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発売日 2012年10月26日 ブランド ZyX タグ 2012年10月ゲーム 2012年ゲーム ZyX キャスト 民安ともえ(ライディ),市川みぃ(フォレス),青井美海(フォンフォン),御苑生メイ(ティス),魚刀秋(ゲイル),花歌七星(リィーア),野々村紗夜(フォルミ),宮森ゆう(マリア),夏川奈々美(アラクネ),義仲愛(ヴェス),らいむらいと(ヴィラン),花京院秋法(クァック),小中大輔(ギャルン) スタッフ ゲームデザイン:江島みなみ クリエイティブディレクター:宮城ゆうすけ キャラクターデザイン:和馬村政 シナリオ:江島みなみ,株式会社エレファンテ 明玖衛,藤野紀理,水原こだま テクニカルディレクター:たかし クリエイティブワーク:Kou Maki グラフィック:ムラムラ,こやぽん,たっち デバッグ:岩石落とし,キャンドル,びしょうじょアルファ,ひらっち,そふそふ プロモーション:下川憲一 キャスティング&Studioワーク:スタジオ以心電信 サウンド/SE:HT-SOUND アニメーション:GWAVE ムービー:KIZAWA STUDIO Special Thanks:明智松五郎,さわのたかじ 制作総指揮:江島みなみ 制作・著作:ジックス 販売:株式会社コンテンツトラフィック 企画制作:ZyX 主題木 「紅く染まる世界」 Vocal:MAKI 作詞:HT-SOUND 作曲:HT-SOUND シリーズエンディング曲 「誓いのバンダナ」 Vocal:民安ともえ 作詞:漫遊詩 作曲:天乃啓示 編曲:天乃啓示&Mad Pierrot E.Guitar:天乃啓示 E.Guitar(Ad-Lib Solo):ジャンゴマン E.Bass:Timothy Middleton
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時空の創生コナタ 7 5000 マーンーガー 水 R このクリーチャーは全ての文明、種族を持つカードとする。 自分のターンのはじめ、自分の手札を3枚捨てれば、自分の山札から、種族にマーンーガーをもつクリーチャーを1枚手札に加えてもよい。 覚醒ー自分のターンの終わりに、自分のバトルゾーンに、種族にマーンーガーをもつカードが他に2体いるとき。創生神Cool a shrine(クール・ア・シュライン)は2体分とする。 (フレーバーテキスト) 創生の覚醒者ハレハレ・コナタ 15 8000 マーンーガー 水 R このクリーチャーは、自分のターンのはじめに裏返してもよい。 W・ブレイカー 自分のマーンーガーを持つ種族が破壊されたとき、代わりに手札に戻せる。 自分のターンのはじめに自分のクリーチャー1体を選ぶ。そのクリーチャーは、ブロックされず、相手プレイヤーを攻撃できないという効果は無効になる。 (フレーバーテキスト)偉い人は言いました。ただのクリーチャーには興味ありませんと。 作者:(名前)ホワイト 2期が出ないからカッとなって作ったカード。本当に後悔してます。(実際作りたかったくせに)創生神様の子孫ということにしてください。名前はたぶんわかりそうです。(神とか、子孫とかもうわけわかんないよ)
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【防御の要】 (先生 今日は特殊な読み方をする漢字について――― (裂邪 (うぅ・・・ミナワの事が気になり過ぎて授業に集中できない・・・) (裂邪 (そろそろ俺の想いを打ち明けるべきだろうか? いや待て、それだと契約者としての面目が立たない・・・ それにシェイド達の事を考えると・・・ん?もし契約者と都市伝説が関係を結んだら―――) (先生 黄昏君。 (裂邪 ドキッ!? (先生 この漢字を――― (裂邪 み、ミナワ!(あ、しまった!) (先生 流石黄昏君ですね! 『水泡』と書いて『みなわ』と読みます。 (男子A 即答かよ・・・すげぇ・・・ ざわざわ・・・ (裂邪 (・・・守ってくれたのか・・・やっぱ好きだよミナワ・・・) 【一方その頃】 (ミナワ ックシュン!・・・あ、すみません!私のターンですよね! (ミナワ 『氷結界の龍ブリューナク』で直接攻撃します! (ウィル うぉ!? 負けちまったぜい・・・ (バク バククク、やっぱりウィルの【ヴォルカニック】デッキは弱すぎるバクよ。 (ウィル てやんでい! バクの旦那の【岩石族】も、ミナワの姐さんに負けたでやしょ!? (バク 古傷を抉るなバク! (ミナワ あわわわ、やめて下さいよ二人とも~; (ミナワ 【邪神】使いのマスターシェイドさんの前ですよ? (シェイド ・・・イツカラソンナ呼ビ名ガ・・・ 【ご主人様の腕前】 (ウィル 確か旦那と決闘したのはシェイドの旦那だけでやしたね? (ミナワ そういえばそうですね。 見た事ありませんけど・・・ (シェイド アイツ他人ニ教エルダケ教エテオイテ最近シテナイカラナ。 (バク 主はどんなデッキを使うバクか? (シェイド ム、流石ニ中身マデハ言ワナイデオクガ・・・ (シェイド 正直、闘ッテイテ疲レル。 (ウィル そ、そんなに強いんで!? (ミナワ 流石ご主人様です・・・ (シェイド イヤ、アニメノラスボスノヨウナ決闘ヲ仕掛ケテクルンデナ? (一同 あ~。(手をポンと叩く 【帰ってきたご主人様】 (裂邪 ただいま~。 (ミナワ あ! おかえりなさいませご主人様♪ (シェイド 「噂をすれば影がさす」、カ・・・ (バク さりげなく影だけにうまいこというバクね。 (ミナワ ご主人様、お疲れの所申し訳ありませんが、決闘してください! (裂邪 決闘か。 久しぶりだな~。いいよ。 (ウィル さっすが旦那、気前がいいぜい! (裂邪 暫くやってないから弱いかも知れんぞ。 (ミナワ そんなことないですよ! (バク ん? 何バク? その大きなケース・・・ ガチャッ (裂邪 0から13、好きな数字選んで? (ミ+バ デッキが14個!? (シェイド 裂邪ガ一番気ニ入ッテイルノガ0軍ダ。 (ウィル もしかして旦那、暇人? 【vsご主人様 1】 (裂邪 俺のターン、ドロー! (ミナワ (ご主人様のお気に入り・・・どんなデッキでしょうか?) (裂邪 ヒハハハハ! 『死皇帝の陵墓』の効果で、『地縛神Ccapac Apu』を召喚! (バ+ウィ じ、【地縛神】!? (ミナワ しかも1ターン目にいきなり・・・; そして数ターン後――― (ミナワ 『グングニール』の効果で『死皇帝の陵墓』を破壊します! (裂邪 なっ!? (ウィル お! 『Ccapac Apu』も破壊されて形勢逆転でい! (バク いよいよ主の泣きっ面が拝めるバク・・・ (裂邪 ウヒヒヒ、まだだ。まだ俺のデッキにはあと6体の『地縛神』がいる! (ミ+バ+ウィ 『地縛神』フルコンプ!? (シェイド ナ? 面倒クサイダロ? 【vsご主人様 2】 (裂邪 ウヒヒヒヒ、ターンエンド・・・ これで『光の護封剣』は消え、次の『Uru』の攻撃で終わりだ! (ミナワ うぅ・・・ (ミナワ (応えて下さい、私のデッキ・・・!)私のターン、ドロー・・・ッ! (ミナワ 『氷結界の風水師』を召喚して、『氷結界の龍トリシューラ』をシンクロ召喚します! (裂邪 何ィ!? 俺の『地縛神Uru』がぁ~! (ミナワ やったぁ!ご主人様に勝ちましたぁ♪ (ウィル 流石姐さんでい! (バク おめでとうバク~! (裂邪 (あぁ・・・はしゃいでるミナワも可愛い・・・) (シェイド (コイツ、目ガ危ナイ・・・) 【ミナワの想い】 (ミナワ あの・・・シェイドさん? (シェイド ム、何ダ? (ミナワ ご主人様の好きな食べ物ってご存知ですか? (シェイド 裂邪ノカ・・・アイツハ食ベ物デ好キ嫌イシナイカラナ。 (ミナワ ・・・チョコレートとか・・・好きでしょうか?/// (シェイド チョコレートナラ、ビターヲ好ンデイタナ。 翌日――― (ミナワ ご主人様、これ・・・よろしければ召し上がってください/// (裂邪 マジで!?ありがとう! (シェイド (ソウカ、今日ハ・・・) (バク (いいバクか!?こんな展開放置してていいのでバクか!?) 【ご主人様の想い】 (バク (主が珍しく静かバク。勉強バクか?) (黄昏父 おーい裂邪、飯だぞー? (裂邪 おーう、もうちょっと待って~ (ウィル (飯時には即行で下りていったのに・・・何かあったんでい?) 真夜中――― (裂邪 ・・・・・・よし、できた!よかった~間に合って。 (シェイド (ム、何カ作ッテイタノカ?) 翌日――― (裂邪 ミナワ、これ先月のお返し! 裂邪はオーラカラーのシャボン玉のようなビーズアートがついたネックレスをミナワに渡す。 (ミナワ えっ!?私に!? あ・・・ありがとうございますぅ・・・(半泣 (ウィル (うぅ・・・あっし涙が・・・) (シェ+バ (終わった・・・何モカモ・・・) 【迫り来る悪夢】 (裂邪 もうすぐ春休みか・・・ (シェイド コノ1年間ハ色々イベントガ多カッタナ。 (裂邪 1番のイベントは、ミナワとバクとウィルに出会ったことだな。 (ミナワ そ、そんなぁ・・・/// (バク 当然だバク。 (ウィル 嬉しいぜ旦那ァ! (裂邪 しかし、真の戦いはこれからだ。 (シェイド ム? 「組織」ヤ「首塚」ノコトカ? (裂邪 もうすぐ・・・正義がこの町に・・・ (四天王 そっち!? 【音】 ゴトッ・・・ (裂邪 ん? (シェイド ドウシタ裂邪? (裂邪 このマンホールの蓋が動いたような気がした。 (シェイド ソウカ? 私ハ何モ感ジナカッタガ・・・ (裂邪 う~ん、気の所為かな? しかしいい天気だ、今日はミナワと2人っきりで花見でも行こうかな? (シェイド オ前汚レ無キ少女ニ手ヲ出スツモリカ? 音の正体は後の話で・・・ ...Fin 前ページ次ページ連載 - 夢幻泡影
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乾貞治[アルコール度数98%] LV.57 バード DEX AGI型の殴り鳥。ときたまDS。 寧ろベースが低すぎて楽器MSだとネタにしかならない。非常に滑稽。 が。楽器殴りがしたい一心で鳥を作った以上、ネタも厭わない。 楽器ASPDは癖になるぜ…ゴクリ。 ワンデイで作り、以降一度も課金されない垢に在中する為 見かけた方は少ないと思われる。レアですらない。 ジョークで氷のエンペラーを凍らせてははしゃいでいる。AHOと呼べ。 基本は不協和音でうろちょろ、溜まり場ではブラギとアサシン。意味NEEEEE! 元ネタは知る人ぞ知るテ○スの王○様。汁の人。 最初は「天根ヒカル」で作るつもりだったのだが 1stアサの嫁さんから 「ネー乾マダー?」 コールがかかり勢いでこうなった。 …今はちょっと反省している。 (だがわたしは謝らない!) 溜まり場に良く出現している千石清純というアサの4thだったりする。 因みに2ndが跡部景吾というバランスステ殴りプリ 3rdが村神Co.Hey(伏字)という鷹師 5thが伊達政宗という剣士である。 しかしほぼ前垢課金しかしない為に、後垢キャラの詳細ステを忘れているというのは 俺とお前だけの秘密だ。 名前がネタしかないのは中の人の人生そのものです。 名前 コメント
