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「いやーすっかり遅くなっちゃったわね」 全くだ。現在時刻、午後9時半。部活にしては遅すぎるぜ。 朝比奈さんなんかさっきからあくびをかみ殺してばかりだ。ふぁあ。あくびうつった。 とりあえず、早く帰って休もうぜ。明日休みとは言え疲れをためるのは良くない。 「わかってるわよ!…キョン、古泉くん!」 何だ。 「何です?」 「女子をそれぞれの家に送りなさい!こんな時間に女の子が一人で歩いたら危険よ!」 あのなハルヒ、こんな時間になったのはお前が… 「わかりました。ここから一番近いのは長門さんの家ですね」 「じゃあみんなで有希の家へゴー!スパイダーマン♪スパイダーマン♪」 近所迷惑になるからスパイダーマンのテーマ(エアロスミス)歌うな。 「ぅう…暗いですね…」 すみません朝比奈さん、俺がついてますから…本当だったら真っ先にあなたを… 「…キョン」 何だよ… --------- 何となく喋りながら歩き、ほどなく長門のマンションに着いた。 まだ更に朝比奈さんの家・ハルヒの家へと行かなけりゃならん事を考えると少々気が滅入るがまぁ仕方ない。 じゃあな長門。また学校でな。 「………」 「どうしたの有希?」 マンションの門で立ち止まったままの長門に、ハルヒが問い掛ける。 確かに様子がおかしいな。どうしたんだ? 「…あそこ」 「…ぁあっ!ひぃい…」 長門の視線が指す先を俺が見る前に朝比奈さんの悲鳴が夜の住宅地に響いた。 おいおい…あれは… 「おやおや…これは」 おやおやって…お前な… 「キョ、キョン!何なのあれ!」 俺に聞くな!俺にはアレにしか見えんが… 「…有機生命体の言語で言うなら」 待て待て。俺は認めたくないんだ。何かの間違いだ。特撮だ。 「あれは幽霊」 ……はぁ… 「ふみゅう。。。」 崩れ落ちる朝比奈さんを古泉と支えながら、長門に尋ねる。 マジで言ってるのか?幽霊なんてホントにいるのかよ。 「いるじゃない実際に!あたしだってそりゃ100%信じてたわけじゃないけど、 幽霊なんていないって言うならアレは何よ!」 確かにハルヒが指差す先には、中学生くらいの女の子が… その…何だ。浮いてるんだ。宙に。 それに俺は長門に聞いてるんだ。なぁ長門、本当に幽霊なんか… 「…あなたは誰?」 …は?何故それを俺に向かって言うんだ?聞くならアッチだろ? 「あなたに聞きたい。答えて。」 …何か意図するところがあるみたいだな。 俺は俺だ。これでいいか長門。 「いい。次の質問」 ……… 「なぜあなたはあなただと言い切れる?」 ……解らん。 「降りてきなさーい!あんたに聞きたいことがあるのよ!」 向こうでハルヒが拳を振り上げ何やらきゃいきゃい騒いでいるがとりあえず無視する。 「…自意識という情報があるから」 「自分、という概念」 「その情報はとても大事」 「それが確立していないとヒトは自他の境界線を失う」 「だから自意識の情報には強固なセキュリティがかかっている」 「普通死後は全ての情報が破棄されるが自意識の情報はそのセキュリティのせいで残る事がある」 「それが幽霊」 要するに、自意識情報が魂みたいなもんで死後に残ってしまうといわゆる幽霊になるってわけか? 「そう」 なるほどな… 情報統合思念体なんてものの存在を知った今じゃ、 幽霊が完全削除するのを忘れてゴミ箱フォルダに残ったデータだ、 とかいう突拍子もない話の方が、もっともらしい心霊番組よりよほど信じられる。 「キョン!あんたさっきから人を無視して!」 …あぁ、すまん。 「あいつ捕まえるわよ!」 幽霊をどうやって捕まえるって言うんだ! 「頑張るのよ!」 「そうですよ。努力は時に天才を打ち負かすものです」 …古泉を本気で殺したいと思ったのは初めてだ。いや初めてか…?まぁいい。 あのなお前ら、 「あっ!消えた!」 なにっ? さっきまでヤツがいた所を見ると…確かに消えていた。 あぁ…俺の頭にわずかに残っていた特撮説も、一緒に消えちまった。 一般人よりもちょっとばかり超常現象に耐性がついてる俺は、 幽霊が消えた事に驚くよりもさっきから最高の笑みを崩さずこっちを見ているハルヒが、 次に言うだろうセリフを予測しうんざりしていた。 「探すわよ!」 ってな。…まぁいいが、 探しに行く前に、朝比奈さんを起こさないとダメだろ。 「そうね。みくるちゃん起きなさい。気絶なんかしてる場合じゃないわよ」 「う…ん…」 俺の腕の中でかわいらしい声を出す朝比奈さん。 自制しなければ…ってうわぁ! 「……」 いきなりがばっと立ち上がった朝比奈さんは、黙ったまま俺達に視線を向けた。 「みくるちゃん…?」 「これは少々厄介ですね…」 どういう事だ古泉。 「朝比奈みくるの自意識情報が一時的ブランク状態である事を利用して入り込んだ」 …えっとつまり… 「朝比奈さんが気絶しているスキに幽霊が憑りついたということです」 「みくるちゃんが憑りつかれた!?凄いわみくるちゃん! 日頃から巫女さん衣装とか着せてるから霊媒体質になってたのかも!」 …何でそんなに嬉しそうなんだ。 しかし、ハルヒがいくらつねったり胸をつついたりしても無反応な事を考えるとどうやらマジらしい… 「あなたたち」 朝比奈さん(霊)が突然口を開いた。 「あなたたち、私が怖くないの…?」 朝比奈さん(霊)は、朝比奈さんの声で俺達に問い掛けてくる。 不思議と恐怖感は全くない。奇妙なものに遭遇するのにも慣れてきたしな。 「全然大丈夫!ところで、あんた名前は?」 「…ちひろ」 「ちひろちゃんね!どうしてあたし達の前に出て来たの? あと、憑りつくってどんな感じ? そうそう、どうやったら幽霊になれるの?」 朝比奈さん(霊)、どうやらちひろというらしいが… ハルヒのヤツ…幽霊に質問攻めとは… 「好ましくない状態」 長門が呟く。 「一つのフォルダに二つ自意識情報が入っている」 「このまま朝比奈みくるの自意識情報がブランク状態から復帰したら」 「…重大な人格障害を起こす危険がありますね」 「…そう」 人格障害…?まずいじゃないか。何とかならないのか…? 「入り込んだ自意識情報を削除すればいい」 「しかし、セキュリティはどうするんです?」 「外部操作によってセキュリティを解除する」 「正確には自ら解除させるよう仕向ける」 わかったぞ。つまり俺達が幽霊ちひろの未練みたいなのを取り払ってやれば、 セキュリティは解除されるって事だな? 「飲み込みが早いですね。驚きましたよ」 「私も驚いている。 こうも容易に理解することは予測していなかった」 ただ幽霊モノの基本を言っただけなんだが…なんかムカつくな… 長門まで… 「おーいあんたたち!」 俺達をそっちのけで朝比奈さん(霊)となにやら話していたハルヒが、彼女の手をひいてくる。 「ちひろちゃん、生きてた時に付き合ってたひとと話したいんだって!」 またベタな展開だが…いいのか、長門。 「…」コク 正直こんな時間に見ず知らずの人を訪ねるのはどうかと思うが、 朝比奈さんの事を考えれば仕方ない…か。 で、場所は分かってるのか? 「大丈夫。あの人の事はいつも感じているから」 幽霊ならではの能力ってわけか。 「形のない情報として存在しているから自他の境界線はない」 ふむ。 「だから他人を自分として認知することもできる」 頭が痛くなってきた…とにかく行こう。 「こっちです…」 俺達は朝比奈さん(霊)…ちひろについて歩く。 どうやら彼女の恋人の家は例の公園の方向にあるらしかった。 5分ほど歩いたところでふと、ちひろが足を止める。 「………」 …ここか。 「ここね!じゃあちゃっちゃと済ませましょう」 待て! 何普通にチャイム鳴らそうとしてるんだ。 「だって出て来てくれないと話せないじゃない」 あのな…今何時だと… 「…あの…」 …! 「何かご用ですか…?」 …この人は…まさか? ちひろの方へ視線を向けると、彼女は泣きだしそうな表情で呟いた。 「道弘くん…」 やっぱりそうか… 俺達の後ろからやって来た、不審な顔で問いかけてきたサラリーマン風の男。 この人がちひろの探していた人物らしい。 「…どこかでお会いしましたっけ…?」 「あの…私…」 「わからないむぐっ!まいむんももっ!」 何やらわめこうとしたハルヒの口を抑え、古泉と長門に目で合図を送る。 俺達は邪魔者だ。空気を読もうじゃないか。 しばらく遠巻きに見る事にしようと、場を離れかけた時だ。 「何だかわからないけど、制服姿でこんな時間にうろついてたら捕まるよ? 早く家に帰りなさい」 事情を知る俺達にはとてつもなく非情に響く言葉を残し、彼は玄関に歩いて行ってしまった。 「…無理もないですね…彼は何も知らないわけですから」 「話くらい聞いてもいいと思わない!?ふざけてるわ! これじゃあせっかくちひろちゃんが…」 ガチャン… ドアの音がこんなに冷たいとは知らなかったぜ。 「顔が違うだけでわかんないの!? 死んじゃったら忘れるなんて酷い男だわ!信じられない!」 『パパ…か…りーっ』 「いいちひろちゃん、あんな奴の事忘れなさい! もっとマシな男がきっと…」 しっ!ちょっと静かにしろ!今… 『ただい…ちひ…』 …ちひろが息を飲むのがわかる。 いや、息を飲んだのは俺だったのかもしれない。 『ちひろねぇ、パパがかえってくるのまってたんだよ』 『ありがとう。でも夜更かしはダメだぞ』 「「あ…」」 ちひろとハルヒの声が重なる。 「みなさん、こっちを見てください」 古泉が芝居がかったポーズで指し示しているのは… 表札。 そこにはこうあった。 木下 道弘 早紀 千日旅 「これは、何と読めばいいんでしょうね」 「…ち…ひろ…私と同じ…字で」 「これは珍しいですね。きっと出生届を出すときも一悶着あったでしょう。 わざわざこんな字を当てるなんてよほど思うところがあったんでしょうね」 …ハルヒは、驚きと悲しみが混ざり合ったようなよく解らん表情で表札を凝視している。 かくん、と朝比奈さんの体が崩れ落ちる。何とか支えられたが、こりゃ… 「…長門さん」 「彼女の自意識情報は削除された」 …成仏したってことか? 「そう」 「じゃああなたは涼宮さんをお願いします」 再び長門をマンションに送った後、俺と古泉はそれぞれ二手に別れて二人を送ることにした。 あの後ハルヒが終始無言だった事を懸念してるらしい。 懸念だけじゃなく対処もしてほしいんだがな。 「………」 どうしたんだ。黙ってるなんてらしくないじゃないか。 「死んじゃった後の事考えてたの」 …ふむ。 「そしたら…怖くなって…」 あぁ。誰もが体験する感覚だ。自分が死んだらどうなるのか考えて、勝手に恐怖を感じる。 死んだらもう何も感じないし、何も感じない事も感じない。 feel nothingどころかdon t feel nothing の状態になるって事を考えると確かに怖い。 でもなハルヒ、今日した体験で死んでも自意識情報…魂は残る事もあるって解ったじゃないか。 お前ほど自意識の強い奴なら、絶対に幽霊になれると思うぜ。 「当たり前じゃない。幽霊になる方法もちひろちゃんに聞いたし、 死んだら絶対に幽霊になってやるって思ったわ」 …じゃあ何が怖いんだ? 俺は今日の体験で逆に死への恐怖感が減ったくらいだ。ほんの少しだが。 「ちひろちゃんは結局、道弘くんと話せなかった」 …そうだな。でも彼はちひろの事を忘れてなかったじゃないか。 「すれ違いなのよ」 …何がだ? 「例えるなら車道ね。すれ違う時、限りなく近づくんだけど 交わることはないの。だって正面衝突しちゃうでしょ?」 お前まで分かりづらい例えをするようになったか。 要はちひろは道弘さんと話したいし、道弘さんはちひろの事を忘れていないけれど---- 「もう一度二人が会うことはできないってこと…」 …そうか……… 「その事だけじゃないわ。 …そもそも道弘くんがちひろちゃんの事を死んでしまった後も覚えてて、 娘に同じ名前をつけたのって愛してたからよね」 そうだろうな。 「あたしが死んだ時、誰かが同じ事してくれるのかなって考えたら… また怖くなって。」 ハルヒ… 「…あたし死んだらあんたのとこに化けて出るわ」 ……… えーっとこの脈絡でそういうこと言われると…どう反応していいか… 「何よ。イヤなの?」 いや、そういうわけじゃないんだが… お前より先に俺が死んだらどうするんだ? 「あたしのとこに化けて出ればいいじゃない!」 そうする為には俺も幽霊になる方法を知らなければならないんだが… …何赤くなってんだ? 「…すごく、好きな人がいればいいんだって…! もうここまででいいわ!ありがとう!気をつけて帰りなさい!じゃね!」 …はぁ。 何と言うか… 死ぬ時は一緒に…なんて考えちまった俺が憎いぜ。 一緒に幽霊になっちまえば、同じ車線にいるわけだからな。 …疲れてんのかな。明日も休みだし、帰って寝よう。 To ハルヒ Sub 幽霊の件 Txt どっちかが先に死ぬって考えるから怖いんじゃねーか? 例えばお前が先に死んでも忘れられないとは思うが… まぁちょっとした思い付きだ。俺は寝る。 Fm ハルヒ Sub Re 幽霊の件 Txt バカな事言ってないで早く寝なさい!明日9時集合だからね! To ハルヒ Sub Re Re 幽霊の件 Txt 明日は何もなしじゃなかったのか!? Fm ハルヒ Sub Re Re Re 幽霊の件 Txt 今決めたの! fin.
