約 6,870 件
https://w.atwiki.jp/trinity_kristo/pages/367.html
キリスト教における広義の祈祷書とは、キリスト教各教派において、公的あるいは私的に信者が行うものとして教会が認可した祈祷文を収録したものをいう。ただしカトリックでは、ミサ典礼文・聖務日課など公的な場(典礼)での祈祷文を「典礼文」とし、祈祷文から分けている。この場合、祈祷文とは信者が私的に行う祈祷のための書である。 対して、正教会などでは、公祈祷(奉神礼)と私祈祷で用いられる書物のいずれに対しても「祈祷書」の語を用いている。 http //www.geocities.co.jp/HeartLand-Gaien/2696/preces1.html http //www.geocities.co.jp/HeartLand-Gaien/2696/precum.html http //hosanna.romaaeterna.jp/prayer/contents1.html
https://w.atwiki.jp/mitamond/pages/14.html
ガラシア祈祷書 島原の一揆衆のごく一部にのみその存在を知られる文書。高山右近?が日本追放された頃の、迫害を受けている切支丹の現状が書かれており、細川ガラシアの名においてローマ法王に送られることとなっていた。後に森宗意軒が手に入れ、利用しようと企む。
https://w.atwiki.jp/mangaroyale/pages/497.html
始祖の祈祷書 津村斗貴子に支給された。 トリステイン王国に伝わる秘宝。 外見は古びた革の装丁がなされた色あせた三百ページくらいの本で、とても値打ちものには見えない。 ページも白紙だが、虚無の魔法の素質を持つ者が水のルビーを始めとする始祖の指輪を身に着けた時だけ、書かれた文字が見える。 中身は始祖ブリミルが虚無の魔法について記したもので、そこに書かれた呪文を唱えることで虚無の魔法が発動する。 といってもいつでも読めるというわけではなく、必要になったときに必要な魔法だけが読めるようになる。 以下に原作で確認されたこの祈祷書に記されている魔法を列挙する。 《エクスプロージョン》 大爆発を起こす魔法。 ルイズが魔法を唱える度に爆発を起こしていたのは、これの片鱗と思われる。 原作で発動したときは敵国の空中艦隊を一発で全て撃沈した。 被害を与える対象を限定できるのも特徴で、前述の艦隊のときはその船の動力と帆のみを消し飛ばした。 威力は大きいが、消費も大きい。 《ディスペル・マジック》 魔法を消去する魔法。 《イリュージョン》 幻影を作り出す魔法。 大きさは最大で軍隊一つ分くらいまでなら投影することができる。 発動すれば極めて強力であるが、発動するまでに長い詠唱を必要とする。 (《エクスプロージョン》については途中で詠唱をやめてもそれ相応の大きさの爆発が起きる) もっとも、本ロワにおける唯一の術者であるルイズが虚無の魔法に覚醒する前から呼ばれている上に、発動のために必要な条件は極めて厳しい。 果たして彼女が虚無を発動することはあるのか?
https://w.atwiki.jp/mitamond/pages/607.html
作品データ 阿修羅衆 天草四郎 ガラシア祈祷書 ゴロリア善馬 佐々木蘭丸 不知火 陣佐左衛門 聖母 朱鷺 細川ガラシア 細川忠利 松井寄之 森宗意軒 由比富士太郎
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/749.html
巫女! 空白なる始祖の祈祷書 ある日オールド・オスマンに呼び出されたルイズは、自分が何かやらかしてしまったのだろうかと緊張しながら学院長室にやってきた。 そしたら本を渡された。 「これは? 「始祖の祈祷書じゃ」 始祖の祈祷書。王家に伝わる伝説の書物であり国宝だ。 といっても、この手の伝説の品によくあるように偽者もいっぱいある。 そして偽者を持つ貴族やら司祭やら王室関係者は誰もが「私のが本物だ!」と主張。 そんなこんなでトリステイン王国に伝わる始祖の祈祷書も本物かどうか怪しい。 が、それでも国宝である事に代わりはなく、とても大切な物である。 で、何でそんなものをルイズに渡すのか。オスマンは説明を始めた。 「トリステイン王家の伝統で、王家の結婚式には貴族から巫女を選ばねばならん。 巫女はこの始祖の祈祷書を手に式の詔(みことのり)を詠み上げるのじゃ」 「そ、それはつまり、まさか、私が巫女に?」 無理無理、絶対無理。ルイズは断ろうと思った。が。 「うむ。姫がミス・ヴァルエールを巫女にと指名してきたのでな。ホッホッホッ」 「ひ、姫様が!?」 無理無理、絶対無理。姫様の頼みを断るなんて絶対無理! ルイズは観念した。 「でじゃ。巫女は始祖の祈祷書を肌身離さず持ち歩き、詔を考えねばならぬ」 「わた、私が考えるんですか!?」 「もちろん草案は宮中の連中が推敲するから安心せい。 伝統とは面倒なものじゃが、姫はミス・ヴァリエールを指名したのじゃ。 これはとても名誉な事じゃぞ? 詔を詠み上げるなど一生に一度あったら僥倖じゃ」 「……解りました。謹んで拝命いたします」 詔を考えて詠むなんて無理無理、絶対無理。 でも姫様のお願いを断るなんてもっと無理。 ルイズの無理を実行という選択肢しかなかった。 何度入っても好きになれないサウナ風呂から出てきた承太郎は、気分転換にと学院内を散歩していた。 平民の風呂は焼いた石が詰められた暖炉の横で身体を温め汗をかき、外に出て水を浴びるという現代人にはつらいものだった。 一応貴族用の風呂もあるのだが、ギーシュの部屋に居座っていた時、夜中にこっそり見に行って入る気を無くしている。 ローマ風呂のような造りでプールのように大きいのはともかく、香水が混じった湯船というのはサウナ風呂以上に馴染めなかった。 贅沢な事ではあろうが、承太郎は香水より温泉の元を入れた風呂の方が好きだった。 なぜならば! 彼は日本人だからである。 日本に帰れたらまずひとっ風呂浴びて、湯上りにビールを飲んで、そして母の作った手料理か、もしくはうまい和食でも食べにいくかしたい。 などと考えていると、月明かりの中、誰かがやって来た。 「……シエスタか?」 「あ、ジョータローさん。探してたんですよ。 実は珍しい品が手に入ったので、ご馳走しようと思って! ですから、厨房に来ませんか? 今なら、その、誰もいませんし」 「……ああ、いいぜ」 珍しい品、というものがはしばみ草のような類のものでない事を願いつつ、この世界での珍しい品とはいったい何だという好奇心に駆られる承太郎。 さっそく厨房に行くと、シエスタがいそいそとティーポットに何かを入れる。 「シエスタ、珍しい品ってのは飲み物なのか?」 「ええ。東方のロバ・アル・カリイエから運ばれた『お茶』っていう……」 「お茶?」 この世界に来てお茶と言えば、間違いなく紅茶だ。 珍しい紅茶の葉でも手に入ったのだろうと承太郎は判断する。 だがシエスタが持ってきたティーポットからカップに注がれたお茶は、馴染み深い緑色をしていた。 「…………」 まさか、と思い承太郎はお茶を飲む。すると渋い苦味が口内に広がった。 はしばみ草の苦味と違い、何と心地いい苦味か。 味も香りもまさに日本茶そのものだった。 承太郎はじっくりとその味と香りをたしなんでからお茶を飲み込む。 「どうですか? 普通のお茶と違って苦いんですけど、それがまたおいしいんです」 「ああ……うまい。故郷を思い出させる味だ」 承太郎は『苦いのも好きなんだ』と思い、シエスタは今度どんな料理を作ろうかと考えた。 が、故郷という言葉で、以前聞いた話を思い出す。 「ジョータローさんの故郷には、ひこうきみたいなすごい道具だけじゃなく、東方のお茶とか、見た事もないような食べ物とかあるんですか?」 