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基本情報表紙 タイトル色 その他 目次 裏表紙のあらすじ 出版社からのあらすじ 内容 あらすじ「プロローグ」 「第一章」 「第二章」 「第三章」 「第四章」 「第五章」 「第六章」 「第七章」 「エピローグ」 挿絵口絵 挿絵 登場人物 後に繋がる伏線「第五章・第六章」(伏線) 「第七章」(伏線) 「エピローグ」(伏線) この巻にて回収した伏線「プロローグ」(回収した伏線) 刊行順 基本情報 涼宮ハルヒシリーズ第7巻。2005年9月1日初版発行。 表紙 通常カバー…朝比奈みくる 期間限定パノラマカバー…橘京子、谷口 タイトル色 通常カバー…青 期間限定パノラマカバー…紫 その他 本編…422ページ 形式…長編 目次 プロローグ…P.5 第一章…P.58 第二章…P.112 第三章…P.162 第四章…P.224 第五章…P.265 第六章…P.319 第七章…P.265 エピローグ…P.401 あとがき…P.428 裏表紙のあらすじ 年末から気にしていた懸案イベントも無事こなし、残りわずかな高一生活をのんびりと楽しめるかと思いきや、 ハルヒがやけにおとなしいのが気に入らない。 こんなときには必ず何かが起こる予感のそのままに、俺の前に現れたのは8日後の未来から来たという朝比奈さんだった。 しかも、事情を全く知らない彼女をこの時間に送り出したのは、なんと俺だというのだ。 未来の俺よ、いったい何を企んでいるんだ!?大人気シリーズ怒涛の第7弾! 出版社からのあらすじ 残りわずかな高一生活をのんびりと過ごすはずだった俺の前に現れたのは、8日後の未来から来た朝比奈さん!? しかもこの時間へ行くように指示したのは俺だというのだ。8日後の俺よ、いったい何を企んでるんだ!? 内容 シリーズ中最長編の巻。この巻では、朝比奈みくるメインでストーリーが進んでいく。 時系列では、第6巻『動揺』収録の「朝比奈みくるの憂鬱」の直後となり、冒頭では『消失』での伏線を回収する回想シーンが挿入されている。 新たな伏線が多く張られる巻でもある。 あらすじ 章ごとに記載。また、ネタバレ記述があるので、原作未読の場合は注意。 「プロローグ」 +... 時は2月3日。キョンの回想から始まる。 1月2日、キョンは長門、みくるとともに12月18日へと時間遡行する。長門の行為によって変わってしまった世界を再改変するためだった…… 「第一章」 +... 節分から数日が経過した日の夕方、キョンは部室へ向かうと、掃除用具入れの中から音がする 不審に思ったキョンは中を確かめてみると、そこには朝比奈みくるがいた。みくるはキョンも一緒に隠れるようにと言い、2人で掃除用具入れに入る。 しばらくして、部室に入ってきたのはまぎれもなく朝比奈みくるであった。 みくるが2人。掃除用具入れから現れた自分は、8日後から時間遡行した未来のみくるであり、時間遡行をするように言ったのはキョンだというが…… 「第二章」 +... 学校に登校したキョンは、いつものように自分の下駄箱を開けて靴を履き替える。 だが、そこには朝比奈さん(大)からの指令書(#1)が入っていた。放課後、キョンは指令書に書かれていた道具を取りに家に帰り、 自転車で長門のマンションへと向かう。 8日後から時間遡行したみくるとともに、指令書に書かれている場所に向かう。 その後、鶴屋邸へと向かい、キョンは8日後から時間遡行してきたみくるを預かってもらえるよう頼む。 「第三章」 +... 翌日、学校に登校したキョンは、自分の下駄箱を開けて靴を履き替える。そこにはまたしても朝比奈さん(大)からの指令書(#2)が。 指令書(#2)をクリアするため、みくる(みちる)とともに鶴屋家の私有山へと向かうが…… 「第四章」 +... 翌朝、キョンは目覚まし時計を止めに来た妹によって起こされ、SOS団一行で鶴屋山へと向かう。土、日曜日の件について話すハルヒ。 解散後、キョンは帰宅し鶴屋邸に電話をすると、みくる(みちる)が電話に出て、明日の件についての話をするのだが…… 「第五章」 +... 土曜日の朝、キョンは自転車で駅前へと向かい、SOS団のメンバーでいつもの喫茶店へ。 12時に再び集合した際に再びクジを引くと、今度は長門と一緒になり、長門とともに市内図書館に行く。 中で待っていたみくる(みちる)はキョン達の元へと駆け寄る。キョンとみくる(みちる)は指令書(#3)をクリアするため目的地へと向かい、 指令書(#3)に書いてある物を探すが、なぜか見つからない…… 「第六章」 +... 日曜日の朝、キョンは自転車で駅前へと向かい、SOS団のメンバーでいつもの喫茶店に入る。ハルヒの作ったクジを引き、長門と一緒になる。 キョンは長門とともに市内図書館に行く。指令書(#4)をクリアするため、その場所へと向かう。後にみくる(みちる)と合流する。 