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シナリオ攻略 第6話 『魔神が生まれた日』 勝利条件 敵の全滅。⇒ランスロット以外の敵の全滅。(敵増援3出現後) 敗北条件 いずれかの味方ユニットの撃墜。 SRポイント獲得条件 ???⇒カレン登場から3ターン以内にマップをクリアする。 フローチャート 初期 初期味方 ブラスタ(主人公) スコープドッグ(キリコ) ウイングガンダム(ヒイロ) ガンダムデスサイズ(デュオ) 初期敵 治安警察戦闘ヘリ×3 治安警察装甲車ガーシム×3(4) 初期敵の全滅 敵増援1 サザーランド〔強2〕(ジェレミア) サザーランド×2(3) グラスゴー×4(6) ユニオンフラッグ×3 敵増援1を2機以上撃墜 or 敵増援1出現の次PPカレンの気力が10上昇。 すべての味方が強制移動。 SRポイント獲得条件が公開。 味方増援 グラスゴー(カレン) グラスゴー(扇) グラスゴー(玉城) 敵増援2 サザーランド〔強2〕(キューエル) サザーランド×3 敵増援2出現後、敵を2機以上撃墜 or 敵増援2出現の次PP勝利条件1が変更。 敵増援3 ランスロット(スザク) ランスロット以外の敵の全滅 or 敵増援2出現から4PPステージクリア。 敵データ 初期 機体名 パイロット LV HP 最大射程(P) 獲得資金 PP 配置数N H 獲得ボーナス 備考 治安警察装甲車ガーシム 治安警察 7 H 36502900 5(2) 1400 4 3 4 - 治安警察戦闘ヘリ 治安警察 7 H 34502700 5(3) 1400 4 3 - 増援1 機体名 パイロット LV HP 最大射程(P) 獲得資金 PP 配置数N H 獲得ボーナス 備考 サザーランド〔強2〕 ジェレミア 8 H 75506800 5(4) 2000 8 1 - 底力L3、闘争心、見切り サザーランド ブリタニア騎士 7 H 51504400 5(4) 2000 6 2 3 - サイズ差補正無視 グラスゴー ブリタニア騎士 7 H 43503600 5(4) 1800 4 4 6 - サイズ差補正無視 ユニオンフラッグ ユニオン兵 7 H 51504400 5(2) 2500 6 3 - 増援2 機体名 パイロット LV HP 最大射程(P) 獲得資金 PP 配置数N H 獲得ボーナス 備考 サザーランド〔強2〕 キューエル 8 H 75506800 5(4) 2000 8 1 - 底力L3、Bセーブ、気力+(回避) サザーランド ブリタニア騎士 8 H 51504400 5(4) 2000 6 3 - サイズ差補正無視 増援3 機体名 パイロット LV HP 最大射程(P) 獲得資金 PP 配置数N H 獲得ボーナス 備考 ランスロット スザク 9 H 1135010600 3(3) 6400 8 1 ランドモジュール 見切り、サイズ差補正無視、闘争心、ブロッキング イベント詳細 敵増援1はMAP西側に出現。 敵増援2・味方増援出現時、全味方機がMAP中央に強制移動。敵増援2はMAP西側に出現。 敵増援3はMAP中央やや西寄りに出現。 スザクは毎ターン「集中」を使う。撃墜されても「ド根性」で復活する。 ランスロットの初回撃墜時のみ、強化パーツ『ランドモジュール』入手。 カレン登場から4ターン目のPPでステージは強制終了する。スザク撃墜ばかりに躍起にならないようにしよう。 攻略アドバイス 1機残して左へ進めておくと増援に痛手を与えられる。2機倒すと話が進んでしまうので削りに。 スザクは無理に倒す必要は無いが、倒すと貴重な強化パーツが貰えるので一回は倒しておきたい。その強化パーツで攻撃力が上昇しているのには注意。 回避能力が高く、そこそこ硬いのでキリコが有効。主人公も「集中」を使えば大技でも40%前後はある。無改造・SRポイント全獲得といった条件でも2、3回は倒せる。毎回資金・経験値・PP・撃墜数もちゃんと貰える。 戦闘前会話 初戦闘(増援2出現後)…デュオ 初戦闘(ブリタニア)…カレン、扇、玉城 対ジェレミア…初戦闘 対スザク…初戦闘 隣接シナリオ 第5話 エリア11ルート『バトリング』 第7話 エリア11ルート『その名はゼロ』
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桃から生まれた―― 昔々あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。 「おそらく14世紀~16世紀、そしてここは岡山県と思われる。ちなみに普段我々が活動しているのはその隣、兵庫県」 「なあ長門。時代はともかく、いきなり場所を特定するのはどうかと思うぞ。一応、『あるところに』って言っているわけだし、原作にも俺たちの所在地は特定されていないわけだし」 「しかし、大半の読者は知っている。なら問題ないはず」 「そういう問題か? ところでだな」 「何?」 「どうして俺たちがおじいさんとおばあさんなんだ? 爺さんっぽい格好、婆さんっぽい格好をしていることはしているけど顔とかは思いっきり普段のままで設定上高校二年生通りのままなのは置いておくとして、てことは何だ、その……」 「わたしは構わない」 「そ、そうか? いやまあお前がそう言うならそれでもいいが」 とどのつまり、二人は仲睦まじい夫婦として長年連れ添ってきたでのです。若い頃は毎晩愛を育んでいたにも関わらず残念なことに子宝には恵まれませんでした。しかしそれでも二人は幸せでした。 「マテ。その言い方はかなりの誤解を招くぞ」 「そう。我々がそうなるには五十年以上の月日が必要になる。しかし未来日記と思えば納得できないこともない」 「……お前って、そんな性格だったか? なんだか別世界のお前のような気がひしひししてならんのだが……」 「その認識は正しい。なぜなら、この作者はとあるサイトのわたしをモチーフにして書いている。よって、こういうわたしになるのは自然の成り行き、自明の理」 ええっと、おばあさん? もうこれ以上はいいですよ。ここでは大人の事情がありまして、あんまり詳しく言えませんから、そろそろお話を進行していただけると。 「了解した。では、わたしは川へ洗濯に向かう。あなたは山へ芝刈りに向かうべき」 「やれやれだ。まあ進行させないことには何も始まらんしな。じゃあ俺は籠を背負って、って、長門! それ違うって! 準備してくれていることには感謝するし根本的には間違っていないけどお前の背丈くらいの鉈は必要ないから!」 「オヤシロさま?」 「芝刈りとどう関係するっての!? 確かに山へ行く訳だから雑木林には入るかもしれんが、もう蜩が鳴いている季節でもないし!」 「うみねこは?」 「海じゃないだろ!」 あのーもう夫婦漫才はよろしいですよ? と言うかあまりに無理矢理です。 とりあえずお話は進行します。 おばあさんが無言無表情で川で洗濯していると、どんぶらこーどんぶらこーと桃が流れてきました。 「なるほど。わたしがおばあさん役になるはず。確かにこの大きさの桃を運べるのはわたしのみ。昔話では老婆が運んでいたがあれは物理的には不可能」 言って、おばあさんはあっさりと桃を持ち上げて帰ります。 その途中、おばあさんは不意に足を止め、 「ところで質問がある」 ナレーションに、でしょうか? 「そう。あなたは『桃太郎』の原作においてどうやって桃太郎が生まれたかを知っている?」 な、何のことでしょうか!? 「心拍数増大、通常より血圧も上昇。……つまり、あなたは原作を知っていると確信できる。よって、わたしは原作を忠実に再現することを提案する。許可を」 いやまあ……おそらくはその方が喜ばれる読者もいるでしょうけど、このお話は全年齢対象SSですのでそういった描写などは極力避けたいのでございますが…… 「別に描写する必要はない。あなたの許可が出ればこの物語の進行上、原作通りに事が進んだことになる」 でもそれだと、もうすでにその桃の中でスタンバっている人の意味がないのですが? 「情報操作しても構わない。中の人物をわたしのた」 先に進みましょう。 ナレーションがバッサリ切り捨てて話を進めたことには触れないでください。 日も暮れた頃、おじいさんは戻ってきました。 「よう。って、何だ? そのでかい桃は」 「夕食」 言って、おばあさんは、最初におじいさんに渡そうとしました鉈を振りかぶりました。そうですかーあれはこのためのネタフリだったんですね。 「今さら取ってつけたように言われてもな」 そこは目を瞑ってください。 で、おばあさん、その鉈、振り下ろしてもいいですよ? 「あなたの意見を聞きたい」 鉈を振り上げた態勢のままでおばあさんがおじいさんに問いかけます。 「何だ?」 「わたしは原作に忠実に桃太郎を誕生させたいと思う。あなたはどう?」 少し考えてからおじいさんは言いました。 「よく分からんが、まあ原作に忠実に進める方がいいだろうな」 「それは、あなたは許可するということ?」 「おう。やっちまえ」 おい! お前、それがどういう意味か分かっているんだろうな! 「何だよ。桃太郎が桃から生まれたってのは有名な話じゃないか。それのどこに問題があるんだ? まさかブラックユーモアによく使われた、桃を真っ二つにすると桃太郎も真っ二つになってしまったってアレになるとでも言うのか?」 ちっがぁぁぁう! お前、全然分かってないじゃないか! いいか、原作の桃太郎の誕生ってのはな! 「情報統合思念体にアクセス。認証コードおよびパスワード確認」 「あれ? 長門の奴、何やってんだ?」 もう遅えよ。言っておくが話を進める以上、もう変更はきかんからな。 なんたって、長……おばあさんがこっちの都合を聞いてくれるはずがありませんし、反論を挟むことなんて怖い真似はできませんから。 「これより『桃』に関する情報改変を行う。『桃』には多少の精力効果と興奮効果を付加するが、通常、食料としての『桃』に改ざんし、中にいる者を生命の根源まで変換。その源泉をわたしと彼へと分散移行する」 「は?」 おじいさんは間の抜けた声を漏らしますが、おばあさんは情報改変を粛々と進めるのみであります。 まあ仕方ないですね。知らなかったこととは言え、おじいさんが望んだことです。 もう開き直って進めることにしましょう。たぶん、桃の中の人もしばらくは意識がなくなるでしょうから。 ちなみに『桃太郎』の原作では、桃の中から桃太郎が生まれたわけではないのです。そんなものは真っ白な女の子にのみ通用するコウノトリが運んできたり、キャベツの中から生まれると言った非科学的な作り話でしかありません。 いくら昔話が幻想と言っても子供の授かる方法は生きとし生けるものすべてが共通する行為でのみと言うことだけは忠実だったのです。 とどのつまり、原作では桃を食したおじいさんとおばあさんが若返り、その晩、一気に燃え上がった結果として、ということであり、 「もう一回……」 「一回と言わず何度だって出来るぜ」 「顔にかけるのはもったいない……」 「ちゃんと中にだって充分出してるぞ?」 「そう……」 と言う訳で、それから十月十日(とつきとうか)の月日が流れまして…… 「このあほきょん! えろきょん! りんりかんぜろきょん! あんた、あたしがみてないとおもってゆきにナニしてんのよ!」 二人の間に生まれた玉のような、しかし、やはり絵本の設定を覆した影響なのか、男の子ではなく女の子として生まれてきた、生まれたなりからいきなり山吹色でリボン付きのカチューシャを付けたなぜかそのまんま小さくしたサイズの北高の制服を身にまとった可愛い赤子は猛然とおじいさんに指を差し、思いっきりがなりたてました。なぜかナニだけがカタカナです。 普通は一糸まとわぬ姿で産声を上げると思うんですけどそれはさておき、おじいさんは土下座しておでこを床に擦りつけてただただ平身低頭でひたすら謝り続けています。 自業自得というやつですね。 「わたしはラッキー」 「ゆき!?」 しかしまあ、幸いなことに、おばあさんは赤子がお腹の中にいてまだ意識がない時に世界改変能力をかすめ取ってくれていたおかげで世界が崩壊することはなかったようです。この後も散々文句を言われるおじいさんですが、おばあさんの口添えもあり、いちおー形としては二人の子供として生まれたわけですから倫理観を口にした以上、女の子は諦めるしかなく、ぶーたれながらも割り切って、そしてすくすくと成長し、気が付けば十七歳になっておりました。 「よし今日は鬼ヶ島へ遊びに行くわよ! 鬼が大勢いるって言われているんだから!」 鎧兜を身にまとった、んでカチューシャを外すことを拒んだ桃太郎、改め桃姫は左腕に『日本一』と書かれた赤い腕章を巻いて、いきなり何の脈絡もなく言い出しました。ストーリー展開は間違いではないのですが、動機が間違っているような気がするのは何故でしょう? ただ残念なことに、せっかく発育のいいラインは鎧兜によって完璧に隠されております。 「あのなハルヒ、鬼ヶ島に行く理由はこの村に悪さする鬼を退治するために行くものだと思うのだが」 桃姫が十七歳だというのにおじいさんもおばあさんも全然歳をとっておりません。おそらくこれは桃姫の能力をかすめ取ったおばあさんが情報操作したのでしょう。おじいさんがやれやれとため息をついたあと、露骨にうんざり感を醸し出した表情で桃姫を窘めます。というかいちおーハルヒという名前はやめてください。あなたは桃太郎改め桃姫と名付けたはずですよ? 「あほか! んな大昔のAV女優の源治名みたいな名前で呼べるかっての!」 「よって、彼は、もとい、おじいさんはファーストネームとセカンドネームの間に『ハルヒ』というミドルネームを付けることによって、普段は『ハルヒ』と呼んでいる」 おばあさん、丁寧な説明ありがとうございます。ちなみに昔話なんですから横文字はどうかと思うのですがそれを言い出すとまた話が進まなくなりそうなのでスルーします。 「今、あなたも使用した」 スルーしてください! 「何言ってんのキョン。いい? あたしは『泣いた赤鬼』を読んで以来、鬼を見かけたら優しくしようって心に決めたんだから退治なんて物騒なことはしないわよ! だから鬼ヶ島に行くのは鬼たちと仲良く遊ぶためよ!」 幸いなことに桃姫にはナレーションの声は聞こえていないようなので話を進めてくれそうですから何よりです。ちなみに、おじいさんを『キョン』呼ばわりすることもスルーですよ。ついでに言えばいつ『泣いた赤鬼』なんて読んでんだよ、というツッコミも受け付けません。 「まあそりゃ確かにな。そもそもこの村に悪さする鬼なんていない、というか、悪さしようとする鬼が来ても長門、じゃなくて、おばあさんが手加減無用で追っ払う訳で、逆に鬼が泣いて逃げ出しているからな」 「蜩は鳴いていた」 「まだ言うか!」 「でしょ! だったら全然大丈夫! 有希……じゃなくておばあさんが一緒に来てくれれば遊べるわよ! ほら早くあんたも来なさい!」 「お、おわっ!?」 言って、桃姫はおじいさんの手を取り引きずるように旅に出るのでありました。もちろん、おばあさんも無言で付いていくことに。もうこのあたりで完全に昔話とは違ってきている気がします。というか、間違いなく違っています。 しかしそんなことは気にせずに進めましょう。 穏やかな日差しの中、きらびやかな鎧兜に身を包んだ桃姫は最初こそ、上機嫌に、足に羽根でも生えているんじゃないかという浮かれっぷりで先頭を歩いていたのですが、やっぱり、鎧兜は重たかったようです。 最初はおじいさんにおぶられていたのですが、さすがのおじいさんも重さで疲労してしまったので今はおばあさんにおぶられて道中を進んでおりました。 「まったくだらしがないわねキョン。有希におぶらせて悪いと思わないの?」 「ああ悪いと思うさ。だけどな、俺だって限界なんだ。この汗見りゃ分かんだろ? お前こそ鎧兜やめたほうが良かったんじゃないか?」 「馬鹿言わないでよ。これがないと決まらないじゃない」 「変なところで律義な奴だ。ところでだな、そう言えば俺たちは突然、外出したわけだろ? てことは定番のアレを用意できなかったはずなんだが」 「問題ない」 「有希?」「長門?」 いちおーおばあさんと言ってもらえます? 「あ、じゃあどうしておばあさん?」 「わたしが常時、携帯している。すずみ……ではなく桃姫が鬼ヶ島へ行くことは規定事項。よって、いつ出かけられてもいいようにわたしは三つ、普段から持つよう習慣づけた」 おばあさん、付いていく気満々ですな。元ネタ完全無視ですか? 「そう。しかしわたしは別の目的があり、桃姫が鬼ヶ島へ行く際は同行しようと思っていた」 と言いますと? 「あ、ちょっと待って。あそこに誰かいる」 おばあさんの説明を打ち切って、桃姫は前方を指差しました。 