約 344,725 件
https://w.atwiki.jp/goldenlowe/pages/76.html
「大江戸愛物語」(初日その2) 先発隊6名勢ぞろいし、これから東京Noプランの観光が始まる。 はずだったが、さすがNoプランということで荷物を置いて動くのか、このまま動くのか、どこへ行くかも決まらぬままに一同立ち止るw 「どうする?」の言葉に「とりあえずコインロッカー探そう」となった。 しかし、構内地図を見て探したコインロッカー…あると信じた所に無かったw 下手に預けるより持って移動するほうが後々迷わずに済むだろうと、結局荷物を持ったまま聖地秋葉原へ移動する。 無論、初乗り運賃なんて知るはずも無くこれから事ある度に「ナンボや~?」と発券機前で西の言葉が飛び交うのだった。 JR山手線で移動する。 ホームに着いたばかりの電車をみて閣下が「緑色ちゃうんか?」と呟く。 ウチにはチンプンカンプンな台詞だが、どうやら山手線=緑らしい…緑色の帯は描かれていたけどw 東京駅から1駅移動、ようやく日の光を浴びる事ができr…。 首の角度が大変な事になりそうなビル群の隙間に少しだけ空が見える、しかも曇ってるし! 駅を出てすぐにコインロッカーの案内が見える。 だーす卿:「ここで預けて動こう」 GJな提案。 が、しかし、居並ぶコインロッカーは満員御礼…ちょっと奥の方まで覗いても預けられる可能性は無かったw とりあえずはアテもなく聖地を巡る。 何か目的があるわけでもなく、ぶらぶらぶら… そして某有名電気店の角を右に曲がった小さな稲荷社でチョー怪しい人ハケーン! しきりに周りの目を気にするように佇んでいる、その右手には一眼レフカメラが握られ、恐らく50-200mmのAFレンズを装着している。 なにをしてるんだろうかと通り過ぎさまに様子を窺うと社の階段にコスプレおねーちゃんが座っている…。 なに?そのシュチエーション!ネタとしては最高だけど画としてはサイテー!Σ( ̄□ ̄; これでもウチは元某大学写真部、出来上がる画を想像しては込み上げる笑いに耐えられないw 先発隊の他面子はそのシュチエーションの不思議さに首をかしげている。 ルカ:「あれは、おねーちゃんが○○を▽▽で…そういう商売やろ。」 一同納得…そういう商売が成り立つんだね…売り手と買い手が居て…うん、都会だw 人だかりの出来ている電気屋(ジャンクショップ?)っぽい所の角で立ち止まる。 ただウロウロしているだけだと時間の無駄遣いという事で要望を取る。 しかし、何も出ないw そして再び放浪する事に…。 途中繁華街のパチンコ屋を視察する。5分と経たずに外へ出る。 激渋と思っていた地元のパチンコ屋が優良店に思えるほどのスペックでしたwww 目抜き通りへと出て、再び歩き出す一行。 それにしても人の数が尋常じゃない!「何かの祭りか?」と思えるほど行き交っている。 まぁ、ここに来てる人にとっちゃ年中祭り感覚かw 目的地もないまま行く角々で立ち止まっては進むという事を繰り返す。 ただ、だーす卿と共に先頭を切るケン卿はなにやら思惑があるっぽい事を話しているものの…。 あまりにも事が運ばない事態に「○○時に◇◇へ集合するように、解散!」でも良いんじゃ?との意見も出たが何故かグダグダに流されたw そして何度か立ち止まった後、時間も時間なのでウチから「昼ごはーん食べよう」と切り出す。 食事なら神田方面だろうと何故か路線図を確認したのち再び歩く。 テクテクテクとケン卿と剛田卿に代わった先頭に他4人がついてゆく。 閣下 :「おい、リーダー(ケン卿)頼むで。」 ケン卿 :「仕事で何回か来てるからな。」 いつの間にかケン卿がリーダーになってるよw 道端に立っている地図を確認しながら進むことン百メートル…気付けばはるか遠くを歩く2人に対して至って冷静な後ろの4人w 「ホンマに合ってんやろな…」 4名のぼやきが止まらない、しかし先頭2人は自信満々に歩いているように見える。 そして2枚目の近隣地図でもう一回確認する… アンレ :「こっちで合ってんの?」 だーす卿:「えっと…」 アンレ :「さっきココだったよね?」 だーす卿:「これは逆?」 アンレ :「どこ向かってんの?」 だーす卿:「神田だから、このままだと東西反対だね。」 閣下 :「おいおい、ケンのヤツはなにやってんや…」 今までの進行方向へ視線を戻すと、2人は先の横断歩道を越えているw 後ろ4名は無視かい!Σ( ̄□ ̄; 2人にケータイ飛ばすのも通話料勿体無いので無言の圧力で引き戻させるw 閣下 :「ええわ!お前等ついてこい!」 号令一発、転進する。 さっき渡った大通りを再び渡り、Newリーダー(閣下)の元で来た道を再び戻る。 『同じ道を戻るのはイヤ!』ってな事で、Newリーダーの閃きで路地へ入ってゆく。 そして繁華街を抜けて静かな路地へ入った所で驚きの看板をハケーン。 「千代田区内路上での喫煙禁止」 丁度よい所に公園があったので「ちょっと一服しない?」と言おうかとしたのに… それにしても公園ってのはその土地で雰囲気が違うと感じる。 まず地面の色が違う、ウチの地元は何て言うか茶色の混じるアイボリー色、今見てるのはちょっと黒っぽい…きっと曇天と疲れがそう見えさせてたんだろうなw 見知らぬ道を右へ左へとNewリーダーの方向感覚だけを頼りに一行は神田方面を目指す。 しかし、とにかくNoプラン。何を食べるかも決まらぬまま悪戯に時間だけが過ぎてゆく。 閣下 :「もぅお前等コンビニで何か買ってこい!」 コンビニを見つけた閣下が皮肉っぽく叫ぶw さすがにメイン通りから外れた所にはめぼしい店が少ない…。 途中、ヤキニクっぽい香りにグラッと心が揺れたが、ここで入っては夜のお楽しみ前に出来上がってしまうというのでヌルーw コンビニを過ぎた所で何やらレストランのメニュー看板が… 店構えとメニュー看板を凝視する一行… 「高いな…」 ここだけは全員の意見が見事に一致するのだったw それから間もなくして見覚えのあるロゴマークが目に飛び込んでくる。 今やTVCMでバンバン放送されてお茶の間の知るところとなった「KYOURAKU」のビルだ…。ガラス張りの外壁に中を窺うが全く人の気配がなかったw 一行はさらに神田方面と思われる方向へ進んでいく。 すると今度は白泉社の建物が…。 しかし、これに激しく反応したのはウチだけで他の人は大して食指が動かなかったみたいw いよいよ込み合った建物群を抜けようかとしたとき、ふと足が止まる。 中華料理屋が店前に出しているメニュー看板がなにやら誘っている。再びじっくりと内容を確認する。 閣下 :「ここでエエか。」 ルカ :「作戦会議だ。」 と、ようやく昼ご飯決定…長かったw この店、お昼は定食がメインだそうで、約10種の定食の中から各自選ぶことに。 注文の内容は 閣下、ルカ:角煮定食 剛田卿 :酢豚定食 だーす卿 :坦々麺セット(半チャーハン付) ケン卿 :固焼きそばセット(半チャーハン付) アンレ :エビとタマゴのチリソース定食 各795円均一でしかもご飯はおかわり自由という…。という事は料理自体がショボいのかなと思いきや、メイン+小鉢(マーボー豆腐)+中華スープとしっかりした量が運ばれてきて、ウチにはかなりキツい量だった…お店の名前は確か「中南天」だったかな、オススメですw かなりの距離を歩いた反動からか、皆黙々と箸を運ぶ。 疲れた体にチリソースのピリッと感が程よく刺激になってまだまだ先の長い初日の半分を乗り切る為のカンフル剤になったかなw そして皆が完食して一息ついた後、これからの行動について会議が始まる。 だーす卿 :「さて、どこか行きたい所あります?」 閣下 :「塔って遠いん?」 だーす卿 :「いぁ、そんなに遠くはないかと…塔にする?」 ルカ :「ベタやなw」 アンレ :「鉄板やねw」 閣下 :「お台場は?なんかしてるんちゃうん?」 だーす卿 :「今、冒険王ファイナルやってるんかな。行けなくはないね。」 閣下 :「よっしゃ冒険しに行くか!」 他全員 :「おう」 閣下 :「(剛田卿をつつきながら)お前は何かないんか?」 剛田卿 :「俺が行ったことあるのは…ココとここと…3箇所かな」 閣下 :「まじかw」 剛田卿 :「3年半居て3箇所、今日新宿行くから4箇所目だw」 閣下 :「1年1箇所かいwww」 行き先が決まれば行動は早い、さっと席を立ち各自勘定を済ませようとレジに並ぶとウチの前にいたケン卿がレジのおねーさんと何か話してる。 ケン卿 :「アンレなんか話してくれ。」 アンレ :「は?」 ケン卿 :「3号として中国語で話してくれ。」 何?この無茶振りは?!Σ( ̄□ ̄;) アンレ :「ウチは愛媛語と日本語しか話せんわw」 ルカ :「愛媛は国ちゃうw」 ケン卿 :「残念やな~アンレの流暢な中国語が聞けると思ったのに…」 ;==)ノシ☆ 本場仕込みはアンタやんっ。この本家本元めっ! 店をでて再び神田駅を目指す、するとスグに何やら赤レンガ倉庫っぽい建物が並ぶ川に着く。聞けば有名な「神田川」らしい。 仕事上川の状態が気になって覗き込む…澱んでる…。 食後の運動には最適な距離(w)を歩き漸く神田駅に到着する。 切符を求め、迷宮のような地下鉄構内を歩きつつ地下鉄を乗り継ぐ。 新橋まで辿りついてスグに今度は「ゆりかもめ」に乗り換える。 これがまたチョーが付くほどの満員、まぁ吊り輪が持てるだけマシか~って思ってると、海の向こう側に何か見覚えのあるものが…「フジテレビ」だw TVでは良く見るモノがすぐそこにあるw つか、今乗ってる人全部目的地同じかwww 徐々に近づいてくる冒険王になるための地。 時間にして約15分弱、窮屈な車両から逃げ出すように地上へ降り立つ。 そして再び現れる人の群れ…駅のキャパを越えるんじゃないか?w。 改札を抜け、いよいよ冒険の場へ!っと意気込む前に都会人ならではの知恵が… 『帰りの切符を先に購入』 さほど大切なことではないかと思っていたが…。 会場へ続く通路の窓から現場の様子を窺い見る。 絶句するほどの人が大きな波となってうねっているw フジテレビ内へ続く階段には長蛇を越えた列ががががが。 ともかく近くへ行ってみようとゾロゾロと連れ立っていく、そして受付っぽい所の前で灰皿を見つけ「緊急作戦会議(煙草休憩)」を開催する。灰皿の付近には何かに疲れた人々が魂の抜けそうな顔を浮かばせている。先発隊6名も目の前の濁流にその身を委ねた後の未来予想図がずらりと並んでいる。 そこへ斥候に出ていただーす卿が情報を携えて戻ってきた。 「有料ルート60分、無料は90分。しかも冒険王参加に1500円かかる…」 「それはできんなw」 緊急作戦会議はアッサリと結論を出したw それでも見れる範囲だけでも見るかと蠢く人の波の合間を縫うように歩き始める。 妙なオブジェ、そして遠目に見る何かしらの出店そして蟻の這い出る隙間もないような人… どこを見ても人!人!人! 人波に慣れていない田舎もんは視界に押し寄せるうねりに酔いそうなほど…(==; それぞれの会場に枝分かれした波を踏破すると、そこには静かな公園が広がっていた。 さっきと違って、人の影もぽつりぽつり…イベントの力がいかに偉大であるかを痛感したw 全くヤル気の失せた一行は近郊の地図を眺めながら新たなる目的地を探す。 だーす卿 :「ジョイポリスでも行く?」 この一言で難しい思考能力が低下気味だった先発隊の新たなる目的地が決まる。 聞けばここから歩いて行けるとの事で、先ほど抜けた人の波の中へ再び飲み込まれるw するとその道中、賑わう会場方向を見ていると、会場内でなにかの仕事をしていたであろう赤パンダの着ぐるみが役目を終えて会場裏へ戻ってくる場面を発見。 ギリギリまで手を振って愛想を振りまいていたが、スタッフの待つプレハブ小屋へと入っていった…なーんな妙なリアリティ…w 舞台裏やスタッフさんが待機する所は見えるようにしちゃダメだと思うよw 「どうにか(会場の)下へ行けたら楽になるんだけど。」とだーす卿の言葉を信じ、ふと現れた下階段を一斉に降りる。 すると、信じられないほど過疎化した道が広がるw ドンチャカ賑やかな音楽が流れている会場を横目に見ながら「来た証拠」にと会場の一角をカメラで激写w 閣下 :「フジテレビ激写!」 ケータイカメラを構え閣下は妙に嬉しそうだったw メインとは逆のお台場冒険王ファイナル入り口を右手に見つつ、横断歩道を渡るとすぐに「JOYPOLIS」のロゴが見える。 朝イチの大阪南港→新大阪ぶりに目的と行動が一致したwww とは言え、そのジョイポリスなるものが何をする所か全く知らないのだが…w 移動の最中、閣下・ルカ・ウチの3名はジョイポリスよりも違うモノを探している。 煌びやかなネオンの輝く看板はないのかと必死に目を凝らすw 閣下 :「アレは…ボーリング?」 剛田卿 :「いぁ、映画館」 閣下 :「アレは?」 アンレ :「小香港って書いてる…」 閣下 :「なんか違うかw」 結局、お目当てのモノは見つからず…orz この近隣の人たちはヒジョーに健全的な生活をしていることが判明したw 嬉しいかな哀しいかな、何事もなく目的地「JOYPOLIS」へ到着するw 入り口へ続くエスカレーターに乗り到着した先に見えたのは、やはり人の群れ! はっきり言って見飽きた感もあれば、諦める感も…(  ̄0 ̄)y-~ ただ、そろそろどこかに腰を据えないとガラスの腰が悲鳴を上げ始めてる…かなりヤヴァイ。 入り口(受付)は人の数に比べて案外空いてる。 皆、遠巻きに入るか否かを見定めている、はっきり言って邪魔!w オマケに上階に用事の買い物客(外食客)も混ざり合って余計な混雑を招いている…あぁもぅ! ふと入り口付近に設けられている施設内の状況を示すディスプレイに目をやると、各待ち時間が表示されている。 「最大40分待ち…かw」 未だにここがどんな所か知らぬまま、軽く呆ける。 しかしここまで各地で肩透かしを食らったままでは心のモヤモヤが晴れないという所か、とりあえず入場することに。 券売機っぽいマシーンに入場料500円を投入し、いざ入場…ここも自動改札かwwww PM2 30 薄暗い場内は賑やかな音楽と派手なアナウンスと人影に満ちていた。 どうやらウチの想像したゲームセンターとは遥か別次元の場所らしい。 これはゲームセンターというよりアミューズメントエリアの範疇に入るんだろう。 クレープ屋のある一角に集合し『16時に再びここへ集合』の号令を機に個人行動へ移る。 ウチはというと、限界が近づいた腰を休ませる為よっこいせと椅子に腰掛ける。 なんだか久しぶりに落ち着いて座ったような気がするww 丸テーブルに対面だーす卿、右にケン卿、左に剛田卿という豪華メンバーを揃えたものの、何かに取り付かれたように誰も何も発しないw 沈黙ほど時間の経過は遅く感じる。 何十分に思えた数分の後、徐に席を立っただーす卿がコーラを伴って戻ってくる。 だーす卿 :「年に1度飲むか飲まないかのコーラを今日飲む。」 そういえば昼ゴハーンの時はお茶だったような…きっと泡が恋しかったのかな?w ようやく腰にも心にも落ち着きを取り戻した頃、テーブルの脇にあったオブジェと信じていた公衆電話がけたたましく響く。 動くんかいっ!Σ(=◇=ノ)ノ そういえば、楽しげな家族・カップルがその前で何やらしていたのを思い出す…これもアトラクションの1つかっ! 一瞬、心電図が止まりかけたぞっ! ケン卿に電話を取るよう促すが、テーブルに座っていた全員+通り掛かった人全て電話をスルー…これじゃ仕掛けた側も報われんなww そして本当に用事ある人は電話が鳴らない時に現れるという寸法らしいw もっとも今となっては電話が鳴った正体を確かめようもなく、ちょっとだけ心に引っかかるものがあったりw ぼんやりと時間を過ごしていると、満面の笑みを浮かべた閣下とルカが戻ってきた。 「アカン、なんもない!」 全てのフロアーを見て回ってきたらしい、実に良い笑顔だw それでも、ずっとココに座っているのも勿体無い。 折角支払った入場料500円分は楽しまないと無駄足も良い所。 よっこいせと重い腰をあげ上の階にあると聞いた喫煙スペースへと向かう。 コインゲームが居並ぶ奥の奥…手洗いまでのすぐ手前に申し訳なさそうにぽつんと置かれている吸煙機、分煙・禁煙と騒がれるご時世、煙草税をコツコツ支払っている言わば高額納税者への扱いはかくも厳しいものなのか…(;_;) たった4人で満員御礼な喫煙スペースを逃げ出し、ぶらりぶらりと辺りを見て回る。 誰しも目の前にあるゲーム機に夢中になっている。 ここにもパチスロが設置されているが、ラインナップのショボさに食指も動かずAllヌルー。 見覚えのある機械、初めて見る機械、聞こえてくる絶叫。 楽しく遊んでいる人にはヒジョーに楽しい場所らしいw ふらりふらりと歩いて全てのフロアー回っていると気付けば元の休憩スペースに戻っていたwwww すると、閣下、剛田卿、ルカが燃え尽きたような顔でベンチに座ってるw 言わば「やっぱり何もなかった組」がずらりと顔をそろえる。 疲れを癒しつつぼんやり人の流れを眺める。 ちょうど目の前には景品をクレーンで落としたり掴んだりする機械が並んでいる。 見た限り、強運と豪運に奇跡を加えないと獲れそうになさそうだがw なぜか人はそこに大金を突っ込んでいる、きっと店で買った方が数倍安く手に入るだろうに…。 そこでとあるカップルを見つけた、♂推定年齢24歳、♀推定年齢25歳。 妙にはしゃぐ♂、そして優しく見守る♀… どうにか良い所を見せたい♂、変わらず見守る♀… 3個1パックの「じゃ●りこ」をGETしようと頑張る♂、やっぱり見守る♀… 次はぬいぐるみに挑戦する♂、微笑んだままの♀… 何台の機械をハシゴしたのか、見ているコッチが痛くなるほど微笑ましい光景が暫く続いた後、ようやく何かをGETしたらしく、♂は「どや顔」を浮かべている。そんな♂を遥か高みから見守る♀…なんて涙ぐましい感動の名場面(ノ_ 。) しかし、クレーンゲームってのはヒトの心を掴んで離さないようで、1人の客が居なくなれば、また新たなる客が…活性高いねw。 一通りの顛末を見届けると、なんだか不思議な安堵感に包まれ荷物を脇にして肩ヒモを硬く握ったまま、ウトウト…。 よくもまぁアレだけ騒がしい所で眠ることができたもんだw ただ、つかの間の居眠りも徐々に目覚めが悪くなっていく、かなりお疲れが溜まってるなw 16時までの自由時間にも関わらず、それ以前に全員が一同に揃っていた。 皆燃えつきかけかなと思っていたが、だーす卿は足裏マッサージを見つけて少しリフレッシュしていたらしいw そんな便利なものあるならウチもやりたかったなww 少々早いながらもこれ以上の発展性を望めない状況に魅惑の遊び場「JOUPOLIS」を後にする。時刻は15時30分…外はいまだ小雨が続いている。 今から移動すればホテルのチェックイン時間がピッタリかなという予測の元、再び移動を開始する。 が、しかし。ルカ+ウチは既に体力ゲージが枯渇寸前w 魅惑の遊び場を出てスグのところに店を構える某有名ドラッグストアー「マツ●トキヨシ」に飛び込む。 入り口付近に並べられている命の水の中から「ユ○ケル」を手に取り、迷わず会計。 再び電車移動となる前に店前の喫煙スペースで至福のひと時を過ごしつつ、ケン卿から帰りの切符を購入するwww (ゆりかもめの切符は妙に可愛らしかったw) 駅までの途中、屑篭を見つけ先ほど購入した「ユ○ケル」を一気飲み…マズイ…( ̄_ ̄; そして、ちょうどフジテレビ正面を通りかかった時、本日2度目の 閣下 :「フジテレビ激写!」 再び皆でデジカメタイム(歩きながら)w ここへ着いてからそれなりの時間が経過してるにも関わらず、そこらかしこを歩く人の数は一向に減る気配をみない。 ちょいと込み合う横断歩道を渡り、歩道橋を登った先に見えたのは…自由の女神… なぜ?Σ( ̄□ ̄; レインボーブリッジを重ね合わせた光景を摩天楼に重ねたのだろうか…まったく意味不明の女神さまだw 駅へと続く道のり、なにやら小規模な人の群れが見える。 