約 40,249 件
https://w.atwiki.jp/magicman/pages/44196.html
《アビス・スマッシャー/「深淵(しんえん)を覗(のぞ)きたいか?」》 アビス・スマッシャー C 闇文明 (4) クロスギア:アビス・ギア ■[闇(1)]を支払って、このクロスギアをクリーチャーにクロスしてもよい。 ■クロスマッシュ・バースト(これをクロスしたクリーチャーが攻撃する時、このカードの呪文側を、バトルゾーンに置いたままコストを支払わずに唱えてもよい) 「深淵を覗きたいか?」 C 闇文明 (4) 呪文:アビスへの誘い ■アビス・メクレイド5する。(アビス・メクレイド5:自分の山札の上から3枚を見る。その中から、コスト5以下のアビスを1枚、コストを支払わずに使ってもよい。残りを好きな順序で山札の下に置く) 作者:wha 《メカ・デル・スマッシャー/メカニック・バレット》 《マジック・スマッシャー/♪ともかくも マジックまかせの メクレイド》 《アビス・スマッシャー/「深淵を覗きたいか?」》 《アーマード・スマッシャー/アーマード・クエスト》 《ジャイアント・スマッシャー/大陸弾道弾》 クロスマッシュ・バースト 【企画】♪山札を めくって仰天 メクレイド 【企画】行くぜデュエマの頂上へ!オリカ・デュエキングMAX2023! カードリスト:wha カードリスト2:wha 評価 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/queuetrpgbu/pages/40.html
クトゥルフ神話TRPG Log ↓テンプレ [[]] yyyy/mm/dd GM PL1 PL2 PL3 落日の楼閣 一日目 2018/06/23~ どどんとふにて GM ヴィリー PL1 Noja PL2 ポマ PL3 エルミナ PL4 旋盤 銀行強盗代理 #前 銀行強盗代理 #後 2017/09/24、26-27 GM yutoziro PL1 アカサカ PL2 のゔぇ職員 PL3 土下座 PL4 ポテト トマト/ポマ
https://w.atwiki.jp/librariberia/pages/264.html
658 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2013/12/30(月) 21 52 27.89 発信元 111.86.147.172 (´・ω・`)時を忘れて覗き見るようですζ(゚ー゚*ζ 元ネタスレ シベリア特殊部隊 第71幕 原作 ブーン系小説シベリア図書館を題材とした作品群 659 :(´・ω・`)時を忘れて覗き見るようですζ(゚ー゚*ζ:2013/12/30(月) 21 56 11.84 発信元 111.86.147.172 爪 ー`) よお、独り酒か? シベリアにはBARが多々あって、その内の一軒のカウンターで官製ウォッカを楽しんでいたドクオは、かつての同僚に声をかけられた途端に興醒めしてしまった。 爪 ー`) ケケッ、露骨に嫌そうな顔しやがんなあ… ドクオの態度を気にすることもなく、引き締まった長躯を流れるように隣席へと収めたフォックスは、官製ウォッカ『革命』を注文する。 ( A`) なんで俺と同じ安酒なんだよ。いつも高いのばかりだったろ 受け取ったグラスを勝手にぶつけて乾杯したフォックスは、機嫌の悪さを肴にしているかのようだ。 爪 ー`) あの頃は、若かったからな ( A`) まだまだ若いじゃねーか 爪 ー`) 未熟って意味さ ( A`) 解ってるし、未だに未熟だろ、なに懐かしんでるんだよ 落ち着き、洒落た雰囲気を崩す不協和音。 662 :(´・ω・`)時を忘れて覗き見るようですζ(゚ー゚*ζ:2013/12/30(月) 21 59 23.69 発信元 111.86.147.165 しかし店内で唯一フォックスだけは、心底楽しげな表情をしている。 爪 ー`) なあ、なあ。オマエ、今の仕事は上手くいってんのかよ? ( A`) いってるさ。なにせお前が居ないからな 爪 ー`) ヒヒッ…そうかい、そうかい。良かったぜ 我慢の限界が近付いていたドクオは、一気にグラスを仰ぐとフォックスを睨む。 ( A`) なんなんだ、なんの用だよ。いい加減にしやがれ マスターや他の客が、さり気なく警戒の眼差しを向けているのも厭わず、今にも殴りかかりそうなドクオに、フォックスも真剣な眼差しを向ける。 爪 ー`) 頼みがある ( A`) おう、なんだよ言ってみろ 爪 ー`) オレの、受取人になってくれ ドクオは、その一言で冷静さを取り戻した。握り締めていた拳から力が抜ける。 ( A`) …お前の受取人は、親御さんだったはずだ 663 :(´・ω・`)時を忘れて覗き見るようですζ(゚ー゚*ζ:2013/12/30(月) 22 02 42.80 発信元 111.86.147.169 爪 ー`) 死んだよ。だから、オマエに頼みたい 言葉が見つからないまま、フォックスの眼を見つめていたドクオ。二人の剣呑さが薄れ、どうにか殴り合いは避けられそうだなと、感情の機微に鋭いマスターは安堵した。 爪 ー`) 頼むよ、ドクオ。今度の大仕事の前に、何としてでも成って欲しいんだ ( A`) …何でだよ。何で、俺なんだよ。お前はモテたし、友人だって山ほど居たろう。何で俺だよ 爪 ー`) 他のみんなと同じさ。尊敬しているからだ ( A`) うるせえ、軽口叩きやがって 爪 ー`) 本当だよドクオ…本当なんだ ( A`) …その大仕事ってのは、厳しいのか 爪 ー`) 知らない土地で、とある豪邸をド派手に改修工事さ。近隣住民は猛反発、裁判も辞さない。 おまけに、悪戯好きな子供が毎日ボール遊びをしているのに、ガードマンも交通整理も無しだ 666 :(´・ω・`)時を忘れて覗き見るようですζ(゚ー゚*ζ:2013/12/30(月) 22 06 09.69 発信元 111.86.147.163 ( A`) それは…厳しいな 爪 ー`) ああ、厳しい。上司は、残業してでもノルマは達成しろ、と言う。でも部下に子持ちがいてな…定時には、あがらせてやりたいんだが…無理かもしれない ( A`) 無理かも、だと?お前、変わったな。前はそんな事言わなかったのに 爪 ー`) そうとも。オレは部下に指示する立場になってようやく…同期のくせにオレや他のみんなを引っ張らなくちゃいけなかった、オマエの苦労を知れたんだ 爪 ー`) 言ったろ?今更だが、尊敬しているんだよ、ドクオ。だから赦してくれ、確かにオマエが辞めた時、オレは馬鹿にした。 見下した。けれども今なら、賢明な判断だと思うんだ 爪 ー`) だから頼む、御願いだよドクオ…嫌われてるのは知ってる、けどオマエしか居ないんだ。 受け取ってくれるだけで良いからさ……たのむよ 667 :(´・ω・`)時を忘れて覗き見るようですζ(゚ー゚*ζ:2013/12/30(月) 22 12 22.73 発信元 111.86.147.169 ( A`) ケッ……わーったよ、まったくムシのいい野郎だな 爪* ー`) ホントか?良いのか!?ありがとうドクオ、今夜は奢るぜ何でも注文してくれよな!! 結局、ドクオとフォックスは朝まで飲み明かしたのだった。 BARを出てすぐにフォックスと別れ、独り歩いていたドクオは道中、うっかり寝てしまいそうになった。 シャッターが下りた花屋の前に座り込み、今にも鼾をかきそうなドクオを起こしたのは、平凡な顔立ちの若い姉弟。 川*` ゥ´) ちょいとアンタ (゙A゙) …んがっ? (`ェ´) おーい、おきろってばホラ! ( A`) お、おう…あれ?もう朝か?っていうか何処だココ? 川*` ゥ´) アタシらの職場の前だよ、あの看板が見えないかい? 姉、ヒールが指さしたのは花屋を示す看板。 668 :(´・ω・`)時を忘れて覗き見るようですζ(゚ー゚*ζ:2013/12/30(月) 22 15 07.23 発信元 111.86.147.178 (`ェ´) ちなみにホテルシベリアのすぐそばだよ 弟、ユウヤが差し示した先には、まだ新しく立派なホテル。昇り始めた日に照らされて、純白の外壁は橙色に染められている。 ( A`;) お、おお…こんなとこまで来ちまったか 驚いているうち、眼前の通りも蒼暗い陰から陽光の色へと移ろい、モノトーンの町並みと薄く積もっている雪は早朝の清々しさに包まれた。 川*` ゥ´) まったく、シベリアは寒いから酒飲むのも良いけどさ、外で寝たら死んじまうよ 雪を頂いた建物の合間に見える、遙か地平線からの日の出に目を細めながら、ドクオは己のうかつさを自覚して完全に目が覚めた。 ( A`) いやあ…すまない、起こしてくれてありがとう (`ェ´) 立てるか? ( A`) 大丈夫だ、すぐにどくよ 669 :(´・ω・`)時を忘れて覗き見るようですζ(゚ー゚*ζ:2013/12/30(月) 22 19 40.71 発信元 111.86.147.175 姉弟は花屋が職場と言った。ならば店の前に酔っ払いなどいては邪魔だろう、ドクオは急いで立ち上がると、残雪の多い店の前の歩道に…車道ギリギリまで下がる。 ( A`) すまなかったな (`ェ´) まあ、生きてて何よりだよ。最初は凍死してんのかと思ったからね 川*` ゥ´) …ねえ、アンタさ ( A`) うん? 川*` ゥ´) 本当に、気を付けなさいよ?人間なんてあっさり死んじゃうんだ…アンタが死んだら、悲しむ人がいるでしょう ( A`) …まあな ありきたりな台詞。しかしだからこそ、心の芯に重苦しく響いた。 姉弟は開店準備に取りかかり、ドクオは二人に感謝を述べて店を後にする。 ( A`) さてなあ…まあ財布もあるし帰れるか 所々に張った氷や固い雪の塊を踏みそうになり、何度もヒヤリとしながら最寄りのバス停を目指す。 急ぎはしていない、今日はドクオの職場であるブーン系小説シベリア図書館が休みなのだ。 671 :(´・ω・`)時を忘れて覗き見るようですζ(゚ー゚*ζ:2013/12/30(月) 22 24 23.86 発信元 111.86.147.176 ( A`) やれやれ 長いこと待ってようやく乗れたバスに揺られながら、遠目にちらりと見えた小高い丘。 郊外にある緑豊かな霊園には、かつてドクオの同僚だった者が何人も眠っている。 フォックスは、果たしてシベリアの地に骨を埋めることができるのだろうか? ドクオは、心ではきっとできると思いながら、頭では死体の回収すら困難になるだろうと考えていた。 ( A`) …不正規の作戦って、どうしてこうも難しいんだろうなあ… シベリア特殊部隊として携わった戦闘を思い返しながら、ドクオは盛大に溜息を吐く。 やがてドクオは考えるのを止めて、うたた寝を始めた。うたた寝のできる幸せをかみしめながら。 679 :(´・ω・`)時を忘れて覗き見るようですζ(゚ー゚*ζ:2014/01/01(水) 13 45 23.42 発信元 111.86.147.166 数日後、ドクオは違う店で同僚アサピーと飲んでいた。 (-@∀@) 私達にとっての、メタな存在って、何なのでしょうかね ( A`) 神様じゃないか?随分と昔から高次の存在だろう (-@∀@) しかし私は宗教を信仰してはいません。それに、神様という概念そのものは人間が創り出したものでは、ありませんか ( A`) そういう事か…それなら、自分自身がそうなんじゃないか?言うなれば、魂ってやつだ (-@∀@) 魂、ですか ( A`) 俺は、魂、あるいはそれに酷似しているものが存在すると思っている… おいそんな目で見るなよ、良いだろ?どうせ酒飲みながら交わすような、議論にもなっていない雑談だ (-@∀@) いえ、別に否定するつもりは無いのですが、なにせ、昔からの疑問なものですから ( A`) 魂の存在が? 680 :(´・ω・`)時を忘れて覗き見るようですζ(゚ー゚*ζ:2014/01/01(水) 13 50 39.43 発信元 111.86.147.169 (-@∀@) ええ…私達に魂が宿っていると言うのならば、それは何処にあるのか。人間という動物は、肉体を失っても、魂さえあれば人間と呼べるのか ( A`) ああ…俺も昔考えたことがある。結論なんて出せなかったがな (-@∀@) ドクオさんは、何が切っ掛けで? ( A`) 前の職場でな、人が粉微塵になったのを見て、同僚が言ったんだ 『 奴の魂もバラバラになっちまったかな 霧になって空気に混じったり土に染み込んだのかな 』 ( A`) 俺は思ったんだ…吹き飛んだ奴は、死んだら自分の魂は天に召されると信じていた… けれど、こんなに細かくなっちまったら、魂を回収するのは大変だろうな、と。思ったんだ (-@∀@)確かに…しかしそれでも、魂については信じるのですか 681 :(´・ω・`)時を忘れて覗き見るようですζ(゚ー゚*ζ:2014/01/01(水) 13 54 28.83 発信元 111.86.147.177 ( A`) いや、とは言え巷で言われているような神秘的可能性には懐疑的なんだが… 精神の原型となる何かしらを、進化の過程で獲得していると思う (-@∀@) 人間という動物の持つ機能として存在する、自我よりも根幹的な部分が魂であると? ( A`) そんな感じだ。生き延びるために、受動的な経験則だけでなく、能動的で本能とも違う、自らの肉体すらも疑い、我が成果のみを追求するような自我でもない何かがあるように思う。 意志を発生させる因子は遺伝子に組み込まれているのだろうけど、魂があるとしたら、そういった生臭い物だと考えているんだ。