約 374,252 件
https://w.atwiki.jp/animefate/pages/16.html
【英数字】【あ行】【か行】【さ行】【た行】【な行】【は行】【ま行】【や行】【ら行】【わ・を・ん】 英数字の本編用語集 あ行の本編用語集 か行の本編用語集 【クラス】 さ行の本編用語集 【聖杯】 【聖杯戦争】 た行の本編用語集 な行の本編用語集 は行の本編用語集 【宝具】 ま行の本編用語集 や行の本編用語集 ら行の本編用語集 【令呪】 わ・を・んの本編用語集 .
https://w.atwiki.jp/nijiseihaitaisen/
当Wikiは版権キャラによる聖杯大戦を行うリレー小説企画のSS保管です。 本編には殺人、流血、暴力、性的表現といった過激な描写や陰鬱な展開が含まれています。閲覧の際は十分にご注意ください。 現在の本スレ:二次キャラ聖杯戦争・聖杯大戦 http //jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12648/1409684845/ まずはこちらをご覧ください。 @wikiの基本操作 編集モード・構文一覧表 @wikiの設定・管理 分からないことは? @wiki ご利用ガイド よくある質問 @wiki更新情報 @wikiへのお問合せフォーム 等をご活用ください アットウィキモードでの編集方法 文字入力 画像入力 表組み ワープロモードでの編集方法 文字入力 画像入力 表組み その他にもいろいろな機能満載!! @wikiプラグイン一覧 @wikiかんたんプラグイン入力サポート まとめサイト作成支援ツール バグ・不具合を見つけたら? 要望がある場合は? お手数ですが、お問合せフォームからご連絡ください。
https://w.atwiki.jp/sentakushi/pages/1076.html
815 :隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM:2007/08/29(水) 02 56 42 遠坂の言葉に、ライダーが軽く手を挙げる。 「よろしいでしょうか?」 こういった場所でライダーが発言することは稀だったから、興味があった。 そういった事を知る者も知らない者も、全員が頷いて先を促す。 「相手の行動を想定するに……」 地図の上に指を滑らせる。 指差した先は想定していた戦場の外縁、冬木で一番高いあのビルのある場所だ。 「幾つか候補があるとして、この場所で周囲の監視を行うでしょう」 「まあ、そうでしょうね」 指が滑り、今度は中心点を通り逆の方向に動く。 「ですから、私がこちらから陽動を掛けます」 当然バイクで、と付け加えて笑みを見せる。 まあ、少なくとも直線での速度に限れば生身よりも速いんだろうし、この状況で趣味と言うことはあるまい。 「無視されればそのまま攻撃を掛けますが、攻撃を受ければ退避しながら相手を引きつけます」 「……なるほど、互いが陽動と本命を兼ねると言うことですね」 理解が追い付かないが、先生はすぐに理解できたようだ。 こういったことに慣れているのか、理解力の差なのか……多分両方なのだろうが、その理解力は羨ましく思う。 「はい、ですから他のメンバーでビルを制圧し、そこを橋頭堡として中央へと向かってください」 そこまで聞いて、ようやくだがライダーの言いたかったことを理解する。 「勿論、こちら側の戦力が劣っている場合、そして片方に全力で迎撃に来るようなら合流する必要があるでしょう、その場合この距離なら……一分あれば十分に合流は可能ですし」 「ふむ、策そのものは基本だな、一方が物量に勝る限りその相手は行動を制限され続ける、だがそれ故に対抗策を練っているのではないかね?」 確かにジェネラルの言う通りで、敵が同盟をしていると言うのであれば当然相手も同盟を組んだ敵との交戦を想定しているだろう。 想定しているのであれば、戦力比において勝る相手との交戦だって考慮に入れるだろう。 ましてこの場所は相手の庭も同然である以上、どんな罠が用意されているのか……考えれば考えるだけ悪い方向に傾いていく気がする。 「……結局は力押ししかないって事かしら?」 ルヴィアがうんざりしたような表情で呟く。 「勿論最終的にはそうなるでしょう、要はこちらが全力を発揮できれば良いのです」 ライダーは微笑み、そして相手の力を発揮させない状況を作ることですと付け加えて微笑んだ。 つまりこの外縁部のビル制圧にかかる時間が短ければ短いほど次の行動へのアドバンテージは大きくなる。 そのアドバンテージを可能な限り生かし切り相手を撃破する、という策と言うには大雑把な物で、だがある意味で的確な策であった。 いずれにせよ相手の戦力さえまともに把握できない状況ではこれ以上の策は練りようがない。 「……それなら私も陽動に参加するわ」 「シャリフさんも?」 「私も同じ『ライダー』だし、バイクの扱いも私の方が慣れている。 そして陽動は多い方が良いし、同レベルの機動性を持つなら合流は容易……その場合陽動の間サクラの護衛は貴方しか居なくなるのが問題だけどね」 じ、とこちらを見やる。 「そうだな……話を聞く限り士郎君のキャスターは宝具が発動しなければ一般人と変わらん上に、その宝具は常時発動には向かないと言うことだし……戦術は限定されるだろう」 ジェネラルが軽く桜を見やる。 その隣で名城が少しだけふて腐れたような表情で何事か呟いている。 恐らく『事実だけどもうちょっと言い方はないのか』とかそんな所だろう。 しかし、ジェネラルの言ったことは事実だし、陽動作戦を実際に行うなら一人より二人の方が相手を釣れる確率は高くなる。 と、なれば桜は家に残した方が良いのか? 「どうする桜……ここに残るか?」 「いいえ、私も行きます」 既に決意を固めていたのか、反応は早く、そして強かった。 「危険だって自覚はしてますけど、二人のマスターは私で、だから念話できるのは私だけです……だから、居るのと居ないのじゃ連携に差が出るはずですし、それに二日連続で家で待つだけなんて、したくありません……」 最後の方は消え入りそうだったが、言いたいことは伝わった。 ジェネラルは溜息を一つつく。 「戦いの前に感情をそう出されても困るが……確かに連携に関しては私も見落としていた、危険だという自覚があるなら……」 ちらりと何人かに視線を向ける。 何を意図しての物かはすぐに理解できたので、頷く。 「では桜君にもついて来てもらうとして……確認をしよう。 陽動としてライダーがこの方向から攻撃、時間を合わせて我々がこのビルを制圧、その後合流して敵中枢を叩く、方針はこれで良いかね?」 代案があるわけではないし、特に問題はなさそうなので頷くことにする。 「……連携と言うことなら、こことの連絡も可能なようにしておいた方が良いのでは?」 セイバーの言葉にあっという言葉が漏れる。 確かに、どちらかが危険な状態になったとき救援に駆けつけられることが可能な場合と不可能な場合、どちらが良いかは考えるまでもない。 「だとすると、通信機材を使うわけにもいかんし……携帯電話が必要だな」 電波妨害をされていれば無駄に終わるが、そこまでの装備を用意しているとは考えにくい。 「こっちは家の電話を使うとして……携帯電話って誰か持ってるか?」 ルヴィアと名城が手を挙げる。 「二人いればいざという時の分散行動も取れるか……番号は分かっているのか?」 ジェネラルの言葉に二人とも首を横に振ったのでこの家のと互いの番号を教え、メモリに登録させる。 念のためにその番号に掛けさせ、二人とも通じることを確認した。 「では……行動を開始するとしよう」 そう言って、立ち上がった。 出発前に一度だけ自室に立ち寄る。 別に何か忘れ物があるわけじゃなく、ただ立ち寄りたかったのだろうと思う。 隣の部屋からは寝息が聞こえてくる。 念のため襖を開けても、起き出す気配は無い。 ……遠坂の配慮か、魔術で全員が深い眠りに落ちているらしい。 「あとは、全員で生きて帰ってこないと、な」 目と襖を閉じ、一度だけ深く呼吸する。 それからもう一度、部屋をゆっくりと見回し、部屋を後にした。 玄関前に向かえば、既に全員が揃っていた。 最終確認をしていたのか、ライダーは二人ともこちらに気付くと軽く微笑んで火器を背負い、爆音と共に走り去る。 姿は見えなくなっても、爆音だけは遠くから聞こえていた。 「やれやれ、凄い音ね……」 「……耳が痛くなりそうです」 遠坂達は半ば呆れたように音のする方を眺めている。 確かに、あんなにバカでかいエキゾーストノートを至近距離から聞かされたらそりゃ耳も痛くなる。 特にライダーのバイクの音はエンジンの関係でヘリの音と同じだし。 「それでは我々も出発するとしようあの二人はS市方向を迂回して行動する、その間に橋を踏破するとしよう」 それだけ言って、ジェネラルが歩き出す。 「それじゃ遠坂、みんなと留守番を頼む」 「分かってるわ……士郎達は私の代わりに行くんだから、きっちりやってきなさいよ? 勿論死なない程度にね」 胸元を軽く小突きながら、遠坂が笑う。 「ああ、任された、それじゃ、いってきます」 手を振り、先を行くジェネラルの方へと走り出した。 「……さて」 全員を見送って数分、セイバーが口を開く。 「皆さん、身体の調子はどうですか?」 「別に普通だけど……どうしたの?」 多少打ち身が残る程度で、昨日バラバラになりそうなダメージを受けたばかりの左腕の刻印にも、そして骨や神経にも支障はない。 「そうですか……ではなのはさんとフェイトさんはどうです? ……戦えますか?」 「魔力を少し身体の維持に回さないと傷が開いちゃうかもしれません……でも援護なら問題はありません」 足で軽く地面を叩き、足首の状態を確認する。 痛みはそれほどでもないが、鈍さが完全には取れていないのが自覚できた。 「ひょっとして、敵が?」 周囲を見渡すが、姿は確認できない。 「ええ、私もつい先程気付きました……留守を預かるならば、迎撃しなければなりません、我々を信頼してくれた士郎君のためにも」 そう言って指差したのは、今は無人となった家屋の一つ、その二階の窓だった。 その窓が開き、中から影が飛びだす。 飛びだした影は二つに増えて道路に着地する。 「気付いていたとは驚きだ……だがこれはこれで幸運なのかな? 遠坂凛」 そう言って笑うのは、見知った男である。 「確かランサーのマスターだったわね……2日ぶりかしら?」 「……自己紹介はまだだったかな、タイタニア・ヴィルベルトだ」 そう言って笑みを消したその表情からは、執念を感じ取れた。 ――同時刻、S市 己貫く者:無言で佇む男の前に、笑みを浮かべた男が現れた 同郷の者:コート姿の男の前に、赤い女が現れた 陰謀の種:スキップする 疾走:ライダー二人は迂回しつつ目標地点に近付いていった 駆逐:士郎達は第一目標のビルに近付いていった 迎撃:衛宮邸前の道路は戦場と化した 上下3つの中からそれぞれ一つを選んでください
