約 130,372 件
https://w.atwiki.jp/pokecharaneta/pages/9263.html
象の背中 登場人物 コメント 秋元康の小説作品及び、それを原作とした日本の漫画・絵本・アニメ・映画・テレビドラマ作品。 登場人物 グレイシア:藤山はるか 某ヒロインの名前から コメント 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/cosumeno5/pages/17.html
背中ニキビ予防 顔と違って汗をかいてもそのままに してしまうケースが多くないですか? 汗をかくと細菌が増殖しニキビを作ってしまいます。 汗をかいても吸い取りにくい 化学繊維の下着や ブラジャーをきつく締め付けるなど 汗のたまりやすい着衣は、避けましょう。 人は、就寝時にも汗をかきますが、 前述のような下着ですと 汗をためてしまいますので 細菌の増殖しやすい環境を作ることになります。 また洗髪時のシャンプーやリンスの洗い残しが 背中にたまると毛穴を詰まらせ ニキビを作る原因になります。 特に首下は、リンス後に たまりやすい場所ですので注意が必要です。 背中ニキビjは、外見には、気になりませんが、 一度出来てしまうと思うように ケアしにくい場所なので 作りたくない場所ですよね。 出来てしまう前にしっかり予防しましょうね。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5870.html
「本当は誰も入れるべきではないんだけれど、あなたを信用します。あなたなら大丈夫だと。古い付き合いだしね。だけど、花嫁におかしなことをしたら、許さないわよ。」 今日はあたしの結婚式。 人生の門出。 あたしは古泉君と結ばれる。 大学を卒業して就職したあと、古泉君に告白された。 三年ほどおつき合いをしてプロポーズされた。 SOS団は不滅だと言っていたけど、あたしが高校を卒業すると同時にみくるちゃんは遠い外国に行ってしまった。 有希は、あたしが知らない間に行方不明になっていた。あのマンションの部屋はいつのまにか何ひとつなくなっていた。 今あたしのそばにいるのは……。 「もう一度いいます。わたしは最後まで反対しました。しかしどうしても娘があなたに会いたいと。だから私はあなたを信用しました。決して花嫁におかしな真似をしないで下さい。」 ここは、ホテルの部屋。 あたしは、豪華な椅子に座っている。 大理石の床に高い天井。大きなシャンデリア。 大きな鏡がある。全身を映す鏡。 純白のウェディングドレスをまとった、あたしを映している鏡。 ママがキョンにしつこく念を押している。 馬鹿ね。 鏡の中のあたしがクスリと笑った。 そんなに心配しなくても、あいつがあたしに変なことなんかできるわけがないのに。 「涼宮さん」 キョンの声が聞こえた。 久しぶりに聞く声。 やっぱり大人になったのね。 太くて、練れた声。 男の声。 あたしは鏡から目を離して、頑丈そうな木の扉を見た。 「あなたは、俺を信用しているのですか。信用していないのですか。」 「何を言っているのですか。あなたを信用していると言ったでしょう。だから新郎以外決して入れるべきではない所にあなたを案内しようとしているのです。あなたは拗ねているのですか。ここに新郎以外の男性を入れることの意味がわかっているのですか。そんなことを言うのなら、やはり信用すべきではないですね。」 「あなたが俺を信用するのならば、何も言わずにここに俺を連れてくるべきでした。信用しないのならばこんな所に俺を連れてくるべきじゃなかった。違いますか。」 キョンったら、理屈っぽいところは変わってないのね。だけどそんなことを言ったら逆効果よ。ほら、親父が露骨に舌打ちをしているわ。 「あなたねえ、いい加減にしてちょうだい。あなたを信用しているって言ったでしょう。だけど万一のことがあったら困るから、釘を刺しただけ。わかりますね!」 「あなたは、俺を信用するのなら、信用したことについて責任を負うべきだ。 ここに俺を連れてきて何があったとしても自分で責めを負うだけのね。 あなたが信用しないというなら、信用しないことについての責任を取るべきだ。 あいつがあきらめるまで反対するべきだ。」 何だか様子がおかしい。 キョン…、何言ってるの? やっぱり拗ねてるの? あたしに、会いたくないの? 「俺には何の責任もない。 俺は古泉一樹君と涼宮ハルヒさんの門出を祝福するだけのためにここに来た。 俺は二人の友人です。それ以外のものでは決してありません。 俺がここでやるべきことはご祝儀を持ってくることと、披露宴を盛り上げることだけ。 違いますか。 俺には何の責任もありません。あなたがあいつに反対しきれなかったことに対する責任を負うつもりは毛頭ありません。 ではもう一度聞きます。 何の責任も負っていない俺を信用するんですか。しないんですか? 責任を持って決めて下さい。」 ママ、お願い! キョンを信用するって言って! あいつがあたしに乱暴したりするわけないわ! あたしはどうしてもあいつに会わなきゃならないの! ママが息を飲む音が聞こえた。 「失礼をお許し下さい。どうぞ娘に会ってやって下さい。お願いいたします。」 数秒間、誰も何も言わなかった。親父も我慢しているらしい。 「バカだ、おまえら。親子そろって大バカだ!」 「なんだと、小僧、いい加減に……。」 親父の声が聞こえる。親父がキョンを殴るかもしれない。 「いい加減にしてほしいのはこっちだ! ハルヒもバカだが、親はもっとバカだ! 高校生のころから知っているからっていつまでも人を高校生のガキ扱いするんじゃねえ! これだけ言ってもまだ俺を花嫁の仕度部屋に入れようとするのか! あんたらがすべきことは、おまえは信用できないと言って、俺をここから追い払うことだ!」 「…大人だったらわかるだろう。おまえ、花嫁になんかしたら大恥かくことに…。」 「それで俺が大恥かいたら古泉がなんと思う? あいつが傷つかないとでも思ったのか! 何事もなかったとしても、それがあいつに対する裏切りだとは思わないのか! それがあいつに知られたとしても、きっとあいつは許すだろう。 だったらそれでいいのか? 許してくれるんだったら裏切ってもいいのか? あいつはもう高校生のガキじゃねえ! 立派な大人だ! これからハルヒを養っていく、一家の主だ!」 あの強面親父が完全に気圧されている。 映画撮影の時にあたしを惚れ直させた、本気のあいつ。 あたしが絶対にやっちゃいけないことをしたら、本気で怒ってくれる、キョン。 だけど今、そんなことを感じさせられたら、覚悟が…。 キョン、ここに来てくれないの? あたし、あんたに「あの言葉」を言ってもらえたら、覚悟を決められるはずなのに…。 「ハルヒがなんかしてほしいんだったら古泉にやらせろ! なんでただの友人の俺にやらせるんだ! 俺の友人としての立ち位置はあいつが決めたことだ! 自分で決めたことだ! 一人で決めたことだ! 花嫁の仕度部屋でやらせるようなことだったらどんなことであれ古泉にやらせろ! 頭おかしいのか、おまえらは! こんなこと、言い出す方も言い出す方だが、伝える方も伝える方だ! こんな親に育てられたから、ハルヒもあそこまで傲岸不遜なバカ女になっちまったんだ!」 キョンは、ここに来てくれない。ここに入ってきてくれない…。 「だいたいこんなことを聞かされて、俺が冷静でいられるとでも思ったのか! ちったあ、他人の、俺の気持ちっていうものを考えやがれ!」 俺の気持ち? あいつの、気持ち…。 あたしは椅子から立ち上がった。 ドレスの裾がまとわりついて走りにくい。 あたし、なんでこんなもの着てるんだろう? 突進するようにドアを開けた。 同時にキョンが背中を向けた。 廊下に両親が真っ青な顔をして立ちつくしているのが見える。 そんなことはどうでもいい。 「ハルヒ、それは古泉に最初に見せろ。」 キョンは、あたしに礼服の背中を向けたまま言った。 なんでこんなことになっちゃったんだろう。 ずっとこいつのことが好きだった。 だけどあたしはこいつにつらく当たってきた。 それでもこいつはあたしについてきてくれた。 あたしはこいつにつらく当たりつづけた。 きっと、許してくれていると確認したかったから。 まだ、見捨てられていないと確認したかったから。 そうしないと、もう見捨てられたのかもしれないと怖かったから。 こんなあたしを、こいつが好きになってくれるはずがないと思っていた。 ずっとあたしの片思いだと思っていた。 そうじゃないと気づいた時には遅すぎた。 両家の結婚話は、もう後戻りのできない段階に入っていた。 あたしのわがままが通るような状況ではなかった。 そんな段階ではなかったから? 違う。 たとえ裏切ったとしても、古泉君は許してくれたと思う。 両親は、許してくれたかどうかはわからないが、許してくれなくてもかまわなかった。 だけど、キョンが許してくれるはずがなかった。 あたしが古泉君を裏切ることを、キョンが許すはずがなかった。 だから、あたしは覚悟を決めた。 もう、キョンのそばにいられなくても仕方がないと覚悟を決めた。 決めた、はずだった。 だけど不安だった。 だからキョンに「あの言葉」を言ってもらえればふっきれると思った。 最後に「あの言葉」を言ってもらいたかった。 「あの言葉」をもらえさえすれば、未練がなくなると思った。 「おまえが今やろうとしていたことは決して許されることじゃない。」 そう。誰が見たって、決して褒めてくれない行為。 なんで、こんなことしようとしたんだろう。 答えは、はっきりしている。 こいつがそばにいなかったから。 こいつのそばにいなかったから。 あたしは、こいつがそばにいなきゃダメだ。 そんなこと、ずっと昔からわかっていた。 くしゃりと視界が歪んだ。 大粒の涙が後から後からこぼれ落ちてくる。 覚悟が…、あんたのそばにはもういられないという覚悟が…、覚悟が、覚悟が! 「泣くなよ! おまえがもしここで泣いたら、古泉への最大の侮辱だ。そんなことは……俺が許さん!」 そうだ、覚悟なんかはじめから無かった。 覚悟を決めたつもりだっただけ。 いや、そうですらない。 覚悟を決めたと自分に言い聞かせただけ。 「あの言葉」を聞けば覚悟が固められるなんて嘘。 ただ、こいつにそう言ってほしかっただけ! 「泣くんだったら…、古泉の前で泣け。」 あいつの手を見た。 何回も何回もつかんだ手。 嵐の中で初めて握り返してくれた手。 