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訓練風景 うすぐらい倉庫のような空間で二人の人間が対峙していた。壁には窓の一つもない。それでも明るいのは天井から光を投げかける照明のせいだ。死角なく、ただしまぶし過ぎない程度に部屋を照らし出す明かりは、破壊されないように鉄格子と強化硝子で覆われている。 一人が動いた。巨大な軍用ナイフのようなものを片手に一気に間合いを詰める。それに対してもう一人は相手から目を離さぬまま大きく後ろに跳び、さらに牽制とばかりに細いナイフを投げつける。しかし一直線に迫る相手はわずかな身体の動きでそれを回避した。逃げる相手は間合いを計りながら相手の横に入り込むように動く。だが、それを見越して巨大な刃物をもつ方の相手は迎撃体勢にはいる。 するどい金属音がした。跳躍し、勢いと体重をかけた一撃が振り下ろされる。巨大なナイフの人物は、自分の獲物でそれを防いだ。対するほうは細身のナイフ二本をうちこんだが、折れたのは細い二本のナイフの方だった。作りの強度が違うのだ。大振りの刃物がとにかく折れないことを前提としているのに対し、小型の刃物に求められるのは切れ味と携帯性だ。 打ち込んだ人物は舌打ちすると反動を使って後ろに跳ぶ。当然それを追って自由になった巨大ナイフが振り下ろされるが、大きくのけぞることで服一枚で相手はそれをかわした。かすかにナイフの人影が動揺する。その隙を逃さず、細いナイフを使ったほうは喉元を狙って刃物を投げつける。それは叩き落とされたが、別の場所を狙うのは十分だ。立て続けに手足の筋を狙って攻撃が繰り出される。舌打ちして巨大なナイフの男は刃をふるった。それは相手の身体にはわずかに距離が届かなかったが、反応が遅れた相手は完全に刃物の軌道の延長線上にとらえられる。そして―――― 「――――っ」 声にならない悲鳴を上げて相手の身体が中を舞った。まるで見えない塊に吹き飛ばされたかのように分厚いコンクリートの壁に叩きつけられる。受け身は取っていたものの衝撃を殺しきれずに、相手は床に崩れ落ちた。そのままぴくりとも動かない。その時、 『そこまで! 勝負あり!!』 『ちょっ、二重やり過ぎ!!』 マイク越しの声が割り込んできた。批難する言葉に巨大なナイフをもった男――学園都市トランキライザー序列8位【エターナルコンダクター(悠久の指揮者)】澪漂二重(みおつくし ふたえ)は苦い顔をした。そして振り返る。視線の先にはダイナマイトの攻撃にすら耐える超強化硝子の向こうでこちらを見守るギャラリーの姿がある。 「……私はきちんとハンデをつけている。それに手加減もした」 愛用の巨大ハサミではなく、普通の戦闘訓練で使う軍用ナイフを持ち上げて二重は言った。それに答えるように、扉があいて硝子の向こうから人が出てくる。 「訓練なんだから仕方ないとはいえ……結構もろに入ってたよ。珠月ちゃん、気絶してるんじゃないの?」 「死んではいないと思うけどね。それに本当にもろに入ってたら、五体バラバラになって吹き飛んでるよ。一応避けてた。一応は。そう、一応……うう、眠い。寝そう……」 入ってきたのは、二重のパートナーである序列22位【アルカディアフレンド(理想郷の大親友)】澪漂一重(みおつくし ひとえ)と予科生時代からの友人である序列26位【シエスタロット(昼寝大量生産)】紫々守兎熊(ししもり とぐま)である。ちなみについ先ほど、二重が気功で吹き飛ばした人影は同じく予科生時代からの友人である序列24位【イノセントカルバニア(純白髑髏)】篭森珠月(かごもり みづき)である。 「おい篭森、大丈夫か?」 全員の予想に反してまったく起きあがる気配のない対戦相手に、流石に不安になってきた二重は声をかけた。返事はない。 「……脳震盪とか起こしてない?」 「自分が『暇だし、学校の訓練室で自主練しよう』とか言いだしたのにね。ふぁあ、だからちゃんと起きてきたのに……眠い」 ここは学園のメインヤードにある地下訓練施設である。様々なステージで生徒同士が訓練対戦を行えるよう、この施設は作られている。部屋によっては霧でまったく視界が利かなかったり、四方八方から銃弾が飛んできたり、暴風が吹き荒れていたり、地雷が埋め込まれている部屋もある。 二重たちが使っているのは、逃げる場所も隠れる場所もない、狭い部屋だ。ここは搦め手が使えない場合という想定で訓練をする部屋だ。部屋の四分の一ほどはガラス張りのスペースになっており、そこに荷物を置いたり、ギャラリーの観戦スペースとして使ったりする。外に出るにはそのスペースにある廊下に通じる扉を開くしかない。オープンの練習試合の時はギャラリーが好きに出入りできるように開けておくのだが、今日は個人的な訓練なので閉まっている。 ギャラリーがいなくてよかったと二重は思った。ぼろ負けしたところを見られる珠月も嫌がるだろうが、友人を思いきり壁に叩きつけたところを他人に見られるというもの嬉しいものではない。 「珠月ちゃん、生きてる?」 「うう……」 兎熊が近付くと、うめき声のような返事が返ってきた。三人は一様にほっとした顔をする。本日の対戦は異能使用なしの模擬戦だったのだが、異能無だと四人の中で一番弱いのが珠月なのだ。間違って怪我をさせてしまった場合、友情にひびは入らないだろうが、評判にはヒビがはいる。誰の評判かはさておき。 「痛い……というか、全身の筋肉にもれなくダメージがきてて……物理的に動けない」 うめくような言葉を発して、珠月は目を開いた。血色の瞳が天井をうつす。いつも通りの過剰なまでに優雅なゴスロリ服だが、ところどころ服は裂けていてそこからのぞく白い肌にも裂傷や痣が見られる。変色した肌がひどく痛々しい。それに反して表情は完全な無で、そのせいでまるで人形が怪我をしているような気持ち悪さがある。 「動かさない方がいいよ、それ」 あきれたように兎熊は言う。追いついてきた二重と一重は顔を見合わせた。 「……すまん。防御すると思ってやりすぎた」 「いや、避けきれなかったのはこっちの責任……っ、駄目だな。雑魚はいくらいても簡単に蹴散らせるのに、強敵になると途端にすぐに負けちゃう。ソルジャーとかワーカーなら平気なんだけど、グラップラーとサイボークはきついな……」 床に転がったまま、珠月はぶつぶつと恨みごとに近い何かを呟き続ける。珠月が負の方向に饒舌になるのは、大概何かを誤魔化そうとしている時だ。今回は痛みだろう。 「珠月ちゃん、珠月ちゃん……珠月ちゃんはミスティッククラスであって、戦闘者のクラスじゃないんだから、そこまで生身で戦闘能力高くなる必要ないんだよ?」 珠月の所属するミスティッククラスとは、現代の魔術師のクラスである。当然のことながら、ミスティックとは鬼のように強いわけではない。はまれば強い必勝パターンはあるものの逆にいうなら、使えない能力が多く制限やリスクも高い。複雑な分応用が利かず、強化もほととんどできない。 「ミスティック能力は、アンチミスティックやミスティックキャンセラーで簡単に封じられるんだよ? そうなったらどうするの。痛っ」「動くな、【無能】が」 身じろぎをして、珠月は声にならない悲鳴を上げた。ばたばたと床を動く姿は、部下には絶対に見せられない。 「そういえば珠月ちゃん、何で二重の攻撃を防御しようとしたの? 気功による遠当は無理に受けずに流すか避けるのが常套手段でしょ?」 気功とは華僑のあいだではTAO、世界的にはアウラーと呼ばれる体内をめぐる“気“を戦闘に利用する技術のことだ。 自身の肉体強化に特化した内気功、遠当などに象徴される外気功の二種類に大別される。上位の使い手ともなれば、武器に自身の気を纏わせて放出することも可能である。二重が使ったのもこれである。ただの接近戦武器の攻撃と思うと、酷い目に合う。しかもサイキックやミスティック能力と違って単純な分、防ぐのが難しい。機械でも何でもそうだが、単純な能力というのは一番弱点が少なく応用が利くのだ。同じ理由で身体すべてを強化してあるサイボークも弱点が比較的少ない。 「…………」 尋ねられて珠月は沈黙した。ややあって、開き直ったように答える。 「二重が速すぎて反応できなかった」 「貴様もミスティック単独履修にしては素早い。だが、攻撃の一つ一つが軽すぎる。並みの敵兵ならそれでも刃物で致命傷を与えられるが、司令官クラス相手では致命傷は与えられないぞ。しかも長期戦になれば、生身の女のほうが体力的に不利になる。もっと考えて戦え」 的確なアドバイスに、珠月はため息をついた。反論の余地がない。 「力がないのは分かってるから、体重と勢いと重力を利用して攻撃してるんだけど?」 「その分上からの攻撃が増え、軌道が読みやすくなる。力を込めるのもいいが、受け止めて流すことも考えろ」 「二重の場合、攻撃を流させてなんてくれないじゃん。これだから本職の殲滅屋は」 「言っておくが、警備会社の№2で、序列が十位以上も下で、しかも戦闘者クラスでない貴様に後れをとるようなことがあれば、私は速攻引退しなくてはいけなくなるぞ」 「戦闘系のクラスじゃなくても、私だって警備会社の偉い人なんだよ? 痛っ、くそ、絶対に部下やクライアントには見せられない」 「ああ、見せないほうがいいな。依頼が減るぞ。そもそも貴様の傍若無人な態度でなぜ客が減らないのかが疑問だが」 「無愛想で敵が多い二重でも仕事が絶えないのと同じじゃないかな」 「そういえば貴様の得意技は、異能戦と交渉術と圧倒的な人脈と物資に物をいわせての不戦突破だな。なるほど、弱い者いじめが得意なわけか。黒服魔女」 「売られた喧嘩を高価買取してるだけだよ。触覚眼鏡」 互いに悪口寸前の言い合いをするが、不思議と空気が悪くならない。それを見て、一重と兎熊は肩をすくめた。 「安心していいよ。ただの同族嫌悪だから」 そして一言でまとめる。二重と珠月は同時に沈黙した。そして何事もなかったかのように会話を仕切り直す。 「仕方ないなぁ。やっぱり、当面は勝つより負けない訓練積んだほうが妥当かな」 「護衛を連れ歩くのが手っ取り早いと思うぞ。お前なら、命をかけてくれそうな連中の一人や二人いるだろう?」 「二、三十人はいるけど、忠臣というよりは狂犬なんだよね。私も二重みたいにパートナーほしいな。そうだ。一重を頂戴」 「絶対にやらん」 嫌そうな顔で二重は言った。そして、何かに気づいたようにかすかに表情を変える。 「……貴様ひょっとしてかなり怪我が痛いのか? 言っていることがどんどん中身がなくなっていっているが」 「学園8位の攻撃喰らって痛くないとでも? 痛い……筋肉が動いてくれない……死ぬ…………くそっ、二重、責任とって私をお姫様だっこして医務室まで運べ」 「どんな新手の嫌がらせだ」 一瞬だけ心配そうな顔になった二重だったが、続く言葉にため息とともにその表情を崩した。珠月は床に転がるという、部下や敵対者の前では絶対に本人が許さないだろう醜態をさらしながらも、どこか余裕がある。