https://w.atwiki.jp/nijiseihaitaisen/pages/67.html
深夜――――とある家屋の一室。 大きめのベッドに腰掛けているのは屈強な体格の老人。 部屋には僅かな明かりが付けられているのみ。 光によって微かに照らされる老人の表情は、どこか億劫な様子に見えた。 そんな老人の前に立つのは、眼帯で片目を覆っている少女。 「へぇ、まさかアンタみたいなジイさんがオレのパートナーだなんてな」 少女は不敵な笑みを浮かべながら語り掛ける。 その表情から読み取れるものは己への確固たる自信。 自らの力が優秀であると信じて疑わない慢心。 老人は、そんな少女の顔をゆっくりと見上げる。 「俺はアーチャー、アンタのサーヴァントだ」 眼帯の少女。彼女こそが『アーチャー』のサーヴァント。 そしてベッドの腰掛ける老人は、彼女のマスター。 この聖杯大戦の参加者として会場に誘われたされた主従達の一人である。 「…フフ、怖くて声も出ねぇか?」 アーチャーはそう呟きながら、沈黙を貫く自らのマスターの顔を覗き込む。 老人は何一つ話そうとしない。 どこか気難しそうな表情で考え事をしているようだ。 アーチャーはどこかつまらなそうに彼をまじまじと見ていた。 聖杯戦争の実感を掴み切れていないのか。 既に戦いの為の方針を練っているのか。 或は、ただシカトしてるだけなのか。 兎に角口を開かぬ老人に、アーチャーは近づけていた顔を遠ざけ更に話し掛ける。 「まッ、喜びな。アンタが引いたのは『大当たり』だぜ。何せオレは世界水準なんだから―――――――」 「…お嬢ちゃん、一つ聞きたいんじゃが」 自信満々に語ろうとしたアーチャーの言葉が唐突に遮られた。 黙りこくっていた老人がようやく口を開いたのだ。 一瞬やや不服そうな表情を浮かべたものの、すぐに老人を真っ直ぐに見つめる。 聞きたいことがある、とのことだ。 そのままアーチャーは老人の言葉に耳を傾ける―――― 「ワシは帰りたいんだが」 アーチャーは己の耳を疑った。 予想もしなかった老人の一言を聞き、眉間をピクリと顰めた。 「…か、帰りたいって?」 「はっきり言わせて貰うが、ワシは聖杯とかいう胡散臭いモンに興味は無い」 「は?」 「というわけで、とっとと帰る方法を教えてくれ」 老人はきっぱりとそう言った。 聖杯に興味無し。戦う気無し。 ムーンセルに誘われておきながら、老人は当たり前のようにその意思を伝えたのだ。 無論、老人のサーヴァントが黙っている筈が無い。 「はァ!?おま、ジジイ何言ってんだ!?じゃ、じゃあオレの戦いは――――」 「知るかッ!ワシは長旅を終わらせて娘の所に帰る所だったっつーのにッ! サーヴァントだか何だか知らんが、聖杯なんて知ったことじゃあない!!」 「だったら何で此処にいるんだよ!?」 「むしろワシが聞きたい所だっつーのッ!!」 「テメェこのクソジジイ、ナメてんのかッ!?」 ―――――そんなこんなで、言い争いが始まった。 二人は互いに胸倉を掴み、ああだこうだと言い争う。 当初は現状や相手への不満を吐き出していた。 しかしそれは段々罵倒や悪口を交えた口論へとシフトし始めている。 はっきり言ってしまうと、子供レベルの微笑ましい喧嘩だった。 そして、いつまで経っても終わらぬ言い争いに痺れを切らしたアーチャーが吐き捨てる。 「おいジジイ!一つ言わせて貰うがなッ!!」 「何じゃ!」 「聖杯戦争で勝ち残らない限り、アンタは生きて帰れないんだよ!!」 「ニャニィーーーーーーッ!!?」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「Oh my god…」 「観念したかい、ジジイ」 数分後、ようやく現状を受け入れた老人は頭を抱えていた。 彼はアーチャーの口から様々なことを聞かされた。 この聖杯戦争、そしてムーンセルのこと。 戦いに勝ち残らなければ脱出は出来ないということ。 そう、戦わなければ生き残れないという現実をまざまざと突きつけられた。 「ま、この戦いは言わば陣営戦。 何も全員と相手取れってワケじゃないんだから、それだけでもマシだろ?」 ざっくばらんにそう言ってのける少女。 はっはっは、と笑い飛ばしながら老人の肩をポンポンと叩く。 そんな余計な気遣いを他所に、老人は暫く頭を抱えていた。 しかしその直後、何かに気付いた様子で口を開いた。 その問いかけの矛先は無論、アーチャー。 「…えーと、お嬢ちゃん」 「ンだよ」 「その…聖杯戦争っつーのは、願いを叶える為の戦いなんじゃろ? お嬢ちゃんにも聖杯に託す願いがあるってことなのか?」 アーチャーから生い立ちを聞いていたジョセフは問いかけた。 彼女は聖杯戦争に関することのついでに、己の素性も語ったのだ。 アーチャーの真名は『天龍』。 軍艦が少女として転生した存在――――艦娘。 天龍は戦前の日本海軍に於いて運用された軽巡洋艦の生まれ変わりである。 ジョセフの問いかけを聞いた天龍は、少しの間を置くように沈黙。 そのまま静かに一息吐き、窓辺に腰掛けて口を紡いだ。 「二度目の生とかには興味は無い。だけど、未練はある」 英霊はゆっくりと語り始める。 己がこの聖杯戦争の召還に応じた理由を。 「オレはかつて、駆逐艦のひよっこ共を前線で率いる指揮官の役割を期待されていた。 実際にオレは旗艦の座を任せられていた時期もあったさ」 ―――少女の戦場は、海だった。 時に穏やかに、時に激しく鳴り響く波の音色。 少しだけしょっぱい潮の匂い。 吹き抜ける爽やかな風。 それらは英霊となって尚、彼女の記憶に染み込まれている。 そんな戦場で、軽巡洋艦「天龍」は戦いを望んでいた。 水雷戦隊の旗艦として駆逐艦達を率い、前線に躍り出て全力で戦う。 それこそがが彼女にとっての歓びだった。 戦う為の軍艦として生み出された少女の、生きる価値を実感出来る瞬間だった。 しかし、至福の時がいつまでも続くことなど無かった。 「だけど、オレは結局第二線に回された。要するに二軍落ちさ。 オレは世界水準の高性能機だっつうのに、やれ時代遅れだの旧式だの…「力不足」の烙印を押さた。 それからは警備や支援みたいな地味な任務ばかり寄越されたのさ」 ある時を境に天龍は旗艦の座を下ろされ、第二線に回された。 建造当時は「世界水準」と謳われた彼女も時代の荒波には勝てなかった。 続々と完成する新型の軍艦。更なる性能の向上を実現した数々の兵器。 それらに劣っていた天龍は、旗艦として力不足であると認識されたのだ。 以来、彼女は前線に出ることも出来ず――――――もどかしい日々を繰り返していた。 「まあ、戦場で散ることが出来ただけ幸福なんだろうけどよ… どうにも腑に落ちなかった。だからオレは此処に来た」 そう、彼女には未練があった。 世界水準と称されながら、結局は冷遇され第二線に回された事実。 さしたる戦果を挙げることも出来ず、周囲の波に取り残されたという結果。 己が望み続けていた『戦い』を続けることが出来なかったという悔い。 故に彼女は願う。 「――――――――思う存分戦いたい。それがオレの望みだ」 不敵に笑う少女の目は、老人を見据えていた。 その瞳はどこまでも真っ直ぐであり、純粋だった。 己の願いに対し、只管に従順であることを瞳が物語っていた。 「オレは聖杯そのものに託す願いがない。 だからこそ、アンタを此処から生きて帰す為に戦うことだって出来る」 どうするよ、と天龍は老人に問いかける。 老人は彼女の話を黙って聞き続けていた。 彼女の来歴を、経緯を、願いを。 全ての瑣末を静かに耳にしていた。 何か悩むような素振りを見せる老人。 進むべき道を選んでいた。 暫しの沈黙がその場を包む。 少女は黙って老人の返答を待ち続けていた。 「やれやれ、じゃのう」 そして、老人はその場で溜め息をつく。 面倒なことに巻き込まれてしまったな、と言わんばかりに顔に手を当てる。 天龍は、無言で老人の『答え』を待つ。 そのまま、少しの間を経て。 老人は、答えた。 「…仕方ない、付き合うとしよう」 ―――一先ず、戦いを受け入れることにしたのだ。 最早観念したような様子で彼はそう言い放った。 老人の返答を聞いた瞬間、ニヤッとアーチャーが笑みを浮かべる。 「そうこなくっちゃな」と呟く彼女の表情は不敵であり、どこか晴れやかだった。 「ジジイ、名前は?」 「…ジョセフ・ジョースター」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 承諾してしまった。 本当ならばこんな戦いに興味は無い。 アーチャーというお嬢ちゃんの事情もどうだっていい。 だが、彼女と戦うことを受け入れてしまったのだ。 それは何故か。 (あんな真っ直ぐな目をされたら、断るにも断れんのう) 彼女の目を見てしまったからだ。 生前に果たし切れなかった願い。 どこまでも純粋な望み。 あの目からそんな想いを感じ取ってしまった以上、無下にすることなど出来なかった。 尤も、それがこの老人の持つ優しさであるということに彼自身気付いていないが。 それに、老人はかつて彼女と似たような目を持つ男と戦ったことがある。 どこまでも純粋な武人。戦場で存分に力を振るうことを望んだ戦士。 敵でありながら、高潔な意志を以て戦っていた『人ならざる者』。 彼の目とアーチャーの目が無意識の内に重なって見えたのも共闘を受け入れてしまった一因だった。 (さーて、どうするか…) アーチャーの望みを叶える。 聖杯戦争から生還する。 その為には戦わなくてはならない。 願いのない自分に出来ることと言えば、それくらいだ。 何もしないままでは始まらないのだ。 成り行きで戦争に巻き込まれてしまった老兵は静かに己の従者を見上げる。 サーヴァントの少女は相も変わらず笑みを浮かべていた。 やれやれと静かにごちりながら、彼は今後の方針を練ることにした。 この聖杯戦争を生き残る為の術。それを考えなくてはならない。 彼の名はジョセフ・ジョースター。 かつて人間を超越する『闇の一族』を打ち倒した波紋戦士。 そして現代において、空条承太郎らと共に邪悪の化身を撃破したスタンド使い。 ジョセフ・ジョースターの奇妙な冒険が、再び幕を開ける。
