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2ページ目 絶対能力進化計画。学園都市第一位である超能力者、一方通行を絶対能力者(レベル6)へと進化させる実験。 その実験内容は、学園都市第三位である御坂美琴のクローン、妹達(シスターズ)を2万通りの戦闘環境で2万回殺害すること。 何も問題が起こらなければ今回も妹達の1人が殺されて終わりとなる。 実験は10032回目。一方通行は既に10031体もの妹達を殺害していた。 10032号は一方通行によって反射された弾丸を肩に喰らい、息絶え絶えとなっていた。 あらゆる向きを変換する、ということはあらゆる攻撃の軌道が逸らされてしまうということ。 普段一歩通行は向きの変換を『反射』に設定しており、その状態で攻撃しようものならどんな攻撃でも本人へと返ってきてしまう。 10032号がそうであったように。 攻撃面でも、触れられれば終わり。血流を逆転させられ即死させられる。 2万回戦ったとしても妹達が勝利することは決してないだろう。 それでも、実験を止めることは出来なかった。 彼女達は――この実験の為に生み出されたのだったから。 「よォ、随分辛そォじゃねェか。今楽にしてやるよ」 無情に投げかけられる一方通行の言葉。 逆転は不可能。もう逃げられる程の体力も気力も10032号には残されていなかった。 一方通行の手が彼女に触れようと、血流逆転をさせようと近づく。 触れるか触れないかの瞬間で彼は異変に気付いた。 何かの気配を感じて振り返る。 そこにはオーバーオールに赤い帽子の、立派なヒゲの太った男性が立っていた。 一般的に見れば彼の姿は酷く滑稽に見えることだろう。 しかし、僅かだが一方通行はその姿に威圧されてしまっていた。 そんな馬鹿な、と彼は我に返る。そして実験に紛れ込んだ不穏分子へと声をかける。 「おいおい……、こういう場合はどうすればいいン――――」 その言葉が最後まで紡がれることはなかった。 話している途中にも関わらず、赤い帽子の男性が突進するかのようにこちらへと走り出したのだ。 一体何を考えているのか、一方通行には理解が出来なかった。 いくら突進して来ようが、どんな能力を持っていようが向きを変換させてしまえば終わり。 何の考えもなくただ突っ込んできているのだというのなら、それは単なる馬鹿か、一方通行の能力を知らない無知だけだ。 何の迷いもなく突っ込んできている辺り、男は後者のようだった。 「ま、見られたからには始末しねェとな」 男に対して何か構えるわけでもなく、一方通行はそのままの姿勢で迎え撃つ。 どうせ反射してしまうのだから防御行動も回避する必要もない。 次へ トップへ
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/例えばこんな三人の関係 海に行こう☆☆ 青々と澄み渡った空。 ザザー、ザザーと寄せては返す波の音。 「暑い…」 砂浜の上にビーチパラソルを刺し、レジャーシートの上で足を伸ばして座っている当麻はそう呟く。 「それにしても遅いな…」 先程荷物を運び終え『水着に着替えてくる』と言って、五人の姉妹がこの場を後にしてから既に二十分近く経っている。 「何かあったのか…?」 あまりの遅さに心配になる当麻だが、絶対に来るなという美琴の言いつけがある為、車の方に向かう事はできない。 万が一、着替え中に乱入しようものなら消し炭にされてしまう事だろう。 なので、こうして大人しく待っている事しか出来ないのだ。 (う~ん、暇だ…) ごろんと仰向けに寝そべった当麻は、そのまま目を閉じて彼女達の到着を待つ事にした。 ―――― ―― 時間は少し前に戻り、時刻は午前8:50分 「あー疲れたー」 海沿いの山道を走り、少し広い路肩に車を止めた番外個体は軽く伸びをしながらそう呟く。 「お疲れ様、番外個体」 「お疲れさん、一時はどうなる事かと思ったが無事に到着できてよかったよかった」 番外個体にねぎらいの言葉をかける美琴と当麻。 あの後、計画通りに学園都市のゲートを突破し『今回の目的を忘れないように』という妹達の言葉を受け、 超安全運転を始めた番外個体の運転によって寄り道をしながら目的地である静岡県の伊豆にある某海岸に無事到着していた。 「では早速荷物を下ろしましょう、とミサカ19090号は車から降りるよう促します」 「荷物の搬送はこちらでやるので、番外個体は暫く休んでください、とミサカ10032号は番外個体を気遣います」 「ようやくミサカの出番ですね、とミサカ10039号は息巻きます」 颯爽と車を降りる三人の妹達はいそいそと荷物を下ろし始める。 当麻と美琴も荷物を運ぶ為に車から降りた所で御坂妹が二人の方を見て、 「お姉様とお義兄様は軽い物を運んでから本拠地の設営をお願いします、とミサカ10032号はお二人に役割を与えました」 「さて、少し本気になりますか、とミサカ10039号は一番重いであろうクーラーボックスを持ち上げます」 ぐいっと二つのクーラーボックスを持ち上げる10039号に当麻が声をかける。 「お、おいおい、重いやつは俺が運ぶからお前等は軽いのを運べばいいぞ?」 「これくらい余裕です、とミサカ10039号は余裕の笑みを浮かべて返答したい所ですが、二つ同時は無理そうなので一つにします」 余程重たかったらしく、10039号は持ち上げたクーラーボックスの一つを下ろし、代わりに軽いバッグを担ぐ。 どうやら彼女には何度かに分けて運ぶという選択肢は存在しないらしい。 当麻は10039号が置いたクーラーボックスに手を伸ばしながら、 「んじゃ、それは俺が運ぶわ」 と言うのだが、それを見た御坂妹がサッと手を出すと、 「ダメです、それはミサカが運びます、とミサカ10032号は阻止します。これから足場の悪い階段を降るので、 お義兄様はビーチサンダルを履いているお姉様のフォローをお願いします、とミサカ10032号はお義兄様の役割についてお願いをしました」 チラリと美琴の足元を見てそう言う御坂妹だが、その言葉に少しむっとした美琴は『馬鹿にすんなー』といった感じで、 「大丈夫に決まってんでしょ、子供じゃあるまいし」 「万が一というのがありますので、とミサカ10032号はかなり薄い可能性について危惧しつつクーラーボックスを持ち上げます」 「ミサカ達は私服のお姉様と違い、いつもの着慣れた格好ですので、 パフォーマンスはいつも通りなのです、とミサカ19090号はこの服装を選択した理由を今更詳細に説明します」 「さ、海が呼んでいるのでさっさと行きましょう、とミサカ10039号は移動を開始します」 三人の妹は淡々と喋りながら各々が荷物を持ち、歩き出す。 そんな中、番外個体だけは車の中からひらひらと手を振っている。 「じゃ、ミサカは暫くここで休んでるから後はよろしくー」 どうやら彼女は休憩と荷物番を兼ねて車に残るようだ。 妹達のいつもと全く変わらない対応に抵抗するだけ無駄と判断した美琴は溜め息混じりに、 「…まあいいわ、んじゃ適当に運べそうな物運ぶわね」 「んじゃ、行きますか~」 そう言うとビーチボールや浮き輪などが入った軽めのバッグを一つ持った美琴と、タオルや衣類などの入ったバッグを担いだ当麻が妹達に付いて行く。 そして、林に囲まれた狭い道を抜けると――目に入ったのは白い砂浜と青い海。 入り江のようになっているその場所は、海水浴場と比較すれば広いとは言えないが、人の気配は全くなく、6人で遊ぶなら十分過ぎる程の広さがある。 視界に広がるその光景を目にした美琴は目をキラキラさせると、 「わ~、海だ~!」 目に見えてはしゃぐのだが、その光景に心を奪われてしまい、 「きゃっ!」 「っと」 見事に躓いた彼女だが、横を歩いていた当麻がそれに気付き、スッと回り込むように体を前に入れ、左腕でしっかりと抱きとめる。 「大丈夫か美琴?」 「う、うん。ごめんね?大丈夫だった?」 「俺なら平気だぞ?かなり足場が悪いから気をつけたほうが良いぞ」 そう言いながら右手で美琴の頭をぽんぽんとする当麻。 すると美琴が少し俯きながら、 「うん。ありがと…」 短く返事をするが、その頬はほんのり赤く染まり、目を細めて気持ち良さそうにしているが、一向に離れようとしない美琴に当麻は、 「あの~、そろそろ離れて欲しいんですが…」 「あ、う、うん」 当麻の少し照れたような声を聞き、ぱっと離れる美琴。 すると、そのタイミング見計らったように横槍が入る。 「先程注意したばかりだというのに、とミサカ10032号はお姉様の注意力の無さに嘆息します」 「いやいや、お姉様はお義兄様にああして貰う為にわざと躓いたのですよ、とミサカ10039号はお姉様の行動について推測します」 「こんなに明るい時間から大胆ですね、とミサカ19090号は白昼堂々抱き合っていた二人に言葉もありませんが、しっかりと目に焼き付けました」 揃って溜め息を付いた三人の妹達の目は『はいはいごちそうさま』と言っている。 妹達に躓いてしまった所と、当麻に抱きしめられていた場面を見られてしまった美琴は、顔が紅潮するのを感じながら、 「う、うるさい!こっち見てんじゃないわよ!!」 と、右手を振り上げて妹達を威嚇する。 すると、三人の妹達はササーっと浜辺に下りていった。 その様子に美琴は『ったく』と言いながら一息つくと、当麻の顔を見ながら、 「さ、私達も行きましょうか」 と言いながら左手で彼の右手を掴むと、上目遣いに言葉を続ける。 「また躓くといけないから下に着くまではこうしてていいよね?」 「ああ、いいぜ」 「じゃ、早く行こ!」 仲良く手を繋いで浜辺へ下りていく二人は、先に到着していた妹達と合流する。 そして、妹達の指示通り本拠地の設営を済ませた二人は、同じく荷物を運び終えた妹達と少しばかりの休憩を取る事にした。 「ふぅ、少し疲れました、とミサカ10032号は自らの体力の無さに嘆きます。 お陰で汗を掻いてしまいました、とミサカ10032号は暑っ苦しいサマーセーターを脱ぎ捨てます」 脱いだサマーセーターをぽいっと投げ捨て、ビーチパラソルの影に入って座る御坂妹。 汗を掻いた彼女の肌にシャツが張り付き、縞模様のブラが透けて見えてしまっている。 その事に気が付いた当麻は視線を逸らし、美琴は慌てた様子で、 「こ、こら!こんな所で脱ぐんじゃない!!」 盾になるよう二人の間に割って入ると、脱ぎ捨てられたサマーセーターを彼女に押し付ける。だが、 「どうせすぐに水着になるので問題ないのでは?とミサカ10039号はお姉様の言動に疑問を抱きます」 「そういう問題じゃ…ってあんたも!当麻の前で脱ごうとすんな!」 視線を逸らした当麻の正面で今度は10039号がサマーセーターを脱いでいる。 美琴は急いで彼女の元に駆け寄り、御坂妹と同様にその胸元を隠させる。 すると、19090号がごにょごにょ声で、 「み、ミサカは…」 「あんたは分かってるみたいね、つーかこの子(19090号)が恥ずかしがってるのに何であんた等は平然としてるわけ?」 当麻の方をちらちら窺う19090号の様子に安心する反面、何でこんなに反応の差があるのか不思議でならない美琴。 肩を落として疲れたような顔をする彼女を他所に、暑苦しい服を押し付けられた事に不満げな顔を浮かべた10039号が19090号を見ながら、 「そのミサカはただのチキンですから、とミサカ10039号は19090号について意見を述べます」 「いや、女の子の反応としてはこの子(19090号)の方が正しいわよ」 「それはお姉様の基準です。それに…」 一度裸を見られているから平気だ。という言葉を寸前で飲み込んだ御坂妹。 そんな事をこの場で言ってしまった場合、どんな事態が引き起こされるか容易に想像できた彼女は話題を変える。 「…まあ細かい事は良いとして、この場所はどうですか?とミサカ10032号は話を逸らしつつお二人に問いかけます」 「へ?ああ、静かだし良いところだと思うわよ」 唐突に話題が変わり、一瞬付いていけなかった美琴だが、率直な感想を述べる。 目のやり場に困っていた当麻も頷くが、彼には一つだけ疑問があった。それは… 「なあ、お前等この場所来た事あるのか?」 「…?今日が初めてですが?とミサカ19090号はお義兄様の質問に疑問を抱きつつも回答しました」 「だってさ、こんな場所地元の人しか知らなさそうだし。何で知ってたんだ?」 「ふむ、それはですね…」 当麻の問いに少し沈黙する御坂妹だが、意を決したように顔を上げると、 「脱出計画の予行演習を兼ねて衛星カメラをハッキングした際に調べました、とミサカ10032号は簡潔に答えました」 「実際見た映像、侵入の痕跡などは消し去りましたので問題は無いはずです、とミサカ10039号は補足します」 「まあ妹達の頭脳を持ってすれば造作も無い事ですが、とミサカ19090号は妹達の力を誇ってみます」 妹達の口から淡々と語られる衝撃の事実に頭を痛める二人は、 「お前等…無茶苦茶にも程があるだろ…」 「同感。あんた達は少し自重しなさい」 揃って溜め息を付く。 その様子を見た妹達の方も二人の反応を見て『やっぱりこうなるか』と同じく溜め息を付く。 するとその時、ザッザッザッ!と砂浜を軽快に走る音が近づいてきた。 「遅い!遅い遅い!!ミサカは待ちくたびれた…ってどうしたの?」 テンション高く現れた番外個体だったが、微妙な空気を感じ取り、そう問いかける。 状況の飲み込めない彼女に御坂妹が大まかな事情を説明すると、番外個体がやれやれと頭を掻きながら、 「過ぎた事だし、何事も無かったからいいじゃん。それよりミサカは早く泳ぎたいから着替えに行こうよ」 「そういう問題じゃない。私はただあんた達の事が心配で…」 「平気平気、ちゃんと線引きはしてるから安心してよ。 それに、こんな無茶な事するのも全ては『今日』っていう日を存分に楽しむためなんだしさ。 だから、二人にそんな顔されちゃうとミサカは悲しいかな」 「言いたい事は分かるけどな。それでもお前等の事が大切だからどんな小さなことでも心配になるもんなんだよ」 「お義兄様…うん、分かった。じゃあ今後はちゃんとするから今回の事は許して」 当麻の言葉を聞いた番外個体は少しだけ神妙な顔をした後、片目を瞑り右手を顔の前に持ってきて謝る仕草を見せる。 その言葉を聞いた当麻はしょうがないなといった様子だが、美琴の反応はというと、 「待て、あんた絶対そんな気無いでしょ!?」 番外個体の様子から『反省の色無し』と判断した美琴が彼女に突っ込むと、 「げぇ、バレてたか!まぁミサカ達はその日を全力で楽しむのがモットーだからね!ちょっとやそっとじゃ止まらないよ!」 「こ、コイツは…」 きゃはは!と笑いながら返事をした番外個体の態度にイラッと来た美琴は体をブルブルと震わせながらそう呟く。 と、不意に番外個体がその動きを止め、真剣な眼差しで美琴と当麻を交互に見る。そして、 「でも、一つだけ。ミサカを含めた全妹達は助けてもらったこの命を粗末にするような事は絶対にしない。それは約束する」 「そんなの当然でしょ、その上で危ない事すんなつってんのよ!ったく…」 何を言ってるんだコイツは…と言った顔で大きく溜め息を付いた美琴だが、 「まぁ今回の事は私にも責任があるしもういいわ。いつまでもこんな事で空気を悪くするのもアレだし、 今日を楽しみたいのは私も同じだから、サクッと着替えてひと泳ぎしましょうか」 元々監視カメラの件を頼んだのは自分だった事を思い出し、話題を打ち切るように立ち上がると番外個体が、 「そうこなくっちゃ!」 待ってました!と言わんばかりに弾んだ声で返事をした番外個体に続き、三人の妹達も立ち上がる。 その様子をやれやれといった表情で見つめた美琴は当麻の方を見る。 「じゃ、ちょっと着替えてくるから当麻はここで待ってて。少し時間掛かると思うけど、絶対に来ちゃ駄目だからね?」 「へいへい、所で俺は何処で着替えれば良いんだ?」 「お義兄様は男なんですからここで着替えれば良いです、とミサカ10039号は回答します」 「なんですと!?誰かに見られたらどうすんだよ!」 「この辺りには誰も居ないので安心して着替えてください、とミサカ10032号は電磁波レーダの結果について報告します」 「ではミサカ達は行ってきますので、暫くお待ちください、とミサカ19090号はそそくさと退散します」 そう言い残して楽しそうに浜辺から歩いていく姉妹。 その後ろ姿を寂しそうに見送った当麻は、 「不幸だ…」 と呟きながらサーフパンツに穿き替える事になるのだった。 ―――― ―― 波の音が聞こえる。 カモメの鳴き声が聞こえる。 砂浜を誰かが駆ける音が―― 「ぶわー!?…げっほ!げっほ!」 突然顔面に砂が被せられ咳き込む当麻。 何事かと起き上がって辺りを見回すと、パーカーを羽織った五人が立っていた。 その中で美琴が手に付いた砂を払っている。どうやら彼女が砂をかけた犯人らしい。 「いきなり何すんだよ!ちょっと口に入っちまったじゃねーか!」 「当麻こそ!寝てるってどういう事よ!」 「はぁ?というか何で怒ってんだよ?」 突如逆切れしてきた美琴の態度に疑問を抱く当麻だが、彼女より先に妹達が文句を言い出す。 「遅かったのは申し訳ないと思いますが、その対応はあんまりです、とミサカ10032号は憤慨します」 「お義兄様はミサカ達の水着姿の期待度より睡眠欲の方が勝ったという事ですね、とミサカ19090号は嘆息します」 妹達の言葉を聞いて彼女達が怒っている理由を理解した当麻はすぐさま土下座体勢に移行し、彼女達の怒りを受け入れる準備を整える。 だが、流れは思わぬ方向へ動き出す。 「ミサカはどうでも良いけどね。ま、そんなお子様体系じゃ期待されなくても仕方ないね」 「確かにもう少し胸の膨らみがあった方が男性的には…、とミサカ10039号は成長しない体にショックを受けます…はぁ…」 「それは宿命というやつです、とミサカ10032号は既に諦めモードだったりします」 「しょぼーん、とミサカ19090号は己の体型のメリハリの無さにうな垂れます」 番外個体の言葉を聞いた妹達は揃って肩を落とし、大きく溜め息を付く。 