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■工事請負契約書のチェック事項 契約書の構成 契約書 保証 約款 添付書類
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請負と派遣の違い 1.労働者派遣事業 労働者派遣事業とは、派遣元事業主が派遣先と労働者派遣契約を締結して、派遣元事業主が雇用する労働者を派遣先の指揮命令下で労働に従事させることを指します。 労働者派遣事業は、厚生労働大臣の許可証(一般労働者派遣事業)、又は届出受理証(特定労働者派遣事業)の交付を受けた事業所でないと行なうことが出来ません。 2.業務請負による事業 業務請負による事業とは、請負事業主が依頼主と請負契約を締結して、請け負った仕事の完成を目的として業務を行なうことを指し、業務請負会社が雇用する労働者と依頼主の間に指揮命令関係が無い点で労働者派遣とは異なります。 業務請負による事業は、労働者派遣法の規制を受けませんので、業務内容や業務受託期間などについては契約当事者間で原則として自由に定めることが出来ます。 但し、形式上、業務請負契約を締結していても、業務請負会社の労働者が依頼主の指揮命令下で業務を行なっている場合は「偽装請負(=違法な労働者供給事業)」となる為、労働局の取締りの対象になります。 偽装請負は、職業安定法違反として「1年以下の懲役刑又は100万円以下の罰金刑」が科されますが、注意しなければならないのは、請負事業主だけでなく、依頼主に対しても同様の罰則が科される、という事です。 3.請負と派遣の違い 上述の通り、派遣とは、自己の雇用する労働者を「他人の指揮命令を受けて、その他人のために労働に従事させる事」です。 一方、業務請負は通常、労働の結果としての作業の完成を目的とするものであって、業務を受託した業務請負会社が自己の雇用する労働者を直接指揮して仕事の完成にあたるものを言います。 このように規定されているのですが、それでもなお、実務上紛らわしい部分がある事は否定できません。 昭和61年に労働者派遣法が制定される以前に日本に進出してきた外資系派遣会社は、労働者派遣事業が認められなかったため、当初は事務委託など、請負のかたちで事業を行っていたという経緯もあります。 4.適正な業務請負の基準 労働者派遣事業と請負により行なわれる事業の区分については、厚生労働省から有名な区分基準(昭和61年4月17日労働省告示第37号)が告示されています。 「適正な業務請負」とみなされる為には、概略、次に掲げる要件を全て満たす必要があります。 つまり、次に掲げる7つの要件を一つでも満たしていない場合は、特定労働者派遣事業の届出(又は一般労働者派遣事業の許可取得)をしなければ偽装請負に該当してしまう、ということです。 【適正な業務請負と認められる為の概略の基準】 自分の資金で 自分で雇っている労働者の労働時間などを管理して 自分で労働者を指揮し、服務規律などを守らせ 自分で責任を持って必要な資金は調達し、支払いを行い 自分が業務処理についての責任を 負い 自分で必要な機械・設備・材料などを調達し 自分の企画や専門的な技術などに基づいて業務を処理する ■請負wikiの作成者プロフィール 池田雅之 NECで設備設計・製品開発・管理・製造部長等経験、その間ISO監査員・PEC山田先生指導のトヨタ生産方式インストラクタ等の資格を取得。 50代半ばで退職後人材派遣業界のコンサルタントとして請負化・業務改善・教育等の業務に従事し現在に至る。 【池田雅之ブログ:請負の品格】 showrss プラグインエラー RSSが見つからないか、接続エラーです。
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告示37号 派遣と請負の違いを明確にするものとして、適正な業務請負に対する具体的判断基準( 昭和61年4月17日労働省告示第37号)では、製造業務、車両運行管理業務、医療事務受託業務、バンケットサービスについて、適正な業務請負に対する具体的判断基準が例示されています。 【製造業務の場合】 業務受託者が、一定期間において処理すべき業務の内容や量の注文を依頼主から受けるようにし、当該業務を処理する為に必要な労働者数等を自ら決定し、必要な労働者を選 定し、請け負った内容に沿った業務を行なっていること。 業務受託者が、作業遂行の速度、作業の割付・順序を自らの判断で決定出来ること。 受託業務を行なう日時が業務請負契約書(又はそれに付随する書面)の中で明示されており、依頼主が、受託業務を行なう個々の労働者に対して、始業/終業時刻・休憩時間・休 日等に関する指示を直接していないこと(業務受託者側の管理責任者に要求をしていること)。 業務受託者が、自ら雇用する労働者の実際の労働時間を常に管理・把握していること。 また、時間外・休日労働については、業務受託者側の管理責任者が決定し、指示をしていること。 依頼主の事業所内で受託業務を行なう場合は、前もって依頼主から緊急の業務量増減の連絡が受けられる体制になっており、業務受託者が人員の配置や増減を決定出来ること。 依頼主からの原材料・部品等の受取りや、依頼主への製品受渡しについては、伝票等による処理体制が確立されていること。 受託業務を行なう労働者が依頼主の所有する機械・設備等を使用する場合は、 業務請負契約とは別に双務契約が締結されており、その保守・修理を業務受託者自身 が行なうか、又は保守・修理の費用を業務受託者が負担していること。 【車両運行管理業務の場合】 業務受託者が、予め定められた様式により運行計画(時刻・目的地等)を依頼主から提出させ、当該運行計画が安全運転確保や人員体制等から不適切な場合は、業務受託者がその旨を依頼主に申入れ(変更要求)出来 るものになっていること。 業務受託者が、自動車事故等に係る任意保険に自ら加入していること。 自動車事故等の発生により依頼主に損害が生じた場合は、業務受託者が依頼主に対して損害賠償責任を負う(又は求償に応じる)旨の規定が業務請負契約書に明記されていること。 業務受託者が、運転者の提供のみならず、管理車両の整備や修理全般、燃料・油脂等の購入や給油、備品・消耗品の購入、車両管理の為の事務手続き、事故処理全般などについても一括で請け負うことで依頼主の自動 車の管理全体を行なっているものであり、尚且つその旨が業務請負契約書に明記されていること。 【医療事務受託業務の場合】 受託業務従事者が病院側からその都度指示を受けることが無いように、受託した全ての業務について、業務内容、業務量、遂行手順、実施日時、就業場所、業務遂行に対する連絡体制、トラブル発生時の対応などの事 項が業務請負契約書(又はそれに付随する書面)で取り決めされていること。 業務受託者側の管理責任者が、受託業務従事者に対して具体的な業務指示をしていること。 業務受託者が、定期的な病院側との打合せの機会を通じて、受託業務従事者の業務遂行に関する評価を自ら行なっていること。 業務受託者が、職場秩序の保持や風紀維持の為の規律等の決定、指示を自ら行なっており、定期的な病院側との打合せや就業場所巡回の際に、受託業務従事者の規律・服装・態度等の管理を自ら行なっていること。また、予め病院側に対してその旨の説明を行なっていること。 受託業務の処理により、病院側及び第三者に損害を与えた場合は、業務受託者が損害賠償責任を負う旨の規定が業務請負契約で定められていること。 【バンケットサービスの場合】 バンケット業者が、コンパニオンがホテル等から業務遂行に関する指示を受けることの無いように、予めホテル等と挨拶・乾杯・歓談・催し物等の進行順序やそれぞれの時点においてコンパニオンが実施するサービス の内容と注意事項を打合せし、取り決めしていること。 宴席が予定時間を超えた場合、バンケット業者の管理者責任者が、ホテル等とサービス提供時間延長の交渉を行ない、延長した場合のコンパニオンへの指示を行なっていること。 バンケットサービスに従事するコンパニオンの決定について、ホテル等による指名や面接選考等を行なわず、バンケット業者が自ら決定していること。 同一の宴席において複数のバンケット業者が請け負う場合、異なるバンケット業者のコンパニオンが共同で1つのサービスを実施することが無いように、予め各バンケット業者が担当するテーブル又はサービス内容を 明確に区分していること。 上記の具体的判断基準のうち、どれか一つでも「×(非該当)」が有ると、特定労働者派遣事業の届出(又は一般労働者派遣事業の許可申請)が必要になります。 特に、労働者派遣事業の許可番号又は届出受理番号を全く持っていない業務請負会社は、労働局からマークされがちですので、充分ご注意下さい。 ■請負wikiの作成者プロフィール 池田雅之 NECで設備設計・製品開発・管理・製造部長等経験、その間ISO監査員・PEC山田先生指導のトヨタ生産方式インストラクタ等の資格を取得。 50代半ばで退職後人材派遣業界のコンサルタントとして請負化・業務改善・教育等の業務に従事し現在に至る。 【池田雅之ブログ:請負の品格】 showrss プラグインエラー RSSが見つからないか、接続エラーです。
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帳票類の作成 業務請負契約の締結および請負後の業務運営を円滑にするため、帳票類や必要器材等を整備します。 下記に帳票類や必要器材等の事例を示します。 なお、適正な業務運営に必要とされるもの以外はクライアントとの協議において割愛が可能なものもあります。 【帳票類や必要器材等の整備】 1.業務請負契約締結に必要な帳票 業務請負基本契約書 注文仕様に関する覚書 請負代金支払いに関する覚書 建物等の賃貸借基本契約書 機械設備等の賃貸借基本契約書 安全衛生に関する覚書 秘密保持に関する覚書 業務改善に関する覚書 機械設備等メンテナンスに関する覚書 2.適正な業務運営に必要な帳票 注文書 納品書 就業規則の制定 法定選任者の選任 安全衛生マニュアルの作成 コーディネーター等内勤社員巡回計画 生産コンサルタント報告 3.必要器材等の準備・設置 クライアント構内における請負事務所の開設 作業着・帽子・手袋・マスク・ヘルメット・安全靴等の準備 通信回線の整備、TEL・FAX・PCの設置 タイムレコーダー・カードラック設置&事務設備一式の整備 その他業務運営上に必要な事項の整備 ■請負wikiの作成者プロフィール 池田雅之 NECで設備設計・製品開発・管理・製造部長等経験、その間ISO監査員・PEC山田先生指導のトヨタ生産方式インストラクタ等の資格を取得。 50代半ばで退職後人材派遣業界のコンサルタントとして請負化・業務改善・教育等の業務に従事し現在に至る。 【池田雅之ブログ:請負の品格】 showrss プラグインエラー RSSが見つからないか、接続エラーです。
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判示事項の要旨: 旧高根町長であった被告の行った次の3つの財務会計上の行為,すなわち,① 火葬場建設に関する請負契約の締結,② 安都玉財産区及び安都那財産区への繰入れ,③ 平成16年度入札執行事業に関する請負契約の締結は,いずれも違法であり,被告は旧高根町に損害を与えたとの主張が排斥された事例(住民訴訟) 主 文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,被告個人に対し,金2億7592万7000円及びこれに対する平成17年3月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を請求せよ。 2 被告は,被告個人に対し,金2728万円及びこれに対する平成17年3月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を請求せよ。 3 被告は,被告個人に対し,金4億5024万3150円及びこれに対する平成17年3月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を請求せよ。 第2 事案の概要 1 事案の要旨 本件は,高根町外6町村が合併して発足した北杜市の住民である原告が,地方自治法(以下「法」という。)242条の2第1項4号に基づき,高根町長であった被告が違法な公金支出をしたことによって同町に損害が発生した旨主張して,北杜市長である被告に対し,高根町長であった被告個人に対して損害賠償請求するよう求めている事案である。 2 前提となる事実(証拠等を掲記した事実以外は,当事者間に争いがない。) (1) 当事者等 ア 原告は,本件に関する住民監査請求(下記(5)ア)が行われた平成16年12月13日よりも前から,北杜市に住所を有していた。 イ 山梨県北巨摩郡に属する地方公共団体であった明野村,須玉町,高根町,長坂町,大泉村,白州町及び武川村(以下「旧7町村」という。)は,平成15年10月10日,合併協定書(甲7はその抜粋である。以下「本件合併協定書」という。)に調印し,平成16年11月1日,北杜市となった。 ウ 被告は,平成16年よりも前から,高根町長の職にあったが,上記合併に伴って平成16年11月28日に実施された北杜市長選挙で当選し,北杜市長に就任した。 (2) 本件火葬場建設費 被告は,高根町長として,下記アないしオのとおり,代金合計9億3002万7000円で,火葬場建設に関する請負契約を締結した(以下,これらの請負契約を「本件火葬場建設請負契約」といい,同契約の代金を「本件火葬場建設費」という。)(甲3)。 ア 契約日 平成16年10月19日ころ 相手方 A土木株式会社 工事内容 北杜市火葬場建設工事(建築主体) 代金額 5億8590万円 イ 契約日 平成16年10月19日ころ 相手方 B工業株式会社 工事内容 北杜市火葬場建設工事(機械設備) 代金額 1億3881万円 ウ 契約日 平成16年10月19日ころ 相手方 C電気株式会社(甲府営業所) 工事内容 北杜市火葬場建設工事(電気設備) 代金額 1億0888万5000円 エ 契約日 平成16年10月19日ころ 相手方 株式会社D工業所 工事内容 北杜市火葬場建設工事(火葬炉設備) 代金額 7963万2000円 オ 契約日 平成16年10月ころ 工事内容 北杜市火葬場建設工事(下水道整備工事) 代金額 1680万円 (3) 財産区への本件繰入金 ア 高根町安都玉財産区は,平成15年度の予算において,歳入として88万円の繰入れを受けた(甲4の2)。 