SF作家が鼻で笑うネタだな (-@∀@) そう言わずに…ああ、その話を聞いていて思いついたのですが…次元を超越した人間は、死ぬのではないでしょうか? ( A`) どうして 682 :(´・ω・`)時を忘れて覗き見るようですζ(゚ー゚*ζ:2014/01/01(水) 13 59 07.48 発信元 111.86.147.173 (-@∀@) もしも本当に、魂と呼ばれる肉体とは別系統のシステムが搭載されているとし、死んだ者の魂が召される天の国があったとしても …人類は宇宙に飛び出して尚、未だに観測できていない。死ぬ以外には、せいぜい特殊な修行を経て極一部の者しかたどり着けないとされている場所 …ひょっとしたらそれは別の次元にあるからなのかもしれない。いつか科学の発達によって、生きた人間が次元を超越する仕組みが発明されれば …それを使い、別次元に在る天の国へ進入する。言い換えれば、生きたまま死ぬことができるかもしれない。 …これも、どこかで聞いたような話なのですが ( A`) 『人間の無意識下に存在する内面世界』とかって言わないあたりが存外ロマンチストだな。 次元が違うから魂という曖昧な認識が、摩訶不思議で神秘的なメタファーとして在り続ける事ができるわけだ 683 :(´・ω・`)時を忘れて覗き見るようですζ(゚ー゚*ζ:2014/01/01(水) 14 08 44.23 発信元 111.86.147.165 (-@∀@) そうですね。子供扱いされそうな考えですよ、こんな場でなければ口にする気にもならない ( A`) なに、考えることは皆同じさ。でも生きたまま死んだら…何的ゾンビになるんだろう?哲学的ゾンビとは違う気がする (-@∀@) はて…でも哲学はやだな。抽象的すぎて好きになれない ( A`) 学んだ訳でないから何とも言えんが、確かにそんなイメージがあるもんな。アサピーさんは、ハッキリとした事が好きなんだっけ (-@∀@) ええ…それでも、時折…曖昧なものに、逃げたくなりますがね。甘いものです ( A`) いいじゃないか、辛いだけなら地獄と変わらん。この世は確かにろくでもない、だが地獄でもない。人間なんて所詮は脆弱な獣だ、逃げてあたりまえさ (-@∀@) …そうですね ( ∀`) まっ、かく言う俺も逃げたクチでな 684 :(´・ω・`)時を忘れて覗き見るようですζ(゚ー゚*ζ:2014/01/01(水) 14 13 25.78 発信元 111.86.147.164 ξ゚⊿゚)ξ 最近あちこち飲み歩いてるそうね ( A`) まあね 開館準備が一通り済んだ早朝、給湯室で皆のお茶を用意していたドクオに、運ぶのを手伝おうとやってきたツンが話しかけてきた。 ( A`) このあいだ、BARで昔の知り合いに出会した。その店は気に入っていたんだが、出会した知り合いが嫌な奴でな、避けようと余所をあたってた ξ゚⊿゚)ξ はい、砂糖壺 ( A`) おっ、ありがとう ξ゚⊿゚)ξ アサピーさんが心配してたわよ ( A`) どうして ξ゚⊿゚)ξ 貴方、良くない酔い方してたから、反動でまた新聞沙汰になってしまわないか…って ( A`) 飲み過ぎて外で脱いだのは反省してるさ…でも、悪酔いはしてないはずなんだが… ξ゚⊿゚)ξ 自覚できないから悪酔いなんじゃないのかしら?あと、それ私も運ぶわ ( A`) 頼む…うーん、酔い方ね… 685 :(´・ω・`)時を忘れて覗き見るようですζ(゚ー゚*ζ:2014/01/01(水) 14 18 47.42 発信元 111.86.147.168 ξ゚⊿゚)ξ …どんどん、悲しそうになっていったそうよ…その知り合いと、関係あるんじゃないの? ツンと二人で塵ひとつ無い廊下を歩きながら、ドクオは酔っていた自分を、なんとかして思いだそうとしていた。 …その時である。 ξ;゚⊿゚)ξ ドクオッ!! 唐突に、倒れてしまった。 しばらくして目を覚ました時は、既に休憩室のベッドだった。 ( A`) …知らない天井…ではないが… ( A`) …なんだろう、貧血か? ξ゚⊿゚)ξ ウォッカの浴びすぎじゃないかしら ( A`;) おっと、居たのかよ ξ゚⊿゚)ξ 一応ね ( A`) まいったな。そういえばツンさん、紅茶かからなかった? ξ゚⊿゚)ξ 安心して。濡れたのは床だけよ ( A`) そっか…いや申し訳ない ξ゚⊿゚)ξ 体調不良ならしかたないじゃない 686 :(´・ω・`)時を忘れて覗き見るようですζ(゚ー゚*ζ:2014/01/01(水) 14 24 28.52 発信元 111.86.147.166 ( A`) …貧血は甘えとか言われるかと思ったよ ξ゚⊿゚)ξ 言わないわよ、そんなヒドいこと…ちょっと、いいから寝てなさい ( A`) しかし… 起きあがろうとするドクオを、押し倒すかのように、ツンはベッドに押し付けて布団を掛け直した。 ξ゚ー゚)ξ ドクオさん、あなた、疲れているのよ。館長も言ってたから…ね? ( A`*) …おう 微かに香る優しい香水と、近くで見るにはあまりに綺麗な瞳。 ドクオは何も言えなくなり、気恥ずかしさと幾らかの劣等感を持て余しながらも、無理矢理眠ることにした。 なかなか寝付けはしないだろうと考えていたが、眼を瞑ってしまえば一瞬であった。そしてそのまま夕暮れ時まで、眠ることになる。 (-A-) 合間にドクオは夢を視た。昔の、フォックスを嫌い始めた切っ掛けだ。 その日はシベリアでも指折り数えで寒い日で、しんしん雪が降り積もっていた。 688 :(´・ω・`)時を忘れて覗き見るようですζ(゚ー゚*ζ:2014/01/01(水) 14 33 32.23 発信元 111.86.147.173 『相手はガキだぞ』 フォックスは叫んだ。 『仲間を殺す気か』 ドクオは呟く。 足下には、右手を失い頭に深紅の花を咲かせ、どす黒い蜜を流す少女。 身体に巻き付けた高性能爆薬がどこまでも似合わない、華奢な体つきだ。 『オレは手を撃った、起爆スイッチを』 薄暗い廃屋には麻薬カルテルの幹部と、彼の愛人である少女の死体。それに密売ルートを追ってたどり着いたドクオとフォックス。他の隊員は外で見張りについている。 『外れたかも知れない』 フォックスの弾頭は。 『当てたじゃないか、オレは』 起爆スイッチが握られた手に。 『今回は、な。だから、即死させろと教わったはずだ』 もし爆発していたら、ドクオたちはおろか廃屋外の仲間も吹き飛ぶ。 693 :(´・ω・`)時を忘れて覗き見るようですζ(゚ー゚*ζ:2014/01/02(木) 21 45 03.77 発信元 111.86.147.165 『俺は、心中するつもりの奴と愛人を同時に撃つと説明した、そうだな』 フォックスは力無く頷く。 『俺は奴を射殺した。しかし彼女は手を飛ばされた』 ドクオは、見開かれたままの少女の瞼を閉じてやった。左側しか残っていなかったが。 『しかし、この子は』 『彼女は、共に死のうとしていた。俺たちをも巻き込んで。幼い頃に買い取られた彼女が、今までにどんな経験をしてきたのかは知らない、想像したくもない。しかし彼女は』 ドクオは、脇に転がる幹部の死体を見ながら言う。 『彼女は最期まで、奴との繋がりを求めた。自ら左手を繋ぎ指輪を触れ合わせ唇を重ねた。 それが本心かは知らない、奴の命令だったのかもしれない、惰性なのかもしれない。 ひょっとしたら奴が逃げようとしたのを彼女が捕まえたのかもしれない。だが少なくとも、彼女は奴の死ぬ様を、見てしまった』 694 :(´・ω・`)時を忘れて覗き見るようですζ(゚ー゚*ζ:2014/01/02(木) 21 50 26.97 発信元 111.86.147.170 ドラマチックな話だと、他人事のようにドクオは薄笑う。 『だから俺は、同時に撃つと言ったんだ』 その夜から、ドクオはフォックスを毛嫌いするようになった。 696 :(´・ω・`)時を忘れて覗き見るようですζ(゚ー゚*ζ:2014/01/02(木) 21 58 27.87 発信元 111.86.147.176 ドクオは夕方に目が覚めた。罪悪感が彼を襲う。 ( ^ω^) おっ、もう良いのかお? ( A`) はい。申し訳ありません、今からでも… ( ^ω^) なーに言ってんだお。快復して何より、今日はもうあがって休むよろし ( A`) …はい 図書館を出るまでに、皆から声をかけられた。 ( A`) … ξ゚⊿゚)ξ あら、もう大丈夫なの? ( A`) うん ξ゚⊿゚)ξ 気を付けてね。お疲れさま ( A`) ああ、お疲れさま 697 :(´・ω・`)時を忘れて覗き見るようですζ(゚ー゚*ζ:2014/01/02(木) 22 05 08.78 発信元 111.86.147.171 ( A`) … (-@∀@) おや、今日は大変でしたね ( A`) 自分でも吃驚だよ (-@∀@) 無理なさらないでくださいね。お疲れさまでした ( A`) そちらこそ、お疲れさま ( A`) … ハハ ロ -ロ)ハ あっ、お疲れさまです。もう大丈夫なんですか?念のためにも病院行ってくださいね? ( A`) ありがとう、ただの貧血だよ。お疲れさま ハハ ロ -ロ)ハ 御気を付けて~ ( A`) … 698 :(´・ω・`)時を忘れて覗き見るようですζ(゚ー゚*ζ:2014/01/02(木) 22 10 26.86 発信元 111.86.147.163 日が落ちたばかりの、物悲しい宵闇にドクオの溜息も吸い込まれる。 空腹とあいまって孤独感に苛まれたドクオは、酒を飲む気にも成れずに、まっすぐ家を目指した。 ( A`) …はぁ… なんてことはない、倒れたから早退、当たり前のこと。 だが帰り際に皆から言われた言葉が、なんだか自分を責めていたように思えてしまう。 これではまるで、噂に聞く日本の会社員みたいな思考だと、自嘲した。 ( A`) …ツンの言うとおりだな、疲れが溜まっているのか… 寒風に負けてしまいそうな、弱々しい足取りで住んでいるアパート前までたどり着いたドクオ。 そんな彼に、背後から忍び寄る人影。 ( A`) … ドクオが気配を察知し振り返ろうとした瞬間、人影は素早く飛びかかり、拘束しようと両腕を伸ばした。 700 :(´・ω・`)時を忘れて覗き見るようですζ(゚ー゚*ζ:2014/01/02(木) 22 21 06.59 発信元 111.86.147.166 从 ゚∀从 あっ だが、ドクオが急にしゃがんだ為に空を掴み、逆にドクオの肘が鳩尾の辺りに食い込む。 从;゚∀从 う゛べっ! 直後、ドクオは立ち上がりつつ腕と脚を絡ませて押し倒し、服の下に隠していたナガン・リボルバーを突きつける。 回転式弾倉を持つソ連時代の拳銃は充分に手入れが施されており、握るドクオも隙などない。 从;゚∀从 まって!撃たないで!! 山にでも行くかのように武骨な服装をし、片目を銀髪で隠した若い女性は、心底焦った様子で懇願した。 ( A`) …ハイン、どういう事だ? 冷静な声色で、かつての後輩を睨むドクオも実は相応に動揺していたが、表情のひとつも変わらない。 702 :(´・ω・`)時を忘れて覗き見るようですζ(゚ー゚*ζ:2014/01/02(木) 22 29 35.63 発信元 111.86.147.168 从;゚∀从 驚かそうと思ったんすよ!久々で、いきなりだから、どう話しかけたら良いのか分かんなかったし…すんません ( A`) なぜ話しかける、任務か? 从;゚∀从 や、ちがいます…自分、シベ特は辞めたんで… ( A`) 俺に危害を加えるつもりは無いんだな? 从;゚∀从 無い無い無い無い!! ( A`;) まったく… ドクオはハインを解放すると、拳銃を服の下のホルスターへと戻した。 从;゚∀从 やー、すんません。先輩、なんかボーッとしてたから、いけるかなって… ( A`) あんな雑な動きでいけるか、バカ…まあ、それはともかく…辞めたって言ったな 从 ゚∀从 あ、そうなんす。だから、その… 从* ∀从 先輩の家に…泊めて貰えないかなーって… ( A`;) …んあ? いまいち理解できず、ひとまず自室に上げたドクオであった。 703 :(´・ω・`)時を忘れて覗き見るようですζ(゚ー゚*ζ:2014/01/02(木) 22 38 53.45 発信元 111.86.147.174 从*゚∀从 ウラー!ガサ入れじゃーい! ( A`#) テメエやめろクソアマ! 从*゚∀从 うっわ部屋きったね!超きたねえ!!うひゃひゃひゃひゃ!! ( A`#) どう見ても普通に綺麗だろうがっ!待てこら! 从*^∀从 きゃっ! ( A`#) 捕まえたぞこのっ!静かにしろ! 从*゚∀从 きゃーいやー!らめええええアタシこんな汚い部屋で押し倒されて汚されちゃうのおおおお!! ( A`#) 黙れコラ!通報されるだろうがコラ!本当に素面かよテメエ! 从*゚∀从 んほおおお…ん? 从 ゚∀从 先輩、あれ何すか? ( A`;) 急に戻りやがる…話したことなかったっけ? 廊下に押し付けられているハインの視線は、閉め忘れた扉へと向けられている。 小部屋に並べられた幾つかの写真と、文具や櫛、膨れた鞄や薄汚れた衣類などの荷物に興味が湧いたのだ。 704 :(´・ω・`)時を忘れて覗き見るようですζ(゚ー゚*ζ:2014/01/02(木) 22 48 21.78 発信元 111.86.147.176 ( A`) …入れ、すぐわかる 从 ゚∀从 はーい… 从;゚∀从 えっ…これ… ドクオの後についていき、それが何か理解したハインは、無意識に敬礼していた。 ( A`) まったく、どうしてこいつら、俺を選んだのかね 从 ゚∀从 これ…遺品ですか… 人物こそ違えども、写真には軍服に身を包んだ男性が同じように写っている。 しかし、どの男も、今は居ない。 