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ゆっくりと豆 30匹ほどのゆっくり家族が暮らす、大きめの巣の中。 日の昇る少し前に目覚めた母ゆっくりまりさは、彼女のはじめての娘であった 姉ゆっくりまりさの異変に気が付いた。発情したゆっくりありすが、必死に抵抗 する姉ゆっくりまりさに覆い被さっていた。ゆっくりありすにしては小柄なこと、 そのため声量が小さく、襲われている本人以外誰も気がつかなかったのだろう。 寝静まった夜中だと言うことも災いした。 『まり゛ざあああああ! しゅぎ! だいじゅぎだよぼおおおお!』 と発情するゆっくりありすを、体の大きい家族で踏みつけにすることで、大惨 事は免れることができた。ゆっくりありすが一匹だけであったこと、襲われた時 間が深夜でなかったことが幸いした。いくら小柄なゆっくりありさでも、大群に 襲われれば対処の出来ようはずはなく、また深夜であれば、寝静まった者が気付 くことも少ないからだ。 姉ゆっくりまりさは襲われていた時こそ衰弱してはいたが、日の昇る頃には小 さな枝を二振り授かり、襲われたことも忘れやがて生まれる子供たちの笑顔に思 いを馳せるくらいには回復していた。 母ゆっくりまりさからすれば、不幸な出来事とは言うものの初孫を授かること が嬉しくないわけがなく、かいがいしく娘の世話を焼いてやることにした。 付いた実はそれぞれ、5つと4つで、まりさ種が8、ありす種が1であった。 奇妙なことに、枝ぶりからすると、少しばかり生まれる子が少なく、本来子が宿 る場所には、小さく黒いつぼみがいくつか結ばれていた。 母ゆっくりは、娘に覆い被さった運命がもたらした悲しい出来事の結実である と考え、娘の頬を優しくなぜるのであった。家族の皆が見守る中、生まれてくる ゆっくり達は、未来の幸せを疑うことすらなかった。 ・ ・ ・ 私はゆっくり研究者の一人だ。 ゆっくりまりさと共に食事をとり、ゆっくりれいむと昼寝をし、ゆっくりに囲 まれて研究を行うのが日課だ。 ゆっくりありすに襲われた家族があると他のゆ っくりから聞き、生き残りを保護しにやってきたのだが。 日が沈んだばかりのこの時間帯であったためか、巣穴ではゆっくりな大家族の 幸せそうな生活か営まれていた。それどころか、子ゆっくりありすが家族と同居 しているではないか。興味を引かれた私は、そのゆっくり家族を観察させてもら うことにした。 私はその家族に向けて、ゆっくりしていってね、と優しく挨拶をする。突然の 挨拶に驚いた家族達は、私が優しそうな笑みを浮かべていること、美味しそうな お土産を持っていることを理解したのか、口々にゆっくりしていくことを勧めて 来た。彼女達の住処は小柄な私が入り口から入れるくらいに大きく、洞窟と言っ ても大げさでないほどであった。このような巨大な巣穴を作り上げたゆっくりま りさ達に感動を覚え、ゆっくりさせて貰えるお礼と共にその内心を告げると、親 ゆっくりまりさはとても嬉しそうに、ずっとゆっくりすることを進めてくれた。 その日ゆっくり達から聞いた話をまとめるた私は、少しばかり危機感を抱いた。 子ゆっくりまりさ大のゆっくりありすが、一匹だけ訪れたこと。さらに、ゆっ くりまりさがゆっくりありす種を宿した事。先日、工場近くで化学薬品の流出事 故が発生したばかりだ。近辺のゆっくり達に悪影響を及ぼし、一部のゆっくりに 突然変異を起こすきっかけとなったことは、一般には伏せられている。もしかし たら、その異変ゆっくりありす種がここを訪れたのかもしれない。 お土産をゆっくり達にくばりながら、異変がないかを探る。ゆっくり達の顔を 見回すと、……簡単に見つけられた。 だれもが、額やら頬やら側頭部やらに、黒い点をつけている。よくよく観察し てみるに、それはどうやら小さい穴のようであった。小さい子ゆっくりまりさは 数個、親ゆっくりまりさに至っては28個もの穴が開いていた。症状を聞くと、 毎朝起きると、体中に鈍痛を覚えるが、時間が経つにつれ気にならなくなるらし い。それが毎朝続いているためか、体力も乏しくなってきているようだ。 多分ではあるが、夜中のうちに誰かに穴をあけられ、しだいに回復しているだ けなのであろうと推測できた。 明日は朝早く訪れることに決めた。 ・ ・ ・ 早朝。 巣穴の外から観察していた私は、奇妙なことに気が付いた。ゆっくりの頭から、 小さい枝がいくつも生えているのだ。生殖したのではないだろう、すべてのゆっ くりがその枝を生やしていたのだ。懐中電灯を照らしてもまだ暗いため、よく見 えなかったのだが、枝には小さな豆粒ほどの実が成っているようだった。 これが、変異の影響であろうか。 枝の数をいくつかメモしているうちに、母ゆっくりまりさのそれが28個、つ まり昼間見つけた穴と同数であることに気が付いた。 これはもしや……。 思考しているうち、いくつかの子ゆっくりまりさが小刻みに揺れた。 ゆ゛っ、ゆ゛っ、と声を上げた彼女達の枝は、すぐに枯れはじめた。急いで巣 穴に入り、枝の落ちた子ゆっくりまりさを抱えると、いくつか新しい穴が開いて いるようだ。ピンセットで傷をつけぬよう注意しながら、穴を探る。穴から引き 出された物は――とても小さいゆっくりありすであった。 豆粒ほどの彼女は、抜き出された時こそくーくー寝息を立てていたものの、す ぐに起きて暴れ始めた。ピンセットでは捕まえていることは出来ず、『とかいは のありすは暖かくゆっくりするんだから!』といいながら、子ゆっくりまりさの 皮下に、勢い良く潜り込んだ。 このゆっくりありす――豆ありすとでも言うのか――はどうやら寄生体で、宿 主の体内にもぐりこんで食い荒らし、さらに一日で受精させる新種のようであった。 これはいそいで発表せねばならないと踵を返したとき、足に激痛が走り、倒れ こむ。調べてみると、豆が打ち込まれたような、小さな穴。 まさか……。嫌な汗が体中から吹き出てくる。人間にも、寄生するのだろうか? 一つの枝から5,6個の子が生まれるようで、巣穴はすでに豆ありすに埋め尽 くされていた。腕、足、胸、喉と、饅頭でもないのに容易く皮膚を食い破られ、 激痛に悶える。汚染の影響なのか新種の能力なのかわからないが、手足が痺れ、 筋肉が言うことを聞かない。 巣穴はすでに阿鼻叫喚の渦に巻き込まれていた。 母ゆっくりまりさは、体中を蝕まれ、ゆ゛っ、ゆ゛ぐっと呟くも、動きが取れ ないようだ。生まれたての子ゆっくりまりさは寄生に耐えられず絶命していた。 