」 多数の目撃証言から、今回の襲撃を統率していたとされるACの存在が明らかになっていた。 「【ナインボール】――恐らくAI機体だろうがね。パルヴァライザーを指揮していたことに間違いは無い」 「だとするとやはり統一政府が……?」 「断定しても問題は無い……と思う。一応ボクもお偉方にはそう報告してある」 【統一政府】――既に形骸化していると目されているが、各巨大軍需企業やコーテックスなどの依頼仲介企業を、名ばかりではあるが統括管理する組織だ。 五年前のジシス財団解体の際、プロトタイプネクストである【ナインボール・セラフ】と量産型ナインボールを持ち去ったとされている。 「でも相手が統一政府にせよ理由が不明のままだわ。コーテックスに『NEXT』の臭いを嗅ぎつけたにしても、〈エデンⅣ〉は無関係だもの」 ディタの言い分もまた然りである。 コーテックス社が多大な出資をして都市の利権を一人勝ちしているとは言え、〈エデンⅣ〉に暗部は無い。 対立する企業ならともかく、統一政府に狙われるような理由は見当たらない。 それ故、今回の襲撃事件には謎が多いのだ。 すると、そこまで黙ってビーカーの縁を見つめていたスワローが口を開き、思っても見ない事を言い出した。 「……案外、居るのかもしれない」 「え?」 「〈エデンⅣ〉に生体CPUが居るかもしれない」 「ち、ちょっと待ってスワロー。順序立てて説明して」 言うに事欠いて何を言い出すのか、この男は。 ディタは困惑した。 「〈エデンⅣ〉に生体CPUが居るとすると、今回の襲撃の辻褄が合う。統一政府はその生体CPUを狙ったのだろう」 「でも〈エデンⅣ〉で旧世代施設なんて発見されてない――」 「そうじゃないよディタ」 スワローは苦笑しながら、弟子に教えを聞かす賢者の様に根気よく語った。 「旧世代施設があり、そこから発見されたわけじゃなく、既に誰かが他の場所から入手したと考える。つまり匿っているんだ。匿えるだけの地位と力を持った誰かが」 「……それなら確かに説明は付くわね。そしてある程度、その『誰か』は絞れるとは思う。……でも根拠はあるの?」 それが問題だった。 スワローが今言った事は、机上の空論――根拠の無い眉唾話かもしれないのだ。 「南方にミラージュ社領アディオン地域があるだろう?そこで頻繁に【赤いAC】が武力介入している」 「それは知っているけど、本件と一体どんな関係があるというの」 「その【赤いAC】が出没しているアディオン地域のケレト大断崖で、新しく生体CPUが発見されたそうだ」 「なっ……!」 スワローの語る、その計り知れない情報価値に絶句する。 生体CPUは、あらゆる軍事関係機関が、喉から手が出る程渇望しているものだ。 その存在を巡り、いつ戦争が起きてもおかしくはない。 そして、その生体CPUが発見されたという場所に【赤いAC】が武力介入している――。 「これらの要素を全て偶然で片付ける程、ボクはお人好しでは無いつもりだ」 「あ、貴方の言う通りなら、……ええ、確かに全て符合するわ。でもそんな情報一体ドコから……?」 「なあに、古いツテからの情報さ。――ただ、信用の置ける筋であるのは間違いない」 スワローに気取った様子や、からかっている様子はない。 「ボクは〈エデンⅣ〉に生体CPUが居た、もしくはまだ居る可能性は高いと見る。何故なら、そう考えるのが一番自然だからさ」 そう言ってコーヒーに口を付ける。 ディタには目の前に座るこの男が、幾年月を経た本物の賢者の様に映った。 「コーテックスが貴方を必要としている理由――何となく解る気がするわ」 両手を上げながら、ディタが自嘲気味の笑みを見せた。 「買い被り過ぎさ」 泰然としているスワローであったが、心中は穏やかではなかった。 今まで表舞台には姿を見せなかったその統一政府が、今回の一件の裏で糸を引いているらしい。 どうにもきな臭い話に、スワローは言い知れぬ悪寒を感じずにはいられなかった。 二人は簡単に近況報告を終えると、いよいよ本題に入った。 内容は勿論クレストのパルヴァライザーもどきについてである。 「戦闘データを見る限り、先日貴方が交戦したクレストの新型にネクスト技術が使われているのは間違いないわ。ただ外装がパルヴァライザーに似ていたというのが気掛かりなのよね…」 コホンと一つ咳払いをして、ディタがコーヒー入りのビーカーを弄ぶ。 「ここからは私の推論だけど…」 「構わないよ。聞かせてくれ」 「可能性としてはまず情報の誤認狙い。ネクスト機体ではなく、あくまでもパルヴァライザーの系譜と見せ掛けるため――言ってみれば隠蔽ね。……まあ、貴方にはあっさり看破されたようだけど」 スワローの頭に戦闘中のライラの様子が浮かんだ。 「ふむ、確かにボクの可愛いオペレーターはパルヴァライザーだと勘違いしてたね。ネクストがどういったものか知らない人間からすれば、アレをパルヴァライザーと見間違えるのも無理はない」 「ええ、だから可能性としてはこれが一番高いと思うの。万が一目撃者が出たとしても、良く分からないがパルヴァライザーの改造機だろうと解釈させることで、本質を見えなくさせることが出来る。ネクスト技術はそれだけ秘中の秘ってことね。私達の【ARROWS】だって同じことが言えるのだから。」 確かに【ARROWS】は本来中量二脚だが、捨脱可能な増設装甲を取り付けることで重量二脚機体としてカムフラージュしてある。 「ボクもそれは思い付いたよ、確かに理には適っているからね。ただ君の言い方だとまだあるみたいだけど?」 対面に座るディタを見やる。 いつもの不敵な姿はなりを潜め、自信なさげに言い澱んでいた。 「君の意見なら何でもいいさ。聞かせてくれ、ディタ」 スワローに促され、渋々といった面持ちで考えを述べ始めた。余程確証の持てない話を口にするのは嫌らしい。 「…可能性は低いと思うけど、マルチハイブリッドなのかもしれないわ」 「どういうことだ?」 耳慣れない単語である。 思わず聞き返していた。 「クレストの新型は、パルヴァライザー・ネクスト技術・ノーマル技術、この三つが融合した機体かもしれないの。…ああ、ノーマルというのは我々ネクスト研究者の造語で既存ACのことね」 かつて古代の技術と現代の技術が融合した、既存のあらゆる兵器をも凌駕する機体が開発された。 もっとも、機体は強奪され、現在は行方知れずだが。 ただスワローやディタにとっては馴染み深い機体である。その機体――それは、 「馬鹿な、それではまるで――」 「――新しいナインボール、とも言えるわね」 ただし、とディタが付け加える。 「その可能性は低いと最初に言ったわ。ナインボールの開発は、各分野最高の技術を持った研究者が揃って初めて成し遂げられたの。いくらクレストの技術が優れているとしても、独自の力だけでは不可能なはずよ。」 クレスト如きに自分が携わったAMSやIRSと同等の物が造れるはずがない――ディタからはそういった自信が伝わって来る。 結局結論を出す根拠は自分の力量とプライドに依るのだろう。 そのことにスワローは苦笑するが、ディタの能力を高く評価しているのも事実だ。 彼女の意を汲み、ひとまずこの案件はここまでとする。 「分かった。では先日の報告は以上だ。また何かあれば追って連絡して欲しい。ボクはこれから新人の試験に立ち会わなければならないのでね、準備があるため失礼するよ」 席を立とうと腰を浮かすと、ディタに呼び止められた。 「あっ、ちょっと待ってスワロー。こちらから通達がまだあるのよ」 ディタはデスクの引き出しから一枚のデータディスクを取り出し、それをスワローに手渡しながら努めて事務的に告げる。 「【ARROWS】には今ICSが組み込んでありますが、これをAMSに換装しての起動実験を行います。そのため、現在【ARROWS】は換装作業中につき使用は禁止。換装作業の間は【ベルフェゴル】を使用して下さい。それと、脳波増幅装置を埋め込むのと、AMSの負荷を低減するために、……貴方の脳と脊髄神経に強化手術も行います。実験の詳細や手術の日程もその中に明記してあるので必ず目を通しておいて下さい」 そこで一旦切り、申し訳無さそうに目を伏せた。 「生体CPUが居たらこんな手術必要ないのだけれど。ごめんなさいスワロー……。また貴方を人間では失くしていってしまうわね」 「構わないさ。あの子を失った時、僕自身が決意したことだから」 そう言って顔を近付け、ディタの頬に優しくキスをする。 だがディタの表情は暗いままだ。 研究者としての責務と、人としての良心の呵責に板挟みになり、苛まれているのだろう。 だからスワローはこう言うのだ。気にするなと意を込めて。 「なら、今度また飲みに付き合って欲しいな。それで恨みっこ無しとしよう。ね?」 片目を瞑りおどけてみせる。 そしてようやくディタの顔に笑みを作ることに成功した。 「ええ、そんなことで良いならいくらでも」 フフッと、微かな笑い声が聞こえた。正に微笑という程度のものだったが、美女の笑顔は何よりにも勝る報酬だ。 「よし、決まりだ。ボクはもう行くけど、楽しみにしててよ。旨い酒の店を探しておくからさ」 席を立ちディスクをコートのポケットに入れる。 頭は既に仕事のために切り替えた。 「それじゃ行ってくる」 「いってらっしゃい。私も楽しみにしてるわ、スワロー」 片手を上げて応え、部屋を出る。 次の仕事――新人レイヴン試験の詳細を頭に浮かべながら、コーテックスの廊下を社有ガレージに向かって早足で歩く。 浮ついた気持ちは既に無く、この切り替えの早さも、レイヴンがレイヴンたる所以である。 →Next… ② コメントフォーム 名前 コメント
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【検索用 CORE 登録タグ 2010年 C GUMI TEMB/ブランコP VOCALOID vient ゆちゃP 曲 曲英】 + 目次 目次 曲紹介 歌詞 コメント 作詞:TEMB/ブランコP 作曲:TEMB/ブランコP 編曲:TEMB/ブランコP メロディ考案:ゆちゃP イラスト:vient 唄:GUMI 曲紹介 <(`・ω・´)>こあっ! 曲名:『CORE』(コア) ツイッターがきっかけで生まれたコラボ作品。 歌詞 沈んでいくイメージ 浮かんでくるはイデア 夏の虫じゃないけど 快楽主義ならいいんじゃない? 不細工なステップで踊る 憧憬はバカにされたから 今この胸に火をつけて 焦げた身体を見て笑うんだ 壊れていくアイデア 積み上げてくのは何? 汚れた言葉だって 完全主義ならいいじゃない 被害者に向けられたテーゼ 革命の旗は折れたから その饗宴に火をつけろ 閉じた回路だけが増えるんだ 不器用に作られたリズム 道化師は暗がりで踊る 今その未来を愛して 冷めた瞳で見つめ合うんだ まだその核は熱くなる 溶けた身体だけが笑ってる コメント ページ作成乙です! 今一番大好きな曲。絵も素敵です! -- 名無し (2010-06-04 00 09 21) GUMIの曲って全部いいよなwwwつくづくそぉ思うゎwwwこの歌詞とかまぢサイコー★☆皆もGUMIを好きんなって、GUMIの時代をつくろぉぜ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! -- ベル (2011-01-17 18 02 25) よし、作ろう!!← -- 名無しさん (2011-02-02 23 42 51) 皆もっとGUMIを見て欲しい -- ミルク (2011-03-21 15 51 16) もっと評価されるべき! -- 名無しさん (2011-05-25 21 58 33) この曲のイラストのGUMIグレルみたい -- 黒猫 (2012-01-15 17 03 41) この歌良すぎるのになんでカラオケに入ってないの! -- えりんぎ (2012-02-04 12 29 05) この曲、本当にいいと思う! -- 名無しさん (2012-02-18 01 59 16) GUMIではこの曲が一番好きです! -- 名無しさん (2012-06-16 09 23 57) 歌詞のそこかしらがGRAPEVINEっぽいですね。 -- あ (2016-11-08 00 58 50) 名前 コメント コメントを書き込む際の注意 コメント欄は匿名で使用できる性質上、荒れやすいので、 以下の条件に該当するようなコメントは削除されることがあります。 コメントする際は、絶対に目を通してください。 暴力的、または卑猥な表現・差別用語(Wiki利用者に著しく不快感を与えるような表現) 特定の個人・団体の宣伝または批判 (曲紹介ページにおいて)歌詞の独自解釈を展開するコメント、いわゆる“解釈コメ” 長すぎるコメント 『歌ってみた』系動画や、歌い手に関する話題 「カラオケで歌えた」「学校で流れた」などの曲に直接関係しない、本来日記に書くようなコメント カラオケ化、カラオケ配信等の話題 同一人物によると判断される連続・大量コメント Wikiの保守管理は有志によって行われています。 Wikiを気持ちよく利用するためにも、上記の注意事項は守って頂くようにお願いします。
