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―――― 修学旅行 一日目 そうこうしているうちに修学旅行初日を迎えてしまった。あれからというものハルヒは 憂鬱とは無縁の一週間を過ごしていた。だからって俺をこき使うのだけは勘弁してほしい んだがな。離陸前の飛行機の中でもハルヒは、 「この飛行機落ちないかしらね。」 とか言っていた。ホントに落ちるから勘弁してくれ。俺はまだこの年では死にたくない んだがな。しかしハルヒとなら墜落しても次の日の新聞には”飛行機墜落、生存者4名” という見出しが紙面を飾りそうだ。そんな気がするのはなぜだろうか。 飛ぶこと数時間。俺たちは台北に降り立った。空はどこまでも青く透き通っていた。二 年生約三百五十人がひとつの飛行機で台湾に行くのは無理なため関西国際空港からの直 通組と広島空港経由組、福岡空港経由組に別れ台湾桃園国際空港へ向かうことになった。 俺とハルヒ・長門が所属する一組、古泉が所属する九組は福岡空港組であったために台 湾への到着は一番遅く、入国手続きを済ませ集合場所となっていたメインターミナル向 かうとそこは北高生であふれていた。 点呼と簡単と簡単な連絡を済ませた後、空港ビルの外へ出た。九台のバスに分かれて乗 り込み最初の目的地である台北101ビルへと出発した。バスガイドさんはなかなかの美 人で早くも谷口が話しかけている。それを眺める俺の横で、 「ニヤついてるんじゃないわよ。バカ・・・」 とハルヒがつぶやいたように聞こえたのは気のせいだろう。そんな台詞は何百回と聞か せられたからな。 バスから眺める台北の街には数々の高層ビルがそびえ立ち大阪や東京と比較してもまっ たく遜色はない。その高層ビル群の中でも頭ひとつ抜け出している台北101ビルは地上 508メートルで現在世界で最も高いビルである。ビルは台湾ならどこからでも見えるの ではないか?と思うほど空を真っ二つに割るようにそびえ立っていた。 ビルに入ると岡部が簡単な注意事項、夕食の集合時間をを告げ、俺たちは自由行動とな った。 「ねぇ、キョン。」 ハルヒが俺に話しかけてきた。 「どうした?ハルヒ?」 「一緒に展望台に行かない?」 正直な話、高いところはあまり好きでは無い。馬鹿と煙は高いところがなんとやら。ハ ルヒもバカとは言わないものの変人ではあるから高いところが好きなのだろう、などと思 いながら 「あぁ、いいぜ。」 とハルヒの申し出を快諾した。ここで断って不機嫌モードに入ろうものなら台北の街が 閉鎖空間に包まれてしまうかも知れぬ。海外にまで来て古泉に神人退治をさせるのもどう かと思うからな。さすがの俺もそこまで腐っちゃいないつもりだぜ。一応な。 八十九階の展望台へはエレベーターであっという間に着いた。さすが東芝エレベータ。 日本の技術は世界いt(ry 展望台から眺める台北の街は壮大そのもので俺とハルヒは口を開くことも無く眺めてい た。ふとハルヒに目をやるとハルヒは腕を組み、その目は感動しているというよりはなに かに期待しているような目であった。しばらくハルヒを眺めていると、ふとハルヒと目が 合った。ハルヒはニヤッと笑うと、 「何見てんのよ。このエロキョン。」 と言い放った。別に変わった目で見ていたつもりも無いんだが。ただ見とれてただけだ、 とでも言おうと思ったがやめておいた。 ハルヒは黙っていれば美少女である。それは一年半の間そばにいる俺が一番知っている。 これまで怒った顔、困った顔、泣き顔といろいろなハルヒの顔を見てきたがやっぱり笑顔 が一番似合うな。ハルヒには。こんな美少女と一緒に修学旅行を楽しめる俺は意外と幸せ 者なのかも知れない。 「キョン。夕食を食べたらもう一回ここに来ない?それまで下に戻って買い物でもしまし ょう。」 このビルの地上五階から地下一階まではショッピングモール、レストラン街となってい る。早くも俺の財布から諭吉さんやら一葉さんが逃げ出してしまうかと思ったが、さすが のハルヒもそこまで鬼ではないらしくウインドウショッピングを楽しむことができた。 夕食時間になり、四階のレストラン前に集合する。 「食べ終わったら私のところに来なさい!来ないと死刑よ!」 わざわざ台湾で殺されたくは無いんだがな、などと思いながら 「あぁ、わかったよ。」 と答え夕食にかぶりつく。台湾料理というのもなかなかいいものではないか。うん。中 華とは一味違った辛さ、うまみ。うん気に入った。 夕食を食べおわり谷口、国木田と談笑していると 「キョン!アンタ約束忘れたの?展望台に行くわよ!」 と見事に拉致されてしまった。谷口、国木田の両名は 「本ッ当に仲がいいね。」 「キョン。台湾に来てまでいちゃいちゃするのはどうかと思うぜ?」 と、気の抜けたことを言っているが俺は身の危険を感じたね。不機嫌なハルヒなら地上 五百メートルであろうと俺を突き落としかねないぜ? 危険を感じながらもハルヒに引っ張られ昼と同じようにエレベータに乗り込み展望台へ 向かう。ハルヒは俺を引っ張っているときになんかブツブツ言っていたな。八十九階の展 望台に到着し俺とハルヒは窓際に近づき外を見る。 展望台からの眺めは昼とはガラッと変わり百万ドルの夜景となっていた。ハルヒの態度も 昼とはガラッと変わり”女の子”の目になっていた。こんなハルヒをみたら俺でなくても 抱きしめたいと思うだろう。俺のそんな目に気づいたのかハルヒは、 「もう。スケベ。」 とつぶやいた。なんなんだろうね。コイツは。それ以外に言うことは無いのだろうか。 あっという間に集合時間となりホテルへとバスで向かった。ホテルは男子は一クラス当 たり二部屋の大部屋、女子には二人につき一部屋の個室が与えられた。何だこの待遇の違 いは。立ち上がれ、男子。今こそ女子の部屋に突撃するのだ。とは谷口の言葉。ちなみに その谷口は夜中に部屋を抜け出したのが岡部に見つかって職員部屋送りになった。バカめ。 ところで俺たちの部屋で”マッガーレ!”だの”ふんもっふ”だの変な声が聞こえると国木 田が言っているんだが・・・。気のせいだよな。 ――――一日目終わり 二日目1
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そういえば、国木田と谷口の存在を完全に忘れていた。 ひとまずこのみるきなる人物の事を聴いておく事にする。 二時間目の間は後ろにいるみるきを警戒して、俺は特にアクションを起こさず(寝そうになって精神棒ならぬ精神本で後頭部に打撃を食らって死にそうになったが)二時間目の終わりに聴こうとしたが、何故か俺の後頭部から視線は離れてくれないし出て行くと俺をストーキン グする仕草を見せるので、どうにかみるきが何処かに行くタイミングを見計らっていたわけだが、ようやく昼休み、みるきはフラフラっと何処かへ行ってくれた。 よし、弁当食いつつ情報収集だ。 「なあ。お前ら」 弁当を何故か楽しそうにかき回す谷口と、反対にごく普通に弁当を食らう国木田に 「涼門みるきさんについての情報を、すべて教えてくれ」 と言ってみた。例によって気の毒そうな顔になる二人だったが、別に答えない義理は無いようで 「彼女は・・・まぁおかしな人だ」 やばいのか? 「いや、お前のヤバイ基準がどの程度かは知らんが、そんなにヤバイ奴でもないとは思う」 どういうことだよ。 「まあ無意味なことは良くしてたぜ。友達の頭にジュースこぼしたら顔ごと舐めてジュースを除去しただとか、 中学校のズラ校長のズラを外してオリーブオイル染み込ませた布巾で拭いて殴られたり、雨降らなくてあわや干ばつって時期に、 校庭のど真ん中に立ってぼーっと空を見上げてなにやら呪文を唱えてたり」 「雨は降ったのか?」 「ヤツが立ち始めてから1時間くらいたったころ、突然入道雲が発生して大雨を降らせたとさ」 巫女さんの才能もあるようだな。 「ただ、そんなにヤバい奴じゃない。むしろ役に立つ奴だ。中学時代、クラスが荒れてどうも纏まらなかった時期に、不良どもに蹴られ殴 られしながらクラスを建て直した上に、不良グループを全員公正させちまったんだからな。・・・ってか、この話以前お前にしたような気がするが」 「気にするな。俺は若年性痴呆なんだ」 「お気の毒にな。そりゃ前から後頭部を鈍器で殴られまくってりゃそうなるよな」 今日に限らず結構殴られてたんだな。 「お前、マジで脳外科に行ったほうが良いかもしれないぞ」 「そうだよキョン。