https://w.atwiki.jp/psyren_wars/pages/152.html
僅かな休息 ◆wd6lXpjSKY 誰にも罪は無いが、渋滞に巻き込まれると苛立ちが生まれてしまう。 罰を与えるわけではないが、一人の運転手は八つ当たりのようにクラクションを鳴らす。 「あーあー! さっさと進めや……」 悪態をつきながら一向に進まない前方の乗用車を見つめる纏流子。 邪魔なモンは斬る――そんな方針ではあるが、常識の範囲内では関係ない。 車から降りてぶった斬って道を空ける。そんなことが許されるはずが無い。無論、するつもりも無い。 「もう人吉の姿も見えなくなっちまったな」 「見えなくも何も最初から見えてやしねえだろ。 なぁアゲハ。こっから人吉を見つけるってのは流石に無理がある」 「解ってるよ……これじゃあ橋の向こうに行ってる可能性もあるしな」 人吉善吉を捜索するために車を走らせていた夜科アゲハとセイバー、纏流子。 人形を使役するキャスターに連れ去られたようだが、完全に追跡するアテが無くなってしまった。 車を飛ばせば少しは姿を発見出来るかと思っていたが、まさかの渋滞に巻き込まれてしまう。 夜という仕事帰りの時間と重なってしまったこと。 もう一つは彼ら――聖杯戦争参加者が起こした戦闘の余波で交通規制が始まっていた。 麦わら帽子のライダーが一般人を気絶させてしまったこと。 他にも響く銃声や轟音は日常に似合わない不協和音であり、住民にとって大きな恐怖となっている。 一種のパニック現象に近い今、マスコミも多く集まっており自由に身動きが出来ない。 「なぁ纏。これ盗んできた車だよな?」 「当然だろ。あたしが車持ってる訳ないだろ」 「足が付いたら面倒だ。そこら辺に乗り捨てて、単車でも何でもいいから新しいのパクって帰るぞ」 助手席に座っているアゲハが提案した内容は正直に言って褒められるものではない。むしろ罪である。 しかし盗難届を出されれば警察が動き、拘束されるかもしれない。此処で車を捨てる判断は懸命である。 しっかりしていないようでしっかりしているような。勉強は出来ないが馬鹿ではないような。 (悪いな人吉……明日、またお前を探すからよ) 聖杯戦争に巻き込まれた夜科アゲハが最初に接触した他の参加者が彼、人吉善吉だ。 助ける、救うなどと自分の生命を肩入れしてまでの仲ではないが、黙って見捨てる訳がない。 一度ぶつかった男だ。もう他人ではない。この手が届くなら救ってやる。 (それでも見つからなかったら――俺は先に行くからな) もしその手が届かなかったら、それは物語の分岐点である。 生きていることを願い、夜科アゲハはその足を進めるだけ。立ち止まってはいられない。 天戯弥勒を止めるために。仮初であろうがこの世界を救うために。 脇道に車を滑らせ、ギリギリ車線が存在するかしないか程度の広さしかない小道を進む。 聖杯戦争の舞台は比較的都会であり、ちょっとした移動でも混雑で足を取られてしまう。 座席にだらしなく腰を預け、片手でハンドルを切りながら流子はルームミラーを調整する。 後ろから来ている車は無い。このまま大通りに合流すればすんなり帰れそうだ。 「なぁアゲハ。お前、魔力の貯蔵は充分か?」 「なんだよその言い回し……心配すんな。ちっともへばってないぜ?」 「そっか……ん! ならいいぜ、とっととバイクかっぱらって帰るぞ!」 先の戦闘ではアーチャー相手に苦戦を強いられた。予定よりも大幅に魔力を消費してしまった。 サーヴァントなるシステム上、自分の戦力はマスターに依存し、力を振るえば振るう程マスターを蝕んでしまう。 アゲハに対して流子は申し訳無さを、自分に対する情けなさを感じていた。 しかしそれは既に流れており、両者は通じあっていた。それでも気になる物は気になる。 人吉善吉の件もある。 なるべくアゲハに負担が掛かる事は回避したい……しかし彼は強い。或いは強く振舞っている。 なら必要以上に心配する必要は無い。 話題を勢いで切り上げた流子はアクセルを踏み込み、適当な駐車スペースに車をダイレクトに決める。 決めるとは駐車を行ったことを彼女なりの言葉で表現したものである。 「荒いぞお前!」 シートベルトで抑えられていた身体に重力が襲い掛かり、不満を叫ぶ。 当の本人である流子は特に反応もせずに扉を開けると、停まっていたバイクに手を掛ける。 「これなら走れるぞー」 するとカギも無いのにエンジンが掛かり、誰も触れていなかった無機の械に息吹が吹き込まれる。 ようはちょっとした魔力の応用で、自らのバイクになった。 「ったく……さっさと帰るぞ」 手を振る流子に対しアゲハはぶっきらぼうに扉を開け、彼女の元へ進む。 今日は色々なことがあり過ぎた。シャワーでも浴びて早く眠ろう。 そう思いながらバイクに跨り、若い男女は出発した。 『洗濯してもらいフブキにはアイロンも掛けてもらった。幸せだ』 「それはよかったな鮮血」 (ハンガーに掛かってる姿見てるとやっぱ服だよなコイツ……) アゲハの家に無事帰宅した彼らは、彼の部屋に入り浸り適当に会話をしていた。 既にシャワーや歯磨きは済ましており、もう寝るだけと言った段階である。 フブキ――アゲハの姉が昔使っていたパジャマを着せられた流子はアイスを食しながら学園の生徒名簿を見ていた。 単なる暇つぶしであり、特に意味は無い。 『流子、もう歯磨きをしたのに物を食べるのか』 『うるへーほ、ふぇんふぇふ』 まるで親子のような会話をしている流子達を無視してアゲハは窓から空を見上げていた。 仮初の架空世界でも星は美しく輝いている。 手を伸ばして掴み取れたらどれだけ強く輝いてくれるだろうか。星はどの世界でも輝いている。 (月が綺麗だな……今日は満月か) 雲一つ無い美しい月夜。 これで雨宮でも居たら良い雰囲気に……なんて考える余裕や発想出来るほど頭も回っていない。 とりあえず明日は学園に行く。其処にルキアが来れば改めて情報交換でも行うか。 人吉善吉は来るのか、来て何を話すか。紅月カレンとも接触するかもしれない。 そもそも天戯弥勒の手掛かりを掴まなくては……やることが多過ぎる。 (俺は結局何も手掛かりを掴めちゃいねえ……祭先生や影虎さんに笑われちまう。 雨宮やヒリューにもボロクソ言われるだろうな……情けねえ、俺には帰る場所があるのに――っ) 「はああああああああああああああああああ!?」 「うるせーぞ! 纏!」 「なあアゲハ、お前アッシュフォード学園の生徒会長に会ったことあるか!?」 「あ……たしか鬼龍院皐月だろ? あるぜ」 「これ、あたしの姉さんだ……まさか姉さんも聖杯戦争の参加者に!?」 「いやあの人から魔力を感じなかったけど……姉妹なのに似てねえなお前達」 「うるせえ! んなことより明日はあたしも学園の中まで付き合うからな! NPCにわざわざ知り合いを用意する糞野郎の気持ちなんて解りたくも無いけど、一応姉さんの無事を確かめるからな!」 「はいはい……んじゃ電気消すから戻れ」 センチな感傷に浸っていた自分は何だったのか。騒ぐ流子を見てアゲハの弱い考えはぶっ飛んだ。 悩むなんてらしくない。道があるなら黙ってでも走る。それでいい。 纏流子に助けられた。考えてやっているならたいしたもんだが……どうなのやら。 電気を消したアゲハは窓を締め忘れていたことに気付き、鍵をかけた。 彼らは明日、学園で一つの噂を知ることになる。 『満月の夜に現れた巨人伝説』 今日の満月は一段と綺麗で、不気味であった。 【B-4/アゲハ自宅/一日目・夜】 【夜科アゲハ@PSYREN-サイレン-】 [状態]魔力(PSI)消費(中) [装備]なし [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:聖杯戦争を勝ち抜く中で天戯弥勒の元へ辿り着く。 1.寝て学園に行く。 2.人吉善吉捜索再開。 [備考] ※ランサー(前田慶次)陣営と一時的に同盟を結びました ※セイバー(リンク)、ランサー(前田慶次)、キャスター(食蜂)、アーチャー(モリガン)、ライダー(ルフィ)を確認しました。 ※ランサー(レミリア)を確認しました。 ※キャスター(フェイスレス)の情報を断片的に入手しました ※『とある科学の心理掌握(メンタルアウト)』により、食蜂のマスターはタダノだと誤認させられていました。 ※アーチャー(モリガン)と交戦しました。宝具の情報を一部得ています 【セイバー(纒流子)@キルラキル】 [状態]魔力消費(中)疲労(中) [装備] [道具] [思考・状況] 基本行動方針:アゲハと一緒に天戯弥勒の元へ辿り着く。 1.寝て起きたら学園に行って皐月に会う。 2.キャスターと、何かされたアゲハが気がかり 3.アーチャー(モリガン)はいつかぶっ倒す [備考] ※セイバー(リンク)、ランサー(前田慶次)、キャスター(食蜂)、アーチャー(モリガン)、ライダー(ルフィ)を確認しました。 ※間桐雁夜と会話をしましたが彼がマスターだと気付いていません。 ※キャスター(フェイスレス)の情報を断片的に入手しました ※乗ってきたバイクは学園近くの茂みに隠してありましたが紅月カレン&セイバー(リンク)にとられました。 ※アゲハにはキャスター(食蜂)が何かしたと考えています。 ※アーチャー(モリガン)と交戦しました。宝具の情報を一部得ています BACK NEXT 054 MEMORIA 投下順 056 CALL.2 満月 053 運命「ミゼラブルフェイト」 時系列順 054 MEMORIA BACK 登場キャラ NEXT 047 Cat Fight!!! 夜科アゲハ&セイバー(纏流子) 064 きっとどこかに繋がる世界
https://w.atwiki.jp/fateonsen/pages/118.html
