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2010年4月13日 2011年2月1日更新 中国のミステリについての文献一覧。日本語で書かれたものを集めている。 ※このページは長い間更新していません。中国ミステリについての文献の一覧は「中国ミステリ史 参考文献 - 中国推理小説120年の歴史」をご覧ください。 ■ブログ:「トリフィドの日が来ても二人だけは読み抜く」 中国に在住の阿井幸作さんが、中国での生活の中のさまざまな出来事を書いているブログ。中国のミステリに関する話題も多い。私が中国の推理小説を読んでみようと思ったのは、こちらのブログの2008年8月28日の記事「御手洗パンダという男」で御手洗熊猫という推理作家の存在を知ったのがきっかけでした。 ■ニュースサイト「Kinbricks now」で不定期連載されている「中国本土ミステリの世界」 上記ブログの阿井幸作さんによる、中国ミステリの紹介記事。 以下、日本での刊行(掲載)年順。 ■李長声(リー チャンション)(2002)「中国のミステリー事情 大衆文学への渇望」 (光文社『ジャーロ』7号(2002年春号))pp.273-277 『ジャーロ』創刊号から掲載されていた企画「世界のミステリーを読む」の第7回、中国編。畀愚(ビイユ)の短編「謀殺」とともに、この記事が掲載されている。 短い記事ではあるが、中国での推理小説の受容から現在にいたるまでの、密度の濃い情報が書かれている。 ■井波律子(2003)『中国ミステリー探訪 ―千年の事件簿から』日本放送出版協会、2003年11月 (未見) 第4回(2004年)本格ミステリ大賞評論・研究部門候補作 (→第4回本格ミステリ大賞 評論・研究部門選評) (最近の中国ミステリについては載っていない??) ■池田智恵(2009)「発展途上の中国ミステリー」 (水天一色『アジア本格リーグ4 蝶の夢 乱神館記』講談社、2009年11月)pp.383-394 中国大陸部のミステリの歴史から現状までを概観した巻末解説。最近の代表的な作家として以下の3人が挙げられている。 御手洗熊猫(ユーショウシー ションマオ、中国語(簡体字)表記同じ) 午曄(ウーイエ、中国語(簡体字)表記「午晔」) 羅修(ルオシウ、中国語(簡体字)表記「罗修」) ※名前の読み方は上記解説に従っている。 御手洗熊猫は、日本語風に読むと「みたらいぱんだ、みたらいくまねこ」。探偵役は御手洗濁(読み方は、上記解説では「ユーショウシージュオ」、原書の表紙には「Mitarai Daku」と書かれている)。 このペンネーム&探偵役の名前のインパクト! そして熊猫の推理小説処女作のタイトルは「二十角館の首なし死体」(短編)(タイトルの訳は上記解説に従う)。 日本のミステリ読者ならとにかく惹かれてしまうペンネーム&タイトル。ぜひどこかのミステリ雑誌で邦訳を掲載していただきたいものです。 羅修(ルオシウ)は、2001年にネット上で作品の発表を始めた推理作家で、2007年5月、心臓病のため27歳という若さで逝去している(http //mysteryworld.cn/shownews.asp?news_id=57)。 『蝶の夢』巻末解説によれば、最も早い時期にネット上で作品を発表し始めた推理作家で、エラリー・クイーンなどの影響を受け、国名シリーズにヒントを得たと思われる作品があるという。 ■天蠍小豬(2009)「中国ミステリー事情」 (島田荘司監修『本格ミステリー・ワールド 2010』南雲堂、2009年12月)pp.27-30 『本格ミステリー・ワールド』では、2008年版(2007年発売)のものから台湾ミステリを紹介するコーナーがあったが、2010年版では中国大陸部のミステリーを紹介するコーナーも新たに加わった。 天蠍小豬(中国語での表記は「天蝎小猪」、この記事では振り仮名は振られていないが、普通に読むと「てんかつしょうちょ」または「ティエンシエ シャオチュー」)氏は、中国で推理小説の解説を書いたり、中国のミステリ雑誌『歳月・推理』で日本ミステリ関連を含むミステリ紹介記事を書いたりしている方。 最近の作家として、アジア本格リーグから邦訳が出た水天一色(すいてんいっしき、シュイティエンイースー)や前述の御手洗熊猫をはじめ、以下の人たちの名前が挙げられている。 ※振り仮名は振られていないのでこちらで振りました。「」内は中国語簡体字表記(同じ場合は略)。 杜撰(ずさん、ドゥージュアン) 文澤爾(ぶんたくじ、ウェンゼル、「文泽尔」) 普璞(ふはく、プープー) 周浩暉(しゅうこうき、チョウ ハオフイ、「周浩晖」) 王稼駿(おうかしゅん、ワン ジアジュン、「王稼骏」) 馬天(ばてん、マーティエン、「马天」) 言桄(げんこう、イェングアン) 江暁雯(こう ぎょうぶん、ジャン シャオウェン、「江晓雯」) 鬼馬星(きばせい、グイマーシン、「鬼马星」) この中では、不可能犯罪ものの短編を書き続けていると紹介されている杜撰が気になる。 関連記事 台湾ミステリについて知るための資料リスト 韓国ミステリについて知るための資料リスト 中国ミステリ 読書案内 中国ミステリ紹介 目次へ
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2011年2月10日 『中国ミステリ史 第六章』では、現在(2011年)の中国の探偵小説(偵探小説)/推理小説/ミステリ事情を紹介している。 目次 第六章 現代の中国ミステリ界第一節 北京偵探推理文芸協会の活動 第二節 現代の中国ミステリ作家 第三節 賞・ランキング・雑誌・その他 おわりに 参考文献 第六章 現代の中国ミステリ界 第一節 北京偵探推理文芸協会の活動 先ほど、前述の中国のミステリ情報サイト「推理之門」を見ていたら、「今日は何の日?」コーナーで「船戸与一の67歳の誕生日」などといった情報とともに「韓国推理作家協会設立から28年」という情報が出ていて、そんな情報まで押さえているのかと驚いた(※ 2月8日)。日本の推理作家団体としては、1947年設立の日本推理作家協会と、2000年設立の本格ミステリ作家クラブがある。韓国には、1983年設立の韓国推理作家協会があり、中国語圏では、台湾に2001年設立の台湾推理作家協会がある。そして、中国でも21世紀になってからこの種の団体が設立されている。2004年設立の、北京偵探推理文芸協会である。(最初に「注」で書いたように、このページでは書籍・雑誌のタイトルや団体名に使われる「偵探」はそのまま「偵探」としている。日本語にあわせて「北京探偵推理文芸協会」と書くやり方ももちろんありうる) 公式サイト 公式ブログ (2009年4月を最後に更新がストップしている) 北京偵探推理文芸協会(北京侦探推理文艺协会、The Beijing Association of Detective and Deductive Literature)は2004年設立。行政(北京市)から正式な認可を受けて成立した中国で唯一の推理小説研究団体。前身は1992年に成立した中国通俗文芸研究会法制文芸委員会である。「法制文芸」は聞きなれない言葉だが、これは第三章で述べた「公安法制小説」と同じ意味である。中国では1949年以降、「推理小説」≒「警察官が、おおやけの安寧(=公安)のため、法と制度に基づいて犯罪を捜査する小説」だったため、日本でいう推理小説は「法制文芸」、「法制小説」などと呼ばれることも多かった。会長は作家の蘇叔陽(そ しゅくよう/スー シューヤン/苏叔阳)、常務副会長は推理小説研究者の于洪笙(う こうせい/ユー ホンション)、そのほかの副会長に三章で紹介した推理作家の藍瑪(らん ば/ラン マー)、理事に三章で紹介した推理作家の何家弘(か かこう/ホー ジアホン)らが名を連ねている。会員は推理作家や推理小説研究者、愛好家からなる。団体名には「北京」と付いているが、参加者は北京出身・在住者に限らない。 この団体は、1998年から3年に一回ほどのペースで、「全国偵探推理小説大賽」(全国侦探推理小说大赛)を行っている。 北京偵探推理文芸協会が主催する「全国偵探推理小説大賽」について 北京偵探推理文芸協会(およびその前身)が主催する「全国偵探推理小説大賽」は、単行本で刊行された作品や雑誌に掲載された作品、さらにはネット上で発表された作品も含め、既発表の作品の中から優秀作品を表彰する賞である。日本でいえば、「日本推理作家協会賞」に当たるものだと言えるだろう。 「全国侦探推理小说大赛」の「大赛」は、コンテスト、コンクール、コンペティションなどの意味なので、元の文字の並びを活かして日本語に訳すのなら、「全国偵探推理小説コンテスト」などとなる。李長声(2002)では、「全国探偵小説コンクール」と表記している。ただ、この訳語だと中国の賞だということが分かりにくいため、このページでは「全国侦探推理小说大赛」を北京偵探推理文芸協会賞と表記することにする。ダガー賞のことを「英国推理作家協会(CWA)賞」と呼んだり、エドガー賞のことを「アメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞」と呼んだりするのと同じことなので、そんなに変わったやり方ではないと思う。 北京偵探推理文芸協会賞1998年 第1回結果 2001年 第2回結果 2004年 第3回結果 (2005年の授賞式開催時に、北京偵探推理文芸協会設立) 2007年 第4回結果 2010年 第5回 (選考中) 第1回では、【1】1950年から1996年の作品を対象とする部門と、【2】1996年8月から1998年8月までの作品を対象とする部門と、【3】1950年から1998年までの翻訳作品を対象とする部門があった。 【1】や【2】では、第1回から台湾や香港の作品(繁体字圏の作品)も受賞している。第2回では、新たに設けられた長編賞を、藍瑪(らん ば/ラン マー)の『凝視黒夜』とともに、台湾ミステリの始祖・林仏児(りん ふつじ、1941 - )の『美人捲珠簾』(美人卷珠帘)が同時受賞している。林仏児のこの作品は、台湾で1986年に発表されたものなので、おそらく簡体字版が刊行された際に賞の対象になったのだろう。また、第3回の長編賞は香港の推理作家・鄭炳南(てい へいなん)の『謀殺方程式』が受賞している。第4回は該当作なし。 1950年以降の約50年分の翻訳ミステリを対象とする第1回の翻訳部門(翻訳作品賞)は16作品が受賞しているが、その中にはドイルやクイーン、クリスティの作品とともに、日本の作品も3作品入っている。松本清張『点と線』(1979年、群衆出版社)、森村誠一『人間の証明』(1979年、中国電影出版社)、夏樹静子『蒸発』(1996年、群衆出版社)である。 第2回以降、翻訳作品賞は毎回1作品ずつ選ばれており、第2回は夏樹静子『Wの悲劇』(2000年6月、中国国際広播出版社)、第3回は『ジョセフィン・テイ推理全集』、第4回は米国の推理作家ケヴィン・ギルフォイルの『我らが影歩みし所』が受賞している。(作品を出版した出版社が受賞する) なお第4回では、同時に「世界華文創作ミステリ大賞」(世界华文侦探推理原创文学大赛)(公募の新人賞か?)の実施が当初はアナウンスされていたが、その後の情報が見つからないので、実際には実施されなかったようだ。 この賞の実施のほか、北京偵探推理文芸協会はブログの説明文によると「イギリスや日本の推理作家との交流や、国際推理作家協会への参加」などを行うと書いてある。サイトを見ると、フランスの推理作家やイギリスの推理作家との交流会の写真が掲載されているが、日本のミステリ界との交流はあったのだろうか? 第二節 現代の中国ミステリ作家 20世紀末から21世紀の中国ミステリを扱った「第五章」では、ネット上の創作ミステリ掲示板から主に本格ミステリを手掛ける新たな勢力が生まれてくる過程を紹介したが、21世紀に入ってそれ以外の作家がいなくなってしまったわけではない。たとえばすでに述べたが、第三章で紹介した推理作家の何家弘(か かこう/ホー ジアホン)は2001年以降、フランス語やイタリア語に著作が翻訳されるなどして、世界で評価が高まっている。また、上で紹介した北京偵探推理文芸協会賞の結果を見れば、『歳月・推理』以外にも雑誌はいくつもあり、またそこで、まだ紹介していないたくさんの推理作家が活躍していることが分かるだろう。 ここでは、汪政(2006年?)に従って、現代中国の推理作家を概観したい(やや古いが)。汪政氏は、ミステリを執筆する作家を二種に分けている。ジャンル小説としてのミステリを書く作家と、ミステリの構造を借りて文学を書く作家である(彼は前者を「本格派」、後者を「芸術派」と読んでいるが、「本格派」は現代日本でいう「本格」とは意味が異なり紛らわしいので、ここでは使用しない)。 ミステリー派(サスペンス、ホラーなども含む広義のミステリー)藍瑪(らん ば/ラン マー)、湯保華(とう ほか/タン バオフア)、葉永烈(よう えいれつ/イエ ヨンリエ)、鐘源(しょう げん/ジョン ユアン) 【新人】 蔡駿(さい しゅん/ツァイジュン)、鬼谷女(き こくじょ/グイ グーニュー)、哥舒意(か じょい/ゴー シューイー) 芸術派馬原(ば げん)、王朔(おう さく)、余華(ユイ ホア)、格非(かく ひ)、海岩(かい がん)、潘軍(はん ぐん)、方方(ほう ほう)、北村(ほく そん)、陳染(ちん りょう) 【新人】 麦家(ばくか)、田耳(てん じ)、須一瓜(す いっか) 上は、汪政氏がそれぞれの代表的な作家および新進気鋭の新人として名前を挙げている作家の一覧である。太字化しているのは、その中でも汪政氏が特に詳しく紹介している作家。これに、2006年創刊の『歳月・推理』で活躍を始めた一群を加えれば、現代中国のミステリ作家がある程度把握できるはずである(もっとも、「芸術派」の作家は「ミステリ作家」とは言えないかもしれないが)。 本格ミステリ派水天一色(すいてん いっしき)、馬天(ば てん/マー ティエン)、杜撰(ずさん)、御手洗熊猫(みたらい ぱんだ) 「ミステリー派」の代表的な作家として名が挙げられている4人については、すでに第三章で紹介した。新人として挙げられている蔡駿(さい しゅん/ツァイジュン、1978 - )は、『ハヤカワミステリマガジン』で一度少しだけ紹介されたことがある。それによると、「上海出身の若手作家」「二〇〇〇年に二十二歳でデビューして以来、高い人気を誇っている作家」「サイコ・サスペンスやホラーが得意で、作品は映画化・ドラマ化もされている」とのこと(2008年6月号、p.166)。同じく新人として挙げられている鬼谷女(き こくじょ/グイ グーニュー)と哥舒意(か しょい/ゴー シューイー)も、サスペンスやホラーを書く作家のようだ。 「芸術派」の代表者として名が挙げられている馬原(ば げん/マー ユアン/Ma Yuan/马原)は、中国で最初に推理小説とポストモダン文学の融合を図った作家で、トマス・ピンチョンやフリードリッヒ・デュレンマット、ソール・ベロー、フランスのヌーヴォー・ロマンなどの影響を受けていると見られるという。王朔(おう さく/ワン スオ)についてはすでに第三章で言及した。余華(ユイ ホア)はすでに何冊か邦訳が出ている作家だが、彼の短編「河辺的錯誤」(河边的错误)は、殺人事件の真相を追求する過程を描くミステリ物である一方で、典型的なポストモダン文学のテクストでもあるという。この作品は、20世紀の中国ミステリの傑作短篇を集めた前述のアンソロジーにも収録されている(第三章参照)。新人の田耳(てん じ/ティエン アル)は、「重畳影像」(重叠影像)が代表作。また、麦家(ばくか/マイ ジア)はデビュー時にその作風が既存の枠組みでは分類不能だと話題を呼んだ作家であり、純文学とジャンル文学をもっとも見事に融合させた作家だと評されている。 その他の現代中国ミステリ作家 天蠍小豬(2009)で挙げられている作家のうち、今までに名前が出ていない作家の一覧を示す。 江暁雯(こう ぎょうぶん、ジャン シャオウェン/江晓雯) 第1回島田荘司推理小説賞1次選考通過作の『紅楼夢殺人事件』(红楼梦杀人事件、2010)など。 文澤爾(ぶんたくじ/ウェンゼル/文泽尔) 「華文ミステリの第一奇書」と呼ばれる『荒野猟人』(荒野猎人、2010)など。 王稼駿(おう かしゅん、ワン ジアジュン/王稼骏) 雑誌『最推理』、『推理誌』(推理志)などで活躍。 普璞(ふ はく/プー プー) 雑誌『最推理』、『推理誌』(推理志)などで活躍。 台湾やベトナムでも著作が刊行されている。 鬼馬星(き ばせい/グイ マーシン/鬼马星) 第三節 賞・ランキング・雑誌・その他 天蠍小豬(2009)では、他国や地域との交流、賞の創設、ランキング企画の実施などが今後の中国ミステリ界の課題だとされている。 華文ミステリ界の賞・ランキング 非公募北京偵探推理文芸協会賞(1998年~/3年に1回) 前述。 公募華文推理大賞(2011年末まで募集、2012年4月に結果発表予定) 短編ミステリを募集。詳細は阿井幸作さんがブログ、またはニュースサイト「KINBRICKS NOW」で紹介していますのでそちらをご覧ください(もともとの賞の名前は「华文推理大奖赛」。阿井さんは「中国語推理小説グランプリ」と訳しています)。 また、台湾では短編ミステリを募集する台湾推理作家協会賞(2003年~/毎年)と、長編ミステリを募集する島田荘司推理小説賞(2009年~/隔年)があり、どちらも台湾のみならず、香港や大陸の作家からも応募がある。 ランキングについては詳しくは知らないが、阿井さんがブログで2008年末に『歳月・推理』で実施されたミステリランキングを紹介している(2008年 这十本小说了不起(日本語)(2008年12月31日))。 その他 雑誌・ムック第四章でくわしく説明した『歳月・推理』や『推理世界』のほか、『最推理』、『推理誌』(推理志)などがある。また、前述の蔡駿(さいしゅん/ツァイジュン)によるミステリムック『懸疑誌』(2007年)、『謎小説』(2009年~)などもある。 大学ミス研2008年9月15日、中国大学ミステリ研連合設立。ミステリ研9つが参加。 東アジアにおける近年のミステリ刊行状況 データの取り方が統一されていないが、参考までに、中国、台湾、韓国における2009年のミステリ刊行状況を示す。 中国 2009年1月から10月までの10か月間で、ミステリ小説の刊行点数は関連書も含め358。うち、中国の作品は102(広義ミステリ)。日本の作品は65(約18%)。 台湾 2009年1月から10月までの10か月間で、ミステリ小説の刊行点数は146。うち、台湾の作品は7。日本の作品は67(約46%)。欧米作品は72。 韓国 2008年12月から2009年11月までの12か月間で、ミステリ小説の刊行点数は294。うち、韓国の作品は38。日本の作品は98(約33%)。英語圏のものが125。その他が33。 (台湾、中国のデータは『本格ミステリー・ワールド2010』より。韓国のデータは『季刊ミステリ』26号(2009年冬号)より) おわりに 予想外に長くなってしまったが、以上でシャーロック・ホームズ受容から現代にいたるまでの中国ミステリ120年の歴史の紹介を終える。 日本では中国ミステリの知名度は低い。そんな中、なぜ中国ミステリに興味を持ったのかと質問されるかもしれないが、私が十代の終わりを迎えたころには日本の文芸誌『ファウスト』が台湾や韓国に進出したり、あるいはそれらの地域で日本の漫画・ライトノベル・ミステリが人気だということがすでに話題になっていて、ミステリファンの自分からすれば、それでは逆に台湾や韓国などアジア地域ではどんなオリジナルミステリが出ているのだろうという好奇心を持つのは非常に自然なことだった。taipeimonochromeさんの「taipeimonochrome ミステリっぽい本とプログレっぽい音樂」を参考にしながら台湾ミステリを少しずつ読んでいた私が中国ミステリにも目を向けるようになったのは、早い時期から中国現代ミステリの紹介を行っていた阿井幸作さんのブログ「トリフィドの日が来ても二人だけは読み抜く」で御手洗熊猫(みたらい ぱんだ)という作家の存在を知ったのがきっかけだった。 今まで日本では、「中国には推理小説はほとんどないらしい」ということがまことしやかに囁かれることが多かった。その原因はひとえに、「日本語でググってもほとんど情報が出てこない」ということに尽きると思う。この「中国ミステリ史」が、日本での中国ミステリの知名度アップに貢献できれば幸いである。今後、中国ミステリの日本語への翻訳、そしてアジアミステリ界の交流が進むことを願っている。 参考文献 中国ミステリ史 参考文献 (新しいウィンドウで開きます) 『中国ミステリ史 第一章』(19世紀末~1910年代) 『中国ミステリ史 第二章』(1910年代~1940年代) 『中国ミステリ史 第三章』(1940年代末~1970年代) 『中国ミステリ史 第四章』(1970年代末~1990年代) 『中国ミステリ史 第五章』(1990年代末~21世紀初頭) 『中国ミステリ史 第六章』(現代) ←今見ているページ
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2014年8月6日 アンケート企画「フランスミステリベスト100」のために作成した参考リストです。 国会図書館の蔵書データを「キーワード:角川文庫/分類:953*(フランスの小説)」などで検索し、検索結果からミステリを抜き出したものです。ただし、フランス語圏のメジャーなミステリ作家3人(ガストン・ルルー、モーリス・ルブラン、ジョルジュ・シムノン)については省略しています。 読売新聞社の《フランス長編ミステリー傑作集》(全6巻)および草思社の《ロマンノワール》(全5巻)は文庫ではありませんが、このページで合わせてリストを示しておきます。 創元推理文庫およびハヤカワ・ミステリ文庫で刊行されたフランスミステリについては下記のページをご覧ください。 創元推理文庫海外ミステリ非英語圏作品一覧 ハヤカワ・ミステリ文庫非英語圏作品一覧 Index 旺文社文庫 角川文庫 河出文庫 現代教養文庫 講談社文庫 光文社文庫 光文社古典新訳文庫 集英社文庫 小学館文庫 (旧)小学館文庫 新潮文庫 ちくま文庫 中公文庫 徳間文庫 扶桑社ミステリー(文庫) 文春文庫 ランダムハウス講談社(文庫) 読売新聞社《フランス長編ミステリー傑作集》 草思社《ロマンノワール》 旺文社文庫 ガストン・ルルー、モーリス・ルブラン、ジョルジュ・シムノンは省略 E.ガボリオ ルコック探偵 松村喜雄 1979年8月 角川文庫 ガストン・ルルー、モーリス・ルブラン、ジョルジュ・シムノンは省略 S・A・ステーマン マネキン人形殺害事件 松村喜雄 1976年 J・F・コアトムール 真夜中の汽笛 長島良三 1986年5月 1976年フランス推理小説大賞 引き裂かれた夜 長島良三 1987年8月 1981年ミステリ批評家賞 血塗られた夜 長島良三 1989年7月 クリストフェール・ディアブル 雨を逃げる女 長島良三 1988年5月 1977年フランス推理小説大賞 ローランス・オリオール 絞殺魔の森 長島良三 1990年1月 ポケミスでの表記は「ローレンス・オリオール」 フランソワ・ジョリ 鮮血の音符 長島良三 1996年3月 セルジュ・ブリュソロ 真夜中の犬 長島良三 1998年10月 エリエット・アベカシス クムラン 鈴木敏弘 2000年2月 1997年同社刊の単行本の文庫化 フランソワ・ジョリ『鮮血の音符』とセルジュ・ブリュソロ『真夜中の犬』はどちらも訳者あとがきでフランス推理小説大賞の受賞作とされているが、実際は受賞していない。 『クムラン』の続編『クムラン 蘇る神殿』(鈴木敏弘訳、角川書店、2002年10月)は文庫化されていない。この作者はほかにも「神学的スリラー」という売り文句の『黄金と灰』(鈴木敏弘訳、角川書店、1999年10月)がある。 河出文庫 ジョルジュ・シムノンは省略 ジョゼ・ジョバンニ 生き残った者の掟 岡村孝一 1986年4月 フレデリック・ダール 恐怖工作班 長島良三 1988年4月 マルグリット・デュラス ヴィオルヌの犯罪 田中倫郎 1996年1月 実際にあった事件に取材した作品 ミシェル・ビュトール 時間割 清水徹 2006年12月 文庫以外(主なもの) ジャン・デュシャトー『エリゼ宮の殺人』(榊原晃三訳、1988年4月) ※フランスの政治家を実名で登場させた政治情報小説 ロマン・サルドゥ『我らの罪を許したまえ』(山口羊子訳、2010年5月) ※出版:エンジン・ルーム、発売:河出書房新社 現代教養文庫 S・A・ステーマン ウェンズ氏の切り札 松村喜雄、藤田真利子 1993年5月 ミシェル・ルブラン パリは眠らない 藤田真利子 1994年9月 創元推理文庫での表記は「ミッシェル・ルブラン」 シャルル・エクスブラヤ キャンティとコカコーラ 藤田真利子 1994年5月 ポケミスでの表記は「シャルル・エクスブライヤ」 ハンサムな狙撃兵 藤田真利子 1995年3月 講談社文庫 ジョルジュ・シムノンは省略 カミ エッフェル塔の潜水夫 吉村正一郎 1976年 ドムーゾン マドモアゼル・ムーシュの殺人 長島良三 1983年8月 ぐうたら探偵苦戦中 榊原晃三 1985年5月 P・ボアロー 殺人者なき六つの殺人 松村喜雄 1985年3月 光文社文庫 アラン・フォージャ TGV(フランス新幹線)殺人事件 長島良三 1992年10月 光文社古典新訳文庫 マンシェット 愚者(あほ)が出てくる、城寨(おしろ)が見える 中条省平 2009年1月 ガストン・ルルー オペラ座の怪人 平岡敦 2013年7月 ロブ=グリエ 消しゴム 中条省平 2013年8月 バルバラ 赤い橋の殺人 亀谷乃里 2014年5月 新訳文庫からの刊行だが、これが初訳 集英社文庫 モーリス・ルブラン、ジョルジュ・シムノンは省略 ジャックマール&セネカル 『そして誰もいなくなった』殺人事件 矢野浩三郎 1983年9月 1981年8月刊行の『11人目の小さなインデアン』(Playboy books)の改題文庫化 ユベール・コルバン 屍肉の聖餐 佐宗鈴夫 2001年2月 ベルトラン・ピュアール 夜の音楽 東野純子 2002年10月 2001年コニャック・ミステリ大賞 セルジュ・ジョンクール U.V. 