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score of XA0086M / ジョージ・ヤン in 070202 出場クラス A チーム 孤独狼 RGM-79SP / ジム・スナイパーII? 今回の結果は【帰還】です。 撃墜 0機, 経験値 1p, MSp 18p [00 01] ALEXより桃色のMS-09Rへの攻撃命令を受信、了解。 ラファエル=フォーミュラに攻撃を指示、応答あり。 瀬田 丈に攻撃を指示、応答あり。 アルス・アンドレイに攻撃を指示、応答あり。 [00 02] 桃色のMS-09Rの隙をうかがう。近距離からビームランスで桃色のMS-09Rを攻撃、機体に命中。 [00 03] ラファエル=フォーミュラより通信。桃色のMS-09Rを撃墜したとのこと。 [00 04] ALEXより緑のMS-09Rへの攻撃命令を受信、了解。 瀬田 丈に攻撃を指示、応答あり。 アルス・アンドレイに攻撃を指示、応答あり。 [00 05] 射程のあわない緑のMS-09Rに対して使用可能武装なし。 [00 06] 近距離からビームランスで緑のMS-09Rを攻撃、機体に命中。 [00 07] ラファエル=フォーミュラより通信。緑のMS-09Rを撃墜したとのこと。 ラファエル=フォーミュラから青いYMS-15の目標報告を受信、了解。青いYMS-15を確認。 瀬田 丈に攻撃を指示、応答あり。 アルス・アンドレイに攻撃を指示、応答あり。 [00 08] 遠距離から大型ビームライフルで青いYMS-15を攻撃、かわされる。 [00 09] 遠距離から大型ビームライフルで青いYMS-15を攻撃、かわされる。 [00 10] エドガー・ゲイン機が青いYMS-15を撃墜するのを目撃。 [00 11] ALEXより青いMS-14Aへの攻撃命令を受信、了解。 ラファエル=フォーミュラに攻撃を指示、応答あり。 瀬田 丈に攻撃を指示、応答あり。 アルス・アンドレイに攻撃を指示、応答あり。 [00 12] 遠距離から大型ビームライフルで青いMS-14Aを攻撃、かわされる。 [00 13] 遠距離から大型ビームライフルで青いMS-14Aを攻撃、かわされる。 ラファエル=フォーミュラへ攻撃を指示するも応答なし。 [00 14] 青いMS-14Aの隙をうかがう。遠距離から大型ビームライフルで青いMS-14Aを攻撃、かわされる。 [00 15] エドガー・ゲイン機が青いMS-14Aを撃墜するのを目撃。 [00 16] 通信らしきノイズを受信。 物陰に潜んで索敵、白いRGM-79LAを発見。 ラファエル=フォーミュラに攻撃を指示、応答あり。 [00 17] 通信らしきノイズを受信。 射程のあわない白いRGM-79LAに対して使用可能武装なし。 [00 18] ラファエル=フォーミュラより通信。白いRGM-79LAを撃墜したとのこと。 [00 19] 物陰に潜んで索敵、白いMS-09Rを発見。 ラファエル=フォーミュラに攻撃を指示、応答あり。 アルス・アンドレイに攻撃を指示、応答あり。 [00 20] 指揮官行方不明。 近距離からビームランスで白いMS-09Rを攻撃、かわされる。 [00 21] 指揮官行方不明につき、エドガー・ゲインの指揮下に入る。 近距離からビームランスで白いMS-09Rを攻撃、スパイクシールドに命中、破壊。白いMS-09Rがスパイクシールドを投棄するのを目撃。 [00 22] 近距離からビームランスで白いMS-09Rを攻撃、かわされる。 [00 23] 射程のあわない白いMS-09Rに対して使用可能武装なし。 エドガー・ゲインより通信。指揮官行方不明のため、指揮下に入るとのこと。 [00 24] エドガー・ゲインより通信。白いMS-09Rを撃墜したとのこと。 [00 25] エドガー・ゲインより青いMS-15Bへの攻撃命令を受信、了解。 アルス・アンドレイに攻撃を指示、応答あり。 [00 26] エドガー・ゲインより早期警戒情報を受信、了解。 エドガー・ゲインより通信。青いMS-15Bを撃墜したとのこと。 エドガー・ゲインより応援要請を受信、了解。目標を青いGP03Sに変更。 [00 27] 射程のあわない青いGP03Sに対して使用可能武装なし。 アルス・アンドレイに攻撃を指示、応答あり。 [00 28] 近距離からビームランスで青いGP03Sを攻撃、シールドに命中、破壊。青いGP03Sがシールドを投棄するのを目撃。 [00 29] 近距離からビームランスで青いGP03Sを攻撃、シールドに命中、破壊。青いGP03Sがシールドを投棄するのを目撃。 [00 30] エドガー・ゲインより通信。青いGP03Sを撃墜したとのこと。 これで総参加回数は47回 撃墜 10機, 被撃墜 35回, 経験値 140p, MSポイント 493p になりました。 セッティング ■■ XA0086M / ジョージ・ヤン ■■ [搭乗機種] RGM-79SP / ジム・スナイパーII? (銀) [性能諸元] BG 3/MC 1/Psy 0/IFG 0 推力 +55%(+79%) 機動 +10% 索敵 +46% 射撃 +9% 格闘 +12% 装甲 +0% 耐久 +7% 戦闘限界 31分 [武装] ビームランス 大型ビームライフル ビームハンドガン [改造] スーパーカスタム 次世代規格改装 スラスター・チューンナップ [総コスト] 455msp 天気予報 M粒子濃度:中程度,デブリ量:まばら 感想 ここ最近、やっと攻撃があたるようになって来ました… うーん。ヘイズルより上の数字に纏めるためにジム・スナイパーII?に搭乗したわけですが。。。ビームランスはいらなかったかも…? そろそろクウエルは卒業しないとだめかな… MSBS?
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曲名 アーティスト フォルダ 難易度 BPM NOTES/FREEZE(SHOCK) more more more capsule X2 激10 135 268/27 譜面 http //eba502.web.fc2.com/fumen/ddr/x2mf/more3_4m.html 動画 http //www.youtube.com/watch?v=aS8LWRsl3-k (1P x4.0,NOTE 2P x3.5,NOTE) 解説 AC版DDR2013ではプレイできません。 全体的にリズムが取りづらい。動画の1 36の部分で1度だけある16分2連に注意。 フリーズアローによって片足を拘束される配置が多い。 名前 コメント コメント(感想など) 付点8分が中心のリズム難。↑解説にもあるとおりフリーズを固定する箇所が非常に多いのでLv10では強め。 -- 名無しさん (2012-12-23 23 17 08) 名前 コメント
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第五話*②/ /第六話 リニアは少しもスピードを落とさずに目的地へと向かう。 運搬用リニアはもちろん無人で、入力されたプログラム通りの進路を走っていく。 今通っているのはサービストンネルと呼ばれる場所で、エデンの地下階層にクモの巣のように張り巡らされている。 同じようにエデンに路線が張り巡らされているリニアとの違いは行き先だ。 サービストンネルは工場や制御区の制御棟のジェネレーターや制御装置が設置されている地下階層に素早くアクセスする連絡通路で、業者や政府関係者しか利用できないのだが、グローバルコーテックスはエデンⅣ建設のおり、エデン内部での作戦時に素早く展開できるようにサービストンネルの利用許可と路線の開通権を取得していたのである。 政府も建設に巨額の出費をし、完全中立を掲げるグローバルコーテックスにノーとは言えなかったためだ。 程なくして、リニアは制御棟の地下2階に位置するアクセスランプに到着した。 さすがに敵が潜む地下3階に直接乗りつけるのは危険度が高い。 脚部のロックを解除し、立ち上がる。 アクセスゲートの前まで来ると、再びミランダから通信が入った。 「アクセスゲートのロックを解除します。そのまま暫くお待ちください」 ミランダがロックを解除するまでに、システムを戦闘モードへと移行する。 『コマンドを確認。システム、戦闘モードに移行します』 中性的な電子ボイスが簡潔に情報を伝える。 ブリューナグに搭載されているAIは特別高性能という訳ではない。どのACにも搭載されている一般的なものだ。 個人差はあるだろうが、俺の場合、必要最低限の機体状況が把握できれば後は自分で判断できる。 一時期、高性能AIを使ってみたこともあったが、こちらが分かり切っていることもいちいち伝えてきて耳障りだったので止めてしまった。 ボイスは作戦行動中、自分にとって精神的・心理的に影響の少ない中性的なものにしてある。 これはもう好みの領域だが、俺は自分の愛機に疑似人格を求めていないからだ。 「ゲートロックを解除しました。作戦開始です。レイヴン、ご武運を」 目を閉じ、一度大きく息を吸い、吐き出す。 「了解。ソリテュード、作戦を開始する」 目を見開き、コントロールレバーを強く握る。 リモート操作でゲートを解放し、開かれた通路へブーストを吹かして侵入する。 自慢の高性能レーダーの索敵によって、このフロアに敵がいないのは確認済みだ。 事前に入力しておいた制御棟のマップを横目に、最短距離を割り出したAIのナビゲートに沿って地下3階へと通じるエレベーターを目指す。 途中、テロリスト達がトラップを設置していることも想定していたが、思いすごしだったようだ。 相手にそこまでの余裕は無かったらしい。 何の抵抗もないまま、エレベーターへとたどり着いた。 念のために各種センサーを使って、エレベーターにトラップが設置されていないかスキャンする。 『スキャン終了。異常は認められません』 AIからの結果報告を聞くと同時に、エレベーターのゲートを開き、滑り込む。 