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ナオミちゃんかわいいよナオミちゃん ハァハァ 朝起きーの着替えーの歯磨きーの家を出ーのオシリーナ
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「・・・・・・・・・・・やっぱりこのままじゃいけないみたいね・・・・・あのときやってさえいれば・・・」 俺たちももう高校二年生になり、桜の花もその役割を終え、新しい季節が 始まりを告げようとしていたとき、SOS団の活動もひと段落ついた学校の帰りの坂道で、ま~たハルヒが妙に気になることを呟いた。 まあ、どうせろくなことじゃないだろうがな。ハルヒのこの無茶な発言にもいいかげん慣れている。 この言い回し・・・・・ろくなもんじゃないってことはわかるぜ。 まあ、もっともこいつがまともなことを言ったことは雀の涙程度しかないがな。 まあ、朝比奈さんの新しいコスプレ衣装に関しては文句なしだがな。 しかし、今回に関してはなにか嫌なー予感ーがするぜ。 少なくとも、いらないのについてくるケータイ電話のストラップくらいろくなもんじゃないな。 で、今度はいったいどんなことを言い出すんだろう・・・・・ 思考をめぐらせてみよう。 ①UMA探索 ②UFOを呼ぶ ③地底人探索 ④GAN○Z部屋に行こう ⑤スタ○ド能力が使えるようになったのよアタシ! ⑥オ○シロ様の正体を探りましょう! ⑦幻○郷に行ってあの貧乏巫女にあいたいわ! ⑧聖○戦争に巻き込まれちまったぜ ⑨直○の魔眼を手に入れた ⑩左手が鬼になっちゃった ・・・ ・・・っと、これくらいかな。あいつが言い出しそうなのは。 しかし、こんな普通に考えるとほぼ100%できないようなことでも、言い出したら最後、飽きるまで暴走し続けるのがこの涼宮ハルヒの得意技だ・・・ ああ、もしかしたら俺、自称ハルヒ心理学者の古泉よりもハルヒの心境がわかるかもしれないぞ。 まあ、もっとも分かりたくもないがな。・・・・・・・おいそこ、嘘だッ!!っとか早くも叫んでるそこのお前、俺は断じて嘘などついておらん。 っていうか、なんで今の俺の考えが嘘と思われるのか知りたいところだ。 てか、俺は誰に向かって話してんだ?俺もそろそろヤバイかな。嘘は谷口の存在だけにして欲しいぜ。 ・・・・・・・・・・なぁんてことを溜息交じりに考えて、俺は手をやれやれだぜといった具合にしながら、ハルヒに問いかけた。 「どうしたんだハルヒ?このままじゃいけないって・・・・・なにがだ?俺はこのままで十分高校生であるべきLifeを堪能しているがな。なにより朝比奈さんが淹れてくれるお茶はそれはもう言葉では言い表し難い程ウマイし、長門は無口、無表情、無感動の3M(?)だし、古泉は古泉だし、何一つとして困ることや不安はないと思うが?」 それにしても、俺たちももう高校二年生か。しっかし色々あったな。 まぁ、色々ありすぎたわけだが。朝比奈さんはもう3年生かあ・・・・・・ 早いものだ・・・・・・・・朝比奈さんは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・3年生・・・・・3年・・・・卒業・・・・・・・・ん?・・・・・・ってちょっと待て! 俺たちよりも早く卒業するとなると、あ、あの極上のお茶・・・別名「天使の涙」(命名俺)が、もう飲めなくなるじゃねえか!! ・・・・・・・・・参ったぜ畜生、思わず声に出しちまったじゃねえか。 ほら、さっき道の角ですれ違った中学生っぽい男の子も、俺のほう見てるよ・・・・・ああ、ハルヒもあきれてモノもいえないみたいだな。 ・・・・・・・で、どの部分から声に出ていたのだろうか? このときの俺には知る由もなかった・・・・・・ ~角川書店 著者キョン『倦怠に満ちた俺の日々』より~ 「・・・・・・あんたもう相当頭が谷口化しちゃったみたいね・・・・・・・・そんなんだからいつまで経っても本名で呼んでもらえないのよっ! 団長の気持ちもわからないようじゃ今後、一生雑用みたいね。 ・・・それはさておき、去年の文化祭のライブ覚えてる?バンド演奏よ。あれ来年の目的とかいって、それからSOS団のライブ活動をちょこっとやっただけじゃない。あの応募して落選したやつ。なんか落選したらさ、もういいや~って思えるようになってね? それっきりやってないじゃない!やっぱり続けるべきなのよ!」 おいおい、バンド演奏ならもういいじゃねえか。それに、俺はもうハルヒの作り出した曲で、あのわけのわからん音符の怪物と戦うのはもういやだぜ? サウンド・ウォーム(命名俺)だっけか? まあ、せっかくベースも弾けるといってもいいレベルまで達したわけだし?俺としても、やりたくないなんていったら嘘になるな。そんな心にもないこといったら針千本を飲まされるぜ。 しかし、俺たちももう高校二年生だ。来年は受験だし、二年の成績はかな~り内申に響くんだぜ? もし、あまりにもできないんで補習!・・・な~んてことになったら、俺はお袋の怒りを買いかねない。 そうなったら最後、バンドはおろかSOS団の活動の参加すら危ういんだぞ。 え~、つまり、大きくまとめると第一に、ハルヒが作った曲にはあのトンデモパワーが宿り、それを聞いたら最後、一生その曲が頭の中で これ以上聴いたらノイローゼになりかねないぞくらいのリピート状態になる。 第二に、俺たちはもう高校二年生だ。わかる?受験だよぉ~・・・ そういうことだからさ、いいかげんそこんとこ学習しようぜ!ハルヒ! ・・・・・という理由である。 まあ、俺的には後者のほうが大きいかな。 理由としては。 しかし、学習してないのは俺も同じだった。 つかさ、俺が本名で呼ばれないのとさ、そこで谷口の名前が出てくる意味がわからねえ。 「なに言ってんの!SOS団の団員である以上は、好成績を残さないとだめだめよ!補習なんてもってのほかだわ!・・・・・・・・・こりゃあま~たあたしが勉強を教えるしかないようねぇ~♪」 はい、俺の話は全然届いていなかったようだ。ようするにやめて欲しかっただけなのにな。ていうか妙にうれしそうだな~、ハルヒよ。 バカに勉強を教えるのは、ペットに芸を教える感覚と類似したものがあるのだろうか?だとしたら、俺には一生無縁な感覚だな。 「バ、バカッ!ぜんっぜんうれしくなんかないわよっ!このうんこっ!」 わかった。もううんこでいいからさ、ネクタイをこれからカツアゲする不良みたいに引っ張らないでくれよ。 でもまたなんで急にそんなことを思いはじめたんだ? 「ハァハァ・・・・・・ふぅ・・・・それはね、昨日部屋のなかを整理してたらね、ビデオが出てきたのよ。結構古かったわね~。それをさ、なんとなく再生してみたら、昔やってた音楽番組だったのよ。でね、あるバンドの演奏してる姿を見たのよ。 それみたらもういても経ってもいられなくなってね! あれがまたすごいのよ! あの哀愁漂うアルペジオのイントロから始まり、終わったかと思いきや、ここから『静』から『動』!ヴォーカルがね、なんていったかしら・・・・・あ、そう!紅だああああああ!!って叫んだのよ! そしたらね、そこからはもう疾走感溢れるアップテンポでね~。 ホント、あれ見て思わず身震いしたほどよ! あのバンドの名前なんていったかしら・・・・・・・・たしか・・・・・アルファベットだったような・・・・? あ、Xなんとかだったわ! 」 こいついったいいくつなんだ? XJAPANだろ?そんでもって曲は紅だ。 なんでそんな古いもん見て興奮するんだよ。Xっていや~・・・・・1989年デビューしたんだっけか。 お袋がファンで、嫌というほど話を聞かされたから覚えてる。 紅はデビュー曲だよな。聴いたことはないけど・・・・・ ああ、そういやこいつ、ロックも聴くんだっけか。いつだったか、『マリリン・マンソン』の曲を口ずさんでたっけ・・・・・・・・・・ 興奮するのも分かる気がする。 「そう!それよ! XJAPAN!懐かしいわね~♪」 だから、お前一世代古いって。 「なにいってんのよ! 彼らの1番の魅力は、『時代を感じさせない音楽』 よ! 『DAHLIA』や、『ART OF LIFE』なんか、90年代の曲だけど、今の邦楽なんかには感じない凄味があるわ! 全然色褪せてないもの! あんたも一回聴いてみなさいよ!絶対ハマルって!」 だ~か~ら~、ハルヒよ、俺はもう勉強でいっぱいいっぱいなの。 そんな音楽聴いてる暇なんかないぞ。 「勉強はアタシが見てあげるっていってんでしょうが!人の話は最後まで聞きなさい! アンタの悪い癖よ! ・・・・・・・・!! 思いついたわ・・・・・・・・!!」 嫌なー予感ーがする。またなんかバンドで俺たちを巻き込むつもりだ・・・・・・・・・・。 まあ、それはいいか! ハルヒが見てくれるって言ってくれてるしな。こちらとしてもそれは大いに助かる。巻き込まれてやろうじゃないか。 なんだかんだいって、俺もバンドをやりたいらしいな。 Xにも興味があるし。・・・・・・で、その思いついたことはなんだ? 「前のときは、容姿が普通すぎたからダメだったのよ! 今度からは、あれよ、あれ。ん~っと・・・・・そう! ヴィジュアル系! これしかないわ~。 邦楽でいいのは、ほとんどヴィジュアル系だしね!PIERROTに、LUNASEA、PENICILLIN、Laputa、Dir en grey、ラファエル、プラスティック・トゥリー、CASCADE、陰陽座、Janne Da Arc、ラルクアンシェル、SHAZNA、上海アリス幻○団・・・・・あげたらきりがないわ!」 わかった、わかったからもう言わなくても、いいぞ? ていうか90年代多いな。ほんとは年ごまかしてんじゃねえのか?・・・・・ていうかさ、ラルクアンシェルをV系呼ばわりしたら、怒って帰っちまうぜ? それに上海アリス幻○団はヴィジュアル系でもないし、バンドでもねえよ。 それに、前に落ちたやつの応募方法は、デモテープを送ることだったろ? 容姿なんて見えないんだから意味ねえじゃねえか。ああ!つっこみどころが多すぎる! 「細かいところは気にしなくていいの! それもあんたの悪い癖よ! それに!アタシがV系っていったら、それはもうV系なの!わかった!? ・・・・・で、これからキョンの家にみんなを呼んで邪魔しようと思うんだけど。 どうせ親はいないでしょ? だったら早くいきましょ!もういても経ってもいられないの!」 どうやらこいつの辞書には遠慮という単語は存在していないようだ。ま、別にかまわんが・・・・・・・・いったいなにをしに来るんだ? 「練習よ練習!みんなだいぶうまくなったようだけど、アタシから見たらまだまだよ。みんなが作詞作曲できるようなレベルにならないとね!」 それはレベルが高すぎだろう。思わず溜息が出ちまったじゃねえか。 気づけば、俺たちがいつも分かれる道まで来ていた。 早いもんだな。 「それじゃあ! 準備が整い次第! あんたの家に行くからねっ!ちゃんと片付けておきなさいよ!」 じゃあねと手を振ったハルヒは、そのまま元気良く走り去って行った。 「やれやれだぜ・・・・・・」 思わずだれかのセリフが出ちまった。 俺はこのあと、ハルヒが去っていった道をただボーっと突っ立って眺めていた。 「そろそろ帰るかな・・・・・」 ハルヒたちが来るので、部屋の片付けを済ませなくちゃならなくなった。やらなかったら死刑っぽいからな、うん。 死刑はやだろ?死刑は。 そして俺は、自分の家に帰るために歩を進め歩き始めた。 これからどんなことになるのかな? なーんてことを考えながらな。 しかし、俺が思っている以上に、大変な出来事に遭遇することは、このときの俺には知る由もなかった・・・・・・・・・・ 続く
