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憑坐 操 ■キャラクター名:憑坐 操 ■ヨミ:よりまし みさお ■性別:男性 ■武器:憑依先に依る 特殊能力『精神牢獄(マインド・バインド)』 任意の相手に憑依し、憑依先の精神を精神の牢獄に閉じ込める。 被憑依者は己の体の主導権を憑坐に奪われる。 平時は被憑依者の精神を元にしたルーチンで受け答えなどをするため、挙動から見て憑依されているとは気づき得ない。 痛覚などは被憑依者の精神にフィードバックされるため暴力などを浴びても憑坐本人は一切の痛痒を感じない。 常人には無条件で憑依できるが、さしたる力があるわけでもないので非常時でもなければ憑依することはない。 魔人相手へも憑依できるが、相手が抵抗できないほど弱っているか、死にたてほやほや(およそ5分以内)であることが条件。 憑依先が魔人だった場合、その魔人が持っている能力を使うことができる。ただ効率的な運用方法まではわからないため自分で手探りで探すか被憑依者を拷問して無理やり聞き出す必要がある。 憑依先が身体的に死んでいても、首と胴が完全に切り離されてるなど明らかに不可逆な致命傷を負っていなければ憑依した時点で問題なく動けるレベルまで負傷などが回復する。 憑依中、憑依先に甚大なダメージがあるとエクトプラズムらしきものが放出される。 これが憑坐の本体であり、再度憑依される前に仕留める必要がある。再度憑依されれば回復してしまうので。 なお憑坐が憑依先を完全に乗り換える時は憑依元の精神を完全に壊してから乗り移る。 精神を壊されたものはただ死んでないだけの廃人と化し、再度の憑依が不可能となる。 設定 長年に渡り依代をとっかえひっかえしながら最強の憑依先を見つけるために暗躍しているもの。 すでに己の身体というものはなく、憑依していない状態では青白い魂魄しか存在しない。元は男性だが女性にも普通に取り憑く。 必要なとき以外は能力によるルーチンワークで憑依先を動かすため、身体の違いに戸惑うことは一切無い。 性格は悪辣、陰険。現在の依代を得るために他の魔人と協力して物量で押し、疲労困憊で倒れたところを乗っ取った。 現在の憑依先は神凪ひかりという名の魔人。以下神凪ひかりについての設定。 + 神凪ひかりについて 名前:神凪 ひかり(かんなぎ ひかり) 性別:女性 武器:能力による光剣 特殊能力:光芒一閃(サンライズ・セイバー) 光を操り、淡く輝く光剣などを作成し自在に振るう能力。 生物を斬っても傷が入ることはないが、斬られたことによる痛みは十分に伝わる。 無機物は普通に斬れるし鍔迫り合いも可能な程度に物理的干渉は可能。 これを応用して淡い光の膜で全身を覆い、防御力を格段に高めている。 剣を投げての遠距離攻撃なども可能であり、即時の再生成も出来る。 総じて攻防ともに安定して強い能力である。 設定: ごく普通の高校に通っている高校一年生、16歳。 表向き、普通の学生として生活しているが、裏では悪い魔人を退治するために夜を駆ける、正義感に溢れる少女。 髪は黒っぽい茶髪で、三つ編みにしたおさげを肩に垂らしている。 数年前に家族ぐるみで出かけていたところ魔人に遭遇し、両親を殺され、自身も殺されかけたことをきっかけに能力に目覚めた。 家は裕福だったため、遺産でなんとか食いつないでいける身ではあった。 両親や自分のような者をまた生み出さないようにするため、目覚めた能力を使って悪に手を染める魔人を狩っていた。 平時は両親を亡くしたことを振り切るように努めて明るく振る舞っており、魔人退治のときは侮られないように凛々しい感じを意識している。 だが、現在は憑坐の奸計にかかり、身体を乗っ取られている。 精神はこの状況から抜け出そうともがいてはいるものの、どうにもならない状況である。 ふと目を覚ますと、私は薄暗闇の中で椅子に縛り付けられていた。 あたりを見回すと鉄の柵……いや、檻。 どうしてこんな事になっているのか、これまでのことを思い返す。 たしか、とある魔人を追いかけて……操られた一般市民をけしかけられて…… 転倒などで傷つけないように気をつけながら気絶させて……何人も何人も…… キリが無くなって……疲れ果てて……そこからの記憶がない。 『ようやく目覚めたか』 「誰!?」 声はすれども姿は見えず。 『俺の名は憑坐操(よりましみさお)。お前は我が魔人能力、精神牢獄(マインド・バインド)に囚われたのだ』 「!? まさかこの拘束も、檻も……!」 『わかりやすいシンボルというものだな。そしてお前は、お前自身の精神でしかない。お前の肉体は俺の支配下だ』 「う……そ……」 『見てみるがいい。これが今のお前の視界だ』 正面に映画のスクリーンよろしく画像が投影される。見慣れた景色、見慣れた動き、見慣れた応答。 自分がいつもしていたことが他人事のように映し出されている。 『わかったろう? お前はもうお前の意思と関係なく動いている』 「そんな……! 返して! 私を、返してよ!!」 『うるせぇ!』 ズム、と鈍い衝撃が下腹部に走る。 「あ……がふ……」 『必要だから生かしているだけで俺はいつでもお前を殺せる。それを肝に銘じておくんだな』 「なんの……ため、に……?」 『冥土の土産に教えてやるか。山乃端一人という少女を知っているか?』 「知ら……ない……」 『そいつは死ぬとどういう理屈か知らんが魔人が集うダンゲロス・ハルマゲドンを引き起こす。そいつを糧にダンゲロス・ハルマゲドンを何度も引き起こして、最強の魔人に憑依してやろうという寸法よ』 「そんな……! そんなことさせるわけには……!」 ギリギリギリと首が締まる。精神でしか無いはずなのに苦しい。 『立場がわかってないようだな? 俺はお前の生殺与奪を握っているのだ』 「カハッ、ゴホッ……」 『まぁ毎日ひっそり能力の使い方の練習をしていたようだからお前に訊くことも特に無いんだよな』 「私の体を……どうするつもり?」 『山乃端一人を奪うために。それまでは生かしておいてやる。残り短い人生、せいぜいその檻の中で楽しむことだな。ハッハッハ……!!』 (誰か……助けて……!!) 山乃端一人を殺す理由 騒乱を無限に巻き起こし、最高の憑依先を得るため 山乃端一人が死ねば大騒乱が巻き起こる。つまり彼女が何度も死ねばその回数分騒乱が発生する。 彼の能力により自殺と蘇生を繰り返し、無限にダンゲロス・ハルマゲドンを引き起こすことで最強の憑依先を見つける腹づもりである。 なおそれに伴う苦痛は全て山乃端一人が背負うため、死ぬより辛いことになる。
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憑坐は夢と現の間に ~ Necro-Fantasia 作品:東方憑依華~ Antinomy of Common Flowers. シーン:八雲紫のテーマ(ストーリー) データ BPM 172 拍子 4/4 再生時間 調性 【Aメロ】C#m Em 【Bメロ】Am 【Aメロ】Bm Dm 【サビ】G#m 使用楽器 コード進行 【Aメロ】C#--- C#dim Cdim C#m- x2 Em--- Edim D#dim Em- x2 x2 【Bメロ】Am E G D F Am D E x2【サビ】Bメロに同じ(inG#m) ZUN氏コメント 解説 Aメロはピュアヒューリーズや秘匿されたフォーシーズンズなどの最近のボス曲で多用されているクリシェ進行で、短いピアノのフレーズか繰り返される。 後半のサビでは同じく八雲紫のテーマであるネクロファンタジアのフレーズがAメロのピアノのメロディと共に流れる。 サビでAメロを重ねるのは前述の秘匿されたフォーシーズンズと同じ構成であり、他にもシンコペーション多用した特徴的なメロディなど共通点が多く、八雲紫と摩多羅隠岐奈の関係性を感じさせる。 ちなみに「憑坐」は「よりまし」と読む。 コメント この曲の話題なら何でもOK! 名前 コメント すべてのコメントを見る
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読者の皆様へ。 本作はハッピーさんの作者が執筆しております。 しかし、この作品は第一話に引き続き、ファイのプロローグ、ジョン・ドゥのプロローグの設定に準拠しております。 …そして、 山乃端万魔のプロローグ及びすーぱーブルマニアンさん十七歳のプロローグとも繋がっております。 数多のキャラクター達の世界と完全に地続きの物語としてお楽しみください。 + つまりどういうこと? ハッピーさん:ファイの守っていた山乃端一人を護衛に向かい、典礼を撃破(第一話)。山乃端一人が複数存在することを知り調査を始める。 ファイ:『大体何でも屋レムナント』として、アグレッシブな山乃端一人を護衛中。 ジョン・ドゥ:シスター服姿の山乃端一人を護衛中。我が花嫁として丁重に扱う。山乃端一人に害するものは容赦しない。 山乃端万魔:囲碁部の山乃端一人の親友。父親であるクリスプ博士と離反してでも山乃端一人は守りたい存在。 すーぱーブルマニアンさん十七歳:変態から守ってあげた少女が山乃端一人であった。変態は私のことではないぞ!悪しからず! ◆◆◆ 魔人警察の一室に、タイピング音と資料をめくる音が響く。 「だ!終わりが見えねえ!!」 大量の書類とデータを相手に格闘するのは、金髪の大男。 魔人警察に属する警部、遠藤ハピィ。通称ハッピーさん。 山乃端一人の調査のため、彼は魔人警察に保管されている膨大な資料をあさっていたのだ。 「ハピィ警部、お疲れ様です!」 「お、サンキュ。でもハッピーさんでいいぞう。」 協力してくれる部下の差し出してくれたコーヒーをグイっと飲み干し、またしても書類に向かう。 山乃端一人。 自身の死をトリガーとして災厄を引き起こす魔人能力者。 彼女を保護することで災厄を事前に防ぐことが出来る。 「…と考えて『大体何でも屋レムナント』に保護された山乃端一人を迎えに行ったのによぉ…」 そう。山乃端一人は一人ではなかったのだ。 ジョン・ドゥに守護されたシスター服姿の山乃端一人の出現により事態は大きく変わってしまった。 【山乃端一人は一人ではない】 それを前提に調べ始めたら、山乃端一人の気配が東京中に転がっていることに気づかされた。 「死が災厄を呼ぶ少女なんて大々的に知らしめるわけにはいかない!」と理性に基づいた最少人数での対応が各地で行われ、結果として全体共有が出来ていなかったのだ。 「スカイツリーの黒龍も山乃端一人絡んでいるのか?列車でのデモンスレイヤーによる無差別殺人は?東京タワーでの寿司テロは?…クソ!俺一人じゃどうにもならん規模だぞこれは!!」 ハッピーさんは、事実の解明と協力者の選定を急ぎ進める。 これは徹夜の作業になるか。そう覚悟を決めて動き出したところに、部下の言葉が飛び込んできた。 「ハッピーさん。どうしてもお会いしたいという方がいらしています。山乃端一人の件とのことです。」 「…!?通してくれ。」 急ぎ面会を許可したハッピーさんの前に現れたのは、瓜二つの顔を持つ二人の少女。 山乃端一人と山乃端万魔であった。 「ここにも山乃端一人かよ…!」 ◆◆◆ またしても山乃端一人。 一体何人山乃端一人がいる?護衛しなくてはならない対象はどこだ? この二人は何をしに来た? ハッピーさんは高速で思考を始める。 そんなタイミングに、ハッピーさんの携帯がけたたましく振動をした。 「…こんなタイミングに誰だよ…って、ウゲェ…」 携帯のディスプレイに表示される通話相手の名前に顔を歪めながら、ハッピーさんは電話を取った。 妙にハキハキとした声が部屋中に響き渡る。 「ハッピーさん!お久しぶりですー!少女の味方!ブルマニアンです!」 「…切るぞ。」 「ヘイヘイヘイ!ストップ!山乃端一人!山乃端一人の案件に私も絡んでいるんですってば!」 ブルマニアンが山乃端一人の案件に絡んでいる。 この事実にハッピーさんは一瞬だけ眉をひそめたが、すぐに思考を改めた。 確かにブルマニアンは変態。ハッピーさんとは別ベクトルで組織活動が出来ないタイプであり、同じ魔人警察ながら相性が良いとは言えなかった。 しかし、その正義感に関しては疑うところがない。 ブルマニアンが少女を守ると口にしたならば、それが破られたことは無かった。 「…マジか。どんな感じで。」 ブルマニアンはこれまでの経緯をハッピーさんに語る。ハッピーさんも情報を提供する。 互いの立ち位置が明確になったところで、話は次の段階へ進んだ。 「なるほど。お前がこの二人のお嬢ちゃんを俺のところに寄越したのか。」 山乃端一人と山乃端万魔。 彼女たちは池袋での騒動で仙道ソウスケに襲撃された。 紆余曲折あってなんとか窮地は脱したものの、組織だった襲撃の恐ろしさというものを嫌というほど痛感した。 個人では山乃端一人を守り切ることはできない。 そう感じた山乃端万魔は、組織の力を頼ることにしたのだ。 最初は警察に頼ることに不安を感じていたが、当の魔人警察に囚われ収監されている父親、クリスプ博士の 「山乃端一人の件に関して、魔人警察は味方のようだ。悪用しようという気配がない。」 という言葉を信じて魔人警察に出頭。対応したのがブルマニアンだったのだ。 「その通り!私も山乃端一人の護衛をしているけど、複数守るなんて無理無理。というか複数いるってことにビックリ。今、魔人警察で信用出来て、山乃端一人の件に絡んでるの、ハッピーさんくらいしか思いつかなくて!」 ハッピーさんは山乃端一人を守るため、典礼と代々木公園で派手に交戦した。 一般にその情報が漏れないように統制はしたが、裏、および身内に対して隠しきるのは難しく、ブルマニアンの耳に届いていたのだ。 「じゃあ、そこの二人についても話しちゃうね。」 ブルマニアンは続けて山乃端一人と万魔の情報も提供した。 ハッピーさんは新たに入った情報と、今目の前にいる二人、これまでの人脈、様々を加味し何をすべきか組み立てていく。深い思考に潜り込んでいくハッピーさんにブルマニアンがもう一声かけた。 「――最後、これが一番大切な話。」 ブルマニアンらしからぬ真面目な声色。 その声に本気を感じ取り、ハッピーさんは静かに言葉を待つ。 「あの(・ ・)憑坐 操(よりまし みさお)が、そこの山乃端一人を狙っているらしい。」 憑坐 操。その名を聞いた瞬間、ハッピーさんの獅子を思わせる髪がざわりと揺れた。 額にはハッキリと血管が浮かび、こめかみがぴくぴくと震える。 「あの(・ ・)憑坐が、か。戦後最悪の寄生能力者。人から人へ移り、数多の破滅をばら撒きながらも、魔人警察の追跡を躱し続けた厄介な腐れ外道…!あの野郎の痕跡を追うのは酷く困難なはずだが、どうやってその情報を?」 「宵空あかね…って名前でいっても分かんないよね。ちょっと前に、幽霊の女の子と知り合う機会があって。」 幽霊?とツッコミを入れたかったが黙って話の続きを待つ。 「彼女は幽霊だから、何かが憑いてる存在が分かるんだって。何かに憑かれた大男が、そっちの山乃端一人の写真を見ながら、『これが山乃端一人ねえ…新しい駒を確保してからヤッちまうかぁ…』って呟くのを聞いたとか。彼女は山乃端一人って名前に反応してコッソリ写真を覗き込んだけど、自分の知ってる山乃端一人じゃなかったからそこで興味を無くしてそれ以上追いはしなかったみたい」 「何かに憑りつき、次の憑依先を物色し、山乃端一人を狙う存在…限りなくビンゴに近いな。あの腐れ外道がこちらの山乃端一人を狙っている、か。助かったブルマニアン!その情報があるかないかで全然違うぞ!」 「役に立ったなら良かった!じゃあ私は、こっちの山乃端一人の護衛があるので!じゃあね!正義執行(ジャスティス)!」 上司の決め台詞をパクったブルマニアンの別れの言葉と共に電話は切れた。 山乃端一人と万魔は、ブルマニアンとハッピーさんの通話を不安そうに見つめていた。 その視線に気が付いたハッピーさんは、頭を乱暴にガシガシと掻いた後、ニッと音が聞こえてきそうな笑顔で二人に向きあう。 「心配するなお嬢ちゃんたち!俺はこう見えてもプロだ!ああいう外道の考えることはよ~く分かる。お嬢ちゃんたちは俺が守って見せるさ!」 不安を与えない、風のような声だった。 「…ただな、それでも強敵が相手なのは間違いない…」 そうして万魔に真っすぐ目を合わせる。 「協力してもらうぞお嬢ちゃん。この戦いは、準備が肝心だ。これから作戦会議をする。やることをしっかり頭に叩き込んでくれ。」 「一人を守るためなら、俺は何でもする!」 「その意気だ!始めるぜ!…外道狩りを!」 ◆◆◆ 霧雨が降る午後であった。 魔人プロレス地方団体のエースである、リカルド権藤は特に何を想うこともなく商店街を歩んでいた。 この程度の雨ならば傘をさす必要もない。 そう考えながら進むリカルドの前を、少女がふさぐ。 プロレスラーとしての本能。リカルドは瞬時に筋肉を緊張させた。 肩まで垂れる三つ編みにしたおさげが軽く揺れる。 「リカルド権藤さんですよね!?ファンなんです!サインをいただけませんか!?」 ファンに対して一瞬警戒をした己を恥じ、リカルドは応じる。 「…あ、でも、この雨でサインが濡れるのは嫌だから、屋根のあるところに行きませんか?すぐそこに倉庫があるので…」 少女の提案を受け、リカルドは倉庫に歩みを進めた。 倉庫、という点を少し怪しくは思ったが、少女の挙動に怪しいものはなく、殺気のかけらも感じなかったため杞憂と判断した。 仮に何か罠のようなものがあったとしても、自分ならば問題なく対処できるという自信もあった。 