中原毅志 2005年7月 集英社から刊行されたフランスミステリの単行本(主なもの) ギ・デ・カール『けだもの』(横塚光雄訳、1968年) → のちに三輪秀彦訳で『破戒法廷』として創元推理文庫入り ジャックマール&セネカル『「風と共に去りぬ」殺人事件』(矢野浩三郎訳、1983年6月、Playboy books) マリー・ルドネ『ネヴァーモア』(柴田都志子訳、1995年6月) トラン・ニュット『王子の亡霊 マンダリン・タンの冒険と推理』(岡元麻理恵訳、2004年6月) 小学館文庫 エリック・ローラン 消えた小麦 長島良三 2007年1月 同社刊の単行本(2003年11月)の文庫化 深海の大河 長島良三 2007年2月 同社刊の単行本(2004年6月)の文庫化 ドミニク・シルヴァン 欲望通りにすむ女 中原毅志 2007年3月 日本在住のフランス人ミステリ作家 サムライの娘 中原毅志 2007年5月 (旧)小学館文庫 ジュヴナイルミステリ、《名探偵ランジェロ》シリーズ(全15巻) 作:リューテナンX、訳:磯村淳、画:御厨さと美 名探偵ランジェロ1 『みさきの銃声』 1977年8月 名探偵ランジェロ2 『5F.銀貨のひみつ』 1977年8月 名探偵ランジェロ3 『ロンドン爆破計画』 1977年8月 名探偵ランジェロ4 『星から来たスパイ』 1977年8月 名探偵ランジェロ5 『秘密指令をねらえ』 1977年10月 名探偵ランジェロ6 『童話の国の陰謀』 1977年11月 名探偵ランジェロ7 『死の超高層ビル』 1977年12月 名探偵ランジェロ8 『古城に鳴る笛』 1978年3月 名探偵ランジェロ9 『わなのある孤島』 1978年5月 名探偵ランジェロ10 『赤い上着のSOS』 1978年7月 名探偵ランジェロ11 『ハイジャック作戦』 1978年8月 名探偵ランジェロ12 『万国博に白い花を』 1978年10月 名探偵ランジェロ13 『顔のない追跡者』 1978年12月 名探偵ランジェロ14 『海は枯草(かれくさ)のにおい』 1979年1月 名探偵ランジェロ15 『黄色い自転車』 1979年2月 現物未見。まんだらけのブログ記事によると、全ページが「上段に挿絵・下段に小説」という体裁の書籍だとのこと(2012年1月4日「ヴィンテージ入荷情報 リューテナンX・作 御厨さと美・画『名探偵ランジェロ』全15巻セット!!!!」)。 リューテナンX(Lieutenant X)の正体はウラジーミル・ヴォルコフ(Vladimir Volkoff)。 ウラジーミル・ヴォルコフ名義では、早川書房の《Hayakawa novels》で『寝がえり』(長塚隆二訳、1981年9月)、『モンタージュ』(長塚隆二訳、1985年5月)が出ている。ほかに、中央公論社から『大公ウラジーミル』(市川智子訳、1986年11月)が出ている。 新潮文庫 ガストン・ルルー、モーリス・ルブラン、ジョルジュ・シムノンは省略 アルセーヌ・ルパン ウネルヴィル城館の秘密 榊原晃三 1974年 1974年ミステリ批評家賞/正体はボワロー=ナルスジャック バルカンの火薬庫 榊原晃三 1975年 ボワロー=ナルスジャック アルセーヌ・ルパンの第二の顔 榊原晃三 1976年 デラコルタ ディーバ 飯島宏 1983年11月 ジャック・サドゥール 太陽の下、三死体 長島良三 1988年9月 1987年フランス推理小説大賞 ルー・デュラン ダディ 【上下巻】 榊原晃三 1989年5月 パスカル・バセ=シェルコ ベイビー・ブルース 長島良三 1991年3月 1988年パトリシア・ハイスミス賞(フランスの賞) エリック・ローラン メランコリー作戦 西側経済を壊滅せよ 榊原晃三 1991年12月 ジャン=ミッシェル・トリュオン 禁断のクローン人間 長島良三 1993年5月 ダン・フランク&ジャン・ヴォートラン ベルリン強攻突破 佐藤公彦、坂井潤 1996年5月 フランク・ティリエ 死者の部屋 平岡敦 2008年5月 クリスティーヌ・ケルデラン&エリック・メイエール ヴェルサイユの密謀 平岡敦 2010年8月 ちくま文庫 カミ エッフェル塔の潜水夫 吉村正一郎 1990年8月 バルザック 暗黒事件 柏木隆雄 2014年6月 中公文庫 レオ・マレ サンジェルマン殺人狂騒曲 パリ・ミステリーガイド 藤田宜永 1984年5月 ミラボー橋に消えた男 パリ・ミステリーガイド 長島良三 1984年6月 シャンゼリゼは死体がいっぱい パリ・ミステリーガイド 藤田宜永 1984年7月 国会図書館に所蔵なし 殺意の運河サンマルタン パリ・ミステリーガイド 長島良三 1984年8月 P・シニアック ウサギ料理は殺しの味 藤田宜永 1985年5月 のちに創元推理文庫入り レオン・サジイ ジゴマ 久生十蘭 1993年12月 ダニエル・ジュフュレ スイス銀行の陰謀 長島良三 2001年12月 1998年コニャック・ミステリ大賞 文庫以外 アレクシス・ルカーユ『シャーロック・ホームズを訪ねたカール・マルクス』(西永良成訳、1982年11月、C novels) ディディエ・ヴァン・コヴラルト『聖骸布の仔』(竹下節子訳、2006年4月) 徳間文庫 マレク・アルテ エルサレム・ミステリー ユダヤ謎の古文書を追え 広津倫子 2000年12月 扶桑社ミステリー(文庫) フランソワ・リヴィエール KAFKA 迷宮の悪夢 武田満里子 他 1992年7月 パトリス・ルコント タンゴ 武田満里子 1993年9月 3作中、ミステリといえるのは『タンゴ』のみ? 髪結いの亭主 阪田由美子 1993年10月 タンデム 藤丘樹実、坂之上美樹 1993年11月 ジャン=ピエール・ガッテーニョ 悪魔の囁き 高野優 1993年10月 パスカル・フォントノー 災いの天使 吉田良子 1996年7月 ジェラール・ド・ヴィリエ ビンラディンの剣 小林修 2004年2月 SASプリンス・マルコ・シリーズ 中国の秘密を握る男 高橋啓 2004年4月 SASプリンス・マルコ・シリーズ アルカイダの金塊を追え 小林修 2004年6月 SASプリンス・マルコ・シリーズ サルヴァトーレ・ウォーカー 闇のアンティーク 工藤妙子 2005年11月 ※扶桑社からは単行本ではジャン=ピエール・ガッテーニョ『青い夢の女』(松本百合子訳、2001年11月)が出ている 文春文庫 フレデリック・ダール 甦える旋律 長島良三 1980年1月 1957年フランス推理小説大賞 生きていたおまえ... 長島良三 1980年12月 ギイ・テセール 女テロリストを殺せ 長島良三 1983年1月 ジャン=フランソワ・シェニョー 自由への最終列車 喜多迅鷹 1986年2月 ノンフィクション? フレデリック・ルパージュ 七日目の終り 長島良三 1988年11月 リシャール・ケルラン 迎撃のスホーイ 【上下巻】 村松潔 1990年1月 1988年6月の単行本の文庫化 ソフィ・ガロワ 天才狩り 【上下巻】 香川由利子 1998年8月 ダニエル・チエリ 悪しき種子 香川由利子 2000年2月 ジャン・ヴォートラン グルーム 高野優 2002年1月 トニーノ・ブナキスタ 隣りのマフィア 松永りえ 2006年1月 2013年9月に『マラヴィータ』として改題刊行 ヴィルジニ・ブラック 倒錯の罠 女精神科医ヴェラ 中川潤一郎 2006年9月 ランダムハウス講談社(文庫) フランク・ティリエ タルタロスの審問官 吉田恒雄 2007年9月 七匹の蛾が鳴く 吉田恒雄 2008年4月 パトリック・ボーウェン カインの眼 中原毅志 2008年8月 ジャン=フランソワ・パロ ニコラ警視の事件1『ブラン・マントー通りの謎』 吉田恒雄 2008年11月 ニコラ警視の事件2『鉛を呑まされた男』 吉田恒雄 2009年8月 ニコラ警視の事件3『ロワイヤル通りの悪魔憑き』 吉田恒雄 2010年2月 読売新聞社《フランス長編ミステリー傑作集》 ※文庫ではない 《フランス長編ミステリー傑作集》 1 フレデリック・ダール 並木通りの男 長島良三 1986年6月 2 シャルル・エクスブライヤ チューインガムとスパゲッティ 堀内一郎 1986年6月 3 ジョルジュ・シムノン メグレと死体刑事 長島良三 1986年8月 4 フレデリック・ダール 蝮のような女 野口雄司 1986年8月 5 ピエール・ボアロー 死のランデブー 佐々木善郎 1986年10月 6 フランシス・リック パリを見て死ね! 山本岳夫 1986年10月 この叢書については、川出正樹氏が東京創元社『ミステリーズ!』で連載している「ミステリ・ライブラリ・インヴェスティゲーション 魅惑の翻訳ミステリ叢書探訪記」(50号~、2011年12月~)の第14回(63号、2014年2月)および第15回(64号、2014年4月)で非常に詳しく紹介されている。 読売新聞社から刊行されたその他のフランスミステリ ジョルジュ・シムノン『ベティー』(長島良三訳、1992年10月) 『家の中の見知らぬ者たち』(長島良三訳、1993年12月) 《名探偵エミールの冒険》1『ドーヴィルの花売り娘』(長島良三訳、1998年9月) 2『老婦人クラブ』(長島良三訳、1998年9月) 3『丸裸の男』(長島良三訳、1998年10月) 4『O探偵事務所の恐喝』(長島良三訳、1998年10月) ジャン=フランソワ・ルメール『恐怖病棟』(長島良三訳、1997年5月) ※1996年コニャック・ミステリ大賞 ジャック・バルダン『グリシーヌ病院の惨劇』(長島良三訳、1998年6月) ※1997年コニャック・ミステリ大賞 草思社《ロマンノワール》 ※文庫ではない ディディエ・デナンクス 記憶のための殺人 堀茂樹 1995年8月 1985年フランス推理小説大賞 死は誰も忘れない 高橋啓 1995年8月 未完の巨人人形 神山朋子 1995年10月 1984年813協会賞 ジャン・ヴォートラン パパはビリー・ズ・キックを捕まえられない 高野優 1995年8月 鏡の中のブラッディ・マリー 高野優 1995年12月 1980年ミステリ批評家賞 関連ページ 創元推理文庫海外ミステリ非英語圏作品一覧 ハヤカワ・ミステリ文庫非英語圏作品一覧 ポケミス非英語圏作品一覧 フランス・ミステリ必読30冊(『ミステリマガジン』2003年7月号) フランスのミステリ賞 - 受賞作の邦訳一覧 年間ミステリランキング 非英語圏作品一覧 非英語圏ミステリ2013年の邦訳出版一覧 非英語圏ミステリ2014年の邦訳出版一覧 非英語圏ミステリ各種リスト
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2011年2月10日 『中国ミステリ史 第五章』では、1990年代末から21世紀初頭までの中国の探偵小説(偵探小説)/推理小説/ミステリの歴史を紹介している。 目次 第五章 20世紀末~21世紀初頭: 新たなミステリの潮流第一節 インターネットという新天地/新たな創作の場 第二節 ネット上で活躍していたミステリ執筆者が紙媒体へ/雑誌『歳月・推理』創刊 第三節 邦訳された21世紀の中国探偵小説 参考文献 第五章 20世紀末~21世紀初頭: 新たなミステリの潮流 第一節 インターネットという新天地/新たな創作の場 【主要参考文献:杜撰(ずさん)(2009)「百年華文推理簡史 九、網絡推理小説的創作熱潮」】 20世紀末より、今までとはまったく違う文脈でミステリ作家が登場するようになる。大きな役割を果たしたのは、インターネット環境の整備である。1998年、中国語簡体字による最初の推理小説ファンサイトとされる『偵探推理園地(ていたん すいり えんち)』(侦探推理园地)が誕生。続いて次々とミステリ関連サイトが開設されるが、その中でも、中国オンラインミステリの発展に最も影響を与えたのが1999年開設の『華生的偵探世界(かせい の ていたんせかい)』(华生的侦探世界)だった。このサイトはほかのサイトにはないオリジナルコンテンツとして「推理クイズ」コーナーを擁していたが(現物を見ていないが、おそらく阿井幸作さんのブログ「トリフィドの日が来ても二人だけは読み抜く」に掲載されているこのようなものだと思われる)、このコーナーはまたたく間に人気コーナーとなり、ほかのサイトの管理人たちもこぞって推理クイズを作成するようになる。この「推理クイズ」文化は1999年中ごろに発生し、またたく間に中国語簡体字圏のミステリサイト中に広まったという。 (【注】 簡体字(かんたいじ):中国で使われている簡略化された漢字のこと。たとえば、「学習」は「学习」と書かれる。簡体字と対になる語は繁体字(はんたいじ)で、これは台湾や香港などで使われている省略されていない元の漢字のこと。たとえば「学習」は「學習」となる。繁体字は、日本の旧字体とほぼ同じものだと考えてよい。) 2000年8月、ミステリ関連サイトの管理人と古参の推理マニアが十数人が集まり、現在も存続する中国最大手のミステリ総合サイト「推理之門(すいり の もん)」が開設される。このとき推理之門の管理人に推薦されたのが、「書香門第網絡図書館(読書家 ネット としょかん)」(书香门第网络图书馆)を運営していた老蔡(ラオツァイ)氏だった。中国オリジナルミステリの発展に寄与することを旨とするこのサイトでは、当時の推理クイズ文化を受けて、「毎週謎題(まいしゅう めいだい)」コーナーすなわち毎週定期的にオリジナルの推理クイズを出題するコーナーが設けられ、またオリジナルの推理小説を投稿できる掲示板も設けられた。「推理クイズ」は2011年2月現在も続いており、クイズの数は計459に達している(「推理之門」にユーザー登録しないと見られない)。現在の中国のミステリ作家の中には、この推理クイズの作成をきっかけに小説を執筆するようになったという人も少なくない。最初のころに創作ミステリ掲示板に投稿された作品は、単なる推理「クイズ」から脱し切れていなかったが、熱心な読者の励ましと批評により、執筆者は次第に腕を上げ、推理「小説」といえるものが書かれるようになっていった。 2003年3月、大衆文芸出版社(大众文艺出版社)より、「推理之門」に投稿された創作ミステリ21編を収録したアンソロジー『指紋』(指纹)が刊行される。そのレベルは決して高くはなかったが、このようにオンライン推理小説が出版されたことは、ネット上で創作する多くの作者に希望を与え、さらなる情熱を呼び起こした。 2004年から2006年にかけて、「推理之門」では創作ミステリのコンテストを何度か行った。このころ、「推理之門」でオリジナルミステリの書き手として注目を集めたのが、日本でも2009年に『蝶の夢』が刊行されている水天一色(すいてん いっしき)や、服部平次(フーブー ピンツー)・羅修(ら しゅう/ルオ シウ)・杜撰(ずさん)といった作家たちである。 服部平次(フーブー ピンツー)現在20代またはそれ以下のミステリファンなら必ずこの名前(というか、この文字の並び)に心当たりがあるはずである。断言はできないが、名探偵コナンの登場人物・服部平次(はっとり へいじ)から筆名を取ったと思われる。服部平次(フーブー ピンツー)は1998年よりネット上で推理小説の創作を開始。「推理之門」では2001年から2005年にかけて数十編の短編を発表した。創作理念に変化があり2005年に一度ミステリの創作から離れたが、2008年より本名の馬天(ばてん/マーティエン/马天)名義で雑誌『歳月・推理』にミステリを掲載している。敬愛する推理作家として、欧米ではエラリー・クイーン、日本では島田荘司、東野圭吾を挙げており、特に本格ミステリを好んでいる。出版された書籍に、『女王勲章 The Queen s Medal』(女王勋章)、『時光隧道(じこう すいどう) The Time Tunnel』(时光隧道)がある。『時光隧道』および、古い型に「島田荘司流」を流し込んで新しくした『旅行推理』シリーズ(未単行本化)は、現在の中国ミステリを代表する短編シリーズである。 羅修(ら しゅう/ルオ シウ/罗修)2001年より「推理之門」で創作ミステリの発表を開始。2005年まで、服部平次とともにオンラインミステリ創作の2大エースだった。2005年に服部平次が一度ミステリ創作から離れた後は、一人で「推理之門」の創作ミステリの先陣を走り、また創作ミステリ掲示板の管理人として、創作を志す新人をはげまし、オンライン創作ミステリ界を盛り上げた。2006年に『歳月・推理』が創刊されるとそこで作品を発表し好評を得る。しかし、初の単行本『麒麟之死(きりん の し) The American Pen Mystery』が刊行される直前の2007年5月、心臓病のため27歳という若さでこの世を去った。没後に出版された書籍にほかに、『狐仙伝(こせんでん) The Tale of Fox』(狐仙传、2008)、『女媧石伝奇(じょかせき でんき)(上) 九藜山荘不可思議的殺人(きゅうれんさんそう ふかしぎ さつじん)』(女娲石传奇 上部 九藜山庄不可思议的杀人、2008)、『女媧石伝奇(下) 女媧石密碼(じょかせき の 暗号)』(女娲石传奇 下部 女娲石密码、2008)がある。2007年7月、北京偵探推理文芸協会より特別記念賞が贈られた。エラリー・クイーンを敬愛しており、「アメリカペンの謎」という副題を付けた上記の『麒麟之死 The American Pen Mystery』のほか、短編「日本人形の謎(日本娃娃之谜)」、「インド真珠の謎(印度珍珠之谜)」、「モンゴル駿馬の謎(蒙古骏马之谜)」、「中国爆竹の謎(中国炮仗之谜)」などがある。 水天一色(すいてん いっしき/シュイティエン イースー)(1981 - )水天一色の作品はすでに日本でも刊行されているので、名前を聞いたことがある人も多いだろう。2009年11月に日本で刊行された『蝶の夢 乱神館記』(原著2006年)は、毎年恒例の原書房『本格ミステリ・ベスト10』の海外部門で14位となり、個別の投票結果を見ると、推理小説評論家の千街晶之氏が年間1位に、ほかに3名が年間2位に推すという好成績を収めた。千街晶之氏の「今後もこのシリーズを続けて紹介してほしいと心底希望する」というコメントは、海を越えて前述の中国ミステリ総合サイト「推理之門」にも届き話題になった(原书房发布《2011本格推理BEST10》水天一色作品入选)。なお、同ランキングでは台湾の寵物先生(ミスターペッツ)『虚擬街頭漂流記』も12位に入っている。また『蝶の夢』は、『本の雑誌』2010年9月号の「初心者向けおすすめミステリー30」で30冊のうちの1冊に選ばれている。 水天一色と寵物先生は、両人とも第4回(2006年)台湾推理作家協会賞に参加している。この賞は台湾推理作家協会が主催する短編ミステリの公募新人賞で、この時は水天一色が1次選考通過、寵物先生が3次選考通過(最終候補)だった。 乱神館記シリーズはまだ『蝶の夢』しか発表されていないが、ほかに学生探偵・杜落寒(ドゥールオハン)が活躍する「杜公子シリーズ」の長編『盲人と犬』(盲人与狗、2008)、『学校の惨劇』(校园惨剧、2008)がある。「推理之門」では創作スピードは遅かったが、どの作品も質は高かった。2007年には、「推理之門」に掲載した「青煙手記(せいえん しゅき)」(青烟手记)が第4回北京偵探推理文芸協会賞に入選。2006年より『歳月・推理』の編集者となり、「推理之門」で活躍していた作家を紙の雑誌という新たな舞台へと引き入れる役割を果たした。 杜撰(ずさん)(1984 - ) (ブログ)2005年2月から「推理之門」で創作ミステリの発表を開始。2006年8月までに20編発表。『歳月・推理』創刊後はそちらに舞台を移し、2006年末から2007年にかけて、新作の不可能犯罪物のミステリ短編の13か月連続掲載を成し遂げた。のちに同誌の編集者になり、オリジナルミステリの掲載数を増加させることと、「本格ミステリの重視」を編集方針として打ち出した。影響を受けた作家に、エラリー・クイーン、ジョン・ディクスン・カー、横溝正史、島田荘司を挙げている。出版された書籍に、短編集の『純属杜撰(じゅんぞく ずさん)』、『第五元素』、『純属杜撰Ⅱ』、長編の『時之悲(とき の かなしみ)』がある。 日本の最近の若手作家では、米澤穂信(2001年デビュー)や北山猛邦(2002年デビュー)が、デビュー前にネット上で小説を発表していたことが知られている。中国で、1998年から2006年までネット上で鍛えられた若い力は、2006年に創刊されるミステリ専門雑誌『歳月・推理』上で花開くことになる。 インターネットが読書環境に与えた影響 インターネットの普及により現れたミステリファンサイトの中には、中国語簡体字圏では出版されていない国外ミステリ作品を違法に掲載しているものも多かった。すでに台湾や香港で刊行された翻訳本を用いたり、あるいは自分で訳したりして、欧米から日本まで幅広いミステリがネット上で読めるようになっていたという。当時まだ中国では刊行されていなかった島田荘司や綾辻行人の作品が人気を集めるようになったのもこのころだった。綾辻行人の作品は、台湾では1988年ごろから1998年にかけてすでに館シリーズの最初の6冊が刊行されており、その後も次々と翻訳が進んでいたが、大陸の方で館シリーズが最初に刊行されたのは2004年である(綾辻行人 海外で刊行された作品リスト)。 また、今まで第一章から、「ホームズなどの欧米探偵小説」(第一章)、「旧ソ連の反スパイ小説」(第二章)、「日本の社会派推理小説」(第三章)が中国ミステリ界にインパクトを与えてきたことを見てきたが、この時期に中国の特に若い世代に影響を与えたのは、日本の『金田一少年の事件簿』や『名探偵コナン』だった。『名探偵コナン』は1990年代末に中国でテレビ放送され、それによってミステリーに魅せられた少年少女も多かったという。このことは、上で紹介した中国の推理作家・馬天(ば てん/マーティエン)がネット上で『名探偵コナン』の登場人物の一人である「服部平次」の名をペンネームとして使っていたことからもうかがえるし、池田智恵(2009)によれば、日本で『蝶の夢』が刊行されている水天一色も、高校時代に放送が始まった『名探偵コナン』を毎回見るたびに、自分の書いているミステリの至らなさを思い知らされたということをインタビューで話しているという。中国における『名探偵コナン』の影響の大きさは、後述する雑誌『推理世界』でもうかがうことができる。 (もっとも、ドラマやアニメの影響を受けて漫画的な推理小説が増えた、ということを主張しようとしているのではない。たとえば、フランスの推理作家ポール・アルテもインタビューでアニメ『名探偵コナン』について「プロットがよくできているので驚きました」、「コナンのトリックには、すっかりだまされましたよ」(『本格ミステリー・ワールド2009』)と語っているし、不可能犯罪ものに詳しいミステリ翻訳家のジョン・ピュグマイヤー氏も、英文雑誌に掲載された密室ミステリーに関する座談会で、「日本に特有の、不可能殺人事件を味わう方法の一つとして、漫画を読むというやり方があります」として、漫画『金田一少年の事件簿』を挙げている(『本格ミステリー・ワールド2011』)。まだ海外への翻訳の少ない(特に欧米では少ない)日本のミステリの魅力を伝えるのに、日本の漫画(およびそれをドラマ化、アニメ化したもの)はアジアのみならず世界中で貢献しているのである。ヨーロッパでは、アニメ『キャプテン翼』をきっかけにサッカー選手を志した人もいるという。日本のミステリ漫画が世界に与えた影響については、いつか誰かがきっちり論じなくてはならないだろう。) 韓国でも『金田一少年の事件簿』はかなりの人気を博している。エキサイトニュースの記事「韓国で今、横溝正史がヒットするワケ」(2008年10月17日)によれば、韓国では金田一少年人気が先にあって、その結果「金田一耕助って誰?」ということで横溝人気に火がついたのだという。 第二節 ネット上で活躍していたミステリ執筆者が紙媒体へ/雑誌『歳月・推理』創刊 【主要参考文献:杜撰(ずさん)(2009)「百年華文推理簡史 十、《歳月·推理》与現今華文推理」】 2006年1月、中国でミステリ専門の月刊誌『歳月・推理』(岁月·推理)が創刊され、ネット上で活躍していた作家が紙媒体へと進出する。杜撰(2009)によれば、創刊以降の『歳月・推理』は3つの段階に分けられるという。第1段階は、2006年から2007年にかけての、主にオンラインミステリを掲載していた時期。このころの『歳月・推理』はいわばネット上の創作ミステリを集めたアンソロジーのようなもので、作品も有名作家の模倣にとどまっていたり、ネット用語を多く使用していたり、あるいは現実感がとぼしかったりする同人的な作品が多かったという。この時期の『歳月・推理』で一番の人気を集めたのは、もともと「推理之門」に掲載されていた午曄(ご よう/ウー イエ/午晔) の『罪悪天使 Evil Angel』(罪恶天使)で、漫画的な舞台設定やサスペンスで多くの読者をひきつけた。また、前述の羅修も、連続して短編を掲載した。 