そしてその先にはなにやら芸人さんらしき人が何かのイベントをしているっぽい。 傍らには山積みにされている手桶…。 「打ち水で地球温暖化を防ごう」…この小雨の中で打ち水かっ!Σ( ̄□ ̄; 行動が目的を外れ、行動することが目的になってしまっている荒唐無稽っぷりがなんとも痛々しい…。 そんな取り合うのも面倒な団体を横目に先発隊一行はその先に見えるレインボーブリッジを激写! 閣下 :「アカン、わしメッチャ上手いんちゃう?!新しい職業にしよかw」 どうやら良い画が撮れたらしくご満悦だったw 駅へ近づくにつれて再び行列が現れた。 並んでいる人の顔は見事に疲れている、偶に元気イパーイな若人がまだ遊び足りないような笑顔を振りまいていたが、今は逆にそれが恨めしく思えるw そして長い行列の先にあったのは券売機。 あぁ、なるほどこういう事かっ! ケン卿が先に切符を買っていたのはこの状況を見越しての事だったのかw と何気に感心していたが、良く考えると行きの切符売り場で「往復」というのを買えば良かったのじゃなかろうか…いぁ、今は素直にケン卿の英知を褒めるべきだなw 再び乗車率100%なゆりかもめに乗り込み新橋を目指す。 曇天模様な空が写りこんだ江戸の海を車窓の向こう側に見る。 どんよりと濁った海に数隻の船が浅い波間に揺れている。 その上を走り抜けるゆりかもめ、江戸は空だけじゃなく海も狭く感じるな…。 行きと同じ分数だけの移動をこなし、新橋駅へ到着。 ここで乗り換えなのだが、ちょっと途中下車。 新橋駅前にはSLがでーんと構えていて、どうやら鉄道ファンの聖地となっているらしい。 妙に開けた広場を少し進んだところにある金券ショップへ入る。 ウチ等兄弟には全く馴染みの無い店だが、岡山行き新幹線切符が¥16,600-。 初の江戸遠征で運賃がナンボかかるか分からないトコロが罪だな…。 閣下 :「アカン、当日券なかったわw」 当日は東京ドームで巨人―中日戦らしく、いつでも臨戦態勢な閣下の淡い期待はアッサリ砕かれていた。 ショップを出て、しとしと降る雨の中で企業戦士な方々が集まっている場所を発見。 SLになぞっているのか否かは不明だが、貴重な喫煙スペースだw じわりじわりと現れる疲労に喝を入れるべく、先発メンバーもそれに加わりモクモク…♪ ただちょっとだけ、時間が逼迫してきた状況にだーす卿の顔に少し焦りが浮かんでいる。 のんびりネタをしてる余裕もなく1本吸い終えるとすぐに移動再開。 JRで神田駅まで移動し、まずはウチのホテルへ向かう。 HPから印刷してきた小さな地図を見ると駅から2つ目の角にあるっぽく、さらには駅構内に看板まであって、道程は容易く思えた。 西口を出て、ぞろぞろと歩く。目印は某有名コンビニ、ファミ●ーマートを過ぎてサー○ルKの向かいにあるらしい。目立つ対象物だけに楽々見つかるだろうと意気揚々と歩いていくが、徐々に町並みが怪しくなっていく。煌びやかな看板は数を減らし、人の往来すら疎らになっていく。やっと見つけたコンビニは微妙に地図に描かれている場所と異なったり、大通りにすら目印になるような明るい看板は見えなくなっている。 何度も何度も地図を見直しては探すものの、地図も雨にぬれて徐々に鮮明さを失っていく。 だーす卿 :「あぁ、分かった。逆だw」 雨にぬれるのも飽きた頃、だーす卿が閃いた。 すでにグシャグシャになりかけている地図に小さく書かれていた文字を見事に解読したらしいw だーす卿の閃きのお陰でその後は驚くほどすぐにホテルは見つかった。 駅からホテルまでの道にはパチンコ屋に天下一品ラーメンとまさに至れり尽くせりな環境…。 アンレ :「ここはパラダイス理想郷やなw」 まさにダメ人間路線まっしぐらな台詞だった… ホテルのチェックインを済ませ、荷物を部屋へ置く。 大阪で使っている宿よりか少し狭いが寝るだけの部屋なら充分事足りるw 昼間の汗と雨に塗れて感触の悪い服を脱ぎ捨て、新しく着替える。 時刻は17時を過ぎている…い、急がねばw エレベーターを降り、次は閣下・けん卿の宿へと急ぐ。 地下鉄銀座線に乗り込み2駅進んだ日本橋で下車、また迷うかもと心構えしていたが、今回はあっさりと発見。 ロビーの椅子にどっかりと腰を落とし煙草を吸おうとしたが、ここも禁煙らしい…。肩身狭いのぅ…。 だーす卿が時計を確認する間隔が少し早くなっている。 つまりはかなり逼迫しているらしい。 そう思っていると2人が準備を終えて戻ってくるまでの時間は非常に長く感じるw ルカ :「これで閣下が風呂入ってたら笑えるな。」 だーす卿 :「それは勘弁w」 アンレ :「ネタとしては最高やね、タオル片手に(エレベーターから)出てくるんやろw」 ルカ :「風呂ならしゃーないなw」 実際、時間に余裕があるなら風呂を間に挟みたくなるほど、今日の天気は蒸し暑くて鬱陶しい。待っているホテルの25Fには展望風呂があるらしく、いっそこのまま皆で風呂という手も…いぁいぁ、きっと殺られるなw 17時35分頃、閣下・けん卿共に合流を完了し、いざ待ち合わせ場所へと出発する。 ぶっちゃけ、ここの時点ですでに遅刻確定だったらしいw 神田駅から1駅で東京駅、そこから丸の内線へ乗り換える。 階段を登って降りて、グルッと回って横道へ入って…。 時間的余裕の無さからだーす卿とけん卿がスンゴイスピードで先導する。 しかし、残る4名は開く距離に焦る事無く見失わない程度について行く。 ;==)ノシ おーぃ、田舎モンにそのスピードは酷じゃぞ~… 再び同じ道を行けといわれても「無理!」と答えられるほど複雑に入り組んだ構内をどう進んだのか分からないままホームへ到着し、やってきた地下鉄に飛び乗る。 これがまた結構な人でいつもいつもこんな状況で通勤するのかと思うと、都会の企業戦士な方々の苦労を察する。 結局、目的地まで降りる人より乗ってくる人の方が多かった、特に赤坂付近…えらい乗り込みようでwww 新宿駅から一歩手前にある新宿御苑前で下車、いよいよ今日のメインイベントが迫ってきている。ただ、地下鉄車内で集合時間の18時を過ぎていたりw (その3へ続く)
https://w.atwiki.jp/goldenlowe/pages/39.html
外伝「誓いと絆」(前) 真夏の太陽が主役の2人を祝福するようにその日差しをセビリアの教会に降り注いでいる。牧師はその両の手を高く上げ、祭壇前に並ぶ2人がその生涯に幸多かれと主に祈りを捧げている。互いに目を合わせることなく緊張した面持ちの2人は居並ぶ参列者の優しい視線を背中に浴びながら今日という晴れ舞台を迎えた事に自然と感激しているように紅潮した顔に緊張した表情を見せている。 静かな、本当に静かな教会は美しく飾られたステンドグラスが織り成す神秘的な光に包まれている。 参列者には見知った顔が並んでいる、誰も彼も一番の正装を身にまとい、2人の新たなる生活の始まりを祝福する為だけに集まったのだ。 いつもは甲冑に身を包む者、いつもは土埃と汗にまみれる生活をする者、いつもは作業着を身にまとう者…それらの全てが慣れない服の袖に手を通している。セレモニーが始まるまでは、互いの見慣れない格好を指差しては笑いあっていた。 「商会長がそんな服を持ってるなんてね。」 「やかましいわぃ。」 皆が妙に照れくさいように、聳え建つ教会の前に集まっている。 今日だけはここに集まっている誰もが主役ではなく、ただの脇役という事を全て自覚していた。 教会の扉が重い音と共に開かれる。 眩い光に背中を押されながら純白の2人がそのバージンロードを進んでくる。 聖歌隊はその儀式をより神秘的に、より感動的に教会を包む。 参列者は静々とゆっくりと祭壇へと歩み寄る2人を暖かく、中にはその目に涙を浮かばせながら見守っている。 そんな参列者に目を合わせる事無く、新婦は俯いたまま赤い絨毯の上を手を引かれて進んでゆく。ゆっくりとその歩みに今までの様々な思い出が目の奥に鮮やかに浮かんでは消えて行く。今、私がこの道を歩めることが生を受けて今まで最高の幸せだとヴェールにかすんで見える花嫁の瞳に静かにうっすらと涙が滲んでいた。 全ての参列者が祭壇を向かい、いよいよ2人が祭壇の前に辿り着いた時、聖歌隊の歌声は最高潮に達しそして再び教会内は例えようのない祝福と緊張感が支配する。しんと静まり返った中、厳かにパイプオルガンの音が高い天井に反響し天使の歌声と評されるその音色を受けて牧師が大切な儀式の始まりを告した。アンレーデは参列者の一員として今まで見たことのないほどに美しいアムスの姿に女性としての幸せを感じ取っていた。いずれ自らもその道を歩けるのだろうか、そう思えば思うほどに純白の花嫁の姿が眩しく華やかに映り、そしてその姿は薄っすらとぼやけた視界へと変わった。目頭を押さえつつアムスとの時間を思い起こしていた。賛美歌はそんなアンレーデを含む参列者の全てを包み込むように教会全体に響いている。 それは、冬の寒さが少し残る日だった。 F・トーレスはかねてより話を進めていた事を商会員にどのように伝えるか思案していた。 場所はセビリア、ゴールデン・ルーヴェの面々がいつも屯する一室の椅子に深く腰を下ろしている。とは言え、各々がこの部屋に集う事は定例会議が殆んどで、それ以外は使われていない時間が大半を占めていた。 「あれ、商会長。珍しいわね」 部屋に入ってきたのは脇に重たそうな書類を抱えたアンレーデだった。 「ん?まぁな。アンレは…なんだその書類は?」 机に下ろした音がどすんと室内に響く。ダマスク織シュルコーに付いた塵埃を払い落としてアンレーデは空いている席に座る。 「いつもの事よ」 慣れた手順で慣れた手順でそれらを仕分けると、それも慣れたようにペンを執っては書類作成に取り掛かっている。 「なぁ、アンレ。」 「なぁに?」 「この商会を発足させた時、どんな気分やった?」 「どんな気分と聞かれてもね。新しい何かを始める気分としか例えようがないわ。」 「いいや、そうやなくてな。アンレは元々違う商会に入ってたやろ。そして移籍してくれた訳や。」 「そうね。」 「移籍を決めた時はどんな気持ちやったかという話や。」 アンレーデは書類上で走るペンをそのままに、しばらく考えて答える。 「普通の一言よ。」 ペンを止め、商会長へと向き直すと当時の事を語り始めた。 「辞める時も、そして新たな場所へ入った時もいたって平静だったわ。今まで築いてきた物が全く役に立たない所へ移るんですもの妙に楽しかったわね。」 「そっか。……実はなとある商会からの移籍の話があるんや。」 そう言うとF・トーレスは1枚の紙をアンレへ向かって滑らせる。それには聞き覚えのある名前が3名記されている。アンレーデは目を疑った、これほどまでに有名な人物が今の商会を抜けてゴールデン・ルーヴェに移籍してくれるなど露ほどに思わない話だったからだ。 「商会長、これって本当なの?」 問われた商会長は懐から煙草を取り出すと静かに火をつけて頷いた。 「そいつとはインドで共に戦場を駆け巡った仲でな…まぁ、商会の事情とやらで話が上がったんや。」 「閣下が認めたのなら素晴らしい方に違いないわ、反対する人も居ないでしょう。」 「どうやろか、他の2人はそれほどに知ってる仲じゃないが。」 「来る人を拒まないのはウチのモットーでしょ?良いんじゃない?」 「まぁな。」 アンレーデはそういうと再び書類に向かいペンを走らせ始めた。 「新しい仲間が増えるのは大歓迎よ。」 「まぁな。」 翌月もまだ寒さの残る日々が続いていた。チュニスの地に降り立ったアンレーデは代理報告の手続きを終らせメイン広場へと足を向けていた。寒い時期は生物学に関する依頼も少なく、またフィールドワークを行おうにも冬眠からいまだ目覚めぬ動物たちは調べようにも無かった。そんな理由もあってジェノヴァ近海の海事依頼を引き受けての活動を主としている。全身打ち身になりそうな激しい戦闘に疲れを隠せないままにその足は自然と書庫へと向かっている。 「アンレーデさん」 その呼びかけに一瞬反応が遅れた。まさかこの街で知己に会うとも思っていなかった。 ようやく足を止めたのは2度目の呼びかけと駆け寄ってくる足音に気付いてからだった。 「アンレーデさん。初めまして、アムスと申します。」 ショートに揃えられた栗色の髪を耳上で留め、大きな瞳を輝かせながら1人の女性が駆け寄ってくる。屈託のない笑顔とどこか品位の通った立ち振る舞いにアンレーデは思わず襟を正した。 「こうやってお会いするのは初めてですね。」 彼女の言葉に首を傾げる素振りを見せると、アムスと名乗る女性は一度セビリアのとある会で同席した経緯を述べた。 「あの会に貴女も…気付きませんでした。」 「えぇ、私は遠目に見ただけですから。えぇ、トーレスさんとご一緒してたのですが」 これはいきなり手厳しいと思わず天を仰ぐアンレーデを見てアムスはクスクスと笑っている。 そんな街角の2人に対してチュニスの町は突然の降雨で歓迎した。急いで最寄の休憩所へと駆け込む2人。大きな雨粒が屋根を叩く音が鈍く響いている。 アムスはトーガの雨をを払いながら華奢な仕草で席に着く。 「ゴールデン・ルーヴェにようこそアムス。」 第一声はありきたりの言葉だった。 「えぇ。まだ、お会いしてない方も多いんですけど。」 「皆忙しいみたいね。でも、いずれ会えるわ。」 運ばれたお茶を口へ運ぶと口の中に混じる砂漠の洗礼が妙に気に掛かる、しかし、それ以上に疲れた体に染み入る感覚がその不快感を払拭するようだった。 「不安だったでしょ。」 不意の問いかけにアムス嬢は大きな瞳をより広げてアンレーデの顔を見た。 「そんな事はないですよ。今までお会いした方は皆さん優しい方ばかりでしたし。」 「アムス。私もね移籍組なのよ。」 そう言うとアンレーデは自らの経験を語り始めた。 「それはね不安と言うより恐怖に近い感情だったわ…」 アテネ会談から始まるゴールデン・ルーヴェの歴史の中で彼女が味わった経験を隠す事無くアムスへと伝える。 「でもね、新しい仲間が増える度にあの恐怖感の対価以上の喜びを感じるの、そして貴女のような素晴らしい方を迎えることができて、また味わう事ができたわ。」 少し驚いたような照れたような顔を浮かべながらアムスは口を開いた。 「正直、不安だらけでした。それなりにと言えば語弊があるかもしれませんが、前の商会も楽しかったんです。でも…」 アンレーデはその先を手で遮る。 「私は今、すごく嬉しいわ。他の商会でなくこのゴールデン・ルーヴェを選んでくれた事が。私は何の役にも立たないお荷物的存在だけどよろしくね。」 「え、お荷物なんですか?」 「まぁ、そんなモンよ。」 休憩所の外はいつの間にか空中の全ての砂埃を取り払い透明度の高い空気が街を包んでいる。そんな外の変化にも関係なしにそれは似た境遇を得た者同士の話はいつ尽きるとも知らないほどに盛り上がっていた。 「自分には無理だと最初から否定するのはダメよ。何事もやり始めてから考えないとね。」 「あはは、私はナマケモノですから。無理です。」 「何でもやってみると楽しいものよ。」 「えー。そうですか?」 「うんうん、さっそくケンに連絡入れておくわ。貴女が何かしたいって。」 「だめです!」 その笑顔できっぱりと否定されてはアンレーデも笑顔で返すしかなかった。 「でも、出来そうな事を見つけてやってみますね。」 「期待してるわ。あら、雨が上がったようね…」 雨音が消えてからかなりの時間が経ってからようやくに2人はその事実に気が付いた。そして揃って外へ出る、うって変わって眩いほどの日差しに照らされて2人の虚像がそこらかしこにある水たまりに写っている。 「さてとっ!」 アンレーデはぐっと背伸びをしながら自らに檄を飛ばす。まだ体の芯には鈍い疲れが残っているように背伸びが心地よい。 「アンレさん。ありがとうでした。」 そんなアンレーデの横でアムスは唐突にお辞儀する。アンレーデはアムスに何かと驚かされている。 「急に何を言ってるの?」 「いぁ、やっぱり緊張してて、必死だったから。アンレさんと話せて良かったです。」 「緊張なんて無駄な労力は不必要よ。こんな役立たずも居させてくれる商会ですもの。」 「役立たず?」 「こんな事しかできないからね。」 「そんな…」 「ふふふ、お互い頑張りましょうね。」 「はい。私はバルサ方面へ向かいます。」 「道中気をつけてね。貴女みたいな美女は襲われるわよ。」 「捕まらないように気をつけます。」 休憩所前の2つの影はその言葉を最後に別々の方向へと分かれていった。 (続く)
https://w.atwiki.jp/goldenlowe/pages/31.html
「航跡の価値」 ケンケーンは喉まで出掛かっている言葉をぐっと押し込むようにグラスのブランデーを押し込んだ。セビリアの小さな酒場、その1テーブルで語るには余りにも重過ぎる内容に上手く会話を続けることが出来ないでいる。目の前に座る銀髪の女性は落ち着いた様相とは別にその口から紡ぎ出されている台詞は彼の心情を押し沈めるに十分だった。 酒場の中は2人の重苦しい雰囲気とは裏腹に時間が経つにつれてゆっくりと賑やかさを増し始めている。重く響く男の笑い声、忙しく店内を駆け回る店員が矢継ぎ早に繰り出される注文を必死でこなし、厨房は額に汗を滲ませた料理長が怒声に近い言葉で指示を出している、看板娘は彼女を口説こうとしている男達の話を上手く受け流しながら笑っている。本来ならケンケーンもそういった中で今日の憂さを晴らす為に楽しい酒を呷るはずだった、しかし現状は酒の味も分からないほど深刻な状況と思える場面に対象の女性から目を逸らしていた。 「いっそ野に下ろうかと思ってるの…」 今までの酔いが全て吹き飛ぶような言葉を聞いて、ケンケーンのグラスを持つ手が止まる。 「振り返ってみれば、もう商会は勝手に動けるほどまでに成長したし…」 女性の眼差しは空ろで寂し気にテーブルに落とされている、事あるたびに何かと賑やかな人がこれほどまでに萎れられるのかとケンケーンは少し躊躇している。 「私が何をしてきたわけでもないけどね」 ゆっくりと酒を呷る彼女のペースはいつもより確実に酒量を越えている。注文する酒がそのアルコール度数を上げている。到底付き合いきれないと自らはいつも通りのペースを守らねばと自答しつつ、一挙手一投足が長く感じられるこの雰囲気では飲まずに間を持たせられなかった。 「あっと言う間に時間が過ぎて、素晴らしい方々が商会に来てくれて。皆が我先にと口を開いていた時期が懐かしいわね。」 頬杖着くような視線は一度も正面に座るケンケーンに向けられていなかった、彼女自身の後ろめたさというか自信の喪失感を体現するように両肩に力はなく頬杖だけがその身を辛うじて支えているように映る。 ケンケーンが返す言葉を聞いているのかいないのか、目前の女性は滔滔と言葉を連ねている。 この酒場の喧騒でさえ、彼女の耳には届いていないのかもしれない。しかし、逆にそれは時折彼女から発せられる独り言をかき消すには十分なほどの賑わいでもあった。 「ここ最近、ずっと思ってるの。ここに私の場所は無くなったとね…」 心情を全て吐露するには静か過ぎる口調で女性はさらに続ける。 「後進を止める愚を犯すほどの大罪はないの、私の存在価値はもう終わったのよ…」 ヒステリックなまでに言葉が過激になっていく、ただ感情の昂ぶりがそうさせているのでは無いことを証明すように女性は溜息を混じらせている。 そして女性のその言葉をきっかけにテーブルは言い例えようのない静寂と沈黙に支配された。 どれくらいの時間が経過しただろう、刹那の時間でも千秋のように感じられる時間を2人はただ目の前にあるボトルを注いでは喉に押し込むだけに費やしている。 「俺はね、アンレが羨ましいよ。」 重苦しい雰囲気を押し破ったのはケンケーンの言葉だった。 「アンレの存在ほどこの商会で重要な役割はないんやで。」 ケンケーンの言葉を聞くほどでもないような様子でアンレーデの視線はテーブルに落ちたままにグラスを見ている。 