イ 高根町安都那財産区は,平成15年度の予算において,歳入として2640万円の繰入れを受けた(以下,この繰入金と上記アの繰入金を併せて「本件繰入金」という。)(甲4の1)。 (4) 本件各公共工事請負契約 高根町は,平成16年度入札執行事業(第6回から第9回)として,別紙(省略)のとおり,合計46件(総額4億5024万3150円)の公共工事に関する請負契約を締結し,随時,その請負代金を支払った(以下,前記46件の公共工事に関する請負契約を「本件公共工事請負契約」といい,同契約の請負代金を「本件公共工事請負代金」という。)。 (5) 住民監査請求 ア 原告は,平成16年12月13日,北杜市監査委員に対し,本件火葬場建設請負契約とその建設費の支払,本件繰入金及び本件公共工事請負契約とその請負代金の支払が違法な契約や公金支出であるなどとして,必要な措置を講ずるよう求める住民監査請求をした。 イ 北杜市監査委員は,平成17年2月9日,上記各契約と各支払はいずれも違法,不当であるとは認められないとして,上記住民監査請求を却下し,この監査結果は,そのころ,原告に到達した。 ウ 原告は,平成17年3月8日,本件訴えを提起した。 3 争点 (1) 本件火葬場建設費の一部(2億7592万7000円)について,違法な契約締結ないし公金支出があるといえるか。 ア 原告の主張 (ア) 高根町議会は,平成16年6月18日,平成16年度高根町一般会計補正予算(第2回)として,火葬場建設費6億5410万円を支出する旨議決した。 (イ) 旧7町村は,上記議決に先立つ平成15年10月10日,本件合併協定書において,「火葬場整備については,合併推進債を活用して平成15年度より建設に着手し,平成17年4月の供用開始を目標とする。」と合意した(本件合併協定書36条)。 (ウ) 高根町議会が平成16年6月18日に議決した火葬場建設費6億5410万円(上記(ア))は,本件合併協定書による合意を前提とするものである。そして,本件合併協定書30条は,本件合併協定書による合意を変更する場合には,旧7町村の調整に委ねなければならない旨定め,かつ,同36条は,火葬場整備については合併推進債を活用する旨定めている。そうすると,旧7町村は,火葬場整備について,合併推進債を活用し,かつ,予算総額を6億5410万円とする旨定めたというべきであるから,この額を変更するには,旧7町村又は北杜市議会の議決を経る必要があるというべきである。 (エ) しかるに,被告は,平成16年10月,上記2(2)のとおり,高根町長として,旧7市町村議会の議決を経ることなく,北杜市火葬場建設工事請負契約を代金合計9億3002万7000円で締結し,かつ,現在まで北杜市議会の議決を得ていない(しかも,上記2(2)オの契約については,高根町議会の議決も得ずに契約している。)。したがって,本件火葬場建設費のうち,実際の契約額である9億3002万7000円と高根町議会が平成16年6月8日に議決した6億5410万円の差額である2億7592万7000円については,予算外又は目的外契約であり,違法な契約ないし公金支出であるといえる。 (オ) なお,高根町議会は,平成16年6月,上記6億5410万円の他に,4億8090万円を限度額とする債務負担行為を議決したが,この議決は,本件合併協定書による合意に反し,かつ,高根町を除く旧7町村及び北杜市議会の議決を経ていないから,上記の結論に変わりはない。 イ 被告の主張 (ア) 上記ア(ア),(イ)の事実は認める。同(ウ)ないし(オ)の主張は争う。 (イ) 高根町議会は,平成16年6月18日,平成16年度高根町一般会計補正予算(第2回)の中で,火葬場建設関係として,6億5410万円(第4款6目15節工事請負費)を議決し,また,債務負担行為として4億8090万円を議決した。 そして,高根町長(被告)は,上記議決の範囲内で,本件火葬場建設請負契約を締結し,かつ,契約金額が5000万円を超える契約については,法96条1項5号及び「議会の議決に付すべき契約及び財産の取得又は処分の範囲を定める条例」(昭和39年3月31日条例第45号(乙1)。以下「本件条例」という。)2条によって議会の議決が要求されていることから,各契約の締結に先立ち,議会の議決を得た。したがって,本件火葬場建設請負契約の締結とその建設費の支払が違法となることはない。 (ウ) また,本件合併協定書は,本件火葬場建設請負契約の締結よりも前に旧7町村によって平成15年10月10日に作成され,しかも原告の指摘する同36条は,「火葬場整備については,合併促進債を活用して平成15年度より建設に着手し,平成17年4月の供用開始を目標とする。」と定めるのみであり,上記6億5410万円が旧7町村の議決(協議)を経た不変事項であるとの原告の主張は,その前提を欠くものであって主張自体失当である。 (2) 本件繰入金が違法な公金支出であるといえるか。 ア 原告の主張 (ア) 高根町長(被告)は,平成16年度の高根町の一般会計から,本件繰入金を支出した。 (イ) 法294条2項は,財産区の財産又は公の施設に関して特に要する経費は財産区の負担とする旨規定するから,上記各繰入れは,違法な公金支出であるといえる。 イ 被告の主張 (ア) 上記ア(ア)の事実は否認する。同(イ)の主張は争う。 (イ) 安都玉財産区及び安都那財産区への本件繰入金は,高根町安都玉財産区財政調整基金の設置管理及び処分に関する条例(乙2)及び高根町安都那財産区財政調整基金の設置管理及び処分に関する条例(乙3)に基づき,各財産区の財政調整基金から繰り入れたものであって,何ら違法な公金支出ではない。 (3) 本件公共工事請負契約の締結が違法であるといえるか。 ア 原告の主張 (ア) 高根町長(被告)は,本件公共工事請負契約の締結について,高根町又は北杜市議会の議決を得なかった。 (イ) したがって,本件公共工事請負契約の締結は違法であり,その代金4億5024万3150円の支出は,違法な公金支出であるといえる。 (ウ) 被告は,法96条1項5号及び本件条例2条によって,金額5000万円未満の契約については高根町議会の議決は不要である旨主張する。しかしながら,前記各規定を形式的に適用すれば,公共工事を意図的に分割することによって,議会の議決を要求する法96条1項5号の制限を潜脱することができるから,単に,契約金額が5000万円未満であるからといって,常に議会の議決が必要ないとはいえないと解すべきである。 そして,本件公共工事請負契約についても,① 平成16年度入札執行事業(第6回)のうち,公共下水道事業中央処理区管渠布設工事が,五町田第7工区,同第9工区,同第12工区,同第11工区,同第10工区の5つの工事に分割され,② 同事業のうち,地震対策緊急整備事業耐震性貯水槽設置工事が,東井出,村山北割,五町田,清里及び浅川地区の5つの工事に分割され,③ 平成16年度入札執行事業(第8回)のうち,公共下水道事業が,中央処理区舗装復旧工事(打乙地区),清里南部処理区管渠布設工事(清里南部第1工区),中央処理区舗装復旧工事(東井出1工区)及び中央処理区舗装復旧工事(前田地区)の4つの工事に分割されている。 したがって,仮に5000万円未満の契約については議会の議決を経る必要がないとしても,本件公共工事請負契約の締結すべてが適法であったとはいえない。 イ 被告の主張 (ア) 上記ア(ア)の事実は認める。同(イ),(ウ)の主張は争う。 (イ) 高根町の本件条例2条は,金額5000万円未満の契約については高根町議会の議決は不要である旨定めており,本件公共工事請負契約46件は,いずれも請負代金が5000万円未満である。 (ウ) したがって,本件公共工事請負契約の締結については,高根町議会の議決は必要ない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(本件火葬場建設費の一部(2億7592万7000円)について,違法な契約締結ないし公金支出があるといえるか。)について (1) 原告は,本件合併協定書30条,36条を根拠に,本件火葬場建設請負契約を締結するためには旧7町村議会又は北杜市議会の議決が必要である旨主張する。しかしながら,本件合併協定書30条は,旧7町村の既存の条例の調整方法について規定しているに過ぎないし,また,同36条の規定の文言からすると,同条項に原告の主張するような拘束力を認める根拠は見いだし難い。したがって,この点に関する原告の主張は採用できない。 (2) また,上記前提となる事実,証拠(甲1ないし3)及び弁論の全趣旨によると,① 高根町議会は,平成16年6月18日,平成16年度高根町一般会計補正予算(第2回)の中で,火葬場建設費の工事請負費として,6億5410万円を議決し,また,火葬場建設事業について請負契約を締結するための債務負担行為として4億8090万円を議決したこと,② 高根町長(被告)は,上記議決の合計金額である11億3500万円の範囲内で本件火葬場建設請負契約を締結したこと,③ 高根町長は,法96条1項5号及び本件条例2条によって,5000万円を超える契約を締結する場合には議会の議決を得ることを要求しているため,この制限に服する契約については,各契約の締結に先立ち,高根町議会の承認を得たことが認められる。 そして,上記の本件火葬場建設請負契約の締結に至る経緯からは,同契約の締結及びその代金の支払が財務会計法規に違反するとは認められない。 (3) 他に,本件火葬場建設費の支払等が財務会計法規に違反して違法となる事実を認めるに足りる証拠はない。 2 争点(2)(本件繰入金が違法な公金支出であるといえるか。)について (1) 原告は,法294条2項を論拠に本件繰入金の支出が違法な公金支出となる旨主張するが,この原告の主張は,原告独自の見解であって,採用することはできない。 (2) また,この点をおくとしても,争点(2)ア(ア)の事実,すなわち,高根町長(被告)が平成16年度の高根町の一般会計から本件繰入金を支出した事実を認めるに足りる証拠はない。かえって,証拠(甲4の1,乙2,3)によると,本件繰入金は,高根町安都玉財産区財政調整基金の設置管理及び処分に関する条例及び高根町安都那財産区財政調整基金の設置管理及び処分に関する条例に基づき設置された財政調整基金から繰り入れられたことが認められる。 (3) この財政調整基金からの繰入れが財務会計法規に違反して違法な公金支出となることを認めるに足りる証拠はない。 3 争点(3)(本件公共工事請負契約の締結が違法であるといえるか。)について (1) 争点(3)ア(ア)の事実,すなわち,高根町長(被告)が本件公共工事請負契約の締結について高根町又は北杜市議会の議決を得なかった事実は当事者間に争いがない。 (2) しかしながら,本件公共工事請負契約の代金は,いずれも5000万円未満であるところ,高根町の本件条例(乙1)によると,予定価格5000万円未満の工事に関する請負契約については,議会の承認は必要ないことが認められる。 (3) この点,原告は,本件公共工事請負契約の一部について,意図的に同一事業を分割することによって,議会の議決を求める法96条1項5号の規定を潜脱した旨主張する。 そこで検討するに,法96条1項5号の趣旨は,政令等で定める種類及び金額の契約を締結することは普通地方公共団体にとって重要な経済行為に当たるものであるから,これに関しては住民の利益を保障するとともに,これらの事務の処理が住民の代表の意思に基づいて適正に行われることを期することにあるものと解される。そうすると,長による公共事業に係る工事の実施方法等の決定が当該工事に係る請負契約の締結につき同号を潜脱する目的でされたものと認められる場合には,当該長の決定は違法であると解するのが相当である(最高裁第三小法廷平成16年6月1日判決・裁時1365号4頁参照)。 しかしながら,本件全証拠を精査しても,本件において,被告が,本件公共工事請負契約の締結について,法96条1項5号の制限を潜脱する目的で,本件公共工事請負契約を一つの契約とせず,意図的に分割して別個に入札を行ったと認めることはできない。 (4) 他に,本件公共工事請負契約の締結及びその代金の支払が財務会計法規に違反して違法であることを認めるに足りる証拠はない。 4 結論 以上によると,原告の請求はいずれも理由がないから棄却すべきである。よって,主文のとおり判決する。 甲府地方裁判所民事部 裁判長裁判官 新 堀 亮 一 裁判官 倉 地 康 弘 裁判官 岩 井 一 真
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問30 発注者と受注者の間でソフトウェア開発における請負契約を締結した。ただし、発注者の事業所で作業を実施することになっている。この場合、指揮命令権と雇用契約に関して、適切なものはどれか。 ア 指揮命令権は発注者にあり、更に、発注者の事業所での作業を実施可能にするために、受注者に所属する作業者は、新たな雇用契約を発注者と結ぶ。 イ 指揮命令権は発注者にあり、受注者に所属する作業者は、新たな雇用契約を発注者と結ぶことなく、発注者の事業所で作業を実施する。 ウ 指揮命令権は発注者にないが、発注者の事業所で作業を実施可能にするために、受注者に所属する作業者は、新たな雇用契約を発注者と結ぶ。 エ 指揮命令権は発注者になく、受注者に所属する作業者は、新たな雇用契約を発注者と結ぶことなく、発注者の事業所で作業を実施する。 問30回答 正解 エ 解説 労働法、請負契約に関する問題です。 ア 不正解 請負契約では指揮命令権は雇用者にあり、発注者の事業所で作業するために雇用契約を結ぶ必要はありません。 派遣契約であれば、発注者が労働者への指揮命令権を持つことができます。 イ 不正解 請負契約では指揮命令権は雇用者にあるので不正解です。 ウ 不正解 発注者の事業所で作業するために雇用契約を結ぶ必要はないため不正解です。 エ 正解 請負契約では、指揮命令権は雇用主にあり、発注者の事業所で新たな雇用契約を結ぶ必要もないため正解です。 過去問2013年春午前1へ 問29に戻る