周りが古い友人だけしかいないからかもしれない。 「ふふ、服が破れていて、しかもぐったりしてる私を運んで、周囲に変なうわさが立てばいい」 楽しそうに珠月は笑った。本心から楽しそうな顔を見て、二重のテンションは急降下する。 「……その場合、変なうわさが立つのは貴様の方だと思うのだが」 「安心していいよ。私の周囲はいつもほの暗い噂で満ちている」 「生活態度を改めろ……違う、そうじゃない。話をそらすな。本当に大丈夫なのか?」 「平気。私のことは放置して、次の試合始めるといいよ」 痛いはずなのに泣き言は言わず、代わりに軽口を叩いて珠月は静かになった。黒い髪が床にこぼれ落ちている。目を閉じていれば死んでいるように見えるかもしれない。 「……貴様が転がってる状態で出来るか、この【無能】が」 「休憩しよう……眠くなってきた……眠い」 本当に寝むそうに兎熊はあくびをした。彼女はいつも眠たげだ。校内には他にも寝るのが大好きな生徒が複数いるが、その中でも兎熊は特別ねむそうだ。 「そういえばさぁ」 話題が変わったところで、一重は壁を見上げた。その先には何もないが、壁の向こうではまた誰かが訓練を積んでいるのだろう。 「隣の部屋なんだけど、誰が何してるのかな?」 「ああ、確かにちょっと気になったね。さっき廊下に出た時……眠いからどうでもいいけど」 転がったままの珠月が答えた。早くも動こうとしてるのが指先がかすかに動いているが、全身に衝撃を受けたせいでまだ立つことはできないらしい。 「隣は何だったかな? ああ、あれだ。もろいブロックが積んであるステージ。足場の確保と安全な盾になるものを見定める能力が必要とされるのが特徴だったかな」 「よくもそんなことを記憶しているな」 あきれたように二重は呟いた。珠月はたまに、なぜそんなことを知っているのかということまで知っている。場合によっては情報屋より情報持ちだったり、スカラーより物を知っていることもある。問題はその知識が、生きていく上でどうでもいい雑学情報やトレンド情報にやや偏っていることだが。 「何か漏れ聞こえる気配と音に統一感がないというか……むしろ戦闘の音じゃないというか」 「壁越しだから、そう聞こえたんじゃない? うう、眠いよぉ」 兎熊の返事に一重は小首を傾げた。各部屋は強化された密室となっているが、それでも中で暴れる人間のスキルが並々でないせいか他の部屋まで気配や破壊音が聞こえてくることはしばしばある。隣の部屋からも時々物音が聞こえてくるのだが、ややおかしいのだ。少なくとも熟練のプレイヤーがスマートに戦っているときはこんな余計な物音はしない。 「何してるんだろうねぇ、どうでもいいけど」 「珠月ちゃん、動くと埃まみれになるよ……」 すでになっているのだが、進んでそれ以上に汚れる必要もない。着替える服は用意してあるが、それでも更衣室やシャワールームに行くまでには人目がある(更衣室やシャワールームは、秘密保持や襲撃防止のため細かくかぎ付き個室に分かれている)。埃まみれの姿を見られると、格好が悪い上に色々と勘ぐられてしまう。 「平気へいき。誰も私が訓練でちょっぴり命の危機だったなんて思わないって。対外的にはさぼり魔で虐めっ子で唯我独尊傍若無人で通ってるから、新手の遊びを開発したと思われるだけだよ」 「……眠い……かごもって……本当に見栄っ張りだよね」 気の置けない仲間同士の打ち解けた空気が漂う。その時、不吉な音がした。ほぼ同時に全員が一つの方向の壁を見上げる。 「…………何かすごい破壊音しなかった? 隣の部屋」 「壁ぶち抜かないといいんだけど……ふぁあ、眠い、寝る……」 この訓練施設は軍事施設並みの強度を誇っている。それでも年に数回は壁や天井をぶち抜く生徒が出るのだから、困ったものである。 「ステージ破壊にでもチャレンジしてるのかな? しばらくはあっちの壁に近寄らないように……」 一重が言い終わるより前に、ひときわおおっきな音がして目の前の壁に大きなヒビが入った。沈黙が部屋を支配する。 「……少し文句を言ってくる。一重はここで篭森を見ていろ」 「ええ? もう立てるよ?」 勢いよく立ちあがった珠月は、そのまま速攻で膝をついた。二重は冷たい視線を投げかける。 「【無能】はおとなしく寝ていろ」「嫌だね」 珠月が手を叩くと同時に、ギャラリー席に置かれたいたトランクが内側から開いて、一体の骨格模型が立ちあがった。珠月が好んで操る白骨のアーサーである。すばやく主人の元に走ってきたアーサーは、珠月に肩を貸して立ちあがらせる。 「ほら、たとえ動けずとも移動したり、攻撃する手段ならいくらでもある」 「ああ、すごい。凄いから、さっさと直接戦闘は諦めて能力戦と戦闘指揮のほうに集中するべきだと思うぞ。お前は異能者のクラスなんだから」 「何か棘のある言い方だね」 三度破壊音がして、壁からパラパラと塗料が剥がれおちた。つまらない言い合いをしていた珠月と二重は沈黙する。 「怪獣でも暴れているのか隣は」 「とにかく、行くぞ」 隣の部屋へは直接行くことはできない。一度廊下に出てから、隣の部屋に続く扉を開く。公開練習なら扉は開いているし、非公開なら扉の隣の呼び出しボタンを押してコンタクトを取ればいい。二重が先頭に立ち、その横に当然のように一重が並ぶ。兎熊は眠たげに目をこすりながら後に続き、怪我をしているのに無理やりついてきた珠月は白骨のアーサーに自分をお姫様だっこさせている。それを目撃した通行人がびくりと震えたが、トップランカーの新手の奇行と解釈したのか話しかけてはこなかった。そんな外野を無視して、二重は隣の部屋の扉に手を伸ばす。意外にもそれはあっさりと開いた。 「おい、ちょっといいか? 誰だか知らないが、壁にひび割れが……」 そして中にいたものを見て、二重は停止した。そこには、流石のトップランカーも予想していないものがいた。 「すみません。すぐにどうにかしますので」 「おや、西の指揮者殿ではありませんか。丁度良かった。これも運命の歯車を回す女神の導きです。手伝ってください」 武器を持った二人の男と、赤銅色のうろこを持つドラゴンが崩れ落ちた障害物を踏みつけて立っていた。 「…………何だこれは?」 本当に怪獣が暴れていた。 部屋にいた人物のうち片方の顔を見た瞬間、一番後ろにいた珠月はためらいなく逃走したため、後には二重、一重、兎熊の三人だけが残される。 「…………ジェイル・クロムウェル。今度は何をしている?」 頭痛をこらえながら、二重は中にいた男のうち見覚えのあるほうの名前を口にした。銃器を持った青年は、まるで竜退治の王子のようににこりと微笑んで見せる。逆にもう一人の少年はまったく笑わない。この場合は笑わないほうがただしい。 「僕の後輩と模擬戦を行っていたのですが……彼の天使も敵わないような詩作の才能が、伝説のレッドドラゴンを生み出してしまいまして」「意味が分からない」 ワルツでも踊るように優雅に瓦礫の上を飛び回るジェイルを追って、おそらくは火炎放射器並みの火力があると思われる炎がドラゴンの口から吐き出される。ファンタジーな光景に、二重は頭痛を覚えた。横では一重と兎熊が苦笑いをしている。 「ところで指揮者殿、先ほど僕の美しい月の姫がいたような」「お前を見た瞬間に帰ったがな」 序列102位【ワンダフルポエマー(凍れる詩人)】ジェイル・クロムウェルは、珠月の幼なじみにして最大の天敵である。もっとも、天敵と思っているのは珠月だけで、ジェイルのほうは珠月への好意で溢れているのだが、この場合好意は嫌がらせにしかなっていない。 「そうですか。相変わらず、水面に映る月影のように見えてはいるのに捕まえさせてはくれないのですね。ふふ、つれないお方だ」 「お前はそろそろ篭森に嫌われているという事実に気づけ。そうでないなら、さっさと燃えろ。今、この場で」 炎をかわしながらふざけたことを言うジェイルに、半ば以上本気で二重は言った。しかし、いつも通り予想の斜め下をいく回答が返ってくる。 「僕の心はいつも月の姫への愛で空も焼け落ちるほどに熱く燃えているので、これ以上燃える必要はありません。今でも姫を思うだけで、魂が煉獄の炎にあぶられるような心地がします」 「そのまま焼死すればいいのに」 ぎりぎり聞こえるくらいの音量で、兎熊はぼそりと呟いた。会話が一段落したのを見計らって、そこでやっと沈黙していた少年が口を開いた。 「お騒がせして申し訳ありません。ジェイル先輩と模擬戦をしていたのですが、ミスティック能力の使用に失敗して、具現化した個体が暴走してしまったんです。出来るだけ早くどうにかします」 見覚えのない少年だった。取り立てて外見に特徴はない。一般的には端正な部類に入る顔だとは思うが、この学園には人類の美的感覚の限界に挑戦しているとしか思えない超絶美形がごろごろしているため、それに比べれば目立たないと言えよう。全体的に人を寄せ付けない空気を纏っているが、不死コンビのようなあからさまな殺気を放っているわけでも、ドナルドのように存在時代が浮いているわけでもなく、単に愛想がないという程度だ。 おとなしそうな普通の少年。その印象に対して、二重はかすかな警戒心を覚える。なぜなら、おとなしい普通の少年がこの学園の本科に在籍しているわけがなく、ましてや限りなく二桁に近い三桁の序列にいるジェイルと行動を共にするわけがないからだ。 「ふん、【無能】が。能力制御は初歩の初歩だろう」 「申し訳ありません。私の能力は相手の影響を受けやすいというか、ジェイル先輩が相手じゃなかったらこんなことには……いえ、いいわけでした。すみません」 かちんとくるような二重の言い様に、少年はごく普通に頭を下げた。その横をブロックの山がなだれ落ちる。二重はため息をついた。 「仕方ない。一重、兎熊、行くぞ」 「はい。二重」「面倒くさい……眠い……」 ギャラリー席とステージを隔てる扉はすでに歪んで機能していない。二重は舌打ちすると、ひびの入った強化硝子を愛用する巨大なハサミ〈二重迷走(ドッペルフーガ)〉でぶんなぐった。耳が痛くなるような音を立てて、ミサイル爆撃にも耐えるはずの硝子が吹き飛ぶ。同時にむっとするような熱気がギャラリー席に飛び込んできた。おとぎ話のような竜の吐く炎は本物のようだ。 「ありがとうございます。御挨拶が遅れました。私は……黒雫といいます」 「僕の後輩で、218位【マルウェス・べーロ(夢幻の星影)】です。六つの心でミューズのような美しい詩を織り成す詩人なんですよ」 「……トップランカーか」 ジェイルの後半の台詞は聞き流して、二重は眉をしかめた。 トップランカーとは学園内で成績順位300位以内にはいる超成績優秀者のことだが、300人もいる上に、降格や昇格、死亡などで割とよく順位が入れ替わるため、全員を把握することは難しい。居住地や職業もまちまちなので、トップランカー同士でも顔と名前が一致しないことはしばしばある。