約 120,328 件
https://w.atwiki.jp/higumaroyale/pages/113.html
羆 - 野生の闘牌 「わけがわからない」というのが、ここ――温泉宿に揃った三人の共通見解であった。 年齢も性別もてんでバラバラな三人がこの場所に集ったのは、情報収集のため建造物に近寄ろうと各々が考えていたからだ。 地図には建造物が書いてはいなかったが、温泉があるなら近くに宿かせめて脱衣所くらいはあるだろうという希望的観測。 それが見事的中し、温泉からはやや離れた場所の簡素な宿が発見され、そこに三者が集ったというわけだ。 そうして情報交換が始まったのだが――時間をかけた情報交換の末に出せた結論は「意味がわからない」である。 三人寄れば文殊の知恵、とも言うが、それにも限度があった。 「そもそも、何やねん、ヒグマて」 ああ、もう、と大げさに声を上げソファにばふっと飛び込む少女。 ポニーテールを揺らして頭を掻き毟る紅一点の少女の名は、愛宕洋榎。 姫松高校という大阪の高校で、麻雀部の主将を務める少女だ。 「それもだけど……さっきの場所で起こった惨劇……」 顎に手を添え、壁にもたれ掛かりながら呟く男は伊藤芳一。 東京を根城にする極道・波城組の代打ちとして身を置いたばかりの東大生である。 “裏”の世界も多少は垣間見てきているため他の二人と比べるとまだ落ち着いている方だが、それでもあまりに理解を超えた出来事に、伊藤もまた混乱していた。 「な、なんかビームとか出してましたよね……」 最年長にも関わらず最もビクビクおどおどしたスーツの男は杉村タイゾー。 これでも政治家である。 ……女子高生よりも怯えの色が濃いけれど、一応政治家なのである。 一応、芸人とかでなく、政治家……だよ、うん……本人がそう言ってるし…… 「あれってやっぱトリックなんかなぁ? そうやったとしても、そんな大掛かりなトリック仕掛ける意味が分からへんねんけど」 ソファの上で転がりながら、洋榎が疑問を投げかける。 あの場で処刑された男は、明らかに人智を超えた攻撃を行っていた。 そして、ヒグマの方も、人智を大幅に超えた形でその攻撃に対処している。 にわかには、あれが種も仕掛けもないものだとは思えない。 「……こういう催し物に巻き込まれる心当たりとかがあれば、そこから大掛かりなトリックを仕掛ける意味に辿り着けるかもしれないけど」 少し迷って、伊藤が問う。 伊藤はヤクザと繋がりがあり、単なる殺人遊戯になら巻き込まれる可能性は0ではない。 しかしそんな伊藤とは違い、目の前の二人からはそういう闇社会との繋がりがほとんど感じ取れなかった。 特に洋榎はどこにでもいる明るい女子高生という印象を受ける。 こういうあらぬ疑いをかけるような質問をすることすら憚られた。 「ないないない、あるわけないやん。全く無いんてぃーん無いんやわ」 しかし特に気にするという風でもなく、洋榎は冗談めかして答えた。 洋榎自身、伊藤達と出会う前に、こんな目にあう心当たりを考えている。 ちなみにその時出た結論も「何で巻き込まれたのかわからん」というものだった。 『何かしらの共通点があれば新たな気付きに繋がるかもしれない』と、出会った者にこの質問をすること自体は格別おかしなことではない。 むしろ多少頭がキレる者なら当然の質問だ。 伊藤の評価を、洋榎は心の中で上方へと修正する。 この男は、自分と同じく、ここに来る前から色々とちゃんと考えている、と。 「自分らは、心当たりとかあるん?」 無いだろう、とは思いながらも洋榎が聞き返す。 その際に首を向けてきていたので、伊藤は言葉には出さず黙って首を横に振った。 「まあ、せやろなあ」 正直に言うと、伊藤には、多少だけなら理由に心当たりがある。 新入りとはいえ、ヤクザの代打ちなのだ。 背中には既に刺青を背負っているし、それだけで“狙われる理由の心当たり”には十分だ。 「拉致にヒグマに波動砲にと、意味分からんモンが多すぎるわ」 しかしながら、大袈裟な溜息と共に洋榎の口から飛び出してきた言葉の通り、理解を超えた要素があまりに多すぎる。 もしもこれが、クマと殺し合わせるだけだったり、拉致されただけだったり、理不尽な殺し合いだけだったりしたら。 きっと復讐か粛清か、はたまた他の組からの攻撃だろうと思えていたかもしれない。 しかし、それらが複合されたうえに理解不能な飛ばし技まで目にしてしまっては、「たかだかヤクザの代打ち相手にここまでするだろうか」という疑問を持たずにはいられない。 そして、そんな疑問を胸に抱いてしまった以上、不用意なことを気軽に口にすることはできまい。 ましてや相手にも心当たりなどない状況だ、自分がヤクザと繋がりがあることなんて黙っているに越したことは無い。 自称議員の男の前でなら特に。 「あ、あの、も、もしかしてなんですけど」 そんな自称議員様が、青い顔で口を開く。 もしや議員レベルでないと知らない何かが裏で動いているのか―― そう思い、伊藤も洋榎も黙ってタイゾーを見つめた。 「これ、ナチス軍の奇襲か何かなんじゃ――」 が、口から出てきた単語はロクでもないものだった。 思わず洋榎の口から大きな舌打ちが飛び出す。 「あんなぁ、場ぁ和ませよう言うのは悪ないけどな、ンな期待煽る前振りの後にそういう反応しにくいボケは……」 さすがに引くわぁ、なんて思いながら、洋榎は苦言を呈そうとする。 しかし、視界の端に真剣な目の伊藤を捉え、言葉を発するのを忘れた。 そんな洋榎に代わり、伊藤が代わりに問いかける。 「そのナチス軍とやらについて、知ってることを教えてもらってもいいですか?」 もしかすると、ナチス軍は何かしらの隠語なのかもしれない。 もしかすると、自分達の知らない所にヒントが転がっているのかもしれない。 そう考え、伊藤はタイゾーの言葉に耳を傾けた。 少なくとも、心当たりが僅かでもあるのなら、聞き出しておくに越したことはないからだ。 しかし―――― 「なるほど、ほんで、蘇ったヒトラー達と麻雀しとって、大将戦を前にして拉致されてもうたわけね」 はぁ、とため息をつく洋榎からは、落胆の色が見て取れた。 無理もない。 タイゾーの口から出てきた話は、絵空事そのものだったのだから。 「いや、うん、すごいね、でもごめん、時間返して」 蘇ったナチスの地球進行を阻止すべく麻雀バトルを繰り広げていた日本政府。 そのナチスによる、大将戦前の突然の奇襲なのではないか。 クーデターの煽りで一部過激派がそういう行動に出てもおかしくない――それがタイゾーの考えだった。 んなわけねーだろ頭わいてんのかボケ――それが話を聞いた洋榎の考えだった。 「いやいやホントなんですって! 信じて!!」 必死の形相でタイゾーが言う。 タイゾーが付き従う総理大臣・小泉ジュンイチローとはぐれた今、誰かに守ってもらわなくては生きていけない。 麻雀卓での勝負なら一人でもそれなりに頑張れないこともないけど、ヒグマが闊歩する中での肉弾戦とか無理無理マジ無理ぜってー無理。 何とか今の危機的状況を理解して貰って、一緒にジュンイチロー達にSOSを届けて貰わなくては。 「そうは言うても、今の話のツッコミどころだけで打線組めてまうで」 タイゾーに呆れはしたものの、別に洋榎はそれでタイゾーを軽蔑したわけではない。 悪い人ではないのだろうと思っているし、ダメ出しについても半分くらいはネタのつもりであった。 何にせよ意味が分からない状態に変わりはないのだ、一緒にいられる相手を逃す理由もない。 「伊藤さんやっけ、アンタもそう思うやろ?」 しかしながら、洋榎は冷静な頭でタイゾーの評価を下し終えていた。 悪い人じゃないし、一緒に居ようとは思うが、真面目な意見を求めてもしょうがないと。 そして、真面目な話をするなら、伊藤を相手にするしかないと。 「いや……すごく言い難いし、目が曇っただけかもしれないけど……」 しかしながら、その伊藤は、冷や汗をひとつかきながら、タイゾーの目をじっと見ていた。 そして、至極言い難そうに、その言葉を口にする。 「多分……杉村さんは嘘を吐いてない……」 「はぁ!?」 洋榎が驚くのも無理はない。 伊藤自身、自分がとんでもないことを口走っているのはよく分かっている。 しかしながら、物事の真実を見極めるべく鍛え続けた己の目が、そう結論付けたのだ。 博徒として生きた証である己の“目”とそこから来る判断を、偽ることなど出来やしない。 「いや……俺も正直真実とは思えないけど…… でも彼の目は、嘘をついてる目や、それを装おうとする者の目じゃない……」 師に言われ、沢山の人間を観察してきた。 誰かを騙してやろうとする目も沢山見ている。 しかしタイゾーのそれは、嘘を吐き相手を騙そうとしている者のソレとは異なって見えた。 「ちょ、ちゅーことは、まさかマジでナチスが云々やっちゅーん!?」 洋榎は、伊藤のことは、この短時間でかなりの切れ者だろうと評価していた。 一番冷静であったし、的確に情報交換を進めてくれていた。 彼にならまとめ役を任せられると思ったし、だからこそ自分は深く考えずに思いついたことを言ってもいいと判断したのだ。 キッチリとしたまとめ役は参謀に任せ、自分は“いい空気”を作るべく好きに動く。 それが洋榎のやり方だ。 「まあ、本人は真実として語ってるってだけだから、クスリか何かの常習犯で、そうだと思い込んでることを言ってるだけって可能性もかなりあるけど」 「おいおいおっちゃん、クスリはアカンで、人生ぶっ壊れてまう」 「してないからね!?」 だから――洋榎は、少しだけ認識を改める。 伊藤に対する評価を、ではない。 自分の今の現状に対する認識を、だ。 洋榎自身、人を見る目はある方だと自負している。 そして、頭脳派というキャラでないことも自覚している。 ならば、そんな自分と伊藤の意見が食い違ったらどうすべきか。 どちらを信じ、どう改めるべきかなど決まっていた。 どうやら、もう、自分の常識を盲信できる状況ではないらしい。 これからは、本当に気まぐれに放った一言がたまたま的中しました、くらいのことがあってもおかしくないと思わなくては。 「っていうか、俺おっさんって言われるほどおっさんじゃないからね!?」 「いやいや、もうおっちゃんやろ、議員せーんせ」 ケラケラと冗談めかして洋榎が言う。 ナチス発言のせいで意味の分からぬ形で行き詰まりかけてた空気が一気に穏やかなものとなる。 「先生……いい響きだ……」 「よっ、未来の総理大臣!」 「いいねー! いいねー! 僕のこたぁ杉村先生、もしくは杉村総理大臣候補とでも呼んでくれたまえ!」 「ほんならその秘書予約しとくわーこれで将来安泰や」 伊藤としても、この空気は歓迎すべきものだった。 真面目な話し合いの空気ではなくなったが、おそらくアレを突き詰めた所で納得のいく答えは出ないだろう。 それよりも、今後共に行動することになろう人間と交流を深めておく方が有益だ。 「あ、ほんならウチのことは下の名前、洋榎で呼んでや」 「おいおい、未来の総理大臣だからって惚れてもらっちゃー困るね、未成年とは合意の上でも――」 「アホぬかせ。妹おるから、苗字で呼ばれ慣れとらんねん」 「あ、そーいうことね……」 それに、ふざけあっている内に、タイゾーの顔からも怯えの色が薄れてきた。 元来調子に乗りやすい性格なのもあり、洋榎と話している内に「あれ、これなんとかなるんじゃねえ?」と思えてきたようだ。 まあ、単に恐怖を忘れただけとも言えるけど。 「じゃあ、僕はよっちんでいいですよ」 伊藤も、その輪に歩み寄る。 自分も馴染んでおくに越したことはない。 ――背中に“背負う”前だったら、そんな打算など抜きに、親しげに話しかけて輪に溶け込んでいただろうけど。 「……皆からも、そう呼ばれていたから」 少しだけ、よっちんの目に寂しさの色が宿る。 よっちんの背に“墨”が入ってしまうより前、麻雀を楽しみながら極めようとしていた頃。 尊敬する師や気さくな兄弟子、共に競った弟弟子からそう呼ばれていた。 今はもう、その日々も遠い。 過去形に、してしまう程に。 「おう、よろしくなーよっちん」 それに気付いてなのか否か、洋榎がわざとらしいくらいに明るい声でバシバシとよっちんの背中を叩く。 それから、ちらりと視線を動かした。 その先には、温泉宿にはやや不釣り合いな少々豪華な自動卓が。 「とりあえず、ナチス(笑)が麻雀で地球侵攻(爆笑)狙とるんなら、対抗する練習しとこか~?」 なお、この発言をする際一々吹き出しそうになっていたのだが、それを忠実に再現すると非常に読み難くなるため割愛する。 タイゾーはぷんすこ怒っているが、洋榎がゲラゲラ笑っているのもあって、微笑ましい光景となっていた。 それを見て、よっちんの顔にも多少なり笑顔が戻る。 「っていうか、君ちゃあんと麻雀打てるの?」 自分は出来る、それも上級者だ――言外にそう言いながら、タイゾーが洋榎に言う。 その高圧的態度に対抗でもするように、ふふんと鼻を鳴らして洋榎が無い胸を張る。 「はっはん。姫松高校麻雀部の美少女エースを知らんとは、アンタさては潜りやな?」 麻雀部なんてある高校も存在するのか―― そんなことを思いながら、よっちんが横槍を入れた。 「僕も、一応打てるよ」 一応なんてレベルでなく打てるし、それこそ学生麻雀選手権の覇者なのだが、そういうものは鼻にかけて宣伝するものではないと知っている。 実力と言うのは、卓を囲んでから、闘牌を持って知らしめるものだ。 「あ、そーなん? ほんなら、うちの支給品別に要らへんかったなぁ」 そんなこと言いながら、洋榎がデイパックから一冊の本を取り出してみせる。 『サルでも分かる麻雀講座』と題を付けられた麻雀入門書のようだ。 帯にはデカデカとゴリラの写真が貼ってあり、「ウホッウホウホウホウホ、ウッホーーーー!!」と猿人雀士代表オラ=ウータン選手による賞賛のコメントが寄せられている。 「そういえば、自分らは何貰ってん?」 この雰囲気なら、仮に銃が出てきたとしても一気に殺伐とはならないだろう。 むしろ何か起きてから出てきた方が嫌であると判断し、洋榎が今こそ好機と切り出した。 「オレはこんなのだったけど……」 タイゾーが取り出したのは、やはり洋榎と同じ紙の束。 洋榎のソレと違う点と言えば、製本されて一冊の本になっていた洋榎の支給品に対し、タイゾーのソレは一枚ずつの紙が単純に輪ゴムで束ねられているだけということが挙げられる。 それは、所謂年賀状というやつだった。 皆、もう11月も終わりだぞ! そろそろ年賀状の足音が近付いてきているな! 「僕のが、その自動卓だ」 「ふぁ!?」 「え、これ自分の支給品なん!?」 三人の中で、最初にこの温泉宿にきたのはよっちんである。 というか、よっちんだけは、ここからスタートしていたのだ。 支給品である自動卓の横でスタートしたよっちんは、催し物の趣旨に合わない支給品を前に、どう出るべきか決めかねた。 故に待ちに徹し、情報集めを優先したのだ。 (ますます持って、俺達に何をさせたいのか分からなくなってきたな……) 三人が三人共、とてもではないが殺傷力のないものを配られている。 これではただヒグマによる晩餐会のメニューになれと言わんばかりではないか。 一体何をさせたいのか。 「ええなあ、これ。配牌までしてくれるやつやん」 ボタンを押すと、牌山と同時に手配がせり上がってきた。 如何に名門姫松高校と言えど、そこまで豪勢な自動卓は置いていない。 持って帰れないだろうか、などと思いながら、洋榎がアレコレ自動卓を見始めた。 「で、どーする? 打つ? 相手になるよ?」 主導権を握ろうとでも考えているのか、それとも単なる思考停止の現実逃避か。 何にせよ、タイゾーは割りと麻雀に乗り気な様子で、よっちんに問いかけてきた。 「……ま、半荘くらいなら」 本当は、こんなことをしている場合ではないけれど。 うだうだ話し合いを続けても進展しないだろうし、ここらで交流を兼ねて半荘打つ程度なら悪くないだろう。 ……よっちんに流れる血が、麻雀を拒絶できなかったというのもあるけれど。 「それじゃ、サンマやな!」 ウキウキしながら、洋榎がサンマ――三人麻雀の準備を進める。 牌を三麻用に入れ替える作業に手馴れているのは、よく友人と三麻に興じていたからだろう。 関西――特に大阪では、三人麻雀が盛んなのだ。 「赤はどーする?」 「俺は有りでも無しでも」 「やっぱ有りの方が面白くない?」 「ほんなら、いっそ全赤にしてみる? 北ドラと合わせてハイパー高火力のクソ殴り合い出来るで」 ケラケラと笑いながら、五筒と五索を赤いものと入れ替えていく。 全てを赤に変えようとしているのを見て、タイゾーが慌てて止めた。 「いやいやいやいや、さすがにそれは無いから!」 「それだけ赤があると、半荘で相当な金額が動くことになるな……レートは?」 「しかも賭けるんだ!?」 相手が素人と女学生ということもあって、タイゾーは何も賭けないと思っていた。 というか、自分が圧勝してドヤ顔するための麻雀のつもりでいた。 「まあ、言うて財布とかも盗られとるし、ヒラでええやろ」 「それもそうか」 「ちなみに赤は結局どーするん?」 「全赤はダメだって。普通の枚数にしよう」 ワイワイとした雀卓の空気。 もう長いこと、味わっていないものだった。 ただ騒がしいだけの学生集団なら雀荘で何度か見ている(そして眉をひそめていた)が、洋榎達から感じるものはあの集団のそれとは少し異なっている。 麻雀に対して真摯でないいい加減な連中のソレとはまた違う、麻雀に対して真摯であり楽しもうとしているが故の賑い、という印象を受けた。 「赤ばっかりはアカン、ってか」 ゲラゲラと笑う洋榎と、あまりのくだらないギャグに表情を凍らせるタイゾー。 しかし次第に洋榎の顔の方が凍りついていく。 対照的に、その表情に疑問を抱いたタイゾーの顔が温度を取り戻した。 「どうかし――――」 「……アカン」 何故ここに来て天丼なのか。 その顔芸みたいな驚愕の表情を挟めばウケると思ったのか。 「いや、アカンてこれ」 ひくついた口でそう言いながら、洋榎が背後を指さす。 一体何だと振り返り、タイゾーも、よっちんすらも、セメダインも裸足で逃げ出す速度で顔が固まった。 「ヒグマさんって、サンマに引き寄せられる習性とかあってん?」 視界の向こう、ロビーからヒグマがこちらに入り込んでくるのが見えた。 「いや、ヒグマの主食は鮭とかであって、サンマを食べるって話はあまり聞いたことないな……」 冗談めいたやりとりをしていても、よっちんと洋榎の心は決して穏やかではない。 むしろ何か呟かないと発狂してしまいそうな程焦っている。 「う……うぅわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」 洋榎とよっちんの二人は、発狂“しそう”という段階で何とか踏みとどまれた。 しかしながら、タイゾーは、タイゾーだけは、踏ん張り損ねてしまう。 恐怖に負け、思わず駆け出してしまった。 「馬鹿! クマに背を向けちゃ――――」 よっちんは、博識である。 ヒグマによる事故・事件の新聞記事も見たことがあるし、クマに背を向けて走ってはいけないことは、常識として知っていた。 勿論、急に現れたヒグマに対しソレをきちんと実践できるのはよっちんが凄いからであり、普通の人がソレを知ってても実行できるかどうかは別問題なのだけど。 「ひぃ!?」 ヒグマには、背を向け逃げる者を襲う習性がある。 それはもはや本能レベルで刻まれたものであり、ヒグマ本人の意思とは無関係に体が動いてしまうのだ。 当然のようにヒグマの体が弾かれたようにタイゾーへと向かっていく。 鹿をも捉えるヒグマの瞬発力は、人間にどうこうできるレベルではない。 タイゾーのひ弱な体は鋭利な爪でバターのように切り裂かれる――――はずであった。 「ひいいいいいっ……」 のしかかられ、タイゾーがガタガタと震える。 しかし、いつまで経っても命を刈り取る一撃は訪れなかった。 (おかしい……どういうことだ……?) よっちんの疑問は尤もである。 ヒグマは本来逃げる獲物を仕留める習性を持つもの。 なのに何故、未だにタイゾーは傷ひとつ付けられていないのか。 「……グルルルル」 唸り声をあげながら、ヒグマがタイゾーの顔を眺める。 このヒグマ、お察しの通りただのヒグマではない。 “あの”イチローを相手に野球で接戦を披露し、ユニフォームを受け継いだヒグマ――通称ヒグマイッチなのだ。 そもそもユニフォームと帽子を身に纏っていること自体異常であるし、よっちん達の知るヒグマのソレとは異なっていた。 「ウォー……ン」 ヒグマが悲しそうに呻いた。 ヒグマの胸には、イチローとの戦いを通じて得たサムライスピリッツがある。 受け継いでしまった、正々堂々とした勝負を是とするスポーツマンシップがある。 それらがこの一方的な虐殺を良しとせず、本能のままにタイゾーを狩り殺すことを拒んだのだ。 「ひいぃぃぃ……こ、殺さないで……!」 タイゾーが大量の涙を撒き散らしながら懇願する。 その言葉を聞き悲しそうに目を細めながらも、ヒグマは静かに首を横へと振った。 ヒグマは、賢い。 その知能は犬をも超えると言われている程であり、理解力・判断力・学習能力という点では動物の中でも最上位に位置している。 だからこそ、理解してしまっているのだ。 自分がこの舞台に立たされている意味を。 自分に課せられた使命と、それを後押しする本能を。 だから、見逃すことなど出来ない。 授けられたスポーツマンシップとサムライスピリッツに背くようで心は痛めど、見逃すことなど出来はしない。 「ま、麻雀っ……!」 それは、論理的思考に基づく発言ではなかった。 ただの命乞い――いや、その域にすら到達していない、単なる思いつきの発言。 追い込まれ、何を言えば助かるのかも分からずに、ただ目に入った自動卓を見て口をついて出ただけの言葉。 