あたしが崖から落ちても離そうとしなかった手。 後悔…、後悔、後悔、後悔! もう一度あのころにもどりたい! 毎日こいつの背中を見ていたあのころに…。 毎日こいつの声を聞いていたあのころに…。 あたりまえのようにこいつのそばにいられたあのころに…。 神様、今まで一度も信じたことなんかなかったのに虫が良すぎるけど、たった一つのお願い! あたしをあの、北高の部室にもどして! 「じゃあな、披露宴のキャンドルサービスで会おう。」 あいつの背中が遠ざかっていく。 それを追いかけることは許されない。 キョンが、許してくれない。 大好きな背中。 ずっと見ていた背中。 ずっと見ていたい背中。 なんで、しがみつかなかったんだろう。 なにが邪魔したんだろう。 みんなに美人だともてはやされていたプライド? 勉強もスポーツも音楽さえもあいつより優れているという自己満足? 平凡な容姿のあいつと結ばれるのは嫌だという女の見栄? 違う。 そんなものじゃない。 そんなもの、この背中に比べれば、ジュースの空き缶ほどの価値もない。 勇気が、足りなかっただけ。 それさえも、嘘。 勇気を、ふりしぼらなかっただけ! こいつにしがみついて振り払われるのが怖かった。 ただそれだけ。 こんなに大事なものだとわかっていたなら、何回振り払われてでもしがみつくべきだった! こいつが「やれやれ、しょうがないな」と言ってあたしを背中に乗せてくれるまで、何度でもしがみつけばよかった! 「おまえをこう呼ぶのも最後になるな。」 キョンが扉を開ける。 この廊下からさえも出ていく。 あの夜の校庭で、あたしだけをつれて駆けた背中が、あたしの前から消えようとしている。 せっかく、出会えたのに! この広い世界で、キョンに出会えたのに! 「おれは断じて見ていない。断じて見ていないが…、やっぱり意地があるようだ。…これだけは言わせてくれ。」 いや…、あれほど聞きたかった言葉だけど、今は聞くのが怖い。 そう。あたしの生涯でいちばん大切な思い出。 あたしにとって宝物のような、宝石みたいな思い出。 今それを聞いてしまったら…あたし…。 「ハルヒ。」 「…なに。」 「似合ってるぞ。」 扉がパタンと閉じた。 パソコンのディスプレーが見える。 電源は…、落ちているみたいだ。何も映っていない。 夕方のようだ。後ろに窓があるのだろうか。夕陽が照りつけている。 ディスプレーの向こうに、長机が見える。 その先に、ボロボロの扉が見える。 見慣れた場所のような気もするし、ひどく懐かしい場所のような気もする。 自分の体を見てみた。 北高のセーラー服を着ている! 左袖…。 見間違うはずもない! 真っ赤なSOS団団長の腕章! だけど…、まだ安心できない! そうだ! 学生カバンの中を必死に探る。 あった! あのホテルの部屋にあったバカでかい代物とは全く違う、高校生の身の丈にあった粗末な鏡。 意を決して見る! 涙と鼻水でボロボロのひどい顔をしている。だけどそんなことはどうだっていい! あたしの髪には、あのティアラとかいう用途不明の装飾品ではなく、黄色いリボン付きカチューシャがはめられていた。 悪い夢を見ていたのだろうか…。 それとも、神様があたしのたった一度のお願いを聞いてくれたのだろうか。 そう言えば、今日一日授業を受けた後団活をして、団長机で居眠りをしてしまったような記憶がある。 だけど、高校を卒業して大学に進み、就職をして古泉君と交際をして…、という記憶もあるような気がする。 どっちでもいい。 あたしは、ここにいる。 北高の部室にいる。 ここにいる…はず。 自信がない。 あれは、夢なんかじゃなかった。 そう、あれはきっと、もう一つの現実。 体の震えがまだ止まらない。 あれが現実で、今あたしが見ているのが、ホテルの救護室で見ている夢だったら… 深く考えるのが怖い。 立ってあの扉を開けるのが怖い。 やっぱりあたしは臆病ものだ。 勇気をふりしぼることができない。 あの扉の向こうのどこにも、キョンがいなかったらと思うと怖い。 なんでこんなに怖いんだろう。 キョンが、あたしのいる部屋に入ってこなかったせいだ。 キョンが、あたしを廊下に残して、後ろ手にドアを閉めてしまったせいだ。 キョンがあの扉を開けて、ここに入ってくるまでは安心できな……。 ガチャ。 「ハルヒ、起きたか? 他の三人は帰ったぞ。コーヒー買ってきたんだけど飲むか? 一本しかないから半分こな。まあ、おまえに半分と言ってもほとんど飲まれちまう…。」 さっきまでの焦燥と不安がみるみる消えていく。 胸の辺りから生まれた安心感がゆっくりと全身を包みこむ。 あたしは、声に出して言っていた。 「か、か、かみざま……、あ…、あじがどう……。」 「バカだ、おまえら。親子そろって大バカだ!」 「なんだと、小僧、いい加減に……。」 親父の声が聞こえる。親父がキョンを殴るかもしれない。 「いい加減にしてほしいのはこっちだ! ハルヒもバカだが、親はもっとバカだ! 高校生のころから知っているからっていつまでも人を高校生のガキ扱いするんじゃねえ! これだけ言ってもまだ俺を花嫁の仕度部屋に入れようとするのか! あんたらがすべきことは、おまえは信用できないと言って、俺をここから追い払うことだ!」 「…大人だったらわかるだろう。おまえ、花嫁になんかしたら大恥かくことに…。」 「それで俺が大恥かいたら古泉がなんと思う? あいつが傷つかないとでも思ったのか! 何事もなかったとしても、それがあいつに対する裏切りだとは思わないのか! それがあいつに知られたとしても、きっとあいつは許すだろう。 だったらそれでいいのか? 許してくれるんだったら裏切ってもいいのか? あいつはもう高校生のガキじゃねえ! 立派な大人だ! これからハルヒを養っていく、一家の主だ!」 あの強面親父が完全に気圧されている。 映画撮影の時にあたしを惚れ直させた、本気のあいつ。 あたしが絶対にやっちゃいけないことをしたら、本気で怒ってくれる、キョン。 だけど今、そんなことを感じさせられたら、覚悟が…。 キョン、ここに来てくれないの? あたし、あんたに「あの言葉」を言ってもらえたら、覚悟を決められるはずなのに…。 「ハルヒがなんかしてほしいんだったら古泉にやらせろ! なんでただの友人の俺にやらせるんだ! 俺の友人としての立ち位置はあいつが決めたことだ! 自分で決めたことだ! 一人で決めたことだ! 花嫁の仕度部屋でやらせるようなことだったらどんなことであれ古泉にやらせろ! 頭おかしいのか、おまえらは! こんなこと、言い出す方も言い出す方だが、伝える方も伝える方だ! こんな親に育てられたから、ハルヒもあそこまで傲岸不遜なバカ女になっちまったんだ!」 キョンは、ここに来てくれない。ここに入ってきてくれない…。 「だいたいこんなことを聞かされて、俺が冷静でいられるとでも思ったのか! ちったあ、他人の、俺の気持ちっていうものを考えやがれ!」 俺の気持ち? あいつの、気持ち…。 あたしは椅子から立ち上がった。 ドレスの裾がまとわりついて走りにくい。 あたし、なんでこんなもの着てるんだろう? 突進するようにドアを開けた。 同時にキョンが背中を向けた。 廊下に両親が真っ青な顔をして立ちつくしているのが見える。 そんなことはどうでもいい。 「ハルヒ、それは古泉に最初に見せろ。」 キョンは、あたしに礼服の背中を向けたまま言った。 なんでこんなことになっちゃったんだろう。 ずっとこいつのことが好きだった。 だけどあたしはこいつにつらく当たってきた。 それでもこいつはあたしについてきてくれた。 あたしはこいつにつらく当たりつづけた。 きっと、許してくれていると確認したかったから。 まだ、見捨てられていないと確認したかったから。 そうしないと、もう見捨てられたのかもしれないと怖かったから。 こんなあたしを、こいつが好きになってくれるはずがないと思っていた。 ずっとあたしの片思いだと思っていた。 そうじゃないと気づいた時には遅すぎた。 両家の結婚話は、もう後戻りのできない段階に入っていた。 あたしのわがままが通るような状況ではなかった。 そんな段階ではなかったから? 違う。 たとえ裏切ったとしても、古泉君は許してくれたと思う。 両親は、許してくれたかどうかはわからないが、許してくれなくてもかまわなかった。 だけど、キョンが許してくれるはずがなかった。 あたしが古泉君を裏切ることを、キョンが許すはずがなかった。 だから、あたしは覚悟を決めた。 もう、キョンのそばにいられなくても仕方がないと覚悟を決めた。 決めた、はずだった。 だけど不安だった。 だからキョンに「あの言葉」を言ってもらえればふっきれると思った。 最後に「あの言葉」を言ってもらいたかった。 「あの言葉」をもらえさえすれば、未練がなくなると思った。 「おまえが今やろうとしていたことは決して許されることじゃない。」 そう。誰が見たって、決して褒めてくれない行為。 なんで、こんなことしようとしたんだろう。 答えは、はっきりしている。 こいつがそばにいなかったから。 こいつのそばにいなかったから。 あたしは、こいつがそばにいなきゃダメだ。 そんなこと、ずっと昔からわかっていた。 くしゃりと視界が歪んだ。 大粒の涙が後から後からこぼれ落ちてくる。 覚悟が…、あんたのそばにはもういられないという覚悟が…、覚悟が、覚悟が! 「泣くなよ! おまえがもしここで泣いたら、古泉への最大の侮辱だ。そんなことは……俺が許さん!」 そうだ、覚悟なんかはじめから無かった。 覚悟を決めたつもりだっただけ。 いや、そうですらない。 覚悟を決めたと自分に言い聞かせただけ。 「あの言葉」を聞けば覚悟が固められるなんて嘘。 ただ、こいつにそう言ってほしかっただけ! 「泣くんだったら…、古泉の前で泣け。」 あいつの手を見た。 何回も何回もつかんだ手。 嵐の中で初めて握り返してくれた手。 あたしが崖から落ちても離そうとしなかった手。 後悔…、後悔、後悔、後悔! もう一度あのころにもどりたい! 毎日こいつの背中を見ていたあのころに…。 毎日こいつの声を聞いていたあのころに…。 あたりまえのようにこいつのそばにいられたあのころに…。 神様、今まで一度も信じたことなんかなかったのに虫が良すぎるけど、たった一つのお願い! あたしをあの、北高の部室にもどして! 「じゃあな、披露宴のキャンドルサービスで会おう。」 あいつの背中が遠ざかっていく。 それを追いかけることは許されない。 キョンが、許してくれない。 