第2段階は2007年から2008年にかけてで、このころになると雑誌に依頼されて雑誌掲載のために書いた作品が増えていく。そのため、オンライン小説の欠点がだんたんと消えていき、小説に必要なストーリー性や現実感のあるミステリが執筆されるようになっていった。2007年7月に授賞式があった第4回北京偵探推理文芸協会賞では、『歳月・推理』掲載作品が6作品入選し、従来のミステリ文壇でもその力が通用することが証明された。また、2006年から2007年にかけて、『歳月・推理』編集部から4冊の単行本が誕生する。このときに刊行されたのが、2009年に邦訳が出た水天一色『蝶の夢』である。ほかの3冊は、『歳月・推理』創刊当初に人気を集めた前述の午曄『罪悪天使 Evil Angel』と、羅修『麒麟之死 The American Pen Mystery』と、周浩暉(しゅう こうき/チョウ ハオフイ/周浩晖)(ブログ)の『鬼望坡 The Cliff』(サスペンス作品)。また2007年1月には、少年読者向けの姉妹雑誌『推理世界』(月2回刊行)も創刊されている。この雑誌は、最初の半年間ほど『名探偵コナン』のイラストを表紙に無断(…だろう、おそらく)使用していたという問題はあったが、『歳月・推理』と同じくミステリ専門誌として、特に若い世代のミステリファンの増加に貢献している。(なお、この雑誌のキャッチコピーは最初の1年半ほどは「真相只有一个!」(真相はただひとつ!)であり、どこか『名探偵コナン』の決め台詞「真実はいつもひとつ!」を思い起こさせる。この辺りからも、中国における『名探偵コナン』の影響が見て取れる) 第3段階は2008年以降で、杜撰氏が歳月推理の編集になり、2つの方針を決める。1つは、中国オリジナルミステリの掲載を増やすこと。もう1つは、本格ミステリを主とすること。この方針のもと、2008年9月号のリニューアル号から2号連続で島田荘司のインタビューを掲載。またこの年、『歳月・推理』の不可能犯罪特集号で、御手洗熊猫(みたらい ぱんだ)がデビュー。島田荘司流の奇想とトリックで話題となる。しばしミステリから離れていた馬天(=服部平次)もミステリ創作に復帰し、『歳月・推理』は本格ミステリ雑誌としての地歩を徐々に固めていく。また同編集部は、前年に続き、2008年には10冊の単行本を刊行。言桄(げんこう/イェングアン)の『七宗罪 Seven Sins』 は、赤川次郎を思わせる青春ミステリ路線。ほかに、水天一色の『盲人と犬』、『学校の惨劇』、杜撰の不可能犯罪ものの短編集『純属杜撰』などが刊行された。 2009年以降は、単行本では御手洗熊猫の短編集『御手洗濁的流浪』や、杜撰の初の長編『時之悲』を刊行したほか、台湾ミステリの簡体字版の刊行にも着手し、日本で『錯誤配置』が刊行されている藍霄(ランシャウ)の作品や、台湾推理作家協会創始者の既晴(き せい/ジー チン)、第1回島田荘司推理小説賞最終候補になった林斯諺(りん しげん/リン スーイェン)の作品を刊行した。 2010年末には、『歳月・推理』と『推理世界』の合同で華文推理大賞(後述)を創設。短編の創作ミステリを募集する公募新人賞で、第1回の結果は2012年4月に発表される。 御手洗熊猫(みたらい ぱんだ)「中国のミステリ作家・御手洗熊猫の長編推理小説『島田流殺人事件』」参照。 推理世界(『歳月・推理』と『推理世界』の公式サイト)『歳月・推理』各号へのリンク集 『推理世界』各号へのリンク集 第三節 邦訳された21世紀の中国探偵小説 【2011年7月31日、追加】 ミステリ雑誌では、21世紀に入ってからの作品だが、2002年刊行の光文社『ジャーロ』7号(2002年春号)に畀愚(ビイユ、1970年生、男性)の短編「謀殺」が掲載されている。『ジャーロ』創刊号から連載されていた企画「世界のミステリーを読む」の第7回「中国編」で掲載。『上海文学』2001年7月号掲載の同タイトルの作品(表記は「谋杀」)の翻訳。もともとミステリ雑誌に掲載されたものではなく、ミステリらしい作品でもない。 また、中国語ではなく英語による創作だが、中国で育ちアメリカで著作活動をしているジョー・シャーロン(裘 小龍/Xiaolong QIU)の『上海の紅い死』が早川書房ハヤカワ・ミステリ文庫で2001年に刊行されている。この作品は、桐野夏生や宮部みゆき、前述の中国の作家・王朔や何家弘などの作品と並んで、イギリスの推理作家キャサリン・サンプソンが選ぶアジアミステリーベスト10にも選ばれている。 参考文献 中国ミステリ史 参考文献 (新しいウィンドウで開きます) 『中国ミステリ史 第一章』(19世紀末~1910年代) 『中国ミステリ史 第二章』(1910年代~1940年代) 『中国ミステリ史 第三章』(1940年代末~1970年代) 『中国ミステリ史 第四章』(1970年代末~1990年代) 『中国ミステリ史 第五章』(1990年代末~21世紀初頭) ←今見ているページ 『中国ミステリ史 第六章』(現代)
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2014年6月11日 最終更新:2015年4月14日 非英語圏ミステリ2015年の邦訳出版一覧(2015年4月14日作成) Index 刊行順一覧 国別一覧 予定 刊行順一覧 ※タイトルからのリンク先は、それぞれの出版社サイトの書籍紹介ページ(論創社のサイトは書籍紹介ページがないので論創社の本はamazonにリンク) ※アフリカの作家の英語作品もリストに入れています 既刊 1月10日 スウェーデン スウェーデン語 アレクサンデル・セーデルベリ 『アンダルシアの友』 ハヤカワ・ミステリ ヘレンハルメ美穂訳 1月10日 スウェーデン スウェーデン語 ヴィヴェカ・ステン 『夏の陽射しのなかで』 ハヤカワ・ミステリ文庫 三谷武司訳 1月17日 スウェーデン スウェーデン語 カミラ・レックバリ 『人魚姫 エリカ&パトリック事件簿』 集英社文庫 富山クラーソン陽子訳 1月30日 オーストリア ドイツ語 アンドレアス・グルーバー 『黒のクイーン』 創元推理文庫 酒寄進一訳 2月7日 南アフリカ 英語 ローレン・ビュークス 『シャイニング・ガール』 ハヤカワ文庫NV 木村浩美訳 3月7日 スウェーデン スウェーデン語 ヴィヴェカ・ステン 『煌めく氷のなかで』 ハヤカワ・ミステリ文庫 三谷武司訳 3月22日 スウェーデン スウェーデン語 カーリン・イェルハルドセン 『パパ、ママ、あたし』 創元推理文庫 木村由利子訳 4月10日 フランス フランス語 カミ 『三銃士の息子』 ハヤカワ・ミステリ 高野優訳 4月28日 イタリア イタリア語 ルーサー・ブリセット 『Q』【上下巻】 東京創元社 さとうななこ訳 5月9日 チリ スペイン語 ロベルト・アンプエロ 『ネルーダ事件』 ハヤカワ・ミステリ 宮崎真紀訳 5月13日 フランス フランス語 バルバラ 『赤い橋の殺人』 光文社古典新訳文庫 亀谷乃里訳 5月26日 ドイツ ドイツ語 メヒティルト・ボルマン 『沈黙を破る者』 *注1 河出書房新社 赤坂桃子訳 5月30日 フィンランド フィンランド語 レーナ・レヘトライネン 『要塞島の死』 創元推理文庫 古市真由美訳 6月6日 イタリア イタリア語 ドナート・カッリージ 『ローマで消えた女たち』 ハヤカワ・ミステリ 清水由貴子訳 6月10日 フランス フランス語 バルザック 【新訳】『暗黒事件』 *注2 ちくま文庫 柏木隆雄訳 6月20日 フランス フランス語 エレーヌ・グレミヨン 『火曜日の手紙』 早川書房 池畑奈央子訳 6月25日 フィンランド フィンランド語 マッティ・ロンカ 『殺人者の顔をした男』 *注3 集英社文庫 古市真由美訳 6月27日 韓国 日本語・韓国語 金来成(キム・ネソン) 『金来成探偵小説選』 *注4 論創ミステリ叢書 祖田律男訳 6月28日 スウェーデン スウェーデン語 M・ヨート、H・ローセンフェルト 『犯罪心理捜査官セバスチャン』【上下巻】 創元推理文庫 ヘレンハルメ美穂訳 7月9日 デンマーク デンマーク語 ユッシ・エーズラ・オールスン 『特捜部Q―知りすぎたマルコ―』 ハヤカワ・ミステリ 吉田薫訳 7月9日 スウェーデン スウェーデン語 アンデシュ・デ・ラ・モッツ 『監視ごっこ』 *注5 ハヤカワ・ミステリ文庫 真崎義博訳 7月22日 スウェーデン スウェーデン語 ヘニング・マンケル 『北京から来た男』【上下巻】 東京創元社 柳沢由実子訳 7月29日 韓国 韓国語 金来成(キム・ネソン) 『魔人』 *注6 論創海外ミステリ 祖田律男訳 7月30日 スイス フランス語 ジョエル・ディケール 『ハリー・クバート事件』【上下巻】 東京創元社 橘明美訳 7月30日 ドイツ ドイツ語 フォルカー・クッチャー 『ゴールドスティン』【上下巻】 創元推理文庫 酒寄進一訳 8月21日 ノルウェー ノルウェー語 ジョー・ネスボ 『ザ・バット 神話の殺人』 *注7 集英社文庫 戸田裕之訳 8月29日 ドイツ ドイツ語 ラフィク・シャミ 『愛の裏側は闇』【全3巻】※第2巻は9月、第3巻は10月発売 東京創元社 酒寄進一訳 9月2日 フランス フランス語 ピエール・ルメートル 『その女アレックス』 *注8 文春文庫 橘明美訳 9月7日 オランダ オランダ語 ヘルマン・コッホ 『冷たい晩餐』 イースト・プレス 羽田詩津子訳 9月12日 オーストリア ドイツ語 アレクサンダー・レルネット=ホレーニア 『両シチリア連隊』 *注9 東京創元社 垂野創一郎訳 9月25日 スウェーデン スウェーデン語 シューヴァル&ヴァールー 【新訳】『刑事マルティン・ベック ロセアンナ』 角川文庫 柳沢由実子訳 9月25日 ノルウェー ノルウェー語 トマス・エンゲル 『瘢痕』 ハヤカワ・ミステリ文庫 公手成幸訳 9月25日 フランス フランス語 ルネ・レウヴァン 『シャーロック・ホームズの気晴らし』 国書刊行会 寺井杏里訳 9月29日 ドイツ ドイツ語 シャルロッテ・リンク 『沈黙の果て』【上下巻】 創元推理文庫 浅井晶子訳 9月末 イタリア イタリア語 ジョルジョ・シェルバネンコ 『傷ついた女神』 論創海外ミステリ 熊木信太郎訳 10月3日 中国 / 台湾 中国語 (アンソロジー) 『現代華文推理系列 第一集』(詳細は「こちら」) KDP 稲村文吾訳 10月3日 中国 中国語 御手洗熊猫(みたらい ぱんだ) 短編「人体博物館殺人事件」 KDP 稲村文吾訳 10月3日 中国 中国語 水天一色(すいてんいっしき) 短編「おれみたいな奴が」 *注10 KDP 稲村文吾訳 10月3日 台湾 中国語 林斯諺(りん しげん) 短編「バドミントンコートの亡霊」 *注11 KDP 稲村文吾訳 10月3日 台湾 中国語 寵物先生(ミスターペッツ) 短編「犯罪の赤い糸」 *注12 KDP 稲村文吾訳 10月10日 オーストリア ドイツ語 ウルズラ・ポツナンスキ 『〈5〉のゲーム』 ハヤカワ・ミステリ文庫 浅井晶子訳 10月17日 スペイン スペイン語 カルロス・ルイス・サフォン 『天国の囚人』 *注13 集英社文庫 木村裕美訳 10月17日 スペイン スペイン語 トニ・ヒル 『死んだ人形たちの季節』 集英社文庫 宮崎真紀訳 10月17日 スウェーデン スウェーデン語 カミラ・レックバリ 『霊の棲む島 エリカ&パトリック事件簿』 集英社文庫 富山クラーソン陽子訳 10月24日 デンマーク デンマーク語 エーリク・ヴァレア 『7人目の子』【上下巻】 *注14 ハヤカワ・ミステリ文庫 長谷川圭訳 10月31日 スウェーデン スウェーデン語 アンナ・ヤンソン 『消えた少年』 創元推理文庫 久山葉子訳 11月20日 南アフリカ アフリカーンス語 デオン・マイヤー 『デビルズ・ピーク』 集英社文庫 大久保寛訳 12月中旬 ペルー スペイン語 グスタボ・ファベロン=パトリアウ 『古書収集家』 *注15 水声社 高野雅司訳 12月19日 スウェーデン スウェーデン語 ヨアキム・サンデル 『スパイは泳ぎつづける』 ハヤカワ文庫NV ヘレンハルメ美穂、中村有以訳 12月22日 ノルウェー ノルウェー語 アンネ・ホルト 『凍える街』 *注16 創元推理文庫 枇谷玲子訳 注1:メヒティルト・ボルマン『沈黙を破る者』 … 2012年ドイツ・ミステリ大賞第1位 注2:バルザック『暗黒事件』 … 「ナポレオン帝政時代が舞台の、陰謀の闇と不安定な政情を描いた歴史推理小説」 注3:マッティ・ロンカ『殺人者の顔をした男』 … 2008年ドイツ・ミステリ大賞第3位。このシリーズの第3作『Ystävät kaukana』(未訳)は2006年フィンランド・ミステリ協会 推理の糸口賞受賞、2007年ガラスの鍵賞(北欧最優秀ミステリ賞)受賞。マッティ・ロンカは現在のところ、ガラスの鍵賞を受賞した唯一のフィンランド作家。 注4:金来成(キム・ネソン)『金来成探偵小説選』 … 金来成が日本語で執筆した短編探偵小説2編、ユーモア掌編1編、および韓国語からの翻訳作品『思想の薔薇』(長編探偵小説)、「恋文綺譚」(ユーモア短編)を収録。『思想の薔薇』はもとは1930年代に日本語で執筆された作品。 注5:アンデシュ・デ・ラ・モッツ『監視ごっこ』 … 2010年スウェーデン推理作家アカデミー最優秀新人賞 注6:金来成(キム・ネソン)『魔人』 … 日本で探偵作家デビューした金来成が朝鮮半島に帰ってから韓国語で執筆・発表した長編。1939年発表。 注7:ジョー・ネスボ『ザ・バット』 … 1997年リヴァートンクラブ(=ノルウェー推理作家協会)ゴールデンリボルバー賞(=最優秀ミステリ賞)、1998年ガラスの鍵賞(北欧最優秀ミステリ賞) 注8:ピエール・ルメートル『その女アレックス』 … 2013年英国推理作家協会インターナショナル・ダガー賞 注9:アレクサンダー・レルネット=ホレーニア『両シチリア連隊』 … 訳者の垂野創一郎氏はこの作品を「オーストリア三大アンチミステリの一つといわれるこの幻魔怪奇探偵小説」と紹介している(2014年7月10日のエントリー参照)。 注10:水天一色(すいてんいっしき)短編「おれみたいな奴が」 … 本格ミステリ長編『蝶の夢』(講談社、2009年)が訳されている作家。千街晶之氏は『蝶の夢』を「アガサ・クリスティーばりのミスディレクションの技巧が冴えわたるド本格」として高く評価した(翻訳ミステリー大賞シンジケート、書評七福神の2009年12月度のベスト)。短編「おれみたいな奴が」(2009)は第5回(2011年)北京偵探推理文芸協会賞の最優秀短編賞受賞作。北京偵探推理文芸協会(2004年設立)およびその前身は、1998年から3~4年に一度のペースで長編や中編、短編、ショートショートなどいくつかの部門に分けて期間内の最優秀作品に賞を授与している。第5回の賞は2007年~2011年半ばの作品が対象。 注11:林斯諺(りん しげん)短編「バドミントンコートの亡霊」 … 第2回(2004年)台湾推理作家協会賞受賞作。この賞は公募の短編ミステリ賞である。2014年、本人が英訳し、米国『エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン』2014年8月号に「The Ghost of the Badminton Court」のタイトルで掲載された。中国語圏のミステリ小説が米国『EQMM』に翻訳掲載されたのはこれが初めてである。 注12:寵物先生(ミスターペッツ)短編「犯罪の赤い糸」 … 第1回(2009年)島田荘司推理小説賞を受賞した『虚擬街頭漂流記』(文藝春秋、2010年)と短編「彷徨えるマーク・ガッソン」(『ジャーロ』41号、2011年3月)が訳されている作家。短編「犯罪の赤い糸」は2007年の台湾推理作家協会賞(公募の短編ミステリ賞)の受賞作である。 注13:カルロス・ルイス・サフォン『天国の囚人』…『風の影』、『天使のゲーム』に続く《忘れられた本の墓場》4部作の第3作(第4作は本国でも未刊行)。 注14:エーリク・ヴァレア『7人目の子』…2012年デンマーク推理作家アカデミー ハラルド・モーゲンセン賞(国内最優秀ミステリ賞)受賞、2012年ガラスの鍵賞(北欧最優秀ミステリ賞)受賞。 注15:グスタボ・ファベロン=パトリアウ『古書収集家』…ペルーの迷宮的本格ミステリ。(宮﨑真紀「各国ミステリ事情 スペイン・中南米篇」『ハヤカワミステリマガジン』2013年12月号 参照)。 注16:アンネ・ホルト『凍える街』…ハンネ捜査官シリーズ第7作 Sannheten bortenfor (2003) 。1990年代末に集英社文庫から柳沢由実子氏の訳でシリーズ第1作~第3作が刊行されている。このシリーズの2007年の作品『1222』は2012年のエドガー賞最優秀長編賞にノミネートされた。 短編の雑誌掲載アンドレアス・グルーバー「amazon.jp」、「『信じてほしい、私はワトスン博士だ』!」(『ミステリーズ!』63号、2014年2月、酒寄進一訳) ポール・アルテ「狼の夜」(『ハヤカワミステリマガジン』2014年9月号、平岡敦訳) レオ・マレ「墓地にて」【前・後篇】(『ハヤカワミステリマガジン』2014年10月号および11月号、竹若理衣訳) 関連書籍(原語は英語)ジェイムズ・トンプソン『凍氷』(集英社文庫、2014年2月、高里ひろ訳) 2013年2月の『極夜 カーモス』に続くシリーズ第2弾。フィンランド在住のアメリカ人ミステリ作家がフィンランドを舞台にして書いたミステリ。作者は1998年からフィンランドで暮らし、現地の女性と結婚し、フィンランド語を流暢に話すという。2014年12月にシリーズ第3弾の邦訳出版が予定されている。 ジェイムズ・トンプソン『白の迷路』(集英社文庫、2014年12月) 文庫化2月7日 フランス(フランス語) カミ『機械探偵クリク・ロボット』(ハヤカワ・ミステリ文庫、高野優訳) 3月20日 フィンランド(英語) ハンヌ・ライアニエミ『量子怪盗』(ハヤカワ文庫SF、酒井昭伸訳) 国別一覧 スウェーデン 1月10日 スウェーデン スウェーデン語 アレクサンデル・セーデルベリ 『アンダルシアの友』 ハヤカワ・ミステリ ヘレンハルメ美穂訳 1月10日 スウェーデン スウェーデン語 ヴィヴェカ・ステン 『夏の陽射しのなかで』 ハヤカワ・ミステリ文庫 三谷武司訳 1月17日 スウェーデン スウェーデン語 カミラ・レックバリ 『人魚姫 エリカ&パトリック事件簿』 集英社文庫 富山クラーソン陽子訳 3月7日 スウェーデン スウェーデン語 ヴィヴェカ・ステン 『煌めく氷のなかで』 ハヤカワ・ミステリ文庫 三谷武司訳 3月22日 スウェーデン スウェーデン語 カーリン・イェルハルドセン 『パパ、ママ、あたし』 創元推理文庫 木村由利子訳 6月28日 スウェーデン スウェーデン語 M・ヨート、H・ローセンフェルト 『犯罪心理捜査官セバスチャン』【上下巻】 創元推理文庫 ヘレンハルメ美穂訳 7月9日 スウェーデン スウェーデン語 アンデシュ・デ・ラ・モッツ 『監視ごっこ』 *注5 ハヤカワ・ミステリ文庫 真崎義博訳 7月22日 スウェーデン スウェーデン語 ヘニング・マンケル 『北京から来た男』【上下巻】 東京創元社 柳沢由実子訳 9月25日 スウェーデン スウェーデン語 シューヴァル&ヴァールー 【新訳】『刑事マルティン・ベック ロセアンナ』 角川文庫 柳沢由実子訳 10月17日 スウェーデン スウェーデン語 カミラ・レックバリ 『霊の棲む島 エリカ&パトリック事件簿』 集英社文庫 富山クラーソン陽子訳 10月31日 スウェーデン スウェーデン語 アンナ・ヤンソン 『消えた少年』 創元推理文庫 久山葉子訳 12月19日 スウェーデン スウェーデン語 ヨアキム・サンデル 『スパイは泳ぎつづける』 ハヤカワ文庫NV ヘレンハルメ美穂、中村有以訳 デンマーク 7月9日 デンマーク デンマーク語 ユッシ・エーズラ・オールスン 『特捜部Q―知りすぎたマルコ―』 ハヤカワ・ミステリ 吉田薫訳 10月24日 デンマーク デンマーク語 エーリク・ヴァレア 『7人目の子』【上下巻】 *注14 ハヤカワ・ミステリ文庫 長谷川圭訳 ノルウェー 8月21日 ノルウェー ノルウェー語 ジョー・ネスボ 『ザ・バット 神話の殺人』 *注7 集英社文庫 戸田裕之訳 9月25日 ノルウェー ノルウェー語 トマス・エンゲル 『瘢痕』 ハヤカワ・ミステリ文庫 公手成幸訳 12月22日 ノルウェー ノルウェー語 アンネ・ホルト 『凍える街』 *注16 創元推理文庫 枇谷玲子訳 フィンランド 5月30日 フィンランド フィンランド語 レーナ・レヘトライネン 『要塞島の死』 創元推理文庫 古市真由美訳 6月25日 フィンランド フィンランド語 マッティ・ロンカ 『殺人者の顔をした男』 *注3 集英社文庫 古市真由美訳 ドイツ語圏 1月30日 オーストリア ドイツ語 アンドレアス・グルーバー 『黒のクイーン』 創元推理文庫 酒寄進一訳 5月26日 ドイツ ドイツ語 メヒティルト・ボルマン 『沈黙を破る者』 *注1 河出書房新社 赤坂桃子訳 7月30日 ドイツ ドイツ語 フォルカー・クッチャー 『ゴールドスティン』【上下巻】 創元推理文庫 酒寄進一訳 8月29日 ドイツ ドイツ語 ラフィク・シャミ 『愛の裏側は闇』【全3巻】※第2巻は9月、第3巻は10月発売 東京創元社 酒寄進一訳 9月12日 オーストリア ドイツ語 アレクサンダー・レルネット=ホレーニア 『両シチリア連隊』 *注9 東京創元社 垂野創一郎訳 9月29日 ドイツ ドイツ語 シャルロッテ・リンク 『沈黙の果て』【上下巻】 創元推理文庫 浅井晶子訳 10月10日 オーストリア ドイツ語 ウルズラ・ポツナンスキ 『〈5〉のゲーム』 ハヤカワ・ミステリ文庫 浅井晶子訳 オランダ 9月7日 オランダ オランダ語 ヘルマン・コッホ 『冷たい晩餐』 イースト・プレス 羽田詩津子訳 フランス語圏 4月10日 フランス フランス語 カミ 『三銃士の息子』 ハヤカワ・ミステリ 高野優訳 5月13日 フランス フランス語 バルバラ 『赤い橋の殺人』 光文社古典新訳文庫 亀谷乃里訳 6月10日 フランス フランス語 バルザック 【新訳】『暗黒事件』 *注2 ちくま文庫 柏木隆雄訳 6月20日 フランス フランス語 エレーヌ・グレミヨン 『火曜日の手紙』 早川書房 池畑奈央子訳 7月30日 スイス フランス語 ジョエル・ディケール 『ハリー・クバート事件』【上下巻】 東京創元社 橘明美訳 9月2日 フランス フランス語 ピエール・ルメートル 『その女アレックス』 *注8 文春文庫 橘明美訳 9月25日 フランス フランス語 ルネ・レウヴァン 『シャーロック・ホームズの気晴らし』 国書刊行会 寺井杏里訳 イタリア 4月28日 イタリア イタリア語 ルーサー・ブリセット 『Q』【上下巻】 東京創元社 さとうななこ訳 6月6日 イタリア イタリア語 ドナート・カッリージ 『ローマで消えた女たち』 ハヤカワ・ミステリ 清水由貴子訳 9月末 イタリア イタリア語 ジョルジョ・シェルバネンコ 『傷ついた女神』 論創海外ミステリ 熊木信太郎訳 スペイン語圏 5月9日 チリ スペイン語 ロベルト・アンプエロ 『ネルーダ事件』 ハヤカワ・ミステリ 宮崎真紀訳 10月17日 スペイン スペイン語 カルロス・ルイス・サフォン 『天国の囚人』 *注13 集英社文庫 木村裕美訳 10月17日 スペイン スペイン語 トニ・ヒル 『死んだ人形たちの季節』 集英社文庫 宮崎真紀訳 12月中旬 ペルー スペイン語 グスタボ・ファベロン=パトリアウ 『古書収集家』 *注15 水声社 高野雅司訳 南アフリカ共和国 2月7日 南アフリカ 英語 ローレン・ビュークス 『シャイニング・ガール』 ハヤカワ文庫NV 木村浩美訳 11月20日 南アフリカ アフリカーンス語 デオン・マイヤー 『デビルズ・ピーク』 集英社文庫 大久保寛訳 中国語圏 10月3日 中国 / 台湾 中国語 (アンソロジー) 『現代華文推理系列 第一集』(下記4編の合本 / 詳細は「こちら」) KDP 稲村文吾訳 10月3日 中国 中国語 御手洗熊猫(みたらい ぱんだ) 短編「人体博物館殺人事件」 KDP 稲村文吾訳 10月3日 中国 中国語 水天一色(すいてんいっしき) 短編「おれみたいな奴が」 *注10 KDP 稲村文吾訳 10月3日 台湾 中国語 林斯諺(りん しげん) 短編「バドミントンコートの亡霊」 *注11 KDP 稲村文吾訳 10月3日 台湾 中国語 寵物先生(ミスターペッツ) 短編「犯罪の赤い糸」 *注12 KDP 稲村文吾訳 韓国 6月27日 韓国 日本語・韓国語 金来成(キム・ネソン) 『金来成探偵小説選』 *注4 論創ミステリ叢書 祖田律男訳 7月29日 韓国 韓国語 金来成(キム・ネソン) 『魔人』 *注6 論創海外ミステリ 祖田律男訳 予定 東京創元社北欧スウェーデン:アンナ・ヤンソン『消えた少年』 Pojke försvunnen 久山葉子訳 ドイツ語圏ドイツ:ラフィク・シャミ『愛の裏側は闇』(仮) Die dunkle Seite der Liebe 酒寄進一訳 (ドイツに亡命したシリア出身の作家。創作活動はドイツ語で行っている) ドイツ:フェルディナント・フォン・シーラッハ『禁忌』(仮) Tabu 酒寄進一訳 フランス語圏フランス:フレッド・ヴァルガス Sous les vents de Neptune 田中千春訳 早川書房北欧スウェーデン:ヨアキム・ザンデル(Joakim Zander)『Simmaren』(スイマー) デンマーク:エリク・バレウル(Erik Valeur)『Det syvende barn』(七番目の子供) 2012年ハラルド・モーゲンセン賞、2012年ガラスの鍵賞 デンマーク:サンダー・ヤコブセン(Sander Jakobsen)(Dagmar WintherとKenneth Degnbolのコンビの筆名) ノルウェー:トマス・エンゲル(Thomas Enger)『Skinndød』(仮死) ドイツ語圏オーストリア:ウルスラ・ポツナンスキ(Ursula Poznanski)『Fünf』(五) 集英社スペイン:トニ・ヒル『壊れた玩具たちの夏』(El verano de los juguetes muertos)→『死んだ人形たちの季節』2014年10月 論創社 論創海外ミステリ韓国:金来成(キム・ネソン)『魔人』(1939)祖田律男訳日本でデビューし、のちに朝鮮半島で探偵作家として活躍した作家の代表作。 フランス:フランシス・ディドロ『七人目の陪審員』(1956?)森英俊編著『世界ミステリ作家事典 本格派篇』(国書刊行会、1998年)によれば、この作品は「植草甚一が絶賛したことでも知られている。その評価に偽りはなく、まさにディドロの真骨頂が発揮された法廷ミステリの傑作である」。 イタリア:ジョルジオ・サルバネンコ(ジョルジョ・シェルバネンコ)『傷ついた女神』(1966)「イタリア国産ミステリの父」、「イタリアン・ノワールの父」などと呼ばれるシェルバネンコの代表シリーズ、ドゥーカ・ランベルティ・シリーズの第1作。第2作『裏切者』は早川書房『世界ミステリ全集』第12巻(1972年)に収録されている。 ジョルジュ・シムノン『紺碧海岸のメグレ』 情報源 東京創元社 「【新年特別企画】2014年 東京創元社 翻訳ミステリラインナップのご案内」(2014年1月1日) 翻訳ミステリー大賞シンジケート「今年もやりました! 出版社対抗ビブリオバトル・レポートと各社の隠し玉公開!」(2014年4月25日) 『このミステリーがすごい! 2014年版』の「我が社の隠し玉」 論創社 刊行予定 関連ページ 非英語圏ミステリ2013年の邦訳出版一覧 (1)叢書等 ポケミス非英語圏作品一覧 創元推理文庫海外ミステリ非英語圏作品一覧 ハヤカワ・ミステリ文庫非英語圏作品一覧 年間ミステリランキング 非英語圏作品一覧 (2)地域別 北欧ミステリ邦訳一覧 南欧ミステリ邦訳一覧 ドイツ語圏ミステリ邦訳一覧 ロシア・中東欧ミステリ邦訳一覧 中南米ミステリ邦訳一覧 フランスミステリベスト100 (3)賞 フランスのミステリ賞 - 受賞作の邦訳一覧 北欧のミステリ賞 インターナショナル・ダガー賞 受賞作・候補作一覧 (4)その他 『ミステリマガジン』洋書案内〈世界篇〉で紹介された本とその邦訳状況 ヨーロッパの推理小説 - ヨーロッパの推理小説に関する日本語文献の一覧 《世界探偵小説全集》のラインナップを本当に「世界」規模で考えてみる 非英語圏ミステリー賞あ・ら・かると (翻訳ミステリー大賞シンジケート)