キャラシート【としあきの聖杯戦争TRPG】 【名前】レイト・クーリュイア 【容姿】アルビノの少年 【願い事】残りの寿命を意味のあるものにする 【バッドエンド】何も残せず、残りの生を過ごす 【グッドエンド】自身の願いを見つけ、生きる道を探す 【令呪】3/3 【英雄点】20点 【HP】45(30)/45(30) 【筋力】A 5 【耐久】A+ 6(7) 【敏捷】E 1 【魔力】A 5 【幸運】C 2 【スキル1】滅私の献身:英雄点5を得る。相手の攻撃時、攻撃対象を自分に変更できる。 【スキル2】人造の生命:自身の最大HPを15増やす。 【スキル3】聖杯の残滓:英雄点5を得る。サーヴァントに対し、通常のダメージを与える。 【その他】中立・善 男性 ホムンクルス 泥 名前 レイト・クーリュイア 誕生日・年齢 12月24日・生後半年 身長・体重 163cm・53kg 血液型 O型 好きなもの クーリュイア卿のためになることをすること 苦手なもの 戦闘以外のこと 特技 基盤レベルで編み込まれた魔力の即時解放 起源 奉仕 属性 中立・善 魔術属性 火 魔術系統 錬金術 魔術特性 放出 魔術回路 質:A / 量:A/ 編成:異常 【設定】 三流錬金術師の家系であるクーリュイア家によって聖杯戦争に送り出されたホムンクルスの少年。 当主である現クーリュイア卿は大きな功績もなく、魔術師としての実力もお粗末なものであった。そして彼は捻くれており、自分以外の人間を信用もしていなかった。結果、クーリュイア家は没落し、存在すら危うくなっていた。 レイトはクーリュイア卿によって聖杯戦争の為だけに作り出されたホムンクルスであり、1年にも満たない寿命をかけて聖杯戦争に身を投じた。 彼のサーヴァントであるバーサーカー紅孩児の奮闘もあり、無事聖杯戦争に勝利し、クーリュイア家の成功への道を開いた。 一度は聖杯戦争に勝利し。クーリュイア家の再興を果たしたが、欲に駆られた当主により、再び聖杯戦争へと投じられた。 召喚したシールダーアムピアラオスと共に、マスター煤居&セイバーの陣営と同盟し戦い抜く。 結果的に敗北したが、煤居により願いを叶える権利を譲渡され、クーリュイア家の繁栄を願う。 彼が自分の願いを持つのはまだ先の話である・・・。 2度の聖杯戦争を生き抜き、2度聖杯を持ち帰った少年。 その恩恵により、強い権力と地位を得、錬金術師として一大勢力となったクーリュイア卿の手によるホムンクルス。 しかし、旧式となった彼は卿に捨てられ、残り少ない寿命の使い道を探し今回の戦いに身を投じた。 その寿命も半年程度、彼が望むのは・・・ただひとつの生命の輝き。
https://w.atwiki.jp/psyren_wars/pages/34.html
人吉善吉&アサシン ◆iDawWxUUzg 「傑作だな、聖杯戦争」 ◇ ◇ ◇ 生まれた時から、彼女は総てにおいて満たされていた。 恵まれた家庭環境、才覚に溢れた身体と頭脳。 他の人ができないことを簡単にやってのける彼女を、尊敬していた。 それが、眩しくて、愛おしくて――少しでも追いつこうと努力した。 「子供の頃から、めだかちゃんの横に並び立てる男になりたいと俺は努力していた」 いつかはきっと。 その想いを胸に、ひたすらに前を向いてきた。 あらゆる知識を頭に詰め込んで、あらゆる武術をかじり、自分に適応するモノを極めて。 ただ一人、彼女の為に。そして、何よりも誰に対しても真っ直ぐでいられる自分で在り続ける為に。 人吉善吉は、努力の最果てまで辿り着いたのだ。 「だけど、もっと見るべきもんもあったんだよな。言ってやるべきだった、めだかちゃんに」 だが、その最果てで見た景色は、違った。 絶対に正しいと信じていた彼女は歪で、救われない女の子だった。 何処にでもいるありふれた少女。正しさに動かされているだけのか弱い女の子だった。 「ナメてんなよ、バーカ。お前が全部背負う必要なんざ何処にもありやしねぇってな」 そして、善吉は気づいてしまった。 間違いを正さないと――彼女は破綻する。 黒神めだかはどうしようもなく報われず、救われない。 「聖杯戦争。万感の想いも世界へと響かせる聖杯なら、めだかちゃんの呪縛も無くなるのかねぇ」 そうして、善吉はめだかに期待することを諦めた。 立たないといけない。振るわないといけない。 彼女を抜きに、自分が正しいと思える拳を。 ――それなら、これを使うといい。 安心院なじみはそんな善吉を、くつくつと嗤いながらも、認めた。 これまでの『主人公』を押しのけてでも。めだかと敵対することになってでも。 自分だけの想いを貫く覚悟をついに得たことを。 オリエンテーションで打ちひしがれていた善吉に差し伸べられたモノは赤いテレホンカード。 「ま、取れる手段は何でも取らないといけねぇか」 願いを叶える戦争へと誘う魔性の宝具を、善吉は手に取ることを選んだ。 命の保証はない。もしかすると、何も得ることができず死にゆく結末がまっている可能性だってある。 そんな、なじみの優しい忠告をはねのけ、善吉は頬を釣り上げて笑った。 ――命ぐらい懸けれなきゃ、俺は一生めだかちゃんに追いつけねぇよ。 この決意は、間違いなんかじゃない。 人吉善吉が一人で考え、一人で決めた願いの意志。 だから、 「つー訳だ、力を貸せッ!」 彼は迷いなく、テレホンカードを公衆電話の差し口へと押し込んだ。 ◇ ◇ ◇ 「いいや、戯言だね。聖杯戦争」 ◇ ◇ ◇ 「よう、愉快なお祭り騒ぎへの招待状――確かに受け取ったぜ」 そして、天戯弥勒の開催宣言を経て、人吉善吉は此処にいる。 「……えーっと、アンタがサーヴァントでいいのか?」 「ったりめーだろ。どっからどう見てもサーヴァントじゃねーか」 「いや、見るからに普通の男子高校生なんだけどよ……」 善吉の前に現れたサーヴァントは一見しても、化け物じみた雰囲気を出さない普通の青年だった。 茶色に染めた髪、胸元を開けた制服に、鋭い目つき。 年齢的には、自分とそこまで変わらないだろう。 「おいおい、心配すんなって。見た感じ、強そーじゃねーって自覚はある。 だが、肝心なのは中身? そうだろうが、つーかそうだから」 「そういう意味じゃなくてさ。俺と同年代の奴が出てきて驚いただけだっての。 こっちは最初から信じてるよ、アンタのこと」 そんな心配を読み取ったのか、サーヴァントは皮肉げに笑った。 最後の一人になるまで生き残る。その果てに、聖杯は産声を上げるらしい。 全く、大した苦難の道程だ。 もっとも、相対するサーヴァントはそんなこと知ったことではない。 サーヴァントが求めているのは何が何でも勝ち抜く決意。何を切り捨てて、何を掴み取るかを決める一歩なのだ。 「……そういう照れることを真正面から言うかねぇ。お前、人誑しだな?」 「は、はぁ?」 「ま、ともかくだ。呼ばれたからには勝ちに行きたいね」 願いを叶えるには代償が存在する。重複した願いは、争いを生む。 聖杯戦争ではありふれた茶飯事であり、常識とさえ言える絶対のルールだ。 「ああ。というか、アンタにも願いがあるんだな」 「当然だろ。願いがあるからこそ、サーヴァントになってんだ。 何事にも報酬ってのは必要だぜ? 生憎とボランティアは嫌いなんでね」 だから、迷うな。一直線に聖杯を勝ち取るべく、駆け抜けろ。 サーヴァントは善吉に対して言外に伝えているのだろう。 「そんで、俺の願いが聞きたいってか。言ってしまえば簡単なんだけどよ。 つまるところ、リベンジマッチだ。もう一度、やり返したい奴がいるんだよ。 無様に負けちまったから、今度こそ俺は勝ちたい。負け犬のまま終わるのは御免なんでね」 サーヴァント――垣根帝督のすることは英霊になる前と変わらなかった。 上へと登り、自分こそが最強だという証明を勝ち取るのだ。 例え、マスターに理解されずとも、知ったことか。 彼の根本は英霊になろうとも、揺らがない。 「へっ、シンプルでいいじゃねぇか。それに、そういうのわかるぜ。 俺も負けたまま終わるのは嫌だ。どうせなら、勝ちに行きてぇよ」 だが、今回当てられたマスターは――少し違った。 彼の願いを馬鹿にせず、笑って肯定してくれる変わった奴だ。 それが、帝督の頭に強く残った。 【マスター】人吉善吉@めだかボックス 【参戦時期】第一回オリエンテーリング終了後。 【マスターとしての願い】黒神めだかを打ち砕く。 【weapon】なし 【能力・技能】 『欲視力』 他人の視界を覗くスキル。 『サバット』 大抵の武術はかじった善吉だが、その中でも足技を多用するサバットを一番の得手としている。 また、銃火器対策も積んでいる。 『???』 なぜかは知らないが、異常性を持った人物に好かれる。 ある意味、人誑し。 【人物背景】 めだかボックスの主人公。箱庭学園の第98・99代生徒会庶務を務めている1男子生徒。 ヒロインであり、主人公でもある黒神めだかとは2歳の頃からの幼馴染。 昔からめだかの正しさを信じ多大な好意と信頼を寄せていたが……。 【方針】 聖杯を取る為にも、生き残る。 【クラス】 アサシン 【真名】 垣根帝督@とある魔術の禁書目録 【パラメーター】 筋力C 耐久C 敏捷B 魔力E 運D 宝具A 【属性】 混沌・悪 【クラススキル】 気配遮断:D 自身の気配を消す能力。完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。 【保有スキル】 見切り:B 敵の攻撃に対する学習能力。 相手が同ランク以上の『宗和の心得』を持たない限り、同じ敵からの攻撃に対する回避判定に有利な補正を得ることができる。 但し、範囲攻撃や技術での回避が不可能な攻撃は、これに該当しない。 生存:B 暗部に長くいる経験からか、戦場にて生還する事に長けている。 対魔力:C 精神汚染系の魔術に対する強い耐性を持つ。物理的耐性にも強い。 未元物質を纏うことで得られるスキル。 【宝具】 『未元物質』 ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1 学園都市第二位のレベル5であった垣根帝督が有する、 「この世に存在しない素粒子を生み出し(または引出し)、操作する」能力 。 及びそれによって作られた「この世に存在しない素粒子(物質)」。 能力仕様の際は基本的に天使のような白い6枚の翼の形になる。 これらの能力を活かし、飛行や防御・打撃・斬撃・烈風・衝撃波・光攻撃に応用が可能。 また、未元物質を利用し、体の傷を癒やすことも出来る為、かなり万能である。 【Weapon】 拳銃。 【人物背景】 学園都市で暗部組織、『スクール』のリーダーを務めていた青年。 能力『未元物質』を所持する、学園都市第2位の超能力者(レベル5)。 基本的に敵でない一般人は攻撃しないし、敵を許す寛容さもあるが、逆上すると周りに気を使わなくなる。 それでも裏社会ではまだ人間味のある方だが、一方通行にはチンピラと酷評されるレベル。 【サーヴァントとしての願い】 再誕。一方通行へのリベンジ。 【基本戦術、方針、運用法】 宝具を活かした機動戦、もしくはトラップ主体の待ち戦術。 正面戦闘もこなせるが、長期的な戦いを踏まえ、消耗は避けたい。 BACK NEXT 012 エレン・イェーガー&アサシン 投下順 014 間桐雁夜&バーサーカー 012 エレン・イェーガー&アサシン 時系列順 014 間桐雁夜&バーサーカー BACK 登場キャラ NEXT 参戦 人吉善吉&アサシン(垣根帝督) 016 LIKE A HARD RAIN