しかし、その自信は慢心であった。 「…は?」 倉庫に踏み入れた瞬間、リカルドの二の腕に深々と光の剣が突き立てられた。 予兆…というより殺気は一切なかった。日常の一部、トースターから焼けたパンを取り出すかのような気軽さで光芒一閃(サンライズ・セイバー)は発動していた。 リカルドの腕には剣が突き立てられたというにもかかわらず傷一つない。 それでも筋肉を切り裂かれる痛みだけはリアルなものとして襲い掛かって来ていた。 そう。リカルドを誘った少女の名は光芒一閃(サンライズ・セイバー)の使い手、神凪ひかり。 少女は何でもないことのように、再び光の剣を振るう。 しかしリカルドとて魔人プロレスのエース。 瞬時に精神を立て直し、豪風のような一刀を躱す。 そしてそのままの勢いで膂力に任せたボディーブローを神凪に叩きつけた。 神凪の左あばら骨がベキベキとへし折れる音が倉庫に響く。 何本かの骨は内臓に突き刺さり、妙に鮮やかな血が彼女の口から吹き出た。 リカルドは神凪をここで殺すつもりはなかった。 ボディーブローの痛みで動きを止めたところで、関節を決め警察に引き渡すつもりだった。 ――その優しさを弱さと呼ぶのは酷というものだろう。 神凪ひかりは、内臓を痛めつけるほどの一撃を受けたにもかかわらず、少しも動きを止めなかった。 すぐさま光芒一閃(サンライズ・セイバー)を振るい、光の剣をリカルドの脳髄に突き刺した。 光芒一閃(サンライズ・セイバー)は生物を斬っても傷が入ることはないが、斬られたことによる痛みは伝わる。 脳に直接伝わる痛みという、未だ経験したことのない激痛を前に、リカルドは意識を手放した。 地に伏す大男を、神凪ひかりは、否、憑坐 操は歪んだ笑顔で見下ろすと、ゲラゲラと笑った。 「やっぱりこの体はなかなか優秀だあ~。見た目の割に能力の出力が高いから良い感じに不意打ちが出来るなぁ!」 倉庫で起きた一瞬の凶行。 その一部始終を、体の中から(・ ・ ・ ・ ・)見ている存在があった。 それは、精神牢獄(マインド・バインド)に囚われた、本物の神凪ひかりの精神。 まるで巨大ロボットに乗った操縦者がコクピットから外部を見るような感覚。 映画のスクリーンよろしく目の前に展開された映像に、神凪ひかりは涙をこぼす。 「やめて…もうやめてよ…私の体で!これ以上酷いことしないで…!」 リカルドの一撃による痛みを全て押し付けられ、口から血を吐きだしながらも、彼女は懸命に目の前の外道に抗議をした。 「うるせえなぁ~~??ま~だ学習しねえのか?」 相対するは憑坐 操の精神体…という名の本体。顔には意地の悪い笑顔が張り付いている。 弱者の命をもてあそぶことに愉悦を感じる者特有の、歪んだ笑顔だった。 キヒっ、と一つ笑うと、憑坐は神凪ひかりの体を操りナイフを一つ取り出した。 その様を精神体の神凪ひかりは内部から見ていることしかできない。 「いや…やめて…それだけは!」 少女の必死の懇願を無視し、神凪ひかりの首筋にゆっくりとナイフが深々と突き立てられた。 「あ…ぐげぇ…!」 憑坐が憑りついた宿主への痛みは、内部にいる寄生された被害者の精神にフィードバックする。 リカルドの一撃による痛みのときと同様、神凪ひかりの精神体の喉元がゆっくりと切り裂かれ始めた。 ゆっくりと、ゆっくりと刃が進んでいく。 ごぼごぼと口元から血の泡が吹き出て、少女らしからぬ蛙が潰れたようなグゲェという悲鳴が零れた。 そうして、酷い痛みと屈辱の中で神凪ひかりは息絶えた。 その瞬間、彼女の肉体からずるりと憑坐が這い出た。 憑坐 操は、寄生先の宿主が息絶えると表に出てくるのだ。 しかし、憑坐は少しも慌てず、再び神凪ひかりの死体に憑りついた。 するとどうだ。神凪ひかりの首元の傷も、あばら骨の粉砕骨折も、まるで無かったかのように治癒をした。 これぞ、精神牢獄(マインド・バインド)最大の特徴。 憑坐は死にたてであれば、死体であろうと強制的に治癒・生存させ、寄生することが出来るのだ。 寄生するにふさわしい強力な宿主に寄生するにはある程度痛めつけなくては憑りつく余地がない。 仮に多少やりすぎて殺してしまったとしても問題なく憑りつけるように、最悪の蘇生能力が備わっているのだ。 そしてこの能力は、宿主を屈服させるためにも使われる。 自殺、生存、自殺、生存を繰り返し、死の絶望を何度も与えることで反抗心を刈り取るのだ。 「…あ…はが…」 自死からの強制的な蘇生により、焦点の合わない目でぜひゅーぜひゅーと荒い呼吸をする神凪ひかり。 「キヒヒ!お前さん、結構タフだねえ。何回死んだ?これだけ死んで、まだ反抗的な目を出来るやつは、そんなにいなかった!」 心からの賞賛を憑坐は繰り出す。 「そうだなあ…大体50人もいなかったんじゃないかな?」 さらりと憑坐は告げる。――いったいどれだけの宿主を踏み台にしてきたのか。 その悍ましい有様に、神凪ひかりは叫んだ。 「…人でなし!こんなことして…それでも人間!?」 神凪ひかりは、折れていなかった。 あばら骨を滅茶苦茶にされ、精神をズタズタにされて、何回も殺されて。 それでも彼女は闘志をもって憑坐に嚙みついた。 その闘志を、憑坐は酷く滑稽なものとして笑い倒した。 品のかけらもない笑いだった。 「ギャハ…!ギャギャギャハハハハァ!!まだ、まだ理解してなかったのかよ?おめでたいなぁ!お前、俺が、この俺が、人間に見えるのかい(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)?」 ――憑坐 操(よりまし みさお)。 正確には尸童(よりまし)と書かれる。祭礼に関する語で、稚児など神霊を降ろし託宣を授かるべく育てられた少年少女の意味だ。実際には「寄りまし」が語源とも言われているが、真偽のほどは定かではない。 なんにせよ、憑坐 操という存在は、『何か』を求めて祈り続ける尸童(よりまし)の懇願が歪んだ形で現実化した存在だ。ここまでして祈り、求めるならば、寄ります存在があってしかるべきだという人々の集合意識が生んだ邪念だ。 人々の願いに応え、降ろされたはいいが邪悪のまま振舞う怪異。 醜く歪んだ黒い流れ星。長年人々の祈りを糧に人から人へ憑りつき渡る大怪異。 それが憑坐 操の正体だった。 「ああー、笑った笑った。本当にお前は馬鹿だな…っと!」 憑坐は容赦なく神凪ひかりの精神を締め上げる。 「俺はお前の意識なんざいつでも粉々に出来るんだぜ?ま、リアクションが楽しいから生かしてやってるけどよ。もっと媚びな!犬っころみてえによぉ~!」 (ま、本当は意識を残してるのは痛みの生贄にするためだけどな) とことん神凪ひかりを侮辱しながら、憑坐は続ける。 「俺の目的はよぉ、死と引き換えにハルマゲドンを起こす山乃端一人に憑りつくこと…。俺の能力なら何度だって山乃端一人を殺せる!ハルマゲドンのバーゲンセールだ!死体の山の中から、せいぜい使い勝手のいい宿主を見繕ってやるよ!ギャギャギャハハハハァ!!」 濁った眼が神凪ひかりに向けられる。 「そうしてよぉ~、山乃端一人に憑りつくときには…お前は用済みさ。…今度こそ、完全に、死ぬ。俺に利用されたまま、一生陽の目を見ることも無く消滅する…」 その死刑宣告に、神凪ひかりはぶるりと震えた。 体の芯に、氷の柱を突きさされたような底冷えする感覚に襲われる。 「ほら、言ってみろよ?『命だけは助けて(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)』ってさぁ~~?ヒヒッ!」 それは酷く歪んだ、卑しい笑いだった。 「ほら、ほら、ほらほらぁ!芋虫みたいに這って、無様に媚びながら『命だけは助けて』って言ってみろ!」 ペッ、と一つ唾を顔に向かって吐きつける。 薄く濁った液体が、少女の頬を穢した。 「もしかしたらその滑稽さに俺様も絆されて、お情けをやるかもしれねえぜ?ウケケケケ!」 そんなはずはない。 こんなことを言いながら、結局は憑坐のような悪党は、宿主を無残に殺してから次に移るに決まっている。 懇願し、生を媚びたくなる欲求に襲われながらも、神凪ひかりは必死に己を奮い立たせ、何も言わずにキッと憑坐を睨みつけた。 「いいねえ~。その負けん気!その強情ごと、あとでぐちゃぐちゃに犯してやるから覚悟しな!」 言うが早いか、憑坐は神凪ひかりを蹴り上げ、腹を殴りつけ、後頭部を叩き気絶をさせた。 そうして、肉体の操作に戻る。 「イヒヒィ!」 憑坐は神凪ひかりの肉体を再起動させると、地に伏せたままのリカルドの頭部をグチャリグチャリと踏みつぶし、床の染みに変えた。倉庫中に血の嫌な香りと雨の湿気が満ちる。 「ギャハ!ギャハハハハァ!!お前らを踏み台にして、俺は先に進む!まだ、まだまだ先に飛べる!」 神凪ひかりの体で憑坐が笑う。 欲望に歪み切った笑顔が、少女の顔に張り付くさまはグロテスクと言っていいほどであった。 憑坐は自らの栄華を疑わずに笑い続ける。 先に広がる勝利と栄光の道を確信し揺るがない。 ―――憑坐は確かに恐ろしい存在だ。 長年、人から人に移り寄生し続けてきた。 狡猾にして残忍。悪辣にして陰険。人を利用することを一切躊躇わず、望むままに生きてきた。 彼を害することが出来る存在など、この世にほとんどいないであろう。 しかし、ゼロではない。 数多の人生に憑りついてきた大怪異を誅することの出来る者は存在する。 憑坐は知らない。 このあと彼が対峙する相手が、現代日本最強の「怪異殺し」であることを。 ハッピーさんであることを。 ◆◆◆ ハッピーさんと 外道の最期 ◆◆◆ 新宿。入り組んだビル街をハッピーさんと山乃端一人、山乃端万魔が練り歩く。 ハッピーさんの策はシンプル。 山乃端一人を囮にし、襲い掛かってきたところを仕留める。 大通りであれば罠を警戒し、あるいは逃走経路がないことに難色を示して憑坐は襲ってこないかもしれない。 しかし入り組んだビル街であれば逃走経路は十分用意されているし、目撃者も少ない。 襲撃には格好のスポットである。――だからこそ動いてくる。 そうハッピーさんは確信していた。 「…じゃあ事前の打ち合わせ通りに。」 山乃端一人と万魔は既定のルートを通る。 新宿のビル街は複雑怪奇かつ広大なので、いくつかのルートを組み合わせた動きをするだけで、自由意思に基づいて歩き回っているかのような印象を与える。実際はハッピーさんの規定した通りの動きをしているなど初見では見抜きようもない。 (こうして歩き回っていれば釣れる可能性が高いだろ…問題はどっちを狙ってくるかだな…) 二人の移動経路、タイミングを完全に把握しているハッピーさんは、敢えて二人から距離を取る。 監視の存在を感じられては、憑坐は釣りだせないと考えたからだ。 既定のコースをぶらつく山乃端一人と山乃端万魔。 位置を把握しながらも接触しないハッピーさん。 ヒリヒリするような時間が流れる。 (…まあ、いきなり奴が釣れるなんざ思っちゃいないさ。今日は駅中のベルクあたりで一杯ひっかけて帰るかな) 空が夕闇に染まり始めたあたりで、ハッピーさんは撤収を考え始めた。 その、ほんの少し、気が緩んだ瞬間。 側を歩いていた女学生が予兆を全く見せずに光の刃を振るった。 その凶刃を、ハッピーさんは当たり前のように受け止めた。 「…やるねえ…。どうして俺に気付いた?厄介そうな保護者から潰しちまおうと思ったが…初手を防がれるとは思わなかったぜ。」 「簡単な話だ。俺はお前みたいな外道の考えることはよく分かる。手を出しにくい、若い女性に憑依して不意打ちしてくることくらい読めてんだよ。…『怪しさのない若い女性』にだけ警戒を絞っていたってわけだ。」 ハッピーさんの答えに、憑坐は歪んだ笑みで返す。 「奇遇だなあ。俺もお前みたいな正義気取りは何人もぶっ殺してるから、考えがよく分かるんだよ…!」 人から人へ寄生する大怪異と、現代日本最強の怪異殺しの戦いが幕を開けた。 「こっちに出た。手筈通りに!」 ハッピーさんは開戦直後に一本の電話をかけた。 この電話が全ての結果を左右する一手であったことを、憑坐はまだ知らない。 ◆◆◆ 「オラァ!喰らえや!」 憑坐は神凪ひかりの能力を十全に使用し、『光芒一閃(サンライズ・セイバー)』を繰り出す。恐ろしい冴えを見せる光の剣がハッピーさんに襲い掛かった。 「『時よ止まれ、君は。(ファウスト)』!!」 しかしハッピーさんは動じず、光の剣を傷つけた瞬間に箱に閉じ込める。 『光芒一閃(サンライズ・セイバー)』は光を物質化し、干渉可能な存在とする能力であるが、物質化するという事は傷をつけられるという事。ハッピーさんの愛刀である妖刀武骨が煌めき、傷をつけ能力発動の条件を満たしたのだ。 光の剣が箱化したのに合わせて、ハッピーさんは憑坐の腹部に強烈な足刀蹴りを放った。 真っすぐに押し出すような動きをする空手の技が、憑坐の鳩尾に突き刺さるかと思われたが、僅か手前でハッピーさんの蹴りは動きを止めた。 『光芒一閃(サンライズ・セイバー)』の応用。 淡い光の防御膜で全身を覆い、守備力を格段に高めていたのだ。 それは、さながらエアバッグ。決まるはずであった一撃は幕に阻まれダメージとならなかった。 (チッ、攻防一体の能力か!相手にしにくい!) 内心毒づきながらも、ハッピーさんは顔色を変えずに憑坐を攻め立てる。 達人であるハッピーさんと、長年寄生を続けてきた憑坐が操る神凪ひかりの戦闘力は拮抗していた。 互いに決め手に欠けるまま、一進一退の攻防が繰り広げられる。 (いい宿主に憑いてやがる…。光を体にまとっているのか?箱化しようにも中身を巻き込んでしまう使い方は出来ない…どうしたもんかね) 攻め手を考えながら、ハッピーさんは再度蹴りを放った。 全身を覆う光の防御幕であっても、何発か撃ち込むうちに摩耗するのではないかと推察したのだ。 何回も蹴りと斬撃を入れることで防御のための光を削る。 それは作戦として正しかった。 神凪ひかりを相手にするのであれば、その戦法がまさに正着と言っていい一手だったであろう。 しかし、ハッピーさんが相手をしているのは神凪ひかりではない。 その中に巣くう、憑坐 操こそが相手なのだ。 ハッピーさんはその違いを理解しきっていなかった。 ハッピーさんの鋭い蹴りが叩きつけられる刹那、憑坐は『光芒一閃(サンライズ・セイバー)』による光の防御幕を解除した。 「な…!?」 憑坐のどてっぱらにハッピーさんの一撃が綺麗に決まる。 メキメキとあばら骨の砕ける嫌な感触がハッピーさんに伝わった。 ゴポリ、と嫌な赤色をした血潮が、憑坐の操る神凪ひかりの口から零れた。 「…どうして…?」 神凪ひかりが涙をこぼし、何故自分を痛めつけるのかと責め立てる。 ハッピーさんは世界一諦めの悪い男だ。 ありとあらゆる手段を用いて神凪ひかりを助けるつもりであった。 そのプランの中には、彼女を五体満足ではなく、ある程度負傷させてでも助け出す次善の策もあった。 ハッピーさんは、人質を傷つけてしまう事も覚悟していたのだ。 しかし、この瞬間、全く予想をしていないタイミングで少女を傷つけてしまったことに、愛と正義の人であるハッピーさんは僅かながら揺らいだ。 これが外道の策であると理解しながら、少女の涙に心を揺り動かされてしまった。 その、ほんのわずか生まれた隙をつき、憑坐はハッピーさんの側頭部に鮮烈なハイキックを撃ち込んだ。 意識が一瞬吹き飛ぶほどの一撃に足踏みをした瞬間を狙い、光の剣が四肢を傷つける。 拮抗していた攻防が一転、ハッピーさんは地に崩れ落ちた。 「キヒヒィィィィ!!言ったよなあ!?正義気取りの考えることはよく分かるってよお!」 崩れ落ちたハッピーさんに対し、何の容赦もなく追撃が行われる。 拮抗していた戦闘力。天秤が一旦傾いてしまえば、あとに待っているのは一方的な蹂躙であった。 ハッピーさんはなんとか攻撃を防ごうと努めたが、何もかもが一手遅い。 あっという間にハッピーさんの全身は血に染まり、肩で息をし始めた。 だが、それでもハッピーさんの表情に絶望はない。 圧倒的に不利な状況にもかかわらず、ハッピーさんは笑顔で話しかけた。 「俺は、言ったよな…外道の考えることはよく分かると…」 血にまみれながら言葉を紡ぐハッピーさんを、憑坐は嘲笑った。 「ああ、言ったなあぁ~。そして俺はこう返したぜ。『俺も正義の味方の考えることはよく分かる』ってなア!もう忘れたか?記憶が朦朧としてんのか?」 ハッピーさんの顔面に、容赦なく憑坐の蹴りが突き刺さる。 「お前みたいなタイプは、俺が憑いている少女を犠牲に出来ねえ!」 『光芒一閃(サンライズ・セイバー)』がハッピーさんの内臓に、切り刻むかの如き痛みを与える。 (コツはよお~、嬲ってやることだ。『このままだと死ぬかもしれない』と思わせたら、この宿主の命を無視して襲ってくるかもしれないからな~。じわじわ痛めつけて、抵抗心を削いでやるよ!) 「ギャギャギャハハハハァ!お前のようなお人好しは!俺みたいな悪者に利用されるって決まっているんだよ!」 容赦ない暴力がハッピーさんを打ち据える。 それでもハッピーさんの目の光は一向に濁らず。 血反吐を吐きながらも、ハッピーさんは言葉を紡いだ。 「何度だって言うぜ…俺はお前みたいな外道の考えはよく分かる…。『嬲ってやればいい』とか思ってんだろ?外道はいつだってそうだ。一方的に相手をいたぶることに夢中になる。」 憑坐は、この期に及んで余裕を見せるハッピーさんが気に食わなかった。 ムカついたので鼻っ柱に強烈な一撃をお見舞いし、鼻骨をへし折った。 「キヒヒィ!良~い感じになったじゃねえか色男!」 徹底的に蔑む憑坐に、ハッピーさんは酷く冷めた言葉を投げた。 