約 24,297 件
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/3503.html
ひぐらしのなくハルヒ カセットテープ 興味 Stairwayto Haruhi SIRENOF Haruhi 長門猫化 日常あるいは平穏な日々:ハルヒ篇 仮入部 最後の手紙 長門さんとギター 二人で、校舎にて 携帯電話 コミケにて 長門有希の体温 ある雨の日のこと 遺書 気のせい・・・? 感情 1.35倍 俺・・・実はポニテ萌えなんだ(憂鬱後記) 俺・・・実はポニテ萌えなんだ 涼宮ハルヒのエロゲー 朝比奈みくるとポケモン 憎悪、拒絶、少女 長門有希の虐待 日常 大切な君達へ……… 長門さんと白雪姫 えいえんのせかい だーれだ? 『きっかけ』 忘れな草 『涼宮ハルヒのコミケ』 涼宮ハルヒのカラオケ 涙 オセロ三番勝負 焼いた芋 酒と桜と…… 海の家のラーメン キッドナップ・テレフォン のれん 遊○王 赤服親父捕獲戦線 プリン作戦 カッコイイキョン君 くじびき妙バランス 未だ来ない日の一頁 鬼編集長の期待 妄想が…妄想が…蔓延る! 暮れの演奏会 古泉一樹の戯言 半年と4日目の憂鬱 CALLED(kyon side) CALLED(haruhi side) 涼宮ハルヒの疑問 朝比奈みくるの帰還 ホワイトデーの計画 猫又 そんなある休日の二人 旧友の往診 お袋の陰謀 キョン恋愛裁判 『オレとおまえと聖夜』 いたって普通の学校風景 恋愛感情は精神的な病の一種 キョンとハルヒの残したもの 誰かの結婚式の日の二人 涼宮ハルヒの用事 朝比奈みくるの憂鬱 日曜日の陽射しの下で ずっと一緒 トラブルメーカー 猫になったキョン 長門有希の手料理 雷、雷鳴、部室にて。 許されざるもの 生徒会室で… クラブ予算分配会議の真相 未来への坂道 涼宮ハルヒの清涼 長門有希のSF用語講座 長門有希の願望 キョンの一国一城 長門有希の出張 微妙な三角関係 フラクラKの末路 10年後のSOS団 エンドレスハイスクール 「ありえない」のニュアンス 煩悩との戦い 朝比奈みくるの恋人 ズボン下げ 佐々木さんの密かな楽しみ 立秋の二編 閉ざされた世界で 流星群 夕立ち
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/3102.html
The melancholy of Cupid 新入生もそろそろ初々しさを失い、彼らもまあ人生こんなもんかという高校生的悟りを開いた頃、俺も高校生最後の一年間に足を踏み入れてそろそろ一ヶ月が経とうとしている。クラス編成はたぶん説明するまでもないだろうな。俺とハルヒはなぜかそのまま繰り上げ文系、古泉と長門は理系クラスへ進級した。単なる偶然かあるいは誰かの意図か四人とも同じ国立を志望していて、俺は模試が来るたびにハルヒの課外講習を受けているありさまだ。ハルヒに付き合ってまで進学校を選ぶなんて、俺も自主性がないのか人がよすぎるのか、どっちでも同じだが。最後には神頼み的ハルヒの力でなんとか試験合格させてもらえないかなどと、甘いことを考えている自分を恥じていたりもする。 SOS団はなんの変わり映えもしない、はっきり言えばマンネリ化だな。昔に流行ったタイトルをリメイク、リキャストして出しなおす英雄モノの映画みたいに、去年のイベントに手を変え品を変え再利用しているのが、今日この頃のハルヒだ。さすがのお前もそろそろネタ切れか、ハルヒ。 俺はといえばあの事件以来、たまにだが、長門を誘うようになった。 たとえば日曜の朝、本を買いにでかけようと玄関で靴を履きながら、ひとりで行くより誰かを連れて行きたいなと考える。妹を連れて行った日にゃおもちゃやらケーキやらの前でじっと動かないし、卒業してから会っていない朝比奈さんを誘えたらいいんだが誘うとまたハルヒの不機嫌の虫が暴れだすだろうし、古泉?この世界が閉鎖空間になっちまってもあいつとだけはデートはしたくない。じゃあハルヒか、あいつは持てる全エネルギーでぶつかってくるんで気が休まらん。 こんな感じで、消去法でいくと長門しかいないわけだ。別に付き合うとか、長門を恋愛の対象として見てたわけじゃない。言い訳じみて聞こえるかもしれないが、俺が出かけるついでに長門も連れて行ってやろうかとふと思うことがたびたびあっただけだ。 休みの日に長門をひとりにしておくべきでないような、なんとなくそんな気になる。殺風景な部屋でじっとしている長門を想像すると、心のどこかにモヤモヤしたものが生まれてしまう。部屋の白い壁と同化してそのまま消え入ってしまいそうな気さえする。 休日の朝、電話をかけると長門もとくに用事もないようでいそいそとついてきた。図書館に行って長門が気の済むまで借りる本を品定めしたあと、たまにだが映画に行ったり、ごくごくたまにだが飯を食いに行ったり、まれに地元のイベントに行ったりしていた。無論、俺が誘うのだから俺のおごりだ。そういう日には不思議と財布の中身にも余裕があった。 一度ゲーセンに行ったときには、長門がファイター系のゲームをはじめてしまって止まらなかったことがあった。 無駄のない動き、炸裂するコンボ技、目にもとまらないコントローラの操作。むかし炎のコマとかあったっけ。ギャラリが集まってきてオオッとかスゲーとか、セーラー服のきゃしゃな女の子がやってるもんだから、やたら歓声が上がったりしていた。 俺はゲーマーの群れから離れて、ひとり缶コーヒーを何本か飲みながら暇を持て余していた。手持ち無沙汰にUFOキャッチャーで取ったぬいぐるみをいじっていた。 二時間くらいしてやっと終わり、長門の妙に達成感に充たされた表情を見て俺は笑った。グッジョブ。おつかれさま。 それから光陽園駅まで戻り、そこで別れる。そんなことを何度か繰り返していた。 「じゃ、またな」 「……」 俺も別れを惜しんだりしないし、長門もいつまでも手を振っていたりはしない。たまに、俺が千二百円くらいかけてやっとゲットしたヌイグルミを大事そうに抱えている以外は。 二人とも極めてドライだった。他人が見れば、兄と妹だと思っても違和感はないくらいにカラリとした付き合いだった。俺はこんな、お互いになんの気兼ねもない関係が続けばいいと思っていたんだ。 ところがそうは思わなかったやつがいた。涼宮ハルヒである。 「キョン、谷口に聞いたんだけど、あんた有希と付き合ってんの?」 俺は飲んでいたお茶を噴いた。長門が読んでいた本から顔を上げた。目を丸くしている。 「な、なにを根拠にそんなでっち上げを!?」 だが予想はしていたことかもしれない。なにもやましいことはないはずなのに、俺は妙にうろたえた。 