動脈瘤とかなら、発見さえ早ければ十分完治は可能だからね。大学病院なら知り合いが居るし、話通しておこうか?」 「大丈夫だ。冗談だよ」 「それよりキョン」 谷口はなにやらニヤつきながら俺のほうに身を乗り出し 「お前、涼門さんに気でもあんのかぁ?」 そりゃな。俺の萌え三大要素がすべてミックスされてるようなもんだからな、とは口が裂けても言えない。 「もし気があるなら・・・あきらめろ。他にもお前が好きになれそうな女性は一杯いる。悪いことは言わん。手を引いてくれ!」 どうした谷口! 「俺は・・・俺はどうやら彼女を好いてしまったようなのだよ、キョン君」 トチ狂ったか谷口。 「あのなんともいえない神々しいオーラ、もはや神性を感じざるをえないその知識量、大きな胸・・・ああ、俺はあの人の手にかかって死ぬなら、本望だ」 日本語おかしいぞ谷口。それに、その台詞はどこぞのスパイが言うような台詞であって、少なくともお前のような学なし能無し女っ気無しの男が言っていい台詞じゃない。 「聞き捨てならんぞその言葉」 アヘアヘ、と擬音がついてしまいそうだった弛緩した顔から一変、やたら眼光を利かした鋭い表情に変わり・・・きれてはいないようで、 相変わらず口が弛緩している。お前、その顔は正直ヤバイ。 「す・・・すまん、俺としたことが」 ヨダレを拭け。 そんな奇妙な問答をしているうちに、みるきはふらふらと教室に戻って来、その数分後昼休み終了のチャイムが校内に鳴り響いた。 さて、あっという間に放課後だ。 まあ色々と後ろのみるきと話をしてやろうかと思っていたんだが、何故か昼過ぎからはだんまりを決め込むし、第一何故か抜き打ちの模試とかいう奴が始まってしまったので、満足に会話すらする暇もなく、心的余裕も無かった。 ハルヒ並みの気まぐれ女のようだな。ほかにあの二人が融合してんだから、ちっとはましな精神構造になってるかと思ってたんだが・・・ ひとまず放課後、みるきの後を付けてみることにした俺であった。 「やぁ。僕もご一緒させて戴いてよろしいですか?」 俺の背後に怪しい奴。 古泉以外の誰でもない。 「何か見つけてくれるのであれば、ついて来てもいいぞ」 「そのつもりです」 ガチホモ疑惑ありの微笑み青年は、ご一緒させていただくとか言いながら先陣切ってみるきの後を追い始めやがった。 おい待てよ。 「正直、悠長に待ってる時間はありません」 どういうことだ?古泉は若干スピードを落とし俺と並び、小声で 「この時間平面上の情報が改変されかけているようです」 おいおい、お前も未来人的能力を持っちまったのか?どうしてそんなことが判る。 「先刻、他のTFEI端末・・・もとい喜緑さんからのコンタクトを受けて判明しました」 「このままだとどうなるんだ?」 「さあ、予測もつきません」 微笑少年の顔が歪む。 「最低でも長門さんを分離させないと危険です。精神構造は涼宮さんのままなのですから、長門さんの能力を駆使して何かをやらかす前に、どうにかして止めねばなりません」 「止めるってどうやって」 「だから、あなたは鍵なんです。なんでも協力します。なんなら僕のア・・・いえ、何したって構いません。とにかく早急に”鍵穴”を見つけ出してください」 お前、アレと鍵穴をかけようとしたな。 まあいい。みるきの後をつけるのが先だ。 さて、しばらくみるきの追跡を続けるわけだが、案の定部室棟への最短ルートをとるように歩き、部室棟の、ある一室へと消えた。 ある一室。 文芸部部室である。 いや、文芸部部室じゃないな。 SOS団部室だ。ちゃんとドアに張られてる紙にもそう書かれている。 ま、明らかにハルヒの字じゃなかったがな。 長門の字に近い、綺麗な明朝体だ。 「さあ、入りましょう。そんな虎穴に入る狩人みたいな顔しなくても大丈夫ですよ」 「どうしてそんなにお前は平静を保っていられるんだ」 「仮にも僕達はSOS団員なんですから」 「それはこの、三人が融合しちまった世界にも継承されているのか?」 「ええ。恐らく2人意外の誰かと涼宮さんが融合していたらその限りではなかったようですが」 大丈夫です。SOS団副団長として保障しますと言い残し、先に扉を開ける古泉副団長であったが、なぜか一瞬顔を顰めたかと思うと すぐに扉を閉めてしまった。 「どうした?入れよ」 「恐らくあなたがまず入るべきです、早く!」 「んだよ」 別にドア開けて入るくらいのカロリー消費には目を瞑れる。 「判った、先に入るよ」 ギィ、と扉を開けてそろりと中に入ると 長門がいた。 先日消えたはずの長門が。 「手を貸して」 顔だけ長門なグニョグニョは言った。 顔こそ長門だが、首から下は先ほど見たみるきのソレである。おまけにまるで擬態中の昆虫か遺伝子改良されたアメーバか何かのように、目まぐるしく首から下の色、形状が変化していく。 こいつは何かUMAの細胞でも移植した新人類か何かだろうか。 「早く、手を貸して。私の頭を掴んで手前に引っ張って。思い切り」 声は確実に長門のソレだ――ええい、どうとでもなりやがれ! 「古泉、みるきの肩掴んで後ろから引っ張れ!俺は正面から頭掴んで引っ張る!」 「わかりました!」 俺はまるで両面テープに引っ付いた保護カバーを引き剥がすかのごとく、長門の髪を掴んで思い切りを手前に引っ張った。 すまねえ、ハゲたら俺の所為だ。 すっぽん そういう擬音が聞こえてもおかしくない感触を残して、長門のようなものは目まぐるしく変化を続けていたみるきの体から引き離された。 古泉は勢い余って持っていたみるきの体ごと後頭部からダイブする。 「あいたたた・・・」 確かにヤバイダイブの仕方だったが、そんなに痛そうには見えんぞ、古泉。 ははっ、と自嘲めいた笑いを漏らすと、よっこらせと一緒に倒れたみるきの体を引き起こし、壁にもたれかけさせた。 分離?いや脱皮という方が正しいかもしれない。だが、脱皮と違って抜け殻にあたるみるき・・・いや長門が抜けたから”みるひ(仮)”としておこう・・・の体は色を変え、光を放ち、ついでに形まで変化させまくっていたし、見た感じ長門が新型長門へと変化を遂げたわけでもないようだ。 しばらく何故か顔を手でぺたぺた触っていた長門だったが、気が済んだのか ふぅ、と珍しく安堵にも似た溜息をつき 「ありがとう」 といって、俺と古泉を特に何の感慨もなさそうに眺めた。 ま、少々申し訳なさそうな色を液体窒素的な冷たさの瞳に浮かべてはいるが。 いやいや、例には及ばんさ。 しかしまぁ、こうもあっさりと長門が分離してくれるとは。 「現在新規情報の整理を実行中・・・完了」 長門は機械的な言葉をつぶやき、 「非常に苦労した。2時間と25分をかけて”私”の存在確率を上げ、その後融合しかけていた私の意識と情報野を強制的に分離、その後物理的分離を実行した」 未だ絶賛変化中のみるひ(仮)をちょっと気味悪そうに眺めながら古泉が 「強制的に、とはどういう風にです?」 「癒着したデータを構成するセルの一部をパージ、このインターフェース内に存在するバックアップデータの一部を利用して擬似再生した」 という事は、昨日の消滅前の長門ではないということか? 「結果的にはそう。一部の情報を失っていたりもするし、涼宮ハルヒおよび朝比奈みくるに起因する情報の一部を持っていたりもする。失った情報は殆ど再生されたため、問題ない。しかしながら私の情報因子が二人に深く侵食していたため、パージし情報を擬似再生する際他の二人の情報も顕著に再生された」 「どういうことだ?」 「私は、ほか二人を構成する情報の一部を持った」 なにやら長門は俺が見たことの無いほどのエネルギーを眼孔に湛えて 「新・長門有希ということ」 力を込めて言い放った。 前 次