絶命しては受精できないからだろうか、その子ゆっくりまりさの皮を食い破って 外に出た豆ありすは、新たな獲物――ゆっくりと逃げる美味しい饅頭か、動けな い大きな肉の塊のどちらか――を見つけて、嬉しそうに近づく。 どぼじでゆっぐりぃぃぃ゛と泣き喚く親ゆっくりまりさ。 ゆ゛ぐりじだがっだゆ゛ううう、と食い破られる子ゆっくりまりさ。 そういえば、と視線を彷徨わせる。子ゆっくりありすはどうしたのだろうか。 その疑問はすぐに氷解した。 傷一つない彼女は、他のゆっくりに寄生すればすぐ殺してしまうこと、また自 分が殺されてしまうことを理解していたのだろう。とかいはをえんじょいするに は大きな肉塊が必要なことを呟きながら、嬉しそうに私に近づいてくる。獲物で ある私の顔をがっちりと掴み、『いただきます』と呟いた彼女は、そのまま私の 右目に向かって ・ ・ ・ 私の動きを制限する神経毒は、どうやら痛みも打ち消してくれるようであった。 鈍痛と緩やかな眠気の中で、かろうじて動かせる左手で、土をかき集め、出口 を塞いだ。例え子ゆっくりまりさであったとしても簡単に掘り起こせる程度の薄 い蓋であるが、豆ありすであればどうだろうか。 雨でくずれないよう、外から掘るものがいないよう、奇跡を願いながら、次第 に小さくなってゆくゆっくりまりさ達の断末魔を聞きながら。 私はゆっくりと目を閉じた。 このSSに感想を付ける
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『もしも宇佐美いちかが“プリキュア5つの誓い”をひらったら』/Mitchell Carroll 春一番であろうか、昨日は大風だった。小鳥たちの今朝の木の上会議も、開口一番そのことのようである。その下をいちかは、大きなゴミ袋を両手にぶら下げ、エッサホイサと収集所へ運んでいた。途中、おそらく風で飛んできたのであろう、A4サイズ程の紙が、可哀相に幾つかの足跡を付けられて道にへばり付いていた。いちかはその紙を拾い上げ、裏返して見ると、ただでさえ大きな目をさらに拡げて驚愕した。 「こ、これは……“プリキュア5つの誓い”!?」 プリキュアといえば、先日いちかが変身したそれである。そのプリキュアの、秘伝書のような内容がコピーされた紙を拾ってしまったのである。いちかは抜群に良い視力で辺りをキョロキョロと見回し、誰にも見られていない事を確認すると、その紙をポケットに突っ込んで隠した。その様子はまるで、卑猥な本を見つけた少年のようであった。 ゴミを出し終えたいちかは脱兎の如く家に帰り、そのまま自分の部屋へと収まった。そしてドアに鍵を掛け、替わりに自分の心の鍵を外した。万全な体制はユートピアとでも呼ぼうか、はたまたパラダイスか。 (こんなドキドキ、初めて―――) 高鳴る鼓動を必死に宥(なだ)めながら、ポケットから先程の紙を取り出し、改めて内容を確認してみる。 ―――いちかは迷った。この紙を、他の誰かにも見せるべきかどうか。まだまだ幼い心のどこかに、この興奮を独占したいという気持ちがあった。だが、手にする紙に書かれている二つ目の誓いが目に止まる。 「……そうだよね。独り占めは良くないよね。今度、みんなにも見せてあげようっと!」 さっそく誓いをひとつ実行したいちかは、まだまだ幼いその胸を誇らしげに張る。そして部屋の中をうろうろしながら、誓いを声をあげて読み始めた。 「ひとぉ~つ!プリキュアたるもの、いつも前を向いて歩き続けること!!」 だが丁度その時、足元に転がっていたぬいぐるみを踏みつけて、つんのめってクローゼットに鼻をぶつけてしまった。鈍痛と激痛が入り混じったハイブリッドな痛みに、いちかの瞳はジワリと濡れる。すぐさま紙をグシャグシャに丸めて窓から投げ捨てたくなったが、プリキュアとしての使命感からか、いくらか忍耐強くなったらしく、そこは何とか耐える事ができた。そして涙と鼻水交じりの声で、残りを読み上げる。 「ひ、ひとぉ~つ!愛は与えるもの!!ひとぉ~つ!愛することは守りあうこと!!ひとぉ~つ!プリキュアたるもの自分を信じ、決して後悔しない!!ひとぉ~つ!プリキュアたるもの一流のレディたるべし!!ひとぉ~つ、みんなで力を合わせれば不可能はない!!」 読み終えるやいなや、ガックリと肩を急降下させ、ベッドにダイブしてしまった。 「自分を信じるって難しいよ~……」 ちょうど先日、自己流でプリンを作ろうとしたが上手く出来ず、結局、友達の助けを借りてようやく完成したところであった。 「それに、一流のレディって?レディのたしなみと言えば……やっぱり、“スイーツの美味しいお店を知っている”、これだよねっ!!」 いちかの頭の中に追いつくように、外もだんだんと暖かくなり、いちかとその仲間が、偉大な先輩達と出会う季節がもうそこまでやって来ている。ひょんな事からこっそり予習をした彼女は、この春、どんな活躍を見せてくれるのであろうか。誓いに秘められた、プリキュア達によって受け継がれる“思い”とは――。 劇場版へ続く
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0108:暴走列島~衝撃~ ◆z.M0DbQt/Q “放送”が終了してもしばらくの間、越前と新八は無言のままだった。 『神楽』 『坂田銀時』 脱落者として読み上げられた中にあった、近しい人の名。 「……嘘だろ」 新八の呟きが差し込む朝日に溶けるように消える。 ――――”脱落”?銀さんと神楽ちゃんが?――――死んだ? 先程潤したばかりの喉がすでに渇き、ひりひりとした痛みを訴えている。 瞬きを忘れたように見開かれたままの新八の目は、赤く充血し始めていた。 「嘘だろ……」 もう一度無意識に新八は呟く。 だって、昨日……いや、数時間前まではまったくの日常だったのだ。 神楽ちゃんはいつも通りすこんぶを食べてたし、銀さんはいつも通りジャンプを読んでいた。 そりゃあ時々大きな騒ぎに巻き込まれたりするけど――――死ぬなんて。あの二人が。 ――――本当に死んだ? ――――なぜ? ――――どうして? いくつもの疑問と二人の顔がぐるぐると頭の中を回る。 ……頭だけじゃない。 目の前の景色もぐるぐると渦巻き……視界がぼやける。 「ちょっと、アンタ……」 少し焦ったような越前の声を微かに認識し、新八の意識は急激に閉じていった。 「ちょっと……!」 急激に顔を青くしたと思ったら白目をむいてひっくり返ってしまった新八に、流石の越前も少しばかり焦る。 ……呼吸は、してる。脈もある。 これが正常なのかどうかはわからないけど、生きてることは確かだ。 恐らく高揚していた精神がオーバーヒートしてしまったのだろう。 まぁ、これで強制的に寝かせられたから結果的にはOKかな。 