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Oh.... 最悪だ。 私は、頭を抱えながら、思考に耽っていた。 吸い込まれるような赤!一体空とはどうなってしまったのだ! などと考え出す時点で私の思考回路はもう色々とお終いなのかもしれない。 正直、空が赤いのはこの魔境では日常茶飯事だ。 ついでに魔境にも海は存在し、砂は黒く海水は赤い。それはそれで風情が…ないでもない。 この最悪な気分を紛らわすには関係のない事を考えるに限るのだ。 まぁ…こうして怠惰という名の激流に身を任せ同化してみるのも悪くないだろう。 それもまた、一興…だ…。 『…魔…タ……ん…』 え?魔…たん?なに?マトンの親戚か何かか? 『悪…さ……さん…』 あくさままさまさ……???ええい、日本語を喋れ! 「悪魔サタンさん。」 「阿久真佐たんさんとは誰だ!さんなのかたんなのか二人称をハッキリしろ!……ハッ」 突如頭の中に女性と思われる声が反響した感じだがそんなことはどうだっていいぞ! 寝ぼけ眼で何とか状況の分析を開始する! さて…大声を張り上げられて、突如覚醒を余儀なくされた我が意識は、目の前の存在をようやく人と認識したところだ! 目の前にメイドなどという今時痛々しい格好をしたアホが…ん? 「メイド…?お前…。」 「こんにちは。よく寝れましたか?昨日のこと思い出せますか?」 私はメイドの顔をペチペチ叩いて確認する! 昨日のこととは一体何の事なのか皆目見当つかないが。 「な…なんだ。メイド管理人か!驚かせおって…貴様など怖くないわ!ワハハ…ハハ……ハ?」 「よう糞餓鬼…私です(^o^)」 「わぁぁあーーーっ!!!」 な、なんでいるんだーーーッ!? 見知ったメイドの顔をローテーションさせるとそこには最早トラウマとなった男の顔が! 理不尽すぎるぅ!! 大声を張り上げたのは良いものの、私は自分の体が固定されていることに気づく。 「な、縄!!?この人でなし!」 「うっせぇ!」ドゴォッ 「いたぁ!」 頭を男に殴られた! 私は目尻に涙を浮かべそうになるが、なんとか堪える。 なんて酷い人間だ。ここ数百年生きてきてここまで非道な奴は初めて見たぞ…。 「…私は…このアパートに古くから住む妖怪だぞ!?貴様ら人間にこのアパートはやらん!」 こうなったからには潔く我が正体を晒すしかあるまい! 妖怪とわかれば恐れおののいた人間共は早急に私の縄を解き土下座で命乞いをするに決まって… 「いや、ここ寮だから。アパート違うから。そりゃアパートっぽいけど。」 あ…駄目だ…こいつ…私の言うことを全く聞いてない。 「ここ元アパートなんですよ。ていうか妖怪だったんですか?悪魔サタンと名札に明記してあったのでてっきり大魔王な方かと…」 こいつは昔からどっか抜けている…アホなのだ。 「おいメイドさん…アンタ名札にコイツの事書かせたのかよ。つーか昨日も気になってたけどその名札何?」 「あら、気になります?ここの住民の名前は皆この名札に書いてあるの。私筆跡マニアだから…」 「へぇ~なかなか粋な趣味ですね~(キッショォォオオイ!)」 なんだ?こいつら私の事など気に掛けるかと言わんばかりに談笑し始めたぞ…どういうことだ!? 「あ!妖怪が睨んでる!大変だぁ呪われちゃうぞ!ねぇメイドさん!ボクの部屋でお茶しない?」 「?いいですけど…」 男が人を馬鹿にするような顔で私を見ながら場所を移し始めた。 縄に締め付けられた私は、ただただ呆然していた。 だからこそ、私は、誰にも聞こえないように呟いた。 「…ふん。人間なんぞ皆汚れた心の奴ばかりだ…。」 餓鬼を一先ず柱に張りつけておいて、俺とメイドさんは特に目的もなくマイルームで談笑をしていたのだった。 理由は二つある。一つは餓鬼が非常に悔しそうな顔をするので好奇心揺さぶられたのと… もう一つはこのメイドさんが昨日見たよりずっと可愛い顔をしていたからだ!!!!!!!!!!! いや、単に昨日メイドさんの顔を全然見なかっただけだがな! 全く昨日の俺はどうかしてたよ! 「おかしいと思ってたのよね…。ここに入ってくる人が幽霊が出るとか言って次々に引っ越していくもんだから…。やっぱりあの娘が原因だったんですねぇ。」 メイドさんが呑気に笑いながらそう言う。 突込みどころしかないし!正直管理人として大丈夫なのかと思うところがあるなこのメイド。 まぁ…所謂天然キャラという奴だ! だが、管理人がこの人なだけマシか。 糞デブピザオタクとか出てきたらもうどうしようかと思ったしね。 いやぁーなんだかんだ言ってこうして普通(?)の女性と会話を弾ませる俺マジ普通だな。 こんな辺境の地で手に入れた日常…絶対に手放さないぜ! 「そういえば………あなた学校はどうしたんですか?」 あー… 「やべェな、超面倒臭いわ…サボろっかなー。」 やっぱり女性と話すのって良いじゃん? リア充みたいで。まぁ俺、故郷でもマジ余裕でリア充だったけど。 とにかく女性と話す時間は心地良いわけだよ。 「駄目ですよ…?学校サボったら…あ、そうだ!!」 それにさー、よく考えてみろよ。 脱ホームレス一日目から学校とかテンションダダ下がりってレベルじゃねぇって。 これはもう記念日として後世に語り継ぐしかないっしょってぐらいだし。 今日こそはサボタージュコーンポタージュ……鈴木先生(失笑)……ん? 「あれれ?メイドさーん?」 メイドさんの姿が突如消え去る。 やはり最近の俺は長考になっているらしい…考えてる間に消えやがった。どういうことだッッ だから幼女なんぞに遅れを取るんだ…今度から注意しよう。 ………。 「…ま、行くけどねー」 メイドさんがサボったら駄目言うてた気がするさかい…しゃーない行くかー↑。 つーか、ヤベェな。 なんかメイドさんがいるから生きて行ける気がする。機会があれば嫁にでも貰っとくかな。 ふぅ……。気分を切りッ替えッッ 「…なんだか久々の学校だぜ!!!」 最近サボってばっかりだったからな!!!!!!! やっべぇ…本格的にテンション上がってきた!!! 「今日こそ友達作るぞぉおおおおおおおお!!!」 友達百人できるかなぁあああああああああ!!! 「じゃあこの娘を友達にしてみるのはどうでしょう!?」 次の瞬間、俺の視界に写ったのは何故かはしゃいでるメイドと… 高校の制服を着た例の幼女だったのである! 「えっ、今なんて?」 俺は真顔でメイドに聞く。耳に掌を当てて「でっかくなっちゃった」のポーズでできるだーけわかりやすーくメイドに聞く。 「ですから!この娘も学校に通わせましょう!酉島くんと同じクラスでっ!ほら、制服似合ってますよ!」 ・ ・ いや、普通初等部だろ? 小学生って体躯だろお前。 なんで高校の制服着とるん? つーかなんでメイドさんはそのサイズの制服を持ってるん? なんで生きてるん? ──様々な随想が俺の脳の中を駆け巡り回ったが、 ──結果的に俺は意気消沈をした。せざるを得なかったのだ。 つまり…えっと…本格的にテンションが下がってきたということだ…うん… 「おぉ…制服というのか!これは!中々可愛いじゃないかっ!!どうだ!貴様!えっと…名前なんだっけ?」 「酉島雄也さんよ。」 「そうか!おいっ!鳥っ!私を見ろ!」 「腐って落ちろ。」 その後… 俺はメイド・オブ・カーリーの申し出により、学校に行く間この見るも無残な糞餓鬼のお守りをすることになった。 なんでも、「人は助けあう物でしょう?」だそうだ。とんだ大義名分だ。ゴミが! 俺は助けあいだとか協力だとか集団行動的な物が死ぬほど苦手だ! 社会不適合者と言って貰っても構わない。 何故なら俺は社会に不適合でもヨユーで生きていける気がするからだ。(※飽くまで気がするだけで絶対的な自信はありません) 不適合な奴はどこまで行っても不適合!無理矢理それをしろだなんてとんでもない!俺は人権を発動する! だが人権より優先すべきは住む場所だ! メイドの機嫌を損ねれば、突如豹変し俺に出て行け!と言って数多の銃火器を取り出し俺に一斉発射してもおかしくない。 ここ夢幻の世界はそういうアレだ…無闇に拒否すると想像を絶する展開に成りかねない。小説として破綻しかねない。 ということで…早くも俺の、甘酸っぱいスクールライフ(になる予定)は…天()から地()に墜ち… さらに言うと墜ちる過程で炎上し、軈てそれは跡形もなく燃え尽き、消滅したのだ── ──気怠さを何とか押し切る形である。 俺は前に進む事を拒否する体を、鞭打って動かしながらも何とか登校をしていた。 さて、例の糞餓鬼…阿久真佐たんはというと。 「す…すごい…こんなにも沢山の人間がここを巣食っていたのか!」 何やら感動していた。 この餓鬼…人間を見るのに慣れていないのだろうか。 なんとも初々しい反応で見ていて楽しいものがある。 と、思っていると、何かを思い出したように餓鬼が俺の方を向く。 こうして見るとなかなか可愛い子供じゃあないk 「おい鳥!」 死ね糞餓鬼。 俺は優雅に拳骨を餓鬼の頭の突出部目がけて。 「…せめて名前で呼べや…」 さらに威圧感を放つ。我ながら…小さいキモの奴なら昏倒して泡を吹きかねない威圧感だ。 ひょっとしたらショック死するかも知れない…。 「っつぅぅ……わわわ、わ、わかった…ゆ、雄也!」 どうせなら昏倒すれば良かったのに… 「さんを付けろ。年上を労れ。殺すぞ。」 「雄也……さん。学校って…どんな所だ?私はどうすれば良いんだ?」 「なんだお前、学校知らないのか。馬鹿だなぁ…」 ェエエエエエエエエエエエエエ!!!! 「恥をかかない為に…今のうちに教えてくれると助かるぞ!」 「…!」 なんという純粋な眼差し…こいつ、俺が昨日テメェの脳天にカカト落としをキメたの覚えてないのか!? 俺が真面目にこいつのお守りをしてやるとでも思っていたのか!!? ひょっとして本気で何らかのまともな情報を俺から得られると期待しているのか!!?!?!?本気で!!? 「? どうした?」 「いや…なんでもない。説明面倒だしそういうのは先生に教えて貰え…」 「先生?…なんだかよくわからんが、わかったぞ!先生…先生…」 フッ… 素直な餓鬼は… …嫌いじゃねぇぜ! 俺は餓鬼の真摯な態度を素直に賞賛した。 嘘の情報を教えられなかっただけありがたく思え! と心の中で叫ぶように呟きながら若干ながら軽くなった体を急かし登校をそれとなく急いだのだった… 「ワハハ…学校の中にエレベーターがあるとは……。」 面食らったような顔をする阿久真佐たん。 俺も最初見たときはビビったもんだよ! 「最近学校の巨大化が著しくなってきてたしな。 なんかエレベーターとか出来ないかなーとか思ってたら次の日できてた。 …ってのが図書館の夢幻学園黙示録に載ってた情報だ!」 「そ、そうなのか…」 「ちなみに、お前がこれから転校する1年GX組は、転校生のみで構成された特殊なクラス! この学校には、それとなーく異能者もいるから下手に喧嘩を売ったりすんなよな。 