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ミ 三重県! mixi 神輿 みさくら語 ミルクティー 三宅 みやみや~ 三重県! 1.つなしの故郷 2.漫画「おしゃれ手帖」より。 mixi 7つの大陸をめぐる冒険者達の物語。オンラインゲーム。 ひわちゅんがはまっている。 神輿 ガチンコ かっちゃん。 みさくら語 らめぇえええぇええええーッ!とか ハースニールのみさくらなんこつが開発 木曜洋画劇場の番宣でも使われたりした ゲームやってるときに発する人もいる ミルクティー 飲むとイケメンになれる。 三宅 いい人。でも髪の毛薄い。というかもう無い。 ニットで誤魔化す人生。 もじゃもじゃ。 ボンボン。 教師目指してたけど早くも挫折。 でもリアルJK持ち。 でもいいようにあつかわれてる。絶対。 絶対。 絶対。 家がよくたまり場になる。 高校のころにも軽音部に入ってたらしい。 あとPSPを持たしてはいけない。 無くすから。すぐに。新幹線とかに。 でも酒飲むとみんなで励ます羽目になる。 あとなぜか06年のおいコンで高塚のマジギレされる。 原因は不明。 みやみや~ えーちゃんのモノマネ
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【漢達の序曲】 【漢達の前奏曲】 【漢達の行軍歌】 【漢達の舞踏曲】 【漢達の鎮魂歌】 【漢達の子守唄】 【漢達の序曲】 今日も暖かい日になりそうだ。 雲一つない空を眺めながら、藤江はうんと両手を高く上げて体を伸ばした。ようやく春らしい好天が何日も続くようになってきた。そんな日の朝早くのことだった。 「いよぉう……」 お食事処「たたら」の開店とほぼ同時と言っても良い頃合い、げっそりとやつれきった男が店にやって来た。 「え、ええっと……、七さん? いらっしゃい。なんかお疲れのようだねぇ」 四月の空に負けないほどの爽やかな笑顔を一瞬引きつらせ、藤江は彼を出迎えた。 ここ最近まったく姿を見せないお得意さんなのだが、以前店に来た時とは別人のような顔つきに変わっている。 「へへへ、ちょっとね……。祭で休みを貰うために働きすぎたってとこよ……」 本来岡っ引きであるはずの七さんだが、にやりと笑ったその顔は、まさしく悪人のそれに等しい笑いだ。 「ま、まあねぇ、祭のために頑張んのはいいんだけどさ。それで体壊して祭に参加できなくなっちゃ本末転倒ってもんだよ。ちょっと気を抜いても良いんじゃない?」 「へへへ、仕事も昨日で終わりさ。明日っから休みってもんよ」 「ならいいんだけどさぁ。父ちゃん、七さんご来店だよ!」 藤江が厨房に向かって声をかけると、客席との仕切りから男が顔を覗かせた。 「よぉ、七さん。話ぁ聞かせてもらったぜ。その心意気や良し、だ。今日の飯は俺のおごりだ。じゃんじゃん食って力つけてくれぃ!」 そう言ったおやじは、丼に山と盛られたごはんとみそ汁、生卵のはいった椀を乗せた盆を取り出して藤江に渡した。「さあ、小鉢は何が良い。焼き物は何にするよ」 「すまねえ、おやっさん。それじゃあ、いつもの鮭の焼きを頼むぁ」 おうよ、とおやじの返事が返ったあと、魚を焼く香ばしい香りが、客席の方まで漂ってきた。 「てぇへんだ、てぇへんだ〜!」 七さんが食事を終えて、腹をさすりながらもう食えねえ、と唸っているところに、新しいお客がやって来た。否、正確には客ではない。七さんに厄介ごとを持って来る、同僚の十三が、毎度のごとく大声を張り上げながら、たたらの中へ飛び込んできた。 「どうしたんでぃ、十三」 うぷっ、と胃の中の空気を放出しながら、七さんが十三を自分の席に呼ぶ。 「七さん、奴らだ。今度は祭用の褌を百八枚もかっさらって行きやがったんだよ!」 「何だとぉ!」 机を真っ二つにするかのような勢いで、七さんが机を叩く。 「しかも盗まれたのは宮廷の中にあったものばっかなんだ。こいつぁちょっとした問題じゃねえかって政庁の方でも噂んなってやがるよ」 「ちぃっ。やってくれるぜ、褌小僧共めっ!」七さんは楊枝で口の中をすすきながら、立ち上がる。「せっかくの休暇だってのによぉ! おい、いくぜ、十三」 「がってんだ!」 七さんと十三は暴れ馬のごとき勢いでたたらを飛び出していった。 「まったく、いつもながら、慌ただしいお人達だねぇ」 七さんの机を片付けながら、ぼそりと藤江は呟いた。 「信乃さん、また奴らが現れたそうだね」 宮廷の一画、祭の準備にてんてこ舞いになっている有馬信乃に向けて、七比良鸚哥が声をかけた。 「おや、摂政さま。いかがなさいました? たしか今日から祭の終わりまで、休暇をとられていたはずでは?」 「ああ、そうなんだが……、奴らが現れたのなら休暇もなにもあったもんじゃないだろう」 いつになく真顔で、ぽっこり膨れたお腹をさすりながら信乃を見る。 「ははぁ、十倉のやつですね。まったく心配しなくてもいいと言っているのに、困ったもんだ」 「なぜ? ……、あ、また今回も追跡用の理力褌を紛れ込ませたとか?」 「いや、まあ……、そうではないんですがね。盗まれたのは無料配布用の祭褌なので、たいしたことじゃないかと」 「何を言ってるんです。たとえ無料配布用であっても、それはれっきとした犯罪。たとえやつらでなかろうとも、放っておくわけにもいかんでしょ」 「まあ、そうなんですがね……。いや、今回の件に関しては、大袈裟に考えなくても問題はありませんよ」信乃は、ふと口元を緩める。 「じつはですね、少し前のことなんですが、祭に参加したいという他国の方がいらっしゃったのですが、諸処の事情によって全員参加して頂くわけにはいかなかったのですよ。その数が百八人、今回盗まれた褌の総数と同じです。しかもご丁寧に祭の参加要項も一緒に盗っていっている。おそらく彼らでしょう。まあ、その辺りのことはすでに手を打ってあるので、心配するほどのことではない、というわけなんですよ」 「ふむぅ……」 鸚哥は顎に手をやってしばらく考え込むようにおし黙った。 「わかりました。しかしここは念には念を入れて、私も加わりましょう。場合によっては外交問題にもなりかねない。そいつらの神輿管理は私が担当します」 「いえ、そのようなことして頂かなくとも……。摂政さまは休暇中なのですから、担ぎ手としてご自身の地区に参加して頂いて構いませんよ?」 「いやいや、仮にも摂政の身、私事よりも国事を優先させるのは当然のことです」 「いえ、だから手は打ってあるのですが……」 何故か意気揚々としている鸚哥の前に、信乃の言葉はむなしく宮廷に広がるだけであった。 町の中心から離れた地区にある、うらさびれた食堂。昼の日中だというに、店内はほの暗い。先に座っていた二人の前に、一人の男が席につく。どうやら待ち合わせのようだ。 「遅かったですね、黄金様」 「ああ、すまん。これでも忙しい身でね。それよりも首尾はどうだ、赤よ?」 赤と呼ばれた男は、うっすらと笑みを浮かべた。 「ほぼ完璧です。さすが、としか言い様がありません。黄金様に頂いた地図通りで、大変仕事しやすかったですよ。よくこんなものを持ち出せましたね」 食卓の上に一枚の紙を置く。黄金はそれを取って、懐にしまった。 「それなら結構。俺の力を持ってすれば、こんなもの雑作もないことだ。それよりも、奴らの方も何かしらの手を打っているようだ。とりあえず俺の方でも対処はしておいたが、お前達も気を抜くなよ」 「心配ありませんって。黄金様がお戻りになるまで、俺と赤にお任せ下さい」 「ふむ、青よ。お前達の実力はちゃんとわかっているつもりだ。だがやつら、特に有馬信乃は見かけによらず、かなりの策士。どのような手段を用いて来るかは俺でも読めん。くれぐれも油断は禁物だぞ」 「はっ!」 赤と青、二人の声が同時に響く。 「さて、と。俺はまたいつものところへ戻る。ここの勘定は俺が出そう」 黄金は銀子一枚を卓に置いた。 「そんな、こんなに多くはありませんよ」 「なに、あまりは外で待っている連中に美味いものでも買って持っていってやってくれ。せっかくの祭なんだ、やつらにも精を付けてやらんとな」 くくく、と悪そうな笑いを浮かべながら、黄金は席を立ち、後に手を振りながら店を出た。 「なあ、赤よ。俺ぁ計算が苦手だが、この量じゃ百五人分の飯なんて買えねえんじゃねえか?」 「言うな、青よ。足らず分は俺達で出そうじゃないか……。黄金様の心意気を俺達で買うのさ」 次の派生SS → 漢達の前奏曲 → 浜のけんか祭 → たけきの藩の祭前 → 巫連盟の祭前 【漢達の前奏曲】 「ほんっと済まねえ、おやっさん!! この借りは必ず別のことで返すから、今回だけは見逃してくれぃ!」 夕餉時まで一時閉店中のたたら。土下座しそうな勢いで、七さんは頭を下げた。 「いや、仕方ねえってのはわかってるよ。さすがに公務じゃしょうがねえさ」 たたらのおやじはぷかりとキセルの煙を吹き出しながら、笑って答えた。 「ああ、ほんっとすまねえ。今年こそはこの地区に勝者の振る舞い酒を持って帰るつもりだったのによぉ……」 そう言って、また深く七さんは頭を下げる。 「いや、だから七さんが悪いわけじゃねんだからさ。気にしなくていいってよ。まったく、役人達もこんなときに仕事を押し付けるなんて、なんてぇやつらだ」 「それはちげえよ、おやっさん。別に休んでも良いたぁ、言ってくれてんだけどよ。それじゃ、俺っちの正義の心ってやつが納得してくんねえのさ」 「くぅ〜、格好良すぎるぜ、七さんよぉ」 おやじはけむくじゃらの腕を目に当て泣きまねをする。よほど七さんの行動に感動しているようだ。それが七さんの良心にちくりと刺をさす。 「いや、そんなこたぁねえよ。俺のわがままで、おやっさん達に迷惑かけちまうんだからな。けどよ、何事も起こんなかったら、俺の担当する神輿と、おやっさん達の神輿、境内で勝負しようじゃねえか。そんときぁ全力でいかせてもらうぜ」 「おうよ! それこそ望むところさ。こっちだって手ぁ抜かねえぜ」 七さんとおやじはがしっと腕を組んだ。 ……、熱っくるしいなぁ。 買い出しから戻った藤江が、呆れた顔でその光景を眺めていた。 今回は相当に大規模な褌対策本部、通称マルフン達が動員されている。しかも兵部省の方から兵員の借り出しを行ったらしい、との噂までマルフン達の間に出ているほどだった。 「信乃様、これほどまでに大規模な動員が必要でしょうか?」 マルフンにおける信乃の片腕、十倉助三郎は、祭当日の兵員配置図を見ながら尋ねた。 「これでも少ないと思ってるんだけどなぁ。ここだけの話だが、どうやら他国からの褌一味が相当数紛れ込んでいるのだ。せっかくの好機、ここで一気に叩いておきたいんだよ」 「ですが、祭当日は多くの参加者が褌姿ですよ。どうやって見分けをつければ良いものやら……」 十倉は両手を挙げてお手上げです、と仕草で示した。 そんな彼に、信乃はふっと笑って口の端を斜めにあげて見せた。 「そのための無料配布褌さ。我々が参加者に手渡したものは全て記録がとってある。褌の枚数も地区ごとに制限があるし、偽造できないように簡単には手に入らない布も使ってあるからな。それらと見合わせれば一般人か褌一味かは簡単に見分けられるよ」 「なんとっ、そのようなことをなさっていたとは……」 「祭の実行委員も兼ねているからな。これくらいは役得と言うもんだよ。良いか、この話は誰にも漏らすなよ。どこで奴らの耳に入るかわからないからな」 「ええ、わかりました……」 「さて、じゃあ残りの作戦もさっさと組み上げてしまおう。