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あの閉鎖空間から帰還して数日たったある日のこと・・・ キョン「ん、なんかとなりが騒がしいな」 授業中に突然、なにかを叩きつけたような音がとなりから響いてきた。 ハルヒ「ねえキョン!なんか面白そうなことが起きてるんじゃない?」 後ろからハルヒがオレに耳打ちしてくる。 キョン「スズメバチかなんかが教室に入ってきてパニックになってるだけじゃねえか?」 ハルヒ「アンタってホント夢がないのね」 ハルヒはそういうと視線を窓の外に移した。つられてオレもなにげなく外を見ると・・・!? キョン「なんだありゃ!?」 オレは自分の目を疑った。なんと、ガタイのいい白人がとなりのクラスの窓から 飛び降りていったのだ。一体なにが起きたんだ・・・!? ハルヒ「ちょっとキョン!今の見た!?」 キョン「・・・お前も見たのか?」 ハルヒ「今飛び降りてったの、たぶん外人よね!?なにやら事件のニオイがするわ! キョン、ちょっと一緒にきなさい!」 キョン「一緒にってお前、今授業中・・」 ハルヒ「先生!キョンが気分悪いっていってるから保健室につれていきます!」 ハルヒが一方的に言い放つと、オレの手を引きずって廊下に出た。 大学を出たばかりの英語教師は問題児の扱いに免疫がないらしく、 黙ってうなずくだけであった。 まあ、たとえベテラン教師だとしてもハルヒを持て余すだろうが。 オレたちが廊下に出ると、同時に一人の男子学生がとなりのクラスから出てきた。 ハルヒ「ん?彼はたしか4組の・・・範馬刃牙君、だったっけ?」 エピローグ(´・ω・`) いろいろあって、SOS団は大幅に団員が増えた。 まずは4組のバキだ。彼の本性は地下格闘技トーナメントのチャンプということだが、 ハルヒにとってはただの気弱な高校生らしい。 ちょっと前にバキが不良にからまれているところをハルヒが助けたことがきっかけで、 彼はSOS団員となった。 彼は不思議な力を使えるわけではないが、なんせ地上最強の高校生である。 この前閉鎖空間が大量発生したときは、古泉の頼みで神人退治に駆り出されていた。 しまいには彼の父親まで出てきて素手で神人を殴り殺したらしいが、そのことはハルヒには秘密だ。 次に1組の烈海王だ。長門のクラスメートである。 彼もただの高校生ではなく、その肩書きは中国拳法界最高位である海王の名前の継承者である。 駅前のデパートの本屋で買い物をしているときに長門と知り合ったらしい。 その直後暴漢に襲われた彼だが、薬で眠らされた彼を、長門がなんと 一晩中守っていたらしい。そのことを恩に感じた彼は川の上を走り回った挙句、 SOS団入りすることになった。
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「みくるちゃ~ん、また大きくなったんじゃないの~?」 「ふ、ふぇ~!やめてくださぁ~い!」 あたしはみくるちゃんの背後にまわって、胸をつかんだ。 う~んいつ触っても最高の触りごこちね!ちょっとうらやましいわ。 「こらやめろハルヒ。嫌がってるじゃないか。」 そんなあたし達のやり取りを見て、キョンは目を背けながらあたしに注意する。 その向かいに座ってる古泉君は苦笑い。有希は目も向けずに読書。 いたっていつも通りの光景。不思議なことなんて何1つ無い。 だけどあたしはそれでもいいと思ってる。今では不思議なことよりも、SOS団のみんなと過ごすことが1番楽しい。 だけど団長がそんなこと言ったらみんなに示しがつかないから、不思議は探しつづけるけどね! パタン。 有希が本を閉じた。時計を見るともう6時前。もうすぐ学校が閉まっちゃう。 あたし達は荷物をまとめて、帰る支度をする。 何よりも楽しみな時間である団活の時間が終わる。途中まではみんなと一緒に帰るけど、それぞれが別々の道へと別れていく。 「じゃあなハルヒ。また明日。」 そして最後にキョンと別れて、あたしは一人になる。 1日で1番楽しい時間は終わりを告げて、ここからは1日で1番嫌いな時間が始まる。 またあの家に帰らなきゃいけないんだ……そう思うとさっきまでウキウキしていた心が一気に沈んでいく。 家についた。玄関の明かりは……消えている。 ドアを開ける。部屋の中は真っ暗。 「ただいま……」 帰りのあいさつをしてみる。だけど帰ってくる声は、無い。 ああ、今日もか……分かってはいたけど、やっぱり気分は沈んじゃう。 家には誰もいない。お父さんもお母さんも、あたしを出迎えてはくれない。 別に死別してるわけでも別居してるわけでもないけど、二人とも仕事で帰ってくるのは日付を超えてからがほとんどだ。 休日も仕事に出掛けてるみたいだし、朝も起きた時にはもう仕事に行ってる。 あたしはほとんど親と会話することがない。こんな生活が、もう3年近く続いてる。 テーブルの上には、500円玉が置いてあった。今日も、これで夕飯を済ませろということらしい。 これが普通の家なら、机の上にあるのは親が作ったおいしそうな夕飯なんだろうな。 だけどあたしのところにあるのは、無機質な硬貨1枚。 ……まあ、もう慣れっこだけどね。あたしはもう1度家を出た。コンビニのお弁当でも買おう…… コンビニでお弁当を買った後、もうすっかり寒くなった夜道を、あたしは一人で歩いていた。 寒いのは身体だけじゃないのかもしれないけど。 ……やだなあ。なんでこんなにネガティブになっちゃうんだろう。 元気いっぱいで、何事にもポジティブ。それがSOS団でのあたしなのに、キャラ違うわよ。 こんな姿団員には見せられな…… 「あ、あれは……」 前方に見覚えのある人影が見えた。……キョンだ! キョンもこっちに気付いたらしい。あたしの方に向かってくる。 「よお、ハルヒ、また会ったな。」 理由は無かった。悪いことをしてるわけでも無かった。 それでもあたしは、気付いたらその場から逃げ出していた。 「お、おい!待てよ!」 キョンが追い掛けてくる。やだ、来ないでよ。 あたしは元気いっぱいでいつも強気の団長でなくちゃならないの。こんな弱い姿、あんたには見せられない。 いやキョンだけじゃない、みくるちゃんにも有希にも古泉君にも、こんな姿見せちゃダメなの! でも限界だった。いくらあたしが運動神経いいからと言っても女。キョンは男。 先にバテたのはあたしの方で、キョンに追い付かれてしまった。 「な、なんでキョン、追いかけてくるのよ……」 「そりゃこっちのセリフだ、なんで逃げるんだよ……」 「理由なんてないわよ、ただ……なんとなくよ。」 「おいおい、なんとなくで逃げるほど俺はお前に嫌われてるのか?」 違う。そんなこと無い。でもあたしはなんて言い訳すればいいのか分からずに黙ってしまった。 そしてキョンがトドメの一言を言った。 「別にやましいことしてたワケでもないだろ。それ弁当だろ?普通じゃないか。」 もうダメだ。あたしの抑えこんでたネガティブな感情が……爆発した。 「そうよ!悪いの!?あたしの家にはお父さんもお母さんもいないのよ! アンタの家ではおいしい夕飯が食べれるんでしょうけど、あたしはコンビニ弁当よ!! そんな姿を見られたく無かったから逃げたのよ!みじめでしょ!?笑いなさいよ!!」 だけどキョンは笑うことは無かった。真剣な顔で、あたしを見てくれていた。 「……とりあえず、落ちついて話をしよう。あそこの公園でいいか?」 ~~~~~ そしてあたしのキョンは夜の公園のベンチに二人で座っていた。 周りから見ればカップルに見えるかもしれない。だけど今は、そういう気分にはなれなかった。 あたしは、ゆっくりと話し始めた……。 「お父さんもお母さんも生きてるし、別居はしてないわ。だけど、ずっと仕事で家にいないの。」 「忙しいのか。」 「きっとね。だけど昔はそうじゃなかったわ。お母さんは専業主婦だったし、お父さんも休日は一緒に出かけてくれたわ。 優しかったし、厳しかった。あたしは昔からやんちゃだったからね、悪いことしたら、厳しく叱られたりもした。 だけど中1の夏頃から、急に変わったのよ。」 「変わったって、どういうことだ?」 「悪いことをしても叱らなくなった。何をしてもただ笑うだけで、何も咎めたりはしなくなったわ。 それだけじゃないの。なんだかいつもあたしのご機嫌を伺うようになって、ヘラヘラ笑うようになった。 あたしはそれが気に食わなくてね、悪いことをどんどん繰り返したの。犯罪スレスレのこともやったわ。 だけどそれでも怒ってくれなかったわ!」 「……」 「それでバチが当たったのね。今度は父さんも母さんも家に帰らなくなった。 父さんは仕事の量をふやして、母さんも忙しい仕事を始めた。 それからはずっとこんな生活よ。笑っちゃうでしょ。」 「……なんで黙ってたんだ。俺達に相談してくれれば……」 「相談してなんになるのよ!これはあたしの家族の問題なの!アンタには関係ないわ!」 「そうかもしれないが、何か力になれたかもしれないじゃないか!」 「アンタに何が出来るってのよ!!」 怒鳴り終えた後ではっとする。キョンは何も悪くないのに、ただ心配してくれただけなのに。 それなのに、どうしてあたしはこうやって…… 「俺にも出来ることはあるさ。」 え?出来ること? 「俺に少し考えがある。今は言えないが、お前の両親を元通りにすることが出来るかもしれない。」 「バカ、何言ってるのよ、会ったことも無いくせに……」 「俺を、信じてくれないか?」 そう言ってあたしをまっすぐと見つめるキョンの顔は真剣そのもので。 ただあたしを慰めるためのウソでは無いということが伝わってきた。 何をするのか分からないけど……だけど。 「……そんなに言うなら、信じてあげてもいいわよ。期待はしないけどね。」 お願いキョン。お父さんとお母さんを、元に戻して。 ~~~~ 公園での会話が終了した後、俺はハルヒと別れた。 正直なところこれ以上ハルヒに寂しい思いをさせたくは無かったから、ハルヒの家に行くなり逆に俺の家にハルヒを呼ぶなりも出来たのだが、俺にはやることがあった。 「ハルヒ、もう少しだけ、我慢しててくれ……」 俺はポケットから携帯を取りだし、電話をかけた。こういう時にかける相手は決まっている。あの超能力者だ。 『もしもし、珍しいですね、あなたから電話をかけてくるとは。』 「そうだな。それでいきなりで悪いんだが……今時間は大丈夫か?」 『ええ、大丈夫ですが……何か?』 「ハルヒのことについて話がある。今からいつもの公園に来てくれないか。」 『……了解しました。すぐに向かいます。』 その電話から10分後、古泉がやってきた。その表情はいつものスマイルだが、少し固い。 俺は古泉に先程ハルヒが話した内容をそのまま伝えた。伝え終えた時には、スマイルすら消えていた。 「まさか、涼宮さんにそのような事情があったとは……」 「機関は、把握していなかったのか?」 「申し訳ありません。流石に機関と言えど、家族の中まで監視するということは不可能でして。 学校内の様子を僕が見ることが限界なのです。」 「ハルヒの話を聞いて分かった。