「麻雀勝負なら負けないからっ……!」 しかしソレは、ヒグマの心をくすぐるには十分だった。 「おいおいおい……」 洋榎が思わず声を漏らす。 麻雀発言を聞いて、ヒグマが顔をタイゾーから離したのだ。 洋榎以上に驚いたタイゾーが、数瞬の硬直の後、必死に言葉を続ける。 「お、お前より点数を上回ったら、見逃してくれ……!」 何故、ヒグマが麻雀という単語に反応したのか。 よっちんには、その理由が分からなかった。だから、考え込んだ。けれども結論は出なかった。 洋榎にだって、その理由は分からなかった。だから、麻雀という単語に反応したわけではないと、自分の気のせいだったのだろうと結論付け、他の脱出方法を模索する方向に切り替えた。 しかし――タイゾーにだけは、心当たりがあった。 洋榎達は信じていなかったため、頭から抜け落ちていた可能性。 即ち、この催し物にナチスが関わっているという可能性だ。 限りなくありえない話ではあるが、死んだはずのヒトラーが蘇り麻雀を打っていることと比べれば、ヒグマが麻雀を打つことくらいあってもおかしくないと思っている。 いや、実際はおかしいのだが、少なくともタイゾーの知る常識では100%無いとは言い切れないのだ。 だからこそ、ナチスの手先か何かである可能性に行きあたり、麻雀勝負を仕掛ければ乗ってくるのではないかと判断したのだ。 「お願い! プリーズチャンス!! 正々堂々イカサマなしで決着つけましょうよ、ねっ!!」 必死の懇願だった。 だから、ヒグマは聞くだけ聞いてやった。 そして――正々堂々という単語に、受け継がれたサムライスピリッツとスポーツマンシップが反応してしまう。 「……ウォウーン」 重低音で唸り声を上げ、ヒグマがタイゾーの上から退く。 それは、タイゾーの死が遠ざかったことを意味した。 (……ダメだ。俺の理解を超えている……) しかし、それは同時に、よっちん達に死が近付いたことをも意味していた。 今、ヒグマは出口の近辺に陣取っている。 正面出口から出ることは無論不可能だ。 可能性があるとしたら、タイゾーを犠牲にし、捕食に夢中になってる間にこちら側の窓か少し離れた裏口からの脱出だったのだが―― ヒグマがタイゾーの捕食をやめ、いつでもこちらに飛んでこれるようになった今、それも難しいだろう。 もう、逃げることすら許されない。 理解と常識を超えたヒグマの思考に希望を抱くことしか出来ない。 己の行動で、未来を切り開くことなど出来ないのだ。 「……なんか、うちの中のヒグマに対する常識が音を立てて崩れてんねんけど」 別に、これまでもヒグマに詳しいわけでは決してなかったが、少なくとも、洋榎の知るヒグマは本なんか読まない。 仮に本が置いてあることを認識しても、「何やねんこれ食えるんかいな(パクー」で引き千切るのが関の山。 そんなザ・獣みたいな認識だった。 「奇遇だね……俺もだよ」 しかし、実際に目の前にいるヒグマは、出しっぱなしにしてあった麻雀入門書を読んでいる。 それも鼻先でページをめくる、などという原始的スタイルではない。 きちんと前足を使い、ページをめくっているのだ。 「ヒグマは確かに高い知能を持つと文献で目にしたけど……」 ヒグマは、とても賢い生物だと言われている。 狩りにおいても、効率的に獲物を狩るため先回りをする等、“戦略”を駆使する。 そして、自身のものだと決めたものへの異常な執着心は、記憶力の高さを裏打ちしている。 「ここまで高いとは、想定外だ」 誰から教えられるでもなく戦略を編み出す応用力の高さと、強い執着に裏打ちされた記憶力の高さ。 この二点は、『学習能力』というものに大いに関わってくる。 もしもこの二つの力に秀でたヒグマがいたとして、文字を教えられた場合、果たしてヒグマは文字を読むことが出来るのか否か。 まだ学術的に証明はされていない。 しかしながら、犬より賢いとされ、道具が使えないという一点だけで猿以下の知能とされるヒグマならば、あるいは。 ヒグマの中でも高度に脳が発達した固体ならば、あるいは。 サルの域に、届くかもしれない。 それどころか、ヒトの域にすら届いてしまうのかもしれない。 「恐らく……何らかの教育が施されている」 そして、よっちんの読み通り、このヒグマは主催によって多少の教育を受けている。 空が飛べるようになっていたりオーバーボディだったりと、多少個性をつけるために主催も少々ヒグマを調教はしていた。 この固体は、ヒトの言語と文字を教え込むことで、高度な頭脳線を可能にするべく生み出されたヒグマなのだ。 「目的は分からないが……下手に動かない方がいいかもしれない」 もっとも、主催の目論見は外れた。 高度に発達した頭脳でイチローとの対決方法を理解したまではよかったものの、彼の持つスポーツマンシップまでをも吸収してしまうとは、このヒグマロワ主催の目をもってしても読めなかったのだ。 おかげで即殺とはいかず、こうして彼らに生きるチャンスを与えてしまっている。 ……まあ、参加者同士の殺し合いでありヒグマばっかり殺しちゃ駄目だしある意味いいっちゃいいんだけどさあ。 「それに……多分だけど……」 よっちんに一筋の冷や汗が流れる。 言葉に出してしまうことで、それが現実のものとなってしまうようで。 飲み込みたくなったこと場を、なんとか口外へと押し出す。 「……あいつは、僕達の言葉を理解している……」 それは、動かないまま逃走方法を話し合うのは不可能だということを意味している。 ありえないと言いたくなるし、そんな仮説で逃げるのを諦めていいのかという想いはあるのだが―― よっちんの中の危険察知能力のようなものが、その楽観視を諌め続けているのだ。 「そ、そんな……じゃ、じゃあどうすれば……!」 いつの間に漏らしていたのか、ズボンを尿でぐっしょり濡らしたタイゾーが、一人離れた位置で嘆く。 あまりの絶望感に、再度尿が漏れそうだった。 もしもヒグマがこちらの言語を理解していたとすると、ここで通しのサインを決めることすら出来ない。 堂々と欲しい牌を口にすることで悠々全員点を稼ぐという戦法も、当然ながら使えないのだ。 「勝つしかないだろ……真っ向から……」 麻雀で、後れを取るつもりはない。 しかし、しかしだ。 相手はヒグマ。 何をしでかすか丸で分からない。 よっちんに、一抹の不安がないわけではなかった。 常に勝つことしか考えない洋榎ですら、うっすらと汗を浮かべていた。 「ヴゥゥルルルル……」 どれほどの時が経っただろう。 さほど大きな時間は経っていないかもしれない。 しかしながら、ただ死のゲームの開始を待たされるだけだった三人の体感では、もう何時間もこうしているようだった。 「……座れ、ってことか」 唸り声をあげ、雀卓を鼻で指し示すヒグマ。 どうやら、早くもルールを理解したらしい。 (麻雀はそんなに底の浅いゲームじゃないってことを教えてやる……) かつて、よっちんは師に、どんな相手にも敬意を持ち、教えを乞うくらいの気持ちを忘れるなと言われた。 しかしながら、今回ばかりは無理である。 ハウツー本を一読しただけの獣。 それにどう敬意を抱けというのか。 「……ま、やるしかないやろな」 よっちんに続き、洋榎が卓へと向かう。 多少ぎこちなくはあるが、強がって笑みを浮かべていた。 自分の雀力次第では生き残りの目がある――無理矢理にでも笑うには、十分すぎる理由だった。 「どーすんねん、せんせ。雀卓拒否れば行き着く先はこのデカブツの食卓やで」 風牌を伏せかき混ぜるよっちんを横目に、洋榎がタイゾーへと声をかける。 タイゾーだけは、まだガタガタと震えており、まだ覚悟が決めきれないといったような様子だった。 「……勝つ自信は、あんねんやろ?」 洋榎は、タイゾーが打てる人間だと思っている。 先刻あれだけドヤっていたのだ、まさか素人と言うことはあるまい。 「う、ううううう……」 そう、タイゾーは打てる。 総理レベルには劣れど、人並み以上には打てるのだ。 しかし、だからこそ、タイゾーは尻込みをする。 彼だけは、人間とは思えない者達の闘牌を見てきたから。 よっちんの見てきた“異次元”のように、巧の技が織り成すような異次元ではない。 洋榎の見てきた“異次元”のように、ツモる牌に偏りが生じる連中が織りなす異次元でもない。 死んだはずのヒトラーが繰り出す、賽を回さず点数移動すら行われる理解不能な異次元だ。 だからこそ、彼だけが『絶対に到達し得ない世界』を認識している。 だからこそ、ヒグマという未知なる敵に、ヒトラー達を重ね合わせて恐怖している。 「……不安なのはうちも同じや」 いつのまにか、タイゾーのズボンには追加の染みが広がっていた。 それほどの威圧感を、ヒグマに感じ取っているのだ。 さすがに少々顔をしかめるも、洋榎はそんなタイゾーのことを笑わない。 ヒグマに迫られたタイゾーが味わった恐怖を、味わってもいない自分が嘲笑えるはずがなかった。 「安心せえ。誰も死なさん」 まるで、自分に言い聞かせるように。 ぷぅ、と間抜けな音と共に大きく息を吐き出して。 洋榎が宣誓する。 ヒグマが自分の言動を、理解できているかもしれないと知りつつ。 「あの獣野郎にラス引かせたる。 全員揃って、アイツの上行きゃ目出度く全員ゲームクリアや」 洋榎の言葉に後押しされ、ようやくタイゾーも卓へと歩み寄る。 しかし―― 「な……!?」 ヒグマの腕が、横へと薙ぎ払われた。 人間なぞマッチ棒かポッキーかめん棒かとにかくなんかそんなくらい簡単にへし折れる威力の腕。 それが、よっちんの前で振るわれた。 「おい、約束ちゃうやろクマァ!」 よっちんが襲撃されたと思い込み、洋榎の頭に血が上る。 思わずヒグマに掴みかかろうとした洋榎を、よっちんの声が制止した。 「待て、落ち着け。これは攻撃じゃあない」 見ると、今度はヒグマが卓の傍で屈みこんでいた。 そして、薙ぎ払ったと思しき牌を、二つの手で掴み取る。 腕はゆっくりと卓の上空へと移動し、再び二つに分かれた。 コロコロと音を立て、雀牌が卓へと戻る。 「……出来れば次からはゆっくり牌を握ってくれると嬉しいんだけどね」 卓に落とされた風牌は3枚のみ。 これは、ヒグマが場決めで牌を選んだと見ていいのだろうか。 洋榎はほっと胸を撫で下ろす。 もっとも、数秒後には、また息を飲むはめになったけど。 「なっ……!」 ヒグマが、本のページを開いている。 そして、それを腕で指し示している。 まるで、そこに書かれたことを命令しているかのように。 「どうやら……」 よっちんが、呟く。 反論してやりたい気持ちは、先の薙ぎ払いで消し飛んだ。 今はルールに従わねば、生き残るチャンスはない。 「俺達に……三麻をやれということらしい……」 開かれたページには、三麻――三人麻雀の説明が載っている。 それから、ヒグマがゆっくりと三人の顔を見渡す。 「……おい、関西にようある四人三麻なんやろうなぁ!?」 洋榎の中に僅かな焦りが生まれる。 もし、タイゾーを励ますために発した言葉がキッカケで、ヒグマがルールを変えたとしたら。 即ち、三人で打たされ、ラスだけ捕食、ほしくはトップだけ生還などというルールにされたら。 自分達は、卓上で殺し合うはめになるのだ。 「落ち着け、洋榎」 ふるふると、ヒグマは首を横に振る。 それから、もう一度、三人を鼻で指し示し、それから雀卓へ向いた。 「……このヒグマの知能の高さから察するに、さっきのは意味のない挙動でなく、明確な『NO』の意思伝達と見ていい。 俺達は、三麻を打つしかないんだ……逆らえば殺されるッ……!」 「せやけど、それやったら――」 「確かに、その三麻で殺し合えば、誰かが死ぬ。だけど」 よっちんが、ヒグマを見据える。 確証があるわけではない。 否定されるかもしれない。 それでも、敢えて口に出す。 肯定してもらうことで、この三麻を『他の二人の力量を見る場』に出来るかもしれないから。 そのワンチャンスを、自ら掴みとりに行く。 「ここまで知能が発展していて俺達の言語すら解するコイツが、そう易易とルールを変えると思うか?」 「……え?」 「……なあ、あんた。どうなんだい?」 ヒグマのことを何と呼んだらいいのか。 分かるはずもなく、よっちんはとりあえず『あんた』と呼んだ。 幸い、意味は通じてくれたらしい。 「今回の三麻で、順位や点によってどうこうなるってことはあるのか?」 その言葉を聞き、ヒグマはまたも首を横にする。 それは、今から打たされる三麻に、命の類が一切かからないことを意味していた。 「……どうやら、そういうことのようだな」 「どないなことだってばよ」 「おそらく、半荘の流れを実際に見たいんだろう。 ゲームを見たことがあるのとルールを読んだだけなのとでは、大きな隔たりがあるし」 何だその関西弁、とツッコまず、真面目によっちんが解説をする。 「麻雀に限った話じゃない。ルールを聞くだけより実際やった方が覚えやすいなんてのは。 サッカーとか、将棋とか……スポーツもゲームも、往々にしてそういうものだ。 試しに一回やってみろ、という要求は、おかしなことではない」 要求したのがヒグマでさえなければな、とツッコミを入れたかったがグッと堪えた。 「何にせよ、折角の機会だ。二人の腕も見ておきたいしな」 そう言うと、よっちんは再び風牌をかき混ぜた。 言外に、ヒグマ戦でアシストしなければならない二人のレベルを知っておきたいと言いながら。 「命かからんのは朗報やけど……よっちんには、1つ悲報があるで」 それを感じ取り、洋榎の中の雀士の魂に火がつく。 宣戦布告するように、風牌をめくり、言った。 「うちは強いし、どんな時でも手加減なんて出来へんねん」 それから、「勝ってまうから、ごめんな」と付け加える。 その言葉に苦笑いを浮かべながら、よっちんはタイゾーにも風牌をめくるよう促した。 「まあ、それを言うなら俺もだよ」 最後の牌をめくりながらよっちんが言う。 「俺だって……麻雀でだけは、手加減ってのが出来ないんだ」 そう言って席に着くよっちんの表情は、洋榎達には見えなかった。 かつて友と別れるキッカケにもなった、麻雀への真摯な姿勢。 それを手に、またもよっちんは、卓へと座る。 あの頃のように、純粋な目で牌を触る者と共に。 ☆ ★ ☆ ★ ☆ 最初の上がりを手にしたのは、洋榎だった。 三麻は牌の種類が少なく、自分のツモ番が回ってくるのも早いので、出和了り以上にツモ和了りが期待できる。 テンパイもし易いし、高い手も作りやすい。 (さて……どちらの面子を外すか……) だからこそ、“運”と“流れ”の読み合いが、四人打ち以上に必要とされる。 皆が速く高い手を作りやすい環境ゆえ、一巡の遅れが命取りとなる。 牌がどちらに寄ってくるのか。 どこをどのタイミングで切り離せばツモを極力無駄にしないのか。 そう言った“感性”や“嗅覚”が求められるのだ。 (よし……通った) その“感性”や“嗅覚”という点では、洋榎が頭1つ抜けていた。 危険牌を感覚的に察知することもできるし、普段の言動からは想像もつかないほど繊細な思考を持って麻雀を打てる。 きちんと考え、そこに感性を織り交ぜ、攻め時を逃さない。 「ええい、怖いけどリーチ!!」 逆にそれらが最も鈍いのがタイゾーだ。 タイゾーは運量だけなら議員に相応しいものを持っている。 勿論天和やダブリーレベルではないものの、そのツモは常人なら羨む程度には優れていた。 「悪いなあ先生、それロンや!」 しかしながら、タイゾーのツモの良さは時にマイナスとなる。 カンが冴えず、残す牌に地雷が埋まっていることも多いため、素直に手を進めてしまい振り込むことが多いのだ。 「だってこんないい手に育ったら攻めちゃうでしょ!」と言いたくなる手がよく入るが故の弱さ。 己の感性を信じて役満だろうと捨てられる程、強い“芯”を持てぬが故の弱さ。 「このまま独走させてもらうでー!」 ガッハッハと笑う洋榎を見ながら、よっちんは冷静に二人の力を見極めた。 一見頭の悪い全ツッパ麻雀をしそうに見える洋榎の方がカンも冴えてるし深く麻雀を考えている。 タイゾーは初心者のように流れに乗れれば上がりを連発出来そうだが、その流れを殺せるレベルの人間が相手ではほぼ無力。 洋榎と自分なら自分の方が技術が優れているという自信はあるが、どうやら今ツキは彼女に来ているようだ。 何とかこれ以上堕ちないようにと背中に墨まで入れて背水の陣に立つよっちんと、押せ押せのまま大会二回戦を突破した洋榎とでは、勢いが違っていても無理はない。 勿論、よっちんにはそんなこと知る由もないのだけど。 「ヴォォォォォォーーーン」 局が進むと、ヒグマはよっちんの後ろへと移動した。 まるでよっちんの手を観察するかのように、べったりと張り付いている。 (光栄だね……俺が一番対策が要るとでも思ってくれてるのかな……!) もしもヒグマの目的に、『麻雀を実際見る』というものの他に『皆の癖や打ち筋を知る』が含まれているとしたら。 背後に立たれたよっちんは、現在トップの洋榎以上に警戒されてるということだ。 「ヴォォォォォォーーー……」 ヤクザの視線を背負ったこともある身であるし、洋榎達よりは背後にヒグマが居ても動揺してはいないつもりだが…… さすがに荒い鼻息に加え、何を喋っているのか理解できない咆哮や唸り声を背後で上げられると集中力が持たない。 出来れば勘弁して欲しかったが、このヒグマを洋榎やタイゾーに押し付けるのは酷だろう。 どの道この程度で動揺しててはヒグマには勝てない。 このくらいで、ダメになるわけにはいかないのだ。 (そうだ……俺はもう負けられないんだ) 全てを捨ててでも、この世界にしがみつくと決めたのだ。 今更、たかがヒグマに怯えて心折られてなるものか。 「ツモ――!」 よっちんの反撃に、洋榎がククッと笑みを浮かべる。 洋榎は、まだそこまで強い挫折を味わっていない。 洋榎の中の雀士魂は、強敵をただひたすらに求めていた。 「そうでなくちゃあ、おもんないわな」 獰猛な笑みを浮かべる洋榎と、静かに闘志を燃やすよっちん。 卓上は、洋榎とよっちんの熾烈な争いの場となった。 その煽りでタイゾーが一人沈みになっており、今にも飛びそうだったのだが、二人共特に気にしていない。 今はただ、目の前の猛者を倒すことに心血を注いでいる。 (よし、テンパイ……!) そしてよっちんに手が入った。 問題は、どちらを切るか、だ。 ここまで洋榎と打ってみて、洋榎の腕は大体分かった。 この拮抗した状況では、当たり牌を掴んだらきっちりと降りてくるだろう。 出和了りは期待できない。 さてそうなると、問題は『タイゾーが振り込むかどうか』だ。 今の状態を見るに、おそらく張ればイチかバチかに賭けて突っ込んでくるだろう。 ノーレートだし、そういう戦法を取ってきても不思議ではない。 では、タイゾーを飛ばしてしまうとどうなるか。 タンピンに受けるなら、タイゾーを飛ばしても洋榎をまくれる。 しかし敢えてタンピンを捨て嵌張待ちにしようものなら、横に曲げても一発でないとタイゾーからは上がれない。 洋榎の点数に僅かながら届かないのに、タイゾーの飛び終了となってしまう。 後者なら、ツモ和了りしか出来ないというわけだ。 (……洋榎ちゃんの当たり牌は……おそらく……) 一枚の牌に指をかける。 それさえ捨てれば、ピンフとタンヤオが確定。 どこからでも上がれるし、ツモ和了りでも条件クリアだ。 (ここまで観察してきて分かった。あの娘は、麻雀が“スレて”ない) 洋榎は、その優れたカンで当たり牌をキッチリ止めるし、捨てる順序も間違えない。 運量も申し分なく、火力も決して低くない。 そして、運やカンで多少常人の手順と前後はするものの、彼女は決して『目に見えておかしな』手順で牌を捨てることはない。 あくまで素直に、自分の運と「どちらで待つ方が良さそうか」というカンを大事にしながらも、基本に忠実な麻雀を打っているのだ。 ヒグマが見ている前でもトラッシュトークを時折見せる大胆不敵さからは想像もつかないが、基本に忠実でいい麻雀を打っている。 (だからこそ――これは切れない) これまでよっちんは、洋榎に何度か差し込んできた。 連荘中の洋榎を前に、自分もタイゾーも手作りが間に合わない時。 高めに張り替える前に、安めを振り込み上がらせてきた。 洋榎はまだ、大物手を上がれていない。 マンガンまでの手を刻んでいるからこそ、あと一歩、よっちんを突き放せないでいるのだ。 (ピンフもタンヤオも消えるが……) 今までは、黙って足を溜めてきた。 安手を上がらせ、脆い点棒を積み上げさせた。 その点棒と調子の上に乗っかる洋榎を、後は下から叩いてぶち落とすだけだ。 (当たり牌を捨てる理由など無いッ!) よっちんは、タンピンを捨て嵌張を選んだ。 捨てられた牌は、曲げられてもいなかった。 リーチも拒否。 どうせツモしかする気がないのだ、自ら手に蓋をする理由はない。 (俺の当たり牌は、まだ確実に山にいる――――――!!) 確信を持って、フォロースルーをぶち決める。 やだかっこいい。 多分これ天牌なら1ページぶち抜きで次号へ続くわ。 「ロォン」 「!?」 なお、思いがけないロンを貰い大ゴマで斜めに傾く体を映されながらビックリマークを浮かべるのも、天牌ではよくあることな模様。 「ば、馬鹿な……」 予想外の言葉に、よっちんの目が見開かれる。 その顔には、数多の汗が浮かんでいた。 カンが外れ、洋榎に振り込んだから――――などではない。 洋榎の当たり牌は、よっちんの読み通りだった。 タンピンを取っていたら振り込んでいたが、洋榎という人間の打ち筋を見極めたよっちんの読み勝ちだった。 そして、読みはタイゾーについても当たっていた。 タイゾーはまだイーシャンテン。 手は高いが、張ったら当たり牌を切り飛ばすような手構えだった。 「ヴォォォォ……ヴォン……ヴォウ……」 では、何故こうも驚いているのか。 