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指輪物語 古より遥か西の大陸で伝わりし”指輪物語” ~ひとつの指輪はすべてを統べ、 ひとつの指輪はすべてを見つけ、 ひとつの指輪はすべてを捕らえ、 暗闇の中につなぎとめる~ そして我が落研にも密かに語り継がれる ”もうひとつの指輪物語”が存在した・・・
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登録日:2012/05/24 Thu 16 50 04 更新日:2023/05/02 Tue 21 40 49NEW! 所要時間:約 10 分で読めます ▽タグ一覧 エルフ オーク ガンダルフ トールキン ドワーフ ハイファンタジー ファンタジー ホビット ロード・オブ・ザ・リング 元ネタ 冒険 前日譚も映画化 剣と魔法の世界 原点にして頂点 名作 小説 指輪物語 映画化 色々と 金字塔 ▽目次 概要? 概要 時系列 映画版 ドラマ版「ロード・オブ・ザ・リング 力の指輪」 他作者による外伝作品 ストーリー 一つの指輪 概要? 『指輪物語:(The Lord of the Rings)』は、正式名称を『The Downfall of the Lord of the Rings and the Return of the King(指輪の王の没落と王の帰還)』といい、 かつて人類と交流のあった知的種族・ホビットに伝わる書物『赤表紙本』全五巻中の第二巻にあたる歴史書。 著者は数千年前に実在したホビットのマウラ・ラビンギ(Maura Labingi、英語ではフロド・バギンズと表記される)で、 一部は同じくホビットのバンジール・ギャルバジー(Banazîr Galbasi、英語ではサムワイズ・ギャムジー)が著述している。 ホビットが人間と交流しなくなって長い年月が経過したためこの本の存在は人間社会では全く知られていなかったが、 イギリスの言語学者「J・R・R・トールキン」が赤表紙本の写本一式を入手し、当時の言語を英語に翻訳して出版した事で、広く日の目を見る事ができた。 赤表紙本の他の四巻とともに、太古の世界で起きた様々な出来事、 特にホビット・エルフ・ドワーフといった古い種族について正しく紹介した、貴重な史料となっている。 * * * + という設定で創られています n ∧_∧ n + (ヨ(*´∀`)E) Y Y * 概要 『指輪物語:(The Lord of the Rings)』は、イギリスのJ・R・R・トールキン作のハイ・ファンタジー作品。 初期作品『ホビットの冒険』の続編として始まるが、より大きな物語になった。 非常に奥が深く壮大で緻密な物語である。 オックスフォードで言語学を研究していたトールキン博士は幼い頃より言語に興味を持ち、自ら言葉を創って遊ぶ趣味があった。 そうして創られたのが「エルフ文字」である。 他にも言語を創っているのだが、中でもエルフ文字は文法的にほぼ完成しており、勉強すれば日常生活でも使えるほどである。 世界ではこのエルフの言語を研究している立て主のような暇人がたくさんいる模様。 トールキンが『指輪物語』をはじめとする一連の神話作品を創ったのは、自分で創った言語を実際に使ってみたかったからである。 使ってみたかったからである。 つまり彼は文学作品のために言語を創ったのではなく、言語を使うために文学作品を創ったというわけだ。 なお、トールキンは、 「本作を翻訳する時は、英語(指輪世界の共通語を訳したもの)はそれぞれの言語で意味を同じくする単語に翻訳し、エルフ語はそのまま使ってくれ」と明言している。 日本語版で出てくる“つらぬき丸”“裂け谷”“馳夫”“ゴクリ”といった和風な単語は英語=共通語からの翻訳で、 “アンドゥリル”“アラゴルン”“ロスロリアン”といった雅な横文字言葉は専らエルフ語。 本来ならフロド、サムといった英語の人名も日本語に訳すべきなのだが、 それは日本人の文化的にそぐわないと考えたのか、人名は基本的に英語をそのままカタカナ表記している。 時系列 また『指輪物語』以外にも同じ世界の話を幾つも書いており、『指輪物語』は数万年に及ぶ神話世界のほんの一時期を扱った作品にすぎない。 天地開闢と神々の戦を描いた第一紀、神々が離れ人の治政へ移り行く第二紀、神々の統治から人間の治政への移り変わりが概ね完了する第三紀に別れ、 指輪物語ではこの第三紀を扱っている。 物語は中つ国を舞台に冥王サウロンの作った力の指輪の存在を軸に、 ホビットやエルフ、人間、ドワーフ、魔法使い、ゴブリン(オーク)など、様々な種族を巻き込み展開する。 映画版 アメリカの映画制作会社ニュー・ライン・シネマ(『ホビット』シリーズではワーナー・ブラザースの傘下になった)で遂に待望の実写映画化が行われた。ニュージーランド撮影での「中つ国」の高い再現度や、 CGを使った迫力ある映像で壮大な物語を映画として描がかれており、大ヒットを飛ばした。 ロード・オブ・ザ・リング(映画) ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔 ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還 ホビット 思いがけない冒険 ホビット 竜に奪われた王国 ホビット 決戦のゆくえ これらの項目も参考。 ドラマ版「ロード・オブ・ザ・リング 力の指輪」 アメリカネット通販大手「アマゾン」の子会社「Amazonスタジオ」による長編ドラマ。同社の専用サービス「アマゾンプライム」独占配信で2022年9月1日に配信され、他の動画サービスでは視聴できない。 本作はアマゾンが絡んでいるドラマや作品の中でも群を抜いて気合が入っており、権利獲得だけで2億5000万ドル、製作費はテレビドラマ史上最高額となる10億ドルを超えるという超大作となってる。上記の映画版では2時間に収まるような内容で、原作のシーンは一部カットされていたが、今回のドラマ版ではカット無しで原作に近い詳細な内容となっている。 初期のシーズンは「ホビットの冒険」と「指輪物語」本編の数千年前となる中つ国第二紀を舞台とし、そこから指輪や中つ国に関する物語を描いていく。それ故、おなじみのキャラクターが出てくるのは当分先になる。 他作者による外伝作品 原作者が一切かかわっていないが、ゲームによる外伝作品が「ワーナーブラザーズゲームズ」から発売されている。 「シャドウオブモルドール」 オリジナル主人公である「タリオン」となってサウロンの軍勢と戦うオープンワールドアクションRPG。設定の時系列も原作ではなく、映画版を基準にしたオリジナル設定になっており、「二つの塔」と同時期の物語を描く。 ケレブリンボルの幽鬼の力を使った秘術を用いてウルクの思考を読み、制御する力を用いて様々な苦難を乗り越える。敵のウルクは派閥が権力争いを起こして勢力図が変化したりすることでゲームの流れも変化する。 他にもステルスアクションによるスニーキングや、幽鬼の力を使った爽快感溢れる無双ライクなアクションが楽しめる良作。 「シャドウオブウォー」 前作、シャドウオブモルドールの続編で、時系列歴には「王の帰還」と同時期。新たに作られた血からの指輪を手にしたタリオンは、モルドールに抵抗する者たちと協力してサウロン軍に立ち向かう。 前作さながらのスニーキングと無双ライクな戦闘システムやウルクを支配するシステムはそのままに、ウルクの大軍団を編成して攻城戦を行う事ができるなどの追加要素が実装されている。更に配下のウルグを育成したり、武具を強化するシステムも追加されている。 ストーリー ビルボ・バギンズがはなれ山への旅(『ホビットの冒険』)からホビット庄に戻ってきて60年後。 ビルボは養子として甥のフロド・バギンズを迎えていた。 そしてビルボの111歳の誕生日パーティーが開かれたが、ビルボは宴会の最中に別れの挨拶を述べ突如として文字通り姿を消してしまう。 フロドの元にはビルボの遺産と、彼がはなれ山への冒険で手に入れた魔法の指輪が残された。 魔法使いガンダルフはフロドに指輪を大切に保管し、使用はしないように忠告すると再びホビット庄を去っていった。 それから更に17年が経ち、再びガンダルフが10年ぶりにフロドの元を訪れた。 そしてガンダルフは、ビルボが残した指輪が冥王サウロンの『全てを統べる一つの指輪』であることを告げる。 もしこの指輪が冥王の元に戻れば中つ国は暗黒で包まれる。 そのためフロドは、指輪を破壊するために旅に出る。 一つの指輪 ここで、ある程度この指輪の概要だけ記しておく。 恐ろしく長い経緯があるので割愛すると、保護観察期間の次代冥王が、鍛冶の神の眷属としての力を物作り大好きエルフに提供して共に作ったというか作らせた、 装具者の能力を増幅する効果を持つ力の指輪の要。 その共同製作者にあたるエルフに対しては「皆の繁栄を願う」的な都合の良いことをいって、 9人の人間、7人のドワーフ、3人のエルフら、各種族を統べる立場にあった有力者達に配る為にまずは19個の指輪を製造していた。 が、実際には指輪をはめた者を堕落させて、最悪幽鬼の類に変質させて隷属させる罠だった。 サウロンはそれら19の罠を遠隔制御する装置であり、サウロン自身の力も高められる、 サウロン自身の意志と力の大半も注ぎ込んだ20個目の強力な指輪を密かに作成する。これがその「一つの指輪」である。 これは中つ国最大の溶鉱炉と言える滅びの山の熔岩の裂け目、滅びの罅裂で作り出された。 この指輪を消し去るにはこの場の炎に再び投じる必要がある。 この指輪は殆ど冥王の分身同然なので、基本的には冥王以外の持ち主を選ばず勝手にサイズを変えてすり抜けたりしつつ、 本来の主人が自分を身に着けるべき時を待つ。 しかし、エルフ用の3つの指輪の作成に着手した辺りで、上記のエルフがサウロンの真意に勘付いて事なきを得た。 まず、サウロンの毒牙にかからず、身に着けるだけなら堕落させないまともな3つの指輪をエルフには託せた。 そして、人間より遥かに精神力の強いドワーフには、7つの指輪は大して効かない上に欲の皮をつっぱらせて指輪の所有権をめぐってもめ事起こした挙句、指輪をすべて紛失する予定外の事態も発生。 目論見通り幽鬼へ堕落させられたのは人間だけだった。 そんなこんなで、痺れを切らせたサウロンと交戦した第二紀では、微妙にヘタレたこの冥王を何とか打倒して乗り切った。 が、サウロンのバックアップデータとも言えるこの指輪を処分し損ねた所為で彼を仕留めきれないという不測の事態が第二紀末に生じてしまう。 冥王さえ倒れれば万事が快方に向かう筈だったが、第三紀になっても尚魔物の類が跋扈するままとなってしまった。 「自分らが作った人間世界(中つ国)に過度に干渉すると、刺激したりで悪影響しかなくて拙いんじゃね?」 という方針から神々が現世を去った影響で弱体化する一方のエルフ達では、そんな魔物達相手にするにも3つの指輪を用いて対抗せざるを得ない。 しかし、サウロンが一つの指輪を取り戻して完全体と化せば、その3つの指輪すらサウロンの支配下に置かれてしまい、もう抗う術が無くなる。 そんな時限爆弾に縋って辛うじて膠着状態を維持する中で、冥王無双状態に戻り絶望に陥るのを防ぐための攻防戦がこの物語である。 この指輪は、ガンダルフ曰く「アンカラゴンの火ですら溶かすことは敵わない」という。 映画だけ見た人には何を言ってるのか分からないと思うが、アンカラゴンとは第一紀の神々の戦いの際に、初代冥王が作り出してが投入した最強最大の火竜のこと。 神々でも手を焼くコイツの火でも壊せない、というのは要は神々に類する力ですらこれを消し去るのは困難、という話。 映画を見ているだけだと「何か姿は消せる指輪」にしか見えないが、それは単に「数ある指輪の能力のうちの一つ、生者でありながら幽界にも立ち入れる力を得た」だけ。 主人公フロドの忠義の従者にして無二の相棒である庭師サムが多数のオークを相手に大健闘をして、庭師無双などと ネタになったりしたが(ゲームだと冗談抜きで無双)、これは装着せずに保持していた指輪の影響をサムが無意識に受けて、 オーク達に恐ろしい外見に見せる等のプレッシャーをかけていたことも一因。 その他脆弱な生物を何百年も生かし続けることも出来るが、これは言うなれば極限までカルピスを薄め続けるようなもの。 長寿でなく悪い意味での延命に近い、呪いと言った方が正しいものでもある。 指輪の使用者が脆弱な身体・魔力等しか持たなかったからこの程度の力しか引き出せないなかったが、能力のある者が使えば更なる超常の力を引き出せる。 そのため、サウロンの邪気の籠ったこの指輪はより力がある者程強く惹かれ、ガンダルフ辺りが手にしてしまえば、 サウロンばりの力と欲や邪気を抱え込んだ第三の冥王爆誕となってしまう。 こうした事情から、より実力行使する術を持たない種族が持つのが望ましいが、 この指輪には純朴な気の良い奴を欲深い殺人鬼にも変えてしまう力があり、どれだけ自制心を持った生物でも長時間首にでも下げておけば精神が崩壊を来す。 人間を遥かに超越した自制心が無いと維持管理すら不可能な、呪物の類と言える。 指輪物語は後の作品にも影響を及ぼしている。 ちなみに指輪物語のオークはいわゆるブタ顔では無い(ブタ顔オークの初出はTRPGのダンジョンズ ドラゴンズであると言われている)。 追記・修正は指輪物語を読破してからお願いします。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] フロドのヘタレ振りは日本の三大ヘタレ主に匹敵するレベルだと思う -- 名無しさん (2013-10-17 20 51 49) ファンタジーというジャンルそのものを創造したという点では文学史に残る傑作だと思う -- 名無しさん (2013-10-17 22 11 59) 指輪→TRPG(D&D)→ウィザードリィ等→DQ -- 名無しさん (2013-10-17 22 17 56) フロドはヘタレじゃ無いだろ -- 名無しさん (2013-10-19 12 36 35) 映画でのレゴラスのチート度は異常 -- 名無しさん (2013-10-19 12 38 50) アニヲタWikiはファンタジーとみるとすぐ厨二とか言い出すな。そして神話・宗教ディスは基本。 -- 名無しさん (2013-10-19 12 45 11) ↑×2&6指輪の魔力に魅せられていたから仕方がない。 そしてサムは真のヒロイン。 -- ヤーコブ (2013-11-03 01 12 43) ↑すまん、間違えた。 ×2じゃなく、×3だった。 -- ヤーコブ (2013-11-03 13 51 34) ↑3 こういうのの場合は中二病に大人気って意味だと思うぞ。神話、宗教ディスに関しては個人差をあるだろうから何も言わないが -- 名無しさん (2014-02-11 20 22 34) サムって原作では「おら~ですだ」と田舎風喋りなのだが、映画版は見た目といい吹き替えのせりふといいイケメンだった! -- 名無しさん (2014-02-11 20 54 47) フロド=へたれという奴が現れたのは映画のせいだと思うの -- 名無しさん (2014-03-10 15 58 02) ホビットの家に住みたい。穴掘って作ってるから冬とか温かそうだし -- 名無しさん (2014-03-11 00 36 41) ニュージーランド行きたいわあ -- 名無しさん (2014-06-18 09 04 49) 指輪を狙う悪魔の名前が原作だと「ゴグリ」になっているが映画だと「ゴラム」になっている。後、フロドはヘタレじゃないとおもうの。 -- 名無しさん (2014-06-18 09 07 42) 厨二病も極めれば、もはや厨二病とはいえず、神になってしまうのね -- 名無しさん (2014-12-14 10 26 31) フロドはPCのゲームでは必死だったぞ、ヘタレじゃない!!(怒) -- 名無しさん (2014-12-14 10 27 56) フロドをヘタレ呼ばわりしたヤツは最終章のフロドのように中指をちぎれ!! -- 名無しさん (2014-12-14 10 29 05) ↑×4 「ゴラム」は元々は英語の“物を飲み込むような擬音”からついた蔑称。翻訳家の瀬田先生がこれを「ゴクリ」と訳したわけです。 -- 名無しさん (2014-12-15 19 17 00) ↑擬音だったと言うことか、ためになる。 -- 名無しさん (2014-12-15 19 27 05) 使用者によって善悪変わるってまるで鉄人のリモコンだな -- 名無しさん (2015-02-04 23 59 25) いや一貫して悪だろ。耐性に個人差があるだけで。 -- 名無しさん (2015-02-05 00 13 16) 何故か日本でネタにされる大将ことボロミアさん -- 名無しさん (2015-04-26 14 38 14) 指輪物語って難しそうで遠ざけてたけどここの記事見て興味持った 映画よりは小説の方がよさそうね -- 名無し (2015-07-21 00 08 38) ↑映画はあれでも結構内容をハショってる。どっちも触れた立場から言えば原作の方が好きだけど、善側の英雄達が妙に強い映画は映画で好き -- 名無しさん (2015-10-25 13 32 08) 指輪の魔力に対する理解が足りないとフロドがヘタレに見えるんだよね。しばらくそばにあっただけでボロミアがトチ狂った闇のアイテムをずっと持ってて、最後の最後でちょっと負けただけっていうチート精神の持ち主なんだけどね -- 名無しさん (2019-03-05 21 21 56) (ミス・マシュマロをさがせ)マシュマロ通信 -- 名無しさん (2019-04-10 20 50 25) 学生のころ読んだ原作は、いなかっぺ口調と文体がトールキンのオーダーに応えすぎてて過ぎて肌に合わなかった。文化史的経緯を無視して他国語を国語に直訳させたのは、ある種の厨二病的な失敗だったと思う。 -- 名無しさん (2019-05-11 19 24 25) 某王様の扱いが不遇過ぎて泣ける。何であんな改変を······。某種族の衰退による変異のカットも残念。世界の変化が表現されてて良かったんだけど。 -- 名無しさん (2019-05-11 20 29 38) 自分で指を千切ったと思ってる人が居て驚き。指輪取り合って噛み千切られただけじゃん。ビルボと比べると誘惑に弱い。他の所持者に比べてビルボが耐えれ過ぎたという気もするけど。 -- 名無しさん (2019-05-11 20 42 04) アラゴルンがマジでカッコよすぎる。非の打ち所のないイケメン -- 名無しさん (2019-05-11 22 41 40) ファンタジー物やRPGの元になった作品なのだけれども、大まかなストーリーは「魔王を倒す」とか「姫を救う」とかじゃないということに今更ながら気がついた -- 名無しさん (2020-06-19 18 02 06) ↑7フロド以外じゃ間違いなくもっと早期に指輪の魔力に屈していただろうしな。ヘタレどころか無茶苦茶精神力が強い -- 名無しさん (2020-10-16 19 23 41) 映画のフロド、ヘタレって言われてたの!? -- 名無しさん (2022-04-12 21 00 14) アラゴルンの存在がホビットで言及されてん?ってなったけど、アラゴルンはヌーメノール人とかいう長寿人種なのね。 -- 名無しさん (2022-08-09 03 17 35) ↑フロド一行と合流した時にはもう90近いけど全盛期真っ盛りって年齢 -- 名無しさん (2022-09-02 12 48 35) 世界レベルで厄い指輪を運搬してるだけでも偉業ってのがわかりにくいので、映画見てるとフロドはこの主人公あまり活躍しないなと感じるのはわからんでもない。それが少ない語彙だとヘタレになるのかも。一方で同じホビットのサムはわかりやすく活躍するから、相対的にフロドの株が下がりやすい。 -- 名無しさん (2023-01-12 12 02 27) 映画で微妙にヘタレ感あるのは、最後の最後に指輪に屈したってのも大きいかな。それこそ(T)RPG的にみれば、衰弱して介護強要したり人間不信で周囲にストレスを与えたりするロールプレイは最後は自分でケツを拭く前提で許されてるのに、肝心の場面で事故って「今更ここから立ち直るシーンも別エンディングも用意できるかよ!」と仕方ないから無理やりゴラム再登場させてデウスエクスマキナしました、みたいな…… -- 名無しさん (2023-01-12 20 04 51) 指輪の効力が映画では分かりづらいからフロドの凄さがなかなか伝わらないのが映画版の数少ない不満点 -- 名無しさん (2023-05-02 21 40 49) 名前 コメント