新八の体勢を少し直し、越前は眉根を寄せた。 彼がこうなってしまった原因は恐らく、先程バーンだとかいうジイさんが言っていた脱落者とやらの中に、 新八の仲間である坂田銀時と神楽の名前があったからだろう。 ここに着いて新八が目覚めてから絶え間なく続けられていた話の中に何度も出てきた彼らの名前は、越前も覚えてしまっている。 ――――竜崎。 坂田銀時と神楽と同じように読み上げられた『竜崎桜乃』の名。 死んだの?アンタ……本当に? 確かにさ、アンタってばトロイし方向音痴だし運動神経も誉められたモノじゃないけど。 こんな、異常なゲームで……本当に? 越前の脳裏で、長い三つ編みが揺れる。 「ウソだろ……」 先程新八が呟いていた言葉を、今度は越前が口にする。 いつも自分を応援してくれた彼女。 なんでだかヘンなヤツラに絡まれることが多くて、助けると「ありがとう。リョーマくん」とはにかむように笑った彼女。 ああ、そういえば、いつかの試合で「がんばってね」ってメモと一緒にポンタを差し入れてくれたの、アンタでしょ? 名前書いてなかったけどアンタっぽいと思ったもん。 脳裏で長い三つ編みが振り返り、困ったように笑う。 「……信じない」 かぶりっぱなしだった帽子のつばをさげ、深くかぶり直す。 ――――アイツが死んだなんて証拠はどこにもない。死ぬところや死体を見た訳じゃない。 だから信じない。彼女が死んだなんて。 あんなジイさんの言葉だけで信じられるはずないじゃんか。 だから……自分は当初の目的通りに東京を目指す。 唇を小さく噛み、越前は静かに立ち上がった。 新八に視線を向け彼が眠っていることを確認すると、越前はレストランの外へと出て行った。 信じない、と決めても心底で澱む不安は消えず……外の空気を吸って少しでも気分転換がしたかった。 外に出たところで大きくのびをする。 頭上に広がる青空は元いた世界のモノと変わらず――――越前は再び帽子を深くかぶり直した。 空が白み始めると同時にボロ小屋を出発した火口卿介は、昨夜と同じように己の幸運に打ち震えた。 しばらく歩くうちに大きな道路に行き当たり、そこに立てられていた標識によって自分の現在地を把握することに成功した。 斬魂刀を握りしめ、大きな道路……山陽自動車道を北上する。 程なくして見えたサービスエリアを覗き込むと……なんと中から子供が出てきたのだ。 昨夜、姫路駅の構内で少女を殺したときのことを思い出す。 たった数度石で殴っただけであっさりと動かなくなったあの少女は、この刀を持っていた。 あの小柄な少年は一体、自分にどんな武器をもたらしてくれるのだろう。 自分の幸運に、口元が緩む。 刀の柄を握り直し、気取られないように回り込む。 レストランから数歩離れた少年は大きくのびをしていた。 レストランの側の植え込みに潜む自分にはまだ気付いていない。 刀を鞘から抜く。 一瞬だ。一瞬で終わる。 満面の笑みを浮かべながら、火口は立ち上がり刀を大きく振りかぶった。 そして――――振り下ろす。 「なんだと?!」 振り下ろした刀は空気のみを切り裂き、火口の目の前にいる少年はキツイ目で自分を睨んでいる。 「なんなの、アンタ?」 淡々とした口調にわずかに苛立ちを含ませた少年は真っ直ぐに立ったままだ。 「どうやってかわしたのかは知らんが……所詮は子供!!」 そうだ。相手はたかが子供だ。 かわされたと思ったのは何かの間違いだ。きっと、目測が狂ってしまったんだ。 「アンタ、馬鹿?」 「なっ?!」 「どうやってかわせたか知らんが、って、影が見えたんだよ」 昇り始めた朝日は、アスファルトに二人分の影を作る手助けをしている。 小馬鹿にしたように小さく笑った少年に、火口はギリギリと唇を噛みしめた。 「生意気なガキめ!!」 再び刃先を上げ、少年の脳天目掛けて振り下ろす。 少年の白い帽子を捉えた、と思った瞬間、その小さな体は火口の視界から消えていた。 「……なにっ?!」 「なんなの、アンタ?」 先程と変わらない口調で少年は立っている。生きている。 「小癪な……っ!」 横凪に刀を振るも、少年は跳ねるように後ろに下がり三度刀身をかわす。 火口は知らない。 少年がテニスの天才であることを。 少年に時速200㌔近い速さのサーブを打つ先輩がいて、それを毎日のように見ていることを。 だから、少年が常人である火口が刀を振り下ろす速さをどうにか見切れることを、火口は知らない。 「……うおおおおおおおおおおおおお――――――――っっ!!」 咆吼をあげ、火口は少年に斬りかかる。 ――――このガキは死ななければならない。俺に武器を与え、死ななければならない。 血走った目で刀を振り下ろし、再び振り上げる。 少年がかわす。刀を振る。 少年がかわす。刀を払う。 一方の越前は、少々焦っていた。 自分を襲っているこの男は、間違いなく殺意を持っている。 ついいつもの調子で煽ってしまったが、武器も何も持っていないこちらが圧倒的に不利だ。 逃げようにも荷物もウェイバーもレストランの中だし、なにより店内には気絶したままの新八がいる。 今のところどうにか刀はかわせるが、それだってギリギリなのである。 このままかわし逃げ続けて体力を消耗させるって手もあるが…… 「まったく……」 ここにラケットとボールがあれば話は早いのに。 頭がおかしいとしか思えないこのオッサンにボールを打ち込んで、気絶させることだってできるのに。 心の中で舌打ちをし、越前は左肩目掛けて振り下ろされた刃を右に上体を開いてかわす。 そのまま突っ込んでくる男を右足を出して待ちかまえる。 「ぐおっ?!」 お約束のように越前の足に引っかかった男は、よろめきながらも倒れはしなかった。 だが男のズボンのポケットから小さなカプセルが転がり出る。 ボンッと音を立て、カプセルが開く。 カランとその場に落ちたのは一本のテニスラケットだった。 自分の使うソレよりも少し小振りなソレは―――― 「竜崎の……」 越前の脳裏でまた、長い三つ編みが揺れる。 いつまでたっても膝は伸びすぎだし肘は曲がりすぎだし髪は長すぎだし…… でも、最近ちょっとマシになってきた彼女が振っていたラケット。 3ヶ月ほど前に買ったばかりだったそれはすでに新品ではなくなっていて、彼女が毎日一生懸命に素振りをしてきたことがわかる。 そのラケットを、なぜこの男が…… ――――――――まさか。 「アンタ、どこかで俺と同じ年くらいの女の子に会わなかった?髪の毛を二つに縛ったヤツ」 足を引っかけられた事を怒っているのか、男の表情は鬼気迫るモノがある。 「女の子だと?」 男の口元が、歪む。 なんだかやけに楽しそうだけど……頭イッちゃってるんのかな。 