从 ゚∀从 どうして? ( A`) なぜか知らんがこいつら、俺を死後の受取人に指名しやがってな 从 ゚∀从 家族へは… ( A`) シベリアだからな…流れ者も少なくない 从 ゚∀从 そうっすよね… ( A`) 妙な話だよな。こいつら、別に故郷があるってのに、わざわざシベリアなんて最果ての地の為に、死にやがる 708 :(´・ω・`)時を忘れて覗き見るようですζ(゚ー゚*ζ:2014/01/03(金) 19 04 18.24 発信元 111.86.147.173 ( A`) 皮肉だよな、昔の俺やハインやこいつらみたいな連中は。誰かの安寧の為にと、自分達の安寧を捧げて …知らない人を守るために知らない人を殺すんだ。平和のために殺し合うんだ。気持ちの悪い真実だよ 从 ゚∀从 …そんな言い方、あんまりっすよ… ( A`) 赦せ、そういう気分なんだ 从 ゚∀从 そっすか…自分で良ければ慰めますよ? ( A`) いらん、もう寝ろ 从 ゚∀从 相変わらずヘタレっすなー。そうだ、じゃあダブルベッド買いましょうよ! ( A`) いったい何日泊まる気だよ… 从 ゚∀从 え?年単位でしばらくですけど ( A`;) えっ? 从 ゚∀从 だってー何かあったら寝床くらい貸してやるって昔言ってたじゃないっすかー! ( A`;) いや、そうだけど! 709 :(´・ω・`)時を忘れて覗き見るようですζ(゚ー゚*ζ:2014/01/03(金) 19 12 27.17 発信元 111.86.147.175 从 ゚∀从 日数決めなかったのは先輩っすよ。どうせ女は居ないっすよね。 あ、お金は自分も出しますから。片目潰れたんで辞めるとき沢山貰えたんすよ ( A`;) ああ、うん…えっ? 从 ^∀从 まっ、よろしくおねがいします ( A`;) お、おう ドクオは考えるのを辞めた。心境を深く訊ねるのが、なんとなく怖くなったのだ。 そのほうがハインも都合が良いようで自ら語った理由も、就寝前に、寂しかった、と一言。 710 :(´・ω・`)時を忘れて覗き見るようですζ(゚ー゚*ζ:2014/01/03(金) 19 21 54.99 発信元 111.86.147.173 ハインが転がり込んできて、二日が過ぎた夜。 この日はシベリアでもとびきり寒く、音もなく落ちてくる雪の粒はとても大きい。 皆が脇目もふらずに家路を急ぐ中で、ドクオは一人、随分遠回りな寄り道をしていた。 川*` ゥ´) いらっしゃーい…おや、アンタか ( A`) あの時は御世話になりましたよ 川*` ゥ´) 良いさ。それよりどうしたんだい? ( A`) 花が欲しい。造花でも構わないが、白い百合の花を 川*` ゥ´) …あるとも。生花でね。供えるんなら花束にするから少し待ってな ( A`) いや、一輪で良いんだ。満開の奴が良い 花屋の女性はどこか哀しげに、慎重に花を選ぶと、ガラス細工でも扱うかのような丁寧さでもって新雪にも負けない白を包装して、ドクオに手渡した。僅かな硬貨と引き替えに。 ( A`) ありがとう 711 :(´・ω・`)時を忘れて覗き見るようですζ(゚ー゚*ζ:2014/01/03(金) 19 26 44.81 発信元 111.86.147.168 川*` ゥ´) 商売さね。こちらこそ、ありがとうございました 今度こそ、ドクオは家路を急ぐ。花を庇って歩きながら。 いままでなら、ただ寂しいだけだったが、家には騒がしい居候がいる。いつもなら雪だろうと飲みに寄るが、いまは酒が無くとも暖かい。 しかし、昼頃自宅に届いたとハインから連絡のあった荷物が、ドクオを哀しくさせていた。 从 ゚∀从 おかえりなさーい ( A`) ただいま…なんでエプロンしてんだよ 从 ゚∀从 雰囲気って大事じゃないっすか ( A`) ああそうだな不覚にもドキッとした自分に苛つくよコンチクショウ 从 ^∀从 へっへっへっ 帰るなり、ドクオは喪服に着替え遺品を集めてある部屋へと入る。ハインも喪服の上に着けていたエプロンをとき、続く。 そして、部屋の中央、届いた時の状態で置かれている小包を丁寧に紐解いた。 712 :(´・ω・`)時を忘れて覗き見るようですζ(゚ー゚*ζ:2014/01/03(金) 19 36 39.82 発信元 111.86.147.164 从 ゚∀从 意外と少ないんすね ( A`) 私物だけだからな。配偶者でも血縁者でもないんだ、こっちに全部まわってはこないさ しかし必ず一枚は、遺影が入っているので、それだけを立て掛けると他はしまい直した。 从 ゚∀从 これでよーし 部屋の片隅に、新たな遺品が加わり。 ( A`) … 中央に、新たな遺影が置かれ。それらの前に、一輪の百合が供えられた。 ( A`) まったく、フォックス。オマエは本当に、嫌な奴だったよ 从 ゚∀从 … ( A`) でも、オマエはすごく人間らしい考え方をすることができた。すごくまっすぐだった…俺は、それが羨ましかった 独り言を言い終えると、ドクオはリビングへと戻りソファーに腰を下ろす。ハインもついて行き、隣に座った。 从 ゚∀从 …酒でも飲みます? 713 :(´・ω・`)時を忘れて覗き見るようですζ(゚ー゚*ζ:2014/01/03(金) 19 44 53.76 発信元 111.86.147.174 ( A`) …なあ、ハイン。教えてくれないか?なんで俺なんだ? 从 ゚∀从 え? ( A`) 俺は他人なんだ。なのに奴らは俺に荷物を送りつける。遺影を飾らせる。俺はひどく迷惑なんだ ( A`) 奴らの荷物が増えるたび、俺は感傷的にさせられる。もう忘れた仕事を思い出しちまう。 人間は忘れられるから強いんだ、なのに奴らの所為で弱くなる…辛くなる ドクオの声は、徐々に熱を帯びてゆく。 ( A`) 仲の良かった彼奴は、今も元気だろうか?生きていれば良いな…そう思う事すらできなくなる。 彼奴はもう居ない、その証拠だけを突きつけられて、人の死が怖くて辞めたのに、思い出しちまって、でも荷物が在るから忘れられなくて 714 :(´・ω・`)時を忘れて覗き見るようですζ(゚ー゚*ζ:2014/01/03(金) 19 59 06.51 発信元 111.86.147.171 ( A`) …それでも、頼まれたら断れなかった。部屋に在る半分は辞める前からの約束だったし… 誰かにちゃんと受け取って欲しい気持ちは良く分かるから 从 ゚∀从 先輩 ( A`) なあ、教えてくれよ、なんで…俺なんだ ハインはドクオの手を優しく握った。小刻みな震えは暖かさに包まれると、ぱたりとやんだ。 从 ゚∀从 先輩は、優しいんです、すごく ( A`) そんなことは、無い 从 ゚∀从 ありますよ。でなきゃ、自分みたいなの泊めてくれないですよ 祈るようにドクオの手を胸元に運んだハインは、母親が子供を励ますように優しく語りかける。 从 ゚∀从 先輩は、最期まで付き合ってくれそうな感じがあるんすよ。 勝手な思いこみですけど、みんな先輩に助けられて、先輩がたくさん頑張ってるのも知ってて、みんな先輩を尊敬していましたよ 716 :(´・ω・`)時を忘れて覗き見るようですζ(゚ー゚*ζ:2014/01/03(金) 20 12 22.24 発信元 111.86.147.172 ( A`) …上辺だけだろ 从 ^∀从 本心ですよ。自分が保証します ( A`) お前は俺が死んだらどうするつもりだったんだよ 从 ゚∀从 フォックス先輩が言ってたんすよ、ドクオ先輩は主人公タイプだから死なないって ( A`) なんだ、そりゃ 从 ゚∀从 物事を俯瞰視点で見て的確に判断できるから死なずにすむだろう、羨ましい… て言ってました。自分もよく解んないっすけど ( A`) 羨ましいのはコッチだってのに 从 ゚∀从 …ああ、さっきの、ですか ( A`) そう。フォックスはな、物凄く真っ直ぐな、人間らしい判断ができたんだ。 俺なんかよりも遙かに優しくて、涙もろくて、積極的に手助けして…よっぽど、良い人間だった ( A`) だから俺は嫌いになった。真っ直ぐすぎて、知らぬ間に他人の足を引っ張るフォックスに… 善意を疎ましく思う俺の感覚を、蔑まれている気がしてな 718 :(´・ω・`)時を忘れて覗き見るようですζ(゚ー゚*ζ:2014/01/03(金) 20 24 02.05 発信元 111.86.147.164 ( A`) ハイン、知っているだろう、本当に皆をまとめていたのはフォックスだ。皆から慕われていたのはフォックスだ。 慕われるに値する人間、まさに主人公だった 从 ゚∀从 でも…死んじゃいましたよ ( A`) …主人公が途中で死ぬ話は、偶にある 从 ゚∀从 そしたら、他の登場人物が主人公になるじゃないっすか。 群像劇なら尚更っすよ…先輩、いい加減、胸張りましょうよ ( A`) うるさい、生来なんだ 从 ゚∀从 聞きましたよ先輩、あの図書館が廃墟になった時、最後まで残っていたのは先輩だったんすよね ( A`) 俺は何もしていない 从 ゚∀从 先輩、物語の主人公は、存在することにこそ真価が有るんすよ? だから先輩、自分やフォックス先輩たちの登場する物語の主人公で居てくださいよ ( A`) …まったく、お前が何を言いたいのか全く分からん 725 :(´・ω・`)時を忘れて覗き見るようですζ(゚ー゚*ζ:2014/01/04(土) 13 35 03.60 発信元 111.86.147.167 从;゚∀从 いや~…ははは ( A`) だけど、まあ…ありがとな。慰めて貰ったことだし、もうしばらくは都合の良い男で居てやるよ 从;゚∀从 言い方が…いや事実そういう事なんすけど違うって言うか… 从*゚∀从 先輩? ドクオが、おそるおそるハインに縋りつく。 いつでも抵抗できるような微弱な力加減、しかしハインがふりほどく事はなく、ドクオは幼子の様に頭を撫でられた。 726 :(´・ω・`)時を忘れて覗き見るようですζ(゚ー゚*ζ:2014/01/04(土) 13 41 08.45 発信元 111.86.147.165 良く晴れた冬の日、ブーン系小説シベリア図書館の館長であるブーンは館内のトイレ掃除を終えると、利用者に混じって書架を物色する。 ( ^ω^) まったく、いつまで浣腸ネタを引っ張られなくちゃいけないんだお… ぼやきながら手に取ったのは、大好きなクッソスレ集であった。 ( ^ω^) … 書架から読書スペースへ向かう際、整然と並ぶ机と椅子を一望して、思わず足が止まる。 利用者が少ないのだ、図書館の広さがそれを際だたせている。 元々、過疎っぷりに定評のあるシベリアにおいては普段ならば気にも留めないほどに当たり前なのだが、それにしても年々減っている気がしてしまったのだ。 727 :(´・ω・`)時を忘れて覗き見るようですζ(゚ー゚*ζ:2014/01/04(土) 13 46 11.91 発信元 111.86.147.167 ( A`) 館長、どうしたの? ( ^ω^) ドクオ…いや、別に ( A`) あー、ちょっと寂しいかもな ( ^ω^) 心読むなキメエ ( A`) 図星かよ…館長は、どう思うよ?このまま利用者が減り続けたら、どうなると思う? ( ^ω^) 変わらんお。過疎だろうと、ここは無くならないお ( A`) 自信たっぷりだな ( ^ω^) 前に決めた事だお。人が居なくなっても物語は残るお。ドクオ ( A`) なに? ( ^ω^) もしまた、あの頃みたいになったら、今度は僕も残るから ( A`) それはダメだろ。館長は全体の指揮をとる立場なんだから ( ^ω^) でも…まあ、これからも続いていけば良いだけだおね ( A`) そうそう ( ^ω^) ドクオは、どう思うんだお?いつかは…という可能性について 728 :(´・ω・`)時を忘れて覗き見るようですζ(゚ー゚*ζ:2014/01/04(土) 13 51 46.79 発信元 111.86.147.163 ( A`) 太く短くよりも、細く長く続いて欲しいな、俺は ( ^ω^) ほう ( A`) 確かに、印象は薄いと思う。新作も余所に比べれば随分少ないしな…けどさ ( A`) 誰かが、ふとした拍子に思い返してくれればそれで良いんじゃないかな ドクオは、感想祭に来ていた少年を思い出していた。 ( ^ω^) そうだおね…ねえドクオ、僕は幼い頃、忘れることが怖かったお。 僕の存在の何もかもが何時消えてしまうのかと怯えていたお。人間は儚い、すぐ死ぬし、すぐ忘れる。 でも成長するにつれ、過去の自分に関する記憶ですら全て覚えていたら感傷で死んでしまうし、全ての他人の記憶を相互に保持したら自分という存在が消えてしまう、だからこそこれしかない… いや、これで良いと思うようになったお ( A`) 厨二乙 ( ^ω^) うるせー 730 :(´・ω・`)時を忘れて覗き見るようですζ(゚ー゚*ζ:2014/01/04(土) 13 56 53.01 発信元 111.86.147.171 ( A`) けど分かるよ、俺も似たような事考えてた ( ^ω^) そうだお? ( A`) たとえば、少年が大人に成って此処を通りかかった時に 『嗚呼そういえば祭りの時に職員が半裸だったな。俺は行くのを止めたけど、彼らは今も脱ぐのかな』 って思い出す程度の淡さで充分かなって…確かに、全部忘れられてしまうのは怖いけどさ ( ^ω^) だからこそ、みんな物語を書くのかもしれないおね。 自分を覚えていて欲しい、知って貰いたい、共感して欲しい… といった欲求の妥協点として、何の気なしに手に取れて何処までも自由な物語を ( A`) 他人にとって俺の人生は所詮、千年どころか死後数年で跡形も無くなる代物だろうけど… 『ひょっとしたら覗き見好きな誰かさんが、今までとこれからの全てを、覚えていてくれるかもしれない』 …そう考えると怖さが薄れるよ 731 :(´・ω・`)時を忘れて覗き見るようですζ(゚ー゚*ζ:2014/01/04(土) 14 02 28.34 発信元 111.86.147.167 ( ^ω^) ドクオは無神論者だったと思ってたお ( A`) 信仰してない、でも便利なのは認めるよ。