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編集中 指輪物語 The Lord of the Rings 著者:J・R・R・トールキン John Ronald Reuel Tolkien 翻訳: 瀬田貞二、田中明子 挿絵:寺島龍一、アラン・リー 発行:評論社
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童話・物語 指輪物語(THE LORD OF THE RINGS) J.R.R.トールキン(父がドイツ系で母が英国系で出身は南アフリカ)の著書 全部で三部に分かれており、第一部「旅の仲間」、第二部「二つの塔」、第三部「王の帰還」となっている。 2001年には映画化され、日本でも大々的に宣伝されたので多くの人が名前ぐらいは知ってると思われる。 作者は敬虔なクリスチャン(カトリック系)であったが、作品へはクリスチャニティを「敬してこれを遠ざく」スタンスで書いているため、一応キリスト教的な物は一応一切出ていない(ファンからはエルフ、ドワ-フなどの善なる者に対し、キリスト教的な倫理観が指摘されている) 空想の金属として比較的良く聞くミスリルはここからの出典である。
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指輪物語 931 名前:水先案名無い人 :2007/10/15(月) 07 25 29 ID hkwOnN+u0 『指輪物語』全主要人物入場!! 忍びの者は生きていた!! 更なる研鑚を積み奇人ホビットが甦った!!! エルフの友!! ビルボ・バギンズだァ――――!!! 最後の憩い亭はすでに我々が完成している!! 裂け谷当主エルロンドだァ――――!!! 馬に乗りしだい突撃しまくってやる!! ローハン騎士国代表 セオデン・エドニューだァッ!!! 素手の殴り合いなら我々のパワーがものを言う!! 素手のエント 木の髭カッチュアー ファンゴルン!!! 真の駿足を知らしめたい!! 馬たちの王 飛蔭だァ!!! 身長は3人で階級制覇だがトラブルメーカーなら全時代オレのものだ!! トゥックのバカ息子 ペレグリン・トゥックだ!!! ナズグル対策は完璧だ!! 裂け谷貴族 グロールフィンデル!!!! 全中つ国のベスト・ディフェンスはミナス・ティリスにある!! ゴンドールの野伏が来たッ ファラミア!!! 空中戦なら絶対に敗けん!! 鷲たちのケンカ見せたる 鳥の王 グワイヒアだ!!! バーリ・トゥード(大戦争)ならこいつが怖い!! はなれ山のピュア・ドワーフ ギムリだ!!! バラド・ドゥアから炎の目が降臨だ!! 冥王 サウロン!!! ルールのいらない指輪が欲しいからバウンサー(裏切り者)になったのだ!! プロの魔法を見せてやる!!白のサルマン!!! めい土からの土産にクラスチェンジとはよく言ったもの!! 達人の魔法が今 実戦でバクハツする!! 灰色→白の魔法使い ガンダルフ先生だ―――!!! ハーフ・エルフこそがヒロインの代名詞だ!! まさかこの女がきてくれるとはッッ アルウェン・ウンドーミエル!!! 気ままに生きたいからここまできたッ キャリア一切不明!!!! 古森のピット(隠者)ファイター トム・ボンバディルだ!!! オレたちは生身の人間ではない人間の男に対して不死身なのだ!! 御存知ナズグル筆頭 アングマールの魔王!!! 騎士の本場は今やマークにある!! オレと戦える奴はいないのか!! エオメル・エアディグだ!!! デカァァァァァいッ説明不要!! 推定5m!!! 推定1t!!! ドゥリンの禍・バルログだ!!! パランティアは実戦で使えてナンボのモン!!! 超精神崩壊!! 本家ゴンドールからデネソール大侯の登場だ!!! 指輪は私のもの 邪魔するやつは思いきり殴り思いきり斬るだけ!! 袋小路屋敷・堀窪屋敷統一家主 フロド・バギンズ イシルドゥアの禍を探しに裂け谷へきたッ!! 戦士全ゴンドールチャンプ ボロミア!!! 歌唱力に更なる磨きをかけ ”流浪のエルフ”ギルドールが帰ってきたァ!!! 今の自分に記憶力はないッッ!! 踊る子馬亭店主バーリマン・バタバー!!! 人間の指輪の魔力が今ベールを脱ぐ!! モルドールから 黒の乗手軍団だ!!! アラゴルン様の前でなら私はいつでも思春期だ!! 盾持つ腕の姫・エオウィン 騎士の変装で登場だ!!! 庭師の仕事はどーしたッ 従者の炎 未だ消えずッ!! 指輪を使うも思いのまま!! 勇者サムワイズ・ギャムジー殿だ!!! 特に理由はないッ エルフが強いのは当たりまえ!! スランドゥイルにはないしょだ!!! 闇の森開山! レゴラスがきてくれた―――!!! ローハンで磨いた実戦剣術!! バック郷のデンジャラス・ホビット メリアドク・ブランディバックだ!!! 裏切りだったらこの人を外せない!! 超A級蛇の舌 グリマだ!!! 超一流エルフの超一流の美貌だ!! 生で拝んでオドロキやがれッ ロスロリアンの森の奥方!! ガラドリエル!!! テレコンタール統一王朝はこの男が完成させた!! ドゥネダインの切り札!! アラゴルン2世だ!!! いとしいしとが帰ってきたッ どうやって滅びの山まで来たンだッ 指輪好きチャンピオンッッ 俺達は君を待っていたッッッゴクリの登場だ――――――――ッ 加えて指輪に捕らわれた者の発生に備え超豪華なリザーバーを 前作・ホビットの冒険から4名御用意致しました! 山の下の王 トーリン・オーケンシールド!! 伝統派熊人 ビョルン!! はなれ山の巨竜! スマウグ! ……ッッ どーやらもう一名は太りすぎで起きあがれない様ですが、 介助人が確保でき次第ッ会場にお連れ致しますッッ 関連レス 939 名前:水先案名無い人 :2007/10/15(月) 22 49 33 ID 0SMTxLFk0 上手いなあ。 木の髭カッチュアーとか、言葉の意味はよくわからんが、とにかくすごい語感だ。 フロドが途中で出てきたので何かと思ったが、 フロドの所もチャンピオン枠も、良く合っていた。 それにしても、こんなメジャーなネタが、まだ残っているんだな。 コメント 名前
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結婚指輪物語 Blu-ray BOX 発売日:6月26日 ●初回特典 ◆キャラクターデザイン・仲敷沙織描きおろし豪華収納BOX(予定) ◆リバーシブルジャケット(裏面:原作めいびい描きおろしイラストをプリント)(予定) ◆特製丸見えブックレット(48p)(予定) ◆ストーリービジュアル&場面写ポストカードセット(予定) ここを編集 2024年1月放送開始。 https //talesofweddingrings-anime.jp/ 監督 直谷たかし 副監督 浅見松雄 原作・エンディングイラスト めいびい シリーズ構成 赤尾でこ キャラクターデザイン 仲敷沙織 サブキャラクターデザイン 立石聖 総作画監督 仲敷沙織、小美戸幸代、小林利充、青野厚司 プロップデザイン 冨樫彩菜 動画検査 小野将、磯部信人、鈴木ののか デジタル修正 磯部信人、小野将、山崎千絵、鈴木ののか 美術監督 小崎弘貴 美術監督補佐 阿部とし子 色彩設計 堀内里奈 撮影監督 兪飛 CGディレクター 池田裕之 CGデザイナー 池田裕之、岸本将典 特殊効果 海鋒重信 2Dデザイン 南條楊輔 編集 長谷川舞 編集助手 榎田美咲 音響監督 納谷僚介 音響効果 川田清貴 録音調整 宮城普達 録音助手 藤澤卓 音楽 宝野聡史 設定制作 中村良 アニメーションプロデューサー 植田慎也、中村良 アニメーション制作 Staple Entertainment 脚本 赤尾でこ 吉岡南都 絵コンテ 直谷たかし 西田正義 寺東克己 祝浩司 演出 浅見松雄 中村良 作画監督 仲敷沙織 小美戸幸代 小林利充 青野厚司 森悦史 大塚八愛 菊池一真 櫻井拓郎 中島美子 鎌田均 飯飼一幸 池田佳織 岡田雅人 吉岡勝 扇多恵子 松下純子 内野明雄 南伸一郎 冨樫彩菜 片岡康治 河村涼子 清水明日香 ■関連タイトル 結婚指輪物語 Blu-ray BOX 原作コミック 結婚指輪物語 1 Kindleまとめ買い 結婚指輪物語 ホビー:結婚指輪物語 rakuten_design= slide ;rakuten_affiliateId= 053df7e0.7c451bd1.0c852203.190c5695 ;rakuten_items= ctsmatch ;rakuten_genreId=0;rakuten_size= 468x160 ;rakuten_target= _blank ;rakuten_theme= gray ;rakuten_border= on ;rakuten_auto_mode= on ;rakuten_genre_title= off ;rakuten_recommend= on ; 随時更新! pixivFANBOX アニメ@wiki ご支援お待ちしています! ムック本&画集新刊/個人画集新刊/新作Blu-ray単巻/新作Blu-ray DVD-BOX アニメ原画集全リスト スタッフインタビューwebリンク集 最新登録アイテム Switch ゼルダの伝説 Tears of the Kingdom Switch 世界樹の迷宮Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ HD REMASTER Switch ピクミン 4 大友克洋 Animation AKIRA Layouts Key Frames 2 小説 機動戦士ガンダム 水星の魔女 1 ONE PIECE FILM REDデラックス・リミテッド・エディション 4K ULTRA HD Blu-ray Blu-ray 劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 冥き夕闇のスケルツォ 完全生産限定版 Blu-ray 映画『ゆるキャン△』 Blu-ray 【コレクターズ版】 Blu-ray ウマ娘 プリティーダービー 4th EVENT SPECIAL DREAMERS!! Blu-ray 天地無用!GXP パラダイス始動編 Blu-ray第1巻 特装版 天地無用!魎皇鬼 第伍期 Blu-ray SET 「GS美神」全話いっき見ブルーレイ Blu-ray ソードアート・オンライン -フルダイブ- メーカー特典:「イベントビジュアル使用A3クリアポスター」付 ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 5th Live! 虹が咲く場所 Blu-ray Memorial BOX 宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち Blu-ray BOX 特装限定版 地球へ… Blu-ray Disc BOX 完全生産限定版 神風怪盗ジャンヌ Complete Blu-ray BOX HUNTER×HUNTER ハンター試験編・ゾルディック家編Blu-ray BOX BLEACH Blu-ray Disc BOX 破面篇セレクション1+過去篇 完全生産限定版 MAZINGER THE MOVIE 1973-1976 4Kリマスター版 アニメ・ゲームのロゴデザイン シン・仮面ライダー 音楽集 テレビマガジン特別編集 仮面ライダー 完全版 EPISODE No.1~No.98 MOVIE リスアニ!Vol.50.5 ぼっち・ざ・ろっく!号デラックスエディション ヤマノススメ Next Summit アニメガイド おもいでビヨリ アニメ「魔入りました!入間くん」オフィシャルファンブック 『超時空要塞マクロス』パッケージアート集 CLAMP PREMIUM COLLECTION X 1 トーマの心臓 プレミアムエディション パズル ドラゴンズ 10th Anniversary Art Works はんざわかおり こみっくがーるず画集 ~あばばーさりー!~ あすぱら画集 すいみゃ Art Works trim polka-トリムポルカ- つぐもも裏 超!限界突破イラスト&激!すじ供養漫画集 開田裕治ウルトラマンシリーズ画集 井澤詩織1st写真集 mascotte 鬼頭明里写真集 my pace 内田真礼 1st photobook 「まあやドキ」 進藤あまね1st写真集 翠~Midori~ 声優 宮村優子 対談集 アスカライソジ 三石琴乃 ことのは 亀田祥倫アートワークス 100% 庵野秀明責任編集 仮面ライダー 資料写真集 1971-1973 金子雄司アニメーション背景美術画集 タローマン・クロニクル ラブライブ!サンシャイン!! Find Our 沼津~Aqoursのいる風景~ 機動戦士ガンダム 逆襲のシャア 友の会[復刻版] 梅津泰臣 KISS AND CRY 資料集 安彦良和 マイ・バック・ページズ 『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』編 氷川竜介 日本アニメの革新 歴史の転換点となった変化の構造分析 Blu-ray THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 10th Anniversary Celebration Animation ETERNITY MEMORIES Blu-ray おいら宇宙の探鉱夫 ブルーレイ版 Blu-ray 映画 バクテン!! 完全生産限定版 アイカツ! 10th STORY ~未来へのSTARWAY~ Blu-ray BOX 初回生産限定版 はたらく細胞 Blu-ray Disc BOX 完全生産限定版 Blu-ray 長靴をはいた猫 3作品収録 Blu-ray わんぱく王子の大蛇退治 Blu-ray 魔道祖師 完結編 完全生産限定版 魔道祖師Q Blu-ray Disc BOX 完全生産限定盤 にじよん あにめーしょん Blu-ray BOX 【特装限定版】 Blu-ray 鋼の錬金術師 完結編 プレミアム・エディション Blu-ray付き やはりゲームでも俺の青春ラブコメはまちがっている。完 限定版【同梱物】オリジナルアニメ Blu-ray「だから、思春期は終わらずに、青春は続いていく。」
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指輪物語(ゆびわものがたり) 概要 シンフォニアに登場したサブイベント。 登場作品 + 目次 シンフォニア指輪物語1 指輪物語2 関連リンク ネタ シンフォニア 連続サブイベントの一種。1と2がある。 指輪物語1 絶海牧場クリア後、ハイマのお墓の前に行くと発生。 イベント後、フウジ山岳の山頂に行くとイベントが発生する。 発生場所 ハイマ・フウジ山岳 発生条件 お墓の前に行く 入手 - 指輪物語2 ラーセオン渓谷で霊草マナリーフを入手して語り部から話を聞いた後、「指輪物語1」クリアした状態で、パルマコスタ人間牧場に行くとイベントが発生する。 なお、GC版の攻略本にはアルテスタの家でミトスの正体判明後とあるがこれは誤記で、実際はこのタイミングで消滅するので注意。 (このイベント内でユアンがクラトスを狙う理由について疑問を持つ会話があるが、アルテスタの家でのイベント後にそれがユアン本人から明かされる為、このタイミング後だとおかしい事になる) 発生場所 パルマコスタ人間牧場 発生条件 パルマコスタ人間牧場に入る 入手 - ▲ 関連リンク ▲ ネタ ▲