「ハルケギニアにどんな食べ物があるか把握した訳じゃねーが……。 そうだな、和食や中華は無さそうだ。俺も詳しくはないがな」 「もしかしてジョータローさんの故郷ってロバ・アル・カリイエですか?」 承太郎が異世界から来た事を知っているのは、ルイズ、オスマン、コルベールのみ。 他の人間には『故郷』という単語しか使っていない。地球や日本といった言葉もだ。 承太郎はしばし考え――「そうだ」と答えればうまく誤魔化せると思った。 「いや、違う」 「それじゃあどこなんですか?」 「……遠い所だ。帰る手段が解らないほどにな」 シエスタに嘘はつきたくないという思いから、承太郎は言葉を濁した。 正直に伝えて、それを吹聴するような相手ではないと理解しているが、ガンダールヴである自分の情報を知る者として、余計なトラブルに巻き込まれる可能性もある。 「秘密……なんですか?」 「……まあな」 シエスタはさみしそうに、上目遣いで恐る恐る訪ねてきた。 「ミス・ヴァリエールは知ってるんですか?」 「……ああ」 「……そう……ですか」 そう言って微笑んだシエスタの表情は、はしばみ草よりずっと苦かく感じた。 承太郎が部屋に戻ると、ルイズがベッドに寝そべって本とにらめっこしていた。 そして巫女に選ばれ始祖の祈祷書を持ち詔を考えてる事を聞かされた。 「その始祖の祈祷書ってのには何が書いてあるんだ?」 「何も。始祖の祈祷書には偽者が多いけど、これはその中でも劣悪ね。 だってまったくの白紙なんだもの。どうしてこんなのが国宝なのかしら」 「……それで、詔は思いついたのか?」 「うー、い、一応。……あの、変じゃないか、聞いてくれる?」 「異世界人の素人意見でよけりゃな」 承太郎はソファーにドカッと座り、ルイズが詔を読み上げるのを聞いた。 「この麗しき日に、始祖の調べの光臨を願いつつ、 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 畏れ多くも祝福の詔を詠み上げ奉る……」 「ほう、なかなか立派じゃねーか。続きはまだ考えてないのか?」 「これから、火に対する感謝、水に対する感謝、順に四大系統に対する感謝の辞を詩的な言葉で韻を踏みつつ詠み上げるんだけど、詩的なんて言われても全然思いつかなくて、どうしよう……」 「やれやれ……とりあえず思いついた事は何でもいいから言ってみな」 「じゃ、じゃあ言うわね。コホン」 ルイズは緊張に震える声で言った。 「ひ、火は暑くて鬱陶しく出番は控え目がいい」 (……アヴドゥル?) 「み、水は静かにレロレロレロ」 (……花京院…………) 「か、風になった友に友情で敬礼」 (じじいの昔話でそんなのがあったな……風の戦士と戦って友情を感じたとか。 幼い頃はホラだと思ってたが、波紋やらスタンドの存在を知った今は信じてるが) 「つ、土は変幻自在で人を騙すので注意しましょう」 (イギーじゃねーか) 「ど、どうかな?」 「てめー、ほんとは俺の世界の事を知ってんじゃねーだろーな」 「えっ、何で?」 火は何となくキュルケに対する悪いイメージで浮かんだものを、水は幼い頃アンリエッタ姫(水系統)がチェリーを舌の上で転がして遊んでいた時の事を、風はこないだのアルビオンの承太郎とウェールズ皇太子の友情を、土は土くれのフーケに騙された事を思い出しての詔だった。 が、どっちにしろこんなもん全然詩的じゃないから却下確定である。 (そういえばポルナレフのネタだけ出てこなかったな……) などとのん気に承太郎は窓を開けてタバコを吸った。 一方ルイズは承太郎に呆れられて恥ずかしくなって、この場から逃げ出したい気持ちに駆られた。 そこで出た言葉が、これだ。 「ちょ、ちょっとトイレ行ってくる」 その瞬間、承太郎は鮮明にポルナレフの引きつった笑顔を思い出した。 回想の中のポルナレフは咳き込みながら「ベンキ」と言っている。 なぜ急にそんな事を思い出すのだろうか? 虫の知らせ? だが、ルイズがまさか便器を舐めるような事態になるとは思えないし、無視していいだろうと承太郎は思った。 「な、無い」 一方ルイズはトイレの個室の中で動けなくなっていた。 なぜならば、無いのだ、紙が。 こういう時、普通の生徒なら魔法で外にある紙を浮かばせて個室に入れる。 だがルイズはレビテーションすら使えない成功率ゼロのメイジである。 選択肢はふたつ。 誰かが来るのを待って紙を取ってもらうか? (とても屈辱的! 却下!) もしくは拭いてないまま個室を出て紙を取って戻ってくるか? (そそそ、そんな下品な真似、できる訳ないじゃない!) こうしてルイズはトイレから出られなくなり、心配して探しに来た承太郎が、廊下で偶然会ったキュルケとタバサに頼んで女子トイレの中を探してもらい、キュルケとタバサの活躍によって何とかトイレから出てくる事ができた。 ちなみにルイズがトイレから出られなくなった理由は、承太郎にはこう説明された。 「か、鍵が壊れてたのよ! それで開かなくなっただけよ!」 「だったら俺が声をかけた時に返事をすりゃあよかったじゃねーか。 何でキュルケ達が女子トイレに入っていくまで返事をしなかったんだ?」 「そそそ、そんな事どうでもいいでしょう!?」 ルイズは精いっぱい誤魔化した。 すると承太郎もこれ以上突っ込まない方がいいと判断して質問をやめた。 ルイズはホッと胸を撫で下ろす。 (よかった。まさか紙が無くて出られなかったなんて知られたら……。 ああ! もう、恥ずかしくて死んじゃうところだったわ) そして承太郎もやれやれと帽子のつばを下ろす。 (まさか便器を……いや、ルイズはそういうキャラクターじゃあない。 ……だが………………万が一、ポルナレフのように……という事も……? もし寝る前の歯磨きを念入りにしていたとしても、知らんプリしてやるか) 正直に話した方がマシな推理を展開させていた。 そしてどうでもいい事だが、その晩ルイズは歯磨きをしながら、水に関する詔で何かいいのはないかなーと考え、すでに磨き終えた歯をぼんやりと磨き続けていた。 それを見て承太郎がどう思ったのかは、ここでは伏せさせていただこう。
https://w.atwiki.jp/darthvader/pages/38.html
413 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/03(火) 23 24 39.59 ID 37OU16gw0 「窮屈だわ……」 タバサの足元で、ルイズがぼやいた。 ルイズはコクピットの床面にお尻をついて座り、伸ばした足でフットペダルを操作している。 膝上まであるソックスに包まれたタバサの両脚が背もたれ代わり。その両膝が、ルイズの頭を やんわりと挟んで固定してくれていた。 「我慢」 涼しい顔でそう言うタバサは、杖を構えて魔法で操縦桿を操作していた。 ルイズに輪をかけて小柄なタバサは、直接レバーを握って操縦するのを最初から諦めていた ようだ。 420 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/03(火) 23 29 45.11 ID 37OU16gw0 「桃色の髪の娘っ子はまともに魔法が使えねえからな。これがベストな体勢だろう」 そう言い、自分で自分の言葉に納得したかのようにカチャカチャ鳴るデルフリンガーをきっ、 と睨んでから、ルイズはなんだか悔しくなって、傍らに置いた『始祖の祈祷書』に思わず目を やった。 そして、息を呑んだ。 その内の一ページが、また光を発しているのがわかったからだ。 422 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/03(火) 23 34 22.27 ID 37OU16gw0 ルイズは震える手で祈祷書のページをめくった。 