急によそよそしくなって、ご機嫌を伺うようになったと言う。それも中1の夏からだ。 ……ハルヒの両親は、ハルヒの能力について知っているんだな?」 「ええ。伝えさせて頂きました。しかし今の話を聞く限り、伝えたのはどうやら失敗だったようですね。」 「ハルヒの親と話すことは可能か?出来るだけ早くアイツを救ってやりたい。」 「そうですね……古典的な方法なら1つありますが。」 ~~~~~~ というワケで、俺と古泉はハルヒの家の前で待ち伏せをしている。 あ、もちろん家の前で堂々と立ってはいないぞ。ハルヒにバレたら元も子も無い。 近くに車を泊めて、その中で張り込みをしている。刑事ドラマでよくやってることだ。確かに古典的だな。 その車は「機関」のもので、運転手は新川さんだ。つまり新川さんもこの場にいるということになる。 「しかし彼女にそのような事情があったとは、見抜けなかったのは僕等機関としては恥ずべきことです。」 「涼宮さんはこの状況を誰にも知られたくないと望んだのでは無いでしょうか。だから今まで誰も気付けなかった。」 「そう言えばハルヒも言っていたな。『こんな姿見られたく無かった。』ってな。 ……ん?だとすると何故俺は知ることが出来たんだ?」 「それもまた、涼宮さんが望んだからですよ。あなたになら話してもいい、話を聞いてほしい、ってね。 もちろんこれは無意識下のことであり、本人は気付いてはいなかったようですが。」 「だが古泉、だったら最初からこんな事態起きなかったんじゃないか? 起きたとしても、ハルヒの能力があれば自然解決するはずだぞ?」 「これは私含め機関の中で有力な仮説があるのですが……」 新川さんが口を開いた。仮説?なんだそれは。 「涼宮殿の力は、親しい人間であればあるほど影響力が弱まるのではないかという説です。 私程度では涼宮殿の力によりいくらでも改変されてしまうでしょう。それも知らずのうちに。 しかしあなた方は、改変されたとしてもその事実に気付くことが出来る。これは大きな違いです。 更に親しい、血縁関係にあるご両親には、涼宮殿の能力も干渉することが出来ないと考えられます。」 「涼宮さんは人の心に土足で踏み込んで改変するような方ではありませんしね、その想いは親しい人ほど強いのでしょう。」 ……バカだな。ビームなんかを出すよりも、こういうことに力を使えよ。 不器用な能力だ。今だからこそ思う、こんな能力を持ったとしても、決して幸せでは無い。 そう、そして今回のケースもまた、ハルヒの能力が…… とその時だった。二人の男女がこちらに向かって歩いてきた。 片方はメガネをかけた優しそうな男性、もう片方は見ただけで分かる。ハルヒにそっくりな女性だ。 「あれは、ハルヒの両親だな。」 「ええ、私とは面識があります。私が行きましょう。」 新川さんは車から出て、ハルヒの両親の前に立った。 「あなたは確か……」 「ご無沙汰しております。『機関』の新川で御座います。」 「何か御用でしょうか?」 「はい、すず……ハルヒ殿のことで少々お話が。」 それを聞いて一気に顔が強張る二人。しかし抵抗することは無く新川さんに連れられ、車に入った。 元々が大きな車だから大人5人が入っても余裕はある。 助手席に移った古泉が後ろを向き自己紹介をする。 「始めまして。僕は古泉一樹と申します。涼宮さんの友人であり、機関の一員でもあります。 そしてこちらの彼は○○君、涼宮さんからはキョンと呼ばれております。」 「どうも、始めまして。」 古泉についでに紹介されてしまったので、俺も合わせて会釈をする。 しかし、こんなときに言うのも難だがキョンのくだりは必要なのか疑問である。 車の中で話す内容では無いということで、近くの喫茶店に場所を移した。 どう考えてもカップルや親子連れには見えない集団であり、若干浮いているが仕方が無い。 「さて、では単刀直入に伺います。」 古泉が話を切り出した。 「涼宮さんから話を伺いました。あなた方はずっと、仕事ばかりで家に帰っていないようですね?」 「……はい。」 答えたのは父親だった。とても人が良さそうな人で、悪意があってやったんじゃないということは一目でわかる。 申し訳なさそうな顔をしながら、彼は続けた。 「忙しかったから、と言い訳する気はありません。私達は怖かったのです。あの子のことが。」 「怖かったとは……能力のことですか?」 「はい。今から4年前の夏でしょうか。あなた方機関に呼び出され、あの子に特別な能力があると告げられました。 願望を実現し、時には世界まで変える能力。そして機嫌次第では閉鎖空間を生み出し世界を滅ぼすということ。 元々あの子はやんちゃで、よく叱っていました。しかしこれからはそのことが世界を崩壊させてしまうかもしれない。 ずっとかわいい子供だと思って育ててきたのに、急に世界を滅ぼすことも出来る能力を持っていると聞かされた途端、まるであの子が怪物のように思えてきて……」 「ふざけるな!!」 俺は声を荒げていた。言葉遣いに失礼があるのは分かってる。だが黙ってられるか。 「ハルヒは怪物なんかじゃない!確かにトンデモない能力は持ってる! だけどアイツは普通の人間なんだ!確かに破天荒な性格だけど、根は優しくていいヤツなんだ、それを……」 「落ちついてください!」 俺を抑えつける古泉。それと同時に、母親が泣き出した。 「だけどどうすることも出来なかったんです!機嫌が悪くならないようにしていたら、あの子はもっと暴れ出して…… だけど叱ることなんて出来ない!もう私達は逃げるしか無かったんです!」 「本当にそうですかな?」 今までずっと黙っていた新川さんが口を開いた。 「ハルヒ殿は本当は、叱ってほしかったのでは無いでしょうか。」 「叱ってほしかった……?」 「ええ。聞くところによるとハルヒ殿は、急に親の態度がよそよそしくなり、寂しかったと言っていたようですぞ。」 「……俺が直接あいつの口から聞きました。だから叱ってもらおうとしてもっとはちゃめちゃなことをするようになったって……」 「だけどそれでもし、閉鎖空間が発生したら……」 「心配しないでください。」 古泉は微笑ながらそう言った。コイツの1番得意な顔だ。 「その時は、僕達がなんとかします。我々「機関」は、そのためにいるのですから。」 「それに、アイツはもう叱られたぐらいで世界を滅ぼそうとする空間を生み出すようなヤツじゃありません。俺が保証します! だから、自分を偽って接しようとしないでください。あいつが望んでるのはご機嫌取りなんかじゃない。 悪いことをしたら本気で叱ってくれる、自然なままの親の姿なんです。」 「……わかりました。」 終始うつむいていた父親は顔をあげた。 「あの子と真正面から、向き合ってみたいと思います。以前のように厳しく叱ることもあるでしょう。 だけどもう、あの子から逃げません。約束します。」 その顔からは、先程までのオドオドとした様子は見られなかった。 大きな決意をした、父親としての顔だった。 ~~~~~ 翌日、俺はいつものキツいハイキングコースを登っていた。 昨日は夜も遅かったということもあり、あの後自然解散となった。 ハルヒの両親はそのまま家へ、そして俺は新川さんの車で自宅まで送って頂いた。 俺の親に「こんな時間まで何をしていたの!」と大目玉を食らったが、反省はしていない。 そして、今回のことについて古泉がこう言ってきた。 「今回の落ち度は我々機関にあります。どうか彼らを憎まないでください。 突然自分の子供に膨大な能力があると知らされれば、あのようになってしまうのも仕方ありません。 親と言えど一人の人間ですから。もし僕自身が同じ境遇に立たされても、今回のようにならないとは言い切れません、 言い訳になりますが当時の機関はまだ出来たてで、思慮に欠ける部分があったようです。 ですから、憎むとするならば我々機関の方を憎んでください。」 確かに、あの時は俺も感情が激高して怒鳴ってしまったが、 両親にしてみたって突然トンデモな境遇に立たされればああなってしまうのも仕方ないかもしれない。 だがそれでも俺は機関を憎むようなことはしないぜ。 確かに思うところが無いと言えばウソになるが、機関のおかげでこの世界があるのもまた事実だからな。 それよりも大事なのはこれからだ。本当にあの両親はハルヒと真正面から向き合ってくれるのだろうか。 と様々な思考を繰り広げているうちに、教室についたようだ。 「よお。」 いつものようにハルヒに声をかけ、自分の席に座ろうとした。だがいきなり、 「うおっ!」 首ねっこを掴まれて引っ張られた。おい、むち打ちになったらどうする! 「キョン!来週の不思議探索は中止だから!」 遅刻も許さない探索を自ら中止?どういう風の吹きまわしだ。 それになにやら、そのことがとても嬉しそうである。 「なんだ、何か用事でも出来たのか?」 「うん!父さんと母さんと一緒に旅行に行くことになったのよ! それで父さんも母さんも仕事を減らして、家に居る時間を増やすって!」 その言葉を聞いて俺は心底ほっとした。だからだろうな、なんというか反射的に 「良かったな、ハルヒ。」 そう言いながら、ハルヒの頭のなでていた。 真っ赤になってびっくりした顔を浮かべるハルヒ。だけどその後、にっこりと笑って 「ありがとう、キョン。」 ハルヒにしては珍しい、素直なお礼の言葉だった。 その笑顔はとても穏やかで、俺を安心させてくれるには充分なものだった。 また辛いことがあったら俺に相談しろよな。「強くて元気な団長様」だって、心休める時は必要だぜ? HRが終わった後の休み時間に、この朝のやり取りを見ていた谷口その他大勢から盛大なからかいを受けたのはまた別の話である。 やれやれ。 終わり
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「こんにちはー。あれ?今日はまだ長門さんだけですか?」 「そう。古泉一樹は休み。」 休みってまさかアルバイトかな…? …あれ?長門さん今日はハードカバー読んでない。 「長門さんが文庫本を読んでるなんてちょっと珍しいですね。いつもはすっごく厚いハードカバーだから私には無理そうかな、って思ってたんですけど。どんな本読んでるんですか?」 「・・・読む?」 「え?いいんですか?ならお借りしようかな。恋愛物とかですか?」 「戦闘物。」 戦闘…? これまた長門さんのイメージとは違って驚いた。そういうのも好きなんだ? 「この表紙の女の子が戦うんですか?どことなく涼宮さんと似てるような…。」 「……。」 その後部室に涼宮さんとキョン君が到着し、いつも通りの時間を過ごした。 古泉君が休んでいる事、長門さんが文庫本を読んでいる事以外は、いつも通りの。 今夜私がこの本を読み終えた瞬間、世界は小規模な改変をされる事になる。 ―― 翌日 コンコン 「はーい。大丈夫ですよ。」 「こんちには。ハルヒは少し遅れます。ところで、今日も古泉が休んでるみたいなんですが何か知りませんか? ハルヒの機嫌も悪くはないし、電話しても繋がらないので。ただの風邪とかならいいんですが。」 「徒を追っているのかもしれませんね…。」 「…ともがら?神人の別種かなんかですか?」 「紅是の徒を倒すのがフレイムヘイズの使命なので。」 「ふれいむ、へいず…?なんですかそれ、未来人の敵とかですか?」 「世界のバランスを崩す紅世の徒を狩る者が私達フレイムヘイズ…私は『雁ヶ音の煎れ手』朝比奈みくる。」 「・・・・・・・・。長門、どうなってる。」 