もう時間はないんだからな」 それから翌日の太陽が昇るまで、褌対策本部の間から明かりが消えることはなかった。 こうして、マルフン達の最も長く熱い一日が始まる。 「褌こそは男の正装! 褌に力を、褌に勝利を、褌に栄光をーーー!」 神輿の上に立って男が叫ぶ。今は祭の規則上、乙の字入りの赤い褌姿だが、普段は金色の褌を纏う男、黄金が担ぎ手達を叱咤激励する。 それに応える声は低く地を揺るがしそうな野太い男達の声。 「我ら褌のために! 全ての力を出し切るのだ!」 「いくぜ、野郎共! 褌の力を今こそ見せつけてやるんだ!」 威勢の良さだけであれば、どこの地区よりも彼らは勝っていたことであろう、と後の観客の一人は語る。なぜ彼らが境内戦まで残れなかったのかが不思議である、とも。 「いくぞ、褌藩の名の下に!」 「おおぅっ!!」 盛大な男達の掛け声のあと、他国参加乙組の神輿は、その巨体をゆっくりと宙に舞わせた。 「良いか、これ以上褌を冒涜させるような輩をのさばらせるわけにはいかん。ここで奴らを一網打尽にしてやるんだ。褌共に罰を、褌共に制裁を、褌共の撲滅をーーー!」 マルフン諸隊を前に、男が盛大な演説を行っている。有馬信乃が祭実行委員のため朝の間は代わって十倉助三郎が隊を仕切っているのだ。 マルフン達も楽しみにしていた祭参加を奪われる形となって、褌一味に対する恨みの念からか、今日はいつも以上に士気が高い。奴らに目にものを、奴らを排除せよとの声が、あちこちから沸き上がる。 たとえ帝国本体が相手だったとしても、彼らのやる気がそがれることはなかっただろう。後にマルフンを退役した者は当時の状況をそう語る。それがなぜ、あのような結果に終わったのだろうか、とも。 「行くぞ、褌小僧を根絶やしに!」 「おおぅ!!」 マルフン達は勢いよく駆け出し、それぞれの持ち場へと散っていった。 次の派生SS → 漢達の行軍歌 → 神輿出陣 → 祭の裏方達 → 祭の観客達 → 神輿のかき手達 【漢達の行軍歌】 褌のために! 彼らの勢いは衰えることがなかった。一台目の神輿を完膚なきまでに叩き壊した彼らは、観客からの応援を受けて得意気になっていた。普段街中で褌一丁で暴れ回っていれば、変態だの狂人だのと後ろ指を指されるのに、今日だけは彼らの勇姿に対して、男からは熱い賞讃を、女からは黄色い声援を投げられる。彼らにとってこんなに嬉しいことはない。俺達は間違っちゃいなかった、そんな錯覚すらも覚えていた。 「青よ、褌とは、良いものだな」 赤は隣で神輿を担ぐ青に向かって呟いた。 「ああ、俺も同じことを思ったさ」 青も同じように考えていたらしい。 二人は顔を見合わせて。ふっと満足げな笑みを浮かべた。 「まだだ、こんなもので終わらんよ」 二人の会話に割り込んできたのは黄金だった。 「黄金様」 「これはまだ始まりでしかないのだ。もっと多くの民に、もっと多くの国に、そう、褌こそが世界を繋ぐものとして、全ての民に褌の栄光を知らさねばならんのだよ。この祭はそのための第一歩にしか過ぎんのだ」 それは王が国を治めるように、神が世界を創造するように、遥か高きを目指すかのごとくに黄金は言った。 「申し訳ありませんでした。そうですね、まだこれは単なる始まり」 「黄金様の目指す頂まで、俺たちぁどこまでもついて行きます」 黄金の言葉に感銘を受けた赤と青は、自分たちの浅慮を改め、そして再び気合いを入れ直した。 「さあ、次の相手はどこのどいつだ! 褌の力みせつけてやるぞっ!」 おかしい、順路道理に進んでいるはずなのだが……。 黄金は実行委員から手渡された地図を見て首を傾げた。一戦目を終えてから、およそ一時間ほど神輿を進めたのだが、二戦目の会場に未だ辿り着いていない。それどころか、白浜宮神社から遠ざかっているようにさえ思えた。道端にいる観客の数もあきらかに減っている。 大体にしてこの地図が不親切すぎることも一つの原因だ。順路を描くのであれば、地図に線を引けば良いものを、神輿の出発地から一戦目の神輿競り会場までしか記されておらず、その先は、突き当たりを右、三つ目の十字路を左、と言った具合に、言葉だけで道が表記されている。一応担当者としてこの国の人間が道案内をしてくれているのだが、本当に彼らがちゃんと場所をわかっているのか、少々不安になってきた。 黄金は巫国内の地図を頭の中に描き、現在の位置を割り出そうと試みる。やはり、白浜宮神社とは逆方向へ向かっているようだ。 「おい、この道だと白浜宮神社へいくには相当な遠回りになると思うのだが、間違っているのではないか?」 黄金は担当の一人に声をかけた。 「いえ、間違ってはございませんよ。私は何度も有馬様と共に順路を歩いておりますので、経路はばっちり頭に入ってございます。もう少し先に行くと広い空き地があるのはご存知でしょう? そこで二戦目となっておるのですよ」 黄金は道の少し先に目をやった。確かにあそこの角を曲がれば、相当に広い空き地へ出る。だが、祭の会場としては適当だろうか? なにより周囲の観客数があきらかに少ないのだ。屋台の出も多くなく、中には見知った顔のもの達が掃き掃除なんかをしている。 ふむ、まあこんな神社から離れた所では、観客も来たがることはない、ということか。 そんなことを思いつつ、黄金達の神輿は二戦目の神輿競り会場へと辿り着いた。 「来たか」 神社から遠く離れた空き地にて、信乃は数人の部下と共にその中央に立ち、神輿が入ってくるのを眺めている。 「もう合図を出しましょうか?」十倉が声をかける。 「いや、もう少し引きつける。どうやらまだ気付いていないようだからな」 信乃は静かに言葉を返した。 やがて、他国参加乙組の神輿が中央にやって来た。ちょうど信乃達と向かい合うような形で、神輿は止まる。 「有馬様、他国参加乙組、全員連れて参りました」 担当の一人が有馬の前で跪き報告をする。 ご苦労、と小さく首を縦に振った信乃は、左手を高く上げた。そして、 「褌小僧一味の皆様、お疲れさま。あなた方の祭はここで終わりです。この空き地は完全に包囲してあります。おとなしく投降するのなら、手荒な真似はいたしませんので」 静かに、だが冷たく、神輿の男達に向かって言った。 「な、何を馬鹿なことを! そもそも俺達は他国からの祭参加者だぞ。そんなもんのわけねえだろうが」 「そうだそうだ、ひでぇ言いがかりだ!」 誰ともなしに神輿担ぎの男達からそんな声が上がる。 「てえことだ。俺達を捕まえるってんなら相応の証拠ってもんを持ってきてもらおうじゃねえか!」 一人の担ぎ手が前に出てきて、信乃に向かって啖呵を切った。 「先日、宮廷から赤い褌が百八枚盗まれたのですよ。乙組参加者百八名。数はぴったり合うわけです」 「そ、そんなの偶然だ! 俺たちゃちゃんとした参加者だよ!」 「やだなぁ、ちゃんとした参加者なら、赤褌は甲の字なんですよ。……乙字の赤褌は、祭運営委員では作っちゃいないんだ!」 最後の台詞を勢いよく言い放ち、信乃が左手を下ろすと、空き地の周囲に伏せていたマルフン達が箒型銃を構えて立ち上がる。彼らは皆制服ではなく、祭の観客やら何やらに変装していたのだ。 「く、くそぉ! 謀ったなっ!」 赤褌の集団は抵抗しようと構えるが、如何せん今まで神輿を担いでいたために、武器となるものは何一つ持ち合わせていない。素手対箒型銃、あきらかに不利であると悟ったのか、彼らはクモの子を散らすようにバラバラの方角へ逃亡しようと試みた。 「誰一人として逃がすなよ!」 信乃の声でマルフン達は一斉に神輿に向かって突撃する。 熱き漢達の戦いの火ぶたが切って落とされた。 次の派生SS → 漢達の舞踏曲 → 祭の観客達 → 神輿のかき手達 → 浜漢への道 【漢達の舞踏曲】 「褌のために!」 黄金は神輿の陰に隠れて同志達に発破をかけた。祭への意気込みがそのまま士気に繋がっているようで、彼らは威勢よくおう、と返事を返してくる。 だがそうは言っても周囲をぐるりと取り囲まれているため、状況は圧倒的不利。一部ではマルフンと同志達の殴り合いも始まっている。なんとかして打開策を見つけなくては、と黄金は策を練り始めた。 その時である。神輿を内側から叩く音が聞こえ、やがてそこから腕が伸びてきた。 何だこの腕は!? よく見ると出てきたの袖は、マルフン達の制服のものであった。 「ちぃ、神輿の中に伏せ手がいるぞ!」黄金は声をあげて注意を促す。 その間にも神輿のあちこちから腕や脚が出現し、神輿自体が割れ中からマルフンの増援が現れるのも、もはや時間の問題に思えた。 「ええい、一点突破を試みる。全員頭を低く下げよ。突撃をかますぞ!」 指示を出した黄金は自らも頭を低くしてマルフン達に向かって突っ込んでいった。箒型銃は本来敵を威嚇、足止めすることを前提に作られてあるので、平時の出力では殺傷能力が全く無いことを彼は知っていた。弾が当たっても数発までなら耐えきれる、そう踏んでの行動である。 だが、黄金の予想は簡単に裏切られた。 「ぎゃあぁぁぁ!」 後方から断末魔のような叫び声。ふと後ろを振り返ると、数人の同志が気を失って崩れ落ちていく。それを見た黄金は出力が平時の鎮圧設定ではなく、戦時の裁定出力に調節されていたことを理解した。 「ここは街中だぞ! なんてことをー!」 黄金は大声で信乃に向かって叫ぶが、その声はマルフン達の威嚇、同志達の悲鳴、二つによってすぐさまかき消された。 仕方ない、ここは下手に戦うより逃げる方を優先しよう。 そうと決めた黄金は、マルフン達の囲いを破って何とか戦場から立ち去ることに成功した。 伏せ手の奇襲が予想以上に出遅れた。その結果こちらの意図が悟られてしまい、多くの褌小僧達を逃亡させる結果となってしまったようだ。もっと強度を落としておくべきだったか、と信乃は戦況を見ながら後悔をしつつも、頭の一方では今後の方針についても考えを巡らせる。 神輿競り会場はかなりの乱戦になっている。褌小僧をマルフンが羽交い締めにし、縄をかけようとしたところにべつの褌小僧が体当たりをかまし邪魔をする。それを別のマルフンが羽交い締めにして……、と千日手のように事態は膠着していた。その中から一人の男が上空へと飛び出し、民家の屋根へと登った。 あの身のこなし、後ろ姿、やつに違いない。 「十倉、ここは任せる。何人かは僕に続け!」 信乃は屋根の上を悠々と走る一人の男を追いかけた。褌小僧一味における実行部隊の長と目される人物、通称「赤」。せめてやつ一人でも押さえてしまえば褌被害の大半は防げると踏んだからである。 信乃にとって幸運だったのは、赤が神社方面へ向かわなかったことだ。あちらに逃げられては道を走る追跡隊は人ごみに邪魔されて身動きが取れなかっただろう。ところが何故か赤は人通りの少ない北を目指して走っていた。 「あいたっ!」 上ばかり見ていたせいで、横から飛び出してきた女の子に気付かなかった信乃は、彼女とぶつかって大きくよろめいた。女の子の方は尻餅をつく。 「これは失礼しました。お怪我はありませんか?」 信乃は女の子に向かって手を差し伸べる。 「あ、ええーと、大丈夫、です」 信乃は手を掴んだ女の子を引き起こす。 「本当に申し訳ありません。ただいま祭を濁す無粋な者が現れました故、追いかけてるのに夢中でお気付きできませんでした」 「あ、いえ、私の方こそ……」 「ただ、この先は女性には危険ですので、しばらく立ち入られない方がよろしいと存じます。