光っていたのは、序文の次のページだった。 「以下に、我が扱いし『虚無』の呪文を記す。 初歩の初歩の初歩。『エクスプロージョン』」 その後に、古代語の呪文が続いていた。 それを一通り読んでから、ルイズは顔を上げた。背骨を反らし、顎をぐっと上げ、上下反転して 見えるタバサの無表情な顔を仰ぎ見る。 「ねえ、タバサ……」 「何?」 タバサが不審げに眉を動かした。 436 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/03(火) 23 39 45.11 ID 37OU16gw0 ルイズはしばし逡巡していたが、やがて意を決して言葉を継いだ。 「あんたとベイダー、このところよく一緒に居たけど、何やってたの? それから、あの恋文みた いなのは何?」 眼鏡の奥の目が一瞬困ったように泳ぐのを、ルイズは見逃さなかった。 じっとその視線を絡めとり、放さない。 逃げ切れないと思ったのか、タバサは一度両目を瞑った。 そして、その瞼がもう一度開いた時には、瞳に映るのはいつもの無機質な色だけになっていた。 「ベイダー卿に、字を、教えていた」 一言一言紡ぎ出すように、ぽつりぽつりとタバサは言った。 「字? ベイダーってば、字がわからなかったの?」 少しだけ困ったような表情で、タバサがこくりと頷く。 452 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/03(火) 23 46 21.70 ID 37OU16gw0 「でも、どうしてあんたに? わたしに習えばいいじゃない。四六時中一緒にいるんだし」 タバサは今度こそ目を伏せた。 「あなたを、驚かせたかった」 「はぁ?」 「ベイダー卿が、そう言っていた」 ルイズはあんぐりと口を開けた。そっちの方がよほど驚きだ。 467 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/03(火) 23 52 08.39 ID 37OU16gw0 なんて馬鹿げた理由だろうか……ルイズは思った。振り回されるこっちの身にもなってほしい。 第一、ルイズはベイダーが字を解さないこと自体、今の今まで知らなかったのだ。 驚く驚かない以前の問題である。 そして、そんな困惑とともに、ルイズの胸の中に沸々と笑いがこみ上げてきた。 胸中澱のように溜まっていた疎外感が、ぽろぽろと剥がれ落ちていくのを感じた。 (あんたも結構ヌケてるんじゃない、ジェダイの騎士さん?) ルイズは顔の向きを戻し、ひとり笑いをかみ殺した。 471 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/03(火) 23 56 14.11 ID 37OU16gw0 タルブの草原が近づくにつれ、爆発の衝撃が強くなってきた。 それに揺さぶられ、機体のブレも大きくなる。 デルフリンガーの指示でタバサが操縦桿を小刻みに動かし、続いてルイズが必死にラダー ペダルを踏み込む。 二人が力を合わせて操縦するハリアーが、戦場の空に躍り出た。 478 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/04(水) 00 02 11.52 ID /LcM/qO40 「なんてこと……!」 予想を遥かに超える事態に、ルイズは束の間呼吸を忘れていた。 ルイズの姿勢では上方を仰ぎ見ることしかできないのだが、それでも相も変わらず悠々と滞空 する超巨大戦艦と、無数の機影が空を覆っているのが見て取れた。 地上でも乱戦が繰り広げられている。 「下りられない」 白磁の如きタバサの顔が、さらに蒼白くなった。 それどころか、今こうしている間にも撃墜されないのが不思議なくらいだ。 488 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/04(水) 00 08 05.63 ID /LcM/qO40 上空を見守るルイズの視界の隅で、一機の小型機が味方に撃たれて墜落していった。 なぜだかわからないが、ルイズの背筋を、悪寒が駆け抜けた。 そしてその刹那、今しかない、と誰かの声が聞こえた気がした。 気がつけばルイズは立ち上がり、キャノピーを開放していた。 その背後では、タバサが珍しくぎょっとしたような表情を浮かべている。 ルイズは『始祖の祈祷書』に記されていた呪文の詠唱を開始した。 エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ タバサは今度こそ目を見張った。 ルイズの唇が、勤勉な彼女ですら聞いたことのない、古代のルーンが紡ぎ出していた。 498 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/04(水) 00 12 45.82 ID /LcM/qO40 オス・スーヌ・ウリュ・ル・ラド ベオーズス・ユル・スヴュエル・カノ・オシェラ ルイズの中を、リズムがめぐっていた。一種の懐かしさを覚えるリズムだ。 呪文を詠唱するたび、古代のルーンを呟くたびに、リズムは強くうねっていく。 神経は研ぎ澄まされ、辺りの雑音はすでに一切耳に入らなくなっていた。 体の中で、何かが生まれ、行き先を求めてそれが回転していく感じ――誰かが言っていた そんなセリフを、ルイズは思い出していた。 自分の系統を唱える時には、そんな感じがするのだという。 だとしたら、これがそうなのだろうか? いつも、ゼロと蔑まれていた自分……。 魔法の才能がない、と両親に、長姉に、先生に叱られていた自分……。 そんな自分の、これが本当の姿なのだろうか? 507 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/04(水) 00 17 12.08 ID /LcM/qO40 タルブの草原目がけて落下していくVウィングのコクピット内で、ベイダー卿は奇妙な声を聴い た気がした。 不思議に暖かく、懐かしいようでいて、こちらの勇気を鼓舞する声だ。 ベイダー卿はハッとして目を開けた。 被弾の衝撃で、ほんの一瞬だけ、気を失っていたかもしれない。 できる――ベイダー卿はそう自分に言い聞かせた。 意識と無意識の狭間で聴いたあの声が、ベイダー卿を高揚させ、自信と勇気を与えていた。 自分にならできる……。 515 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/04(水) 00 21 41.17 ID /LcM/qO40 操縦桿を握る手に力が籠もる。 飛行を続けるのは絶望的だが、操縦系統はやられてはいない。 機体を制御することは可能だ。 必要な動作を見事な手際でこなしつつ、ベイダー卿は先ほどの声の主をおぼろげながら感じ 取っていた。 そして、『彼女』がやろうとしていることも。 536 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/04(水) 00 30 07.98 ID /LcM/qO40 草原が急速に迫ってくる。 それが瞬く間に視界一杯に広がってから、ベイダー卿は思い切り操縦桿を引き、機首を起こした。 目の前には、着陸した二機のガンシップ。 ベイダー卿はトリガーを素早く引いた。 まばゆい激光が連続して数十発放たれ、二機のガンシップをたちどころに粉砕した。 それからベイダー卿は、Vウィングを地面とほぼ平行に滑空するような姿勢に持ち込んだ。 ランディング・ポイントは、トリステイン軍と帝国軍のちょうど中間。 思い切り左に舵を切り、機体を横滑りさせながら接地。 そして次の瞬間、ベイダー卿はコクピットのハッチを跳ね上げた。 