「あんたと有希が駅前を歩いてるのを何度か見たらしいんだけどね」 「でっち上げだ!濡れ衣だ!冤罪にもほどがある、弁護士を要求する」 「なにムキになってんの。なんでもないならいいじゃないの」 「……わたしたちに特別な関係はない」長門は本に視線を戻してボソボソと言った。 「まあ、キョンが誰と付き合おうが自由だけどね」 ハルヒが横目にお茶をすすりながら言った。内心ほっとした。というかまわりから見れば、俺と長門の関係は微妙で曖昧かもしれんな。 話はそれだけでは終わらない。 翌日俺が部室のドアを開けるなり、ハルヒが叫んだ。 「キョン、有希。ちょっとあんたたち、マジで付き合ってるんじゃないの?」 唐突にハルヒが言った。長門と俺は目を見合わせた。 「なんなのよ、その目と目で暗黙の示し合いは」 ハルヒのイライラ度指数が急上昇してきた。まずい。 「昨日あんたが有希のマンションに入るのを見たのよ!」 うわ……まじか。俺は自宅前で絶世の美女といるところをフォーカスされた有名人のようにうろたえた。 「付き合ってるというわけでもなくてな。いやまあ、ときどき一緒に図書館に行ってる程度なんだが……」 「一人暮らしの女の部屋に上がりこむのはね、世間では付き合ってるって言うのよ」 「お前にとやかく言われる筋合いのことじゃないと思うが」 「あたしが言ってるのはね、あたしに嘘をついてまで付き合ってるのが気に入らないってことよ!」 俺には取り付く島がなかった。 「SOS団は、あたしはいったい何なの、ただの同級生?見せかけの信頼関係だったの?」 「たまにいっしょに出かけるくらいで、お前が考えてるような関係じゃないんだけどな」 「じゃあなんで嘘をついたのよ」 「いやなんというかな、ハルヒ、俺は別に悪気があったわけじゃ……」 どうにもごまかしようのない事態になってきた。古泉に助け舟を求める視線を投げてみるが、この野郎、笑ってやがる。 「有希も黙ってないでなんとか言いなさいよ。あんただけは信用してたのに」 「……わたしは間違ったことはしていないし、言ってもいない」 長門は本から目を離さず、抑揚のない声で言った。それがハルヒの逆鱗に触れたようだ。ハルヒは机をげんこつでドンと叩いた。湯飲みが震えてお茶がこぼれた。 「有希、あんたここから出て行って」 「……」 長門はじっとハルヒを見つめた。それから本棚から本を数冊抜き取って脇に抱え、何も言わずに出て行った。ハルヒのこめかみに青筋が立っている。 「ハルヒ、言い過ぎだぞ。長門は元々文芸部の人間だろうが」 「なによ、事実上SOS団のメンバーじゃないの。あたしは団長よ。上司の言うことは絶対なのよ」 「お前、もうちょっと大人かと思ってたが全然ガキじゃないか」 「あたしに向かって嘘をつく団員なんかクビよ!」 「長門は嘘はついてないだろうが!」 「もう、その辺で」古泉が割って入った。 「気分悪いわ。今日は帰る」 ハルヒはカバンをひっつかんでドタドタと出て行った。ガラスが割れそうな勢いでドアを閉めた。壁の粉がパラパラと落ちた。 「お気持ちは分かりますが、ここは暴走させない方向でお願いします」 古泉がすがるように俺を見る。 「んなこた言われなくても分かってるさ。だがいったいいつになったらハルヒは大人になるんだ」 「待つしかありません。しかし今回の件はあなたに責任がある」 「俺が誰と付き合おうとあいつの許可はいらん」 っていうか、付き合ってるわけじゃないのに俺。 「ですが、嘘は涼宮さんを怒らせる要因にはなります。それに……」 「それに何だ」 「嫉妬だとは考えられませんか」 「ハルヒが嫉妬?」 「前にあなたが涼宮さんもろとも閉鎖空間に行ってしまったときのことを、よもやお忘れではないでしょう」 思い出したくもない……あれは悪夢だ。 「あれは涼宮さんが望んだからそうなった。その要因を作ったのはあなたと朝比奈さんだった」 「まったく……。ハルヒは俺のタイプじゃない」 「なにも恋愛しろと言っているわけではないんです」 いまいましいことに俺は古泉に説教されている。 「あなたの言動は涼宮さんの精神状態に影響するんです」 「じゃあ俺は死ぬまでハルヒの子守りをしなきゃならんのか」 「そうです」 なんてこった。俺は頭を抱えた。 「ですが、徐々に環境を変えていくことはできます。たとえば将来、あなたが別の誰かと結婚することになっても、涼宮さんを暴走させないでいるだけの環境に」 「ハルヒは嫌いじゃない。だがときどき俺の手にあまることもあるんだ。俺自身の人生は俺が決めてもいいだろう?」 なぜか弱腰だ。 「もちろんです」 そのとき、誰かの携帯が鳴った。俺ではなく古泉のほうだった。 「どうやら涼宮さんのイライラが限界に達したようです。バイトに行かなくてはなりません」 「そうか。すまんな」なんで俺が謝るんだ。 「できれば僕がとりなしておきますよ。明日また会いましょう」 しかしまあ、恋愛のレの字もないのに恋愛沙汰とは。俺もヤキが回った。 その日は結局、長門は戻って来ず、ハルヒにも会わなかった。長門は嘘をついたわけではないが、ハルヒに正確なところを伝えていない。それも要因のひとつだ。俺は嘘でお茶を濁そうとした。……なんてこった、俺が悪いのか。ハルヒがわがまま過ぎるのは論外だが。 次の日、俺はなんとかハルヒと和解しようと試みたんだが、ずっと無視されっぱなしで立つ瀬がなかった。ハルヒをなだめたりすかしたりするなんて、俺もうこんな人生いやだ。 その日、ハルヒはとうとう部室に来なかった。当然、長門もだ。 「僕にも立つ瀬がありません」 古泉の和解工作も失敗したらしい。 ── 聞いた話になる。 「涼宮さん、僕たちが出会ってからもう二年が経つんですね」 「なにが言いたいの。愛の告白なら間に合ってるわ」 「そうではありません。僕たち、というのはSOS団のメンバーのことです」 「それがどうかしたの」 「今までいろんなことがありましたね。宇宙艦隊を指揮して獅子奮迅の戦いをしたり、雪山で遭難しそうになって助け合ったり、SOS団の存亡かけて生徒会と戦ったり」 「だから?」 「僕たちはかつてないほどの最高のチームだとは思いませんか」 「まあ、それは認めるわ」 「こんなつまらないことで仲たがいするのはやめましょうよ」 「つまらないこととはなによ。あたしは本気で怒ってるんだから」 「長門さんも悪気はなかったんだと思いますよ」 「あたしは有希のことを言ってるんじゃないの。キョンがあたしに隠れてこそこそしてるのが気に入らないの」 「つまり……どうしろと」 「付き合うのか付き合わないのか、はっきりしなさいってことよ」 「でもあの二人ですから。そう簡単には白黒がつくとは思えないですが」 「古泉君、あんたどっちの味方なの」 「えっ……。