答えは視線の先にある。 同じように洋榎も目を見開き驚愕の顔で見つめる先。 再び尿をまき散らしながらカタカタするタイゾーの視線の先。 「ロ゙ン……ヴォ……ロォン……ロン……ロン」 ヒグマが、呻き声に混ざって、『ロン』と発し始めていたのだ。 否。それは正確な表現ではないだろう。 ヒグマはずっと、「ロン」と口にしていたのだ。 上手く言うことが出来ず、唸り声になっていただけ。 「ロン……ロン……ロン……」 最初はぎこちなかった『ロン』も、次第に安定感を強めていった。 重低音で不気味ではあるが、それは紛れもない『ロン』の単語。 ヒグマは、克服したのだ。 発声しないと上がれないという、麻雀の持つヒグマお断りな鬼畜ルールを。 その高い学習能力を持って。 (あ、侮ったわけではなかったっ……) よっちんは、自身の脳みそが、そして世界がぐにゃりと歪むような錯覚に襲われた。 ロンを連呼するヒグマの姿は、クスリでも嗅がされて幻覚を見ているとしか思えないし、むしろそうであってほしい。 悪夢以外に形容する言葉が見つからないほどだ。 (だが……超えてきた……こちらの予想、常識をっ……!) ヒグマは、非常に学習能力が高い生物である。 先に記したように、記憶力・応用力共に秀でている。 人を喰ったヒグマが凶暴になるのは、『ヒトは美味いし弱いからチョロい』ということを“学習”するから。 人を喰ったヒグマに、鈴による威嚇が意味を成さないのは、『音を出してるのは未知の怖い生物でなく、チョロい餌』と“学習”された後だから、 ヒグマは、学習する生き物だ。 それも、自らの体験を経て学習していく生き物だ。 (確かに……実際の流れとか、俺達の癖だとかを知る意味もあったかもしれない……) 勿論特別頭のいいヒグマイッチは本で読んだ内容は全て暗記している。 しかしそれだけでは麻雀は打てない。 実際に見て経験することで、麻雀を知ろうとしたというのはある。 だが、それ以上に―― (でも……これだったんだ……こいつの一番の目的はッ……!) 『発声』――麻雀には絶対に必要で、しかしヒグマが経験したことのないもの。 文字情報として頭にあっても、『ロン』という単語を何と発声するのかが分からなければ上がりようがない。 だからこその、デモンストレーションの三麻。 『発声』こそが、ヒグマが最も見たかったもの。 (覚えられてしまった……これでコイツは、フリテンにさえ気をつければ、出和了りを出来る……!) よっちんの後ろに陣取ったのも、対面の洋榎を観察するためだった。 よっちんは、洋榎の高火力を発揮させぬため、安めに振り込んだり、止まらぬと判断したら鳴かせて打点を下げさせたりしている。 それ故に、洋榎を観察しておくのが、一番多くの発声を見られると判断されてしまったのだ。 更に言うと、洋榎が大口を開けて喋るせいで、その舌の動きを学習されてしまったのだ。 「ヴォォォォ……ヴォ……グオオオオ……」 大粒の汗が、握りしめた拳に落ちる。 よっちんの顔から、もはや純粋に麻雀を楽しむ気持ちは消え去っていた。 完全に、油断していた。 ヒグマはそもそも喋れないだの、所詮素人だからだの、どこかに存在していた油断。 『運気を一定状態にしていつもの麻雀が打てれば勝てる相手』とどこかでナメてかかっていた。 相手をナメてはいけないと、師に散々教えられてきたのに。 「……洋榎ちゃん」 その結果が、これである。 最終的にトップを取り自分の運気を高めながらも、洋榎とタイゾーの運気を奪いすぎないよう立ち回る―― そんな傲慢なことを考え、安めの連荘を支援し、大物手で一発逆転なんてことを考えてしまっていた。 洋榎はきっと、そうなった場合心折れるのでなくこなくそと奮い立てるタイプだと思ったからこその判断。 家庭教師等の経験から培った、その人がどういうタイプでどういう形で伸びるかを見極める目からくる判断。 「これ――上がり牌?」 はっきり言って、失敗だった。 そんな綺麗なエンディングを目指して時間を使わずに、さっさとタイゾーを飛ばして終わっていればよかったのだ。 そうすれば、ヒグマが発声を学習することはなかった。 もし仮にもう一度三麻を強要されたら、その半荘でデモは最後にし四人の決戦を始めてくれと言えたのに。 タイゾーの懇願を聞き入れたこのヒグマなら、それが通る可能性は高かったのに。 それこそヒグマは殺し合いの円滑化のため存在しているのだし、殺し合いに使う時間がなくなるからなどと言えば、最初の三麻が終わり次第決戦に持ち込めたかもしれないのに。 「え、あ、いや……ちゃうわ。すまん、うちのツモやな」 ヒグマがロンと言ったことに呆然としてた洋榎だが、よっちんの言葉で現実へと引き戻される。 よっちんのその表情から、洋榎は事態の深刻さとよっちんの伝えたいことを理解する。 (洒落にならんな……アイツ、次は別の発声しようとしとんのかいっ!) 洋榎はそのままツモ切りを行う。 仮に洋榎がよっちんに振り込んでも、まだ半荘は終わらない。 二人が狙うは、ただタイゾーを飛ばして速く半荘を終わらせることのみ。 言える言葉が『ロン』のみならば、まだ対処のしようがある。 (頼む、振れ、振ってくれ――――!) よっちんの切な願いも、タイゾーには届かない。 ただひたすら震えるだけのタイゾーには、自分がどうすればいいのかまるで理解できていない。 思考停止しそのままツモ切った牌は、よっちんと洋榎、二人をすり抜け河へと出て行く。 「…………っ!」 必死に念じ、よっちんがツモる。 指先に感じる凹凸。 それが、その牌が何か語りかけていた。 「よっし、ツ――――」 「ヅモ゙ォ……」 またも、皆の目が見開かれた。 消え入りそうだったとは言え、一応『ツモ』と発声したため、よっちんのツモは成立。 裏を見るまでもなくタイゾーが飛び洋榎をまくり半荘終了である。 「グォオ……ヅヴォ……ヅ……ツモォ……」 しかしそこに歓喜の表情などない。 ヒグマが、『ツモ』の発声の仕方を覚えてしまったのだ。 (ば……馬鹿な……早すぎるッ……!) ただの威嚇の唸り声として聞き流そうとしていたよっちん達には分からぬことだが、ヒグマは既にツモの発声練習は始めていた。 ずっとツモとロンを交互くらいに繰り返し練習していた。 聞く機会の多かったロンがたまたま先に言えただけ。 本当に、ただそれだけだった。 「ヴォン……ヴォン……ヴォ……ボ……ボン……」 ヒグマが今度は違う言葉の練習をしていることにいち早く気がついたよっちんが、点数を申告し確定した順位をヒグマへと告げる。 しかし急いだにも関わらず、「終わったぞ」と告げると同時に、ヒグマは「ポン」と発声してしまった。 『ロン』と近い発声なため、他のものより学習しやすいと判断されたのだろう。 そして、その考えは当たっていた。 このヒグマは、的確な判断を行い、終局までに3つの単語を言えるようになったのである。 「……いやー、参ったわ。ほんま。うちの待ち、そんなに透けて見えとった?」 タイゾーの漏らす尿の音と、今度は別の単語を言おうとしているらしいヒグマの声しか聞こえなかった空間に、見せかけの明るさで出来た洋榎の声が混ざった。 普段の調子を装っているが、明らかに顔色が悪い。 「気分よう上がれとる思ったら、まさか安手で上がらせられてるだけとは思わんかったわ」 洋榎は、よっちんの強さを認めた。 差し込みについても薄々感じてはいたが、よっちんの手を見て確信が持てた。 逆転手を決めるために足を溜め、そのためならトップ目への差し込みすら辞さない覚悟。 口で言うのは容易いが、そうそう出来ることではない。 「悔しいし、次はうちが一位取るで。今度は負けへん。まあ、勿論ヒグマにも負けんけどな」 そう言いながら、洋榎が風牌を集め出す。 ちゃっかり4枚風牌を入れて。 ヒグマを入れての命を賭けた麻雀(長いし、以下『ヒグ麻雀』と略すことにする)が、本格的に開始されるのだ。 「思う存分殴り合いたいし……飛び、どないする?」 裏返した風牌を掻き混ぜながら投げられた問い。 単なるルール決めなどではない。 どうすれば、ヒグマ相手に有利になるか――――それに関する相談だ。 ヒグマ相手のヒグ麻雀は、卓の外でも、開始前から始まっている。 「そう、だな……無くてもいいんじゃないか?」 飛びをありにすれば、ヒグマを飛ばして全員勝てる可能性がある。 しかし、先程飛びを経験し、更にはこれほど怯えているタイゾーに、運気があるとは思えない。 『タイゾーが飛び、しかも親っ被りなどの影響でヒグマが2着で終了』なんて可能性すらある。 そうやって自分達の退路を絶つくらいなら、自由度の高い飛び無しルールの方がいいだろう。 飛ばせるくらい雀力に差があるのなら、それを持ってして絶望的な点差を作ってやるまでだ。 「ほんなら、場決めや」 その後は、粛々と進んでいった。 ヒグマが呻き続けているのが不気味としか言いようがないが、仕方がない。 何せ先程洋榎が散々トラッシュ・トークをしていたのだ。 ヒグマの恐怖を紛らわせるため仕方ないことなのだろうと目を瞑っていたせいで、余計なお喋りを咎めることも出来やしない。 「……スタート、やな」 起家の洋榎が、サイコロを回す。 命がけのヒグ麻雀。 文字通り、その賽は投げられた。 【ヒグ麻雀】 半荘1回。 飛び無し、喰い断有り、後づけ有り、赤4枚。 終了時、ヒグマの持ち点を上回っていればゲームクリア。 ヒグマの持ち点を下回ったものはヒグマの餌となる。 東:愛宕洋榎 南:タイゾー 西:伊藤芳一 北:ヒグマ 自動で競り上がってくる手配を見て最初に抱いた感想はまちまちだった。 洋榎は最後にまくられたのもあり多少手が落ちたものの、なかなかの好配牌。 本人も「これは幸先ええな」と思っている。 よっちんは、火力が高く綺麗な手だ。それも配牌イーシャンテン。 しかしながらピンフやイーペーコーの複合なため鳴くには厳しく、ヒグマが新たな言語を会得する前に早上がりしたい身としては複雑な気持ちだった。 タイゾーの手は、もう大分腐ってきていた。 議員レベルの配牌でなく、もはや一般人レベルの特筆すべき点のないような配牌。 それでもクソ配牌とまでは言えないし、まだ希望はあるのだが、死への恐怖がその道を見つけねばならない目を曇らせている。 そして、ヒグマは―――― 「グルルリィィィ……」 口の端から白い息を漏らし威嚇じゃねーかとしか言えないような声を漏らしながら、牌山へと手を伸ばした。 己の手への感想は特に無い。 人生初麻雀のヒグマには、さすがにこれが好配牌かどうかまでは分からなかった。 「グォ……!?」 そして悲劇は起こる。 ヒグマが、牌山を崩したのだ。 その手が大きすぎる故の悲劇。 ヒグマの巨体は、麻雀には不向きだったのだ。 「ちょ、チョンボォ!」 鬼の首を取ったかのように、タイゾーが叫ぶ。 恐れも忘れ、ヒグマを思いっきり指差した。 「……チョンボは、あの本にも載っとったやろ」 タイゾーの言葉に、ここぞとばかりに洋榎も乗る。 こうなると飛びを有りにしておくべきだった気がするが、まあいいだろう。 ヒグマがチョンボをする度に、生還が近付くのだ。 「罰符や。点数貰うで」 心なしかヒグマがしょげたような顔をする。 結構可愛い。 卓の三人にそんな感想抱く余裕はないけれども。 (よしよしよしよし! 行けるぞこれ! あのクマ、ホントに麻雀知らないっぽい!) タイゾーの顔に、目に見えて生気が戻る。 ヒグマに対する恐怖が薄れ、生き残れるかもしれないと思い始めた。 それが仕切り直された配牌にも影響する。 (一応、踏みとどまってはいるが……) 一方のよっちんは、配牌を見て眉を顰めた。 まだ配牌が腐るとまでは行っていない。 しかしながら、先ほどのヒグマのチョンボが彼の流れを塞き止めたのか、手が少々落ちたように思えた。 手順を誤ると、このままズルズルと行きかねない。 「は、はは……またチョンボチョンボチョンボォ!」 数巡後、再びヒグマが牌山を崩した。 鬼の首を取ったかのように、タイゾーがそれを指摘する。 再びヒグマが点棒を吐き出して、仕切りなおす形となった。 「ツモォォォ!」 先の懸念の通り、仕切り直してもよっちんの手は進まなかった。 手順を誤り裏目ることこそなかったものの、結局テンパらないまま、タイゾーにツモられた。 意外なことに、先程一番死に体だったタイゾーが、一気に運を引き寄せている。 生来の運量ならよっちんを大きく上回っているのに加え、恐怖に怯えた状況がヒグマのチョンボで消し飛んだのが大きかったのか。 意気揚々とツモ上がるその姿は、先程までの失禁野郎と同一人物には思えないほどだ。 「あ、すみません、つい」 上がってから、タイゾーにちょっとデカい手だったかなという想いが芽生える。 直撃狙って手を作り直せなんて言われるんじゃ、と思いながら、許しを乞うような媚びるような表情で頭を掻く。 しかし洋榎もよっちんも、そんなタイゾーのリアクションをまともには見ていない。 二人の視線は、ヒグマへと向けられている。 「いや、ええで。全然ええで。大歓迎や」 この局は、タイゾーが上がりきった。 ――上がりきるまで、ヒグマが牌山を崩さなかった。 「最終的にうちら皆がアイツを上回っとればええんや、上がれる時に上がっとき」 洋榎もよっちんも、表情が硬い。 無理もない。 ヒグマが、この僅かな局で、ツモり動作時の牌山崩しを克服したのだ。 その成長速度は尋常ではない。 「さっさと終わらせてしまおう……」 調子に乗ってるタイゾーは気付いていないが、その事実は二人の心から余裕を奪い去った。 間違いなく、奴の成長速度からすると、半荘が終わるまでに「リーチ」と「チー」の発声くらい覚えるだろう。 チーはともかく、リーチを覚えられたくはない。 チョンボで生まれた点差を維持して局をさっさと進めていくに越したことはないだろう。 最悪、沈んだのが洋榎かよっちんならば、調子に乗って冷静に場が見れなくなったタイゾーを踏み台にヒグマの上まで行けばいい。 むしろそれをするためには、後々踏み台にしやすいタイゾーに点を稼げる内に稼いでもらう必要がある。 ツモ和了りというヒグマの点まで減らせる形で貯金を増やしてくれたのだ、咎める理由はどこにもない。 「悪いな、それロンや」 今度は洋榎が上がる番だった。 意外なことに、上がった相手はタイゾー。 まだ奪うには早すぎるタイミングだが、今のタイゾーの勢いなら放っておくと無駄に連荘してしまいそうと判断してのことだろう。 そう結論づけ、特に何を言うでもなく、よっちんは賽を回す。 「ロン。12000」 今度はよっちんの親満炸裂。 相手はヒグマ。 初めてヒグマが振り込みにより点を失う。 (悪いが……実質3対1なんでね) よっちんは、まだ余裕のある序盤だからこそ、見逃しも行う。 確かに急がねばならない。 しかし、急ぎすぎてヒグマの射程に居続けるのも恐ろしい。 ならば、ヒグマが当たり牌を掴んでそうな気配の時に、他家の捨て牌を利用してそれを放り出させるのがベスト。 スジくらいしかまともに理解できていないレベルなら、スジ引っかけも効果的だろう。 とにかく、余裕があればヒグマを狙い撃つ算段だ。 それならば、連荘で時間を食ってしまうリスクに見合うリターンが得られる。 「ロンッ!」 確かにヒグマの成長は目覚ましい。 つい先程初めて麻雀というものを知ったケダモノとは思えない程であり、時間をかければ一流雀士になれる可能性だってある。 「悪いなあよっちん。うちも一方的にボコられるってわけにゃぁいかんからな」 しかしながら、この卓にいる者は、ヒグマを除き全て一流の雀士。 運なりカンなり技術なり、何かしら人並み外れたモノを持っている。 いきなりその輪で何か出来るほど、麻雀というゲームの底は浅くない。 (……これは、先に咎めておくべきだったな) 洋榎の悪いクセの1つが、上がる度に調子に乗った発言をし、点数申告を度々忘れることだ。 言わずとも皆がキチンと上がり役に即した点棒をくれる環境に慣れすぎて、ついつい申告を忘れる。 これは、テレビカメラが入っており対局相手が点数を誤魔化せない環境に身を置いていた弊害と言えた。 タイゾーも調子に乗りやすい性格で先程洋榎がドヤ顔を披露する度にワイワイ騒いでいたのもあって、思わず点数申告のことを注意し忘れていたのだ。 (これじゃあ、今更点数申告をしなきゃ無効とかは言い出せない) ヒグマがまだ人間の言葉を完璧には使いこなせていない以上、複雑な手役の発声は出来まい。 申告された役の点数分しか支払わない、とでもしておけば、しばらくはリーチ以外の役を無効化出来たかもしれないのに。 洋榎が散々点数申告を怠ったのにきっちり点数を支払ってもらった後では、それも通じないだろう。 「……ツモ」 「乗っとるねえ、よっちん」 無駄な連荘は避けたい。 しかしながら、わざわざ手を崩し運気を手放す余裕があるとも思えない。 よっちんも洋榎も、仲良く皆でお手てを握ってゴールイン、と行くなんて思ってなかった。 各々が全力で駆け抜け、ヒグマに捕まりそうになったら援護する。 そうするのが結局のところ一番全員生還するのに近いだろうと思ったし、事実そうだった。 「なに、離れかけた運気を必死に手繰ってるだけさ」 そう、よっちんには分かっている。 馬鹿げたツキは持たない自分が、ここで生き残るためには、少ないチャンスを物にしていくしかないと。 一時でも気持ちを緩め判断を誤れば、忽ち化け物達に追いつかれ、残さず喰い尽くされると。 「そりゃええ心がけや」 そう相槌を打ってはいるが、洋榎にそのような殊勝な心掛けはない。 常に自分に自信があり、ツキが来てると信じている。 だからこそ、掴まされる等の“紛れ”をきっちり処理していけば勝てるものだと思っている。 「そうしてくれると、うちも周りに気ぃ使わんと上がってけるわ!」 よっちんのような常に死を背負ってるようなハングリーさは持っていないが、自身を高みに置くが故の余裕が洋榎にはある。 緩みそうになる切っ掛けを敏感に察知し対処するという点はよっちんと共通しているが、その根底にあるものは真逆と言えた。 「それは通らへんなァ! ロン、こいつはデカいでぇ!」 洋榎とよっちん。 二人共が、己の根底にあるモノに忠実に打っていく。 そして、己の中にあるモノに忠実なのは、残りの一人とて同じ。 「や、やった! ツモ!」 タイゾーは、よっちん程の思慮深さも、洋榎程の自信も持ち合わせていない。 吹けば飛ぶような薄っぺらな信念しか持ち合わせていないタイゾーは、その場凌ぎで打つことしか出来なかった。 「よしよしよし、逃げ切れる……!」 しかし薄っぺらだからこそ、地に足が付いていないからこそ、吹き込んできた神風に乗ることにも長けていた。 深い考えもなくただ流れに身を任せて上がりを目指す。 振り込まない流れになっている状態では、それが大きくプラスに出ていた。 (……このままなら、ヒグマの一人沈み、か) 現在、三者が三者共原点を超えている。 このまま行けば全員生存。 30000点返しだとしても揃ってプラス収支だ。 (だが……何だ、この心臓を鷲掴みにされてるような感覚は……) しかしながら、よっちんの額にはうっすら汗が滲んでいた。 よっちんだけは、見ていたから。 手配と河しか見ていないタイゾーには気が付かなかった。 洋榎も、毛深く覆われた手がブラインドとなり見落とした。 その中でよっちんだけが、修羅場の中でも常に見開くよう鍛えられた眼だけが、しっかりと捉えていた。 ヒグマが、小手返しを使うのを。 とてもケダモノとは思えぬ精密動作で、その技術を行ったことを。 (奴は……成長している……) 必死にここ数局を思い返す。 だが、どれだけ思い返しても、小手返しを使ったという記憶はない。 ヒグマを倒せばいいだけの試合ではあるし、何より余計な技術を披露して学習されるのは怖かった。 そして、それは、見ている限り、洋榎達もそうだったように思う。 (ただ単に『見たものを覚える』だけではない……) もし、そうだとすれば。 あのヒグマは、小手返しを、“編み出した”ということになる。 何の前情報もなしに、無の状態から編み出したのだ。 (コイツ……麻雀というゲームをきちんと咀嚼し、昇華しているッ……!) 単に覚えたゲームの上っ面をなぞるのではない。 きちんと理解したからこそ『ツモ切りかどうか隠したい』という思考にまで至り、そしてその手段として小手返しを身につけたのだ。 (嫌な予感がまとわりつく……もう、自分のツキがどうだの言ってる場合じゃない……) 不慣れでぎこちなかったが、大きな手が目隠しとなりよっちん以外には見ることが出来ない。 おそらくヒグマはそれを自覚している。 牌山を崩してしまうほどの欠点であった大きな手を、僅か半荘の間に武器へと変えてしまったのだ。 (連荘なんて出来ない……これ以上、コイツを学習させるのは不味い……!) ヒグマは現在、牌を爪でツモ動作や小手返しを行っている。 ヒグマの爪は摩耗しやすく、成長スピードが尋常でないと言われているのだ。 生き残るために進化した爪が、ヒグマの驚異的学習能力と組み合わさることで麻雀向けの伸び方をするのは、必然のことだった。 (しかもコイツにはラス親が残ってる……) 今のヒグマに、打点を気にする必要など無い。 それこそ、失点を気にする必要すら無い。 ただオーラスで蹂躙すべく爪を研ぐだけでいいのだ。 その間に、逃げる準備を整えなくてはならない。 狩りの準備を妨害しなくてはならない。 (気付け……俺達の予想なんかよりコイツは遥かにやばい奴なんだ……!) よっちんは、配牌から店仕舞いを始めていた。 現在自分は39000点。 ラス親になるヒグマの連荘のことを思うと余裕は全く無いのだが、それ以上にヒグマの成長速度の方が警戒すべきだと判断。 タイゾーか洋榎がテンパイすれば、いつでも差し込むつもりでいた。 「よしきた! リィィィィィィチ!」 