https://w.atwiki.jp/kakiteseihai/pages/32.html
「“真実”ってなんだろ?」 「哲学的な問だね」 「ちゃかすなよ。この姿になっちまったんだ、突き詰めたくもなるだろが、このロワの理由を、“真実”を」 「そうだね、仮面の王と夢の塔・クルツ(◆CruTUZYrlM)。 その姿なら、いや、ソフィアに限ったことじゃない、カインもローラもロッシュも……他にも多くの皆が“真実”を望んだ」 「てめーの方こそその姿だけど、大丈夫だろな、悪しき世界の人々・ワンダブル(◆1WfF0JiNew)! 自害しろ、アーチャー! だなんて、アタシは御免こうむるぞ」 「やだなあ、アーチャー。僕は満足できる結末を迎えたいだけだよ。 それにロッシュをともすれば優勝狙いとも取れるように書いたのは僕だけど。 段階は踏んでたし、どうしようもなく“人間”で、それでいて“魔王”なのは彼に限ったことじゃない。 君だってリュカをそういう風に書いたじゃないか」 「違いねえ。アタシとてめーだけじゃねえ、うちのロワの書き手はみんなそうさ。 “勇者”と“魔王”なんて大層なものだだけじゃない。“人間”と“魔物”を書いてきた。 だからこそあたしは、サイモンを――彷徨う鎧を纏ったソフィアなんて姿になったんだろな」 「で、僕は真っ黒な影のロッシュ、っと。 いやぁ召喚したての君と顔を合わせた時は、そう来るか―! って互いに見つめ合ったよね。 “愛”は特に生まれなかったけど」 「目と目が合う瞬間に何とやらとはいかねえよな、現実は。 アレフとかの姿になってたならまだしもよ。 って、話がずれ過ぎだ!」 「はっはっは、悪いね。で、なんだっけ、“真実”、だったかな。 ところで、ひとえにこのロワの“真実”と言っても、何を指してるんだい?」 「そうだなあ。例えば主催者は誰なのか、とか。 このロワの目的とか分かんねえことはいっぱいあるけれど、主催者さえ分かってればそいつをふんじばって聞き出すこともできる。 なのに肝心の主催者は姿さえ見せはしねえ。 てか放送とかちゃんとあるのか、このロワは」 「お、流石うちの専属ラジオ、『チャモっていいとも!』をやってるだけはあるね。 そこ気になるんだ」 「まあな。とはいえ今は主催だ主催。いったい誰だよ、書き手ロワならぬ書き手聖杯なんざ開いたのは。 こんなことしてそいつは“幸せ”なのかよ」 「うーん、誰だろね。現状全くと言っていいほど、考察する足がかりさえないからね。 いや、そもそも主催者なんかいるのかな?」 「あん? ロワが開かれたんだ、そりゃあいるだろ」 「けどこのロワはロワであってロワじゃない。聖杯戦争だ。 僕たちは書き手聖杯とやらに呼ばれたというならさ。 それは聖杯という道具及び聖杯戦争というシステムであって主催者なしで成り立つものなんだ」 「あー、そうなのか?」 「……多分」 「多分だぁ?」 「君もそうだろうけど、ドラクエロワ2ndの書き手として呼び出されたからかFateについての記憶がどうも曖昧でね」 「そういや言われてみればアタシもあんまり思い出せねえ!」 「でしょ? 聖杯戦争という切り口から考察を進めるならFate系列の作品が出ているロワの書き手の協力は必須かもね」 「或いはどこかでパソコンでも使ってぐぐるとかだな」 「うん」 「けどなあ、アタシはどうにもこのロワ、機械的な運営には思えねえんだけどなあ」 「へー、そうなの? 何か根拠でもあるのかな」 「あたしの容姿やスキル、宝具といった存在そのものだよ。 単に機械的に当てはめたと思えないくらいやけに凝ってる。 大体さ。あたしん姿をソフィア――ドラクエ4の女勇者にするならクラスはセイバーにしとくんが一番てっとり早えだろ。 けど、今のあたしはアーチャーだ。なんでセイバーじゃなくてアーチャーなのか、お前なら分かるだろ?」 「真実へと至る弾丸――Silver Bullet。 魔法の解決策のことだね。同時に魔王に対する特効薬としての勇者を皮肉っているのかもしれないね」 「だろ! 後はピサロ射殺やローラ姫のことも加味されてるんじゃねえか? つうわけで、だ! あたしのこの敢えてアーチャーというクラス付には明確な主観が、クラス付した奴の好みが感じられるんだ。 例えるなら登場話でどのキャラにどのアイテムを支給するのかそんな感じのさ」 「うーん、でも、確かFateシリーズでも、英霊の容姿やスキル、宝具は人々の“夢”や希望や信仰、だったはずだから。 聖杯が別に考えてるわけじゃなかったような」 「人々の“夢”や希望や信仰から成り立つ存在……。それって」 「うん。似てるよね」 「「ドラゴン・クエスト6の夢の世界に」」 「っつうことは何か。英霊であるあたしだけじゃなくて。ワンチャンらマスターも“夢”の産物ってわけか?」 「さあ、どうだろ。言ったよね、Fateの知識もうろ覚えだって。断定はできないよ」 「そっか。となるとやっぱりFateについて知るのが先だな」 「そうだね。この付近なら学校が近いから、そこの情報室で探してみようよ。 途中で絶賛Fate活躍中の聖杯系ロワの書き手にでも出会えたら万々歳だし」 「よし、決まりだな! あ、そういえば。 ここまで“真実”やら“勇者”やら“魔王”やら“魔物”やら“人間”やら“愛”に“幸せ”に“夢”とうちらしいこと口にしてきたけどさ」 「うん」 「一個、足りねえよな」 「ああ、そういえば」 「んじゃ、よろしく頼むぜ、“お兄ちゃん”!」 「僕にだって“家族”を選ぶ権利はあるよ、アーチャー」 「なんでだよッ! そこはシスコンしろよ、ロッシュなんだし!」 「いやだって君、ラジオ的に中の人男でしょ?」 「中の人言うな―! それにほら、そこは男の娘とか女装っ子とか流行りだろ!」 「ロッシュはシスコンであってもブラコンじゃないし」 「くそう、融通の効かないマスターだぜ……」 【クラス】 アーチャー 【真名】 【渾名】仮面の王と夢の塔・クルツ(◆CruTUZYrlM)@ドラゴンクエスト・バトルロワイアルⅡ 【パラメーター】 筋力:B 耐久:B 敏捷:A+ 魔力:B 幸運:C 宝具:E~A+++ 【属性】 混沌・中庸 【クラススキル】 対魔力:EX(D) 魔法反射装甲。つまるところの常時マホカンタ。 魔法反射による悲劇を描いたアーチャーの対魔力は規格外であり、いかな呪文でも反射する。 あくまで跳ね返しているだけなので、飛び道具ではない魔法剣や魔法拳などは無効化できない。 キラーマジンガ(ドラクエ6)仕様なため味方からの呪文まで跳ね返してしまうという欠点も持つ。 また、魔法反射装甲なのはあくまで彷徨う鎧部分であり、鎧を脱いだ場合はランク:Dにまで低下する。 単独行動:B トップ書き手としてこつこつ書き続ける意思。 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。 ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。 【保有スキル】 勇者の宿命:A “勇者ロトの血”“天空の勇者”。 各三部作計六作品にも及ぶ勇者の血の宿命と呪縛を書き綴ったことにより発現した能力。 良し悪しを別にして異常な事態や状況を招きやすい。 また自らや勇者に因縁のある存在と遭遇しやすくなる。 直感:A 戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を「感じ取る」能力。Aランクの第六感はもはや未来予知に近い。 また、視覚・聴覚への妨害を半減させる効果を持つ。 魔術:B アーチャーとして現界したため、飛び道具として自身が書いた攻撃魔術が使用可能。 イオナズン、メラゾーマ、ベギラゴン、マダンテ、ジゴスパーク、ギガデイン、ミナデインなど。 ゴッドハンド:A かつてのドラクエ職業風書き手紹介でゴッドハンド(攻撃系最強職)と例えられたことに由来する能力。 ゴッドハンドの特技が使用可能。 対魔法:EXは自分の魔法は跳ね返さないので回復補助魔法も使えるゴッドハンドとは相性が良い。 ラジオ:B DQBR2専属ラジオ『チャモっていいとも!』のDJとしての力。 情報の収集及び発信に関して補正がかかる。 またスキル:パロロワ把握も兼ねており、概ね古いロワほど詳しい傾向にある。 尚、今回は書き手である◆CruTUZYrlMとしての参戦で、MCとしての力もDQBR2専属のためランクが下がっている。 ロワラジツアーのMC、情報に“乗る者”ライダーとして召喚された場合は当然EXランクである。 【宝具】 『真実へと至れ終わりなき愛の証明よ(エヴァーラスティング・トゥルーラブソング)』 種別:追求証明宝具 ランク:E~A+++ レンジ:1 最大捕捉:1(人とはいってない) 真実を追い求め、愛の証明をなしたアーチャーの象徴たる宝具。 真実を突き詰めれば突き詰めるほど威力が上がり、対象の真実へと辿り着いた時その威力は最大に達する。 銀の弾丸という形を取っているが、真実を追い求め続けるという一種の概念のため必ずしも銃は必要ない。 理論的な考察だけでなく、人の気持ちを察して自分の気持ちと照らし合わせ、一つの答えを導き出してもよい。 また生命体以外の物体や概念にも使用でき、ランクが上がるほど隠された何かを発見したり、偽りを剥ぎ取ったりもできる。 【容姿】 サイモン(彷徨う鎧)@DQBR2を纏ったソフィア(ドラゴンクエスト4女主人公)@DQBR2 男の娘? 【Weapon】 天空の剣@DQ4、メタルキングの盾@DQ6 KBP GSh-18 自動拳銃。現実出典ながらDQBR2内において、クルツの手により印象的な描かれ方をした。 担い手は皆女性であった。 尚、DQBR2では残弾描写がちきんとされていたが、書き手聖杯ではサーヴァントの武装につき弾数無限である。 【人物背景】 【トリップ】◆CruTUZYrlM 【代表作】「天までアクセル踏み込んで」「ラブ・ソングはここにある」「世界が終わったから」 DQBR2のトップ投下書き手、及び専属ラジオ「チャモっていいとも!」