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新川「涼宮ハルヒのお願い!ランキング!!」 多丸兄「今回のテーマはこちら!!」 森「本当に可愛い北校生がしりたーい!!」 多丸弟「そしてそれらの美少女たちを審査する美食家アカデミーはこちらぁっ!!」 キョン「どうも、キョンです。座右の銘はポニーテールは人類の宝です」 古泉「これはこれは……古泉です。今回はよろしくお願いしますよ、んっふ」 谷口「女の審査は任せろ!!!なんなら俺的北校美少女ランキングを公開してm」 国木田「国木田です。始めまして」 多丸弟「以上の四人の美食家アカデミーが、それぞれ10点ずつの持ち点、合計40点満点で審査してランキングを作成するぞ!!」 新川「機関のブレインたちが汗水垂らして作成した予想ランキングはこちらぁっ!!」 第一位 涼宮ハルヒ 第二位 朝比奈みくる 第三位 長門有希 第四位 鶴屋さん 第五位 喜緑江美里 第六位 朝倉涼子 第七位 阪中 佳実 森「上位三位はやっぱりSOS団が占めてるみたいね」 多丸兄「果たして一番可愛い北高生の称号は誰の手に!?それでは参りましょう!!まず第七位はこの方!!」 新川「阪中さん!!さて、美食家アカデミーたちの反応は?」 キョン「うーん……普通なんだよな」 古泉「普通ですね……」 谷口「うん、これといった特徴がねえんだよなあ……たしかに顔も可愛いし、スタイルだって悪くないんだけど……なんだかなあ」 国木田「普通に見てもかなり可愛い方だと思うけど、やっぱりこれだけ個性の多い北高生の中ではなんだか見劣りするものがあるよね。あと特徴的な口調だけど……僕的にはかなりマイナスかな。普通のしゃべった方が可愛いと思う」 多丸弟「早速美食家たちの厳しい指摘の声!!さて、開発者……もとい、美少女たちの反応は!?」 阪中「みんなひどいのね」 ハルヒ「どうどう」 みくる「ていうかなんですかぁこの企画……」 長門「普通に引く」 森「番組の内容自体に不満が集中しているぞ!」 新川「……」 多丸弟「さあ、気になる得点は!?」 キョン「7点です」古泉「5点です」谷口「4点です」国木田「6点です」 合計 22点 ハルヒ『うわぁ……厳しいわね』 みくる『涼宮さん、そんなこと言ってる場合じゃないですよう』 朝倉『谷口君にこんな点数付けられる筋合いないと思うわ』 長門『そう。あれは人類の最下層に位置する個体。採点する資格も無ければ、気にする必要も無いものと思われる』サスサス 阪中『うう……』 長門(ここで媚売っとけばシュークリームが) 新川「さて、ここまでは機関の予想通りの結果に!!続いて第六位に美食家アカデミーの選択した美少女は!?」 多丸兄「涼宮ハルヒ!!これは機関予想を大きく覆しての第六位だ!!美食家アカデミーたちの反応を見てみると?」 キョン「ハルヒか……黙っていてなおかつポニーテールにしてたらかなりいいんだけどな……でも最近髪短くしてるし騒がしいし……」 古泉「うーん……立場上言えませんでしたが、彼女あなたがいないときよく団室で放屁されるんですよ」 キョン「マジか」 古泉「えらくマジです。……そんなこともあって残念ながら僕もあまり高評価は下せませんね」 谷口「俺は一度振られた女には低評価を付ける事にしているんだ。それに性格も腐ってやがるしな」 国木田「そんな事誰も聞きたくないし、言っちゃだめだよ谷口。涼宮さんか……僕はそこまで悪いとは思わないけどな……でも、文化祭の映画のときのことキョンから聞いたんだけど、朝比奈さんにあんなことするのは良くないと思うな。でも最近はそんなことしないみたいだからそこまで悪い評価は上げられないよ」 多丸兄「世界が滅びそうな厳しいコメント!!美少女達の反応は!?」 ハルヒ『むきー!!!!』 みくる『涼宮さん落ち着いて……』 長門『正当な評価』 ハルヒ『有希!?』 長門『今のは腹話術。朝倉涼子改めまゆりんの陰謀』 朝倉『ちょっと長門さん!?まゆりんってなによ!?』 長門『ユニーク』 ハルヒ『……ともあれキョンと古泉くんにはおしおきが必要ね』 鶴屋『あははっ、キョンくんにげてー!!にょろ!!』 喜緑『なかなか厳しいようですね』 森「あまりに厳しい審査に、動揺が隠せないようだぞ!」 多丸弟「それでは気になる点数は!?」 キョン「6点です」古泉「6点です」谷口「3点です」国木田「8点です」 合計23点 ハルヒ『ぬがああああ!!!!!!!』 みくる『涼宮さん!!握りしめすぎて爪が掌に刺さって血がだくだく出てます!!危ないです!!』 長門『ユニーク』 ハルヒ『有希!?』 長門『見ざる聞かざる言わざる。まゆりんの陰謀』 朝倉『知らないわよ!?』 鶴屋『知らざるだねっ!!』 森「なんだか本人以外特に気にしてないみたいだぞ!」 ~この番組は世界の明日を作る、機関の提供でお送りしています~ CM中 キョン「………そろそろ説明してもらおうか」 古泉「なにがですか?」ニコッ キョン「とぼけんなって。あと古泉スマイルとかそういうのマジでいらないから」 古泉「んっふ、これは手厳しい」 キョン「だれの陰謀だ。ハルヒか?」 古泉「いや、今回は涼宮さんとは無関係ですよ。ついでに言うと貴方の親友の佐々木さんも無関係です」 キョン「じゃあなんでこんなことを」 古泉「分からないのかね?」キリッ キョン「え?」 古泉「そっちの方が、面白いだろう」ダイハツッ キョン「………」 古泉「いや、止めましょうって。無言で鉄パイプとか振りかぶっても面白いことなんてありませんから」 ~ここからは神人たちから世界を守る、機関の提供でお送りします~ 新川「予想一位のまさかの六位転落!!大波乱のまま続いて第五位に選ばれたのは!?」 多丸兄「朝比奈みくる!!またしても機関予想を大きく裏切る結果に!!美食家アカデミーたちは一体どのような反応を示したのか!?」 キョン「この人は……可愛らしいな。そして巨乳なんだが……」 古泉「貴方の仰りたい気持ちは理解しました……何かが足りないんですよね?」 キョン「ああ、そうだ……そして、言っちゃ悪いが影が非常に薄い。……残念だ」 谷口「俺的美的ランクで言えばAAAなんだが……たしかにキョンたちが言うとおり、何かが足りないんだよな」 国木田「すごく阪中さんとケースが似てるんだけど……やっぱりこの人の場合、お茶汲みメイドのキャラ設定とか、様々なキャラが涼宮さんによって後付けされたものだから 微妙なんじゃないかな?やっぱり個性ってものはその人自身でつけるものだし……」 多丸弟「北高のマドンナと称される朝比奈みくるの評価に意外すぎる厳しい声が!!これを受けて美少女たちの反応やいかにっ!?」 みくる『殺す。[禁則事項]で[禁則事項]して殺す』 ハルヒ『はっ!!みくるちゃんからドス黒いオーラが立ち上ってるわ!!』 長門『当然。意味のない脂肪をつけていたらだれでもこうなる』 ハルヒ『有希!?』 長門『まゆりん、いい加減にしてほしい』 まゆりん『長門さん?いい加減にしないと、今日のハンバーグあなたのだけ豆腐のやつにするわよ?』 長門『なぜあんなことをしてしまったのか自分にも理解できない。深く反省している。もうしない』 朝倉『よし』 森「どうやらSOS団の女性陣は怒ると人格が変わるようだぞ!」 新川「さて気になる点数は!?」 キョン「7点です」 古泉「6点です」 谷口「7点です」 国木田「7点です」 合計27点 みくる『でも涼宮さんより4点も上なんだぁ……ふふっ』 ハルヒ『みくるちゃん!!それどういう意味よ!?』 長門『超低空飛行な争い。ゆきりん見てられない』 ハルヒ『有希!?』 長門『まy……喜緑江美里改めわかめ星人は少し自重してほしい』 喜緑『長門さん?今なんと?』ニッコリ 長門『ご……ごめんなさい。ぶたないで。わたしの髪の毛をわかめに変えないで』ガタガタ 森「どうやらSOS団内の友情に亀裂が生じてきたようだぞ!」 多丸弟「さて!!大波乱が続くなか、お次は第四位!!ランクインしたのは……」 多丸兄「喜緑江美里!!美食家アカデミーの感想は?」 キョン「おお……喜緑さんか…!!美人だ……ただ」 古泉「ええ………この美貌には、朝比奈さんや涼宮さんとは違った何かを感じます。本当に気品があって上品そうな美人ですね……ですが」 谷口「うほっ、この人ってあの生徒会きっての美人の喜緑江美里さんじゃねえか!!お綺麗だなぁ……惚れ惚れするぜ!!……だが」 国木田「やっぱりこの人は上級生だけあって大人っぽさがあるよね。この人にも僕憧れてるんだ。ちょっとね。……けど」 キョン「わかめだ」 古泉「わかめですね」 谷口「わかめだな」 国木田「わかめだね」 喜緑『パーソナルネーム「キョン」「古泉一樹」「谷口」「国木田」の情報連結の解除を申請』 朝倉『ちょ、落ち着いてよね』 長門『そう。貴方がわかめなのはもはや避けようのない規定事項』 ハルヒ『有希!?』 長門『阪中佳実、出番がないからといってわたしにアフレコをするのは推祥できない』 阪中『はひっ!?』 鶴屋(出番がないのはわたしも同じっさ) 森「出番争いという新たな争いが起こっているようだぞ!」 新川「さて、気になる得点は!?」 キョン「8点です」 古泉「8点です」 谷口「8点です」 国木田「7点です」 合計31点 森「ついに大台の30点突破!!これに対して美少女の反応は!?」 みくる『くそワカメが。