約 194,488 件
https://w.atwiki.jp/jososs/pages/49.html
いもうとごっこ 「僕、妹が欲しい!」 僕の発言に、タカ兄ちゃんの顔から表情が抜けた。 茶色く染めたふわふわの癖っ毛に両耳で五つのピアス、高校生になってから遠くなった気がしてたけど、やっぱりタカ兄ちゃんは僕の兄ちゃんだ。だって、ビックリした時の顔が小さい頃から全然変わらない。 タカ兄ちゃんは高三、僕は中三。通う学校も兄ちゃんは県内有数の進学高で、僕は受験が楽だからと親に入れられた中高一緒の中学と違うんだけど、家が隣同士だから未だに僕の勉強を見てくれたり、一緒に遊んだりしてくれる。 今だって、ナントカ推薦で早々と進路が決まったからと、親が出張中の僕に「健太の面倒は俺が見てやるからな!」と言ってくれて、家庭教師をかって出てくれているのだ。推薦入試万々歳だよ。 おかげさまで兄ちゃんが見てくれる単語や計算テストは花丸もらえるし、大好きなタカ兄ちゃんといっぱい遊べるしで、兄ちゃん子な僕は親の出張が長引けば良いのにとすら思っている。 ただ唯一、なかなか覚えられない…というかわけ分からなさすぎて覚える気がなかった英語の完了形を、タカ兄ちゃんは「今度の小テストで満点だったら、何でも好きなもの買ってやる!」と豪語する事で僕に覚えさせようとしたのだ。 俄然やる気になった僕に驚きつつも「頑張れよ」って頭を撫でてくれたのも、満点の答案を持ち帰った僕に「約束だ。俺にできる金額内なら何でも言ってみろ!」と男らしく言ってくれたのも兄ちゃんだ。 だから僕はキッパリハッキリおねだりしたんだ。 「僕、妹が欲しい!」って。 §§§ 僕がそんなの欲しがるなんて思ってもみなかったのだろう。面食らいつつも真面目な顔で、しどもどとタカ兄ちゃんはうなずいた。 「そ…そうか。じゃあその、俺の方からご両親に伝えてみるけど…」 「そうじゃなくって、今欲しいの!」 「…てことはお前、もしかしてそーゆーゲームとかあぁああ可愛い健太が…俺の健太がオタクの道に……っ!」 よく分からない言葉を口走ってヨヨヨと泣き崩れてるが、誤魔化されるわけがない。 「何わけ分かんないこといってるのさ。兄ちゃん早く妹になってよ」 「はあ!?」 いよいよ兄ちゃんはわけが分からないといった顔をした。 隣に立つと、ほんのちょっぴり見上げる位置にいるタカ兄ちゃん。バスケ部に入ってからなのか、急に背が伸び出した僕に時々敵意を燃やしてるっけ。 「去年タカ兄ちゃん、高校の文化祭でメイドさんしてただろ?僕、その時からずっと兄ちゃんみたいな妹が欲しかったんだ」 「妹ぉ!?」 僕のお母さんが口を開けば「貴明くんはお利口さんね」と言う優秀なタカ兄ちゃんの頭でも、僕のお願いは理解してくれないようだ。 「お前ほんと、マジ冗談カンベンだから!しまいにゃ怒るぞ!」 「冗談なんかじゃない!僕は兄ちゃんに妹になって欲しいんだ!」 「じゃあなおさらだっ!俺は男だし、第一お前より年上だっての!」 埒が明かないので、僕は最終手段に出ることにした。 「…なんでも」 「う」 「なんでもしてくれるって言ったじゃないかあー!」 半泣きでわめき出す僕に、タカ兄ちゃんは激しくうろたえた。学校の友達が僕を見たらビックリするだろう。 身体は大きくなったけど、兄ちゃんに対してだけは僕はずっと「弟みたいな幼馴染み」のままだからだ。 「だ、だからそのそれはオモチャとかランドとかそういう意味で言ったんであって…第一お前そのケあるわけ!?」 「ひっぐ…何それ?僕がタカ兄ちゃん好きだと兄ちゃん嫌なの?僕のこと嫌いなの?」 「そそそそんなわけないだろ!お前が風邪ひいたクリスマス、『ガキとアタシとどっち取るの!?』って詰め寄られてノータイムで『弟!』つった俺だぞ!?お前が嫌いなわけないじゃないか!」 「…じゃあ、頑張った僕のお願い聞いてくれる?」 「うん、わかったよわかった!約束だもんな!」 言ってから「いや待てちょっと待て」と言いだすが、もう言質は取ったからこちらのもの。「ゲンチ」なんて言葉が出るなんて、これも兄ちゃんの教育の賜物だ。 「わぁい!やっぱりタカ兄ちゃんは僕の兄ちゃんだ!」 嬉しくなって飛びつくと、小さい頃と違って体格差がないのでタカ兄ちゃんがよろめく。 それでも弟分に甘えられて悪い気分じゃないらしい。 「うん…うん、そうだよな。犬に手を噛まれたって思えば、台本読むくらいどうってことないよな」 「何ぶつぶつ言ってるの?早くこれに着替えてよ」 「ぶふっ!?」 僕の部屋の隅に置いていた、クラスの背の高い女の子に借りた紙袋の中身を逆さにするとタカ兄ちゃんは盛大に噴いた。 「ちょ!おまっ…それはカナリ重症だ!」 「何言ってるの兄ちゃん、まさか『おにいたまだいちゅき』ってアニメキャラのセリフ言うので済ませる気だったの?」 それはこの二週間でアタマの大改造を行った僕に対して失礼ってもんだ。 「俺はリ○ちゃん、俺は○ェニーちゃん…」 なんか怪しい呪文を唱えてるけど、タカ兄ちゃんの身体は透けないし、目の前の服も僕の意識も消える気配はない。 むくれている僕に気付いたのか、タカ兄ちゃんはかなり迷いながらも床に落ちた服に、ついに手を伸ばした。 何てことない、黒タイツにブラウス、ピンクのチェックのミニスカート。 「どうしたの?早くしなよ」 「いやその…これはやり過ぎじゃないのかな?健太君」 「文化祭の時は、ストッキングにナントカベルト着けてたって、兄ちゃんのクラスの人から聞きました」 「誰だよそいつ絶対殺す!」 兄ちゃんを前科持ちにしないため、僕は貝になることにした。 僕が一向に「嘘だよ~ん☆」と言わないので、兄ちゃんは「ええい、どうにでもなっちまえ!」と言わんばかりにカーゴパンツとTシャツを脱ぎ捨てた。 カラフルなトランクス一枚の、引き締まった身体でポーズを決め、タカ兄ちゃんは言い放つ。 「どうだ、萎えただろっ!?」 「うん、これがあのメイドさんみたく可愛くなるんだと思うと、なんだかか僕、ドキドキしてきちゃった」 「………」 遠い目をするタカ兄ちゃんに、拾った衣服を渡すと、もうなんか機械的に着替え始めた。 兄ちゃんのクラスメイトも、この生着替えを見てたのかと思うとちょっと嫉妬しちゃうけど、あの人達だってピンクだの白だのの衣装を着てたんだから、まいっか。 私服の学校の僕とは違い制服だから慣れているのか躊躇なくブラウスに腕を通したけれど、両手をクロスさせるようにしてボタンを留めている。ああ、貸してくれた子が「アワセがナントカだから」って言ってたけど、そういうことか。 僕がじっと見ているせいか何度かボタンをかけ違えた挙句、どうにかタカ兄ちゃんはブラウスを着終えた。 白いレースやフリルで飾られたブラウスの襟には、ベルベットの黒リボンが付いているが、朝のお父さんのネクタイみたく解けたままでブラブラだ。 「結んだげるね」 「いや、自分ででき…っ」 「お兄ちゃんにまかせなさい!」 たいして背の変わらない僕に強く言われて、タカ兄ちゃんは黙り込んでしまう。甘えんぼな僕が兄ちゃんを手伝ってあげてるなんて、何かウキウキしちゃうな。 リボン結びにしてあげると、タカ兄ちゃんは「ちょっと後ろ見てろ」と言ってきた。 「なんで?兄ちゃんもしかして逃げる気?」 「このパンツをタイツに押し込むところを見てみろ。お前も俺も一生トラウマんなるぞ! てゆーかこれくらい許してくれないんなら俺は約束を破る!」 「ちぇー」 言われた通り後ろ…というか、部屋のドアの方を向いてあげる。その格好で二階の僕の部屋の窓から逃げるなら、大声でご近所さんを呼んでやる。 物騒な事を考えてたら、震える声が僕を呼んだ。 「…ほ……ほらよ…」 振り返ると、タカ兄ちゃんが変身していた。 黒タイツを穿いた足もスラッとした細身の身体に、ブラウスとチェックのスカート。気の強そうな目元が、そこらのグラビアアイドルなんか目じゃない感じ。 