俺みたいな化物がゴロゴロいるからな…下手すると死ぬぞ?」 「む…わかった。」 ゴクリ…と生唾を飲む音がこっちまで聞こえる。 どうやら緊張しているらしい。それとも死ぬと聞いて怯えたか? うーん、「それは殺し甲斐がありそうだなッッ」とかいきなり叫び出したりしなくて良かったわぁ…。 この餓鬼は、どちらかと言うと常識人サイドにいるらしく、俺は今非常に安堵している…。 数秒間ほどゴウンゴウンと動き、重力を感じさせていたエレベーターが停止する。 ふと上に表示されているあのアレを見た。『15F』と書いてある。目的の階についたようだ。 …俺は昨日15Fから落ちたのか…。やれやれ、こんな高い所から落ちても死ねないなんて、俺は本当ヤバいお方だぜ。 さて…GXはアルファベットなのでもっと低い階にあるんじゃね?と思った奴、それはお門違いだ。つーか二文字あるしな。 クラスGXは転校生のみで構成されるクラスで大体が異世界から迷い込んだ者、調査や好奇心、何らかの誤解などで入り込んだ者などで構成される…予定だ。 俺のような超弩級の天才超能力者から、何から何まで揃ったある意味危険なクラス!!!になる予定だ。 というのも、クラスGXが現れたのはつい最近の事で、まだ生徒が俺を含め…三人しかいないわけだからね。 しかもその三人全員がまるで他人に無関心! 俺が必死に話題を提供してやっても一瞬で受け流すわ無視しだすわ… …生徒は教師に似るって感じだな!いや俺は似てないし似ないけど。 …実のところ、異世界人だろうがなんだろうが、普通に転校生として隔離されることはなくクラスに配分されるのが普通だが…。 如何せん、ここの学園長や理事長などがかなり適当なクラス配分を行っているようだ。 時たま一年生が三年生の教室にいたり、女のみや男のみのクラスがあったり、僅か数人のみで構成されるクラスがあったり…。 とにかく適当だ。究極的に適当なのだ!ultimate perfunctory!!! とかなんとか説明口調で考えている内にエレベーターを揺らしながら降りる俺とサタン。この間約0.3秒。新記録だ! ……いやいやつーか待て、俺とサタンってなんだよ。どんだけシュールなの?俺と大魔王なの? やはりこいつの名前は阿久真佐でいいかな。なんかマサオとかまさしとかと親近感あって良いし。 「なぁなぁ!なんだかわくわくしてきたぞ…鳥!同時にちょっと不安だけど…」 そのサタンだが俺を見るも無残…いや、聞くも無残なあだ名で再び読んできた。 しかも本人は気づいていない。最早癖なのだろうか。とにかく、再び拳骨をくれてやろうかと思った。 がっ! 「そうかそうか」 俺は妥協した。時に妥協する事も大事なのだ。また一つ貴重な教訓を得られたね☆彡 …本音を言うと少女の目が輝き過ぎていてヤバかった…。 ここで殴るのはなんだかもう俺の良心が許さないというかな…。 あ!?違うぞ!?俺は断じてロリコンじゃあない! 俺は断じてあの…名前なんだっけ、白…なんだっけ。白島だっけ?とにかくあんな幼女性愛者じゃあない! これは飽くまで本能というか、人間のサガ的なものだ!そう…父性本能だ!!!! 葛藤に震える俺の拳を柔らかな平手に変える。 足を武者震いサタンの頭に乗っけて適当に左右運動…つまりなでようとし… ん!? 俺は何故幼女の頭なんぞ撫でようとしているんだ!?こいつは俺が大嫌いな糞餓鬼の筈! いくら優秀な態度を示しても餓鬼は餓鬼だろ!?違う!俺は断じて幼女性愛者じゃない!!! 白…なんだっけ!?白井だっけ!?とにかくあのような性癖破綻者じゃあない! 断じて!!!違ァァアアアア 「やぁ。君が今日転校してくる予定の阿久真佐さんかな?カーリーからは聞いているよ。」 ァアアアウ!?突如背後から聞くも忌々しい声が聞こえる!人が葛藤している時に!なんて忌々しい奴なんだ! そこにいたのは…身長170cm程度で、地味な私服を着用した、極めて普通の成人男性…。 しかし!!その名も鈴木權三郎(Gonzaburou suzuki)…例の糞教師である! つーかテメェカーリーだと!?呼び捨てだと!?つーかテメェメイドさんと知り合いだと!?テメェ!! 「つーかテメェ阿久真佐たんって!?それ正式名称だったの!!!?サタンじゃないの!?」 「酉島、貴様の意見など聞いていない。そもそも何故貴様がこの娘の近くにいるのだ。悪い病気をうつすなよ…。」 「なっ…ぐ……」ビキビキ ………説明しよう。 この夢幻学園には、大きく分けて三種類の教師が存在する。 一つは歯向かえばソッコー殺しにかかってきたり、生徒を理科の実験台にしようとしたりするクレイジー教師。 二つは教育?何それ美味しいの?と、全く以てやる気がなかったり、そもそも学校を欠席したりする糞教師。 三つは一般的な思想を持った普通の教師。もしくは綺麗な教師だ。 飽くまで『大きく分けて』なので、実はもっと種類があるが、大きく分けると大体三種類だ。 いや、四種類かも知れないけど、まぁ、俺の主観なのでなんの問題もない。 …俺としては…というか全校生徒はきっと満場一致で三つ目の教師に教えて貰いたい所だろう…。 だが当然のように三つ目の教師のエンカウント率は、ポケモンRSのチリーン並に低いのだ。 權三郎に至っては男女差別は当たり前。 明らかにストレス発散の為に行う体罰…そして何より、生徒達を見下すような態度! そもそも奴には一般常識というものがあるのか!?そんな世界で(ry 急に無口になった上、私達を無視するように早々と歩き出し勝手に教室に入っていってしまった酉島雄也。 私と先生と呼ばれる立場らしい鈴木權三郎は、それを追いかけるように並んで歩いていた。 人間って最低の屑ばかりだなぁーと思っていた私だったが… 早くもその考えを改めそうな勢いだ! こういう人間もいるのか! これがカルチャーショックというやつか!? 「つまり、学校とは様々な教養を得る為の場だったんだな…!」 「…そうとも。(そんなことも知らなかったのか…)」 鈴木權三郎とやらは何故か憐れむような視線を私に向けるものの、この短時間で凄く親切に分かりやすく色々な事を教えてくれた! あんな鳥野郎より余程よくできた人間であることを如実に感じ取ったわ…。 人間もまだまだ捨てたもんじゃないのかも! 「まぁ勉強とか、その他一般的な事は、クラスメイトから教えて貰え。(何故こんな子が高等部なのだろうか…)」 だが!私は、クラスというものに馴染む為に『自己紹介』というものをしなければならないらしい。 なんだか体全体が締め付けられるような苦しい感覚だ…これは、ひょっとしなくても緊張だろう。 「大丈夫だ。力を抜け。簡単に名前を言ってよろしくお願いしますと言えばいいんだ。」 「そっ…か…。力を抜いて…よろしくお願いします…」 「まぁ、クラスメイトは三人しかいないし、その緊張もとんだ杞憂になるだろうが。」 「?」 クラスメイトが三人?それが普通なのか?でも─── ───ズギョャァアアアアアアアアアアアアアアン!!!!! !? 突如背中をビリビリと伝ってくる巨大な爆発音…いや、粉砕音とでも言おうか?! 私はそれを聞いて直ぐ様振り返る! そこにあったのは砂埃と破壊し尽くされた廊下!!さらには扉の残骸!! その中から砂埃から現れる、手から気孔弾のような物を出す生徒らしき人物! そしてその生徒が睨む先にいるのは… 「テメェ俺が真面目に授業聞いてりゃあつけあがりやがってよォォオオオ!!」 「なんだとテメェ俺が真面目に授業してりゃあつけあがりやがってよォォオオオ!!」 教師だったァーー!? 「けっ…喧嘩してるぞ!?止めなくていいのか鈴木權三郎!」 見向きさえする気配がない鈴木權三郎を妙に思った私は、思わず手を掴み止めてしまう。 「…あんな光景はここでは日常茶飯事だ…それにしても実に煩いな。何故あんなのが隣の隣の教室なんだ…ブツブツ」 あ、あんなのが日常茶飯事…!?い、いや…アレは別クラスだ…落ち着け…大丈夫だ………私死なないよね… 「…ん?」 「ギィイイイイヤァアアアアアアアアアアアア!!!」 生徒『グングニルの槍』!! 先程の方面から突如猛スピードで飛来する槍…否、人間槍!! それは、教師が生徒をぶっ飛ばした物と認識するまで当たり前だけど数十秒もの時間がかかった! 飛来する槍が向かう方向は鈴木權三郎…ハッ!マズい…このままでは鈴木權三郎が死んでしまう! 私は…足が竦んで動けない!だって…暴力沙汰とか専門外だもん! 「そぉい!!」 「ギッ!!!」 しかし、現実は『非常』…だった。非常識だったのである。 結果から言うと、鈴木權三郎は当然のように無傷のままそこに立っていた。 ありのまま今起こったことを話すと、鈴木權三郎は非情にも頭から飛んでくる不良生徒の頚部を、いとも簡単に全くの躊躇もせず蹴りで粉砕したのだ! 粉砕された不良生徒はと言うと、何やら血などをぶちまけながら廊下に突き刺さっていた。 「あ、鈴木先生。サーセン、またやっちまいやしたぁ。あははは!」 向こう側から軽快な声で話しかけてくる笑顔の先生。白いシャツ姿なので、返り血が非常に目立っている… 「(チッ…毒虫が…)大丈夫です、問題ありません。さっさとそのオブジェ、片付けておいてくださいね。歩く時邪魔ですから。」 「はいはーいっと」 ………。 「ん?どうした阿久真佐。」 「い…いえ…あの………」 ……人間怖いよ………。 yr)も~うあれは酷かった!もう精神を疑った!まさかあんな暴挙に出るとはな… まさしく鈴木權三郎は、『糞教師』の権化のような奴なのだ!權三郎だけに! 俺が宿題忘れてきただけで殴り飛ばしやがって…絶対あの時の痛みは忘れねぇ…!! さてと。 などと考えている間に、俺はちゃっかり自分の席についていたわけだが…。 「良いから早く授業始めろよ…」 俺は机に頬杖をつく。 説明しよう!机に頬杖をつくという恐らく誰しもやった経験があるであろうこの体勢。 この体勢に入れば最後、俺はいつでも即睡眠が可能な状態に入る事ができるのだ! 言わば仮死状態という奴である! ガラッ そんな状態の俺の元に、突如響く扉の開く音! 「このクラスが確立し約一ヶ月半。漸く四人目の転校生だ。皆さん、仲良くするように。」 「「「………。」」」シーーーーーーン… うわ…どんだけだよ。相槌ぐらい打ってやれよ…流石の俺も引くわ…まぁ俺もメンドいから嫌だけど… 「あ…あの…阿久真佐………です!」 ん…?「たん」はどうしたんだ。「阿久真佐たん」だろ?それがお前の芸名だろ? ははん…さては緊張で自身の芸名も忘れたか!可愛い奴…ハッ! ちがっ…違うぞ俺は白木みたいな幼女性愛者じゃあ… 「えっと…その…」 …口篭るサタン。どうしたものか。「よろしくお願いします~」とか「よろちくび~」とか適当に言っときゃいいのに… ひょっとして、何か気の利いた言葉でも選んでんのか? 「…………生きててごめんなさい!!」ガバッ !? 「…あの!私頑張って皆さんに尽くすので!命だけは助けてくださいぃ…!!!」 …ェエエエエエエエエエエエエエ……!!!! かくして、彼女阿久真佐たん… 本名(?)悪魔サタン… 本本名不詳の彼女の学校生活は、渾身の土下座を以てして、その火蓋は切って落とされたのである!
