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幻想卿にゆっくり虐待に生涯を捧げた虐待お兄さんがいた。 男は畑を荒らす泥棒ゆっくりを見つけては虐待し。 親子で仲良く暮らすゆっくりを探しては、親の眼の前で子供を食い殺し。 恋人同士幸せに暮らすゆっくりを探しては、仲違いさせ殺し合わせ。 元気に遊ぶ子ゆっくりを探しては、底部を焼き眼を抉り二度とゆっくり遊べないようにした。 やがてそんな虐待お兄さんにも、虐待嫁ができ虐待息子ができ虐待孫ができ。 気がつけば、いつお迎えが来てもおかしくない年齢になっていた。 死期を悟った老いた虐待お兄さん、いや虐待爺さんは人生最後にと、虐待祭りを開いた。 虐待爺さんの屋敷に近隣に生息していたありとあらゆるゆっくりを集め。 虐待爺さんとその家族は、盛大にゆっくり達を殺しいたぶり蹂躙し皆で大いに楽しんだ。 十日で、五百匹のゆっくりを虐待したこの祭りの三日後、虐待爺さんは親戚縁者に見守られ眠るように息を引き取った。 虐待爺さんの人生はこれで終わったのだが、死後の世界というものは存在し、虐待爺さんは生前の罪の裁きを受けることになった。 虐待爺さんは生前の記憶を持ったまま、三回ゆっくりに転生した後地獄行きという、非常に厳しい判決を受けた。 小さくも威厳のある幻想卿の閻魔様、四季映姫・ヤマザナドゥが言うには、 「そう、あなたは少しゆっくりを殺し過ぎた、一度虐げられる側、ゆっくりの立場に立ってみることでこれまでの無益な殺生について反省しなさい」 との事だ、判決を聞いた虐待爺さんは何度も抗議をしたが聞き入れられなかった。 映姫が槌を叩くと、その瞬間虐待爺さんは意識を失った。 目覚めると虐待爺さんはゆっくりの茎に生えた、一匹の赤ちゃんゆっくりになっていた。 「ゆっくりうまれてね!」 「ゆっくりしたいいこになるんだぜ!」 わしの真下にはゆっくりれいむが居る、そばのゆっくりまりさはキラキラした目でわしを見つめている。 多分こいつ等が、わしの両親なんじゃろう。 どうやらあのツルペタ閻魔の言っていたことは本当だったようじゃ、わしはゆっくりになってしまったようだ。 虐待爺ともあろうものがゆっくりになってしまうとは、何とも情けない話じゃ。 それにしても、よりによってわしはまりさ種に生まれてしまったのか。 せめて捕食種のゆふらんとかなら、ゆっくりを虐待しまくれるんじゃが。 そんなことを考えた瞬間、元虐待爺さんのゆっくりまりさの体に電撃が走った。 何故人間じゃないとゆっくり虐待が出来ないんだ?、何故ゆふらんじゃないとゆっくり虐待が出来ないんだ?、何故ごく平凡なゆっくりまりさはゆっくり虐待が出来ないんだ? ゆっくり虐待に必要なのは人間の体でも、ゆっくりより強い力でもない、眼の前のゆっくりを虐待したいという虐待魂だ!!! わし、いや、俺は、この第二の人生いや饅生を虐待ゆっくりとして生きるのだ!!! 自分達のかわいい愛の結晶の中に虐待ゆっくりがいることには気づかないれいむとまりさ。 ゆっくりの両親は、茎に実った可愛いわが子達に目を細めていた。 その数時間後、邪な野望を持った虐待ゆっくりは五匹の姉妹たちと一緒にこの世に生まれ落ちた。 ちなみに俺の姉妹はれいむがニ匹にまりさが三匹だ。 「「「「「ゆっくちちていっちぇね!!!!」」」」」 「ゆっくりしていってね」 「ゆぅ~!れいむたちのあかちゃん!ゆっくりしていってね!」 「ゆ~!ゆぅ!みんなとってもゆっくりしてるんだぜ!」 元気に、ゆっくりしていってねと叫ぶ姉妹達。 生まれてきた我が子を見て、目に涙を浮かべながら歓迎するゆっくりれいむに、巣の中で飛び跳ねて大喜びをするゆっくりまりさ。 どいつから虐待しようかな?うきうきワクワクしてきたぜ。 親れいむは、頭に生えていた茎を落とすと赤ゆっくり達に食べるように言った。 「「「「「むーちゃ!むーちゃ!ちあわちぇ~!」」」」」 「むーしゃ!むーしゃ!幸せー!」 ゆっくりになったのだから、味覚も当然ゆっくりと同じになっているようだ。 茎はなかなかうまい、柔らかくて噛むといい匂いがする。 しばらくすれば虫や雑草を食べねばならない、そう思うと気が滅入るがゆっくりになった以上仕方のないことだ。 それに俺の味覚はゆっくりそのものなのだから、美味しく感じるはずだし今は気にすることじゃないな、まずはこの体で俺がどのくらい動けるかを試してみることが大事だ。 俺達は食事の後、親から跳ね方を学んだ。 もと人間の俺は、跳ね方のコツがつかめず苦戦したが、 「ゆ~!いそがなくていいよゆっくりおぼえてね!」 「ゆっふふ!まりさはゆっくりしてるんだぜ!れんしゅうすればゆっくりすぐにはねれるようになるのがまりさにはわかるんだぜ! と微笑みながら両親は語りかけてくれた、おお母性愛、母性愛。 俺が上手に跳ねれるようになるころには、他の姉妹共はそれぞれ遊んだり昼寝をしたり、思い思いに過ごしていた。 まさに幸せなゆっくり家族の巣といった感じだ。 俺も笑いながら姉妹たちの遊びに加わった、鬼ごっこをしたり跳ねる高さの競争をした。 せっかくゆっくりに生まれたのだ、一度姉妹のゆっくりとゆっくりの体で遊んでみるのも一興だろう。 後ろでは、両親が本当に幸せそうな顔で俺達について話している。 「れいむたちのはじめてのこどもだねまりさ!」 「ゆ~!ゆっくりしたいいこにふたりでそだてるんだぜ!」 もちろんだ、俺は最高にゆっくりした子供になってやるぜ。 俺はその後も姉妹たちと、夜遅くまで遊んでいた。 「ゆ~!そろそろおねむのじかんだよ!ゆっくりおねんねしようね!」 「「「「「ゆっくちおやちゅみなちゃい!」」」」」 「ゆっくりお休みなさい!」 五分もたつと、両親も俺の姉妹たちも、眠りの世界に旅立ったようだ。 親まりさと親れいむを中心に、俺の姉妹たちは気持ちよさそうに眠っている。 俺は笑みを浮かべながら隣で寝ている、俺より一回り小さい俺の妹、ゆっくりまりさの前に立つ。 可愛いらしい顔をしばらく眺めた後、妹の口に思い切り噛みつき引き千切る。 ぐじゃ!!っといい音がした。 「びゅ………!!!!!!!!!」 「むしゃ!ふひひ…良い味だぜ、まりさの妹…!」 口を噛み裂かれたせいで悲鳴を上げられない妹を押さえつけて、幼く穢れを知らない白く柔らかい身体を本能のまま貪り喰らう、言うまでもないが食事的な意味でだ。 餡子のつながった妹だからだろうか?それともゆっくりにとっての最高の美味はゆっくりだからであろうか。 口の中に広がる芳醇な甘みは、前世で数多食らった、どのゆっくり達にも勝るまさに至高の味だった。 食事を終えると俺は妹まりさの帽子を咥えて、家族を起こさないようにゆっくりと巣穴の外に出た。 外で、妹の帽子を吐き捨てると、巣穴に戻って俺自身も、睡眠をとることにした。。 俺は家族たちから少し離れて、ついさっき食い殺した妹の恐怖に染まった表情を思い浮かべながら目を閉じた。 「「ゆっくちおはよう!」」 「「「「ゆっくりおはよう!!!!!!」」」」 「ゆっくり起きたよ!」 姉妹たちも両親も、一匹家族が欠けている事に気がつかないようだ、さすがゆっくりだ。 俺達はその日も巣の中で、ゆっくり過ごした。 別段変ったことは無い日だったが、一つだけ素晴らしい発見があった。 どうやら、ゆっくりは同族を食うと体力や運動能力が上がるようだ。 体が昨日より明らかに軽く、素早く動けるようになっている。 今夜も誰かを食い殺して力をつけるとするか…。 俺はその日も残った姉妹のうち、一番小さい妹まりさを昨日と同じ方法で噛み殺した。 きちんと全部食おうとは思ったが、親れいむや親まりさが朝起きて娘の惨殺死体を見つけたらどんな顔をするか見たくなったので、半分ほど残してその日は寝た。 俺が目を覚ますと、ゆっくり虐待が好きな者なら垂涎の光景が繰り広げられていた。 「ゆぅぅええ!!!ぇえぇぇぇん!!!!」 「れいみゅおねーちゃんちっかりちてね!!」 妹のれいむがゲロを吐いてい痙攣しているのを見ながらおろおろしている妹のまりさ。 「ゆぅぅぇぇぇ…ぇぇ」 それを見て貰いゲロをしている姉れいむ、ゲロといっても吐いているのは餡子だからそれほどグロくないし実にシュールな光景だ。 生まれて二日目の赤ん坊ゆっくりがゲロなんて吐くなんて命にかかわる大事だ、現に妹れいむはあくまで目測だが致死量に至るだけの量の餡子を吐いているもう助からんだろうね、合掌。 ちなみに俺の両親はというと、妹の死骸、昨日の俺の食い残しの傍で騒いでいた。 「ゆぅぅ!!!あかちゃんしっかりしてね!!すーりすーり♪‥」 「れいむ…やめるんだぜ‥あかちゃんはもう…もう…」 「ゆゆ!!!うるさいよ!!あかちゃんはねてるだけだよ!!すーりすり♪…おねがいゆっくりおきてね!!」 親れいむは泣きながら俺が食い殺した妹れいむの死体に頬擦りをしている。 そんな事して生き返ると思っているのか?馬鹿なの?、今世話をしてやるべきは餡子吐いちゃってる生きてる方の妹達だろ。 一方、親まりさは親まりさで汗をかきながら、挙動不審に体を揺らしている。 御自慢のお家で殺饅事件が起きて動揺してるんだな、それにしても全く駄目だな奴だ、一家の大黒柱はもっとどっしり構えてなきゃ駄目だぜ。 結局その日は、餡子の吐きすぎで妹れいむが死んで、家族みんなで大声で泣いた。 俺はその日一日泣きまねをしなければならないので実に疲れたので、この日は夜に妹達を食い殺すことはやめておいた。 ゆっくり虐待は体が資本、体調管理は大事な仕事のひとつなのだ。 「ゆぅえぇぇん‥おねぇちゃん‥なんでちんじゃったの‥」 「ゆぅぅ‥れいみゅやまりちゃとゆっくちちたかったよ…」 夜遅くまで死んだ、妹を思って泣く姉妹たちを気にせず、俺はたっぷり睡眠をとった。 「あかちゃんはまりさがまもるんだぜ!!ゆっくりあんしんするんだぜ!!」 「ゆぅぅ‥がんばってねまりさ!!れいむはあかちゃんといっしょにゆっくりねむるよ!!」 ちなみに親まりさはゆっくりできないものが襲ってこないか寝ずの番をするそうだ、まぁゆっくりゃに襲われないようにほどほどに頑張ってくれ。 「ぷくくぅぅ!!れいむひどいよ!!まりさはおこったんだぜ!!!」 「ぷくぅぅぅぅ!!!まりさがくちだけなのがいけないんだよ!!!ゆっくりはんせいしてね!!!」 「おかーしゃんたちゆっくちけんきゃやめてね!!!」 「ぷくぅぅししゃだめだよ!!ゆっくちちてね!!」 続く? このSSに感想を付ける
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小ねたっぽいゆっくりいじめ 季節は巡り、幻想郷は今厳しい冬を乗り越え春を迎えようとしていた。 人里近い森の中を1匹のゆっくりまりさが飛び跳ねている。寒さも和らぎ、 冬篭りを終えたことでとても嬉しそうな顔だ。 突然、ゆっくりまりさの体がふわりと宙に浮く。 「ゆゆ?おじさん、まりさになにかごよう?」 ゆっくりまりさを持ち上げたのは1人の男だった。 「んー、特になにもないけど、君とゆっくりしたくてね。」 「ゆっ!じゃあ、まりさといっしょにゆっくりしようね!」 ゆっくりという言葉に反応して上機嫌になるゆっくりまりさ。 「ところでおじさん、なにかおしいものもってない?まりさおなかすいちゃったー。」 長い冬篭りのせいでろくに食事をできていなかったのか空腹を訴えるゆっくりまりさ。 「んー、おいしいかは分からないけど、お花の種なら持ってるよ?」 男は両手で持っていたゆっくりまりさを片手で抱えなおすと、腰に下げた小袋か花の種を 取り出しゆっくりまりさに見せる。 「ぽ~り、ぽ~り、む~しゃ、む~しゃ。」 花の種を見るや否やすぐさまかぶりつくゆっくりまりさ。よっぽど腹がすいていたのだろうか。 「ゆゆっ!おじさんこれはあまりおいしくないよ!もっとおいしいものをちょうだいね!」 あれだけがっついておいて更に食事を要求するゆっくり。 「そんなこと言われても、今はこれしか持ってないしなー。」 そういって、ぱらぱらと花の種をゆっくりに振り掛ける男。 「やめてよおじさん!もう、おはなさんのたねはいらないよ!!」 「おーい!春告精はおらんかー!!!」 ゆっくりの抗議の声を無視し、大声で叫ぶ男。その声に驚きビクッとするゆっくり。 「はいはーい、ここですよー。」 男の声に反応して、声が返ってくる。その声は男の上から聞こえてきた。 「ゆ?おねえさんはだれ?ゆっくりできるひと?」 上空からの突然の来訪者に疑問の声をあげるゆっくり。 男の上空から現れたのは、白い三角帽子に白い服を纏った妖精の少女だった。幻想郷に春が来たことを 告げる妖精、リリーホワイトである。 「お兄さん、私に何か御用ですか?」 男に何用かと尋ねるリリー。すると男は、 「ああ、あるとも。ここに丁度花の種がある、これに春を与えてはくれんかね?」 そういってゆっくりまりさをリリーの前に突き出す。ゆっくりまりさは男が何をいっているのか分からず 顔をしかめる。 「はーい、お安い御用ですよー。」 まかせろ!というように即答するリリー。 「それじゃいきますよー。・・・・・・・・春ですよー!!」 リリーは息を整えた後、元気一杯に叫んで万歳をするような格好をとる。全身からはこうなんというか、ぽわ ぽわしたピンク色のオーラがあふれ出していた。 ・・・ぴょこ。 その春オーラにあてられた花の種が芽を出した。 ぴょこ、ぴょこ、とゆっくりまりさの周りにあった花の種が次々と芽をだしていく。 「ゆー!ゆー!」 妖精の起こす奇跡に目を輝かせるゆっくりまりさ。しかし、異変はすぐに起きる。 ぷっ、ぷつ、と何か小さな穴が開くような音。その音に反応してゆっくりまりさは周りを見渡す。しかし、自分の 周りにはそのような音を出すものは見受けられない。突然、激しい空腹感に苛まれるゆっくりまりさ。 「わー!キレイに咲きましたね!それでは、私はこれで!」 「おーう、ありがとさん!」 満足げな顔で立ち去るリリーに笑顔で謝礼と別れの挨拶をする男。 「おじ・・・さん・・・、なに・・・いってるの・・・・?」 あまりの空腹に言葉がたどたどしいゆっくりまりさ。 「何って・・・ああ、そうか、お前は見えてないものな。ほら。」 ゆっくりまりさの顔を近くの小川の水面に写してやる男。 「???!!!」 そこにあったのはまりさの顔だった。しかし、その顔は先ほどまで小憎たらしいほどに丸々した饅頭顔とはちがって、 まるで干しぶどうの様に皺くちゃだった。しかも、その周りにはまるでまりさを彩るようにたくさんの花が咲いていた。 そう、先ほどのリリーの春オーラによって、まりさの食べた花の種や、男が振りまいた種が土を求めてまりさの中へと 根を伸ばしたのだ。先ほどまりさが聞いた音は、花の茎がまりさの皮を突き破る音と、根が皮を突き破る音だったのだ。 「ゆ゛・・・・・・・っ!」 その衝撃の事実に悲鳴を上げそうになるが一段と強まった空腹感に思わず黙り込むゆっくりまりさ。 「ふむ、少し種が多すぎたか。一気に吸われて餓死寸前じゃないか。」 男はそう分析しながら品定めをするようにゆっくりを見回す。 「このまま死なれても実験の意味が無い。念のために持ってきてよかった。」 そういって男は少量のオレンジジュースをゆっくりに与える。 「どう・・・じで・・・?どうじで・・・こんなごとずるの・・・?」 オレンジジュースによって少し活力を取り戻したゆっくりは息もたえたえに男に怨嗟の声をぶつける。 「そりゃ、俺だっておまんまに食いつきたいからな。」 とりあえずゆっくりの命に別状が無いことがわかると男はゆっくりを抱えたまま里のほうへ向かった。 「よろこべゆっくり。今日からお前はそのお花さんとこれからずっと一緒に暮らせるんだぞ。食べ物は俺が用意してやるから 安心しろ。」 その男の言葉をきいてゆっくりまりさは、これでずっとゆっくりできるね・・・。とか、お花さんきれいだね・・・。とか、 思っていたが拭いきれない空腹感を忘れるため静かに眠ることにした。 数ヵ月後、加工所から新製品が発売された。 それは、「初心者でもできる!ガーデニング用ゆっくりプランター」というものだった。 あらかじめ発芽した状態のゆっくりでガーデニングを楽しめるというものだった。やることは一日一回の水の入れ替えと、 初心者でも分かるように親切なフラワーガイドブックがついていたことから、ガーデニングに興味のあった奥様方から子供の 夏休み宿題用と、幅広い人々の支持を得て一躍人気商品となった。 ゆっくり春ですよー。 完 書いた人:名も無き作者
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感染拡大 直接の虐待描写は皆無 恐らく俺設定あり とある男が風邪をひき、町の医者に診てもらおうと道を歩いていた。 「・・・あー、今年もひいちまったなぁ・・・ゴホンゴホン・・・」 男は咳が止まらないようだった。 何度も咳をしていると、その時食べていた煎餅に痰が掛かってしまった。 「あー、汚ねぇなぁ、これはもう捨てるか・・・」 と捨てようと思っていた時にゆっくりの親子が目の前に現れた。 大きいのが1匹と小さいのが3匹、全てれいむ種だろうがそんなことはどうでもいい。 「「「ゆっくりしていってね!!!」」」 お馴染みの台詞を吐くが男は風邪で喋るのがめんどくさかったので、 「はいはい、ゆっくりゆっくりっと・・・」 と適当に流していた。 「ゆ?おじさんゆっくりできるひと?ゆっくりできるなられいむたちにごはんちょーだいね!」 「「ちょーらいにぇ!!」」 親子揃って初対面の相手に傍若無人なことを言う。 「生憎食える物は持ってないよ、帰った帰った。」 と男が追い払おうとすると、ゆっくりは男の持っていた煎餅に目をつけ 「ゆっ?おじさんおせんべいさんもってるよ!どうしてうそつくの?ばかなの?しぬの?」 と実に腹立たしいことを平然と抜かすが、男は相手にしたくなかったので、 「あー、これか?こんなもんでいいんならやるからさっさとかえってくれ。」 と痰を拭き取ってゆっくりに食わせてやった。 親と思われるれいむはそれに齧り付き子供もそれに倣った。 「「「むーしゃむーしゃむーしゃ、しあわせー!!」」」 男はゆっくりが煎餅にご執心の間にそそくさとその場を立ち去った。 「ちょっとからいけどゆっくりあまくておいしいよ!おじさん、もっとちょうだいね!!」 甘辛な砂糖醤油はゆっくりの口に合ったようで予想通りおかわりを要求してくるが男は既にその場にいなかった。 「ゆぅー?おじさんどこいったの?やくたたずなじじいはさっさとしんでね!!」 だが男はいない。早足なのでもうゆっくりの視界から離れていたのだ。 しばらく男を罵倒し続けたゆっくりもやがて無駄を悟ると森へ帰って行った。 巣に帰った親子はいつもどおりゆっくりとし、日が暮れると昼に狩った虫を食べて眠りに就いた。 次の日、親子はいつもどおり目覚めた。 「ゆぅーん、たいようさん、きょうもゆっくりしてるね!!」 「「「ゆっくりしていってね!!!」」」 家族で挨拶しあうと今日の朝食のためにゆっくり巣を出た。 狩りの途中、出会うゆっくり達に親愛の情を示すすりすりをし、やがて狩りを終え、ゆっくり朝食を終えた。 これは全ていつもどおりである。 昼になると森の開けた場所で他のゆっくり達と一緒にゆっくりし、日が沈むと互いに巣に帰りまた眠りに就いた。 また次の日、親のれいむが目覚め、 「ゆっくりしていってね!!」 と言い、子供達を起こしたが、子供たちの異変に気づいた。 「ゆぅー・・・おかーしゃん、れいみゅなんでゃかしゃむいよ・・・」 「ゆっくりできにゃいよ・・・ゆっくりすーりすーり♪してにぇ・・・」 皆元気がないのである。 「ゆ?おちびちゃんたち、どうしたの?ちゃんとゆっくりしないとだめだよ?」 だが親のれいむにはわけがわからず子供たちにゆっくりするように言う。 だが子供たちは相変わらず体を震わせてゆっくりできていない。 困り果てたれいむは朝食を早く済ますと、群れで一番の物知りであるぱちゅりーを訪ねることにした。 「むきゅーん・・・これはきっと“かぜ”だわ・・・!」 物知りのぱちゅりーは言う。 だがれいむには“かぜ”が何の事だか分らない。 「ゆ?ぱちゅりー、“かぜ”ってなぁに?それってゆっくりできないの?」 「“かぜ”っていうのはにんげんがよくひくびょうきよ、ひいたらしばらくはゆっくりできないけど、 なおったらいままでどおりゆっくりできるからあんしんしてもいいわよ、むきゅん!」 「ゆっくりあんしんしたよ!よかったね、おちびちゃん!!」 「ゆぅー・・・かぜしゃんゆっくりにゃおってにぇ・・・」 子供たちは少し安心したようだ。 「でもしばらくはあったかくしてはやくねたほうがゆっくりはやくなおるわよ」 とぱちゅりーが助言を言うので、れいむは子供たちの家に帰り寝かしつけてやった。 次の日、れいむが目覚めると子れいむ達はきのうよりも苦しそうだった。 しかもれいむ自身も疲れているのか少しだるい。 「ゆー・・・なんだかだるいよ・・・つかれてるのかな、ゆゆっ!?おちびちゃんたち、ゆっくりだいじょうぶ?」 「ゆふ、ゆふ・・・おかーしゃん、しぇきしゃんがとまりゃにゃいよ・・・」 「どぼじでゆ゛っぐりなおっでぐれないのお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!???」 まだ一日しか経っていないのに、親れいむは子供がよくなっていないことを嘆いた。 仕方なく朝食を取るために1匹で狩りに出たが、何か様子がおかしいことに気づいた。 いつもならばもっと多くのゆっくり達が狩りをしていたり、ゆっくりしているはずなのに、今日は殆ど見かけないのだ。 何とか餌を見つけ巣に帰ってみると子供達はますます苦しそうだった。 「れいむのおちびちゃんたち!ゆっくりたべてはやくげんきになってね!!」 何とか餌を食べさせようとするが子供たちはすぐに吐き出してしまう。 ついに咳をする度に餡子を吐きはじめた。 「ゆふ、ゆふ、ゆびぇえええ・・・!」 「ゆ゛!?おちびちゃん!あんこはかないでね!ゆっぐりできなぐなるよ゛!!!」 だが子供たちの咳は止まらず餡子も止まらない。 その間にれいむ自身も咳が出始めたのだが、子供をすりすりしていたので気づいていなかった。 「ゆほん、ゆほん・・、おぢびぢゃん・・・ゆっぐりよぐなっでね゛・・・すーりすーり♪・・・」 「ゆふ、もっど・・・ゆふ、ゆっぐ・・ゆっぐぢちだがっだよ゛・・・」 遂に1匹が息絶えると親れいむは絶叫した。 「ゆほん・・・、おぢび、おぢびぢゃぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん!!!」 1匹が息絶え、親れいむがすりすりをやめその子れいむに駆け寄ると他の子れいむ達も相次いで息絶えて逝った。 「ぐるじいよおおおお・・・」 「もっどゆっぐ・・・ゆぎゅい・・・!」 「どぼじで・・・ゆ゛ほん、どぼじでごお゛な゛るのお゛お゛お゛お゛お゛!!??」 そのうち親れいむも餡子を吐きはじめて衰弱していった。 「ゆ・・・もっどゆっぐりじだがっだよ゛・・・」 その頃この森の周辺に棲む他のゆっくり達の巣でも同じような光景が広がっていた。 どの巣でも体の小さいゆっくりから症状が出始め、やがて死に至るという具合である。 症状は程度の差こそあれ、恐らく全て風邪であろう。 男の風邪の原因である、ウイルスや細菌のこびり付いた煎餅を食べたゆっくり親子が感染源であり、 それが潜伏期間のうちに、他の個体にすりすりしたため、それが広がりまたそれが感染源となって広がっていく。 更に、人間では重篤状態に陥ることは稀な風邪だが、ゆっくりでは体の構造が単純かつ、脆弱であるため、 感染すると治る前に咳をした拍子に餡子を吐きだして死んでしまうのだ。 一部の体の大きい個体や感染を免れた個体を除いて、この流行によって全滅してしまったといっても過言ではないだろう。 fin ゆっくりが風邪をひいたらどうなるかというレスを見て書いてみました。 熱はないけど、咳が辛い・・・皆さんも風邪には気をつけて下さい。 過去作品 男と一家 きめぇ丸の恩返し 丙・丁 ゆっくりハザード 永遠亭の怪 楽園の崩壊 by同志ゆっくり小町 次があればこの名前で書きますんで その時はよろしくお願いします。 いずれはゆっくりこまちで書いてみたいっすねw このSSに感想を付ける