のDJを務めている。 無銘キャラを始めとした各キャラのキャラ付け、掘り下げ、転換、結末を魅力的に描くのがとにかく上手い。 ストーリー運びも熱いものから切ないもの、鬱、ギャグまでオールラウンダーである。 また割りとおちゃめ(?)な一面がありシリアスにネタに走ることが多々ある。 【スタンス】 書き手聖杯戦争の真実を突き詰める。 【基本戦術、方針、運用法】 非常にまとまりのある能力を誇るオールラウンダー。 ステータスは安定しており、スキルも戦闘非戦闘共に役に立つものばかり。 燃費もよく非常に活用しやすいサーヴァントである。 ただし、スキル『勇者の宿命』には注意が必要。 真実への糸口を得られる可能性も高いが真実を探求する間もなくボスラッシュなど困難を呼び寄せることも多い。 また、宝具の性質上相手ごとに真実を追求していく必要が有るため、即効性がなく手間がかかるのが欠点。 【マスター】 悪しき世界の人々・ワンダブル(◆1WfF0JiNew)@ドラゴンクエスト・バトルロワイアルⅡ 【マスターとしての願い】 書き手聖杯を自分が満足の行く形で終わらせる 【容姿及び口調】 影の騎士@DQBR2色の“ロッシュ@DQBR2 【weapon】 ロトの剣 【能力・技能】 かつての書き手紹介で魔法戦士と称されたため、魔法戦士の特技が使える。 ある程度はロッシュできるかもしれない。 【人物背景】 【代表作】「ある愛の誓い」「永遠の約束に願うこと」「どうかこの手を離さないで」「 ここぞという時に名だたるキャラの死亡話を描くクライマックス書き手。 キャラの隠された真意や、思いもよらない人間らしさなどを明かし、それまでの印象を大きく変えるのが得意。 とにかく衝撃的な作風が持ち味。 序盤からちょくちょく投下していたが、後半から終盤にかけてペースがかなり上がっており、心強い人物である。 【方針】 全ては真実を解き明かし次第。幸せを諦めるつもりはない。 013:Re・貴方の素晴らしき物語 投下順に読む 015:タチムカウ-絶えることなき生の証明- 悪しき世界の人々・ワンダブル 021:無限大な夢の後で 仮面の王と夢の塔・クルツ 021:無限大な夢の後で ▲上へ戻る
https://w.atwiki.jp/psyren_wars/pages/158.html
犬飼伊介 キャスター ◆BATn1hMhn2 とある休日の昼下がり、自家製のチーズケーキが自慢の一品であるその喫茶店は、多種多様な客で賑わっていた。 益体もないおしゃべりに興じる者、本人には聞かせられない悪口や愚痴を話す者、誰にも言えないような秘密を親友にだけ打ち明ける者と様々。 その殆どは自分たちの席の中にしか関心がなくて、他の席に座る者たちが何を話しているのかまで気には留めていない。 だが、店内に一つだけ、他の客の関心を集めるテーブルがあった。 そのテーブルで向かい合っているのは、まだ成人はしていないだろう二人の少女だ。 しかしその身体は既に成熟しており、少女とは言えない大人の女性の色香を醸し出している。 雑誌の表紙を飾るトップモデルたちと比べても何ら遜色ない彼女たちの美貌こそが、周囲の目を引く理由である。 二人とも腰までかかろうかというほどに長く髪を伸ばしている。 片方は芳醇な香りを漂わせる赤ワインを連想させる、深く重い赤髪。 もう片方は気位の高さを思わせる、一点の曇りもなく輝く金髪だ。 先に口を開いたのは、赤髪の少女だった。 くるくると巻かれたサイドロールを右手で弄りながら、声に僅かな苛立ちを含ませ、 「――で、アンタが伊介のサーヴァントってワケ?」 「そうよぉ。私がアナタのサーヴァント、キャスターよん☆」 金髪の少女は、片目ウインクにピースサインと聖杯戦争に臨むサーヴァントらしからぬ態度で問いに答える。 キャスターの瞳はまるで星のように輝いていて――マスターである犬飼伊介は、それが、ひどく気に入らなかった。 何故だか分からないが、無性に気に入らない――それが犬飼伊介が己のサーヴァントに対して抱いた第一印象だった。 とはいえ、伊介が初対面の赤の他人を気に入ることのほうが非常に稀ではあるのだが。 犬飼伊介は職業暗殺者である。つまり、殺し屋だ。 生きるために人を殺す。金のために人を殺す。 ただの仕事で、ただの殺人であるその行為について、それ以上の感情は持っていない。 だから望んだ報酬が何であろうと手に入るという殺人依頼が舞い込んできたとき、伊介は一切の躊躇なく飛びついた。 だが――ミョウジョウ学園10年黒組に転校し、ターゲットの少女を殺すというその依頼を、伊介は遂行することが出来なかった。 失敗した要因は幾つかある。同じく暗殺者側だったはずの一人が、ターゲット側に寝返り、障害になったこと。 無力なだけの少女だと思っていたターゲットが、生き残るという一点に関しては数多の暗殺者の殺意を凌駕する存在だったこと。 だがしかし、それらをいくら並べ立てたところで、伊介が暗殺に失敗し報酬をもらい損ねたという事実が覆ることはない。 (だからこそ二回目のチャンスが回ってきたときに飛びついちゃったワケだけど―― ただでさえ誰かと組むなんてキライなのにこんなヤツと一緒になるだなんて、ほんとサイアクよねぇ?) 伊介の声と態度にはあからさまな苛々が含まれているというのに、キャスターは素知らぬ顔で微笑んでいる。 空気が読めないわけではないだろう。伊介の苛立ちに気付いた上で、その苛立ちを笑っているようにしか見えない。 それが、 「やっだ、おまえムカつくぅ~。殺したくなっちゃう♥」 伊介にとっては、令呪を使う十分な理由となった。 無論、自害の命を下すようなことはしない。伊介とてマスターの一人、サーヴァントを失ったマスターの末路は知っている。 六時間のうちに新たなサーヴァントを見つけ出すことが出来なければ、マスターは灰となって消失する―― そして聖杯戦争を勝ち抜くためには、サーヴァントの力が必要不可欠だ。 ここはひとまず、決定権はこちらにあるのだということを分からせ、ついでに憂さ晴らしをする程度にしておこう。 「キャスター。これから私のことは、『伊介さま』と呼びなさい♥」 と、犬飼伊介は令呪を使った――はずだった。 「まったくぅー、ちょ~っとイヤなことがあったからって大事な令呪をこんなところで使おうとするなんてダメだゾ☆」 令呪は、発動しなかった。 マスターを遥かに上回る力を持つサーヴァントを唯一服従させることが出来る絶対命令権は、キャスターに対して何の効果もなかった。 言葉もなく愕然とする伊介を尻目に、キャスターは喋り始める。 「説明の手間が省けたわぁ。これが私の能力――ホントは会話力も必要ないんだけどぉ」 キャスターの言葉通り、伊介の脳内に彼女が知らなかったはずの情報が、次々と流れ込んでくる。 学園都市――常盤台中学――超能力――レベル5――第五位―― 『心理掌握(メンタルアウト)』。 「私への命令力は禁止させてもらったわよぉ。令呪は貴重なエネルギー源だから勝手に使ってもらったら困るものぉ」 いつの間に取り出したのか、右手にリモコンを持ちながらキャスターは――学園都市に七人しか存在しない超能力者(レベル5)の一人、食蜂操祈は、口の端を歪めた。 片肘を突き、足を組み、笑みを浮かべながら椅子に座る様はまるで女帝のよう。 かつて常盤台の女王と呼ばれ、学内の最大派閥の長として君臨していたときと何ら変わらぬ態度で、食蜂操祈は聖杯戦争に臨もうとしている。 「――なんとなくキライだと思ってたけど……訂正するわ。伊介、アンタのことが殺したいほどキラーイ♥」 「あらぁ、キライはスキの反対じゃないのよぉ? それに私はアナタのことそんなにキライじゃないのよねぇ。 私がその気になれば、アナタの意志力なんて欠片も残さないことだって出来るんだけどぉ……そうしないほうが、面白そうだものぉ」 キャスターは目を細め、己のマスターへ挑発的な視線を送る。 それを受けた伊介は―― 「……ハァ、バカらしー。伊介、くだらないことで疲れたくないの♥ いいわキャスター。アンタがこの聖杯戦争を勝ち抜く力を持ってるのはよ~く分かったから――今だけはアンタの言う通りにしてあげる♥」 ただし、今だけってことを忘れないでね――と、心の内で呟いたのは、キャスターにも伝わっているだろう。 キャスターの能力は、精神の操作だ。読心、念話、洗脳、記憶消去etc……とにかく精神に関係する事柄ならば、なんだろうと操作することが出来る。 その能力を使い、伊介が令呪を使うことを禁止し、言葉にすることなくキャスターの真名と能力を理解させたのだ。 「で、それだけデカい態度取るんなら聖杯戦争に勝つための方策くらいあるんでしょうねぇ♥」 「見ての通り私の能力を使えば、マスターだろうとサーヴァントだろうが思い通りに動かせるわぁ。 だけど、この超能力は――この聖杯戦争では魔術として扱われるみたいねぇ。 だから対魔力スキルを持つ三騎士が相手だと、私の支配力も通じないことがあるみたい」 そこで、 「鍵になるのは――令呪よぉ☆」 令呪は、サーヴァントにとっては絶対の命令である。 キャスターが伊介の令呪を無効化出来たのは、令呪というシステムそのものに逆らったわけではなく、令呪を使おうとする伊介の精神に干渉したからだ。 一度令呪が発動してしまったならば、如何に優秀な対魔力スキルを持つサーヴァントであろうとも、抵抗することは叶わない。 そして、キャスターの能力があれば――他のマスターに令呪を使用させ、サーヴァントへの自害を命じさせることすら可能である。 「令呪が一画しかなかったら自害までは難しいかもしれないけどぉ。 そのときは動きの抑止力くらいしかならないだろうから、マスター同士戦ってもらうことになるわぁ」 「えっ、サーヴァントなのにマスター任せ? ダサッ♥」 「……うるさいわねぇ、適材適所って言葉力も知らないのぉ?」 「もしかしてサーヴァントのくせに戦闘苦手系? マジでちょーウケる♥」 キャスターがふくれっ面になったところを、ここぞとばかりに責め立てる伊介だった。 これでもまださっきの屈辱には足りないくらい。機を見て全て倍返しだ。 「とーにーかーくぅ。これで私たちは一蓮托生ってことだから。よろしくお願いねぇ、『犬飼さん』」 「あ――やっぱアンタ、すっごく殺したい♥」 【クラス】 キャスター 【真名】 食蜂操祈@とある科学の超電磁砲 【パラメーター】 筋力E- 耐久E- 敏捷E- 魔力A 幸運B 宝具A 【属性】 混沌・善 【クラススキル】 陣地作成 C 道具作成 E 【保有スキル】 虚弱 C 一般を遥かに下回る身体能力を持つ。 