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結界を重ねてジャンプ等で裏回り SonJ3強と屈弱で2択
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DAY DREAM ~ 天満月の妖鳥、化猫の幻想 中⇐中編から ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ Chapter.5 『DEAD DREAM』 『ジャン・ピエール・ポルナレフ』 【朝】E-6 太陽の畑 攻防は十分にも及ばぬほどに僅かなもの。 しかし、ポルナレフと蓮子、剣と剣のぶつかり合いは優に千を越えるほどの斬り合いによって今なお続いていた。 その卓越した技量の剣撃は、離れた場所で戦いを見守る阿求の目には無数の火花が散っているほどの錯覚を起こす。 「ポルナレフさん……! メリー……!」 戦う力を持たない阿求には手を組んで祈ることしか出来ない。 肉の芽に支配されていたポルナレフが、今度はメリーを救うために剣を振るっている。 その相手はあろうことか、メリーの親友である宇佐見蓮子その人だ。 蓮子の額の芽を直視し、気絶してしまったメリーを後ろに下げた蓮子。 その瞬間、戦いが始まってしまった。 ああ、運命というものはどこまで残酷なのだろう。 どうして蓮子までもがDIOの支配を宿してしまったのか。 どうして蓮子がメリーを連れ去ろうとしているのか。 阿求には何も分からない。 何も分からないから、祈るしか出来ない。 「ホラホラホラホラホラホラホラホラホラホラホラホラアアァァァーーーーーーーーーーッッッ!!!!」 ポルナレフが高らかに咆え続け、『シルバー・チャリオッツ』の剣を目に見えぬ速度で突く! 突く! 突く! 突く! 対する蓮子は涼しい顔で『アヌビス神』の刀を以っていなし続ける。 その後ろでは気を失ったメリーの身体をヨーヨーマッが支え、観戦していた。 「さっきから全く手加減ナシですか。私、これでもメリーの親友なんですよ?」 「やかましいッ!! お前の芽を潰して、目を覚まさせてやるって言ってんだーーーッ!!」 「私に手を出せばメリーは殺すと言った筈ですが」 「お前たちは明らかにメリーを攫うために近づいてきた! そのお前らが簡単にメリーを傷付けるわきゃねーからな! ハッタリだろーがッ!」 「……ただのアホじゃあなさそうね」 凄まじい剣の嵐の中、2人の言葉が交わう。 しかし、徐々にポルナレフの剣が押され始めた。 ポルナレフは手加減などしているつもりは無いが、恩人であるメリーの親友を斬り付ける事にはやはり抵抗があった。 対して蓮子はポルナレフを完全に殺す気で刀を振るっている。 その意識の差が2人に優劣を付け始めた。 そして蓮子の操る刀のスタンド『アヌビス神』の特性も、蓮子優勢の一因を語っている。 (いいゼいいゼ蓮子の嬢ちゃん!! そのままクソッタレポルナレフを百枚にオロしちまおうぜェーーーッ!!!) 「……戦ってるのはあくまで私の身体よ。あまり無茶をさせすぎないで欲しいんだけど」 (おっと女の子の蓮子ちゃんにゃあやっぱキツイかい? だが安心しろォ! 俺様はことポルナレフにおいてはもう負ける気しねェーッ!) 蓮子の意識がDIOによって支配されている以上、アヌビス神がDIOの支配を上書きすることは出来なかった。 故に蓮子がアヌビス神を握っていても、彼女の意識が刀に支配されることはない。 しかしアヌビス神の能力が蓮子を剣の達人へと変貌させ、ポルナレフをも上回る剣士を誕生させた。 そしてアヌビス神の『一度受けた攻撃を憶える能力』は、長期戦になるほどポルナレフにとって絶対的不利。 蓮子の手数がポルナレフを上回り始める。 (ウーーッシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャァーーーッ!!) 「く……ッ! やはりコイツの刀! さっきからだんだん『強くなって』きてやがる……ッ!」 劣勢を悟り狼狽するポルナレフは、一度大きく間合いを取る。 既に彼の肉体の所々には刀の切り傷があった。 対する蓮子の身体には……一切の傷が無い。 剣と剣による正面からの斬り合い。 その結果、目に見えて蓮子に軍配が上がり始めている。 ポルナレフの心には焦りと屈辱がざわめきたっていた。 (クソ……ッ! あの妙な刀も恐らくスタンド……! こんな女の子にいい様にあしらわれるなんざ、俺のプライドが許さねえぜ! だがどうする……!? このスタンド、相当強い……!) 荒い息遣いを隠すように顔の汗を拭う。 最早単純な力や技術押しでは敵わなくなってきた。 『敗北』の二文字が頭を過ぎる。 (負け……だと!? 俺が負けりゃあ誰がメリーを救う! 女一人護れねえで何が騎士道だ! 皆の命を護ってみせると……誓ったばかりじゃねえかッ!) 例え死んでも護り通すものがあった。 それは自尊心や自己満足などではない、彼にとってはかけがえのないモノ。 再び『シルバー・チャリオッツ』の剣を構える。 蓮子の構えは素人そのものであったが、あの妖刀から生み出される攻撃の軌道はまるで読めない。 恐らくあの刀のスタンドに『意思』のようなものがあって、それが蓮子を突き動かしているのだとポルナレフは当たりをつける。 『刀さえ破壊できれば』……そう思索していたその時。 「蓮子ちゃ~~~ん! ただいまぁ♪」 場にそぐわぬ締まりない声で青娥が戻ってきた。 「おかえりなさ……わ。どうしたんですかその右手とお腹の怪我。まさか『失敗』ですか?」 「いえいえ、ちゃあんと『仕掛けて』きたわよぉ♪ でも、ちょっと反撃されちゃってねぇ…… 蓮子ちゃんの方もメリーちゃんは確保できたみたいね。よぉお~~~しよしよしよしよしよしよし♪」 「やめてください……。目的を果たしたならさっさと行きましょう」 (青娥……ッ! じゃあジャイロと神子はやられたのか……!?) 青娥は怪我こそしていたが、彼女がここに居るということはジャイロと神子はどうなったのか。 こんなふざけた女1人にあの2人がやられたとは考えたくなかったが、この青娥という女はどうも底知れぬモノを感じる。 しかし万が一彼らが敗北したのなら、今度この2人と対峙するのはこの自分だ。 緊張と戦慄の汗がポルナレフを伝う。 その動揺を打ち払い、チャリオッツの剣を一振りして敵に向けた。 「おい、テメエらッ!! ジャイロ達をどうした!? メリーを何処へ連れて行く気だッ!?」 「悪いですがポルナレフさん。勝負はここでお開きです。 私たちが貴方に直接手を下す必要は『無くなりました』から」 「ごめんなさいねぇポルナレフさん? 急ぐ用事が出来てしまいましたので。 それにジャイロさん“は”まだ生きていますわ。早く会いに行ってあげた方がよろしいかと」 そう吐き捨てた後、青娥と蓮子はメリーを連れてあっさりと踵を返していく。 「待ちやがれッ! そう簡単に逃げられてたまるかッ!」 それを見逃すわけにはいかないポルナレフは追おうと駆けた。 その時、足元に小さな缶の様なものが転がっていることに気付く。 次の瞬間、辺りを覆う爆音と衝撃。 凄まじい爆音にたち眩み、膝を突かずにはいられなかった。 青娥の放った『音響爆弾』がポルナレフの視界と聴覚を奪い、暫くの間その行動を封じたのだ。 彼が何とか立ち上がれた時には、既に彼女らの姿は見えなかった。 「………クソッ!! 何やってるんだ俺はッ!!」 呆然と立ち竦んだ後、悔やむ様に足踏みするポルナレフ。 とにかく後を追わなければ……! そう思ったのも束の間。 「あ……ぁ、ポルナレフさん……!」 陰ながら戦いを見ていた阿求がよそよそと現れた。 彼女はおよそ半泣きになってポルナレフに駆け寄り、その場でくたっと腰を抜かしてしまう。 「ポルナレフさん……メリーが、メリーがぁ……!」 「阿求ちゃん、大丈夫だ。メリーは俺がすぐに助けに行く! だから泣かないでくれ!」 「グス……っ、はい……」 震える阿求の頭を撫で、笑顔を作って勇気付ける。 しかしメリーを攫われたことによる自責の念は拭えない。 とにかく、今はすぐさま敵を追わなくてはならない一刻を争う状況。 それに青娥が最後に放った言葉も気になる。 「阿求ちゃん! 俺はジャイロ達の様子を見てくる! ……幽々子さんを頼む!」 眠る幽々子を阿求に任せ、ポルナレフは仲間の元へと飛び出した。 ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽ 「……青娥さん、その傷は大丈夫なんですか?」 「……正直、ちょっと危ないかも。早いとこ治療しないと死んじゃうわ」 「簡単に治療できるような軽い怪我には見えませんが」 「大丈夫大丈夫♪ 仙人にはキョンシーを使っての蘇生術もあるんだから! その辺の死体の肉体を使えば治療出来るわよ~」 「……私の身体を治療には使わないでくださいよ」 「あははバレちゃったぁ~? まぁ仙人ジョークは置いといて、早くここから逃げ出さないと巻き込まれちゃうわ」 「スタンドDISCを欲しがってた割には『アレ』、あっさりと使っちゃうんですね」 「だって~、流石の私でもあんなのいらないわよぉ。 『死ななきゃ能力が発動しない』なんて全然面白くないじゃない? だから死ぬ直前の豊聡耳様の頭に差し込んできちゃったわ♪」 「……青娥さんって本当に容赦ナシですよね」 「豊聡耳様の欲も私に負けず劣らず巨大ですのよ。 遍く全ての生き物は欲によってこの世に産まれ、そして最期には欲によって朽ちるのです。 ……あの方の最期の欲は凡庸でもあり、高潔でもあり……だからこそ本当に美しかった」 「分かったような分からないような。 まあ、とにかくその傷を治療したら早くDIO様の元へ急ぎましょう。 ……ヨーヨーマッ。しっかりメリーを運んでね。私の友達に傷でも付けたら怒るわよ?」 『かしこまりましたァ、ご主人様』 【E-6 北の平原/午前】 【霍青娥@東方神霊廟】 [状態]:疲労(中)、右手欠損、右脇腹損傷、全身に唾液での溶解痕あり(傷は深くは無い)、衣装ボロボロ [装備]:S W M500(残弾3/5)、スタンドDISC「オアシス」@ジョジョ第5部、河童の光学迷彩スーツ(バッテリー60%)@東方風神録 [道具]:双眼鏡@現実、500S Wマグナム弾(13発)、催涙スプレー@現実、音響爆弾(残1/3)@現実、基本支給品×5 [思考・状況] 基本行動方針:気の赴くままに行動する。 1:DIOの王者の風格に魅了。彼の計画を手伝う。 2:死体の肉体を使って身体の治療。その後メリーを連れて紅魔館へ帰還。 3:会場内のスタンドDISCの収集。ある程度集まったらDIO様にプレゼント♪ 4:八雲紫とメリーの関係に興味。 5:あの『相手を本にするスタンド使い』に会うのはもうコリゴリだわ。 6:時間があれば芳香も探してみる。 [備考] ※参戦時期は神霊廟以降です。 ※制限の度合いは後の書き手さんにお任せします。 ※光学迷彩スーツのバッテリーは30分前後で切れてしまいます。充電切れになった際は1時間後に再び使用可能になるようです。 ※DIOに魅入ってしまいましたが、ジョルノのことは(一応)興味を持っています。 【宇佐見蓮子@秘封倶楽部】 [状態]:疲労(中)、肉の芽の支配 [装備]:アヌビス神@ジョジョ第3部、スタンドDISC「ヨーヨーマッ」@ジョジョ第6部 [道具]:基本支給品、食糧複数 [思考・状況] 基本行動方針:DIOの命令に従う。 1:DIOの命令通り、メリーを紅魔館まで連れて来る。 2:青娥やアヌビス神と協力し、邪魔者は排除する。 [備考] ※参戦時期は少なくとも『卯酉東海道』の後です。 ※ジョニィとは、ジャイロの名前(本名にあらず)の情報を共有しました。 ※「星を見ただけで今の時間が分かり、月を見ただけで今居る場所が分かる程度の能力」は会場内でも効果を発揮します。 ※アヌビス神の支配の上から、DIOの肉の芽の支配が上書きされています。 現在アヌビス神は『咲夜のナイフ格闘』『止まった時の中で動く』『星の白金のパワーとスピード』『銀の戦車の剣術』を『憶えて』います。 【マエリベリー・ハーン@秘封倶楽部】 [状態]:気絶中(蓮子の肉の芽の中?) [装備]:なし [道具]:八雲紫の傘@東方妖々夢、星熊杯@東方地霊殿、基本支給品 [思考・状況] 基本行動方針:蓮子と一緒に此処から脱出する。ツェペリさんの『勇気』と『可能性』を信じる生き方を受け継ぐ。 1:蓮子……どうして? 2:八雲紫に会いたい。 [備考] ※参戦時期は少なくとも『伊弉諾物質』の後です。 ※『境目』が存在するものに対して不安定ながら入り込むことができます。 その際、夢の世界で体験したことは全て現実の自分に返ってくるようです。 ※ツェペリとジョナサン・ジョースター、ロバート・E・O・スピードワゴンの情報を共有しました。 ※ツェペリとの時間軸の違いに気づきました。 ※竹林で落とした八雲紫の傘と星熊杯を回収しました。 ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽ それは本体の『死』をトリガーとし、殺されることによって初めて発現するエネルギー。 瀕死であった神子が気付かぬ内に頭に仕込まれ、そしてその悪夢の『スタンド』はこの世に顕現してしまった。 永永無窮のエネルギー。 空空漠漠の射程距離。 電光石火の牙。 この世のあらゆる狂気と絶望を体現したかのような禍々しさは、死によってその存在を確立させた。 無我の悪魔であり、最早食べることのみを機能として動き出した不死のスタンド。 ―――そのスタンドの名は、 ―――――― ――― ― ウジュル、ウジュル。 そんな不気味な『食事』の音を、ジャイロは呆然と立ち竦みながら耳に入れていた。 喰われているのは、千切れ飛んだ自分の右腕だ。 喰っているのは、『骨』とも『肉塊』とも形容し難い『ナニカ』。 散らし尽くされた大量の向日葵の残骸。 その上を紅色で彩るように流れる鮮血。 その上でハイエナが血肉を貪るように一心に続けられる食事。 ウジュル、ウジュウジュウジュウジュウジュルルルル。 血液が逆流を開始するように、失った右腕から血のシャワーが噴き出る。 遅れてポツポツと、顔中から汗がドッと染み出してくる。 グラリと視界が揺れ、倒れそうになった足を必死に持ちこたえた。 目の前で行われている晩餐から、視線が外せない。 ふと、蠢く『ナニカ』の傍の地面に目が行った。 血文字だ。血によって何か書かれていた。 『敵スタンドの名はノトーリアス・B・I・G』 『助けてくれ』 『お願いだ』 『神子が死体になってしまった』 『喰われるのは嫌だ』 『神子はカワイソーにゾウキンのように捨てられた』 『殺されることによって初めて作動するエネルギー 死体だからもう殺すことはできない』 『もう助からない』 『死ぬ前に』 『故郷ネアポリスの ピッツァが食べたい』 ―――『ジャイロ・ツェペリ』――― (敵……スタンド……? 『ノトーリアス・B・I・G』……だと?) 誰が書いたモノだこれは。 誰の攻撃だこれは。 死体……? 喰われるだと……? 目の前の『コイツ』が書きやがったのか? それとも……オレか? コイツが美味そうに喰ってんのは、オレの『腕』か? これは、スタンド攻撃…… 殺されることによって初めて作動するエネルギー……だと。 まさか、神子のスタンド……? 違う。 「―――あ」 短く零れ落ちた呟き。 それと同時に、残った左腕で腰のホルダーから鉄球を取り出す。 「―――ッッッッの女ァァァァァアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!!!!」 怒りが爆発した。 これが誰の攻撃によるものか、考えるまでも無い。 あの邪仙・霍青娥の攻撃は終わっていなかった。 奴は逃げ去る直前、最後の最後で神子に『何か』したのだ。 死ぬことによって発現するスタンド。 そんな悪魔のようなカラクリを、奴は神子に植え付けて逃げ去った。 奴はあろうことか、神子の死を『利用』したッ! この上ない、『生』への冒涜だッ! 絶対に、絶対に許さねェッ!! 「何喰ってんだテメエエエエェェェェェーーーーーーーーーッッッ!!!!!!」 左手で鉄球を投げるモーションを取る。 未だに視界は青娥の催涙スプレーにより完調ではない。 若干の視界の滲みでも、黄金長方形のスケールの読み取りを狂わせてしまう。 そんなことは関係あるかとでも言いたげに、ジャイロは手に持つ鉄球を回転させ…… 『食事中』だった敵スタンドが、突然ジャイロの振りかぶった左腕目掛けて飛んできた。 (な……にィィーーーッ!? なんだコイツ!? 目標をオレの腕にいきなり変えやがったッ!) 死ぬことで発現する能力。言うなれば『本体』のいないスタンドだ。 本体がいないのに、自分の攻撃が『見えている』? ありえない。ならば考えられることはひとつしかない。 コイツは何かを『探知』し、それに向かって自動的に攻撃する『自動操縦型スタンド』だッ! しかし……! (避けるのが間に合わねえッ! 『速い』ぞコイツ!) 左腕もが敵の餌食になることを覚悟したジャイロだったが、 ―――敵は何故かジャイロの『腕』ではなく、手に持った『鉄球』へと喰らいついた。 思わず鉄球を手放す。敵スタンドはそのまま回転する鉄球を覆い尽くすように隙間無く齧り付いた。 不可解ではあったが、自分が鉄球すら握れない身体になるのはとりあえず免れたらしい。 だが、今度は肝心要の鉄球が奪われてしまった。 肉と骨を混ぜ合わせた悪趣味なオブジェのようなスライム型の『ナニカ』が、ボリボリと音をたてて鉄球を喰らい尽くしていく。 身体から失われていく血液が止まってくれない。 霞みゆく思考の中、必死に考えを巡らせる。 敵本体は居ない。 鉄球も無い。 どうする。この『化物』を完全に殺害するにはどうすればいい? 「く………ッ!」 打開策が思い付かない。 こんな時、ジャイロの傍にはいつもジョニィ・ジョースターが付いていた。 ジャイロが危機に陥った時にはジョニィが。ジョニィが危機に陥った時にはジャイロが。 2人は互いに助け合い、笑い合い、そして長い長いレースの道のりを常に隣同士で走ってきた。 そのジョニィもここには居ない。今は居ない相棒を考えてもどうにもならない事態なのだ。 赤いマントも腰のサーベルも、何の装備も無い状態で暴れ牛の前に投げ出された闘牛士。 そんな闘牛士が選択し得る行動など、みっともなく無様に闘技場から逃げ出すことだけだ。 ―――今ならコイツから逃げられるかもしれない。 今にして思えば青娥があっさりと逃走を選んだのは、このスタンドの攻撃に巻き込まれないからだった。 しかし仮に逃げたとして、果たしてその行為は正解なのか。 最悪、向こうにいるポルナレフやメリーたちを巻き込む形になってしまいかねない。 そもそもポルナレフたちは無事なのだろうか? 青娥には仲間もいた。そいつに襲われていないだろうか。 やはり向こうも心配だ。この化物とあの青娥は後で必ずブッ殺すとして、今はコイツから距離を置きたい。 ジャイロがそう結論付け、ゆっくりとこの場から離れようとした瞬間…… またもや敵スタンドが食事をやめ、高速で突っ込んでくる! この敵の攻撃条件が掴めない。次に攻撃を受けたら間違いなくやられる。 防御も反撃も出来ない。万事休すか。 絶望的な死を覚悟したジャイロだったが、敵は何故か“ジャイロの横をすり抜け”見当違いの方向へと飛んでいった。 驚くジャイロの見つめる先、そこには…… 「ジャイロォッ! 大丈夫かッ!?」 ポルナレフがこちらへと向かって走って来ていた。 「ポルナレフゥゥゥウウウウーーーーーッッ!!!!! こっちへ来るんじゃねェェエエエーーーーーーーーーッッッッ!!!!!」 ガバリと、巨大な鮫のように大口を開いて飛び向かう敵スタンド。 ジャイロの叫びはこの状況の緊迫さを表しており、自身に危険極まりない何かが迫っていることを瞬時に悟り、 何より目の前に迫る怪物がポルナレフにかつてない危険信号を与えていた。 全身の毛が逆立つほどの『脅威』を眼前の化物から感じ取ったポルナレフは咄嗟にスタンドを展開。 『シルバー・チャリオッツ』の一閃を繰り出す! ―――が! 目で捉える事も困難なチャリオッツの剣撃を、敵スタンドは形態を変化させて容易に掴んだ。 アメーバを思わせる半固体状の敵スタンドがチャリオッツの剣先を飲み込み始め、徐々に徐々にチャリオッツ本体へと蝕んでいく。 その薄気味悪い外殻以上に、ポルナレフはこの化物の『スピード』に何より恐れを抱いた。 自分のチャリオッツの剣術、特にその攻撃のスピードには誰にも負けない自信があった彼であった。 そのチャリオッツの至近距離からの攻撃をあっさりと捕らえ、今こうしてじわじわと敵の魔の手が伸びて来ている。 自信すらへし折られそうな敵の超絶なスピードに、ポルナレフは恐怖し慄く。 「ジャ……ジャイロォッ!! 何だこの化物はッ!? とんでもねえ動きしたぞ今ッ!!」 言い終わらない内にも敵スタンドが剣を完全に飲み込み、続いてチャリオッツ本体に飛び掛った! 先程よりも化物の体積が『増えている』。肉もスタンドも飲み込み、大きく成長していっている。 そして次にこの化物はチャリオッツに喰らい付き、それはすなわち本体であるポルナレフへのどうしようもないダメージへと繋がる! 「――――ガ、ハッ!」 「ポルナレフウウウゥゥーーーーーッ!!!」 近距離での白兵戦ならばポルナレフのシルバー・チャリオッツを凌駕するスタンドなどはそうそういない。 そのポルナレフが何も出来ずに易々と懐に潜りこまれたのだ。 当人は勿論、それはジャイロにとってもかつて味わったことの無い最悪の相手だと痛感する。 化物がチャリオッツの胸部をガツガツと喰い、吸収していく。血反吐を吐くポルナレフ。 ジャイロは考えるよりも先に、地面に落ちていた鉄球を拾った! 化物に喰われ尽くされたそれはもう球体と呼ぶには些か不似合いであり、既に鉄球としての戦闘能力が失われている。 それでも強引に回転させ、絶体絶命のポルナレフを救うためにジャイロはもう一度投擲を試みるしかなかった。 ポルナレフの皮膚が見る見るうちに喰われていき、辺りにおぞましい悲鳴が轟く。 ジャイロの手から鉄球が離れる直前。 ポルナレフを喰らっていた敵スタンドが、今度はその心臓を標的と定め魔手を伸ばしたその瞬間。 ―――敵スタンドは突然チャリオッツから興味を失ったように離れ、そのまま上空へと飛んでいってしまった。 あまりに不意の奇行。 何かに反応していったのか、敵の姿が暁光の空へと消えていく。 それに安心したのか、ガクリと膝を突いたポルナレフだったが幸いにして命はあった。 「……ッ!? な、何だァあの化物ヤローは? 散々暴れまわった挙句、とっとと逃げちまいやがったぞ……」 「くっ……ハァ…ハァ……! ジャ、イロ……今の奴は……? それに……」 ―――神子は何処にいる……? ジャイロは当然その質問を予想していたが、いざ聞かれるとやはり口篭る。 その様子を一目見、ポルナレフも瞬時に理解した。彼女の身に何があったかを。 2人の間には一瞬の沈黙が流れたが、時は一刻を争う事態だという事も理解していた。 神子と青娥の戦いの瑣末、現れた蓮子に拉致されたメリー、今しがた襲われた怪物スタンド…… 事は既にして、抜き差しならない状況にまで追い込まれている。 それを互いに確認し合えば、最早為すべき事は理解、共鳴した。 青娥をブッ飛ばして、メリーを救出する。 つまるところ、今一番に為すべき目的はそれに間違いない。 ジャイロは己の失態で神子を失い。 ポルナレフは己の未熟でメリーを攫われ。 