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※何の罪も無いゆっくりがナニでアレされます。そういうのが苦手な人は回れ右。 森の中を歩いていると、ゆっくりれいむを見かけた。 その瞬間、勃起したのでとりあえずお決まりの挨拶をしてみた。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!おじさんはゆっくりできるひと?」 主の本能に従ってお約束の返事をするゆっくりれいむ。 おじさんって年ではないのだけれど、そんなことをいちいち気にする性分でもないので軽く聞き流す。 「すごくゆっくりできるひとだよ!だかられいむのおうちにつれていってね!」 「うん!れいむのかぞくといっしょにゆっくりしようね!」 警戒心が無さ過ぎるぜ。しかしそのピュアハートが良いんだな!! というわけで、俺はゆっくりれいむの家族の待つ家へ向かうことになった。 「ただいま、みんな!れいむがゆっくりかえってきたよ!」 「「「「おかえり、おかあさん!れいむたちゆっくりおるすばんしていたよ!」」」」 「おかえり、れいむ!まりさもゆっくりあかちゃんをまもっていたよ!」 そのれいむの家はかつて人間が使っていたと思しき木造の小屋だが、ゆっくりの言えとしては破格の大きさだった。 そこにいたのは子れいむと子まりさが2匹とにんっしん中のゆっくりまりさが1匹。 「ゆ?おじさんはゆっくりできるひと?」 「そうだよ!ゆっくりできるひとだよ!」 そう言うと小屋に備え付けられた棚にあった釘と金槌とベニヤ板で、壊れてしまって押すだけで開いてしまう扉を即座に封印した。 「ゆゆっ?」 何をやっているのかよくわからないらしく、興味津々のゆっくりたち。 そんなゆっくりたちを尻目に作業を終えた俺はすぐさまズボンと下着をずり下ろしていきり勃ったイチモツの封印を解く。 「だから、おじさんとゆっくりシようね!」 そう叫ぶや否や、近くにいた子れいむを掴むとその可愛らしい口に俺の白楼剣を突き立てた! 「んぐっ!?」 「ゆゆっ!おじさん、なにするの!?」 すぐさま抗議する母れいむだったが、口にナニを入れられた子れいむの表情を見せてやるとすぐに黙りこくった。 そりゃそうだろうな。親だったら子どものこんな嬉しそうな表情を見せられたら文句なんて言えなくなる。しょせんゆっくりだし。 「どうだい、れいむ。お兄さんのぺにぺには甘くて美味しいだろう?」 「うん、おいひぃ~。あまあま~♪」 実はこんなこともあろうかと毎朝起きたらMy白楼剣に潤滑剤として蜂蜜を縫っているのだッ!! それはさて置き、その言葉を聞いたとたん、子ゆっくりたちが俺の下に殺到する。 「れいむもあまあまー!」 「「あまあまぺにぺにはまりさのものだぜ!」」 「おいおい、お兄さんのぺにぺには一つしかないんだぜ?」 と、俺が困っているのをお構いなしに子どもたちはぺにぺに争奪戦を始めてしまった。 しかし、こんなことで俺の憩いのひと時が邪魔される訳にはいかない。だから・・・ 「よ~し、しかたない!お兄さんが4匹全員いっぺんに相手してあげるよ!」 そう言うと、一匹の子まりさを空いているほうの手で掴んで、俺の顔に近づけ・・・ 「まりざああああ!!がわいいいよおおおおおおおおおお!!!」 と、アリスっぽく叫びながら子まりさの口に舌をねじ込んでやった。 「ゆ!?」っと驚き、またしても抗議しようとする母れいむにまた、子どもの表情を見せてやる。 「ゆ!・・・あまあまらぜ!」 口の中には飴が入っているので、こっちもあまあまだ。 さらに残りの2匹を足で押さえつけると、要石でも止められそうにない、激しく、荒々しく、それでいて慈愛に満ちた地震を発生させた。 「ゆぎゃ!おじさんなに・・・ゆぅ~ん、ゆっゆっゆ・・・」 「ゆ!?ゆぅぅぅぅぅううぅぅ・・・ゆっゆっゆっゆ・・・」 ゆっくりのそれとは違う、絶妙な緩急と多彩な振動、そして時には焦らしも交えたをテクニックの前に子どもたちはあっという間にヘブン状態! あっという間に子ゆっくりたちは何かよくわからない汁で体中をぬらぬらとてからせ、にちゃにちゃと淫靡な音を小屋中に響き渡らせる。 何度か親ゆっくり2匹が俺にこの行為をやめさせようとしていたが、その度に幸せそうな表情の子どもを見せつけられては押し黙ってしまうだけだった。 「ゆううううううう・・・きもぢいいいいいいい・・・・」 「いぐぅうぅぅぅぅ・・・いっぢゃうううううう・・・!」 「あまあま~、ゆっゆゆぅぅぅぅうう・・・ちゅぱ・・・」 「あまあまだぜ・・・にちゃ、ぷちゅ・・・ゆうううううう・・・」 イチモツと舌を咥えている子ゆっくりたちにも本人があまり意識しない程度に振動を与えているので、すでに発情モード、もうすぐオーガズムに達するだろう。 勿論、俺もナ☆ 続く、はず? ---あとがきっぽい何か--- 今回はゆっくりとせっくる。 多分この後は母ゆっくりを母まりさの前で自分のテクニックの虜にしたり、 口だけじゃ物足りなくなって子どもたちの体に穴を開けたり、 最終的に母まりさの産道を犯したりする予定、のようなそうでないような? byゆっくりボールマン このSSに感想を付ける
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「ここはまりさのおうちだよ!ゆっくりでていってね!!」 ある森の中、館と家の中間くらいの大きさの煙突がある家の前のことであった。 帽子をかぶったゆっくりが叫んでいる。 この個体はゆっくりまりさと呼ばれる。天邪鬼で意地っ張りな個体が多い種族だ。 ゆっくりまりさはいたずらを好む。好奇心が旺盛なためか、他者にかまってもらいたいのか、 いずれにしろよく悪さをしでかし、叱られることが多い。しかしこのまりさの行動はそれを踏まえてもありえないものであった。 他者の家に勝手に上がりこんでここが自分の家だと宣言している。 この家の主人であろうか、若い女性が苦笑いしている。 自分が留守にしていてしばらくぶりに帰ってきたらこの始末だったためである。 うっかり鍵を掛け忘れていたのを思い出す。長期間留守をするにしては間が抜けたものである。 そんな彼女はどうするべきかと悩んだしぐさをしている。 「ゆっくりしんでね!!」 あろうことがまりさは女性に向かって体当たりを仕掛けてきた。 しかし女性はひょいと身をそらしたため難なくよけられ、 まりさは逆にあっさりと捕まってしまい、押さえつけられることとなった。 女性は目の前のゆっくりは自らの力を把握できていないのだろうか。 そう思ってまりさをつねる。ひたすらつねる。女性はまりさが泣くまでつねるつもりであった。 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛っ゛ぐ・・・」 しかしまりさは耐えている。更に力を込める。それでも泣かない。目に涙を浮かべて必死に耐える。このままでは千切れてしまう。 しょうがないので女性はまりさを外に放り投げて家の中に入った。 「ゆっくりいれてね!ここはまりさのおうちだよ!!」 しかし女性は聞き入れない。このまま家の奥へと向かっている。まりさは焦りを感じていた。 このままあの人間があの子をみつけたらどうなってしまうのかと思い、口に石をくわえ、窓から家の中へと侵入してきた。 砕けたガラスによって細かい切り傷がいくつもできたが、それでもまりさは飛び跳ねて体当たりを続ける。 なかなか根性があるというか図々しさに毛が生えているというか、傷だらけなことをまるで感じさせない挙動だった。 横で攻撃してくるゆっくりまりさの攻撃に女性は内心あきれながら無視して家の中を捜索していた。 まりさの攻撃を全て軽くかわす。勢いあまって壁に激突しても次の瞬間には飛び掛ってくる。 女性は段々と違和感を感じていった。家の中に何か大事なものがあるのだろうか。 この剣幕はただごとではなかった。攻撃性が少なく、 あまりにも弱すぎため無害なものが多い ゆっくり種がここまで攻撃的となる原因はなんだろうと興味を持った。 そしてある部屋の前に来ると扉の前にまりさが立ちふさがった。 「おねがいだからでていってね!!ここだけでもまりさのおうちにして!!」 放り投げてどける。扉を開けると、一匹のゆっくりがいた。あの青白い顔はゆっくりぱちゅりーである。 体が弱く、野生を生きる能力があまりないため、いつもじっとしている個体である。 しかしぱちゅりー種であることを踏まえても、その顔色は病的なまでの白さを誇っていた。 「むきゅぅぅ・・・。」 今にも力尽きそうなその姿。必死なまりさ、これらの状況から判断して、このまりさはぱちゅりーを守ろうとしたらしい。 「ゆぅぅぅぅぅ!!!!」 まりさはぱちゅりーの前にかばうように唸っている。 女性はどうしたものかと思案して、ぱちゅりーを介抱することにした。ここまで弱っているとほうってはおけない。 放り出すには目の前の命はあまりにも儚げで、今にも消え入りそうだった。 事情を知った女性はまりさの方をじっと見つめ、優しく両手で抱える。 「ゆ!?」 すると全力で窓の外に放り投げた。まりさはぱちゅりーを守るために警戒していただけだったが、 人の家に居座られて体当たりされたので、ちょっと気に入らなかったからこれくらいはしてもいいと女性は思った。 「むきゅぅ・・・、おうちにすませてくれてありがと・・おねぇさん・・・」 しかし一向に良くはならない。いくら喘息もちで死にやすいとはいえ、これは少しおかしかった。 女性は怒りが収まり、ぱちゅりーにお願いされたこともあったのでまりさを家の中に入れてやった。 まりさの体にあるガラスでできた傷は浅かったが、女性は一応手当を受けさせようとした。 「ゆっくりはなしてね!おねぇさんとはゆっくりできないよ!」 しかしまりさはそれを拒み、ぎろりと睨み付ける。 まりさはずっとぱちゅりーのそばにいた。 まりさはとても心配に思っていた。唯一の友達であるぱちゅりーが調子が悪い。自らの手で餌を食べることができなくなり、 一向に動く気配がない。以前自分達の家であった木の空洞にぱちゅりーをひとりにしておくと、 蛇などの動物が来たときに食べられてしまう。そのため、丈夫で安全で誰も住んでいない人間の家を探し出し、 ぱちゅりーを引きずって連れてきたというわけである。そこで留守にしていた人が帰って来たというわけであった。 女性は、この二匹を追い出して次の日玄関先で死なれたら目覚めが悪いと思った。 結局、女性はまりさとぱちゅりーを家に居候させることにした。 それから人とゆっくりの奇妙な共同生活が始まった。 まりさはぱちゅりーと四六時中いっしょにいる。女性は信用されていなかった。そのため、餌をとりにいくこともしていなかった。 まりさが留守の間にぱちゅりーと女性の二人だけが残されることを警戒していたのだろう。 いくらなんでもこれでは本末転倒だ。女性がこのままでは二匹が飢え死にしてしまうと思って食べ物を与えると、 まりさはまず毒見をしてからぱちゅりーに咀嚼した食事を与えた。 消化しやすくするためであろう。 まりさは明らかに人間不信であった。もしかしたら以前人間にひどい目にあわされたのかもしれない。 だからといって女性は特になにをするでもなく、二匹に餌を与え続けた。 「ゆっ・・・」 あるとき家の前に傷ついたゆっくりありすがいた。すぐに生殖行為に及ぼうとすることから、 ゆっくり達の間では嫌われているものが多い個体だった。けれども女性はありすを家の中に招いた。 驚くことにこのありすはまりさやぱちゅりーを見ても生殖行為を行わなかった。 最初は驚いたまりさとぱちゅりーだったが、辛い状況が続いたため、警戒心が養われていたためだろうか、 目の前のありすが他者に害を与えるような存在ではないと気づいた。 二匹はありすを受け入れた。 「ありすはきらいじゃないよ!ゆっくりしていってね!!」 「むきゅぅ、よろしくね」 「きやすくはなしかけないでよ。いわれなくてもゆっくりしていくわ!」 そういいながらありすは二匹の手伝いをした。まりさと共にぱちゅりーの看病をしていた。このありすは意地っ張りであるらしいが、 面倒見はいいようだ。ありす種に性欲がなくなるとこんな性格だとは意外であった。 いつからだったかわからないが、三匹は常に一緒にいた。 「ゆっくりしね!ゆっくりしね!」 「うっうー♪」 ある日女性はとんでもないものを連れてきた。攻撃的な種属のゆっくりふらんとゆっくりれみりゃだ。まりさたちは虐められると思い、 身を強張らせた。しかし 目の前の二匹は何かがおかしい。それもそのはず、ゆっくりふらんには羽が片方ついていなかった。 再生力が強いふらんだったが、 たぶん生まれつき羽がなかったら再生もできないだろう。ゆっくりふらんは飛ぶ性質を持つため、はねる動きは不得意なようで、 ずりずりとゆっくりともいえないほどの速さで這いずり回ることしかできていなかった。れみりゃは叫び続けるふらんのそばで飛んでいた。 こちらはしっかり羽がある。 しかし牙がなかった。 この二匹はたぶんほうっておいたら死ぬだろう。 「「「ゆっくりしていってね!!!」」」 またある日女性はゆっくりれいむの家族を連れてきた。母れいむは行くあてがなく困っていたところらしい、 体中ぼろぼろで汚れていた。共に連れてきた子れいむ、赤ちゃんれいむも不安そうにきょろきょろと辺りを見回す。 そんな彼女達はまりさ達に受けいられた。家族が一気に増えた。 「わかるよーわかるよー」 「ちーんぽっ!」 「ケロ、ケロケロ!」 だんだんゆっくり達が増えてくる。いつしか家の中にはゆっくりたちがたくさん溢れていた。みょん、ちぇん、ふらん、れみりゃ、 ありす、ぱちゅりー、まりさ、そしてそのほかの様々な種類のゆっくりたち。 みんなこの家に来るとゆっくりしていた。 彼女達はけんかすることもあったが、そのたびに女性につねられ、叱られることで少しずつ仲良くなり、 いつしか家族の一員となっていった。 女性はあらゆるゆっくり達を家の中に招いた。ここで彼女達に狩りの仕方を教え、食べられるもの、農耕の仕方など、 様々な生きる術を教えていた。 それからまたしばらくたった。ゆっくり達がゆっくりさせてくれた女性への恩返しのため、皆一丸となって働いていた。 家の前には畑が広がり、ゆっくり達が道具を口で使って耕している。 このとき女性は驚いたが、ありすは農耕における用地の運用の仕方や、道具の効率的な使用法をあっという間に覚えていった。一度教えたことを更に発展させて考えることができる。 人間にも難しいことだった。女性はありすに家の中の本を与えて読ませた。女性が難しいからといって買ったまま積んでいた本をありすは次の日にはそらで言えた。 ありすは正直なところ女性よりも頭がよくなっていたかもしれない。ありすの知識は大いに役立った。 体力のあるものは狩りに出かけていた。 母れいむはきのこと山菜を取りに山を駆け回る。最も力があって重いものを持つためだ。途中で蛇や猪などの獣とかち合っても、護衛のみょんやけろちゃん、ちぇん、 ゆっくり達が追い払う。おいしい食べ物を待っている仲間がいるから、だから頑張れる。 そして、留守番をしているものは子守をしていた。 「ゆっくりしね!!!」 「ゆっくりするー!!」「わたしもー♪」「遊んで♪遊んで♪」「ふらんおねーちゃん♪」 「うー、うー♪」 なんとふらんがれいむの子供達にかこまれて遊ばれていた。ふらんは不機嫌だったが、 赤ちゃんれいむたちはお構いなしにふらんにつっかかる。そんな赤ちゃん霊夢にふらんは本気で威嚇しているが、 れいむ達は怪獣ごっこだと思っているようだ。動きの遅いふらんにつかまるほど赤ちゃんれいむはゆっくりしていなかった。 れみりゃはそばで無邪気に飛び回っている。 ふらんは終止不機嫌で、れいむ達に遊ばれた後見かねた女性になだめられていた。 「う゛ぅ゛・・・・・・・・・・・・・・・♪」 ふらんは甘えることにてれを感じているのか、女性と目を合わせなかった。 けれどもその横顔は頬がにやりと緩んでいた。 ある日昼ごろのことだった。女性がゆっくり達にいいことを思いついたと言って、ゆっくり達を庭に集めた。 彼女はときどき突拍子もないことをいいだす。 なにかな、どうしたの、ゆっくり達が皆庭に集まると、女性は背中に何かを隠してやってきた。 ふっふっふっと笑って、もったいぶっている。まるで悪役のような笑い方に、ゆっくり達は不安になった。 そこで女性はジャジャーン、といった擬音が聞こえそうになるぐらい、うれしそうに背中の物を目の前に 出した。それはギター。指でかき鳴らし、音楽を奏でる道具。 みんなで歌を歌おう。それが女性が考えたことだった。ゆっくり達はみんな今日のお仕事がまだ終わっていない と、ばつの悪そうな顔をしていたが、女性はあっけらかんとして、そんなこと気にしないでいいとでもいうように ギターを弾いていった。彼女はまりさに侵入されたとき、家に鍵をかけ忘れたことから考えられるように、 細かいことを気にしないというか、豪快というか、いい意味でも悪い意味でもいい加減というか、そんな人だった。 女性はみなを楽しませようと弾いた一曲。彼女の弾くギターはあまりいい腕ではなかったが、 その楽しそうな雰囲気によって、ゆっくり達はゆっくりせずに大はしゃぎしていた。 「ヘェーラロロォールノォーノナーァオオォー」 お母さんれいむは歌っている。音程は高く、以外に上手い。それにしてもこのれいむ、ノリノリである。 「おかーさんすごーい!」 「わたしもうたうー!」 「わたしもー!」 赤ちゃんれいむたちも一緒に歌う。 「へェーらろ・・・むりだわ、これ・・・」 ありすは完璧に歌えないと嫌なのか、早々と歌を止めた。 こういうところで変に意地っ張りである。 しかしそっぽを向きながら口をパクパクとさせ、次回に継げていた。次に歌うときのために必死に練習するであろう。 その顔は楽しそうだった。t 「うー、ゆっくりしね♪」 ふらんまでご機嫌だ。その周りには赤ちゃんれいむたちが集まっている。楽しいときには細かいことは気にしないものである。 姉のれみりゃは踊るように飛んでいる。 「ゆっゆー♪」 「あるーひー♪」 「ゆっくりー♪」「ヘロロォールノォーノオォー」「うっうー♪」「ちんちーん♪」「けろけろッ♪」 その日はゆっくり達の大合唱が森中に響き渡った。誰もがゆっくり平和にすごしていた。 いつしか女性はゆっくり達の母親のようなものになった。 「ぱちゅりー、たのしい?」 まりさはぱちゅりーに尋ねる。 もはや自ら動くことができなくなったぱちゅりー。そんなぱちゅりーは女性に抱えられて、みんなの姿がよく見える特等席に座らせてもらった。 「むきゅ♪」 ぱちゅりーはとても嬉しそうだった。まりさはぱちゅりーのこれほどまでに嬉しそうな顔をみるのは久しぶりだった。 そして、それが最期だった。 空気が澄んだ朝だった。ついにぱちゅりーが死んだ。最後には話すことさえできなくなり、 発作的に餡子を吐き出すようになっていた。ゆっくり達皆が心配そうに見つめる中、 まりさとありすはぱちゅりーのほほに自らのほほを当てて、その最後を看取った。 「ぱちゅりー、だいすきだよ・・・」 「ゆっくりしてね、やすらかにねむりなさい・・・」 ぱちゅりーは力なく微笑むと、 「むきゅ」 と返事をするかのように一言発し、事切れた。 ゆっくり達はこの家に来てはじめて家族を失う悲しみに涙した。 