「緩衝帯って言うのかな、皆アンレが居るから蟠り無く過ごせてるんやで。」 取り繕うような言葉だと決め付けるように、アンレーデは動かない。 「アンレのポジションは他の誰にも務まらない、俺はそんなアンレの人間性が羨ましいよ。」 ケンケーンは自分に目を合わせず身動ぎしないアンレーデを逆に見つめながらこの女性の凍てついた状況を打開しようと慎重に言葉を選びながら話しかける。 「アンレの言う通り、商会が一人歩きし始めたのかもしれへんけど。それはトーレスを始め、ライラ、アンレ、イザナミの上層がしっかりしてた結果やんか。」 その言葉を聞いたアンレーデは、グラス持つ手をテーブルに叩きつけるようにしてケンケーンへと向き直った。 「上層ですって?発足に立ち会ったメンバーがそんなに特別なの?皆、国で何かしらの柵を受けているのに商会の中でも上下関係を求めるの?!」 「い、いや…それは…」 「私のポジション?当事者になれば誰だって出来るわよ、それが何?皆と楽しく過ごすって事が罪なの?」 アンレーデの激昂したような口調、ケンケーンが初めて聞くほどの語気だった。 「それは考えすぎやで、皆楽しくやってる。俺はこの商会ほど楽しい所はないと思ってるで、それは何よりこの商会が持つ雰囲気それはこの商会が当初から持ってるもの全てが素晴らしいからだと思うで。」 目前に座る女性の勢いを殺ぐような冷静な口調をケンケーンは保っている。そしてアンレーデの反論を制するように続ける。 「まぁ聞け。今の商会の状況はアンレを含む全てが条件として動いてるんや。俺はこの商会が好きや、俺はその商会を守るためアンレの意見を真っ向から否定する。そう何があってもだ!」 思わずテーブルを叩き、その音に驚いた周囲の視線が向けられる。しかし、その状況を見た店の客はぱっと見てしがない痴話喧嘩かと再び自らの酒を楽しむ時間に戻っている。 「すまない、つい大きな声を…」 「…そうね…」 「非礼は詫びる、しかし、俺の言葉は他の皆の言葉だと思って欲しい」 「…そうね、私はこの身に注ぐ愛情と火の粉をと間違っていたのかしらね。」 かすれ消えそうな声、そしてグラスを持つ手が少し震えている。 「なんか、最近泣いてばかりだわ…悔しいね、どうしてこんなに弱いのかしら」 必死に堪えようとすればするほどに、彼女の視界が潤み滲んでゆく。 女性の涙は男を黙らせる最大の武器になる、しかし、ケンケーンはそれに負ける事無く口を開く。 「アンレ。こうやって、飲むことが誰とできるって言うんや。な、良い商会やんか、もうちょい皆とがんばってみようや。」 アンレーデは俯いたままで何かを耐えている、いつもは颯爽と風を切る肩も弱々しく落ちている。そして、テーブルには再び沈黙が訪れた。 時間にして数分、今度はアンレーデからそれを打ち消した。 「頑張れか…脆い言葉だけどこんなに力強い言葉だとは思いもしなかったわ。」 濡れた目尻を指で押さえながら、ようやく顔を上げたアンレーデはグラスに残る酒を飲み干す。その面持ちには何かを諦め、決意した事を十分に示すほどいつも通りの表情を浮かべている。 ケンケーンはそんな表情を確認すると、課せられた重荷がどっと降りたように軽くなった手でグラスを持ち直す。 「蟠り、柵、大いに結構。こうやって酒が美味けりゃ、明日は良い日になるって。」 いつの間にか自分の許容量を越えているはずの酒の最後を流し込む、妙に乾いた喉に酒が絡むように落ちてゆく。その余韻を感じながらいつの間にか満席になっている店内を見渡す。客の様子からするに日が暮れてまだそれほどの時間が経っていないように見える。しかし、ケンケーンには一晩使ったような疲労感があった。 「ケン、すまなかったわね。私の為に無駄な時間を使わせてしまって。」 「なぁに、普段アンレには世話になっとるからな。」 「ふふふ。日が暮れたわね、家で待ってる彼女さんに悪い事したわね。こんな場面を見られたら違う修羅場が出来上がるわね。」 「まったくだ。」 ようやく訪れた笑顔には互いに曇るところがなかった。 「ケンありがとうね。お礼はここの勘定を持つことしかできないけどね。」 ケンケーンはただ笑っているだけだった。軽い沈黙が今のアンレーデには嬉しく思える。 2人は揃って店を出た、外は家路を急ぐ人の往来が増えている。驚くほどに時間が経っていない事に互いが笑っている。そんな2人のすぐ近く、恐らく家へ戻ろうとする子供が足元を滑らせて転倒するや、大きな声を出して泣き始めた。 「ふぅ、今日は泣く場面に良く遭遇するな」 ケンケーンが独り言と共にアンレーデが居た方を見ると、そこは誰も居なかった。 「ほら、泣かないの。どこも怪我してないわ、大丈夫よ。」 泣く子を優しく宥めながら、アンレーデはポケットからコインを取り出す。 「これで、お菓子を買ってご機嫌で帰りなさい。泣き顔で帰ると家の人が心配するわ。」 「うん…うん。ありがとお姉さん」 「もぅ転んじゃだめよ。」 お辞儀して走り去る子供を見送りくるりと向きを変えるとすぐ後ろにケンケーンが立っている。その顔は妙ににやけている。 「なによ?」 「いぁ~、アンレも女らしいところがあるんやなとな生態観察中や」 意地悪そうに眼鏡を押し上げる素振りを見せる。 「うるさいわねっ」 不貞腐れたような顔を見せアンレーデはケンケーンを背にするように振り返る。 「なぁ、アンレ。俺にもあんな風に優しくしてくれると有り難いが?」 「言う相手が違うんじゃないの?アンタの大切な人に言いなさい。」 「そんなん言うたら殺されるで…」 「じゃ、私と2人で居るこの場面を見せると大変な事になるのかしら?」 「多分な…」 店の中での経緯が嘘のように穏やかな2人の元にバーヌースの布擦れする音が近寄ってくる。 「ケンっ、久しぶりだなっ」 不意打ちを喰らい、驚きの表情で振り返った所に1人の男が立っている。 「ありゃ、シッドやんか。」 「こんな美しい女性を口説くとは…お前も身持ちが軽くなったもんだ。それがケンケーンクオリティか?」 眼鏡の奥に潜む切れ長の瞳、赤い髪を後ろへ梳き流しただけのような風貌、加えての長身ゆったりとしたバーヌースの衣装からも分かる軍人としての雰囲気を漂わせている。 「ちゃうわっ。俺が大切なのは只1人や!それにこの御方を口説くと後が大変な事に…」 「なにが大変なのかしらね。初めましてシッド、連絡は受けてたわ、副代表のアンレーデと申します。」 握手する手には冒険家とは違う感触が伝わってくる。それはF・トーレスと同じく剣を握り続けた手の感触だとアンレーデは確信した。 背筋にぞくりと来る、それは彼女が今までに数人から味わった直感的な信号だった。 「え?シッドが?ホンマか?」 「腐れ縁のようだな。なにか悪さしてないか?スグにでも撃ち沈めてやるが?」 「お気遣いは無用や。爽やか系な俺には悪事なんて似合わんからな」 「さて、どうやら…」 不適な笑みを浮かべて両者が向かい合う。 傍から見ているアンレーデには圧倒的シッド有利に見える、シッドの実力の程は何もしらないが、感じ取れる何かがそう言わせていた。 「ま、今日のところは勘弁しといてやるわ。シッド、命拾いしたな。」 「ほぉ…まぁ、俺も忙しい身だからな。また後日改めるとしよう。」 そう言うなり、2人に敬礼するとシッドはその足を夜の港へと向けた。 「あれじゃ、勝負にならないわね。」 「まぁな、トーレスでさえ敵わないヤツやからな。」 「世の女性が黙ってないでしょうね、良い男だわ。」 「俺よりもか?」 アンレーデはそれは言わなくても分かるだろうという仕草をして見せる。 「へいへい、俺は百万の女性にフラれてもアイツが居れば十分さ。」 「お惚気ごちそうさま。」 朧月夜に延びる2つの影は挨拶らしい動作を石畳に映すと、それぞれに別れていった。セビリアの街中は昼の喧騒とは違い、そこらかしこから聞こえる酒の声が薄く響いている。世の憂さと悲しみ、喜びを全て飲み込むように更けてゆく夜はまだ序章の余韻を残していた。 あくる朝、1隻の船がインドへ向かうべくセビリアを出航した。 少し白波立つ水面を押し分けて西南西へと進んで行く、順風満帆の言葉通りしっかりと風を受け止めた帆はその姿を見せびらかすように澄み切った青空に美しく栄える。瞬く間とは大げさな表現だが、すでにセビリアの港が小さく見えるほど沖合いまで進んでいる、振り返る先には今、出てきたばかりの港へ大小を問わない船が忙しく出入りする。 船中は扱いに慣れた余裕を思わせる靴音が響く、当然のようにその中にはこの船の提督のものも含まれている。ただ彼は何を支持することもなく船員達の動きを確かめると悠然と航路の先をもっとも確認しやすい場所へと移動する。 遠く離れた街までの航路は今までに両手に余る以上の回数を往復した、しかしそのどれもが安寧としたものではなかった。過去の災害を数えるのも馬鹿馬鹿しいとも思えるが、自然の驚異、人災、疫病等遠路になればなるほど自らが藻屑になりかねないものばかりが増えていた。 「まぁ、今回も易々とはいかないだろうな…」 提督として不安な材料は全て取り払うよう勤めているが、何が起こる分からないからこそその重責は測るに十分すぎると自らに言い聞かせるように呟く。 振り向きざまにかけている眼鏡が日の光を反射させる。静かに足音を響かせながら船中へ戻るその甲板には統制のとれた船員達の影が絶え間なく映り込んでいた。 提督室での仕事は比較的容易に片付いてしまう、過去に通った航路を辿るようにその計画を立てるだけで大半が終了していると言っても過言ではなかった。これが今と異なる目的の旅路ならば様々な書類に忙殺される所、交易に関しては作成する書類も比較的穏やかな量で済むのが彼にとっては有り難いことだった。時に冒険家の事情を聞く事もあるが、そんな時には、「優秀な副官を雇うさ」と一笑していた。 船はマディラ沖へと進入し、予定通り一気に進路を南へ取る、無寄港航路としてはこれから先数十日間、陸を見ることもなくただ広大に広がる海だけの世界に入る。島影がゆっくりと離れてゆく、当然といえば当然の如くこれまで何の心配も憂慮もトラブルも無く距離を進めている。 椅子にどっかりと座る提督もどこか面白味に欠けるといったような雰囲気で窓外の景色を眺めている。無論、そこは何の代わり映えのない360度を海水に囲まれただけの景色が続いているだけであった。 「トーレスの作った商会だけにどんな際物が居るのかと思えば…」 口元に薄っすらと笑みを浮かべて昨日の出来事を思い起こす。西アフリカ特有の波具合を示すように船の軋み音が変化する。小刻みに変化する風向きを手玉に取るように帆を繰る船員達の声がかすかに聞こえてくる。船は躊躇い無く白い航跡を残しながら南へ向かって進み続けている。 カナリア沖、穀物海岸沖を抜け南太平洋から喜望峰沖を越えてもなお順調な航海は続きアラガス岬沖を抜けたモザンビーク海峡エリアをマダガスカル島の東を通るような航路ととりながら船の進路を北北東へと調整する。 「さて、これからが一番大変だな…」 ザンジバル沖からカリカットを結ぶ航路は海賊行為が頻発すると航海者間では有名な航路だった、しかし、その危険を冒してでも選択する価値を見出す商船は後を切る事は無い。 カリカットーザンジバルを結ぶ線と船の針路が交差する地点へと近づくにつれて、船内に見えない緊張が走る、誰もがいつでもそうなる可能性があると自覚しているとその目元はいつしか厳しいものへと変化している。 「さぁさぁ、目的地までもう少しだ。なぁに幸運の女神は俺たちを見捨てたりはしない。陸に上がればささやかな幸せと泣きたくなるような美味い酒が待っているぞ。」 いつもと変わらない口調で船中を鼓舞する。適度な緊張こそ普段以上の実力を発揮するとは言え、下手な力みに変わればミスの元凶にもなりかねない。そんな紙一重のギャンブルを好むほどインドの海は優しい所とは言えなかった。そしてもっとも危険な海域へと船は寡黙に進入する。 「ふん、着いてしまえば余計な気苦労だな。」 ゴアの港へと降り立った男は軽い溜息と共に呟く。 海賊は歓迎するものではないが、平穏すぎる航路も退屈だと言わんばかりの表情を顔に浮かべている。 慣れた足取りで街路を右へ左へと進む、時折、彼の顔を見つけては挨拶する人々に丁寧に返事しながら街役場へ辿り着く。 「しばらく。相場はどうだい?」 勝手知ったる他人の家の如く、普段話を始める。 「これはシッド卿、お久しぶりで。」 恐らくこの建物の中で一番偉い人と思われる人物が歩み寄ってくる。 通された執務室で2人は何気ない話を続けている。 「景気はボチボチといった所ですか。お目当ての品は最近安定しているようですな。」 帳面をめくりながら、最近の相場動向を確認しながら役人の話は続く。 「少し前に大掛かりな掃討作戦がありましてな、欧州の…そうイスパニアとか言う国の方が頑張られたようですよ。」 「ほぅ」 「そのお陰か、不穏な輩もセイロン方面へ追いやられたようですな…」 その言葉にぴくりと手が反応する。帳簿を見ている役人はそれに気付いていないものの明らかに動揺の仕草がそこに見えた。 このシッドと名乗る人物はこの街では5指に入る投資家であった。知る人ぞ知るという域を超えて知らぬ人を探す方が難しいほどの知名人であった。 街役場を出ると、その足は交易所へ向けられる。 「しかし、セイロン方面はちとヤバくねーか?」 この後、セイロンへと向かう予定だったシッドは呆れた表情でその足取りを保つ。 「掃討作戦って、あのトーレスもやったんか?」 交易所までの道中、イスパニアの行った掃討作戦の是非を自らに問う。 「どちらにせよ、迷惑な話だ…ったく。」 バーヌースが擦れる音もどことなく荒々しく感じる。心の動揺は交易所でも落ち着いている様子は無かった、さっと流し書くようなサインの乱れはその表情には表れないものが見て取れる。数枚の書類を仕上げると一直線に港へと急ぐ。 港は多国籍の船が所狭しと係留されている中の一隻へと足早に駆け上がる。 「おぃ、上のモンを集めてくれ。あぁ急ぎだ、降りてるヤツは探して来い。」 苛立った口調を隠す素振りを見せない声が船内に響く、洋上では静かな提督が見せる荒々しい語気に言い知れぬ緊張感が走る。そしてその緊張は彼らの本来の姿を蘇らせるに十分だった。 「これは一戦あるかもしれないな。」 率直な思いが乗組員の口から漏れる、ただその表情は妙に落ち着き払っている。そして、互いにそれを否定しない会話が終わると皆はそれぞれの持ち場に戻る。恐らく出航は3日後、それがシッドがこの街に留まる平均日数だったからだ。 厳しい顔で自室へと戻るシッド、ポルトガル国籍の彼にはイスパニアが行った事をとやかく非難することに躊躇いはないものの、今回の一件は躊躇いよりも腹立たしさが先行する嫌な出来事だった。 「やれやれ、面倒事は御免いただきたいんだがな。」 クローゼットの傍に整理されている甲冑の方をチラリと見る。甲冑は鈍い光をその身に浴びて沈黙を守っている。物言わぬ相手を見つめながら大きな溜息を天井へ投げる、遠くに聞こえる呼びつけた船員の声が聞こえてくる。 これからの対応を早急に片付けることが先手を取るためには必須とそのまま会議へ入る。 「さてっ、真に喜ばしい事態が発生した。」 皆の予想を裏切る言葉で会議は始まった。 思いがけぬ好相場にいつもより船足が軽く感じられる。ゴアからセイロンへの航路は皆の期待を裏切るように安寧で、なにかしらの障害が予想された先にはさらに予想を裏切る宝石の買い時が待っていた。 「取り越し苦労のご褒美にしては盛大すぎるな…これから先の迷惑料とは考えたくないが。」 不機嫌とも機嫌面ともいえない表情のままで椅子に座るシッドは呆気ない進行に憮然としている。無論、事なきを得たのは彼にも船員にも有り難い事と思える反面、すこし残念だったという顔を浮かべるものも多少からず居た。 「まぁ、確かにここん所平和過ぎるのは平和すぎるが…」 近海に不穏な船が2,3隻居るという情報はセイロンの酒場で聞いてはいたが、広大な海に浮かぶ数隻が全ての出航路を絶つことなどできるはずも無く、シッドの船は悠然と出港しては既にアラガス岬沖まで進んでいる。 西欧から見て、カナリア沖、喜望峰海域、ザンジバル沖、インド洋南西のポイントが注意すべき域で、事実これまでに指折りほどの回数ではあるもののシッドもその被害者になりそうな場面に遭遇していた。洋上での敗北は限りなく死が近くなる、辛くも難を逃れてきた彼にはそんな幸運が巡っていると船内では噂していた。 「ここを越えれば後は楽ですね、今回は話のワリに取り越し苦労で終わりそうですな。」 「ん…まぁな。」 副航海長の発言にもなんとなしに応えるシッド。 「少し鬱憤の溜まった船員の捌け口が失われて残念でしたが」 「なぁに、楽に儲かるならそれが一番だ。好き好んで血を見なくても良いだろう。」 「確かに。でもこうやって楽をさせて貰えるのも提督のお陰ですよ。」 「何の話だ?」 「提督の技量こそが我々の楽さ加減だという事です。」 「何の根拠も無いな。」 「過去の実績が物語るという事ですよ。」 「過去の実績か…確かに地位や名声は実績で勝ち取れるものかも知れんがな。」 「なにやら反対意見のようで」 「俺たちにとってみれば、この先が一番大切なのだ。それは儲け云々ではなく、砲弾に生きるという訳でもなくだ。」 「はぁ。」 「つまり勲章や爵位だけでは食っていけないという事さ。」 そういって甲板に出るように促しながら部屋を出る。 「この白い航跡には何の価値もない、波に浚われいずれ消えてゆく。しかし、俺たち、いや海に生きる者全てがそれに価値を見出そうとする。過去の中に現在を求めるのは途方も無く難しい事だと思わないか?」 「提督の言葉も難しいですね。」 「現在という区切りこそ過去と未来を分ける唯一つの境界線だ、過去の栄光は未来になんの影響ももたらさない。それに胡坐をかいてしまっては自ら生きる手段を放棄する事と何ら変わりないのさ。」 そういうと副航海長を甲板に残し船中へ戻る。セイロンを出るときに帯びたままの剣が歩調に揺れている。蒼く澄み切った空にと海の狭間に吸い込まれるように進む船は、人のやり取りを無視するようにその役割を遂行し続けていた。 (航跡の価値 終)
https://w.atwiki.jp/goldenlowe/pages/94.html
2007年 1月6日 第4回オフ会開催 参加者:閣下、アンレ、ライラ、アイメル、けんけーん、SEIJI、ひろっち、レナータ、 Wol、シッド、れんれん 電話参加:アムス 先遣隊:日本橋 先発隊:ヨドバシカメラ、餃子スタジアム 晩餐会会場:レストランルース 1月の加入者:筑豊 この頃よりIzanamiが長期離脱。 2月17日 テノチティトラン発見イベント 参加者:閣下、アンレ、ライラ、アイメル、SEIJI、レナータ、Wol、シッド、 れんれん、アムス、くらぷりん 加入者 4月:白リス 5月:DASDAQ(だーす) 6月:ジョコンダ、安樹(れんれん) 6月24日 ケルトの腕輪納品イベント 参加者:閣下、アンレ、ライラ、アムス、くらぷりん、ケイ・ネーヴェ、白リス、ひろっち、Wol 7月7日 七夕イベント「ミルキーウェイを遡れ!」 アンレーデが考案・主催。用意した課題をいち早く達成したPTの優勝 結果: 優勝シッド・にゃたペア 2位―閣下・ジョコンダペア 3位―アムス・白リスペア 4位―ライラ・アイメルペア 7月22日 納品イベント(ラフカラーサテン製ドレス) 閣下、アンレーデ、エルリッシュ、DASDAQ、アイメル、ジョコンダ☆、ひろっち丼、wol、クラプリン、すずめ、白リス、ライラ 7月加入者:ぽんこん(にゃた) 8月に長期離脱していたIzanamiが復帰。 8月12日 第5回オフ会 参加者:閣下、アンレーデ、ジョコンダ、ぽんこん、ライラ、Wol、 けんけーん、アイメル、ひろっち、ルカ・トニ、ミヤ 電話参戦:アムス・クラプリン 先発隊:大阪城 晩餐会場:あじびる花心 8月17日 納品イベント(名匠メテオーラ砲) 参加者:閣下、ライラ、アンレ、アムス、こうひえ、フィゲレー、DASDAQ、ひろりん(他商会) 11月加入者:うずまき