もちろん僕は涼宮さんの味方です」 「よろしい」 「、ということなんですよ」 「ということじゃないよ、全然フォローになってないじゃないかよ」 「面目ありません」 ハルヒの腰巾着め。 「あなたは涼宮さんに第一の信頼を置かれている人です。そのあなたが涼宮さんに悟られないように行動しているのが、彼女には気に入らないのでしょう」 「俺は隠れてるわけじゃないんだがな」 「本当にそうと言い切れますか?長門さんを誘うとき、涼宮さんに遭遇しないよう配慮したりしませんか」 ズバリ言われて、ぐうの音も出ない。 「ここはひとつ、オープンに行きませんか」 「どういうことだ」 「二人の状況を正直に話すんです。分からないことは分からないでもいい。どういうきっかけで一緒に出かけるようになったんだとか」 「まあその程度なら。でも、なんでも教える必要があるのか」 「それはもちろん、」古泉はひと呼吸置いた。「あなたがたを引き合わせたのは涼宮さんですから」 休み時間に携帯が鳴った。 「もしもし、キョン君?喜緑です」ひさしぶりに聞く声だ。 「これはどうも、おひさしぶりです」 俺はハルヒに聞こえないようにと教室を出た。喜緑さんにはいろいろと影になり日向になりお世話になっていて、困ったときの救いの女神だ。 「あの……長門さんのことでちょっと話したいんですけど、今日は忙しいですか?」 「いえいえ、俺はいつでも暇ですよ」 ここんとこSOS団の活動は停止している。 「じゃあ、学校が引けたら光陽園駅前で会ってもらえます?」 「いいですよ。六限が終えたら電話入れます」 長門とハルヒの仲裁に来たのだろうか。今日、ハルヒはとうとう口を利かなかった。俺もムキになって無視し続けた。子供っぽいにもほどがある。 ホームルーム後、俺は古泉に電話して今日は休むと伝えた。 「長門のことで喜緑さんに呼び出された」 「ああ、そういうことですか。行ってらっしゃい。涼宮さんには伝えておきます。それはそうと、昨日の神人狩りはすごかったですよ。見せたかったです」 あんまり見物したくなるようなシロモノじゃないんだが。 「おひさしぶりです。先日はいろいろとありがとうございました」 ついこないだ会ったばかりなのに、なんだかずいぶん昔のことのような気がした。 喜緑さんは卒業後、たぶんハルヒの志望校と同じなんだろうけど、大学生になり、見た目もずいぶん大人っぽくなった。セーラー服じゃないからかもしれないが、なんだか妙にお姉さんっぽい雰囲気に包まれていた。 喫茶店に入ると、喜緑さんは本題を切り出した。いつものように前置きがない。 「長門さんがあんまり強情なので、情報統合思念体が解任しようかと動いてるんです」 「そんな。長門はよくやっていますよ」 「いつだったか異時間同位体とのリンクを拒んだ理由、覚えてます?」 「ええ。長門自ら、“自分がいやだから”とか言ってましたっけ」 「あの頃から長門さんは、なんというか今の、現時点の自分の個を主張する傾向にあって」 「もともと主張がなさすぎたから、ふつーになったんじゃありませんか。朝倉みたいに主張が強すぎるのも問題ですが」 「ええ。それは分かるんです。でも任務に支障をきたすようになってきたんで、上のほうでも懸念してまして」 「今回のことは俺が悪いんです。なんというかこう、人間には曖昧な部分がたくさんあって、たまに関係がこじれるんです」 「分かりますわ。私が来たのはただ、長門さんに任務を遂行するよう伝えるためなんです」 「喜緑さん、思念体の言いたいことは分かります。でもあんまり長門を叱らないでやってください。悪いのは俺とハルヒなんです」 喜緑さんはにっこりと微笑んだ。 「キョン君は優しいんですね」 「長門と知り合ってからいろいろあって、一緒に危機を乗り越えたり、異世界に行ったり、泣いたり笑ったりがあって。今では俺と長門の間には特別な信頼みたいなものがあるんです。そこにハルヒが子供みたいに嫉妬して、こういう状態になってしまったわけで。なにをされても怒ることすらなかった長門に、今は守りたいものがあるんです」 長門のことになるとなんでこんなに饒舌になるのか、自分でもよく分からないんだが。 功を奏したのか、喜緑さんは少し考え込んだふうだった。 「そうなのですね……分かりましたわ。それにしても、長門さんもずいぶん人間っぽくなりましたね」 「ええ。みんなが思うよりずっと人間臭いと思います」 「たぶん、あなたのその感性が彼女を変えたんだと思いますよ」 「え……」 言葉にならなかった。 「有希のマンションでなにしてたのよ」 翌日の四限の終わりに、弁当を持って外に出ようとしたところ、ハルヒが唐突に切り出した。 「あんた、有希のマンションでなにしてたのよ」 「なんというかな。いつだったか話したろ、長門が親類のところに引っ越すとかどうとか」 「あれとどう関係があるのよ」 「いや、あれからときどき身の上相談に乗ってやっててだな」 「それで付き合うようになったわけ?」 「いや、だから一般に言うような男と女の付き合いじゃないんだって」 「じゃあなんで隠してたのよ。やましいことがあるからでしょ」 「隠してたわけじゃなくて、誤解されそうだったからあえて誰にも言わなかったというか。谷口はアレだし」 「隠したってもう周知の事実よ」 それはまあ、人の噂も八十日というから気にはしてないんだが。 「あたしは隠れてコソコソされるのが嫌いなの」 「ああ、分かってるよ。悪かった」 「謝ってるのそれ」 「そうだ」 「まあ、いいわ。最初からそう説明してくれれば……」 言い淀んだハルヒは、なにごとか考えているようだった。 「あんた、有希とまじめに付き合うとか考えないの?」 「うーん……」 俺は少し考え込んだ。俺にとって長門って何なんだろう。同級生、部活のメンバー、頼れる宇宙人、でもときどき守ってやらないといけない宇宙人、ほかにもなんだかあるが。 「分からん。そうなるのかもしれないし、ならないのかもしれない」 しかしながらハルヒの次の一言は、正直こたえた。 「キョン、有希を泣かせたらあたしがタダじゃおかないからね」 Someday over the rainbowへ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/3572.html
