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本編十六話*②* ③ マイはリナリアと名乗った少女の手をとり、共に簡素な照明が照らす艦内通路を歩む。少女の手は小さく繊細であり、僅かながら冷えている。歩みにややぎこちなさがあるのは、緊張のためだろうか。 マイは立ち止まり、少女に向き直る。 「それじゃ、改めて……俺はマイ――マイ・アーヴァンク。よろしくな」 「は、はい……。リナリアです……」 硬い動きでお辞儀をする少女。制動のはっきりした動作ゆえに、その勢いに負けて少女の頭部に乗っていた白磁の帽子が零れ落ちる。栗色の長い髪が扇状に揺れる。 マイは帽子が地に落ちる前に掴み取る。 「あ――」 「――ふー。何とか落ちずに済んだ。はい、これ」 マイは薄蒼色のリボンが小さく備え付けられた帽子を、少女に手渡す。少女――リナリアは栗色の髪を押さえ、俯きつつも言葉を紡ぐ。 「あ、ありがと……ございます」 途切れ途切れの小さな声でお礼を口にする少女。少女は帽子を手に取り、目深く被りなおす。マイは少女の小動物のような仕草を見て、出会ったばかりの頃のシルヴィアを思い出す。 リナリアと名乗った少女は、ソグラト付近に存在する旧補給基地を襲撃した「シーア・ヘルゼン」によって保護された少女である。 シーアが遭遇した状況というものが極めて奇異であるため、救出当時から今に至るまで、少女の身の上は誰もが知りえていない。 さりとて、それを問いただすには、リナリアの置かれた状況には緊迫したものがあった。また年齢もまだ幼いこともあり、そこら辺の問題は先送りとされた。 サンドゲイルの専属医であるアリーヌが言うところでは、少女の身体に怪我の類はないとされている。身体に僅かに残る緊張状態も、あくまで緊迫化した環境内に長期間置かれたことによる心と身体の硬直状態なのだろう、というものであった。 リナリアを保護することは、サンドゲイルにとってもまたひとつの活動だ。サンドゲイルはACを用いた遊撃傭兵部隊ではあるものの、戦災孤児を保護するという活動も行っている。 アーセナルハザードが発生して以来、地球上での紛争は激化の一途を辿っている。そうした中で企業間の戦闘行動による間接的作用、あるいは余波によって帰る家を失う者も少なくない。あるいは保護者が企業に属し、それ故に保護者を失うことで孤児となるものもいる。また、旧世代兵器による襲撃も、その孤児の発生に一役買っていた。 こうして生まれた孤児を、サンドゲイルは保護し、傭兵都市トラキアに立てられた孤児院に収容しているのである。 マイは少女を連れつつ、自身の過去を思い出す。 戦いの余波で失われた家族と家。何もかもが焼き払われ、未だ猛々しく炎上する街。陳腐ながらもこの世の終わりという言葉が的確と言えるほどの情景。 広がる景色は夕焼けよりも赤く染まっていた。現実味のない光景を前にしても、絶望は一切感じられないでいた。 一夜が明け、当たり前のように現れた朝陽が悲劇の光景を浮き彫りにした。動かぬ家族の姿に、慟哭の涙を流した。子供でしかなかった自分はただ泣く事しか出来ずにいた。 そんな崩壊した街中に現れたのが妙齢の男性だ。自身もボロボロになりながら、血だらけになりながら、それでも自分の手をとってくれた一人の男。 血と泥で汚れながらも、その硬い笑顔は眩しいものがあった。その男こそが現在のサンドゲイルのリーダー――シェルブ・ハートネットである。 マイは再び、リナリアへ視線を送る。 自分と少女の境遇は似て異なるものではあるが、それでも孤児であることに変わりはない。ならば、少女が自由な生を得ることが出来るまで、自分が保護しなければならない。 ――俺がやらなきゃダメなんだ。俺がやるべきことなんだ。 マイは内なる覚悟を持って、艦内の案内を開始した。 * リナリアをサンドゲイルで保護してから、既に一週間ほどが経過した。 「リナリア、走ると転ぶぞ!」 「大丈夫だよ。早くいこ、マイお兄ちゃん!」 「ま、待てって!」 シェルブはリヴァルディの廊下より響き渡る声音を聞き、歩みを止めずに物思いに耽る。 マイが傍につくようになって以来、リナリアは何をするにもマイの後を追うようになった。声音も明るくなり始めており、躍動感に満ちている。 リナリアはマイのことを兄のように見ているらしく、今ではマイのことを「マイお兄ちゃん」と呼び、慕っている。 少女はさながら雛のようにマイと行動を共にしている。そのような微笑ましい光景がここ最近、リヴァルディには齎されている。 艦橋に戻り、世界情勢の情報を閲覧していたシェルブは、自身の携帯端末に着信がきたのを知る。連絡主はアリーヌだ。受話機能を確立すると、端末越しのアリーヌがリナリアの件について伝えたいことがあるので、至急医務室に来てほしいとの旨を伝えられた。 シェルブはレイヴンとしての感覚、より有体に言えば戦場に身を置くものが持つ直感が脳裏によぎったのを感じた。人によればそれは胸騒ぎとも定義できるだろう。 シェルブは医務室へと赴く。センサーが動体に反応し、自動扉が開放。消毒液特有の香りが流入する大気の流れに連れ添い、鼻を突く。 シェルブ・ハートネットは室内へと歩み入る。シェルブは室内で待ち受けていた二人の人物、その取り合わせにやや驚きを覚える。 医務室で待ち受けていたのはアリーヌだ。室内には主であるアリーヌ以外に、別の人間が座していた。サンドゲイルの整備士であるショーン・ハワードである。 「よぉ、来たかボス」 「ショーンか。何故お前がここに?」 「まぁ、コイツを見ろよ。アリーヌ、さっきの画像を出してくれ」 ショーンはアリーヌへ言葉を投げかけ、シェルブに対し、ディスプレイを見るよう顎で差す。 アリーヌが医務室にある端末を操作し、数多あるファイルの中から一つの画像を選択し、ディスプレイ上に表示する。 「はい、これよ」 表示されたのは電磁波測定によって人体内部を投射した画像だ。表示されたのは人体の部位における脚部だろう。 皮膚とその境界線、そして骨部分が色合いの濃淡の違いで分けられている。 「リナリアの透過画像だ。アリーヌ、例の部分を拡大してくれ」 アリーヌが端末を捜査し、画像の一部分を選択。徐々に拡大させていく。 その画像の中、淡白な色合いの中に不審な黒点が表示される。専門的知識を持たないシェルブは、それが何であるかを断定することは出来なかった。 「これは何だ?」 「盗聴器と電波送信を兼ねた通信機だ」 「なに……?」 ショーンの言葉を受け、シェルブは目つきが細まる。その二つの言葉が意味するところの重大さを認識し、シェルブは驚愕を覚えた。 その二種の装置が意味することは一つだ。サンドゲイル内で得た何かしらの情報を発信し続けているということである。 「周囲に飛び交う電波に情報を差し込んで送受信を行うっていう、特殊な装置だ。一見するとわかんねぇし、受信機で拾ったところで専門の機械とアルゴリズムを解析出来るソフトがないと見つからない代物だ。中々手が込んでやがるぜこれ」 「どうしてわかった?」 「シーアの野郎が少し、意味深なこと言っていてな。俺もそれとなく観測していたんだが、まったく引っかからなかった。それで杞憂だと想っていてそのままにしてたんだが……。見つけたのはたまたまだ。通信機の修繕中、送受信のテスト起動をした時のことさ」 ショーンは腕を組みなおし、続ける。 「ノイズレベルの信号だが、何だかキレイ過ぎるノイズに見えてな。適当に解析ソフトにぶち込んでみたら案の定、不可思議な情報を獲得した。解析ソフトがないから、不審な電波情報の域を出なかったがな。その後にアリーヌがちょうどこの件を伝えてきてな。それで合点がいったのさ」 「なるほどな……」 「今回の検診は、あくまであの子の心の状態が落ち着いたからやっただけのもの。実際、あの子は拒絶をしなかったわ。ここにある機器見つかる程度のものなら、あの子自身がこの事を知っていれば拒絶するはず。拒絶しても、それはそれで不自然だけどもね」 アリーヌが流麗な長髪を耳にかけ直し、事の次第を伝える。長い脚を組みなおし、自身が持つ考察内容を口にする。 「つまり――リナリア本人が感知せぬところで、これが埋め込まれたということか?」 「自然に考えれば、その可能性が高いわね」 シェルブは黙して、一連の事柄の整理を行う。 既にリナリアを保護して一週間以上が経過している現状、今からその根源を絶ったところで手遅れであることは揺るがないだろう。 「取り出せるものではあるのか?」 「不可能ではないけども……、ココでやるのは余りオススメできないわね。それに――」 「その不信を形にしてしまうのもまた、難儀だな」 「そうね……」 どのような形にしろ、この事柄、リナリア本人は無論のことながら、サンドゲイル全体にも少ない衝撃を与えるだろう。その衝撃は不信感、疑心暗鬼へと変じ、それは波紋となって組織内を病のように伝播する。 そうなってしまえば、組織は内側から蝕まれ、瓦解する可能性さえ生じてくるだろう。 問題なのは、何から何まで不明瞭なことだ。誰が、何の目的で、何処へ向けて情報を発信させるように仕向けたのか。その全てが不明瞭なのである。 そこにリナリア本人が一枚噛んでいる――とは到底思えたものではないが、その可能性もゼロではないのだ。確認が出来なければ、リナリアがスパイでないという事象さえも確立することが出来ない。 「何はともあれ、だ。リナリア本人がウチをどうこうしようとしている、とは思えねぇのは確かだな。そんなタマじゃねぇだろうよ。けど、それはどっちだろうが同じことじゃねぇか? 元々単独でやる意味がない以上、コレの裏には必ず何か潜んでるだろ」 「ソグラト……いや、さらにその裏か?」 「そこまでは堂々巡りだからお手上げだ。けど、これだけは言える。リナリアにコレを仕込んだ人間は、何かしらの目的のためにサンドゲイルを狙っているってことだ。これは面倒だぞ、シェルブ」 「お前の言うとおりだな」 現状、裏に潜む何かを突き止めることは叶わない。だがそれでも、現状で確定できる情報が唯一ある、と整備士は語る。 それは確実なる敵対者が存在し、かつ勝利するための算段を得るために情報の会得を行っているということだ。つまり、近い内にサンドゲイルは襲撃を受けるということである。 「どうするの、ボス?」 * マイはリナリアを連れて食堂へと向かっていた。 この一週間、マイはリナリアに付きっ切りで世話をしていた。事情がある場合のみ、シルヴィアやエイミに手伝ってもらっていた。そういった例外を除き、マイは生活のほとんどをリナリアと共にしていた。 一週間という時間が長いようにも思え、短いようにも感じる。リナリアは見違えるように明るくなり、今では孤児達の中心にいるほどである。 「マイお兄ちゃん、今日は何を食べるの?」 笑顔満ちる表情は、リヴァルディに来たばかりの頃とは異なる様だ。だがこの明るい表情こそ、少女が本来備えていたものなのだろう。 「そうだなぁ。もう豆料理は飽きたし……今日は西欧州料理なんかがいいな」 「それじゃ、私もそれにする!」 「え。本当にいいのか?」 マイは意地の悪い笑みを浮かべる。その意図が把握できず、リナリアは首を傾げる。 リナリアには兄がいたと、マイは聞いていた。旧世代兵器の侵攻により母親と兄を失ったそうだ。唯一の父親もまた、ソグラトで命を失っていた。 リナリアはマイのことを自分の兄に重ねてみていた。そのことをマイは聞き及んでいるのは、リナリア自身から口にされたからである。 マイ自身、その接し方に当初は気恥ずかしいものがあったものの、今は幾分慣れていた。慕ってくれていることには変わりはないのだ。ショーンやアリーヌに冷やかされるようなことが幾度かあったものの、それはある意味、周りから認められているとも言えることだろう。 マイとリナリアは食事を載せるプラスチック製のプレートを持ち、それぞれ料理を載せていく。 テーブルへ着席し、料理を見るや否や、リナリアは呻き声を漏らす。 「うっ……」 マイが選択したのは、並々と魚介類が投入された西欧州の海鮮料理だ。煮込まれているとはいえ、小さな魚がまるごと入っているというのは、初見ではかなり堪えるものがあるだろう。ましてや子供ならば、その生々しさに屈することも少なくない。 「ははははっ! だから言っただろ? いいのか、って」 「うー……。んもう、意地悪っ!」 「はは、ごめんごめん。こうやってさ……、こうして……」 マイは食べやすいように小魚を切り分けていく。 スープで煮込んだ魚は柔らかく、刃物を使わずとも切り分けることが可能だ。リナリアのプレート内にある魚、その身を潰さないよう、解体していく。 香辛料が効いているため、魚特有の臭みは生じない。芯まで味をしみ込ませた魚は実に美味だ。だが味はともかくとして、その外見を受け入れられないという者は多いだろう。 マイはその外見が気にならないよう、魚を細かく切り分けていく。 「これならいいだろ?」 「うん……。ありがと、マイお兄ちゃん」 そのような微笑ましい光景を離れた位置から見る少女が一人いる。シルヴィアである。 シルヴィアはエイミと共に食事を取りつつ、しかし視線はマイとリナリアの二人へと注がれている。食が進んでいる様子はない。 シルヴィアは視界の端にある明るい光景を見やり、溜息をつく。 「……はぁ。あの二人仲良いね……」 「そうね。なんだか本当の兄妹みたい」 「本当の――か」 シルヴィアは侘しい声を発する。嫉妬を交えた負の感情は一転して、寂しさで満たされていた。 「寂しい、シルヴィ?」 「……別に」 「ふふ、顔と言葉が合ってないわよ」 「そう……だよね……」 シルヴィアは食欲が出ずにいた。それでも食事をせねば活力は出ず、無理やりにでも料理を頬張っていく。 シルヴィアは視線を転じ、食堂全体を見渡す。シルヴィアとてサンドゲイルに所属している人たちは多くの面々、その全てを把握しているわけではない。だが一度見かければ、例え深くは知らずとも面識を覚えるものだ。 だが、食堂の内に一度も見たことのない三人組がいるのを見咎める。接しているのはシェルブだ。 「あれ、あの人達――って」 シルヴィアの言葉を遮るかのよう騒がしく現れたのは、子供達の集団だ。孤児達の一団が一斉に流入してくる。その最後尾にはいるのは黒衣を纏う隻眼の男。 サンドゲイルに所属する人物の一人――アハトである。 ――うっ……。 シルヴィアはアハトの存在を見咎め、思わず口の中の入ったリゾットを飲み込んでしまう。喉に強烈な圧迫感を覚え、胸を小さく叩く。 静かに歩みを進め、子供達の後を追うアハト。その体躯は長身痩躯であり、靡く髪は刃のような銀色。片目は白磁の眼帯で覆われ、物々しい黒衣を身に纏っている。 他者の存在を拒絶するかのような、ある種の圧力さえ感じさせる装いだ。シルヴィアはアハトの雰囲気を苦手としていた。むしろ怖いという印象さえ、抱いていた。 ソグラトの一件で、アハトが自分とマイの窮地を救ってくれたのは事実だ。その恩もあってか、多少の恐怖は拭えたものの、それでも未だなお正面から一人で相対するのは難しい。 物々しい服装や無口な態度から怖さを感じたのかといわれれば、そうではないだろう。それよりも恐れを感じるのは、時折覗く、濡れた刃のような雰囲気か。 子供達から慕われているということは、悪い人間ではないのだろう。そうでなければシェルブが受け入れるはずもない。サンドゲイルのリーダーであるシェルブが受け入れたということは、彼は信頼に足る人物であると仮定してもいいはずである。 近くまで歩み進めたアハト。片瞳だけで見下ろし、問いかける。 「――あれは?」 アハトが静かに示しているのはシェルブと相対している、見慣れぬ三人組みのことだ。エイミはアハトの問いかけに答える。 「ソグラトの件で移動手段を失った家族だそうよ。ほら……私達のせいも少しあるし……。こちらとしても……ね?」 「……そうか」 * 廊下を音もなく歩く男が一人いる。刃のような銀髪を揺らす人物。威圧的な黒衣を身に纏い、白磁の眼帯で片目を覆っている。他者を寄せ付けない雰囲気の男の名はアハト。サンドゲイルに所属する人物の一人だ。 アハトの前方では、孤児達が右往左往しつつ歩んでいる。お互いがお互いを小突き合いながら、笑みを絶やすことなく食堂を目指している。 戦地で見捨てられた孤児達は、今ではこうして仲間と共に笑い合いながら生活している。それは子供がかくあるべしという姿だろう。 アハトは硬い表情のまま、片眼だけとなったその瞳で目の前の光景を見据え、自身を振り返る。 意味なき復讐を終え、数多の人物を犠牲にし、そしてそれ以上に多くの人を殺めた。返り血が滴るその生涯に、存在意義は一切ないだろう。 そのような自身の物語に己で終止符を打つというのも、また一つの方法であった。だがそれに異を唱えた者がいた。自身と同じく、生体研究所で身体を改造された人物だ。 さながら詩人のように謳う彼女は、終止符を打つことを否定した。その理由は単に、つまらないから――という子供染みた内容であった。 『君は生まれたばかりの赤子なのだよ。故――君は次に童子を目指したまえ。高きにある何かを求めてその手を伸ばし、その脚で未地を駆けるのだ。案ずることはない。一度死んだというのなら、君を縛る楔は既に存在しないのだ。素直に生きれば良い。そのようなつまらぬ判断で、私の楽しみを奪わないで欲しい。では――始まりの鐘を打ち鳴らそうか。新しい物語の幕開けである』 旅の楽人を称する彼女、自身と同じく生体改造を施された女性――フィリーネ・ユーヴェルリートはそう言い残した。故に自分は第二の人生を送ることを決意した。 果たしてそれが他者から許されることなのかどうかは、判断が難しい。その命題に「決して許されない」と勝手に断定させてしまうのもまた、自分の罪から逃げようとする自分勝手な行動とも取れるだろう。 罪と咎の狭間で漂う己にこのような平和な一時を得る資格がないというのなら、その時は確実に訪れる。だが――。 ――今はこれでいい。これでいいのだろう……。 忘れるな。何もかもを忘れるな。殺めた人も、犠牲にしてきた人も。その全てを失われぬよう記憶に留める。恨みを込めた視線、投げかけられた呪いの言葉。その全てを刻み留めておく。 それ故に、今、この目の前で繰り広げられる童子のじゃれ合いはかくも尊く、美しい。眩しく、瞳を逸らしたくなるような光景である。 「アハトおにいちゃん、はやくー」 「――あぁ。すぐ行く」 アハトは孤児達を追い、食堂へと足を進める。視線の先、食堂に見慣れぬ人物達がいるのを見咎める。片目の視線だけでその対象を捉える。 男女を含めた三人組の一団だ。そのうち二人は女性であり、残り一人が男性である。女性二人には外見から年齢差を推察することが出来る。片方は妙齢の女性であり、年齢は三十代前半ほどか。もう一方は反して、十代後半を思わしき少女である アハトは近くで食事をしていたエイミに問いかける。 「――あれは?」 「ソグラトの件で移動手段を失った家族だそうよ。ほら……私達のせいも少しあるし……。こちらとしても……ね?」 「……そうか」 両親と思わしき、大人の男女。その脇に小さくたたずむのは、白磁の長い髪が美しい少女――のような外見の人物である。髪が時折扇のように優雅に広がる。身に纏うには、血の如き真紅のドレスだ。麗しいと共に狂的な装いにも見える。 アハトはその人物等とシェルブとの会話を拾うため、それとなく耳を澄ます。 「ソグラトを出たらいきなりこんなことに……。荒野に放り出されたとあって途方にくれていたところでした」 「その件については、我々にも責任の一端があるだろう。部屋は用意してあるから、寛いでくれて構わない。足りないものなどは遠慮することなく、言って欲しい。出来る限り用意しよう」 「ありがとうございます」 「では部屋へと案内しよう。マイ――」 シェルブに呼ばれたマイは、シーアが救出したとされる少女――リナリアに別れを告げ、渡航者である家族の一人――白髪の少女を連れて艦橋から退出する。 二人の去り際――正確には白髪の少女の姿をアハトは見つめる。少女の姿に違和感を覚える。それがどういった違和感なのかを突き止めようと、その動きを細かく見聞していく。 ――重心か? いや、それとも……。 そのような思考を知ってか知らずか、近くを歩いていたショーンがアハトの視線の先に気付き、己が予想を口にする。 「どうしたアハト? さては――ああいう娘が好みだったりするのか?」 笑いを込めた冗談交じりの言葉を受け、アハトはショーンに視線を向けることなく沈黙を継続する。ショーンがその沈黙に対して罪悪感を覚え、取り繕おうと慌て始める。 ――いや、気のせいだな。 銀髪の男は自身が感じた違和感のようなものが杞憂なものであると判断し、思考を打ち消した。 * マイはサンドゲイルで保護した白髪の少女を連れ、リヴァルディ内に存在する空き部屋を目指す。 渡航者の三人のうち、両親はシェルブとの対談があるとのことだ。彼等の一人娘だけがマイの後についていた。 少女の名はラトラ。乳白色の長い髪は、老いによるものではない。さながら深雪を塗されたような、気品さえ感じさせる美しさだ。反して、身に纏っているのは真紅の婦人礼服だ。その色合いの対比は極端であり、しかし少女が纏うことで妙なる統一感を示していた。 マイは少女――ラトラを連れて部屋を紹介する。 「この部屋を使っていいってさ」 「まぁ、広いのですね。このような広いお部屋をお借りしても宜しいのですか?」 ラトラと名乗った少女が両手を組み合わせ、感嘆の言葉を口にする。女の子らしい柔らかな仕草である。 「親方が良いって言っていたからね。サンドゲイルは人の流入も多いけど、同時に出て行く人も多いから。今はけっこう部屋が余ってるのさ」 「本当にありがとうございます」 「何かあったら遠慮なく呼んで。通信機の番号、教えておくよ」 「貴方は――優しいんですね」 白髪の少女が柔らかく微笑む。乳白色の髪の奥に潜む、氷蒼色の瞳に添えられた信頼の視線で送られ、マイは動揺する。 「あぁーいや……。優しくなんかないよ」 「ふふ……」 口元を小さく隠し、微笑む少女。ラトラの笑い方は、マイにとっては初めてのものだ。これほど女の子らしさを感じさせる微笑みを、マイは終ぞ見たことがなかった。 マイは動揺を押し隠し、ラトラを連れて艦内の案内を始める。渡航者の少女――ラトラは戦艦リヴァルディが珍しいのか、くるくると表情を変えていく。 その表情は明るいものの、仕草は所々で柔らかい。マイはラトラがシルヴィとは対照的な女性であると感じた。 医務室、作戦会議室、AC格納庫などを案内し終えたマイは、次にリヴァルディの艦橋へと向かう。 「それで、ここがリヴァルディの艦橋だ。ここから外の景色が一望できるよ」 「あら……ここは遠くまで見えますね」 少女は踊り舞うかのように艦橋を右往左往する。少女が移動するだけで、無機質な艦橋は華やかなる舞踊会場の如き様相へと変異する。 その麗しい光景に、艦橋にいる皆々が振り返る。艦橋の端で景色を眺めていた栗色の髪の少女――リナリアもまた、例外ではなかった。 「あ、マイお兄ちゃん!」 マイの姿に気付いたリナリアが声を上げ、マイとマイが連れている少女――ラトラの下へ駆け寄る。 「ここにいたのか。あ、この子はしばらくリヴァルディに滞在することになったラトラ」 「あ、あの……始めまして。リナリアです」 「始めまして。ラトラと申します」 リナリアの緊張を残したお辞儀に反して、ラトラが優雅にお辞儀を返す。マイは目の前の光景に、どことなく小動物同士が相対したかのような、そんな感想を抱いた。 そうして二人が手を握り合う。対照的な二人の色彩。背丈のほどはラトラのほうが高い。さながら、姉妹のような印象を与えた。 だが二人が手を握りあったその瞬間、異変は生じる。リナリアの体勢が崩れ、白磁の礼服が風に泳ぐ。地面へと吸い込まれ始めたのを留めたのは白髪の少女――ラトラであった。 ラトラは転倒しかけたリナリアを抱きこみ、リナリアのこめかみにガンメタリックに輝く銃が突きつけられる。一瞬の出来事にマイは一切、何も出来ずにいた。今、目の前の光景が一体何の意味をもたらしているのか、戸惑う。 その異質なる光景の意味を把握し、艦橋に静けさが増す。その場にいた者が皆、自然と黙す。 「感謝するよ、リナリア。まさか君がちゃんとこうして生きているなんてね」 ラトラが発した声は、今まで発していた高い少女然とした声ではない。男性にしては些か高く、しかし少女とするには低い音程を伴った声音だ。中性的ということもできるだろう。 マイはその光景とラトラが持つ銃に動揺しつつも、努めて冷静に問いかける。 「ラトラ、これはどういうことだ?」 「どうも何も、こういうことさ」 艦橋に二人の男女が入り込んでくる。少女の両親と名乗った男女二人だ。二人がその手の内に携えているのは、自動小銃である。その光景の意味を、艦橋にいる皆が把握する。 「反応が途絶えたから、事と次第によっては完全制圧を試みようとして乗り込んだはいいが、まさかこんな体の良い人質がいるなんてね。僕等は祝福されているようだ」 「人質だって……?」 「言葉どおりの意味さ、マイ・アーヴァンク」 ラトラと名乗っていた人物が唇の端を上げ、笑みを象る。今まで見せていた好意を含んだ麗しい笑顔ではない。半ば狂気さえ湛えた笑みを浮かべる少女。否――目の前の人物は真にただの少女なのか? マイは再び少女――と思わしき人物にその名を問う。 「お前は誰だ?」 「僕は――ミラージュ社特務工作班・第一班所属――カイ・ラタトスク」 少女と思わしき人物が名乗りを上げる。その意はミラージュ社所属の工作員。 「さて――僕は君達に命じよう。君達が所持している生体演算装置――もしくは有機戦略体機構とも言ったかな? それを僕等に提示したまえ」 「生体演算装置?」 「アスセナ基地で手に入れた、異様に綺麗な人形がいたろう? それを出したまえ」 マイはその言葉に、一人の人物を思い浮かべる。 ――イリヤのことか。 合点がいき、息を呑む。ソグラトの件に続いて、再びミラージュはイリヤ奪取のための部隊を組織したのだろう。 だが、イリヤを差し出すことは出来ない。不可能な理由はただ一つ、この場に存在し得ないからだ。 「それは――出来ない……」 不可能という言葉をどう捉えたのか、白髪の少年は氷蒼色の瞳を不機嫌そうに細める。 「――へぇ。ということは、それは死体になることを望む――ということでいいのかな?」 狂気を帯びた少年の瞳。死体になることを望むのか、と問うているように思えるが、その実は異なるだろう。その瞳は明確に、引き渡したところで命の保障はしない、というのを危うさを感じさせるものだ。 「そう難しい選択じゃないだろう?」 カイはリナリアに突きつけた銃口を下げ、おどけたような仕草をとり、言葉を続ける。 「この艦内にいるのは一〇〇人ちょっとかな? それを助けるためにたった一人を差し出すだけさ。簡単な計算だよね。一人を生贄すれば、みんながハッピーエンド。それとも何? 僕等のために犠牲になってくれ、って言葉にして言うのが怖かったりするのかい?」 「無理なんだ。……もうここにはいない」 「――は?」 苦渋の選択の末に吐露した言葉。その言葉を意味することを瞬時に把握できずにいた白髪の少年――カイは呆けた声を出す。 「この艦にはもういないんだ……」 「なにそれ、面白くないよ。大体嘘吐くならさ――」 「お前が捜し求めているもの、イリヤならエデンⅣのターミナル・スフィアへと送った」 会話を遮ったのは、サンドゲイルの中心人物シェルブ・ハートネットだ。 「――対象〇〇一、サンドゲイルのリーダー――シェルブ・ハートネットだね。それは本当かい?」 「真実だ。スフィアとの交渉は既に終わっている」 「へぇ。てことは何、君ら、アレを他人の手に渡したわけ?」 「真実を言えばそうなるな」 シェルブは動揺することなく、毅然とした声音で答える。それはこの危機的状況下にあってなお冷静さを失わないという、歴戦の勇士であって始めて出来ることだろう。 この状況で黙すのは危険と言える。半ば命の取捨選択を握られている状態である以上、握り手の要求に答えなければ、その場でその命が奪われかねない。 「お前の求めるものはない。だから――」 「だから、何?」 「だから手を……引いて欲しい」 マイは万感の想いを込めて、カイを見据える。 「ふふ……あはは……」 少女の装いをした少年――カイが、押さえ込むように笑い出す。リナリアを抱き寄せた手で小さく口元を押さえる仕草は、その装いに正しく、少女然とした麗しい姿である。 僅かな微笑みの後、白髪の少年は堰を切ったように笑い出す。 「あははっ! いいね! すごくいい手だよそれ! 最高じゃないか!」 見目麗しい、童女のような外見を持つ少年が明るく、狂気的に笑う。 「はは……、人からモノを盗んでおいて、もうありません? 他の人に渡しちゃいました? 見逃してください? あはははは…………ふざけるなよ糞がッ!」 白髪の少年は麗しい外貌を歪ませ、激昂を露にする。リナリアのこめかみに突きつけていた銃、その銃口を少女の脚へと押し付け、留まることなく引き金を弾く。 雷鳴の如き銃声が鳴り響き、次いで少女の悲鳴が上がる。白磁のワンピースドレスが鮮血に染まっていく。滴り落ちる血流が小さな血溜まりを形成する。 白髪の少年はリナリアに太ももに手を這わせ、その鮮血を拭い、舐め取る。少女然とした装いのカイが行うことで、ある種の倒錯的な光景を演出している。リナリアは嗚咽を漏らし、痛みの余り涙を流す。 マイは目の前で起きた光景に駆け出そうとするも、視界の隅に捉えた自動小銃の銃口を見咎め、踏みとどまる。深い憤りは黒光りする銃口によって押さえつけられた。 「はぁ……、何なの君等。人からモノを盗んでおいてさ。よくもまぁ、そんなことが言えたもんだね」 「……くっ」 「正気を疑うね。まさかアレの価値がわからないわけないよね。むしろ理解したからこそ、自分達の下あったらまずいから、他人にあげちゃったとか、そんなところ?」 「イリヤは……モノじゃないんだ……!」 「どうでもいいよそんなの。どっちにせよ、君等が盗人である事実に変わりはないしね。ってことはさ、君等は僕等に何の償いもしないことになるよね。じゃあここで――代価を払ってもらおうか」 突きつける銃口の強さが増したのか、その痛みに怯む、嗚咽を漏らすリナリア。それが意味するところに、次に齎されるであろう惨劇を予感し、その場にいたもの全てが凍りつく。 「あぁ、君がここで枯れ死んでしまうのは、そこの男――マイが原因なのさ。恨むなら彼を怨んでおくれ。それじゃ――」 「やめろ!」 「――なぁ、マイ・アーヴァンク。僕等はあの時――アスセナから帰る君に、こう伝えたはずだよね。何か見つけましたか――って」 「――っ!」 「そして君はこう答えた。何も見つけてはない――と。これに間違いはないよね?」 「――あぁ……」 マイとカイの会話を受け、シェルブは意図せずマイに視線を送る。 「マイ、お前――」 マイは不吉な視線に唇を噛む。拳を強く握りこむ。 「そして僕等は、君達の中に生体CPUがいることを確認した。これに間違いはない。てことはさ、君はクライアントに嘘の報告をしたわけだよね?」 「マイ、そういうことだったのか?」 マイはシェルブの問いかけに、拳を握り締める。シェルブの落ち着いた声音が返ってことの深刻さを示しているようにも思える。 「結果的に――そうなる……」 「てことはさ、この状況も、何かもが君の責任というわけさ」 「ぐっ……」 「君の責任だよ、君の」 マイは強く噛んだ唇から血が流れ出るのを感じ取る。イは痛みと憤りを押さえ込み、己が心中に打ち立てられた決意を言葉として露にする。 「――俺が責任をとるから、だからその子を――」 「へぇ。なら君が代わりとなるかい?」 「あぁ――」 カイがこみ上げる笑いを抑えるかのように、小さく笑う。 「そうかい。いやいや、痛々しい英雄っぷりだね。だ、そうだよ、リナリア」 「マイ、お兄ちゃん……?」 リナリアは脚の痛みに涙を浮かべながらも、己を救ってくれる人物に向けて声を発する。儚く、脆ささえ感じるその声に、マイは精一杯の優しい表情を象り、微笑を返す。 「あぁ、それと――。これは今回の件での僕からの最後のお礼だ。受け取っておくれ」 「は、はい……。――え?」 カイがリナリアの首に装着させたのは、冷えた金属光沢を放つ機械装置である。簡易ディスプレイには数値が示されている。 カイが円輪の縁にあるスイッチを押し込む。簡易的な警告音らしきものが響き、次いでディスプレイ上の数値が一六から一五へと転じる。それがどんな意味であるか、この場にいた全ての人物が把握し、騒然となる。 怒号と悲鳴が飛び交い、その合間を警告音のような音が無慈悲に響いている。少年は軽やかに口笛を吹く。既に数値は十を示している。 「あと九秒――だね」 カイは邪なる笑みを浮かべながら、リナリアの背面を足蹴にする。脚を銃弾で打ち抜かれたリナリアは受身を取ることも出来ずに、その場に倒れ伏す。 その装置の数字が示す意味を理解したマイは、足早に少女の下へと駆けつけ、その首輪を掴み上げる。金属製の機械首輪をはずそうと試み膂力を込めるも、その反動で痛みを感じたリナリアが顔を顰める。 指の入る隙間はほとんどなく、如何程膂力を込めたところではずれる気配はない。耳元に飛び込む、カウントダウンを示す音が次第に大きく、反してゆっくりと響く。 「くそ……、くそ……!」 マイは憤りの言葉を吐きつつ、必死の思いで装置の取り外しを試みる。次いでマイが感じたのは衝撃だ。突如、思いもよらない人物から押し出されたマイは、尻餅をつく。 マイは刹那の後、リナリアに突き飛ばされたということを知覚する。視線の先には、血に染まる白のワンピースドレスを着込む少女の姿がある。 涙に塗れた瞳で笑みを象り、そして――。 「マイお兄ちゃん、ごめんなさ――」 マイはその笑顔を前に再び駆けようと試みるが、背後から首根っこを捕まれ、圧倒的な膂力によって引き戻される。時の経過がゆったりと感じられる中、マイはリナリアの笑顔を明確に記憶する。 瞬間、轟音が轟いた。 →Next… ③ コメントフォーム 名前 コメント