だが、朝比奈みちる誘拐事件が起こる。みくるを誘拐した犯人を追うため、キョンは新川の運転するタクシーに乗車し、古泉、森園生とともに みくるを誘拐した車を追うが…… 「第七章」 +... キョンは長門とともに駅前に戻り、ハルヒは総員解散を告げる。 翌日、キョンは駅前に向かい、鶴屋山を登り、指令書(#2)で行った場所を掘ると、箱のようなものが出てくる。その中身は… 日没後、キョンは自転車で長門のマンション近くの例のベンチに向かう。そこには朝比奈さん(大)がいた。 だが、彼女の言っていることは、これから起こる出来事らしいが…… 「エピローグ」 +... 次の日の昼休み、鶴屋さんが1年5組の教室に来る。キョンに用事があるらしく、薄暗い踊り場にキョンを連れて話を始める。 鶴屋山にて、本物の鶴屋家の宝が出てきたらしい。 その日の放課後、ハルヒはSOS団プレゼンツをする。それは、当たりのクジを引くと、みくるから手渡しでチョコがもらえるというものだった。 だが、参加者が多かったため、いつ終わるのかも分からない。長門に情報操作をしてもらったキョンは、みくるの手を引っ張ってを部室に連れて行き、 時間遡行をするように頼む。 8日前に時間遡行したみくる。少ししてから再び、掃除用具入れの中から音が聞こえる。そこに登場したのは…… 挿絵 口絵 涼宮ハルヒ、朝比奈みくる、長門有希、古泉一樹(プロローグ) ⇒ 朝比奈みくる(みちる)(第一章) ⇒ キョン、長門有希(第一章)、朝比奈みくる(みちる) ⇒ 長門有希、朝比奈みくる ⇒ 挿絵 「プロローグ」 P.57…SOS団 ⇒ 「第一章」 挿絵なし 「第二章」 P.143…朝比奈みくる(みちる)、鶴屋さん ⇒ 「第三章」 P.197…涼宮ハルヒ、キョン ⇒ 「第四章」 挿絵なし 「第五章」 P.291…未来人 ⇒ 「第六章」 挿絵なし 「第七章」 P.381…涼宮ハルヒ、朝比奈みくる、長門有希 ⇒ エピローグ 挿絵なし 登場人物 涼宮ハルヒ キョン 長門有希 朝比奈みくる(=朝比奈みちる) 古泉一樹 鶴屋さん 朝比奈さん(大) 谷口 国木田 キョンの妹 森園生 新川 多丸圭一 多丸裕 シャミセン ハカセくん 未来人 誘拐少女 後に繋がる伏線 「第五章・第六章」(伏線) 対立組織の登場・目的 ⇒第9巻『分裂』にて半分回収 「第七章」(伏線) 朝比奈さん(大)の言う「とても強力な未来」 ⇒未回収 「エピローグ」(伏線) 鶴屋山で発掘された謎のオーパーツ ⇒未回収 この巻にて回収した伏線 「プロローグ」(回収した伏線) 第4巻『消失』にて、もう一度12月18日に時間遡行しなければならないこと ⇒長門の行った時空改変を元通りに戻す 第4巻『消失』にて、ハルヒの見た謎の少女の正体 ⇒長門有希 刊行順 <第6巻『涼宮ハルヒの動揺』|第8巻『涼宮ハルヒの憤慨』>
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クリスマスイブ、独り身の女二人 川沿いの桜並木。 朝比奈みくるは、ベンチに座って、空を眺めていた。 空からは、ふわふわと雪が舞い降りてくる。 この時間平面はいわゆるクリスマスイブ。 そんな日の夜に、こんなところにいる人間は多くない。一般的にいえば、桜は春に愛でるものだ。 彼女がここに来たのは、特に理由があるわけでもなかった。この時代に遡行したときは、許される限りは、ここに来ることが習慣化している。ただ、それだけのこと。 あえて理由をつけるなら、ここがとても思い出深い場所だから、とでもいうべきだろうか。 彼女の今回の任務は既に完了している。部下たちは、原時間平面に帰還させた。 彼女がこの時間平面に無駄に滞在することが許されているのは、組織内での彼女の地位が確固たるものであり、多少のわがままが通るからにほかならない。 ふと見ると、人影が見えた。徐々に近づいてくる。 探知デバイスが、その存在を人間外だと提示してきた。物体識別パターン、TFEIコードネームNとの一致率97.23%。 その姿がはっきりと識別できるほど近づいてきたところで、朝比奈みくるはこう話しかけた。 「お久しぶりです、長門さん」 「久しぶり」 長門有希は、相変わらずの平坦な口調で応じた。 「今日は、どうしてこちらに?」 長門有希は、涼宮ハルヒとキョンの夫妻が暮らしているのと同じ街のマンションに住んでいる。ここからは結構遠い。 「あなたと情報交換をするため、あるいは、単なる世間話をするためといってもいいかもしれない」 「涼宮さんのところでは、今ごろはクリスマスパーティでもしてるんじゃないですか? 涼宮さんもキョンくんも、長門さんなら喜んで混ぜてくれるでしょうに」 「それが許されたのは、二人の間に子供ができるまで。今でも、私が行けば彼らは歓迎してくれるとは思う。でも、家族の団欒によそ者が入るのは、野暮というもの」 「独り身の女二人で、寂しいクリスマスイブですか。