「兄ちゃん…じゃなくてタカちゃん、可愛い」 ツインテールのウィッグつけて、やけくそになって僕に「よう、おかえり!」と呼びかけてくれたタカ兄ちゃんの姿を僕は忘れない。視界の端になんか精神的ブラクラなメイドというよりは冥土な人も居たけど、兄ちゃんのキラキラで記憶にない。 男子校なのにクラスメイトからバレンタインチョコをもらって、「成人未満の野郎は健太以外死ねば良い!」と物騒な事を言っていたが、あれはきっと、文化祭のせいなんだと思う。 (僕の友達は三人までなら生きてて良いらしい) 「こ…これで満足か!?脱いでいいか!?」 「だぁーめ。仕上げがまだだよ」 「仕上げ?」 首をかしげるタカ兄ちゃん。ふわふわ茶髪がほっぺたや襟にかかっているのはいつものことなのに、首のリボンやフリフリとあいまってとっても可愛い。 「あのね、僕のこと『お兄ちゃん』て呼んで?」 「………っ!?」 可愛くおねだりしたのに、タカ兄ちゃんの顔は青くなる。いつもなら満面の笑顔で「おう!」って言ってくれるのに。 「僕、妹欲しいのになぁ……くすん」 「…ぉ……お兄ちゃん!お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん!これで満足か!?」 慌てて連呼するタカ兄ちゃんに飛びついて、僕はコクコクうなずいてみせた。 「うん!ありがとうタカに…タカちゃん!お兄ちゃん嬉しいっ!」 ぎゅーっと抱き付くとスカートを穿いたタカ兄ちゃんの足がふらつく。目の前に赤くなった耳があるので、ペロンとピアスごと耳たぶを舐めてみた。変な感触。 「うひゃ!」 友達に借りたビデオでは「あぁん」って言うハズなんだけど、男と女で違うのかな? そう思ってしばらくしゃぶって見ると、兄ちゃんの声がおかしくなってきた。 「ひゃ…ぁ…ちょ、ちょっとやめっ……やあ…っ!」 僕から逃げようとするんだけど、力が入らないのかなんか前屈みになってへたりこんじゃった。 ベタベタになった耳を放してあげると、僕はチュッと音を立ててタカ兄ちゃんのほっぺたにキスをした。 「タカちゃんはお顔もお洋服も、お耳もとっても可愛いですねぇ~」 「ちくしょう、健…お兄ちゃんなんか、好きだけど嫌いだ…っく」 「よしよし、泣いちゃダメだよ~」 僕はタカ兄ちゃ…年上の妹の頭をなでなでしてあげた。 (おしまい)
https://w.atwiki.jp/ws_wiki/pages/16330.html
IMS/S93-113 カード名:勇気を示す者 白石 紬 カテゴリ:キャラクター 色:青 レベル:0 コスト:0 トリガー:0 パワー:2000 ソウル:1 特徴:《音楽》?・《和菓子》? 【自】このカードが手札から舞台に置かれた時、あなたは自分の手札を1枚選び、ストック置場に置いてよい。 【自】[手札の《音楽》?のキャラを1枚控え室に置く]このカードが手札から舞台に置かれた時、あなたはコストを払ってよい。そうしたら、あなたは自分の山札を見て「クリスマスの贈り物 真壁瑞希」を1枚まで選んで相手に見せ、手札に加え、その山札をシャッフルする。 C:「やーやー! あっちいけーっ!わ、私は先に進まなければいけないのだっ!うう、妹を……、ミキを返しなさーいっ!」 BNP:「ふふっ、ミキったら本当に甘えんぼうね。あなたが帰ってきてくれて、うれしいわ……さあ、みんなでお茶にしましょう?」 レアリティ:C BNP 「アイドルマスター ミリオンライブ! Welcome to the New St@ge」収録 22/05/29、22/06/14 今日のカード。
https://w.atwiki.jp/gijin-kareshi/pages/651.html
Lost Memory!メモリアルのネタバレを含みます。 編集、情報のご協力お願いします。 取り戻した記憶(1) 取り戻した記憶(2) 取り戻した記憶(3) 取り戻した記憶(4) 取り戻した記憶(5) 取り戻した記憶(6) コメントフォーム 取り戻した記憶(1) 【生徒名】 ▲▼ 取り戻した記憶(2) 【生徒名】 ▲▼ 取り戻した記憶(3) 【生徒名】 ▲▼ 取り戻した記憶(4) 【生徒名】 ▲▼ 取り戻した記憶(5) 【生徒名】 ▲▼ 取り戻した記憶(6) 【生徒名】 ▲▼ コメントフォーム 情報などがあればコメントよろしくお願いします (1) 今日は【教師名】さんと一緒にプリンを食べに行く約束を思い出したんだ~ うっかりその記憶を取られちゃってたみたいで、すっかり忘れてたよ~。帰ったら【教師名】さんと一緒に行かなきゃね♪ 【生徒名】 -- (名無しさん) 2015-01-25 18 16 49 (2) 今日は【教師名】さんと約束したお出かけについて思い出したよ! 行き先は【教師名】さんのみが知ってるみたい。楽しみだな~♪ 【生徒名】 -- (名無しさん) 2015-01-25 18 19 00 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/83452/pages/10929.html
その日、何があったか覚えていない。 ただ空虚に時間だけが経過していって、気付いたら、放課後になっていた。 軽音部の面々と生徒会長は、お見舞いに行かない? とかいう話をしていた。そこには二年生のツインテールの子もいた。 言うまでもなく、澪のお見舞いの話だろう。 私も行きたかったが、いかんせん、澪の家を知らなかった。私の恋は、一方的すぎる想いにすぎないのだ、ということを自覚させられた。 いちご(胸が苦しい……) いちご(心配だなぁ……) 軽音部の面々と生徒会長が教室を出ていく。彼女たちが向かった先は音楽室ではなく、校舎の外だった。 付いていこうか、と私は考えた。 でも、いきなり行っても迷惑になるかもしれない。 それに、と思う。 私が澪を好いているだけで、澪は私のことなど見てくれていないのだ。 私は軽音楽部の一人でもなければ、クラスメイトと言えるほどの間柄でもない。 ただ、澪のことが好きな人。 二年も前の時に、名前が可愛いって言われて、孤高であることを格好いいって誉められて、以来澪を好きになった一人の女の子。 それが、私。若王子いちご。 私は変な名前を授けやがった両親に、並々ならない憎悪を持っている。 でも、この名前のおかげで、澪に恋慕を抱くことが出来たのだとしたら――。 それはとても幸せなことだ、と思えた。 私は孤高の女の子を演じていた。そして演じている。今この瞬間も。 ほんとうは、孤高なんかじゃない。甘えんぼなのだ。誰かとずっと一緒にいたいのだ。一緒に笑いあって、一緒にご飯を食べたりしたい。 名前という劣等感が、誰かと関わるのを躊躇わせていただけで。 名前で笑われたりするのが恐くて。 臆病になって、やがて、ひとりになった。 けれど、彼女は私の名前を可愛いと言った。 孤高で孤独な私を見て、そこに格好よさを見出してくれた。 彼女なら、私のことを受け止めてくれるんじゃないかと。 私が澪のもとに行って悪い理由があるだろうか? いや、ない。 ○ 外はまだ曇っていた。晴れるわけがないと知っているのに、晴天になるのを望んでいる。 私は軽音部の面々の後ろを追った。彼女たちはきっと、澪の家に向かうはずだ。 数分後、予想通り彼女たちは一軒の民家に入った。玄関より中に入って行くのを眺めた後、私はその家の表札を見る。 『秋山』 いちご(……澪の家だ) いちご(よし、大体の道のりは覚えた……あ、でも今行くと律とか生徒会長とかと鉢合わせに…天) いちご(時間、ずらして行こうかな。うん、そのほうがいいよね) いちご(どこかで時間つぶそうかな……) いちご(バレンタインまでには治っていてほしいな……、風邪ならすぐ治るよね、きっと) ふと、自分を客観的に見た。 いちご(あぁ……駄目だ、私。全然孤高じゃなくなっている) いちご(行動も何もかも、全部感情的になってる……) いちご(よく考えたら、家の場所が分かっても入れてくれるかどうか…………。