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種族 名前 ALIGN 出現数 月齢 相性 LV つよさ ちから 魔法・特技 攻撃回数 HP ちえ めいちゅう 基本経験値 まりょく まもり お金 MP たいりょく かいひ MAG はやさ まほうりょく アイテム CP うん まほうこうか ジャシン トウテツ LAW 1体 0 ボス0 71 28 141 デスタッチテンタラフーマハラギオン 1~2回 737 21 17 284 24 73 497 151 20 13 210 10 27 アシュラのて 38 8 24 ジャシン オーカス LAW 1体 4 ボス0 66 34 153 アギラオマカラカーンシバブー 2回 707 12 23 231 21 61 396 141 14 16 264 14 23 ペンタグラム 35 10 15 ジャシン テトカトリポカ LAW 1体 5 ボス0 62 32 142 デビルスマイルムドムドオン 1~2回 747 14 20 186 19 56 310 121 13 14 248 12 21 ひこうばり 32 10 16 ジャシン ミシャグジさま LAW 1体 5 ボス0 44 26 107 ジオンガマハジオンガムド 1~2回 505 10 17 132 12 50 220 212 15 11 176 10 13 まけんムラマサ 24 8 12
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空はいつもに勝り晴天であった。 そう、いい天気だ。こっちでも空は青かった。 太陽は、いつもと変わらずギラギラ輝いていた。 そう、清々しいまでにいい天気だ。太陽が二つあるとかではなく。 Ah.... 退屈だ。 俺は、頬杖をついて窓際からそれを見ていた。 吸い込まれるような青!一体空とはどんな仕組みなんだろう! などと考え出す時点で俺の思考回路はもう色々とお終いなのかもしれない。 正直欠片も興味がなかった。退屈を紛らわすには関係のない事を考えるに限るのだ。 まぁ…こうして眠気という名の三大欲求の一つに従ってみるのも悪くないだろう。 それもまた、一興…だ…。 …………。 『…島雄……』 え?何?シマオ? 『酉……也…!』 とり………ん…? 「酉島雄也!!!」 「わぁビックリした!!?」 突如、頭の中に男のものと思われる大声が反響する! 『酉島雄也』。 …忘れもしない…この名前……!!! うん、俺の名前で間違いない。 ならば、その俺の名を気安く呼ぶこの男は一体…!!! 「ハァ……酉島君……今日の曜日を言いなさい……」 俺を覚醒させた目の前の男性が、改まってそんなことを聞く。 それも冷淡にだ。一字一句ハッキリと…まるで幼児に絵本を読み聞かせるように。 しかし、その比喩は余りに不適切、か。 その声色は、まるで囚人に死刑宣告をするような冷酷さも持っていたのだ。 幼児になんてとても聞かせられないね! …まぁ仕方がない。 何が仕方ないって、何故ならここは『学校』だ。 それも少し特殊な学校だ。 一回りもふた回りも特殊な学校だ。 俺がふわふわ寝かけていれば、それを見た教師は当然呆れるか…もしくは怒り狂うことだろう。 しようがない。何故なら俺にとって、勉強などというものは無意味だ。 ふぅん…取り敢えず質問に答えてあげましょう。 ほほう、今日の曜日とな?何を言っているのかね?そんなこと聞くまでもない! 「日曜日です!」 「じゃあなぜお前はこの教室にいる?…しかも一人で。」 間髪を入れずまたもや質問をする。 どうやら相手は本気のようだ! 良いだろうならば俺も誠心誠意答えようじゃないか。 俺は態々本気をだしてくる相手に、本気で応えないほど野暮な人間ではない。 「俺だけが追試だからです!」 「その通りだ酉島!転校してから一週間とは言え、よくわかってるじゃないか!」 「お褒めに預かり光栄であります!!!」 我ながら完璧な言葉遣いだ。 先生はいい笑顔d── ──バリーーーーン!!── 次の瞬間、俺の耳に届いたものは教師の『もう帰っていいぞ♪』という優しい声色でも『もう帰れやァ!』という怒号でもなく、 なんと!ガラスの破壊音だったのである。 全く以て予想ができなかった。これは意外である。 適当に的外れな事を言っておけば帰れると思ったのに… 何故ガラスの破壊音なのだろう? そこで気づいたのだ。 自分が窓辺のガラスごと外へ吹き飛ばされていたということに。 直下、何百メートルだろうか!地面を歩く生徒達が小さく見えるぞ! 頬に鋭い痛みが如実に伝わってきやがった!野郎、顔を殴りやがったな。 さらには、俺を吹き飛ばしたと思われる男性教師の声が聞こえる。 こんな状況でここまで五感が働くのは些か人間離れしてるんじゃないかって? そんな野暮な事は聞くな。 さて、肝心の教師のセリフだが… 「もう帰れやァ♪」 なんと!我が予想の前者と後者が融合していた! 具体的には優しい声色で、汚らしい言葉をまき散らしていた。 生徒にもう帰れやとは……教師にあるまじき事だ!!!! それにしても…やはり俺には未来予知能力とかもあるっぽいな! まさかこんな正確に予想が的中するとは! ふふ…感動やら何やらで目から汗が出てきたぞ♪ ───説明しよう! ここは夢幻学園高等部! 夢幻というだけあってこの校舎、一言で言えば摩訶不思議だ! 具体的には、等部ごとに校舎が別れており、それら全てを見てまず比喩したくなるのがあの巨大な『バベルの塔』だ。 些か大言壮語であるが、バベルの塔の絵を見ればわかる通り…とにかく大きいのだ。 うん、そう。「とにかく大きい」。高等部が「とにかく大きい」なら、中等部とかは「めちゃくちゃ大きい」感じだ。 何故なら人口が多いからだ。あ…この話もうどうでもいいや 「でもこれはないんじゃないの?」 当然そんな巨大なバベルの塔から放り出され、挙句地面に激突でもしようものなら、普通即死は免れないだろう。 地面に赤い一輪の花を咲かせる事になるだろう。 俺はそんな状況の中ひたすら面倒臭かった。 『異能力』ッッ この摩訶不思議な世界では許され、現実世界では間違いなく人々の『驚異』になるであろうもの。 それがこの世界には…夢幻には跋扈しているというのだ。 とてもニワカには信じられぬ話である。 「あぁ、そうとも。普通なら即死…普通ならな。」 無慈悲にも近づく地面。しかし俺、酉島雄也は平然とした面持ちだ。 ものの数秒で地面に激突することだろう。 頭から落ちていく俺は、体勢を『調整』する事を試みる。。 手の人差し指と中指を、眉間に当てるという不可思議な動作の後… なんと、酉島雄也の体勢が頭から落下していた先程とは打って変わり足から落下するようになったのだ! 次に起こるミラクルは!酉島雄也の落下速度が著しく落ちていく!おお!なんということだろう! そしてェ!無事着地d 「ッッグェアァ!!!」 ちょっと落下速度が早すぎた!!!! 両足にかかる猛烈な激痛…!!! しかしそれをなかった事にする為、必死に堪えつつ俺は立ち上がった。何事もなかったかのように…! 「ッたく、生徒を窓からぶん投げるとは、全くろくでもない教師だぜ…!」ペッ 俺はそう悪態をつきつつも、一時は物凄い勢いで落下してた為に、乱れた服を整える。 フッ…今時能力に一個や二個持ってないと笑われるZE…☆ 自慢じゃないが、俺の能力は故郷(こきょう)オブ故郷(ふるさと)で多くの愚民共から持て囃されるほどのものである! 右に出るものなしと自負するこの能力の前には、超高層学校から転落しようが無為だ! とかなんとか思考しながら、俺は平然と校舎の方に唾を吐き捨てる。この間約0.1秒。 「ッたく、転校してきてから一週間がもう経過してるッてのに、友達の一人もいないとは…。 皆俺を本能的に恐れすぎ!もうっ!俺だって人間なんだよ!?そりゃあ怪物じみた強さだけどさ… まぁクラスメイトが俺含め三人しかいないからしょうがないとは思うけどさ!!それでもだよ! こんな辺境の地だから、DBとかに出てきそうな奴とかと友達になれるかもとわくわくしてたのに!」ペッペッカァーーーペッッ さて、唾もひと通り吐き終わったし、去るか。 説明するべき事は大体した感じでもあるしな…。 勿論去るっつっても、具体的にはゲーセンへ行くわけだが。 …うーん、何か大事な事を忘れている気がしないでもないが。 大丈夫だ。後で思い出すだろう。 とまで考えて、ナイスガイは踵を返すまでもなく、校舎を後にした── 「………おい。」 ──筈だった! 突如背後から声がかかるッッ それは紛れもなく女性の声ッッ それでいて殺意に満ちた声ッッ 俺は命の危機に近いものを察知し背後に振り向くッッ 「こ、こんにちは…酉島先輩…。教室から落下してくのが…み、見えたんですが大丈夫ですか…?」 そこには冴えない少年の顔があった。 無論、このような冴えない少年から、女性の声が出る筈がない。 実際、冴えない少年の声は、顔に似合って冴えない男のそれだった。 俺は先程の声が幻聴である事を確信し、胸をなで下ろした。 同時に俺は説明すべき事を思い出した。『友達』はできなかったが、『部下』ならできたのだ。 紹介しよう。 この少年の名前は白鳥裕也。厨房だ。 昨日見つけた俺のパシリでもある! 何故だか知らんが、いつも焦燥感に満ちた表情をしているのが特徴だ! 今日も随分と滑舌の調子がよろしくない様子だ。 なんだか自信なさげな表情が実に滑稽で頼れない感じでもある! 「ハッハッハ、この俺は『 能 力 者 』なんだぜ?大丈夫じゃないわけがないだろ?☆彡」 俺は少年に明るく振舞った。正直足がまだ痛かった。 やたら能力者の部分を誇張した感じだがまぁ何も問題はないな。 それぐらいの余裕があって当然!俺は高校生!こいつは中学生!格の違いは確定的に明らか! 何より…少年は無能力者!部下兼、パシリにするには最高の逸材である!そう思わんかね!? さて、もうおわかりと思うが…ゲーセンの財布はこいつってわけだ! 忘れていた事はこの財布のことだ!財布を忘れるなんて俺もどうかしてたな!やれやれ! さて、当のお財布くんは、俺の機嫌を取る為なのか相変わらずヘラヘラした感じだ。 こいつ媚びる才能あるんじゃないか?と思った。 いや…待てよ、ヘラヘラに焦燥感をプラスしたような感じかな。 先程も言ったがなんかめっちゃ焦っている!汗とか顔に浮き出てきている! ──ふと視線を横に流したそこには、見覚えのない女児の姿が! 身長的に小学生なのは確定的に明らかだった為、俺は指をさして言った。 「おい、白鳥君。誰だね?この小便臭いガキは。」 この時点で俺は深く考えていなかった。 ここに来て、よく見ると糞餓鬼の顔面には我が唾が吐き捨てられていたのだ。 先程からプルプル小刻みに震えながら40℃ほど顔を俯かせていたのはその為かぁ。 顔真っ赤で泣いてるわけだなぁ?ハッハッハ… いやぁ…悪いことをしてしまった! 「済まないねェ☆お兄ちゃん弱小な存在にはひたすら強気だからね☆ねぇ、今どんな気分だい?まぁそう泣くなヨ! 後でお菓子とか買ってあげるからさ!コイツの金で!」 一字一句ハッキリと…まるで幼児に絵本を読み聞かせるようなナメタ口調で幼女に話しかける! コイツとは当然白鳥の事だぜ! 俺はポンポンと、未だ口を開かない幼女の頭を笑顔で小突くとゲーセンへ歩き出す。 大人気ないって?ハッハッハ。 俺は子供が大嫌いなんだよ!! フン…途中白鳥君の顔がなんだか馬鹿みたいに歪んでいたがなんだったんだろうか? ひょっとして白鳥君は幼女性愛なのだろうか? だとしたら流石の俺もどん引きだ…早々に縁を切るべきかも知れないな! あー…こんにちは。もしくはこんばんは違ったらおはようございます! 白鳥裕也でございます!はい! 本日はお日柄もよく…えー…いやもういいや、以下省略以下省略。 こんな所に出てくるとは思わなかったでしょう?うん、俺も思わなかったよ。 さて、本題に入ろう。えっとね。なんだかんだで今ピンチです。ええ。厳密には俺がピンチなわけじゃないです。 …お金なんて手に入れようと思えばいつでも手に入ります。 ですが命はそれっきりです。命は儚いんです。 「じゃあゲーセン行くか!ハッハッハ!」 などと呑気にニヤケた顔の彼。彼の名前は酉島雄也。 奇遇にも同じ名前だね!いや、今そんな事はどうでもいいんだよ!! 何がそんなにピンチかって?もうおわかりと思うけど、俺の隣で震えているこの少女── 「シャラァァーーーーーーーーーッップ!!!!」 その名も若林子乃ッッまたの名を野獣ッッ美女は野獣ッッ ──!? 再び俺の第五感が『殺気』をキャッチする!今度は真っ先に殺しにかかるような殺気ッ! 一体何故俺が!?これでも人の恨みを買わないように生きてきた積もりですけど! 不意に背後を見るッ!弾かれるようにッッ 「シャラァァーーーーーーーーーッップ!!!!」 そこには…俺を睨みながら物凄い勢いで突撃してくる温厚生物『幼女』とは思えない形相な生物がいた! 俺の知ってる幼女と違う!って感じだ! 「子乃ちゃんストーップ!!!」 バギンッッ!!! 