ある意味では、風情がありますね」 朝比奈みくるは、微笑を浮かべた。 「その風情を理解できるようになったということは、年をとったということでもある」 長門有希も、わずかばかりの微笑で応える。 「まだ、年寄り扱いされるような年齢ではないつもりなんですけどね」 「それは私も同様」 ここで、朝比奈みくるは、話題を切り替えた。 「涼宮さんとキョンくんの近況はいかがですか?」 「特に述べるようなことは何もない。すべては順調。彼らの子供たちも含めて」 「つまりは、幸福な家庭を築かれているということですか。子孫の私としては、喜ぶべきことですね」 「そう」 「森さんと古泉くんは?」 「こちらも順調。先日、森園生の妊娠を確認した」 「それはおめでたいですね。お子さんが生まれたら、お祝いにいかなくちゃ」 「彼女が歓迎してくれるかどうかは微妙だと思うが」 朝比奈みくるの組織の時間工作のターゲットは、涼宮ハルヒの周辺から「機関」にシフトしている。「機関」が反発するのは当然のことで、その中でも森園生は反未来人の急先鋒だった。 「そうですね。でも、古泉くんは拒絶したりはしないでしょう」 ここで、長門有希が話の矛先を変えてきた。 「他人のことばかり気にしているが、あなたにはそういう話はないのか?」 「ありません。交際の申し込みは全部拒否してきましたから、最近では言い寄ってくる人もいませんよ」 「もったいない──涼宮ハルヒなら、きっとそういうと思う」 「そうでしょうね。でも、初恋が禁則でがんじがらめにされたまま終わってしまってから、どうしてもそういう気分にはなれないんです」 「それはあなたの組織の大罪といえるのではないのか?」 「そうかもしれませんけど、それでも組織を恨む気はありません。そういう部分も全部知ったうえで、それでも組織に残ることを決めたのは、ほかならぬ自分自身ですから」 「そう……」 「そういう長門さんこそ、その手の話はないんですか? もしかしたら、TFEIは恋愛禁止とか?」 「それはない。私の指揮下にあるインターフェースには、人間との間にそのような関係を築くことを許可している。私が情報統合思念体に強く要望して認めさせた。しかし、実際に人間との間でそのような関係を築いているインターフェースは多くはない」 「なぜですか?」 「我々は生殖機能をもたない。子供を生めないということが、多くのインターフェースに、ためらいを生じさせている」 「情報統合思念体なら、長門さんたちに生殖機能を付与することも簡単なんじゃないですか?」 「そのとおり。それは容易なこと。しかし、情報統合思念体は、それだけは許可しようとしない」 「なぜです?」 「私の親たちは、孫の反乱を恐れている。子である我々でさえ、完璧にコントロールできているとは言いがたい──それは自律的進化の可能性を探るため我々にある程度の自由意思を付与した結果なのだが──状況の中で、さらなる危険を冒すつもりはないということ」 「酷い親ですね」 「それでも、私の親ではある。子である私としては、どこかで折り合いをつけなければならない。その妥協点が現在の状況である」 「でも、子供ができないとしても、恋愛関係は許可されてるんですよね? なら、長門さんご自身はどうなのですか?」 「私の初恋はいまだに終わっていない。永久にかなわぬことは分かってはいるのだが……」 沈黙があたりを支配した。 「……そうですか。それこそ、涼宮さんにもったいないって言われますよ」 「既に何回も言われている。それでも私の気持ちは変わらない」 「頑固ですね」 「こればかりは生まれつきのもの。いまさらどうしようもない」 朝比奈みくるがふと顔をあげた。 「帰還命令が出ました。長居しすぎたようです。世間話はここまでですね」 「また、いつか」 「今度は、バレンタインデーにでも会いましょう」 二人が同時に苦笑した。 そして、TPDDが起動し、朝比奈みくるの姿が掻き消えた。 長門有希は、空を見上げた。 空からは、ふわふわと雪が舞い降りている。 この懐かしき街を少しばかり歩いてみようか。 彼女は、そう思った。 終わり
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涼宮ハルヒの憂鬱 作品情報 5枚 涼宮ハルヒ 長門有希 朝比奈みくる(250x188) 朝倉涼子(248x186) 鶴屋さん
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SOS団 朝比奈みくる キョン 涼宮ハルヒ 長門有希 古泉一樹 その他のキャラクター 朝倉涼子 佐々木 谷口 派生キャラクター キョン子 ちゅるやさん
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涼宮ハルヒ 朝比奈みくる 長門有希 古泉一樹 朝倉涼子 鶴屋さん 喜緑江美里 吉村美代子 佐々木 その他のキャラ・SOS団 小ネタ作品一覧