わたしの方が絶対可愛いわ』(すごいですぅ喜緑さん) 鶴屋『みくる、逆、逆』 喜緑『……まあ、わかめと言われたのは癪に障りますが、30突破は気分がいいですね』 長門『』スック トトトト 喜緑『あら、長門さん。なんですか?』 長門『TFEI最弱が』ボソッ 喜緑『』ピクッ 長門『』トトトト ペラッ 朝倉『は、は、ははは……』 阪中(帰りたいのね) 森「女の争いは恐ろしいぞ!」 新川「続いては第三位!!と、その前に……」 森「涼宮ハルヒの番外!ランキング!!」 多丸弟「ノミネートされたのはこちらのメンバーだ!!」 機関予想 第一位 佐々木 第二位 渡橋泰水 第三位 周防九曜 第四位 橘京子 多丸兄「こちらの佐々木団+αも美食家アカデミーに審査してもらおう!!」 森「本当は妹ちゃんやミヨキチちゃんもいれたかったけど、妹ちゃんはキョンくんの肉親だし、ミヨキチちゃんはあまりにも資料が無かったのでカットさせてもらったぞ!」 新川「さて番外編第四位は……この人だあっ!!!」 多丸弟「佐々木さん!!さて、美食家アカデミーたちの反応は!?」 キョン「佐々木か……可愛いんだけどなあ……なんかもうひとつ」 古泉「んふ、そうですね……非常に魅力的なんですがね」 国木田「やっぱり男性だけに僕っ娘ってキャラはいいんだけど……なんだか無理してる感じがあるよね。無理してまで個性を作っちゃいけないよ」 谷口「ああ……それに言っちゃ悪いが胸が小せえな。かなり可愛いけど」 新川「さて、気になる得点は!?」 キョン「8点です」 古泉「8点です」 谷口「8点です」 国木田「6点です」 合計30点 森「本編と同じく大波乱!!でも一発目にして30点の大台を突破したぞ!」 新川「非常にレベルの高い番外編!!続いては第三位!!選ばれたのは……」 多丸弟「周防九曜だあっ!!さあ、美食家アカデミーたちはどのような感想を抱いたのか!?」 キョン「なんだかんだ言っても九曜も可愛いよな、結構」 古泉「そうですね。彼女には彼女の魅力が多大にあります」 キョン「実は、俺踏切で襲われてアイツが微笑んだとき『耐えられたのは俺でこそだ』とか偉そうな事いってたけど正直昇天するかと思ったよ」 古泉「んふ。それは興味深い。またいつか詳しくきかせていただくといたしましょう」 谷口「す、周防さん……」 国木田「大丈夫、谷口?顔、酷い事になってるよ」 谷口「……ほっといてくれ」 新川「さて、気になる点数は!?」 キョン「9点です」 古泉「9点です」 谷口「6点です」 国木田「8点です」 合計32点 森「どうやら谷口くんはいきなり振られたのが相当ショックだったみたいだぞ!」 多丸兄「さあ番外編第二位は……この人!!」 藤原「渡橋泰水!!さて、気になる美食家アカデミーたちの反応は……?」 キョン「ヤスミか……可愛かったなあ」 古泉「ええ……もう二度と会えないのが残念でなりません」 キョン「……なあ、古泉よ」 古泉「なんですか?」 キョン「どうせ幻だったんなら……一回ぐらいやってても誰にも気付かれなかったよなあ……勿論警察にも」 古泉「おやおや……まさかこのような事で貴方と考えが一致するとは思いもしませんでしたよ」 キョン「……やっぱりお前とは親友だ」 谷口「可愛いなぁ……うん。可愛い。でもちょっとムネが小さいか?」 国木田「死になよ谷口。うん、でも涼宮さんが言ってたんだけど彼女って中学生なんだって。だから胸が小さいのは当然じゃないのかなあ」 谷口「JCだって…… み な ぎ っ て き た ぜ ! ! !」 国木田「ほんと帰りなよ」 新川「さて、気になる点数は!?」 キョン「9点です」 古泉「10点です」 谷口「8点です」 国木田「8点です」 合計35点 森「遂に古泉から満点が出たぞ!」 藤原「さあ!!残る第一位はこの人!!橘京子だぁっ!!!」 多丸兄「さて、美食家アカデミーたちの感想は!?」 キョン「おうふ……いやはや、朝比奈さん誘拐事件の犯人とはいえ……可愛いよなぁ」 古泉「この純真無垢な笑顔は……敵対組織ながら、かなり来るものがあります。そして仕事時にする子悪魔的笑みもまてbeautifulですぞ」 谷口「可愛いなあ……うん、このぽやーっとした感じがなんとも」 国木田「なんだか天然っぽい子だね。それもこの笑顔は作った天然じゃなくて真の天然だ。いまどき珍しい子だと思うよ」 新川「さて!!番外編第一位の点数は!?」 キョン「9点です」 古泉「9点です」 谷口「9点です」 国木田「10点です」 合計37点 森「惜しくも40点には届かなかったものの、本日最高得点をマークしたぞ!」 藤原「さて、CMの後は遂に本編ベスト3の発表だ!!」 ~この番組は●<マッガーレ印の機関でお送りします~ CM中 キョン「いやー……九曜に橘。そしてヤスミに佐々木……前回の事件の女性陣は実に素晴らしい!!」 古泉「全くです。いやはや、橘さんに至ってはあの事後思わずメールアドレスと電話番号を聞き出してしまったくらいですから」ハナタカダカー キョン「古泉……威張ってるつもりかもしれんが、俺だって橘のメールアドレスくらい持ってるぜ。そしてお前のとは文字列が違う……これがどういう意味だか分かるか?」 古泉「いえ……」 キョン「古泉。俺のとお前のと、ドメインを見比べてみろ」 古泉「はいはい……貴方のは……codomo.ne.jp……僕のは……orz」 キョン「そいつはサブアドだ」 古泉「ちくしょう」 ~ここからは世界の明日を担う機関の提供でお送りします~ 新川「さて!!遂に本家第三位の発表だ!!第三位は……この人!!」 藤原「長門有希だぁっ!!」 長門『……不服』ガンガン 朝倉『ちょ、長門さん、落ち着いて』 長門『黙れまゆりん』 藤原「さあ!美食家アカデミーたちの反応は!?」 キョン「長門か……正直、消失世界での長門の微笑み、それに帰ってきた後のありがとうはかなり俺の胸にくるものがあったな」 谷口「一年の最初こそ俺的美的ランクA-に留まっていたが……キョンたちと一緒にいるようになってからは雰囲気も柔らかくなったし、普通にAAランクくらいなら上げれるレベルになってきてるぜ」 国木田「そうだね……うん、谷口の言うとおり、かなり印象が柔らかくなったと思うな。今までは少し近寄り難かったんだけど……最近は接点こそ無いにしろ、接点さえあればかなりフレンドリーになることが出来ると思う」 藤原「ここまではかなりの好評価だ……しかし、ここにきてあの男が牙をむく!!」 古泉「あのー、確かに最近……特にこの12月から春にかけてかなり近寄りやすく、人間らしくなってますが……その、彼女少し黒いような印象を受けますね。なんだか自分というものを確立して、自信が出てきたのは結構だと思うんですが……少しそれを前面に出しすぎかなといった印象を受けますね」 藤原「ここまで同調同調を繰り返し、あまり自分の意見を出さなかった古泉がまさかのダメ出し!!これを受けて女性陣は!?」 長門『パーソナルネーム「ガチホモ」の情報連結の解除を申請』 朝倉『長門さん落ち着いて……ほら!!そんなことするから阿部高和さんがいなくなっちゃったじゃない!!』 長門『うかつ』 喜緑『うふふ、偉そうなことを言っていたわりには張り合いの無い順位ですね』 長門『たった一番とはいえわたしはあなたの上。あなたにわたしを皮肉る資格は無いものと思われる』 喜緑『おや、皮肉に聞こえましたか?そんなつもりはさらさら無かったんですけど』 森「皮肉というよりは、ただの悪口だぞ!」 藤原「さて、気になる得点は!?」 キョン「9点です」 古泉「8点です」 谷口「9点です」 国木田「9点です」 合計35点 長門『あなたより4点も上』ドヤアアアアアアアアアアアアア 喜緑『くっ……』ギリッ 鶴屋『有希っこすごいねっ!!』 長門『まだ出ていないあなたが言っても嫌味にしかきこえない』 ハルヒ『それにしてもSOS団の女性陣がこんな順位までなんて……鍛えなおしよ!!』 みくる『六位が何言っても説得力ないですよう』 ハルヒ『みくるちゃん!?』 みくる『ひえー!禁則事項ですぅ!!』 阪中(わたしなんてもう面目丸つぶれなのね) 森「なんだか知らないけど殺伐としているぞ!」 藤原「さて第二位発表の前にスタジオ予想だ!!」 森「朝倉涼子と鶴屋さんのどっちが一位か、スタジオで決めて欲しいぞ!」 佐々木「ふむ……とりあえず藤原くん、こちらにもどっておいで」 藤原「ふんっ、禁則事項だ」 橘「意味が分からないのです!」 