つられて、その指の先へとおじいさんとおばあさんも視線を移します。 って、何故『誰』という単語なので? 桃太郎ではお供になるのは人ではなかったはずなのですが。 というナレーションの声に応えるがごとく、 「何だありゃ? 緋色の衣に左腰に刀を差して銀髪で犬耳って」 おじいさん、その説明では何と言うかその……確かに間違いではないのですが…… 「どうもお待ちしておりました。僕がこの役のようです」 「犬夜叉コスプレ」 はい。おばあさん補足ありがとうございます。 という訳で、外見上は犬夜叉なのに顔は爽やかな笑顔を浮かべた古泉一樹によく似た犬が登場したのでありました。 「外見はともかく、役割としてはこれはベストチョイスだな。俺も感心してしまったほどだ」 「確かに。古泉一樹は原作においても涼宮ハルヒの犬と化している。これは完璧」 「申し訳ございませんが、その言い方では、あんまり褒められている気がしないのですが……」 犬は苦笑を浮かべますが、おばあさんはさらに続けました。 「ただわたしとしては少々不満。できればダルメシアンの着ぐるみで古泉一樹がお座りポーズで登場することを期待した。そして、古泉一樹がやや落ち込んでいるところに『ベストキャスティング』と言ってやりたかった。これがわたしが桃姫に同行しようと思い至った主な理由」 あのー長門さん? なんだか少し黒くなっていませんか? 「気のせい。では話を進める。古泉一樹、例の歌を」 あ、それ聞いてみたいかも。 「桃太郎さん、桃太郎さん、お腰につけた黍團子、一つわたしに下さいな」 「やりませう、やりませう、これから鬼の征伐に、ついて行くならやりませう」 「行きませう、行きませう、あなたについて何處までも、家來になって行きませう」 征伐にはいかないのですがこの際、触れないでおきましょう。 「餌付け、絶対服従の誓い。しかしこれは普段の古泉一樹と同じ。しかも上機嫌に歌った。やや面白みに欠ける」 ひょっとして長門さんは古泉一樹が嫌いなのでしょうか。 「それは禁則事項」 そ、そうですか…… 犬を従えた桃太郎一行は鬼ヶ島への道中をさらに進みます。 となると次に出てくる第二のお供と言えば、 「もぉもたろさん♪ ももたろさん♪ お腰につけた黍團子ぉ♪ ひっとつぅ♪ わったしに下さいな~♪」 あなたもノリノリですね。というかこの御方のこう言う歌い方は何とも可愛くて仕方がありません。一つどころか二つでも三つでもあげたくなっちゃいますよ。 「……あの、朝比奈さん……その格好は……?」 「えっ? ち、違うんですか? あたしは『猿』って聞きましたけど?」 おじいさんのツッコミに朝比奈みくる、ではなくて猿は、本当に何も分からないようなびっくり眼で問い返しております。 「ちなみにどんな格好かというと、赤と薄黄緑の横縞ストライプ半そでぴちぴちTシャツに、生太ももむき出しでカットの際どいジーンズ。その手には木製のゴルフクラブを持っている。なお、そのTシャツは胸部によりジーンズに収めることができず臍部丸出しで男という有機生命体であればローアングルで見ることを必ず願うこと間違いなしであると推測できる。亜麻色で柔らかいロングの頭髪以外の体毛も見当たらない。しかし不可視部分までは不明」 いったい、その不可視部分がどこなのかをおばあさんに問い詰めたいところではありますが、それは断腸の思いで堪えなければならない描写説明が終わったところで桃姫が目をキラキラさせて猿に抱きつきました。 「素晴らしいわみくるちゃん! なんてエロイ格好なのよ! うん! 某女子ゴルファーのへそ出しもみくるちゃんに比べれば弱すぎよ!」 「あ、あん! 涼宮さぁぁぁん!」 桃姫と猿はじゃれあっております。 その後ろでおじいさんと犬はそれを眺めながら、 「なぁ、ハルヒが某女子ゴルファーを知っていても不思議はないと思うんだが、どうして未来人設定の朝比奈さんが20世紀のしかも1970年代の賭けゴルファーの話を知っているんだ?」 「公式の設定年齢を鑑みますと僕たちが生まれる十年以上前の、年代とさらっとした内容まで出てくるあなたもどうかと思うのですが、これは僕の推測ですけど、おそらく朝比奈さんは『桃太郎』を知らずに『猿』の攻撃方法をシュミレートしてみたのではないかと想像できます。となれば、くだんの猿では、朝比奈さんの普段の行動からは素早しっこさもなく、物を投げるにしても威力もなさそうですし、爪による引っ掻き攻撃の前に抑え込まれそうでしたから別の攻撃手段を模索したのだと考えられます。そして、『猿』が武器を使うとして不思議ではないものを扱う存在を知ったのではないかと」 「……あれは裏ゴルフつっても、別にクラブで殴ったり、ボールをぶつけたりする話ではないんだが……」 「まあ、もしかしたら朝比奈さんの本来いる時間軸であります未来には『ゴルフ』そのものがないのかもしれませんよ」 「あ、そう考えると確かに、あの物語に出てくるショットはともすれば殺人兵器に見えないこともないか……」 「ヌンチャクやトンファーを振りかざしてましたからねえ」 「それ本当にゴルフか?」 「ちなみにこの作品を描いた作者は本当にヌンチャクやトンファークラブを作って自分でプレイしてました」 おーい。お前ら、今、室町時代って知ってっか? その時代にはゴルフなんてないんだぞ。何よりマニアックな会話するな。 ちなみに犬夜叉は設定が五百年前とありましたので問題なしです。 しばし桃姫と猿のじゃれあいを眺めるおじいさんと犬の後ろでは、おばあさんがいつも通り、何やら分厚い絵巻を眺めておりましたとさ。 「続編での次男坊の変わり様がユニーク」 それ言っちゃあお終いだ。 これで普段のメンバーは全員揃ったわけですが、物語ではあと一つ、お供してくれる存在が居るわけでして、はてさてどうするのでしょう。 「ま、難しくないわね」 「だな。もうあの人しかいないだろう」 「あたしも、苗字に鶴の名が入っているあの人だと思います」 「それも鶴の恰好をして現れると思われる」 「しかも、『人を見かけで判断しては駄目よ。体は鶴でも心はキジさ』とかお決まりのセリフを声高らかに宣誓しそうですね」 などと一行は談笑しながら予想しておりますが、そんな読者にも解りきってしまうようなベッタベタ展開を本当にここの作者がすると思っているのでしょうか。 という訳で。 「あら? みなさんお揃いでどうしたんですか?」 「って、き、喜緑さん!? 何で!?」 おじいさんの驚嘆の声に、突然、一行の前に降り立ったのは背中に大きな翼を広げた喜緑江美里でございます。 つか、翼以外は普段の格好なんですね。 北高の制服も、軽くウェーブのかかった髪型も。その髪を止めている留め金も。 「うふふふ。そうですか? 私は神出鬼没で長門さんでさえ恐れるTFEIでございますよ」 いったい誰に説明しているのでしょう。 なぜなら、SOS団一行、もとい桃姫一行は茫然自失と立ち尽くしております。 「どうされました皆さん? さ、鬼ヶ島へと向かいましょう。あ、きび団子を頂かなくても私はご一緒させていただきますのでお構いなく」 満面の笑顔で促す喜緑さんによく似たキジに一行は茫然としたままですが、なぜ喜緑さんによく似ていたのかと言いますとそれは後の展開で。 「このまま南西の方角へ航路を取ると、十五分後に到着する」 「長門さん、この時代の時間単位は刻かもしれませんよ。四半刻と言えばいいのかしら」 船の船頭に肩を並べて立っているおばあさんの淡々とした報告に、キジさんは淑女的な笑みを浮かべてツッコミを入れておりました。 二次創作で見られるほど、二人の仲は悪くないようです。というか面倒なんでその辺りの人間(?)関係は省かせていただきます。 ところで、ふと思ったのですが長門風おばあさんと喜緑さん風キジがいましたら、いったい鬼は何グロスくらいいないと太刀打ちできないでしょうか?という思考がよぎりませんか? 「そりゃそうだよな。せっかく犬と猿さんが武器を持ってきてくれても無理に必要なさそうだ」 「あたしは助かりますぅ。だって戦いなんて野蛮な真似できませんし」 「僕も同じですね。さすがにこんな大きい刀はそうそう振り回せません」 一応、あなた方は鬼退治に行くつもりだったと思っていたのですが? 「あん? 目的は違うんじゃなかったか? まあ、どっちにしろ、俺は戦う必要がないはずだ。いくらなんでもそこまで原作を覆さないだろ?」 いやまあそれはそうですが……では、犬と猿さんは? というか、お二方は何のために鬼ヶ島へ向かっているのかをご存知で? 「ええ。聞いてますよ。涼……ではありませんでした、桃姫さんの目的は鬼と遊ぶことだとか」 「あたしは鬼さんたちとお茶を飲んで楽しい会話ができればいいかなぁ?」 まったく緊張感のない一行でございます。 ちなみに桃姫はおじいさんと犬と猿さんの前に腕を組んで悠然と佇み、勝気な笑顔でおばあさんとキジさんの方へと視線を向けていたりします。 表情と佇む姿だけは今から戦いに挑む気満々に見えるわけですが、当然、目的はまったく違います。 そんな一行の目の前には少し霧ががった島が見えてまいりました。 「いよいよ。決戦の火ぶたが切って落とされるのね!」 それ遊びに行くのに出る言葉ではないですよ桃姫さん。 というナレーションのツッコミを無視して、 「さあ行くわよ、みんな!」 声を張り上げて桃姫は接岸と同時に上陸し、先導を買って出るのでありました。 もちろん、鬼側も桃姫一行の侵入には気が付いております。 「殿、如何なされます?」 忍者衣装を着た緑鬼Aが片膝ついて報告している前には、鬼の総大将がおりまして。 「もしかして、あれが悪名高い桃姫か? 近隣の村では知らぬ者がいないと言われる奇人変人ぶりで頭の中が常に春の花でいっぱいと言われている」 「左様で」 「そもそも奴は何の目的でこの鬼ヶ島へと来たのだ? 我々はあやつの住む村はおろか、その近隣の村でさえ手出ししたことはないぞ。というか、逆に我々はあやつの住む村も含めて、方々の村に生活援助さえしている。それに我々はあやつの母親のおかげで不穏分子の粛清も進められており、人数的にも周りの村と比べるならかなりの少数村であるにも関わらず破格の援助をしているはずなのだが」 「まったくもって分かりません。ただお言葉を返すようで申し訳ございませんが、そもそも桃姫の行動を読めという自体、不可能ではないかと」 「なるほど一理ある。とりあえず、泳がせておくことにしよう。何かあったら逐一、知らせるように」 「はっ」 言って、緑鬼Aは姿を消しました。 残されるのは鬼ヶ島一の高い場所にある城の天守閣から外の景色を眺める鬼の総大将のみ。 「厄介事はご免こうむりたいものだ」 くいっとメガネをかけ直して嘆息するのでありました。 「あれ~? おっかしいわね~鬼なんていないじゃない。ひょっとしてガセネタ?」 先頭を歩く桃姫は右手を翳し周囲を見回しながら呟いておりました。 「いいえ。ここには、まあたくさんとは言いませんがある程度の数の鬼はおいでますよ。もしかしたら今は食事中なのかもしれませんね」 キジが笑顔で返します。 「って、あれ? ちょっと待って。今の喜みど……じゃなくてキジさんの言い方だと、まるであんたはここのこと知っているみたいね」 桃姫がふと疑問を感じます。 「ええ、よく存じております」 というキジさんの柔らかな笑顔の答えを聞いて、 「じゃさ! 案内してよ。鬼の居るところにさ!」 桃姫は期待感が溢れ返っている満面の笑みでキジに詰め寄りました。 「分かりました」 朗らかな笑顔で答えて、キジが桃姫の前へと歩み出ます。 「では行きましょう」 今度はキジさんが案内役となって進むことになりました。 「なあ、こいず……犬よ。ひょっとして鬼の総大将って……」 「ええ、これはまずいことになりましたよ」 珍しく、おじいさんの方から犬に顔をよせてひそひそ問いかけております。それが嬉しいのかはさっぱり分かりませんが犬は、セリフの割には全然緊張感のないいつもの爽やかスマイルでやはり小声で返します。 「もし我々の想像通りの方でしたら、おそらく桃姫さんは遊ぶことをやめて本気で退治しかねません。なんたって別段、彼を、桃姫さんの立場から見れば、このお話ではのさばらせておく理由もありませんからね」 「まあな……確か、本来の桃太郎でも『鬼は退治される』わけだからな……」 「あのぉ~犬くん、キョ……おじいさん。どうして、鬼が退治されるといけないんですかぁ?」 猿さんが恐る恐る、しかしやっぱりおじいさんに顔をよせて小声で割ってきました。 「いやあの……顔が違いですよ朝ひ……猿さん、ま、まあ犬と比べるならむしろ、あなたの顔が近い方が俺としても嬉しいのですが……」 「あ……! ち、違うんです! あたし、そんなつもりじゃ……ただ、すずみ……じゃなくて、桃姫さんには聞こえない方がいいかな、と思っただけで……」 赤くなってもじもじと伏せ目になるお猿さん。いや、とっても可愛いです。 が、 「ここの鬼ヶ島の鬼は我々の村に多大な援助をしてくれている。その存在がなくなるのは痛手」 おばあさんのその一言は、一瞬にして、ちょっと離れているキジさんと桃姫以外の周りの空気を暗転させて、さらに時間ごと絶対零度にまで凍結させてしまったような錯覚すら与えるのでした。 「な、長門……?」 「何?」 おじいさんもおばあさんと言うことさえ忘れるくらいのどす黒いオーラがおばあさんから溢れ返っております。正直、怖いので、おじいさん、頑張って宥めてください。 「む、無茶言うな! これで俺にどうしろと!」 「いえ、ここで長門さんを鎮められるのはあなただけですし」 「キョ、キョンくん……ご、ごめんなさい! あたしの所為で……」 などと言いながらお猿さんも、犬と一緒になっておじいさんの背中を押して、無表情のまま絶対零度の瞳のおばあさんの前に突き出しております。 はっきり言って人身御苦労です。 という訳でおじいさんは諦めてお婆さんに言い訳を始めました。 「な、なあさっきのは別に悪気があってじゃなくてだな……というか変な下心が……無かったとは言わないけど、いや本当にお前が思っているほどのものはなくてだな……」 「で?」 うわ怖っ! あの、おばあさんがこれほどまでに率直な感情を表に出しますか!? 「わ、分った! 謝る! 今後一切、お前以外の女子をお前以上に近づけないし、近づけたときはお前をそれ以上に近づける!」 どうやらおじいさんはおばあさんのセリフが何を意味するのかが解っているようです。いきなりあたふたしながら両手をバタバタ振りつつもう謝り倒してますから。 ね、おばあさん、今回は許してあげたらどうですか? 「そう」 頷いて、おばあさんはおじいさんの腕に自分の腕をからませました。 「なら今回はここまで接近することになる。いい――わね?」 「はい。もちろんデス!」 なんとも珍しいおばあさんの脅迫語尾におじいさんは即答で頷き、二人は桃姫の後を追うことにしたようです。 「あ、あの~~~犬くん、いいんですか?」 「いいんじゃないですか? このお話では桃姫さんに閉鎖空間を生み出す能力はないようですし、というか、その力はおばあさんが持っているようなので、僕としては仲間がどこにいるか分からない以上、おばあさんが平穏無事でいられるならそれに越したことないです」 「でも、それだと桃姫さんが……」 「心配いらないでしょう。なぜなら桃姫さんは今回おじいさんとおばあさんの間に生まれた子供という設定ですし、いつもと同じ態度を見せているということはもう割り切っていると推測できますよ」 「そうですね。あれ? ということはあたしの観測対象は今はおばあさんってこと?」 「それは禁則事項でないかと」 ぶっ! 犬がそれを言いますか? それも笑顔で人差し指を唇につけてウインクって。まるでどこぞの謎のプリーストのようですよ? 「誰のことです?」 「あ、えっと……た、たぶん、これは深く追求しない方がいいと思います!」 慌てふためくお猿さんは犬の手をとって四人の後を追うのでした。 「あらあら、やっぱりこうなんですか? 会長」 「き、喜緑くん……! どうして君がここに……!」 にこにこ笑顔のキジの前で、メガネをかけ直した鬼の総大将は顔色を失くしてしどろもどろするしかできませんでした。 なぜかって? それはですね。 この総大将は、メガネを外すと性格が変わるからです。 普段は生真面目で威厳ある総大将をやっておりますが、ひとたび、メガネを外せば単なる不良と化し、己が欲望に忠実に行動する鬼畜生そのものという存在になるのです。 そのストッパーがキジだったわけですが、残念なことについ先日、キジに浮気現場を目撃されまして、それでキジは鬼の大将を討つ腹を決めたのでした。 まあ、一回だけでやめときゃよかったのに、緑鬼忍者の報告を聞いたあと、側室の部屋で正妻以外の女と絡んでいれば、そりゃどんな目に合うかは火を見るより明らかな訳でして。 