大好きな背中。 ずっと見ていた背中。 ずっと見ていたい背中。 なんで、しがみつかなかったんだろう。 なにが邪魔したんだろう。 みんなに美人だともてはやされていたプライド? 勉強もスポーツも音楽さえもあいつより優れているという自己満足? 平凡な容姿のあいつと結ばれるのは嫌だという女の見栄? 違う。 そんなものじゃない。 そんなもの、この背中に比べれば、ジュースの空き缶ほどの価値もない。 勇気が、足りなかっただけ。 それさえも、嘘。 勇気を、ふりしぼらなかっただけ! こいつにしがみついて振り払われるのが怖かった。 ただそれだけ。 こんなに大事なものだとわかっていたなら、何回振り払われてでもしがみつくべきだった! こいつが「やれやれ、しょうがないな」と言ってあたしを背中に乗せてくれるまで、何度でもしがみつけばよかった! 「おまえをこう呼ぶのも最後になるな。」 キョンが扉を開ける。 この廊下からさえも出ていく。 あの夜の校庭で、あたしだけをつれて駆けた背中が、あたしの前から消えようとしている。 せっかく、出会えたのに! この広い世界で、キョンに出会えたのに! 「おれは断じて見ていない。断じて見ていないが…、やっぱり意地があるようだ。…これだけは言わせてくれ。」 いや…、あれほど聞きたかった言葉だけど、今は聞くのが怖い。 そう。あたしの生涯でいちばん大切な思い出。 あたしにとって宝物のような、宝石みたいな思い出。 今それを聞いてしまったら…あたし…。 「ハルヒ。」 「…なに。」 「似合ってるぞ。」 扉がパタンと閉じた。 パソコンのディスプレーが見える。 電源は…、落ちているみたいだ。何も映っていない。 夕方のようだ。後ろに窓があるのだろうか。夕陽が照りつけている。 ディスプレーの向こうに、長机が見える。 その先に、ボロボロの扉が見える。 見慣れた場所のような気もするし、ひどく懐かしい場所のような気もする。 自分の体を見てみた。 北高のセーラー服を着ている! 左袖…。 見間違うはずもない! 真っ赤なSOS団団長の腕章! だけど…、まだ安心できない! そうだ! 学生カバンの中を必死に探る。 あった! あのホテルの部屋にあったバカでかい代物とは全く違う、高校生の身の丈にあった粗末な鏡。 意を決して見る! 涙と鼻水でボロボロのひどい顔をしている。だけどそんなことはどうだっていい! あたしの髪には、あのティアラとかいう用途不明の装飾品ではなく、黄色いリボン付きカチューシャがはめられていた。 悪い夢を見ていたのだろうか…。 それとも、神様があたしのたった一度のお願いを聞いてくれたのだろうか。 そう言えば、今日一日授業を受けた後団活をして、団長机で居眠りをしてしまったような記憶がある。 だけど、高校を卒業して大学に進み、就職をして古泉君と交際をして…、という記憶もあるような気がする。 どっちでもいい。 あたしは、ここにいる。 北高の部室にいる。 ここにいる…はず。 自信がない。 あれは、夢なんかじゃなかった。 そう、あれはきっと、もう一つの現実。 体の震えがまだ止まらない。 あれが現実で、今あたしが見ているのが、ホテルの救護室で見ている夢だったら… 深く考えるのが怖い。 立ってあの扉を開けるのが怖い。 やっぱりあたしは臆病ものだ。 勇気をふりしぼることができない。 あの扉の向こうのどこにも、キョンがいなかったらと思うと怖い。 なんでこんなに怖いんだろう。 キョンが、あたしのいる部屋に入ってこなかったせいだ。 キョンが、あたしを廊下に残して、後ろ手にドアを閉めてしまったせいだ。 キョンがあの扉を開けて、ここに入ってくるまでは安心できな……。 ガチャ。 「ハルヒ、起きたか? 他の三人は帰ったぞ。コーヒー買ってきたんだけど飲むか? 一本しかないから半分こな。まあ、おまえに半分と言ってもほとんど飲まれちまう…。」 さっきまでの焦燥と不安がみるみる消えていく。 胸の辺りから生まれた安心感がゆっくりと全身を包みこむ。 あたしは、声に出して言っていた。 「か、か、かみざま……、あ…、あじがどう……。」 「本当は誰も入れるべきではないんだけれど、あなたを信用します。あなたなら大丈夫だと。古い付き合いだしね。だけど、花嫁におかしなことをしたら、許さないわよ。」 今日はあたしの結婚式。 人生の門出。 あたしは古泉君と結ばれる。 大学を卒業して就職したあと、古泉君に告白された。 三年ほどおつき合いをしてプロポーズされた。 SOS団は不滅だと言っていたけど、あたしが高校を卒業すると同時にみくるちゃんは遠い外国に行ってしまった。 有希は、あたしが知らない間に行方不明になっていた。あのマンションの部屋はいつのまにか何ひとつなくなっていた。 今あたしのそばにいるのは……。 「もう一度いいます。わたしは最後まで反対しました。しかしどうしても娘があなたに会いたいと。だから私はあなたを信用しました。決して花嫁におかしな真似をしないで下さい。」 ここは、ホテルの部屋。 あたしは、豪華な椅子に座っている。 大理石の床に高い天井。大きなシャンデリア。 大きな鏡がある。全身を映す鏡。 純白のウェディングドレスをまとった、あたしを映している鏡。 ママがキョンにしつこく念を押している。 馬鹿ね。 鏡の中のあたしがクスリと笑った。 そんなに心配しなくても、あいつがあたしに変なことなんかできるわけがないのに。 「涼宮さん」 キョンの声が聞こえた。 久しぶりに聞く声。 やっぱり大人になったのね。 太くて、練れた声。 男の声。 あたしは鏡から目を離して、頑丈そうな木の扉を見た。 「あなたは、俺を信用しているのですか。信用していないのですか。」 「何を言っているのですか。あなたを信用していると言ったでしょう。だから新郎以外決して入れるべきではない所にあなたを案内しようとしているのです。あなたは拗ねているのですか。ここに新郎以外の男性を入れることの意味がわかっているのですか。そんなことを言うのなら、やはり信用すべきではないですね。」 「あなたが俺を信用するのならば、何も言わずにここに俺を連れてくるべきでした。信用しないのならばこんな所に俺を連れてくるべきじゃなかった。違いますか。」 キョンったら、理屈っぽいところは変わってないのね。だけどそんなことを言ったら逆効果よ。ほら、親父が露骨に舌打ちをしているわ。 「あなたねえ、いい加減にしてちょうだい。あなたを信用しているって言ったでしょう。だけど万一のことがあったら困るから、釘を刺しただけ。わかりますね!」 「あなたは、俺を信用するのなら、信用したことについて責任を負うべきだ。 ここに俺を連れてきて何があったとしても自分で責めを負うだけのね。 あなたが信用しないというなら、信用しないことについての責任を取るべきだ。 あいつがあきらめるまで反対するべきだ。」 何だか様子がおかしい。 キョン…、何言ってるの? やっぱり拗ねてるの? あたしに、会いたくないの? 「俺には何の責任もない。 俺は古泉一樹君と涼宮ハルヒさんの門出を祝福するだけのためにここに来た。 俺は二人の友人です。それ以外のものでは決してありません。 俺がここでやるべきことはご祝儀を持ってくることと、披露宴を盛り上げることだけ。 違いますか。 俺には何の責任もありません。あなたがあいつに反対しきれなかったことに対する責任を負うつもりは毛頭ありません。 ではもう一度聞きます。 何の責任も負っていない俺を信用するんですか。しないんですか? 責任を持って決めて下さい。」 ママ、お願い! キョンを信用するって言って! あいつがあたしに乱暴したりするわけないわ! あたしはどうしてもあいつに会わなきゃならないの! ママが息を飲む音が聞こえた。 「失礼をお許し下さい。どうぞ娘に会ってやって下さい。お願いいたします。」 数秒間、誰も何も言わなかった。親父も我慢しているらしい。 「バカだ、おまえら。親子そろって大バカだ!」 「なんだと、小僧、いい加減に……。」 親父の声が聞こえる。親父がキョンを殴るかもしれない。 「いい加減にしてほしいのはこっちだ! ハルヒもバカだが、親はもっとバカだ! 高校生のころから知っているからっていつまでも人を高校生のガキ扱いするんじゃねえ! これだけ言ってもまだ俺を花嫁の仕度部屋に入れようとするのか! あんたらがすべきことは、おまえは信用できないと言って、俺をここから追い払うことだ!」 「…大人だったらわかるだろう。おまえ、花嫁になんかしたら大恥かくことに…。」 「それで俺が大恥かいたら古泉がなんと思う? あいつが傷つかないとでも思ったのか! 何事もなかったとしても、それがあいつに対する裏切りだとは思わないのか! それがあいつに知られたとしても、きっとあいつは許すだろう。 だったらそれでいいのか? 許してくれるんだったら裏切ってもいいのか? あいつはもう高校生のガキじゃねえ! 立派な大人だ! これからハルヒを養っていく、一家の主だ!」 あの強面親父が完全に気圧されている。 映画撮影の時にあたしを惚れ直させた、本気のあいつ。 あたしが絶対にやっちゃいけないことをしたら、本気で怒ってくれる、キョン。 だけど今、そんなことを感じさせられたら、覚悟が…。 キョン、ここに来てくれないの? あたし、あんたに「あの言葉」を言ってもらえたら、覚悟を決められるはずなのに…。 「ハルヒがなんかしてほしいんだったら古泉にやらせろ! なんでただの友人の俺にやらせるんだ! 俺の友人としての立ち位置はあいつが決めたことだ! 自分で決めたことだ! 一人で決めたことだ! 花嫁の仕度部屋でやらせるようなことだったらどんなことであれ古泉にやらせろ! 頭おかしいのか、おまえらは! こんなこと、言い出す方も言い出す方だが、伝える方も伝える方だ! こんな親に育てられたから、ハルヒもあそこまで傲岸不遜なバカ女になっちまったんだ!」 キョンは、ここに来てくれない。ここに入ってきてくれない…。 「だいたいこんなことを聞かされて、俺が冷静でいられるとでも思ったのか! ちったあ、他人の、俺の気持ちっていうものを考えやがれ!」 俺の気持ち? あいつの、気持ち…。 あたしは椅子から立ち上がった。 ドレスの裾がまとわりついて走りにくい。 あたし、なんでこんなもの着てるんだろう? 突進するようにドアを開けた。 同時にキョンが背中を向けた。 廊下に両親が真っ青な顔をして立ちつくしているのが見える。 そんなことはどうでもいい。 「ハルヒ、それは古泉に最初に見せろ。」 キョンは、あたしに礼服の背中を向けたまま言った。 