誰でもすぐに顔と名前が分かるのはトップ10のランカーか、区画やリンクのボスなど要職についているランカーか、ごく一部のやたらと顔が広いランカーのせいぜい30人か40人くらいだろう。 「はい。ジェイル先輩にはいつもお世話に……なっています」 「正直だな」 ジェイル・クロムウェルの戦闘センスの高さやスキルの多様さは、彼を知る人物なら誰しも認めるところである。しかし彼は、それを普段の生活では活用していない。しかも具体的な実績には不可解な点が多く、周囲には謎が多いというか謎しかなく、背景どころか住所すら定かではなく、交友関係も不明点だらけで、授業にも出てこない。そのため能力値の高さにも関わらず、予科卒業に5年もかかった上、いまだにマスタークラスに留まっているというおかしな人物である。同じようなおかしさでも、夜厳の胡散臭さや沙鳥の異様なまでのおっとりさとはまた違う、得体のしれないおかしさだ。当然、そんな人間に関わって利益があるとは思えない。 「ジェイル先輩は……スキル値はとても高いんです。それに歩く武器庫みたいな人で、戦闘センスも高いですし……ちょっと想像力とか発想がぶっ飛んでいますけど」「ふふ、そんなに褒められると照れます」「安心しろ。貴様の後輩は一生懸命フォローしようとしているだけで、一ピコも褒めていない」 ちなみに『ピコ』とは、10のマイナス12乗で、コンピューターなどで小ささを表す補助単位としてよく用いられる。ミリ、マイクロ、ナノ、ピコの順で小さくなっていく。 「指揮者殿は相変わらず、閻魔大王より容赦がありませんね。0,5ピコくらいは褒められているかもしれないじゃありませんか」 「そんな小さい単位で褒められて、はたして貴様は嬉しいのか?」 「指揮者殿。人の称賛と感謝の声というものは、万の金より貴重で、蜜よりも甘く、アヘンのように中毒性のあるものですよ。褒められて嬉しくない人間はいません」 「ジェイルさんはもう少し後ろ向きになるべきだと思うんだ」 一重は大仰にため息をついて見せた。 ちなみに一連の会話は、崩れ落ちたブロックで足場が悪くなっている訓練室で、紅蓮の炎をかわしながら行われている。全員がトップランカーであるだけあり、ゲームの竜退治の勇者よりよほど余裕がある。しかし、余裕があるのと相手を倒せるのは違う。 「硬いな」 金属がぶつかるような音がして、二重の〈二重迷走〉が赤いうろこに弾かれた。流石に刃こぼれを起こしたりするようなことはないが、ハサミが当たったうろこには切り裂いたような痕が出来ただけで、致命傷にはほど遠い。 「先ほどから攻撃しているんですが、うろこが頑丈でマグナム弾や刃物くらいではびくともしません。喉や目を狙ってみてはいるんですが……どうも通常の生物の法則に完全に逆らっているようで」 「こういうのは篭森が得意なんだが……」 「だよね。物体操作能力使えば、空気や水の流れで火を消したり……石ころ一つでも高速で動かせば硬いものにダメージ与えたりできるもんね」 その珠月は、ジェイルを見た瞬間、この場から逃走している。 「……つまりはすべて貴様のせいか。クロムウェル」 「篭森先輩もいらっしゃったんですね……よくお姿を見かけるのですが、いつもジェイル先輩のせいで御挨拶ができません」 ぼそりと黒雫が呟いた。心外だと言わんばかりに、ジェイルは顔をしかめる。 「私のせいなんて、とんだ冤罪です。黒雫君は、自分の影以外に同行者がいない時であっても、月の姫に影を掴ませてもらえないでしょう?」 「それに関しても私の職業が詩人だから避けられているわけで……元とたどれば」 先輩に失礼なことを言う直前に、黒雫は口を閉ざした。それでも心のうちは十分に伝わった。 「……苦労してるな」「悪意の人ではありませんから」」 世の中には悪意がない故に手に負えない人物というのも確実に存在する。 「仕方ない。こういうのは首を落とせば消えるだろう。いくぞ、一重」 「はい、二重」 「私も忘れないでね……眠……」 三人が前に出ると、さりげなく黒雫は道を譲った。おっとりして見えて所作に隙がない。 「さて、いい加減業火にも飽きたことだ。すぐに終わらせるとしよう。澪漂を始めるまでもない」 〈二重迷走〉が二重の手の中で輝いた。二重の武器は、一言で言うなら刃渡りが六十センチはあろうかという大振りな鋏だ。二枚の刃はそれぞれ片刃であるが切っ先だけが両刃になるよう作られている。その形状から突きには向くが、横の攻撃には向かない。逆にいうならば、刺す攻撃でこの鋏はもっとも威力を発揮するのだ。 予備動作ほとんどなしに走りだした二重は、ほとんど崩れ落ちた足場をモノともせず、一息で距離を詰める。三歩後ろを走る一重と兎熊も、一定のスピードでそれに続く。そして赤い竜自身の足を踏み台に跳び上がった。当然、竜は迎撃に入るが、狭い空間ではその巨体は邪魔なばかりだ。たいした抵抗もなく、二重は長い首の真上に跳び上がる。そのまま、武器に自らの気を纏わせ、重力と体重で加速を加えて振り下ろす。 鈍い音がした。硬いうろこが破壊され、大鋏〈二重迷走〉が深々と竜の首に突き刺さる。しかし、貫通までには至らない。 「二重、退いて!」 パートナーの声に、ハサミをつきたてていた二重は竜の首から飛び降りた入れ違いに、二つの人影が跳び上がる。 「はっ!!」「眠いから……帰って寝る」 天井近くまで跳び上がった一重と兎熊は、二重と同じように体重と重力を上乗せした渾身の一撃を、〈二重迷走〉の持ち手に叩きこんだ。嫌な音がして、根元まで深々と鋏が突き刺さる。耳が痛くなるような声を上げて竜が悶えた。 「ちっ、貫通はしているのにまだ動くか」 「頑丈だねぇ」「眠……」 軽い音を立てて三人は着地した。首にハサミが貫通しているというのに、竜は激しく暴れている。もう一撃加えるかと、一重が身構えた時、 「花が美しいのは散る様がたおやかで儚げだから。星が美しいのはその中で生命が燃えているから。退き際が美しくないのはよくありませんね」 生き物の血とは思えないほど赤黒い血が飛び散った。中には肉片もまざっている。 「おや、まだ切れませんか」 いつの間に現れたのか、二重の〈二重迷走〉で出来た傷跡にバゼラードと呼ばれる中型の軍用ナイフをねじ込んで、ジェイルは小首を傾げた。傷に武器をねじ込むという残虐な行為とその仕草があまりにもミスマッチで、気分が悪くなる。 ジェイルはもう一度バゼラードを押し込んだ。バゼラードは中世に登場し、その後長い間兵士の作業用ナイフとして利用された片手剣である。柄頭から鍔の形状が歪んだ「I」の形になっているのが特徴である。全長は50センチほどで、作業用とはいえ威力はけして低くない。ぶちぶちと肉が切れる音がして、激しく竜が暴れる。だが、打ち込まれた鋏を視点に半分ほど切り裂いたところで、耐えきれず刃が折れた。ジェイルは目を細める。 「あと少しなんですけど……これも運命の女神の気まぐれでしょうか。黒雫君!」 「はい、先輩」 ジェイルは飛び降りた。直後、自らの首を天井に叩きつけるように竜が暴れる。空中で勢いを殺しながら、ジェイルは二重のそばに着地した。 「お気に入りだったんですが、壊れてしまいましたよ」 「貴様……ナイフも使うのか?」 「銃も刃物も爆薬も、人という悲しい生き物が戦うために長い歴史の中で編み出したものです。使わなくては、遥かなる先達に申し訳が立ちません。本当は、朧の君のように拳銃とナイフが一体型になった特殊銃剣を使いたかったんですが、特注しようとしたら、月の姫に涙を流されてしまいました」 朧の君とは、珠月の後輩の朧寺緋葬架のことである。可愛がっている後輩と宿敵が同じ武器を持つのがよほど嫌だったのだろう。それこそ、泣くほどに。 「涙を流す姫は朝露に濡れる薔薇のように美しく、しおれた菫のように可憐ですが、流石に紳士として愛しい姫君に悲しい思いをさせ続けるわけにはいきませんので、今はこうして一般的な武器を使っています」 「悲しませたくないなら、貴様は篭森を追うのをやめるか死ぬべきだろうな」 ジェイルが死んだら珠月が大喜びするであろうことは、客観的に見て間違いない。 「僕が姫をあきらめるのは死ぬ時だけですので、前者はありえません」 「貴様は本当にストーカーだな」 その時、大きな音を立てて力尽きたように竜が頭を垂れた。激しく頭を打ち付けていた天井には無数のひび割れが出来ている。 「やっと落ち着いてきたか。面倒な奴だ」 「ほとんど首切れてるのに、よく動くね。二重」 あきれたように二重と一重は竜を見やった。普通の生物なら初めの一撃で致命傷だ。 「やはり、首を完全に落とすしかないか」「それなら平気ですよ」 にっこりとジェイルは微笑んだ。直後、ずっと動きながら様子をうかがっていた黒雫が竜の上にとび乗る。その手には大小二つの剣が握られていた。 「黒雫君は、双剣使いのミスティック&ソルジャーダブルクラスなんです。アーサー王の騎士のように強いんですよ」 ミスティックもソルジャーも本来は直接戦闘を専門とするクラスではない。ミスティックは、現代の魔術師として複雑多様な異能を操る存在であり、「だから何だ?」というような意味のない能力を持つものも少なくない。ソルジャーは戦闘クラスではあるが、司令・指揮をおもな専門とするクラスであり、戦闘能力は高いが直接戦闘ではグラップラーに劣ることもある。気功は使えない方が多い。 だが、黒雫は本職の戦闘者の動きだ。兎熊は首をかしげる。 「あの人は……どこの人?」「ミスティックキャッスルにいるはずですよ」「ああ、道理で」「あそこは荒事もするからな」 完全に観戦モードに入った先輩を無視して、黒雫は二本の剣を水平になるようにして傷口に叩きこんだ。かろうじて繋がっていた筋肉繊維や皮が切断され、首が重力に従って落下する。地響きとともに首は落ちた。直後、その色素が薄くなる。次の瞬間、砂糖細工のようにもろく首が砕け散った。ワンテンポ遅れて胴体も同じ道をたどる。砕けた破片はたちまち空気に混じって消えていく。 「うわぁ」 幻想的な光景に、一重は声を上げた。舞い上がる透明な欠片の中、黒雫は申し訳なさそうに歩みよってきた。その手には二重の鋏がある。 「お手数おかけしました」 頭を下げながら、黒雫は鋏を二重に返した。 「貴様ばかりのせいではない。どうせ、この【無能】が何かしたんだろう?」 ジェイルを顎で指して、二重は鼻を鳴らした。黒雫は苦笑いを浮かべて首を振る。 「いいえ。私の能力は周囲の影響を受けるタイプなので……それを考えずに能力行使した私が悪いんです。ジェイル先輩には、この能力は禁物だということ忘れてました」 「僕が危険物みたいな言い方はやめていただけませんか?」 「いや、危険物だと思うよ」 ばっさりと一重は言いきった。二の句が継げず、ジェイルは苦笑とともに沈黙する。ふとその視線が彷徨い、扉の所で止まる。ぱっと彼の顔に笑みが宿った。嫌な予感がする。 「月の姫、来てくださったんですか!?」 「近づくな! お前じゃなくて二重たちの様子を見に来たんだ!!」 ジェイルが踏み出した瞬間、音を立てて天井の照明が落ちてきた。偶然ではない。