「ねえキョン」 「何だ?」 桃姫が不敵な笑顔を浮かべておじいさんに声をかけました。つか、その嬉々とした殺意の瞳は怖いです。 「あたしさ、やっぱ鬼は退治するべきだと思うのよ。じゃないと、いつ村が襲われるか分かったものじゃないし。つまりこれはアクティブセーフティー。正当防衛よね」 と言っても、別に桃姫の殺気は別段、おばあさんと腕を組んでいるおじいさんに向けられているものではありません。これは犬が言った通りで桃姫ももう既に割り切っているのです。でなければ十七年も一緒に居るわけがありませんからね。 「いや過剰防衛だと思うぞ。お前も知っていると思うが、俺たちの住む村はこの鬼の総大将のおかげで随分助かっているんだぜ」 「ふっ! 何言ってるのかしら? そうやって甘いところを見せておいて後から寝首をかくってタイプよ! こいつは!」 それはあんまりな決め付けかと思うのですが、一度、これと決めた桃姫が、その思考を覆すことはないのです。 つまり―― 「犬くん! キジさん! お猿ちゃん! 敵の大将を地獄の豪火で焼いてあげなさぁぁぁい!」 軍配を振りかざし、桃姫は満面の笑顔でそう指揮するのでありました。 つられてキジはニコニコ笑顔のまま、飛びかかり、 「すみません。他の鬼たちはキジさんとおばあさんを恐れてここに助けに来れないそうです。ですからお許しください」 犬は苦笑を浮かべて刃を抜いて、 「ふ、ふぇ!? えっと……えっと……!」 猿はお手製ゴルフクラブで、ボールを打ち続けるのでした。しかし目を瞑って打っているというのにどういう訳か全部、鬼の大将に当たります。はっきり言ってガチャプレイに翻弄されているようなものです。 「やっぱりこうなるのか……」 「ユニーク」 その後ろでは、おじいさんが嘆息を吐き、おばあさんはおじいさんに腕をからめたまま、目の前の出来事もどこ吹く風で分厚い絵巻を眺めているのでした。 めでたしめでたし……か? 「いや、お前ら傍観するくらいなら助けろ!」 鬼の大将の叫びにおばあさんは一言。 「喜緑江美里とはココ○チカレー一年分にて交渉成立している」 「なぁっ!?」 鬼の叫びなどどこ吹く風、それを聞いたおじいさんは、 「そうか、なら今から食いにいくか?」 「いく」 あっさりと二人は決めてしまいました。 「んじゃハルヒー、俺ら先行ってるから適当なとこで帰ってこいよー」 「もう! いいとこなんだから見ていきなさいよね! まあいいわ、気が済んだら帰るから!」 こうしておじいさんとおばあさんはカレーを食べに行きましたとさ。 めでたしめでた…… 「めでたくないだろっ! なんでジジイとババアがカレー屋に行くエンディングなんだよ!」 鬼の大将に正論を吐かれちゃいましたので、お願いします。 「そうですね、ここはこれが正しいオチではないかと」 そう言うキジのまあ素晴らしい笑顔を見て鬼の大将が震え上がりました。 「ギャアアアアアアアアーーーッ! たすけてえみりさまーーーーっ!」 この後、鬼の大将はどうなったのでしょうか。 それは誰にも分かりません。知らぬが仏、ってことで、深く追求しない方が身のためなのではないかと。 桃から生まれた――(完)
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3DS板が生まれたのは、2011/9/14日 あれから二年立ってるが、3DS板はにぎやかです。
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桃から生まれた―― 昔々あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。 「おそらく14世紀~16世紀、そしてここは岡山県と思われる。ちなみに普段我々が活動しているのはその隣、兵庫県」 「なあ長門。時代はともかく、いきなり場所を特定するのはどうかと思うぞ。一応、『あるところに』って言っているわけだし、原作にも俺たちの所在地は特定されていないわけだし」 「しかし、大半の読者は知っている。なら問題ないはず」 「そういう問題か? ところでだな」 「何?」 「どうして俺たちがおじいさんとおばあさんなんだ? 爺さんっぽい格好、婆さんっぽい格好をしていることはしているけど顔とかは思いっきり普段のままで設定上高校二年生通りのままなのは置いておくとして、てことは何だ、その……」 「わたしは構わない」 「そ、そうか? いやまあお前がそう言うならそれでもいいが」 とどのつまり、二人は仲睦まじい夫婦として長年連れ添ってきたでのです。若い頃は毎晩愛を育んでいたにも関わらず残念なことに子宝には恵まれませんでした。しかしそれでも二人は幸せでした。 「マテ。その言い方はかなりの誤解を招くぞ」 「そう。我々がそうなるには五十年以上の月日が必要になる。しかし未来日記と思えば納得できないこともない」 「……お前って、そんな性格だったか? なんだか別世界のお前のような気がひしひししてならんのだが……」 「その認識は正しい。なぜなら、この作者はとあるサイトのわたしをモチーフにして書いている。よって、こういうわたしになるのは自然の成り行き、自明の理」 ええっと、おばあさん? もうこれ以上はいいですよ。ここでは大人の事情がありまして、あんまり詳しく言えませんから、そろそろお話を進行していただけると。 「了解した。では、わたしは川へ洗濯に向かう。あなたは山へ芝刈りに向かうべき」 「やれやれだ。まあ進行させないことには何も始まらんしな。じゃあ俺は籠を背負って、って、長門! それ違うって! 準備してくれていることには感謝するし根本的には間違っていないけどお前の背丈くらいの鉈は必要ないから!」 「オヤシロさま?」 「芝刈りとどう関係するっての!? 確かに山へ行く訳だから雑木林には入るかもしれんが、もう蜩が鳴いている季節でもないし!」 「うみねこは?」 「海じゃないだろ!」 あのーもう夫婦漫才はよろしいですよ? と言うかあまりに無理矢理です。 とりあえずお話は進行します。 おばあさんが無言無表情で川で洗濯していると、どんぶらこーどんぶらこーと桃が流れてきました。 「なるほど。わたしがおばあさん役になるはず。確かにこの大きさの桃を運べるのはわたしのみ。昔話では老婆が運んでいたがあれは物理的には不可能」 言って、おばあさんはあっさりと桃を持ち上げて帰ります。 その途中、おばあさんは不意に足を止め、 「ところで質問がある」 ナレーションに、でしょうか? 「そう。あなたは『桃太郎』の原作においてどうやって桃太郎が生まれたかを知っている?」 な、何のことでしょうか!? 「心拍数増大、通常より血圧も上昇。……つまり、あなたは原作を知っていると確信できる。よって、わたしは原作を忠実に再現することを提案する。許可を」 いやまあ……おそらくはその方が喜ばれる読者もいるでしょうけど、このお話は全年齢対象SSですのでそういった描写などは極力避けたいのでございますが…… 「別に描写する必要はない。あなたの許可が出ればこの物語の進行上、原作通りに事が進んだことになる」 でもそれだと、もうすでにその桃の中でスタンバっている人の意味がないのですが? 「情報操作しても構わない。中の人物をわたしのた」 先に進みましょう。 ナレーションがバッサリ切り捨てて話を進めたことには触れないでください。 日も暮れた頃、おじいさんは戻ってきました。 「よう。って、何だ? そのでかい桃は」 「夕食」 言って、おばあさんは、最初におじいさんに渡そうとしました鉈を振りかぶりました。そうですかーあれはこのためのネタフリだったんですね。 「今さら取ってつけたように言われてもな」 そこは目を瞑ってください。 で、おばあさん、その鉈、振り下ろしてもいいですよ? 「あなたの意見を聞きたい」 鉈を振り上げた態勢のままでおばあさんがおじいさんに問いかけます。 「何だ?」 「わたしは原作に忠実に桃太郎を誕生させたいと思う。あなたはどう?」 少し考えてからおじいさんは言いました。 「よく分からんが、まあ原作に忠実に進める方がいいだろうな」 「それは、あなたは許可するということ?」 「おう。やっちまえ」 おい! お前、それがどういう意味か分かっているんだろうな! 「何だよ。桃太郎が桃から生まれたってのは有名な話じゃないか。それのどこに問題があるんだ? まさかブラックユーモアによく使われた、桃を真っ二つにすると桃太郎も真っ二つになってしまったってアレになるとでも言うのか?」 ちっがぁぁぁう! お前、全然分かってないじゃないか! いいか、原作の桃太郎の誕生ってのはな! 「情報統合思念体にアクセス。認証コードおよびパスワード確認」 「あれ? 長門の奴、何やってんだ?」 もう遅えよ。言っておくが話を進める以上、もう変更はきかんからな。 なんたって、長……おばあさんがこっちの都合を聞いてくれるはずがありませんし、反論を挟むことなんて怖い真似はできませんから。 「これより『桃』に関する情報改変を行う。『桃』には多少の精力効果と興奮効果を付加するが、通常、食料としての『桃』に改ざんし、中にいる者を生命の根源まで変換。その源泉をわたしと彼へと分散移行する」 「は?」 おじいさんは間の抜けた声を漏らしますが、おばあさんは情報改変を粛々と進めるのみであります。 まあ仕方ないですね。知らなかったこととは言え、おじいさんが望んだことです。 もう開き直って進めることにしましょう。たぶん、桃の中の人もしばらくは意識がなくなるでしょうから。 ちなみに『桃太郎』の原作では、桃の中から桃太郎が生まれたわけではないのです。そんなものは真っ白な女の子にのみ通用するコウノトリが運んできたり、キャベツの中から生まれると言った非科学的な作り話でしかありません。 いくら昔話が幻想と言っても子供の授かる方法は生きとし生けるものすべてが共通する行為でのみと言うことだけは忠実だったのです。 とどのつまり、原作では桃を食したおじいさんとおばあさんが若返り、その晩、一気に燃え上がった結果として、ということであり、 「もう一回……」 「一回と言わず何度だって出来るぜ」 「顔にかけるのはもったいない……」 「ちゃんと中にだって充分出してるぞ?」 「そう……」 と言う訳で、それから十月十日(とつきとうか)の月日が流れまして…… 「このあほきょん! えろきょん! りんりかんぜろきょん! あんた、あたしがみてないとおもってゆきにナニしてんのよ!」 二人の間に生まれた玉のような、しかし、やはり絵本の設定を覆した影響なのか、男の子ではなく女の子として生まれてきた、生まれたなりからいきなり山吹色でリボン付きのカチューシャを付けたなぜかそのまんま小さくしたサイズの北高の制服を身にまとった可愛い赤子は猛然とおじいさんに指を差し、思いっきりがなりたてました。なぜかナニだけがカタカナです。 普通は一糸まとわぬ姿で産声を上げると思うんですけどそれはさておき、おじいさんは土下座しておでこを床に擦りつけてただただ平身低頭でひたすら謝り続けています。 自業自得というやつですね。 「わたしはラッキー」 「ゆき!?」 しかしまあ、幸いなことに、おばあさんは赤子がお腹の中にいてまだ意識がない時に世界改変能力をかすめ取ってくれていたおかげで世界が崩壊することはなかったようです。この後も散々文句を言われるおじいさんですが、おばあさんの口添えもあり、いちおー形としては二人の子供として生まれたわけですから倫理観を口にした以上、女の子は諦めるしかなく、ぶーたれながらも割り切って、そしてすくすくと成長し、気が付けば十七歳になっておりました。 「よし今日は鬼ヶ島へ遊びに行くわよ! 鬼が大勢いるって言われているんだから!」 鎧兜を身にまとった、んでカチューシャを外すことを拒んだ桃太郎、改め桃姫は左腕に『日本一』と書かれた赤い腕章を巻いて、いきなり何の脈絡もなく言い出しました。ストーリー展開は間違いではないのですが、動機が間違っているような気がするのは何故でしょう? ただ残念なことに、せっかく発育のいいラインは鎧兜によって完璧に隠されております。 「あのなハルヒ、鬼ヶ島に行く理由はこの村に悪さする鬼を退治するために行くものだと思うのだが」 桃姫が十七歳だというのにおじいさんもおばあさんも全然歳をとっておりません。おそらくこれは桃姫の能力をかすめ取ったおばあさんが情報操作したのでしょう。おじいさんがやれやれとため息をついたあと、露骨にうんざり感を醸し出した表情で桃姫を窘めます。というかいちおーハルヒという名前はやめてください。あなたは桃太郎改め桃姫と名付けたはずですよ? 「あほか! んな大昔のAV女優の源治名みたいな名前で呼べるかっての!」 「よって、彼は、もとい、おじいさんはファーストネームとセカンドネームの間に『ハルヒ』というミドルネームを付けることによって、普段は『ハルヒ』と呼んでいる」 おばあさん、丁寧な説明ありがとうございます。ちなみに昔話なんですから横文字はどうかと思うのですがそれを言い出すとまた話が進まなくなりそうなのでスルーします。 「今、あなたも使用した」 スルーしてください! 「何言ってんのキョン。いい? あたしは『泣いた赤鬼』を読んで以来、鬼を見かけたら優しくしようって心に決めたんだから退治なんて物騒なことはしないわよ! だから鬼ヶ島に行くのは鬼たちと仲良く遊ぶためよ!」 幸いなことに桃姫にはナレーションの声は聞こえていないようなので話を進めてくれそうですから何よりです。ちなみに、おじいさんを『キョン』呼ばわりすることもスルーですよ。ついでに言えばいつ『泣いた赤鬼』なんて読んでんだよ、というツッコミも受け付けません。 「まあそりゃ確かにな。そもそもこの村に悪さする鬼なんていない、というか、悪さしようとする鬼が来ても長門、じゃなくて、おばあさんが手加減無用で追っ払う訳で、逆に鬼が泣いて逃げ出しているからな」 「蜩は鳴いていた」 「まだ言うか!」 「でしょ! だったら全然大丈夫! 有希……じゃなくておばあさんが一緒に来てくれれば遊べるわよ! ほら早くあんたも来なさい!」 「お、おわっ!?」 言って、桃姫はおじいさんの手を取り引きずるように旅に出るのでありました。もちろん、おばあさんも無言で付いていくことに。もうこのあたりで完全に昔話とは違ってきている気がします。というか、間違いなく違っています。 しかしそんなことは気にせずに進めましょう。 穏やかな日差しの中、きらびやかな鎧兜に身を包んだ桃姫は最初こそ、上機嫌に、足に羽根でも生えているんじゃないかという浮かれっぷりで先頭を歩いていたのですが、やっぱり、鎧兜は重たかったようです。 最初はおじいさんにおぶられていたのですが、さすがのおじいさんも重さで疲労してしまったので今はおばあさんにおぶられて道中を進んでおりました。 「まったくだらしがないわねキョン。有希におぶらせて悪いと思わないの?」 「ああ悪いと思うさ。だけどな、俺だって限界なんだ。この汗見りゃ分かんだろ? お前こそ鎧兜やめたほうが良かったんじゃないか?」 「馬鹿言わないでよ。これがないと決まらないじゃない」 「変なところで律義な奴だ。ところでだな、そう言えば俺たちは突然、外出したわけだろ? てことは定番のアレを用意できなかったはずなんだが」 「問題ない」 「有希?」「長門?」 いちおーおばあさんと言ってもらえます? 「あ、じゃあどうしておばあさん?」 「わたしが常時、携帯している。すずみ……ではなく桃姫が鬼ヶ島へ行くことは規定事項。よって、いつ出かけられてもいいようにわたしは三つ、普段から持つよう習慣づけた」 おばあさん、付いていく気満々ですな。元ネタ完全無視ですか? 「そう。しかしわたしは別の目的があり、桃姫が鬼ヶ島へ行く際は同行しようと思っていた」 と言いますと? 「あ、ちょっと待って。あそこに誰かいる」 おばあさんの説明を打ち切って、桃姫は前方を指差しました。 つられて、その指の先へとおじいさんとおばあさんも視線を移します。 って、何故『誰』という単語なので? 桃太郎ではお供になるのは人ではなかったはずなのですが。 というナレーションの声に応えるがごとく、 「何だありゃ? 緋色の衣に左腰に刀を差して銀髪で犬耳って」 おじいさん、その説明では何と言うかその……確かに間違いではないのですが…… 「どうもお待ちしておりました。僕がこの役のようです」 「犬夜叉コスプレ」 はい。おばあさん補足ありがとうございます。 という訳で、外見上は犬夜叉なのに顔は爽やかな笑顔を浮かべた古泉一樹によく似た犬が登場したのでありました。 「外見はともかく、役割としてはこれはベストチョイスだな。俺も感心してしまったほどだ」 「確かに。古泉一樹は原作においても涼宮ハルヒの犬と化している。