「・・・わからない。」 またハルヒの奴がおかしな事始めたか・・・。なんだって…フレイムヘイズ? 長門は知らない、歩くムダ知識古泉は休み、となれば・・・困ったときのgoogle先生。 「40000件…?」 wikipediaへのリンクを開く。 【フレイムヘイズは、高橋弥七郎のライトノベル作品『灼眼のシャナ』及びそれを原作とする同名の漫画・アニメ・コンピュータゲームに登場する架空の異能者の総称である】 「つまり朝比奈さん・・・灼眼のシャナって小説を読んだわけですか?それで影響されたと。」 「炎髪灼眼の討ち手をご存知なんですか?彼女は今どこに?」 ダメだ…すっかりハマっている・・・。 朝比奈さんがまさか高2ではなく厨2だったとは・・・。 遅れてハルヒも到着したが何やら不機嫌な様子。岡部と揉めたか。ご愁傷様、古泉。 ハルヒが到着するまでヒマだった俺はwikipedia、灼眼のシャナの項目を読み漁ったため大筋は把握した。 ハルヒに知られたら厄介な事になりそうだな…この内容は。 ―― 夜 プルルルルルルル 「はい、もしもし。」 「こんばんは。不躾ですが、ここ数日あなたの周りで何か変わった事はありませんでしたか?」 「朝比奈さんが壊れた。いや正確には朝比奈さんに対する俺の夢が壊れた。」 「…よく分かりませんが。無事ならそれでいいんです。ですが、気をつけてください。近々あなたを狙う輩が現れるかもしれません。」 「…勘弁してくれ。機関の方々で何とかできないのか?」 「えぇ、フレイムヘイズは基本的に単独行動なので横の繋がりが薄いんですよ。」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 「…今何つった?」 「え?…あ、いや「薄い」というのは別に頭髪の状態を言っているわけではなくですね・・・」 「そこじゃねーよ!!フレイムヘイズって言ったか今!?お前も…フレイムヘイズとかぬかすのか・・・?」 「言いましたよ。いかにも私はフレイムヘイズ、『赤光の狩り手』古泉一樹です。」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 「分かったもういい・・・全面的にお前らに任せる。」 「お任せを。いざという時携帯電話が命綱になりますので、充電状態には気を配ってください。」 「あぁ心配するな。俺の携帯の充電は午前零時に全回復するか・・・」 俺もかーーーーーっ!!!! ―― 翌日朝 あの2人(俺も?)が同時に影響を受けてるなんて厨2病の一言で済ませられる問題じゃないよな・・・。毎回毎回長門に頼らざる得ない俺が情けない。 でもしょうがないじゃない、一般人だもの。――キョン いや、待てよ。・・・長門に限ってまさかとは思うが、あいつもすでに毒されてるって可能性もあるんじゃないのか? あれこれ考えている内に部室に到着してしまった。 ガラッ 「おはよう、早いな長門。」 「おはよう。」 「朝比奈さんと古泉の様子がおかしいんだが、何か心当たりないか?」 「わからない。」 「そうか。ところで、「灼眼のシャナ」って小説読んだ事あるか?」 「…無い。」 …アイがスイミングしたぞ長門。 「そうか。いや俺も最近知ったんだけどな。ライトノベルって言ったか、ああいう小説にはやっぱりこう無口なキャラが必要不可欠だよなぁ長門。」 「…その意見は正しい。」 「さっき言った「灼眼のシャナ」ってのにもそういうキャラがいてな。俺はそいつが一番好みのタイプなんだ。」 (コクコクッ) 「名前なんて言ったっけなぁー、ヴィ…、ヴィ…」 「ヴィルヘルミナであります。」 「そうそうヴィルヘルミナ。――長門集合。」 「……違う。今のはケロロ軍曹…。」 ―― 「――つまり、まずお前がハマり、古泉に貸したらあいつもハマって学校休んでまで読み漁り、次に朝比奈さんに貸したら案の定、って事だな?」 「…そう。」 「て事はハルヒにはまだなんだな?」 「まだ。しかし、朝比奈みくると古泉一樹、そして私の様子を見る限り、単に小説に影響されただけとは思えない。私が最初に小説を手にした時点ですでに涼宮ハルヒの影響を受けていた可能性も否定は出来ない。」 「…なるほどな。とりあえずハルヒに読んだ事あるか聞いてみる事にするよ。 …で、お前も『なんとかのなに手』とか異名ついてんのか?」 「『万象の繰り手』長門有希。」 …ちょっとかっこいいと思っている自分が、そこにいた。 ―― 昼 「あー、ハルヒよ。ちょっと聞きたい事があるんだが。」 「何よ。団活欠席なら却下よ。」 「違う違う。「灼眼のシャナ」って本読んだ事あるか?」 「なにそれ?知らないわ。」 「フレイムヘイズって単語に心当たりは?」 「はぁ?何なの一体?初耳よそんな言葉。」 「そうか。…で、お前は今何食べてるんだ?」 「メロンパン。」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 待て待て待て。あきらめるのはまだ早い。 単にこいつがメロンパンのおいしさに目覚めただけかも知れないじゃないか。美味いしね。美味いしねメロンパンは。 「時にハルヒよ、もうポニーテールにはしないのか?」 「えっ?…な、何でよ?」 「単純に見たいからだ、お前のポニーテールを。」 「あ・・・う・・・、み、見たいって、どうしてよ?」 「どうしてって、俺がポニーテール好きでお前はポニーテールが似合うからだ。」 「なっ・・・う…うるさいうるさいうるさいっ!!」 ・・・・・・・・確定。 つづく
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【ミリマス】真壁瑞希「スタドリ物語」 執筆開始日時 2020/10/17 元スレURL https //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1602860625/ 概要 17日なのでシアター17歳組のSS 真壁瑞希「こんにちは、スタドリの翁です。野山でスタドリを集めてはいろいろなことに使っています」 瑞希「名前を真壁瑞希といいます。瑞希と呼んでもらえると嬉しいです」 瑞希「おや、今日のスタドリはなんだか光輝いています。……眩しい」 瑞希「さっそく開けてみましょう」 宮尾美也「おぎゃあ〜」 瑞希「なんと。可愛らしい女の子が入っていました。白石さんに報告しましょう」 タグ ^真壁瑞希 ^白石紬 ^高山紗代子 ^宮尾美也 ^横山奈緒 ^島原エレナ 関連SS 月刊シアター17歳組シリーズ まとめサイト あやめ速報-SSまとめ- えすえすゲー速報 ごちゃまぜオールマイティ プロデューサーさんっ!SSですよ、SS! ポチッとSS!! SSまとめ ホライゾン SSでレッツゴー SSびより SS 森きのこ! SS2chLog wiki内他頁検索用 コメディ シアターデイズ ミリオンライブ 作者◆ncieeeEKk6氏 劇中劇 宮尾美也 島原エレナ 横山奈緒 白石紬 真壁瑞希 高山紗代子
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涼宮ハルヒの呪縛-MEGASSA_MIMIKAKI+冥&天蓋こんにゃく百合カレーmix-Relinquished 掃除で遅れた俺は、既に全員揃っているであろう部室へ向かっていた。 扉を開けるとハルヒが怒鳴る。 「遅いわよミョン! …あれ?」 ? 「ちょっとミョン! …あああれ?」 部室の空気が北極並に凍りついた。ハルヒのエターナル(以下略)が炸裂した! 俺はミョンじゃないんだが。どうした、滑舌が悪くなったか? 「よく分からないけど、ミョンって言ってもミョンになっちゃ…ああーーーーーっ!!」 ハルヒはぐしゃぐしゃ髪を掻きむしり悶絶している。意味が分かりません。 「つまり、『キョ』の発音が『ミョ』になっちまうということか?」 「そうなのよ! なんとかしなさいよ!」 「じゃあ試してみるか。Repeat after me. 教科書」 「教科書」 「京都」 「京都」 普通の単語には影響ないのか。 「巨乳」 「……」ガシッボカッ 痛い痛い、無言で殴るな! 「このエロミョン!!」 「「……」」 長門「……変態」 駄目か。 長門「無視しないで…」 「駄目みたいね。ああもうなんとかしなさいよ!」 そう言われても、俺に何が出来る…。 長門(涙目)「無視しないで…お願い…」 「あああああああああああぁぁぁぁあぁぁぁあぁあこんにゃくぅぅぅぅぅぅぅぅうぅぅぅぅぅうぅぅぅぅぅ!」 混乱したハルヒは髪を掻き回しながら廊下へと疾走していった。 「馬鹿! 廊下へ飛び出すな! もしかしてもしなくてもナイスタイミングでパイプ椅子を運ぶ会長が…!」 バッシャーンガラガラガラガラ 「ハルヒー!」 「きゅーん…」 「あーあ言わんこっちゃない」 「す、涼宮さぁん! あ、あの、私、保健室に連れていきます!」タタタ… 因みに共に気絶した会長は廊下放置されたが、後にボンテージ姿の喜緑さんに回収されていった。何するつもりなんだろうあの人…。 「古泉一樹…、私が勇気を振り絞ってツッコミを放ったのに無視された…」グスン 「それは可哀想に」ナデナデ 「ううっ…」ポロポロ 「僕も空気ですから…」 「古泉一樹…泣かないで」 「長門さん…」 しばらくして朝比奈さんが戻って来た。頭を打ったのか、ハルヒの頭上に星が4つ程「ピヨピヨ」という効果音を伴いながら輪になって回転していたが命に別状はないとのこと。 「あ、あの、ミョン君…ふぇぇぇぇぇ?」 朝比奈さんもですか…。 「ごめんなさいミョンく…」 「……」 「…ぅぅぅ…」 伝染している、まさかハルヒの仕業か…? 「ずみまぜん…」 な、泣かないで下さい。ときに古泉に抱かれている長門よ、どうなってんだこれ。 「(重要な出番ktkr!!)涼宮ハルヒは自分だけが『ミョン』と呼んでしまうことが恥ずかしく、それならばいっそ皆が『ミョン』と呼んでしまうようなればいいという改変を行なった模様」 なんで元に戻るように改変しなかったんだよ…。 つまり、 「今日から貴方の名前はミョン」 「マジか」 「マジ(ざまあwwwwwwwwww)」 「勘弁してくれよ」 「無駄(メシウマwwwwwwwww)」 「はぁ…」 (はっ、いけないいけない。私の愛しのキョン様が…) 「ふ、ふっかーつ!」ピヨピヨ 威勢良く扉を開けて保健室から戻って来たたハルヒであったが、ふらふらしているし、何やら効果音が聞こえる。 「大丈夫かハルヒ、星が回ってるぞ」 「だだだだだだだだ大丈夫!」ピヨピヨ 長門(涼宮ハルヒは思考力が低下している、キョン様に接近するチャンス!) 「ふらふらじゃないか、家まで送ってやるよ」 「え? あ、う、うん、ありがと!」ピヨピヨ 「という訳だから先に帰るよ、じゃあな」 バタン 長門(涙目)「うぅっ……」 古泉「……」 「彼は無意識に人を傷つける…間違い無く女性の敵…」ポロポロ 「そう言われましても……」 意気揚々と学校へ向かう妹「翌日っ!」 なのね「阪中」 妹「逆になってるよー」 あれ? どうなってるの?「阪中」 妹「…」 教室へ向かう。ハルヒはまだ来ていないようだ。重たい足取りで自分の席へ。 「ハァ、参ったなぁ。今日から俺は『ミョン』なんだよな…。なんだよ『ミョン』って、力の抜ける擬音だなぁ、…みょん」 「ミョン君、落ち込まないの」 「朝倉…」 朝倉は長門からの連絡を受けたのか、俺が『ミョン』になったことに驚いていない。 