男はふつふつと心に闘争心を滾らせる。 互いに「すまなかった」とは言葉にしない。 ゴタゴタぬかす暇があったらとっとと追うぞと言わんばかりの鋭い瞳を燃やし。 青娥達の去っていった方向を目に定めて――― 「うおおおぉぉぉぉーーーーーーーーッッッ!?!?」 「きゃああああああああああぁぁぁぁッッッ!?!?」 ド ォ ォ オ オ ー ー ン ッ !! ―――その方向、正確に言えば更にその上空から悲鳴と地鳴りと共に2人の男女が降ってきた。 「おわあッ!? な、なんだあ……ッ!?」 「さっきの化物スタンドかッ!?」 すぐに戦闘の姿勢をとったポルナレフとジャイロ。 目の前の土埃の向こうに先の敵スタンドの姿を仮想し、神経を集中。 落下の衝撃で発生した軽いクレーターと煙幕が、中々敵の姿を見せてくれない。 ゴクリと唾を飲み込む音が聞こえた。タラリと緊張の汗が一粒滴る。 十数秒ほど空気が硬直した中、ついに晴れた土埃から覗かせた者は…… 「むきゅ~~~……。 痛ったぁ~~~……む、無茶しすぎですよぉ……!」 「東風谷、さん……重い、です……」 「あ! す、すみません……! ……って、重いってなんですか重いって! 私はこれでも日々苦労しながら健康と食事量との戦いを続け、先日やっっっと3キロのダイエットに……」 現れた少年と少女は、静かなる情熱の緑と鮮やかなる華麗の緑。 『奇跡の少女』東風谷早苗と、 「―――花京院、典明……!」 「……ポル、ナレフ?」 ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ★ ★ 『花京院典明』 【朝】E-6 太陽の畑 近隣上空 もうどれほどになるだろうか。 朝靄の冷たい風を頬に受けながら、この悠久なる大地の空を飛び続けるのは。 星と太陽が入れ替わり、この世界の朝を初めて体験する花京院典明は、目の前の少女の風に靡く後頭部を見つめながらそう思った。 たまに地上を見下ろせば自然豊富な大地の美しさを感受し、思わず感嘆の息を漏らす事もここ数度。 よくよく考えてみれば自分は滅多に出来ない体験をしているのかもしれない。 飛行機から地上を見下ろす時とはまた違った感動が心に浮かび出てくるのを、外界の人間である花京院が止める事叶うわけもなく。 すぐにその考えを不謹慎だと振り飛ばし、また目前へと視線を戻す。 自分らの真下では今も殺戮が行われているかもと考えると、楽観的な思考など邪念として捨て払わずにはいられなかった。 先程からこの『オンバシラ』は轟々と突き進み、だが緩やかに湾曲したり高度を上げ下げしたりと忙しない。 目標人物である『八坂神奈子』の姿など一向に見つからず、花京院の心には次第に焦燥心が生まれてくる。 巨大な森林上空を走ったり、気になる所では館の隣で何かが燃えている光景まで目撃した。 それでもこの高度、このスピードで豆粒ほどに小さな人物ひとりを見逃すことなく飛行を続けるのは至難だ。 上空を飛行し続けるこのオンバシラの舵取り役は目下の所、目の前の東風谷早苗なる少女が握っていた。 というよりは、オンバシラの操作など不可能である花京院には黙って乗客で在り続けることしか出来ない。 元より彼は無理を言って彼女に付いて来た身。自分がどうこう口出しできる立場では無いのだ。 だから、これまでの空路を殆どの会話もなく、飛んできた。 気まずさも当然あったが、それ以上に花京院は早苗を信用して相乗りしているのだ。 だがその信用も数分、数十分経つにつれると段々疑心が生まれてくる。 その内花京院は早苗を怪しむようになっていた。 こちらからでは彼女の顔色を窺うことは出来ないが、その後ろ姿からでも確固たる信念は知れる。 迷うことなくこの空のサーフィンを決行した彼女だ。早苗という少女はあらゆる意味で真っ直ぐな少女だった。 それでも、『もしかして』……『まさかとは思うが』…… そんな懸念が花京院の心の大部分を占めるようになった頃。 とうとう花京院は意を決して、兼ねてより口には出すまいと忍んできた『質問』をぶつけることにした。 「あの、東風谷さん」 「………何ですか、花京院くん? 喋ると舌、噛みますよ」 「僕は君を信頼してこのオンバシラへと乗り込みました。だから今まで敢えて聞かなかったのですが……」 「…………」 「―――八坂神奈子の逃げた方向、勿論知った上で追跡してるんですよね?」 「…………………………………………」 その溜め息が漏れるほどに長い長い無言は、花京院の『疑問』を『確信』へと変えるのには充分過ぎる時間だった。 「…………あのですね、東風谷さん」 「だってっ!! 仕方ないじゃないですか!!! 煙幕が晴れた時には神奈子様の姿はすでに見えなかったんですからっ!!! それにそれに! 勝手に付いて来たのは花京院くんであって、それはいわゆる自己責任って奴で!! えっとえっと………つまり~~~~~っっ!!!」 「つまり、八坂神奈子の逃げた先の見当は全く付かない、ということですね?」 「はいッッッッ!!!!!!」 今までの捜索は一体なんだったのだろう。 近年稀に見るほどに良い返事を耳に入れながら、花京院は額に手を当てて呆れる仕草をひとつ。 「あの、どうしてそれをもっと早く言ってくれなかったのですか……?」 「だ、だってだって背中の花京院くんの視線が段々プレッシャーに感じてきちゃって、言うに言い出せなかったんですよ~っ!!」 自分はそれほど眼力を発していたのだろうか。 どうやら東風谷早苗という人物は思ったよりもずっと天然だったらしい。 「……戻りましょう。もうかなりの距離を飛んで来てしまっています。このままだと会場の『外』に出かねません」 この会場に『外』などあるのだろうかと、ふと思ってしまう。 だがこのままエリア外から出てしまえば最悪、脳内爆弾が発動しかねない。 時間のロス。それだけの事だと自分に言い聞かせ、溜息を漏らすのは我慢した。 ……………………? 花京院の案に、早苗がまたもや無言になる。 それを訝しげていると、早苗がゆっくりと、かつ半涙目でこちらへと振り返った。 その年相応の乙女らしい仕草に花京院は不覚にも、少しだけ鼓動が早まった気がした。 「…………戻れません」 「……………………はい?」 「このオンバシラ、スピードはありますけど小回りが殆ど効かないんです! このままゆったりと旋回してれば会場外へはみ出しちゃいますよぉ~~~っ!!」 どうやら鼓動が早まったのは別の意味だったようだ。 「な……なんですってッ! じゃ、じゃあ今すぐ降りてくださいッ!! 下手すれば僕達、文字通りの『自爆』ですよッ!?」 「お……降りるって、どうすればいいんでしょう……?」 目眩がした。 この両の足にしっかりとネジが張り付いていなければ、確実に自分の体はヒモ無しバンジーを体験していただろう。 「き、君は何も考えずに操縦していたのか!?」 「ご、ごめんなさわわぁ~~~ん!!! ででででも大丈夫ですっ! オンバシラに注いでいる霊力の注入をやめれば……」 「……着陸はどうするのです?」 「…………………………」 自分が目覚めた時に感じたこの少女への『女神』のようなイメージ像が、派手な音をたててバラバラと崩れてゆく。 「じょ、冗談じゃあないぞ! こんな馬鹿みたいな事故で死んでしまうなんて僕はごめんだ!」 「あーーー!!! なんか私のせいにしてる流れですけど、勝手に付いて来たのは花京院くんなんですからね!? どんな結果になっても責任持てませんって私言いましたからね!?」 「それにしたってこんな結果になるなんて思わないでしょう! そもそも東風谷さんが黙っているのが悪いわけで―――」 ド ガ ン ッ !! 互いにいがみ合う中、突如響く轟音。 続いて足元を大きく揺らすほどの振動が2人を正気にさせた。 「……ッ!? なんだ今の揺れは……!?」 「わ、わかりません……。それに気のせいか、スピードも高度も『落ちて』いるような……」 言われてみれば段々とオンバシラの速度が落ちてきている。 花京院の額に嫌な汗が流れた。乗った乗り物が墜落するジンクスが、まさかあの血統から自分にも移ったんじゃないだろうか。 「東風谷さん、態勢を立て直してください! どんどん落ちているぞッ!」 「やってますが……駄目ですッ! 調整が出来な―――」 不意に早苗の声が止まった。 見れば、彼女はこちらを振り向きながら固まっている。 「……東風谷さん?」 「……花京院くん。 ……う、後ろ」 後方を指差しながら彼女は引き攣っている。 その指の指す方向を花京院はおそるおそる……振り返った。 爆進するオンバシラの最後尾。 ピタリと張り付くように―――『ソレ』は居た。 ウネウネと蠢き合う皮膚。腐ったスライム状の形態。 丸い目の中には光も焦点も無く、不気味な唸り声が歯の揃った口腔から響いてくる。 バスケットボールほどの大きさはあるだろうか。いや、僅かにだが成長している様子が見られた。 『喰って』いるのだ。このオンバシラから湧き出るエネルギーを。 このエイリアンのようにグロテスクな風貌を見て、花京院は直感する。 「スタンド……!? 地上から乗り込んできたのかッ!」 だとすれば本体はどこから操っている? 飛行するオンバシラに飛びついてくるなど相当なスピードと射程距離のスタンドだ。 (僕達を攻撃するつもりか!? しかしコイツ……何か『ヤバイ』ぞッ! 嫌な禍々しさだ……!) オンバシラの速度が落ちているのは間違いなくコイツの仕業だ。 すぐにコイツを倒さないとこのままでは墜落してしまう! 思うが否や、花京院は即座に攻撃に移った! 「エメラルド・スプラーーーーッシュ!!!!」 散弾銃のように発射された煌びやかな弾幕は、後尾にしがみつく敵目掛けて光を放ちながら飛んでいく。 この至近距離でこれだけの数の攻撃を躱すことなど到底不可能。花京院はそう思った。 しかし攻撃が命中する前に敵スタンドは形態を変化し、数本の触手のような物でなんとエメラルド・スプラッシュの弾幕を全て掴み取ったのだ。 「GYYYYAAHHHHHHHHHHHHーーーーーーーーーッ!!!!!」 猛獣のような咆哮。花京院は背筋を凍らせる。 今のありえぬ動き。1つ2つ弾くならともかく、コイツは放った弾幕全てを『掴んだ』のだ。 とても遠隔操作のスタンドとは思えない正確な動きと超スピード。まともに戦えば負傷必須だ。 (……おかしい、理屈に合わないぞ。これほどのスピードと正確性、本体がどこか近くに潜んでないと納得出来ない……!) 空を飛んでいるのにどこか『近く』? やはり妙だ。この速度と高度を飛ぶオンバシラの上まで地上から遠隔操作する者など…… それにさっきのコイツの動き、どこかで本体が見ていないと反応できるようなスピードではない……! いや、『探知』か……? コイツは僕達の『何か』を探知して、『自動的』に攻撃してるんじゃあ? 『自動操縦』! だから遠隔操作でもあんなスピーディな動きが出来るッ! 「か…花京院くんッ! もう無理です! 墜落しますッ!」 「東風谷さんッ! 足に固定させた『ネジ』を外すんです! 早くッ!」 今はこの敵よりもまずは無事に着地出来ることが重要だ。 早苗は言われたとおりに『ナット・キング・コール』でオンバシラと足を固定させたネジを外し、2人の足を自由にさせた。 「それで、この後はどうするんですか!? 花京院くん!」 「今すぐオンバシラの飛行を止めて下さい! 着地は僕が何とかします!」 「………ッ!」 焦りつつも言われた通り、オンバシラへの霊力の注入をストップする。 一瞬だけ重力から解放された感覚を味わい、次の瞬間2人の体はオンバシラと共に地上へと真っ逆さまに落ち始める。 だがこの敵はその程度では追跡をやめない。 張り付いていたオンバシラから離れ、空中を落ちながら花京院へとその邪悪な牙を向けて飛びかかった! 「き、来ましたよーッ!? こんな空中でどうやって追い払うんですかッ!?」 「エメラルド・スプラッシュで駄目なら粉々にするしかありませんッ! 東風谷さん、オンバシラを持ってください!」 花京院の意図が分かったのか、すぐに早苗は共に落下するオンバシラを脇で抱え込み、再び最大の霊力を込め始めた。 「メ…『メテオリックオンバシラァァーーーーッ!!!』」 軍艦の大砲を思わせる強力無比な巨大光弾が花京院に飛びかかる敵スタンドを丸々飲み込んだ。 「GYAHHHHHHHHHッッッ!!!!!!」 白光のレーザーに焼き尽くされ、その悪魔のスタンドは粉々に消滅する。 喜ぶ間も無く、撃ち込んだ反動で吹き飛ばされる早苗。 「きゃあああああぁぁぁーーーーーーーッ!?!?!?」 「東風谷さんッ!! 掴まって下さいッ!」 絶叫する早苗をスタンドで掴んで抱き寄せ、花京院は更にハイエロファント・グリーンを展開させた。 スタンドをヒモ状に細く分け、何重にも薄く重ね合わせる。 やがて出来たそれをマットの代わりとし、自分たちの下に敷く。 多少の空気抵抗も生まれ、落下の速度を減少させてくれる。 すぐ真下の地上では、黄色い草原が広がっていた。地図によれば確かここは『太陽の畑』と書かれた向日葵畑。 花を潰してしまうのは心痛いが、土も柔らかいだろう。死ぬことはないはずだ。 花京院は広げたスタンドのマットを今度は何重にも網のように重ね、『ネット』を生成。 落下の衝撃に備え、早苗を抱きしめる腕に一層力を込めた。 そして――― 「うおおおぉぉぉぉーーーーーーーーッッッ!?!?」 「きゃああああああああああぁぁぁぁッッッ!?!?」 ド ォ ォ オ オ ー ー ン ッ !! 早苗の奇跡を操る力かは定かではないが、2人は無事に怪我なく『着陸』した。 ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽ ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽ 「―――花京院、典明……!」 「……ポル、ナレフ?」 2人の男が向き合っていた。 それは遥か遠いエジプトへの路を共に旅してきたかけがえのない仲間。 花京院の感覚ではつい数時間別れていただけに過ぎないが、実に数年ぶりの再会のようにも思えた。 思いがけない『友』との出会いに、花京院の心もすぐに喜びで満ちる。 「ポルナレフ! 心配したぞ! だが…あぁ、無事で本当に良かった……!」 落下の衝撃で多少ふらついたが、花京院はすぐにポルナレフへと駆け寄った。 しかし、 「それ以上近づくなッ! 俺の許可なく足を動かせば瞬間、細切れにしてやるからな。まず色々質問させてもらうぜ」 2人の間には、致命的な『ズレ』があった。 花京院の足が止まる。 「ポルナレフ……!? 何を突然言い出す?」 「貴様はジョースター一行の花京院典明だったか? 悪いが俺はよく知りもしねー奴をそう易々と近づけるほどアホじゃねーぜ。 まず、何だっていきなり空から降ってきやがる? 人間大砲の練習でもしていたか?」 ポルナレフはそう制し、『シルバー・チャリオッツ』の剣を向けてきた。それは間違いなく花京院もよく知るスタンドの姿だ。 だからこそ花京院は余計に混乱する。ポルナレフが今放った言葉の意味がよく分からなかった。 「おいポルナレフ! お前はジャン・ピエール・ポルナレフだろう!? 僕のことを忘れたとでも言うのか!?」 「あぁ? だから花京院典明だろう? 随分馴れ馴れしい奴だな」 「ポルナレフ……? 何だ、コイツらお前の知っている奴か?」 「あの……花京院くん? どうしましたか? ポルナレフさんって、確か花京院くんのお仲間でしたよね……?」 相方の様子にジャイロと早苗も疑問を投げてきた。 花京院は動揺する。まるで自分の事を殆ど知らないかのようなポルナレフの口ぶり。 これでは自分の気が違っているみたいではないか。 だが事実、彼は僕をよくは知らないと言い、僕だけが彼を仲間として見ている。 これはどういうことだ? この一方通行の理解はどう解釈すればいい? まさかコイツ、足を滑らせて頭でも打って……いやいや、彼は確かにマヌケな所はあるがそこまでマヌケでもない、と思う。 目の前のポルナレフの瞳には、嘘や演技の色は見えない。それは確かに『警戒』しているような目をしていた。 花京院は混乱を極める頭をどうにかして冷静に考え、ひとつずつ順序立てて考えることにした。 もし考えを誤れば最悪、花京院は仲間の手によって斬り裂かれることになりかねない。 落ち着いて、ロジックを組み立てるように思考する。 そもそも不可解なのはあの『名簿』と支給品の『記憶DISC』だ。 死んだ者の名が載る参加者名簿。未来の承太郎の記憶。 荒木と太田が『時間を操る』能力を有している可能性は最初に考察したばかりだが、しかしそんなことが本当にありえるのか? いや、これを確かめる簡単な方法があった。 「ポルナレフ……。ひとつ聞きたいが、君はこの会場に連れて来られる前、『何処』に居た?」 「……おい、質問してるのはこっちだぜ。次ナメた口きくと八つ裂きにして―――」 「―――頼む。答えて欲しい。 ……ポルナレフ」 深く頭を下げる花京院を見て、ポルナレフは何故だか答えなくてはいけない。そんな気持ちになった。 「……中国のタイガーバームガーデン。そこで『魔術師の赤』のアヴドゥルや貴様たちと戦おうとしていた。 次の瞬間、俺は気付いたらここに連れてこられていた。これがお気に召す回答か?」 バラバラだったピースがカチリと組み合った。 それと同時に花京院は途方も無い脱力感に覆われ、目の前が真っ暗になった。 ここにいるポルナレフは確かに花京院の知る男であり、そして花京院の知らない男だった。 50日間に渡るエジプトへの旅は花京院にとって、そしてその仲間達にとって何にも代えがたい物となった。 しかしこのポルナレフはその思い出も、絆も、一切を持ち合わせていないポルナレフ。 友情を何よりも大切に想う花京院にとってその事実は、この上なく辛い衝撃を与えた。 「そう、か……そうか……。君は……僕の知っているポルナレフでは、なかったのか……」 「……花京院典明、アンタ…俺のことを知っているのか……?」 項垂れる花京院を見て、流石にポルナレフも違和感を覚えてきた。 何か会話が噛み合わない。まるで自分と花京院が友人同士だと言わんばかりだ。 重苦しい雰囲気が漂う中、ポルナレフの後ろに立つジャイロが口を開く。 「おいお前さん、あんたこのポルナレフをよく知っているみたいだな? ……オレにも何となく察しがついてきたぜ。神子やメリーが話していたな。 このゲームの参加者はどうも『違う時間軸から連れてこられた』と……。 オレの言いたいこと分かるかポルナレフ?」 「………!」 ジャイロの言葉を受け、ポルナレフにもようやく察してきた。 DIOの支配から解かれたとはいえ、この花京院はポルナレフの最後の記憶の上では敵ではあった。 今のポルナレフの居場所は、幽々子やメリーらの隣であることは間違いない。花京院は自分からすれば赤の他人も同然。 だがこの花京院の表情は、何か自分達の間にどうしようもない『ズレ』が存在するのではと思わせるには充分だった。 こんな時、どうすればいいのか分からない。 だがこのままでは『納得』することも出来ない。 ポルナレフという男は、花京院と同じ様に友情を何よりも大切に想う人間だったからだ。 「……花京院典明。次は俺の質問だ。 ……俺はあんたにとって『何だ』?」 答えを聞くのが少し恐ろしくもあった。 もしもポルナレフの想像している通りの答えだったならば、2人の中で決定的な『何か』が壊れてしまう気がする。 それでも聞かないわけにはいかない。それがポルナレフにとっての『納得』であった。 伏せていた顔を上げた花京院の表情はとても辛そうであり、それがポルナレフには泣いて見えた。 「―――このDISCを頭に挿してください。それで全てが……理解出来るはずです」 しかし花京院が次に言った言葉は、ポルナレフの予想にしない内容だった。 そう言って差し出された彼の手には1枚の『DISC』。円盤だ。 わけがわからなかったが、花京院の目は至って真面目である。 怪しみながらもポルナレフはそのDISCを受け取り、躊躇しながらそれを頭に挿して――― ―――そして、一瞬で全て理解出来た。 未来の空条承太郎の記憶。その中に眠る50日の旅が鮮明にポルナレフの中に蘇る。 いや、それはここにいるポルナレフ自身体験したことの無い、いわば偽りの記憶。 未来のポルナレフが体験するはずだった数々の出来事が、まるで走馬灯のように頭に流れ込んでくる。 ―――『いっておくがジョースターさんッ! 俺はこのままおめおめと逃げ出すことはしねーからなッ!』 ―――『僕もポルナレフと同じ気持ちです』 ―――『いやだッ! 俺は逃げることだけはできねえッ! アヴドゥルとイギーは俺のために死んだッ!』 ―――『承太郎……この旅行は…実に楽しかったなあ……色んなことがあった…』 ―――『まったく、フフフフフ…。本当に…楽しかった…50日間じゃったよ』 ―――『花京院! イギー! アヴドゥル! 終わったよ……』 ―――『つらいことがたくさんあったが…でも楽しかったよ。みんながいたからこの旅は楽しかった』 ―――『そうだな……楽しかった…心からそう思う…』 ―――『それじゃあな!! しみったれたじいさん! 長生きしろよ! そしてそのケチな孫よ! 俺のこと忘れるなよ!』 ―――『また会おうッ! わしのことが嫌いじゃあなけりゃあな! …マヌケ面ァ!』 ―――『忘れたくてもそんなキャラクターしてねえぜ…てめーはよ。元気でな……』 ―――『あばよ……』 映像はそこで途切れた。 否。堪らなくなってポルナレフが自ら取り出した。 所詮は他人の記憶。自分が体験したものではない。 だが空条承太郎というかけがえのない仲間の記憶は、DISCによってポルナレフの脳にリアルな感情と情景をもたらした。 ポルナレフには気の知れた友人などは居ない。 復讐に身を委ね、孤独に生きてきたといっても良いだろう。 だが確かに……確かに自分には仲間が居た。友人が居た。想い出があった。 孤独だった自分の人生には、何よりも大切な『居場所』があったのだ。 それを知れただけで、失った幸せを取り戻せた感覚になれた。 彼は同時に恥じた。 仕方の無いこととはいえ、目の前の花京院との友情を侮辱したも同然だったのだから。 しかしこんな自分が許されるのなら、もう一度。 「すまねえ……! す、まなかった……『花京院』……っ! 俺は……おれは……っ」 もう一度だけ、『友』でいて欲しい。 涙を流しながら懇願するポルナレフの姿に、花京院は。 「……これは、『仲直りの握手』だ。 ……ポルナレフ」 涙を溜めた笑みを浮かべながら、腕を差し出す。 その言葉の意味はかつての花京院とポルナレフの2人しか知らない、深い意味となるもの。 故にDISCにも存在しなかったその記憶が無い今のポルナレフでは、その言葉の真の意味は計れない。 しかし不思議なことにポルナレフには、その『仲直りの握手』が2人にとって大きな意味となることが何となく分かった。 ポルナレフは間を置かず、その握手に応えた。 嗚咽を流し震える友の肩を、花京院は優しく叩く。 はぐれた銀屑の星は、いま再びかつての煌きを取り戻した。 ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽ 「そうか……、じゃあ君はこのままメリーさんを助けに行くのだな」 「ああ! お前の事も心配だが、彼女達も俺の『居場所』に違いねえ! そこだけは曲げられねえぜ!」 「フフ……。やはりポルナレフはポルナレフのままだな。いつもの真っ直ぐな君だ」 「あー? なにワケのわからねえこと言ってんだよ花京院」 あれからすぐにお互いの状況を簡潔に話し、4人は状況を再確認した。 