これは完璧」 「申し訳ございませんが、その言い方では、あんまり褒められている気がしないのですが……」 犬は苦笑を浮かべますが、おばあさんはさらに続けました。 「ただわたしとしては少々不満。できればダルメシアンの着ぐるみで古泉一樹がお座りポーズで登場することを期待した。そして、古泉一樹がやや落ち込んでいるところに『ベストキャスティング』と言ってやりたかった。これがわたしが桃姫に同行しようと思い至った主な理由」 あのー長門さん? なんだか少し黒くなっていませんか? 「気のせい。では話を進める。古泉一樹、例の歌を」 あ、それ聞いてみたいかも。 「桃太郎さん、桃太郎さん、お腰につけた黍團子、一つわたしに下さいな」 「やりませう、やりませう、これから鬼の征伐に、ついて行くならやりませう」 「行きませう、行きませう、あなたについて何處までも、家來になって行きませう」 征伐にはいかないのですがこの際、触れないでおきましょう。 「餌付け、絶対服従の誓い。しかしこれは普段の古泉一樹と同じ。しかも上機嫌に歌った。やや面白みに欠ける」 ひょっとして長門さんは古泉一樹が嫌いなのでしょうか。 「それは禁則事項」 そ、そうですか…… 犬を従えた桃太郎一行は鬼ヶ島への道中をさらに進みます。 となると次に出てくる第二のお供と言えば、 「もぉもたろさん♪ ももたろさん♪ お腰につけた黍團子ぉ♪ ひっとつぅ♪ わったしに下さいな~♪」 あなたもノリノリですね。というかこの御方のこう言う歌い方は何とも可愛くて仕方がありません。一つどころか二つでも三つでもあげたくなっちゃいますよ。 「……あの、朝比奈さん……その格好は……?」 「えっ? ち、違うんですか? あたしは『猿』って聞きましたけど?」 おじいさんのツッコミに朝比奈みくる、ではなくて猿は、本当に何も分からないようなびっくり眼で問い返しております。 「ちなみにどんな格好かというと、赤と薄黄緑の横縞ストライプ半そでぴちぴちTシャツに、生太ももむき出しでカットの際どいジーンズ。その手には木製のゴルフクラブを持っている。なお、そのTシャツは胸部によりジーンズに収めることができず臍部丸出しで男という有機生命体であればローアングルで見ることを必ず願うこと間違いなしであると推測できる。亜麻色で柔らかいロングの頭髪以外の体毛も見当たらない。しかし不可視部分までは不明」 いったい、その不可視部分がどこなのかをおばあさんに問い詰めたいところではありますが、それは断腸の思いで堪えなければならない描写説明が終わったところで桃姫が目をキラキラさせて猿に抱きつきました。 「素晴らしいわみくるちゃん! なんてエロイ格好なのよ! うん! 某女子ゴルファーのへそ出しもみくるちゃんに比べれば弱すぎよ!」 「あ、あん! 涼宮さぁぁぁん!」 桃姫と猿はじゃれあっております。 その後ろでおじいさんと犬はそれを眺めながら、 「なぁ、ハルヒが某女子ゴルファーを知っていても不思議はないと思うんだが、どうして未来人設定の朝比奈さんが20世紀のしかも1970年代の賭けゴルファーの話を知っているんだ?」 「公式の設定年齢を鑑みますと僕たちが生まれる十年以上前の、年代とさらっとした内容まで出てくるあなたもどうかと思うのですが、これは僕の推測ですけど、おそらく朝比奈さんは『桃太郎』を知らずに『猿』の攻撃方法をシュミレートしてみたのではないかと想像できます。となれば、くだんの猿では、朝比奈さんの普段の行動からは素早しっこさもなく、物を投げるにしても威力もなさそうですし、爪による引っ掻き攻撃の前に抑え込まれそうでしたから別の攻撃手段を模索したのだと考えられます。そして、『猿』が武器を使うとして不思議ではないものを扱う存在を知ったのではないかと」 「……あれは裏ゴルフつっても、別にクラブで殴ったり、ボールをぶつけたりする話ではないんだが……」 「まあ、もしかしたら朝比奈さんの本来いる時間軸であります未来には『ゴルフ』そのものがないのかもしれませんよ」 「あ、そう考えると確かに、あの物語に出てくるショットはともすれば殺人兵器に見えないこともないか……」 「ヌンチャクやトンファーを振りかざしてましたからねえ」 「それ本当にゴルフか?」 「ちなみにこの作品を描いた作者は本当にヌンチャクやトンファークラブを作って自分でプレイしてました」 おーい。お前ら、今、室町時代って知ってっか? その時代にはゴルフなんてないんだぞ。何よりマニアックな会話するな。 ちなみに犬夜叉は設定が五百年前とありましたので問題なしです。 しばし桃姫と猿のじゃれあいを眺めるおじいさんと犬の後ろでは、おばあさんがいつも通り、何やら分厚い絵巻を眺めておりましたとさ。 「続編での次男坊の変わり様がユニーク」 それ言っちゃあお終いだ。 これで普段のメンバーは全員揃ったわけですが、物語ではあと一つ、お供してくれる存在が居るわけでして、はてさてどうするのでしょう。 「ま、難しくないわね」 「だな。もうあの人しかいないだろう」 「あたしも、苗字に鶴の名が入っているあの人だと思います」 「それも鶴の恰好をして現れると思われる」 「しかも、『人を見かけで判断しては駄目よ。体は鶴でも心はキジさ』とかお決まりのセリフを声高らかに宣誓しそうですね」 などと一行は談笑しながら予想しておりますが、そんな読者にも解りきってしまうようなベッタベタ展開を本当にここの作者がすると思っているのでしょうか。 という訳で。 「あら? みなさんお揃いでどうしたんですか?」 「って、き、喜緑さん!? 何で!?」 おじいさんの驚嘆の声に、突然、一行の前に降り立ったのは背中に大きな翼を広げた喜緑江美里でございます。 つか、翼以外は普段の格好なんですね。 北高の制服も、軽くウェーブのかかった髪型も。その髪を止めている留め金も。 「うふふふ。そうですか? 私は神出鬼没で長門さんでさえ恐れるTFEIでございますよ」 いったい誰に説明しているのでしょう。 なぜなら、SOS団一行、もとい桃姫一行は茫然自失と立ち尽くしております。 「どうされました皆さん? さ、鬼ヶ島へと向かいましょう。あ、きび団子を頂かなくても私はご一緒させていただきますのでお構いなく」 満面の笑顔で促す喜緑さんによく似たキジに一行は茫然としたままですが、なぜ喜緑さんによく似ていたのかと言いますとそれは後の展開で。 「このまま南西の方角へ航路を取ると、十五分後に到着する」 「長門さん、この時代の時間単位は刻かもしれませんよ。四半刻と言えばいいのかしら」 船の船頭に肩を並べて立っているおばあさんの淡々とした報告に、キジさんは淑女的な笑みを浮かべてツッコミを入れておりました。 二次創作で見られるほど、二人の仲は悪くないようです。というか面倒なんでその辺りの人間(?)関係は省かせていただきます。 ところで、ふと思ったのですが長門風おばあさんと喜緑さん風キジがいましたら、いったい鬼は何グロスくらいいないと太刀打ちできないでしょうか?という思考がよぎりませんか? 「そりゃそうだよな。せっかく犬と猿さんが武器を持ってきてくれても無理に必要なさそうだ」 「あたしは助かりますぅ。だって戦いなんて野蛮な真似できませんし」 「僕も同じですね。さすがにこんな大きい刀はそうそう振り回せません」 一応、あなた方は鬼退治に行くつもりだったと思っていたのですが? 「あん? 目的は違うんじゃなかったか? まあ、どっちにしろ、俺は戦う必要がないはずだ。いくらなんでもそこまで原作を覆さないだろ?」 いやまあそれはそうですが……では、犬と猿さんは? というか、お二方は何のために鬼ヶ島へ向かっているのかをご存知で? 「ええ。聞いてますよ。涼……ではありませんでした、桃姫さんの目的は鬼と遊ぶことだとか」 「あたしは鬼さんたちとお茶を飲んで楽しい会話ができればいいかなぁ?」 まったく緊張感のない一行でございます。 ちなみに桃姫はおじいさんと犬と猿さんの前に腕を組んで悠然と佇み、勝気な笑顔でおばあさんとキジさんの方へと視線を向けていたりします。 表情と佇む姿だけは今から戦いに挑む気満々に見えるわけですが、当然、目的はまったく違います。 そんな一行の目の前には少し霧ががった島が見えてまいりました。 「いよいよ。決戦の火ぶたが切って落とされるのね!」 それ遊びに行くのに出る言葉ではないですよ桃姫さん。 というナレーションのツッコミを無視して、 「さあ行くわよ、みんな!」 声を張り上げて桃姫は接岸と同時に上陸し、先導を買って出るのでありました。 もちろん、鬼側も桃姫一行の侵入には気が付いております。 「殿、如何なされます?」 忍者衣装を着た緑鬼Aが片膝ついて報告している前には、鬼の総大将がおりまして。 「もしかして、あれが悪名高い桃姫か? 近隣の村では知らぬ者がいないと言われる奇人変人ぶりで頭の中が常に春の花でいっぱいと言われている」 「左様で」 「そもそも奴は何の目的でこの鬼ヶ島へと来たのだ? 我々はあやつの住む村はおろか、その近隣の村でさえ手出ししたことはないぞ。というか、逆に我々はあやつの住む村も含めて、方々の村に生活援助さえしている。それに我々はあやつの母親のおかげで不穏分子の粛清も進められており、人数的にも周りの村と比べるならかなりの少数村であるにも関わらず破格の援助をしているはずなのだが」 「まったくもって分かりません。ただお言葉を返すようで申し訳ございませんが、そもそも桃姫の行動を読めという自体、不可能ではないかと」 「なるほど一理ある。とりあえず、泳がせておくことにしよう。何かあったら逐一、知らせるように」 「はっ」 言って、緑鬼Aは姿を消しました。 残されるのは鬼ヶ島一の高い場所にある城の天守閣から外の景色を眺める鬼の総大将のみ。 「厄介事はご免こうむりたいものだ」 くいっとメガネをかけ直して嘆息するのでありました。 「あれ~? おっかしいわね~鬼なんていないじゃない。ひょっとしてガセネタ?」 先頭を歩く桃姫は右手を翳し周囲を見回しながら呟いておりました。 「いいえ。ここには、まあたくさんとは言いませんがある程度の数の鬼はおいでますよ。もしかしたら今は食事中なのかもしれませんね」 キジが笑顔で返します。 「って、あれ? ちょっと待って。今の喜みど……じゃなくてキジさんの言い方だと、まるであんたはここのこと知っているみたいね」 桃姫がふと疑問を感じます。 「ええ、よく存じております」 というキジさんの柔らかな笑顔の答えを聞いて、 「じゃさ! 案内してよ。鬼の居るところにさ!」 桃姫は期待感が溢れ返っている満面の笑みでキジに詰め寄りました。 「分かりました」 朗らかな笑顔で答えて、キジが桃姫の前へと歩み出ます。 「では行きましょう」 今度はキジさんが案内役となって進むことになりました。 「なあ、こいず……犬よ。ひょっとして鬼の総大将って……」 「ええ、これはまずいことになりましたよ」 珍しく、おじいさんの方から犬に顔をよせてひそひそ問いかけております。それが嬉しいのかはさっぱり分かりませんが犬は、セリフの割には全然緊張感のないいつもの爽やかスマイルでやはり小声で返します。 「もし我々の想像通りの方でしたら、おそらく桃姫さんは遊ぶことをやめて本気で退治しかねません。なんたって別段、彼を、桃姫さんの立場から見れば、このお話ではのさばらせておく理由もありませんからね」 「まあな……確か、本来の桃太郎でも『鬼は退治される』わけだからな……」 「あのぉ~犬くん、キョ……おじいさん。どうして、鬼が退治されるといけないんですかぁ?」 猿さんが恐る恐る、しかしやっぱりおじいさんに顔をよせて小声で割ってきました。 「いやあの……顔が違いですよ朝ひ……猿さん、ま、まあ犬と比べるならむしろ、あなたの顔が近い方が俺としても嬉しいのですが……」 「あ……! ち、違うんです! あたし、そんなつもりじゃ……ただ、すずみ……じゃなくて、桃姫さんには聞こえない方がいいかな、と思っただけで……」 赤くなってもじもじと伏せ目になるお猿さん。いや、とっても可愛いです。 が、 「ここの鬼ヶ島の鬼は我々の村に多大な援助をしてくれている。その存在がなくなるのは痛手」 おばあさんのその一言は、一瞬にして、ちょっと離れているキジさんと桃姫以外の周りの空気を暗転させて、さらに時間ごと絶対零度にまで凍結させてしまったような錯覚すら与えるのでした。 「な、長門……?」 「何?」 おじいさんもおばあさんと言うことさえ忘れるくらいのどす黒いオーラがおばあさんから溢れ返っております。正直、怖いので、おじいさん、頑張って宥めてください。 「む、無茶言うな! これで俺にどうしろと!」 「いえ、ここで長門さんを鎮められるのはあなただけですし」 「キョ、キョンくん……ご、ごめんなさい! あたしの所為で……」 などと言いながらお猿さんも、犬と一緒になっておじいさんの背中を押して、無表情のまま絶対零度の瞳のおばあさんの前に突き出しております。 はっきり言って人身御苦労です。 という訳でおじいさんは諦めてお婆さんに言い訳を始めました。 「な、なあさっきのは別に悪気があってじゃなくてだな……というか変な下心が……無かったとは言わないけど、いや本当にお前が思っているほどのものはなくてだな……」 「で?」 うわ怖っ! あの、おばあさんがこれほどまでに率直な感情を表に出しますか!? 「わ、分った! 謝る! 今後一切、お前以外の女子をお前以上に近づけないし、近づけたときはお前をそれ以上に近づける!」 どうやらおじいさんはおばあさんのセリフが何を意味するのかが解っているようです。いきなりあたふたしながら両手をバタバタ振りつつもう謝り倒してますから。 ね、おばあさん、今回は許してあげたらどうですか? 「そう」 頷いて、おばあさんはおじいさんの腕に自分の腕をからませました。 「なら今回はここまで接近することになる。いい――わね?」 「はい。もちろんデス!」 なんとも珍しいおばあさんの脅迫語尾におじいさんは即答で頷き、二人は桃姫の後を追うことにしたようです。 「あ、あの~~~犬くん、いいんですか?」 「いいんじゃないですか? このお話では桃姫さんに閉鎖空間を生み出す能力はないようですし、というか、その力はおばあさんが持っているようなので、僕としては仲間がどこにいるか分からない以上、おばあさんが平穏無事でいられるならそれに越したことないです」 「でも、それだと桃姫さんが……」 「心配いらないでしょう。なぜなら桃姫さんは今回おじいさんとおばあさんの間に生まれた子供という設定ですし、いつもと同じ態度を見せているということはもう割り切っていると推測できますよ」 「そうですね。あれ? ということはあたしの観測対象は今はおばあさんってこと?」 「それは禁則事項でないかと」 ぶっ! 犬がそれを言いますか? それも笑顔で人差し指を唇につけてウインクって。まるでどこぞの謎のプリーストのようですよ? 「誰のことです?」 「あ、えっと……た、たぶん、これは深く追求しない方がいいと思います!」 慌てふためくお猿さんは犬の手をとって四人の後を追うのでした。 「あらあら、やっぱりこうなんですか? 会長」 「き、喜緑くん……! どうして君がここに……!」 にこにこ笑顔のキジの前で、メガネをかけ直した鬼の総大将は顔色を失くしてしどろもどろするしかできませんでした。 なぜかって? それはですね。 この総大将は、メガネを外すと性格が変わるからです。 普段は生真面目で威厳ある総大将をやっておりますが、ひとたび、メガネを外せば単なる不良と化し、己が欲望に忠実に行動する鬼畜生そのものという存在になるのです。 そのストッパーがキジだったわけですが、残念なことについ先日、キジに浮気現場を目撃されまして、それでキジは鬼の大将を討つ腹を決めたのでした。 まあ、一回だけでやめときゃよかったのに、緑鬼忍者の報告を聞いたあと、側室の部屋で正妻以外の女と絡んでいれば、そりゃどんな目に合うかは火を見るより明らかな訳でして。 「ねえキョン」 「何だ?」 桃姫が不敵な笑顔を浮かべておじいさんに声をかけました。つか、その嬉々とした殺意の瞳は怖いです。 「あたしさ、やっぱ鬼は退治するべきだと思うのよ。じゃないと、いつ村が襲われるか分かったものじゃないし。つまりこれはアクティブセーフティー。正当防衛よね」 と言っても、別に桃姫の殺気は別段、おばあさんと腕を組んでいるおじいさんに向けられているものではありません。これは犬が言った通りで桃姫ももう既に割り切っているのです。でなければ十七年も一緒に居るわけがありませんからね。 「いや過剰防衛だと思うぞ。お前も知っていると思うが、俺たちの住む村はこの鬼の総大将のおかげで随分助かっているんだぜ」 「ふっ! 何言ってるのかしら? そうやって甘いところを見せておいて後から寝首をかくってタイプよ! こいつは!」 それはあんまりな決め付けかと思うのですが、一度、これと決めた桃姫が、その思考を覆すことはないのです。 つまり―― 「犬くん! キジさん! お猿ちゃん! 敵の大将を地獄の豪火で焼いてあげなさぁぁぁい!」 軍配を振りかざし、桃姫は満面の笑顔でそう指揮するのでありました。 つられてキジはニコニコ笑顔のまま、飛びかかり、 「すみません。他の鬼たちはキジさんとおばあさんを恐れてここに助けに来れないそうです。ですからお許しください」 犬は苦笑を浮かべて刃を抜いて、 「ふ、ふぇ!? えっと……えっと……!」 猿はお手製ゴルフクラブで、ボールを打ち続けるのでした。しかし目を瞑って打っているというのにどういう訳か全部、鬼の大将に当たります。はっきり言ってガチャプレイに翻弄されているようなものです。 「やっぱりこうなるのか……」 「ユニーク」 その後ろでは、おじいさんが嘆息を吐き、おばあさんはおじいさんに腕をからめたまま、目の前の出来事もどこ吹く風で分厚い絵巻を眺めているのでした。 めでたしめでたし……か? 「いや、お前ら傍観するくらいなら助けろ!」 鬼の大将の叫びにおばあさんは一言。 「喜緑江美里とはココ○チカレー一年分にて交渉成立している」 「なぁっ!?」 鬼の叫びなどどこ吹く風、それを聞いたおじいさんは、 「そうか、なら今から食いにいくか?」 「いく」 あっさりと二人は決めてしまいました。 「んじゃハルヒー、俺ら先行ってるから適当なとこで帰ってこいよー」 「もう! いいとこなんだから見ていきなさいよね! まあいいわ、気が済んだら帰るから!」 こうしておじいさんとおばあさんはカレーを食べに行きましたとさ。 めでたしめでた…… 「めでたくないだろっ! なんでジジイとババアがカレー屋に行くエンディングなんだよ!」 鬼の大将に正論を吐かれちゃいましたので、お願いします。 「そうですね、ここはこれが正しいオチではないかと」 そう言うキジのまあ素晴らしい笑顔を見て鬼の大将が震え上がりました。 「ギャアアアアアアアアーーーッ! たすけてえみりさまーーーーっ!」 この後、鬼の大将はどうなったのでしょうか。 それは誰にも分かりません。知らぬが仏、ってことで、深く追求しない方が身のためなのではないかと。 桃から生まれた――(完)