「いくら抵抗しても無駄だからね。仕方ないわよ、ミョン君」 「ああ、相手がハルヒじゃ仕方あるまい…だが俺を『ミョン』と呼ぶ奴は許さん!」ガバッ 「え、ちょ…」 俺は怒りに任せて朝倉を机に押さえつけ、「アレ」を取り出した。 「痛いのが嫌なら大人しくしてろよお嬢ちゃん…」 「…ん、うう…///」 just a moment... 「はぁ……」 「いけないコだ…、俺をここまで本気にさせるとはな」 満足感と達成感に溢れた俺の目の前に、呆れた様子の谷口と国木田が現れた。 「何でお前が朝倉の耳掃除してんだ? (う、羨ましくなんかない! 決してない!)」 悪いか? だが俺の綿棒の手さばきは半端無いぞ? 既に俺の手に「墜ちた」朝倉はすやすやと穏やかな寝息を立てて眠っている。 「しかも綿棒って、耳かきじゃないのかよ」 綿棒なめるなよ。 「なぁミョン…あれ?」 当然のことながら、谷口もハルヒの呪縛に囚われているのである。 「何故だぁぁぁぁぁ! ミョンがミョンになっちまう!」 谷口が頭を抱えている。 「意味が分からないよ谷口君」 ここでようやく国木田が喋った。 こいつがハルヒと同じことを言うのが忌々しく感じられたので、立ち上がると悶絶している谷口に接近し、指先に渾身の力を込めて脇腹を突いた。 「ぅぼぁ」 倒れて床を転がる谷口。俺はそれを見届けて席に座る。 「容赦ないね…」 「俺だってこういう時もあるさ」 「でも、谷口君が悶える姿って本当に愉快だよね」 「国木田!?」 黒い…、国木田の笑顔が、黒い。 「ついでに僕も追撃しちゃお。『冥闇符:チャックアイ=テルーゾ』」 ズガァァァァァァァァァァァァァン 謎の呪文によって放たれた紫炎は龍の如く谷口へと突っ込んだ! 「国木田ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!(断末魔)」 ピチューン 某魔女「弾幕はパワーだ…」 「国木田、お前の方が容赦無さすぎる」 「ん? そうかなぁ」 「そうかなって…」 「先に謝るよ。ごめん、どうやら僕も『ミョン』としか言えないみたいなんだ」 国木田は申し訳なさそうな表情をしている。この正直者め。 「はははそうかそうかミョンか…ならば貴様も生かしてはおけん!」グサッ 「な…んで…」ドサッ 「まさかこのナイフ(提供朝倉)を汚す時が来るとはな…残念だよ。ラ=ヨダソウ=スティアーナ…」 だが谷口と国木田はまだ残機が残っていたので、3分後には何事も無かったかのように復活した。 チャイムが鳴ると同時にハルヒがやって来た、珍しく遅刻寸前だった。 「おはよ」 「おう。ケガは大丈夫なのか?」 「勿論よ。なーんかミョンって違和感あるわね…」 「ミョンなぁ…あんまりミョンミョン言われるとゲシュタルト崩壊を起こしそうだ」 岡部「朝倉ー、起きろー」 朝倉がまだ眠っている。残念だが、俺の超絶テクニックに墜ちると1時間はぐっすりなんだぜ。 山根(あの男…何をした…!) 岡部「そういえばミョン…ん、ミョン?」 「おんどぅるあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁいとこんにゃくぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」 「ミョン!?」 なぁハルヒ、言い間違えるのも恥ずかしいが、言い間違えられるのも恥ずかしいんだぜ…。 「rrrrrrrrrrrrrrr!!!(裏声)」 遂に耐えきれなくなった俺はホームルーム最中の教室を飛び出した。 手ぶらで来た為に行くあてもなく、自分でもどこか分からない程に徘徊していた。 石を蹴って歩く。あそこの電柱まで行ったら100点…側溝に落ちた。ゲームオーバー。 「くそぅ…どいつもこいつもミョンミョン言いやがって…」 カラスが「アホー」と鳴く中、俺は夕焼けを眺めながらとぼとぼ歩いていた。 ふとポケットから綿棒のケースを取り出す。 「綿棒の残りが少ないな…補充しないと」 綿棒「なんで耳掃除を究めようと思ったんだ?」 「なんかこう…至福の時じゃないか」 綿棒「確かにな。だがいきなり襲うのはどうかと思うぞ、誤解を招く」 「耳掃除を耳かきで簡単に済ませようとする人を見ると勿体無いと思ってしまうんだ」 (見たことあるのか…) 「そういう人達に耳掃除の素晴らしさを伝えるには、少々力ずくになっても仕方ない」 (そうか…?) カオス擬人化保守。じゃないよ、嘘だよ、全然違うよ。 「ところで綿棒よ」 綿棒「ん?」 「お前も『ミョン』としか呼べないのか?」 綿棒「どれどれ…ミョ、ミョン、ミョン…」 「……」 綿棒「……ミョン」 「そうか」 綿棒「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃ……」 「だが綿棒は俺の人生だからな、許す」 綿棒「ほっ…」 そうして綿棒ケースをポケットに戻したその時だった。 救いの手がさしのべられた。 「どうしたんだいキョン、えらく落ち込んでいるじゃないか」 佐々木がいた。 「佐々木…お前、今…!」 「キョン? 何かあったのかい?」 当の本人は不思議そうな表情だが、俺にとってはまさに救世主(メシア)! 彼女の背後にある夕日はまさに後光! 「佐々木ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」ガシッ 「うわっ、何だい、いきなり路上で抱きつくなんて…苦しいじゃないか…///」 「佐々木ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!! 有り難う佐々木! お前は…お前はこんな時でも俺の味方なんだな! うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ佐々木ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」 「どうして泣いているんだい…。ま、先ずは落ち着いてくれないかな…///」 電柱の影から見守る九曜「───計画──通り──」 画面の向こうのみくる「今私のことを空気って言った奴、体育館裏に顔貸しな」 顔だけの谷口「はい」 みくる「ピギィィィィィィィィィ!! 本当に顔を貸してきたでしゅ…! ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん怖いよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」 鶴屋侍「現れたな妖怪カヲダケ! 今日こそあっしが成敗してくれるっさ!」 空中を漂うカヲダケ「ウケケケケケケ…朝比奈たんの(゜ρ゜)ハァハァ…」 鶴屋侍「喰らうが良いっさ、月夜の静寂をも乱さぬ斬撃…。鶴屋流剣術奥義・蒼月静風斬!!」ザシュッ カヲダケ「ギャアアアアアアアアアアアア!!」 鶴屋侍「妖怪、討ち取ったりぃ!!」 カヲダケ「残像だ」 鶴屋侍「!? そんな…馬鹿なっ!」 カヲダケ「クケケケケケケケケケ…無駄無駄無駄ぁ!」 鶴屋侍「な、なんだって…あたいの奥義が…効かない…?」ガクッ カヲダケ「ほっほっほっ、キミの攻撃パターンは全て学習済みなのサ!」 鶴屋侍「くっ…」 みくる「つ、鶴屋さぁん…」 カヲダケ「ヒャッハー! 命が惜しけりゃその娘を…げふぅっ」 SP「………」 カヲダケ「な、何だこのごつい体格の人達…」 SP「………」 カヲダケ「いぎぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 ドゴォォォォォォォォンバキガスドキャグルォメチャイヒャアルデヒドケトンナンプラァァァァァァ… 鶴屋さん「いやぁ…情けないねっ…結局護衛の助けを借りちゃったさ…」 みくる「でも…鶴屋がいなかったら、もう駄目かと思いました…」 鶴屋さん「みくる…」 みくる「鶴屋さん…」 「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」」 人々を震撼させた妖怪カヲダケの恐怖から解放された二人は抱き合い、大きな声で泣きました。そして二人が流した涙は雨となって乾いた大地を潤し、やがてそれが全ての生命の源である母なる海となり(以下略) 終われ 古泉「だがそう簡単には終わらないのだよアンダーソン君」 「おい古泉一樹」 「ただ言ってみたかっただけですよ長門さん…」 「貴方の言動は時折理解出来ない。まだ話は続く、『ミョン』問題は解決していないから」 俺は佐々木の部屋にいた。 そして愛を育んでいた。 「佐々木…」 「キョン…」 ※注 耳掃除です 屋根裏の九曜「──全て──順調───」 天蓋「くーちゃん、ちょっといらっしゃい」 九曜「───!!!」 天蓋「さっきからなにしてるのかなー?」 九曜「──────」フルフル 天蓋「おかーさん、みーんな知ってるんだからねー…」ゴゴゴゴゴゴ 九曜「───ぁ─ぁぁ───」ガクガクブルブル 穏健派「天蓋さんが何やら騒がしいですね」 主流派「どうしたの?」 天蓋「聞いてよ! またくーちゃんがイタズラしちゃったのよ!」 急進派「あー、さっきからのてんやわんやの原因は天蓋さん家の娘さんだったのか…」 天蓋「言ったでしょ!? 情報操作でイタズラはしちゃいけないって!」 九曜「─────」 天蓋「くーちゃん!!」 九曜「──ごめん───なさい…─」グスン 佐々木の部屋で談話していた時だ。携帯に着信が、ハルヒからであった。 「キョン! 遂に治ったわよ!」 「おお! ホントだ! やっぱり馴染みのあるのじゃないとな」 「疲れたわよ、もうあの苦しみから解放されたからもう安心! ってことで、また明日! じゃね!」 電話を切ると、佐々木が寂しげな笑みを見せた。 「佐々木…」 「いいさ、キョンが元の生活に戻ることが出来るなら」 「だが…」 俺は真っ直ぐ佐々木を見つめた。 「な、何だい」 「まだもう片方が終わっていない、やらせてくれ」 「キョンは相変わらずみたいだね、仕方ないな…」 そして俺は佐々木をベッドに寝かせると、綿棒を取り出した。 長門「貴方のお陰で、出番が減った。責任をとって欲しい」バシッ 古泉「キモティー☆」 「しかし、あの時貴方が構ってくれたことは…嬉しい…」 「長門さん…」 「古泉一樹…」 (嗚呼ぷにぷにで滑らかな白い肌…それに長門さんは僕の理想とするょぅι゛ょ体型に近い…。やはりこれは触ってこそ分かる…。見た目以上の破壊力…!) 「ここここ古泉一樹…」 「はい…、なんでしょうかぁ…」 「あああ貴方の様子がおかしい…。しし心拍数が上昇している。ぃぃ言わば『興奮状態』…ななななななな何故…」 「どうして、震えて、いるんですか? おかしくなんか、ありませんよ、あはは」ガシッ 「いいい嫌…やややめて…はははは放して…」 新ジャンル「ロリコン古泉」 バアン! 「私の長門さんに何してるのよ!」 「朝倉涼子…」 「もう大丈夫よ長門さん」 「こ、これは…! 朝倉さんはょぅι゛ょ体型とは異なるタイプ、しかしスカートから覗く紅色に染まったムチムチ太股もまた威力抜群…!」 