九曜「――――チーム――――佐々木は――――橘京子と―――――佐々木某――――――チーム――――藤原は――――わたしと――――――シスコン未来人――――――――」 佐々木「九曜さん説明ありがとう。ふむ……僕の順位が最下位だったのは後でキョンにじっくり訊いてみるとして……やっぱり勝つのは鶴屋お嬢さんではないかな?」 橘「きっとそうなのです!!わたしに亀さんくれたのです!!」 佐々木「橘さん……言っては悪いが、そのう……なんだかアホの子になってないかな?」 橘「気のせいなのです!!天才の指輪も持ってるのです!!雑誌で売ってたのです!!」 佐々木(うわぁ……真性のアホだこいつ) 藤原「ふん、僕は癪だがあのTFEIに賭けてやろう」 九曜「―――どう――――して――?」 藤原「ふんっ、僕は太ももが好きだからd………あ」 佐々木「…………」 橘「…………」 九曜「…………」 藤原「いっそ殺せよ」 佐々木チーム……鶴屋さん 藤原チーム……朝倉 新川「さて、どちらの予想が正しいのか!?」 藤原「運命の瞬間!!第二位は……この人だ!!」 多丸弟「鶴屋さん!!!さて、美食家アカデミーは、どのようなジャッジを下したのか!?」 キョン「おお……鶴屋さんか……この人は正真正銘の天才だ……!!そして何よりもお美しい……」 古泉「んふ。まさかこれほどまでとは……いやはや、鶴屋家もあと50年、いや70年は安泰ですね」 谷口「いや、素晴らしい。マジですごい。それしか言い表す言葉がねえな」 国木田「流石、僕の進路……いや、人生を変えた人だよ」 多丸兄「美食家アカデミーのこの高評価!!女性陣の反応は!?」 鶴屋『みんな……こんな風に思っていてくれてたなんて……お姉さん感激だよっ!!』 みくる『すごいですぅ鶴屋さん』 ハルヒ『流石はわがSOS団の名誉顧問ね!!ううん、貴女には名誉顧問なんて肩書きは生ぬるいわ!!永世最高名誉顧問に任命します!!』 鶴屋『ハルにゃん、ありがとっ!!』 長門『』シュッシュッ 朝倉『どうしたの、長門さん?』 長門『次に呼ばれる不届き者を抹殺するための特訓。まさか情報統合思念体はそのような不届き者は抱え込んでいないと思われるが、例え抱え込んでいたとしても大丈夫。その場でスタッフがおいしくいただきました』 朝倉『ぴいっ!』 森「やっぱり恐ろしいぞ!」 藤原「さて気になる点数は……これだ!!」 キョン「10点です」 古泉「10点です」 谷口「10点です」 国木田「9点です」 合計39点 新川「一見完璧を思われた高評価に国木田氏が待ったをかけた!!その理由は!?」 キョン「国木田……?どうしてお前が9点なんだ?」 国木田「違うんだよキョン……確かにあの人は天才だ。でもね……まだ高みに昇る事ができる天才なんだ」 国木田「今彼女は天才の中の頂上にいるんだ。でも、まだだ。あの人ならまだそこから新しい頂上を積み上げて作っていくことができるんだ……そして、頂上の頂上まであの人が行き着いたとき……そのときに僕は10点を付けたいんだ」 谷口「国木田……」 古泉「国木田くん……」 キョン「ものさしが……違うんだな」 国木田「……そういうこと」 鶴屋『決めた。わたし国木田くんと結婚するよっ』 みくる『ちょ、そんないきなり』 鶴屋『わはは、冗談さっ……でも、そんな風にみてくれてる人がいるって、凄く大切なことだよねっ!!』 朝倉(どうしよう、なんか……とてもじゃないけど言い表せないエラーがどんどん湧き出てきてる) 森「あまり評価が高すぎるのも考え物だぞ!」 新川「そして遂に第一位!!朝倉涼子さんだ!!!」 藤原「さて、美食家アカデミーたちの反応は?」 キョン「なんてこった…………」 古泉「この眉毛………そしてこの眉毛……」 谷口「そしてこの健康的な太もも……」 国木田「鶴屋さんとはまた違う美しさがここにある……」 キョン「……なんだろう、二回刺されたのがなんだか光栄に思えてきた」 古泉「機関の見解は大きく間違っていました……彼女こそ、真の神です。それ以外にありえません」 谷口「AAランク+なんてヤワなもんじゃねえ……こいつは、いや、このお方はAAAAAランクだ!!」 国木田「うん!非のうちどころがないよ!」 藤原「さて、点数は!!」 キョン「10点です」 古泉「10点です」 谷口「10点です」 国木田「10点です」 合計40点 新川「満点だああああ!!!本日最初の満点に女性陣の反応は!?」 ハルヒ『朝倉!!アンタ凄いわ!!本日をもってアンタをSOS団副団長に任命します!!』 朝倉『あ、ありがとう!……あれ?でも古泉くんは?』 ハルヒ『ああ……古泉くんは 13の時点でキョンの前任ポストの雑用係に降格よ』 みくる『前任……?あのぅ、キョンくんは?』 ハルヒ『奴隷に降格』 朝倉(ひどっ) 朝倉『……ていうか長門さん』 長門『なに』 朝倉『どさくさに紛れて眉毛剃ろうとするの止めてちょうだい』 長門『そう』 鶴屋『まあ何はともあれおめでとう!!』 一同『おめでとう!!(なのね)』 朝倉『うう……ありがとう!!』グスッ 森「というわけで、ランキングは以上のものとなったぞ!」 機関予想 結果 一位 涼宮ハルヒ |一位 朝倉涼子 ↑ | 二位 朝比奈みくる |二位 鶴屋さん ↑ | 三位 長門有希 |三位 長門有希 → | 四位 鶴屋さん |四位 喜緑江美里 ↑ | 五位 喜緑江美里 |五位 朝比奈みくる ↓ | 六位 朝倉涼子 |六位 涼宮ハルヒ ↓ | 七位 阪中 |七位 阪中 → シャミセン「というわけで、藤原チームの勝利ー!!!」 藤原「ふんっ当然だ」 佐々木「そういえば藤原君司会だからそりゃ当たるよね」 橘「ズルなのです!!」 九曜「―――――――ズル」 藤原「俺、泣いてもいいかな?」 森「次回の涼宮ハルヒのお願い!ランキングは!」 新川「一番強い組織をしりたーい!!」 藤原「というわけで、皆さま、また来週!!」 ~この番組は明日を守る●<ふんもっふ! 機関の提供でお送りしました~ <後日談> ~数日後~ ハルヒ「キョン!!これ焼却炉に捨ててきて!!」 キョン「へいへいただいま」 長門「古泉一樹」 古泉「はい、なんでしょう」 長門「このへんの空気が悪い。恐らく肩が凝っているせいだと思われる。早くこの辺の空気の肩を揉むことを推奨……いや、命令する」 古泉「いや……空気に肩はないかと」 長門「逆らう気?」 古泉「めっそうもございません閣下」モミモミ 長門「……なぜ空中で手を動かしているの?あなたのような変態は即刻立ち去るべき」 古泉「……了解しました」 朝倉「なるほど。こうやってお茶っ葉を蒸らすのね」 みくる「そうですよ……うまくなってきましたね」 ~部室の外~ 古泉「……しくしく」 キョン「お、どうしたんだ古泉……またアレか?」 古泉「そうですう……めそめそ」 キョン「そうか……それはそうと、国木田と鶴屋さん、付き合い始めたらしいな」 古泉「そうなんですか?それはおめでたいですね」 キョン「……お互い親友どうし、この辛い状況を乗り切っていこうぜ」 古泉「………はい!!」 完
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涼宮ハルヒの憂鬱 2期 この作品は1期と2期を合わせて時系列順に並べ、1期分と新作が混在する形で放送されています。 詳しい情報はWikipedia等を参照してください。1期放送時のコメントについてはこちら⇒-涼宮ハルヒの憂鬱 今回の1期分は内容がDVD版の再編集になるのでコメントは今回の放送内容orDVD版用のコメントです。 以下実際放送されたに1期分+新作の順序で並べてあります。 ※ 以下のリストは推測の部分が含まれます。確定次第修正していきますのでご了承下さい。 ※ 1期分は暫定で放送時の跡地を載せて置きますがDVD版で多いのがあれば是非編集orお知らせ下さい。 