あきらかに殺意のある攻撃だった。ジェイルは苦笑を浮かべる。 「ふふ、相変わらずですね。月の姫。綺麗な薔薇には棘があるといいますが、月の姫の麗しさはまさしくそれを体現して」「聞こえない! 聞こえないもん!!」 「…………篭森」 「珠月ちゃん……回復したんだね。そして、一応気を使って様子見に来てくれたんだ」 「天敵がいるのにね……眠い」 絶好調で珠月をたたえる台詞を並べるジェイルと、大声を上げて拒否する珠月を四人は生温かい視線で見守った。そしていつも通り、珠月は逃げた。 「一重たちが無事でよかった。じゃあ、帰るから! ジェイル、弁償しろ!」 捨て台詞に近い何かを吐いて、再登場早々珠月は逃げていった。後にはテンションがだだ下がりの人々が残される。 「……また挨拶をし損ねました」 ぽつりと黒雫は呟いた。それを皮きりに、それぞれが撤収にはいる。 「……クロムウェル、破損届けを出しておけよ」 「一階受付ですね。やれやれ」 「二重、帰ろうか」「運動したら……眠くなった……寝る」 兎熊は今にも眠りそうだ。その手を引いて、一重は歩き出す。 「みなさん、ありがとうございました。先輩方に御迷惑をおかけして申し訳ないです」 「困った時はお互い様だよ。今度機会があったらきちんと手合わせしようね」 「その機会はないと思うがな」 平謝りの黒雫と愛想良く黒雫に返事をした一重の間に割り込んで、二重は呟いた。分かりやすい感情の動きに、兎熊は半分寝たまま笑う。 「そういえば、結局君の能力って何なの?」 兎熊はあくびを噛み殺しながら尋ねた。あいまいに黒雫は微笑んで見せる。 「秘密です。まあ、ヒントを言うなら周囲の人間の想像力の具現化に近いですね」 二重たちと分かれ、破損届けを提出するため事務室へ向かう道すがら、黒雫はジェイルのほうを振りかえった。 「……先輩」 「はい。なんでしょう」 「俺は、『紅蓮の炎』って単語を混ぜただけなのに、なんで竜が出てくるんですか? 知っているでしょう? 俺の中でも蒼のやつの能力は『自分が暗唱した詩を聞いた相手が想像したものを具現化する』能力です。あんなものが出てきちゃったのは、先輩が瞬時にそれを連想したからですよ」 「申し訳ありません。僕はただ、正義の女神がかざす天秤と剣に誓って申し上げますが、悪意があったわけではありませんよ? ただ、紅蓮の炎が現れるなら、古い物語のように赤き竜が吠えてもよいと思っただけです」 「迷惑な想像力ですね」 くすくすとジェイルは笑った。その完璧な笑顔からは彼の真意は見えない。いつもそうだ。簡単に見透かせそうなのに、何も見えない。まるで複雑に光が屈折するカットグラスのようだ。 「他人に頼らないといけないミスティック能力というのは、操作が大変なんですよ」 重ねて黒雫は文句を言った。ジェイルはニコニコと笑っている。 「黒雫君……今は、蒼君ですね。貴方の……貴方がたの能力というのは、歪んだ鏡です」 またよくわからないたとえ話が始まった。黒雫――あるいは彼が内包する五つの人格は眉をひそめる。 ジェイル・クロムウェルは尊敬すべき先輩だ。序列も彼の方が高い。しかし、言葉をもてあそぶ彼の仕草にはいまだに慣れない。 「周囲を歪めて写し取る、中途半端な虚像です。アポロンのともしびのように自ら輝き動く必要はない故に、リスクも条件も緩いですが、代わりに限界も分かりやすいのがこのタイプの能力の特徴です。相手の一部を歪めて写し取るだけでは、相手以上の力には成りえません。ですから、僕のベッドの中で見るような空想で困るようではだめですよ」 「先輩は特殊です」 何を言われてもジェイルは笑っている。 「ふふ。この蒼い箱庭に住む万物が己という矮小な存在の想像の及ぶ範囲のことしか空想し得ないとは思ってはいけませんよ」 「次は頑張ります」 「その粋ですよ」 ちなみに、その後破損届けを見て部屋をチェックした関係職員は、あまりの破壊ぶりにしばらく言葉も出なかったという。 おわり
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■第5.2次排撃戦線 【公式掲示板スレッド】 参加できなかった人用 5月3日に行われたチーム対抗戦,チーム乱戦中ののスクリーンショット ※1週間後までMenuに表示 イベント風景 テスト -- Guest (2009-05-04 21 15 09) 名前 コメント
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imageプラグインエラー ご指定のURLはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLを指定してください。 ある日の授業風景 魔物狩りの養成機関であるアンドラスティア練兵院は、その訓練の都合上、 周囲に様々な種類の魔物が棲息し、時には中級の悪魔なども出現するような危険地帯に建てられている。 そのため、座学の授業中に防壁を乗り越えてきた魔物や悪魔が乱入し、 そのまま実技演習に雪崩れ込むという事態もしばしば起こる。 尚、教師陣は第一線を退いた熟練の魔物狩りが務めているため、授業中の死亡事故は極めて稀である。 era3 協会 地名
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風景部門 【投稿例】 No.0 名前 東 佑志(投稿者の名前を書く) 題名 「ここにそれっぽい題名を入力」 (ここにそれっぽい写真を貼る!!!) (画質との兼ね合いもあるのでお任せしますが、500×500pxぐらいにお願いします) 一言 (ここにそれっぽい一言コメントを書く) 過去の夏合宿のフォトコンも参考にしてみてください、各年の夏合宿のページよりフォトコンのページへ飛べます。 投稿の仕方はここを参考に http //www6.atwiki.jp/cucc/pages/170.html 【投稿作品】 No.1 名前 内山 悟 題名 「ほしぞらのどうろ」 一言 寝ようと思ったら素敵な星空が広がっていた No.2 名前:こんどう 題名 「合宿の朝」 一言:カッパを着ながらの朝食も、信州ならではの「風景」ですよね。 No.3 名前:狩野 題名 「日本のチロル」 一言:本当の山里。信州ならでは、感動モノの風景。 No.4 名前:田中 知季 題名 「夏阿蘇」 一言:どうだ!これが夏の阿蘇だ!! No.5 名前:iwsk 題名 「水辺があったら入りたい」 一言:最近ちゃり部でよく見る風景…? No.6 名前:mryk 題名 「天の川にむかって」 一言:歩いてたどり着けるかな
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ある朝の風景 【投稿日 2006/01/11】 カテゴリー-笹荻 笹荻成立後の話。 夜、二人は荻上の部屋のベッドで共に眠りについていた。 初めて肌を合わせたのは少し前のことで、それから何度かそういう行為を重ねはしたが、 今日になって突然荻上の方から笹原へ「もし良かったら泊まっていきませんか」と切り出されたのだ。 普段は自分を極力抑える荻上の言葉に、笹原は内心驚きながらも嬉しく思い、 当然断ることなどあるはずもなく、その申し出を二つ返事で了承した。 ただその時の荻上の、他に何かもっと言いたい事がありそうで、 それを飲み込んだような表情が少し気になったと言えば言えた。 そして時刻は2時。ふと何かに気付いて笹原が目を覚ますと、 目の前で眠る荻上の顔が苦しそうに歪んでいた。 呼吸は荒く、顔色は青ざめ、うっすらと汗をかいてうなされている。 そんな荻上の様子に、笹原の寝惚けていた頭が急速にはっきりと覚醒していく。 (…荻上さん?) 胸の前で固く拳を握りしめ、何かを耐えるような荻上の姿に、一瞬どうしたのだろうと訝しみ、 「起こした方が良いだろうか」という思いが浮かんだが、すぐさまその考えを否定した。 思えば、あの荻上が自分から笹原に泊まっていくことを勧めたのは、 ひょっとしてこれが原因だったのではないかと薄々感じたからだ。 結果として起こすことになっても、出来るだけのことをしよう。 そう思った笹原は、きつく握りしめられた荻上の右手に、そっと自分の手を重ねた。 (ひどく冷えてるな) その小ささに内心どぎまぎしながら、優しく手を包む。 少しでも自分の温もりが伝われば、と。 しかし、荻上の苦しそうな様子は変わらない。寄せられた眉根。 きつく閉じられた唇。目元には涙も滲んでいる。 堪えきれず、笹原はそっと囁いた。 「…大丈夫だよ、荻上さん」 少し、添えた手に力を込める。ほんの僅か。思いの分だけ。 「俺は、ここにいるから」 その声が聞こえたわけでもないだろうが、眠ったままの荻上の手が笹原の手をそっと握り返した。 まるで確かめるように。 (起こしちゃったかな) そう思って様子を窺うも、その心配は杞憂だったようで、 荻上の寝息は次第に穏やかなものへと変わっていった。 あれだけ苦しそうだった表情も、今は子供のように落ち着いている。 冷え切っていた手もいつの間にかすっかり温もりを取り戻していた。 繋がったままの手。落ち着きを取り戻した今も、荻上は笹原の手を離そうとはしない。 その様子に何となく苦笑を浮かべながらも、笹原の心は嬉しさで満たされていた。 改めて見る荻上の寝顔は、笹原を動揺させるに充分な程愛らしく、 思わず頭の一つでも撫でたいところであったが、 さすがにそれは目を覚ますだろうとぎりぎりのところで思いとどまった。 握りしめられた荻上の手から感じる温もりが、笹原を次第に眠りへと誘う。 目を閉じる前、最後に見た荻上の表情は何だか少し微笑んでいるように見えた。 (おやすみ、荻上さん…) もう一度だけ軽く手に力を込める。 どうか彼女の見る夢が、穏やかで優しく暖かなものでありますようにという願いと共に。 翌朝。荻上は実にすっきりと目を覚ました。自分でも驚くほど静かな目覚め。 こんなに自然な気持ちで朝を迎えるのはいつ以来だろう、と荻上は考えた。 恐らくは中学生の頃の「あれ」以来だろう。 あの一件があってからずっと、眠れば悪夢に襲われ続けていたのだから。 そう思い、そして何故今日に限って悪夢にうなされず目を覚ますことが出来たのか戸惑った。 そんな荻上の目に、ようやくぼんやりと笹原の姿が映る。 寝る時は眼鏡もコンタクトも外しているので、非常に視界が悪い。 ただ、それでもいつも見慣れている笹原の姿を見間違うことはない。 そしてようやく自分が笹原の手を握りしめていることに気が付いた。 意識すると同時に伝わってくる笹原の体温に、改めて赤面する。 (え…? 何で私笹原さんの手を握ってんの? 寝る時はちゃんと離れてたのに、いつの間に) 途端に手の平に汗が滲むのを感じて、焦りつつもそっと荻上は手を解いた。 急速に冷えていく手の平の感覚に、弱冠の寂しさを覚えながら。 改めて笹原の寝顔を見つめる。