俺の足場が突如歪んだと思ったら…鉱物が破裂するような音を立てて砕けるコンクリィィイイートッッ!! ───この幼女…異能者!─── それも『不可視』の何かを操っている!もし念動力の使い手なら…ッ! 「くっ…白鳥!コイツは私の顔を汚したんだぞ!ソッコー殺して当たり前だ!ソッコー殺す!」 「まぁまぁ落ち着いて…大丈夫ですか?酉島さん…怪我はありませんか?」 白鳥が妙になれなれしく俺の心配をしてきやがる…ハッ! 「命拾いしましたね酉島。俺が止めてなかったらソッコー死んでましたねあなた。マジだせぇ。うはっ。」 と言いたいのか!!! それに物騒な言葉を連発する幼女。なんて生意気なガキだ! それを躾ける男白鳥裕也…ただの幼女性愛者かと思ったが、コイツ…幼女の皮を被った野獣を飼ってやがった! 油断したぜぇぇぇっ!これが夢幻の『驚異』!一見普通でも…かなり高確率で『ワケあり』であるという! 記録者に聞いたので間違いない情報だぜ…!白鳥と幼女…か… だがこの酉島雄也!!退かぬ!媚びぬ!省みぬゥーー!! 「かかってこんかいィー!『不可視』能力の真髄、見せてくれよォーう!」 「酉島さん煽らないでーッ!?」 白鳥が錯乱したように言う! しかし無視だッ!こいつはきっと、この野獣を使役する事で、いつでも背後から俺を殺せるんだぜェ?と俺に力の片鱗を見せたに違いない! 小動物みたいな面してんのに…なんて腹黒いんだッ!許せん! それに…生意気なガキは教育してやらねばならんッッ!! さぁ…どちらが最強の念動力がハッキリつけようじゃないかっっ!! 学園都市レベル5の重みを思い知らせてやろう…ッ!! 「そうか。では心置きなく死ぬがよい。」 「子乃ちゃーーーん!?」 子乃と呼ばれた幼女が謎の威圧感を放ちながら俺に近づく。 白鳥裕也は慌てるばかりだ。だが関係ない!財布に人権はないのだ! その距離───射程範囲内ッッッ!!! 「躾をしてやろう…糞餓鬼め!」 俺は手始めに幼女の腹めがけて『成人男性並みの鉄拳』程度の力を加えた! フッ…我ながら無容赦な攻撃だ…あ、俺やっぱり悪い奴かな?後で慰謝料ぐらい払ってやるか…白鳥の金で。 ──この間約5秒。俺にしては長考だったのかも知れない。 「何が躾だって?」 マッシブ!!!!!!! 自分でも驚くぐらいヘヴィな一撃を腹に感じるッッ!! 激痛を感じながら俺の体が容易く宙に浮くッ 馬鹿な…射程内での攻撃は、有無を言わさぬ速度で当たるはずゥッー!? く、くぉのような華奢なガキがそれを食らえばただでは済まぬはずゥッー!! 何故だ…何故…!! 理解不能…理解不能…! あ、避けられたのか。理解可能。 「空気の流れも把握できない青二才に…」 幼女が俺の頭上に現れるッ!馬鹿な…!戦闘慣れしすぎているッ!こいつはァァ! 「不可視の技で私に勝てるかッッこの馬鹿者がァアアアアアアアアアアアア!!!!」 アビバッッ!!! そんなマヌケな声を誰かが発した気がし、直後…俺の意識はどん底に沈んだ…… さて、どこから話そうか…。 「アビバッッ!!!」 アレだけ悠々とした顔をしていた酉島さんがマヌケな声を発し、地面に顔を埋めた辺りから話そうか。 その残虐な弱肉強食的光景を目撃した俺は、考える暇もなく…子乃ちゃんに向かって 「もうやめてぇ!」 と悲痛に(聞こえるように)叫びながら後ろから押さえつける。 子乃ちゃんは最近俺の言う事を聞いてくれるようになってきたので、 暴れる子乃ちゃんの鉄拳が腹などその他数カ所に突き刺さる程度の怪我(全治一週間)で何とか済んだ。 一昔前には考えられないぐらい穏便だ! だが、俺以外の相手には相変わらず無容赦に殺害を試みようとするので困ったものである。 酉島さんは正直最低な人間だが、それでも殺生はいけない。その一線は超えちゃいけない気がするのだ。まぁとっくの昔に超えてるけども。 「家に帰って顔を洗ってくる!白鳥!お前はもうコイツと会わなくていいぞ!」 大層ご立腹の様子の子乃ちゃん。正直子乃ちゃんを連れてきちまったのが運の尽きだったなぁ…。 それに、大の字で地面に顔だけ埋めるというシュールな図を形成している酉島さんとは、残念ながらもう会う事はないだろう。 残念ながら?いや、寧ろ会わなくて良いことしかないかも知れない。うーん…ま、いいか。 俺はビッコをひきつつも適当に決死の思いで保健室の前に到着する── ──そこで白鳥裕也の意識は途絶えたのだった。 説明しよう! 傍から見ればかなり壮絶だが、鬼畜幼女子乃ちゃんの剛拳に幾度と耐えてきた白鳥裕也にとってこの程度、朝飯前なのである! 白鳥裕也と若林子乃が去り、そこに残ったのは哀愁漂う一人の男の姿だった。 ──気づいたら夕方だった。 「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」 まさかあんな幼女に遅れをとるとは…ゲーセンに行けなかったじゃねぇか糞が! などと嘆く暇も与えぬとばかりに、倒れていた俺を写メに収めていた不良生徒共。 取り敢えず数名駆逐し、現金を手に入れた。上の断末魔は不良のそれである。 この世は弱肉強食という事だと言うことに、今身をもって知った気がする。 そして、同時に今気づいた。 「っべー…っべーよ…時間過ぎてーら…っべーー…」 さて、ここで一つ真剣な話をしよう。 この世界に俺が頼れる人間など只の一人もいない故、俺の住む場所は『寮』に決めていたのだ。 時は一週間前に遡るのである。 ~一週間前だよ~ 「えっとォ、君は寮に住みたいってわけね。寮なら沢山あるんですよ。」 「ほほうほう?」 「じゃあ学園内の地図渡しとくんでェ。ここ広いんでね。迷うと思うんでね。一週間後の六時にここに来ると良いよ。」 「え?じゃあ一週間の間どうすりゃいいんの?」 「ハッハッハ…そんなの知ったことか。俺とお前は他人だよ。この寮制は恩情による物でもなんでもない。 金も払えないんじゃあこれぐらいの待遇、当然だろ?何を期待していたんだ?馬鹿かい?」 男は冷淡だった。まるで囚人に死刑宣告をするような声色で俺にそう言い放ったのだ……。 ~海藻終了だよ~ 男の名前は鈴木權三郎と言って、俺の担任でもある。コイツを四字熟語にするとしたら間違いなく『他人行儀』になるだろう。 生徒の事など気にもかけんとばかりの男! 全くもって最低なクズ野郎だぜ! 何が權三郎だ。名前がダサ過ぎるんだよ死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね とか思っていたら寮に着いた。 「フゥン…ここが寮かね!」 見かけは白いアパート…と言った感じだろうか。期待はずれ…いや、勿論良い意味でな。 普通って素晴らしいね!普通は素晴らしいよ! ここに来て以来、悪い意味で裏切られてばかりだったが、ようやく『普通』の寮に辿り着いた。 この夢幻学園の敷地内には、多数の施設が存在するから、中には騙し絵のような構造の建物まで見かけたが、これなら安心だ。 ……いや待て。 何故夕方なのに玄関に電気がついてないんだ? というか… 「窓に電気がついてねェ…狂気の沙汰だ…。」 …それとも誰も住んでいないのか? 一先ず、疑念を振り払う事にした俺は、無事寮に一歩足を踏み入れることに成功したのだった。 そして、再び俺の思考は疑念に包まれた。 一言で表すならこうだ。 「意味不!」 「何が意味不、なんですか?」 「!?」 俺は驚愕した。俺の高尚な独り言に介入してきた奴がいたのなら、そりゃあ驚愕するだろ? 驚かせやがった声の主を見るため俺は振り返る! そこ再び俺は驚愕した!なんと女はメイド服を着こなす色々とアレな女だったのだ! ───ェエエエエエエエエエエエエエ!!!! 「ここは私が趣味でそれとなーく経営する『夢幻学園寮─アマゾン─』でございます。何か…用ですか?」 怪しげな人を見る目で俺を見てくるメイド。 つーか…アマゾンってなンだよ!!!つーか… 「メイドってなンだよ!ひょっとしてお前さんは、オタク文化とかいうキッショイものに踊らされてるわけですかァ~!?マジ・引くわ!」 ──おっとと…思わず突っ込むところだったぜ。口からでかけたが、なんとかそのまま飲み込む事に成功したぜ。マジ危なかったぜ。 こんな所で下手に煽って彼女の気に障ったら、何をされるかわからないからな。 自分で言うのもなんだが、ここで一週間サバイバル(ホームレス)しただけあって、我が第五感とかその他諸々は色々と鋭くなっているのだ。 この程度の地雷に引っかかるものか!フーハハハざまぁみろ!! 「ハッハッハ!メイドとはまた随分とお洒落ですね!私の名前は酉島雄也!今日ここに来る予定だったのですが!」 その後すぐに「遅れて申し訳ない!」とお辞儀する。 しかし、当のメイドさんは『お洒落』という言葉を聞いて頬を赤らめていた。しかしそんな反応は割とどうでもいい。 俺は今体中が痛いのだ。さっさと休まる場所で寝たいんだよ!! 「か…可愛いだなんて。ハッ…褒めたって何も出ませんよ?」 可愛いだぁ?言ってねぇよ!!! しかもメイドはそれに付け足して、「お世辞なんてやめてくださいな…」とかもじもじしながら言い出す始末。 「だからそんなんどうでもいいっつってんだろォロオロロロロ!!!」 っととと、危ない危ない。思わず口から出かけたぜ…「だ」まで出かけたぜ…。危ない危ない。 冷静になれ…クールになれ俺。目の前の壁を超えればすぐそこにベッドがあるんだぞ!それまでこらえろ! 「あ、私の名前はカーリー・デルタロイドと言います。どうぞよろしくお願いします。」 ぺこりと律儀に45度のお辞儀をするメイドさん。 反射的に俺もお辞儀をするものの… クソッ!この摩訶不思議なメイドさん如きに、どれだけ精神をすり減らせば良いんだァ! 「え、えーっと…そ、そんなことより…私の部屋なんですが…」 「はい。それならこっちです。」 メイドさんがようやく歩き出す。俺もそれに釣られて歩き出す。 この住宅街とかによくありそうな作りのマンションっぽい寮の全貌が酷く気になる。 ただの好奇心によるものではなく、自身の命の心配によるものだ。 俺は注意深く周囲を見渡す。 ………普通だ。 何ゆえか、電気がついていないという点を除けば普通だ。 一階上 たまに蜘蛛の巣が張っていたりする辺り、どこにでもある普通のマンションやアパートのようだ。 それにしても、このメイド…管理人か?寮長か?いや…メイド、つまり従者って事は、管理人のメイドなのだろうか。 つまり管理人が糞デブピザオタクって事か?うーん…長い付き合いなるだろうしそれは勘弁して欲しいな。 「あ、ここですね。あなたの部屋は。」 さて、肝心の俺の部屋の扉だが…。 ──これも、普通! だが中を確認するまで安心できぬ…! あまりにも用心深すぎると思うかも知れませんがね。 この学園は色々とガチなんだってばよ。マジで。 俺は保身の為ならどこまでも用心深い男なんだよ。 どんな些細な違和感だって見逃さない自信があるぜ。 「…すいませんちょっと、中見せて貰えますか?」 「ええ。結構ですよ…あ、ちょっと待ってください。」 「んー?」 「この名札に自分の名前を書いてください。」 メイドの声は酷く冷静で、冷淡で、それでいてどこか冷酷だった。 一言で表すなら、冷たい声だった。最初玄関で会った時もこんなんだっただろうか? まるで『仕事人』のようだ……必殺仕事人…アレかっこいいよなぁ。 俺の能力を使えばあんな芸当も夢じゃないわけだが。改めて自分の才能に嫉妬だわ。 「名前?お安いご用ですよ!はっはっは!サインを書くのは故郷で慣れているんでね!!!」 「ペンならこちらにあります。」 「はいはいっと。」キュッキュッ 俺は淡々と自分の名前を名札に書き記す。ただしサインっぽくアレンジしてな! しかしこんな事に何の意味があるのだろう?心底疑問だが、別にそこまで心底疑問じゃないのでまぁいいとしよう。 書き終えた頃には、何やらご満悦な表情メイドさん。何か良い事でもあったのか?とかもうそんなことはどうでもよかった。 既に俺の視界には手渡された鍵とドアノブしか映っていなかったのである。 「ではどうぞごゆっくり。うち、お金とかは取りませんので。お疲れのようですし…今日はおやすみになるとry」 俺は、メイドの言葉を最後まで聞かずに部屋に入った!なげぇんだよ! 部屋の中は……… 「普通だァァァァァ!!!!!」 ヒィーハァー!!!とけたたましく叫びながらも俺は押入れを開き借り物の布団を取り出すッッ 気が効いてやがるぜッッ 「ヨイショオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」 ビタァァァァァンと凄まじい勢いで畳の床に叩きつけられた布団は埃を巻き上げるッッ だが私は謝らないッッ 「あのー」 突如背後──玄関から上がる声!!!!その声は女性のものだった! 「ファンタスティィィイイイイッッック!!?(なんですか?)」 「このアパート…何か幽霊的な物で出ますから注意してくださいね。悪魔サタンとか出るかも…」 「ファンタスティィィイイイイッッック!!!(余裕です!!)」 俺は無事、恐らく本日最後の応対を終えると、踵を返しビタァァァァァンと敷かれた布団を視界に収める。 