なんでこんなことになっちゃったんだろう。 ずっとこいつのことが好きだった。 だけどあたしはこいつにつらく当たってきた。 それでもこいつはあたしについてきてくれた。 あたしはこいつにつらく当たりつづけた。 きっと、許してくれていると確認したかったから。 まだ、見捨てられていないと確認したかったから。 そうしないと、もう見捨てられたのかもしれないと怖かったから。 こんなあたしを、こいつが好きになってくれるはずがないと思っていた。 ずっとあたしの片思いだと思っていた。 そうじゃないと気づいた時には遅すぎた。 両家の結婚話は、もう後戻りのできない段階に入っていた。 あたしのわがままが通るような状況ではなかった。 そんな段階ではなかったから? 違う。 たとえ裏切ったとしても、古泉君は許してくれたと思う。 両親は、許してくれたかどうかはわからないが、許してくれなくてもかまわなかった。 だけど、キョンが許してくれるはずがなかった。 あたしが古泉君を裏切ることを、キョンが許すはずがなかった。 だから、あたしは覚悟を決めた。 もう、キョンのそばにいられなくても仕方がないと覚悟を決めた。 決めた、はずだった。 だけど不安だった。 だからキョンに「あの言葉」を言ってもらえればふっきれると思った。 最後に「あの言葉」を言ってもらいたかった。 「あの言葉」をもらえさえすれば、未練がなくなると思った。 「おまえが今やろうとしていたことは決して許されることじゃない。」 そう。誰が見たって、決して褒めてくれない行為。 なんで、こんなことしようとしたんだろう。 答えは、はっきりしている。 こいつがそばにいなかったから。 こいつのそばにいなかったから。 あたしは、こいつがそばにいなきゃダメだ。 そんなこと、ずっと昔からわかっていた。 くしゃりと視界が歪んだ。 大粒の涙が後から後からこぼれ落ちてくる。 覚悟が…、あんたのそばにはもういられないという覚悟が…、覚悟が、覚悟が! 「泣くなよ! おまえがもしここで泣いたら、古泉への最大の侮辱だ。そんなことは……俺が許さん!」 そうだ、覚悟なんかはじめから無かった。 覚悟を決めたつもりだっただけ。 いや、そうですらない。 覚悟を決めたと自分に言い聞かせただけ。 「あの言葉」を聞けば覚悟が固められるなんて嘘。 ただ、こいつにそう言ってほしかっただけ! 「泣くんだったら…、古泉の前で泣け。」 あいつの手を見た。 何回も何回もつかんだ手。 嵐の中で初めて握り返してくれた手。 あたしが崖から落ちても離そうとしなかった手。 後悔…、後悔、後悔、後悔! もう一度あのころにもどりたい! 毎日こいつの背中を見ていたあのころに…。 毎日こいつの声を聞いていたあのころに…。 あたりまえのようにこいつのそばにいられたあのころに…。 神様、今まで一度も信じたことなんかなかったのに虫が良すぎるけど、たった一つのお願い! あたしをあの、北高の部室にもどして! 「じゃあな、披露宴のキャンドルサービスで会おう。」 あいつの背中が遠ざかっていく。 それを追いかけることは許されない。 キョンが、許してくれない。 大好きな背中。 ずっと見ていた背中。 ずっと見ていたい背中。 なんで、しがみつかなかったんだろう。 なにが邪魔したんだろう。 みんなに美人だともてはやされていたプライド? 勉強もスポーツも音楽さえもあいつより優れているという自己満足? 平凡な容姿のあいつと結ばれるのは嫌だという女の見栄? 違う。 そんなものじゃない。 そんなもの、この背中に比べれば、ジュースの空き缶ほどの価値もない。 勇気が、足りなかっただけ。 それさえも、嘘。 勇気を、ふりしぼらなかっただけ! こいつにしがみついて振り払われるのが怖かった。 ただそれだけ。 こんなに大事なものだとわかっていたなら、何回振り払われてでもしがみつくべきだった! こいつが「やれやれ、しょうがないな」と言ってあたしを背中に乗せてくれるまで、何度でもしがみつけばよかった! 「おまえをこう呼ぶのも最後になるな。」 キョンが扉を開ける。 この廊下からさえも出ていく。 あの夜の校庭で、あたしだけをつれて駆けた背中が、あたしの前から消えようとしている。 せっかく、出会えたのに! この広い世界で、キョンに出会えたのに! 「おれは断じて見ていない。断じて見ていないが…、やっぱり意地があるようだ。…これだけは言わせてくれ。」 いや…、あれほど聞きたかった言葉だけど、今は聞くのが怖い。 そう。あたしの生涯でいちばん大切な思い出。 あたしにとって宝物のような、宝石みたいな思い出。 今それを聞いてしまったら…あたし…。 「ハルヒ。」 「…なに。」 「似合ってるぞ。」 扉がパタンと閉じた。 パソコンのディスプレーが見える。 電源は…、落ちているみたいだ。何も映っていない。 夕方のようだ。後ろに窓があるのだろうか。夕陽が照りつけている。 ディスプレーの向こうに、長机が見える。 その先に、ボロボロの扉が見える。 見慣れた場所のような気もするし、ひどく懐かしい場所のような気もする。 自分の体を見てみた。 北高のセーラー服を着ている! 左袖…。 見間違うはずもない! 真っ赤なSOS団団長の腕章! だけど…、まだ安心できない! そうだ! 学生カバンの中を必死に探る。 あった! あのホテルの部屋にあったバカでかい代物とは全く違う、高校生の身の丈にあった粗末な鏡。 意を決して見る! 涙と鼻水でボロボロのひどい顔をしている。だけどそんなことはどうだっていい! あたしの髪には、あのティアラとかいう用途不明の装飾品ではなく、黄色いリボン付きカチューシャがはめられていた。 悪い夢を見ていたのだろうか…。 それとも、神様があたしのたった一度のお願いを聞いてくれたのだろうか。 そう言えば、今日一日授業を受けた後団活をして、団長机で居眠りをしてしまったような記憶がある。 だけど、高校を卒業して大学に進み、就職をして古泉君と交際をして…、という記憶もあるような気がする。 どっちでもいい。 あたしは、ここにいる。 北高の部室にいる。 ここにいる…はず。 自信がない。 あれは、夢なんかじゃなかった。 そう、あれはきっと、もう一つの現実。 体の震えがまだ止まらない。 あれが現実で、今あたしが見ているのが、ホテルの救護室で見ている夢だったら… 深く考えるのが怖い。 立ってあの扉を開けるのが怖い。 やっぱりあたしは臆病ものだ。 勇気をふりしぼることができない。 あの扉の向こうのどこにも、キョンがいなかったらと思うと怖い。 なんでこんなに怖いんだろう。 キョンが、あたしのいる部屋に入ってこなかったせいだ。 キョンが、あたしを廊下に残して、後ろ手にドアを閉めてしまったせいだ。 キョンがあの扉を開けて、ここに入ってくるまでは安心できな……。 ガチャ。 「ハルヒ、起きたか? 他の三人は帰ったぞ。コーヒー買ってきたんだけど飲むか? 一本しかないから半分こな。まあ、おまえに半分と言ってもほとんど飲まれちまう…。」 さっきまでの焦燥と不安がみるみる消えていく。 胸の辺りから生まれた安心感がゆっくりと全身を包みこむ。 あたしは、声に出して言っていた。 「か、か、かみざま……、あ…、あじがどう……。」 「本当は誰も入れるべきではないんだけれど、あなたを信用します。あなたなら大丈夫だと。古い付き合いだしね。だけど、花嫁におかしなことをしたら、許さないわよ。」 今日はあたしの結婚式。 人生の門出。 あたしは古泉君と結ばれる。 大学を卒業して就職したあと、古泉君に告白された。 三年ほどおつき合いをしてプロポーズされた。 SOS団は不滅だと言っていたけど、あたしが高校を卒業すると同時にみくるちゃんは遠い外国に行ってしまった。 有希は、あたしが知らない間に行方不明になっていた。あのマンションの部屋はいつのまにか何ひとつなくなっていた。 今あたしのそばにいるのは……。 「もう一度いいます。わたしは最後まで反対しました。しかしどうしても娘があなたに会いたいと。だから私はあなたを信用しました。決して花嫁におかしな真似をしないで下さい。」 ここは、ホテルの部屋。 あたしは、豪華な椅子に座っている。 大理石の床に高い天井。大きなシャンデリア。 大きな鏡がある。全身を映す鏡。 純白のウェディングドレスをまとった、あたしを映している鏡。 ママがキョンにしつこく念を押している。 馬鹿ね。 鏡の中のあたしがクスリと笑った。 そんなに心配しなくても、あいつがあたしに変なことなんかできるわけがないのに。 「涼宮さん」 キョンの声が聞こえた。 久しぶりに聞く声。 やっぱり大人になったのね。 太くて、練れた声。 男の声。 あたしは鏡から目を離して、頑丈そうな木の扉を見た。 「あなたは、俺を信用しているのですか。信用していないのですか。」 「何を言っているのですか。あなたを信用していると言ったでしょう。だから新郎以外決して入れるべきではない所にあなたを案内しようとしているのです。あなたは拗ねているのですか。ここに新郎以外の男性を入れることの意味がわかっているのですか。そんなことを言うのなら、やはり信用すべきではないですね。」 「あなたが俺を信用するのならば、何も言わずにここに俺を連れてくるべきでした。信用しないのならばこんな所に俺を連れてくるべきじゃなかった。違いますか。」 キョンったら、理屈っぽいところは変わってないのね。だけどそんなことを言ったら逆効果よ。ほら、親父が露骨に舌打ちをしているわ。 「あなたねえ、いい加減にしてちょうだい。あなたを信用しているって言ったでしょう。だけど万一のことがあったら困るから、釘を刺しただけ。わかりますね!」 「あなたは、俺を信用するのなら、信用したことについて責任を負うべきだ。 ここに俺を連れてきて何があったとしても自分で責めを負うだけのね。 あなたが信用しないというなら、信用しないことについての責任を取るべきだ。 あいつがあきらめるまで反対するべきだ。」 何だか様子がおかしい。 キョン…、何言ってるの? やっぱり拗ねてるの? あたしに、会いたくないの? 「俺には何の責任もない。 俺は古泉一樹君と涼宮ハルヒさんの門出を祝福するだけのためにここに来た。 俺は二人の友人です。それ以外のものでは決してありません。 俺がここでやるべきことはご祝儀を持ってくることと、披露宴を盛り上げることだけ。 違いますか。 俺には何の責任もありません。あなたがあいつに反対しきれなかったことに対する責任を負うつもりは毛頭ありません。 