567 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/04(水) 00 41 54.31 ID /LcM/qO40 トリステインは小国ながら、歴史ある国である。由緒正しい貴族が揃っている。 軍におけるメイジの比率は、各国で一番高いくらいであった。 着陸した大型機から数十名の兵士が姿を現した時、少なからぬ数のメイジが反撃を試みた。 今まで空を飛ぶ謎の敵に蹂躙されっぱなしで活躍できなかった鬱憤を、ここで晴らそうとした のである。 それは貴族の名に恥じぬ勇敢な行為であったが、結果として、新しい敵の強力さを印象付ける ことになった。 彼らが手にした円筒状の大きな武器から出る光は、ほとんどの攻撃魔法より殺傷力が高く、 しかも比較にならないほどのスピードで連射ができた。 さらに、彼らが着込んだ白い甲冑は軽量の上に非常に頑丈で、『ドット』や『ライン』程度の攻撃 呪文ではなかなか致命傷を与えられない。 そして、より強力で時間のかかる呪文を詠唱させてくれるほど、敵は鷹揚ではなかった。 580 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/04(水) 00 46 40.36 ID /LcM/qO40 敵の部隊も、初めこそ既知の体系にない原理で生み出される『魔法』という攻撃手段に戸惑っ ていたようで、その間に数名を倒すことができた。 しかしながら敵部隊が『魔法』のおよその性質を把握し、体勢を整えるや否や、トリステインの メイジたちは次々に撃破されていった。 何しろ、こちらが一発の攻撃呪文を詠唱する間に、相手からはその何十倍もの光線が飛んで くるのだ。それも、確実に被弾した者の命を奪い取る殺人光線が、である。 そして、一人の敵兵が投げた小さな球状の兵器が周囲を焼き尽くす火球を出現させるに及んで、 ついに彼ら勇敢な貴族たちも戦意を失った。 590 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/04(水) 00 53 44.49 ID /LcM/qO40 その場に踏みとどまろうとするアンリエッタとマザリーニだったが、もはや戦線の維持は困難に なっていた。 前方の味方は瞬く間に総崩れになり、逃げる間もなく屠られていった。 だが、被害がアンリエッタのすぐ前の兵士まで及び、彼女自身も身の危険を感じた時、こちらの 方に機首を向けて低空を飛んでくる小型機が目に入った。 先ほど味方であるはずの大型機を撃墜したのと同じ機体だ、とアンリエッタが気づくより先に、その 機は敵味方の間の地面に接触し、草地の上を滑走する。 前部を覆う風防が跳ね上がり、人影が一つ、ばね仕掛けの人形のように高々と空中に飛び 上がった。 赤く光る長剣を手にして。 609 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/04(水) 01 00 08.68 ID /LcM/qO40 背後のガンシップが破壊され、さらにスターファイターが眼前に落下してきたことに浮き足立ち ながらも、歴戦のクローン兵たちの対応はさすがに素早かった。 ファイターのコクピットから宙に舞い上がった黒い人影に、立て続けにブラスターを撃ち込む。 だが、標的の人影は空中で華麗に体勢を整えると、手にしたライトセイバーを振るい、その全弾 を跳ね返した。 その影が着地するまでの一瞬の内に、偏向された光弾を受け、数人の死傷者が出た。 気づけば身長二メートルあまりの黒ずくめの巨人が、原住民の軍隊を守るようにして彼らの 前に立ちふさがっていた。 「ジェダイだ! 殺せ!」 コマンダーが怒号を発した。 630 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/04(水) 01 04 55.04 ID /LcM/qO40 「あなた……だったのですか」 わけのわからぬスピードと身のこなしで目の前に降り立ったベイダー卿の背に、アンリエッタが 声をかけた。 枢機卿のマザリーニは、唐突に現れた巨人に目を丸くしている。 ベイダー卿はブラスターの弾を偏向しながら、ちらり、と顔だけをアンリエッタの方に向けた。 「貴婦人の護衛には慣れているのでね」 笑えないジョークだった。 642 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/04(水) 01 07 27.88 ID /LcM/qO40 残ったクローン兵たちは姿を現したジェダイの騎士にブラスターの砲火を集中させた。 だがその騎士は、彼らが今まで共闘してきたどのジェダイよりも手強かった。 あたかも全身を偏向シールドで覆っているかのように、ライトセイバーの細い刀身でことごとく 光弾を弾き返す。 傍らの兵がサーマル・デトネーターを投げつけようとするのを、コマンダーは激昂して制止した。 「やめろ! フォースで跳ね返されたら我々は一瞬で全滅だぞ!」 だが、このままやっていても勝ち目は薄い。 コマンダーはコムリンクでもう一方の軍勢に向かった小隊を呼び戻すと共に、残存の航空戦力 に連絡を取った。 656 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/04(水) 01 11 54.22 ID /LcM/qO40 アンリエッタとその周りに控える高官たちは、ベイダー卿の戦いぶりに目を見張っていた。 人間の認識力を超えた速度で飛来する光線が、赤い刃に次々と跳ね返されていく。 しかもそれを振るうベイダー卿の動きには無駄もよどみもなく、あたかも軽やかなダンスを踊っ ているかのよう……。 ベイダー卿が光弾を防いでくれているのを見て、後ろに控える貴族たちもにわかに勢いを取り 戻した。 口々に呪文を詠唱し、火球や真空の刃をクローン兵目がけて放つ。 敵兵が次第にその数を減らし、味方の士気が回復していくのを感じ取って、アンリエッタはぼん やりと理解した。 ああ、こういう人をこそ英雄と呼ぶのだ……、と。 黒いマントに包まれた広いその背は、どんな城砦よりも頼れるものに思えた。 682 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/04(水) 01 22 03.96 ID /LcM/qO40 残るクローン兵がガンシップの残骸を迂回して一旦引き、もう一つの小隊と合流するのを見て、 ベイダー卿はライトセイバーの刃を収めつつ、すぐ後ろにいるアンリエッタに声をかけた。 「トリステインの王家は代々『水』系統の魔法を得意とすると聞くが?」 「え、ええ……」 ベイダー卿に話しかけられたことに少々面食らいつつ、アンリエッタは曖昧に肯定した。 その言葉に嘘はない。彼女自身も『水』系統のトライアングル・メイジである。 ベイダー卿は満足そうに頷いた。 「ならば、できるだけ広範囲に濃密な水蒸気を張ることは可能か? 味方全部を包み込む ような」 「わ、わたくしひとりでは心許ありませんが、もう何人かの貴族に協力してもらえるなら……。 でも、どうして?」 「彼らの持っている武器は、水蒸気によって減衰させられ、威力が半減する。しばらくそれで 持ちこたえてほしい」 対レーザー用エアゾールを、魔法の力で作り出そうというわけだ。 705 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/04(水) 01 28 40.12 ID /LcM/qO40 アンリエッタは戸惑った。 「そ、それはかまいませんが、あなたは?」 ベイダー卿はそれに答えず、アンリエッタの顔をまともに見下ろした。 「航空戦力からの攻撃からは、僕の力でもきみたちを守りきれない。だが、僕にはわかる。もう すぐマスターが来るのを感じる。それまで、できるだけ散開して被害を抑えるんだ。いいな?」 「は、はい……」 迫力に気圧されたアンリエッタがそう返事するのを見届けてから、ベイダー卿はもう一度前方 に目を向けた。 クローン兵の小隊が戻ってこようとしていた。 726 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/04(水) 01 36 02.34 ID /LcM/qO40 ルイズが来てどうするというのか、アンリエッタにもよくわからなかった。 だが、ベイダー卿の活躍でなんとか立て直してもらった自軍の将兵を守るのが、指揮官たる アンリエッタの使命だ。 そして、そのための指針も与えてもらった。 甲高い音とともに、ベイダー卿の右手に握られたライトセイバーが、再び光を発する。 マントを翻して駆け出すその背に、アンリエッタは我知らず呼びかけていた。 「メイ・ザ・フォース・ビー・ウィズ・ユー、ロード・ベイダー!」 戦場の猛き風がその声を届けてくれたかは、だれにもわからない。