では、私は賊を追いかける任務がございますので、失礼させて頂きます」 信乃は女の子の前でくるりと踵を返し、再び赤を追いかけて走っていった。 くそぅ! なんて狡猾な! 誰よりも早く神輿競り会場から逃げ出したのは赤だった。忍者でもある彼は、いつものようにその跳躍力を活かし、一瞬で包囲網を飛び越え、次には民家の屋根へと飛び移り、あとは屋根伝いに逃亡した。ふと後をみると、有馬信乃を先頭に数人のマルフン達が道を走って追いかけて来る。 よりにもよって信乃さんとは……。 赤は唇を噛みながら忌々しげな思いを胸に伏せ、さらに脚を速めて屋根を走る。 とにかく宿舎に戻ってしまえば、あとは何とかなるはずだ。 そう考えた赤は、ぐるりと周囲を見渡した。宿舎までの最短路を探すために。だがそれは、予想だにしない出来事を引き起こした。 それはお互いほんの刹那の出来事であっただろう。一人の女性とばっちり目が合ってしまった。 いや、それは赤の錯覚であったかもしれない。平時であれば気にしなかったかもしれない。しかし、こんな逃走劇のまっただ中ではそんな思考も悪い方へと向かってしまうのも当然だろう。 まずい、まずいぞーーー!!! このまま宿舎に戻るのも危険だと感じた赤は、追手からも宿舎からも離れるように進路を変更した。 北に広がる森を目指して……。 手遅れだったか……、まさか役人に追われるとは。いったい何をしたんだろうか。 ……いや、当然の報いね。 たけきのこは、屋根伝いに逃げる男を追いかけていく役人達を眺めながら、そんなことを考えた。いつの間にか自国で暴れる褌達に慣れ過ぎていたようだ。普通に考えればあんな姿で街中をうろつくこと自体十分に犯罪的だ。 あいつの制裁は彼らに任せてしまおうか、とも考えたが、ぼろを出してうっかりたけきのの名を出されても困る。自国内ならまだしも他藩に迷惑をかけるなど藩王としての矜持が許さなかった。 仕方ないわね……、使いたくはなかったけど……。 たけきのこは右手を首の後へ持っていき、するするっと金色に輝く鉄の棒を取り出した。長さ三尺三寸、先へいくほど太くなっている。二度三度軽く素振りをして、たけきのこは屋根を走る影を追いかけた。 次の派生SS → 漢達の鎮魂歌 → 祭の観客達 → 浜漢への道 【漢達の鎮魂歌】 森の中は意外と暗かった。朝はそれなりに晴れていたのだが、いつの間にか太陽は雲に隠れてしまったようだ。夕立でも来なければ良いのだが、と信乃は別の人間に任せきりにしている祭のことが少しだけ気になった。 わずか数名で森の中を捜索するのはやはり無茶だったかもしれない。信乃についてきた追跡隊は誰一人として信乃の周囲にはいない。皆迷子になっていなければ良いのだが。 ……、迷子は僕の方か。 いやいや、森は広いのだから手分けして探しているのだ、ということにして信乃は一人で森の奥へと進んでいく。しばらく森の中央へ向かって歩いたが、結局赤はおろか、追跡隊一人として出会うことはなかった。 さて、どうしたものか……。 信乃は両手を逆の袖の下にしまって考え込む。すると右手の袖の下に何やら小さな箱が当たった。取り出されたその箱は、先日ボロマールに貰った紙巻き煙草だった。悪いとは思いつつも、封を切って一本取り出し、口にくわえる。考え事をする時にはどうしても吸ってしまうのは信乃の悪い癖だが、それをわかっていながらも、頭が冴えてしまう(それが錯覚と知りつつも)のだから止めようとは思わない。 火打石をとり出して煙草の先に火をともす。ぽわっと小さな赤い光が、信乃の周りを照らした。 「いたか?」 「いや、こっちにはいないようだった。そっちはどうだ?」 「すまん、こっちでも見つけられなかった」 一本だけある森の奥への道で、巫の兵装をした男達がそんな話をしている。 たけきのこは近くの木に身を隠して彼らの話を聞いていた。男達の話をまとめると、どうやらこの森に逃げ込んだのは確実で、現在のところ誰も見つけてはいないらしい。さらに、彼らはどうやらここで一旦引き上げるらしく、事態はたけきのこにとって都合の良い方向へと進んでいるようだ。 ふっふーん、まってろよー たけきのこは男達に見つからないように、そっと身を伏せて森の奥へと向かって進んでいった。 五分ほど進んだところで、鼻をくすぐる嫌な臭いが漂ってきた。この臭いには十分に心当たりがある。誰かさんが吸っているのを何度か見かけたことがあった。煙草だ。 臭いのする方に目を向けると、うっすらと人影が見え、たまに顔の近くがぽっと赤く光るのが見える。 たけきのこはにやり、と口元を歪め、そっと近づいていく。絶対に逃がしはしないと万全の体勢を整え、大きく上段の構えをとった。 「なにをやらかしたーーーー!!!!」 大きな叫びとともに人影に向かって「粉砕バット改」を振り下ろす。 「え?」 振り向いた人影、彼はたけきのこが頭に描いていた人物とはまったく別の顔をしていた。そこにあるのは先ほど街中でぶつかった役人の顔だ。 「え、えーっ!?」 慌てて腕を止めようとするが時すでに遅く……、鈍い音とともに彼は地面へと横たわっていた。見間違いかもしれない、と倒れた男の顔を覗くが、やはりそこにあるのはあの役人の顔だった。 …………、 ……え、えーと。 「ぎゃーーーー!!」 加害者であるたけきのこが倒れた男に変わって大きな悲鳴を上げる。 ど、どっどどっどどうしよーーーー! え、えーと……、だ、誰も見ていなかったから知らないふりをしてればいいのかな。あ、いや、まずはこの死体をどこかに埋めないと。発見を遅らせることが捜査攪乱の第一歩よね。 ……、違うって! そうじゃなくってー! 落ち着け、冷静になれ、とぶつぶつ口の中で呟きながら、男の容態を確認する。男の胸に耳を当てると心臓の鼓動が聞こえ、顔に手をやるとかすかながら息が当たるので、幸いにして命に別状は無さそうだ。 ふー、何とか最悪の事態は免れたようね。 男の側にへなへなっと座り込んで、たけきのこは安堵の息を漏らした。そして顎に手をやってどうしようかと思案する。 こういう場合はたしか頭を固定してやればいいはず。 戦闘訓練で気を失っている兵士にそんな応急処置を施していた軍医がいたことを思い出した。だが、頭を固定させようにも、周りに適当な枕となりそうなものは見つからない。 し、しかたないわ、ね……。 たけきのこは男の頭を自分の膝の上に乗せてみた。不本意ながら頭の納まり具合はちょうど良い。しばらくの間、たけきのこは男を膝枕の状態で様子を見ることにする。 早く起きないかと男の頬をペチペチと叩きながら、途中で見かけた兵士達が早くやってくることを願った。 たたらのおやっさん達は境内戦に辿り着いたか。頑張れよ、おやっさん……。 白浜宮神社境内、息を切らせた七さんは鳥居をくぐってくる神輿を眺めていた。 「七さん、七さんてぇへんだーーー!」 そんな七さんの元へ、神を振り乱した十三が駆け寄ってきた。 「どうしたんでい十三。褌小僧達の残党共が現れやがったのか!?」 「ち、違うんだ。いや、そうかもしれねえんだけど……。有馬様が褌小僧の一人を追いかけたまま森の中で行方不明になっちまったらしいんだ!」 「なんだとー!!」七さんは祭の掛け声よりも大きな声をあげる。「今すぐ手の空いてる者を森の入り口へ集合させ……、いや、集めるんでぃ!」 七さんは十三と共に政庁方面へと向かった。 摂政七比良鸚哥はメイド達を率いて、有馬信乃の行方を捜索するため森の中へと進んでいった。半刻ほど森の中をうろついたところ、森の中で一人の女性が座り込んでいるのを発見した。よく見るとその膝の上には人の頭が乗っており、彼女の膝枕で男が横になっているようだ。もしやと思い、鸚哥は彼女達に近づいていく。 「七比良さん!」 お互いを視認できる距離になって、先に声をあげたのは相手側だった。 「これは、たけきのこ様ではありませんか。このような場所で何を……、それに、そこで横になっているのは信乃さんか」鸚哥は二人の元へ駆け寄る。「一体、何があったのですか!?」 「え、えーと……」 束の間、黙り込んだあと、たけきのこが言葉を発した。 「じつは……、私が森に迷い込んでしまってですね。えっと……、そうだ、褌の暴漢に襲われそうになったんですよ。うん、それで、この方に助けて頂いたのですがね。ただそのときに、ちょっと頭を殴られたみたいで、気を失ってしまわれて……」 たけきのこがどもりながらたどたどしい言葉を続けようとした時、信乃がゆっくりと目を開けた。 「あれ、摂政さまではありませんか。それに、貴方はたしか……」 「信乃さん、大丈夫ですか? ええ、貴方はよくやってくれましたよ。貴方のおかげで外交問題にならずに済みました」 「は? 何のことです?」 「貴方がお救いしたこのお方はたけきの藩国たけきのこ藩王様なんですよ。ご存じなかったのですか?」鸚哥はたけきのこに手を向けて信乃に説明した。 「なんと、それはご無礼を」信乃は慌ててたけきのこから離れ、膝をついて頭を下げる。「ですが、藩王さまをお救いしたとは一体どういうことでしょう?」 「たけきのこ様が暴漢に襲われていたところを信乃さんが助けたそうじゃないですか?」 「え? いえ、確かに暴漢らしき人物は現れまし……」 「七比良さん! この方は頭を強く打っておられますので、早く医師の元へお連れした方がよろしいかと」 信乃の言葉を途中で断ち切り、たけきのこが提案をはさむ。 「ええ、そうですね。誰か、信乃さんを医務室までお連れしてください」 次の派生SS → 漢達の子守唄 → 浜漢への道 → 深夜の団子屋 【漢達の子守唄】 祭も無事に終わった夜の政庁。マルフン達の仕事場にはまだ灯りが灯っていた。部屋の中には二人の男、有馬信乃と十倉助三郎である。 「というわけで、逮捕者総数四十七人、ですが、黄金、青、赤、をはじめとした首謀者達は残念ながら一人も捕縛することは出来ませんでした」 「そうか。僕の不注意で迷惑をかけた。本当にすまない」 「いえ、有馬様がご無事であった事の方が大事です。それに、たけきの藩王様をお救いしたとか。大変な栄誉ではありませんか」 「ああ、そのことは……」信乃はわずかに溜息を漏らす。「確かに暴漢は現れたんだが、その時は僕一人だったんだ。あのとき僕がたばこを……」 言いかけて信乃は言葉を止める。森林では火災予防のため禁煙区域に指定されていたことを思い出したのだ。法官出仕を予定している者がそのような規則違反を犯したことは出来れば伏せておきたかった。 「どうなさいました?」 「いや、なんでもない。たけきのこ様がそうおっしゃるのなら、きっとあの方の言い分が正しいのだろう。僕は気を失っていたのだから……」 浜のけんか祭は今年もまた熱く盛り上がったようである、翌日の瓦版にはただそのことだけが記されていた。 次の派生SS → 祭の終わり → 帰路 → 日常の曙