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2010年11月5日作成 最終更新:2011年6月15日 2003年版(2001年11月~2002年10月)2003 国内編 2003 海外編 2006年版(2004年11月~2005年10月)2006 国内編 2006 海外編 2007年版(2005年11月~2006年10月)2007 国内編 2007 海外編 2008年版(2006年11月~2007年10月)2008 国内編 2008 海外編 2009年版(2007年11月~2008年10月)2009 国内編 2009 海外編 2010年版(2008年11月~2009年10月)2010 国内編 2010 海外編 2ちゃんねるのミステリー板のスレッド「ミステリー2002/ベスト10投票場 」(2003年版)、「2chが選ぶこのミステリーがすごい!2006 」(2006年版)、「2chが選ぶこのミステリーがすごい!」(2007~2010年版)で行われた年間ミステリーランキング。対象期間は、『このミステリーがすごい!』や『本格ミステリ・ベスト10』と同じく「11月1日~10月31日」である。なお、2004年、2005年、2011年は実施されていない。 以下では、各年の10位まで(海外編は、投票者が少ないため5位まで)の一覧を掲げる。各年の詳細は、Wiki内のそれぞれのページを参照のこと。 関連ページ:『このミステリーがすごい!』@ミステリー板 過去ログ - 『このミステリーがすごい!』や『本格ミステリ・ベスト10』など、ミステリーランキング全般についてのスレッド。過去ログをすべて見られるようにしてある。 ※各年の集計人の方の丁寧な作業に感謝します! 2003年版(2001年11月~2002年10月) 詳細は→「2chが選ぶこのミステリーがすごい!/2003年版」 2003 国内編 1位 世界は密室でできている。 舞城王太郎 講談社 96点 2位 鏡の中は日曜日 殊能将之 講談社 77点 3位 ルール 古処誠二 集英社 67点 4位 クビシメロマンチスト 西尾維新 講談社 66点 5位 GOTH 乙一 角川書店 48点 6位 半落ち 横山秀夫 講談社 40点 7位 殺人症候群 貫井徳郎 双葉社 37点 8位 アラビアの夜の種族 古川日出男 角川書店 35点 9位 世界の終わり、あるいは始まり 歌野晶午 角川書店 34点 10位 暗いところで待ち合わせ 乙一 幻冬舎 33点 10位 黒と茶の幻想 恩田陸 講談社 33点 2003 海外編 投票者1名のため集計されず。 2006年版(2004年11月~2005年10月) 詳細は→「2chが選ぶこのミステリーがすごい!/2006年版」 2006 国内編 1位 「容疑者Xの献身」東野圭吾 69点 2位 「扉は閉ざされたまま」石持浅海 36点 3位 「模像殺人事件」佐々木俊介 33点 3位 「交換殺人には向かない夜」東川篤哉 33点 5位 「女王様と私」歌野晶午 28点 5位 「犬はどこだ」米澤穂信 28点 7位 「神様ゲーム」麻耶雄嵩 24点 8位 「クドリャフカの順番」米澤穂信 23点 9位 「死神の精度」伊坂幸太郎 22点 10位 「シャングリ・ラ」池上永一 20点 10位 「少女には向かない職業」桜庭一樹 20点 10位 「ギブソン」藤岡真 20点 2006 海外編 18 「アプルビイズ・エンド」マイケル.イネス 12 「愚か者の祈り」ヒラリー・ウォー 10 「春を待つ谷間で」S.J.ローザン 10 「謀殺の火」 S.H.コーティア 10 「エラリー・クイーンの国際事件簿」エラリー・クイーン 10 「サルバドールの復活」 ジェレミー・ドロンフィールド 2007年版(2005年11月~2006年10月) 詳細は→「2chが選ぶこのミステリーがすごい!/2007年版」 2007 国内編 1位 道尾秀介「シャドウ」56P 2位 三津田信三「厭魅の如き憑くもの」46P 3位 米澤穂信「夏期限定トロピカルパフェ事件」43P 4位 乙一「銃とチョコレート」37P 5位 道尾秀介「骸の爪」34P 6位 道尾秀介「向日葵の咲かない夏」28P 6位 海堂尊「チーム・バチスタの栄光」28P 8位 大山誠一郎「仮面幻双曲」27P 9位 宮部みゆき「名もなき毒」26P 10位 法月綸太郎「怪盗グリフィン、絶体絶命」24P 2007 海外編 デイヴィッド・アレクサンダー「絞首人の一ダース」26P マージェリー・アリンガム「屍衣の流行」10P ジェイムズ・カルロス・ブレイク「荒らぶる血」10P ハーラン・コーベン「イノセント」9P ミルワード・ケネディ「スリープ村の殺人者」8P P.G. ウッドハウス「エムズワース卿の受難録」8P 2008年版(2006年11月~2007年10月) 詳細は→「2chが選ぶこのミステリーがすごい!/2008年版」 2008 国内編 1位 三津田信三「首無の如き祟るもの」200P 2位 米澤穂信「インシテミル」100P 3位 歌野晶午「密室殺人ゲーム王手飛車取り」86P 4位 有栖川有栖「女王国の城 」59P 5位 冲方丁「マルドゥック・ヴェロシティ」56P 6位 近藤史恵「サクリファイス」55P 7位 島田荘司「リベルタスの寓話」42P 8位 桜庭一樹「赤朽葉家の伝説」38P 9位 今野敏「果断-隠蔽捜査2-」37P 9位 柄刀一「密室キングダム」37P 2008 海外編 1位 アン・クリーヴス「大鴉の啼く冬」34P 2位 セオドア ロスコー「死の相続」28P 3位 ヘニング・マンケル「目くらましの道」23P 4位 ポール・アルテ「狂人の部屋}22P 5位 ウィリアム・ブリテン「ジョン・ディクスン・カーを読んだ男」18P 5位 ヘンリー・ウェイド「議会に死体」18P 5位 スーザン・ギルラス「蛇は嗤う」18P 2009年版(2007年11月~2008年10月) 詳細は→「2chが選ぶこのミステリーがすごい!/2009年版」 2009 国内編 1 位 (119pt) 『山魔の如き笑うもの』 三津田信三 2 位 (96pt) 『ラットマン』 道尾秀介 3 位 (67pt) 『堕天使拷問刑』 飛鳥部勝則 4 位 (64pt) 『完全恋愛』 牧薩次 5 位 (44pt) 『造花の蜜』 連城三紀彦 6 位 (37pt) 『エコール・ド・パリ殺人事件』 深水黎一郎 7 位 (35pt) 『新世界より』 貴志祐介 8 位 (34pt) 『少女ノイズ』 三雲岳斗 9 位 (31pt) 『告白』 湊かなえ 9 位 (31pt) 『ディスコ探偵水曜日』 舞城王太郎 2009 海外編 1 位 (24pt) 『チャイルド44』 トム・ロブ・スミス 2 位 (20pt) 『冬そして夜』 S・J・ローザン 3 位 (18pt) 『フロスト気質』 R・D・ウィングフィールド 4 位 (17pt) 『ウォリス家の殺人』 D.M.ディヴァイン 5 位 (16pt) 『紫雲の怪』 ロバート・ファン・ヒューリック 2010年版(2008年11月~2009年10月) 詳細は→「2chが選ぶこのミステリーがすごい!/2010年版」 2010 国内編 1 位 82pt 『Another』 綾辻行人 2 位 62pt 『三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人』 倉阪鬼一郎 3 位 60pt 『密室殺人ゲーム 2.0』 歌野晶午 4 位 47pt 『身代わり』 西澤保彦 5 位 31pt 『殺人鬼フジコの衝動』 真梨幸子 6 位 30pt 『花窗玻璃 シャガールの黙示』 深水黎一郎 7 位 27pt 『秋期限定栗きんとん事件』 米澤穂信 8 位 24pt 『ここに死体を捨てないでください!』 東川篤哉 9 位 21pt 『神国崩壊 探偵府と四つの綺譚』 獅子宮敏彦 9 位 21pt 『リバース』 北國浩二 2010 海外編 1 位 28pt 『検死審問ふたたび』 パーシヴァル・ワイルド 2 位 20pt 『荒野のホームズ、西へ行く』 スティーヴ・ホッケンスミス 3 位 17pt 『麗しのオルタンス』 ジャック・ルーボー 3 位 17pt 『災厄の紳士』 D.M.ディヴァイン 3 位 17pt 『幽霊の2/3』 ヘレン・マクロイ
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2013年6月18日 ドイツ語圏版の『東西ミステリーベスト100』、のようなもの。 姉妹ページ「ドイツ語圏のミステリファンが選ぶドイツ語圏ミステリベスト100(2002年)」もご覧ください。 「ドイツ・ミステリ大賞」(1985年~)を主催するミステリ愛好団体「ボーフム・ミステリ・アーカイブ」の調査による「ミステリ・オールタイムベスト119」(1990年)。ミステリ作家やミステリ評論家、ミステリファンが調査に協力しているが、参加者は37人とあまり多くない。(新版『東西ミステリーベスト100』は387人がアンケートに回答しているので、その10分の1の規模である) DEUTSCHER KRIMI PREIS - Die 119 besten Krimis aller Zeiten (ドイツ・ミステリ大賞公式サイト>ミステリ・オールタイムベスト119) ドイツ語部門と翻訳部門の区別はない。119作中、邦訳がないのは12作品。 なお、このオールタイムベストは1990年のものだが、この後ドイツのミステリ事情は大きく変化していく。1990年代初頭にスウェーデンのヘニング・マンケルのヴァランダー警部シリーズ(1991年~)が翻訳されてドイツの読書界を席捲し、その後北欧のミステリが続々と翻訳されるようになるのである。その結果、現在のドイツでは北欧ミステリが英米のミステリに匹敵する存在感を持っているのだという。また、その北欧ミステリの大量流入に刺激を受けて、ドイツの国産ミステリ市場も活性化していったそうだ。今同じようなオールタイムベストのアンケートを取ったら、北欧やドイツ(語圏)のミステリの占める割合がもっと大きくなるのではないだろうか。 (参照:ドイツでの北欧ミステリ人気については、マライ・メントラインさんのエッセイ「マライ•de•ミステリ2 「黒船」は極北の地から!」[2012年3月5日]が詳しい) 表の見方 作品タイトルの後ろの数字は、その作家の作品が何作ランクインしているか、またその中でその作品が何番目であるかを示している。たとえばレイモンド・チャンドラー『長いお別れ』の後ろの「1/6」は、チャンドラーの作品が6作ランクインしており、その中で『長いお別れ』が一番高い順位であることを示す。 「英」イギリス、「米」アメリカ、「独」ドイツ、「ス」スイス、「仏」フランス、「伊」イタリア、「典」スウェーデン、「ノ」ノルウェー、「蘭」オランダ。 4種のオールタイムベストとの比較を付した。「旧×位」…旧版『東西ミステリーベスト100』(1985年) 「新×位」…新版『東西ミステリーベスト100』(2012年) 「英×位」…英国推理作家協会(CWA)によるベスト100(1990年)(「海外ミステリ総合データベース ミスダス」の「CWAが選んだミステリベスト100」で見られる) 「米×位」…アメリカ探偵作家クラブ(MWA)によるベスト100(1995年)(「海外ミステリ総合データベース ミスダス」の「アメリカ探偵作家クラブが選んだミステリBEST100」で見られる) 第一席(第1位) 26ポイント 【米】ジェイムズ・M・ケイン 『郵便配達夫はいつも二度ベルを鳴らす』(1/2) 旧56位 英30位 米14位 WENN DER POSTMANN ZWEIMAL KLINGELT 第二席(第2位) 25ポイント 【米】レイモンド・チャンドラー 『長いお別れ』(1/6) 旧3位 新6位 英15位 米13位 DER LANGE ABSCHIED 第三席(第3位) 24ポイント 【米】レイモンド・チャンドラー 『大いなる眠り』(2/6) 旧43位 英2位 米8位 DER TIEFE SCHLAF 【米】ダシール・ハメット 『マルタの鷹』(1/5) 旧19位 新36位 英10位 米2位 DER MALTESER FALKE 第四席(第5位) 18ポイント 【ス】フリードリヒ・グラウザー 『シュルンプ・エルヴィンの殺人事件』(1/3)(シュトゥーダー刑事シリーズ) WACHTMEISTER STUDER 【英】エリック・アンブラー 『ディミトリオスの棺』(1/6) 旧71位 英24位 米17位 DIE MASKE DES DIMITRIOS 【米】ダシール・ハメット 『影なき男』(2/5) 米31位 DER DÜNNE MANN 第五席(第8位) 17ポイント 【英】ジョン・ル・カレ 『寒い国から帰ってきたスパイ』(1/4) 旧33位 英3位 米6位 DER SPION, DER AUS DER KÄLTE KAM 第六席(第9位) 16ポイント 【英】アーサー・コナン・ドイル 『バスカヴィル家の犬』(1/2) 旧45位 新47位 英32位 *注1 DER HUND DER BASKERVILLES 【米】ダシール・ハメット 『ガラスの鍵』(3/5) 旧88位 英31位 米88位 DER GLÄSERNE SCHLÜSSEL 第七席(第11位) 15ポイント 【英】ハドリー・チェイス 『ミス・ブランディッシの蘭』 KEINE ORCHIDEEN FÜR MISS BLANDISH 【米】レイモンド・チャンドラー 『さらば愛しき女よ』(3/6) 旧13位 新79位 英7位 米21位 LEBWOHL, MEIN LIEBLING 【米】ダシール・ハメット 『血の収穫』(赤い収穫)(4/5) 旧29位 新38位 英94位 米39位 ROTE ERNTE 第八席(第14位) 13ポイント 【ス】フリードリヒ・デュレンマット 『判事と死刑執行人』(裁判官と死刑執行人)(1/2) DER RICHTER UND SEIN HENKER 【米】パトリシア・ハイスミス 『太陽がいっぱい』(リプリー)(1/8) 英45位 米71位 DER TALENTIERTE MISTER RIPLEY 【米】エドガー・アラン・ポー 「モルグ街の殺人」*注2 旧36位 新34位 英23位 米3位 DIE MORDE IN DER RUE MORGUE 【米】ミッキー・スピレイン 『裁くのは俺だ』 米45位 ICH, DER RICHTER 第九席(第18位) 12ポイント 【英】ジョン・バカン 『三十九階段』 英20位 米22位 DIE NEUNUNDDREISSIG STUFEN 【英】ダン・キャヴァナー 『顔役を撃て』 DUFFY 【米】レイモンド・チャンドラー 『高い窓』(4/6) DAS HOHE FENSTER 第十席(第21位) 11ポイント 【独】Jörg Fauser (未訳) DER SCHNEEMANN 【ス】フリードリヒ・グラウザー 『狂気の王国』(シュトゥーダー刑事シリーズ)(2/3) MATTO REGIERT 【伊】ウンベルト・エーコ 『薔薇の名前』 新7位 英13位 米23位 DER NAME DER ROSE 【英】アガサ・クリスティー 『アクロイド殺し』(1/2) 旧8位 新5位 英5位 米12位 ALIBI 【英】レン・デイトン 『イプクレス・ファイル』(1/2) 英9位 米43位 IPCRESS - STRENG GEHEIM 【英】ブライアン・フリーマントル 『消されかけた男』 旧41位 CHARLIE MUFFIN - AGENTENPOKER 【米】レイモンド・チャンドラー 『湖中の女』(5/6) 英47位 米59位 DIE TOTE IM SEE 【米】チェスター・ハイムズ 『暑い日暑い夜』(1/3) BLIND, MIT EINER PISTOLE 【米】ロス・トーマス 『大博奕』(1/3) 米85位 UMWEG ZUR HÖLLE 第十一席(第30位) 10ポイント 【典】シューヴァル&ヴァールー 『テロリスト』(1/4) DIE TERRORISTEN 【英】エリック・アンブラー 『グリーン・サークル事件』(2/6) DER LEVANTINER 【英】E・C・ベントリー 『トレント最後の事件』 旧74位 英34位 米33位 TRENTS LETZTER FALL 【英】ドロシー・L・セイヤーズ 『学寮祭の夜』 英4位 米18位 AUFRUHR IN OXFORD 第十二席(第34位) 9ポイント 【伊】フルッテロ&ルチェンティーニ 『日曜日の女』(1/2) DIE SONNTAGSFRAU 【英】アーサー・コナン・ドイル 『緋色の研究』(2/2) 新96位 *注3 STUDIE IN SCHARLACHROT 【米】パトリシア・ハイスミス 『見知らぬ乗客』(2/8) 英38位 ALIBI FÜR ZWEI / ZWEI FREMDE IM ZUG 【米】ハリイ・ケメルマン 『金曜日ラビは寝坊した』 AM FREITAG SCHLIEF DER RABBI LANG 【米】ジム・トンプスン 『内なる殺人者』(おれの中の殺し屋)(1/3) 米49位 DER MÖRDER IN MIR 第十三席(第39位) 8ポイント 【典】シューヴァル&ヴァールー 『笑う警官』(2/4) 旧30位 新30位 米46位 ENDSTATION FÜR NEUN 【英】エリック・アンブラー 『シルマー家の遺産』(3-4/6) SCHIRMERS ERBSCHAFT 【英】エリック・アンブラー 『真昼の翳』(3-4/6) TOPKAPI 【英】ジョン・ル・カレ 『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』(2/4) 英33位 米30位 DAME KÖNIG AS SPION 【英】アースキン・チルダーズ 『砂洲の謎』 英92位 DAS RÄTSEL DER SANDBANK 【米】ジェイムズ・M・ケイン 『殺人保険』(2/2) 米34位 DEN HAIEN ZUM FRASS 【米】トルーマン・カポーティ 『冷血』 米54位 KALTBLÜTIG 【米】パトリシア・ハイスミス 『アメリカの友人』(3-4/8) RIPLEYS GAME 【米】パトリシア・ハイスミス 『愛しすぎた男』(3-4/8) DER SÜSSE WAHN 【米】チェスター・ハイムズ "Run Man Run"(未訳)(2/3) LAUF NIGGER LAUF 【米】エルモア・レナード 『グリッツ』 GLITZ 【米】グレゴリー・マクドナルド 『フレッチ 殺人方程式』 米29位 FLETCH 【米】マーガレット・ミラー 『狙った獣』 英75位 米79位 LIEBE MUTTER, ES GEHT MIR GUT 第十四席(第52位) 7ポイント 【独】Hans Werner Kettenbach (未訳)(1/2) MINNIE 【仏】ガストン・ルルー 『黄色い部屋の秘密』 旧16位 新28位 DAS GEHEIMNIS DES GELBEN ZIMMERS 【英】エリック・アンブラー 『ドクター・フリゴの決断』(5/6) DOKTOR FRIGO 【英】ウィルキー・コリンズ 『月長石』 旧51位 新67位 英8位 米7位 MONDDIAMANT 【英】グレアム・グリーン 『第三の男』(1-2/4) 英72位 米48位 DRITTE MANN 【英】グレアム・グリーン 『ハバナの男』(1-2/4) 米61位 UNSER MANN IN HAVANNA 【米】W・R・バーネット 『リトル・シーザー』 米75位 DER KLEINE CÄSAR 【米】ジョー・ゴアズ 『ハメット』 DASHIELL HAMMETTS LETZTER FALL 【米】ロス・トーマス 『女刑事の死』(2/3) SCHUTZWALL 【米】アンドリュー・ヴァクス 『フラッド』 KATA 【米】コーネル・ウールリッチ 『黒衣の花嫁』 DIE BRAUT TRUG SCHWARZ 第十五席(第63位) 6ポイント 【独】Michael Molsner (未訳)*注4 ROTE MESSE 【伊】フルッテロ&ルチェンティーニ "A che punto è la notte"(未訳)(2/2) WIE WEIT IST DIE NACHT 【典】シューヴァル&ヴァールー 『唾棄すべき男』(3-4/4) DAS EKEL AUS SÄFFLE 【典】シューヴァル&ヴァールー 『警官殺し』(3-4/4) DER POLIZISTENMÖRDER 【英】ジョン・ル・カレ 『スクールボーイ閣下』(3/4) EINE ART HELD 【英】アガサ・クリスティー 『そして誰もいなくなった』(2/2) 旧4位 新1位 英19位 米10位 ZEHN KLEINE NEGERLEIN 【英】エドマンド・クリスピン "The Glimpses of the Moon"(未訳) DER MOND BRICHT DURCH DIE WOLKEN 【英】マイクル・イネス 『ハムレット復讐せよ』 英68位 HAMLETS RACHE 【米】レイモンド・チャンドラー 『かわいい女』(リトル・シスター)(6/6) DIE KLEINE SCHWESTER 【米】ジェイムズ・エルロイ 『ブラック・ダリア』 新55位 DIE SCHWARZE DAHLIE 【米】ローレン・D・エスルマン "Motor City Blue"(未訳) DETROIT BLUES 【米】パトリシア・ハイスミス 『贋作』(5-6-7/8) RIPLEY UNDER GROUND 【米】パトリシア・ハイスミス 『水の墓碑銘』(5-6-7/8) TIEFE WASSER 【米】パトリシア・ハイスミス 『変身の恐怖』(5-6-7/8) DAS ZITTERN DES FÄLSCHERS 【米】チェスター・ハイムズ 『黒の殺人鬼』(3/3) HARLEM DREHT DURCH 【米】ロス・マクドナルド 『地中の男』(1/4) DER UNTERGRUNDMANN 【米】ジム・トンプスン 『ポップ1280』(2-3/3) 1280 SCHWARZE SEELEN 【米】ジム・トンプスン 『ゲッタウェイ』(2-3/3) GETAWAY 【米】ジョゼフ・ウォンボー 『ハリウッドの殺人』(1/2) DER HOLLYWOOD MORD 【米】チャールズ・ウィルフォード 『マイアミ・ブルース』(1/2) MIAMI BLUES 第十六席(第83位) 5ポイント 【独】ヤーコプ・アルユーニ 『異郷の闇』 HAPPY BIRTHDAY TÜRKE 【独】ピーケ・ビーアマン (未訳) POTSDAMER ABLEBEN 【独】Hans Werner Kettenbach (未訳)(2/2) GLATTEIS 