「ひ、ひひ非常事態…、ここここここ古泉一樹がかかかかか覚醒している…」ガタガタ 「うわぁ…」 「にににににににに逃げ…」ガタガタ 「下品ですが…不覚にもbokkiしてしまいました…」 「ひぃぃっ…」 「そうと決まれば朝倉さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」 「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 新ジャンル「変態ヒート古泉」 ズドォォォォォォォン 「だ、誰ですか! 僕のおにゃんにゃんタイムを邪魔するのは!」 「ミョン君(当時)に言われてね、古泉君が暴走する危険性があると」 「国木田君!!」 「な、何故気付いた…」 新ジャンル「冥王国木田」 「「「それはない」」」 「…やっぱり?」 九曜「──うぐっ───ひっく───」 喜緑「ほら、もう泣かないの、ね?」 「──お姉ちゃん───」 (涙で潤んだ目で私を見つめている…あぁ駄目よ私、理性を保って…)クラクラ 「───?」 (く、首を傾げないでぇぇぇぇ! もうらめぇぇぇぇ! お姉さんおかしくなっちゃうぅぅぅぅぅぅ!) 「──お姉ちゃん──どうしたの─?」 (あああああああああああっ…!)ビクンビクン 主流派「喜緑江美里が周防九曜に萌え死にしたそうだ」 穏健派「えみりぃぃぃぃぃん!」 天蓋「くーちゃんがまた一人癒しちゃったわね☆」 喜緑(く、悔しいっ! でも萌えちゃうっ!)ビクッビクッ 佐々木に別れを告げ、その後学校に鞄を取りに行ったので帰宅した頃にはすっかり夜になっておった。いやぁ今日は疲れた…。 「ただい…ふぉ!」 ハルヒ「キョーンキョンキョンキョーン♪ やっぱり『キョン』が一番よね!」 妹「ねー!」 「なんでハルヒがいるんだ、しかもパジャマ姿で!」 「泊めさせて貰うわよ!」 「ハルにゃんお泊まりー!」 俺は突然のことに困惑しながらも、笑みが溢れてしまった。今夜も俺のハイパー綿棒が炸裂するのか、大活躍だな。 月明かりが照らす部屋には俺とハルヒ、二人きりである。妹? 既にお休みさ、俺の超絶技巧でな。今日は俺の綿棒さばきで3人も幸せにしちまったぜ。 ハルヒは窓から見える星空を眺めていた。 「Beautiful...」 「Yeah.」 「Hey,KYON!! Let s go catching stars!」 流石団長様、今日も考えがぶっ飛んでます、絶好調です。 「How?」 「hmm...えーっと」 「『えーっと』なんて英語はないぞ、ハルヒの負けだな」 「うっさいわね…」 何故か知らんが「英語しか話せない」ゲームをしていたのである。途中、冗談半分にパンツの色を訊いたら「SHINE!!」という返事を頂いた。何で「輝け」なんだ? カヲダケの亡霊「ローマ字読みしてみろよ…」 ん? さっきの声は何だ? まぁいいか。 「そうだ、あたし達が行けないなら星を呼べばいいのよ!」 「まだその話題は続いてたのか、って星を呼ぶ?」 もしそうなるとしたら…星が接近してきて恒星の熱で地球どろどろで人類滅亡で地球温暖化もアルマゲドンもビックリの… 「待て待て待て待て待て待て待て待て」 「ダメ?」 そんな甘えたような声でもダメなものはダメ。 「じゃあ、隕石を手に入れればいいのよ!」 「星から離れてないか? ほい、反対側も」 ああそうさ、耳掃除の真っ最中だ。膝枕してんだぜ? 羨ましいだろ。 「じゃあ隕石を呼べばいいのよ!」 「だーかーらー」 カヲダケの亡霊「畜生ー! 羨ましくなんかNEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!」 「はぁ…」 ハルヒが眠っている。そう、ハルヒも俺の耳掃除テクニックに墜ちたのだ。起こさないようにそっとベッドに寝かせる。また一人、幸せにしちまったぜ。 鶴屋侍は、苦戦していた。突如として現れたそいつに、手も足も出なかった。 「はぁ…はぁ…」 「貴方の剣術はなかなかのもの。しかし…」 ぼろぼろの鶴屋侍に対し、相手は呼吸すら乱れていない。 「速さが足りない!」 「も、もう一回いくっさ…!」 鶴屋侍が地面を蹴る。 「……」 「はあああああああああああ!!」 「残念でなりません、貴方ともあろう方がこの程度なんて」シュッ 「うっ……」 相手の攻撃をまともに喰らい、地面に倒れた。 「これが峰打ちじゃなかったら、今頃胴体が真っ二つですよ」 「く……」 峰打ちは実力が無い者への手加減、屈辱である。鶴屋侍は砂利を掴んだ。 「出直して来なさい」 そう言い残して立ち去ってゆく。 「待って下さい!」 「なんでしょうか」 「あ、貴方は…一体…」 彼女は振り返ると、微笑んで答えた。 森「ただのメイドですよ」 アクション時代劇、SAMURAI-CRANE カミングスーン… 「なぁハルヒ、何だこの予告編」 「次回の映画よ!」 「いつの間にこんなの撮影してたのか。やけにクオリティ高いなぁ」 「なんてったって今回は鶴屋さんの全面バックアップだからね! そうだ、アンタもミョンって名前で出しちゃおうかしら!」 妙「え、俺こんな名前なの?」 「そうよ! それで『ミョン』って読むの!」 妙「まてこら悪夢再燃させるな」 「結構しっくりくるわね…」 妙「おいおい、あの時言ってたことと違うじゃねぇか」 「あの時はあの時よ。うん、妙(ミョン)に決定!」 妙「うわあああああああああああああああああああああさしみこんにゃくぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」 そう、悲劇は繰り返される。 エンドレス・ミョン
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涼宮ハルヒの遡及Ⅱ …… …… …… ああ、なんだ集合時間より一時間は早く着いたぞ。 いつもは二十分近くかかる駅前までだが、空から一直線に来ればこんなに早いんだな。なんせ五分とかからなかった。 と言うかアクリルさんの飛ぶスピードが速いんだろう。 などと諦観している俺がいる。 「ふうん。あの時計で短針が九、長針が十二になるまでにハルヒって子が来るのね」 「ええまあ……」 「とりあえず待ちましょう」 「それはいいんですけど、『さくら』さん……」 「何?」 「俺たち、注目を集めてるんですが……」 そう。うんざりしている俺とあくまであっけらかんとしているアクリルさんの周りには得体の知れないものを見る目をした人だかりができているのである。 「何で?」 「……ここはさくらさんが本来住む世界じゃありませんからね……『魔法』は認知されていないんです……」 「あ、そう言えばそうだったわね。でも安心して。それじゃ――」 ん? 何だ? アクリルさん、左手を開いて翳しているし……って! その手から強烈な光が発せられる! うぉい! ただでさえパニック寸前の雰囲気満々なざわめきが沸き起こっているのに追い打ちかけますか!? 「心配いらないわよ。この魔法はメモリーリウィンド、簡単に言えば記憶を除去する魔法……じゃないか、記憶を巻き戻す魔法、の方が適切かな?」 アクリルさんが説明を終えると同時に光が止む。 刹那、人だかりは、「あれ? 何してたんだっけ?」「わたしは……」と呟きながら、まるで何事もなかったかのように四散していった。 って、これは……? 「んまあ、さすがに人の記憶を操作する、なんて真似はそうそうできるもんじゃないからね。一応、そういう魔法がないわけでもないけどそれは催眠術や傀儡術に近いものがあって『覚める』と何の意味もなさないのよ。だから今のは記憶を前の記憶まで戻す魔法だったの。とりあえず、あたしたちが現れた時間前まで、ね」 な、なるほど……あれ? でも、同じ光を見ていた俺はどうして記憶がなくならなかったんです? 「ふふっ。今の人たちはあたしだけを見たのかしら?」 あ、そうですね。俺も見てますよね。 「そういうこと。記憶巻き戻し対象はあくまで『あたしとキョンくんを見た人』。なら、キョンくんが影響を受けないのは当然でしょ」 相変わらず魔法ってのは凄い力だ。できることとできないことがあるのは仕方ないとしても通常、普通の人が持つ能力からすれば格段にできることが多いんだからな。 はてさて、そんなちょっとした異常事態も文字通り、何事もなかったことにしたアクリルさんと俺は、ただただ待ちぼうけである。 そりゃまあ仕方ないことで集合時間よりも一時間早く着けば当然の成り行きとしか言いようがない。 「ん~~~まだ二十分はあるわね」 背伸びしながらアクリルさんが呟いております。 ううむ……やっぱ背伸びをするとさらにその豊満な丸みを帯びたものが強調されますな…… しかも山吹色のノースリーブシャツの脇からなかなか素晴らしい光景が垣間見えて目のやり場に困りますがな。うぉ? ひょっとしてノーブラってやつか? あ、臍も見えている。なるほど、胸が大きいと下に生地が収まり切らないってことか。 ヘアカラーが黒になっているとまったく違う印象を受けるもんだ。と言うか、あのヘアカラーが異質過ぎるんだろう。 などとアクリルさんは全く気付かないのだが、劣情に浸っていた俺の至福のひとときを吹き飛ばす音響が響いたのはこの時だった。 着信、古泉一樹。 ん? 何だ? どうした? 「もしもし?」 『おはようございます。古泉です』 お前はどこぞのニュースキャスターか? 『いえ、まずは挨拶を、と思ったものですから。それよりもお聞きしたいことがあります』 何だ? 『あなたの隣におられる方はどちら様ですか? 確認したところ、朝比奈さんも長門さんもご存知ない方ですし、佐々木さんでもありませんよね?』 ん? ああ、この人は……って、お前らもう来てるのか? 集合時間までまだ二十分はあるぞ? いつもこんなに早いのか? 『そんなことはどうでもいいです。それよりもあなたの隣の人の方が問題です』 は? 何でだ? 『……涼宮さんももうこちらにいらっしゃってるのですが……』 古泉の声はなんとも触らぬ神に祟りなしっぽい口調だな。 あーてことは…… 俺はこめかみにでっかい困った汗を浮かべて、 ううむ……確かに背後からなんだか無言のプレッシャーに等しいどす黒いオーラを感じているような気がする…… 「えっとだな古泉……ハルヒにこう言ってくれないか……?」 『僕の声が届くと思えないのですが?』 まるっきり暗君の弑逆を決意した冷徹な奸臣のような声だぞ、おい。 『で?』 「分かった分かった。じゃあハルヒに替ってくれ。俺から話す」 『……分かりました』 古泉の返事を聞いて待つことしばし。 『……ふーん……あんたなんかでもナンパが成功するのね……』 第一声が思いっきり嵐の前の静けさなのですが? 五分後に雷付き暴風雨が来るのが解っていながら家に居ればいいのに血迷って雨具を持たずに外出した三分後の心境とはこのことだ。 しかしまあ今回は後ろめたくなる理由はどこにもない。あるはずがない。 って、今回“は”って何だ。俺は一度たりともそんな後ろめたいことをした覚えはない、はずだ。 「あー勘違いするなハルヒ。別にこの人はナンパした人じゃない。それよりも早くこっちに来いよ。この人はお前にも会いたいって言ってるんだ」 『あたしは別に会いたいと思わないわ』 だから違うって。何、勘違いしてやがる。 って、待て待てツッコミを入れるのは後にしておかないと、向こうがぶつ切りするかもしれないんだ。その前に用件を伝えないと。 つーわけで俺は捲し立てるように言った。 「違うって。この人は蒼葉さんの友達だ」 『――!!』 受話器の向こうかでもはっきり分かった。ハルヒの奴、驚嘆に絶句しやがったな。 