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登録日:2020/07/08 (水) 00 29 18 更新日:2024/02/10 Sat 12 00 22NEW! 所要時間:約 7 分で読めます ▽タグ一覧 24年冬アニメ めいびい アニメ化 スクウェア・エニックス ビッグガンガン ファンタジー 指輪王 漫画 異世界モノ 異世界転移 結婚指輪 結婚指輪物語 魔法 「黄昏乙女×アムネジア」「かつて神だった獣たちへ」のめいびいが贈る、異世界新婚ラブコメ!! ●目次 ■概要 ■あらすじ ■主な登場人物■指輪王 ■指輪の姫 ■その他 ■用語 ■概要 『結婚指輪物語』とは『月刊ビッグガンガン』にて2014年Vol.04から連載中の漫画作品。既刊13巻。 著者は『黄昏乙女×アムネジア』『かつて神だった獣たちへ』で有名なめいびい。 シリーズ累計110万部突破している。 2023年にアニメ化が発表された。24年1月から放送予定。 ■あらすじ 幼なじみの『野中姫乃』……通称ヒメに想いを寄せていた主人公の佐藤は、彼女の引っ越しの日に彼女が異世界『アーヌルス』のお姫様だったことを知る。 そして母国『ノカナティカ』へと帰国し、帝国の皇子と結婚しなくてはならないと告げられる。 佐藤は自分の気持ちを伝えるためにヒメを追って異世界へ。 しかしそこで行われていた結婚式に深淵王の手下である魔物が出現し、ヒメの持つ光の指輪を狙って襲う。 そこでヒメは本来なら皇子に渡さなくてはならなかった指輪を佐藤へ渡し、キスをしたことで佐藤は『指輪王』に覚醒し、魔物を撃退する。 こうして晴れてヒメと結婚することになった佐藤は喜んでいたが、 実は光の指輪と同等の指輪が後4つ存在し、指輪王はそれを全て身に付けなくては深淵王には勝てないという。 ……すなわち佐藤はヒメという本命の女性がいながら、あと4人の女性と重婚しなくてはならなくなったのだ。 果たして佐藤はヒメのために自分の貞操を守りながら、深淵王に勝てるのだろうか……? ■主な登場人物 ■指輪王 佐藤春人/サトウハルト CV:佐藤元 本作の主人公。現代日本に住む高校生。ヒメとは幼なじみ。 ヒメが日本に転移してきた瞬間を目撃したが、彼女に「この事を忘れて」という願いを聞き入れたため、ヒメが故郷に帰る時まで異世界人ということを忘れていた。 長年ヒメに好意を寄せていたため、その気持ちをヒメに伝えるために異世界へ転移した。 そこでヒメに光の指輪を託され指輪王となり、異世界アーヌルスを救世する事を宿命づけられる。 しかし指輪王は他の4人の姫が持つ指輪を手に入れなければならず、手に入れるには結婚しなくてはならなかった。 さらに指輪王が指輪の力を引き出すには妻と絆を深めればならず、 一夫一妻制の日本に住んでいた佐藤にとってヒメ以外とは恋愛関係となることに消極的で、せめて最初にセックスする相手はヒメと決めている。 しかし色々邪魔があったりして、ヒメとセックスするのは日本に戻ってからと約束する。 なのでなかなか指輪の力が引き出せない。 ハーレムものの主人公にしてはかなり地味目な見た目だが、性格は少し頼りないものの総合的に見て筋の通った男らしさがあるため、ヒメ達をはじめとする周囲からの好感度は悪くはない。 ちなみに下の名前はなかなか名乗らせてもらえない上に、周囲からも「サトウ」で通ってしまっている。 下の名前自体は言及されないだけで1話の答案用紙に「佐藤某」と書いてあるが、あまりに適当過ぎるので暫定的なものなのか、本気でこれなのかは不明であった。 後に「佐藤春人」が本名で、某は仮の名前と判明した。 ■指輪の姫 野中姫乃/クリストル・ノバティ・ノカナティカ CV:鬼頭明里 佐藤の幼なじみにして妻。通称『ヒメ』。人間族が住む光の国『ノカナティカ』の第一王女。光の指輪を受け継ぐ姫。 10年前に母国に深淵王の配下である魔物の襲撃があり、 襲撃の目的が光の指輪だと察した両親がアラバスタに頼み、アラバスタと異世界日本に転移してきた。 転移を目撃した佐藤と友達となり、彼が住むアパートの隣に引っ越し、共に過ごすうちに好意を抱くようになる。 しかし王女の使命として指輪王を誕生させねばならず、そのためには故郷で帝国の皇子と結婚せねばならなかった。 佐藤への好意を殺しマルスと結婚しようとしたが、色々あって佐藤と結婚する事になる。 好きな人との結婚に喜んではいるが、佐藤に「異世界の救世」「指輪王の重責」を負わせてしまった事に苦悩している。 また自分以外の妻がいることに嫉妬し、他4人の事を信用しきれておらず、そのせいで指輪の力が引き出しきれなかった。 ネフリティス・ロムカ CV:島袋美由利 佐藤の妻。エルフ族が住む風の国の『ロムカ』の第一王女。 若く美しい外見をしているが実はこう見えて54歳である。 人間から見れば婆さんに分類されるが、エルフから見れば少女に分類されるため、ネフリティスは他種族と交流してから自分の年齢を気にし始めた。 両親が命がけで国を守った事と、兄の過保護のせいで人見知りの激しい引きこもりと化しており、部屋で読書をしていた。 佐藤の妻となってから部屋の外で見分を広げる事を楽しんでおり、そのきっかけを与えた佐藤に好意を抱いている。 しかし長寿ということもあって、ヒメが先に既成事実を作った後で愛してくれれば問題ないと言っているが、機会があれば佐藤に近づこうとしている。 グラナート・ニーダキッタ CV:上田瞳 佐藤の妻。猫人族が住む火の国『ニーダキッタ』の王女。まだピチピチの18歳だが猫人のなかでは行き遅れ。 ニーダキッタは傭兵の国であり、指輪を受け継ぐ姫と結婚するには姫に打ち勝たなくてはいけないという掟がある。 グラナードは最強の猫人の戦士と言われており、ニーダキッタ中の男の戦士に打ち勝ったあげく他国から見合いにきた腕自慢にも勝ち続けたほど。 佐藤との見合いでは乱入した魔物との戦いで佐藤に見所アリと判断し勝負なしで結婚してもいいと思うほどだったが、 佐藤に「認めてもらう」ではなく「認めさせてやる」と言われた事で本気で勝負する事に。 そして本気で勝負して負けたため彼に好意を抱く。 サフィール・マーサ CV:加隈亜衣 佐藤の妻。竜人族が住む水の国『マーサ』の第一王女。サフィラの双子の姉。 マーサと同盟を組んだ帝国の過干渉に危機感を覚えたサフィールは、指輪王を政争に巻き込むため佐藤と結婚した。 佐藤とは妻というより友達感覚であり、姫としての務めで世継ぎは設けようとは思っているが恋愛感情はない。 そのため姫たちの恋愛争奪戦を他人ごとのように見ている。 アンバル・イダノカン CV:小松未可子 佐藤の妻。ドワーフ族が未来のために作った魔動人形。 かつての深淵王との戦いで全滅しかけたドワーフ族は遠くないうちに滅びると悟り、当時の王女の依代として魔動人形を作り、異世界日本に転移させた。 指輪王が日本に来るまで数百年待つ事になり、色々あって祠に祀られていた。 彼女の役割は指輪王の妻となり深淵王と戦う事と、体内にある最後の姫の因子と指輪王の精子を合わせて子供を作ることである。 ■その他 アラバスタ CV:千葉繁 ヒメの両親に頼まれ姫を日本に連れて来た老人。日本ではヒメの祖父として過ごしていた。 実はアーヌルスでは知識と魔法を巧みに扱う大賢者と呼ばれるほどの偉人。 若い頃は旅をしていたらしく、その頃にはエルフの国にも訪れた事があったという。 ノカナティカ王族の一人らしく、王位を継げなかったため魔法の才を伸ばすべく旅をしていたらしい。 マルマリギアス・ギサラス CV:坂田将吾 ギサラス帝国の第二皇子。通称マルス。 本来は彼こそがヒメと結婚し指輪王になるべきはずだったが、成り行きで佐藤に指輪王に任す。 そのため皇帝を始め帝国の関係者から白い目で見られており、本人も判断は間違っていなかったと思いつつも後悔していた。 その心の闇を突かれる形で敵に操られ、佐藤らに剣を向けてしまったことも。 その時に、佐藤からの純粋な感謝の言葉と、仲間として認めてもらえたことで吹っ切り、「指輪王の騎士」を名乗るようになる。 強大な軍事力を持つ帝国の皇子らしく屈強な肉体を持ち、剣の腕も一流。 マーサ国の第二王女サフィラ・マーサとは愛し合う関係。紆余曲折はあったが彼女と無事に結ばれたこともあり、佐藤とは義兄弟という関係にもある。 モーリオン・ラヴリ・ノカナティカ ヒメの妹。ノカナティカ国の第二王女。面白い事が好きな性格。 10年前、姉は異世界へと非難したが指輪を持たないモーリオンは魔法の才を伸ばして姉の役に立つため、魔導の尖塔という場所に送られていた。 ここは魔法使いが魔法を高めるために修行をする場所であり、 他人への関心が薄かったため幼い彼女にとってつまらない場所であり、それが今の性格へ繋がった。 ■用語 指輪王 大昔、光、風、火、水、土の5つの指輪を作り出した指輪王によって深淵王が倒され、世界を救世した。 指輪王には5人の妻がおり深淵王を倒した後、指輪王と妻が身に付けていた指輪は5つの国に伝えられる事になった。 そして深淵王が蘇る時、光の指輪を手にした王が新たな指輪王となる、という伝説が伝わっている。 5つの指輪 指輪王が世界を覆う闇を払うために作り出したという、魔法の指輪。 光、風、火、水、土の属性を持つ5つの指輪であり、これは指輪王が妻となる者に送った結婚指輪のため、 代々指輪の国は王女に指輪を受け継がせている(結婚指輪なので計10個だが) そのため各指輪の国の王となる者は基本的に長子でも王子でもなく、指輪を受け継いだ王女と結婚した者となっている。 結婚指輪のため指輪の魔力を引き出すには指輪王と妻の絆が深まっているほど強く、ぶっちゃけセックスすれば強く引き出せる。 深淵王 大昔、魔物を率いて暴れていた闇の者。詳細不明。 なんでもこの世界は最初は深淵であり、深淵王は一番初めの世界に戻そうとしているらしい。 追記・修正は結婚してからお願いします。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] ロード・オブ・ザ・ウェディングリング。めいびぃ氏らしい王道マンガだが、さっさと一線踏み込めよというイライラ感は海の御先に匹敵するw -- 名無しさん (2020-07-08 03 33 19) ↑一線超えようとしたらアンバルが部屋に入ってきちゃったし… -- 名無しさん (2020-07-08 19 09 20) その奥手ぶりがどう転ぶかがカギなんだけどね。過去の指輪王はなんかあんまりいい末路じゃなさそうだし -- 名無しさん (2020-07-08 19 20 55) 好きな子に一途と言う点で好感持てますな。 -- 名無しさん (2020-07-09 02 43 13) 名前 コメント
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694 名前:番外編・兄弟版指輪物語 プロローグ投稿日:03/03/17 15 24 ID ??? はるか昔、中つ国と呼ばれる世界。魔王と呼ばれる邪悪な力の主が魔法の指輪を作った。 魔王は指輪の力で世界を闇で覆うため、各国に戦争を仕掛けた。 戦いは人間と妖精の連合軍の必死の抵抗で魔王が敗北し、魔王は肉体を失った。 そして魔王の力が与えられた魔法の指輪は、魔王の肉体を滅ぼした人間の王の手に渡った。 しかし肉体が滅んでも魔王の力は指輪に強く残り、指輪は手にした者の運命を狂わせていく。 人間の王もその後の戦いで魔王の残党に殺され、指輪の行方はわからなくなっていた。 魔王との戦いが歴史ではなく神話として風化するほどの年月が過ぎた時代、 クルーゼという者が湖の底に沈んでいた指輪を拾った。 指輪の呪いの力は時が経っても変わらず作用し、クルーゼは不老不死の力を得た。 しかしその外見は指輪に蝕まれた精神そのままに変貌していき、いつしか変態仮面と呼ばれるようになった。 クルーゼに拾われても指輪は真の主たる魔王を呼び続け、ある時指輪はクルーゼの手を離れた。 しかし運命のいたずらか、その指輪を拾ったのは小人のキラだった。 キラに指輪の価値はわからなかったが家に持ち帰って長い間隠して、年月が過ぎた。 年月が経ってキラにはアルという新しい家族も増えたが、アルの成長を見届けたキラは再び村を旅立つ決意をした。 キラは村では結構な財産家だったが、その財産のほとんど全てをアルに残していくことにした。 彼は指輪を含めた、昔の冒険で手に入れた宝のいくつかだけを持って、誰も知らないところへ行こうと思った。 お別れのパーティを開くつもりで、キラは村人や古い友人達に招待状を送った。 695 名前:番外編・兄弟版指輪物語 1投稿日:03/03/17 16 29 ID ??? パーティ当日、村の入り口にいたアルは待ち人がやっと来たことを確認した。 待ち人は馬車でやって来た。 アル「良かった、アムロ、間に合ったよ。いつも旅してるからここには来ないんだと思ってた」 アムロ「キラが招待状を『踊る天馬亭』に預けてくれてたんだよ。それでわかったんだ。それにしても今日は急な話だね」 アル「キラの誕生パーティなんだよ!ねえねえ、花火持って来てくれた?」 アムロ「荷台に山ほど積んできたよ」 アムロはキラの古い知り合いだった。アルとキラが住むこの田舎の村で村祭りがある頃になると、 今回のように自作の花火を山ほど持ってくるのだった。 キラが言うにはアムロはすごい魔術師だということだが、 アルがいくらせがんでも「危険だからめったに使うものじゃない」とアムロは言って一度も魔法を使って見せてくれなかった。 パーティ会場の集会場では、村人達がおおわらわで準備をしていた。アムロの馬車が来ると、 ミーシャ「おっ、花火師の先生だ」 チェイ「アムロ、花火やって見せてくれよぉ」 アムロ「だめだめ、夜のお楽しみだ」 ソシエ「けちんぼー!」 せがむ村人達はアムロのことはただの花火師だとしか思っていない。しかし彼らはアムロが持ってくる花火を楽しみにしていた。 アムロは木を刈り込んでいる庭師の若者に声をかけた。 アムロ「やあロラン、精が出るね」 ロラン「あ、こんにちはアムロさん。今日は集会場の木を全部刈り込まなきゃいけなんですよ」 アムロ「間に合いそうかい?」 ロラン「パーティには間に合わせますよ」 アル「ロランはアムロの花火を魔法みたいだって言ってたけど、ロランの仕事も魔法みたいだね」 ロラン「そんなことないですよぉ」 ロランは謙遜したが、集会場の木々は人型や動物型に刈られて見事な出来栄えだった。 696 名前:番外編・兄弟版指輪物語 1投稿日:03/03/17 16 57 ID ??? 兄弟版指輪物語外伝・「キラの冒険」より。 ゴクリ(ゴラム)=クルーゼ「この洞窟の出口を知りたくば、私と f´ ヽ r'´ f"~`ヽ ヽ Y f^ f'"~Yゝ,f-、ッ 〕 ,.! /_`-、! ∧ /-'"// ゙、 \`_ヽ V r'_,フ/ ! ! ノ i | i { | 〈 {ヽ!``__!__'"レ,イl や ら な い か?」 ヽ ir\ ,イ !.l j i i ヽ` ' / !', l ,.、-  ̄/ | l  ̄ / | |` ┬-、 / ヽ. / ト-` 、ノ- | l l ヽ. / ∨ l |! | ` | i / |`二^ l. | | <__,| | _| |.|- \ i / ,イ____!/ \ .| {.| ` - 、 ,.---ァ^! | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄l __{ ___|└―ー/  ̄´ |ヽ |___ノ____________| }/ -= ヽ__ - 'ヽ -‐ ,r'゙ l | __f゙// ̄ ̄ _ -' |_____ ,. -  ̄ \____| | | -  ̄ / | _ | ̄ ̄ ̄ ̄ / \  ̄| ___`\ __ / _l - ̄ l___ / , / ヽi___.| ビルボ=キラ ;´从V∧) W; ´Д`) キモッ!ヘンナオトコ!マホウノユビワデスガタヲケシテ ニゲナキャ! / つ つ 人 Y し'(_) 699 名前:番外編・兄弟版指輪物語 旅の仲間編2投稿日:03/03/18 03 06 ID ??? アルは友達と遊びに行くので途中で馬車を降り、アムロ一人がキラの家に着いた。 キラ「いらっしゃい、来られないのかと思ってましたよ。お茶で良いですか」 アムロ「いただくよ。…それで、どうしても行くのか」 アムロは単刀直入に聞いた。 キラ「貴方への招待状に書いた通りです。ここには戻らないでしょう。アルのことをお願いします」 答えて、キラはアムロの視線から逃れるように顔を伏せた。 今回のキラの旅に特に合理的な理由はない。彼の中には何故かとにかく、「行かなければならない」という衝動だけがあった。 アムロ「アルは旅に出ることを知っているのか?」 キラ「言ってません。でも、賢い子だから気づいているかも。ついて行きたがるかも知れないけど、一人で行くつもりです」 そこへ玄関から激しいノック音と女の大声がした。 フレイ「キラー、いるなら出てらっしゃいー」 キラ「げっ。僕は留守ですよ」 アムロ「……」 外の来客はしばらく呼んだ後あきらめて帰って行った。しかし間もなく、別の女の声で、 ラクス「キラ様ー、居留守を使ってないで出てくださいませー」 アムロ「………」 二人目の来客は粘ったが、日が暮れてきてあきらめて帰って行った。 アムロ「…キラ、女の問題でこじれたから、ほとぼりを冷ますまで隠れようっていうんじゃないだろうな」 アムロは白い目でキラを見た。 キラ「ち、違いますよ(汗)」 そこへ三度ノック。 ロラン「キラさん、そろそろパーティが始まりますよぉ」 アムロ「…………」 キラ「何で、男にも手を出したのかと言わんばかりに僕を見るんですか!」 アムロ「……………」 link_anchor plugin error 画像もしくは文字列を必ずどちらかを入力してください。このページにつけられたタグ ガンダム一家 キラ・ヤマト シリーズ パロディ ファンタジー 兄弟指輪物語