「ファンタスティィィイイイイッッック!!!!!!!!!」 俺はルパンダイブで布団へ飛び込むと、一週間分の疲労を耐えてくれた俺のマッスルボディ(妄想)に感謝しつつも、一瞬で眠りに落ちたのであった。 眠ることを死に例えると…まさに即死って感じカナ… こうして…この長き戦いはようやく落ち着いたのだ…死、という形でな…いや…本当に長かった…ぜ…… ここは…どこだ? 空はいつもに勝り晴天であった。 そう、いい天気だ。こっちでも空は青かった。 太陽は、いつもと変わらずギラギラ輝いていた。 そう、清々しいまでにいい天気だ。太陽が二つあるとかではなく。 だが一つ相違点があった。 海が赤い。 海が赤い上に何だか鉄の臭いがする。 酷く鼻につく臭いだ。 「馬鹿な…俺は確かに…あの…あそこで寝ていた筈!あの小汚い部屋で!」 俺はハッとなり、足場を見る。 なんと俺は海に立っていたのである!!!!! しかしそれはよく考えたら特筆すべき点ではなかったのだ。 何故なら俺は超能力者。念動力の使い手だ。 海など歩けて当然。寧ろ歩けない奴遅れすぎぃみたいな? 「フン!どこだかわからんが…この俺を連れてきた人間がさてはどこかにいるな! 無駄な事を!どこからでもかかってこんかい!それともこの俺が怖いのか!?そうだな!怖いんだな!? じゃあ出てこなくてイイぞ!泣いて喜べ俺は無駄な争いは好まないのだ!さぁもとの場所に戻せ!さもなくばァ…」 ひとしきり大声で恫喝した積もりだったが、見えるのは青い空 輝く太陽 そして赤い水平線だけだ。 「……マジで誰もいないのかァ?」 俺は赤い海を歩く。当てはないが何もせず突っ立ってるわけにもいかない。 やれやれ…面倒ごとはごめんだぜ。 とか気取った次の瞬間! 赤い飛沫が上がる!!! 「!?…糞が!一体何奴だ!」 飛沫の中から現れたのは…… ……幼女だった! 「ゲェー!!」 しかしそれはただの幼女ではなかった! 「昼間の糞餓鬼!!!」 「ワハハハハ!また会ったな!」 ワハハハハ!?どんな笑い方だ!生意気な! 幼女は赤い海水を返り血にように浴びながら生意気にふんぞり返る! なんだかさっき会った時と雰囲気が違う気がするが気のせいだろうか。 「今度こそ殺してやるぞぉう!」 「何!」 「ワハハハハ!この私が怖いだろう!命乞いをしろ~!」 「断る!」 「!?」 糞餓鬼が驚愕に満ちた顔になる! 正直興奮した! 「私が怖くないのかァ~!」 「黙れこの糞餓鬼がァァ!!!俺は餓鬼が大嫌いなんだよ!!教育してやる!!!!」 「!!?!?」 俺は幼女を追いかける! 「う…来るなァー!きたら殺すぞーっ!」 「ッヒヒヒヒャ!!いいぜ!殺してやるよ糞餓鬼が!そこで首洗ってろ!辺りにゃ血しかねぇけどなァー!」 「ひえぇぇー!」 逃がすかボケェェ!とけたたましく叫びながら俺は幼女を縦横無尽に追いかけまわす! 急に弱気になったのが意味不!だが別に良いだろう。そんなことは些細なものだ!夢だし! なんて幸せな夢なんだろう!俺は今幸せの絶頂にある! 「うわぁぁぁーー!!!」 「………ハッ!」 「!?」 「俺は何をしていたんだ…これではまるで性犯罪者じゃないか!」 「…!?なんだか知らないが勝機!」 「最初から“こうしていれば”良かったのにね!」 「!?」 感嘆符&疑問符を連発する糞幼女! いいぞ!その顔!絶望に染まっていくその顔!!!実にいいッッ そう…最初から『能力』を使っておけばよかった! 「いやぁぁあーーー!」 幼女が甲高い叫びを上げながら我が念動力に持ち上げられ、思い切り引き寄せられるッ! 次の瞬間、俺のモーレツゲキレツハイパー頭突きが炸裂── ──その時、男は突如として グワァン!!! と飛び起きた!!! 「ユアマザァァァファッカァアアアアアアアアアアア!!!!」 それも奇声を上げながらである! 「ハァッ…ハァッ……なんだ…夢かッ!?」 汗が肌を伝う感触…否!汗が肌を包みこむ感触! 汗など寝ている間にとっくに大放出していたということだ。 「ハァ…フゥッ…」 ちょ…これ予想外に呼吸を整えるのがキツい…。 「ヒィッ…ヒギィッ…ヒッヒッフッー……酷い悪夢だった気がする!」 フry ─数分後─ 「やれやれ…どんな夢だったか覚えてないが…悪夢を見て飛び起きるなんざ、随分恥ずかしい所を見せちまったな。」 誰に言っているのだ…。 外を見るまでもなく、現時刻は夜!時刻と言っているのに朝昼夜の三択から言葉を選ぶのは些か気が引けたがとにかく夜! 今まさに俺の視界は闇夜にザワールドに包まれ暗視ゴーグルがあればソッコー装着する勢いで目を闇に慣らそうと踏ん張った! でもよく考えてみろ! ここは寮だ! 明かりがあったのだ! もうホームレスじゃないんだ! 「そう思った俺はようやく、暗い部屋を見渡す覚悟ができたのである(説明しよう!俺は暗い所が苦手だ)!」 「グワァン!」 「と立ち上がり!」 「明かりを!」 「探す!」 「俺!!」 「ヒギッ!?」 「ここにきて、自分の頭に鈍痛が走っていることに気づいた!」 「寝違えたか!?久しぶりの寝床にはしゃぎ過ぎたようだ!ファッキン!」 「え!?なんで態々声に出すのかって!?」 「うるせぇな!!黙ってろ!!」 「そんなに俺をショック死させたいのか!?」 「糞が!」 「この!」 「くそったれが!」 「フゥ…俺は自分の心拍数が低下していく気がした。落ち着いてきたということだろう。」 「そろそろグダグダになってきたし電気でも付けるか…。」 「俺が怖いものは、俺より強いものとなんか超常現象的なアレのみだ!」 「だから普通に生活してて俺に怖いものなんて基本的に現れないのだ!」 「ざまぁみろ!俺は学園都市LEVEL5の男!最強の念動力使い!」 switch on!!!! 「俺は壮大に体を仰け反らせてながらも部屋の電気をつけた。」 「それに応えるように、ペカペカーッと我が家を照らす照明!!」 「光とは実に頼もしい限りだ!」 「これぞ日本のyうわっ!」 『日本の夜明け』と最後まで言えず、俺は突如前のめりにブッ倒れる! 足に何かが引っ掛かったようだ! 派手に動きすぎたか!何もないこの部屋でまさか躓くとは! 何もないところ? え、ちょっと待て。 足に何かが引っ掛かったんだぞ? あぁ、布団だな。布団に躓いたんだ。 俺は顔をあげる。 目の前にある俺のモーレツゲキレツハイパー寝相によってバイオレンスの限りを尽くされた敷き布団がそこにあった。 この部屋は、明かりをつけてみて四畳半程度の広さしかなく…── ──またテレビやそういったものから、生活必需品など何から何まで揃っていない。 揃っているとしたら、不自然にもこの布団と掛毛布のみ。 …………。 俺は現実逃避の為に始めた考察が何だかアレな方向に走り始めたので、中断する。 「何を恐れているのだ?俺は学園都市LEVEL5…恐れるものなど何もないに決まっ───」 ブツッ 次の瞬間、突如消灯する我が太陽。 「エヒョッ……!!?!?J#」 俺は言葉が出ないぐらい同様しながら立ち上がり、思い切り振り返る!!!! 誰も!!!いない!!! 「ヒィッヒィッフゥーーー……!!」 ラマーズ法で息を整えるものの、なんだか脳がこんがらがってきた。 取り敢えず、俺は、なんか今にも死にそうだった。ヤバい。 「…………いたたたたた…頭が痛い!うー…おのれ、矮小な人間め…こ…この私の顔に傷をつけるとは…うう…」 …………俺は急に冷静になると、目線を地面に落とす。 そこには小ぢんまりとした尊厳の欠片もない格好(恐らく黒色無地のポンチョ)の糞餓鬼が涙目で蹲っていたのだ。 まるで一昔前に規制された黒いゴミ袋のようだ。 髪は黒を極めたような黒。まさに真っ黒で、肌は日本人らしい色をしていた。 なんだかそこらへんのゴミ捨て場とかに落ちてそうな薄汚いポンチョ…これがこの餓鬼が糞餓鬼に至る要因に違いない。 ま、そんなことはどうでもいいとして… 「……!や…やい貴様!先程はよくも私に頭突きを「ユアマザァァァファッカァアアアアアアアアアアア!!!!」アビバッ!」 無論、俺は幼女の頭上にカカト落としを決めたのである!!!!!!!!!!!!!!!!
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UNDERGROUND SEARCHLIE ◆HOMU.DM5Ns ―――このアーカムという街は多くの噂に溢れている。 人が集団を成し、街といえるだけのコミュニティを築いてる場であれば当然の現象だろう。 だがアーカムのそれはあまりに多すぎた。質と量が膨大に尽きた。 加えて、噂の種類はその全てが陰鬱な、後ろ暗い背景で綴られた内容ばかりだった。 ―――曰く、ミスカトニック大学にある禁書指定されたその魔術師を読んだ者は精神を貪られ生きながら亡者と化した。 ―――曰く、フンチヒルにいた優れた感性を備えた芸術家は魂を囚われ、今も狂った神を慰撫する演奏を強制され続けている。 ―――曰く、太平洋の漁業から帰って来た船乗りは毎夜悪夢に怯え、最期は人間では発音不可なはずの言語を撒き散らし狂死した。 ―――曰く、白昼公然のダウンタウンの往来で、不可視の怪物に捕らわれ、恐怖で凍りつく大衆の前で貪り喰われた科学者がいる。 魔術師たる者が都市伝説に気を揉むとはお笑い草、そう受け取るのも当然だろう。 事実私とてかつてはその無知なる哀れな―――そして幸運な―――衆愚の一員だったのだ。 九分九厘噂の出どころは根も葉もない出任せであり、そこに協会が神秘の香りを嗅ぎ取ることは決してない。 才ある者が偶然にも正しい儀式の手順を成功させてしまう事例は少なからずある。しかし百年単位で流布している伝承ならいざ知らず、現代都市で生まれた噂に神秘が付与されるわけもないのだ。 仮に噂が真実であったとしても、問題と受け取りはしない。それこそ魔術師にとっては垂涎ものの話題に他ならない。 禁忌。怪奇。異常。どれも神秘には付き纏う付属物。魔の深奥ほどそれは色濃く増していく。 必要ならば女の血肉を裂く。重要であれば老人の骨を割る。素材なら幼子の臓腑を吐き出させ、獣の脳髄を晒す。 どれも必要なやってのける。人道の外にこそ神秘は存在する。更なる神秘の発見に魔術師は眼を血色に染める。 その解明の足掛かりになるのなら、私は喜んで都市伝説(フォークロア)の蒐集家になっていたであろう。 ……今は後悔している。 知ってしまった真実を悔いている。 見つけてしまった闇の底からこちらを覗くふたつの目を、記憶から忘却したくて仕方がない。 噂が真たることは魔術師にとって幸運だ。だが実態が伝聞を遥かに超える領域であった場合、それは不幸と反転する。 源流たる根源が幾つもの魔術体系に枝分かれする度に流れが弱まり幅が狭まるように、噂が恐るべき真実を覆い隠す慈悲なるヴェールであることを私は思い知ったのだ……。 話を最初に戻そう。 このアーカムにある数多ある噂、そのひとつについて。 私が軽率にも足を踏み入れ、その語るもおぞましき狂気の世界を体験する羽目になった話だ。 ―――曰く、アーカムには幻の地下鉄道が存在する。 (古ぼけた一冊のノートから抜粋) ◆ ◆ ◆ 現在アーカムには三つの路面電車がある。 北部のノースサイドから東のイーストサイドを周回するノースサイド線。 南部のアップタウンからキャンパスを通り川を越え、ノースサイドまで登るチャーチストリート・ホスピタル線。 そして南東部フレンチヒルからダウンタウンまで伸びるフレンチ・ヒル線である。 これら以外にもかつて路線があったが今は廃止され、使われなくなって久しい。 今のアーカムの街並みになってこの三つが使われてるが、五年ほど前に第四の線路の話が持ち上がってきたらしい。 交通の便をより快適にし、アーカムを更なる近代都市に発展させる、地下鉄建造の計画だ。 だがその計画は開始間もなくして水泡に帰した。 莫大なコスト、フレンチヒルにいる旧い名士からの反対、理由は多々あるとされはっきりとしていない。 中には掘り進めた地下から金塊が見つかった、明らかに人為的な空洞が形成されていた、作業員が闇の中で消息を断ったなどの眉唾な噂すら立ち上ってる。 事実として計画は立ち消えとなり、既に着手していた出入り口は撤去されぬまま、奇怪なオブジェとしてアーカムの異物として残っている。 全ては過去の遺物となり、人々の記憶から風化される。 それで終わるはずだった話が蘇ったのが、新しく生まれた噂だった。 始まりは平凡な民家の家主の男。 寝静まった深夜の家の中で、男は振動を感じた。一定の間隔で線路を走る電車のような音を。 路面電車の運航時刻はとっくに過ぎており、またその住まいは路線から離れた位置にある。昼間でも電車の騒音に悩まされたこともない。 しかも音の震源は家の外の街道からではなかった。 男の眠る家の下……即ち地下だ。 始めは物取りが潜んでいるのかと警戒していたが、音は一定周期で通り過ぎ、響いては消えを繰り返すばかり。 そもそも長大で巨大な物体が土を駆けていく音はとても人間が出せるものではありえなかった。 地下鉄の話を知っていた男は、計画が頓挫していることも知っている。