【ス】フリードリヒ・デュレンマット 『嫌疑』(2/2) DER VERDACHT 【ス】フリードリヒ・グラウザー 『シナ人』(シュトゥーダー刑事シリーズ)(3/3) DER CHINESE 【仏】ボアロー&ナルスジャック 『死者の中から』(1-2/2) AUS DEM REICH DER TOTEN 【仏】ボアロー&ナルスジャック 『私のすべては一人の男』(1-2/2) MENSCH AUF RATEN 【仏】エミール・ガボリオ 『ルルージュ事件』 DIE AFFÄRE LEROUGE 【仏】モーリス・ルブラン 『怪盗紳士ルパン』 ARSENE LUPIN - DER GENTLEMAN GAUNER 【伊】レオナルド・シャーシャ 『真昼のふくろう』 DER TAG DER EULE 【ノ】Ingvar Ambjørnsen "Stalins øye"(未訳) STALINS AUGEN 【蘭】J・ヴァン・デ・ウェテリンク 英題"The Japanese Corpse"(未訳) TICKET NACH TOKIO 【英】エリック・アンブラー 『恐怖への旅』(6/6) DIE ANGST REIST MIT 【英】ジョン・ル・カレ 『スマイリーと仲間たち』(4/4) 米58位 SMILEYS LEUTE 【英】G・K・チェスタートン 『ブラウン神父の童心』*注5 旧24位 新8位 米57位 PATER BROWN UND DAS BLAUE KREUZ 【英】ジョゼフ・コンラッド 『密偵』 米86位 DER GEHEIMAGENT 【英】レン・デイトン 『ベルリン・ゲーム』(2/2) *注6 BRAHMS VIER 【英】イアン・フレミング 『007/カジノ・ロワイヤル』 CASINO ROYALE 【英】フレデリック・フォーサイス 『ジャッカルの日』 旧12位 新17位 英17位 米20位 DER SCHAKAL 【英】ニコラス・フリーリング 『アムステルダムの恋』 LIEBE IN AMSTERDAM 【英】グレアム・グリーン 『ブライトン・ロック』(3-4/4) 英46位 米69位 ABGRUND DES LEBENS 【英】グレアム・グリーン 『おとなしいアメリカ人』(3-4/4) DER STILLE AMERIKANER 【米】ラリー・バインハート 『見返りは大きい』 ZAHLTAG FÜR CASSELLA 【米】ジョン・エヴァンズ 『灰色の栄光』 DER GESCHMACK VON ASCHE 【米】ウィリアム・フォークナー 『騎士の陥穽』(駒さばき)*注7 DER SPRINGER GREIFT AN 【米】ダシール・ハメット 「シナ人の死」(5/5)*注8 FRACHT FÜR CHINA 【米】パトリシア・ハイスミス 『妻を殺したかった男』(8/8) DER STÜMPER 【米】リチャード・ホイト "The Manna Enzyme"(未訳) CASTROS COUP 【米】ロス・マクドナルド 『ブルー・ハンマー』(2-3-4/4) DER BLAUE HAMMER 【米】ロス・マクドナルド 『象牙色の嘲笑』(2-3-4/4) EIN GRINSEN AUS ELFENBEIN 【米】ロス・マクドナルド 『魔のプール』(2-3-4/4) UNTER WASSER STIRBT MAN NICHT 【米】サラ・パレツキー 『センチメンタル・シカゴ』 FROMME WÜNSCHE 【米】メアリ・ロバーツ・ラインハート 『螺旋階段』 米40位 DIE WENDELTREPPE 【米】レナード・シュレーダー 『ザ・ヤクザ』 YAKUZA 【米】ロス・トーマス 『五百万ドルの迷宮』(3/3) AM RAND DER WELT 【米】ジョゼフ・ウォンボー 『クワイヤボーイズ』(2/2) 米93位 DIE CHORKNABEN 【米】チャールズ・ウィルフォード 『部長刑事奮闘す』(2/2) BIS UNS DER TOD VERBINDET 注1,3:アメリカ探偵作家クラブ(MWA)のベスト100では《シャーロック・ホームズ・シリーズ》が第1位。 注2:第八席(第14位)エドガー・アラン・ポー「DIE MORDE IN DER RUE MORGUE」…短編の「モルグ街の殺人」だと思うが、ひょっとしたらそれを表題作とする短編集のことかもしれない。 注4:第十五席(第63位)Michael Molsner(ミヒャエル・モスルナー)『ROTE MESSE』…未訳だが、水野光二「現代ドイツの推理小説について」(『明治大学人文科学研究所紀要』37号、1995年)に簡単なあらすじ紹介がある。「明治大学学術成果リポジトリ」からPDFで閲覧可能(リンク)。 注5:第十六席(第83位)G・K・チェスタートン「PATER BROWN UND DAS BLAUE KREUZ」…「青い十字架」だが、このタイトルで短編集『ブラウン神父の童心』が出たことがあるようなので、おそらくは短編集の方だろうと判断した。 注6:レン・デイトン『ベルリン・ゲーム』…英国推理作家協会のベスト100では『ベルリン・ゲーム』『メキシコ・セット』『ロンドン・マッチ』のスパイ小説三部作が第58位。 注7:第十六席(第83位)ウィリアム・フォークナー「DER SPRINGER GREIFT AN」…短編「騎士の陥穽」か、またはそれを表題作とする短編集『騎士の陥穽』。おそらくは短編集の方だろうと判断した。 注8:第十六席(第83位)ダシール・ハメット「FRACHT FÜR CHINA」…短編の「シナ人の死」。ただ、それを表題作とする短編集『シナ人の死』(「シナ人の死」「新任保安官」「チューリップ」収録)が出ているようなので、ひょっとしたらそちらのことかもしれない。 補足:ドイツ・ミステリ大賞公式サイトの「ミステリ・オールタイムベスト119」を見ると「119」のはずなのになぜか120タイトルが示されている。この謎は邦題を調べてみて解けた。第十二席(第34位)にパトリシア・ハイスミスの『ALIBI FÜR ZWEI』と『ZWEI FREMDE IM ZUG』の2作品がランクインしていることになっているのだが、これはどちらも『見知らぬ乗客』のことなのである。 ドイツ語圏からのランクイン(7人、11作品)スイスフリードリヒ・グラウザー(3作品) フリードリヒ・デュレンマット(2作品) ドイツJörg Fauser(イェルク・ファウザー)(1作品) … 1988年のグラウザー名誉賞受賞者 Hans Werner Kettenbach(ハンス・ヴェルナー・ケッテンバッハ)(2作品) … 2009年のグラウザー名誉賞受賞者 Michael Molsner(ミヒャエル・モルスナー)(1作品) … 1998年のグラウザー名誉賞受賞者 ヤーコプ・アルユーニ(1作品) ピーケ・ビーアマン(1作品) その他の非英語圏からのランクインフランスガストン・ルルー(1作品) ボアロー&ナルスジャック(2作品) エミール・ガボリオ(1作品) モーリス・ルブラン(1作品) イタリアウンベルト・エーコ(1作品) フルッテロ&ルチェンティーニ(2作品) レオナルド・シャーシャ(1作品) スウェーデンシューヴァル&ヴァールー(4作品) ノルウェーIngvar Ambjørnsen(イングヴァル・アンビョルンセン)(1作品) ※ドイツ在住のノルウェー人作家。作品はノルウェー語で書いている。 オランダヤンウィレム・ヴァン・デ・ウェテリンク(1作品) ※オランダ語と英語で作品を発表した。 関連ページ ドイツ語圏のミステリファンが選ぶドイツ語圏ミステリベスト100(2002年) ドイツ語圏ミステリ邦訳一覧 非英語圏ミステリ各種リスト北欧ミステリ邦訳一覧 南欧ミステリ邦訳一覧 フランスのミステリ賞受賞作の邦訳一覧 フランス・ミステリ必読30冊(『ミステリマガジン』2003年7月号) ポケミス非英語圏作品一覧 創元推理文庫海外ミステリ非英語圏作品一覧 年間ミステリランキング 非英語圏作品一覧 非英語圏ミステリ2013年の邦訳出版一覧 ドイツシャーロック・ホームズの異郷のライヴァルたち(1) ドイツ語圏編 ドイツ語に翻訳された日本の推理小説/ミステリ
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2013年4月17日 最終更新:2014年1月14日 非英語圏ミステリ2014年の邦訳出版一覧(2014年6月11日作成) Index 刊行順一覧 国別一覧 予定 刊行順一覧 ※タイトルからのリンク先は、それぞれの出版社サイトの書籍紹介ページ 既刊 1月4日 スウェーデン スウェーデン語 カーリン・アルヴテーゲン 『満開の栗の木』 小学館文庫 柳沢由実子訳 1月10日 イタリア イタリア語 ドナート・カッリージ 『六人目の少女』 ハヤカワ・ミステリ 清水由貴子訳 1月11日 フィンランド フィンランド語 レーナ・レヘトライネン 『雪の女』 創元推理文庫 古市真由美訳 2月21日 オーストリア ドイツ語 アンドレアス・グルーバー 『夏を殺す少女』 創元推理文庫 酒寄進一訳 3月21日 スウェーデン スウェーデン語 モンス・カッレントフト 『冬の生贄』【上下巻】 創元推理文庫 久山葉子訳 4月10日 スウェーデン スウェーデン語 ヨハン・テオリン 『赤く微笑む春』 ハヤカワ・ミステリ 三角和代訳 4月11日 ドイツ ドイツ語 フェルディナント・フォン・シーラッハ 『コリーニ事件』 東京創元社 酒寄進一訳 4月19日 スウェーデン スウェーデン語 カミラ・レックバリ 『踊る骸(むくろ) エリカ&パトリック事件簿』 集英社文庫 富山クラーソン陽子訳 4月20日 オーストリア ドイツ語 バルドゥイン・グロラー 『探偵ダゴベルトの功績と冒険』 創元推理文庫 垂野創一郎訳 4月下旬 韓国 韓国語 キム・オンス(金彦洙) 『設計者』 クオン オ・スンヨン訳 4月30日 韓国 韓国語 キム・タククワン(金琸桓) *注1 『愛より残酷 ロシアン珈琲』 かんよう出版 中野宣子訳 5月10日 デンマーク デンマーク語 ユッシ・エーズラ・オールスン 『特捜部Q―カルテ番号64―』 ハヤカワ・ミステリ 吉田薫訳 5月24日 フランス フランス語 フランク・ティリエ 『GATACA』【上下巻】 ハヤカワ文庫NV 平岡敦訳 5月30日 ドイツ ドイツ語 ネレ・ノイハウス 『白雪姫には死んでもらう』 創元推理文庫 酒寄進一訳 6月11日 スウェーデン スウェーデン語 カーリン・イェルハルドセン 『お菓子の家』 創元推理文庫 木村由利子訳 6月21日 ドイツ ドイツ語 ヴォルフラム・フライシュハウアー 『消滅した国の刑事』 創元推理文庫 北川和代訳 6月21日 南アフリカ アフリカーンス語 デオン・メイヤー *注2 『追跡者たち』【上下巻】 ハヤカワ・ミステリ文庫 真崎義博、友廣純訳 7月10日 フランス フランス語 ガストン・ルルー 【新訳】『オペラ座の怪人』 光文社古典新訳文庫 平岡敦訳 7月11日 アイスランド アイスランド語 アーナルデュル・インドリダソン 『緑衣の女』 東京創元社 柳沢由実子訳 7月12日 デンマーク デンマーク語 レナ・コバブール*注3、アニタ・フリース 『スーツケースの中の少年』 講談社文庫 土屋京子訳 7月27日 フランス フランス語 モーリス・ルブラン 【新訳】『リュパン、最後の恋』 創元推理文庫 高野優監訳、池畑奈央子訳 8月7日 フランス フランス語 アラン・ロブ=グリエ 【新訳】『消しゴム』 光文社古典新訳文庫 中条省平訳 8月21日 ドイツ ドイツ語 フォルカー・クッチャー 『死者の声なき声』【上下巻】 創元推理文庫 酒寄進一訳 9月11日 フィンランド フィンランド語 レーナ・レヘトライネン 『氷の娘』 創元推理文庫 古市真由美訳 9月25日 スウェーデン スウェーデン語 マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー 【新訳】『刑事マルティン・ベック 笑う警官』 *注4 角川文庫 柳沢由実子訳 10月10日 デンマーク 英語 *注5 クリスチャン・モルク 『狼の王子』 ハヤカワ・ミステリ 堀川志野舞訳 10月11日 スウェーデン スウェーデン語 モンス・カッレントフト 『天使の死んだ夏』【上下巻】 創元推理文庫 久山葉子訳 10月16日 ノルウェー ノルウェー語 ジョー・ネスボ 『ヘッドハンターズ』 講談社文庫 北澤和彦訳 10月18日 ノルウェー ノルウェー語 ジョー・ネスボ 『スノーマン』【上下巻】 集英社文庫 戸田裕之訳 10月18日 スペイン カタルーニャ語? *注6 エステバン・マルティン、アンドレウ・カランサ 『ガウディの鍵』 集英社文庫 木村裕美訳 10月25日 スウェーデン スウェーデン語 アンデシュ・ルースルンド、ベリエ・ヘルストレム 『三秒間の死角』【上下巻】 角川文庫 ヘレンハルメ美穂訳 10月30日 ドイツ ドイツ語 イザベル・アベディ 『日記は囁く』 東京創元社 酒寄進一訳 11月2日 オーストリア ドイツ語 レーナ・アヴァンツィーニ 『インスブルック葬送曲』 *注7 扶桑社ミステリー 小津薫訳 11月8日 スウェーデン スウェーデン語 ヴィヴェカ・ステン 『静かな水のなかで』 ハヤカワ・ミステリ文庫 三谷武司訳 11月15日 スウェーデン スウェーデン語 イェンス・ラピドゥス 『イージーマネー』【上下巻】 講談社文庫 土屋晃、小林さゆり訳 11月20日 アイスランド アイスランド語 ヴィクトル・アルナル・インゴウルフソン 『フラテイの暗号』 創元推理文庫 北川和代訳 11月25日 ドイツ ドイツ語 マックス・ベントー 『羽男』 角川文庫 猪股和夫訳 11月28日 スウェーデン スウェーデン語 リザ・マークルンド *注8 『ノーベルの遺志』【上下巻】 創元推理文庫 久山葉子訳 12月6日 スウェーデン スウェーデン語 ラーシュ・ケプレル 『交霊』【上下巻】 ハヤカワ・ミステリ文庫 岩澤雅利、羽根由訳 12月20日? ドイツ ドイツ語 セバスティアン・クナウアー 『バッハ 死のカンタータ』 大成出版社 藤田伊織、帯純子訳 注1:インターネット上では「キム・タククワン」という表記で代用されることが多いようだが、書籍現物を見ると、表記は「キム・タㇰクヮン」(名前の2文字目と4文字目が小さい「ク」、小さい「ワ」)。早川書房から歴史小説『ファン・ジニ』(全2巻、ハヤカワ文庫NV、2007年)が出ている「キム・タクファン」と同一人物。『ロシアン珈琲』は、朝鮮初のバリスタを題材にしたミステリー映画といううたい文句の『GABI / ガビ-国境の愛-』の原作小説。著者のキム・タククワン(キム・タクファン、キム・タックァン)は映画『朝鮮名探偵』の原作者でもある。 注2:「デオン・マイヤー」というカタカナ表記で2012年に武田ランダムハウスジャパンから『流血のサファリ』が出ている。 注3:カタカナ表記が全然違うが、早川書房からファンタジー小説『秘密が見える目の少女』、『ディナの秘密の首かざり』が刊行されているリーネ・コーバベルと同一人物。 注4:『笑う警官』は刑事マルティン・ベック・シリーズの第4作。今後は第1作から順に第10作まで新訳刊行予定。 注5:クリスチャン・モルクはデンマーク出身。20代でアメリカに渡った。母語はデンマーク語だが、『狼の王子』は英語で執筆したものである。デンマーク語版も出版されているが、これはモルク自身が英語からデンマーク語に翻訳したもの。(当ページは「非英語圏ミステリ」の一覧だが、この作品も一応リストに入れておく) 注6:2007年にバルセロナでスペイン語版『La clave Gaudí』とカタルーニャ語版『La clau Gaudí』が刊行されている。アンドレウ・カランサはカタルーニャ語で書く作家、エステバン・マルティンもカタルーニャ語圏出身の人物なので、おそらく元はカタルーニャ語で書かれたものだと思うが、確証はない。 注7:2012年のフリードリヒ・グラウザー賞(ドイツ語圏推理作家協会賞)の新人賞受賞作。『ミステリマガジン』2013年3月号の洋書案内《世界篇》で『インスブルックでの死』というタイトルで紹介されている(レビュアー:小津薫氏)。 注8:リザ・マークルンド … 2002年に邦訳された『爆殺魔(ザ・ボンバー)』 (柳沢由実子訳、講談社文庫)の著者名カタカナ表記は「リサ・マークルンド」。 短編アンドレアス・グルーバー - 「ゴーストライター」、「メスメリズムの実験」(『ミステリーズ!』57号、2013年2月、酒寄進一訳) バルドゥイン・グロラー - 探偵ダゴベルト・シリーズ「六百の鍵穴がある小箱」(『ミステリーズ!』58号、2013年4月、垂野創一郎訳)この短編は創元推理文庫版『探偵ダゴベルトの功績と冒険』には収録されず。 関連書籍(原語は英語)ジェイムズ・トンプソン『極夜 カーモス』(集英社文庫、2013年2月) フィンランド在住のアメリカ人ミステリ作家がフィンランドを舞台にして書いたミステリ。作者は1998年からフィンランドで暮らし、現地の女性と結婚し、フィンランド語を流暢に話すという。 デイヴィッド・ヒューソン『キリング』全4巻(ハヤカワ・ミステリ文庫、2013年1月~4月)デンマークの大ヒットミステリドラマをイギリスのミステリ作家デイヴィッド・ヒューソンが小説化したもの。(この作家は「デヴィッド・ヒューソン」という表記で邦訳書あり) 文庫化等3月8日 スウェーデン ヨハン・テオリン『黄昏に眠る秋』(ハヤカワ・ミステリ文庫) 4月10日 デンマーク ユッシ・エーズラ・オールスン『特捜部Q―キジ殺し―』(ハヤカワ・ミステリ文庫) 5月24日 フランス モーリス・ルブラン『ルパン、最後の恋』(ハヤカワ・ミステリ文庫) 9月3日 フランス トニーノ・ブナキスタ『マラヴィータ』(松永りえ訳、文春文庫) ※2006年1月文春文庫刊の『隣りのマフィア』の改題版。11月に『マラヴィータ』というタイトルで映画が公開されるのに合わせたもの。 10月 フランス ポール・アルテ『第四の扉』(ハヤカワ・ミステリ) ※新装版。ハヤカワ・ミステリ創刊60周年を記念したリニューアル刊行。 12月6日 デンマーク ユッシ・エーズラ・オールスン『特捜部Q―Pからのメッセージ―』(ハヤカワ・ミステリ文庫、上下巻) 予告されたものの未刊の作品未刊スウェーデン:ヘニング・マンケル『イタリア製の靴』 Italienska skor (2006) ドイツ:ライナー・レフラー(Rainer Löffler)『血塗られた夏』 Blutsommer (2012) フランス:フレッド・ヴァルガス『汚れた手』、田中千春訳(警察署長アダムスベルグ・シリーズ) Sous les vents de Neptune (2004) フランス:エルヴェ・コメール(Hervé Commère)『水の波紋』(Les ronds dans l eau) マルセイユ推理小説賞受賞作 2014年に刊行スウェーデン:Alexander Söderberg 『Den andalusiske vännen』(2012) →アレクサンデル・セーデルベリ『アンダルシアの友』ハヤカワ・ミステリ、2014年1月 ドイツ:シャルロッテ・リンク『沈黙の終焉』 Am Ende des Schweigens (2003) →『沈黙の果て』創元推理文庫、2014年9月◆予定 国別一覧 スウェーデン 1月4日 スウェーデン スウェーデン語 カーリン・アルヴテーゲン 『満開の栗の木』 小学館文庫 柳沢由実子訳 3月21日 スウェーデン スウェーデン語 モンス・カッレントフト 『冬の生贄』【上下巻】 創元推理文庫 久山葉子訳 4月10日 スウェーデン スウェーデン語 ヨハン・テオリン 『赤く微笑む春』 ハヤカワ・ミステリ 三角和代訳 4月19日 スウェーデン スウェーデン語 カミラ・レックバリ 『踊る骸(むくろ) エリカ&パトリック事件簿』 集英社文庫 富山クラーソン陽子訳 6月11日 スウェーデン スウェーデン語 カーリン・イェルハルドセン 『お菓子の家』 創元推理文庫 木村由利子訳 9月25日 スウェーデン スウェーデン語 マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー 【新訳】『刑事マルティン・ベック 笑う警官』 *注4 角川文庫 柳沢由実子訳 10月11日 スウェーデン スウェーデン語 モンス・カッレントフト 『天使の死んだ夏』【上下巻】 創元推理文庫 久山葉子訳 10月25日 スウェーデン スウェーデン語 アンデシュ・ルースルンド、ベリエ・ヘルストレム 『三秒間の死角』【上下巻】 角川文庫 ヘレンハルメ美穂訳 11月8日 スウェーデン スウェーデン語 ヴィヴェカ・ステン 『静かな水のなかで』 ハヤカワ・ミステリ文庫 三谷武司訳 11月15日 スウェーデン スウェーデン語 イェンス・ラピドゥス 『イージーマネー』【上下巻】 講談社文庫 土屋晃、小林さゆり訳 11月28日 スウェーデン スウェーデン語 リザ・マークルンド *注8 『ノーベルの遺志』【上下巻】 創元推理文庫 久山葉子訳 12月6日 スウェーデン スウェーデン語 ラーシュ・ケプレル 『交霊』【上下巻】 ハヤカワ・ミステリ文庫 岩澤雅利、羽根由訳 デンマーク 5月10日 デンマーク デンマーク語 ユッシ・エーズラ・オールスン 『特捜部Q―カルテ番号64―』 ハヤカワ・ミステリ 吉田薫訳 7月12日 デンマーク デンマーク語 レナ・コバブール*注3、アニタ・フリース 『スーツケースの中の少年』 講談社文庫 土屋京子訳 10月10日 デンマーク 英語 *注5 クリスチャン・モルク 『狼の王子』 ハヤカワ・ミステリ 堀川志野舞訳 ノルウェー 10月16日 ノルウェー ノルウェー語 ジョー・ネスボ 『ヘッドハンターズ』 講談社文庫 北澤和彦訳 10月18日 ノルウェー ノルウェー語 ジョー・ネスボ 『スノーマン』【上下巻】 集英社文庫 戸田裕之訳 アイスランド 7月11日 アイスランド アイスランド語 アーナルデュル・インドリダソン 『緑衣の女』 東京創元社 柳沢由実子訳 11月20日 アイスランド アイスランド語 ヴィクトル・アルナル・インゴウルフソン 『フラテイの暗号』 創元推理文庫 北川和代訳 フィンランド 1月11日 フィンランド フィンランド語 レーナ・レヘトライネン 『雪の女』 創元推理文庫 古市真由美訳 9月11日 フィンランド フィンランド語 レーナ・レヘトライネン 『氷の娘』 創元推理文庫 古市真由美訳 ドイツ語圏 2月21日 オーストリア ドイツ語 アンドレアス・グルーバー 『夏を殺す少女』 創元推理文庫 酒寄進一訳 4月11日 ドイツ ドイツ語 フェルディナント・フォン・シーラッハ 『コリーニ事件』 東京創元社 酒寄進一訳 4月20日 オーストリア ドイツ語 バルドゥイン・グロラー 『探偵ダゴベルトの功績と冒険』 創元推理文庫 垂野創一郎訳 5月30日 ドイツ ドイツ語 ネレ・ノイハウス 『白雪姫には死んでもらう』 創元推理文庫 酒寄進一訳 6月21日 ドイツ ドイツ語 ヴォルフラム・フライシュハウアー 『消滅した国の刑事』 創元推理文庫 北川和代訳 8月21日 ドイツ ドイツ語 フォルカー・クッチャー 『死者の声なき声』【上下巻】 創元推理文庫 酒寄進一訳 10月30日 ドイツ ドイツ語 イザベル・アベディ 『日記は囁く』 東京創元社 酒寄進一訳 11月2日 オーストリア ドイツ語 レーナ・アヴァンツィーニ 『インスブルック葬送曲』 *注7 扶桑社ミステリー 小津薫訳 11月25日 ドイツ ドイツ語 マックス・ベントー 『羽男』 角川文庫 猪股和夫訳 12月20日? ドイツ ドイツ語 セバスティアン・クナウアー 『バッハ 死のカンタータ』 大成出版社 藤田伊織、帯純子訳 フランス 5月24日 フランス フランス語 フランク・ティリエ 『GATACA』【上下巻】 ハヤカワ文庫NV 平岡敦訳 7月10日 フランス フランス語 ガストン・ルルー 【新訳】『オペラ座の怪人』 光文社古典新訳文庫 平岡敦訳 7月27日 フランス フランス語 モーリス・ルブラン 【新訳】『リュパン、最後の恋』 創元推理文庫 高野優監訳、池畑奈央子訳 8月7日 フランス フランス語 アラン・ロブ=グリエ 【新訳】『消しゴム』 光文社古典新訳文庫 中条省平訳 イタリア 1月10日 イタリア イタリア語 ドナート・カッリージ 『六人目の少女』 ハヤカワ・ミステリ 清水由貴子訳 スペイン 10月18日 スペイン カタルーニャ語? *注6 エステバン・マルティン、アンドレウ・カランサ 『ガウディの鍵』 集英社文庫 木村裕美訳 南アフリカ共和国 6月21日 南アフリカ アフリカーンス語 デオン・メイヤー *注2 『追跡者たち』【上下巻】 ハヤカワ・ミステリ文庫 真崎義博、友廣純訳 韓国 4月下旬 韓国 韓国語 キム・オンス(金彦洙) 『設計者』 クオン オ・スンヨン訳 4月30日 韓国 韓国語 キム・タククワン(金琸桓) *注1 『愛より残酷 ロシアン珈琲』 かんよう出版 中野宣子訳 予定 東京創元社北欧スウェーデン:ヘニング・マンケル『イタリア製の靴』 Italienska skor (2006) 【11月】アイスランド:ヴィクトル・アルナル・インゴウルフソン(Viktor Arnar Ingólfsson)『フラテイの暗号』 Flateyjargáta (2002) 【10月】スウェーデン:モンス・カッレントフト(Mons Kallentoft)『灼熱の夏に死す』(仮)、久山葉子訳 Sommardöden (2008) → 『天使の死んだ夏』10月刊行 【既刊】スウェーデン:カーリン・イェルハルドセン(Carin Gerhardsen)『お菓子の家』、木村由利子訳 Pepparkakshuset (2008) 【既刊】アイスランド:アーナルデュル・インドリダソン『緑衣の女』、柳沢由実子訳 Grafarþögn (2001) - 2005年、英国推理作家協会(CWA)ゴールド・ダガー賞 【既刊】フィンランド:レーナ・レヘトライネン『氷の娘』 Kuolemanspiraali (1997) ドイツライナー・レフラー(Rainer Löffler)『血塗られた夏』 Blutsommer (2012) シャルロッテ・リンク『沈黙の終焉』 Am Ende des Schweigens (2003) 【既刊】ヴォルフラム・フライシュハウアー『消滅した国の刑事』、北川和代訳 Torso (2011) 【既刊】フォルカー・クッチャー『物言わぬ死者』(仮)、酒寄進一訳 Der stumme Tod (2009) → 『死者の声なき声』8月刊行 フランスフレッド・ヴァルガス『汚れた手』、田中千春訳(警察署長アダムスベルグ・シリーズ) Sous les vents de Neptune (2004) 早川書房北欧スウェーデン:Alexander Söderberg 『Den andalusiske vännen』(2012) 【12月】スウェーデン:ラーシュ・ケプレル Eldvittnet (2011) 【10月】デンマーク/米国:クリスチャン・モルク Christian Moerk(Christian Mørk) 『狼の王子』(Darling Jim)(2007) 堀川志野舞訳デンマーク出身の作家。