青娥急襲のこと。神子の死。攫われたメリー。 八坂神奈子を探してこの地まで来たこと。途中謎のスタンドに襲われたこと。 ポルナレフとジャイロはすぐにメリーの救出に向かうという。 花京院は仲間として彼らに同行したい気持ちもあったが…… チラリとジャイロの傷の手当をしている早苗の方を振り向く。 ジャイロの千切れた右腕は、早苗の『ナット・キング・コール』によって応急の接合処置は施されている。 所々喰われた肉片の欠損は目立つがこれで以前のように鉄球を投げられるはずだ。 手持ちの止血剤でジャイロの手当てをしながら早苗は花京院の視線に気付き、申し訳なさそうな顔をした。 「私も出来ればメリーさんの救出をお手伝いしたい所ですが……私にはやるべきことがあるんです。 すみません。でも花京院くんが御友人を協力したいのであれば私は止めたりなんかしません」 花京院と早苗の方も、やるべき使命はあった。 逃げた神奈子を追い、その凶行を止める。 花京院の天秤は多少揺らいだが、それでもポルナレフの事を信頼して、こう言った。 「ポルナレフ。僕たちの方も優先すべきことがあります。ですから残念ですが、君の方を手伝うことは難しいようです」 「ああ。お前ならそう言うと思ったよ。 ……早苗ちゃん、しっかり守れよ」 「君こそ、メリーさんを絶対救ってくださいね」 まるで昔からの親友同士のような会話。 そんな台詞にポルナレフは心の中が温かくなる。 「さあ、オレの方も治療は終わったぜ。そうと決まったらさっさと行くぞ、ポルナレフ ……神子の仇は絶対に取らなくちゃならねえからな」 ジャイロが繋ぎ終えた右腕をグルングルン回しながら歩き始める。 ポルナレフもすぐにそれに倣い、覚悟を固めた。 神子を失った事実は、ポルナレフにも大きな衝撃を与えたのだ。 これ以上、誰も失わせない。そんな覚悟で2人は歩き出す。 「花京院くん。 ……私達もそろそろ」 「……ええ」 こんな狂ったゲームの中でも、彼らには彼らの道がある。 願わくばもう一度、彼らの道と僕らの道が交差することを願って…… ポルナレフたちを見送りながら、すぐに自分達もここを発つため落ちたオンバシラを拾うために振り返った ―――時だった。 「―――東風谷さん。振り返らないで下さい。 ……ゆっくりです。ゆっくりこっちへ、歩いて来て下さい……!」 花京院の顔色が激変した。 早苗の、いや早苗の『後方』を凝視しながらゆっくりと手を差し出している。 その様子に早苗はただならぬ予感を感じ、冷や汗を流しながら―――後ろを振り返った。 「GYYYYYAAHHHHHHHHHHーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!」 そこには再び悪魔が居た。 さっきよりも更なる巨大な姿で、その獰猛な牙を早苗に光らせて。 「ひ………っ!!」 「東風谷さんそこを決して動くなッ!!! こいつは何かを『探知』してそれに向かって動いているッ! ポルナレフゥーーーッ!! ジャイロォーーーッ!! さっきのスタンドだァーーーッ!!」 すぐさまポルナレフとジャイロを呼び戻し、花京院は思考を開始する。 この怪物はバラバラになってなどいなかった。 その不死なるスタンドの僅かな破片がオンバシラへと取り憑いたまま、再生と構成を繰り返しながら巨大化していたのだ。 オンバシラに溜まった膨大な霊力を取り込み、自分の物にして再び復活した。 全く不死身なスタンドだ。こんな敵をどうやって倒せばいいのか。 ジャイロ曰く、このスタンドは本体が既に死亡しているという今までの常識を覆すスタンド。 ならばやはり『自動的』! コイツは何を探知して動いているッ!? ジャイロは最初、コイツは回転する鉄球に向かって攻撃してきたと言う。 そして次に走り寄って来たポルナレフを襲い。 窮地の所を今度は空に向かって飛んでいった。 恐らく飛行する僕たちを感知して! 最後に飛び降りた僕たちに反応し、オンバシラを離れて攻撃してきた。 もう確実だ……! コイツの探知している物が分かった! 「おい、花京院……このバケモン、さっきよりデカくなってねーか?」 「おい……おいおいおいおいおいこんな奴どーやって倒すんだ?」 「ポルナレフ、ジャイロ。よく聞いてください。コイツは恐らく『動いているもの』を最優先で攻撃してきます。 それもその速度が速ければ速いほど、より速いスピードで追いついて来るのでしょう。 至近距離でのエメラルド・スプラッシュも全て受け止められたんだ。絶対に素早く動いてはいけませんよ……!」 花京院、ポルナレフ、ジャイロが3人並ぶように戦闘態勢をとった。 花京院たちと敵との間に挟まれるような形で、固まって動けない早苗が膝を振るわせる。 「東風谷さん、ゆっくりです……! そこからナメクジのようにゆっくりとこちらへ戻って来てください……!」 「なななナメクジって、この状況でそんな悠長な……!」 「早苗ちゃん早く! いや、遅く! 中国人のする太極拳のようにゆっくりとだぞ……!」 「…ポルナレフ、君たちはすぐにメリーさんの元へ向かってください。コイツは僕と東風谷さんで何とか……」 「バーーーカ! 俺を舐めてんじゃねえぞ、お前達だけで戦わせるわけにはいかねえだろーが! みんなでコイツを『秒殺』してすぐにメリーを追うぜ!」 今やこの怪物は人間大ほどの大きさにまで巨大化している。オンバシラの無尽蔵なエネルギーを取り込んで成長したのだろう。 果たしてこんな敵が倒せるのか……? だが花京院らが旅した中で、無理だ無謀だのなんて言葉は無かった。 コイツはこの世から消さなければならないッ! 『法皇』と、『銀の戦車』と、『鉄球』を構え、不死の化物との戦いが始まった。 ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽ 【E-6 太陽の畑/午前】 【花京院典明@ジョジョの奇妙な冒険 第3部 スターダストクルセイダース】 [状態]:体力消費(中)、右脇腹に大きな負傷(止血済み) [装備]:なし [道具]:空条承太郎の記憶DISC@ジョジョ第6部、不明支給品0~1(現実のもの、本人確認済み)、基本支給品×2(本人の物とプロシュートの物) [思考・状況] 基本行動方針:承太郎らと合流し、荒木・太田に反抗する 1:目の前のスタンドを倒す。 2:東風谷さんに協力し、八坂神奈子を止める。 3:承太郎、ジョセフたちと合流したい。 4:このDISCの記憶は真実?嘘だとは思えないが…… 5:4に確信を持ちたいため、できればDISCの記憶にある人物たちとも会ってみたい(ただし危険人物には要注意) 6:青娥、蓮子らを警戒。 [備考] ※参戦時期はDIOの館に乗り込む直前です。 ※空条承太郎の記憶DISC@ジョジョ第6部を使用しました。 これにより第6部でホワイトスネイクに記憶を奪われるまでの承太郎の記憶を読み取りました。が、DISCの内容すべてが真実かどうかについて確信は持ってません。 ※荒木、もしくは太田に「時間に干渉する能力」があるかもしれないと推測していますが、あくまで推測止まりです。 ※「ハイエロファントグリーン」の射程距離は半径100メートル程です。 ※ポルナレフらと軽く情報交換をしました。 【東風谷早苗@東方風神録】 [状態]:体力消費(中)、霊力消費(中)、精神疲労(小)、右掌に裂傷(止血済み)、全身に多少の打撲と擦り傷(止血済み) [装備]:御柱@東方風神録、スタンドDISC「ナット・キング・コール」@ジョジョ第8部 [道具]:止血剤@現実、十六夜咲夜のナイフセット@東方紅魔郷、基本支給品×2(本人の物と美鈴の物) [思考・状況] 基本行動方針:異変解決。この殺し合いを、そして神奈子を止める。 1:後ろのスタンドをどうにかする。取り込まれたオンバシラも取り返したい。 2:『愛する家族』として、神奈子様を絶対に止める。…私がやらなければ、殺してでも。無関係の人はなるべく巻き込みたくない。 3:殺し合いを打破する為の手段を捜す。仲間を集める。 4:諏訪子様に会って神奈子様の事を伝えたい。 5:3の為に異変解決を生業とする霊夢さんや魔理沙さんに共闘を持ちかける? 6:自分の弱さを乗り越える…こんな私に、出来るだろうか。 7:青娥、蓮子らを警戒。 [備考] ※参戦時期は少なくとも星蓮船の後です。 ※ポルナレフらと軽く情報交換をしました。 【ジャン・ピエール・ポルナレフ@第3部 スターダストクルセイダース】 [状態]:疲労(中)、身体数箇所に切り傷、胸部へのダメージ(止血済み) [装備]:なし [道具]:基本支給品 [思考・状況] 基本行動方針:メリーや幽々子らを護り通し、協力していく。 1:メリー救出。 2:花京院たちと協力してこの敵を秒殺する! 3:仲間を護る。 4:DIOやその一派は必ずブッ潰す! 5:八坂神奈子は警戒。 [備考] ※参戦時期は香港でジョースター一行と遭遇し、アヴドゥルと決闘する直前です。 ※空条承太郎の記憶DISC@ジョジョ第6部を使用しました。3部ラストの承太郎の記憶まで読み取りました。 ※はたての新聞を読みました。 【ジャイロ・ツェペリ@第7部 スティール・ボール・ラン】 [状態]:疲労(中)、身体の数箇所に酸による火傷、涙と洟水(現在ほぼ沈静)、右腕欠損(ネジで固定) [装備]:ナズーリンのペンデュラム@東方星蓮船 、ジャイロの鉄球@ジョジョ第7部(欠損多し) [道具]:ヴァルキリー@ジョジョ第7部、基本支給品 [思考・状況] 基本行動方針:ジョニィと合流し、主催者を倒す 1:目の前のスタンドを倒す。 2:メリーを救出。 3:青娥をブッ飛ばし神子の仇はとる。バックにDioか大統領? 4:ジョニィや博麗の巫女らを探し出す。 5:リンゴォ、ディエゴ、ヴァレンタイン、八坂神奈子は警戒。 [備考] ※参戦時期はSBR19巻、ジョニィと秘密を共有した直後です。 ※豊聡耳神子と博麗霊夢、八坂神奈子、聖白蓮、霍青娥の情報を共有しました。 ※はたての新聞を読みました。 ※E-6 太陽の畑に豊聡耳神子の死体が置かれています。 ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽ 「ポ……ポルナレフさんッ! ジャイロさぁーんッ!!」 「……っ!? 阿求!? 来るなッ!! 危険だッ!!」 動けば殺られる膠着状態が少し続いた中、遠くから阿求が駆け寄ってきた。 その様子は周章狼狽といった感じで、躓きそうになりながら慌てて向かって来ている。 ポルナレフは阿求を近づかせまいと大声で叫んだが、彼女はそれどころではないほどに取り乱していた。 「ごめんなさいッ!! わ、私のせいで…私が止めるべきだったのに……ッ!」 要領無く、なんとも的を射ない言葉だったが、ポルナレフは直感的に嫌な予感がした。 「―――幽々子さんが……っ! 幽々子、さんが……っ!」 「―――な、に……? 幽々子さんが、どうしたって……!?」 ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽ ひた、ひた、ひた。 行き処を見失った亡霊のように。 死してなお動き続ける亡者のように。 空虚を宿した瞳で、取り留めの無い足取りで、目覚めた女は歩く。 力無くだらんとぶら下げた右腕には従者の愛刀。 この刀で誰を斬らんとするのか。 何も、何も分からない。 彼女には、何を信じて良いのか分からない。 ただひとつ。 『彼女』に会わなければ。 その想いひとつで、泳ぐように進む。 「ゆかり…………あなた、いま………どこに…いるの………? ねえ、……ゆかり………どうして……」 Chapter.5 『DEAD DREAM』 END 【E-6 北の平原/午前】 【西行寺幽々子@東方妖々夢】 [状態]:茫然自失、霊力消費(小)、疲労(小)、左腕を縦に両断(完治) [装備]:白楼剣@東方妖々夢 [道具]:基本支給品 [思考・状況] 基本行動方針:殺し合いには乗らない。しかし… 1:紫に会って真偽を問う。 ※参戦時期は神霊廟以降です。 ※『死を操る程度の能力』について彼女なりに調べていました。 ※波紋の力が継承されたかどうかは後の書き手の方に任せます。 ※左腕に負った傷は治りましたが、何らかの後遺症が残るかもしれません。 【稗田阿求@東方求聞史紀】 [状態]:疲労(中)、自身の在り方への不安 [装備]:なし [道具]:スマートフォン@現実、生命探知機@現実、エイジャの赤石@ジョジョ第2部、稗田阿求の手記@現地調達、基本支給品 [思考・状況] 基本行動方針:殺し合いはしたくない。自身の在り方を模索する。 1:私なりの生き方を見つける。 2:メリーを助けたい。 3:幽々子さんも追わなきゃ…! 4:主催に抗えるかは解らないが、それでも自分が出来る限りやれることを頑張りたい。 5:荒木飛呂彦、太田順也は一体何者? 6:手記に名前を付けたい。 [備考] ※参戦時期は『東方求聞口授』の三者会談以降です。 ※神子が死んだことはまだ知りません。 ※はたての新聞を読みました。 ○支給品紹介 <催涙スプレー@現実> 魂魄妖夢に支給。 相手の顔面に向けて噴射する小型スプレーの防犯・護身グッズ。 カプサイシンを主成分としたOCガス(トウガラシスプレー)がスプレー缶より勢いよく噴射される。 これを顔面にスプレーされると皮膚や粘膜にヒリヒリとした痛みが走り、咳き込んだり涙が止まらなくなるなどといった症状が現れる。 <音響爆弾@現実> 星熊 勇儀に支給。 3個セットの非破壊・非致死性手榴弾。安全ピンを抜いて数秒後に爆発する。 爆発時の爆音・閃光により、付近の者に一時的な眩暈、難聴、耳鳴りなどの症状を起こす。 <スタンドDISC「ノトーリアス・B・I・G」@ジョジョ第5部> 破壊力:A スピード:∞ 射程距離:∞ 持続力:∞ 精密動作性:E 成長性:A 魂魄妖夢に支給。 自動操縦型のスタンド。本体が死亡することによって初めて発現する。 本体がいないため射程距離がなく、肉体やスタンドなどのエネルギーを取り込んでいくので持続力も無限大である。 またエネルギーを取り込む度に巨大化していく。 近くにあるものの中で『最も速く』動くものをそれと同じスピードで最優先に追跡し攻撃するが、逆に速く動きさえしなければ攻撃されることもない。 細切れになっても破壊されても永遠に再生を繰り返し、実質的には不死のスタンド。完全殺害不可能。 105:人妖彼岸之想塚 投下順 107:大脱走 105:人妖彼岸之想塚 時系列順 107:大脱走 073:戦車おとこにひそむめ、境界むすめのみるゆめ 稗田阿求 109:母なる坤神よ、友と共に 073:戦車おとこにひそむめ、境界むすめのみるゆめ 西行寺幽々子 135:亡我郷 -自尽- 073:戦車おとこにひそむめ、境界むすめのみるゆめ マエリベリー・ハーン 118:紅蒼の双つ星 ― ばいばいベイビィ ― 096:カーニバルの主題による人形のためのいびつな幻想曲 宇佐見蓮子 118:紅蒼の双つ星 ― ばいばいベイビィ ― 096:カーニバルの主題による人形のためのいびつな幻想曲 霍青娥 118:紅蒼の双つ星 ― ばいばいベイビィ ― 094:Green,Green 東風谷早苗 109:母なる坤神よ、友と共に 094:Green,Green 花京院典明 109:母なる坤神よ、友と共に 073:戦車おとこにひそむめ、境界むすめのみるゆめ ジャン・ピエール・ポルナレフ 109:母なる坤神よ、友と共に 073:戦車おとこにひそむめ、境界むすめのみるゆめ ジャイロ・ツェペリ 109:母なる坤神よ、友と共に 073:戦車おとこにひそむめ、境界むすめのみるゆめ 豊聡耳神子 死亡
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. Und der Haifisch, der hat Zahne und die tragt er im Gesicht und Macheath, der hat ein Messer doch das Messer sieht man nicht. ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ 空条承太郎。DIO。カーズ。 誰も彼も、普通の人間とは思えない超常的な能力を持っていた。 あれだけ激しい戦いをなんとか逃げ延びはしたが、吉良吉影は重傷であった。 放送を終え、互いの生存を確認する。 あの戦いでは、誰も命を落とさなかったようだ。 ちぃッ、と、吉良は心中で舌を打ち鳴らす。 せめてDIOかカーズ、どちらかでも消し飛ばすことができていれば…… 左手首が痛む。無理して『シアー・ハート・アタック』を酷使し続けた結果だ。 その代償を払った成果が得られなかったとこが、何より悔しい。 いや、あの場を生きて逃れられただけでも幸運と考えるべきなのだろうか。 「なにが起きたか…… ですか」 さて、どう答えるべきだろうか。 川尻しのぶと名乗ったこの女。おそらく川尻浩作、早人という2人の親族だろう。 親? 兄弟? 旦那? 息子? 近しい人間を亡くして間もないというのに、随分と気丈に振舞っている。 なにか他に、心の支えになるものでもあるのか。 ともかく、女の本性の見えぬうちに、下手なことを話すべきではない。 そう考え、吉良がすっとぼけた回答を返そうとしたちょうどその時、玄関から物音が聞こえた。 引き戸を開ける音だ。 そして、かすかに聞こえる足音。何者かが、この屋敷に侵入したのだ。 「誰か来ますね」 「え……ええ………」 しのぶを後ろ手に庇うような形で、吉良は侵入者への対応に備える。 開きっぱなしになった応接室の戸口から、緑色でスジのある光ったメロンのようなスタンドが顔を見せる。 スタンドは警戒を強める吉良を目に捉え確認すると、今度はその本体と思われる人間が姿を見せる。 赤く長い髪をした、日本人の学生のようだ。 「2人か?」 首肯する吉良。 「……承太郎はいないのか?」 続く少年の問い。今度は首を傾げつつ、黙ってしのぶの表情を伺う。 「……はい」 自然な受け答えだ。 と同時に、自分と承太郎のつながりを隠しつつ、しのぶと承太郎のつながりを確認する吉良。 この少年は、空条承太郎の仲間だろうか。 たしかに、ここは『空条邸』。空条の名に親しいものが集まってくるのは必然ーーー こうなる可能性も十分にあった。 考えが甘かったか、と吉良は思い返す。 前置きもなく、突如背後から言葉が投げかけられる。 少年が現れた反対側。 吉良は振り向くと、庭に面した縁側に別の男がスタンドを携えて立っていた。 学生服の方は囮だった。本命はこちらだ。 (危なかった…… 有無を言わさず学生服を攻撃を仕掛けていれば、こちらの男に倒されていたかもしれない……) 身体の怪我もあり、即決即断の戦闘態勢を取れなかったことが、逆に幸いしていた。 この侵入者、あらかじめ吉良たちの位置をだいたい掴んでいたようだ。 そして、屋敷に侵入してものの数秒で挟み撃ちを仕掛けてくる。 なかなか侮れない。 「突然、奇襲のような真似をしてしまい申し訳ない。だが、状況が状況だ。 安易に他人と接触することは命取りになる。勘弁して頂きたい……」 そうはいいつつ、2人ともスタンドは出したままだ。 完全に警戒を解いたわけではないようである。 まあ、言葉のひとつふたつを交わしただけでは、吉良たちを信用するにはまだまだ足りないのは当然であるが。 だが、とりあえず、問答無用の戦闘だけは避けられた。 泥スーツの男といい、空条承太郎といい、吉良が最近出会ったのは問答無用の敵ばかりだった。 ここに来てようやくまともな人間が現れたことに、吉良は息を吐いて安堵する。 「おおそうだ! まずは名乗っておこう。そっちのは花京院典明。そして私は、占い師のモハメド・アヴドゥルだ」 だんまりを決め込む花京院を余所に、でかいアフリカ人のブ男、アブドゥルがそう自己紹介した。 ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ 少々、時は遡る。 「これで全ては闇の中……か」 放送を終えた直後、ビーティーは静かに項垂れる。 すぐそばに座り込んだジャイロ・ツェペリも、大きく肩を落としていた。 麦刈公一を殺した犯人、その容疑者として最も疑わしい存在だったスティーリー・ダンは、既にこの世の者では無かったのだ。 ツェペリも表情に悲しみを見せる。直接会って、問いたかったのだ。 自らをスタンド攻撃した意図を。そして、自分たちに見せた善良な彼の姿は、偽りだったのかを。 そして、ストレイツォ。 若き日を共に過ごした旧友の死は、すでに戦士としての生命を奪われた老兵には大きなダメージだった。 各人が放送の結果に重苦しい反応を示している中、ドルド中佐のみが、内心苛立ちを見せていた。 (たったの18人か…… 最初は一気に半分も減ったというのに、やはり人数が少なくなるにつれ、ペースが落ちていくのは必然か……) はやくゲームが終わって欲しいドルドにとって、この死者の数は物足りなかった。 仲間も居らず、優勝することしか頭にないドルドにとって、放送の結果などそんなものだ。 名前がわかる唯一の存在である橋沢育朗は、とっととくたばって欲しいのだがなかなかしぶといようなのだ。 「さて、もういいな。悔やんだところで始まらない。では、放送前に話し合った通り、まず俺ひとりで空条邸に出向く。 危険が無いことを確認すれば、合図を送る。その後、改めて全員でこちらに来てくれ」 立ち直りが早かったのは、モハメド・アヴドゥルだ。 彼とて、この放送には思うところが多々あった。 ポルナレフの遺言にあった、ブローノ・ブチャラティ。彼も死んでしまった。仲間であるアバッキオも一緒に。 見せしめでジョルノも死んでしまったので、残るは3人。彼らのうち何人が、レクイエムのことを知っているのだろうか。 だが、悔やんでも仕方がない。一刻も早く彼らと接触するためには、行動を止めるわけにはいかぬのだ。 空条邸より北東1kmほどにある小さなビルで放送を迎えた一行は、次の目的地をそこに選んでいた。 広いローマの地図のど真ん中に位置する施設であり、しかもそれは参加者の殆どに縁のある空条承太郎の実家なのだ。 いかなる理由をもってしても、立ち寄らない理由は存在しない。 「本当にひとりで大丈夫か? なんならオレも―――」 ジャイロが手を挙げて名乗り出るが、アヴドゥルはにべも無く返答する。 「いや、気持ちだけ頂いておこう。誰と遭遇するか分からぬ以上、この人数で動くのは危険だ。 ビーティーは戦うことはできないし、シニョール・ツェペリにも、無理はさせられない。 そんな中で、あの男から目を離すわけにはいかないからな」 アヴドゥルがドルドを一瞥する。ジャイロにも睨みつけられ、ドルドはやれやれといった雰囲気で肩をすくめた。 ズッケェロを始末したことを、まだ根に持ってやがるのか。 あんな野郎を生かしておこうとしたお前らの方がどうかしているだろう。 何を言っても、ドルドはそんな態度を変えなかった。 確かに正論かもしれない。間違っているのはアヴドゥルたちなのかもしれない。 だが、だからといってこの男の言うことを軽々と受け入れるわけにはいかなかった。 「気をつけてな、アヴドゥル」 ツェペリが拳を握り、檄を飛ばす。 アヴドゥルは笑顔で手を挙げて答えた。 「アヴドゥル…… 油断するなよ?」 ビーティーは自らの脇腹を親指で示しながら、注意を促した。 アヴドゥルは釣られて、ビーティーと同じように自分の脇腹に手を添える。 そこには、ビーティーから賜った『戒めのナイフ』を差してあったのだ。 