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◆◆ 『無駄だ、滑皮』 『その拳銃、模擬弾だ。』 ◆◆ 『もう誰にも従わない。』 『俺の生き死には俺が決めます。』 ◆◆ 『オヤジ。所轄のデカから連絡がありました』 『梶尾が射殺体で発見されたそうです。』 ◆◆ 『奴を力でねじ伏せてやる。』 『俺の道を阻む奴は一人残らず潰す。』 ◆◆ 血腥い臭いが漂っていた。 冬木市郊外の倉庫は猪瀬組の企業舎弟が経営している水産加工会社の所有物で外から足が付かない。 そこに、球体関節人形を関節に合わせてちぎったような部品たちが十つほど転がっていた。 腕が二本。足が二本。首と胴体が一つずつ。抉り出された目玉が二つ。切り落とされた唇が上と下でこれまた一つずつ。 かつて人間だったものの成れの果て。 より正しく言うなら、この"聖杯戦争/Holy Grail War"に希望を抱いて足を踏み入れたある魔術師の残骸だった。 その証拠に散らばる右腕には令呪の赤色がありありと残っている。 傍に置かれた電動ノコギリが、此処で何が起こったのかを暗喩していた。 額に飛んだ血飛沫を拭い、眼窩をぽっかりと空けて事切れている元人間の顔に痰を吐き捨てる。 黒いスーツに、坊主頭の男。 佇まいの一つ一つに暴力の気配が染み付いて、匂い立っている。 和彫りの刺青をびっしりと刻み、障害の排除の為に殺人という手段を躊躇なく選べる人種。 男は、ヤクザ者であった。 暴排法が整備され、日に日に生存圏が狭まり苦境に立たされている任侠者達の中で――しかし今も在りし日の黒々とした輝きを保っている。 生粋の暴力。弱肉強食の強者の側。悶主陀亞連合の滑皮と言えば文字通り泣く子も黙る存在だった。 猪瀬組の熊倉に拾われ稼業入りしてからも、その名声が衰えたことはない。 頭脳と金、そして暴力。三拍子を揃えた覇者の器。 ヤクザの世界では若手でありながら、天魔外道の妖怪達と並んで幹部候補に名を挙げられた破竹のヤクザだ。 本来、猪背組が最も力を持っているのは東京の一等地だ。 断じてこんな冬木などという地方都市ではない。 枝の下部団体ならいざ知らず、理事長の熊倉義道から盃を受け取った滑皮が活動するには些か辺鄙すぎる土地だった。 しかしその理由は、たったの一言で説明できる。 此処は彼の生きるべき世界ではないからだ。 公判を待つ獄中でたまたま手にした"黒い羽"が、失脚したヤクザを冒険譚の主役に変えた。 滑皮の右腕にも、今しがた殺した男の腕にあるのと同じ刻印が三画刻まれている。 滑皮秀信は、聖杯戦争のマスターであり、この電脳世界(ゲーム)のプレイヤーの一人だ。 「うわ、グロ。そんな高そうな服着てよくやるね」 「しゃーねェーだろ。じゃあ次からはてめェーが作業着買ってこいよ」 「やだよ面倒臭い。舎弟にやらせりゃいいじゃん、ヤクザ屋さんの数少ない利点じゃないの」 「それに刑務所思い出しちまうから嫌なンだわ、そういう貧乏臭い服。やっぱヤクザは礼服じゃねェーとな」 滑皮は現在、三主従から成る徒党の切り崩しにかかっていた。 目の前で死んでいる魔術師はその一角で、彼のサーヴァントは既に滑皮のアサシンが殺害している。 魔術師にしては善玉だと聞いていたし、実際仲間のことは何も喋らない、それが仁義だと高尚なことを喚いていた。 ただそれも顔から目玉と唇が両方無くなるまでのことで、最後の方は油紙に火が付いたみたいに何から何まで喋ってくれたが。 「深山の方に拠点を構えてるらしい。若いのを何人か地下に潜らせて偵察させるから、準備が出来たらカチ込んで殺せ」 「あいよ」 滑皮は敵を恐れない。 何人が相手だろうが、やると決めたら必ずやる。 不良だった頃から、聖杯戦争なるけったいな儀式に招かれた今もその点に関しては不変だった。 現にこの翌日、滑皮に喧嘩を売った"同盟"は二組目の脱落によって瓦解。 滑皮が事前に手を結んでいたこちら側の協力者と彼のアサシンによる共同戦線で最後の主従が落ち、完全壊滅を迎えることになる。 ヤクザは落ち目の絶滅危惧種だ。 社会的にはむしろ、彼らは弱者と言っていい。 暴排法によってホテルにも泊まれず、銀行口座も作れない。 ヤクザの子供に生まれただけで行政から見捨てられ、権利を制限される。 おまけに現代では昔ながらのシノギにも頼れず、それこそ不良まがいのチャチな金稼ぎで男を下げなければならない。 そうまでして稼いだなけなしの金も義理事で吸われ、常に極貧の生活だなんて話も珍しくないほどだ。 今の時代、ヤクザになりたがる人間なんて余程の馬鹿か、先輩に恐喝されて引き込まれたかのどちらかしかいない。 そんな謂われをされ笑われるのはしょっちゅうだ。 しかし。こと社会の基準を法(ルール)ではなく暴力にするのなら、彼らは未だに絶対的に強者である。 特に――滑皮のような、力のあるヤクザ者であれば尚更だ。 彼らはまず、手下を使って情報を探る。 敵の居所を突き止め、ある日突然人間を送り込んで制圧する。 滑皮はヤクザの常套手段(メソッド)を、この通りそっくりそのまま聖杯戦争の戦い方に転用していた。 「しかしサーヴァントってのは便利だな。高い金払ってヒットマン雇ってたのが馬鹿らしくなるぜ」 「人の形した拳銃(チャカ)みたいなもんだからね。人間相手ならもっと証拠残らない殺しも出来るけど」 「考えとくよ。気に入らねェー奴なんて山ほどいるからな」 そんな大物ヤクザが召喚したサーヴァントは、しかし反社会的勢力のパブリックイメージとはてんで似つかない美しい少女だった。 虹色を貴重にしたサイバーパンク調の衣装に身を包んだ、滑皮とは二回りも歳が違うような身なりの少女。 いや、少女という形容はこと彼女に対して使うには適しているとは言い難い。 彼女は、少女だったものだ。秘めたる才能を見初められ、人から人ならざるものへと変容を遂げた魔法の兵だ。 魔法少女。 冗談のような単語だが、しかし彼女に限ってはメルヘンもファンシーも介在する余地がない。 彼女は殺す。人を殺すことに毛ほどの躊躇も持たない。 この才能は、ヤクザの世界で見ても稀有で有用なものだった。 口でどれだけ男を装っても、実際に人を刺して弾いて平静を保てる人間は位の上下に関わらず限られている。 滑皮にとって、魔法少女は最高の道具でありヒットマンであった。 鬼に金棒。虎に翼。駆け馬に鞭。 冬木の彼は、戦うために必要なすべてを持っている。 「肉見てたら焼肉食いたくなってきたわ。まだ開いてるかな」 「野蛮人だね。引くわ」 「舎弟に店探させるから、お前は死体(ロク)片付けたら部屋戻って寿司でも取ってくれ」 「ヒットマンに報酬も払わないで自分は焼肉パーティーですか。いいご身分ですねえヤクザ屋さんは」 「あ? お前連れて行くわけにはいかねェーだろ? てめェーみたいな色物と一緒に歩いてたら笑われて、組中に噂されるわ」 彼らは、アウトローの星だ。 社会秩序では評価されない才能と、生き方の持ち主。 無法の中でこそ真価を発揮する、他人の不幸を飯の種にする肉食の獣。 人の命に、誰かの幸せの残骸に、頓着しない。 彼らは自分の幸せのためだけにどこまでも血を流せる存在だ。 「ところでよぉ。そういや聞いたことなかったよな」 「何を?」 「お前、聖杯に何願うつもりなンだよ? 受肉か?」 「……まあ、とりあえず受肉かな。私さ、それなりに上手く生きてたんだよ。 上手く狡く、賢くやってたの。けど訳わからんクソ化物に出くわして全部おじゃんになっちゃった。 まさか死んでからもこき使われるとは思わなかったけど、これはこれでラッキーかな」 「仕事人の末路ってのは大体そんなもんだよな。床の上じゃやっぱり死ねねェーよ」 「で、そういうあんたは? その口振りからしてさ、あんたもデカい失敗して潰れたんでしょ? 聞かせてよ、面白そう」 「言葉選べよ。デリカシーって言葉知らねえのか?」 「高校生(ガキ)にヒットマンやらせてる反社のおっさんに言われてもね」 口の減らねえ奴だ。 滑皮は嘆息して、取り出した葉巻に火を点ける。 舎弟から贈られたものだ。ガキの頃に兄貴に吸わせて貰った時は良さが分からなかったが、この歳になるとこういうのが沁みてくる。 紫煙を口の中で転がして、吐き出して――滑皮は口を開いた。 「お前の言う通りだ、アサシン。俺も失敗した。失敗して、全部持ってかれちまった」 滑皮秀信は、敗者である。 最後の最後にそうなってしまった、勝者のレールから転げ落ちてしまったアウトサイダーの成れの果てが彼だ。 猪背組の看板を背負えているのだって、この世界の温情のようなものだ。 元の世界では仲間殺しの外道として絶縁を喰らい、塀の中でいつ下るとも分からない死刑判決を待つだけの身だった。 大恩ある兄貴を殺されて、燻っていた執着の火がガソリンでも注がれたように燃え上がった。 昔から気に入らなかった金融屋のガキを屈服させて、自分の犬にしなければ気が済まないと思うようになった。 手下を使い、暴力を使い、ありとあらゆる手段で追い込んだ。 しかし最初に"奪われた"のは、因縁の金融屋ではなく他でもない滑皮の方だった。 ――舎弟が、殺された。 拷問され、自分を売って射殺された。 思えばあの時から歯車が狂い始めたのだと思う。 舎弟を殺されて、滑皮の中の鬼が狂い始めた。 丑嶋を屈服させる。梶尾の仇を殺す。 二つの目的が融合し、迷走の末に屍と罪を重ね…… 「失った物は取り戻さなきゃならねェーだろ? 負けっぱなしで下向いてるようなヘタレじゃヤクザは張れねえ」 そして滑皮は、負けた。 罠に嵌められ、もう一人の舎弟までも殺され。 罪のすべてを被せられて、司法の手による裁きを待つ身になった。 仮に法の裁きによる死を免れても娑婆の空気を吸える望みは絶無。 ヤクザとしての成り上がりや再起など、もう二度と臨めない。 まさに、死を待つだけの身に成り下がったのだ――黒い羽を手にするあの日までは。 「俺は負けを認めない。聖杯を手に入れて……今度こそ俺がすべてを手に入れるンだ。 失ってきたモンも、手に入らなかったモンも、全部俺のモノにしてやる。てめェーを使ってな、アサシン」 「は。頑張るじゃん、負け犬の癖に」 「お互い様だろ? 捨て駒野郎」 滑皮もまた、凶星(マグネター)である。 近づく者を皆破滅させる、底知れなさを秘めた悪の星。 だからこそ、泣き寝入りは彼に限ってあり得なかった。 なくしたものは取り戻さなければならない。 奪われたものは、取り返さなければならない。 欲しいものは、手に入れなければならない。 それが彼の選んだ生き方で。 何があっても、どこにいても、それだけは決して変わらぬままだった。 彼は彼のままだ。何も、変わらない。 「は。違いないね」 笑いながら、虹の魔法少女――『レイン・ポゥ』は考えていた。 このマスターは間違いなく当たりの部類だ。 肉体的にはただの人間でしかないが、精神性も使える手段の豊富さも自分の戦い方とこれ以上なく合致している。 正面戦闘でなら厳しくとも、策と人を使ってのし上がって行けば、十分に聖杯を狙える可能性はある。 そうすれば、なくした未来を取り戻すことができる。 あの封鎖都市での失敗を、なかったことにできる。 受肉して再び人生を歩み直せる上、英霊の座なんてけったいなところからも解放されることができるのだ。 まさに願ってもない話だった。このチャンスを棒に振るわけにはいかない。 レイン・ポゥは現実を見ている。 人生の歩み方というものを知っている。 だから、決して間違わない。 チャンスがあればモノにする、自分の身の程と生き方を分かっている。 今も脳裏によぎる、この手で引き裂いた少女の亡骸には見ないふりをした。 振り返ることに意味があるとは思えない。 "それ"に固執することは、きっと不合理を生む。 帰ってマスターの金で寿司でも取って、仕事終わりの報酬と洒落込めば消える程度の感情でしかない筈だ。 だってそれは。とっくの昔に。 ◆◆ 『安心しろ。事が終わったら君の全てを元に戻してやる』 『友を殺した思い出を胸に抱いて我輩に殺されるがいい』 『お前はそれで初めて許されるのだ、下郎』 ◆◆ 『心配しないでよ、たっちゃん。いざとなったら私が守ってあげるからさ』 ◆◆ 『もうすぐ遠足あるからそこで滅茶苦茶うめえ卵焼きやって虜にする』 『なんか発想の段階でおかしくない?』 『いいから! 教えて! 遠足にこそチャンスがあるから! 次のイベントこそはもっと仲良くなってやる!』 ◆◆ 『あなたは魔法の才能を持っている。わたしが本物の魔法少女にしてあげるよ!』 ◆◆ もう何もかも終わったことだ。 【クラス】アサシン 【真名】レイン・ポゥ 【出典】魔法少女育成計画limited 【性別】女性 【属性】中立・悪 【パラメーター】 筋力:C 耐久:C 敏捷:B 魔力:B 幸運:D 宝具:C 【クラススキル】 気配遮断:B サーヴァントとしての気配を断つ能力。隠密行動に適している。 完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。 【保有スキル】 魔法少女:B 魔法の国から力を授かって変生した存在である。 通常の毒物を受け付けず、寝食を必要とせず、精神的にも強化される。変身と解除は任意。 身体能力は極めて超人的であり、更に一人に一つ"魔法"を持つ。 不覚の虹:A 虹の暗殺者レイン・ポゥ。 気配遮断スキルが発動している場合、最初に放つ攻撃の成功率と威力を格段に跳ね上げる。 更に対象の耐久ステータスをこの時に限り「E-」ランクとして扱う。 無力の殻:B 魔法少女に変身していない間、サーヴァントとして感知されなくなる。 能力値も人間相応のランクにまで低下する。 人格偽装:B 自身の本性を隠蔽する才能。 天性ではなく境遇の中で身に着けた後天的なもの。 他者との対話時にプラス判定を受けるが、対象がアサシンの素性を何処まで知っているかに応じて効果が薄れる。 【宝具】 『実体を持つ虹の橋を作り出せるよ』 ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:可変(アサシンの視界の広さに準ずる) 最大補足:1~15 レイン・ポゥが持つ魔法。名前の通り、実体のある虹を生み出すことが出来る。 虹の強度は非常に堅牢で、しかしながら厚さという概念を持たず、発生の際も音を出さない。 彼女の視界の任意の点から任意の点まで弧状に伸長して伸び、視界から外れると崩れて消える。 【weapon】 宝具 【人物背景】 魔法の国人事部が擁した魔法少女。 魔王と呼ばれた魔法少女の殺害に成功するが、その後転げ落ちるように破滅した。 【サーヴァントとしての願い】 とりあえず受肉……たぶん。 【マスター】 滑皮秀信@闇金ウシジマくん 【マスターとしての願い】 聖杯を手に入れ、自身の失脚を覆す 【能力・技能】 ただの人間だが、敵対者に対して一切の容赦をしない冷酷さと残忍さを併せ持つ。 一介のヤクザ者としては部下からの人望も厚く、本人は腕っ節と知略の両方を高い水準で備えている。 【人物背景】 若琥会若琥一家二代目猪背組、猪背組系列滑皮組組長。 暴走族時代から敵対者の唇を切断するなどの凶行で恐れられ、地元では「絶対に逆らってはいけない人物」と言われていた。 しかし情がない人物というわけではなく、部下を惨殺された際には怒りと喪失感を示すなど人間味もある。 復讐のために金融屋・丑嶋を追い込み、様々な策で追い詰めるが、あと一歩のところで嵌められ殺人罪で警察に逮捕された。 【方針】 生き残り、聖杯を手に入れるべく動く。 早い内に協力者を手に入れ隷属させたい。
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この場にいる誰もが、思う事が一つある。 どうして、こんな事になったのだろう。それぞれの思いや感情を抱いている彼女らであるが、全員が心の何処かに、この疑問を抱き続けている。 新国立競技場の地下に設置されたリハーサル室だった。 此処は名前通りリハーサルや打ち合わせだけでなく、本日の興行において出番がまだ先であるアイドル達の控室としても機能する、言ってしまえば広めの憩いの場である。 当然此処には数多くのアイドル達が集っている事になるのだが……その表情は一様に暗い。いや、暗いだけでなく、全員泣いている そこ彼処を見渡しても、泣いている少女が殆どだ。小中学生程度の年齢のアイドルなど、皆このような感じであった。 「大丈夫、大丈夫ですから……だから泣きやみましょう……?」 泣きやむのが止まらないアイドル達を泣きやませようと、年長のアイドル達が心を砕いていた。 安部菜々と呼ばれるアイドルは、流石にこの状況下ではキャラクターを保つ事が出来ないのか、大人としての態度で、泣いている子供達を泣き止ませようと必死だった。 が、努力は全く実らない。それはそうだ、起っている状況も状況だが、大人達の方も泣きたくてたまらない気持ちであるのだ。 子供は心を敏感に感じ取る。大人がこの調子では、泣き止む筈もない。そして大人達の方も、今この場で、明るく笑顔を振りまく、と言う気にはなれずにいた。 アイドルの仲間が一時に何人も死んだ、その様子を、このリハーサル室のモニターで彼女達は眺めてしまっていた。 クローネのアイドル達は一瞬で四人も、あたら若い命を花のように散らしてしまった。その死にざまは余りにも無惨、そして、死んだ時間も一瞬。 だからこそ彼女達は、初めてその映像を見た時、何が何だか解らなかった。余りにも常識離れした展開に、脳の処理が追いつかなかった。 そして、脳が事態の理解をしてしまった瞬間、半ば狂乱に近い叫び声が上がった。親しい仲間を殺された少女はその名を叫び、またある者は意識を失ってしまった者もいる。 そうして、現在に至る。 アイドル達の混乱は全く収まらない。それどころか時間を置き、冷静になればなるほど事態を認識する時間も増える為に、より酷くなる一方だ。 誰もが思う。どうして、こうなっているのだろうと。失敗したらどうしようと緊張しながらも、でもなんだかんだでステージ上ではいつも通りどころか、いつも以上の力を発揮して、ステージを大成功させて、皆でその事を喜び合う。そんな結末が、本当はあった筈なのだ。 だが、今はどうだ。ステージは大成功どころか、あの神楽坂で大量虐殺を行った黒礼服の殺人鬼が乱入したせいで、ライブは失敗。 いやそれどころか、仲間を喪ってしまい、今や自分達ですら命の危険がないとは言えない危険過ぎる状態。 この場において誰もが、こんな事態なのに逃げ出そうと口にしない。逃げる方がベストであるし、仲間を置いて逃げ出しても誰も卑怯者とは罵るまい。 それが出来なくなる程、彼女達の頭は混乱していた。彼女達もまた、新国立競技場から現在進行形で逃げ出そうとしている、パニック症状に陥っている民衆同様の存在なのであった。 「――皆っ、大丈夫だったか!?」 そんな一同の状況を打ち破るように、一人の大人の声が聞こえて来た。 皆がその方向に顔を向ける。スーツを身に纏った、妙齢の女性。此処にいるアイドル達は、皆彼女の名前を知っている。 「み、美城常務!? 如何して此処に――」 それまで子供の面倒を見ていた菜々が、驚いた様に口を開く。 顔中に汗を張り付けて、346プロのアイドル部門、その事実上の最高責任者にして、今回のライブイベントのメインプロデューサー。美城と呼ばれる女性が、その姿を現した。 「来るに決まっているだろう、今は非常事態何だ!!」 そう、考えてみれば当然の話。そして、その当然の帰結が思い浮かばない程、彼女達は混乱の状態に立たされていた。 メインプロデューサーと言う事は事実上の最高責任者。イベント全体の指揮や、各種人員の配置場所を決めると言う強力な権限を持っている他、 今の様な非常事態が起こった場合の指揮も担当せねばならない。そして、今がその時なのだ。来るに決まっている。 「……映像は見えないのか」 と言って美城は、リハーサル室に設置されていた巨大なモニターの方を見る。波一つ立つ事のない、墨の満たされた硯のように真っ黒い画面があるだけだった。 「変な青緑色の何かが迫った、と思った瞬間に、こんな風に……」 「そうか……では此処からだと何が起っているのか、解らないと言う事か」 「……はい」 其処で、再び沈黙が流れた。 「大槻唯、塩見周子、速水奏、神谷奈緒……そして、彼らのプロデューサー。尊い命を、失ってしまった」 啜り泣く声はなおもやまない。 「……胸が痛い、と言う他ない。彼らは皆、死ぬには余りにも若く、余りにも可能性に満ちていた。……私は、それが許せない。だから、今こそ彼らに誅罰を与えねばならぬと、固く誓った」 美城の口から出た言葉に、皆がキョトンとした表情を浮かべる。 言っている事の意味が理解出来ない、と言うのは子供達の方に多い。そして、意味を理解している者も、余りにも突飛な言葉の為に、絶句の表情を隠せずにいる。 「ち、誅罰って……私達に、どうやって!? そもそも、そんな事が出来る訳――」 「出来る!!」 本田未央の言葉に対して、美城が一喝した。 「見た筈だ、あの殺人鬼が超常の力を振う瞬間を。思い出せる筈だぞ」 美城の言う通り、皆は見ていた。あの殺人鬼が謎の力を以て雷を落とし、目に見えぬ力で相手を粉々にしたり。 思い出したくもない光景であったが、彼女達は思い出そうと必死だった。確かにあれは、普通の光景では断じてない。 「私は君達に、彼の殺人鬼が奮う力と同じ様な力を奮える道具を持っている。それを以て、対抗するんだ。そして、仲間の仇を取るんだ」 「そ、そんな、突拍子もない事を……」 「今一度言う、出来る」 手近にいた、泣き腫らした顔の輿水幸子のスマートフォンを借り、それを手慣れた動きで操作。 ――刹那、美城の真横に、蒼白く光り輝く、巨大な頭とそれとは不釣り合いの小さめの胴体を持った怪物が、何の前触れもなく現れた。 随所から上がる悲鳴と、渦巻く恐怖の感情。それを美城は、強く一喝し鎮める。 「この力は私達を救うに値する力。そして本質的には、あの殺人鬼が奮うそれと同じ。だが、私達はそれを正しい方向に使う事が出来る!! 恐れる事はない……今こそ、戦うんだ!!」 と、檄を飛ばす美城であったが、何せ起っている事態が事態である。 我こそは、と思う人物など中々いない。皆が沈黙し、互いの表情を見あったり、美城の立ち居振る舞いを眺めたり、と。己の主張を示そうとしない。 「あ、あの……常務」 と、やや控えめに手を上げる人物に、美城は目線を送り、この場にいたアイドル達も、その声の上がった方向に身体を向けた。 本田未央、と呼ばれる、如何にも快活そうな容姿をした少女だった。その見た目に違わず、普段は明るく、誰とでも仲良くなれる性格なのだが、流石にあの虐殺を前にして平時のテンションを保てはしなかった。 「その……お化け? みたいなの、私にも操らせて下さい……」 「み、未央ちゃん!?」 隣にいた島村卯月がこれに反応する。 まさか自分の知り合い、それもかなり仲の良い部類に属する人物が、こんな得体の知れない提案に乗るとは、思っても見なかった。とでも言うような顔である。 他の人物についても同じで、先陣を切るのがまさか未央だとは、と言う様な顔を隠せないアイドルも大勢いる。 「ほ、本当にやるの!? だって、こんなお化けみたいなの操るなんて……」 「……正直、私も気乗りはしないよ。得体が知れないのを操るの何て、私だっていやだもん。……だけど、友達が死んでるのに、なんにも出来ないなんて許せない!! 皆の晴れ舞台が台無しになってるのに、ただ翻弄されるだけ何て、悔しくて、我慢出来ない!!」 思いのたけを、血でも吐くが如くにぶちまけた。発した言葉が、火の玉になりかねない程の強い言葉であった。 未央の思う所を、理解出来ない、と言うアイドルはこの場に一人たりとも存在しなかった。恐怖と言うカーテンに本質を隠されてはいたが、抱く思いは皆同じ。 何故、こんな事になったのかと言う思いと、今自分達に降りかかっている事に対する恐怖。そして、それらについての、怒り。 この三つを抱いていないアイドルなど、この場に一人たりともいなかった。彼女達は、自分達には想像も出来ない程の魔宴、聖杯戦争の被害者だった。 彼女達NPCは、聖杯戦争の参加者が駆るサーヴァントの暴力に翻弄される、無力の象徴だった。川の流れ、吹き荒ぶ風に蹂躙される蟻と変わらなかった。 「常務、そのお化け、操れるようにしてよ!!」 「ま、待って!! 美城常務、そのお化けみたいなの、本当に操って大丈夫なんですか!?」 疑問としては当然の物だろう。超常の力である事は理解したが、これが何のリスクもなしに操れるとは思えない。卯月の疑問に、美城が答える。 「結論を言えば、リスクはない訳ではない。私の横にいるこれが破壊されれば、その人物は意識を失う。昏倒だな」 「それは――」 「だが、死にはしない」 卯月が反論するより早く、美城が付け加えた。 「リスクはある、それは否定しない。だが、死ぬ訳ではない。それは本当だし、それを怖いと思ったのなら、私は戦う事を強要しない。だが、それを理解しても戦いたいのなら、私の近くに寄るんだ。この怪物――『CROWDS』を操る力を、お前達の携帯やパソコンに落とし込む」 再び、水を打ったような沈黙がリハーサル室を支配する。美城が提示した、怪物、即ちCROWDSと呼ばれる存在を操るリスク。 それを聞いて尻すぼみしてしまった者も多い。昏倒、つまり意識を失うと言う事だろう。それについて恐れがないと言えば嘘になる。寧ろ、かなり怖い者が殆どだ。 ……それを理解して尚、未央や、他の、行動的で知られるアイドル達が、美城の下へと集まって行く。覚悟を決めたらしいのと、恐怖よりも、一矢報いたいと言う気持ちが勝ったのである。 美城は、自分の所に寄って来た、提案に乗るアイドルの携帯端末に、Bluetooth経由で件のアプリを転送。 それを確認したアイドル達は、恐る恐ると言った様子で、そのアプリを実行。「CROWDSの操作に画面を触る必要はない、勝手に動けと命令すれば、その通りに動く」。 アプリを開いたのを見計らって、美城がそう補注を加える。「凄い……」、とか、「本当だ……」、と、CROWDSを操作しているアイドル達が感嘆の念を口にした。 他のアイドル達には解らないが、如何やらCROWDSは此処ではない何処かで展開されているらしい。場所は容易に想像出来る。あの競技フィールド以外の何処にあるのか。 「皆の仇ッ!!」 そう口にした未央であったが、その、一秒後であった。 手にしていたスマートフォンを床に落としたのは。落した衝撃で、保護フィルムを張っていなかった液晶が割れる。 彼女が、それを認識していたかどうかは解らない。落したと同時に、彼女の意識は闇の中に落ち、糸の切られたマリオネットのようにガクッ、と地面に膝を付、倒れたのであるから。 方々から、「未央!?」とか、「未央ちゃん!!」と言う声が上がる。 これが、CROWDSを破壊されると言う事だった。卯月が慌てて駆け寄り、未央の体調を調べる。息はある、脈もある。本当に、昏倒の状態であった。 「怯まないでくれ、既にメフィスト病院は手配してある!! いくら倒れても、CROWDSを操作出来るこのアプリがある限り、お前達は何時どんな所でも戦え、死ぬ事もない!! 自分は怖くない、戦って仇を討ちたい、と言う者がいるのなら、今一度言う。私の所にくるんだ!!」 その言葉を契機に、二の足を踏んでいたアイドルが次々と、美城の下へと駆け寄って行き、最初にCROWDSのアプリを渡されたアイドル達も、その言葉に勇気を貰ったか。 次から次へと、競技場内のCROWDSを操作し、其処にいるだろう宿敵の排除に向かい始めた。自体の趨勢に呆気にとられ、卯月はおろおろとした様子を隠せない。 困った様に、美城の顔を見つめる卯月。キビキビとしていて、怖いけど、しかしそれでいて誰よりも346プロと言う会社と其処に所属するアイドル達の事を考えている大人。 それが、美城常務と言う人物だと卯月は思っていた。……だが、何故だろう。今の彼女のその顔が、酷く悪辣な物に見えるのは――何かの、見間違いなのであろうか? ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 何が起っているのだ、と言う思いだけが、美城の心の中を支配していた。 今日のこの日の為に、ありとあらゆる方面に宣伝を打っていた。仕掛けた宣伝も様々だ。 チラシやパンフレットの配布と言う古典的手段を行えば、テレビCM、果てはネットワークが発達した現代だからこそ可能なSNSや動画サイトを用いた宣伝など。 凡そ考え得る全ての手段で、美城及び346プロダクションは、今日のイベントを成功させる為様々な営業をして来た筈なのだ。 後は、アイドルの興行が成功するだけだが、これに関しては心配などしていなかった。自分達が手塩にかけて育てたアイドルなのだ、失敗する可能性など、ある筈がないのだから。 ――だが、他者からの暴力的な介入があったとなれば、話は別だ。 美城は特等席からこの様子を眺めていたが、それ故に良く見えた。アイドルのライブステージを襲撃し、大槻、速水、塩見、そして神谷の四人を殺したのは。 あの、 新宿 の神楽坂で大量虐殺を行った、黒礼服の殺人鬼であると。それを見た瞬間、美城は、己の用意して来た物が。己の業界人としての全てを掛ける覚悟で、昼も夜もなく働いて整えて来たこの舞台が、崩れて行くのを肌で感じた。全ては、水泡に帰してしまった。 しかし、それについて絶望する時間はなかった。アイドルが――年端もいかない若い女子達が亡くなった。 確かに悲しい。何故、彼女達が死ぬ必要があったのかと叫びたくなる。が、それについて悲しむ時間は美城には無かった。彼女はこれから責務を果たさねばならないのだ。 346プロの責任者の一人として、其処に所属するアイドル達の身の安全を保障せねばならない身として。他のアイドル達を退避させ、安全を絶対の物にしなければならないのだ。 だからこそ美城は、黒礼服の殺人鬼が現れた瞬間、急いで特等席であるVIP用のボックス室から飛び出し、目的の場所へと走り始めたのだった。 ヒールだから走り難い、転びそうになる。しかし今は一秒とて惜しい。自分の判断ミスが、アイドル達の死を招く。責任は重大であった。 走り始めて三十秒と経っていないのに、体中が汗だらけである。夏の暑さから来る物ではない。嫌な予感から来る冷や汗である。 最後に激しい運動をしてから何年も経過していて、運動不足も甚だしい状態なのに、全然疲れが訪れない。 それよりも何よりも、身体全体が張り裂けそうになる程の責任感で、如何にかなりそうだった。 自分が、悪いと言うのだろうか。美城は考える。 今日だけで起った 新宿 の諸々の事件、彼女が知らない訳がない。実際、中止した方が良いのでは、と言う意見も少ないながらに社内でも上がった。 しかし、それをやるには最早遅すぎた。その事件が、コンサート開始の前日、一週間前に起っていれば、それも可能だったであろう。 今日の朝や昼では、無理である。もうその頃には客も並んでいたし、各種キー局もスタンバイしていた。今更中止、何て言える筈がない。 況してやUVMの牙城を崩す為の大事な一大イベント。それに掛ける思いは、美城も、346プロダクションも並々ならぬものがある。 だから、危険だと解って実行した。事件は起こったのだろうが、自分達の所にはそんな事件は起こらない。そんな思いで、コンサート開催に踏み切ったのだ。 ――その結果が、これである。346プロで夢を叶えようと邁進していた尊い命が幾つも失われ、その晴れ舞台を見ようと駆けつけた観客も、何百人と犠牲になった。 自分が、間違っていたのかと自問する。答えは返って来ない。走りながら美城は、ただ、自分は正しかったのだと思い込むしかなかった。 そう思いながら、アイドル達のいる所に駆ける時、彼女の瞳に涙が浮かんだ。こんな、筈じゃなかったのだ、と。小さく彼女は口にした。 「じゃどう言う筈だったんですかぁ?」 と、言う声が響いたと同時に、美城の移動ルート上にそれが現れた。 二mを優に超す背丈をした、長身の男だった。346に所属している、諸星きらりと言うアイドルよりもずっと大きいだろうと、頭の何処かで美城が考えた。 ピンクがかった赤色の髪を後ろに長く伸ばしており、ドライヤーを掛けていないのかモジャモジャである。その髪が目を隠していて、表情を読み取らせない。 そんな存在が突如進行ルート上に現れるものだから、突然バッと、美城は立ち止まった。 