地下に電車など通っているはずはないと。 ではこの振動はなんなのか。まるで、人間を丸呑みに出来るほど長く、大きな蟲(ワーム)が這いずっているような音は……。 結局男は恐怖で一睡もできず一夜を明かす。そのまま隣人に相談を求めたが、そこでも驚愕した。 近隣に住んでいた誰も、夜にそんな音を聞いていないと言うのだ。 気のせいだ、仕事のストレスだ、幻聴だ、そう丸め込められその日は引き下がる。 だが次の夜、その次の夜と、地下鉄の通過音は鳴り止まなかった。 何度問い詰めてもやはり誰も知らない。聞こえるのは自分だけ。 孤立は精神の均衡を失わせ、止まない音は剥き出しの精神を軋ませる。 異変が一週間過ぎ、いよいよ友人も病院の勧めを考えた時。男はある場所へ向かった。誘われるように。両の眼を血走らせて。 男の家、商業地域の外れの近くにあるもの。 廃棄路線を撤去し立てたまま放置された、地下鉄に繋がる入口跡だった。 以降、男の姿を見た者はいない。 「家の地下から聞こえてくる男の叫び声」が新たな噂に立ち上ったのは、その後すぐのことだった。 ◆ ◆ ◆ 『……気が滅入る話ばかりよね、この街って』 念話で呟く三好夏凛は現在、フレンチヒル線の路面バスに揺られていた。 『それは、さっきの女の子から聞いた噂のことか?』 『そう。幻の地下鉄の噂。工事が半端なまま終わったのに巨大な何かが地面の下を通り過ぎる音が聞こえてくる、ってやつ』 問いかける声は他の乗客には届くことはない。 契約したサーヴァント、ライダーの声は、マスターである夏凛にだけ聞こえている。今は姿も見ることはできないが。 霊体化という状態はやはり慣れないと思う。 コストとリスクの面から見れば合理的であると分かっていても、そう思う時がある。 そこに在る筈のものに触れることも出来ず、すぐ傍にいる誰かの声すらも聞こえない。 それはまるで、五感の幾つかが失くしてしまったかのような感覚だから。 『……ふむ、怖かったのか?』 『はあ!?』 反射的に出しそうになった声を手で塞いで抑える。 バスの中の乗客は多い。空に向かって叫ぶ少女と奇異な視線を受ける羽目になってしまう。 それこそ新たな噂に取り込まれかねない。 『こ、怖くなんかないわよ、ばか!あれはホラ、話し手の上手さってやつよ!あの子えらく迫真だったし!』 『そうか?あの時の夏凛の気配を感じていたが、時々震え声が聞こえていたような……』 『あー!知らないったら知らない!もう蒸し返すな!』 口に目に頬はなるべく無表情のまま顔を崩さず念話で叫ぶ、という無駄に高度な真似をして気さくな青年に抗議する。腹話術でもやっている気分だ。 こうしたやり取りは初めてではない。人口の多い場所での連携、遠隔での連絡の手段として念話の感覚は練習している。 『それじゃあ話を変えるが……夏凛はその話を信じてるってことか?』 『……普通なら信じてないでしょうね。だって滅茶苦茶だし、荒唐無稽だし。 元々アンタのマシンを動かせるか調べてる途中で地下鉄の話を聞いたとこからのオマケみたいなもんでしょ。 けど実際に行方不明者はいるし、鉄道があるのなら私達にも無関係じゃない。線路が通ってたら、ちゃんとそこでも運転できるんでしょ?』 路線を使ってライダーの宝具が使用できるかの確認と同時に、ダウンタウンのボランティア施設に行き情報を得る。それが今日での夏凛の指針だ。 自分と同じく休校で暇を持て余した学生も来ていたため、広い地域での話を聞くこともできた。 それも施設に向かった理由のひとつ。多様な仕事の人間が集まるからであり、皆一様に不穏な話題を持っていた。 『幻の地下鉄』も、その中に含まれていた噂だ。 『ああ。今回使った線路はライナーガオーで走行可能だが、人の密集する地域では不安がある。フレンチヒルもそういう場所だった。 地下鉄がありそれが河を超えているのなら、移動の面で俺達にとって大幅に有利になれる』 『本当にあれば、だけどね。残った入口もただの不良のたまり場みたいだし』 件の失踪が発覚してから警察も跡地を調査したが、底は計画が頓挫したままの半端な空洞があるままで線路など通ってるはずもなかった。 現状では噂は噂でしかなく、積極的に調べに行くだけの価値もないというのが夏凛の決定だった。 『まあ、いざとなればドリルガオーで掘り進めばわかるさ』 『……何でもありなのも程があるでしょ』 そのうえ空から行く選択肢もあるのだから、豊富すぎるほど移動手段は備えている。 小規模な市街地戦には向かず、どこにでも瞬時に移動できる機動力がライダーの持ち味なのだと夏凛は理解していた。 「……ん、着いた?ありがと」 同学年くらいのボランティア仲間に呼びかけられ、バスから降りる。 ロウワー・サウスサイドで起きた『事故』の影響か、街全体にピリピリした空気が感じられる。 『白髪の屍食鬼(グール)』の名はアーカム中に知れ渡っている。報道を受け、全体的にボランティア活動も自粛気味である。 安全の為活動は常に複数人で行動し、学生は夜間での活動を禁止することになっている。今も奉仕用の荷物を持った大人たちが保護者役を兼ねて同行している。 住民票もあるか怪しい浮浪者や札付きの不良とはいえ、犠牲者は既に何人も出ている。 にも関わらず『事件』でなく『事故』として報道している。監督役とやらが手を伸ばしたのかもしれないが、それだけではない。 生まれた被害が人為的とは考えられない規模であるのが原因だ。自然災害、爆弾の暴発とでもしなければまともに公表できない程、それは壊滅的な惨状だったのだ。 隠された真実は聖杯戦争による爪痕。その正体を知る者は同じ神秘を携える者。 三好夏凛と同じ、マスターのみである。 ―――……けど、今はこっちに集中しないとね。 今確実に聖杯戦争絡みと確定できる場所。しかしそれを知ってなお、夏凛は当初の予定を変えずにいる。 物件が入り組み幅が狭く、ライダーの戦いには向いていない地域。警察や報道後で密集した野次馬。同じように集まる他のマスター達。 統合する状況は全てライダーの不利に働く。交渉の機会を得る可能性はある。しかし未知数の相手に戦闘での枷をかけてまで接触するには時期尚早だ。 以上の判断は夏凛でなく、他ならぬライダーからの助言だった。 これを意外に思ったのが夏凛だ。輝けるほどに熱く勇者を名乗る戦士。 そんな印象で固定されていた夏凛にとっては。時折暑苦しくも感じる炎のような性格でありながら、戦略を冷静に分析する一面を見て気を改められたのだ。 英霊と呼ばれるほどの勇者の、戦士として積み重ねた経験則をここでは信用した。 だからまだ勇み足には遠く、今は地道に歩いていく。 目の前に近づいた孤児院での奉仕活動に精を出すことに、ひとまず夏凛は集中した。 ◆ ◆ ◆ フレンチヒルに建つ教会は歴史ある建造物だ。 アーカムが都市という形を取り、やがてミスカトニック大学と名される院が設立され始めるより前に宣教師によって建立されたという。 今でこアーカムに受け入れられてるが、設立時は土着の宗教との対立が絶えなかった。その宗教の痕跡は今も街のそこかしこ残っているという。 孤児院が運営されたのも少し後であり、以後アーカムの風土と共にこの教会はある。 名だたる大学の一に数えられる栄光、魔女狩りを始めとした闇を同時に見てきた。 だが歴史あるということ、年月を重ねてるということは、つまり古いという意味である。 教えを受けている育ちざかりの孤児達の手で痛む箇所は増えるばかり。清貧が旨になる教義故、大規模な改修の目途もままならない。 つまり常に人手を求めており、夏凛達も仕事の荒波に揉まれることになった。 とはいえ中学生(ジュニア)の夏凛にそこまで酷な労働は求められていない。 割り当てられた役目は、夏凛と同学年以下の子供との交流。 年配者の大人が多い運営者にとっては元気が有り余る子供の相手は体力が保たないため、これはこれで重要な役目でもある。 とはいえ一緒に遊んでいれば済むことなの、だが。 「あ"~~…………」 数時間後、施設の遊び場である中庭にある長椅子。 そこには髪をバラバラに乱し、椅子に全てを任せ寄りかかっている少女が出来上がっていた。 「抜かった……演舞にあんなに食いつくとか予想外過ぎた……」 確か折り紙を折って見せるまでは普通に好感触だったはずだった。 雲行きが怪しくなったのは、話題が街の治安の悪さに移り空気が沈みかけた時だった。 子供達に元気を出させようと、適当な木の枝でいつもの訓練の舞を見せたのだが……それが引き金だった。 これが見事に大ウケしたらしく夏凛目がけて殺到。繰り返しねだる、伝授をせがむ、果ては配給の菓子を賭けて対戦を望むと発展してしまった。 あまりに露骨な反応に夏凛は一瞬固まり、熱意に押されるまま律儀にも全ての要望に応え、代償に体力の大幅な消耗を払ったわけだ。 肉体的な体力だけならまだ余裕があるのだが、子供に気を遣いながらの応対は精神的に疲弊した。 全力はもってのほかだし気を抜き過ぎれば子供が不満をこぼす。派手にやらかしてはシスターに大目玉を食らってしまう。 勇者部の活動で子供の扱いには順応していてこの有様だ。以前の夏凛なら投げ出していたかもしれない。 『大人気だったじゃないか夏凛。立派だったぞ』 背後から―――厳密には脳に直接伝わるものだし発言主の姿は消えているのだが、多分後ろにいるのだろう―――ライダーの言葉がかけられる。 ……理由もなく、笑っているなと夏凛は想像した。 『立派……か。みんな、やっぱり不安だったのかしらね。 元気そうにしてたけど、どこか怖がってる気がした』 『ああ。だから皆の不安を一時でも取り除いた夏凛は立派だ。これも勇者の務めのひとつだな。 本当なら俺も手伝ってやりたいぐらいだが……』 まるで勇者部の面々のような台詞だった。あの部室にライダーが入っている絵面はまるで釣り合いが取れないのは想像に難くない。 だが同時に、あの部屋の面々とはこすぐに馴染むのだろうなと思って微笑ましくなる。 『あんたも……こういうのは勇者にとって必要な活動って思う?』 『もちろん。とても必要で、大切なことだ』 晴れやかな即答だった。 考え無しなのでまかせではない。姿が見えなくともわかる迷いのない断言。 考えるまでもないのだと、ライダーは自分にとって当然の事を言っているのだ。 『勇者は世界の平和を守る為に戦う。体を張るし時には命だって賭ける。それが使命だからな。 だったら、俺達は世界の平和を知っていなくちゃならない。その街の生活や笑顔。大切な人の姿を。 戦うだけが目的になればいつか足は止まってしまう。俺達が守っているものが何なのか、何のために守るのか。それを心に刻み込むんだ。 その思いを憶えていれば理由を見失わなず戦える。いつどこに、どんな敵が相手でも勇気を生み出す源になる。俺はそう信じてるからな』 その声には、表にも裏にも悲観はどこにも感じられない。 ライダーは誇っているのだ。サイボーグと変わった自分の身体を。 鋼鉄のような意志。揺るがぬ迷わぬ不変。敗北の可能性が現実を侵す中で己の勝利を疑わぬだけの根拠に転換している。 本当に純粋に、信じているのだろう。思い出が熾す種火を。それを炎に燃え盛らせる勇気。そこから繋がる勝利を。 「―――っ」 喉元までせり上がった声を押し留めた。決して声にしないように、今度は必死に。 今言おうとしたことは伝えるべきではない言葉だ。 自分の身体が失われても誰かの為に戦えるのか――― 夏凛が言われても良い気はしない。例え答えが分かり切っていてもだ。 若草の香りと、子供の笑い声。 頭の中だけで流れる会話は外に聞かれることなく。穏やかな空気が気まずくて。 『それ、じゃあさ』 切り上げる。無理やりにでも。 『情報、まとめましょうか。もうすぐお昼だし。色々話も聞いてきたしね』 多少不自然であっても、この話題は終わらせたかった。 『ああ、そうだな!』 ライダーはやはりあっさりと同意した。 アーカム内でも歴史のある古い教会。 専門でない夏凛なりに考え、神秘や魔術と結びつきやすい寺院だからということで目星をつけていた施設だ。 マスターとサーヴァントがいたわけでも、その痕跡が発見された等の、分かりやすい成果はまだ見つかってはいなかった。 夏凛の想像を超えていたという、別の意味での成果はあったが。 「頻繁に教会を訪れていた信心深い男性が雷に打たれて死んだ」「今度テストで赤点とったらゲンコツじゃ済まない、勉強を見てくれ」 【日本から来たアイドルがとても可愛い、今度やるコンサートに行きたい】「幽霊とか怪物とかそういう話はアーカムには昔からある。今更起きても飽きるくらいだ」 「リバータウンの河のほとりにある喫茶店のカレーが美味かった」「孤児院出の青年がミスカトニック大学に合格した、お祝いをしよう」 「夜に子供たちが宿舎を抜け出してるらしい。治安も悪いし目を光らせておかねば」「寝ている時地響きがした。地震というより何かが下を通っていくような感じだった」 「教会の何処かに職員でも知らない地下室がある。古株の神父なら知っているかも」【包帯男のビラを拾った。気持ち悪い】 「同じクラスの銀髪の女子を見ると胸が痛くなる。どうすればいいのか」「孤児の一人が富豪の家に養子として引き取られた。