だが、その様子を見てバチィ!っと空気を鳴らす者が約一名。 「…あんた等…好き勝手言ってくれちゃって…、覚悟は出来てる?」 自分と同じ体を持つ妹達にボロクソに言われ、我慢の限界に達した美琴はユラユラと妹達に近づいていく。 すると、10039号が近づく美琴を見ながら、 「お姉様はお義兄様が居ますので将来有望ではありませんか、とミサカ10039号はお姉様の胸部を羨望の眼差しで凝視します」 「んな!?ば、あんたいきなりそんな事言うんじゃない!」 以前彼女に言われた事を思い出し、瞬間湯沸かし器の如く真っ赤になって胸元を両手で隠すように覆う。 その様子に薄笑いを浮かべた10039号は更にからかおうとするが、番外個体が横槍を入れる。 「はいはい、漫才はその辺にしておいて今はお義兄様の処遇を決めようよ」 思わぬ助けにより10039号の追撃を逃れた美琴は軽く咳払いをしてから土下座体制の当麻を見る。 「で、何か言い訳はある?」 「いや、お前等が中々戻ってこなくて退屈だったんだ…それに昨日は寝たのが遅かったから睡眠不足でして、気が付いたら寝てたみたいだ…すまん」 「ほうほう、お義兄様はミサカに欲情して寝られなかったと…、とミサカ10032号は冷静に分析します」 「え!?いや!違っ!」 「いや、きっとお義兄様はお姉様の短パンにやられた筈です、とミサカ10039号はお義兄様の趣向を予想します」 「!?」 10039号の予想を聞いた当麻はビクッとする。 昨夜の美琴の寝姿を思い出し、顔が紅潮していくのが分かるが、何とか軌道修正を図る。 「と、所でなんで全員パーカー着てるんだ?水着に着替えに行ったんじゃ…?」 「お義兄様、話題の逸らし方があからさま過ぎて逆に怪しいよ。ま、そんな様子じゃ何もしてないんだろうけど」 「水着はこの下に着ています、とミサカ19090号は返答します」 「気分を盛り上げようとの配慮です、とミサカ10032号はパーカーを着ている理由について説明しました」 「仕方ないですね、では早速水着披露といきましょう、とミサカ10039号は先の話を流す事にします」 当麻の反応から図星だったと判断した妹達だが、そこは空気の読める出来た妹。 何事も無かったかのように当麻の話に乗っていくのだが、その目は少し呆れ気味だった。 そんな中、昨晩当麻が自分を意識して寝れなかったという事実を知った美琴は、 「…なんかこの流れで水着見せるの凄く抵抗があるんだけど…」 「さっ、お義兄様!誰の水着から見たい?」 恥ずかしさでもじもじしている美琴を完全に無視して話を進める番外個体。 一方当麻はというと、誰から見ようか視線をさまよわせる。 (う~ん、美琴は最後にするとして…ってちらちら見てくる美琴可愛すぎ。 じゃなくて、番外個体を先に見たほうが無難か?いや、あえて最後にしたほうがあいつ等にダメージが…いやいや!) 考えながら彼女達を見ると、楽しそうな番外個体、平然と待っている10032号&10039号、少し恥ずかしそうにしている美琴&19090号が目に入る。 すると、不意に19090号と目が合った。 「おっし、目が合ったから御坂妹(19090号)からいいかな?」 「わ、分かりました、とミサカはトップバッターになってしまった事にドキドキしつつファスナーをおろします」 19090号がファスナーを下ろし、羽織っていたパーカーを脱ぐと、 「ど、どうですか?とミサカ19090号はお義兄様の反応を窺います」 「あ、ああ、似合ってるってかそれってスクール水着か?」 「それ、常盤台中学の水着じゃない。なんでそれをここで着るのよ?」 着替えを個別で行っていた為、妹達がどんな水着を来ているのか知らない美琴は、内心で楽しみにしていた。 だが、海に来てまでスク水を着た19090号に拍子抜けし、同時にスク水なのかと疑問を抱く。 すると、その疑問に19090号が答える。 「布地の多さと軽さです、とミサカ19090号は簡単に説明しました。 さ、ミサカの番は終わりましたので次に行きましょう、とミサカ19090号は促します」 「あ、ああ。んじゃ次は御坂妹いってみるか」 次に目が合った御坂妹にそう言うと、コクリと頷きパーカーを脱ぐ。 すると… 「どうですか?と言っても19090号と同じですが、とミサカ10032号は二番目になってしまってインパクトが欠けてしまったことにショックを受けます」 「あんたもスク水!?なんで海に来てそんなん着るのよ!他に水着無かったの?」 「う~ん、これじゃ見分けが付かないな…」 御坂妹と19090号を交互に見てそう漏らす当麻。すると、 「…しくしく…、とミサカ10032号は…」 「当麻!あんた感想言う前にそんな事言うんじゃない!!」 デリカシーの欠片も無い当麻の対応に怒った美琴が彼の頭を叩く。 そして泣いている(嘘泣き)御坂妹を抱きしめると頭を撫でる。 「よしよし、そんなに泣かないの」 「うぐ、すまん御坂妹…今のは全面的に俺が悪かった…」 「やれやれ。じゃ、次はミサカがいかしてもらおうかな?」 目の前で繰り広げられるコントを見て肩をすくめた番外個体は返事を待たずにパーカーを勢い良く脱ぎ捨てる。 「じゃーん!どうよ、この水着!」 「…競泳水着…あんたもか…」 デザインも常盤台中学の物と似ているソレだが、先の二人とは決定的な違いがある。そう、体型だ。 「ぐぐ、さすが番外個体…ミサカ達とは発育が違います、とミサカ10032号は悔しさを滲ませます」 「ああなるまで何年…というかアレが限界なのでしょうか?とミサカ19090号は意外な小ささに絶望します」 「……(アレが将来の私…。もう少し欲しいなぁ…)」 19090号の言葉を聞いた美琴は盛大に凹む。 胸の大きさに悩む彼女達を横目に番外個体は当麻に近づくと、目の前でくるりと一回転する。 「お義兄様?ミサカの水着姿はどうかな?」 「あ、ああ。中々良いと思うぞ?」 未来の美琴の姿という事もあり、少し照れながら感想を言う当麻。 言葉自体は物足りないが、その表情に満足した番外個体は、 「そっかそっか、ありがと。それじゃ後は10039号に任せた」 笑みを浮かべながら少し下がり、10039号を当麻の前に差し出す。 「ではお待ちかね、ミサカの出番ですね、とミサカ10039号はここまで生き残った事に感謝しつつ気合を入れます」 「10039号ー、待ってましたー!」 「何なのあんた等?」 10039号の自信に加え、番外個体のあのテンションの高さは先程のソレではない。 何か企んでいる。直感的にそう感じたが、分からない。 あるとすれば突拍子も無い水着が出てくるくらいだ。 (流石に裸って事は無いだろうし…まさか…いや、それはないわね) 一瞬、黒子が持っていた紐のようなものが頭をよぎったが、妹達に限ってそれは無いと踏む。 だが、他の三人が違う意味で予想外だっただけに、少しだけ期待も出来る。 そして、10039号がファスナーを下ろし、パーカーを脱ぐと、そこには… 「って、何で制服着てるのよ!!」 常盤台の制服姿だった。ご丁寧にサマーセーターまで着直して。 予想の遥か上を行った事態に思わず突っ込んでしまった美琴だが、10039号はニヤリと怪しげな笑みを浮かべる。 「フフフ…、『想像力を豊かにする』ための演出です、とミサカ10039号は回答します」 そう言うと、10039号は靴を脱ぎ、片足ずつルーズソックスを脱いでいく。 裸足になって砂浜に立つと、今度はサマーセーターをゆっくりと脱ぎだす。 「ちょ、ちょっとあんた…何やってんのよ?」 「……」 美琴の問いかけを聞き流し、サマーセーターを脱いだ10039号はスカートに手を掛ける。 「ねぇ、ちょっと、本当に何する気?」 「まあまあ、お姉様。大丈夫だから黙って見てなよ。お義兄様も目を逸らしたら10039号に失礼だよ?」 近寄ろうとした美琴を手で制した番外個体は目の前で衣服を脱いでいく10039号から視線を逸らしていた当麻に軽く注意する。 すると、当麻は視線をちらちらと10039号に送るようになった。 そして当麻の視線を再び感じた10039号はスカートのホックを外し、少しずつ下ろしていく。 「わ、うわ…」 縞パンが見える!当麻がそう思ったところで10039号が左手で下着をガードするように手で隠し、手を離してスカートを下に落とした。 「ひゅー、10039号中々魅せるねぇ」 楽しそうな番外個体。完全にノリノリな彼女に御坂妹が、 「ミサカはこんな演出聞いてませんが、とミサカ10032号はハラハラしつつ事態を見守ります」 「色々あってね、ミサカは絶賛10039号の支援中って所」 「く、ミサカネットワークに接続していない事が悔やまれます、とミサカ19090号はこの後何が起こるか予想も付きません」 「え?あんた達も知らないの?」 「はい、ここに居る妹達は学園都市を出てからミサカネットワークに接続していませんから、とミサカ10032号は懇切丁寧に説明しました」 「何でまたそんな事を?」 御坂妹の説明を受けた美琴だったが、根本的な理由が分からずに再び問いかける。 すると、今度は番外個体が返事をする。 「極力横槍を入れられたくないからね。今日は個性を存分に発揮して暴れ回りたい気分だったから」 ミサカネットワークに接続している状態では必ず他の妹達から干渉される。 今日は自由に振舞いたいと考えた彼女達は、他の妹達に内緒で切断中という状態だ。 (ま、接続した瞬間に集中砲火確定だから接続したくないってのもあるけど) ここまで妹達の総力を挙げて行った作戦に対して、自分達の取った行動を考えれば良くて吊るし上げだろう。 そんな事を考えていると、美琴が話しかけてきた。 「そっか、じゃあ今日はあんた達らしさっていうのを見せてもらおうかな?」 「おっけー、って言っても10039号は既に全力疾走だけど」 「げ、そうだった!あんな事続けさせる訳には…!!」 視線を10039号に送ると、既にスカートが無い状態で更にブラウスに手を掛けている。 その行動をやめさせるべく美琴は動き出すが、番外個体が彼女を羽交い絞めにする。 「ダメダメ!今個性を存分に見せるって言ったばっかじゃん!」 「あれはそういう問題じゃない!いいから離せー!当麻も凝視すんなー!!」 ぎゃあぎゃあと騒ぎ出す外野を他所に10039号はブラウスのボタンを一つ一つ右手で器用に外していく。 そして、すべてのボタンを外し終えると、恥ずかしそうに顔を逸らしてから少しずつ左手を除け、右手でブラウスの真ん中辺りを開く。 「ゴク…」 いつの間にか10039号の動きに見入ってしまっていた当麻が喉を鳴らすと同時に彼女の制服の下の姿が晒された。 「ど、どうですか?とミサカ10039号は少し恥ずかしそうな演技をしながら問いかけます」 10039号の制服の下から出てきたのは紺色のスクール水着。 真ん中に白の布があり、そこには手書きで『みさか』と大きく書かれ、隅っこには『♯10039』と検体番号まで書かれている。 しかし、当麻と美琴が声を出す前に御坂妹&19090号が10039号に歩み寄る。 「10039号、確か水着については不公平が無いようにスク水で統一すると決まっていた筈ですが、とミサカ10032号は問い詰めます」 「おや、これもれっきとしたスク水ですが?とミサカ10039号はしれっと言ってのけます」 「度重なる裏切り行為。もう許しておけません、とミサカ19090号は怒りを露にします」 「こんな時に自己をアピールしきれないミサカにそんな事を言われる筋合いはありません、とミサカは偉そうな事を言いますが危機を感じ逃げ出します」 詰め寄ってきた二人の視線に身の危険を感じた10039号は海に向かって走り出す。 「待つのです!とミサカ10032号は裏切り者を追いかけます!」 「そのまま海の藻屑にしてやります!とミサカは海に向かって突進します!」 「きゃはは!やっぱりこうなったか!!ミサカも混ぜてもらうよ!」 物凄い勢いで海に走っていく4人の妹達はバシャバシャと浅瀬を走っていくが、 「ミサカはこの個体において初の海に突入しますとミサカは――――!?」 バッシャァアアン!!と、少し深くなった所で水の抵抗に足を取られた10039号は盛大にすっ転ぶ。 そこに次々と妹達が襲い掛かり、ギャーギャー騒ぎ出した。 一方取り残されてしまった二人はというと、あっという間の出来事に呆然としているが、やがてクスクスと笑い出す。 「本当にしょうがない子達なんだから」 「そうだな。でも、何だかんだいってあいつ等が楽しそうにしてるとこっちも楽しい気分になれるよな」 「そうね。それじゃ、私も早く混ざりたいし、脱いじゃうね」 言いながらパーカーを脱ぎ始める美琴には先程のような恥じらいは無くなっていた。 どうやらいつもの調子の妹達に当てられ、リラックスしているようだ。 だが、当麻はというと… (わ、わわ…) ――隣で彼女がパーカーを脱いでいる。 たったそれだけの筈なのに、鼓動はどんどん高鳴っていく。 元々彼女の水着姿を心待ちにしていた事もある。 だが、それプラス、先程10039号の艶かしい動きを見てしまった彼の脳は10039号の動きと、今の美琴の姿が合わさり、大変な事になっている。 そして、今の状況に耐えられなくなった当麻は思わず視線を逸らしてしまうのだが、それが決定打となった。 (やば、俺なんて想像してんだよ) 視覚情報がなくなったことで、想像が鮮明になり、彼の頭には常盤台の制服を着た『美琴』が制服を脱いでいるシーンが映し出される。 10039号の言っていた『想像力を豊かにする』とはこの事だった。 彼女の罠にかかった当麻はもうどうする事もできず、ただ美琴が水着になるのをドキドキしながら待つしかなかった。 そして、パサリとパーカーが落とされる音が聞こえると、彼女の方を恐る恐る見る。 すると、そこには白のビキニを身に着けた彼女の姿があった。 トップスは後首と背中を紐で留め、ボトムの方も両サイドを紐で縛って留めるという至ってシンプルなものだ。 「どう…かな…?」 自分の体型にいまいち自信の持てない美琴は不安げに当麻の方をちらちらと伺い、そう呟く。 すると、当麻はスッと視線を逸らしながら照れくさそうに、 「あ、ああ、凄く似合ってる。ってか完全に予想外だったから上条さんもうだめです。直視できません」 「そ、そう。ありがと…。でも、もっと良く見て感想言って欲しいな…」 当麻に喜んでもらえたのは嬉しい美琴だったが、すぐに顔を逸らされてしまったのは少し寂しい。 なので、水着を見せ付けるように彼の視線の先に移動する。 相変わらず直視できない当麻だったが、徐々に慣れていくと、ようやく彼女の顔を見れるようになり、 「…可愛いぞ美琴。うん、すっげー可愛い」 「ふえっ!?そ、そんなに可愛いとか言われると恥ずかしいじゃなぃ……」 当麻の褒め言葉に不意を突かれた美琴は真っ赤になってもじもじとし始めた。 そんな彼女の仕草を見た当麻は、 (本当可愛いなぁ…今すぐ抱きしめたい……はっ!いかんいかん、ここには御坂妹達もいるんだった) 理性が一瞬飛びかけるが、何とか押さえ、彼女の手を取ると、 「よし、じゃあ俺達も行こうぜ!」 「あ…、うん!」 当麻の言葉にふわりと笑みを浮かべた美琴。 その笑顔にドキリとした当麻だが、恥ずかしさを吹き飛ばすように妹達が暴れている海へと駆け出す。 そして、怒る妹達をなだめると、久しぶりの海を満喫しはじめるのだった。 ―――― ―― 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/例えばこんな三人の関係
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2008年32号集計結果(有効票数117) 2008年32号集計結果(有効票数117) (平均) (合計)(標準偏差)[1← ★ ...→5]_有効票数 ワンピ .......… 4.14 0472 1.029 [003_006_017_034_054]_114 うさぎ……… 3.49 0366 1.324 [013_010_024_029_029]_105 勇者学 …… 3.43 0370 1.154 [005_021_027_033_022]_108 トリコ......…… 3.39 0386 1.000 [005_012_047_034_016]_114 こち亀 .......… 3.27 0317 1.168 [009_015_028_031_014]_97 ぬらり....…… 3.21 0340 1.300 [014_020_020_034_018]_106 とらぶる ...… 2.83 0314 1.257 [016_033_033_012_017]_111 スケット......… 2.83 0291 1.332 [020_024_030_012_017]_103 ネウロ...…… 2.82 0299 1.003 [010_030_039_023_004]_106 ジャガー....… 2.82 0296 0.959 [010_025_048_018_004]_105 ナルト....…… 2.61 0290 1.011 [016_034_042_015_004]_111 マン研. …… 2.59 0184 1.116 [013_020_026_007_005]_71 サイレン....… 2.59 0256 1.060 [015_033_035_010_006]_99 アイシル....… 2.40 0259 1.093 [025_037_028_014_004]_108 Wアーツ ...… 2.34 0248 1.170 [032_029_027_013_005]_106 リボーン . … 2.32 0213 1.317 [031_028_017_005_011]_92 銀魂 ……… 2.29 0238 1.094 [031_029_030_011_003]_104 Dグレ....…… 2.15 0204 0.989 [029_032_027_005_002]_95 ハケン .…… 2.07 0209 1.003 [033_041_015_011_001]_101 どがし ..…… 1.98 0198 0.932 [038_032_024_006_000]_100 錬菌 . . …… 1.63 0132 0.798 [043_027_010_000_001]_81 総括 ……… 3.27 0245 0.905 [001_013_033_021_007]_75