そして、女性はぱちゅりーを弔うことにした。火葬にしようかと思ったらまりさが強く反対した。 「あついのはよくないよ!もうぱちゅりーにいたいおもいをしてほしくないよ!!」 そんなまりさの姿を見て、ありすは何かを感じ取り、まりさをかばうように意見する。 「おねがい!ぱちゅりーがやかれるところをみたくないの!!」 結局、ぱちゅりーは土葬することにした。虫に食われないように厳重に箱につめて、家のそばに石を積み上げて墓を作った。 家のなかのゆっくり達はみな悲しんだ。別れはとても辛い。 それを見ていた女性はこうやってお墓を作ってあげると、いい子は天国にいけると女性はゆっくり達に教えた。 「てんごくってなに?」 「たべもの?おいしい?」 「ゆっくりできる?」 女性は教えた。天国とはいつまでもゆっくりできるところだと。ぱちゅりーはいい子だからそこに行けた、死んだ後には会えるから心配しなくていいよと言うと、 ゆっくり達は嬉しそうにしていた。 ちなみにわるい子は地獄という、ゆっくりできないところに行かされると釘をさしてしつけることもした。 まりさはぱちゅりーの帽子を形見としてとっておくことにした。 その日の夜、まりさは女性に向かって今までの行いをあやまった。 自分の事をずっと気にかけてくれていたぱちゅりー。 まりさが夜寂しい思いをしたとき、いつも体を寄せて寝てくれたぱちゅりー。 ぱちゅりーはまりさの全てだった。 ぱちゅりーが死んだことはとても悲しい。だけど彼女が幸せそうに死ぬことができたのが、うれしかった。 まりさだけでは、ぱちゅりーをあそこまでゆっくりさせることはできなかっただろう。 「おねぇざん・・・いまま゛゛でまりざはわるいごでごべんなざい・・・。おねぇざんのおうち゛をがっでにづがっ・・てて・・・、 まりざもうででぃぐね、ぱぢゅりーのこどありがどう、ありずをよろじぐね・・・」 まりさは初めて女性にあやまった。ぱちゅりーと共に生きるためとはいえ勝手にひとの家に上がりこんだこと、 それなのに追い返そうと体当たりをしたこと、それなのにぱちゅりーを弔ってくれたことなど、感謝をしてもしきれなかった。 女性は何も言わずまりさを手招きした。まりさはぱちゅりーがいなくなったから、外に放り投げられるのではないかと思った。 自分から出て行くつもりであったが、もし恩人にそのようなことをされたらと思うと怖くて仕方がなかった。 まりさは恐る恐るゆっくりと女性に近づいた。 ぎゅぅぅと、音が鳴る。つねられるときのように、しかしまりさはつねられていない。 女性は何も言わずにただまりさを抱きしめた。まりさは女性のあたたかさを感じた。 そして女性は膝の上に載せると子守唄を歌った。 ぽんぽんと優しく頭を叩きながら。 まるで人間の子供のおなかを叩いて母が歌うように。 その歌声は正直あまり褒められたものではなかったが、 まりさは耳を澄ませ、涙で真っ赤にした目を更に赤くしないように閉じて聞き入れた それはまぎれもなく母が娘をあやす姿そのものであった。 もうでていかなくていい。あなたもここのうちのかぞくなのだから。 そのような歌詞であった。 いつしかまりさの閉じた目から涙がつぅっと落ちていた。 まりさはこの日本当の家族になった。 「おねぇさん!これあげるね!おいしいやさいだよ!!」 ぱちゅりーが死んだ日からまりさは女性に対する不信感を完全に失っていた。 今では誰よりも女性の近くに擦り寄って、誰よりも働いている。 食事も女性からうけとるとき、 毒見をするようなしぐさをしなくなっていた。逆に畑で取れた野菜を女性にプレゼントするようになった。まりさは女性への感謝の気持ちでいっぱいだった ゆっくり達を受け入れてくれたこと、みんなが仲良くできるようにしてくれたこと、ぱちゅりーを弔ってくれたこと、 まりさは女性を母親のように感じていた。 それでも憎まれ口をたたいて女性につねられるのは相変わらずだった。 女性がまりさからもらった野菜を調理して、並んでご飯を食べる。まりさはとてもうれしそうだ。 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせ~♪」 女性はそんなまりさをみて微笑む。まりさもつられてえへへと笑う。 そんなまりさでも女性の体の変化には気がつかなかった。 女性がまりさに気づかれないようにしていたためである。 それでも症状はゆっくり進行していく。 ゆっくり達が目を覚ます。寝ぼけた女性を数匹がかりで起こす。今まで誰よりも早く起きたのに。 みんなで協力して食事をつくる。女の人とは思えないくらい食べたのに。 太陽の下で働く。休む回数が増えた 眠る。眠ったらいくら呼んでも起きない。かとおもえば、一日中起きている日もあった。 こうなってくると、ゆっくり達も気がつく。女性の体が悪いんだと。 だけど女性は人間の医者のところには行かなかった。 軽い風邪だから大丈夫だと。 幸せな日々にもいつしか終わりがやってくる。それはあまりにも突然の事だった。ある日いきなり女性が倒れた。 顔を見てみると赤い斑点が出て、 常に苦しそうな表情を浮かべていた。 1日、2日、3日、1週間、女性はどんどん体が悪くなっていった。 それでも彼女は医者に見せなかった。 まりさ達はかわるがわる看病に努めた。ごはんを運ぶもの、身体を井戸水で冷やして氷嚢代わりになるもの、 女性が行っていた家の管理に務めるものなど、皆女性のために働いた。 それでも病気の進行は止められなかった。 心配するまりさをからかうようにつねる手の力がとても弱くなっていた。 はじめてあったときは泣きそうになるくらい痛かったのに。 女性はもうすぐ死ぬ。ゆっくりたちが女性のベッドの周りに群がっていた、 みな不安そうな顔をしている。 まりさとありすはかつてぱちゅりーに対して行ったように自らのほほを女性に当てていた。 「いままでありがとうね・・・。おかあさん・・・」 ありすが泣きながら女性に話しかける。女性は心配するなと笑顔でうなづいた。 このとき女性は気がついた。まりさの底の一部分が感触が固いと、それはまるでパンを一部分だけ焼いた後のようであった。 以前人間に虐待されたのだろう。火傷によって焦げてしまったに違いない。 女性はまりさがこの先みんなと一緒にゆっくりできることを願った。 女性はまりさに対して二つの望みをつぶやいた。最後の言葉だった。 自分が死んだらここをみんなのおうちにしてね。 ゆっくり達を守ってね 、と そして女性はゆっくり息を引き取った。 まりさがみんなを導いて、みんなが天国にいけるようなゆっくりとして生きていけることを願って。 遺体はゆっくり達の手でぱちゅりーの隣に埋められた。 「おねぇさん、てんごくでもゆっくりしていってね・・・」 それからさらに1ヵ月後、ゆっくり達は女性のいいつけを守って生活していた。女性がいなくなってもゆっくり達は今までどおり、 むしろそれ以上に頑張って生きていった。まりさとありすがリーダーとなり、ゆっくりたちをまとめていた。 女性が生前そうだったように、行き場のないゆっくり達を受け入れ、いつしか家はゆっくり達の楽園となっていた。 そんなある日の夜、人間が尋ねてきた。壮年の男が数人いた。ゆっくり達は突然の人間に驚いた。 しかし以前女性に対してとてもやさしくしてもらっていたことを覚えていたゆっくり達。みな口々に歓迎している。 「「「「ゆっくりしていってね!!!」」」」 まりさは以前人間に虐待されたことを忘れてはいなかったが、女性に心を開いたことで以前より人間の事を嫌ってはいなかった。 そして女性の最後の言葉を思い出し、その願いをかなえることにした。 「ここはみんなのおうちだよ!! ゆっくりしていってね!!!」 うん、ありがとう、ゆっくりさせてもらうね。 男はそう答えた。きれいな瞳をした男であった。 男達はこの場にいるゆっくり達を見て、何か話し込んでいる。牙と片羽のないふらん、牙のないれみりゃ、 その他様々なゆっくりたちをじっと見た。 特に驚いていたのは、ありすをみたときであった。男の一人がありすに振動を与えた。 「なにしてんのよ、えっち!!」 ありすは不機嫌そうな顔をして去っていった。男は信じられない顔をした。発情しないありすがいるなんてと。 ところでここに女の人は住んでいなかったかな? そう男のひとりがゆっくりに質問した。 なんでも男達は女性の知り合いらしい。ゆっくり達は女性の事を話した。皆バラバラに話すので聞き取るのに一苦労であったが 、男達は彼女がどれだけゆっくり達愛されていたのか理解した。そして彼女が病気によって死んだことを伝えると、男達は悲しそうな顔をした。 しばらくうなだれ、考え込んでいた後、男の一人が意を決したようにまりさに話しかけた。 「おねぇさんのお墓はどこにあるかな。お墓参りをしたいんだ。」 まりさは女性のお墓に案内した。 石を積み上げられたあのお墓に。 ここでおねぇさんが天国でもゆっくりできるようにいっしょにお祈りをしようと思っていた。 人間も自分達と変わらないと、 そう信じていた。 数刻後、男は女性の墓を掘り返していた。隣にあるぱちゅりーの墓も同時に掘られている。 まりさは何が起きたのか理解できなかった。なぜこんなことをしているのだろう。 死んでゆっくりしている人をなんで無理やり起こすのだろう。 おねぇさんもぱちゅりーも天国でゆっくりしているのに、ゆっくりさせてあげないなんて・・・。まりさとありすは男に飛び掛った。 「やめて!!どうじてそんなことをするの!!」 「やめてぇぇぇ!!」 男のひとりがまりさとありすを押さえつけながら、段々と墓が暴かれてくる。 ゆっくり、ゆっくり、ゆっくり、ゆっくり、 悪臭がただよう。まりさは口から餡子を吐きそうになった。 まりさの頭にあったのは、生きていた頃のおねぇさんの美しい姿とぱちゅりーの青白い顔であった。 しかし、目の前にいるものは、 にてもにつかない ぱちゅりーってこんなくろかったっけ? どろだんご・・・ あのシろいむしってナに たくさんいるよ となりのオおきいのは ひと? もの? くろい あのおなkaカらでるデろでろってなに・・・ あnこ? 「あ・・・あ・・・あぐ・・ぐぺぇぇ゛ぇぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇ」 「ひどい・・・、なんで・・・」 あまりの衝撃にまりさはおねぇさんがどのような顔をしていたのか思い出せなくなった。 全く面影がなければそれでよかった。しかし着ている物、髪、顔の無事な部分と ぱちゅりーのそばに埋めた影響か、ところどころ虫に食われた部分がまりさの思い出の中のおねぇさんと混ざり合ってしまった。 おねぇさんといえば、目の前のくろくて、ぐちゃぐちゃで、べちゃべちゃなものしかわからなくなっていた。 男達は辛そうな顔をしながら女性を引き上げ、顔の確認をした。 男達の数人が泣いていた。リーダーらしききれいな瞳をした男が彼らをなだめた。 そしてしばらく話し合った後、男達は何かを決意した顔をした。男はまりさとありすを家の中に入れて、外から閉じ込めることにした。 男達の目的はこうであった。 ゆっくりから他の生物に媒介するウィルス、 感染方法はゆっくりを食べることと、ゆっくりを食べて感染した生物からの血液、経口感染であった。 そのウィルスはゆっくりと時間をかけて体内に潜伏し、発症の際は死亡率が40%を越えていた。 このウィルスにかかったゆっくりは先天的な奇型・変化をもって生まれる。 病弱さに拍車がかかったぱちゅりー、羽のないふらん、発情しないありすなどがそれにあたる。 男達はここに住んでいた女性の友人と加工場の職員で構成されていた。 彼女がゆっくりを襲っている犬からゆっくりをかばって噛まれ、このウィルスに感染していた可能性があること、 そのために森のはずれにある家で最後を迎えようとしようと失踪したこと、ついに家の位置を探し当てたこと、 最近わかったことだがもし感染していたら死体を焼却しておかないと動物によって死肉を漁られ感染が広がること、 彼女のような犠牲者を増やさないために感染源の奇型・変種ゆっくり達を炎によって滅菌処分する目的でこの場を訪れていた。 加工場の人間達にとってゆっくりは食料。それ以上でもそれ以下でもない。里の人に美味しく餡子を食べてもらいたい。 それだけを考えて仕事に励んでいる。しかし目の前のゆっくりが他の生き物に害を及ぼすと知ったとき、人を守るために自らの仕事を失うことを躊躇しない。そこには私情は一切なかった。 対して、女性の知り合いたちは私情によって動いている。彼女がまだ生きていた頃、世話になった者達の一部である。 彼らは彼女のような犠牲者を出さないようにゆっくり達を駆逐しようとしていた。それが彼女の意思とはかけ離れたものと知りながら。そんな彼らがやすやすと目の前の仇を逃がすはずがなかった。 この二つの思想を持つ包囲網からは、決して逃れられないだろう。 まりさは家の窓から女性とぱちゅりーが焼却されるのを見ていた。 まりさの母がわりであるおねぇさんとぱちゅりーはゆっくり燃えていった。熱いのは苦しいと思ってまりさは火葬をしなかった。 その結果があのどろどろの物体だった。 静かに、ゆっくりと炎は一人と一匹を包んでいく。その空気は以前おねぇさんとぱちゅりーが死んだときのお葬式のようであった。 違うのは、おねぇさんとぱちゅりーが穏やかな顔をしていなかったこと。 しばらく後、一人と一匹の遺体は真っ黒に焼き尽くされていた。 ぎろりと、男達がゆっくりが住む家のほうを向く。 まりさはきれいな目をしていた男と目が合った。男の目はもう曇っていた。疲れたような顔をして、生気を感じさせない。 それでもふらふらと家の方に近づいてくる。幽鬼のように。そしてそれにつられて他の男達もついてくる。 手に持っているのはたいまつ。 百鬼夜行そのものだった。 そして男達は、まりさたちの住む家目掛けてたいまつを放り投げて火をつけた。本格的に滅菌作戦を開始した。 「みんな、にげてぇぇぇぇぇぇぇ!!」 まりさが叫んだ。まりさは火の怖さを知っている。昔人間に捕まったとき、仲間と一緒に網の上で火にあぶられたことがある。 熱さから逃げるためぴょんぴょんと飛び跳ねる。しかし跳ねてもはねても火に接している底が熱くなる。 ほんの少し火に触っただけなのに体がこんがりと焼ける。それを見ている人間達は笑っていた。 誰が速く死ぬか当てる遊びをしていた。 まりさは運よく最後まで生き残り、死なずにすんだ。仲間達は焦げ付き、食べられもせずに放置されていた。 あの時と違うのは、人間達が遊びではなく、殺すことを目的として火を使っていることであった。 皆逃げる。しかしどこに逃げればいいかわからない。 部屋の中をひたすらうろうろとするばかり。パニックを起こしたゆっくり達は、部屋の中から出ることさえ考え付かなかった。 「ゆ゛ぎぃ゛ぃ゛ぃ!」「ゆ゛ぐえぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ !!」 放り投げられた火の近くにいた数匹のゆっくりが悲鳴を上げる。体に直接火を浴びたため、髪の毛から引火して体中が火達磨になっていた。 それはある怪異を髣髴とさせた。 鬼火と呼ばれる、宙を舞い、駆けずり回る火の玉。 違うことは、それが地を這うことであった。 「ゆ゛っぎゅり゛でぎな゛い゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!」 「ゆ゛っぐぃざぜでぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ!」 家の外に火達磨のゆっくり達が飛び出した。 もはや飛び跳ねることもできずにごろごろと地面を転がっている。 けれども火はゆっくり達の体を蹂躙するのをやめなかった。ごろり、ごろりと地面に向かって体をこする。けれども 全く効果がない。ひらすらに転がる。転がって転がって、何かにぶつかって止まる。それは男達の足であった。 ゆっくりにぶつけられた男は火にあおられ、熱さのあまりのけぞる。それをかばうように隣の男が火の玉を踏み 消す。その中にある命ごと 「ごぼっ!!」 「「ゆ゛っ!!!」 あっけない。あまりにもあっけない最期だった。これまで苦楽を共にしてきた仲間達。 同じ食事をし、共に笑い、泣き、一つ屋根の下に眠ってきた仲間達。ほんの数時間前までは隣で笑っていた。 ほんの数時間前までは。 今までこの家で体験した死とは違い、何の思いやりも見られない死は、ゆっくり達の心をぐちゃぐちゃに掻き回す。 仲間の悲鳴が現実から心を遠ざけ、炎の熱さが現実に心を引き戻す。ゆっくり達はパニックを起こした。 これから自分達にどのような運命が待ち受けているかをぼんやりと感じながら。 そう、悲劇はまだ終わっていない。これはほんの前奏にすぎないのだから。 「みんなはやくにげて!!ゆっくりしちゃだめだよ!!」 まりさはみんなを逃がすようにした。。 外には逃げられない。まりさは家の中の上の方へ、上の方へと 逃がすようにした。火は上に昇るが、地上は囲まれてしまったため、これ以外に逃げ道がないためである。 まりさは率先して皆を助けようと足掻く。懸命に足掻く。 おねぇさんに皆の事を頼まれたから・・・ 「ありすー、どこー!!でてきて!!にげるよ!!」 アリスの姿が見えない。はぐれてしまったのだろうか・・・。そういえば家の中に放り投げられたときから見ていない気がする。 ありすを助けに行くことも考えたが、まりさは目の前のゆっくり達を見て皆を逃がすことを選んだ。ありすならきっと大丈夫、 ありすが死ぬとは思えない。すぐにあの憎まれ口をたたいてくれるはずだ。 ゆっくり達は2階に上がり、1階より炎の進みが遅いことに皆少しほっとした。 しかしまりさは気を緩めない。皆に向き合って、大声で呼びかける まりさは火があっというまに広がることを知っていたので、皆を3階に誘導した。 「こっちだよ!うえにあがって!!うえにあがればゆっくりできるよ!!」 先陣を切り、階段の上に立って、ゆっくり達が階段を上ることを待っていた。 上が安全という根拠はないが、こうでもしないと皆パニックを起こす。 はやくこっちにくるように、恐怖に震えたゆっくりたちを励ます。 そのとき、 ビュッ!! ゴォォォォォォ!! いきなり外からたいまつが投げられた。窓ガラスを破り、階段を炎が包み込んでいく。ゆっくり達は散り散りになってしまった。 3階部分にはまりさしかいない。炎によって分断されてしまった。潜り抜けることは不可能だ。まりさにとっては不幸なことに、 皆を誘導するために急いで階段の前に行ったため、まりさのみ助かっていた。 まりさは階段の上から一部始終を見届けることになった。 「「「おがーざーん!だずげでぇぇぇ!!」」」 炎による恐怖で動けなくなった赤ちゃんれいむ達。 炎。それは母ゆっくりれいむの命への祝福をする優しいあたたかさとは違う、命を否定する激しい熱。 ぷるぷると振るえ、目の前の母をひたすら呼び続ける。 「わだじのごども”おぉ゛ぉ゛ぉ!!!」 母れいむは赤ちゃんれいむたちを庇おうと自らの口の中に入れた。 こうしておけばみんな一緒に逃げられる。そう思っての行動だった。 しかし誤算があった。口内に大量の子供達を含んだ母れいむはゆっくりとしか動けない。 はやく逃げなきゃこどもたちが死んでしまう、 はやく逃げなければ ぐらり そんな母れいむの思いとは裏腹に、母れいむの上に燃えた柱が倒れてきた。 大きい柱が ゆっくり、 ゆっくりと 「ん゛ん゛゛ん゛ん゛んん~~~~」 しかし子供達をくわえて動きの鈍った母れいむは更にゆっくりしていた。 ずりずりと這いずる様にしか動けない。 その目は落ちてくる柱をうつしていた。逃げようとすれば逃げ切れるようにも見えた。 じたばたともがき、目の前を見て、避けきれるまであと少し、あと少しのところまできた。 しかし、結局無理だった。あと1メートルほど進めば避けられたのに、それもかなわず柱が母れいむの頭を捕らえた。 ぐしゃり 母れいむは横に3倍ほど広がってしまった。悲鳴を上げる暇さえなかった。餡子が飛び散り、ぴくぴくと痙攣している。 口の中の子供達はつぶれて混ざり合っているだろう。 もう二度と母れいむの美しい歌声を聞くことはできない。 炎で分断された更に別の場所、移動の遅いゆっくりふらんは自分を助けようと近づいてくる子れいむたちとれみりゃを追い払っていた。 「ゆっくりしね!!!ゆっくりしね!!!ゆっくりしね!!!ゆっくりしね!!!ゆっくりしね!!!ゆっくりしねぇ!!!」 鬼気迫る形相でこっちに来るなとひたすら吼え続ける。しかしそれでもゆっくり達はふらんにむかっていく。 ふらんをくわえると、少しでも火のない方向目掛けて引きずっていた。 「ふらんちゃん、ゆっくりしちゃだめだよ!」 「いっしょににげよ!」 「あきらめちゃだめだよ!」 「う゛~、ごぁい!こぁ゛い!いっしょににげる!おいで!!」 しかし炎は容赦なくふらんとゆっくり達を包み込む。 まるで焼き栗。炎の中で小さな塊がぱちぱちとはじけていく。それとも焼き芋とでも言おうか、餡子が焼けるいいにおいがあたりに広がっていた。 炎に慈悲はない。ただ全て燃やすだけ。そこには善意も悪意もない。 再生力の高いふらんとれみりゃはすぐには死なない。目の前でれいむ達が焼き死ぬところをゆっくりと見ることとなった。 最初はあまり気に入らなかった。自分がおもちゃにされているようでイヤだった。食べてやろうと思ったことも一回や二回じゃない。 だけど、だんだん一緒にいると楽しくなった。からかわれるのも悪くなかった。自分がからかわれるのに慣れてしまっただけなのか、 それともなにか別の理由があるのかわからない。ただ、ふらんはいつしかみんなの笑っている顔が大好きだった。 「あぢゅいよ゛おぉおぉ゛ぉ゛ぉぉ」 「ゆっぐりじでてよぉ・・・」 「ふら゛んおね゛ーじゃんっっっ!