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請負Wikiにようこそ 請負Wikiは、製造業請負(アウトソーシング)に関する情報を集約したサイトです。 業務請負とは 概要 受け入れ会社の指示に従う「労働者派遣」と違い、請負契約であるため、請負会社が労働者を指揮命令する。受け入れ会社は請負会社を通してしか指示できない。労働者派遣事業のような国への届出や許可が必要ないため、派遣労働者の受け入れが2004年2月まで禁止されていた製造業で広がった。 しかしながら、実態は労働者派遣に該当することも多く(請負を偽装した労働者派遣であるという意味で偽装請負という)、またこのような業者を使うことは長期的な観点からみれば重要な経営資源である「人」と「情報」を失うことにつながる。これは技術の継承や重要情報の引継ぎがなされなかったり、情報漏洩や産業スパイ行為の温床となりうるためである(事実、外注業者による情報漏洩事件がここ数年多発している)。また、偽装請負の状態になると労働者の賃金が抑えられたり、長時間労働を強要する傾向が無意識のうちに強まり、製品品質の劣化に直結することもある。 このように問題点が噴出しており、ここ数年で社会問題化が顕著である。 労働者派遣法が改正され、製造業にも労働者派遣が解禁されたが、今もって正規の派遣業者ではなく請負業者を使う企業は多い。ただし2006年夏以降の偽装請負報道(主に朝日新聞による)がきっかけとなり、前述の理由や上場企業会計改革および投資家保護法(通称「SOX法」。日本のそれについては内部統制を参照)への対応もあって不適切な請負業者を排除する傾向が強まりつつある。 業務請負と労働者派遣については、昭和61年労働省告示第37号「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」により区分されている。 日本経団連の御手洗冨士夫元会長は経済財政諮問会議の席上で「請負で業者が労働者に命令できないのはおかしい」などとして、偽装請負の合法化ともとれる主張をしており、非難されている。 ■請負wikiの作成者プロフィール 池田雅之 NECで設備設計・製品開発・管理・製造部長等経験、その間ISO監査員・PEC山田先生指導のトヨタ生産方式インストラクタ等の資格を取得。 50代半ばで退職後人材派遣業界のコンサルタントとして請負化・業務改善・教育等の業務に従事し現在に至る。 【池田雅之ブログ:請負の品格】 showrss プラグインエラー RSSが見つからないか、接続エラーです。
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判示事項の要旨: 市の住民が,市発注の清掃工場建設工事の入札において,違法な談合によって入札額が不当につり上がり市が損害を被ったとして,受注業者に対し,市に代位して行った損害賠償の請求が一部認容された事例 主 文 1 第1事件原告ら及び第2事件原告らの主位的請求に係る訴えを却下する。 2 被告は,京都市に対し,金11億4450万円及びうち金3億7939万4100円に対する平成12年5月8日から,うち金7億6510万5900円に対する平成13年5月26日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 第1事件原告ら及び第2事件原告らのその余の請求を棄却する。 4 訴訟費用は,第1事件及び第2事件を通じて,これを5分し,その1を被告の負担とし,その余を第1事件原告ら及び第2事件原告らの負担とする。 事 実 及 び 理 由 第1 請求 1 主位的請求 被告は,京都市に対し,248億3947万5500円及びうち76億8500万円に対する平成12年5月8日(第1事件の訴状送達の日)から,うち171億5447万5500円に対する平成13年5月26日(第1事件の請求の拡張申立書送達の日)から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 予備的請求 被告は,京都市に対し,57億3218万6653円及びうち17億7346万1538円に対する平成12年5月8日から,うち39億5872万5115円に対する平成13年5月26日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 第1事件は,京都市の住民である第1事件原告らが,京都市が発注したごみ処理設備建設工事の請負契約の一般競争入札において,被告が違法な談合を行い,その結果,落札価格が不当につり上げられ,京都市が損害を被ったなどと主張して,地方自治法(以下「法」という。)242条の2第1項4号(平成14年法律第4号による改正前のもの)により,上記請負契約等の相手方である被告に対し,主位的には,上記請負契約等は公序良俗に反し無効であるとして,工事代金として受け取った公金(合計248億3947万5500円)相当額の不当利得金及びこれに対する遅延損害金を,予備的には,不法行為に基づく損害賠償金(上記金額の13分の3相当額)及びこれに対する遅延損害金を,それぞれ京都市に支払うよう請求する住民訴訟である。 第2事件は,京都市の住民である第2事件原告ら(以下,これと第1事件原告らとを併せて「原告ら」という。)が,第1事件と同じ被告に対し,同一の請求をして,第1事件に共同訴訟参加をした事件である(なお,第2事件は,第1事件の別件訴訟として提起されたものであるが,共同訴訟参加の要件を満たしているから,その訴えの提起は共同訴訟参加の申立てとして取り扱うのが相当である。)。 2 基礎となる事実(争いのない事実のほか,末尾に掲記した証拠(書証番号はいずれも枝番を含む。以下同じ。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実) (1) 原告らは,いずれも京都市の住民である。 (2) 被告は,ストーカ式燃焼装置を採用する全連続燃焼式(以下「全連」という。)及び准連続燃焼式(以下「准連」という。)のごみ焼却施設(当該ごみ焼却施設と一体として発注されるその他のごみ処理施設を含む。以下「ストーカ炉」という。)を構成する機械及び装置の製造業並びに清掃施設工事業を営む者である。 (3) ごみ焼却施設の発注方法等 ア 普通地方公共団体(以下「地方公共団体」という。)は,ごみ処理施設を建設する実行年度の前々年度以前に,ごみ処理基本計画を策定し,将来の人口の増減予測に基づいてごみの種別ごとの排出量を推計し,リサイクルすることができるごみの量や地域内で処理が必要なごみの量等を把握した上,その処理のために設置すべき施設の整備計画の概要を取りまとめている。 そして,地方公共団体は,ごみ処理施設の建設用地の選定,環境アセスメント,都市計画の決定等の手続を経た上,実行年度の前年度にごみ処理施設整備計画書を作成し,都道府県を経由して国に同計画書を提出するところ,工事費用を把握するため,将来の入札に参加させることのできる施工業者を選定し,工事の仕様を提示して参考見積金額を徴している。 国が国庫補助事業として予算計上したごみ処理施設整備事業については,予算計上後に内示がされ,当該地方公共団体は,内示を受けた後,指名競争入札,一般競争入札又は指名見積り合わせ(以下「指名競争入札等」という。)又は特命随意契約のいずれかの方法により発注しているが,ほとんどが指名競争入札等の方法により発注されている。 イ 地方公共団体は,指名競争入札又は指名見積り合わせの方法で発注するに当たっては,入札参加資格申請をした者のうち,地方公共団体が競争入札参加の資格要件を満たす者として登録している有資格者の中から入札参加業者を指名している。 また,地方公共団体は,一般競争入札の方法で発注するに当たっても,資格要件を定め,一般競争入札に参加しようとする者の申請を受けて,その者が当該資格要件を満たすかどうかを審査し,資格を有する者だけを入札参加業者としている。 (4)ア 京都市は,京都市東北部清掃工場(仮称。現在の京都市東北部クリーンセンター。以下「本件清掃工場」という。)のごみ処理設備建設工事(以下「本件工事」という。)の請負契約を一般競争入札の方法により締結することとし,予定価格を222億8571万5000円と定めた上,平成8年11月18日,本件工事の入札(以下「本件入札」という。)を行い,被告が入札価格218億円で落札した。 本件入札には,被告のほか,株式会社タクマ(以下「タクマ」という。),日本鋼管株式会社(現商号はJFEエンジニアリング株式会社。以下「日本鋼管」という。),日立造船株式会社(以下「日立造船」という。),三菱重工業株式会社(以下「三菱重工業」という。),株式会社荏原製作所(以下「荏原製作所」という。)及び株式会社クボタ(以下「クボタ」という。)が参加していた。 イ 京都市は,本件入札の結果に基づき,被告との間で,平成8年12月13日,本件工事について,代金を228億9000万円(うち消費税相当額10億9000万円)とする請負契約(以下「本件ごみ処理設備工事請負契約」という。)を締結した(甲8)。 ウ 京都市は,被告との間で,平成10年9月17日,随意契約の方法により,本件清掃工場の溶融設備建設工事等について,代金を19億4985万円とする請負契約(以下「本件溶融設備工事請負契約」といい,これと本件ごみ処理設備工事請負契約とを併せて「本件各請負契約」という。)を締結した。 (5) 京都市は,被告に対し,本件各請負契約に基づき,別紙2「公金支出経過等一覧」記載のとおり,代金を支払った(甲16から甲23まで,乙3,乙4)。 (6) 公正取引委員会(以下「公取委」という。)は,平成11年8月13日,被告,日立造船,日本鋼管,タクマ及び三菱重工業(以下,これらを併せて「5社」という。)が,遅くとも平成6年4月以降,地方公共団体が指名競争入札等の方法により発注するストーカ炉の建設工事について,共同して,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた事実が認められ,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独禁法」という。)3条の規定する「不当な取引制限」(独禁法2条6号)の禁止に違反するとして,5社に対し,独禁法48条2項に基づき排除勧告(以下「本件排除勧告」という。)をした。 5社が本件排除勧告を応諾しなかったため,公取委は,平成11年9月8日,審判開始決定をした。なお,公取委の平成16年3月29日付け審決案においては,本件工事を含む合計30件の工事について,5社による談合の事実が認定されている(甲査190)。 (7) 第1事件原告らは,京都市監査委員に対し,平成11年12月24日,監査請求を行ったところ,同監査委員は,平成12年1月14日,監査請求期間徒過を理由にこれを却下した。 また,第2事件原告らは,同監査委員に対し,同年2月4日,監査請求を行ったところ,同監査委員は,同月17日,監査請求期間徒過を理由にこれを却下した(以下,原告らの上記各監査請求を併せて「本件各監査請求」という。)。 3 本件の争点 (1) 主位的請求 ア 本案前の争点 主位的請求に係る訴えは,適法な監査請求を経たものであるか否か。 (ア) 監査請求期間の起算日は,いつであるか(以下,この点を「争点1」という。)。 (イ) 本件各監査請求が監査請求期間を徒過してされたものである場合,法242条2項ただし書にいう「正当な理由」があるか否か(以下,この点を「争点2」という。)。 イ 本案の争点 (ア) 本件ごみ処理設備工事請負契約は,公序良俗に反し,無効であるか否か。 この点に関し,被告が本件入札において談合を行ったか否かが争点となる(以下,この点を「争点3」という。本件ごみ処理設備工事請負契約が談合に基づいて締結された後に,そのような談合に基づく契約が公序良俗に反するものとして無効となるかどうかが問題となる。)。 (イ) 本件溶融設備工事請負契約は,無効か否か。 a 本件溶融設備工事請負契約は,随意契約の方法により締結されたことにより,無効となるか否か。 その前提として,京都市が本件溶融設備工事請負契約を随意契約の方法により締結したことは違法か否かが争点となる(以下,この点を「争点4」という。)。 b 本件溶融設備工事請負契約は,本件ごみ処理設備工事請負契約が無効であることにより,無効となるか否か(以下,この点を「争点5」という。)。 (ウ) 被告の利得及び京都市の損害 (2) 予備的請求 ア 本案前の争点 (ア) 本件各監査請求の対象と予備的請求に係る訴えの対象とは,同一であるか否か(以下「争点6」という。)。 (イ) 京都市長は,損害賠償請求権の行使を違法に怠っているか否か(怠っていることの違法性が訴訟要件かどうかを含み,訴訟要件でない場合には本案の争点となる。以下「争点7」という。)。 イ 本案の争点 (ア) 被告は,本件入札において,談合を行ったか否か(争点3) (イ) 京都市が本件溶融設備工事請負契約を随意契約の方法により締結したことは,違法か否か(争点4)。 (ウ) 京都市が被った損害及びその額(以下「争点8」という。) 4 争点1から争点8までについての当事者の主張 (1) 争点1(監査請求期間の起算日)について(主位的請求に係る本案前の争点) (被告の主張) 本件各監査請求は,本件各請負契約が無効であることに基づき発生する実体法上の請求権の行使を怠る事実に係る監査請求であるから,法242条2項の監査請求期間の制限が適用される。 そして,原告らは,本件各請負契約の締結自体を財務会計上の行為として,その違法を主張するものであるから,監査請求期間の起算日となる同項の「当該行為のあった日又は終わった日」とは,本件各請負契約の各締結日をいうものと解される。 しかるに,本件各監査請求は,いずれも本件各請負契約の各締結日から1年以上経過した後に行われているから,監査請求期間を徒過した不適法なものである。 (原告らの主張) 建築請負契約のように,契約の締結とその履行としての代金の支払との間に時間的間隔のある契約においては,契約の締結及び代金の支払を一連の行為とみて,最後の代金支払日をもって監査請求期間の起算日と解するべきである。そうでないとしても,少なくとも,各代金支払日を監査請求期間の起算日と解するべきである。 したがって,本件各監査請求は,監査請求期間を徒過したものとはいえない。 (2) 争点2(法242条2項ただし書にいう「正当な理由」の有無)について(主位的請求に係る本案前の争点) (原告らの主張) 原告らは,平成11年8月18日に本件排除勧告に係る勧告書を入手したものであり,原告らが本件入札において談合が行われていたという事実を知ったのは,同日以降である。 そして,原告らは,その後,被告が本件排除勧告を受諾するか否かという動向を見守る必要があったこと,本件の事案は複雑であり,監査請求の準備のために時間を要したこと等の事情を考慮すれば,本件各監査請求が同日から約4か月後に行われたことをもって,相当な期間を徒過したとはいえない。 したがって,本件各監査請求が監査請求期間を徒過したものであるとしても,法242条2項ただし書にいう「正当な理由」がある。 (被告の主張) 平成10年9月17日及び翌18日には,公取委が5社に対し独禁法違反容疑で立入検査を実施した旨の新聞報道がされたこと,本件とほぼ同一の事実関係に基づく浦和市(当時)発注のごみ焼却炉建設工事請負契約に係る監査請求は同年12月に行われていること等にかんがみると,原告らは,相当の注意力をもって調査すれば,同月ころ,あるいは,遅くとも公取委が5社の談合についてほぼ断定した旨の新聞報道がされた平成11年8月9日ころまでには,監査請求が可能な程度の事実を知ることができたというべきである。 仮に,原告らが,本件排除勧告に係る勧告書を入手した同月18日まで談合に関する事実を知り得なかったとしても,本件各監査請求は,いずれもその日から4か月以上経過した後に行われているから,相当な期間を徒過したものというべきである。 したがって,本件各監査請求が監査請求期間を徒過したことに,「正当な理由」はない。 (3) 争点3(本件入札における談合の有無)について(主位的請求及び予備的請求に係る本案の争点) (原告らの主張) 被告は,以下のとおり,本件入札において,談合を行ったというべきである。 ア 5社間では,遅くとも平成6年4月以降,地方公共団体が指名競争入札等の方法により発注するストーカ炉の建設工事について,受注機会の均等化を図るため,次のような基本合意(以下「本件基本合意」という。)が成立していた。 (ア) 地方公共団体が建設を計画していることが判明した工事について,5社の各社が受注希望を表明し,①受注希望者が1社の工事については,その者を受注予定者とし,②受注希望者が複数の工事については,受注希望者間で話し合い,受注予定者を決定する。 (イ) 5社間で受注予定者を決定した工事について,5社以外のプラントメーカー(以下「アウトサイダー」ともいう。)が指名競争入札等に参加する場合には,受注予定者は自社が受注できるようにアウトサイダーに協力を求める。 (ウ) 受注予定者は受注すべき価格を定め,受注予定者以外の者は,受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する。 イ 5社は,本件基本合意に基づき,次のような方法により談合を行っていた。このことは,5社の関係者の公取委審査官に対する供述調書等からも明らかである。 (ア) 5社は,地方公共団体が建設を計画している工事について,各社が把握している情報を明らかにし合い,情報交換を行って各社の認識を一致させる。 (イ) 5社は,「張り付け会議」と称する会合を開催し,情報交換によって明らかになった工事のうち受注を希望する工事を表明する。 希望者が重複しなかった工事は,その希望者を受注予定者とし,希望者が重複した工事は,希望者間で話し合い,受注予定者を決定する。 (ウ) 受注予定者の決定は,規模別(1日当たりのごみ処理能力を基準とする。以下同じ。)に,大型(400トン以上),中型(200トン以上400トン未満)及び小型(200トン未満)の3つに区分して行う(ただし,平成8年末ころより以前は,「400トン以上の全連」,「400トン未満の全連」及び「准連」に区分していた。)。 (エ) 受注予定者の決定に当たっては,各社の受注する工事のトン数の合計が均等になるようにし,各社の受注実績等を基に,あらかじめ一定の方式により算出した数値を勘案して行う。 (オ) アウトサイダーが入札に参加する場合には,受注予定者は,自社が受注できるように協力を求め,その協力を得る。時には,受注に相当協力したアウトサイダーに受注させることもあり,この場合には他の4社の了解を得る。 もとより,アウトサイダーが入札参加業者にならないよう,発注者に対し,5社のみを指名するよう働きかける。 (カ) 受注予定者は,自社の受注価格を定めるほか,他の4社の入札価格を定めて各社に連絡する。受注予定者以外の者は,受注予定者から連絡を受けた入札価格で入札し,受注予定者が定めた価格で受注できるように協力する。 ウ 被告のストーカ炉の営業担当者であるaが所持していたリスト(別紙3の「年度別受注予想」と題する表(甲査89の1枚目。以下「aリスト」という。))は,平成7年9月28日時点で,5社が既に受注予定者を決定していた工事を,会社別の一覧表にまとめたものである。 aリストには,本件工事を表す「京都市-北700」という記載があり,その横に被告を表す「K」という文字が記載されており,これは,本件工事の受注予定者として被告が決定されていたことを示すものである。 したがって,本件入札については,遅くとも上記時点までに,本件基本合意に基づく個別談合がされ,被告を本件工事の受注予定者とすることが決定されていたというべきである。 しかも,本件入札においては,入札に参加した7社のうち,被告及び荏原製作所以外の入札価格はいずれも予定価格を上回っており,予定価格をわずかに下回った被告と荏原製作所のうち,より入札価格の低い被告が落札したものであり,このような事実も,個別談合の存在を推認させる。 (被告の主張) ア 本件基本合意について 5社間で本件基本合意が成立していたとの事実は,否認する。 本件基本合意について供述した関係者の公取委審査官に対する供述調書等には,およそ信用性がない。 また,原告らは,受注予定者を決める基本,受注対象物件の区分といった本件基本合意の核心部分である受注予定者の決定方法について,矛盾した主張をしている。 イ 個別談合について 本件入札において,本件基本合意に基づく個別談合がされ,被告を受注予定者とすることが決定されたとの事実は,否認する。 原告らは,本件入札に係る個別談合について,その主体,時期,受注予定者や受注予定価格の決定方法等の具体的内容を主張せず,請求原因事実を特定していない。 また,原告らは,個別談合について,何ら立証もしていない。原告らが,個別談合の直接証拠であると主張するaリストは,被告が独自に業界内の競争相手の動向を折り込んで受注予想を記載した社内資料にすぎない上,「京都市-北700」という記載は,本件清掃工場とは別の京都市北部クリーンセンターを表すものである。 さらに,本件入札にはアウトサイダーとして荏原製作所及びクボタが参加しているところ,原告らは,被告が,自社が受注できるように両社に対し協力要請をし,両社がこれに応じたという具体的事実について,全く主張立証せず,これを認めるに足りる証拠は一切存在しない。かえって,弁護士法23条の2第1項に基づく照会に対する荏原製作所及びクボタの回答書に照らすと,両社が被告からの協力要請を受けていなかったことは明らかである。 (4) 争点4(本件溶融設備工事請負契約を随意契約の方法により締結したことの違法性)について(主位的請求及び予備的請求に係る本案の争点) (原告らの主張) 溶融設備は,焼却灰や飛灰を溶融炉で溶融し,これを減容化・無害化・資源化する,ごみ処理設備とは別個の設備であるから,その工事について,競争原理を排除してまで,ごみ処理設備工事を請け負った業者に行わせるのが適当であるということはできない。 したがって,本件溶融設備工事請負契約は,競争入札によらないで随意契約の方法により締結することができる場合を定めた地方自治法施行令(以下「法施行令」という。)167条の2第1項各号のいずれにも該当しないから,法234条2項に違反し,違法である。 (被告の主張) 本件溶融設備工事請負契約は,本件ごみ処理設備工事請負契約に関連して,焼却炉等の基幹部分に設備を付加する工事であり,技術的見地及び経済的見地から,随意契約の方法により締結されたものである。 このように,京都市長が本件溶融設備工事請負契約の締結について法施行令167条の2第1項2号に該当すると判断したことには合理性があり,本件溶融設備工事請負契約を随意契約の方法により締結したことは,何ら違法ではない。 なお,仮に,本件溶融設備工事請負契約を随意契約の方法により締結したことが法令に違反するとしても,これによって,当該契約が私法上当然に無効となるわけではない。 (5) 争点5(本件ごみ処理設備工事請負契約が無効であることにより,本件溶融設備工事請負契約は無効となるか否か。)について(主位的請求に係る本案の争点) (原告らの主張) 本件ごみ処理設備工事請負契約は,公序良俗違反により無効というべきであるから,これに付随して締結された本件溶融設備工事請負契約についても,随意契約の方法により締結することが許容された基礎を失い,無効と評価されるべきである。 (被告の主張) 本件溶融設備工事請負契約は,本件ごみ処理設備工事請負契約とは別個独立の契約であり,随意契約の方法により締結されたものであるから,仮に,本件ごみ処理設備工事請負契約が公序良俗違反により無効であるとしても,これによって本件溶融設備工事請負契約が当然に無効となるわけではない。 (6) 争点6(本件各監査請求の対象と予備的請求に係る訴えの対象との同一性)について(予備的請求に係る本案前の争点) (被告の主張) 本件各監査請求は,本件各請負契約の無効等を理由として,不当利得に基づき既に支払われた工事代金の返還,将来の支払の差止め等の措置を講ずることを求めたものであり,被告の談合という不法行為に基づく損害賠償請求権の行使ないし当該請求権の怠る事実について監査請求の対象としていたものではない。 したがって,予備的請求に係る訴えは,適法な監査請求を経ずに提起されたものであり,不適法である。 (原告らの主張) 監査請求と住民訴訟の請求との同一性については,住民の実質的な不服の内容を考慮して,請求の同一性があれば足りるものと解される。 本件各監査請求は,被告の談合という違法行為により京都市が損害を被ったことを指摘した上で,工事代金の返還,公金支出の差止め等の適切な措置を講ずることを求めたものであり,その適切な措置の一つとして,損害賠償請求をも含むものである。 したがって,本件各監査請求は,損害賠償請求を怠る事実の是正についても求めていたといえるから,本件各監査請求の対象と予備的請求に係る訴えの対象には,同一性がある。 (7) 争点7(怠る事実の違法性)について(予備的請求に係る本案前ないし本案の争点) (被告の主張) 住民訴訟において,財産の管理を怠る事実の違法性は,適法な住民訴訟を提起するための前提となるものであり,訴訟要件であると解するべきである。 京都市長は,民法709条に基づく損害賠償請求訴訟を提起するか,公取委の審決確定後に独禁法25条に基づく損害賠償請求訴訟を提起するかについて,選択権を有するところ,公取委の審決により被告の違反行為が確定した場合には,独禁法25条に基づく損害賠償請求を検討するという方針を選択したものと解される。 そして,公取委の審決確定後は,審判事件の記録に依拠して主張立証をすることが可能であり,立証責任も大幅に軽減されることに照らすと,京都市長が審判事件の進行中にあえて民法709条に基づく損害賠償請求訴訟を提起しないという選択をしたことは,合理的裁量の範囲内にあり,違法とはいえない。 したがって,現時点において,京都市長が違法に損害賠償請求権の行使を怠る事実が存在しないことは客観的に明白であるから,予備的請求に係る訴えは不適法である。 仮に,怠る事実の違法性が,訴訟要件ではなく,実体要件であるとしても,上記のとおり,京都市長の損害賠償請求権の不行使を違法と評価することができないことは明らかであるから,具体的な損害賠償請求権の存否について判断するまでもなく,原告らの請求は棄却されるべきである。 (原告らの主張) 独禁法違反の行為によって自己の法的利益を害された者は,当該行為が民法上の不法行為に該当する限り,これに対する審決の有無にかかわらず,別途,一般の例に従って損害賠償を請求することを妨げられない。 したがって,現時点において,京都市長が損害賠償請求権を行使することは法律上当然可能であるから,これを怠る事実が存在していることは明らかである。 そして,住民訴訟の口頭弁論終結時において,不法行為の相手方に対する損害賠償請求権の存在が認められる場合には,地方公共団体が被った損害の早期回復が図られるべきであるから,長が当該請求権の行使を怠っている事実は違法と評価されるべきである。 (8) 争点8(京都市が被った損害及びその額)について(予備的請求に係る本案の争点) (原告らの主張) ア 被告の談合によって京都市が被った損害額を立証することは,その性質上不可能であるから,損害額については,民事訴訟法(以下「民訴法」という。)248条により,口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づいて認定されるべきである。 別紙4「ストーカ炉の建設工事一覧」(以下「工事一覧表」という。)のとおり,平成6年4月1日から平成10年9月17日までの間に地方公共団体が指名競争入札等の方法により発注したストーカ炉の建設工事において,中型以上の規模のもののうち,公取委の審決案において談合が認定されたもの(1番から5番まで,9番から11番まで,14番,17番,18番,21番,29番,35番,36番,38番,39番,43番,44番,49番,51番,54番,58番,60番,61番,73番,74番,76番,80番,83番から85番まで)の平均落札率(落札率とは,落札価格の予定価格に対する割合をいう。