「そういえば、昨夜俺が殺した女の子も二つに縛ってたっけな」 くぐもった笑い声とともに吐き出された言葉は、越前を金縛りにかけるには十分な力を持っていた。 「……!!……嘘だ」 絞り出した声が少し震えたのを自覚し、越前は唇を噛む。 竜崎を……殺した?このオッサンが? 「嘘だ」 はっきりと、自分に言い聞かせるように口にする。 信じない。俺は信じない。 こんな馬鹿げたゲームでアイツが死んだなんて、俺は信じない――――!! 震える拳を握りしめ、越前は鋭い目で刀を構える男を見据えた。 対する火口は、少年が呟いた名を聞き逃さなかった。 『竜崎』 その名には聞き覚えがある。 確かあの目覚めた大広間で主催者に質問をしていたLを、側にいた青年がそう呼んでいなかったか? 竜崎というのは、もしかしてLの本名なのではないか? だとすると、このガキはLの本名を知っている?! 火口の口元が再び幸運に緩む。 通常時の火口なら、先刻流れた放送の中にあった『竜崎桜乃』の名を記憶に留めていただろう。 だが今の火口は目の前の幸運に我を忘れていた。 「簡単だ。このガキからLの本名を聞き出しデスノートを手に入れる。Lの顔はすでに知っているんだ。 殺すのは簡単だ。そしてこの俺が……」 「なんだか楽しそうなトコ悪いんだけど、ソレ、返してくれない?」 幸運を噛みしめる時を邪魔され、火口は口元を引きつらせる。 少年の視線の先にあるのは、自分に支給されたテニスラケット。 「ふんっ!」 ガット面を足で踏みつぶし、火口は笑う。 「ガキ、Lの本名を教えろ」 「言ってる意味がわかんないんだけど。それよりもソレを踏まないでくれない?」 はっきりと怒りの滲む少年の声に、火口は笑う。 「Lの本名を教えろ。そうすれば命だけは助けてやってもいい」 嘘だけどな。聞き出したら速攻で殺してやる。 心中で少年を嘲笑い、火口は少年を見下ろす。 目の前の生意気なガキは、燃えるような目で自分を睨み付けている。 ――――ああ、やっぱり自分は運がいい。 こうやって子供という楽な獲物に巡り会えただけではなく、Lの本名まで知ることができるとは。 己の幸運に、火口は一瞬だけ空を仰ぐ。 ――――それが、文字通りの命取りであった。 「うわあああああ――――!!」 悲鳴ともつかない大声を聞くと同時に、火口の後頭部に鈍痛が走った。 視界が揺らぎ、火口はその場に膝をつく。 「何だ……?」 振り返った火口の目に映ったのは、メガネをかけた少年と彼が振り上げる椅子。 真っ直ぐに振り下ろされた椅子が火口の額を割り、流れ出た血が視界を赤く染めていく。 なんだこのガキは?もう一人いたのか?どこにいたんだ? 混乱した思考のまま刀を振り上げようとし、再び感じた鈍痛にその柄を取り落とす。 ……こんな所で倒れるわけにはいかない。 せっかくLを殺す手がかりを手に入れたのに。 せっかく想像も付かないような栄光を手に入れるチャンスなのに。 こんな……ガキのせいで…… 「俺にはまだ……やることが……」 「うわあああああ――――!!」 火口の声をかき消すように、メガネの少年は叫び続ける。 飛び散る血を物ともせず、メガネの少年は振り下ろし続ける。 鈍痛はやがて遠のいていき、火口の視界が赤味を増していく。 そして―――――――― 火口卿介は、地面に突っ伏したまま動かなくなった。 【兵庫県/山陽自動車道のサービスエリア/朝】 【志村新八@銀魂】 【状態】中度の疲労、全身所々に擦過傷、特に右腕が酷く、人差し指、中指、薬指が骨折 【装備】血まみれの椅子 【道具】荷物一式、両さんの自転車@こち亀 【思考】1:越前を助ける。精神錯乱中。 【越前リョーマ@テニスの王子様】 【状態】健康 【装備】なし 【道具】荷物一式(半日分の水を消費)、サービスエリアで失敬した小物(手ぬぐい、マキ○ン、古いロープ 爪きり、ペンケース、ペンライト、変なTシャツ)、ウェイバー@ONE PIECE 【思考】1:目前の光景に半茫然自失 2:情報を集めながらとりあえず地元である東京へ向かう。 3:仲間との合流。竜崎桜乃の死は信じない。 【備考】火口の荷物一式は植え込みに隠してあります。 【火口卿介 死亡確認】 【残り111人】 時系列順で読む Back 川を越えて Next 死を乗り越えて 投下順で読む Back 川を越えて Next 死を乗り越えて 071 暴走列島@一時休憩 志村新八 114 暴走列島~覚悟~ 071 暴走列島@一時休憩 越前リョーマ 114 暴走列島~覚悟~ 046 死帳万華鏡 火口卿介 死亡
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俺は名前は〇〇。IT関係の大企業に勤めて・・・・・・すまん、見栄張った。 実家の農業を手伝いながら過ごしてる。でさ、俺も一応現代人(25歳)なわけで娯楽に飢えてたんだよ。 だけど、当然のごとく遊ぶ施設なんか無くってさ、身近な山に探索?的な気分で乗り込んでだんだ。護身用+木でも削る為にサバイバルナイフ(学生時代に衝動買いした。割と後悔してる)を片手に軽装で。 いやぁ、なかなか楽しかったよ。少年の気分てやつ?を味わえて。でも・・・いや、だからこそあんなミスをしたんだろうな。光源の確保を忘れていた・・・・・・。 夜の森って思ったより暗くてさ、ただひたすらに来た道を戻ったんだ。・・・・・・周辺の異変に気付くのにそう時間はかからなかった。 「・・・あれ?この森に竹なんて生えてたっけ?」 周りが背の高い竹林で埋め尽くされていた。絶句だったね。 ここがどこなのかもわからず景色の変わらない竹林をウロウロしてたら、正面でドンパチしてる音と灯り・・・灯り?(なんか飛び交ってる)が見えたのでそっちに走って向かってみた。 近くまで来て、誰かいるなぁ。とわかり始めた辺りで、 「くそっ!避けるな輝夜!」 「そんな遅いのに当たれって言う方が無理よ」 なんか言い合ってる二人の女の子が宙を舞ってた。 まぁ、当然俺は状況が理解出来ずにいたんだ。立ち止まって。 「はっ!でかい口叩きやがって、いいだろう・・・くらえ!フェニックス再ッ誕!」 「ただ大きくなっただけで当たるわけないでしょう」 長い黒髪の女の子の方がそう言うと、横に素早く移動した・・・・・・・・・へ? 「え!?なんでここに人間が!?」 その言葉を耳に俺の意識は途絶えた。 「ん・・・ここは・・・っ!」 上げた上半身を再び倒す。体に鈍痛が走る。チラっと見えた包帯で巻かれた足には感覚すら無い。 「あら・・・起きたの?」 上から見下ろす人がいた。 「お、俺は・・・俺はどうなって・・・」 痛みに顔を歪めながら質問をする。 「落ち着いて、今動くのは体に良くないわ。そうね・・・まずはここの説明をしないと」 彼女、八意永琳の説明を聞いて俺は何回目かになる絶句をした。 話をまとめるに、ここは幻想郷というらしい。俺が居た世界とは異なる世界で、どういう訳かおれは迷い込んで(幻想入りと言うらしい)しまったのだと。 「そんな話が・・・・・・」 「信じられないのはわかるわ。でも、これが現実なの」 とてもじゃないが信じられる話ではなかった。 「それで・・・あなたがこうなってしまった訳だけども」 「!?そ、そうだ!なんで俺はここに寝ているんだ?確か竹林に居て・・・あれ?思い出せないぞ・・・」 「・・・あなたはね、私の姫様とその知り合いの『遊び』に巻き込まれたの。もちろん只の遊びじゃないんだけどね。それで、不運にもあなたには大きすぎる『流れ弾』が当たったの」 そういって、彼女は足の包帯を優しく剥がしていく。感覚が無いため、痛みは無かった。 「・・・・・・っ!」 そこには、膝より先が炭化した俺の足があった。