それほど……仲好くはないんだし) つきん、と心が痛んだのは気のせいではあるまい。 いちご「あぁ……何かお見舞いの品持っていけば大丈夫かも……」 ちょうどいい時間つぶしにもなるし。 そう思った私は、コンビニを求めてその場から離れた。 ○ 品物を選ぶのに、三十分もかかってしまった。 何を買えばいいのかよくわからず、結局、カロリーメイトを持っていくことにした。四本入りの奴だ。 秋山家のインターホンを押す。さすがに軽音部の面々はもう帰っているだろう。 ?『はい? どちらさまですか』 その声は、聞き覚えのあるものだった。 いちご(……澪の声) 澪「あの、新聞とかは要りませんので……」 いちご「あ、その、お見舞いに来ました、若王子いちごです」 何故か敬語になってしまった。澪の方も敬語だったからだろうと思うことにした。 ○ 私は澪の部屋に招かれた。熱も下がってきていて、明日には治ると医者に言われているらしい。 私はその澪の言葉にそこはかとなく安堵した。 澪「いやぁ、それにしても、いちごが来てくれるなんてなぁ」 気恥ずかしさを覚える。 いちご「……その、受験まであと少しだから、心配になった」 言い訳するような口調で、私は澪に言った。 冷たい口調になってしまったのが、少し悔やまれる。 澪から、ありがとう、という返答が一つ。 いちご「あ、これ、お見舞いの品みたいな……」 す、とカロリーメイトを手渡す。フルーツ味。 澪「いいのか? ありがとう」 受け取ってもらえた。 澪「昨日の夜くらいに高熱が出てさ、一時はどうなるかと思ったけど、受験には間に合いそうでよかったよ。一日落としたのは痛いけど」 言いながら、澪は机の方を見やった。私も視線をそちらに移す。勉強道具がひろげられていた。 いちご「……どこの大学受けるんだっけ?」 澪「N女。いちごは……?」 普通に会話していることが何だか可笑しくて、笑いを噛み殺しながら、私は「就職」と答えた。 澪「へぇ、高校卒業と同時に働くなんて、親孝行だな」 親孝行。そのフレーズが意外で、私は吹き出してしまった。 いちご「そうでもない。私はただ、勉強がしたくないだけ」 悪い気分では、なかった。 私は部屋中を見渡す。と、一点で視線が止まった。 見覚えのある豪奢な衣装。中世の貴族が着るような刺繍の服が、ハンガーでつるされていた。 いちご「あれって……ロミオの服?」 その衣装を指差し、尋ねる。 澪「あ? ああ。うん。文化祭の時のね」 澪が遠い眼をする。 いちご「……あの時の澪、格好良かった」 澪「そうか? 何かそう言われると恥ずかしいな」 いちご「何か、覚えている台詞ある? あの劇の時ので」 そう尋ねる気分になったのは、単なる気まぐれだろうか。 澪「ああ、うん。一つだけ、印象に残った台詞なら」 いちご「どんなの?」 澪はすぅ、と深呼吸した。 澪「愛に導かれてやってきました、案内人などいません。しかし、あなたがどれほど離れていようと、 そこがはるか海に洗われている広々とした岸辺だったとしても、私はあなたのような宝を見つけて旅に出ますよ」 すらすらと紡いで見せた澪に、私は羨望のまなざしを向ける。すごい、と思えた。 ジュリエットになりたい、とあの時言っておけばよかった。 澪の口から、あの場所で、この台詞を生で聞けたのだ。 澪「何か、今思うと大仰な台詞だけどさ、ロミオになり切っている時は、金言に感じられたんだ」 感慨深そうに、澪が呟く。 私はジュリエットじゃないけれど、その言葉の重みが伝わってきた。 〝愛に導かれてやってきました〟 私も、愛に導かれてやってきた。 愛? それはあまりにも一方的な片想いだけど。 いちご「……素敵な台詞だった」 ジュリエットになり損ねた私は、目の前のロミオに向かってそう答えた。 異変は、私がそろそろ帰ろうかな、と立ちあがったときに起こった。 窓の外から、音。ぽつり、ぽつり。音は大きくなっていく。ざぁ……ざぁぁぁぁ……。曇り空が崩れた。シャワーのように、雨が降り始めた。 澪「うわ、ついに雨が降っちゃったか……。天気予報では明日とか明後日に振るって言ってたのに……」 いちご「……あ、私傘持ってきていないや」 澪「あ、家のでよかったら、貸すけど」 断る理由はなかった。 紺色の傘が手渡される。重い。男性用の傘だろうか。 澪「ありがとう、今日はお見舞いに来てくれて」 いちご「ううん、どういたしまして」 あ、そうだ。と私は澪に言う。 いちご「2月14日の放課後……四時半くらいかな。三年二組の教室にさ、来てくれない?」 私は、笑ってみることにした。上手く笑えている自信がない。 澪「――え?」 いちご「渡したいものがあるんだよね」 それだけを言って、私は秋山家を出た。 ○ 雨は12日から13日まで降り続いた。14日の今日はすっかり晴れ模様で、天気予報は信用ならないと痛感した。 朝から私は落ち着かなかった。それは何故か? きまっている。 放課後になるまでは、それほど時間はかからなかった。四時半になるまでなんて、あっという間だった。心の準備は出来ていないと言うのに。 そういえば、澪や他の軽音部の面々は、もう少しでN女の試験があるらしい。 澪がN女に合格したら、会う機会が少なくなってしまう。それ以前に会えるかどうかも怪しい。それが、残念でならなかった。 〝しかし、あなたがどれほど離れていようと、そこがはるか海に洗われている広々とした岸辺だったとしても、私はあなたのような宝を見つけて旅に出ますよ〟 ふと、その台詞を思い出す。 いずれ、会えるだろうか。 別れてしまった後も、十年後か二十年後か、もっと後。ふたたび澪に逢うことはできるだろうか。 きっとできる。そうに違いない。逢えなかったら、こちらから逢いに行ってやろう。あなたのいる場所が遠く離れていようとも。 この想いを伝えるために。 教室の扉が開く。 澪がいた。 澪「こ、この前言われたとおりに来たけど……」 澪の顔は少し赤い。私の顔もそうかもしれない。 私は澪に歩みよる。 いちご「ありがとう。来てくれて」 そして、私は言うのだ。 いちご「あのさ、どうしても食べてほしくて――――」 まだ想いは伝えない。いずれ、その時が来たら伝えたい。今、この時は、少しでも澪と一緒にいよう――。 私はホワイトチョコレートを手渡す。澪は、ゆっくりと受け取ってくれた。まだら模様の包装紙のかかった、一枚のチョコ。 その味は、とてつもなく甘いに違いない。 終わり 戻る
https://w.atwiki.jp/yuiazu/pages/435.html
薄暗い部屋の中、真っ暗な天井が見えた。 顔を少し動かすと、壁にかけた時計が視界に入って、 針に塗られた夜光塗料が今の時刻を私に伝えていた。 「……3時」 時間を呟いて、そこで思考が追いついてきて…… 夜中に目を覚ましてしまったことを、私は理解した。 あくびを一つ。同時に喉の渇きを覚えた私は、 お水を飲んでこようとベッドから降りようとした。 でも…… 「……あれ?」 パジャマを引っ張られるような抵抗を覚えて、自然と体の動きが止まった。 まだ少し寝惚けている頭で、何か引っかかっているんだろうかと 疑問に思いながら首を巡らせば…… 「ぅにゃぁ……」 眠っている唯先輩の姿が、そこにはあった。 私のベッドの上で横向きで眠っている。 めくられた掛け布団の下、伸びた右腕を目で追えば、 しっかりと私のパジャマを掴む右手を見つけることができた。 「えっと……」 無意味な呟きを発し、また一つあくびをして…… 唯先輩が今日、私の家に泊まったことをようやく思い出していた。 両親のいない土曜日、ギターの練習のため私の家に来た唯先輩。 珍しく練習に熱中して、気がつけば夜も大分遅くなってしまい…… 明日は日曜日だからと、泊まっていくことになったのだった。 最初は私の部屋に布団をひいて、 唯先輩がベッドを、私が布団を使うつもりだったのだけど、 「せっかくのお泊りなんだから一緒に寝ようよ!」 