「…違うな。クソ野郎。色男ってのは、俺じゃなくて、お前の後ろの男(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)みたいなやつに使うんだぜ…!」 ハッピーさんの言葉が耳に届くか否かというタイミングで、憑坐の背を、何者かの手が触れた。 その瞬間、神凪ひかりの内部に異変が起きた。 「…あ?なん…だ!?ちょっと待て!なんだこれは…!?俺の…俺の能力がぁぁぁ!?」 「言っただろ!?外道は相手をいたぶることに夢中になるってな!背中がお留守だ!光の防御幕があれば大丈夫だとでも驕ったか?なんにでも例外があることは、魔人なら常識だろうが!!」 酷く呆気なく、精神牢獄(マインド・バインド)は解除された。 神凪ひかりの口から、精神体である、エクトプラズムのような憑坐の本体がずるりと飛び出た。 (何が?何が起きたっていうんだ!?) 混乱のままに、憑坐は自分に触れた手の正体を確認する。 そこには、まさに色男と呼ぶにふさわしい、人間離れした端正な顔立ちにホストのような華美なスーツを着た青年が立っていた。青年の後ろには、シスター服姿の女性が不安げな顔で立っていた。 「『大侯爵』」 青年は能力名をビル街に放り投げる。 対象に直接接触している間のみ持続するその能力は、魔人能力を無効化する能力(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)。 能力者の名は、ジョン・ドゥ。 【こっちに出た。手筈通りに!】 ハッピーさんが憑坐と接触したタイミングで電話をかけた相手は、万魔ではなく、前回の戦いで縁が出来たジョン・ドゥであったのだ。 (何が起きた、じゃねえ!まずいまずいまずい!逃げろ!!逃げるんだよ!) ジョン・ドゥの能力で剥き出しになった憑坐は、恐慌をきたしながら逃げの一手を打つ。 「ジョン・ドゥ!ありがとなぁ!この借りは近いうちに返すぜ!!」 礼を叫びながら、剥き出しの憑坐を容赦なくハッピーさんが追う。 「…ふん、俺を都合よく使ったことには一言言いたいが…我が花嫁の望みであるのなら叶えないわけにはいかんのでな…!」 ジョン・ドゥは、自らの役目は終わったと言わんばかりに、花嫁を優しく抱きかかえ去っていった。 「俺をここまでさせるのはお前だけなのだぞ?」 愛の言葉を吐くのを忘れぬままに。 ◆◆◆ ビル街の入り組んだ路地を、必死に憑坐が逃げる。 (畜生…畜生!能力解除の能力者!?天敵じゃねえかクソが!!) 内心で罵詈雑言を吐きながらも澱みなく逃走をする。 新宿の入り組んだビル街が憑坐に味方をする。 多種多様な曲がり角を十全に利用し、憑坐は一心不乱に逃走をした。 その熱意が起こした奇跡か。 はたまた、ただの偶然か。 一つの曲がり角で、憑坐は見知った少女と遭遇した。 写真で何度も確認した存在。 丁寧に身につけられた制服。上品にカットされた髪。穏やかでありながら芯の通った空気感。 憑坐が狙っていた、山乃端一人がそこにいた。 (やった!!ついてる!俺はついている!情報では山乃端一人は魔人であるけれど、死亡時のハルマゲドン能力以外に何かをすることはできない!だったらすぐに憑ける!本当に憑いているぜ!) 憑坐は喜色満面で山乃端一人に襲い掛かる。 怪異が急に襲い掛かってきたことに怯えたのか、山乃端一人は恐怖で失神をした。 糸を切られた操り人形のごとく、ぐにゃりと倒れ込んだのだ。 憑坐はすぐさま失神した山乃端一人の肉体に憑りついた。 もう少し落ち着いた場面であれば、憑坐も気が付いたであろう。 あまりに都合のいい展開であると。これがハッピーさんたちの用意した罠であると。 事前の打ち合わせ通りに待機していた万魔の策であると。 憑りついた瞬間に憑坐は山乃端一人の精神体を掌握しようとする。 しかし、奇妙なことに山乃端一人の精神体が存在しない。 憑坐が憑りついた体には、魂が含まれていなかったのだ。 困惑する憑坐に対して高らかな声が降り注ぐ。 「彼誰時(クライベイビーファーストクライ)」 山乃端一人と瓜二つの顔ながら、白い髪に褐色の肌。 山乃端万魔がそこに立っていたのだ。 「まんまと引っかかったね。あんたが憑りついたのは、一人の変装をした私。あんたが襲い掛かってきた瞬間に能力を発動させて別のボディに移ったのさ。」 ――つまり。 憑坐は魂の存在しないボディに憑りついてしまった。 死体であろうと憑りつくことの出来る応用性の広さが災いした。 憑坐は、人質がいないまま憑りついてしまったのだ。 ◆◆◆ フッ!と一つ息を吐き出したハッピーさんのジャブが、万魔のスペアに憑りついてしまった憑坐の顔面に刺さる。めきりと嫌な音を響かせ、鼻が歪に曲がる。 「……?……??」 憑坐は何が起きたか分からずに棒立ちをした。 ハッピーさんのジャブが着弾してから数瞬の時を経て、爆発的な悲鳴がビル街に轟いた。 「…!!???い…痛ぇ~~!!あ!あ!痛っ、痛、痛い~!!??」 それは当然の道理。憑坐は今まで痛みを宿主の精神体に押し付けていた。 憑坐が憑りついてしまった万魔のスペアには精神体が存在しない以上、痛みは全て憑坐が負う。 何十年何百年と、痛みとは無縁で存在してきた憑坐にとって、久方の痛みは深く、鋭く、重く突き刺さった。 (痛い!痛い!痛い!どうしてこんな!?) 声も出せずに混乱し悶絶する憑坐に、万魔がお手本のようなローキックを叩きこむ。 太ももからブチブチと筋繊維の断絶する不愉快な音が響く。 「…俺と同じの顔の相手をぶちのめすなんて、気が乗らないと思ってたけど…そんだけ気持ち悪い笑顔をしている奴なら容赦はしない…!外道でいてくれてありがとう!容赦なくぶちのめせる!!」 「今までの分…きっちりお返ししなきゃなあ!」 「やめ…やめろクソったれぇぇえ!!!」 憑坐の叫びを無視し、二人の溜まりに溜まった感情が爆発する。 万魔の左フック。ハッピーさんの右ミドルキック。 万魔の肘打ち。ハッピーさんの廻し蹴り。 万魔の目突き。ハッピーさんの金的蹴り。 万魔の掌底。ハッピーさんのアッパーカット。 「「うおらぁぁぁぁああああああ!!!!」」 暴力の嵐が憑坐を痛めつける。 内蔵が潰れ、眼球が飛び散り、骨が砕かれ、四肢がひしゃげる。 「あ!ぎゃ…ぎゃぶ!ぐげぇ!」 汚い悲鳴と共に血を撒き散らす憑坐。 もはや彼に道はなく、こうして成す術もなく死んでいく。 ――そんな未来を、憑坐は信じていなかった。 長年人間を食い物にしてきた大怪異の面目躍如。 絶望的状況であっても、自身の生に貪欲であり、何とか生き延びようとする。 久方ぶりの痛みに情けなく悲鳴を上げながらも、諦めてはいなかった。 ハッピーさんの渾身の右ストレート。 万魔の裂帛の左ハイキック。 強烈な一撃に対して、憑坐はあえて脱力した。 今までは痛みを極力抑えるように、攻撃に対し抵抗し、身を固め、衝撃を逃がす努力をしていた。 その戦法を繰り返し、相手に意識付けしたうえでの脱力。 強大なパワーをそのまま受け入れ、ぼろ雑巾のように吹き飛ばされる。 そうして、その瞬間に寄生を解除した。 猛烈な勢いで憑坐が射出される。精神体が加速し、一直線に離れていく。 二人の達人の一撃を利用し、推進力と変えて逃走を図る。 (タイミング!完璧!俺は貴様らから逃げきって見せる!少し、ほんの少し別の路地に逃げさえすれば、そこら辺の一般人に憑りついて逃げることが出来る!!) ハッピーさんと山乃端万魔の手の届かぬ位置に消えゆく憑坐。 しかしハッピーさんも万魔も、欠片も慌てるそぶりがない。 「言っただろ?外道の考えはよく分かっているって…。倒したいだけなら妖刀武骨を抜けばいいだけだ。そっちに(・ ・ ・ ・)逃げるように仕向けたんだよ。」 逃走の成功を確信した憑坐 操の前に、死神が待つ。 因果応報の具現が、路地裏に構えを取る。 肩まで垂れる三つ編みにしたおさげが夕焼けに照らされ、燃えるように赤く光る。 憑坐 操に寄生されていた少女、神凪ひかりがそこに立ちふさがっていた。 あばら骨を砕かれ、精神を徹底的に痛めつけられ、命乞いを強要されても折れなかった少女。 満身創痍なれど、その瞳は爛々と輝き、憑坐 操を睨みつける。 ペッ、と一つ口に溜まった血反吐を路上に吐き捨て、渾身の構えを見せた。 憑坐 操の顔色が青に染まる。 (いいいいいつの間に???何故まだ立てる??何故何故何故???!!) 完全に恐慌状態に陥る憑坐。 結局のところ、彼は人間を甘く見ていたのだ。 たまたま(・ ・ ・ ・)上手くいっていた現状を当然と思い、刹那に輝く人間の意地を舐めていた。 ハッピーさんは、握り拳をグッと神凪ひかりに突き付けて叫んだ。 「お嬢ちゃん!!ぶちかませぇぇぇえええ!!!」 ハッピーさんの声援をブーストに、神凪ひかりが輝きを増す。 魔人能力『光芒一閃(サンライズ・セイバー)』による、淡くも美しい光の剣が生成される。 彼女の剣閃は霊体である憑坐 操にも容赦なく干渉し斬り捨てることが出来る。 憑依し能力を十全に把握していた憑坐は、誰よりもそれを理解していた。 憑坐 操の脳裏を、高速で記憶が駆け巡る。 自身が神凪ひかりにしてきたことを反芻していたのだ。 彼女の精神を散々に嬲り、犯し、痛めつけ、蹂躙し、利用し、踏みにじった。 ――笑いながら。 反芻の結果、結論は一つ。 許されない。赦されるはずもない。 如何に傲慢で人を人と思わない憑坐であっても、神凪ひかりが自分を赦さないことくらい理解できた。 この期に及んで神凪ひかりが、自分を見逃すはずなどないと理解できた。 思うが儘に過ごしてきた長き悦楽の日々の終わりが、まさに眼前に迫っていることを理解できた。 「い…嫌だ…嫌だ嫌だ嫌だ!」 霊体であるにもかかわらず、彼の全身をねっとりと脂汗が包んだ。 涙と鼻水、絶望で顔面をぐちゃぐちゃにしながら、夕陽に照らされ美しく佇む少女に向かって叫んだ。 「命だけは助けてぇぇぇえええええ!!!!」 外道の命乞いが、ビル街に惨めに響いた。 その汚い悲鳴を切り裂くかのように、凛とした声が押し通る。 「光芒一閃(サンライズ・セイバー)ァァァ!!!!」 「あぎゃああああぎぃぃぃぃいいいい!!!!」 憑坐 操は絶望を顔に張り付けたまま両断され、夕闇のビル街に霧散していった。 勝者:ハッピーさん&山乃端万魔&神凪ひかり 敗者:憑坐 操。完全敗北 ◆◆◆ ――激戦を終えて―― ◆◆◆ 魔人刑務所の奥。特に危険な人物、もしくは特殊犯を収監するための施設。 山乃端万魔の生みの親であるクリスプ博士が収監されている部屋に、今回の事件の関係者が集っていた。 山乃端万魔、山乃端一人、クリスプ博士、ハッピーさん。 そしてもう一人。 坊主頭に鍛え上げられた肉体、身にまとうはボサボサの袈裟。 まさに修行僧そのものといった巨漢が同席していた。 クリスプ博士が感心したように言葉を漏らす。 「ふむ…日本の警察は本当に優秀だねえ!まさか数日で彼を発見し連れてくるとは!」 「名前と、あんたが接触した時期さえ分かればな…ベタなセリフだが、日本の警察を舐めないでいただこう、ってやつだ。」 ハッピーさんが連れてきた男は、『他人の能力を知る魔人能力者』。 その名は贋真。物事の真贋を見抜く者。 クリスプ博士が山乃端一人のハルマゲドン能力を知るのに使った能力者である。 「あんたがコイツの名前と接触時期を教える条件に出したのは、これからすること(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)を共有すること…。約束通り、あんたの目の前で行うことにしたぜ。」 その言葉を合図に、贋真がぬらりと動く。 大きな手を、山乃端一人の頭にピタリと付けた。 「…拙僧の魔人能力は遠隔でも発動し、対象者の能力を看破できるが…直接触れた場合は能力をより深く見抜くことができる…」 「山乃端一人が複数いて、同じ能力を有している…ならば、能力の解析をより深くできれば秘密が分かるのではないか、ってわけよ。」 贋真の手が薄ぼんやりと光りはじめた。 その瞬間、贋真の眉がビクビクと痙攣し、顔面が脂汗に染まった。 どんどんと呼吸が荒くなったかと思うと、ぶはぁと大きく息の塊を吐き出した。 「…こんな…こんなことが…!」 贋真の反応に嫌なものを感じながらも、万魔は思い切って尋ねた。 「一人の能力…分かったのかよ…?」 贋真はこくりと頷き、 「良い情報と悪い情報がある。」 と、どこかの洋画にでもありそうなセリフを吐いた。 「まず良い情報であるが…彼女にハルマゲドン能力を与えた大いなる存在…仮に『神』とでも呼ぼうか。『神』はどうやら今回はどうしてもハルマゲドンを起こしたかったようだ。そのために本来1人に与えるべき能力を25人に分割した…。どの山乃端一人が死んでもハルマゲドンは起きる。これで発生確率は跳ね上がる。」 ハッピーさんが眉をひそめて食ってかかる。 「待て待て!どこが良い情報だそれの!」 「焦るな。続きがあるのだ。分割した故に、能力の有効期限が極端に短くなってしまった。…山乃端一人のハルマゲドン能力は、この冬を終えて春が来れば消失する(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)。」 一瞬の沈黙。 「やったー!!!」 万魔が一人に抱き着く。 「うわ!万魔!何急に!」 「だってよお…春になれば一人が狙われる理由はなくなって!そうしたら、そうしたらさ、俺たち、普通に学生出来るわけじゃない?…一人はさ、もう危ない目に合わなくて済むわけじゃない?」 万魔の目にジワリと涙が浮かぶ。 それにつられたのか一人の鼻も赤くなった。 「あ~、お嬢ちゃんたち。水を差すつもりはないが…喜ぶのは、『悪い情報』とやらを聞いてからにしようや。」 ハッピーさんの言葉に万魔は気を引き締めなおす。 空気が再び緊張をはらんだものに変わったのを見届け、贋真は口を開いた。 「悪い情報は…彼女を確実に仕留めるために『転校生』が呼ばれる…!そういう能力!」 先ほどまで喜びと興奮で朱に染まっていた万魔の顔が、一瞬で蒼白に染まった。 ――『転校生』。 無限の攻撃力と無限の防御力を持つ、魔人とすら一線を画す存在。 それはもはや厄災の一種であり、過ぎ去るのを祈るしかできぬ相手である。 その恐ろしさはこの世界に生きる者であれば誰もが骨身に染みている。 「…やれやれ。やっぱり忙しくなりそうだぜ」 ハッピーさんのため息が、静かに収監施設に響いた。 ◆◆◆ 「――――と、そんな秘密が山乃端一人にはあるそうですよ」 クリスプ博士が収監されている施設には、他にも稀代の悪党が存在していた。 その男は情報を操る。 人知れずに施設内の会話を傍受するなどお手の物であった。 その男の名は仙道ソウスケ。 一度この施設を抜け出し池袋で暴れたソウスケは、紆余曲折あって再び施設に戻っていたが、情報網はいささかも衰えていなかった。いかにして看守を買収したかは知らぬが、看守の目前で堂々と携帯で外部と通話をする。 ――その通話相手は。 「ペーラペラペラ!!面白い情報だな!それをオレに教えてどうしようってんだい!?」 「特に他意はありませんよ。池袋でお世話になった方々に、山乃端一人の情報を提供したまで…今後のお付き合いを考えたアフターサービスというやつです。」 軽薄な口調でソウスケと通話するのはウスッペラード。 「つーことは、ジャックや餅子にもコレ伝えた?ペーラペラペラ!あいつらどう動くかなあ!」 (ま!考えても分からね~けどな!) 彼は薄っぺらかった。 「なんにせよ良いタイミングで知らせてくれてサンキュー!」 興奮気味にウスッペラードは通話を切った。 その行為とすれ違うかのように、ウスッペラードを呼ぶ声が響く。 「ウスッペラードさん!出番です!」 彼を呼んだのはテレビ局のスタッフ。ウスッペラードは、『新春大特番!生でお笑い東西戦』のゲストとして呼ばれていたのだ。ペストマスクの怪人という分かりやすいビジュアルを持ち、特撮によく呼ばれる影響で子供たちへの知名度は高く、薄っぺらながら場を盛り上げる能力もあるウスッペラードはバラエティ番組で重宝されていた。 しかしテレビ局は理解していなかった。 ウスッペラードは「マジで本物の悪役」であり、正真正銘の「異次元からの侵略者」なのだ。 予定調和が重んじられる生放送番組に彼を呼ぶという事の意味を、少しも理解していなかった。 ~五分後~ 「ペーラペラペラ!カメラ!もっとちゃんとこっち向いて!オレの言葉を届けるんだよ~!」 ウスッペラードは大物司会者を頭から丸呑みにして紙化。 人質にしてスタジオで暴れていた。 何故いきなりウスッペラードはスタジオをジャックするなどと言う暴挙に出たのか。 なんのことはない。 ただそっちの方が悪役っぽいかなー! こう、全国電波に乗せて関係者には伝わるメッセージとかイケてない? と思っただけだった。 彼は薄っぺらかった。 スタジオをジャックしたウスッペラードは高らかに笑った。 「ペーラペラペラペラ!山乃端一人たちに告ぐ!25人いる、山乃端一人たちに告ぐ!」 「山乃端一人?」「誰だそれ?」 「え、コレってドッキリじゃなくてガチ?」「警備員何やってんの!」 スタジオと全国のお茶の間に広がる困惑をよそにウスッペラードはペラペラ喋る。 「山乃端一人!お嬢ちゃんの能力は~、春になったら消えちゃうぜぇ~!良かったなぁ!ラッキー!」 軽薄の極み。彼はどこまでも薄っぺらく、特に責任感も持たず秘密をぶちまけた。 「だけどアンラッキー!絶対仕留めようと『転校生』が来るってよ!『転校生』が来るってよ!一人でも殺されたら…ドカン!ハルマゲドンだ!ペーラペラペラ!」 全国の電波に乗って、秘密の共有が行われた。 それが何を引き起こすのか、ウスッペラードは特に考えない。薄っぺらいから。 彼にとって世間だとかど~うだってよかった。 他の山乃端一人もど~うでもよかった。 自分なんかのファンでいてくれる、奇特な山乃端一人以外のことは知ったことではなかった。 この放送をみれば、他にも山乃端一人がいることを知って、刺客はバラけるんじゃね? だとか 鏡に姿すら映らなくなった、重圧を背負うあの山乃端一人も少しは楽になるんじゃね? だとか ウスッペラードが考えていたかは分からない。 彼は薄っぺらだから。 ただまあこれは「わるいこと」だろうな、とだけは思っていた。 ◆◆◆◆ 「『転校生』まで来るかい…たいぎいのう。」 だぼだぼの学ランをまとった少女が呟いた。 「儂の獲物を横取りする愚か者がおるか…同胞達!戦の支度じゃあ!」 並行世界の超越者が咆えた。 「『転校生』っすか…。相手が誰であろうと、こっちの取立が優先っす。」 最速の取立屋が静かに燃えた。 シスターが。幽霊が。配信者が、メイドが、殺し屋が。 それぞれの山乃端一人に思いを馳せて、それぞれが行動に移った。 様々な思惑が絡み合いどのような物語が生まれるのか。 それは誰にも分からない。 ただ一つ確かなことは。 この物語の終着はハッピーエンドである、ということだ。 ――――間もなく、冬が終わる。 了