「ああ、わかっている。『過信』はしない。―――行ってくる」 アヴドゥルはひとり、空条邸を目指した。 『空条』の名は我々にとっての正義であると同時に、多くの悪にとっての敵でもあるのだ。 スティーリ・ダンやJ・ガイルは死んだがしかし…… ラバーソール。ホル・ホース。最悪の場合、DIOがそこにいることまで想定して動く必要がある。 油断して殺されないように、か。 ふた回りも歳が離れている子供に、まさかこんなことを教えられるとはな。 アヴドゥルは自嘲し、しかしその言葉を心に噛み締めながる。 バイクに跨り、アヴドゥルは一路目的地を目指した。 ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ローマの街には似つかわしくない、本格的な日本庭園。 その敷地内に足を踏み入れると、そこにはさらに似つかわしくない高級リムジンが停車している。 『法皇の緑』が目撃したものに間違いない。 「まさか自宅に戻っているとはな…… リムジン通勤とは、随分と結構な身分じゃあないか」 花京院が軽くジョークを飛ばし、ラバーソールがその隣で「ククク…」と小さな笑いを零す。 承太郎を殺せば、さぞ高得点だろう。 あわよくば花京院と相打ちにでもなってくれれば、それがラバーソールの最も希望する結末である。 まずは、『法皇』を屋敷の床下へ潜行させる。 普段はドブネズミどもの住処になっている軒下から、屋敷内の気配を探る。 屋敷にいるのは、2名。男ひとりと女ひとりだ。 承太郎だろうか…… いや、迷う必要はない。問答無用で、襲撃し制圧する。 ラバーソールがその手を、屋敷の引き戸に伸ばす。その時――― 「待て」 花京院はこちらへ近づいてくる、僅かなエンジン音を聞いた。 この音は―――オートバイだろうか? 北東の方角から、ゆっくりこちらへ近づいてくる。 ラバーソールへ目線で指示を出し、花京院たちは一旦屋敷の玄関前から退き、離れとなっている書庫の陰へと身を隠した。 やがて現れたのは、オートバイに跨った大柄な黒人男性。 その手には、長物の銃火器。おそらく、猟銃。 (モハメド・アヴドゥル―――!) 先の放送から生存確認は取れていたが、ここで遭遇するとはタイミングがいいのか悪いのか…… 確かに彼は承太郎に匹敵する重要な標的のひとりだが、強敵だ。 中に承太郎がいるかもしれない。彼らふたりを同時に相手にするのは骨が折れる仕事だ。 前もって気が付いてよかったと、花京院は思う。 承太郎とアヴドゥルに挟み撃ちにされるのは御免である。 (しかし、ここで逃すのも惜しい相手だ。承太郎と手を組まれるとしたら面倒だし、始末しておきたいが……) 花京院は考えを巡らせる。 そして、ひとつの妙案に辿りついた。 ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ 屋敷の玄関前に辿り着き、アヴドゥルは『魔術師の赤』を出現される。 誰かに見られている気配を察したのだ。 元々、誰かと接触するのを覚悟の上で、オートバイなどという目立つ乗り物で屋敷に来たのだから。 善良な者なら歓迎であるし、悪意ある者ならば排除するまでだ。 アヴドゥルにはその自信と実力がある。そして、やらねばならぬ使命もあるからだ。 どこからの攻撃にも対応できるようアヴドゥルは臨戦態勢に入り、周囲を見渡す。 すると観念したかのように、離れの陰からひとりの男が現れた。 「やれやれ、降参だ。さすがだな、アヴドゥルさん」 花京院典明だった。そばには、彼のスタンド『法王の緑』。 思いがけぬ仲間との再会に、アヴドゥルの緊張が緩んだ。 ポルナレフが死亡し、承太郎も見せしめとして殺された。 ツェペリがワムウから聞いた話によると、ジョセフ・ジョースターも同時に死亡している可能性が高い。 だとすれば花京院(とイギー)は、唯一残されたアヴドゥルの仲間なのだ。 再会が嬉しくないわけがない。 「あなたも承太郎の家に来ているとは思わなかったですよ。ここで―――」 「待て花京院」 だがアヴドゥルは冷静だ。 簡単に流されはしない。熱くなりやすい性格だと自分でわかっているだけに、常に冷静であろうと心がけている。 「疑うようですまないが、お前のスタンドを、私の手の届く距離まで寄越してはくれないか?」 「えっ?」 突然の尋問のようなアヴドゥルの態度に、花京院は固まる。 しばし逡巡するも、アヴドゥルの有無を言わさぬ眼光に刺観念し、黙って『法皇』をアヴドゥルの元へと操作した。 下手な動きをすれば命取りだと、花京院は理解していた。 アヴドゥルは『法皇』のスタンドヴィジョンへと手を伸ばす。 (触れられない……) 本物だ。 アヴドゥルが警戒したのは、ラバーソールの『黄の節制』。 承太郎より聞いた話によると、ラバーソールが花京院に化けていた際、『黄の節制』は『法王の緑』の姿さえも完全に再現していたそうだ。 だが、『黄の節制』は実態のあるスタンド。アヴドゥルが手を伸ばせば、そのヴィジョンには触れられるはずだ。 つまり、この『法皇』は本物であるということ。 ならば…… 「花京院……。その長い前髪を上げて、額を見せてくれないか?」 そこまでするか…と、花京院は嫌な汗を流す。 だが、黙って従うしかない。前髪を右手で抑え、額を露わにする。 肉の芽は―――――― 無い。 (やれやれ、どうも神経質になりすぎていたようだ……) ようやく、アヴドゥルは肩の荷を下ろす。 他人に化ける―――特に、過去に花京院に化けたことがある、ラバーソールという可能性。 もしくは、参加者たちの時代の差により生じうる、DIOの刺客だった頃の花京院であるという可能性。 ビーティーに感化されてか、それともバトルロワイアルの緊張感からか、つい疑り深くなってしまった。 「すまない、花京院。君を疑うような真似をしてしまった」 「いえ、仕方がない。この状況下ではむしろ当然でしょう。さすがだ、アヴドゥルさん」 頭を下げるアヴドゥルに、花京院はなんてことない素振りを見せた。 だがその内心は、今にも心臓が止まりそうなほどに、緊張が収まらなかった。 花京院―――否、彼に化けたラバーソール。 花京院の仕組んだ策は、偽物の花京院でのアヴドゥルとの接触である。 実際に花京院に化けて承太郎を襲撃しようとしたラバーソールの方が、「アヴドゥルの仲間である花京院」を演じることに長けているだろう。 それが、花京院の狙いだった。 (実際にはラバーソールが花京院に化ける際は、そのキャラクターまで似せるつもりはなかったのだが) 当然、ラバーソールは拒否したが、花京院は有無を言わせなかった。 ただでさえ花京院に対し痛い目をみた直後である。 最悪、花京院が敵側に着いたとすれば、花京院とアヴドゥルの二人を同時に相手にするハメになる(さらに屋敷には承太郎もいるかもしれない)。 あまりにも分が悪すぎる。ラバーソールは従うほかなかった。 『黄の節制』による外見の変装は完璧である。当然、額に肉の芽など現れないのだ。 ならばなぜ、アヴドゥルは『法皇』のヴィジョンに触れることができたのか? その答えは至って簡単…… この『法皇の緑』は『本物』なのだ。 『花京院』の側ならば、『法皇』のヴィジョンが宙を浮いていても不自然はない。 情報をラバーソールに独占させない為、且つラバーソールを見張る為、且つ隙あらばアヴドゥルに奇襲をかける為、花京院は『偽花京院』の側に自らのスタンドを配置したのだ。 射程距離の広いスタンド使いならではの奇策である。 (花京院の野郎―――ッ! こっちは冷や汗もんのスレスレ演技だぜッ!! 調子に乗りやがってよォ―――!!) まさかアヴドゥルが肉の芽の確認と、『黄の節制』の確認までしてくるとは思わなかった。 偶然が重なり、ラバーソールはアヴドゥルの追求を逃れることができた。 だが、これは逆に好機である。 始めにこれだけ疑われておけば、もはやアヴドゥルの信用は勝ち取ったも同然。 寝首をかくには、むしろ好都合といえる。 その後、アヴドゥルと花京院(ラバーソール)は二手に分かれて空条邸に進入。 吉良吉影、川尻しのぶの両名との接触を図るのだった。 ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ 新たに3人、屋敷に現れた。 ウィル・A・ツェペリ、彼を背負うドルド中佐、それにビーティーの3人だ。 吉良らとの接触後、アヴドゥルはすぐに付近に隠れさせていた仲間たちを呼び寄せた。 空条邸の庭にでたアヴドゥルの『魔術師の赤』は火の玉を打ち上げた。 まるで打ち上げ花火のように花火のように、2発。 オレンジ色のそれは、日中ではさほど目立つ物ではなく、この周辺の空を注意してみていなければ気が付かないものだった。 事前の打ち合わせ通り、火の玉が1発なら危険、来るな。 2発なら、早急な危険は無し、来い。 という意味だ。 このことから、アヴドゥルは吉良、しのぶ、そして花京院についての警戒は(ある程度)必要ないと判断したとわかる。 「あれだけ死亡フラグまがいの別れのシーンの後で、随分あっけない再会になったな」 軽口を叩きながら、ビーティーはアヴドゥルに歩み寄る。 アヴドゥルは苦笑いを浮かべつつも、怪訝な表情を見せる。 「……ジャイロは外だ。用心のため、保険として待機させておいた」 アヴドゥルにしか聞こえない声で、ビーティーは囁いた。 ツェペリも、アヴドゥルの顔を見て頷く。 なるほど。 ドルドにツェペリの介助を任せたのは些か不満があるが、そういう役目ならばジャイロが適任だろう。 花京院はともかく、残り2人はまだ出会ったばかりだ。 男の方は大怪我をしていた。彼がどんな人物であれ、これまでの経緯などは聞いておきたい。 アヴドゥルに迎えられる彼らを、庭に面した応接室から吉良が睨む。 花京院に扮したラバーソールもまた、苦虫を噛みつぶしたような表情を必死に隠していた。 そして…… (面倒だな………) 離れの書庫に隠れ潜む本物の花京院もまた、予定より多い登場人物の数にイライラしていた。 これだけの数の仲間が潜んでいたのならば、アヴドゥルと接触すべきではなかっただろうか? (しかし、あの川尻しのぶという女は、承太郎について何か知っているような様子だった……) もう少しだけ、観察してみるか? 『法皇』で承太郎の行方さえ聞き出すことができれば、自分一人だけで追いかけるか。 正直、承太郎さえ仕留めることができれば、ラバーソールがどうなろうと、この場がどうなろうと、どうでもいいのだ。 空条邸の応接室に集合したのは、全部で7人。 アヴドゥルの一行のリーダーは意外なことに最年少のビーティーだった。 彼を中心に、向かって右隣にアヴドゥル。 アヴドゥルが脇に置いた猟銃を挟んで、川尻しのぶ。 吉良と、彼の左腕を治療するツェペリが並び、ツェペリの介助をするドルド。 最後に花京院(ラバーソール)、そしてビーティーに戻る形で円形に陣取った。 出会ったばかりの人物に無償で治療を行うことにビーティーは難色を示したが、ツェペリが頑として譲らなかった。 『魔術師の赤』の姿はアヴドゥルの意思によりとっくに消えているが、『法皇』はまだ花京院の側に佇んでいる。 花京院は素知らぬ顔をしており、他の者も、それについてとやかく言うことはない。 (花京院、どうかしたのか? ひどく落ち着かない様子だが…) そんな中でビーティーだけが、例外的に、彼の挙動に若干の違和感を覚えていた。 「さて、蓮見さん。治療を受けながらで構わない。話してもらえないかな。その怪我はいつ、どこで、いったい誰にやられたのだ?」 『蓮見』と呼ばれたのは、吉良吉影だ。 アヴドゥルとの遭遇後、吉良は名前を問われ、そのとき蓮見琢馬と答えたのだ。 ストレイツォらといた時とは、状況が違う。 あの空条承太郎の中で、吉良吉影と言う人物が殺人鬼であるということは等式で結ばれていた。 承太郎のように顔を見て吉良とは認識されなかったが、吉良の名前を知っているかもしれないと思い、偽名を使った。 実際に承太郎から吉良吉影の素性を聞かされていた川尻しのぶもおり、吉良の判断は正解だった。 問題は、偽名でなんと名乗るか。 名簿にない名を名乗るわけにはいかない。 第2放送までの生存者の中で、日本人男性とはっきりわかるのは、11人。 その中から、吉良吉影、空条承太郎、花京院典明を除外。 良平、億泰のような親族がいる東方ジョウ助、虹村形兆も意識して除外。 残る6人の中から、無作意で蓮見琢馬の名を選んだ。 これは一つの賭けであったが、吉良は無事に突破した。 ここでツェペリと面識のある宮本の名でも挙げていたなら、吉良は嘘が即座にばれて窮地に陥っていただろう。 閑話休題。 「……地下の洞窟で、3人の戦いに巻き込まれました。とても人間とは思えない、化け物でした。 たしか、名前はわからないがコートを着た男と、後の2人は、カーズ、それにDIOと名乗っていたと思います」 「DIO――!」 ツェペリの波紋による治療を受けながら、吉良はこれまでの経緯を説明する。 意図的に承太郎の名前を隠し、さらに吉良自身はやはり無力な一般人を装った。 偽名を使った以上、近いうちに全員始末する必要がある。 ならば、わざわざ『キラー・クイーン』を見せてやることもない。 DIOの名を出したことで、アヴドゥルたちの興味はそちらに移った。 さらに奴らの詳細を話し、ツェペリからカーズがワムウの同族であることが推測された。 吉良にとってはワムウというのは新たな情報。 あのカーズと同等の危険人物とは気が滅入るニュースであったが、情報が得られたこと自体は幸運だ。 「しかし、DIOたちの戦いに巻き込まれて、よく無事でいられたものだ」 「はい。幸運でした……」 「だが、それだけでは説明が付かんな? 蓮見、その左手首の傷は普通じゃあない。毒か何かで溶かされたようだが?」 鋭い目付きでビーティーが睨む。 ドルドはその歪な形の手首に、杜王駅に見たバオー鼠の能力を連想する。 吉良はビーティーから目線を外らし、沈痛な面持ちを浮かべて語り始めた。 「こちらのは、別です。体に泥を纏った……スタンド使い……でしたか、それに襲われました。ストレイツォさんが身を挺して守ってくれなければ、私の命はなかったでしょう」 「なんと―――っ! そうか、ストレイツォが君と……」 必要のない嘘は付かず、そして自分にとって都合のいいストーリーを吉良は創作して話す。 ツェペリがストレイツォと知り合いである事も気が付いており、彼の名を出す事でストーリーにも真実味が増す。 (まただ。話題を逸らし、深い追求から逃れ、煙に巻いた。蓮見琢馬、この男、やはりどこかおかしい) だが、ビーティーだけは吉良の言葉の不自然さに気が付いていた。 続いて川尻しのぶが話を始めたときも、吉良の不自然さは現れた。 吉良はしのぶの動きを常に気にしていた。 それは、今のしのぶが触れたものを爆破させる起爆材であり、不用意に他人と接触させたくないからである。 不自然の無いよう振る舞ってはいたが、ビーティに疑問を持たせるには十分だった。 「それで、空条さんはカーズという男に戦いを挑みました。私はこの空条邸で待つと、彼に約束を―――」 「なるほど。蓮見さんの巻き込まれた戦いのもう一人は、承太郎か。しかも、俺より年上の時代の承太郎とは…」 しのぶの話がだいたい片が付いた。 これまでの承太郎の動向。 ツェペリの気にしていたスティーリー・ダンと思われる人物を無慈悲に惨殺したことや、アヴドゥルが看取ったポルナレフの遺体を見つけたことまで、何一つ隠し事はしなかった。 そして、吉良吉影という男について。 吉良本人も知り得ない、未来の吉良としのぶの関係について。 吉良が川尻浩作に扮し、しのぶとひとときの結婚生活を送ることまで。 あまりの内容に吉良は呆気にとられた。 「しかしその承太郎って男は、蓮見がいながら構わずDIOたちとの戦いを続けたのか? 」 「…………」 「ああ、あり得るな。話を聞く限り、今の承太郎は何かがおかしい。まるでダーティハリー症候群だ。このまま放ってはおくわけにはいかん」 吉良に不信感があるビーティーが承太郎に対し不平を漏らすが、アヴドゥルはむしろ承太郎の現状に不安を感じている。 そして吉良は、綱渡りのような情報交換に疲弊していた。 今のところ致命的な矛盾は無いが、このままではいつかボロが出るだろう。 何か手を打たなければならない。 「だが、その承太郎が生きているという事は、同じように見せしめとなったジョセフ・ジョースターもまだ死んでいないということだろうか? それにジョルノ・ジョバァーナも―――」 「うむ。花京院、君の意見を聞こう」 情報交換の指揮はアヴドゥルとツェペリが中心となり、他の者は黙って質問に答える側だ。 ドルドに対しはなんとも思わないが、沈黙を保つ花京院にはビーティーだけでなくアヴドゥルも違和感を覚えていた。 「……さあ。私からはなんとも言えないな。君と違ってシンガポールまでしか知らないし、ここへ来てからもろくな人間と出会っていない」 話を振られ、ラバーソールはなんとか切り抜けようとした。 だがその後すぐに、今度はラバーソールがこれまでの経緯を話をするターンが回ってきた。 花京院からはほとんど何も聞かされていないため、彼も過去を創作する。 水のスタンドを使うアンジェロと言う外道を始末した事、その際に、川尻しのぶの夫らしき人を死なせてしまった。 などと言う内容などだ。 吉良の語ったカバーストーリーと比べて出来が悪く、ビーティーから鋭い指摘がある度に、言葉を詰まらせていた。 (やはり、この花京院も、何かを隠している……) (畜生ッ! このビーティーとか言うクソガキをぶち殺してやりてえ! しかしこの人数相手に、妙なことは出来ねえ……) ラバーソールは焦燥を誤魔化し、『法皇』を見る。 スタンドには変化はない。 (花京院ッ! もう限界だぜ! なにか指示を寄越せッ! このままじゃあ――――――) その後、今度はアヴドゥルたちが自分たちのこれまでの経緯を話し始めた。 ポルナレフの死、ホテルでの出来事、ワムウという男、ドルドの駆除対象である危険生物バオーについて等だ。 ビーティーに巧みな話術によりジャイロの存在はうまく隠され、ジャイロ無しでは知り得ない情報(主催者スティールの事など)も当然出なかった。 一通りの話が終わった頃、時計の針は既に午後2時半を回る頃だった。 「では、このままここで待機する。承太郎の帰還を待つのだ。異論のある者はいるか?」 アヴドゥルの言葉で、情報交換は締めくくられようとしている。 川尻しのぶの言葉を信じるならば、承太郎は必ずここへ戻ってくる。 まずは、それを待ち、合流の後にその後の方針を決定するという流れだ。 異論がでるはずもないが、若干1名は納得していなかった。 無論、ラバーソールだ。 (冗談じゃねえ… この人数に加えて、承太郎まで…… 花京院の奴は一体何をしているッ?) そんな2人を余所に、アヴドゥルはビーティーを見る。 そろそろジャイロを呼び出していいんじゃないか? そう問いたいのだろう。 まだ屋敷内にも不安要素は残っているが、ここらがビーティーとしても譲歩のし時だ。 いつまでも門の外で待たされ、ジャイロもそろそろ我慢の限界だろう。 ビーティーは目線でドルドに指示を送る。 アゴで使われることにやれやれとため息を付き、しかしドルドは静かに従う。 「少し外の空気を吸ってくる」 適当にそう言って、ドルドは立ち上がった。 ビーティーにとっての不安は蓮見(吉良)と花京院(ラバーソール)の2人だ。 彼らについて、アヴドゥルに注意を促しておくべきか? 蓮見は、ツェペリからの波紋の治療を終え、軽く体を動かしている。 溶かされた左腕はそのままだが、それ以外は普通に動くに問題ないほどにまで回復しているようだ。 花京院は…… (ム? 『法皇』の姿が無いーーー) ドルドに指示を送った隙にだろうか? 常に花京院の傍らに構えていた『法皇の緑』の姿が、いつの間にか消えていた。 室内を見渡すも、その姿はない。 花京院が消したのか、それともどこか遠くへ操作させたのか? いや、違う。 ビーティー同様に、花京院(ラバーソール)もきょろきょろとあたりを何かを探しているのだ。 (花京院? クソッ! 『法皇』はどこに行った? 花京院は何を考えている?) (なんだ? 花京院も『法皇』を探しているのか? 自分自身のスタンドを――? 奴が自分で消したんじゃあないのか?) 「おや? 川尻さん、どうしました?」 ビーティーの考えは、アヴドゥルの言葉に遮られる。 川尻しのぶが突然立ち上がり、生気のない表情を浮かべている。 その手には――― 「川尻さんッ! あんた何を?」 猟銃だ。 情報交換の間、アヴドゥルが小脇に置いていた猟銃。 川尻しのぶは猟銃を水平に構え、そして射撃した。 発射された散弾は、縁側から庭へ出ようとしていたドルドの背中を打ち抜き、胸に大きな風穴を生み出した。 ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ☆ (なんだ? 銃声か!?) 屋敷内で、なにか異変が? ジャイロ・ツェペリがビーティーの指示により空条邸の敷地外部にて待機をして小一時間が経過していた。 そろそろ待たされる我慢も限界に達していた頃、屋敷内から聞こえてきたのは、1発の銃声。 おそらく、アヴドゥルのもっていた猟銃だろう。 中で一体、なにが……? ドルドが暴れたのか。それとも、別の敵か? (どうする―――? 行くか? だが―――) 迷うジャイロ。 そこへ、さらに2発目の銃声が鳴り響く。 躊躇うことはない。ビーティーが自分を外に残したのは、こういう事態が発生した時を想定したからじゃあないのか? ジャイロは鉄球を握りしめ、屋敷内部へと駆けだした。 ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ☆ 「グハァッ!」 ドルドの機械仕掛けの胴体の風通しは良くなり、そのまま動作を失い地面に倒れた。 突然猟銃を放った川尻しのぶは、うつむいてなにかブツブツと呟いている。 「川尻さんっ! あんた何をしとるんじゃあ! なぜドルドを撃った!?」 「その猟銃をこっちに寄越すんだッ! さあ早くッ!」 川尻しのぶによる突然の暴挙。 これには流石のビーティーも想定外だ。 何かしでかすとしたら花京院か蓮見だと思っていたからだ。 完全に油断していた。 「猟銃? 猟銃ですってぇぇぇ……?」 しのぶが口を開く。 目は虚ろで、呂律も回っていない。 「アヴドゥルさぁん! あなたにはこの『棒っきれ』が、『猟銃』に見えるのぉおお!?」 足下がふらつき、口からは涎が垂れる。 そして猟銃を再度構え、銃口はビーティーに向けられる。 (いかんッッ!) 「それじゃあっ! ちゃんと! よく見なさぁい!!」 「『魔術師の赤』ッ!!」 アヴドゥルはビーティーを庇って前に飛び出し、スタンドを繰り出した。 銃声が鳴り響くと同時に、『魔術師の赤』も高熱の炎を吹く。 牢屋の鉄格子すら一瞬で焼き付くす炎で、飛来する弾丸を相殺させるのだ。 このゲーム開始直後、屍生人たちから同じ猟銃で狙われたときも、この炎によって防ぎきった。 「ぐゥゥ……」 だが、あの時より至近距離で、しかもとっさにビーティーを庇った直後の銃撃だった。 しかも相手は女性で、ここは学校の教室よりも狭い空条邸の応接室だ。 そのため対応が遅れ、すべての散弾を防ぎきることはできなかった。 急所は守り抜いたが、散弾の一部が炎のガードを避けて、アヴドゥルのわき腹に命中した。 (くそっ なんて事だっ! 腹をやられた。これでは、炎のパワーも落ちてしまうッ! だが―――) 「スタンドだッ! 彼女はスタンド攻撃を受けているッ!」 ビーティーが叫ぶ。 