という唯先輩の一言で、同じベッドで眠ることになってしまったのだ。 「……ふにゃ……ぁずにゃ……ん……」 二つ並べた枕の一つに顔を埋めて、幸せそうな表情で眠っている唯先輩。 寝る直前まで大はしゃぎでお喋りしていたのが嘘みたいに、 今は大人しかった。 「……私を離してくれないところは、起きてるときと変わらないですけど」 パジャマを掴んでいる手を見つめて、私は苦笑を浮かべた。 並んで寝ているときもすぐに抱きついてきた唯先輩は、 寝た後もこうしてパジャマを掴んで、私を離してくれようとしない。 それだけ唯先輩に求められていることに、 私はくすぐったいような嬉しさを感じていた。 外で抱きつかれれば恥ずかしく思ってしまうけれど、 唯先輩の真っ直ぐな好意が嫌なわけではもちろんなかった。 「でもやっぱり……」 時と場所は考えて欲しいとも思う。 こうして寝た後も捕まえられていては、 お水も自由に飲みにいけなくなってしまう。 「もうっ、唯先輩は……」 小声で文句を言って、私は唯先輩を起こさないよう気をつけながら、 その手をパジャマから離そうとした。 そっと指に触れ、布地を抜き取ろうとする。でも…… 「……抜けない」 思いの外唯先輩の力は強く、 パジャマの布はしっかり握られてしまっていた。 起こさないよう優しく……そんな考えでは、脱出は不可能みたいだった。 このまま眠ってしまおうかとも思ったけれど、 一度意識してしまうと、喉の渇きはどうにも我慢できないもので…… でも無理に手をはずそうとして、 唯先輩を起こしてしまうのも申し訳なくて…… 「どうしよう……」 唯先輩の手の平をなんとなく撫でながら、困ったようにそう呟くと、 「……くすっ」 小さな笑い声が聞こえた。私の声ではもちろんない。ということは、 「……唯先輩?」 そう声をかけるけれど、唯先輩は返事をしなかった。 聞き間違いかなと一瞬思ったけれど、 唯先輩の顔を見てみれば、その表情はさっきとは違って、 まるで笑いを堪えているかのように力が入っていて、 「……唯先輩、起きてるんですか?」 そう私が聞くと、 「スースースー」 わざとらしい寝息が返ってきた。明らかに起きていた。 「唯先輩、起きてるんですね?」 「グーグーグー」 「もうっ、唯先輩!」 「……ダメ、寝てるからお返事できない」 重ねた私の言葉に、挙句そんなことを言ってくる唯先輩。 思わずあきれ、私はため息をついてしまった。 「もうっ、唯先輩。起きてるのなら、手を離して下さいよ」 「ダメだよあずにゃん、私眠っちゃってるもん。だから無理なのです」 「……しっかりお話できてるじゃないですか」 唯先輩の態度にあきれ、喉の渇きにちょっとムッとしてしまい…… 二つが合わさって、珍しくも悪戯心が私の心に生まれていた。 「そうですか……唯先輩は寝てるんですね?」 「うん、もうぐっすり寝てるよ」 「そうですか、ぐっすり寝てるんですね……」 そう言いながら、私は人差し指を唯先輩の手の甲に近づけ、 肌に触れるか触れないかという位置でそっと動かした。 「ひゃっ」 そのくすぐったさに、唯先輩が小さな悲鳴を上げた。その声に私は笑って、 「ダメですよ、唯先輩。眠っているんですから、そんな声出しちゃ」 言って、また指を動かす。それにあわせて悲鳴を上げる唯先輩。 「そんな声出しちゃダメですってば、唯先輩は寝てるんですから」 ちょっといじめるようにそう言って、 私は身を乗り出し、今度は指を首筋に這わせる。 「ひゃうっ、あ、あずにゃん、ダメっ……」 途端、体をびくんと震わせる唯先輩。 ベッドの隅に逃げようとするその体を抑えて、繰り返し首筋を撫で、 更にはパジャマの下にまで手を入れようとしながら、 「逃げちゃダメですよ、唯先輩。だって寝てるんですから」 私がそう言うと、 「降参! あずにゃん、降参!」 慌てて唯先輩が体を起こして、半ば叫ぶようにそう言っていた。 必死なその態度が面白くて、私はつい笑ってしまっていた。 「うぅ……あずにゃんひどい。いじめっ子ぉ」 「最初にふざけたのは唯先輩じゃないですか」 そう言いながら、 私はまだパジャマを掴んでいた唯先輩の手をそっと離して、 ベッドから降りた。 「……だって、あずにゃんが私を置いて、どっか行こうとしてたんだもん」 「ちょっとお水を飲んでこようとしただけですよ」 「ぶー、それでもダメだもん。 せっかくのお泊りなんだから、朝まで二人で寝なきゃダメっ」 拗ねたようにそんなことを言う唯先輩。 いつも以上に子供っぽいのは、ちょっと寝惚けているためだろうか。 私のさっきの悪戯も、まだちゃんと目が覚めていないからできたことだろう。 朝ちゃんと起きたら、思い出して恥ずかしい思いをしそうだった。 「……あずにゃん、早く帰ってきてね?」 部屋を出ようとする私に、唯先輩がそう声をかけてくる。 枕を両腕で抱きしめ、ベッドの上に座っている唯先輩は、 ほんとに甘えんぼの子供みたいだった。 「はい、すぐ戻ってきますね」 くすっと笑って、私は部屋を出た。 台所からミネラルウォーターのペットボトルとグラスを二つ持って、 私は部屋に戻った。ベッドに座ったままの唯先輩にグラスを一つ渡し、 「唯先輩も飲みますよね?」 と言う。唯先輩は笑って、 「ありがと、あずにゃん」 グラスを両手で受け取った。 ペットボトルをあけ、唯先輩のグラスに水を注ぎ、 続けて私のグラスにも水を注ぐ。 ペットボトルをテーブルに置いて、 ベッドに腰をかけて、私は水を一口飲んだ。 冷たい水が喉を通り過ぎて、ようやく渇きが癒された。 「お水、美味しいね」 「……そうですね」 唯先輩に返事をして、もう一口水を飲んで、ほっと息を吐いた矢先、 「えいっ!」 「にゃっ!」 首筋に冷たいものを感じて、私は悲鳴を上げていた。 なにが起きたのかは考えるまでもなかった。 唯先輩が水の入ったグラスを、私の首にくっつけたのだ。 「も、もうっ、唯先輩!」 「エヘヘ……さっきの仕返しです!」 笑いながら言って、唯先輩が突然抱きついてきた。 「あ、危ないですよ、唯先輩!」 「だってぇ、あずにゃんが離れていた分、 あずにゃん分足りなくなっちゃったんだもんっ」 「ダメですってば、唯先輩! お水こぼれちゃいます!」 「エヘヘ……あ~ずにゃんっ」 ベッドの端で揉み合って、 並んで腰掛ける形で落ち着くまで、 お水がこぼれなかったのは奇跡だった。 「もう……ほんとに唯先輩はしょうがないんですから……」 私の文句に、唯先輩は「エヘヘ」といつもの笑いを浮かべる。 片手は私の手をしっかりと握っていた。 手の平をあわせる恋人繋ぎ。抱きつく代わりの唯先輩のご希望で…… これなら抱きつかれた方がまだ恥ずかしくなかったかな、と思ってしまう。 昼間だったら、たとえ部屋の中であったとしても断っていただろう。 まったく何をしているんだろうと、そんなことも思ってしまった。 真夜中に、二人でベッドの端に腰掛けて、 恋人繋ぎで手を握って、一緒にお水を飲んでいる。 どこか間が抜けているようにも思えて…… でもなんとなく、私と唯先輩らしいかななんて風にも思ってしまった。 「ねぇあずにゃん、明日はなにしよっか!」 隣に座った唯先輩の言葉に、私は壁の時計を見た。 夜光塗料は3時半の形になっている。 「明日」というよりも、もう既に日曜日は「今日」で…… こんな時間に起きてお喋りをしていたら、 きっと朝早く起きることなんてできないだろう。 昼頃までズルズルと寝てしまい、結局一日部屋で、 なにをするでもなくダラダラ過ごしてしまうことになるかもしれない。 それも悪くないかななんて私は思ってしまって、 そう言ったら唯先輩は笑って喜ぶだろうけれど…… それで喜ばれるのもやっぱりちょっと悔しいから、 「決まってます、もちろん練習です!」 力強く、私はそう言っていた。私の言葉に、 「えぇ~」という唯先輩のちょっと情けない返事が返ってくる。 部屋に響いたその声に、私は小さく笑って、また一口、お水を飲んだ。 冷たいお水と、手の平のぬくもりが心地よかった。 END こういう雰囲気大好きだわ -- (名無しさん) 2020-07-10 01 07 32 名前 感想/コメント: すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/moecc/pages/861.html