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夏休み。 この響きにこの上無い程の喜びを感じる学生もいれば、 「夏休みか、そんな時期が私にもありました」 と、哀愁漂う背中で語る社会人など、人それぞれに感慨深いものがあると思う。 では、俺にとってはどうなのか。 少なくとも、中学の時の様に一日中家の中でだらだらと過ごしたり、たまーに友人に誘われて何処かへ出かけたりといった、まあごく普通の一般学生が送る典型的とも言えるのが、俺の夏休みだった。 しかし、高校に入ってからというものの。涼宮ハルヒと出会った事によって年中ずっと振り回されっぱなしの俺にとって、心身ともに休める日など当然の如くありはしなかった(もちろん、田舎に帰るのは別としてだ)。 故にこう断言できる。 夏休みだと? 「そんなもんねーよ」 季節は夏。学生最大のイベント夏休みの真っ只中である。 蛇足だが、俺は高校に入ってからこれで二回目の夏休みである。故に、今は高校二年生というわけだ。 去年の夏の様な事が起こらないよう、ただひたすらに祈るばかりである。 【自宅にて】 さて、何故俺がこうも長々と夏休みについて熱く語っているかというと。それは田舎から帰ってきた翌日の朝、奇跡的にも早起きしてしまった自分を呪いつつ、暇を持て余した俺は何を思ったのか、今までやらずにいた夏の課題を少しでも消化しようと試みたのだ。がしかし、目の前の机の上に積まれた紙切れやらくそ分厚い本やら何やらが山積みされているのを見てやる気を削がれ、現実逃避したくなったのである。 なんでこうも教師どもはアホみたいに課題を出したがるんだろうね? 「あぁ、くそいまいましい」 完全に試合を放棄した俺はその内、なぜお金は貯まらないのかとか、フロイト氏の人間性について等を考察し始めたのだが、フロイト先生は実はエロいんじゃないのか? という結論が出た所で卓上の携帯電話が鳴った。 電話先の相手はあの、涼宮ハルヒだ。 俺は渋々電話に出た。 「なん――」 『キョン! 今ヒマでしょ。いいえ、ヒマに決まってるわ。なんたってあんたはキョンなんだから。キョンはキョンらしくヒマ人でいなさい!』 どうでもいいが、こいつは今何回キョンキョン言ったんだろうね? ヒマな人は是非数えてみて欲しい。 『自分で数えれば? あんたどうせ万年ヒマ人なんだから』 おっと、つい言葉に出ていたらしい。悪い癖だな。 「悪かったな、万年ヒマ人で」 『そんなことはどうでもいいのよ。とにかく! 今から十二時までに駅前集合! いいわね?』 ん? 今は朝の十時三十分だが、あのハルヒが珍しく時間に余裕を持たせるとは。 どうゆう魂胆だ? 『失礼ね。どっかのお馬鹿さんがいっつも遅刻してくるから、わざわざ余裕持たせてあげたんじゃない』 お前等が早すぎんだよ。 「へいへい、わるーござんしたね」 『なんかムカツクわね……。ああ、それと。お昼は食べてきた方がいいんじゃない?』 「なんでだ?」 その時、電話の向こうのハルヒが、何かイタズラを発見したガキの様にニタァっと笑っているのが、 見えたのは錯覚じゃないんだろうな……。 『あたし朝まだ食べてないのよねぇ。あんたちゃんと人数分奢れんの?』 【駅前へ】 さて、いま俺は駅前に到着したわけだが。 その前に言い訳をさせてくれ。俺はあの後、ハルヒの挑発的な言葉を聞いてすぐに出かける準備をしたんだ。どんだけゆっくり行っても、駅前には十一時前後に着くはずであり、少なくとも俺がビリになる事は無いと踏んでいた。 ……いや、何かこう言い訳するのも虚しくなってきた。結論を言おう。 皆さんもうお気づきだと思うが、俺が最後だった。 ハルヒはもちろんのこと、相変わらず寡黙な宇宙人、未来から来た愛くるしい少女、ムカツクほど笑顔を絶やさない超能力者。 超普通人の俺がこいつらに勝てる日は、まあ余程の事が無い限り無いんだろうなぁ……。 そんな俺の沈んだ表情を見て何を思ったのか。ハルヒが非情に嬉しそうで、非常に眩しい笑顔で言い放つ。 「遅い! 罰金!」 何はともあれ(もう古いか、これ)SOS団の面々と会うのも久しぶりなわけで。 どうやら皆何も変わりは無いようで、安心したような残念なような微妙な気分に浸っていると、 「あなたが旅行から帰ってきて嬉しい限りですね。――いえ、その前に挨拶が先でしょうか。お久しぶりです、お元気そうで何よりです」 これまた相変わらずのハンサム顔のニヤケ面が話しかけてきた。 「それはいいが、気色悪い事を言ってくれるな。鳥肌が立つぜ、まったく」 「いやぁ、本心から述べたのですが、――ほんの軽いジョークですよ。そんな顔しないで下さい」 俺の表情から何を読み取ったのか、それとも顔にでたのか。古泉は苦笑した。 そんな奴は無視して、俺は他の団員へと片手を挙げる。 「久しぶり、みんな元気そうで何よりだ」 「当然よ、SOS団団長たるあたしが、夏如きにやられはしないわ! 年中無休なんだから!」 相変わらずこいつはわけの分からない事を言っているが。まあそこが涼宮ハルヒたる所以であり、凹んでるハルヒ何ぞ見たくないね。いや、何か不気味なだけであって、特に深い意味は無いぞ。本当だ。 「お久しぶり。キョン君も、元気そうで良かったぁ」 などと、極上のスマイルを浮かべて朝比奈さんが言う。 いやぁ、そう言われればこの暑さなんぞ地球外を突き抜けて宇宙の果てまでブーンと吹き飛ばせるというものです。それと、その白いリボンが付いた麦わら帽子もとても良く似合ってますよ。 「……」 ふと、視線を感じたのでその方向を見てみると、朝比奈さんの背後霊の様にして長門が立っていた。 そしてここで何も変わっていない、というのが間違いだということに気付く。 珍しく長門は私服姿でいたのだ。それも驚いたことに、朝比奈さんと御揃いの麦藁わら帽子(ただしリボンの色は薄青色だが)をかぶっていた。 「……?」 ジロジロと見ている俺の視線を訝ったのか、長門は数ミリ首を傾げた。 「ふふーん。どう? この前三人で買い物行ったときに色々買ったのよ。二人の服のチョイスはもちろんあたし。みくるちゃんは基が可愛いから何でも似合うけど、有希も結構可愛いと思わない?」 ハルヒはその二人を引き寄せながら言う。ああ、思うぜ。反則だ、その麦わら帽子とリボンは。 そして俺はふと思ったことがあるので、口に出してみた。 「ハルヒ、お前も被ればいいのに。似合うと思うぞ?」 するとハルヒは、 「あたしも買おうと思ったんだけどね、二人の分と自分の買ってたらお金なくなっちゃったのよ。仕方ないから、諦めたわ」 至極残念そうに言った。 【喫茶店へ常連へ】 この後、俺たちはいつもの喫茶店に入り、ハルヒの暴力的なまでの食欲と他三名の昼食代によって、それは決壊したダムがその流れを止める術を持たないように、俺の財布から金が失われていくのだった。 そんな厄介なダム決壊事件の首謀者は、もちろん涼宮ハルヒだ。 朝比奈さんは気を使ってくれたのか、ケーキセットだけという何とも女の子らしい注文をし、申し訳無さそうにそれをチョビチョビと食べていた。それがまた、良い。 「あのぉ……キョン君。本当に大丈夫? わたしの分は自分で出そうか?」 伝票を片手に、そこに書かれている金額を見てひたすら難しい顔をしていた俺に見かねたのか。朝比奈さんが心配そうに上目遣いで聞いてきた。 いえいえ、あなたは何も気にしなくていいのですよ。むしろこっちが奢ってあげたいくらいです。 「いいのよ、みくるちゃん。遅れて来た奴が悪いんだから。じゃんじゃん注文してやりなさい。あ、すいまっせーん! デザートにアイスシャーベット一つくださーい!」 お前は注文し過ぎなんだよ。なんだその目の前に並べられた皿の山は。こいつの胃袋は小宇宙でできてんのか? 「ふふっ、本当に驚きの食欲ですね。これを全部支払う人が可哀相だ」 同情に値します、と俺の隣に座ってる0円スマイル野朗が言った。 お前の食ってるビーフストロガノフも、俺のお陰でタダで食えるんだ。こいつには感謝されてもされたりん。 いや、やっぱこいつに感謝されると何か不気味なので、遠慮しておこう。 「古泉、それは俺に対する挑戦状と受け取っていいのか?」 「まさか。僕は心の奥底からそう思っているのですよ。まあ、そう捕ってもらっても構いませんが」 どうやらこいつは俺に殴られたいらしいな。 「冗談ですよ」 ふっと鼻で笑い肩をすくめた。いちいち感に障る野朗だ。 俺は軽く溜息をつきどこかに安住の地は無いものかと探していると、そこに長門が映ったのでそのまま凝視する。 何ということは無い、いつもの長門なのだが。なんだか妙に楽しそうに見えるのは、俺の気のせいなんだろうな。 リズム良く口にサンドイッチを運び、もくもくと食べる光景は見ていて飽きない。ふと目が合った。何を思ったのか、この対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェイス(最近言える様になったぜ)は、俺にしか分からない様な角度で首を傾げた。 何? とでも言いたいような感じだったが。いや、それを食えるのは俺のお陰なんだから感謝してくれよ。 と、一瞬思ったが。普段助けられてばかりいる俺が、こんなもんで恩返しできていると考えれば。まあ、安いもんかと思い直した。 この無表情な宇宙人は俺の顔から何を読み取ったのか。数ミリほど頷き、また黙々と食べ始めた。 「それじゃあ! デザートも食べ終わった事だし、そろそろ行きましょうか!」 今まで大食い世界王者も顔負けの勢いで食べ物を胃袋に詰め込んでいたハルヒは急に席を立ち、店を出る準備をし始めた。 ん? いつものくじ引きはどうしたんだろうか。グループ分けしなくていいのか? 「待てまて。グループ分けはいいのか? それとも、全員で市内を練り歩くつもりか?」 するとハルヒはキョトンとした顔で、 「何言ってんの? 今日はそんなことしないわよ」 「じゃあ、何をするんだ」 まさか、昼飯食ってはい終わり。じゃないだろうな。だとしたら俺の財布の殉職が報われんぞ。 「あれ? 言ってなかったっけ?」 「何をだ」 食べる事に夢中で肝心なところが抜けてやがるな、こいつはよぉ。 「今日は皆で図書館に行くのよ」 「初耳だぞ」 「それは僕も初耳ですね。いったいどういった御了見で?」 「わ、わたしも……」 「……」 その場全員の発言――約一名沈黙だが。――を受け。あれ、そうだっけ? などと言いつつ、ハルヒは再び椅子に座ると説明を始めた。 その説明によると、せっかくの夏休みなんだし何か夏らしい事をしようと思い、出てきた案が『怪談話』らしい。それも飛びっきりマジな。 「なんでかしらないけど、こうポーンっと出てきたのよね。ポーンって」 年中愉快な頭をしたこいつの中から、ポーンっと出てきたのがそれなら、まあまだマシな方だろう。 宇宙人や未来人や超能力者、未知の生物とかを捕まえにいくなどと言い出すよりはな。 「それはいいが、なんでまた図書館なんだ? 怖い話でも探しに行くのか?」 「ええ、そうよ。百物語やるつもりだし、その方が話の種類も増えて楽しくなるじゃない?」 なるほど、長門が楽しそうに見えたのは気のせいじゃなかったようだ。 図書館に行けることがか、大勢でワイワイしながら行ことがか。どうかは分からないが、少なくとも楽しみ……なのだろう、きっと。 「場所も確保してあるから安心なさい。鶴屋さんに頼んだら快諾してくれたわ。あの人の家、和風だし広いしね。皆で怪談話をするのにうってつけの場所だと思うのよ。真夜中になったら出るかもしれないし? やっぱやるからには本格的にやらないと!」 ずいぶんと手際がいいことだ。将来はツアー会社のコンダクターにでもなるといい。 俺がそんな無関心にハルヒの将来の職業について考えていると朝比奈さんが上目遣いでこちらを覗いていることに気付いた。 「あの、キョン君。わたしそうゆうの苦手なんだけど……」 この年中ドジっ子で麗しくも愛らしいハートフルエンジェルに助けを求められたら、そりゃもう全財産をはたいてでも助けてあげたい衝動に駆られるというものだ。金はもうないがな。 「大丈夫ですよ。何も幽霊や妖怪が本当に出てくるわけじゃ無いですし、いざとなったら耳栓でもして聞き流せばいいんです。それに所詮お遊びですし、気楽にやれば――」 この時、俺のこの言葉の全てに涼宮ハルヒを焚きつける要素があったことにすぐに気付くべきであった。 「なーに甘い事言ってんの! やるからには徹底的にやるわよ! 幽霊や妖怪が出てくるような――いいえ、から傘おばけも思わず全力で逃げ出したくなるような世にもこわーい話をするのよ! 今からそんな甘っちょろいこと言ってると、鶴屋さん家五十周の刑なんだからね!」 そんな喜怒(哀は抜けて)楽で喋るハルヒを見て、この世はまだまだ平和だな。 などと思いつつ、俺は後に起こる身も凍る様な出来事など、想像できるはずもなかったのだった。 その後すぐに店を出ると、俺たちは一路図書館へと向かった。 その内ハルヒは朝比奈さんに絡んで楽しそうに笑ってたし、朝比奈さんも妹を見ているお姉さん的スマイルでハルヒを見ていたし、古泉はいつものようにニヤケ面を満面に湛えていた。 だがその中でも、一番楽しそうにしていたのは長門だったように思う。 笑いながらハミングしスキップを、などは無かったが(そんな長門も見てみたい気もする)家族で遊園地に行くときの我が妹と似たような雰囲気を感じ取った、様な気がする。あくまで内面的にだがな。 【図書館へ】 さて、図書館に着くと館内のヒンヤリとした空気が出迎えてくれた。 夏場のこのくそ暑い時期。やはり冷房の効いた場所というのは極楽と言えるので、俺の顔が緩むことも仕方が無いのだ。いやぁ、エアコンはいいね。エアコンは人間の創った文化の極みさ。 だからハルヒが、 「なぁにアホ面してんのよ。いい? 一人最低十個以上は見つけてくるのよ。それもハンパな物は許さないんだから。特にキョン、あんたサボって寝てたりしてたら罰金なんだから! いいわね?」 ひじょーに楽しそうにそう言うと、ハルヒはリズムよく『サライ』をハミングしながら本棚の影へと消えていく。 それに続いて長門が夢遊病者のような足取りで。残された俺たち三人も散開して『怖い話』の本を名目の元探し始めた。 探し始めてから十五分後。俺は一角の本棚でホラー全集を観ているのだが、どうにも読む気になれず適当な本を手に取ると、手近なソファーへと腰掛けた。 どうやら俺の体は図書館に来ると睡眠物質を体の中で無断で勝手に大量に作り出すらしく、その原因は何なのかと考え始め、このままではハルヒによって神罰が下されるので俺なりに全力で睡魔の野朗に抗っていたのだが、冷房効果もありやがて無力にも暗黒空間へと引きずりこまれる寸前に、 「隣、いいですか?」 微笑を携えたマイエンジェル、ではなく。 「何だ、お前か」 いつもニヤケ面を構えている、古泉であった。 「何か残念そうにされてらっしゃいますが、誰だと思ったのですか?」 「いちいち聞くな、鬱陶しい」 これは失礼、とくすくす笑い出す。 「それで、何のようだ」 すると奴は待ってましたと言わんばかりに、 「今回の件なんですが」 擦り寄ってくるな、顔が近い、息を吹き掛けるな気色悪い。 やれやれと言わんばかりの表情で、古泉は少し身を引いた。 「それで、今回の件なんですが。またこちらから色々とイベントを用意させて頂く事になりました」 「またハルヒが余計なことを考えないようにする為に、か?」 「ええ、そうです。ちなみに今回はドッキリ企画を計画しているので、くれぐれも涼宮さんには一切口にしないようお願いいたします」 どうだか、つい口が滑っちまうかもしれねえな。 「その時はその時ですが。もし本当に幽霊や妖怪が出てきたとしたら、あなたの責任ですよ?」 「わかってるよ、ハルヒには黙っておく。んで、朝比奈さんと長門にこの事は伝えてあんのか?」 「いえ、これから伝えようかと。黙っておくのも一興かと思うのですがね。どうでしょう?」 まあ、言うに越した事はないのだが。怖がって俺に抱きついてくる朝比奈さんを想像すると、こうグッと来るものがあるにはあるが、あの人の場合ショックのあまり気を失いかねん。 長門? ああ、あの宇宙人アンドロイドなら大丈夫だろう。というか、あいつが怖がる姿など想像できん。 「一応言っておくべきだろう。ハルヒの為のドッキリ企画なら、仲間外れにしてしまうのは気が引ける」 「了解しました。ところで、あなたには――」 そう言うと、古泉は視線だけを後ろに配り、 「彼女に構って、足止めをお願いします」 古泉はそう言うとソファーから立ち上がり、そそくさと本棚の群れへと非難して行った。 だが、ここで俺はある事を思いつき、奴を呼び止めた。 「古泉」 「なんでしょう?」 俺はできる限り皮肉ぶった顔をして、 「今年もまた、同じ夏が巡るかもしれんな。そうしたらお前のその企画とやらも徒労に終わるかもな」 それを聞いて古泉は大袈裟に肩をすくめると、 「できるのなら、そのようなことが起こらないように願うばかりですね。その為にこちらから娯楽を提供しているのです。全力を尽くすまでですよ」 冗談めいて言うが、奴は俺に背を向けており表情は見て取れなかった。そのまま本棚へと消えていく。 半分冗談、半分マジってところか。 俺が軽く溜息をつくのと、数秒遅れで。 「ねえキョン。見て見て、なんだか怪しい本を見つけたわ! あからさまに、あたしに読んで下さいって言ってる様なもんよねっ! なによ、あんたのそのショボそうな本は。そうね、特別にあたしが見つけたこの本を読ましてあげるわ。さっ、読みましょ!」 いつもより等比者(あえて誤字するのがポイントだ)二、三倍は明るいハルヒが後ろから頭越しに、まあ今しがた述べられた通りの本を突き出し、俺の隣のソファーに座るとその本を読み始めた。 図書館=寝る場所の俺に。安住の地は無いらしい。 その後の事なのだが。あらかた怪談話の種を探り終えた俺たちは一時解散。そしてまた駅前に二十一時ジャスト集合となっていた。 「それじゃあ、二十一時に駅前集合よ。絶対に遅れちゃダメよ。特にキョン、あんたいっつも遅いんだから。たまには早く来てみなさいよ」 努力はするが、頼むから集合十五分前にはいてくれるなよ。勝てん。 「ダメよ、あたしだって負ける気ないんだから。悔しかったら一番乗りで来てみなさい!」 ハルヒはやっぱり楽しそうに、満面の笑みでそう言った。 「じゃあね!」 「私も帰りますね。それじゃあ、また後で」 そう可愛らしく手を振り、朝比奈さんもヒョコヒョコと帰って行く。 「……また」 何を思ったのか、長門は俺を見上げると、朝比奈さんのマネなのか手を振って帰って行った。 止めてくれ、その格好にそれは反則だ。 「ああ、またな」 そして今は俺と、隣にいるハンサム野朗と二人きりになり、 「そうそう、一応報告しておきますが。あなたがいない間に涼宮さんは、今日に至るまで計十四回ほど閉鎖空間を発生させましたよ」 いきなりそんなことを言い出した。 計十四回と言う事は、一日に何回も発生させたのか。はたまた一日置きに発生させたのかは定かではないが。 「そうか、それはご苦労だったな古泉」 「いえ、慣れっこですが。でもご無沙汰でしたので少々くたびれたのも事実ですね」 両手を上げると肩を落とし、芝居染みた仕草を見せた。 