アヴドゥル同様、彼もその結論に辿り着いていた。 川尻しのぶは何者かに操られている。 それが何者の仕業か? それは、今のやり取りですべてわかった。 「花京院ッ! キサマかァッッ!?」 承太郎から聞かされた話でしか知らなかったが、花京院はDIOの配下だった頃、承太郎の高校の校医を操り、襲わせている。 そのときと状況が告示している。 肉の芽の有無は確認したはずだった、どうなっている? だが、情報交換中も、花京院はどこか様子がおかしかった。 なぜもっと早く手を打たなかったのかと、アヴドゥルは悔やむ。 アヴドゥルは『魔術師の赤』の手刀を、花京院に叩き込む。 しかしーーー 「―――くそッ!」 花京院の腕が黄色いスライムで覆われ、攻撃は防がれてしまった。 ラバーソールの『黄の節制』である。 「「何だとッ?」」 アヴドゥルとビーティーが同時に叫ぶ。 スタンドは一人につき一体だ。 花京院にこんな芸当ができるわけがない。 蓮見が絡んでいるのか?とビーティーは視線を切るが、彼もまた事態を飲み込み切れていない様子で、腰を落として身を引いているだけだ。 突然の事態に、考えがまとまらない。 そして、アヴドゥルに攻撃されたラバーソールは、それ以上に焦っていた。 (畜生ッ! とっさに守っちまったッ! 花京院の野郎、俺を見捨てて、おっ始めやがったなッ!?) すべては外にいる花京院の仕業だった。 『法皇』によって情報交換の様子を観察していた花京院は、空条邸での大乱闘を始めさせた。 承太郎がここに来る。 それは彼をターゲットとする花京院にとって好都合だったが、敵側であるアヴドゥルらの集団に行動されては、迎え撃つに都合が悪い。 花京院は、集団を崩壊させるプランを進めることにした。 ドルドが席を立ち、全員の意識がそちらに向いた隙をついて、『法皇』を川尻しのぶへ憑依さる。 そして、まず部屋を出ようとしていたドルドを銃撃。 その後、情報交換中にもっとも厄介だと判断したビーティーを始末しようとしたのだ。 『法皇』による操作を疑われるだろうが、問題はない。 なにせ、現場には『花京院』がいる。 罪はすべてラバーソールが被ってくれるというわけだ。 ラバーソールなどどうなっても問題はない。 『法皇』が暴れている以上『花京院』は言い逃れられないし、ラバーソールが正体を明かしたところで、アヴドゥルにとっては元々敵なのだから意味は無い。 そして、川尻しのぶがとりつかれている以上、『法皇』を攻撃できない。 アヴドゥルが花京院本体(ラバーソール)と交戦している隙を付き、『法皇』の攻撃でアヴドゥルを仕留める。 これで、花京院の勝利は確定する。 「アヴドゥルさぁぁん!! これは猟銃じゃあないわよねぇぇぇぇぇ!!!」 再度、弾を装填し、川尻しのぶがアヴドゥルを狙う。 炎の防御壁の威力は予想以上だった。 ビーティーから先に始末するつもりだったが、予定変更、アヴドゥルが先だ。 今の攻防でビーティーに身を守る能力がないのも明白である。 ここでアヴドゥルさえ押さえてしまえば、後はどうとでもなるだろう。 (まずい! もう一度攻撃されたら、今の俺では散弾を防ぎきれないっ! いや、花京院に捕まっているこの状態では、満足に動くこともできんッ!) 「パウッッッ!!!」 その刹那、ツェペリが飛び上がった。 座ったままの姿勢。腕の力だけでのものすごい跳躍で、ウィル・A・ツェペリは宙を舞った。 「やめんかァ―――っ!!」 (何ッ?) 花京院の予想を超える、ツェペリの超身体能力。 下半身不随と聞いて、侮っていた。 これが波紋の戦士の能力か。 飛び上がったツェペリの身体は川尻しのぶの身体を抱き留め、地面に押さえつけようとする。 だが――― カチリ (なんじゃとッ!?) 彼女の身体が床面に達するよりも早く、彼女の身体が起爆材となり、ウィル・A・ツェペリの身体は木っ端微塵に消し飛んだ。 「ウィル――――――ッッ!!」 奇しくもそれは、ジャイロ・ツェペリが応接室の縁側に辿り着くのと、ほぼ同じタイミングであった。 ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ☆ ローマ文化の町並みから、門をくぐればそこは日本庭園。 豪華な高級自動車に、アヴドゥルのバイク。 離れの書庫に、大きな池。 それらを横目に庭内を走り抜け、銃声のした屋敷の縁側を目指す。 ジャイロ・ツェペリが最初に見えたのは、縁側の廊下で倒れているドルド。 知らない奴とスタンド同士で取っ組み合いになっているアヴドゥル。 そして、自分と同じ姓を持つ異世界の友人、ウィル・A・ツェペリの身体が吹き飛ぶ光景だった。 (馬鹿がッ―――! 何故ノコノコ現れた? 何のためにお前を外に残したと思っているんだッ!? こういう場面になってこそ、伏兵のお前の存在が活きてくるのに―――ッ! もっと慎重に動けッ! 愚か者め!!) 心中で憤るビーティー。 どんな時も冷静沈着な彼とは違い、ジャイロは結構熱くなり易いタイプだ 銃声を聞いて、いてもたってもいられなくなってしまったのだろう。 本当ならばもっと現れるタイミングを図って欲しかったが、出てきてしまったのならば仕方がない。 「くそっ! どうなってやがるッ? どいつが敵だッ!?」 見極めないまま考え無しに飛び出してきたジャイロには、攻撃対象が定められなかった。 一発しか無い鉄球を構え、ジャイロは思案する。 ツェペリが爆死した側でうずくまる女か? 高そうなコートを着込んだ、見慣れぬ金髪男か? いや、やはりアヴドゥルと組み合っている、長い前髪の少年が怪しいかッ!? 「女だジャイロ! 女を狙えッ!!」 ジャイロの迷いを、ビーティーの指示が一蹴した。 花京院が何かをしたのは間違いない。 だが、鉄球は1発だ。 謎の防御スタンドを繰り出した花京院の正体がわからぬ以上、貴重な攻撃手段を無駄に使うことはできない。 「女の腹に鉄球を叩き込めッ! その女は何者かに操られているッ! お前の『回転』ならば、吐き出させる事もできるはずだッ!」 「お おうッ!」 まず優先して無力化すべきは、猟銃を持つ川尻しのぶだ。 猟銃には残弾が5発あった。 ドルドに1発。アヴドゥルに1発。弾はまだ3発も残っている。 しのぶが本当に『法皇』に操られているならば、解放してやらねば。 そうでないとしても、鉄球でしのぶを倒してしまえば、とりあえず猟銃の驚異は無くなるだろう。 「うおおおおおっ!!」 ツェペリの体当たりを喰らい倒れていた川尻しのぶを狙い、ジャイロの鉄球が放たれた。 回転する鉄球が身体を起こしかけていたしのぶの腹部に突き刺さる。 しのぶは低い呻き声を上げ、そして大きく開けられた口から、先ほどから見失っていた『法皇の緑』のヴィジョンが姿を現した。 『何ィィ―――ッ!?』 『法皇』を操る花京院にとっては想定外の攻撃だ。 しのぶの体内から『法皇』が強制的に引きずり出される攻撃など、予測できるわけがない。 身体から飛び出した『法皇』などよそに、側にいた吉良は、鉄球を喰らったしのぶを抱き留める。 そして、無防備に投げ出された『法皇の緑』―――。 アヴドゥルがそのヴィジョンを確認し、そして深い悲しみに襲われる。 やはり、花京院の仕業だったのだ。 (花京院―――ッ! 何故だッ! 何故お前が―――ッ!?) 「うおおおおおおお――――――ッッ!!!」 『黄の節制』に腕を捕まれたまま、アヴドゥルは吠えた。 身体を捻らせ、力の限りを尽くした回し蹴りを、無防備な『法皇の緑』の胴体へと叩き込む。 『グバァァァ!!』 強烈な一撃に見舞われ、『法皇』は苦しみを見せる。 やがて『法皇』のヴィジョンは力無く地面に落ち、そしてその姿を消した。 (よしッ! 『法皇』は仕留めたッ! あとは―――) ビーティーとアヴドゥルは、同時に『花京院』へ視線を送る。 奴はまだ、『魔術師の赤』の手刀を黄色いスライムで防いだ状態のままだった。 つまり、『法皇』へのダメージが届いていない。 この『花京院』は『法皇』の本体では無かったッ! ジャイロはまだ事の成り行きを把握できず呆然としている。 だがアヴドゥルは、既にすべてを理解しつつあった。 花京院とラバーソール。どういうわけかは知らないが、彼らがグルになって仕掛けていたのだ。 『黄の節制』のスタンド使いを知らぬビーティーも、ここで何が起こったのか、だいたいの予想が付いてきた。 こうなると、ジャイロの考え無しの参戦も、結果オーライで済ませられるだろう。 こちらの人的被害は、厄介なドルドと足手纏いのツェペリだけで済んだのだ。 あとは、アヴドゥルとジャイロの2人がかりで偽の花京院を倒して仕舞う。 そしてどこか近くで倒れているであろう、本物の花京院を押さえてしまえば、すべてが終わるのだ。 本当に、そうだろうか? 何か見落としている気がしてならない。 ビーティーは、事件の経緯を振り返る。 そうだ。 これではツェペリが爆死した事に対し、説明が付かない。 彼は川尻しのぶの身体に触れたとたん、爆死した。 明らかにスタンドによる攻撃だ。 だが、これは誰の能力だ? どこかに潜んでいるであろう花京院の能力は、間違いなく『法皇の緑』である。 そしてこの偽花京院の能力は、おそらくこの黄色いスライムだ。 スライムを変形させて身体に纏い、変装すると同時に身を守るスタンドだろう。 どちらのスタンドも、条件に合わない。 アヴドゥルも知らぬ『法皇』の隠れた奥の手という可能性もあるが、やはり現実的ではない。 可能性として高いのは、更なる別の敵スタンド能力の存在。 ここで、未知の攻撃についてもう一度振り返る。 ツェペリは川尻しのぶの身体に触れたことにより、爆死した。 普通なら、ここでしのぶに触れる事が危険だと、誰だって思う。 だが、奴は違った。 鉄球に弾き飛ばされたしのぶを、真っ先に抱き抱えた奴。 それも、彼女を気遣っての行動ではない。 彼女の持つ武器、猟銃を手に入れるため。 そしてその他の状況を考慮しても、消去法でも、爆破の能力の本体は、奴以外には―――――― 「さて、聞かせてもらうか? キサマはいったいーーー」 「アヴドゥルッ! 蓮見だッッッ!!!」 ラバーソールへ尋問するアヴドゥルの言葉を遮る、ビーティーの叫び声。 そしてそれと同時に鳴り響く、もはや聞きなれた轟音。 猟銃を水平に構えた吉良吉影の放った弾丸は、モハメド・アヴドゥルの胴体を撃ち抜いた。 ★ ★ ★ ★ ☆ ☆ ☆ ☆ こいつは鮫だ こいつにゃ歯がある その歯は面に見えてらあ こいつはメッキース こいつにゃドスがある だけど そのドスを見た奴はねえ 投下順で読む 前へ 戻る 次へ 時系列順で読む 前へ 戻る 次へ
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設定 不思議の国のアリスみたいな服装をしている魔女 ゲームと人形が好きでよく某3部悪執事と間違われる事もある クロスとは血の繋がっている姉妹で妹である ちなみにジョジョで好きなキャラは花京院典明だそうだ ツインテだったりサイドテールだったりポニテだったりと髪型をちょくちょく変える 人形といっても操り人形だったり普通の愛らしい人形だったりと色々作れる 燔蔵とは知り合いだが…釖剣の人形を作らされてるらしい 頑張れアンクちゃん 人格番号2番の人形を新しく作ってあげたりなど 仲はまあまあ良い オリキャラパロで演じたキャラ ジョジョ3部 テレンス・T・ダービー ケロロ軍曹 モケケ(人形は2番) のみである 好きな曲は人形裁判やブクレシュティの人形師など 後、ジョジョASB花京院のテーマ「法皇の緑」
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++第八話 使い魔の決闘②++ 花京院は今、ギーシュと向き合っていた。 二人の距離はおよそ十歩ほどだ。花京院のスタンドの射程距離には十分入っている。 いつでもスタンドを動かせるよう構えながら、花京院は首を巡らせた。 二人の周りには、いつのまにか観客たちが集まっていた。 平民とメイジが戦う。 そのトップニュースはあっという間に学校中に知れ渡った。 噂を聞きつけた生徒たちは一目見ようと広場に集まった。 普段は薄暗く、人気のないヴェストリの広場が、今日だけは大勢の人で溢れ返っている。 あまりの人の多さに少々呆れながら花京院はギーシュを見た。 決闘を前に、緊張しているかと思ったが、ギーシュは気楽そのものだった。 先ほどから観客たちに手を振ったり、女の子には笑みを投げかけたり、なにかと観客たちにアピールしている。 「諸君! 決闘だ!」 ギーシュがバラを掲げ、声を張り上げた。 たちまち人垣がどよめき、歓声が巻き起こる。 ギーシュはもう一度観客たちに手を振り、花京院に視線を向けた。 二人は広場の真ん中に立ち、にらみ合う。 「とりあえず、逃げずに来たことは、ほめてやろうじゃないか」 「逃げる必要がないからな」 「お互い準備は出来てるようだ。そろそろ始めようか」 ギーシュはそう宣言した。 始まると同時に、花京院はスタンドを出して構える。 彼のスタンド、『法皇の緑(ハイエロファントグリーン)』には近距離パワー型のようなパワーやスピードはないし、特別な能力もあまりない。 しかし、それだけが強さではないことを花京院は知っている。 花京院と対峙するギーシュは余裕たっぷりの笑みを浮かべていた。 キザな仕草でバラを花京院に向ける。 「僕はギーシュ・ド・グラモン。栄えあるグラモン家の四男だ。たとえ相手が平民であろうと、手加減はしない」 ギーシュはバラの花を振った。 花びらが一枚、宙を舞う。 ひらひらと花びらは揺れ、次の瞬間、戦士の人形になった。 甲冑を着た女戦士の人形だ。大きさは普通の人間と同じぐらいだが、甲冑から覗く肌の色は甲冑と同色で、固い金属でできているらしい。 がしゃん、と人形が一歩前へ踏み出した。 「僕はメイジだ。だから魔法で戦う。……おっと、言い忘れていたな。僕の二つ名は『青銅』。青銅のギーシュだ。したがって、青銅のゴーレム『ワルキューレ』がお相手するよ」 ギーシュがバラを振ると、女戦士の形をしたゴーレムが突進してきた。吸血鬼ほどの速さではないが、プロのランナーぐらいの速度はある。 花京院のスタンドは近距離を得意としない。近寄られるのは得策ではなかった。 スタンドを操作し、ゴーレムに向けて両手を構える。 「エメラルドスプラッシュ!」 スタンドの両手からエメラルドの何かが放たれる。一見体液にも見えるそれは破壊のエネルギーの像だ。触れれば砕き、貫くことができる。 エメラルドスプラッシュは真っ直ぐにゴーレムに当たり、吹っ飛ばした。 上半身を仰け反らせながら後ろに吹っ飛んだゴーレムを見て、ギーシュの顔が強張った。 「き、君は今何をした。僕のゴーレムに何をしたんだ?」 「答える必要はない……と言いたいところだが、少しだけ教えよう。僕はある力を持っている。君のゴーレムと同じだ。ただ、誰にも見えないし、触ることもできないがな」 「……」 ギーシュは無言で花京院を睨みつけている。本当か嘘か図りかねているようだ。 軽く肩をすくめるようにして、花京院は言った。 「別に信じなくていい。……ただ、これは決闘だからな」 そう、これは決闘なのだ。ただの勝負ではなく、決闘。 卑怯な手段を使って、相手を倒すことが“勝利”ではない。 正々堂々、相手を打ち砕く。それが“決闘での勝利”なのだ。 だから花京院はスタンドでいきなり攻撃しなかったし、スタンドのことを教えた。 わざわざ相手に魔法を使わせるチャンスを与えたのもそのためだ。 ……これは彼女の誇りをかけた決闘だ。 だからこそ、負けるわけにはいかない。 絶対に、勝たねばならない。 ゼロと侮辱された彼女のためにも。 「……不思議な力か。信じがたいが、本当のことなんだろう」 少々驚いた様子で、ギーシュは呟いた。 そして、バラを振り、新たに六体のゴーレムを作り出す。 「ならば、僕も全力で相手をしよう」 再度、ギーシュがバラを振ると、たちまちゴーレムは花京院に向かって襲い掛かってきた。 合計七体のゴーレムが、花京院めがけて向かってくる。 花京院はそれを視界に納めると、狙いをつけた。 「エメラルドスプラッシュ!」 スタンドの手から無数のエメラルドが飛び出す。 それらはギーシュのゴーレムに当たり、相手を後方へと弾き飛ばした。 「この程度の攻撃で、倒せるとでも思っているのか?」 「戯言は勝負が終わってから言いたまえ」 地面に倒れたゴーレムたちは起き上がり、また花京院に向かって突進する。 魔法で動いているせいか、痛みや恐怖はないようだ。その動きにはなんの迷いも怯えも感じられない。 とは言っても、動きが見えている以上、その攻撃は意味がない。 花京院はまたエメラルドスプラッシュを放った。 後続のゴーレムと派手にもつれ合いながらゴーレムは後方へと転がる。 何度も、何度も、ひたすらそれを繰り返す。 意味のない、無駄なことをなぜ続けるのか。 花京院にはそれが疑問だった。 しかも、ギーシュは笑みを浮かべていて、何かたくらんでいるようだ。 「お前が何を考えているのかは知らないが、こんな攻撃を続けるつもりなら……」 その時、花京院は気付いた。 自分とゴーレムの距離。それがいつの間にか、狭まっている。 十歩ほどの間があったはずが、今は三歩ほどの距離まで近くなっていた。 ……まずい! 花京院は距離を開けようと足に力を入れたが、動かなかった。 愕然と足元に視線を落とす。 足元の地面が盛り上がり、足首を固定するように固まっていた。それもただの土じゃないらしく、蹴ったぐらいではびくともしない。 物音が聞こえ、顔を上げると、目の前にゴーレムがいた。 危険だと感じる余裕さえなかった。 次の瞬間にはゴーレムの拳が身体にめり込んでいたからだ。 「ごふっ!」 身体の奥底に響くその衝撃に、一瞬意識が遠のく。 かろうじて意識だけは保ったが、痛みが消えるはずもない。 身体を折り、花京院は地面に膝をついた。 「なんだ。もう終わりかい?」 「……いや、まだだ」 今度はゴーレムの蹴りが飛んできた。 脇腹に当たり、その衝撃で息が止まりそうになる。 地面をごろごろと転がりながら花京院は体勢を立て直そうとするが、すぐ側には別なゴーレムが立っている。 「降参するかい?」 「するつもりはない」 ギーシュの問いに、花京院は首を振った。 すると、ゴーレムの足が花京院を蹴り上げた。 束の間、宙に浮き、地面へと叩きつけられる。 「がっ……!」 肺の中の空気が外に出される。 横向きに倒れたまま、花京院は荒い呼吸を繰り返した。 「まだやるつもりかい?」 「当たり前だろう」 ゴーレムはゆっくりと足を上げた。 踏み下ろすのだと気付いた瞬間、花京院は右腕を構えていた。 落とされた足とそれを受け止める腕。 ごきり、と鈍い音がした。 痛みはあったが、どこか曖昧なものになっていた。 ……腕が折れたな 冷静に、花京院はそう思った。 落ち着く暇もなく、ゴーレムの攻撃は続けられる。 一つ一つがプロボクサーの一撃のように重く、速い。 避けることはおろか、受け止めることすらできない。 何度も何度もゴーレムの攻撃を喰らい、そのたび花京院は吹っ飛ばされる。 ギーシュは花京院の側まで来て、見下ろした。 「いい加減、諦めたらどうだい?」 「……そうだな。その角度がいい」 花京院は口元に笑みをにじませる。 ぼろぼろになっても笑みを浮かべる花京院を見て、ギーシュは怪訝な顔になった。 「頭でもやられたのかい? なんの角度……」 その時だった。 この勝敗は明らかに見えるこの状況の中、花京院だけは見えていた。 勝利でもなく、敗北でもなく、ただ今だけを見ていた。 スタンドがギーシュの口の中へと入っていく、この瞬間を。 狙っていたのは……この時だった。 To be continued→
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◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 光。 花京院典明がまぶたをゆっくり開くと、そこは緑の海だった。 低く輝く太陽が、一面に広がる草原を鮮やかな緑に燃やしていた。 冷たい風が草木を揺らし、さざなみの調べを奏でていた。 離れた所には、背を向けて佇む女神の姿。 その長い髪は、朝日を受けてエメラルドのように輝いていた。 未だ覚醒しきらぬ意識の中、花京院はそんな絵画のような風景を呆然と眺めていた。 こんな景色を見るのは久々だな、と花京院は思う。 思えば日本からカイロまでの旅路は、海と渇いた土地がほとんどだった。 もう何年も見ることがなかった気さえする緑一色の風景。花京院の目には染み入るほどに鮮烈だった。 今は、さっきまで激闘を繰り広げていたことも、そもそもここになぜ呼び出されたのかも忘れていた。 ――しばらくの間、こうしているのもいいか。 ぼんやりと花京院がそんなことを考えた時、エメラルドの女神がこちらを振り向く。 ……振り向こうとして、そっぽを向いてしまう。 『少女』は服の袖で顔を拭ってからもう一度振り向き、無表情でゆっくりと歩み寄りながらこう言った。 「あの……大丈夫ですか?」 返答のために花京院が身体を起こそうとすると、右の脇腹に痛みが走る。 と同時に意識が醒め、ここに来てからの事を思い出す。 僕は『八坂神奈子』という、機関銃と釣り竿のスタンドを携えた、『神』を名乗る存在と戦っていた。 劣勢に陥っていた所、『プロシュート』という、スタンド使いが味方として加勢する。 そして彼の援護の為にスタンドの『盾』を構築していたが、闘いの結末を見ること無く、僕は気を失ってしまった。 彼女は、確か……その闘いの直前まで『プロシュート』と同行していた少女だ。 「君は……! そうだ、君、機関銃と釣り竿を持った女を見なかったか!? 金髪の、スーツを着た男は?」 「機関銃と釣り竿の……神奈子様なら、既にここを離れました」 「……神奈子『様』、だって!?」 神奈子『様』。 先ほどの襲撃者に敬称を付ける彼女は何者だ。 花京院の表情が強張る。 痛みをこらえて立ち上がり、いつでもスタンドを出現させられるように身構えた。 ……よし。脇腹の傷は、動けなくなる程じゃない。 警戒の色を強める花京院を見て、少女は一瞬、固まる。 足を止め、続けた。努めて平静を装っている様子。 「スーツの男の人……プロシュートさんは、私が駆けつけたときには、既に…… 既に、神奈子様の手に掛かって……亡くなって、いました」 少女は言葉を絞り出した。 少女の視線の先……花京院が後ろを振り向くと、五メートルほど背後の岩陰に、先ほど共闘したスタンド使い…… プロシュートの亡骸が、仰向けで横たわっていた。 首の辺りが、異様な形に凹んでいる。首の骨を折られて死んだのだろう。 ガトリング銃を軽々と扱う『神』・八坂神奈子の腕力なら、容易だったに違いない。 「……あのっ!」 少女の声で、花京院は向き直る。 「どうして、神奈子様から攻撃を受けていたんですか? 事情を教えていただけませんか? 私が、神奈子様を止めなければならないんです!」 嘘を言っている目ではない。 ……どうやらこの少女は殺し合いに乗っている八坂神奈子と違い、逆に彼女を止めようとしているらしい。 そして今の状況から察するに、この少女が八坂神奈子から僕の生命を守ってくれたのだろう。 「なにやら、深い事情がありそうですね……。 僕の名は……」 そのままの立ち位置で、お互い踏み出せば手を取り合える距離で、二人は情報交換を開始した。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 花京院は東風谷早苗と名乗る少女に促されるままに、まず八坂神奈子と邂逅した際のやりとりを話した。 