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有希「ここは緩やかに衰退している。SSの存在が確認されなくなったのが兆候としてはもっとも最悪の事態」 ルリ「え・・・どういうことなんですか有希姉」 有希「もとより曖昧な分野で構成されていたここが第2、第3と続くこと自体が異例。 だがしかしここも時間の流れには逆らえない」 ルリ「どういうことなんですか!だってそれじゃあ・・・ここがまるで・・・」 有希「 そう ここはもう先には進めない つまり ネタ切れ 」 レイ「豆餅おいしいわ・・・」 発:ネルフ本部 情報統合思念体 ネルガル重工 宛:綾波レイ 長門有希 ホシノルリ A:3名は現在従事している作戦「共同生活」は現地時間1月23日付で解除される B:3名は23日付で現住所の集合住宅を解約し、上記発令所に帰還せよ C:23日以降3名は他2名に会うことを禁ずる 補足:当命令は23日以前に撤回される可能性有り
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OP・ED・劇中歌収録CD及び関連CDを記載(歌のタイトルクリックで歌詞ページへ別窓で開きます)。 2006年度OP・ED曲 2009年度OP・ED曲 関連項目 2006年度OP・ED曲 涼宮ハルヒの憂鬱 OP曲 タイトル 冒険でしょでしょ? 発売日 2006年4月26日 アーティスト 涼宮ハルヒ(平野綾) 収録曲 1:冒険でしょでしょ? 2:風読みリボン 3:冒険でしょでしょ?(off vocal) 4:風読みリボン(off vocal) 商品ページ こちら 涼宮ハルヒの憂鬱 ED曲 タイトル ハレ晴レユカイ 発売日 2006年5月10日 アーティスト 涼宮ハルヒ(平野綾)/長門有希(茅原実里)/朝比奈みくる(後藤邑子) 収録曲 1:ハレ晴レユカイ 2:うぇるかむUNKNOWN 3:ハレ晴レユカイ(off vocal) 4:うぇるかむUNKNOWN(off vocal) 商品ページ こちら 2009年度OP・ED曲 涼宮ハルヒの憂鬱 新OP曲 タイトル Super Driver 発売日 2009年7月22日 アーティスト 涼宮ハルヒ(平野綾) 収録曲 1:Super Driver 2:アイシテ! 3:Super Driver(off vocal) 4:アイシテ!(off vocal) 商品ページ こちら 涼宮ハルヒの憂鬱 新ED曲 タイトル 止マレ! 発売日 2009年8月26日 アーティスト 涼宮ハルヒ(平野綾)/長門有希(茅原実里)/朝比奈みくる(後藤邑子) 収録曲 1:止マレ! 2:潜在的太陽の証明 3:止マレ!(off vocal) 4:潜在的太陽の証明(off vocal) 商品ページ こちら 関連項目 キャラクターソング ドラマCD ゲーム関連
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ここには各キャラのいじめSSを置いてください 涼宮ハルヒ キョン 長門有希 朝比奈みくる 古泉一樹 その他 クリスマス ひとり とんでも生徒ムテキョング あさひなの泣く頃に
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・・・長門有希 -- 名無しさん (2006-12-09 21 50 53) 難しい・・・ -- 名無しさん (2006-12-09 21 53 28) 名前 コメント
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前ページ次ページ雪と雪風_始祖と神 5. 「あなたに、話すことがある」 授業が終わり自室に戻ると、タバサは長門に、真剣な面持ちで切り出した。 「なに?」 「わたしのこと。それと、あなたにも関係がある」 タバサは椅子に腰掛けると、ベッドに座る長門へと向き直った。 「あなたも知っている通り、タバサは偽名」 一呼吸置いて続ける。 「わたしの名前は、シャルロット・エレーヌ・オルレアン。つまり、ガリア王弟の娘」 「そう」 「……驚かないの?」 「べつに」 簡単な返答にもかかわらず、長門の口調には、けっして冷淡さはみられない。 それどころか、身分を明かしたというのに、シャルロットを、タバサでも王族でもない一人の人間、 使い魔と主人という関係ではあれど、友人のように見つめている変わりはないことに、タバサは気付いたのだった。 「……ありがとう。あなたが自分について話したときに、わたしも話すべきだった。ごめん――」 「気にしなくていい。わたしにとって時間は意味を持たない。ただ、知るか、知らないか。だから、話して」 感情こそ表に出してはいないが、なぜかタバサは、言葉を続けることができない。 