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飲食中に生まれた言葉 and or 27イェーガー ノーハンドイェーガー ブルガリ一気 ラーメン10杯はいける 俺は口から入れるしか無いからね
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autolink FT/S09-104 カード名:ハッピーが生まれた日 カテゴリ:クライマックス 色:赤 トリガー:2 【永】あなたのキャラすべてに、ソウルを+2。 ルーシィ「なんだろ、この絵」 レアリティ:TD illust.-
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魔神が生まれた日 ID 8hO3e7Pv 「ぬおおおおおおおおおおおおお!!」 どうも脱衣拳です。 バトルロワイアルという現実に巻き込まれてからすでに2時間以上が経過、 東京タワーを適度に満喫した後、品川方面に向かってブラブラとビル街を歩いていた僕が最初に出会った参加者は ピーター・ホーにクリソツのイケメンでした。 「HENSHIN」 僕の姿を見ると、ピーター・ホーにクリソツのイケメンは (Ψ)こんなマスクの白い仮面ライダーに変身していきなり銃撃してきました。 僕は「ぬおおおおおおおおおおおおお!!」と悲鳴を上げて飛び退きました。 このライダーはどう見てもマーダーです。本当にありがとうございました。 「うぉっ!危なっ!」 「You just take it easy.」 ピーター・ホー似のイケメンこと上級オルフェノクの一人、レオが変身した仮面ライダーサイガの射撃から逃げつつ 脱衣拳はディエンドライバーを天に掲げ引き金を引く。 「変身!」 《KAMEN RIDE DIEND》 光とともに、脱衣拳はシアンの戦士、仮面ライダーディエンドへと変身した。 「Hah!Are you the same KAMEN RIDER as me?」 「こうなったらテメェなんざ怖かねぇ!逆に使役してやんよ!」 脱衣ディエンドは意気軒昂とサイガに向き直り、反撃すべくカードホルダーを漁る。 しかし…… 「他のカメンライドカードが無い……だと……」 ディエンド最大の特徴はカメンライドのカードを使って他のライダーを呼び出し、使役できること。 だがホルダーの中にはディエンドのアタックライドカードしか入っていなかった。 「ならばディエンドブラストで!」 脱衣拳はアタックライドブラストのカードをセットしてサイガに発砲する。 だがそれより早く、サイガは腰の飛行ユニットで空に飛び上がっていた。 「クソッ!流石に俄かライダーが本職を相手にするのは辛いぜ!」 追尾弾を連射する脱衣ィエンド。しかし空中での機動性に優れたサイガは空を飛び回りつつ銃撃を相殺していく。 「こりゃいかん、一旦インビジブル使って撤退して……」 カードホルダーに手を入れた一瞬の間に、急接近したサイガは脱衣ィエンドの体を掴むと、空高く飛び上がった。 「ぬぐああああああああああああああ!!これは効く!」 「Resistance is futile.」 ガラス張りのビルに体を押し付けられたまま、一気に天空まで引きずり上げられた脱衣ィエンド。 頑丈なスーツ越しにも、すでに相当なダメージを受けている。 「ぬわー!離せコノヤロー!」 「OK」 「ってここで離しちゃらめええええええええええええ!」 上空から投げ捨てられた脱衣ィエンドは、成す術無く落下し 路端に止めてあった無人のタクシーの上に激突した。 「グハッ!!!」 転がる脱衣ィエンドの変身が解除され、脱衣拳の姿に戻る。 すでに満身創痍の脱衣拳に、着陸したサイガは武器のトンファーを持って近づく。 「Let s put an end to this game.」 「ぐ……冗談じゃない……死んでたまるか……」 傷だらけの身体に鞭打ってよろよろと立ち上がる脱衣拳。 (だがどうすればいい? もうディエンドに変身することもできない。ならば俺は……) 脱衣拳の前に立ったサイガがトンファーを振り上げる。 「Game set!」 その極限の状況が、脱衣拳の内なる力を目覚めさせた。 「!?」 仮面ライダーサイガの装着者、レオには何が起こったのか分からなかった。 変身が解けてもう動くことすらままならない傷を負っていた目の前の男が 仮面ライダーに変身している自分の繰り出したトンファーの一撃を紙一重の差で避けたのだ。 その後も何発も繰り出されるトンファーを、傷だらけの男はまるで風にそよぐ葦のように軽やかに避けていく。 「Why!?」 「激流に身を任せ同化する……」 混乱するサイガに向かって、脱衣拳はその手を怪しく動かす。そして…… 「南斗脱衣拳奥義!」 「!!!!」 ジョインジョインダツィデデデデザタイムオブレトビューションバトーワンデッサイダデステニーダツイッ ペシペシダツイッペシペシハァーンダツイッハァーンテンショーヒャクレダツイッカクゴォダツイッダツイッダツイッフゥハァダツイッ ゲキリュウニゲキリュウニミヲマカセドウカダツイッカクゴーハァーテンショウヒャクダツイケンダツイッハアアアアキィーンナントウジョウダツイケンK.O. イフクハヌギステルモノ バトートゥーデッサイダデステニー セッカッコーハアアアアキィーン テーレッテーナントウジョーダツイケンハァーン 次の瞬間、レオが纏っていた仮面ライダーサイガのスーツが跡形も無く消し飛んだ。 それどころかレオがライダースーツの下に着ていた服さえ消し飛んでいた。 「Naked……」 「せめて痛みを知らずに安らかに死ぬがよい」 脱衣拳がそう言うと、レオの身体は灰となってさらさらと崩れ去った。 「これが……俺の本当の力か……」 体中に傷を負いながら、それでも脱衣拳は自分の覚醒した力の喜びを噛みしめていた。 「ん?」 レオの遺灰の中に光るものを見つけ、脱衣拳はそれを取り上げる。 それは仮面ライダーサイガの姿が映ったライダーカードだった。 「これはカメンライドサイガのカード……そうか、俺がサイガを倒したからこのカードが……」 だがその直後、脱衣拳の体を異変が襲った。 「ぐッがァッ!!?」 脱衣拳の中で覚醒した脱衣の波動、それが暴走を始めたのだ。 「ぐッ……飲まれる……意識が……脱衣……波動…… やめ……うぐッ……うぐわああああああああああああああああああああ ああああ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!」 ☆ それからしばし後、少し離れた場所にて 「どうしよう……これから……」 人に見つからないよう物陰を歩きながら、岩崎みなみは溜息を吐いた。 姿の見えない殺人者から逃げてここまで来た。 その途中でも人の争う音や悲鳴が聞こえ、彼女は誰にも見つからないよう必死で逃げ続けてきた。 だが、これから一体どうすればいいのだろう。 「ゆたか……何してるかな……」 そう呟いた途端彼女は慄然とする。今まで自分のことで頭が一杯だったが、ひょっとしたらここに ゆたかや、自分の知っている者たちもいるのではないか? 爆発で死んだ男、そして道端で死んでいた男の死体が脳裏にフラッシュバックした。 「さ、探さなきゃ……もしいるのなら……」 その時、彼女の背後に人の気配がした。 「!?」 みなみは歩みを止めて慌てて振り返る。 だがそこには誰もいなかった。 「気のせい……」 安心して前を向くみなみ。 その眼前に、いつの間にか男が立っていた。 「!!」 驚きのあまり悲鳴すら出ない。 みなみはその場から逃げようとするが、体が動かない。 その男は明らかに普通ではなかった。体中が傷だらけで着ている白い胴着は血に塗れているし 片手には奇妙な形の銃らしきもの、もう一方の手には一枚のカードを持っている。 だが男の中で最も異様なのは、紅色に光る眼だった。 「あ……あ……」 絶句するみなみに、その男は一言だけ告げた。 「我は脱衣を極めし者なり」 男が銃とカードをその場に落とし、両手を上げる。そして――― 「南斗脱衣拳!!」 衝撃が彼女の身体の回りを走りぬけた。 次の瞬間、 彼女の服が 上着も 下着も スカートも ブラジャーも パンツも ニーソックスも 首輪と靴とデイバックを除く彼女が身に纏っていたものの全てが、塵となって跡形も無く消し飛んだ。 「―――――――ッ!!!」 みなみは声にならない悲鳴を上げて、胸と股間を手で隠す。 だが彼女の服を消し去った男は、それ以上みなみを構うことなく その場から何処かへと走り去っていった。 男の姿が消えてからも、みなみはその場にしゃがみ込んで震え続けていた。 みなみは知る由も無かった。脱衣の波動に飲まれたその男が マーダーでも変態でもなく、女であろうと男であろうと 間合いに入ったもの全ての服を脱がせる魔神へと変貌を遂げていたことを。 【港区 白金高輪/1日目・午後】 【脱衣拳@パロロワ書き手】 [状態] 暴走中、脱衣の波動に目覚めた、魔神状態、ダメージ(中) [装備] 血塗れの胴着 [道具] 基本支給品一式 [思考]基本:服を脱がす。 1:出会ったら男女関係なく服を脱がせる。 2:服を脱がせたら後はどうでもいい。 ※2時間仮面ライダーディエンドに変身不可。 【岩崎みなみ@らき☆すた】 [状態] 全裸、恐怖、混乱 [装備] なし [道具] 支給品一式、首輪探知機@パロロワオリジナル、ランダム支給品(0~2) [思考・状況] 基本:死にたくない 1:恐怖のため思考停止中 ※参加者に自分の知り合いがいるかどうか知りません。 ※脱衣拳を危険人物と認識しました。 ※岩崎みなみの側にディエンドライバー@仮面ライダーディケイドとカメンライド・サイガ@仮面ライダーディケイドのカードが放置されています。 【レオ@仮面ライダー555 死亡】……遺体は灰となって消滅 支給品?紹介 カメンライド・サイガ@仮面ライダーディケイド 脱衣拳氏が仮面ライダーサイガを倒したことにより出現したライダーカード。 仮面ライダーサイガの力が封じられており、ディエンドライバーにセットすることで 仮面ライダーサイガを実体化させ、使役することができる。 041 アトミック・ガール(仮称)の恐怖 投下順に読む 043 百合展開?無い無い無い 041 アトミック・ガール(仮称)の恐怖 時系列順に読む 043 百合展開?無い無い無い 033 脱衣の波動を秘めし者 脱衣拳 065 そんな装備で大丈夫か? 031 捨てるカミあれば… 岩崎みなみ 057 押し寄せる災禍
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《壱》 「アンタは笑い方をどうにかすれば、靴磨きとして一流なんだけどね」 一人の赤毛の少女は、座り込む金髪の少年にそう言う。 少年は、金髪で釣り目で目立つ容姿をしていた。対する少女は、赤毛に美麗な容姿で目立つ容姿をしている。 1887年のロンドン、貧民街のある地域ホワイトチャペル。親に捨てられ、名前はない一人の少年と名前はない一人の少女はそこで生まれた。 イギリスは、他国に先駆けて産業革命を達成した。そして、産業革命により、科学と産業が飛躍的に発展した。 しかし、産業革命で、産業が発達したとは言え、労働者の子供では無い子供に雇い手がある訳が無い。靴磨きで生計を立てるしか、生きていけない状況。 この地区は、ホワイトチャペル(白い礼拝堂)という美しい響きを持つ名前とは、裏原にあらゆる貧困と悪徳と犯罪が蔓延るような所。 そして、巷ではアヘンや猟奇殺人、強盗などの危険ばかりで、また貧民が被害者になりやすく、生きていくのがやっとであった。 もし、病気にかかれば、そのまま苦しみ死ぬだけ。そんな、貧民街の人々の平均寿命はわずか16才ほどであったという。 「嬉しくはねぇな。そんな事で褒められても」 「褒めちゃいないし……って言うかアンタの癖を直して欲しいのよ」 ヒャハハ、と不気味な笑い方で少年は笑う。そのため、口癖のように少女は少年に言っている。 実は、その笑い方はスラムの顔見知りにでも気味悪がられており、評判に関しては良くは無かった。 そのせいか、客は気味悪がり、最近は客も少なくなっている。 今となっては、靴磨きではなく、スリや窃盗をしてその金で、食料を買いあさっている。 「ってか、アンタさ、夢とか無いわけ?」 「言ったところで何になるんだ? 叶うわけじゃねぇんだろ」 貧民が、資本家になれることはまず無い。労働者になっても低賃金で信じられない過酷な労働条件のもとで働かされる。 女性は売春婦になる者が多く、酒に溺れ、荒んだ生活を毎日繰り返していた。 少年は、夢などを持ったことは無いと言うと嘘になる。 過酷な条件下でも、人間は希望や夢を持とうとする。それが、人間の大罪の一つである強欲だ。 「アタシは、この世界を変えてみたいんだ。こんなの平等じゃないよ」 その時のロンドンの人々に良心など微塵もなかった。少なくとも、両親にある人間と彼らは出会わなかった。 そんな理不尽で人道極まりない状況を少女は熱く語りだす。 少年は、聞く耳を持たずにただ座り込んでいる。どこかで、貨幣が落ちていないかと、地面に目を配りながらも。 聞いても、語っても別に何も変わらない。ならば、時間を無駄にしないほうがいい。 《弐》 その日は嫌な予感がした。 冷たい雨が降りしきり、少年はずぶ濡れとなってしまった。 少女も共に近くにいたが、ずぶ濡れとなっていた。 駅のホームで雨を凌ぐことが得策なのだが、生憎、少年がいる場所から駅までは遠い。 それが、嫌な予感の原因では無かったことは言うまでも無い。 グサッ と言う音がした。肉に何かが刺さるような、痛々しい音が。 少年は、少女の姿を目視する。 刺された。 目の前で、少女が刺された。 ナイフで刺された。 刺された。 刺された。 遅れてヒステリックな声が聞こえる。 それは少女を刺した犯人の声。 刺した犯人──それは一人の中年の娼婦。 正確に言えば、娼婦ではないかもしれない。 中年の女性は少年の存在に気づくと、足早に去っていく。 少年は追いかけようとした。 しかし、少年は少女を見捨てることは出来なかった。 「おい、死ぬんじゃねぇぞ!! 俺はお前しかいねぇんだ!!」 彼はただ助けたかった。 まだ、大切なものを失ったことは無かったから。 少年は、死に対して異常な恐怖を感じていたから。 彼は、少女のことが好きだったから。 必死に傷口を押さえた。 血を止めるため。 