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1.今月の憑坐を神として拝むべし
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妖夢を使うのが初めてな人・手っ取り早く妖夢の基本を知りたい人のための簡易解説です。 詳細な解説は各ページで。 キャラ概要 コンボ地上【地上A・低空JA始動コンボ】 【6C・憑坐の縛始動コンボ】 空中 固め地上固めに使えそうな技 空中固めに使えそうな技 スキルカード スペルカード基本・ダメージソース(JA )AAAから (JA )AAAAから (JA )AAAAAから ロマン・玄人向け ネタ デッキ キャラ概要 長所打撃の発生が早い! ダッシュも飛翔もとにかく速い! コンボを入れるチャンスが多い! コンボや差込みに使えるスペカが多い! 短所射撃が弱い・薄い・遅い! 技の判定が弱い! 空中でスペカ・必殺技を使えない! 総括弾幕は添え物程度に、打撃で攻めて攻めて攻めまくれ!牽制は半霊で。 コンボ コマンド表記の略称は以下のようになっています。 コンボページやスレでも表記は統一されているので、早めに覚えておく方が良いでしょう。 各必殺技のコマンドは必殺・特殊技へ。 表記 意味 7 8 9 方向を示す。テンキーで8方向。稀に5やN表記があるが、それはニュートラルを指す。大抵は妖夢が右を向いている時の表記。 4 * 6 1 2 3 A 打撃 B 弱射撃 C 強射撃 J ジャンプ jc ジャンプキャンセル((小文字jcはキャンセル行動、大文字JCがジャンプ強射撃)) HJ ハイジャンプ hjc ハイジャンプキャンセル D(Dh) ダッシュ dc ダッシュキャンセル BD バックステップ 空ダ 空中ダッシュ。前・後が前に付くことも HS 飛翔 CH カウンターヒット 溜 ボタンホールド 例 J6A → J 空中 6 前 A 打撃 22C (jc)J6C → 22C 下下強射撃 の後( jc ジャンプキャンセルして) J6C 空中前強射撃 地上 【地上A・低空JA始動コンボ】 ジャンプキャンセルは省略しています。その他も含めた一覧はコンボのページへ。 AやJA始動は基本中の基本。 中央 (JA )AAAA 22BorC J6C +解説 妖夢の基本コンボ。魔方陣ダウン。22BorC(憑坐の縛)を当てた後は半霊が相手にくっつくので2Cから起き攻めへ。 (JA )AAA(AA) 各種スペカ +解説 AAAで入るのは、 人符「現世斬」 断命剣「冥想斬」 人鬼「未来永劫斬」 の三つ。 AAAAでは断霊剣「成仏得脱斬」、断迷剣「迷津慈航斬」が入る。 AAAAAからは「現世斬」「冥想斬」「成仏得脱斬」「未来永劫斬」「迷津慈航斬」が入るが、現世斬以外はダメージが落ちてしまう。 現世斬はAAAAA即キャンセルで発動してもAAA 現世斬よりダメージが高いのでこちらで。 ディレイで補正切りはシビアすぎる上、遅すぎると反確なのを留意しておくこと。 端 (JA )AAAAA 623B +解説 画面端で最も安定するコンボ。魔方陣ダウン。 A連の前に射撃が当たってたりすると623B(B弦月斬)がスカって大変なので注意。 【6C・憑坐の縛始動コンボ】 半霊を飛ばす6C・憑坐の縛(22BorC)は妖夢の貴重な牽制。ガンガン振っていこう。 参考動画↓↓ 通常ヒット 6C 6C 22BorC +解説 魔方陣ダウン。 空中の相手に。壁が遠すぎると入らない。 天候が川霧だと繋がりやすい。 6C 22BorC +解説 地上の相手に。やっぱり壁が遠すぎると入らない。 相手のスペカをスカした時などに覚えておくとダウンを取れる。 22BorC (J)6C +解説 憑坐の縛が当たった場合。憑坐の縛ヒット後は半霊が相手に憑くので空中安定・地上は微妙。 憑坐の縛は射撃・打撃をある程度貫通するが、リーチがないので中距離で振る。 カウンターヒットすると地上にいようが空中にいようがJ6Cが確定。 カウンターヒット 6CCH ディレイ6C 22BorC +解説 魔方陣ダウン。 通常ヒット版より楽に繋がるが、二発目の6Cの前に間をおく必要がある。 天候が川霧の場合はさらにディレイをかけること。 6CCH・J6CCH・22BorCCH エリアル +解説 相手が壁に近い場合、jcやhjcすればそのまま空中コンボに持っていける。 エリアルは… JA J8AorJ6A J6Cがお手軽。… JA J8A JC 前空ダ JA J8Aなどが高火力。 J6CCHから飛翔で追いかける場合、残り飛翔回数と霊力に注意。 空中 空中でもやっぱりJAが強い。持続が長いので、空中戦闘になったら先出しするつもりで。 判定は斜め下に強いので、上方向はJ8Aで。 JA J8AorJ6A J6C 空ダ いろいろ +解説 「いろいろ」に入るのは 基本:後空ダ J6C 端が近くて相手が自分より低い:前空ダ J6A 端が近くて相手が自分より高い:前空ダ J8A とか。全て魔方陣。ぶっちゃけアドリブと慣れ。 とりあえず真横~斜め上の相手にJAが当たったならJ8A、斜め下の相手にJAが当たったらJ6Aが繋がる。 空ダキャンセルに慣れてない人はJA J8AorJ6A J6Cだけでも。 JA J8A JB J6C +解説 画面端用、魔方陣ダウン。 お手軽&低ダメージ。空ダキャンセルが出来ない人向け。 JA J8A JB JC 前空ダ JA J8AorJ6A +解説 画面端用、魔方陣ダウン。 画面端空中コンの安定最高ダメージ。半霊の位置によっては決まらないことも。 JA J6A J6C 前空ダ JA J8AorJ6A +解説 画面端用、魔方陣ダウン。 JA J6A始動の場合。ダメージはJ8Aルートより劣る。 固め 妖夢に固めで使える射撃が少ないので、打撃メインで。ダメージは暴れ・HJ・結界狩りで取る。 崩しはホールドと、ガードを揺さぶってスペカ割りで勝負。通常射撃で割るのは難しい。 攻めの継続を重視するなら、スキカの折伏無間(コマ投げ)が有効だがダメージが小さいのでデッキを選ぶ。 地上固めに使えそうな技 AAAAのどこかまで AAとAAAの間は連ガではないことに注意。AAAだけやってると割り込まれます。 遠A 2A・遠2A ここら辺はガードを揺さぶって霊力削りにも使える。 ↓ 3A・6A HJ狩りとかにも。これの後は結界してくることが多い。 ↓ 憑坐の縛 霊力削りが1と大きく、jc可能なので攻めを継続させやすい。 6B 霊力削り兼攻めの継続。グレイズ付きD攻撃で割り込まれること多々。 ↓ 生死流転斬1・2段(3段目はスキが大きいので蒼天またはスペカを持ってなければ反確。でも結界狩りに便利) 低空JA 射撃の後はこれ。遅いHJ狩りにもなる。スカすと危険。 割りに使えるスペカは冥想斬と成仏得脱斬。 迷津慈航斬は発生が遅い上一切無敵がないので、大抵の場合割り込み余裕でしたとか前HJ余裕でしたとかになる。 割れそうなとこでB射撃に合わせての回避結界読み先出しや半霊が完全に重なってる状態で2Cをガードさせれば使える。 空中固めに使えそうな技 妖夢は空中固めを継続できる射撃や必殺技がないので、プレッシャーや霊力削り程度にしかならない。 相手の霊力が2くらいなら削りきれるかも。 JA 始動は大抵これ。早め早めに出しておくと吉。 J8A JAの後。対上空にも。めくりになった時もコンボが入る。 J6A JAの後。ガードさせてすぐにJBでキャンセルすると妖夢が変な動きをするので仕切りなおしになる。 J6C J8A・J6Aから。こればかりだとグレイズされるので…と言いたいが、J8Aの後はスキが大きいのでB射くらいしか他にない。 J6Cをガードしてくれたら空ダや飛翔からJAやJ8Aを当てに行って割る。あんまり固めになってないけどね。 スキルカード 必殺・特殊技の項を参照。結跏趺斬や心抄斬は初心者にも扱いやすい書き換え技。 スペルカード 基本・ダメージソース 地上打撃レベル2(SEが「ボカッ」)から確定。 (JA )AAAから 断命剣「冥想斬」 中段クラッシュ。でも射撃なので、ぶっぱなすとグレイズや立ちガードされる。発生は早いがガードされるとやはり反確。ダメージが高いのでコンボや割りからどうぞ。また、冥想斬自体も割りに使える。霊力削って流転二段目の後なら連ガなので割り込まれる心配も無し。 人鬼「未来永劫斬」 暗転後無敵。ある程度近ければ反確ではないので差込みぶっぱにも。遠(2)Aヒット確認 永劫斬などができると撃てる状況が一気に増える。川霧・台風で使わないこと!ダメージが一気に落ちます。 (JA )AAAAから 断霊剣「成仏得脱斬」 入力~出がかりが無敵なので割り込みに使える。と言ってもグレイズ可能で、発生がちょっと遅い、密着で当たらない、と少し不安な技。でもダメージは高いのでいい抑止力になる。2Cや結跏趺斬をガードさせて、あるいはガードを揺さぶって割りに使えるので入れておいて損はない。他にも、わからん殺しだが流転3段目のフォローにも使える。 小町のJ2AやパチェのJC・溜J2Aなど、発生が遅く硬直の長い技に合わせるとよく当たる。 (JA )AAAAAから 人符「現世斬」 ガードされると反確。暗転前は無防備だが暗転後は無敵。地上突進技やアリスの6Aを叩き切ると気分がいい。永劫斬より少し発生が遅いので注意。 ロマン・玄人向け 強いのだけれど使いづらい。お守りとして仕込んでおくといいことあるかも。 断迷剣「迷津慈航斬」 グレイズ不可!ダメージ高い!範囲広い!見た目格好いい!でも発生がこの上なく遅い。台風時C射撃で束縛してからや相手のスキの大きい行動に合わせれば確実に当たる。使う場面を選べばコンボダメージ大幅アップ。あとは遠めで発生遅い射撃読み。 魂魄「幽明求聞持聡明の法」 半身が妖夢の姿になる特殊なスペカ。半身の射撃及びコマンド技が使用不能になる。半身は少し遅れて妖夢の動きを真似る。ガー反に当たってくれることも。発生自体は非常に早いので、クラッシュなどから専用コンに。より極めたい人は「テケテンの人」で調べると幸せになれるかも。 剣技「桜花閃々」 見た目は綺麗なのだが発生が大変遅くグレイズ可能。確定状況もDCカウンターヒットとか当身とか、非常に少ない。むしろ、B射撃ってぶっぱでめくり、とりあえずターン取りたいからぶっぱ、など立ち回りで使うほうがいいかも。マジカル~剪定! ネタ 魂符「幽明の苦輪」 幽明求聞持聡明の法と同じ効果だが、効果時間が1/3未満な上、発動にスキカと同じくらいの時間がかかる。実用不可能。 デッキ アンケートができているのでそちらを参考にしてください http //creatorof.dip.jp/emquete/emqueteResult/10483/
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太陽の色は白か黄色か。 妙に暗い青空に浮かぶそれが赤くも眩しくもないのは確かだ。 見えるもの全てに暗い影がかかっている。 背にアスファルトや小石が刺さるのを感じながら、体を動かすこともできず、ただ空を見上げている。 私を庇うように覆いかぶさったお母さんの体が段々と冷えていく。 こめかみの辺りが不意に熱くなる。目尻から涙が零れていた。 お父さんとお母さんが死んだからか、これから私が死ぬからか。 痛いとか、怖いとか。寒いとか、悲しいとか。 それだけじゃない気もしていた。 寂しい。悔しい。 大声で喚く男の声が聞こえる。 魔人だ。 私たちを襲った魔人。 両親は億万長者と言えるほどではないけれど、間違いなく裕福ではある方で、慈善家の面もあった。 雇用拡大とか差別解消とか、そういう福祉に取り組んでいた。 支援を受けた人から感謝の手紙が家に届いたこともあったし、友人とか、学校や習い事の先生とか、ご近所さんからも「神凪さんのご両親は立派な方ね」なんて言われたりして。 社会問題の何もかもを解決できたなんて言わないけれど、魔人の人たちにとっても幾らかの助けになっていたはずだ。 襲われる理由なんてない。 彼は私の両親が何者かなんて知らないのだと思う。 知っていたのだとしたらこうはならなかった。私はそう思いたい。 実際はどうなのだろう。 魔人とか非魔人とか関係なしに人を傷つけたいという気持ちがわからない。 自己表現として理由なく力を振るうとか、自分でも制御できないとか、そういうケースもよくあると聞くけれど。 力が欲しい、みたいな妄想をする人が魔人になりやすいとか。 そういう人は最初から誰かを傷つけるつもりで魔人になるのかな。 私だったら。どんな力が欲しいかな。 力があれば、なにができるかな。 考えても、意味ないか。 もう、将来もなにもないのだし。 視界がどんどん暗くなる。 力とか、命ではなく。 光が欲しい、そう思った。 ――そして、目が覚めた。精神的に。 相変わらず肉体の自由はない。正面に投影されている映像は憑坐操による他人事。 この精神の体とでもいうべき今の私も檻の中で椅子に縛り付けられたままだ。 昔の夢を見ていた。眠っていたと言えるのか、気絶していただけなのか、この精神世界でその差は曖昧だ。 少なくとも疲労感は取れていない。 体に食い込む拘束の痛みも癒えない。 いくらもがいても、どうにもならない。 誰か助けて、と口にはせずに歯を食いしばる。 言葉にしてもそれが聞こえるのは憑坐操だけだ。 正義の味方はやってこない。 私がそうなることもできなかったし、他の誰かをあてにすることもできない。 悔しい。私が魔人になった時とは別の種類の、そして同じくらい強い感情。 どうにもならない。 それはわかっているのに、考えずには、祈らずにはいられない。 悪とか、不幸とか、悲しみとか、諦めとか、そういうものを吹き飛ばす、都合のいいなにか。 神様とか、正義の味方とか、多分現実にはいないなにか。 そんな妄想をやめられないのは、やはり私も魔人の気質があるからなのだろう。 意味があるかはわからないまま、私は今ももがき続ける。 ● その刑務所の最奥、その階層に収容されている者はただ一人。地下牢の彼を知る者は多い。 山乃端一人の命を狙う者。山乃端一人の利用価値を測る者。山乃端一人をただ守ろうと戦う者。あるいは、鏡に潜む異界の魔人。 彼を真に理解する者は少ない。 彼の思考。彼の技術。彼の願望。 たとえ彼が娘と呼び、そのように扱う子供であっても。 かつて彼のために山乃端一人を捕えようとし、既にそれをやめた彼女。 父と呼ぶ彼との縁が切れたわけではないものの、その脳髄に張り巡らされた計画の全容を把握することはできていない。 だから、そこを訪れた山乃端万魔は、怒りと困惑、そして疑問をぶつけることしかできない。 「親父。仙道ソウスケがやったことについてどれだけ関わってたんだ?」 「私は依頼をした。手段を考え実行したのはあの男だ。上手くいったな」 「上手くいったじゃねえよ」 肩までの白髪。褐色の肌。首や手足を飾る鎖。鉄格子の前に立つ少女の顔には素直な感情が浮かんでいる。 スキンヘッド。筋肉質の巨体。男は豪奢な椅子に座ったまま眉一つ動かさない。 「死傷者の六割はお前にとっても敵だったはずだ。現状で山乃端一人の命を狙う勢力はあれで大方が消えた」 「いいことみたいに言うなよ」 万魔はがしがしと頭をかいた。 「関係ない人も巻き込んだし、敵だって死んでほしかったわけじゃない。なんのためにここまでするんだ」 「研究のためだ」 二人はしばしにらみ合い、やがて万魔が首を振って視線を外した。 「なんのための研究だよ。前にも聞いたけどさ」 「うむ。二回はその話をした」 「俺が生まれてすぐの時と今年の夏休み前だ。最初は『最高の生物』に近づくため、二回目は単に探求心を満たすためだって言ってたよな? どうして答えが変わったんだ。本当の目的はなんなんだよ」 「その二つは同じことだぞ」 クリスプ博士はやおら立ち上がり、壁際に備えられた棚へゆっくりと歩く。 地下牢にはひどく場違いな、奇妙なほどに優し気な音楽が流れている。 ドビュッシーの『亜麻色の髪の乙女』だ。 「虫を愚かだと思ったことはあるか」 博士は出し抜けにそう尋ねた。 