エレベーターは対象物が乗り込んだことを判断すると、自動で降下を開始する。 降下Gを感じながら地下3階のマップをコンソールから呼び出し、構造をイメージしていると、ミランダから通信が入った。 「間もなく地下3階に到達します。エレベーターを出た通路の先に2機の熱源を確認しました。注意してください」 こちらのレーダーでもすでに索敵済みだった。2つの機影がせわしなく動く。向こうもこちらの侵入を察知したのだろう。 「こちらでも確認した。視認し次第、殲滅する」 室内に、ガクン、と大きな振動が伝わる。対象物を運び終わったエレベーターは自らその扉を開いた。 ――さあ、ゲームの始まりだ。 ブーストを吹かし、最大戦速で一気に加速する。 10メートル以上の巨体が約400キロものスピードで狭い通路を疾走し、レーダー上での互いの距離が一気に縮まってゆく。 FCSはすでに隔壁越しに敵を熱源ロックで捕らえており、メインディスプレイには2つのシーカーが表示されていた。 その距離、約500メートル。 レーザーライフルの有効射程圏内だったが、さすがにレーザーでも隔壁を撃ち抜いて攻撃することはできない。 閉所での戦闘の宿命だが、多少の被弾は覚悟で突入するほかない。 距離は見る見るうちに詰まり、隔壁越しに互いの距離は100メートルを切っていた。 ソリテュードは一度止まり、隔壁の解放をリモート操作するのと同時に、隔壁が開ききる直前を見計らって、オーバードブーストを起動した。 強烈な加速Gが体をシートへ押し付ける。 急激な加速に脳が軽くシェイクされ、一瞬くらりとブラックアウトするような感覚に襲われるが、それはすぐに戦意の高揚感へと変わる。 隔壁が開ききったのと同時に、その先の小部屋へと文字通り飛び込んだ。 小部屋で待ち構えていた重装MT2機は予想もしなかったACの突入方法に明らかに面食らっていた。 その内、手近の1機に最接近し、一気にブレードで薙ぎ払う。 高エネルギーを集束した一閃を密着状態で食らったMTはコクピット部分をごっそりと抉り取られ、二度と動くことはなかった。 突然の襲撃に加え、僚機を失った残りのMTはブリューナグが自分の方へ向き直った所でやっと我に返った。 慌てて、メインウェポンのバズーカで反撃を試みるも、先を読んでいたブリューナグに簡単に回避される。 ソリテュードは回避と同時に右へブーストで横滑りしながら、レーザーライフル3発をMTへと見舞った。 レーザーライフルの弾速は実体弾ライフルよりも圧倒的に速く、弾速も再装填も遅いバズーカとは比べるべくもない。 結局、MTは抵抗できないまま、止めの一撃でジェネレーターを打ち抜かれハデに爆発し鉄クズと化した。 敵の本隊が待ち受けている制御装置のフロアまでのルートを確認するため、マップを呼び出す。 見ると、中央の制御装置が設置されているフロアへの道のりはほぼ一本道なので、当然通路上での迎撃が予想される。 先程は小部屋だったので回避スペースがあったが、狭い通路でのバズーカの射撃はACでも侮れない。 レーダーを見つつ、マップと照らし合わせながら戦術イメージを再構築する。 どうやら待ち構えている敵MTは、これまた2機で、通路は小部屋を出てから直進し、右へ曲がる構造になっている。 MTは曲がり角の先でこちらを迎撃するつもりらしい。 ――なるほど、悪くない選択だ。 オーバードブーストによる強行突撃も考えたが、リスクが高い。 何か手は無いかとマップに眼を凝らすと、制御装置のフロアへの通路は右に曲がっているが、小部屋を出て直進した先にも別のフロアがあり、曲がり角の先にも多少の直進スペースが残っていた。 ――これだ、この構造を利用しよう。 方針が固まれば、後は実行するのみ。 先の通路へと続く隔壁を解放し、今度は通常歩行で距離をじわじわと詰めてゆく。 距離を詰める間に、兵装をレーザーライフルから右肩のミサイルへと切り替える。 ミサイルの有効射程はレーザーライフルよりも長い。 通常歩行で距離を詰めたのは、2機のMTに壁越しの熱源による多重ロックをするためだ。 すでにロックオンサイトに敵を収めたFCSは1機につき3発のミサイルロックを完了した。 そしてロック完了と同時にエクステンションを起動する。 ブリューナグの両肩に装備された連動ミサイルのハッチがガバッと開き、そこからミサイルの弾頭が顔を覗かせる。 ハッチが開くその様子は、獲物を狙う獰猛なワニを連想させた。 通路の曲がり角を直前に控え、ソリテュードはレーダーを見る。 相手に動きは無く、こちらに打って出てくる様子はないようだ。 それを確認すると、ソリテュードは機体を右の壁に正対するように向け、左方向への水平移動を始めた。 ディスプレイ越しの風景は、ひらすら壁が左から右へ流れていく様子だけが映し出される。 そして、曲がり角直前でブリューナグは一旦停止し、次の瞬間、ブーストによる左水平走行を開始した。 ディスプレイの画面に映し出さていた壁は急速に右へと流れ、唐突に視界が開ける。 その先にはバズーカを構えたMTが2機。 想定していた通りの映像を確認した瞬間、コントロールレバーのトリガーを引き、合計10発のミサイルが敵MTへと襲い掛かる。 MT側も咄嗟にバズーカによる迎撃をしてきたが、そのまま左へ横滑りしていったブリューナグに、その弾丸が当たることは無かった。 ミサイルの発射音の後、一拍遅れて轟音が響き渡り、凄まじい爆煙によって視界が一時遮られる。 煙が薄れるのを待って、機体を制御装置へと続く通路へ向かわせると、その先にはMT2機分のスクラップが転がっていた。 確かに狭い通路ではバズーカのような高火力の実体弾兵装は有利だ。 しかし、逃げ場が無いのはこちらだけではなく、向こうも同じ。 10発ものミサイルを閉所で食らえば、拡散する空間が無いがために高められたミサイルの爆発による破壊力だけでなく自らの機体の誘爆で機体は跡形も残らない。 無残に転がる残骸を踏み越えて、最後の目的地へと向かう。 残るはACとMT2機のみ。 最終目標を前にミランダから通信が入る。 「この先に制御装置が設置されている部屋があります。多少の空間がありますので、戦闘に支障はないかと。確認される熱源は3機。この先の部屋に退路はありません。袋のネズミです」 「万が一にも取り逃がす恐れは無いってことか」 「彼我の戦力を考慮しても、まず有り得ないでしょう」 ミランダは俺が勝利することを信じて疑わないようだ。まあ、俺もそのつもりだが。 「しかし、制御装置はどうする。気を付けるが、流れ弾による被弾も有り得なくはない」 俺の疑問にミランダは少しも慌てた様子もなく答える。 「その点に関してはご心配なく。制御装置はテロリストが占拠している部屋より更に奥に設置されており、2つの隔壁が備わっています。隔壁を解放しない限り被弾の可能性は無いと考えていいでしょう」 「なら気兼ねなく戦えるな」 「はい、政府からも施設に多少の被害が及んでも構わないとのことですので、敵勢力を速やかに排除してください」 コントロールレバーを握り直し、気持ちを引き締める。 「よし、突入する」 スロットルを上げ、ブーストを吹かし、敵の主力が待つ部屋の前へと立つ。 コンソールを叩き、リモート操作で隔壁を解放すると同時に、今度はブーストでバックをかけて後退した。 後退しつつ、あらかじめ壁越しに熱源ロックしておいた動きの鈍い敵にミサイルの一斉射撃を見舞う。 部屋の中へ目暗ましの弾幕を打ち込むための行動だったが、前に出過ぎていたMTの1機がミサイルの直撃をモロに食らい、そのまま沈黙した。 その瞬間を見計らって、一気に部屋の内部へと踊り出る。 確認できたのはAC1機と残りのMT1機。 そこまでは予想どおりだったが、敵ACの姿を見てソリテュードは呆気にとられた。 機動力を重視した軽量級のフロートACだが、肩には重量がかさむミサイル兵装が装備されている。 右肩には多弾頭マルチミサイル、そして左肩にはあろうことか垂直発射式ミサイルが搭載されていた。 どちらも開けた場所でなければ真価を発揮しない兵装だ。 主力兵装はパーツと武器が一体となった武器腕のマシンガンタイプ。 このアセンブリにソリテュードは首を傾げるしかなかった。 まったくもってコンセプトが分からない。 機動力と攻撃力どちらを重視しているのか。近距離主体なのか遠距離主体なのか。 「敵AC、グローバルコーテックスの登録に該当ありません」 ミランダの冷静な声で瑣末な思念を払拭する。 「当たり前だ。こんな阿呆、コーテックスの試験に受かるものか」 気持ちを切り替えると、鈍重なMTにレーザーライフルを叩き込み黙らせる。 残るはAC1機。 そう大した腕を持っているようには見えないが、外見だけで判断するのは早計だ。 相手の実力を図るべく、揺さぶりをかける。 敵ACはマシンガンを装備しているので不用意に近づかずに、ブーストで距離を取りつつ連動ミサイルを組み合わせたミサイルの弾幕を張り、牽制して様子を見る 敵ACはマシンガンを乱射しつつブリューナグを追撃しようとしたが、ミサイルの弾幕に阻まれる。 ミサイルを回避しようとエクステンションの迎撃ミサイルを発動させるが、重いミサイル兵装に機動力を殺され、さらに限られたスペースしかない室内ではフロートの最大の強みである地表を滑るような軽快な機動が発揮できず、回避しそこねたミサイルを数発被弾する。 ――武装をパージする技術も知らないのか、コイツは・・・。 敵ACのぎこちない動きに疑念を抱きつつ、相手を追い込むため更なる追撃を仕掛ける。 ブーストを吹かし、後退と旋回による不規則な機動で攻撃を巧みに回避しつつレーザーライフルで応戦し、動きを読まれないようにブレード光波による牽制攻撃を絡める。 ブリューナグが装備するブレードの光波は物体に当たるか一定距離を進むとプラズマによる爆炎が巻き起こるため、牽制や追加攻撃に打ってつけで使用頻度は高い。 レーザーの直撃に加え、続けざまにブレード光波が機体を掠め、爆炎を巻き起こし、相手の機体を激しく揺さぶる。 敵ACは、この予想だにしなかったブレード光波に面食らい、動きを止めてしまった。 その相手の動きを見て、ソリテュードはモチベーションを下げざるを得なかった。 対AC戦に慣れていないのは明白だ。 「まったく、張り合いのないヤツだ」 興味を失ったソリテュードは、さっさとカタを付けるべくラッシュをかける。 敵ACは戦意を喪失したのか、逃げようと必死になるが、ブリューナグのレーザーライフルにその身を削られてゆく。 ACのアセンブリのためなのか、それともレイヴンの腕なのかは分からないが、動きの鈍い敵ACは、弾速の速さに加え、ソリテュードの的確な射撃を避けられず追い込まれていった。 弾幕を張るために乱射していたマシンガンもいつのまにか弾切れとなり、唯一残った手段であるマルチミサイルを発射するが、ブリューナグには掠りもしない。 「漠然と戦っていた代償は自らの命で払え」 それは相手に向けての言葉だったのか、それとも自分への戒めだったのか。 ソリテュードはフルブーストをかけると、一気に肉薄し、ブレードを薙ぎ払う。 高エネルギーを集束した光の刃は敵ACの左胴体部分から右肩にかけての装甲を焼き切り、真っ二つに切断した。 切断された断面からは溶けた鋼鉄が水飴のように垂れている。 沈黙した敵を見下ろしながら、つまらなさそうに嘆息する。 「こちらソリテュード。敵殲滅。これより帰還する」 「敵殲滅を確認しました。ミッション終了です。お疲れ様、レイヴン」 ミランダの事務的な労いの言葉に特に何も返さず、その場を後にした。 結局、今回の依頼にかかった出費は被弾が10%にも満たなかったため、ほぼミサイルの弾薬費だけとなった。 報酬30000Cのうち約27000Cが手元に残り、ボロ儲けだった。 