だずげでぇぇぇ」 そんな仲間達が、自分を助けようとしたから、ふらんを助けようとしたから、苦しそうな顔をして消えて行く。 真っ黒になりながら。そしてれいむ達が焼き死ぬと、今度はれみりやとふらんがゆっくりと死ぬ番だった。 「う゛・・・・、」 ふらんの目の前でれみりゃが焼けていた。普段の無邪気な表情とはかけ離れた苦悶の表情だ。 いつも自分の近くにいた姉。いつもへらへらとして弱そうで、ずっと姉扱いはしていなかった。 だけど、そんな自分を、ふらんをれみりゃは助けようとしてくれた。 れみりゃは紛れもなく自分の、ふらんの姉だった。 「ゆっくりしね・・・ゆっ・・・」 ふらんは何もできない自分がうらめしかった。 結局、最期まで姉扱いをしてあげることはできなかった。 生まれて初めてふらんは泣いたが、涙は蒸発してしまい、誰にも見られることはなかった。 炎が辺りを包み込み始めていた。 ゆっくりできないところが地獄なら、ここはまさにそれであった。地獄というコンサートホールでゆっくりの悲鳴の大合唱が奏でられている。 音の大きさはバラバラ、音程はバラバラ、リズムもバラバラ、共通しているのは苦痛を表現した歌だということ一点のみであった。 まりさはこのときほど自分手がないことをうらめしくおもったことはなかった。 耳がふさげないため、ゆっくり達の悲鳴があますことなく聞こえてくる。 「ゆ゛っぐり゛い゛い゛い゛ーー!!」「ゆ゛っぐり゛でぎる゛どお゛も゛っだどに゛い゛い゛い゛い゛い゛いい゛い゛い゛!!」 「ぐぉぼ!!」「ゆるじでぇ!! あづいよぅゆうぎゃあぁあ゛!!!」 「どおじでぇえ゛ぇぇっごんなごどずるのぉぉ゛お!!!」「ゆ゙ゎああああああああ」 「おねぇざんだずげでぇぇぇ」「ぶぎい゛い゛い゛い゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!」 「わからないよ!!!わからないよおおおおお!!!」「ゆっぐりだずげでええええ!!!」 「 ゆ゛っぐり、じだい、じだいよおおおお!」「びゅっぐりゃぃぃぃ!!」「おぎゃぁぁぁざぁあぁぁん!!」 「いや!ゆっくりしてよう!や・・・あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」「がぼッ、ガボボッ、い゛や゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!」 「し、じじにたくないよ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!」「なんで!なんで!!なんでえ゛え゛え゛え゛え゛!!!」 「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っ!?」「んほおおおおおおおおおおおおお!」「う…うあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!」 「ぢんぼぼぼぉおぉおおっ!!!」「う゛っ!う゛っ!う゛っ!う゛っ!う゛っ!う゛っ!」 あ゛づい゛よ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!」 「ゆーーー?!い゛や゛だぁぁぁぁぁぁ!?あづいいぃいぃぃいl?!」 「ひ゛ぃぃい゛い゛ぃあ゛あ゛あ゛あ゛ぁあ゛ぁあ゛ぁぁぁあ゛ぁっ!」「ゆっぐりじだがっだよー!!!!!」 「……ゲロ゛ォォオゲロオォオオォっ!」 おがあざんどご!? み゛ん゛な゛どごぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!? みぇな゛いぃぃ!!!」 「 ゆ゛ゆ゛っ゛っ゛ーーーーーーーーー!!!!」「あ゛づ!! け゛む゛い゛よ゛お゛ォ!!!」 「おうち゛でみ゛ん゛な゛どゆっぐり゛じでだだげな゛のに゛い゛い゛い゛い゛!!!!!」 そして大合唱が終わりを告げた。まるで焼ききれたカセットテープのようにぷつりと音が消える。 もう誰も生き残っていないだろう。 みんなと分断されてからあっという間の出来事だった。 だけど、みんながどう死んだか、その様子は全く同時の出来事だったが、全てまりさの目に映り、記憶に刻まれた。 目をそらせなかった。よって、一匹一匹、全てのゆっくりの死に様が余すことなく焼きついた。 結局おねぇさんとの約束を破ることになってしまったことになって、申し訳なかった。 そしてそれ以上にみんな大事な仲間だったのに、大好きだったのに守れなかったことを後悔した。 まりさは死を目の前にして、それでも火から逃げることを選んだ。 火は・・・・・・・・・・どうしても怖かった。 3階にたどり着いた。目の前にありすがいた。 いなくなっていたかと思ったありす。まりさが気がつかないうちに死んでしまったのかと思ってしまった。それは一番嫌だった。 とにかく無事でいてよかった。生きていてくれてうれしい。 「ありす!いままでどこにいってたの!!しんぱいしたんだよ!!」 「わるかったわね・・・、みんながにげるためのどうぐをつくっていたのよ。それよりみんなは・・・」 「しんじゃったよ・・・。れいむたちもふらんもれみりゃもみょんもちぇんもみんなみんな!!ひでやかれちゃったよ・・・」 ありすはまりさから目をそらした。生き残っているのはまりさとありすだけ、 ありすは一瞬呻いて、暗い顔をしたが、急がないとまりさたちも危ない、 ありすはまりさをある部屋に誘導した。煙突のある暖炉とつながっている部屋だ。 煙突の下にハンモックがあり、傘がついた大きな箱のようなものが乗っていた。 「まりさ、まずこのうえにのって」 まりさは箱の中に入れられた。結構広かった。 「ゆ?これからどうするの?えんとつからにげようとしても、そとにはにんげんがいるし、えんとつもふさがっているよ!」 「いいからここでじっとしていなさい!そうすればとおくににげられるわ!」 ありすの作戦は、まず煙突を発射台にするため、その中間あたりに箱とハンモックで弾を作り、 その下に部屋との仕切りをして、部屋の中を密閉する。 そうすると熱によって膨張した部屋の中の空気が逃げ場を求める。 下の仕切りが燃え尽きることで外に空気が逃げる。その勢いを利用して箱ごと飛び上がるというものであった。 性欲を失い、リミッターがはずれたためか、ありす種の知能は本来の力を発揮していた。まさに賢者そのものであった。 「よくわからないけどすごいね!はやくにげよう!いっしょににげようよ!!」 「まってて、まずこれ、ぱちゅりーのぼうし。こんなだいじなものをもっていかないなんてまりさったらほんとにばかね・・・」 「ゆぅ、まりさはばかじゃないよ・・・。でも、ありがとね!ぱちゅりーもいっしょだよ!」 「それから、これ、わたしのへあばんど、もしこれをなくしたらおぼえてなさいよ・・・」 「なんでありすのへあばんどをくれるの?ありすがもっていればいいのに!?」 「それから、あなたのこときらいじゃなかったわよ・・・。」 ありすはまりさのほほに自分のほほを触れさせた。人間が今生の別れの際の抱擁を行うように・・・ 「ありす、どうしちゃったの!!なんかおかしいよ!!ゆっぅ・・・ゆぅ!」 ありすはいきなりまりさ目掛けて体当たりをした。 「ゆぇ!」 ありすは泣きながら 「ゆ゛・・・」 何度も 「あ・・・ありす・・・」 何度も そしてまりさは動けなくなっていた。 「このしかけはね、だれかがふたをしたでしめるこがひつようなの・・・じゃあね、まりさ。そこでゆっくりしていってね・・・」 傷ついてこの家に来たありす。ここに来るまで、その生活は決して幸せなものではなかった。 一日の食事に泥水をすするのみのことが珍しくなかった。 ぼろぼろになって、体を治す暇さえなく這いずり回る日々。 だけど決して弱みを見せない。見せたくない。 そんなありすがゆっくりできたのがこの家。初めての仲間。最後に残った家族。 ありすは自分の命の使い方を決めた。 ありすは部屋の中に残った。まりさを助けるために。まりさは動けず、そんな彼女の姿をじっとみていることしかできなかった。 そして炎が部屋に侵入してきた。ありすは仕切りをした。まりさはありすの姿が見えなくなった。 姿が見えなくなってもありすの声が聞こえてくる・・・ 「ひぎゃぁ゛ぁ゛ぁっぁ゛ぁぁぁ!!!あ゛ぢゅ゛いぉよぉぉ゛ぉぉ!!」 まりさは知っている。火による熱さはは決して我慢しようとしてできるものではないと・・・ 「ぱじゅりぃ゛ぃぃだずげでぇ゛ぇぇ!!おねぇざあん゛ん゛ん゛んんん゛!!じにだくないよぉおぉ・・・」 絶対に聞きたくなかった声が聞こえてくる。ありすが今まで一度も出したことのないようなひどい声だ。 「ま、まりさ・・・ゆ・・・・ゅぅ・・・ゅ・・・ゅ・」 最期にありすの頭に浮かんだのは、女性に連れられ、まりさとぱちゅりーに始めて出会った光景だった。 そして仕切りが燃え落ちて、逃げ場を失った空気によりまりさは煙突から発射された。 ある木の空洞にまりさはいた。あの家に住む前に住処にしていた家だった。ここはまりさ『だけ』のおうちだ。 結局あの日まりさは逃げ切るのに成功した。 煙突より遠くに飛ばされ、気がついたらもう夜が明けていた。 皆と住んでいたあの家に戻ると、全てが灰になり、何も残っていなかった。 畑も、ギターも、そしてみんなの死体も。 まりさはあの日から、起きていると仲間たちの悲鳴を思い出すためにゆっくりすることができなかった。 まりさにとってゆっくりするために必要なものはおうちではなかった。 仲間が欲しかった。仲間さえいればどこでもゆっくりすることができる。 しかし今となってはゆっくりはまりさだけになってしまった。人間たちの滅菌作戦によりこの一帯のゆっくりは全滅した。 だれかと一緒にゆっくりすることはもうできない だからといって人間とはもう会いたくない。おねぇさんのようなやさしいひととおじさんたちのような怖い人、 どっちが本当の人間かわからなくなった。やさしくされた後に裏切られるのが怖くなった・・・。 だったら死んでしまえばいい。そう思ったことも何度もあった。しかしそのたびにまりさは結局死にきれない。 死ぬのは怖かった。おねぇさんのお願いであったみんなを守ること、それができなかったまりさは地獄に落ちるだろう。 でも、ぱちゅりーの帽子とありすのヘアバンドをかぶって眠るとみんなとの楽しかった日の夢が見れる。 起きているときは仲間達の惨たらしい最期しか思い出せなくなったが、夢の中では現実では決してありえない、幸せな光景がある。 まりさはおねぇさんに抱きしめられて、 ぱちゅりーが元気に外であそんで、 ありすが意地を張って、 れいむ親子が歌って、 ふらんがからかわれ、 れみりゃが飛び跳ね、 ゆっくり達みんなが笑っている。 そんな夢。 まりさは夢のほうがいいのなら、ずっと夢を見つつけることを選ぶ。現実なんかどうだっていい。 ゆっくりねむろうとまりさはまた夢をみようとしたとき、家の中に蛇が侵入してきた。うっとおしい。せっかくいい夢をみていたのに。 まりさはぼんやりと、二度と誰かに「ゆっくりしていってね」といえる日はこないと思った。 「ここはまりさのおうちだよ!ゆっくりでていってね!!」 平成20年8月17日 最後にケジメをつけるため、加筆修正しました。 これにてssを書くことを引退します。作者の方々のご活躍をお祈りして、 ゆっくりスレのこれまで以上の発展を願っています。今までありがとうございました。
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注意書き もういじめとは言えないと思うので注意 自分なりの解釈を含んだドスまりさが出てきます これはゆっくり虐待というよりゆっくりとゆっくりの戦いです 当然ながら虐められないゆっくりがいます(虐めるわけじゃないし) ほんの少し過去作 ドスまりさの誕生 番外編1に関係する単語があったりしますが重要度はゼロに近いので読んだことがある人は苦笑いしてください ゆっくり大戦(YW)の続編という形を取ってはいますが、世界観は同じでも時系列とかははっきりしていません、同じ戦争の戦場の一コマと思ってください こんかいゆっくり達が非常に頭がいい(人間並みに道具を使って文明を作ってたりする)のでそういうのが嫌いな人も読むときは注意してください 元ネタはフリーゲームの「KBAF」WW2が好きな人はやってみるといいかも では本編行きます これは、遠いところのお話 紫にスキマで異星へ追放されたゆっくりれいむ、まりさ、ありす、ぱちゅりー、みょん、ちぇん れいむとまりさに別れた戦いは500年も続きついに星中を巻き込んだ一大戦争になっていた… ここはれいむ軍の最前線基地 最前線には位置してもこの島は非常に小さく、港も滑走路もほとんど作ることができないためまりさ軍もれいむ軍も完全に無視していた島である なぜそんな島をれいむ軍は基地にしたのか、それは偵察飛行中にこの島の近くを飛んだ元まりさ軍のゆっくりまりさの一言だった 「ここはてきもむししているしまだからここにあずきとこむぎのせいさんきちをつくればきっとゆっくりできるよ!!」 たしかにここの周辺には(といっても数百ゆっくりキロメートルほど離れているが)いくつかの航空基地があるが滑走路だけで精いっぱいな大きさの島なので餡子も小麦粉も作れない 当然飛行機は餡子がなければ動けないがここ最近敵潜水ゆっくりによる本土からくる輸送ゆっくりの被害が増加していた この島で小豆と小麦を作り餡子と小麦粉に加工、周囲の基地に輸送すればわざわざ本土から長い距離を輸送する必要もない またこの海域はつい最近までまりさ軍の制圧下だったがまりさ軍はこの島を無視していた よって対空偽装さえしっかりすれば敵にばれる心配はないだろう 「みんなでなかよくゆっくりしよう」をモットーにしているれいむ軍 当然一般兵の意見も上官が有益と判断すればさらに上に伝えられそれが実行されることもある まりさのこの意見は実行され、この基地に数十匹のれいむ軍が上陸、小豆と小麦の生産拠点にするべく作業を開始した それが3か月前、今ではまだ他の基地に輸送するほどはないがこの基地で消費するだけの小麦粉と餡子を生産するようになった 「なんとかゆっくりできるようになったね!!」 「もっとがんばってまわりのきちのみんなもゆっくりさせてあげようね!!」 「みんなでいっしょにゆっくりしようね!!!!」 そのとき、遠くから飛行機の爆音が聞こえてきた 「ゆゆ?ひこーきのおとだよ!!」 「みかたかな?てきかな?」 「てきだとあぶないよ!!みつかったらゆっくりできなくなるよ!!みんなぼーくーごーにかくれてね!!」 せっかくこの基地でゆっくりできるようになり始めたのだ、簡単に見つかってはたまらない 飛行機がどんどん近付いてきた 味方じゃない、敵だ あれはP-36まりさりんぐとB-25ゆっくり、偵察飛行ではない じゃあなんだろう?近くの味方を攻撃しようとしているのだろうか?だがこのコース上に味方はここしかいないはず… そこまで考えたとき、B-25の爆弾槽が開いた 「たいくうせんとうだよ!ゆっくりしないでね!!」 この基地の存在が敵にばれている、どうしてかは分らない、だが敵がいるのは事実だ れいむはすぐに無線室に飛び味方に援軍を要請する ほかのゆっくり達も対空砲や対空ゆっくりがんに向かう 一匹のれいむが対空砲座に飛び込む、すぐに射撃しようとしたとき目の前に黒い影が現れた 「はろー!ゆっくりしね!!」 爆弾ゆっくりだ!!そうおもいすぐに逃げようとしたが遅かった 爆弾は地面に激突すると同時に爆発、れいむと対空砲座をぶっ飛ばした 戦闘は一方的だった、もともとこの基地は敵と戦うことを想定したわけではない、対空砲も対空がんもほとんど配備されていないのだ 火器がすべて破壊されたためゆっくり達は皆防空壕に退避した、その中では負傷したゆっくり達を衛生兵が必至の治療作業を行っている 爆弾で顔の右半分を吹き飛ばされたれいむはしばらく「ゆっゆっゆっ…」と痙攣していたがやがて動かなくなった 頬をごっそり削り取られたちぇんは痛みに顔をゆがませ暴れている、それを他のゆっくり達が「がんばってね!!」「がんばったらゆっくりほんどでよくなろうね!!」と励まし衛生兵が薬草を貼り付け止餡しようとする 機銃掃射で足をやられたみょんは自分が役立たずになったと絶望していた、幸い餡子は止まったがもう歩くことはできないだろう 「いだいよ!!いたいよ゛!もうやだ!!おうちかえして!!」 「だいじょうぶだよ!あんこはもうとまったからゆっくりがまんしてね!!」 「い゛だい゛よ゛ぉお゛ー!!」 「むきゅ!このもるひねをうってね!でもさんぼんまではいいけどよんほんうったらしんじゃうからぜったいにうったらだめだよ!」 そう言われたのに泣きやまない友人の痛みを和らげようと5本もモルヒネを打ってしまい親友を殺してしまい精神崩壊を起こすれいむ 外では爆撃が終わり生き残りの元気なれいむたちが外に出てきた 本部はこの島の放棄を決定、明日には引上げの輸送船が来る だがその前にこの島にある小豆畑や小麦畑、加工施設などの基地施設をすべて破壊しなくてはいけない 作業の打ち合わせをしている時にまた爆音が響いた、味方だろうか?だがそれにしては少し早い、味方が来るにはまだ時間がかかるはずだ… 飛んできたのはB-17ふらいんぐまりさだった。れいむ軍にはない四発の大型爆撃機、まりさ軍の技術力の高さの証明と言える だがなぜ一機で飛んできたのだろうか?偵察だろうか? そんな事を考えながら空を見上げるれいむたち、しかしその顔は一瞬で恐怖に染まった 「ど、ど、ど、どすまりさだー!!」 B-17は飛行形態のどすまりさを牽引していたのだ 母機から切り離されゆっくりと降下してくるどすまりさ、しかしれいむ軍には迎え撃つ武器はない どすまりさ ゆっくり大戦における最大最強の地上戦力だ 戦艦の艦橋そのものといってもいい大きさをしており口からはゆっくりすぱーくを放つ もともとゆっくりたちが兵器を使うこの戦争は大洋に浮かぶ島々の奪い合いだった、当然お互い船と飛行機の開発に力を注ぎ地上戦はほとんど500年前と変わっていない れいむ軍では地上戦力として戦車というものを開発中だが艦船の建造に資源を取られほとんど進んでいないのが現状である そこにれいむ軍の援軍が現れた、3機のゆしきかんじょうせんとうき(以下ゆせん)が飛行中のドスまりさに向かい突撃していく ドスまりさはそのサイズに負けない防御力を持っている、戦艦の主砲の直撃にだって耐えるのだ だが飛行形態時に装着しているグライダー、これを破壊すればドスまりさは地面に激突して潰れてしまう ちなみに今大戦がはじまってからのドスまりさの被害の9割は飛行形態中の墜落だ 残りの一割は輸送船の沈没による溺死 だがどすまりさも黙ってやられはしない、戦艦の装甲並みの厚さを持つ帽子、その表面がいくつかのドアとなり、それがスライドして中から数十門の対空がんが出てくる 戦闘用どすまりさの帽子は戦艦の艦橋のように中は数階建ての構造物になっている 内部はゆっくり達の司令部や対空砲座になっているのだ ゆせんも何とか対空機銃をかわしながらドスまりさを攻撃するが機関銃程度では蚊に刺された痛みすらない、グライダーにあたってもほんの数発では撃墜はできない ついにどすまりさが、れいむ軍からは「白黒の悪魔」とまでおそれられたどすまりさが遂に地面に着地した 「ゆゆっ!うってうってうちまくるんだよ!!」 「ちんっぽ!ここからさきにはいかせないよ!!」 防空壕のれいむ軍が唯一の陸戦用火器、軽機関銃でドスまりさを攻撃する 戦闘機帯も機銃掃射を繰り返すがドスまりさに対抗することはもうできない 「ゆっくりすぱーくっ!!」 たった一匹のスパイの流した情報によってこの島のれいむ軍はたった一度の攻撃で全滅してしまった この島の畑はまりさ軍に吸収されドスまりさの拠点となり今後周辺のれいむ軍を恐怖のどん底にたたき落とすことになる あとがき+補足 どすまりさ 全高、全幅、全長約6メートル 重量 諸説あり不明 武装 ゆっくりすぱーく 対空ゆっくりがん約50基 どすまりさ飛行形態 どすまりさが空挺作戦をするときの形態、可能な限り平らになり、両横に滑空用のグライダーを装着する この状態ではゆっくりすぱーくは使用不能、今まで数匹のドスまりさがこのグライダーを破壊され地面に激突、あんこの塊になっている この星のゆっくり達の資源は餡子と小麦粉です 餡子は小豆を栽培し加工することで、小麦粉は小麦を栽培し加工することで手に入れます ゆっくりの餡子や皮は品質が一定じゃないことがあるので戦局が悪くならないと使うことはないでしょう 餡子は火薬、石油 小麦粉は鉄やアルミになると脳内変換してください これでは説明不足かと思うので質問等があればスレとかで見たら答えます 続きは…未定です、虐めスレとは少し路線が異なると思うので「もう書くなバカ」とか言われたら続きは書きません でもそういうのがなければ気分しだいで続きを書くと思います では 8月20日 2113 セイン このSSに感想を付ける