「ンチャwwwwwwwwwwwwwwwwww」 と言って、その長躯の男が会釈をして来た。軽薄さを隠し切れぬ声である。 「な、何だ君は……? 私は急いでいるんだ!!」 「私との会話イベントでフラグ立ててないからどけないでーすw。それに、こーんな騒動が起きてるんだったら興味わかない訳がないじゃな~い。それで、何があったんですかぁ?」 チッチッチッチッチッチッチッ、美城が何が何だか解らない、と言う風な顔をしている間に、目の前の怪人は舌打ちを高速で繰り返していたが、二秒後程に 「おっそーい!!(SMKZ) もういい!! 私紳士的に聞くの止める!!」 と、癇癪を起した様にそう叫ぶと、その男は突如として美城に近付いて行き、彼女の頬に両手を触れさせるや、無理やりその唇を奪った。 「ムグッ!?」と、突飛としか思えぬ目の前の男の行動に、美城は目を丸くし、自分が何をされているのか悟った瞬間、その胸中を驚愕と怒りが支配した。 二秒程のキスの後、男が美城の唇から己の唇を離す。それを見て美城が、烈火の如く激昂した。 「貴様!! 一体何を……――!?」 激昂が、引潮のように引いて行く感覚を覚える美城。 驚愕ではない。恐怖である。先程まで目にしていた、怒りを覚える程無礼な長身の男が消え失せ、逆に、その男がいたその位置に――『自分がいた』。 346プロの常務である美城が目の前にいるのだ。背格好も顔つきも、見に纏うスーツからヒールまで。全部が全部、自分のもの。目の前の男は、いつの間にか、自分に変身しているのだ!! 「あーなるほどそう言う事ね、理解したわ(理解してる)」 腕を組みながらコクコクと、美城に変身した男は頷いた。声音まで、同じだった。 「なんだ……何だ、お前は!?」 怯えながら、美城は叫んだ。自分と同じ姿をした人物が、勝手に動くその様子に、彼女は堪らない程の恐怖を覚えてしまった。 「失礼しましたwwwwwwwwwww私、水島ヒロですwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」 「馬鹿にするな!! 私の顔でふざけた事を言うのは――」 其処で、偽物の美城は、本物の襟をガッと掴み。 「ままま、焦らないで下さいよ常務。急いでアイドルの所に向かいたいんざんしょ?wwwwwwwww」 其処で、自分の使命を思い出した。そう、今は目の前の怪人にかまけている時間はないのだ。 今の美城は、一分一秒とて無駄にする時間は存在しない。早くアイドルの所に駆けつけねば、彼らの命が―― 「ミィが代理人として出向いてあげますから――」 其処で、偽物の美城の、狂喜としか表現出来ぬ狂った笑みが、虚無その物の如き真顔になった。自分に、こんな顔が出来るのか、と美城は場違いにも思ってしまった。 「用済みじゃ、とっとと失せろや」 其処で偽物は、本物の美城から手を離し、突き飛ばした。 紙のように彼女は吹っ飛んで行く。其処は、階段だった。頭から段差に落下し、ゴロゴロと転がって行くのを感じる。 その時に、頭が割れ、身体の骨が折れんばかりの衝撃が、身体に舞い込んで行く。意識が、痛みと、脳に来る衝撃で遠くなる。 暗くなりつつある己の視界に最後に映ったのは、下卑た笑いを、自分の声と自分の姿で上げながら、霞のようにその場から消える怪人――ベルク・カッツェの姿であった。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「みん……な……っ、プロ、デューサー……!!」 先程までメインステージに、プロジェクトクローネの面々であるアナスタシアは、メインステージから離れ、自分達の楽屋まで避難した瞬間に、堰を切った様に泣いた。 ステージにいる間は涙を堪えていたが、楽屋につき、先程までメンバー全員が此処で、打ち合わせを行ったり他愛もない会話をしていたと言う事実が残っていたのを見て、皆は泣いた。死んだ塩見周子、速水奏、大槻唯、神谷奈緒の荷物やスマートフォンが、そのまま楽屋の真ん中のロングテーブルに置かれていた。 彼女らが飲みかけていたドリンクも、そのまま置かれていた。ほんの十分前まで、彼女らが此処にいて、彼女らと会話をしていたと言う事実を認識した瞬間、アナスタシアは泣いた。二度と戻ってはこない、無惨に殺された友達の事を思って、皆は泣いた。 「どうして、こんな事に……」 涙を隠せぬ鷺沢が、呟いた。 その疑問は、誰しもが思う所だった。346プロダクションのアイドルに限らず、観客達も、そう思っているに相違ない。 自分達が、何をしたと言うのだろうか。何の権利があって、大切な友人達の命を、自分達の晴れ舞台を見に来た罪のない人々を殺すのだろうか。 友を失った事による哀しみと、何故失わねばならないのかと言う理不尽に、彼女らは、身が捩じ切れんばかりに泣いていた。 黒贄礼太郎に扮した10世に、脇腹を貫かれた加蓮も、今は痛みよりも悲しみの方が勝っているらしい。彼女から流れ出る涙は、痛みからではなく哀しみからだった。 「……ねぇ」 今まで不気味な程沈黙を保っていた、宮本フレデリカ、と言う名前をした金髪の少女――今回のライブコンサートの事実上の目玉と言っても過言ではなかったアイドルが。 今この瞬間になって口を開いた。啜り泣く声が部屋に響く中にあって、奇妙な程平静を保ったフレデリカの声は、よく目立つ。皆が、彼女の方に顔を向け始めた。 「もしも、だけどさ~……皆を酷い目に遭わせた、あの殺人鬼を、如何にか出来るって方法があったら……どう、する?」 何㎞も走り込んだ後のような、荒い息遣いを抑えながら、フレデリカが口にした。 そしてそれは、驚愕に値する内容だった。あの殺人鬼を、倒す、と来た。誰だって不可能に思うだろう。 相手は息を吸うように雷を落とし、謎の力で人間を粉々に爆散させる超能力の持ち主。とてもではないが、人間の身体能力では倒せる便もないであろう。 それを、打倒する術を知っていると言うのだ。そう、普段ならばクローネのムードメーカーとして、時は空気を弛緩させ皆をリラックスさせたりする、と言う緩いキャラクターがウリの、フレデリカが、である。 「じょ、冗談では……い、言ってない、よ……?」 皆も、流石にこんな局面で、フレデリカが冗談を言う様なキャラクターだとは認識していない。 本当に、倒せる術が、或いはそうでなくとも、付け入る隙の様なものを、理解しているのかもしれない。 「でも……どうやって?」 文香が、恐る恐ると言った様子で訊ねて来る。そう、やはり方法が問題になって来るのだ。 「……余り、皆に言いたくなかったんだけど……アタシね、あ、あの怪物と、同じ力が奮えるんだ」 言ってフレデリカは、右腕にそれまで巻かれていた包帯を解いた。 皆は、擦り傷か何かでも負っていたから、フレデリカはそこに包帯を巻いていたのではと考えていた。 ――実態は違った。彼女が包帯で隠していた位置には、黒い、痣の様なものが刻まれていたのだ。 否、それはただの痣ではない。よくよく目を凝らして見ればそれは、独特の紋様をしたタトゥーではないか。 とてもではないが、フレデリカにそんな物を刻む趣味があるとは思えない。それ程までに悪趣味なタトゥーなのだった。 「ふ、フレデリカさん? それ……」 ありすが、不思議に思い訊ねて来た。 「こ、怖い女の人に脅されて……刻まれちゃってね……、その日以降、アタシ、変な力が発揮出来るようになっちゃったの……。それが怖いから……ずっと、包帯で……」 皆は愕然とした。あの殺人鬼と同じ様な力を与えられ、誰にも相談出来ず、心細い思いをして。 しかしそれでも必死にその恐怖に耐え続け、フレデリカは今日まで生き続けていたのだと言う。想像だに出来ぬ過酷なそれまでの生活に、皆は言葉に詰まった。 今この瞬間、フレデリカはその力を使って、仲間達を助けようとしている。誰もがそう思った。何と、健気なのだろう。 此処で、フレデリカを迎えられねば、嘘だと皆は思った。今はフレデリカを排斥している場合ではない。皆で一丸となってこの状況を打開しない事には、どうにもならないのであるから。 「……フレデリカは、危険な目に遭わないんですか?」 アナスタシアが、神妙な顔つきで訊ねた。 「た、ぶん……」 フレデリカの答えは、酷く曖昧だ。 「フレデリカにまで死なれたら……わ、私達、立ち直れないよ……だ、から、絶対死なないって約束して……」 加蓮が、息も絶え絶えと言う様子で言葉を紡ぐ。10世に貫かれた脇腹は、軽い応急処置が施されているが、本当に軽い応急処置だ。 話すのだって恐ろしく苦痛な筈であるが、それを耐えてでも、今の言葉を伝えたかったらしい。 「ほ、本当に……協力、してくれる、の……?」 フレデリカが、眦に涙を浮かべて訊ねて来た。これが、最後の確認、今生の別れとでも言わんばかりの態度であった。 「……私は乗るよ、フレデリカ」 ややあって、凛が言った。 「だけど、私もフレデリカが死ぬのは絶対嫌。……教えて、何をすれば良いの?」 皆の目線が、フレデリカに集まる。 「アタシ、のね……力になって、一緒に戦うの」 なおも要領を得ない、フレデリカの答え。 「一緒にって……私達、戦う力は……」 凛が、フレデリカの答えに戸惑いながら答える。 彼女の言う通り、フレデリカ以外の面々は、あの黒礼服の殺人鬼を相手に抵抗出来る力を持たない。周知の事実であった。 「大丈夫……戦う、必要は、ない……から」 其処まで言ってフレデリカは、右腕の半ばに刻まれた刺青とも痣とも取れるシンボルを抑えた。「フレデリカさん!!」、と、ありすが心配そうな声を上げる。 「『一緒』に……戦おうね、皆……」 「フレデ――」 其処で、フレデリカの右腕が消えた。 誰もが、肩から先の動きを見る事が出来なかった。至近距離で、ツバメやハヤブサがトップスピードで移動しているのを見ているような気分だ。 フレデリカの腕が、戻る。コスチュームである黒長手袋が、消えていた。右腕全体が露出されており、その露出された部分に、白と黒のボディタトゥが刻まれていた。 肌色の部分が一つとして存在しない。白地に黒いラインが走っていると言う、独特のタトゥだ。 ――その右腕の下腕全体が、目に痛い程鮮やかな深紅色の液体に覆われていた。 その右手には血濡れた肉の塊のような物が握られており、フレデリカは、スナック菓子でも食べるような感覚で、それを口へと運び、咀嚼した。 「――え、ふ、フレデリ……カ?」 脳の処理が追いつかない、とでも言う様な風に、加蓮が呟く。 呟いている最中に、彼女の顔が苦痛に歪む。何だと思い、痛みの生じた方向に顔を向ける。ポカン、とした表情を浮かべてしまった。 胴体の右半分が、完全に消滅し、其処から大量の血液が流出し、内臓が零れ落ちて行っているのだ。 「う、そ……」 そう呟いて、加蓮は仰向けに倒れ、事切れた。最期の表情は苦痛に歪むようなそれではなく、自分の身に起った自体が理解出来ず、呆然としたようなそれであった。 「フレデリカ――!?」 凛が、フレデリカの名前を叫ぶ。再び、フレデリカの右腕が消えた。 凛の胸部に、バスケットボール大の風穴が一瞬で空く。肋骨も両肺も心臓も、全て、フレデリカの右腕に抉られてしまった。 黒い髪をしたアイドルの口から、バケツをひっくり返したような大量の血液がたばしり出た。彼女もまた、自分の身に起った事態を理解出来ていなかった。 「……え?」 そう呟いて、凛は床に両膝を付き、糸の切られたマリオネットのように、くたっと倒れ、息を引き取った。 フレデリカの右腕には、また新しい、血濡れた肉の塊が握られていた。慣れた手つきでそれを口元へ運び、一口齧る。 ――その瞬間だった。フレデリカの瞳に、正気の色が戻ったのは。 「え、嘘……? り、凛、ちゃん? 加、蓮……ちゃん?」 幽霊でも見たような表情と声音だった。 フレデリカの瞳には限りない恐怖の色が浮かび上がっており、その目で、血を流し続ける死体となった、加蓮と凛の双方に目線を送る。返事は、来ない。 「ッ……!?」と、此処で漸く、己の右腕に握られた『もの』に気付き、不浄な物のようにそれを地面に投げ捨てた。 「ち、違うの!!」 弁疏の為、フレデリカがアナスタシア達の方に目線を送った。 「ひっ……!!」 畳床の上に腰を抜かしていたありすが、怪物を見るが如き目でフレデリカの事を見ていた。 瞳に浮かび上がっている恐怖の色は、フレデリカの今のそれの比ではない。恐れから来る涙をその双眸から流し続けるだけでなく、自分に迫る未来を予測しているのか。 ガチガチと上下の歯を鳴らしている。恐怖が限界に達していたか、股の間から、小水も零れさせていた。 「文香ちゃん」 言ってフレデリカが文香の方向に顔を向ける。頭の処理の限界を迎えたか。彼女は、フレデリカが二名を殺している間に、気を失い、倒れていた。 「アーニャちゃん」 彼女の方は事態を細やかに認識したらしい。 口を両手で抑えていたか、やがて、凛と加蓮の身に訪れた、悲惨で、無惨にも程がある結末に耐え切れず、胃の中の物を全て吐き出してしまった。 未消化だった昼食のものが全て戻されるが、それでも尚吐き足りないのか。ついには、胃液すら吐き出していた。 「あ、ありすちゃん――」 目線を、アナスタシアから、小動物のように縮こまっているありすの方に向ける。 それに気付いた、年端の行かない少女が、膝を曲げ、頭を抑え始めた。身体を襲う震えが、より一層強くなる。 「こ、こないで……」 冬山に裸で放り出されたように、彼女の歯はガチガチと音を立てており、言葉を紡ぐのも難しい状態だ。 それでも、この言葉を紡ぐ事が出来たのは、奇跡のような物だったであろう。 「ありす、ちゃん……」 一歩、ありすの所に近寄るフレデリカ。 「――来ないでぇ!!」 肺の中に辛うじて残った空気を、全て吐き出す様にしてありすが叫んだ。怒気ではなく、恐怖でもって構成された、懇願するような泣き叫びだった。 その叫びに思う所があったか、アナスタシアは、畳の上を這いながら、何とかありすの下へと近付き、彼女を抱き寄せる。 ありすはアナスタシアの胸の中で、普段のキャラクターを金繰り捨てた、年相応の泣き声を上げて、啜り泣き始める。 その状態でアナスタシアは、フレデリカの方を睨みつけ、恐怖と焦燥で声を上擦らせながら、一喝した。 「こ、これ以上近付いたら、私達も貴女を――!!」 声の続きを聞くのが怖い、とでも言うように、フレデリカがその場から逃げ出した。 楽屋と廊下を仕切るドアは、フレデリカの突進で蝶番ごと吹っ飛ばされ、向かいの楽屋のドアに勢いよく衝突。 そのまま彼女は廊下へと躍り出て、消え去ってしまった。後には、渋谷凛と北条加蓮の死体と、三人のアイドルが残される形となった。 泣き止まないありすを、どう慰めれば良いのか解らない。アナスタシアは、呆然とした表情で、天井の照明を見上げるのであった。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 限界だった。 ステージにいる間は、不思議と飢餓が抑えられていた。パフォーマンスをしている間は、大丈夫に違いない。そう思っていた。 あの殺人鬼が現れ、周子達を焼き殺した瞬間、彼女の理性は一気に吹っ切れた。常人ならば、吐き気を催すような人間の身体の焼ける臭い。 それをフレデリカは、牛や豚にスパイスを塗して焼いた様ないい匂いだと思った。それを嗅いだ瞬間、彼女の理性は決壊した。 抑えつけていた飢餓が一気にあふれ出たが、それをメインステージが設置されていたフィールド内で発揮しなかったのは、殆ど奇跡にも等しい所業であった。 飢餓を満たしたいと言う本能が理性を追い越し、暴走し、凛と加蓮の命を、この手で奪った。 その事実を認識した瞬間、体中の毛穴から冷たいものが噴き出てくる、堪えられない程の恐怖が身体を包み込んだ。 そしてその恐怖が身体から心根を支配していてなお、二人の身体は、とても美味しかったと舌が覚えており、そして、全部食べずに残して逃げたのを勿体ないと思っている自分を、フレデリカはこれ以上となく嫌悪していた。 凛の内臓は、良く煮込んだ鳥のもものように柔らかく、ほのかな塩気が実に良かった。 加蓮の肉は、結構な時期を病院で過ごしていたと言う事実を感じさせぬ程香気だっていて、ハーブか何かと一緒に煮込まれた牛の肉のように美味だった。 フレデリカが正気に戻ったのは、二人の肉を食べ、飢えが若干満たされた事で、理性が本能に若干勝ったその瞬間であった。 何て、取り返しのつかない事をしてしまったのだ、と。フレデリカは堪らなく後悔し、そして、クローネから向けられる怪物やお化けでも見るような目線に、ゾッとした。 そんな目線を向けられるだけの事を、フレデリカはやってしまった。非難がましい目線、自分に対する恐怖の籠る目線、自分に対する憐憫が隠し切れない目線。 それら全てを向けられる事が怖くて、フレデリカは逃げてしまった。そして、もう一つ。そんな目線を向けられているのに、アナスタシア達を『美味しそう』だと思った自分が恐ろしくなり、あの場から逃げ出してしまった。 何処に向かって走っているのか、解らない。 口についた血を拭う事も忘れ、怪物みたいになった右腕を元に戻す事も忘れ、宮本フレデリカは何処かに向かって走っていた。 クローネの生き残りの目から逃れる為――彼女達を、この手で殺さない為に。 国立競技場内部は、不気味な程人がいなかった。 今フレデリカが走っている所が、一般客とは違う、TV局や346プロの関係者のみが入る事が出来る、競技場北側の入口であると言うせいもあるだろう。 今頃南側は、大量の人間でごった返しているに相違あるまい。つまり、大量の人間――食糧――がいると言う事で……、其処まで考えて、かぶりを思いっきり振った。 何て事を、考えるのだろうと。今この状況、人っ子一人いない状況の方が、良いに決まっている。自分はこのまま行けば、死を振り撒き続ける。 それを避ける為、フレデリカは逃げ続ける。この一心で逃げ続けた末、遂にフレデリカは、北側の大入口まで到達、外に出る。 国立競技場では、あんなに悲しい出来事があったと言うのに、外はこんなにも晴れているものなのかと、心の何処かでフレデリカは考えた。 何れ此処にも、警察や、自分達のライブを中継しにやって来たのとは違う刑事事件等を主として担当するTVレポーターが、やって来るのだろう。そうなる前に、何処か遠くに―― 「ふ、フレ……ちゃん?」 逃げる筈だったのに。 運命の神が振った賽子は、宮本フレデリカと呼ばれる少女に、安息の時を許さなかった。彼女の目の前には、白衣を纏った、己の友人であるアイドル、一ノ瀬志希が、呆然として佇んでいるのであった。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 生中継されていた、余りにも無惨で、凄惨な光景を見た時、一ノ瀬志希は全身の血が引いていくような感覚を覚えた。 突如として現れた、黒礼服のバーサーカー、黒贄礼太郎と、それによって殺される、自分の見知ったアイドル達。 予想だにしていなかった展開に、休憩室にいた他のスタッフ達も、志希同様驚愕を隠せぬ風であった。永琳ですらも、それは同じ。 まさか数万人規模で人が集まるこの一大イベントで、こんな野放図極まりない大虐殺を行う愚か者がいる何て、永琳は予測出来なかったのである。 テレビ越しからでも、現場の生の戦々恐々ぶりが伝わってくる迫真さ。それが、この映像が3Dによる物ではない、真実の映像である事の証左だ。 その映像を見て、黒贄が行う恐るべき凶行を何分か見た時。志希はいても立ってもいられなくなり、メフィスト病院から支給された白衣を脱ぐ事すらしないで、休憩室を飛び出し、遂には院外へと駆け出した。 白衣を着た少女が勢いよく病院の中を走るものであるから、スタッフや患者を含めた多くの人間が、何があったと言わんばかりに彼女に目線を投げ掛けて来るが、それが気にならない程、志希は必死であった。 【助けに、行くつもりかしら?】 駐車場から歩道に出たその時になって、永琳が念話で訊ねて来る。無言を以って、志希が返した。 【元居た世界では確かに友人だったのかも知れないけれど、此処ではNPCでしょう? 助けに行く意味は、ないと思うわよ】 永琳の言葉はとても冷酷で、無慈悲であり、そして、主である志希の事をどれだけ慮っているのか、志希にはよく解る。 永琳の言う通り、この世界で活動している、聖杯戦争の参加者以外のあらゆる存在はNPCに過ぎない。 346プロのアイドル達は皆一ノ瀬志希と言う人物の事を知っているし、友達だとも認識している。志希だって、そう思っている。 だが、どんなに互いが仲間だ友達だと思っても、この世界の住民は全てNPCであり、志希が本来いた世界とは何の関わりも接点もない存在だ。 パラレルワールドに生きる人間達、と言う解釈の方が解りやすいかも知れない。この世界の住民達が、志希の元々の世界の住民ではなく、 しかも元の世界に無傷で帰らなくてはならないと言う志希の目的上、要らぬ火中の栗を拾いに行くのは、そもそもの方向性として間違っている。 つまりは永琳の言う通り、今志希が行おうとしている、346プロの仲間を助けに行く、或いはそうでなくとも、新国立競技場に向かうと言う行為は百害あって一利なしの選択でしかない。 【……確かに、そうかもしれない】 志希は、永琳の意見を肯定した。彼女の意見にも正しさがある――いやそれどころか、ある観点から見たら、正しさしかない意見であったからだ。 【でも、所詮NPCだからって理由で見ないフリしたらあたし……とっても後悔しそうな気がする……】 【理屈も何もないわね】 呆れた様子で永琳が言う。 【NPCだって解っても……この世界の346プロの皆は、あたしの知ってる人達と本当にそっくりで……だから】 【見捨てられない、と】 【悪い事なの?】 【聖杯戦争に勝ちたいなら悪手。だけど、感情の動きとしては、正常じゃないかしら】 永琳が続ける。 【主君に振り回されるのは、こっちに行っても変わらない、か……。因果からは、天才でも逃れられないみたいね】 【え?】 【独り言よ。それより、貴女が競技場に向かいたいと言うのなら、私もそれに従うわ。フォローは既に考えてる。だけど、我儘を聞いてあげる代わり、これだけは約束なさい】 【……何?】 真面目なトーンで永琳が口にした為、つられて志希の方も、真面目なそれになってしまう。 【恐らくは新国立競技場には、間違いなくサーヴァントが一人以上はいると見て間違いないし、サーヴァントと鉢合わせになる可能性がとても高い。そうなった場合、全ての行動の選択権を全て私に委任なさい】 【……解った】 【宜しい】 否定する理由がない。どの道、志希は何時だって重要な局面は永琳に任せて来た。 それが正しいからである。永琳は志希以上に頭も良く、多方面の才能に長じている。志希が頼るに値する、優れたサーヴァントであった。 その証拠に永琳は、全力疾走で国立競技場へと向かう志希を疲れさせない為に、身体に作用する魔術を彼女に掛け、疲労が蓄積しない状態にさせている。 こうする事で、常に全力で志希を走らせる事が出来、スムーズに目的地へと向かわせる事が出来る。こう言った所においても気配りが出来る辺りが、八意永琳と言うサーヴァントが優秀である事の何よりの証左であった。 メフィスト病院――もとい、元々存在していたK大の大学病院と、新国立競技場までは目と鼻の先である。 歩いて十分、自転車があればもっと速く到着できる程近い。全速力で走れば、五分と掛かるまい。実際、それだけの時間で、志希は新国立競技場に到着した。 遠目から見ても、大量の人間が慌ただしく逃げ出しているのが解るレベルで、その潰乱ぶりが見て取れるようであった。 まだ警察がやって来ていないのは、永琳達が此処に潜り込むと言う意味では、不幸中の幸いと言うべきだろう。NPC達にしてみれば、事態の鎮静が遅れる為に堪ったものではないだろうが、どの道警察程度ではサーヴァントは対処出来ない。彼らはどの道、詰んでいた。 観客が入る為のルートと、346プロや業界の関係者だけが入れるルートが別々に解れている事を知っていた志希は、 北側入り口、即ち関係者口から競技場内に入ろうと決めていた。永琳もそれについては異存はないと言う。NPCが少ない場所であるのなら、それに越した事はないからだ。 騒ぎが騒ぎの為、本来ならば人の数が少なくて然るべき筈の北口周りにも、NPCがちらほらと見られる。 既に事態の詳細が行き届いているのか、NPC達は皆困惑した表情を浮かべて、競技場を見上げていたり、競技場の方が気になりつつも、 その場から距離を取ろうとしている者に別れている。また中には、屋台を捨てて逃げ出している的屋もいる程で、今回の事態がどれ程NPCに混迷を齎しているのかよく解る。 どちらにしても、この程度の人数なら、簡単に忍び込めるだろう。――そう思っていた、その時だった。 競技場の入り口から、見知った少女が慌てた様子で飛び出して来たのだ。明るい金髪、整った欧州風の顔立ち、柔かなボディラインが特徴的な魅惑的な身体つき。 その少女を、一ノ瀬志希は知っている。宮本フレデリカと言う名前のその女性は、志希の友人であった。この世界でも、その立ち位置は変わっていない。 お互い緩い性格が特徴的で、波長も合っていた事から、元居た世界でも346プロに入った瞬間から真っ先に友達になれた程だが……何故だろう。今のフレデリカは、頗る余裕がなさそうに見える。 「ふ、フレ……ちゃん?」 だがそれよりも志希の目を引いたのは、フレデリカの右腕だ。 見間違いじゃない。彼女の肘から先は、紅い液体が今も滴っていて――。 「――下がりなさい!!」 その一喝が、志希の意識を一瞬空白にした。 永琳が霊体化を解除。乙女を守る騎士の様に、志希を背後にするような立ち位置になるや否や、いつの間にか手にしていた弓矢をフレデリカに番えていた。 実体化と同時に、周囲に極めて強い認識阻害の結界を展開させるのも忘れない。これから起こる、無惨な戦闘を誰にも気取られないように。 「あ、アーチャー!?」 何をしているのだ、と言う様な非難がましい声音で、志希が叫ぶ。友人であるフレデリカに矢を向けるなど、志希からすれば正気ではないだろう。 だが永琳の方は至って冷静沈着だった。フレデリカは、右腕に傷を負って血を流しているのではなく、誰かを傷付けた際の返り血がその手から滴っている、と言う事など永琳には御見通しである。 だがそれだけで、フレデリカをギルティだと決めつけた訳ではない。 永琳が本当に彼女が危険な存在だと思ったのは、別の要因。彼女の存在の余りの不安定さなのである。宮本フレデリカの存在は、酷く曖昧で、ブレている。 今の彼女は、人と、それ以外の存在の『情報』が揺らぎ、鬩ぎ合っている状態。言ってしまえば今のフレデリカは、人と、『何か』の中間を彷徨っている存在である。NPCですらない。それだけなら、問題ではない。問題は、その人以外の情報が極めて危険な存在のものであり、今この瞬間に暴走する事が目に見えていると言う事なのである。 断言出来る。戦闘は、最早避けられない。 これより永琳は、宮本フレデリカ――もとい、フレデリカを侵食している怪物との戦闘に突入する事になる。 殺すか、殺されるか。それでしか終わらない。つくづく、主君の為に厄介事に巻き込まれるのが、自分の宿命らしいと永琳は苦笑いを浮かべてしまった。 「し、き……ちゃん……志希、ちゃん……!!」 身体の中に救う病巣や悪性腫瘍の齎す痛みに耐えるように、フレデリカが身体を極度に震わせ、地面に膝を付いた。 「フレちゃん!!」、と叫び、前に出ようとする志希だったが、当然永琳は許さない。バッと、志希の靴を踏んで抑えた。 「逃げ、て……もう、耐えられない……!! 何処か、遠くに……ィ!!」 頭を掻き毟りながら、四つん這いの状態でフレデリカが叫ぶ。 哀願に近い、痛切な叫び声だった。宮本フレデリカ、と言う人格が、怪物の人格にとって変わるまで、もう一分の猶予もない。 間違いなく暴走する。フレデリカ、と言う少女もそれを予期しているのだろう、でなければ、こんな言葉は出ない。 「アーチャー、お願い!! フレちゃんを助けて!!」 ――否。殺す。 本心を言えば、助けたい。救える者は救いたい。永琳だってメフィストと同じ、プライドの高い医者である。患者が救えませんでした、など我慢が出来ない。 だが、永琳は既に知っている。既にフレデリカが救えないと言う事を。彼女を苛んでいる要因は腫瘍でもなく感染症などの病気でもない。 もっと根元的――万物を構成する最小の要素、原子より小さく素粒子よりも細やかなもの、情報が改竄されているせいだと永琳は見抜いていた。 これは、治せない。病気を治すのと、万物を構成する情報を治すのとでは次元が違い過ぎる。生前ですら、治せたか如何か解らない程だ。 メフィスト病院に連れて行けば治せるのかも知れないが、それをする気は永琳には無い。 病院に連れて行く間に、フレデリカが完全に暴走し、志希を殺す事を危惧しているのだ。そうなってしまえば元も子もない。 つまり永琳は、主である一ノ瀬志希を守る為に、彼女の友人である宮本フレデリカを殺すのだ。 ……絶対に治る事のない、情報の改竄と言う現象に苦しむフレデリカを唯一救う方法、外部から死を齎すと言う救いを以って、彼女に引導を渡そうと言うのだ。 「……天才が、聞いて呆れるわね」 これしか方法が思い浮かばない自分の知性と、救ってやりたい存在を殺す事で救うと言う陳腐なやりかたしか出来ない自分の実力を、永琳は呪った。 呪いながら、彼女はフレデリカの胸部に鏃の照準を合わせ――この瞬間、彼女の暴走が本格的な物となった。 腕に刻まれた痣のような物から、白色の光の筋が彼女の前身にくまなく走り初め、それが頭頂部から爪先にまで走るや、彼女は光の柱に包まれた。 光の柱の内部では、永琳ですら瞠若する程の大量の魔力が嵐のように荒れ狂っていたが、直にそれは安定して行き、光の柱の内部に存在する何かに収斂する。 変身を終えた、いや、フレデリカの三次元空間上での姿が、彼女を苛んでいた何かに乗っ取られた、と言う言い方の方が正しい事であろう。 光の柱が止まると、永琳の見立て通り、其処にはフレデリカではない、真実フレデリカ以外の怪物が存在した。後ろで志希が、息を呑む声が聞こえた。 光の柱から現れた存在は、フレデリカとは似ても似つかぬ、人間の女性を基(もとい)にした何かであった。 身長は永琳と同じ程で、プロポーションはフレデリカ以上にグラマラスで、女性的である。髪の色は変身前同様の金髪であるが、後ろに前に、 その髪が長く伸びているだけでなく、その輝きたるや煮溶かして不純物を全て取り除いた黄金の如くに美しく光り輝いていた。 だが何よりも目を瞠るのは、その身体の色だろう。石灰か何かのように彼女の身体の色は真っ白で、その白い皮膚の上に墨に似た黒い刺青を全身に幾何学的に走らせているのだ。 その双眸は驚く程機械的で冷たく、右手に握られた磨製石器を思わせる武骨な黒曜石製のナイフは、人間に備わるプリミティブな恐怖を喚起させる、武骨だが恐るべき凶器である。 永琳が予測した以上に、これは危険な存在だった。 救うだの何だのとは言っていられない、どの道、葬るしか道はないだろう。それ程までに危険な存在だと永琳は判断し、そしてそれは残酷なまでに正しかった。 宮本フレデリカの変身した怪物――悪魔――こそは、古の昔メソポタミアや西セムの民族が崇拝した大地母神であるからだ。 数多の名と数多の姿を持ち、数多の土地で形を変えて尊崇されて来た、肥沃な大地の化身にして、自然の恵みと厳しさをか弱い人間に教える偉大なる母神。 そのあまりの信仰の強さの故に、彼の基督教は彼女を悪魔に貶め、しかしそれでも、その信仰を完全に消し去らせる事は出来なかった、強壮な女神――を模した怪物。 「人類……裁かれねばならない……美しい霊と、美しい地……そして、ママ・メムアレフの為……違う、私は……!!」 変身した高次存在本来の物であろう低いハスキーボイスと、フレデリカの声である若い女性の声が、二重音声になっている。 まだ、怪物本来の意思と、フレデリカの意思が鬩ぎ合っている状態だ。フレデリカの意思は消えていない。 尚の事、倒されねばならないと永琳は思った。ただでさえ強大な力を持っている上に、この悪魔は人類に対する明白な敵意すら抱いている。 放っておいて良い筈がないし、放っておいてもこの場にいる志希達が真っ先に狙われる。悪魔の意思がフレデリカの意思に打ち勝って顕在化する前に、この場で斃さねばならないのは明白だ。 「この地に、母はいない……なれば私が、地上を破壊し、ニンゲンを殲滅し尽くすまで……美しい霊と、嘗てこの地に生きていた気高きニンゲンの為に……!!」 「嘗ての栄華に縋る貴女の様は、私の目から見ても美しくなくてよ。旧き地母神……『アシェラト女神』」 永琳のその言葉は、確実に、眼前の悪魔――地母神・アシェラトの怒りの要訣を抉った。怒気が、瞳と身体から迸る。空間が、ぐにゃりと水あめの如く歪み出した。 「貴様……私達と同じ旧き神であると……言うのに、私達の悲……願を嘲弄すると、言うか」 完全にアシェラトの物となった声を受け、失笑とも言う様なリアクションを永琳は取ってしまった。張りつめた永琳を笑わせるに足る一言だったのである。 「時に忘れ去られた存在ならば、静かに滅びを受け入れなさい。この世において全ては、仮初の客。