効果が無いと知っていても。 無駄だと知っていても。 助からないと知っていても。 彼は、少女の傷口を両手で抑えた。 彼の服は血で染まる。 少年の両手は血で染まる。 少年の涙には、付着した血が混じる。 「ねぇ……世界って……変われるのかな……?」 「馬鹿!! テメェが変えるんじゃねぇのかよ!? 目ぇ覚ませ!!」 それから、少女に反応は無かった。 しかし、少年は何度も叫び続けた。 雨はそんな彼に降りしきる。 だが、少女が目を覚ますことは無かった。 死んだ。 刺されて死んだ。 いや、殺された。 守れなかった。 死んだ。 刺されて殺された。 守れなかった。 守れなかった。 その日から少年は屍のように座っているだけだった。 自らを死に追いやりたいかのように。 何も口にせず、仕事もしない。 同じところに毎日座り、屍のように空を見ているだけだ。 人に声をかけられても、ただ黙っている。 いくら、やせ細っても、何も食べなかった。 いくら、声をかけられても返事はしなかった。 《参》 それから、数ヵ月後のこと。 少年は、女性を尾行しながらも、暗い路地に入っていた。 やせ細り、目つきは悪くなり、髪の毛からは銀色の毛が生えだしている。 阿片や麻薬に手を出し、四人の娼婦を殺害した少年には、かつての面影は無い。 今の彼を突き動かすものは、ただ一つの復讐。 女性は物音に気づき、ようやく少年のほうへと顔を向けた。 女性も、異常さと少年の殺気に気が付くことは容易だった。 「テメェを殺しに来たぜェ……アイツの復讐だ……」 「あぁ…ああああああああ……嫌あああああああああ!!!!!」 女性は覚えている。一人の少女にした、酷い仕打ちの事を。 しかし、少年は許すことが出来なかった。 まだ、当初は躊躇う気持ちがあったのだが、最早、四人殺した以上は包丁を構える。 怯む女性の喉笛を瞬く間に切り開き、致死量の血液が噴出す。 女性は悲鳴を挙げることも無く、切り開かれた首から滝のように血を流し、倒れる。 少年は、その時ただ絶望していた。 絶望しながらも死体を切り刻む少年の目には、涙が浮かんでいた。 その少年は、救えるはずだった少女を救えなかった自分に絶望している。 その少年は、血の海でもがく女性を見下している自分に、絶望している。 その少年は、少女を殺した女性に復讐してしまった自分に絶望している。 ただ、その少年は、その女性の死体を衝動的に食している自分を誇りと思っている。 喉を切り裂いて、腹を切り開き、残った部位を食い尽くす。異常な犯行だ。 その行動には、理由は無い。ただ、彼は復讐と憎しみで狂っていた。 少年がこの後どうなったか? 正体は誰なのか? と言うことは、また別の話。
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魔人 が 生まれた 日(前編) ◆ew5bR2RQj. 「貴様だけは、貴様だけは絶対に許さん。人間の心を弄ぶ、貴様だけは! この軽子坂高校2年E組の狭間偉出夫が、魔"人"皇として裁いてやる!!」 白の制服に身を包んだ少年が宣言する。 かつて少年は異能の力を掌握し、自らを蔑んだ者達を混沌の渦中に叩き込んだ。 最終的に元の世界に戻れたものの、犠牲者の数は決して少なくない。 ある者は悪魔に喰われ、ある者は悪魔に取り憑かれた。 しかもそれは”この”少年が連れて来られた世界の話だ。 蒼嶋駿朔が連れて来られた世界では、蒼島以外の人間は全員魔界に取り残されている。 自らを魔”神”皇と称するその少年は、確実に悪と呼べる存在だった。 「貴方がそっちに回るなんて予想外だわ」 金の鎧に身を包みながら、鷹野三四は言った。 V.V.曰く、このバトルロワイアルの参加者にはある程度の役割が振られている。 主催への反逆を目標とする対主催と、優勝するため他の参加者を殺し回るマーダー。 もう少し細かく分類することもできるが、多くの参加者がこのどちらかに属する。 例えば、何よりも人命を尊重する警察官・杉下右京。 例えば、自らの快楽のために他人を殺す連続殺人鬼・浅倉威。 前者は対主催として、後者はマーダーとしての活躍が期待されていた。 ならば、狭間偉出夫はどちらに属すると期待されていただろうか。 当然、マーダーとしての活躍だ。 それもシャドームーンや後藤のような強力なマーダーとしてだ。 対主催になる可能性も考えられていたが、彼に他者と友好関係を築く力はない。 事実、水銀燈に枢木スザクの二人とはすぐ仲違いしている。 さらに蒼嶋駿朔と和解することは有り得ないため、対主催に火種を撒く以上の役目はないと考えられていた。 それがどうだ。 今の狭間偉出夫は、対主催に力を貸している。 竜宮レナのL5を治療し、彼女を殺そうとする鷹野と対峙している。 「黙れ、貴様の物差しで人を測るな」 「随分な言い草だけれど、貴方は元の世界で何をしてきたか忘れたのかしら?」 「忘れるわけがない。軽子坂高校の者達を魔界に引きずり込み、結果多くの者が死んだ」 「覚えてるじゃない。なら正義漢気取るのはやめなさい、所詮は同じ穴の狢よ」 「そうだ、これは私の罪だ、一切の言い訳はしない」 「なら――――」 「だが、私の罪と貴様は何の関係もない」 鷹野が二の句を継ごうとするが、狭間がそれを許さないと言うように言葉を叩き付けてくる。 「私の罪と、貴様が竜宮達の心を弄んだのは何の関係もない これ以上のやり取りは無意味だ、私が貴様を許すことは絶対にない!」 屹然とした態度に、思わず慄いてしまう鷹野。 この様子では、どんな説得も無意味だろう。 戦うために錫杖型の召喚機を出現させ、そしてふと気付いた。 何故自分は、彼を説得しようとしたのか。 (……恐れている?) 狭間偉出夫の力は、シャドームーンや後藤といった者達にも匹敵する程。 こうして対峙しているだけでも、凍り付くようなプレッシャーがひしひしと伝わってくる。 出来ることならば、戦うのは避けたい相手だ。 (恐れる必要なんてない) 凍り付いた思考を解すように、ニ、三度首を振る。 確かに狭間は強力だが、今の鷹野は仮面ライダーオーディンに変身している。 北欧の最高神の名を冠するそれは、世紀王にも匹敵しうる力があった。 他にもいくつかの道具は用意してあるし、万が一のための切り札も用意してある。 負けるはずなど、ない。 「マハジオンガ!」 狭間が呪文を唱えると同時に、彼の右手から幾条もの電撃の鞭が放射される。 夜闇を切り裂きながら電撃は走り抜け、意思を持つかのように鷹野の陣地を侵略していく。 瞬く間に四方八方を電撃に塞がれ、鷹野は逃げ道を奪われた。 「無駄よ」 一斉に迫ってきた電撃を、姿を消して回避する鷹野。 そこには金色の羽だけが残り、行き場を失った電撃は霧散してしまった。 これこそがオーディンが所持する最強の能力――――瞬間移動。 ストレイト・クーガーや瀬田宗次郎の速さとはまるで別次元の移動法。 彼らの移動の軌跡は線だが、オーディンの瞬間移動は点。 彼らは四方八方を塞がれれば身動きが取れなくなるが、オーディンにそのような事態は無い。 姿を消した鷹野は狭間の背後へと降り立ち、ゴルトバイザーを振り上げる。 ニメートルを越える長さを誇る錫杖は、立派な打撃武器に成り得た。 「狭間さん!」 レナが叫ぶ。 狭間の背後に居たため、鷹野の行動が全て見えていたのだ。 彼の頭部を砕かんと迫るゴルトバイザー。 だが、直前でピクリと停止する。 斬鉄剣を抜いた狭間が、ゴルトバイザーを受け止めていたのだ。 「不意を突いたつもりか? 貴様の瞬間移動は既に北岡達から聞いている」 余った左腕を鷹野へと向ける狭間。 間髪入れずに氷系魔法の一つである「ブフーラ」を唱えた。 「あらぁ、それはご苦労なことね」 だが、ブフーラが命中するよりも鷹野が消える方が早かった。 残された金色の羽が爆発し、ブフーラを相殺してしまう。 (そうだ、負けるわけがない!) 今のやり取りで確信する。 狭間偉出夫の力を持ってしても、オーディンには敵わない。 そもそも彼の能力には、大幅な制限が課せられているのだ。 今度は彼の左側に姿を現し、先程と同様にゴルトバイザーを振り上げる鷹野。 (え?) そして、見てしまった。 ありとあらゆる憤怒の篭った、狭間偉出夫の双眸を。 「ジオ!」 狭間の右手から一筋の電撃が放射される。 瞬間移動で回避を試みようとするが、既に電撃は鷹野の身体を貫いていた。 腹部に鋭い熱と痛みが篭り、鷹野はたたらを踏む。 事前に調べた通り、雷系最弱の魔法である「ジオ」は大した威力ではない。 しかし、瞬間移動を呆気無く破られたことは動揺に値した。 瞬間移動で狭間の攻撃範囲から後退し、体勢を整えるために一枚のカードをデッキから抜き取る。 ――――SWORD VENT―――― ゴルトフェニックスの翼を模した二対の剣・ゴルトセイバー。 それは基本武器としては破格の力を持ち、一本でも他のライダーのファイナルベントを破るほどだ。 両手にそれらを握り締めると、鷹野は瞬間移動して狭間へと肉薄する。 右側面を陣取り、水平に斬り込む鷹野。 しかしそれは狭間の肉体まで届かず、斬鉄剣に受け流されてしまう。 すぐにもう一方の剣を振り下ろすが、僅かな動きで簡単に躱されてしまった。 身体を反転させて鷹野と向き合った狭間が、肌白い左手を向けてくる。 即座に瞬時に瞬間移動して、狭間の背後へと移る。 攻撃と防御を同時に熟す理想的な動き。 そのまま両腕を交差させ、狭間の細身を挟み込むように斬撃を繰り出す。 だが、それも届かない。 身体を捻りながら斬鉄剣を振り抜いた狭間は、ゴルトセイバーの交差する箇所に斬撃を叩き付けたのだ。 回転による遠心力を利用した一撃の威力は凄まじく、数秒の拮抗の末に鷹野の剣を弾く。 勢い余った鷹野は体勢を崩し、その隙に狭間の剣閃が走った。 「うっ……」 くぐもった悲鳴が漏らす鷹野。 オーディンのスーツで威力を削いでいたにも関わらず、腹部の痛みは確かな存在感を放っている。 「貴様、剣を扱ったことがないだろう?」 月光を斬鉄剣に反射させながら、狭間は鋭い視線を突き付けてくる。 「私も他人に師事できるほど剣に精通している訳ではない、だが貴様の技量はあまりにもお粗末過ぎる 太刀筋は滅茶苦茶、踏み込みは出鱈目、これでは素人同然だ しかもその素人が二刀流だと? 随分と笑わせてくれる」 狭間の指摘を受け、鷹野は顔を歪める。 銃火器の扱いは多少の経験があるが、刀剣類に関しては全くない。 北岡やジェレミアの時は辛うじて対応できていたが、狭間との戦闘でボロが出てしまったのだ。 (待て、どうしてボロが出た……?) 剣の技量を語るのならば、間違いなくジェレミアの方が上だ。 それにあの時は北岡も居たため、状況的には確実に不利だったはずである。 「どうして見抜かれたという様子だな、特別に教えてやろう」 図星を突かれ、鷹野は思わず目を見張ってしまう。 「先の戦いで貴様がジェレミア達に勝てたのは、その瞬間移動があったからだ 貴様の持つ強さなど、デッキが与える仮初の物に過ぎない」 またしても図星だった。 オーディンのデッキは最強ではあるが、それでも変身者による技量差が生じる。 鷹野には戦闘経験自体が少なく、はっきり言ってしまえばデッキに使われている状態だった。 「だが、それはこの私には通じない 何故なら、私は既にその貴様の動きを把握しているからだ」 尊大な物言いでとんでもない事を宣う狭間。 「出任せは止しなさい」 「出任せかどうか、試してみるか?」 口端を釣り上げて挑発する狭間。 瞬間移動を披露したのはたったの数回しかないのだ。 いくら狭間が天才でも、それだけであの動きを把握できるわけがない。 (出任せに決まってる!) 仮面の下から狭間を睨み付け、同時に瞬間移動を行う。 出現地点は狭間の正面から十メートル前方。 だが、すぐに別の場所へと移動する。 今度は左斜め前から五メートル前だが、すぐにまた別の場所へと移動。 次々に瞬間移動を行い、相手を撹乱する作戦。 「さぁ、どこから来るか分かるかしらぁ?」 嘲笑いながら、狭間の四方八方を次々に移動する鷹野。 彼は一歩も動くことができず、レナを背後に従えたまま沈黙していた。 「貴様の瞬間移動は、それほど遠くに行くことはできない」 不意に口を開く狭間。 怪訝に思う鷹野を尻目に、彼は言葉を紡いでいく。 「空中に移動することができないため、頭上を取ることができない」 「瞬間移動は自動ではない、故に貴様の意思が介在する」 「移動してから次の行動に移るまで、一秒程度の時間を要する」 「つまり攻撃に移るまで、僅かなタイムラグが生じるということだ」 分かり切ったように解説する狭間の姿は、かつて祖父の研究を踏み躙った政府の高官達を連想させる。 悍ましいほどの不快感と怒りが鷹野を支配していた。 もう、十分に撹乱しただろう。 最後に狭間の目前にまで肉薄すると、そのまま対極の位置である背後に移動。 前方を見ると、狭間の姿は前を向いたまま。 やはり、動きを把握したなど出任せだったのだ。 隙だらけの脳天を真っ二つに割ろうと、鷹野は月の昇る夜空へと剣を掲げる。 「そして――――」 気付いてしまった。 「貴様は無作為に動いていたつもりだが、行動にパターンが出来ていた いくら撹乱を狙っても、これでは無意味だ」 前を向いているにも関わらず、いつ現れるか分からなかったにも関わらず。 狭間の左手は、背後にいる鷹野に向けられている。 前を見据えたまま、背後にいる彼女を正確に捉えている。 「ザンダイン」 特大の衝撃波を撃ち込まれ、盛大に地面を転げる鷹野。 今までの攻撃と違い、ザンダインは衝撃系の中でも上級魔法に値する。 その威力は、今までの比ではなかった。 腹部を斬られたことで内蔵が傷つき、仮面の下で吐血する。 味わったことのない痛みに身体が警鐘を鳴らすが、それでも立ち上がらないわけには行かなかった。 ここで沈んでいては、すぐにまた追撃が―――― 「それに、貴様からは嫌というほど感じる DARK系の悪魔どもが放つような、ドス黒い殺気をな」 額に、手が翳される。 「ブフダイン」 狭間の左手に冷気が収集されていく。 高速で形を為していくそれは、瞬く間に鷹野の全身を覆い尽くす程の大きさを形成した。 その様相を喩えるなら、さながら巨大な氷の結晶。 「キャアアアアァァァァッ!!」 ブフダインが直撃し、宙へと投げ飛ばされる鷹野。 身体を凍り付かせながら、遊園地の地面を何度も跳ね跳ぶ。 その度に全身を強く打ち付け、やがてメリーゴーランドの残骸に墜落した。 「がっ……あっ……」 オーディンの鎧に守られているにも関わらず、打ち付けた衝撃は肺にまで到達した。 満足に酸素を吸い込むことができず、鷹野の口からは嗚咽が漏れる。 打ち付けた衝撃で凍結が砕けたのは不幸中の幸いだっただろう。 しかし、全身が凍り付くような寒さは残っている。 手はがくがくと震え、まともに力を入れることさえできない。 ゴルトセイバーは今の衝撃で取り零し、瓦礫の山の中に滑り込んで行ってしまった。 「ディア」 先程とは一転し、何処か優しげな声で魔法を唱える狭間。 手を向けられていたのは、背後にいるレナだ。 「痛いのが……治ってく?」 「それで少しはマシになっただろう」 「ありがとうございます」 「ッ……き、気にするな、このくらいどうということはない」 レナの身体が暖かな光に包まれ、喉と頬に刻まれた傷が治癒されていく。 その光景を見て、鷹野の怒りはさらに激しさを増した。 今の一瞬で追撃することも可能だったのに、あえてレナの治療を優先したのだ。 鷹野は非常に優秀な人間であり、それに見合う分の誇りを抱いている。 父の研究を知らしめるという使命感もあり、プライドの高さも常人を遥かに上回っていた。 その彼女が自身を歯牙にも掛けられていないと知れば、激昂するのも当然だろう。 しかし全身が冷え切っているせいか、頭の方は冷静さを保っている 認めるのは癪だが、狭間がオーディンの動きを読んでいるのは事実だ。 これではいくら撹乱したところで意味は無い。 今までのような、デッキの力に頼った戦い方は通用しないのだ。 (使うしか無いわね、切り札を……) 万が一の事態に備え、用意しておいた切り札。 こんなに早く切る羽目になるのは思わなかったが、狭間はそれを使うに相応しい相手だろう。 ――――ADVENT―――― 震える手でゴルトバイザーの蓋を開け、バックルから一枚のカードを抜き、窪みへ装填。 閃光が闇を切り裂き、夜空に太陽が昇る。 そう錯覚させる程に煌々とした輝きを纏う鳳凰・ゴルトフェニックスが、鷹野の召喚によって光来した。 「一人では勝てぬと知って増援を呼んだか、懸命な判断だな」 「フフ……この子を……呼んだのは……戦うためだけじゃ……無いわよッ!」 ゴルトフェニックスは宙を旋回すると鷹野の傍に降り立つ。 それを確認すると、鷹野は燃え盛るその翼に自らの手を突き入れた。 