ややぼやけてはいるが、それでも分かるひよこのような無防備な寝顔。 そのあまりに笹原らしい寝顔に、荻上は少しの間見入っていた。 (可愛い寝顔だぁ…) そして思った。この穏やかな目覚めは、きっとこの人がいてくれたからなんだろう、と。 期待していなかったと言えば嘘になる。いや、正直に言えば笹原ならばあの悪夢からも助けてくれると、 助けて欲しいとそう思ったからこそ、泊まっていくよう勧めたのだろう。 そして事実助けてくれた。思わず視界が滲む。嬉しさと喜びと愛しさで。 (いつも私は笹原さんに助けてもらってばっかりだ) 些かの罪悪感もある。悪夢を拭い去るために笹原を利用したとも言えるのだから。 けれど、それすらも笹原ならば、「俺で良ければいくらでも手助けするよ。と言っても、 あまり役に立たないかもしれないけどね」などと言って、 いつものように優しく微笑みながら受け入れてくれるのだろう。 知らず、涙が頬を伝う。笹原への思いと、自分への嫌悪で頭の中がいっぱいになる。 (私って本当に嫌な女だ…) 笹原を起こさないよう気遣いながらゆっくりと身を起こし、目元を拭う。 しかし、涙は後から溢れてきて止まってくれない。 何故こんな自分をこの人は選んでくれたのだろう、そんな暗い考えに囚われかけた時。 「ん………」 ごろりと笹原が寝返りを打った。投げ出された手が荻上の膝に落ちる。 そしてむにゃむにゃと口元を動かした後、にこりと幸せそうに微笑んだ。 弛緩しきった、だらしないとも言える幸福に満ちた顔。 「……ぷっ」 そのあまりに明るい笑顔に、思わず荻上は吹き出した。 同時にすうっと心が晴れていくのを感じた。 (眩しいなぁ…。目の前でこんな顔されちゃ、泣いてる自分が馬鹿みたいだぁ) 緩む口元。そっと手を伸ばすと、荻上は笹原の頬を人差し指で軽くつついた。 「うぅ…、ん」 再び寝返りを打ち、荻上のつついた頬の辺りをぽりぽりと掻く。 そんなお約束でとても愛らしい行動に、荻上はくすくすと笑って、もう一度だけ頬をつついた。 笹原は夜中に一度目を覚ましていた所為か、起きるそぶりも見せない。 「さて、と」 ベッドから下りると、荻上は大きく伸びを一つ。そして鏡を見てコンタクトを付けると、 布団にかけていた半纏を手に取り、慣れた様子で上に羽織った。 振り返ってもう一度笹原の寝顔を見つめる。 (せっかくだから、いつも傍にいてくれるこの大切な人のために、 せめて朝食でも用意しよう。精一杯の感謝を込めて) 心の中で呟きながら、台所へと足を運ぶ。 眠ったままの笹原を気遣って閉じられたままのカーテンの隙間から、朝の光が差し込んでいる。 それは今日も快晴である証。まるで台所で我知らず鼻歌を口ずさんでいる荻上の心のように晴れ渡った空。 やがて朝食の支度を終えた荻上は、笹原を起こすためにカーテンを開いた。 瞼に差し込む光と荻上の声に促されて目を覚ました笹原は、窓越しの光に照らされた荻上の笑顔を見る。 かけがえのない大切な物。 それはいつまでも消えることなく心に残る、ある朝の風景。
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世界の風景 景色にまつわる中編集 本当にあった信じられない景色 世界の車窓から アメリカとメキシコの国境線 愛に包まれた世界 本当にあった信じられない景色 (39スレ459-461) 391 名前: 職業は画家 [sage] 投稿日: 2009/08/09(伊) 08 02 58 ID ??? これなーんだ 392 名前: 職業は日曜大工 [sage] 投稿日: 2009/08/09(典) 08 51 05 ID ??? 絵画? 393 名前: 職業は闘牛士 [sage] 投稿日: 2009/08/09(西) 09 24 45 ID ??? 綺麗やんなあ、やっぱイタちゃんは何年たっても絵が上手やわ 394 名前: 職業は画家 [sage] 投稿日: 2009/08/09(伊) 09 43 04 ID ??? 違えぞ!これは写真だコンチクショー。実際にイタリアにある風景なんだよ! 395 名前: 職業はヨーグルト [sage] 投稿日: 2009/08/09(勃) 10 52 53 ID ??? イタリア…恐ろしい子… 396 名前: 職業は牧場経営 [sage] 投稿日: 2009/08/09(露) 10 55 26 ID ??? これなーんだ(^J^) 398 名前: 職業はコピーライター [sage] 投稿日: 2009/08/09(芬) 11 21 47 ID ??? 冬の海ですか?寒そうですね 399 名前: 職業はシェフ [sage] 投稿日: 2009/08/09(仏) 11 33 03 ID ??? …なんかこれおかしくね? いやいやまさかロシアでもそんなこと…いやまさか… 400 名前: 職業は農場経営 [sage] 投稿日: 2009/08/09(露) 11 35 10 ID ??? ロシアは海は波さえも凍るよー 急激に冷やされたから波が海面に落ちる前に凍っちゃったんだー 401 名前: 職業は壷売り [sage] 投稿日: 2009/08/09(埃) 11 36 15 ID ??? おそろしあ 402 名前: 職業は動物園飼育員 [sage] 投稿日: 2009/08/09(濠) 11 39 46 ID ??? これなーんぜよ 403 名前: 職業はスパイ [sage] 投稿日: 2009/08/09(加) 11 41 55 ID ??? 氷河?! 404 名前: 職業は魔法使い [sage] 投稿日: 2009/08/09(英) 11 44 04 ID ??? 家が飲まれてるぞ大丈夫か??!!! 405 名前: 職業は動物園飼育員 [sage] 投稿日: 2009/08/09(濠) 12 07 10 ID ??? へへへ、いい眺めぜよ 406 名前: 職業は車整備 [sage] 投稿日: 2009/08/09(独) 12 08 36 ID ??? なんだ?!新手の拷問か?! 407 名前: 職業は壁サークル [sage] 投稿日: 2009/08/09(日) 12 10 01 ID ??? 国民が死んでしまいます!早く助けてあげてください!! 408 名前: 職業は動物園飼育員 [sage] 投稿日: 2009/08/09(濠) 12 10 56 ID ??? 実はこれ泡ぜよ。シドニーの北の浜辺に泡の大群が押し寄せて、カプチーノ海岸になったきに。 うちの科学者によると泡の発生は海の不純物が混ざり合ってできるものらしく、 海水の塩分、化学薬品、枯れた植物、分解した魚類、海藻類の腐敗物などが強力な海流によって 泡立てられてできたものらしいぜよ。 30マイル(48キロ)にも及ぶほど太平洋に続いてるぞなもし。30年前にも同じことがあったぜよ~ 409 名前: 職業は翻訳家 [sage] 投稿日: 2009/08/09(香) 12 11 50 ID ??? アンビリーバブル 410 名前: 職業は仙人 [sage] 投稿日: 2009/08/09(中) 12 12 42 ID ??? 地球もバブルバスしたくなったあるよ 411 名前: 職業は原子炉管理 [sage] 投稿日: 2009/08/09(烏) 12 13 32 ID ??? この泡で地球の汚れも落ちればいいのに…(ぼいーん) 上へ戻る 世界の車窓から (38スレ727-729) 1 名前: 来週は俺がヨーグルト食べてるとこををお送りします [sage] 投稿日: 2009/08/06(勃) 世界の車窓から。あー…みなさんの顔見てたらつい独断と偏見で描きたくなったんです 5 名前: 来週は英国紳士のアフタヌーンティーをお送りします [sage] 投稿日: 2009/08/06(英) 薔薇の花持ちながら片手運転するバカは世界に一国しかねーな 12 名前: 来週は自宅警備員の一日をお送りします [sage] 投稿日: 2009/08/06(普) ワインボトルと酒樽にフランスパンwwwエッフェル塔ときたらわかりやすすぎるwwwww 24 名前: 来週はを全裸と薔薇お送りします [sage] 投稿日: 2009/08/06(仏) お兄さんとしてはキューピッドがブリーフなのが気になってしょうがないんだが 32 名前: 来週は俺がヨーグルト食べてるとこををお送りします [sage] 投稿日: 2009/08/06(勃) 56 名前: 来週は隕石VSヒーローをお送りします [sage] 投稿日: 2009/08/06(米) ドリームキャッチャーと鮭、犬ぞりにスキー板…わかった、イヌイットだ! 63 名前: 来週は熊次郎さん育成日記をお送りします [sage] 投稿日: 2009/08/06(加) カナダだよ! 76 名前: 来週は俺がヨーグルト食べてるとこををお送りします [sage] 投稿日: 2009/08/06(勃) 89 名前: 来週はロシアさんと僕のゆるやかな喧嘩をお送りします [sage] 投稿日: 2009/08/06(愛) クロスはカトリックの総本山ってところですか 90 名前: 来週はプーちん☆をお送りします [sage] 投稿日: 2009/08/06(露) 建物にまでキスマークがあるなんて、らしいなぁw 108 名前: 来週はスペイン宗教裁判をお送りします [sage] 投稿日: 2009/08/06(西) マフィアにピッツァ、レストランにシェフの看板。特定したで~ 114 名前: 来週は俺がヨーグルト食べてるとこををお送りします [sage] 投稿日: 2009/08/06(勃) 126 名前: 来週はシナティランドをお送りします [sage] 投稿日: 2009/08/06(中) ミッ●ーある!かわいいある!!ハンバーガーはこっちが食われちまいそうで怖いある… 131 名前: 来週は俺の起源は俺をお送りします [sage] 投稿日: 2009/08/06(韓) コーラにロリポップ、フレンチフライにスナックコーン、ガムの包み紙…胸焼けしてきたんだぜ… 143 名前: 来週は中米のアイス狂をお送りします [sage] 投稿日: 2009/08/06(玖) 誰か国旗に触れてやれよ 162 名前: 来週は俺がヨーグルト食べてるとこををお送りします [sage] 投稿日: 2009/08/06(勃) 170 名前: 来週は自宅警備員の一日をお送りします [sage] 投稿日: 2009/08/06(普) 金地の黒鷲をちゃんと入れるなんてわかってるじゃねーか 184 名前: 来週は森の演奏会をお送りします [sage] 投稿日: 2009/08/06(墺) 右下にアインシュタインがいますね。