ではもう一度聞きます。 何の責任も負っていない俺を信用するんですか。しないんですか? 責任を持って決めて下さい。」 ママ、お願い! キョンを信用するって言って! あいつがあたしに乱暴したりするわけないわ! あたしはどうしてもあいつに会わなきゃならないの! ママが息を飲む音が聞こえた。 「失礼をお許し下さい。どうぞ娘に会ってやって下さい。お願いいたします。」 数秒間、誰も何も言わなかった。親父も我慢しているらしい。 「バカだ、おまえら。親子そろって大バカだ!」 「なんだと、小僧、いい加減に……。」 親父の声が聞こえる。親父がキョンを殴るかもしれない。 「いい加減にしてほしいのはこっちだ! ハルヒもバカだが、親はもっとバカだ! 高校生のころから知っているからっていつまでも人を高校生のガキ扱いするんじゃねえ! これだけ言ってもまだ俺を花嫁の仕度部屋に入れようとするのか! あんたらがすべきことは、おまえは信用できないと言って、俺をここから追い払うことだ!」 「…大人だったらわかるだろう。おまえ、花嫁になんかしたら大恥かくことに…。」 「それで俺が大恥かいたら古泉がなんと思う? あいつが傷つかないとでも思ったのか! 何事もなかったとしても、それがあいつに対する裏切りだとは思わないのか! それがあいつに知られたとしても、きっとあいつは許すだろう。 だったらそれでいいのか? 許してくれるんだったら裏切ってもいいのか? あいつはもう高校生のガキじゃねえ! 立派な大人だ! これからハルヒを養っていく、一家の主だ!」 あの強面親父が完全に気圧されている。 映画撮影の時にあたしを惚れ直させた、本気のあいつ。 あたしが絶対にやっちゃいけないことをしたら、本気で怒ってくれる、キョン。 だけど今、そんなことを感じさせられたら、覚悟が…。 キョン、ここに来てくれないの? あたし、あんたに「あの言葉」を言ってもらえたら、覚悟を決められるはずなのに…。 「ハルヒがなんかしてほしいんだったら古泉にやらせろ! なんでただの友人の俺にやらせるんだ! 俺の友人としての立ち位置はあいつが決めたことだ! 自分で決めたことだ! 一人で決めたことだ! 花嫁の仕度部屋でやらせるようなことだったらどんなことであれ古泉にやらせろ! 頭おかしいのか、おまえらは! こんなこと、言い出す方も言い出す方だが、伝える方も伝える方だ! こんな親に育てられたから、ハルヒもあそこまで傲岸不遜なバカ女になっちまったんだ!」 キョンは、ここに来てくれない。ここに入ってきてくれない…。 「だいたいこんなことを聞かされて、俺が冷静でいられるとでも思ったのか! ちったあ、他人の、俺の気持ちっていうものを考えやがれ!」 俺の気持ち? あいつの、気持ち…。 あたしは椅子から立ち上がった。 ドレスの裾がまとわりついて走りにくい。 あたし、なんでこんなもの着てるんだろう? 突進するようにドアを開けた。 同時にキョンが背中を向けた。 廊下に両親が真っ青な顔をして立ちつくしているのが見える。 そんなことはどうでもいい。 「ハルヒ、それは古泉に最初に見せろ。」 キョンは、あたしに礼服の背中を向けたまま言った。 なんでこんなことになっちゃったんだろう。 ずっとこいつのことが好きだった。 だけどあたしはこいつにつらく当たってきた。 それでもこいつはあたしについてきてくれた。 あたしはこいつにつらく当たりつづけた。 きっと、許してくれていると確認したかったから。 まだ、見捨てられていないと確認したかったから。 そうしないと、もう見捨てられたのかもしれないと怖かったから。 こんなあたしを、こいつが好きになってくれるはずがないと思っていた。 ずっとあたしの片思いだと思っていた。 そうじゃないと気づいた時には遅すぎた。 両家の結婚話は、もう後戻りのできない段階に入っていた。 あたしのわがままが通るような状況ではなかった。 そんな段階ではなかったから? 違う。 たとえ裏切ったとしても、古泉君は許してくれたと思う。 両親は、許してくれたかどうかはわからないが、許してくれなくてもかまわなかった。 だけど、キョンが許してくれるはずがなかった。 あたしが古泉君を裏切ることを、キョンが許すはずがなかった。 だから、あたしは覚悟を決めた。 もう、キョンのそばにいられなくても仕方がないと覚悟を決めた。 決めた、はずだった。 だけど不安だった。 だからキョンに「あの言葉」を言ってもらえればふっきれると思った。 最後に「あの言葉」を言ってもらいたかった。 「あの言葉」をもらえさえすれば、未練がなくなると思った。 「おまえが今やろうとしていたことは決して許されることじゃない。」 そう。誰が見たって、決して褒めてくれない行為。 なんで、こんなことしようとしたんだろう。 答えは、はっきりしている。 こいつがそばにいなかったから。 こいつのそばにいなかったから。 あたしは、こいつがそばにいなきゃダメだ。 そんなこと、ずっと昔からわかっていた。 くしゃりと視界が歪んだ。 大粒の涙が後から後からこぼれ落ちてくる。 覚悟が…、あんたのそばにはもういられないという覚悟が…、覚悟が、覚悟が! 「泣くなよ! おまえがもしここで泣いたら、古泉への最大の侮辱だ。そんなことは……俺が許さん!」 そうだ、覚悟なんかはじめから無かった。 覚悟を決めたつもりだっただけ。 いや、そうですらない。 覚悟を決めたと自分に言い聞かせただけ。 「あの言葉」を聞けば覚悟が固められるなんて嘘。 ただ、こいつにそう言ってほしかっただけ! 「泣くんだったら…、古泉の前で泣け。」 あいつの手を見た。 何回も何回もつかんだ手。 嵐の中で初めて握り返してくれた手。 あたしが崖から落ちても離そうとしなかった手。 後悔…、後悔、後悔、後悔! もう一度あのころにもどりたい! 毎日こいつの背中を見ていたあのころに…。 毎日こいつの声を聞いていたあのころに…。 あたりまえのようにこいつのそばにいられたあのころに…。 神様、今まで一度も信じたことなんかなかったのに虫が良すぎるけど、たった一つのお願い! あたしをあの、北高の部室にもどして! 「じゃあな、披露宴のキャンドルサービスで会おう。」 あいつの背中が遠ざかっていく。 それを追いかけることは許されない。 キョンが、許してくれない。 大好きな背中。 ずっと見ていた背中。 ずっと見ていたい背中。 なんで、しがみつかなかったんだろう。 なにが邪魔したんだろう。 みんなに美人だともてはやされていたプライド? 勉強もスポーツも音楽さえもあいつより優れているという自己満足? 平凡な容姿のあいつと結ばれるのは嫌だという女の見栄? 違う。 そんなものじゃない。 そんなもの、この背中に比べれば、ジュースの空き缶ほどの価値もない。 勇気が、足りなかっただけ。 それさえも、嘘。 勇気を、ふりしぼらなかっただけ! こいつにしがみついて振り払われるのが怖かった。 ただそれだけ。 こんなに大事なものだとわかっていたなら、何回振り払われてでもしがみつくべきだった! こいつが「やれやれ、しょうがないな」と言ってあたしを背中に乗せてくれるまで、何度でもしがみつけばよかった! 「おまえをこう呼ぶのも最後になるな。」 キョンが扉を開ける。 この廊下からさえも出ていく。 あの夜の校庭で、あたしだけをつれて駆けた背中が、あたしの前から消えようとしている。 せっかく、出会えたのに! この広い世界で、キョンに出会えたのに! 「おれは断じて見ていない。断じて見ていないが…、やっぱり意地があるようだ。…これだけは言わせてくれ。」 いや…、あれほど聞きたかった言葉だけど、今は聞くのが怖い。 そう。あたしの生涯でいちばん大切な思い出。 あたしにとって宝物のような、宝石みたいな思い出。 今それを聞いてしまったら…あたし…。 「ハルヒ。」 「…なに。」 「似合ってるぞ。」 扉がパタンと閉じた。 パソコンのディスプレーが見える。 電源は…、落ちているみたいだ。何も映っていない。 夕方のようだ。後ろに窓があるのだろうか。夕陽が照りつけている。 ディスプレーの向こうに、長机が見える。 その先に、ボロボロの扉が見える。 見慣れた場所のような気もするし、ひどく懐かしい場所のような気もする。 自分の体を見てみた。 北高のセーラー服を着ている! 左袖…。 見間違うはずもない! 真っ赤なSOS団団長の腕章! だけど…、まだ安心できない! そうだ! 学生カバンの中を必死に探る。 あった! あのホテルの部屋にあったバカでかい代物とは全く違う、高校生の身の丈にあった粗末な鏡。 意を決して見る! 涙と鼻水でボロボロのひどい顔をしている。だけどそんなことはどうだっていい! あたしの髪には、あのティアラとかいう用途不明の装飾品ではなく、黄色いリボン付きカチューシャがはめられていた。 悪い夢を見ていたのだろうか…。 それとも、神様があたしのたった一度のお願いを聞いてくれたのだろうか。 そう言えば、今日一日授業を受けた後団活をして、団長机で居眠りをしてしまったような記憶がある。 だけど、高校を卒業して大学に進み、就職をして古泉君と交際をして…、という記憶もあるような気がする。 どっちでもいい。 あたしは、ここにいる。 北高の部室にいる。 ここにいる…はず。 自信がない。 あれは、夢なんかじゃなかった。 そう、あれはきっと、もう一つの現実。 体の震えがまだ止まらない。 あれが現実で、今あたしが見ているのが、ホテルの救護室で見ている夢だったら… 深く考えるのが怖い。 立ってあの扉を開けるのが怖い。 やっぱりあたしは臆病ものだ。 勇気をふりしぼることができない。 あの扉の向こうのどこにも、キョンがいなかったらと思うと怖い。 なんでこんなに怖いんだろう。 キョンが、あたしのいる部屋に入ってこなかったせいだ。 キョンが、あたしを廊下に残して、後ろ手にドアを閉めてしまったせいだ。 キョンがあの扉を開けて、ここに入ってくるまでは安心できな……。 ガチャ。 「ハルヒ、起きたか? 他の三人は帰ったぞ。コーヒー買ってきたんだけど飲むか? 一本しかないから半分こな。まあ、おまえに半分と言ってもほとんど飲まれちまう…。」 さっきまでの焦燥と不安がみるみる消えていく。 胸の辺りから生まれた安心感がゆっくりと全身を包みこむ。 あたしは、声に出して言っていた。 「か、か、かみざま……、あ…、あじがどう……。」 「本当は誰も入れるべきではないんだけれど、あなたを信用します。あなたなら大丈夫だと。古い付き合いだしね。