「あんなところに手を入れたら燃えちゃう!」 鷹野の奇行を目撃し、驚きの声を上げるレナ。 「それが目的だろう、ああすることで奴は体温を取り戻したのだ」 対する狭間は、何処までも冷静にその行動を分析していた。 「ええ、とっても熱いわ……でも平気よ……この程度今までに何度も体験してるもの!」 脳裏に蘇っているのは、これまでの人生でも一二を争うほど辛い記憶。 施設から脱走を試みて失敗した時の記憶。 糞便の溜まる便所へと落とされ、舌で掃除をしろと命令された。 悪臭で嘔吐を繰り返し、いくら払っても糞便が肌に纏わりつく。 舌で汚物を舐め取り、その不快感にまた嘔吐する。 それでも必死に舐め取るが、目の前の糞便は少ししか減っていない。 不快感と屈辱に塗れた地獄だった。 二十年近くが経過してもこの記憶は彼女の心に巣食い、毎日風呂で肌が擦り切れるほど身体を磨かせている。 「行きなさい!」 自らを鼓舞するように高らかと命令を下す。 呼応するようにゴルトフェニックスも雄叫びを上げ、黄金の翼を広げながら進撃を開始した。 同時に鷹野も一枚のカードを発動。 鳳凰の背と尾を模した巨大な盾・ゴルトシールドを装備する。 「来るぞ、私の後ろから離れるな!」 「はい!」 ゴルトフェニックスの突進を見据えながら狭間が叫ぶ。 レナが後退できないのは、オーディンの瞬間移動が理由である。 いくら狭間と言えども、遠く離れた場所にいる人間を守って戦うのは不可能だ。 瞬間移動は見破られているが、決して無意味になどなっていない。 「マハブフーラ!」 鷹野が正面に移動した瞬間、狭間の左腕から氷の弾丸が連射される。 しかし、ゴルトシールドがそれを阻む。 ゴルトセイバーを最強の矛とするなら、ゴルトシールドは最強の盾。 他のライダーのファイナルベントすら受け止める強度を誇る。 ゴルトフェニックスも身に纏う炎で氷を焼き尽くしため、マハブフーラは足止め程度にしか作用しなかった。 顔を歪める狭間に向けて、巨大な盾を突き出す。 防具であるため大した威力にはないが、そもそもの目的は別にある。 巨大な盾で視界を奪い、切り札の発動を悟られないため。 仮面の下で酷薄な笑みを作り、鷹野は指を鳴らす。 これが、切り札を発動する合図だ。 「狭間さん、上!」 上空を指差しながら声を荒げるレナ。 その指の先にあるのは、放物線を描きながら落下してくる球体。 「……手榴弾だと? どうやって投げ込んだ……ッ!」 落下してくる手榴弾を見て、狭間は疑問符を浮かべている。 それもそうだろう。 彼は鷹野の動きを注視していたが、彼女は一度も物を投げる素振りを見せていないのだ。 納得の行かないまま、迎撃のためにブフを唱える狭間。 発射された手榴弾は空中で命中し、信管ごと手榴弾を凍らせてしまう。 こうなってしまえばこの手榴弾が爆発することはない。 ――――しかし、これすらも囮であった。 夜闇に紛れるよう、小さな足音が侵攻を開始する。 蛇のように地を這いながら、一つの影が戦場へと往く。 上空に視線が向いていた彼らがその存在に気付いたのは、影が刀を抜いた瞬間。 鈍い輝きを放つ太刀が月光を返し、狭間へと振り下ろされた。 「ぐあぁっ……!」 気付いたのが遅かったため、狭間は迎撃の魔法を唱えることは出来なかった。 咄嗟に斬鉄剣を構え、迫り来る斬撃を受け止める。 だが、影の方が何枚も上手。 下から突き上げるような二撃目で斬鉄剣は弾かれ、返す刀で繰り出された三撃目が彼の白い制服を切り裂いた。 「狭間さん!」 「竜宮……伏せろ!」 警告と同時にレナを押し倒す狭間。 刹那の差で、彼らの頭上を大量の鉛玉が通過する。 やがてそれが終わると、上空にいたゴルトフェニックスが炎の竜巻を彼らへと飛ばした。 「アギラジャ!」 アギラジャは術者に火炎属性への耐性を持たせる魔法。 赤い光を纏った狭間は、迫り来る紅蓮色の竜巻に背を向けながらレナを抱き締める。 竜巻は狭間に衝突すると、霧散するように消えて行った。 「アハハ、良かったじゃない女の子を抱き締められて、もう二度と味わえないかもしれないんだからしっかり覚えておきなさい」 片膝を突きながら、背を向け続ける狭間 事前に調べておいたため、愛する女性に拒絶され続けた彼の過去を鷹野は知っている。 それを嘲り笑う彼女の背後に、二体の影が舞い降りた。 「そんな……なんで……」 鷹野の背後を見て驚愕するレナ。 そこに居たのは、絶対に居るはずのない人間達。 「詩ぃちゃんと……五ェ門さんが……」 友を思うが故に狂ってしまった友人と、彼女を守りながら散って行った侍。 先程攻撃を仕掛けてきたのは、死亡したはずの二人だった。 「なんで死んじゃった人がって顔してるわね、いいわ、特別に教えて――――」 「さざなみの笛」 鷹野の言葉を遮るように、狭間がぽつりと呟く。 「死人を魂のない人形にし、ゾンビのように操ることのできる道具」 レナから手を離した狭間は、背を向けたままゆっくりと立ち上がる。 「なぁ、楽しかったか?」 言葉を紡ぎながら、狭間はくるりと身体を反転させる。 「今までずっと嬲られてきた相手にようやく掠り傷一つ負わせたのは、そんなに楽しかったか?」 そうして対面した狭間の顔は。 施設にいた大人達よりも、祖父を馬鹿にした政府の高官達よりも、今まで見てきたどの顔よりも。 ――――怖かった。 「い、行きなさい! あなた達!」 背後に控えていた五ェ門と詩音に命令を下す。 狭間の言う通り、彼らを操っているのはさざなみの笛の力だ。 この道具は死者を復活させてしまうが故、支給品としては配布されなかった一品。 しかしオーディンのデッキ等に比べて希少性が薄いため、鷹野の権限でも持ち出すことができた。 事前に教会へと赴いていた彼女は、これを使用して二人を操り人形にしていたのだ。 この状態になった者には一切の攻撃が効かず、最強の兵士として操ることができる。 戦闘を有利に運ぶために用意した最後の切り札。 彼らが負けることなど、決して有り得ない。 「メディア」 溜息を吐きながら、狭間は魔法を唱える。 すると迫っていた二人の身体が光に包まれ、糸が切れたように崩れ落ちた。 「な、なんで……!?」 「さざなみの笛で蘇った者達は回復魔法を使うことで死者へと戻る、知らなかったのか?」 さざなみの笛は封印された支給品であったため、簡単な説明文しか記載されていなかった。 故に鷹野は知ることができなかったのだ。 「でも、また復活させれば……!」 「メギド」 鷹野がデイパックから笛を取り出すよりも早く、狭間の左手から一メートル程の大きさの火球が二発発射される。 それらが二人の遺体に触れると、あっという間に燃やし尽くしてしまった。 「答えろ」 「あ……あぁ……」 「貴様は何処まで人間という存在を貶めれば気が済むというのだ」 「……い、いや……こないで……」 「なぁ、答えてみろ」 「あ、あ、あ、あああああああああああああああああああああああああああッ!!!!」 革靴を音を響かせながら、一歩ずつ近づいてくる狭間。 最後の切り札をちり紙のように引き裂かれ、恐怖心から大声を上げる。 思考はオーバーヒート直前の機械のように熱くなり、まるで冷静な判断を下すことはできない。 直ぐ様最後の手段を思い付いた彼女は、それを実行に移すため姿を消した。 「竜宮、前へ進め」 消える直前、こんな声が聞こえた気がした。 「アッハハハハハハハハハハハハハッ!」 瞬間移動した鷹野は、前方に向けて手を伸ばす。 彼女が移動したのはレナの背後。 彼女を捕まえて、再び人質にするためだ。 「ハハハハ……は?」 伸ばした手が空を切る。 前を見ると、レナの姿は手よりも数歩分先――――狭間のすぐ傍にあった。 「貴様のような下衆の考えることなどお見通しだ」 鷹野の腹部に、狭間の手が添えられる。 「マハブフダイン」 凍り付くような冷たい声に乗って、氷結系最強の魔法が唱えられた。 ☆ ☆ ☆ その一撃は猛吹雪と呼んでも過言ではなかった。 咄嗟にゴルトシールドを構えなければ、今の一撃で凍死していただろう。 自然災害そのものである。 ゴルトシールドは凍結して砕け散り、鷹野もその余波を受けていた。 炎の化身たるゴルトフェニックスの翼さえ凍り付かせる吹雪。 すぐ元通りになったものの、相当の体力を消耗させられたようだ。 強い、強すぎる。 強力な相手であることは覚悟していたが、まるで歯が立たない。 回復道具は用意してあるが、それを使ったところで狭間を倒すことはできない。 そしてオーディンの変身が解除されれば、その時点で詰みである。 身を芯から凍らせる寒さと恐怖に煽られ、がちがちと歯を鳴らす鷹野。 「さぁ、喋ってもらうぞ」 かつ、かつ、と音を立てながら、悠然とした態度で狭間は歩を進める。 もはや、打つ手はない。 でも、諦められない。 二つの思いが頭を交錯し、ぐるぐると渦を巻き始める。 その時だった。 「イデオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!」 建物の影から、一人の復讐鬼が姿を現した。 「がっ……その声……枢木!?」 「殺してやる! 殺してやる! 殺してやる!」 仮面ライダーに変身しているが、聞こえる声は間違いなく枢木スザクのものだ。 「は、離せ!」 「よくも水銀燈を殺したな! お前も同じ目に合わせてやる!」 狭間の首根っこを掴みながら、呪詛の言葉を述べ始めるスザク。 その様子を見た鷹野は、スザクと狭間の間にあった出来事を思い出していた。 「ほう……あれがあいつの復讐相手カ」 スザクに遅れて、建物の影からもう一つの影が姿を現す。 サングラスに白髪、間違いなく雪代縁だ。 鷹野がアジトを離れて以降、彼らは同盟を結んでいたのである。 (ツイてる……運命は私に向いてきている) 施設から脱走した際、公衆電話のお釣りの中に取り残されていた十円玉。 あれが無ければ、祖父に助けを求めることはできなかった。 あそこまで走って足掻いたからこそ、幸せを掴み取ることができたのだ。 今の状況はそれと同じ。 ここまで粘ったからこそ、彼らがこの場に到着することができたのだ。 急いでデイパックの口を開け、中身を見ないまま感触だけで中身を取り出す。 そうして出てきたのは知恵の香。 傷を完全回復し、さらに知恵を上昇させることのできる道具。 一つで出来ることが多すぎるため、さざなみの笛と同様に封印されていたのである。 凍える手でガラス瓶の蓋を開け、中に封入された香の匂いを嗅ぐ。 不思議な匂いが鼻孔を擽り、身体をな心地いい感覚に包み込む。 身体に刻まれた傷や寒さは瞬く間に回復し、頭が冴えていく感覚を鷹野は得ていた。 「雪代縁ね」 狭間とスザクの争いを傍目に捉えながら、鷹野は縁の傍へと瞬間移動する。 「……貴様いつの間に。いや、そもそも何故俺の名前を知っている」 「話は後よ、私に協力しなさい」 「何?」 「私は主催側の人間よ、これだけ言えば貴方なら分かるでしょう?」 鷹野がそう告げると、怪訝な目をしていた縁の目の色が変わる。 釣れている証拠だ。 縁が逡巡している間に、背負っていたデイパックから香を一つ取り出す。 そして残ったデイパックを強引に押し付けた。 「これを渡しておくわ、その代わりあの男を倒すのに協力しなさい この瓶の蓋を開けて匂いを嗅げば、あっという間に傷は回復するわ」 別途に取り出した瓶を手渡し、縁の前から姿を消す鷹野。 そのまま瞬間移動をして、再び戦場へと舞い戻った。 ☆ ☆ ☆ 「あっ……ぐっ……」 スザクに首を締められ、狭間の顔が青く染まっていく。 元々の超人的な握力に加え、ベルデの力と狭間に対する燃え盛るような復讐心。 これらが相乗効果を生み出し、スザクは普段の何倍もの力を発揮している。 「……ッ、ジオ!」 だが、狭間も負けていない。 圧迫されていく喉から声を絞り出し、左手から発射した電撃をスザクへと叩き付ける。 十分に魔力を込められなかったため、大した威力にはならない。 しかし雷系魔法の持つ固有効果で、スザクを一時的なショック状態に陥らせることには成功した。 「ゲホッ、ゲホッ……」 何度も咳き込みながら、狭間は酸素を取り込む。 その間に、スザクはショック状態から立ち直っていた。 「イデオオオォォォッ!」 爪が食い込むほどに強く握り拳を作りながら殴り掛かるスザク。 それに対し狭間は、僅かに身体を逸らすことで回避。 拳は空中を掠り、スザクの身体は前のめりに倒れそうになる。 否、違った。 本来なら倒れているところを右脚で強引に踏み止まり、それを軸足に裏拳を繰り出した。 超人的な身体能力を持つからこそ出来る芸当。 「貴様はまだあの人形に操られていることに気付かないのか!?」 振るわれる豪腕を屈んで回避する狭間。 「うるさい! 水銀燈が僕を操ってるわけがない!」 屈んでいる狭間を頭蓋を見据えながら、渾身のローキックをお見舞いするスザク。 「あの人形は貴様の思うような存在ではない!」 「黙れ! お前は死んだ彼女の魂すらも汚す気か!」 「貴様は……貴様は!」 「殺してやる! 絶対にお前を殺してやる!」 「この分からず屋め!」 狭間の白い手が、仮面越しにスザクの額に翳される。 「あの時は不憫に思って放っておいたがもう我慢ならん、貴様に掛けられた呪いを解いてやる」 「何を――――」 「カルムディ!」 カルムディは魅了状態を解除する魔法。 狭間が呪文を唱えると、スザクの動きが機械のように停止する。 「あ……あぁ……」 声が漏れた。 激しい頭痛に襲われているのか、両腕で頭を押さえ始めるスザク。 「あ……ああああ……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……」 それでも収まらなかったのか、漏れる声はだんだんと大きくなっていく。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!」 やがてそれは獣の慟哭へと変わった。 「どうなっているというのだ……!?」 過去に幾度もカルムディを使ったことはあるが、このような反応を見せる者はいなかった。 想定外の事態に、狭間も思考を追い付かせることができない。 ――――確かに彼が推察した通り、スザクは魅了状態にあった。 だが彼の陥っている状態は、悪魔達の魔法による一時的なものとは違う。 彼が呑まされた惚れ薬は、水の精霊の一部を用いて作られた禁断の秘薬。 解除するには同等の力を持つ秘薬が必要であり、原産国であるトリステインでは違法とされていた。 全知全能の力を得た狭間でも、制限された力ではこの領域に足を踏み入れることができなかったのである。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!! 死んでしまえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛えッ!!!!」 しかし、全く効果を及ぼさなかったわけではない。 確かにカルムディは発動し、スザクはその効力を受けている。 魔法の効果で強制的に精神を戻そうとしたところで、より強い惚れ薬が頭を埋め尽くす。 力と力が脳内で奔流し合い、恐慌状態に陥ってしまったのだ。 「くっ……ブフーラ!」 拳を突き出しながら突進してくるスザク。 横に飛んで躱そうとしたが、背後には今にも泣き出しそうなレナがいた。 仕方なく迎撃の魔法を唱えて彼を迎え撃つ。 一直線に突っ込んできていた彼はこれを避けれず、身体を凍らせながら後方に吹き飛ばされていった。 「ッ!?」 背後に気配を感じ、瞳孔を見開きながら振り返る狭間。 そこに居たのは傷一つないオーディン――――鷹野三四の姿。 同時に空で待機していたゴルトフェニックスが、その大翼を広げながら滑空を始める。 「マハジオンガ!」 何条もの電撃が鞭のように放射され、宙にいるゴルトフェニックスと鷹野に襲い掛かる。 だが、鷹野はすぐに瞬間移動することで回避。 ゴルトフェニックスも電撃の隙間を縫うように飛び、難なく凌いでしまった。 そして―――― 「あんたに私怨は無いが――――」 あらゆる負の感情を煮詰めたような殺気が、狭間の背後に降り立つ。 「俺の目的のためだ、ここで犠牲になってもらう」 香の効能で傷を完全に回復した雪代縁だった。 「 掌 破 刀 勢 !」 掌から押し出された豪刀が、狭間の頭上へと振り下ろされる。 斬鉄剣で受け止めるがすぐに均衡は崩れた。 先ほど回復した際、彼が使ったのは力の香。 更に彼はデイパックの中から、本来の得物である倭刀を持ち出していた。 倭刀術と名を冠するだけあり、彼の剣術は倭刀を使うことで初めて完成する。 つまり、今の彼は自分の力を余すことなく発揮しているのだ。 「がああっ!」 斬鉄剣は彼の手から零れ落ち、さらに倭刀が右腕を切り裂く。 血飛沫が宙を舞い、狭間の制服を汚した。 