プレッツェルがおいしそうです 198 名前: 来週はジャーマンブートキャンプをお送りします [sage] 投稿日: 2009/08/06(独) ビールにヴルスト、これだけで大抵の国には特定されてしまうな… 213 名前: 来週は俺がヨーグルト食べてるとこををお送りします [sage] 投稿日: 2009/08/06(勃) 234 名前: 来週は英国紳士のアフタヌーンティーをお送りします [sage] 投稿日: 2009/08/06(英) すぐ壊れるラジオがそれっぽいなw 241 名前: 来週はキルビルをお送りします [sage] 投稿日: 2009/08/06(辺) そして直せないところもそれっぽい。だがそこがいい 251 名前: 来週はエロエロエアロビクスをお送りします [sage] 投稿日: 2009/08/06(烏) コサック帽に運転手のひげ面、雪と針葉樹。ステレオタイプだなあw 269 名前: 来週は俺がヨーグルト食べてるとこををお送りします [sage] 投稿日: 2009/08/06(勃) 274 名前: 来週はロボット戦隊シーランジャーをお送りします [sage] 投稿日: 2009/08/06(海) この薄暗ーいジメジメした感じはあいつですよー 287 名前: 来週はマフィン大戦争をお送りします [sage] 投稿日: 2009/08/06(伊) ビックベンに二階建てバス、街灯にタイムズ紙、紅茶にサッカー、垢抜けないもさい服… 295 名前: 来週はスペイン宗教裁判をお送りします [sage] 投稿日: 2009/08/06(西) 誰かイングランド旗に触れてやれや 314 名前: 来週は俺がヨーグルト食べてるとこををお送りします [sage] 投稿日: 2009/08/06(勃) 345 名前: 来週はゼウス神話をお送りします [sage] 投稿日: 2009/08/06(希) ニンジャにテンプルゲート…スクールガール…フジヤマ…全部見たことある 398 名前: 来週はシナティランドをお送りします [sage] 投稿日: 2009/08/06(中) 盆栽に…あれは銀閣寺あるか? 423 名前: 来週は3分クッキングをお送りします [sage] 投稿日: 2009/08/06(伊) レーシングゲームでロボットに運転させちゃうんだwでも日本ならやりそうww 433 名前: 来週はヘタリアAxisPowersをお送りします [sage] 投稿日: 2009/08/06(日) 遺憾の意…と、言いたいところですが右ハンドルなのは評価してさしあげましょう 上へ戻る アメリカとメキシコの国境線 (43スレ10,12) ※州が喋って未登場国も注意 698 名前: ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ [sage] 投稿日: 2009/08/26(米) 22 24 46 ID ??? アメリカとメキシコの国境線。 いやぁ別に意味はないんだけどね?XDDDD 700 名前: ニュージャージー州(アメリカ) [sage] 投稿日: 2009/08/26(米) 22 35 55 ID ??? おいおい発展途上国の真実を見せ付けてやるなよXDDDD 706 名前: テキサス州(アメリカ) [sage] 投稿日: 2009/08/26(米) 23 17 37 ID ??? 野蛮な南は分相応に農地を耕している、当たり前のことじゃないか。笑うなんて失礼だぞ? 709 名前: アリゾナ州 (アメリカ) [sage] 投稿日: 2009/08/26(米) 23 42 58 ID ??? 世界でも格差社会、いやだね。出来ることならこっちのアメリカ・ドルのレートを分けてやりたいよXDDDD 771 名前: ユナイテッド・メキシカン・ステイツ [sage] 投稿日: 2009/08/27(墨) 19 07 47 ID ??? さて、そろそろその白昼夢を醒ましてやるとしますか あぁ、そっちではアメリカン・ドリーム(笑)っていうんでしたっけ? 774 名前: ミシシッピ州(アメリカ) [sage] 投稿日: 2009/08/27(米) 19 13 25 ID ??? えええええええええええええ 778 名前: ウェストバージニア州(アメリカ) [sage] 投稿日: 2009/08/27(米) 19 31 24 ID ??? なんじゃこりゃああああああああ 780 名前: インディアナ州(アメリカ) [sage] 投稿日: 2009/08/27(米) 19 45 12 ID ??? どういうことなの…! 784 名前: チワワ州(メキシコ) [sage] 投稿日: 2009/08/27(墨) 21 06 59 ID ??? お前らがバカだってことだよ 785 名前: バハ・カリフォルニア州(メキシコ) [sage] 投稿日: 2009/08/27(墨) 21 25 06 ID ??? 大人しく分相応に農地でも耕してモロコシでも輸出してろ途上国が 964 名前: カナダ [sage] 投稿日: 2009/08/28(加) 19 02 38 ID ??? さすがに可哀想だからネタバレするけどね、 アメリカ側からは歩いて簡単に回転ドアで出られて、 メキシコ側からは数時間の審査待ちという構造が、 メキシコ側の国境沿いだけ栄えてる理由みたいだよ。 さらに、広域でみてみるとこうなってる。 サンディエゴの南側が局地的に農地その他で緑化してただけというカラクリさ。 967 名前: ユナイテッド・メキシカン・ステイツ [sage] 投稿日: 2009/08/28(墨) 19 30 41 ID ??? ちっ、余計なことしやがって 968 名前: ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ [sage] 投稿日: 2009/08/28(米) 19 56 16 ID ??? 肝が冷えたんだぞ…早く言ってよ!君はどっちの味方なんだい! 兄弟が貶されててなんとも思わないのかい! 970 名前: カナダ [sage] 投稿日: 2009/08/28(加) 20 24 49 ID ??? 君は自分の国の地理と現状ぐらい把握してるべきなんだよ!!! 大体最初につっかかっていったのはアメリカだろ?君はいつもそうだ考えなしに突っ走っていつも それで痛い目にあってるのにいい加減学習したらどうなんだよ。教えてあげた僕に感謝の言葉もな くそれってどういうこと?味方とかないよ僕も君も独立国家なんだからさ、自分の身は自分で守る のが当たり前じゃないか。そういうことは僕に貸しの一つでも作ってから言ったらどうなんだい。 貸しどころか僕が貸しっぱなしだろ?おい、あの貸した奴どうしたんだよ。まさか失くしたなんて (以下10レス消費) 981 名前: ユナイテッド・メキシカン・ステイツ [sage] 投稿日: 2009/08/28(墨) 20 30 41 ID ??? もう許してやれ 上へ戻る 愛に包まれた世界 (52スレ378-380) 1 名前: マーガレットより愛を込めて [age] 投稿日: 2009/11/09(拉) 12 34 42 今日も上司(僕が傘下に入っている国です)に怒られました。 あぁ、いつも「明日はきっといいことがある」と思って寝るのに、目覚めると悪夢のような1日が始まる。 この世界には愛なんてほんとはないんじゃないですか? みんな僕をだましてるんじゃないですか? ああ、こんなこと考えてしまう自分がとても嫌です。 みなさん、この世界に愛が本当にあるというなら、見せてください。僕を安心させてほしいです。 8 名前: カーネーションより愛を込めて [sage] 投稿日: 2009/11/09(西) 12 50 49 何言うとんのやー世界は愛に包まれとるでーアメリカ以外。 少なくともスペインには愛がある。カンタブリアの森1つ分にてんこもりやでー 13 名前: アクレイギアより愛を込めて [sage] 投稿日: 2009/11/09(米) 12 55 35 HAHAHA、何言ってるんだ。スペインにあってアメリカに愛がないわけないだろXDDD オハイオ州にある個人所有の土地だけど、合衆国のラブは大きいよ!密度が違うからね! 20 名前: マンポーサより愛を込めて [sage] 投稿日: 2009/11/09(玖) 13 15 26 13 人工物乙。そんな冷め切った愛は愛じゃねえよ。 俺んとこじゃないんだけどよ。俺の知り合いの南米の国にはあるぜ。 パタゴニアのグティエレス湖の島だ。もちろん森や池よりもでけぇぜ。 25 名前: 梅より愛を込めて [sage] 投稿日: 2009/11/09(台) 13 23 19 台湾にも愛がありますよー関渡自然公園にある湿地です。 自然公園の中にあるっていうのがミソだと思いません?地球への愛ですよ。 33 名前: バラより愛を込めて [sage] 投稿日: 2009/11/09(英) 13 33 26 あー、俺のとこじゃねーけどフィジーにならあったな。 タバルア島だ。まさに海に浮かぶ愛の楽園だと思わねぇ? 42 名前: エーデルワイスより愛を込めて [sage] 投稿日: 2009/11/09(墺) 13 39 37 ハートの形ならクロアチアに訪れた際に見ましたね。 黒水晶の宝石のような輝きです、愛はやはり美しくなければいけませんよ。 51 名前: 牡丹より愛を込めて [sage] 投稿日: 2009/11/09(中) 13 47 11 ニューカレドニアのヴォウにあるマングローブある。 ハートの地形で世界一有名な場所よ。 内側と外側で違うマングローブが群生してるから二段階のハートになってるあるよ。 これこそ 1の心に響く正真正銘の愛だと思わねぇあるか? 61 名前: チューリップより愛を込めて [sage] 投稿日: 2009/11/09(土) 13 55 33 インドのチャンブラ山にある湖でぃ。実はこの湖はな、干上がったことがないのよ。 ホンモノの愛ってのはなぁ、どんな辛いことがあってもぜってぇ枯れねぇんだ。 66 名前: ゴールデン・ワトルより愛を込めて [sage] 投稿日: 2009/11/09(濠) 13 59 34 俺の家のサンゴ礁は世界一ぜよ。 グレート・バリア・リーフといえばわかってもらえるきに? 正真正銘、人の手が加えられずに自然に出来上がったものぞなもし! 愛は作るもんじゃねぇ、気づいたら出来てるもんだぜよ。 1が愛を決して忘れず、疑わず、人に与え続けていればきっといつか報われるぜよ。 85 名前: マーガレットより愛を込めて [sage] 投稿日: 2009/11/09(拉) 14 17 29 ちょっと想像してたのと違うけど、元気が出ました。 みなさんありがとうございます! なんていうか、暖かいスレだなぁ(;_;) 102 名前: 桜より愛を込めて [sage] 投稿日: 2009/11/09(日) 14 35 48 97 あなたが感じた、それが愛ですよ。 上へ戻る .