ジョギング程度の速度で走ることすらままならない。 【宝具】 『とある科学の心理掌握(メンタルアウト)』 ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1~50 最大補足:200 記憶の読心・人格の洗脳・念話・想いの消去・意志の増幅・思考の再現・感情の移植など精神に関する事なら何でも出来る能力。 操作の精度によって同時操作可能人数は変わるが、プログラムに従ってオート動作をさせるだけなら三桁、全身を完全に掌握するような精密操作でも十人は同時に操作可能。 能力使用時には常に持ち歩いているリモコンのボタンに様々な命令を割り当て、それを操作することで能力を安定させている。 効果があるのは人間のみで、ロボットなどの無機物や動物に対しては無力である。 【weapon】 能力使用時に使う複数のリモコンと、それを入れているハンドバッグ。 【人物背景】 学園都市最高レベルの能力区分レベル5の一人で、常盤台中学の学内最大派閥の女王。 星の入った瞳、背に伸びるほどの長い金髪、長身痩躯、そして巨乳と中学生離れした容姿をしている。 実際に作中で「本当に中学生なのか」と問われたことがあるが、食蜂曰く彼女の能力による改竄力ならば年齢設定などどうにでも出来るとのこと。 倫理観や常識が欠けており、極めて自分勝手な性格をしている。無邪気に周囲への迷惑行為をすることもザラ。 身体能力がかなり低く、御坂美琴のジョギング程度の速度にもまるでついていくことができない。 【サーヴァントとしての願い】 不明 【基本戦術、方針、運用法】 極めて強力な宝具を持っているが、逆にこれが唯一の戦闘手段である。 もしも近接戦闘を強いられることになればキャスターに勝ち目はない。 特に対魔力を持つ三騎士クラスはキャスターの天敵であるため、サーヴァントとまともに相対することは自殺行為である。 敵マスターを宝具によって操作し、令呪による間接的な干渉を狙うくらいのことしか出来ないだろう。 手駒として利用できるマスター・サーヴァントを見つけることが出来れば三騎士との戦闘も可能かもしれない。 【マスター】 犬飼伊介@悪魔のリドル 【参加時期】 アニメ最終話後。 【マスターとしての願い】 勝ち残り、パパとママと三人で一生遊んで暮らせる富を手に入れる。 【weapon】 ナイフ 【能力・技能】 殺し屋として少なくない経験と確かな技術を持っている。 素手、ナイフを用いた戦闘が得意。 【人物背景】 ヘソ出し谷間出しの服を着ている、セクシー&ダイナマイトな美少女。 ムカつくことがあるとすぐにイラつき、当たり前のように周囲に我儘な要求をする。 暗殺依頼として学校生活を送っていたときも勉学や文化祭に対してまったく興味を抱いておらず、暗殺関係にしか興味がないようである。 家族のことをとても大切にしているがそれ以外の人間は心底どうでもいいと思っており、人を殺すことについても何の抵抗もない。 【方針】 キャスターの方針に従って勝ち残りを目指す。 BACK NEXT 010 犬飼伊介&キャスター 投下順 009 暁美ほむら&キャスター 010 犬飼伊介&キャスター 時系列順 009 暁美ほむら&キャスター BACK 登場キャラ NEXT 参戦 鹿目まどか&ライダー(モンキー・D・ルフィ) 018 ゴムと反射と悪党と
https://w.atwiki.jp/psyren_wars/pages/72.html
闇夜に生ける者たち◆wd6lXpjSKY 夜は人の心を自然と煽り立てる。 光よりも闇、恐怖を感じるのは後者であり、追い込まれるのもまた同様である。 暗さはそれだけで恐怖を演出出来る、謂わば魔法のスパイスのような物だ。 陳腐な状況でも総てを多い囲む闇があればある程度は演出出来る筈。 闇を生業にするのは吸血鬼、或いは暗殺者だ。 聖杯戦争に招かれた吸血鬼――系譜を継ぐはランサー。 その血は真なる吸血鬼であり、彼女も例外に漏れず朝日に弱く闇夜に強い存在。 今までの交戦状況は一つ、陽が昇る今は彼女の戦場ではなく、身を潜めるだけだ。 マスターである――執事となっているウォルターが単独行動をしている今、彼女は一つの現場を目撃する。 元はそのまま拠点である館に帰るだけだったが思わぬ状況に遭遇、当事者ではないのだが。 彼女が唯一戦闘を行ったサーヴァントが更なる戦闘を重ねていたのだ。 老いた海賊、彼女のマスターも老体だが彼らは歳を感じさせない程の戦闘力を有している。 海賊のサーヴァントは己の拳を振るい空を翔ける悪魔のサーヴァントを相手にしている。遅れはない。 (あの女のサーヴァント……吸血鬼とはまた違うわね) 女のサーヴァントから感じる魔力は自分のソレに近い何かを感じていた。 緑髪の妖艶な身体を持ったサーヴァント、まるで異性を誑かし己が糧にするような。 (遠目では判断出来ないけど……近付き過ぎてバレるのも情けない話) 霊体化の選択を取っているためその身体は表に出ていない。 しかし近付き過ぎた結果、戦闘の余波で思わぬ事態を招くかもしれない。存在を感付かれるかもしれない。 より近くで目視すれば小さな情報でも大きな結果に結び付けることが出来るかもしれない。 だがその不確定な可能性に賭けて己の正体が露見しては総てが悪い事態に傾いてしまう。 まだ時は夜ではないのだ。本来の時間、陽が在る間の時間は彼女のモノではない。 まだ駄目よ。月は登っていない、蒼い御月様はまだ眠っている。 無理に動く必要はない、ならば本来通り館に戻る。何も不思議な点はない帰り道だ。 収穫があったとすれば新しいサーヴァント、魔の気配を感じる女を確認出来たこと。 もう一つは今朝方交戦した老体のサーヴァント、どうやら震動を操る力を保持している。 老体、海賊、震動……この単語を組み合わせた結果生まれる答えは在るのか。 ある程度絞れる、半ば確信に持っていく事も出来るが答えを出すのは些か早過ぎる。 確証が持てるまで確信してはならない、慢心は良い結果を何一つ生まない魔の言葉。 マスターと情報を照らし合わせる、新たな情報を探る……遠回りではあるが一歩を踏み出すためには正確さが重要であろう。 少ない情報を手に取り倒すべき敵の正体を洗い出す――戦争らしい。 口元から小さい笑みを零しその場を後にする幼き吸血鬼。 英霊に年季など既に死に体のため関係ないかもしれないが見た目と中身が比例しない場合もある。 現にランサーは見た目こそ幼体だが生前の年齢は五百を超えているのだ。 同じ英霊でも見た目通り現代風な英霊もいれば、姿が全盛期で実体化している歴戦の戦士も居る筈。 主観と言う外からの意見を遮断するシェルターからでは見える景色も脳内で保管してしまう。 初見は究極のアドバンテージである。手の内を明かしていない状況で放たれる宝具は必殺の領域だ。 しかしそれは己の敵にも言える。誰もが所有している一度限りの必殺でも在る。 などと戦闘における供述をしようがそれは単なる飾りである。本番とでも呼べばいいだろうか。 実際に戦闘が始まれば運や奇跡など総て含んだ結果が答えになる。用意した材料も強火でじっくり煮込めば結果は同じだ。 生命は生物《ナマモノ》である。その時にならなければ真の姿を垣間見ることなど出来ないのだ。 また情報も生物《ナマモノ》であり、今新たに強いられた主催《アマギミロク》の情報も同じカテゴリに分類される。 彼が言う通り感知による逆探知は不可能であり、言葉が直接脳内に響いてくる。 この力は不明だが、今の段階では個人で聖杯を用意した男だ。幾つもの手段があるのだろう。 今の段階――天戯弥勒には総てが謎に包まれている。素性も力も目的も。 この情報提供で解った大きな点を挙げるならば参加している組の数は十四であること。 本来の聖杯戦争は英霊を各クラス七騎招いて争う儀式、今回の聖杯はその倍を招いた。 そして既に暗殺者が一名脱落したとのことだ。潜む殺し屋が最初に脱落するとは何事か。 何にせよ残りの敵は十二、最後に笑うのは一、やるべきことは何も変わらない。 話しによればアサシンは正面から戦闘を全う出来る英霊だったらしいがそれを確かめる術はない。 そもそも聖杯なるビジョンが見えない今、天戯弥勒の声をそのまま鵜呑みにするのも危ういだろう。 だがそれでも時計の針は止まらない、次第に夜になり、やがて人数が減っていく。 その減りゆく人数に己が含まれてしまっては聖杯に招かれた意味も無くなってしまう。 『――どうかしたのかしら、ウォルター』 別行動を取っていたウォルター――マスターからの念話。 疑うまでもなく天戯弥勒の伝令事項に関するものだろう。レミリアの問にウォルターは言葉を紡ぐ。 『ええ、お嬢様。先ほどの声は』 『私にも聞こえていたわ……確認かしら?』 『マスターだけに聞こえていた可能性もありましたゆえ、お嬢様に届いておれば問題有りません。それと、一つ』 用事はそれだけか。その意味を含んで尋ねたレミリア。 対するウォルターは確認の他にもう一つ尋ねる事項があるようだ。 レミリアは何も答えず無言の姿勢を取る。早く述べよ、そう主が謂わんばかりの静寂。 『使い魔を――アッシュフォード学園に張らしてみるのはどうでしょう』 ウォルターが言うには人の集まる場所に目を配らせる事で他の参加者を見つける、と言った内容だ。 実に効率の良い、かつ的確な判断だと思われる。現に遭遇しているマスターは学生服を纏っていた。 レミリアはまだ知らないがウォルターが単体で遭遇したマスターも学生服を纏っている。 残る主従は己を含んで十三、その内二組が学生だ。価値はあるだろう。 『解ったわ。ふふ、戦争らしくなってきた……ってところかしら』 『お気に召しませんか?』 『別に……そんなことはないわ。ところでウォルター、貴方はいつ頃帰るのかしら』 『日が落ちる前までには合流出来そうです』 そう、なら続きは館で。そう告げると念話は終了された。 日中都合よく動けないならば使い魔を派遣し情報を集める――遠回りだが実に有用な手段だ。 勝つためには手段を選ばない、その点で見れば取る他にない手段である。 聖杯に招かれたのだ。本来の己ならばこのような行為はしないかもしれない。 だが、折角の機会でもある。今宵だけは仮の主に力を貸すのも悪くない――かもしれないだろう。 帰ったら紅茶を淹れて貰おう。 椅子に座りに口に含み、今後の戦況に対する打ち合わせと洒落こんでみよう。 これは戦争、聖杯戦争。やるならばとことんどこまでも――。 