https://w.atwiki.jp/trinity_kristo/pages/535.html
カトリックや正教会では、独自に伝承されてきた祈祷文が存在する。 たとえばカトリックの典礼の一種である聖務日課における祈祷文をまとめた「教会の祈り」はカトリック教会で読まれる祈祷書である。 旧約聖書の祈祷文 『詩篇』と『哀歌』は旧約聖書の時代における祈祷文を集めた書物である。 また、正教会の聖書に含まれる『オデス書』は、詩篇以外の旧約聖書から抜粋された祈祷書である。 カトリックの祈祷文 ミサの祈祷文 通常文:求憐誦(Kyrie), 栄光頌(Gloria), 信仰宣言(Credo), 三聖頌(Sanctus)と幸いなる哉(Benedictus), 神羔頌(Agnus Dei) 固有文:入祭唱(Introitus), 昇階唱(Graduale), アレルヤ唱(Alleluia)または詠唱(Tractus), 続唱(Sequentia), 奉納唱(Offertorium), 慈悲深いイエス(Pie Jesu), 聖体拝領唱(Communio) その他:救済の主よ(Domine Salvam), 赦祷唱(Absolutio, Libera me), 楽園へ(In Paradisum) マリアへの祈祷文 聖務日課の聖書朗読:マリアの歌(Magnificat)(夕の祈り) 聖務日課の聖母賛歌:天の女王(Regina Coeli、アレルヤの祈り), 憐れみの女王(Salve Regina), 救い主の麗しき母(Alma Redemptoris Mater), 幸いなるかな天の女王(Ave Regina Caelorum) 他の伝統的な祈り:天使祝詞(Ave Maria), 御使い(Angelus), 海の星(Ave Maris Stella), 恵みの母マリア(Maria Mater Gratiae), 思い給え(Memorare), 汝の保護の下に(Sub Tuum Praesidium), 連祷:聖母マリアへの連祷(Loreto), 三回のマリア称賛(Three Hail Marys) ロザリオの祈り:聖母マリアへのロザリオの祈り 近代の祈り:ファティマの祈り 他の祈祷文 聖務日課の聖書朗読:主の祈り(Pater Noster), ザカリヤの歌(Benedictus)(朝の祈り), シメオンの歌(Nunc Dimittis)(寝る前の祈り), テ・デウム(Te Deum)(読書課のみ), 懺悔の詩篇(Penitential Psalms) 他の伝統的な祈り:栄唱(Gloria Patri), 汝を熱烈に崇拝す(Adoro te devote), 神の天使よ(Angele Dei), キリストの魂よ(Anima Christi), 聖体賛美(Ave Verum Corpus), イイススの祈り, 神の称賛(Laudes Divinae), 救いのいけにえ(O Salutaris Hostia), 永遠の安息を(Requiem Aeternam), 偉大な秘蹟(Tantum Ergo), 来たれ、創造主たる聖霊よ(Veni Creator Spiritus), 来たれ、聖霊よ(Veni Sancte Spiritus), 聖霊に向かう祈り(Preces ad Spiritum Sanctum), 痛悔の祈り(Actus Contritionis), 十字架像の前の祈り(En ego, o bone et dulcissime Iesu), あらゆる被造物の賛歌(Laudes Creaturarum、太陽の賛歌) 連祷:聖人たちの連祷(Litanies) 動作を主体とする祈り:十字架の道行, ノベナ(Novena) ロザリオの祈り:神のいつくしみへの祈りの花束 近代の祈り:フランシスコの平和の祈り, 朝の奉納(Morning offering), 聖ヨセフへの祈り, 大天使聖ミカエルへの祈り 近代の詩:足跡(Footprint), 神の愛(The Love of God) その他:Spiritual Communion, Thanksgiving after Communion, Visit to the Blessed Sacrament, 瞑想 Wikipedia Prayer in the Catholic Church Wiki ミサ曲 グレゴリオ聖歌 ラテン語の祈り Orthodox Prayers ラテン語宗教歌、単語の意味と日本語訳 女子パウロ会>祈りのひととき
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1754.html
夜、私とルイズは当然のことながら自分たちの部屋にいた。私は特に何もすることも無いので、椅子に座りながらキュルケからもらった剣を掃除していた。 埃まみれだったからだ。どうせこの剣は売ってしまうのだ。埃まみれではあまり高く買ってもらえないだろう。 ルイズは、ベッドに寝転びながら始祖の祈祷書を開き、穴が開くほど見詰めている。その手にはやはり水のルビーが嵌められている。 タルブの村に行く前もこうして祈祷書を見詰めていたが、今度はそのときよりもひどいような気がする。 まあ、もうすぐ幼馴染のお姫様の結婚式だからな。こうして真剣になるのも無理は無いような気がしないでもない。 だが、私にはそんなもの関係ない。ルイズ一人が背負えばいいプレッシャーだからな。 私はこうしてのんきに剣でも磨いて高く売れるように頑張ればいい。この剣を売れば画材を買えるくらいの金は手に入るだろう。 金が余ればデルフに新しい鞘を買ってやってもいいな。どんなのを買おうか?とりあえず派手なのはダメだ。目立つのは好ましくない。 品がよく、なるべく自己主張しないような、そんな鞘がいいな。いや、ここはデルフの意見を聞き入れるべきだろうか? 「ねえ、ヨシカゲ」 「ん?」 不意の呼びかけに剣を磨く手を止める。呼びかけてきたのはもちろんルイズだ。この部屋にいる人間は私とルイズだけだからな。 さて、なんだろうか?何日か前にもこうして呼びかけられたことがあった。結局何も喋らなかったが。 「今日、なにか変わったことあった?」 「ああ、ゼロ戦の燃料が完成した。もうすぐ空を飛べるだろう」 「ふ~ん」 そこで会話が止まってしまった。結局ルイズは何が言いたかったのだろうか?自分が本当に喋りたいことは言ってないようだったが。 そんなことを思っていると、突然ルイズがベッドから起き上がりこちらを向く。そして指輪を外すとこちらに祈祷書を突きつけていた。 「ヨシカゲ、これってなにも書いてないわよね」 「ああ、書いてないな。前から知ってるけど」 いきなりなんだ?それよりなんでわざわざ指輪を外す必要があるんだ?