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186 ある朝の風景 sage 2008/01/21(月) 01 01 59 ID SU+72IKd 「和也。朝よ、起きなさい」 優しい囁き声が吐息と共に耳をくすぐる。体が緩やかに揺すられるのを感じながら、和也は薄らと 目を開けた。 視界に映っているものは見慣れたものばかりだ。いつも通り綺麗に清掃された自分の部屋と、その 整然とした部屋を背景に柔らかい笑顔を浮かべて自分を見下ろす姉、円の姿。いつも通り、エプロン を身につけている。和也がぼんやりと目を開けているのが分かっているはずだが、弟の体を軽く揺す るのを止めなかった。和也が緩やかな揺れを感じるたび、円の長い黒髪がかすかに揺れてひそやかな 音を立てた。 「ほら、起きなさい、和也」 急かすでもない、のんびりとした口調だった。表情もさして慌ててはおらず、長い睫毛に縁取られ た両目は微笑ましげに細められているし、形のいい唇も同じような笑みを作っている。 「もう起きてるよ」 何とか口から出た声はひどく掠れていた。起き抜けはいつもこうだ。円はさらに目を細める。和也 の体を揺するのは止めなかった。 「ダメよ。ちゃんと体を起こして部屋から出て、朝ごはんを食べて学校に行く支度を整えて……そこ までやって、初めて『起きた』って言えるの。いつも言ってるから分かるでしょう、和也」 ほんの小さな子供に言い聞かせるような、ゆったりとした口調である。和也は唇を尖らせた。 (いつまで経っても子ども扱いだもんな) 「分かったよ」と答え、布団を除けながら体を起こす。すると、円が口元に手をやって、おかしそ うにこちらを見た。 「なにさ?」 「ううん。元気だなーと思って」 嫌な予感を覚えて円の視線を辿ってみると、股のところで寝巻きがテントを立てていた。和也は悲 鳴を上げてベッドから飛び降りた――布団で隠そうとしても引っぺがされることが分かりきっていた からだ。そんな和也の慌てぶりを見て、円は堪えきれずに吹きだした。 「そんなに慌てなくてもいいのに。可愛い象さんじゃない」 「そういう表現は止めてくれ!」 文句を言いながらドアノブに手をかける。焦っていたせいか、一回ノブを捻る方向を間違えた。ド アを開いて部屋から出て行こうとしたところで、背後から呼び止められた。 「朝ごはん、テーブルの上に用意してあるから。ちゃんと食べるのよ」 「ありがと」 「どういたしまして。お姉ちゃんは、この部屋を軽く掃除してから行くから」 「分かった」 円が和也を起こしたあとで部屋の掃除をするのは、長く続けられている慣習のようなものだった。 と言っても、部屋の掃除は毎日他の機会にも行われるので、毎朝繰り返す必要がないぐらいには綺麗 なはずだ。 (それでも絶対毎朝掃除するんだよな、円姉ちゃんは。おかげで俺の部屋は埃一つ落ちてない。あ りゃ綺麗好きってよりは清潔好きってレベルだよなあ) そんなことを考えながら階段を下る。 和也としては、円の掃除を止めるつもりはさらさらなかった。部屋が片付いているのはいいことだ し、円は弟のプライバシーを尊重して、机の中を覗いたりはしない。要するに健全な男子諸氏なら必 要不可欠なある種の雑誌等を隠しておくのは容易ということである。彼らの家は片親で、唯一の保護 者である父は海外出張中。家に残っているのは円と和也と、妹の茜だけだ。茜は今年で中学二年。意 図的に兄を避けるような年頃なので、勝手に部屋に入ってくることもない。 要するに、女衆に見られるのは少々恥ずかしいカラー書籍類を見られる心配はしなくてもいいということだ。 (姉さんは真面目で、その辺きっちりしてるもんな。あれだけ信頼できる人も珍しいよ、ホント) ダイニングのテーブルには既に茜が座っていた。ショートヘアーに伏目がちの瞳。いつも通りもう 通学する準備を済ませているようで、皺一つないセーラー服に身を包んでいる。左手に茶碗を持ち、 右手の箸を無駄なく動かして黙々と食事をしている。兄を待つ気はさらさらないらしい。「おはよ う」と挨拶しても「ん」という返事が返ってくるだけで、実に淡白だ。 (ま、この年頃の女の子ってのはこういうもんだって言うし、別に気にすることでもないか) 和也は特に文句も言わず椅子に座り、円が腕を振るった朝食を、妹同様黙々と食べ始めた。 187 ある朝の風景 sage 2008/01/21(月) 01 03 03 ID SU+72IKd 自分の背後でパタンとドアが閉まり、弟の足音が遠ざかっていく。それを確認して初めて、円は気 を緩めて深く息を吐き出した。全身から力が抜けて、思わず床に膝を突いてしまう。激しく高鳴る心 臓を落ち着かせるため、その場で数十秒ほども深呼吸をして待った。 手を見ると、親指と人差し指の間の肉に、赤い歯型がついていた。先程和也の朝立ちを目撃したと き、口元に手を当てて笑う振りをしてずっと噛んでいた跡である。そうでもしなければ、ある衝動を 抑えていることが出来なかったのだ。 (ああ、和也……あんなにたくましくなって……) 先程の光景を思い浮かべて、円はうっとりとする。危ないところだった。咄嗟に手を噛まなければ、 我を忘れて弟を押し倒していたかもしれない。 (そんなことをしてはダメよ、円。和也はわたしのことを綺麗好きで真面目なお姉ちゃんだと思って いるんだもの。こんなことを考えているのがばれたら、絶対に嫌われてしまうわ) それは円にとって、最も恐れるべき事態だった。もしも不気味がった和也が家を出てしまったりし たら、自分は発狂して死んでしまうかもしれない。そこまで深刻に考えているし、実際それに遠くな いことにはなるだろうと確信してもいた。 (そうよ。和也の前では自嘲するの、円。たとえあの子が我慢しきれないぐらいに愛しいとしても) そう念じて表情を真面目なものに変えた円だったが、和也の寝顔と先程の朝立ちが脳裏に蘇った途 端、毅然とした表情は一気に崩れ去った。自分でもそれが分かるほどだった。 「しっかりしなさい!」 短く叫びながら、思い切り頬を叩く。乾いた音がして、なんとか理性が戻ってきた。こんなことが 必要になったのもごく最近のことである。気付けば、弟に向けられる劣情が抑えきれないほど高まっ てしまっていた。もしかしたら、近い内に本当に抑えきれなくなるかもしれない。そう考えると、円 は胸は重くなった。 (可哀想な和也。こんな薄汚いお姉ちゃんと一緒に暮らさなくちゃいけないなんて) だが弟への同情と憐憫に浸っている暇はない。 円は和也が先程まで寝ていたベッドのそばに近づいた。ベッドメイキングをするためでもあるが、 真の目的はそんなことではない。 ベッドは和也が布団を跳ね除けたままになっており、空になった敷布団に、弟が寝ていた跡が見て 取れる。その凹みに、円は唾を飲み込みながら腕を伸ばした。腕は自覚できる程度には震えていた。 そっと敷布団に触れた手の平に弟の温もりを感じたとき、円の胸に狂おしいほどの熱が湧き上がって きた。その熱狂的な情動の命ずるまま、床に膝をつけて敷布団の上に突っ伏す。頬擦りしながら鼻息 を一杯に吸い込むと、かすかに汗の臭いを感じ取ることができた。 (和也の臭いがする) 目を閉じて浮き上がるような幸福感を感じたあと、円はすぐに体を起こした。掃除と偽って和也の 部屋に居残るのは、何もこれだけが目的ではなかった。むしろ、これはほとんど前準備のようなもの である。 円はエプロンのポケットからあるものを取り出した。ジッパーのついた小さなビニール袋と、すっ かり使い慣れた感のあるピンセットである。それぞれを手に持ち、ベッドの隅々まで視線を走らせる。 「あった!」 小さく歓声を上げて、円はピンセットを持った右手を敷布団の一角に伸ばした。そこに、黒い毛が 一本落ちている。髪の毛ではない。和也の髪の毛はストレートだったが、その毛はひどく縮れていた のだ。言うまでもなく、陰毛だった。ピンセットでそれをつまみ上げ、ビニール袋の中に入れる。他 にないかと探してみたが、それ一本だけだった。残念に思うと同時に、どうしようもない自己嫌悪の 念で頭がクラクラした。 だが、自分は一体何をやっているんだろう、と思いつつも、手は大事にそうにビニール袋のジッ パーを閉め、エプロンのポケットの中にそれをしまいこんでいる。 この行為を円が始めたのは、一ヶ月ほど前からだった。 188 ある朝の風景 sage 2008/01/21(月) 01 04 38 ID SU+72IKd その晩、円はどうしても寝付けずにいた。布団の中に入っていても、自然と頭の中にあることが浮 かんでくるのだ。それは一本の竿と二つの玉を含んだ袋で、多くの縮れ毛に覆われている物体である。 要するに、和也の股間を直に見てみたいという願望が急激に高まりつつあったのだ。 その夜は本当に危険だった。もう少しで寝ている和也の部屋に忍び込んで彼のズボンを引っ張り下 げていただろう。弟の部屋のドアノブを握ったところで何とか踏みとどまり、何度も何度も冷水で顔 を洗ってようやく欲望を押さえ込んだのである。 その日以来、円はこうして和也の陰毛を収集するようになった。