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このページはhttp //38.xmbs.jp/lfy-10495-br_res.php?no=33609 action=res page=r2 guid=onからの引用です ■2/17◆飛世旭「お返しとプレゼント。勉強の合間かなぁ……」(145)■記帳■▼ 1[飛世旭]URL[編]◆ひとこと◆ 「お返しとプレゼント。勉強の合間かなぁ……」 ◆気分・心境◆ 受験生生活の合間をぬってバレンタインデーに首を突っ込む…かも知れず。 学校には用事があれば。 残り少ないもの、足を運びたい……かも。 ◆覚え書き◆ 市葉さんからのチョコ戴きました。 ◆服装・所持◆ 公私共通:携帯、財布、手帳、薬・サプリ、アクセ、タンブラー、エコバッグ他適時 私服1:黒ムートンつきレザージャケット/ケーブル編み紫ニットミニワンピ/エナメルベルトでウエストマーク/黒ストレートパンツ/ローヒールパンプス/黄フリンジつきバッグ 通学通常:スクールコート/制服/革鞄/ 制服他:ストール、靴下がタイツに変わったり、髪をまとめ・あげていたり。 ◆場所◆ 中庭 聖堂 甘味処 ・三年椿組 ・陸上部 ・保健委員会 ・生徒会の白いヒト ◆◇◆ ここまでPL事情を一切加味してないです。反映可。 追記 2008-06-25 18 28■記帳■▲▼ ←|→|最初|最新(1/29) 147[飛世旭][編]0219 ◆中庭 ◆バレンタイン企画 いや、片手間にね、ちょっとおふざけが過ぎただけ……なんだわ、たぶん。 大学生になったらちゃんと主婦やりますー。 ◆L◆ 13 06 体調悪化 嘔吐が止まらず 後様子みますが本日これ以上の活動不可かもしれません。 すみません。 22 02 とりあえず止まったり止まらなかったり。 簡易のみ。 2009-02-19 13 09▲ 146[飛世旭][編]0218 ◆甘味処 ◆バレンタインでとんでもないチョコレートを作った件について 笑いの神様が降りてきたのかと思った。 誰か食べて。食べてくださいお願いします。 頑張ってマトモなの作り直すから、うん。 ◆◇◆ 中庭確認してます。後入り感謝。 背後風邪引き&何故か足首~ふくらはぎ鈍痛&全身ふらふら。 安定時のみ携帯でちまちまです。お許しを。 2009-02-18 23 48▲ 145[飛世旭][編]◆お聖堂 ◆中庭(スレ立て) 瑠璃、今は敢えてレスはしないよ。貴女、きっと無理するでしょう。 暫くはおとなしくなさいよ。落ち着いたらまた始めようね。 ゆっくり、お休み。 ただ、純粋に、なんの添え物もない言葉しかあたしは君に与えられない。 いくらでも休みなさい。 誰に気兼ねも断りもすることはないよ。 それらは義務ではないのだから。 楽しめない君の顔を見ていると悲しいね。 ウイルス、という単語がどこに(何に)かかっているのか解らなかったなんて……こと……ないんだから。 ◆◇◆ マシントラブルが起きなくなってありがたい反面、却って怖いです(笑) そろそろもう一箇所くらい。 日常の中であれ思い出は作られるものでもあり、自ら作るものだと思うのです。 2009-02-14 18 49▲ 144[飛世旭][編]2月6日 甘味処 長らくお待たせしました。申し訳ないです。 週明け接続頻度低下予告。 2009-02-06 22 58▲ 143[飛世旭][編]1月30日 ◆聖堂 ◆甘味処 2009-02-01 00 04▲ [■記帳■][一覧に戻る] ←|→|最初|最新(1/29)
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クロナの四肢同様に肉付き薄く、無毛の丘の膨らみは慎ましくしどけない。 しかし、すでにそこはざわめく粘膜の奥から溢れた蜜で濡れそぼり、キッドの肉芯をぱくりと咥え込んでいた。 「僕が…キッド…食べてる…?」 「あぁ、見えるか?」 ゆるく頷こうとしたが下腹部の内臓が押し上げられるような強い異物感をおおぼえてクロナはおもわず身をよじる。 内側に他人の熱い肉が食い込み埋没していく、緩慢でも重い衝撃に戦慄き始めた膝が止められない。 じわじわと蠢動する張りに僅かな抵抗をみせながらも、肉孔が左右に開いていく。 聖女が処女性を重んじられるのとは逆に、陰を呼び寄せる魔女は処女を失うと魔が強くなる。 自分がその血肉を色濃く受け継いでいるのを、こんなときに実感して、目の前もぐらぐらと揺れ始めた。 恐れていた、破瓜の痛みはない。 戦いの中で裂傷なんて数え切れないほど負ったし、腹を半分に裂かれるのはどんなものかすら知っているから それに比べたら、この程度は痛みのうちにははいらない。 それよりも、開いてもいないのにチクチクズキズキし始めた胸のほうが今や重傷だった。 自らの血を操れるクロナであっても、生理的な反応まではそう簡単には抑えられない。 特に対処の仕方をその都度必死に考えなくてはならない、こんな状況下にあっては尚更で。 まるで全力疾走しているような心臓に、切羽詰った胸元は今にも張り裂けそうな鈍痛を訴える。 つい枕を手繰り寄せたクロナが不安げに見下げた視界の先、痛みの真ん中にふっと影が被さった。 「っはぁあ・・・・・・あぁ・・・」 両耳まで真っ赤に昂揚したキッドの頭と湿度をもった長い溜息が、クロナの平坦に近いやや硬めの乳房を服越しに擦る。 たっぷりと時間をかけて挿入を果たした二人の陰部は、初めからそういう形であったかのように隙間なくぴたり。くっついて。 不思議な対称曲線を描いているように見えた。 意識を向ければ痺れるような、痒みのような痛みのような、止め処も無い疼きがジンジンと響いてくる。 