うっおとしくなったのか? 「前に言ったわよね?一瞬だけ文字が見えることがあるって」 「あ?……ああ、そういえばそんなことも言っていたな」 たしか、何回も見えたから見間違いじゃないって確信して無視できなくなったんだったな。 「あのとき、その祈祷書に魔法がかかってるんじゃないかって結論にたどり着いたんだっけ?」 「そう、条件を満たせば見れるんじゃないかってことになったわ」 そうだっただろうか?どうでもいいことだからすっかり忘れていた。 「それで、ちょっとこれ嵌めてみてくれない?」 ルイズはそういいながら近づいてくると私に外した指輪を差し出してきた。何故だ?もしかして、 「この指輪を嵌めることが見る条件なのか?」 「いいから嵌めなさいよ」 やれやれ、説明くらいしろよ。 そう思いながらも指輪を受け取る。まあ、実際これを嵌めて祈祷書が見えるかどうかは興味がある。 見えたとしても私はこの世界の文字は殆んど読めないけどな。 しかし、嵌めろといわれても穴が小さい。私に嵌められるだろうか?嵌る指なんて小指しかないだろう。右手の小指はまだ骨折が治りきっていないので必然的に左手だな。 手袋を外し指輪を小指に通してみる。以外にもすっぽりと嵌ってしまった。嵌らないのでは、という思いはどうやら杞憂だったらしい。 「はい、これ」 私が指輪を嵌めたのを確認したのか、ルイズが祈祷書を私に渡してくる。 私はそれ受け取ると適当にパラパラと捲ってみる。捲ってみる。捲ってみる。捲ってみる……、やがて静かに祈祷書を閉じた。 そしてルイズに祈祷書を差し渡す。 「ダメだな。何も見えない。だが、一体どういうつもりで私に読ませたんだ?」 さらに指輪も外しルイズに渡す。ルイズは指輪を受け取ると自分の指に嵌めなおす。 初めルイズが指輪を差し出してきたときは、その指輪を嵌めていれば祈祷書に書いてある(と思われる)文字が読めるようになると思っていたんだが違っていた。 では、何故ルイズは私にこんなことをさせたのか?検討もつかない。 ルイズは私の質問を聞いているのかいないのか、祈祷書を何気ないように開く。ちっ! 「おい、ルイズ。聞いてん「わたしには」……え?」 ルイズに質問に答えるように言おうとすると突然ルイズが口を開き喋り始めた。 「わたしには、見えるわ。この『始祖の祈祷書』に書いてある文字が」 「なんだと?私が見たときは確かに何も見えなかったぞ?」 ルイズの目を見る限り嘘は言っていない。だとしたら本当にルイズには見えていることになる。 わざわざ指輪をつけていることから指輪をつけなければ見れないことは確実だ。だとしたらなぜ指輪をつけていた私には見なかったんだ? 「『序文。我が知りし真理をこの書に記す』」 「そう、書いてあるのか?」 「うん。古代のルーン文字でね。授業を真面目に受けてたから読めるわ。で、今のは書いてある文字のほんの初め」 「……なんでルイズだけ読めるんだ?私が指輪を嵌めたときは文字なんて全く見えなかったのに、ルイズが嵌めると見えるなんておかしくないか?」 もしかしてメイジかそうじゃないかが分かれ目なのか?私はメイジじゃないから読めない。ルイズは(一応)メイジだから読める。 そう考えれば辻褄が合う。 「ヨシカゲが読めないのは資格が無いからよ」 「資格だって?」 「これを読めばわかるわよ。いい?『この世のすべての物質は、小さな粒よりなる……」 ルイズが祈祷書に書かれているという文字を私に読み聞かせてくれる。 その内容は『虚無』という系統についてだった。虚無という言葉には覚えがある。まず初めに思いつくのは虚無の曜日だ。しかしこれは明らかに関係ない。 次に思いつくのは授業内容だ。前にその中で虚無という言葉が出てきたことを憶えている。あのとき、虚無は確か伝説と言われていたはずだ。 つまり『始祖の祈祷書』は伝説が記されていることになる。 この始祖の祈祷書を読むには資格がいるらしく、その資格が無いものはたとえ指輪を嵌めようと何も読めないらしい。 資格がある人間は『四の系統』の指輪を嵌めれば見えるらしい。『四の系統』というのは『火』『水』『風』『土』のことだろう。 だから『四の系統』の指輪は4つあると予測がつく。そのうちの一つがルイズが嵌めている『水』のルビーなのだろう。 そしてルイズは資格を持っていた。そして『水』のルビーを嵌めたことにより『始祖の祈祷書』が読めるようになったというわけだ。 なぜ資格が無ければ読めないのか?どうやら虚無というのは非常に強力な魔法らしく、精神力を大きく消費するらしい。 そして、それは時に命すら縮めかねないほどらしいのだ。まさに諸刃の剣って感じがする。 これを記したのはブリミル。ブリミル・ル・ルミル・ユル・ヴィリ・ヴェー・ヴァルトリ。ブリミルといえば確か魔法使いの祖だったはずだ。 「オッたまげた……。そんな内容が書いてあるなんて」 「わたしだってはじめに見たときは相当驚いたわ」 「資格ってのは内容から察するに虚無が使えるやつってことだろう?だとしたらルイズ、お前は伝説の再来ってことになるじゃないか!」 まさか才能ゼロのルイズがそんなすげえ魔法を使える素質を持っているなんて。 そうだ。私は『ガンダールヴ』だ。『ガンダールヴ』は伝説の使い魔と言われている。つまり私も伝説だ。 なんだかどこかできすぎているような気がする。これは偶然なのか? だが、指輪が無きゃ読めない本に注意書きを書くなんてブリミルは間抜けか?読めなきゃ注意書きの意味が無いだろう。 「でも、今一つ信じられないのよ。わたしの魔法はいつでも爆発するわ。その理由は誰も言えなかった。 それはわたしが『虚無』の系統だからで、他の系統魔法が使えないから失敗してたって考えれば説明はつくかもしれない。でも、ほんとにそうかしら? 魔法が失敗してたのは単純に私にその才能が無いからかもしれないじゃない。これが読めるのも何かの偶然って考えられない?それか偽物かも…… だって『虚無』の系統って言ったら伝説よ?失われたはずの、伝説の系統なのよ!?そんな簡単に信じられるわけが無いじゃない」 ふむ、ルイズたちにとって魔法というもには日常だ。あって当たり前のもの。そんな中にあってはならないものが虚無だ。なんといっても伝説だからな。日本なら、日本神話は実話です、というぐらい信じられないもんだろう。まあ、それはともかく。 「何かの偶然で読めるなんてことは無いんじゃないか?魔法のことについてはお前の方が詳しいから強くは言えないが、魔法はそんなに曖昧なもんじゃないだろう? そして偽物かどうかは、たしかに私たちには確認する術がない。だが、その『始祖の祈祷書』は王室に伝わる伝説の書物だったな?だったら偽物である可能性も低い 王室ってのは大抵歴史がある。だから歴史ある物も受け継がれているはずだからな。その『水』ルビーがいい証拠じゃないか」 『始祖の祈祷書』に『水』のルビーの記述があるということは、その指輪もまた伝説の道具ということだ。それを王女が持っていたということは王族が受け継いできたということだろう。しかし、そんな受け継いできたものを簡単にあげちまっていいのか?なんだか後先考えてないような気がする。 そういや、『始祖の祈祷書』は虚無について色々書かれてるんだよな? 「ルイズ、他にはどんなことが書いてあるんだ?」 「え?」 「『始祖の祈祷書』にだよ。虚無のことが書かれているんだろ?だったら呪文やなんかが書かれていても不思議じゃない。それで呪文を唱えれば一発で『虚無』の使い手かそうじゃないかがわかるじゃないか」 「……『以下に、我が扱いし『虚無』の呪文を記す』」 「やっぱり書いてあるじゃないか!」 さて、『虚無』の魔法ってなんなんだ?『火』『水』『風』『土』とは全く違う魔法。興味がないわけが無い! しかし、その思いは容赦なく裏切られることになる。 「終わり」 「は?」 「だから、ここまでしか書いて無いの。もしかしたら、まだここまでしか読めないのかもしれないけど」 「………………」 使えねえ……。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5151.html