だけど、花嫁におかしなことをしたら、許さないわよ。」 今日はあたしの結婚式。 人生の門出。 あたしは古泉君と結ばれる。 大学を卒業して就職したあと、古泉君に告白された。 三年ほどおつき合いをしてプロポーズされた。 SOS団は不滅だと言っていたけど、あたしが高校を卒業すると同時にみくるちゃんは遠い外国に行ってしまった。 有希は、あたしが知らない間に行方不明になっていた。あのマンションの部屋はいつのまにか何ひとつなくなっていた。 今あたしのそばにいるのは……。 「もう一度いいます。わたしは最後まで反対しました。しかしどうしても娘があなたに会いたいと。だから私はあなたを信用しました。決して花嫁におかしな真似をしないで下さい。」 ここは、ホテルの部屋。 あたしは、豪華な椅子に座っている。 大理石の床に高い天井。大きなシャンデリア。 大きな鏡がある。全身を映す鏡。 純白のウェディングドレスをまとった、あたしを映している鏡。 ママがキョンにしつこく念を押している。 馬鹿ね。 鏡の中のあたしがクスリと笑った。 そんなに心配しなくても、あいつがあたしに変なことなんかできるわけがないのに。 「涼宮さん」 キョンの声が聞こえた。 久しぶりに聞く声。 やっぱり大人になったのね。 太くて、練れた声。 男の声。 あたしは鏡から目を離して、頑丈そうな木の扉を見た。 「あなたは、俺を信用しているのですか。信用していないのですか。」 「何を言っているのですか。あなたを信用していると言ったでしょう。だから新郎以外決して入れるべきではない所にあなたを案内しようとしているのです。あなたは拗ねているのですか。ここに新郎以外の男性を入れることの意味がわかっているのですか。そんなことを言うのなら、やはり信用すべきではないですね。」 「あなたが俺を信用するのならば、何も言わずにここに俺を連れてくるべきでした。信用しないのならばこんな所に俺を連れてくるべきじゃなかった。違いますか。」 キョンったら、理屈っぽいところは変わってないのね。だけどそんなことを言ったら逆効果よ。ほら、親父が露骨に舌打ちをしているわ。 「あなたねえ、いい加減にしてちょうだい。あなたを信用しているって言ったでしょう。だけど万一のことがあったら困るから、釘を刺しただけ。わかりますね!」 「あなたは、俺を信用するのなら、信用したことについて責任を負うべきだ。 ここに俺を連れてきて何があったとしても自分で責めを負うだけのね。 あなたが信用しないというなら、信用しないことについての責任を取るべきだ。 あいつがあきらめるまで反対するべきだ。」 何だか様子がおかしい。 キョン…、何言ってるの? やっぱり拗ねてるの? あたしに、会いたくないの? 「俺には何の責任もない。 俺は古泉一樹君と涼宮ハルヒさんの門出を祝福するだけのためにここに来た。 俺は二人の友人です。それ以外のものでは決してありません。 俺がここでやるべきことはご祝儀を持ってくることと、披露宴を盛り上げることだけ。 違いますか。 俺には何の責任もありません。あなたがあいつに反対しきれなかったことに対する責任を負うつもりは毛頭ありません。 ではもう一度聞きます。 何の責任も負っていない俺を信用するんですか。しないんですか? 責任を持って決めて下さい。」 ママ、お願い! キョンを信用するって言って! あいつがあたしに乱暴したりするわけないわ! あたしはどうしてもあいつに会わなきゃならないの! ママが息を飲む音が聞こえた。 「失礼をお許し下さい。どうぞ娘に会ってやって下さい。お願いいたします。」 数秒間、誰も何も言わなかった。親父も我慢しているらしい。 「バカだ、おまえら。親子そろって大バカだ!」 「なんだと、小僧、いい加減に……。」 親父の声が聞こえる。親父がキョンを殴るかもしれない。 「いい加減にしてほしいのはこっちだ! ハルヒもバカだが、親はもっとバカだ! 高校生のころから知っているからっていつまでも人を高校生のガキ扱いするんじゃねえ! これだけ言ってもまだ俺を花嫁の仕度部屋に入れようとするのか! あんたらがすべきことは、おまえは信用できないと言って、俺をここから追い払うことだ!」 「…大人だったらわかるだろう。おまえ、花嫁になんかしたら大恥かくことに…。」 「それで俺が大恥かいたら古泉がなんと思う? あいつが傷つかないとでも思ったのか! 何事もなかったとしても、それがあいつに対する裏切りだとは思わないのか! それがあいつに知られたとしても、きっとあいつは許すだろう。 だったらそれでいいのか? 許してくれるんだったら裏切ってもいいのか? あいつはもう高校生のガキじゃねえ! 立派な大人だ! これからハルヒを養っていく、一家の主だ!」 あの強面親父が完全に気圧されている。 映画撮影の時にあたしを惚れ直させた、本気のあいつ。 あたしが絶対にやっちゃいけないことをしたら、本気で怒ってくれる、キョン。 だけど今、そんなことを感じさせられたら、覚悟が…。 キョン、ここに来てくれないの? あたし、あんたに「あの言葉」を言ってもらえたら、覚悟を決められるはずなのに…。 「ハルヒがなんかしてほしいんだったら古泉にやらせろ! なんでただの友人の俺にやらせるんだ! 俺の友人としての立ち位置はあいつが決めたことだ! 自分で決めたことだ! 一人で決めたことだ! 花嫁の仕度部屋でやらせるようなことだったらどんなことであれ古泉にやらせろ! 頭おかしいのか、おまえらは! こんなこと、言い出す方も言い出す方だが、伝える方も伝える方だ! こんな親に育てられたから、ハルヒもあそこまで傲岸不遜なバカ女になっちまったんだ!」 キョンは、ここに来てくれない。ここに入ってきてくれない…。 「だいたいこんなことを聞かされて、俺が冷静でいられるとでも思ったのか! ちったあ、他人の、俺の気持ちっていうものを考えやがれ!」 俺の気持ち? あいつの、気持ち…。 あたしは椅子から立ち上がった。 ドレスの裾がまとわりついて走りにくい。 あたし、なんでこんなもの着てるんだろう? 突進するようにドアを開けた。 同時にキョンが背中を向けた。 廊下に両親が真っ青な顔をして立ちつくしているのが見える。 そんなことはどうでもいい。 「ハルヒ、それは古泉に最初に見せろ。」 キョンは、あたしに礼服の背中を向けたまま言った。 なんでこんなことになっちゃったんだろう。 ずっとこいつのことが好きだった。 だけどあたしはこいつにつらく当たってきた。 それでもこいつはあたしについてきてくれた。 あたしはこいつにつらく当たりつづけた。 きっと、許してくれていると確認したかったから。 まだ、見捨てられていないと確認したかったから。 そうしないと、もう見捨てられたのかもしれないと怖かったから。 こんなあたしを、こいつが好きになってくれるはずがないと思っていた。 ずっとあたしの片思いだと思っていた。 そうじゃないと気づいた時には遅すぎた。 両家の結婚話は、もう後戻りのできない段階に入っていた。 あたしのわがままが通るような状況ではなかった。 そんな段階ではなかったから? 違う。 たとえ裏切ったとしても、古泉君は許してくれたと思う。 両親は、許してくれたかどうかはわからないが、許してくれなくてもかまわなかった。 だけど、キョンが許してくれるはずがなかった。 あたしが古泉君を裏切ることを、キョンが許すはずがなかった。 だから、あたしは覚悟を決めた。 もう、キョンのそばにいられなくても仕方がないと覚悟を決めた。 決めた、はずだった。 だけど不安だった。 だからキョンに「あの言葉」を言ってもらえればふっきれると思った。 最後に「あの言葉」を言ってもらいたかった。 「あの言葉」をもらえさえすれば、未練がなくなると思った。 「おまえが今やろうとしていたことは決して許されることじゃない。」 そう。誰が見たって、決して褒めてくれない行為。 なんで、こんなことしようとしたんだろう。 答えは、はっきりしている。 こいつがそばにいなかったから。 こいつのそばにいなかったから。 あたしは、こいつがそばにいなきゃダメだ。 そんなこと、ずっと昔からわかっていた。 くしゃりと視界が歪んだ。 大粒の涙が後から後からこぼれ落ちてくる。 覚悟が…、あんたのそばにはもういられないという覚悟が…、覚悟が、覚悟が! 「泣くなよ! おまえがもしここで泣いたら、古泉への最大の侮辱だ。そんなことは……俺が許さん!」 そうだ、覚悟なんかはじめから無かった。 覚悟を決めたつもりだっただけ。 いや、そうですらない。 覚悟を決めたと自分に言い聞かせただけ。 「あの言葉」を聞けば覚悟が固められるなんて嘘。 ただ、こいつにそう言ってほしかっただけ! 「泣くんだったら…、古泉の前で泣け。」 あいつの手を見た。 何回も何回もつかんだ手。 嵐の中で初めて握り返してくれた手。 あたしが崖から落ちても離そうとしなかった手。 後悔…、後悔、後悔、後悔! もう一度あのころにもどりたい! 毎日こいつの背中を見ていたあのころに…。 毎日こいつの声を聞いていたあのころに…。 あたりまえのようにこいつのそばにいられたあのころに…。 神様、今まで一度も信じたことなんかなかったのに虫が良すぎるけど、たった一つのお願い! あたしをあの、北高の部室にもどして! 「じゃあな、披露宴のキャンドルサービスで会おう。」 あいつの背中が遠ざかっていく。 それを追いかけることは許されない。 キョンが、許してくれない。 大好きな背中。 ずっと見ていた背中。 ずっと見ていたい背中。 なんで、しがみつかなかったんだろう。 なにが邪魔したんだろう。 みんなに美人だともてはやされていたプライド? 勉強もスポーツも音楽さえもあいつより優れているという自己満足? 平凡な容姿のあいつと結ばれるのは嫌だという女の見栄? 違う。 そんなものじゃない。 そんなもの、この背中に比べれば、ジュースの空き缶ほどの価値もない。 勇気が、足りなかっただけ。 それさえも、嘘。 勇気を、ふりしぼらなかっただけ! こいつにしがみついて振り払われるのが怖かった。 ただそれだけ。 こんなに大事なものだとわかっていたなら、何回振り払われてでもしがみつくべきだった! こいつが「やれやれ、しょうがないな」と言ってあたしを背中に乗せてくれるまで、何度でもしがみつけばよかった! 「おまえをこう呼ぶのも最後になるな。」 キョンが扉を開ける。 この廊下からさえも出ていく。 あの夜の校庭で、あたしだけをつれて駆けた背中が、あたしの前から消えようとしている。 