結局神様って、無いものを曖昧なものに高めて、感情をぶつけたり整理するために生まれたんじゃないかな。こんな風にさ そう言ってドクオは天を指さし、つられて館長も仰ぎ見る。なるほど、館長は呟いた。 ( A`) ほら、見てるか?見てんだろ? mg( A`) おまえだよ、オマエ ( ∀`) …なんてな ( ^ω^) ―――こうしてまたひとつ、ドクオの新たな黒歴史が誕生した――― ( A`) ・(∩A∩)・ ( ;^ω^) ちょっ、ゴメン泣くなドクオォーーー!! 733 :(´・ω・`)時を忘れて覗き見るようですζ(゚ー゚*ζ:2014/01/04(土) 14 10 08.08 発信元 111.86.147.166 (´・ω・`) 「…ふう」 ζ(゚ー゚*ζ 「あら、館長、倉庫で読書ですか?」 (´・ω・`) 「うん、ちょっとね」 ζ(゚ー゚*ζ 「その厚い本、表紙に何も記されていないのですね。いったい、どのような内容なのですか?」 (´・ω・`) 「ふふふ…超絶おもしろい大スペクタル超長編サクセスストーリーさ!」 ζ(゚ー゚*ζ 「そこまで仰られると一周まわって全米も無視しそうです」 (´・ω・`) 「ごめん」 ζ(゚ー゚*ζ 「けれども現に、真面目な館長が倉庫で夢中になってしまわれたのですから、とっても楽しいのでしょうね。私にも読ませて頂けませんか?」 (´-ω-`) 「うん、良いよ。だけどまだ僕が読んでる途中だから、いつか読み終わったら…そうだな」 (´^ω^`) 「結末を教えながら手渡してやるよ!!」 ζ(゚ー゚;ζ 「ゲスいっ!!」 終 734 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2014/01/04(土) 14 13 57.29 発信元 111.86.147.177 去年の投下納めのつもりが…どうしてこうなった (´・ω・`)時を忘れて覗き見るようですζ(゚ー゚*ζ 以上で終わりです、ありがとうございました。
https://w.atwiki.jp/megalon/pages/44.html
#blognavi chunさんちでやってたうるつげ祭り、なぞの人がこんな絵を描いてました。 オンドル:床下暖房装置 だそうです。 オンドルの覗き見 | MIDI | MP3 鼻歌交じりに化粧じる あらゆる波が すべて日常 どっちも♪どっちも♪ どちらも♪どっちも♪ (どっちもどっちもどちらもどっちも) 景色は違えど 立つ瀬は同じ 挿絵:なぞの人 作詞:なぞの人 作曲:×ガロン 企画:chun カテゴリ [chun] [ころ]- trackback- 2005年06月12日 15 47 14 名前 コメント #blognavi
https://w.atwiki.jp/sywksrk/pages/15.html
編集部ブログ 僕はほぼ毎日「最前線」のページを開きます。お目当ては一日に二度も更新される「編集部ブログ」です。そんなに新記事うpして暇なのかと突っ込みたくもなりますよね。いや、更新頻度が高いのは有り難い事ですけれど。 そんな「編集部ブログ」を覗きながら書いてみたのがこのレビューです。山中さんが「このブログもいずれレビューされたりするのかな、と思うと今からそわそわします」って言ってたからレビューする訳じゃないんだからねっ! さてまずは「編集部ブログ」に僕が抱いた印象から話しますけれど、一目見た時に大分斬新だなぁと驚いたのを覚えています。最初に拝見した記事が山中さんの「150匹のサンマと愛すべき週末」というタイトルで、何の話だよと画面に向かって突っ込んだりもしました。それから五カ月ぐらいこのブログを閲覧している訳ですが、正直なところ「何処にでもありそうなブログ」ではないかと。別にパラドキシカルな事を述べたい訳ではないですよ。出版社のウェブサイトに「何処にでもありそうなブログ」が載っている状況が斬新だなぁ、と思わされたのです。 一般的な編集部のブログでは、「いついつにこれこれが発売されます!」だとか「執筆者の誰それがこんな事してきました」みたいな告知中心の記事ばかりですし、一日二回の更新なんて他ではやってないですよ。 ところが最前線の「編集部ブログ」では堂々と「編集部の日常」を公開してみせる。普通ならあり得ないんじゃないでしょうか。 挙句の果てには平林さんが戦国時代について熱く語りだしちゃう訳です。もう「誰が興味あんねん」と。僕は日本史好きだから楽しく読んでますけどね。 でもそこが好いんですよ! 「あ、『最前線』を作っているのはこんな人達なんだ」というのが手に取るように分かりますから。告知だけのブログなんて機械じみていて無機質じゃないですか。それと比べれば人間味に満ちていますし、「編集部ブログ」そのものを楽しみにサイトを訪れる人だって出て来るでしょう。 さらに嬉しいのは逐一「星海社文庫」が出来あがるまでを報告してくれることだったりします。ただ発売日を発表するだけではなく、校了や入稿の段階から、写真を交えてブログに記してありますので、文庫本が出来あがる過程を編集部と一緒に追うことができ、発売までのもどかしさも倍増、書店で購入する際の感動や興奮、喜びも一入です。 編集部の日常から、とっておきの裏話まで、「最前線」の舞台裏、ぜんぶ見せます! という言葉は決して嘘ではなく、将に僕達は編集部の現状や、編集者さんの素顔まで覗き見る事が出来るのです。ここまで編集部の存在を身近に感じる事が出来るのは、「最前線」ならではかと。だって既存のいわゆる編集部ブログだと、先から述べている通り、あくまで編集者が僕達に何かを呼び掛ける一方的なものでしかありません。だけれども私達との距離を縮めてくれる「最前線」の「編集部ブログ」は、読者に対して手を差し伸べてくれているように感じます。敢えて日常を記す事で、一般人のブログ同様に読者の存在が意識されているのです。平林さんと山中さんのツイッターアカウントが、各記事の終わりに毎度掲載されていますから、コメント欄は無いものの、やろうと思えば感想を直接伝える事もできますよね。斯様に編集部と双方向的な感覚に浸りうるのです。 皆さんも小説やマンガを読み終わったら、是非「編集部ブログ」にも足を伸ばしてみて下さい。 そこでは今まで見る事が適わなかった編集部の姿を覗き見る事ができます。 さすればもっと、「最前線」が好きになる筈ですから。 自己解説 第2場に投稿したものの未掲載だったものです。 最後の一文に同感です。最前線のメインはやっぱり連載作品なんだけど、もっと最前線にハマるとしたらこういうコンテンツだと思うんですよね。あのアニメ好きだったんだけど、気付いたらそのアニメの声優とか監督にハマってた!みたいな笑 -- yagi_pon (2011-03-02 15 31 59) 同じく同感。星海社ってなんだかそばに寄ってみていたくなる雰囲気がすてきです。それにしても自分たちのブログをレビューされて、さらにそのレビューを評価するなんてかなりプレッシャーかかるだろうなっていまさら思いました。さやわか団長たいへんだ笑。 -- ticheese (2011-03-03 00 55 01) なまえ: コメント
https://w.atwiki.jp/kt108stars/pages/11700.html
695 名前:ゲーム好き名無しさん (アウアウエーT Sa02-Or0L)[sage] 投稿日:2017/10/06(金) 20 22 28.28 ID 3hnHEMzva [1/2] プレイヤーだけじゃないんだこれが… PCの設定をからかいのタネにして来るんだ そういう事するようなキャラじゃないのに「君は女湯を覗き見してるところからシーンが開始する。覗きがばれた君は~」とかを導入にしたりして ハンドアウトには一言もそういう事書かれていない 言われたセリフが「真面目なPC設定ほど崩しがいがある」と「セッション進行に協力する義務がPLにはあるよねえ?」 696 名前:ゲーム好き名無しさん (アウアウカー Sa4d-zShx)[sage] 投稿日:2017/10/06(金) 20 29 05.24 ID s6ZSna6na うっわ、なんだそりゃ……うっぜ 697 名前:ゲーム好き名無しさん (アウアウエーT Sa02-Or0L)[sage] 投稿日:2017/10/06(金) 20 58 59.86 ID 3hnHEMzva [2/2] あ…言葉足らずだったけど 695はそういうGMの話ですわ 698 名前:ゲーム好き名無しさん (アウアウカー Sa4d-qMbY)[sage] 投稿日:2017/10/06(金) 21 13 30.84 ID yYeKnXhya [3/3] GMはシナリオに支障がない限りはPLのRPを尊重する暗黙の義務があると思ってた 700 名前:ゲーム好き名無しさん (アウーイモ MM39-16fN)[] 投稿日:2017/10/06(金) 22 04 24.62 ID bawjkw2vM 695 女性キャラなのに女街で女買ってたと言い出す狂ったGMを思い出した。 706 名前:ゲーム好き名無しさん (ワッチョイ 76e8-BYga)[sage] 投稿日:2017/10/07(土) 10 58 05.86 ID BUOdpW3F0 「セッション進行に協力する義務がPLにはあるよねえ?」 これって「GMとPLが協力してセッション進行していこう」って意味では合ってはいるけどこの困の場合は当てはまらないよな PLの設定崩そうとしてる時点で協力体制じゃないし つか 666も 695も他の参加者のやりたいことをぶち壊すのがやりたいことな点では根本的に一緒なんだよね 楽しく遊べなかったら失敗のTRPGにおいてはある意味最悪のタイプだ スレ451
https://w.atwiki.jp/pre_jam/pages/119.html
春は皆が穏やかに過ごせる季節、そうは言うけれど。 彼女にとっては全く関係の無いことである。 「ったく、何なのよ、あの女はっ!」 私立亜名座阿学園の第二食堂に響くのは、如何にも苛立たしげな色を宿す少女の声。 「何か中村さん……今日は一段と機嫌悪いね」 「ちょっ……遼っ! それじゃ私がいつも機嫌を悪くしてるみたいじゃないっ!」 それに軽い苦笑で答えつつ、上野遼は何度も舌打ちしている彼女の前に座った。 妙なことになったと思う遼である。如何に遼とは同じクラスといえ目の前の彼女、中村陽菜には自分より遥かに仲の良い友人が何人もいるのではないか。それなのに、どうして自分などと一緒に食堂まで来ているのか。女の子との付き合いがあまり無い遼としては、流石に普段より少ないとはいえ周囲から向けられる奇異の目が非常に痛い。 今日は土曜日である故に授業は四時間で終了である。ただ、四時間目のホームルームの議題が未だに決着を見ていないため、彼らのクラスは午後まで残ることになってしまった。当然だが、土曜日に弁当など持ってきているはずも無く、クラスメイト達はそれぞれの場所で昼食を取っている。 そんな中で遼は陽菜に引っ張られて第二食堂を訪れていた。要するに、それだけのことだった。 「……で、どうするのさ?」 「何よ?」 「午後からの会議だよ。……加賀美さんには勝てないでしょ、今のままじゃ」 日替わり定食を乗せたお盆を食堂の長机に置きながらも遼は冷静である。冷めていると言ってもいい。このように女の子が相手である場合に若干の緊張こそすれ、本題に入る場合は一切の余計なことを捨て置けるのが遼だった。 そんな彼だからこそ陽菜が相談相手に選んでいるということを、本人だけが知らない。 「それよ。……ったく、どいつもこいつも夏姫の胸にたぶらかされちゃってさ……!」 「それは、その……残念だよね、中村さんの場合」 「どこ見てんのよっ!」 何事も無かったかのように冷めた瞳で語る遼に、いつも陽菜は妙に調子を崩される。 高校入学と同時に所謂幼馴染といった連中とクラスが別々になってしまった陽菜には、正直に言えば現時点で友人は多くないのかもしれなかった。元来誰とでも打ち解けやすいとされる性分を持つ彼女ではあるのだが、今のクラスでは仲良くなる人間よりも気に入らない女の存在の方が大きすぎて、その女とのギスギスした関係の所為で他の女子からも少々避けられている嫌いすらあった。 その気に入らない女というのが加賀美夏姫という少女である。高校生離れしたプロポーションと身体能力、そして人間離れしたブラコン精神と、あらゆる意味で個性的すぎる女子生徒。四月の始業式から早一ヶ月、似た者同士であり同時に正反対な気質も持つ陽菜と彼女は事あるごとに対立してきた。 そうして今日。六月の移動教室を林間学校にするか臨海学校にするかという議題が行われる今日のホームルームに至ったわけである。 「なになに? 悩み事?」 そんな二人のところに、厨房の奥から楽しそうな顔でやってくる女性が一人。 「あ、竹中さん」 「珍しいCoupleねぇ……どうかした?」 家庭的なエプロンを首から掛けつつも身に纏うのはスパッツとタンクトップという活動的な様相の彼女は、本学園の食堂にて働いている竹中穂波という女性だった。年齢は19歳だから陽菜や遼とも大して変わらない。彼女だけに限ったことではないが、本学園にはこうした年齢や性別に関わらず実力とある程度の素質さえあれば当人の人格に関わらず職員または事務員として採用する、そんな風紀がある。