それでも、長門有希の言葉に促されてか、少しづつながら、自身の境遇について、彼女は語り出した。 「――それが、わたしがタバサと名乗る理由。そして、ユキ、あなたに、任務に協力してほしい」 タバサが語ったのは、父を殺され、母親を人質に、駒として無謀な任務に狩り出されているという事実である。 もちろんタバサとしても、使い魔とはいえ友人を巻き込むことを後ろめたく感じている。 「……あなたを巻き込むのは不本意。拒否するのであれば、わたしは止めない」 しかし、はたして長門は、首を縦に振った。 「……どうして?」 「拒否する理由が見当たらない。これはわたしの選択。誰の指示でもない」 「わたしの使い魔だから?」 「違う。あなたのため」 短いものながら、長門の言葉がタバサの胸をうつ。 仮にそれが、似たもの同士であるという理由であったとしても、二人の間に友情が芽生えていることに間違いはない。 あなたがタバサだから。それだけで理由は十分であった。 「わかった。でもそれは、母様の病を治すまで。機を待つ……」 「だいじょうぶ。話を聞く限りでは治療は可能と思われる」 「……できるだけ早く、こんなことは終わらせる」 + + + フリッグの舞踏会が終わると、矢継ぎ早に使い魔の品評会がやってくる。 生徒にとっては、使い魔を通じて自身の力量を示すチャンス、 そして、トリステイン王家からやってくる来賓に対して家をアピールする絶好の機会でもある。 しかしながらタバサにとっては、特に目立つ必要もないし、興味を持つ理由もなかった。 事実、長門有希が行ったのは、小石をそれと同じ大きさの金に錬金するという、 彼女がスクエアクラスのメイジであるという記号を示すだけの予定調和。 やがて一部には、ミス・ナガトはゴールドの錬金にしか能のない、歪んだ才能の土メイジであるとの噂も伝播したという。 しかしタバサにとって、そのようなことは何の問題にもならない。 それよりも彼女を悩ませたのは、前日の夜に届いた、一通の手紙であった。 窓辺と椅子にもたれて書物を開くのは、タバサと長門の日課である。 しかしその晩に限っては、開け放たれた窓から飛び込んできた伝書鳩に、平静を破られた。 それが何であるかを理解しつつ、タバサは鳩にくくり付けられた文書を開く。 「来た」 「なにが?」 「任務」 「そう」 もちろん、いつか任務が舞い込むことは予想の範囲内であった。 しかし、その機会が思いのほか早くやってきたことが、タバサの心に葛藤を呼ぶ。 「あなたは、いいの?」 「いい。使い魔として、協力する」 いや、タバサにとって、長門有希の召喚以来、これまで任務を命じられなかっただけでも、 幸運だったのかもしれない。仮に風竜のような移動手段となる使い魔を従えていれば、 これまで以上に都合のよい駒として扱われていたことは、想像に難くない。 ただ、長門有希の能力を持ってしても、自身の領地との距離が埋められず、 簡単には母の病を治しに向かえないことに苛立ちを感じてはいたが。 手紙には文書のほか、ガリア王の名が記された小切手や通行証、そして「武運を祈る」といった程度の、 内容がないも同然の信書も同封されていた。タバサは長門に、文書の内容を伝える。 『――明日、トリステインよりアルビオン王国へ派遣される密使に同行し、 ウェールズ王太子をトリステインに亡命させよ。詳細はラ・ヴァリエール家三女への使者より情報を得ること。 なお至急の任務のため、即時行動開始せよ。任務完了後はリュティスにて報告のこと [北花壇騎士団長]』 「どういうこと?」 タバサは長門有希に、現在のハルケギニアの情勢を説明する。 空中大陸アルビオンにおける内戦、旧体制に相当する王党派が敗北寸前であること、 そして、ガリア王家の血を引くタバサの耳にしていた、トリステイン王女アンリエッタとアルビオン王太子ウェールズが、 かつて恋仲であったということ――。長門有希がこれまでに読んだハルケギニアの書物の知識と合わせれば、理解は容易であった。 「この任務は危険」 長門有希が口を開く。それはタバサへ意見するためのものであったか、単に事実を述べたものであったか。 「王太子を亡命させれば、アルビオン貴族派――レコン・キスタ――の次なる矛先は、トリステインに向かう。目的はなに?」 「あなたの言うとおり。目的は――、おそらく、気まぐれ――。だけどわたしはただの駒にすぎない。 わかって。わたしが駒なのは、ユキに母様の病を治してもらうまで」 + + + そして、使い魔品評会の終わった夜。 「来た」 タバサは、自室の扉を叩く音に、友人を招き入れる。 「タバサ、気付いているかもしれないけれど、ルイズの部屋に客人よ。たぶんあれは――」 「気付いてる」 タバサと長門は椅子から立ち、キュルケに同行してルイズの部屋へと向かう。 ルイズの部屋の前には、既に先客がいた。いつかルイズの使い魔と決闘した、土メイジのギーシュである。 タバサと長門有希は、彼とほとんど面識がない。 