今日も院からの友達と遊びに出かけて羨ましい」 「怪しげな男が不遜な言葉を吐きながら施設に入ろうとした。警備を強化しなくては」【『白髪の屍食鬼』を見た。体格の大きい爬虫類じみた顔をしていた】 夏凛は交流した孤児との会話で最近起きた変わった出来事を聞き出し、大人の職員からはスクールでの課題と偽ってアーカムにまつわる逸話を訊ねて回った。 ライダーも霊体化し、存在が露見しない範囲で施設の間を回り調べを進め、集めた情報を二人は揃えて出し合った。 『多いわね……』 『多いな……』 只の世間話の類を除いてもなお余りある「噂」の数々に、夏凛は重く息を吐く。 膨大な情報と目撃証言。聖杯戦争に関係しているかの見極めは難航しそうだった。 アーカムは怪奇と異常に慣れ過ぎている。どんな事態が生まれてもそれを受け入れてしまう空気が出来上がってしまっている。 纏めて当たれば、現実との照らし合わせにどれだけ時間がかかるかも分からなくなる。 『これ全部サーヴァントの仕業なのかしら……多すぎるのにも限度ってものがあるでしょう?』 『……いや、そういうわけでじゃない。聞いた話からすると、噂にも二種類あるように俺は感じる』 『二種類?』 『簡単に分ければ、古い噂と新しい噂、昔から伝わるものと新しく生まれたものだな』 山積みの情報に辟易してた夏凛に先駆けて、なんとライダーは一歩進んだ推論を展開していた。 『多くの噂が伝播し、実際に被害が出た事件が複数存在する。犠牲者が生まれてそれに恐怖した人々が大勢いる。 俺達英霊とは無関係に、この街には多くの伝説が息づいてるんだ。その恐怖と伝説を―――利用してる奴がいる気がしてならない』 『マスターやサーヴァントの誰かが……自分達のやった事を噂の一つにして隠してるってこと?』 情報操作の一種だ。完全な秘匿の出来ない事象を、一部以外を脚色して表に露出させる。 アーカムという怪奇を受け入れやすい広大な森に紛れれば、無数の噂という木の葉の一枚としてしか外には認識されなくなる。 そう推理する夏凛に、ライダーは更に言葉を上塗りした。 『あるいは、逆かもしれないな』 『逆?』 『自分達を恐れさせる、噂を流す事自体が目的かもしれない。人の感情を媒介に強化される……そういった能力を持つ敵が』 『はあ?』 困惑した夏恋の声も尤もだった。自身を堂々宣伝するサーヴァントなど想像だにしない。 本質的に魔術師ではない夏恋にとっては、英雄ならそんな威風ある真似はするかも知れないと思いはする。だとしてもこんな婉曲的にする意味が分からない。 だがライダーは『人の感情を媒介にする』といやに具体的な例を出してその説を口にした。 それはつまり、彼自身の『前例』を参考にした意見……生前で戦った敵にそれがいたからに他ならない。 『俺達GGGが戦ったゾンダーという敵が似たような力を使っていた。奴らは人間に憑りつき、宿主のストレス……マイナスエネルギーで成長し巨大なロボになるんだ。 知名度や信仰で英霊が強化される現象があるが、それをより限定的に能力化したものだな。後世の伝聞や風評で姿が変化する、そんなサーヴァントはけっこういるらしい』 勇者の英霊獅子王凱の戦歴を紐解き始めに開かれる敵。宇宙の海を超え地球に現れた機界生命体ゾンダー。 全ての生命体を惑星ごとゾンダー化―――機界昇華する為未曾有の危機を地球に振り撒いた暴走プログラム。 仕事の失敗、将来の不安。猟奇的な噂に溢れ、日々恐怖を抱えて生きる人々を飲み込む怪物(ゾンダー)。 街と市民の様子を観察したライダーはその存在を思い出し、外部からの情報の誘導の可能性を見出したのだ。 『つまり、最近作られた新しい噂は、ソイツが力を強くする為に自分で街に流したものだってアンタは言いたいわけね』 『全部が全部そうだとは限らないが……大体はそんな感じだ。だが直接起きたロウワーでの件は特に強いと俺は見ている』 白髪の屍食鬼の名は今や子供が話題が上がる度に口にする。アーカムの街に信じられない速度で浸透していた。他と比してもその認知度は倍近い。 屍食鬼自体は過去の記録にも載ってる情報であるにも関わらず、だ。明らかに何者かの意図が介在している。 これが今の敵の本命……主力だと、そう睨むのは自然だった。 『……ねえ、やっぱりこれへの対処って優先した方がよくない?』 『ああ、俺も今そう思ってたところだ。ゾンダーに近い特性があるとしたら、時間をかけるほど厄介な敵になるかもしれない』 魔術師であるキャスターのクラスは、陣地を確保し装備を増産し戦力を強化する。長期的なスパンを念頭に置いた戦術を用いやすい傾向がある。 ゾンダーロボも完全体と化せば、一体で星を機界昇華してしまう浸食度だ。 空想も信仰が深まれば幻想に階梯を上げる。ただの噂がそのレベルにまで達すれば、手の付けられない段階にまで成長してしまう危険性がある。 『それに―――勇者として、この惨状を起こした奴を認めるわけにはいかない』 『凱?』 この時、切り替わったという差異を体感した。 姿の見えないライダーの声を聞いてその姿を自然に投影させていた。 傍にいる勇者がいまどのような表情をしているか、夏凛に齟齬がなく伝わった。 『ゾンダーは暴走によって星をも滅ぼしてしまう危険極まりない存在になってしまった。けどその本来の目的は生命体からストレスを無くすという、平和の為のプログラムだった。 これを起こしてる奴はきっと、根底から違うものだ。無辜の人々を媒体にしながらその人々に牙を剥く。勝利という結果の過程にある、殺戮そのものを愉しんでいる』 聖杯戦争を戦うにあたっては不要な感情が顔から覗く。 サーヴァントと戦う為の戦術ならば否定はしない。マスターを狙うのも一つの選択だ。 ライダーもまた同じく聖杯を求むサーヴァント。相手のやり口を何もかも糾弾する資格はありはしない。 無関係の命を奪う邪悪。それだけは許容できない。 戦いでなく殺しを愛い、伝染病のように一帯に蔓延る恐怖を撒き散らす蠢く影。 それは英霊の誇りを穢す侮辱だ。勇者の使命として立ち向かうべき闇だ。 ただ一人の人間が抱く、原初に根差した場所からこみ上げてくる怒りだった。 獅子王凱の魂が熾す、炎の如し意志だった。 マスターの夏凛すらもがその熱の余波に驚く。恐怖ではなく、垣間見えた火の勢いに。 知らず漏れ出ていた内の感情を戒めるように、ばつが悪そうな口調でライダーは言った。 『……とはいえ、今の俺はサーヴァントだ。マスターの身を護る事が優先される。 この世界では俺は最終的な判断はお前に任せるつもりだ、夏凛。サーヴァントはマスターに従うものだからな。 なに、迷ったらすぐ相談してくれればいいさ、だろ?』 召喚されるにあたって、サイボーグ・ガイが連れてこれたのは半身たる愛機のみ。 背中を預け合う勇者ロボ軍団、後方で全面的なサポートを施すGGGスタッフ達はここにはいない。 勇者は孤高なるものに非ず、支え合う仲間と一丸となってこそ勝利した守護者だ。 ここではその道理は通用しない。 外部からの支援が届かない、孤立無援の状況。無数に潜む競合者。 苦い敗北の経験が蘇る。生前(いままで)の調子で戦えば、必ず手が間に合わない事が起きる。 若き勇者に二の轍を踏ませまいと、英霊に慎重な選択を取らせていた。 『……それ、うちの勇者部の条約じゃない』 一方の選択を委ねられた夏凛。 何を選び進むかは自分次第。マスターであり、生きている者である夏凛が決めるべき、そう言われた。 夏凛は当然決めている。告白すれば、初めて聞いた時から何をするかなど分かっていた。 噂を集めた最中の交流は、和やかなものばかりではなかった。 笑い話と受け取る中には、本当に怯え涙を目に滲ませる子供もいた。 自分の住む街の裏に密やかにいる闇。怯えは今も広がっている。 情報が揃った。正体が理解に届き始めた。早急に倒す事が最善と知った。 光明は見えている。この聖杯戦争を勝ち抜く一歩が。 そして―――そんな前提を打ち消せるだけの強い意志が、言葉となって背中を後押ししている。 何故か。問うまでもない。獅子王凱は勇者であり、 『―――叩くわよ、凱。勇者がいる場所で暴れたのが運の尽きだって、分からせてやるんだから』 三好夏凛もまた、勇者であるからだ。 『ああ。了解だ、マスター』 答えるライダー。反応は平静だ。始めから分かっていたように。 生粋の勇者であるライダーにとって後輩勇者ともいえる夏凛の精神の波長は親和性が高い。 双方の勇気こそが、あり得ざる二人の勇者の出会いの縁―――触媒となったのだから。 ―――故にこそ、彼らはじき理解する。 古今東西、次元星界を超えて普遍の絶対。 勇者が立ち向かう相手とは、世界を脅かす闇そのものであるという事を。 そして彼らは理解していない。この聖杯戦争を戦う行為の意味を。 アーカムに浸透する底のない沼のような闇。 魔王という渾名、それすら似つかわしくない無明の渾沌を知る事になる。 「あら夏凛さん、ここにいたのね」 そんな時に、霊体ではない生の声が夏凛に呼びかけた。 孤児院で教師もしている年配のシスターだ。職員達を主導する中心的人物で、作業でもしていたのか修道服は脱いでいる。 「あ、すいません。すぐ戻りますから……」 「いえいいの。子供たちとよく遊んでくれたらしいわね。みんな喜んでましたよ」 丁寧な所作でのお辞儀。こういう時夏凛はどうにも困ってしまう。ストレートな感謝に戸惑ってしまうのだ。 「い……いえ。当然のことをしたまででして」 「そんなことないわ。あんな元気な子供達の姿はここ最近見れなかったの。こんな年寄りじゃ運動で相手をするには厳しいし本当に感謝してるわ」 結果、こんなぎこちない返事しか出来なくなる。 友奈なら朗らかに笑って円満に済むものを、と臍を噛む。こればかりは性分なのだろう。少しばかりもどかしい。 「それじゃあ中に入りましょう。もうすぐお昼になりますからね。そうそう、食事時は子供たちにせがまれても暴れてはいけませんよ?」 「も、勿論です。あはは……」 シスターが後ろを向いて遠ざかっていくのを見て、黙っていたライダーも念話を再開した。 『俺はもう少し周りを見ている。教会にも気になる噂はあったしな』 『分かった。私も噂の奴を捜す方法を考えてみるわ』 何処に出現するかが事前に分かれば、ライダーの宝具で早急に現場に向かうことも出来るだろう。 クラスの特性を存分に発揮したやり方だ。こんな所でも鉄道の調査が役に立つ。 施設内の食堂に向かおうとする夏凛を、再びライダーの声が呼び留めた。 『―――夏凛』 『なに?』 『これからは本格的に戦いに介入していくかもしれない、しっかり食べて力をつけておけよ!好き嫌いとかないよな?』 「アンタは私のお父さんかっ!」 肉声で夏凛は怒鳴った。 【フレンチヒル(孤児院)/一日目 午前】 【三好夏凜@結城友奈は勇者である】 [状態]健康 [精神]正常 [令呪]残り三画 [装備]なし [道具]スマホ、ボランティア証、学生証、鞄(にぼしとサプリは入っている)、木刀袋(木刀×2) [所持金]一人暮らしをするのに十分な金額(仕送り、実家は裕福) [思考・状況] 基本行動方針:マスターやサーヴァントの噂を調査し判明すれば叩く。戦闘行為はできるだけ広い場所で行う。 1.アーカムに噂を流している敵を倒すための情報を集める。優先は『白髪の屍食鬼』。 2.各エリアのボランティア事務所へ行き、仕事を請け負いつつ敵主従の調査。 3.夕食はリバータウンの喫茶『楽園』で食べる? [備考] 令呪は右肩に宿っています。 ステルスガオーIIで街を上空から確認し、各エリアでの広い土地の位置を把握済です。 リバータウン一帯のスクールは休校中。 真壁一騎と出会いましたが、名前も知らず、マスターとは認識していません。一騎カレーの人かもしれないと思っています。 「アーカムで噂を流して市民の不安を煽る事で強化される敵」を仮定しています。 【ライダー(獅子王凱)@勇者王ガオガイガー】 [状態]健康 [精神]正常 [装備]ガオーブレス [道具]私服 [所持金]なし [思考・状況] 基本行動方針:マスターの願いを叶える。 0.教会周辺を調査、哨戒。 1.夏凜を守る。 2.ライナーガオーが使えるか、アーカムにある各路線をチェックしたい。 3.『幻の地下鉄』があるかいずれ確かめたい。ドリルガオーでの掘削も検討。 4.無差別に殺戮を愉しむ相手を許してはおけない。 [備考] 真壁一騎を見ましたが、マスターとは認識していません。戦士の匂いがすると思っています。 リバータウン線でライナーガオーを走行するのに問題ありません。ただし一部住宅密集地域があります。 「アーカムで噂を流して市民の不安を煽る事で強化される敵」を仮定しています。 BACK NEXT 015 Arkham Ghul Alptraum(前編) 投下順 016 BRAND NEW FIELD 015 Arkham Ghul Alptraum(前編) 時系列順 016 BRAND NEW FIELD BACK 登場キャラ NEXT 001 蒼い空 三好夏凜&ライダー(獅子王凱)
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