「それで? あいつがムカッ腹立てるほどの事が、俺がいない間にそんなにあったのか?」 「いえ、そうではありませんが……まあ、そう取っても間違いではないでしょう。ちなみに、その主な原因はどうやらあなたの様ですよ」 いよいよもって意味不明だ。 「……俺が何したってんだ」 「あなたは然程悪くは無いのですが、そうですね。言うなれば『会えない時間が想いを募らせた』とでも言った所でしょうか」 何楽しそうな顔してどこぞのキャッチフレーズを謳ってやがるんだ、この野朗は。 「俺にはお前の言ってる事がさっぱり理解できん」 すると古泉は得意のククッという含み笑いをすると、 「おや? そろそろ気づいている頃かと思いましたが……それとも惚けているのでしょうか?」 「理解できんことに気づけってのは、無理難題ってもんだぞ」 「そうですねぇ、涼宮さんには悪いのですが。具体例を挙げますと――」 少々間を空けもったいぶり、田舎の従兄弟達がちょっとしたトラップを仕掛け俺がどんなリアクションをするのか楽しみで仕方が無い、といった感じの表情で俺の顔を観察してきやがった。 「あなたが旅行に出かけていた二週間ほど。毎日一、二回は非通知で電話がかかってきましたよね? 」 「それがどうした」 そして奴が、これまででベストⅢ――いや、ワーストⅢに入るであろう最上級のニヤケ面で言いやがった。 「その全ての電話先の相手は、あの涼宮さんなのですよ」 【自宅にて】 「訳分からんっての……」 あの後、ちょっとばかし寄り道をし、家に帰った俺は飯、風呂、着替え等。やるべきことは全てやり暇を持て余していたのだが、なにぶんまだ十九時近くだ。約束の時間までやることが何も無いので、仕方なく先ほどの古泉の言葉を頭の中で反芻していた。 田舎に帰っていた間中のイタズラ電話の数々。その犯人がハルヒだ? いよいよもって意味が分からん。何がしたいんだ、あいつは。 その後もその行動理念は何なのかについて考察し始めたのだが、そもそも相手があの涼宮ハルヒだ。やる事なすこと全てに良い結果をもたらす事が、限りなくゼロに近い奴にとって俺へのイタ電は、まあヒマだったからだとか、そんなところだろう。きっとな。 そして、「あいつの考えてる事を理解することは、無理無駄無謀」という結論に至った所で、今日は徹夜をする事になるだろうし、それに備えて今から睡眠を摂っておくのも悪くないなと思い、俺はそのままベットに横になった。 さて、これを読んで何かしらの予想できた方はまあ、正解だ。 正解? 何がだよ。と、熱り立つ人も落ち着いてほしい。 結果から言おう。俺は寝坊した。 ここまでくると、最早漫画の主人公の様に王道を突っ走る俺に自分自身ほとほと呆れるのだが、時間が時間だ。そうも言ってられない。 なんせ今は二十一時ジャストだ。そう、駅前集合時間ピッタリである。 「嘘だろ」 夏場のこの時季、少々寝汗を掻いてたりしてたんだが、今はそんな細かい事を気にしてられん。 案の定、ポケットの携帯が鳴り出す。 示された電話相手は、涼宮ハルヒ。 『ちょっと! 何してんのよバカキョン、遅いじゃないの!』 「すまん、今起きたところなんだ」 『はあ? このばか! バカ! バーカッ!』 特大の声量で出迎えてくれた。いい目覚ましだなこの野朗。目覚ましと言えば、なぜ作動してないのだ? 相棒よ。 よく見ると目覚ましの隣にシャミセンが寝ていて、その手はなぜか目覚ましを止める為のボタンに届いていた。なんてこった、絶妙のタイミングでシャミセンが止めたとでも言うのか? 実はまだ人並みの知性を持ち合わせているんじゃないだろうな、こいつは。 「集合、九時だよな」 『いいから、さっさと来なさい! 三十秒以内よ!』 無茶言うなよ、ここからそこまで最速で二十分は掛かるんだぞ。 『寝坊したあんたが悪いのよ。とにかく、さっさと来なさい!』 その後、俺は急いで家を出て可能な限り自転車を飛ばした。 信号待ちなどで待ってると、ハルヒが引っ切り無しに電話で「信号なんてくだらないわ! 無視よ無視!」などと言う。 どうにもこいつは俺を車に轢かせたいらしいな。 駅前に着くと、既に全員揃っていてハルヒが踏ん反り返ってるのも、否応無しに発見できた。 古泉は盛大に肩をすくめ、朝比奈さんは苦笑いのような微妙な笑顔で、長門は沈黙で出迎えてくれた。 そしてハルヒは、怒り笑いで、それでもやっぱり楽しそうにこう言うのだった。 「遅刻、厳罰!」 【鶴屋家へ】 さて、その時言い渡された厳罰は何かというと、 「鶴屋さん家五十周の刑よ!」 それはマジで言ってんのか? お前も鶴屋さんの家の広さがハンパ無い事は知っているだろう。 結局やる破目になるわけだが、夏場のマラソンほど過酷なものは無いな。陸上選手でも避けてるもんじゃないのか? やがて三周目にしてぶっ倒れた俺に見かねたのか、 「ハルにゃん、もうそろそろいいんじゃないっかな? ほら、本当に五十周してたら時間なくなっちゃうっしさっ!」 玄関前まで出迎えてくれていた鶴屋さんが、天然笑顔百パーセントで言った。 ハルヒは俺にじとーっとした湿った視線を送ると、 「鶴屋さんがそう言うなら、まあいいわ。キョン、鶴屋さんに感謝なさい」 本当に感謝しますよ、彼女には頭が上がらない。 「さあさあ! 前座も終わった事だし、さっさとうちに入っちゃってよっ! めがっさ盛大に持て成してあげるにょろ!」 ……前座扱いですか、俺は。 そしてSOS団の面々は鶴屋家へと入っていくわけだが、実は俺は一つ手荷物を持ってきていて、厳罰を受けている間にそれを古泉に預けていたのだが。 なにやら奴がいつも以上にニヤニヤしているのは、気のせいか? 「大変でしたね。まあ、今回はあなたに非がありますが……。それにしても、あなたも中々粋な方だ」 くそっ、こいつに預けたのは間違いだったか。 俺は汗でベタベタになったTシャツをつまみつつ、苛立ちをあえて隠さずに言った。 「……中身を見たのか」 「ええ、それはもうバッチリと拝見させて頂きました」 ウインクをするな、気色悪い。 「デリカシーの無い野朗だ」 そう言って俺は奴から荷物をひったくると、さっさと女連中に続く事にした。 後ろから付いてくる野朗の、ふうやれやれと言った溜息交じりの苦笑が、また俺をイラつかせたのは内緒だ。 手荷物の中身? それもまた、内緒だ。 【入場、そして怪談へ】 俺たちは鶴屋さんに案内され、少なくとも俺の部屋の三倍はあろうかという部屋に案内されると、 「ここはあたしの部屋だから、じゃんじゃんくつろいじゃっていいよっ! 狭いかもだけどねっ」 なんて言うから、やはりこの人は只者ではない。 その後、鶴屋家のお手伝いさんらしき女性が飲み物を運んできて、「ごゆっくり」の一言に感謝の言葉を述べていると、 「それじゃあ、時間も押してるし。そろそろ始めましょうか!」 第一回『SOS団百物語』の始まりである。 さて、ここで百物語って何? という方もいるであろうから説明しよう。 端的にいえば、「ロウソクを百本用意し、怪談話が一つ終わるごとにロウソクの火を一つ消していく」というものだ。 そして百話終えたのちに何かしらの妖怪や幽霊が出てくる、というのだが。さて、そんなことは本当に起こり得るのだろうか。 俺は幽霊や妖怪なんざ信じちゃいないが、今この場に涼宮ハルヒなる人物がいることを考慮に入れると、そうゆう類の物が出てきてもおかしくは無い。だから古泉の野朗がドッキリなるイベントを企画しているらしいのだが。はて、うまくいくかね。 「うまくいかせてみせますよ。そうでなくては、やる意味がありません」 それはいいが、お前が言うとイマイチ悪寒が走るのは、どうしたことだろうね? 隣の部屋に用意されていた「百」のロウソクに次々と火がともされていき、次第に俺も不安になってきた。 「おい、ハルヒ。こうゆうのは寸止めでやるもんじゃないのか?」 「何言ってるのよ、こうゆうのは本格的にやらないと、幽霊とか妖怪とかツチノコとかは出てこないのよ!」 いや、最後のは出てくるかどうか知らんが。 「マジで出てきたらどうすんだよ」 ハルヒは俺の言葉を意外だとでも言いたそうな顔で見てくると、次第に子悪魔的な笑みを浮かべ、 「なに? あんたそうゆうの苦手なの? ふーん、そうなんだ。へぇ……」 「なに言ってやがる。俺はその手の類は信じてねぇよ。何なら『幽霊不信大会第二十九回』でもやるか? 優勝する自信があるぜ」 するとハルヒは路上パフォーマンスに失敗した道化師を見る様な顔で、 「なにそれ。まあいいわ、そこまで言うなら別にいいのよね? ひゃくものがたり♪」 最後にはとっておきの笑顔――だろう、きっと――をするのだった。 ええい、ドジ踏んじまった。どうやら俺はこいつを止める術を持ち合わせていなく、それに否応なしにホイホイ付いていくしか能が無い様だな。 そんな自分に少し自己嫌悪する。 「やれやれ」 まあ、それも悪くは無いのは、ずっと前から分かっているんだがな。 【百物語、開始】 そんなこんなで「第一回SOS団百物語」は、遂に開始されてしまった。 全てのロウソクに火が灯され、隣の部屋から百のロウソクの熱気が伝わってくる。 さすがに、夏場にやるものとはいえ恐怖で体が冷める前にこの熱気でダウンしてしまうので、窓とふすまは全開にして行われることとなった。今日は風もあまり吹いてないし、まあ火が消える心配はあまりないだろう。 「じゃあ、まずは団長たるあたしから始めるわ!」 さて、いきなりだがここで俺の怪談耐性について語りたいと思う。 それはいいから怪談を聞かせろ? まあ待て、そんなことしたらただでさえ無駄に文字数が多い今回の話が、数十万文字は超過してしまうことになり、ただでさえグダグダな俺の文章が、更にグダグダになることは目に見えている。――そこ、決して俺が怪談話のボキャブラリーが少ないからではないぞ。ヒソヒソするなっ。 俺は中学を卒業するまでは、怖いもの見たさで様々な本や映像を見てきたがたいして怖がったことは無い。 故に、古泉の理論めいたどこで怖がればいいのか分からない話や、朝比奈さんの途中で噛んだりする怖い話のはずなのに逆に和んでしまったり、長門の本の内容をそのまま読むだけで無感情で語られたりしても、全く怖くは無いのだ。 「でね、その湖に何があったと思う? ――河童のメガネがあったのよ!」 ハルヒにいたってはこんな感じだ。ここ、笑うとこ? (それなんて銀●?) だが一人――いや、実のところ二人か。恐ろしいダークホースがいた。 「ずっと前の話なんだけどね、戦時中ここら辺に赤い着物を着た女の人が住んでたんだよっ。戦争に駆り出された恋人を待っててね。 そんでもって、その人いっつも赤い鞄を持って恋人との約束のここの近くの街灯下で毎日待ってたんだけど、その恋人実は死んじゃっててね。 その女の人、その事はもう知ってたんだけど。やっぱ信じられなかったんだろうねぇ。 何年も待ってたんだってさっ!」 鶴屋氏である。 なるほど、序盤は儚い恋の話で和ませる、ですか。そして段々怖くしていくといった具合か。 その証拠に朝比奈さんは、祈るようなポーズをとって悲しそうにしていた。あれ? なんでこんな所に天使が? 俺がそんな愛らしい方を思わず抱きしめそうになり、理性と全面戦争を勃発させたのだが。ハルヒが俺をしかめっ面のアヒル口で見ていたので俺は瞬時に理性と戦争終結を調印した。いや、やっぱり戦争は駄目だね。 「それである時、その人は運悪く通り魔に刺されて死んじゃったんだ。犯人はすぐに捕まったんだけど、その犯人、気がおかしかったらしくてね。殺した女の人の首を――」 妙に切迫した鶴屋さんの雰囲気に、全員静まる。 「切り落として山中に埋めたんだってさ……」 「ひぃっ……」 朝比奈さんは小さな悲鳴を上げると、かたかたと小さく震えだした。 どうやらここから鶴屋ワールドが展開されていくらしい。この人の事だ、相当怖い話を用意しているに違いない。 ですが、はたして俺を恐怖に陥れれますかね、鶴屋さん? 「そんでね、これも謎なんだけど。女の人がいつも大切に持っていた赤い鞄も、どこかに消えちゃったんだってさ」 「犯人が、山中へ一緒に捨てたんじゃ?」 何となしに俺が質問するが、鶴屋さんはニッと笑うと(これがまた不気味だ)。 「ううん。犯人は盗ってないって言い張ったんだってさっ」 「それは虚言という可能性もありますよね」 古泉がずいっと前にでて言う。 「うんっ、そうかもしれないね。真相は闇の中ってやつっさ!」 するとハルヒが怪訝そうな感じで、 「それで? まさか終わりってわけじゃないでしょ?」 「うん、それでねっ。一応警察も、犯人に動機を聞いてみたんだけど。ひたすら怖がるばかりでね、なかなか言い出さなかったんだって。それでも、しばらくすると落ち着いたのか話し出したのさっ」 全員、鶴屋さんの話しの続きを静かに―― 「それでそれで?」 待てないのか、ハルヒよ。 「うん、それでね。動機はまあ、通り魔なんだし。ムシャクシャしてやったんだって。でもね、女の人の首を切り落とした理由が――」 「――死んだはずのその死体は、笑いながら犯人に話しかけてきた」 俺は――いや、その場の全員が驚いた。 「ねぇ、どうして邪魔をするの?」 「な、長門?」 長門が喋りだしたのだ。あくまで棒読みだ、が。それが逆に怖い。 「え、有希……?」 ハルヒも意外そうな顔をし、朝比奈さんに至っては顔が青ざめ、ガタガタ震えだしている。 「それに恐怖した犯人は、その手に持った包丁で何度も何度もその死体の首を突き刺し始めた。 何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も――」 突然エラーでも起こしたかの様に、長門は同じ事を繰り返し喋り始めた。流石に悪寒を覚えたね。 「そして首を切断した犯人はその首を持ち去り、山中へと埋めた」 「お、おぉ……よーっく知ってるね長門っち! いやあ、知ってたのかいっ?」 鶴屋さんの言葉に軽く肯定の仕草を見せると、 「この話には続きがある」 そう言って俺を見つめだした。止めてくれ、今はその黒い瞳が怖いぜ。 「……続き?」 仕方なしに俺が言うと、その言葉を待っていたのか長門はゆっくり頷くと喋りだした。 「翌日、犯人は独房の中で死んでいるのを発見された。死因は不明。密室のはずのその空間には他者を殺害する方法はありはしなかった。 だがそれが他殺だという事は明瞭としていた」 「なにそれ? 舌を噛んで自殺とかじゃないの?」 ハルヒの質問だが、きっとそうではないだろう。何となくだが予測はできる。 「なぜなら、その死体は――」 「首から下が無かったから」 予想がハズレた。 「首から下だ? なんでだ、そうゆうのは普通首が無くなったとかじゃねえのか?」 あえて体を持ってったってのは、いったいどういったことか。 俺のこの疑惑に鶴屋さんが明朗に言い返してきた。 「うんっ、それがね。犯人が首を埋めるときに、聞いちゃったんだ」 「なにを?」 ハルヒの怪訝そうな声に応えず、鶴屋さんは同じ言葉で返した。 「きいちゃったんだぁ……」 「…………」 突然クスクス笑い出し、俯いた鶴屋さんの表情は前にかかった髪のせいで伺えない。 当然の如くその場に沈黙が訪れる。 そして次の瞬間―― 「きゃはははははは! ねえ、なんで首だけ埋めちゃうの? あたしの体はどこにいったのかしらぁ? うきゃはっ! きゃはははははははは! ぎゃはははははははははははははははははははははははははははは!」 心臓が止まるかと思った。 突然、鶴屋さんは立ち上がると大声で上記のセリフを叫びだしたのだ。 「ふぁ、ふぇ……はふぅ~……」 白目を剥いて朝比奈さんが倒れてしまった。 「あ、朝比奈さん……? ちょ、ちょっと。大丈夫ですか?」 この出来事に気付いたのか、鶴屋さんは今までの調子を止め、 「あはははは! あれっ? みくるっ、そんなに怖かったのかいっ? ごめんよ~」 といっていつもの調子に戻った。 「あ~、びっくりしたぁ。ちょっと鶴屋さん? いきなり叫び出すのは反則よ!」 畳に手をつき(腰でも抜かしたのか?)、猛抗議をするハルヒに鶴屋さんは笑って返した。 そうだぜ、いきなり叫ぶのはこちらとしてもそれなりの気持ちの準備が……いやまあ、それが狙いなんだろうから、してやられたんだろうな。 「あはは、ごめんよ~。そんなに怖がるとは思わなかったからっさ! あ、でもまだ続きがあるんだっ」 鶴屋さんは何故か持っていた毛布を、横たわった朝比奈さんにかけると(予想してたんだろうな)、話の続きを始めた。 「そいでねっ、独房の看守さんが言うには。死体の近くに何か赤い物を見つけたんだってさっ」 「赤い物、ですか?」 これは俺の質問だ。 「うんっ。真っ赤に血で染まって、中からながーい髪がはみ出てたらしいよっ」 「それって、もしかして……」 ハルヒが先ほどの姿勢のまま言った。あれ、こいつ本当に腰が抜けたのか? 「う、うっさいわね! 黙って聞いてなさいよ!」 どうやら図星らしい。 ニヤニヤしている俺が、ハルヒにグーで殴られたのは蛇足だ。 「あははっ。でね、それはいつの間にか消えててそのまま行方知れずらしいんだっ」 「そして今でもその女性の首は発見されていない」 長門が付け足すように言う。もはやここまでのコンビネーションを見せ付けられると、気付くなと言う方が無理な注文だろう。 どうやらハルヒも感付いたようで、俺に目配せをしてくる。 ああ、そうだな。 この二人、グルか。 「あはははっ! 気付いちゃったっかなぁ? いやあ、バレちゃ仕方ないっさ!」 「仕方ない」 二人は残念そうなのを微塵も見せずにいた。 「あー、でね。もうちょっと付け足させてもらうと」 「今もその赤い鞄は夜になると、自分の体に合う体を探しているらしい」 『お・わ・り』 「どうだい? めがっさ怖かったと思わないかいっ?」 どうにょろ? と聞かれれば。もちろん怖かったさっ。 「ええ、怖かったですよ。思わず、腰を抜かしそうになるほどにね」 そう言うのと横からビンタが飛んでくるのは、まあ言わなくても分かるよな。 しかしここまで見事なコンビっぷりを見せ付けられると、逆に賞賛の美を送りたくなるってもんだ。 「……怖かったにょろ?」 や、止めろ長門。こら、首を傾げるな。それは反則だっ。 「いやー、流石ね二人とも。やっぱりあたしが見込んだだけの事はあるわ。そうね、これを贈呈するわ」 そう言うとハルヒは、どこから取り出したのか黒ペンと腕章二つを取り出した。 お前はドラ●もんか。 腕章に書かれた文字は『恐怖コンビ』。見方を間違えれば別の意味でも恐怖であろう。この二人は。 