これも偏にルーチェモン理事長の人徳なのだろう。 だからなのだろうか、この学園にて働く者達は生徒達以上の愛校心がある。 中でもこの女性、竹中穂波は昨年度までこの学園の生徒だったこともあって、その愛校心は並大抵でない。昨年度の生徒の中でも大学へ進学すること無く本学園で働くことを選んだのは彼女ぐらいである。尤も、そこには大学受験に失敗したという理由もあるのだが、とにかくそういうことだ。 「あ、聞いてよ穂波さん。今日ウチのクラスでホームルームやってるんだけどさぁ」 「……陽菜ちゃんとこの担任って、確かゴワス君よね」 エプロンを取り払いつつ穂波は陽菜や遼の向かいに腰掛ける。健康的な太股が少々眩しい。 「あれか、もしかして移動教室の話?」 「そう、そうなのよ!」 「それに関連して、ちょっとした話題が……」 陽菜には細かい説明をしようという気が全く無いため、必然的に話を進めるのは遼になる。 「へえ、昔は私も良く……って、誰が年増だゴルァ!」 「……誰もそんなこと言ってないんですけど」 「穂波さん! そんなことより聞いてよ! 私は嫌なんだからね、臨海学校なんて!」 「いや、いきなり言われてもCannot Understandなんだけど、流石の私も」 とりあえず説明をしてくれと言いたげな瞳を陽菜に向ける穂波であったが、陽菜は意にも介さない。 陽菜としては年上の穂波相手だろうと敬語を使う気は更々無い。穂波の方としても下手にそれを強制すると陽菜の持つ本来の良さが失われてしまうかもしれないと考えているため、特に気に留めることはしない。だから同年代の相手に対しては何かと口うるさかったりテンションが高かったりする穂波も、彼女の前では人生の先輩としての態度を崩さない。 こんな感じでも二人の関係は結構上手く行っている。前に一緒に商店街を歩いた時には姉妹に間違われたこともあった。要するに竹中穂波は中村陽菜にとってお姉さんなのである。 「はいはい。……じゃあ、とりあえず経緯を話して?」 「うん! じゃあ遼、説明は任せたから!」 「……だと思ったよ」 どこまでも面倒なことは人任せな友人に、遼はため息を吐く。 数刻前、亜名座阿学園高等部1年A組。 土曜日の三時間目及び四時間目にロングホームルーム、略してLHRを割り振られているこのクラスは、どうした理由からか学年でも教師達に何かと目を付けられる問題児が多く揃ったクラスである。その筆頭が廊下側の最後尾に座る加賀美夏姫と、教室の中央に席を持つ中村陽菜の二人だった。別に彼らは素行が悪いというわけではない。夏姫は基本的には真面目で人の話も良く聞く生徒であったし、陽菜もまた少々うるさい部分こそあるが所謂不良と呼ばれるような行為は何一つしていない。 そんな二人が何故教師に目を付けられたのかといえば、それは互いの仲が頗る悪いということに集束される。この二人は顔を合わせる度に見苦しい口喧嘩をするのである。流石に女子だけに殴り合いにまでは発展しないが、それでも迷惑なことに変わりは無い。そのためか、学園側は彼女達のストッパーとなるべき人間を用意した。 それがこのクラスの担任である武蔵丸雷電、その恰幅の良さから通称ゴワスと呼ばれる教師であった。 『今回の移動教室、概要は以上でゴワス。……何か質問は?』 『はいっ!』 ちらほらと手が挙がる。その中でも最も勢い良く手を上げたのは夏姫である。 『では……加賀美女史』 『関係無い物を持って行ってはいけないってゴワス先生は言いましたけど』 『うむ』 『じゃあ弟も持ち物に入りますよね? アタシの弟ですし』 ズコンッ! そんな夏姫の言葉に快音を立てて額を机に叩き付けたのは、部屋の中央に座る中村陽菜であった。 『……中村女史?』 『夏姫ぃ……あんた馬鹿!? どこの世界に弟を連れてく学生がいるってのよ!』 『馬鹿ね陽菜、ここにいるじゃないのよ』 『違う! 反語表現! ていうか、それ開き直りだから! はい! 私からも質問!』 互いに互いが絡むと自然と厚くなるのが彼女達の悪いところである。 『何でゴワスか、中村女史』 『お菓子は五百円までとか言ってたけど、バナナはお菓子に――』 『……入らないわよ?』 言い終える前に夏姫がボソッと呟く。 『何であんたが答えんのよ!?』 『いや、馬鹿でもわかるでしょ、それは』 『つまり私は馬鹿以下ってことぉーっ!?』 どちらかといえば快活な方である夏姫とて、この元気の塊のような人間である陽菜に対しては自然とツッコミ役になることが多い。 そして売り言葉に買い言葉である。喧嘩っ早い陽菜は夏姫の何気ない指摘に過敏に反応してしまい、反対に夏姫の方も陽菜に何かと絡む。そうなったら二人の口喧嘩はなかなか止まらない。今日も朝のホームルーム直後に二十分近い口論を交わしたばかりである。 『えぇい! 落ち着くでゴワス! これから移動教室の行き先を決めねばならんでゴワスよ!』 『……何ですって? 行き先……?』 『如何にも。臨海学校にするか林間学校にするか、他のクラスの希望は既に出ているでゴワス。それを集計したところ現時点では五分と五分、つまり多数決である以上は我がクラスの希望がそのまま学年の総意となるのでゴワス!』 ゴワス教諭が熱弁しつつ教卓を勢い良く叩く。何気に痛かったらしく、手を赤く染めて顔を顰めている。 自由な校風で知られる本学園にて六月に行われる移動教室の行き先は、原則として生徒達の決定に基づいている。そのため、この時期になると各クラスのホームルームにて希望を取り、学年の総意が決められることになる。そんな中で他のクラスの希望の合計は林間学校と臨海学校が二票ずつで全くの互角と聞く。それ故に陽菜や遼達のクラスの希望が自動的に学年の決定となるのである。 そして、ここでもまた陽菜と夏姫は言い争うことになる。 『林間学校よ!』 『……臨海学校でしょ、普通』 いきり立つ陽菜と冷淡に告げていく夏姫は正反対。 正直に言えば、他のクラスメイト達は移動教室というものにそこまでの興味があるわけではない。ただ、既に恒例行事と化した陽菜と夏姫の言い合いを面白がっているだけである。その所為か、自然とクラスの意見は真っ二つに割れる形となる。 両者が何か言葉を発する度に「あ、じゃあ林間学校にする」とか「やっぱ臨海学校だよな」とか、幾人かの生徒が立場を変えたりもしたが、結局は決定的な変化が訪れない。 『日本は島国だからね、臨海学校の方が行き先にバリエーションが出るわよ?』 『正論だね。……では僕もやはり臨海学校の側に回らせてもらおうかな』 夏姫の言葉に出席番号一番、青山怜治が普段通りの冷笑を以って彼女の後ろに付く。 『怜治、あんた……!』 『……ふふ、相変わらず頭が足りないね、中村さん』 『ああん!? 誰が頭足りないって!?』 容赦の無い口調でどこか挑発的な台詞を吐いていく青山怜治は、このクラスの中でもダントツに成績の良い男子生徒である。何しろ既に海外では大学を卒業しているというのだから驚きである。少々嫌味なところこそあるが、なかなか整った顔立ちをしているため、それなりに学年の女子からの人気も高い。――尤も、陽菜や夏姫には見向きもされていないわけだが。 そんな彼は上野遼のことを何かと買っており、事ある毎に彼に絡んでいる姿が見受けられる。 『何故お題の使用キャラとして選出されていない僕が出ているのかって? ……ふふ、この作者はどうやら僕のことを気に入ったようだからね』 『何食わぬ顔でメタ的な台詞吐いてんじゃねえわよっ!』 『おっと、相変わらず乱暴だな』 とりあえず叩き込まれた陽菜の鉄拳を、怜治はヒラリと避ける。 『ならワイも臨海学校ってことで頼むわ』 『大地、あんたまで!?』 エセ関西弁を用いる長谷川大地もまた徐に立ち上がると怜治に続いて夏姫の側に付く。 怜治と大地の移動によって若干臨海学校派が多くなるが、結局クラスの総意が決められないままチャイムの音色が鳴り響き、異例の土曜日の午後まで残ることになってしまった。 そんなこんなで、陽菜と彼女に強引に付き合わされている遼は、なんとかして午後の会議が始まるまでに逆転の秘策を練らねばならないというわけである。 「――というわけなんですよ、竹中さん」 「うん、そうなのよ!」 「つまり陽菜ちゃん達は、なんとかして林間学校にしたいわけよね?」 「そゆこと! だから穂波さん、一緒に作戦を考えて!」 自分は何も話していない癖に妙に偉そうな陽菜である。 その真正面に座る穂波は数秒間だけ何かを思案するように瞑目していたが、結局のところ何も良い考えが浮かばなかったらしく、ため息を吐きつつ静かに首を振った。やれやれといった表情で首を振る彼女は、どうにも普段の穂波を知る者からすれば違和感を覚える姿だろう。だが実際、陽菜の前では必要以上にお姉さんぶろうとする穂波には、概して今のような面が存在するのである。 彼女が自分に期待していることが表情だけで理解できるだけに、なんとかして陽菜の手伝いをしてあげたいとは思うのだが。 「……じゃあ一つQuestionしてもいい?」 「何ですか?」 「二人は何で林間学校に行きたいの?」 こういう時、素っ気無く「そんなことはクラスの友達と話し合えば?」という尤もな正論を言わないところが穂波の美徳である。ただ、これは常に相手と同じ目線で物事を考えると言えば聞こえは良いが、彼女の場合は単純に性根が単に高校生と殆ど変わらないというだけのことだった。要するに子供なのである。 ただ、そんな穂波の質問に遼はともかく、陽菜は僅かに怯んだようだった。 「き、決まってるじゃない! 臨海学校なんて嫌だからよ!」 「考え方がMinusねぇ……遼君は?」 「僕はあまり山とか行ったことが無いので……」 海に面した地域で暮らしていた遼としては、山中へ足を運んだことは殆ど無い。家族で旅行する時も常に沿岸部であったし、登山やキャンプなどの経験も当然無い。小学校や中学校の遠足で丘陵地帯のハイキングをしたことが関の山である。もちろん小中学校通して修学旅行の行き先は海であった。 尤も、遼が林間学校派に回った理由としては陽菜に付き合わされていることの方が大きいのであるが。 「……できれば山に行ってみたいなとは、思います」 「なるほどねー」 そんな遼の目を見て穂波は少しだけ口の端を上げる。彼の口調から滲み出ている純粋な思いという奴が心地良い。本当に林間学校に行きたいのだと感じさせてくれる。それに引き換え、陽菜の方はといえば。 「海なんて嫌よ! 暑いし直射日光ギンギンだし人は多いし!」 「それじゃ駄目でしょうが……」 「は? 穂波さん、それどういうことよ?」 「あのね陽菜ちゃん、だったら――」 「そんなに林間学校にしたいのなら、ただ臨海学校を嫌だって言うだけじゃ駄目でしょう。……やっぱり林間学校のいいところも挙げていかなくちゃ。……ね?」 「そうそう、私はそう言いたかったのよ……って!」 自分の言いたいことを勝手に引き継がれた穂波が振り返ると、そこには彼女より遥かに年上な大人で(重要)更に遥かに綺麗な(もっと重要)女性がいた。 「人の言おうとしたことを……チョベリバです、吹雪さん!」 「……あら、それはごめんなさいね?」 いっそ清々しいまでの微笑を浮かべたこの綺麗な女性は海山吹雪、名前からわかる通り陽菜や遼の一つ上の学年の中でも稀代のイケメンとして知られた海山煌麒の実の姉である。 弟よりも十歳年上の彼女は、かつては商社のOLだったということもあり、如何にもできる女の風体をしている。現在はこの学園で事務員をしている。弟に似て(逆?)目鼻立ちの整った顔立ちをしているし、背も高いのでモデルにでもなれそうな印象を受ける。前に学年の男子、中でも結構なゲス野郎が多い陽菜のクラスの男子生徒が、事務室に書類を取りに行くという口実で彼女に会いに行こうとしたことは記憶に新しい。無論、その先陣を切ろうとしたのは言うまでも無く、あの長谷川大地である。 ただ、結果的にその目論見は彼女が事務室で二年生の男子とストロベリーな空間を作り出していたことで、見事なまでに失敗に終わったのだが。 「ったく、吹雪さんは相変わらず空気読めないところがあるんですから……」 「……穂波さんに言われちゃ終わりの気もしますが……」 「ふふふ遼君、今何か言った? 穂波ちゃん、ちょっと聞こえなかったんだけどぉ?」 「いえ、別に何も」 にべも無く穂波をサラッとあしらう遼である。 覗き、それは純粋なる願いロマン 何はともあれ、自分の意見を通すためには相手の意見を否定するのではなく、自らの考えを高める言葉を探す必要があるのだと聞かされた陽菜は、相変わらず遼を伴って校内を徘徊していた。 「う~ん、悔しいけど確かに吹雪さんの言う通りかも……」 「だね。……相手を否定するよりは、自分達のいいところを探した方がずっといい」 「あのさ遼、もしかして……あんた、最初からそのことに気付いてた?」 それに対して遼は「さあね?」と意味深な言葉を返す。 全く以って真意を悟らせぬ同級生だと陽菜は思う。普段はボーっとしているように思えるけれど、良く見ると彼は熱心に人を観察していることがわかる。決して積極的な人間ではないし強気な性格の持ち主でもないためか、人と目を合わせることは殆ど無い。だが上野遼という人間には、時折陽菜ですらハッとさせられるレベルの底の知れなさを感じてしまうのである。彼が今こうしているのは何か深い理由があるのではないか、彼には何らかの思惑があるのではないか。有り体に言ってしまえば、そんな感覚だった。 不意に合った彼の瞳は、まるでこちらの全てを見透かされているようで、陽菜は不安になる。 「と、とにかく! 林間学校のいいところを探すわよ!」 「……どうやって?」 「うっ。……そ、それを今から考えるの!」 「じゃあとりあえず、あそこで話を聞いてみるのはどうかな?」 