テンパイまでこぎつけたタイゾーが、威勢よくリーチをする。 しかし、タイゾーの表情とは裏腹に、よっちんの顔色は優れない。 (この捨て牌……チートイだとして……当たり牌は……) 必死に思考を巡らせても、出てくる結論は同じ。 『自身の手配に、タイゾーの当たり牌はない』 僅かな可能性に賭けて打ち出した牌にも、何の声もかからなかった。 (クソ……頼む……差し込め……差し込んでくれ洋榎ちゃん……っ!) 本音を言うと、洋榎の方にテンパイしていて欲しかった。 タイゾーは勢いに任せて打っている所が強く、無意味に打点が高い可能性がある。 差し込み等の計算が出来るのは、どちらかといえば洋榎だろうと思っていた。 (このアホ、差し込みとか考えとらんな) 洋榎も、タイゾーに差し込むつもりがないわけではない。 ヒグマから嫌な予感を感じているのは、洋榎もまた同じだったのだ。 しかしながら、洋榎はよっちんとは違い、自分の点を無為に吐き出すつもりはない。 あくまで一位を狙うスタイルを貫くからこそ、盤石の強さを誇っているのだ。 平気でドラ待ちを行い一先ずの自身の安全確保に動いていそうなタイゾーに振り込むか、このシャンテンの手をテンパイまでこぎつけるか―― 洋榎は主に思考をそこに費やしていた。 「ヴォィ゙ィ゙ィ゙ィ゙ィ゙ィ゙ィ゙ィ゙……」 ヒグマの、低い唸り声を聞くまでは。 「なっ……!」 ヒグマの捨てた七筒。 それが、横に、曲がっていた。 (こいつ……リーチも言えるようになったんかい……!) それ自体は、それほど驚くことではないのかもしれない。 定期的に呻いていたし、遅かれ早かれこうなることは分かっていた。 洋榎もよっちんんも、リーチ宣言にそこまで衝撃は受けない。 一番焦りを覚えているのは、すでにリーチで手に蓋をしたタイゾーだろう。 (どうする……? このリーチ、意義を唱えるか……?) よっちんは考える。 先述の通り、麻雀は発声が大事。 今のヒグマのリーチ宣言は、「リーチと言った、と認識したうえで聞けばそう聞こえないこともない」程度のもの。 きちんと言えてなかったと抗議すれば通る可能性は高い。 (いや……こちらもリーチの前後に余計な一言を加えたりしているし、下手に突っ込むと不味いか……?) しかし――よっちんは、頭が良かった。頭が良すぎた。 それ故に、よっちんの想定する『最悪のケース』では、常にヒグマはよっちんレベルの反論が出来てしまう。 だからこそ、よっちん自身に反論が浮かぶ抗議を、行うことは出来なかった。 (さすがにこいつは……切れんわな) 洋榎が、タイゾーの当たり牌だと当たりをつけていたドラから指をソッと離す。 卓に着く前、ダブロンなのか頭ハネなのか取り決めをしていなかった。 ダブロンと頭ハネ、どちらを一般的としてヒグマの読んだハウツー本に書かれているか分からない以上、下手に二人の当たり牌を切ることは出来ない。 タイゾーの待ちは、ヒグマの待ちの一つと同じ牌だと洋榎の中の何かは告げていた。 「すまんな」 読みと言っても、100%当たるというわけではない。 カンのようなものとも言えるソレは、どこまで言っても運の要素が纏わり付く。 それでもその運の要素を限りなく100%に近付けるのが、洋榎達麻雀打ちの持つ“嗅覚”というものなのだ。 この嗅覚が、感覚が、ただの『麻雀牌を切っているだけの凡夫』と『麻雀打ち』とを分けている。 (ツモれ、タイゾー……!) さて――この『嗅覚』というものだが、これは麻雀打ちだけが殊更優れているというわけではない。 何らかの『プロ』とされている者には往々にして備わっていると言われており、その『嗅覚』こそがプロたらしめるとすら言われる。 例えば、猟犬が、獲物を追う『嗅覚』によって狩りのプロとなっているように、だ。 (そうじゃないと、多分、お前は――――) そして――ヒグマもまた、優れた『嗅覚』の持ち主である。 犬の10倍とも言われる嗅覚を持つヒグマは、狼等の陰に隠れてはいるものの『嗅覚の優れた生物』の代表格と言えるだろう。 その嗅覚は狩りでも遺憾なく発揮され、獲物の位置を的確に補足し、そして―――― 「くっ……ツモれず……!」 ズダン、と悔しそうに音を立ててタイゾーにより牌が切られる。 ヒグマの口元が、一瞬、笑みのように歪んだ。 「ヴォォォォォォォォォォン!!!」 そして――――ヒグマは、嗅覚で捉えた獲物の行動をその類まれな知性を持って先読みし、命を刈り取るのだ。 「あ、あわわわわ……」 不格好なロン宣言に、タイゾーの顔から血の気が引く。 一発振り込み。 洋榎やよっちん程の嗅覚を持たないタイゾーからして見れば、意表を突かれたとしか言えない一撃。 「お、おおおおいくら……?」 ヒグマの手が倒される。 三筒と四筒が4枚ずつ、そしてニ筒3枚とドラの五筒が2枚そこには並んでいた。 一目で分かる清一色手。 さらにタイゾーがニ筒で振ったことで二盃口が付き、平和にドラ2と赤ドラを合わせ13翻。 長い4本の爪と、1本のそれより短い爪。 人を叩き潰すヒグマの凶暴な掌を表しているかのような上がりだった。 無慈悲に振るわれたその“手”は、タイゾーを容赦なく叩き伏せる。 「か、数え役満……!」 ジョビジョバジョボボボボwwwwwwwwww タイゾーの股間からまたしても滂沱の尿が噴射される。 確かに河に筒子はほとんど出ていなかった。 しかしそれは他の者も同じであり、皆が筒子を組み込んでいるものだと予想していた。 染め手ではなく、皆がドラ回りというのもあり組み込んでいるのだろうと。 だからタイゾーは、他家の当たり牌だったら怖いし今の勢いならツモって来れそうなどという理由でドラの五筒で待っていたのだ。 「一瞬にして借金返されてもーたな……」 洋榎も、ヒグマの手が大きいだろうと思ってはいたが、ここまでとは思っても見なかった。 普通に冒頭字牌整理をしているし、早い順目で筒子も切り出していたので、清一色までは頭の隅にあるかないか程度であった。 勿論独自の嗅覚で「高そう」と分かった時点で当たり牌なんて切らないのだから、そこまで読めなかったとしても何ら問題は無いのだけど。 「それどころか……」 点棒を全て渡し終えたタイゾーの顔が、より一層青くなる。 まるでもう命でも落としたかのような、限りなく存在感が透明に近いブルー。 仕方あるまい。何せ、卓に表示された点数は―― 「……これで、ヒグマは3着だ」 タイゾーの、一番の敗因。 それは、闘牌開始前の反省を活かせず、少しでも遠くに離れようと全力で背を向け逃げ出したことである。 ヒグマの『逃げる者を追いかけて後ろから殺す』という習性を、甘く見過ぎた。 逃げのためのリーチなど、本気で追っかけたヒグマのリーチ相手に逃げ切れるわけがない。 何せ相手はヒグマなのだ。背中を見せて逃げようとしたら死ぬに決まってる。 それは世界の法則であり、じゃがポテ仮面がヨウ素液で溺れると顔色が青紫になるのと同じくらい普遍的で絶対的なルールなのだッ! 「こいつは……ちぃとばかし洒落にならんことになってきたな」 勿論、“ちぃと”などという生易しい状況ではない。 点数的に厳しいのは勿論のこと、ヒグマの力を想定より更に上方修正するはめになったのだ。 『スポンジのように何でもかんでも吸収し、急成長を遂げる強敵』なだけではない。 圧倒的嗅覚という天賦の才を持った一流雀士だと思わなくてはならない。 (恭子がおったら、ヒグマも丸裸に分析してくれとったんかな……) 思い出すのは、頼りになる親友のこと。 彼女もまた、逃げようとして後ろから襲われたことがある者だ。 それでも彼女は思考をやめず、傷だらけになりながらも逃げ切ってみせた。 諦めるのは、まだ早い。 「さ、泣いても笑ってもオーラスや」 洋榎が顎で軽く卓を指し示す。 静かに頷き、ヒグマがサイコロを回した。 「……ああ、これが最終局だ」 よっちんは、洋榎の言葉を、こう解釈した。 『これで最後だ。連荘は絶対にさせない』と。 よっちんもまた、同じことを考えている。 もう、なりふり構わずヒグマを止めにいかないと、間に合わなくなってしまうと。 本気で逃げる獲物を鏖にかかったヒグマには、人類では勝てないと。 そうなる前に、狩らねばならない。 【ヒグ麻雀 南4局(オーラス)】 愛宕洋榎 34000 タイゾー 13000 伊藤芳一 39000 ヒグマ 14000 (オーラスで25000点の差……普通なら、セーフティリードなんだろうな) 引っ繰り返せない差ではないが、25000点の差は相当に大きいと言える。 直撃でも満貫までなら耐えられるし、ツモなら倍満が必要だ。 一度の直撃でトップに立とうと思った場合、洋榎かタイゾーから当たるなら三倍満が必要である。 同レベル同士の争いならなかなかに厳しい状況と言えよう。 超一流と二流との戦いなら、吹けば消し飛ぶ点差ではあるが。 (だが……俺は油断はしない。洋榎ちゃん達もだ……!) 一流同士の闘牌なら、その特有の嗅覚による防御力の高さもあり、そう簡単には引っ繰り返せぬ点差と言えよう。 よっちん達は、その“一流”たる資格を持っている。 そう易易と大物手を作らせてやるつもりはない。 (出来るだけ、軽い手を作る……!) 満貫までなら『ヒグマより下』にならないのは洋榎とて同じ。 点数が同じだとしても席順でヒグマより上の順位になるので、多少なら無理が効く。 とにかく何より避けなくてはならないのは、ヒグマに上がられることなのだ。 喰い断でも何でもいい。一刻も早く上がらねば。 「グヴィィィィィ……」 ヒグマが低く唸り声を上げ、よっちんの捨て牌を掴む。 そのあまりの威圧感に思わず立ち上がりそうになるのをグッと堪えた。 大丈夫。奴の発声はロンのソレとは違うものだった。 リーチをかける場面でないことを考慮すると、あの発声はチーだ。 (赤含み……!) ここにきて、ヒグマが積極的に動いた。 役牌の可能性は既に無い。 可能性が高いのはタンヤオをベースとした手。 最低限、満貫になりそうな手役の複合に警戒をしていれば上がりを目指すことは出来る。 が、しかし―――― (ドラ……!) よっちんの手に、4枚目のドラが舞い降りる。 普通なら、涎が出るような状況。 役はないが、早々にリーチをかけて攻めたくなるような手配。 だが、この場合は。 (……店仕舞い、だな……) よっちんは、薄々感付いている。 リーチをかけると、後ろから追いつかれ狩り殺されると。 追っかけリーチという形でなくても、間違いなく噛み殺されると。 それはもはや確信に近かった。 ヒグマの嗅覚は、自分の余剰牌の臭いを嗅ぎ分けるだろうという確信。 タイゾーや洋榎も、その確信は抱いていた。 「あ、あわ、あわわわわ……」 だからこそ、タイゾーは思考が纏まらないでいる。 リーチはかけられないのに、手役が全然纏まらない。 裏目も引き、テンパイできるのかも怪しい。 本来ならもう店仕舞いのへくり具合だが――洋榎やよっちんがヒグマの点を削ってくれない限り、待っているのは死だけだ。 もう引けばいいか押せばいいのか分からなかった。 (このままじゃ、タイゾーさんから出かねないな……) よっちんには、タイゾーの振り込みを止めることがもう出来ない。 迷走を始めたタイゾーは捨て牌が滅茶苦茶すぎて、出てくる牌を狙い撃ちタイゾーを犠牲に逃げ切ることも無理そうだ。 タイゾーのことは極力助けてやりたかったが、こうなってくると、それすら難しく思える。 (おそらく、あのヒグマは振らない) しばし悩み、よっちんが手を崩す。 おそらく今の流れだと、ヒグマは当たり牌を引いて来ても溢れ出ない形に手を作り替えられるだろう。 どの形を目指せば安全にそれを成せるかの選択を間違えるのには期待が出来ない。 何せ、哺乳類でもトップクラスの嗅覚を持つのだから。 (俺がテンパったところで、同テンになるか、面子に組み込まれるかだ) ならば、自身に課せられた役割は一つ。 少しでもヒグマの手を遅らせるため、徹底的に牌を絞る。 先に洋榎に上がらせれば勝ちなのだ。 (……すまない) それは、タイゾーを見捨てることを意味している。 洋榎がツモるかヒグマから直らない限り、タイゾーはラスのままだ。 だが、よっちんは、もうタイゾーを助けられるとは思っていない。 助けたい気持ちはあるが、よっちんは賢いからこそ、それが不可能だと分かってしまうのだ。 (……今になって……踏み倒した借を死神が取り立てに来たのかもな) あの日、王様ゲーム麻雀に敗れ、人を殺さねばならぬ罰を背負ってしまったよっちん。 中釜の温情もあり、結局その手を染めることはなかった。 きっと、今、雀卓の上を舞う死神が、あの時なあなあで終わらせた罰を今こそ受けよと言っているのだ。 消えぬ咎を、今、きっちりと背負わなくてはいけないのだ。 自身を追い込み雀力を高めるために入れた墨と一緒に、死ぬまで、ずっと。 (張った……) よっちんが上がりを諦め牌を絞りにかかってることは、洋榎にも分かっていた。 故に、洋榎は前に出た。 多少の危険牌だとしても、振っても安いと判断したら全て押した。 結果、洋榎はようやくテンパイへと漕ぎ着ける。 (長かったわ、ここまで) 一見、洋榎とよっちんには上がり役に制約などないように思われる。 しかしながら、二人にはヒグマとは逆に『大きすぎる手は作れない』という制限があるのだ。 よっちんが三倍満まで作ってしまうと洋榎は差し込めないし、洋榎の手が役満手ならよっちんは差し込めない。 勿論そんな大きな手、狙わなければそうそう飛び出さないし、元に洋榎もよっちんもそんな大きな手にはならなかった。 しかし、安易に手を育てすぎた末ドラが重なり更にツモがつく可能性などもありはした。 元よりかける気などないが、裏ドラを恐れリーチを打てないというのもある。 多少ばかりは、制約として機能している。 (これが通ったら……逆転手や!) 明らかな危険牌。 しかしこれを、洋榎は強打した。 『通る』という確信があったわけではない。 『振っても安い』と嗅覚が教えてくれたわけでもない。 「……当たるか?」 ただ、「これで振ったら仕方ない」と、心からそう思えたから。 命がかかった場面なのに、ここで行くしかないと判断したから。 言うならば、『彼女が愛宕洋榎であるから』、危険牌を強打したのだ。 「……どうやら、通ったみたいやなぁ!」 洋榎の強さは、それなのだ。 己への絶対的な自信。 そしてそれに殉じることが出来る強さ。 それを貫き通せた以上、仮にここで振っていても、彼女の牌勢は衰えない。 単なる押せ押せではなく、きちんと信念に基づいた強打なのだ。 命の宿ったその捨て牌は、洋榎に味方してくれる。 「グルルルル……」 洋榎が切った生牌の八萬は、確かにヒグマの当たり牌だった。 しかしながら、ヒグマはロンと発生できない。 ヒグマの手は、タンヤオではなかった。 役なしの、ツモり三暗刻バック。 他家からは当たれないのだ。 (……洋榎ちゃんは……どうやらテンパったみたいだな) よっちんも、タイゾーすらもそれを察する。 タイゾーは己が助かるワンチャンスに賭け現物を打つ。 その表情は、憐れみすら誘ってきた。 (……すまない……それでも、俺は……) 洋榎の待ちに、よっちんは当たりをつけている。 きちんと牌も抱え込んでいる。 先程のタイゾーの失敗があるからか、きちんと洋榎は多面張に仕上げていた。 よっちんには、ヒグマに振り込まず洋榎に振り込む牌が分かる。 それさえ出せば、ゲームセットだ。 (死ねないんだ……こんなところで……) しかし、その形でのゲームセットは、タイゾーの死を意味している。 自身の手で、一人の命を奪うことを意味している。 (背中に墨を入れてでも、歩むと決めたこの道……) 牌に、触れる。 走馬灯のように、今までの人生がよっちんの瞼の裏へ流れこんできた。 もう、戻れない。 自分はもう、仄暗い井戸の底へと落ちているのだ。 こんなところで止まれない。 毒を口に入れた以上、全て食い尽くしてでも欲しいものを手に入れるしかなくなったのだ。 (今更――歩みを止めるわけにはいかないっ!!) 洋榎に振り込む。 その決意は固かった。 よっちんの指から当たり牌が放たれる。 (頼む……これであってくれ……こいつで上がってしまってくれ……!) よっちんの読みは当たっていた。 この牌で、目出度く洋榎は上がれる。 実際、洋榎の口がピクリと動いた。 『ロン、タンピン三色の満貫』――それを洋榎が口にすれば、この闘いは幕を閉じる。 (ま、まさか……ここに来て、タイゾーさんの命を奪う結果になることに怖気づいたっていうのか……!?) しかし――洋榎の口から、ロンの声は出なかった。 ヒグマでさえも何かを察したらしく、洋榎の方を見やったが、洋榎は口を噤んでいた。 ヒグマが、牌山へと手を伸ばす。 (く、黒澤さん……) かつて、師に言われたことを思い出す。 コンビ打ちとは、勢いを殺し合うものではない。 かといって、お互い心底好き勝手をして共倒れするのは論外。 正しく競い合い高め合うためにも、心底信頼できる相棒を見つけ、そして共に勝利を掴め―― 確かにそう言われていたのに。 (俺が……間違っていたのか……?) よっちんの顔に陰が落ちる。 よっちんは、洋榎を信用しすぎた。 正確には、あったばかりの小娘に抱いた『自分の中の愛宕洋榎像』を信じすぎた。 洋榎はただの騒がしい奴に見えて水面下で思考を働かせ現実的な考えが出来る少女に見えた。 だからこそ、きっと自分と同じように断腸の思いでロンをすると思っていたのに。 それは、所詮洋榎のことを信頼するほど理解できてないよっちんが抱いた幻想に過ぎなかったというのか。 (……すまんな、よっちん……) 別に洋榎は、タイゾーを殺すことに怖気づいたわけではなかった。 確かにこの麻雀により、洋榎の心は磨り減っている。 当たり牌が出された時、弱い考えを持ったのも事実だ。 しかしそれは「これで上がれば生き残れる」という弱い考えであり、決してタイゾーを切り捨てるのを恐れたというわけではない。 そもそも洋榎は、ハナからタイゾーを見捨てる気などなかった。 (約束、してもうてるからなぁ) 別に、タイゾーにそこまでの義理があるわけじゃない。 つい先程出会ったばかりの失禁野郎に、命を賭けるなど決して普通じゃない。 (誰も死なさん、皆で生還するってなぁ……!) そんな口約束にだって、何の拘束力もない。 でも、それでも。助けたい、と思ったから。 その感情に素直に従い、結果を叩き出す。 それが、愛宕洋榎なのだ。 彼女が彼女であるためにも、それだけは違えられない。 (大丈夫、問題ない。次でツモる) 先述した通り、よっちんと洋榎には手役の上限があった。 同時に、洋榎はずっと手役に下限を設けていたのだ。 (うちには分かる。これで満ツモ、親っかぶりのヒグマがラスや) 満貫縛り。 満貫ならば、ツモればタイゾーがヒグマを捲れる。三着になれる。 洋榎の記憶では「ヒグマより下の順位だったら食われる」だったか「ヒグマ以下の点数だったら食われる」だったかが定かではなかったので、慎重を喫し確実に点棒で上回れる満貫のみを目指していた。 そのせいで、何度かシャンテン数も戻していた。 よっちんやヒグマの目にはそれが振ったら大物手になる牌を捨てないための回し打ちに映ったが、そんなことはない。 洋榎は振らないという自信の元で、自分の今の引きなら行けると判断し、満貫手を作りにいっていたのだ。 あまりよくない配牌で、リーチを使えないので少々苦労はしたが、結果的には良かったと言える。 手を高めるためヒグマの急所牌を早々に切り飛ばし、ヒグマに焦ってチーをさせた功績もある。 「グルォ……」 役なしを誘発したチーをするはめになったのは、ひとえにヒグマの嗅覚が尖すぎたから。 ヒグマの嗅覚は、主に死臭を嗅ぎ分けることに長けている。 数キロ先の動物の死骸を捕食出来るほどの嗅覚は、『生きてる牌』を嗅ぎ分ける洋榎やよっちんのものとは逆に、『死んだ牌』の臭いを嗅ぐのに特化していた。 それ故に、あそこで鳴かねば赤が死ぬと判断し、反射的に飛びついてしまったのだ。 「…………」 今のヒグマの手牌は、八萬と西が2枚ずつに、一索が3枚。 三索を鳴いた赤含みの三四五の順子に、今しがたツモってきたものを入れて4枚の七筒だ。 七筒からは明確な死の臭いが漂っていたが、今はほんのり薄れてきている。 洋榎の当たり牌だが、今はよっちんの当たり牌を見逃した影響でこれを打っても当たられない。 抱え込んでいても使い道がないこともあり、今までのヒグマなら迷うこと無くツモ切っていただろう。 「……ヴォォォ」 小さく呻き、ヒグマが鼻をひくつかせる。 漂う死の臭いを嗅ぎ分け、自身の勝利への道筋を見出すように考える。 上家については、どう見ても手を崩して牌を絞っているため、当たりを警戒する必要はない。 下家以外で警戒すべきは対面だが、冒頭に国士を目指し途中で諦め迷走していたようなので、半端に染め手に向かっていそうにも見える。 西を抱え込んでいる可能性があり、西を安牌として切り飛ばす事もできず、また西をツモってこられるともあまり思えない。 それに西からは強い死臭を感じる。どこか手の届かない場所におり、既に西は“死んで”いるということだろう。 「……ヴァ……ヴォ、ヴァ……」 ヒグマもまた、覚悟を決めた。 下手に足掻いて裏目を引く可能性は低くない。 このまま下手に足掻いた末に流局でもしようなら、完全に流れを失ってしまうだろう。 しかし、ヒグマには分かったのだ。 大自然のハンターの持つ狩人のカンが、今が唯一の勝機だと告げているのだ。 (何や? 何をしようと……) 絶対的自信の元、流れを手繰り寄せる洋榎。 このまま勢い付いた後では、彼女を殺すことは不可能。 実際、洋榎のツモ牌は彼女の上がり牌だ。 真っ直ぐ行けば、ヒグマには明確な敗北が訪れる。 (大丈夫や、ツモられても次ぶち当てられる確信はある……!) そんな洋榎に生じた僅かな緩み。 