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ササッキーとんち話3‐4 第三話:お菓子がタダ キョンの親戚の田丸兄弟はすごく仲が悪くて、いつも喧嘩ばかりしていました。 「殺してやる」 「あー殺せ」 菓子店の商売そっちのけで キョンはササッキーに相談に行きました。 「僕に良い考えがあるよ。くつくつ」 いつものように田丸兄弟が喧嘩をしていると 「皆さん。お菓子がタダだよ。お菓子がタダだよ」 と言って喧嘩を見物している人々に店の菓子を配り始めました。 「おい何をする」 「大体お前は誰だ」 「こいつはササッキーといって、俺の」 「婚約者」 「それより、店の菓子を勝手に配るのはどういう了見だ」 「だって二人は殺せ、殺してやる、といいながら喧嘩している。 兄さんが弟さんを殺せば兄さんは死刑で、誰もいなくなった店の菓子は腐ってしまう。残念ながら ということは、今の内に食べておくべきだね」 「判った。喧嘩はもう止める。だから菓子を投げないでくれ」 お菓子を貰えなくなったギャラリーは口々に叫びます。 「つまんねー、喧嘩しろよ」 こんなことを言われれば馬鹿らしくて喧嘩する気になりません。 その後、田丸兄弟は仲の良い兄弟となり、商売も繁盛しました。 第四話:重い箱 ササッキーはチュルヤ姫様というか将軍様に呼び出されました。 また、金庫の金が盗まれたのです。 「二度も盗まれるとは管理体制がなっていないのじゃないのか?会長」 会長は会計の責任者でした。 「すまん、知恵を貸してくれ。容疑者の中に犯人がいるのは確実なんだ。 でも、言っとくが、名前の消える箱のペテンはもう使えないぞ」 「そう思って妹ちゃんを連れてきた」 「今日はー。おいしいお菓子ちょうだい―」 ササッキーは臨時裁判官として判決を下した。 「容疑者4人とその連れ合いは、2か月の間、交代で、この神輿を担いで夜の見回りをするように」 その神輿が何故か重くて、皆ブーたれながら担いで行きました。 そして、ある日 「この中の誰が犯人かがはっきりした。その者は(略)」 犯人が奥さんに、金を盗んだことを告白し「ほとぼりがさめるまで我慢しろ」と言った様子を事細かに説明するササッキーでした。 「勘違いしないでくれ。僕は神通力なんか使えないよ。 実は、あの神輿にはキョンの妹ちゃんが隠れていたのだよ。 妹ちゃんは狭い所に隠れるのが特技でね。くつくつ」 「毎晩―、お疲れ様―」 (続いたら良いね)
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コマンド表 連続技各スピリッツ共通 怒 真・剣 天 零 コマンド表 必殺技 技名 コマンド 備考 男車 41236+斬り連打 江戸っ子の心意気 623+斬り 千輪菊被せ打ち 623+蹴り 昇銀竜斜め打ち 41236+蹴り 歌留多! 214+蹴り 祭囃子花火・江戸の華 632146+蹴り ぬいぐるみ 6412364+E 真スピリッツ限定 秘奥義 技名 コマンド 備考 江戸っ子の男気 4123623+BC 真スピリッツ限定 江戸っ子の男気 236+BC 剣スピリッツ限定 武器飛ばし技・武器破壊技 技名 コマンド 備考 神輿突進 男の花道 236+AB 怒スピリッツ以外 連続技 各スピリッツ共通 ※武器飛ばし技は怒スピリッツ以外 近距離立ちB>B江戸っ子の心意気orB男車or祭囃子花火・江戸の華中央では心意気、画面端では男車を使う 近距離しゃがみB(1段目)or遠距離しゃがみB(1段目)>昇銀竜斜め打ちor祭囃子花火・江戸の華 近距離立ちC>A江戸っ子の心意気orB江戸っ子の心意気or祭囃子花火・江戸の華B江戸っ子~は画面端限定 3D>B江戸っ子の心意気or昇銀竜斜め打ちor祭囃子花火・江戸の華 6D>近距離立ちAor祭囃子花火・江戸の華 4D>A江戸っ子の心意気or祭囃子花火・江戸の華 ダッシュD>A江戸っ子の心意気or昇銀竜斜め打ちor祭囃子花火・江戸の華昇銀竜~はダッシュDの持続を当てる必要がある JC>近距離立ちB~or近距離しゃがみB~近距離しゃがみB~はJCを最低空で当てる必要がある 近距離立ちBor近距離しゃがみB(1段目)or3D>神輿突進 男の花道自分が画面端を背負っている時限定 C江戸っ子の心意気>遠距離立ちB C江戸っ子の心意気>近距離しゃがみB~orA江戸っ子の心意気or祭囃子花火・江戸の華画面端限定 (技ありor背面当て)近距離立ちBor近距離立ちC>千輪菊被せ打ちor昇銀竜斜め打ち (技ありor背面当て)遠距離立ちC(2段目)>遠距離立ちBor祭囃子花火・江戸の華技あり時江戸の華は画面端限定 (背面当て)遠距離立ちC(2段目)>近距離立ちB~背面引き寄せ時限定 (しゃがみ当てor技ありor背面当て)JC>C江戸っ子の心意気~or千輪菊被せ打ちor神輿突進 江戸の華しゃがみ当て時にC江戸っ子~と神輿突進~に繋ぐ場合、JCを最低空で当てる必要がある (しゃがみ当てor技ありor背面当て)JD>近距離しゃがみB~or近距離立ちC~ (技ありor背面当て)JD>千輪菊被せ打ち 怒 (しゃがみ当てor技ありor背面当て)JC>超斬り 真・剣 近距離立ちBor近距離立ちC>江戸っ子の男気 3D>江戸っ子の男気 6Dor4D>江戸っ子の男気 ダッシュD>江戸っ子の男気 C江戸っ子の心意気>江戸っ子の男気 (技ありor背面当て)遠距離立ちC(2段目)>江戸っ子の男気技あり時は画面端限定 天 近距離立ちBor近距離しゃがみB(1段目)or近距離立ちC>一閃 3D>一閃 6D>連斬入り込み~ 4D>一閃 連斬入り込み>AABBCC>一閃AABBCCCルートの8段目を空キャンして一閃を出す 連斬入り込み>BBC>昇銀竜斜め打ちor祭囃子花火・江戸の華or一閃or神輿突進 男の花道神輿突進~は自分が画面端を背負っている時限定 ダッシュD>一閃 JC>連斬入り込み~or一閃 JD>一閃 C江戸っ子の心意気>一閃 (技ありor背面当て)近距離立ちC>連斬入り込み~技あり時は画面端限定 (技ありor背面当て)遠距離立ちC(2段目)>連斬入り込み~or一閃技あり時連斬入り込み~は画面端限定 (技ありor背面当て)2D>一閃 零 近距離立ちCor遠距離立ちC>無の境地~ 3D>無の境地~宙に浮くので怒り爆発不可能 6Dor4D>無の境地~ ダッシュDor江戸っ子の心意気>無の境地~宙に浮くので怒り爆発不可能 JCorJD>無の境地~ (技ありor背面当て)2D>無の境地~ 無の境地>遠距離立ちC×n>一閃 境地ゲージの溜まり具合によってnの回数を調整する 遠距離立ちCを2段当てないとダウンしてしまうので注意 無の境地>近距離立ちCor遠距離立ちC>近距離立ちB>歌留多!>近距離立ちC>祭囃子花火・江戸の華境地ゲージ初期値で可能 一閃を繋ぐコンボよりダメージが高い 無の境地>近距離立ちC>歌留多!>近距離立ちA>近距離立ちC>遠距離立ちC>祭囃子花火・江戸の華境地ゲージ50%で可能 一閃を繋ぐコンボよりダメージが高い 無の境地>遠距離立ちC>近距離立ちB>歌留多!>遠距離立ちC>近距離立ちB>祭囃子花火・江戸の華境地ゲージ50%で可能 一閃を繋ぐコンボよりダメージが高い 6D>無の境地>近距離立ちC>歌留多!>近距離立ちA>遠距離立ちC>祭囃子花火・江戸の華境地ゲージ初期値で可能 一閃を繋ぐコンボよりダメージが高い 中段始動 4D>無の境地>遠距離立ちC>近距離立ちB>歌留多!>近距離立ちC>祭囃子花火・江戸の華境地ゲージ初期値で可能 一閃を繋ぐコンボよりダメージが高い 中段始動 6D>無の境地>近距離立ちC>歌留多!>近距離立ちA>遠距離立ちC>近距離立ちA>近距離立ちC>祭囃子花火・江戸の華境地ゲージ50%で可能 一閃を繋ぐコンボよりダメージが高い 中段始動 4D>無の境地>遠距離立ちC>近距離立ちB>歌留多!>遠距離立ちC>近距離立ちB>祭囃子花火・江戸の華境地ゲージ50%で可能 一閃を繋ぐコンボよりダメージが高い 中段始動 3DorダッシュDorC江戸っ子の心意気>無の境地>JC>歌留多!>近距離立ちC×n>祭囃子花火・江戸の華宙に浮くので怒り爆発不可能 レシピ 解説
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時間は少し遡って午後1時30分。 新宿駅の中央線ホームにアナウンスが流れた。 『お客様にご連絡申し上げます。山梨県内の中央本線の線路が破壊されたため 現在、特急「あずさ」「かいじ」の運転は見合わせています。誠にご迷惑……』 「えーーー?!」 放送を聞いて、ツインテールの小柄な女子高生・中野梓はがっくりとうなだれた。 梓の支給品は13:30新宿発の特急あずさの乗車券だった。戦闘能力が無く、 危険人物の多い東京から一刻も早く離れたい梓にはラッキーアイテムと言える。 しかしその乗車券も単なる紙切れになってしまった。 「糞ッ・・なんで俺はいつもこうなんだっ・・!」 梓と同じくうなだれている男がいた。伊藤カイジである。 支給品を置き忘れ途方に暮れていた彼は武器こそ見つけられなかったが、やがて 道端のゴミ箱から特急かいじの乗車券を見つけると、これ幸いと新宿駅に向かった。 やはりカイジも東京より人の少ない田舎のほうが安全と考えたのである。 「「はあ~~……」」 梓とカイジが同時に溜め息をついたその時、中央線ホームに異変が起きた。 「「「ウィア~ザワァ~ッ♪ ウィア~ザ中ブ連~♪」」」 神輿(みこし)をかついだ八人の屈強な男たちが中央線の線路の上を走ってきた。 彼らはブリーフを一枚つけている他は裸という漢仕様てあった。 彼らのうち代表らしき一人が中央線ホームの客に語りかけた。 「我々は中央ブリーフ連盟! 特急に代わって君達を山梨長野方面に運ぼう! やっぱり中ブ連、中央線がストップしても大・丈・夫!」 ざわ・・ ざわ・・ 「ただし! 神輿に載せられるのは一人までだ! だから君達にジャンケンを してもらい、最後まで勝ち残った者を乗せることにする!」 梓はあまりあの神輿には乗りたくなかったが、 「でも、ここで死ぬよりはマシだよね……、やるしかないか」 一方、カイジは内なるギャンブラーの血が目覚めるのを感じていた。 「こんな所で死んでたまるか・・・勝たなきゃゴミっ・・・!」 かくして、総勢数百名による大ジャンケン大会が幕を開けた。 「優勝おめでとう! 目的地はどこかね?」 「遠くへ・・・できるだけ田舎へ頼む・・・!」 地獄の限定ジャンケンを生き延びたカイジにとって、普通のジャンケン大会で 優勝するのは造作も無いことだった。 「あいよ! 野郎ども、気合入れていくぞー!!」 カイジを乗せた中ブ連の神輿は新宿駅を出発し、線路の彼方へ消えていった。 【午後2時00分/東京都・新宿駅ホーム】 【伊藤カイジ@賭博黙示録カイジ】 【状態】健康 【装備】無し 【道具】特急かいじ乗車券(無効) 【思考】1:とりあえず田舎に逃げる。 2: 人を殺したくはないが、襲われたら反撃する。 【中央ブリーフ連盟×8人@ボキャブラ天国】 【状態】無駄に健康 【装備】ブリーフ 【道具】神輿 【思考】1:ブリーフ命。 2:カイジを希望の場所へ送り届ける。 ▽ 数時間後、夕刻。 杉下右京(全裸)のパトカーは新宿駅東口に来ていた。 「澪さん、あそこで座り込んでいる女の子はあなたのお友達ではありませんか」 「え……あ、梓! すごい、どうしてわかったの? 写真も無いのに」 「絵柄があなたにそっくりです」 澪は飲んでいた紅茶を吹き出した。 「さ、早く彼女の所に行ってあげましょう。だいぶ疲れているようです」 右京と澪はパトカーを降りた。 「梓!」と澪は声をかけた。 「え……あっ! み、澪先輩!」梓も澪に気付いたようだ。 澪と梓は抱き合い、しばらくの間泣きじゃくっていた。 二人か落ち着きを取り戻す頃合いを見て、右京は語りかける。 「梓さん、初めまして。僕は警s――」 「きゃあああああっ!!!」 梓は思わず絶叫した。 「梓、落ち着いて」なだめる澪。 「何ですか、その人! こんな街中で素っ裸なんて、へ、変態じゃないですか!」 「変態だけどいい人だよ。私に紅茶おごってくれたし」 「澪先輩……その理屈だと、誘拐犯はみんないい人になっちゃいますよ?」 「細かい事はいいのっ」 こうして、澪は梓を強引に説得して右京パーティに引き入れた。 【午後5時45分/東京都・新宿駅東口】 【中野梓@けいおん!】 【状態】健康 【装備】無し 【道具】特急あずさ乗車券(無効) 【思考】1:仲間を探す 【秋山澪@けいおん!】 【状態】健康 【装備】無し 【道具】支給品一式その他不明 【思考】1:仲間を探す 【杉下右京@相棒】 【状態】健康、全裸 【装備】熱線銃@ドラえもん、ニューナンブ 【道具】支給品一式、警察手帳、メガホン、パトカー 【思考】1:信長を逮捕する 2:澪と梓の仲間を探す