いつの間にか部室棟に来ていたらしく、遼が指差した先には『山岳部』と『探検部』の文字が見える。 正直、現時点では部活に入っていない陽菜には全く縁の無かった部室棟であるが、意外にも前々から持っていた如何にも汗臭そうで汚らしいといったイメージとは違い、少なくとも山岳部や隣の探検部の部室前はゴミ一つ無く小奇麗にされていると見える。それにしても、山岳部と探検部というのは何が違うのだろうと思う陽菜と遼であった。 どうやら探検部の部室は無人らしいので、必然的に山岳部の方へと足は向けられる。 「ちょっと毛色は違うかもしれないけど、ここでなら山の楽しさを教えてもらえるんじゃないかな?」 「遼、あんた結構考えてるわね。……何でそこまで?」 「……それぐらい林間学校に行きたいんだって考えてもらえると、僕的には助かるかな」 動揺も何も無い。部員に知り合いもおらず、そもそも実態も不明な部活の門戸を文字通り叩くというのに、遼には気負った様子など微塵も見られない。普段は気弱で少々おどおどしたところもある彼なのに、今の彼は陽菜の良く知る上野遼のどの顔とも違っていた。その不敵な表情が誰かに似ているかと思えば、それはエリートぶった嫌味なクラスメイト、青山怜治に似ていたのだ。 軽くノックをすると、部屋の奥から女性の「は~い」という声が聞こえた。――山岳部の女性の部員か、それとも顧問の先生だろうか? 「高等部一年の者です。興味がありましたので、少々お話を伺いたく今回参りました」 「あ、見学者の方ね。どうぞ~」 返事が返ってきたので、遼は躊躇うこと無くドアノブに手を掛ける。だがそうしてドアが開かれる前に、陽菜は彼の手を握って小声で告げる。 「……遼、あんた良くもまあ抜け抜けと嘘を吐けるわね」 「嘘は言ってないと思うけど? 事実、僕らは興味を持ったからこそ今この扉の前にいる。そして話を聞きたいからこそ今から部屋に入る。……それだけだよね?」 そこで遼は今日初めて陽菜の顔を真正面から見返してニカッと笑った。彼が潜在的に備える強かさが表出した笑みである。 「では失礼します。……中村さんはここで待っていてくれるかな?」 その瞬間、陽菜は本当の意味でこいつには敵わないと思った。だから情けないながらも、気持ち悪いぐらいに上擦った声で「う、うん……」と答えるしかない。遼が恭しく頭を下げて部室の中へ入っていくのを、ただ黙って見ていることしかできなかった。 遼が部室に入った後、その扉が再び閉め切られると、廊下には陽菜だけが残される。――少し寂しい。 「部活動……か」 高等部に繰り上がってから早二ヶ月弱。 自分も何らかの部活動に参加するべきなのではないかとも思うが、差し当たってこれだと思える部活動が見当たらないのが問題なのである。女子の友人がいないわけではないけれど、陽菜は友達付き合いで同じ部活に入ることが好きではなかったし、そもそもその手の如何にも女の子といった手芸やら料理やらの部活にわざわざ所属しようという気も無かった。 ならば体育会系かとも聞かれれば、それもまた何か違う気がする。バスケやバレーも嫌いではなくむしろ好きな部類に入るのだが、それは飽く迄も体育の時間などに一種のレクリエーションとして行うからこそ好きなのであって、まさに一所懸命にそれだけに打ち込むというのも自分には合わないのではないかと思う。 何か見つかれば熱くなれるのだろうが、その何かが見つからない。今の陽菜はそんな状態であった。 「あれ? ……お前、こんなところで何してんだ?」 何分ぐらい経っただろうか、唐突に声を掛けられた。いきなり人を捕まえて何をしているのかと聞く失礼な男は、彼女とは既知の仲の高等部二年生、渡会八雲である。その隣には陽菜の知らない男子生徒の姿も見える。 「あ、八雲。……と、誰?」 「渡会、この女子生徒は?」 陽菜と知らない男子生徒、二人が八雲に問い掛けたのが殆ど同時だったので、八雲は小さくため息を吐きつつ。 「ああ、紹介するな二階堂。……こいつは前からの知り合いで、前の大会で組んだ中む――」 「んー?」 「……陽菜だよ」 「正解♪」 何週間か前のバトル大会でチームを組んだ時から、八雲に苗字で呼ばれることに違和感を覚えていた陽菜である。そのため、数日前に半ば強引に苗字で呼ぶことを認めさせたのだが、今でも八雲はこのようにして時折苗字呼びが混じってしまうことが多々ある。その度に不思議と陽菜がイラつかされてしまうのは、要するにそういう理由であり、八雲もまた戸惑いながらも彼女に接している。そんな意味では、結局のところ彼らは互いに素直になり切れていないだけなのかもしれなかった。 八雲の隣に立つ男子生徒は、その様子を面白そうに見つめていた。 「なるほど。……渡会、彼女が噂の貴様の細君ということか?」 「ちょ、噂されてんのか!?」 「さいくん? なに、どういう意味よ八雲」 「気にするな。……それで、こいつは二階堂秋哉。俺と同じクラスの……まあ友達だ」 「……あんたに友達なんていたんだ?」 意外と仲が良さそうな二人にイラついたので、とりあえず本音を言っておく陽菜である。 「陽菜……お前、相変わらず失礼だな!?」 「ごめんね、生まれ付きだからさ」 「だがまあ何はともあれ、お前が俺のことを友人と思ってくれていたことは嬉しいぞ、渡会」 「気にすんな、俺は本当のことを言っただけ……って、ぬおっ!?」 八雲の言葉を遮るように陽菜は彼の右腕を掴んで思い切り引っ張ると、その耳に顔を近付けて言う。 「あのね八雲、友達は選んだ方がいいわよ?」 「別に悪い奴じゃないぞ、あいつは。そりゃ――」 「……チャックが開いてるって?」 彼の台詞を引き継いで小声で言ってやる。当然だが、二階堂秋哉には聞こえていない。 この二階堂という男、長身だし顔立ちも整っており如何にも優秀そうな雰囲気を醸し出してこそいるのだが、体の中心に位置するチャックが物の見事に開きっ放しなのである。それに本人は全く気付いていない。いっそ清々しいまでの開きっぷりであった。 とはいえ、八雲の交友関係に自分が口を出したところで何も始まらないことはわかっている。彼が迷い無くそれでいいと答えるのなら、それ以上は何も言わない。人間同士の関係って奴は濃すぎると長続きしない、むしろ少なからず遊びの部分を設けていた方が長続きするというのが陽菜の持論である。だから如何に大切な相手だろうと、彼女は必要以上に干渉することはしない。 尤も、このチャック男には色々と言いたいこともあるのだけれど、それはまあ後々に取っておけばいい。 「それよりお前は部室棟なんかで何してんだよ?」 「あんたに言う必要無いわよ」 「じゃあ聞かないな。……そろそろ俺達は行くから」 「だぁーっ! 張り合い無いわねぇ!」 少々この男は素直すぎると思う。もう少し何かと言い返して欲しいと切に願うのだが。 「それじゃ一つだけ聞くけどね、八雲……あんた達って去年、林間学校だった? それとも臨海学校?」 「ん? ……二階堂、どっちだったっけ?」 「林間学校だ。……渡会、お前去年のことも忘れたのか?」 釈然としない様子で首を傾げる八雲に、二階堂秋哉は呆れた様子を見せている。 「悪い、ちょい記憶が曖昧でな」 「ふ~ん? それで、その林間学校って楽しかった?」 「……だから、記憶が曖昧なんだって」 ムカッ。やっぱり彼に対してはそんな苛立ちしか覚えない陽菜である。 同時刻、こちらは山岳部の部室に足を踏み入れた遼である。陽菜がその部室の前で上級生の男子二人と顔を合わせていることなど、当然だが知る由も無い。彼女が如何に底知れなさを感じていようとも、この上野遼とて所詮は高校一年生の男子でしかない。陽菜の目に遼が全く緊張していないように見えたのならば、彼は単にそういうフリが得意というだけで、内心には少なくない緊張が走っていた。 ただ一点だけ遼が陽菜より緊張していない点を挙げるなら、それは山岳部の顧問が彼の良く知る女性だからということがあるだろうか。 「あら? 誰かと思えば、見学者って遼君だったの?」 「こんにちは、浅賀さん」 「学校では浅賀先生……でしょ?」 先程の吹雪とは異なり、多少なりとも着崩したスーツで部室の奥の椅子に腰掛けている女性は遼の現保護者である浅賀という女性だった。彼女は同時に本学園の教師も勤めているため、遼にとっては同級生以上に気心の知れた人間の一人だ。その関係から遼も高等部への繰り上がりと同時に山岳部への入部を勧められていたのだが、曖昧な言葉で誤魔化し続けて今に至る。 隣のクラスの担任でもある彼女はつまり、後々に移動教室へ随伴する教師でもあった。 扉のすぐ傍の椅子でペーパーバックを読んでいる一人の女子生徒に軽く会釈した遼だったが、あちらは気付いてもいないのか何も反応してこなかった。また長椅子の上で一人の男子生徒が盛大な鼾を立てているが、他に部員の姿は見られない。だが山岳部に関しては、浅賀が顧問をしているということ以上の情報を遼は知り得ないので、その意味では少なくとも二名も他の部員がいる状況は少々やり難くもある。 遼は勧められるままに浅賀のすぐ隣の椅子に腰掛けた。 「それで、どうしたの? まさか山岳部に入ろうってわけじゃないんでしょ?」 「……移動教室の件は聞いてますよね?」 「ええ。林間学校か臨海学校かをまだ決めあぐねているのよね?」 我が意を得たりといった表情を浮かべる浅賀。 「そうなんです。……色々あって、まあ結果的に僕らのクラスの決定が学年の総意になるらしいんですけど」 「遼君は林間学校に行きたいってわけだ?」 「流石に全てお見通しなんですね、浅賀さんは」 思わず苦笑が漏れる。殆ど家族のような関係だからこそ、彼女とは話しやすい。明確な言葉で言い表すことはできないかもしれない、けれど彼女は間違い無く上野遼にとって大切な人間なのであろう。 先程穂波にも話した内容を、遼は浅賀にも掻い摘んで話すことにした。クラスで林間学校派と臨海学校派との間で激しく議論を戦わせていることや現時点で林間学校派の自分達は少々劣勢であること、そして何よりもそんな中でも自分は林間学校に行きたいのだということ。その正直な思いを、遼は母親でもあり姉でもあり恋人に近い存在ですらある女性に、ただ真摯な言葉で伝えた。 「じゃあ遼君は山へ行くことの魅力を聞きにここへ?」 またも見透かされたので、再び苦笑しつつ首肯。 「山の魅力……か」 「温泉ニ決まってイるだロウが!」 その時、今まで椅子に寝転んでいた男子生徒が突如として立ち上がり、そんなことを叫んだ。 「なっ……こ、この人は……!?」 制服の襟元を見た限りでは高等部の三年生、つまり遼にとっては先輩である。だが身長こそ高いのだが、その軽薄そうな顔付きや浅賀以上に着崩した制服の所為で、その雰囲気が異様なほどに子供っぽく見える。ギラギラと妖しい輝きを放つ漆黒の瞳は、まるで少年のようだった。 そんな青年の唐突な叫びにも浅賀は全く慌てずに静かに告げる。 「あら前田君、起きたんだ」 「無論だ、浅賀サん。……山ノ魅力といエば豊かな自然に囲まれた岩場、そコに立ち上ル湯気、煌く肢体、そノ最奥に位置する漢達の夢ニマで見た桃源郷! こレニ限ルと相場は決まっテイるノだぁ!」 「お、温泉?」 そこで男子生徒は初めて遼の存在に気付いたようだった。 「むっ、見ネえ顔だナ小僧。……見学か?」 「……ま、まあそんなところです」 「先ニ言っテオくが、浅賀サんは渡サね――ひるでがはっ!?」 何故か両拳を握って力説する男子生徒の頬に、いきなり筆箱が突き刺さった。当然だが彼は大きく弾き飛ばされて壁に激突し、昏倒して動かなくなる。 「天斗君……うるさいわ?」 「は、ハニー……相変わラず激しイ……ぜ……ぐフっ」 「……そう? それは良かったわね」 それ以上の言葉は無かった。筆箱を片手で、それも座った状態から投擲した件の女子生徒は、何事も無かったかのように読書を再開する。遼としてはツッコミを入れるべき箇所が多すぎて逆にツッコミを入れられないので、こちらも何事も無かったかのように対処することにした。 浅賀が軽く説明してくれたところによると、この二人が現在の山岳部の主力ということらしい。 「まあ前田君が言うから変な風に聞こえるけど、確かに温泉も一つの魅力ではあるわね」 「……この学園の保養施設に温泉なんてあるんですか?」 「そりゃね。……理事長がゴリ押しで温泉のすぐ傍に宿舎を立てたものだから」 机の中から浅賀が取り出したパンフレットには、確かに某有名温泉のすぐ傍の住所が記されている。ページを一枚捲ってみると、確かに温泉で戯れる女子生徒の写真があった。良く見ればその写真の被写体は、遼の先輩である渡会八雲の知り合い、長内朱実と皆本環菜ではないか。この二人、特に長内朱実の方は先日のバトル大会で手合わせする羽目になったので良く知っている。 体にタオルこそ巻いているが恥じらう様子も無くピースする朱実と、少しだけ俯き加減ながらも横目でカメラに目線を向ける環菜が対照的だ。――そもそも、誰がこんな写真を撮ったのだか。 「温泉……ですか、確かに」 魅力的ではあると思う。少なくともクラスの女子に上手く話すことができれば、彼女達を味方にすることもできるかもしれない。ただ、それだけでは少し弱いか。 その時だった。唐突にドサッと何かが地面に落ちる音が響く。後ろを振り返れば、そこには学生鞄を取り落としたクラスメイトの長谷川大地の姿があった。驚愕に目を見開き、まるで幽霊でも見たような表情で壁際にて昏倒している前田という先輩のことを見つめている。 彼の姿があったことに、遼は少々驚かされた。まさかとは思うが。 「大地君? もしかして君、山岳部だった――」 「さ、流石は天斗はんや! ワイとて、その発想は無かったわ……!」 どうやら山岳部所属だったらしい大地は、奇妙にワナワナと震えている。 「温泉! そうや、温泉や! 