前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ 四五〇 体力点一を失う。 樫の若木の杖は持っているか? なければこの術は効かず、≪始祖の祈祷書≫は屋根から落ち、怪物どもに呑み込まれてしまう。二一八へ。 杖を持っているなら、掲げて術を使え。 間一髪だった! ≪始祖の祈祷書≫は屋根から滑り落ちたその瞬間に、君の術によって空中に固定される。 君は屋根のへりに立って祈祷書に手を伸ばす。 ルイズは、君が無事に≪始祖の祈祷書≫を取り戻すところを見て安堵の溜息をつき、 「よ、よかったぁ……トリステインの国宝が……」とつぶやく。 よけいな冷や汗をかかされて不機嫌になった君は、振り返ってルイズに本を押しつけると、悪態をつく。 そんなに大事なものなら自分の部屋の戸棚にきちんとしまって鍵をかけておけ、どういうつもりで旅先まで持ってきたのだ、と。 「な、なによ。だって、わたしは姫さまに約束したんだもん。祈祷書の秘密を調べて、もういっぺん文字が見えたらすぐに報告するって」 ルイズは憮然として言い返す。 「わたしはあれから毎日、祈祷書を開いてなにか変わったことが起きないかと調べてきたわ。タルブに居るあいだも、それを怠るわけにはいかないのよ!」と。 君はいらだち、無駄なことをしてきたものだ、何千年にもわたって白紙のままだった頁に文字があらわれるものか、姫君と謁見したときに見えたものも眼の錯覚だろう、と言う。 この言葉を聞いてルイズは眉を吊り上げる。 「そんなことないわ! あのときは確かに、この最初のほうのページに……」 そう言うといささか乱暴な勢いで≪始祖の祈祷書≫を開くが、すぐに手を止め、とある頁を食い入るように見つめる。 その眼は驚きに見開かれ、ぽかんと開かれた口からはときおり奇妙な呟きが漏れる。 「……我が知りし真理を……小さな粒より為る……」 ルイズはまばたきひとつせずに祈祷書に見入っており、いったいどうしたのだという君の問いかけにも反応しない。 「さらに小さな粒……四にあらざれば零……虚無の系統……」 どうやら彼女は、白紙だったはずの≪始祖の祈祷書≫に忽然とあらわれたとおぼしき文章を読み上げているようだ。 ルイズにもう一度声をかけようとした瞬間、ふたたび足元が大きく揺れたため、君は屋根から落ちぬように両脚を踏んばる。 ルイズも前のめりによろめくが、それでも祈祷書から眼を離そうとはしない。 君は彼女のすさまじい集中力になかば感心し、なかばあきれる。 ぬらぬらとした≪混沌≫の怪物が腐臭を撒き散らしながら足元にひしめき、自分たちの立つ足場はいつ崩れ落ちるかわからぬというのに、夢中で太古の書物を読みふけっているのだから! 「相棒、娘っ子! 古本のことは後にしてさっさとずらかろうぜ。この家はもうもたねえ」 デルフリンガーの言葉にあいづちをうち、脱出のための術を使おうとするが、君は致命的な間違いを冒していた。 先刻の言い争いで、貴重な時間を無駄にしてしまったのだ! 足元から響く音が大きくなる──柱が折れ、壁が崩れる音だ。 君たちの立つ屋根はぐらぐらと上下左右に揺れ、立っていることさえ困難なありさまとなる。 君は四つん這いになってルイズに近づく。 この期に及んでも≪始祖の祈祷書≫に見入っているルイズの腕をつかもうとしたところで、奇妙な浮遊感を覚える。 支えを失った屋根全体が落下しているのだ! 君はルイズに飛びつくと、その華奢な体を抱きかかえて衝撃にそなえる。 サイコロ二個を振り、出目の合計を自分の技術点と比較せよ。 君の技術点と同じかそれ以下なら、君は落下の衝撃に耐え、ルイズも無事だ(二〇〇へ)。 出目が君の技術点より大きければ、君とルイズは屋根が落ちた拍子にその上から転げ落ちてしまう(三一二へ)。 二〇〇 三階ほどの高さから落ちたにしては、その衝撃はさほどのものではない。 地面になにか柔らかいものが敷き詰められていて、それが君たちの乗った屋根を受け止めたのだ。 その『柔らかいもの』の正体に思い当たり、血が凍るような戦慄を覚える。 君とルイズは、村じゅうに大海のように拡がりのたうちうごめく、おぞましい怪物どものまんなかに居るのだ! 四方も、足元も、すべてが≪混沌≫の怪物で埋めつくされている! 「相棒、これ……やばくねえか? ものすごくやばくねえか?」 デルフリンガー話しかけてくる。 「俺にゃわかる。あの韻竜の言ってたとおりだ、こいつらはなんでも腐らせちまう。こいつらに呑み込まれちまったら、六千年生きてきた俺だってきっと、ただじゃ済まねえ。 なあ、早く空飛んでずらかろうぜ!」と、 彼には珍しい怯えた声を上げる。 息が詰まるような臭気が鼻を襲うなか、ルイズは信じがたいほどの集中力で≪始祖の祈祷書≫の頁をたぐっており、 「『四の系統』の指輪を嵌めよ……ブリミル……初歩の初歩の初歩……」と、 意味のわからぬことを呟いている。 この様子では、今しがたの落下に気づいたかどうかもあやしいものだ。 君はいい加減にしろと怒鳴り、ルイズから≪祈祷書≫を取り上げようとするが、周囲が急に暗くなった――まだ日没には早い――のに驚いて手を止める。 慌てて顔を上げた君が見たものは、その体の一部を蛇の鎌首のようにもたげ、今まさに君たちにのしかかろうとしている怪物の姿だ! 急いで決断しなければならない。 ルイズを抱きかかえて横っ飛びに身をかわすか(三〇一へ)、それとも君ひとりで後ろに飛びすさるか(一〇八へ)? それとも、術を使って身を守るか? ZEN・四九七へ HUF・四〇〇へ GAK・四六八へ DET・三四九へ ZAP・四一六へ 四一六 体力点四を失う。 君たちを押しつぶそうとする怪物に指でねらいをつけ、稲妻を放つ。 稲妻は命中し、腕状の塊は破裂して焦げた肉片を周囲にばらまく。 なんとか死の一撃を防いだ君だが、危機は去っていない。 周囲を取り巻く怪物の中から、大木のように太い触手めいた突起が、新たにいくつも生まれる。 さらに、君たちの立つ屋根自体が怪物の中に沈み込もうとしている。 どうすべきかを考える君に、≪始祖の祈祷書≫を読み終えたらしきルイズが言う。 「その……もしかしたら、わたし、どうにかできるもしれない」と。 「この祈祷書に書かれていることがほんとなら、この呪文が本物なら、あの化け物を……やっつけられるかもしれない」 彼女はなかば独り言のような口調で言う。 意外な言葉に君は面喰らい眉根を寄せるが、ルイズは構わずに続ける。 「これから呪文を詠唱するから、終わるまでのあいだわたしを守って。だめでもともと、やってみるわ!」と。 君はどうする? ルイズの言葉に従って、彼女を守ることに全力を尽くすか(八七へ)、今は逃げ出すことだけを考えるべきだと説得するか(一八四へ)? 一八四 「いいから、言うとおりにしなさい! あんたはわたしの使い魔! 使い魔は主人の言うことに従い、主人の身を守る!」 ルイズが君を怒鳴りつける。 「あんた、ギーシュが大怪我した日に誓ったでしょ。故郷に帰るときまでわたしに忠誠を誓う、命ある限りわたしを守る、って。 今こそあの誓いを果たすとき、あんたの勇気と献身を示しなさい!」 こうなっては説得するだけ時間の無駄だと考えた君は、大きく溜息をつくと、わかったと告げ、自分たちの身を守る方法を考える。八七へ。 八七 ルイズはその大きな鳶色の瞳で君の眼をじっと見つめ、 「それじゃ、いくわよ。……お願いね」と言うと、 片手に小さな杖を、もう一方の手にとある頁が開かれた≪始祖の祈祷書≫を持つ。 細い指に嵌った≪水のルビー≫が、沈みかけた夕陽を受けてきらりと輝く。 