第01話 「涼宮ハルヒの憂鬱Ⅰ」 第02話 「涼宮ハルヒの憂鬱Ⅱ」 第03話 「涼宮ハルヒの憂鬱Ⅲ」 第04話 「涼宮ハルヒの憂鬱Ⅳ」 第05話 「涼宮ハルヒの憂鬱Ⅴ」 第06話 「涼宮ハルヒの憂鬱Ⅵ」 第07話 「涼宮ハルヒの退屈」 第08話 「笹の葉ラプソディ」 (新作) 第09話 「ミステリックサイン」 第10話 「孤島症候群(前編)」 第11話 「孤島症候群(後編)」 第12話 「エンドレスエイト」 (新作6/18) 第13話 「エンドレスエイト」 (新作) 第14話 「エンドレスエイト」 (新作) 第15話 「エンドレスエイト」 (新作) 第16話 「エンドレスエイト」 (新作) 第17話 「エンドレスエイト」 (新作) 第18話 「エンドレスエイト」 (新作) 第19話 「エンドレスエイト」 (新作) 第20話 「涼宮ハルヒの溜息Ⅰ」 (新作) 第21話 「涼宮ハルヒの溜息Ⅱ」 (新作) 第22話 「涼宮ハルヒの溜息Ⅲ」 (新作) 第23話 「涼宮ハルヒの溜息Ⅳ」 (新作) 第24話 「涼宮ハルヒの溜息Ⅴ」 (新作) 第25話 「朝比奈ミクルの冒険 Episode00」 第26話 「ライブアライブ」 第27話 「射手座の日」 第28話 「サムデイインザレイン」 第01話 「涼宮ハルヒの憂鬱Ⅰ」 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 備考 sm6629928 25 00 727 75 第02話 「涼宮ハルヒの憂鬱Ⅱ」 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 備考 sm6704086 24 00 1611 65 第03話 「涼宮ハルヒの憂鬱Ⅲ」 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 備考 sm6769085 24 59 2091 138 第04話 「涼宮ハルヒの憂鬱Ⅳ」 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 備考 sm6836478 24 14 1354 89 第05話 「涼宮ハルヒの憂鬱Ⅴ」 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 備考 sm6906857 24 59 1648 48 第06話 「涼宮ハルヒの憂鬱Ⅵ」 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 備考 sm6981499 23 59 1964 111 第07話 「涼宮ハルヒの退屈」 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 備考 sm7047188 24 00 1264 43 第08話 「笹の葉ラプソディ」 新作 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 備考 sm7115372 25 00 16772 6551 sm7115755 24 59 4050 919 第09話 「ミステリックサイン」 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 備考 sm7184541 24 29 593 30 第10話 「孤島症候群(前編)」 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 備考 sm7251017 23 59 271 7 sm7250839 23 59 14 7 第11話 「孤島症候群(後編)」 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 備考 sm7318048 24 00 1587 85 第12話 「エンドレスエイト」 新作 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 備考 sm7383064 25 00 7508 3512 エンドレスエイト1 sm7383194 25 00 3079 767 第13話 「エンドレスエイト」 新作 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 備考 sm7449723 25 00 2361 1292 エンドレスエイト2 第14話 「エンドレスエイト」 新作 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 備考 sm7518026 25 00 4964 1896 エンドレスエイト3 sm7518188 25 00 1386 235 第15話 「エンドレスエイト」 新作 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 備考 sm7587899 25 00 4998 2670 エンドレスエイト4 sm7588539 24 59 787 122 第16話 「エンドレスエイト」 新作 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 備考 sm7654935 25 00 3745 2051 エンドレスエイト5 第17話 「エンドレスエイト」 新作 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 備考 sm7724152 25 00 9327 4337 エンドレスエイト6 第18話 「エンドレスエイト」 新作 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 備考 sm7793125 25 00 6336 3877 エンドレスエイト7 第19話 「エンドレスエイト」 新作 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 備考 sm7861937 25 00 2557 1423 エンドレスエイト8(終) sm7862856 25 00 2376 1404 第20話 「涼宮ハルヒの溜息Ⅰ」 新作 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 備考 sm7929652 25 00 4664 1834 第21話 「涼宮ハルヒの溜息Ⅱ」 新作 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 備考 sm7994043 25 00 2666 1400 第22話 「涼宮ハルヒの溜息Ⅲ」 新作 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 備考 sm8061607 25 00 3419 1779 第23話 「涼宮ハルヒの溜息Ⅳ」 新作 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 備考 sm8127667 25 00 2032 1356 第24話 「涼宮ハルヒの溜息Ⅴ」 新作 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 備考 sm8193226 25 00 1949 1149 第25話 「朝比奈ミクルの冒険 Episode00」 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 備考 sm8261992 24 30 64 23 第26話 「ライブアライブ」 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 備考 sm8356566 24 15 1531 18 第27話 「射手座の日」 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 備考 sm8442254 23 25 335 16 第28話 「サムデイインザレイン」 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 備考 sm8459880 24 45 290 30