臨海学校なら水着姿まで、だが温泉なら完璧にZENRAや! ぬおおおおっ、燃えてきたでぇーーーーっ!」 「ど、どういうことさ……? 僕には全く意味がわからないんだけど……」 「なんや、つれへんな、センセ。まあいいわ……ワイとお前の仲やないか~」 いつの間にか遼の存在に気付いていたらしい大地は、不気味に手足をクネクネさせながら近寄ってくると、躊躇も無しに遼の首に手を回した。 「覗きや、覗き。……上手くすれば、あの加賀美はんのZENRAが見れるんやで? くくく、それを写真に収めることができれば、少なくとも一週間は困らんがな」 「な、何にさ……」 「嫌やなぁ、わかっとる癖に。……それにな、加賀美はんの写真なら高く売れると思うで? 最低でも五百円はボッタできるわな。くっくっく、上野屋……お主も悪よのぅ、くっくっく……」 「悪は明らかに君だろ!?」 「ま、そーいうわけや。ワイはクラスの男子に知らせてくるから、後は任せてーな」 そんな言葉だけを残し、それは風のように長谷川大地は部室を飛び出していった。 覗き。それはつまり、入浴中の女子生徒の生まれたままの姿を隠れた場所から見るということだろうか。アニメや漫画では良く見るシチュエーションではあるが、実際に存在する行為だとは知らなかった。少なくとも自分が今まで生きてきた中では全く縁の無かった言葉だと思う遼である。 それに何よりも遼にはその手の興味がまるで無いときている。知識としては多少なりとも持っているのだが、それが自分に如何なる効用や影響を齎すのかは全く知らないのだ。だから大地が先程事も無げに告げた『使う』という言葉も意味としては理解できても、何のためにそんな行為をするのか、そもそも何かその行為をすることでメリットがあるのかということはまるでわからない。 ただ、クラスメイトにして友人の冨田有香や犬飼美樹など数名の入浴シーンを覗くことを考えると、少しだけ頬が赤くなるかもしれないとは思った。――残念ながら、その数名の中に先程まで一緒に行動していた陽菜の名前が無い辺り、遼は薄情者なのかもしれない。 「遼君もいい友達を持ったわねぇ?」 「……いい友達ですか、彼は」 確かに決して悪い奴ではないから否定はできないのだが、いい友達かと聞かれれば必ずしも首を縦には振れないとも思う。 「あの積極性は遼君も少しは見習うべきね」 「それは……確かにその通りです」 こういう時、浅賀は遼にとって母になる。その感触は遼からしても居心地の悪いものではない。 「ふふ、覗きかぁ。……ちょっと林間学校が楽しみになってきたかも」 「……毎日風呂上がりに全裸で牛乳飲んでる人が何を言うんですか」 「酷っ!」 壁に掛かった時計を見ると、間も無く昼休みも終わる時刻だ。軽く会釈をして部室を出て行こうとする。 「……待ちなさい」 「はい?」 「餞別。……上野君だったわね」 唐突に遼を呼び止める声は、壁際で小説を読んでいた女子生徒のもの。先程までの無表情さとは打って変わって楽しそうな笑みで遼のことを見つめている。無造作に纏められた髪は乱雑で顔立ちにも男性っぽさがあり、所謂中性的な雰囲気を持つ彼女は、それらとは反対に柔らかな女性そのものといった声で遼を呼び止めた。 その彼女が軽く放った何かが、遼の右手に収まる。果たしてそれは、ボタン程度の大きさを持つ何らかの機械のようだった。何の用途に使うのだろうか。 「私が開発した超小型の盗撮用カメラ。……あなたに託すわ」 「は?」 「……覗き、頑張ってね?」 今日も一つ学んだ。――この学校、今更だが良くわからない人間が多すぎる。 チャイムが鳴り響く直前になって遼は席に戻ってきた。どこか疲れた顔色のようだが、同時に何らかの手応えでもあったかのような晴れやかさもあるように思える。少なくとも先程の遼とは全く様子が違うように陽菜には思えた。自信に満ち溢れている感じがする。 斜め前の方で友人と談笑している加賀美夏姫をチラッと見やる。結局まともな策は見つからなかったが、このままで彼女相手に勝つことはできるのだろうか。 「中村さん、何か機嫌悪そうだね」 「……別に」 「エリカ様? ……古いよ、そのネタ」 「ネタじゃないっての!」 渡会八雲に色々とムカつかされたので、あの後で中等部の加賀美冬梧に会いに行った陽菜だったが、今日が土曜日だということをすっかり忘れていた。当然だが冬梧は既に帰路に着いており会うことは敵わず、隣のクラスの泰祐や静もまた二人でどこかに遊びに行ってしまったということらしいので、遼と別れて八雲と会った後は何をするわけでもなく、ただ淡々と昼休みを過ごすしか無かったのである。 とはいえ、何か妙ではあった。数分前に帰ってきた長谷川大地が窓際の男子達に何かを囁くと、その男子達は突然陽菜の席にやってきて林間学校派に鞍替えする旨を表明し始めたのである。 大地を含む鞍替えした連中を頭数に入れれば、これで人数的には互角。多数決なら負けることは無い。 「どゆこと……!?」 「大地君達、どうやらこっちに付いてくれるみたいだね」 「……遼? あんた、どーいうことか知ってるわけ?」 そう聞いたところでまともな返答が得られるわけも無く、遼は相変わらず「さあね」と取り付く島も無い言葉だけを残して席に戻る。 「ま、いっか……」 そんな彼の態度に釈然としない感覚を覚えながらも、陽菜はそれ以上の詮索を試みようとはしなかった。悔しいことだが上野遼という男は自分より幾分か上手であるようだし、そんな相手の口を割らせるような達者な口を自分は持ち合わせていない。また飄々とした態度で誤魔化されるのが関の山である。そういう意味で、普段こそ半ばパシリのように遼を振り回している陽菜ではあるが、その実こういう時にはむしろ彼が自分を翻弄しているのではないかとも思えてくるわけである。 チャイムが校内に響き渡るが、担任のゴワスが入ってくることは無い。彼も仮にも教師である、土曜の午後はそれなりに忙しいらしく、後は生徒達の間でなんとかしろという方針らしい。 「人数は互角……追い着いたわよ、夏姫!」 「いきり立っちゃって……んじゃ、まあ決戦かしら?」 頭数だけなら互角に持ち込んだ。そうであるにも関わらず、夏姫は相変わらず不敵な表情で慌てる様子を微塵も見せない。何か勝算があるのだろうか。 腕を組んだまま立ち上がった夏姫は、悠然とした動作で陽菜の前まで歩いてくる。なんとなく見下ろされることが嫌で思わず立ち上がってしまった陽菜ではあったが、当然のように元より身長差は凄まじいので結局見下ろされることに変わりは無かった。状況的には全くの五分と五分だというのに、こうして見下ろされているだけで負けているような気になるのは何故だろうか。 だから、そんな思いを振り払うように叫び散らす。 「とっ、とにかく! 決戦ってどうするの! まだディベートするの!?」 「あんた馬鹿? これ以上言い合ったところで水掛け論でしょうが……」 「馬鹿言うなっ! 中間試験だって全教科赤点じゃないんだからね、私ってば!」 そんな彼女の叫びにクラス中から失笑が漏れ、陽菜も数秒後にハッと気付いて顔を赤くする。 「な、何言わせんのよ!?」 「……あんたが勝手に言ったんじゃない?」 嘲笑する夏姫。弟が絡む時には全校生徒が恐れるほどの狂気に走る彼女ではあるが、それ以外の時の彼女はむしろ驚くほどに普通の女子生徒である。適度に快活で適度に冷淡な彼女は、その点では常に明るいどころか暴走気味に振る舞う陽菜とは正反対の生徒とも言えるのかもしれない。 そんな彼女の手からスッと一枚の紙が滑り落ちる。――凄まじくわざとらしい動きで。 「ぬっ……こ、これは、まさか!?」 「加賀美殿の試験でござるか!」 「馬鹿な……ぜ、ゼロが二つ並んでいる!」 「ダブルオー! だ、ダブルオーとでも言うでござるか!」 そんな紙を拾った二人の男子生徒が驚愕の声を上げ始めた。何故か彼らの視線はその試験用紙と思しき紙と夏姫の胸部を行ったり来たりしている。この点は彼女にこそ相応しいでござるとか、まさにダブルオーだとか、そんな良く意味のわからない言葉が二人の口からは漏れていた。 見た目や弟に対する偏執ぶりから良く勘違いされるが、こう見えて夏姫は成績優秀な生徒である。サボることなど論外で授業中は寝ることも無く真面目にノートも取っているし、試験前には熱心に教師に質問にも来る。 だからこの成績は言わば取るべくして取った点数だとも言えよう。要するに、100点満点であった。 「な、何よ見せびらかしちゃって! そんなテストの点なんか今は関係無いんだからねっ!?」 「そりゃそうでしょ。……ったく、あんたは本当にわけわかんないことばかり」 「私からしてみれば、あんたの方が全くわけわかんないから、そーいうこと言わないで欲しいんだけど……」 「はいはい。……それじゃ来なさい? ゴワス先生がグラウンド貸切にしてくれたからさ」 それだけを言うと、夏姫は臨海学校派の生徒達を伴って教室を出て行く。目線だけで示されたから陽菜にも良くわからないが、どうやら一緒に来いということらしい。 そんな彼らの行動に釈然としない何かを感じながらも、陽菜もまた林間学校派の生徒達に軽く目配せをして彼女達の後に続くことにする。何故か大半が男子生徒で占められている林間学校派ではあるが、彼らもいつの間にか自分をリーダーと認めてくれているらしく、特に文句も無く従ってくれた。別段リーダーになろうという気も無かった陽菜なのだが、これはこれで嬉しい感触だ。 そんなわけで高等部1-Aの生徒三十数名は校庭に移動を開始するのだが―― さて。 ここから先は男の妄想が文字通り溢れ出ている、大変痛いシーンである。本来なら惜しみ無く発表すべき箇所であるのかもしれないが、ここはインターネットにおいて小説を公開しており不特定多数、特に女性の方が読まれるという可能性も存在する以上、今回ばかりは自重しようかと思う次第である。無論、作者とて当初は決して書くつもりでは無かったのだが、登場キャラの持つ何かが作者を抑え切れなくしたということだけは明言しておく。勘違いしないで頂きたいのは、作者は決してこの手の描写が嫌いなわけではない。むしろ好きであるが、ここは自重するつもりであった。だが乳が。 ……え~、ゴホン。 湯気の立ち上る岸壁。そこを超えた先に漢達の浪漫の源泉、女子風呂はある。 そこに響いているのは、年若い女の子達のキャッキャウフフな声。万が一にもその光景を前にすれば、漢達の脳裏が一瞬にしてピンク色に染め上げられていることは想像に難くない。現に岸壁の向こう側には稀代の女好きとしても知られる長谷川大地他数名の男子生徒が待機しているのかもしれなかったが、そのキャッキャウフフな女の子達には全く気にならないことであった。 一糸纏わぬ姿の女の子(子じゃない人も混じっているが)達の声は、十二分に男達の煩悩を刺激しよう。 『うっは! いい気持ちっ!』 その先陣を切って派手に風呂に飛び込んだのが最も色気の無い少女であることは言うまでも無い。 誰とは言わないが、要するに彼女は子供である。女らしいというのとはまた違った意味で、体付きがまだ全体的に子供っぽい。それが発育途上なのか既に未来が見込めないのかは神のみぞ知ることであるが、普段なら時折見せる大人っぽさも一糸纏わぬ今の状態では全く感じさせず、全く以って彼女は子供であった。――無論、それはそれで需要があることも事実であるのだが。 ある男は言う。見た目は子供、頭脳は大人。――そのギャップがいいのだと。 『ほらほら陽菜ちゃん、温泉なんだから泳いだら駄目よ?』 そう言いながら落ち着いた様子で湯船に体を預けているのは、1-Bの担任である浅賀だった。 彼女の魅力は、何と言っても年齢から来る適度に熟した空気であろう。誰とは言わないが前述した彼女とは正反対な容姿を持つ彼女だったが、濡れて半分ほど透けた手拭いで前を隠すことも無く、ある意味で誰とは言わないが前述した彼女以上の豪胆さを持っているのかもしれない。色々と仕事疲れもあるのだろうが、殆ど肌も荒れていないし逆に余計な肉が付いていることも無い。肩から腰、そして太股に掛けてのラインは何か武道を嗜んでいるのかと思えるほど引き締まっている。これは高校生、言ってしまえば未だに発展途上である少女達には出せないアダルトな魅力と言えよう。 『いいじゃない、クリステルちゃん。……今ぐらいは……ね?』 『吹雪。……まだそのネタ引っ張るわけ?』 『ふふ、まあ気にしないの。……皺が増えるわよ?』 振り返りつつ女の大敵の存在をサラッと示しつつも、海山吹雪は穏やかな笑顔。 浅賀が適度に熟した女の魅力を持っているとするならば、吹雪は年齢に反した若々しい魅力が持ち味と言うべきだろうか。この姉にしてあのイケメン弟あり、まさに血は争えないという奴である。壁際で洗面器にて体を洗っている彼女は浅賀とは反対に手拭いで前を隠しながら、柔らかな微笑を以って湯船の方を見返している。普段はほっそりとした印象の強い吹雪であるが、衣服を脱ぎ捨てた今ではむしろ肉感的な肢体を外気に晒している。所謂着痩せするタイプという奴なのだろうか、彼女は。濡れた黒髪が滑らかな曲線を描く背中のラインに流れている様はどこか扇情的な感覚すら覚えさせる。確かに学園の男子が大挙して事務室に押し掛けるのも頷ける、芸術的な美しさであった。 大人の女二人に挟まれていると、この誰とは言わないが前述した彼女も少々肩身が狭いらしい。 『ぐ、ぐぬぬぬぬ……!』 『中村さん、落ち着いて。あの二人は大人だもの、流石に勝てないわよ……』 『……あんたも少し上から目線よね、千春』 並んで湯船に浸かっている百合原千春もまた、学年では結構な美少女で通った女子生徒である。だがウルトラスーパーデリシャスハイブリッドアミューズメントスターギャラクシーアルティメット心苦しいのだが、この百合原千春は残念ながらお題のキャラではないのでZENRAを描くことは断念しようと思う。