作品は英語で執筆し、それを自らデンマーク語にも訳しているらしい。『Darling Jim』は2007年にデンマークで出版、その後英語圏でも出版。 その他【既刊】南アフリカ共和国:デオン・メイヤー『追跡者たち』、真崎義博訳 英題 Trackers、アフリカーンス語原題 Spoor (2010) 武田ランダムハウスジャパンから出た『流血のサファリ』では著者名表記は「デオン・マイヤー」 集英社フランス:エルヴェ・コメール(Hervé Commère)『水の波紋』(Les ronds dans l eau) マルセイユ推理小説賞受賞作 【10月】スペイン:エステバン・マルティン(Esteban Martin)、アンドレウ・カランサ(Andreu Carranza)『ガウディの鍵』(La Clave Gaudí)、木村裕美訳、10月刊行 光文社【既刊】フランス:《新訳》アラン・ロブ=グリエ『消しゴム』、中条省平訳(光文社古典新訳文庫) 夏ごろ英国推理作家協会(CWA)ゴールド・ダガー賞ノミネート作?(参照:大城譲司「前衛からエンターテイメントヘ アラン・ロブ=グリエをミステリとして読む。」ブックジャパン、2008年12月5日) 角川書店『ブラックアウト』(角川文庫、2012年7月)が邦訳されたオーストリアのマルク・エルスべルグの新作が翻訳される?(『このミステリーがすごい! 2013年版』「我が社の隠し玉」) 扶桑社【11月】「オーストリアのクラシック音楽ミステリー」(翻訳ミステリー大賞シンジケート「出版社対抗ビブリオバトル・レポートと各社の隠し玉公開!」2013年4月19日)→レーナ・アヴァンツィーニ『インスブルック葬送曲』2013年11月2日発売予定 情報源 東京創元社 「【新年特別企画】2013年 東京創元社 翻訳ミステリラインナップのご案内」(2013年1月1日) 翻訳ミステリー大賞シンジケート「出版社対抗ビブリオバトル・レポートと各社の隠し玉公開!」(2013年4月19日) 『このミステリーがすごい! 2013年版』の「我が社の隠し玉」 関連ページ 非英語圏ミステリ2014年の邦訳出版一覧 ポケミス非英語圏作品一覧 創元推理文庫海外ミステリ非英語圏作品一覧 年間ミステリランキング 非英語圏作品一覧 『ミステリマガジン』洋書案内〈世界篇〉で紹介された本とその邦訳状況 ヨーロッパの推理小説 - ヨーロッパの推理小説に関する日本語文献の一覧
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2012年6月13日 『韓国ミステリ史 第四章』では、1980年代から20世紀末までを扱っている。 目次 第四章 1980年代~20世紀末: 韓国ミステリ界の隆盛期第一節 韓国ミステリクラブから韓国推理作家協会へ(1)韓国推理作家協会の創設(1983年) (2)韓国推理作家協会主催 韓国推理文学賞 受賞作一覧 (3)韓国推理作家協会と日本推理作家協会の交流 第二節 スポーツ新聞や雑誌での新人作家発掘(1)スポーツ新聞の新春文芸公募 (2)『小説文学』長編推理小説公募 (3)『季刊推理文学』と金来成推理文学賞 第三節 ミステリ専門の出版社も登場(1)国産ミステリ出版の活況 (2)ミステリ読者の団体「韓国ミステリクラブ」の結成 (3)翻訳ミステリの出版 (4)苦戦するミステリ雑誌 第四節 20世紀末: 出版不況の影 第五節 邦訳された1980年代~20世紀末の韓国推理小説 参考文献 第四章 1980年代~20世紀末: 韓国ミステリ界の隆盛期 第一節 韓国ミステリクラブから韓国推理作家協会へ (1)韓国推理作家協会の創設(1983年) 1970年代半ばからのキム・ソンジョン(金聖鍾)の活躍やその後の翻訳ミステリ叢書の創刊ラッシュなどにより、韓国では推理小説の読者層が大幅に拡大され、推理小説ブームとなった。この時期の韓国での推理小説ブームは日本の新聞でも取り上げられている。 新聞記事「純文学の韓国でなぜか推理小説ブーム」朝日新聞1981年10月1日朝刊、6面 韓国の読書界にちょっとした異変が起こっている。推理小説は育たない、という定説を破って、最近、韓国人作家の推理小説がやたらに売れるようになったのである。純文学中心の韓国文壇では、まだ異端者的存在だが、学生やサラリーマン層に圧倒的な支持を受けている。(中略)ブームの火付け役は、"韓国の松本清張"といわれる延世(ヨンセ)大出身の作家金聖鍾(キム・ソンジョン)氏。 (原文は振り仮名なし) 同記事内にはキム・ソンジョンの写真付きインタビュー記事もある。もっとも、キム・ソンジョンの作品が初めて邦訳されるのはこの20年後の2001年(『ジャーロ』2001年夏号)になってからである。 このような推理小説ブームの中、1972年に結成されていた韓国ミステリクラブが母体となって、1983年2月8日、韓国推理作家協会(한국추리작가협회)が設立される。初代会長は韓国ミステリクラブでも会長を務めた英文学者のイ・ガヒョン(李佳炯)(이가형)。なお2代目会長にはイ・サンウ(李祥雨)(이상우)が就任し、1991年から2005年まで15年間会長を務めた。その後、3代目会長(2006-2008)にキム・ソンジョン(金聖鍾)(김성종)、4代目会長(2009-2011)にイ・スグァン(李秀光)(이수광)が就任し、2012年にはカン・ヒョンウォン(강형원)(本名はカン・ヒョング [姜亨求、강형구])が5代目の会長に就任している。韓国推理作家協会の当初の会員数は30人ほどだったが、20世紀末には80人ほどになっている。 韓国推理作家協会の当初の主な事業は、韓国推理文学賞(한국추리문학상)の選定・授与や、アンソロジー『韓国優秀推理短編コレクション』(한국 우수 추리 단편 모음집)の編纂だった。韓国推理文学賞の第1回(1985年)の大賞はヒョン・ジェフン(玄在勲)(第二章参照)、第2回(1986年)の大賞はキム・ソンジョン(金聖鍾)(第三章参照)が受賞している。 『韓国優秀推理短編コレクション』は1984年に刊行されたのが最初で、1986年にVol.2、1987年にVol.3、1989年にVol.4が刊行されている(収録作一覧)。1998年からは、韓国推理作家協会の編纂でアンソロジー『今年の推理小説』(올해의 추리소설)が毎年夏に刊行されている。1998年版のみ、『コリアン・ミステリ 韓国推理小説傑作選』(バベル・プレス、2002年)というタイトルで邦訳が出ている。(1990年~1997年にもアンソロジーの刊行があったかもしれないが確認できていない) 1988年からは毎年夏に、ミステリ作家とファンの交流イベント夏季推理小説学校(여름추리소설학교)を開催している。2011年の第24回夏季推理小説学校は7月29日から7月31日にかけて開催され、「歴史推理小説を知る」「日本の推理小説のすべて」などの講義が行われた。 写真:「日本の推理小説のすべて」の講義 - 『ハヤカワミステリマガジン』の歴史が紹介されている(韓国推理作家協会会員の推理作家チョン・ソッカ(鄭石華、정석화)氏のツイートより) また、2002年創刊の『季刊ミステリ』(계간 미스터리)は韓国推理作家協会が編者を務めている。『季刊ミステリ』は韓国内外の短編推理小説や評論、最新のミステリニュースなどを掲載するほか、短編ミステリおよび評論を募集する季刊ミステリ新人賞(계간 미스터리 신인상)により新人発掘も行っている。2008年冬号に掲載された季刊ミステリ新人賞受賞作、ソン・シウ「親友」(좋은 친구)は『ハヤカワミステリマガジン』2012年2月号に訳載されている。 (2)韓国推理作家協会主催 韓国推理文学賞 受賞作一覧 ※受賞作で邦訳されているものは1作もない ※この賞はいまも続いているが、ここでは1990年代までのものを示す ※新人に対する賞は「新人賞(신인상)」とされた時期と「新鋭賞(신예상)」とされた時期があるが、このページでは「新人賞」に統一する ※韓国推理作家協会会員の推理作家ソン・ソニョン氏のブログ記事「歴代韓国推理文学賞、新人賞、その他受賞作整理」(2010年10月6日)を参照した ※大賞の受賞には韓国推理作家協会の会員で、かつ推理小説の創作活動を5年以上していることが条件となる。新人賞には特に条件はなく、会員以外でも受賞できる。(『韓国推理作家協会 会員手帳 1993』「推理文学賞授賞規定」参照) 韓国推理文学賞 大賞 韓国推理文学賞 新人賞 第1回(1985年) ヒョン・ジェフン(玄在勲、현재훈)(1933 - ) 『絶壁』(절벽) チョン・ギュウン(鄭奎雄、정규웅)(1941 - ) 『影絵遊び』(그림자 놀이) 第2回(1986年) キム・ソンジョン(金聖鍾、김성종)(1941 - ) 『悲恋の火印』(비련의 화인) チョン・ヒョヌン(鄭賢雄、정현웅)(1949 - ) 『女子大生殺人事件』(여대생 살인사건) 第3回(1987年) イ・サンウ(李祥雨、이상우)(1938 - ) 『悪女、二度生きる』(악녀, 두 번 살다) ユ・ウジェ(柳禹提、유우제)(1955 - ) 『夜』(밤) 第4回(1988年) ノ・ウォン(魯元、노원)(1931 - ) 『危険な外出』(위험한 외출) ハン・デヒ(韓大煕、한대희)(1952 - ) 『華麗なる情死』(화려한 정사) *注1 第5回(1989年) イ・ウォンドゥ(李源斗、이원두)(1938 - ) 『暴君の朝』(폭군의 아침) カン・ヒョンウォン(강형원)(1956 - )キム・サンホン(金尚憲、김상헌)(1955 - ) 『青い王冠』(푸른 빛 왕관)『恍惚のゲーム』(황홀한 게임) 第6回(1990年) - - アン・グァンス(安光洙、안광수)(1955 - ) 『死刑特急』(사형 특급) *注2 第7回(1991年) ハン・デヒ(韓大煕、한대희)(1952 - ) 『憤怒の季節』(분노의 계절) チャン・セヨン(張世娟、장세연) 『広開土魔王』(광개토 마왕) 第8回(1992年) カン・ヒョンウォン(강형원)(1956 - ) 『ソウル・エッフェル塔』(서울 에펠탑) イ・テヨン(李泰栄、이태영) 『悪魔の駆け引き』(악마의 흥정) 第9回(1993年) ユ・ウジェ(柳禹提、유우제)(1955 - ) 『不死鳥の迷路』(불새의 미로) カン・ジョンピル(姜鍾弼、강종필)(1960 - ) 『都市の誘惑』(도시의 유혹) 第10回(1994年) イ・スグァン(李秀光、이수광)(1954 - ) 『死者の顔』(사자의 얼굴) ペク・ヒュ(白恷、백휴)(1960 - ) 『楽園の彼岸』(낙원의 저쪽) 第11回(1995年) イ・ギョンジェ(李慶載、이경재)(1928 - ) 『日本を裁判する』(일본을 재판한다) チャン・グニャン(張根亮、장근양) 『核心』(핵심) 第12回(1996年) - - - - 第13回(1997年) ペク・ヒュ(白恷、백휴)(1960 - ) 『サイバーキング』(사이버 킹) ファン・セヨン(黄世鳶、황세연)(1968 - )チェ・チョリョン(최철영) 『美女ハンター』(미녀 사냥꾼)『赤き十字架のコウモリ』(붉은 십자가 박쥐) 第14回(1998年) - - - - 第15回(1999年) キム・ヨンサン(金容相、김용상)(1942 - ) 『殺人者の仮面舞踏会』(살인자의 가면무도회) チェ・サンギュ(崔尚圭、최상규) 『悲しい出会い』(슬픈 만남) *注1 『華麗なる情死』および『華麗なる情事』の両方の意味をかけたタイトル(「情死」と「情事」がハングルでは同じ表記) *注2 『死刑特急』ではなく『私刑特急』かもしれない(「死刑」と「私刑」がハングルでは同じ表記) 1984年にも韓国推理文学賞が実施されており、チョン・ゴンソプ(鄭建燮)(정건섭)(1944 - )が長編推理小説『罠』(『덫』玄岩社、1983年)で新人賞を受賞している。授賞式は1984年2月7日。このときの主催は韓国ミステリクラブだったようである。チョン・ゴンソプは『罠』をはじめとして初期にはアリバイトリックなどを用いたクラシカルな作品を発表したが、1980年代後半からはスパイ小説『死の天使』(죽음의 천사)などに代表されるスリラーを発表するようになった。邦訳に、大韓航空機爆破事件を題材にした長編小説『真由美 最後の証言』(光文社、1988年)がある。 主な大賞受賞者 第1回(1985年)大賞受賞者 - ヒョン・ジェフン(玄在勲)(현재훈)(1933-1991)第二章参照。邦訳なし。 第2回(1986年)大賞受賞者 - キム・ソンジョン(金聖鍾)(김성종)(1941 - )第三章参照。韓国推理作家協会3代目会長(任期:2006年~2008年)。邦訳に『最後の証人』(論創社、2009年)、『ソウル 逃亡の果てに』(新風舎文庫、2005年)、「帰ってきた死者」(『ジャーロ』2001年夏号)、「失踪」(『コリアン・ミステリ』)。 第3回(1987年)大賞受賞者 - イ・サンウ(李祥雨)(이상우)(1938 - )韓国推理作家協会2代目会長(任期:1987年~2005年)。新聞記者出身の作家。『スポーツソウル』や『スポーツトゥデイ』などのスポーツ新聞の創刊やその経営に携わっている。1961年に新聞連載『新・林巨正伝』(歴史小説?)でデビュー。ミステリではチュ・ビョンテ警官シリーズなどで知られる。1987年、『悪女、二度生きる』(악녀, 두 번 살다)で第3回韓国推理文学大賞。『悪女、二度生きる』と『犬と詩人』はベストセラー。ほかに、初心者向けミステリ入門書『イ・サンウの推理小説探検』などの著書がある。エドガー・アラン・ポーの翻訳もしている。邦訳に「地獄への道行き」(『コリアン・ミステリ』)。 第4回(1988年)大賞受賞者 - ノ・ウォン(魯元)(노원)(1931 - )スパイ小説の第一人者。KCIA(韓国中央情報部)の元局長という異色の経歴の作家。50代なかば過ぎから推理小説を書き始めた。ペンネームの「ノ・ウォン」は「no one」(=誰でもない)から来ている。1988年、『危険な外出』(위험한 외출)で第4回韓国推理文学大賞。『背信の季節』(배신의 계절)はテレビドラマ化され話題になった。ほかの代表作は『三号庁舎』、『夜間航路』など。邦訳に「ブラック・レディ」(『コリアン・ミステリ』)。 第10回(1994年)大賞受賞者 - イ・スグァン(李秀光)(이수광)(1954 - )韓国推理作家協会4代目会長(任期:2009年~2011年)。1983年デビュー。推理小説のほか、歴史小説も多く発表している。1994年、『死者の顔』(사자의 얼굴)で第10回韓国推理文学大賞。邦訳に長編実録小説『シルミド 裏切りの実尾島』(ハヤカワ文庫NV、2004年)、「その夜は長かった」(『ミステリマガジン』2000年10月号)、「月夜の物語」(『コリアン・ミステリ』)。 (3)韓国推理作家協会と日本推理作家協会の交流 1984年3月、東京で開催された国際ペン大会に当時の韓国推理作家協会会長だったイ・ガヒョンが韓国代表として参加し、その機会に中島河太郎と面会している。この面会の様子は中島河太郎が『日本推理作家協会会報』1984年6月号(No.426)掲載の記事「李会長訪問」で伝えている。また正確な年は分からないが、その数年前には中島河太郎は韓国ミステリクラブ総務のファン・ジョンホ(黄鐘灝、황종호)と何度か書簡のやり取りをし、面会もしている。 1990年代に入ると日韓の推理作家協会の交流が活発になる。1990年8月に韓国推理作家協会の代表団が来日。1992年6月には、韓国・釜山(プサン)市海雲台(ヘウンデ)の推理文学館(추리문학관)(1992年3月開館)で日韓の推理作家協会の交流会が行われ、日本推理作家協会からは生島治郎、山村正夫、豊田有恒、麗羅、大沢在昌、西木正明が参加した。 推理文学館前での日韓推理作家集合写真(韓国側の参加者、クォン・ギョンヒ氏のブログ記事) - 1枚目の写真は1992年3月の開館式の日のもの。2枚目の写真が1992年6月8日の日韓交流会の日のもの。 1993年5月には韓国推理作家協会の代表団が再度来日。しかし残念ながら、この後交流は途絶えている。これらの交流をきっかけに、1993年には韓国で日本推理作家協会推薦・韓国推理作家協会編訳『日本サスペンス傑作選』(일본 서스펜스 걸작선)が刊行されている。山村美紗、赤川次郎、小泉喜美子、阿刀田高、夏樹静子、戸川昌子、多岐川恭、原尞、森村誠一、生島治郎、大沢在昌、麗羅(収録順)の短編を収録。同年に韓国で『韓国サスペンス傑作選 金来成(キム・ネソン)から権敬姫(クォン・ギョンヒ)まで』(한국 서스펜스 걸작선 김내성에서 권경희까지)が刊行されているが、これは日本では翻訳刊行されなかった。 詳細記事:日本推理作家協会と韓国推理作家協会の交流 (1990年代) 韓国推理作家協会と台湾の推理作家の交流 1989年には、台湾の推理作家・林仏児(りん ふつじ)の招待で韓国推理作家協会の一団が訪台している。韓国の推理作家イ・サンウ氏のブログでその際の写真を見ることができる(リンク先、上から6枚目の写真)。「歓迎韓国推理作家協……」と書かれているのが読める。 イ・サンウ氏の説明によれば、写真は後列左から、キム・サンホン(金尚憲)、イ・ガヒョン(李佳炯)、イ・サンウ(李祥雨)、イ・ギョンジェ(李慶載)、林仏児、キム・ナム(金楠)、チョン・ヒョヌン(鄭賢雄)、前列左から、ハン・デヒ(韓大煕)、パク・ヤンホ(朴養浩)、キム・ソンジョン(金聖鍾)、ユン・フミョン。(前列一番右の人物は不明) ちなみに林仏児(りん ふつじ)は1980年代の台湾ミステリ界における最重要人物である。詳細は「台湾ミステリ史 中編」を参照のこと。 第二節 スポーツ新聞や雑誌での新人作家発掘 (1)スポーツ新聞の新春文芸公募 このころの韓国では推理小説のメインの発表の場は新聞だった。韓国最初のスポーツ新聞である『日刊スポーツ』(일간 스포츠)(1969年創刊)は1970年代からキム・ソンジョンらの推理小説を掲載していたが、ソウルオリンピック(1988年)の開催決定や1982年のプロ野球発足などでスポーツ新聞の発行部数が増大し、これも推理小説の読者の増加に拍車をかけた。一方、大手の新聞では文学作家による推理小説が掲載されるようになった。『中央日報』や『韓国日報』などには、チョ・ヘイル(趙海一、조해일)(韓国語版Wikipedia)、キム・ソンイル(金成一、김성일)(韓国語版Wikipedia)、イ・ビョンジュ(李炳注、이병주)(韓国語版Wikipedia)、パク・ポムシン(朴範信、박범신)(韓国語版Wikipedia)らが推理小説を連載した。パク・ポムシンは韓国推理作家協会の会員にもなっている。邦訳に『掟』(角川書店、1989年)(原題『틀』)があるが、これはミステリではない。 1985年創刊の『スポーツソウル』(스포츠 서울)は推理小説を掲載しただけでなく、1986年から新春文芸公募に推理小説部門を置き、短編推理小説を公募した。邦訳のある作家ではファン・セヨン(1995年受賞)とイ・ウン(1996年受賞)がここからデビューしている。なお『スポーツソウル』の創刊を主導したのは、のちに韓国推理作家協会の会長にもなるイ・サンウである。イ・サンウは新聞記者出身の作家で、いくつかのスポーツ紙の創刊や経営に携わっている。 ファン・セヨン(黄世鳶)(황세연)(1968 - )1995年、短編ミステリ「塩化ナトリウム」(염화나트륨)が『スポーツソウル』新春文芸公募・推理小説部門に入選してデビュー。1997年、『美女ハンター』(미녀사냥꾼)で韓国推理文学賞新人賞を受賞。2011年、短編「スタンリー・ミルグラムの法則」(스탠리 밀그램의 법칙)で韓国推理文学賞の黄金ペン賞(황금펜상)(2007年新設の短編賞)を受賞。長編の邦訳に『第二次朝鮮戦争勃発の日 D-DAY』(扶桑社ミステリー、2004年)、短編の邦訳に「天の定めた縁」(『ミステリマガジン』2000年10月号)、「本当の復讐」(『コリアン・ミステリ』)がある。 イ・ウン(李垠)(이은)1996年、短編ミステリ「ほくろのあるヌード」(점이 있는 누드)が『スポーツソウル』新春文芸公募・推理小説部門に入選してデビュー。2003年に長編ミステリ『誰がスピノザを殺したか』を発表し、本格的な作家活動を始めた。2007年には美術商である自身の知識を活かした長編ミステリ『美術館の鼠』(邦訳2009年、講談社《アジア本格リーグ》)を発表。以来、『不思議な美術館』(수상한 미술관)(2009年)、『美術館占拠事件』(미술관 점거사건)(2011年)などの美術業界を扱ったミステリを主に発表している。 チョン・ソッカ (鄭石華)(정석화)(1965 - ) ※カタカナでは「チョン・ソクファ」「チョン・ソックァ」とも表記されうる2000年、短編ミステリ「夫をひどく愛する女」(남편을 지독히 사랑하는 여자)が『スポーツソウル』新春文芸公募・推理小説部門に入選。それ以前から編集業のかたわら作家活動をしており、1999年には同年公開の韓国映画『シュリ』(쉬리)のノベライズを担当。このノベライズ本は同年のうちに邦訳『シュリ ソウル潜入爆破指令』(文春文庫、1999年12月)が出ている。オリジナル作品の邦訳はない。 (2)『小説文学』長編推理小説公募 1983年10月15日、小説文学社から不定期刊行物『ミステリ』(미스터리)が出版された。2号まで刊行されたのち、3号からは同社の出版する雑誌『小説文学』の別冊付録となっている。なお2号では「ミステリ」は副題となって『推理小説 ミステリ』(추리소설 미스터리)というタイトルになっており、別冊付録のときは単に『推理小説』というタイトルになっていたようである。掲載内容は国内外の短編ミステリや評論。日本の作品では、1号に森村誠一「魔少年」、2号に同じく森村誠一の「侵略夫人」が訳載されている。 『推理小説 ミステリ』2号と、小説文学1984年12月号別冊付録『推理小説』の書影 (推理作家のイ・サンウ氏のブログ記事、2011年7月8日) なお小説文学社からは1983年、森村誠一の『狼たちの夜会』(流氷の夜会)が出版されている。当時の新聞広告には、「日本推理小説の天才森村誠一が日本の『小説宝石』と韓国の『小説文学』に同時連載した作品『狼たちの夜会』は連載中、両国の推理小説読者たちを熱中させた」と書かれているが、この日韓同時連載が正式に許可を取ったものだったのかは分からない。韓国が万国著作権条約に加盟したのは1987年のことである。 『小説文学』は長編推理小説の公募も実施した。第1回(1985年)はユ・ウジェ(柳禹提)『死のセレナーデ』(죽음의 세레나데)が受賞、第3回(1987年)はカン・ヒョンウォン『証券殺人事件』(증권살인사건)が受賞した(『証券殺人事件』は後に『見えざる手』(보이지 않는 손)に改題)。 ユ・ウジェ(柳禹提)(유우제)(1955 - )1985年、長編ミステリ『死のセレナーデ』が『小説文学』第1回長編推理小説公募で受賞作となりデビュー。1987年、『夜』で第3回韓国推理文学賞新人賞受賞。1993年、『不死鳥の迷路』で第9回韓国推理文学大賞受賞。邦訳に短編「敵と同志」(『コリアン・ミステリ』)がある。 カン・ヒョンウォン(강형원)(1956 - )本名はカン・ヒョング (姜亨求、강형구)。弁護士を務めながら作家活動を行っている。1987年、長編ミステリ『証券殺人事件』(後に『見えざる手』に改題)が『小説文学』第3回長編推理小説公募で受賞作となりデビュー。1989年、『青い王冠』(푸른 빛 왕관)で第5回韓国推理文学賞新人賞受賞。1992年、『ソウル・エッフェル塔』(서울 에펠탑)で第8回韓国推理文学大賞受賞。2012年1月より、韓国推理作家協会の5代目会長を務める。作品の邦訳はない。 (3)『季刊推理文学』と金来成推理文学賞 1988年12月にはキム・ソンジョンが『季刊推理文学』(계간 추리문학)を創刊。さらに創刊号で、長編推理小説を公募する金来成(キム・ネソン)推理文学賞を立ち上げた。 