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そういえば今朝の出費で上条の所持金はほぼ0だった。 「………………不幸だ」 一旦寮に荷物を置いてから、クラスメイトの青髪ピアスの居候先のパン屋でパンの耳でも貰うことにした上条。パンの耳なんて成長期の男子高校生にとっては『オヤツ』にすらならないのだが、無いものは無いのだから仕方ない。 明日担任の小萌先生にお金を借りようと思いながら、寮のオートロックを抜ける。他の住人達は夏休み初日ということもあって、皆一様にどこかで夏を満喫しているようだ。 夏休みであろうが無かろうが関係なく無人の管理人室を過ぎて、豚箱のような狭苦しいエレベーターに乗る。 上条の部屋がある七階に着いて、ガコンというボロさを主張するかのような振動と共にエレベーターが止まった。 「ん?」 と、上条はすぐに気付いた。エレベータホールから通路に出てその奥――自室の扉の正面で、清掃ロボが三台ほどたむろしている。清掃ロボットはこの寮には五台しか配備されていないはずなのに、なぜこんなに固まっているのか。 故障しているわけではなさそうだ。むしろ職務を果たそうと頑固な汚れに挑んでいるように見える。 ……なんか、すさまじい不幸の予感。 そもそもあの手の清掃ロボはアスファルトにこびりついたガムだって瞬殺するのだ。それが三台も集まっているのに落ちない汚れとはいかなるものか。 もしかしてチンピラみたいな格好をすればモテるなんていう幻想を未だに持ち続けている悪友であり隣人の土御門元春が、酔っ払って胃の中身を綺麗に曝け出したんじゃあなかろうかと上条は恐れ慄く。 「まさか、な……」 何にしろ見ない方が身の為だとわかっているのだが、悲しきかな人間には怖いもの見たさという何の役に立つのか分からないものが巣食っている。 そろりそろりと足を進めて、やっとそれが視界に入った。 モヤシでチンピラな超能力少年一方通行がぶっ倒れていた。 「…………………………、はー」 ドラム缶三台がガコガコと体当たりを繰り返すも、一方通行は身じろぎ一つしない。そもそもああいうロボットは人間や障害物を避けて通るようになっているはずなのだが、自称ゴミ以下のクソ野郎は清掃ロボットにもゴミ以下のクソ扱いされているのだろうか? 「…。ちくしょう、不幸だ」 そんなことを言いながらも、上条は無意識に笑っていた。 やはり気になっていたのだ。『妹達』なんてトンデモ話は信じられないが、妙な研究所が妙な技術を使って彼を追い回している、とも考えられる。 それが変わらない、前と同じ姿で見つけられたのが嬉しかった。 そんな細かい理屈を取っ払っても、また出会えたことが無性にただ嬉しかった。 何に使うのか分からない電極、ただ一つの忘れ物。それを上条は思い出す。それが、何故だかおまじないのように思えてくる。 「何やってるんだよお前、こんなところで!」 走り寄りながら声をかける。それだけの動作で何故こんなに心が弾むのだろうと上条は思う。 一方通行はまだ反応しない。 なんとも唯我独尊な『一方通行らしい』反応に笑みを漏らして、 一方通行の体が血に染まっていることに、ようやく気付いた。 「……、え……?」 戦慄するより前に、困惑する。 固まっている清掃ロボットに隠れて見えなかった。うつ伏せに倒れた一方通行の手が、額を押さえている。まるで頭痛でもするかのような仕草、しかしそこから止めどなく溢れる鮮血が、その前髪と服の白を鮮烈に塗り潰していく。 その時上条は、それが『人の血』であることが理解出来なかった。 たった今とついさっき。あまりに大きな落差を伴う現実が、頭の中をかき乱す。赤くて赤い真っ赤な……絵の具かなにかだろうか? あの一方通行が真っ白なキャンパスの前で筆を構えて、なんてなんとも似合わない図を妄想しても、上条は笑えない。 笑わないでなく、笑えない。 そんなこと、出来るはずもない。 清掃ロボットが三台、床の汚れを拭っている。床を汚す赤を、一方通行の額から流れる赤を。 くたびれた雑巾を絞るように、一方通行の体から血液を一滴残らず搾り出すように。 「……やめろ、くそっ! やめろ!!」 やっと上条の認識が現実に追いつく。致命傷を受けている一方通行に体当たりを繰り返す清掃ロボットを、強引に引き剥がしにかかる。 しかし馬力もさることながら、盗難対策の為に重量もある清掃ロボットはなかなか動かせない。 無論清掃ロボットは一方通行の傷口を広げたいわけではなく、単純に『床を汚し続ける液体』を拭っているだけだ。それを理解していても上条には清掃ロボットが死肉に群がるハイエナのように思えた。 そうまで感じているのに。ただの清掃ロボットを、上条は引き剥がすことすら出来ない。引き止められるのは一台が精一杯で、その間に残り二台が『液体』へ群がっていく。 神様すら殺せる男のくせに。 こんなガラクタに翻弄されてしまう。 一方通行は身じろぎ一つしない。元から異常なまでに白かった肌は、最早死人のそれのように蒼白だった。 「ちくしょう、畜生!!」錯乱状態に近い上条は叫んでいた。「どうしたんだよ、何が起こったんだよこれは!? なめやがって、一体どこのどいつがこんなことしたんだよ!!」 「私達『妹達』ですが? と、ミサカは返答します」 そして当然、背後から降ってきた声は、一方通行のものではない。 喰らい付かんばかりの勢いで上条は体ごと振り返る。エレベーターの音はしなかったから、その脇にある非常階段から少女はやってきたのだろう。 その少女は上条より低い身長で、顔も上条より幼く見えた。 歳は恐らく中学2、3年といったところか。肩程度の長さの茶髪に半袖の白いブラウスとサマーセーター、灰色のプリーツスカート。あれは確かこの街の中でも有数のお嬢様学校、常盤台中学のものだ。ただしコイツを『ただの女子中学生』と形容する人はこの世にいないだろう。 まず真っ先に目に付くのがごつくて真っ黒のアサルトライフルだ。無骨というよりは機能美的で無機質な兵器。次に目に付くのが額にかけられた、ゴツい暗視ゴーグルのようなもの。 そしてなにより、その目。焦点が酷く曖昧で何を見ているのか何も見ていないのか分からない、感情の無く暗い瞳。 学生とも、ましてや軍人とも呼べない少女。 上条は、通路に立つ少女を始点に周囲の空気が塗り潰されていくのを感じる。 『日常』から『非日常』へ。 『普通』から『異常』へ。 その時上条は恐ろしく思ったし、それより強く怒ってもいた。 だが、それ以上に。上条が感じたものは『戸惑い』だった。幼い頃から住んでいるこの街、学園都市。それが決して謳い文句通りの平和で美しいだけの街ではないことは知っていた。 開発では得体の知れない薬物を投与されてきたし、路地裏のスキルアウトには数え切れないくらい追われてきた。 だが、それでも上条は知らなかった。この街の『裏』の本当の顔を。 彼女が、『妹達』。 今この時、この街はそんなものを平気で作ってしまうような『裏の顔』を曝け出していた。 「これはまた派手に決まってしまいましたね、とミサカは独り言に近い感想を述べます」 妹達(一人称はミサカのようだがそれが名前なのだろうか)はその感情の無い瞳を一方通行に向ける。 「まだ息があるようなので能力が使えなかったわけではないのでしょうが……、途中の血の跡はその清掃ロボットが拭ってしまったのですね、とミサカは確認します」 妹達は今も一方通行に集っている清掃ロボットに視線を向ける。 『途中の』ということは一方通行はここでは無い場所で撃たれて、ここまでわざわざ戻ってきたのだ。 「でも、何で…?」 「一方通行がここまで戻ってきた理由ですか? とミサカは確認を取ります。私にも詳しい事情は分かりませんが、頭を撃ち抜かれた後にポケットなどを探って何かを探すようにしていたような、とミサカは思い出します。逃走に移ったのはその後だったので、何かこの辺りに忘れ物でもしたのではないですか? とミサカは推測を述べます」 『忘れ物』。そんなもの一つしかない。 (あの、電極……?) 一方通行が残していった唯一のもの。何に使うのかも分からない電極。 だが、きっとそれは一方通行にとっては重要なものだったのだ。能力を使う為に必要なのか、能力を破られた時に必要なのか。 推測しても答えはでない。が、分かっていることが一つ。 一方通行がそんな大切なものを不用意に落とさなければ、きっとこんなことにはならなかったのだ。 「……とんだ馬鹿野郎じゃねえか」 そして上条があの時、すぐに後を追って電極を渡していれば。 上条が繋がりなんて求めなければ、きっとこんな最悪なことにはならなかったのだ。 「……とんだ大馬鹿野郎じゃねえかよ、俺は!!」 思えば彼は最後、意図的に上条と距離をとろうとしていたような気がする。来るなとも言われた。 それなのに上条が勝手にしがみ付いて足を引っ張って、結果がこれだ。 上条は許せなかった。 勝手に一人で戦って勝手に一人で血塗れになった一方通行が。そんな一方通行の額を撃ち抜いた妹達が。そして何より、人に不幸を押し付けた自分自身が。 「そんなに睨まれても困るのですが、とミサカは困惑します」 妹達はそういいながらも顔色一つ変えずに続ける。 「確かに一方通行を撃ったのは私ですが、まさかあんなに簡単に銃弾が当たるとは思ってもみませんでしたし、とミサカは当時の状況を振り返ります。一方通行の能力は絶対防御であり、本来はあれくらい『反射』出来るはずなのです、とミサカは説明します。核爆弾が落ちてきても傷一つつかないという謳い文句だったはずなのですが……とミサカは疑問を抱きます」 半ば独り言のように、最後まで一切の感情を滲ませずに、妹達が淡々と述べる。 それが一層、上条の感情を逆撫でする。 「なんなんだよ、何考えてるんだよ。俺はお前みたいなクローンのことなんかよく分からないし、お前がどんな世界に生きているのかも分かんねえよ。それでもお前等にだって心はあるんだろ? 痛みとか苦しみとか感じられるんだろ……?」 そんなこと、上条が言えたことではないのは分かっていた。 この惨状の原因の一端は、確実に上条にあるのだから。 それでも、言わずにはいられない。 「こんな細っせえヤツを寄って集って追い回して、銃弾ぶち込んで!! こんな現実を前に、テメエは何も感じないのかよ!!」 「だから、そもそも銃弾が当たるとは思っていなかったのですが、とミサカは再度説明します」 それでも、彼女は一言で返した。僅かにも微かにも、揺れていなかった。 「もっとも、彼がどうなろうが実験は続けられますが、とミサカは分かりきったことを告げます」 「じっ、けん?」 意味が分からない。 「……念の為パスの確認を取ります、とミサカは有言実行します。ZXC741ASD852QWE964、とミサカはあなたを試します」 「パス? さっきから一体何を……」 「どうやらあなたは実験の関係者では無いようですね、とミサカは今更ながら確認します。一方通行と言葉を交わす人間なんて実験の関係者くらいだと思っていたのですが、とミサカは僅かに驚きます。一方通行とは個人的な知人か何かなのですか? とミサカは質問します」 「そういえば一方通行もなんか言ってたな。実験ってなんなんだよ? お前等と一方通行と、どんな関係があるんだ?」 「お答えできません、とミサカは即答します。というかミサカの質問はスルーなのですね、とミサカは不満を滲ませます」 上条は黙って妹達を睨む。『不満を滲ませる』などとのたまいながら、彼女の顔には一切の表情が無い。その様は機械よりも機械的で、その挙動はまるで操り人形のようで。 上条は少し彼女のことを理解する。きっと彼女は、『正しさ』なんて考えていない。それを正しいと『信じる』人々からの命令に従っているだけで、それが間違っているか否かなんて判断はきっと無い。 「まあそれはいいでしょう、とミサカは閑話休題を宣言します。それよりもミサカは早く一方通行を回収したいのですが、とミサカは申し出ます」 「かい……、しゅう?」 だからこそきっと彼女のその発言にも、特に意図はないのだろう。そういう表現をしただけだ。 「ええ、回収ですよ、とミサカは繰り返します。詳細は語れませんが、一方通行は実験に欠かせない個体なので、早急に回収してしかるべき処置を施さなくてはならないのです、とミサカは漠然とした情報を告げます」 その発言にも、だ。きっと他意は無い。人を人とも思わないような、まるでその実験に支障がなければ一方通行がどうなろうと知った事ではないと告げるようなその内容にも。 もう少し深く、上条は理解する。きっと彼女達だけではなく、その背後にある研究者たちも『正しさ』なんて考えていない。得体のしれない『実験』の為ならば一方通行だろうが妹達だろうが使い潰すような、人を道具としか考えていない意思が妹達の背後に透けて見える。 上条は全身に鳥肌が立つのを感じる。皮膚の内側から蛆虫が沸いて出るような不快感が体中を駆け巡る。 科学宗教、という言葉が脳裏に浮かぶ。 道徳も人権も完全に無視したその考えに上条は強い拒否感を覚えた。 「……やらせねえよ」 言って、拳を固く握る。眼差しはまっすぐ妹達に向けて。 「それは、実験妨害の意思表示と取って間違いありませんか?とミサカは問います。第三者が実験の障害となる場合、ミサカはそれを迅速に排除する義務があります、とミサカは警告します」 「ああ。止めてやるよ。そんな胸糞悪い実験、この場で終わらせてやる!!」 咆哮と同時に、爆ぜるように駆け出す。 右の拳を更に強く、砕けんばかりに強く握り締める。 上条の右手は不便だ。作用するのは異能の力だけで、銃なんかには全く歯が立たない。 けれどそんな右手でも、ただの人間をブン殴ることには何の支障も無い。 「実験を妨害する意思を確認、これより検体番号10032号は対象の排除に移ります」 それでも妹達――10032号は機械的に宣言する。 そしてその間に上条は妹達との距離を半分に詰める。 「降伏の意思が認められるか、或いは行動不能に追い込むまで攻撃は継続しますので、速やかに降伏して頂ければ幸いです」 そう上条に告げた10032号は、持っていたアサルトライフルをようやく構える。 が、遅い。もう上条は彼女の眼前まで迫っている。 銃なんてものは単純だ。銃口をこちらに向ける前に銃身を押さえてしまえば、もうそれはただの鉄の塊なのだから。 10032号の言葉の一切を無視して駆けた上条は、右手を真っ直ぐ銃身に向かって伸ばす。 10032号の指は引き金にかかっていたが、それが引かれるより早く上条の右手が銃身を捕らえた。 (捕った!!) アサルトライフルを掴んだままの右手を強く右に払う。銃を奪うことは出来なかったものの、銃口は上条から大きく逸れた。 目の前には、それでも無表情な顔と、がら空きの腹。 勝利を確信した上条が、左腕を振りかぶった瞬間。 10032号の額から、凶悪な電撃が迸った。 「なっ!?」 とっさに後ろに仰け反りながら、右手で顔を庇う。 運よく右手に触れた電撃が、バチバチと音を鳴らしながら四散した。 (こいつ、能力者なのか!?) 怪訝な顔をしている10032号を尻目に、上条は思い出す。 今朝、一方通行は妹達のことをなんと言っていたのかを。 『妹達ってのは学園都市第三位『超電磁砲』のDNA マップから作られた二万体のクローンの総称だ』 (そういえばこいつらは学園都市最強の電撃使いのクローンだった。待てよ、ということはまさか妹達って全員レベル5!?) 上条の全身から気持ちの悪い汗が噴出した。無意識に一歩、二歩と後ずさる。 いくら上条の右手が異能の力を打ち消せるといっても、レベル5級の相手にそう簡単に勝てるわけでは無い。上条の右手はあくまで異能の力にしか作用しないので、能力の余波で飛んでくる瓦礫などは防ぎようが無いのだ。 それがただの能力者ならば痛いで済む。だが相手がレベル5となれば話は別だ。 その能力が『災害級』と称されるならば、その余波もまた『災害級』なのだから。 「……? やはり電子線を追えない状態での能力の使用は安定しませんね、とミサカはゴーグルを装着します」 上条が電撃を打ち消したことを理解しきれていないまま、額にかけていたゴーグルを下ろす10032号。そこでようやく上条は我に返る。 銃口がこちらを向いていた。 上条は先の電撃を『右手』で打ち消した。そうするしか無かったので仕方無いのだが、結果アサルトライフルは今いつでも撃てる状態にある。 (マズ……ッ!!) 上条と10032号の距離はたったの数歩。だがその距離を詰めるより早く、引き金が引かれる。 オモチャの拳銃のように安っぽい銃声が、本物の破壊の後を追った。 掃射が終わってみれば、辺りはもはや廃墟のようだった。床も壁も銃弾で容赦なく抉れ、通路奥にいた清掃ロボットにまで銃弾が数発めり込んでいた。 「やりすぎましたね、とミサカは前方を視認します」 まるで銃を持ったテロリストが暴れまわったかのような(実際そんな感じなのだが)惨状を前に、10032号は相変わらず無表情で呟く。 この寮、及び周囲に人がいないことは確認済みだ。