同じ理由で今まで登場させようとしていた犬飼美樹及び冨田有香の両名も除外させて頂く。期待した方はいないと思うが、こういったところで奇妙な意地を通すのが作者なのである。 そんなところで、最後に主役の登場となる。 『はぁ、疲れた……』 『……むっ、やっと来たわね夏姫――って、ムネーーーーーーーーッ!?』 『陽菜に……千春? どうしたのよ、そんなデッサンの崩れた顔して』 『どうしたのって、ちょ! おま! メロンが! 有り得ないところにメロンがあるわよっ!?』 そんな感じで陽菜が思わず絶叫してしまうほど、彼女のアレは凄まじかった。無論、制服の時点で十分にその存在を誇示していたわけだから予想はできていたことである。だが衣服という枷を取り払われたソレは、予想を遥かに上回る異様さを見せていた。いや、もう女子高生のレベルではない。この旅館で借りられる中では最大のサイズのバスタオルだというのに、余裕を持って包み切れていない。そもそもバスタオルがバスタオルの意味を成していない。本人もそうだが自己主張が激しすぎるのではないだろうか。 陽菜からすればそれは、別世界の生き物ですらあった。黄金率などクソ喰らえ、胸部だけを極限までに強化されたその生き物は、もう想像を絶する以外の何者でもない。胸の馬鹿デカさに比べて、その尻のなんと慎ましいことか。作者がエロければ勝手にスリーサイズを決めているところである。 どうやらバスタオルの端でも固定できないらしく、少しズレたタオルを『……んっ』と何故か色っぽい声を出して直したりしている。この場に男がいたら、その行為だけで全てが終わることは間違い無いだろう。既にそれは核兵器である、ジェネシスである、メメント・モリである。 『夏姫? ……はしたないから早く体でも洗ってらっしゃいな? ね?』 隣で千春が呟く。――その目障りな胸を早く視界から消しやがれコノヤロウということらしい。 『えっ? まあわかった……ちょっと行ってくるわ』 『……早く行けっ』 『???』 全く意味がわからないといった様子で夏姫は首を傾げ、シャワーの方へ向かう。 そうして吹雪の隣に腰掛けた夏姫が蛇口を捻ると、再び周囲には静かな水の音だけが響き渡ることになる。吹雪は何やら夏姫に話し掛けているようだが、どうせ胸が大きいだの胸が大きいだの胸が大きいだの、そんなことだろう。それよりも誰とは言わないが前述した人及びその隣の千春は自然と静かな水の音だけに傾けられている。 これは髪を撫でる音、これは頬を伝う音、これは胸に当たる音、これも胸に当たる音、また胸に当たる音――胸に当たってばっかじゃねえか! 『ねえ千春。……私の頭、少しばかりハルマゲドンなんだけど』 『あら、偶然ね中村さん。……私もよ』 そうして黙って湯船に沈んでいく。 誰もが気付いたであろう。――作者は馬鹿である。 「へぶあっ!?」 そう、その光景こそが漢達が夢にまで見た、遥か遠き理想郷アヴァロンだった。 「な、何よ?」 校庭に出た途端、後ろを歩いていた林間学校派の男子達が凄まじい奇声(というより嬌声に近い)を上げたので、陽菜は半ば飛び上がるようにして背後を振り返った。そうして見てみれば、彼らの鼻から僅かに赤い液体が漏れだしているように見えるのだが、それは気の所為だろうか。 その中の一人、長谷川大地などは白目を剥いている。 「堪らん……堪らんでぇ……こりゃ、何としてでも林間学校にせにゃならんわ!」 そんな彼らの様子に首を傾げつつも、陽菜は彼らを伴って校庭の真ん中で仁王立ちしている夏姫の元へと向かう。 「で、どーすんのよ夏姫。こんな場所に呼び出してくれちゃって……」 「決戦よ」 「はあ? 決戦?」 この女が何を言いたいのか、結局のところ全く意味がわからない。そもそも、ただでさえ大きな胸を張るな。――何故か見ていてイラついてくるから。 「負けないわ。……あたしは意地でも臨海学校に行かなくちゃならないんだから……」 「そーいや、その理由を聞いてなかったわね。……何で?」 「そりゃ決まってるじゃない……!」 その瞬間、夏姫の瞳がギラリと光った気がして陽菜は内心ゾクッとする。 「臨海学校といえば水着……そうよ、あたしはまず誰が冬梧を狙う泥棒猫なのか確かめなきゃならないんだから……! 臨海学校、それも水着って無防備な状態ならそれも随分と容易くなるってもんよね……くふふ……」 「……いや、一番男を挑発しそうなのあんたなんだけど」 ボソッと呟いてやるが、夏姫には聞こえていない様子である。 しかし合点が行った。夏姫の弟、加賀美冬梧は何故か年上の女性に異様なまでに気を掛けられる節がある。そして独占欲の強い(というレベルではないが)夏姫がそれを快く思っていないのは当然である。弟のことになると彼女は我を失い、平然と犯罪的な行為に身を染めかねない。 はて? そうなると冬梧と何かと関わることの多い自分もまた夏姫にとっては排除の対象なのだろうか? そんなことを何気なく考える陽菜であるが、今まで夏姫からその手のことでちょっかいを掛けられたことは一度として無いはずだ。それは何故だろうと考えて、納得した。――自分が女っぽくないからか。 まあそんなことは気にせずともいいことなので。 「で? 決戦って、何するのよ!?」 「……ふむ、ここは僕から説明した方が早そうだ」 そんな声と共に、地響きを立てて目の前に大柄なサイボーグ型のモンスターが降り立つ。 ダークドラモン。高等部1-A内でも最大級の戦闘力を誇るモンスターであり、同時に青山怜治とそのパートナーであるコマンドラモンが融合した姿。以前のバトル大会でもかなりの戦果を上げたとされ、上級生にも恐れられる存在であった。 「な、夏姫!? どういうつもりよ!?」 「簡単よ。……この学園の基本方針『意を通す時はデジモンで』ってことだけど?」 「それ今作ったわよねぇ明らかに!」 しかし引く気は無かった。挑まれた喧嘩を無視するような行為は、陽菜が最も嫌悪する行為の一つである。 「ど、どうすんだよ中村……ダークドラモンにゃ、俺達じゃ束になっても敵わねえぜ……!」 「わかってる」 「そもそも一対一ってことだよな? そんなのもっと無理だって……」 「わかってるわ」 「くそぉぉぉぉ! 俺達の覗きの夢もここで潰えちまうのか……!」 「わかってるわよ。……って、今何て言った!?」 「中村さんのパートナーは? 確か結構強いって聞いたけど……」 「……うっ。あ、あいつはね……」 それを聞かれると弱い。陽菜のパートナーは先日のバトル大会で少し無理をさせすぎたのが祟り、現在療養中の身なのである。しばらくはバトルなど論外の状態だ。その原因はそもそもあの大会の時のチームメイトだった八雲のデュナスモンに何から何まで頼り切りになることを陽菜が良しとしなかったためなのだが、その事実を彼女は頑なに否定していた。 そう、あれは八雲の所為。あいつが偉そうに私のことを守ろうとなんかするからいけないのだと、そう思うことにしている。 「怜治のダークドラモン。あいつに単体で勝てそうなデジモンなんて……」 「ワイがやってもええで~」 「……いないわよね、こっちには」 「って、ワイは無視かいな!? ……がはっ!?」 すぐ耳元で大地が騒いでいたので、とりあえず裏拳を入れて黙らせておいた。 「だ、誰か自信のある奴……いる?」 恐る恐る聞いてみる。自分でもらしくない声が出たと思う。 無論、手が挙がることは無い。ダークドラモンといえば究極体、対抗できるモンスターがいるとすれば少なくとも完全体のクラスは超えねばなるまい。そして、当然ながらこのモブどもの中にそのレベルまで達している者がいないことは明らかである。 「……じゃあ僕がやろうかな」 そうして皆が諦めかけたその時、最後尾から手を挙げたのは誰あろう上野遼であった。 「遼!? あんた、自信あるの……!?」 「自信は無いよ。……でも、彼に対抗するなら僕が一番いいかなって」 「………………」 「それに僕は、どうしても林間学校に行きたいんだ」 毅然とした輝きを宿す瞳。そこには揺るぎも迷いも無かった。――だから陽菜は。 「頑張りなさい! あんたに任せた!」 バシッと彼の背中に思い切り紅葉の葉を散らせて激励する。 「痛っ! ……いきなり叩かないでくれないかな」 「いいのっ! 応援だってば!」 「おうともさ! 見直したぜ上野!」 「同じく! 拙者達の運命、託したでござる!」 「ああ、行ってこい! お前の全力をぶちかましてやれ!」 そうして次々と遼の背中に紅葉が散る。数秒後には彼の背中は真っ赤に染まっていたことだろう。 けれど、こうした応援が紛れも無い力になることもまた当然。事実、ダークドラモンの前に進み出た遼の顔には普段以上の強さが滲み出ている。それは前々より何かと関わりのあった怜治としても、初めて見る上野遼の本当の意味での強さだったのかもしれない。 「……ドルモン」 「わかった!」 どこからか飛び出してきた遼のパートナー、紫紺の獣竜ドルモン。 彼が激しい光を放ったかと思えば、次の瞬間にはその光が遼の体をも包み込み、互いの体を一瞬にして融合させ更には転身させていく。そうして一瞬の後、そこには重厚なフォルムの鎧を身に纏う漆黒の騎士が降臨していた。その迫力や威圧感は目の前のダークドラモンに勝るとも劣らない。 この学園の中でも最大級の戦闘力を誇るだろう聖騎士、その名はアルファモン。 「遼……頑張れっ!」 祈るような陽菜の声が戦いの火蓋が切って落とされた。――アルファモンとダークドラモン、いずれ劣らぬ究極体同士の戦いの火蓋が。 「上野殿! 勝つでござるよ!」 「勝ったら近場のラーメン屋で特盛り奢ってやる!」 「お前が俺達の最後の希望だぁぁぁぁーーーーっ!」 「実現させようぜ、俺達の望んでいた、林間学校って奴を!」 ぶつかり合う二体を前にして、彼らの応援の声が高らかに鳴り響く。 アルファモンとダークドラモンの力は全くの互角。無論、林間学校派だけでなく臨海学校派が怜治のことを応援する声も同じように響いているのだから、その点でも勝負は互角だった。遼と怜治の二人の間にある奇妙な因縁のことも鑑みれば、少なくともあっさり決着するような勝負ではなさそうである。 「頑張れアルファモン!」 「負けるなダークドラモン!」 激突を繰り返す両者に、それぞれが高らかな応援を浴びせ掛ける。 皆の願いは林間学校もしくは臨海学校に行きたいと思う純粋な思いだけ。先程のディベートとは全く異なり、そこには相手の思惑を払い除けることではなく、ただ己が思いを貫き通したいという強い思い。それを受けているからこそなのか、アルファモンもダークドラモンもいつもより遥かに輝きを増しているように見える。 そう、彼らの願いは純粋であるからこそ、その目的が覗きだろうと何だろうとそれを誰にも責めることはできないはずなのである。――その野望が何度挫かれようと、彼らの望みが如何に罵倒されるべきものであろうと、無垢なる望みは決して潰えないのだから。 「ねえ珠生、歩」 「何かな?」 「あん?」 「この学校って……変な人達ばっかりよね」 「ああ、お前は前のバトル大会で変態にセクハラされたんだっけ」 「どこを曲解したらそうなるっ!?」 「なにっ」 「……た、珠生?」 「八重ちゃんにセクハラ? 許せないな……誰なんだ、その羨ましい人は」 「そこ羨ましいんかいっ! てか断じてセクハラじゃないってのっ! 単にチャック開けっ放しの人と戦ったってだけだってば!」 「しかしご覧よ八重ちゃん、皆が一つの目的に向かって鎬を削り合っている。……ロマンチックじゃないか」 「うっ……あ、あんた相変わらず唐突に話の腰を折るわね……」 「まあ確かにいいもんだとは思うぜ。……俺らも再来年になったら同じことをやるのか?」 「……私はやりたくないんだけど」 「そうか? 俺ぁ燃えるぜ、勝った方が自分の意を通せる、楽しいじゃねえか!」 「危険思想に近いものがあるわよ、それ」 「ほら二人とも、夕日が綺麗だよ」 「は?」 「そう、僕達には無限の未来が待っているんだ。……そして未来、きっと僕らはあの夕日のように輝く人間になれる……いや、絶対になるんだ。僕らは皆生きている、生きているから歌うんだ……」 「勝手に纏めに入らないでくれます……?」 「ふむ。……八重、天才のこの俺が歌ってやろうか?」 「それはいいけど……テンドウ、あんたは林間学校と臨海学校、どっちに行きたいわけ?」 「それは愚問だ、八重ちゃん。樹液を吸いに行ける林間学校がロマンチックに決まっている」 「ふむ。……ならば、君達の今年の移動教室は林間学校で決まりですね!」 「ヴァイス先生!?」 「これで私もまた彼らと同じく覗きが……ふふふ」 「……馬鹿ばっかよね」 <了>
https://w.atwiki.jp/13series/pages/38.html
( ๑◕` 3 ◕´ )bみんなの日記をのぞいちゃえ☆ ■ ☆プーアル姫☆ミ ■ しこたん ■タキシード変八 ■紀紗 桜花の月 もうちょっと時間ができたらこのページも装飾します、、、タブン
https://w.atwiki.jp/iliasion/pages/164.html
ep.67「覗き込む」「走る男」怪談・怖い話・不思議な話・人怖を朗読・考察 朗読怪談 1.「覗き込む」 2.「走る男」 参加メンバー Tomo K-suke その他 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/iliasion/pages/621.html
ep.419「車座で覗き込む霊」「迷い込んだ異界」恐怖実話体験談!本当にあった怖い話 朗読怪談 1.「車座で覗き込む霊」 2.「迷い込んだ異界」 参加メンバー Tomo Kimura K-suke その他 名前 コメント すべてのコメントを見る