https://w.atwiki.jp/goldenlowe/pages/88.html
35
https://w.atwiki.jp/goldenlowe/pages/82.html
大江戸愛物語(オフ3日目) 最終日の朝、再び目覚まし時計が鳴り響く。 ウチにしては珍しく熟睡していたらしい。 むっくり起き上がると、さっそく風呂へと向かう。 さすがに平日の朝、大浴場に人の数は疎らで最後の最後に快適な風呂を堪能することができた♪ 朝からラッキーに恵まれる、きっと今日は勝負に行けば勝利間違いなしだろうなw しかしながら今日は田舎へ戻る日…ん~残念w 手早く身支度整えるのはいつもの事、出撃準備いつでもOK状態で煙草を1服。 なんかこの狭小スペース落ち着くな…w 8時55分、いよいよ部屋を出る。 すると廊下でルカとばったり♪ なんか調子良いねw 合流したそのままホテルのチェックアウトを済ませ、今度は閣下と合流すべく神田駅を目指す。 すると、この2日間全く見ることのなかった人の波がそこらに溢れてるw …これが神田の実力か!Σ( ̄□ ̄; 閑散としたいた街が一気に賑やかさ(?)を取り戻している。 それは駅内も同じで、矢継ぎ早にやってくる地下鉄から降りる人乗る人がごっちゃごちゃになっている。 およそ5分間隔でやってくる電車を追っかけるように走る人も意外と多い…。 狭い日本そんなに急いでどこへ行く…。遅れそうなら5分早く出ろ。 時間の余裕は心の余裕という事でのんびり閣下の到着を待っていると。 ケータイがメールを受信する。 閣下 :「今から出ます。」 全く問題ありません♪ 今日の予定は「帰るだけ」何も急ぐコトないからw 9時半を過ぎると電車に急ぐ人も徐々に少なくなってきた。 台風一過の如く静けさが戻った(?)ホームに閣下の姿がチラリ。 閣下 :「いぁいぁ、すんません。」 アンレ :「ダイジョブ。田舎モンは朝早いからw」 閣下 :「んじゃ、いきまっかw」 アンレ :「えとね、東京駅で1枚写真撮りたいんよ。」 閣下 :「おけおけ。移動しまっかw」 JRで1駅移動して東京駅に向かうと、そこにはゲンナリするほどの人の群れ。 これはすごい、きっとこの駅内だけで地元の人口全部飲み込んでるんちゃうか?w いつもいつもこんなに混雑する駅を使って江戸の人は生活してるんか…考えられんw ともあれ新幹線の切符を求める為に緑の窓口を探すと…。 「只今、東海道新幹線小田原―熱海間運休となっております。」 まぢデスカ! 聞けば昨晩、一時的に運転を再開したものの明け方からの大雨で再び運休してるとの事。 あらら、これは困ったね…。 とりあえずどうするか? 江戸OFF会、何度目かの緊急作戦会議を開催。 候補としては、 1、 切符購入→お土産購入→待機→西へ 2、 朝ゴハーン→お土産購入→切符購入→西へ の2択が考えられる。 辺りは新幹線の運休で行き場を失った人たちで混雑の極みを見せている。 こんな状況で正しい判断なんてできやしない、という訳で2を選択。 一度、駅を出て朝ゴハーンを食べられそうな喫茶店なり何なりを探す。 適当な出口からガード下の店を見て回る。 アンレ :「朝から焼肉はキツイか…。」 ルカ :「朝からピビンバもキツそうやしなw」 閣下 :「さっきのサ店は?」 アンレ :「あそこがイチバンまともっぽいねw」 くるりと転進し、ガード下の喫茶店に入る。 クラブハウスサンドウィッチ+カフェラテを注文しこの2日間の事を喋りながら優雅な朝食をとるw 結構、美味しかったですよ♪ 西と東の文化の違いや、(パチンコ)店の状況を話題に小一時間粘る。 すると、ウチの横に座ってた客がケータイで何か話している。 客 :「もしもし、東海道新幹線運休って聞いたけど復旧するの?。なに?運転再開した?じゃ、動いてるのね。あーはいはいわかりました。」 客、ナイス電話だw ウチ等もその情報が欲しかったwww 肝になる情報を思わぬ所でGETし、ウチ等もようやく店を出て駅内へ戻る。 切符を買うその前にウチがどうしても撮りたかった写真を狙うべく駅構内にある某有名お土産菓子店の売り子さんに情報を求める。 アンレ :「あのーすんません。」 可愛い店員 :「はい、なんでしょう。」 アンレ :「東京駅の赤レンガってドコで見られます?」 可愛い店員 :「…えっと、知らないです。」 アンレ :「あ゙?知らん?」 可愛い店員 :「はい、すみません。」 アンレ :「へぇ…アンタ東京の人ちゃうんか…」 思わず悪態をついてしまった。 東京駅内で働いてて東京駅の赤レンガを知らないのか、文化財にも指定されてるのにね。 つか、アンタどうやってココに来てんの? 当たり前すぎて教える気もないのか…はたまたウチみたいなのを相手にするのが面倒やから「知らない」と返事してるだけなのか…。 事前にアムス嬢より東京バ●ナがお土産に良いですよと聞いていたが…ちょっと印象悪いな~。 仕方なく構内地図を見ながら適当な出口を見つけて外へ。 ただ、ソコはウチの求める赤レンガではなく反対側だったらしく、どこにも赤レンガが見れない…。 閣下が交通整理のオサーンに話を聞くと、反対側の出口らしいが、ここも近々取り壊しになるらしいとの情報。 それはそれでラッキーな情報で思わず激写♪ 微妙な2択を外したものの次なる出口には必ず赤レンガがある。 前向きな思考で駅内を横断して外へ出ると、ありました赤レンガ! でも、改装中で遠巻きにしか見れなかったけど何とか激写成功♪ 3人並んでモダンな駅の外装を激写する姿はなんとも良い知れぬ感じがwww 赤レンガの撮影を終了し、これで今回は心置きなく西へ戻ることができる。 さっそく緑の窓口へ向かい、切符を求める。 閣下は先日に新橋の金券ショップで求めた指定切符があるので確定してるものの、ウチ等は席があるかどうか微妙な所、一応掲示板には空席有りの○印がついてるものの、この混雑状況では何を信用して良いもんか分からない。きっと駅員さんすら正確に状況を把握してる人は少ないんじゃないかな~…不安だ。 券売マシーンを素晴らしいスピードで操り、あっさり切符ゲット。 ただ、現状で新幹線の運転状況は2時間遅れらしい…しゃーない待つかw とりあえず2時間の待ち時間を強制され、ゆっくりとお土産を選ぶ事に。 けっして先ほどの店には行かないと決め付け、専門店ではなく各種取り扱っている店へw でも東京バ●ナは1箱購入しましたw 両手に荷物となった状況でホームへ上がる。 時刻は11時、そろそろ昼ゴハーンをGETせねば…と、売店へ再び入店w 閣下は横浜焼売を探してるらしい…。 アンレ :「閣下、シューマイ・チャーハン弁当あるよ。」 閣下 :「ホンマかっ!?ワシこれでええわw」 ルカ :「ウチは無難にコレ。」 アンレ :「さて、ウチは何にするか。」 ここでウチの優柔不断さが出る。 どれもこれも興味津々…で、結局手に取ったのは、その名も「21世紀出陣弁当」なんか強そうだw ホームの喫煙場所で一時休息。 どうせ2時間もあるのだからのんびり待とうやw ここで閣下とウチ等とリアルのお話に花を咲かせる。 話をしてて思ったのは、やっぱり、閣下は一本気通っててDOL外でも頼りがいのある人でつ。 この人やからウチは付いてゆくんだよね。 新幹線が来るであろう乗り場へ向かい、電光掲示板を睨みつつ到着を待つ。 が、いきなり掲示板の内容がコロコロと変わり始める…。 閣下 :「アカンな、これは信用ならんw」 一度ホームを降り、新幹線乗り場の情報を把握できる場所で待機…周りは混雑度合いを増している。 とある客 :「すんません、この切符だけど。欠行になったらしんですが。」 駅員 :「確認してみます。…そうですね、欠行になってますね。」 とある客 :「でもこれ、指定席なんですよ。どうすれば?」 駅員 :「乗車券はあるようなので、他便の自由席ならご利用になれますが。」 とある客 :「指定席分は戻ってこないんですか?」 駅員 :「えと、戻らないかと…」 駅員の言葉に肩を落とす客、そらそうだわな。指定席って微妙な値段だからねぇ…。 そういやウチも以前、乗り継ぎなのに同時刻発車の切符を握らされた記憶がるなw みどりの窓口も全面信用してはならんと教訓を得たもんだwww 2時間遅れの状況を見て、11時50分発の新幹線の到着が17番乗り場に決定しそうなので、再びホームへ戻る。 相変わらず電光掲示板はコロコロと内容が変わっているが17番・18番が西行きの便らしい。 現在13時、このまま待っていれば大丈夫だろうと再び喫煙スペースでモクモク煙を上げる。 もうすぐ2時間遅れで電車がやってくると思った所に駅内アナウンスが。 「11時50分発の広島行き新幹線は17番ホームに入ります。」 キタ!いよいよキタ! と思って待っている目の前に現れたのは、のぞみとは全く違う車体…。 なんかヤヴァイ予感がするので駅員に話を聞いてみる。 アンレ :「広島行きのヤツってコレでええの?」 若い駅員 :「いぁ、これは回送用ですが…」 アンレ :「んじゃ、電光掲示板が違ってるん?」 若い駅員 :「えっと、はい。これは回送用です。」 中堅駅員 :「そうだね。これは●●●便だから違うね。」 アンレ :「んじゃ。どこへ行けばええん?」 若い駅員 :「あ、チョット待ってください。…今、アナウンスで21番らしいです。」 アンレ :「21番?それってどこ?」 若い駅員 :「向かい側です。」 アンレ :「はぁ?!」 2人の待つ場所まで猛ダッシュ! アンレ :「アカン、駅員も全く分かってないわw」 ルカ :「まぁ、しゃあないな。」 苦笑いしてると再びアナウンス…。 「11時50分発のぞみ69号は18番乗り場に…」 これだ! って、隣かw 移動距離10歩w 車内は意外と空席だらけw 指定席に座り、やっと落ち着いた~♪ まだ混雑してるみたいやから、ダッシュでコーヒーを購入♪ 売店が近くてヨカッタ~…って、オバチャン!早くお勘定!早く! 微妙に危険なコーヒーになりつつも無事帰還。 あとはいつ発車するかだが…って、いきなり動いたw 閣下 :「いきなり動くんやなw」 アンレ :「アナウンスして欲しいねw」 動いてしまえば後は待つだけ♪ 品川を越え、荒れていた息も元に戻り早速お弁当をイタダキマス(-人―) お弁当の中身はと…。 五穀米や赤米のおにぎり3種 煮物 はまちの漬焼き こんにゃく田楽 など、なんかホッとする内容でキッチリ美味しく頂きました。 その後、閣下から金券ショップで売られている新幹線切符について話を聞いた。 なんかすっごい便利な所なのね金券ショップってw 地元には無いから二の足を踏んでしまうが、次回機会あれば使ってみようw さて、お腹もイパーイになり、美味しい話も聞き、あとは軽く昼寝…。 目を覚ますと名古屋手前だった。 空模様は相変わらずだが、京都を越えた頃から徐々に雲が切れて行く。 やっぱり西は晴天だったかww なんとなく車窓から見る京都の町並みもなかなか良いね♪ 行きは良い良い、帰りななんとやらで、無事に新大阪駅に到着w 閣下 :「んじゃ、また海でな♪」 笑顔で閣下と別れ、2人はそのまま岡山駅を目指す。 新大阪―岡山間はたったの45分。 煙草を2本飲んでしまえばスグに到着。 乗り換えの為、岡山駅で降りる。 さすがに時間が時間だけに人の数もそれなりに見える。 在来線への乗り換えで切符を購入するが、平日なのに指定席は満席…また自由席かっ。 どうも最近、ここからの指定席が買えないな。 きっと国家的陰謀にチガイナイw すでにホームで待機していた特急しおかぜに乗り込む。 並びの空席は無かったが、なんとか座ることに成功し、あとは3時間弱の電車旅を残すだけ♪ 定刻に発車した特急列車、暇な車中は昨日ファミ●ーマートで購入した本で万事OK。 しかし、相変わらず特急しおかぜは乗車率高いな、まぁ四国へ渡る足のメインだからかな? 雑学本のお陰で道中暇無しで過ごしていた所に閣下からメールが届く。 件名:無題 内容:やればできる! と、写メが添付されている…太閤秀吉様じゃないですかw ってか、アンタ打ちにいったんかいww 結局、最後に勝つのは閣下なのねwww 間もなく目的の駅に到着する頃になって、窓から必死に風景を見つめる。 まだ鎮火したという話は聞いていないので、もしかしたらと思ったが、角度的に厳しく淡い希望は叶えられなかった。 そして、地元の土を踏んだのは20時近くだったw 特急しおかぜは全席禁煙の為、駅を出るなり煙草をプカリ♪ そしてタクシーに乗り込み山火事について聞いてみると、実家までの道中ずっと喋りっぱなしの運転手さんでした…ちょっと疲れたw 20時過ぎ、実家に到着これにて第7回GLOFF会江戸編は無事終了しましたとさ、めでたし♪めでたし♪ あとがき OFF会開催にあたり、参加してくれた方々ありがとうでした。 悲願の江戸OFF、また機会があれば実現させたいですね~♪ 今回行けなかったところも沢山あるし、何より個人的にリベンジしたいですなw さて、本編には書けなかった気になる事を少しだけ… 東京駅の売り子さんの事しかり、街中で見かけた人しかり、何度か首をかしげるような人に出会いました。 道を聞いて教えてくれない、人のすぐ近くで唾を吐く、お客に対して挨拶できないと何だか寂しい思いをしました。 日本の中心という自負が何をやっても良いとか思ってるのかな~? それとも単に礼儀知らずなのかな~? 曲りなりにも日本の政治や経済の中心だからこそ、模範となるような都であって欲しいと思ってみたり、せめて公序良俗を守るぐらいは何の罪にもならないと思います。 あと、クラ卿! てんめぇ~、OFF宴会中に電話してやったのに、返信なしかっ!!! 覚えてろよっ!!!wwwww 以上、大江戸愛物語でした。長らくお待たせして申し訳なかったです。 次回のGLOFF会開催予定は冬で大阪を予定しとります。 今回参加でけんかった方、常連な方、もしお時間あえば一緒に飲みましょ♪
https://w.atwiki.jp/goldenlowe/pages/52.html
「越えてきた日々」(後) 「鬱陶しい!」 全く思い通りにいかない展開にミヤは誰にも分かるほど苛立っている。 アテネとカンディアのちょうど中間付近、2個の船団が歯切れの悪い戦闘をながびかせていた。 対峙しているのは10隻にも満たないごく小さな船団だが、そのどれもにオスマン帝国を示す緑色の旗が風に揺れている。 ガレー系の船が主体編成のらしい船団だが、今日の相手はこれまでの相手にはない違和感を感じていた。 押しては引き、引いては押す、だらだらと消耗戦を強いられる展開に引き込まれている。 「クリスッ、アイメルッ、右翼から展開!」 たかが斥候含みの小船団と高をくくっていたミヤも痺れを切らすように局面を変えていく。 ミヤの指示を受けたクリスチーネとアイメルはオスマン帝国旗を誇り高きように掲げる船団を大きく回りこむように進路を取る。 それに応じるようにガレーの船団は動くクリスチーネ、アイメルに対して防御隊形を取り始める。 「そこだっ!」 2隻が作ったわずかな隙をミヤは見逃さず機敏に反応する。 隊列のズレに向けて一気に直進し始める。 オスマンの船団は包囲を警戒していた為かミヤの直進への対応が遅れている。 ミヤはもたついているガレー船団の真ん中を殆ど無傷で分断しながら更に二分の一になって小隊規模になった数隻の周りを巧みに周回しつつ相手を見事に団子状態にしてしまった。 互いの櫂が邪魔しあうほどの密集隊形を強いられたオスマンの船団は思うような動きが取れず、ただ被弾し続けるだけの状況にパニック状態に陥っている。 クリスチーネ、アイメルはミヤが分断したもう片方を相手にミヤほどではないものの上手く相手を密集隊形に陥れることに成功している。 この状況であれば後は楽に勝負が付くだろうとミヤもようやく付いた目処に眉間の深い皺が消えている。 相手は確実に船へのダメージが蓄積し、こちらへの反撃する手立てを見出せないままにいるように見えた。 これで決着が付くと攻め手の砲撃が弛まぬままに時間が過ぎてゆくだけかと思った矢先、小さな密集隊形はするすると手順を踏み始めた知恵の輪のように隊列が解け、ミヤが相手する小隊は陣形を整えようと動き出した。 「なに?!」 船中の誰もが、今自分達が見ている光景に目を疑った。 さらに陣形を整えたガレー船団は分断された固体を自ら二手に別れ一方はミヤの足止めを、もう一方はクリスチーネとアイメルの2隻へと向きを変える。 その様子を見ながらミヤの目に険しさが戻る。 「小癪な….」 息の詰まるような雰囲気の中でアイメルは口を固く結んでいる。 ミヤや姉のクリスチーネとは違い、踏んだ場数の違いが彼女に次に何をすれば良いのかという判断を鈍らせている。 ただ、事前にミヤの配慮で海事に長けた副官がサポートとして同乗させていたため致命的な操船の遅れまでにはなっていない。 「提督、指示が出てますぜ。」 副官に促されて旗艦へ目をやると確かに自船への指示が見える。 「えっと、相手を回りこむように展開して。」 「了解」 慣れた様子で副官が舵を切る。 傍目にはこの2人のどちらが提督なのかと思えるぐらいに2人の落ち着き方には違いがある。 甲板の一箇所を忙しく行き来する、アイメルはこれからの展開がまだ読めていないだけに余計な苛立ちが彼女を支配している。 「次は何?これでどう変わる?」 局面は膠着状態にあるものの、アイメルの目には細かな船の動きさえが重大な意味を持つように映り局面が常に大きな変化をしていると思え、彼女には緊張が解ける間もない。 「提督、これは相手を包囲する為の展開ですね。」 「う、うん。」 「ただ、それだけが狙いではないようですね。ミヤ提督がこのような単調戦術を狙うとは思えないですが。」 「へぇ…」 姉クリスチーネの船と共に相手船団の側面を回り込むように2隻は動いている。 ミヤはその2隻の後ろを守るような位置を保持している。 「ねぇ、こっちは数的に不利よね。ミヤさんが居れば最悪はないと思うけど…」 不安げな表情がアイメルの顔に浮かんでいる。ミヤのそれとは違った意味を持つ眉間の皺がくっきりと浮き上がっている。 副官はそんなアイメルの不安を払拭するように手をぱんぱんと大きく叩く。 ビクッと肩を震わせるアイメル。 「提督。これは命を賭してやるほどの戦じゃありません。最悪で相手を退かせてしまえば良いんです。余計な力みは疲れるだけですぜ。」 うんうんと頷きながらもアイメルの足は小刻みに甲板を叩いてる。 少数での戦は殆ど経験がなく、しかも相手は屈強と知られるオスマンの船団である。 地中海の小さな海賊を相手にするのとは全く状況が異なり、自ずと全身に力が篭っている。 その余計な力みはこの海と状況が全く別次元の事ではないかという錯覚さえ覚えさしている。船が押し分ける波を切る音、マストの軋み音さえ交易で海を行く時とは異なり、まるで彼女を脅すように聞こえている。 戦闘の局面はミヤとクリスチーネ&アイメルの2手に分かれて包囲するように進んでいる。 「おや。あぁ、なるほど。提督、ミヤ提督が動きますよ。」 「えっ?」 先ほど指示を見逃しそうになったばかりなのに、またしても同じ事を副官に指摘される。急いで旗艦方向を振り向く。 しかし、副官の言っている事がアイメルには直ちに理解できなかった。自分が見た局面でミヤが何を狙っているかを見抜けないでいる。 「今、向こうの隊列の丁度真ん中付近。そう、その辺りが今もたついてますね、そこを割る狙いでしょう。」 「なんでミヤさんの考えがわかるの?」 「それは、包囲をするにしてはミヤ提督の動きが少し遅いんですよ。」 そう言いながら、副官は相手の隊列を左手で自分達の船を右手で示しながら説明し始める。 しかし、アイメルはその内容を聞く余裕などあるはずも無い。 「つまり、ここを割くことができば相手は2分されるので、後はそれぞれを叩けば良いわけです。」 