妖怪占いイベント 「《お兄ちゃん》が助けてくれるから《わたし》も頑張るね! (笑)」 「これが終わったら一緒にフルフルパフェ食べにいこー! (笑)」 「ねぇ・・・・・・《お兄ちゃん》・・・・・・《わたし》にこれできるかな・・・・・・? (哀)」 「ん~そろそろ疲れてきちゃったよ《お兄ちゃん》~!! (哀)」 -- (名無しさん) 2012-07-26 22 31 02
https://w.atwiki.jp/83452/pages/6012.html
梓(ダメダメ、まだあずにゃん体操の途中だにゃん) 梓(全国の好い子と好い子猫が私を待ってるにゃんっ!!!) 梓「さあっ、次は手を前に出したまま、その場跳びにゃん」 梓「いちっ、にゃん、にっ、にゃん」ピョンピョン 梓父「あずさっ!」 梓「さんっ、にゃん、しっ」 梓父「おい梓っ!!!」 梓「もっと子猫が猫じゃらしに夢中になった様に跳ねるにゃん☆」 梓父「……おいあずにゃん」 梓「なんだにゃん?」 梓父「……っ!?」 梓父「おまえ…『なんだにゃん』はないだろぉ」ブワッ 梓母「私の可愛い梓が…」ボロボロ 梓「!!!?」 梓「えっ!?ああっ、お父さん、お母さん!!!!」ガーン 梓(見られたっ!!!見られたぁー!!!!) 梓(私の秘密、あずにゃん体操がぁー!!!!!) 梓(いやぁーーーーーーーーーーっ!!!!!!!!!!!!) それから梓は家を出た、そして放浪の生活の末辿り着いたのは… ヒマラヤだった 梓(私がここで修行を始めて何年が経つだろう) 梓(いや、もう時間など関係ない) 梓(私はあずにゃん道の真髄を極めた) 梓(あとはここで自然と一体になり、この体が朽ちるまで) 梓(静かに暮らす、それだけだ) ?「えっ、あれっ?もしかして?」 梓(珍しいな、旅行者か?) ?「あなた?もしかして、あずにゃん!?」 梓「!!!?」 梓「確かに私は、以前、その様な名前を名乗っていました」 梓「しかし、それを自分の名とするおこがましさに気付いたのです」 梓「あずにゃんとは私を含めた自然、宇宙の神秘と一体なのです」 ?「は、はあ…」 梓「あなたにもあずにゃんのご加護があらん事を…」 ?「えっ、いやっ」 ?「ごめんなさいっ、友達に似ていたもので」 ?「すいません、人違いでしたぁ」ダッ 梓(いってしまったか…) 梓(しかし、どこかで見た事がある顔だった) 梓(しかしそれも今ではどうでもよい事だ…) 梓(あずにゃんのご加護を) バッドエンド3 インドの山奥で修行しすぎた ヒント あずにゃん体操とは一体なんだったのだろうか? 梓の両親の喧嘩は本編とどう関るのか? ヒマラヤで会った人物は一体誰なのか? 少なくとも、その時間軸で「生きている」人物だろう 1直前から始める 2キャラクター選択まで戻る 3初めからやり直す 安価 410 ※1 梓「はーい、もっとネコがジャレつく様にするにゃん☆」 梓「さんっ、にゃん、しっ」 梓父母「ガミガミ、ギャーギャー」 梓(あれ?なんだか後ろが騒がしい気がするけど…) 1気になるなぁ、振り向いてみよっ 2だめだめ、まだあずにゃん体操の途中だにゃん☆ 3あれ?何だろ?この体の底から湧きあがるパワーは!? 4しまったぁー!!!!アレがっ!アレが無いっ!!!!!!! 安価 422 ※4 梓「ああっ!!!しまったぁ!!!!なんてことだぁーーー!!!!!!」 梓「無いっ、ないよーーーーーーっ!!!!」 梓「猫耳を付け忘れてたぁぁあああああ!!!!」 梓「あれが無いと、私はあずにゃんなんかじゃないっ」 梓「ただの梓」 梓「ちっぽけでつまらない、タダの女の子」 梓「そんなっ!嫌だっ、いやだよーっ!!!」 梓父「そんな事は無いぞっ!!!」 梓「えっ?お父さん!?」 梓母「そうよ梓っ」 梓「お母さんもっ!!!」 梓父「お前はちっぽけなタダの女の子なんかじゃないっ!」 梓「えっ?そんなはずないっ!私なんてっ」 梓父「お前は私の、私達の、宇宙で一番大切な娘だっ」 梓母「そうよっ、梓っ、ごめんなさい、あなたが悩んでる事」 梓母「ちっとも気付いてあげられなくて…」 梓「おとうさんっ、おかあさんっ!」 梓父「お前はあずにゃんである必要なんてないんだ」 梓父「そのままのお前で、中野梓で、私達にとって、この世で一番大切なんだっ」 梓「う、ううっ」ポロポロ 梓母「よしよし、泣かないのっ、可愛いお顔が台無しよ?」 梓「えぐっ、そんなこと、今まで一度も言ってもらった事無いっ」グスグス 梓父「ごめんよ梓」 梓「いいのっ、私うれしいのっ!ありがとうお父さん、お母さんっ!」 梓「私、二人の娘に生まれてきて良かったっ!!!」 梓父「ううっ、梓」ポロポロ 梓母「この子ったら」ポロポロ 梓父(さっきまで妻と喧嘩したり、娘の事をおかしいと思った事が恥かしいな) 梓父(それにしても、つい最近まで家庭崩壊寸前だった我が家が) 梓父(こんな切欠一つで元に戻れるとは…) 梓父「梓、ちょっといいか?」 梓「なあに?お父さん?」 梓父「その体操、あずにゃん体操だっけ?」 梓父「それを教えてくれた人は誰なんだい?」 梓「これは、直接教えてもらったんじゃなくて、自分で作ったんだけど」 梓「あずにゃんって名前を付けてくれたり」 梓「体操のイメージをくれた人なら…」 梓「唯先輩って言うんだ」 梓父「唯先輩かっ」 梓父「その人に伝えてくれ、私が心から感謝していると」 梓「うん!」 梓「って、あれっ?いけないっ!唯先輩を助けなきゃっ!!!」 梓「その先輩が大変なのっ!」 梓「私、今から出かけなくちゃっ!」 梓父「そうなのか、気をつけろよ」 梓母「危ない事はしちゃだめよ」 梓「あぶないって事は、ないと思う…」 梓父「そうか、でも後で電話するからな」 梓「うん、行ってくるね」 梓(こんな言葉、普段ならうざったいだけなのに) 梓(不思議と今は頼もしい…) 梓「とにかく唯先輩の家へ行ってみようっ」 …… 梓「たしかココが唯先輩の家…」 梓「とりあえずチャイムを押してみよう」 ピンポーン 梓「……」 梓「誰もいないのかな?」 カチャ 梓「玄関は開いてるみたい」 梓「何方かいますかーっ!」 シーン 梓「唯先輩にもう一度電話してみようかな…」 ピッピッピッ トゥルルルルル…トゥルルルルル… 梓「出ないけど家の中から着信音がする…」 梓「倒れてたりしたら大変、ちょっと入ってみようかな…」 梓「でもなんか怖い…明らかにこの家様子がおかしいいよ…」 梓「誰か呼ぼうかな…」 1イージーモード 律 僕らのりっちゃんが大暴れ、唯ちゃんを簡単に助けちゃうよ! 事件の謎なんてそっちのけだい! 2ノーマルモード 純 純ちゃんの行動力が道を切り開く? 梓と純ちゃん、お互い協力し合って平沢家の謎を解けっ! 3ハードモード 澪 怖がりの澪ちゃんははっきり言って邪魔 平沢家の謎なんて言っている場合じゃない! とにかく死なないようにがんばらなきゃ! 4ベリーイージーモード 紬 ムギちゃんのパワーで、襲われてもへっちゃら 緊急時には琴吹家が何とかしてくれるよね! 安価 542 ※ニア【4】 梓「ムギ先輩、来てくれないかな?」 ピッピッピッ トゥルルルルル…トゥルルルルル… 紬「あっ、梓ちゃん」 紬「ちょっと電話しようかなって思ってたとこなのー」 梓「そうなんですか?」 梓(ムギ先輩の声を聞くと、なんか安心できるな…) 梓「それより、唯先輩がピンチかもしれないんですっ!」 梓「今から唯先輩の家まで来てもらえませんかっ?」 紬「えっ、唯ちゃんが!?」 