しかし、高額報酬を手にしても、今のソリテュードに大した喜びはなかった。 どうも最近のミッションは、どれも張り合いが無い。 ソリテュードは自分の心に何か満たされないものがあるのを自覚していた。 自惚れている訳ではないが、正直自分の腕前には自信がある。 もっと困難なミッションや自分の死力を尽くせるようなレイヴンと戦いたい。 そういう思いがソリテュードの心を占めていた。 そう、5年前のあの日のような。 そんなことを考えつつ、気付けば自宅近くのターミナルの出口だった。 満たされぬ心を抱えつつ、作り物の空と平和ボケした摩天楼を見上げ、ため息を吐くと、家路へと急いだ。 「ただいま」 呟くように言って、自宅のドアを開けたが返事がない。 ――まあ、いつもの事だ。 逆にアリスから返事が返ってくる方がびっくりするくらいだ。 部屋は明かりが点いていた。 リビングに入ると、ソファに小さな人影が一つ。 アリスがぬいぐるみを抱えたまま横になり、静かな寝息をたてている。 ソファの前の机には空になったプラスチック容器とスプーンとフォークが散乱していた。 どうやら食事をした後、眠くなってそのまま寝てしまったらしい。 「まったく、寝るなら部屋で寝ろよ」 呆れつつもその微笑ましい光景に、不覚にも笑みがこぼれてしまった。 らしくないと思いつつ、自分の部屋にブランケットを取りに行く。部屋に移動させてもいいが、起こすのもかわいそうだ。 アリスにブランケットをかけようとした時に、ふと机の上に未開封のプラスチック容器があるのに気付いた。 注文して食べきれなかったのかとも思ったが、それにしては量が多い。 アリスはきちんと状況判断できる娘なので、自分が食べる量くらいは把握できるはずだ。 ――ということは・・・。 「これ、俺の分か」 無意識のうちに疑問が言葉に出る。 普段から妙な言動をするアリスを見ているソリテュードにとって、彼女のこの行動は少し意外だった。 すうすう、と年相応の可愛らしい寝息をたてるアリス。 普段は感情の読めない不思議な娘だが、こう見るとやはりか弱い女の子なのだと実感する。 実際に普通ではないというのは確かなのだが、しかし、3年前よりかは多少人間らしくなってきたのも事実だ。 そうして、すやすやと眠るアリスを見ていて、もう一つ思い立ったことがあった。 もしかすると、俺の帰りを待っていたのかもしれない。 そうでなければ、未開封の食事を前にしてソファに座っている必要もないからだ。 「ありがとな、アリス」 そう言って、起こさないように小さな頭を軽く撫でた。 ケータリングのディナーパックをレンジで温めると、自室へと運んで食べることにした。 正直少し眠たかったが、アリスの好意を無駄にしたくはなかったからだ。 さて、食べようかとフタに手をかけたその時、マルチコンソールから重要メール受信を知らせるメロディが耳に響いた。 面倒だなと思いつつも受信ボックスを開く。 メールの送信元は『ターミナル・スフィア』、差出人は『ノウラ』。 それを確認すると、ソリテュードはマルチコンソールを閉じた。 「まったく・・・協力はしないと何度言ったらわかるんだ。いい加減しつこいぞ」 誰に聞かせるでもなく、それでも声に出して悪態をついた。 詳細は後で確認してみなければ分からないが、大方いつもと同じ内容だろう。 レイヴンとしての仕事のオファーならば受けてもいいが、ヤツらが人の手を借りることなどそうそうない筈だ。 「研究熱心なのは分かるが、他人の家の娘にまで興味持つなよな・・・」 どうせあのマダムに何言ってもムダだろうが。 ――まあ、メールの返信なんぞ明日でいい。 余計な思考を脇へ追いやると、今度こそ食事へ手を伸ばしてガラでもなく感謝をしつつ、少女のささやかな贈り物に舌鼓を打った。 第五話 終 →Next… 第六話 コメントフォーム 名前 コメント
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④*⑤*⑥ 停泊ポートに迫る制圧部隊を他施設との連結通路を隔てて圧し留め、水際での近距離戦に突入してから数分が経過していた。 練達した技量を持って連綿な戦術を駆使する制圧部隊を前に、サンドゲイの歩兵戦力は初期に築いた防衛線から順序後退し、既に最後衛へその拠点を移していた。 『正面第五、第六搬入通路の封鎖完了──』 「よくやった。迂回路を進行し、五〇秒で拠点に合流しろ」 地下へ遣した爆破工作班を労い、シェルブは次の作戦段階に意識を移す。 (戦局はまずまずといった所か……稼げて、残り一五分弱。そろそろ来るな) 敵征圧部隊の技量が確かな事も無関係ではないが、シェルブは時間稼ぎの為の機動防御を当初から指示していた。施設管理局の承諾を得て爆破工作班に地下の物資搬入路を封鎖させた事により、敵部隊が武力による進入を確実にするには正面から乗り込むしかない。 あらゆる時間稼ぎを使って敷設した強固なバリケードに篭もれば、弾薬系統が枯渇しない限りいつまでも粘り続けられる算段が確信としてあった。 もっとも、相手の意図がそうであれば、の話だが──。 「ショーン、こちらFU(Front Unit)──調子はどうだ?」 実行要員でない為に、艦内で別行動中の整備士のショーンへ問いかけると、余りに逼迫した時間と状況の中で精彩を欠いた中年男の喚切り声が届いた。 『あと腕が二〇本は欲しい所だ! 間に合わせで正常に稼動する保障はないぞっ?』 「皆、お前の腕を信じてる。一〇分以内で調整を済ませてくれ」 『相変わらず、人使いの荒い頭目だな。そんな特権はプレジデント・クラスになってから寝言で言ってくれ』 愚痴こそ絶やさないものの、ショーンの言動にはある程度の余裕がある。最前線の兵士を整備面から支える腕利きのメンテナンスクルーとして鉄火場に長い間浸かっているだけあり、旧来の間柄であるショーンを全面的に信頼していた。 シェルブやショーン、サンドゲイルにとっても、今回の襲撃は何ら特別なものでなく、相手の素性を除けばよくある癇癪のようなものだった。 状況は逼迫しているが、珍しい類の話ではない。それに慣れているかいないかでは、命が天秤に乗っかった状況の結末に雲泥の差が出る。 いくつもの戦場の辛酸をなめて来たシェルブは、老獪な認識力を持って現状を把握していた。 傍の装甲板で跳ねた小銃弾が甲高い音を立て、応酬とばかりにFUが制圧射撃を一層激しく撃ち込む。 使えるならば旗艦の艦載砲群で一掃したい所だが、生憎とそんなモノを屋内で持ち出せば、建物自体の倒壊を招き双方共倒れか、運良くて丸裸で命辛々という所が関の山だろう。 肩に掛けた小銃を取って制圧攻撃に加わろうとした矢先、確立状態の無線に連絡が入り、シェルブは確信を持って応答した。 『親方、こちらマイ──地下道へ入りました。間もなく到着します──ACの出撃準備を済ませておいて下さい』 あちらはどうやら、何とか無事に遣り遂せたらしい。だが、総合的な状況は然程芳しくないようだ。 「既にショーンが掛かっている、お前達は直接ハンガーへ向かえ──」 今回の襲撃自体が、不測の状況下で起こったのだ。事態が好転しないどころか悪化修正したとしても、そこに驚きはない。だからこそシェルブは万一に備え、施設ドックに移していたAC機体を全て艦内ハンガーへ再搬入、コロニー外部への出撃がすぐにでも可能なようショーンに指示を出していた。 攻囲網が敷かれる前に、フィクスブラウも繋留施設内へ帰還させた。一対多数で不利な野戦を演じさせるよりは、強固な隔壁設備を盾に状況を保つべきだとシェルブが判断した為だ。 マイからの通信に加え、ほぼ入れ替わりでコントロールから通信が入る。 『ボス、こちらコントロール──施設外部のAC部隊が戦域離脱を開始しました』 「了解。艦載レーダーの索敵態勢を第一種広域索敵態勢へ移行、データリンク・システムの確立を急げ」 『了解しました』 早速万一の事態が転がり込んできた事に、シェルブは薄ら笑う。 現場指揮権を副官に委譲し、バリケード伝いにシェルブも停泊ポートの内壁階段を下りる。最寄の乗降口から艦内へ駆け込みハンガーへ到着するのと、開放状態のハッチからマイ達の乗り込む車輌が滑り込んできたのはほぼ同時だった。 マイが文字通り車内から飛び降り、丁度傍で繋留状態にあったAC機体──濃蒼色を宿す中量級二脚機〝蒼竜騎〟の最終調整を行っていたショーンの元へ駆け寄る。 「おやっさん、蒼竜騎の状態は?」 機体上方は整備用重機械を用いて作業に臨むショーンが、顔面保護用のマスクを被ったまま大声を上げる。 「だめだ、まだ腕の換装が済んでねえ。五分待て、シーアが拾ってきた部品を着ける!」 数日前の作戦によって左腕部を欠損した蒼竜騎には、それに変わる新しい腕部が接続されつつある。先程まで周辺地帯で戦闘を行っていたシーアが偶然拾ってきた代物だが、それを使えると判断したショーンがほぼ独断で、その場で蒼竜騎に換装することを決めた。 ハンガー上部の欄干に立つシェルブの下方部へ、マイが走り寄る。軽く息を切らしてはいるが、焦燥と頑健な意思の入り混じった双眸と視線が交わり、表情を引き締めた。 娘の姿がない──。 「あの娘が、攫われたんだな?」 一時を置き、マイは覚悟した面持ちで返す。 「はい──親方、力を貸して下さい」 事前のやり取りの手前が為に恥を偲んで──という表情ではない。 それは、己が遣り通すと誓った覚悟を微塵も諦めていない者の眼だった。 だからこそ忌憚なく、 一切の澱みなく、 全く臆さず、 マイは、率直に助力を述べた。 自らの手で成すべき事を放棄した人間は、その目に恥辱の色を浮かべる。それに例外はない。 戦場で長い年月を過ごすシェルブには、尚も戦士としてあろうとする者を視る確かな洞察眼が備わっていた。 自らが最も時間を掛けて育て、教えてきた最も古い教え子は、覚悟を放棄していなかった。 戦士の尊厳──その重圧に屈さず、戦おうという意思を貫こうという教え子に、シェルブは敬意を払った。 今一度大きく肺腑に息を吸い込み、ハンガー内にいる全ての者に聞こえるよう号令を響き渡らせる。 「聞いたか野郎ども! サンドゲイル、全機発進だ──!」 各々が威勢良く応え、速やかに出撃できるよう搭乗準備を開始する。 その中で一人、非常にゆったりとした足取りで此方へ歩む寄るアハトの姿があった。 「施設に残って、奴らの相手をする──構わんな?」 「ああ。手はず通りに頼む」 サンドゲイルに引き入れてからまだ間もないアハトには、その身の上、容易に姿を外部へ曝せない、或いは曝そうとしない姿勢を以前から見せていた。 「今回の襲撃規模、ただ事ではあるまい。本社がその気だとしたら、あの娘は黙って引き渡した方が利口かもしれんぞ」 連絡通路へと向かうアハトと背中合わせの状態を保ったまま、シェルブは逡巡なく応答する。 「──かもしれん。だが、通すべき筋が俺達にはある。それをなくして、俺達はどうやって傭兵を語れる。この生き様を通し、マイ自身が望むようにその筋を通させてやりたい。──後の事はさておいても、な?」 力強い意思を秘めるシェルブの言動に対し、アハトは一拍を置いて小さく苦笑する。 「ふ──シェルブ、お前も大概狂ってるな」 出がかった言葉を飲み込み、シェルブは自らも出撃すべく待機室へと向かった。 前を向いて狂わなければ、生き残れない戦場もあるさ──。 それにどう折り合いをつけて生きるかが、戦士の分水嶺だ──。 * 嬉しかった──。 そう思ったのは、産まれてからの日々の中で、二回──。 私が知らなかった世界には、そんな感情が生きているという事に、ようやく確信を持つ事ができた。 でも、繋がれた日々は、やはり私に嵌められた頚城を強く引き戻す。 