0-1.プロローグ 「今回の事態は、この組織が対処できるレベルを超えている。よって、最高評議会においても明確な結論が出なかった。しかし、ゆっくり検討している余裕もない。よって、あなたの立案した暫定計画を実行することに決した。実行責任者はあなた」 暫定計画といってもたいしたものではない。現地の長門有希に情報を流して、あとは彼女に頼るしかないという、なんとも情けないものにすぎなかった。TFEI同士の抗争に、人間の出る幕などないのだ。 「はい。かしこまりました」 1.端緒 その変化は、突如として発生した。 情報統合思念体穏健派は、主流派より主導権を奪取。主流派と急進派の動きを封じ込め、他の派閥を勢力下に収めた。 穏健派は、クーデターを平穏に完遂したあと、配下のインターフェースに指令を下した。 喜緑江美里は、自宅のマンションの一室で、穏健派からの指令を受領した。 了解する旨を返答する。 情報統合思念体の存在及び宇宙の秩序を脅かしうる涼宮ハルヒの抹殺。 その障害となるのは、間違いなく、長門有希。 まずは、その注意を他へ逸らさねばならない。 彼女は、配下のインターフェースに、「機関」に働きかけるよう命じた。 0-2.プロローグの続き 「もともと、この問題は、情報統合思念体の内部抗争が原因。本来なら、あなたがたの手を煩わせるようなことではないのだが……」 「いいのですよ。『機関』時空工作部としては、先輩方の不始末については自分たちで処理したいところですから」 「あなたの心情も組織としての面子も理解はできる。でも、無理はしないで」 2.接触 長門有希が学校に行くためにマンションの自室を出ると、そこに、一人の女性が立っていた。 「お久しぶりです。長門さん」 長門有希は、黙って、自室に入るように促した。 「用件は?」 長門有希は、朝比奈みくる(大)に対して、端的にそう訊ねた。 「今からデータを送信します」 長門有希は、送られてきたデータの内容を把握すると、わずかに表情を動かした。 「すみませんね。なにぶん、こういう事態において頼りになるのは、長門さんしかいないものですから」 「情報提供には感謝する」 「よろしくお願いします」 立ち去ろうとした朝比奈みくるに、長門有希は質問をぶつけた。 「あなたはこれからどうするの?」 「『機関』への対処をとります。長門さんにばかり頼るわけにもいきませんので」 「無理はしないで」 長門有希のその言葉に、朝比奈みくるは一瞬驚いた表情で固まった。 0-3.プロローグの続き 「しかし、この任務が失敗しては……」 朝比奈みくるの言葉は、途中でさえぎられた。 「最終的には私が直接介入を行なう」 3.狙撃 森園生は、自らの装備を確認していた。防弾チョッキ、拳銃、手榴弾。それなりの武装であったが、それらがどれだけ役立つかは分からない。 部下たちを見回す。新川、多丸兄弟。みな凄腕の戦士たちだ。 「TFEIの支援があるとはいえ、ちときついですね。例の長門有希が敵に回るのは確実でしょう」 多丸裕がグチのようにそういった。 「私たちは上部の命令に従うのみよ」 「古泉が抵抗してきたら、いかがないさいますかな?」 新川がそう訊ねてきた。 「任務の障害となるならば、実力で排除します」 森園生はさも当然のようにそう答えた。 「機関」の上層部がいきなり入れ替わった。そして、下された指令は、ただ一つ。 世界の秩序を脅かす涼宮ハルヒを抹殺せよ。 森園生たちがアジトを出た瞬間。 あたりに銃声が響いた。森園生が脇腹を押さえて倒れこむ。 とあるビルの屋上。 彼の手には、狙撃銃が握られていた。用いた銃弾は、防弾チョッキを貫通する特殊銃弾だ。 「御先祖様を狙撃するというのも、あまり気分がよいものではありませんね」 そんな部下のグチに対して、上司である朝比奈みくるは、 「あなただって賛成したじゃない」 「将来結婚するはずの御先祖様お二人が殺し合いをするのを見せつけられるよりはマシですからね。しかし、自分で撃っておいてこういうのもなんですが、彼女は大丈夫でしょうか?」 「大丈夫よ。『機関』の鋼鉄の女が、あれぐらいで死ぬわけないわ。森さんには『機関』総帥になるまでは生きてもらわなきゃ困るもの」 二人は、森園生が救急車に乗せられていく様子をただ眺めていた。 その間にも、情報通信デバイスを通じて、朝比奈みくるに部下たちから続々と報告が入ってくる。 経過はおおむね順調。 しかし、すべてが順調にいったとしても、「機関」を完全制圧するのは難しい。この作戦に投入されている時間工作員は、朝比奈みくるのチームだけだったから。 他のチームの投入も検討されたが、最高評議会の審議段階で、断念されていた。どのみちTFEIを相手にせざるをえない状況では、人員の大量投入は無駄に犠牲を増やす結果にしかならない。そういう判断だった。 0-4.プロローグの続き 「……」 朝比奈みくるは絶句したまま固まっていた。 「さきほど、私に情報統合思念体主流派から命令が下った。主流派としても、このような既定事項からの逸脱は容認できないということ」 4.偽りの平穏 放課後、文芸部室。 「遅れてしまいました」 古泉一樹がそういいながら入ってきたときには、他の団員は全員そろっていた。 「古泉くん。それ何?」 古泉一樹は、菓子箱のようなものを持っていた。 「ああ、これですか。実は、親戚が旅行のお土産にと分けてくださいましてね。何の変哲もない温泉饅頭です。一人で食べるのもなんだと思いまして」 温泉饅頭はみんなに配られ、朝比奈みくるが入れたお茶とともに、それぞれの胃に収まった。 みんなが饅頭を手に取る前に長門有希が短く呪文を唱えたことに気がついた者はいなかった。 彼女は、饅頭に含まれていた青酸カリを分解して無害化したのだった。 そのことは古泉一樹も知らないことだろう。彼は道具にされただけだ。 その後は、いつもどおりの団活だった。 涼宮ハルヒはネットサーフィン。キョンと古泉一樹は、ボードゲームで対戦。朝比奈みくるはお茶をせっせと入れ、長門有希は読書に専念。 しかし、長門有希は、今日という日がこのまま平穏には終わらぬことを知っていた。 0-5.プロローグの続き 「最終的な処理は私が行なう。だから、あなたが無理をする必要はない」 「はい。かしこまりました」 5.襲撃 喜緑江美里は、SOS団のメンバーが下校したのを確認すると、配下のインターフェースにいっせいに指令を下した。 「機関」の人間たちは未来人たちの妨害工作のせいでだいぶ数を減らしていたが、彼女は気にもしなかった。人間ごときは捨て駒にすぎないのだから。 SOS団の集団下校。 その途中で、朝比奈みくるにいきなり最優先強制コードによる指令が入った。 「えっ!」 朝比奈みくるが驚いたのもつかの間。彼女のTPDDが強制的に起動し、その姿が忽然と消え去った。 それが合図だった。 長門有希は、涼宮ハルヒ、キョン及び古泉一樹を強制的に眠らせると同時に、みんなを包み込むように防御フィールドを展開した。 その透明な防壁に、無数の銃弾と手榴弾が弾き飛ばされた。 彼女たちの正面から、武装した集団が襲いかかってくる。 そこに、また別の人間たちが忽然と現れた。 「すみません。長門さん。『機関』を制圧し切れてなくて、この有り様です」 朝比奈みくる(大)は、手にした光線銃で次々と「機関」の襲撃者たちを撃退していく。