夏休み初日なので住民は全員外出しているし、周囲にはそんな若者が集う場所は無い。 だが、その全てが帰宅せずに徹夜もしくは泊まりで遊びほうけるということは無いだろう。 実験は秘密裏に行わなければならない。なのでそれらが帰宅する前に、この惨状をどうにかしなくてはならないのだ。 「……まあなんとかなるでしょう、とミサカは無責任にため息をつきます。というか危うく一方通行にも当たるところでしたね、とミサカは自分の無計画さを反省します」 そもそも10032号も上条を必殺しようとしていたわけではなく、行動不能に陥らせようとしていただけだ。故に銃口は意図的にやや下に向けていたのだが、壁や床で跳弾したのだろうか。何にしろ、一方通行を回収するために一方通行を撃ち抜いてしまっては笑えもしない。 「まあもう撃ち抜いているのですけどね、とミサカは小粋なジョークを飛ばします。まあついでにもう片方にも釘を刺しておきましょうか、とミサカは手すりから身を乗り出します。」 「し、死ぬ! やばい! 本当に死ぬかとおもった!!」 掃射が始まる寸前に七階の手すりを越えてノーロープバンジーに挑戦した上条は、六階の廊下で膝をついて荒い呼吸を繰り返す。心臓が左胸で暴れまわっているのを感じながら、とりあえず射程距離から外れて一息つこうとしていたのだが。 「はろー、とミサカは場違いな挨拶をします」 降ってきた声に慌てて上条が振り返ると、10032号が上の階の手すりから身を乗り出してこちらを見ていた。 手には当然アサルトライフル。 「嘘だろ、なんでそんな不安定な姿勢で撃てるんだ!?」 弾かれるように走り出す上条の後を銃弾が追う。床が爆ぜ、ドアに風穴が開き、消火器が弾けとんだ。 先ほどとは違いまだ逃げようがあるものの、それでも一直線に逃げていたのではではいずれ捕まってしまう。 咄嗟に上条は真横の非常階段への扉を蹴やぶって転がり込む。下へ下へと階段を降りながらも、背後から容赦なく安っぽい銃声が追ってくる。 (そもそもこっちは丸腰だってのに……ッ) 卑怯だ、と思う。とはいえそんな言い分はこの場で通用するとも思えない。 しかし実際問題、あんな物騒な銃を持った相手を素手で倒すことなんて出来るのだろうか? 先ほどのように至近距離からの不意打ちでも決まれば話は別だろうが、一度これだけ距離を離してしまってはそれも適わない。 しかも相手は能力まで持っている。さっきのはレベル3程度の電撃だったが、最悪レベル5クラスであっても不思議ではない。 だからといっていくら上条が頑張ったところで、ちゃちな拳銃一つだって手に入らないだろう。よしんば手に入ったとしても相手はアサルトライフルだ。勝ち目なんてあるはずも無い。 そこまで考えて、上条の思考は強引に断ち切られた。 何故なら、上条の向かう先――階段の踊り場に手榴弾が投げ込まれたからだ。 「なっ……!? こんな物騒なものまで使うのかよ!!」 爆発寸前の手榴弾を前に、上条がとった行動はシンプルだった。 今まで下ってきた階段を引き返すのではなく、更に階段を下るのでもなく。 そのまま加速して、手榴弾ごと踊り場の手すりを飛び越えた。 背後で手榴弾が弾ける音を聞きながら、上条は着地地点を確認する。二階と三階を繋ぐ階段だったので死にはしないだろうと思って飛んだのだが、見れば下は自転車置き場だった。 「わっ、うわわわわああああ!」 がしゃんごしゃんと自転車をなぎ倒しながらも、なんとか着地する。 あちこち擦りむいたり切ったりしたが、大した怪我は無いようだった。 「って、安心してる場合じゃねえ!!」 上条は慌てて頭上を仰ぐ。非常階段まで撃ってきたのだから、恐らくまだ10032号の射程範囲から外れてはいないだろうからだ。 案の定、半ば手すりに腰掛けるようにしている10032号と目が合った。慌てて起き上がって逃げようとした上条だったが、10032号はしばらく上条の顔を見た後、手すりから降りて上条に背を向けた。 どうやらもう追撃は無いらしい。 それが分かった途端に、上条は脱力した。膝から崩れ落ちて尻餅をつき、深いため息をつく。 まだ完全に危機を脱したわけではない。依然として上条は10032号がその気になれば撃ち抜かれる位置にいるし、一方通行のことも片付いていない。 だが逆に。上条がここからさっさと逃げ出して一方通行のことを忘れてしまえば、これ以上の危機は訪れないのだ。 10032号が撃って来ないのもそういうことだろう。つまり、今朝の一方通行と同じことを言っているのだ。 こっちへ来るな、と。 倒すべき相手も、助けるべき対象も、両者とも一様に来るなと言っている。 それらを無視してまでそこに命がけで赴く理由なんて、上条には無い気がした。 ポケットを探る。とりあえず携帯で警備員に連絡しようと思ったのだが、思い出してみればそれは今朝踏み砕いていた。 結局、ここにいても上条に出来ることなど何も無い。本当に彼を助けたいのなら、さっさと携帯を持っている人や公衆電話などを探して助けを呼ぶべきなのだろう。 例えその間に一方通行が『回収』されても。 そもそも、だ。 『じゃあついてくンのか? 地獄の底まで』 学園都市で最も強い能力者すら抜け出せないような深く暗い地獄の底。 そんなところから上条一人で彼を引きずり上げるなんて、無理に決まっているのだから。 彼の言によれば彼は人殺しで、極悪人で。 その血に塗れた手を掴む理由なんて、上条には無いのだから。
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ミニマム当麻 「ふう、なんとか逃げ切ったか…」 ここは第七学区の大通り、現在当麻は、学校でのリアル鬼ごっこから逃げ切り、下校中である。 (ふははは!逃げることに関して、この上条さんに勝てるとでも思ったか!) などと、心の中で何かほざいている当麻だが、もちろん逃げ切れたのは、 ほぼゴジラのように暴れまくった吹寄のおかげだった。 (それにしても、まさかあのタイミングで吹寄が出てくるとは思わなかったな……たぶんあいつら、 明日は顔面に包帯巻いて学校に来るだろうな。お気の毒に……) そんな感じで当麻が機嫌よく下校している時、学校では制裁という名の八つ当たりが行われていた。 「にゃ、にゃー!ふ、吹寄様、そろそろお怒りを静め―――」 土御門の額に吹寄のおでこDXがたたき込まれる! 「うるさい!あんたたち!今日という今日は勘弁ならないわ!!」 「吹寄はん!?そないやったら上やんもグルギョバ!」 右ストレートがクリティカルヒット! 「黙れ!あんたたちに発言する権利なんてないのよ!それにあんたたち、あたしにちっちゃい子を殴れって言うの!?」 吹寄の怒りはとどまることを知らず、土御門達が発言をするたびに、 攻撃力が上がっていく。 もちろん馬鹿な男たちにわかるはずがなく、どんどん発言をしていくやつから、なぎ倒されていった。 「「上やん!覚えとけよおおぉぉおぉお!!」」 「うお!?なんだ?急に寒気が……」 風邪でも引いたかな?そう思っていた矢先後ろから 「おや?あの少年によく似た子供ですね。とミサカは話しかけてみます。」 「あ?なんだ、御坂妹(10032号)か。」 「何でミサカのことを知っているのですか?とミサカは質問します。」 「あぁ、この姿じゃわからねえのも無理はねえか。俺は上条当麻さんですよ~」 「そうですか、とミサカは納得してみます。」 (あり?そんなに驚いてねーな。はっ!もしや、俺はそんなことも気にならないほどどうでもいいやつなのか!?」 そんな風に、いろいろなことを考えている当麻をよそに、 御坂妹はミサカネットワークで緊急会議を行っていた。 ~緊急会議、当麻さんの異変について~ (と、突然ですが、今から緊急会議を行います!とミサカ10032号は他のミサカを呼びかけます。まず、この映像を見てください!) (一体何の会議ですか?とミサカ10045号は――な、何ですかこれは!?とミサカはこの映像に驚愕してみます!) (この子は当麻さんに弟か何かですか?とミサカ10123号ははミサカ10032号に説明を要求してみます) は、早く説明を!この子は誰ですか!などと、いろいろな意見がとびかっている。 (静かにしてください!とミサカ10032号は落ち着きながら呼びかけます) 一瞬でネットワークが静かになった。 (この子供は、当麻さん本人のようです。とミサカは事実を述べてみます。) (な、なんですって!?この子供が当麻さんですか?とミサカ10082号はこの事実に驚きを隠せません!) (なぜ、当麻さんが子供の姿に?とミサカ10045号は当然の質問を問いかけます) (いや、そんなことよりも、このかわいさは反則でしょう!とミサカ10231号は自分の母性本能を必死に押さえてながら発言します) (とにかく落ち着いてください!とミサカ10032号は他のミサカ達に訴えます) 他のミサカ達の興奮が収まってきたころ、ミサカ10032号はミサカ達に意見を求めた。 (とりあえず、これからどうしましょう?とミサカは意見を求めてみます) ((((様子を見てみましょう)))) ミサカ達の意見がまとまったので、会議はとりあえず終了となった。 ~緊急会議、一時終了~ 「おーい、御坂妹?」 御坂妹の反応がなかったので、気になって話しかけてみた当麻である。 話しかけられた御坂妹は、体をビクッ!と震わせたあと、 「何ですか?とミサカは平静を装いながら、質問に答えます」 このとき、ミサカは顔が少し赤かったりするのだが、鈍感な当麻は気付かない。 「いや、なんか反応がなかったから少し気になってな。」 熱でもあるのか?と当麻は御坂妹の頭へ手を当てようとしたが……届かない 手を当てようと、がんばって背伸びなどをするが、やはり届かない。 しかも、その様子を間近くで見ていた御坂妹は、自分の母性本能を必死に押さえようと頑張っている (この激しい攻撃をやめてください!とミサカは心の中で叫んでみます!) 届かないと理解した当麻は、無駄な努力をやめ、御坂妹との会話に戻ろうとした、が 御坂妹が顔を後ろに向けて、両腕を握りながら、必死に何かを堪えている。 「ど、どうした御坂妹?やっぱり体調が悪いんじゃ……」 「だ、大丈夫ですから、これ以上ミサカを攻撃しないでください。とミサカはお願いしてみます…」 「まあ、とりあえず何の用だ?」 「ムッ!とミサカは少々不機嫌になってみます。何か理由がなければあなたに会ってはいけないのですか?とミサカは質問し返してみます。」 「い、いやっ!そういう意味で聞いたわけじゃないんだが……んじゃ、どっか遊びにい――」 遊びに行こうと言おうとした直後に、後ろから声をかけられた 「あれ?アンタこんなところで何してんの?」 そう声をかけてきたのは、常盤台の超能力者、そして御坂妹のオリジナル、御坂美琴である。 「おや、奇遇ですね。とミサカはお姉さまに挨拶をしてみます。」 「治療は順調に進んでる?って隣のその子誰?」 「ああ、この人は当麻さんですよ。とミサカは当たり前のように説明してみます」 「えぇ!?この子があのバカァ?あはははは、そんな訳ないじゃない。ねえ?」 「悪かったな、バカで。俺は本物の上条さんでせうよ。」 「へ?ええぇえぇぇ!!」 「お姉さま、驚きすぎです。とミサカは耳を押さえながら抗議してみます」 「そうだぞ!俺に失礼だ。」 「いや!そんな堂々と言われても、普通驚くでしょうが!?」 「まあ、そんな事はともかく、これ――」 「ちょっと待ちなさいよ!アンタ、どうしてちっちゃくなったの!?」 「なんか朝起きたらちっちゃくなってたんだよな。」 もう何度も同じ質問をされているので、てきとーに答える当麻である。 「まあ、お姉さまは放っておいて、早く遊びに行きましょう。とミサカは当麻さんをせかしてみます」 「んあ?そうだな。御坂も一緒に行かねえか?」 「へ!?アタシ?ア、アタシはひ、ひまだから、いい一緒にいってもいいわよ!」 そう言いながらも、美琴の顔は真っ赤に染まっていく。 しかし、ここでも当麻は気付かない。 「よし!じゃあどこに行くんだ?」 「「ショッピング!!」」 「ショッピングー?俺金ねーぞ?」 「いいからショッピングにしなさい!」 「ミサカもショッピングという案には賛成です。とミサカは強く指定します!」 「はあー、しゃあねえ、じゃあ行くか……」 (ショッピングに賛成したってことは、この子も同じこと考えているのかしら?) (ショッピングにしたということは、お姉さまも同じ考えですか……) ((この人(このバカ)を着せ替えよう!)) そんなことを知らない上条さんは、ショッピングセンターまで重い足取りで歩いて行く。
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別ver. 上条「で、どうしてそれで俺のところに来ちゃうのか説明してくれるかお嬢様方?」インデックス「今回は私もいるんだよ?」美琴「何でって……だってしょうがないでしょ。こういう非現実的オカルト現象はアンタの専門じゃないの」上条「勝手に人をオカルト専門にするんじゃねえ! つーかそういうのは俺じゃなくて、 ここにいるイギリスからやってきた食いしん坊シスター様に頼むべき事であって上条さんは一切関係ありません!」禁書「とうま、人生最期の日に食べたいものはあるかな。今日は特別に私が作ってあげてもいいかも。もちろん、お金はとうま持ちだけど」上条「すいません勘弁してください。これ以上、上条さん家の食器と調理器具と食費を消費しないでください!?」美琴「ちょっとー? 仲がいいのは結構だけど用件を忘れないでくれるかしら」 上条「用件って何だっけか……?なんか白井がちっこくなったとか訳分かんねーこと言ってたけど、そんな筈ないだろ。 映画とかゲームじゃあるまいし人間がそんな風になるなんて見た事も聞いた事もねーぞ?」黒子「はぁ……こんなるいじんえんになにができるというんですの、おねーさま?」上条「……えっ?」インデックス「…………とうま、もしかして、この手のひらサイズのが?」美琴「そ、私のルームメイトの白井黒子……のちっこいヤツよ」黒子「じゃっじめんとですの!」美琴(かわいい……あ、いや、違うわよ!? 今はこんな黒子を元に戻すのが先決じゃない! しっかりしろ私!)上条「ちょっとごめんな、白井」黒子「ひとのあたまにいきなりさわるなんてなにするんですの!?」美琴「ど、どうなの……? 何か分かりそう?」上条「ゴメン、無理」美琴「は?」上条「いやぁ、右手が反応すればこんな冗談みてーな現実はぶち壊せると思ったんだけど、見ての通り何にも起きねーし。 つまりは異能の力とか神様うんぬんって奴も、今回の件には関係ないって訳だ」美琴「じゃあ、黒子はどうなるのよ? もしかして一生このままだったりしないわよね……!?」上条「……、悪いな美琴。俺にはどうする事も───」 オカルト インデックス「とうまの右手の力が効かないなら、これは科学の人工の奇跡による原因があると考えるのが自然かも」美琴「?? えーと、もしかしてアンタって割とその手の話が通じる子だったりするの?」黒子「おねーさま、いまはそのようなせりふをいっているばあいではありませんの」美琴「あ、うん、そうだったわね! 続けていいわよ、白いの」インデックス「白いのじゃなくてインデックスな・ん・だ・よ!」黒子「つづけてくださいな、いんでっくすさん」 インデックス「私には魔術の事しか分からない。でも私の知らない魔術があったとしても、それがとうまの右手に反応しないなんて有り得ない。 なら答えは一つだけなんだよ。このちっこいのが今こうなってしまったのは、科学の力によるものなんじゃないかな?」 上条「という訳です。分かりましたかエリート女子中学生達。上条さんの右手が役に立たないなら、そういうのはカエル顔の医者の先生にでも診てもらった方がいいんじゃねーの?」美琴「何が、という訳です───よ。そうね、こんなチート的な存在に頼ろうとしたのがそもそも間違いだったわ。黒子、それじゃその先生のとこ行ってみる?」黒子「かえるがおのいしゃ……まえにもおせわになったことがありますの」上条「ま、そう気を落すなよ。魔術だとか訳分からないものが原因じゃなかっただけラッキーだと思うぐらいじゃないと、この先生きていけませんことよ?」インデックス「とうま!魔術はれっきとした学問で、誰にでも扱えるように改良、改変され続けてきた歴史あるものなんだけど、 もしかしてとうまの可哀想な頭じゃまだ理解できてなかったりするのかな」ガブリ!上条「痛っえぇ!この肉食シスター!腹すかせてるからって本気で噛まなくたっていいだろ! だいたい誰にでもって、俺達みたいな開発されてる人間には使えない時点でちっとも親近感なんて持てねえよ!」インデックス「『開発』って超能力を使えるようになる為にするものだよね。ところで、とうまの『れべる』っていくつだっけ?」美琴「無能力者よ。……たく、腹立つぐらい簡単に人の電撃を打ち消すくせに最低ランクとかね。正直、黒子よりもアンタの存在が一番訳分かんないわよ」黒子「どうかんですの」上条「そんな訳分からない人間の部屋をわざわざ尋ねてきたヤツに言われたくない。もういい、もういいよ!上条さんはもう無能力者としてふさわしい生活を送ってやろうじゃねーか! という訳で、今夜の夕食から白飯と味噌汁だけのメニューになるから、いいよなインデックス」インデックス「いい訳がないんだよ!」ガブリ!!上条「んぎゃああああ!!」美琴「うわぁ……見事に腕に歯形がついちゃってるわね。何か同情するわ……一応、役に立ちそうな話を聞けたし今度お礼に食事でも奢ってあげるわよ」黒子「ありがとうございましたの!」上条「ありがとな……インデックス、お前のおかげで上条さんの食費は一食分の余裕が生まれましたよ?」インデックス「え? あ、そんなお礼を言われるような事は、してない……かも」上条「なっちまったもんはしょうがないし、白井が元の大きさに戻れるように祈ってるからさ。