以下同じ。)は98.75%であるのに対し,談合が認定されず,かつ,明らかに談合が行われた形跡が認められない工事(41番,42番,70番)の平均落札率は66.52%であり,両者の間には32.23%もの差が生じている。 したがって,本件入札においても,談合により本件ごみ処理設備工事請負契約の落札価格は不当につり上げられたものであり,京都市は,少なくとも落札価格の30%に相当する金額について損害を被ったというべきである。 イ 前記のとおり,本件ごみ処理設備工事請負契約の価格は談合により不当につり上げられたところ,これを前提として競争原理を排除して随意契約の方法により締結された本件溶融設備工事請負契約の価格についても,同様に不当につり上げられたと推認すべきである。 ウ よって,原告らは,被告に対し,前記損害のうち,本件各請負契約の代金額の13分の3に相当する合計57億3218万6653円について,京都市に支払うよう請求する。 (被告の主張) 民訴法248条は,損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるときに限って適用されるものであり,原告らは,損害額について,可能な限りの立証を要する。しかるに,原告らは,損害の発生及びその額について,主張立証を尽くしていない。 また,公正な自由競争を前提としても,予定価格に近い落札価格で落札されることはいくらでもあり得るのであって,原告らの主張のように,落札率の高低と談合の有無とを短絡的に結び付けることには合理性がない。落札率は,予定価格がどの程度の金額に設定されるかによって変動する,極めて相対的な数値というべきである。 しかも,原告らが談合が行われたとする事案と談合が行われた形跡が認められないとする事案との間に顕著な落札率の差がみられるのは,落札率の高低を基準として談合の有無が判断されているからにほかならず,明らかな循環論法である。 第3 争点に対する判断 1 主位的請求について (1) 争点1(監査請求期間の起算日)について 原告らは,本件各監査請求において,本件各請負契約は談合により締結されたものであり,無効又は取消し・解除をすべき行為である旨主張していたものであるから,本件各監査請求の対象とされた財務会計上の行為は,本件各請負契約の締結行為という支出負担行為であったものと解される。 そうすると,本件各監査請求において,監査請求期間の起算日となる法242条2項の「当該行為のあった日又は終わった日」とは,本件各請負契約の締結日をいうものと解するのが相当である。 そして,前記基礎となる事実のとおり,本件ごみ処理設備工事請負契約は平成8年12月13日に,本件溶融設備工事請負契約は平成10年9月17日に,それぞれ締結されたところ,本件各監査請求は,これらの各締結日から1年以上経過した後(第1事件原告らは平成11年12月24日,第2事件原告らは平成12年2月4日)に行われているから,いずれも監査請求期間を徒過したものというべきである。 これに対し,原告らは,契約の締結とその履行としての代金の支払とを一連の行為とみて,本件各請負契約の最後の代金支払日,あるいは少なくとも各代金支払日を監査請求期間の起算日と解するべきである旨主張する。 確かに,契約の締結といった支出負担行為と当該契約に基づく支出とは,一連の行為ではあるが,その権限が属する者や,それぞれの行為に適用される実体上,手続上の財務会計法規の内容は同一ではなく,互いに独立した財務会計上の行為というべきものであり,監査請求において,これらの行為のいずれを対象とするのかにより,監査すべき内容も異なることになる。したがって,支出負担行為及び支出については,その監査請求期間は,それぞれの行為のあった日から各別に計算すべきものというべきである(最高裁平成11年(行ヒ)第131号同14年7月16日第三小法廷判決・民集56巻6号1339頁参照)。これを実質的にみても,契約の履行としての支出について固有の違法事由を主張せず,単に契約の締結が違法であることを理由に,支出が違法であると主張した場合に,当該支出の日をもって監査請求期間の起算日と解するとすれば,契約締結行為を対象とする監査請求の期間が経過した後であっても実質的に契約内容の違法について争えることとなり,財務会計上の行為を早期に確定させ,法的安定性を図るために監査請求期間の制限を設けた法の趣旨を没却することとなり,相当ではない。 したがって,原告らの上記主張は,採用することができない。 (2) 争点2(法242条2項ただし書にいう「正当な理由」の有無)について 法242条2項ただし書にいう「正当な理由」の有無は,特段の事情のない限り,地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査したときに客観的にみて当該行為を知ることができたかどうか,また,当該行為を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきである(最高裁昭和62年(行ツ)第76号同63年4月22日第二小法廷判決・裁判集民事154号57頁参照)。 これを本件についてみると,証拠(末尾に掲記した各書証)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。 ア 京都市住民の一部は,本件清掃工場の建設について,その計画段階から強い関心を有しており,平成3年以降,京都市と交渉を重ね,随時建設計画に関する情報の提供を求め,平成10年には,本件清掃工場の建設工事の差止めを求める訴えを提起していた(甲2から甲4まで)。 イ 公取委は,地方公共団体が発注するストーカ炉の入札について5社が談合を繰り返している疑いがあるとして,平成10年9月17日,独禁法違反容疑により5社に対する立入検査を実施した。 朝日新聞,読売新聞,日本経済新聞等の複数の新聞は,同日又は翌18日,5社の社名を掲げて,上記事実を報道した(甲9)。 ウ 朝日新聞は,平成10年10月29日,昭和53年に5社,荏原製作所及びクボタの各担当者が会合を開催し,地方公共団体が発注するストーカ炉の建設工事を対象として,過去の実績に応じて各社の年間受注トン数の割合を定め,各社の受注希望を星取表にまとめるなどの受注調整をしていた旨を報道した(甲10)。 エ 読売新聞は,平成11年8月9日,朝刊第1面で,地方公共団体が発注するストーカ炉の入札をめぐる談合疑惑で,公取委が5社に対して排除勧告をすると決め,1社当たり30億円を超える課徴金が課される可能性もある旨を報道し,平成8年度から平成10年度までに5社が受注した主な焼却炉の一覧表を掲載した。この一覧表には,被告の受注物件として,本件清掃工場に該当する「京都市・東北(218億円)」という記載がされていた(甲12)。 オ 公取委は,平成11年8月13日,5社に対し本件排除勧告をし,原告らは,同月18日,本件排除勧告に係る勧告書をファクシミリで取り寄せた。 上記認定の事実によれば,原告らは,相当の注意力をもって調査すれば,遅くとも,本件工事を掲記した新聞報道がされた平成11年8月9日ころまでには,上記新聞報道等に基づき,監査請求の対象を特定し,その違法事由を監査請求書に摘示することは十分可能であったというべきである。 ところが,第1事件原告らが監査請求をしたのは同年12月24日,第2事件原告らが監査請求をしたのは平成12年2月4日であり,それぞれ平成11年8月9日から約4か月半,あるいは約6か月経過しているものであるから,原告らが,被告が本件排除勧告を応諾するか否かという推移を確認し,監査請求の準備のため慎重に事実関係を調査する必要があったという事情を勘案しても,本件各監査請求は相当な期間を徒過しているといわざるを得ない。 したがって,原告らが監査請求期間を徒過したことについて,法242条2項ただし書にいう「正当な理由」があるということはできない。 (3) 以上によれば,原告らの主位的請求に係る訴えは,適法な監査請求を経たものとはいえないから,その余の点を判断するまでもなく,不適法というべきである。 2 予備的請求について (1) 争点6(本件各監査請求の対象と予備的請求に係る訴えの対象との同一性)について 被告は,本件各監査請求は,本件ごみ処理設備工事請負契約の無効等を理由として,不当利得に基づき工事代金として受け取った公金相当額の返還等を求めるものであるのに対し,予備的請求に係る訴えは,被告の談合という不法行為に基づき損害賠償を求めるものであるから,両者には同一性がない旨主張する。 しかしながら,住民訴訟とこれに前置されるべき監査請求とは,その対象が同一でなければならないものではあるが,両者の同一性は,必ずしも形式的な同一性を要するわけではなく,実質的な同一性があれば足りると解される。 これを本件についてみると,本件各監査請求と予備的請求に係る訴えとは,いずれも,本件入札における被告の談合の事実を指摘して,本件各請負契約の締結という財務会計上の行為を対象としているものである。また,本件各監査請求は,京都市に対し,既に支払われた工事代金の返還,支払の差止め等の是正措置を講ずることを求めているが,このような是正措置には,地方公共団体が被った損害を補填するために必要な措置を講ずべきこと,すなわち,被告に対して損害賠償を求める訴えを提起することも含まれていると解するのが相当である。 したがって,本件各監査請求の対象とされた行為と予備的請求に係る訴えの対象とされた行為とには,同一性が認められるというべきである。 (2) 争点7(怠る事実の違法性)について 独禁法違反の行為によって自己の法的利益を害された者は,当該行為が民法上の不法行為に該当する限り,これに対する審決の有無にかかわらず,別途,一般の例に従って損害賠償の請求をすることを妨げられない(最高裁昭和60年(オ)第933号・第1162号平成元年12月8日第二小法廷判決・民集43巻11号1259頁参照)。 原告らは,京都市は,被告が談合により本件ごみ処理設備工事請負契約を締結したという不法行為に基づく損害賠償請求権を有しているにもかかわらず,京都市長がこれを行使しないとして,法242条の2第1項4号に基づき,被告に対し,京都市に代位して損害賠償請求訴訟を提起したものであるところ,京都市長が現に被告に対してかかる損害賠償請求権を行使していないことは,当裁判所に顕著である。 ところで,地方公共団体の債権については,その長がこれを行使すべき義務を負い,行使するか否かについての裁量の余地はほとんどないものと解される(法施行令171条以下。なお,法96条1項10号参照)。したがって,長が,法施行令171条の5に定める場合でないのに,相当期間債権を行使しないときは,それを正当とする特段の事情のない限り,違法というべきである。 この点,被告は,京都市長が公取委の審決が確定するまで上記損害賠償請求権を行使しないことには合理性がある旨主張する。 しかしながら,公取委の審判手続において,被告を含む5社が談合の事実を全面的に否認して争っている状況にかんがみると,審決が確定するまでには,審決取消訴訟の帰すう等を含め,なお長期間を要することが想定される。しかるに,その間,京都市長が上記損害賠償請求権を行使しないでいるとすれば,地方公共団体の被った損害の回復が図られない状態が長期間継続し,法242条の2第1項4号に基づく損害賠償代位請求訴訟の目的に沿わないばかりか,将来,被告から,上記損害賠償請求権の消滅時効が援用されるなどして,債権の行使に支障が生じる危険性も生じかねず,上記損害賠償請求権を行使しないことを正当とする特段の事情に当たるとはいえない(なお,独禁法25条の規定に基づく損害賠償請求が将来可能になるとしても,そのことが,現に発生している不法行為に基づく損害賠償請求権を現に行使しないことを正当化する理由とはならない。)。 そして,本件において,かかる損害賠償請求権が発生していることは,後記認定判断のとおりであるから,怠る事実の違法性が訴訟要件であるか実体要件であるかを問わず,いずれにせよ,被告の主張は失当である。 (3) 争点3(本件入札における談合の有無)について ア 証拠(甲査29,甲査31,甲査149,甲査160)及び弁論の全趣旨によれば,ストーカ炉の建設工事市場における5社の地位について,以下の事実が認められる。 (ア) ストーカ炉の建設工事のプラントメーカーとしては,5社のほかに,荏原製作所,クボタ,住友重機械工業株式会社(以下「住重」という。),ユニチカ株式会社(以下「ユニチカ」という。),石川島播磨重工業株式会社(以下「石川島播磨重工」という。),株式会社川崎技研,三機工業株式会社等が存在している。 これらのプラントメーカーの中でも,5社は,ストーカ炉の建設工事について,施工実績の多さ,施工経歴の長さ,施工技術の高さ等から,「大手5社」と称されている。 (イ) 平成3年度から平成7年度(平成7年9月11日現在)までの5年間に,ストーカ炉(100トン以上)の建設工事について,発注者である地方公共団体から指名を受けた実績をみると,5年間の全体指名率は,三菱重工業は95.4%,タクマは87.4%,日本鋼管は86.0%,被告は85.9%,日立造船は85.0%であり,一方,荏原製作所は24.1%,クボタは17.2%,石川島播磨重工は4.7%,ユニチカは4.0%にとどまり,5社とそれ以外のプラントメーカーとの間には大きな格差が存在していた。 (ウ) 平成4年度から平成9年度までの間に,5社を含むプラントメーカーがストーカ炉の建設工事を受注した実績をみると,日立造船は6739トン(シェア15.0%),タクマは6520トン(同14.5%),三菱重工業は5315トン(同11.9%),日本鋼管は5297トン(同11.8%),被告は3977トン(同8.9%)であり,一方,荏原製作所は1729トン(同3.9%),クボタは1620トン(同3.6%),住重は1324トン(同3.0%),ユニチカは457トン(同1.0%)にとどまっていた。 