「あははははっ! あんがとね、大事にするよっ!」 「……」 長門、そんなものにお礼のお辞儀をしなくてもいいんだぞ。 そんな俺の思いを知ってか知らずか、二人ともいそいそと付けだした。 「ふふん、でもね。あたしの方が凄いのよ? なんたって、今日はこれなんだから!」 ハルヒは元気良く言うと、右腕についていた団長印ではない腕章を見せびらかした。 『恐怖大王』 お前はどこのノストラダムスだ。 【休憩、そして……】 「さーて、それじゃあ次行きましょう、次」 一つ火を消した後、また続きを始めたのだが、そういえばさっきから珍しく黙りこくってる野朗がいるな。 「次は、古泉君ね。さ、始めてちょうだい」 「……」 だが古泉は、ハルヒの問いかけに無言で微笑んでいた。 なんだ? このイエスマンが珍しくノーと言える男にでもなったのか? 「おい、古泉?」 軽く肩を揺する、と。 バタリッ こ、こいつ……。 微 笑 み な が ら 気 絶 し て い や が る ! あ……ありのまま今起こった事を話すぜ! 『今まで怪談とか平気だと思っていたサイコ野朗が正座の姿勢で微笑みながら気絶していた。』 な……何を言ってるのかわからねーと思うが、おれも何があったのかわからなかった……頭がどうにかなりそうだった……。 閉鎖空間だとか超能力だとかそんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ。 もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……。 さて、俺はいつの間にポル●レフになったんだろうね? 「って、んなことはどうでもいいんだ!」 と、空気に突っ込んだ俺なのだが。周りの視線が痛いのは気のせいさ、きっと。 「あんた何やってんの……?」 だよね。俺もそう思うぜ、ハルヒよ。 「あーあ。まさか古泉君も気絶しちゃうなんて。これじゃ続きができないじゃない!」 非常に残念そうに言っているが、俺としてはそろそろ休憩を挟みたいのだが。 「ハルにゃん、ちょうどいいから休憩にするっぽ? 飲み物とかも持ってこないとだしさっ!」 俺の思考を瞬時に読みとったのか、自分の意思なのかは定かではないが。 非常にありがたいです、鶴屋さん。 「ああ、俺もそろそろ疲れてきた。ちょうどいいし休憩にしようぜ、ハルヒ」 何しろ三時間はぶっ続けでやってきたんだ。そろそろ休んでも、幽霊や妖怪も文句は言わんだろうよ。 「ふーん……。有希は? 休憩したい?」 「どちらでもいい」 「そっか。それじゃあ、休憩にしましょう」 その後、鶴屋さんは長門をお供に飲食物を取りに行くと言って廊下へと消えていった。 しかし、まさかあの古泉が怖い物嫌いとは。ようやくこいつの知らない一面を垣間見たような気がする。 「まっさか、あの古泉君が気絶しちゃうなんてね。思いもしなかったわ」 そりゃそうだ。 「でもさっきの話、本当なのかしらね? マジだったとしたら、そのうち掘りに山へ行ってみましょうか。何か出てくるかもしれないわ」 「止めておけ。もし本当だったとして、マジで掘り出したりしたらどうする気だ。祟られても知らんぞ」 俺の発言に、ハルヒはMr.ビーンばりにニヤっと笑うと、 「なに? やっぱあんたそうゆうの信じてんの?」 「いや、そうゆう訳じゃないが。気味が悪いだろ、普通」 「そうゆうのを信じてるって言う――ん」 突然、ハルヒは会話を止めると立ち上がった。なんだ? 「どうした?」 「ん、ちょっとトイレ」 そう言うと廊下へと消えていった。 五秒後、戻ってきた。 「なんだ、えらい早いな。普通女性のトイレってのはもっと長いもん――」 「ちょっと来て」 そういうと、ハルヒは俺の手首を掴み無理やり立たせやがった。 なんだ? どうしたってんだか。 「いいから黙って付いてきなさい!」 「わかったから、そう怒鳴るな。家中に響くだろうが」 「ふんっ」 そうして行き着いた先は、 『WC』 「……あん?」 なんのつもりだ、これは。 「まさか……ハルヒ、お前。怖いのか?」 するとハルヒは俺のその言葉に、異常とも言えるほど過剰に反応し、 「バッカじゃないの? そんなわけないじゃない! いい? あんたがトイレに行きたそうだったから、しょうがなく一緒に連れてってあげたの。感謝なさい」 俺がいつトイレに行きたいなどと言ったか、ハルヒさん? 「うるさい! あんたはトイレに行きたかったんでしょうが! あたしがそれを察したの、感謝しろ!」 なんだその滅茶苦茶な理由は。 いや、しかし。ははーん、そうかいそうかい。どうやらコイツは、俺の知らない意外な一面をまだ隠し持ってるらしい。 「ニヤニヤすんな! バカキョン!」 おっと、知らん間に顔がニヤついてたらしい。いかんいかん、悪い癖だな。 それにしても、あの天上天下唯我独尊をモットーとしているようなこいつに、こんな一面があったとはな。 普段、滅茶苦茶な事をしていて気付かなかったが。まあ、こいつも一女子高生って所か。可愛らしい所もあるじゃないか。いや、これも深い意味はないぞ、マジだって。って俺は誰に言い訳してるんだろうね? 「いい? 用が終わっても勝手に戻っちゃダメだからね! 絶対よ!」 ハルヒはそう言って、怒ってんだか怖がってんだか良く分からない勢いで女性用トイレへと入っていった。 数分後。 俺は付き添い人を待っているわけだが。しかし、女性のトイレってのはどうしてこう長いんだろうか。 まあ、女性は色々大変なのは分かっているので別段待つのは構わないのだが。仕方ないので、退屈を紛らわす為に窓の外を見る。 今夜は満月か。いやぁ、いい月だな。 おや? 満月の付近に、もう一つ丸い物が浮遊しているのが見えるのだが。はて、月の野朗はいつの間に分離したのだろうか? アメーバか何かの親類だったのか。 チリーン ふと、鈴の音が聞えたが、まあ風鈴か何かだろう。でもこの音からは、あの球体の鈴の方を連想させる様な、 チリーン 『……ねぇ』 俺は鈴の音に気を取られていたらしく、自分へと近づいてきていたその『存在』に気付けなかった。 もはや空に影の月は無く、代わりにその『存在』がそこにあった。 『私の体、どこにあるか知らない?』 長い黒髪に覆われた、血まみれの生首がそこに『浮いていた』。 「――!!!!!!!」 俺は声にならない悲鳴をあげ、その場に立ち尽くした。 いや、動けなかったんだ。声も全く出せず指一本動かせれない。なるほど、これが金縛りってやつか。 それは分かった。だが、この状況はなんだ? 金縛りってのは幽霊か何かのせいだと言われているが、確かテレビで理論的証明をしていたはずだよな。幽霊なんかの仕業ではない、と。 では、俺の目の前にあるこれはどう説明するよ。 『ねえ、知らない? 知らないの? じゃあ――』 それはもう俺の手が届く範囲にまで迫っており、青白く土汚れがついた顔が良く見え、俺をより一層恐怖のどん底へと叩き落した。 そしてその次の言葉もまた、俺を恐怖させるには十分だった。 『貴方の体、ちょうだい?』 「……っ!!!」 そして次の瞬間―― ――バタンッ! 蹴破ったように扉が開け放たれる音が聞えたと同時に俺はその場に尻餅をついた。 そしてあの生首も消えていた。 「ちょっとキョン! ちゃんといるでしょうね! いなかったら殺す――あら?」 そんな感じでハルヒの声が聞えた。いや、実際は曖昧だったからどうか忘れたが。 「どうしたの? あんた、息荒いし顔色悪いわよ?」 いや、これほどハルヒに感謝したいと思った日は無いね。今なら素直になれそうだぜ。何にかは知らないが。 「……ハルヒ」 「な、なによ」 俺はハルヒの顔をしっかり見据えると心なしかこいつの顔は少し赤かった気がするが、今はそんなことはどうでもいい。 俺は立ち上がると、すぐにでもその場から逃げ出したい衝動に駆られた。 「はやく戻ろう」 「うん? え、ええ。分かったわ」 何か鬼気迫る感じを察してくれたのか、存外素直に言う事を聞いてくれた。 俺はハルヒの手を引きながら、冷静になろうと考える。 何だったんだ、今のは。 新手の催眠術か何かか? それとも古来より伝わる何かの魔術か? それとも未来から来た朝比奈さんの親戚のロボットか何かが四次元ポケットから出した道具に誤作動でも引き起こったのか? ええい、落ち着け俺。そうだ、素数を数えるんだ。 「2 、3 、5 、7 、11、13……」 「ちょ、ちょっとキョン? ……素数? 何言っちゃってんのよ。ほんとに大丈夫?」 いかん、口に出ていた。 「いや、すまん。大丈夫だ」 珍しくハルヒが心底心配そうな優しい言葉をかけてくれるが、よくよく思えば奴をからかえるチャンスだったのだろうが。いや、そんなことはどうでもいい。今は一刻も早く皆のところへと戻らねば。 その間にもう一つの疑問が俺の頭の中に浮かび上がってきた。 これもハルヒの仕業なのか? 【イッキ ショウタイム】 部屋に戻った俺は愕然とした。 火の灯ったロウソクはそのままで、部屋には誰もいなかったのである。 この時の俺はどうにも焦っていたようで、気絶した二人がいないことに何の疑問も持たなかったのだが。 「あれ、なんで誰もいないの? まあいいわ、座って待ってましょ」 「あ、ああ……」 それにしてもこれはどう言うことだ。 さっきのあれにしろ、今のこの状況にしろ。何か不気味なものがある。 幽霊なんぞ信じていない俺だが、あんな間近でリアルなものを見せられちゃ信じないって方が嘘だぜ。 それにしても、浮遊する生首か。いや、待てよ。 あれは何か言ってなかったか? つい最近聞いた事のあるようなセリフを……。 「ちょっと、なにボーっと突っ立ってんのよ。あんたもさっさと座りなさいよ」 俺はかなり深く思考していたようで、ハルヒの声に呼び覚まされると不承不承に座った。 「全く、あんたさっきからちょっと変よ?」 「ああ……いや、なんでも無いんだ。気にしないでくれ」 「ふーん……」 いくらなんでも、ハルヒに「実はわたくし、先ほど幽霊なんかを見ちゃいまして」などと言える訳が無い。 もしさっきのが偽者か何かだったとしても、ハルヒが俺の言葉を聞いて信用してしまえばそこらじゅうに怪奇現象が巻き起こってしまうかもしれない。そんなのはごめんだ。 さすがの俺もこうゆう幽霊沙汰やらなんやらは傍観者でいたいし、そんなものはテレビなどで見ていれば充分なのだ。間違っても当事者などご免蒙る。 さて、しばらくしても皆戻ってこないのに痺れを切らせたのか。ハルヒは勢い良く立ち上がると、 「ああ、もう! 遅すぎるわ皆、何やってんのかしら。ちょっとキョン、探しに行くわよ」 「探すったって、どこへ」 ハルヒは少し考えるような仕草をしたが、 「そうね、鶴屋さんと有希は台所へ行ったのよね。とりあえずそこへ行きましょ」 否定する要素も無いので、俺はそれに同意した。 薄暗い廊下を彷徨う事しばらく。台所らしき広い厨房へとたどり着いた。 「変ね、いないのかしら」 見渡した限りでは人っ子一人いないのだが。さて、どこにいったのやら。 すると―― 「ひっく……ぐすっ……ひっぐ……」 女性のすすり泣く声が、厨房に響いた。 この時点で俺はさっきの事もあり、すこーし薄気味悪く感じたと同時に何かこう胡散臭いように思えたのだが。 さてどうゆうことだろうか。 「あら? 誰かいるの?」 ハルヒは何の訝りも無く声の元へと進んでいく。 そこには見慣れた超ロングヘアーがチャームポイントの鶴屋さんが、こちらに背を向けてしゃがみこんでいた。 「鶴屋さんじゃない! ねえ、何で泣いてるの? 大丈夫?」 「ひっぐ……ハルにゃん……? あのねっ……あたしね……」 ハルヒが鶴屋さんの肩に手を置くと、鶴屋さんはこちらを向きその表情は―― 「今、どんな顔してる?」 表情は無かった。 それは見事なまでに肌一色で、目も口も鼻さえもどこで研磨してきたかと思うぐらい、ぴっかぴかのつるっつるにテカっていた。いわゆる、のっぺらぼうだ。 「えっ?」 ハルヒの驚愕した声が聞え、一歩二歩とこちらへ下がってきた。 まさか、鶴屋さんの顔が無いなどと思いもしなかったのだろう。ただでさえ大きい目がいつも以上に見開かれている。 「ねえ、あたしの顔。どこにあるのかなっ?」 鶴屋さんはゆっくりと不気味に立ち上がると、ふらーりふらりとこちらへと近づいてくる。 「な、なにこれ。まさか、本物……?」 「俺が知るか」 無感情にそう応えると、ああ、そういえばこうゆうこともするんだったな。などと、ちょっとした仲間ハズレ意識に苛まれたのは、まあどうでもいいことだが。 さて、そんな思考を張り巡らせていると。思った通りに周りの戸から続々と『妖怪もどき』が出てくるわけだが。 「う、うらめしや~ですぅ……あいたっ。ふぇ~、痛いですぅ」 白い着物と黒髪のカツラをかぶった、なんとも貞子チックな姿をした朝比奈さんが着物の裾を踏みつけてこけたり。 「……ユニーク」 何かこう、どこぞの歌のお姉さんが番組のイメージキャラクターをどこをどう間違えればそんなモンスターに描けるのか。といった具合の着ぐるみを着た長門がいたり(ていうか、お前がユニークだ)。 その後ろでは引き戸の出入り口に引っかかってる古泉がいた。真四角の石の壁のような……これはヌリカベか? いや、お前何やってんだ? 「おや? おかしいですね。僕の計算ではギリギリ通れるはずなのですが……」 微笑みながら必死に抜けようとするが、どうもうまくいきそうにないな。 「あっはははははは! おっかしー! もう我慢できないっぽー!」 ついに鶴屋さんが堪えきれずに高笑いを始めた。っていうか、さっきののっぺらぼうからいつの間に戻ったのだろうか。 「ああ、これかいっ? ちょっとした特殊メイクってやつっさ! ほら、映画とかでもよくあるにょろ?」 と言って右手に風船を割った後のような残骸を持っていた。なるほど、特殊メイクか。 でも特殊メイクなんて滅多にできるものではないし、何よりそんな技術者がどこにいるのか、と思ったが。 ここが鶴屋邸なのを忘れていた……。何でもありなんだろうな、きっと。 「……あんたたち、何してんの?」 ハルヒの当然の質問に古泉が、 「いえ、ちょっとした余興をしようかと思ったのですが。どうやら失敗したみたいですね」 肩をすくめ――たかったようだが、できないので仕方なく前に突き出ている手を上げた。 どうでもいいけど古泉、それ滑稽だぞ。 「ふぇ~、ごめんなさい。あたしがドジっちゃったから……」 いえいえ、この計画は元より成功する要素なぞ皆無だったので、あなたが心配する必要は無いですよ。 ところで、朝比奈さん。そのはだけた生足と胸の谷間はどこのエデンなのでしょうか? 「へ? ひゃっ! ……もぉ~、キョン君?」 朝比奈さんが頬を赤らめながら服装を正す。その時に胸の谷間がいっそう誇張されるのだが―― たいしょおおおおおお!!! 生盛いっちょおおおおおっ!!!! ふと、じめじめした視線に気付き何となしにハルヒを見ると。 「……変態」 「うっ」 ハルヒの容赦無い変態扱いにより俺はそこそこのダメージを受けてしまった。 いやだね、ハルヒ君。これは不可抗力でありながら服装の乱れを注意してあげる俺の優しさであり、決してやましいことなんか無いんだよ? うん。 するとハルヒは本当にどーでもよさそーに溜息をつき、 「まあいいわ。さっ、みんなさっさと戻るわよ」 さっさと戻ろうとしたのだが、誰も付いてこない事を怪訝に思ったのだろう。目をパチクリさせた。 「なに? どうしたのよ」 「あー、あたしこれの片付けしてから行くねっ! 色々面倒なんだよっ」 「あたしも着替えないと……」 「わたしもこの着ぐるみを片付けなければならない」 「いやぁ、僕もとりあえずここから出なければならないので」 それぞれ多種多彩な言い訳を言うのだが、なんだそのチームワークは? これも何かのたくらみか? 主に古泉主犯の。 「っそ、まあいいわ。じゃあ、あたしは先に戻ってるから」 ハルヒはあっさりと真に受け、廊下へと歩いていった。 「おい、何考えてやがる」 俺は先ほどからどうにか戸から出ようとしている真四角な奴に話しかけた。 「いえ、何も。本当です、今回のドッキリというのはこれだけですから」 だとしたら、随分と情け無いドッキリだな。 「あはは、ご尤もです。ところで、あなたは戻らないのですか? ああ、ヒマなのでしたらこれを抜け出すのに手伝って欲しいのですが」 「さあてね。ところで、お前気絶してたんじゃないのか?」 まさか、演技とか言い出すんじゃないだろうな。 「やだな、先に言わないで下さいよ。ご名答、演技ですよ。まあ、ちょっとした記憶がフラッシュバックして、少しの間気絶はしましたが……」 「ちょっとした記憶? なんだそれ?」 「それはですね――」 と、あの解説好きな奴が珍しく喋るのをやめると少し冷や汗のようなものを流しだした。 ここで気付いたが、古泉の視線は俺を捕らえておらず、ある一点を見ていたので俺もそれに倣う。 「んん?」 そこにいたのは鶴屋さんなのだが。さてさて、いったいあの笑顔がいつも以上満面な方に何があるというのだろうか。 鶴屋さんはこちらに気付いたのか、手を振ってきたので俺も振り返す。 「鶴屋さんがどうしたんだ?」 俺の声に古泉はハッとしたようにまたこちらをみると、 「い、いえ。何でもありません。なんでも……」 なんだ? いつも冷静沈着な野朗が珍しく焦ってるな。奇妙な事もあるもんだ。 「そういえば、朝比奈さんは?」 「着替えに行ったのでしょう。長門さんもね」 俺が聞きたいのは、朝比奈さんが気絶したのはお前と同じく演技かどうかってことだ。 あの純粋無垢なお方が気絶する演技をドジも無くできるとは、考えられん。 「そのことでしたか。いえ、彼女は本当に気絶していましたよ。それこそ気絶した人間を起こすのは容易ではないので、長門さんに手伝って貰いましたが」 なるほどね。そりゃ長門なら腕に噛み付いてナノマシンやらなんやらを体に流し込んで、無理やり起こす。なんてことは簡単なのだろう。 「そうかい、分かったよ。それじゃ、また後でな」 すると古泉は立ち去る俺を慌てて呼び止めてきた。 「ま、待ってください。どうかここを抜け出すのを手伝ってくれませんかね?」 くそう、耐えろ俺の顔。笑っちゃ駄目だ、ここは目一杯の皮肉顔を作るんだ。 そして俺は古泉を突き放す為の言葉を捻り出した。 「やなこった」 前に突き出た両手とともにうな垂れた奴は放って置いて、さっさと戻ることにした。 「キョン君キョン君、ちこーっといいかいっ?」 厨房から出ようとしたところを鶴屋さんに呼び止められたのだが。さて、あのハルヒと同調できるようなお方が一体俺に何の用があるのだろうか? ちこーっと恐い。 