周囲にたちこめる悪臭をものともせず大きく息を吸い込むと、祈祷書に記された呪文──覗きこんだ君の眼には、あいかわらずなんの文字も映らぬのだが──を詠みあげる。 君はどうやって彼女を守る? 武器か(二二八へ)、それとも術か(七へ)? 七 どの術を使う? DEN・四八九へ FOF・四一七へ RUS・三七四へ ZIP・四〇一へ HOT・四六五へ どの術も使いたくない、もしくは使えないなら武器をとって二二八へ。 四一七 体力点四を失う。 術を使うと君たちの周りに眼に見えぬ防壁が張りめぐらされる。 形のない怪物は君たちめがけて津波のように押し寄せてくるが、この防壁に衝突してせき止められる。 怪物は下からも襲いかかり、君たちが足場にしていた屋根がついに粉々に砕けてしまうが、防壁は足元をも覆っているため安全だ──少なくとも当面は。 “エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ” ルイズのさえずるような声が、ひとつの長々とした呪文を紡ぐ。 君にとってまったく未知の言語で構成されたその呪文は、高く、低く、歌のような旋律をともなってルイズの喉から流れ出す。 見開かれたその眼には防壁に張りついた怪物の醜い姿が映っているはずだが、恐怖によって詠唱が途切れるようなことはない。 「……おでれーた。この呪文は≪虚無≫じゃねえか! まさか娘っ子が『担い手』だったってのか!?」 デルフリンガーが興奮気味に言うが、防壁の制御に手いっぱいの君はその言葉を聞き流す。 “オス・スーヌ・ウリュ・ル・ラド” 周囲が闇に閉ざされる。 ≪混沌≫の怪物が、君の作った防壁を完全に包み込んだのだ。 「だが、相棒は『使い手』じゃあねえ……。こいつはどういうこった?」 呟き続けるデルフリンガーに君は、集中の邪魔になるから黙っていろと唸る。 “ベオーズス・ユル・スヴェユル・カノ・オシェラ” ルイズの詠唱は止まらない。 一筋の光もなく、鼻をつままれてもわからぬほどの暗闇に包まれているはずなのだが、 どういうわけか彼女には祈祷書に書かれた文字が読み取れるようだ。 「たしかに、この魔法なら化け物どもを始末できるかもしれんね。だが詠唱がやたら長げえときてる。相棒、詠唱が終わるまで、この障壁は持つのかね?」 君はなにも答えない。 君も今まさに、デルフリンガーと同じ不安を覚えたところなのだ。 “ジェラ・イサ・ウンジュー・ハガル・ベオークン・イル……” 怪物は防壁ごと君たちを押しつぶすつもりらしく、荷重が増すにつれ、防壁がぶるぶると震えだす。 この術はけっして無敵ではない。 土砂崩れや雪崩のような、圧倒的な重みをくい止めるほどの効果はないのだ。 「相棒、あとひとふんばりだ! 娘っ子の呪文はもう少しで完成する!」 デルフリンガーが叫ぶ。 しかし、もはや術の効果は失われようとしている。 君がルイズのほうを振り返ってもう限界だと叫ぼうとした瞬間、眼の前で光が炸裂する。 太陽神グランタンカが地上に降り立ったかのような凄まじい光を前にして、君は思わず両手で眼を覆う。一四二へ。 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2047.html
絶対絶命の状況で救いの声が掛かる。 「ミスタ・コルベール実家に連絡とは、いささかやり過ぎではないかね」 オールド・オスマン! 部屋の入り口にオールド・オスマンが立っていた。 「しかし、ミス・ヴァリエールは規則を破り・・・」 「ミスタ・コルベール」 コルベール先生の話をオールド・オスマンが遮った。 「は、はい」 「今、君がこうして暢気に授業や研究が出来るのは、ミス・ヴァリエールの お蔭と言っても過言では無いのじゃよ」 「なんですと!?」 コルベール先生から驚きの声があがる。 「先の任務でミス・ヴァリエールはそれだけの働きをしたのじゃよ。性質上 誰彼かまわず自慢出来る事の無い任務のな。その任務で失ってしまった 使い魔を侮辱され怒りに囚われ魔法を使ってしまった・・・ 一体誰が彼女を責められようか」 ・・・使い魔・・・プロシュート・・・ 「ミス・モンモランシー使い魔はメイジの半身じゃ、その失ってしまった気持ちを 察し、どうかミス・ヴァリエールを許してはくれんかね」 オールド・オスマンはモンモランシーに頭を下げた。 まさか学院長がわたしの為に頭を下げるなんて・・・ だが、わたしよりも、モンモランシーの驚きの方が大きかった。 「あ、頭をお上げください、オールド・オスマン。何も知らずに無責任な事を 言ってしまった私も悪いのですから」 「そうか許してくれるか。これで、この話はお仕舞いじゃ」 オールド・オスマンの決定にコルベール先生が非難の声をあげる。 「しかし、それでは他の生徒に示しがつきません」 「そんなもん、罰当番で充分じゃわい」 「しかし・・・」 コルベール先生は納得できないようだ。 その様子をみてオールド・オスマンは声を掛ける。 「のう、ミスタ・コルベール。人は誰しも間違いを犯してしまう、大切なのは 責める事ではなく赦す事だとはおもわんかね?」 「・・・わかりました。学院長の決定に従いましょう」 先生から先ほどの剣呑な雰囲気がなくなったが、哀しい表情をしていた。 「今度こそ、この話は終わりじゃ。ミス・ヴァリエール」 オールド・オスマンに声を掛けられ、わたしの中に緊張が走る。 「はっ、はい」 「旅の疲れはいやせたかな?思い返すだけで、つらかろう。だがしかし、 おぬしたちの活躍で同盟が無事締結され、トリステインの危機は去ったのじゃ」 優しい声で、オールド・オスマンは言った。 「そして、来月にはゲルマニアで、無事女王と、ゲルマニア皇帝との結婚式が 執り行われることが決定した。きみたちのおかげじゃ。胸を張りなさい」 確かに手紙は取り戻した。でも、わたしの勝手な行動によりプロシュートを 死なせてしまった・・・とても胸を張ることなんて出来ない。 わたしが黙って頭を下げているとオールド・オスマンは一冊の本を差し出した。 「これは?」 「始祖の祈祷書じゃ」 「始祖の祈祷書?これが」 たしか王室に伝わる伝説の書物。国宝のはずだった。どうしてそれを オールド・オスマンが持っていて、わたしに差し出すの? 「トリステイン王室の伝統で、王族の結婚式の際には貴族より選ばれし巫女を 用意せねばならんのじゃ。選ばれた巫女は、この『始祖の祈祷書』を手に、 式の詔を詠みあげる習わしになっておる」 「は、はぁ」 そんな事するんだ。 「そして姫は、その巫女に、ミス・ヴァリエール、そなたを指名したのじゃ」 「姫さまが?」 「その通りじゃ。巫女は、式の前より、この『始祖の祈祷書』を肌身離さず持ち 歩き詠みあげる詔を考えねばならぬ」 「えええ!詔をわたしが考えるんですか!」 「そうじゃ。もちろん、草案は宮中の連中が推敲するじゃろうが・・・。 伝統というのは、面倒なもんじゃのう。だがな、姫はミス・ヴァリエール、 そなたを指名したのじゃ。これは大変に名誉なことじゃぞ。王族の式に 立ち会い、詔を詠みあげるなど、一生に一度あるかないかじゃからな」 心の何処かで、こんな事をしている場合じゃないとさけぶ・・・ いや違う、これはチャンスよ。アルビオンで手柄を立てたが、その成果は誰にも 言えない・・・家族にさえも。 匿名の情熱なんていらない・・・ わたしは歴史に名を残すと決めた。これは、その第一歩よ! わたしは、きっと顔をあげた。 「わかりました。謹んで拝命いたします」 わたしはオールド・オスマンから『始祖の祈祷書』を受け取った。 これが『始祖の祈祷書』・・・ トリステインは、なんとしてでも余の版図に加えねばならぬ。 あの王室には『始祖の祈祷書』が眠っておるからな。 聖地に赴く際には、是非とも携えたいものだ。 頭の中に響く声・・・ 聞いたことも無い声なのに・・・ ・・・どうして、こんなに胸騒ぎがするの・・・