また,平成6年4月1日から平成10年9月17日までの間に,地方公共団体が指名競争入札等の方法により発注したストーカ炉の建設工事の件数は87件であり(その発注者,全連・准連の別,処理能力,落札業者等の詳細は,工事一覧表のとおり。),発注トン数(トン数は,1日当たりのごみ処理能力を示す。以下同じ。)は2万3529トン,発注金額は約1兆1031億円である。そのうち,5社のいずれかが受注した件数は66件であり,受注トン数は,発注トン数の約87.3%に相当する2万0534トン,受注金額(落札金額による。以下同じ。)は,発注金額の約87%に相当する約9601億円に及んでいた。 このように,ストーカ炉の建設工事の受注実績においても,5社とそれ以外のプラントメーカーとの間には,大きな格差が存在していた。 イ 本件入札について談合が存在したことを推認させる事実又は証拠として,次のようなものがある(なお,固有名詞については,甲査190に基づき適宜補充している。)。 (ア) 5社の会合の開催 証拠(甲査33,甲査46,甲査104,甲査105,甲査139)によれば,5社は,持ち回りで会合を開催していたこと,この会合には,三菱重工業から本社機械事業本部環境装置第一部環境装置一課長b,日立造船から環境・プラント事業本部環境東京営業部長c,日本鋼管から環境第一営業部第一営業室長d,タクマから環境プラント統轄本部東京環境プラント部第二課長e,被告から本社機械・環境・エネルギー事業本部環境装置営業本部環境装置第一営業部長f(平成8年4月以前はg)が出席していたこと,これらの者は,5社各社の本社のごみ焼却施設の営業担当部門の課長ないし部長待遇の者であり,ストーカ炉の建設工事の選定過程や入札価格の決定過程に関与し得る立場にあったことが認められる。 (イ) 関係者の供述 5社がストーカ炉の発注予定物件について受注予定者を決定する行為をしていたことについて,5社の関係者は,以下のとおり供述している。 a 三菱重工業のbの供述 (a) bは,昭和61年10月から,三菱重工業本社の機械事業本部環境装置第一部環境装置一課に所属し,平成6年4月,同課主務(課長待遇)に,平成8年4月,同課課長に就任し,ごみ処理プラントの官公庁部門の営業の実質的な責任者として,受注物件,販売価格等を決定していた(甲査28)。 bの公取委審査官に対する平成10年9月17日付けの各供述調書(甲査28,甲査46)には,おおむね次のような供述部分がある。 「bは,平成6年4月以降,5社の会合に出席するようになった。会合の出席者は,どのような発注予定物件があるかについて,共通の認識を有しており,各出席者が,発注予定物件について受注希望を出して「チャンピオン」と呼ばれる受注予定者を決定する。受注希望者が1社の場合には,当該会社が受注予定者となり,受注希望者が2社以上の場合には,希望者同士が話し合って受注予定者を決定する。発注予定物件は,規模別に,400トン以上の大型,200トン以上の中型及び200トン未満の小型の3つに区分し,それぞれに分けて受注希望を確認している。受注予定者の決定は,各社が平等に受注することを基本とし,各社の受注物件の処理能力の合計が平等になるようにしている。受注予定者は,指名を受けた物件について積算し,5社を含む各相指名業者に入札の際に書き入れる相手方の金額を電話等で連絡して協力を求めている。5社以外の会社が一緒に指名を受けた場合には,受注予定者が個別に当該会社に協力を求め,受注予定者が受注できるようにしている。」 (b) bの供述の信用性 bの上記各供述調書には,5社の会合で受注予定者を決定する方法について,ストーカ炉を規模別に3つに区分し,それぞれについて受注希望物件を確認して受注予定者を決めるなど,具体的であり,実際に会合に出席した者でなければ知り得ない事実が含まれていたことにかんがみると,相当程度の信用性が認められるというべきである。 これに対し,被告は,bの上記各供述調書は,個別具体的な事実関係が述べられておらず,抽象的かつ曖昧な内容である上,客観的事実と明白に異なる記載も多く,更に,b自身,その内容が誤りであると述べているのであるから,およそ信用性がない旨主張する。そして,被告は,①bが環境装置一課長に就任したのは平成8年4月であり,b自身の課長就任時期や職務上の権限に関する記載が客観的事実に反している,②上記各供述調書は,公取委が三菱重工業への立入検査を実施した当日に作成されたものであり,混乱に乗じ,審査官の誤った先入観と予断によって誘導して作成された疑いがある,③上記各供述調書は,bに閲読をさせずに作成されたものであり,bが供述内容を冷静に確認した上で署名指印をしたとはいえず,bの供述内容を正確に記載したものではない,④bの公取委審査官に対する審訊調書(甲査176,甲査189)には,談合の存在を明確に否定しているものがある,などと指摘するので,これらの点について検討する。 ①の点については,bは,環境装置一課長に就任する以前である平成6年4月から,同課主務として,実質的には課長と同等の決裁権限を有していたものであるし,bの職務上の権限等に関しても,客観的事実に反する供述がされているとは認められない。 ②の点については,上記各供述調書は,公取委が三菱重工業への立入検査を実施した当日に作成されたことからすると,最も記憶が鮮明で,かつ,他の者に相談したり,他の者から示唆又は指示を受けることのない状況で供述されたものと解することができる。しかも,審査官が,立入調査によって収集した証拠を整理・検討するいとまのない時点で事情聴取をしたのであるから,誘導がされた可能性は低いといえ,当日の事情聴取の経緯,内容等に関するbの審訊調書(甲査165から甲査173まで,甲査182から甲査189まで)に照らしても,審査官が,不当にbの意思を抑圧したり誘導したりしたことをうかがわせる事情は認められない。 ③の点については,上記各供述調書は,bが,審査官から内容について読み聞かせをされた後,誤りのない旨を申し立てて自ら署名指印をしたものであるから,bに閲読をさせなかったことをもって直ちに,その信用性が低下するとはいえない。また,上記各供述調書の内容は,日本鋼管のdが所持していた,bと審査官とのやり取りを記載したと推認されるメモ(甲査36,甲査80。これらをdが所持していたことについては甲査140)の内容ともおおむね一致していることからすると,bは,自己が供述した内容について十分認識していたものとみることができる。 ④の点については,上記のとおり,上記各供述調書には,実際に会合に出席した者でなければ知り得ない具体的事実が含まれていたのに対し,bが,審査官に対して供述した内容を上司や弁護士に報告した後になってから,談合の事実を否認するに転じたという経緯は,むしろ不自然であるというべきである。 以上によれば,被告の主張によっても,bの上記各供述調書の信用性を左右するには足りない。 b 日本鋼管のhの供述 (a) hは,平成8年7月から,日本鋼管大阪支社の機械プラント部環境プラント営業室長を務めていた。 hの公取委審査官に対する平成10年9月18日付けの供述調書(甲査44)には,おおむね次のような供述部分がある。 「大阪支社では,官公庁が発注するごみ処理プラントの見積価格や入札価格については,すべて本社の環境プラント営業部第二営業部第一営業室から指示された価格で対応している。hは,平成8年の秋から冬にかけて,本社環境プラント営業部第二営業部長のi,同部第一営業室長のj及び同室係長のkから,飲食店で酒を飲みながら,ごみ処理プラント施設についてメーカー間で行われている受注調整の話を聞いた。その内容は,「5社のみで指名競争入札が行われる場合には,5社のルールによって,あらかじめ物件ごとにチャンピオンが決められる。5社の担当者が集まる張り付け会議と呼ばれる会議を年1回開催し,5社が情報を有しているストーカ炉の物件について,5社が平等に分け与える形でチャンピオンを決めている。受注希望を出したのが1社の場合には,そのメーカーがチャンピオンになり,複数のメーカーの場合には,そのメーカー間でその場でチャンピオンを決める。ストーカ炉は,規模ごとに,400トン以上の大規模物件,100トン以上400トン未満の中規模物件,100トン未満の小型物件(准連)に分けて,物件ごとにチャンピオンを決める。」というものであった。」 また,hが,部下を指導するために,上記会話の内容をまとめて作成したというメモ(甲査35)が存在し,これには,同様の内容が記載され,受注予定者を決める基本として,「比率は5社イーブン(20%)」,「20%のシェアを維持する方法は受注トン数/指名件数」との記載もされている。 (b) hの供述の信用性 被告は,h及びiは,いずれも受注調整に関わる行為を直接体験した者ではないから,hの供述は再伝聞にすぎず,信用性がない旨主張する。 しかしながら,iは,5社の会合の出席者ではないものの,当時日本鋼管本社の環境プラント営業部第二営業部長の立場にあり,主として西日本地区における営業活動を管理していた者であり,日本鋼管が「賀茂広域行政組合」工事について他の入札参加業者4社の1回目から4回目までの入札価格等を算出した資料(甲査124)を所持していたことからしても,受注調整に関わる行為を直接体験していたということができる。 また,hも,日本鋼管大阪支社において,近畿一円の官公庁が発注するごみ処理プラントの受注業務等の責任者であった者であり,職務の性質上,かねてから各社の受注状況等に関心を持ち,業務上の知識も有していたことを勘案すると,hがi等から聞き取った内容には,相当程度の信用性を認めることができるというべきである。 c 三菱重工業のlの供述 lは,平成8年3月,三菱重工業中国支社の機械一課に配属され,同年4月から同課課長を務め,官公庁向けのごみ焼却施設等の営業を担当していた。 lの公取委審査官に対する平成10年9月18日付け(甲査42),平成11年7月26日付け(甲査43,甲査49)及び同月27日付け(甲査102)の各供述調書には,おおむね次のような供述部分がある。 「lは,前任者のmから引継ぎを受けた際,ごみ処理施設の受注については,5社が,受注機会均等を図るため,受注予定者を決め,受注予定者が受注できるように仲良く話し合っている,実際の入札での受注予定者を決める話合いは,各社の本社レベルで行われていると聞いた。現在,受注調整が行われなくなったとは聞いていない。」 また,lがmから引き継いだ内容を記載したというメモ(甲査40)が存在し,これには,「5社 機会均等」,「全連24H/DAY:東京仲 准連18H/DAY:東京仲 機バ8H/DAY:」など,上記の供述内容に沿う記載がされている。 d 三菱重工業のnの供述 nは,平成元年4月,三菱重工業中国支社の化学環境装置課(後に機械一課に名称変更)に配属され,官公庁向けのごみ焼却施設等の営業を担当していた。 nの公取委審査官に対する平成11年2月4日付け(甲査47)及び同月5日付け(甲査108)の各供述調書には,おおむね次のような供述部分がある。 「nは,化学環境装置課に配属された際,前任者のoから,「業界(機種別)の概況について」という書き出しの文書を引き継ぎ,ストーカ炉の受注については5社間に受注調整のための協定が存在し,5社が受注機会を均等化していると聞いた。oがごみ処理施設の営業を担当するようになってからも,受注調整行為は行われている。受注調整行為は,本社レベルで行われており,課長クラスの者が対応していると思う。」 そして,nがoから引き継いだという上記文書(甲査37)には,ストーカ炉について,「※全連:大手5社協有.受注機会均等化(山積)・・・極力5社のメンバーセットが必要(他社介入の時は条件交渉を伴う)」という,上記の供述内容に沿う記載がされている。 e タクマのpの供述 pは,平成10年6月から,タクマの環境プラント本部取締役本部長を務め,ごみ焼却炉の営業責任者であった。 pの公取委審査官に対する平成10年9月17日付けの供述調書(甲査45)には,「pは,タクマの環境プラント本部営業部長から,受注獲得のための営業方針として,「何としても当社が受注したい物件については,当社が他社との間で話合いを行い,当社の入札価格よりも高い価