無防備なままドアに耳をつけていた彼を引き剥がし、タバサは一同の周りにサイレントをかける。 既にルイズの部屋にはサイレントの魔法がかけられていたが、おそらく風メイジによるものではないのであろう、 トライアングルであるタバサのサイレントを上掛けすることによって、部屋の内部の音が、わずかながら漏れ出した。 彼女らが耳にしたのは、ルイズの部屋の客人は、トリステイン王女アンリエッタその人であること、 彼女が隣国ゲルマニアに嫁ぐことが政略として決定していること、そして結婚の障害となる、 かつてアンリエッタが、アルビオン王太子ウェールズにしたためた手紙をルイズに取り戻して欲しいということ……。 タバサにとってはガリアから送られた文書から予想できたことではあるが、 彼女が同行する対象と日時を見極めるためには、ルイズの部屋に聞き耳を立てることも必要なことである。 タバサとキュルケは、概ね話が終わったことを確認すると、何事もなかったかのように退散した。 キュルケは自室へ遊びに来ないかとタバサを手招きするが、明日の出発に備え断る。 かといってキュルケは、そんなタバサをどうこういうわけでもない。 その後ギーシュだけが、聞き耳を立てていたことに気付かれ、ルイズにエア・ハンマーをお見舞いされるのだが、 それはキュルケとタバサの感知するところではなかった。 + + + 翌朝、ルイズと才人、トリステインから派遣されたと思しき長髪の男、そしてなぜかギーシュが出発したことを確認すると、 タバサと長門も馬を駆り、アルビオンへ向かう港、ラ・ロシェールへと彼らを追った。 最初は彼らに追いつかないよう、控えめに馬を走らせていたが、途中の駅で馬を乗り換える際にそれとなく問うと、 彼らは想像以上の速さで街道を駆け抜けていったようである。自然、タバサと長門も馬に鞭を入れる。 「どこで合流するの?」 小休止を取りつつ、長門が問いかける。 「機会がなければ合流しない。単独行動。――うかつ。せめてキュルケがいれば、ルイズを追うことを不自然と思われなかったのに」 確かに、キュルケのような因縁のないタバサがルイズを追うのは不自然である。 フーケの征伐に同行したというだけでは、言い訳としても弱すぎるであろう。 「身分を明かせば?」 「最悪、そうなる。おそらくミス・ヴァリエールは信用できる。でも、トリステイン王宮から派遣された男が問題。 ガリアがアルビオンに介入することを、悟られるわけにはいかない」 「……わかった」 「考えがあるの?」 長門は小さく頷く。 「環境情報を改竄する」 すると、長門は高速言語を詠唱し――、タバサが瞬き一つすると、そこには彼女の最も親しい友人、キュルケ、らしき人物がいた。 「フェイス・チェンジ?」 フェイス・チェンジは、水のスクエア相当の魔法である。流石のタバサも、使い魔のレパートリーに驚きを禁じえない。 「わたしの周りの環境情報を改竄した。どう?」 しかしタバサの視線が顔から体、特に胸部へと移るにつれ――、表情が曇り出した。もはや語るまでもない。 「だめ」 「そう」 長門有希も憂鬱な表情を浮かべた。おそらくハルケギニアに召喚されてから、初めてのことである。 結局、どのように違和感なく合流するかを有耶無耶にしたまま、二人旅は続く。 + + + アルビオンへと繋がる港町、ラ・ロシェールは、古代の世界樹を利用して作られた港と、 岩造りの建築物で構成される経済都市である。四方を峰に阻まれ、 街道こそ整備されてはいるものの、峠を封鎖することで守備は容易であるといえた。 その入り口となる山道の途中、タバサと長門は、手負いの馬を引く男二人に追いついた。 「ヒラガサイト?」 タバサが声をかける。 「ん、誰かと思えば、タバサと長門さんじゃないか」 「どうしたの?」 「どうしたもこうしたも……」 「そうさ、聞いてくれないか」 才人を遮り、ギーシュが一方的に話し出す。 「つい先ほどのことなんだが、物盗りに襲われてね。 あの男、ルイズの婚約者でトリステインのグリフォン隊隊長らしいんだが、少しだけ盗賊を相手にしただけで、 僕たちを置いて、ルイズと先に行ってしまったんだよ。相手が全員平民だからなんとかなったものの……。 まったく、彼がトリステイン貴族だなんて、到底信じられない。父に頼んで罷免してもらわなければ――」 「それで、タバサと長門さんはどうして?」 「彼、ギーシュと同じ」 「と、いうことさ」 「実はわたしたちも話を聞いてきた」 「なんだ、盗み聞きしてたのはギーシュだけじゃなかったのか? タバサらしくないなぁ」 「ぼ、僕は君達がいたことは秘密にしていたんだぞ!?」 しかし才人はギーシュの言葉を無視し、 「ってことは、キュルケも来るんだろ?」 「来ない」 「どうして?」 「わたしと同行すると、キュルケに迷惑をかける」 「迷惑って……なぁ。もっとタバサらしくないぜ。友達なんだろ?」 「……待って」 「どうした、タバサ?」 「来た」 耳をすますと、才人も背後から蹄の音が近付いてくることに気付く。 