それこそが、先程のよっちんの差し込みであった。 通常時の洋榎なら、初志貫徹で平然と見逃していただろう。 しかし、命がかかっていることで、一瞬だけ、ロンしようかと思ってしまった。 ほんの僅かながらだけど、「よっちんだけでも確実に」と言い訳をし、上がってしまおうかと考えた。 それ自体の倫理的な話はどうだっていい。 麻雀において、この“揺るぎ”というのは致命的なものになる。 その一瞬の迷いが、とりあえずツモって連荘しようとしていたヒグマに考えを改めさせた。 洋榎が明確な目標を定めることで強さを発揮していたのを見て、ただ漫然と上がろうとした末役なしテンパイになった自身を恥じた。 恥は人を強くさせる。 人並の頭脳を持つヒグマもそうだ。 二度とそんな目に合わぬため、己の頭が限界を超えて稼働し、思考を悔い改めさせる。 「グァァァァゥン!!!」 ヒグマは、ヌルいツモ切りを拒否し、4枚重なった七筒を晒した。 槓。 今まで一度もしてこなかった、練習すらしなかったそれを、この土壇場で披露してみせた。 「んなっ……カンやと……!?」 カンの発声は、この場の誰もしていなかった。 しかしヒグマは、今まで耳にした数多の単語から、全ての『かな』とその『読み』を結びつけるに至っていたのだ。 それさえ済めば、あとは「あかん」だの「簡単」だの、『カン』というフレーズを含むことばを喋る際舌の動きを注視していればいい。 練習をすると悟られるため今まで敢えて練習しようともしなかった、正真正銘奥の手である。 「か、カンドラ……っ!!」 めくられたドラ表示牌は六筒。 これで、赤を含めドラだけで5翻。 上がれるとしたら三暗刻が付く場合のみなので、三暗刻の2翻も付くのが確定している。 合計7翻、親ッパネで18000点だ。 (アカン……この感じ……) ヒグマの嗅覚は、残り一枚の八萬にも死の臭いを嗅ぎとっていた。 普通にしていては決して手に入らないという予感。 それを分かりつつ、テンパイ流局を視野に入れ、手を崩さずにいたのだ。 万が一捲られても、何も失う者の無い気の緩みだとも言えた。 イチローとの死闘の末に宿っだSAMURAI魂が、今更になってそんな緩みを叱責してくる。 (おる……奴の最後の一牌が……) 洋榎の緩みと、ヒグマに再び宿ったサムライスピリッツが、山の上に“ソレ”を用意した。 確かにそれは、普通に行ったら決して手の届かない死んだ場所。 でも、それは、もう到達出来ない場所では決して無い。 イチローと得たSAMURAIの誇りを持って会得した『カン』――その隠していた一太刀の元、道は切り拓かれた。 (あの……小高い山の上に……ッ!) 山の覇者。 かつて全裸にジャージの上だけ纏った少女も、野山を駆けた末にその力を得た。 ならば、元より山では最強とされるヒグマならば。 その山の深い位置を全て制覇しているのではないか。 ましてや、その山の上に咲く植物など、ヒグマにとっては美味しい餌に過ぎない――――!! 「……ヅヴォォォォォォォ!」 嶺上開花。 この手が唯一倍満へと届く手順。 この手が唯一洋榎の攻撃をすり抜ける手順。 ヒグマは、いや――ヒグマイッチは、見事にそれを成し遂げたのだ。 もうこれ以上噴射する水分もないのだろうか、タイゾーの股間からはチョロチョロと締め損ねた蛇口のように尿が漏れている。 洋榎も、顔を青くしてその嶺上牌を睨みつけていた。 よっちんだけは、変わらぬ表情のまま、諦めたように目を閉じる。 もっともよっちんの顔は、洋榎に見逃された時から、既に死んでいたようなものだったけども。 【ヒグ麻雀 最終成績】 愛宕洋榎 26000 タイゾー 5000 伊藤芳一 31000 ヒグマ 38000 最後の点棒移動。 もはや結果は見えているのにそれを行うのは雀士としての最期のプライドだろうか。 洋榎が軽く舌打ちして点棒を出す。 しかしヒグマは、首を軽く横に振ると受け取り拒否の意志を示した。 「……見逃してくれる……って、わけじゃなさそうやな」 しかし意図が分かりかねる。 顔をしかめる洋榎を見て、よっちんはとりあえず持てる点棒を全て卓へとぶちまけてみた。 ぶちまけられた点棒を嗅ぎ、ヒグマが点棒を回収していく。 「……ヒグマは……自分の持ち物に執着する習性がある……」 とある惨劇以来有名になった話だ。 ヒグマは己の持ち物だと見なしたものを奪われることを決して許さず、取り返そうとする習性を持っている。 そしてそれは、点棒とて例外ではない。 「最初にヒグマから奪った点棒で払え……っていうことなんだろう」 ああ、と呟き、洋榎が全ての点棒をぶちまける。 洋榎達に、どれがヒグマから奪ったものか判別する術はない。 判別する意味もない。 ただヒグマが、己の習性に忠実に、臭いを嗅ぎとって自分の点棒を手元に収めたいというだけの話。 「きっちり、全部、取り返されてしもうたな……」 残る点棒のやりとりは、タイゾーからヒグマへの移動だけだ。 タイゾーは既に初期に奪ったヒグマの点棒を全て吐き出しているので、どの点棒を出してもいい。 しかし。 「う……うわああああああああ嫌だあああああああああああ!!」 タイゾーには、耐えられなかった。 元よりオーラス時点で正気を保つことが難しいほど動転しており、何の覚悟も何の影響力もないまま死が決まってしまったのだ。 大人しく点棒を渡せるわけがない。 「僕は……僕は生き残って……生き残っていい政党入ってやるんだぁぁぁぁぁ」 タイゾーが、ついに背を向け走り出した。 狂ったように政治用語を列挙しながら体液を散らし出口へ向かう。 運動能力の差があるうえ、麻雀を経て嗅覚を更に強めたヒグマから逃げられるわけなどないのに。 「あのバカ……っ!」 悲しそうに顔を歪める洋榎。 その横をすり抜け駆け出すヒグマの瞳も、どこか悲しそうな色を帯びていた。 「……ダメだよ、タイゾーさん」 よっちんの呟きは、まるで自分に言い聞かせるようだった。 「負けを誤魔化しちゃ、いけないんだ」 それは、死から逃げたい自分への戒めか。 それとも、かつて罰ゲームを免れ落ちぶれ続けた自分への後悔の念か。 「……どれだけ未練があっても……それをしたら、麻雀打ちとして、完全に死んでしまう」 ここから生き残れるなんて、どれだけポジティブな洋榎ですら思わない。 そのくらい、絶望的な状況。 ならばせめて、博徒としての誇りを抱え、麻雀打ちとして生きた証を胸に死んでいきたい。 麻雀打ちとしての自分が先に逝くなんてことだけは避けたい。 矜持というよりただの意地かもしれないが、それがよっちんの素直な感情だった。 「せやな……そんな真似して麻雀打ちの自分まで死んでもうたら、うちらみたいなんには何も残らへんからな……」 そう返した洋榎の脳裏に、大切な妹の姿が映る。 絹恵。大切な妹の絹恵。 何をするときも後ろをついて来た彼女は、麻雀のセンスだけでなく、サッカーなど多岐に渡る才能を持っていた。 そんな妹に、いつしか冗談めかして言ったことがあった。 『絹と違って、うちは麻雀打てんくなったら何にも残らんからなぁ』 そんな冗談に、大切な妹は少し悲しそうな顔で頬を膨らませていたのを覚えている。 そして、言われた。 麻雀なんて打てなくても、自分は大事な彼女のお姉ちゃんなのだと。 「でも、うちは……何にもないただのクズに成り下がっても、帰らなきゃあかんねん」 絹恵を、一人残していくことなんて出来ない。 今度の日曜日には一緒に服を買いに行く約束だってしている。 恭子や由子と麻雀を打つ約束もあるし、漫にはCDを借りっぱなしだ。 くだらないことなのかもしれないけど。 でも、そんなくだらない日常の積み重ねが、ここで死ねないと告げているのだ。 「すまんな……あん時に……」 どうせ麻雀打ちとして命を落とすなら、あの時よっちんの捨て牌で上がっていれば。 そうすれば、少なくとも洋榎とよっちんは助かった。 そうしなかった自分が、今更一人逃げ出そうなど、許されることではない。 「……いいさ。少なくとも、あの時あの瞬間は、君の方が正しかった」 二人だけとりあえず助かるように手を取ることだけを考え、勢いを殺すなんて愚の骨頂。 だから、自身の信念を優先した洋榎を間違ってると罵ることは、よっちんには出来ない。 ましてや、自分より少し早く“堕ちていった”友人相手に、かつて自分も同じようなことをしているのだから。 「行け。振り返らず、後悔もするな」 その言葉も、果たして誰に投げかけてるのか、もはやよっちん自身にも分からなくなっていた。 ただ、自然と言葉が口から出てくる。 「君は、そのまま真っ直ぐな目で走り続けるといい」 逃げて程度で死が避けられるだなんて、よっちんは思ってもいない。 けれども、よっちんはそう言葉を投げかけた。 ここにきて、真っ直ぐに麻雀を楽しむ洋榎の姿が、かつての自分や海輝と重なっていると気が付いたから。 まるで、もう届かない過去の自分達に語りかけるように言い、よっちんは静かに瞳を閉じた。 「……すまん」 もう一度謝罪をすると、洋榎は静かに出て行った。 決して背を向けないよう、じりじりと出口へと向かっていたのだ。 ヒグマの嗅覚を持ってすれば間違いなく追いつけるが、これで死ぬまで多少の猶予くらいはできるだろう。 運がよければ、マタギのような人間に保護されるかもしれない。 勿論、そんな期待、恐ろしいまでに望み薄だけど。 「……俺の番、か」 どのくらい経っただろうか。 師である黒澤達と過ごした麻雀漬けの日々を思い返していたら、時間があっという間に過ぎた。 その間に、どうやらヒグマはタイゾーを綺麗に完食したらしい。 スパゲティを乱暴に口へと放り込んだ幼稚園児のように、ヒグマの口周りは真っ赤に染まっていた。 「グルルルル……」 しかし、既に一人を食べつくし、今からさらに命を奪う者にしては、ヒグマの目は悲しみに染まっていた。 本当は、ヒグマだって殺したくなんてないのだ。 本能に抗って、イチローから受け継いだ精神に従って、熱い死闘を繰り広げたいだけなのだ。 しかしそれは許されない。 賢すぎるが故に、冒頭にも記した通り、狩りを行わねばならないのだ。 ただの虐殺を避けるべく、きちんとしたルールに則り正々堂々戦った。 そこで勝利し、強者として弱肉を貪る。 決して間違ったことではない。 むしろチャンスを与えているだけ遥かに優しいと言える。 しかし、そんな『理』とは別の所で、ヒグマは悲しみを覚えるのだ。 死闘を通じて強敵とみなした者を捕食しなくてはならない悲しみ。 それが、ヒグマの心を締め付けた。 「……参っちゃうよな」 ぽつりと、よっちんが呟く。 その顔には、自嘲めいた笑みがうっすらと浮かんでいた。 「あれだけ色々賭けてきたのに、まさか素人のヒグマに競り負けるなんてな」 それは決してヒグマを貶める言葉ではない。 ヒグマを下に見ているが故の悲観とは少し違う、限界を感じた己の才能への呪詛のようなものだった。 「いや……違うか」 洋榎は、タイゾーを助けようとする意思を貫き通した。 それだけではなく、あくまで一位を狙っていた。 ヒグマから逃げ切るというだけでなく、ライバルであるよっちんにも雪辱を晴らそうと上を見続けていたのだ。 だというのに、よっちんは。 「振り込んででも、タイゾーを見捨ててでも生き残ろうとした時点で、俺はとっくに強さを失っていたんだ……」 弱腰になり、二位でもいいからヒグマの上を行くことを優先した。 麻雀を司る神が居れば、こんな自分に愛を注がぬのも当然のことと言えよう。 「神様を殺してでも、この世界にしがみ付きたかったはずなのにっ……!」 無念が指先へと宿り、握った拳から血が滴る。 何故、目先の命の危機に屈して、麻雀から目をそむけたのか。 何故、他の何を押しのけてでも、一位を独走しなかったのか。 「グルォォォォォォォォ!」 まるで泣き叫ぶ子供のような咆哮をあげ、ヒグマが拳を振り上げる。 タイゾーにそうしたように、痛みもなく命を刈り取るためだ。 本当は食べたくなんてないが、死体が発見されたら他のヒグマに食われてしまう可能性が高い。 それならば、自分が全て平らげて己の血肉とすることこそが強敵(とも)への最たる手向けとなるのではなかろうか。 「……ああ……」 振り下ろされる腕がスローモーションに見えた。 走馬灯の最後を締めくくるように、恩師の背中が瞼に映る。 しかし、最期に鼓膜を振るわせた幻聴は、その恩師のものではなかった。 『先生はボクのウルトラマンさ!』 まもなく訪れる真っ暗な世界を、ずっと生き続けてきた少年。 まだ背中に後ろ暗い世界を背負う前のよっちんが戦う理由にして、引き裂かれることになった少年。 いつか言われたその一言が鼓膜を振るわせたと同時に、よっちんの瞳から大粒の涙がこぼれた。 もうずっと流してなかった、きらきらと光る、澄んだビー玉のような涙が。 「そうか……」 気付くのが、遅かった。 もう、後悔を口にする時間すらない。 それでも、まるで懺悔のように、命の火が刈り取られる瞬間までよっちんの口は小さく動き続けた。 「そうだったんだ……」 大好きな麻雀で、負けたくなかった。 目的もなく抱いていたそんな想いは、いつからか手段になっていた。 だからこそ、ここまで強くなれたのに。 いつしかまた、その手段が目的に摩り替わっていた。 「俺は――――――」 ――――俺は、ウルトラマンになりたかったんだ。 ☆ ★ ☆ ★ ☆ いつまでも逃げ切れるなんて思っちゃいない。 ただ、素直に殺されてやるわけにはいかなかった。 無様だろうと、最期まで皆の下に帰るため足掻かなくてはいけなかった。 「さっきんとこで、充電くらいしとくんやったな……」 話のわかる先ほどのヒグマなら、懇願すれば遺言を携帯電話のメールボックスに保管する時間くらいくれたかもしれない。 だが、洋榎はワンチャンスに賭け逃げ出した。 一応遺言を入れはするが、ベストは誰かと遭遇し、共にヒグマの襲撃を退け生きて帰ることである。 「最期に残すは年賀状、か。シュールすぎるやろこれ」 結局、必要ではないが何かに使えるかもとタイゾーに分けてもらっていた数枚の年賀状にメッセージを込めた。 嗅覚の鋭いヒグマ相手に足を止めるのは愚策であるが、ヒグマは他にもわんさかいるのだ。 下手に動いて他のヒグマの縄張りに入り妹達に何も残せず食われてしまうことを思えば、この行動もやむなしだ。 「無念の篭った無念だ状、っちゅーとこか」 はは、と乾いた笑みが漏れる。 くだらないジョークにツッコミは入らない。 タイゾーやよっちんなら愛想笑いくらい浮かべてくれていたかもしれないが、二人とも見捨ててきてしまった。 おそらくもう、この世にはいないだろう。 「……いやほんま、折角逃げ切ったんやけどね」 その表情には、僅かな諦めの色も見える。 しかしそれでも、ほんの微かな希望を手繰り寄せるように、己を鼓舞しストレッチをする。 眼が映すは、新たなヒグマ。 「安堵の瞬間こんにちはとかパニックホラーの定番やけど、そこは君、同じ奴が出てくるもんやで」 素手で勝てる道理はない。 だからといって、諦めて黙って食われる道理は尚無い。 やれるだけ、やってみる。 頭を止めたらそこで終わりと親友だって言ってたじゃないか。 「生憎やけど、万が一腹に入るならうちを負かしたあの野郎のって決めとるんでなぁ!」 洋榎が駆け出す。 無理矢理にでも笑顔を浮かべ、泣きそうな声でジョークを言って。 最期のその瞬間まで、『愛宕洋榎』であり続けようとするかのように。 ☆ ★ ☆ ★ ☆ 匂いを辿り、最期の強敵(とも)を血肉にしようと追いかけてきたヒグマイッチが見たものは、無残にも食い散らかされたその強敵(とも)の姿だった。 髪も、足も、内臓も、ところどころ食べ残しとして散らばっている。 その中央には、別の個体――エニグマのヒグマと呼ばれる、スタンド能力に目覚めたヒグマがいた。 「グルルルル……」 どちらが先に仕掛けたかは定かではない。 だが、自然に二匹は唸り声で相手に警告を出していた。 その警告の内容は、まるで違ったのだけど。 『そいつから離れてどこへなりとも去っていけ』 そう言わんばかりに睨みつけているのはヒグマイッチ。 その瞳に宿るのは、怒りを含んだ嘆きの炎。 あくまで相手は同種であり、健常体である以上、種として共食いすべき場面でないと分かっているからこその、感情を抑えての警告。 従わなければこの感情を全てぶつけて貴様を殺すという意味も含まれている。 『後から出てきて何不満そうな面してんだコラァ』 そう言いたげに冷たい視線を返すのは、スタンド使いエニグマのヒグマ。 こちらとて、別に積極的に同種を殺して回る理由などない。 死んだ仲間は美味しく食べるし、性交渉のライバルになる等の理由でもない限り、わざわざ争うのは愚の骨頂。 かといって自ら立ち退く理由もないので、目で威圧して向こうを立ち去らせようとする。 背中を見せて全力逃走なんぞされたら本能で殺しちゃうけど、まあそのときはそのときだ。 「その少女を、食ったのだな」 ←と、クマ語で言っている。 極力感情を抑えて、ヒグマイッチが言った。 無理からぬことではあるが、エニグマのヒグマにヒグマイッチの心情など量れない。 今しがた食った少女とヒグマイッチとの間に何があったか瞬時に理解できるほど、スタンドは万能ではない。 「それが何? そこをどうこう言われる筋合い無いと思うんですけどねェェェェーーーーーーー」 ←と、クマ語で煽っている。 別段殺し合う理由はない。 だがしかし、それと喧嘩を売らないのとは別問題。 己の雄としてのプライドのため、縄張りを示すため、威嚇はしておかなくてはならない。 また、エニグマのヒグマにとって、ヒグマイッチの言動は神経を逆撫でするものだった。 自分の見つけた餌をとやかく言われる筋合いなんて無い。 だからこそ、口で露骨に嫌悪感と挑発を叩き付ける。 「それとも何? その骨ばっかのクソみたいな餌、お前の名前でも書いてあったわけ? 見えなかったわぁーーーー次からはわっかりやすく体全体に書いといてねェェェェェェん」 ←大体分かってると思うけどこれもクマ語ね。 顔を限界まで近付け、大口を開けて挑発する。 同じヒグマでなければ、ガタガタと震えビチャビチャと尿を撒き散らす壊れたスプリンクラーみたいになっていたことだろう。 人間だったら壊れたレディオの如き念仏リピート機能も搭載されてる。 「洋榎だ」 ←クマ語。多分この短さだと「ガゥゥ」だけとかそんな感じ。 そんな挑発的態度に対し、毅然とした態度でヒグマイッチが言葉を返す。 しっかりと、エニグマのヒグマの目を見て。 「餌ではない。そやつの名は、洋榎だ」 ←当然ながらこれもクマ語 自己紹介をしたわけではない。 単純に、卓上でそう呼ばれているのを聞いていただけだ。 それだけだが、ヒグマの高い記憶力はしっかりその名を刻み込んでいる。 己と熱戦を演じた、忘れがたき強敵(とも)の名として。 「ぶぁっはっはっは、何、お前一々餌の名前とか気にしてるわけェ? かっこつけた立派なお顔の割りに随分女々しいんでちゅねェェェ~~~~~ギャハハハ」 ←ヒグマ同士なのでクマ語でやりとりをしてます。 ヒグマは、雑食生物である。 死肉なら何でも食べるし、植物に関してもそうだ。 だから一々その肉が何の肉かなど気にしないし、精々『チョロいから生きてるとこ襲った方がいい生物』リストにぶち込んでる生き物か否か判定する際に気にかける程度で十分である。 にも関わらず耳慣れないフレーズの名にこだわりを見せるヒグマイッチは、エニグマのヒグマ以外のヒグマから見ても、さぞ滑稽なことだろう。 「……我々ヒグマは、己の獲物を奪われることに尋常でない殺意を抱く」 ←クマ語で淡々と言っている。 その先は、言わなくても伝わるだろうと判断し、ヒグマイッチは余計なことを喋らなかった。 事実、エニグマのヒグマにも、今しがた食べた餌がヒグマイッチの獲物だったことは十分伝わった。 「なるほどォ~~~獲物を盗られてご立腹なわけね。そら怒りますわ、誰だって怒る」 ←と、ちょっと蝦夷なまりのきついクマ語で頷きながら。 うんうんわかるぅと言わんばかりに腕を組み頷くエニグマのヒグマ。 しかし一転、泣く子から諭吉をせしめる不良中学生のように脅すような口調へと変わる。 一緒に態度も一変し、一層食い殺さんばかりに顔を近付けた。 「だが、マヌケ! それを横取りされんのはよォォォーーーてめーがすっとろいからじゃねーか! あんなチョロい餌如きに逃げられて恥ずかしくねェのか? ああ? そもそも手傷も負わせられてないし、実質俺のモンだろありゃぁ」 ←と、威圧する目的もあって蝦夷なまりが一層強くなったクマ語で言っている。 その渾身の恫喝は、並みのヒグマなら「ちっ、今日はこんぐらいで勘弁したるわ」とシベリアなまりのクマ語で捨て台詞を吐いてすごすご引き下がってるだろう迫力だ。 だがしかし、ヒグマイッチは眉一つ動かさない(クマに眉なんてあるのか知らねえけど) 目の前の薄っぺらな恫喝が持つ力など、あの卓を囲んだ者達の気迫の篭った「ロン」の二文字の足元にも及ばなかった。 「あまり強い言葉を使うな、弱く見え……って臭ッ! 口すごく臭い。うわぁ何これくっさ。引く。えー何これ」 ←途中から標準的クマ語でなくイントネーションに出身地のソレが混じってる。 一瞬素に戻りながら、ゴミを見るような目を向けヒグマイッチが距離を取る。 一見低俗な言葉と煽りではあるが、縄張り意識という『誇り』に関わる真面目な会話の最中にぶち込むことで、相手の神経を逆撫でしたのだ。 スポーツマンシップのような『誇りを尊重する』精神を持ち合わせたからこそ身についた煽りのスキル。 誇りを汚される怒りを理解したが故の煽り。 「て……んめェェェェ……上等だ……五体満足で帰れると思うなよ……?」 ←と、クマ語でキレてる。 ビキビキとエニグマのヒグマの顔に青筋が浮かび上がる。 これが少年マガジンなら1ページの2/3くらい使って拳を鳴らし「!?」