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建設業法第3条:建設業の許可は、一定規模以上の建設工事を請け負う場合に必要となる許可です。 土木行政経験37年・技術士・1級土木施工管理技士(監理技術者)として建設業法に基づき申請手続します 建設業法に関する法令 リンク●建設業法 リンク●「建設業の許可」及び「経営事項審査」 リンク●建設業許可申請に係る様式集 リンク●建設業許可申請の記入例 リンク●建設業許可申請の参考例 リンク●建設業に関すること 建設業許可を取得するメリット 1.請負金額500万円以上の工事も施工することが可能。 2.公共工事の入札などへ第一歩になる。 3.元請業者さんからの信用につながる。 4.融資などを受ける場合の信用につながる。 5.請負価格が500万円未満の軽微な工事であれば、建設業許可は不要とされていますが、それでも建設業許可を取得するメリットは大きいと思います。 6.建設業者さんが事業を拡大していくためには建設業許可を申請して取得することがは必須であると思います。 7.最近はゼネコン等の元請がコンプラインアンスを重視していることから建設業許可取得の有無や法人化の有無で下請業者の選別をするようになってきています。建設業の生き残りの為には建設業許可の取得は必須と思われます 建設業許可の業種 1.土木工事業 2.建築工事業 3.大工工事業 4.左官工事業 5.とび・土工工事業 6.石工事業7.屋根工事業 8.電気工事業 9.管工事業 10.タイル・れんが・ブロック工事業 11.鋼構造物工事業 12.鉄筋工事業 13.舗装工事業 14.しゅんせつ工事業 15.板金工事業 16.ガラス工事業 17.塗装工事業 18.防水工事業 19.内装仕上工事業 20.機械器具設置工事業 21.熱絶縁工事業 22.電気通信工事業 23.造園工事業 24.さく井工事業 25.建具工事業 26.水道施設工事業 27.消防施設工事業 28.清掃施設工事業 建設業許可申請の区別 大臣許可と知事許可の区分 1.知事許可は、県内の営業所のみで営業する場合 申請者の主たる営業所の所在地を所管する、例西部県民局(許可行政庁)に提出します 2.国土交通大臣許可は、他府県にも営業所を置く場合 県土木部の建設業係を経由して、国土交通省関東地方整備局(許可行政庁)あてに提出します 営業所とは、当該許可に関わる営業所のみを指すのではなく、当該建設業者についての許可に係る建設業を営む全ての営業所を含みます。さらにここでいう営業所とは本店支店または常時建設工事の請負契約を締結する事務所(出先機関)のことを指します。 また請負契約を締結しない営業所であっても他の営業所にたいして請負契約関する指導監督を行い、営業等に関して実質的に関与する場合は営業所とみなされます。 建設業許可 1.特定建設業・2.一般建設業の区分 1.特定建設業は、発注者から直接請け負う1件の元請工事について、下請人に施工させる額の合計額が3,000万円以上(建築工事業の場合は4,500万円以上)となる場合 特定建設業は、一般建設業より、「財産的基礎または金銭的信用を有していること」、「専任技術者」の二つ要件が厳しくなります。 2.一般建設業は、特定建設業以外の場合 一定以上の技術経験または資格を有する「専任技術者」がいること 建設業を行うすべての営業所に、専任の技術者を置くこと。 専任の技術者とは、次のいずれかの要件を満たす技術者のことです。 1. 許可を受けようとする業種に関して、別に定める国家資格を有する者(国家資格には、資格取得後に実務経験を要するものがあります。) 2.高等学校(又は大学等)で、許可を受けようとする業種に関連する学科を卒業して、5年(又は3年)以上の実務経験を有する者 3.許可を受けようとする業種に関して、10年以上の実務経験を有する者 資格を証明する書類 1級土木施工管理技士などの合格証の写し 常勤を証明する書類が必要になります(社会保険の月額報酬表の写しなど)。 建設業許可の誠実性申請者が、不正または不誠実な行為をするおそれがないこと、が求められます。具体的には、「不正な行為」は「請負契約の締結又は履行の際における詐欺、脅迫、横領等法律に違反する行為」、「不誠実な行為」は「工事内容、工期、天災等不可抗力による損害の負担等について請負契約に違反する行為」とされています。これは申請者が個人の場合は申請者自身と政令で定める使用人、法人の場合は法人とその役員及び政令で定める使用人が問われます。政令で定める使用人は、支配人、支店長、営業所長などが該当します。 単独の事務所を有すること 営業を行おうとする事務所が、申請者所有の建物であるか、申請者が借主で営業用としての使用を認められた賃貸(又は使用貸借)物件であること。 自己所有の場合登記簿謄本(建物部分)、固定資産評価証明書、建物の売買契約書、登記済証等のうち、いずれか1点(原本提示) 賃貸等の場合事務所として使用許可する旨の記載ある賃貸借契約書(原本提示) 建設業許可の(欠格要件等) 下記に該当する場合は、許可を受けることができません。 ア 申請書及び添付書類に、虚偽の記載や、重大な事実の記載漏れ等がある場合 イ 申請者や申請する法人の役員に、以下に該当する者がいる場合 成年被後見人、被保佐人、破産者で復権を得ない者 禁錮・罰金などの刑を受け、一定の期間を経過していない者 請負契約に関して不正又は不誠実な行為をする恐れが明らかな者 暴力団の構成員である者 申請の留意点 「経営管理者」の経験年数 「専任技術者」の要件不足 契約書・領収書控え・請求書控え・確定申告書控え契約書の不在 工事施工金額を記載した書面で下請け金額500万円以上を記載 技術者の資格要件を実務経験を含めて申請する場合や許可を持っていた業者に勤務していた場合は、その会社の代表者から証明をもらえばその業種について裏付け書類である工事請負契約書や注文書、請書、請求書等の原本の提示が省略できます。 無許可業者に勤務していた場合には、これらの裏付け書類を必要年数分、提示できなければ許可されません。 建設業法第11条:変更等の届出 許可申請書の記載事項商号又は名称、営業所の名称、所在地、資本金額、役員の氏名等に変更があった場合は、必ず30日以内に変更届を提出しなければならない。 建設業者は国土交通大臣又は都道府県知事に変更届出書を提出 建設業法第12条:廃業変更等の届出 許可に係る建設業者が次の各号のいずれかに該当することとなった場合、当該各号に掲げる者は30日以内に届け出なければならない。 1.許可に係る建設業者が死亡したとき、その相続人 2.法人が合併により消滅したときは、その役員であった者 3.法人が破砕手続開始の決定により解散したときは、その破産管財人 4.上記3と4以外の事由により解散したときは、その清算人 5.許可を受けた建設業を廃止したときは、当該許可に係る建設業者であった個人又は当該許可に係る建設業者であった法人の役員 ☆来訪者(H22.11.15~): - 人☆昨日: - 人☆本日: - 人
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建築請負契約の締結に際し仲裁契約がなされた事案において,建設工事紛争審査会による仲裁が訴訟に比較して消費者保護に欠けることはない等として,不法行為又は請負人の瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求の訴えを却下した事案 主 文 1 本件訴えを却下する。 2 訴訟費用は,原告の負担とする。 事 実 第1 当事者の求めた裁判 1 請求の趣旨 (1) 被告は,原告に対し,5238万5185円及びこれに対する平成14年2月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 訴訟費用は,被告の負担とする。 2 請求の趣旨に対する答弁(本案前の答弁) 主文同旨。 第2 当事者の主張 1 本案前の主張 (1) 被告の主張 ア 仲裁合意(妨訴抗弁) 原告と被告は,後記2「本案についての主張」(1)ア(ア)の請負契約(以下「本件請負契約」という。)の締結に際し,同請負契約に関して紛争が生じた場合には,民間(旧四会)連合協定工事請負契約約款第34条(2)の規定に基づき,B建設工事紛争審査会の仲裁に付し,その仲裁判断に服することを合意した(以下「本件仲裁合意」という。)。よって,本件訴えは訴訟要件を欠き,不適法である。 イ 錯誤無効関係 (ア) 錯誤無効に対して(否認) 被告の担当者Aは,原告に対し,仲裁合意の説明をしている。 また,本件仲裁合意書の裏面には,仲裁合意の説明が記載されているところ,原告は,仲裁合意書の綴じられた請負契約書を預かって検討していたものである。 したがって,原告は仲裁合意について理解していた。 (イ) 原告の重過失(再々抗弁) 仮に,原告が,本件仲裁合意書に署名する際に,裏面の説明を全く読んでいなかったというのであれば,原告には重過失があるというべきであり,原告は仲裁合意の錯誤無効を主張できない。 (ウ) 追認(再々抗弁) 被告は,平成14年8月6日,B建設工事紛争審査会に対し,請負代金の支払いを求める仲裁申請を行い,平成14年10月23日,第1回仲裁期日が開かれているところ,その際,原告は,仲裁委員から仲裁制度の説明を受けている。その後,原告は,同審査会に対し,建物の取り壊し,請負代金の返還等を求める仲裁の申請をしている。 遅くとも原告の上記申請の段階では,原告は仲裁の意味・効力を理解していた筈であるから,この段階で仲裁合意について原告の追認があったというべきである。 (エ) 信義則違反(再々抗弁) 上記(ウ)のとおり,原告は,被告の仲裁申請に対し,却下を求めるどころか,仲裁合意の成立を前提に,建物の取り壊し,請負代金の返還等を求める仲裁の申請をしている。また,被告が仲裁を申し立てた平成14年8月6日以降,平成16年8月26日までの間に,計7回の仲裁期日が開かれているところ,原告から仲裁合意が無効であるという異議は一切出されなかった。 したがって,本件仲裁合意が無効であるという原告の主張は,原告の従前の行動と矛盾するものであり,信義則に反する。 (2) 原告の主張 ア 仲裁合意に対して(否認) 原告は,本件請負契約締結の際,契約書に2か所の署名・押印を求められ,言われるままに署名・押印したに過ぎず,被告から仲裁合意についての説明などを受けておらず,仲裁合意書の存在すら意識していなかった。 原告が仲裁の意義及び仲裁合意の法的効果を認識しないで,仲裁合意書に署名した以上,仲裁合意は成立していない。 イ 錯誤無効関係 (ア) 錯誤無効(妨訴抗弁に対する再抗弁) 一般に,消費者は建築業者が契約書どおりの瑕疵のない建物を建てる良質な業者であろうとの期待のもとに建築請負契約を締結するのであり,消費者である原告が,建築業者との紛争を予期した上で,仲裁の意義,法的効果を正確に理解し,仲裁を紛争処理手段として選択する意思の下,仲裁合意書に署名押印することなどあり得ない。 通常取引における一般消費者が「仲裁合意の成立によって裁判所への訴訟提起ができなくなる」という法的効果を正確に知っていたのであれば,かかる仲裁合意書に署名することはあり得ないから,原告の意思表示は「要素の錯誤」に該当する。 (イ) 重過失に対して(否認) 原告は本件仲裁合意書の裏面を読んでいないが,社会通念上,消費者としての注意義務を尽くしていたものであり,仲裁合意書に署名・押印するに際して,重過失はない。 (ウ) 信義則違反に対して(再々々抗弁) 以下の諸事情に照らすと,原告が本件仲裁合意が無効である旨主張することは,信義則に反しない。 a 平成16年3月1日に施行された仲裁法が,その附則により,仲裁合意をした消費者に,同合意の無理由解除権を与えた趣旨(附則3条2項)は,訴訟による解決が出来なくなるという仲裁の意義を理解している消費者が少ないことなどに照らし,将来生じる紛争を対象とする仲裁合意をした場合でも,現実に紛争が発生した時点で,紛争解決手段として仲裁又は訴訟その他の手段のいずれによるかを選択する権限と機会を認めようとしたことにある。 本件仲裁合意は,仲裁法の施行前になされたものであるが,消費者が仲裁の意義を理解していない点は,本件の原告にもそのまま当てはまるものであり,仲裁法附則3条2項の趣旨に照らして,仲裁合意の効果を排除すべきである。 b 本件請負契約により建築された建物(以下「本件建物」という。)に関する瑕疵は,仲裁委員も訴訟で解決することを提案した経緯さえある程の重大な紛争であるところ,原告はこのような事態が生ずるとは予想すらしなかった。 このような場合に,訴訟による解決が図れなくなることは極めて理不尽である。 c 原告は,被告から仲裁申請をされたから,同じ手続での対抗手段として仲裁申請をしたのであり,仲裁合意書にしたがって申請をしたものではない。原告は,仲裁申請以外に訴訟提起もできると考えていた。 2 本案についての主張 (1) 請求原因 ア 請負契約の成立と被告の設計及び施工 (ア) 原告は,被告との間で,平成13年9月20日,原告を施主,被告を請負人として,以下のとおり,原告宅新築工事建築の請負契約を締結した。 工事場所 名古屋市a区b町c-d 請負代金 4420万円(うち消費税210万4761円) (イ) 被告が本件建物の建築施工をし,被告代表者のCが本件建物の設計及び監理並びに建築確認申請の代理を行った。 イ 建築確認の虚偽申請 本件建物の軒高実測は9.5メートルであり,D建設一級建築士事務所作成の鉄骨詳細図にも軒高9.5メートルとされているところ,Cは,関連法令上,軒高が9メートルを超えない建物につき,構造計算書等の添付及び鉄骨製作に関する受入れ検査等が免除されることを逆手に取り,建築確認申請書に軒高9メートルと虚偽の申請をした。 ウ 本件建物の瑕疵 本件建物には,以下の(ア)ないし(エ)をはじめとして,それ以外にも建築基準法及び同法施行令に違反する瑕疵が多々ある。 (ア) 柱耐力が梁耐力の1.5倍以上を満足しないこと (イ) 1階鉄骨柱脚につき,アンカーボルト下端のかぶり厚さが全く確保されていないなどの欠陥があること (ウ) 柱梁接合につき,内蔵ダイヤフラムが入れられていないなどの欠陥があること (エ) マット基礎につき,コンクリート強度が不足しているなどの欠陥があること エ 原告の損害 (ア) 取り壊し・建て替え費用 本件建物を法令に適合するように修補するためには,本件建物を一旦取り壊して,建物を建て替えるほかないところ,建物取り壊し,再築に要する費用は以下のとおりである。 ① 本件建物の取り壊し費用 729万8340円 ② 本件建物新築費用 4420万円 (イ) 仮住まい費用 本件建物の取り壊し・建て替えに要する工事期間は,約8か月間であるところ,本件建物相当の床面積を持つ賃貸住宅を借りる必要がある。 同期間の賃料相当損害金の合計は,158万円である。 (ウ) 犬の保管費用 原告は,グレートデン(犬)を飼っているところ,同犬を飼うことができる賃貸住宅はないので,専門の施設に管理を委ねる必要がある。 8か月間の管理費用として,少なくとも90万円を要する。 (エ) 引越費用等相当損害金 上記(イ)の仮住まいのため,家財道具の移転等,引越をしなければならないところ,これに要する費用は以下のとおりである。 ① 搬出費用 397万2150円 ② 搬入費用 99万4000円 (オ) 登記費用 16万3927円 (カ) 不動産取得税 81万5100円 (キ) 照明器具・換気扇 本件建物の建て替えにより,本件建物用に購入して据え付けた器具等が使用不可能となるところ,これらの時価相当額は以下のとおりである。 ① 照明器具・換気扇 130万3008円 ② ロールスクリーン 1万4000円 (ク) 一級建築士へ依頼した調査費用 本件建物の瑕疵については,通常人が容易に認識しうるものではなく,専門家の調査によらなければ,その有無・程度を知ることができないところ,同調査費用として,既に87万8760円を支出している。 (ケ) 慰謝料 原告は,妻,子供6人とともに本件建物に住んでいるが,建物基礎や建物構造上の欠陥の判明によって,建物の安全性に不安を抱き,常に建物崩壊のおそれと背中合わせに日々の暮らしを送らなければならず,現に,原告ら家族は,本件が解決するまでの間,別に住居を借りて仮住まいをするか否か検討しているほどである。 