元気だせよな、美琴」美琴「な、なんでそこで私の名前が出てくるのよ。……心配してくれるのは、嬉しいけど」黒子「ふふ……おねーさまはすなおじゃありませんのねー」美琴「アンタ、自分が大変な事になってるって自覚あるの? 喋り方もどことなく子供っぽいし……いつもの黒子と違うから調子が狂うのよねー」 上条「でも見た目はこうでも白井であることに変わりはねーよな。空間移動だって出来るんだろ?」黒子「……ぐすん」インデックス「泣かしたね、とうま。前から思っていたけど、とうまは女の子を泣かせるのがシュミだったりするの?」上条「んな訳あるか! ちょっと待ってくれ、俺には今のでどうして白井が泣かなきゃならないのか分からないんだけど……」美琴「アンタ、自分の言った言葉を忘れたの? 結論からいうとね、飛べなくなってるのよ、この子。 正確には能力レベルが落ちて移動できる質量と距離が極端に低くなっちゃってるの」上条「……」美琴「だから、さっきの発言はもろにアウトって訳。……知らなかったからしょうがないけど、取るべき行動は分かってるわよね?」上条「……、あー、その、ごめんな白井。別に悪気とかそんなのは全然なくて口から出ちゃっただけでさ、本当にごめんな」ナデナデ黒子「だいじょうぶですの。きにしてませんから、はやくそのてをどけてくださいな」美琴(アイツに頭を撫でられてる……私もちっちゃくなったら撫でてもらえるの……? そしたら甘えたりもできるの……?)上条「?? どうしたんだよ美琴。ボーっとして体調でも悪いのか?」美琴「ふにゃぁ゛っ!? な、な、なんでもないわよ!! イ、イキナリ人のおでこに触るなんて……って、あれ? アンタ、いま私に触られてるの…!!?」上条「どうしたんだ、何か変だぞ? いや、お前がおかしな中学生なのはいつもの事だけど」黒子「……」インデックス「とうま、やっぱりとうまは女の子のハートを踏みにじるのがシュミな外道学生だったりするの?」上条「人聞きの悪いことをさっきから好き放題言うのはどこのどなたですか!? そんな子には今日の夕食のご飯をおかわりする資格はありませんが、いいですかいいですよねいいんだろこの野郎!!」インデックス「とうまはいつもいつ見てもどの瞬間でもカッコイイかも。だからおかわりしてもいいよね。ね、とうま」上条「とってつけたようにカッコイイとか言われても全然嬉しくもなんともないのですがー!?」美琴「……もういいわ、アンタにこれっぽっちでもそういうイベントを期待した私が馬鹿だったのよ」黒子「おねーさま、げんきをだしてくださいな。こんなおさるさんよりもおねーさまにふさわしいあいてはいくらでもいますもの!」美琴「?? 例えば、誰なのよ」 黒子「わたくしですの!」 ウィンク美琴「はいはい、ありがとねー。私も黒子がいつもこんな風に無害な存在だったらすっごく嬉しいわ。 思わずガッツポースしちゃうぐらい嬉しいかもね」黒子「おねーさまぁ……」 「ぐぅ~~ぐきゅるきゅる~ぐぅ~~」美琴「???」黒子「おねえさま、いくらおなかがすいたからっていまのおとは……」美琴「ち、違うわよっ。今のは私が出した音じゃ───、」上条「おっ? インデックスが腹を鳴らしたって事はそろそろスーパーに買出しに行く時間だな。 今日はお一人様1パック限定の食材が結構あるからお前も手伝えよな、インデックス?」インデックス「そんなことよりも。お腹が減ったんだよ、とうま」上条「だから、そんなお前の空腹を満たす為の食料をこれから買いにいくんだよ! ほら、つべこべ言わずにちゃんと着いてこないと本当におかわりできなくなっちまうぞ!?」美琴「……」美琴「はぁ、ほんとにもう、何だってこんな奴を好きになっちゃったのかしらね」上条「ん? 何か言ったか、美琴?」美琴「別に、アンタ達これから夕食の買い物に行くんでしょ? 私もこれから行かなきゃいけない用事が出来たし、これで帰るから。 ……せいぜい二人で仲良くすれば? お邪魔したわね」 フン上条「……なんで美琴のヤツ、いきなり不機嫌になってんだ」黒子「それがわかるようになるまで、あなたはおさるさんでじゅーぶんですの」インデックス「私が言うのもなんだけど、とうまは接する女の子の扱い方を一から見直した方がいいと思うんだよ」上条「お前は、衣食住を提供してあげてるこのわたくし上条当麻に対する姿勢というものを、一から徹底的に改めてみるべきだと思いますが!?」ガブリ!!上条「そのガブリをやめろって言ってるのに!ほら白井も早く美琴に早くついていかねーと置いていかれちまうぜ?」黒子「ふぇ……? あーーっ!まってください、おねーさまー!!」 パタパタパタ! 上条「あの体じゃ歩いていくのにも一苦労だよな。……さて、んじゃ俺達もスーパーに出陣して貴重なお得食材をゲットといきますかね」インデックス「とうま、今日の夕食のメニューは?」上条「まだ決めてねぇけど、何か食いたいものとかあるのか?」インデックス「……えーと、特にはないかも。とうまが作ってくれるご飯なら私は満足できるしね」上条「褒めてもおかずが一品増えたりはしねーからな。代わりに、一品一品のおかずを1ランクいいものにしてやろう」インデックス「ほんと? えへへ、ありがとね……とーま」 チュッ 上条「……、いつもそういう風に接してくれると、腕に噛み跡ができずに済むんだけどな」インデックス「とうま……噛まれたいの?」上条「馬鹿、ちげーよ。噛まないインデックスの方が良いに決まってんだろ」インデックス「なるほど、つまり、とうまは暗に私にいつもキスしてほしいと、そう思っているんだね?」上条「なっ!? ちょっとそれはいきなり話を飛躍しすg………」 インデックス「─────」 美琴「なによアイツ、あのシスターとは一体どこまでの仲になってるっていうのよ……。 食事だって本当はアイツが喜ぶと思って提案したのにシスターが褒められるってどういう事よー!!」美琴「ったくもう! 腹立つったらないわね。アンタもそう思うでしょ黒子───あれ? 黒子ー?」黒子「…………ぉねーさまぁー……はぁっ…はぁっ…」美琴「あっ! ご、ごめん黒子、ついアンタの体のことを忘れて歩いてきちゃって……」黒子「や、やっと追いつきましたのー」美琴「はい、お疲れ様。……よっと、こっからは私が抱いていってあげるから堪忍しなさいよ?」 ギュッ黒子「あ、ありがとうございます。おねえさま」美琴「どういたしまして。しかしこうして見るとヌイグルミみたいで可愛いわね」 ギュゥゥゥ黒子「にゅぅ……く、くるしいですの」美琴「あっはは、なんか黒子で遊んでたら気が晴れたわ。よっし、まだ寮の門限まで余裕があるしリアルゲコ太の所へ行きましょうか」黒子「もうしわけありません、おねーさま。くろこが……ふがいないばかりに……」美琴「なに言ってんのよ。アンタは私のルームメイトなのよ? 困った時はお互い様って言うでしょ?」黒子「るーむめいと……だからですの?」美琴「なにそこんとこで引っ掛かってんのよ。放っておくなんて出来ない大事な存在だって表現しないと分かんないの?」黒子「そ、それって……」美琴「そんじゃ行くわよ。あの子の言う通り、ちゃんとした病院で診てもらえば案外すぐに直ったりするんじゃないかしらね」黒子「だといいのですけど……」 第七学区 とある病院 -診察室-冥土帰し「──────ふむ、事情は分かったんだね。正直なところ、こんな事例は僕が知る限りでも初めてだよ。 ……何か新しい実験で生まれたという訳でもなさそうだし困ったものだね?」美琴「困ったものだね、じゃなくて本当に困ってるんですってば!!」黒子「ぉ、おねえさま?あの、すこしおちついて……」冥土帰し「そうだね、僕の仕事は患者を救うことだ。だから出来る限り力になりたいと考えている。これは本心だよ。 だけど万能って訳じゃない。分からないものに立ち向かうにはそれなりの時間を要する。言っている意味が分かるかい?」美琴「……それは、頭では理解してますけど」冥土帰し「焦るのはよくないね。まずは今の状況をきちんと把握するのが一番にするべき事だ。 そのうえで彼女にしてやれる事をする。もっとも、それは僕が決めるものじゃないけどね?」黒子「…………」美琴「黒子、心配いらないわよ。アンタがちゃんと元に戻るまで私が面倒をみるんだから。……だから元気出してよね」黒子「……あ、あの」冥土帰し「うん?なにかね」黒子「も、もとにもどれない、なんてことは?」冥土帰し「……そうだね。気休めを求めてるようには見えないからはっきりと言わせてもらうよ?───今の時点では必ず元に戻る保障はない。 何しろ原因が分からない以上は一から原因を調べないといけない。風邪を引いて薬を飲んで治すのとは訳が違うからね」美琴「そんな、なんでこの子がそんな目に……」冥土帰し「……こうなった理由に何か心当たりでもあれば別だけどね?」黒子「……っ!!」 ビクッ美琴「どうしたのよ黒子。何か心当たりがあるの……?」黒子「え、えーと……わたくしはなにものんだりは……あ、いえ、こころあたりなんてこれっぽっちもありませんの……!」 冥土返し「……」美琴「そうよねぇ、分かってたらここに来る前に話してるわよね。残念だけど今は手の打ちようがないって事か……」黒子「そ、そうですわね!」美琴「でも、ずっとこのままの黒子でいる訳にもいかないし。たとえどんなに時間が掛かっても絶対に何とかしないとね。 ゲコ…じゃなかった、先生もあきらめないで黒子の為にお願いします」 ペコリ黒子「おねえさま……」冥土返し「当たり前だね? さっきも説明したように時間はかかるかもしれないけれど、この子を必ず治してみせる。 君は出来るだけ彼女の負担を軽くしてあげるんだね」美琴「もちろんです」冥土返し「それじゃ、今日はここまでにしようか。何か分かったらこちらから連絡をするよ。 もしも異常があればすぐに来なさい、いいかい?」黒子「は、はい」美琴「今のところは様子を見るしかないか……確かに、焦ってもしょうがないものね。 黒子、帰りにどっかでおいしいものでも食べて気でも晴らす?特別に私が奢ってあげるわよ?」黒子「おきもちだけでけっこうですの」美琴「子供みたいな姿になっといて遠慮すんじゃないっての。こうして抱いて行っちゃえば付き合うしかないでしょう?」 ヒョイッ黒子「あ……ちょっと、ずるいですのー!」美琴「先生、この子を宜しくお願いしますね? さってと、どこに行こうかしらねー。 ねぇ黒子、知ってた? 今、駅前の喫茶店で1000円以上食べるとゲコ太グッズがもらえるらしいんだけど……」黒子「おねーさまはもしかしなくても、それがほしいだk……む、ぐ…!?」美琴「……な、なにいってるのよ黒子ー、そんなグッズが欲しい訳ないでしょ」 ギュウウウウウウ…黒子「……むぐ、もが……!!」 ジタバタ冥土返し「もういいかな……? 仲がいいのは結構だけど、僕も仕事中でね? 次の患者さんも診ないといけないんだけど」美琴「あ……そ、そうですよね!! ほら! 黒子行くわよ? ゲコ太……じゃなくてスイーツを食べに……」黒子「やっぱりゲコ……グェッ!?」 グイッ!!美琴「それじゃ先生また来ますね。失礼します」 ギュウウウウウ…ギュ!!冥土返し「……」 冥土返し「やれやれ、元気な女の子達だね。あれぐらいの年の子は今ぐらい活発の方がいいけど。人それぞれかな?」 コンコン……???「失礼します、とミサカは入室の許可を待たずに診察室に入りましたが問題はないでしょうか、とミサカは事後確認を行います」冥土返し「何も問題はないよ。丁度良いタイミングでやってきた……いや、あえて少しずらしたのかな?君のお姉さんと会わないように」 10032号「───何のことでしょうか、とミサカは今の質問に対して回答を曖昧にしょうと試みます」冥土返し「まぁ、それは僕がとやかく言う事じゃないね。いつもの診察をする前にちょっと確認したい件があるんだけど、いいかな?」 10032号「ミサカネットワークで照合できる範囲の事柄であればお役にたてます、とミサカは胸を張りながら答えます」 冥土返し「実は君もよく知る人の友達がちょっと厄介な状況でね。その友達の子を日頃から観察しているユニークな妹達がいたと思う。 ……僕の記憶に間違いがなければね?」 10032号「もしや、とミサカは頭によぎった不安を思わず口にしますが、いえ……そんなはずは……」冥土返し「───白井黒子、という子について知りたいんだけどね?」 10032号「いやですお断りします、とミサカは即答します。 もう帰ってもいいでしょうか…というより、もう帰りますので、とミサカは既にドアノブに手をかけた状態で尋ねます」 カチャリ……カチッ 10032号「……ッ!? あ、開かない、とミサカは状況が飲み込めずにそれでも諦めずにドアノブに必死に回します……!」 ガチャガチャ…!冥土返し「一応、君達は限りなくグレーな立場にいるのは理解しているかな。 プライバシーと外部の関係者に対するセキュリティ対策が十分に考慮されている結果だと思って欲しいね?」 10032号「ミサカに選択する権利はないのでしょうか、とミサカはがっくりと肩を落とし落胆してみせます……」冥土返し「そこまで拒否反応を示すということは、よほど過去に色々されたみたいだね。 患者の心のケアをするのも欠かせない治療の内だ。その件については後日、ちゃんと対応はさせてもらうよ」 10032号「今、ではないのですね、とミサカは突きつけられた現実に思わず後ずさりします……」冥土返し「こういう言い方はどうかと思うけど。君のお姉さんの為でもあるとしたら、それでも協力をしてはくれないかい」 10032号「…………分かりました、とミサカは無駄な抵抗は無意味と判断して大人しくあなたの指示に従います」 冥土返し「心配しなくてもいい。君にしてもらう事はあくまで彼女にネットワークを通じて 近いうちに病院を訪ねるように と伝える、言わば連絡係のような役目だね?あとは僕から彼女に直接説明して手伝ってもらうつもりだよ」 10032号「 『11028号』……数多くいる妹達の中でも、かの白黒の悪魔に立ち向かえるどころか逆に好意すら抱いてしまった妹達です。 ……もはやミサカを超えたミサカといっても過言ではありません、とミサカは複雑な心境を吐露します」打ち止め「なんかその言い方だとミサカよりも凄そうでなんだかミサカが上位である意味がないかも、 ってミサカはミサカは面白そうな話をあなたがしているのをキャッチしたので、唐突に話題に混じってみたり」 10032号「そうですね、確かにあの幼女個体が上位である必要は…………、最終…信号…?」 ビクッ打ち止め「必要はー? ってミサカはミサカはあなたのその言葉の続きをニコニコしながら待ちわびてるんだけど」 ニッコリ 10032号「ここはロックされていたはずではないのですか、とミサカは恨めしそうにあなたをウルウルとした瞳で見つめます……」冥土返し「そのはずなんだけどおかしいね。この子の力は君達とそう大きくは変わらないから、同じように強制解除したりはできない作りなんだけど」一方通行「チッ、ガキが能力使ってでもとにかくここを開けろっつーから、 何か大変な事態にでもなってンのかと思ったら……いつもの診察 メンテナンス してるだけじゃねェか。 おい、つーかどうすンだよコレ。南京錠じゃねェンだからまた鍵をかけなおせば元通りって訳にはいかねェンだぞ」打ち止め「さすがにミサカもあなたが本当に物理的に壊してまで入るなんて思わなかったんだもん、 ってミサカはミサカは自分に非がないのをアピールしてみる!!」 キリッ冥土返し「……まぁ、間違いは誰にでもあるね」 打ち止め「そうだよ、だからあなたがそこまで失敗を気にする必要は…………きゃっ!?」一方通行「なァ、誰が、何の失敗を気にするのかもう一度最初から言ってみてくンねェかなァ?」 カチリ打ち止め「べ、別に電極のスイッチを入れたからって能力が使えないようにミサカが命令を出せば───、一方通行「……」 グリグリグリグリグリグリ…打ち止め「い、痛いよーっ!?ごめんなさい!!ミサカがふざけてお願いしたのが悪かったの!ってミサカはミサカはあなたの容赦ないぐりぐり攻撃に平謝りーッ!?」冥土返し「あのねぇ、仮にもここは病院の一室なんだよ。君達は僕の大事な患者なんだからその患者同士で喧嘩をされちゃ困るんだけどね」一方通行「そォ言われるだろォと思って、手加減はしてやったけどな。……あンまり認めたくはねェが俺が勘違いしてやったってのもあるし、 壊しちまったモンに関してはちゃンと責任は取る。……で、幾らぐらいすンだよ、ここのセキュリティってのは」 10032号「一方通行が自ら過ちを認めるなんて……何か起きなければいいのですが、 とミサカは変な物でも拾って食べたのではないかと心配してみます」打ち止め「それは違うかも、あなたが知ってるようにこの人は結構そういうまともな所があったりするんだよ、 ってミサカはミサカは思わず笑いがこらえ……ぷ、く、あはははー!」 クスクスプー一方通行「テメェら、この病院から出た後にまともな顔をしてられっといいなァ……! それとも、それぞれ今から行きたい場所があンなら望みどおりに俺がそこまでぶっ飛ばして差し上げてもいいンですけどォ!?」冥土返し「君、人の言葉をちゃんと聞いてなかったかな。ここは病院だよ? そういう発言は関心しないね? それと、弁償しようとする気持ちは嬉しいけれど君にお金を払わせるつもりは全くないからね。 なに、その程度の必要経費ぐらい問題ないさ」一方通行「本当か? 遠慮して言ってンじゃねェよな。もしそうだとしたら気にくわねェし、今ここで故意にぶっ壊して払ってやってもいいンだがな」冥土返し「お願いだから無駄に設備を壊すのはやめてほしいね。請求するべきものはするけど、今回はそうじゃないというだけの事だね?」一方通行「……なら別にいいンだけどよ。だけど何もしねェってのはスッキリしねェからな。借りにでもしといてくれ。 