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Black Cat 入隊希望者 書き込みお願いします。 ゲーム内の名前を記入して、コメントもくわえて書き込みしてください。 -- (紅いチョコボ) 2008-11-29 23 30 32 クラン最弱の座は譲れません -- (はまぞ) 2008-12-02 00 30 59 クラン退場処理願いします。 -- (junper) 2008-12-02 20 56 41 クランお誘いありがとうございます。 -- (HちょんH) 2008-12-04 00 08 10 HちょんH -- (BlackCat(マスタ)) 2008-12-04 00 33 49 いぇいぇ^^ 入ってくれてありです -- (BlackCat(マスタ)) 2008-12-04 00 34 00 AVAが初めてのFPSですがよかったら誘ってください。 -- (神輿様) 2008-12-04 18 58 43 神興様、 えっと今現在はクラン員は満員ですので、誰かが抜けたらでもよろしいでしょうか? -- (BlackCat(マスタ)) 2008-12-04 20 58 36 はい、空いたときでいいですよ^^ -- (神輿様) 2008-12-05 00 28 02 お疲れ様でした┏(o:)ペコリーン -- (HちょんH) 2008-12-08 23 09 01 名前 コメント すべてのコメントを見る
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[部分編集] 愛 大谷吉継-莫逆- SR #ref error :ご指定のページがありません。ページ名を確認して再度指定してください。 必要兵力 20 Lv1 攻 2770 防 2760 知 3280 LvMAX 攻 5530 防 5510 知 6560 スキル [白頭神輿【雷】] LV1/7 敵単体の攻防ダウン 武芸者計略 敵HPダウン【発動率:低】 売却価格 両 コメント 「あら??どうかしましたか三成??」石田三成とは莫逆の友。茶席を通じての出来事から自らの死を予感しながらも三成と共にセキガハラで戦う決意をする。 台詞 「三成との茶席は……存外に愉快なんですよ」 図鑑 備考 入手:独り占めガチャIllust.鈴木ロケット ↓進化↓ [部分編集] 愛 [絆]大谷吉継-莫逆- SR #ref error :ご指定のページがありません。ページ名を確認して再度指定してください。 必要兵力 20 Lv1 攻 防 知 LvMAX 攻 防 知 スキル [白頭神輿【雷】] LV1/7 敵単体の攻防ダウン 武芸者計略 敵HPダウン【発動率:低】 売却価格 両 コメント 「ああ、この子??三成って名付けましたの」石田三成とは莫逆の友。茶席を通じての出来事から自らの死を予感しながらも三成と共にセキガハラで戦う決意をする。 台詞 「この子を三成って名付けたと伝えた時の三成の顔ったら……ふふっ」 図鑑 備考 ↓進化↓ [部分編集] 愛 [義人]大谷吉継-莫逆- SR #ref error :ご指定のページがありません。ページ名を確認して再度指定してください。 必要兵力 20 Lv1 攻 防 知 LvMAX 攻 防 知 スキル [白頭神輿【雷】] LV1/7 敵単体の攻防ダウン 武芸者計略 敵HPダウン【発動率:低】 売却価格 両 コメント 「どちらの三成もとても可愛いの、ふふっ」石田三成とは莫逆の友。茶席を通じての出来事から自らの死を予感しながらも三成と共にセキガハラで戦う決意をする。 台詞 「ああ見えてとても可愛い人なのよ、三成は……」 図鑑 備考 ↓進化↓ [部分編集] 愛 [刑部少輔]大谷吉継-莫逆- SR #ref error :ご指定のページがありません。ページ名を確認して再度指定してください。 必要兵力 20 Lv1 攻 防 知 LvMAX 攻 8306 防 8281 知 9852 スキル [白頭神輿【雷】] LV1/7 敵単体の攻防ダウン 武芸者計略 敵HPダウン【発動率:低】 売却価格 両 コメント 「願わくば永久まで三成と一緒に居たいわ」石田三成とは莫逆の友。茶席を通じての出来事から自らの死を予感しながらも三成と共にセキガハラで戦う決意をする。 台詞 「あなたは生き延びて欲しいのだけど……運命を共にするの??」 図鑑 備考 4MAX:攻8306 防8281 知98526MAX:攻8526 防8500 知10112修正前画像 コメント 6Max 攻8526 防8500 知10112 -- コメント 1進 [絆] 「ああ、この子??三成って名付けましたの」 2進 [義人] 「どちらの三成もとても可愛いの、ふふっ」 最終 「願わくば永久まで三成と一緒に居たいわ」 -- 台詞 初期「三成との茶席は……存外に愉快なんですよ」 1進「この子を三成って名付けたと伝えた時の三成の顔ったら……ふふっ」 2進「ああ見えてとても可愛い人なのよ、三成は……」 最終「あなたは生き延びて欲しいのだけど……運命を共にするの??」 -- 名前
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祭囃子の由来について解説します。 囃子 山車巡行・競り合いの曲。屋台囃子とも言う。 神霊を勇める曲とも言われ、 最も勢いの良い祭り囃子の代表的な曲。 演奏:豊田本宿(豊八幡神社)http //www.youtube.com/watch?v=Q0JQ4Kknp08 演奏:中原上宿太鼓保存会(中原日枝神社)http //www.youtube.com/watch?v=7vJdE2GyxPw 宮昇殿 囃子と同じく巡行の曲。 神輿が神社に近づいたことを知らせると同時に、 巡行の労をねぎらい神霊を勇める曲と言われる。 演奏:宿和会(豊八幡神社)http //www.youtube.com/watch?v=X3KZif4DlYs 治昇殿 神輿の宮入を告げ、無事に宮入が出来ることを促す曲。 演奏:宿和会(豊八幡神社)http //www.youtube.com/watch?v=dEPMdlmxlZk 印場 俗に言う「馬鹿囃子」。 祭りが終わった後、山車の帰路に叩かれた。 演奏:豊田本宿(豊八幡神社)http //www.youtube.com/watch?v=FG7jeb-deOw
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「……お願い」 少女の瞳が真っすぐに見つめている。 「必ず……お神輿担いで、会いにきてね」 「任せておけって。必ず行くから」 目を伏せ、ぎこちなく伸ばされた少女の指先が触れた。 「きっと、だよ……」 指が絡まる。 「約束……」 茜色に染まった砂。 夕日を照り返して輝く海。 足を洗う波。 すぅっと海の底まで引っ張る行くように、足の裏の砂がさらわれて行く。 赤く染まった雲が、海風に細くちぎれて流れた。 「約束、だから。待っているから」 うなずく。 「ずっと。ずうっと、待っているから」 ずっと……。 目が覚めると、まだ暗かった。 ヘイタはそっと立ち上がると、板の間で寝入っている兄弟を踏まないように、忍び足で厠に向かう。 目尻からこぼれた一筋の涙を、手の甲で拭う。 さほど遠くない海からは、波の音。 見上げれば群青の空に、いくつもの星が瞬く。 毎年この時期になると同じ夢をみていた。去年も、一昨年も。 銭《ぜに》があれば、夢見の伺いを立てることもできる。 だが、おっかあと六人の兄弟の生活を支えるヘイタには無理だった。 忘れなければ。 いくらそう思っても、少女の姿をした御魂《みたま》との『約束』が忘れられない。 いつの時のどの世界での、いかような因縁か。 わからない。 だが、確かに約束をしたはずだ。 今年も『あらうみさん』の大祭が近づいていた。 浜からは一際大きな波の音が響いてくる。 呼びかけは、これがきっと最後。 ――『あらうみさん』には神輿を担ぎ、ナカノシマへと渡る。 ヘイタは「よし」と低く呟くと、傾いだ小屋に戻った。 「この忙しいのに何だ? なにぃ? 担ぐ?」 烏帽子の老人はヘイタの方へ振り返り、途端に、あいたたた……、と顔をしかめた。 「大丈夫か、じっさん」 「大丈夫なもんか。だめだめ、そしたら誰が代わりに神楽を吹く? だいたい、おめぇんとこだって銭がなけりゃ大変だろう」 座りなおそうとして、また、あいたたた、とトムラベノウシナは腰を押さえる。 父親を海で亡くしたヘイタにとって、ウシナは親父のような存在だった。 船に弱く、漁師には向かないヘイタに笛の才を見いだし、楽師として『あらうみさん』の大祭の時に奏じさせてくれたのはウシナの配慮だった。 ヘイタの笛は好評で、この数年、大祭での奉納演奏は一家の貴重な収入になっている。 その稼ぎを棒に振ってまで、ヘイタはウシナに担ぎ手になりたいと相談にきたのだった。 「なぁ、ヘイタ。どうしてまた、ほげた《馬鹿げた》ことを言い出すんだ」 トムラベの家は代々、荒海大社《あらうみたいしゃ》の神職だった。 だが、夢見は巫女の仕事。 トムラベノウシナほど力ある神職でも、いやだからこそ、口が裂けても夢の話をするわけにはいかない。 ヘイタはウシナの作りかけていた注連縄《しめなわ》に目をやった。 大祭には付近の漁村に散らばる荒海神社から神輿がここアラガハマの海辺に集う。街道と辻を清める注連縄は、いくら作っても足りることがないほどだった。 できあがった注連縄は丸められている。木綿《ゆう》の紙垂《しで》が内側に揃えられて、まるで卵を守るムカデかヘビのようだった。 ヘイタがどうしようもなく黙っていると、ウシナはニヤリと笑った。 「ははぁ。そうげことか」 両腕を組むと、うんうんと頷く。 「おなごに惚れたな」 「違う」 「へへへ。図星だべ」 あわてたヘイタの様子に、再び満足そうに頷いた。 『あらうみさん』の祭りには、意中の異性に想いを伝えられる。だが、それには神輿を担いで一人前の男であることを示さなければならない。 「もうおめぇもそんな歳とはなぁ。んで、相手は誰だ?」 「違うって言ってるだろう、じっさん」 「まさか、サナか?」 「ち、違うよ、あんな奴」 「そうか……」 ウシナは、ふぅとため息をついた。 「いやな……。サナはよぉ、急にナカノシマから遣いがきて、あそこの巫女にきまったからさぁ」 「本当か、じっさん」 「ああ。あいつ、ああ見えてよぉ、おめぇには懐《なつ》いてるだろ。喧嘩するのも何とやらとか、いうじゃねぇか。