「はあ、何でしょう?」 「あっはっはっ! そう警戒しないしない」 地の文読まれた!? 「んでね、これあげるっ」 そう言って鶴屋さんに差し出されたそれは、 「指輪、ですか? それも二つ。何で俺に?」 少々傷がついたりしているが、そこそこの代物だということは素人目からでも分かるほど、それは手の込んだ物だと分かった。 「いやぁ、特に意味は無いんだけどさっ。まっ、あたしからの真心として受け取ってよっ」 なんなんだこれは。つまりこれは、鶴屋さんから俺へのプレゼントとして取って良いのだろうか? 「ああ、ちっがうよっ! マジホンにそれはただあげただけっさ。それをどう使うかは、君次第ってねっ!」 「はあ……そうっすか」 「あははははっ! そうっすそうっす!」 すると鶴屋さんは急に思い出したように、にゅふふふと笑い出した。なんだなんだ。 「キョンく~ん? ハルにゃんに変な事しちゃダメっぽよ。分かったにょろ?」 【真・度胸試し】 はいにょろ。 などと言う前に、そんな恐ろしい事はまず思いつかないわけで。あの後、俺はハルヒのいるであろう部屋へと廊下を歩いていた。 それにしても、鶴屋さんの言動はイマイチ理解不能な事が多い。どっかの金メッキのアナキン製アンドロイドでも理解できんだろう。俺が理解できないんだ、間違いねぇ。 さて、指輪についてだが。ただでさえ俺は一つの懸案事項を抱えているわけだが、それでさえタイミングがいまいち良く分からないのにもう一つ増えるってのは悩み物だ。 というか、プレゼントするなら新品の物を渡すだろうに。ハルヒにこんな物を渡したらどんな文句が飛んでくるやら。 何を考えているのだろうか、あのお方は。 って、何で俺はこれをハルヒに渡す事前提で考えてるんだ? 鶴屋さんは言った。これをどう使うかは俺次第だと。ならば、別にそんな自ら火に入るような夏の虫にならずとも―― ――チリーン 思わずぞわっと来たね。 またか、また鈴の音か。さっきのトイレ前での事が鮮明に蘇るぜ。 「おいおい、勘弁してくれ……」 これもまた古泉のドッキリとかじゃねえだろうな。機関とやらが本気を出せばあれぐらいの立体グラフィックぐらい簡単に作れそうだが。 だがこれは断言できる。あれはマジもんだ。直に見た俺が言うのだから間違いない。 チリーン……チリーン…… 連続で聞える鈴の音に思わず身構えるのだが、どうやら遠ざかって行くようだ。 それも俺がこれから進む方向へ。その方向には、ハルヒ一人で待っているはずの部屋が―― 「……! 狙いはハルヒか!」 俺は右手に持っていた指輪をズボンのポケットにしまうと駆け出した。 かつて無いほど全力で駆けたと思う。廊下を走るな? そんなこと知ったこっちゃないね。 ハルヒがあれを見たら、まず間違いなく世の中には奇怪なもので溢れ返るだろう。 いや、そうじゃない。そうじゃないんだ。 自分に素直になれ、俺。いいか? そんなこと知った事じゃない。今お前が一番懸念していることはなんだ? 「あいつの身の危険だ!」 そう、ならお前にできることは何がある? 超普通人の俺ごときに、あんな得体の知れないものに立ち向かえる力でもあるのか? いや、無いね。これは断言できる。なら今すぐにでも長門や古泉に助けを求めるべきじゃないのか? え? 「そんな時間ねえよ。だけどな、今一番近い位置にいるのはこの俺だ。俺が行かなきゃ誰が行くよ?」 オーケー、よく言った。それでこそ俺だ。 それなら、後は最善を尽くすだけだ。いいか? 逃げるなよ、立ち竦むな、より最善の動きをしろ。そしてなにより――死ぬなよ。 「死ぬにはまだ心残りが多すぎるぜ、まったくな」 そうしてようやく見えた鶴屋さんの部屋に浮いた物体が透けて入って行くのが見えた。 「くそっ!」 俺は部屋の障子に手を掛けると力任せに開けた。間に合ってくれよ、最悪な光景だけは見たくない。 「ハルヒ!」 精一杯あいつの名前を叫び、そこにいたのは―― 「な、なによキョン! ビックリしたじゃない、どうしたのよ。そんなに慌てて?」 そこには畳にちょこんと座って、固焼きせんべいを豪快に食べてるハルヒがいた。 なんだ? もしかして全部俺の気のせいで、それが何かの拍子に不安が加速してあんな物を見たり聴いたりしちまったのか? だったら俺のさっきの心の葛藤は、このやるせなさはどうしてくれよう。 「はあ……いや、何でもない――」 その時、俺は見てしまった。 ハルヒの後ろに浮く、『奴』に。 『ねぇ、その体。チョウダイ?』 そしてゆっくりとハルヒの後頭部へと近づき―― ぶちんっ 「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」 その時、正直何が起こったのか自分でも良く分からなかった。 頭の中で何かが弾けたかと思うと、気付いたら俺は部屋の壁に激突していた。背中が非常に痛む。 くそ、動けねぇ。 「なっ、なっなっなっ……?」 ハルヒは喋ろうとして声が出ないようなそんな感じだった。まあ突然目の前の野朗が自分を抱き寄せて飛び込み、あまつさえ壁に激突した、なんて事が起こっちゃまあそうなるよな。 「ちょ、ちょっとキョン? 何するのよ、放しなさい!」 腕の中でハルヒが暴れだし、俺の全身に満遍なくダメージが行き渡るのだが、 『ねえ、どうして邪魔をするの?』 あの声がした途端、ハルヒは暴れるのを止めた。 「えっ? キョンじゃないわね。あ、あれ……」 ハルヒは口をパクパクさせると、それを見た。 そりゃビックリするさ、俺も宙に浮く生首を見た時は恐怖でどうにかなりそうだったぜ。 だがな。今はそんなことすら、ひたすらにどうでもいいのさ。 『ねえ、どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? どうし――』 「ああ、そうだな。自分でも良く分からんな」 俺は狂ったように「どうして?」を連呼しだした生首幽霊の声に割り込んだ。 どうにかして立ち上がり、ハルヒを庇うようにして後ろへ回す。背中の痛みがひどいがそこは我慢だ、俺。 「トイレでお前に襲われた時、俺は一瞬諦めたね。『ああ、ここで死ぬんだな』とも思ったさ。だがな、こいつだけは駄目だ。俺がいくら死のうが、ハルヒだけは死んでも渡さん。こいつは確かに毎日バカやって、俺や周りを巻き込んで非常識な事をしたり、厄介なことを毎回持ち込んで俺を苦悩させたり、迷惑の台風みたいな困った奴だ」 「ちょっとキョン、あんた何言って――」 「だがな!」 途中でムカついてきたのだろう。ハルヒの非難する声が聞こえたが俺はそれを遮り演説を続けた。 「だがな、俺はそんな馬鹿やってるこいつが好きなんだよ。毎日振り回されたり後始末やらなんやらさせられたりするがな、ハルヒはいつだって俺に非日常をくれた。毎日が退屈で、平凡すぎる日々を送ってた俺に退屈のたの字も出ないほどにな。そうさ、だから俺はハルヒを死んでも守る。絶対にだ!」 後で冷静に考えると、良くもまあここまでクサイ台詞が言えたもんだ。その場の勢いってやつは恐ろしいね、まったく。 まあ最後に凄んでみるものの、相手は幽霊だ。効果なんて期待できないのは明白だ、が。 その幽霊の目は見開かれていて、瞳孔も開いてるんじゃないかと思うほどだった。幽霊って目あったんだね。 『……さ……ん……の……ゆ……さん……』 なにやら不気味にぽつりぽつりと呟きだしたが、気にしてはいられない。危険な状態には変わり無いのだ。 くそ、何か無いのか。何か……。 (ん……?) 何と無しにズボンのポケットを探っていると、冷たい金属の感触がしたので、俺は取り出した。 指輪だ。 そう、さっき鶴屋さんがくれた指輪なのだが、今この状況でとてもじゃないが役に立ちそうにはない。 だがそうでもなかったようだ。見開かれていた幽霊の目はさらに見開かれ、K点突破したのでは無いかと思うほどだった。 『それは……わたしの……のぶゆきさん……』 ここで俺は頭の中に電撃が走り、ピーンときた。 なるほど、そうゆうことか。 つまりこの幽霊は、鶴屋さんが百物語で話した怪談の中の女性。通り魔に刺されて死んだ無念の霊ってところか。 そしてこの指輪は本来、この女性とのぶゆき氏が付けるはずだった。それをなぜ鶴屋さんが持っているのかは不明だが、やはり知っていたのだろうか。 「そう、これはあなたの。そしてあなたの恋人がつけるはずだった指輪だ。愛する人を失ってしまい、互いの指に嵌められなかったのはさぞ残念だったことだろう」 俺はその場に合わせ、もっともであろう言葉を慎重に言葉を紡いだ。 「だから、今その無念を晴らそう。その役目は俺たちが引き受ける」 そう言うと、俺はハルヒの手を取り立ち上がらせる。怪訝そうなハルヒの顔だが、今までの話で察していたのか俺の行動に何も言わない。 「ハルヒ、この指輪を嵌めてくれ」 「分かったわ。けど――」 するとハルヒは俯いた。俺の言葉でも待ってるのか? 「けど、なんだ?」 仕方が無いので聞くとハルヒはソッポを向き、顔を赤らめて言う。 「……あんたがつけてよ」 しばらく俺はポカーンとしていたが、ハルヒがむっとした表情をしたので慌てて俺は声を捻り出す。 「あ、ああ。分かった。わかったからそうむくれるなよ」 「ふん」 むすっとしたままハルヒは右手を差し出した。こうゆうのは薬指に嵌めるんだったよな。 俺はハルヒの手を取り、薬指に指輪を近づける。 「待って」 なんだ、やっぱり俺につけられるのは嫌だったのか? ハルヒよ。だったら、最初からそう言えば―― 「何言ってんの? あたし何にも言ってないわよ」 それじゃあ、今の声は? 俺はもしやと思い、生首幽霊を見た。が、そこにいたのはもはや生首だけではなかった。 赤い着物を着た、長髪の女性がそこにいた。 「あら? 体が……」 ハルヒも思わず声を上げた。 「これ? ああ、生前の記憶がこれしかないから、仕方ないのよ」 女性は首を横に振り、悲しそうにそう言う。いや、しかし中々似合ってますよ。 「ふふ、ありがとう」 一瞬笑った女性だが、すぐに寂しげな表情に戻ってしまった。惜しいな、笑った方が可愛いのに。 などと俺が思っていると、ハルヒがアヒル口で唸り声を上げながら俺の足を踏んだ。 「そ、それで。待て、とはどうゆう事ですかね?」 なんとか耐えつつ、俺は女性に聞く。 「できれば、左手の薬指につけてくれないかしら。あなたたちが私の代役と言うならね」 俺としてはどちらでもいいのだが、彼女としては何か重要なのだろう。黙って従う。 「そういえば、左手の薬指に指輪を嵌めることは愛の力とかそうゆう事の助けになるって聞いたことがあるわ。そうゆうことなの?」 ふと、ハルヒが思い立ったように言う。ほう、そんな意味があるのか。 「そうね、そうゆうこともあるわ。でも――」 女性は俺たちを見比べると、俺に向かってこう言った。 「あなたは、彼女のことが好き?」 『へっ?』 正直、間の抜けた声だと我ながら思い、ハルヒもそう思ってるだろう。ていうかハモるな。 だがここで「AHAHA、そんな事アーリマセン。嫌いデース」などと言ったら何もかもパーになってしまう。 ここは超えるべき壁……! 「……好きよ」 「へっ?」 なんと、あのハルヒが「好き」などと。いやまあ、状況的には仕方ないか。 「あたしはあんたのことが好きよ。あんたはどうなのよ」 威圧するような、それでいてどこか不安そうな目が俺を捕らえる。止めてくれ、そんな目で俺を見るな。 耐え切れなくなった俺はそっぽを向き、仕方なしにこう言ってやった。 「お、俺も……す、す、好き……だ……」 ええい、くそう! 何て恥ずかしい言葉なんだ、これは。ここがアメリカじゃなくて良かったぜ。じゃなきゃ俺は荒野の果てまで全力疾走しているところだ。 「そう、それは良かったわ。それじゃあ」 顔を赤くした俺とハルヒを見て女性はクスクス笑いながら、哀愁漂う雰囲気はどこ吹く風で愛しそうに俺たちを見ていた。 そして彼女は、結婚式でよく聞くあの言葉を言ったのだった。 『両者、その健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?』 そうか、そうだったな。この人は大好きな人を失い、そして自らも殺されてしまい結婚式などできなかったんだ。そうだ、俺が代役を勤めると言い切ったのだ。ならば責任も俺にあり、やはり言わなければなるまい。 「はい、誓います」 「……」 だがハルヒは黙ったまま、俺を見ているのだった。なんだ、何を言いたい。 「あなたは……?」 女性が怪訝そうに聞くと、ハルヒは大声でこういった。 「そんなのダメね、命ある限り? 死んだらそこではいさようなら? そんなの許さないわ! いい? あたしと結婚するような奴は死んでもあたしを好きでいてくれるような奴じゃないとダメなの! もちろん、あたしが死んでもそいつのあたしへの愛をちゃんと確認してやるんだから、油断なんてさせないわよ!」 なんつー出鱈目なことを言いやがる。ああ、いかん。頭が痛くなってきた。 しかも、なんで俺を見ながらそれを言うのか、詳しく教えてほしいもんだぜ。いや、やっぱいい。なんか怖い。 「あんたも幽霊なんかになってこの世に残ってるようじゃダメよ! あの世に彼氏がずーっと退屈そうにあんたの事待ってるかもしれないじゃない。いいえ、そうに決まってるわ。でもね、好きな女より先に死ぬ男なんて、バカ以外の何者でもないわ! そのバカ面を引っ叩いてやりなさい! あたしが許可するわっ!」 満足そうにそう言い切ると、腕を組み得意そうに満面の笑みを浮かべた。 おいおい、何てこと言ってるんだ。これじゃあ、俺の頑張りが水の泡じゃねえか。どうしてくれるよ。 「……っぷ」 っぷ? 「あははははははははははははは! あ、あなた面白いわね。……そうね、そうよね。私より先に死んじゃって、何やってるんだか。ああ、でも。待たせてる私もわたしかな?」 幽霊の女性が楽しそうにそういうのだった。それと同時に体の透明度が上がっているのか、だんだん存在が薄くなっていく。 「あはははは……あら? もう時間なのかしら。そうね、それじゃあ最後に私たちの代役のあなたたちに、ちゃんとしてもらおうかしら」 やっぱりやるのか、あれを。というか俺さっき言ったのに言い損じゃねえか。 「文句言わないの。それとも何? あたしとじゃ嫌だっての?」 「別にそうゆうわけじゃ……」 「じゃあどうゆうわけよ」 「いや、だからだな――」 「はいはい、そこまで。他人の痴話喧嘩なんて私は見たくないわ」 女性は呆れたようにそう言うが、表情はもはや哀愁などではなくひたすらに朗らかだった。 「それじゃあ、いくわよ」 そしてまた繰り返し、あれを言う。 ただし、内容を若干変えてな。 『両者、その健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命尽きても永久に、真心を尽くすことを誓いますか?』 これにはハルヒも満足したようで、満足そうに笑った。 「誓います」 「もちろん、誓うわ!」 そして女性は嬉しそうに頷き、 「よろしい、それでは。指輪の交換を」 俺はハルヒの持つ少し傷ついた指輪を受け取り、こっちからも手渡した。その後ハルヒの左手を手に取り、指輪を薬指に嵌めると、 「あたしもつけてあげるわ」 そう言ってハルヒは俺の左手の薬指に指輪を嵌めた。 「ありがとう」 指輪を付け終わった瞬間、一陣の風が巻き起こり俺は思わず目を瞑った。そして目を開けた時、女性の幽霊が消えたのを知ることになる。俺は安堵した反面なにか物悲しい気分になったのだが、さて一体どうしたことだろう。 だが、次の言葉で俺の顔が引きつることとなる。 「後の誓いのキスはあなたたちにまかせるわ。お幸せに♪」 【激闘? 終えて】 「ああーっ!」 呆然としている俺を尻目に、ハルヒは悲鳴をあげた。 「ど、どうした?」 俺はハルヒの視線の先を追い、そこにあったのは、 「ロウソクの火、全部消えてる……」 隣の部屋の見るも無残に溶け残った、ロウソクの墓場であった。 先ほどの風で火が消えてしまったのだろうか。それにしても、再び火を点けるにはロウソクが小さすぎるか。 俺はハルヒをなだめる試みをしてみた。 「まあいいじゃねえか。本物の幽霊も出てきたし、それを成仏させる手助けをしたんだ。こんな体験はそうそうできやしないぜ。それともハルヒ、お前はまだ満足しないのか?」 すると奴は何か思案するポーズを取り、むーっと唸り始めたかと思うと何を閃いたのか、急に不気味にニタァっと笑いやがった。 「そうね、満足できないわ。だって、さっきの誓いまだ続きがあるじゃない」 このヤロウ、さっきの女性の言葉しっかり聞いてやがったな。 「あのな、あの人は成仏できた。俺たちも助かった。これで万々歳じゃねえか。それじゃ駄目なのか?」 「だーめっ! あたし、中途半端なことは嫌いなのよね。それともなに? あんたはあたしとしたくないの?」 別にそうゆうわけじゃないが。いやいや、何を言っている俺。 「なら目ぇ瞑りなさい。いいから、さっさとする!」 「……本気なのか?」 「……そうよ、悪い?」 顔を赤らめながら言うハルヒはいつもより可愛く見え、そりゃもうポニーテールにした時に匹敵するのでは無いのかと思うほどだ。ポニテ教の俺が言うのだから間違いない。 だから、俺が目を瞑ってあまつさえ口先を尖がらせるなどといった愚行をしたのは――まあ、今更か。 パシャッ! 目を瞑ってでも分かるフラッシュの光とシャッター音で、俺は何をやられたのか察した。 ――しまったぁ。 「ふふーん、バカね。あたしが易々とキスすると思った? 乙女のキスはそんな安っぽくないのよ。あんたのバカ面、しかと撮ってあげたわ!」 そう高笑いするハルヒの右手に掲げられていた物は、安物の使い捨てカメラだった。 なんてこった。俺としたことがこれを想定しなかったわけではないが、その場の流れに身を任せたと言うか。いや、勢いというものはまったく恐いね。 「お待たせしました……おや? どうなされたのですか?」 俺が愕然たる面持ちでいると、廊下から古泉がニヤニヤしながら出てきた。この野朗、何分かったような面してやがる。 「聞いて古泉君、今こいつあたしの唇奪おうとしたのよ。どう思う? ケダモノでしょ?」 古泉はそれを聞くと、俺を一瞥し意味深にニヤリとした。なんなんだお前は。 「ははは……いや、全く。その通りで」 このイエスマンめ。 「ところで古泉君、他のみんなは?」 「そのうち来られるかと。……ほら、来ましたよ」 すると、廊下から足音が聞こえてこの場はすぐに賑やかになるのだが。 「そう、じゃあ皆で一緒に写真撮りましょ。