何よりも、この息苦しさを帯びた発熱はどちらのものだろう。 「・・・はぁ、こんな、美味そうにしゃぶりついてくるものとは、思わなかった、ぞ」 そう嬉しそうにこぼすキッドの細めた目と目が合う。 「あ・・・うぅ・・・」なんと返したらいいのか、「・・・・・・・え、・・・えっち・・・」 自分が彼と同じ表情を浮かべていることに気がついた途端、 とうとう極まった胸の痛みは咽元まで込み上げて目端に溜まり、やがて静かにこぼれ落ちた。 少年は、ごく自然に顔を寄せるとその涙の粒を丁寧に舐め取る。 舌先が桜色の頬を伝い、震える唇の端をかすめ、まだ口付けを知らない少女の胸をまた一度ドキリとさせる。 「すまない」 「えっ!あ、違う・・・痛いとかそんなんじゃ・・・ない、よ。ち、違うから・・・大丈夫、だから・・・」 「いや、俺としたことが順番を間違えた」 今度は唇に柔らかく湿ったものが触れる。 クロナは眉を跳ね、両目を見開いた。唇を急に押し当てられたはずみでキッドの吐息を吸いながらクロナの唇も開く。 温みや弾力だけでなく匂いと味、初めて触れる口腔粘膜のぬるりと濡れた感触は、信じられないほど気持ちよくて お互いに驚いてしまい思わず唇を離してしまう。 やがて、どちらともなく、もうひとたび重ねた。 著者コメント もしも誰か思い立ったことがあったら勝手に続きやIFや、もしくはアイデア一言でも書いてくれると嬉しい候。
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■ フオルナウト -田中れいな- ■ 社務所の奥は広い道場となっていた。 すでに暖かな外の陽気は、 静謐で厳格な、この空間とは無縁のようであった。 「慣れない方に板の間での正座は御辛いでしょう?膝を崩されても結構ですよ。」 白衣に差袴、見たところ40代。 細身だが、引き締まった全身を、その白装束が引き締める。 「…これで、ええったい…」 田中れいなは、脛に走る鈍痛を堪え、そう答える。 「そうですか。」 微笑。 「おっしゃる通り、あの方からお預かりしたものはここに…」 変らず、微笑。 「時と場所は違えど、あなたと同様、私が応対させていただきました。」 微笑。 「失礼ながらお預かりしたものの内容は全て閲覧させていただきました…特に『見るな』とは、お約束しておりませんでしたのでね。」 変らぬ、微笑。 「興味深い内容でした。 我々のテリトリーの、目と鼻の先で、このようなことが… かといって、明らかな協定違反とも言い難い… 今頃は本部のお歴々も、頭を抱えていることでしょう…」 微笑、心なしか嬉しそうに。 「さて、本題に入りましょう… お預かりしたものの引き渡しについてですが…」 微笑、だが徐々に、変ってゆく。 その眼の光が、変ってゆく。 田中れいなは身じろぎもしない。 そうだ、知っていて連れてきた。 彼女も知っていて、同行してきた。 あのビジョン、あの場所…であれば、これは避けられない。 組織とは異なる集団。 安芸灘、伊予灘、周防灘…備前、豊前、筑前、筑後、そして… 弱小。 世界規模に触手を伸ばす『組織』とは、あまりに規模が違いすぎる。 だが、できない。 組織といえど、彼らの存在を無視、できない。 「ほう、その顔は『全て織込済み』といったところでしょうか。 では、話は早い、我々があの方に出した条件は一つ。 すなわち…」 それは、飲めるはずのない条件。 だが、交渉は成立した、それは最も無慈悲な、それは最も非情な、 いや、それこそが、そう、それこそが、最上級の。 奪いたければ奪うがいい! やれるものなら!やってみるがいい! ウチの子達は!そんなに!ヤワじゃないよ! 「塵は塵に…我ら『灰』に連なる結社は、 組織との不可侵条約により、あなた方とも、 表向き、互いに存在せぬものとして、互いに知らぬものとして、 今の今まで参ったわけですが…」 白衣の男が懐から取り出す、携帯端末。 田中が尻のポケットから取り出す、携帯端末。 「120分、3名、遺恨は無し…よろしいですね?」 「ああ、ええっちゃ。」 「では、おかけください。」 それぞれの端末が戦いの火蓋となる。 「私だ、回収しろ。」 「生田!鞘師!思いっきり!ぶちかませ!」 同時に切る。 「さて、このあとは、如何なさいますか?」 「きまっとろうが。」 「…でしょうな…では、謹んで…」 田中が立ち上がる。 白衣が立ち上がる。 「あの方との交渉において『私』が選ばれたのは、当然、 その【能力】を警戒して、という側面もありました。 結局、それは杞憂にすぎませんでしたが…」 足袋を脱ぎ、差袴の裾をからげる。 「あいにくと、れーぎなんか何もしらんちゃけん…お辞儀もせんよ。」 「結構、お手柔らかに。」 身を低く沈め… 今度こそ…今度こそ! 今度こそ! 【増幅(アンプリフィケーション;amplification)】 投稿日:2015/05/02(土) 19 46 57.14 0 back ■ チェリィブロッサム -生田衣梨奈・鞘師里保- ■ 【index】 next ■ プリイジング -研修生- ■
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ゆっくりと豆 30匹ほどのゆっくり家族が暮らす、大きめの巣の中。 日の昇る少し前に目覚めた母ゆっくりまりさは、彼女のはじめての娘であった 姉ゆっくりまりさの異変に気が付いた。発情したゆっくりありすが、必死に抵抗 する姉ゆっくりまりさに覆い被さっていた。ゆっくりありすにしては小柄なこと、 そのため声量が小さく、襲われている本人以外誰も気がつかなかったのだろう。 寝静まった夜中だと言うことも災いした。 『まり゛ざあああああ! しゅぎ! だいじゅぎだよぼおおおお!』 と発情するゆっくりありすを、体の大きい家族で踏みつけにすることで、大惨 事は免れることができた。ゆっくりありすが一匹だけであったこと、襲われた時 間が深夜でなかったことが幸いした。いくら小柄なゆっくりありさでも、大群に 襲われれば対処の出来ようはずはなく、また深夜であれば、寝静まった者が気付 くことも少ないからだ。 姉ゆっくりまりさは襲われていた時こそ衰弱してはいたが、日の昇る頃には小 さな枝を二振り授かり、襲われたことも忘れやがて生まれる子供たちの笑顔に思 いを馳せるくらいには回復していた。 母ゆっくりまりさからすれば、不幸な出来事とは言うものの初孫を授かること が嬉しくないわけがなく、かいがいしく娘の世話を焼いてやることにした。 付いた実はそれぞれ、5つと4つで、まりさ種が8、ありす種が1であった。 