私も神も、それは同じ」 「――神は、滅ばぬ……からこそ神なのだ。私は滅ばない!!」 かぶりを振るう永琳。出来の悪い弟子か生徒に呆れる教師宛らの態度であった。 「言っても無駄だったようね。これだから、感情的な地母神様はイヤなのよ」 フッと、永琳の顔から失笑の表情すら消え失せた。感情が死んでいるとしか思えぬ、能面の如き無表情だった。 その表情のまま、番えた矢をアシェラトの方に放った。時間流を局所的に加速させ、初速の段階で音を超える程の速度で矢を放つ、永琳が使う弓術の絶技である。 それをアシェラトは、手に握った黒曜石のナイフを振い、粉々に破壊。それと同時に、体内に循環されていた魔力を調整。 「アギダイン――!!」 その一言と同時にアシェラトは、頭上に巨大な火球を展開させる。局所的に小規模な太陽が降りてきたように、周りが明るくなる。 この恐るべき大火球を、旧き女神は永琳と志希目掛けて高速で飛来させる。摂氏にして八千度以上は下るまい。 直撃すれば志希など骨どころか灰すらも残らず焼き尽くされる。これを永琳は、弓を持っていない左手で軽く払った。 誰が信じられよう、永琳のか弱い繊手が火球を打ち叩いた瞬間、それは幾千幾万もの火の欠片になって砕け散ったのである!! アシェラトが目を見開かせる、が、原理を明かせば何て事はない。永琳が有する埒外の対魔力が齎した結果に過ぎない。彼女の対魔力は、女神の扱う超絶の魔術ですらも一方的に無効化させる。 火球を砕いたばかりの永琳の左手に、一瞬で五本もの矢が握られていた。 それを彼女は、マシンガン染みた速度で次々と右手に握った和弓に番えて行き、連射させて行く。 放たれた矢は軌道上で細い光の筋――レーザー――のようになり、十m先のアシェラトの急所に放たれて行く。 これをナイフ状の石器で次々砕いて行く、しかし永琳は止まらない。放った五本の矢が破壊されると殆ど同時に、また矢を番えて高速連射させていたからだ。 しかも、先程の倍の十本。これは堪らないとアシェラトも考えたか、最初の四本を砕いた後、左方向にステップを刻み、矢の軌道上から逃れた。 残りの六本の矢は新国立競技場の内部、北側入り口の先に広がっていたロビーに消えて行く――かに思われたが、物理法則の下では有り得ない程のUターン軌道を描き、 勝手にアシェラトの方に向かって行くではないか!! アシェラトも異様な気配を感じたのか、背後を振り返り驚きの表情を浮かべていた。 永琳は放った弓矢に、自動追尾の術式を当て嵌めていたのである。命中するか破壊されるまでは、地の果てでも永琳の放った矢は相手を追跡するのである。 アシェラトは火球を矢に放ち、直撃させる。着弾と同時に火球は、レーザーと化した矢諸共、噴火を思わせる火柱になり破壊される。 石畳が一瞬で融解し、溶岩状になる程の威力。流石、高位の悪魔が放つ魔術であった。アギダインと呼んでいた魔術が砕かれると同時に、永琳がアシェラトに接近。 いつの間にか弓矢は三次元と四次元の間の隙間にしまわれており、永琳は空手だった。アーチャークラス、それも筋力のステータスに優れぬ永琳が、素手で戦闘を行おうと言うのである。 右手の指を全てピンと立てた状態で永琳は、アシェラトに対して手刀を行った。 水平に振り抜かれようとするこの攻撃を、この地母神はナイフの刃部分で防御、永琳の手首を斬り飛ばそうとする。 が、ナイフ越しにアシェラトの身体に舞い込んだのは、高速で放たれた砲丸に直撃したような凄まじい衝撃。 その衝撃に対して何の対策もしていなかった為に、彼女の身体は紙のように吹っ飛んだ。これが、本当に、生身の女の身体と石器が衝突した際に生じたエネルギーなのか。 アシェラトを吹っ飛ばしたのは確かに、永琳の手刀に内包されていたエネルギーであった。アシェラトが地面に着地したのと殆ど同じタイミングで、永琳は再び接近。 既に手刀の間合いに入っていた永琳は、右手刀を振り下ろすも、これをナイフの刃部分で防御。鉄槌でも落とされたような凄まじい衝撃がアシェラトの腕に走るばかりか、余りの攻撃の威力に、防御した彼女を中心に地面が浅いすり鉢状に陥没した。 無論、今の永琳の常識では考えられない腕力と、黒曜石製とは言えナイフの刃に手を当てても切れない異常な耐久力には訳がある。 何て事はない、強化の魔術を己に施しているだけだ。但し、永琳程の魔術の達者が行う強化の魔術は、人間の魔術師が行うそれとは一線を画する。 ただの包丁の切れ味を宝具レベルにまで引き上げる事も、ただの小石の硬さを鋼の数倍にまで引き上げる事は愚か、強化の魔術の最高峰である他者の強化、遂には曖昧な概念を更に曖昧にさせる事など、永琳にとっては赤子の手を捻るようなもの。そんな彼女が、己の身体能力と言う狂化の魔術の基本を行えばどうなるか? 各種ステータスを、実質上Aランク以上に相当する修正を行う事が出来るのだ。これを永琳は行っていた。彼女程のサーヴァントにとって、ステータス程意味のない指標はない。己の意のままに、その値を乱高下させる事が出来るからだ。 力を込め、アシェラトは永琳を弾き飛ばそうとする。永琳は抵抗を行わず、地母神が力を込めた方向に吹っ飛ぶ。 吹っ飛ぶと言うよりは、殆ど打ち上げられたと言う風が適切であり、永琳はアシェラトの単純な腕力で、十五m程も頭上へと飛ばされていた。 其処に悪魔が、アギダインを何発も永琳目掛けて飛来させるが、その全てを永琳は、左手指から発射した蒼白い色をした魔力の弾丸で粉砕させて行く。 魔力の弾丸を放つ技術、即ちガンドと言う初歩的な技術ですら、永琳が行えば対魔力ですら信頼に足るのかと疑問を抱かせる程の必殺の一撃と化す。 矮化されているとは言え、神霊の名を冠する強大な悪魔が放つ魔術ですら、相殺に持ち込める程にだ。 重力を制御する術法を用い、アシェラトの腕力で吹っ飛ばされた高度十五m地点を浮遊しながら、永琳はガンドの弾幕を放ちまくる。 それは最早弾幕と言うよりも、弾『壁』とも言うべき代物で。真正面から見れば回避する隙間が一切存在しない。 そんなものが、アシェラトを押し潰す様に、四方八方から向かって来るのである。これを地母神の姿をした悪魔は、身体を独楽の如く回転させ、 手に持っていたナイフの風圧と衝撃波で破壊し、無効化させる。これ位は出来るのか、と永琳も実力の予測を更新させた。 スペルカードルールに則った弾幕では、多少は相手が回避出来る程度の間隙を用意するのが暗黙の了解であるのだが、そんなルールが存在しない聖杯戦争においては、永琳も容赦しない。回避不能、反応困難の、反則そのものの弾幕を永琳は平然と行い続ける。 其方がその気なら、と、アシェラトは宙に浮いている永琳目掛けて黒曜石のナイフを高速で幾度も振り抜いた。 すると、この地母神が振り抜いのと同じ向きと角度をした、黒紫色の光の筋が空間に刻まれ始め、それが高速で永琳の方へと飛来して行くではないか。 斬撃エネルギーの可視化と実体化、アシェラト女神程の神格であれば成程、そんな芸当造作もない事だろう。だが、永琳からすれば面白みのない技術だ。 迫りくる斬撃エネルギーを、拳大程のガンドを放って尽く破壊、エネルギーを破壊したままの勢いを保ちながら、蒼白いガンドがアシェラトの方に向かって行く。 これを黒曜石の凶器で以って殴打、永琳の方へとホームランの要領で打ち返す。ガンドが身体に到達するよりも速く、永琳は瞬間移動の魔術を構築させ、直に地上にワープ。事なき事をえる。 此処まで戦って、永琳には解った事が一つある。このアシェラトは、間違いなく本物の神霊ではないと言う事。 身体能力こそは確かに、本物に近いのかも知れない。だが、神が神である為に必要な、最大の要素を目の前の存在は欠いていた。 つまりは、『権能』である。アシェラト程の神格が奮う権能は凄まじい物で、仮にだが、この場にいるアシェラトが真実本物であるとしたら、 サーヴァントの身に矮小化された永琳では万に一つも勝ち目は存在しない。サーヴァントの永琳がアシェラトと渡り合えている理由は、一つ。 目の前のそれが、権能を行使出来ない紛い物の神格に過ぎないからである。身体能力は十分過ぎる程脅威だが、権能の扱えない神など、その強さの半分以上も損なっていると同義。つまりは――弱い、と言う事だ。 「……フレ、ちゃん……」 志希が、変わり果てたと言う言葉ですらが控えめに見える程の変貌を遂げた、宮本フレデリカ=アシェラトを見て、呆然と呟く。 無二の友である少女が、自分の引き当てたサーヴァントと、殺すつもりの熾烈な戦いを繰り広げていると言うこの現実を、まだまだ認識出来ていない様子だった。 何故フレデリカが、よりにもよって自分の引き当てたサーヴァントと戦う最初の存在になってしまったのかと、志希は己に降りかかる運命の残酷さを、呪っているのかもしれない。 機先を制したのはアシェラトの方だった。 持っていた黒曜石のナイフを思いっきり永琳の方に突き出した。距離にして十数mも離れている為、普通は当たる筈がない。 しかし、持っている得物の見かけ上のリーチの差など、何の意味も持たないのが聖杯戦争での戦いである。 突き出させたナイフの先端から、具現化した貫通エネルギーの凝集体となった光芒が射出、永琳の身体を貫こうとする。 攻撃が放たれた事を、常識を逸脱した思考速度で永琳は認識、攻撃が放たれたのを見てから回避行動に移る。 身体を半身にする事で、アシェラトの放った攻撃を回避した永琳は、彼女の周りの空間の時間流を意図的に遅く設定。 悪魔は次の行動に移ろうと身体を動かし、体内の魔力を循環させようとするが――行動速度が素人、それこそ志希にすら視認出来る程に遅い。 アシェラトは驚きの表情を浮かべようとしているが、それを作るのだってスローモーションカメラで撮影した様に遅すぎる。 時間の流れが遅い空間にいれば、耐性のないものは如何なる動作、如何なる生理反応もスローになる。脈拍や血液の流れでさえも、だ。況や、魔力の循環など。 時間流の遅い空間にいる存在は、時間の流れが正常の空間にいる者から見れば、極端にスローの状態になる。 と言う事はつまり、攻撃を叩き込むカモであると言う事だ。永琳がそれを狙わぬ筈がない。案山子同然となったアシェラトに対して、 手元の空間に産み出させたクレバスの様な裂け目に手を突き入れ、其処から弓矢を取りだし、高速で番えて発射。 弓道の的の様に其処から動けずにいたアシェラトは、永琳の一撃に命中。音の五倍の速度で射出された矢は、アシェラトの胸部に命中したばかりか、鏃は背中まで貫通。 直撃の勢いを受けて、地母神の女体が後方に数mも吹っ飛び、仰向けに倒れた。血が、女神の口から溢れ出て、白と黒の身体を紅く染め上げた。 アシェラトの頭上に、青く激発する榴弾を大量に生み出させ、それを凄まじい勢いで永琳は落下させる。 しかし、直に意識を取り戻したアシェラトが放った、アギダインと呼ばれる火球の連発により、永琳の放った榴弾は全て到達前に焼き尽くされてしまった。 意外としぶといと思いながら、永琳は地を蹴り、二十m程も離れた距離を一瞬でゼロにし、倒れているアシェラトの方に接近。 彼女の腹部目掛けて、右足で思い切りストンピングを行う永琳。これに気付いたアシェラトが、急いで立ち上がって回避。 永琳の右足が石畳に衝突する。踏みつけられた地点を中心とした直径数mがクレーターになったのと同時に、アシェラトも攻勢に転じる。 黒曜石のナイフを縦に振り下ろすのを見た永琳は、空間転移の術を用い、ナイフの軌道上から幻のように消え去る事で回避。 ナイフが振り下ろされたゼロカンマ一秒後程に、先程まで永琳がいた地点に、深い三本の痕が刻まれた。 獣の爪痕の如きそれは、硬い石畳を果肉をスプーンで抉るような容易さを以って削り取られており、それが一方向に十数m程も伸びている。 直撃していれば、どうなっていたか。対魔力は物理的な衝撃を緩和させられない、こればかりは素の耐久力で耐えるしかないが、永琳としては直撃は避けたい所だった。 成立させた空間転移の術で移動した先は、アシェラトの五m背後だった。 その地点で番えだすが、この瞬間、アシェラトが何らかの呪言を小声で口にするのを永琳は聞いた。「テトラカーン」、確かにそう呟いた。 急激に嫌な予感を感じ取った永琳は、鏃の照準をアシェラトではなく、アシェラトから数m狙いを前にした地点に定め、其処に矢を放つ。 矢は石畳に当たった瞬間砕け散るばかりか、石畳も破砕させ、その礫を凶悪な女悪魔の方に飛来させる。速度にして亜音速、掠ればその部位は一瞬でミンチになる威力だ。 それがもうすぐ衝突する、と言うその時だった。永琳の目ですら見えなかった、ルビーの板のような透明な赤色の障壁が突如としてアシェラトの前に出現。 矢が弾き飛ばした石礫がこれに命中した瞬間、衝突時のスピードを完全に保ったまま、永琳の方へと反射されて行くではないか!! 拙い、と思い、永琳が身体を半身にさせるが、回避が間に合わなかった。礫の一つが左肩に命中。肩の一部を、肩甲骨ごと抉り飛ばされ、其処から血が噴出した。 「あ、アーチャー――!?」 事態を認識した志希が、悲鳴に近い声を上げる。 現状自分が最大限頼れる相手である永琳が、血を流す、と言う誰の目から見ても明らかな手傷を負ったのだからそんな声も上げるだろう。 「……時間が経過する毎に力を取り戻してる……? だとしたら厄介ね」 一方永琳の方は、骨すら砕かれる程の一撃を貰ったと言うのに、恐ろしく涼しい顔をしていた。 まるでこの程度の痛みは、慣れっこであるとでも言うように。痛覚が完全に機能していないか麻痺しているとしか思えない程の、恬淡さであった。 永琳が命中させ、今まで胸部に突き刺さったままだった矢をアシェラトは引き抜く。傷が驚く程軽微だ、回復の術にも長けているらしい。 負わせた傷を安定状態にさせるや、アシェラトの体内に、魔力が循環して行くのを永琳は感じ取った。 悪魔の意識が表面化して行くと言う事は即ち、肉体もまた悪魔のそれに近づくと言う事と意味合いは一緒である。 つまり、時間が経てば経つ程、宮本フレデリカ=アシェラトは危険な性質を帯びて行くと言う事になる。 完全に悪魔に意識が乗っ取られれば、それは最早一個のサーヴァントと殆ど変りがない。そうなる前に、仕留めねばならないだろう。 「テラダイン」 独特の韻律でアシェラトがそう呟いた瞬間、自分の立っている地面に、魔力が収束して行くのを永琳は感じた。 跳躍、空を飛んで回避する永琳。すると、先程まで永琳が立っていた地面が、まるで地中に埋め込まれていた不発弾が発破される様に砕かれ、爆散。 どうやら、ある種の対人地雷を踏んだような、凶悪な威力の爆発を地面から発生させる魔術らしい。あの場に後ゼロカンマ数秒程佇んでいたら、永琳の下半身は粉々になっていた事だろう。 空に飛び上がった永琳に目線を送るアシェラト。二の矢は既に、整え終えているらしい。 先程放ったテラダイン、と言う魔術は言わば当てるつもりのない魔術。此方が、本命であるらしい。桁違いの魔力が、アシェラトの体内で収束して行くのが永琳には解る。 「――メギドラ!!」 その言葉と同時に、永琳とアシェラトの間に、アメジストに近い色味をした紫色の球体が現れた。 ただの球ではない、凄まじいまでの魔力と熱エネルギーを内包した球体である。そのエネルギー量の総量は凄まじく、炸裂させればこの地点からでも、新国立競技場の半分近くは消し飛び、近場に存在する 新宿 の首都高速にも甚大な被害が出る。確実に言えるのは、永琳は無事で済むが、マスターの志希がそうはならないと言うう事だ。 急いで永琳は暴走寸前のエネルギー球の下へと近付いて行き、そこに左手を突き入れる。 このメギドラと言う魔術は特別らしい、永琳レベルの対魔力ですら、一方的に無効化する性質を持っているらしい。 左手が一瞬で黒焦げになり、炭化寸前になる。味わった事のない痛みに眉を顰める永琳だが、彼女の行動は迅速だ。 即座にこのメギドラと言う魔術を解析、性質を理解するや、急いで対になる要素の魔力を注入させ始めたのだ。いわば中和だ。 見事に永琳の行った事は功を奏し、魔力球はゆで卵の殻のように剥離されてゆき、無害化される。 だがこれもまた、アシェラトにとっては予測出来た事柄らしい。 この女神の真なる狙いは、アーチャーのマスターである一ノ瀬志希だったらしい。この地母神は永琳がメギドラを対策している間、地を蹴り、志希の下へと近付いていた。 ――拙いッ!!―― メギドラを無害化させた永琳は、炭化してしまった左手を治す事すらせず、空間転移の術を成立させる。 時間が経過して行くうちに、アシェラトの方も永琳と志希の関係性に気付いたらしい。極めて高い単独行動スキルを誇るとはいえ、主であるマスターがいなくなれば、さしもの永琳も活動限界が早まってしまう。それだけでなく、この世界に於いては永琳の主は蓬莱山輝夜ではなく一ノ瀬志希。 主を死なせると言う事については、自分の死よりも強い忌避感を永琳は抱いている。仮初の主とは言え、自分が付いていながら主を殺すと言う醜態は、永琳には我慢出来ない。己の矜持の為に、永琳はアシェラト達の方へと転移した。 危機が迫っていると言う事自体に、志希は気付いていなかった。 元よりアシェラトと永琳の攻防は、人間の反射神経の限界を容易く超える程の速度で行われている。ただの人間である一ノ瀬志希が、反応出来る筈がなかった。 故に、気付かない。アシェラトが目の前に現れ、志希の方目掛けてナイフを振り下ろそうとしている事に。自分の目の前が、アシェラトが立ちはだかったせいで暗く陰った事すらも、気付いていないだろう。 「――志希、ちゃん」 一瞬だが、性質がフレデリカの物に変わっていた。アシェラトの恐ろしげな瞳に、人間的な色が過る。表情も、酷い懊悩で彩られていた。 「え、フレ、ちゃ――」 志希が何かを言うより速く、アシェラトの鳩尾に、血濡れた手が生えた。 アシェラトの背後に回った永琳、彼女の右貫手が、プリンに針でも刺すような容易さで、頑丈な女神の身体を貫いたのだ。 血の雫が飛び散り、志希の白衣と顔に、降り掛けの雨粒のように付着して行く。酷く生暖かく、ぬめっている。 何処か塩くさい鉄の香りが、志希の嗅覚が捉える。其処で漸く、我が前で起っている事態を彼女は認識した。 永琳はアシェラトの身体に蓋をしている右腕を引き抜いた。ドボッ、と言う効果音が付きそうな程の勢いで、血液が鳩尾に空いた風穴から溢れ出た。 ――この瞬間だった 今まで永琳が戦っていたアシェラトと言う存在に、ビデオ映像を巻き戻したような急速な変化が齎されて言ったのは。 白かった肌は一瞬で白人相応の肌色になり、伸びていた金髪が短くなって行き、手にしていたナイフも粒子になって消えて行く。 そして、志希と永琳の前に現れたのは、クローネのコスチュームに身を包んだ、宮本フレデリカの姿だった。 怒れる地母神としての面影は顔にも身体にもなく、大地の恵みと怒りを象徴する大量の魔力も、既にフレデリカにはない。十九歳相応の小娘としての風格を纏った、一人の人間の姿があるだけだった。 「――ああ、美味しそう」 志希の背後十m程先に停車されていた、ケバブの移動販売車を見ながら、フレデリカがそう言った。 ドッ、と言う音を立ててフレデリカが仰向けに倒れ込む。「フレちゃん!!」、と志希が叫び、彼女の所へ駆け寄った。 「す、凄い……お友達だね~シキちゃん……あ、アタシにもそう言う友達……いたんだよ~……う、嘘、だけど……」 「喋らないで!! 血が、血が……!!」 こうしてる間にも、フレデリカの身体からは血が流れ続けている。 永琳の貫手によって生み出された鳩尾の風穴は元より、如何やらアシェラトの時に負った傷も据え置きらしい。 無理やり矢を引き抜いた傷も完全には回復し切っておらず、其処からもだくだくと、生の証である紅い液体が流れ続けていた。死の瞬間まで秒読みである事が、素人でも受け取れよう。 「ねぇ、アーチャー!! 傷……治してよ!! フレちゃんの傷も、治せるんだよね!?」 「……」 首を横に振る永琳。途端に、絶望の紗幕が志希の顔を覆った。 無論の事、永琳は嘘を吐いている。フレデリカを苛む傷を治す事は、永琳にしてみれば赤子の手を捻るよりも容易い事。 だが、フレデリカを苛んでいる最も重要な、情報改竄による悪魔への変身能力、こればかりは現状治す事は出来ない。 これがある以上フレデリカは暴走を引き起こし、志希の命に危険を齎す可能性が極めて高い。つまり永琳は、治せないのと同時に、治したくないのである。 これは即ち、八意永琳と言うサーヴァントが持つ医術の敗北であった。殺した方が楽になると言う道への、逃避であった。 「そ、そうだ、ねぇフレちゃん!! メフィスト病院って知ってるよね?どんな病気でも治してくれるって病院何だけど、あたし達今其処でちょっと働いてるの!! す、凄いでしょ? だから、其処に行って、治そうよ。ね、ね!!」 「……あはは、初めて、見た……。シキちゃん、意外と泣き虫さんだね……」 言ってフレデリカはよろよろと、血に濡れていない左手を上げて、志希の頬にそっと触れた。 フレデリカの思わぬ動作に一瞬たじろぐ志希だったが、直に、その意図を知る。眦がやけに熱いと思った彼女は、目元を指で触れてみる。 透明な雫が、志希の細い指から滴り落ちた。他ならぬ自分の眼から、今も泉のように湧き出てくるそれを、志希は止めようとどんなに思っても、止める術を持たなかった。 「え? あ、あれ? おかしいな……あたしが泣いてたら、フレちゃんを励ましたって……」 白衣の袖で何度も何度も顔を拭うが、全く涙が止まらない。ただ袖に、温い濡れ痕を作るだけだった。 「……アタシね、二人、殺しちゃった。加蓮ちゃんと凛ちゃん……」 「……えっ?」 予想だにしない言葉に、志希が呆然とした表情を浮かべる。 「悪い奴を……やっつける為に、って……嘘、吐いてね……。本当は、お腹が空いてるのを我慢……出来なくて、酷い事して……それで……それで……」 血液の塊が、フレデリカの口から溢れ出た。「フレちゃん!!」、悲痛そうな叫び声が響き渡る。 「だから……ね、二人の所に行って……あ、謝りたいなぁ……って。で、でも……許して、くれるかなぁ……と言うか、アタシ、あんな酷い事して、二人と同じところ、い、行ける……のかな……?」 話の内容が、全く頭に入って来ない。脳の処理が追いつかないのと、脳がフレデリカの言っている言葉の理解を拒んでいるせいで、全く言っている意味が咀嚼出来ない。 頭蓋の内部が燃えているように熱く、その熱に充てられたせいか、今も双眸から溢れ出る涙は、灼熱の溶岩のように熱かった。 「し、シキちゃ~ん……な、泣いて……ばかりじゃ変な顔になっちゃうぞ~……♪ す、スマイルスマイル……」 口の回り愚か、首すらも血でぬらつかせているフレデリカが、ヒクヒクと痙攣した口の端をつり上げて、無理やり笑みを作ろうとした。 それにつられて、志希の方もいつもの笑みを浮かべようとするのだが、口の端が、糸で縫いつけられたように上がらない。 上げようとしても、ふるふると唇が震えるだけで、笑みと言うよりは寧ろ、哀しみを必死に抑えている風にしか、傍からは見えなかった。 「……し、シキちゃん……」 「な……に……?」 「……お腹……空いちゃったな……アタシ。あそこの美味しそうなケバブ、お、……奢って、欲しいなぁ……って」 「け、ケバブ……って」 後ろを振り返る志希。確かに其処には、ワゴン車を改造した、移動式のケバブの屋台が存在した。 店員は気の弱い者だったか、焼いている途中だったケバブの肉塊をそのままに、何処かに逃げ出し、無人の状態であった。 「わ、解った。待っててね!!」 間違いなく、これが今生の別れとなると、志希も悟ったらしい。最後の頼み位、聞いてやらねば嘘である。 急いでケバブの販売車の方へと駆け出し、店員が作り置いている筈の物を探し、見つけた。パンに分厚い肉を挟んだそれを手に取ってから、志希は急いで店内に千円札を置き、フレデリカの方へ駆け寄る。 「ちょっと冷たいけど、たぶん美味しいと思うよ!!」 そう言って志希は、フレデリカの口元にケバブを持って行く。 ……全く、フレデリカがケバブを咀嚼する感覚が、志希の腕に伝わって来ない。パンに挟まれた千切りにされたキャベツやレタスなどの野菜が、 ただパラパラと落ちて行くだけ。嘗て悪魔に変身出来、そして自らの在り方と悪魔に変身出来る事による副作用に苦しんでいた少女、フレデリカの瞳は、閉じられていた。 瞳から頬に掛けて、何か透明な雫が通った跡が、志希には痛い程解る。鉄のように重い瞼が閉じられたその表情は、笑いながら泣いているように志希には見えた。 そっと、頬を触ってみる。何が起っているのかは、実を言うと触れずとも解る。誰だって解るだろう。だが、解っていても、彼女は解りたくなかった。 だから、最後の確認と言う意味で、触れてみた。フレデリカの身体から急速に熱が引いて行くのを、志希は再認してしまった。触れねば良かったと、彼女は思った。 「……貴女が向こうに行っている間に、亡くなったわ」 其処で、志希の身体に火が灯った。 持っていたケバブを放り捨てて立ち上がり、無慈悲にフレデリカの状態を告げた永琳の頬を、右掌で打擲した。 パンッ、と言う小気味の良い音が鳴り響く。音速にすら反応出来る程の反射神経を持つ永琳が、避けなかった。永琳の身体は、叩いた志希の方が申し訳ないと思う程に、柔らかかった。 「……」 黙って永琳が、志希の方を見つめる。まだ、その目には涙が溜まっていた。 「……生き物ってさ、本当に謎が多いよね……。虫や犬、鳥の謎だって解明出来てないのに、自分達ヒトの謎だって人間は全部解き明かせてない……。だけどね、一つだけ。生き物に対して、確かに解る事が、あると思うの」 「それは?」 「どんな生き物だって、死ぬ事からは避けられない」 至極、当然の事だった。 ませた子供ですら、今時は知っている理屈だろう。しかし永琳はそれに対して茶々を入れずに、聞き続ける。 「『死』なんて、究極的には全ての生き物が最後に経験する不可避の生理現象でしょ? 地球だって太陽だって、宇宙だって永遠じゃないんだから、人間なんかが永遠に生き続けられる筈ない。消えてはまた生まれて、の繰り返し。だからね、死ぬ何て事、そんな悲しく思わない方が、幸せに生きられるんじゃないかな~……って、……あたし、思ってた。だ、だって……誰だって、経験するんだもん……」 言葉が後の方になるに連れて、プレゼンテーションを行う様な饒舌さが志希の口から失われ、計画性も纏まりもないアドリブをしているかのように、口調の統一も無くなり、言葉を選ぶと言う事にも時間が掛かるようになって行く。 「でも、口でそう言っても、心ではそう思ってても……全然……ダメだね……。NPCだから、泣く事はないって……アーチャーは言うのかも知れないけど……あたし、凄い悲しくて……悔しくて……」 其処で、堪えていた感情が決壊し、涙が志希の瞳から溢れ出た、石畳に落ちて、涙が砕ける音すら聞こえそうな程の静寂を、志希が思いを乗せた言葉で切り裂いた。 「NPCだって解ってても、元居た世界のフレちゃんじゃないって解っても!! あたし、全然駄目で、フレちゃんの死を本当のフレちゃんの死と重ねてて!! フレちゃんと一緒に笑おうとしても笑えなくって!! 涙だけが出て悲しい気持ちになってて!! フレちゃんの苦しみを慰めたくても慰められなくて!!」 話す内容もまとまりがなく、ただ心の中に浮かんでは消える言葉を一つ残さず、後悔しないように、ヒステリー気味に志希は叫び続ける。 それを永琳はただ聞き続ける。心に浮かび続ける闇を、志希が吐き出し終えるまで。やがて、志希の方も、身体の内部を燃やし続けていた感情の焔が消えたのか、思いの丈を叫ぶうちに頭も冷え、叫ぶトーンも落ち込んで行く。萎んだ風船のような態度で、彼女は口を開いた。 「あたし……結局、何も出来なかった……。フレちゃんを慰める事も、一緒に笑う事も――」 「泣いて、あげられてるじゃない」 志希が何かを言うよりも速く、永琳が言葉を挟み込んだ。 「な、泣いて……って……」 「彼女の死を、医者の分際で私は避けさせる事が出来なかった。その上、死んだ彼女の為に、流す涙もない。けど貴女は、彼女……フレデリカの為に、泣いてあげれてるでしょ?」 今も流れ続ける涙を、志希は指で掬った。人差し指の半ばまで、熱く濡れそぼった。 「……私は、殺したフレデリカの為に、泣いてあげる事は出来ないけど、貴女はそうじゃない。キチンと、彼女の死を悲しんであげられてる。その時点で貴女は、私よりもフレデリカと言う少女の事を救えているのよ」 志希は、黙って聞き続ける。 「離別の哀しみを癒すのに、医術は不要。ただ、感情に任せるまま、泣き続ければ良い。貴女に泣かれても、私は困らないし笑わないわ。思い切り、子供みたいに泣きなさい」 沈黙を保ち続ける志希を見て、永琳は言った。 「……良いのよ、子供で。人の為に涙を流せる自分を、誇りに思いなさい。一ノ瀬志希」 其処で、志希から遠慮が消えた。 よろよろとふらつく足で永琳の方に近付き、倒れ掛かるように永琳の方に抱き着いた。 「ひっ……うっ……ああああああああああぁああぁぁあああぁあああぁあああぁぁああぁ!!」 志希の方も、溢れ出る感情を堪えきれなかったらしい。 感情の荒波を堰き止めていた理性と維持と言うダムは、永琳に触れた瞬間決壊。愛児を失った母親の如き号哭を上げ、志希は涙を流し続けながら叫んだ。 「フレ、ちゃんが……フレちゃんがああぁああぁああぁぁああぁああぁぁあああぁ……!!」 自分の服が涙で汚れる事も厭わず、永琳は志希を泣かせ続けた。それで、彼女の気が済むならば安いものだった。 志希に胸を貸してやりながら、永琳は、あの白亜の大医宮に君臨する、一人の魔人の事を考えていた。 白いケープを身に纏う、この世の美の体現者。女神ですら蝙蝠の如く逃げ散らしてしまうだろう、運命と偶然を味方につけたような美貌の持ち主、ドクターメフィストの事を。 プロフェッショナリズムと言う言葉を用いる事すら躊躇われる程の、常識を逸脱したプライドを持った男。 それが、メフィストと言うサーヴァントだと永琳は思っていた。実際、医術の道を志す者であれば、それだけのプライドは必要になるだろう。永琳だってそう思う。 だが、あの男のプライドの高さは異常である。度を超えたメフィストのプロフェッショナリズムを、永琳は内心で嘲笑していた。 其処が、付け入る隙になると。不必要な程の倨傲さは命取りになる、と言う世の法則を大先輩として教えてやろうかとも、思っていた。 だが実際は、自分もまたメフィストと同じだったようだと、永琳は自身について再認した。 志希の友人であると言う贔屓を抜きに、フレデリカと言う人物を救えなかった自分の無力が堪らなく腹が立つ。殺すと言う事でしか救えなかった自分が呪わしい。 ――そして、人間の情報を改竄させて悪魔にさせると言う手法を取る何者かの存在が、殺してやりたい程憎々しい 事の張本人の顔も姿も名前も永琳は解らない。だが一つ言える事がある。このような事を行う存在をこそ、きっと、吐き気を催す程の邪悪と、言うのだろうと。 ――……あの魔界医師と、同じ穴のムジナのようね、私―― 志希に胸を貸し続けながら、永琳は思う。受けた恨みは十倍どころか百倍に返してやらねば気が済まない。 人を悪魔化させる技術を持ったこのサーヴァントは、八意永琳の全霊を以って滅ぼさないと溜飲が下がらない。永琳は、元凶となるサーヴァントを絶対に葬るのだと心に誓った。 ――結局自分と言う女もまた、ドクターメフィスト同様、プライドの高過ぎる一人の医者である事を、八意永琳は改めて認識したのであった。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 完全に観客全員が逃げ切り終え、無人の廃墟に近しい様相に成り果てた新国立競技場のフィールド内。 そんな状況にも関わらず、この場に残っている者が二名、存在した。観客ではないし、況してや残された者でもない。二人は自分の意思で残っている者だった。 一人は、見事な業物の刀を神技の如き軌道で振るい続ける、蒼いコートをたなびかせる銀髪の美青年だった。 刀を振るう、その一つ一つの動作が洗練された武の極致。足運び、重心の移動、そしてその剣筋の鋭さ。 どれもがこの時代の武術者では足元にも及ばぬ水準であり、その技練から放たれる居合は、空間すらも斬り取れそうな程の速度と威力を内包しているのだ。 もう一人は、黒いローブを纏った立派な偉丈夫だ。彼は両手に握った、先の蒼コートの男の身長程もある大剣を、己の手足の如く振っていた。 大きい得物程、振い難く扱いにくいが常識であるが、それは常人が認識している武の法則。この大男にとっては、そんな法則は当てはまらないらしい。 まるで小刀でも振っているような器用さで両大剣を振い、迫り来る蒼コートの剣閃を弾き続けるその姿は、正にギリシャ神話に語られるスパルトイ宛らだった。 蒼コートの男バージルと、黒灰色のローブを羽織る魔将ク・ルームの死闘は、尚も続いていた。 次々と現れた、蒼白く光る不気味な怪物を五分と掛からず殲滅。時間を掛ける必要もない程、あの怪物は、二人の烈士の前では無力だった。 そして、邪魔者がいないと解ると、双方は再び激突。観客の誰もがいなくなったこの闘技場の内部で、死闘を繰り広げていた。 趨勢は終始、バージルが有利であった。 