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じっくりと虐待・2 前 「そう、これが最後のゆっくりになるとも知らずに……ナレーションを入れるとするとさしずめこんな感じか?」 ゆっくり達の”おいわい”から数時間後。お値段以上の光学迷彩スーツを着こんだお兄さんは、”おいわい”が終わって静まり返ったゆっくり達の洞窟を歩いていた。 ゆっくり達に気づかれないように依頼をこなすため依頼主から貸し出されたものだが、ここのゆっくりたちは見張りも立てずに眠りこけているため、 ほとんど意味のない物に思える。 だが、お兄さんはそれでもスーツを展開し姿を消しながら行動していた。 「まあ、用心に越したことはないからな。 俺の虐待方法も考えれば尚更だ」 そう小声でつぶやいたお兄さんは、妊娠したゆっくり達がいる出産室の前に立っていた。 出産室をはじめとする重要な部屋はドスが眠る巣の中心となっている広場に面して作られているため、ドスを起こすことだけは避けなければならない。 (ドスは……寝てるな) 広場の真ん中で眠りこけているドスと側近のぱちゅりーを見ながら、お兄さんは出産室に入っていった。 そこには、プチトマト程の赤ちゃんを茂らせた数十匹のゆっくりと、顎を膨らませた十匹ほどのゆっくりがいた。 「ゆ~……ゆ~……あかちゃんゆっくり~……」 「寝言までイラつかせるのかよ……本当にふざけたナマモノだぜ」 すべての母ゆっくりが寝ているのを確認すると、お兄さんはおもむろに懐からナイフと小瓶を取り出した。 「さて……これよりゆっくりへの介入行動を開始する……」 少しかっこつけた口調でお兄さんはつぶやくと、細かい何かを持ち、一匹の母れいむの茎に茂った赤ゆっくりに近づけていった。 ぷっくりとした体に浮かべたその表情は生まれた後の幸せを思い浮かべているのか、希望に満ちていた。 「ゆ~、ゆ~……」 だが、そんなゆっくりとした生活を送らせてやるつもりなど毛頭ない。 お兄さんは一匹の赤れいむを慎重につかむと、瞼をめくり裏側に小さな針を付け始めた。 母ゆっくりも、そして当の赤ゆっくりにすら気づかれることなく、職人のような手つきで赤ゆっくり達の瞼の裏側に針を取り付けていく。 数分もするとその茎についていた赤れいむ達すべての瞼に針が取り付けられた。 これでこの赤ゆっくり達は、希望に満ちた誕生の直後、喜びに沸く仲間たちの笑顔を見ることなくその光を失うだろう。 無事に生まれた赤ゆっくりが目を開くその瞬間、絶望するゆっくり達を思い浮かべるとお兄さんは小さく笑みを浮かべた。 「さ~て、まだまだ行くぞ……」 そうして赤ゆっくりへの工作を開始するお兄さん。 あるまりさの茎の赤ん坊たちは、にとり製の高熱になる鉄の棒で口の中を焼かれた。 これでこの赤ゆっくり達は口を動かすことが出来ず、液状のものを流し込まれない限り栄養を摂取できない体になった。 あるぱちゅりーの茎には、細かなガラス片を仕込んでおいた。 赤ゆっくり自体には何もしていないため、このぱちゅりーは一時安堵した後絶望することだろう。 その後もお兄さんの赤ゆっくりへの改造は続いた。 目を抉り、歯を抜き、足を焼き、髪を削いだ。 これらの工作をゆっくり達を起こすことなく、プチトマトサイズの赤ゆっくり達に行っていることからも、このお兄さんの技術の高さが伺える。 「こんなもんでいいだろう……」 お兄さんがすべての植物型妊娠をしているゆっくりに工作を終えた時には、巣に侵入した時から数時間が経過していた。 すでに夜は明け、外は明るくなり始めている。 とはいえ、プチトマトサイズの赤ゆっくり数百匹への工作を数時間で終えたと考えれば、驚異的と言える。 このお兄さんの技術、実は昔はゆっくり好きのゆっくり医だった経験の賜物なのだ。 ゆっくりというものは基本的に単純な生物である。 餡子の詰まった饅頭にすぎないゆっくり達は、コツさえつかめれば饅頭と同様、痛みなど感じさせることなくいじることが可能なのである。 もっともそのコツをつかむためには並大抵ではない修練が必要であるし、そもそも虐待目的でこの技術を身につける者などいない。 虐待お兄さんでこの技能を身につけているのは元愛護派という異色の経歴のこのお兄さんくらいなものであった。 そしてこの経歴こそが、この虐待計画の実行要因にこのお兄さんが選ばれた理由でもある。 「ん~っ! これで作業は終わりだな。あとはこいつをこうして……さて、帰るか」 長時間中腰で曲げっぱなしだった腰を伸ばし、小瓶に入った液体を動物型妊娠したゆっくりの餌に撒くと、お兄さんは静かに出産室を出た。 その表情には今日この群れに訪れるであろう素晴らしい絶望に対する期待に満ちあふれていた。 「監視を始めて一週間、今日でフラストレーション生活ともおさらば……ん?」 そんな意気揚々と歩くお兄さんの前で、一匹のまりさが家族用の部屋からのそのそと這い出ていた。 「ゆ~……おみずのみすぎちゃったよ。 ゆっくりちーちーするよ……」 言葉からするとどうも夜中に催して起きだしたようだ。 「何がちーちーだ……イラつくし……前祝いといくか……」 お兄さんはちーちーなどと腹の立つ言葉を吐いた饅頭を本番前の前祝いとして虐待することにした。 そう決めるとまりさが出てきた巣穴の中からつがいであろうれいむを起こさないように持ち出し、まりさの後をつけていった。 まりさは”といれ”と書かれたゆっくりたちの排泄のための部屋に入っていった。 お兄さんも続けて入ると、そこはゆっくり達の尿である砂糖水の甘ったるい匂いであふれ、べたべたとしていた。 そんな気持ち悪い部屋の一角で、まりさが汚らしい排泄口を下あごに作り、腹の立つ表情でプルプルと震えていた。 「ゆゆゆ! もうがまんできないよ! ちーちーするよ! すっき……」 まりさがそういったところで、すかさずまりさの前にれいむを置く。 光学迷彩のせいで、まりさにはれいむがいきなり飛び出してきたように見えただろう。 「ゆっ! れいむ! はやくどかないと……が、がまんできないよ!」 いきなりのことに驚き、我慢しようとしたまりさだが、ゆっくりの体の構造上排泄口が開いてしまえば我慢することは不可能である。 勢いよく放出されたまりさのちーちーは、眠りこけたれいむに降り注ぐ。 「ゆ~……なんだかあまくてなまあたたかいよ……ゆゆ? まりさ……?」 降り注ぐ生暖かい砂糖水に気がついたのだろう。目を覚ましたれいむの目の前には、恥ずかしそうにちーちをする愛するまりさの姿。 「ゆ! ゆ"げえ"え"え"え"え"! ぎだな"い"よ"お"お"お"! ば"り"さ"! ゆ"っ"く"り"や"め"て"ね"え"え"え"え"え"!」 まりさが自分にちーちーをかけていることに気がついたれいむは悲鳴を上げた。 いくら愛おしいつがいでもさすがに嫌なのだろう。 「でいぶがいきなりきだんでじょおおおおお! はやくどいてね! ちーちーはとめられないよ!」 「がぼがぼ! ゆっくりわかったよ……ゆゆゆ! うごけないよおおおおお! どぼじでええええええええええ!」 理由は簡単、お兄さんがれいむを押さえつけているからだ。 汚い砂糖水を浴びているれいむには透明な何かに押さえつけられていることなど気が付きようもなく、必死に飛び跳ねようと体を震わせながら、ちーちーを浴びている。 「がら"だがどけ"じゃ"う"よ"お"お"お"お"! だずけてばりざあああああ!」 「どめ"ら"れ"な"い"よ"お"お"お"お"! はやくどいでえええええ!」 すでに全体がふやけてアメーバのような輪郭になっているれいむはまりさに必死に訴えるが、まりさのちーちーは止まる様子はない。 向きを変えればいいようなものだが、それもお兄さんが押さえているためかなわない。 「ゆ"げげ……ぼっどゆっぐりじだかっだよおぉぉ……」 「でいぶううううううううううううううううううううううううううう!!!」 やがて限界を超えたれいむはでろでろとした小麦粉と餡子の塊へと姿を変え、息絶えた。 足もとに排泄されていたほかのゆっくりの砂糖水があったことと、ちーちーが生暖かいことが短時間での死につながったようだ。 「ゆうううううううううううううう! でいぶううううううう! どお"お"お"じでごんな"ごどに"い"い"い"い"い"い"い"い"!」 皮肉なことにまりさのちーちーはれいむが死んだ直後にとまった。 ついさっきまでドスを中心に楽しいおいわいをして、愛しいれいむと頬を寄せ合って眠っていたのだろうに、そのれいむを自分のちーちーで殺してしまうとは、 本当に間抜けな生き物である。 何はともあれ、馬鹿なゆっくりを久しぶりに虐待出来た。 お兄さんは満足すると、泣き叫ぶまりさとれいむの死体をトイレの奥にある砂糖水の尿を貯めておく穴に投げ込んだ。 「ぎゅべええええええええええ! ぎだないよおおおおおおお! だずけででいぶうううううう!」 「お前が殺したんだろうが……とりあえず前祝いの虐待終了。 すっきりー」 砂糖水に沈んでいくまりさを見たお兄さんは静かに呟くと、今日から起こるであろう素晴らしき日々に思いをはせ、小屋へと帰って行った。 お兄さんが洞窟を出た一時間ほど後、出産室から突然大きな叫び声が聞こえた。 「ゆゆゆ! みんなー! あかちゃんがうまれるよー! はやくきてー!!!」 ドスの朝の挨拶よりも早く聞こえてきたその声に、洞窟中のゆっくりが起きだした。 余談だがこの時の起床のごたごたにより、お兄さんがトイレで殺した夫婦がいなくなったことに誰も気づかず、そのまま忘れてしまった。 そうしてゆっくり達があわてて起きだしてくる中、いち早く状況を察知したドスとぱちゅりーが出産室に駆け込んできた。 「ゆ! れいむ! うまれるんだね!」 「むきゅ! 周りに草を集めてあげてね!」 「ゆゆ! ゆっくりわかったよ! あかちゃんまっててね!」 少し遅れてやってきたゆっくりたちにぱちゅりーが指示を出すと、ゆらゆらと赤ちゃんが揺れている母ゆっくり達の周りにさらに草が敷き詰められていく。 そうしている間にも、れいむの茎の赤ちゃんたちはぷるぷると揺れながら、生まれ落ちる瞬間を待っていた。 「れいむ! がんばってね! まりさがいるよ!」 「ゆ! まりさのあかちゃんもゆれてるんだぜ!」 「むきゅ! ぱちゅのあかちゃんもよ! あかちゃんゆっくりうまれてね!」 「「「「「あかちゃん! ゆっくりがんばってうまれてね!」」」」」 れいむのつがいであろうまりさが励ます中、他の植物型妊娠のゆっくりたちも騒ぎ出していた。 それを聞いて出産室を取り囲むようにしていたゆっくり達から声援が上がる。 今や巣は一丸となって赤ちゃんの誕生を待ち望んでいた。 そして、ついにその時は訪れた。 ポトリと、最初に声をあげていたれいむの茎から赤れいむが落ちたのだ。 「ゆゆ~! すごくゆっくりしたこだよ~! はやくおめめをあけてね!」 やわらかい草に落ちたその赤れいむにはすでに意識があった。 周りからの声援と両親の感動に震える声が聞こえていた。 れいむがいちばんさいしょにうまれたおねえさんだ。 まわりにはやさしそうなゆっくりがいっぱいいて、おかあさんもおとうさんもよろこんでる。 さあ、めをあけてあいさつをしよう! それからいっぱいほおをすりすりするんだ! そんな希望に満ちた想像の中、赤れいむは素晴らしい世界を見るべく、やさしいお母さんにあいさつをするべく目を開いた。 その瞬間、メチャリ。という鈍い音が聞こえた。 まるで寒天を爪でひっかいたようなその小さな音を、瞼の裏についていた針が目を引っ掻いたその音を、赤れいむは確かに聞いた。 「ゆ"ぎゃ"あ"あ"あ"あ"あ"あ! お"みぇ"みぇ"があああああああああああああ!」 突然出産室に響き渡った絶叫に赤れいむの母親はもちろん、洞窟のゆっくり達全員が凍りついた。 だが、その悲痛な声は始まりに過ぎなかった。 絶叫をきっかけとするように次々と生まれていく赤ちゃん達。 植物型妊娠したゆっくり達の茎から、二百近い赤ゆっくり達が希望に満ちた誕生を思い描きながら草に着地し、目を開く。 瞬間、響き渡るおびただしい絶叫。 「「「「「ゆううううううううううう! にゃにもみえにゃいよおおおおおおおおお! おきゃあああしゃあああんんん!!!」」」」」 「「「「「ぼおおおびべびゃびびぇびゃびびょおおおおおおおおおおお!」」」」」 「「「「「んー! んー!………んんんんんん!!!」」」」」 「「「「「ゆぎゃああああああああああああああああ! いぢゃいよおおおおおおおお!」」」」」 「「「「「「たちゅけておきゃああしゃああああああああああああん!」」」」」」 やさしい母親と柔らかい草に囲まれた、赤ちゃんにとってのゆっくりプレイスだったはずのその場所は今や地獄絵図と化していた。 どの赤ゆっくりも、生まれた瞬間に訪れた身体の異常と痛みに悲鳴をあげている。 もちろんそれはお兄さんによる工作による物であり、痛みが生まれた瞬間に訪れる用にお兄さんの技術で調節されていたのだ。 赤ゆっくりは非常に脆弱な存在だが、それは何も肉体に限ったことではない。 精神事態も非常に弱いため、茎についている状態で過度の振動や痛みを感じると、たとえ無事に生まれ落ちたとしても精神に異常を起こしてしまうのだ。 そのため、茎についている状態の赤ゆっくりは外部刺激に対する感覚が多少鈍くなっている。 お兄さんはその鈍くなっている間隔を見極め、茎についている状態ではぎりぎり痛みを感じないように工作していた。 その結果がこれである。出産室にあふれる様々な赤ゆっくり達。 本来目があるはずの場所から、諾々と黒い餡子交じりの涙を流す目のない赤ちゃん。 激痛とともに歯がないことに気が付き、ふがふがと聞き取れない悲鳴を上げる赤ちゃん。 火傷で口が固まり喋れない赤ちゃん。 焼かれた足の痛みに泣く赤ちゃん。 そして誕生とともに訪れた激痛に泣き叫ぶ、すべての赤ゆっくり達。 そして、赤ゆっくり達の悲鳴に、我に帰った母ゆっくりや群れのゆっくり達の絶叫が混じり始める。 「あがぢゃんがあああああああああああ!!」 「どおじでええええええぇぇぇぇぇ!! 」 「ゆぎゃ"ぁ"ぁぁ"!!! あ"がぢゃんが!! いぎゃ"ぁ"ぁ"!! 」 「ゆ、ゆゆ! みんなおちついてね!」 ドスが必死になだめるが、混乱は全く収まる様子はない。 そうしている間にも、母親や出産室を取り囲むゆっくりの中にショックを受けて餡子を吐き出してしまうものが現れる。 群れは完全に混乱の中にあった。 そんな様子を、お兄さんは小屋の中でモニター越しに眺めていた。 「うひょっはああああああああああああああ!!! 饅頭どもざまあ! 最高だぜ!」 ハイになり思わず叫んでしまうお兄さん。 うろたえるばかりで何もできないドスまりさと母ゆっくり達がお兄さんのテンションをさらに高めるのだった。 「お! あのぱちゅりー茎を食べさせるぞ!」 そうこうしているうちに、お兄さんは映像の中に茎にガラス片を仕込んでいたぱちゅりーを見つけた。 どうやら周りの赤ちゃんと違い、自分の赤ちゃん達に異常がないのに気がついて落ち着き始めているようだ。 その様子を見ながら、お兄さんは満面の笑みを浮かべて洞窟に仕掛けられた集音マイクをぱちゅりー親子に向けた。 「おきゃあしゃん! みんながゆっくちできてないよ!」 「むきゅぅ、こわいよお!」 「おかあしゃん、ゆっくちできないよおおお!」 「むきゅ! みんなあんしんしてね! だいじょうぶだからこのくきをたべておちついてね!」 「ゆ! しょういえびゃおにゃかしゅいたにぇ!」 「ゆっくちたびぇりゅよ!」 そう言って茎に群がる赤ゆっくり達。 「ぱちゅ! ぱちゅのあかちゃんはだいじょうぶなんだね!」 「むきゅう、とてもゆっくりしたかわいいあかちゃんなのよ」 無事に生まれ、茎を食べ始めた赤ちゃんがいることにドスも気がついたようだ。 混乱そっちのけでそれを見つめるドスの顔は、リーダーとしての素質はともかくゆっくりとしいた。 一瞬だけは。 「「「むーちゃむ……い、いちゃいよおおおおおおお!」」」 「「「ゆっくちできないよおおおおおおおお!」」」 「ど、どぼじだのおおおおおおおお!」 「む、むきゅうぅぅぅぅぅぅぅぅぅ! ぱちゅりーのかわいいあかちゃんがあああああ!」 無事だと思っていた赤ゆっくり達が茎に仕込まれたガラス片で口の中を傷だらけにしているのを見て、ドスと母ぱちゅりーの表情が絶望に歪む。 非常に痛快だったがドスがここまで無能だと思っていなかったお兄さんは、少し焦っていた。 「おなじみのゆっくり光線でも使えばいいものを……言葉がたどたどしいし……このドスは頭悪いのか?」 もし、このままこの群れが混乱したままでいると、お兄さんが受けた依頼的には少々まずいことになる。 なぜならばこの群れのゆっくりは、ゆっくりした状態とゆっくりしていない状態を交互に与えるように虐めなければならないためだ。 お兄さんは依頼主の仲介人だという兎に出された条件通り、虐めた後に再びゆっくりとさせる必要がある。 今回は混乱した群れをドスが立て直してくれると期待していたのだが……。 「そういや、やたらとぱちゅりーに頼ってたし……まずい! 頼む! 持ち直せ!」 虐待したのにゆっくり達を応援するという妙な事をするはめになったお兄さんだが、祈りが通じたのか側近のぱちゅりーが指示を出し始めた。 「むきゅ! ドス! 早くゆっくり光線でみんなを落ち着かせてね!」 「ゆ! わかったよ! ゆーっ!」 掛け声とともにドスの体からキラキラとしたキノコの胞子が飛び散る。 すると、胞子を浴びたゆっくり達が次第に落ち着き始めた。 「ゆぎゃああああああああ……ゆー、ゆー……あ。あかちゃんたちがあああ……」 「どぼじでええええええええ……ゆ! は、はやくたすけてあげてね!」 「むきゅ! 赤ちゃんを生んだお母さん達は赤ちゃんを口の中に入れて新しい育児室に行ってね!」 「「「「「ゆっ! ゆっくりわかったよ!」」」」」 「ドスは他ののみんなを広場に集めて事情を説明してね!」 「ゆゆ! わかったよぱちぇ! みんな、ゆっくりあつまってね!」 お兄さんの見込み通りドスはおろおろするばかりで何もできず、結局この非常事態に指示を出したのはぱちゅりーだった。 そのパチュリーの指示は的確で、群れのゆっくり達は瞬く間に統制を取り戻していた。 傷ついた赤ゆっくり達も、母親に口の中に入れられ、かねてから作られていた育児室に運ばれていった。 だが、だからと言って赤ちゃん達の苦しみが終わるわけではない。 やわらかい草ときれいな石、ドングリや松ぼっくりで作られたおもちゃが置かれた赤ちゃんのゆっくりプレイスである飼育室でも、痛みまで消してくれるわけではない。 「ゆげえぇぇぇぇぇ……いちゃいよぉ」 「おかぁしゃん……どきょなのぉ……みえにぇいよぉ……」 「ゆっくちできにゃいよぉ……」 そこに広がるのは、母親の口から出された後も変わらずうめき続ける赤ゆっくり達の地獄だった。 監視カメラでその光景を眺めるお兄さんの顔も自然とにやけてくる。 「さあて、ぱちゅりー……お手並み拝見だ」 その地獄にやってきた側近ぱちゅりーは、読んできた数匹のゆっくり達に次々と指示を出していった。 「むきゅ! 落ち着いた子には茎をあげてね! 口が動かない子にはかみかみして口に入れてあげてね! 」 「ゆっ! わかったよ! んーしょ!」 そう言って比較的容態の落ち着いている赤ゆっくりの母親たちは、頭の上の茎をゆらゆらと揺らしながら落としていった。 茎がなかなか落ちない母親は、ついてきた番のゆっくりが手伝っている。 「ゆ~! これをゆっくりたべてね! むーちゃ、むーちゃ……ぺっ!」 「ゆ~……むーちゃ、むーちゃ……ちあわせー」 様々な異常を持った赤ゆっくり達が、徐々にではあるが元気を取り戻してきたようだった。 あの惨状から良くもと、お兄さんも感心するほどの手際だった。 しかし、それに比べてドスまりさの手際は酷いものだった。 広場側の監視カメラに目を移したお兄さんが見たのは、ひたすらゆっくり光線に頼り、何もできないドスまりさの姿だった。 「ゆ~っ! みんなゆっくりおちついてね!」 「ゆ~、ゆっくりできるけどふあんだよ~」 「あかちゃんだいじょうぶなの~」 「せつめいしてほしいんだよ、わかるよ~」 「どす~、おねがいするちーんぽ~」 「ゆ~……、ま、まずはおちついてね! あとでぱちぇがせつめいするからね! ゆっくりしていってね!」 「「「「「「「「「「ゆっくりしていってね!」」」」」」」」」」 お兄さんはあきれ果てていた。 依頼を受けてからしばらく監視していたため、このドスまりさが多少頼りないことに気がついてはいたが、まさかここまでとは思わなかったのだ。 これではドスの能力を持ったただのゆっくりまりさに過ぎない。 だが、その一方で側近のぱちゅりーは大したものだった。 知識もさるものだが、何よりも行動力と決断力に優れ、今回の危機に際してもその力をいかんなく発揮していた。 「むきゅ! みんな、赤ちゃんたちはもう大丈夫よ!」 「どぼじでごんなごどになっだのおおおおお!」 「赤ちゃんの中には生まれつきこういう風に生まれてしまう子もいるのよ! 今回はそれが多かったのよ! 悲しいけどゆっくり理解してね!」 「ゆ~……けれどもおめめがみえなかったりぴょんぴょんできないこたちはどうするの? ゆっくりできないよ!」 「むきゅきゅ! 大丈夫よ、みんなで協力すればあの子たちもゆっくりできるわ!」 おろおろするばかりだったドスとは違い、広場のゆっくり達にしっかりと説明をしていくぱちゅりー。 お兄さんの工作を奇形だと考え、対応したのには感心した。 しかしドスまりさまで他のゆっくりと一緒になってほっとしているのにはお兄さんもあきれるしかない。 「赤ちゃんのお母さんたちは赤ちゃん達のお世話で働けないわ! だから明日からはご飯を多めにとってこないといけないわ!」 ぱちゅりーの言うとおり、二百匹もの赤ちゃんが生まれたのではさすがに餌の豊富なこの森とはいえ、今までのゆっくりとした狩りでは食糧供給が追い付かないだろう。 本来ならば赤ちゃん達を数匹の育児担当に任せ、狩りに出かけるはずだった母ゆっくり達が看病につかなければいけないのも痛手のはずだ。 これからすっきりして身ごもってしまうゆっくりのことも考えれば、群れの食糧事情は厳しいものになるだろう。 だが、側近ぱちゅりーはその危機を乗り切る計画をすでに持っていた。 すでに群れの中の幹部ゆっくりにドスそっちのけで指示を出している。 「むきゅ! 漁をしているまりさ達は明日から一日に二回漁に出てちょうだいね! 大変だけどお願いね!」 「ゆっくりまかせてほしいんだぜ! あかちゃんたちにおいしいおさかなをたべさせてゆっくりさせてあげるんだぜ!」 他のまりさより一回りも大きい、漁を取り仕切るまりさが力強く答えた。 その表情は歴戦の漁師のようにふてぶてしい自身に溢れている。 「むっきゅー! 森担当のれいむ達は赤ちゃんのために柔らかいものを集めてね! 冬のために腐らないものもだよ!」 「ゆっくりまかせてね! ちびちゃんたちもいっしょにがんばるよ!」 「ゆゆ! いっしょうけんめいがんばるよ!」 「あかちゃんたちにゆっくりしてもらうよ!」 二十匹近い子ゆっくりに囲まれた、いかにも肝っ玉母さんといった感じの森での狩りを担当するれいむが子供たちとともに張り切っていた。 今まで狩りの練習をしていた子ゆっくり達も飛び跳ねながら赤ちゃんのために闘志を燃やしているようだった。 「ありすは巣をもっと広げて、狩りの道具をもっともっと増やしてほしいわ! むきゅ! 大変だけど頑張ってね!」 「まかせて! とかいはなおうちにして、みんなにせんれんされたどうぐをいっぱいつくるわ!」 家事や道具作成をしきっていたありすが自信満々に声を張り上げた。 作業部屋に置いてあるまりさのオールや狩りの道具を見ても、このありすが自信通りの技術を持っていることがわかる。 「むきゅ! ドス! 明日から大変だけど頑張りましょうね!」 「ゆー! やっぱりぱちぇはすごいね! みんな! ぱちぇのいうとおりにがんばればゆっくりできるからね! がんばるよ! えいっ、えいっ、ゆーーーーーー!」 「「「「「「「「「「えいっ、えいっ、ゆーーーーーー!!!!!」」」」」」」」」」 かわいそうな赤ちゃん達を助け、ゆっくりするために一致団結するゆっくり達。 そんなゆっくり達を見てお兄さんは三日月のように口を歪め、笑っていた。 「なるほどね~……頼りないドスと四匹の幹部たちかあ~……」 そう呟き、ドスまりさとぱちゅりーをはじめとした四匹の幹部ゆっくりたちを見つめるお兄さんの頭では、すでに次の虐待の計画が出来始めていた。 「うふふふふふふふふふふふふふ……さあがんばってゆっくりしろ~ゆっくりども。そして次の虐待だあ~……うふふふふふふふふ」 ピンチを脱し、再びゆっくりし始めた饅頭どもが絶望に落ちるその瞬間を想像して、再びお兄さんはどこかの魔法使いのように笑うのだった。 ※ゆっくりが幸せな状態から一気に不幸な状況に陥る展開が好きで、何も考えずに書き始めたところこのようなssになってしまいました。 ゆっくりとした生活→ばれないように虐待→ゆっくりする→ばれないように虐待…… というサイクルを繰り返すためにドスを中心とした賢いゆっくり達になってしまいましたが…もう少し馬鹿だったりゲスだったりしたほうが良かったでしょうか? 続きは少し先になってしまうと思いますので、ゆっくりと期待せずにお待ち下さい。 続 このSSに感想を付ける