奇妙なことに、枝ぶりからすると、少しばかり生まれる子が少なく、本来子が宿 る場所には、小さく黒いつぼみがいくつか結ばれていた。 母ゆっくりは、娘に覆い被さった運命がもたらした悲しい出来事の結実である と考え、娘の頬を優しくなぜるのであった。家族の皆が見守る中、生まれてくる ゆっくり達は、未来の幸せを疑うことすらなかった。 ・ ・ ・ 私はゆっくり研究者の一人だ。 ゆっくりまりさと共に食事をとり、ゆっくりれいむと昼寝をし、ゆっくりに囲 まれて研究を行うのが日課だ。 ゆっくりありすに襲われた家族があると他のゆ っくりから聞き、生き残りを保護しにやってきたのだが。 日が沈んだばかりのこの時間帯であったためか、巣穴ではゆっくりな大家族の 幸せそうな生活か営まれていた。それどころか、子ゆっくりありすが家族と同居 しているではないか。興味を引かれた私は、そのゆっくり家族を観察させてもら うことにした。 私はその家族に向けて、ゆっくりしていってね、と優しく挨拶をする。突然の 挨拶に驚いた家族達は、私が優しそうな笑みを浮かべていること、美味しそうな お土産を持っていることを理解したのか、口々にゆっくりしていくことを勧めて 来た。彼女達の住処は小柄な私が入り口から入れるくらいに大きく、洞窟と言っ ても大げさでないほどであった。このような巨大な巣穴を作り上げたゆっくりま りさ達に感動を覚え、ゆっくりさせて貰えるお礼と共にその内心を告げると、親 ゆっくりまりさはとても嬉しそうに、ずっとゆっくりすることを進めてくれた。 その日ゆっくり達から聞いた話をまとめるた私は、少しばかり危機感を抱いた。 子ゆっくりまりさ大のゆっくりありすが、一匹だけ訪れたこと。さらに、ゆっ くりまりさがゆっくりありす種を宿した事。先日、工場近くで化学薬品の流出事 故が発生したばかりだ。近辺のゆっくり達に悪影響を及ぼし、一部のゆっくりに 突然変異を起こすきっかけとなったことは、一般には伏せられている。もしかし たら、その異変ゆっくりありす種がここを訪れたのかもしれない。 お土産をゆっくり達にくばりながら、異変がないかを探る。ゆっくり達の顔を 見回すと、……簡単に見つけられた。 だれもが、額やら頬やら側頭部やらに、黒い点をつけている。よくよく観察し てみるに、それはどうやら小さい穴のようであった。小さい子ゆっくりまりさは 数個、親ゆっくりまりさに至っては28個もの穴が開いていた。症状を聞くと、 毎朝起きると、体中に鈍痛を覚えるが、時間が経つにつれ気にならなくなるらし い。それが毎朝続いているためか、体力も乏しくなってきているようだ。 多分ではあるが、夜中のうちに誰かに穴をあけられ、しだいに回復しているだ けなのであろうと推測できた。 明日は朝早く訪れることに決めた。 ・ ・ ・ 早朝。 巣穴の外から観察していた私は、奇妙なことに気が付いた。ゆっくりの頭から、 小さい枝がいくつも生えているのだ。生殖したのではないだろう、すべてのゆっ くりがその枝を生やしていたのだ。懐中電灯を照らしてもまだ暗いため、よく見 えなかったのだが、枝には小さな豆粒ほどの実が成っているようだった。 これが、変異の影響であろうか。 枝の数をいくつかメモしているうちに、母ゆっくりまりさのそれが28個、つ まり昼間見つけた穴と同数であることに気が付いた。 これはもしや……。 思考しているうち、いくつかの子ゆっくりまりさが小刻みに揺れた。 ゆ゛っ、ゆ゛っ、と声を上げた彼女達の枝は、すぐに枯れはじめた。急いで巣 穴に入り、枝の落ちた子ゆっくりまりさを抱えると、いくつか新しい穴が開いて いるようだ。ピンセットで傷をつけぬよう注意しながら、穴を探る。穴から引き 出された物は――とても小さいゆっくりありすであった。 豆粒ほどの彼女は、抜き出された時こそくーくー寝息を立てていたものの、す ぐに起きて暴れ始めた。ピンセットでは捕まえていることは出来ず、『とかいは のありすは暖かくゆっくりするんだから!』といいながら、子ゆっくりまりさの 皮下に、勢い良く潜り込んだ。 このゆっくりありす――豆ありすとでも言うのか――はどうやら寄生体で、宿 主の体内にもぐりこんで食い荒らし、さらに一日で受精させる新種のようであった。 これはいそいで発表せねばならないと踵を返したとき、足に激痛が走り、倒れ こむ。調べてみると、豆が打ち込まれたような、小さな穴。 まさか……。嫌な汗が体中から吹き出てくる。人間にも、寄生するのだろうか? 一つの枝から5,6個の子が生まれるようで、巣穴はすでに豆ありすに埋め尽 くされていた。腕、足、胸、喉と、饅頭でもないのに容易く皮膚を食い破られ、 激痛に悶える。汚染の影響なのか新種の能力なのかわからないが、手足が痺れ、 筋肉が言うことを聞かない。 巣穴はすでに阿鼻叫喚の渦に巻き込まれていた。 母ゆっくりまりさは、体中を蝕まれ、ゆ゛っ、ゆ゛ぐっと呟くも、動きが取れ ないようだ。生まれたての子ゆっくりまりさは寄生に耐えられず絶命していた。 絶命しては受精できないからだろうか、その子ゆっくりまりさの皮を食い破って 外に出た豆ありすは、新たな獲物――ゆっくりと逃げる美味しい饅頭か、動けな い大きな肉の塊のどちらか――を見つけて、嬉しそうに近づく。 どぼじでゆっぐりぃぃぃ゛と泣き喚く親ゆっくりまりさ。 ゆ゛ぐりじだがっだゆ゛ううう、と食い破られる子ゆっくりまりさ。 そういえば、と視線を彷徨わせる。子ゆっくりありすはどうしたのだろうか。 その疑問はすぐに氷解した。 傷一つない彼女は、他のゆっくりに寄生すればすぐ殺してしまうこと、また自 分が殺されてしまうことを理解していたのだろう。とかいはをえんじょいするに は大きな肉塊が必要なことを呟きながら、嬉しそうに私に近づいてくる。獲物で ある私の顔をがっちりと掴み、『いただきます』と呟いた彼女は、そのまま私の 右目に向かって ・ ・ ・ 私の動きを制限する神経毒は、どうやら痛みも打ち消してくれるようであった。 鈍痛と緩やかな眠気の中で、かろうじて動かせる左手で、土をかき集め、出口 を塞いだ。例え子ゆっくりまりさであったとしても簡単に掘り起こせる程度の薄 い蓋であるが、豆ありすであればどうだろうか。 雨でくずれないよう、外から掘るものがいないよう、奇跡を願いながら、次第 に小さくなってゆくゆっくりまりさ達の断末魔を聞きながら。 私はゆっくりと目を閉じた。 このSSに感想を付ける