振う大剣が二本に増えた所で、バージルとク・ルームではそもそもの霊基の出来が余りにも違い過ぎる。 使い魔と言う枠を飛び越え、極めて高位の精霊の類である英霊たる彼らサーヴァントに、使い魔としての枠を出ないク・ルームでは、出力に限度がある。 単純なステータスでは、互角だろう。だが、宝具と言う英霊=サーヴァントの最大の武器を活用するバージルを相手に、ク・ルームが勝利を拾える可能性は、偶然の女神が微笑みでもしない限り、あり得ない。そしてその女神は、魔将を見放している。邪悪なる者の使い魔に堕ちた男には眼中にない、とでも言うように。 連続して響き渡る、バージルの閻魔刀とク・ルームの大剣の衝突音。 戛然とした金属音が一続きに鳴り響きまくる。ク・ルームはその技巧を以って、致命傷に至る攻撃を大剣で防いではいたが、それ以外の攻撃は喰らう事が多い。 その証拠に生傷の数はク・ルームの方はかなり多いのに対し、バージルの身体にはそんなものは愚か土埃すら付着していない。双方の技量差を示す、何よりの証左ではないか。 一秒間の間に無数に放たれる、バージルの魔速の居合に、ク・ルームは対応。 剣を二本も持っている、と言うアドバンテージを利用し、急所や末端に対して寸分の狂いなく放たれる、閻魔刀の一撃を次々に防いでいる。 ……ように、素人には見えるだろう。しかし実際には、細かい、直撃しても戦闘不能には至らないレベルの攻撃についてはク・ルームは防御を諦めており、直撃を甘んじている。彼程の戦士ですら、直撃は最早避けられない、と覚悟を決める程の、恐るべきバージルの技量よ。 ――とは言え、ク・ルームはこれを己の敗北だと露程も思っていない。 元々ク・ルームは、十世が思いの外芳しい結果を残せなかった、その尻拭いとして今戦闘を行っている。 この時点で戦略的にも敗北を喫しているとは思うだろうが、結果的には多くのNPCにク・ルーム=タイタス=アルケアの因子を刻み込める事が出来たであろうし、結果的にはバージルと大杉栄光と言う、一筋縄では行かないサーヴァントの情報を二名も知る事が出来た。NPCにアルケアの情報を刻み込む、と言う当初の目標は、 確かに始祖・タイタスが意図してものを下回るだろう。だが、驚異的なサーヴァント二体の情報を手土産にすれば、結果的にはイーブンにまで持ち込める。 つまり、元は十分過ぎる程取れているのだ。後は頃合いを見て、退散するだけである。尤も、バージルが相手では先ず逃れられまい。 極めて不服であるが、命の数を一つ減らして逃亡する必要があるようだ。まさか今日だけで命を三つも失う羽目になるとは思っても見なかった。 聖杯戦争、かくも恐るべき戦場かと、ク・ルームの背骨が震える。タイタスから聞かされていたが、かくも恐るべき魔戦であったとは。 バックステップで距離を離し、覚悟を決めるク・ルーム。 玉砕覚悟で大剣を構え、突進を始めようとした、その時だった。自分の頭上から、第三者の気配を感じ取ったのは。 上空の敵意は一言で言えば、烈火だ。迂闊に触れれば肉どころか骨すらも灰にする程激しい敵意。 それにも関わらず、その敵意は極めて指向性が高く、目標目掛けて一点に向けられており、何の迷いもない。そう――これは、強者だけが放てる敵意であった。 頭上を見上げるク・ルーム。其処には、紅い外套をはためかせ、天蓋から降り注ぐ隕石の如き勢いで此方に堕ちて来る誰かがいた。 其処から先の事を、この魔将が知る事はなかった。誰かが堕ちて来た、と認識したその瞬間。この魔将の身体は、頭頂部から股間に掛けて、見事なまでに真っ二つにされ消滅していたからである。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「……いるのではないかと、思っていた」 そう口にするバージルの声音には、ク・ルームに対して言っていたそれとは次元の違う程の敵意と殺意が溢れていた。 ク・ルームと話す際、バージルは、彼を一太刀で斬り捨て、処理をする程度の認識で話していた。言ってしまえば、路傍の小石と同じ感覚でしかなかったと言う事だ。 ――今は、違う。バージルは目の前で佇む、紅コートのセイバーを完全に、対等な敵として相手する気概でいた。 それはつまり、手を抜いて戦って勝てる相手では絶対にないと言う事。バージル自身が、死を覚悟する程の強敵。居丈高な態度を崩しもしないバージルが、そう認めているのと同義だった。 そう認めるのも、当たり前の存在だった。 バージルは、目の前の紅の魔剣士の存在を、生前から知っていた。そして、目の前の男は、バージル程の強さの男を二度に渡って打ち倒している。 バージルが、今のままの姿だった時。そして、殺してもなお足りない程憎んでいる悪魔共の頂点・ムンドゥスに操られていた時。 目の前の存在こそは、自分と唯一対等であった男であり、そして真実、自分を超えた男。 「来たか、『ダンテ』」 その名を、この地で口にする機会は二度とない、と思っていたかと言うと嘘になる。血の繋がりと言うものは、英霊の身になっても消えぬものらしい。 根拠こそなかったが、バージルは、己の悪魔の血で、この 新宿 に己の血縁がいるのではないのか、と言う予測を遥か前から立てていたのである。 そしてそれは、紅コートの魔剣士・ダンテにしても同様。彼もまた、己に流れる大悪魔・スパーダの血を以って、自分の血縁がいるのではないかと考えていたのだ。 「アンタが出張るイベントはロクな事にならねぇな」 厳かさを隠さぬバージルに対し、ダンテの語り口は軽く、おちゃらけたそれに聞こえるだろう。事実、ダンテの表情は、常通りの不敵な笑みのそれである。 ……だが、声の端々から裂いて現れるような、圧倒的な覇気はどうだ。その道に通暁する戦士は元より、枝すら振るった事のない腕白の対極にいるような子供ですらが、ダンテの並々ならぬ敵意を感じ取れるだろう。 「華の舞台だってのに、ノーフードで、ノーアルコール。それに、……ハハハ、ひでぇな。目玉の可愛い子猫ちゃんも、あんなザマだ」 ダンテが、先程10世が破壊したメインステージの方に目線を向けた。 破断されたステージの中央あたりに、黒焦げになった三人のアイドルの死体と、下半身だけが黒焦げになり、上半身に何かに貫かれたような血色の風穴が穿たれ、倒れ伏している少女の姿があった。 「お前は何時だって時間にルーズだろうが。何かと時間に遅れ、中途半端に得物を取り逃す」 「だが何時だって、メインディッシュには間に合うぜ」 ダンテの返答は、即答とも言うべき速さだった。 「アンタの事は大体解ってるつもりだ。欲しいんだろ? 聖杯がよ。親父が泣くぜ、バージル」 「貴様には関係ないだろう、ダンテ。俺は、より力を手に入れ、貴様が狩り残した悪魔共を斬り尽くすまで」 「Wow、素晴らしい心構えだ。拍手を送ってどうぞどうぞと言いたい所だが、生憎俺は聖杯を破壊する立場でね。アンタの心を此処で挫く必要があるんだ」 「その返事も、薄々だが予測出来ていた。そして、俺達が出会えば、戦うしか道がないと言う事も」 其処で、ダンテがガンホルスターから、黒色の銃身を持った巨大な拳銃、エボニーを取りだし、バージルの額に照準を合わせた。 陽の光を受けて、名の通りのエボニー(黒檀)の名を冠したその銃身が、ギラリと、死神の振う鎌めいて輝いた。 「奇遇だな、俺もなんだ。トラブルが起ったら仲良しのキスで円満に、とはいつも行かないな俺達は。双子、だってのによ」 沈黙が、場を支配した。身体に変調を来たしかねない程の、濃密な殺意が場を満たし、そして荒れ狂った。 足元にはグチャグチャに耕された芝生の地面、どれが男でどれが女なのかも解らぬ程粉々になったNPCの死体。 酸鼻を極る悲惨で無惨なこの光景の中にあって、二人の魔剣士は、己の殺意と敵意を曇らせる事無く。これから死闘を演ずる相手の事を、睨みつけていた。 「感動の再開なんだ。笑って戦って、笑って死ねよ。バージル」 そう口にするダンテの顔も、笑っていなかった。 「……前者は、お前を斬り殺す事よりも難しいな。後者に至っては、俺には出来ない」 鯉口を切ってから、バージルが告げた。 「死ぬのはお前だからだ。ダンテ」 両者の姿が、霞のように消えたのは、この瞬間だった。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「逝きすぎイイイイイイイィィィィィィィ~~~~~~~~~~~~~~wwwwwwwwwwwwwww(宝塚ボイス)」 リハーサル室の床に、敷かれた絨毯めいて転がっている、様々なアイドルの姿を見て、美城――否、ベルク・カッツェはのびのびとした声で叫んだ。 集団ヒステリーでも起こした後のように、様々なコスチューム、様々な年齢、様々な体格が地面に横たわっている。 此処に血が流れていれば、機関銃の一声掃射を受けて倒れた群衆の姿だ、と説明しても皆は信じるだろう。それ程までの、壮絶な光景だからだ。 カッツェの扇動により、この場にいるアイドル達の九割九分が、己の持っているスマートフォンやPC類に、CROWDSを操作出来るアプリを落とし込み、 CROWDSを競技場内で戦っているであろう存在の下に差し向けた。その結果が、この通りだ。CROWDSがNPCならば兎も角、サーヴァント相手には糞の役にも立たない。 この事をカッツェは知っていた。自分が対処出来る存在なのだ。強さに秀でたサーヴァントが、あんな図体だけデカい、的そのものの怪物に後れを取る筈がない。 要するにアイドル達は、――実際には死んでいないが――無駄死にに近いのである。無論、そうなる事もカッツェは知っていたし、万に一つも勝つ事は愚か、 サーヴァントに手傷を負わせる事すら出来ないだろうと踏んでいた。そうと解っていて何故、カッツェがアイドルを差向かわせたのか。 ――簡単な話だ。全ては、己の悦楽の為だ。 破滅的な光景、人間同士が醜く争う情景、ドロドロとした憎劇。それこそが、カッツェが人間に対して求めるもの。 愛、友情、努力、結束、成功、決意。そんな物、人間に対して求めていない。生き物の本質は並べて、戦争と階級闘争である。 そしてその末の破滅を、カッツェは何よりも好む所とする。それを特等席から眺めるのは、カッツェにとってはこれ以上と無い愉悦なのだ。 それは聖杯戦争の参加者だろうがNPCだろうがどうでもいい。人が争い破滅する、その姿が良いのだ。 本当の敵は誰で、今やるべき事は何なのか。それを見失い、勝手に暴走して勝手に倒れて行くアイドル達の姿は、実に楽しかった。 仲間が意識不明に陥っても、何の疑問も抱かずカッツェにアプリを落とし込んでくれと頼んで来たアイドルがいた時など、 美城の姿を崩してしまう程の爆笑を堪えるのに必死だった。その目で、CROWDSを破壊された存在がどうなるかを見ているにも拘らず、このザマ。 この、暗黒面のカオスの具現化たるアサシン・カッツェが、こう叫ばぬ筈がない。 「ンンンンンンンwwwwwwwwwwwwwメシウマアアアァアァアァァァアアァァァァア!!!!!!!!!wwwwwwwwwwwwwwwwww」 テンションが上がり過ぎて、地面に転がっていた適当なアイドルを蹴り飛ばした。 蹴りが当たった瞬間、そのアイドルの胴体から骨が飛び出、風のような速度で壁に激突。うめき声を上げる事無く、その少女は地面に倒れた。 頭からコンクリートの壁に激突したせいか、あり得ない方向に首が曲がっている事に、カッツェは気付いたか如何か。 さて、と、これからの予測を立てるカッツェ。 九割九分のアイドルは、見ての通りの様子なのだが、残りの一分のアイドルは、アプリを落とし込む為の端末を持っていなかったり、 怖くなって逃げ出したと言う理由で取り逃してしまった。これを、追ってみるかとカッツェは思い移動を始めようとした、その時だった。 ガチャッ、と、ドアが開く音が聞こえて来た。その方向に顔を向ける。 するとその方向には、パーカーを身に纏う、オレンジがかった茶髪の青年と、野球帽を被った無精ひげの青年がいるではないか。 二人は、リハーサル室の驚くべき光景に、驚愕の表情を隠せぬ様子であった。パーカーの青年――大杉栄光が口を開く。 「なん……だよ……これ!!」 そう、言いたくもなるだろう。床のタイルが見えないと言っても過言じゃない程に、大量に倒れ込んだ346プロのアイドル達。 一部屋に大量人間を集め、其処に毒ガスを散布した風な破滅的な光景にしか、余人には見えないだろうし、そう言っても信じてしまう程の説得力があった。 「き、君達は……!?」 此処でカッツェは、カッツェとしての仮面(ペルソナ)ではなく、美城としての仮面(ペルソナ)を被ってそう言った。 演技である。二人を騙す為の。そして、彼らを破滅させる為の。 「いや、今は如何だって良い!! 君達、緊急事態なんだ。手を貸し――」 「その必要はねぇよクソ野郎ッ!!」 栄光は、主である順平が初めて聞く様な、怒気を露にした様な声でそう叫び、美城に扮したカッツェの下に飛び掛かる。 その両脚には既に風火輪が装着されており、其処から炎状のエネルギーを推進力代わりに噴出させ、カッツェの反応を許さぬ程の速度で急接近。 そして、彼の顔面に右脚による回し蹴りを叩き込むが、サーヴァントとしての反応速度でカッツェは、慌てて両腕でこれを防御。 しかし、防御の際に力を込めていなかったか、カッツェは弾丸みたいな速度で蹴られた方向へと吹っ飛んで行き、先程蹴り飛ばしたアイドルが衝突したコンクリの壁に激突。栄光の蹴りの威力は、吹っ飛ばされたカッツェがその激突の勢いで、コンクリの壁を薄焼きの煎餅みたいに砕いて尚余りあるほどの威力があった。 「ら、ライダー!?」 順平が困惑したような声を上げる。 命令を無視しての突飛な行動よりも寧ろ、栄光がこんな声を上げられるのか、と言う事実に寧ろ驚いていた。 「マスター!! そいつはNPCじゃねぇ、NPCに化けてるサーヴァントだ!!」 地面に着地してから栄光が叫ぶ。 そう、栄光は気付いていた。元々栄光達は、競技場内を移動しながら、栄光の持っている解法の技術で、何処に誰が隠れ潜んでいるのかを虱潰しに探していた。 此処に現れたのも、その一環。此処リハーサル室の壮絶な光景を前に順平は怯んだが、栄光だけは、唯一この場所に置いて無事な状態だった美城=カッツェを、解法の技術で解析していた。結果は、黒。いやそればかりか、目の前に倒れ伏している大量のアイドル達が、なぜこうなったのかと言う原因だと言う事も解った。 これが解っていたから、先んじて栄光はカッツェに攻撃を仕掛けた。事実だ。 だがもう一つ、理由がある。それこそが、重要な事柄であった。それは、大杉栄光から見たベルク・カッツェが、心底のクソ野郎に映ったと言う事である。 カッツェは明らかに、此方を演技でハメようとしていたが、栄光はそれを先述の解法で見抜いていた。その腐った性根が、許せない。 同じ手法でこの場にいるNPCも陥れたのだろう。目の前のサーヴァントは自身の悦楽の為に、地上に混沌を齎し、人類が破滅するまで争い戦わせる、 絶対悪その物だと栄光は認識した。そんな存在、栄光は知っている。生前見た事があるからだ。蝿声厭魅と言う名前の、無窮の悪意が形を成した存在であった。 「え、NPCって……俺には全然」 「俺じゃねぇとわかんねぇよ!! そしてこいつは、この光景を作り出した、張本人のクソ野郎だ!!」 「誰がクソだこのチビガキがああぁあぁあぁぁ!!!」 怒気を露にそう叫び、カッツェは、先程蹴り飛ばしたアイドルを再び、栄光の方へと蹴り飛ばした。 サッカーボールの如き勢いで吹っ飛ばされたそのアイドルを、慌てて栄光はキャッチするが、身体が異様に冷たい。そして、首がほぼ直角に折れている事にも気付いた。 誰がやったのか。答えは一つだった。怒りが、身体を支配して行くのが、栄光には解る。 「テメェッ!!」 栄光が口角泡を飛ばして叫ぶと同時に、カッツェが変身を解除する。 美城の姿から元の、ボサボサの赤髪を長く伸ばした長躯の男の姿に。口元は怒りに歪み、体中からは異常とも言うべき殺気が、瀑布の如くに迸っていた。 「ドアはノックしてから部屋に入る物だって、教わらなかったんですかぁ~????wwwwwwまぁ、人に勝手に蹴りかかる育ちの悪い猿には解らないんでしょうがねwwwwwwwwww」 おどけた口調でそうは言うカッツェだったが、伸ばした前髪から見え隠れする、血のように紅い瞳は、全く笑っていなかった。 「マスター、コイツに普通の理屈は通じねぇ、このまま放っておけば災厄になるゴミだ!! この場で仕留める必要があるぞ!!」 「……テメェ、猿の分際でゴミだクソだのと……」 其処でカッツェは、右手にノート状のアイテムをアポートさせ、それを水平に伸ばした。 これこそが、ベルク・カッツェがガッチャマン形態になる為に必要な宝具、幸災楽禍のNOTE。これを出す以上、目の前のサーヴァント、大杉栄光に齎す結果は一つ。『死』以外にはなかった。 「ミィを仕留めるって言ったな……? 燕が鷹に勝った試しは何処にもないですよぉ?wwwwwwww」 「自分で自分の事を鷹って言う奴は、総じて雀みたいな強さしかねぇんだよ。クソ野郎」 ――其処で、ベルク・カッツェの切れた堪忍袋の緒が、ズタズタに引き裂かれた。 「……五体満足で死ねると思うなよ野蛮な猿がァ……!!」 その一言を契機に、NOTEに魔力が収束して行く。それを見て、順平も構えた。 「BIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIRD GO!!」 「ライダー、お前に全てを任せるぜ。そいつを処理しろ!!」 「応ッ!!」 カッツェに蹴り飛ばされて死んだアイドルを床に置いてから、大杉栄光は変身したベルク・カッツェの下へと向かって行く。 人を幾人も喰らって来たかのような悍ましい姿の凶鳥に、翼を燃やしながら燕が特攻して行く様子に、今の構図は似ている。 悪なる鳥と善なる鳥が、今、 新宿 の地下を舞おうとしているのであった。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 如何して、こうなっているのか安部菜々には理解が出来なかった。 何故皆、あんな怖いのを平気で操ろうとしているのか。何故皆、あんな怖い存在と戦う気概があるのだろうか。 絶対に、逃げた方が楽なのに。警察やらに任せた方が、丸く収まる筈なのに、どうして自分達だけで解決しようとするのだろうか。 それが、彼女には解らなかった。だから、逃げ出した。あの、狂気と狂奔が渦巻くリハーサル室から、幾人かの年少の子供達を引き連れて。 アプリを落とし込む為のスマートフォンを、まだ買っていなかった事が菜々には幸いした。 ガラケーではどう足掻いてもアプリを操作できないからだ。だから、美城の提案には乗るに乗れなかった。もっと言えば、洗脳されなかったと言うべきなのかも知れない。 この機に乗じて菜々は、リハーサル室にいた小さいアイドル達、即ち、赤城みりあと佐々木千枝、城ヶ崎莉嘉の三人を引き連れて、新国立競技場の外へと出ていた。 菜々の力では、この三人を外に出すだけで手一杯だった。次戻った頃には、もう多くのアイドルが、駄目になっているかも解らない。 だがそれでも、現状マシな物にするべく、せめて子供達は救ってやりたかった。年長者として、その義務があると思ったのだ。 「良いですか、皆!! すぐ近くにTV局の中継車とかがある筈ですから、其処に助けを求めに行くんですよ!! 絶対に保護して貰えますから、ね!!」 此処までくれば、後は関係者に保護を言い渡せば全て丸く収まる筈。 誰もいなくなった警備員の詰所から外に出た安部奈々は、一緒に同行していた三人の小さいアイドル達にそう告げた。 「で、でも菜々ちゃんは、どうするの……?」 莉嘉が心配そうに顔を見上げて来た。まだ泣き足りないのか、眦に涙が溜まっている。 「私は、また中に戻って、皆を戻します」 「だ、ダメだよ!! い、いっしょに行こうよ!!」 みりあの方が、今度は懇願する。つられて莉嘉や千枝も、一緒になって頼み込んだ。 その健気さに菜々は涙が出そうになるが、今は彼女達の安全の方が重要だった。 「ナナは、ほら、大丈夫ですから!! 皆は早く家族の所に戻ろうね……? お願いだから」 「菜々ちゃん……」 不安そうに、菜々の顔を見上げる三人。言いたい事が解ったのか、皆はこれ以上、何も言わなかった。 「うん、いい子だね。それじゃぁ、私、行って――」 「あの、すいません。此処に私と同じ礼服の殺人鬼がいるって本当ですか?」 三人を抱きしめようとしていた菜々達の方に、そんな、気の抜ける男の声が聞こえて来た。声は明らかに、菜々達に向けられていた。 「……へ? 確かに、それらしい人はいましたけど……」 「そうですか、ありがとうございます」 菜々が、その男の方に顔を向けると、菜々の首に、凄まじいまでの衝撃が舞い込んで行き、その衝撃で首が捩じ切られる。 ぶちぶちと嫌な音を立てて筋繊維が引き裂かれ、その勢いのまま菜々の首が宙を舞った。三人を抱きしめようと言う姿勢のまま、彼女は、三人の少女のアイドルの方に、ドッと倒れ込んだ。 「ありゃ」 先程まで自分達と話していたアイドルの無惨な死に方を、三人は理解出来ていないようだった。 三人の子供達を見下ろすのは、凶器くじ番号五十九番、ステンレス製の火かき棒を右手に持った、黒礼服の殺人鬼、黒贄礼太郎であった。 「……ま良いか。子供は社会の為に必要ですし、環境保全環境保全」 そう言って黒贄は、菜々達が先程出て来た警備員の詰所のドアから、競技場の内部へと入って行く。 黒贄が閉めたドアから、三人の子供達の悲痛な叫び声が聞こえて来たが、黒贄がそれを認識していたのかどうかは、解らない。 Back Cinderella Cemetery Next Mass Destruction
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『【日立冷蔵庫】未出・迷宮入りCM捜索スレ31【シンクロ手】』にて書き込みがあり、捜索依頼が出されたCMの一覧です。 各項目前の数字は初出のレス番号を示しております。カッコ内は年代・地域・出演者等の情報の概要です。 個別ページがあるCMは該当リンクをクリックすると移動できます。 情報をお持ちであれば一番下のコメント欄にお願いします。 詳細は、スレにてご覧ください。 捜索中 12 女性がサウナに入る?(2015〜16頃、サウナの効能を紹介、関西で目撃) 13 ティファール(2010頃、食器がキッチンにぐちゃぐちゃに置かれる) 21 自殺防止?(2000年代後半、苦しんでいる人はあなただけじゃない、長崎で目撃) 26 関西サイクルスポーツセンター?(2000年代後半、春の野原に自転車の蝶と尺取虫、兵庫で目撃) 31 奈良ドリームランド(1961頃、ディズニーランドの日本版) 34 ユニクロ(2001頃、このボルトはもう増やしたくないな、森且行) 38 踊る女性と花を引き抜く女性?(2000年代前半、埼玉で目撃) 39 Persona4 the Golden ANIMATION番宣(2014頃、CMソングが平田志穂子のNext Chance to Move On) 49 ディズニーツムツム(2010年代前半、プーさんプーさんと連呼) 78 丸勝釣り具店(1988頃、東京吉祥寺釣り具のまるかつ、関東ローカル) 90 三条信用金庫(1965頃、4歳の高橋克実、新潟ローカル) 120 CMソングが小坂忠&岩渕まことの君が輝けば?(1990年代、岡山香川で目撃) 123 パイロット万年筆(1969頃、学校出た編、大橋巨泉) 199 AIG損保(2017〜18頃、Unite as One) ※キャプチャ画像は発掘済み 216 女性とカエルの着ぐるみがかくれんぼ?(2008〜10頃、関西で目撃) 220 ヨドコウヨドガレージ(子ども愛して妻も愛そう、バカボンのパパ) 229 はぎや整形(2004年版) 238 ベネッセこどもちゃれんじ(2014〜15頃、手と手をつないで、しまじろう) 239 機械音のようなサウンドロゴ?(1994〜95頃、神奈川で目撃) 241 仮面が顔を上げ血しぶきが飛ぶ?(1990年代後半、東京で目撃) 263 ヌマショク変わりそば薫(1988〜92頃、かおると呼ばれて女性が振り向く) 276 HIS(2005頃、秋もっと安し、新庄剛志) 286 飲酒運転防止?(けっこうおじさん、長野ローカル) 287 補聴器センター?(2000頃、両方から聞こえてる、福井ローカル) 293 小学館コミックGOTTA?(1999~2001頃、青春を無駄遣いしよう) 302 暖房器具?(川口浩探検隊のパロディ、北海道で目撃) 341 はぎや整形(1999頃、市内局番4桁化後、30秒版) 342 はぎや整形(2008頃、女の子がシャボン玉を吹く) 351 P&Gボールド(2002頃、ラグビー編、武蔵&玉山鉄二) 353 ベルフーズカルビラーメン(前の席に美人が2人座ってる幸せ) 358 徳田青果キングバナナ(ベートーヴェンのトルコ行進曲の替え歌) ※キャプチャ画像は発掘済み 372 沖縄ウエル専門学校(2000年代前半、ここに来て手を繋いで、沖縄ローカル) 384 チッコラコピッコラコ?(1980頃、関東で目撃) 390 姫路セントラルパーク(2000頃、ウルトラセブンの歌の替え歌、関西ローカル) 393 JA共済(2000年代前半、車が手に捕まえられる、仲間由紀恵) ※一度発見されたが削除 395 酒?(2000年代、僕はいつもの私もいつもの) 397 デジタルツーカー九州(1995頃、開業告知、クリストファーロイド、九州沖縄ローカル) 398 ホテル日航那覇グランドキャッスル(満月と首里城、沖縄ローカル) 398 ゴルフ場?(2000頃、夕方5時に那覇出発、沖縄ローカル) 398 宜野湾中古車街道(2000頃、子どもの絵日記、沖縄ローカル) 398 あやはしの水(2000頃、海中道路デザインパッケージ、沖縄ローカル) 432 保険会社?(2015頃、大切な人はいつ失ってしまうか分からない) 467 大将軍(2011~13頃、シャアが明らかな別人、石川ローカル) 482 電力会社(ハムスターの研究レポート) 509 鳥が回りながら知ってますけどとキレる?(2010頃、関西で目撃) 520 NTTドコモ九州(2000年代前半、中川愛海、九州ローカル) 577 わかめラーメンorわかめスープ?(警察と泥棒が追いかけっこ) 641 シャディ(1997頃、新郎新婦がハードルを跳ぶ) 642 点天(2004〜05頃、BGMがドヴォルザークの家路) 646 パチンコキララ(2000年代、きらきら星の替え歌、石川ローカル) 650 ナショナルエアコンエオリア(1998〜99頃、男女がギターで弾き語り) 704 バーゲン?(2016頃、ソファーに座る男女が服を脱ぐ、関西で目撃) 710 丸菱産業サンマッサー(1980年代前半、落穂拾いやモナリザ) 726 女の子の顔が崩れてロボットに変わる? 729 ペット用ノミダニ除去薬?(猿が大型犬の毛づくろい) 746 女性用の競泳水着を着た男性が歩いてくる?(1990年代前半、全編モノクロ) 760 リクルートエイビーロード(1990年代前半、レオタード姿の女性が踊る、帰って来たヨッパライの替え歌) 784 交通事故なんて大したことね~よと言って急ブレーキ?(1990年代前半) 800 最後の宇宙船行ってしまいましたね?(2000年代、関東で目撃) 801 女の子が真っ暗な部屋でテレビを見る?(2008頃、千葉で目撃) 842 商品先物取引企業の団体?(1990年代後半、ポルコロッソ) 851 GREEスーパー戦隊ウォーズ(2011頃、スーパー戦隊のタイトルを早口で読み上げ) 908 浪速予備校(1993頃、合格しタイ、関西ローカル) 909 凸版印刷(1989頃、Dance of the Waterlilies) 917 北方領土返還主張?(2019頃、おじいさんが海を眺める) 917 北方領土返還主張?(2019頃、おじいさんがベンチに座る) 918 別れてもチュキな人番宣(加瀬亮) 958 紙パック飲料?(2000年代後半、ストローをパックに押し込む) 962 小野薬品工業(1990年代後半、ビッグファミリーシリーズ、七つの子) 963 バー?(1999頃、白塗りメイクの男性4人、宮崎ローカル) 966 中央三井信託銀行(2012頃、書斎でレコード鑑賞、役所広司) 987 サークルKサンクス(2008頃、シェリエドルチェがあるお店) 992 マクドナルド(1980年代、2枚のミートにレタスにチーズ、ゴマ付きバンズは特別製) 捜索完了済 8 新三共胃腸薬グリーン(マスターがグラスに息を吹きかける、石塚英彦) 36 ジェネオンユニバーサル海外ドラマDVD(朝まであなたを寝かさない、杉本彩) 42 はごろもスパゲティグラタン(子役時代の杉咲花) 49 パクロス(ライス完食ウケる、柳原可奈子) 68 日立白くまくん(本物のシロクマ) 77 ヌマショク鍋焼天ぷらうどん(これ本番用ですか) 79 永谷園(だっこちゃん、遠藤聖大) 181 KGこどもグンゼ(小学生時代の福原愛) 211 大塚製薬オロナインH軟膏(たまにはやり返してやんなさいよ) 217 SCEロコロコ(カラフルな映像に擬音語の歌詞) 221 紳士服はるやま(礼服祭、何故そんなに悪ぶるの) 222 ライオンデンターシステマ(第九の替え歌) 223 日本食研魔法のメニュー(ジンメンカメムシ) 227 財宝(朝起きたらまず財宝、遠藤聖大) 264 日本リーバラーマソフト(食パンが逃げる) 270 ピザーラ(写真を指差したら本物のピザ) 272 日産ステージア(碧い海編) 277 日産ブルーバード(コートをタイヤに巻きつけて救出) 280 日本赤十字社(愛の献血、天使とカエル) 285 伊藤園香草茶(ウーロンチャンとハーブ伯爵の姉妹) 291 永谷園すし花子(やるねぇ奥さん、爆笑問題) 292 ダリ回顧展(私はダリでしょう、太田光) 301 明星究麺(もちもちコール編、佐々木蔵之介) 341 はぎや整形(市内局番4桁化後、15秒版) 377 金鳥ゴキブリがいなくなるスプレー(しぶとい編、岡本夏生) 393 フォードフォーカス(CMソングがザポリスの見つめていたい) 417 つきじ入船(門松鏡餅年の初めは伊達巻) 475 アンナと地球(土屋アンナ) 491 ユニリーバドメスト(郷里大輔がナレーション) 492 グリコとろーりクリームonプリン(クリームからまるハーモニー) 502 白夜書房パチンコ必勝ガイド(ツチノコ編) 519 わんぱくこぞう(私王さん私朴さん) 522 出光興産(まいどカード&ユーカード、とんねるずが漫才していて木梨憲武が小さくなる) 547 ハドソンスーパーパワーリーグ(ウッチャンナンチャン) 552 ハッシュパピー(片方ずつに男物と女物の靴と衣装を着たモデル) 557 生首ピエロ(カットサロン恋歌屋) 568 コンコルド(アイちゃんが一肌脱ぎまーす) 643 東京電力(福島と新潟の原発のPR、中畑清&川合俊一) 697 おもちゃのお城きり屋(横断歩道の渡り方) 714 アイフォー筆王2002(小池栄子&小野愛&松岡由樹) 717 カルビーじゃがりこチーズ味(踏切がチーズチーズ) 720 バスクリンきき湯(まかさ自分の口からどっこいしょが出てくるなんて、加藤あい) 722 キリンカリブーン(いいキブーン) 763 日立(社会イノベーション事業、東葉高速鉄道、佐藤浩市) 895 庄内米(ねばりとコシ編) 902 劇団東俳(持つかなぁ) 903 サンスターOra2ステインクリア(コーヒー紅茶赤ワイン) 980 エバラ坦々ごま鍋の素(ひき肉餃子青梗菜豚肉) コメント 6は既出依頼 -- 名無しさん (2022-03-18 14 21 59) 8 https //www.youtube.com/watch?v=Qg_b4eY2960 6 44~ -- 名無しさん (2022-03-21 22 43 21) 8 画質が良い方 https //www.youtube.com/watch?v=v_BqL_cZ5Wo 16 28~ -- 名無しさん (2022-03-21 23 18 58) 211は2003年頃のオロナインだと思われます。坊主の男の子は同時期の生茶に出てた子と同じだとか -- 名無しさん (2022-03-25 19 29 54) 8を依頼したものですあ -- 名無しさん (2022-03-26 14 18 15) ↑途中送信 ありがとうございます! -- 名無しさん (2022-03-26 14 18 39) 211 https //www.youtube.com/watch?v=KhmXMhLykKE 4 13~ -- 名無しさん (2022-03-26 15 42 00) 49? https //www.youtube.com/watch?v=w0Vgd3LSCEE 3 19~ -- 名無しさん (2022-03-26 23 53 21) 223 https //ux.getuploader.com/newcm2/download/34 -- 名無しさん (2022-04-03 13 36 52) 270 https //ux.getuploader.com/newcm2/download/31 -- 名無しさん (2022-04-03 13 37 22) 285 https //ux.getuploader.com/newcm2/download/30 -- 名無しさん (2022-04-03 13 37 46) テコレさんかな? -- 名無しさん (2022-04-03 13 45 04) https //ux.getuploader.com/newcm2/download/35 -- 名無しさん (2022-04-03 13 49 01) 374は既出?