なるべく、詳細に、一字一句漏らさぬように。 「『生贄』に、『儀式』……『幻想郷の最高神』…… ……神奈子様は本当にそう仰ったのですか?」 全く信じられない、という風な様子で早苗はしばし黙りこくる。 手持ち無沙汰となった花京院が時計に目をやると……既に6時を回ってしまっていた。 「あっ、ごめんなさい、気づかなくて」 そんな花京院の様子を見た早苗は、1枚の紙を手渡した。 参加者名簿だ。 「つい先ほど、主催者の片方……荒木飛呂彦の声で第1回放送がありました。 ……亡くなっ、いえ、放送で呼ばれた名前の横に、印をつけておきました」 見ると、所々の名前の傍に『×』が付いている。 90人の参加者のうち、×がついているのはざっと20人弱か。 およそ5分の1が、わずか6時間で命を落としたのだ。 花京院、息を呑んで、まずは一緒に旅をしていた仲間の名前を探す。 空条承太郎、ジョセフ・ジョースター、ジャン・ピエール・ポルナレフ。 いずれの名前にも×は付いていないことに、花京院は安堵した。 仇敵・DIOにも、×は付いていない。……逆に、既にこの場で何人かの命を奪っているのかもしれない。 DIOの手下、ホル・ホースもまだ生きているようだ。 確か、奴はつい数時間前に襲撃してきた所で自滅して、重傷を負い再起不能となったはず。 そんな状態で殺し合いに呼び出されたりしたら、真っ先に命を落とすはずだが……。 浮かびあがる疑問をこらえて、花京院は鉛筆で自分の名簿に×の印を写し取り始める。 『×プロシュート』 印をつけ、後ろに横たわる彼の亡骸と交互に見比べる。 名前の横に付けられた鉛筆書きの×の記号に、拭い様のない重みが加わったように感じられた。 横に×と名付けられた名前の者は、彼のように、既に命を落としてしまった者なのだ。 「あの……プロシュートさんの知り合いの方、ですか?」 そんな花京院の様子を見て、早苗が尋ねてきた。 「いや……さっき会ったばかりです。君の知り合いですか?」 「私も……ここで初めて会いました。 スタンド使いである以外、素性はほとんど話してくれませんでした。 怖い雰囲気の人でしたけど、初対面の私に対してもなんだかんだで面倒見良くしてくれました。 ここで手に入れたばかりの、『スタンド』の使い方について教えてくれたり……」 「スタンドを『手に入れる』……だって?」 「プロシュートさんも、驚いていました。 この支給された『DISC』を頭に差し込むと、スタンドが使えるようになるみたいで。 神奈子様の釣り竿のスタンドも、私と同様にDISCを支給されたのだと思います」 早苗は頭から、花京院の支給品『空条承太郎の記憶DISC』と同じ形の円盤を半分だけ引っ張りだして見せてくれている。 「『DISC』……!」 花京院の支給品、『空条承太郎の記憶DISC』に残されていた、最新の記憶が脳裏をよぎった。 最新の記憶……40歳の空条承太郎が見知らぬスタンドの手刀を受け、DISCを抜き取られる瞬間のことだ。 あの時確かに、記憶DISC以外にも別のDISCを抜き取られる感覚の記憶があった。 あのスタンドは、記憶だけでなくスタンドもDISC化して抜き取り、他者に与えることができる、ということなのか。 「あの、何か……」 「いや、なんでもありません……」 現状では、やはり何とも結論付けることはできない。 ……そもそも、この承太郎のDISCに込められた記憶さえ真偽が不明なのだ。 今後は早苗や、あの八坂神奈子のように、DISCの力でスタンドを得る者が現れるかも知れない、 ということだけは気に留めておく。 「あの、『外の世界』では、『スタンド使い』は珍しくないのですか?」 「どうでしょうね……。僕は生まれつきスタンドを持っていたけど、 最近までスタンドを持っている人と出逢ったことは無かった。 だけど、今までたまたま遭うことがなかっただけで……」 「プロシュートさんみたいに、スタンド使いのギャング?……みたいな人がたくさん居るのでしょうか?」 「……そうかも知れません」 共闘した彼からは、芯の通った『凄み』や重い『覚悟』、そして抜け目のない『したたかさ』を感じた。 彼が言っていたように、『スタンド使いの』ギャングだったのだろう。それも相当の百戦錬磨。 自らのスタンドを駆使して、スタンド使いの仲間と共に、スタンド使いの敵を相手にして、数多くの修羅場をくぐってきたのだろう。 『自分には一生この「法皇の緑」を見ることのできる友達が現れない』などと 半年前まで思い込んでいたことが、馬鹿馬鹿しくなってきた。 花京院は思う。 もし、DIOと出逢う前にスタンド使いの友ができたなら…… 『肉の芽』を植え付けられ、道を外れかけることもなかったかもしれない、と。 例えば……承太郎たちや、DISCの記憶に残っていた、 名簿にも載っている、『彼ら』のような友達と遭うことができたのなら、と。 『×紅美鈴』 「くれない・みすず……」 小さな声で、花京院が名前を読み上げる。 「……ホン・メイリン、です」 早苗が近寄ってきて、すかさず訂正に入った。 「この近く、ポンペイに亡骸がありました。 丁重に弔われていました。……きっと彼女は最期まで、 私の知る、やさしい妖怪の『紅美鈴』だったんだと思います」 「……妖怪?」 「もともと、この土地……幻想郷は、科学の発達によって存在を否定された 妖怪や神が存在を維持するために創られた領域なんです。 外界で幻想とされ、存在できなくなった者達が、ここでは今も生きています。 神様である神奈子様に諏訪子様も、外界の信仰が薄れて存在が危うくなったために、ここに移り住んできたんです」 「……それから私も」 そう言うと早苗は、おもむろに足元の木の葉をつかみ、胸の前に両掌を捧げて目を閉じ、一言、何かを呟く。 すると早苗の掌の上に乗った木の葉は小さなつむじ風に乗り、くるくると回り出した。 「『風』が……!」 「これは『スタンド』ではない、『奇跡を起こす程度の能力』。 神奈子様と諏訪子様から小さい頃より教わってきた、守矢神社に代々伝わる秘術なんです。 その気になれば、突風だって吹かせることができちゃいますよ。 私は、守矢神社の風祝……巫女として、お二方に付いて移住してきたのです」 固かった早苗の表情、ほんの少しだけ緩んだ。 「美鈴さんとは私が幻想郷に移り住んでから知り合いました。 美鈴さんは姿形も人間とほとんど変わりませんけど、 ……何というかそれ以上に、中身の方が、人間より人間じみて人間臭いヒト、でしたね……。 ……紅魔館の門番で、よく居眠りして、咲夜さんからナイフを投げつけられたりしてましたっけ……」 『×十六夜咲夜』 花京院が名簿を見ると、その咲夜という名前の傍にも×が付いていた。 「……咲夜さんは、紅魔館のメイド長、でした。彼女は人間です。 彼女がどこで、どのようにして命を落としたのか。私にはわかりません。 まさかあの人まで死んでしまうなんて。……まだ実感が湧きませんが……。 ですが正直信じられません。……ナイフの達人で、時間を止めることまでできるあの人が」 「時間を、止める?」 それは、未来の花京院が命を賭けて解き明かすはずだったDIOのスタンドの秘密であり、 未来の承太郎が新たに目覚める……ことになっている、スタンド能力だった。 「時間を止めるなんて、いくら貴方がスタンド使いとはいえ、流石に信じられないでしょうけど」 「……彼女はスタンド使いではないのですか?」 「違うと思います。少なくとも、スタンド像を見たことはありません。 ……レミリアさんの事が心配。紅魔館の主、つまり美鈴さんと咲夜さんのご主人様で、 吸血鬼なんですけど」 「……何だって!?」 「どうしました?」 「吸血鬼なら、僕も知っています」 「外界にいるなんて、始めて聞きました」 「……そのレミリアという吸血鬼は、『乗って』いたりはしませんか?」 「さっきあんなことがあったので、自信をもって言うことはできなくなってしまいましたが…… 少なくとも私の知る限りでは、無闇に殺しあうようなヒトではありません。 ……貴方の知っている吸血鬼というのは?」 「DIOという男です。 他者を害するのに全く躊躇のない悪しき吸血鬼で、スタンド使いです。 僕たちはここに連れてこられるまで、DIOを倒すための旅を続けていました」 「……もしかしてその顔の傷跡は……」 早苗の視線が、花京院の両目に移るのが感じられた。 花京院は、エジプトの砂漠で水のスタンドの使い手に襲われた時の事を思い出した。 その時の両目の上下に残る傷跡のことを言っているのだろう。確かに、ただの学生にはあまりにも不釣り合いだ。 サングラスが無いと目立つかも知れない。夜だったので外していたが。 「ええ、DIOのけしかけたスタンド使いの攻撃によって受けたものです。 日本からDIOの待つカイロまで、何人ものスタンド使いと戦いながら旅を続けてきました。 名簿にあるこのホル・ホースのように、金で雇われただけと思しき者、 DIOの細胞・肉の芽を脳に植えこまれて無理矢理操られた者、 それから、DIOのためなら生命を捨てて良いと、そんな狂信的な気持ちで襲ってくる奴らもいました。 僕が思うに、そのカリスマがDIOの一番恐ろしくて危険なところだ……」 「肉の芽……ですか」 考えこむ早苗を横目に、残りの×マークは黙々と、手早く書き写した。 聞きたいことは数多いが、あまりゆっくり話し込んでもいられない。 既に亡き者となってしまった彼らについて話すのは、またの機会でいい。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ プロシュートの亡骸は、ポンペイ遺跡、紅美鈴のそばの石畳の下に埋められた。 「ありがとうございました、プロシュートさんの埋葬を手伝ってくれて」 「礼を言われるほどのことはしてません。……彼が駆けつけてくれなかったら、死んでいたのは僕の方だった」 手伝ったといっても、花京院はプロシュートの亡骸を運んだだけなのだが。 穴は早苗のスタンド『ナット・キング・コール』で石畳を外すことによって、すぐに掘ることができた。 もちろん、切り落とされたプロシュートの腕も、スタンドで修復済みだ。 「あとは、美鈴さんの右足も返さないと」 そう言って、早苗はネジ止めされていた自分の右足を模型部品の様に取り外した。 それを赤毛の中華風の服装の女性、紅美鈴の脚にネジで取り付けると、何事も無かったかのように元通りとなった。 続けて早苗はデイパックからもう一つ『右足』を取り出す。 その断面はまるで模型のジョイントの様だ。 早苗の脚の断面に合わせ、ネジを差し込むと……。 「……よし。動けます。美鈴さん、ありがとうございました」 早苗は先ほどと同様に2本の脚でしっかりと地面を踏みしめ、美鈴に頭を下げた。 「便利なスタンドですね」 「おまけに、ルックスもイケメンなんです。 ……では私は、これで。承太郎さんに、ポルナレフさん、 それから、ジョセフさんとお会いできたら、よろしく言っておきます」 作業の片手間だったが、必要な情報は大方交換し終えた。 そうだ、僕達にもうここにいる理由はない。 気持ちが逸るのか、早苗は足早にこの場を去ってゆく。 「ええ、行きましょう」 取り残されぬよう、花京院は慌てて早苗の後を追う。 「えっ?」 「……えっ」 まるで予想していなかった、という風な反応の早苗。 そんな早苗の反応は、また花京院にとっても予想外のものだった。 しばしの間、気まずい沈黙が流れる。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 「どうして、貴方がついてくるのですか?」 早苗が問いかけてくる。 「戦力は多いほうが良いでしょう? あの機関銃は、ここにいるスタンド使いの中で僕の知る限り 『法皇の結界』でないと防げません。 君の『ナット・キング・コール』も近接パワータイプに見えますが、 単純にスピードが速いだけのスタンドでは、あの連射は捌き切れないとでしょう。 ……それこそ時間を止めでもしない限りは」 と答える花京院。 だが早苗は 「貴方が私わざわざについてきて、危険を冒す理由は無いのではないですか。 これは守谷神社の、私達家族の問題なんです。私一人で行かせてください。 貴方をプロシュートさんのように……巻き込む訳にはいきません」 と素っ気ない。 「君一人では、危険すぎます。……勝算は、あるんですか?」 食い下がる花京院に、早苗が振り向いて答え、そして尋ねた。 「仮に神奈子様と私がお互い万全の状態で、本気で戦ったとして……勝算は……それこそ万に一つでしょう。 おまけに今の神奈子様は機関銃とスタンドまで持っています。 でも、私が説得すれば、きっとわかってくれるはずです。 ……見たんです。私が駆けつけた時、神奈子様が私に向けてスペルカードを放った時……神奈子様は、泣いていた。 本心から殺し合いたいと思っている訳ではないんです。きっと……いえ、絶対に。 ……ねえ、肉の芽で操られた人って、どんな感じなんですか。 操られて、親しい人と殺しあうことになったら、やっぱり泣いたりするんですか」 花京院は、自身が肉の芽で操られていた頃の、忌まわしい記憶を思い出した。 「肉の芽を植え付けられると、ただひたすら、DIOのためだけを思って行動するようになってしまう。 断言できます。たとえ肉親と殺しあうになっても、涙を流したりはしません。 DIOのためにしか涙を流せなくなってしまいます」 その言葉には実感が込められていた。 それは早苗にも伝わったのか。彼女は微笑み、 「よかった、恐らく違うだろうとは思ってましたが……。 これで……これで肉の芽で操られている可能性はなくなりました。 安心して説得に向かえます。では……失礼」 酷く悲しそうな声で言って、小さくおじきして早足で去ってゆく。 花京院はなおも追いすがる。 「ッ……! 来ないで下さい!!」 遂に早苗が声を荒らげた。予想だにしていなかった剣幕に、花京院の足が思わず止まった。 「わからないのですか。 きっと神奈子様、貴方の事は問答無用で襲います。 説得の可能性があるのは私か……諏訪子様だけです」 そう告げて、早苗はデイパックから、太い木製の角柱……御柱(オンバシラ)を取り出し始めた。 デイパックの中に折りたたまれた紙から、ポケットの容量を無視してズルズル、ズルズルと 早苗の手で引っ張りだされたそれは、全長2メートルを優に超えている。 「これ以上、神奈子様が誰かを傷つける所を見たくは、ないんです。 もう、神奈子様に罪を重ねさせないで。 貴方のお気持ちは、お気持ちだけですが、ありがたく、受け取っておきます……さようなら」 早苗はオンバシラを肩に担ぎ上げ、勢い良く走りだす。 そして十分な加速がついた所で、 「『メテオリック! オンバシラァァーーッ!!』」 叫ぶと同時、早苗は御柱を担いだまま空に向かってジャンプ。 跳び上がる勢いそのままに、御柱は重力を無視して高度を上げてゆく。 早苗の身体は御柱にぶら下がる形で宙に浮き始め、遂に両足が地面を完全に離れた。 追い掛ける花京院。だが、もう遅い。 ……御柱とそれにぶら下がった早苗が遠ざかってゆくのを、花京院はただ立ち尽くして見送ることしかできなかった。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 無事離陸が成功した所で、早苗はスタンド『ナット・キング・コール』を御柱の上に出現させた。 そのまま本体である彼女自身を御柱の上に引き上げ、体を横向きに、足を広げて立ち上がる。 そして両足にスタンドの『ネジ』を打ち込んで固定すると、早苗はスノーボードや、サーフィンのような体勢をとる。 「これで、このオンバシラをコントロールできる……。あまり小回りは利きそうにありませんが」 オンバシラに乗り、早苗は冷たい朝の大気を切り裂きながら行く。 (彼には『私が説得すれば、きっとわかってくれるはずです』などと言ってしまいましたが、 果たして神奈子様を言葉で止められるかどうか) ――物心着く前から、神奈子様と諏訪子様は、私の傍におられました。 ――幼い頃から、色々な昔話、そして、守谷の秘術を教えて下さりました。 ――ですが、信仰が薄れた外界で、お二方は私以外には視えない存在でした。 ――……いずれ完全に消滅しつつある運命だったのです。 ――私の家族にも、学校の友達にも視えないのです。 ――いや……外界に本当に友達と呼べる人が果たしていたかどうか。 ――私にとっては家族同然の、私を語る上で欠かせない存在であるお二方。 ――誰も彼女たちに、私の一部ともいえる存在に気付いてもらえないのです。 ――……外界では、心の底から理解しあうことなど、誰ともできなかった。 ――血の繋がった家族とさえ。 ――だから、神奈子様と諏訪子様から幻想郷という土地に渡ると聞いた時には、 ――迷わず私もついていくと決心しました。 ――そして幻想郷に渡ったあの日から、 ――神奈子様と諏訪子様の信仰のためにこの私の生命を捧ぐと決めていました。 ――お二方にとって私は、何十代も続いてきた風祝のうちの一人に過ぎないのかもしれない。 ――……だけど私にとってお二方は、血の繋がった両親よりも大切な存在なのですから。 (だから、あの時の神奈子様の涙、そして、『愛している』というお言葉……錯覚とは思えない。 錯覚であるはずがない……私が、信じなければ) そう言い聞かせる早苗の脳裏を、花京院から伝え聞いた神奈子の言葉がよぎった。 曰く、『この土地が決めたシステムの基本…―――『生贄』という概念』 曰く、『此度の『儀式』のルールを変えることは私にも不可能だ。生贄は89人、生存者は1人。 『幻想郷の最高神』がそう決めたのなら、私も従わざるを得ない』 花京院は戦いの前に神奈子にそう告げられたという。 幻想郷にそんなルールがあるなど、早苗はもちろん聞いたこともない。 だが、花京院が嘘を言っているようには思えなかった。 そしてもし、その言葉を真実とするなら…… 神奈子より直接伝え聞いた『愛している』という言葉と、等しく真実であるとするなら……。 (……もはや言葉など何の用も為さない、この世界にとって、 幻想郷にとって致命的な変化が起こってしまったのかもしれない。 ……神奈子様はそれを理解してしまわれたのか。 故に、神奈子様は殺戮の道を選ばざるを得なかったのか) (……だとしても、私は見たくはない! 神奈子様のあんなお姿を……! 諏訪子様に、霊夢さんに、皆を手にかけた結果、神奈子様が最後の一人として生き残ったとして…… 89の屍の山の頂点に立つ血塗られた神として崇められて、それが何だというのか……) ……ならば、どうする。 説得が通じなければ……戦って、殺してでも止めるしかない。 神奈子様と諏訪子様の為にこの命捧ぐこと、惜しくはない。 だが……いざその時になってみて、死ぬのが怖くないなどとは、言えなくなるかもしれない。 だけど、その恐怖が私の弱さであるなら……それは乗り越えなければならない。 プロシュートさんが『弱さを乗り越え立ち上がれ』と遺したように、私は乗り越えてみせる。 ……神奈子様と私の力の差は、歴然としている。 自分が傷つき命を落とす恐怖くらい乗り越えられなければ……万に一つの勝機さえ見いだせないだろう。 そう、あの人から教わったように…… 愛する神奈子様を殺すために、『己の精神を支配する』。 愛する神奈子様を殺すために、『己を知り』、自らの能力を最大限に振り絞る。 そして『愛する神奈子様の立場に身を置いて思考』し、愛する神奈子様を出し抜いて、愛する神奈子様を殺す。 座して死を待つでもなく、昂った感情に任せるでもなく、強靭な意志と冷徹な思考でやらなければならない。 でなければ、幻想郷で出会った友たちも、見知らぬ人々も、また愛する神奈子様に殺される。 やらなければ、殺らなければならない。 ――その時、早苗の背筋に冷たいものが走るのを感じた――。 もし私が弱さを乗り越えて、愛する神奈子様を冷静に、全力で殺しにかかることができた時……。 私は果たして私であり続けることができるのか。 私の姿をとっていながら、私でない、おぞましい何者かになってしまっているのではないか。 『弱さを乗り越える』ということは、 『愛する者を全力を以って殺しに掛かる』ことへの恐れさえ捨て去ることなのか。 あの人ならこんな時、何と声をかけてくれるのか。 振り返って遠ざかりゆく彼の方を振り向くが…… 早苗の視界には、朝日を受けて輝く幻想郷の大地と、遠ざかってゆく石造りの遺跡、 そしてオンバシラ後尾にしがみつく緑色の上半身しか映らなかった。 (そう、彼は既に石畳の下で眠っている。 もう何もレッスンを授けてはくれない) 再び早苗は前を向き、先刻神奈子が逃げ去っていった方角を目指す。 ――……あらゆる『弱さ』を乗り越えた者は、一体何者となってしまうのか。 その疑問尽きぬままに。 【B-2 ポンペイ遺跡上空/朝】 【東風谷早苗@東方風神録】 [状態]:体力消費(中)、霊力消費(中)、精神疲労(大)、右掌に裂傷(止血済み)、全身に多少の打撲と擦り傷(止血済み) オンバシラに乗って飛行中 [装備]:御柱@東方風神録、スタンドDISC「ナット・キング・コール」@ジョジョ第8部 [道具]:止血剤@現実、基本支給品×2(美鈴の物) [思考・状況] 基本行動方針:異変解決。この殺し合いを、そして神奈子を止める。 1:『愛する家族』として、神奈子様を絶対に止める。…私がやらなければ、殺してでも。無関係の人は巻き込めない。 2:殺し合いを打破する為の手段を捜す。仲間を集める。 3:諏訪子様に会って神奈子様の事を伝えたい。 4:2の為に異変解決を生業とする霊夢さんや魔理沙さんに共闘を持ちかける? 5:自分の弱さを乗り越える…こんな私に、出来るだろうか。 6:今、後ろに何かいましたよ!? 物思いにふけっていたせいか、軽やかにスルーしてしまっていた。 ……もう一度早苗が振り返ると、オンバシラの後尾に、確かに緑色のスタンドの上半身がしがみついている! つい今しがた振り切ったはずの青年のスタンド、『法皇の緑(ハイエロファントグリーン)』! ひも状にほどけた法皇の緑の下半身が、ぶら下がった本体の青年を引っ張り上げ……遂にオンバシラに追いついてしまった! 「ゼェーッ、ゼェーッ……ハァーッ、ハァーッ……」 「貴方……! 飛行中のオンバシラにぶら下がって登ってくるなどと、なんて無茶なことを……!」 「……君がこれからしようとしている無茶にくらべれば……このくらいは……」 「ケガしてるのに、どうして、そこまでして……」 「何となく、ですが……君がこれから『死にに行く』ような目をしている様に見えました」 図星であった。早苗は二の句が継げない。 「そんな目をした人を……たとえ今日であったばかりの人であっても…… 放って置けるほど僕は冷たい人間ではない……つもりです」 花京院には、一人で神奈子の説得に向かうと言った早苗が、あの時の、 妹の仇を討ちに一人向かったあの時のポルナレフとダブって見えていた。 遠くで様子を伺っていた時の彼女とは別人のような、冷たい、思いつめた目をしているように見えた。 こちらを向いて話しているつもりで、その瞳はずっと遠くを見ているようだった。 きっとあの視線の先には、神奈子のことしか見えていないのだろう。 自分の命さえ顧みていないのだろう。 放っておいたら間違いなく彼女は生命を落とす。 さっきあったばかりの赤の他人とはいえ、……見殺しにするようなマネは、彼にはできなかったのだった。 「それに、君は僕の命の恩人でもある……! 