悠々と舵を取りながら副官の口は滑らかに動いている。 「動き始めましたね。こちらも呼応するように指示してください」 「えっと…クリス船との距離を取るように船足を落として。クリスが相手の後ろに回りこむだけの時間をこっちで稼ぐように相手の前へ。」 「了解」 まずまずの答えに納得しつつ素直に返事する。 ただ、この副官もミヤと同じく相手の動きに違和感を感じていた。 「妙だな。船の特性を殺すような事をして何になる?」 「え?なに?」 「いや、なんでもありません。独り言で…」 副官は軽く頭を掻きながら局面をじっと見据えている。 「まずはミヤさんの船に近いヤツを!次はクリスに付く船を狙って!」 声を枯らさんばかりの大声で指示を飛ばすアイメル。 指示内容にうんうんと頷く副官。セオリーどおり過ぎるなとも思えるが、それはこれからの経験次第だと口を開かずに居る。 局面が大きく動いていく、もたついた相手をミヤは難なく中央突破し相手を2分することに成功している。 これまで上手く戦局を膠着させていたオスマン船団は一気に激しくなった局面を統制する指示が機能していない様子で俄かに秩序が崩れている。 その間にクリスチーネは相手の背後へ回り込む事に成功し、相手船団を遥かに優位な位置で挟撃できる形勢を作り上げる。 「ゆっくりと距離を詰めて…」 飛び交う砲弾の数が一気に増える。 2分された船団は一度失っている統制を取り戻そうとしている船と各個で動こうとしている船とが入り乱れ、結果として1つの塊になったままに被弾し続けている。 ミヤの展開力に助けられているとは言え、上手く連携が取れた事に満足気なアイメルもこの状況になってしまえば自ずと勝ちが見えているようだ。 ただ、ミヤとアイメル船に乗る副官は釈然としないものを抱えたままにその状況を見守っている。 たかが斥候交じりの船団とは言えども、その名を轟かすオスマン帝国の船団がこれほどに戦下手ともいえる展開を許してしまう事が不気味だった。 彼等の乗るガレー系の船にしてみれば一方的に不利な状況へ自ら踏み込んでいくようなもので、ラムを武器に突撃と白兵を得意とする戦術を封印したまま船体強度で勝る帆船相手に撃ち合いを挑んでいる今の状況ではよほどの切り札がなければ彼等は無駄死にが待っているだけだった。 どれくらいの時間が経ったのか、アイメルの声が少し枯れ始めている。 状況は圧倒的に有利と思える状況だが、相手も時間の経過と共に取り戻した統制によりこれ以上の決め手を与えられないままに無駄な時間が過ぎている。 結局、相手の混乱に乗じて与えたダメージ以外はさほど決定打を与えていないようで対極で船を繰るクリスチーネもそれを察しているようだった。 「統制が戻り、本来の動きが戻りかけている。これでは埒があかないですな。」 副官はこの状況が新たなる膠着だとアイメルに告げている。 「ミヤ提督がこの状況をどう見るか…」 もう1つの塊へ視線を移す副官。 その目にはこちらより状況を遥かに上回るように相手を翻弄しているように映る。 「どうやら、このままで…ん?」 言葉尻を切って副官は船首まで駆け寄るとミヤが相手する船団を凝視する。 「なんか怪しい気配だな…」 互いの櫂が邪魔しあうほどに乱されていた形がその動きに制約を受けないぐらいまでに整列されつつある。 「ミヤ提督が相手だぞ…」 自らの目に映りこむ光景が信じられずに硬直する副官。 死線を潜り抜けてきた数はそこらに居る将兵を遥かに越え、培った経験と技術は内外に聞こえている。そんな人物を相手にして一度乱された統率を回復させているなどとミヤに仕えている副官からは信じられないことであった。 「馬鹿な。」 隊列を整えようとする一団とそれを許すまじと仕掛けるミヤ、しかし、その仕掛けに対してもきっちりと対応しつつガレー系船団はゆっくりと隊列を整えていく。 「なんて事だ…。」 急ぎアイメルの元へと戻ると状況の変化を具に報告する 「展開を仕掛けられる側になっちゃったのか…」 「ミヤ提督ですから、相手が隊列を整えようがいまいが大丈夫だとは思いますが…」 副官の言葉を遮るようにして目に映る様子をじっと睨む。 「ダメ!このままだとクリスが逆に挟まれちゃう!」 いきなりアイメルは大声を上げる。 「もし向こうが2手に分かれたら、クリスが挟まれる形になっちゃう。」 「2分されたのを更に分かれると?」 大きく頷くアイメル。 「確かにその手もありますが…」 「もし、挟まれる形だと圧倒的にこっちが不利になるよ」 ミヤという主戦力を外で縛り付けクリスチーネ・アイメルをそれぞれ圧倒的多数で各個撃破してゆく、そんな戦術が今の状況では可能だった。 「提督、どうやらその読みは当たりかも知れません…」 ミヤが相手する船団はきっちりと方形隊形を整えている、これならいつでも後方の船が離脱することができる。 「どうしよ、ここを離れるのも危険だし。でも、このままだとクリスが挟まれちゃう」 「そのようですな。」 「どうにかならないの?!一発逆転みたいなっ」 アイメルのイライラはここにきてピークに達している。 枯れて響く声も凄みが増している。 「クリスチーネ提督に頑張って打開してもらうのが一番なんですがね」 「ちょっと、悠長な事言わないでよ。」 「踏みとどまってくれてる間にこっちから背後を覗く形が最も良い形なんですがね。」 「それは危険すぎるよ。なんか向こうの足がさっきと違うよっ。」 「気づかれましたか、あの足を出された現状はちょっと形勢を持ち直された形ですな。」 「だ・か・ら、なんでそんなに悠長に言ってられるの。」 「ミヤ提督が若干足止めを喰らってるようですな、出鼻を止められては追いつくまで時間が掛かるか…」 「ほら、クリスへ向かって動き始めた」 「提督、少々船が揺れますがよろしいですか?」 「へ?」 副官はそう言うなりに舵に手を掛ける。 「では、私は船繰りに専念しますので。状況に応じて相手を撃ってください。」 「う、うん。」 副官が居なくなり、1人残されたアイメルはじっと目の前で動く展開を睨みつける。 苛立ちと不安が胸に去来する。 その時、船がガクンと向きを変えた。 副官の細やかな指示にしたがって船員達は慌しく駆け回る。 オスマンの船へと船足を速めながら近づいてゆく、切羽詰まる状況が迫ってくる。 作る拳に力が篭る。 アイメルは腹の奥から搾り出したかのような大声を船内に響かせた。 「放てー!」 アテネの中心街に位置する酒場から笑い声が聞こえる。 「まぁ、一瞬ヒヤっとしましたけどね。」 手元の酒を煽りながら副官は笑いながら顛末を語る。 「コッチは大変だったのよー。一斉に相手が向かってきて怖いったらありゃしない。」 並べられた鶏肉料理に手を伸ばすクリスチーネ。 「アイメル提督も良く頑張りましたね。姉妹の絆ってやつですかねぇ、見事に相手の動きを看破したのは脱帽もんでさ。」 「あら、アンタ。腕が鈍ったの?何の為にアイメルの船に乗っけたと思ってんの。」 「ミヤ提督、そりゃないですぜ。」 「まぁ、そんな事より今回はしっくりと来ない事が多すぎたわ。」 場面、場面を思い出しながらミヤの言葉は一同を静める。 「結果的には相手を退かせる事で落ち着いたけど。なんか向こうの戦術が納得いかないわね。」 「確かに、今までとは違った雰囲気でしたな。」 「そうなの?」 「そうね、アイメルはまだ分からないかもしれないけど。局面局面で指揮する者の癖がでるものなのよ。」 「ふぅん。」 「国によっても違うわね。特に布巻きの奴等は当たって砕けろみたくどんどん押してくるのよ。」 「今回は違ったよね。」 「そうね。なんか顔無しのお化けみたいな感覚ね…」 「ミヤさんでも初めて?」 「似たような相手はゴマンと居るけどね、相手が相手だけに意味ありそうで嫌ね。」 ミヤと副官は展開についての差を3姉妹に説明し始める。 「私は留守番だったから良く分からないよ。」 ウーナは海上での結果を経験していないだけに目の前で繰り広げられている戦術論の内容を理解に苦しんでいる。 「ウーナは次にクリスの船へ乗ると良いわ。」 そのミヤの言葉にウーナの目が輝く。 「ミヤさん、ホント?!」 「何事も経験よ。お姉ちゃんに守ってもらいなさい。」 ウーナの明るい返事が店内に響く。 「さて、今日はこの辺で終わりにしましょうか。皆、ご苦労様」 ミヤが宴を切り上げる。 「次7日後ぐらいを目処に準備してね。」 店を出た先で2手に分かれて帰途につく。 そして3姉妹が見えなくなってからミヤは口を開いた。 「どう?モノになりそうかしら?」 「クリス提督は大丈夫でしょう。アイメル提督は良いもん持ってますがね、カードの少なさが残念なところですな。」 「やはり場数か…」 「サポートは必要でしょうな。」 「付け焼刃ではなまじに手間が増えるだけだけ、時間があれば良いけど。」 「難しいですな。あとどれだけ出られるか、こればっかりは向こう次第ですからね。」 「そうなったら、嫌でも出てもらうしかないでしょうね。」 「提督の悩みも尽きませんねぇ」 「アンタがしっかりしてくれれば半減するんだけどね。」 「そりゃヒデェ、あっしは目イッパイやってますぜぃ。」 「アイメルに先を越されるようじゃダメでしょう。」 「それを言わないで下さい。」 頭を掻きながら副官は目を空へとやる。 その様子を見てミヤの足が動く。 「さ、戻るよ」 「へい。」 「あー疲れたー…」 ベッドに身を投げ出す長女と次女。 適度な酔いが心地よく瞼を閉じようとしている。 「東へ来いと言われて、着いたと思ったらすぐにコレでしょ…」 クリスチーネの独り言が空しく部屋に篭る。 「お姉ちゃん、いつもこんな事してるんだ。」 「んな訳ないでしょ。今回が特別なのよ。」 「そっか…」 暫くの無言が支配する。 そこへ静かな寝息が聞こえてくる。 「ん?」 「ウーナ?…」 「この子が1番働いてないのに、大した度胸ね。」 「待つだけってのも疲れるけどね。」 無邪気な寝顔を浮かべて寝床に横たわるウーナ。 その寝顔を2人が覗き込んでいる。 ウーナを起こさないようそっと部屋の中央にあるテーブルに移動し、用意されていた酒瓶を抜栓する。 琥珀色の酒を喉の奥へ押し込む。 「それにしても、ミヤさんってすごいよね。」 アイメルが沈んだ口調で零す。 「結局、ミヤさんが一人でやっちゃったようなもんだよ。」 アイメルの言葉をクリスチーネは黙って聞いている。 「あんなに強くて格好良いし…それに綺麗だし…」 クリスチーネが包囲されんとした場面、アイメルは必死に局面の打開を試みようと副官が操る自船にあわせて自分でできる限りを出し尽くしたつもりだった。 それは辛うじて相手の足を鈍らせる結果になったものの、副官の意図したことを導くまでには至らず、いつの間にか足止めを振り切ったミヤによって再び分割されるような形に持ち込まれたオスマンの勢力は最小限の抵抗を見せた後にタイミングを取られて逃げられてしまった。 「アイメル。ミヤさんも最初っから強かった訳じゃないよ。」 クリスチーネは嘗てミヤから聞かされた修行時代の話をそのままに話始める。 「自分の非力さに何度も砂を噛むほどの苦しみを味わったんだって。今日が何日であるかも忘れるほどの厳しさの中を這いずり回る毎日だったとか。」 クリスチーネの口調は淡々としている。 「それだからこそ今日に生まれる余裕があるんでしょうね。」 「今日よりもっと辛いのか…」 知らず知らずにボトルの内容物は徐々にその高さを失っている。 「今、こうやってミヤさんと同じように船を並べる機会が増えたからこそ思える事もあるよ。ゆっくりと時間を過ごすにはどこかで短く生きなければならないのかなってね。」 「でも、ミヤさんって。強いだけじゃなく綺麗よね…いつも大勢に囲まれてるよね。」 「うーん、それは違った次元の話だと思うけど。」 「あれだけ男の人に言い寄られたらお母さんに言われたこともできると思うんだ。」 「なーにアイメル。まだ気にしてたの?」 「そだよ。」 「ふふふ。お母さんにそっくりなぐらい芯があるのね、初めて知ったわ。」 クリスチーネは店番の昼に聞いた母の言葉を思い出していた。 「お姉ちゃんはどうなの?」 「アンタに気遣われるほど不便はしてないよ。さ、明日から色々と準備忙しいんだから寝よっか。」 「う、うん…」 憮然とした顔でベッドに戻るアイメル。 「でも、明日にはミヤさんに綺麗な秘密でも聞いてみよっか。」 「うん!」 そう言って2人は布団に身を包む。 ただクリスチーネだけは天井に反射する蒼白い月明かりをじっと見つめながら瞼を閉じる時間をまだ迎えていない。 遠くから聞こえ消えるような波音が彼女の心に平安を取り戻そうと窓に届いているものの、その思考はそれから暫く治まらず、2人の寝息が静かに流れる部屋の静寂さを確かめる時間は月明かりが真天から降り注ぐ時まで続き、諦めるようにしてその瞳を閉じた。 翌日早朝クリスチーネは静かな寝息を並べる2人の妹の横をそっと抜け出し港へ向かった。 少ないながらも荷車が路面を叩く音が聞こえてくる。 朝冷えの緩やかな風がそっと頬を撫ぜるように通り抜け、金糸を思わせる長い髪が緩やかに宙を舞う。 まだ半分にも満たない朝日が勢い良くその姿を現そうと水平線の彼方よりこちらを望んでいる。 かつてこの地は父が汗を流し行き来した街だと思えば燦々と照り注ぐ一番の日差しさえ特別なものに見えてくる。 「お父さんもこの朝日を見たのかな…」 幾度と無くこの街に立ち寄ったが、そんな事を考えさせた日は嘗てなかった。 父や母から聞いた昔話と比べて今の自分はどれだけ差があるのだろうと自問を繰り返す。 その両肩に掛かる期待は痛いほどに感じているが、それは両親が歩んだ道程を踏襲させまいとした親心なのだろうかとも考えてしまう事が両親に対するささやかな罪悪感だと感じている。 次第に賑わいを増す港から埠頭の先まで進み、誰が置いたか乱雑に横たわる木箱に腰掛けながらじっと昇る太陽を眺めている。 「今日までの自分と明日の自分は何か違ってるのかな」 昨晩の酒が少し残っているのか日に照らされた顔が妙に温かい。 ぼんやりと眺めてながら晴れぬ心中を模索していた中で彼女はかねてから見えていた一筋の光の筋を握る決意をした。 「ま、悩んでもしょうがないか。良い男を捜すのなんてどうでも良いや。私は私の遣りたいことをやる!」 その決意を言い聞かせるように思わず口に出す。 それは自分への期待を裏切る結果になるかもしれないという恐れを無理やりに払拭させるための行為でもあった。 「こらっ!女1人でなにボヤッとしてるの。」 不意を疲れた掛け声にクリスチーネは目を丸くして振り向く。 「えっ?」 振り向いた先にはミヤが立っている。 「あ、ミヤさん。おはよ。」 「おはよじゃないわ。こんな所に1人で危ないじゃない、ったく。」 「えへへ、ちょっとね。それよりミヤさんは何かあったの?」 「本国へ至急戻って来いと早舟が来たのよ。言いたい事があったので部屋に行って見るとアンタは居ないし…」 「ごめん。でも、伝えたい事って?」 思い当たる節を探そうとしているクリスチーネの耳元でミヤは何言かを囁く。 先ほどの驚きを遥かに越える言葉にクリスチーネは絶句する。 「まだ確定じゃないけど、お呼びが掛かったとなれば可能性が高いわ。」 「私、どうしよう。」 「とりあえず商会の誰かを探しなさい、きっと情報握ってる人が居るわ。」 「そだね。今日にはココを離れるよ。」 ミヤは頷いて同意する。 「本国命令で忙しいから私は船へ戻るわ、生きていたらまた会いましょう。」 2人はその場で敬礼して分かれた。 クリスチーネは昨晩から悩んでいた事を思い浮かべながら足早に宿へと戻る。 「私は私の道を往くんだ、どんな結果でも私はそれで納得する。」 その一言で自分を縛り付けていた何かから解放されたように体が軽くなるのを感じる。 午前を知らせる潮の匂いを乗せた風が吹き抜ける、それはこれから始まる歴史の1幕が開けた事を体感させるべくいつもより湿った風だった。 (越えてきた日々 完)
https://w.atwiki.jp/goldenlowe/pages/56.html
「その手に掴むもの」Ⅱ 慣れた航路ながらも、いつもは何かそれなりの書類や細々とした雑務が発生し、時間を費やすことが出来ていたが、今回に限っては穀物海岸に入るまでの洋上で面倒な書類も仕上がってしまい、さらには手を焼かせる雑務さえも現れない事態にクラプリンもいよいよ暇を持て余し気味に無駄な時間を過ごしている。 椅子から立ち上がり、部屋の片付けをしてみたり窓外の景色をじっと眺めたりと決して有意義とは言えない時間を強制されている為か、どことなく覇気のない雰囲気に気だるさが増長されているように感じている。 そして部屋をうろつく足が書棚の前で止まった。 埃を被った書籍が並んでいる。 居並ぶそれらを見つめるクラプリンはその題名を一つずつ確認しながら、内容を思い出すようにうんうんと頷いている。 今の商会に所属した当初、多くの先輩と船を並べあちらこちらの海域に顔を出したりしていたことを不意に思い出す。 そんな時分、参考までにと手に入れた書類達が今はいつ役目が来るのかと待ちわびるだけになっている。 表情を変えずに書棚の前で立つクラプリンだったかが、いきなりにやってきた大きな衝撃に体勢を崩す。 「なんだ?」 船員達が船中で何か大声を上げながら走り回っている音が扉越しに聞こえてくる。 襲撃にあったのかと緊張感が一気に部屋を支配するが、それと考えるには変事を知らせる警鐘もなくただ船員が駆け回る音しか響かない状況に最悪の事態が発生したのではないと心を落ち着かせる。 そして、その間に1つの足音が近づいてくるとノック音と共に副官の1人が部屋へ入ってきた。 「申し上げます。先ほど突然の横波を受けたため大揺れが発生しました。船の状況は現在調査中ですが、今の所被害の報告は届いておりません。」 「はいはい、報告ご苦労さま。被害がなければ航路に戻してくれ、あの揺れ方だとずれてるだろう。」 「了解しました。」 提督の指示を持った副官は敬礼すると部屋を出て行った。 「やれやれ…船に被害がないのは幸いだけどな…」 船さえ無事なら急ぐ仕事もないが、クラプリンの目の前に広がるものは派手に散らかった部屋だった。 「ほんのさっきまでは綺麗だったのに…」 思わぬイベントの発生に軽い溜息を一つ吐き出す。 「よし、やるぞ。」 袖を捲くり上げ、惨状とも言える部屋に屈みこんだ。 先ほどまで書棚に収まっていた書籍たちは居場所を床に変えている。 久しぶりに窮屈な書棚から開放されたそれらは放り出された拍子に溜め込んでいた埃を一気に空中へと投げ出してさっぱりとしている。 そんな書籍を1冊ずつ手にとって書棚へと戻すクラプリン、中途半端に開いた状態にある本の文章に目を取られ、ついつい読み更けてしまいそうになる誘惑に時折敗北しつつ、片づけを進めていく。 クラプリンの額に汗が滲み出ている。 南半球の容赦ない日差しと海からの照り返しをまともに受けている船内の温度はじりじりと上昇している。 そんな船中でクラプリンは新たなる敵の出現に書籍と厳しい戦いを強いられている。 先ほどまで見つめていた書棚と収め直した書棚の雰囲気がどことなく異なっていて、何冊かを手に持ってはどの段にあったかと自らの記憶を辿るためしばしば手を止める羽目になっていた。 「んー、なんか景色が違う気がするぞ。」 首を傾げながら崩れたパズルを直すかのように書棚を埋めていくものの、几帳面な性格が掛かるべき作業の拍車を思った以上に留めている。 苦闘を強いられながらも床板の見える範囲が広がってきた頃、床に落ちた古ぼけたファイルを手に取り何気なしに中を検めたクラプリンの口から感嘆の声に似たものが零れる。 「おおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ…」 思わず全身に力が入り、滲んでいた汗が大きな玉となって床へと落ちる。 びっしりと書き込まれた見慣れた文字の1字1字をしっかり確かめるようにページをめくっていく。 