「蜂とか蟻は頭いいんじゃないか」 「だが人間並みの思考力があるわけではないだろう。人間は虫の行動を観察し理解することはできるが虫が人間を理解することはない」 「そりゃあ脳の大きさが違うし」 「大きさなら人間もクジラに劣る。もっとも割いている機能が違うのだがな。物理的な脳の機能の比較ならば体重比や表面積の方が重要だ。これを見ろ」 彼は一つの瓶詰を手に持ち万魔の正面にやってきた。 薄黄色い液体の中に拳ほどの大きさの脳が浮かんでいる。 「これはお前の予備から採った脳だが――」 「なにやってんの!?」 「――基本的な構造は人間の脳と変わらない。だがお前の予備である以上これは魔人能力を持ちうる脳だ。そして魔人能力については現代の科学でも推し量れないところがある。確かだと言われているのは『自己の認識を他者に強制する能力』だということだ」 「魔人能力は認識から生まれるってことだろ。それはわかる」 万魔自身の魔人能力。彼誰時(クライベイビーファーストクライ)。予備の体を召喚して意識を乗せ換える力。 予備の体とされているそれらが全て同一の自己、それらの総体が山乃端万魔であるという認識に基づいている。 「ふむ、では『卵が先か、鶏が先か』。聞いたことはあるだろう。この問いについてはどう考える?」 「その話はちゃんと繋がってるのか?」 じゃらり。少女が疑わし気な目を向けて首を傾げると鎖が鳴った。 「……卵が先だろ。鶏っていう種は進化の中で生まれてきた。最初の鶏の両親は鶏とは別種だったことになる。でもそこから生まれた卵は鶏という新種の遺伝子情報を持っていたはずだ」 「だが卵の見た目はその両親と大差あるまい。そしてそれまで鶏という種がなかった以上それが産まれた時に鶏の卵だと認識できた者はいなかった」 「それは、別の問題だろ。その時はわからなかっただけで卵の中身の遺伝子が後から変わったわけじゃない」 「では魔人能力もそうだとしたら?」 「なに?」 万魔は顔を歪めて一層の不信感を現した。 「認識を他者に強制する――認識によって現実を書き換えているのではなく、まだ誰も気づいていないが確かに存在する現実を認識して広めることができる者が魔人だとしたら? 魔人にとっての人間は人間にとっての虫に等しいのだ」 「本気かよ。魔人能力はめちゃくちゃなやつばっかりだぞ。非魔人が気づかないってのはないだろ」 「だが中二力というエネルギーにより認識が現実を変えるなどという言説とあり得なさでは大差あるまい」 「……とりあえず親父がそう考えてるのはわかったよ。それで親父がしたいことは?」 厳めしい口角がわずかに上がる。 「うむ。より高次の生物はより高い視点から世界を見ることができる。私の目的はただの魔人よりも高い視点に立つことだ。そのために私自身を魔人よりも優れた生物に改造する。あるいはお前の様にこの私とは違う要素を加えた上で、望月餅子のように私の記憶を持った人造人間を作るということになるかもしれん。今は通常の魔人の範疇を逸脱した者を調査するという段階だ。山乃端一人、山居ジャック、そして『転校生』も期待外れではあるが……」 「転校生?」 「ああ、奴らは案外同類が多い。つまり特別ではないということだ。今の私よりは上位なのだろうが最終目標足りえない」 「いや、まず転校生ってなに? 普通の意味じゃないんだよな?」 「ふむ」 今度はクリスプ博士が怪訝な顔を向けた。 「鏡助という男はお前の所には現れていないのか?」 「それは……仙道ソウスケの偽名じゃなくて?」 「別人だ。お前が山乃端一人を守るつもりなら接触があっておかしくないはずだが」 「知らない。そいつは一人の味方なのか?」 「そのようだな。奴は立場を変えることもあるまい」 「まあ、敵じゃないならいいよ……待ってくれ。奴はってなんだよ。味方から敵になりそうなのもいるのか?」 「もとより味方というわけでもなかったが」 博士の視線は万魔の背後に向いた。 分厚い鉄の扉。 その先は。 「親父と取引した奴らか? ハルマゲドンが起きないように一人を親父に殺させる案を保留にしているっていう」 「奴らにはまだ伝えていないが私が一人を殺してもハルマゲドンは止まらないことがわかった。あれは死後発動する能力ではなく生前の内にそうなりうる状況を作りだすという能力だ。前提が変わったのだ」 「マジか。でもそれなら殺す理由はなくなるはずだ。ハルマゲドンを防ぐのが目的ならむしろ一人が死んだら困るだろ?」 「無闇に殺すことはないだろうが放置するとも思えん」 「……親父は一人の能力についてそいつらに伝えてないのか?」 「この環境は悪くないのでな。それに私と敵対している者も全て片付いたわけではない」 「大方死んだんだろ? 池袋に来なかった奴ってことか?」 「生き残った者は小物だ。問題ではない」 太い眉の間に皺が寄る。万魔はあまり見たことのない様子だった。 この男が普段見せる顔は厳めしい無関心か理解しがたい哄笑のどちらかがほとんどだ。 「問題は死が終わりではない者だ」 「蘇生する能力ってことか」 「そう言える面もあるな」 「具体的な心当たりがあるならどんな奴か教えてくれよ」 「ふむ」 不快感、だろうか。万魔にはその表情の意味をはっきり読み取ることができない。 ただ、研究対象に向けるものとは違う特別な感情が込められているように思える。 稲妻型の髭の下、嚙み締めた唇が開かれた。 「憑坐操。奴はそう名乗っているはずだ」 ○ 冷たい風の吹く乾いた青空の下で。 少しづつ減ってきているらしい瓦礫に向かって俺はそっと手を合わせた。 撤去作業中の池袋には近づけず、なんとか視界に入るくらいの距離から拝んでいる。 一人は連れてきていない。 流石に親父の言っていたことが気になる。 危険があるとわかっているなら隠れ家で待ってもらっていた方がいい。 危険なのは俺も一緒だということで一人は難色を示したが、独りで考えたいことがあるのだと言うと一応は納得してくれた。 嘘も方便というのではなく、実際考えたいことはある。 こちらから憑坐操を探す当てもないのだし、とりあえず目についた喫茶店に入る。 店員に促されるまま、席の下の箱に下ろしたての上着やマフラーを入れた。 今日は学校の制服ではないのだ。 制服。一年後には着られなくなる。 俺はその後どうするのだろう。 いや、それ以前に一人を守る戦いに決着がついたら、俺はそれから何をすればいいのだろう。 憑坐操を倒して、一人の安全が保証されて、一人が普通の生活に戻ったら。 最初は一人を捕まえるために造られた。自分の意志でそれをやめることができたのは、一人に死んでほしくないと思えたからだ。 やりたいこと、進みたい道、就きたい仕事、そういうものが思いつかない。 もっと普通の人間だったら、生まれてから高校を卒業するまでの約18年の間に色々なものに触れて、漠然とでも自分の進路を思い描けるのだろうと思う。 「まだ生まれて二年だしな」 愚痴っぽい言葉が口を吐く。 マジで何も思いつかない。 少なくとも親父の手伝いをしたいとはもう思えない。 落ち込んだ気分で熱いカフェオレをすする。 「お嬢ちゃん。相席いいかい? それからもう一つ――ハッピーかい?」 不審者がテーブルの向かい側に仁王立ちしていた。 黒革のジャケット、ドクロのプリントされたTシャツ、ジーンズにブーツ。 なんとなくメタラーっぽい。 鎖をじゃらじゃら付けてる俺に言えたことじゃないが。 妙に親しげだが完全に初対面だ。 「ああ、安心してくれ、怪しい者じゃない」 魔人警察刑事局 異質犯罪課 警部 遠藤ハピィ 差し出された名刺にはそう書かれている。 「えーと、遠藤警部、ですか?」 「ハッピーさんと呼んでくれ! お嬢ちゃんは山乃端万魔で間違いないな?」 親指で自分を指してそう言った。 物凄くうさん臭かったが俺も頷いて答える。 「お嬢ちゃんたちの事情はある程度聞いている。警察としても俺個人としても放っておけなくてな」 「聞いてるって、親父からですか?」 「ああ。例の表沙汰にできない取引の関係でな」 確かにある程度の事情は知られているらしい。 親父がどういうつもりで話したのかはわからないが。この人と協力しろということだろうか。 こっちは遠藤警部について何も聞かされていないのだが。 「あー、信用できないって顔だな。気持ちはわかるぜ。とりあえず俺が山乃端一人について知ってることを話す。間違ってたら訂正してくれ」 一人自身は普通の女子高生。ただし一人が死ぬとハルマゲドンが起こるという魔人能力を持つ。一人には様々な死の危険が迫っている。 大筋は俺の知っている通りではある。 「差し当っての危険は憑坐操という魔人だ。こいつについてはどれだけ聞いてる?」 「名前と能力の概要は聞きましたけど」 「そうか。奴とは異質犯罪課としても前々から因縁がある。継続して調査もしてるし現在憑依されている被害者についても目星はついている。襲われるのを待つんじゃなくてこちらから仕掛けるつもりだ。お嬢ちゃんにも協力してほしい」 そう言われ差し出された右手を見つめる。 この手を取るべきだろうか。 俺にとって最も重要なのは一人を守ることだ。 一人のいない所で戦いを始めるのは悪くない。 問題があるとすれば、やはり遠藤警部のことをよく知らないということに尽きる。 それでも。 「とりあえず、よろしくお願いします」 俺よりも少し小さいくらいの手を取った。 瞬間。 「ッてぇ……!」 腕が焼けるような痛み。 握った手から肩までを光剣の切っ先が貫いていた。 「くそっ」 手を振りほどき席から転げ落ちるようにして距離を取る。 転がりながらズボンのポケットから手錠を取り出し立ち上がる。 改めて敵を見てみれば。 黒革のジャケット、ドクロのプリントされたTシャツ、ジーンズにブーツ。 俺と見た目上の年齢は大して変わらない女。 髪は黒っぽい茶髪。 三つ編みのおさげではないが髪型を変えるのは簡単だ。 そして刺されたはずの俺の手に傷はない。 痛みは間違いなく現実だったにもかかわらず。 つまり生物を斬っても傷をつけない光剣。そういう魔人能力。 親父から聞いていた情報は四つ。 一つ、その名前。二つ、他者に憑依するという能力の概要。そして三つ目、最後に確認された憑依能力の被害者、神凪ひかり。 こいつがそうか。 「お前が憑坐操だな」 「よく知っているな。狂ったハゲ親父から聞いていたのか?」 「ああ、親父と同じくらいイカれてるらしいな」 それ以上会話に付き合う気はないらしい。 チリチリと肌を刺すような悪寒が走る。 正中線めがけて振り下ろされる光の刃。 半身になってかわす。 その刃すれすれに、相手の腕と交差させるように手を伸ばす。 池袋で仙道ソウスケが俺の一撃を止めた時、こういう動きをしていた。覚えている。 でもここから先は俺のやり方。 手首を掴む代わりに手錠を押し当てる。 かしゃんと音を立てて鉄輪が閉まった。 ぐるり。 勢いを殺さず腕を引っ張りながら相手の背に回る。 「大人しくしろよっ……!?」 そりゃあ抵抗はするだろうが。 想定以上に激しく藻掻く。 手錠がみしみしと音を立て捉えた手首に血が滲み始めた。 ――確かこいつが感じる痛みは憑依元の人間に押し付けられるんじゃなかったか? 思わず力が緩む。 「甘いんだよ人間もどきが!」 「ッ!」 体の負担を考えない剛力で振り払われ、さらに光剣の追撃。 速い。そして躊躇がない。 首に激痛。 この剣は生物を斬らずにすり抜ける。しかし斬ったのと変わらない痛みはある。 つまり、肉や骨で止まらず両断されたのと同じ痛みだ。 やられる場所によっては痛みのショックで倒れかねない。 実際、俺は覚えていないが一度倒れたことがあるらしい。 親父から聞いていた四つ目の情報。あの夏の日、俺を不意打ちで倒したのが他ならぬ憑坐操だ。 「今度は勝つ……」 「お前には無理だ。諦めな」 目の前の女の笑顔は悪魔に似ている。 ● 子供の頃から妙なモノを見ていた。 世間の魔人が引き起こす異常な事象ともまた違う、怪異と呼ばれるモノの類。 それは時には恐ろしく、時には美しく、忘れようもないいくつもの記憶を俺の中に残していった。 妖そのものだけでなく、それらに関わる人々との出会いもそうだ。 俺に怪異との向き合い方を教えてくれた人たち。 師、友、好敵手。間柄は様々。 武器、傷、呪い、想い。残されたものも様々。 今俺の手の中にある一つの箱もそうだ。 「こいつを使うことになるとはな……」 生きていれば良いことはある。 死んではどうにもならない。 そうは言っても、いつでもどこかで、死ぬ者は死ぬ。 だがしかし。だからこそ。 今も生きている俺が、やらねばならないことがある。 「死を約束されている少女、少女に迫る死。やるべきことは二つだが、一つの道の上にある!」 ビル街を駆ける男の姿は魔性に牙剥く獅子に似ていた。 ○ 諦めるつもりはさらさらないが状況はかなり不味い。 ガラスをぶち破った喫茶店を後にして土地勘のない街を走る。 憑坐操が俺を襲いに来たのはやはり次の憑依先として狙っているからだろう。 奴は憑依した相手の習慣化していた行動をトレースできるらしい。 今の隠れ家を使い始めてそれほど長いわけでもないが慣れてきてはいる。 つまり俺が憑りつかれてしまえば、奴はそのまま一人が待つ家に直行してしまうわけだ。 こうして知らない道を走るのは万一の時に俺の体が帰れなくなればいいなというささやかな期待がある。 もう一つ、なるべく人気のないところに行きたい。 奴の狙いが俺だとしてもその過程で他人を巻き込むことに抵抗を感じるとは思えない。 こうして一旦逃げること自体は悪くない。 奴も目視できる距離でしっかりついてきている。 この辺りもまだ無人ではないがさっきの店の中よりはましだ。 ちょっと不味いのは手錠を奴の手にかけたまま手放したこと。 俺の能力で次の体を召喚すれば手錠もついてくるのだが、それをすれば今の体は意識を失った状態でこの場に残る。奴の前にそれを出せばおそらく憑依されるだろう。 能力を使わず手錠もなしで戦う必要がある かなり不味いのは勝利条件が思いつかないこと。 なにをどうすれば奴が止まるのかわからない。 憑坐操に実体はない。 神凪ひかりを傷つけることに意味はないし、仮にそれでどうにかなるとしても彼女を犠牲にしたくはない。 有効な攻撃手段がこちらにはない。 「通りすがりの悪霊退治の専門家とかが助けてくれないかなあ!?」 口から出た言葉に大した意味はなかった。 愚痴だとか弱音ということでもないが益体もない無駄口の類。 誰にも聞かれず宙に消えるはずの言葉。 しかし。 ずん、と力強く響く足音。 正面に立つ人影一つ。 「ああ、今――」 俺自身、なんの期待もかけていなかったその言葉。 それに応える者があった。 「――『助けて』ってそう言ったかい?」 それを聞き逃さない者がいた。 黒革のジャケット、ドクロのプリントされたTシャツ、ジーンズにブーツ。 服装はどこかの誰かとよく似ている。 その他はまるで違う。 腰に差した一振りの太刀。 背に負う古びたずた袋。 都会のビル風になびく金髪。 俺よりもずっと大きい筋骨隆々の巨漢――まあ男だろう。顎鬚生えてるし。 そして笑顔。俺にはわかる。作り笑いだ。 騙そうとしているのではなく、俺を安心させるための。 「言ったよな!」 獅子の如きその人が俺とすれ違うように駆け抜けた。 振り返る。 彼は刀を抜き放つ。 「おいおいおいおい!」 慌てて追いかける。 体格がいいだけあって足も速い。 俺を置いてけぼりにして光剣を振りかざす憑坐操と切り結び始めた。 双方ともに上段に構え、袈裟切りに振り下ろす。 鏡合わせのような軌道で二つの武器が鍔元でかち合いそのまま鍔迫り合いとなった。 力では男が上か。 鋼の塊が光の刃を押し込んだ。 瞬間、光が掻き消える。 憑坐操が倒れこむように前に出る。男の刀をくぐり抜けて組み付き、その手から再び光が伸びる。 男は光剣に貫かれながら膝蹴りを繰り出す。 膝が憑坐操の顎を揺らす。 頬が波打つ衝撃。女の小さな体が浮き上がり組みつきが外れる。だが表情は変わらない。 不気味な嘲笑。 男は歯を食いしばりながら一歩引きさがり、剣先を降ろし下段の構え。 そこにやっと追いついた。 「ちょっと待ってくれ!」 無手のまま両者の間に割って入る。 「おっと! なんだ!? どうしたお嬢ちゃん!」 戸惑う男に呼びかける。やはり厳ついがいい人っぽい。 「この人は傷つけないでください! 操られてるだけで――」 「――あーあーあーそのことか! 大丈夫だ! わかってる!」 「わかっててやったの!?」 「いや対策がある!」 「対策!?」 「対策! ……おい逃げたぞ!」 「エッ!?」 振り向けば憑坐操はこちらに背を向けて走り出していた。 逃げた? この人が言う『対策』に信憑性があるってことか。 憑坐操もその対策を危険視している、もしかしたら内容を知っている? 明確な弱点が周知されているのか? 「ええと」 追いかけますか、と言いかけたのを飲み込む。 まずこの人は誰なんだ? 憑坐操を知っていて敵対しているらしいが。 「ああ、俺はこういう者だ」 納刀した後、両手で差し出された名刺には。 魔人警察刑事局 異質犯罪課 警部 遠藤ハピィ 「すみません、あなたが本物かどうか警察署に電話して確認してもいいですか?」 ● 『クソがっ!』 「うぐっ……」 みぞおちの辺りに鈍い痛み。 相変わらず姿もないのに好き放題してくれる。 けれど聞こえる声の様子は明らかにいつもと違った。 苛立ち、焦っている。 「無様ね……っ……」 顔が歪むような衝撃。 今度は無言のまま不可視の暴力を振るわれた。 『なぜ東京に来た……いや、それよりも対策が問題だ。あれを使う気か? 