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涼宮ハルヒの奇妙な憂鬱 1. 百聞は一見にしかずと昔の人は良く言ったもので、ついさっきまで車の中で俺に向かって長々と持論を浴びせてきたこの男──古泉一樹──が言った事に間違いは無かった。ここは…この世界は、物理法則が全てを支配する超常識的な俺達の世界とはかけ離れていたのだ。今目の前で起きている事実を端的に説明するとなると次のとおりだ。 “古泉は、赤色に鈍く光る球体に包まれ、ビルを一心不乱になぎ倒している巨人相手に空中を自在に舞いながら攻撃している” 俺の生きてきた十何年もの間にこのような夢のような出来事は一切起こらなかった。…そんな出来事があって欲しいと心から願っていた時期もあるにはあったが、しかしこんな夢まぼろしな光景なんぞ、『起こりえる訳がないッ』と考えるのが正解だと既にお子様を卒業した20代目前の俺の頭は解答した。 この常識ハズレな展開が今まさに起こっている状況で、俺は意外にも冷静だった。…冷静に考えている事は…そう、古泉が延々と喋ったうちの一部だ。 “スタンド” スタンドとは生命体が持つ精神エネルギーが力を持ち、実体化したもの。各々に応じた特殊な能力を身に付けているということ。そして。 全てのスタンドは “涼宮ハルヒ” が与えたものであるということ。 涼宮ハルヒというは入学早々に異世界人や未来人、超能力者に宇宙人なんかを本気で招集しようとした、一言で言えばイカレた女子であり、その行動も口頭に負けぬ程の変態っぷりである。というのは半ば無理矢理に入部させられた “SOS団” などと言うハルヒの言動がそのまま反映された新生の奇天烈部にて判明したものなのだが…中学時代の涼宮ハルヒを知る同級生達の噂は全く以って鮮明で正確なものだったのだとこの時になってようやく気づいたのだ。…人間、未来を知る事が出来ればどんなに良い事だろうか。…クソッ! しかしだ。部活を立ち上げたのがこれだと集まる部員も部員だった。部室として強引に借りた文芸部に元々いた長門有希という女子は後に自分を宇宙人と紹介し、書道部から無理矢理拉致してきた2年生の朝比奈みくるさんとやらは後に自分の事を未来人だと言い、そして入学式からそう経っていない妙な時期に転校してきた古泉は超能力者であると自己紹介した。無論、そのような戯言なんぞ信じる気すら無かった。…今日までは。古泉は自分が超能力者であるということを今日、実証して見せたのだ。 さてここで少し1時間前に遡ろう。古泉がしたスタンドの話は確か続きがあった。人の話を完璧に覚えられるほど俺の頭の出来は良くはないが、しかしあまりにも電波的だったその内容は未だに掠れることなく頭の中にあるのだ。 「涼宮さんのスタンドとはまさに世界を “超越” したスタンドと言っていいでしょう。ありとあらゆる法則を無視し、自分の望んだものをこの世界に反映させる事ができます。そして必要が無くなれば世界ごと消してしまえる、実に神がかった能力です。…その正体とは何か? …スタンド名 トウェンティ・ツー 。21を超えた者、スタンドを創り出すスタンドです。」 古泉はこの時俺がスタンドについて理解したと仮定したうえでこう言い放ったのだ。いや、むしろ見抜かれていたのかもしれないな。長門や朝比奈さんが俺に正体を説明した時に既に聞いていた単語だったことを。 自分が涼宮ハルヒによって与えられたスタンドは特定の状況下でないと発動できない特殊なスタンドだと古泉は語る。長話が終わって車から降ろされた俺がこいつに連れられて来た場所こそがその特定の状況なのだと言う。その時古泉が言った言葉を俺は聞き逃さなかった。 「これであなたがスタンド使いなのか解ります。」 古泉に手を引かれて一歩踏み出した瞬間、それまでそこになかった壁のようなものが俺達2人を避けて大きく裂け、不気味な空間に入り込んだのだという感覚に襲われた後あたりを確認してみると、そこはもう俺が普段見慣れた世界とは違っていた。まだ夕方で日が沈みかけていた頃だったのが、今はどうだ。空は曇りでもないのに靄が掛かったように薄暗く、夜になりきらない夕方と例えようか、とにかく異質な雰囲気の漂う世界へと変わっていたのだ。そして古泉が誘うビルの屋上に着いてから俺は目を疑った。マンガやアニメにしか存在しないような、青白い巨人が見下ろしたビルの間にひっそりと佇んでいるのである。 「見えますか?あれが。あれが見えるなら…これも見えるはずです。」 その声に振り向くと。なんと今度は赤いガラス状のものが古泉の身体の周りで球を成すところではないか。続けてこう説明する。 「これが僕のスタンド、僕に与えられたスタンド。名前は ケイク・アンド・ソドミー です。詳しい説明はまた後で。」 そう言うと青白い巨人めがけて重力を完全に無視し、一直線に飛んでいったのだ。そして話は冒頭に戻る。 その青白い巨人とは何か?結論から言えばこれもまたスタンドなのだという。さらに詳しく言えば主を与えられなかったがために暴走して独り歩きしてしまったスタンド。 「名前はゴッド・ブレス・ザ・チャイルド。僕は個人的に “神人” と呼んでいますがね。独り歩きしてしまった哀れなスタンドです……。あれに与えられた能力とは見ていただいた通りの、単なる破壊だけではありません。頭の中でサンドバックを殴るように、誰も見ていないところでクッションを殴るように、…あれを誰にも迷惑のかからないこの空間でのみ暴れられるよう、僕達の世界から放逐したのです。…いえ、そう設定したのでしょう。つまり元の世界と異なるこの世界とは神人が能力によって創りだしたもので、丁度さっき通った壁もスタンドによるものですよ。」 古泉はいとも容易く、その神人とやらを倒してみせた。神人が完全に崩れ落ちるのを見届けた後舞い戻ってきたのはいいが、俺が聞きもしないうちから説明を始めるのはこいつの癖なのだろうか。 「そして僕のスタンド、ケイク・アンド・ソドミーは一言で言えばスタンドの攻撃を “跳ね返す” スタンドなんです。スタンドによる壁があるならば抗力だけでこれを壊せますし、スタンドが攻撃してきたならば立ち向かうだけで圧倒できます。」 「正直、衝撃的な出来事が多すぎて良く把握できないが…とにかくお前のスタンドとやらは余程凄いということでいいのか。」 古泉は意外な回答をした。 「ええ、凄く面倒なスタンドですよ。あまりにも不完全過ぎて今回のような場面で無ければまともに扱えませんから。」 さらなる説明によれば、ケイク・アンド・ソドミーとはスタンドに対して病的に防衛的なスタンドであり、発現させるのに敵の攻撃を待たなければならないこと、そしてスタンドの攻撃以外には無力である、ということがその究極の不完全さの理由であるとの事。まず敵スタンドが正体を曝け出し、真っ向から近づいてきて殴りかかってくる事などまず起こりえないという点、そしてスタンドの腕力で投げられた瓦礫などを防ぐことが不可能なのでその時点で完全に敗北が決定するという点。その2点だ。 「敵スタンド…と言ったな。俺にお前の弱点をベラベラと喋ってしまってもいいのか?俺はこの先、お前の敵スタンドとやらに接触するかもしれないんだぜ?」 「正確には敵スタンド使い、ですね。…それはともかく。こうして僕の手の内を包み隠さず喋ったのは、僕があなたの敵ではない、ということを理解して欲しかったからです。この先、敵であるにもかかわらず、自分の事を味方だのと紹介するスタンド使いが現れるやも知れませんから。」 それをわざわざ俺に言ってどうなる。 「まだ、解りませんか?あの壁が視えたこと、あの巨人が視えたこと、そして僕のケイク・アンド・ソドミーが視えたこと……。スタンドはスタンド使いにしか視認出来ません。」 …俺が……スタンド使い。 「一つ、説明が抜けていましたね。スタンド使い同士は惹かれあうという事を……。」 その時だった。この異質な世界を保つためにあった壁が割れる音が響き渡ったのは。 ……その破片が古泉の頭にクリーンヒットしたのは。 「古泉…。お前の防御のスタンド…今少しの時間、解除しないでかぶってりゃあ良かったのにな…。」 【古泉一樹:ケイク・アンド・ソドミー:装甲型(現時点)】 破壊力-∞(E) スピード-A 射程距離-なし 持続力-B 精密動作性-A 成長性-A 能力:触れたスタンドの攻撃に自身の攻撃力を加算して跳ね返す。 よって、必ず攻撃力を上回ることになる。 ①跳ね返せるのはスタンド、スタンド攻撃のみであり、飛散した瓦礫などには極めて無力。 ②装甲型で射程距離が無いために、自分の身ごと敵に接触する必要があるのがネック。 ③スタンドの性質は「防衛」であり、敵に攻撃されて始めて発動できるスタンド。 ダメージのフィードバック:スタンドの攻撃に対しては無敵。スタンド以外の攻撃には無力。 【本体不明:ゴッド・ブレス・ザ・チャイルド(神人):独り歩き型】 破壊力-S スピード-B 射程距離-10m 持続力-∞(ハルヒの精神状態による) 精密動作性-C 成長性-D 能力:命令を与えられていないがためにただ暴れまわるだけのスタンド。 無意識的な能力として自身の周囲に自己の世界を構築するための壁を張る。 