だから私は、淡く暖かいその感情を享受する前に、線を引いた。 それがいつか私自身の頚城を引っ張り、首を酷く締めつける事を知っていたからだ。 傷つき、傷つけるのなら、本当に受け入れてはいけない。 身体が横たえられた薄暗く狭い筺体の中で、そんな事をぼんやりと考えていた。 私が生きるのは、いつの時代も変わらない。 小さく区切られた普遍世界──。 願う事が誰の損にもならないとは言うけれど、自分が傷つくのなら、それを考える事すら愚かしい。 ただ、かつて自分がそう思った事だけを胸に抱いて、日々を繰り返そう──。 そう心に考え、瞳を瞑ろうとした時だった。 無意識下で稼動していた機械化知覚機能群が、外部環境情報の変動を捕捉する。 何の興味もなく、しかし、退屈凌ぎには丁度いいものかと、意識を傾けて外部状況の取得を試みる。各種知覚機能群の稼動率を僅かに底上げしただけで、単純な遮光外板で覆っているだけの天蓋は透過できた。 周囲一帯に広がる荒野──その果てに粉塵を巻き上げ、渇いた大地を縦断してくる幾つかの機影があった。 更に知覚機能を遠方へ拡張して詳細を把握した時、私は余りの驚愕に上体を起こした。 「嘘でしょ、何故──っ?」 驚異的な速度で荒野を走り寄る複数の機影──その中の一つに、見覚えがあった。 最先鋒へ立つ、滄海のように深い彩を宿した、この時代の鋼鉄の戦士──。 「マイ、貴方は──」 * ソグラト管轄領外へ向け前方の荒野を縦断していく動体群の反応を、各種搭載センサー群と広域索敵態勢で稼動中のレーダーが捕捉する。 娘が拉致されてからほぼ間を置かず追撃に入った事も一助となって、見事な引き際を持って撤退を試みる敵部隊の後方有効戦域内へ踏み込む事ができた。 拡視界に捕捉した敵性動体を速やかに解析した戦術支援AIが、中性的なプログラムボイスを操って報告事項を述べる。 『敵性動体数、四機。いずれもAC兵器、中量級二脚機〝三〟、軽量級二脚機〝一〟の同規模編成です──』 敵部隊が此方の増速接近へ対応すべく後退陣形を移行、背部に収容コンテナを積載したACを最前衛に残りの三機が後方へ扇状に展開し始めた。 典型的な後退支援隊形──手堅く、確実に逃げ切るつもりか。 積極的な攻勢を仕掛けてくる事は一切ない、相手の出方を瞬時に把握したシェルブは隊内回線を通じて指示を出した。 「彼我の戦力差は同等だ。最前衛から時計回りに、敵個体をレイダー1から4とする。目標は〝レイダー4〟が確保しているコンテナの奪還だ。流れ弾を当てないよう、注意してかかれ」 ただの迫撃戦闘ならば問題ないが、今回は奪還すべき対象が此方にある。それは恐らく、コンテナを最優確保先目標として動く敵部隊も同様だろう。 つまり、此方が主導権を掌握して動く限り、相手もそれに合わせて動いてくる事に直結している。 制圧戦闘を行なうには戦域密度が高く、戦闘の際の何れかの呷りを受けて万が一の事態──コンテナが被弾するような末路だけは避けねばならない。 奪還猶予は、敵部隊の領域外離脱まで──地域情勢を鑑みるならば、相対距離的にも然程時間は残されていないと考えた方が良い。 如何に冷静に、繊細に、そして同時に大胆に動くかが重要だ。 「敵隊形の即時分断、各個撃破を図る──状況を見誤って遅れるなよ?」 『了解です──』 横列追撃隊形の最右翼を進行中の軽量級二脚AC、〝ジルエリッタ〟に乗り込むシルヴィアが意気よく応える。それに続いてシェルブが自ら駆る機体〝ツエルブ〟の右側にフィクスブラウを併走させるシーアが、 『連続だが、中々楽しめそうだな』 と、言う。 本人が口にする通り先程の戦闘から時間は経ておらず、シーアの口調は冷静でこそあるものの、何処か高揚感に満ちている。シェルブが言及する前に、旗艦の管制室に残って通信支援を行なう専属オペレーターのエイミが、彼を嗜めた。 『シーア、ボスが言ってるのはあくまであの娘の奪還支援よ、わかっていて?』 度の過ぎた息子の手を抓るような、母性をすら感じさせるエイミに対し、シーアはばつが悪そうに言い返す。 『わかってるって──』 自陣に今の所、問題はないな──中央右寄りを最先鋒で疾駆する滄海色の中量級二脚機〝蒼竜騎〟の背中を見咎め、シェルブは冷淡に勤めた口調で問う。 「奪還猶予は然程ないぞ、ドラグーン」 『はい。何としても、イリヤを取り戻します──』 心理的にこの状況を逼迫していると考える筈のマイが、最も冷静に勤めた態度で応える。しかし、その戦意は猛っている事だろう。 そろそろ仕掛けるか──。 シェルブは左腕部携行兵装──軽装型滑腔砲を注視し、操縦把付随のスイッチを数度押し込んで装填弾種を白燐発煙弾に切り替える。即座に砲口を跳ね上げ、四五〇メートル前方を移動中の敵部隊最後尾に向け発砲した。 それを契機として自陣のAC機が各々に機動展開を開始、その様子を視界の隅で捉えながら自らもフットペダルを踏み込む。著しい前方増速による軽負荷が身体をパイロットシートに押し付ける中、自然燃焼から急速な収束へ移った白燐が広範囲にわたって乳白色の煙幕を展開する。 強襲機動を取った蒼竜騎が突出して煙幕右側からの迂回を実行、後方は追従進路を取るフィクスブラウが安全射角を取った上で腕部武装の滑腔砲を用いて制圧射撃を撃ち込んだ。 その隙に蒼竜騎が前方へ大きく食い込んだ直後、識別名称〝レイダー1〟と割り振った中量級二脚のAC機が煙幕を突き破る。即座に反転したフィクスブラウが蒼竜騎の後背を護り、交戦状態へと移行した。 明確な戦術計画がなくとも柔軟に状況を展開した二人に感心しつつ、シェルブは自身の駆る重量級二脚機ツエルブを左側迂回路へ進行させていた。 ツエルブの動体反応を捕捉していた〝レイダー2〟が、進行路を遮断すべく同様に煙幕の中から姿を現す。 先行し、シェルブは仕掛ける。右腕部の重滑腔砲の砲口を跳ね上げ、APFSDS弾(離脱装弾筒付徹翼安定徹甲弾)を撃ち込む。多大な砲火が一瞬有視界に閃光を撒き散らし、外部情報を遮断する。 「ほう──、一兵卒とは違うようだな……」 流石にミラージュ本社が送り込んできた精鋭部隊と言うだけはあるか、微細な機動増速を行なって此方の狙い済ました着弾地点を狂わした。大口径のAPFSDS弾が荒野の大地へ弾痕を穿ち、大量の乾燥した土砂が中空へ舞い上がる。 シェルブは焦燥しない。何故ならば、自分が確信して行なった誘導軌道にレイダー2が過たず踏み込んだからである。レイダー2が踏み込んだ軌道上に、砲弾の再装填を済ませた左腕部軽装型滑腔砲より通常榴弾を撃ち込む。 黒々とした噴煙が上がり、胸部に重大な損傷を受けながらもなお戦闘機動を展開するレイダー2がその中から離脱を試みる。 『レイダー2、前胸部破損、冷却機構系統の機能低下を確認。有効打撃です──』 攻撃の手は、一切緩めない。コンソールを叩いて火器管制システムの管轄対象を切り替え、背部ミサイルコンテナを展開、確定捕捉を済ませた小型地対地ミサイルを連続射出した。急加速した小型ミサイル群が燃焼ガスによる白線を引き、レイダー2へと殺到する。 立て続けの攻撃に慌てて回避行動を取ったレイダー2が、大型推力機構のオーバード・ブーストを起動し、交戦圏からの一時離脱を図る。 小型ミサイルの直撃を回避されはしたものの、それ以上の回避機動は不可能である事をシェルブは確信していた。事前に破壊した冷却気候系統の不全により、間もなくレイダー2はその機体機動の停止を余儀なくされる。 そして僅かに三秒後、不意に高速機動を停止したレイダー2がその無防備な後背部を曝した。 其処へ撃ち込んだAPFSDS弾が胸部を無慈悲に貫通し、指揮系統を喪失したレイダー2の機体が、ずん、と大地に倒壊する。 「まずは一機──」 精鋭部隊の一機を瞬く間に撃滅せしめてみせたシェルブではあったが、大した感慨や高揚感などはなく、戦闘収束までの一切が全て当人の予定調和の範疇に過ぎなかった。 表現としてこれ以上ない陳腐さなのかもしれないが、赤子の手を捻ると言って良い程度のものだった。 しかし、事態の推移に対してはそうも言っていられないだろう。 支配企業の一角を担うミラージュ社、その本社直轄部隊が出向いて独立武装勢力を襲撃したのだ。 この数日間の動向が全て監視されていたというのなら、我々の置かれている状況は傍目以上に致命的な爆弾を抱えているという事になりかねない。 荒野の風によって流れていく黒煙の裂け目に、膝関節を追って中座する識別目標レイダー1の機影を見咎める。その傍に、武装の幾つかを投棄して格納装備の光学発振装置を備えたフィクスブラウが立っていた。 『他に歯ごたえのある奴はいないのか──?』 「スコープアイ、此方ザックセル──始末が済んだのならレイダー4の追撃、及びマイの支援に向かうぞ」 『了解──』 今は戦闘を全面的に収束させる事が、最優先案件である。 →Next… ⑥ コメントフォーム 名前 コメント
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第七話/ /第八話/ /第九話 第八話 執筆者:ヤマト 「また、この感覚」 生体と機械が感覚を共有する時の独特の不快感、知らない筈の知識、わからない筈の感覚が一瞬で未知から既知へとシフトする。ついで自分の中に他人がいる。旧世代の技術を復活さようとしている組織を攻撃する為にナインボールを起動させたハスラーワンという名の男だ。 「っ…ハスラー、入り過ぎ」 (解った) 私の中に入り過ぎたハスラーワンの意識を外側へ追い出しながら起動シーケンスを立ち上げる。 本来ならナインボールの起動に私は必要ない。このナインボールは負荷低減型ネクストのためAMS適正の高いハスラーワンなら一人で操れる。にも関わらず生体CPUである私が同乗しているのは戦闘になるとハスラーワンが機体の限界以上の性能を要求し機体がオーバーロードするからだ。パイロットを守るはずの私は機体を守るためのリミッターになっていた。システム、機体、武装、すべての情報が意識に流れ込んでくる。問題無し。 「Active」 そう告げると同時に体中が継ぎ接ぎになった気がする。 脆弱な肉の皮は強固な複合金属の装甲へ、心臓は重厚な電磁音を響かせるジェネレータへと、それぞれ感覚を共有していく。機体全体にコジマ粒子が潤滑するにつれて力が漲るのを感じる。 (コジマ粒子は?) 私と同じく機体とシンクロしているハスラーワンの意識を感じとる。 「安定している。」 答えると今度は満足そうな意識が飛んできた。 (結構だ…行くぞ) そう言うと機体の巡航用OBを起動させ、目的地である旧世代技術解析財団、通称ジシス財団の研究所の一つへと駆け抜けていく。 道中、ふと冬眠前の事を思い出した。 「調子はどうだ?」 「問題ありません。パイロットとの相性ですかね、負担が目に見えて少ないですよ」 実験室を見ながら科学者と思われる白衣を着た男達は話す。ネクスト開発研究所では今日も制御機構の実験が繰り返されていた。 (エネルギー源もないのに馬鹿な人達) 既存のエネルギーではネクストの性能は生かせない。故に現在でも新たなエネルギーを求めて調査隊は各地を周り、科学者は新エネルギーを開発中だ。その間に制御機構だけでも確立させたいのだろう、毎日同じ事の繰り返し。 「ナカジマ、どうだ?」「軽い違和感はあるが、これならノーマルと変わらん」 今日のパイロットは新人だ。昨日までの人は元々AMS適性も低かったからか死んだようだ。 (私がクッションになっているからそんな酷い負荷も無いのに) 生体CPUとして生まれて2年と4ヶ月…私の体は13歳くらいの少女になっていた。人では無くモノとして扱うように遺伝子操作を受けて生まれたのだから成長は早くプログラムされた体型になると後は安定期を迎え、死ぬまで老いる事もなく身体は維持される。