彼女に指揮された部下たちも、同様に光線銃を放っていた。 長門有希は、防御フィールドを拡大して、朝比奈みくるを保護下に収めた。 「いい。それより、あなたの部下たちを撤退させてほしい。このままでは、巻き込まれる」 「了解です」 朝比奈みくるは、部下たちのTPDDを強制起動させた。 それと同時に、長門有希は、「機関」の襲撃者たちを遠隔地に空間転移させる。 その瞬間に、長門有希と情報統合思念体の連結が強制的に切断された。 彼女はすぐさま、個体単体の全力を用いて防御フィールドを強化する。 それはギリギリのタイミングだった。 上空からいっせいに光の槍が降り注ぐ。 「長門さん、いつまでもちます?」 「私単体の能力では、5分が限界」 「少し時間を稼がなければいけませんね」 朝比奈みくるの肩に忽然と、バズーガ砲のようなものが現れた。 「長門さん。防御フィールドの外方向への透過率をあげてください。10秒でいいです」 「了解した」 バズーガ砲のようなものから不可視の光線が放たれる。 放たれたガンマ線レーザーは、迫り来るTFEIたちを次々となぎ倒していった。 朝比奈みくるは、一掃射すると肩からそれを投げ捨てた。膨大な電力を消費するため、携帯型では一掃射が限度なのだ。 残ったTFEIたちが、空からこちらに迫ってくる。 防御フィールドに接触するかと思われたその瞬間。 彼女たちは、一瞬にして霧散した。 防御フィールドの前に、いつの間にか一人の小柄で老齢な女性が立っていた。 「朝比奈みくる。ご苦労様」 「すみません。結局、お手を煩わせてしまいました」 「気にすることはない。インターフェースの相手は、私の役目」 長門有希は、目に前に現れた老齢の女性が、自分の異時間同位体であることを理解した。 0-6.プロローグの続き 「それでは、行ってまいります。長門さん」 「私の異時間同位体によろしく」 6.爆弾 長門有希(大)は、静かに右手を上げた。 そこに、猛烈な勢いで拳が叩き込まれる。長門有希(大)の右手は難なくそれを受け止めた。 「なぜ、あなたがここにいるのですか?」 喜緑江美里は、拳の叩き込んだ体勢のまま空中に固定されていた。 「私は、情報統合思念体主流派の命令を受けてここにいる。あなたがたは、主流派が主導権を奪われたままで黙っていると思っていたのか? だとすれば、愚かだとしかいいようがない」 「随分と親孝行なことですね。そこにいるあなたの異時間同位体は、親に反発してばかりだというのに」 「あのころは、私は、人間でいうところの反抗期にあったものと理解している」 「そうですか。でも、結局のところ、今のあなたも、命令にかこつけて、自分の守りたいものを守っているだけなのではないですか?」 「否定はしない。でも、あなたの親──穏健派とは違って、私の親は寛大である。涼宮ハルヒ及びその周辺事項の保全と観測──その基本方針に反しない限り、私の我がままはたいていは許してくれる」 あの12月18日の暴走。あのときも、長門有希の処分を強硬に主張していたのは穏健派であって、主流派自身は寛容であったのだ。 「酷い言われようですね。あれでも、一応私の親なんですけど」 「あなたが親孝行なのは承知している。それを非難するつもりもない。でも、今は邪魔。後で再構成するから、消えて」 喜緑江美里の身体が一瞬光ったかと思うと、あっという間に霧散していった。 長門有希(大)は、地面を蹴ると、空に向けて上昇した。 そこには光り輝く球体が浮いていた。その周りには火花が無数に散っている。 長門有希(小)は、それが核融合反応によるものであると分析した。 穏健派TFEIたちの襲撃の瞬間にそれは忽然と現れ、起爆直後に長門有希(大)によって情報制御空間に閉じ込められたのだ。 その情報制御空間の内部で、核融合爆発による猛烈なエネルギーが暴れまわっている。 「あれは、未来から送りこまれてきたものか?」 長門有希(小)の質問には、朝比奈みくるが答えた。 「ええ、そうです。未来側にもいろいろな考えの人がいましてね。時間航行技術の開発に関係する人物及びその先祖は、涼宮さんの半径50キロメートル圏内に集中してます。この混乱に乗じて、あの爆弾一発で時間航行技術の完全消滅をもくろんでいたのでしょう」 時間航行技術の開発に関係する人物及びその先祖が涼宮ハルヒの半径50キロメートル圏内に集中しているという事実。 古泉一樹あたりに言わせれば、それも涼宮ハルヒが望んだからということなのであろうが。 0-7.プロローグの続き 朝比奈みくるを見送ったあと、長門有希は静かに計算を開始した。 介入のタイミングを1/10000秒単位でつめていく。少しでもずれれば、事態は最悪の結末を迎えかねない。 計算を終えると、彼女は自らのTPDDを起動した。 7.再生 長門有希(大)は、球体に手をかざすと、長々と呪文を唱え始めた。 呪文が終わったとき、球体はゆっくりと縮小し、やがて消えていった。 核融合爆発は完全に封じられたのだ。 長門有希(大)は、再び地上に降り立った。 「朝比奈みくる。帰還してよろしい」 「かしこまりました」 朝比奈みくる(大)の姿が掻き消えた。 その代わりに朝比奈みくる(小)が忽然と現れた。眠らされた状態であったが。 「この後は、どうするのか?」 長門有希(小)が、長門有希(大)に訊ねる。 「涼宮ハルヒの力を用いて、世界を再構成する」 長門有希(小)の表情がわずかに動いた。 それには構わず、長門有希(大)が続ける。 「この時間平面の現状は、私が記憶している既定事項から逸脱している。よって、私の記憶しているとおりの状況に復元する、あなたの記憶も含めて」 「それは、未来人の傲慢ではないのか?」 「否定はしない。私は、思い出をできる限り完全な形で保全したいと思っている。よって、私の記憶にない出来事は、あなたの記憶から抹消されなければならない」 長門有希(小)は、自分の体が圧倒的な情報圧力によって拘束されていることに気づいた。 「抵抗は無意味」 長門有希(大)は冷酷にそう通告しつつ、涼宮ハルヒの体に手をかざした。 「涼宮ハルヒとの連結完了。世界構成情報の改変開始」 長門有希(小)は、それを黙ってみていることしかできなかった。 8-1.エピローグ──平穏な放課後 放課後、文芸部室。 「遅れてしまいました」 古泉一樹がそういいながら入ってきたときには、他の団員は全員そろっていた。 「古泉くん。それ何?」 古泉一樹は、菓子箱のようなものを持っていた。 「ああ、これですか。実は、親戚が旅行のお土産にと分けてくださいましてね。何の変哲もない温泉饅頭です。一人で食べるのもなんだと思いまして」 温泉饅頭はみんなに配られ、朝比奈みくるが入れたお茶とともに、それぞれの胃に収まった。 