返すときにはコイツにも手伝わせる、文句は言わせねェぞ打ち止め」打ち止め「むー、ほんのちょっと調子に乗りすぎちゃったししょうがないね、ってミサカはミサカはあなたの意見を尊重してあげる」 一方通行「つー訳だ、部外者の俺達は仕事の邪魔になンねェようにさっさと帰るからな」打ち止め「あれ、もう帰っちゃうの……ミサカはもう少しここにいてあげてもいいんだけど、 ってミサカはミサカは本当はまだお喋りしていたいけど、気まずいから帰ろうとするあなたのシャイな心を汲んであげるー」一方通行「……ついてこねェなら置いてく。夜までにはちゃンと帰ってこいよ」 スタスタ ギィ……バタン! 10032号「あれは本当に置いていくつもりですね、幼女個体のあまりの反省のなさに同じ妹達として恥ずかしい限りです、とミサカは冷めた視線を送ります」打ち止め「もう!ミサカを置いてけぼりにするなんて許さないーーっ! ってミサカはミサカは思わずあの人へのサポートを勝手にぷちっと切断してみたり」 ガチャッ!!一方通行「てgq2@勝twな事して……enあhgnしろ……!!」 パタリ 打ち止め「……」 10032号「……思っていたよりも近くに、というかドアのすぐ前で幼女個体が来るのを待っていたようですね、 とミサカは足元に転がっている白い物体に呆れた視線を注いでみます」冥土返し「あまり面白半分に彼への補助を止めるのは脳に負担が掛かるから止めた方がいいと思うよ? 取り返しのつかない状態になったら困るのは君なんじゃないかな」打ち止め「そ、そうだね……ごめんね、すぐに演算を元に戻してあげるから、ってミサカはミサカは───わっ」一方通行「…………打ち止めァ」打ち止め「どうしたの、立ち上がるなりいきなりミサカの頭を鷲づかみにするなんて、 ってミサカはミサカは意味が分からないのでとりあえず押さえつけられて動かない首を気持ちだけでも傾げてみる」一方通行「オマエ、そこの窓から家までぶっ飛ばされるか自分で飛ぶか好きな方を選べ」 10032号「今のあなたにそんな行為がとれる訳ないのに威勢だけは立派なのですね、 とミサカは目の前でさっきからイチャイチャしてるロリコン幼女カップルを尻目に本日の診察を受けたいのですが、とミサカは暗にいいからお前等は帰れと主張してみます」冥土返し「仕事を再開したい、という点では僕も彼女と同意見かな?」打ち止め「あれ、もしかしてミサカ達っておじゃま虫? ってミサカはミサカはまだ頭から手を離してくれないあなたに確認を取ってみる」一方通行「もしかしなくても、そうに決まってンだろォが! めンどくせェからこのままオマエは引きずってでも連れてく。異論は認めねェ。つーか、これ以上迷惑かけンな」 打ち止め「ミサカ達は帰っちゃうけど、ちゃんとお姉様の助けになってあげてね、ってミサカはミサカは念のために釘をブスリと刺しておいてみたり」 10032号「せっかく忘れかけていたのに思い出させんな、とミサカは最終信号に言われなくても役目をきちんと果たす出来る女であるとさりげなくアピールしておきます」一方通行「オリジナル……? おィ、またくだらねェ事に巻き込むンじゃねェよな? 頼むからそォいうのは俺抜きでやれ」打ち止め「うーん、そうなるとあなたの出番はここで終わっちゃうけどいいの? ミサカにピンチを颯爽と現れて助けるヒーローになれなくてもいいの? ってミサカはミサカは本当は秘密なんだけど特別に教えてあげ……あ、あれ!? 無言でミサカを引っ張っていかないで!」一方通行「付き合ってらンねェ。オリジナルに関わるなンてこっちから願い下げだっつーの。やるンならお前等で勝手にやってろ、ンじゃな」 ズルズル…… ギィ……バタン!! 10032号「やっといなくなったか幼女個体、とミサカは過ぎ去った脅威の足音を確認しつつホッと安堵します」冥土返し「まったく、こちらの子達も相変わらず仲が良いようだね」 10032号「あれは仲が良いのではなくデキてるだけです、とミサカは二人がいないこの際に好き勝手にぶちまけることにします」冥土返し「その表現は年齢的に色々と問題があるけれど、人の生き方にケチをつけるつもりはないし僕からはコメントし辛いね」 10032「ロリコンが公に許されるのはこの学園都市ぐらいです、とミサカは世界各国の幼児性愛に対する扱いを各ミサカ達に確認しながら、 ダメだこの街……早く何とかしないと……と危険な発言をしてみます」冥土返し「……ま、まぁそれはともかくだよ? お姉さんの友達の件はお願いしてもいいのかな。どうしてもと言うなら無理に協力してもらわなくても構わないんだよ」 10032「いいえ、問題ありません、こうなったら自棄です、日頃から一部のミサカを除いて酷い目に合わされてきた恨みを晴らしてやります、とミサカは違った意味でやる気を出します!」冥土返し(何か変な方向にやる気を出しているようだけど……嫌々に手伝わせるよりはいいだろうね……) 10032「それでミサカはまず何をすればいいでしょうか、むしろナニをさせられるのでしょうか、と興奮気味に問い詰めます」 ハァハァ冥土返し「さっきも言ったけど君よりもこの件にはふさわしい子がいるから、とりあえずいつものように体の調子とか困っている事でも話してくれれば構わないね?」 10032号「なんだつまらない、とミサカはせっかく出たやる気が空振りしたことにガクリと肩を落とします」冥土返し「特に問題がないのであれば大いに結構だね。……ふむ、もうこんな時間になってたんだね。 どうかな、もう今日は予定がないんだろう?ここで一息ついていくといい。お茶と菓子ぐらいは用意するよ」 10032「!! そ、その提案はとても魅力的ですが、とミサカは少し残念に思いながらまたの機会に、と説明します……!」冥土返し「……そうかい? あぁ、そうだ。君は知っているかな。無理なダイエットをすると逆に成長を阻害してしまって発達するものもしなくなる……らしいね?」 10032号「えっ? なにそれこわい、とミサカはこのカエル野郎そういう大事な話は外に出る前にちゃんと教えとけよ、とショックを隠しきれずに素で落ち込みます……」冥土返し「体型に気を遣うのも大切だけど、それで体を壊したら元も子もないんだよ」 10032号「む……わ、分かりました! とミサカは今までの認識を改めてちゃんとご飯を食べるように誓います、 とミサカはそういう事なので先程のお茶とお菓子を頂いてもいいでしょうか、と確認を取ります」冥土返し「もちろんだね。それじゃ僕はお茶を淹れてくるから、ちょっと待っていなさい」 10032号「いえ、それぐらいはミサカがやります、とミサカは慣れた手つきで準備に取りかかります」 カチャカチャ冥土返し「そうかい? それじゃ悪いけどお願いするよ」 10032号「任せてください、とミサカは日頃からお世話になっているのでこれぐらいはさせてください、 とミサカはどこかの幼女個体に見習わせたいほど素晴らしいミサカであると自負します」 カチャ…コトコト…冥土返し「…………」 10032号「~~♪」 冥土返し(───彼女、心当たりがないかと聞いた時の反応は明らかに原因を知っているようだったけど。 正直に言えない事情があるとすれば、真っ向から探ってもたいして手がかりは得られないだろうね。 やはりここは妹達に一仕事をしてもらうのが最善かもしれないね。彼女達のリハビリにも役立つといいのだけど) 10032号「お待たせしました、とミサカは二人分の緑茶と和菓子を用意して意気揚々とテーブルに戻りました」 第七学区 とある病院 -病院 外-打ち止め「それでミサカはいつまでこうやってあなたにずるずると引きずられてればいいのかな、 ってミサカはミサカはいい加減にワンピースの生地が地面にこすれて破れちゃうかもしれないからやめてほしいな、ってミサカはミサカはお願いしてみる……」一方通行「…………」 ズルズル…打ち止め「ねぇ聞いてるの? もしかして、あの時みたいに見えない知らない聞こえないふりなの!? ってミサカはミサカは恐怖の再来に身を震わせてみたり!」 ジタバタ……!一方通行「あァ? やかましィンだよ、ちょっと考え事してて忘れてただけだろォが……もう離すから一人でちゃンと歩け」 スッ打ち止め「こんなことならもっと早くジタバタしてればよかった、ってミサカはミサカはあなたの無神経さにちょっと怒りながらも一体何を考えてたの? ってミサカはミサカは聞いてみる」一方通行「別に、大したことじゃねェよ。ただ、オマエ達が関係するような頼み事なンてどうせまともな内容じゃねェだろうし、万が一の時は俺が引っ張りだされる可能性もゼロって訳じゃねェだろォが」打ち止め「つまりミサカ達が困った時にすぐに助けにこれるように考えてくれてたのね、ってミサカはミサカは本当に素直じゃないねってあなたの頭をなでなでしてみる」 ナデナデ一方通行「うぜェから、ヤメロ」 パシッ…!打ち止め「でも大丈夫だよ、ミサカは今回は危ない目にあったりしないから、ってミサカはミサカは心配してるあなたを安心させてあげるんだから」一方通行「なンで、そンな事がオマエに分かるンだよ。オマエはいつから予知能力者になったンですかァ?」 ベチッ!打ち止め「うぅ…違うけど、分かるものは分かるんだよ、ってミサカはミサカはそれでもミサカ達のことを心配してくれてすごく嬉しいからもう一度なでなで……」 ナデナデ一方通行「だから、うぜェって」 パシッ…!!打ち止め「でも……もしミサカが本当に困ってる時はあなただってピンチなのかもしれないよ、ってミサカはミサカは首元のチョーカーを見ながら申し訳なさそうにしてみる……」一方通行「──────たとえそうだとしてもなァ、ガキ一人守るぐらいは何とかなるンだよクソッタレ。クソガキはクソガキらしく、いつもみてェにヘラヘラ楽しそォに笑ってりゃいいンだ」 一方通行「……」 グシャグシャ打ち止め「ミ、ミサカの髪の毛を無造作にぐしゃぐしゃにしないでー!? ってミサカはミサカはひどいよ責任取って、って慌てて髪を直そうとしてみる……」一方通行「散々、人の頭を撫で回したのはどこのどいつですかァ。ほンのお返しだ、アリガタク受け取っとけ」 グシャグシャ!打ち止め「直したそばからまたぐしゃぐしゃだー!? ってミサカはミサカはお返しにミサカもあなたをなでなでしたいので背中に乗ってみたり!」 ナデナデナデナデ!一方通行「クソッ、ふざけンな、ヤメ…………」 グシャグシャグシャグシャ!!???「あーもう、分かったわよ。アンタの言う通り私はグッズが欲しいだけよ。認めたからそれでいいじゃない!まだ何か文句あるの、黒子?」 ビリビリ一方通行「!?」 つづく
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2007年32号集計結果(有効票数170)備考 2007年32号集計結果(有効票数170) (平均) (合計)(標準偏差)[1← ★ ...→5]_有効票数 うさぎ……… 3.78 0612 1.063 [006_014_035_062_045]_162 ベルモンド ...… 3.45 0576 0.916 [005_020_051_077_014]_167 エムゼロ...… 3.39 0549 1.207 [016_016_053_043_034]_162 ワンピ .......… 3.38 0538 1.152 [011_021_055_040_032]_159 P2!.....……… 3.18 0480 1.172 [016_024_048_043_020]_151 銀魂 ……… 3.09 0498 1.117 [017_026_059_043_016]_161 ナルト....…… 2.96 0476 1.174 [018_042_048_035_018]_161 ジャガー....… 2.88 0424 1.101 [016_040_046_035_010]_147 カトブレ......… 2.68 0415 0.953 [017_049_059_027_003]_155 ネウロ...…… 2.65 0427 0.853 [012_057_070_019_003]_161 ムヒョ.....…… 2.65 0342 1.021 [019_036_049_021_004]_129 とらぶる ...… 2.56 0397 1.146 [034_039_052_021_009]_155 勇者学 …… 2.48 0345 1.144 [034_036_044_018_007]_139 アイシル....… 2.42 0377 0.936 [027_055_060_010_004]_156 Dグレ....…… 2.32 0316 1.101 [033_053_030_013_007]_136 郷田豪 …… 2.18 0290 1.051 [043_040_036_011_003]_133 こち亀 .......… 2.00 0274 1.022 [056_038_032_009_002]_137 読切 ……… 1.98 0238 1.130 [055_031_018_013_003]_120 リボーン . … 1.95 0271 0.958 [055_048_024_012_000]_139 ラルグラ....… 1.94 0307 1.169 [073_050_016_009_010]_158 ブリーチ . … 1.81 0287 0.882 [070_059_022_007_001]_159 総括 ……… 3.14 0289 0.872 [003_016_042_027_004]_92 備考 ラルグラド最終回 読切 除霊少女ヤミコさん 桜井建志
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―第三十一話~第三十七話― カ行 学園都市宇宙センター タ行 第二三学区 樹形図の設計者(ツリーダイアグラム) 樹形図の設計者情報送受信センター(ツリーダイアグラムじょうほうそうじゅしんせんたー) ハ行 春上衿衣 マ行 美琴の母 ミサカ10031号 ミサカ10032号(御坂妹) ラ行 残骸(レムナント)
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/例えばこんな三人の関係 海に行こう☆☆ 「いや~、二人はもう周囲の事なんてお構い無しだね」 「良いではないですか、その方が面白いですし、とミサカ10032号はいいぞもっとやれ、と思いつつ二人の発展に期待します」 ニヤ付いた顔で到着した二人を突き始めた番外個体と御坂妹。 当然予想していた反応ではあるが、それでも恥ずかしいらしく、当麻は頬を掻きながら視線を逸らし、美琴は頬を染めて、もじもじしながら、 「う、うぅ…。あんた達、お願いだからあんまりからかわないで…」 と懇願する。 すると、10039号と、19090号がニヤ付いた顔を元に戻すと、 「…仕方が無いですね、とミサカ10039号は先の失敗からこれ以上の羞恥プレイを勘弁する事にします」 「そうですね。では、お二人も早速いかがですか?とミサカ19090号はお二人を迎え入れる準備をしつつ促します」 「その前に、あちらのプールで砂を落としてきてはどうでしょう?とミサカ10039号はお二人に提案します」 10039号がビニールプールを指差すと、彼女達の言葉責めが意外に早く終わった事にほっと胸を撫で下ろした当麻と美琴は、 「まさか、砂落とし用の為だけにあれを準備したのか…?」 「…あんた達、本当用意周到というか…、普通こんな事しないわよ?」 ビニールプールを準備した妹達に言葉を返す二人に、19090号がエッヘンと胸を張る。 「ミサカ達に隙などありません、お二人が楽しく過ごせるように準備するのがミサカ達の務めなのです、とミサカ19090号は誇らしげに回答します」 「…とても酸欠でぶっ倒れた奴の台詞とは思えませんね、とミサカ10039号は19090号の汚点について鋭い指摘をします」 「本当、そのお陰でこっちは苦労したってのに、呑気なもんだね」 ジト目で見る10039号と番外個体の視線にダラダラと脂汗を掻いた19090号は、 「ま、まぁ外野は放っておいて、砂を落としてきたらどうですか?とミサカ19090号はやっべーと思いながら話題を少し逸らします」 二人の視線から逃げるように美琴の手を取ろうとする19090号だが、 「折角だけど、私も早く混ざりたいから今はいいわ。それよりあんた達、先に食べちゃうなんてちょっと酷いんじゃない?」 やんわりと断った美琴が、先に食べてしまっていた10032号と番外個体に言葉を向けると、 「試しに焼いてみたら美味しかったのでつい、とミサカ10032号は先に食べていた理由を説明します」 「ミサカは帰ってきたら10032号が食べてから。それに、面白い寸劇見てたらついつい食が進んじゃった」 「寸劇って…。はぁ…もういいわ…」 「まあまあ、それより俺達も食べようぜ」 眉一つ動かさずに淡々と答える御坂妹と、全く悪びれる様子の無い番外個体に溜め息を付いた美琴。 当麻がその肩をぽんぽんと叩くと、美琴は諦めたように『そうね』と呟く。 そして、10039号が気を利かせて持ってきたパーカーを羽織ると、紙皿と箸を19090号から受け取り、ようやく食事の時間となる。 ―――― ―― 「う、美味い…、こんな美味しい肉を食べれるなんて上条さんは幸せ者です…」 炭火でじっくり焼かれた肉を食べた当麻がそんな事を呟くと、美琴がくすっと笑う。 「やっぱり、こうやって外で食べるのって何か気分的にいいわよね」 そう言うと、ぱくっと肉を口に運び、『ん、おいし』と顔を綻ばせる。 「でも、バーべキューってさ、何でこう美味しく感じるんだろうな?」 「そうね~、炭の近赤外線効果云々~って聞いた事はあるけど…」 一旦言葉を切る美琴。 赤外線の効果で表面が一気に硬化する事で旨みを逃さず、燻煙効果によって程よい香りが付くからという話を聞いた事があるが、そんな事はどうでも良いと考えた彼女は、 「一番の理由は、こうやって皆で楽しく食べるからでしょ?」 