機動兵器に同乗するのだから、背は低く、体重も軽い方がいい。試験的に06は大人の女にしたそうだがパイロットとの相互干渉が酷く、早々に凍結されたらしい。 生体CPUといえど、やはり人間である。ホルモンなどの影響を受けてパイロットと生体CPUの双方に悪影響を与え、その内の1件は社会上あまりよくない程の精神汚染を引き起こしたそうだ。他にもパイロットの意識を食い破ったり、逆に06が突然発狂する等、挙げていけばキリがない。結局、生体CPUは13歳前後で性別機能が曖昧な状態の方が扱い易い、という事が決定したため、私の体は少女のままになった。 ナカジマというパイロットとは相性がいいのか、開発は加速度的に進み、6ヶ月もすればネクストの開発は一応の完成を迎えた。肝心の動力源が無いままに…。 「おい09!避難するぞ!ついて来い!」 「避難?」 待機室で休憩していた私の所へ血相を変えた主任が飛び込み乱暴に手を引いた。 「何があったんですか?」 「近くの施設でテラ・ブーストの実験に失敗したんだ。大規模な粒子汚染が観測されている!だから06は使うなと言ったのに!」 06?確かパイロットとの相互作用が酷く凍結されたはず… 「06は凍結処分と記憶してます」主任に抱き上げられながら記憶を口にする。 「そうだ。パイロットに悪影響を与える支援機構なんて使えない、だけど無人機なら大丈夫とか言う馬鹿がいたんだよ。テラブーストの制御をやらせてみたらこれだ!」 言い終わると同時に激しい振動と爆発音が施設を襲う。 『パルヴァライザーの接近を確認。非戦闘員はシェルターに移動して下さい。』 通路を主任に抱き上げられて進む中、アナウンスが聞こえる。 「パルヴァライザー!?くそっ!やりたい放題だな!」 毒づく主任はシェルターとは別方向へ走り出した。 「シェルターはこの先には無い筈ですが?」 「解ってる、念のため君を最深度地下施設に連れていく。君がネクスト特化型でなければそこでパルヴァライザーを止める事ができるんだが…」 話す内に最深度地下施設に到着する。 「今からカプセルを用意する、お前は一時冷凍保存だ」 端末を操作しコールドスリープ用のカプセルのハッチを開けると私を中に横たえる。 「その内迎えに来るよ、九玉(こだま)」 「コダマ?」 「君の名前だ。昨日思い付いてね、データには僕が登録しておく。少しの辛抱だからいい子にしてるんだよ?」 私の頬を優しく撫でてハッチを閉じるとすぐに装置が動いた。急速に失われる意識の中でメモリーに自分の名前をセットする。 ー九玉ーそれが私の名前。 そして、目が覚めると見知らぬ施設にいた。聞けば私の生まれた時代は旧世代だという。 ―随分と眠ってたのね― 身体が安定してからは冬眠前にしていた事を最初からやり直す日々が続いた。驚いたのはここではコジマ粒子という新たなエネルギー源があり、プロトタイプといえどネクストが開発されていた。さらに驚いたのはそのネクストの名前を聞いた時だ。 <ナインボール・セラフ> それは私と同じ名のネクストだった。 プロトタイプ・ネクストのパイロットに会ったのは少ししてからだ、ハスラーワンという名のあまり好きになれそうに無い男だった。 シンクロを繰り返す内に彼の意識内に企業に対する敵意を感じ始めていた。いつまでも自分達の利益のみを求め、真に世界の安定を望んでないのだ。 「個の利益は企業の利益の先にある。焦る必要はあるまい?」 ハスラーワンへ依頼を届けにきた企業の重役はいつもそう言った。やがて利用されているだけと解った時には行動は速かった。負荷低減型ネクストを奪い、さらに長期間の稼動を見越して私も連れだした。 追っ手は凄まじかった。当然だ。最高のレイヴンが最高の機体を奪い企業に牙を剥いたのだ。説得あるいは抹殺を見越しての編成か常に20機以上の大部隊を送りこんできた。だが、負荷低減型とはいえ、こちらはネクスト。MT相手なら100機でも相手にできる。 ACとの戦闘も何度かあったが機体の性能とパイロットの技量からか全て撃破している。…ただ一人、施設を襲撃した際、施設を防衛していた「アロウズ」と名乗ったレイヴンを除いて。 第八話 終 →Next… 第九話 コメントフォーム 名前 コメント
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第九話*②*③ ミラージュ社直轄経済管轄領、閉鎖型自治区【ソグラト】── 午後一五時三〇分──。 艦艇上部区画の展望施設から臨む荒野に、黄塵を含んだ陣風が不規則に渦巻いている。 霞むその荒野の中に数日見なかった人工物──都市全域を覆う外殻機構を見咎めた時、艦内内線を通じてインカムに通信が届いた。 『繋留コロニーに着くわ、マイ。ボーディング・ブリッジに移動するから、手伝ってちょうだい』 「オーケー、すぐに行くよ」 外景に傾注していた視線を戻し、マイは艦内八階の乗降施設に直結する連絡通路へ再び足を向けた。 繋留施設への接近報告が艦内放送を通じて響き、先程まで落ち着いた静けさを保っていた艦内が俄かに騒がしくなり始める。繋留準備の為に通路を行き交う見知りのクルーらと目礼を交わし、込み合う昇降設備を避けて連絡階段で一気に八階まで駆け上がった。 すぐ右手、右舷第七管区の乗降口に待機する白衣姿の女性を見つけ、マイは小走りで走り寄る。 「あら、遅かったじゃないの?」 「ごめん。此処からでも代わるよ」 別段咎める口調でもなかった妙齢の女性──部隊旗艦の筆頭軍医を努めるアリーヌへ素直に謝辞を述べた。彼女が手を添えていた担架の傍に近づき、その上に横たえられた患者をマイはそっと見下ろす。 件の初の単独出向任務の際に持ち帰った──強引に預けられた、が正しいかもしれないが──身元不明の少女は至極安らかな寝顔をしており、掛けられたブランケットの下で胸部が緩やかに動いている。 「コロニーの病院なら、何とかなるのか?」 「まだ分からない。近隣で最も設備の整った医療機関が、此処にしかなかっただけの事だから。これから時間を掛けて精密検査をしてみないと、今は何も言えないわ。性急すぎて、良い事はなにもないしね」 右舷九階第九管区の医務室に常駐するアリーヌとほぼ付っきりで看護に当たっていたマイが知る限り、少女は彼此一週間近くもその意識を覚ましていない。 昏睡状態の主因が何なのか、主治医のアリーヌも今いち突き詰められていなかった。この数日間で分かりえた事は、マイが救出する以前に生命維持装置に問題があったか、それか現在は覚醒までの経過期間に過ぎないのかもしれない、という不確実な可能性のみだった。 艦内の医療設備では限界があると進言した彼女の意向もあって、元々物資補給の為の長期繋留を予定していた独立傭兵部隊〝サンドゲイル〟はこの数日間、希望に叶うコロニー都市を求めて長距離移動を展開していた。 結果、物資補給との兼ね合いがとれると判断されたのが現在、繋留設備に進入中の閉鎖型自治区【ソグラト】である。既に先方の繋留施設局との入域手続きとコロニー内総合病院への搬送連絡が済んでおり、繋留し次第即座に少女の身柄を搬送する準備が此方には整っていた。 「暑いわね、空調ちゃんと効いてるのかしら……」 経過記録と引継ぎ事項等を記したファイルボードを扇代わりに扱いながら、アリーヌは白衣の下に纏うブラウスのボタンを一つ、二つと整った指で弾く。平時から唯でさえ目立つ豊満な胸の谷間がより強調され、偶然ソレを後ろから見ていたマイは慌てて、気づかれないよう視線を逸らした。 「こ、この管区は、暫く前から調子が悪いらしいよ」 横合いへ向けていた視線をそろりと戻すと、それを待っていたとばかりのアイスブルーの双眸とぶつかってしまい、マイはそれ以上視線を動かす事ができなくなってしまった。 慣れていない訳ではないが、どうにもアリーヌという女性を前にするとどこか落ち着かない気分になってしまう。単に、一回りも二回りも年上の彼女に弄ばれているだけのような気も、マイはしていたが。 「貴方も物好きよねえ、本当に」 「な、何が……?」 何を得たとばかりにアリーヌが妖艶な笑みを口許に作る。引かれたグロスによって妖しい艶めきを放つ唇を目の当たりにし、マイは背筋に落ち着かない感覚が奔ったのを自覚した。 「最近、シヴちゃんとはどう?」 「どうって、何もないさ。俺もアイツもクルーの一員なんだから、暇じゃないよ」 収まり切らない動揺を文字通り手玉に取り、彼女がくすくすと笑いながら続ける。 「一週間近くもこの子にお熱だったのに、シヴちゃん可哀想じゃないの」 アリーヌの言うシヴとは、旗艦にクルーの一員として乗り込んでいる同僚のシルヴィア・マッケンジーという馴染みの事である。 「止してくれよ。アイツは単に妹みたいなもんだし、それ以前に仲間なんだから……」 マイのその発言のどこが悪かったのか、アリーヌは小さく吹き出した。それから取り繕うように後出しで「ごめんなさい」と付け足す。 「まあ、時々でいいから構ってあげなさいよ? あの位は丁度、淋しい年頃なんだから」 「よく分からないけど、考えとくよ。ありがとう、ドクター……」 カウンセリングを受けた訳でもないし単純に遊ばれただけのような気がするが、後半の言葉が何故口をついて出たのか、マイは自分でもよく分からなかった。 艦内にも女性クルーは多くいるし交流の機会も少なくないが、どうにも彼女の考えることは今いちよく分からない。とにかく、人生の先達足るアリーヌ〝大先生〟のありがたい助言だったのだと思うことにして、マイはその場の会話の流れをぶち切った。 「でも、本当に大したものよね。時間があれば付きっきりで看病だなんて」 「拾ってきた本人だしな。なら最後まで面倒見ないと、余りに無責任だろ」 半ば強制的に押し付けられたとはいえ、それを請け負った以上は最後まで全うする義務がある。その責任を果たせないのであれば、自分が戦場に臨む者──戦士として余りに不適格であるという事を、マイは自身への戒めとして厳格に課していた。 「ふふ。やっぱり、貴方はパパの自慢の教え子なのね」 「兄妹揃って迷惑かけてばっかりだから、あながちそうとも言えないけどな?」 独立傭兵部隊〝サンドゲイル〟と艦艇筆頭を兼任する組織の頂点──マイの師であり育ての親であるシェルブ・ハートネットという傑物を、彼女は敬愛を込めてパパと呼んでいる。 「沢山の教え子を見てきたけど、貴方ほどパパの教えを継いだ人はそう多くないわ」 「居心地悪いな。まだ駆け出しだし、その言葉は俺が本当に独立した時にでも取っておいてよ」 「そうね。じゃあ、その時に改めて褒めてあげる」 そうこう雑談をしてから数分の後、停泊施設への繋留完了を知らせる艦内放送が響いた。 乗降口脇の窓からも停泊施設の様子を窺う事ができ、丁度ターミナルビルからボーディング・ブリッジが移動を開始していた。間もなくして乗降口とのドッキングが完了、事前に示し合わせた施設内線を用いてアリーヌが確認を取り、自動隔壁扉を開放した。 ブリッジの操縦用コンソール脇に佇んでいた壮年の風貌の整備士が、帽子を脱いで出迎える 「渡った先にすぐ、搬送車が待機しています」 「ありがとうございます。マイ、いくわよ」 「オーケー」 ブリッジと隔壁の段差を慎重に乗り越えた後、ガラス貼りのブリッジ通路を先行するアリーヌと整備の後に続いて渡っていく。 ブリッジ内から繋留施設の全容を見渡すと、流石に長期滞在が望めるコロニーとだけあって設備水準はかなりしっかりとしていた。望むなら、久々にゆっくりした時間を過ごせそうだとマイは口許を綻ばせる。 ブリッジの先にあった貨物用エレベータを通じて地上の駐車場へ向かい、そこに待機していた搬送車の傍まで担架を運んだ時、マイのインカムにリヴァルディから無線が飛ばされてきた。 