ファイルにはかつてどこかの書庫で写した遺跡・遺物に関する資料が書き込まれていた。 古代の謎を解き明かそうと躍起になっていた頃、あれこれと集めた資料の中の1つで、いつか資料にあった場所へ向かうと思いながらついに今日の今まで忘れてしまっていた物だった。 ページをめくる度にクラプリンの中で燻っていた何かに再び灯が点った。 そしてファイルの最後まで目を通すと、それを書棚へではなく反対側に置かれている机の引き出しへと突っ込んだ。 「困ったな。」 一言呟くと服の袖を捲り直し、書棚へと戻る。 しかし、その表情は明らかに先ほどとは異なっていた。 時折、陽気な歌声が部屋に響き、あれほど梃子摺っていた書棚整理も始めから比べると格段に速く終了していた。 更に、書類以外に散乱していた部屋の小物類もあっさりと片付けると、倒れていた椅子を元へと戻しどっかりと腰を落とし器用に後ろ2本の足でバランスを取っている。 取り出した煙草を口に咥え、煙をゆっくりと天井へ向けて吐き出す。 幾何学的に変化する白い煙に視線をやりながら、クラプリンの思考は1つに囚われていた。 「とりあえず戻ってからかな。」 考えれば、あの頃と比べ仕事も増え、そして仕事をこなすうちに船も変わり、船員も増えた。しかし、自分が忙しくなればなるほど本来「したかった事」から遠ざかっているのではないかとクラプリンの考えは宙を舞っている。 今現在も十分楽しいと思っている。例えインドまでの遠距離航路を行く事も、危険と言われる海域を航行することも、交易所で渋る主人との駆け引きでさえ苦にする事ではないと感じる反面、自分が人について回っていた頃のあの感動や衝撃はどれよりもスリリングで我を忘れるほどのめり込んでいたと吐き出した煙の中に場面を思い出す。 この短い期間に自らの中で「何かを楽しむ」事を変質させてしまったのをあのファイルがまざまざと思い知らせている。 付いては離れぬ思考の中で発生した苛立ちが、机に投げ出した両足を一定のリズムで震わせる。 ぐっと煙草を押し消してクラプリンはうっすらと煙が満ちる部屋を出る。 横波の受けて騒がしかった船内は落ち着きを取り戻し、船員達は普段どおりの持ち場へと戻り仕事をこなしている。 誰も居ない通路を甲板へ向けて変わらない歩調で向かう。 扉を開けると、きつい日差しに一瞬視界を奪われながら船上へと姿を表す。 波を切り分ける音が頼もしく耳に届き、風を一杯に受け止めて裂けよと言わんばかりに堂々とした姿を見せる帆が晴天に映えている。 船員達はいきなりに現れた提督の姿に戸惑いを見せながらも各個の仕事をこなしている。 クラプリンの姿を見て副官が駆け寄ってくる。 「なにかありましたか?」 「いあ、特に用事はないんだ。」 副官は提督が下あごに手を当てて何かを思案する風な姿を見て、また良からぬ事を考えているのではないかと不安が過ぎる。 「そう言えば。」 「(そら来た。)なんでしょうか。」 「交易ギルドへ登録したのはいつだった?」 「(いきなり何の話を…)そうですね、詳しくは記録を見てみないと分かりませんが、3年前かと…。」 「そうかー。もう3年になるのか。」 「(怪しいな、絶対何か悪いことを企んでいるな)」 「積荷を下ろせれば、特に急ぎ仕事はなかったな?」 「(それは提督が一番知ってるんじゃ?)その筈ですが。」 「そかそか…」 「(何を考えてる?)」 うんうんと頷きながらクラプリンは辺りをウロウロとしている。一方の副官は不安が的中しそうな状況にも顔色を変えずに提督が何を言い出すのだろうかと心持ち身構えている。 そしてクラプリンの足が再び副官の前で止まった。 振り向いた拍子に掛けている眼鏡がきらりと太陽光を反射する。その反射光の奥には何かの確信に満ちたクラプリンの瞳が潜んでいる。 「バカンスへ行かない?」 「はぁ?」 想像をはるかに超える提督の言葉に副官の声が思わず裏返る。 「陽気な太陽と小波打ち寄せる海岸…すばらしい出会いを求めてバカンスへ行かないか?」 「提督…北海ならいざ知らず、この暑さの中でそういう誘い文句は意味がないかと。」 副官はそう口にしながら苦々しい顔で空を見上げる。 その目に映るのは、いよいよ真天へと登り強烈な日差しを燦々と照りつける本領を発揮している太陽だった。 潮騒すら聞こえない沈黙が空を見上げたままの2人を支配する。 額の汗が一筋流れ落ちるのを感じて、クラプリンは副官へ視線を戻した。 「うん、まぁ、そういう事で。よろしく。」 言い逃げるように、そして副官の冷たい視線が背中に突き刺さってくる事が耐えられないようにクラプリンは足早に船内へ消えていった。 東西南北の交易の要所として古い歴史を持つポルトガルの首都リスボン。 街の中は昼夜を問わず活気に溢れ、聞き耳を立てれば聞こえてくる多様な言語の渦があらゆる国の人を飲み込んでい事のを十分に思い知らされる。 人種の坩堝と化しているこの街の文化はあらゆる方面の影響を受け、尚且つそれを自らの文化と上手く融合させて他に類を見ない独自のものへと昇華させている。 北海や地中海、さてはオスマン圏の文化さえ吸収し、立ち並ぶ建物にその面影を見て取れる。 そんな町並みの風景の中で生まれ育ったクラプリンは久々に降り立った故郷の雰囲気を懐かしむ風もなく、入港の手続きの為に役場へと向かう。 決められた書類を定められた様式で記したものを役人へと手渡す。 役人は提出された書類をまるで機械仕掛けのように決まりきった動作を繰り返す。 1日で何十も同じ作業を繰り返すだけあって、彼らの動きに一切の淀みは見られない。 待っているクラプリンもこれまでに何十回と経験した手続きとあって、なんら警戒することもなく役人からの声を待っている。 「クラプリン殿」 ほどなくして役人の呼ぶ声が聞こえる。ゆっくりと腰を上げて窓口へと進む。 「書類の方は間違いありませんね。」 これも聞きなれた台詞だった。 「では、入港して良いかな?」 その言葉に役人はちらりとクラプリンの顔を見る。役人のそんな態度を見てクラプリンは自分の言葉に反応したのか否かと不思議そうな顔をする。 「えっと、一度積荷を検めさせてもらいますので、それが終わるまでは船の入港許可が下りません。」 「ん?検閲?ポルトガル人の俺に対してもなのか?」 「えぇ、今はそういう決まりになってまして。」 長らく欧州を離れていたクラプリンにとって、地中海が今どんな状況になっているか詳細に知らないでいた。 「それと、クラプリン殿はもう結構ですが、船に同乗している船員の方々が街へ入る前に一度確認をさせていただきますので、身分を証明するものを…」 「なに?先ほど申請したじゃないか。」 「えぇ、でもこれが規則ですので…」 クラプリンは言い知れようもないほどの不快感をあらわにしている。 しかし、縦割り行政の末端である目の前の役人にその怒りをぶつけたとしても何ら解決にならない事をクラプリンは知っていた。 お上からの命令を忠実にこなしているだけの窓口ではどんなに騒いでも効果が無いことは、いままで他国で受けてきた仕打ちが教えてくれていた。 ただ、胸の中では故郷に戻ってきた同国人に対しても何かの疑いが掛けられるというお偉方の方針が同じ国籍を持つ者として情けないと爪が立つほど強く拳を握っていた。 数人の船員を留守番として船中に残し、クラプリンの一行はリスボンの街中へ上陸する。今までに無かった身元確認の作業も形だけをなぞるようなお粗末さであまり効果を得られるものではなかった。しかし、形だけとは言えそれを通過しなければならない不快感はクラプリンの頭から離れずにいた。 上陸した全ての船員がその作業を通過し、晴れてリスボンの街中へ解放されるまでおよそ2時間が経過していた。 「遠路ごくろうさん。さて、これから暫くは故郷を楽しもう。」 提督はそう言いながら上陸した船員達に小さな皮袋を渡す。 その中には当夜の飲み代としては少し多めの金貨が入っている。 何十日も掛かる遠路を終えた後の恒例となった臨時ボーナスだった。 陸に上がった船員達全てに皮袋を手渡すと、これから滞在中の取り決めごとをあらためて確認する。 「最後に変事の場合には連絡がつくようにしておいてくれ。では、解散」 船員達は提督の言葉が終わるが速いか否かに蜘蛛の子を散らすような勢いでその場を離れる。 出迎えた家族と抱き合って帰郷の喜びを噛み締める者、足早に我が家へと向かう者、仲間達で連れ合ってどこかの酒場へと消えてゆく者、それぞれの想いを込めて船員達は雑踏に消えてゆく。 副官の一人が提督の横に取り残されたように立っている。 「いやはや…賞賛に値するほどの機敏さですね。」 「全くだ。」 「提督はいかがなされるんで?」 副官の言葉に腕組みのまま考えている。 「家路につくのも悪くないが、少々遠いからな。船で留守番しているやつ等には悪いが今晩はこの街で楽しく過ごさせてもらうかな。」 「ほお…それはご相伴に預かりたいですが。」 「ん?お前はどうなんだ?」 「あっしは北の生まれなんで、次に出るまではぶらりぶらりと過ごすつもりで。」 「そうだったな。なら、久しぶりに陸の酒でも堪能するか。」 「ご馳走になりやす。」 行き交う人の波の合間を縫うようにして2人は港を離れていく。 しかし、クラプリンはそれまでの道中、特に港内の違和感に故郷の感慨も忘れていた。 「(なんか物々しいな~…)」 「どうかしやした?昔分かれた娘が居たとか?」 「それならまだ歓迎だ。」 改めて足を止め、周りを見渡す。どことなく余所余所しい雰囲気が見え隠れしているように感じられるが、それを何かと特定するには至らなかった。 「ただの杞憂だろうな。酒へ急ごう。」 馴染みの酒場の看板を見つけると吸い込まれるようにして店内へと入ってゆく。 店内はあいも変わらずの繁盛振りに空いている席は壁際の暗いテーブルだけだった。 席へ向かう途中にすれ違う店員にワインと腹の足しになるものを持ってくるように注文し2人は席へつく。 酒場の賑わいは町の賑わいとは良く言ったもので、隣に座る副官の声さえも聞き逃すかもしれないほど、人の声が充満している。 「しっかし、アレだな。しばらくぶりに戻ってきた我が祖国のはずだが、どうやら素直に喜べないのは頂けないな。」 「まったくその通りで、あっし等が離れている間に何があったんでしょうかね?」 「良い事ではないだろうな。ポルトガル人である俺でさえ、すんなりと通してくれない程だ、おおよそどこかと喧嘩してるんだろう。」 入国に際し、あれこれと余計な手続きを踏まされたことが納得いかないクラプリンは賑やかな店内において憮然とした顔のまま注文したワインが届くのを待っている。 「そこの仏頂面してる旦那っ、1曲いかがですか?」 南部訛りを話す若い男がリュートを手にテーブルへと近寄ってくる。 「日ごろの憂さを何もかも忘れられる酒場にそんな面は似合いませんぜ、1曲聴いていただけたらきっと美味しい酒になること間違いなし!」 底抜けに陽気な声がクラプリンの耳に刺さる。 「まぁ、今は間に合って…」 「そう言わずに1曲お願いしますよ。聴いて、飲んで、楽しくなったら可愛い子と一緒にどこかへドロン!これで明日も頑張れるって寸法で。」 「立派な口上だな。それじゃ、酒が届くまで1曲頼むかな。」 クラプリンはポケットに入っていた金貨を陽気な流しへ弾くように投げる。 「おお、これは。近頃物騒になったお陰で渋いお客が多くなったんでね、へへへ。」 流しは渡された金貨を大事そうに懐へしまい、1・2度咳払いで喉を慣らすと流行のメロディーを奏で始めた。 全くアテにもしていなかったクラプリンだったが、若い流しの歌声は南部訛りのある者のものとは思えないほど上手く歌っている。 いつの間にか届いていたワインと肴に手をつけるのを忘れ、ポルトガル語の歌にしばし聞き入っている。 「ご清聴ありがとうございます。」 最後まで歌いきった流しは満足気な顔で礼を述べた。 「貴殿は南部訛りがあるようだが、出はあっちか?」 「この街に来て数年経ちますが、面目ございませんで。」 何に対しての面目だろうかとクラプリンは首を捻ったが、目の前で頭を掻く仕草をする流しの言葉に何かを閃いていた。 「なに!」 声を荒げたのは副官だった。 「それは本当なのか?」 想像すらしない反応に対して流しは目を丸くしている。 「えぇ、東からの…なんて言ったかヴァ…ヴァテ…」 「ヴァチカンか?」 「そうそう、そのヴァなんとかっていう所からの偉い人が来たらしいですが、大して取り合われなくて早々に引き上げてしまったと噂ですぜ。」 そんな事には自分も無関心と言わんばかりに空となったグラスにワインを注いでいる。 「(あぁ、なるほど。だからか…)」 クラプリンは入港して不可解に思っていた事の全てがそれによって全て繋がったと掌を打つ。 提督の冷静さをよそに副官は顔を紅潮させるほど興奮している。 目の前にいる流しに対し今にも飛び掛らんとばかりに腰が少し浮いている。 そんな副官の気を殺ぐ静かな声を出す。 「んで、その特使ってのは、どんなヤツが来たんだ?」 「無学なもんで難しい事は分かりませんけどね…確か枢機卿とか言ってましたね。」 枢機卿という台詞を聞いてクラプリンの指がピクッと動く。そして、その手でそのまま髪を掻き揚げながら感嘆の声を上げる。 「おやおや…それはそれは…」 テーブルを囲む3者はそれぞれに違った表情を見せている。 「もう一度聞くが、この国は立たないと?」 「あっしも船乗りからの伝え聞きですがね。」 「他に面白い話を聞いてないか?」 「そうですねぇ…確か、お隣さんは征ると他の船乗りに聞いたですかねぇ。」 「オレンジの野郎共は出るのか。」 大体の事情を飲み込めたクラプリンは懐から出した煙草に火をつけて考えを纏めるように大きく煙を吐き出した。 そのクラプリンの横で収まりがつかない副官はまだ何か聞き出せないかと流しへ向かって矢継ぎ早に質問を繰り返しているが、両者ともにこれまでの酒量が祟ってか、ちぐはぐに噛みあわない問答がいたずらに時間を食っているだけだった。 副官の食って掛かりそうな勢いを手で制するようにしてクラプリンは話題を変えようとする。 「それより、売りが立ってるのは外れにある橋の周辺で変わってないか?」 「おっ。旦那も好きな口で?もちろん、そこら辺りの事情は変わってませんよ。」 その会話を聞いていた副官は狐に摘まれたような顔をしている。 それから間もなくして3人は席を立った。 流しの若者は一通りの礼を述べると街の中へと消えていった。 「よし、それじゃ。行こうか。」 副官の返事も待たず、クラプリンは歩き出す。 昼間とは違って少し乾いた風が酒に火照った体に心地良い、ちょうど良い程に行く先の道を月明かりが照らしている。 「どこへ行かれるんで?」 「売り街さ。」 今の提督に雇われてからと言うもの、船員からそれらの話を聞くことがあっても提督からは一切聞いたことが無かった言葉に耳を疑った。 しかし、躊躇い無くその場所へと進む提督を見ると、ただ話さないだけだったのかと副官は自分を納得させた。 「そうだ、こいつを渡しておこう。」 普段と変わらない歩調のままでクラプリンは懐から数枚の金貨を取り出し副官へと渡す。 「これで一晩の伽代にはなるだろう。」 「はぁ。」 今ひとつ納得のいかない副官は渡されるままに金貨を懐へとしまいこむ。 何気ない話をとりとめもなく続けながら歩く2人、そして静かな郊外の通りを1本2本と通り過ぎると、ちらりほらりと周りの様子が変わり始める。 街角の雰囲気にそぐわない若い女性達が大きく胸元の開いた服を着てあちらこちらに立つ姿が見える。 そして腰を振るように歩く様はなんとも艶かしく、その動きの一つ一つが男性を誘っているようにも感じられる。 「さてと、ここまで来れば相手も選びたい放題だな。」 事の内容に関わらず、クラプリンの表情はどことなく冴えない。 そんな提督の表情に気付いた副官はふと足を止めて考えにふける。 「提督…本当の狙いは何です?」 振り向いた先にクラプリンの姿はなかった。 先ほどまで同じ歩調で歩いていたはずの提督の姿はいつしかどこにも見えなくなっていた。 「あれ?提督?どこいきやした?」 月明かりに蒼白く照らし出されている街角を見渡しても、クラプリンの姿が見えない。 「参ったな…」 何かに化かされたように辺りを見渡す副官。仕方なく付近をぐるぐると歩いては消えた提督の姿を探す。途中、すれ違う女性達からの誘い言葉が引きも切らずにかけられるが、副官はにべもなくそれらを突っぱねながら提督を探している。 「おい、なにを偉そうに考えてるんだ?難しい顔してると可愛い子が逃げるぞ。」 いきなりクラプリンが細い路地から姿を現した。 「提督、知らぬ間に消えるのは止めてくだ…」 声のする方へと向き直った副官は目を疑った、提督が知らぬ女性と腕を組んで立っているのである。 「ねぇ、この人だぁれ?」 これ見よがしに開いた胸元をクラプリンの腕に押し付けるようにしながら女性はクラプリンに問いかける。 「俺の大事な仲間さ。」 「ふぅ~ん。」 やたらと通る声を持つ女性はそんな答えに興味ないような素振りを見せる。 「そいじゃ、そういう事で。お前も楽しめよ。」 驚いている副官へ軽く言葉をかけると2人は宿屋の多く居並ぶ方向へと消えていった。 「なんだよ、それ…。」 1人取り残された副官は2人が消えていった方向を睨みつけ、先ほどは無視して通った色声のかかる筋へと戻っていった。 朝靄に煙草の煙を重ね合わせながら、クラプリンは朝を迎えた。 安宿の窓辺に置かれた椅子に腰掛け、何本目かと数を取り忘れた煙草をくわえている。 ベッドでは女が穏やかな寝息を立てている。 ガラガラと荷車を牽く音が微かに聞こえ始め、街が本格的に目覚めのときを迎え始めている事を知らせている。 長く伸びた髪を両手で掻き揚げて手元のメモに何かごとを書き綴っている。 無精髭が薄っすらと伸びた事に加え、一晩を寝ずに明かした為の窶れで顔立ちの印象を凛々しく変えている。 「ねーぇ。なに書いてるの?」 いつの間にやら目覚めた女が背後から問いかけてくる。 温かさが残るベッドに上体を起こし、シーツで胸元を隠すようにしているものの、その行為自体は大して重要でもないように腕に力は入っていない。ただ、ベッドの傍らに置かれた女の衣類を見るに今は一糸も纏わぬ格好であることは容易に見て取れる。 「なーに、大した事じゃないさ。」 女の問いかけに振り向く事もなく返事する。 そっけない返事に特に何を言い返す事もなく女は脇テーブルに残っていたワインへ手を伸ばす。 「折角、私を選んでくれたのにさ、何もなしに朝になったらドブ川に捨て銭したようなもんじゃないの?」 女の言うとおり、この安宿へ女と入ってから2人は酒の飲んで明かしただけだった。 「私は抱く価値が無かったぁ?私は普段飲めない高いお酒が飲めたから満足だけどぉ。」 ちくりちくりと針で刺すような愚痴を背中を向けているクラプリンへと投げかけている。 「まぁまぁ、そう言うなって。」 手を止めてクラプリンは自分を見つめる女のもとへと近寄る。 酒で熱くなり脱いだままになっていたクラプリンの上半身が朝日に照らし出される。 「ふぅん。初めてみるけどさ、アンタ良い体してんのね…。」 「そうか?船乗りは皆こんなもんだろう。」 女の隣へと座り、飲んでいたグラスを取り上げ口をつける。 「アンタ、ただの商人じゃないわね。何て言っても私は信じないよ。」 「いや、ただの商人さ。」 「ふぅん。」 疑いの視線がじろりとクラプリンを見定める。 「朝日に陰るアンタはますますいい男ね。特別に今からでもどう?」 胸元を隠していた手でクラプリンの腕を引き寄せるように誘う。顕になった胸がクラプリンの腕に押し付けられ、女の温もりと柔らかな感触が直に伝わってくる。 しかし、クラプリンはその絡んでくる手からするりと腕を抜き取ると手元のシーツで朝日を浴びて美しく柔肌が輝く女を包み込む。そして、そのまま優しくそっと抱きしめると額に軽く口づけすると耳元で囁いた。 「今日は船乗りとして大事な仲間を守るためにお前に寂しい思いをさせてしまったな許してくれ。」 クラプリンの囁きは続く。 