奴に使えるはずがないが……そうか、山乃端万魔か……そう組み合わせれば……』 これは、多分チャンスなのだ。 さっき出会った二人の人物。 あの人たちを憑坐操は恐れている。 憑坐操を倒す鍵を握っている。 そして私を傷つけないようにと考えてさえいる。 助けを求める声は誰にも聞こえなかったはずなのに。 それでも。 そんなことができるだろうか。 そこまで都合のいいことが本当に上手くいくだろうか。 憑坐操は何かに気づいた様子だった。 彼らの用意した対策は不発に終わるかもしれない。 だとしたら。 私にできることはないだろうか。 彼らの後押しになることは。 もしも。 もしも私が生きていることが、私を助けようとすることが、彼らの足枷になるのなら。 憑坐操を倒せるのなら私は諸共に死んでもいい。 この意思を伝える方法はない。 それでも、できることは……。 ○ 「対策は二つだ。まずは俺の魔人能力。そしてこの妖刀武骨だ」 本物の遠藤警部は急いで追わずとも憑坐操の居場所はわかるのだと言う。 なので歩きながら彼の言う『対策』についての説明を聞いている。内容を知らなければ俺も安心して戦えないからだ。 「能力名は『 時よ止まれ、君は。(ファウスト)』。傷つけたものの時間を止めて箱に閉じ込める。ただし命のある者は対象外。そして武骨は怪異に干渉できる刀だ。こいつを組み合わせることで憑坐操だけを箱に閉じ込めることができる……あいつ自身は既に死人だからな」 なるほど、うまい話だ。 でも、なんだろう。何か引っかかる。 「リスクはないんですか? それ、神凪ひかり自身はどれくらい傷つくんです?」 「髪の毛の先をちょっと斬るくらいで十分だ。呪術においては髪一本にさえ魂が宿る。呪いの藁人形って聞いたことないか? あれにも髪を入れるだろ」 「それは知りませんけど」 話を聞く限り問題はなさそうだ。 しかし、それならばなぜ、本物の遠藤警部の顔が陰って見えるのだろうか。 「どうした、そんなにじっと見て。なんか食べるか? 歩きながら食えるものは――」 「――いりません。食事は苦手なので」 「そうか? ……摂食障害か、それは?」 「どうでしょう。医者からちゃんとした診断を受けてはいないですけど」 強張っていた彼の顔はまたこちらを気遣う笑顔に戻った。 「うん、じゃあ話の続きだが。もう一つの対策は――」 「――え? 二つじゃなかったんですか?」 「二つだぞ?」 「能力と妖刀で二つじゃ?」 「ああいや、それはセットで一つだ。もう一つある」 「ああ、セット。なるほど」 「おう」 なんとなく、嚙み合わない。 「二つ目は呪具だ。口寄せってわかるか? 霊能力者が死者の霊をその身に呼び寄せる。その応用だ。死者の魂を呼び寄せて生きてる人間に憑りつかせることができる、そういう呪具だ。つまり憑坐操の居場所がわからなくなってもその場に呼び出せるわけだな。今回はさらにその応用で奴を呼び出さずに居場所だけ探る。繋がりは作るが呼び出すまではしない。向こうにもこっちの位置がバレるんだけどな。本来の使用方では使いたくない」 「憑りつかれる役が必要だから?」 「いや、それよりも神凪ひかりが心配だ。憑坐操が引き剝がされた時に無事でいられるかわからん。今まで奴に憑りつかれた人間が解放された時は必ず廃人にされていた。奴にとって用済みだから、そして憑りつかれていた間に知った情報が俺たちのような捜査員に渡らないようにするためなんだろうが。奴が人の精神を壊すのにどれだけの手間をかけているかはわからん。俺の能力での封印なら何もさせず一瞬で済むが、通常の呪具ならある程度は抵抗されると見ている。今の奴は悪霊だが生前から一端の呪術師でもあるんだ」 「そりゃあ……使えないですね」 コメントに困る。神凪ひかりを助けられないのでは片手落ちだ。 「ああ、お嬢ちゃんがそう言える人間で良かった」 顎鬚の上で口元が綻ぶ。彼自身の安堵の笑いのようだった。 「奴の方で憑依先を乗り換える可能性はありませんか?」 ふと思いついた疑問だ。こちらとしてはそれが一番嫌だ。 「それはないな」 本物の遠藤警部は首を振る。 「奴からすれば神凪ひかりは人質だ。人質を無下に扱えばこちらも強硬手段に出ると考えるだろう。それに神凪ひかりの能力は優秀だ。この辺りはそこらのビルを探せば人はいくらでも見つかるだろうが一般人との交換は可能な限り避けるはずだ。そもそもの奴の目的は強い体を手に入れることだからな」 「『最高の生物になる』ってやつですか」 それもどこかで聞いたような話だ。 イカれた親父と同類か。 俺は、やっぱりあいつには負けたくない。 ● そして。 とあるビルとビルの狭間で相対する。 路地裏というには広い裏道だ。 俺たちが奴を追い詰めたのか。奴が俺たちを待ち受けたのか。 憑坐操は神凪ひかりの体でうすら寒い笑いを浮かべている。 勝つのはこちら、そう思っているのはお互い様だ。 じゃらり。 緩んだ鎖を腕に巻きなおす。 手錠がないのだからこの鎖を使うしかない。 神凪ひかりの光剣は生物を傷つけずにすり抜け、無生物なら斬り捨てる。 しかし本物の遠藤警部の妖刀武骨とは鍔迫り合いをして見せた。 実際の剣でも斬れない程度の強度があれば持ちこたえることができる。 鎧と呼ぶには頼りないが鎖帷子代わりというわけだ。 守りを固めているのはこちらだけではない。 神凪ひかりの能力は光剣に限ったものではないらしい。 大通りでは気づかなかったがビルの影がかかるここならわかる。 全身を淡い光の膜が覆っている。 その強度が光剣と同等であるならば、こちらは鎧と称して差し支えないだろう。 本物の遠藤警部の能力はわずかでも傷つけることが条件だ。 光の守りを突破する一撃を与えなければならない。 「それじゃあやるか」 位置取りは俺が本物の遠藤警部より前。 俺が憑坐操の動きを阻害して彼が十分集中できる状況を作れさえすれば斬鉄の剣技を繰り出せるらしい。 俺に大した攻撃ができない以上はそれを当てにさせてもらおう。 憑坐操は八双に構えた。右手首に手錠がぶら下がったままだ。 振り下ろし、振り上げ、左右を入れ替えて繰り返す。持久力に優れた守りの構え。 そう構えるだろうと本物の遠藤警部から事前に受けた助言通りだ。 先ほどの戦いを見た時から気になっていたが、二人の剣術はどこか共通するものがある。 それが憑坐操が身に着けたものか神凪ひかりのルーチンに属するのかは不確かなのだが。 俺に呼吸の間などはわからない。 ただ覚悟を決めたその瞬間に地を蹴った。 魔人の脚力で駆け抜ける。 30メートル、20メートル。 敵とはまだ距離がある。奴は微動だにしない。 10メートル、5メートル。 その刹那、光剣の間合いに入ったその時。 一閃。 袈裟懸け。 俺はより強く踏み込む。 足元でアスファルトが悲鳴を上げる。 それでもなお。 俺の手は奴の体に未だ届かず、光剣はその刃渡りの中に俺の全身を収める間合い。 それでもかまわない。 奴の光剣に速度が乗り切る前に、俺は鎖で固めた腕をその刃に衝突させる。 鎖が軋む。俺の骨も。だが斬れてはいない。 そのまま光剣を抑え込もうと両腕を使い挟み捻る。 ひゅ、と無抵抗に腕が空振った。 光剣は消失。 奴の手元で即座に再生成。 腹を刺される痛み。 痛いだけだ。傷はない。 奴が俺にかかりきりになっていることに違いはない。 刺された腹は刺されたまま。 距離を詰める。全身で抑え込む。 俺と神凪ひかりの身長は大差なく、やや俺の方が大きいくらい。 背後からの圧力にぞわりとうなじが泡立つ。 妖刀武骨が俺の頭上をかすめた。 幾筋か、白髪と茶髪が宙を舞う。 あっけなく。狙いは成った。 「ふ」 女が笑う。 「ハッハッハ……!」 憑坐操が神凪ひかりの声で嘲笑っている。 『 時よ止まれ、君は。(ファウスト)』による箱ではなく、彼女の中に奴はいる。 ――そもそも箱が作られていない? 「そうだ、お前にできるわけがない……! 遠藤ハピィ! お前は今でも俺が死んだと思えていない!」 「何を……!」 獅子の如き男が歯噛みする。 認めたくはないが。なぜ彼がそう思えないのかはわからないが。 現実に起こっていることを考えれば、奴の言う通りなのだろう。 どうする? 憑坐操をどうにかできるという前提が崩れてしまった。 逡巡する間に奴は喋り続ける。 「お前の負けだ! 二重にな!」 叫ぶ奴の手元に鈍い光。 光剣ではない。何の変哲もないバタフライナイフ。 体を覆う膜が輝きを失った。 ずぶり。 神凪ひかりの腹にナイフが突き刺さる。 そして。 彼女の目つきがまるで別人のように変わった。 その表情は明らかにひどい苦痛に襲われている人間のそれだ。 彼女の口が開かれる。 悲鳴でも嗚咽でもなく。 切れ切れと、恐らくは本心からの言葉。 「構わずに、奴を、追って。私は、ここで、死んでもいい」 憑坐操は彼女の中からいなくなった。 獅子の如き男は空中の何かを目で追った。 「諦めるな」 彼の目の眼光は消えない。 彼はもはや見えない何かには目もくれず、倒れた少女に寄り添った。 「お嬢ちゃん! 手伝ってくれ!」 「……はい!」 矢継ぎ早に指示が飛ぶ。 袋から言われるままに幾つもの箱を取り出す。 箱を開ければ清潔なタオル、圧縮されていたらしい毛布、なんだかよくわからない薬。 「本来なら失血死の恐れがあるからナイフは抜かない。が、この河童の万能膏がある。合図したナイフをまっすぐ引き抜く。お嬢ちゃんは同時に薬を塗ってくれ」 「はい!」 「3、2、1、今!」 ナイフが抜けると同時に血が迸る。神凪ひかりは声にならない悲鳴を上げて痙攣し、狙いが定まらない。 だが綺麗に塗るより早さが大事だ。べったりと広い範囲に塗りたくった。 「それでいい。どうしても血は抜けちまう。お嬢ちゃん、足を持ち上げてくれ。下に毛布を敷く」 「はい!」 ショック体位という奴だ。指示に従い、ついでにベルトを緩めておく。 「救急! ナイフで刺された! 止血はしたが傷が深い――」 「大丈夫だ! すぐに助けが来るからな――」 彼が電話をしている間、俺は神凪ひかりに声をかけ続けた。 「どう、して」 彼女は何とか意識を保っている。 俺には声をかけることしかできないが。 「あいつを、止めないと」 「そんなのは後からどうとでもなる! 今は生きることを考えろ!」 その声に迷いはない。奴に有効打を与える当てがなかったとしても、決して諦めないのだとわかる。 「あなた、何者……?」 「ハッピーさん、と呼んでくれ」 神凪ひかりの青ざめた顔が、ほんの少し笑った気がした。 そして力なく目を閉じた。 「おい、しっかりしろ! ……そうか、これは――」 「どうしたんです!」 「あの野郎、ナイフで刺しただけじゃない。呪いを残していきやがった」 「どうにかならないんですか」 呪術に関して俺はなにもわからない。 「俺が進行を食い止めることはできる。だが俺も結局は刀で斬る方が得意だからな。野郎をぶちのめした方が確実なんだが」 「ハッピーさん」 そう呼ぶと怪訝な顔でこちらを向いた。 ハッピーさん。警部よりはよく似合う呼び名だ。心からそう思う。 「俺が奴を追うよ。考えがある」 「……できるのか? 一人で?」 「ああ」 頷き応える。 出会った時の彼のように力強く。 「さっき会った時、『助けて』って言ったか聞いたよな。今言うよ。ハッピーさん、神凪ひかりを助けてくれ」 「助けて、か。それを言われちゃあな……」 彼はなにか噛み締めるように目を閉じ、開いた。 「……ああ、行ってこい、万魔!」 その声に背中を押されるように俺は駆けだす。 ここから先は別行動だ。 だが、俺たちやっといいコンビになってきた。 そうは思わないか? ○ 昔からハッピーエンドが好きなんだ。 それはあくまでも「お話」の中でだ。 現実じゃあ、終わり(エンド)自体が気に入らねえ。 『人魚姫』というお話は嫌いだ。 あれに出てくる人魚のお姫様は好きだ。 恋に破れた人魚姫はお姉さまたちにナイフを渡された。 王子か姫かどちらか死ななければならないと選択を迫られた。 そして彼女はナイフを遠くの波間に投げ捨てた、それができる人魚姫が好きだ。 死んで泡となった彼女は空気の精として生まれ変わった。 人間には見えないモノになって、新たな世界に旅立つ前に、恋敵だった花嫁の額にそっとキスして自分を選らばなかった王子に微笑みかけた、それができる人魚姫が好きだ。 物語の続きを考える。人魚姫はそれからきっと、空気の精として幸せになったのだろう。 暑い国に涼しい風を送り、両親から可愛がられる子供を見守り、やがて神様の国へ行ったのだろう。 ヘイヘイ、アンデルセン。 お前の書いた物語は、きっと世界で一番美しい。 それでも、俺とは趣味が合わない(・・・・・・・)。 それだけのことだ。 人魚姫がそれから幸せを手に入れたのだとしても、それまでに望んだ恋は叶わなかった。 そんなことが気にかかる。 それになにより。 死んだら終わりだ。 俺は結局死後の幸せを信じられない。 「だから、お前も生きろ。神凪ひかり」 妖刀武骨を抜き放つ。 呪いの進行を食い止める。それだけで済ますのは妥協ってやつだ。 呪いを斬る。できるはずだ。今度こそ。 俺と武骨で大妖の呪弾だって斬ったじゃないか。 できるわけがない。脇腹から背にかけて、まとわりつくそれがネチャネチャと蠢く。祓えず受け止めるしかできなかったものは幾らでもある。 憑坐操とは深い深い因縁がある。 戦ったことは数知れず。そして奴が今ものうのうと過ごし新たな犠牲者を生み出そうとているのは、一度として勝つことができなかったからだ。 新たな呪いを背負うつもりか。今度こそ潰れるであろうな。 諦めろ。諦めろ。ぶるぶると震えるそれが囁きかける。 だが、諦めろなどと言われれば。 「絶対に嫌だね!」 躊躇なく、妖刀武骨が閃いた。 再び舞い散る髪が一筋。 さあさあ幾度も繰り返されたるこの物語。 恐るべき悪霊呪術師と獅子の如き怪異殺し。 これぞまさしく現代に生まれし御伽噺。 果たして此度の結末は。 ● 考えはある。 それは嘘じゃないんだが。 問題も一つ。 憑坐操に肉体はない。 その本体は青白い魂魄。 親父からも、ハッピーさんからもそう聞かされた。 先ほど神凪ひかりからそれが抜き出ていたのだろう。 俺には見えなかったんだが。 どうやら俺には霊感というやつがないらしい。 ヘイヘイ、神様。 ここにきてそれはどうなんだ。 まあそれでも作戦を実行できないことはない。 主導権があっちに移るというだけで。 「おい憑坐操! 逃げ出した死にぞこないの負け犬め! 俺の体が欲しいんだろう! 欲しけりゃ自分で取りに来いよ!」 とりあえず奴が消えたと思われる方角に叫んでみた。 後は待つしかない。 いや、待つまでもなかった。 「フッ、遠藤ハピィならば敵として戦いにもなっただろうが。狩られるだけの獲物が一人でノコノコやってくるとはな。……おっと人間もどきは一匹と数えるべきだったかな」 見知らぬ男だ。目は虚ろ。ひくひく動く口元は人を小馬鹿にしている。 「無条件で憑依できるのは非魔人の人間だけでな。お前に殴られたら大怪我してしまうかもしれない。抵抗するなよ」 ごつ、と鈍い衝撃。 口の中に鉄の味が広がる。 いきなり顔を殴りやがる。 ぐい、と髪を引っ張られる。 慣れない質の痛み。 頭も腹も遠慮なしに殴り、蹴る。 反撃はできないが意識を失うわけにもいかない。 能力を使うのも今は無意味だ。 「一応言っておこう、能力を使っても無駄だ。俺はお前の意識が宿る体を痛めつける。お前が気絶するまでな」 「お前の能力、『精神牢獄(マインド・バインド)』。憑依先の精神を牢獄に閉じ込める力。つまり相手に本来の精神が前提だな。死体なら蘇らせることもできるらしいが、俺の体は事情が違う」 「ほう、それも遠藤ハピィから聞いていたか」 そう、空の体を奴の前に出せばそれに乗り移るというのは俺の勘違いだった。 実際にはどう転ぶかなんとも言い切れないが、不確定要素のある行為は避けるだろう、というのがハッピーさんの見立てだ。 「つまりお前はこう考えているのだろう。このまま能力を使わず意識を失った振りをする。そして俺がお前に憑依するタイミングでお前の力を使う。そうすれば俺とお前の意識は別々の体に宿り俺の能力はエラーを起こして無能力と同然になる、とな。馬鹿が! 俺はお前らみたいに甘くはねえ! 確実に殺してから乗り移ればいいんだよ!」 「……そりゃそうだ!」 狙いがばれたならしょうがない。 顔を狙う打撃を今度は腕でガードする。 腹も、首も、できる限り身を固める。 「そんな時間稼ぎに何の意味がある! どうせ俺には手出しできねえだろうが! 死ね! 死んじまえ!」 ガード。ガードだ。 奴の拳をよく見ろ。 弧を描く軌道で顎。 下からすくい上げるように鳩尾。 大丈夫だ。防げる。 「意味はある。お前は賭けに出ざるを得ないさ。神凪ひかりに残した呪いが原因でな」 「ああん?」 「俺はハッピーさんに『神凪ひかりを助けて』って言ったんだ。ならそうするさ。ハッピーさんは呪いを破る。そしたら呪術の世界には呪詛返しってのがあるんだろ。お前は相応のダメージを受ける。普通の体じゃ死んじまうだろうな。それを防ぐ方法は一つだ。俺は一人で一万人分の体を持ってる。俺に憑依して呪いが予備の体に分散するのを期待するしかない」 「はっ」 馬鹿にしたように吐き捨てる。 「確かに呪詛返しがあればそうかもな。一万分の一の足りない頭でよく考えたじゃねえか。だが絶対にそれはない。感覚でわかるぜ。神凪ひかりに残した呪いは既に遠藤ハピィに移っている。そして奴はもう死ぬ寸前だってな! お前の希望はとっくに潰れてるんだよ!」 「いいや!」 笑顔を作る。否定する。 憑坐操の顔は嘘をついている顔じゃない。 