ひょっとしておめぇもサナのこと好いてたらと、少し心配でさぁ。……だとしてもナカノシマの巫女じゃ、どだい無理だからな。いや、おめぇの言葉聞いて安心した」 「そうなんだ……」 「だがん、このことはまだあいつにも言ってねぇ。実はよぉ、俺もどうやって切り出せばいいか、なんか踏ん切りがつかなくてさぁ。ま、いずれにしてもよ、こいつは誉れだ。めでてぇさぁ」 そういうとウシナは声を上げ笑いだした。 幼なじみのサナ。両親を相次いで海でなくしてからは、親戚のウシナに養われていた。 あの真っ黒に日焼けした男顔負けの快活な少女が巫女に選ばれた。全く信じられない。 ウシナの冗談かとも思ったが、先程からカカと声を上げる目は笑っていなかった。 「……んで、誰だ、おめぇの想い人はよぉ? 恥ずかしがることねぇべ。教えろや」 「だから、違うって!」 「おや、おっかねぇ。ホトケのヘイタも怒るんか。クワバラクワバラ……」 急に真顔になったウシナは、パン、とひざを打った。 「よし、分かった。そういうことなら仕方ねぇべ。一肌脱ごうじゃねぇか。他の村から笛のできる奴を頼んでやるからよぉ。神輿、しっかり担げ。好いたおなごにゃいいところ、見せてやりな」 ヘイタはウシナの前を辞すると、屋敷裏の小屋にまわった。 大祭までに注連縄を出来る限りたくさん作り上げ、通りや辻に張らなければならない。そのための人手はいくらでも必要だった。 他にも何人もの村人が手伝いにきている。 ヘイタは土間に座ると縄を結い始めた。 手を動かす合間、視線は自然とサナを探していた。 だが、普段は忙しく動き回っているその姿が見当たらない。 あたりがうす暗くなるとヘイタは暇《いとま》を告げた。 帰り道、いつものように荒海大社へと参る。 ねじ曲がった松林に『大社』という名には似あわない、小さなお社《やしろ》がポツンと建っている。 この小さなお社が、海神として各地に祀られている荒海神社の中心だった。 あたりは真っ白な砂が浜まで続いている。裏手にはゴツゴツした黒い岩。他には何もない。 みな大漁や海の安全を祈念するものの、村外れのためにふだんは人もあまりいなかった。 紫色に染まった空に、屋根が黒い影となる。 ヘイタは深々と礼をすると、柏手を打った。 今日も一日、無事に過ぎて行くことを感謝して、そのまま両手を合わせる。 目をつむるとサナのことが心に浮かんだ。 もしかすると、舞で巫女に選ばれたのかもしれない。 サナの舞は都からも誘いの声がかかるほどだった。 その動きは、門外漢のヘイタにさえ何か特別なものを感じる。 ――だからって、どうしてこんな急に? なぜ? 思いは次々にわいてきた。 だが、島から遣いがきたからには、もう決まった話。 どうすることもできない。 だいたい、巫女に選ばれるのは栄誉だ。それもナカノシマは別格。これ以上の話はない。 それをまるで悪いことのように思うのは、自分がどうかしている。 境内で悪い念をもったことを詫び、ヘイタは深く息を吸うとサナの心配を払った。 今度は神輿を今年は担がせて頂くことになったことへの感謝を心の中で唱える。 すると、あの夢は一体何だろうと心に浮かんできた。 やはり分からない。 とにかく、今は少女の姿をした御魂の『約束』には近づいている気がする。 そう考えて、ふっと息を吐いた。 ヘイタは再び礼をして、神前を辞す。 境内を抜けようとすると、人の気配。 「『あんな奴』だなんて、随分な言い方」 松の影からすらりした細身の少女が出てきた。 「私もあんたなんか、何とも思ってないけれど」 「サナ……」 ウシナとのやり取りを聞かれていたらしい。 いつもなら、いきなり抱きついてくるサナが、今日に限ってはおとなしかった。 ゆっくりとヘイタの元へと近づいてくる。 「ヘイタ、今年は担ぐんね、お神輿」 「ああ」 長い睫の瞳が、ヘイタを見上げていた。 「じゃあ、笛はないのね」 「そうなるな」 「つまんないの」 よく見ると、日焼けした少し丸い頬には、濡れたあと。 目が赤い。かすかに二重のまぶたが腫れている。 サナの手が刹那に触れた。何かを言いかけていた口を閉じ、あわてて手を引くと、サナはそのまま逃げるように急ぎ足で離れる。 「おい、サナ」 止まらない。髪を夕風になびかせて駆けていく。 追いかけようとしたが、足が地面に吸い付いたように動かない。 白い砂を蹴るサナの姿が、松の枝のかげに消えた。 「男ってもんはな、男気よぉ! しゃきっとしやがれ、しゃきっと!!」 照りつく太陽。 従兄の黒く日焼けした太い手が、ヘイタの白い背中をパンと打つ。 ヘイタは生白い指先に力を込め銛の柄をしっかりと握り直した。気を張って背を伸ばす。 だが、腹の底からせり上がってくる酸っぱさに負け、再び船縁にかがみこんだ。 真上から照りつける陽が、背中をチリチリと焼く。 輝く青い水面とヘイタの口元が、光る一筋の粘液で繋がった。 船は、波に当たるたび、上へ下へと大きく揺れる。 もう胃の中は空っぽのはずなのに、寄せる吐き気はおさまらない。 荒海大社が奉るフカワタツミノミコトは海神。神輿の担ぎ手は、海の男だ。ヘイタはその証しを示す必要があった。 納屋から、おっとうが使っていた銛を捜し出し、褌一つで母方の従兄、カイチの家を訪ねた。 ウシナに担ぎ手にしてもらったことを話すと、カイチは一も二もなく船に乗せてくれた。 だが、いざ浜を離れると、この有り様。 「いいか、男気だ! しゃきっとしろ、ヘイタ!! 誰とはいわねぇけどよ、あの娘にいいところ、見せてぇんだろう?」 カイチの巨大な腕が再び背中を打つ。 ヘイタは涙目で、口の端からこぼれる酸っぱい光の筋を拭った。 その日暮れ、何も採れずに戻ると、浜ではウシナが待っていた。 急に島から迎えがきた、とだけ告げる。 「ウシナどの、冗談だろう?」 カイチの問いにウシナは首を横に振った。 「サナちゃんがナカノシマの巫女だって? おい、ヘイタ。おめぇ知ってたのか?」 「……ああ」 「きちんと別れの挨拶もしてねぇだろう? おめぇ、どうするんだよ」 「……どうもしないよ」 「いいのか、それで」 「でも、どうにもならないだろうがっ!」 ヘイタは駈け出した。 誰もいない浜。 銛に寄りかかったまま茫然と、ヘイタは夕焼け空に浮かぶナカノシマの影を見つめ続けた。 ナカノシマには海神、ミナツヒメの宮とご神木がある。 島全体は男子禁制だった。 『あらうみさん』の大祭ではくりだした荒海神、つまりフカワタツミノミコトの神輿が島に渡る。そこでミナツヒメと出会う神事が執り行われることになっていた。 男子禁制のナカノシマもこの日だけは、選ばれた神輿の担ぎ手を受け入れる。 もしかすると、神事にはサナと対面できるかもしれない。 そこにかけるしか、もう何もなかった。 ヘイタは決意を新たに漁へ出た。 もともと色白だったヘイタは日焼けで全身真っ赤になり、皮がむけ、ところどころ水ぶくれさえ出てきた。 無理がたたり、熱と吐き気でぐったりとしている。 見かねたカイチは船を降ろそうとした。 ところが普段はなよなよしたヘイタが強情を張り、頑として聞かない。 そんな様子に、カイチは仕方なく今日も船を出した。 だが強情だけでは、漁はままならない。 船が波に揺られはじめると、ヘイタはまるで虫の息になって横たわってしまった。 カイチは舌打ちをすると船首を外海から回し、比較的穏やかな浦へと進ませた。 しばらくするとヘイタの顔色が少し回復してくる。 櫂を手にしたカイチが、ぐったりとしたヘイタを見下ろした。 「おい、ヘイタ。そういやおめぇ、泳げたよな?」 ヘイタは凍りついた。 それは、あからさまな侮辱。 海の男は、泳がない。 あらうみさん、つまりフカワタツミノミコトに呼ばれたら、潔くすべてを捨てて沈む。それが生きざまだった。女でもないのに泳ぐのは、恥ずべきこと。 だが、ヘイタは生きるために泳ぎ、海に潜った。 父親を失った当時、一家は食べるものにも困っていた。母親一人が海女で働いてもまかない切れない。 ヘイタは船はからきし駄目だが、天性の泳ぎ手だった。 夕方、あたりが薄暗くなると、浜へ隠れて海へでる。岩場へ潜っては、貝や小魚を捕まえて、何食わぬ顔で母親の魚籠《びく》へと滑り込ませていた。母はいつもかすかに潮の香りを纏わせたヘイタに見て見ぬふりをした。 カイチはそれに気づいていたのだろう。この期に及んでそれを持ち出してくるとは、どういう意図か分からないが、あまりにもひどい仕打ちだった。 強い憎しみと怒りと、そしてやるせなさが一度にヘイタの心のうちに渦巻く。 だが、その感情は朦朧とした意識の奥へ飲み込まれた。 船に酔い、日焼けで動けなくなった自分は漁のお荷物。むしろ怒りはカイチに、ではなく、カイチから自分へと向けられるべきものだった。 仕方のないことだ、と胸の内で溜息をつく。 もう、海の男としての証は立てられない。 祭に担ぎ手として出ることも無理だろう。 あの夢に出てきた御魂との『約束』は果たせない。 それ以上に、サナに会える最後の機会を失うのが、悔しくて惜しくて仕方なかった。 いつも一緒だったサナ。 あんなにも近くて、気づくと隣にいて。 砂浜の砂を蹴り上げ走り去るサナの後ろ姿が、まぶたに映る。 いつの間にか、手が届かないところへ行ってしまった。 何もできない。 漁も、担ぎ手も、御魂との『約束』も。 そして、サナと一目会うことも。 こんなにも無力な自分が、生きていていいのだろうか。 そら恐ろしい考えが浮かび、ヘイタは頭を振った。 「大丈夫か、ヘイタ。でも、ちょっと見ろ……あれだ」 カイチが指さす先を見ると、岩のような黒いものがゆらゆらと歪んでうつっている。 「アギガイだ」 砂に深く埋まったアギガイは、底引き網にはほとんどかからない。採れないだけに貴重で『あらうみさん』には欠かせないお供物だった。 「おめぇ、潜ってとれるか?」 そう言ってカイチはほほ笑んでみせた。 一瞬戸惑ったものの、ヘイタは従兄の意図を察した。 カイチに対し、一瞬でも悪い念を思った自分を恥ながら、ヘイタは褌を締め直す。 「いってみる」 ざんぶと海に飛び込んだ。 水と泡の感触が全身を頭から足先まで広がる。火照った肌をいたわるように、水が体を優しく包みこんだ。 さきほどまで割れるように痛み、汚泥が詰まったようだった頭は、芯の方からすっきりとして、冴えてくる。 ヘイタは大きく息を吸い込んだ。 頭を下げてぐんぐん水を蹴り、ヘイタは水深くへと潜って行った。 体を包む水が、見えない境で急に冷たくなる。潮の流れで海草が手を振るように揺れていた。 ツバを飲み込むようにして耳の痛みを抜くと、さらに深くヘイタは潜った。 黒いアギガイが目の前にある。隙間に指を挟まれないよう貝殻に触れると、ぱくっと一瞬で口が綴じた。ゆっくりと注意深く前後に揺らす。 徐々に息を止めた苦しさが回ってきた。指先が少し冷えて、チリチリとしてくる。それでも根気よく動かしていると、やがて砂に半分沈んだ貝が徐々に出てきた。 取り出した貝を抱えると、ヘイタは海底を蹴る。 口から溢れた泡がゆらゆらと揺れながら上がっていく。同じ早さでヘイタもカイチの待つ船の影を目指す。 息が切れそうになるぎりぎりで、新鮮な空気が一気に入ってきた。大きく息をする。太陽の明るさに圧倒される。あたりはすべてが紫色に包まれて、小さな光の粒が舞って眩しい。全身に力が少しずつ戻ってきた。 「どうだった?」 ヘイタは息を整えながら船に近付くと、震える手でえいとばかりにアギガイを放り込んだ。 「やったな。これでおめぇも海の男だ」 「で、でも……」 「気にするな。