「次会った時は同じポルトガル人として君を選ばせてもらうよ、だから今日はこれで美味しい朝食を取って昨晩の事を忘れてくれ。」 女の手を取りその手の中にそっと何かを忍ばせる。 そして年月の産物ともいえるベッドの軋み音と共にベッドを離れる。 女はシーツに包まれたまま、一連の動作を無言で見守っている。 身支度を整えたクラプリンは短い別れの挨拶と共に部屋から消えていった。 「なによ…何さ…頭悪い私には分からないわよ!」 後姿を見せぬように閉じられた扉に向かって手に持っていた金貨を投げつける。 寂しさを代弁するような乾いた音が部屋の中に小さく響いている。 「……バカ」 治まりそうもない欠伸に大きな口を開けたまま本通りを歩く。 図らずも夜を徹してしまった為かいつもより太陽が黄色く輝いているように感じる。 まだ支度し始めたばかりの露店から朝食にと買ったブールを荒っぽく口の中へと放り込む、素朴な固焼きパンの風味が口の中に広がっていく。 昨日、町へ降りてから漸くまともな食事にありつけた為か、それとも長らくインドへと向かっていた為か実に味わい深く感じられる。 ただ、歩きながらの朝食が終わってみると適度な満腹感と徹夜の疲労と体に残った酒に緩やかな眠気が彼を襲っていた。 「どこかで一休みしたいか…」 ふらりと街の広場にたどり着いたクラプリンは横になれそうな場所を探す。 「おや?」 広場の先に遠目に覚えのある姿が見える。 どこで遊んできた帰り道か否か自分の下で働く船員達が2・3名なにやら立ち話をしている。 何を話しているかは聞こえる由もないく、内容がどうであれその輪に自分が入り込んでも財布を狙われるだけだと思いながら、やっと探し当てた休憩場所へ横になる。 目に染み入るような日差しを恨めしく思いながら、上着を顔にかけ仮初に作り上げた暗がりにクラプリンは目を閉じる。 広場は時間が経つにつれて徐々に人の往来が多くなり、多くの人々が忙しく働く時間へと変化する。 そんな広場の傍らに人目を憚ることなく静かな寝息を立て始める。 ただ、硬い寝床の上では芯から寝られるはずもなく、浅い眠りを数珠繋ぎにしていくことが精一杯だったが、今のクラプリンの体には十分な休憩時間だった。 人の往来する気配の質が変わり始める正午前になってもクラプリンはまだ浅い眠りの最中だった。 太陽の恵みが容赦なく降り注ぎ、クラプリンの体にはじわりと汗ばんでいる。 背中に感じる硬さと日差し熱に寝苦しさが膨らみ、気にならなかった町の雑踏がクラプリンの睡眠を邪魔するようになっていた。 「それからウチの船長ときたらさ、いつの間にか可愛い子を連れて消えやがるんだ。」 身に覚えのある内容が聞き覚えのある声で聞こえてくる。 「(おや?)」 その声にまどろみが覚めてしまった。 「へぇ、普段は実直真面目に見えて、そんな事しないと思ってたがねぇ。」 「しかしだな、付いていったお陰で俺は懐痛まずに美味しい思いをさせてもらったぜ。」 聞いていた他の船員の口から悔しがる言葉が漏れている。 「(やれやれ…)」 酒場で副官の見せた剣幕を思い出しながらクラプリンは小さく溜息を吐く。 そして、彼等の声が雑踏に消えてから、ゆっくりと体を起こす。 日差しはまだ目に厳しく降り注いでいる。 まだはっきりとしない思考を顔の表情に表している。 「さてと。動くに動けないからな、もうちょっと探りを入れてみるか…」 2日後の昼、クラプリンの姿は船内にあった。 役人による船内検めを終えた後、良くも悪くもない相場にも関わらずインドからの積荷を馴染みの交易所へ全て卸し終えた後の帰船だった。 船員達もなぜここで投げてしまうのかと口々に噂しあっていた。 「失礼します。お呼びでしょうか?」 いきなりの呼び出しに険しい表情を浮かべた副官が部屋へと入ってくる。 「どうだろう、船員には各2日ずつの休暇になったんだが。皆は元気になったかな?」 「若干の遊び足りない部分もあるかもしれませんが、良い気分転換にはなったと思います。」 「そうか、こっちも色々と楽しい情報を拾えたし、そこで前に話していたバカンスの話だが。」 以前には眉を顰めた副官も、あの夜の事があってかその言葉を聞いて表情が明るくなる。 「4日後に出発する。」 「え?4日後ですか?」 そうだとクラプリンははっきりと答える。 「資材調達から散らばった船員の呼び戻す事まで全てを終えて4日後に出発する。」 念を押すようにクラプリンは日取りを繰り返す。 「しかし、その予定だと日数的にぎりぎりではないかと思いますが…」 2人の間で事の真意の汲み取り方が異なるため、副官は緩やかな表情で意見を述べるに対し、クラプリンの表情は一貫して作った笑顔のままでいる、その表情の下ではこの会話が最初から成立してないことを十分に認識していた。 「今回は青い海に白い町並みが映える所へ向かおうかと思ってる。」 「良いですねぇ。それなら尚更にいろいろと準備もあるでしょうし、4日後は…」 「あぁ、そうだな。このところ平和に剣の手入れをしてない者も居るだろうし1日延ばすか。」 「剣…ですか?」 「そう。剣だ…なんと言っても今回はそれがメインになるからな。」 副官は提督の言葉に理解が追いついてゆけないという顔でクラプリンを見ている。 「皆へ伝えておけ、今回は死出の出航になるかもしれん。嫌な者は船を降りて良いと。」 クラプリンは煙草を取り出し火をつけた。 「イスパニア、ヴェネツィア、ジェノヴァ、イタリア諸国、マルタ騎士団が征るそうだ。」 提督の口調が変わり、ただならぬ様子を察し直立したままの副官をよそにクラプリンは続ける。 「教皇ピウス5世の指示の元、神聖同盟なるものが出来上がったそうだ。これ以上、布巻きの奴等の横暴は許せないらしい。まさに同感だ。」 2・3度煙を吐き出す間、2人には例えようのない沈黙が敷かれている。 「ところで、この3日間。これについての情報は?」 「あの最初の晩に…」 「そうか、もう一歩踏み込んで欲しかったな。あの流しの話を聞いてから俺は今まで奔走しきりだ。」 何も言い返せないほどの重圧が副官に圧し掛かってくる。 「俺の何を噂されようが知った事ではないが、あの夜に出会った女性は実に多くのネタを持ってたな。お偉方に口止めされてるヤツ等も女の前では口が軽いらしい。」 短くなった煙草を灰皿へぐいっと押し付けて火種を消す。 副官はあの夜に感じた違和感が今になってようやく正解だと気付く。 「この代償は現場できっちり働いて貰うからな。ドッグに預けてる船を出して来い。そして、準備を急げ!」 「はいっ!」 言われるがままに副官は提督の部屋を飛び出した。 「やれやれだ。」 椅子へ深く腰掛けると大きな溜息つく。 「ま、立場が逆だったとして、俺でもそこまでは気付かんな。」 きつく当たった事を思いながら、クラプリンはもう1度煙草を咥えて火をつけた。 白煙の先に見えるものは古ぼけた天上ではなく、各国の展開に関する速度の予測だけだった。 クラプリンの指定した出航日は5日後だったが、当初に予定していた4日目には全ての準備を終えて出航を待つだけになっていた。 副官がどのように働いたかは知る由もないが、船員は欠けることなく集まっていた。 「全員集まったな。今回は1度のミスも許されない出航になるだろう。」 船員達の前でクラプリンは口を開いた。 「しかし、ヤツ等の横暴を見逃し続けるにも我慢の限界がきたらしい、国がどうたらなんて関係ない!ナメたことしてくれたヤツ等に西の力を見せ付けてやれ!」 空を割らんばかりの喚声が響き渡る。 クラプリンは大きくてを振りかざし出航の合図を送る。 「シラクサへ!」 (続く)
https://w.atwiki.jp/goldenlowe/pages/79.html
大阪真剣紀行その2 人ごみに揉まれながら梅田駅へと向かう。 朝昼暮夜の関係なしに人の数は変わらない。 それだけ活動する人の単位が多いということなのか、流れに任せるように歩くにはそれなりの速度を要求される。これが毎度の事ながら最も神経を使う所と思う。雲ひとつ無い空とまではいかないものの概ね快晴といえる天候にも立ち並ぶビルが地表に降り注ぐ日光をかなり制限しているようだ。時折吹き抜けるビル風に体感温度が下げられている。地元では決して味わうことのない都会の洗礼に思わずオーバーのファスナーをきっちりと上げ閉める。閣下とけん卿のホットラインを駆使し、待ち合わせ場所は地下鉄御堂筋線車中と決まった。まさに都会ならではの集合方法だ。 人ごみに方向感覚と閣下の影を見失いそうになる、できるなら閣下の胴にロープでも結わえ引っ張るように先導してもらいたいぐらいだ。どの道をどうやって進んだか今更思い出せないが、切符売り場に到着する。閣下の奢りで片道230円の切符を手中にし、なかもず方面行きのホームの最後尾でけん卿とだーす卿が乗り込んだ電車を待つ。1時間に1本という田舎の常識が染み付いているウチの目の前を矢継ぎ早に到着する電車がせせら笑うように長い車両を見せ付ける。 閣下 :「これには乗ってないみたいやな、すぐ来るから。」 アンレ:「便利よね。」 ルカ :「都会の交通事情を考えると本数要るねぇ。」 閣下 :「こっちは駐車場料金がめっちゃ高いからな。月1万円越えるところもあるから。」 ルカ :「それは駐車場料金というより家賃やw」 アンレ:「田舎ほど電車使う機会が減るね、もっぱら車移動だし。」 ルカ :「こっちじゃ考えられんかもね。」 アンレ:「時間によったら1両編成で、しかも客ナシなんてざらやからね。」 閣下がヒキ笑いしている。田舎の感覚と都会の感覚は微妙は食い違いがあるものだ、恐らく季節感にも誤差があるのではと思う。ウチ等、田や畑をいじる人間には冬は「農閑期」、さて都会の方々にとって冬とはどんな季節なのだろうか。2本目か3本目の電車の最後尾にけん卿を発見する。早速乗り込み地下鉄の車中でも円陣を組む、もはやこのように並ぶのはGLの基本隊形なのだろうか…だーす卿とは今回初めてお会いする、想像していた通りとまではイメージが合致しなかったけど、けん卿とは違った爽やかさを携えた方とお見受けする。初対面なのでお約束通りに自己紹介をする。 閣下 :「SEIJIです。」 アンレ:「レナータです。」 ルカ :「アンレ兄です。」 この偽証自己紹介もGLのクオリティか… ムー○ィー勝山級に受け流されてはネタとしては滑ったかもしれない。だーす卿はニコニコ笑っている。芸人殺しのスキルRはかなり高いと見える。 先発隊総勢5名が勢ぞろいし、一行は事前の打ち合わせ通りに「通天閣」を目指す。 通天閣付近は田舎モノでも知っている格言がある。 『夜に出歩くな!』 真偽の程は知らないが、なんと恐ろしい格言だろう。動物園前で降り立って街中を歩くと、行き交う人すべてが怖い人に見えてしまう。疑心暗鬼とは恐ろしいもので、いわばウチ等と同じ観光客と思しき人でさえそう見えてしまう。元々ウチは小心者なだけに、この町全体が伏魔殿であるかのような錯覚を起こしている。もっとも地元の方々はそんな噂に迷惑しているだろうと思う。もしかすると逆説的な言い伝えなのかもしれないと思考をめぐらす。帰れなくなるほど楽しい街だから、明日の仕事に差し支えないように夜は出歩くなと…。真意は神のみぞ知るという謎にしておこう。 けん卿のナビゲーションで謎の廃墟の中を通り抜けると、そこには天高く聳える通天閣が目に飛び込んでくる。書籍やTVで見る数百倍のものが立体的にいま目の前に現れている。なぜか無意味に長い階段を下りると目の前にはふぐ料理で有名なあの店のあの看板が悠然と商店街の空を泳いでいる。この晴れ渡った空こそ彼が泳ぐには最適な場所だろう、地表にこれほど大きな魚が居たら迷惑極まりない。と思っていると居た…満面の笑みを浮かべ大きな図体の奴が天下の往来を占拠している。何が嬉しいのかそいつを見て立ち止まり携帯電話を構えている、それが加わってまっすぐな道をまっすぐ進めないジレンマを強制的に味わう羽目となる。 近づくにつれて見上げる首の角度が徐々にきつくなっていく。そして近づいて分かることがもう1つ、それは展望室らしきところに詰め込まれている人の群れ、何とはなしに嫌な予感が胸の中に沸き起こる。商店街を突っ切り、いよいよ通天閣へとアプローチしようとするとそこに見えるのは長蛇の列。やはり名所にはこの風景がついてくるのだと行列を見れた事に感動を覚える。そういえば0次会で訪れたホールの2件隣に有名ラーメン店があったが、そこでもプチ行列が発生していたのを思い出す。たかが1杯のラーメン、されど1杯のラーメン、さらにたかが展望室されど通天閣、それに掛ける情熱が何時間も及ぶ忍耐力を有無のだと寒さに耐える行列を見て感嘆の声を上げる。 閣下 :「並んでんな。」 けん :「えらい行列やな。」 閣下 :「どないする?」 行列の長さをもう一度確認する、最後尾はゴマ粒以下の大きさで軽く2時間は待つだろうと予想する。 閣下 :「他行くか」 一同合意の上、180度向きを変える。再びまっすぐな道を右へ左へと蛇行する。 すると居並ぶ店の幟に見慣れないモノを見つける「どて焼き」。魅惑のミステリー品を今回も発見。「どて焼き」とはいかなるものであろうか、名前から何かを焼くまでは想像つく、しかし、「どて」とはいかなる食材なのか全く想像がつかない。 アンレ:「閣下、どて焼きってなに?」 閣下 :「ん?なんやったらやっていくか?」 アンレ:「本ちゃん始まる前に出来上がってしまうよ?」 だーす:「完成品で乗り込む?」 けん :「それはマズいやろ」 前々回のOFF会では餃子ミュージアムへ向かった先発隊は1杯ひっかけて本番に臨んだのは記憶に新しいところだが、さすがに今回はそれを回避する。そして、けん卿の案内で向かったのが今はその姿を見なくなったスマートボールを楽しませてくれるお店。今では各方面のTVで放送されて有名なお店なのだが、ネタとしてこれほど上質なものはない。5人で店内へと入る。 …ほぼ満席… さすが有名店と人気の高さを思い知る。適当に座って遊ぼうという流れに閣下・だーす卿・けん卿・ルカが並んで着席しウチはネタ取りとして背後からじっとネタ取りに専念させてもらう。スマートボールにも機種というものがあることが判明。平台のようなものからフィーバー機のようなものと実に様々なものがある。閣下・だーす卿・けん卿が平台パターンへ、ルカがフィーバー機パターンへ座り実践開始。100円を投入し再び戦闘開始。 単純なゲームほど奥が深いと言うが、このスマートボールにも魔物は住んでいたらしく店内はかなりの鉄火場となっている。真剣な眼差しをした老若男女が盤面を一斉して盤面を睨み付ける風景はここに足を運んで見る価値があると納得する。局面はどうなっているかと視線を戻すと、ものの数分の間に明暗がくっきりと分かれていた。ルカの盤面がボールで埋まっていく、ルカと兄弟をやってて今の今まで彼にこんな才能がるとは知らなかった。 けん卿がふらりと席を立ちウチと交代することに。隣にはダース卿が2個だけ開いたままになっているチャッカーを閉じようと苦戦している。 だーす:「入ったとしても賞球は5個なんだけどねw」 きっちりとけじめをつけようとする所がだーす卿の几帳面さを現している。「ギャンブルを見るとその人の性格が分かる」と格言を吐いた人が居たが近からず遠からずといった所か。時間にして20分~30分ほど楽しんだ後、勝敗は決した。 ルカ :200個 けん :160個 他 :負け 100円単位で熱くなれるスマートボール、近辺に寄った際は是非とも足を向けていただきたい。店の独特の雰囲気と共に楽しい時間を味わえます。 店を出たのが16時30分ごろ、本番の集合時間まであと2時間もあるが何をして時間を潰そうかと思案するけん卿。微妙な残り時間に日本橋へ行くかと提案がなされたが、あちこちへと小刻みな移動をするのは上策ではないと鶴の一声が出て梅田付近を散策しようということになった。長い階段を上り廃墟のような場所を越え、温泉施設に後ろ髪を惹かれそうになりながら、動物園前を通り過ぎる。再び230円の切符を購入し地下鉄へ乗車。 車中ではフットサルの話やリーガの話で盛り上がる。ウチはサッカー関係について大した知識もないので静かに傍観する。 梅田駅の喧騒は昼にもまして洪水のように人が流れていく、もう見慣れたはずなのに群集に酔いそうになる。極力、人とぶつからないように歩いているつもりだが人密度の高い場所では至難の業と言える。交差する人に道を譲ったり譲られたりしていると先導するけん卿の姿が段々と遠くなる。再び同じ道を通れと言われると全く自信がないほど付いていくのが必死の道のりを越えて見覚えある商店街へと出る。そして更に見覚えのあるエスカレーターを上り、見覚えのあるゲームセンターへと到着する。 ゲームセンターは学生生活を終えた頃、足しげく通っていた記憶があるが最近は全く足が向かず疎遠となっている。ぐるりと店内を見渡すと、パチスロも設置されている。中にはホールで現役として置かれている機種もある、さすが大都会大阪。手荷物が増える事を倦厭して景品ゲームを回避し、全くやり方のわからないビデオゲームも避け、設定の期待できないスロもスルーして店内を回ると気付けば入り口へ戻っていた。いつの間にか皆とはぐれていて、ぼんやりと待機。周りを見渡すとけん卿の姿が無い。閣下曰くけん卿はゲームセンターが好きなのだという。確かに到着してすぐに両替機へ向かったのはけん卿だったし、ここへ誘導したのもけん卿だった。店から出なければ大丈夫だろうと4人はロビーらしきスペースで寛ぎモードへ入る。ここでルカがドーピングが切れたというのでドリンク剤を求め一時離脱、さすがに不眠30時間を越えると効き目が薄そうに思える。その間にけん卿が再び登場し、皆でレースゲームをしようと4名で着席。シートベルトが着いていることに少しウケる。内容はどうであれレースはレース、基本的な事は変わらないというので勝負開始。結果は楽しい時間を過ごせたので気にしないという事で流してしまう。 ホテルのチェックイン時間が迫ってきた為、17時45分にゲームセンターを出る。都会の夜は星空さえ見えず、吹きぬけるビル風はさらに温度を下げている。誰しもが肩を竦めわずかな体温も外へ逃さまいとしているような格好で往来を行き来する。1時間前に通った道を逆に歩く、朝から数えれば3度目になる道を大阪駅へ向けて歩く。さすがにこの時間まで遊んでいると腰にも相当の負担が強いられているようで、違和感を通り過ぎた先に出てくる痛みが下半身に感じられる。予約したホテルまでの道はさすがに覚えて、ウチ風に例えると、 『地下へ真っ直ぐ降りて、真っ直ぐ進み突き当たりを直進する。』 分かる人には分かる、分からない人が居てもウチが分かっていれば良しである。 約15分ほど歩き、チェックインを済ます。だーす卿も手続きを終え、3人してエレベーターへと乗り込む。ここでも小ネタが発生、ウチとルカはホテルの予約を1ヶ月前からしていたが、つい先日に予約をしただーす卿とは同じ5階の部屋が宛がわれていた。何と例えれば良いか分からない複雑な心境を抱きつつ部屋へと入る。バッグを投げるように下ろし、取り出した市販の鎮痛剤を飲み込む。これを忘れると宴会が終わる頃には動けなくなる可能性が高い。なんとも不自由な体だ。 タバコを1本吸い終えてからホテルのロビーへと向かうとだーす卿もルカもすでに降りてきた後で、喫煙組は外で至福時間を満喫している。18時を過ぎている事を確認して、いよいよ晩餐会集合場所へと向かう。集合場所はビックマン前、つまり再び同じ道を戻る。何往復目かと数えるのも面倒になってきた。数分で何が変わることもない道程を乗り越えてビックマン前へと到着すると、そこには以前に見たような後姿を携えた人物が何かを探している。その人はジョコンダ嬢である。閣下御自ら声をかけまず1人合流。 閣下 :「こやつはケツを蹴りあげたらなあかんなっ。」 ジョコ:「いやいや、はははは。なにかと忙しくてね。」 閣下 :「もう商会抜かれてんで、はよ戻ってこい。」 ジョコ:「はははは。」 