欠陥住宅被害は,財産的損害であることは勿論のこととして,本来心安らげて落ち着けるはずの場所である生活の本拠に,建物倒壊等による自らの生命,身体の安全に対する懸念を持ち込んでいるという点で,居住者の精神的損害は相当なものがある。 本件においても,原告の被った損害は,財産的側面にとどまらず,精神的損害にも及んでおり,これに対する慰謝料は,少なくても500万円を下らない。 (コ) 弁護士費用 本件訴訟が,高度に技術的・専門的訴訟追行能力を要することはいうまでもなく,本件訴訟提起及びその追行のためには弁護士への委任が必要不可欠であった。 そのための費用として,被告が負担すべきは600万円である。 オ 被告の責任原因 (ア) 建設業法25条の25第1項は,建設業者は,施工技術の確保に努めなければならない旨定めるところ,建築基準法に定める基準は,建築物の敷地,構造及び建築設備に関する「最低の基準」であって,同法に定める基準は,建築業者たるものが守らなければならない最低限度のものである。したがって,建築基準法令に違反した建物を建築した場合には,私法上も不法行為を構成する。 特に本件建物の建築に当たっては,上記イのとおり,Cが虚偽申請をしており,意図的かつ悪質な手抜きであり,故意による不法行為である。 (イ) 被告は,本件建物の請負人として,民法634条2項所定の瑕疵修補に代わる損害賠償責任を負う。 カ よって,原告は,被告に対し,不法行為又は請負人の瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求権7311万9285円から未払請負金2073万4100円を控除した5238万5185円及びこれに対する本件建物の引渡が終わったことが明らかな平成14年2月2日から前記損害賠償金の支払済みまで,民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める。 (2) 請求原因に対する認否 なし 理 由 1 被告は,本案前の抗弁として,本件請負契約においては原告と被告との間に本件仲裁合意が存在するから,本件訴えは訴訟要件を欠く不適法なものであると主張する。以下,本案前の抗弁について判断する。 2 前提事実 証拠(甲2,5の1,2,乙1,2,3,4,5,6,証人A,原告本人及び被告代表者本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) 被告担当者Aは,平成13年2月ころから,実家建物を二世帯住宅に建て替えることを検討していた原告に対し,建物新築工事の営業活動を行い,平成13年9月20日乃至10月ころ,原告と被告との間で,代金額4420万円(消費税込み)の請負契約(以下「本件請負契約」という。)が成立した。すなわち,上記契約は,工事請負契約書,仲裁合意書,民間(旧四会)連合協定工事請負契約約款,見積書,図面類が一体として綴じられた書類を2部作成し(甲5の1,2,乙6),原告と被告が各1部を保有する方式でなされているところ(争いがない),工事請負契約書に記入されている日付けは平成13年9月20日であり,Aも同日に原告と被告代表者の署名がなされた旨証言するものの,見積書の日付は同年10月23日であり,原告が「実際に署名したのは10月に入ってからだと思う」旨供述していること,この点に関するAの記憶は明確でなく,ワープロミスを可能性として挙げるに止まるから,契約書の作成日,すなわち契約の成立日は判然としない。 (2) 仲裁合意書(以下「本件仲裁合意書」という。)の表面には,「裏面参照のうえ建設工事紛争審査会の仲裁に付することに合意する場合に使用する。」との説明書に続き,「仲裁合意書」という表題,「工事名 E邸新築工事」,「工事場所 名古屋市a区b町c-d」との記載があり,本文として「平成13年9月20日締結した上記建設工事の請負契約に関し紛争が生じた場合は,民間(旧四会)連合協定工事請負契約約款第34条(2)の規定にもとづき,建設業法により定められた下記の建設工事紛争審査会の仲裁に付し,その仲裁判断に服する。」と,さらに管轄審査会名として「B建設工事紛争審査会」と明記されている。裏面には,「仲裁合意書について」との表題のもと,大要,(1)建設工事紛争審査会は,建設業法にもとづき設置され,建設工事の請負契約に関する紛争の解決を図るため,斡旋・調停及び仲裁を行っていること。裁判所の訴訟に代えて審査会の仲裁に付するためには,当事者の合意が必要であるので,仲裁合意書が添付されたものであること。(2)適法になされた審査会の仲裁判断は,裁判所の確定判決と同一の効力を有し,たとえその仲裁判断の内容に不服があっても裁判所で争うことができなくなること。建設工事紛争審査会の仲裁制度はいわゆる一審制であることなど,仲裁制度に関する説明が14行の文章でなされている(乙1)。 (3) 被告は,平成14年2月1日,本件建物を原告に引き渡したが,原告が建物の瑕疵を理由に既払い額2346万5900円の残額2073万4100円の支払いを留保していることから,同年8月6日,本件仲裁合意書の規定に基づき,B建設工事紛争審査会(以下「本件審査会」という。)に対し,仲裁の申請をした(乙4参照)。 同年10月23日,第1回仲裁期日が開かれたところ(争いがない),第1回仲裁調書には,「審査会が,申請人(被告)・被申請人(原告)双方に仲裁について説明した」旨の記載がある(乙5)。 原告は,同年11月27日,被告を被申請人として,本件審査会に対し,本件建物の取り壊し,請負代金の返還等を求める仲裁の申請をした(争いがない,乙4)。 仲裁廷は,その後の仲裁期日において,当事者双方に対し,仲裁は施工ミスが中心で,設計ミスの審理に適さないから,裁判でやったらどうかというアドバイスを行っているところ,被告は即座に異議を述べたのに対し,原告は同アドバイスに従い,平成16年7月16日,本件訴えを提起した。 本件仲裁手続は,同年8月26日,第7回の仲裁期日が開かれて以来,事実上中断している。 3 仲裁合意の成立について (1) 本件仲裁合意書には,原告及び被告代表者の署名押印があり(甲2,乙1,2,3,証人A,原告本人及び被告代表者本人),真正に成立したものと推定される。 また,証拠(乙1,2,3,5,証人A及び被告代表者本人)によれば,本件請負契約を締結する際,Aが原告に本件仲裁合意書の表面を示して,その本文を読み上げたか,少なくとも「紛争が発生した場合,裁判ではなく仲裁という規定があるので,こちらの方で解決させてもらっています」という程度の説明をしたこと,その後,紛争が発生し,被告の申請により第1回仲裁期日が開かれた際,仲裁委員から仲裁制度につき「一審制で仲裁の判断は最高裁判所の判決と同一の効力がある。仲裁の効力を他で争うことができない」旨の説明があり,これに対し,原告は何らの異議を唱えなかったことが認められる。 (2) これに対し,原告は,本件仲裁合意書について,A又はCから,何らの説明を受けておらず,同文書の存在すら意識せずに署名捺印したものであるから,本件仲裁合意は不成立である旨主張し,その主張に沿う供述をする(甲1,原告本人)。 しかしながら,本件仲裁合意書はその表面を一読すれば,原告と被告間の本件請負契約に関して紛争が生じた場合,仲裁に付し,その判断に従うことを合意する文書であることは容易に知ることができるものであって,被告において,原告に同文書の存在を意識させることなく,原告の署名捺印をさせることはそもそも困難である。また,原告は,第1回仲裁期日の仲裁委員からの説明すら「仲裁制度について説明はあったと思うが,内容は全く覚えていない」と著しく曖昧かつ乙5の記載にも反する不自然な供述をしており,かかる供述態度に照らすと,本件仲裁合意に関する原告の供述も採用することができない。 4 錯誤無効関係 前提事実(2)及び前記3(1)で認定したAの説明内容に照らせば,原告の本件仲裁合意書による意思表示が,錯誤によりなされたものと認めることはできない。 5 信義則違反関係 被告は第2「当事者の主張」1(1)イ(エ)のとおり,原告の錯誤無効の主張に対し信義則違反の主張をし,原告は同主張に対し信義則違反の評価障害事由の主張をするところ,原告の主張の内容は被告の本案前の抗弁に対する予備的な再抗弁とも位置づけることができるので,念のため,この点について判断する。 (1)ア まず,仲裁法附則3条2項の趣旨についてみるに,原告が主張するとおり,仲裁合意により,その対象となる紛争につき訴訟による解決が出来なくなるという重大な効果が生ずるが,消費者が紛争の発生前に,仲裁の意義を十分に理解した上で仲裁を解決手段として選択するケースが稀であること,仮に消費者が仲裁の意義を理解したとしても,事業者との交渉力の格差から,仲裁合意の内容の変更のための交渉をしたり,契約の締結を断念したりすることは期待できないことなどの事情から,消費者が事業者との間で将来生じる紛争を対象として行う仲裁合意(以下「消費者仲裁合意」という。附則3条1項参照)について,消費者に無理由解除権を与え,もって,消費者が,紛争発生後において,紛争解決手段として仲裁又は訴訟その他の手段のいずれによるかを選択する権限と機会を付与したものと解される。 ところで,仲裁法附則3条が予定する消費者及び事業者の種類は様々であるところ,仲裁法が,仲裁人の数(同法16条1項),仲裁人の選任手続(同法17条1項),仲裁廷が従うべき仲裁手続の準則(同法26条1項)などについて当事者の合意により定めると規定していることもあって,消費者仲裁合意の内容はなおのこと様々であり,上記附則3条2項等の規定により消費者を保護すべき必要性が高い。これに対し,建設工事紛争審査会が行う仲裁は,仲裁法(仲裁法施行以前は,公示催告手続及ビ仲裁手続ニ関スル法律)を一般規定としつつも,建設工事紛争の特殊性に配慮し建設業法に特別規定がおかれている結果,その他の消費者仲裁合意と比較すれば,事業者と消費者の力関係等が反映されにくい,換言すれば,適正かつ公平な制度が保障されている。すなわち,建設工事紛争審査会は,国土交通省及び各都道府県に設置されていること(建設業法25条3項),仲裁委員の選定母体となる委員及び特別委員は,国土交通大臣又は都道府県知事が,人格が高潔で識見の高い者のうちから任命するものとされていること(同法25条の2第2項,25条の7第1項,第3項,25条の16第2項),仲裁委員は3人とされ,うち少なくとも1名は弁護士となる資格を有する者でなければならないこと(同法25条の16第1項,3項)などの規定が置かれている。 そもそも,建設工事紛争審査会は,①建設工事をめぐる紛争が,技術的な専門性をもつ分野であり,紛争を解決する側にもそれに関する専門的知識が必要なこと,②請負契約には特別な慣行が伴う場合があり,その知識も要求されること,③瑕疵の主張は一般に多岐にわたりがちであり,また,追加変更合意の有無を巡る争いも頻発しがちであるところ,これを厳格・慎重な手続である訴訟で解決するとなると,裁判官は建築の専門家ではないこともあり,解決に時間を要することなどの実態を踏まえ,建築に関する知識と経験のある専門家が関与する準司法機関として昭和31年に創設されたものである。この点,原告の引用する文献「建築請負・建築瑕疵の法律実務<建築紛争解決の手引>横浜弁護士会編」(甲1)にも,原告の引用部分(第2「当事者の主張」1(2)イ(ウ)a参照)に続いて,「この点,法案の審議過程においては消費者仲裁合意を一律に無効とするとの意見もあったが,建設工事紛争審査会など特定の紛争分野では,仲裁合意に基づいて消費者と事業者間の仲裁も現に相当数行われており,消費者が仲裁を申し立てる例も少なくない。したがって,将来の消費者仲裁合意を一律無効とすることは,これまで消費者が利用できた仲裁を制限することになり,かえって,消費者の利益にならない場合があると考えられるため,利用するか否かの選択権を消費者に与えたものである」旨記載され,その有用性が評価されているところであり,適正,公平かつ迅速な紛争処理を期待したいわゆるADRの代表格である建設工事紛争審査会による仲裁が,訴訟に比較し,消費者保護に欠けるということにはならない。 イ 次に,附則3条の趣旨を,仲裁合意の方式の点から考察するに,仲裁法13条3項に「書面によってされた契約において,仲裁合意を内容とする条項が記載された文書が当該契約の一部を構成するものとして引用されているときは,その仲裁合意は,書面によってされたものとする」と規定されているところ,仲裁法施行以前は,消費者が約款等の仲裁条項の存在を意識していなかったとの理由により,約款等を引用する方式での仲裁合意の成立を否定し,消費者保護を図ることができたのに対し,仲裁法施行により,かかる救済がなし得なくなり,かえって,消費者保護に欠ける事態が生じうることに配慮して,附則3条2項の無理由解除権を始めとする消費者保護規定を置いたものと解される。 本件仲裁合意は,単に約款中の仲裁条項を引用して合意されたものではなく,前記認定のとおり,仲裁合意書という独立した文書によって合意されたものであるから,この点でも附則3条の趣旨を及ぼす実益に乏しい。 (2) 原告は,仲裁委員が,原告・被告双方に対し,訴訟による解決を勧めたのであるから,訴訟への途を閉ざすことは極めて理不尽である旨主張する。 そこで検討するに,「仲裁廷は,仲裁手続を続行する必要がなく,又は仲裁手続を続行することが不可能であると認めたときは,仲裁手続の終了決定をしなければならない」旨規定されているところ(仲裁法40条2項4号),本件紛争を担当する仲裁廷が同決定をしていない以上,原告の主張する事由のみでは仲裁法14条1項2号の「仲裁合意に基づく仲裁手続を行うことができないとき」に当たるということができず,原告の主張は採用できない。 6 以上の次第で,被告の本案前の抗弁は理由がある。 7 よって,原告の訴えは訴訟要件を欠くことになるから,本件訴えを却下することとし,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第6部 裁 判 官 安 田 大 二 郎