それで今日は終わり! ね、キョン?」 お前がそれでいいなら、まあいいさ。 その後、俺たちは全員揃って集合写真を撮りそのまま解散という流れになったのだが。 さて、ここで色々な話を聞けたので紹介しておこう。 まずは長門から。 「あの屋敷には不確定要素の情報が出入りしていた。そして先ほどまで敵性であったそれは途端にその性質を失った。情報統合思念体はこれに疑問を抱いている」 ほう、宇宙人様にも分からないことがあるんだな。だが、これだけは言っておこう。 「長門」 俺は首を傾げる宇宙人の、その黒い瞳を見つめながら言う。 「前に、俺はお前に幽霊はいるか云々を聞いたよな。その問に対してお前は禁則と答えた」 「そう」 相も変わらず無表情なのだが、なにか興味を惹かれたようにこちらを見ている長門に対して、俺はこう言い切った。 「いるぜ、幽霊は。珪素や宇宙とかは抜きにしてな。魂は残るのさ。その人次第でな」 自分でもクサイ台詞だとおもうが、まあ俺は自己満足した。長門といえばそのままじーっとこちらの目、というか心を覗き込むように見つめてきたのだが。 俺はこの後、一生忘れないであろう光景を頭の海馬組織に刻み込むことになった。 「……そう」 数ミリだが、柔和に微笑んだ長門がいた。 思わずクラっときた事は言うまでもないな。 次に朝比奈さん&鶴屋さんコンビ。 「どうだい? キョン君。うまくいったかいっ?」 さて、なんのことでしょうか? 鶴屋さん。 「あ、あの。騙したみたいで、ごめんなさいっ。でも、その、あの。皆に黙っておくようにって言われて……」 あの、朝比奈さん。何についておっしゃってるのでしょうか? 「え? いやだから、キョン君と涼宮さんをふたりっきりにさせるって、古泉君が……」 へえ、古泉がそんなことを。あの野朗、許すまじき。 「ところで、キョン君や。あの指輪は役に立ったかねっ?」 そういえば、この勘の鋭い先輩方はやはりアレに気付いていたのだろうか。 「ええ、それはもう。助かりました。鶴屋さんは、アレに気付いてたんですか?」 「まあねっ。あたしその手の事には敏感だからっさ! 直ぐに気付いたのだよっ」 やっぱりただ者ではないが、今はひたすらにこの超人先輩に感謝するだけである。 なぜ指輪を持っていたかは、聞かないでおこう。 「えっ? 何ですか、指輪って? アレって?」 どうやらこの事は知らされていない朝比奈さんは、頭の上にクエスチョンマークを浮かべほえほえっとしていた。 「あっはっはっ! 指輪はこれだし、アレはアレだよ。ねっ、キョン君や!」 「ええ、そうですね。コレはコレで、アレがアレなんです」 「な、何ですかぁ? 何なんですかぁ?」 すっかり置いてけぼりにされた朝比奈さんに鶴屋さんは高笑いしたし、俺もそれに合わせて笑った。 「もうっ! 二人ともひどいですぅ~!」 すっかり怒り心頭な朝比奈さんの機嫌をどう取ろうか。さて、この世はまだまだ平和である。 そして朝比奈さんは車で家まで送迎してくれると言った鶴屋さんの言葉に甘え、鶴屋さん共々車内に乗り込むと出発した。 それを見送っていた俺の隣に、爽やかフェイスのハンサム野朗が近寄ってくる。 「今回は助かりました。あなたに涼宮さんと接してもらう事によって、彼女を幽霊やその類のことを考えさせないようにしようと思ったのですが、どうやら本物が出てきたみたいでしたね」 「なんだ、お前も気付いてたのか」 「ええ、まあ。あの幽霊は、鶴屋氏のお話の通り。この辺りに住んでいた女性の、まあいわば霊魂とでもいいましょうか。鶴屋氏の話を聞いた涼宮さんは、そんなものいるわけがないという意思とは裏腹に、心のどこかではもしかしたらいるのかもしれないという、ごく普通の人が思う矛盾を感じたのでしょうね。そしてそれが涼宮さんの力によって実際に現れてしまった。といったところでしょうか」 皮肉なものです、と古泉はわざとらしく肩をすくめた。 「涼宮さんがそれを目撃することによって、幽霊や妖怪が世の中にはびこってしまうことを危惧していたのですが。どうゆうわけかその心配も杞憂だったみたいですね。安心しました」 その後、俺は長門を家まで送り届けると申し出た古泉と長門の背中を見送りつつ、先ほどの古泉の言葉を思い起こしていた。 確かに、普通の人間の感じる恐怖感を感じたハルヒが自身の力によって幽霊を呼んじまったと言うのなら。なるほど、それは皮肉なのかもしれない。 「だが、まあ」 だからと言ってハルヒが世の中に幽霊や妖怪の類が蔓延るように願うとは、俺には思えないね。 なぜなら、あいつはただ親しい仲で一緒にバカやったり楽しく遊んだりしていたいだけなんだ。 「………」 この時、俺は無性に腹が立ってきていた。 長門は言った、ハルヒの力は周りの環境に影響を及ぼす力だと。朝比奈さんはハルヒの力は時間を歪ませて過去へ戻れなくさせた力だと。古泉に至っては、ハルヒの力は世界を創ったり壊せたりといった神扱いだ。 ハルヒの力、ハルヒの力、ハルヒの力―― 「ちっ」 俺は思わず舌打ちした。 だってそうだろ? 別にいて欲しくないものでも、ちょっと願ってしまえば現れちまう。自分では迷惑かけているつもりは無いのに、願っただけで勝手に世界の法則が狂ってしまうだと? 俺なら嫌だね、そんな力はいらない。 どこのどいつだ。ハルヒにそんな無粋な能力をくれた野朗は。今のあいつにはそんなもの必要ねぇんだよ。 なぜかって? 「あいつには俺たちがいるんだ。それでいいじゃねえか」 だがここで俺はある事に気付いた。 長門も朝比奈さんも古泉も、そのハルヒの力の影響で今ここにいるのだ。では、元よりハルヒに力がなかったら、あいつらもここにいないという訳になる。 なんつー皮肉だ。どこの誰だか知らないが、よくやるよ。すげぇすげぇ、拍手を送るぜ。 だがな、だったら俺はなんの為にここに、SOS団にいるんだ? ハルヒに強制的に入れられたから? 違うね、だったらすぐに辞めてハルヒなんぞずっと、それこそ我関せずにずっと無視すればよかったんだ。 なら、なぜそうしなかった? 俺よ。 「知らねえよ、気分だろ。そんなもん」 だが俺はその後に起こった出来事を見て、これは既に規定事項であったことを知ったはずだ。 では、それを踏まえた上でもう一度問おう。 なぜお前は今ここにいる? 「じゃあ逆に聞くぜ。お前は目の前の奴が放っておくだけで世界を滅茶苦茶にしちまうようなやつで、それを知ったうえで放っておくのか? 俺は嫌だね。何もせずに、何も知らずに世界が改変されちまうなんざ御免被る。どこに逃げても同じなんだ。だったらいっそ、そいつをできる限り抑えようとする方が懸命だろう?」 いや、これは誤魔化しだな。すまん。 どうせ誰も聞いちゃいねえんだ。本音言っちまえよ、俺。 「そうだな……放って置けない、のかもしれん。見ていて危なっかしいのさ。いちいち自分から火ダルマになった家の中に突っ込んで行く様な奴だ、水も被らずにな。なら俺は、外からできるだけ――全力でその火を消す努力をするさ。それで危機が免れられるならな」 これが俺の本音だ。誰がどう言おうとな。――そこ、クスクス笑うなっ! だがまあ、大体そんなもんだろ? ハルヒが暴れて、俺が裏方でなんとかしたり、尻拭いやらなんやらをするのさ。 なに、いざとなったら長門や古泉や朝比奈さんがサポートしてくれるさ。それで今のSOS団が守られるなら、俺は喜んで何でもする。 俺は今のこの日常が楽しいんだ。だが、それを壊すような奴らがいるなら……。宇宙のどっかにいるハルヒを狙ってる奴らや、『機関』とやらの敵対勢力、未来人のあのいけ好かない野朗。 「来るならきやがれってんだ。俺が――俺たちSOS団は負けやしないぜ。迎え撃ってやる」 俺は夜明けが近くなり、白みがかった景色に向かって呟いた。 やられやしないさ、そう強く思えるね。 今の俺たちならな。 【帰り道】 俺は鶴屋家から駅前までの道を進み始めると、少し歩いた先にハルヒがいるのがわかった。 ぼけーっと突っ立って、これから昇るであろう朝日の方向を見ていた。 「何してんだ? お前」 俺が声をかけると、ハルヒは一瞬こちらを見たと思ったらまた日の方向に顔を向けた。仕方が無いので、ハルヒの隣に行くと俺もそれに倣う。 しばらくそうしていると、とうとう朝日が昇り始めた。結局寝なかったな、帰ったら速攻ベッドインだ。 そんなことを考えていると、ふとハルヒが口を開いた。 「あんたさあ、さっきの幽霊――」 ここで俺は一瞬ドキッとしたね。ああ、やっぱりお前も見ちゃってたんだな。 「本物だと思う?」 普段ならここで、「ノー! ノー! ノー! 断固イイエデース!」とかそんな類の言葉を出すのだが、ハルヒの雰囲気があまりにも、なんかこう哀愁漂っていたからか。 何を血迷ったのか俺はこう言ってしまった。 「そうだな、本物だったのかもしれんな」 すまん世界。すまん皆。世界は混沌の中へ―― 「そう。あたしね、不思議なことや非日常な事柄ならなんでもいいと思った」 ハルヒは俺の思考とは裏腹に話し出した。 ああ、やっぱそうか。 「それこそ幽霊でもなんでもどんとこい! ってね。でも、でもね」 ハルヒはちらっとこちらを見ると、また朝日の方を向いて誓うようにしてこう言った。 「幽霊があんなに悲しいっていうのかな。虚しいものなら、あたしは幽霊なんていらない――って言うのも変ね。そうね、会おうとは思わないわ。だから、幽霊はあたしの不思議リストから除外することにしたの」 そう言うとハルヒはそのまま黙ったので、俺が沈黙を破った。 「……そうか」 これだけじゃいつかの踏み切り前での発言と変わりないので、俺は少し付け足してみた。 「いいんじゃないか? お前がそう言うなら。俺はただお前の背中を押してやるだけさ」 そうして俺は笑みを作ると、ハルヒに向けた。 ハルヒは一瞬キョトンとし、これまた少しだけ微笑み、すこーしの間だけ目を瞑ったかと思うと、次に目を開けた時いつものあの得意げな顔に戻っていた。 「当然よ! あたしはSOS団団長であって、それ以上でもそれ以下でもないわ! あんたもSOS団の雑用係りとしてだいぶ自覚してきたようね。そうよ、あんたは黙ってあたしの背中を押してくれさえすれば――いいえ、ちゃんと押しなさいよね! いい? わかった?」 コロコロと表情を変えて忙しいやつだ、まったく。だがまあ、普段のハルヒに戻ってくれて何よりだ。 憂鬱気味なハルヒなんてのは見たくないね。何か落ち着かなくなるのさ。あのハルヒがそんな気分に陥ってると、こっちもメランコリー状態になっちまう。 いやいや、深い意味は無いんだ。本当だ――いや、もう自分のこの捻くれた考え方が面倒になってきたな。正直に言っちまおう。 俺は涼宮ハルヒに少なからず好意を抱いている、のかもしれん。 「ったく、素直じゃねえなぁ……・」 「なに? 何か言った?」 おっと、自分のヘタレ加減にほとほと呆れて思わず声に出ちまってたか。 「いいや、何でもねぇよ」 俺が首を横に振ったのを見てハルヒはふーん、と言うと、 「ところでさキョン。あんたあの時、何か色々面白いこと言ってたじゃない?」 突然そんなことを言い出した。 あの時? ……ああ、幽霊と対峙したときだろうな、きっと。 だが俺はあえてこう言う。 「あの時?」 「惚けても無駄よ、あたししっかり聞いたんだから」 お前、よく覚えてられたな。突然のことのはずだ、どんだけ冷静なんだよ。 「さて、何のことかね」 「あたしの事散々言ってくれたわね。バカやら迷惑やら非常識。果てには迷惑の台風ですって? ふーん、あんたあたしをそんな風に思ってたんだぁ」 口調は怒っているが、顔がニヤニヤしているのはどういったことか。 「い、言ったような。言わなかったような……」 「いーえ、言ったわ。あたしの記憶力なめんじゃないわよ。それで? この落とし前はどうやってつけてくれるのかしら、キョン?」 たく、こいつはどうしてこうなんだろうか。もうちょっとこう、可愛げがあっても……って俺は何考えてんだ。 「はあ……じゃあ、どうすれば許してくれるんだ?」 うーん、そうねとハルヒは唸ると、何を閃いたのか頭の上に豆電球を作りだしたようで、すこし目を見開いてすぐにニヤニヤしだした。 「そうね、あの時のセリフもう一回言ってくれたら許したげるわ」 「あの時って……どの時だよ」 「あんたがあたしのこと滅茶苦茶に言った後よ。非日常をくれたとか、退屈のたの字もでないとか。あ、あと――あたしが好きだ、とか……」 うあ? 俺そんな事言ったのか。くそ、死にてぇ。すいません、どこかに小口径の銃はありませんかっ! 「い、言ったか……なあ?」 「言ったわ! 絶対に言った!」 あまりにもハルヒがマジな声を出すので、俺は少し溜息をついた。今日何回ついたか分からんな。 「……どうしても言わないと、許してくれないのか?」 ハルヒはそっぽを向くとポツリと、 「………うん」 何だかんだいって、こいつも可愛いとこあるんだな。まあいい、今日の俺は太っ腹な上に心が広いから何だってしてやるさ。 「そうだな。俺は、いつもバカやってたり、毎日振り回されたり、事の後始末やら雑用やらをやらされたりして、そりゃもう不平不満タラタラってもんだ」 俺の言葉を聞くと、そっぽを向いていたハルヒは不意を衝かれた猫のようにこっちを向くと睨んできた。 「な、なによそれ!」 まあ、落ち着けって。 「もんだが、そんな日常も悪くないとも思えたね。なんたって、お前はいっつも無茶やって、色んなことに首突っ込んで、それこそ俺の日常とはかけ離れた非日常さ。それを、お前がくれたんだ。そりゃもう、退屈だーなんて言う暇が無いほどにな。ほんと、ありがとよ」 俺はただひたすらに思ったことをぶちまけて、すっきりした気分になった。いや、ぶちまけるって素晴らしいね。 だがハルヒは俺の言葉にまだ満足しないのか。不満そうな視線を向けてくる。 「な、なんだ?」 「それだけじゃないでしょ? 一番大事な部分が抜けてるわ」 うっ、確かに記憶力だけはいいらしいな。 ていうか、本気で俺にあれを言わせる気か? こいつは。 「当然でしょ。じゃないと、許さないって言ってんの! さあ、さっさと言いなさい!」 ハルヒは怒ったようにそう言うと、期待の眼差しでこちらを見ていた。 やれやれ、どうやら腹を括るしか無いようだ。 「わかったよ。えーっとだな……コホンッ。だから、俺はそんなハルヒがす、す……好きだ。そうさ、だから俺はハルヒを死んでも守る。絶対にな」 最後はもう自棄だ。ええい、どうにでもなれ! すると、 「……っぷ! あはははははははははははっ! あーおかしーっ! だ、だってあんた、マジなんだもん! くふっ! だ、だめ……お、おなか……お腹痛い……」 ……ええっと、ハルヒさん? 何故にそんなに面白かったのかこのヤロウ? くそ、何の罰ゲームだこれは。これなら、まだ闇のゲームのほうが何倍もマシだぜ。 「はあはあ、はあ、はぁー……あー、面白かった。いいわ、許してあげる♪」 「そうかい、そりゃ良かったな」 俺は何かどうでもよくなってくると、さっきから眩しくなりつつある朝日の野郎を睨んだ。 なんなんだろうか、この奈落の底に叩き落とされたような気分は。 「なによ、そんなに落ち込まなくたっていいじゃない。大丈夫よ、あんただって本気で言ってたわけじゃないんでしょ? その場の流れみたいなものよねぇ。あたしもよくあるわ、そうゆうこと」 だから、安心なさいと言うが、さて何に安心しろってんだ。 「……結構マジだったんだがな」 俺は非常にちいさーくぽつりと呟いたのだが、 「ん? なんか言った? キョン」 「別に、なんも」 危うく聞かれるところだった。危ない危ない。というか、何を呟いてんだ、俺よ。 「それじゃ、さっさと帰りましょ」 そう言うとハルヒは歩きだした。俺も後に続く。 ここで俺は、本当に唐突に。ハルヒ的にいうならばポーンっと思い出したことがあった。これを忘れるなんて俺の脳みそはいつの間にか誰かに蟹ミソにでも換えられちまったのか? 今日最大の懸案事項じゃないか。 「ハルヒ」 「ん? なによ、キョン」 俺は前方でリズム良くハミングしていたハルヒを呼び止めると、今まで肩に掛けていた手さげバッグから黄色いリボンの付いた麦わら帽子を取り出し、それをハルヒの頭に被せた。 麦わら帽子を浅めに被ったハルヒは、キョトンとしているようだった。うむ、いい表情だぞ。これなら痛手を負った俺の財布も報われるぜ。 とりあえず何も言わないのもあれなので、俺は男として当然の決まり文句を言ってやる。 「似合ってるぞ」 【九月一日】 さて、ちょっとした後日談を語ろう。 新学期早々。俺は自分の席に向かう途中、その後ろの席にハルヒがいるのを確認した後、谷口に呼び止められた。 「よお、キョン。はあ……いいよなぁ、お前は。ほんと、羨ましいぜ」 谷口よ、俺のどこに羨望を感じるのか。俺とお前は似たり寄ったりだろうが。 「ああ? 何言ってやがる。嫌味か? そんなもんつけといてよ」 というか、なんだってこいつは苛立ってるんだか。 「谷口、夏休み中に彼女作ってね。この前また振られたんだってさ」 「ほっとけ」 横から国木田が割って入ってきた。ほう、そんなことが。 「それはいいが、そんなもんとは。いったいなんだ?」 すると谷口と国木田は「こいつ、まだとぼける気か?」と言った風な顔をした。 「なんだよ。何がいいたいのかハッキリしてくれ」 「じゃあ、ハッキリ言わせて貰うがな。お前のその左手薬指についてる、そりゃなんだ?」 「まあ、パッと見たところ婚約指輪だよね」 国木田が答える。 「それじゃあ、涼宮も左手につけてる……ありゃなんだ?」 「まあ、見た感じキョンと同じ指輪だね。ペアルックかな?」 数秒間の沈黙。 俺はじとっとした視線の谷口と、満面の笑みの国木田を見比べ深い思考を張り巡らせ、いくら鈍感な奴でも辿り着くであろう結論へと辿り着いた。 要するに、俺はあの時からずっとハルヒとお揃いの婚約指輪を付けていたわけだ。 当然? 夏休みの間中はハルヒに呼び出されてあちこち連れてかれたりして……はたから見ればラブラブのカップル……。 ……あれ? な、なんだってー!!!!! 「あ、あ……」 愕然とした俺に何を思ったか。谷口と国木田は首を横に振り俺の肩を叩くと、そのままどこかへ行ってしまった。 一人残された俺は何となしにハルヒの方を見ると、視線が合った。ニンマリとしたその嬉しそうな笑顔は、何故かいつもより輝いて見えたのだが。 俺は頭痛がしたようで、左手を顔に当てた。 この左手についている婚約指輪は何故か少し輝いて見えたのだが、俺の気のせいということにしとこうか。 それよりも今はハルヒの笑顔の方が、何万倍も眩しいんだからな。 指輪物語―完―