明言を避ける所はさすがの熟練さである。ジョコンダ嬢は休日にATMが使えなくて資金繰りに苦労した話を面白く話している。リアル都合でON数が減ったとしてもこうやってOFF会に参加してくれるというのは実に嬉しい限りだ。それに宴会ってのは大人数のほうが楽しい。間もなくしてSEIJI卿とレナータ嬢が現れる、今回は実にスムーズな集合だ。喫茶店前の円陣が徐々に輪を広げている。 レナ :「アンレさん。」 アンレ:「はい?」 レナ :「ライラさんから指令がありまして『食べさせてやってくれ。』だそうですよ。」 アンレ:「ナニ?」 なんとも酷な指令ではないか、それにレナータ嬢、いつも通りの笑顔にも目が光っている。恐ろしい…。 「こんばんはーっ。」 威勢の良い挨拶が円陣の中へ飛び込んでくる。れんれん最高顧問様だ。遅れるとの報が届いていたが、GL時間的には間に合ったようだ。 顧問様:「あー、アンレさん。」 アンレ:「はい?」 顧問様:「ライラさんから『食べさせてあげてね。』って言われたからよろしくね。」 アンレ:「…(姫…鬼!)」 こうしてライラ連合軍(レナータ嬢+顧問様)vsアンレーデという図式が成立する。さすが策士の姫、この場に居合わせないながらもこれだけ強力な包囲網を完成させるとは実力発揮と言ったところか。 ウチが背筋に嫌な汗を感じているところへ、対面に立つ閣下の背後にwol卿が姿を現す。これで全員揃った、総勢10名なんだかんだと言いながら2桁の参加者に恵まれて今回のOFF会も楽しいものになると確信する。円陣を解き1つの塊となって宴会場を目指す、無論のこと場所が分かるはずも無いウチは皆の後を憑いてゆく。田舎仕様の遅い歩調にも関わらず、SEIJI卿が殿を務めて逸れる事を予防してくれている。なんという心遣いであろう。否、待て、もしかするとSEIJI卿もライラ連合軍の軍勢かも知れない、そう考えると既に四面楚歌状態である、この序盤にて早くも包囲網完成か? 道中「GLで1番若いのは誰か?」という話題になる。年齢を知っている人は知っているが謎めいた人は謎のまま。 アンレ:「GLで1番若いのは誰だろう。」 レナ :「うーん…」 アンレ:「うずまき嬢は学生さん?」 顧問様:「ウチはうずまきちゃんの歳知ってるよ。学生じゃないよ。」 アンレ:「ほほぅ、いくつぐらいの人?」 顧問様:「それは本人の許可なくしては言えません。」 ごもっとも。レディーの年齢を聞くのは無作法と知りつつも、知りたくなるのは♂として悪い癖と反省する。 レナ :「クラさんも年齢不詳ですよね。」 アンレ:「確かに低姿勢であのテンションやからねぇ。」 SEIJI:「クラさんはいつも元気ですよね。」 アンレ:「あれで下戸らしいし。」 レナ :「お酒飲めなくて、アレを維持するってすごいですよね。」 アンレ:「レアキャラやな。」 SEIJI:「実際は歳かもしれませんよね。」 アンレ:「しかし。下戸であのテンションの人が上司やったら疲れるでー。」 一同 :笑 笑い話をしつつ歩いていると目的のビルには程なく到着した、お店は9階にある居酒屋さん。狭小エレベーターへと2手に分かれて乗り込み、今日1番の戦場へと到着する。 予約席へと到着すると掘りごたつ風の場所に10人がぴったり(隙間無く)収まる程度のブースで、通路との間仕切りが簾1枚というエコロジーな拵えである。早速、包囲網回避の先手を打とうとするも指定席があるらしく着席図は以下のように。 (閣下)(wol卿)(ルカ)(SEIJI卿)(レナータ嬢) □□□□□テーブル□□□□□□□□テーブル□□□□□ (だーす卿)(顧問様)(アンレ)(ジョコンダ嬢)(けん卿) 兄弟で対面とは… 宴会の始まりはまず乾杯から、各員飲み物を注文する。事前に「飲み放題は100種以上から選べる」と聞いていたので、酒のみが記載されているメニュー表を睨み付ける。 ないっ!!! 冬に頂く酒の代表格「熱燗」がどこにも載っていない。訳分からないカクテル名前がメニューリストの2/3を占めている。 wol:「アンレさん、何飲む?」 アンレ:「熱燗ないらしい。」 wol:「え?ほんまに?」 アンレ:「らしいよ。」 アンレーデ及ビwolノ両名・大阪ノ街ニ轟沈ス… 気を取り直してビールを注文し、wol卿は赤ワインを選ぶ。やはり大阪には熱燗が存在しないのか、大都会の風は田舎者には冷た過ぎる。 「これかGLオフ会を開催させて頂きます。今回で6回目となり…」 GLの永久敏腕幹事けん卿の口上と共にいよいよオフ会が始まった。 けん卿:「それでは閣下より乾杯の音頭をお願いします。」 閣下 :「あ? では乾杯。」 他 :「かんぱーい」 グラスを弾きあう音と共に火蓋は切って落とされた。今回は割り箸を割らずに何分居られるかの記録更新を狙うべく、ビールに口をつけた後、静かに手をテーブルの下へと隠す。今日の獲物は鍋、つまり煮えるまでは記録を伸ばすことが狙える。歓談に花を咲かせつつ、土鍋の蓋から勢いよく湯気が立ち上るまで10分少々。 「蓋開けるでー。」 誰かの声に皆の視線が集中する。真っ白な湯気が立ち上り、その先に見えるのは最近若い方にも人気が高い「ちゃんこ鍋」、初めて見る実物に思わず眼鏡を掛けなおす。良い具合に煮えた鍋を見て誰もが手を伸ばす中、食指が動かないウチを顧問様が見逃すはずはなかった。 顧問様:「さ、アンレさん。よそってあげるね。」 ウチの目の前で綺麗なままに置いていた箸を取り上げるとパチンと小高い音と共に箸を割る。記録は更新されることなくウチのささやかな挑戦はあっけなく幕切れとなった。顧問様はウチの小鉢の中にもくもくと湯気の立ち上るちゃんこ鍋をよそってくださる。 顧問様:「沢山食べてね。」 その笑顔の裏に見え隠れする尖った尻尾が気味良く揺れているのが想像できる。直径約10cm・深さ約4cmの小鉢によそわれたちゃんこ鍋が激しく自己主張してくる。手付かずに置くのも失礼なので軽く白菜を一切れ頂く。美味い、しかし多い…。 会話の内容はDOLやら何やらごちゃ混ぜの雑話。真剣に何かを語り合おうという場ではない為、引っ切り無しに笑いが止まらない。さすが話芸を極めた関西人の街、普通の会話も間の取り方が絶妙に上手い。ウチが口を挟める余地などオブラードの隙間さえない。 OFF会皆勤賞なウチはこの場でのお勉強が楽しくてたまらない、良くしゃべってくれる人が居てくれると時間が経つのも忘れるほどである。話の内容が多すぎて全ては覚えきれなかったが、印象深かった内容は以下の通り。 陸戦の話 閣下 :「陸戦を本気でやったらアイツほどメンドイのは居らんで。」 だーす:「確かに。」 閣下 :「こっちが真剣にやってるのに妙なアイテム投げてきやがるからな。」 だーす:「所持品枠が陸戦道具で埋まってるってのがおかしい。」 アンレ:「呼んだ?」 閣下 :「大体、オオワシを常備してるのがおかしいやろ。」 アンレ:「陸戦するときには必須やろ。」 だーす:「大体、応用R15ってのが変w」 アンレ:「変ってw」 閣下 :「アホやでホンマw」 PKの話 顧問様:「ウチは色つき経験ないのにさ、周りがすごいから勘違いされる。」 SEIJI:「れんれんさんは色ついた事ないんですか?」 顧問様:「1回もないよ。亡命悪名ならあるけど、それぐらいよ。」 SEIJI:「そうなんだ。」 顧問様:「でも、なんか勘違いして知らない人に『襲わないで』みたいな事言われるんよ。」 一同 :笑 アンレ:「でもPKさんは面白い人多いよね。」 顧問様:「ウチの周りは○○ばっかりよw」 だーす:「むしろPKKしてくる方が無言多い。これには参るよw」 一同 :「あー、なるほどー。」 落し物回収の話 顧問様:「前にねNPCにやられて紋章落としたんよ。」 顧問様:「色んなフレが寄って延々探したんだけど出なくって、」 顧問様:「サポに連絡したら『出ないものもあります』っていわれてさ。」 顧問様:「結局、もう一回獲るようになって。頑張ってたら、」 顧問様:「手伝ってくれるってフレが入った途端、その人が1発で『出た!』ってw」 一同 :笑 SEIJI:「そういえば、閣下が落とした耳飾ですけど。」 閣下 :「どやった?」 SEIJI:「あの後ライラさんやアンレさんとクエ行った時に探したんですよ。」 レナ :「そうそう、料理長はニワトリまで使ったんですよ。」 SEIJI:「でも出ませんでした。」 一同 :大笑 BCの話 ジョコ:「BCってどんなん?」 アンレ:「好き嫌いは分かれるかなー。」 ジョコ:「楽しいんですか?」 アンレ:「そやね、船耐久も役割も全く考えなくて撃ちまくれるってのが良いね。」 一同 :「おいおいw」 閣下 :「でも、しんどいで。称号貰ったから、もう参加せぇへんけどな。」 顧問様:「称号貰ったら行く気なくすよねー。」 閣下 :「なかなか勝てへんから、辛かったでw」 顧問様:「ウチも最初は全くやったけど、2回目のBCで90何勝したよw」 一同 :「スゲー!」 顧問様:「相手を良く見ると閣下やアンレさんが居たりするんだよw私1人だったしw」 これ以外にもペットネタ、生産について(閣下が調理マイスターという事実)、サッカーネタ、商会イベネタ等など。しかし、笑うネタが9割を超えていた中で1つだけとても残念な話があった。「プレイヤーのモラル」について、とても辛い現実ですがごく1部のプレイヤーの行為がひどく不快感を与えているという事が話題に上る。私的意見を1つだけ、画面の向こう側でプレイする人への配慮なくしてはオンラインゲームの楽しさは守られないと書かせてもらいたい。 尽きぬ話に時間は過ぎて、宴が中盤を越えた頃に再び顧問様の目が光る。 顧問様:「アンレさん鍋なくなるよー。2杯目置いとくね。」 新しい小鉢をどこから出してきたのか顧問様の愛がイッパイ詰まった2杯目が食べ終わらない1杯目の横に並べられる。ウチの額には不思議と浮かび上がる汗、これでも精一杯の努力をしてるのに認めてくれないのか。でも、その会心の笑顔に顧問様の愛には敵うはずもなく有りがたく頂戴する。 宴はどんどん進む、鍋の他には湯豆腐(味つき)、串揚げと酒のアテになるものがどんどん運ばれてくる、さらにけん卿の機転でたこ焼きとフライドポテトが追加される。それらがすばらしいテンポでウチを除く参加者の胃袋へと消えてゆく光景は毎回見ていても俄かに信じがたい。普段からどのような鍛え方をしているのだろうかと疑問が頭をよぎる、更には、レナータ嬢の食べっぷりも見事なもので、密かに隅っこで箸が動き続けていたのは敵ながら天晴れ。さすが姫が送り込んだ刺客だ。 うどんが運ばれてくる。うどん王国を隣県に持つウチ等兄弟には箸の止まるメニューだ。 1本口へ運ぶが、期待したコシはなかった。瀬戸内海を越えた街でそれを望むのは無謀だったかもしれない。ただ、ウチにはうどんよりも2杯目のちゃんこ鍋という難関がまだ目の前に鎮座している。そろそろ胃袋の限界が近い。 甘いものは別腹、という言葉が世の中には存在する。強敵を前に口の中の雰囲気を変えられればとコースメニューのデザートに淡い期待をしていた。しかし、今回のコースでは水菓子が出ないという罠が発覚する。ならばと気分転換に手洗いへ向かおうと、決して痩躯とは言えない体を掘り炬燵風の席から抜け出そうとした瞬間の事だった。 ピキッ ピキピキピキッ 大胸筋から聞こえる異音と共に胸へ激痛が走る。なんという事はない大胸筋が攣ったのだ。通路を何食わぬ顔を装って手洗いへと向かいながら、周囲にばれないよう小さく小刻みにストレッチをする。焦りと痛さで耳が火照って熱い。なんという醜態、これも姫の仕掛けた罠に違いないと勝手に姫を悪人に仕立てながら気分を紛らわしたが、連日の不摂生が明るみにでた一幕だった。 大胸筋事件で体力を消費したお陰で幾分胃袋に余裕が生まれ席へ戻ってから最後の抵抗を試みる。2杯目のちゃんこ小鉢を平らげ、うどんへと移行する。 顧問様:「すごい!食べれるやん。なくなったらアカンから予約しといてあげる。」 負けました、もう食べられません。もうその笑顔に答えられる胃袋のスペースがありません。 ライラ連合軍vsアンレーデの勝負は、一方的にアンレーデの敗戦に終わった。それでも過去にないほどの量を食しているのだが、姫が考え抜いた策の方が上手だったか。 話のネタに事を欠かないOFF会も店側からお茶のサービスが出てきたのを機にいよいよ幕引きとなる。今回はいつも以上に奮戦したつもりだったが、周囲からの反応は冷たかった。 レナ :「アンレさんあんまり食べなかったんじゃないですか?」 アンレ:「いぁいぁ、体重が2倍になるほど食べたよ。」 顧問様:「アンレさん、あんまり飲んでなかったね。」 アンレ:「いぁいぁ、体重と同じぐらい飲んだよ。」 まだまだ認めてもらうには先が長いと、到達地点までの道のりが遠く茨の道であると再確認する。 2次会の話が出てきて場所や参加者を募っていると、wol卿からスゴイ言葉が。 wol:「明日仕事やから2次会はパスで。」 ジョコ:「仕事なん?」 wol:「うん、10時ちょいの電車に乗らないとマズい。」 一同 :「それはお疲れ様ですっ」 明日も仕事があるという所をOFF会へ参加してくださったwol卿の漢気に一同感服のねぎらいを掛ける。時期的に松の内を外し、年度末の手前を選んだつもりだったが忙しい方は年中忙しいという事で、もっと日程調整を考えなければと考えさせられた一言だった。 店を出て一行は梅田駅へと向かう。夕刻よりも寒さは一層厳しくなり、皆の笑顔もどこかしら引きつっているように見える。徒歩15分、人通りが少し疎らになった駅内のとある場所で皆が立ち止まる。聞けばレナ嬢も明日仕事と言う、本当に忙しい所を参加してくれてありがとう。次回はアンレ軍として参加して欲しい。それぞれが一言二言の挨拶を交わし、それぞれの方向へと散ってゆく。残った6名は閣下、だーす卿、けん卿、ジョコンダ嬢、ルカ、ウチ、もう1杯やろうという意見の一致でけん卿とジョコンダ嬢の先導でとあるビルへと向かう。しかし、ビルの改装中の為にお目当ての店は休業中で、時間的な制約が押し迫っていたため、第6回GLOFF会in大阪は全て終了した。大阪駅まで戻りながら、けん卿がしきりに彼女さんの写メを見せようとしてくれたが、謎の女性で終わらせておく方が楽しみがある為に丁重にお断りをさせていただいた。 ジョコンダ嬢へ「また海で会おう」と言って別れ、東急INN組は宿路につく。ホテルの道向かいにあるコンビニで夜食を求める。買い物かごには焼きそばパンとヴォルビックとウコンの力とイカの姿揚げ菓子とヱビスビール(琥珀ヱビス)を購入する。5Fのエレベーターを降りた所でだーす卿と別れ部屋へと入る。エアコンで乾いた空気が喉に痛く感じる。熱湯シャワーを出しながら湿度を確保しつつ、椅子に腰掛け鏡に映った自分とウコンの力で本日2度目の乾杯。大都会大阪の深夜放送を見つつ、琥珀ヱビスを片手にOFFレポ用のメモを走り書きする。深夜3時、3枚にまとめたメモを大事にバッグへしまい込むと鈍重な体をベッドへ放り投げ眠りに就く。こうして約20時間にも遊んだ初日がようやく終わった。 OFF宴会で口にしたもの 生ビール(グラス)×3 ヨギージンジャー×1(ヨーグルトのお酒らしい) シークァーサーハイ ちゃんこ鍋(小鉢)×2 シメうどん(小鉢)×1 枝豆×9房 フライドポテト少量 たこ焼き×1個 皆、楽しい時間をありがとう。夏も集まれることを期待しています。ご苦労さまでした。 大阪2日目、この日はルカと共にぶらり散策をしようと駅構内の喫茶店でモーニングセットを食し、街へと繰り出す。 何度も足を運んでいるはずだが、ナビが居ないぶらり旅は初めてという事で記憶をたどりながら御堂筋線へ乗る。切符は230円分購入した。 難波駅で下車し、日本橋方面と思われる方向へと歩き出す。ウチの記憶に残る店を探しつつNGKホールへどうにかたどり着き、道具屋横丁を通り抜けた先に見慣れた町並みが広がる。「先日の借りを返す」為、適当に歩きながらホールを探す。しかし、この街にも5スロ1パチの波が押し寄せているらしく、勝負できそうなホールがなかなか見つからない。結局、どこかの商店街にあるホールへ入店。パチンコはほぼ満席の状態で期待が膨らむも、スロットの階は殆ど客が居らず再び嫌な予感が去来する。 ルカはペカッの機種を、ウチは昨日と同じガンダムに座る。1台目は感触なく隣の台へ移るとこの台が当たり台っぽく、5号機らしくマッタリ時間を使う勝負展開へと持ち込む事へ成功し、心中するつもりで座り込む。しかし、昨日閣下が味わった悲劇がウチにも襲い掛かる。「MSバトルモード」で仮面男の2連続襲撃に乱調したウチに下された評価は「上等兵」。もう閣下の事を笑えなくなった。 一方、ルカは勝負台が見つからずフットワークを駆使している。2時間ほど勝負した結果、ウチはチョイ勝ち。ルカは色々と食い散らかした結果、ウチの隣で連荘させて3k負けに落ち着いた。 勝負の開始時間が遅かった為、店を出たのは13時過ぎ。遅い昼ごはんを食べようと、以前に入った定食屋を探すも見つからず、落ち着いたのは王将だった。閣下から「ラーメンには手を出したらアカン」と聞いていたので、ウチは「豚の角煮丼」+ギョーザ、ルカは「チャーシュー丼」+ギョーザを注文する。1日半ぶりの米食に無言で食べる2人、想像以上に大きいギョーザに苦戦しつつもなんとか完食する。丼と一緒に出てきた味噌汁が「あさげ」味だったのがなんとなく庶民っぽく感じられて嬉しかった。 腹を満たした2人はその後日本橋を堪能する。目に付いた店へ入っては出て、入っては出てを繰り返す。しかし終盤まで2人の手元に買い物袋が握られることはなかった。そんなぶらり旅の最中、都会ならではの会話が聞こえてきた。それは服が着る人を選ぶだろうコスチュームに無理やり体をねじ込んだようなコスプレをこよなく愛しているだろうと思われる女と知り合いの男との会話だった。 謎の女:「あー、来てくれたん?」 謎の男:「ちょっとここら辺に用事があってね。」 謎の女:「ねぇねぇ、見て。髪の色変えたんよ。」 謎の男:「良いね。雰囲気変わったね。」 謎の女:「でしょう~♪」 微笑ましく痛い彼等の横を通り過ぎた後、ウチ等は共通の解答を見出した。 「髪の色よりも遺伝子から再構築してこい!」 2人の意見がこうも合致したことはここ数年なかっただろう。大都会大阪は兄弟の絆を再び強固に結びつけるという結果までもたらしてくれた。 ビル風が再び寒さを取り戻そうとし始めた頃、2人は梅田へと戻る。ホテルの裏にある飲み屋通りにある元禄寿司へと入り軽く食事を済ませ、毎回訪れる居酒屋へ入る。 アンレ:「熱燗ありますか?」 店員 :「熱燗ですか?ありますよ。」 アンレーデは命の水を手に入れた。冒険経験50獲得。 志野焼のような二合徳利がやってきた。大っぴらにガッツポーズはできないが、なんとなく何かに勝利したような気分が心を支配する。マグロほほ肉カツ、豚バラ串、フライドポテト、軟骨から揚げを1人前ずつ注文し久々にルカと2人酒で時間を過ごす。OFF会の感想や、日本橋の話、スロットについて、取りとめない話で時間を過ごし20時過ぎにホテルへ戻る。2日連続、ウコンの力で乾杯をしTVを鑑賞しつつ閣下へ「上等兵」GETの写メを送る。すぐさま返事Tellが入り、互いに笑い合った。これからONするという閣下に皆への挨拶をお願いし、2日間の疲労が睡魔を呼び熱い風呂へ入った後はすぐ眠りに就いた。こうしてルカとウチの大阪遠征は終わりを告げた。 皆で笑い遊んで意見を交換しあう、ゲーム内では話せないこともリアルだと話せることができたりする。「やろう」と言えば集まってくれる、アムス嬢やクラ卿は現地に来られないながらも電話で参加してくれた、素晴らしい身内に恵まれた事に感謝できる場がOFF会だと感じた第6回OFF会「GL新年会 2008」でした。皆ありがとう。 (大阪真剣紀行 終)
https://w.atwiki.jp/goldenlowe/pages/63.html
28