そして、一人一人の笑顔が最高のスパイスになっているという事をニコニコしながら語る美琴。 すると、その言葉に素早く反応した妹達が暴走を始める。 「嬉しい事言ってくれるね~。お礼にミサカのピーマンを進呈するよ」 「ちょっと、あんた何人の皿に入れようとしてんのよ?つか、あんたってピーマン苦手なの?」 「いや?普通に食べれるよ。食べれなかったら箸付けるわけないじゃん」 「では、ミサカのお肉を差し上げます、とミサカ10032号は感謝の気持ちと共にお肉を泣く泣く提供します」 「いや、別に無理しなくて良いから。まだまだあるんだし、あんたが食べれば良いでしょ?」 その言葉に一瞬ほっとしたような表情をした10032号が、差し出そうとした肉を自分で食べ、ほぅ、と恍惚の表情を浮かべると、今度は19090号が、 「では、お飲み物でもいかがですか?とミサカ19090号はお二人に問いかけます」 「ん~、じゃあ貰おうかな?」 「あ、俺も頼むわ」 「分かりました。では暫らくお待ちください、とミサカ19090号はお役に立てるときが来たと目を輝かせながら準備を始めます」 紙皿と箸を置いた彼女は紙コップにジュースを注いでいく。すると、 「あ、ミサカのもよろしくー」 「ではミサカのもお願いします、とミサカ10032号は19090号にお願いをしました」 「ついでにミサカのも頼みます、とミサカ10039号は玉葱の甘さに驚愕しつつもお願いをします」 「…ミサカは妹達のパシリではありませんが、まあいいでしょう、とミサカ19090号はせっせこと紙コップにジュースを注ぎます」 結局全員のジュースを準備した彼女が再び戻ると、それぞれがお礼を言ってそれを受け取る。 「ありがと、あんたってこういう時、気が利くっていうか、健気に働くわよね~。感心しちゃうわ」 「ありがとうございます、とミサカ19090号は褒められてむず痒くなります」 「そのミサカはそういう事に特化してますからね、とミサカ10039号は羨ましく思いつつ説明します。あ、この肉いただきです」 「!!…10039号、それはミサカが大事に育てていたお肉です、とミサカ10032号は大事なお肉を強奪した10039号を糾弾します」 声を上げた御坂妹に見せ付けるように、ぱくっと肉を食べた10039号は、 「他人の育てた肉を強奪して食べる…うめぇです、とミサカ10039号は至高の瞬間にゾクゾクします」 軽く震えながらそう呟く。 すると、御坂妹がワナワナと震え出すのだが、不穏な空気を感じた美琴が御坂妹に接近する。 「ほら、そんなに怒らないの。私のあげるから」 「…あーん、とミサカ10032号は要求をします」 「は?なんでそんな事する必要があんのよ?」 「フフフ…たまには姉に甘える妹を演じてみたい時があるのです、とミサカはわりと素直に返答します。ささ、どーんと来て下さい」 大きく口を開けて待つ御坂妹。 全く予想をしていなかった展開なだけに、戸惑いを隠せない美琴。というか半分引き気味なのだが… 「ったく、本当どうしようもない妹ねー。ほら、あーん。…はもうしてるか」 こうなってしまった妹は本当にやるまでテコでも動かない事を嫌という程知っている美琴は、渋々といった様子で御坂妹に食べさせた。 満足そうにモゴモゴ口を動かす御坂妹を見ながら、何で私がこんな事…とブツブツ呟いていると… 「10032号ばかりずるいです。ミサカにもあーんをお願いします、とミサカ19090号はあーんをしてもらった10032号を羨望の眼差しで見つめつつ要求します」 「面白そうですね、ミサカにもお願いします、とミサカ10039号も調子に乗って混ざります」 「もう一回お願いします、とミサカ10032号はあーんを再度要求します」 「ちょっ、あんた達!?どうしたのよ急に!?」 わらわらと群がってきた三人の妹達に圧倒された美琴は大きく仰け反る。 三人は横に並び、まるで親鳥に餌を要求する雛のように口を開けて、彼女のあーんを待つ。 そんな異様な光景を目にした当麻と番外個体はというと、 「お、おい。あいつ等一体どうしたんだ?」 「ん~、お姉様に甘えたい時もあるって事じゃない?さすがにミサカはやらないけど」 「それにしてもあーんって…。あいつ等のキャラじゃない気もするが…」 「それよりこのまま放っておいていいの?同性だからって安心してると痛い目遭うよ。ほら、あの白井黒子って子みたいに」 怪しい笑みを浮かべながらそう語る番外個体は既に遊びモードに入っている。 一方、白井黒子という単語を聞いた当麻は、普段美琴にベタベタと引っ付こうとする彼女の素行を思い出し、その表情から徐々に余裕が消えていく。 先程の美琴とのやり取りの影響もあり、『もしかしたら』という可能性に焦った当麻は紙皿と箸を置き、美琴に群がる三人に近づくと、 「お前等ストップ。美琴が困ってるだろ?」 当麻が美琴の前に立ち、妹達に注意をする。 すると、口を閉じた妹達は含みのある顔を浮かべると、総攻撃へと打って出る。 「何故邪魔をするのですか?とミサカ10032号は憤慨します」 「そうです。お義兄様が姉妹の間に割って入る隙など無いのです。早くそこを退きなさい、とミサカ10039号は偉そうに命令します」 「空気の読めないお義兄様はミサカとお姉様がいちゃいちゃしてる所を黙って見てれば良いのです、とミサカ19090号はお義兄様の空気の読めなさに嘆息します」 「さあ、お義兄様はあっちいって下さい、とミサカ10032号はしっしと追い払います」 本気で怒っているかのような、また、その容赦ない物言いに戸惑った当麻だが、後ろで何かを言おうとした美琴を手で制す。 「おや、何か言いたげですね?まあ主張くらいは聞きましょう、とミサカ10039号は寛大な心を見せてみます」 「お前等が何を考えてるかは分かんねぇけど、美琴が困るような事をするってんなら許さないぞ?」 「お姉様が困る?そうなのですかお姉様?ミサカがお姉様に甘えるのは迷惑ですか?とミサカ10032号はお姉様に問いかけます」 10032号が当麻の後ろにいる美琴の方を見ながらそう問いかけると、美琴がふるふると首を横に振る。 「そんな事は無いけど…。ねぇ、あんた達一体どうしちゃったの…?」 今まで当麻と妹達が衝突する事がなかっただけに、どうして良いか分からずオロオロする美琴。 そんな彼女に、19090号が、 「…どうしたも何も、見ての通りお姉様を取り合っているだけですが?とミサカ19090号は回答します」 美琴に言葉を返すと、再び当麻の方を見ながら、 「お義兄様がお姉様の事を愛しているのは知っていますが、ミサカだってそれは同じです。なのでそこを退きなさい、とミサカ19090号はイライラしながらお義兄様を睨みつけます」 「それとも、退かない、退けない理由でもあるのですか?とミサカ10032号はお義兄様に問いかけます」 「まあ、ミサカ達を退かせるだけの理由なんて無いと思いますが、とミサカ10039号はふふんと鼻で笑いつつお義兄様を挑発します」 あくまでも淡々と、それでいて真剣さを滲ませる言葉に戸惑う美琴は、助けを求めるかのように番外個体の方に視線を向けるのだが… 「…へ?」 思わず気の抜けた声が美琴から発せられる。 何故なら番外個体が呑気に紙コップにジュースを継ぎ足していたからだ。…しかも全員分。 まるで、この後、何も無かったかのように食事が再開される事を知っているかのように。 (…どういう事?) 美琴は混乱した頭で思考を巡らそうとするが、次の瞬間、その思考は全て吹き飛ぶことになる。 「悪ぃ、お前等が本気で美琴の事好きだったとしても、美琴は渡せない」 「ほぅ、何故ですか?とミサカ10032号は更に問いかけます」 「お前等だって知ってるだろ?美琴は俺にとって一番大切な人だし、愛しい人だ。だから、お前等が俺から美琴を取り上げようってんなら、お前等でも容赦しない」 「…言ってくれますね、では、ミサカ達の前で『それ』が証明が出来るのなら認めて差し上げましょう、とミサカ10039号は提案します。 出来ない場合は所詮その程度。ミサカがお姉様を幸せにします、とミサカ10039号はお義兄様を焚きつけます」 「…いいぜ、よく見てろよ?」 10039号の挑発に乗ってしまった当麻は、後ろに居る美琴をグイッと横に引っ張って来ると、そのまま抱きしめ、 「へ?…ちょっ!とう――ンッッ!!?」 驚いた美琴を無視してその唇に口付けをする。 しかも、先程のような触れるだけのようなものではなく、妹達に見せ付けるように時間をかける。 美琴は当麻の胸を叩き抵抗をするが、その抵抗は徐々に弱くなり、瞳はトロンと蕩けていく。 そして、二人の唇が離れると… 「これで分かったろ?美琴は俺のも――痛ってぇ!!」 ごつん、と言葉の途中で耳まで真っ赤になった美琴の鉄拳が炸裂する。 「バカぁ!!何乗せられてんのよ!?」 「いやいや!?こいつ等が証拠を見せろって言うから!」 「だからってあ、あんな事しなくてもいいでしょ!?」 「まあまあ、そんなに恥ずかしがらなくてもいいではないですか。本当は嬉しいのでしょう?とミサカ10032号はニヤニヤしつつ問いかけます」 「そ、そりゃぁ…じゃなくてあんた達も!なんて事すんのよ!?」 「はて?ミサカ達は何もしていませんが?とミサカ10039号は白々しい事を言ってみます」 「ほふ…あんな濃厚なキスシーンを見せられる事になるとは…とミサカ19090号は思考がショート寸前である事を赤裸々に告白します」 妹達からは先程の緊迫感が霧散し、きゃっきゃと美琴を弄り始めた。 一方、そんな妹達を見た当麻は目を点にしながら… 「…どういう事だ?」 と、全く事態が飲み込めていない様子だ。 そんな彼に、何か重大なミッションを成功させたような顔をした妹達が、 「どういう事も何も、そういう事です、とミサカ10032号は悪戯の成功に歓喜します」 「まあミサカの迫真の演技を持ってすれば当然ですね、とミサカ19090号は自身の演技力について自画自賛します」 「早い話がお義兄様の嫉妬を引き出し、目の前で強引にいちゃつかせたという次第です、とミサカ10039号はまんまと引っかかったお義兄様をせせら笑います」 彼女達の言葉に脱力し、その場にがくっと膝をついた当麻は、 「…お前等なぁ…つーことはあれか?美琴を愛してるってのも冗談だったのか?」 彼女達が本気ではなかった事に安堵する反面、その言葉全てが嘘というのもなんだか悲しく感じられた当麻は、そう妹達に問いかける。 すると、彼女達はニヤ付いた表情を戻して、 「…冗談だと思いますか?とミサカ10032号は逆に問い返します」 「ミサカ達は割りと本気だったりしますが、お義兄様からお姉様を取るつもりは無いですよ?とミサカ10039号は分かりきった事を念押しします」 「というかお義兄様があんな安い挑発に乗るとは思いませんでした、とミサカ10032号は妹達に嫉妬したお義兄様に嘆息します」 「それより、こうも統率が取れているのは、やはりクローンだからでしょうか?とミサカ19090号はもうミサカネットワークいらないんじゃね?とぶっちゃけてみます」 そこまで言った所で、番外個体が口を挟む。 「はいはい、いつものコントはその辺にして、食事に戻ったら?大体、妹達の気持ちなんて始めから知ってるでしょ?」 「…いや、お前等見てると冗談に見えないんだよなぁ…」 「それだけ慕ってるって事ですよ、とミサカ10032号は食事に戻りつつ返答しました」 「ところでお姉様、先程はあまり食べていないようでしたが、もう少し食べた方が良いのでは?とミサカ19090号は食の細いお姉様を心配します」 「…アンタ、人の事散々おちょくっといてよくそんな台詞が吐けるわね…」 「まあまあ、そう仰らずに気を取り直して食事にしましょう、とミサカ10039号はお姉様に新しい紙皿と箸を手渡します」 先のやり取りで地面に落ちてしまった紙皿と箸を片付け、新しいものを美琴に手渡す。 美琴は溜め息と共にそれを受け取り、箸を再び動かし始めるのだが、すっかり食べるペースが落ちてしまった美琴の様子に気が付いた番外個体が彼女に話しかける。 「お姉様?箸が進んでないけどどうしたの?」 「…そんな事ないわよ?」 「隠さなくてもいいじゃん。さっきの事が原因なんでしょ?」 番外個体の言葉に一旦箸を止めた美琴は、ふぅーっと息を付くと、 「…まあね。さすがにあんた達の前であんな事しちゃったら、恥ずかしくて食欲なんか失せるわよ」 「あらら、そりゃ悪いことしちゃったね。ごめん、お姉様」 「別に謝んなくても良いわよ。その…嬉しかったのは事実だから」 愛しいと言ってくれた彼の言葉が。 自分を独占しようというその行動が。 「…驚いたけど、あんな強引な当麻もいい…かも…」 先程の事を思い出した美琴は頬を染め、ぽーっと当麻を見つめながらそう呟く。 すると、 「……何言ってんの?つか口半開きなんだけど…?」 「!」 その言葉にハッとした美琴は慌てて口を閉じると、俯いてぶるぶると震え出す。 「………なさい……」 何かを言った美琴に番外個体が『ん?』っと聞き返すと、彼女がグバァ!っと顔を上げ、カッ!っと目を見開くと、 「今聞いた事!見た事は全部忘れなさいって言ってんのよ!出来ないの!?出来ないなら消してやる!!その頭から消し去ってやるぅ――!!」 凄まじい勢いで番外個体に詰め寄り、バチバチと空気を鳴らす。 あまりの剣幕に、そして、突然の出来事に大きく仰け反り返った番外個体は、 「ちょ!?お姉様!?突然キレられても困るんだけど!?」 「うわ――ん!!」 今まで蓄積されてきた恥ずかしさがついに限界点を突破した美琴は、そう叫んだ後、炭火で次々焼かれる肉や野菜、魚介等を手当たり次第食べ始めた。 「おお!?お姉様が覚醒しました!とミサカ10032号は電光石火の勢いで網の上を消滅させるお姉様に驚愕します!」 「み、ミサカの肉が!?とミサカ19090号は目の前で次々狩られていく食べ物を見送る事しか出来ません!!」 「これはミサカへの挑戦状ですね!?とミサカ10039号は焼くスピードを上げつつ自分の食べるものを死守し…!?」 自分の肉を死守する為に箸を出した10039号だが、それを上回る速度で奪い去る美琴。 「うっは!面白い事になってきた!ミサカも参戦するよ!ほら、お義兄様も食べないとお姉様に食べ尽くされちゃうよ!」 「お、おう…」 箸と箸が交差する時、奪い合いが始まる――! と言わんばかりの戦いが、網の上で繰り広げられ始める。 「…酷いです、とミサカ19090号はまたしてもお肉を奪われてしょんぼりします」 「ぼーっとしてる…もぐ…あんたが悪いのよ…もぐもぐ…」 19090号をバッサリと冷たく切り捨てた美琴は次なる標的に箸を伸ばす。 「そうはさせません!とミサカ10039号は玉葱を堅守します!!」 寸前で美琴の箸が止まり、その隙に奪い取る10039号だが、その玉葱を食べた瞬間『シャリッ』という音がし、彼女が涙目になる。 「……うぅ…辛いです…」 「ちゃんと焼けてるか見ないからそうなんのよ」 素知らぬ顔で10039号を陥れた美琴は、次々と獲物を捕獲していく。 完全にスイッチが入ってしまった彼女の姿に御坂妹が焦りの色を浮べる。 「くっ、フェイクまで駆使してくるとは…、とミサカ1032号はお姉様のテクに戦慄しつつも焼き加減を見極めます」 「お姉様、容赦ないね~。ま、ミサカはそこそこ取れてるからいいけど~っと、んー!美味い!」 「くそっ!ミサカの食べるものがないではないですか!?とミサカ19090号はやけくそになります!」 「うお!?お前等!ちょっとは落ち着けって!」 暴走した姉妹を止める術がない当麻は、何とか自分の分を確保しようとするが、殆ど取れていない。 何故なら、彼の狙っているものを番外個体が横から取っていくからだ。 そんな事を暫らくやっていると、当麻が取れていない事にようやく気付いた美琴が、 「ちょっとアンタ、当麻が全然食べれてないじゃない?」 「そんな事言われても、お姉様に勝てる気はしないしね。気に入らないならお姉様が取ってあげればいいじゃん」 「…そうね、そうさせてもらうわ。当麻、何か食べたい物あったら言ってね。取ってあげるから」 「いや、そもそも焦って食べる必要なんかないんだから、ゆっくり食べようぜ?」 「…この状況を作った私が言うのもなんだけど、あの子達完全にスイッチ入っちゃったから、今更ゆっくり食べるとか無理じゃない?」 ある程度おなかが膨れた事で落ち着きを取り戻した美琴が三人の妹達に視線を送ると、ハンターのような目で、焼く→強奪して食べるを繰り返している三人の姿が目に入る。 網の上はさながら戦場と化し、相変わらず箸が飛び交っている。 「…ね?」 「はぁ…じゃ、悪いけど適当に取ってくれるか?」 「うん、任せといて!」 当麻に頼られた事で俄然やる気を出した美琴は、そう返事をすると、妹達が暴れ回る戦場に向き直り、次々と焼きあがったものを当麻と自分の皿に取り分け、仲良く食べていく。 そして、そんな彼女の笑顔はいつの間にか妹達にも伝わり、慌しくも笑いの絶えない彼等の食卓は、持ってきた食材が尽きるまで続けられるのだった。 ――――― ―― 食事を終えて、簡単に片付けを行うと、6人は各々行動を開始していた。 番外個体と10039号は食後の軽い運動と称して波打ち際で組み手のような事を始め、御坂妹と19090号は少し離れた砂浜でしゃがみ込んで何かをしている。 そして、当麻と美琴はというと、ビーチパラソルの下で並んで座っていた。 「ふー、少し食べ過ぎたな…」 「大丈夫?」 「あー、もう動けないー。ちょっと横になるわ」 「ん、横になるなら膝枕してあげよっか?」 「…いいのか?」 「うん」 「んじゃ、お言葉に甘えて…」 ちょっぴり赤くなった彼の頭が膝に乗り、心地良さそうに目を瞑る。 「あー、俺、これ好きだわ。