とか右上の方に背負ってるくらいの怒りっぷりだ。 もっとも、そうは見えないものの、ヒグマイッチもとっくにそのくらい鶏冠に来てたのだけど。 「奇遇だな。こちらとしても、ただで帰したくないと思ったところだ」 ←と、クマ語で煽り返す。 洋榎のことを、自分を追い込んだ強敵(とも)のことを、チョロい餌扱いされた。 如何に自分が貶められても我慢が出来るヒグマイッチだが、強敵(とも)への誹りを我慢できるほど人間が出来てない(ヒグマだけに) イチローから受け継いだサムライスピリッツが、強敵(とも)への侮辱を許すなと囁いていた。 「ひとつ……教えておいてやるぜェ……俺はただのヒグマじゃあないッ! 究極幽波紋使い(スターダスト・クマセイダーズ)だッ! 能力の名は『エニグマ』ッ! 俺にビビってサインを出したその瞬間ッ! 貴様を永久に折りたたんでやるッ!!」 ←と、クマ語で喋りながら、クマ語の「ゴゴゴ」を背負ってる。 己の手の内を事前に明かすメリットは、正直言ってあまり無い。 これが大規模な国家間のやりとりなら、核の存在を明かし「先に教えておいてあげましょう。私の核保有数は53万です」「あ、はい喧嘩売るの止めます撃たないでね落ち着こう」と持っていこうとする等理解できる戦略となる。 しかしながら、信念のもと挑もうとする個人に対し、手の内を明かすのは愚策に過ぎない。 まあ、個『人』というか個『羆』なので、その限りにあらずだけども。 「未知の力に恐怖して……俺の能力の実験台になるんだなァッ!」 ←と、クマ語で叫びながら荒木風に作画が変わっていく。 ここで手の内を明かしたのは、相手に意識させるため。 「これやったらアカンで」と意識すれば意識するほどやってしまう心理を突くため。 洋榎はぺろりと食べてしまい、まだ実際に使えていないエニグマを、ヒグマイッチに試すことがエニグマのヒグマにとっての最優先事項だった。 「馬鹿な餌はサインすら見せず愚かにも突っ込んできやがったが……我々ヒグマはもっと知能が発達しているッ! 生き永らえるべく未知のものに恐怖を覚え、適時撤退をする習性があるッ! その高度すぎる脳味噌こそが我がエニグマの囚われる敗因となるのよォォ~~~~~!! 頂点に君臨する生物が故に俺には勝てんッ! 俺こそが頂点の上の頂点ッ! アイム・オン・ザ・トップ・オブ・ザ・ワールド! ルッキン!!」 ←と、クマ語で叫びながら殴り合いで負けるのを防ぐため距離を取る。 エニグマのヒグマは知らない。洋榎が恐怖していたことに。 エニグマのヒグマは知らない。恐怖していたが、それを押し殺し、僅かな可能性に賭けて特攻してきたという事実を。 エニグマのヒグマは知らない。ヒグマイッチだって知らない。 「高度な脳味噌……? 笑わせてくれる」 ←と、クマ語で呟き鼻で笑う。 けれども、ヒグマイッチには不思議と理解が出来た。 人間とは、恐怖に立ち向かい僅かな希望を掴むべく戦う生物だと知ってるから。 人間には恐怖心が無いのではないということを。 人間は、自分達よりも弱く、自分達より臆病だということを。 「人間はな、弱いんだよ。それに臆病だ。 でもな――――それを乗り越えて、立ち向かう強さだって持っている」 ←と、クマ語で言っている。 イチローも、洋榎も、よっちんも、タイゾーすらも、生存競争力で言えば、ヒグマより劣る者だった。 だがそれでも、己の信ずる道を極め、対等に闘いを挑んできた者ばかりだった。 ヒグマイッチは、そんな彼らを、誰よりも尊敬していた。 「俺達には無いものだよ。なあ、ダストなんとかとやら…… ただ腕力が強いだけで、何故そんな凄い精神力を持つ彼らより上の存在だと思える? 何故、捕食する側というだけの理由で彼らを見下し、世界を獲った気になれる?」 ←と、クマ語で静かに熱く語る。 ヒグマイッチの構えはバッティングフォーム。 きっとイチローが見たら、野球はそういうものではないと苦言を呈していたかもしれない。 でも、それでも。 ヒグマイッチが彼から受け継いだ『戦う手段』はコレだから。 「……会得したばかりのニワカスタンドとやらを披露したいならいいだろう。 付き合ってやる。俺も身につけたばかりの力を実験させてもらう」 ←と、クマ語で静かに、しかし力強く言う。 エニグマのヒグマがこちらを恐怖させるため策を弄するならそれでもいい。 こちらには、麻雀という高度な読み合いゲームのプロ3人から受け継いだ魂がある。 読み合いで、こんな頭の悪そうな奴に負ける気がしない。 「俺が見せるのは、人間の魂だ。我が血肉とし、勝手に受け継いだ、恐怖に立ち向かう人間の魂だッ!」 ←と、クマ語で言ってるんだけど、色々感情込めた結果なまりが強くなりすぎて、エニグマのヒグマは半分くらい聞き取れてない。 もう、取り繕いもしない。 素直な気持ちを叩き付ける。 自分は、人間が好きになり、あのようになりたかったと。 こんな催し物のために飼われるヒグマなどでなく、人間になりたかったと。 殺したくなんて、なかったと。共に闘い、共に生きたかったと。 「教えてやる。お前の言う頂点に立つ生物のはずの我々が、人間に飼われこの催し物の道具にされた理由をッ!」 ←と、クマ語で叫ぶけど、もうエニグマのヒグマはほとんど聞き流してる。 ざあ、と一陣の風が吹く。 それはまるで、ここにはないゴングの代わりを果たすために吹いたかのようで。 「思い知れッ……俺が愛してしまった、人間の強さと、そして尊さをッ!」 と、クマ語で叫び、ヒグマイッチがエニグマのヒグマへと駆け出した。 スタンド使いのヒグマVSやきう麻雀使いのヒグマ。 その異種格闘技戦の幕が開けた。 【杉村タイゾー@ムダヅモ無き改革 死亡】 【伊藤芳一@麻雀飛竜伝説天牌 死亡】 【愛宕洋榎@咲-Saki- 死亡】 【G-8 森の中/早朝】 【ヒグマイッチ@妄想オリキャラロワ】 状態 強い意思、めっちゃ嗅覚冴えてきたわ 装備 イチローのユニフォーム、帽子 道具 なし 基本思考 正々堂々と勝負がしたい、そして強敵(とも)はせめて自身の血肉としてやりたい 思考1:エニグマのヒグマ……貴様はこの俺が……人間の持つ誇り高き勇気を継いだこの俺が『抹殺』するッ!! ※黄色い毛皮と赤いチョッキが特徴的な熊ですが、某D社のハチミツ大好きなバッティングジャンキーとは 一切関係ありません、そもそも奴はアメリカクロクマです。黄色い毛皮の癖にクロクマってどういうことだよ、クソックソッ!! ※スポーツマンシップと侍JAPANの心意気と麻雀打ちの矜持を引き継ぎました ※疲労はよっちんとタイゾーを食べたことで回復しました。人間がチョコ食ったらちょっと疲労が回復した気分になるようなもんね 【エニグマのヒグマ】 状態 究極幽波紋使い(スターダスト・クマセイダーズ) 装備 スタンド「エニグマ」 道具 なし 基本思考 ドドドドドドドドドドドド 思考1:スタンドの実験だぜェーーーーーッぶっ畳まれろォォォォーーーーーッ!! ※F-08にある掘っ立て小屋みたいな簡易温泉宿の中に全自動卓と伊藤芳一の支給品一式、及びタイゾーの支給品一式が放置されています No.082 ゼロからの獣 本編SS目次・投下順 No.084 傍迷惑 No.080 The World is Yours! 本編SS目次・時系列順 杉村タイゾー 死亡 伊藤芳一 愛宕洋榎 No.025 ひぐましのなく頃に ヒグマイッチ No.085 人らしい No.017 新しい誕生祝い エニグマのヒグマ
https://w.atwiki.jp/megido72_item/pages/271.html
入手方法 メギドクエスト(曜日:オセ) 要求するメギド一覧 メギド 進化の段階 個数 備考 [[]] ☆→ 個 合成できる素材 素材名 必要素材 費用 [[]] G 説明 ステータス強化 制限レベル 売却値 オセが落とす欠片 15 G
https://w.atwiki.jp/vice2rain/pages/184.html
終章・語り部は終焉を告げる ――さて皆様、今宵の物語はいかがでしたでしょうか? 嗚呼、かくも儚き物語。 憂いの月が良く似合う。 切。 語り部は小弦を爪弾く。 まだ明け遣らぬ空に、残月が浮かぶ。 儚き調べは風に乗り、有明の月にじわりと溶ける。 スタンダールの言葉に、『恋とは甘い花のようなものである。それを摘むには恐ろしい断崖の端まで行く勇気がなければならない』というものが御座います。ああ、全く言い得て妙。あの二人の恋物語を表すかのよう。 あぁ、そうだ。 皆様はご存知でしょうか? 清らで可憐な白き薔薇、『フィオナ』の花言葉。 『恋の吐息』と言うそうです。 愛しい人に想いを寄せて零れる吐息。 儚いものです。 さて皆様、これでわたくしめの物語はお終いに御座います。わたくしめの持つ小さな小さな物語の壷は、この通り、もう空っぽになってしまいました。 月もそろそろお休みのご様子。 ほら皆様、ご覧下さい。 東の空がじんわりと、紅く色鮮やかになって参りました。 有明の月も真白で鮮やか。あぁ、実に美しい。薄紅く染まったたゆたう雲も風流なもので御座います。 さて、お次はきらきらと眩しい太陽に相応しい、爽やかで晴れやかな物語でもいかがで御座いましょう? わたくしめのこの頭の中には、物語の壷が百も二百も御座います故。 んん?なんと、もう眠たい? ああ、これはこれは。気付きませんで、大変な失礼を致しました。お美しいお嬢さんに、気高き紳士殿。 皆々様の静かな夜、眠りの時間は、わたくしめのささやかな物語に姿を変えたのでしたね。 確かに確かに。 皆々様の瞳は、もううつらうつらと扉を閉じようとしていらっしゃる。 さすがにもうお疲れで御座いましょう。 月夜に物語を紡ぐのと同様、朝日に身をゆだねるのもこれまた一興。 朝日と共に眠りに就く。 そんな贅沢をするのもたまには良いもので御座います。今日はもう、小鳥たちの子守唄に身を任せると致しましょう。 それではまた、いつかどこかでお会いできることを祈りつつ、これでお別れと致しましょうか。 それでは皆々様、良い夢を…。
https://w.atwiki.jp/pricone/pages/1171.html
《弾き語りの名手 聖川 真斗》 キャラクターカード コスト1/赤/CP3000/RANK1 【早乙女学園】/【Aクラス】/【御曹司】 ボーナスアイコン なし このカードが登場した場合、コネクトゲージにあるカード1枚を裏向きにすることができる。 お前に出会って、この歌は生まれた。 うたの☆プリンスさまっ♪マジLOVE1000%で登場した赤色・【早乙女学園】・【Aクラス】・【御曹司】を持つ聖川 真斗。 関連項目 聖川 真斗 収録 うたの☆プリンスさまっ♪マジLOVE1000% 01-025 C
https://w.atwiki.jp/sixtonesann/pages/62.html
野生のジェシー(やせいのじぇしー) その辺を歩いているジェシー。バズツイートに写り込んだことで話題になった。 新しくできるショップの看板に着目したツイートがバズったところ、それとは別軸で右下に写り込んでいる緑のセットアップの男性がジェシーに見えると話題になった。
https://w.atwiki.jp/mandemoari/pages/82.html
71.自分語り ▲ 覗き屋スレ 379 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/21(水) 23 15 21 ID ??? 疲れた、とにかく疲れた 380 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/21(水) 23 16 44 ID SVlSwJhB ID出ないと思って へたればっかり 381 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/21(水) 23 16 55 ID ??? 乙彼ちゃん 382 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/21(水) 23 17 31 ID ??? 380 すいませんねぇw 383 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/21(水) 23 17 31 ID ??? 俺は別にID出てもいいんだけどね 余裕で自演できるしw 385 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/21(水) 23 18 36 ID ??? なんで自分が嫌なものを見るのかがちょっとわかってきたw 387 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/21(水) 23 19 24 ID ??? 書いているとなんとなくわかってくることがいつもあるなぁ 論理的に考えれば知らなくていいことは知らなくていいままにしておいたほうがいいのに 390 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/21(水) 23 21 15 ID ??? 嫌なものを積極的に見てしまう心理分析 1、精神的防御のため 何かに備える 2、自虐、自分の中の嫌な自分を知りたい あとはなんだろ? 394 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/21(水) 23 23 00 ID ??? なんだっけな、人はいつも最適な行動をするわけでもないっていう心理学者の話 経済のなんとか的行動っていうんだけれど・・わすれちゃったよ 395 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/21(水) 23 24 15 ID ??? 思い出すのだw 398 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/21(水) 23 26 44 ID ??? 395 思い出したよ〜ん http //manabow.com/qa/a_finance.html 「行動ファイナンス」とは、人々は常に合理的に行動するとは限らない、という前提に立って経済のあらゆる現象や金融市場の動きを考えてゆく理論です。 400 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/21(水) 23 28 24 ID ??? 398 認知心理学に近い領域か〜 詳しくないので難しい 402 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/21(水) 23 31 00 ID ??? >それは投資家は、ポートフォリオの資産価値の上昇よりも、下落に強く反応するというものです。損失を被ったときの痛みは、利益の時の喜びよりもはるかに大きく強くなります。 ここなんかさぁ、本当人間って感じするんだよね 10円得するより10円損したほうが強いんだ 同じ10円の損益なのに 403 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/21(水) 23 32 54 ID ??? デイトレは死ねる 神経が疲れる 404 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/21(水) 23 34 08 ID ??? 資金が少ないと仕手株に乗るのがハイリスクハイリターンで博打みたいなもんなのだが異常に疲れる 405 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/21(水) 23 35 07 ID ??? 絶対に勝てる方法おしえたげよか? 407 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/21(水) 23 40 16 ID ??? 大手機関投資家の手口どおりに自分がプライスに張り付いて見れるだけの株を買う(銘柄すくなく) fee taxをincludeした損益分岐点を計算して小額でも超えたら売る 大手機関投資家は一人でものすごい数の銘柄を見てるので それほどちょこまか売買はできない 個人は小回りがきく そこを活かす 409 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/21(水) 23 41 34 ID ??? それをヲチするのに神経が磨り減るんだよ 410 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/21(水) 23 42 46 ID ??? しらんよ、そんなん 玉が多くなきゃチビチビ儲けるしかないじゃんか そんなん100万200万で金なんかもうかるかいな! 414 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/21(水) 23 46 39 ID ??? あたしはとっても金が好き〜♪ 415 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/21(水) 23 47 20 ID ??? 金は興味ないwww 417 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/21(水) 23 48 14 ID ??? 2室は自分のものになる金なんだけど 8室は自分のものにならない金なんだ つまんないでしょ? 420 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/21(水) 23 50 47 ID ??? 今日は飲み屋でモツ鍋〜 421 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/21(水) 23 50 54 ID ??? 愛ってさぁ結構長いことどんなんだろなんて思ってたんだよねぇ 最近は解るなぁ 422 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/21(水) 23 51 09 ID ??? 420 いいねぇw 423 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/21(水) 23 51 11 ID ??? コラーゲン!コラーゲン! 424 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/21(水) 23 51 47 ID ??? 421 どんなものだったの? 425 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/21(水) 23 52 25 ID ??? 飲み屋から書き込んでいた時のあの調子、あれが実は一番醒めている 426 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/21(水) 23 52 47 ID ??? 424 誰を思う気持ち 人間以外でも動物でも 428 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/21(水) 23 54 02 ID ??? 425 アイス旨かった? 430 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/21(水) 23 54 33 ID ??? 428 不味かったねw 433 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/21(水) 23 55 49 ID ??? 咳が止まらないから胸や腹の筋肉が痛い! 434 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/21(水) 23 56 02 ID ??? 明日英語を話し続けないといけない恐怖w 泣けてきた。。。 435 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/21(水) 23 56 32 ID ??? 433 軟弱者目が!英霊にしかられるぞ! 436 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/21(水) 23 56 56 ID ??? 明日は新プロジェクトのキックオフ 今のやつどーすんだよw 438 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/21(水) 23 58 01 ID ??? 俺は毎日ラジオ体操をして掃除して洗濯して過ごしたい 440 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/21(水) 23 59 34 ID ??? 人間、窮地におちいるのはよい。 意外な方角に活路が見出せるからだ。 しかし、死地におちいれば、それでおしまいだ。 だから、おれは困ったの一言は吐かない。 高杉晋作 442 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 00 00 33 ID ??? 440 死地ってなに?地獄?