「そう言えば、あの時はお互いによく顔は見えなかったっけ」 「うん。それに今日は髪の色も違ってたから本当に分からなかったんです」 アクリルさんの涼やかな笑顔の感想にハルヒがはしゃぐ笑顔で相槌をうっている。 場所はいつもの喫茶店、ではなく、駅前にあるカラオケボックスの一室。 なぜこんな場所に居るかと言うと、ハルヒが異世界人とじっくり話をしたい、と言うのが一番の理由だからだ。宇宙人、未来人、超能力者に関して言えば、んなもん、部室でできるし、部室にはよほどのことがない限り、俺たち以外はいない訳だから他人の目を気にする必要はどこにもない。 しかし、異世界人であるアクリルさんはそうはいかないんだ。学校に行く、という手もないこともないがそれではここから到着までの時間が馬鹿にならん。 となれば少しでも早くハルヒの望みを叶えてやろうと思えば、周囲に気遣いのいらない俺たち以外は誰も来ない防音設備の整った場所が必要となる。 それがこのカラオケボックスってことさ。 「あと蒼葉さんとはゆっくり話す機会はありませんでしたし、今回のチャンスは逃すわけにはいきません」 ううむ。ハルヒの丁寧語というものはなんとも新鮮でかつ、どことなく違和感が溢れまくっている。 まあ仕方ないよな。普段のこいつは遠慮という言葉からは一番遠いところに居る奴だ。生徒会長は勿論、軽音楽部の諸先輩方々にさえ無遠慮な言葉遣いなんだからな。 だいたい、先輩の朝比奈さんに対して『みくるちゃん』なんて言ってる時点で常識に照らし合わせて論外としか言いようがない。 「ん~~~別にそんな大したことでもないと思うんだけど……」 「そんなことないです! だって異世界ですよ異世界! あたしたちはどうやったって今現在は異世界に行く手段がないし、来てもらわない限り会えないんですから! それに今回はさくらさんは時間制限がありそうなトラブルでこっちに来たわけじゃないんでしょ? だったら、ゆっくり話したいんです!」 ふむ。異世界に行く手段がない、という常識をわきまえていることはどこかホッとするぞ。 「分かったわ。別に時間制限がないわけでもないけど慌てるほどでもないし。で、あたしに異世界……というか、あたしが住んでる世界の何を聞きたいの?」 アクリルさんが降参を表現した笑みを浮かべてハルヒの提案を受けて入れている。 「ありがとうございます! それじゃ――」 300W増しの輝く笑顔でハルヒは取材を始めた。 涼宮ハルヒの遡及Ⅲ
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今、俺たちはハルヒの家に居て古泉とボードゲームをしている。 そこ、耳を疑っただろう。大丈夫だ。俺もはじめて聞いたときは耳を疑ったね。 なぜハルヒの家にいるかというのを説明するとなると、この前の放課後にまで戻らなくてはならなくなる。 あれはちょうど1週間前のことだったはずだ。 俺は古泉とゲームをしていた。 朝比奈さんはいつも通りメイド服姿でお茶くみをしており、長門も本を読んでいる平和な日々だった。 しかし、その平和をぶち壊す奴がいる。 言うまでもないが、涼宮ハルヒである。 その日も、いきなりドアがバーンと開いたと思うと、こんなことをいってきた 「みんなー、来週の月曜にイベントをやるわよ!」 「ちょっと待て。みんな予定がないかどうかわからないだろ。」 「アンタはどうせひまなんでしょ。」 確かに暇だな。 「古泉君もみくるちゃんも有希も大丈夫よね。」 「ええ、大丈夫です。」 「わたしもその日は暇です。」 「・・・・・・。」 「ほら、大丈夫じゃない。」 でも一応確認しなきゃいけないんじゃないか? 「ところでお前は何をやるつもりなんだ?」 「来週の月曜って何の日だかわかる?」 「敬老の日ではないでしょうか?」 「さすが副団長ね。古泉君。」 「で、敬老の日に何をやるつもりだ。」 「敬老の日って言ったら、おじいさんやおばあさんじゃない。老人って言ったら、和風のものが思い浮かぶでしょ。」 思い浮かばん。それに、洋風が好きな人もいるだろう。 「というわけで、SOS団で和風を満喫するのよ。」 「この部室でやるのか?」 「違うわ。キョンの家で、と言いたい所だけど、今回はあたしの家でやるわ。準備もしてあるしね。」 なんだって?ハルヒの家だって?一体こいつには何が起こったんだ? 「キョン。今なんか言った?」 「いや、なんも言ってないぜ。」 というわけで、ハルヒの家で和風を満喫することに決まった。 当日、いつもの駅前に9時集合になっていたのだが、やはり俺が一番遅かった。 「遅刻!罰金。と言いたい所だけど、今回は許してやるわ。」 うん。絶対こいつはおかしくなっている。 「じゃあ、あたしの家に行くわよ。」 どうやらハルヒの家は俺の家と正反対の方向にあるらしいが、自転車ですぐに着いた。 ハルヒの家は俺の家と大して変わらない普通の家だった。 「じゃあ、キョンと古泉君は待ってて。あたしは有希とみくるちゃんと和菓子買ってくるから。」 と、ハルヒは言い長門と朝比奈さんを連れて行ってしまった。 「さて、ボードゲームを持ってきたので、これをやりながら涼宮さん達を待ちましょうか。」 というわけで冒頭の部分に戻る。 ボードゲームも既に終わってしまい、どうやって暇をつぶそうかと悩んでいたところハルヒたちが帰ってきた。 色々な袋を持っているところから、多くの店を回ったようだ。 「それじゃあ、はじめるわよ。」 そう言い、袋の中からいろいろなものを出していくが、半分ぐらいは和菓子だった。 「よく、こんなたくさんの店を知ってたな。」 「あたしは、和菓子が好きだからいろんな店を回ってるのよ。あと、あたしがこれから作るおはぎをあるわよ。」 と笑顔でいっていたハルヒの顔がいきなりまじめな顔になった。 なにかあったのだろうか? 「肝心な小豆を買い忘れたみたい。ちょっとキョン買ってきて。」 「何で俺なんだよ。」 「アンタは平団員でしょ。買ってきなさいよ。」 「俺は、この辺のどこにスーパーがあるか知らん。」 「じ、じゃああたしが案内してあげるから、アンタが支払いなさいよ。」 俺は、ハルヒとスーパーに行くことになったらしい。 なぜかハルヒはそっぽを向いていたが。 ハルヒの家は買い物の便に優れているらしく、10分ほど歩いたところでスーパーに到着した。 でも、このぐらいの距離ならハルヒが案内する必要はなかったんじゃないか? 小豆を買い、ハルヒの家に向かう途中 「あんた、おはぎって甘い方が好き?」 「そうだな。甘いほうが確かに好きだな。」 「そう、じゃあ甘くするわね。」 「甘くするって言っても、限度を考えろよ。」 「あたしがそんなアホに見えるの?」 と言いながらキックを食らわされた。 戻ると古泉が「仲がいいですね」などと言っていたが、当然無視だ。 おい、ハルヒ。なんで赤くなる? 「それじゃあ、キョンと古泉君は茣蓙を出したりして、部屋の準備をして。みくるちゃんはあたしを手伝って。有希もね。」 その後、食べた和菓子はうまいものばかりで、こんな店もあるんだなと思っていたが、一番うまかったのはハルヒのおはぎだ。 俺がリクエストした通り甘かったが、ちょうど良い甘さでそこらへんの店よりもうまい。 朝比奈さんのお茶も和菓子たちとよくあい、おいしいものだった。 ちょうど食べ終わり後片付けをしようというときにハルヒが俺のところに来た。 「どう?おはぎおいしかった?あんたのリクエスト通りにしてみたつもりだけど。」 「ああ、最高においしかったぜ。俺が今まで食べたおはぎの中で一番おいしかったな。」 「それはよかったわ。ところでキョン。今日解散した後、いったん戻ってきなさい。団長命令よ。」 片付けも無事に終わり、解散する直前に長門にハルヒが何をたくらんでいるのか聞いてみた。 俺も何が起こるか心配なんだよ。 「いったい、俺を戻ってこさせて何をしようとするんだ?」 「私にもわからない。ただ、涼宮ハルヒがあなたに悪影響を及ぼすことはないはず。」 「そうか。ありがとうな。」 「ただ、自分の気持ちに素直になって。」 長門も心配することはないと言っていたので、素直に戻ってくることにしよう。 ところで素直になるって何がだ? ハルヒの家の周りはあまり入り組んだ路地などが無くて、迷うことなくハルヒの家に帰ってこれた。 まあ、普通は迷わないだろうけどな。 一体何の話なのだろうと思いながら家に上がっていた。 「ところで親は帰ってこないのか?」 「今日は出かけてて夜まで帰ってこないわ。」 「ところで話ってなんだ?」 「やっぱり私が考えていることはわかってないのね。鈍いわね。」 「お前に言われる筋合いはないぞ。」 と言いながらも近頃のハルヒはおかしいと思っていた。 いつもならこんな回りくどいことはしないし、自分の家にも呼ばず、俺におごりをさせるだろう。 しかし、近頃はそうではない。絶対に変だと言うことはわかるだろう。 「前に、中学のときの話をしたでしょ。あれの続きなんだけど、あたしは中学では完全に浮いていた。 始めは寂しさなんて感じなかったけど、時がたつにつれてさびしさが沸いてきた。 でも今更後には引けないと思っていたの。そんなときに高校に入ってあんたが現れた。 変なあたしに声をかけてくれて、髪の法則にも気づいてくれたのはあんただけだった。 あの時はあんなことしか言ってなかったけど、本当はうれしかったのよ。」 ハルヒがそんな風に思っていたとはまったく思わなかった。 こいつのSOS団での100Wの笑顔の裏にはそんなことがあったなんて思いもしなかった。 「それであたしはもっと楽しくしようと思ってSOS団を作った。 メンバーが集まるか心配だったけど、何とか集めることが出来た。でも、あたしは楽しんでいるけれどみんなは楽しんでいるかわからなかった。 特にキョン、あんたには雑用ばかりさせていたから。だから今日みたいにあたしの家でみんなに負担をかけないようにこのイベントをすることにしたの。」 「楽しんでいるに決まってんだろ。じゃなきゃ毎日のようにあの部室に来ないと思うぜ。もちろん俺だけじゃなくて、古泉も朝比奈さんも長門も。 それにハルヒ、俺でよかったら色々と言ってくれよな。あと、お前にそんな顔は似合わないぜ。いつものような笑顔を見せてくれよ。お前の笑顔を見ていると俺の疲れも吹っ飛ぶからな。」 そう言いながら俺はやっと長門の言っていた意味に気が付いた。 ハルヒのわがままに対応しているのはただ楽しいからだけではなかったのだ。 それは、俺がハルヒのことが好きだからだ。 素直になれというのはハルヒに対する気持ちだったのだ。 ついでに言っちまえ。俺。お前はハルヒに好意を持ってるんだろ。それに、ハルヒがどう思っていようと、お前はハルヒと居たいんだろ。 「そして、ハルヒ。お前のことが好きだ。」 「ちちちちょっとキョン!いきなり何言い出すのよ。」 といいながらハルヒは赤くなっている。 「あああたしがこれから言おうと思ってたのにことば取らないでよね!」 ということはハルヒも俺のことが好きだったのだ。 「それで答えは?」 「もちろんOKに決まってるじゃない。ただし、あたしのわがままにはこれからもっと聞いてもらうわよ」 その後、「それじゃあ、今日は楽しかったぜ」などと話を家に帰ることになった。 帰り道に考えていたのはハルヒのことだ。 これからは大変になりそうだな。 でも、そうなっても別に俺はかまわないと思う。 ハルヒの100Wの笑顔が絶えることが無くなるならば。