こいつは網で引き上げたことにするでよぉ」 そう言って白い歯を見せて笑う。 ヘイタは何度も潜った。 「これだけあれば十分だべ」 「そうだな」 「ヘイタ、そろそろ戻ろうと思うんだがよぉ……なぁ、最後にひとつ、お願げぇだ」 急にカイチは真剣な顔になった。 「悪いけどよぉ、もうひとつ採ってきてくれねぇか?」 「いいけれど」 「へへっ……。俺もひとつ食ってみてぇんだ」 ヘイタは思わず噴き出した。さすが食いしん坊のカイチだ。 「ああ。任せろ。特別でかいの、とってくるよ」 再び息を整え、大きく吸う。 深く潜ったヘイタは、ひんやりとした水に包まれて、ひときわ大きなアギガイと向かい合っていた。 潮の規則的なうねりだけが、あたりを支配している。貝殻の隙間から筒のように伸びた二本の口は、膨らみしぼむ動きを、淡々と繰り返していた。 ヘイタは貝殻にそっと触れた。 殻を閉じる様子はない。 大きく前後に揺すろうとするが、貝はびくともしなかった。 力を込めて揺らすとヘイタの口元からは泡が漏れた。 だが、その甲斐あってか、アギガイは砂からだいぶん傾いていた。もう少し動かせば完全に引き出せそうだった。 カイチの嬉しそうな笑顔が脳裏に浮かぶ。ヘイタは握った腕に力を込めた。さらに前後に貝を揺する。だが、思ったよりも手ごわい。 やがて砂から抜き取る。このころにはさすがのヘイタの腕も足も、かすかに痺れかかっていた。 そろそろ上がらないと、危ない。 アギガイを抱えて、ヘイタは海底を蹴った。 泡はゆらゆらと揺れながら海面へ上る。だが、さきほどと違って、その泡に追いつくことができなかった。 貝が重すぎた。 息が漏れたのに、長く潜りすぎて力が十分に足へと伝わっていない。 ヘイタはがむしゃらに水を蹴る。 その足も、もう思うように動かなくなってきた。 あたりが暗くしか見えない。視界は狭くなってきた。胸は詰まって潰れそうで、からだが早く水の外へと出たがって暴れている。 限界だ。 心の臓が、胸の内側で早鐘のようにのたうっている。 ヘイタはようやくアギガイを手放した。 海面から差し込む太陽の光。かすむ視界に輝くその光を求め、必死に浮かび上がる。 だが耐えきれなかった。 水中で勢いよく吸い込んでしまう。大量の塩水がヘイタの息を止めるように口と鼻を塞いだ。 輝く太陽だけが、ぼんやりと最後まで視界に映っている。 激しい混乱と一抹のさみしさを感じながらヘイタは意識を失った。 ゆっくりと、暗い水の中を漂っていた。 痛みも、苦しみも無い。 静けさだけがあたりを包んでいる。 ヘイタのからだは、ゆっくりと、深く、海の底へと沈んで行く。 ただ流されるままに。沈むままに。 小さな魚がいくつも現れた。体を軽くつついてはどこかへと消えていく。 どれほど漂っただろうか。 やがて、おぼろげに薄青く光る白いものが、上から揺れながら落ちてきた。 一つ、二つ。ふわり、ふわりと。 それはまるで、浜の冬に降る雪のようだった。 少しずつ数が増えて行く。沈んで行くヘイタを見守るかのように。 一つ一つが、とても近しく、懐かしく、そして、いとおしい繋がりを感じた。 ヘイタは喜びを感じた。 ――俺も、水底《みなそこ》の雪になるんだ。 そうだ、ここが俺の帰るところだ。 戻ってきたのだ。 海へ。 水底《みなそこ》へ。 ヘイタを取り巻く光の数は更に増した。 あたりは白い光に覆われている。 だが、その光の幕が突然、何かを避けるように散らばり、所切れた。 赤い光の珠が輝いていた。 ゆらゆらと、漂いながらヘイタに近づいてくる。 すっとヘイタの唇に触れた。 冷え切った水と違う、柔らかな温かさ。 輝きを保ちながら、赤い珠はヘイタのからだへと入り込んだ。 からだの内側から、熱いものがあふれ出す。 赤く、強い光がヘイタの胸に輝き始めた。 あたりを取り囲んでいた淡い白光の粒は、逃げるように霧散しはじめる。 沈みつつあったヘイタのからだが、さらに輝きを増し、加速しながら浮かび上がって行く。 あたりの水が、少しずつ青くなり、揺らめく太陽の輝きがかなたに見えた。 「ヘイタっ! ヘイタぁぁっ!!」 頬に衝撃が感じられる。 「莫迦っ! 莫迦莫迦っ!! 死ぬなぁっ」 痛みは無い。ただ、細い指先が頬をはたいているのが分かった。 右に、左に、右に。 「死んだらタダじゃおかないっ。だから、……だからっ」 うっすらと目を開くと、涙で顔を濡らしたしたサナだった。 巫女の白装束は水で濡れている。 「ヘイタっ!」 サナが両の肩をしっかりと掴んだ。 ――そんな顔してたら、巫女にはみっともないだろう。 微笑みかけようとしたら、急に全身の感覚が戻ってきた。 胸から喉、そして鼻が塞がったように激しく痛む。 少しの動きで筋肉と関節が悲鳴をあげた。 ヘイタの口からかすれたうめき声が漏れた。 「ヘイタ……ヘイタぁぁ」 サナが濡れた衣で、ぎゅうとヘイタを抱きしめる。 それから当分、サナはヘイタを抱いたまま泣き続けた。 ヘイタが流れ着いたのはナカノシマの裏にある小さな入り江だった。 白い砂浜が絶壁に囲まれている。あまりに道が険しく、小舟でしか訪れることができない隠れた場所だった。 「ここはね、私みたいな島に渡ったばかりの巫女が、最初に連れてこられるの」 サナは崖の影に生えた大きな葉をとってきて、器用に入れ物を作り始めた。 「誰からも離れてひとりで、ミナツヒメ様に仕えるために禊《みそぎ》をするの。だから、ケガレハマっていうのよ」 「ケガレハマ?」 「そう。島の外にいるとね、いろんな人の想いが垢になってまとわりつくんだって。そういう垢を、想いのケガレを、ここで落とすの。全部落とし切るまではここで禊を続けるのよ」 サナはそっと指先で砂に触れた。 「だからこの浜の砂はね、禊で落ちたそういうケガレが……人の想いが染み込んでるの」 指を離すと、夕陽を浴びて輝きながら砂粒が零れた。 いとおしそうに光る砂粒を見つめるサナの横顔が、やつれて見えた。浜にいたころはふっくらとしていた頬がそげている。 「どれぐらい禊を続けている?」 「……もうわからなくなっちゃった。正巫女様が船でケガレの落ちを確かめに来られるのだけど、そのたびに、まだだ、まだだって帰っちゃうから」 サナは立ち上がると崖の下にある洞穴へと降りていく。 戻ってきたサナが手にした葉の入れ物からはしずくがたれていた。 「お水、汲んできた。飲む?」 「ああ。喉が渇いてしかたない」 手渡された水を少しずつ口に含む。冷たかった。舌に触れた感触はかすかに甘く柔らかく、包まれるようだった。 「あれだけ海の水を飲んだから、喉も渇いて当然ね」 サナは微笑むとヘイタが飲み終えた葉の入れ物を受け取った。 「まだ飲む?」 「いや、もういい。ありがとう」 二人は並んで砂浜に座った。 「ずいぶん焼けたわね」 「サナに比べたらまだ真っ白さ」 「漁に出てるの?」 「ああ」 「船酔いするくせに」 「仕方ないだろ。神輿を担ぐんだ」 あたりはいつの間にか茜色に染まっていた。 小さな入り江の向こう、朱の太陽が揺らめき、滲みながら空と海との境へと近づいていく。 穏やかな潮風が二人の頬を撫でた。 「私ね……。禊をしながら、どうしても忘れられなかった」 吐き出すように言うと、サナは押し黙った。 ヘイタも黙って夕陽を見つめている。 海鳥が連れ立ってその光を横切った。 「一度でいいから……最後に一度でいいからって。そうしたら、入り江にあなたが現れたの。水の中から、明るく輝きながら、ゆっくりと浮き上がってきて……。まるで深い海の底からきたみたいだった。きっとミナツヒメさまのおかげね」 サナは沈む太陽をじっと見ている。最後の残り陽に照らされて、純白の巫女衣の袖が風に揺れ輝いた。 「サナ、染みが……」 「あ、これ……あなたを吐かせた時についちゃったのね。全く、手ばっかり焼かせて。……大変だったのよ、死んだみたいに息はしなかったし、水はたくさん飲んでたし。……でも、いま、ちゃんとあなた、生きてる」 嬉しそうにそういうと、サナは立ち上がった。 「もう浜まで泳げそう?」 「ああ」 「……よかった」 空と海の後ろに夕日は沈み、あたりは群青の闇が迫っていた。ひときわ明るい星が、消えた太陽の名残りのように西の空に輝いている。 「次は『あらうみさん』のお神輿しょって、会いにきてね。……待っているから」 はっとしてヘイタはサナを見つめた。 サナの瞳が、ヘイタを見上げている。夢で見た少女の御魂に重なった。 「必ず。会いにくるよ」 「待ってるから……」 「ああ、約束だ」 サナの衣の袖がヘイタの手に触れる。 ヘイタはしっかりとサナの手を握った。 そして、唇を交わした。 柔らかな、温かさ。それは人の温もりだった。 二人は少しずつ、重なる唇を離した。 「……もうじき、正巫女様がお目見えになるわ。島を離れないと」 「分かってる」 「私も行くわ。入り江の口まで、見送る」 波打ち際まで歩みを進めた。ヘイタも続く。 水に身を浸し、サナは腰帯を解いた。海蛇のように帯が漂い、流れた。 白い衣が花弁のように水面《みなも》に広がり、波に揺らぐ。 サナはゆっくりと夜の海を泳ぎ始めた。ヘイタも続く。 渦巻く潮が、海へと二人をいざなった。 あたりはさらに闇を増す。 浜に打ち寄せる波が、かすかに輝き始めた。 波の崩れるたびに、水が青白く光る。 その輝きは、闇が濃くなるにつれて、少しずつ強まった。 気がつくと、海全体が光っていた。 水はヘイタとサナに触れると、ひと際青白く輝き、渦をまきながら流れさる。 それは、幾筋もの小さな光の粒だった。 夜の海の輝きで、星空と海が一つになった。 ヘイタとサナは無言で見つめ合う。 流れる潮。 光の軌跡。 青白い光りは、二人を包み込む。 それは少しずつ溶け合い、そして別れた。 「ふうん。ヨガリハマのガンペイもなかなか上手いな」 軽快な祭り囃子の笛の音に耳を澄ませて、ヘイタは呟いた。 「何言ってやがる。おめぇが吹かなきゃ調子が出ねぇって」 カイチが背中をドンと叩いた。 「痛いぞ」 笑いながらヘイタが叩き返す。 「いっっってぇぇ! ひでぇや、ヘイタ」 「これであいこだな」 いよいよ『あらうみさん』の大祭が始まる。 金色の神輿が満月を浴びて輝く。 日焼けした逞しい海の男たちが、白褌で浜に集まっている。 提灯や篝火《かがりび》が焚かれ、樽酒がふるまわれていた。 間もなく、宮立ち。 否応にも興奮が高まる。 「おお、こんなところにいたか」 烏帽子姿のトムラベノウシナが、男たちをかき分けながら近づいてきた。 「前だったらヘイタはすぐに見つかったのによぉ、今じゃあなかなか見つからねぇからな。おめぇ、もう一度白くなれ」 「じっさん、冗談はやめてくれよ」 「それにしてもよぉ、もう文句なしの海の男だもんなぁ。アギガイのあと、サメをつづけて三っツもとってきて、俺もたまげたさぁ」 「たまたまだよ」 「ウシナどの、そんなことねぇぞ」 横からカイチが割って入った。 「ぴたりと狙いを合わせると、銛がそのまますぅっと吸い込まれるように水に入っていくんだ。ヘイタはほんまもんだぜ」 「そうかぁ……」 うなずいていたウシナが、急にしゃんと背筋を伸ばした。 「どうした、じっさん」 「……おいでなすった」 「えっ?」 「おいでなすったんだよっ!」 ウシナは真顔になってヘイタを見つめる。その両目は篝火を映し、妖しく光った。気のせいかその姿さえ突然大きくなったように見える。 「荒海大社宮司トムラベノウシナ、アラガハマのヘイタに只今下りし神詞《かみことば》を伝える」 「はっ」 ヘイタとカイチは畏まり、砂地に伏した。