「まさか、また物盗りか?」 「違う」 そして馬は、彼らの後ろに停まる。 「――タバサったら、あたしを置いていくなんてひどいわよ」 聞きなれた声の主へと振り向くと、噂をすれば影、馬に跨っているのはキュルケである。 「タバサもルイズを追っかけたいなら、あたしに一声かけなさいな。迷惑なことなんて、 何もないんだから。それに、あたしがこんな面白そうなことに首を突っ込まないと思って?」 「ごめん」 「謝らなくてもいいのよ。タバサにはタバサの事情があるでしょうし。大丈夫、タバサの邪魔はしないわ」 友人に対してばつが悪そうな様子で、タバサたちはラ・ロシェールへと峠道を下っていく。 + + + 「確か、"女神の杵"亭という宿のはずだったんだが、おお、ここだここだ」 一行が到着したのは、もはや人通りも少なくなった深夜である。 ギーシュが先頭に立ち、ラ・ロシェールでは最高級の宿に入る。 「サイト!」 彼らを目にするやいなや、ロビーにいた人影が一つ、才人に飛び込む。 「ルイズ、どうしたんだ、こんな時間まで」 「だって、心配したんだから!」 ルイズは才人にすがりつき、今にも泣き出さんばかりである。 「あらあら、ルイズもダーリンも……。あたしたちは退散しましょ」 ルイズと才人を残し、四人は早急に部屋へと入ることにした。既に深夜であることもあり、 男性であるギーシュも同室とあいまったが、そこは男女比と、メイジとしての格の違いによって相互監視が働く。 トライアングルとスクエア相当の女メイジ三人に手を出そうとは、仮にスクエアであっても考えようとはしまい。 翌朝、朝食のため階下へ降りると、才人とルイズは並んでソファで寝ている。どうやら一晩中、二人っきりでいたようである。 「ルイズったら、何人も男をはべらせてたと思ったら、今度はダーリン一人に入れ込んで、どうしちゃったのかしら、あの子」 「大丈夫」 タバサは即答する。 「信頼できる人間が必要」 公爵家と王家という違いはあれど、政略渦巻く中で生きてきたタバサにとって、 一人でも心を許せる人間がいることの大切さは、心に刻み込まれている。 彼女にとってキュルケがそうであり、また彼女の実家の執事、ペルスランもそうであるかもしれない。 そして長門有希も。 「ただ彼の心は、本心なのか、使い魔としてのものであるのか――」 「みんな、船は日没とともに出港よ。七番桟橋の、マリー・ガラント号」 朝食の場にて、船の出港は、ハルケギニア本土とアルビオン浮遊大陸が最も近付くスヴェルの月夜、 すなわちその日の夜であることをキュルケが伝える。皆それぞれに、一日を過ごそうとしていた。 タバサと長門は、アルビオンから輸入された書籍を探しに町へと繰り出すことで一致していた。 しかし宿を出ようとしたところで二人は呼び止められる。 「レディ、少し時間を頂戴してもいいかい?」 声の主は、魔法学院で目にした長髪の男である。 「あなたは?」 「これは失礼」 帽子を取りつつ、 「トリステイン王国グリフォン隊隊長、ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドだ。ミス・タバサと、ミス・ナガトだね? 君達のことは聞き及んでいるよ。謎のスクエアクラスの使い魔だとか」 ワルドはうやうやしく礼をする。 「それで、何か用?」 「いや、それがレディにフラれてしまってね」 レディ、がルイズを意味することに気付くまでの間、二人は一瞬戸惑いを覚える。 「あなたとミス・ヴァリエールに、どんな関係が?」 「自己紹介が足りなかったか。僕はルイズの婚約者でね。 とはいっても親同士、勝手に取り決めたものだが――、僕はルイズを本気で愛しているよ。 君達はおそらく、これがただの遠乗りではないことを察しているだろうが――、 思いがけずルイズに再開できて、僕の思いはいっそう深まったさ」 しかし表面上、二人は眉一つ動かさない。 ワルドは淡々と続ける。 「だというのに、昨日は部屋にも帰らず、今日も使い魔君と街に繰り出しているときたものだ。 婚約者としては、愚痴の一つも言いたくなるさ」 「何が言いたいの?」 タバサと長門が同時に発したつれない返事に、ワルドは肩をすくめる。 「いや……、すまない、ただの愚痴さ。貴族らしからぬ発言を見せてしまった。 それでは僕も、外の空気を吸いにいくことにするよ」 ワルドは二人に先んじて、宿を出ていった。 顔を見合わせるタバサと長門。 「――どう思う?」 と長門。 「わたしたちを観察していた。もしかすると、わたしたちの任務に気付いて――」 + + + 夕刻。一行は早めの食卓についた。才人の両脇にはルイズとキュルケが座り、 話の花を咲かせるも、タバサと長門、そしてワルドは無言である。 ギーシュも同様だが、彼は単に話し相手がいないだけであった。 「それにしてもルイズ、この宿、やけに客が少ないな。俺たちだけでほとんど貸切じゃないか」 確かに見回せば、夕食を取っているのは一行だけである。 