その後は、いつもどおりの団活だった。 涼宮ハルヒはネットサーフィン。キョンと古泉一樹は、ボードゲームで対戦。朝比奈みくるはお茶をせっせと入れ、長門有希は読書に専念。 そう。その日は、まったくもって平穏無事に終了したのだった。 8-2.エピローグ──平穏な未来 長門有希(大)は、原時間平面に帰還すると、すぐさま情報操作を開始した。 穏健派TFEIの撃退、核融合爆発の阻止、世界の再構成。「機関」時空工作部の人間たちには、それらすべてが長門有希(小)がやったものとして認識されるように情報をいじった。もちろん、自分の時間遡行記録も抹消する。 なぜなら、「機関」時空工作部の最高権力を牛耳る彼女がTFEIであるという事実は、組織の中では、彼女自身と朝比奈みくるしか知らない秘密であるから。 朝比奈みくるの部屋に入る。 「ご苦労様です」 「あなたこそ、ご苦労様」 朝比奈みくるが差し出したお茶を口につける。 いつ飲んでも、彼女のお茶はおいしい。 その後、二人は、たわいもない世間話をしてすごした。 その光景は、さっきまで自分たちの時空間が危機にあったことなどまるで感じさせない、のどかな光景であった。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1728.html
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1887.html
冬の墓参り 夏のお盆に墓参りをする風習すら廃れたこの時代において、冬のこんな時期に墓参りをする者など皆無であり、そこには長門有希しかいなかった。 墓地には、雪がチラチラと舞っていた。 ときは、12月18日。 長門有希は、長門有希個人として、その墓地を訪れていた。 「人間」として有する「機関」時空工作部最高評議会評議員の地位。 そして、情報統合思念体から与えられた地球上に存在するすべての対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインターフェースの最高統括指揮権限者としての地位。 そのいずれも、この日のこの場所においては意味をなさないものであった。 130歳という実年齢をはるかに下回る設定年齢も、そしてその設定年齢にあわせた自己の容姿すらも、ここでは意味はない。 この日にここに来るときは、心はいつまでもあのときのまま。 それこそが、毎年、お盆のほかにもう一度ここを訪れる理由であるから。 ゆっくりと歩みを進め、そして、ひとつの墓石の前に立ち止まる。 そこに刻まれた名前は……。 キョン ハルヒ キョンという仮名を刻むことを決めたのは、彼に先立たれた涼宮ハルヒであった。 長門有希は、彼女に対して、仮名を記すことは一般的な慣習上ふさわしくないのではないかという趣旨のことを告げたのだが、彼女は明るく笑って「死んだって、キョンはキョンよ」というばかりであった。 彼女が天寿をまっとうしたのは、その一ヵ月後。 あの世でさっそく「彼」と仲良く喧嘩したであろうことは、想像に難くない。いまさら嫉妬する気もないが……。 それも、今となっては、はるか昔のこと。 長門有希は、ただ静かに手を合わせた。 チラチラと舞う雪の中、その姿はまるで懺悔するかのようであり……。 長い間、ひたすらその態勢を続けていたが、空間転送装置の作動を感知して顔を上げた。 振り向くと、そこには「機関」時空工作部上級工作員朝比奈みくるがいた。統合時空補正計画SOSを成功裏に終わらせたことによって、若くしてその地位は揺るぎない彼女。 (朝比奈みくる)「長門最高評議員殿。さきほど最高評議会の緊急招集が決定されました。直ちに御帰還を」 朝比奈みくるは、あえて堅苦しい言い回しを用いた。 (長門有希)「私は休暇。誰にも私のこの日を邪魔はさせない。他の評議員にもそのことは念押ししてある。なのに、なぜ?」 朝比奈みくるは、墓石に視線を向けた。そこに記された二つの名前は、彼女の親友の名前であり、かつ、彼女の母方の曾祖父の父母の名前でもあった。彼女は、「彼」と涼宮ハルヒの玄孫としてこの世に生を受けていた。 (朝比奈みくる)「長門さんにとって、この日が特別なものであることは分かっています」 長門有希にとって、この日は、「彼」に対する誓いの日であった。 二度とあのような暴走は引き起こさないという誓い。 (長門有希)「ならばなぜ?」 (朝比奈みくる)「時空工作部規定事項管理局から、規定事項候補として御評議にかけるべき事案があがってきております。『機関』に我々の時空工作部が組織される過程に関するものです。 時代が近接しているため、相対的五次元時差を考慮すると、御評議にかけられる時間はあまりありません。僭越ながら、私の方で既に工作計画を立案させていただきました。いっしょに御評議をお願いします。 『私たち』の思い出の保全のためにも……」 緊急事案であることは確かだった。 だからこそ、最高評議会も朝比奈みくるをメッセンジャーにしてきたのだろう。 情報操作によって、長門有希の正体を知る者は朝比奈みくるしかいないものの、二人が親しい関係にあるというのは、時空工作部内では周知の事実であった。 よって、この頑固な御老体を説得できるのは彼女しかいないという判断には、合理性があった。 (長門有希)「了解した」 長門有希としても、これは了解せざるをえなかった。 「機関」に時空工作部が組織されなければ、朝比奈みくるが苦労して成し遂げた統合時空補正計画SOSの成果もなかったことになる。 それは、「彼」と自分との思い出の消失をも意味していた。 この地位は、もともとは、朝比奈みくるの監視のために就いた地位であったが、今となっては、「自分たち」の思い出の保全という役割の方が比重は大きい。 それは「規定事項」の私物化ともいうかもしれないが。 長門有希は、今一度、墓石に視線を向けた。 そして、空間転送装置を作動させ、その場から消え去った。 朝比奈みくるは、それを確認すると、墓石に向かってつぶやいた。 (朝比奈みくる)「ごめんなさいね、キョン君。邪魔しちゃって……」 そして、彼女も、その場から消え去った。 墓地には、雪が降り続いていた。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/4204.html