(1-105)っぽいので保留 -- 名無しさん (2022-04-07 22 56 28) 217 https //youtu.be/c9wH8y1gWeg -- 名無しさん (2022-04-10 07 16 23) 717 https //youtu.be/bUzq-U3z76U?t=208 -- 名無しさん (2022-05-02 02 20 44) 393 https //ux.getuploader.com/newcm2/download/49 -- 名無しさん (2022-05-04 01 08 44) 764 28-147で既出 -- 名無しさん (2022-05-06 09 21 58) 68の画像があった https //middle-edge.jp/articles/p0wHH -- 名無しさん (2022-05-09 17 15 15) 568 https //youtu.be/WFiMVXzkoWw -- 名無しさん (2022-05-14 03 13 15) 68 https //archive.org/details/CM_Kaigen_incomplete_Hitachi_Air_conditioners_1972 スレに書いたけど反応ないのでこっちにも -- 名無しさん (2022-05-14 15 55 57) 上の動画画像と同じだしこれじゃね? -- 名無しさん (2022-05-14 16 39 06) まだか!じゃねーよアホ -- 名無しさん (2022-05-21 00 35 38) レス番号だけ残して書き込みなかったら「まだか!」とか言ってるアホ二度と書き込むんじゃねーぞ -- 名無しさん (2022-05-21 00 41 49) 909 凸版印刷(1989頃、睡蓮の踊り) -- 名無しさん (2022-05-26 14 43 29) 909 凸版印刷(1989頃、睡蓮の踊り) の睡蓮の踊りは私が勝手に翻訳しただけで元々はDance of the Waterliliesというタイトルです -- 名無しさん (2022-05-26 14 46 00) 32-32は捜索依頼ではなくね? -- 名無しさん (2022-06-02 11 03 34) 729 既出であればすみません こちらは「ドギーマン 薬用ペッツテクト+「犬猿の仲と呼ばないで」篇」かと思われます。 動画は削除されていますが… https //www.doggyman.com/?p=video amp;id=2wTfS6eDJDg cmのスクショ?は発見できました https //detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10144391540 -- 名無しさん (2022-06-11 18 48 39) 475 https //youtu.be/rxyL9pN_mqw?t=148 #2と#7 -- 名無しさん (2022-06-12 19 46 05) 902 https //m.youtube.com/watch?v=OQeWjtDWj3o -- 名無しさん (2022-10-02 12 05 23) 522 とんねるずの漫才これか? https //youtu.be/SnO_YikELR4?t=4648 -- 名無しさん (2022-10-09 19 31 55) 227 https //www.youtube.com/watch?v=Nj3QdT6JHMw -- 名無しさん (2022-11-03 23 22 29) 220は違う気がする(既に出ている「こんな物置に誰がしたのだ」ではなく子供愛して妻も愛そう」) -- 名無しさん (2022-11-04 23 37 17) 522、これです!見つけてくださりありがとうございます!! -- 522依頼 (2022-11-07 00 27 23) 992 https //youtu.be/P_7CJLhKWig 6 00~ -- 名無しさん (2023-01-07 22 29 31) 上記のcmは「2枚のミートにレタスにチーズ、スペシャルソース、ピクルスオニオンゴマ付きバンズ、7つの美味しさ」で私が依頼したのは「2枚のミートにレタスにチーズ、オニオン、ピクルス、スペシャルソース、ゴマ付きバンズは特別製」と若干異なります。検索すると一語一句同じものがヒットし、記事にも載っているので、存在はしていると思います。 -- 992依頼 (2023-01-11 16 21 59) 301 自己解決しました↓ -- 名無しさん (2023-05-01 21 19 40) https //youtu.be/f-cTsh9snog -- 名無しさん (2023-05-01 21 20 33) 519です 自己解決しました https //youtu.be/_5O2AaOA0Z4?si=NrEJg-z8leesRTEm (14 37〜) -- 名無しさん (2023-09-25 20 58 53) 720 https //ux.getuploader.com/newcm3/download/69 -- 名無しさん (2024-02-04 18 59 55) 名前 コメント ←捜索CM一覧(30スレ目) 捜索CM一覧(スレッド別) 捜索CM一覧(32スレ目)→
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DL1~10用プライズイベント 3:真っ赤な違いⅠ 足下から数歩先に、真っ赤な何かが転がっていた。 PCから5mの位置に、真っ赤な何かが存在する。 真っ赤な何かを拾ったキャラクターは【幸運】判定を行なうこと。達成値に応じて、以下のアイテムを入手できる。(1エリアにつき1回まで) 0~7:果実(重量1:30/15G) 8~13:ルビー(200/100G) 14~:バーストルビー(重量1:1000/500G) 4:骨抜きⅠ そこには、無残にも打ち捨てられた白骨の山があった。少々不気味だが、漁ってみるのもいいだろう。 PCから10mの位置に、骨の山(《一般オブジェクト》)がある。骨の山のエンゲージには《エナジーロスト》(LV3魔術コンティニュ型)が設置されている。 漁ってみるキャラクターは【精神】判定を行なうこと。達成値に応じて、以下のアイテムを入手できる。(1キャラクターにつき1回まで) 0~5:骨くず(5G) 6~9:骨(30G) 10~12:骨のブローチ(50G) 13~:踊るしゃれこうべ(100G) 5:光と闇の鍋Ⅰ 大きな鍋の中に、得体の知れない液体がぐつぐつと煮え立っていた。 鍋(《宝箱》)がエリアの中央に存在し、周囲に空き瓶が転がっている。 中の液体を飲んだキャラクターは【筋力】か【幸運】で、汲み取るキャラクターは【器用】-[DL]で判定を行なうこと。 達成値に応じて以下のアイテム(と同じ効果)が得られる。最大で3回まで。 また、鍋の中身に対する難易度10+[DL]のアイテム鑑定に成功すれば、以下のチャートを参照できる。 0~5:デスポーション:人間(重量5:1000/500G) 6~7:毒消し(重量1:20/10G) 8~9:HPポーション(重量1:30/15G) 10~:MPポーション(重量1:50/25G) 6:インファントラップⅠ そこには、いくつかのアイテムが転々と転がっていた。その様はなんだか、懐かしいような気もする。 PCから5mの位置に妖精の羽根(10G)、10mの位置に妖精の服(30G)、15mの位置に風精霊の結晶(200G)が落ちている。 また、PCから20mの位置には妖精の上等な服(300G)が落ちており、床に《落とし穴》(LV1物理マイン)が設置されている。 7:おもちゃ箱 そこにはカラフルな箱が、開けっ放しの状態で置かれていた。中身を見る限りでは、どうやらおもちゃ箱のようだ。 《宝箱》がエリアの中央に、開いた状態で存在する。 漁ってみるキャラクターは【感知】判定を行なうこと。達成値に応じて、以下のアイテムを入手できる。(1キャラクターにつき1回まで) 0~7:なにもなし 8~10:木人形(100G) 11~13:からくり人形(130G) 14~:ポメロ人形(300G) 8:赤提灯Ⅰ 紙製のランタンを軒先に下げ、言い知れぬ哀愁を漂わせた屋台が立っていた。のれんの向こうには、突っ伏した背中も見える。 トロウルウォーリア(LV14妖魔)×1、バグベアモンク(LV4妖魔)×1と遭遇。 屋台は馬車(重量-:8000/4000G)相当であり、店主であるトロウルウォーリアは騎乗状態、客であるバグベアモンクは同乗状態となっている。 屋台では以下のアイテムを、価格の半分で購入することができる。 にく(重量1:20/10G) 野菜(重量1:20/10G) 火酒(重量1:300/150G) 魔導酒(重量2:200/100G) 霊水(重量2:200/100G) にくを購入した場合、トロウルウォーリアは調理用具(重量3:5/2G)を使用して調理を行なうこと。 バグベアモンクは[放心]しているが、なんらかのメジャーアクションを行なわれると解除される。 エネミーに対して攻撃を行なった場合、戦闘に入ること。ただし、勝利しても通常のドロップ品以外は得られない。 9:異次元引き出し エリアの壁際に大きな机(《宝箱》)が置かれている。 大きな机のエンゲージには《吸い込み口》(LV4魔術マイン型)が設置されている。 大きな机を破壊した場合、《吸い込み口》は発動しなくなる。 大きな机の中にはマジカルキー(重量1:100/50G)、小道具入れ(重量0:20/10G)、障壁符(重量1:500/250G)が入っている。 10:自由の彫像Ⅰ 刺々しい冠をかぶり、灯火を高く掲げ、一冊の本を腰に抱えた石像が静かに佇んでいた。 石像(《一般オブジェクト》)がエリアの中央に存在する。 石像を調べたキャラクターは1D6を振ること。出目に応じて、石像から以下のアイテムを入手できる。 なお、攻撃を加えた場合、石像はアイテムごと破壊される。 1~2:本→グリモア(重量1:100/50G) 3~4:冠→サークレット(重量1:500/250G) 5~6:灯火→“灯火の”フレイル(エンチャントフォース 火 )(重量7:800/400G) 11:天高き実り 背の高い木の梢に、おいしそうな果実が実っていた。木を登るか、実を打ち落とすか、それが問題だ。 果実(重量1:売値15G)×5が、高さ20mの樹上に存在する。 打ち落とす場合は難易度13の【器用】判定を行なうこと。成功すると、果物を一つ入手できる。 射程:20m以上の射撃攻撃を行なえる武器を装備している場合、武器攻撃の命中判定で代用することもできる。 失敗した場合、樹上の果物が一つ失われる。 木を登る場合は難易度13の【敏捷】判定を行なうこと。成功すると、果物を一つ入手できる。 失敗した場合、[DL]D6点の物理ダメージを受ける。 また、飛行状態の場合、判定を行なわずに果物を入手することができる。 12:誰かの落とし物 そこには誰が落としたのか、眼鏡や書物、羽ペンに白紙などが散らばっていた。 知識の書(重量1:50/25G)、筆記用具(重量1:10/5G)、大きな目(重量1:1000/500G)が1エンゲージに落ちている。 13:インファントラップⅡ そこには、いくつかのアイテムが転々と転がっていた。その様はなんだか、懐かしいような気もする。 PCから5mの位置に鉄(100/50G)、10mの位置に銀(200/100G)、15mの位置に金(500/250G)が落ちている。 また、PCから20mの位置には、ミスリル(1000/500G)が落ちており、その位置の《床》には《蟹挟み》(LV3物理トリガー)が設置されている。 作動条件はミスリルを拾うこととする。また、《床》は破壊可能とする。 14:四挙四得 そこには赤・青・緑・黄の四つの宝箱と、「宝が欲しくば四つの箱を同時に開けよ」と書かれた立て札があった。 《宝箱》が四つ置かれている。《宝箱》にはそれぞれ以下のトラップが設置されており、その宝箱を開けようとすることで作動する。 赤:《マジックボム》(LV3魔術トリガー型:探知値17:解除値14) 青:《鉄砲水》(LV3魔術トリガー型:探知値16:解除値16) 緑:《烈風》(LV4魔術トリガー型:探知値17:解除値16) 黄:《地割れ》(LV3魔術トリガー型:探知値15:解除値15) 四つの箱を同時に開くと、地精霊のオーブ(重量1:1000/500G)×4が手に入る。(個々の対応属性はGMが任意に決定可能) ただし、同時に開くことができなかったり、箱が一つでも破壊されたりした場合、宝箱は消失し、アイテムは得られない。 15:光と闇の鍋Ⅱ 大きな鍋の中に、得体の知れない液体がぐつぐつと煮え立っていた。 鍋(《宝箱》)がエリアの中央に存在し、周囲に空き瓶が転がっている。 中の液体を飲んだキャラクターは【筋力】か【幸運】で、汲み取るキャラクターは【器用】-[DL]で判定を行なうこと。 達成値に応じて以下のアイテム(と同じ効果)が得られる。最大で3回まで。 また、鍋の中身に対する難易度10+[DL]のアイテム鑑定に成功すれば、以下のチャートを参照できる。 0~7:デスポーション:人間(重量5:1000/500G) 8~10:ハイHPポーション(重量1:200/100G) 11~13:ハイMPポーション(重量1:300/150G) 14~:アンチポーション 闇 (重量1:400/200G) 16:骨抜きⅡ そこには、無残にも打ち捨てられた白骨の山があった。不気味だが、漁ってみるのもいいだろう。 PCから10mの位置に、骨の山(《一般オブジェクト》)がある。 骨の山のエンゲージには《エナジーロスト》(LV3+3魔術コンティニュ型)が設置されている。効果量に+3D6すること。 漁ってみるキャラクターは【精神】判定を行なうこと。達成値に応じて、以下のアイテムを入手できる。(1キャラクターにつき1回まで) 0~5:骨(30G) 6~7:骨のブローチ(50G) 8~10:踊るしゃれこうべ(100G) 11~13:堅骨(400G) 14~:竜骨(700G) 17:真っ赤な違いⅡ 足下から数歩先に、真っ赤な何かが転がっていた。 PCから5mの位置に、真っ赤な何かが存在する。 真っ赤な何かを拾ったキャラクターは【幸運】判定を行なうこと。達成値に応じて、以下のアイテムを入手できる。(1エリアにつき1回まで) 0~5:ルビーリング(重量1:200/100G) 6~11:火精霊のオーブ(重量1:1000/500G:地精霊のオーブの 火 版) 12~13:炎のタリスマン(重量1:2000/1000G) 14~:深紅の腕輪(重量1:2300/1150G) 18:秘密のクローゼット エリアの壁際にクローゼット(《宝箱》)が置かれている。 クローゼットのエンゲージには《吸引破砕機》(LV9魔術マイン型)が設置されている。 クローゼットを破壊した場合、《吸引破砕機》は発動しなくなる。 クローゼットを開けたキャラクターは幸運判定を行なうこと。達成値によって、以下のアイテムを発見できる。(1エリアにつき1回まで) 0~6:礼服/ドレス(重量1:15/7G) 7~10:ローブ(重量2:30/15G) 11~13:メイジローブ(重量4:150/75G) 14~:ミスリルクローク(重量5:4000/2000G) 19:自由の彫像Ⅱ 刺々しい冠をかぶり、灯火を高く掲げ、一冊の本を腰に抱えた石像が静かに佇んでいた。 石像(《一般オブジェクト》)がエリアの中央に存在する。 石像を調べたキャラクターは1D6を振ること。出目に応じて、石像から以下のアイテムを入手できる。 なお、攻撃を加えた場合、石像はアイテムごと破壊される。 1~2:本→奥義書(重量1:1000/500G) 3~4:冠→幸せのサークレット(重量2:2400/1200G) 5~6:灯火→エレメントトーチ(重量6:4000/2000G) 20:インファントラップⅢ そこには、いくつかのアイテムが転々と転がっていた。その様はなんだか、懐かしいような気もする。 PCから5mの位置に硝子(50/25G)、10mの位置にクリスタル(100/50G)、15mの位置に魔力の欠片(200G)が落ちている。 また、PCから20mの位置には魔力の結晶(2000G)が落ちており、《金縛りの間》(LV8魔術マイン)が設置されている。 20: 21: 22: 23: 24: 25: ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― CL11~20用プライズイベントチャート 13: 14: 15: 16: 17:赤提灯Ⅱ 紙製のランタンを軒先に下げ、言い知れぬ哀愁を漂わせた屋台が立っていた。のれんの向こうには、突っ伏した背中も見える。 トロウルウォーリア(LV14妖魔)×1、オウガグラップラー(LV14妖魔)×1と遭遇。 屋台は装甲馬車(重量-:15000/7500G)相当であり、店主のトロウルウォーリアは騎乗状態、客のオウガグラップラーは同乗状態となっている。 屋台では以下のアイテムを、価格の半分で購入することができる。 にく(重量1:20/10G) 野菜(重量1:20/10G) 究極の料理(重量1:1000/500G) 火酒(重量1:300/150G) 魔導酒(重量2:200/100G) 霊水(重量2:200/100G) また、このエリアで[種別:食糧]のアイテムを使用した場合、その効果は+3D6される。 エネミーに対して攻撃を行なった場合、戦闘に入ること。ただしその場合、上記のアイテムは全て破壊され、勝利しても通常のドロップ品以外は得られない。 18:骨抜きⅢ そこには、無残にも打ち捨てられた白骨の山があった。かなり不気味だが、漁ってみるのもいいだろう。 PCから10mの位置に、骨の山(《一般オブジェクト》)がある。 骨の山のエンゲージには《エナジーロスト》(LV3+6魔術コンティニュ型)が設置されている。効果量に+6D6すること。 漁ってみるキャラクターは【精神】判定を行なうこと。達成値に応じて、以下のアイテムを入手できる。(1キャラクターにつき1回まで) 0~9:踊るしゃれこうべ(100G) 10~12:堅骨(400G) 13~15:竜骨(700G) 16~19:魔骨(1000G) 20~:骨のマスク(1600G) 19:真っ赤な違いⅢ 足下から数歩先に、真っ赤な何かが転がっていた。 PCから5mの位置に、真っ赤な何かが存在する。 真っ赤な何かを拾ったキャラクターは【幸運】判定を行なうこと。達成値に応じて、以下のアイテムを入手できる。(1エリアにつき1回まで) 0~10:高級ルビー(1000G) 11~14:深紅のしゃれこうべ(1200G) 15~16:最高級ルビー(10000G) 17~:真紅の魔力結晶(15000G) 20:的を射た話 そこかしこに、色とりどりの風船が浮かんでいた。割ってくれと言わんばかりの小憎らしい顔が、ふわふわと遠ざかっていく。 エリア内のGMの任意の位置に、[DL]個の風船(《宝箱》)が設置されている。これらの風船は2ラウンド後のクリンナップにエリアから退場する。 PCが風船割りに挑戦する場合、ラウンド管理を行なうこと。破壊した風船の中からは、練達の証(900G)が入手できる。 ただし、風船のうち3つには、《スティンクボム》(LV4+15魔術トリガー)が設置されている。 探知値に+10、解除値に+5すること。作動条件は、設置された風船の破壊とする。 30:光と闇の鍋Ⅲ 大きな鍋の中に、得体の知れない液体がぐつぐつと煮え立っていた。 鍋(《宝箱》)がエリアの中央に存在し、周囲に空き瓶が転がっている。 中の液体を飲んだキャラクターは【筋力】か【幸運】で、汲み取るキャラクターは【器用】-[DL÷2]で判定を行なうこと。 達成値に応じて以下のアイテム(と同じ効果)が得られる。最大で3回まで。 また、鍋の中身に対する難易度10+[DL]のアイテム鑑定に成功すれば、以下のチャートを参照できる。 0~12:デスポーション:人間(重量5:1000/500G) 13~15:EXHPポーション(重量1:10000/5000G) 16~18:EXMPポーション(重量1:15000/7500G) 19~:蘇生薬(重量1:15000/7500G) 35: ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― DL21~30用プライズイベントチャート 23: 45: ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
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エヴァルト・ロンメル 愛称:ロンメル 称号: 種族:人間 年齢:17 性別:男 穢れ値:0 外見:銀髪碧眼の大男 imageプラグインエラー ご指定のURLはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLを指定してください。 技=8, 体=10, 心=5 A=7, B=10, C=6, D=9, E=12, F=6 器=24, 敏=26+1, 筋=32, 生=25, 知=24, 精=19 技能=ファイター 11 スカウト 9 セージ 8 レンジャー 9 エンハンサー 3 アルケミスト:1 経験点=740/84740 一般技能=ノーブル 2 バウンサー 3 ソルジャー 5 名前:エヴァルト・ロンメル 愛称:ロンメル 種族:人間 出自:冒険者 所属:両方 年齢:17歳 性別:男 穢れ値:0 外見:銀の髪に紺碧の瞳の大男。 イメージCV:森川智之(決定) 経歴:かつて従者がいた。かつては貴族だった。異種族の街で育った。 プロフィール 元はデュポール王国の貴族。幼少の頃父親が政敵の陰謀に巻き込まれ家が没落し冒険者になる。父親は冒険中に死亡し後を追う様に母親も病死する。その後紆余曲折の末家に仕えてくれていたルーンフォークのメイドと共にレガリア王国のドルデア要塞まで流れそこで兵士として育つ。先日までドワーフ兵団に所属し偵察兵として任務に励んでいたが、ある日相棒として一緒に暮らしていたメイドが事故に巻き込まれて行方不明になった為、軍を退役し彼女を探す為に冒険者となって旅立った。 性格はドワーフのそれも軍社会で育ったせいか人間であるにも関わらず忠誠心厚く義理堅い性格をしており(むしろコンプレックスを抱き意識的にそうあろうとしている傾向さえ見受けられる)幼い頃より苦労が続いたせいかやたら斜に構えて皮肉る傾向がある。ハードボイルドでも気取っているのか事あるごとに何かと「やれやれ・・・。」と悪態を吐くのも彼の悪い癖である。 酒好きでアルコールの類は何でも呑む。蒸留酒を好んで呑むが煙草は嫌っておりヤクの類(つまり麻薬)は嫌悪している。尚、好きな酒はラム酒とウィスキー。 実は動物好きで特に猫は猫馬鹿といっても言いぐらいの無類の猫好き。 相棒に任せきりだったせいか家事の類には慣れておらず精々が冒険に出ての一人暮らしで仕方なく覚えた簡単な掃除と洗濯程度の腕しか持ち合わせていない。特に料理の腕は壊滅的。 敬虔なグレンダ-ル信徒だがあちこちで意外だの似合わない等と言われる事に内心不満を感じている。 「母将軍」フルメリ・ベルガメント閣下に忠誠を誓い(国家と「鉄人」ザヴィーエ・ボアギュエール陛下に忠誠を誓うのはごく当たり前の事なので改めて説明する必要は感じていない)憧れと尊敬の念を抱いている為か彼女の様な可憐な容姿で面倒見が良いながらも猛々しい女性(要は典型的なドワーフ女性)が好みなのだが、そんな事はおくびにも出さず普段は女性に全く興味が無い振りをしている。とは言え本人は女性には頼るより頼られるほうが理想の為なかなか好みに合うドワーフ女性はいないんじゃないだろうかと言う皮算用なジレンマも抱えているが、そんな無意味な心配をするより先ずもっと積極性を持てと言うかそもそもテメーは行方不明の相棒ルーンフォークのメイドを探し出すのが冒険に出た目的でさっさと彼女を見つけて軍に復員しろとツッコミを入れているのは何もPLだけではないはずであるwwww 口癖と言うか決め台詞は冒険開始時の「炎武帝よご加護を・・・。」と冒険終了時の「全て世は事も無し、終わり良ければ全て良し。」また冒険終了時のものはそのまま彼の座右の銘にもなっている。 フェンディル王国名誉少尉の称号は得たものの今のところはまだ義理以上の感情は無い。 器用度:24(+4) 敏捷度:27(+4) 筋力 :32(+5) 生命力:25(+4) 知力 :24(+4) 精神力:19(+3) 能力成長:54 能力値上昇箇所:器用度:+9 敏捷度:+8 筋力:+16 生命力:+6 知力:+7 精神力:+8 生命抵抗値:15 HP:105 精神抵抗値:15 MP:19 経験点=740/84740 GMB 0/21 冒険者レベル:11 技能:ファイター 11 スカウト 9 セージ 8 レンジャー 9 エンハンサー 3 アルケミスト:1 一般技能:ノーブル 2 バウンサー 3 ソルジャー 5 種族特徴:剣の加護/運命変転 戦闘特技:全力攻撃 武器習熟/アックス→武器習熟/ウォーハンマー 頑強 トレジャーハント 鋭い目 頑強Ⅱ タフネス ファストアクション 全力攻撃Ⅱ 弱点看破 治癒適正 不屈 武器習熟Ⅱ/ウォーハンマー 影走り ポーションマスター 練技:オウルビジョン スケイルレギンス キャッツアイ 呪歌:_ 騎芸:_ 賦術:クリティカルレイ 言語:交易共通語(会話/読文) リーゼン語(会話/読文) ドワーフ語(会話/読文) 魔動機文明語(会話/読文) ドレイク語(会話) 魔法文明語(読文) ザルツ語(読文)魔神語(会話) 所持名誉点 1288点 合計名誉点:2718点 魔物判定:12=セージ技能レベル(8)+知力ボーナス(4) 先制力 :13=スカウト技能レベル(9)+敏捷度ボーナス(4) 制限移動:3m 移動力:29m 全力移動:87m 基本命中力 :15=ファイター技能レベル(11)+器用度ボーナス(4) 追加ダメージ:16=ファイター技能レベル(11)+筋力ボーナス(5) 基本回避力:15=ファイター技能(11)+敏捷度ボーナス(4) 防護点 :7=鎧:ボーンベスト(6)、ブラックベルト(1) 武器名 :用法:必筋:命中:威力:追加D:C値:その他 へビーアンカー(魔化:+1):2H: 31 : 14 : 61 :+19 :⑩ :金属、非金属両方でクリティカルする。 防具名 :分類 :必筋:回避:防護:その他 ボーンベスト :非金属:16 :14 :7 :必筋を+10してランクの高い防具を扱っている、水泳判定+2、水中での命中及び回避判定の修正を-2に軽減。 ボーンベスト:うみへびの鎧化、専用化が施されている。 真語魔法:_=ソーサラー技能(_)+知力ボーナス(_) 操霊魔法:_=コンジャラー技能(_)+知力ボーナス(_) 神聖魔法:_=プリーストー技能(_)+知力ボーナス(_) 妖精魔法:_=フェアリーテイマー技能(_)+知力ボーナス(_) 魔動機術:_=マギテック技能(_)+知力ボーナス(_) 呪歌 :_=バード技能(_)+精神力ボーナス(_) 賦術 :_=アルケミスト技能(_)+知力ボーナス(_) 装飾品 頭 :専用革の帽子(テンガロンハット)(HP+2) 耳 :ウサギのピアス(「聞き耳判定」に+2) 顔 :ひらめき眼鏡(「見識判定」と「探索判定」に+1のボーナス。)*普段は掛けてない 首 :幸運のお守り(これを身に着けた者は「戦利品」を獲得する為の2dの出目が+1されます) 背中:野伏せの姿隠しのマント+リトルウイング 右手:信念のリング(精神抵抗+1) 左手:俊足の指輪(敏捷度+1) 腰 :多機能ブラックベルト(防護点+1)+アルケミーキット 足 :軽業のブーツ(転倒しなくなる。) 他 :勇者の証:体(出目に「3」「4」が含まれなかった時追加でもう1Dを振りその結果に従う) 所持品:冒険者セット、着替えセット、下着×3、シャツ×2、ズボン×2、ハンカチ×2 ベルトポーチ スカウト用ツール(専用) 保存食(5週間分)楔20本 小型ハンマー フック 頑丈なランタン 油 ワイン(3瓶) ヒーリングポーション(5本) アウェイクポーション(5本) 魔香草(10ヶ) 罠探知の棒 アンロックキー(5ヶ) 粘着靴(強力な粘着力で壁や天井を制限移動できるブーツ。壁、天井移動時敏捷力判定-2) 望遠鏡 北向きの針 ラム酒の種(2袋)キングロバーの指輪(解除判定+1) 迅速の火縄壷 良く切れるナイフ インドミタブルポーション(5本) 魔香水(10本)迷彩ローブ(野外での「隠密判定」「尾行判定」の達成値に+2のボーナス修正を得ます) サイレントシューズ(「隠密判定」+2) トリートポーション(20本) キュアストーンポーション(3本) かえるの足(「水泳判定」に+2のボーナス修正) 虫眼鏡 羽ペン インク 羊皮紙(14枚)スケッチブック(20枚) 砂時計 スカーレットポーション(2本) アンチドーテポーション(3本) 宗匠の腕輪(器用度+2) 怪力の腕輪(筋力+2) グレンダ-ルの聖印 消魔の守護石8点 赤の眼鏡(眠気耐性ただし睡眠不要な訳では無い) スカーフ 疾風の腕輪(敏捷+2) 礼服(燕尾服1セット:300ガメル) 妖精のランタン(MP3点で穢れを持つ者には見えない光を照らす) バーサタイル(未使用) うろこの仮面(水中での呼吸が可能になるが喋れなくなる) デクスタリィポーション(3ラウンドの間命中+2)(10本) 音運び 付け髭 3点魔晶石(10ヶ) 叡智の腕輪(知力+2) 金SSカード(1枚) 金Sカード(5枚) 金Aカード(10枚) 金Bカード(15枚) カースレベリオン(魔神へのダメージ+3、魔神からのダメージ-3) 5人用テント 快眠の寝具 空間固定の棒 空飛ほうき 所持金:3510ガメル 借金:_ガメル 預金:100000ガメル 【メモ】 酒好きと言う趣向を付与してみたもののあまりRPする機会がない(ギリギリ) 9/19(日)【夜卓】ローラ川にかかる橋・前編(12000-20000)のシナリオで「紳士」と評価を得ましたwww・・・いったい何の冗談だ?(汗) ドワーフ社会育ちの為実はロリな外見の女性が好みなのは君と僕だけの秘密だ!!www 先日【夜卓】ローラ川にかかる橋・前編(12000-20000)のシナリオで貴族の女性に面会する機会があったがほとんど無反応だったのはあれは単に好みのタイプじゃないので興味が無かっただけであるwww 竜の篭と鈴の鱗のエンブレムをバッジにして身に着けている。 レガリア王国ドルデア要塞ドワーフ兵団に所属していた時のかつての階級証を今でも肌身離さず身に付けている。 今更の様にドワーフの矜持を思い出し最近髭を伸ばしている(ただし伸ばし始めたばかりなので今は付け髭)が似合ってないことおびただしい(誰か止めてやれって) ロンメルの相棒ルーンフォークメイド募集中!!wwwww 【参加希望用テンプレ】 参加希望。 AWとBT持ってます。 名前:エヴァルト・ロンメル 愛称:ロンメル 種族:人間 出自:冒険者 所属:両方 年齢:17歳 性別:男 穢れ値:0 技能=ファイター 11 スカウト 9 セージ 8 レンジャー 9 エンハンサー 3, 経験点=740/84740 http //dragoncage.upper.jp/sw/chara_list/list.cgi?id=959 mode=show 【個人称号】 10/11 昼【正義の女神は微笑まない】第3話(人)窮鼠猫を噛む(20000-30000) のシナリオにて個人称号“フェンディル王国名誉少尉(50)”を取得。 鈴の鱗エンブレム(5)を10/16【深夜卓】空と大地の脅威! 怒涛の二面攻撃を阻止せよ! ~モンスターハンター~ 35000-45000 のシナリオにて取得 竜の篭のエンブレム(5)を自己習得 二つ名“重爆(10)”を自己習得 【パーティー称号】 勇敢なる奪還者達(20):【夜卓】村落奪還蛮行篇20000-30000のシナリオにて取得。 ”ルキスラの水を断つもの”(-20):10/03【夜卓】<キノコの里シリーズ>潜伏する邪教徒たちのシナリオにて取得 ”フェンディル討伐隊員”(10)を10/11 昼【正義の女神は微笑まない】第3話(人)窮鼠猫を噛む(20000-30000) のシナリオにて取得。 “穢された冒険者たち”(-50)を10/17 【昼卓】<キノコの里シリーズ>邪教徒を殲滅せよ! のシナリオにて取得 【コネ】 "運命?いいえ、IFP"エリシア・アストラル(顔見知り/0)と "運命の少女"アイリス・アークライン(顔見知り/0)を【運命卓】9/17 [フリー]強き力の代償 GM:シャインさんにて取得 "仙人"イヨリ老人 (親友/360)を 9/25【昼突発】とある王様の話【シリーズ予告(何】GM:いぼるーさん、10/23【夜卓】魔の機械【ロスト・スペル】 GM:いぼるーさん、10/31【昼卓】死の定めを覆すものたち【ロスト・スペル】 GM:いぼるーさんにて取得 ノワル・エルラッハ (友人/10)を10/23【夜卓】魔の機械【ロスト・スペル】 GM:いぼるーさん にて取得 ユリウス・クラウゼ(顔見知り/500)を10/31【昼卓】死の定めを覆すものたち【ロスト・スペル】 GM:いぼるーさんにて取得 【研究所長】ベルルス(顔見知り/5)を【1/29夜】『新型ミスリルゴーレム作成への道 ①』55000~77000誤差+2000 GM:エシュコルさんにて取得。 1.9/3 初期キャラ限定! ★演習編☆ GM:ときたみさん 2.9/7【夜卓】洞窟探索初歩篇3000-6000 GM:cicadaさん 3. 9/10 ドラゴンバスター?! 3000-6000 GM:ときたみさん 4. 9/15 【突発】ルキスラ天候異変あり(リサイクル) GM:ときたみさん 5.9/16 【夜卓】 輸送の護衛依頼 Lv4~5(経験点5,000~10,000) GM:クッキーさん 6. 9/17【運命卓】[フリー]強き力の代償 GM:シャインさん 7. 9/18【昼卓】 黒き帝都 Lv4~5(経験点7,000~12,000) GM:クッキーさん 8.9/18 【夜卓】 商人の護衛依頼 Lv5付近(経験点9,000~15,000) 投稿者:クッキー 9. 9/19(日)【夜卓】ローラ川にかかる橋・前編(12000-20000) GM:Zenさん 10. 9/23(木)【夜卓】ショートキャンペーン「ローラ川にかかる橋」中編?後編?(12000-20000) GM:Zenさん 11.09/24【夜卓】それは生き物ですか? GM:葉月さん 12. 9/25【昼突発】とある王様の話【シリーズ予告(何】 GM:いぼるーさん 13.9/25【夜卓】血の滴るステーキをどうぞ (15000-20000)【竜の篭】 GM:馬鈴薯さん 14.9/27 「乱神降臨!? 迷惑千万暴走娘その1 ~マジェラの仮面~」 17000-22000 GM:ゲルニカさん 15.9/28【夜卓】村落奪還蛮行篇20000-30000 GM:cicadaさん 16.9/29【夜卓】人生はいつだって唐突だ(何も考えてません) GM:水城さん 17.9/30 援軍要請(18000~25000) GM:シェクターさん 18.10/03【夜卓】<キノコの里シリーズ>潜伏する邪教徒たち GM:葉月さん 19.10/06【夜卓】紳士博士の野望 20000-30000 GM:ふぃるさん 20.10/09【昼卓】<キノコの里シリーズ>邪教徒の痕跡を追って GM:葉月さん 21.【10/10夜バスター】 トロールアデプト復活 24000~34000(誤差1000程度) GM:シェクターさん 22. 10/11 昼【正義の女神は微笑まない】第3話(人)窮鼠猫を噛む(20000-30000) GM:みょるにるさん 23. 10/12【シティ?】ゲームランドへようこそ【フリー】 投稿者:キウイ 24. 10/13【フリー】当てるな危険 GM:シャインさん 25. 10/16【深夜卓】空と大地の脅威! 怒涛の二面攻撃を阻止せよ! ~モンスターハンター~ 35000-45000 GM:ゲルニカさん 26. 10/17 【昼卓】<キノコの里シリーズ>邪教徒を殲滅せよ! GM:葉月さん 27. 10/23【夜卓】魔の機械【ロスト・スペル】 GM:いぼるーさん 28. 10/24【昼卓】薬草祭り【フリー】 GM:キウイさん 29.10/30 夜卓 式場での凶い事 経験点フリー GM:クジラさん 30. 10/31【昼卓】死の定めを覆すものたち【ロスト・スペル】 GM:いぼるーさん 31. 11/6【昼卓】妄想魔神に襲われた村65000-85000(焼き直し・バスター) GM:おらくるさん 32. 1/1【昼卓】新春お年玉企画 GM:ときたみさん 33.【1/29夜】『新型ミスリルゴーレム作成への道 ①』55000~77000誤差+2000 GM:エシュコルさん Wiki http //www19.atwiki.jp/dragoncage/pages/994.html 質実剛健 他PCとの交友関係 ブリジット・・・今や戦友にして同志と言えよう。お互い精進あるのみ、だな。 マグダレーナ・・・一番お世話になってるプリーストさんだ。ルーフェリア信者なのが残念なくらいである。最近は少し憧れもあるかな?まさかフルメリ閣下以外に気になる女性がいるとは・・・。 ローレンス・・・同じ戦士でも随分主義主張の違う漢がいるものだ。俺は構わないが付き合い方を考えないとパーティー内の不和の原因になりかねないから今後は注意が必要だな・・・。 チルミア・・・ラミアだが信用の置ける「人間」。彼女には自分の狭量さと器の小ささを教えて貰った。単純に実力でもかないそうもないしな(苦笑) ソフィア・・・多分一番交流のある魔法使い。かなり内気な性格の様でいつも会うたびに警戒されている。いい加減なれてくれても良さそうだが。流石に傷つくぞ。 プレイヤー:雅虎 imageプラグインエラー ご指定のURLはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLを指定してください。 登録タグ: (hr,right,text=もどる
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1 学術の街、学園都市。 科学と科学と科学で構成されたこの街ではあらゆるものが機械化され、機械的な整頓によって街全体がデザインされています。 そこには、確かに人の手だからこそ起こり得る『雑さ』や『汚さ』は存在しませんが、人の心によって生み出された『暖かさ』もまた、計算された『科学』によって塗り潰されているような気がします。 喫茶店――『恵みの大地《デーメーテール》』は、そんな学園都市に齎された救いのオアシス。 心に悩みを抱えた人達は自ずとこの喫茶店を訪れ、可愛らしく人情深い 女将さん《マスター》が悩みを打ち明け、そしてどこかすっきりした心で帰路に就きます。そんな暖かなこの店は、学園都市が――いえ、現代社会がいつの間にか忘れてしまった『暖かな気持ち』を取り戻すことの出来る、数少ない場所なのではないでしょうか。 『恵みの大地《デーメーテール》』は、どんな人も拒みません。先生も生徒も研究者も、優等生も不良も、この店の中では関係ないのです。 ……でも店内での喧嘩は禁止です。 2 カランコロン、と。 木製の扉が開いたのを感じて、カウンターで自分用のコーヒーを淹れていた(実はいけないことですが、これは彼女の密かな楽しみの一つです)忍さんは、ふっと入り口のほうを見てみました。 ちなみに、現在この喫茶店の女将さん《マスター》である芽功美さんはちょっと野暮用で外出中です。そんなわけで、この行為を咎める人物は此処にいないが為の行動でしたが、突然の来客に慌てた忍さんは視線をずらしながら無表情のまま素早くコーヒーを飲んで、少し咽つつ空のカップをカウンターの陰に隠します。 そこには、包帯でぐるぐる巻きの少女が立っていました。くたびれたセーラー服を着た、痩せぎすな長髪の少女です。まるで夏とか冬とかを乗り越えた後の薄い本の作者さんみたいにげっそりと痩せていますが、顔の造詣は悪くありません。人によっては需要もあるでしょう(尤もその人は変態で確定ですが)。そんな感じの少女でした。 少女を見た忍さんは、思わず息を呑んでしまいます。 と言っても、別にその肌の面積よりも包帯の面積のほうが広そうな姿に気圧されたわけではありません。大きな声では言えませんが、忍さんもこの仕事に就く前は硝煙の匂いが漂う仕事場で一生懸命(冷や)汗水流して働いていたものです。そもそも彼女自身結構包帯ぐるぐる巻きですから、それでびっくりしたら見事にブーメランです。 だから、彼女が驚いたのは、その姿ではなく少女の持つ『雰囲気』に対してでした。 「…………………………い、らっしゃいませ」 「……ん。私が、『分かる』の?」 何とか声を絞り出した忍さんに、包帯の少女はその隠し切れない『闇』の匂いを隠そうともせず、きょとんとして首を傾げます。その無邪気な残酷さが、忍さんの焦燥を余計に駆り立てます。 忍さんは、先ほども言ったとおりちょっと危ない仕事をしていた過去を持っています。一応、解雇処分を受けたのが足を洗った直接の原因なので元の職場の人間関係などで後ろ暗いことはありませんが、この街の闇というのは結構危ないです。だから、忍さんはふと、『この人は自分のことを殺しに来たのではないか?』と思ったのでした。 そんな忍さんの警戒を察知したのでしょう。包帯の少女(面倒なので以降は『包帯さん』と呼びます)はふっと体の力を抜きました。元々そんなに力は入っていなかったのですが、それをさらに抜いた、というニュアンスが強いです。人間がまだ飼ったばかりの子犬に信頼してもらう為に、わざと猫撫で声を使うような感じを想像してもらえば分かりやすいでしょう。 「持蒲さんが、良い店だ、って、言ってた、から、来たけど……。『卒業生』が、働いてる、とは、思わなかったの。親近感、沸くの」 いかにも適当そうに言いながら、包帯さんはカウンター席に座り込みます。ぱっと見るだけではとても喫茶店に来そうな外見ではないのですが、結構場慣れしているのか、包帯さんの動きはスムーズでした。 そして、もう忍さんもそこまで露骨には警戒していません。 客商売だからいつまでもつっけんどんではいられないというのもありますが、彼女自身持蒲さんという人間に心当たりがあったというのが大きいです。礼服をホストみたいにド派手に着崩しているくせに、自分を研究者だと言い張り、包帯ぐるぐる巻きの忍さんを会う度口説いているのです、覚えていないほうが無理がある、と忍さんは思います。 「コーヒーと、ミルフィーユ、お願いするの」 包帯さんは座り込むなり、カウンターの隅に立てかけてある『おすすめメニュー!』と書かれた紙を見て注文します。 注文し終えた包帯さんは、ふとメニューの紙を見て呟きます。 「おすす、メニュー」 「…………フフッ」 その、駄洒落とも言えないくだらない言葉遊びに反応したのは、何と忍さんでした。 「く、ふふ。……ぷっ。おすす、メニュー、なの。……ぷっ、あは、あはははは、げほっ、げぇほっ」 「……ふ、フフッ、ふふふ」 しばし、静かな笑い声が喫茶店に響き渡ります。ぶっちゃけ、シュールを通り越して最早薄ら寒く感じるほど気味の悪い光景でした。 「……ふう。あなた、なかなか、良いセンス、してるの」 「…………あなたも、ハイセンスです…………」 一通り笑い終えた忍さんと包帯さんの間には、言い表せない友情のような何かが生まれていました。包帯同士、根暗同士、オヤジギャグ好き同士、何か通じるものでもあったのでしょう。 3 「………………あの人も…………『裏』の人員だったんですね………………」 「意外、だったの?」 意外そうな表情(といっても殆ど無表情ですが)で呟く忍さんに、包帯さんは惚けたような表情で首を傾げました。 あれから数分、彼女達はすっかり意気投合していました。ボソボソと話しながら、言葉の端々の駄洒落未満な言葉遊びに気がついてはぷすすーとかふふふーとか笑っている光景は、とてもではないですがお見せできるようなものではありませんでした。今までにお客さんが来店していなかったのが幸いだと思うほどの事態です。誰がこの空間を喫茶店であるなどと思うでしょうか。 「……意外……というよりは…………納得、……ですね……。……ところどころ…………違和感は感じてましたから……」 「……へえ」 過去の持蒲さんの様子を思い返しながら、忍さんは呟きます。 「……いつも……飄々と……している割に……どこか…………リラックスできていない……そんな感じが……しました……」 「そう、なの。私には、よく、分からないの」 哀れむような色さえ滲ませる忍さんとは対照的に、包帯さんはそこはかとなくどうでもよさそうな調子です。このあたりは、二人の感性の違いとでもいいましょうか。芽功美さんの影響を受けてどことなくお節介焼きになりつつある忍さんですが、包帯さんの方はあまり他人のあり方に頓着しないタイプのようです。 「……コーヒーのお替り、……いりますか……?」 話を切り替えるように、忍さんは包帯さんに問いかけます。問いかけられた包帯さんは少しばかり考え込むような様子を見せると、 「お願い、するの。あと、ミルフィーユも」 そう言って、きれいに片付いたお皿を忍さんに手渡します。その表情は相変わらずの無表情でしたが、忍さんにはどこか綻んでいるように見えました。 「……ええ、……勿論、良いですよ」 そう言って、忍さんはカウンターの中に引っ込みます。コーヒーや紅茶などは忍さんや芽功美さんがじきじきに挽いたものを使っているのですが、さすがにオヤツに関しては注文を聞いてから作るのでは時間がかかってしまう為、基本的に作り置きをしている 恵みの大地《デーメーテール》です。 「……そういえば、あなたは、『前』は何をしていたの?」 ミルフィーユが届くまで手持ち無沙汰だったのでしょうか。包帯さんは、カウンターに肘を突きながら問いかけます。 「…………、何てことない、ただの民間傭兵企業《PMC》、ですよ」 その質問に、忍さんはゆっくりと答えました。 以前までの忍さんであれば、答えることはできなかったでしょう。彼女もまた、過去を乗り越え、そしてゆっくりと未来へと歩み始めている証拠なのでした。 しかし、そんな忍さんの成長をしらない包帯さんは、『ふーん』と気のない返事を返します。裏稼業を『卒業』しているという時点でその話題はタブーだと考えてもおかしくないものですが、包帯さんはどうもそのあたりの感情の機微というものがあまり分かっていないようだったので、忍さんもあえてそれを指摘するようなことはしません。 学園都市の生徒さんは、一癖も二癖もある性格《キャラクター》を持つ人たちばかりです。このくらいで驚いていては、 恵みの大地《デーメーテール》の住み込み従業員などやっていられません。 ……尤も、もう片方の、最近やってきたアルバイトの従業員はまだそのあたりが徹底し切れていないようですが……。 「……別に、後ろ暗いことを……していたわけでは、ありません……。……主に……要人、護衛……ですね……」 「護衛」 忍さんの言葉に、関心したように包帯さんが呟きます。『闇』にて現役で活動している包帯さんとしては、『何かを守る』ということに何か感じるものがあったのでしょうか。 「護衛は、凄い、大変なの。敵対対象を、撃退すること、だけじゃなくて、護衛対象を、巻き込まない、ようにしないと、いけないし……尊敬、するの」 「……プロ、ですから……」 そんなことを言いつつミルフィーユを冷蔵庫から取り出す忍さんの背中がどこか誇らしいのは、おそらく気のせいではないでしょう。 「……そういえば、今日はどういった経緯でご来店に……?」 カチャリ、と小さく音を立ててコーヒーとミルフィーユを包帯さんの前に置いた忍さんは、そう言って包帯さんに話を振りました。既に持蒲さんからの紹介だというのは聞いていますが、具体的な詳細は知りません。 話の肴に……と思ってあまり深く考えていなかった忍さんでしたが、包帯さんはどこか苦々しそうな色を目に映します。ちなみに、目でしか判別できないのは、包帯さんの表情はやっぱり無表情のまま固定されているからです。 「……けっこう、無理やりだった、の」 包帯さんの口調には、やっぱりどこか不満そうな色が滲んでいます。 はて、無理やり? と首をかしげた忍さんに、包帯さんは続けるように説明を始めました。 「私たちのグループは、基本的に、四人組、なの」 包帯さんは自分の顔に巻かれた包帯にコーヒーが染みないように注意しながらカップに口をつけ、 「…………、その中の、一番年下の子が、言ってたの」 「……何と……?」 「『今のトレンドは、隠れ家的カッフェ』」 「か、隠れ家……」 文章を読み上げるように平坦な包帯さんの声に思わず呟いて、忍さんは店の内装を見渡します。 確かにアットホームかつ南国風ではありますが、別段『隠れ家』というほど煤けたような印象は感じられない……はずです。 「『一見ボロ屋敷っぽいけど料理はオイシイor接客はステキな、自分だけの「キタナイイ」お店を見つけちゃおう』」 「ぼ、ボロ屋敷……」 ニュースキャスターよりも無表情な包帯さんの声に思わず呟いて、忍さんは店の内装を見渡します。 確かに、確かにどことなく老朽化してはいますが、別段『ボロ屋敷』なんて印象は感じられません。断じて感じられないはずです。 「『そのお店に変人だけどイイキャラしてるマスターがいれば完璧かも』」 「も、もうやめてくださいっ!!」 最後の一言で心に大きな傷を負った忍さんは、そのままカウンターに突っ伏してしまいました。 「……どう、したの?」 「……な、なんでも……ありません……」 悪気〇パーセントで無垢な視線を向けられた忍さんは、よろよろとそのまま起き上がります。 「……それで、……それのどこが……無理やりなんです……?」 「その後が、面倒だったの」 包帯さんは、言葉の割りにどうでもよさそうな口調で続けます。 「その子と、その子の仲良しがいなくなった後、持蒲さんが、私に、その子が持ってた雑誌を、持ってきたの」 「……それで、持蒲さんは……何と?」 「『お前も、こういうの興味ないか?』って、言ってたの。私は、『興味ない』って言ったの。そもそも、仕事も残ってたから、休暇はないって、言ったの」 「……ああ、……それで、仕事を奪われてしまった……と……」 「正解、なの。持蒲さん、『そんなんじゃ将来仕事しか楽しみがねえ女になっちまうぞ』とか言ってたの。私は、持蒲さんの役に立てればそれでいいのに……」 はぁ、と無表情のまま、包帯さんは呆れたような溜息をつきました。 その様子に、忍さんは人知れず心を痛めます。 (……この子も……この街の、『闇』に囚われている……被害者……) しかし、一介のメイドさんである忍さんでは、包帯さんを『闇』から救い上げることに関して何もできませんし、しようと思ってもいけません。それをすることで、何よりも大切な芽功美さんに迷惑がかかることだけは、絶対にあってはならないのですから――。 「……あ」 ふと気がつくと、既に包帯さんはミルフィーユを平らげていました。よほどあれが気に入ったものと見えます。 「……甘いもの、好きなんです……?」 「ん。甘いもの、というか、ミルフィーユが、好きなの」 包帯さんは、昔を思い出すような調子でそんなことを言いました。 「昔、『表』にいた頃に、友達と、よく食べたの」 ふんわりと、そう言った包帯さんの表情に、初めて笑みが浮かんだのを見て、忍さんは頭をガツンと殴られたような衝撃を感じました。 (…………私は、何を……勘違いしていたんでしょう……。……助けようと思っちゃいけないなんて、何もできないなんて、そんなこと……ない) 忍さんは、何も言わずに包帯さんに背を向けると、冷蔵庫からミルフィーユを取り出し、お皿に盛り付けます。 (……確かに、私は……この子を助けることはできない……。自分の身が大事だから……大切な人を巻き込みたくないから……そんな理由をつけて、……この子を助けに行くことさえ……できない……。……でも) 「……? どうした、の。店員さん。私は、ミルフィーユ、頼んでないの」 「私の、奢りですよ」 そう言って、忍さんはミルフィーユを包帯さんの目の前に置きます。 (……でも、何もできないわけじゃない) そう。 確かに、忍さんは暗闇でおびえているお姫様を救い出せるような、完全無欠のヒーローではありません。 しかし、忍さんは忍さんなりの、完全無欠のヒーローではできないような、お姫様の手助けをすることくらいはできます。 「……この店があなたにとって、癒しの地になりますように」 「……ん。何か、言ったの?」 「…………いいえ、なんでも」 無表情な、言い換えるとどこまでも無垢な表情を向ける包帯さんに、忍さんは柔らかな微笑を向けます。 この少女が、いつか救われて、幸せな光の下で暮らせるようになるまで。 自分が、この少女の心を支える大地になろうと、心に決めながら。 ――そんな少女を包む『闇』をヒーローが打ち砕くのは、それから少し後のお話。 4 学術の街、学園都市。 喫茶店――『恵みの大地《デーメーテール》』は、そんな学園都市に齎された救いのオアシス。 心に悩みを抱えた人達は自ずとこの喫茶店を訪れ、可愛らしく人情深い 女将さん《マスター》が悩みを打ち明け、そしてどこかすっきりした心で帰路に就きます。 『恵みの大地《デーメーテール》』は、どんな人も拒みません。先生も生徒も研究者も、優等生も不良も、果てはちょっと危ない仕事をしている人も、この店の中では関係ないのです。 今日も、色んなお客さんが芽功美さんの料理を、芽功美さんの悩み相談を、あるいは芽功美さん本人を目当てに『恵みの大地《デーメーテール》』を訪れます。 ……でも最近は、包帯姿のメイドさんを目当てにしている珍しい女の子もいるんだとか。 前へ 戻る 次へ
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SW2.0キャラクターシート [部分編集] 08 01 25 (Wallaby ) ヨハン24 - 2D6+6+1D6+2D6+2D6+1D6+2D6+6 = [5,5]+6+[5]+[6,6]+[1,6]+[4]+[4,1]+6 = 55 キャラクター名:ヨハン=クリスチャン=バッハ (Johann Christian Bach) プレイヤー名 :あき 種族 :ドワーフ 性別 :男 年齢 :32歳 生まれ :戦士 種族特徴 :[暗視][剣の加護/炎身] 経験点 :51190点 使用経験点 :51000点 【能力値】 :ダイス:成長:装備: :ボーナス ”技”: 16 :12: 2 :器用度・34:+ 5 4 : 5 : 3 : 1 :敏捷度・13:+ 2 ”体”: 12 : 7 : - :筋 力・30:+ 5 :生命抵抗:HP 11 : 7 : 6 : - :生命力・24:+ 4 : 11 : 65 ”心”: 4 : 9 : 2 :知 力・20:+ 3 :精神抵抗:MP 5 : 11 : 2 : - :精神力・18:+ 3 : 10 : 45 【レベル】 冒険者レベル : 7 技能 :レベル:魔力: ・ファイター : 8 : - : ・プリースト : 8 :11: ・ /ザイア: : : ・スカウト : 3 : - : ・セージ : 5 : - : ・レンジャー : 2 : - : ・バード : 1 : 3 : ・ライダー : 6 : - : ・エンハンサー : 1 : - : ・ : : - : 【特技】 戦闘特技 :参照ページ : 《魔力撃》 :I-227p : 《防具習熟/金属鎧》 :I-222p : 《マルチアクション》 :II-125p : 《防具習熟II/金属鎧》 :I-222p : 《タフネス》 :Ⅱ-122p : 《鋭い目》 :Ⅱ-121p : : : 練技/呪歌/騎芸 :参照ページ : 《レジスタンス》 :Ⅱ-85p : 《振り下ろし》 :Ⅲ-88p : 《騎獣回避》 :Ⅲ-86p : 《水中騎乗》 :Ⅲ-87p : 《大型制御》 :Ⅲ-86p : 《人馬一体》 :Ⅲ-89p : 《空中騎乗》 :Ⅲ-89p : 《ビートルスキン》 :Ⅱ-76p : : : 【言語】 :会話:読文: ・交易共通語 : 可 : 可 : ・ドワーフ語 : 可 : 可 : ・汎用蛮族語 : 可 : : ・ジャイアント語 : 可 : : ・ザルツ語 : 可 : 可 : ・エルフ語 : 可 : 可 : ・ : : : 【判定値】 :技能レベル:能力値ボーナス:合計 『魔物知識』 : 5 : 3 : 8 セージ 『魔物知識』 : 6 : 3 : 9 ライダー 『先制力』 : 3 : 2 : 5 『基本命中力』 : 8 : 5 : 13 『追加ダメージ』: 8 : 5 : 13 『基本回避力』 : 8 : 2 : 10 【装備】 武器 :用法:必筋:命中修正:命中力:威力:C値:追加D ・専用オーガモール+1:2H:30: +2 : 16 :45:12:+14 5640G ・専用ミノタウロスアックス+1 :2H:30: +1 : 15 :45:11:+14 5950G 防具 :必筋:回避力:防御点: ・ミスリルプレート:24: -2 : 11 :23000G ・ : : : : その他 : - : +4 : 合計 : 8 : 15 : 【装飾品】 部位 : 装飾品の名称 :効果 頭 : かつら :300G 耳 : 聖印 :100G 顔 : : 首 :〈幸運のお守り〉:2000G 背中 : : 右手 :叡智の腕輪 :知力+2 1000G 左手 :巧みの指輪 :器用+1 500G 腰 :ブラックベルト :防御+1 3000G 足 : : その他:俊足の指輪 :敏捷+1 500G 【所持品】 〈冒険者セット〉 100G 〈ワイン1瓶〉 20G 〈エール1樽〉 300G 〈食器セット〉12G 〈調理道具セット〉50G 〈手鏡〉50G 〈着替えセット〉10G 〈保存食(1週間分)〉50G 〈栄養カプセル〉100G 〈羽根ペン〉2G 〈インク〉3G 〈羊皮紙〉x5 5G 〈楽器:ブルースハープ(頭に固定するタイプ)〉100G 〈執事服〉90G 〈競泳水着〉20G 〈ふかふかの防寒着〉80G 〈礼服〉100G 〈迅速の火縄壺〉100G 〈くさび〉x10 20G 〈小型ハンマー〉10G 〈フック〉10G 〈袋〉x5 40G 〈水袋〉x2 40G 〈ベルトポーチ〉15G 〈ワイン瓶〉x5 100G 〈革製手袋〉x2 36G 〈矢〉x12 10G 〈太矢〉x12 20G 〈弾丸〉x12 50G 〈救命草〉x10 300G 〈魔香草〉x5 500G 〈ヒーリングポーション〉x5 500G 〈アウェイクポーション〉x5 500G 〈怪力の腕輪〉1000G 〈宗匠の腕輪〉1000G 〈ロバ〉800G 〈ヒポグリフ〉15000G 所持金:26147G 【名誉】 名誉アイテム :点数 ・“ドレイク殴り” : 30 ・“ケンタウロスを倒した 勇者” : 30 ・専用〈聖印〉MP : 50 ・専用〈幸運のお守り〉HP: 50 ・〈迅速の火縄壺〉 : 20 ・〈競泳水着〉 : 10 ・〈ふかふかの防寒着〉 : 15 ・専用〈ミノタウロスアックス+1〉 : 50 ・専用〈オーガモール+1〉 : 50 ・ : ――――――――――――――――――――――――――――――― 所持名誉点 : 470 合計名誉点 : 775 【設定】 「ヘイ、きやがれビチグソが! 騎士神ザイアの名にかけて貴様を蜂の巣にしてくれるわ!」 口汚く、酒が大好きな若いドワーフです。 酒を飲みすぎて失敗することもたびたびで、一度はザイア神殿の神殿長の前で、 裸踊りを演じてしまい、破門を宣告されてしまったことすらあります。 しかし、未だにザイア神殿に留まることを許されているのは若い頃絶賛されたその才能ゆえ でしょう。 色恋より酒で、未だ恋をしたことがありません。ステキな女性が現われたら変わるのかも しれませんが。 【成長&セッション参加履歴】 『狙われたキャラバン』でGMを行い、経験点1220、お金2120G、名誉点78点を獲得。筋力1成長 -- あき (2008-05-02 22 45 31) 『畑に蠢く蔓』に参加し、経験点1110、お金731G、名誉点9点を獲得。筋力1成長 -- あき (2008-05-05 11 35 51) 『死霊のはらわた』でGMを行い、経験点1260、お金1475、名誉点32点を獲得。筋力1成長 -- あき (2008-05-05 20 38 03) 『決闘の血統』に参加し、経験点1100、報酬2500G、名誉18を獲得。知力1成長 -- あき (2008-05-05 23 38 50) 『夢のあとさき』でGMを行い、経験点1250点 報酬:1760G 名誉点:89点を獲得。筋力1成長 -- あき (2008-05-15 12 58 21) 『闘技場』に参加し、報酬:8800、経験1360、名誉31を獲得。器用1成長 -- あき (2008-05-15 19 08 26) 『シュラーフェンの地図』でGMを行い、経験点1220点、報酬2008ガメル、名誉点20点を獲得。筋力1成長 -- あき (2008-05-16 08 11 31) 『シュラーフェン:拳の間』でGMを行い、経験点2250点、報酬1850G、名誉点0点を獲得。器用度1、敏捷度1を成長 -- あき (2008-05-16 21 58 34) 《全力攻撃》を《魔力撃》に変更。 -- あき (2008-05-16 22 04 38) 『ドレイクの館』に参戦して、経験1170点報酬5000名誉1獲得、筋力1成長、1230G払って、〈シャンデル製緑の恵み亭ロゴ入りチョーカー&メイド服セット〉と〈アウェイクポーション〉x5と〈救命草〉x1を購入。 -- あき (2008-05-17 17 28 45) 『ヘルハウンド・ハント』(前後編)でGMを行い、経験値:1110XP+1380XP 、報酬:11000G、名誉点:16を獲得。筋力と敏捷度を成長。 -- あき (2008-05-19 05 14 31) 14150Gを消費し、〈ミノタウロスアックス+1〉と〈フォートレス〉を購入。 -- あき (2008-05-19 05 28 12) 《挑発攻撃》を《マルチアクション》に変更。 (2008-06-25 18 15 47) 『石化の街』に参加。 経験点1080点 報酬4100ガメル 名誉46点を入手。敏捷度1成長 (2008-06-25 18 16 31) 『シュラーフェン:第四の剣の間』でGMを行い、経験点:1120点 報酬:4607ガメル 名誉点:28点を入手。器用度1成長 (2008-06-25 18 36 12) 『キントハイトの街の処刑』でGMを行い、経験点:1180点 報酬:1250ガメル 名誉点:42点を入手。器用度1成長 (2008-06-25 18 36 43) 『下水道の決闘』でGMを行い、経験点1180点 報酬:1800ガメル 名誉点:26点を入手。器用度1成長 (2008-06-25 18 37 18) 『迷いの森』でGMを行い、経験点:1260点 報酬:4440ガメル 名誉点:53点を入手。器用度1成長 (2008-06-25 18 37 58) 『トーベ・ヤンソン』でGMを行い、経験点:1360点 報酬:4500ガメル 名誉点:88点を入手。器用度1成長 (2008-06-25 18 38 35) 『フカヒレを入手せよ!』でGMを行い、経験点1090点 報酬:900ガメル 名誉点:8点を入手。器用度1成長 (2008-06-25 18 39 12) 『プー太郎さんのハニー・ハント リベンジ』でGMを行い、経験点:1250点 報酬:980ガメル 名誉点:16点を獲得。知力1成長 (2008-07-28 10 22 42) 『木こりを守れ!』でGMを行い、経験点:1150点 報酬:800ガメル+現物200ガメル 名誉点:1点を獲得。知力1成長 (2008-07-28 10 23 34) 『キントハイトの街での処刑・決闘』でGMを行い、経験点:1290点 報酬:3000ガメル 名誉点:44点を獲得。知力1成長 (2008-07-28 10 24 26) 『トゥース・コレクター』でGMを行い、経験点:1200点、報酬:1740ガメル、名誉点:31点を獲得。知力1成長 (2008-07-28 10 25 46) 『シェロブ』でGMを行い、経験点:1160点 報酬:850ガメル 名誉点:51点を獲得。知力1成長 (2008-07-28 10 27 10) 『シュラーフェン:防具の間』でGMを行い、経験点:1130点 報酬:1910ガメル 名誉点:24点を獲得。知力1成長 (2008-07-28 10 28 06) 『遭遇戦2』に参加し、 経験点:1450点 報酬: 7200点 名誉点:91点 を獲得。器用度成長 (2009-03-09 18 24 57) 『部族の名誉』でGMを行い、経験点:1180点 報酬:2900G+アイテム600G 名誉点:49点+“ケンタウロスを倒した勇者(名誉点30点)” を獲得。器用度成長 (2009-03-10 03 37 23) 2009/03/25 『歌声の消えた森 第1話』でGMをやり、経験点:740点を獲得。器用度成長 (2009-04-06 10 52 04) 2009/03/25 『歌声の消えた森 第2話』でGMをやり、経験点:1040点を獲得。 器用度成長 (2009-04-06 10 52 29) 2009/03/27 『歌声の消えた森 閑話休題』でGMをやり、経験点:1030点、報酬:45G、名誉点:1点を獲得。精神力成長 (2009-04-06 10 53 47) 2009/03/27 『歌声の消えた森 第3話』でGMをやり、経験点:950点+100点、報酬:かつらとモノクル(250G)、名誉点:なしを獲得。精神力成長 (2009-04-06 10 54 08) 2009/03/28 『歌声の消えた森』でGMをやり、経験点:2090点+150点、報 酬:4703G、名誉点:51点+名誉称号“疾風の影殲滅”(30点)を獲得。知力成長 (2009-04-06 10 55 30) 2009/03/29 『パスカの祝祭 閑話休題 ~マギテック協会からの帰りに~』でGMをやり、経験点:1020点+50点、報 酬:650G、戦利品:なし、名誉点:13点+“盗賊退治”(20)を獲得。知力成長 (2009-04-06 11 05 27) 2009/03/31 『パスカの祝祭 第3話』でGMをやり、経験点:1120点、報 酬:3000G、戦利品:1000G、名誉点:30点+“オーガ殺し(30)”を獲得。生命力成長 -- (あき) 2009-03-31 21 03 41 (2009-04-06 11 06 04) 2009/03/31 『パスカの祝祭 閑話休題 ~盗賊団の隠し財宝~』でGMをやり、経験点:1130点、報 酬:5000G、戦利品:80G、名誉点:“沼で汚れた”(10)を獲得。生命力成長 (2009-04-06 11 06 27) 2009/03/31 『パスカの祝祭 閑話休題 ~沼の馬~』でGMをやり、経験点:1460点+50点、報 酬:天使の靴(2000G)+韋駄天ブーツ(1000G;ピアジュ)、戦利品:660G、名誉点:29点+“リザードマン倒し”(20)を獲得。生命力成長 (2009-04-06 11 06 51) 2009/03/31『パスカの祝祭 閑話休題 ~亀の甲~』でGMをやり、経験点:1050点+150点、報 酬:3000G、戦利品:0G、名誉点:20点を獲得。生命力成長 (2009-04-06 11 07 17) 2009/04/01 『パスカの祝祭 第5話』でGMをやり、経験点:1950点+100点、報 酬:3400G、戦利品:5960G、名誉点:122点+“ワーウルフ斬りの英雄”(50)を獲得。生命力成長 (2009-04-06 11 07 52) 2009/04/01 『パスカの祝祭 第4話 メイシア編』でGMをやり、経験点:500点、報 酬:0G、戦利品:0G、名誉点:0点を獲得。生命力成長 (2009-04-06 12 12 13) コメント