それはわかる。それでもだ。 「死ぬ寸前ってことはまだ死んでないってことだ! 俺もハッピーさんもまだ生きてる! そして俺たちは諦めが悪い!」 ○ ビルとビルに挟まれた場所。 影が覆うその場所で。 人知れず、どろりと闇が広がり始めた。 闇の起点は地面の上だ。 他の場所よりやや盛り上がっている。 悪夢のような色彩の闇。 よく目を凝らせばその下に獅子の如き巨漢が横たわっているのが見える。 正確に言えば、彼の背から闇があふれ出している。 今までどれだけのモノを背負っていたのか。 彼が立って動いていた時の見かけよりも、ソレはずっと重く深いモノであった。 彼に向かう呪いであったそれは最早なんの方向性もなく、無秩序に広がりこの世を侵し始めようとしていた。 元は一人の人間に向けられたモノであっても。 そもそも呪いの主も求める禍の質も違う。 結果、掛け合わされたそれは方向を見失い混沌となった。 彼を見逃すのではなく、彼を含む世界全てに仇なす混沌に。 それを止める者はいない。 悪とか、不幸とか、悲しみとか、諦めとか、そういうものを吹き飛ばす、都合のいいなにか。 神様とか、正義の味方とか、そういう者は。 現実にはいない。 当たり前のことだ。 私自身がそれを知っている。 私はそれになれなかったし、私のところにそれがやってくることもなかった。 だからこそ、立ち上がる。 そういう者じゃない、ただの人間でしかない彼らが、そういう者のように戦ったのを知っているから。 光は今もこの手の中にある。 光剣を杖に立ち上がる。 怪異に干渉するという刀に手を伸ばす。 二つの刃を重ね合わせる。 どれだけの意味があるか分からないけど。 闇の中に浮かぶ無数の目が無機質な目線を私に向ける。 不思議と嫌悪感はわかない。そんな気力もないというのが正しい。 傷んだ体中から搾りかすのような力を集めて両手に込める。 ただ一度、振るう。 一閃、などとはいかない。 水たまりを棒でかき回したように、一瞬よりも短い間引いた闇はまたすぐに寄せて返す。 構わない。 もう一度、振るう。 彼の背から闇が離れるように。 振るう。 闇は周囲に広がり、波打って帰ってくる。 振るう。 闇は世界中へと広がっていく。 振るう。 ただの私にできるのは、諦めないことだけだ。 振るう。 振るい。 振るって。 いつの間にか、闇は見えなくなっていた。 決して消えたわけじゃない。 ただ彼一人の背に集まっていたものが世界中に広がったことで薄まっただけ。 きっと、何かが解決したということはないのだろう。 むしろこれから、あれらの闇が世界中のどこかで新たな怪異となるのかもしれない。 それでも。 遠藤ハピィは生きている。 「……やるじゃねえか、神凪ひかり」 ぼろぼろの彼は倒れたまま、視線だけを衣こちらに向けて、私を安心させるように笑った。 ● 「なんだ……?」 憑坐操は動揺していた。 「なんだ、この感覚は。奴はまだ死んでいないぞ。なぜ呪いが拡散する」 「俺の言った通りなんだろ」 「馬鹿な」 憑坐操は恐れている。 呪詛返しをだ。 正直に言えば俺も正確な状況はわからない。 だが、押し通す。 「さあ、呪詛返しが始まるぜ。その人を解放するなら、俺はお前の魂魄を無抵抗で受け入れてやる。あとは賭けだ。どっちが正確なタイミングを掴めるか。お前が俺を精神の牢獄に捉えるか、俺がお前を空っぽの体に置き去りにするかだ」 「馬鹿な、馬鹿な……! 嘘だ!」 こいつは恐らく精神的には強くない。 体の苦痛は他人に押し付け、強くなるためにすることが他人の乗っ取り。 そんな奴が強いわけがない。 こいつは絶対に恐怖に負ける。 俺に人魂が見えなくても問題ない。 なんなら目を瞑ってても賭けに勝てる。 「嘘だあぁぁぁ!」 男の顔から表情が抜け落ち崩れ落ちる。 今回は呪いを残して精神を壊す余裕もなかっただろう。 奴は今、少しでも安全な可能性に逃げこむことしか考えていない。 俺は余裕綽々で能力を使う。 ……銀時計が光った後に、俺は制服姿で立っていた。 手錠もポケットにしまってある。 一方、先ほどまでの俺の体は。 私服姿の俺は地面にはいつくばっている。 「ひっ」 こちらを見るなり悲鳴を上げた。 きっちり入っているらしい。 「どうだ。お前の能力、もう使えないんじゃないのか」 「……っまだだ! 俺自身はそもそも魂魄体となっている! この体を殺せば抜け出せる!」 なるほど。新たに憑依するにはその体を殺すプロセスを踏む必要がでてきたと。 対象を精神牢獄に閉じ込めるのと憑依するのと、あくまで一セットの能力ということか。 立ち上がる様子のない憑坐操を一発殴る。というか軽く小突く。 「うわあぁぁぁ!?」 思った以上の反応だ。 無理もないのかもしれない。 先ほど散々攻撃を食らっていたから全身が痛んでいるはずだ。 こいつは痛み自体に慣れていない。 「お前自身が痛みを感じるのは何年ぶりだ? 多分死ぬのはもっと苦しいぞ。お前に耐えられるのかよ」 「あ、ああ……」 地面に伏せたままの憑坐操ががくがくと震える。 ちょっと可哀想になってきたがもう一押し必要だ。 その体を引き起こして首にかかった銀時計を掴み取った。 「そ、そうだ。お前の能力。俺にも使えるはずだ。体を入れ替えればこの痛みもなくなる」 「……根本的な解決になってないが。それに――」 ぐっと手に力をこめる。腐っても魔人の力だ。 銀時計が音を立てて割れた。 「――俺の能力を使えるならその制約も受けてもらう。起点になるこの銀時計がなくなればもう能力は使えない」 ばらばらと、砕けた部品が手から零れた。 大事な時計だった。 親父からもらった時計。 寂しいような、悲しいような、なんとも言えない気持ちになる。 「な、な……」 憑坐操は先ほど以上になにか恐ろしいモノを見るような目をこちらに向けた。 「あ、あり得ない……自分の、魔人能力を、こんな……」 そして。それだけ言って、白目をむいてぶっ倒れた。 「まあ、わからないかもな。『最高の生物』を目指してる奴らには」 だが俺にとっては問題ない。 戦いはついに終わったのだ。 多分、呪詛返しは来ていないのだが。 ○ それから。 すぐに救急車だの警察だのがやってきた。 神凪ひかりは病院に連れて行かれたが、ハッピーさんは俺の事情聴取に付き合っていた。 体を入れ替えた俺と違って彼もさっさと治療を受けるべきなのだが。 まあ、ありがたいことではある。 で、夕方には事情聴取も終わり。 「送っていくぜ」 「いや、病院行きなよ」 「じゃあ病院への分かれ道まで」 「しょうがないな」 そんなわけで二人で歩く。 「そういえば、あの使わなかった呪具な」 「そういやそんなもんあったね」 「昔、師匠から貰ったんだよ」 「師匠って?」 「怪異との付き合い方を教えてくれた人だ。あっちは呪術師で俺はちょっと違うわけだが」 「どんな人だったの?」 「ヒーローみたいな人だった。助けを求める人のために日本中の怪異と戦ってた」 「立派な人だ」 夕日がハッピーさんを照らしている。 落ちかけた日のオレンジの光は顔の片側だけを照らしている。 「ああ、だが戦いの中で力を求め始めた。みんなを守るには強い力が必要だってな」 「まあ、弱いと大変だよな」 「そのままでも十分強かったんだがな。ある日ついに人間を超えると言い出した。寿命が近かったのもあるが、本来禁じられてる術に手を出して不滅の存在になるっつってな」 「……おい」 「で、その時に『もしも心まで人間でなくなってしまったらこれを使って止めてくれ』と託されたのが例の呪具だ」 「ひでえな」 「ああ、後始末を押し付けられた。……結局師匠は死んじまった。ずっと昔に」 「そうか」 「だからさ」 ハッピーさんはガシガシと頭をかく。鬣のようなオールバックがふわりと乱れた。 「ずっと前に終わっちまってたんだよ。師匠の命はな。それでも、終わったものだけじゃない。俺が師匠の教えを覚えている限り」 「……その呪具、大事にしなよ。使い道はもうないかも知んないけどさ」 「ああ」 ハッピーさんはニカっと笑う。 獅子に似ている、ただの人間のおっさんだ。 「小腹すいたな。なんか食うか? 箱の中には色々あるんだ」 「いや俺は食べ物食わないから」 「あ、あーそういや、そうか、悪い――」 「――ああいや、そうだ。カフェオレある? 飲み物は平気だ」 「ああ! それならコーヒー牛乳! 十勝平野の大清水牧場の牛乳とイタリア産コーヒー豆『ネロ』のエスプレッソを合わせた――」 ● 「万魔、ずいぶん遅くなったじゃない? どうしたの? LINE見なかった?」 「ああ、いやまあ色々あって――スマホ上着の中だ」 「上着もそうだけど、マフラーもどうしたの?」 「……喫茶店に忘れた」 戦いは終わり、日々は続く。
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編集にあたって ver1.02 コンボ詳細A始動 2A始動 遠A始動 JA始動 J2Aカウンターヒット始動 J8Aカウンターヒット始動 2C投げ始動 必殺技始動 幽明系始動 編集にあたって 増えてきたので始動技別に分けました 条件なし>特殊技>位置>スペカ>天気>反射コンボの順に上から記載しています 追加する方はなるべく条件のあったところにお願いします コマンドは全て右向き時のもので記述してください 限定事項の記述は見やすくするためにカラーリングをお願いします。特殊技のスキカを使用しないと繋がらない・スペルカードを使用しないと繋がらない等のカードに関する限定事項にはレッドでカラー指定を。 端付近でのみ繋がる等の位置関係に関する限定事項にはグリーンでカラー指定を。 蒼天のみ発動可能等の天候に関する限定事項にはブルーでカラー指定を。 コマンド表記 表記 意味 7 8 94 * 61 2 3 テンキーの配置で方向を表している。5・Nはニュートラルの意味。 A 打撃 B 弱射撃 C 強射撃 J ジャンプ HJ ハイジャンプ HS 飛翔 D ダッシュ BD バックダッシュ jc ジャンプキャンセル CH カウンターヒット 溜 ホールド攻撃 ver1.02 コンボ詳細 A始動 射撃や着地直前のJAから繋がるものも多い 妖夢の基本なので自分の実力に見合ったコンボを必ず出せるようにがんばって練習しよう コマンド rep ダメージ 限定事項 消費霊力 備考 AAA 未来永劫斬 ◎ 4346 スペルカード 0 スペカ使用コンボ 単発で当てたほうが威力は高いが、A始動で大量の体力を奪えるのが魅力。迷津慈航斬の場合、画面端だと1ヒット増えて威力も4025になる 迷津慈航斬 ◎ 3793 スペルカード 0 弦月斬(C)1段 生死流転斬2段 結跏趺斬 憑坐の縛 - 2910 特殊技蒼天 4 コストパフォーマンスは低い。かっこよさ重視か?JA始動で3201。画面端だと結跏趺斬が1ヒットしかせず威力が下がる。 反射下界斬 AAA 反射下界斬 JA J8A ◎ 3108 反射LvMax画面端 2 A始動の反射下界斬コンボ 少しでも離れると二回目のAが遠Aになるので遠A 反射下界斬 JA J6Aに変える(3027) 6A 弦月斬(C) ◎ 2230 無 1 威力は高いが、弦月Cを最速入力しなくてはならない。その為、通常戦闘では狙いにくい上、ガードされている時につい誤って出した場合は確反。咄嗟に出せる上級者向け。 憑坐の縛 JA J6A ◎ 2723 端付近 1 端が遠いとJAが届かない JAを省くと端が遠めでも繋がる(2514)完全に端だと憑坐の縛が外れるので注意 6C 弦月斬(C) ◎ 2267 中央~端 2 弦月斬(C)は2段目のみが当たるが、端付近限定で2ヒット(2534)。完全に端だと6Cが外れるので注意。 憑坐の縛 ◎ 2464 中央~端 2 端が近い場合は憑坐の縛を少し遅らせて出す。完全に端だと6Cが外れるので注意。 心抄斬(B) ◎ 2554 特殊技中央~端 2 完全に端だと6Cが外れるので注意。心抄斬(B)は距離によってタイミング調整が必要。心抄斬をCにするとダメージが最大でも2442になるかわりに、拾いやすくなる AAAA 弦月斬(C) ◎ 2107 無 1 お手軽コンボ 画面端の場合、弦月斬を最速入力しないと相手キャラ次第で入らない 憑坐の縛 ◎ 2023 無 1 上のコンボより僅かに威力は劣るが、こちらは受身不能な上、半身を相手にくっつけられる。起き上がった後も攻めを維持しやすいが憑坐の縛の入力タイミングは結構シビア。 憑坐の縛 J6C ◎ 2257 端以外 2 基本コンボ 端に近いとJ6Cが当たらないが、ダウンはする。 心抄斬(B) ◎ 2132 特殊技 1 スキカを用意しておく事が条件になるが、一番上のコンボよりさらにお手軽。AAAA 弦月斬(C)の入力が間に合わない、という初心者にもお奨め。結跏趺斬の場合、端だと1ヒットしかせずダメージが1819まで減る。Bで出しても威力が変わらないので、間に合わない人はBで出そう。 結跏趺斬 ◎ 2147 特殊技 1 結跏趺斬(C) 心抄斬(B) ◎ 2698 特殊技蒼天 2 特殊技のスキカと天候が条件だが、どこからでも入る高威力コンボ どちらも受身不能威力重視なら心抄斬、後の展開重視や心抄斬をデッキに入れていない人なら憑坐の縛で結跏趺斬は使い勝手がいいのでデッキに複数入れている人も多いはず 問題は天候か 憑坐の縛 ◎ 2610 AAAAA 3A ◎ 2305 画面端 0 端Aフルコン追撃の基本3Aはほぼ確実に決まる上、起き攻めがしやすい決めた後はスキカを安全に使うことが出来る 現世斬 - 2790 スペルカード 0 Aコンボはどこでも現世締めが有効。最後のAが終わってから時間をたっぷり置いて相手のバウンドを拾うようにスペルを発動させるのがコツ。最後のAが終わってから即発動させても当たるがChainSpell補正が入ってしまう(2673) 弦月斬(B) ◎ 2427 画面端 1 弦月締めのA5連バージョン弦月斬(C)でも入る(2489)が、入るタイミングがキャラによって違う為不安定 JA J6A ◎ 2528 画面端 0 霊力を消費しない壁端コンボ ダメージが高いJAや射撃などからコンボに入った場合、J6Aが当たる前に受身を取られてしまうので要注意 J6A - 2528 風雨 0 風雨時はAAAAAをジャンプキャンセル出来るため、JAで追撃出来る画面のどこでも決められる上、JAや射撃からコンボに入った場合でも問題なく繋がるのが魅力 J8A ◎ 2543 風雨 0 風雨時ではJ8A追撃も可能 DA 憑坐の縛 ◎ 2516 画面端 1 上のコンボより僅かに威力は劣るが、半身を相手にくっつけられるので攻めの継続がしやすいこちらもJAや射撃などからコンボに入った場合、憑坐の縛が当たる前に受身を取られてしまう 弦月斬(B) - - 画面端 1 DA締めコンボの弦月版。コマンドの入力順序的にはこちらの方が安定か 2A始動 出が早いがモーションも短いので弦月斬に繋げるのは難易度が高い 繋ぎをミスすると高確率で反撃を貰うので要練習 コマンド rep ダメージ 限定事項 消費霊力 備考 2A×2~6 弦月斬(C) ◎ 1491~ 無 1 2A始動基本コンボ、通称小足弦月。距離に応じて2Aの回数を増やせばダメージUP2Aは2~4発くらいが目安、端でダッシュから当てれば最大6発 弦月斬(C)1段 現世斬 ◎ 2262~ スペルカード 1 上の2A始動コンボからスペカに繋げたもの距離に応じて2Aの回数を増やせばダメージUP迷津慈航斬は画面端だとヒット数が増える(3619~) 冥想斬 - 2277~ スペルカード 1 迷津慈航斬 ◎ 3185~ スペルカード 1 成仏得脱斬 - 3277~ スペルカード 1 未来永劫斬 ◎ 3888~ スペルカード 1 生死流転斬2段 憑坐の縛 J6A - 2642 画面中央蒼天 3 ダメージは2A4ヒットからの物霊力消費が激しいがこういった場面でダメージを取っておいた方がいい。現世斬の場合壁との距離が遠くJ6Aが届かない位置でも拾える 現世斬 ◎ 2915 画面中央蒼天スペルカード 3 生死流転斬2段(or3段) 結跏趺斬(B) 憑坐の縛 ◎ 3063~3103 蒼天 4 結跏の当たりによってダメージが若干変動。霊力消費が大きいがダメージもなかなか。生死は基本2段キャンセルだが画面端なら3段目キャンセル可能 遠A始動 遠Aは出の速さ、リーチともに優秀な為、意外と決まる機会は多い コマンド rep ダメージ 限定事項 消費霊力 備考 遠A 6A 弦月斬(C) - 1916 無 1 遠Aがある程度深く入っていれば6A後最速のC弦月で拾える。限定項目無しの遠Aコンボではダメージが高い方だが魔方陣無しで受身を取られる上、弦月をミスればこちらがスキだらけなので注意 弦月斬(B) - 1826 中央以外 1 画面中央以外では安定して決まるコンボ。ダメージは低めだがダウンを確実に取れるのがメリット。 6B JA J6A ◎ 2524 中央・端以外 1 決められる機会は多い。6Bを2Bにすると楽。 6C 弦月斬(B) - 2169 中央・端以外 2 やや画面端よりの時の安定遠Aコンボ。6Cの壁バンを弦月で拾う為、壁から遠いと最後の弦月が当たらない。完全に画面端だと6Aで相手が吹き飛ばないので6Cが当たらない。 憑坐の縛 - 2169 中央・端以外 2 やや中央よりの時の安定遠Aコンボ。こちらの方が繋がる位置関係の範囲がやや広い上、半霊を相手に付けられるメリットがある。 現世斬 ◎ 2609 中央・端以外スペルカード 1 現世があれば完全中央・端以外はどこでも安定して決まる。