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楼蘭皇国も六月中旬に差し掛かり じっとりとした湿度と上がり始めた気温の影響を受ければ大体の人間は短気になるだろう 宮原姫子もその短気に拍車をかけられたうちの一人、元々の短気にこの環境は最悪だった この楼蘭に生まれて十四年、梅雨時期だけはどうも好きになれない 苛々しながら境内を掃いているが、何処かに苛々をぶつけたくて堪らなかった 「ひーめちゃん」 無駄に明るい声がしたかと思ったら、次の瞬間自分の体が傾いでいた 「姉様!ただでさえ暑いんですから少しは自重してください!」 自分の脚だけでは支えきれず 箒に頼らなければならないのは、この腹立たしいまでの身長差が原因になる 後ろからの奇襲者は密着していた体を離すと、前屈みになり視線を合わせた 「ちょっと休憩しようと思うんだけど、ね?」 結論としては境内の掃除を中断して正解になった 朝から曇っていた空がとうとう雨を降らし始め 姫子は完全に滅入ってしまったからだった 「降って来ちゃったわねー」 激しく降る雨を目の前にしても笑顔を崩さない自分の姉を前に少し血縁を疑いたくなった 「…これで三日続けて降ってますけど…」 今日の空にも負けないジトッとした目で天を見つめたが、馬鹿にするかのように雨は強さを増した 「あちらは四週連続ね」 首の向きを姉に戻すと視線の先にいい加減見飽きた軍用車が乗り込み始めていた 詳しい事は教えて貰えなかったが『この神社の祭具殿に用があるらしい』ぐらいしか解らなかった 「今日は今までより多いわねぇ」 姉はいつの間にか笑顔が消え、眉間にしわを寄せていた 「姫ちゃんはここで待っててね」 そうとだけ言うと姉は傘を片手に軍用車へと歩いて行った 真面目な事に、軍用車は毎週土曜日に必ず来て姉に追い返されている 今回も大丈夫だろう、となんとなく高をくくっていたが、すぐにその楽観視は終了する羽目になった 最後に入ってきた車から降りた人物が指揮官なのか、他の者に指示を出し祭具殿へと向かわせたのを見て 流石に我慢が出来なくなり、走り出した姉を追った 「これはどういうことですか!? 私たちは再三断ったはずです!」 声を荒げる姉に対して、その男は至って冷静なのが腹に立った 「こちらも再三警告したはずだ、今は国家の、いや世界の存亡が掛かっているのに無駄足を踏ませないで戴きたい」 どこか苛々とした様子の男に対し、自分の中で何かが切れたのを感じた 「国家がどうだとか、世界がどうだとか、そんなのをどうにか出来る物がここにあるわけ無いでしょ、早く帰って!」 その男がため息を吐いたのまでははっきりと見えたが、次の時に見えたのは地面だった 腹部に鈍痛を感じて、自分が何をされたかを理解した 「姫子!大丈夫!? 何も殴る必要があったんですか!?」 姉の悲痛な声に混じって聞こえたのは祭具殿に向かった軍人の一人だと思われる男の声 「中尉、コアを確保しました」 「そうか、他に使える物を確保してくれ」 痛む腹を押さえつつ、なんとか顔を上げると こちらには銃口が向いていた 「素直に従って貰えば、こうはならなかったがね、この二人も連れて行け」 脚がまだ言うことを聞かず、引きずられるように歩く自分とは違い、姉はしっかりと歩いている 姉妹なのにここまで違うのかと落胆しながらも 車両に詰め込まれる前に見えた雨の空に呪詛の言葉を呟く事には成功した
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膵臓病には独特の膵臓痛があります。膵疾患には急性・慢性の膵炎や膵臓癌、膵臓良性腫瘍、膵臓嚢胞などがありますが、近年増加が目立つのは膵臓癌で、この40年程の間に4~5倍になってい.ます。また、胆石などによって発症する急性膵炎や、アルコールの多飲などが影響する慢性膵炎も増加傾向が認められます。 これらの膵疾患は40歳以後に多く、特に膵臓癌の悪性度が高いのはもちろんですが、急性膵炎でショック死をしたり、慢性膵炎で長期間の一進一退を繰り返す例も珍しくないため注意が必要です。 急性膵炎以外は初期症状が現れにくく、日常の痛みを見逃さないことも大事です。 膵がんをはじめ膵臓病はなかなか自覚がないのですが、 主に心窩部や左季肋部におこる。 背中や腰、肩などへ放散する痛みを伴うことが多い。 2~3日間続く持続痛がよくみられる。 背臥位で痛みが強くなるため前かがみの姿勢をとりやすい。 急性膵炎では腹痛はほぼ100%にみられ、激烈な痛みのために絶望感を伴うことすらあります。 慢性膵炎は、多くの場合膵機能がある程度保持される代償期が5~10年続き、その後膵の荒廃が進み、非代償期へと移行します。 この場合代償期には激痛を反復する症例や、比較的軽度の腹痛で経過する症例などがみられます。痛みが軽いものではむしろ「重圧感」、「張る・凝る」などの不定症状を訴えることが多く、なかにはほとんど自覚症状が出ない人もあります。 膵臓癌では、初期にははっきりした自覚症状が出ないことが多く、手遅れになるケースも多いものです。ただし全身倦怠、食欲減退、上腹部鈍痛や重圧感、体重減少などの症状がみられることがあります。 心窩部痛のみられる主な疾患 痛みの性質 疾 患 起こり方と誘因 他 症 状 緩 解 疝 痛 急性胃炎 過食・薬・酒・タバコ 悪心・嘔吐 絶食 消化性潰瘍 ストレス。周期性空腹時痛 胃・十二指腸後壁の潰瘍の際は背申の絞扼感や放散痛。吐血・下血 摂食 胆石発作 初期に心窩部持続痛として漸次増強し右季肋部に限局。過食・脂肪食・激動によって誘発される 発作後発熱・黄疸・疼痛性胆嚢腫脹を触れる 突然緩解することもある 持続性 激痛 急性胃拡張 腹部手術後とか重症感染症時などに急激に起る 黒褐色液大量嘔吐、上腹部 著しく膨隆、乏尿 消化性潰瘍の穿通 とくに小網内穿通は持続性激痛 背部へつき通る痛み 急性胆嚢炎 胆石発作に続発するか、単独に急に生じることもある過食・脂肪食,大酒、ときに胆石発作に続いて起る 胆嚢腫脹・圧痛。黄疸は認められないことが多い 絶食 急性膵炎 過食・脂肪食・大酒、ときに胆石発作に続いて起こる 悪心,嘔吐が激しい。背部痛な伴うこと多し 上半身を起して前屈すると多少楽になることがある 膵 癌 上腹部・背部の不定愁訴が長く続く 痩せ,背部痛。腫瘤を触れることあり 上半身を起して前屈すると多少楽になることがある 浸潤性の癌 漿膜を破るか、周囲臓器とくに腹膜へ浸潤 痩せ。腫瘤として触れる不定の上腹部症状 鈍 痛 慢性胃炎 過食過飲で再燃しがち 絶食 慢性膵炎 過食・脂肪食後に起る。持続性の心窩部痛 消化不良性下痢・脂肪便を起しやすい。痩せ 上半身を起して前屈すると痛みが和ぐ 横隔膜裂ロ ヘルニア 臥位で起こったり、増強することが多い 肥満 むねやけを訴えることあり 立位をとる