紬「うん、わかった!直ぐにそっちに行くねっ」 紬「ちょうど今、近くにいるの!」 梓「そうなんですかっ?よかったぁー」 紬「ごめんね、待った?」 梓「いえ、思ったよりずっと早かったです」 梓(でも、この辺りに一人で用事って、何だったんだろ…?) 紬「それでっ、唯ちゃんは?」 梓「家の中にいるんだと思うんですが、電話に出てくれなくて」 紬「そうなの…でもそれってまさか…」 梓「えっ…」ゴクリ 紬「お昼寝してるんじゃないかしら?」 梓「いえ、そうだ、いい忘れてましたけど、『たすけて』ってメールが届いたんです」 紬「えーっ!!!?それは大変だわっ!!!!」 梓(ピンチって言っただけで、理由も聞かずに来るって、さすがムギ先輩と言うか…) 1とにかく家の中に入る 2家の周りの様子を見る 3憂に電話してみる 4急いで来たのかな?ちょっと頬を染めたムギ先輩…おいしそう… 安価 560 ※4 (梓誰でもいけんのなwwwwwwwwwwwwwwwww) 梓「ムギ先輩っ」ピトッ 紬「あらあら、梓ちゃん」 紬「二人きりだと、急に甘えんぼさんになるの?」ナデナデ 梓「えへへっ」グリグリ 紬「うふふっ」ニコニコ 紬「さっ、どうしたの?唯ちゃんを助けに行きましょう?」 梓「はい!」 1とにかく家の中に入る 2家の周りの様子を見る 3憂に電話してみる 4紬の耳たぶハムハム 安価 571 ※4 梓「」ハムッ 紬「あっ!」ビクッ 紬「ダメよ、いたずらしちゃっ」ドキドキ 梓(ムギ先輩、さらに赤くなった) 梓(口ではああ言ってるけど、本当は興味があるのかな?) 梓「ごめんなさい、ムギ先輩」 紬「いいのよ、梓ちゃんと仲良くできて嬉しいわっ」 梓「それじゃあ、私の気がおさまりませんっ!」 梓「だから、お詫びとして…」 梓「私の耳も…ハムハムして下さいっ!!!///」 紬「!!!?」 紬「えっ、ダメよっそんな事…」 梓「えっ、そんなぁー」 紬「梓ちゃん…」 梓「そうですよね、私の耳なんか、汚くて、ハムハムなんて出来ませんよねっ」 紬「ちがうわっ、そういうつもりじゃ」 梓「じゃあ、してくださいっ!」ウルウル 紬「……」 紬「わ…わかったわ、ちょっとだけね」ドキドキ 梓「はい!」 紬「」ハムッ 梓「あっ、あぁんっ!」 紬「はぁっ」ドキドキ 梓「ムギ先輩…すごくエッチでした」ハアハア 紬「そ、そんな」ドキドキ 1いけないっここまでにしないと、後戻りが出来なくなるっ! 2はっきり言おうっ!ムギ先輩に欲情したぞぉっ!!!!!!!!!! 安価 599 ※2 5
https://w.atwiki.jp/83452/pages/16473.html
……… 唯「ふわぁ」 梓「あっ、もうこんな時間なんですね」 唯「なんだか眠くなってきちゃったよ」 憂「じゃあそろそろ自分の部屋に戻ろっか?」 唯「うん、そうだね」 梓「(やっと…やっとこの時間に辿りつけたよ…! 唯先輩と二人っきりになれる時間が…!)」 憂「じゃあ梓ちゃんのお布団、私の部屋に用意しておくからね」 梓「えっ?」 梓「(そ…そんな…!)」 憂「(すんなりとお姉ちゃんの部屋で眠れると思った?甘いよ梓ちゃん…)」 唯「えー、ずるいよういー、私もあずにゃんと一緒に寝たいー」 梓「(ナ、ナイスです唯先輩!…私も唯先輩と一緒に)」 憂「ごめんねお姉ちゃん、でも…梓ちゃんからしたらお姉ちゃんは先輩だから… 私と一緒の部屋の方が気兼ねなくて良いんじゃないかと思ったんだけど…」 唯「へっ?そうなのあずにゃん?私の部屋だと落ち着かない?」 梓「いえ、どっちかって言うと私は」 憂「私の部屋の方がいいよね?」 梓「えっ、えっとね?憂…その…」 憂「ねー?」ニコニコ 梓「(笑顔が怖い…怖すぎる……まさか憂)」 梓「(私と二人っきりになったらお風呂での続きを始めるつもりなんじゃ…)」 憂「(お姉ちゃんと一緒に寝れるのは私だけなんだから…)」 梓「(そんなのダメ!私の体は唯先輩のものなんだから…! 憂には悪いけどここは引く訳には…)」 憂「あっ、私お布団押入れから出さなくちゃ、少ししたら私の部屋に来てね梓ちゃん」 梓「(決定?!勝手に話が進んでる?!)」 梓「(どうしよう…どう……私…憂に襲われちゃうかも…)」ブルブル 唯「ねぇあずにゃん」 梓「はいっ?」 唯「憂とけんかでもした?」 梓「えっ、し…してないですよ?どうしてですか?」 唯「だってほら」ぎゅ 梓「?!」 梓「(えっ、唯先輩がぎゅって…)」 唯「あずにゃんずっと震えてるんだもん」 梓「(唯先輩…ちゃんと私の事見ててくれてたんだ…… ぽわーっとしてる様に見えたけど…ちゃんと私の事………)」 唯「心配しちゃうよぉ」 梓「唯先輩…私…わたし…」 唯「言ってごらん?」 梓「はい…私…唯先輩と一緒に寝たいです……」 唯「うん分かったよ、憂には私から言っておくからあずにゃんは私の部屋に入っててね」 梓「はい…唯先輩………ありがとうございます…グス」 唯「お礼なんていらないよ?あずにゃんは泣き虫さんだなぁ」 梓「うぅ…グス」 梓「(なんて頼れる人なんだろう…唯先輩……大好きです)」 ……… 唯「おまたせあずにゃん」 梓「あの…憂怒ってましたか?」 唯「ううん平気だよ?少し残念そうな顔してたけど」 梓「すみませんでした」 唯「あっ!」 梓「どうかしました?」 唯「あずにゃんのお布団持ってくるの忘れたよ!」 梓「あっ…あぁ…」 唯「まぁでも今日は少し寒いし、一緒のお布団でもいいよね?」 梓「唯先輩と…一緒のお布団ですか?!」 唯「あずにゃんをぎゅーってしながら寝てみたいと思ってたんだぁ、ダメかな?」 梓「いえ、私は一向に構いません」 唯「(あれ?いつものあずにゃんなら絶対嫌って言うと思ったのに…)」 梓「どうかしましたか?」 唯「う、ううん…じゃあ…」 唯「おいで?あずにゃん」 梓「はい、失礼します…」 唯「わぁ、世界で一つしかないあずにゃん枕だぁ」ぎゅー 梓「はぅ…!」 唯「良い匂いする」クンクン 梓「(あぁ…もう……ドキドキが止まらないよ…)」 唯「やっぱりあずにゃんはやわらかくて気持ちいなー」むにむに 梓「うぅ…唯先輩……唯先輩ぃ…」 唯「ふふっ、今日はいっぱいぎゅーってさせてくれるんだね? 寝る前のあずにゃんは普段より大人しいんだなぁ」 梓「(あぁ…こんなに唯先輩と密着できるなんて…気失っちゃいそう…)」 唯「いいこいいこ♪」ぎゅぅぅ 梓「あっ…」 梓「(唯先輩の…唯先輩の胸が私の目の前に……)」 梓「(もう…我慢できない……唯先輩……唯せんぱぁい…!)」 むにむに! 唯「わわっ!」 梓「むぅ…」ムニムニ 唯「ふふ、もう……あずにゃんは甘えんぼさんだなぁ」 梓「(唯先輩の胸……柔らかいよぉ… 唯先輩の匂い…どうにかなっちゃいそうだよぉ…)」 梓「(来て良かった…もう女性ホルモン分泌してるのが自分でも分かるよ…! このまま朝まで…唯先輩の胸の中で…)」 唯「そろそろいいかな?」 梓「はい?」 唯「うーいー?おいでー」 憂「お姉ちゃん、梓ちゃん、ごめんね?」 梓「えっ?」 唯「いいよ、ほらちょっと狭いかもしれないけど…」 梓「えっ、これは…いったい…?」 唯「仲直りだよあずにゃん」 梓「仲直り…ですか?」 唯「うん、今日は3人で仲良く川の字で寝よう?」 憂「梓ちゃん、さっきはごめんね?」 梓「(えっ…えええええぇぇぇ?!?!)」 唯「きっとあったかあったかで眠れるよ?」 憂「梓ちゃん、もう少しつめてもらえるかな?」 梓「あっ…う、うん……」 梓「………」 梓「(これからだったのに…!!これからだったのにぃぃぃぃぃ!!)」 ……… ~遡る事およそ3時間前~ 律「ありがとう澪、いい湯だったよ」 澪「そうか、最後になっちゃってごめんな」 律「いいよぉ、私が勝手に泊りにきてるだけなんだし」 澪「もう少し早めに企画してくれれば、もっと豪勢な晩御飯作れたんだけど…」 律「そんな事ないって、おいしかったよ?澪と一緒に料理するのも楽しかったし」 澪「そうか?」 