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※今までに書いたもの 神をも恐れぬ 冬虫夏草 神徳はゆっくりのために 真社会性ゆっくり ありすを洗浄してみた。 ゆっくり石切 ありすとまりさの仲直り 赤ゆっくりとらっぴんぐ ゆねくどーと ※今現在進行中のもの ゆっくりをのぞむということ1~ ※注意事項 まず、上掲の作成物リストを見てください。 見渡す限り地雷原ですね。 なので、必然的にこのSSも地雷です。 では、地雷原に踏み込んで謙虚ゲージを溜めたい人のみこの先へどうぞ。 _______________________________________________ 弥生、三月。 朗らかな陽射しが大地にあまねく生命を祝福する、緑の季節がまた巡り来た。 「春ですよー!」 高らかに歌声を響かせる春告精が誘うのは、西からの柔らかい風と、その風が伝える優しく力強い春の息吹。 野山を鎖す白い雪は足早にどこかへと消え去って、大地はモノトーンから草花の鮮やかな彩へとその装いを変えている。 その多様な彩の合間に目を配れば、冬の厳しい環境を潜り抜けて春の恵みにありつくことが出来た多くの命の歓喜の様子と、 余裕を得た彼らが新たに生み出した真新しい命を見つけることもできただろう。 「むーしゃむーしゃ!」 「むーしゃむーしゃ!」 遠く妖怪の山にまで連なる広大な山地の一角、杉林の斜面。 ここにも一組、生まれて始めての冬をなんとかやり過ごした一組の生命が早速がつがつと集めてきた昆虫や草花を頬張っていた。 草木は枯れ果て、昆虫も姿を消す冬場はゆっくりにとって忍耐に次ぐ忍耐の季節だ。備蓄食料の在庫管理を怠って、敢え無く おうちの中での餓死を迎える家族の存在もそう珍しいことではない。 だから、そうした食事制限の一切から解放される春の訪れはとても幸せであるもののはずだった。 「むーしゃむーしゃ、へっくちょん!」 「むーしゃむーしゃ、はっくちょん!」 だが、斜面に掘り抜かれたおうちの奥底で備蓄の残余を食い尽くす勢いで食料に向かう二匹には何か、ゆっくりがゆっくりで あるために重要不可欠なものが足りない。 足りないだけでなく、語尾に余分なものがついていた。 「ゆゆっ。おかしいよれいむ! しあわせー!なごはんさんなのに、おあじがぜんぜんしないよ! へっくちょん!」 「ゆゆっ!? おかしいねまりさ! しあわせー!なごはんさんなのに、れいむもおあじがしないよ! はっくちょん!」 口に含んだご飯のかけらを飛ばしながら、ぎゃあぎゃあ騒々しく言い交わす二匹。実にゆっくりできていない。 そう、二匹に足りないのは「しあわせー!」だ。 腹いっぱい、おいしいごはんを食べているはずなのに、何故かしあわせー!を感じない。 むーしゃむーしゃをいくらしても、しあわせー!の代わりに出てくるのはゆっくりできないくしゃみばかりなのだ。 「「これじゃむーしゃむーしゃしあわせー!できないよ! ぷんぷん、ぷく……へっくちょん!!」」 誰が悪いのか、なんでくしゃみが止まらないのか。 ここにいるのはれいむとまりさの二匹だけなのだから、向ける相手は勿論どこにもいない。 とにかくやり場のないゆっくりできない気持ちを表現しようと二匹は「ぷんぷん、ぷくー!」としてみようとしたが、 頬を揃ってぷっくり膨らませたところでくしゃみが止まるわけでもなく。 吸い込んだ空気を残らず吐き出し、二匹は少し困った顔をお互い相手に向け合った。 「れいむ! まりさはかぜさんかもしれないよ! へっくちょん!」 「まりさ! れいむもかぜさんかもしれないね! はっくちょん!」 馬鹿は風邪を引かないというけれど、ゆっくりだって風邪を引くものらしい。 そういえば、あんまり気にしていなかったけれどどちらも少し涙っぽい目をしているようだ。 実にゆっくりとした感覚でようやく自分と相手の身体の異常を感知し、二匹は「ゆんっ!」と揃って頷いた。 「「おねつをたしかめようね! すーり、すーり!」」 わざわざそう宣言して、二匹はお互いぴったりすりすりと身体を寄せ合う。 といっても、親愛の表現や繁殖行為と違って、すり合わせるのはおでことおでこ。 難しい顔をつき合わせて「ゆゆゆ……」と唸り、額を突きあわせること数秒間。 「おねつはないみたいだね! へっくちょん!」 「じゃあかぜさんじゃないね! はっくちょん!」 すっと身を離した二匹は一瞬ぱぁっと笑顔を咲かせ、でも流石に直後のくしゃみに何にも問題が解決していないことに気付いたらしい。 すぐに顔を曇らせて、「ゆぅぅん」と慰めあうように身をすり合わせた。 『はーりゅでーしゅよー♪』 本当なら嬉しいはずの、春の訪れを告げるそんな声も今日のところはちっとも心が躍らない。 ごはんはおあじがしなくて、だからいっぱいたべてもおいしくなくて、おなかがいっぱいになるだけではあんまりゆっくりできなくて。 風邪なら、おなかいっぱい食べていたらその内治ってしまうけれど、風邪でないなら治し方だってわからない。 さっきの呼び声も、なんだかちょっとゆっくりできない感じがした。 空を飛んでいるはるさんは一人だけのはずなのに変に重なって聞こえたし……おみみも少し、おかしくなっているのかもしれない。 おうちの外に見える世界はとーっても蒼く晴れ渡っているけれど、二匹の心の中はどんより分厚い雲で覆われて、しあわせのおひさま なんてほんの少しだって目にすることはできなさそうだった。 というかそろそろ、二匹の心の雨雲からおめめを抜けて大粒の雨が降り出しそうな。 「ゆう、こういうときは……」 涙目まりさはどうしたらいいか考える。 これが何なのか、どうしたらいいか、まりさとれいむにはわからない。でも、物知りのぱちゅりーなら知っているかもしれない。 そうだ、物知りのぱちゅりーは色々まりさやれいむが知らないことを知っている。この間だって言っていた。 はるさんはとってもゆっくりできるけど、ゆっくりできないこともあるって。 『はーりゅでーしゅよー♪』 ゆっくりできなくなったのは、春さんが来てからすぐじゃなくて、このお声が重なって聞こえるようになってからのことで…… あ、ちょっと待て。このお話はなにか関係あるような気がしてきた。 ……ええと、それはなんだっけ? 「……そうだ! ぱちゅりーが、はるさんのあいだはかふんしょうさんになることがあるかもしれないっていってたよ!」 「ゆゆっ。かふんしょうさん?」 思い出した! まりさが狭いおうちの中でぴょこんと飛び上がって喜ぶと、れいむがびっくりした顔でずるずるっと反対側の壁までずり下がった。 まりさはぱちゅりーのお話を知っていて、れいむはそのお話を全然知らない。 何故って、冬篭りを終えて無事春を迎えた群れのみんなが初めて広場に集まった時、年長さんのぱちゅりーがまりさたちみたいな 初めて春を迎えるゆっくりたちに色々春の過ごし方を教えてくれたのに、れいむは陽気に中てられてゆぅゆぅ寝息を立てていたもの。 「ゆゆっ。そっか! れいむあのときすーやすーやしてたもんね! へっくちょん!」 「あのときっていつかわからないよ。ゆっくりせつめいしてね! はっくちょん!」 少し、得意げな顔でふんぞり返ったまりさにれいむは気分を害したらしい。 ぷくー、と膨れる番の姿にまりさは楽しそうにくすくすと笑って、でもそれ以上は意地悪せずに素直に教えてあげることにした。 「ぱちゅりーはおはなさんがとってもゆっくりできているときに、かふんさんがいっぱいとびだすと、ゆっくりかふんしょうになるって いってたよ!」 花粉症になると、匂いがわからなくなったり、味がわからなくなったり、くしゃみが出たり、涙が出たりするらしい。 それって風邪さんとどう違うの?って質問も当然出たけれど、そこはぱちゅりーも上手く説明はしきらない様子で。 『むきゅ、それはほんとうにかふんしょうさんになっちゃったらわかるわ。とにかく――しちゃだめよ』 なんて誤魔化していたのも、まりさはついでに思い出した。 「……ゆぅ。そういえば、ほかのせつめいもそんなかんじでおわっちゃったようなきがするよ……っくちゅん!」 ぱちゅりーは確かに物知りだけど、あまりその知識は役に立たないような。 そんなことに思い至って、まりさは小さめの溜息を吐いた。うん、ぱちゅりーを頼りにするのは少しだけ考え直したほうがよさそうだ。 もっとも、その場にいたけど全く話を聞いてなかったれいむは全く違う感想を抱いたらしい。 「じゃあ、いまはおはなさんはゆっくりできてるんだね! それはとってもゆっくりしてるよ!」 ゆっくりしているのは、いいことだ。 それがおはなさんだって、まりさやれいむに食べられるむしさんだって、ゆっくりしている時は邪魔しちゃいけない。 それでまりさやれいむたちが少しゆっくりを我慢しなくちゃいけないとしても、他人のゆっくりを台無しにするのはとっても ゆっくりできないことだった。 そんな純粋なれいむの喜びには、まりさとしても少しも異論はない。 ――とてもたいせつな何かを忘れてしまっているような気が、ほんの少しだけしたけれど。 でも、そんなの、思い出せないならどうでもいいことなんじゃないだろうか。 「「おはなさん、かふんさん、はるさん、ゆっくりしていってね……へっくちょん!」」 だから、まりさはそれ以上考えなかった。れいむはもとより知らないのだから、何かを思うこともなかった。 とにかく自分のゆっくりは、後回しだ。かふんさんが思う存分ゆっくりしたら、自分もその後でゆっくりできるはずだから。 『はーりゅでーしゅよー♪』 まりさとれいむが春と野山の草花に向けて投げかけた心からの祝福に応えるように、またおうちの外からそんな声がやっぱり 幾重にも重なりあって聞こえた。 二匹はそれを春からの返事なのだろうと、漠然と信じた。 もちろん春という季節が、なにがしかの言葉を紡ぐことなんてありえないのだけれど。 「れいむ。はるさん、とってもゆっくりしてるよ!」 「まりさ。はるさんにもういっかいごあいさつしようね!」 しかし、信じたれいむとまりさは何とかして春の顔を見たくなった。 見て、きちんと笑顔で挨拶に答えてあげたくなった。 だからいそいそとおうちの玄関まで這い出して、もう一度、お花さんにも負けない満面の笑みを咲かせてお決まりの挨拶を投げ返す。 「「ゆっくりしていって……ゆげぇ!?」」 ……投げ返す、つもりだったのだけど。 その挨拶半ばにして、お外を眺め渡した二匹の顔が奇妙な声と共に歪んだ。それはもう、傍から見ていてこっけいなほどに。 どう見てもゆっくりできていない顔立ちを見せて、二匹はその場で凍り付いてしまった。 『ゆーっきゅり、しちぇいっちぇねーー!』 おうちをぐるりと取り巻く『春』は、愕然としたままのれいむとまりさに向けて確かに言葉を返した。 驚愕に揺れる二匹の目にもそれらは確かにとってもゆっくりとした笑顔で咲き乱れていた。 ……ただ、その『春』たちが咲き乱れている場所が、失望だったり絶望だったり諦観だったり逃避だったり、とかくゆっくりには 程遠い顔をした群れのゆっくりたちの頭に生えた茎の上だったりするのだが。 『はーりゅでーしゅよー!』 みんなの頭に鈴生りに生る『春』は、眼下の親の悲歎なんか気付きもしない様子で愛らしい声を揃えて春を謳う。 その頭に被るのは、一様におそろいの三角帽子。親の種類なんてまるで関係ない。 それは形も違えば色も違う。赤ちゃんたちのお帽子は、つばのない白い三角帽子に大きな赤いリボンが付いている。 (『かふんしょうさんにかかったら、はるですよー、っておこえがきこえてるあいだはおうちをとじまりしておそとにでちゃだめよ』) ……そういえば。 目にしたものの衝撃から立ち直らないままのまりさは、ようやくのことであの日ぱちぇりーが教えてくれたことの続きがどんなもの だったかを思い出していた。 (『そうしないと、からだにたまったかふんさんのせいではるさんのあかちゃんができちゃうから、きをつけてね』) そうだ。ぱちゅりーは『はるさんのあかちゃん』ができるといっていたんだ。 教えをぼんやりと思い出すうちに、頭頂部のむずむずとした痒みと、身体からどんどん餡子が抜けていく感覚が同時にまりさを襲った。 ここまで来たらさすがに、まりさの頭でも深く考えなくたって分かる。 「どおじでごんなごどになっでるの……?」 それでも自分の頭を確認するのが怖くて、ほんのわずかばかりの期待を込めてまりさは隣のれいむの方をちらりと見た。 「「……ゆげげっ」」 ちらりと見て、やっぱりこっちを縋るような目で見ているれいむと視線が衝突して、そのままお互いの頭の上へと視界を移動させて、 それから同時に小さな悲鳴と少量の餡子を口から吐き出した。 二匹の期待も空しく、真っ白な雲が漂うお空を背景にしてすらりと伸びた緑の茎。 そこに鈴生りに生るのはれいむともまりさとも形も違えば色も違う小さな赤ちゃん、三匹ずつ。 未だ目覚めぬその小さな赤ちゃんたちのお帽子は、つばのない白い三角帽子に大きな赤いリボンが付いている。 つまり、群れのみんなが浮かない表情で見上げている赤ちゃんたちと全く同じ種類の、ゆっくりの赤ちゃん。 極めつけは、この子達の背に生えた昆虫のような羽だ。こんなもの、この群れのゆっくりには一匹だって生えていないのに。 どうしてこんな事にと聞いても応えてくれそうな相手はいない。 よく見ると、今のこのことお外に出ていたのは自分と同じで春を迎えたのは生まれて始めての若いゆっくりしかいないようだったから。 つまり、大人のいうことをきちんと聞いていなかったお子様ばかりだったということで――まりさはこれからはきちんと、年を取った ゆっくりの言うことは聞いておこうと心に決めた。 ……それは今この場の問題を解決するには遅すぎる決意だったけれど、これからのゆん生にはとても大切なことではあるはずだ。 特に、そう。たとえば望まずして出来てしまった子の育児とかのために。 「ゅっ……」 「……ゅきゅっ……」 せっかくの陽気だというのに、『これから』を想像してげっそり疲れきってしまったまりさとれいむが見上げる先。 普通のにんっしんっならありえない速さでゆっくりとしての形を成してゆく赤ちゃんたちが、早くもごにょごにょと意味を成さない 音の羅列を口から漏らし始めている。 実際に茎から生れ落ちるのはまだ先のことだろうけど、この分なら目を見開き元気な挨拶を『両親』に向けて放つのは遠くない。 「……れいむ。ふゆごもりようのごはん、まだのこってたっけ」 「うん、まだのこってるよ……」 感情の篭らないぼそぼそとしたまりさの問いかけに、応えるれいむの声も似たようなもの。 それを耳にしたまりさは「そう、よかった」と呟いて、別に今更残っていなくても大丈夫かと思いなおした。 かふんしょうさんで赤ちゃんが出来てしまった以上は、今更お外に出る制限なんてないのだから。 お外にさえ出てよいのなら、ごはんは幾らでも集められる。季節はもう、寒くて野山にごはんの乏しい冬ではないのだし。 「「「「「「ゅきゅ……ゅきゅっ。ゆゆっ!?」」」」」」 そう。それはとても忌々しいことではあるのだけれど。 陰鬱な想いを消せないままに、まりさは頭上にその声を聞いた。 「「「「「「おきゃーしゃん? おきゃーしゃん、ゆっきゅりしちぇいってにぇ!」」」」」」 そう。忌々しいことに、春はまだ、目覚めたばっかりなのだ。 * * * 「おお、子宝子宝。おつむの中身同様、春めいたことで実に結構な騒ぎですね」 春だというのに暗雲たちこめるゆっくりプレイスを見下ろす木の枝で、一匹のきめぇ丸が嘲笑とも苦笑ともつかない笑いを 右往左往するゆっくり達に向けている。 いや、ひょっとするとそれは憐憫、もしくは共感に類する笑みだったのだろうか。 覇気のない笑顔を浮かべるきめぇ丸の頭の上には、ごたぶんにもれず白い帽子を被った赤ちゃんを実らせた茎が伸びていたのだから。 「「「ゆーゆゆー♪」」」 きめぇ丸は知っている。 今頭の上で楽しげに歌声を合わせているこの子達は、春の終わりには前触れもなく風に誘われるようにしていなくなってしまうことを。 人里や多くのゆっくりの間では、初春に突然大量発生し、初夏までにいっせいにどこかに姿を消してしまうと思われている準希少種、 ゆっくりりりー。 それがこの赤ちゃんたちの名前だった。 彼女たちは背中に生えた透き通った翅に五月の風をいっぱいに受けて、どこか根付くべき土地を求めて旅立ってしまうのだ。 そしていつかどこかの大地にたどり着き、そこに根を下ろし、雨にも溶けず鳥獣や昆虫にも食われずに済んだ一握りの子供だけが、 ゆ木となって森を作るという。 そうしてゆ木となったりりーほわいとたちは、歌うことなく、しゃべることすらなく春までひたすらに静かに過ごす。 実は付けないがゆっくりの好む味の葉を多く大地に落とす森として、多くのゆっくりを惹きつける。 「おお……おろかおろか」 「「「ゆっ♪ ゆっ♪」」」 やはりこの年に成体になったばかりの若いゆっくりとして、うかつにもその罠に引っかかってしまったきめぇ丸は頭上のわが子を リズミカルに揺らしながら、今度ははっきりとした自嘲の笑いを口元に浮かべた。 そう、あまあまな落ち葉こそがりりーのゆ木が集まるこの森の罠だ。 春に枝いっぱいの白百合に似た花を咲かせ、多くの花粉を飛ばし――落ち葉の味に惹かれてやってきたゆっくり達に、わが子を 数多宿らせるための。 きめぇ丸は同族に教わった知識をなぞって軽いため息をつき、湿度の高い視線を背後に聳える木の幹へと向けた。 上空から見れば枝葉にすっぽり覆い隠されたその部分の樹皮に、顔のような凹凸が隠されていることにどうしていま少しばかり 早く気づくことができなかったのだろう 「はーるでーすよー♪ ゆっくり、していってね♪」 「おお、拒絶拒絶。子供を育てるということまで含めて、悉く拒絶させていただきます」 その顔のような凹凸――ゆ木となったりりーの成体の歌声に、きめぇ丸は酷く嫌そうな口ぶりで応じた。 そして、なんの躊躇もなく茎を赤ちゃんごと幹、りりーの顔のある部分のすぐ傍へと叩き付ける。 声もなく弾ける、三匹の赤ちゃんゆっくり。飛散した微量の餡子が、りりーの顔をわずかに汚した。 りりーはわが子の無残な末路に一瞬不満そうに目を細めて――しかしすぐに、何事もなかったかのように花のような笑みを咲かす。 「はーるでーすよー♪」 「おお、非情非情。まああれだけ実が生っていれば十分なのでしょうかね……」 不本意に生まれた子だ。育てず、異物として排除するゆっくりはこのきめぇ丸に限ったことではない。 だからこそ、膨大な花粉を飛ばし、数多の子供を作らせる。 別に気にする必要も感じないのだろう、無邪気なゆ木りりーの歌声にきめぇ丸こそ呆れた、いささか非難を含む目を声の主へと向けた。 地上から聞こえるのは、多くの嘆きと幾らかの怒り、そしてたくさんの幼過ぎる歌声と、末期の言葉。 理不尽な子宝を得て育てようと決意するもの、間引くことに決したもの、つがいや姉妹間で意見が纏まらず争いとなったもの、 春から若ゆっくりの間に――多くはこの森に対する無知、油断による――不幸が齎されたゆっくりプレイスはいつも以上に賑やかだ。 そんなゆっくりプレイスの喧騒と、ゆ木りりーの歌声とを聞きながら、きめぇ丸はふわりと空へと飛び上がる。 花粉の季節そのものは、もうじき一応の収まりを見せるはずだ。収まったら、またここに来よう。 きっとその頃には、ある程度育った子供とその若い親を中心にもっと素敵で、悲劇的な光景が幾つも繰り広げられているだろうから。 地上を一瞥したきめぇ丸は、最後に心底からの笑いを見せた。 春が、赤ちゃんが、通常のゆっくりが言うようにひたすらゆっくりできる存在だというならば。 「おお、祝福祝福。赤ちゃんといっしょに、ゆっくりしていってね!」 地上で失意に打ちのめされる若いゆっくりたちに、それができないはずがないのだから。