死角のある土地? 445 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 00 02 32 ID ??? 孫子の兵法第十一章に「死地」という言葉がある。ほかにどこにも行き場の無いのが死地であり、 そこでは直ちに全力を尽くして戦う以外に活路はない。孫子全十三章のそれまで十章を貫く思想は 戦わずして勝つ事にあり、死地に入る事などは下の下策という事になる。 451 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 00 04 42 ID ??? 難しい言葉がいっぱい。。。 脳が腐っていくのがわかる。。。 488 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 00 39 10 ID ??? だめだ眠くなってきてしまって 489 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 00 41 54 ID ??? とろんとろんしてきた 490 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 00 42 45 ID ??? 愛かぁ・・・・ 491 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 00 44 07 ID ??? ヌルのおじ様みたいにさ最初から生き物すべてに愛があったら 愚かな間違いはしなくてすんだんだよなぁ 人間は生き物 492 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 00 44 59 ID uxNBIDWW 愛よりも夢、おやすみ 肉体の愛って疲れるもんね 493 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 00 45 06 ID ??? 何か直接されたわけでもない人を憎んでしまうのは 妄想力だよな 494 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 00 45 55 ID ??? いろんなことを考えるよ 496 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 00 47 23 ID ??? あとさ人って絶対話さないとわからないよねぇ 外から聞いた評判と実際話した印象が大きく違うときがある 文字情報でも判断付かないなぁと思ったのはオフ参加したときに思ったなぁ 499 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 00 51 44 ID ??? でも心を打つ文章っていうのは存在すんだよなぁ 凄く好きな考え方だな、とか、凄く好ましい文章を書く人だなとか 思うときがあったりする 500 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 00 52 00 ID ??? 500 おやすみ〜 4月22日 520 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 06 01 52 ID ??? おはよ あんまよく眠れんかった 521 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 06 02 34 ID ??? 昨日、どこまで考えてたっけなぁ? 522 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 06 03 31 ID ??? 自分の中にある自己嫌悪が嫌いという気持ちに繋がるってとこまでだっけ? 523 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 06 05 03 ID ??? この続きかな?張らないと忘れる 968 名前:学籍番号:774 氏名:_____[sage] 投稿日:2010/04/21(水) 22 57 03 ID ??? 嫌いと好きにはさ、自分の中の問題がモロ反映しない? 誰かを好きになるとか誰かを嫌いになるとか 自分の中の何かが反応するんだよね 誰かを好きになる時は、自分が持っていたいものを持っているのをその人に見つけたり 誰かを嫌いになる時は、自分の中の気に食わない部分をその人が持っていたり 多分なんかそういうことなんだろうと思ったりする 524 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 06 13 16 ID ??? え〜っと、自分に向けられた言葉でも向けられた言葉じゃなくても 凸スレの372みたいな文章は嫌いで朝からうげ〜っとしてしまった どこに嫌悪感を感じたか?って考えてみると自分の普段隠してる自分自身の嫌いな部分が見えそう 1、なんか偉そうw 2、上から目線 3、図々しい感じ 4、断定的 5、自分が行動することじゃないのに人に急かしている 525 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 06 14 18 ID ??? つまり自分のそういうところが嫌だから 普段人に見せないようにして生きてるので 人がそれを露出してるとむかつくんだわwww う〜ん、朝から濃い 526 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 06 15 05 ID ??? 自分のことっていつも自分では正しくわからないよねぇ 527 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 06 15 36 ID ??? 7時になったら支度する 7時になったら支度する 528 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 06 18 36 ID ??? 逆にロム専さんの文章には比較的好感を持てたりする やってることには決して賛成できない部分があるのだけれど それはどこなのか? 1、素直 2、率直 3、謙虚っぽい 4、無骨でも一生懸命書いてる感じ 5、どこかしら面白い つまりこれ自分が持っていたいものかな? 529 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 06 20 22 ID ??? 心理学なんぞ勉強したこともないし 似非心理学者が書いてることなんて信じちゃいないんだけれど 無意識ってすごく気になったりするのだった 530 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 06 25 06 ID ??? そういや自分で気にしてないことは言われても平気なことだったりするよなぁ 太ってることを気にしてなかったらデブなんていわれても平気だしさ 禿げてなかったら禿げとか言われても全然へっちゃらじゃない? 要するに受け手の問題が大きいんだけれど まぁ、察して言わないっていうのが定石なんだけれど 531 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 06 26 49 ID ??? その言葉に傷ついてることを見せるのが嫌で そ知らぬふりをしてしまうことが・・ちょっとあったりするw 素直に「言わないでよ、そんなこと」と言えたら もう少し人生変わるんだろなぁ 532 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 06 30 04 ID ??? 俺流って言葉が嫌いな人もいるだろうけど 自分的には好きなスタイル おぉ〜って思うんだけれど 533 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 06 31 14 ID ??? 本当は個人差って素晴らしくって 人が画一的になってしまえば、その社会の方がやばい気がする 幸せを追求するのも、人のwantsにあった幸せが一番 534 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 06 31 53 ID ??? 書いてきてわかったのだけれど 博愛って、人の個人差を認めてあげることでもあるんじゃないかなぁみたいな 535 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 06 32 36 ID ??? だけど自分の中に自分の嫌悪を持って生きてるから それを表に出す人のことはどうしても好きになれなかったりする 536 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 06 33 30 ID ??? 少女パレアナっていう本を読んで少女時代はいたく感動したのだけれど 大人になって、なんだか馬鹿っぽいなぁなどと思うようになってしまった それはなんでなんだろ? 537 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 06 35 57 ID ??? 好きなことが多い方が人間は幸せなのだけれど 嫌いっていうか ポジティブシンキングの頭の悪さを憎むっていうか ネガティブの方がなんとな〜く賢いであろうみたいな? ああ、違う、守りかな? シニカルにしてる方が何かあったときに打撃を受けなくてすむから? よ〜わからん、この辺り 538 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 06 36 33 ID ??? 陰と陽なら、陰の方に魅力を感じるようになって久しいんだよな 539 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 06 37 26 ID ??? 本当は健康のがいいのに、健康馬鹿ってカッコ悪い〜みたいな そういう変な美意識があったりする 540 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 06 39 46 ID ??? 書いてるとわかってくることが多いのだけれど 自分探しの旅なんかするやつはこっぱづかしいやつだと思ってる けど早朝からやってることは同じだ(涙) 541 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 06 41 06 ID ??? こ、これはぁ、現実逃避ですぅ 今日は嫌なことをしないといけない んでそれに対してしたくもしなきゃいけない 542 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 06 41 13 ID ??? 朝から自分語りうぜーな 543 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 06 42 09 ID ??? 本当はレポート書き上げなきゃいけないのに 懸命に掃除をしてしまうあの感覚に似てるw 544 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 06 42 52 ID ??? 542 それはあなたの中に「自分語り(もしくは自己主張)」をしてしまう自分がいて それを抑えて生きてるからそのようなレスを書くんだよん 545 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 06 43 56 ID ??? 自分の心の何かに触れなきゃ、こんな糞レス埋めてるのなんて気にならないから つまりさ、「反応する」っていうことは原因はいつも自分の中にあったりする 546 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 06 45 18 ID ??? 542 何でも聞くからなんか話してよ どうせセカレを書かれてしまう可能性があるスレなんだから あなたの自己主張を聞いたほうが有意義 547 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 06 48 22 ID ??? 個人差なんて、みんなとっくに気づいてるんだよ 今まできづかないのがおかしい 548 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 06 48 38 ID ??? こうやって考えると嫌悪されるのもそんなに怖いことじゃないんだよなぁ ただ、憎悪の気持ちっていうのはどっからくるのか? 経験なのか? 549 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 06 49 01 ID ??? 547 あなたは偉いねぇ 550 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 06 50 25 ID ??? 543 それは逃避 いつも逃げてんだろうな 避けてるのかも 551 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 06 50 49 ID ??? 「皆」とか「誰もが」とか言葉に入れてしまうときがあるんだけれど それはでも確証はないんだよね だって他人のことは自分はわからないんだから つまり 547の文章には明らかな矛盾があるよ 個人差なんて、みんなとっくに気づいてるんだよ っていう言葉っておかしい 個人差を理解しているのなら、「みんな」なんて単語は主語にできない 552 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 06 52 07 ID ??? おぉ!朝から結構冴えてるじゃん! やらなきゃいけないことの逆のベクトルで! 553 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 06 53 03 ID ??? まぁまぁ糞スレに来てレスを書いてくれて感謝してるので 喧嘩を売ってません!売ってません! 554 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 06 53 13 ID ??? はいはい 自画自賛w 555 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 06 53 34 ID ??? へへへ 556 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 06 54 36 ID ??? あれ?どこまで考えてたっけ? 557 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 06 55 18 ID ??? ローズはいつ離婚したの? 558 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 06 56 09 ID ??? 557 女のプライベートは内緒なのよ 秘密が多いほうがいいの その方が魅力的なのよ? 562 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 07 16 49 ID ??? ああ、嫌いって感情は自分の抑圧してる何かに因果関係があるんだ 私は本当は図々しくしたいんだよ!偉そうにしたいんだw 542は本当は自己主張をしたいはずなんだ 568 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 07 26 22 ID ??? 527 支度した方がいいですよ 569 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 07 35 27 ID ??? あ!嫌いって感情はさ、抑圧されたものに対する自己防衛じゃん 抑圧続きだと自分が参ってしまうからその対象を攻撃するようなイメージ つ〜ことは嫌いなものが多いほど自己愛が強いってこと? だとしたら、嫌いなものをアピールすれば、自分の自己愛の強さをアピールしてしまうってこと? うわ〜っ 571 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 07 42 04 ID ??? そして考えなくてもいいことに必死に頭を動かすのは 紛れもない逃避なのだw あ〜 あ〜 あ〜 572 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 07 42 16 ID ??? ローズさんはお子さまだから(笑) 573 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 07 44 26 ID ??? 無骨でもいい馬鹿と思われてもいい 素直になることにしよう それが一番自分の求めてるものみたいだ ロム専さんの文章からわかったこと 575 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 07 48 41 ID ??? 芹沢ってさ小賢しいから なるべく心を隠す傾向にあるよねぇ 疲れないかなぁ 嫌な自分も弱い自分も自分であることにはかわりないんだから もう開き直って受け止めちゃったほうが楽になれる気がするんだけれど あ〜、よけいなお世話ですね? 576 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 07 50 24 ID ??? 自分的には人間なんて所詮大差はあまりなく いい加減でわがままで勝手でいやな生き物なんだと思ってる 他人も嫌なところがあれば、自分も嫌なとこrがあって当然で ただ、自分と他人のものさしだけ同じぐらいにしとけばそんなに 自己嫌悪するほどのこともないのではないかとも・・たまに思ったりもする 577 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 07 52 12 ID ??? ローズは朝からすごい頭の回転だねw 面白い女性だw 578 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 07 53 32 ID ??? いやなんかダラダラと書いているだけですから・・ ちょこっと冴えていたのは 現実逃避なんですよw うぉぉぉ、もうどうしよ 580 :バカは氏んでも名乗らない :2010/04/22(木) 07 57 21 ID ??? 本当はこんなことをしてる場合じゃないんだぁ! 逃げたいです、です、です でも頑張らずに時間が経過していって やらなきゃいけないところのギリギリの線にならないとやんないのは いつものことで こんなにいやな気持ちになるなら、はよ着手しろと自分でも思うのですがw 次 72.お芋婦人
https://w.atwiki.jp/xspxreexahx-altair/pages/6.html
副官のボカロの語り 管理人はエヴァについて語っているので 私はボカロの事をちょこっと書いてみますw 完全に個人の意見です。 ボカロにハマったのは年明けなので まだまだ日付は浅いですね。 好きなボカロはGUMI、IA、リンレンで 歌い手さんはコゲ犬さん、松下さん、ぐるたみんさんが好き。 kemuさんやLast Note.さんの楽曲をよく聴いてるかな。 特にkemuさん。 今までに発表されている数曲がひとつのストーリーになってて。 それがいい曲ばかりなんですよ。 アップテンポで一気に駆け抜けるような、凄くカッコいい曲でw すみません、詳しい順番までは覚えてないのですが 人生リセットボタン インビジブル イカサマライフゲイム カミサマネジマキ 六兆年と一夜物語 地球最後の告白を この6曲がストーリーになっています。 その中でも…私はイカサマライフゲイムが一番好きかな。 好きな曲書いてみますw 多いかも?w まずはGUMI。 《セツナトリップ》 《恋愛勇者》 《放課後ストライド》 この3曲はLast Note.さんが作ってます。 《イカサマライフゲイム》 これはさっきも書いたけどkemuさんの楽曲です。 《ハートブレイクヘッドライン》 《センセーショナル》 《レゾンデートル頂戴》 《脳漿炸裂ガール》 《天ノ弱》 普通に好きですw 天ノ弱は泣けますよ。 次にIA。 《六兆年と一夜物語》 kemuさんの楽曲です。 《ヘッドフォンアクター》 《チルドレンレコード》 《想像フォレスト》 《ニセモノ注意報》 《ヘイセイカタクリズム》 最後に鏡音リン、鏡音レン。 《秘蜜~黒の誓い~》 《リンリンシグナル》 《再教育》 ↑コゲ犬さんが歌ってるのがカッコいい! 《炉心融解》 《ツンデ恋歌》 まぁ、こんな感じです。 全然ちょこっとじゃない(^-^; 気になる曲があれば、聴いてみてください!