律「(う~…緊張するなぁ……)」 律「(このあと澪と少しお喋りして雑誌とか読んで…そしたらついに就寝時間ですよ)」 澪「………」 律「(寝ている澪の胸を揉まないといけないんだよな…)」 澪「(部屋の鍵を施錠して…)」ガチャリ 律「(本当に大丈夫なのかよ梓…澪って警戒心強いんだぞ?!)」 澪「(窓のカーテンを閉めて…)」シャッ 律「(なんか私が体に触れただけで目を覚ましかねないんだけど…)」 澪「(律の両手をベッドに括りつけて…)」ガチャン 律「(そうも言ってられないよな…とりあえず今は澪に疑われない様に気さくに話しかけとくとするか…)」 澪「(準備オーケーだ…)」 律「なぁ澪!最近のさわちゃんなんだけどさっ………んっ?」 澪「………」 律「なに…この手枷…?」ジャラ 澪「律…」 律「えっ?」 澪「もう逃げられないゾ☆」 律「………」 律「(ええええぇぇぇええ?!?!)」 律「(なに…?!なんなのこの展開…!)」 澪「なぁ律、少し聞きたい事があるんだけど」 律「近い…!顔が近いよ澪?!」 澪「偽りなく答えてほしい」 律「なに?答えられる事なら」 澪「最近梓と仲良くしすぎじゃないか?」 律「えっ?そそそそうかな?」 澪「そうだよ、いつも二人一緒にこそこそしてる」 律「気のせいだろ?言うほど一緒じゃないよ」 澪「目を逸らすなよ律、なにか疾しい事でもあるんじゃないか?」 律「うぅ…」 澪「話して?じゃなきゃ絶交するからな」 律「(なんだこれ…尋常じゃない雰囲気だぞ…なんか澪怒ってるし… ここは正直に話すべきだな…これ以上澪を刺激しない方が…)」 澪「いつも梓となに話してるんだ?」 律「む…む…」 澪「む?」 律「…胸の話しだよ」 澪「胸の話し?なんだそれ」 律「梓と一緒に胸が大きくなれたらいいなって話してたのっ!」 澪「はぁ…」 律「な、なんだよ?」 澪「だから私に胸がどうとか話を振ってきたんだな?」 律「そうだよー!悪いかっ?」 澪「でもなんで私の胸を触りたいっていう結論に至ったんだ? 律の胸が大きくなる事に関してそれは無関係だろ?」 律「梓が……梓が偽装恋愛をしてその相手の胸を揉めば大きくなるかもって… なんか女性ホルモンとか性的興奮がどうとか」 澪「それで今回のお泊りって訳か…」 律「うっ…」 澪「道理でおかしいと思ったんだ、唐突すぎるからな」 律「(名探偵か?こいつ?!) 澪「バカだな律は…」 律「う、うるさい!澪には私の気持ちなんて…!」 澪「素直に私に相談すれば胸くらい触らせてあげるのに…」 律「へっ?…だ、だってこの前私が相談した時にはできる訳ないって…」 澪「梓がいる前でそんな事できる訳ないだろ」 律「気付いてたのか?」 澪「隠れてるつもりだったのか?」 律「(秋山澪…恐ろしい子…!)」 澪「偽装恋愛って言ったよな?」 律「う、うん…」 澪「まぁきっかけはそれでもいいか…」 律「えっ?それってどういう…?」 澪「律は私のものだからな、今夜は私といい事しよう」 律「(なにぃぃ?!?!)」 律「ねぇ澪!みお!」 澪「なんだ?」 律「私用事思い出した!今日はこれで帰ろうと思う!」 澪「……」 律「だからこれ外してよ!…ね?」 澪「用事…用事ってなに?」 律「大事な用事だよ!すぐに帰らないと!」 澪「まさか梓じゃないよな?」 律「(嫉妬?!…これはまたやっかいな…)」 澪「梓と二人で会うつもりなんだろ?」 律「そんな訳ないじゃん!」 澪「じゃあ証拠は?」 律「証拠?!ないよそんなの!」 澪「やっぱり梓か…律ってさ…最近私がメール送っても返信遅いよな?」 律「無関係だよそんなの!梓とはなんにも関係ないから!」 澪「どうせ二人で長話でもしてるんだろ?分かってるから」 律「そんな訳ないだろ澪!私を信用しろ!」 澪「……」 律「お願いだ澪…みおぉ…」ウルウル… 澪「律…」 ヴーヴー! 律「(ん?私のケータイが…)」 澪「…」 澪「……律」 律「へっ?」 澪「なんだこれは…?」プルプル… 着信 ☆中野梓☆ 4
https://w.atwiki.jp/ikiikigonbo/pages/142.html
「いきいきごんぼ」第1巻 ・・・背表紙に3人組の顔が描かれているが、技野の髪の色が茶色ではなく金髪となっている 収録話 1ごんぼ/教科書とセクハラとバイシクル 2ごんぼ/痴女とUMAと公衆便所 3ごんぼ/魔族と野糞とプリングルズ 4ごんぼ/カギと屋上とストレッチ 5ごんぼ/ため息とゲーセンと観音様 6ごんぼ/鼓動と夕立とアリジゴク 7ごんぼ/冒険と楽園ときなこパン 8ごんぼ/珈琲とモンゴルと深海魚 9ごんぼ/幸運と幻覚とコンプリート 10ごんぼ/歌舞伎と粘土と創作活動 11ごんぼ/イスとフラグと善良な市民 集中連載・1ごんぼ/乳と妖怪とマンホール 集中連載2ごんぼ/雨とパンツと保健室 集中連載3ごんぼ/汗とブルマーと柔道部
https://w.atwiki.jp/oyatu1/pages/178.html
玄関のチャイムを鳴らすとすぐに、「いらっしゃい」という言葉と共に扉が開いた。 私にとっては、もはや慣れ親しんだ場所で、友人の家に上がりこむときの特有の高揚感というものは感じられなかった。 「ハッピーバースデー」 と、お決まりの文句が私の第一声だった。親しい仲に改めて誕生日を祝うというのはどうも小っ恥ずかしく、 ちょっとした冗談も思わず添えてしまったのだが。 「お誕生日おめでとうございます」 一緒に来たクラスメイトもお決まりの挨拶をした。普段どおり礼儀正しく、なのに初々しく。 「おお、サンキュー」 ほら、そうしたらさっき私の冗談で怒っていた顔が、ふわりと柔らかくなって、私には滅多に見せてくれない 可愛らしい笑顔を隣に向けてしまうのだ。 こういうことになるのは分かっているのに……私はいつも素直になれないのだ。 目の前で微笑む私の大好きな人は、しかしその笑みが私に注がれることはなく、それに嫉妬してしまう自分が 本当に嫌になる。 「これ、つまらない物ですが」 ドロドロとした嫉妬にも気付かず、やんわりとした微笑を讃えながら、彼女は更にプレゼントの入った紙袋を手渡した。 あまり表情は変らなかったが、しかしいつも見つめている私には分かってしまった。彼女からのプレゼントに 本当に喜んでいることを。 そして私はまた彼女を恨めしくまた羨ましく思ってしまう。 ドロドロ。ドロドロ。ドロドロ。どす黒く、粘性の強い溶岩が体の中を流れていくような感覚。強い、独占欲が、 私を、支配して── 「……ッ」 冷や汗がつーっと流れた。また、やってしまったと思った。 私はそんな邪まな感情を拭い去ろうと、平静を装ってプレゼントを渡した。 やはり、あまり喜んではもらえなかった。私の想い人は、センスや趣味が私とはまるで違うのだ。 いや、それはきっと言い訳。勇気のない自分への言い訳。 本当はもっと別のものを買ってきていたのに、結局渡す勇気がなかったのだ。 部屋に上がらせてもらった私達は、愛すべき人の妹がつくったクッキーを肴に話に花を咲かせていた。 だけど私は、クッキーを食べてばかりいた。彼女の方ばかり見て話すのにまた嫉妬していたからだ。 なのに、あの人に『他人の誕生日なのだから遠慮しろ』と言われてしまった。 ああ、まったく私の行動は裏目に出てしまう。好かれたいのに、そのせいで嫌われてしまいそうなジレンマ。むしろ恐怖。 でも私はやっぱり意気地なしだから「美味しいからね」などとはぐらかす。 だけど私は一瞬手を止めてしまった。今回は自分も一緒にそのクッキーを作った、などといわれてしまったのだから。 体が、顔が火照るのが分かる。頬が高潮しているのかもしれない。 それはそう、ごく自然な反応。だって、家事が得意というわけでもないのに、私のために作ってくれたかも 知れないクッキー。 ・・・・・・・・・・・・ そう、作ってくれたかも知れないクッキー。本当は彼女のために作ったのかもしれない。 