「縁! イデオは僕が殺すと言ったはずだ」 「その割には苦戦していたようだが」 「うるさい! これは僕がやらなくちゃ――――」 「あの女は主催側の人間ダ、ここで協力しておけば後々有利になる なに、トドメはちゃんと譲ってやるから安心しろ、これを使って傷を癒やせ」 早口で捲し立てるスザクを制止し、瓶を投げ渡す縁。 スザクは暫くの間彼を睨んでいたが、やがて瓶の蓋を開け始めた。 枢木スザク――――仮面ライダーベルデに変身し、自身も超人的な身体能力を持つ。 雪代縁――――本来の得物を手に入れ、自身の力を完全に取り戻した。 鷹野三四――――あらゆるライダーを凌駕する仮面ライダーオーディンに変身する。 そして、彼女に付き従う最強のミラーモンスター・ゴルトフェニックス。 いくら狭間と言えども、レナを守りながら彼ら全員を同時に相手するのは困難どころの話ではない。 状況が一転して圧倒的不利になったことで、狭間は臍を噛む。 「形勢逆転ね、安心なさい すぐにレナちゃんも同じ所に送ってあげるから!」 鷹野の言葉で、三人が同時に狭間へ迫る。 痛む身体に鞭打ちながら、狭間が魔法を唱えようとした――――その時だった。 「がっ!?」 背後から銃撃音が轟き、大量のエネルギー弾が彼の頭上を通過する。 呻き声を上げながら、数歩ずつ後退していくスザク。 思わず目を見張るが、それだけでは終わらない。 「とおおおぉぉぉぉっ!」 狭間と彼らを分断ように戦場へと乱入する大きな影。 両手に持つ日本刀を交差させ、縁が振り下ろした刀を受け止めて弾き返した。 狭間が呆然とする中、くるりと身体を翻す影。 白い外套が風ではためき、月光によって橙色の仮面が曝される。 「スマン、遅くなった」 大きな影――――ジェレミア・ゴットバルトが狭間に顔を向けた。 「悪いな」 続いて、狭間の背後からゾルダに変身した北岡が歩いてくる。 前方にジェレミア、後方に北岡。 鷹野達から狭間を守るように、二人の戦士が肩を並べた。 「ふん、随分と遅かったじゃないか」 斬鉄剣を拾い上げながら、遅れてきた二人の文句を垂れる狭間。 だが、その顔はどうしようもないほど緩んでいる。 「悪い悪い、これでも飛ばしてきたのよ?」 ずっと遊園地の外周を探索していた北岡達だったが、夜空を照らすゴルトフェニックスを見て引き返してきたのだ。 「柊はどうした?」 「危ないから隠れてもらってるよ、流石のオーディンでもこの暗がりじゃ見つけられないだろうしね」 「竜宮は……どうやら元に戻ったようだな」 「さっきはごめんなさい! なんか私とても怖くなっちゃって……ホントにホントにごめんなさい!」 「私達は気にしてなどいない。それに……あの女が語ったのも全て事実だ 隠すべきではなかった、後でゆっくりと話をしよう」 「そうだな、俺も色々と言わなきゃいけないことがあるし。でも今は先にやることがあるだろ?」 「ああ」 言葉を切ると、北岡とジェレミアは目前に立ちはだかる三人に武器を突き付けた。 「鷹野だっけ? さっきは随分と甚振ってくれたじゃない それにそこのライダー、五ェ門の時に散々邪魔してくれちゃってさ、百倍にして返してやるよ」 「貴様と会うのはこれで二度目だな、今度こそ叩き切ってくれる」 ベルデに変身するスザクを見据えながら口火を切る北岡。 立ち尽くす縁に贄殿遮那を向けるジェレミア。 そして立ち淀む鷹野に向けて、狭間の眼光が突き刺さる。 「北岡、ジェレミア、そいつらの相手は任せたぞ その代わり、鷹野とあの鳥の相手はこの私がさせてもらう」 「……大丈夫なのか? 彼奴らの力は並大抵のものではないぞ」 ジェレミアが言葉を投げると、狭間はフッと笑う。 「私を誰だと思っている? 悪魔達の巣食う塔を昇り詰め、全知全能の力を得た魔人皇だぞ? 貴様らこそ、そんな傷だらけで大丈夫なのか?」 「この程度の傷など大したことはない、それに……私も相当腹が立っているのでな、ここで退く気は毛頭ない!」 「俺もだよ。ここまでムカついてるのは浅倉以来だ」 二人の言葉を聞く度に、狭間は自身が言いようのない高揚感に包まれていくことに気付いた。 今までの人生で一度も感じたことのない気持ち。 身体の芯が温かくなって、奥底から力の湧いてくる。 「そうか……ならば私に協力しろ この程度の危機、まとめて切り抜けさせてやる!」 大きく息を吸い込み、高らかに宣言した。 ☆ ☆ ☆ 「チィッ……邪魔をするナ!」 「貴様こそとっとと退け!」 刀と刀がぶつかり合い、金属音が周辺一帯に響き渡る。 ジェレミアは贄殿遮那と無限刃を巧みに振るい、縁は倭刀を自由自在に使い熟す。 互いに一流の剣の腕を持つ彼らの戦いは、他者の介入する余地など皆無。 さらに一度手合わせをして相手の動きを知っているため、戦いはより高度な読み合いへと発展していた。 「退け! 僕は狭間を殺さなきゃいけないんだ!」 「お断りだな。それにお前が邪魔しなかったら五ェ門は生きてたかもしれない、分かるか?」 対するスザクと北岡の戦いは、互いに飛び道具を撃ち合う遠距離戦。 スザクはヨーヨー型の武器・バイオワインダーを振るい、北岡はギガアーマーで攻撃を弾きながらマグナバイザーを撃つ。 怒涛の猛攻を仕掛けるスザクだが、今の北岡には通じない マグナギガがジェノサイダーを吸収したことで、ゾルダのスペックは大幅に向上しているのだ。 「くっ……なんで、どうして!?」 鷹野とゴルトフェニックスは連携して攻め込むが、狭間の巧みな体捌きの前には及ばない。 レナを――――足手まといを連れているはずなのに、一向に差が埋まらない。 ゴルトフェニックスが滑空を始めると同時に、背後に瞬間移動してゴルトバイザーを振るう。 だが、そこに下から突き上げるような斬撃が加えられた。 手から離れ、勢いよく宙を舞うゴルトバイザー。 そこにゴルトフェニックスが突っ込み、連携攻撃は失敗に終わる。 ぎりぎりと歯軋りを続ける鷹野。 既に息は上がり、呼吸は荒れ切っている。 オーディンのデッキが常にサバイブの恩恵を受けているためだ。 サバイブはライダーの能力を著しく上昇させる反面、変身者の体力を大きく削る。 鷹野の体力は特別優れているわけでもなく、ここに来て限界が訪れたのだ。 「この! この!」 変身してから既に八分が経過しているため、もうすぐ生身の身体に戻ってしまう。 再び不利な状況に立たされ、鷹野は冷静さを失っていた。 彼女は非常に優秀な人間だが、使命に固執するあまり撤退するということを知らない。 終末作戦の際、次々と山狗部隊が敗北したにも関わらず小此木の進言を無視して軍を送り続けたのが証拠だ。 「無様だな」 狭間の繰り出す斬撃に一瞬反応が遅れる。 咄嗟に瞬間移動するが、剣先は彼女の腹部を切り裂いていた。 (ハァ……ハァ……まずい……ッ!) 他のカードは残っているが、時間の方は残っていない。 小細工を弄するよりは、最強の切り札に賭けた方が懸命である。 掠れてくる視界で狭間の動きに気を配り、何とかファイナルベントを発動する隙を伺う。 そうして防戦に徹することで、ふとある事実に気付いた。 北岡達と合流してからの狭間は、斬鉄剣を振るうばかりで一度も魔法を使用していない。 怪訝な事実に首を傾げるが、やがてある結論に辿り着いた。 もしかしたら狭間の魔力は既に枯渇しているのではないか。 いくら魔法が優れていても、魔力が無ければ扱うことはできない。 むしろ優れているからこそ、大幅に魔力を消耗するのだ。 それに狭間の魔法には大きな制限が設けられているため、普段よりも魔力の消耗は早いはずである。 魔法が使えないのなら、いくらでも対策手段はあるのではないか。 ――――いや、そんなことは有り得ない。 この考えは、あまりにも自分本位で都合の良い考えだ。 いくら制限を設けられていても、この程度で狭間の魔力が尽きるはずがない。 なら、何故狭間は魔法を使用しないのだろう。 思考を展開し始めるが、突如響いた大きな悲鳴がそれを中断させた。 「ぐあああぁぁぁぁッ!!」 目にも留まらぬ速さで刀が振り抜かれ、鮮血が夜空を赤く染める。 悲鳴の聞こえた方向を見ると、ジェレミアが縁を圧倒している場面だった。 「がああああぁぁッ!」 北岡が肩に装着したギガキャノンを発射し、砲丸投げのように宙へ放り出されるスザク。 そのまま地面に激突し、地面へと沈む。 目を疑うが、倒れた彼らが立ち上がる様子はない。 増援に駆け付けた彼らは、こうして呆気無く敗北してしまった。 (おかしい! こんなに早く彼らが敗れるなんて……) スザクと縁の二人は、参加者の中でも上位に君臨する実力者のはずだ。 北岡やジェレミアも実力者ではあるが、今までの戦闘の負傷や疲労は残っている。 一方で二人は傷を回復した上、普段の全力以上を発揮する装備を使っていた。 これだけの好条件が揃っていて、敗北することなど有り得ない。 目の前の矛盾に頭を抱えるが、目前の敵はその答えを出す時間を与えてくれない。 首元を狙うように突き出される斬鉄剣。 瞬間移動して回避を試みる鷹野だが、不意に身体を異様なほどの気怠さが襲う。 まるで数日間徹夜を続けているような気怠さ。 両手足に力は入らず、意識すらも朦朧とし始める。 瞬間移動が間に合わず、辛うじて首を逸らすことで突きを躱す。 しかし刃が喉を掠り、スーツの内側に赤い線が刻まれた。 「ゼェ……ゼェ……」 いくらサバイブが使用者の体力を奪うと言っても、ここまで酷いものなのだろうか。 強烈な違和感が鷹野の脳裏を過る。 異様なほどの身体能力の低下、スザクや縁の不自然な敗北、魔法を使わない狭間。 「……まさか!?」 「どうやら、気付いたようだな」 そう言う狭間の声色は、やっと気付いたのかと言外に見下したものだ。 「私が魔法を使わなかったのではない、貴様が魔法を使われていることに気付かなかったのだ」 左手を掲げる狭間。 「ランダマイザ、これだけ言えば分かるはずだ」 狭間の口から飛び出た単語を聞き、鷹野は戦慄した。 ランダマイザ――――彼の世界では狭間以外に習得した者のいない魔法。 敵全体の攻撃力・防御力・命中率を一度に下げることができる。 一度でも脅威になる魔法だが、最大の脅威は重ねがけを行えるところだ。 「言っただろう? この程度の危機まとめて切り抜けさせてやると」 ランダマイザを使用していたなら全ての違和感に説明がつく。 この異様な疲労感も、スザクと縁の敗北も、ランダマイザによる能力低下が原因だったのだ。 「そろそろ貴様の化けの皮も剥がれるようだな」 指先を見ると、そこから粒子が上がっている。 もうすぐ変身が解除される兆候だ。 「うわあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」 殺される。 変身が解除されたら、確実に殺される。 目の前にいる悪魔は、何としてでも殺さなければならない。 バックルから一枚のカードを取り出し、ゴルトバイザーを出現させる。 狭間が妨害の魔法を唱えるが、もはやそれすらも見えていなかった。 「キイイイイィィィィィィイッ!!」 ゴルトフェニックスが嘶く。 両翼から炎を纏った真空の刃が放たれ、狭間の発動した魔法と相殺された。 主人の危機を感じ、独断で発動したのだろう。 カードはバイザーに装填され、機械音が発動を宣言する。 ――――FINAL VENT―――― 黄金の炎を身に纏いながら、鷹野の背後へと飛行するゴルトフェニックス。 鷹野の身体が重力に逆らいながら、真上へと上昇し始める。 そうして両者の身体が合わさった時。 鳳凰が両翼を広げ、閃光が周囲一体を埋め尽くした。 「これで……終わりよ!」 地面に立つ狭間を見下ろしながら鷹野は叫ぶ。 鳳凰と一体化したその姿は、人間という枠組みを超越したかの如く神々しい。 オーディンのファイナルベント――――エターナルカオス。 永遠の混沌へと相手を導くその技は、他のライダー達のものとは文字通り桁が違う。 地上にいる狭間と、上空にいる鷹野。 その立ち位置の違いは、そのまま位の差だ。 地上を支配する皇も、天空に君臨する神には敵わない。 「死になさい!」 神に歯向かった反逆者を裁くため、鳳凰が下降を開始する。 その様子は太陽の落下。 圧倒的な光と熱量を持ったそれが、地上へと降り注ぐ。 「マハラギダイン!」 それに対抗するため、狭間も魔法を詠唱した。 そうして呼び出されたのは、地上を埋め尽くす程の炎の奔流。 マハブフダインとは対を為す火炎系最強の魔法。 太陽の落下を食い止めるため、うねりを上げながら大量の炎が空へと昇っていく。 「なんという熱さだ……」 「ああ、こっちまで熱くなってくる」 目を細めながら空中を見上げるジェレミアと北岡。 太陽と炎は空中でぶつかり合い、その圧倒的な熱量を周辺へと撒き散らした。 三人の額に玉のような汗が浮かび、遊具の残骸やコンクリートの地面に炎が走る。 酸素は燃やし尽くされ、息苦しさすら感じるほどだ。 このまま拮抗を続ければ、周囲への被害は甚大なものになるだろう。 「ッ……!?」 空が動く。 少しずつ、少しずつ、一歩ずつ踏み出すように太陽が炎を呑み込んでいく。 ランダマイザで能力が減少していても、エターナルカオスの威力が圧倒的であることに変わりはない。 鷹野の執念が、最後の最後で狭間に勝ったのだ。 (勝った!) 勝利を確信する鷹野。 そんな彼女の視界に、小さな異物が映り込む。 目を凝らすと、異物の正体が氷の塊であることに気付いた。 否、違う。 その氷の中には、黒い球状の物体がある。 異物の正体は、氷の塊ではなく黒い球状の物体を凍らせた物だった。 「あ」 その物体に、鷹野は見覚えがあった。 元の世界でも何度か目にし、彼の部下である山狗部隊が多用していた道具。 この場所においても二度使用されている 一度目は夜神月が使用し、展望台を崩壊に追い込んだ。 二度目は鷹野自身が持ち出し、操り人形と化した園崎詩音に投げさせた。 そして本来の役目を果たすことなく、狭間のブフによって凍り付いた。 「忘れ物だ、受け取れ」 投げ付けられた道具の名前。 それは――――手榴弾。 時系列順で読む Back 太陽と月 Next 魔人 が 生まれた 日(後編) 投下順で読む Back 太陽と月 Next 魔人 が 生まれた 日(後編) 155 Switch(Choice[Player]){...} 北岡秀一 159 魔人 が 生まれた 日(後編) 柊つかさ ジェレミア・ゴットバルト 竜宮レナ 狭間偉出雄 鷹野三四 152 SAMURAI X 枢木スザク 雪代縁
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【検索用 うまれたきみとほくのゆめ 登録タグ VOCALOID hajime う ささささ 三重の人 乙P 初音ミク 山下慎一狼 曲 曲あ 横矢重治】 + 目次 目次 曲紹介 歌詞 コメント 作詞:山下慎一狼 作曲:乙P 編曲:乙P イラスト:ささささ(Twitter) 動画:三重の人 エンジニアリング:横矢重治 ギター:hajime(Twitter) 唄:初音ミク 曲紹介 愛しい人がいなくなってしまっても悔いが残りませんように 常日頃から自分の気持ちは愛しい人に伝えておくべきでしょう。 共に祝えるべきはずだった者へ捧ぐ歌。 曲名:『生まれたキミと、ボクの夢』(うまれたキミと、ボクのゆめ) コンピCD『Birthday Songs For 初音ミク』収録曲。 歌詞 (動画より書き写し) 夜明けの地平に 太陽が昇る 季節を巡って キミの朝が来る 数える歳月 この日この時に 産声を上げた キミにおめでとう 想い出のアルバムに 描くふたりの未来 次のページをキミと めくるようにきっと キミが生まれたことは かけがえのない奇跡 キミが生まれた時に ボクの夢も生まれた 茜射す空に 見え隠れる星 キミの面影の 輝きをつなぐ 幾つの彼方で 巡り会えたこと ふたりでいた日々 キミにありがとう 想い出のアルバムは 過去から色褪せても キミと奏でた歌は 胸に凛と響く キミと出逢えたことは 大切な宝物 キミはもう居なくても 笑顔は心の中 キミが生まれたことは かけがえのない奇跡 キミが生まれた時に ボクの夢も生まれた キミと出逢えたことは 大切な宝物 キミはもう居なくても 笑顔は心の中 コメント うわぁああ…追加有難う! -- 名無しさん (2013-07-31 23 19 43) え、凄い良い歌(泣) -- 名無しさん (2014-04-27 09 53 10) これ聴いてると乙Pさんのこと見たいで…乙Pさん、どうか安らかに。 -- ミク廃 (2014-10-09 16 16 16) 泣ける -- 名無しさん (2014-10-09 20 04 34) 乙P -- VM (2022-12-05 20 54 59) これ聞いて毎日泣いてる -- 名無し (2022-12-10 19 05 11) 名前 コメント