涼宮ハルヒの経営I 目次プロローグ 1 章 2 章 3 章 【仮説1】その1 【仮説1】その2 【仮説2】その1 【仮説2】その2 【仮説3】その1 【仮説3】その2 【仮説4】その1 【仮説4】その2 【仮説4】その3 【仮説4】その4 【仮説5】その1 【仮説5】その2 4 章 5 章 6 章 エピローグ おまけ 未公開シーン(外部リンク) 関連作品(時系列順)長門有希の憂鬱Ⅰ 長門有希の憂鬱II 長門有希の憂鬱III 涼宮ハルヒの経営I 涼宮ハルヒの常駐(◆eHA9wZFEww氏による外伝) 涼宮ハルヒの経営Ⅱ(外部サイトへ) 古泉一樹の誤算 長門有希の憂鬱IV 共著:◆kisekig7LI ◆nomad3yzec イラスト:どこここ Special thanks to どこここ データそのほか青空文庫版 元テキスト(Nami2000データ形式)
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/269.html
ここには普通の日常系とかのSSを置いてください。 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 【題名付き・短編保管庫】 1 2 小説 Please tell a final lie こわれてしまった少女のはなし 五月の風、ふぁいなる 艦長ハルヒ保守 寝ぐせ byキョン 長門有希のカラオケ 谷口と国木田の恋 長門有希の密度 ある日の活動 スタンド・バイ・ミー うちゅうせんそう 雨と傘 新しい過去から君への招待状 夜行性の超能力者とインターフェイスのブギー who I hug? 非退屈的日常 恐怖 にぃた 長門有希の夏色 たなぼた―Now,that taste is bittaer― 宙の恋人 長門有希の白痴 足りない誰か ノーコミュニケーション 缶コーヒー あのスイッチを切るのはあなた 全知全能の神 コックリさん 克暑の宴 スーパーハルヒ 夏の夜の風物詩 ウルトラハルヒ 『傷つける』ということ 長門有希の計算 夢 two maniac 長門有希の遭難 RESOLVE 九月一日、月曜日 1/365の一欠片 悲恋 長門有希の秋色 悲愛 悲情 悲嘆 悲痛 混ぜてみるとこうなってしまった jino 平々凡々? 冬×街灯×公園 キョン 落日の夢 I am teacher 長門有希の冬色 初花凛々 ある寒い日の部室で 雪のきらめき キョンの面影 Before 5 years their deaths. 宿願写真 ソロハルヒ キョン転倒 デリバリー どうって事ない日常「偏屈ね 、」 Welcome to the beutiful world! 涼宮ハルヒの消失前日 めがっさ貯古齢糖 箱 熱すぎる季節 涼宮ハル○の性別 (キョン・ハルヒ性転換) 立場 わたしのあなた お茶会へようこそ! 長門の湯 明日に向かう方程式実践編 森園生の苦労 鶴屋の湯 夜と吹雪 部室でアイツとの会話 キョン「年中絵にしたいんだ、ここを」 (日常 掌編) 綺麗な夕焼け 羽 キュウリ 放課後の魔法使い(長門) 15498のはじめの1(長門) メルトインザレター インピーダンスマッチング 誰も知らない二人のためのフィルム 格付け 空に太陽が赤いから 涼宮ハルヒの解散 年上の女房は金の草鞋を履いてでも探せ ある暑い日の部室で 緊急脱出プログラム設置の真相 一樹の湯 テディベア みくるの湯 今夜はブギー・バック恋図mix 笹mix ハルヒの湯 お弁当 キョンの湯 想い出の卒業式 喪失 俺だけ一般人 エレベータ Luge 宇宙人じゃない長門 宇宙人じゃない長門2 宇宙人じゃない長門3(朝倉も宇宙人じゃない) 宇宙人じゃない(?)長門4 長門VSみくる 廃戦記念日 ラスト・ダンス 柑橘空にレモンのあわを 444回目のくちづけ 時の超越 橘さんと午後 驚愕後の断章 橘さんと午前 夜と街灯 夏を涼しく、気持ちよく ハカセくんと佐々木さんとハルヒの時間平面理論 渡橋ヤスミの下準備
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/3687.html
ひぐらしのなくハルヒ カセットテープ 興味 Stairwayto Haruhi SIRENOF Haruhi 長門猫化 日常あるいは平穏な日々:ハルヒ篇 仮入部 最後の手紙 長門さんとギター 二人で、校舎にて 携帯電話 コミケにて 長門有希の体温 ある雨の日のこと 遺書 気のせい・・・? 感情 1.35倍 俺・・・実はポニテ萌えなんだ(憂鬱後記) 俺・・・実はポニテ萌えなんだ 涼宮ハルヒのエロゲー 朝比奈みくるとポケモン 憎悪、拒絶、少女 長門有希の虐待 日常 大切な君達へ……… 長門さんと白雪姫 えいえんのせかい だーれだ? 『きっかけ』 忘れな草 『涼宮ハルヒのコミケ』 涼宮ハルヒのカラオケ 涙 オセロ三番勝負 焼いた芋 酒と桜と…… 海の家のラーメン キッドナップ・テレフォン のれん 遊○王 赤服親父捕獲戦線 プリン作戦 カッコイイキョン君 くじびき妙バランス 未だ来ない日の一頁 鬼編集長の期待 妄想が…妄想が…蔓延る! 暮れの演奏会 古泉一樹の戯言 半年と4日目の憂鬱 CALLED(kyon side) CALLED(haruhi side) 涼宮ハルヒの疑問 朝比奈みくるの帰還 ホワイトデーの計画 猫又 そんなある休日の二人 旧友の往診 お袋の陰謀 キョン恋愛裁判 『オレとおまえと聖夜』 いたって普通の学校風景 恋愛感情は精神的な病の一種 キョンとハルヒの残したもの 誰かの結婚式の日の二人 涼宮ハルヒの用事 朝比奈みくるの憂鬱 日曜日の陽射しの下で ずっと一緒 トラブルメーカー 猫になったキョン 長門有希の手料理 雷、雷鳴、部室にて。 許されざるもの 生徒会室で… クラブ予算分配会議の真相 未来への坂道 涼宮ハルヒの清涼 長門有希のSF用語講座 長門有希の願望 キョンの一国一城 長門有希の出張 微妙な三角関係 フラクラKの末路 10年後のSOS団 エンドレスハイスクール 「ありえない」のニュアンス 煩悩との戦い 朝比奈みくるの恋人 ズボン下げ 佐々木さんの密かな楽しみ 立秋の二編 閉ざされた世界で 流星群 夕立ち
https://w.atwiki.jp/briah/pages/584.html
宿屋同盟 部隊長 †長門有希† 所属人数 10人程度 主要職 工作員中心 歩兵力 ★ 裏方力 ★★ 連携力 ★ 初心者育成 ★ 精鋭率 ★ 問題児率 ★★★★★ 工作部隊・孫呉の旗?・キングベヒんもス?の宿屋前を溜まり場とする部隊が合併して出来た。 アクティブ率向上という名目だが実際は†長門有希†の暴走を止めるためと大言壮語を確かめる為の部隊 発足当時から問題が多く、前日まで何も無かったのが翌日、各部隊にいきなり「宿屋同盟に移ってください」という通達があり、 なぜという声が多く、†長門有希†が後日説明会を開くとするも未だなし。 ここで呆れて去る人間が多数。 VC導入、アクティブ率向上という方針を掲げるも部隊長自体がインせず更に人が消える。 バンクエット20081stステージに参加することで当時の部隊員によって宿屋同盟の活性化が目論まれるが、部隊長である†長門有希†は別のチームで参加してしまう。 部隊を活性化させようとしない†長門有希†と赤主霞の暴言により、再び孫呉の旗?とキングベヒんもス?が別れ現在に至る。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1374.html