「どうしたの?」 またドロドロしたものがこみ上げる。私は咄嗟にごまかすことしか出来なかった。 「そう聞くと、美味しいのとそうじゃないのがある気がするから不思議だよね」 だって、あなたが作ってくれたものに叶うものなどないのだから。 「なんだと!」 また怒らせてしまった。 そうやって憎まれ口を叩いてばかりでその日は終わる──はずだった。 「じゃあ、私はこれで失礼しますね」 おっとりとした足取りと口調で彼女は退室した。 正直、ほっとした。最近彼女といると、嫌な感情ばかり覚えていたから。 「私も夕飯の準備してくるね」 妹もそういって出て行った。 気まずい。お祭りが終わった時の余韻と、やるせなさが混ざったのと同じ感じがする。そして何より、2人きり。 本当はもっと一緒にいたかったけど、その空気に耐えられず、私も帰ることにした。 「じゃあ、私も帰るね」 なのに、私は腕を掴まれた。 「え?」 ドキドキした。私の腕を掴む、その手を通して、鼓動が伝わるんじゃないかと思うぐらいに。 「その……送ってくから」 「ど、どうしたの。珍しいね。というか初めてじゃない?」 多分そんなようなことを言ったと思う。口早に言った台詞は、あまり考えずに言ったので覚えていないのだ。 あっという間に家についてしまった。 始終ドキマギしっぱなしだった私にとっては数分の出来事に思えた。 ガチャッという音をたてて、カギが開いた。 「それじゃ、さよ──」 うなら、と続けようと後ろを振り返り、私は瞬間固まってしまった。 「…………」 ・・ そこには、いつの間にか髪を下ろした愛おしい少女がいたのだから。 「あのさ、私ね、誕生日に言おうって決めてたんだ」 彼女が、言葉を紡ぐ。 「私……貴女の事が好きなの。 好きだから照れ隠しに怒って見せたし、好きだから一緒のクラスになりたいと思ったし、好きだから いつも一緒にお弁当を食べてたの!!」 狂おしいほど愛おしい。だけど届かないところにいたはずの彼女が、そんなことを言ったのだ。 もう、この気持ちを言葉にすることなど不可能に違いない。私はこんな気持ちを表す言葉を知らない。 「私、、、もぉ。私も、好き。大好きぃ」 「う、わ、ちょっと、なんで泣くのよ」 「だって、だって、だって」 嬉しさで涙が出るなんて本当にあるんだ、と思った。 「もお、仕方ないな」 そういって彼女は私をそっと包み込んでくれた。 彼女の手が、腕が、体が、暖かい。丁度彼女の胸の辺りに私の頭が、トンと乗った。 「ぅ……ぐしゅ」 「ほらほら、よしよし」 「うん……」 そっと、そおっと、彼女の手が私の髪を梳いていく。 まるで髪の毛の一本一本まで、彼女に染められていくようだった。 小一時間程たった頃だろうか。ポツリ、と呟いた。 「あたしもう帰らなきゃ」 「ヤダ」 「いや、ヤダって」 「ヤダもん」 もっともっと、こうしていたかった。 きっと一日中こうしていても足りないと思うのに、今だけなんて、耐え切れない。 「今日家に誰もいないから、泊まっていって」 「……わかったわ。まったく、こんな甘えんぼさんだったなんて」 私はその日最高の笑みを浮かべた。 とりあえず戸棚にあった紅茶でもてなすことにした。 今こうして私の部屋に一緒にいること。それだけだったら今まで何度かあったことだけど、今では 私達の関係は全く一転している。 それがとても不思議で、大切で、奇跡のようで、信じられなくて、夢を見ているような私がいた。 「えへへ」 自然と、頬の筋肉が緩む。 「あのさ、本当は誕生日プレゼント、別に用意してあったんだ」 私は、綺麗にラッピングされた小さな箱を渡した。 彼女は、しゅるしゅると紐を解き、箱を開けた。 「コレって……指輪?」 「うん。その、恥ずかしくて渡せなかったんだ」 私とあなたの指輪ですだなんて、言えるわけがなかった。でも今なら言えるから。 「ありがと。ねぇ、目、つむって」 「え、あ、うん」 指が触れているのが分かった。 もしかして、この感触は、という淡い期待が胸を満たす。 「目、開けていいよ」 ゆっくりと閉じていた瞼を開けると、私の左手の薬指に、指輪があった。 「こ、これ……」 「もらったプレゼントをどうするかは私の勝手でしょ?だから、これを私達の婚約指輪にしましょ」 「うっ、うぅ」 「ああん、もう。また泣く」 感無量とはこのことだった。もう、戻れない。私はこの人のことを、本当に愛しているんだと実感した。 そしてもっと、愛を感じたいと思ったのだ。 「ごろぉん」 私はもっと甘えたくて、その健康的な太ももの上に頭を乗せてはにかんだ。 「も、もう、何なのよ」 抗議を述べる顔が、少し赤くなっているのが嬉しかった。 だからなのか、私はとてもいい事を思いついてしまった。きっととてつもなく甘く、淫靡なこと。 「キス、して」 一瞬彼女はびっくりした顔をして、 「いいよ」 と、顔を近づけた。 勿論、唇を合わせるだけで終わるわけもなく、私達はボーっとした頭のまま、互いに舌をねじ込ませていった。 「んっ、くちゅくちゅ」 目の前の可愛らしい目が潤み、とろんとしていた。 「んっ、ぁっ」 そして左手が伸び、私のスカートを捲り、 「私、こなたが欲しい」 「ん……かがみになら。ううん。奪って、かがみ」 そしてその日、私達は初めて肌を合わせた。 「おーっす。こなた」 私達の関係のことはまだ誰も知らない。少なくとも、つかさにはいつか絶対に言わなきゃならないと思う。 だけど、同性愛というのは社会的バッシングを受けやすいものの一つだ。 慎重に、進めていきたい。かがみとの仲を。 「かぁがみぃ~」 でもやっぱり、私は甘えずにはいられない。 2人きりでない時でも、私達の距離は少しだけ変わった。 「ちょっと、くすぐったいって」 人前でベタベタすることも少なくない。 「かがみん、いい匂い~」 私達は大変な道を選んでしまったと思う。でも絶対に後悔はしない。 「嗅ぐな、恥ずかしい!」 これからかがみと一緒に歩んでいけるのだから。 コメントフォーム 名前 コメント GJ! -- 名無しさん (2022-12-16 01 43 50) ナイス! -- 名無しさん (2021-03-22 00 50 12) 作者です。随分久しぶりにここに来ましたが、未だに感想を書き込んでくれている人がいるようで、幸せで胸が一杯です。 本当に有難うございます。 今はSSを書く機会もめっきり減っていますが、それでも少しずつ書いています。また機会があれば、こな×かがのSSも書きたいです。 -- 1-636 (2012-11-26 02 32 33) いい百合ですね♪ -- かがみんラブ (2012-09-20 12 17 08) ↓レズじゃなくて、百合って言って下さい( *`ω´) φ_ -- 名無しさん (2011-02-23 19 55 40) レズ萌えー// -- 名無しさん (2010-08-22 22 19 39) wwwwwwwwwwwwwwwwwwww -- 名無しさん (2010-08-11 20 33 04) お幸せに… -- 名無しさん (2010-06-17 17 56 45) 二人で幸せを勝ち取ってくださいっ!! -- 名無しさん (2010-04-25 17 21 35) 4話のあの数分間の描写からここまでふくらませるとは・・・ ゆっくり味わせていただきました -- 名無しさん (2009-11-08 01 13 17) 2人とも・・かっかわいすぎる・・ -- 名無しさん (2009-03-19 13 11 54) 細かい心理描写にドキドキさせられました。 作者GJ!! -- (2009-03-19 12 32 30) むう…この感動と言うか何かを表せない自分の文才が恨めしいな… とにかくすごく良かったですGJです! -- 名無しさん (2008-06-18 13 41 08) 水竜の上ビレ -- 名無しさん (2008-03-24 17 47 43)