断っても無駄です、勝手に付いて行かせてもらいます……」 そう断ってオンバシラにしがみつき、こちらを見上げる花京院の瞳からは、 翠玉、いや、金剛石のように固く、揺るぎない意志の光が感じられた。 「……『ナット・キング・コール』」 「……!」 「彼の身体を、オンバシラから落ちないように固定して。 勘違いしないで下さい、コソコソ後ろからつけ回されるよりはまだマシって判断しただけですからね? ……私についてきてどんな結果になったとしても、責任は持てませんからね」 「……よろしくお願いします、東風谷さん」 「……花京院くん」 沈黙。 「…………………行きましょう」 ありがとう、とは、言えなかった。 これから自分達が何をしようとしているか、想像すると、感謝の言葉は口にできなかった。 【B-2 ポンペイ遺跡上空/朝】 【東風谷早苗@東方風神録】 [状態]:体力消費(中)、霊力消費(中)、精神疲労(中)、右掌に裂傷(止血済み)、全身に多少の打撲と擦り傷(止血済み) オンバシラに乗って飛行中 [装備]:御柱@東方風神録、スタンドDISC「ナット・キング・コール」@ジョジョ第8部 [道具]:止血剤@現実、十六夜咲夜のナイフセット@東方紅魔郷、基本支給品×2(本人の物と美鈴の物)、 [思考・状況] 基本行動方針:異変解決。この殺し合いを、そして神奈子を止める。 1:『愛する家族』として、神奈子様を絶対に止める。…私がやらなければ、殺してでも。無関係の人はなるべく巻き込みたくない。 2:殺し合いを打破する為の手段を捜す。仲間を集める。 3:諏訪子様に会って神奈子様の事を伝えたい。 4:2の為に異変解決を生業とする霊夢さんや魔理沙さんに共闘を持ちかける? 5:自分の弱さを乗り越える…こんな私に、出来るだろうか。 [備考] ※参戦時期は少なくとも星蓮船の後です。 【花京院典明@ジョジョの奇妙な冒険 第3部 スターダストクルセイダース】 [状態]:オンバシラにしがみついて飛行中、体力消費(中)、右脇腹に大きな負傷(止血済み) [装備]:なし [道具]:空条承太郎の記憶DISC@ジョジョ第6部、不明支給品0~1(現実のもの、本人確認済み) 基本支給品×2(本人の物とプロシュートの物) [思考・状況] 基本行動方針:承太郎らと合流し、荒木・太田に反抗する 1:承太郎、ジョセフ、ポルナレフたちと合流したい。 2:東風谷さんに協力し、八坂神奈子を止める。 3:このDISCの記憶は真実?嘘だとは思えないが…… 4:3に確信を持ちたいため、できればDISCの記憶にある人物たちとも会ってみたい(ただし危険人物には要注意) 5:DISCの内容に関する疑問はあるが、ある程度情報が集まるまで今は極力考えないようにする [備考] ※参戦時期はDIOの館に乗り込む直前です。 ※空条承太郎の記憶DISC@ジョジョ第6部を使用しました。 これにより第6部でホワイトスネイクに記憶を奪われるまでの承太郎の記憶を読み取りました。が、DISCの内容すべてが真実かどうかについて確信は持ってません。 ※荒木、もしくは太田に「時間に干渉する能力」があるかもしれないと推測していますが、あくまで推測止まりです。 ※「ハイエロファントグリーン」の射程距離は半径100メートル程です。 ※早苗と花京院を乗せたオンバシラがどこへ向かっているかは、後の書き手さんにお任せします。 ※花京院の具体的な体勢は、後の書き手さんにお任せします。 <スタンドDISC「ナット・キング・コール」> 【破壊力:C / スピード:D / 射程距離:C / 持続力:A / 精密動作性:E / 成長性:A】 東風谷早苗に支給。 大量の螺子(ネジ)を体中に打ちこまれ、額にV字型の飾りを持った人型スタンド像を持つ、ジョジョ8部からのスタンド。 対象に螺子とナットを打ち込み、ナットを外すと打ちこまれた部位も一緒に外れる『分解』の能力。 そして、外された部位は組み替えることも出来るほか、違う物同士を接合できるなどの『接合』という応用力もある。 これにより切断された体の部位を繋げて応急処置をするという、『スティッキィ・フィンガーズ』のような扱い方も可能。 093:鳥獣人物戯文 投下順 095:薄氷のdisaster 093:鳥獣人物戯文 時系列順 095:薄氷のdisaster 067:弱さを乗り越えて。偉大なる夜を越えて 東風谷早苗 106:DAY DREAM ~ 天満月の妖鳥、化猫の幻想 067:弱さを乗り越えて。偉大なる夜を越えて 花京院典明 106:DAY DREAM ~ 天満月の妖鳥、化猫の幻想
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006 始まってしまった物語に、奪われたままの時に ◆dKv6nbYMB. ―――カチリ 時は進む。 ―――カチリ そのことを我々に知らせるために、時計の針はその秒針を刻んでいく。 ―――カチリ 時に時計はズレが生じていることがある。だが、それに気付くのは容易なことではない。 そして、気付いた時にはもう手遅れになっていることも珍しくない。 『お...おれの時計が進んでいたっ!?すると、おれは正午前に弾丸を撃っていたことになる!今からが正午だ!なにが起こるってんだ!?』 『皇帝』のカードを示唆された男がそうだったように。 『まずい、ビルが...時間が止まらない!そんな...』 時を遡る魔法少女がそうだったように。 それでも、時計の針は進んでいく。 ―――カチリ 例え、それが間違ったものだと解っていても。 ―――カチリ 「どうして、こんなことになっちゃったんだろう」 時計塔の最上階で目を覚ました鹿目まどかは、そんなことをぽつりとつぶやいた。 当然と言えば当然だろう。なんせ、いきなり変な場所へ集められ、その上殺しあえと言われたのだから、こんな言葉の一つや二つが出ても仕方ない。 怖い。あの広川という男が。そして、人を殺さなければ生き残れないというこの状況が。 デイバックを探る両手が、自然に震えていた。 ただの一般人だった彼女が恐怖を抱かないはずがなく、今にも泣き出しそうになっていた。 だが、名簿を見た瞬間、その震えは治まった。 幸か不幸か、この場には彼女の親友や先輩たちが四人も集められている。 心強くもあるが、反面、大好きな人たちまでもがこんな目に遭っていることには悲しさも感じる。 まどかは思う。彼女たちを誰も死なせたくはないと。 元からこんなバカげたことに乗る気はない。だが、その名前を見たことにより、その決意は更に固まった。 (とにかく、みんなと合流しないと) そう決めたまどかの行動は早かった。さっさと荷物を纏めてデイバックを担いだ。 こうしている間にも、みんなが酷い目に遭っているかもしれない。 まどかは焦りを憶えつつ、階段をかけおりる。 その焦りのせいだろうか。 ―――スルスルスル まどかは、時計塔の外壁を這う気配に気づかなかった。 ―――ススススス 時計塔は入口に扉がなく、階段を下れば出入りが可能な仕様となっている。 まどかが時計塔から下りようと階段をおり、あと数段で出られる、そこまでたどり着いた時だった。 ズルリ 「きゃっ!」 なにかを踏みつけ、階段から足を踏み外す。と、同時に グッパオン まどかの左膝が裂け、血が噴き出す。 空中へと放り出され、180度回転するまどかの足を、側の木の枝が掠めていく。 ほとんど下りかけていたことが幸いし、まどかはそのまま入口に転がり落ちたが、膝以外は大した怪我はなく済んだ。 「な、なに...なんなの?」 左膝から流れる血を押さえる。 (なんで膝が...枝で切ったのかな。それに、なにかで滑ったような...) なにがなんだかわからないといった感じで、まどかは辺りを見まわす。 視界の端に捉えたのは、ゆっくりと近づいてくるひとつの人影。 人影の正体は、長身の青年で、ルックスもイケメンだ。ただ、右目を隠すほどに垂れ下がった前髪と、両耳に付けたピアスはどこかしら奇妙な印象を受けた。 「そこのきみ」 いきなりの青年の登場に、つい身構えてしまう。 「そんなに警戒しないでくれ。わたしはこんな殺し合いで優勝するつもりなんてないよ。 不安なら、このデイバックは地面におこう。...さっき、すごい転び方をしていたが、大丈夫だったかい?」 青年の柔らかい物腰と、殺し合いをする気はなく、階段から転んだところを心配してきたとの言葉に、まどかはひとまずホッと胸をなでおろした。 同時に、あんな不様な転び方をした自分が恥ずかしくなり、思わず顔が赤くなってしまう。 「ん?その膝...出血しているじゃあないか。このハンカチで応急手当をするといい。傷口を押さえる前に、血を拭いた方がいいかもしれない」 「あ、ありがとうございます」 青年から差し出された四つ折りのハンカチを受け取り、厚意に甘えて血塗れの膝をふく。 (そうだよね。いきなり殺しあえなんて言われて、簡単にそうする人はいないよね) いきなり優しい青年に会えた安心感からか、まどかの顔からは焦りや恐怖といった感情は薄れていた。 ふと、ハンカチの内側から文字が覗いているのが目にとまった。 純粋な好奇心から、まどかはハンカチを開いてしまった。 人間とは、とかく好奇心に弱い生き物だ。 禁止されていることほど興味が湧き、物事に続きがあると知れば、どうしても結末まで見届けたいと思ってしまう。 『このラクガキを見て うしろをふり向いた時』 もしもまどかがこのラクガキに気付かなければ、せめて続きを読む前に振り向いていれば彼女の運命は変わっていたかもしれない。 だが、彼女は己の好奇心に負けた。彼女は、その続きを開いてしまった。 『おまえは 死ぬ』 「えっ?」 文字を読んだまどかが思わず振り向くと、そこにいたのは緑色の異形。 「エメラルドスプラッシュ」 青年の発した言葉と同時に、緑色の結晶が放たれ、まどかの視界は黒く塗りつぶされた。 「......」 頭部を破壊され、ヒクヒクと痙攣を起こして横たわる少女を見下ろしながら、花京院典明は思う。 これは自分がやったのだ。自分のスタンド『法王の緑』で、幼気な少女を殺害したのだ。 スタンド使いである以外、一般の男子高校生である自分にとって、これは初めての殺人だ。だが... 「...想像してたより、なんてことはないんだな」 彼は、悔やむどころか、悼むことも、ましてや昂ることもなく。殺人という行為に一切の感情を感じることができなかった。 そうだ。いったい、世界でどれだけの人間が人を殺していると思う?数えるのも馬鹿らしくなってくる。 自分の初めての殺人はこの少女になった。今の彼にとっては、ただそれだけのことなのだ。 ただ、あの御方なら彼女をどう扱ったかが気になったが、足元に敷いた『法王の緑』に気付かず足を滑らせる程度なら、あの御方には必要ないだろうと判断した。 「よし。殺人がこの程度のことなら問題はない。一刻も早く、ジョースター一族とモハメド・アヴドゥルを殺さなければ」 やがて少女の痙攣が治まると、花京院は彼女のぶんのデイバックも担ぎ、少女に一瞥もせずその場を後にした。 花京院典明の言葉は本当だ。彼は、己が優勝する気など微塵もない。 ならば、なぜ鹿目まどかを撃ったのか?答えは簡単。他に優勝させたい者がいるからだ。 彼はここに連れてこられる前、ある男に忠誠を誓った。その名は、悪のカリスマDIO! つまり、己の命の保身より、ここに連れてこられている彼を優勝させることが花京院の目的となっているのだ。 彼が何故DIOに対してこれほどまでに心酔しているのか。その答えは、彼の額に蠢く肉片にあった。 DIOが花京院の脳に埋め込んだ肉の芽は、彼から善悪の感覚を奪い、ただDIOの命令に従い、忠誠を尽くすよう仕向けていた。 この肉の芽がある限り、DIOへの忠誠は決して覆ることはないのだ。 ―――カチリ 時計は時を刻んでいく。 ―――カチリ 本来の時間軸ならば、彼は肉の芽の呪縛から解き放たれ、DIOという『黒』を打ち倒す『白』の道を歩むはずだった。 『占い師の私に予言で闘おうなどとは、10年は早いんじゃあないかな』 誰よりも熱き魂を持った、エジプトの頼れる占い師。 『ガウガウガウ!』 成り行きではあるが、共に巨悪へと立ち向かった、愚者を名乗る勇者。 『我が名はJ・P・ポルナレフ!我が妹の魂の名誉のために!我が友アヴドゥルの心のやすらぎのために...この俺が貴様を絶望の淵へブチ込んでやる!...こう言って決めるんだぜ』 どこかとぼけた三枚目の、誇り高きフランスの騎士。 『このジョセフ・ジョースター、このような状況は今までに何度も経験しておる!』 ひょうきんな性格で、敵を華麗に欺く老練なる策士。 『なぜお前はわたしを助けた?』 『さあな...そこんとこだが、おれにもようわからん』 そして、無愛想だが、確かに熱い思いを胸に秘めた不良高校生。 『後悔はない...今までの旅に...これから起こる事柄に...僕は後悔はない...』 たった数十日間だが、共に戦い、泣き、笑い合う、気持ちが通い合う初めての『仲間』を得るはずだった。 ―――カチリ だが、奪われた時間をそのままに、物語は始まってしまった。 仮に、肉の芽の呪縛から解き放たれたとしても、もう遅い。 彼らはこの殺し合いに巻き込まれてしまった。彼はなんの罪もない少女を手にかけてしまった。 いくら他人に許されることがあろうとも、彼自身が、この場にいる仲間になるはずの者たちと手を取ることが許せなくなるだろう。 もう、本来あるべき形に戻ることはできない。奇跡や魔法でもなければ、時間を撒き戻すことなんてできやしない。 そのことを知る由もない花京院の頭上を、夜空に輝く6つの星屑が落ちて消えていった。 ―――カチリ 狂った時計の針は、もう止まらない。 【A-2/一日目/深夜】 【花京院典明@ジョジョの奇妙な冒険】 [状態]:健康 [装備]:額に肉の芽 [道具]:デイバック×2、基本支給品×2、油性ペン(花京院の支給品)、花京院の不明支給品1~2 まどかの不明支給品1~3 [思考・行動] 基本方針:DIO様を優勝させる。 1:ジョースター一行を殺す。(承太郎、ジョセフ、アヴドゥル) 2:他の参加者の殺害 3:DIO様に会えれば会いたい。 ※参戦時期は、DIOに肉の芽を埋められてから、承太郎と闘う前までの間です ※額に肉の芽が埋められています。これが無くならない限り、基本方針が覆ることはありません。 ※肉の芽が埋められている限りは、一人称は『わたし』で統一をお願いします。 ※この会場内のDIOが死んだ場合、この肉の芽がどうなるかは他の方に任せます。 花京院典明は一つの失態を冒した。 彼の一撃は、確かに普通の人間ならば致命傷だった。頭を吹き飛ばされて無事な人間などいないだろう。 そう、人間ならば。 彼が撃ったのは、契約により魂を抜かれ、事実上人間を止めた存在、魔法少女。その中でも、とびきりの魔力を持った最強の魔法少女。 そして、その本体であるソウルジェムが砕けぬ限り、彼女が死ぬことはない。 吹き飛ばされた肉片が、徐々に肉体へと戻っていく様を見ることなく、花京院典明はこの場を立ち去ってしまった。 彼女が目を覚ましたとき、どう行動するかはわからない。 だが、わかることはひとつ。 これからの彼女は、花京院典明を『敵』とみなすだろう。 そして、その力を持って、彼女が『敵』をどうするか。 それは誰にもわからない。 【A-2/時計塔付近/一日目/深夜】 【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】 [状態]:頭部半壊 気絶中 ソウルジェム濁り中 魔力消費中 [装備]:見滝原中学の制服 中指に嵌められたソウルジェム(指輪形態) [道具]:なし [思考・行動] 基本方針:ゲームに乗らない。みんなで脱出する。 1:気絶中 2:??? ※参戦時期は、魔法少女の素質がかなり高い時期からの参戦です。既に契約済みです ※制限は加えられていますが、この会場にいる暁美ほむら、美樹さやか、巴マミ、佐倉杏子の誰よりも魔力は高いです。 ※時計塔の近くで倒れています。 ※魔力を消費しながら、頭を修復しています。自動で行われていますが、早ければ1時間以内、遅くとも2~3時間以内には完全に修復します。 ※この修復による魔女化の心配はありませんが、仮にまどかの身体が必要以上に損壊された場合、魔女へとなる危険性はあります。 ※『このラクガキを見て うしろをふり向いた時 おまえは 死ぬ』と書かれたハンカチはまどかの近くに放置されています。 時系列順で読む Back パラサイトの星は流れた Next 展望は無いが度胸でクリアするしかないや 投下順で読む Back パラサイトの星は流れた Next 展望は無いが度胸でクリアするしかないや GAME START 花京院典明 047 笑う女王と嗤う法皇 鹿目まどか 029 人外の定義
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概要 数多くのアイテムを使うステージです。 かなりややこしい上、長いです。 製作者コメント ダイアーさんで痺れたら終了。 それ以外で運要素はありません。 答え合わせ以外の解法を発見した場合、コメントで報告ください。 特に、ザ・ハンドを利用した抜け道が無いか心配です。 ヒント ↓下記反転↓ 徐倫の部屋 徐倫の特殊な性質を利用します すべてのアイテムを使用しますが、すべて拾っていく必要はありません 始めは片方のDISCは諦めましょう クリアのためにはこの段階で『あること』をしておく必要があります。 花京院の部屋 まずはダイアーさんを始末します。カエルはあらかじめ食べておいた方がいいです。 花京院、ブチャラティ、F・Fの攻撃範囲を把握しましょう マンミラ等を有効に活用します。 ザ・ハンドを意外な使い方をします。 現段階ではこの部屋のアイテムを全て入手することは出来ません。 スト様ワムウ様の部屋 ここを突破することが大きな目標でもあります。 まず迫り来るワムウをどう回避するか考えましょう。 ていうか、まだ突破できません。左の道へ向かいましょう。 億泰の部屋 億泰の動きをうまく利用します。 ホルマジオのビンは使い切ってはいけません。うまく一回分残しましょう。 アナスイの部屋1,2 入る前に片付ける必要があります。残りの手持ちアイテムをうまく利用しましょう。 徐倫の部屋で行った『あること』がここで活きてきます。 徐倫の部屋 広い部屋を利用し、最初と同じかわし方をします。 花京院の部屋 残った敵を処理します。さっきは持っていなかったアイテムを活用しましょう。 スト様ワムウ様の部屋 ワムウの処理が済めば楽勝です。次の部屋のことも考えてアイテムを使いましょう。 階段の部屋 DIO、グリーンディを処理します。最後に残ったアイテムを駆使してクリアです。 答え合わせ ↓下記反転↓ 1.足元の承太郎DISCを回収後、左へ2歩進む。 2.承太郎DISCを投げて徐倫を誘導する。右下に投げたらデス13、右上に投げたらダークブルームーンが手に入る。 ここは右下に投げ、デス13を入手する。 3.残りの拾えるアイテムを全て入手し、ザ・ハンド攻撃装備、デス13防御装備、カエルはを食べてHPを増やしておく。 4.部屋の左上角を上に2マス分掘り進む(ただし入らない。アナスイに殺されるので) 5.最初の部屋から右に出る。 6.右、右上、左の順に動き、花京院にダイアーを殺させる。ダイアーに一発殴られるが、デス13の防御装備で乱数、カエルを食べると確定で耐えます。 (ただし波紋で痺れると終了です。もっといい敵が欲しかった。) 7.部屋の入り口に戻り、左側のブルりんにマンミラを撃つ。右のブルりんが花京院に殺されつつ壁になってくれます。ブルりんの下にあるプッチDISC入手 8.左側の柱の上に移動し、プッチDISCでザ・ハンドの呪いを解き、柱を削る。 9.ブチャラティをデス13発動で寝させる。 10.ブチャラティにマンミラを撃って元々柱のあった場所へ移動。 11.水場を挟んで下向きにザ・ハンド発動。下の部屋からアヌビス神が引き寄せられるので拾い装備。 12.右上に移動。ブチャラティが起きるのでもう一度デス13発動で寝かす。 13.壁越しに熱湯DISCをF・Fにぶつけ倒す。 14.左下→右下と移動し、花京院の弾道に入らないように下の部屋へ行く。 15.分岐は左へ。右に行ってもワムウとスト様が越えられません。 16.二人の億泰が上下に分かれたときに突っ切る。 17.再び上下に分かれたとき、上の億泰(ノーマル億泰)に壁越しにマンミラを『投げる』。 18.ホルマジオのビン(1)を拾ったのち、ブチ切れ億泰に引き寄せられるので、下に投げでビンに入れる。(ビンはナイル川へ) 19.『先に』足元のギアッチョDISCを回収し、アヌビス神も回収する。 20ギアッチョで装備中のアヌビス神を破壊。億泰が左に来たタイミングで引き寄せられる。 21.ホルマジオのビン(2)を拾うので、億泰に投げつけ、再回収。 新しいアヌビス神を攻撃装備し次の部屋へ。 22.部屋に入るとアナスイに殺られるので入り口手前で右上にビンを投げ倒す。 23.ドヒュウの罠に左下から踏み、壁を抜ける。 24.次の部屋にもアナスイが居るので、入り口手前で右下に破裂するDISCを投げ、10ターン待つ。 25.ハーヴェストDISCを拾い発動。スタープラチナDISC、ダークブルームーンDISC、エコーズACT2DISC(2)、プッチDISC、承太郎DISC、紫外線照射装置、鉄球を回収。 26.広い部屋の隅に承太郎DISCを置いておく。 27.破裂するDISCで出来た穴が最初にザ・ハンドで掘った穴とつながり道になっているので、そこを通り最初の部屋へ戻る。 28.徐倫を誘導し、承太郎DISCに向かわせてやり過ごす。 29.プッチDISCでスタープラチナの呪いを解き、防御装備。 30.2番目の部屋に向かい、入り口をふさいでいるブルりんを倒す。F・Fを倒した時レベルが上がっているのでまず倒せる。 31.部屋に入り、すぐ戻る。起きたブチャラティを入り口の前まで誘導し、Act2で飛ばして岩で塞がれた空間に閉じ込める。 32.スタープラチナを発動し、花京院をやり過ごす。 33.下の部屋に進み、次に右の部屋へ行く。 34.あらかじめダークブルームーンを能力装備しておき、どちらでもいいので水を渡り、ACT2でワムウを対岸へ叩き込む。 スト様は、すでにスタプラ発動しているので問題にはなりません。岩を壊して次の部屋へ進む。 35.部屋にいるDIO、グリーンディを紫外線照射装置、鉄球で処理し、水上を歩いて階段へ。クリアです。 評価 選択肢 投票 ☆☆☆☆☆ (0) ☆☆☆☆ (0) ☆☆☆ (0) ☆☆ (0) ☆ (1) タグ 探索系 感想 名前 コメント 承太郎左下投げで全回収、暗月攻撃、場所替え鈍足で倒して承太郎使えば確実。花京院は寝かせて左ルートとかハンドとか不要 -- 名無しさん (2014-12-02 13 53 27) 長い問題で初っ端にハンド置くなよ、別解だらけになるぞ 初めにハンドで左に掘り進めばアイテムかなり余る -- 名無しさん (2011-08-18 04 20 35) 長すぎ -- 名無しさん (2011-08-17 20 58 17) 不要な物だらけ -- 名無しさん (2011-04-23 09 44 04)