○月×日 晴れ 今日から日記を付けてみようと思う。 普通の日記なら書いた本人がその日に起こったことを書き綴るものだが、 今回は同じクラスの女生徒、長門有希という人物を僕の目から見て感じ思ったことを書き綴ろうと思う。 恐らく長門本人にこんなものを書いてると悟られた日には引かれること請け合いだが 誰に見られるものわけでもない。 自由に書いていこう思う さて、冒頭から言い訳がましいのは、数年後この日記を見たとき 俺自身が自分の命を絶たないようにするための防止策である。 そうそう、これも付け足しておかないと 「俺は長門有希に恋をしている」 ○月×日 晴れ 読むのは俺自身しかいないだろうし、読み返すこともないだろうが とりあえず俺自身が感じた長門有希をという人物をついて書いていこう思う。 俺が長門有希を初めて目にしたのは、当たり前だが入学式である 第一印象を箇条書きにすればこんなところだろ 小柄 灰色がかった髪 メガネをかけている 当時はなんら感じるものがなかった 彼女がここまで僕の高校生活を狂わすとはいやはや人生は分からないものである しかし2日目にして本筋に入れないのは、長門有希への申し訳なさからだろうか ○月×日 晴れ さてさて3日目は、学校生活にも慣れてきた今現在の長門有希の印象について書いていこうと思う。 しかし、こんな駄文が第三者に見られたら、1日目に書いた自殺防止策は虚しいものになるであろう。 彼女が、普通と違うと感じ始めたのは3日目ぐらいであろうか。 登校1日目はみな不安や期待と共に周りの人間に話しかけていた。 もちろん俺もその一人である。 しかし長門有希は担任の話が終わるやいなや、誰に話しかけることもなく本を読み出したのである その時は、シャイで自分が話し掛けれらないタイプなんだろうなぐらいで思ったが彼女は違っていた。 ふむ、2日目で彼女に興味がないようなことを書いておきながら、 入学当初の彼女の様子をここまで鮮明に覚えているということは始めてから淡い恋心を抱いてたのかもしれない どんな些細な発見でも素晴らしいと考える俺にとっては喜ばしいことである ○月×日 晴れ 4日目は、彼女は普通とは違うと思った具体的な部分について触れていこうと思う。 入学3日目にもなれば、それなりにグループが出来始め 友達作りの成果が現れてくるころである。 俺は、あまり友達というものを重要視しないほうだが 楽しい高校生活を送りたいという願望は少なからずあるので 中学時代の友達や高校で知り合った気が合いそうな連中とグループを作っていた。 しかし、長門有希にはそのような願望が全くないようで、 出欠を取る時に聞いた「ハイ」という言葉以外声をほとんど聞いたことがないのである。 いつまでも一人でいる彼女のことを心配してか、話しかけてくる女生徒は何人かいたが 長門有希をそれらを「完・全・無・視」したのである。 ○月×日 くもり 5日目は、4月ごろの長門有希の様子を書いていこうと思う。 入学後1週間も、彼女は一人で本を読んでいた。 それでも女に話しかける女生徒はいたが結果は書くまでもないだろう。 彼女のルックスに引かれたのか、冷やかしなのかは知らないが、 話しかける男子生徒もいたが上に書いてあるとおりである。 どうも彼女は、文芸部とかいう俺には 何をするのかよく分からない部活に入ったようである しかし、しかし噂によれば涼宮ハルヒとかいう頭のおかしい女に部室を乗っ取られて SOS団とかいうまたまた俺には何をするか分からない団体に入れさせられたようである。 まぁ、一人でいる彼女が心配だった俺は、少しぐらい頭がおかしくても友達がいればそれでよしぐらいに考えていた。 事実、乗っ取られたあとも足しげく部室に通ってるところから悪いようにされてるようではないようである。 その頃だったかな、彼女の表情が少しだけ柔らかくなったのは さぁ日記というていをとってみたがこれでは、自分の思い出を書き殴っているだけである 自分の駄文に嫌気がさし書くのをやめないか少し不安になってきた俺である ○月×日 晴れ 6日目は、恋する乙女でも付けないような、こんな日記を付け始めた理由に触れようと思う まず、結論から書くと「長門有希はいじめられている」 もちろん長門本人が一番悩んでるだろうが、 好きな女がいじめられている様を見るのは激しく気分の悪いものである 数年後の俺に、笑われるだろうこの日記は感情の捌け口として書き始めたものである さて本筋を中々に入れなかったのか現実を見たくないという俺の弱さだろうか ペン走らせすぎて痛み出した手首とは比べ物にならないほど 「長門有希はいじめられている」という一節を書いた時に俺の心は痛んだ こんな文章も書いてる自分自身が寒いが事実である ○月×日 雨 7日目である。 最近は天気も安定しなくても憂鬱である しかしながら、好きな女がいじめられている様を書き綴るほうが何倍も憂鬱である。 それなら、書かなければいいだろ!と自分自身に突っ込みを入れたいが いい捌け口が見つからないのでやはりここに書くことにする 長門有希がいじめられる原因となったのは、何日か前に書いたと思うが 異常なまでの人当たりの悪さである。 馴染めない人間はどのクラスでもいるだろうが そのような人間でもそれでもある程度の愛想を持ち合わしている しかし長門有希の場合は完全なる無視 無視された人間はもちろん、上っ面だろうが友情を大切にする女子どもが気分よく思わないのは当然である。 ○月×日 雨 最近は、雨が酷くて登下校がイヤになるが8日目の日記である。 まことに憂鬱。 さて、女子のいじめといえば真っ先に思いつくのはシカトであるが 元々クラスメイトと馴れ合おうと思ってない長門には意味のないことである。 俺が、知りえるなかで初めて長門有希にされたいじめは上靴隠しである。 たいしたことではないと思われるが、これが中々効くものである。 一人だけスリッパでいるのは、いやおうなしにも目立ち その日の彼女はいつも以上に本に集中し悲しげであった。 誰がやったかという確たる証拠はないが今日という日まで 長門がされてきたイジメを見てきた俺は女子どもがやったものでは勘ぐってしまう。 結局、見つからず注文となったが 上靴が来るまでスリッパ姿で晒し者となった長門有希が不憫でならない。