なんかこう…安心できる」 「…ありがと、そう言ってくれると私も嬉しいな」 自分の場合は安心とは少し違い、この瞬間は彼の信頼を強く感じる事ができる。 いや、信頼されている事も、大事にされている事も分かっている。 それでも、こうしている間は、彼がその全てを委ねてくれている事を強く感じられるから。 だから、嬉しい。 「…本当に幸せだなぁ」 自分の事を一番大切に、そして愛しいと言ってくれた大好きな彼が側にいる。 それに、多少…いや、かなり行き過ぎた面はあるけど、自分の幸せを願い、背中を突き飛ばすくらい押してくれている妹達がいる。 そして何より、皆の笑顔に囲まれて過ごす事のできる今日という日が幸せでたまらない。 「こんな日々が、ずっと続くといいのにな…」 妹達の置かれた環境を考えると、そうそう上手く行かないのが現実かもしれない… でも… 「――続くさ」 マイナスに傾きかけた思考を切り裂くかのように放たれたその言葉に、思わず彼の方を見る。 どうしてそう言えるの? 普通の人が妹達を受け入れる事なんてあり得ないし、学園都市に帰れば、こんな風に皆で集まって、一緒に遊んだりする事も難しくなる。 なのにどうして… 「――だって俺達は…『家族』なんだろ?」 ニカッっと彼が笑みを浮かべる。 まるで自分の抱えている悩みを『下らない』と吹き飛ばすように。 (…本当にこの男は…) 簡単に言ってくれる。 でも、不思議と信じる事ができた。 それは多分、彼がそう言うからではなく、皆で積み上げてきた時間と、困難を乗り越える度に強くなっていった絆が、何があっても大丈夫と思わせてくれるのだろう。 それにしても、家族か… 「当麻、それってプロポーズって事でいいのかな?何か前は『プロポーズはちゃんとしたい』とか言ってたような気がするんだけど?」 「へ!?いやいや、そういうつもりじゃなかったんだが…覚えてたのか…」 少し慌てる彼が可愛い。 折角だからもう少しからかってやろう。 「当然。忘れるわけないでしょ?つか、いつになったら本番来るの?」 「あ~、え~と、それはですね…」 「もー、いつもいつも…あんなのプロポーズみたいなもんじゃない」 「…ごめんなさいです」 「はぁ…まあいいわ。ねえ当麻」 プロポーズ云々はいずれちゃんとした形でしてもらうとして、それより今は… 「この幸せを皆で守ろうね」 そう、皆で。 もう一人で悩む必要なんてなかったんだった。 根拠も保証もないけど、当麻と、そして妹達と一緒なら、どんな高い壁が立ち塞がっても、きっと超えていける。 だって、私達はもう家族なんだから。助け合って、支え合っていけば、なんだって出来る…そうだよね? 彼の方を見る。すると、 「…ああ」 優しげな笑みと共に、そう返してくれた。 ―――― ―― あの後も美琴の膝枕は暫らく続いていたのだが『足が痺れたわ』という言葉でその終わりを告げる。 そして『妹の様子見に行ってくるね』と言い残した彼女は、何処から行こうか迷った末に、少し離れた所でしゃがんでいる御坂妹のところへ向かう。 「…そんな所で何やってんの?」 美琴が背後からそう声を掛けると、御坂妹は振り向く事無くぽそっと言葉を発する。 「―――カニ、」 「は?」 よく聞き取れなかった美琴は御坂妹の前を覗き込むように見る。 すると、そこには御坂妹を威嚇するように高々とハサミを上げている10センチ位の蟹が居た。 「――カニは何故、横に歩くのでしょうか?とミサカは疑問を抱きますが、目の前のカニはやたら挑戦的で生意気です」 「……」 「ミサカに挑戦しようなど身の程知らずもいいところですが、その意気は買いましょう、とミサカは勇気ある蟹に身震いします」 「………」 「いいでしょう、ではハンデをあげます、とミサカは余裕の笑みを浮かべつつカニを強襲します。フフ、フフフ……」 不気味な笑みを浮かべた御坂妹は、蟹を攻撃すべく右の人差し指を近付ける。 すると――― 「――痛っ!!?」 蟹のハサミで見事にカウンターを食らった御坂妹はバチィ!と思わず電撃を発生させる。 「ああ!?カニが!カニが焼きガニになってしまいました!とミサカは黒焦げになったカニにショックを受けます!」 「……」 「うぅ…ミサカは罪のないカニを殺めてしまいました、とミサカは完全敗北を認めつつ己の未熟さにうな垂れます」 「……」 驚いたとはいえ、本気で能力を使ってしまった御坂妹は黒焦げになったカニの前で両手を付いてガックリとする。 その様子を終始真横で見ていた美琴は、 「……、(この子…本当に何考えてるのか読めないわね…)」 酷く落ち込んだ様子の妹に掛ける言葉が見つからなかった為、そっとその場を後にする。 そして、次に、砂浜でしゃがみ込んで何かをしている19090号の所へ歩いていくのだが、 「妹ー、あんたさっきから何し…て…?」 19090号に接近した美琴は、前方の地面に何か書かれている事に気付く。 「……!!」 バチ!っと美琴の前髪から電撃が飛び、砂に描かれた物を消す。 「妹~、ちょろっと聞きたい事があるんだけどさ~。これ、どういうつもり?」 「何?と聞かれましたら相合傘と答えます、とミサカは短く答えました」 「うんうん。それは分かるけど、当麻とあんた達が一緒に入ってるのは何故かしら?」 周囲の砂に書かれた相合傘を指差しながら問い詰めていく美琴に19090号はうるうると涙を溜めると、 「…ダメですか?とミサカは可愛らしく尋ねてみます」 上目遣いに懇願するのだが、 「ダメ」 見事に一刀両断されてしまった。 「ちっ、ならここは撤退あるのみです!とミサカはお姉様が怖いので逃げ出します!」 身の危険を感じた19090号は美琴に背を向け逃走を図る。 「あ!こら!待ちなさ――って、こっちを先に何とかしないと!」 咄嗟に追おうとした美琴だが、相合傘をこのまま放置するわけにもいかなかった為、すぐに追うのは断念する。 (ったく、何してるのかと思えば…つか、多すぎでしょこれ…) 周囲を見渡すと、かなりの量の相合傘が書かれていて、よく見ると『お義兄様、ミサカ(検体番号)号』と地味な違いがある事に気付く。 美琴は、その一つ一つを確認しながら足で消していくのだが、 (…ん?そういえば、何で『当麻』じゃなくて『お義兄様』なんだろう?) あまりの馬鹿馬鹿しさにかえって冷静になってしまった美琴はそんな疑問を抱く。 (あの子達が当麻をお義兄様って呼ぶって事は、私のって認めてるって事だから……もしかして) ある予想を立てた美琴は何かを探すように周囲を見渡す。そして、 (…やっぱりあった) 無数にある相合傘の中に『当麻、美琴』と他の物より少し大きく、傘の上にハートマークが書かれている相合傘を発見した。 (……本当、下らない事ばっかり考えるわね) それを見つけた事で、19090号が自分を怒らし、これを見たときの反応を面白がろうとしているという予想が確信に変わる。 そして、彼女が逃走した方を見ると、案の定、物陰から薄笑いを浮かべて覗いているその姿を見つけた。 (…とりあえず他のは消しとくか) バチィィィイン!!と周囲に電撃を撒き散らして、周囲の相合傘を一気に消し去った美琴は、手招きをして19090号を呼び寄せる。 すると、冷静な対応を見せる美琴に作戦失敗と感じ取ったのか、大人しくそれに従って物陰から出てきた。 「残念だったわね、あんたの思惑通りにならなくて」 「…まさかお姉様に見破られるとは思いませんでした…、とミサカは悪戯の失敗に落胆します」 御坂妹に手伝ってもらったとはいえ、かなりの時間を費やして準備をしただけに、ガックリと肩を落として落ち込む19090号。 だが、俯いた時に美琴の足元に例の相合傘が残っていた事に気付くと、彼女のテンションが元に戻る。 「おやおや、ちゃっかりそれだけは残したのですか、とミサカはラブラブ傘が無事だという事実にニヤニヤします」 「うん。だって消す必要がなかったし、あんたが私たちの事を祝福してくれてるみたいで嬉しいし」 からかい口調の19090号に淡々と言葉を返す美琴。 そのいつもと全く違った反応に19090号が戸惑っていると美琴が、 「だから、ありがとね」 と、短く感謝の言葉を述べた。 その言葉と、屈託の無い美琴の笑顔に罪悪感を感じた19090号はしゅんと小さく身を縮めると、 「…申し訳ありませんでした…、とミサカは先の悪戯について謝罪します…」 「何で謝るの?」 「ミサカはお姉様をおちょくって楽しもうとしていました。なので本来は叱られるべきなのです、とミサカは己の行動を反省します」 寧ろ叱ってくれといったオーラを醸し出す19090号に首を横に振った美琴は、 「あんたは私の味方だもん。だから、私が不快に思うような事する筈ないじゃない」 「…うぅ…もうやめてください、全てミサカが悪かったです、とミサカはお姉様の対応に胸が苦しくなります」 美琴の言葉が胸に突き刺り、罪悪感や後悔、反省といった感情によって涙目になった19090号は、その場に膝を着く。 そんな様子に美琴は小さく溜め息を付き、髪の毛をくしゃっとすると、 「…ま、こんな所か。これ以上は可哀想で見てられないわ…」 「…お姉様…?」 「私がいつもと違った反応見せたらどうなるかなーってやってみたんだけど、こりゃダメね」 19090号の計画を見破ったことで余裕があった美琴は、先の失敗を踏まえ、どうすれば上手く困らせれるのかを考え、それを試していた。 「てかさー、何も泣かなくてもいいじゃん」 「な、泣いてなどいません、とミサカは反論します」 「…目、充血させながら言っても説得力ないっつーの。ほら、私が悪かったからいつまでも落ち込んでないで顔洗って、元の元気なあんたに戻りなさいよね」 「…泣いてなどいませんが、そうさせていただきます、とミサカは割りと素直に従うことにします」 美琴が手を差し伸べて19090号を立ち上がらせると、19090号も彼女の言葉に従い、当麻が休憩している場所へと歩き出した。 彼女の背中を見送る美琴は、やれやれといった感じで息を吐く。 (…つか、嘘は言ってなっかったんだけど…) それなのに泣かれてしまったという事実に少なからずショックを受けた美琴は、今後はどう対応しようか考えながら番外個体と10039号の元へ歩いて行く。 そして、組み手を終え、波打ち際で休憩を取っている二人の元に近づいた美琴は『お疲れ様』と言いながら混ざっていく。 「お姉様?ミサカ達に何か用でも?」 「用っていうか、様子を見に来ただけよ」 「……折角来てもらったのですが、ミサカ達はこれから模擬戦を行う予定ですので、お姉様はお義兄様と遊んでてください、とミサカはお姉様に伝えます」 「模擬戦って…、海に来てまでそんな事やんなくても…」 「こういった場所では勝手が違うので良い経験になります、とミサカ砂浜を指差しながら回答します」 「そうかもしれないけどさ、今日くらい羽を伸ばせばいいじゃん。…そうだ、皆でビーチボールでもしない?」 模擬戦を阻止しようと美琴がそう持ちかけると、 「…いえ、ですからミサカ達は…」「ミサカは別に良いよ」 番外個体が被せるように言葉を放つと、10039号がムッとした顔をする。 「…番外個体、ミサカとの模擬戦はどうなるのですか?とミサカは問いかけます」 「中止」 「な!?何故ですか!?とミサカは中止の理由を求めます」 「ビーチボールの方が面白そうだから」 「…随分勝手ですね、とミサカは番外個体の横暴っぷりに落胆します」 「まあまあ、今度相手になってあげるって」 「今度ではダメです、砂地での訓練は貴重な経験になるはずなので、模擬戦を行いましょう、とミサカは再考を求めます」 「10039号の気持ちは分かるけど、そんなに焦ったってすぐには強くなれないよ?」 「ですが、模擬戦を行うことで、不測の事態に対応する準備をするのは必要です、とミサカは主張します」 「うんうん。その考え方は正しいけど、息抜きも重要。そんでもってミサカはもう模擬戦やる気なくなったから、皆で遊ぶ事に決定~」 番外個体の言葉にむぅ…と不服そうに唸る10039号。 完全にいつもの様子とは違う彼女の様子に疑問を抱いた美琴は、その理由を番外個体に尋ねると、 「そのミサカはもう戦闘モードだったから、模擬戦が中止になって不満なんでしょ」 「別に今やらなくてもいいと思うんだけど?」 「仕方ないよ。そのミサカはもっと強くなりたいみたいだから」 その言葉を聞いた美琴は、10039号が以前『二人を守れるくらい強くなる』と言っていた事を思い出す。 それに、例の活動を続けて行く上で、今の彼女の力では辛い部分も出てくるだろう。 (……誰かを守る為の力…か…) それが彼女の進む道に必要なものなら…と美琴は考え、10039号に話しかける。 「そんなに強くなりたいなら、今度私と一緒に勉強でもする?」 「なんですか?藪から棒に、とミサカは唐突な申し出に疑問を抱きます」 「あんた何か忘れてない?私はレベル5で、あんたと同じ電撃使い。学べる事は多いと思うんだけど」 「…なるほど、確かにお姉様に教わればレベルを上げる近道になるかもしれませんね、とミサカは思考します」 遺伝子レベルで同質なのだから、レベル5まで上り詰めた美琴にレッスンを受ければあるいは…と思考を巡らせる10039号。 「では、お姉様の時間が空いている時にでもお願いします、とミサカはお姉様に頭を下げます」 「いいの?」 「本当はあんまり良くないんだけど…この子の気持ちは分かるから」 美琴としては、レベルが上がれば上がるほど相応の危険が付きまとう為、本当はこれ以上強くなってほしくない。 だが、『守りたいものがあるから強くなりたい』という彼女の気持ちが痛いほど分かるからこそ、力になる事を選んだ。 「それに、模擬戦を繰り返して怪我されるよりはマシだからね」 「ミサカは模擬戦で怪我をさせるような事はしないよ。つか、怪我させないように妹達を沈めるのがミサカのやることだし」 「まぁ、あんた達はダメって言ってもやめないだろうからあんまり強くは言わないけど、程々にしてよね」 「分かりました。その代わりミサカの指導をお願いします、とミサカは講師であるミコト先生に返事をしました」 真面目な顔で放たれた言葉に、美琴は目をパチパチさせると、 「……美琴…先生…?」 「はい、ミサカの講師を務めるとの事ですのでそう呼んだほうが良いのかと…それとも師匠が良いですか?とミサカは新たな呼び方を用意しました」 「…いや、普通にお姉様でいいわ。小馬鹿にされてるみたいでなんか腹立つ」 「……ぶっひゃ、…美琴先生!?師匠!?なんだそりゃああああ!!ひゃっはははははは!!!」 「ちょっと!そこまで笑わなくても良いでしょ!?」 二人の反応に首を傾げる10039号。彼女は純粋にそう呼んだほうが良いと思ったようだが、どうやら美琴はお気に召さなかったらしい。 美琴の横では番外個体が『笑い殺す気か――!』と叫びながら腹を抱えて大笑いしている。 「ところでお姉様、お姉様のレッスンはどのような事をするのですか?とミサカは興奮気味に聞いてみます」 興味津々といった様子で10039号が尋ねると、美琴は未だに笑っている番外個体から視線を移しながら、 「んぇ?ん~、そうね……私が今までやってきた事を話したり、イメージの訓練とかが主になると思うわよ? でも、よくよく考えたら、あんたは私と同じだけど、私とは違うから、『自分だけの現実』の構築方法はちょっと違ったりすると思うのよねー。 だから、近い事は教えれるけど、結局はあんたの努力次第って事になるわね」 「……、そうですか、まぁ楽しみにしておきましょう、とミサカは色々突っ込みたい事を我慢しつつ、お姉様とのマンツーマンレッスンを想像します。フフ…フフフ…」 「……あんた、一体どんな想像してるのよ…」 不気味な笑みを浮かべる妹の姿に寒気を感じ、ブルッと身を震わせた美琴。 「それはご想像にお任せします。それではこの話はここまでにして、ビーチボールで遊びましょう、とミサカはお姉様とのやり取りに満足しつつ促します」 「それもそうね。んじゃ、行きましょうか」 美琴と10039号が並んで歩き出すと、ようやく笑いを止めた番外個体が二人を追いかける。 「あ、ちょっと、ナチュラルにミサカを置いて行くって酷いんじゃない?」 「ねえ妹、ずっと気になってたんだけど、そのスク水って何処で買ったの?」 「これですか?これは学園都市にあるコスプレ専門店で購入しました、とミサカは報告します」 「…あんた、そんな所に何しに行ってんのよ…」 「あそこには男性の喜ぶ衣類が大量にあるとの情報をキャッチしましたので、足を運んでみた次第です。 今度お姉様も一緒に行きますか?あれらを着ればお義兄様の理性などペラペラの紙切れ同然です、とミサカはお姉様を誘ってみます」 「…ちょっと興味あるかも」 「では、お姉様の都合が良い日にでも行きましょう、とミサカはお姉様と会う口実ができた事に歓喜します。むふふ…」 「だからその怪しい笑みは何なの!?」 「ちょっと二人とも!聞いてるの!?…ねぇってば!」 先程盛大に笑った仕返しと言わんばかりに番外個体を無視する美琴と、彼女と楽しそうに会話をする10039号。 番外個体の訴えは二人には届く事無く、本拠地に戻るまで二人の楽しそうな会話を聞く事になるのだった。 ―――― ―― 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/例えばこんな三人の関係
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【オープニング】 No. タイトル 登場人物 000 終わりと始まり 枸雅匡平、美樹さやか、上条恭介、ミサカ10032号 【第一回放送までの本編SS】 No. タイトル 登場人物 001 人魚姫の涙 美樹さやか、御坂美琴 002 ふケンコー全裸系 喪女、モルジアナ 003 あねおとうと 押水菜子、桐生 004 それぞれの思い キング・ブラッドレイ、瀬田宗次郎、電波 005