現世発動時に拾えるギリギリまでディレイをかけるとごく稀にChainSpell補正が外れて威力が増す(2775)事がある。 ディレイ6A 6C 弦月斬(B) ◎ 2169 画面端相手空中 2 遠Aが空中の相手に当たった場合のコンボ空ガ不能からのまともなコンボだが当たる機会が…弦月はCでも決まる(2001) 反射下界斬 JA J6A J6C - 2337 反射LvMax 2 反射LvMax時は遠Aが入ったらとりあえず反射下界斬で安定。 (遠A 反射下界斬 )*2 J6A ◎ 3108 反射LvMax画面端 3 遠A始動の反射下界斬コンボ、高威力版 JA始動 JAは非常に出が早いので空中での起点になる こちらも妖夢の基本なので実力に見合ったものを必ず出せるように練習していこう rep コマンド ダメージ 限定事項 霊力 備考 ○ JA J8A J6C 1944 空中 1 空中の相手にJAを当てた時用 ゆっくり繋げても充分間に合うため簡単どこでも決まるが、後方に飛びながらのJAからだとJ8Aが繋がらないので要注意 ○ JA (J8A) J6A J6C 1902(2337) 空中中央~端 1 空中の相手にJAを当てた時用 相手との高さ次第でJ8Aが入る妖夢は足が速いので、画面中央からの6Aや6Cカウンターヒット~壁バウンドもダッシュ~JAで拾えるそのまま空中コンボを叩き込もう ○ JA J6AorJ8A J6C 前ダッシュ JA J6AorJ8A 2504~2623 空中中央~端 1 中央付近時の空中戦用相手との高度に合わせてJ6AとJ8Aを使い分ける確実に行くなら締めは前ダッシュ J6AorJ8Aで妥協するといい(2300~2372) ○ JA J6AorJ8A J6C 後ダッシュ JA J6AorJ8A 2504~2623 空中画面端 1 画面端時の空中戦用相手との高度に合わせてJ6AとJ8Aを使い分ける確実に行くなら締めは後ダッシュ J6AorJ8Aで妥協するといい(2300~2372) ○ JA J6A J6B 着地 JA J8A J6C 2600~2772 空中端→反対端へ向いている時以外 2 J6Aの慣性を利用して相手を半画面吹き飛ばし往復させるコンボ着地後の追撃はHJで拾うのが望ましい当たりの条件によってはコンボが繋がらない事が多い(J6Bが画面端で発動してしまった場合・コンボの起点が低空であった場合) ○ JA J8A JB 前ダッシュ JA J8A 2700前後 空中画面端 1 空中画面端での高ダメージ版 高度を選ばない簡単かつ高度を選ばないためコンボミスが起こりにくい相手が高く浮き過ぎている場合は前ダッシュ後のJAを省けば繋がる(2400前後) ○ JA J8A J8A JC 前ダッシュ JA J8A 2900前後 空中画面端 1 空中画面端での高ダメージ版 高度高め用ある程度の高度がないと、2回目のJ8Aが出せないので要注意 ○ JA J8A JA 着地 JA J6AorJ8A J6C 2900前後 空中画面端 1 空中画面端での高ダメージ版 高度低め用高度が足りなくてJ8A J8Aが出せない時に役立つJA 着地 JAの繋ぎが少々シビア 特に小さいキャラには決め辛い ○ JA J8A JA 着地 JA J8A JC 前ダッシュ JA J6AorJ8A 3300前後 空中画面端 1 空中画面端での最大ダメージコンボ 高度低め用高難度かつ高威力 霊夢、魔理沙、萃香、レミリア、紫、幽々子、衣玖にしか決められない ○ JA ディレイJ8A J2B(スカ) 前ダッシュ JA J6A J6C 2607 中央 2 J2Bはキャンセルが早くかかるから出来る 実戦コンボの限界? ○ JA ディレイJ8A J2B 3飛翔JA J2Bヒット 着地 登JA J8A J6C 3000~ 中央 1 中央での最大コンだが実戦で決めるのは難しい J2BがフルヒットするとJ8Aの時点で魔方陣が出る模様 ○ JA ディレイJ8A J2B 3飛翔JA J2Bヒット J6A ~2780 中央 1 上記コンボの登JAが安定しない人用 ダメージはJ2Bフルヒット時(Limit110%)のもの J2Bのヒット数でダメージが変わるが、3つ以上ヒットしなければ魔方陣が出ないのでJ6Cでの追撃が可能 ○ JA J8A JB 空ダ JA J8A 2720 画面端 1 J6C 後空ダ系のコンボよりダメージが高く、難易度も変わらない J2Aカウンターヒット始動 rep コマンド ダメージ 限定事項 霊力 備考 ○ J2A(CH) 2C jc JA J6AorJ8A J6C 2498~2685 どこでも 2 C射の当たる回数でダメージがちょっと変わる JA J8AのとこでディレイかけてやるとC射が当たりやすいかも 画面端密着のとき限定だけど、最大で2685出すのを確認した ○ J2A(CH) jc J2B ダッシュ JA J8A 2620前後 どこでも 1 安定して2600オーバー出せる ただ、J2Bが全弾当たらないとちょっとダメージが下がる ○ J2A(CH) jc J2B 弦月斬(C) 2544 どこでも 2 こんな状況実戦ではまず無いが、J2Aを当てた直後に花曇になったときのための最大ダメコンボ J2Bを低い位置で当てないとC弦月が入らないので注意 ちなみに、疎雨(昇竜LVMAX)のときに使うと2806叩き出す ○ J2A(CH) ホールド6A JA J8A 2718 端付近 0 画面中央からちょっと端寄りのとき限定 J2Aで着地した後に少し後ろに歩くとタメ6Aが入りやすいかも ○ J2A(CH) ディレイ立C 垂直登JA 下JA J8A J6C 2820 画面端 2 ○ J2A(CH) JA J8A C 前ダッシュ JA J6AorJ8A 2820付近 画面端 1 霊力1で良ダメージ C 前ダッシュ JAが若干シビア。前ダッシュを最速で入れる気分で入る ○ J2A(CH) 下りJA ディレイJ8A J2B(スカ) 前ダッシュ JA J6AorJ8A 2730or2747 中央 1 最後のJ8Aは高度調整が難しい コツは追撃最初のJA、次のJ8Aともにキッチリディレイかけて遅めにやること ○ J2A(CH) 下り前JA 着地 登りJA J6A J6C 2759 画面中央 1 お手軽に2700オーバー叩き出す タイミングは慣れれば簡単前ジャンプは結構遅めでも大丈夫なのでCH確認してからで余裕 J8Aカウンターヒット始動 rep コマンド ダメージ 限定事項 霊力 備考 J8A(CH) B 前ダッシュor飛翔 Bヒット JA J8A J6C 2800前後 どこでも 2 魔方陣 J8A(CH) 着地 JA J6A J6C 2551 画面端 1 簡単コンボ 魔方陣 J8A(CH) 着地 JA J8A JC ダッシュ JA J8A(J6A) 3100(3082)前後 画面端 1 高ダメージ版 魔方陣 高さ判断が必要 J8A(CH) 未来永劫斬 4425 スペカ 0 未来永劫斬の単体ヒットが4760なので十分使うことが出来る 2C投げ始動 rep コマンド ダメージ 限定事項 霊力 備考 ○ 2C 折伏無間(CorB) A 前ダッシュ AAAAA 1660 どこでも 2 簡単コンボ 画面端ではB投げで端を維持、このとき屈Aを1回挟むことが出来る ○ 2C 折伏無間(CorB) A B 前ダッシュ AAA 6Aor心抄斬(B)or現世斬 1950~ どこでも 3 安定コンボ 画面端ではB投げで端を維持 ○ 2C 折伏無間(B) A 6B 前jc JA 着地 AAA 6Aor心抄斬(B)or現世斬 2150~ 画面端 3 難易度高 妖夢・レミリア・萃香・優曇華には2Cヒットの具合によりコンボが途切れてしまう事が多い〆は6Aで2150前後、心抄だと2250前後、現世だと2500前後 ○ 2C 折伏無間(C) A B 後jc 低空前ダッシュ JA 着地 AAA 6Aor心抄斬(B)or現世斬 2150~ 中央 3 難易度高 ○ 2C 折伏無間(C) A B 後jc 低空前ダッシュ JA 着地 AAA 折伏無間(C) 未来永劫斬 1946~ 中央 2 遅めに出すと永劫が表ガードになる ○ 2C 折伏無間(B) A 6B C 前jc JA 着地 AAA 折伏無間(C) 未来永劫斬 1869~ 中央 3 ↑の画面端ver 必殺技始動 条件を満たしていれば狙う価値はある rep コマンド ダメージ 限定事項 霊力 備考 ○ 悪し魂 JA J8A J6C 1906~2606 特殊技 2 悪し魂がヒットした時の追撃コンボ技の繋ぎをやや遅らせていかないと、J6Cが出せないので注意が必要 ○○ 折伏無間(C) 現世斬 1687 特殊技スペカ 1 スペカ使用コンボ 単発で当てたほうが威力は高いAAガードされた時にキャンセルや2A Bキャンセルで掴んだり、ダッシュ投げを狙っていくのが効果的未来永劫斬だと3634になるためこっちが本命 ○ 2C 折伏無間(C) 前ダッシュ AAAAA 約1400~1700 特殊技 2 投げコンボ 予め2Cを仕込んでから掴む事で追撃が出来る直接掴むより発生が遅くなってしまうものの、掴んだ時のリターンが大きい ○ 反射下界斬 AA(A) 反射下界斬 JA J6A 2930(2751) 反射LvMAXor疎雨 2 起き攻めに置いた反射下界斬がHITした場合はこちらAの3段目はすばやく入力しないと入らない。HIT確認したい場合や高さが合わない場合は2段目から繋いだ方が安定する ○ 反射下界斬(重ね) 反射下界斬*2 JA J6A 3350 反射LvMAXor疎雨 2 画面端で起き攻めに置いた反射下界斬がHITした場合はこちら 幽明系始動 実戦で決めるのは非常に難しいが、幽明使いなら是非覚えておこう rep コマンド ダメージ 限定事項 霊力 備考 ○ 幽明の苦輪or幽明求聞持聡明の法 2A×2~7 弦月斬(C)or心抄斬(B) 2471~3637 スペカ(特殊技) 1 分身スペカ使用中のコンボ 決められる機会は多くない2Aの回数に比例してダメージが伸びるあまり欲張らず、分身が切れる前に締めの必殺技を出した方がダメージが高い分身はキャンセルが速すぎると行動を追随しないので、気持ち遅めに技を繋げていくとうまく行く ○ 幽明の苦輪or幽明求聞持聡明の法 AAor遠A JA J6A 2084~2909 スペカ空中 0 分身スペカ使用中のコンボ 決められる機会は多くない飛んで逃げようとする相手をAで落として繋ぐ、端が近ければ更に追撃出来る遠Aから入った場合、距離の関係で分身のJ攻撃が届かない事が多い ○ 幽明の苦輪or幽明求聞持聡明の法 遠A×1~6 弦月斬(C) 2486~4243 スペカ 1 幽明系スペルのメリットの一つ、遠A繋ぎの基本コンボ相手と自分の間合いを見ながら、次に遠Aが入らないであろうタイミングでフィニッシュ(弦月斬)に持っていくと良し画面端以外からでもいけるが、遠Aが6回入るのは画面端のみ(端以外は最大4回)最初から遠Aを狙うのではなく、遠Aが入れば逃さず繋いでいけるようになりたい ○ 幽明求聞持聡明の法 ダッシュ2A×6 遠A×5 6A 弦月斬(C) 4902 スペカ画面端 1 分身スペカ使用中のコンボ 決められる機会が見当たらないダメージ・ゲージ回収率ともに凄まじいがまさに絵に描いた餅一応、弦月斬(C)のカウンターヒットから幽明求聞持聡明の法を発動して繋げられる
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東方憑依華 ~ Antinomy of Common Flowers. 東方Project第15.5弾。 アンノウンX ~ Occultly Madness 憑坐は夢と現の間に ~ Necro-Fantasia 今宵は飄逸なエゴイスト(Live ver) ~ Egoistic Flowers.
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技表必殺技 スペルカード 各種早見表必殺技レベルアップ効果 射撃技早見表 フレームデータ 更新履歴 技表 必殺技 コマンド系統 技名 使用場所 攻撃属性 備考 反射下界斬 地上 - 相手の射撃を反射する特殊弾 結跏趺斬 地上 射撃 燐気斬 地上 射撃 弦月斬 地上 打撃 折伏無間 地上 投げ 投げ判定(ガード不能、地上の相手のみ)ホールド可能(自動追撃)ホールドなしの場合、ダメージ0で相手を無防備にして突き飛ばす 炯眼剣 地上 - 打撃に反応する当身技(反撃は打撃でガード不能) 生死流転斬 地上 打撃 連続入力で3回まで追加攻撃 心抄斬 地上 打+射 低い部分は打撃、高い部分は射撃 頭上花剪斬 地上 打撃 ホールド可能(性質変化) 憑坐の縛 地上 射撃 ヒットすると半身が相手の頭上に移動する 悪し魂 地上 射撃 奇び半身 地上/空中 射撃 スペルカード コスト 技名 使用場所 攻撃属性 備考 2 人符「現世斬」 地上 打撃 魂符「幽明の苦輪」 地上 - 本体の行動をトレースして攻撃する分身を生成 3 断命剣「冥想斬」 地上 射撃 剣伎「桜花閃々」 地上 磨耗射撃 転生剣「円心流転斬」 地上 打撃 4 断迷剣「迷津慈航斬」 地上 打撃 断霊剣「成仏得脱斬」 地上 磨耗射撃 5 人鬼「未来永劫斬」 地上 打撃 初段ヒット後の追撃は、前半部分は射撃で最終段が打撃 魂魄「幽明求問持聡明の法」 地上 - 本体の行動をトレースして攻撃する分身を生成 空観剣「六根清浄斬」 地上 - 打撃に反応する当身技(反撃は打撃でガード不能) 各種早見表 必殺技レベルアップ効果 コマンド 技名 レベル毎追加効果 Lv1 Lv2 Lv3 LvMAX 反射下界斬 持続時間延長弾拡大最大反射弾数+1 最大反射弾数+1 弾拡大最大反射弾数+1反射弾の弾数+1 持続時間延長弾拡大最大反射弾数+1 結跏趺斬 - 弾拡大ダメージ減少霊力削り減少 ヒット数+1 燐気斬 - 相殺強度CからBへ 弦月斬 B版に打撃無敵付加C版の前進距離増加 B版の攻撃判定拡大C版の前進距離増加 C版の前進距離増加 C版の前進距離増加 折伏無間 - Rate補正軽減 Rate補正軽減 Rate補正軽減 炯眼剣 - 生死流転斬 硬直減少 Cフィニッシュ派生が開放 硬直減少 Cフィニッシュの硬直減少 心抄斬 - 頭上花剪斬 - 攻撃判定拡大 憑坐の縛 半霊吸着時間延長 半霊吸着時間延長 半霊吸着時間延長 半霊吸着時間延長 悪し魂 - 攻撃範囲拡大 攻撃範囲拡大 攻撃範囲拡大 奇び半身 - 弾数+1 弾数+1 ※レベル毎にダメージが10%ずつ上昇する効果は省略 射撃技早見表 +射撃技早見表を展開 通常技 技名 ヒット数 相殺関連 グレイズ耐久数 備考 強度 回数 B系射撃(立B、+B、屈B、JpB、Jp+B) 1 C 1回 1回 5弾出る 立C系射撃(立C、JpC) 1 C 1回 1回 11弾出る 屈C系射撃(屈C、Jp+C) 1 C 1回 1回 11弾出る +C系射撃(+C、Jp+C) 1 - - 無制限 1弾出る耐久度1の身代わり判定を持つ 必殺技 技名 ヒット数 相殺関連 グレイズ耐久数 備考 強度 回数 反射下界斬 バリア - - - - 1弾出る攻撃判定を持たない反射可能な相手の弾を反射するLv0時の最大反射弾数は4弾までLvアップで最大反射弾数増加(4-5-7-9-11弾)反射時に専用の反射弾も同時に射出する 反射弾 1 C 1回 1回 Lv0時は1弾反射につき1弾出るLv3以上の時は1弾反射につき2弾出る 結跏趺斬 Lv1…1Lv4…2 B Lv1…1回Lv4…2回 10回 1弾出る 燐気斬 2 Lv1…CLv2…B 2回 4回 B版は2弾、C版は4弾出る 憑坐の縛 1 - - 無制限 1弾出る耐久値1の身代わり判定を持つ 悪し魂 1 B 1回 無制限 5弾出る 奇び半身 1 B 1回 4回 Lv1時は3弾出るLvアップで弾数増加(3-4-4-5弾) スペルカード 技名 ヒット数 相殺関連 グレイズ耐久数 備考 強度 回数 冥想斬 5 - - 5回 1弾出る 桜花閃々 1 - - 1回 磨耗射撃属性14弾出る 成仏得脱斬 10 A 無制限 無制限 磨耗射撃属性1弾出る フレームデータ フレームデータ/妖夢 更新履歴 10/05/07スペルカード一覧をver1.10仕様へ。 10/04/10必殺技レベルアップ効果をver1.10仕様へ。 09/08/17技表を必殺技分だけ作成。スペルカードはコメントアウト中 早見表に必殺技レベルアップ効果の雛形だけ作成。他はコメントアウト中
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デッキ名「憑坐の縛」 Leader Lv2 西行寺 幽々子 Lv2 魂魄 妖夢 3x チームプレイ 3x レーザー避け 3x 獄界剣「二百由旬の一閃」 3x 人符「現世斬」 2x 精神統一 3x 妄執剣「修羅の血」 2x 半幽霊 3x 冥符「黄泉平坂行路」 2x 亡郷「亡我郷」 3x 幽曲「リポジトリ・オブ・ヒロカワ」 3x 桜符「完全なる墨染の桜」 3x 悉皆彷徨 2x ボーダーオブライフ 3x 桜花「未練未酌宴」 2x 永遠を斬る 緋想天で半幽霊にボコボコにされたのでムシャクシャして作りました。レーザー避け信仰やめようかな・・・