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5410.html
目次 これも「第三回君誰大会」の続編です。どうしようもないですが、見てください。 君誰大会 「平凡な物語り」 「そもそも、あなたがのろのろと決断を渋っているからこんな事態になったんです。」 「ぐ、それを言われると……」 「決断しなさい! さあ!」 いつもの喫茶店で、いつもの面子+いろいろの、総勢二十名ほど。 そんな大所帯で、店内の客の七、八割は関係者だ。 そして、さっきの決断を迫られているのが俺ことキョンで、決断を迫っているのが何故だか分からないが喜緑さんだ。 正直な所、誰にも糾弾されないままだと俺はまた逃げてしまっていたかもしれない。 実は、答えはもう出たのだが、それを口にするのは憚られたのだ。 なにせ、今のままコトに及んだら犯罪である。 俺は、よりにもよって妹の友人……まだ小学生である、吉村美代子を好きになってしまったのだ。 ああ。年齢的にはロリヰタコンプレックスといわれても仕方がないだろう。 というか社会的に抹殺されてもおかしくない。 だがしかし、あの表情、仕草を見ていないからそんなことが言えるのだ。 周りの女子高生に遠慮しながらも期待を覗かせたあの表情はまさに水爆級だった。一瞬で俺の心は焦土と化した。いや、楽園と化した。 なんだ、もうすっかり大人なんだな………的な父親視点と一人の女の子として見る男視点の両方から見て彼女は可愛い。 ああ、何いってんのかわかんなくなってきた。 しかし、この気持ちを声に出さねばいけない空気である。 恥ずかしいのに。 まあ、しょうがないか。 死を覚悟して言った。 「俺はミヨキチが好きだ。」 言ってやったさ。ああ。言ってやったとも。 だがしかし。 俺を待っていたのは、ある意味当然な、しかし言われる方としてはたまったもんじゃない口撃だった。 「ロリコン?」 「炉?」 「ロリヰタコンプレックス?」 「ローカルなキャラクタリスティックにコンプレックスを持っている略してロリコン?」 「待て。待て待て待て。確かにそう言われる分には覚悟してたがなんだローカルなキャラクタリスティックにコンプレックスを持っている略してロリコンってのは。ドンだけ長いんだ。」 「べ、別にロリコンなんて思ってないんだからね!」 「そしてそれもどんなツンデレ!? さっぱり何がしたいのか分からないよ!? そして外野! こっそり通報しようとするな!」 「もしもし警察ですか………」 「だーかーらやめろっての!」 「もしもし、黄色い救急車をお願いします。」 「都市伝説!」 「そういえば、本当に精神障害になった人は警察が引っ張って行くらしいよ?」 「じゃあ、110番するっさ!」 「つーるーやさーん! お願いですからやめてー!」 「不不不、みくるを泣かせるようなやつは投獄されるがいいっさ!」 「すいませんでしたーっ! でも俺はミヨキチが好きなんです!」 「じゃあ、そろそろ吉村さんにも喋ってもらいましょうか。」 「あ、はい、ありがとうございます。」 「緊張しなくていいんだぞ。こんなやつら相手に。外野の方々は極力気にしない方向で。」 「あの…はい。本当に、私なんかでいいんですか?」 「そーよそーよ。そんな子より私のほうがいーわよ。」 「黙れ自意識過剰。ミヨキチ、俺のこと嫌いなのか?」 「いいえ、そんなことは無いです。けど……」 「けど?」 「じゃあ、私とお兄さんは恋人同士、ってことでいいんですよね?」 「ああ。」 「じゃあ、ミヨキチ、じゃなくて、美代子、って呼んで下さい。その方が好きです。」 「じゃあ、み、美代子。ミヨキチってのは嫌なのか?」 「嫌じゃないですけど、折角恋人になれたんだからそう呼んでほしいです。」 「分かったよ、美代子。」 「お兄さん………」 「ねえちょっと見てアレ。お兄さんって呼ばれるのは変更無しですってよ。つまり、お兄さんと呼ばれたい、むしろ呼ばせて背徳感アップ!」 「ほうほう、えろいね。ナニする時も『あっ、お兄さんそこは……』的な声が聞きたいってことか。えろいね。実にえろい。男のロマンだ。」 「うっせーよお前ら! いちいち雰囲気を壊していくな!」 「うるさいこの幼女愛好家。」 「そうだよペドフィリア。」 「いいから黙って私たちの恨み辛み妬み嫉みを受けなさい。」 「長えよ!」 「高天原にかむづまります。すめらがむつかむろぎかむろみのみこともちて八百万の神等を。かむ集へに集へ賜ひ。かむはかりにはかり賜ひて。あがすめみまのみことは。豊葦原水穂国を安国と平けくしろしめせとことよさし奉りき。かくよさし奉りし…………」 「誰! 誰よ大祓詞なんて唱えてるのは! うわ以外や以外にも朝比奈さん! 畜生春の幽霊騒ぎのせいか!」 「おやおや、神道の魔術特性は禊。つまり絶対なる結界といった所か。彼等のラヴパワーが溢れてこないようにするには確かに有効だね。」 「その上、アレは大祓詞なんだから、ラヴパワーを祓う効果もある、と。流石はみくるちゃんね。」 「そこ! そこの神様コンビ! それ異世界だから! 同じスニーカー文庫だけど異世界だからね!」 「ふむ……つまりあたしもグラム・サイトを使うべきということ……?」 「社長は控えてて。ここはあたしが………。」 「お前ら、周りの皆分かってないから! せめてわかるやつでお願い!」 「むう、祝詞を唱えたからにはわたしは巫女役………でもわたしはあんなに小さくないしな………」 「私が陰陽師役をする。大丈夫。猫には懐かれている。ほら、シャミセン。」 「いいなあ、有希ちゃん。じゃあ私はサメでも飼おうかしら。」 「朝倉さん、フォルネウスは飼ってるんじゃなくて使役してるんですよ。そして私はアレですか? 幽霊少女ですか? 影薄いですか?」 「分かってたの!? そしてやめなさい! 美代子が話し分からなくておろおろしてるだろ!」 「あ、あの………それだと私がルーン使いの狼女ですか? それはちょっと………せめて、ホムンクルスの少女がいいです。」 「おろおろしてる原因それだった! 畜生ここらは馬鹿ばっかかよ!」 「それじゃあオピオンの方々も決めないとね。古泉君たち、頼めるかしら?」 「ええ。僭越ながら僕がもう一人のグラム・サイトを勤めさせていただきます。」 「じゃあ、私は吸血鬼役で。なんだかんだいってチェンジリングとよく一緒だし。」 「じゃあ、会長は陰陽師でいいですか? いいですよね? 有希ちゃんのお父さん役ですよ? 嫌なんですか? 嫌だって言ったら………」 「不服はないが、じゃあ君は何役だ?」 「もちろん気が狂ったまま死んだあなたの妻役ですよ。」 「ならいい。」 「いいの!? それいいの!? そして何で皆そんなノリノリなの?」 「あ、じゃあキョン君がルーン使いの狼少年でいいじゃん。」 「そうだねー。妹ちゃんはあえて管狐使いの彼とかどうにょろ? かっこいいっさ。」 「じゃあ鶴屋さんはみくるちゃんのお姉ちゃんとか? 巫女さんだよ?」 「あ、じゃあ僕はその守人ってことで。神楽ってどんなのかな。」 「―――私は――病弱なネクロマンサー――根暗マンサー?」 「じゃあ、僕はオートマタのオピオンで。」 「む、ならば私がオートマタのアストラル側で。」 「あらら、新川さんに取られてしまったよ。じゃあ、僕は破戒僧にでもなろうかな。裕は?」 「じゃあ、魔法使いを罰する魔法使い、にでもなるよ。」 「正直、彼はチートだと思うけどね。神を越えてるんじゃない?」 「まあ、楽しげだからいいでしょう。」 「………みんな、なんでそんなにノリノリなの? 誰か教えて?」 「ま、まあまあお兄さん。落ち着いて。それに、楽しいじゃないですか。」 「ああ、まあやってるほうは楽しげだけどさ、ツッコミ以外全員ボケって厳しいと思うんだ。二十人弱対一人ってもはや虐めだといっていいと思うんだ。」 「ま、まあまあまあ。皆さんのを見てるだけではいけないんですか?」 「無理なんだよ。これはもう血に埋め込まれている宿命なんだよ。大宇宙の意思なんだ。心で止まろうと思っても体が勝手に動くんだ。」 「危ない薬をやってる人みたいですよ。」 「じゃ、今度の文化祭はこの配役で映画を撮りましょう! そうと決まれば善は急げ! 早速行動しましょう! あ、キョン、お会計お願い!」 「ちょっと待てコラァ! 二十人分の喫茶店代なんて持ち合わせてるわけねえだろ! 古泉払え!」 「新川さんに頼んでください!」 「あの、お兄さん、私なら少しは持ち合わせてますよ?」 「いや、女の子に出させるなんて出来ねえから。というわけで新川さん、後で古泉から搾り取ってください。」 「了解しました。彼の今月の給料から天引きしておきます。」 「ありがとうございます。さて、いくか。」 「ええと、どこへですか? 皆さんがどこへ行ったかわかるんですか?」 「違うよ。折角二人きりになれたんだから出掛けようってこと。」 「え、あの、それは……。」 「もちろんデートってこと。嫌?」 「え、あ、嫌じゃないです! 嬉しいです!」 「じゃ、行こうか。」 「若いって………いいですね。」 「若さとは、振り向かないこと、だったけね。」 「あきらめないこと、でもあるよ。」 後には、遠くを見つめる新川さんと田丸兄弟が残されていたとか。 その後、いちゃついていた所にまた皆が乱入してきて乱痴気騒ぎになるのだが、ひとまずはおしまい。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/5798.html
目次 これも「第三回君誰大会」の続編です。どうしようもないですが、見てください。 君誰大会 「平凡な物語り」 「そもそも、あなたがのろのろと決断を渋っているからこんな事態になったんです。」 「ぐ、それを言われると……」 「決断しなさい! さあ!」 いつもの喫茶店で、いつもの面子+いろいろの、総勢二十名ほど。 そんな大所帯で、店内の客の七、八割は関係者だ。 そして、さっきの決断を迫られているのが俺ことキョンで、決断を迫っているのが何故だか分からないが喜緑さんだ。 正直な所、誰にも糾弾されないままだと俺はまた逃げてしまっていたかもしれない。 実は、答えはもう出たのだが、それを口にするのは憚られたのだ。 なにせ、今のままコトに及んだら犯罪である。 俺は、よりにもよって妹の友人……まだ小学生である、吉村美代子を好きになってしまったのだ。 ああ。年齢的にはロリヰタコンプレックスといわれても仕方がないだろう。 というか社会的に抹殺されてもおかしくない。 だがしかし、あの表情、仕草を見ていないからそんなことが言えるのだ。 周りの女子高生に遠慮しながらも期待を覗かせたあの表情はまさに水爆級だった。一瞬で俺の心は焦土と化した。いや、楽園と化した。 なんだ、もうすっかり大人なんだな………的な父親視点と一人の女の子として見る男視点の両方から見て彼女は可愛い。 ああ、何いってんのかわかんなくなってきた。 しかし、この気持ちを声に出さねばいけない空気である。 恥ずかしいのに。 まあ、しょうがないか。 死を覚悟して言った。 「俺はミヨキチが好きだ。」 言ってやったさ。ああ。言ってやったとも。 だがしかし。 俺を待っていたのは、ある意味当然な、しかし言われる方としてはたまったもんじゃない口撃だった。 「ロリコン?」 「炉?」 「ロリヰタコンプレックス?」 「ローカルなキャラクタリスティックにコンプレックスを持っている略してロリコン?」 「待て。待て待て待て。確かにそう言われる分には覚悟してたがなんだローカルなキャラクタリスティックにコンプレックスを持っている略してロリコンってのは。ドンだけ長いんだ。」 「べ、別にロリコンなんて思ってないんだからね!」 「そしてそれもどんなツンデレ!? さっぱり何がしたいのか分からないよ!? そして外野! こっそり通報しようとするな!」 「もしもし警察ですか………」 「だーかーらやめろっての!」 「もしもし、黄色い救急車をお願いします。」 「都市伝説!」 「そういえば、本当に精神障害になった人は警察が引っ張って行くらしいよ?」 「じゃあ、110番するっさ!」 「つーるーやさーん! お願いですからやめてー!」 「不不不、みくるを泣かせるようなやつは投獄されるがいいっさ!」 「すいませんでしたーっ! でも俺はミヨキチが好きなんです!」 「じゃあ、そろそろ吉村さんにも喋ってもらいましょうか。」 「あ、はい、ありがとうございます。」 「緊張しなくていいんだぞ。こんなやつら相手に。外野の方々は極力気にしない方向で。」 「あの…はい。本当に、私なんかでいいんですか?」 「そーよそーよ。そんな子より私のほうがいーわよ。」 「黙れ自意識過剰。ミヨキチ、俺のこと嫌いなのか?」 「いいえ、そんなことは無いです。けど……」 「けど?」 「じゃあ、私とお兄さんは恋人同士、ってことでいいんですよね?」 「ああ。」 「じゃあ、ミヨキチ、じゃなくて、美代子、って呼んで下さい。その方が好きです。」 「じゃあ、み、美代子。ミヨキチってのは嫌なのか?」 「嫌じゃないですけど、折角恋人になれたんだからそう呼んでほしいです。」 「分かったよ、美代子。」 「お兄さん………」 「ねえちょっと見てアレ。お兄さんって呼ばれるのは変更無しですってよ。つまり、お兄さんと呼ばれたい、むしろ呼ばせて背徳感アップ!」 「ほうほう、えろいね。ナニする時も『あっ、お兄さんそこは……』的な声が聞きたいってことか。えろいね。実にえろい。男のロマンだ。」 「うっせーよお前ら! いちいち雰囲気を壊していくな!」 「うるさいこの幼女愛好家。」 「そうだよペドフィリア。」 「いいから黙って私たちの恨み辛み妬み嫉みを受けなさい。」 「長えよ!」 「高天原にかむづまります。すめらがむつかむろぎかむろみのみこともちて八百万の神等を。かむ集へに集へ賜ひ。かむはかりにはかり賜ひて。あがすめみまのみことは。豊葦原水穂国を安国と平けくしろしめせとことよさし奉りき。かくよさし奉りし…………」 「誰! 誰よ大祓詞なんて唱えてるのは! うわ以外や以外にも朝比奈さん! 畜生春の幽霊騒ぎのせいか!」 「おやおや、神道の魔術特性は禊。つまり絶対なる結界といった所か。彼等のラヴパワーが溢れてこないようにするには確かに有効だね。」 「その上、アレは大祓詞なんだから、ラヴパワーを祓う効果もある、と。流石はみくるちゃんね。」 「そこ! そこの神様コンビ! それ異世界だから! 同じスニーカー文庫だけど異世界だからね!」 「ふむ……つまりあたしもグラム・サイトを使うべきということ……?」 「社長は控えてて。ここはあたしが………。」 「お前ら、周りの皆分かってないから! せめてわかるやつでお願い!」 「むう、祝詞を唱えたからにはわたしは巫女役………でもわたしはあんなに小さくないしな………」 「私が陰陽師役をする。大丈夫。猫には懐かれている。ほら、シャミセン。」 「いいなあ、有希ちゃん。じゃあ私はサメでも飼おうかしら。」 「朝倉さん、フォルネウスは飼ってるんじゃなくて使役してるんですよ。そして私はアレですか? 幽霊少女ですか? 影薄いですか?」 「分かってたの!? そしてやめなさい! 美代子が話し分からなくておろおろしてるだろ!」 「あ、あの………それだと私がルーン使いの狼女ですか? それはちょっと………せめて、ホムンクルスの少女がいいです。」 「おろおろしてる原因それだった! 畜生ここらは馬鹿ばっかかよ!」 「それじゃあオピオンの方々も決めないとね。古泉君たち、頼めるかしら?」 「ええ。僭越ながら僕がもう一人のグラム・サイトを勤めさせていただきます。」 「じゃあ、私は吸血鬼役で。なんだかんだいってチェンジリングとよく一緒だし。」 「じゃあ、会長は陰陽師でいいですか? いいですよね? 有希ちゃんのお父さん役ですよ? 嫌なんですか? 嫌だって言ったら………」 「不服はないが、じゃあ君は何役だ?」 「もちろん気が狂ったまま死んだあなたの妻役ですよ。」 「ならいい。」 「いいの!? それいいの!? そして何で皆そんなノリノリなの?」 「あ、じゃあキョン君がルーン使いの狼少年でいいじゃん。」 「そうだねー。妹ちゃんはあえて管狐使いの彼とかどうにょろ? かっこいいっさ。」 「じゃあ鶴屋さんはみくるちゃんのお姉ちゃんとか? 巫女さんだよ?」 「あ、じゃあ僕はその守人ってことで。神楽ってどんなのかな。」 「―――私は――病弱なネクロマンサー――根暗マンサー?」 「じゃあ、僕はオートマタのオピオンで。」 「む、ならば私がオートマタのアストラル側で。」 「あらら、新川さんに取られてしまったよ。じゃあ、僕は破戒僧にでもなろうかな。裕は?」 「じゃあ、魔法使いを罰する魔法使い、にでもなるよ。」 「正直、彼はチートだと思うけどね。神を越えてるんじゃない?」 「まあ、楽しげだからいいでしょう。」 「………みんな、なんでそんなにノリノリなの? 誰か教えて?」 「ま、まあまあお兄さん。落ち着いて。それに、楽しいじゃないですか。」 「ああ、まあやってるほうは楽しげだけどさ、ツッコミ以外全員ボケって厳しいと思うんだ。二十人弱対一人ってもはや虐めだといっていいと思うんだ。」 「ま、まあまあまあ。皆さんのを見てるだけではいけないんですか?」 「無理なんだよ。これはもう血に埋め込まれている宿命なんだよ。大宇宙の意思なんだ。心で止まろうと思っても体が勝手に動くんだ。」 「危ない薬をやってる人みたいですよ。」 「じゃ、今度の文化祭はこの配役で映画を撮りましょう! そうと決まれば善は急げ! 早速行動しましょう! あ、キョン、お会計お願い!」 「ちょっと待てコラァ! 二十人分の喫茶店代なんて持ち合わせてるわけねえだろ! 古泉払え!」 「新川さんに頼んでください!」 「あの、お兄さん、私なら少しは持ち合わせてますよ?」 「いや、女の子に出させるなんて出来ねえから。というわけで新川さん、後で古泉から搾り取ってください。」 「了解しました。彼の今月の給料から天引きしておきます。」 「ありがとうございます。さて、いくか。」 「ええと、どこへですか? 皆さんがどこへ行ったかわかるんですか?」 「違うよ。折角二人きりになれたんだから出掛けようってこと。」 「え、あの、それは……。」 「もちろんデートってこと。嫌?」 「え、あ、嫌じゃないです! 嬉しいです!」 「じゃ、行こうか。」 「若いって………いいですね。」 「若さとは、振り向かないこと、だったけね。」 「あきらめないこと、でもあるよ。」 後には、遠くを見つめる新川さんと田丸兄弟が残されていたとか。 その後、いちゃついていた所にまた皆が乱入してきて乱痴気騒ぎになるのだが、ひとまずはおしまい。
https://w.atwiki.jp/cyucyu/pages/24.html
童貞ちゃんの童貞語り 「童貞云々以前にただの俺女だから」 「俺女だから童貞じゃない!」 「童貞じゃない!!!」 「あと童貞じゃないし彼女います。かわいいです。フヒヒヒ。」 「ベジータは童貞だろうJK」 「世間の英日がなんていうか童貞の妄想みたいですごく… … 若いなあ…と思いません?」 「童貞の妄想はやたらおっぱいとかちんことか性欲に素直な女の子が出てきますけど、 処女の妄想はちんこも生えてねえような男ばっかり出てくるよな、不思議不思議 若年層の多い某カプとか見てるとそう思います。」