『季刊推理文学』創刊号(1988年冬) 表紙・目次等の写真 『季刊推理文学』3号(1989年夏) 表紙・目次等の写真 創刊号は金来成を特集しており、「初めて発掘公開する金来成の短編ミステリデビュー作」というあおり文句のもと、日本のミステリ雑誌『ぷろふいる』1935年3月号に掲載された金来成のデビュー作「楕円形の鏡」(日本語作品)の韓国語訳が掲載された。ほかに金来成の変格短編「霧魔」(拙訳)や、金来成についての評論なども掲載されている。創刊号には特集記事以外では座談会「韓国推理文学の展望」や韓国内外の短編ミステリが掲載され、日本の作品では松本清張「証言」が訳載された。 『季刊推理文学』は韓国の初の推理小説専門誌だとされている。1980年代末から1990年代にかけて韓国ではいくつかのミステリ雑誌が創刊されているが、どれも長続きしていない。『季刊推理文学』も1991年9月発行の第10号(1991年秋号)を最後に休刊となっている。金来成推理文学賞も全3回【注】で終了した。 金来成推理文学賞 受賞作一覧 受賞者 タイトル 第1回(1990年) クォン・ギョンヒ(権敬姫、권경희)(1959 - ) 『痺れた指先』(저린 손끝) 第2回(1991年) イ・スンヨン(李勝寧、이승영)(1963 - ) 『ミス・コリア殺人事件』(미스코리아 살인사건) 第3回(1992年) イム・サラ(林紗羅、임사라)(1963 - ) 『愛するとき、そして死ぬとき』(사랑할 때, 그리고 죽을 때) 韓国の江戸川乱歩ともいわれる金来成(キム・ネソン)(韓国ミステリ史特別編参照)の名を冠した金来成(キム・ネソン)推理文学賞は長編推理小説を公募する新人賞で、受賞作は推理文学社から刊行された。なお金来成の名を冠した文学賞にはほかに、金来成の死去直後に制定された来成(ネソン)文学賞(1958-1960、非公募、京郷新聞主催)があるが、これは推理小説の賞ではない。 金来成推理文学賞の受賞作で日本語に翻訳されているものはない。『コリアン・ミステリ 韓国推理小説傑作選』(バベル・プレス、2002年5月)には、第2回受賞者のイ・スンヨンの短編「隠しカメラ」と第3回受賞者のイム・サラの短編「標的」が収録されている。 第1回受賞者のクォン・ギョンヒ(権敬姫)氏のブログ記事へのリンク第1回金来成推理文学賞授賞式の写真 右から3番目がクォン・ギョンヒ(権敬姫)氏 受賞作『痺れた指先』の書影など 受賞時に新聞に掲載されたインタビュー記事 1(スポーツソウル1990年4月25日)「日本の作家の三島由紀夫の『金閣寺』が特に好きで、推理小説ではイギリスのアガサ・クリスティ、日本の森村誠一、韓国のキム・ソンジョンの作品を多く読んで来た」と紹介されている。 受賞時に新聞に掲載されたインタビュー記事 2(民主日報1990年5月3日)記事では「韓国初の女流推理作家」などと書かれている。またインタビューに答えて「暴力やセックスを排し、知的なゲームを中心にし、社会問題などを提示しながら文学性の高い推理小説を書いてみたいと思っている」ということを語っている。 金来成推理文学賞はいわば韓国版の江戸川乱歩賞とでも言えると思うが、第1回金来成推理文学賞でのクォン・ギョンヒの受賞と、公募制になった最初の回の江戸川乱歩賞(1957年)での仁木悦子の受賞は、単に女性作家ということ以外にもいろいろとオーバーラップする点があるように思えて興味深い。 注:金来成推理文学賞は李建志(り けんじ)「現代韓国ミステリの思想と行動(上)」(『創元推理 20号 人形の夢』2000年10月)では全4回の公募があったとされている。韓国推理作家協会の公式サイトでは全3回とされており、メールで問い合わせたところ、第4回の募集は行われていないとの回答を得た。 第三節 ミステリ専門の出版社も登場 (1)国産ミステリ出版の活況 キム・ソンジョンやイ・サンウの作品がベストセラーになると、明知社(명지사)、現代推理社(현대추리사)、推理文学社(추리문학사)、南島出版社(남도출판사)などの推理小説専門の出版社も登場する。そしてそれらの出版社や、ほかに小説文学社、ヘネム出版、ヘンニム出版などが国産ミステリを多く出版した。 韓国のミステリファンのDELIUS氏がまとめた以下のページで、1980年代の韓国の国産ミステリの新聞広告を見ることができる(翻訳ミステリも数点含む)。 1980年代の推理小説新聞広告 (1980年~1986年) (2011年12月1日)キム・ソンジョン(金聖鍾)やチョン・ゴンソプ(鄭建燮)などの推理作家の作品の広告のほか、パク・ポムシン(朴範信)やイ・チョンジュン(李清俊)などの文学作家が書いた推理小説の広告も見られる。4枚目の写真は森村誠一『狼たちの夜会』(流氷の夜会)の広告。10枚目の写真はフレデリック・フォーサイス『第四の核』、12枚目の写真はロバート・ラドラム『(?)』およびケン・フォレット『獅子とともに横たわれ』の広告。 1980年代の推理小説新聞広告(1987年~1989年) (2011年12月1日)キム・ソンジョン(金聖鍾)やチョン・ゴンソプ(鄭建燮)のほか、ヒョン・ジェフン(玄在勲)、イ・サンウ(李祥雨)、ノ・ウォン(魯元)、カン・ヒョンウォン、ハン・デヒ(韓大煕)、『季刊推理文学』の広告などが見られる。2枚目の写真はジョン・ガードナーの作品の広告。 1996年には韓国推理作家協会の企画による国産ミステリの選集《韓国ミステリコレクション》(全23巻20作品、高麗院メディア)も出版されている(ラインナップ)。 (2)ミステリ読者の団体「韓国ミステリクラブ」の結成 【2012年6月20日追加】 1990年7月、韓国推理作家協会が主催する第3回夏季推理小説学校に参加したミステリファンの約20名が中心となり、ミステリ読者の団体である韓国ミステリクラブ(한국미스터리클럽)が結成されている。主な目的はミステリの読者の拡大と、ミステリの批評の場の提供。同年のうちに会報の発行も開始しており(1991年説もあり)、年末までに会員数は200名近くになっている。1992年に韓国推理作家協会が作成した小冊子では、当時の韓国ミステリクラブの会員数は約350名とされている。 韓国ミステリクラブ制定 推理文学読者賞 受賞作一覧 受賞者 タイトル 備考 第1回(1992年) イ・スンヨン(李勝寧、이승영)(1963 - ) 『ミス・コリア殺人事件』(미스코리아 살인사건) 第2回金来成推理文学賞受賞作 第2回(1993年) イ・スグァン(李秀光、이수광)(1954 - ) 『その日のことは誰も知らない』(그날은 아무도 모른다) 第3回(1994年) イ・イナ(이인화)(1966 - ) 『永遠なる帝国』(영원한 제국) 邦訳2011年、文芸社 ※イ・スグァンの受賞作は『その日のことは誰も知らない』ではなく『憂国の目』(우국의 눈)とも言われる。詳細不明。 ※イ・イナの経歴をネット上で検索してみると、「推理文学読者賞」(추리문학 독자상)ではなく「推理小説読者賞」(추리소설 독자상)受賞となっている。第3回から賞の名称が変わったのかもしれない。 ※1994年2月に韓国ミステリクラブ会長となったパク・ヒョンサン(박형상)のブログの写真(リンク)を見ると、第4回・第5回も実施されたことが分かるが、受賞者が誰だったのかは分からない。第4回と第5回は「推理小説読者賞」という名称になっている。また、第6回以降が実施されたのかは不明。 イ・イナの『永遠なる帝国』は1993年に韓国で出版されベストセラーになった作品。正祖(チョンジョ、在位1777~1800)時代の宮廷での変死事件に始まるミステリで、映画化もされている。『ハヤカワミステリマガジン』2010年10月号の洋書案内コーナーや、『創元推理』20号(2000年10月)および『創元推理21』2001年夏号(2001年5月)に掲載された李建志「現代韓国ミステリの思想と行動」でも紹介された作品である。 この韓国ミステリクラブは少なくとも1994年までは存続したようだが、その後の活動については不明である。 (3)翻訳ミステリの出版 1970年代末からの翻訳ミステリ叢書の出版ブームも終わりを見せず、1980年代から1990年代にかけては主に以下のような叢書が出版されている。 この時期の主な翻訳ミステリ叢書《自由推理文庫》(자유추리문고)(1986年、全50巻、自由時代社) - SFも数冊含む。日本の作品なし 《アガサ・クリスティー・ミステリー》(1985年~1990年、全80巻、へムン出版社[해문출판사]) 《Qミステリ》(1989年~1992年、全46巻?、ヘムン出版社) - 日本の作品は森村誠一『人間の証明』 《キム・ソンジョン精選 最新世界推理小説》(1982年~1993年、全16巻、大作社・推理文学社) 《キム・ソンジョン選ミステリシリーズ》(1988年~1993年、全16巻、南島出版社) 1990年代以降、翻訳ミステリの出版に大きな貢献を果たした人物にミステリ研究家・翻訳家のチョン・テウォン(鄭泰原)(정태원)(1954-2011)がいる。高麗院メディアのミステリ・シリーズ(全20巻)、時空社のエラリー・クイーン選集(全20巻)など、およそ500冊の企画、出版に携わり、そのうち70冊ほどを自ら翻訳している。英語だけでなく日本語にも堪能であり、1990年代には中島河太郎と書簡のやり取りをしていた。2000年代になってからは東野圭吾『白夜行』、首藤瓜於『脳男』などを翻訳している。 1980年代の韓国では、日本の作家では1970年代に引き続き、松本清張、森村誠一、梶山季之が人気を博した。『日本文学翻訳60年 現況と分析 1945-2005(일본문학 번역 60년 현황과 분석 1945-2005)』(召命出版、2008年)(邦訳なし)によれば、1980年代の韓国で多く翻訳された日本の作家(推理作家以外も含む)は順に、三浦綾子、森村誠一、梶山季之、松本清張、井上靖、遠藤周作、曽野綾子、落合信彦である。それらの作家に数では及ばないが、1980年代前半には西村京太郎、西村寿行、笹沢左保らの作品の翻訳も始まっており、1990年代にかけてそれぞれ10冊から15冊程度翻訳出版されている。 同書を見ると、1990年代には村上春樹と村上龍が翻訳数の1位・2位となっており、推理作家では森村誠一、梶山季之とともに赤川次郎が上位に入っている。赤川次郎の作品が最初に韓国語に翻訳されたのは1980年代前半だが、1990年代末に三毛猫ホームズシリーズを中心として多くの作品が訳された。 1999年には韓国・テドン出版より日本推理作家協会・韓国推理作家協会共編の日本の短編ミステリのアンソロジー『Jミステリ傑作選』(J미스터리 걸작선)(全3巻)が出版されている。この翻訳を担当したのは前述のチョン・テウォンである。 早川書房『ミステリマガジン』2000年10月号では「コリアン・ミステリ・ナウ」と題する韓国ミステリの特集が組まれている。この号に掲載の記事で、2000年当時の韓国における日本ミステリについてチョン・テウォンは以下のように書いている。 鄭泰原(チョン・テウォン)「韓国ミステリ事情」(『ミステリマガジン』2000年10月号) 最近は綾辻行人の〈館シリーズ〉、鈴木光司『リング』『らせん』、東野圭吾『秘密』『白夜行』などの人気が高い。少年物では『名探偵コナン』、『金田一少年の事件簿』が若者の心を摑んでいる。 綾辻行人の作品が最初に韓国語に翻訳されたのは1997年で、《館シリーズ》第1作の『十角館の殺人』から第6作の『黒猫館の殺人』までが鶴山文化社より同時刊行された(なおその後、21世紀になってから十角館、水車館、迷路館、時計館は再刊されたが、人形館と黒猫館は再刊されておらず、入手難の状態が続いている)。東野圭吾の作品が最初に韓国語に翻訳されたのは1999年である。 また、島田荘司の『占星術殺人事件』は1990年代の韓国では異なるタイトルで三度出版されている。最初は1991年で、タイトルは『顔のない時間』(얼굴없는 시간)とされていた。翌1992年には『アゾート』(아조트 )というタイトルで同じ出版社から刊行され、1997年には原題を直訳した『占星術殺人事件』(점성술 살인사건)というタイトルで、また同じ出版社から刊行されている。 (4)苦戦するミステリ雑誌 ミステリの単行本や叢書の出版はそれなりに活況を呈していたが、ミステリ専門誌の出版は必ずしもうまくいかなかった。前述のとおり、1988年12月にキム・ソンジョン(金聖鍾)が中心となって創刊した『季刊推理文学』は、約3年後の1991年9月発行の第10号(1991年秋号)で休刊となっている。ただこれは、この時期の韓国のミステリ雑誌としては比較的長く持った方だった。1990年1月に創刊された『月刊推理小説』(월간 추리소설)(途中で『月刊推理小説ダイジェスト』[월간 추리소설 다이제스트]に改題)は、同年4月号(第3号)をもって休刊となっている。1994年4月にはチョン・テウォン(鄭泰原)が編集長を務める『月刊ミステリマガジン』(월간 미스터리 매거진)が創刊されたが、この雑誌も1年も持たず、1994年4月号から1994年11月号までの全8冊で刊行を終えている(韓国国立中央図書館の蔵書は全8冊だが、ネット上では全部で9冊出ているという情報もある/未確認)。1997年には韓国語版『エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン』(엘러리 퀸 미스터리 매거진)と韓国語版『アルフレッド・ヒッチコック・ミステリ・マガジン』(알프레드 히치콕 미스터리 매거진)が創刊されたが、どちらも年内に2冊出ただけで休刊となっている。 『月刊推理小説ダイジェスト』1990年4月号(最終号)の表紙・目次写真 (推理作家のイ・サンウ氏のブログ記事、2011年6月22日)目次の写真を見ると、江戸川乱歩「月と手袋」が連載小説として訳載されていたことが分かる(完結したのかは不明) (なお2012年現在は、韓国推理作家協会編のミステリ雑誌『季刊ミステリ』の刊行が2002年の創刊以来続いており、2012年春号で通巻35号に達している) 第四節 20世紀末: 出版不況の影 1990年代後半から、アジア通貨危機(1997年)などによる出版不況が韓国ミステリ界に影を落とし始める。創作を発表する場が減り、出版点数も激減。国産ミステリが1年に10冊も出ない低迷期に入る。長編推理小説賞を公募していた金来成推理文学賞は1993年に終了していたが、2000年代に入るとスポーツ新聞の短編ミステリの公募もなくなってしまい、新人のデビューも難しくなった。 次章で扱う内容をやや先取りして言えば、その後翻訳ミステリのファンの増加で韓国におけるミステリ出版は再び活気を見せ始めるが、韓国の創作ミステリ界はそこから取り残されたような形になってしまった。韓国の創作ミステリ界がこの停滞から抜け出す兆しを見せ始めたのは、ここ3、4年のことである。 第五節 邦訳された1980年代~20世紀末の韓国推理小説 原著刊行1981年:金聖鍾(キム・ソンジョン)『ソウル 逃亡の果てに』(祖田律男訳、新風舎、2005年)(原題『나는 살고 싶다』) 原著刊行1988年:鄭建燮(チョン・ゴンソプ)『真由美 最後の証言』(李鍾相[イ・ジョンサン]訳、光文社、1988年)(原題『마유미 최후의 증언 언니 미안해』) 原著刊行1993年:イ・イナ『永遠なる帝国』(武田康二訳、文芸社、2011年12月)(原題『영원한 제국』) 原著刊行1997年:朴商延(パク・サンヨン)『JSA 共同警備区域』(金重明[キム・ジュンミョン]訳、文春文庫、2001年5月)(原題『DMZ』) ※映画の原作小説(映画のノベライズ本ではない) 原著刊行1998年:『コリアン・ミステリ 韓国推理小説傑作選』(祖田律男ほか訳、バベル・プレス、2002年5月) - 短編13編収録。韓国推理作家協会編、1998年版『今年の推理小説』の翻訳。 『コリアン・ミステリ 韓国推理小説傑作選』の収録内容は「韓国ミステリ 読書案内」を参照のこと。ほかに『ミステリマガジン』2000年10月号に韓国の短編ミステリが4編訳載されている。(以下のあおり文句は目次より引用) 『ミステリマガジン』2000年10月号 (特集 コリアン・ミステリ・ナウ)「その夜は長かった」 李秀光(イ・スゴァン)(※当ページではイ・スグァンと表記)――霊魂となって現世を彷徨う男の悲哀 「天の定めた縁」 黄世鳶(ファン・セヨン)――妻が盗み見た、殺人計画を綴った夫の小説 「精神病を引き起こす脱毛剤」 白恷(ベク・ヒュ)(※当ページではペク・ヒュと表記)――画期的新薬の恐るべき副作用とは!? 「妻を守るために」 李源斗(イ・ウォンズ)(※当ページではイ・ウォンドゥと表記)――癌ノイローゼの男を待ち受ける皮肉な運命 参考文献 韓国ミステリ史 参考文献 (新しいウィンドウで開きます) ※便宜のためWikipediaのリンクを貼っている箇所がありますが、Wikipediaを情報源としては使用していません。 『韓国ミステリ史 第一章』(20世紀初頭~1930年代) 『韓国ミステリ史 特別編 - 金来成(キム・ネソン)(1909-1957)【1】』 『韓国ミステリ史 特別編 - 金来成(キム・ネソン)(1909-1957)【2】』 『韓国ミステリ史 第二章』(1940年代~1960年代) 『韓国ミステリ史 第三章』(1970年代) 『韓国ミステリ史 第四章』(1980年代~20世紀末) ←今見ているページ 『韓国ミステリ史 第五章』(1990年代末~21世紀初頭)(未公開) 『読書案内』
https://w.atwiki.jp/asianmystery/pages/159.html
2011年9月3日 2011年10月15日:増補(詳細はページ最下部の「台湾ミステリ史 中編 更新履歴」参照) 『台湾ミステリ史 中編』(第四章)では、1977年から1990年代半ばまでの台湾ミステリ界の動向を紹介している。 島崎博氏は1977年を「実質的な台湾の推理小説元年」としており、1977年から1984年までを準備期、1984年から2000年までを第一期、2001年以降を第二期としている。 ※「台湾ミステリ史 前編」(19世紀末~1970年代)と「台湾ミステリ史 後編」(20世紀末~21世紀初頭)は未完成です。 目次 台湾の言語と文字に関するごく簡単な注釈 台湾ミステリ前史 (第一章~第三章 要約) 第四章 1970年代末~1990年代半ば: 林仏児(りん ふつじ)と『推理雑誌』の時代第一節 1977年: 松本清張『ゼロの焦点』の翻訳刊行 第二節 1984年: 台湾初の長編推理小説 林仏児(りん ふつじ)『島嶼(とうしょ)謀殺案』と『推理雑誌』創刊 第三節 1987年: 台湾における日本ミステリの第1次ブーム 第四節 1988年~1992年: 林仏児推理小説賞 参考文献 台湾ミステリ史 中編 更新履歴 台湾の言語と文字に関するごく簡単な注釈 台湾で刊行されている小説で使われているのは「台湾語」ではなく、日本で言うところの「中国語」である。たとえば、「台湾では日本の推理小説の台湾語版がたくさん刊行されている」といった言い方は誤りである。 中国で画数が省略された漢字が使われていることは、テレビのクイズ番組などでもたまに取り上げられるのでそれなりに知られていると思う(たとえば中国では、「学習」を「学习」と書く)。一方、台湾や香港ではそのような省略した漢字は使われておらず、日本で言うところの「旧字体」が今でも使われている(たとえば「学習」を「學習」と書く)。中国で使われている漢字は簡体字(かんたいじ)、台湾や香港で使われている漢字は繁体字(はんたいじ)と呼ばれる。 台湾ミステリ前史 (第一章~第三章 要約) 台湾の推理小説の歴史は、1898年に台湾の新聞『台湾新報』に連載された『艋舺(もうこう)謀殺事件』(日本語作品)(艋舺(もうこう)は台湾の地名、現在の萬華(ばんか)【注1】)及び、1909年に『漢文台湾日日新報』に連載された「恨海(こんかい)」(中国語作品)に始まり、必ずしもその数は多くなかったが、20世紀前半は日本語および中国語で創作探偵小説が発表されていた。この時期に台湾で探偵小説を発表した人物は、まず日本人から挙げると、江戸川乱歩がデビューしたのと同じ1923年に創作探偵小説を発表し始め、3年間で中短編計15編を発表した座光東平や、鉄道関連の職員だった福田昌夫、第二次世界大戦末期に長編探偵小説『船中の殺人』や《龍山寺の曹老人》シリーズを林熊生(りん ゆうせい)という台湾人風の名前で発表した台北帝国大学医学部教授の金関丈夫(かなせき たけお、1897-1983)らがいる。彼らは日本語で作品を執筆・発表しているので、これらは台湾ミステリ史の前史であるのと同時に、日本のミステリ史の一部分でもある。一方、中国語で探偵小説を執筆した台湾人作家としては、武侠小説を執筆しながら数編の探偵小説を発表した李逸涛(り いっとう、1876-1921)、モーリス・ルブランのルパン物『虎の牙』の翻案も行った魏清徳(ぎ せいとく、1871-1953)、小学生の椿孝一が算数の能力で警察を助けるという児童向け探偵小説を書いた謝雪漁(しゃ せつぎょ、1886-1964)らがいる。また、台湾人の医学博士・葉歩月(よう ほげつ、1907-1968)は、終戦後の1946年に2冊の日本語単行本、『探偵小説 白昼の殺人』と『科学小説 長生不老』を刊行している。 ほかにも、台湾にホームズがやって来て事件を解決するという作品(餘生「探偵小説 智闘」『台南新報』1923年、中国語)や、臍皮乱舞・大舌宇奈児・無理下大損・正気不女給というどこかで聞いたような名前の執筆陣によるリレー小説「連作怪奇探偵小説 木乃伊の口紅」(『台湾鉄道』1934年、日本語)【注2】など、興味深い作品が書かれている。 終戦後、1946年10月25日に新聞・雑誌での日本語の使用が禁止され、葉歩月のような日本語で執筆していた台湾人作家は発表の場を失ったが、上海や香港からは探偵雑誌が輸入され、主にアメリカのパルプマガジンから作品を翻訳していた『藍皮書(らんひしょ)』(1946年7月上海で創刊、1949年5月に休刊、1950年に香港で復刊)【注3】などが人気を博した。1949年、大陸で中華人民共和国が成立し国民党政府が台湾に移ってくると、海外からの出版物の輸入が難しくなり、台湾独自の探偵雑誌がいくつか創刊された。多くは長続きしなかったが、1951年に創刊され10年以上【注4】続いた『偵探雑誌(ていたんざっし)』【注5】のような雑誌もあった。この雑誌の作品は9割がパルプマガジンからの翻訳だったが、作品に作者名は付されず、訳もめちゃくちゃで低俗なものだったという。この時期は、散発的に台湾人作家によりスパイ小説などの推理小説の一種が発表されることはあったが、専門的に推理小説を執筆する作家は生まれなかった。 注1:萬華は2010年に邦訳が刊行された台湾の推理小説、寵物先生(ミスターペッツ)『虚擬街頭漂流記』の舞台でもある。 注2:それぞれ、江戸川乱歩、大下宇陀児、森下雨村、正木不如丘のもじりだろう。 注3:江戸川乱歩は1956年から1958年ごろにかけて、香港版『藍皮書』を定期購読している。 注4:「台湾における日本ミステリー出版事情」では「10年以上」となっているが、『2009 本格ミステリ・ベスト10』に掲載された同じ講演のまとめでは「20年以上」となっている。 注5:単に『偵探』と書かれる場合もある。また日本語の文献では、『探偵雑誌』とされている場合もある。 第四章 1970年代末~1990年代半ば: 林仏児(りん ふつじ)と『推理雑誌』の時代 【同時期の中国の推理小説については「中国ミステリ史 第四章(1970年代末~1990年代)」を参照のこと】 第一節 1977年: 松本清張『ゼロの焦点』の翻訳刊行 戦後、台湾では外国文学の翻訳が制限されていたが【注6】、1975年に蒋介石(Wikipedia)が死去すると、規制は少しずつ緩んでいった。そして1977年4月、林白出版社から松本清張『ゼロの焦点』が翻訳刊行される(台湾国家図書館のデータを見ると、同出版社からは1969年にも『ゼロの焦点』が翻訳出版されている。訳者は同じ)。林白出版社はその後、この『ゼロの焦点』を第1巻とする《松本清張選集》の刊行を1979年に開始。1980年(1979年?)には叢書「推理小説系列(シリーズ)」(推理小說系列)(~1994年、全115冊)を創刊し、清張以外の日本の推理小説も刊行していった。台湾で「推理小説(トゥイリー シアオスオ)」という外来語が定着し始めたのはこの時期である。1986年(1987年?)には別の会社も日本のミステリの翻訳出版に参入するが、それまでは日本ミステリの翻訳出版は林白出版の独占状態だった。林白出版社が1977年から1986年までに刊行した日本ミステリの翻訳本は約70冊である。島崎博氏は、林白出版社が『ゼロの焦点』を翻訳刊行した1977年を、「実質的な台湾の推理小説元年」だとしている(島崎博インタビュー4、p.1110)。 日本語では「探偵小説」という語は、「古き良き時代」のロマンにあふれた作品群をイメージさせるが、台湾では「偵探(ていたん)小説」という語には、パルプマガジン翻訳時代の低俗なイメージが付きまとうという。そのため、日本の雑誌『幻影城』で「探偵小説」という語を積極的に使った島崎博氏も、台湾では「偵探小説」という言葉は使っていない。 欧米の推理小説では、1978年に星光出版社がイアン・フレミングの007シリーズの作品を刊行。続いて、1981年に水牛出版社がフランクリン・ディクスン(Franklin W. Dixon)の少年向け推理小説・ハーディ兄弟シリーズを刊行。1982年(1983年?)には遠景出版社がクリスティー全集を刊行し、続いて1986年にはE・S・ガードナーのペリー・メイスンシリーズの刊行を始めた。クリスティー全集はよく売れたという。 