部屋の机の引き出しの一番奥に仕 舞いこんで、たまに取り出しては眺めてうっとりして妄想に浸るのだ。たまには……というか、大体 自慰もする。 姉がこんなことをしていると知ったら和也はどう思うだろう、と考えると、情けなさと恥ずかしさ で死にたくなる。 しかし円には愛する弟から離れることなど考えられないことであり、同時に弟に嫌われることも弟 を傷つけることも、絶対に避けるべき事態だった。 つまり、彼女は自分自身の欲望から、愛しい弟を守らなければならなくなったのである。それは日 に日に高まる弟への劣情と、大切な家族と一緒にいたい、守りたいという姉としての理性との戦いだった。 欲望と戦うために、彼女は日々こうした代替手段に励んでいるのである。洗う前のパンツの臭いを 嗅ぐこともあるし、和也が使ったあとの食器をこっそり舐めることもある。 円は、自分がこういう状態になって、初めて男性が卑猥な本などを必要とする理由を知った。こう いった欲望は何らかの形で発散させなければならないのだと痛感したのである。さもなければ劣情の 対象に直接叩きつけるしかないのだから。 (ごめんね、ごめんね和也。お姉ちゃん、頑張ってこの気持ちを抑えるから。だから、まだ和也のそ ばにいさせてね) 心の中で弟に侘びながら、円は少し泣いた。 そうして気がついてみると、かなり時間が経っていた。そろそろ、弟が食事を終える時刻である。 円は涙を拭いて、クローゼットの中から和也の制服を取り出して部屋を出た。 階下へ降りると、ダイニングのテーブルには妹の茜だけが座っていた。和也の席には、ほぼ全てが 空になった茶碗と食器が残されている。 「和也は?」 「トイレ」 茜は素っ気なく答える。 和也がトイレに入っている、と聞いて、また変な妄想が膨らみそうになるのを、円は寸でのところ でこらえた。先程欲望を発散したせいで、いくらか理性が優勢になっている感覚がある。和也の制服 をハンガーごと壁のフックに引っ掛けながら、円は肩越しに茜を見やった。 彼女自身も既に食事を終えていた。食器はもう片付けられていて、茜の前には何もない。その何も ないテーブルの上に肘をつき、茜は静かにテレビのニュースを眺めていた。 この、年の割には少々静か過ぎるぐらいに無感情な感じのする妹が、円にとっては最後の希望で あった。いよいよ欲望を抑えきれなくなったときは、茜に全てを打ち明けて、自分を止めてもらうつ もりである。 (自分から和也から離れるなんて、わたしには耐えられそうにないもの。万が一のときは、無理矢理 茜に追い出してもらわなくちゃ) 自分よりもずっと冷静でまともな妹を見つめながら、円は己の情けなさにそっとため息を吐いた。 異常な姉の目から見て、この妹は実に冷静だった。何故自分はこんな風になれないのだろう、とた まに激しい自己嫌悪に襲われるほどである。 (でも、それがわたしの助けになってくれる。茜はきっと、こんな姉を軽蔑して、和也から引き離そ うとしてくれるわ) テレビを見つめる茜の横顔に、円は言いようもない安心感を感じていた。 それからしばらく経って、和也がトイレから出てきた。その間の弟の姿を想像しないように努力し ながら、円は笑顔を作って和也に制服を差し出す。視界の隅で、茜がトイレに向かうのが見えた。 189 ある朝の風景 sage 2008/01/21(月) 01 05 31 ID SU+72IKd トイレに入った茜は、挙げられたままの便座を見つめながら、じっと耳を澄ました。遠くの方から 姉と兄の会話が聞こえてくる。近くに人はいない。 そう認識した途端に、心臓が急に早鐘を打ち始めた。はやる気持ちの命ずるまま、トイレの床にペ タンと座り込み、両手で便器にしがみつく。顔を近づけると、姉の手で綺麗に磨き上げられた白い便 器に、薄黄色の液体が付着しているのが見て取れた。かすかな臭いが鼻腔を刺激する。頭が沸騰した ように熱くなった。茜は舌を伸ばして、その液体を丹念舐め取った。便器の冷たさと同時に、兄の味 が舌に伝わってくる。 (お兄ちゃん、お兄ちゃん) 心の中で狂おしく兄を求めながら、茜は便器についた黄色い液体を残らず舐め取った。問題は味で はなく、こういった行為をすること、そのものだった。しかも、茜が便器に舌を這わせている間、そ の耳には姉と兄の会話が遠くから聞こえていたのだ。二人は自分がこんなことをしているなど微塵も 想像しないだろう。体が芯から熱くなってきた。 茜はもう一年ほども前から、姉や兄に隠れてこんなことを続けていた。最初は確か、兄が昔使って いたリコーダーを思う存分しゃぶりつくすことから始めたのだと記憶している。それから靴下を盗ん だり靴の臭いを嗅いだりして、今はとうとう便器である。こうした行為が茜にもたらす快感は例えよ うもないほどで、止めようと思っても止められない魅力があった。無論、その異様さも自覚してはい たので、茜はかなり慎重に、こういった行為を重ねていた。 最近では、兄にばれるのが恐ろしくて、まともに彼の顔を見ることすら出来なくなっていた。それ もあってわざと素っ気ない態度を取っており、おそらく兄には嫌われているだろうと思う。だが、こ んなことをしていると気付かれるよりは数十倍マシというものだ。 茜は自分の気持ちが落ち着くのを待ってから、そっとトイレを出た。ダイニングに戻ると姉が食後 の紅茶を楽しんでいるところだった。茜に気付き、穏やかに微笑む。 「あら茜。お兄ちゃんはもう出ちゃったわよ。あなたも急ぎなさいな」 「分かってる」 努めて素っ気なく返しながら、茜はちらりと姉の顔を見る。その顔は実に淑やかで、余裕があった。 長い黒髪に優雅な立ち姿の姉は、何をやっても絵になる。それに比べて妹の自分はどうだろう、と考 えると、茜は恥ずかしさのあまり自殺したくなるのだった。だが同時に、それが希望でもある。 (もしもわたしがお兄ちゃんに直接何かしたくなったりしたら、お姉ちゃんに全部話して止めてもらおう) 優しくも潔癖な姉は、きっと妹の異常な行為を激しく非難し、大切な弟と一緒にいさせないように 何らかの対策を講じてくれるはずである。 そう考えると幾分か気が楽になり、茜は姉に「行ってきます」と一声かけて、鞄片手に家を出た。 「美人姉妹と二人暮しとは、実に羨ましいねー、和也よ」 学校に着くと、いつも通り悪友にからかわられた。和也としては苦笑するしかない。 「何言ってんだ、別にいいことなんか何もないよ」 「嘘つけよこの幸せ者め」 「本当だって。姉さんは未だに俺を子ども扱いするし、妹は最近ろくに口も利いてくれないしさ。何 も起こりっこないって」 「んなこと言って、家ではエロエロなんじゃねーの?」 「あのな」 ひどい誤解だ、と和也はため息を吐いた。 「俺の方も二人の方も、そういう変な気は全然ないよ。あんなのは漫画かなんかだけの話だって」 真面目な姉と無表情な妹の顔を思い出し、和也は肩を竦めるのだった。
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風景部門 pak128部門 このページはpak128の風景部門のトップページです。 投稿先は下のリンクよりどうぞ 風景部門@128 第一会場
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このページはこちらに移転しました 忙しくも草臥れた風景 作詞/tta とても詳細なInformationは 僕の脳をさらに混乱させて くだらない事から降順に 降りかかってくる気がする 馬鹿げてると思っていたのに 実際ハマってる現状はどうも腹立たしいね 疲れた顔した小学生が 虚ろに見上げたモニター 煌びやかな世界を映し 美しいなと呟いた 手鏡を覗きこんで 悦に入っている間 その遥か上空では 飛行機雲が消えていった
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【群れの風景】 森には優しさが満ちている。柔らかな草、おいしいご飯、ゆっくりした仲間たち……。 連綿と続く生の営みを支えるものは、ゆっくりした生き方をするゆっくりたちであった。あちこちで子供のはしゃぎ声が聞こえ、愛を囁く者たちの睦言は風に溶けて流れていく。 洞窟、木のうろ、地中。そこかしこで、我が世の春を謳歌するゆっくりたちの喜びの声が響く。 群れの長は、繁栄してゆく群れの姿を見てゆっくりしている。 とあるれいむは子供たちののびのびしているところを見てゆっくりしている。 とあるまりさは狩りの成果に満足してゆっくりしている。 ――――― 狩りに出たぱちゅりーとありすは、野獣に食い殺された。 川のほとりで体を洗おうとしていたちぇんは、思わぬ流れの強さに身を取られて溺れて死んだ。 森の奥で遊んでいたみょんは転んで木の枝に刺さって死んだ。 ――――― ゆっくりたちは今日もゆっくりしている。明日も明後日もずっと、彼らはゆっくりし続けるだろう。 「さいきん、ちぇんとぱちゅりーをみないけどたぶんどこかでゆっくりしているよね!」 次の瞬間には、そんなことは忘れてしまう。明日も明後日もずっとその先も、死んだ者は思い出されることはない。 この群れのゆっくりが、ゆっくりし続ける限り。 完