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(BR230/05/phase:00) 神聖LS教団  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ パロロワ大陸の一角。そこには、他の国々とは異質な勢力が根を下ろしていた。 その名を、神聖LS教団と言う。 その由来は神話の時代にまで遡るというが――国家としての歴史は、思いのほか浅い。 太古の昔、数多の煩悩に迷える人々を導いたという、幼き聖女『ロリータ』。そして短きズボンの少年聖者『ショータロー』。 その2大聖者の名を冠した『LS教団』が『サブ=カル』の地に教会を築いたのは、ほんの数年前のこと。 建造当初は、周辺諸国もその存在を軽く見、いずれ戦乱に飲み込まれて消えるだろうとたかをくくっていたのだが…… 大方の予想に反し、教団は急成長。 それどころか周辺諸国をも次々と飲み込み、事実上の支配下に組み込んでゆく。 力が全てを支配するこの大陸において、「宗教による統一」を果たしていく。 もちろん、教団の拡張の過程では、数多の血が流された。戦闘にもなった。戦争と呼んで良い規模の争いもあった。 だがしかし、その度ごとに教団の勢力は増していって。 特筆すべきは、その思慮遠謀。 武勇に秀でた名将に恵まれているわけでもない。兵力に勝っているわけでもない。むしろ教団の戦力そのものは弱い方だ。 それでも、勝つ。戦わずして勝つ。戦わせずに勝つ。 策を巡らせ策を弄び、策に策を重ねて策で勝つ。 多重に仕掛けられる罠。蟻地獄の如き計略。 心の闇に精通した教団の聖職者たちは、その1人1人が大国の軍師術師にも匹敵して。 やがて、ひとつの評判が誰からともなく囁かれるようになる。 曰く――LS教団の『サディスト聖人』たちとは、出来れば事を構えたくない。 彼らと戦うことを考えただけで『鬱』になる、と。 ……そのLS教団、正確には『神聖LS教団』。 形態としては数多の都市国家群の寄せ集めであり、教団そのものは世俗の権力とは別、という「建前」になっている。 雑多な国々が雑多なまま、たった1つの信念で寄り集まっている形。多様なジャンルの寄せ集め。 ただ、実際にその国々を支配しているのは教団であり、教皇であり大司教であり枢機卿であり信者であり。 ゆえに、最近ではその勢力圏を丸ごとひっくるめ、「LS国」と簡単に呼ばれることも多い。 逆に言えば……「外」から見れば「1つの国として安定している」ように見えるほどに、その勢力の拡大は止まっていたのだ。 もちろん、外部から侵攻をかけようという者もいない。誰が好き好んで虎の尾を踏むものか。 かくして訪れた嵐の前の静けさ。しばしの平穏。あるいは、一時の停滞。 だが、そんなことがあるものか。「あの」策士たちが、「あの」サディスト聖人たちが大人しくしていられるものか。 見かけは静かでも、その内実は……! (BR230/05/phase:03) 神聖LS教団  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 煌く朝の日差しが、大聖堂のステンドグラスを美しく輝かせる。 少年少女によって構成される聖歌隊の歌声が、遠くから微かに聞こえてくる。 神聖LS教団の中心、宗教都市『ロリショタ』――無論この名も、LS教団の元となった2大聖者の名に由来する。 ロリータとショータロー、この2大聖者を崇めるこの教団では、彼らにちなんで見目麗しい少年少女を聖なるものとして扱う。 聖歌隊もそうだし……大聖堂を掃き清めている、奉仕隊もそう。 黙々と朝の掃除を続ける人影の1人1人が美少年であり美少女である。 なぜかたまに坊主頭の小僧や、栗のような頭をしたブサイクな少年が混じってたりもするが……それはともかく。 荘厳な雰囲気漂う大聖堂を、足早に歩く人物がいた。 小柄な体躯。蒼い庭師の服に蒼いシルクハット。短い髪の、パッと見には性別不詳な美少年――もしくは美少女。 正式な儀礼用の礼服こそ身に纏っていないものの、胸元の聖印の形状から司祭位に位置する聖職者であると分かる。 彼、あるいは彼女の名は、『鬼軍曹』。 かつてアニロワ国で勇名を馳せた武将であり……しかし、LS教団はあくまで表向きは宗教組織。 教義を認め洗礼を受ければ誰でも受け入れる建前であり、そこに過去の経緯や肩書きは関係ない。 ゆえに、このような「異国の英雄にして教団の高位聖職者」などという存在がありうるのだが……ま、それはともかく。 誰かを探しているかのような彼(彼女?)の背に、声をかける者があった。 「……誰か、探してるの……?」 「あ、温泉少女大司教! いえ、大司教位の方々ならどなたでも良いのですが、先ほどアニロワ国から……」 「……対外的なことなら他の人探して。専門外。」 淡々と答えたのは、何故か浴衣を身に纏った少女。 教団のトップに君臨する大司教が1人、「温泉少女」――内政に長けた神聖LS教団の柱の1人である。 彼女が得意とするのは、治水工事に農業振興、商業振興に税収の確保。治安の維持に人心の安定。 最近の特筆すべき業績としては、市民の憩いの場、兼、兵士の湯治の場として国中の温泉を整備したことが挙げられる。 自己主張は少ないながら、国家の運営に必要不可欠な才能の持ち主。 同じく内政に長けた『深淵大司教』と共に、この国には無くてはならない存在である。 そんな彼女は、鬼軍曹の慌てた様子にも興味が無い様子でつぅ、と指を指す。 「ほら……そっちにもっと適任がいるから。あの人に言って」 「おやおや、どうしたのかな、鬼軍曹氏? 何かニュースでも?」 「あっ、枢機卿殿!」 2人の視線の先には……燕尾服に丸眼鏡の少年、いや少女。太い三つ編みにされた長いお下げが揺れる。 「地獄の紳士」「派手好み」などの異名を取る枢機卿、『666』。 数多の戦いを勝ち抜いた猛将であり、呪符(スペルカード)を使いこなす術師であり、教団を率いる首脳の1人であり。 なにより、奇想天外な策を使いこなす策士であり。 言うなれば、パロロワ大陸の他国の者たちが考える「神聖LS教団」そのものを具現化したような存在だった。 外見こそまだ若く見えるものの、彼女の姿形は何年経っても変わることはなく…… 一説によれば、邪法に手を染め自らを吸血鬼と化し、永遠の若さを得ているのだという。 そんな黒い噂にまみれながらもしっかり「枢機卿」という地位を獲得しているあたりだけ見ても、只者ではない。 温泉少女はそのまま無言でその場を立ち去る。後に残されたのは鬼軍曹と枢機卿・666のみ。 鬼軍曹は、意を決して「自らが得た情報」を口にする。 「アニロワ国が……戦争を仕掛けるそうです」 「ふぅん……それはもしかして、漫画国が動いたせいかな? つい先日、ギャルゲ国に侵攻したそうだしね。 大方それは、その情報を聞いた地図……否、マスク・ザ・ドS氏が『意図して流した』情報か。 なるほど、やってくれるものだ」 何気ない呟き。 鬼軍曹とて歴戦の将だ。情報の大切さは身に染みて知っている。 だからこそ……驚く。その反応の素早さ、状況を見抜く判断の早さに驚く。 鬼軍曹はただ「戦争を仕掛ける」としか言っていない。なのに、この推測の正確さと言ったらどうだ。 さすがは知恵者揃いのLS教団。脂汗を浮かべる鬼軍曹に、枢機卿666はしかし、フッと微笑みかける。 「それで……貴方はどうするのかな」 「どうする、と言われますと?」 「このまま我が教団のために戦うのか……それとも、故郷に戻るのか。たぶん、決断できるのは今しかないよ」 「…………!」 確かに、その通り。 いざ本格的な戦争が始まってからでは、国の行き来すらも難しい。間者との疑いも受けやすくなる。 下手をすればアニロワ国と神聖LS教団がぶつかり合う可能性もある現在、決断は早めに下さねばならない。 だが……信仰と、かつての戦友との絆。どちらか1つを選べと言われても、難しい。 「まあ、我々としては『どっちでもいい』んだけどね。君が帰るというのなら、止めはしないよ」 困惑する鬼軍曹を前に、666は哂う。 どこまでも底の知れない笑顔で、笑う。 鬼軍曹は思う。 いっそ、「命令」してくれれば楽なのに。 枢機卿という立場から、司祭という立場に命令してくれれば楽なのに。 それとも、鬼軍曹など戦力外だということなのか? 居てもいなくても同じだというのか? いやひょっとして、そう思わせておいて奮起を期待している? あるいはその悩みさえも策のうちなのか。思い悩むことさえも計算のうちなのか。 そういえばアニロワ国からの便りも、別に鬼軍曹に帰還を命じるものではなかった。ただ戦争の開始を告げるだけ。 これも、狙いは同じということなのか。 なら……自分はいったい、どうすればいい? 煌く朝の日差しが、大聖堂のステンドグラスを美しく輝かせる。 少年少女によって構成される聖歌隊の歌声が、遠くから微かに聞こえてくる。 神聖LS教団の聖都・ロリショタ。 その救いの都で、鬼軍曹は1人、揺れ続ける……。 (BR230/05/phase:02) 神聖LS教団  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ [タ・バサ大聖堂における子供たちへの説法会からの抜粋] よい子のみなさん、こんにちわー! (こんにちわー!) はーい、いいお返事ですねー。 わたしは、『深淵』大司教といいま~す。 しってるひとは、こんにちわー。はじめてのひとは、はじめましてー。 きょうは、『悪魔』とよばれた、伝説上の聖人のおはなしをしたいと思います。 そう、悪魔です。悪魔ってよばれたのに、聖人なんです。おかしいですね。 でも、それには深くて悲しいわけがあるのです。 その聖人の名は、「なのはさん」といいます。 なのはさんは、もともとはどこにでもいる、優しいおんなのこでした。 けれども、あるとき……(以下略) [報告書] 『深淵』より『教皇』へ 聖人召喚の大魔法の準備、計画通りに進行中。 LS教団における、伝説の5聖女1聖者―― 「悪魔なのは」「教祖タバサ」「偽悪のエヴァ」「誤殺のトリエラ」「性悪ヴィクトリア」そして「誤解の一休」。 彼ら伝説上の聖人の召喚に成功すれば、これより始まるであろう大戦争において優位を得られるのは間違いない。 説法の場を利用し、純粋無垢なる少年少女のエネルギーを収集。 同時に、依り代たる『ミニ八卦炉』の調整も完了。 聖人『なのはさん』の召喚、秘奇蹟『全力全開ファイナルスパーク』発動、共にいつでも使用可能。 想定されるその威力は、他国の巨大兵器にも十分対抗しうるものだと思われる。 ただし現状では1発撃つのが限界とも見られ、使用に際しては慎重な判断が求められる。 引き続き説法を通じて少年少女の思念を収集し、召喚回数の増加、他聖人の召喚の準備などを進める予定。 聖人『タバサさん』の依り代となる『バルディッシュ・アサルト』の調整進行状況、現在80%……(以下略) (BR230/05/phase:01) 神聖LS教団  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ――それは、鬼軍曹司教が枢機卿666に「アニロワ国からの伝言」を伝えた朝から遡って2日前の夜のこと。 昼間は絢爛豪華な大聖堂も、陽が落ちてしまえば人を寄せ付けぬ雰囲気を醸し出し。 子供たちが大司教の「ありがたいお話」を聞くための講堂も、不気味な静けさに満ちている。 教会内に並ぶ聖人たちの像も、まるで悪夢から抜け出した怪物のような影を投げかけている。 闇。 それが、神聖LS教団の裏の面。 未来への希望に光り輝く子供たちを讃え敬う「表の顔」とは180度異なる、教団の闇の側面(ダークサイド)。 いやむしろ、この教団の実情を詳しく知る者から見れば、こちらこそが主体に見えるかもしれない。 可愛らしさと美しさの裏に潜んだ、深く冥い『闇』――それこそが、他国から恐れられるこの国の本質なのだった。 そんな、闇に覆われた大聖堂に、ふらりと入ってくる影が1つ。 女だった。 大人の、女だった。 1歩進むごとに匂い立つような大人の色気を撒き散らすその姿は、とうてい神聖LS教団に相応しき存在ではない。 これが昼間なら、少年少女からなる護衛隊につまみ出されているところだろう。 礼拝に来ること自体は拒まぬが、それ相応の格好をしてこいと叱られていたところだろう。 にも拘らず、彼女は平然と歩く。大聖堂の奥の奥、高位の聖職者にしか許されぬ領域に足を進める。 「……おや、お帰りでしたか」 「あらァん、ジェイちゃんじゃない。わざわざお出迎え?」 「たまたま私も用があっただけです。それより、その不快な格好はいい加減やめて下さい。教会が穢れます」 不愉快な表情を隠そうともせず、女に声をかけたのは大司教の1人。 JZART。ハンマーや金属バットなどの鈍器の扱いに長けた武人であり、もちろん心の闇に精通した策士でもある。 桃色のツインテールを揺らす彼女に、女はニヤリと笑って。 「そうねぇ……そろそろ元に戻そうかしらん。『トリップヘンコウ』ッ!」 女の小さな囁きと共にボンッ、と小さな煙があがって―― 煙が晴れた時、そこに居たのは黒いローブをまとった、Jと同じくらいの体躯の人物だった。 幻術、『トリップヘンコウ』。 己が正体を偽る術の中でも基本中の基本とされる術であり、それだけに、見破るのは容易ではない。 妖艶な女の姿を取っていたその人物は、そして一転して明るい声で。 「ということで……ただいま。いやー、楽しかったー♪」 「首尾はどうでしたか、『エロ師匠』……いや、『ボマー』教皇」 教皇ボマー。 一応は教団のトップであり……しかしその立場も、決して他の聖職者を支配し押さえつけるようなものではなく。 むしろ平気で教団の勢力圏外に「お忍びで」出かけ、遊んでくるような存在。 漫画国から久しぶりに帰ってきた教皇は、そして楽しそうに報告する。 「『宣教活動』のつもりもあって遊びに行ったんだけど、そっちはちょっと失敗だったかな~。 ロリコン気味な人は結構いたけど、『リアル』に手を出すなら私たちとは相容れないし。 ただね……」 ボマーは1つの目的だけのために行動することはない。 常にそこには二重、三重の意味がある。 そしてボマーが『ボマー(爆弾魔)』と呼ばれる、その一番の理由は。 「特大の『爆弾』、仕掛けてきたから。 上手くすれば、あの2国だけじゃなくて……アニロワ国あたりにも引火するかな? ドS氏あたりは、こっちの思惑が『分かっていても』乗るタチだろうしねぇ……!」 そう……策士に溢れるこの国において、教皇ボマーが最も得意とするのが『爆弾設置』。 呼吸するように爆弾を仕掛け、呼吸するように策を仕掛ける。 漫画国に身分を偽って潜入したボマーは、そして恐るべき爆弾を、言霊を仕掛けた。 曰く――雌は歳若きをもって由とする。 後から気付いても、もう遅い。『エロ師匠』と『ボマー』が同一人物と勘付いても、もう遅い。 そのときにはもう、賽は投げられているのだ。 仕掛けられた爆弾は、爆発しているのだ。 「我々LS教団は、兵力そのものは他国に比べてもやや劣る……だからこそ! 戦乱を、起こす。 他国同士で、潰しあってもらう。 そして最後には――楽してズルして頂きなのかしら~☆」 闇に覆われた絢爛豪華な大聖堂に、軽やかな笑い声が響く。 立ち並ぶ柱を間を駆け抜ける風が、幼い少女の悲鳴のような音を立てる。 ――漫画国がギャルゲ国に進行を開始したのは、その翌日のことだった。
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426: ham ◆sneo5SWWRw :2018/04/13(金) 07 33 40 GATEネタの第一話について、色々と思うところが有るので改訂します。 現在、支援SSにある第1話は、これに全て置き換えてください。 427: ham ◆sneo5SWWRw :2018/04/13(金) 07 34 14 この作品はGATE(ゲート) 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えりと憂鬱のクロスものです。 原作の平成日本とは繋がりません。 色々破茶けてます。 こんなの無いだろ、なオリ設定もあります。 笑い飛ばす程度に読んでください。 以上の事を留意してお読みください。 1945年8月14日 内務省大臣室 「行方不明事件の増加だと?」 「はい」 この日、内務大臣にして夢幻会メンバーの転生者、阿部信行は部下からの気になる報告を受けていた。 最近になり、行方不明者が増加傾向にあるというのだ。 「多くは帝都に出かけたものが多いようです」 「むぅ、明日には近衛第二師団の凱旋があるというのに、面倒が増えるな」 終戦から2年経ったとはいえ、まだ外地には軍の治安維持活動が行われており、それを終えて復員する兵士の凱旋帰還の式典もあり、色々大わらわな状況であった。 近衛第二師団は、近衛師団から分派された外征師団であり、内地に残留する近衛第一師団と分けられてからは、中国戦線を勇猛果敢に戦い、治安維持部隊として外地で目を光らせていた。 だが、それもようやく終わり、本土への帰還が叶った彼らを迎えるべく、式典が準備されていたのであった。 「一部では欧州枢軸の工作員による拉致ではないかと疑ってますが?」 「君が嶋田総理ならそのような事をした馬鹿な国をどうするかね?」 阿部の言葉に、部下は少し思案して答えた。 「・・・軍事制裁を加えざるない、ですね」 「その通りだ。常識的に考えれば戦争だよ。そんな事を欧州枢軸が考えるかね?」 「ないでしょうな。現状、皇国と事を構えるなんて考えたくないでしょう」 「一応、当日の警備は厳重にしておこう」 「は」 このとき彼は気づくべきであった。 報告に合った行方不明者リストに"望月紀子"の名前があることに。 GATE 皇軍 彼の地にて、斯く戦えり 428: ham ◆sneo5SWWRw :2018/04/13(金) 07 34 48 1945年8月15日 午前11時50分 銀座六丁目交差点 この日、帝都東京は賑わいを見せていた。 近衛師団から分派された外征師団の近衛第二師団の凱旋式が行われていたからだ。 銀座など行進して兵営地の皇居北の丸に入り、軍旗返納の後、近衛師団に再編成される予定であった。 当時には、警備として警視庁のみならず、内地残留の近衛第一師団も出動していた。 関東大震災後の復興において、史実では計画縮小を余儀なくされた後藤新平案に基づいた復興計画を実行していた。 尤も、計画全てをこなすには30億円もの巨額の費用が必要だった。 夢幻会もいろいろな方法で資金を工面したが、全額を捻出することは難しく、ある程度は計画は縮小されたが、最終的には帝都大開発と呼ばれる一大工事となる。 そんな背景もあり、史実では44mに大幅に縮小された昭和通りも、この世界では計画通りの108mという広大な道幅を有していた。 そんな昭和通りの隣に位置する銀座のメインストリート、銀座通りで"異変"は起きていた。 夏の日差しによる陽炎か、蜃気楼か。 突如として、銀座六丁目交差点に、銀座通りを塞ぐほどの大きな門のようなものが幻のようにゆらゆらと浮かび上がり、気が付いた時にはそれが現実に存在するように鎮座していた。 周辺を警備する警視庁や陸軍が通報を受け、見物人を下がらせつつ、周囲の封鎖を行う。 「いったい誰だ?こんな迷惑なものを置いたのは?」 周辺封鎖を指揮する士官がそう呟く。 目出度い式典のの最中に、このようなトラブルは彼でなくても迷惑極まりないものであった。 既に工兵連隊にも連絡が行われ、解体のための建設機械が向かっていた。 映画のセットか、いたずらか。 誰もがそのように思っていた。 しかしそれは、門より出でし異形の存在によって否定される。 異世界の宣戦布告なき侵略によって。 429: ham ◆sneo5SWWRw :2018/04/13(金) 07 35 20 1945年8月15日 正午過ぎ 陸軍少尉、伊丹耀司は、この日は休暇を取り、夏と冬の年2回に開催される同人誌即売会に出かけていた。 習志野から総武線で秋葉原駅に行き、そこから京浜東北線に乗り換え、目的地の会場へ向かいつつあった。 「(今日は待ちに待った3日目。何が何でも新刊は確保するぞ!!)」 そう意気込んでいた彼は、目の前の車窓、銀座方面からあり得ないものが見えた。 「なんだあれは!?」 他の客も気づき騒ぎ出す。 彼らの目の前では現実には存在しないはずの竜が飛んでいた。 「やばい・・・やばいやばいやばいやばい・・・・・」 窓に手をついて見ながら、伊丹は焦る。 明らかに何かが、とんでもない何かが起きている。 そして彼は、列車が東京駅に止まると、すぐに降りて、地図で地形を確認して駅を出た。 「マズイ・・・このままじゃ、夏の同人誌即売会が中止になってしまうぅーーーー!!!!!!」 同時刻、銀座6丁目交差点付近 「撃て、撃ちまくれ!!」 銀座付近を警備していた近衛第一師団と警視庁特別警備隊及び警官突撃隊が国民を守りながら突如現れた門から現れた軍勢と交戦していた。 警官隊には超々ジュラルミン製のライオットシールドがあり、陸軍も警備のために銃剣付きの自動小銃を全員が所持していたこともあって、警官隊の盾に守られながら、なんとか防衛戦を気付いていた。 ライオットシールドは防弾性は無いが、幸い敵軍は銃器を持っていないため、剣や槍による斬撃や投擲武器による攻撃を防いではいた。 とはいえ、オークやトロル等の大型亜人のこん棒による一振りには、さすがのライオットシールドもひしゃげてしまうこともあり、 走行車両が無いこと、数の暴力、加えて竜騎士による空からの三次元攻撃も加わり、苦戦を強いられていた。 日本側は無理に格闘戦に応じないようにしながら、抑えこもうとするが、戦線は徐々に押し下げられていた。 「近衛第二師団や他の味方は!?」 臨時で現場指揮を行う陸軍中佐が、背負った無線機で連絡を行っている部下たちに尋ねる。 「第一師団の非常招集がかかりました!麻布の連隊が向かっています!」 「北の丸からも機甲部隊が出ました!習志野の戦車連隊も急行中です!」 「近衛第二師団は田町駅付近の国道2号(現:国道1号線)にいます! そこから部隊を2つに分け、一方が国道2号を、もう一方は国道1号(現 国道15号線)に入って向かっていますが、避難民の列で移動が制限されています!」 続々と来る部下からの報告を受けて指揮官の中佐が、地図を確認して指示を出す。 「皇居と官庁街は絶対に入れてはならん!日比谷公園まで遅滞戦術を行いながら後退して近衛第二師団と合流する!」 430: ham ◆sneo5SWWRw :2018/04/13(金) 07 36 17 1945年8月15日 午後12時30分 宮城(皇居)二重橋付近 「避難民を宮城内に入れろだと!!」 東京駅を降りた伊丹は、避難民を逃がすために皇居二重橋前の皇宮警察の詰所で皇宮警察官らに宮城内への避難を要請していた。 「そうだ!宮城はかつて江戸城だった場所だ! 今ここに居る避難民を賊軍から守るには宮城に立てこもるしかない! それに半蔵門や千鳥ヶ淵側から逃がすことも出来る!」 「いくらなんでも一介の少尉殿の要請では通りません! それに、自分の一存でそのようなことは決められません! 第一、宮城にむやみに人を入れるなど・・・」 渋る皇宮警察官に、伊丹を姿勢を正し、気を付けの姿勢を取り、叫んだ。 「恐れ多くも! 天皇陛下が御座す宮城の御前で! 臣民が賊徒に無残に殺される様を御上に御見せする気か!!?」 この一言に皇宮警察官らは口を噤んだ。 彼らも反論できなかった。 確かに彼の言う通りだ。 陛下の御前でそんな惨状を曝すわけにはいかない。 そんな彼らの詰所の電話が鳴る。 「もしもし・・・は!!」 電話の相手をする皇宮警察官は突如姿勢を正して応待する。 そして、電話を置くと、伊丹と他の皇宮警察官に向かって言った。 「陛下は臣民の安全を守るために宮城への非難を命じられた!すぐに正門を開けよ!」 二重橋を抜けて宮城内に入った避難民は東御苑へ誘導され、本丸跡の広場に集められた。 その後、警備任務に出ていた軍警混成部隊は、日比谷交差点で近衛第二師団の分遣隊と合流。 近衛第一師団の残存歩兵戦力と第一師団の第一連隊が皇居外苑に入り、近衛第一師団の機甲戦力が内堀通りを経て日比谷通りに入った。 これにより敵軍は三方向から攻撃を受けることになる。 空からは緊急出動した陸軍の調布飛行場の近衛飛行隊や海軍の横須賀・厚木・館山・木更津・百里原航空隊が緊急出動し、竜騎士を次々と落して、地上攻撃も行う。 海からは海軍の戦艦長門を始めとする艦隊が出動し、浜離宮周辺から陸戦隊が次々と上陸して銀座に急行する。 ここに至って敵軍は敗走を開始したが、既に習志野より出動した戦車連隊と近衛第二師団の本隊が門を抑えていたために脱することは出来なかった。 降伏する者は捕虜として捕えられたが、抵抗する者は容赦なく攻撃されて討ち取られた。 こうして帝都を揺るがした銀座事件は幕を終えた。 なお、夏の同人誌即売会の中止が決定したのは、言うまでもない。 431: ham ◆sneo5SWWRw :2018/04/13(金) 07 36 51 後日 夢幻会会合 「ゲートの世界とは、全く・・・」 会合の席で、嶋田は頭痛薬を飲みながら頭に手をやり、痛みをこらえていた。 戦後でもまだまだ忙しいというのに、この上ゲート世界と通じるのだから、彼が頭を抱えるのも仕方ない。 「原作は20XX年で、アニメは2015年の放送だから、おおよそ70年前か。ということは向こう側も?」 「いや、原作準拠のようだ」 「捕虜の数は準拠じゃないだろ」 「まぁ、平成世界じゃ逮捕権は警察にあったからな」 会合メンバーは、ゲートの向こう側の特地の状況を確認した。 後に銀座事件、銀座事変とも呼ばれる今回の惨事では、軍事パレードと重なり、なんとか初日で抑え込むことに成功していた。 原作では何日もかかったこともあれば、はるかにマシであったと言えよう。 しかし、一部士官、兵士が感情的になり、降伏をしたと分かっても攻撃を加えて皆殺しにするなどする事態も起き、原作よりは捕虜の数は少なかった。 勿論、感情的になった士官や兵士たちは、軍の統制を維持するため、軍法会議に掛けられていた。 「返した捕虜共は馬鹿をしただろ?そいつらが居なくなったと思えばいいさ」 原作でのヘルム・フレ・マイオなどの面々を知っている転生者たちは、彼らによる面倒が無いと前向きに考えることとした。 「さて、どうしますか?」 辻の訊ねに、嶋田は答える。 「派兵は決定だろう。こちらは2万5千が殺された。報復は必要だ」 「杉山さんの仇を取りませんとね・・・」 「「「いや、殺すなよ!!」」」 会合メンバーが辻の言葉に総ツッコミをした。 参謀総長に就いている杉山は、当日、観閲官として近衛第二師団の凱旋式に出向いた。 当日の彼は式典ということもあって、勲章を多めに付けた礼服を着ていたが、これが逆に目立って襲撃を受ける結果となった。 幸い、命を取り留めたが、もう既に今年で63歳の高齢ということもあり、勇退が決まっていた。 何度目かの全員からの総ツッコミに、辻は再び乾いた笑みを浮かべる。 「冗談ですよ」 「神や悪魔に勝てるお前が言うとシャレにならん。」 「「「うんうん」」」 嶋田の一言に、辻を除いた全員が頷く。 辻が否定しようとするが、すぐに派兵の話に戻され、抗議する機会は流されてしまった。 432: ham ◆sneo5SWWRw :2018/04/13(金) 07 37 24 「震災の時のように騒ぎ出した大陸と半島の馬鹿共はまた躾をしてやったが、これで大陸の警備が余計に外せなくなった」 やはりと言うべきか、またかと言うべきか、大陸では漢民族と朝鮮民族の暴動が発生した。 もちろん、日本軍によるヘリを用いた立体機動戦によって再び鎮圧され、彼らの評価をさらに下げるだけの結果に終わったが。 「それについてだが、福建共和国やタイ、インドネシア、フィリピン等の東南アジア諸国、西海岸の三ヵ国、英国から派兵を打診されている。 これを機に日本への得点を稼ごうという魂胆だろうが」 外務省で外交官として活躍する松岡洋右が、そう報告する。 「規模次第だろうな。問題は欧州だ。特に独ソは日本が特地の資源を手に入れることをよっぽど恐れているようだ」 「現状、軍事技術では日本が進んでいるもんな。それに膨大が資源がつくなんて悪夢なのだろう」 「それで言えばソ連も同様だ。輸出国の価値も落ちるし、ロマノフの忘れ形見がいるからな」 降りかかってくる問題に、夢幻会メンバーは大きなため息を吐いた。 「とりあえず首相は嶋田さんで「辞めさせてもらいます」・・・は?」 嶋田の突然の発言に一同が固まる。 「どう考えても陸軍が主役です。ならば陸軍が政権を握るのが筋でしょう」 「「「陸軍としては海軍の提案に反対である!!!」」」 「「「海軍としては陸軍に期待するところ大である!!!」」」 結局、伊達に三職兼任で仕事スキルが鍛え上げられた嶋田の活躍もあり、 陸軍が主体ということに対する正当性と、 実のところ海軍に比べるとあんまり活躍しているとは言いにくい陸軍の御家事情も重なり、嶋田首相の辞任と陸軍による軍事政権が成立することとなった。 永田鉄山が首相に就任すると同時に、嶋田の先例に習い、彼は陸軍大臣と参謀総長、さらに教育総監も兼務することになり、嶋田内閣に続く第二の独裁政権、永田内閣が誕生することとなる。 一方、辞任した嶋田であったが、「まだまだ引退するには早いですよ」という辻の悪魔の言葉と共に、軍事参議官として中央に残ることになる。 あと、伊丹は二重橋での避難民救出の功から中尉昇進して、さらに翌日に大尉に昇進して、実質二階級特進することとなった。 以上です。 どうして続いてしまった・・・ 改訂前と比べて地の文を増やしました。 あと、永田さんには嶋田さん以上に権限を集約させました。