注6:一方で児童向けの推理小説は出版されていた。1950年代には台湾の東方出版社(社長:林呈禄)から児童向けのホームズ全集、ルパン全集が刊行され、海賊版が数種類出るほどの人気を博していたという。また、同社は1960年代初頭にはクイーンやカー、アイリッシュ、ミルンらの推理小説も児童向けに刊行している。 日本の推理小説の受容に関するもう一つの証言 【2011年10月15日加筆】 以上で提示した台湾の推理小説元年に関する説明は島崎博氏の証言に基づくものである。1977年に台湾で刊行された松本清張『ゼロの焦点』が日本の推理小説の最初の翻訳単行本で、それ以降台湾では「推理小説」という語が次第に使われるようになっていったというもので、島崎氏は21世紀になってから各所で同じように説明している。ところが、ほかならぬ島崎氏自身がこれとは大きく異なる証言をしている文献がある。日本の雑誌『推理界』の1968年7月号に掲載された島崎氏の「台湾の推理小説」という記事である。この記事で島崎氏は以下のように述べている。 島崎博「台湾の推理小説」『推理界』1968年7月号 映画007が話題になってから、007が翻訳され、推理小説の出版はさかんになった。いままでホームズとルパンの二全集しかなかった翻訳ものも、007の外、クリスティ選集、スピレンの全作品など出版された。 日本作家の長編も、新聞の副刊(文芸欄)によく翻訳連載されるようになった。そのうち単行本になったのは、 白髪鬼(江戸川乱歩著、洪明訳) 地獄の傀儡(江戸川乱歩著、永思訳) 魔鬼の標誌(江戸川乱歩著、方圓客訳) 蜘蛛人(江戸川乱歩著、余蔭訳) 霧影魅影(角田喜久雄著、金美訳) 死神的地図(島田一男著、何年訳) 神秘之門(高木彬光著、摩斯訳) 魔弾的射手(高木彬光著、何年訳) 猫影踪謎(仁木悦子訳、許振江訳) 黒色的喜馬拉雅山(陳舜臣著、刘慕沙訳) などがあるが、訳名を見て、原作名を推理するのも楽しみである。 これを見ると、日本のミステリの単行本は松本清張『ゼロの焦点』以前にも刊行されていたことが分かる。クリスティや007シリーズなどの欧米ミステリの翻訳出版も、後の島崎氏の説明よりもずっと早くに行われていたようである。 またこの記事で島崎氏は、台湾では「偵探小説」という言い方をすると説明した後に、「「推理小説」が使われるようになったのは、最近のことで、これは日本の影響である」と述べているので、『ゼロの焦点』が翻訳される10年近く前の時点で、すでに台湾で「推理小説(トゥイリー シアオスオ)」という語が使われていたことが分かる。 この記事によれば1968年当時、台湾には『偵探』(『偵探雑誌』から改題)、『偵探之王』(『偵探小説専号』の後進)、『偵探世界』などの探偵雑誌があり、日本の作品も翻訳されていた。また、文芸誌『文壇』(1952年創刊)も手当たり次第に日本の新刊雑誌から推理小説を翻訳していたという。台湾における日本の推理小説の受容については、もう少し詳しく調べてみる必要がありそうだ。 同時期の他のアジア地域の動向 対岸の中華人民共和国では、1970年代末に文化大革命が終結すると翻訳ミステリブームが起こり、欧米の黄金時代の推理小説から日本の社会派推理小説、さらにはソ連や東欧諸国の推理小説まで各地の作品が翻訳刊行された。特に松本清張や森村誠一などの日本の社会派作品は人気を博した。 韓国では1977年、欧米ミステリの叢書《東西推理文庫》全126巻(日本語からの重訳)と、《河西推理選書》全36巻(江戸川乱歩『孤島の鬼』『陰獣』、横溝正史『本陣殺人事件』、松本清張『点と線』『ゼロの焦点』『砂の器』、森村誠一『高層の死角』『人間の証明』『野性の証明』などのほか、韓国オリジナル作品も含む→ラインナップ)の刊行が始まり、韓国ミステリ中興の祖である金聖鍾(キム・ソンジョン)の活躍も相まって、推理小説ブームが訪れた。この時期の東アジアでは、日本のみならず台湾・中国・韓国と各地で日本の社会派推理小説が読まれていたことになる。 日本では1975年から1979年にかけて、島崎博氏が編集長を務める探偵小説専門誌『幻影城』が刊行されていた。 第二節 1984年: 台湾初の長編推理小説 林仏児(りん ふつじ)『島嶼(とうしょ)謀殺案』と『推理雑誌』創刊 『ゼロの焦点』を翻訳刊行した林白出版社の創設者は、1960年代に詩人・純文学作家としてデビューし、いくつかの雑誌の編集者なども務めた林仏児(りん ふつじ、1941- )である。彼は1984年4月、同社から自身が執筆した推理小説『島嶼(とうしょ)謀殺案』を刊行する。この作品は、台湾初の長編推理小説だと言われている(異論もある、後述)。そして同年11月、林仏児は林白出版社の子会社として推理雑誌月刊社を立ち上げ、台湾ミステリの草創期に大きな役割を果たすことになる月刊の推理小説専門誌『推理雑誌』を創刊する(誌名は単に『推理』と書かれる場合もある)。 『推理雑誌』は、6割が日本ミステリ、2割が欧米ミステリ、残りが台湾オリジナルのミステリと評論というものだった。林仏児に『推理雑誌』を創刊するよう勧めたのは、1979年の『幻影城』休刊後、台湾に戻っていた島崎博氏である【注7】。 島崎博インタビュー1、p.330 『推理雑誌』は今年(二〇〇四年のこと)の十一月でちょうど創刊二十周年になるのですが。その社長というのが、呑み友達だったので、ぼくともう一人の友人が彼に勧めたんですよ。推理雑誌を出しなさいと。それ以前の台湾のミステリーは、『推理雑誌』の親会社の林白出版社からで年平均四冊しか出てなかったんです。この頃の事情は『毎日新聞』【注8】の方に書きました。 『推理雑誌』の創刊に当たって、ぼくがけしかけたんです。そうしたら、雑誌が創刊したときに勝手に顧問にされてしまいました。 なお、この時『推理雑誌』の顧問には島崎氏のほかに、香港の推理作家・SF作家の倪匡(げい きょう)【注9】や、のちに島田荘司推理小説賞の最終選考委員を務める文芸評論家の景翔らも名を連ねている。 『推理雑誌』に掲載された作品は基本的に無断翻訳だったが、林仏児が日本の推理作家側と連絡をとった場合もあるようである。山村正夫『推理文壇戦後史 4』【注9】(1989年)によると、『推理雑誌』第21号(1986年7月号)には仁木悦子が林仏児にあてた手紙(1986年5月19日付)の原文とその中国語訳が掲載されているという。仁木悦子の手紙は『推理文壇戦後史 4』にも転載されているが、その文面から判断するに、林仏児は1986年の5月頃またはその少し前に、世田谷の仁木悦子邸を訪れているらしい。仁木悦子は、「台湾で多くの読者の方に私の作品を読んでいただけるということは、こんなにうれしいことはございません」などと記している。 注7:島崎博氏は1979年12月5日、一時帰国のつもりで台湾に帰郷した。しかし、帰国の5日後に台湾で大規模な民主化要求デモ――美麗島(びれいとう)事件(Wikipedia)が起きると、島崎氏は事件とは無関係だったにも関わらず当局に目を付けられ、出国できなくなってしまった。この後、日本のミステリ界では島崎氏は「消息不明」とされる。1987年~1988年ごろに一度その消息が明らかになり連絡もついたが、しばらくするとまた連絡がとれなくなり、帰国後の島崎氏についての詳細が明らかになるには1979年から数えて実に約25年の歳月を待つ必要があった。 注8:島崎博「台湾 冬の時代経て、今、第2次ブーム 日本ミステリー小説事情」(『毎日新聞』2004年12月28日夕刊 6面) 注9:邦訳に『貓(ねこ) -NINE LIVES-』(徳間文庫、1991年、「衛斯理(ウェイスリー)」名義)がある。 注10:山村正夫『推理文壇戦後史 4』には、『推理雑誌』第23号(1986年9月号)に掲載された島崎博氏のインタビュー記事が抄訳されている。そこには島崎氏の言葉として「五十を過ぎた私には、二つの目標しかありません。一つは日本の推理小説を書くこと、もう一つは、台湾の現代文学史を書くこと」と書かれている。これを受けて山村正夫氏は、「氏の自説にもとづく日本の推理小説の創作を、ぜひ一日も早く読みたいものである」と書いているが、「日本の推理小説を書くこと」というのは『推理雑誌』の誤植であり、実際は「日本の推理小説史を書くこと」だったことが島崎博インタビュー3で明らかになっている。 林仏児の台湾ミステリ界への貢献 林仏児(林佛兒/りん ふつじ)は1941年12月10日生まれ。1960年代に詩人・純文学作家としてデビューし、雑誌の編集者を務めながら作品を発表した。1968年に林白出版社を創設(「林白」は彼の筆名の一つ)。1970年代から1980年代初めにかけては、同社から『北回歸線』(1980年)(2009年版)などの中間小説(最近はあまり聞かないが、純文学と大衆小説の中間的な作品を指す日本の用語)を刊行した。 林仏児が創設した林白出版社は、1977年に松本清張『ゼロの焦点』を刊行して以来、年に数冊のペースで日本ミステリの出版を続ける。1984年4月には、林仏児自身も推理小説『島嶼(とうしょ)謀殺案』を同社より刊行した。同年11月、島崎博らの勧めで『推理雑誌』を創刊、編集長となる。1985年から1986年にかけて同誌に社会派推理小説『美人(びじん)、珠簾(しゅれん)を捲(ま)き』(美人捲珠簾)を連載(単行本刊行は1987年5月)。先に『島嶼謀殺案』を台湾初の長編推理小説だと紹介したが、この『島嶼謀殺案』は中編程度の分量だとして、『美人、珠簾を捲き』の方を台湾初の長編推理小説だとする説もある(『島嶼謀殺案』を台湾初の長編推理小説としているのは島崎博氏、『美人、珠簾を捲き』を台湾初の長編推理小説としているのは台湾推理作家協会所属の評論家・杜鵑窩人(とけんわじん)氏)。1987年には『推理雑誌』誌上で自らの名を冠した林仏児推理文学賞を創設。1980年代末にはカナダに移住し、『推理雑誌』の編集の一線から退く(完全に関わりがなくなったわけではないようである)。1991年にはカナダ華文創作協会(加拿大華文寫作協會)を設立し初代会長になった。推理雑誌に発表した推理小説関連のエッセイ等は、『心緩緩航行』に収録されている。 2007年には、台湾ミステリの発展過程や、そこで林仏児が果たした役割などを論じた研究書『推理小說研究-兼論林佛兒推理小說』が刊行された。 (林仏児の経歴については、台北市文化局の林仏児紹介ページなどを参照した) 林仏児は日本ミステリの出版や『推理雑誌』の創刊、林仏児推理文学賞の開催などで台湾ミステリ界に大きな貢献をしたが、推理小説の創作は少なく、前述の長編2編以外には、短編「東澳之鷹」と「人猿之死」があるだけである。『島嶼謀殺案』と『美人、珠簾を捲き』は2009年末(2010年年初?)に復刊されており、前者には「東澳之鷹」と「人猿之死」も収録されている(『島嶼謀殺案』2009年版、『美人、珠簾を捲き』2009年版)。 島崎博氏は林仏児の推理小説4作品の中で、最後に書かれた『美人、珠簾を捲き』を最も高く評価している。この作品は、2001年には中国で第2回北京偵探推理文芸協会賞の長編賞を受賞している(「中国ミステリ史 第六章 第一節」参照)。 林仏児『美人、珠簾を捲き』(1985-1986)あらすじ台湾人の葉青森(よう せいしん、36歳)は、数年前に日本人の阿部一郎と組んで、台湾の特産品や衣服を輸出する事業を立ち上げた。2か月に1回は日本に出張するが、出張の際には必ず韓国を経由している。韓国では2年前に、レストランチェーンの株主の朴仁淑(パク・インスク)と知り合った。葉の母親は既に死去しており、葉は現在は、台湾の高級住宅街の大邸宅に妻と子供2人と、父親の葉丹青(よう たんせい)とともに暮らしている。葉が日本に出張している時、事件は起きる。葉の父の葉丹青が、台湾の自宅寝室で殺害されたのだ。そして、日本に出張していた葉も突如行方知れずになり、数日後に韓国の仁川(インチョン)港で死体となって発見される。なぜ父と子は、台湾と韓国で同時に殺害されることになったのか。そしてその後、葉丹青の行きつけの喫茶店の従業員女性が殺害される。葉親子の殺害事件との関係は……? 第三節 1987年: 台湾における日本ミステリの第1次ブーム 1977年の松本清張『ゼロの焦点』の出版以来、台湾における日本ミステリの出版は林白出版社の独占状態だったが、1986年(1987年?)には皇冠出版が日本ミステリの出版に参入する。そして1987年3月には、希代書版から島崎博氏が作品選定および序文・解説の執筆を担当した『日本十大推理名著全集』全10巻が一挙に刊行される。 日本十大推理名著全集江戸川乱歩『黒蜥蜴』 横溝正史『獄門島』 高木彬光『破戒裁判』 土屋隆夫『危険な童話』 松本清張『時間の習俗』 仁木悦子『林の中の家』 佐野洋『透明受胎』 笹沢佐保『空白の起点』 森村誠一『高層の死角』 夏樹静子『遠い約束』 島崎氏はこの全集の企画を引き受けるにあたって、「必ず10冊出す、解説を付ける、訳者紹介を付ける」という3つの条件を出版社に飲ませたという。この当時、台湾では翻訳小説に解説を付ける習慣はなかった。また、訳者紹介を付けたのは、訳者にも責任感をもってもらおうという考えからだった(1950年代~60年代のパルプマガジンの翻訳の頃は、訳者の名前は示されないのが普通だった)。 その後希代書版からは、同年から翌年にかけて、『日本名探推理系列』全10巻と『日本推理名著大展』全8巻が刊行される(ラインナップは、Wikipediaの島崎博氏の項目(リンク)で見られる)。この2つの叢書も島崎氏が手掛けたものである。 これらの日本ミステリの叢書の成功により、他の出版社も日本ミステリの出版に参入し、台湾における日本ミステリの第1次ブームが訪れる。この第1次ブームでは、2、3年間で約200冊の日本ミステリが翻訳刊行された。この時の人気作家のトップ3は、松本清張、西村京太郎、赤川次郎であった。主な叢書に、前述の林白出版社「推理小説系列(シリーズ)」のほか、皇冠出版社の「日本金榜名著」シリーズ(1987年~1992年、全80巻)などがある(こちらのサイトが全80巻のリストを掲載している)。 しかし、このころの台湾の単行本は200ページほどが一般的で、それ以上になると訳者や編集者が勝手に一部をカットしてしまっていた(島崎氏は、カットされないように自分の企画では短い作品を選んだという)。そのため、謎解き部分はあるのに事件の部分が省略されていたり、あるいは事件は描かれているのに謎解き部分がカットされていたりと、ひどい訳書が多々あった。また、翻訳自体にも問題があり、「江戸川乱歩」が「江戸川を散歩する」と訳されるようなこともあったという(島崎博インタビュー4、p.1110)。そのため次第に読者が離れていき、2~3年でブームは終わった。日本ミステリのブームが去ると、今まであまり人気のなかった欧米ミステリが次第に読者に受け入れられていく。1990年代は欧米ミステリは好調だったが、日本ミステリは年10冊ほど刊行の低迷期になった。 第四節 1988年~1992年: 林仏児推理小説賞 1987年には『推理雑誌』創刊3周年を記念して林仏児推理小説賞(林佛兒推理小說創作獎)が創設された。短編推理小説を募集するもので、年1回のペースで全4回行われた。主な受賞者に、思婷(してい)(第1回大賞)、余心楽(よ しんらく)(第2回大賞)、葉桑(よう そう)(第3回大賞)、藍霄(らんしょう/ランシャウ)(第2回第3席)らがいる(ここでは「第一名」(第一席)または「首奨」を「大賞」と呼んでおく)。なおこの賞は応募を未デビューの新人に限ってはいない。上記の4人も、受賞以前にすでに『推理雑誌』に別の作品が掲載されたことがあった。 毎年上位入賞するのはほぼ同じ面々だったため、第4回を持って終了となった。 大賞受賞者第1回(1988年)大賞受賞者 - 思婷(し てい/スー ティン/Si Ting)(1948 - )1948年4月1日、中国福建省生まれ。本名は陳文貴。1978年に香港に移住し映画やドラマの脚本家として活動。1986年、短編「神探」で『推理雑誌』に初登場。1988年、暗号を扱った短編「死刑今夜執行」で第1回林仏児推理小説賞の大賞を受賞。ほかに、「最後一課」で第2回第2席、「一貼靈」で第3回審査員特別賞。『推理雑誌』では1986年から1991年にかけて計6編の短編を発表した。1989年に台湾に移住。1998年以降は北京で暮らしている。1993年のテレビドラマ『包青天』(中国語版Wikipedia)の脚本などで高名で、時代劇の脚本の第一人者と呼ばれている。 第2回(1990年)大賞受賞者 - 余心楽(よ しんらく/ユー シンロー/余心樂/Yu Xinle)(1948 - ) 『有栖川有栖の本格ミステリ・ライブラリー』(角川文庫、2001年8月)に短編「生死線上」(1990)が収録されている。1948年6月4日、台湾生まれ。本名は朱文輝。1975年よりスイスに居住。スイスのチューリッヒ大学卒業。1989年、「松鶴樓」で『推理雑誌』に初登場。1990年、スイスの快速列車を題材にしたアリバイ物「生死線上」で第2回林仏児推理小説賞の大賞を受賞。ほかに、「真理在選擇它的敵人」で第3回佳作。『推理雑誌』では1989年から2000年にかけて7短編と1長編(『命案的版本』、連載中断後2001年の単行本版で完結)を発表した。1992年に林白出版社より刊行した『推理之旅』は、台湾初の長編本格推理小説だと言われている。緻密に組み上げたロジカルな本格ミステリを得意とする。ほかの長編作品に、『命案的版本』(2001年刊行)がある。2008年には短編集『洗錢大獨家』(本名の朱文輝名義)を刊行した。 第3回(1991年)大賞受賞者 - 葉桑(よう そう/イエ サン/Ye Sang)多作で知られる推理作家。その浪漫的な筆致は連城三紀彦になぞらえられることもある。『推理雑誌』では1988年から2000年にかけて短編36編を発表している。1988年、「再一次的死亡」で第1回林仏児推理小説賞佳作。1990年、「遺忘的殺機」で第3回大賞を受賞。単行本に『愛情實驗室』(1991年)、『耶誕夜殺人遊戲』(1991年)、『遙遠的浮雕』(1992年)、『魔鬼季節』(1992年)、『顫抖的拋物線』(1993年)などがある。 連城三紀彦の影響を受けたということは本人もエッセイに書いている。葉桑にとって連城三紀彦の短編集『戻り川心中』(台湾では1985年に出版)は、「推理小説は一回読めば充分」という自分の思い込みを打ち破ってくれた作品集で、創作に行き詰まると何度も読み返し、その影響を受けた作品もいろいろ書いているという。また一方で、自分の創作の方向を決定づけたのは『推理雑誌』に掲載された夏樹静子や山村美紗、仁木悦子ら日本の女性推理作家の作品だったとも語っている。 連城三紀彦の短編集『戻り川心中』がこの上なく好きで、この短編集は、「推理小説は一回読めば充分」という自分の思い込みを打ち破ってくれた作品なのだという。創作に行き詰まると何度も読み返し、その影響を受けた作品もいろいろ書いているそうだ。(本人のエッセイより) 第4回(1992年)の大賞は荘仲亮(そう ちゅうりょう/ジュアン ジョンリアン/莊仲亮/Zhuang Zhongliang)の「M16A2與M16」だが、この作者はこの1作のみで消えてしまったようである。なお、第1回から第3回までは、受賞作(佳作含む)を集めた単行本がそれぞれ刊行されている(『林佛兒推理小說獎作品集1』、『林佛兒推理小說獎作品集2』、および第3回の受賞作を集めた『遺忘的殺機』)。 『推理雑誌』に登場したそれ以外の重要作家禄文(ろく ぶん/ルー ウェン/祿文/Lu Wen)1986年から1988年にかけて、『推理雑誌』で6編の短編ミステリを発表。その作品は、香港が舞台となっており、科学トリックの使用に特徴があった。台湾で女性の探偵を起用した初の作家でもある。この作家については、香港の華僑だということしか知られておらず、経歴もその後の消息も不明である。 藍霄(らん しょう/ラン シャウ/Lan Xiao)(1968 - )講談社のアジア本格リーグで長編『錯誤配置』(原著刊行2004年/邦訳2009年)が刊行されている。1967年6月4日、台湾の澎湖諸島に生まれる。まだ高校生だった1985年、『推理雑誌』に「屠刀」が掲載されデビュー。その後しばらく間が空くが、1990年、第2回林仏児推理小説賞の第3席となった第2短編「医院殺人」で復帰。『推理雑誌』では1996年までに計12短編を発表した。邦訳された長編『錯誤配置』は、1990年から藍霄が発表している秦博士シリーズの長編第1作。台湾ではほかに長編第2作『光與影 A Maze Murder Case(光と影)』(2005)、長編第3作『天人菊殺人事件』(2005)が刊行されている。 ネット上ではblueというハンドルネームを使っている。2004年には島崎博氏が台湾のミステリファンと交流する模様をサイトにアップし、島崎博氏が日本ミステリ界に「発見」される契機をつくった。2005年2月に台北で行われた国際ブックフェアでは、有栖川有栖・藍霄・島崎博氏の3人の座談会が行われた。 既晴(き せい/ジー チン/Ji Qing)(1975 - )1975年、台湾生まれ。1995年、『推理雑誌』に「考前計劃」が掲載されデビュー。『推理雑誌』では1997年までに計3短編を発表した。英米ミステリも日本ミステリも原文で読みこなし、評論家としても力を発揮。2001年には、台湾推理作家協会の前身となった台湾推理倶楽部を創設。人狼城推理文学賞を設けて新世代の推理作家を次々と発掘し、台湾ミステリ界に多大な貢献をした。代表作は、2000年に自費出版し、2004年に大手出版社より再刊された『魔法妄想症』。この作品は藍霄『錯誤配置』巻末の玉田誠氏の解説によれば、「悪魔の召喚によって死体が動き出すという、島田荘司の『眩暈』を彷彿とさせる幻想的な謎に、不可能犯罪趣味と魔術的装飾を凝らした長編小説」である。本格ミステリからホラーまで多彩な作風を見せる。ほかの著作に、『請把門鎖好』(2002年、第4回皇冠大衆小説賞受賞作)、『別進地下道』(2003)、『網路凶鄰』(2005)、『超能殺人基因』(2005)、『修羅火』(2006)、『病態』(2008)、『感應』(2010)、短編集『獻給愛情的犯罪』(2006)がある。 2005年には芦辺拓(と島崎博氏)、2006年には綾辻行人(と島崎博氏)、2007年には島田荘司とそれぞれ会談している。 以上の6人の作家は、『台灣推理作家協會傑作選 1』に掲載された巻頭解説で、台湾推理作家協会所属の評論家・杜鵑窩人(とけんわじん)氏が特に重要な作家として挙げている6人である。一方、同解説で杜鵑窩人氏は、必ずしも好ましくないものとして、「風俗派」推理小説の存在にも触れている。これは、社会派のあとにうまれたある推理小説群を指して日本で使われた「風俗派」という用語と同じ意味だと考えてよい。必ずしも謎解きなどの要素がメインになっていない作品群である。なお島崎博氏によれば、林仏児の作品も『美人、珠簾を捲き』以外は風俗派推理小説に分類される。 風俗派林崇漢(りん しゅうかん/リン チョンハン/Lin Chonghan)(1945- ):画家。推理小説の単行本は『收藏家的情人』(林白出版社、1986年)のみ。ほかに、『推理雑誌』で変格推理小説を7編発表。 杜文靖(と ぶんせい/ドゥー ウェンジン/Du Wenjing)(1947- ):新聞記者。サスペンスフルな風俗派推理小説で知られる。作品に、『情繭』(林白出版社、1986年)と『墜落的火球』(1987年)がある。 楊寧琍(よう ねいり/ヤン ニンリー/Yang Ningli)(1966- ):作品に、『童話之死』、『藝術謀殺案』、『要命的5日』、『鑽石之邀』、『心魂』、『失去觸角的蝴蝶』などがある。 葉建華(よう けんか/イエ ジエンホア/Ye Jianhua):作品は1999年刊行の『殺意的空中迴廊』(林白出版社)のみ。この作品は、日本の紀伊半島を舞台にした旅情推理もので、日本の警察が頭を悩ませているところに台湾から引退した刑事がやってきて事件を解決するというストーリーだという。 1980年代から1990年代にかけては、台湾では長編推理小説の創作はあまり多くなく、収穫と言えるものはさらに少なかった。既晴氏作成・杜鵑窩人氏監修の「台灣推理文學年表」では、重要作品として1984年から1997年まででは32作品が挙げられているが、そのうち長編作品は、林仏児『島嶼謀殺案』(1984)、『美人、珠簾を捲き』(1985-1986)、余心楽『推理之旅』(1992)の3作だけである(正確に言えば、もう1編、1994年のところで藍霄『天人菊殺人事件』が挙げられているが、この作品が出版されて一般の推理ファンの目に触れたのは2005年のことである)。 【台湾では1990年代後半になると、日本の社会派推理小説や『推理雑誌』ではなく、欧米ミステリあるいは漫画やドラマなどをきっかけにミステリ愛好者になる人が増え、ミステリの普及が進む。またインターネットの普及もあり、ミステリファンはネット上のサイトや掲示板に集い、情報交換をするようになる。そして2000年、台湾ミステリの第一期を終了させ、第二期の幕開けの契機となった「時報推理小説賞事件」が起きる。/『台湾ミステリ史 後編』(未作成)に続く】 参考文献 台湾ミステリ史 参考文献 (新しいウィンドウで開きます) 台湾ミステリ史 中編 更新履歴 2011年9月3日:公開 2011年10月15日:第四章第一節に「日本の推理小説の受容に関するもう一つの証言」を追加。 『台湾ミステリ史 前編』(19世紀末~1970年代) 『台湾ミステリ史 中編』(1970年代末~1990年代) ←今見ているページ 『台湾ミステリ史 後編』(1990年代末~21世紀初頭)(未公開) 『読書案内』