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「ゆっくり破壊爆弾」(後編) 前 「ゆぐぐぐ……わがままいうとゆっくりできなくするよ!!!」 怒りに我を忘れ、野菜クズを全て口に含んだ母れいむは子供たちを追いかけ始める。 最初、口移ししてもらえると思い込んで、母れいむのほうへ跳ねていった子供たちだったが…… パンッ!!! 一匹の赤ちゃんまりさの犠牲で、全てを思い出した。 自分たちは、母親に近づいてはいけない。近づいたら死んでしまうのだ、と。 そして、何のために母親が自分たちに近づいてくるのか、その理由も理解した。 「ゆぎゃあああぁぁあぁ!!!おかーしゃんこっぢごないでえええぇぇぇぇぇ!!!」 「いやだぁぁあぁぁぁぁぁ!!!ゆっぐぢでぎなぐなるうううっぅぅぅ!!!」 「わがままいうこはおかーさんのこどもじゃないよ!!ゆっくりりかいしてね!!」 逃げ惑う子供たちを、母れいむは鬼の形相で追い掛け回す。 振り返ってはいけない。立ち止まってはいけない。この追いかけっこで追いつかれることは、死を意味するのだから。 だが、赤ちゃんと母親では体力の差は歴然。蓄積した疲労で、赤ちゃん達はすぐに動けなくなってしまう。 「もうわぎゃままいわないがらあぁぁあぁぁ!!!」「ごはんのごぢまぜんがらああぁぁぁぁ!!!」 「ゆっ!!さいしょからそうすればよかったんだよ!!!ゆっくりはんせいしてね!!!」 藁にも縋る思いで、命乞いをする赤ちゃん達。 母れいむは床にご飯をばら撒いて、子供たちから離れていく。 残された赤ちゃん達はずりずりと這いずり、曇った表情のままゴミクズの山に噛り付いた。 「むーちゃむーちゃ……ふしあわせー」「ゆっぐ……ゆっぐぢしたいよぉ…」 「ゆっ!わがままなのがいけないんだよ!ばくはつしたくなかったら、ゆっくりいうことをきいて……ね…?」 そこまで言いかけて、母れいむはやっと正気を取り戻す。 母れいむの衝動を支えていた怒りはどこかに消え失せ、1匹の赤ちゃんの残骸だけが散乱している。 視線を移せば、そこには苦々しい表情で野菜クズを食べる赤ちゃんの姿。 母れいむは、自分がしてしまったことをはっきりと理解した。 「ゆあっ!?ゆがあああぁぁっぁあ!!!れいぶのあがぢゃんがあああああぁぁぁぁぁあぁ!!!」 叫んだところで無意味だ。 1匹の赤ちゃんが死んだという結果は、どう足掻いても覆らない。 「ゆうううぅぅぅぅ!!!!あがぢゃんのぶんもゆっぐじずるがらねええぇぇぇ!!!!」 赤ちゃんの残骸に混じっていた帽子に頬を寄せて、誓う母れいむ。 頑張って赤ちゃん達とゆっくりして、まりさと会える日を待ち続けよう。 そして、皆でこのゆっくり出来ない場所から出て、外でゆっくりするんだ。 そう決意した矢先の、出来事だった。 「れいむ。赤ちゃんが1匹になったら、まりさに会わせてやるよ」 「……ゆっ!?」 それは、悪魔のささやき。 「残り9匹のうち8匹赤ちゃんが死んで、残り1匹になったらまりさに会わせてやる。 分かるか?『赤ちゃんを8匹殺せ。そしたらまりさに会わせる』って言ってるんだ」 「ゆゆっ!?そんなことできないよ!!ゆっくりまりさにあわせてね!!」 母れいむの発言に気を悪くした男は、母れいむの顔面を踏みつけた。 「ゆぎゅっ!?」と気味の悪い悲鳴を上げる母れいむに、男は唾を吐きかける。 「僕は提案してるんじゃない。命令してるんだ。赤ちゃんを8匹殺せ。1匹は残しておけ。 それができたら、まりさに会わせてやる。元の巣にも帰してやる。今さっき1匹殺したじゃないか。出来ないわけないだろう」 母れいむは、無言でいやいやと首を振った。 自分のパートナーに会うために、子供を殺すだなんて……正気の沙汰じゃない。 今、決めたばかりなのだ。もう誰も失わない。皆でゆっくりして、皆でまりさに会って、皆でここを出るんだ。 「焦る必要はない。期限は決めないから、ゆっくり殺せばいい。ただ……ゆっくりしすぎると間に合わないぞ」 間に合わない。子供たちの命を奪うのを躊躇っていると、まりさが助からないということ。 ゆぎぎと唸る母れいむ。男はクククと笑いながら、部屋から出て行った。 「ゆぅっ…」「おきゃーさんこっちこにゃいでね!」 ふと母れいむが顔を上げると、生き残った9匹の赤ちゃんは震えて声を上げる。 先ほどの男の話を、赤ちゃん達も聞いていたのだ。 母れいむがぴくっと身体を動かすたびに、9匹の悲鳴が部屋中に響き渡る。 先ほどの母れいむの暴挙を考えれば、当然の反応である。 「いやあぁあぁぁぁぁぁ!!!」「ごっぢごないでねえええぇぇぇ!!!」「おがーざんはむごうでゆっぐぢしでにぇ!!!」 「ゆっ……そ、そんなこといわないでね!!!みんなでゆっくりしようね!!」 赤ちゃんが自分の命を守るために叫ぶ言葉が、母れいむの心をがりがりと引っ掻く。 しかし、そんなことはお構いなしの赤ちゃん達は、母れいむへの罵声を止めようとはしなかった。 「おがーさんどゆっぐぢしたら、れいみゅたちしんじゃうよ!!」 「おがーじゃんのせいでゆっぐぢでぎないよ!!ゆっくりはんせいしてにぇ!!」 「どぼぢでぞんなごどいうのおおおおおお!!??おがーさんわるぐないのにいいいぃぃ!!!」 母れいむに降りかかる言葉の槍は、男が次の餌を持ってくるまで止まなかった。 そして母れいむは、子供たちを恐怖のどん底に突き落としておきながら、自分に罪はないと言い張るだけ。 ただひたすら必死に、「お母さんは悪くない。れいむは悪くない」と自分に言い聞かせ続けた。 3日間、母れいむは悩み続けた。 子供たちとこのままゆっくり出来ない日々を過ごすか、まりさを救うために子供を犠牲にするか。 だが頭を痛めて産んだ子供を、自ら殺すなどできるはずがなかった。 「この前だって綺麗あっさり殺したじゃないか。それとまったく同じことをすればいいんだ」 毎回毎回、餌を持ってくる毎に男はささやく。 母れいむの心の隙につけ込もうと。最悪の結末を導くために。 周りの赤ちゃん達にも聞こえるように、人間の姿をした悪魔はささやく。 「ここにずっといたって、全然ゆっくりできないよなぁ?」 「こんな性格の悪い赤ちゃんと、これからずっとゆっくりするのか?」 「みんなお前のこと嫌ってるぞ。そんな子供とゆっくりできるのかい?」 「昨日出来て、今日出来ないなんて事はないだろう?……やっちゃえよ」 「もしかしたら、明日にはまりさ死んじゃうかも…」 母れいむの餡子脳に染み込む、男の言葉。 聞いているうちに、納得してしまいそうになる自分に気づいて、ぶるぶると首を振る。 それが、母れいむに許される唯一の抵抗だった。 そして、男が去っていくと食事の時間だ。 「むーしゃむーしゃ!ぺっ!!……おちびちゃんたち!ゆっくりたべてね!」 母れいむが餌の山から離れると、赤ちゃん達が食事を開始する。 ゆっくり出来ない現実を呪いながら。その全責任を母親に押し付けながら。 「おかーしゃんのせいでゆっくちできないよ!!」 「ゆっくちあやまってにぇ!!」「まりしゃにもあやまっちぇね!!!」 口移しで食事をすることが出来ない、そして母親とすりすり出来ないストレスは、赤ちゃん達の性格を捻じ曲げていく。 一方、何も食べていない母れいむも、空腹によるイライラは限界に達しつつあった。 「うるさいよ!!わがままいわないでゆっくりたべてね!!!」 「ゆあああぁぁぁぁん!!おかーしゃんこわいよおおぉぉぉ!!!」「ゆっくちできないいいぃぃ!!!」 3日の時間を経て、母れいむの心は傾き始めていた。 残り9匹となった自分の子供と、最愛のパートナーであるまりさを、れいむは天秤にかける。 どちらも大切な家族。ずっと一緒にゆっくりしたい。皆でゆっくりしたい。 そんな風に思ったこともあった。 でも、今は違う。 「おかーしゃんのばかぁ!!!」「どうちてゆっくちしゃせてくれないの!?」 「まりしゃはおかーしゃんのかわいいこどもたよ!!!」「れいみゅがかわいくないの!?」 ただでさえ空腹でストレスが溜まっているのに、周りの子供たちは暇さえあれば自分を罵ってくる。 自分はゆっくりしてただけ。自分は何も悪くない。悪いことをしていない。 悪いのはあのお兄さんだ。お兄さんが罠で自分を陥れたんだ。だかられいむは悪くない。 それなのに、どうしてここまで言われなくちゃいけないの? 赤ちゃんなんか、いなければ良かったのに。れいむは、まりさだけいれば十分なのに。 まりさ、会いたいよ、まりさ。はやくでてきてよ。あいたいよ、あいたいよ。 あいタイよ。ハやクでてキテヨ。マリサまりサマリさアイタイヨまリサアいたいヨデテきてヨ。 れいむの心は、黒く濁りつつあった。 そして、3日目の夜。一家に変化が訪れた。 「ほら、今日の餌だぞ」 いつものように、食料を持ってくる男。 その量は決して十分といえるものではない。 赤ちゃん達に食べさせたら、れいむの分が無くなってしまうのだ。 全ての食料を赤ちゃん達に譲っていた母れいむ。その空腹は限界に達しつつあった。 『おなか…すいたよぉ……』 れいむの視界がぼやける。遠くで見守っている赤ちゃん達の姿が……消えていく。 もはや、正常な思考が出来る状態ではなかった。 「おかーしゃん!?なにしてりゅの!?」 「さっさとごはんをよういしてにぇ!!のろまなおかーしゃんはきらいだよ!!」 『いっかいぐらい……いいよね…』 赤ちゃん達の罵声も、耳に入らない。れいむにとって、それらは雑音であって声ではない。 れいむの不安定な思考は、全て自分の都合のいい方向へ転がっていく。 『あかちゃんたちも……がまんしてくれるよね……』 『れいむの…あかちゃんだもんね……きっとゆるしてくれるよね…』 そして、我慢できなくなった母れいむは、ついに餌を独占し始めた。 「ゆううううっぅぅぅぅぅ♪むーしゃむーしゃ!!しあわせ~♪」 3日ぶりの食事に、涙を流して喜ぶ母れいむ。 がつがつと目の前の野菜の山を食べ崩していく。 そこに、子供を思いやる母の表情はない。全ては自分が中心。自分がゆっくり出来ればそれでいい、という顔だ。 当然赤ちゃん達は黙っていない。自分たちが当たり前に食べられると思っていた食べ物が、突然母親に奪われたのだから。 「おかーしゃん!!!ごはんをひとりぢめしないでにぇ!!」 「そうだよ!!!おきゃーさんはまりしゃたちにごはんをちょうだいね!!」 「うるさいよ!!むーしゃむーしゃ!!まんぷく~♪」 「どうしてぜんぶたべぢゃうのおおおおぉぉぉ!?」 赤ちゃん達の抗議を全て聞き流し、餌を食べつくす母れいむ。 その一部始終を見ていた赤ちゃん達は、一斉に叫び始めた。 「おまえなんておかーしゃんじゃないよ!!ゆっくちしね!!!」 「おかーさんのせいで、いままでぜんぜんゆっくちできなかったよ!!!」 「もっとゆっくちできりゅおかーさんがよかったのにね!!!」 「ゆっくりしねぇ!!」「ゆっくちしね!!ゆっくちしねぇ!!」 赤ちゃん達にとって、ゆっくりさせてくれない母親に価値はない。 それはもはや母親ではなく、ゆっくりを妨げる敵でしかないのだ。 「ゆっ…ゆゆゆっ!?ご、ごめんね!!おかーさんおなかがすいてたんだよ!!ゆっくりゆるしてね!!」 空腹が解消されて正気に戻ったれいむは、自分のしたことを悔いて必死に謝罪する。 しかし、謝ったところで食べ物が戻ってくるわけではない。 赤ちゃん達の罵声は、さらにエスカレートしていった。 「ばかっ!!おかーしゃんのばかぁ!!!しね!!しね!!」 「れいみゅたちがゆっくちできないよ!!」「まりしゃもだよ!!」 「もっとゆっくちできりゅおかーさんがほしいよ!!!」「おまえなんかいらないよ!!!」 「おまえはしねぇ!!はんせいしてゆっくちしねぇ!!」 「「「「しーね!!しーね!!しーね!!しーね!!」」」」 「ゆああぁぁぁあ……そんなこといわないでねぇ…!!」 ぶちぶちっ。 母れいむの心の中で、“支え”が切れていく。 「「「「しーね!!しーね!!しーね!!しーね!!」」」」 「やめでやめでやめでやめでぇ!!!しねっていわないでねえええええぇ!!!」 死ねと一回言うたびに、母れいむの心の中に黒いものが広がっていく。 「「「「しーね!!しーね!!しーね!!しーね!!」」」」 「「「「しーね!!しーね!!しーね!!しーね!!」」」」 「やめでぇぇぇぇ……ゆっくりやめてねえぇぇえっぇえぇ……!!!」 母れいむが涙を流し、大声でかき消そうとしても……赤ちゃん達の死ね死ねコールは止まない。 際限のない言葉の暴力。思いやりすら母親から教わっていない赤ちゃん達は、手加減というものを知らなかった。 そして。 母れいむの黒い心を抑えていた最後の一本が、切れた。 「ゆがあああぁぁぁぁぁあぁぁあぁ!!!もうおこったよおおおおおぉぉぉぉ!!!」 パンパンパン!!! 赤ちゃんの集団に飛び込む母れいむ。その瞬間、3匹の赤ちゃんが破裂した。 そのうちの1匹は、運悪く身体の3分の一だけが残ってしまったが… 「ぶぎぇっ!?…え゛っえ゛っえ゛っえ゛っ!!」 断面から大量の餡子を漏らし、既に瀕死の状態。放っておいても死んでしまうだろう。 母れいむはバラバラに散っていく6匹の子供たちを見て、くすっと微笑んだ。 踏み潰すより容易い。簡単に殺せると知ったから。 「いやあぁぁあぁぁあぁ!!ごっぢごないでねえぇぇぇぇえ!!!」 「ゆふふふふ!!!ゆっくりできないあかちゃんはゆっくりしねぇ!!!」 「ぶぴっ!?」「ゆぎっ!?」「んゆっ!?」「ぴっぃ!」 母れいむの一跳ねで、今度は4匹の赤ちゃんが弾けた。 散乱する帽子とリボンの残骸をかき分けて、残り2匹の赤ちゃんを追いかける。 「どぼぢでごんなごどぢゅるの!!??」 「れいみゅはおかーしゃんのかわいいこどもなのにいいいぃぃぃぃ!!!」 「ゆふふふふ!!!あかちゃんたちがしねば、まりさにあえる!!まりさにゆっくりあえるよおおおおおお!!!」 残った2匹はしぶとく逃げ続けるが、母れいむも根気強く追い続ける。 ゆひっゆひっと息を荒げながら、赤ちゃんれいむと赤ちゃんまりさの背中を追う。 しかし、その目に映っているのは愛しいまりさの姿。 まりさに会うために、まりさを助けるために、母れいむは子供の命を犠牲にしようとしている。 うまく逃げ延びていた赤ちゃん達だったが、れいむの方が足を滑らせて転んでしまった。 そんな大きな隙を逃す母れいむではない。 「ゆあああぁぁぁぁぁぁ!!!おがーぢゃんごっぢごないでねええぇぇぇぇぇ!!!」 「ゆふふふふ!!!ゆっくりできないれいむはしんでねぇ!!!」 パンッ!!! 皮と餡子が弾けとび、母れいむの顔に降りかかる。 ボロボロになった赤ちゃんれいむの小さなリボンが、母れいむの目の前を遮ったその時… 『ゆ~♪とてもゆっくりしたあかちゃんだね!!』 『ゆっくりうまれてきてね!!ゆっくりでいいからね!!』 『ゆっゆっゆ~♪ゆゆゆんゆ~♪』 『まりさはとってもおうたがじょうずだね!!』 「ゆっ!?」 ……母れいむは、やっと理性を取り戻した。 茎に実った12匹の赤ちゃんを見上げるまりさ。そんなまりさを見つめる自分。 れいむの頭上の赤ちゃんに向かって歌を聞かせるまりさ。そんなまりさに見とれている自分。 かつての平和な日々を、母れいむは思い出したのだ。 その時、母れいむは自分がやったことを正確に認識した。 ぼろぼろと、大粒の涙を流しながら喚き始める。 「ゆっ!!ゆぶああああぁぁぁぁぁぁあぁぁ!!れいぶのあがぢゃんがああぁぁ!!あがぢゃんがあああぁぁぁぁ!!!」 まりさと共に誕生する日を待ち望んだ、12匹の赤ちゃん。 無事に生まれたら、皆で沢山ゆっくりしようね。大きくなったら、皆で狩りに行こうね。 帽子のある子は、まりさお母さんが川の渡り方を教えてあげるよ。 そんな風に希望と未来は広がり続け、怖いものなど何もなかった懐かしい日々。 赤ちゃんたちは無事に成長して、皆巣立っていくに違いない。信じて疑わなかった日々。 輝かしい過去の記憶と目の前の惨状が、どうしても繋がらない。まるでどちらかが嘘か夢だったかのように。 でも、現実だ。 11匹の赤ちゃん達は、皆死んでしまった。皆殺してしまった。 受け入れがたいことだが、これが現実である。 「う゛ぅぅぅぅ……ゆっぐりぃいぃぃぃ……ゆっくりいいぃぃぃ……」 この3日間、とてもつらいことばかりだった。赤ちゃんが沢山死んでしまった。 耐え難い空腹に正気を失い、あるいは怒りに我を失い、自ら沢山の赤ちゃんを殺してしまった。 放置されたままの、持ち主のいないリボンと帽子。それを見ると、さらに涙が溢れてくる。 けれど、全ての苦しみを自分は耐え抜いた。命令を達成した。 やっとまりさと会う事が出来るんだ。そう思うと、悲しみの涙の代わりにうれし涙が流れ出す。 全部まりさに話して、そして慰めてもらおう。『ゆっくりがまんしたんだね』ってすりすりもらおう! 「約束だ。まりさと会わせてやろう」 一部始終を見ていた男が、透明な箱に入ったまりさを連れてきた。 箱の中のまりさは、無言でれいむを見下ろしている。その表情はれいむの記憶どおり、とてもゆっくりした笑顔だった。 「さあ、感動のご対面だ」 透明な箱からまりさを取り出し、れいむの正面に丁寧に置く。 れいむは、部屋の隅で震えている子供のことも忘れ、まりさの顔に見とれていた。 そして…… 「ゆっぐ!!まりさああぁぁぁ!!ゆっくりあいたかったよぉ!!!」 れいむは勢い良くまりさに飛び掛る。それを受け止めたまりさは――― ボヨン!! 変な音がしたかと思うと、コロコロ転がって壁にぶつかり、跳ね返ってれいむのもとに戻ってきた。 「ゆっ?」と首を傾げるれいむに対し、男は誇らしげに説明する。 「どうだ。皮も髪も帽子も全部元通り、すごいだろう。………………中身は風船だけど」 「……ゆゆ?」 男の説明が頭の中に入らない。 れいむは、今度はすりすりするべくまりさの方へ這っていく。 ゆらっと揺れたまりさの体は、そのまま慣性に従って転がり、れいむから離れつつあった。 「まりさ!!ゆっくりすりすりしようね!!」 まりさは無言。まったく笑顔を歪めず、視線を正面に向けている。 れいむは構わず、頬を擦りつける。10秒ほど経過して、やっと違和感を感じたれいむは声を荒げた。 「ゆっ!!まりさもうごいてね!!いっしょにすりすりしてね!!!」 しかし、まりさはやはり無言。口を動かすことなく、沈黙を続ける。 ころりと転がってれいむから離れ、逆さまの背中をれいむに見せ付けるだけ。 ぽろっと帽子が脱げても騒ぎ立てることなく、そのまま逆さまになった状態で止まった。 追い討ちをかけるように、男はにこにこしながらもう一度説明する。 「帽子は簡単に治ったけど、やっぱり皮を直すのが難しくてな。そして中身は……………手遅れだったので風船に変えておいた。 どうだ!どこから見ても正真正銘のゆっくりまりさだ!……中身以外は」 「ゆっ?…ておくれ?……ゆわわわわわ……!!」 “手遅れだった” その言葉が、全てを物語っていた。 思い描いていた未来が、音をたてて崩れ去る。 まりさは、死んだ。 身を挺してれいむを守ってくれたまりさが。 まりさは、死んだ。 一緒に歌を歌って、子供たちをゆっくりさせてくれたまりさが。 まりさは、死んだ。 身重で動けない自分に代わって、沢山のご飯を取ってきてくれたまりさが。 そんなまりさが、死んでしまった。 何故か。 れいむがゆっくりしていたからだ。 れいむがゆっくりしていたせいで、まりさはれいむのあずかり知らぬところで死んでいた。 「昨日のうちに8匹殺してたら間に合ったんだけどなぁ。ま、こういうこともあるさ。元気出せよ」 「ゆがっ…ゆがっ……ばりざあああああああああぁあぁぁぁぁぁぁぁあぁ!!!!!」 信じたくなかった。自分の払った犠牲に対して、返ってきたのはまりさの皮を被った風船だなんて。 自分は……ちっぽけな風船のために、正気を失い、多くの子供を死に追いやったのか。 受け入れられるものではなかった。このまま消えてしまいたい。死んでしまいたい。本気でそう思った。 「ゆわあああぁぁぁぁぁん!!!ゆわああぁぁぁぁぁあぁん!!!ばりざああああぁぁぁあぁあぁぁぁ!!!」 「お……おかーしゃん?」 泣き叫んでいるれいむに、何を思ったか赤ちゃんまりさが恐る恐る近づいていく。 すりすりと、内に秘めた恐怖に必死に抗いながら、少しずつ這いずっていく。 そして、自分の命を脅かした相手に、こんな言葉をかけたのだ。 「お、おかーしゃん!!ゆっくちなかないでね!!ま、ままままりしゃがいるからね!!!」 「ゆっ……!?」 母れいむは、はっとした。 涙をぶるぶると振り払って、足元の赤ちゃんまりさを見下ろす。 そこにあったのは、恐れをなしながらも母に微笑みかける赤ちゃんまりさの姿。 「まりしゃといっちょにゆっくりしようね!!!ゆっくりしていってね!!!」 「おちびちゃん……?」 母親を思いやる心が、赤ちゃんまりさには残っていたのだ。それはきっと、餡子に刻まれていた本能的な優しさ。 どんなに殺されかけても、どんなにゆっくりさせてくれなくても、この世にたった一人しかいない母親。 赤ちゃんまりさにとっては、母親とはれいむ一人だけだ。 