せっかく、出会えたのに! この広い世界で、キョンに出会えたのに! 「おれは断じて見ていない。断じて見ていないが…、やっぱり意地があるようだ。…これだけは言わせてくれ。」 いや…、あれほど聞きたかった言葉だけど、今は聞くのが怖い。 そう。あたしの生涯でいちばん大切な思い出。 あたしにとって宝物のような、宝石みたいな思い出。 今それを聞いてしまったら…あたし…。 「ハルヒ。」 「…なに。」 「似合ってるぞ。」 扉がパタンと閉じた。 パソコンのディスプレーが見える。 電源は…、落ちているみたいだ。何も映っていない。 夕方のようだ。後ろに窓があるのだろうか。夕陽が照りつけている。 ディスプレーの向こうに、長机が見える。 その先に、ボロボロの扉が見える。 見慣れた場所のような気もするし、ひどく懐かしい場所のような気もする。 自分の体を見てみた。 北高のセーラー服を着ている! 左袖…。 見間違うはずもない! 真っ赤なSOS団団長の腕章! だけど…、まだ安心できない! そうだ! 学生カバンの中を必死に探る。 あった! あのホテルの部屋にあったバカでかい代物とは全く違う、高校生の身の丈にあった粗末な鏡。 意を決して見る! 涙と鼻水でボロボロのひどい顔をしている。だけどそんなことはどうだっていい! あたしの髪には、あのティアラとかいう用途不明の装飾品ではなく、黄色いリボン付きカチューシャがはめられていた。 悪い夢を見ていたのだろうか…。 それとも、神様があたしのたった一度のお願いを聞いてくれたのだろうか。 そう言えば、今日一日授業を受けた後団活をして、団長机で居眠りをしてしまったような記憶がある。 だけど、高校を卒業して大学に進み、就職をして古泉君と交際をして…、という記憶もあるような気がする。 どっちでもいい。 あたしは、ここにいる。 北高の部室にいる。 ここにいる…はず。 自信がない。 あれは、夢なんかじゃなかった。 そう、あれはきっと、もう一つの現実。 体の震えがまだ止まらない。 あれが現実で、今あたしが見ているのが、ホテルの救護室で見ている夢だったら… 深く考えるのが怖い。 立ってあの扉を開けるのが怖い。 やっぱりあたしは臆病ものだ。 勇気をふりしぼることができない。 あの扉の向こうのどこにも、キョンがいなかったらと思うと怖い。 なんでこんなに怖いんだろう。 キョンが、あたしのいる部屋に入ってこなかったせいだ。 キョンが、あたしを廊下に残して、後ろ手にドアを閉めてしまったせいだ。 キョンがあの扉を開けて、ここに入ってくるまでは安心できな……。 ガチャ。 「ハルヒ、起きたか? 他の三人は帰ったぞ。コーヒー買ってきたんだけど飲むか? 一本しかないから半分こな。まあ、おまえに半分と言ってもほとんど飲まれちまう…。」 さっきまでの焦燥と不安がみるみる消えていく。 胸の辺りから生まれた安心感がゆっくりと全身を包みこむ。 あたしは、声に出して言っていた。 「か、か、かみざま……、あ…、あじがどう……。」
https://w.atwiki.jp/datenkurusu/pages/29.html
天使の羽[0] 系列 背中 スロット 0 防御力 0 魔法防御力 0 重量 45 Lv制限 なし 強化 不可 職業 全職業装備可 入手方法 ガチャ 敏捷+1 壺からコブラ[0] 系列 背中 スロット 0 防御力 0 魔法防御力 0 重量 45 Lv制限 なし 強化 不可 職業 全職業装備可 入手方法 ガチャ 攻撃力+10 緑甲羅[0] 系列 背中 スロット 0 防御力 0 魔法防御力 0 重量 95 Lv制限 なし 強化 不可 職業 全職業装備可 入手方法 ガチャ 体力+1 敏捷-1 蝶の羽[0] 系列 背中 スロット 0 防御力 0 魔法防御力 0 重量 20 Lv制限 なし 強化 不可 職業 全職業装備可 入手方法 ガチャ 回避+5 物理攻撃を受けた時、一定の確率で攻撃側を睡眠状態にする 赤いランドセル[0] 系列 背中 スロット 0 防御力 0 魔法防御力 0 重量 65 Lv制限 なし 強化 不可 職業 全職業装備可 入手方法 ガチャ 最大HP+50、最大MP+50
https://w.atwiki.jp/sgxdhikoushiki/pages/680.html
追いつきたい背中 No.1242 星 最大HP 最大ATK 最大DEF コスト アニメ 3 126 148 137 5 PS 心属性のDEFを10%上昇 +限界突破時のステータス 凸数 最大HP 最大ATK 最大DEF PS 0凸 1凸 2凸 3凸 4凸 5凸 星 最大HP 最大ATK 最大DEF PS 3 追いつきたい背中 126 148 137 心属性のDEFを10%上昇 [[]] 相性のいいカード シンフォギアカード 星 属性 カード名 最大HP 最大ATK 最大DEF 最大SPD 最大CTR 最大CTD スキル [[]] [[]] メモリアカード 星 カード名 最大HP 最大ATK 最大DEF スキル [[]] [[]] メモリアカード
https://w.atwiki.jp/nikuq-niuniu/pages/1004.html
慕いし背中 依頼主 :ジェンリンス(ウルダハ:ザル回廊 X10-Y11) 受注条件:ナイトレベル35~ 概要 :近衛兵団「銀冑団」総長ジェンリンスが、新たな戦技を伝授してくれるようだ。 ジェンリンス 「「自由騎士」と名乗るようになり、 周囲の反応は、いかがかね? 騎士の本分は、剣のみにあらず。 常に自らを律して正義を行い、 人としての模範を示さねばならぬ。 かつて「銀冑団」の近衛騎士は、市街も巡回していた。 その隊列は、庶民の尊敬と感謝を集めたものだ。 特に、「前総長」は近衛騎士の鑑と称えられていた。 幼少のみぎり、私は前総長と出会ったことがある。 市場で父とはぐれ、裏通りで乱闘にまきこまれてな。 泥酔した狩人が放った矢が、私へ飛んできた。 この窮地を救ってくれたのが、巡回中の前総長だ。 見事な剣さばきで私を救い、父の礼も辞して立ち去った。 その頼もしい後ろ姿・・・・・・忘れようにも、忘れられぬ・・・・・・。 以来、私は騎士に憧れ、剣の稽古に打ちこんだ。 ついに念願かない、「銀冑団」に入ってからも、 前総長に追いつかんと、修練に励んだ・・・・・・。 こうして、前総長の背中を追い続けた私が 気づけば総長の座に・・・・・・なんとも皮肉な話だ。 ・・・・・・だが、今や「銀冑団」の威信も完全に地に落ちた。 原因は、数多ある。 ・・・・・・その中でも特に、「聖剣」の喪失が打撃であった。 「聖剣」とは、初代総長がウルダハ王家から授かった宝剣。 王家への忠誠の象徴として代々、総長に受け継がれてきた。 いわば、銀冑団総長の証・・・・・・。 この「聖剣」を、逆賊が奪い去ったのだ!! それにより、王家からの信頼は揺らぎ・・・・・・ 「銀冑団」の失態は、庶民の失望を深めた。 この状況を打開するには、「聖剣」奪還が急務。 しかし、たるんだ近衛騎士では、結果は望めぬ。 事の成就には、精鋭を集めて任にあたる必要がある。 貴公には特に期待しているゆえ、 大任に備えて新たな戦技を伝授しよう。 魔物との戦いの中で、技の勘所を掴んでみせよ。 これには、予想外の動きを見せる敵の討伐が最適だ。 外地ラノシア「隠者の庵」付近に我らが設置した、 「鉄製のかがり」に火をともしてみよ。 その火に引き寄せられた魔猿を、 すべて討伐するのが今回の試練だ。 見事、試練を達成したら、私まで報告するように。」 隠者の庵の鉄製のかがりに点火しリーピング・リングテイルを討伐 ロイヤル・プロムナードのジェンリンスに報告 ジェンリンス 「「ナイトの証」が輝きを増している・・・・・・。 戦技を体得したようだな。 引き続き、任に備えて鍛錬に励んでおけ。 しかし・・・・・・逆賊の行方については、 有力な情報を掴めないでいる。 動きがあり次第、貴公にも知らせよう。」
https://w.atwiki.jp/pokecharaneta/pages/2418.html
蹴りたい背中 登場人物 コメント 綿矢りさ氏の小説作品。 登場人物 ミミロップ ハツ(タイトルに合わせて蹴り技必須) チョボマキ にな川(になは「虫」に「巻」と書くので) ウインディ オリビア(オリチャン) コメント 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/siika/pages/260.html
はじめに 水竜は当初、非武装の輸送船として生まれるはずだった。 それが理想でしかないことはわかっていたが、それでも開発が決まって最初に出てきたのは、そんなユメのような話だった。 そも、戦うために生まれてくる生命など、あっていいはずがない。 すべての戦いが終わった後、水竜の武装は解かれ、平和な世に放たれることが予定されている。 これから語られるお話は、その予定を一足先に実現させたもの、もしくはその予行練習のようなものだと思っていただければ幸いである。 L:背中でバカンス = { t:名称 = 背中でバカンス(イベント) t:要点 = ロッキングチェア,バカンス,水竜の背中 t:周辺環境 = 海の上 t:評価 = なし t:特殊 = { *背中でバカンスのイベントカテゴリ = 世界イベントとして扱う。 *背中でバカンスのイベントの位置づけ = 自動イベントとして扱う。 *背中でバカンスの効果 = 国民は善政を祝う。 } t:→次のアイドレス = 善政(イベント),高位吟遊詩人(職業), 魔法戦士(職業),ドラゴンライダー(職業)} その日、詩歌藩国に大量のビラがばらまかれた。 一枚拾って見てみれば、まず目に飛び込んでくるのは一組の男女が水着でくつろぐ様子。そんな写真。 男性は【ロッキングチェア】であおむけになり、白い歯を輝かせながら、やたらと嬉しそうにサムズアップしている。 女性のほうはうつぶせで、チェリーの浮かぶジュースを片手に微笑んでいる。 背景は海のようだが、なぜか地面は黒っぽい。黒砂とはまた珍しい浜辺があったものだ。 観光業者の宣伝だろうか、と思ってよくよく見れば発行主には「詩歌藩国海軍 沿岸警備隊」とある。 煽り文句を読めばそこには「水竜ソットヴォーチェの背中で楽しいひとときを過ごしませんか?」と書かれていた。 砂浜ではなく、【水竜の背中】でとられた写真なのだった。 それが、人と竜との交流会。その先駆けだった。 /*/ 極寒の地として知られた詩歌藩国だったが、現在は火山活動の影響から気温が大きく上昇している。 もとは北国であるゆえ暑さに慣れていない国民は、だれた。 それまで見向きもされなかったカキ氷は大ヒットした。 中でも最近になって流行しだしたのは水竜ソットヴォーチェの住む海辺だった。 海辺で涼をとりながらクジラ(正確には竜だが)とたわむれることができるとあって、家族連れやカップルが多く訪れる観光名所となっていた。 特に生まれたばかりのミニソットなどはやたらかわいいと評判で、それを目当てでやってくる者も多かった。 国民の中にはドラゴンシンパシーの持つ能力によって水竜と交信できる者もおり、それも流行の理由のひとつのようだ。 ソットヴォーチェとたわむれる様子の生活ゲーム http //www28.atwiki.jp/komachi/pages/172.html この様子をみて藩国首脳部は決断。暑さ対策の一環としてある計画を立ち上げる。 その名も水竜と一緒に夏を満喫しようゼ計画、通称『プロジェクト ラブ&ソット』である。 イベントの内容はこうだ。 夏のもっとも暑い時期である6~9月一杯を期間としてもうけ、十数頭の水竜が毎日、背中に国民を乗せて海へ出る。 水竜は一日中貸し出しとなるが、すべての水竜が外海に出ているわけではないため、海辺の観光名所はそれまで通りに国民の憩いの場となる予定となっている(最初は10頭しかいなかった水竜だが、現在では自己複製によってその数を増やしている) そうして朝から夕方、日が暮れるまでたっぷり夏の海と水竜を満喫してもらう、というわけだ。 ちなみに行き先としては政府指定の無人島のほか、水竜おまかせコースというものもある。 ソットヴォーチェの遊泳に付き合ってひたすら海を突き進むというもので、船に乗る場合ともまた違い、のんびりとした泳ぎから、時間がゆっくり流れる感じがすると評判が高い。 計画当初は、竜への畏怖や軍隊のいかついイメージから応募数は少ないだろうと予測されていた。 しかし蓋を開けてみれば、宣伝効果かもともとの水竜人気の高さゆえか、数千通もの応募があった。 この結果をかんがみて政府は計画の延長を決定。 かくして水竜の背中で【バカンス】計画は毎年の恒例行事となった。 現在では、3~5日間の予定で他国まで足を伸ばせるようにする、という話や、暑さ問題が解決した後も楽しめるようにと砕氷船を使ったホエールウォッチングならぬドラゴンウォッチングまで計画されている。 /*/ いつかは人も竜も武器を捨て、ともに手をとりあえる世界が来ることを願い、この計画は立てられた。 願わくばこの行いが、理想へ近づくための一歩とならんことを。 キャプテンタルクのバカンス 『拝啓 早いもので私が詩歌藩国に来てもうすぐ1年が経とうとしております。そちらはいかがお過ごしでしょうか。こちらはこの国の人々のご厚意にも助けられ、何とか平穏無事に過ごすことが出来ています。 こちらの国では最近音楽院が創設されました。詩歌の名を冠するだけあって、そのレベルの高さには目を見張らされます。何より、この国の人々は皆心から音楽を愛しています。だから、この国の音楽はいつも人々の笑顔と共に在る。その対象が何であれ、心から愛することのできる何かがあるという事は、それ自体が何よりも得難い財産であると思うのです。 さて、この国には、この国を象徴する存在として音楽と共に挙げられるものがいくつかあります。そしてその中の一つに水竜があることは既にご存知かと思います。実は先日は、……』 「…………あづい。」 一言つぶやいてパタリと机に突っ伏すタルク。 「……おお、机がひんやりして気持ちいい……。」 ここで一人机に突っ伏してうめいている男は、名をタルクという。彼は満天星国の出身であり、今はこの詩歌藩国に留学している。アイドレスの種類で表現するならばいわゆる北国人であった。そして、たいていの北国人がそうであるように、彼もまた、暑さには不慣れだったのである。 「おかしい……。雪と氷に覆われた白銀の国と聞いて来たのに」 自室で一人誰にともなくごちるが、当然返事をする者などいない。 「うう……。うちの国より寒いっていうから防寒具たくさん持ってきたのにー……。」 その視線の先、部屋の隅には封がされたままの段ボール箱が積まれていた。このままいけば開けずに国に送り返すことになりそうだ。周囲の人々から聞いた話によればこの暑さは、現在調査中ではあるものの、どうやら地熱の影響によるものらしい、ということだった。そんな訳で、彼は部屋着のつもりで持ってきた数枚のTシャツをヘビーローテーションで着続ける日々を送っていたのである。 「とはいえ、さすがに限界だわな……。今度服を買いに行こう……。ついでにかき氷も試しに食べてみようかな……。また海に行きたい……」 氷を食べようだなんて最初に考えた人はすごいねえ……、などと、窓の外にゆらゆらと立ち上る陽炎をぼんやり眺めつつ机にぐでー、と突っ伏したままのタルク。しかし、しばらくするとどうやら机が生ぬるくなってきたらしい。のそのそと起き上がり、手紙の続きを書き始めた。 “……実は先日は、…………” ――場面は、その先日に戻る。 「うおお……」 タルクは目の前の光景に圧倒されていた。うだるような熱気の中、眼前には黒山ならぬ白山の人だかり。遠くに視線を向ければ、どこまでも青く広がる海と地平線の果てまで見透かせそうなライトブルーの空。そして、日光を反射して白く輝く砂浜とコントラストを成すかのように海岸にはいくつものの黒い巨体が浮かんでいた。時折光を鈍く反射して輝くなめらかなボディはまさに黒鯨と呼ぶにふさわしい生物的なフォルムを持っており……そう、それこそがソットヴォーチェと呼ばれる水竜達であった。 元々、この国では、竜と人との過去の遺恨を乗り越え、人と竜が互いを友として生きていけるよう交流の場を設ける予定であったという。しかし、最近の気温上昇によって涼を求めて海を訪れる人々が急増した結果、自然発生的にこの状況が生み出されたようなのである。 「まあ、仲が良いのはいいことだよね、うん」 一人頷くとのんびり海岸に向かって歩き出した。 だが、手放しで喜んでいられる状況ではないのもまた事実である。そもそものこの状況を生み出した原因である気温の上昇、その原因として有力視される火山活動の活発化が今後さらに厳しい状態に至る可能性が指摘されている。 「おお、やっぱり間近で見るとすごいな……」 海岸に近付くとその大きさがますます強調される。遠くから眺めている間は気付かなかったが、時折ソットヴォーチェ達の鳴き声が聞こえたり、ライトの点滅が見える。 不幸中の幸いというべきか、何らかの火山活動が近く発生するらしい事が事前に明らかになっており、すでに対策を取ることが出来ているそうだ。そして、それは何も人だけに限った話ではなく、水竜達も既に動き出していたのである。 数機の水竜達は波の穏やかな湾内で人々を乗せてゆっくり泳ぎまわっていた。中には水竜の背中にロッキングチェアを乗せていたり、パラソルを設置したりしている人もいる。一見するとただのバカンスである。実際バカンスには違いないのだが、実は避難訓練も兼ねているらしいのである。そのあたり、ドラゴンシンパシーと呼ばれる竜と会話できる力を持った人々が竜と人の間に立ってうまく仲介してくれているらしかった。 避難訓練という視点に立ってみるとこのバカンスの風景も実は理にかなっていると思えてくるのが面白い。ロッキングチェアはけが人を安静にしたり、応急処置を行うのに便利そうだし、日差しをさえぎる物が無い海上で長時間過ごしたり、あるいは火山の噴火に伴って火山灰等が降り注ぐ可能性を考えると、体力の消耗を防ぐために日陰を作れるパラソルは役立ちそうである。 「それにしても……お、あれは」 周囲をざっと見渡す。ふと、海岸の一箇所だけ妙に人だかりが出来ているのに気が付いた。何と言うか、明らかに盛り上がっている。黄色い歓声が上がりまくっていた。そっと近づいてみる。 「おお……いいなあー」 人だかりの中心でぷかぷかと水に浮いていたのはミニチュアサイズのソットヴォーチェであった。全長2メートルも無い位であろうか、キュイキュイと鳴き声をあげたり、むなびれを小さく振ってみせるたびに周囲の女の子達と小さい子供達が楽しそうに歓声をあげていた。あいにく自分には竜の言葉は分からなかったけれど、その鳴き声や動作は穏やかなものだったと思う。 ヒトは、ヒト以外の存在とも絆を結べる。そんなありふれた何でも無い事実を噛みしめながら、しばらくその光景を眺めていた。 「……よし!今日は楽しもう!」 きびすを返し、誰にともなく呟くと大きな水竜へと歩いてゆく。そう、避難訓練云々はこの際ただのきっかけでもよかったのだ。一番大事な事は、人と竜がこの国で共に生きる友であるとお互いが実感することだったのである。 ……この後、水竜の上で子供達とはしゃぎまくった挙句、浮上した潜水艦でおなじみの大突き落とし大会へと発展したりしなかったりするのであるが、それはまた別の話である。 文:鈴藤 瑞樹、タルク 絵:花陵 編集:鈴藤 瑞樹
https://w.atwiki.jp/anison-rap/pages/409.html
【曲名】 太陽の背中 【アーティスト】 イノリ (CV 高橋直純) 【歌詞】 http //www.utamap.com/showkasi.php?surl=T00467 【作詞】 田久保真見 【作曲】 和泉一弥 【編曲】 和泉一弥 【作品】 遙かなる時空の中で~八葉みさと異聞~ 【メディア】 ドラマCD 【テーマ】 キャラクターソング 【初出】 2001年 【備考】 『ヴォーカル集 八葉みさと異聞~君恋ふる歌~』収録。平安時代風なのにラップ。
https://w.atwiki.jp/electroriarcode/pages/250.html
[部分編集] バックパック。SPDを主に上げる部分。 補正が大きい物が多く、低補正装備はそれだけで評価が厳しくなってしまう。 アリーナが進むにつれ武装付きの装備が増えていく。高性能装備となると武装無しの物はむしろ希少。 一部バックパック装備は頭アクセサリ枠に装備可能。マントとか肩当てでオシャレが可能。 背中装備ページリンク背中(星1~星4ライトストライカー) 背中(星4アークフェザー~星4交換装備) 背中(星4交換装備~星4ツインブースター) 背中(星4セイレーンG~) ※対応状況 [部分編集] 対応済:Ver2.4.2までに実装された装備 対応中:なし 未対応:なし