「今からアルビオンに渡ろうだなんて貴族はいないもの、仕方ないわ」 「そんなもんかなあ。でも昨日は、ギリギリ満室だったんだぜ?」 「日によって変わるわよ」 しかしタバサは、風のメイジにだけ感じられる空気の変化を読み取っていた。 宿の外を動き回る人間の気配。それがもし、宿に閑古鳥が鳴いている理由であったとしたら? ついにタバサは、風に決定的な違和感を覚える。人間が動き出した。 長門に視線を向けると、同時に、長門もタバサへと振り向いた。 どうやら長門も何かを察知したようである。二人は同時に、カウンターの裏へと飛び込んだ。 「どうしたのよ、二人とも!?」 と声を上げたのはキュルケであるが、彼女も続いてカウンターに飛び込む。 その様子を見て皆も続く。デルフリンガーを掴んだ才人はルイズの手を引く。その様子に、ギーシュも彼らの後を追った。 すると火矢が射られるとともに、十数人はいようかという傭兵が、宿へと雪崩れ込んできたではないか。 カウンターの酒瓶が割れ、頭上からガラス片と酒が降りかかる。 一人フロアに残ったワルドは、テーブルと椅子を風魔法でなぎ払い、 即席のバリケードとすると、彼もまた皆の元へと飛び退く。 「さて、彼らの狙いは僕とルイズのようだが――」 ワルドの言葉に、タバサと長門が頷く。キュルケも事態を理解しているようである。 「二手に分かれる」 「うむ、僕らは裏口から出る。君達は、ここを食い止めていてくれたまえ」 ワルドは才人とルイズに先に行くよう促し、カウンターの奥、裏口へと向かう。 「な、いったいどうしたんだ? 僕らも後を追わなくては……、って、なにをするんだい!?」 一人事態を理解できていないギーシュを、タバサが杖で叩き黙らせる。 と同時に、固定化のかけられた天井が抉り取られ、赤く染まる空が露になった。 見ればそこには、いつか見たのと同じ、体高三十メイルほどのゴーレムが立っている。 「おやおや、またあんたたちかい? ん、ヴァリエールはいない、……今日はおまけもいるようだね」 「まさか、フーケじゃないの? あのあとトリステインの衛士に引き渡されたはずじゃ?」 「おまけとは、グラモン家を馬鹿にしたな!?」 驚くキュルケとギーシュをよそに、タバサは長門に問う。 「このままでは船に間に合わなくなる。どうする?」 「わたしが出る」 フーケの登場によって、場の空気は膠着する。矢の洪水こそ一時的に止んだものの、 カウンターの外に一歩出れば狙い撃ちされるか、フーケのゴーレムに踏み潰されるかのどちらかである。 だというのに、長門有希はカウンターから飛び出した。いや、まさに躍り出たという表現が正しい。 しなやかに伸びる跳躍は、フライの魔法を使用したものとは思えない。 巧みに体を捩じらせ、飛び交う矢を逸らそうとする。 しかし、一本、また一本と矢は身体を貫き、彼女が着地する頃には、マントとセーラー服を真紅に染めていた。 それでも長門有希は、顔色一つ変えてはいない。 傭兵たちが怯んだ一瞬を見逃さずに、長門有希はゴーレムに向け、再び跳躍する。 そして、彼女は空中でゴーレムに正対し、両腕を胴体に向けた。 と――、腕は白い光となって伸び、ゴーレムを貫通する。 「な、なんだって? 動きな、どうして動かないんだ、あたしのゴーレム!?」 釘付けにされたゴーレムは、もはやフーケの制御を受け付けない。 光の棒となった長門の腕はやがて消え、ゴーレムには大穴が残るのみである。もはや自壊するほかなかった。 「ちっ、一度ならず二度までも……。何者だい、杖もなしに。まさかテファと同じ――?」 タバサが風魔法により土煙をかき消すと、そこにフーケの姿はなかった。 傭兵たちも彼女の敗走に気付き、次々と"女神の杵"亭を去る。 テーブルと椅子の散乱した床には、四方から矢に貫かれた長門だけが残った。 「ユキ!」 タバサが駆け寄ると、長門有希を貫いていた矢は輝く砂に変わり、散り散りに消え去る。 力を失い倒れこもうとする長門を、タバサは抱き止めた。 「しっかりして、いま、治癒の魔法を……」 「いい。肉体の損傷はたいした事ない。すぐに再構成可能。それより、船に――」 一瞬、いつかフーケの杖を消し去ったときと同じ、輝く砂が長門にまとわりつくのをタバサは目にした。 それと同時に、顔や太腿、露出している部分の傷口が、縫い合わせるように塞がり、その跡は皮膚に沈み込むようにして消えた。 タバサの身体に掴まりつつ、長門は立ち上がる。 「だいじょうぶ。あなたの任務が大事」 確かに、矢に貫かれたはずの長門の服とマントは、何事もなかったかのように穴は塞がり、染み一つなくなっている。 「ユキ、あなたには、驚くばかり……」 タバサは使い魔の能力を一瞬に理解し、長門の言葉に頷く。背後の友人を一瞥すると、使い魔と二人、港へとフライで飛び去った。 「タバサ! ルイズを頼むわよ!」 背中に仲間の声を聞きつつ、世界樹を駆け上る。 前ページ次ページ雪と雪風_始祖と神