「まりしゃはおかーしゃんのかわいいこどもだよ!!たくさんいっちょにゆっくちしようにぇ!!」 「ゆっ…ゆううううぅぅぅぅ……!!」 その言葉を聞いた瞬間、れいむの目に先ほどとは違う涙が浮かぶ。 赤ちゃんまりさの心に残っていた母を思う気持ちが、れいむに伝わったのだ。 「ゆっぐ…ゆっぐあぁ……おちびちゃん……ごめんねぇぇぇぇえ!!!」 れいむは決心した。もう二度と、こんな過ちは繰り返さないと。 これからは、この赤ちゃんまりさに思う存分愛情を注いで、ゆっくりできる子に育てよう。 ゆっくり出来なくなったまりさの分も、死んでしまった赤ちゃんの分も、精一杯ゆっくりさせてあげよう。 男は、ポケットからリモコンを取り出すとスイッチを押した。 赤ちゃんまりさの身体の中から、ピッと音がする。そして、穏やかな顔で2匹に微笑みかけた。 「今、赤ちゃんの爆弾を解除した。もうすりすりしても爆発しないぞ」 「ゆっ!?ゆっくりできりゅの!?」 「すりすりしていいの!?」 2匹の問いかけに、男は再度頷く。 それを見た2匹は、涙を流しながら満面の笑みを浮かべた。 「ゆっ!!しゅりしゅりぃ!!!しゅりしゅりするよおおぉぉ!!!」 「おちびちゃあぁあぁん!!!たくさんすりすりしようねぇ!!!」 全速力でれいむに駆け寄る赤ちゃんまりさ。それを待ち受けるれいむ。 この3日間の出来事を、2匹は忘れない。忘れることは出来ない。 けれど、れいむは生きると決めた。愛したまりさは死んでしまったが、自分には赤ちゃんまりさがいる。 失ったものは戻らない。だったら、今あるものを大切にしよう。 「まりさ……おほしさまになっても、れいむをみててね」 自分が愛したまりさ。自分を愛したまりさ。 れいむは、そんなまりさを絶対に忘れない。 そして…… 「おかーしゃあああぁぁぁぁん!!!!ゆっくr――― パンッ!!! ビシャッ!! れいむの顔に、焦げた餡子が降りかかる。 そして、頭にはボロボロの帽子がパサッと落ちてきた。 「ゆっ?お、おちびちゃん…?」 「あ。スイッチ間違えた。悪い悪い。まぁ、こういうこともあるよな、アハハハハ」 男はわざとらしく、もう一度リモコンのスイッチを押しなおす。 それで結果が変わるわけではない。 「ゆっ…ゆあっ!?…おぢびぢゃん!?…おぢびぢゃんへんじしでええぇええぇぇぇぇぇ!!!!」 れいむが愛を注ぐと誓った赤ちゃんまりさは、誓ってからたった数秒でこの世を去った。 失ったまりさの代わりに一生愛すると決めた赤ちゃんまりさは、餡子屑を残して綺麗さっぱり消えた。 れいむの唯一の生きがいが、この世から消えたのだ。 「ゆっぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あぁぁあ゛あ゛あ゛ぁぁあ゛っぁあ゛ぁぁぁぁぁえrがお゛え゛り゛ごい゛!!!!!」 壊れたスピーカーのように、大音量で叫びながら跳ね回るれいむ。 その破滅的な破壊衝動の矛先は、男に向けられた。 「ゆっぐじいいぃぃぃぃぃぃ!!!!じねえ゛えええ゛えぇぇぇえええええ゛え゛!!!!!!」 ゆっくりとは思えない跳躍力で跳びはねる。そのまま男の喉を噛み切ろうと、大きく口を開けた。 しかし、所詮はただのゆっくり。れいむの口が男の血を啜ることはなかった。 ビタンッ!!! その攻撃はあっさり避けられ、勢い余ってコンクリートの床に叩きつけられたれいむ。 ゆ゛っゆ゛っとびくびく痙攣しながらも、最後の力を振り絞って立ち上がる。 しかし、振り返った視線の先に用意されたある物を見て、その動きすら止まってしまった。 「震えるほど寒いのか。じゃあ部屋の中を温めてやろう」 にこやかな表情で、“それ”を積み上げる男。 れいむは男を止めようと思った。悪い予感がしたからだ。 しかし、床に叩きつけられた激痛のせいで身体が言うことをきかない。 その間に、男は手馴れた手つきでマッチに火をともす。 「ゆ゛っ!?……だめ゛……やべでね……ゆっぐじでぎなぐなるよ……」 「何を言ってるんだ、れいむ。暖まればゆっくりできるに決まってるじゃないか」 その言葉と同時に、男は“ある物”にマッチの火を放る。直後、ぼわっと音をたてて瞬時に炎が燃え広がった。 ばちばちばち。微小な燃えカスが上昇気流に乗って、天井へと昇っていく。 「ゆ゛っ!?……ゆぶっ!?……どぼぢで?……どうぢでぞんなごどおおおぉぉぉぉ!?」 男が火を放ったもの、それは―――― 「あがぢゃんだぢのぼうじとりぼんっ!!!もやじぢゃだべええええええぇぇぇぇぇええええ!!!!!!」 赤ちゃんまりさと、赤ちゃんれいむ。合計12匹分の帽子とリボン。それを積み重ねた山だった。 その襤褸切れの山が今、炎を上げて燃えているのだ。 男はそれをにやにやしながら見つめ、れいむはそれを愕然とした表情で見つめる。 「あ゛っ……あ゛あ゛ぁぁぁっ!……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」 赤ちゃん達のリボンと帽子が炎に包まれて崩れていき、ぱさぱさとした黒いカスになるのを、ただ黙って見ている。 終いには、それらは全て原形を留めぬ炭となり……れいむが触れただけで崩れる、ただのゴミと成り果てた。 「ゆ゛っ!!……あがぢゃんの……ぼう゛じど……りぼんがあ゛あ゛ぁぁぁぁ……!!!!」 れいむが頑張って産んだ、12匹の赤ちゃん。 まりさに会わせてあげたかったけど、それはできなかった。 たくさんゆっくりさせてあげたかったけど、ほんの少ししかゆっくりさせてあげられなかった。 そんな赤ちゃん達の、唯一の形見。 赤ちゃん達が“いた”ことの、確かな証。 それすらも、男は消し去ってしまった。 存在も、その証も、何一つ残さず、無に帰した。 目の前の無慈悲な人間は、れいむから全てを奪ってしまった。 ゆっくりとしての幸せを、男は全て潰したのだ。 「ゆ゛っ!?あ゛っ!?ッがあああ゛あああ゛あ゛あぁぁぁぁあ゛っぁあ゛ぁぁぁぁおあ゛お゛えおごあえ゛お゛ッ!!!!」 それから。 れいむの叫びは1分ほど続いた。 声にならぬ叫びが、永遠とも思えるぐらい長く続いた。 そして、最後にれいむ自身の口に吸い込まれて消えた。 口を限界まで開き、目を大きく開いて血走らせたまま、れいむは動かなくなった。 先ほどまでの震えも、呼吸による微動もなくなった。 瞬きもせず、真っ白になった目で正面を見ている。 涙と唾液は全て蒸発し、眼球や舌はぱさぱさの状態。 れいむは、饅頭になっていた。 れいむは、ゆっくりではなくなっていた。 ……死んだのだ。次々と降りかかる不幸に耐え切れず、心が死んだのだ。 男は笑った。 下等生物のクセに心が死ぬなんて、ちゃんちゃらおかしい。 食用の饅頭が、家族だとか、愛だとか、思いやりだとか、そういう概念を振りかざすのが滑稽でならない。 腹を抱えて、一生分笑ったのではないかというぐらい、笑った。 笑って、笑って、笑い続けて、笑い続けて、やっと笑うのを止めた。 「……あぁ面白かった。でも、れいむにひとつだけアドバイス」 男は、塵取りと箒で部屋の中のゴミと燃えカスを集め、ゴミ袋の中に捨てる。 動かなくなったれいむは――― 「お星様になったまりさと会話するなら、れいむもお星様にならなきゃな」 ―――かさばらないように金槌でぐちゃぐちゃに潰した後、ゴミ袋に放り込まれた。 (終) あとがき ゆっくりが愛し合ったり、親交を深めたりしてるのを見ると、何だかムズムズして全部ぶち壊したくなる。 子のために母が犠牲になる話とか読んでても、イイハナシダナー、グシャッ、って何もかもバラバラにしたくなる。 それにしても、ゆっくりらしさって、難しい。 作:避妊ありすの人 このSSに感想を付ける
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かなーり俺設定です 虐待要素少なめ 未来世界 というかゆっくり要素もあんまないかも 東方関係ない? ゆっくりをしゃべらせるのも苦手 初投稿 かの不可思議な饅頭。ゆっくりが発見されてから何世紀も立ったある時代の物語 人類はほぼゆっくりを制圧する事に成功し、野生のゆっくりのむれが100を超えることはほとんどなく、防犯もしっかりしている為害虫としてすら認識されなくなっていた。 そして人類は宇宙へ道を進めた。人類は月面に都市を建設して月面2世、3世が生まれていた。宇宙にしろ月にしろ酸素なしで生きられるゆっくりは理想の非常食であった。ちょっと栄養に偏りがあるが非常食、飢えをしのぐには十分であった。そのためどんな月面都市にも、宇宙船にもゆっくりがいるのであった。餌もゆっくりを潰したものを与えればいいので自給自足できる。そんな世界だ 〜火星軌道〜 「あと1時間で火星軌道に移民船団が到着します」 「火星に小規模な都市が出来て早2年、大分発展してきたな」 人類は火星に降り立ち、生活を始めていた。200万人の第1次移民は特に問題もなく火星地表で生活をし、人口酸素とゆっくりによる自給自足も一応は可能な状況だ。 都市開発が進みさらに400万人分の住居が完成し今300万人の第1次移民船団が到着しようとしている。 全長800mを超える移民用の宇宙船が300隻ほど火星の中央宇宙港に到着する。海賊対策に100mほどの警備艇が6隻、ついており火星に到着後そのまま火星に配属されるのだという。 火星の移民司令部は6ヶ月に及ぶ長い旅を窮屈な移民船でやってきた移民たちをもてなすべく準備中であった。だが悲劇は起こった。 船団左翼に位置する警備艇「はやぶさ」のクルーが叫ぶ 「せ。。。船団左舷に巨大な影が…ああ、接近してくる」 「何事だ、レーダーは何も捉えられなかったのか!?」 艇長も驚いている。 「何も映っていません。あぁ、未確認物体から熱源反応!!」 レーダーには何もない場所から指向性を持った光が伸びてくるのが表示されていた。 ズズズズズズズッッ!! 「艇長、移民船に被弾しました。損傷は軽い模様」 「むぅぅ、直ちに全警備艇に連絡、移民船にはパニックを起こさないよう注意を払うように言うんだ!!」 というか既に被弾した船ではパニックが起こっていた。いきなり巨大な振動が船全体に伝わったのである。 被弾した箇所はゆっくり貯蔵庫、蒸発したゆっくりの香ばしいにおいが漂う。 「艇長、未確認物体がメインパネルに投影できる位置まできました」 「映せ」 今まで丸い球体としか認識できなかった未確認物体の実態が明らかになる。 それは巨大なゆっくりちぇんであった。 「これは・・・ゆっくり!?ゆっくりなのか!?」 ゆっくりちぇんはまたもやどこからともなく熱線を乱射する。それは狙いも何もない当てずっぽうであったが幾らかの移民船に命中した。 直径250mほどの巨大なゆっくりちぇん… 警備艇隊の司令である中佐から命令が入る。 「船団に被害が出た。死者もいるんだ。これは正当防衛である。そっこく巨大ゆっくりを撃破せよ」 左翼と後部についていた3隻の警備艇が反転、海賊捕獲用の重力魚雷を放つ。これは破壊力をもたず特殊な重力磁場を発生させ船の移動を止め、海賊を拿捕する為の武器である。 しかしちぇんはそれをものともせず前進、あいかわらず移民船に損害が出る。 3隻の警備艇はそれぞれ射程に入り次第荷電粒子砲を撃ち始める。ちぇんはなにやら叫んでるようだが宇宙なので響かない。苦しそうな顔をしながらも前進してくる。 幸いなのはその速力がかなーり遅いということである 応援に火星に駐留していた8隻の警備艇も出撃したがまもなくちぇんは沈黙した…ように見えた。 「後続に球体多数を確認!!、あいかわらずレーダーでは補足出来ません」 ちぇんを倒した3隻の警備艇を40を越える巨大なゆっくりが襲った。 8隻の警備艇や船団残りの3隻なども応援に向かおうとする、だが前方には100匹ほどの巨大ゆっくりがいるのである。 「っ・・・挟まれた!?」 各警備艇奮闘したが数の暴力になす術もなく全滅した。 生存者がいないので定かでは無いが14隻の警備艇は立ったそれだけの数で合計40ものゆっくりをあんこに変えたという。 もちろんゆっくりするわけにはいかない。戦闘のさなか移民船団はゆっくりに集中的に襲われた。非武装の移民船に挟み撃ちはなす術も無く火星にたどり着いたのは30隻に過ぎない。火星への航路であったこの宙域はスペースデブリという名の餡子と船の残骸で溢れた。 火星の移民本部はもうてんてこ舞いである。この事件については地球に連絡しなければならない。 そして数日後火星はこの無数のゆっくりに襲われた。200万いた火星の都市は全長300m程度のゆっくりに潰され、壊滅した。移民本部の幹部に生存者なし。先の戦いで生き延びた30隻の移民船も潰され、宇宙に逃げたものもゆっくりの熱線によって損傷を受け、ほとんどが地球にたどり着く前に息絶えた。 地球に無事生還できたのは大型貨物船に乗って多大な損傷を受けながらも月にたどり着いた数千人だけである。 地球本部はあせった。火星の人工衛星によるとこの巨大なゆっくりは地球へ向かう様子である。その人工衛星からの通信も途絶えた。 何も分からない。ゆっくりは何故襲ってきたのか? 何故あんなに巨大なのか? そもそも何で宇宙にゆっくりがいるのか? 火星から地球までゆっくりは何日でたどり着けるのか? 何より地球には宇宙軍が存在しなかった。連邦とかいう統一政府も無く、現状としては2010年と変わらず190近くの国がそれぞれ別々に政治をしているのだ。ただ各国はかなり仲良くなっているが。 地球に存在する戦力は各国連合で作られている宇宙警察だけだ。 早急に宇宙軍が結成、ゆっくり対策本部がおかれた。宇宙軍といっても警察の警備艇を寄せ集め、艦隊に仕立て上げただけの代物である。旗艦はEUが試験的に運用していた空間戦闘型巡洋艦「ジュネーブ」である。 対策本部は現在分かっている事をとにかく何でも並べた。主な情報源は火星の人工衛星からである 巨大ゆっくりは通常種で編成されている事、ちぇんが直径250mほどで、その他が最大300mほど、赤ゆっくりの30mから成体の300mまでサイズは様々 ゆっくりはとにかく遅いこと。でかい図体で鈍足の移民船にすら追いつけなかった。(ただし今回は挟み撃ちにより壊滅した 無数のビームを放つ事 ゆっくりのビームは威力が低い、非武装の移民船で何十発も耐えたし警備艇もかなり耐え抜いた模様 ゆっくりの防御力は高い、防御力というより耐久力が、何発も荷電粒子砲をぶち込んでようやく沈黙する あれ?そんな怖くなくね? というのが対策本部の結論である。敵のゆっくりは100ちょっと、こっちにも警備艇が100席以上居るのである。警備艇一隻で大体3匹を撃破できるようだ、怖くは無い そういうわけで対策本部は解散、やったことといえば民間の宇宙船に巨大ゆっくりを見かけたら報告する事、余裕があれば自衛用に武装の一つ二つつけることであった。 ただこれはいい機会という事で宇宙軍用の艦艇の開発が始まった。 ==〜16ヵ月後〜== もはや誰もが巨大ゆっくりのことなど忘れかけていた。覚えていたのは火星移民本部くらいであった。 「民間の小惑星帯に資源採掘に向かう輸送船が地球と火星の間…かなり地球よりのところで連絡を絶ちました」 「海賊か?」 「いえ、ゆっくりです」 オペレーターの報告に上官らしき人物は冷や汗を流す。 「まだ状況が分からん、警備艇に偵察に行かせろ」 月面の早期警戒基地から2隻の警備艇が発進する。宇宙軍に編入されてから哨戒仕様に改造され、速力、航続力の向上、対ナマモノレーダーをつけた新型だ。 まもなくこの警備艇は地獄を見る。見るだけで体験しなかったのは幸いだ。 「司令、偵察部隊から報告です」 「嫁」 「はっ…えっ? ゆっくりの一群を確認したとの事です…あ、あぁっ・・・・・・」 「予想していたことだろ、何故そんなに青ざめる?」 「ゆっくりの数、成体だけで1000を超え、小さいのも含めて4000を超えるとの事です」 「…………」 ゆっくりは16ヶ月の間、地球へ向かっている途中、何度もすっきりーをしていたのである。 「月軌道への接近は1週間後との事です」 「5日後までに宇宙軍の全警備艇に第4ルグランジュ地点へ集結と伝えろ、一定の武装を持つ民間船にも参加するよう呼びかけろ、いや徴用しろ、強制にだ!! 海賊にも協力を要請するんだっ!!」 7日の間緊張がずっと走っていた。宇宙軍が集める事に成功した船舶は以下の通りである。 宇宙警備艇、147隻 艦隊の中核をなす艦、重力魚雷を換装した宇宙魚雷2基と2門の荷電粒子砲を装備 ジュネーブ級宇宙巡洋艦 14隻 試験艦ジュネーブを量産した艦、まったく新しい攻撃兵器であるイオン・キャノンを連装2基と宇宙魚雷4門、レーザー機銃を備える アドミラリティ・S級宇宙駆逐艦 27隻 宇宙警備艇を大型化、宇宙軍の目的に合わせた艦、高速でイオン・キャノン2門と宇宙魚雷6門を備える 武装商船 165隻 多くが貨物スペースに荷電粒子砲や実体弾を1門、多くて3門ほど装備した貨物船、ほとんどが300mを越える巨艦&鈍足、装甲なしである 武装商船(小) 327隻 機関砲レベルの武装を施した小型の貨物船、戦力になるか不明 海賊船 42隻 装備は様々、高速で宇宙軍の警備艇と対等に渡り合える物も多く中にはジュネーブ以上の戦闘力を持つものもある 良くこれだけ集めたものである。 連合艦隊は戦闘に突入した。ゆっくりは何も考えていないのかむやみやたらに突撃してくる。相変わらずわけの分からないレーザーを乱射しながら。 まだ結成してから日の浅い宇宙軍は連携が上手くとれずにいたがそれでもゆっくりに比べ優勢な能力をもって奮戦した。 ゆっくりもまた地球にいる頃の性質を忘れていないようで子ゆっくりを盾にして突撃する親と思われるれいむや安全地帯に味方を踏み潰して避難するまりさなど、様々である。 相当数撃破したのに一向にゆっくりの勢いは止まらない。 それもそのはず、500近くのゆっくりが後ろですっきりーをしているのだ。 生まれたゆっくりはすぐに投入される。実際ゆっくりの群はほとんどが子供になっていた。そんななか1kmを超える巨大なまりさがやってきた。 「ドスまりさかっ!? あいつまで等しく大きくなったのかよっ…!?」 ドスを見た兵士は誰もが同じ嫌な予感を持った。 戦力の中核である宇宙警備艇が40隻ほど、まとめて吹き飛んだ、ドススパークによって。ジュネーブに搭乗する連合艦隊の司令官はすぐさま散開を指示する。 しかし火力の密度が薄くなると今度は大量のゆっくりが隊列に侵入、乱戦となった。 相打ちを恐れないゆっくりと恐れる人間、相変わらずゆっくりの攻撃はへぼビームだけであったが効率的な宇宙軍は攻撃が出来ず被害を増していった。 さらに恐ろしい事態が起こった。ゆっくりはその巨体の有効性に気付き始めてしまった。宇宙軍に向かって体当りを仕掛けてくる。成体の直撃を受ければ一瞬で沈みかねない。赤ゆっくりの体当りでさえ相当な威力で、衝突した衝撃で慣性の法則が働き近くの味方に衝突する事もあった。 ついに司令部は撤退を決意、それに伴いアメリカに長い間封印されていたとある兵器が目を覚ます事となった。 核である。 長らく凍結されていた核が始動した。撤退しながら艦隊はゆっくりを核の射程に追い込む。1000ほどのゆっくりがついてきたがすっきり担当の500匹が来ない。 手馴れた海賊船達はゆっくりをうまく纏め上げると離脱した。世界に残されたたった数個の核が弾道ミサイルに積まれ、惜しげもなく全て発射された。 助かった… 誰もがそう思った。500匹のゆっくりは冷静にも撤退を開始したようだ。ぱちゅりーでもいるのだろう。 しかし生き残った500が再び数を増やして攻めてくる可能性は高い… 今回の戦いで宇宙軍は8割の損害を出した。 今後を考えて戦力が増強される事になる。 ゆっくりの特攻による4隻、ドススパークで3隻が失われただけとなったジュネーブクラスが高く評価された。対ゆっくりの主力艦として大量に建造される予定だ 宇宙警備艇も従来通り建造が進められた。これはどちらかというと本来の任務である海賊対策のために そして成体ゆっくりを一瞬で蒸発させる事のできる3連装パルサー・ショックカノンを装備した宇宙戦艦「ラースタチュカ」クラス等が今後建造される事になる …・・・・・・ ゆっくりは数年に一度地球に攻め込んでいる。 回数を重ねるにつれ数が増えている。10回目の攻撃となる今回はついに成体だけで10000匹を超えた 密集するとドススパークの餌食に、散開すると火力濃度が落ちて接近戦によるカミカゼを許してしまう、この憎たらしい饅頭、今まで何度も撃退してきたが毎回おびただしい数の…全体の6割近い損害を出している。一度攻めてくるとその後数年来ないのが救いだがこのままでは地球には宇宙戦士がいなくなってしまう。第1次海戦の旗艦ジュネーブの10回目の戦闘でついに餡子に潰された。火星への移民も当分先送りである 巣を潰さなければこの戦いは永遠に続くだろう… あとがき はい、ぐちゃぐちゃでした。もし読んでくださる方がいれば感謝です。 直径300mの饅頭、恐怖ですね。結局ゆっくりは一度もしゃべりませんでした。スミマセン ちなみに第1次海戦のどすまりさですが、こいつ、艦隊が散開した時点で乱戦となり、相打ちを恐れてドススパークを撃つ事が出来ずに集中砲火を浴びて意識不明、鹵獲されてしまったようです。 また巨大ゆっくりの正体。 かなーり昔に実験の一環として木星に向かって飛ばした無人調査機のスペースに紛れ込んでいたゆっくりが宇宙に適応、大型化したという設定。 攻めてきた理由は地球というなのゆっくりプレイスを取り返すため、及び非常食という非ゆっくり道的な扱いをされている地球のゆっくりを助ける為です。 タイトルはトップを狙えを想像して 評価次第では続編も書くかもですよ? 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