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【まきょういん ノリノリ】魔京院 典典(Norinori=Makyoin) 装備 使用技格闘系 能力系 備考 【まきょういん ノリノリ】魔京院 典典(Norinori=Makyoin) 原画(ジュル画) 眼 : 法皇の緑眼 種族 : 人間 性別 : 男 年齢 : 17歳 誕生日 : 11/18 暗示 : 『法皇』(ザ・ハイエロファント) 中の人 : ジュル ◆JURU/vCmGc (リスト) 一人称 : ボク 二人称 : 君 三人称 : (不定) 口調 : さわやか三組 口癖 : 「ウォンチュッ!」「レロレロレロレロ」 好きな食べ物 : チェリーとココナッツ 嫌いな食べ物 : ひげ根の部分を食べる植物 容姿1 : ピンクステキカット緑の学ランウザいヒラヒラスカーフたまにサングラス 容姿2 : 178cm、63kg パーソナルカラー : 緑 シクラメンピンク クラス : セクシーメイト 所属組織 : 悪の組織かもしれない 頻繁出現地 : どこにでも現れる 設定 (花京院 典明+花中島 マサル/2)=こいつ。だいたいこんな感じ。恐怖を乗り越えるとサングラスを着用する。初登場でリドリィにダンボールハウスを破壊され、Lucille s INNで彼女の部屋にて生活している。寝室はベッド下の収納引出し。 装備 軽装 重装 右手 手刀 散弾銃『ハイエロファント・グリーン』 左手 頭部 ヒラヒラスカーフ サングラス 胴体 緑の学ラン 脚部 緑のスラックス 足 革靴 消耗品 チェリー ココナッツ 使用技 格闘系 「当て身」鋭い当て身。基本的に、大抵のことはこれだけでなんとかなる。というかなんとかする。 「ココナッツバックブリーカー」技名にココナッツとついているが実は関係なく、ただのバックブリーカーと同じだったりする。「コイツはめちゃゆるさんよなああああ!!」が決めゼリフ。 能力系 『エメラルド・スプラッシュ』眼で具現化した散弾及びベアリング入り爆弾の一撃。緑色の弾が炸裂する。 『半径20mエメラルド・スプラッシュ』爆弾や散弾銃を複数具現化して敵を包囲し、凡ての火力を集中させる技。 備考 詳細戦闘力 本体性能 破壊力 敏捷性 精密動作性 持続力 射程距離 思考力 成長性 戦闘ランク C C D C E D D C (A=極めて高い、B=高い、C=普通・人間並み、D=苦手、E=非常に苦手) (EX~E) 何事も当て身でなんとかするセクシーメイト。その乱暴な当て身が直撃すると、頭ならほぼ3倍に脹らむ。予測できない気色悪さで敵の動きを封じ、必殺の『エメラルド・スプラッシュ』で止めを刺すのが必勝パターン。 特殊能力 『法皇の緑眼』 破壊力 敏捷性 精密動作性 持続力 射程距離 思考力 成長性 A D E E C - E (A=極めて高い、B=高い、C=普通・人間並み、D=苦手、E=非常に苦手) 散弾銃、散弾及びベアリング入り爆弾を具現化する能力。具現化には一瞬を要するが、鮮やかな緑色の飛沫は破壊力抜群。ある程度なら遠隔操作が可能な点は特筆に値する。
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出来たばかりの銃創が痛む。 それに呼応するかの如く、花京院の気持ちもどんよりと沈んでいく。 止血をしようと見回した視線も、彷徨い果てて行き場をなくし、一点を見つめたまま動かなくなってしまった。 一体僕たちは何なんだ。 僕たちがお互いに傷つけあって、奪い合う理由は何なんだ? 死にたくない。誰だってそうさ。 でも、だからと言って他人を踏み台にして得る人生にどれ程の意味があるんだ… その後に食べる料理は美味しいのか?映画を見て感動できるのか?友人と楽しくはしゃげるか?…絶対に無理だ。 濁った泥水の中にいるような気分で一生を過ごさなくてはならないだろう… だが、現状はどうだ。 死と言う事実の前には僕の信じた正義などは無意味なのか? 死ぬことに対する恐怖の前には、どんな高尚な思想も便所のネズミのクソ程度のものなのか… では僕はDIO打倒を目指しつつも命を懸けるつもりはなかったとでも言うのか? いや、断じてそんなことはない!ホリィさんのような良い人を死なせたくないし、旅に出た仲間は、初めてできた友達だったんだ。 彼等はきっと今の僕を見たら失望するのではないだろうか? 『おい、花京院、弱気になって眠てぇこと言ってんじゃねえ』なんて言われそうだな… …そうだ。今でもはっきりと言えることは、彼らのためなら命を懸けられる。 出会うまでは存在すら知らなかったような他人でも、しっかりと向き合えば精神を通じさせることができる。 僕だって最初は承太郎を殺そうとしたんだ。 でも彼は逆に僕をDIOの呪縛から解き放ってくれた。 無視してもよかったのに。そのまま殺してしまうことだってできたのに。 この襲撃者の少年を救わなくては、承太郎やみんなに対する侮辱だ。眼の前で泣いている彼は、かつての僕なんだ。 逃げずに向き合えば、絶対に分かり合える。そう思わないで、どうしてこの先やっていけるというのか… …これは、同じ轍を踏んだ僕にしかできないんだ。 心を決めようじゃないか。今は目の前の彼を見極めなくては。 ちゃんとした止血なんか後回しだ。まずはなんと話し掛けるべきだろう…… ※ もう何度考えただろう。『死にたくない』、『優勝する』。 政府公邸へと向かいながらも、わたしの精神は果てしなく暗く、倦み疲れている。 わたしの目的はなんだッ?優勝することだ!…何度も繰り返した自問自答だ。 明白過ぎるこの目的に、なにをこんなにも戸惑うことがある…ッ。 わたしは必ず優勝する… …だが元の場所に、アメリカに帰ったあと、そのあとはどうする…? こんな気持ちを抱えたまま一生を過ごさなくてはならないのか? この心の歪みと共にあと何十年も生きるのか? 自分自身を弱いと蔑みながら? そんなのは生きながらにして地獄にいるのと同じではないか… 死ぬのは嫌だが、ゲームの後手に入れたものが死よりも悲惨な生だったら、ここに来てからの全ての行動に一体何の意味があるんだ… とにかく、今の鬱屈とした気分をどうしたらいい…アヴドゥル、ロビンスン、リンゴォ、あのエメラルド色の瞳の女… あいつらの捉えどころのない”激しさ”に、わたしは恐怖しているんだ。 劣情を感じている。認めよう。 生き残るためには恩人の死体を使い、殺人を続けなければならぬ、が、心がもはやそれには従わぬ。 この気分から解放されるには何をすべきなんだ…覚悟もないわたしにそんなことができるのか…。 とりとめもなく考えながら、政府公邸に向かわせた翼竜にも意識を向ける。 邸内で、先ほど泣き崩れた少年はどうやら完全に戦意を喪失しているらしい。 翼竜の聴覚より、二人の会話を拾って聞く。 囁くようにゆっくりと、花京院が泣いている襲撃者の少年に語りかけているのが聞こえる。 『…なあ、君、話せるかい?僕の声が聞こえる?』 『……うっ、……聞こえて、ますよッ…!でも、もういい、僕は……もう何が何だかわからないッ…。』 『…聞いてください。大切なことなんだ。僕は君自身が信じるものや、君が大切に思っているものを否定するつもりはない。 ただ話を聞いて欲しいんだ。勝負を決めるのは犠牲にするものが何であるかだ、と言ったね? 確かにあらゆる勝利には犠牲が伴う。でもそれは他人の命や、君自身の心じゃないといけないのか?…その答えを見つけたくはないか?』 『…何…だって…?き、君は今、なんて、言ったん、だ…』 『話をしたいだけです。さあ、立って。…僕ももううんざりなんだ。ここに連れて来られてから、間断なく心が擦り減っていくのを感じる。 後悔も、悲しみも、不信も、不安も…もうこれっきりにしたい。』 わたしは、ひっそりとした室内でしゃがみこんだ花京院が襲撃者の少年の腕を引き、ゆっくりと二人で立ち上がるのを翼竜より仲介した視覚から見た。 ”僕は君自身が信じるものや、君が大切に思っているものを否定するつもりはない。” この彼の言葉に、わたしの心は揺れた。 自分の気持ちが弱っているのをはっきりと感じる。 意志が萎えそうになっている。 肉体的にも精神的にも疲弊しているであろう二人の少年も、わたしと似たような心情を抱えている…? 花京院典明。 彼なら、今まで賛同者などいないに等しかったわたしの大地に対する尊敬の念ですら、話せば否定せずに受け入れてくれる気がした。アヴドゥル君のように。 彼の死に際に握った手のひらの感覚が、滲み出るように蘇り、わたしの心はまた激しく揺さぶられた。 さらに、先ほど見た言語に絶する彼の遺体の状態が続いて想起され、不覚にも泣きそうになる。 …やはりアヴドゥル君の仲間の話をどうしても聞きたい…わたしだって、もう考えるのにもうんざりだ。 だが自分の安全が最優先事項であることは以前変わりない。彼らならうまく接触すれば、攻撃されることも無いだろう… 全てが悪い方向へ向かっている気がする……わたしは救われたい…… …さて、わたしは彼らにどう接触するべきか。アブドゥル君の中から出なくてはな…… 政府公邸は近い。 ※ 「…そうですか。わかりました。荒木に日記を取り返されたか…仕方ない。 重要な手がかりを逃しましたが、内容が白紙だったし、有効活用の方法が現状では存在しませんでしたから…これでお互いの話は大方済みましたね。」 「ああ…、ぼくは洗いざらいぶちまけた。あんな大泣き姿を見られた君に、かっこつけて取り繕うなんて馬鹿馬鹿しいからな。 今、わりといい気分ですよ…君は?ノリアキ。」 「ええ、僕も今落ち着いた気分でいますよ、フーゴ。君はさっきの錯乱状態から、よくここまで落ち着いてくれた。すごく話しやすかった。傷も手当てしてもらったし。」 「僕が付けてしまった傷だ。当然でしょう…ところで…」 場所は政府公邸内。 小一時間前、フーゴを手近な場所に腰かけさせたあと、花京院は彼が落ち着くまで根気よく待ち続け、タイミングを見計らって一つずつ質問をしていった。 フーゴは花京院の落ち着いた優しげな様子に、徐々に本来の自分を取り戻し出した。 そして、目の前の同い年くらいであろう少年に、自分の全てを語り尽くすのを止められなかった。 生い立ちからある日自分が起こした傷害事件、その後所属していた組織のこと、恩のあるチームリーダーの突然の反逆に臆病風に吹かれて付いていけず、ひとりぼっちになったこと。 ここに来てからも一人で何の行動も起こせずにいるときに、主催者が突然現れ、『お願い』を強要してきたこと。それに従ってしまった自分を情けないと感じていること。 それに対して花京院は若干の質問を挟みつつ、最後まで聞いてくれた。 しかもフーゴを軽蔑するような素振りなど微塵も見せず、こう言ってくれたのだ。 「さあ、君が何も包み隠さず正直に全て話してくれたんだから、僕もその誠意に答えなくては。…ただその前に、この怪我を何とかしたいんだが、手伝ってもらえませんか?」 怪我の応急処置をした後、花京院が話す番になり、フーゴはDIO打倒の経緯から、花京院がここに来てからの一連の出来事を知ることができた。 話の序盤、承太郎の名前が出た瞬間に彼は顔を強張らせたが、花京院の話が一通り終わるまで取り敢えずは口を挟まず聞くことにした。 吉廣以外の人間から聞かされた承太郎の人物像は、正に真逆、花京院によれば彼は無口でぶっきらぼうだが、とても情に厚く、母親思いの男だった。 先の会話を交わした後、あまりに食い違う意見に混乱したフーゴは、自分の支給品である不思議な写真の中の老人、吉廣から聞かされた話を全て、花京院に話した。 それを聞き花京院はびっくりしたような表情をしたものの、承太郎は優等生では決してないが、犯罪者ではないよ。食い逃げをしたっていうのは聞いたけどね。と、まるで地球は丸いよ、とでもいうような調子で答えた。 共に旅をし、承太郎と親しく関わった花京院からすれば眉唾な吉廣の話だったが、フーゴからすればどちらの言い分が本当なのか全くわからない。 この一連のやり取りは彼の混乱を深めるだけだった。 写真を引っ張り出して問い正すも、吉廣は頑として譲らない。 (「承太郎は極悪だと言っとるだろうがッ!仲間だか何だか知らんが、小僧がすこーしばかり付き合ったところで、奴の何が分かるというんじゃッ!」)と、自分の正しさを主張する。 フーゴの混乱をよそに、花京院は不思議な老人のあまりにも憎々しげな様子に驚いたと同時に、頑固な老人に友を侮辱された気分になり少し辟易していた。 (吉良吉影という人物が本当はどういう人物か未だよくわからないが、吉廣さんがだいぶ自分たちに都合のいいよう事実を曲解して受け止めているのでは? 吉廣さんが悪意から嘘の情報をフーゴにもたらしたのか、何かの事情で逆恨みのような状態や、勘違いから先の危険人物と称した人々の名前を挙げたのか、それを確かめる術は今のところはない… まさか承太郎や彼の知り合いがそんなことをするなんて…ありえない、よな?) 不明確な疑点を確実なものにしたいと、花京院が吉廣の情報についてさらに言及しかけた。が、その時突然公邸の外から男の声が響いた。 「…館の中にいる少年達!特に花京院君に告ぐ!わたしはフェルディナンド。君の仲間のモハメド・アヴドゥル君の死に際に居合わせた者だ。 彼からメッセージを預かっている。わたしに攻撃の意思はない…姿を見せてくれないか?」 刹那、二人は咄嗟に声がした方向から一番近い窓の下の壁に向かって走った。 「そして、できることなら私の話も聞いてほしい。君には許しがたい内容だと予め断っておくがね…君がこれを聞いて何を思うのか…判断してくれ。 …だが、わたしはもうほんとうに…疲れた。何も隠す気力が無いんだ…」 依然男の呼びかけが続く中、壁に張り付くように身を寄せた後、注意深く話を聞きつつ緊迫したお互いの表情を見やる。 「どうして館の中に人がいるとわかった!?しかも僕の名前を具体的に挙げた…スタンド能力なのは間違いないとして、アヴドゥルさんの知り合いか…?」 「ノリアキ、ここに鏡があります。部屋に置いてありました。これで外の様子を探ってから判断すべきでは?」 フーゴは極力露出を控えるように気を配りつつ、発現させたパープル・ヘイズを使って鏡を掲げ、二人で外の様子をうかがった。 そこには一人の男性と、同じくらいの大きさの見たこともない動物が佇んでいた。 「…あれは、恐竜!?トカゲのような…。あんなスタンドがあるとは…本当に想像を絶するな…しかしあのスタンドでどうやって邸内の情報を知ったんだ…?」 「まだ未知の能力があるんでしょう…ともあれ、銃やボウガンのような飛び道具はなさそうだ…彼の様子を素直に受け取るなら、ついさっきの僕らと同じくもう何もかもうんざり、と言った様子ですね。 彼の呼び掛けに応じるかい?ノリアキ。亡くなった君の仲間からメッセージがあると言っていたが…」 「アヴドゥルさんから僕の名前を聞いたのか…?という事は、少なくともアヴドゥルさんが信用した人物と考えて差し支えなさそうですね。…僕が先に顔を出します。 問題ないようなら、フーゴは後から続いてください。」 花京院はゆっくりと警戒しつつ、窓から外を覗いた。 訪問者である男は、疲れた様子はそのままに、唇の端だけを釣り上げ悲しげに笑った。 「…顔を見せてくれてありがとう。早速だが…『スケアリーモンスターズ』。生物を恐竜化する能力。それがわたしのスタンドだ。私の隣にいるのがその生物だ、見えるだろう?」 (…生物を恐竜化出来るスタンド!?それにしてもあの男性はどういうつもりなんだ? 彼の最後のメッセージを伝えたいなどと言ってはいるが、他の参加者を襲っただなんて…!なぜあえてそんなことを僕らに言うんだ…?! しかも生物を恐竜化できるというのなら、今連れている恐竜は元は何の生物なんだ!?) 言いようの無い感情が腹の底からせりあがってくる。 彼の腹の中では、疑惑と恐れ、希望に縋りたい気持などがごちゃごちゃに掻き混ぜられていた。 だが、彼に従来備わっている徳性、冷静沈着であろうとする部分、自制心がわずかに働いた。 フーゴとの会話、その間に流れた同族感から来る何とも言えない気持ちが、花京院を現実へと繋げ置く。 フーゴと共有した気持ちは、慣れ合いでも、傷の舐め合いでもない。 自分がここにいると実感させてくれる物…『他者との共感』。 隣人を信じたい気持ち…”この人間を理解できるかもしれない”という希望。 この確信があったから、この一粒の宝を守りたいと思えたから、彼の心は壊れなかった。 (待て、待つんだ、花京院典明ッ!ここで冷静にならなくてどうする…! あの男性の能力すら未知数の今、戦闘沙汰なんて起こせば、絶対に誰も無事では済まない…それは即ち何を示す?荒木に対する我々の全面敗北ではないか? 今、初対面でもフーゴを理解できるような気がしたんだッ。この尊い気持ちを失いたくない! この局面で、耐えなくちゃならないのは僕だッ!この僕の今後の行動が全てを正しい方向へ導く可能性を持つッ!全てがだめになってしまう前に、手遅れになる前に…!) フーゴもすでに顔を出して、困惑した表情のまま外を見据えていた。 花京院は唇を噛みしめることで自身を戒め、冷静に窓の外に向かって声を投げた。 「…あなたの話を伺います。あなたを敵と断定しているわけではありませんが、だまし討ちは通用しません。 あなたの想像の及ばないような方法で、こちらには対応する用意があります。」 大げさに威嚇し、無駄な争いが起きないよう気を配る。 翼竜でほぼ全ての情報を知っていたフェルディナンドは、そんな用意など無いとわかっていながらも特に何も言わず、言われた通りに2人の居る部屋まで足を運んだ。 そして彼もフーゴと同じようにここにきてからの一部始終を話した。 アヴドゥルのこと、2人で話し合った考察の内容、氷のスタンド使いの襲撃、アブドゥルの最後のメッセージ、自分のこれまでの方針、 配下にしたロビンスンとリンゴォの決闘を理解できずにただ眺めていたこと、眼を付けた女性を襲い、激しい戦闘の果てにひどい捨て台詞を残して去ったこと。 そして今、覚悟も無く弱い自分の精神は死んだような状態で、どうすれば救われるのか知りたいと思っていること。 …だが、彼はいかなる時も隠し持つ札の用意を怠らない。 彼の持つカードは2つ。 人間及び人間の死体を恐竜化出来ることを黙っておく。 連れている恐竜(元アブドゥル)は、”支給品だった動物”を恐竜化している、と嘘をついておく。 フェルディナンドは誰にも心を許さない。 荒木を信用するつもりも、目の前の2人を信用するつもりも、彼には毛頭無い。 必要以上に弱々しい素振りも、少々自分に不利な情報をもらすのも、正直さをアピールするためだ。 それで疑惑を持たれるのは承知の上…これからの行動で仮初めの誠実さを示せば、過去を反省している人間として初めからなんの疑いのない人間よりも、より強固に信じてもらえる。 どんなに精神が消耗しようと、彼の思考は常に彼自身の利益を最優先に進行していく。 そうとは知らない花京院もフーゴも、2人それぞれ質問を挟みつつ、静かに話を聞き終えた。 フェルディナンドが語り終え、一瞬の沈黙が部屋に訪れた。 それをすぐさま破ったのは、花京院の言葉だった。 「…もうこんな悲しみ、苦しみ、怒りの連鎖は止めなくちゃならない。それを僕らでやるんです。アヴドゥルさんの最後の言葉は、僕に勇気を与えてくれる。彼の為にも… 今、弱いのなら成長すればいいんだ。覚悟というものは、行動の後から付いてくるものだと僕は考えます。」 フーゴとフェルディナンドは黙って話を聞いている。その表情から彼らの気持ちを読み取ることは難しい。 花京院は構わずに続ける。その様子はまるで、この言葉を言う事で自分自身が安心を得ようとしているかの如くだ。 「吐き気を催す邪悪は、確かに強大な力を持っているかもしれない。でも、荒木の…悪の行動や意志が未来へ実を結んで行くことなんて絶対に無いッ! ニュートンはガリレオから学びアインシュタインに受け渡した。ダンテはウェルギリウスから学びボッカチオに受け渡した。 でも暴君カリギュラにも、切り裂きジャックにも、アル・カポネにも、ヒトラーにも、後継者などいなかった。 彼らのほとんどは半ば発狂して生涯を終えている。僕らはこいつらの側に落ちかけた人間です。 でも間違いに気付けたのなら、正していける。歴史が常に正しいものを選択してきたのなら、勝つのは我々です。それを証明しましょう。」 語り終えた花京院は気丈な話しぶりとは裏腹に、2人に対する疑心を抑えられなかった。まるで水の上の油、一点の漂流物のように。 (ああ、僕のこんな歯の浮くような台詞、これは確かに本心なんだ。ただこれを彼らが信じてくれるかが分からない。 まだ、僕自身彼らを信じていないのか…僕は一体どうしたい?もう自分の心の限界が分からない……) その言葉を聞きフェルディナンドは眉根を寄せつつも、不安に揺れる瞳を隠そうともせずに素直な様子で言葉を紡いだ。 「いくつか聞いたことの無い名称があるが…君の言うことは分かる…分かるが、わたしはアヴドゥル君に対して罪の意識が消えない。 恩人の彼に対する私の様々な思いの中に、確かにあるんだ。決して払拭できない罪悪感が。 そして荒木と言う人物も恐ろしい…いい大人が、と笑ってくれて構わないんだよ。…こんなわたしに、立ち向かえるのか…そんな資格があるのだろうか…」 花京院はふっと笑った。それは馬鹿にしたような笑いというよりは、自嘲に近い寂しげな笑いだった。 「あなた、真面目すぎるんですよ。…あなただけじゃありません、僕も、フーゴも…。こんな狂ったゲームです。こっちもちょっとばかりイカれた行動をとって、荒木の度肝を抜いてやりましょうよ。 荒木も我々参加者も、何をしでかすかわからないのはお互い様…まずは仲間を集めましょう。みんなで成長できるように、過去に打ち勝てるように。 ただ、他の参加者を襲ったのは誉められたことではありません。まだ間に合う。命がある限り、償っていけるんです。我々は誰一人手遅れなんかではありません。」 このセリフを聞いたフェルディナンドはいくつも年下の少年のこの発言を、生意気だとは思わなかった。 ただ、花京院の本心だとも思えなかった。 (さっきからまるで自分に言い聞かせているような調子じゃあないか。この少年にはまだ何か不安定な影が見える…我々二人にどう接するか迷っているな。 つまり心底安心はしていない…先に起こった出来事を鑑みれば当然か?まあ、その隙を突かれないように気を付けるんだな…) 「…ありがとう。礼を言うよ。ミセス・ロビンスンと同じになるのはごめんだが。 君の言うような”狂った”方向へあえて身を転じてみるのも一興…まだ自信はないが、ね」 「今はそれで十分です。焦ることが何よりも危険なのだから。 さあ、そろそろ彼女を…グェスさんを呼びに行かなくては。僕を、盾にした時…彼女のあのリアクションは、自分の行動を悔いていると思うんです。 決して自分が何をしたのかわからないような人ではない。彼女についても、今はそれだけで十分です。話し合えば、これから信頼関係を築いていけます。悪い人ではないんだから。」 3人はそっと立ち上がり、揃ってグェスが駆け込んだベッドルームへと移動する。 目指す部屋の中は静まり返っていた。 「グェスさん…?」 まず、花京院が少し覗き込みつつ声をかける。が、…返事がない。 拗ねているのか?…まさか、何らかの襲撃を受けたのでは、と案じ、はじかれるように各々のスタンドを発現させつつ室内へと転がり込む。 しかし、彼らの危惧をよそに室内は静寂で彼らを迎えた。 目的の人物が不在なことを訝りつつ、眼を凝らせばシーツがとぐろを巻くベッド上に、四つ折りの紙が置かれてあった。 支給品の紙か…?いや、違う。文字が透けて見えている。手紙だ。 花京院がベッドに近づき、ゆっくりとその紙を開く。かさかさという紙のこすれ合う音が、静かな室内の緊張感を吊り上げる。 手紙の内容は、とても悲痛なものだった。 次へ