『マイ、此方コントロール──聞こえるか』 「届いてるよ、親方」 『お前、今何処にいる?』 「まだターミナルビルの中。今から市中の病院に向うところだけど」 現状をそのまま報告すると、マイが親方と呼ぶボス──シェルブが小さく息をついたのが聞こえた。 『今からブリーフィングを始める。その先はアリーヌに任せて戻ってこい。他の面子にも召集をかけてある』 無理難題な仕事をまた吹っかけられるかと思って胸中で大仰な溜息をつく準備を済ませていたマイは、ブリーフィングという言葉を耳にして、間を空けて小さく嘆息した。 「了解。すぐにコントロールへ向います」 話の間に担架を搬送車の中へ運んでくれたアリーヌが丁度、傍に戻ってきた。 「ごめん、先生。親方のコールが入った」 「あら、ずいぶん急ね。どうしたのかしら、パパったら」 そういうアリーヌは特段心配している様子でもなく、マイは状況の説明を省略した。 「後から病院に向うから、此処はお願いします」 しょうがないわね、と言いながらも快い表情の彼女に目礼し、マイはブリッジを通らずに繋留設備の外縁を走ってコントロールに最も近い乗降口へと向った。 管制室の隣に直結して設けられている作戦会議室に足を踏み入れた時、既に其処にはマイ以外に召集を受けた要員の面々が揃っていた。入室早々、映像出力機器の傍で腕を組むシェルブが面を上げ、 「あの娘は?」 「アリーヌに預けました」 「そうか。まあ、座れ」 顎をしゃくったシェルブに従い、何処に腰を下ろそうかと室内を一瞥する。充分な余地がある程に要員の数は限られており、容易に全員を視界に収める事ができた。 出入り口は左側の壁を背に立つ同僚のアハト、室内前よりの席で整備帽を目深に被って足を組むシーアとその横で背凭れを前に座る整備士のショーンを反時計回りに見回す。そして最後、室内中ほどの席で実に正しい姿勢を持って腰掛ける少女──シルヴィアの後姿を見つけ、マイは彼女の横の席に腰を落ち着けた。 どこに必要があったのか、改めて居住まいを正したシルヴィアが挨拶代わりに小さく手を掲げる。 彼女と自分を含めて集められた要員の事を考えると、シェルブ親方が召集を掛けた動機について漠然とながらマイは想像を巡らす事ができた。 独立傭兵部隊〝サンドゲイル〟は主戦力として機動兵器〝AC〟を据えた傭兵部隊であり、此処に召集を受けた要員は何れも、部隊が抱え込む搭乗者の各々であったからである。 面子が揃ったのを確認したシェルブが頷き、手元の出力機器のスイッチを入れた。光源の落ちた室内前方にホログラム映像が現れ、その脇にシェルブは移動する。 「ソグラト管理局から一報が入った。当局管轄領内で、ソグラト民営会社の物資輸送部隊が襲撃を受けたらしい。ついては我々は現場に急行し、周辺地域で偵察作戦を行う」 暗い一室の中で、前方左手の人影──中年の整備士、ショーンが軽く挙手した。 「シェルブよ、そいつは管理局からの依頼か?」 「いや、此れは俺達の独自行動の範疇になる。当局には繋留施設局を通じて示し合わせてある」 「おいおいおいおい、無償でリヴァルディとACを出すってのかよ。随分気前が良いな?」 シェルブが完全無償での哨戒作戦を立案した経緯について、ショーンという男が考えを巡らせていないという事はありえない。しかし、忌憚ない意見を交えるのは我々の要諦であり、だからこそ、彼は整備士としての立場に則ってそのように振舞う。 「我々サンドゲイルに縁のある勢力が、輸送部隊を襲撃した可能性は否定できない。資金面での活動猶予が逼迫しているとは言え、現況を無碍には出来ん」 そう説明する親方の視線と、マイのそれが交錯する。マイはその意図する所に思い当たる節があり、苦虫を噛み潰した表情を取る。軽く頬杖をつくと、マイの僅かな心境の変化に気づいたシルヴィアが小首を傾げてみせた。 マイはその気遣いに対し、僅かに肩を竦める。 遊撃部隊として各地を転戦するサンドゲイルはその性質上、商売の過程で敵対勢力を作る機会には困らない。個人的な怨恨を持つ敵対者や同業者から問答無用の報復攻撃を貰う事は多く、その点に限って言えば、サンドゲイルは傭兵業の王道を地で行く勢力と言えなくもない。 シェルブ親方が危惧しているのは正しくその可能性のひとつであり、事実関係が判明するまでは我々が無償で動く事に何ら問題はないと言っているのである。 シェルブは指示棒を持ち、出力した地理情報を出力したホログラム情報にその先端を向ける。消火栓のように太い二の腕をシャツからのぞかせるシェルブの巨躯は非常に頑健であり、その彼が指示棒を持つとただの枯れ枝を持って振り回しているようにしか見えなかった。 「ソグラト管理局によると、輸送部隊の信号途絶地点はここ──現コロニーから北東約一二キロ地点となっている。信号途絶から既に二時間余りが経過している為、襲撃勢力が現場に残っている可能性は高くないが、事実関係の確認と状況の正確な把握の為、リヴァルディを早急に現場へ向わせる必要がある」 「で、全機を出撃させるなんて事は流石にないだろうな、シェルブよ?」 「ああ。今回の偵察作戦に当たっては、最小限の兵力で迅速に事態の把握を済ませる事が最優先だ。通常業務に移行するかどうかの状況判断も含めて、現場偵察に当たる奴には注力してもらう」 「で、誰を推すってんだ?」 ショーンの矢次早な問いに辟易する事もなく、シェルブは一度大きく頷く。 「現場偵察は、シーアにやってもらう。いいな?」 ショーンと共に左手前方に座る仲間のクルー、シーアが目深に被っていた整備帽の鍔を軽く持ち上げた。 「丁度暇を持て余していた所だ。部品がなきゃ、今以上に機体を弄る余地もなかったしな」 その後、経理に何とか予算を回してくれだのなんだのとシーアは隣のショーンに愚痴っていたが、シェルブが再び口を開いた事により、再び会議室がほどよい緊張感に保たれる。 「ショーン、すぐに出撃できるようシーアの機体を調整しろ」 「羽休めが短くなったんだ、日当は頼むぜ?」 「夜になったら部屋へ来い。秘蔵のバーボンをくれてやる」 そりゃあ勿体無い話だ、とショーンがボトルを呷る仕草を取る。 「アハト、お前は市中に入って情報収集をしろ。潜伏勢力、施設干渉痕、過去記録その他、出来る限りを集めてくれ」 振り返りこそしなかったが、気配を上手い具合に漂わせていた後背壁際のアハトが、物静かな態度を保って、シェルブに返事をよこした。 「──了解」 有事に於けるシェルブ親方の人員配置は何時も正確にして鋭角、澱みがない。 「俺は現場指揮と、シーアの後詰めとして旗艦に待機する──それから、マイ、」 ようやく自分の名前が呼ばれ、マイはそれが面白くない予兆である事を察知していた。姿勢を正す訳ではないが、頬杖を解いてシェルブをまっすぐ視界に収める。 「お前はコロニーに残留して、病院へ向かえ。あの娘が心配でならないだろう? それに、お前の機体は今使い物にならないしな」 仕事の中で主にマイが乗り込むAC、〝蒼竜騎〟は数日前の作戦時に損傷を受け、現在は艦内のドックで修繕作業を受ける待遇にある。細かい箇所の修繕はドックの備蓄資材で全て直されたが、肝心の目だった箇所──左腕部については丸ごと作戦中に喪失した為、当該部品を新調する以外に修繕が見込めない状況である。確実な流通ルートを通じて当該部品を調達する必要があった為に、そのような経緯もあってサンドゲイルはコロニー・ソグラトを繋留先に選択したのだ。 後半の言葉の一端には何やら追求の意図をあったようで、マイは尚更居心地が悪かった。 今回のような偵察作戦は本来なら、マイが扱うような機体が担う従事分野である。良好な機動力と堅実な機体機能を吟味すれば必然的に行き着く結論であり、それが出来ないのが現状であるからこそ、シーアが代替要員として充てられたのは想像に難くない話だ。 それに加え、数日前にマイが遂行した単独出向任務の戦果は純粋に考えれば世辞にも優れたものとは言えず、持ち帰った報酬は部隊にとって正に雀の涙程度のものだった。 今件に余波が到っているのは、紛れもない事実である。 だが、シェルブはその責任を実際に追及する事は決してしない。ただ、一戦力として在るという事への戒めとして言及したのだろうとマイは確信を持っていた。 前の席で言外に苦笑していたショーンが、それとなく助け舟を出す。 「まあ、初の単独出向任務にしちゃあ上出来だったと思うぜ。結果はどうあれ、思わぬ収穫があった訳だしな」 よくよく聞いてみればそれほどフォローになっていない発言に、会議室に集った面々が苦笑する。あれ、なんか可笑しかったか、とショーンは頭を掻きながら首を捻る。 「とにかく、マイは娘の面倒をしっかり見てやれ。それ位は出来るな?」 「わかってるよ、親方」 まるで出来の悪い愚息への説教のように聞こえ、最後にはマイも苦笑いする始末だった。 召集を受けた要員の大半に指示が行き渡った所で、まだ指示を受けていなかった隣のシルヴィアが、遠慮がちに名乗りを上げた。 「あの、親方っ。僕は、どうしたら……?」 「そうだな……お前はマイに付いていけ」 行動指示というには余りに漠然とした言葉に、シルヴィアがどう返事をしたものかという表情を作る。 「リヴァルディは積荷を最大限軽くして行く。機体も〝フィクスブラウ〟と俺の〝ツエルブ〟を除いて繋留施設のドックに搬入する。人員も最低限で構わない。ちょっとしたボーナスと思って休んでくるといい。わかったな、シルヴィア?」 気遣いという程気の効いたものでく、明確な役割もない指示を伝えられた事に物足りなさを感じたのだろうシルヴィアは、どこか残念そうな表情を浮かべながら「了解しました」と返答した。 その後、艦艇進発までの分担説明が速やかに行われた後、会議室から各々解散する流れとなった。マイは今ひとつ消沈した様子のシルヴィアを叱責し、彼女と格納庫から付随ドックへの機体の搬入作業を行った後、拝借した軍用車をターミナルポート脇につけた。 ポートエリア内に艦艇の進発を知らせる施設警報が反響し、隔壁付近の警戒灯が連なって明滅する。微速を保つ艦艇リヴァルディが指示信号の誘導に従ってポートエリアから隔壁設備の中へとその巨体を移し、隔壁閉鎖と共に間もなくして慌しい騒音が途絶えた。 進発の直前にタラップから艦艇を降りたアハトがポートエリアを横切り、マイがハンドルを握る軍用車の後部座席に乗り込む。 「すまん、待たせたな」 「いんや、良いよ。じゃ、束の間のドライヴとするか」 地上部へ繋がる連結車道へ軌道を合わせ、クラッチ・アクセルを小気味良く踏み込んで車輌を進発する。 他に船舶が常駐していない所為か車道は空いており、港湾施設局へ繋いだナビ・システムの手伝いもあって苦もなく地上部へと抜ける事ができた。天蓋に覆われた車道の終端、即ち繋留施設の敷地限界に近づいた所で、アハトが、 「ここで良い、下ろしてくれ」 と言った。 「まだ施設を出てないぞ、いいのか? 市中はすぐそこだしさ」 そう提案してバックミラーを覗き込み、後部座席のアハトの様子を窺った。すると彼もそれにすぐ気づき、伏し目気味に首を小さく振る。マイは、「了解」と短く応答し、天蓋部を抜ける前に速度を緩めて車道脇に停車した。 「何かあったら連絡する、回線は常に入れておけ」 耳元に装着したインカムをとんとんと叩くアハトに対し軽く手を掲げ、後方に身を下げたアハトを残して車輌を発進させた。若干距離を保ってからサイドミラーに視線を向けると、ミラーに映り込む天蓋下の車道には既に何者の姿も見当たらなかった。痕跡の一切も何もなく。 助手席に座るシルヴィアも一拍遅れて、ようやく気づく。 「アハトさんて不思議な人だね、マイ」 「お互い馴染んでないってだけの話さ、多分な。