周りの男たちも気づいたものは皆伏せる。 コレナルハ 忘ルルナカレ ケガレハマ 砂ニ縞ナル 我ガ想ヒ 与フル人ニ 浦見レバ 水ヒカルナリ 沖ノ岩 寄スル波ノ音 フリカカル 水ノ光ノ 消ヘルマデ 紅キ光ノ 閉ズルマデ ワタツミ渡ル 海鳥ノ 枝ノ泊リニ 留マレル 浜ノ岩松 松ノ枝ニ 降レル雪ミテ 啼キヌレシ 人ハ行クナリ 来ルルマデ 浜ニアガリシ 姿ニテ 浜ニアルベシ 帰リ来ルマデ 「以上、神詞《かみことば》ぞ」 「ははっ!!」 「いやぁ、魂消《たまげ》た。まさかいきなり来るとは思わねぇからよぉ」 ウシナはそう言って身を起こすと、冷えた水をあおる。 神詞《かみことば》が終わり、ヘイタとカイチが顔を上げると、すべてを言い終えたウシナは白眼を剥いていた。倒れそうになったところをあわてて抱きかかえ、二人で屋敷へと運んだのだった。 「いや、ありがとうよ。もう一杯、もらえるか」 空の椀を受け取ったカイチが、外の甕に水を汲みに行く。その姿が見えなくなるとウシナは小声で耳打ちした。 「……いいか、ヘイタ。おめぇは本当は死ぬはずだった。だがよ、神様が、おめぇには何がっても生きろと。浜に打ち上げられた時と同じ、褌一つでな」 ウシナは目を細める。再び、かすかな光がその眼に宿った。 「それから、神輿をしょって島に渡ることになったら、忘れずに笛も持って行きな。たすきに仕込んでおけ」 「わかった」 ヘイタがうなずくと、ふぅ、とウシナはため息をついた。 カイチが部屋に入ってきた。ウシナは礼を述べると椀を受け取り、水を一気に飲み干す。 「さてと。俺も明けの神事の用意があるからよぉ。いつまでも横にはなってられねぇや」 立ち上がると烏帽子を整えた。 「おめぇらも、そろそろ宮立ちだぞ」 「もう大丈夫なのか、ウシナどの」 「おう。もう元気ぴんぴんよぉ。世話になった。じゃあな、しっかりやれよ」 ヘイタの肩を軽く叩くと、ウシナは手を振り、去った。 『とうりゃぁ、やっせぇー』 『どっこい、はっせぇーっ』 フカワタツミノミコトの荒ぶる御魂を鎮め、同時に神輿の到来を人々に告げる太い掛け声が波音に負けじと夜の浜に響く。 ヘイタも重い神輿を担ぎ、掛声をあげる。 夜更けに動き出した神輿は、注連縄の張りめぐらされたアラガハマの集落を練り歩く。 神輿と担ぎ手の姿を一目見ようとみな表に出ていた。 若い娘は目当ての男に声援を送る。 「ヘイタぁ、頑張ってぇ」 「こっち向いてぇ、ヘイタぁ!!」 後ろのカイチがからかった。 「おい、随分な人気じゃねぇかよぉ」 「とうりゃぁ、やっせぇーっ」 ヘイタは答えず、ひと際大きく声を張り上げる。 神輿は明け方に砂浜に着いた。 各地の荒海神社から集まった神輿が、ずらりと波打ち際に列をなしている。 その数、五十余。 上ったばかりの朝日を浴び、いずれの神輿も燦然と輝く。 ヘイタたちの担ぐ荒海大社の神輿を待ち構えていた。 「これより禊《みそぎ》を始める」 トムラベノウシナの声で、着いたばかりのヘイタ達の神輿を先頭に、浜から少しずつ、波打つ海へ進む。 火照ったからだに朝の波が心地よい。 もうしばらくこのままとどまりたかったが、神輿は向きを変え、再び浜へと戻っていく。 禊《みそぎ》を終えるころ、浜風に、高く掲げられた緑の枝が揺れた。 やがて笛の音に合わせ、厳かに神事が執り行われた。 陽が高くなるにつれ潮が引く。 打ち寄せる波がどんどん小さくなった。 浜からは海を割って砂州が浮かび、ナカノシマへと徐々に伸び始めた。 大潮の引き潮に、ほんのひと時だけできる、砂のかけ橋。 ヘイタはただならぬ気配を感じた。たすきを締め、気合いを入れる。 担ぎ手たちが配置についた。 男子禁制の地、ナカノシマ。そこへ渡る神輿の担ぎ手は、仕神《しか》と呼ばた。 浜に集まった各地の神輿の担ぎ手から、亀の甲を焼いた卜占《ぼくせん》で決まる。 ヘイタは筆頭の『太の担ぎ』に選び出されていた。 仕神《しか》は様々な魔除けを入れた『たすき』を身につけることになっていた。 選ばれた者のたすきに宮司のウシナが墨で仕神模様《しかもんよう》を描きこむ。 やがて、準備が整うと、担ぎ手たちは全身の力を込めゆっくりと神輿をかつぎ上げた。 浜の皆が見守る中、神輿は砂州へと進み始める。 夜のような、騒がしい掛け声はなかった。 粛々と、まだ水の残る砂州を渉っていく。 やがて目の前に、木々のうっそうと茂ったナカノシマが近づいてきた。 行きつく先には、風雨で黒く変色した鳥居がそびえている。 一の鳥居。 注連縄は張り替えられたばかりなのだろう。真新しい紙垂《しで》が海風に揺れている。 鳥居をくぐると、島の中心へと続く天然の急な石段。 石段を登り切ると、二の鳥居。 しばらく行くと森が切れて、巨木の姿が目に飛び込んでくる。 ミナツヒメのご神木だった。 古びた幹は苔むし、節くれている。 太さは、小さな家ほどもあった。 張り詰めたような気配が巨木から発せられている。 周りには、幾人もの巫女が整然と伏し控えていた。 今この瞬間も大切な神事。 だが、ヘイタの目は自然とサナを捜し求めていた。 ヘイタの号令で、男たちは金色の神輿をご神木の前に下ろす。 すると巫女の一人が目を伏せながら『太の担ぎ』であるヘイタに近づいてきた。 「仕神《しか》はこちらへ」 「かたじけない」 『太の担ぎ』に選ばれてからトムラベノウシナに教わったように、ヘイタは形式通りの返答を口にする。 担ぎ手たちは外れにある建物へと案内された。 高い所に明かりとりがあるほかは、すべての戸が閉められている。 入口の扉も閉じられた。 板の間には等間隔に、担ぎ手分の膳が据えられていた。 薄暗い中で黙って食し終えると、やがて外から謡うような女の声が聞こえてきた。 神事が始まったようだ。 仕神《しか》であるヘイタ達担ぎ手も居住まいを正す。 心を、無へ。 だが、ヘイタの心にはサナの姿ばかりが浮かんでくる。 無からは程遠い。 惑わされている。 これでは仕神《しか》として不十分だ。 『太の担ぎ』に選ばれた役目を果たさなければ。 ヘイタは心に浮かぶサナの姿を必死に追い払いやろうとする。 だが、忘れようとすればより鮮明に、サナの姿が浮かんできた。 舞踊るサナ。 その華麗な動き。 どれだけ心動かされていたか。 そして普段の男勝りの乱暴な動き。 その裏に、どれだけの細やかな心配りがあったのか。 どれだけの強がりと思いが込められていたか。 今頃それが、手に取るように感じられ、沁みてくる。 祝詞をあげる女の声は消えた。 戸が開き、明るい光が差し込んでくる。 「仕神《しか》はこちらへ」 「かたじけない」 外では、ご神木の前には一人の巫女が坐し、伏せていた。 その脇に控えた髪の白くなった巫女が、同じく伏したままヘイタに声をかける。 「ご苦労様でした」 神事の次第では、これに『太の担ぎ』が返答すると、神輿はすぐに島を辞する。 ヘイタが口を開こうとした瞬間、目の前の巫女が面《おもて》を上げた。 ――サナ。 額を覆う金日輪の飾りが陽の光を浴びて輝く。 日焼けした肌が純白の巫女衣に映えた。 髪飾りが風に揺れる。 黒い瞳が瞬きもせず、じっとヘイタを見つめていた。 悲しみのこもった眼差し。 二人は互いを見つめ合った。 どれぐらいそうしていただろう。 「太の担ぎ殿、ご苦労様でした」 異例の二度目の声掛けが行われた。 だが、ヘイタは返答しない。 代わりに、仕神《しか》のたすきを外した。 低い驚きの声が、背後の担ぎ手たちから漏れる。 ヘイタは両手でたすきを引き裂いた。 貝、小石、鮫の歯。さまざまな魔除けが零れおちる。 そして最後に、笛が現れた。 目を閉じる。 歌口へ、そっと息を吹き込んだ。 高い音が鳴り響く。 森へ、空へ、海へ。 続いて一陣の風が吹き抜け、サナが立ち上がった。 笛の音は高く、低く、時に早く、ゆったりと。 サナは奏でる笛の音に合わせ、舞う。 腕を伸ばし、指先を返し、動きは場を清めはじめた。 ヘイタの心に次々と音が浮かぶ。 湧き出る旋律を笛は奏で続ける。 やがて音色は輝く波紋になって、輪を描くように広がりはじめた。 その波紋に合わせ、サナが舞う。 花のように。天女のように。 その動きが境内の気を練り上げた。 サナの指先から、気が光の粒へと変わり、空へと輝きを解き放つ。 笛が音の光を、舞が動きの光を。 二人は、すべてを忘れた。 ただひたすらに、音と、動きに、すべてが集まる。 からだも、心も、すべてが消え去り、溶けていく。 ヘイタはそのうちに、サナと重なり舞い踊る、輝く少女の御魂を見た。 ――あれは、ミナツヒメ。 そして、自分自身に重なる、輝く少年の御魂を。 ――フカワタツミノミコト。 二柱の御魂は、笛の楽と舞に遊ぶ。 すべてを無へ。すべてを有へ。その境界線を揺れ動きながら、ただ、遊ぶ。 二つの光は徐々に力強く輝き、やがて一つになった。 あっけないくらい突然に、すべてが終わった。 あたりを満たしていた光も、消え失せる。 サナは、抜けたようにしばらく立ち尽くしてから、ゆっくりと膝を折り、その場に伏した。 ヘイタも笛を降ろす。 再び二人は見つめ合う。 「太の担ぎ殿」 サナがほほ笑む。 「大変、ご苦労様でした」 ヘイタは前へ進むと片膝を折り、頭を下げ、笛をサナの前に捧げた。 「ありがとうございました」 顔をあげ、ほほ笑みを返す。 「失礼いたします」 立ち上がると、神輿の傍らへと辞する。 茫然としていた男たちが、あわてて配置についた。 動き出した神輿は二の鳥居を抜ける。 眼下には、一の鳥居が見えてきた。 これをくぐれば、もう二度とサナと見《まみ》えることはない。 ヘイタはそのことをひしひしと感じていた。 今生の別れ。 ミナツヒメに仕える巫女は、決して島を離れない。 そして自分は、二度とこの島へは呼ばれない。 それは宿命だ。 だが、ヘイタの心は不思議なほどに落ち着き、満ち足りていた。 輝くサナの笑顔が心に浮かぶ。 光の中に、二人は確かな『約束』をした。 今生では果たすことのできぬ約束を。 そして今生の二人を、結び続ける約束を。 ――必ず会いに行く、サナ。次の生を受けた時にも、必ず。 神輿は一の鳥居をくぐり抜ける。 満ち潮で、少しずつ細く消え始めた砂州を、神輿は急ぎ渡り始めた。
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虎口(こぐち)とは 中世以降の城郭における出入り口のこと。 戦闘の際は敵が押し寄せてくる攻防の要所であり、日本では戦国時代に著しい発展を遂げた。 虎の口と書くように、防御側が寄せ手を全滅させるように作った攻撃的な構造も散見される。 戦国大戦の筐体では、敵陣中央の一番奥にある城門のような飾りがそれ。 ここで攻城すると兵士たちが突撃するカットインが入り、通常よりも与える城ダメージが大きい。 また虎口ゲージが満タンになると筐体の虎口がパカっと開くギミックがあり、味方武将が辿りつくと虎口攻めが発生する。 (詳しくは「システム」の項目を参照) 虎口攻めは大きな逆転要素となるので、常にお互いの虎口ゲージに注意を払うようにしよう。 ちなみに戦国大戦では馬に乗って刀(もしくは槍)を持って武将が突っ込んでくる演出になっているが、輿に乗った武将(今川親子や姫など)の場合、 輿に乗ったまま、武将は微動だにせず突っ込んでくる。(通称 ダイナミック神輿・神輿ドリフト)輿を運んでいる兵士も大変だろうに…。 なお「虎口(ここう)」とよむ場合は、戦場や陣地における危険な場所を意味する。(Wikipediaより)