【不明/一日目・午後】 【ランサー(レミリア・スカーレット)@東方project】 [状態]ダメージ(小、スキル:吸血鬼により現在進行形で回復中) [装備]なし [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:ウォルターのためにも聖杯戦争を勝ち抜く 1.夜になるまでは拠点で休息 2.ウォルターと合流後、今後の方針を決める 3.アッシュフォード学園に使い魔を……? [備考] ※アーチャー(モリガン)を確認しました。 【C-5・市街地/一日目・午後】 【ウォルター・C・ドルネーズ@HELLSING】 [状態]健康、魔力消費(微小) [令呪]残り3画 [装備]鋼線(ワイヤー) [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:全盛期の力を取り戻すため、聖杯を手にする 1.館に向かう 2.アシュフォード学園内での情報集手段の模索 3.アシュフォード学園近隣で監視に使えそうなポイントの捜索 [備考] ※浅羽、アーチャー(弩)を確認しました。 [共通備考] 虹村刑兆&ライダー(エドワード・ニューゲート)と交戦、バッド・カンパニーのビジョンとおおよその効果、大薙刀と衝撃波(震動)を確認しました。 発言とレミリアの判断より海賊のライダーと推察しています。 ランサーであるレミリアがライダーとアーチャーの戦闘を見ていた。それも素性を明かさずに。 ならばより気配の遮断において秀でているアサシンが出来ない理由も存在しない。 夜を生業にする暗殺者、世界を裏で操っていた暗殺組織黒の牙が誇る伝説の四牙の一人、ジャファル。 彼もまたライダーとアーチャーの戦闘を目撃していた。 ◆ ◆ ◆ 俺は何をしているんだ、部屋に閉じ籠もって。 聖杯戦争……そうだ、俺は願いを懸けているんだ。 でも、その願いって何だ、俺は何を求めている? 皆の所へ帰ること、巨人を駆逐すること、真実を知ること……。 このまま帰っても俺はまた悪夢のような日々を彷徨って巨人を駆逐して。 その流れの過程で仲間を失って……失って……。 「あっ」 イアンさんが死んだ。マルコも死んだ。オルオさんもペトラさんもグンタさんもエルドさんも死んだ。 元を辿れば母さんも死んだ。トーマスもミーナも、他の仲間も多くが死んでしまった。 失った者は決して戻る《イキカエル》ことは無い。 なら聖杯に懸ける願いは――死者の生存か。 しかし巨人を駆逐しない限り人類に未来はない、ならば奴らを消すか。 そもそも聖杯とは何なのか、本当に存在する、生命を賭けるに値する代物なのか。 脳を活動していると疲れが普段よりも大分残ってしまう、エレンは椅子から立ち上がりペットボトルを手に取る。 そのままお茶を喉へ流し込む――日常の光景だが彼にとっては新鮮であり理想郷。 巨人に悩まされている壁の中の生活でこんな安全に居場所があっただろうか。 壁は巨人に崩され、内部では人間同士の争いも起きている。 調査兵団は巨人を駆逐しに向かうがその遠征の中で必ず死者が発生してしまう。 腐敗した内政、貪欲なる上層部。進む貧富の差、高騰する税。幸せとは一体どんな代物なのか。 エレンは時々思ってしまう。 聖杯戦争が行われているこの空間に自分達が生まれていればどんなに良かったのか。 NPCと言われてもエレンには普通の人間にしか感じない。少なくてもコンビニの店員はそうだった。 コンビニだって幸せの証だ。本来エレンが座に位置づけている世界ではそんな物は存在しない。 この世界に皆、皆が生活していれば何一つ不自由な事は存在しない、そう思ってしまう。 発達した文明、美しき自然、そして何よりも人類の敵である巨人が存在しない。 この空間こそが理想郷であり、自分が住んでいたあの世界は悪夢ではないのか。 「悪夢――夢?」 そうだ、あの生活は、巨人は、喰われた母さんは、俺は、全部、総てが。 「夢だった――そうか、夢だ。夢。夢でいい」 扉を開ければ其処にはミカサが居るんだ。 ミカサだって家族と暮らしている。今日は買い物に出掛けるんだ。 駅でアルミンと合流して秋服でも買いに行く、其処でジャンとマルコが現れるんだ。 俺に喧嘩を売ってくる、何時もの事で、慣れっこなんだ。それでも笑い合う。 飯を食おうとしたらサシャが急に現れて、暇してるコニーも来るんだ。 其処にクリスタとユミルも合流して、偶然ライナーとベルトルトとアニも一緒になるんだ。 街では休暇中のリヴァイ班の人達と出会って、兵長は機嫌悪そうにしているんだ。 其処でオルオさんが何故か挙動不審でハンジさんがゲラゲラ笑って、オルオさんは舌を噛んで。 呑んだくれのハンネスさんも見かけるんだ、ガキは早く帰れ、って。まだお昼すぎなのに。 それが俺の日常、大好きな、かけがえの無い。 皆で遊んで俺は楽しんで家に帰って母さんと父さんと――。 「出掛けないと、ミカサが、アルミンが俺を待っている」 俺は鏡を見て適当に前髪を整えると上着に袖を通す。 お茶を飲み込んでそのままキャップもラベルも剥がさないでゴミ箱に投げる。 靴はいつも通りでいいや、踵を整えて、ミカサの所に。 「悪い、ミカサ! 待ったか?」 「俺は出掛けるな、そう言った筈だ」 総てが夢。 笑わせてくれる幻覚だ、そんな訳がない。あれは総てが現実である。 喰われた母も、お前のために死んでいった人達も、現実である。 ドアノブに手を掛けたエレンは声が聞こえた方向へ、後方へ振り向く。 其処には彼が望んだ理想は存在せず、代わりに在ったのは黒を纏う暗殺者だった。 「あ、アサシ――う、ぼぉ……」 頭が破裂しそうだ、エレンは口元を抑えその場にしゃがみ込む。 口元から溢れ出そうになる嘔吐物を必死に抑え込むのだ。 理想郷が壊され、彼が気付いたのは苦しくて救いようのない現実だけ。 総てが一瞬で黒に染まった彼は思い現実に膝をついていた。 ◆ ◆ ◆ 山場を超えたエレンは顔色こそ悪いが平常心を取り戻していた。 しかし問題があるとすれば彼は聞き逃していたのだ、全員が聞いていたと仮定されていた。 《天戯弥勒の話を彼は聞いていない》 厳密に言えば脳内に響いていたのだが、彼は幻想に浸っていた。 これは他参加者による攻撃ではなく彼が己の精神の甘さ故に招いた失態。 彼は自分のために先輩《リヴァイ班》が死んだ。その時点から聖杯に招かれている。 精神の弱さが招いた幻想、其処は理想郷であるが決して辿り着けない幻想郷であった。 「お前は出掛けなくていい、聖杯戦争が終わるまで此処で大人しくしていろ」 「――は? 俺は聖杯を手に」 「したいのなら黙っていろ。邪魔だ」 アサシンは主であるエレンに戦線の不参加を唱えていた。 唱えていた、優しい表現だが実際は警告に近い意義になるだろう。 彼は邪魔と言った。エレンは戦場に必要ない、と。 「お前、それでも――ッ!」 「ならお前に何が出来る? 現に目の前も見れていないお前に何が出来る、言ってみろ」 アサシンの言葉にエレンは立ち上がった、馬鹿にするな、と。 しかし彼の質問に答えれない、彼が言っていることは正しい。悔しいが、情けないが、正しい。 自分も定まらない奴が戦場に出ても死ぬだけ、足を引っ張るだけだ。 「俺は、俺は――」 「殺せるのか、無理だと思うが……まぁいい。夜は日常の用事でも外出はするな。それだけだ」 姿を眩ませるアサシン、残るエレン。 空っぽなエレン。その手に何が掴めるのか。帰るのか。帰らないのか。 このまま暮らすのも悪くな――この考えだけは捨てなければならない。 役目を思いだせ、エレン・イェーガー。お前は何と戦っている。 お前の翼は何のために在る。無様に地を這うためでは無い筈だ。 ならば泥に縋ってでも――さぁどうする? どうする? どうする? 限界まで弦を引き絞るのか、標的が息絶えるまで何度も放つのか。 選べ、お前は何がしたい、黙っているのも選択だ、それを責める《ナグサメル》者はこの空間に――存在しない。 【A-4/エレン自宅(マンション)/1日目 午後】 【エレン・イェーガー@進撃の巨人】 [状態] [令呪]残り3画 [装備]立体機動装置 [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:聖杯を勝ち取り巨人をこの世から駆逐する。 0.俺は――。 1.今後の方針を考える。 2.明日になったら登校する。 3.生きている人間を……殺す? [備考] ※アッシュフォード学園中等部在籍予定です。 ※天戯弥勒の通達を聞いていません。 ジャファルはライダーとアーチャーの戦闘を目撃している。 天戯弥勒の放送も聞いている、だが主であるエレンへの通達はしていない。 必要ない、彼は戦闘に参加させるには不安定過ぎる。 本来なら帰還と同時に情報を与える予定だったが仕方が無い。 死神と称された彼でも主が死ねばその存在は元の座へと帰還するだけ。 逆らえない現象、主の不手際で退場しては戦える事すらままならないのだ。 エレンの素性は知っている、彼の境遇も理解している。 其処には己の生涯に重なる部分もある、だが情けは無い。 戦場に出るならば全員が死ぬ覚悟を持っているはずだ、故に死ぬことに責任など存在しない。 邪魔なだけだ、嗚呼、そうだ。 邪魔なんだ、だから引っ込んでいろ、お荷物を抱えるのは面倒だ。 その代り、これが最初で最後の情けに――なるのだろうか。 黙っている間に総てを殺し戻ってくる、その後で聖杯に願いを懸ければいい。 だから今は、大人しくしてくれ。 【アサシン(ジャファル)@ファイアーエムブレム烈火の剣】 [状態] [装備] [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:獲物を殺す 1.夜になれば戦闘を開始する。 2.甘さは捨てろ……。 [備考] ※ランサー(レミリア)、ウォルター及びライダー(白ひげ)、虹村形兆の姿を確認しました(名前は知りません) ※奇妙な兵隊(バット・カンパニー)を視認しました。 ※公衆電話の異変を感じ取りました。 ※アーチャー(モリガン)を確認しました。 BACK NEXT 037 近くとも遠く 投下順 039 わが臈たし悪の華 037 近くとも遠く 時系列順 039 わが臈たし悪の華 BACK 登場キャラ NEXT 017 近くとも遠く ウォルター・C・ドルネーズ 043 裏切りの夕焼け 028 あの空の向こう側へ ランサー(レミリア・スカーレット) 027 MY TIME TO SHINE エレン・イェーガー&アサシン(ジャファル)