気味の悪い奴だなんて、誰も思っちゃいないだろ?」 広く解釈すれば後半のような意味にも取れる、シルヴィアのアハトに対するイメージを述べる。本人がいないにも関わらず、シルヴィアは慌てて口許に人差し指を当ててみせた。 「俺達よりも先にガキ達に懐かれてるしな。親方だってちゃんと信頼してる、それで充分さ」 今回、サンドゲイルが行った周回業務でも、何人かの戦災孤児をリヴァルディに招いている。サンドゲイルは傭兵部隊として手広く活動する傍ら、戦災孤児に対する救済措置にも注力していた。傭兵業を地で行きながら、その辺りは随分と奇特な気質の勢力だとも一部で揶揄される事も多い。 現在は身内であるアハトも、彼がマイらにとってそういう立ち位置になったのは、比較的最近の事である。サンドゲイルの同志となって日が浅い事と関係なく、彼は自らの経験や過去を必要以上に他者へ話さず、他者との関わりを持とうとする姿勢も希薄だ。だが、それでも仲間というものへの信頼を持っているとマイは確信していた。 アハトという名の青年がサンドゲイルに参入する事になった経緯を、マイは今でも知らない。正確に言えば、彼を招いたシェルブ以外は誰も。しかし、その素性が明らかでなくてもシェルブが信頼してそうしているのであれば、何も問題はない。 そして何よりも、彼は戦災孤児の子供達に非常に懐かれていた。 子供という存在と接する機会に恵まれていなかったのか、彼は扱いが非常に不慣れな面を持っていたが、それでも子供達は構わず彼の周りをついて回る事が多い。 そんな彼の様子を幾度か見ていて、不慣れであるにせよ、あながち不似合いとも言えない印象をマイは受けていた。それどころか、その光景こそが彼の本来の在りようのようにすら見えた時もある。 人心の擦り切れる極地とも言える戦場で、子供達に好かれる大人というのは絶対数として多くない。 アハトは、そんな人間の一人なのだろうと思う。 「本日のソグラトは、まこと晴天なり。ドライヴにはうってつけだな」 都市全域を覆う内壁機構から人工の陽光が燦々と振り、ルーフオープンによって良好な風通しを得ている車内は実に過ごしやすい。 それから間もなくして市中に入り、シルヴィアが起動した市中用のナビ・システムを頼りに繁華街を抜けた所で、車輌を路肩の駐車スペースに停車させた。 「どうしたの?」 「此処から歩いていく。医療機関の関連地だ、騒がせたくない」 ナビ・システムの情報に拠ると、現在マイとシルヴィアが乗り込む車輌は区画境界に位置している。そこから先はアリーヌ医師が向かった総合病院を始めとした医療機関とその係累施設が密集する土地となっていた。 そこに軍用車が無粋に乗りつけて下手に関係者を警戒させたくないという配慮からマイは、徒歩で総合病院まで向かうと言ったのだ。 「あ、じゃあさ、この車借りていっていい?」 「いいけど──て、お前来ないのか」 既に助手席を降りてフロントから回り込むシルヴィアは、一時思案すると笑みを含んだ表情を作る。彼女に合わせて半ば惰性で運転席を降りてしまった。 「んー。時間が出来たら、僕もその時に行くから」 「時間、て、今じゃなくていいのかよ。状況次第じゃ、どうなるか分からないぞ」 「大丈夫だってば、マイ」 説明付けとしては何処か矛盾した言葉だったが、何時もとは異なってどこか強いシルヴィアの語気に圧され、マイはそれ以上言及するのを止めた。 年齢の割りに背丈が小さく華奢な体つきのシルヴィアは、大型の軍用車の運転席へ器用に駆け上がる。 「終わったら連絡してね。迎えにいくからさ」 「オーケー。間違えても店先に突っ込むなよ」そう言いつつ、やはり気になる所は抑えようもなく、マイは最後に今一度問いただした。 「せっかく親方から貰った時間なんだぜ?」 「もう、だからこそだよ。ちょっとした遠慮みたいなの、マイは気にしなくていいの!」 遠慮だあ?──益々分からない言葉に対して疑問を投げかける前にシルヴィアはアクセルを吹かし、「でも、後で一緒に買い物行っていい?」と言ってきたので、マイは「ああ」と返事を付け足す。 それを聞いて明るい笑みを浮かべ、シルヴィアは早々に車道へ車を戻していった。 「なんだかなあ……」 今は時間がないと言ってみたり、かと思えば迎えの後に買い物に誘ったりと、随分忙しい言い回しをするもんだなとマイは思った。それに遠慮も何も、例の少女に関してこの数日色々と気遣いをしたりしたのだから、気兼ねなく病院に足を運んでもよさそうなものだ。 結局真実に辿り着く糸口を見出す試みも無意味だろうと行き着き、マイはジャケットの袖を捲り上げて暑さ対策を済ませる。素早く意識を切り替えると、関連地の歩道へと足を踏み出した。 多少寂れていたにせよ繁華街の体裁を充分に保っていたそれまでの区画とは異なり、医療機関が密集して建つ敷地内は落ち着いた静けさを保っていた。 暫く歩いてから豊かな芝生に恵まれた市街公園内へ入るが、其処もほぼ同じであった。まばらではあるが、子連れの若い夫婦等が歩道を歩き、いくかのベンチにも市民の姿を見かける事ができる。 繁華街を通っていた時から薄々感づいていた事だが、どうやら件──輸送車輌隊が襲撃されたという話は、市井には伝播していないらしい。 会議室でのブリーフィングの最後の辺りで聞いた話だが、ソグラトを含む地域一帯では近頃、ライフラインを狙った強奪襲撃が散発しているらしい。生活水準の劇的な低下にまでは到っていないものの、現状が長引けば一般市民にも不安の種が広がるだろうという事は、まあ、分かる話だ。 その辺の地域事情を把握する前にソグラトへ立ち寄ったのは、時期が悪かったという他ないだろう。 補給物資の高騰を考えると、艦内経理の人間の渋い顔とその後にやって来る此方への皺寄せは確実だ。 と、不景気な可能性に思考が傾いていた時、足首に何かがごつんと辺り、マイは思わず「いてっ」と口に出した。足元を見下ろすと、こぶし大のソフトボールが近くを転がっていて、マイはそれを拾い上げた。自分の方へ何者かが呼びかける声を聞いて振り返ると、キャッチボールに興じていたと思しき父子の姿を見かけて納得した。 マイは距離の離れた場所に立つ子供へ向けてボールを大きく放った。二、三度地に付いた軟球を拾い上た子供が「ありがとう、お兄さん!」と言ったので、マイは手を軽く掲げて応えた。 改めて歩道の先を見据えた直後、背筋に視線を感じて緩やかな動作を心掛けた上で周囲を見渡す。 広い敷地の公園を行き交う市民の穏やかな姿こそ見えど、それ以外に特筆して確認できるものはない。 「──……気のせいか?」 艦艇を降りて久しぶりに一般社会に入り込んだ所為か、普段から張り詰めている緊張感が身体を巡っている。そのために何気ない他者の視線を強く感じてしまったのだろうかと、マイは楽観的に思った。 気のせいだったのだろうと肩を竦めたのと時を同じくして、ジャケットの外ポケットに捻じ込んでいたインカムが振動して着信を告げ、マイはイヤホン部分を耳に当てた。 『マイ──此方コントロール、シェルブだ。聞こえるか?』 「はい、届いています」 つい数十分ほど前に艦艇を丸ごと一隻出し、目的地周辺への偵察作戦に向かったシェルブから早くも通信が入った。経過時間から推察するに、どうやら凡その結果が出たらしい。 『襲撃現場の近隣を調査したが、どうやら一帯を根城にするごろつき共の仕業だったらしい。そちらは変わりないか?』 「市中は平和そのものですよ、親方」 『そうか──此方はもう少し探りを入れてから戻る。帰着予定時刻は一七三〇時だ。特別な危険はないだろうが、万一に備え、油断だけはするなよ?』 「了解しました」 その後、旗艦との無線通信が終了したのを確認してからインカムをポケット内に押し込む。 どうやら、サンドゲイルが懸念していた可能性は唯のコロニー間問題に過ぎなかったらしい。親方の言っていた通り油断こそ禁物だが、その万が一に備えアハトが市中調査にも出向いている。 事態は火急とは程遠く、今後のソグラト管理局と親方の出方次第ではあるものの、暫くは時間的余裕もあるだろうと思う。 マイは先程感じた妙な視線の事など忘れ、再び歩道の先へ足を進めた。対向の若い女性が携帯端末を耳に当てていたが、交差する前後「あれ、何でかからないんだろ」などと呟いて、そのまま歩きすぎていく。 市中公園の敷地外、その奥に一際大きな建築物──少女を収容した総合病院の姿を見つけ、マイは歩く速度を若干速めることにした。 →Next… ③ コメントフォーム 名前 コメント
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SmashCoreOnline 【概要】 2チームに分かれて戦う、マインクラフトPVPイベントです。 相手チームのプレイヤーを全員倒したチームが勝利となります! 参加者全員が鉄防具、剣、弓矢、食料の固定装備で対戦するスマッシュ戦。 色んな装備を備えた機体(職業)から、各参加者が選んで戦いに臨むフリー戦。 フリー戦と同様のルールで、事前に登録した6人のプレイヤーを1つのクランとし、クラン同士が対戦するクラン戦。 上記3つの形式でイベントが行われます。 どの形式で対戦するかは、生放送内で確認してください。 機体について SCO機体考察 機体のデッキ構成について SCOデッキ考察 クラン戦について SCOクラン戦 戦略について SCO戦略考察 対戦マップについて SCOマップ考察 参加枠をする場合の注意点 SCOテンプレ 参加条件:生放送視聴必須このイベントは放送視聴を前提とされており、以下の点を守って下さい。1.生放送の視聴 (ルール変更・注意・警告もここで行われます)2.放送内でminecraftIDの公開3.放送内で184を外しコテハン付け コミュニティの参加もお願いします。 プラグイン:ClassSignの使い方看板を左クリックするとクラス変更が出来ます。 ※1:表示がActiveでない場合は、右クリしてActiveにして下さい。※2:図では、Builderのでダイピと皮装備をしています。※3:クラスが複数あるPvPもあります。 【禁止行為】 放送を見ずに参加している MOD等によるチート行為全般 連打ツール等、PVPに有利になるツールの使用 会場、スイッチ、看板の破壊 会場から脱走する行為 以上の行為は全て禁止です。 運営の指示に従わない方は、BAN・KICKやマイクラニコニコID、IPの公開などの対応をさせて頂きますので、気をつけて下さい。 【ゲームの流れ】 まず、サーバーへ接続したら、待機所でしばらくお待ちください。 運営の合図でチームわけが始まります。 チームわけが済んだら、装備配布部屋へテレポートされます。 速やかに作戦会議を行ってください。 ※チーム内のみのチャットが可能です。 全体通知する場合はコマンドの最初に「 /g 」をつけて発言してください。 スマッシュ戦の場合、配られた経験値を使って装備品のエンチャントを行なってください。 フリー戦、クラン戦の場合、機体(職業)を選んで下さい。 必ず看板を左クリックして、装備を受け取って下さい。 プラグイン:ClassSignの使い方看板を左クリックするとクラス変更が出来ます。 ※1:表示がActiveでない場合は、右クリしてActiveにして下さい。※2:図では、Builderのでダイピと皮装備をしています。※3:クラスが複数あるPvPもあります。 その後、自動で対戦マップへテレポートします。 敵を全滅させれば、チームの勝利です!!! 【IP】 moon-rue.ddo.jp sakusouzu2.ddo.jp のどちらかです。 ポート指定するときもありますので、放送で聞いてね。