本来の世界には干渉させないようにしようとしたハルヒの心理が与えた唯一の能力。 ただし現在その抑制力もかなり不安定なようで、 発現した後に野放しにしておくと壁を拡大させて世界を入れ替えてしまうという。 かなり単純な構造のスタンドであり、 倒す事が出来たとしてもまた新たに発生する事がある厄介なスタンド。 【涼宮ハルヒ:トウェンティ・ツー:型不明】 能力:スタンドを創るスタンド。 詳細不明。 2. その後の話を語ろう。 何時の間にか用意されていた車に載って、来た道を戻る事数十分。その間に俺は古泉からのさらなるスタンドの説明にしばらく耳を傾けていた。これがこの会話だけであったなら俺はあっという間に夢の世界へと旅立っていただろうが、実際この眼球でスタンド対スタンドの戦闘の一部始終を見た後では考え方も変わるッてもんだ。そうして家に着いた後はテレビも風呂も無視して真っ直ぐ自分の部屋を目指した。俺もあんなスタンドを使えるのなら、是非とも使ってみたい。その時考えていた事はただそれだけだったのだ。 結論を言おう、からっきし駄目だった。あらゆるポーズを、あらゆる精神統一を、あらゆる掛け声を発してみたものの、何分経ってもスタンドが現れる気配は無い。奇声に反応して現れたのは妹だけだ。その哀れみの眼差しはこれまで生きてきた中で初めて見るものだったように思う。全く、古泉の奴もなんていい加減な事を抜かしやがる。スタンドが見えるからスタンド使いだと?そしてスタンド使い同士は惹かれあうだと?さらにはそれが味方であるとは限らないだと?…実にふざけている。スタンドの出せないスタンド使いが敵スタンド使いに遭遇した時にはどうなるか。言うまでも無い、避けられぬ “死” だ。 やり場の無い怒りをどこへぶつけるでもなく、ベッドに横になってみる。物に当たったって何も解決しないって事はこの歳にもなれば嫌でも解るからさ。 「そういえば、こうして寝転がってる時にここで長門に借りた本の中から栞を見つけたんだよな…」 長門有希。大人しい元文芸部員。その正体は涼宮ハルヒを観察する対有機生命体…ナントカって言ったっけ。俺を栞による伝言で自宅に呼び出し、古泉に負けぬくらいの電波話を始めた張本人。古泉の話が与太話ではないって事が理解できた今、長門の電波話も理解でき始めているのは事実。その話の中で聞いたアレは…アレはもしかすると、長門のスタンドの名前ではないのだろうか。 “……私という個体に情報統合思念体から分け与えられたスタンド、アーティチュードの力を以ってしても涼宮ハルヒ本人に気取られる事無く完璧に観察し続けるのは容易では無かった……。でも、あなたが涼宮ハルヒに部活の立ち上げを促した。その結果、我々が思い描いていた形から外れる事になった。……現在は観察に支障は無し。むしろ至近距離での観察が容易なものとなり、好都合。感謝している。” 覚えている部分は大体このくらいだな。スタンドとは、そしてアーティチュードとは一体何なんだ、と聞けば長門は 「いずれ解る」 とだけ返してきやがった。…たしかに “いずれ” 解ってしまったが。 長門も古泉と同じスタンド使い…。わざわざ自分の手の内を紹介してきた古泉が俺の味方だと言い張るように、長門もまた俺の味方であるということを主張したかったのではないだろうか。それがあの小一時間に及ぶ話の本当の意味なのだろう。 しかし、そうすると一つ理解できない点が出てくる。古泉は俺がスタンド使いであるかを同行中から見極めた訳だが、長門は俺がスタンド使いであるかどうかを何一つ確認しなかったのだ。まるで、既に解っていたかのように。 と、いろいろ考えていると俺がスタンドの出せないスタンド使いだってことをまた思い出してしまった。…やれやれだ。古泉は敵の襲来があるかもしれないと言っていたが…。この状況、ハッキリ言おう。どうにもならん。大体な、敵だのなんだのと言ってもそれが俺の生命の危機に関わるようなものではないだろう。俺達まだ高校生になったばかりだぜ?一体誰の恨みを買ったって言うんだ。仮に買ったとしても、それが殺したい程に昇華しちまった奴が近くにいるって言うのか?ないない、ないね。全く、無駄に脅かすなよ。 しかし、そんなお気楽な考えはこの世界の扉を開けた後では全く通用しないと言う事を、俺は次の日まで知る由が無かった。 その日、俺がまず向かったのは古泉の元だった。こいつは自信満々に俺をスタンド使いだと言い放ったのだ。しかし事実はどうだ?俺のもとには現れてくれるスタンドなんか蚊程もいないぜ。それとも何か?俺のスタンドは妹に哀れみの目で見られるってのが能力なのか? 「あなたが昨夜どれだけ張りきっていたのかは知りませんが、本来スタンドとは僕が最初に説明した通り、その人の精神力の表れなのです。それ以上でも以下でもありません。涼宮さんのスタンドは確かにスタンドを与えるスタンドです。が、その対象の精神力がスタンドに伴っていなければ、それは眠るか、暴走するか、独り歩きするかのいずれかになるのです。昨日の神人のようにね。あなたの場合は…恐らくまだ目覚めていない状態なのでしょう。だからスタンドを出す事ができない。ですが、むしろこの状態は好都合なんですよ。」 何故好都合なんだと聞いてやったら更にこう説明を続けた。 「涼宮さんは、自分がスタンド使いであることに気づいていないようなんです。…それもそのはず、涼宮さんのスタンド、トウェンティ・ツーは遠隔自動操縦型であり、更に知性さえ持ち合わせているのです。いつもどこにいるのか全く見当が付きませんが、トウェンティ・ツーは自分の意思で涼宮さんから離れた場所で力を振るっている訳なんです。」 「ん…?それは独り歩きって奴とは違うものなのか?」 「非常に似通っていますが…トウェンティ・ツーは“スタンドを創る”能力を、涼宮さんの願望どおりに発動している点から、あれは独り歩きとはまた別物と考えていいでしょう。…さて話を戻します。つまり、涼宮さんは今に至るまで自分自身のスタンドを視認していないのです。また同時に、この為に世界は無事でいられると言えますね。これは僕の仮説ですが、涼宮さんの深層心理が100%反映されたスタンドであるがために、どこかで自己を制限するように創られたのではないでしょうか。」 仮にもし、涼宮が自分の事をスタンド使いだと、そしてその能力がどんな能力でも新たに創る事の出来るものだと知っていたら世界は既に涼宮が望んだファンタジーやメルヘンな世界に変貌していただろう、と古泉は説明した。 「そこで僕達はまず、次の一点に気を付けなければなりません。…涼宮さんの目の前で絶対にスタンドを出さない事。」 成る程、確かにそうなるな。形はどうあれ涼宮も列記としたスタンド使いである事は間違いない。ならばスタンドを認識=自分がスタンド使いである事を理解した時点で世界はグラリと形を変える。 「ですから、あなたがスタンドを出す事が出来ない状況というのはむしろ良い事なんです。敵スタンド使いにもあなたがスタンド使いだと気づかれにくいでしょうしね。」 しかしスタンド使い同士は惹かれ合う、という点だけ注意を怠ってはならない。古泉がそう付け加えたところで丁度始業のチャイムが鳴り響き、俺達は向かうべき場所、つまりそれぞれの教室へと戻っていった。俺自身のスタンドについてはひとまず置いておこう。眠っている奴を無理矢理起こせば面倒になるってのは現実世界では良くあることだ。それに則り、対スタンドにおいても無理矢理起こしてやるより自分から起きるのを待ったほうが良いはずだ。いや、決して俺のスタンドの性格が俺と同じく寝起きの悪い奴だと考えているわけではないぞ。 さてそれよりも今はもう一つの気になる事があった。それは古泉に用意しておいた文句をぶつける前。 学校に到着して校内を動き回る為にまずすることといえばそう、靴の履き替えだ。その時俺が下駄箱の中に見つけたもの、それは一通の手紙だったのだ。中を開けてみれば予想通りの文面、わざわざ放課後なんて時間指定までして俺に会いたい人がいるらしい。 何故もこれほど淡々と説明しているかだって?理由は簡単。俺が、モテない人間にカテゴライズされていると、自覚しているからだ。なればこの手紙は悪戯である可能性が極めて高い。浮かれてスキップでこの指定された場所であるここ、つまりこの教室にやってきたものなら待ってましたとばかりに写真に撮られるハメになるだろう。それを平気でやるのは…恐らくあの谷口と国木田か。この手紙を無視する訳にはいかないが、是非とも第六感をフル稼働させて身に降りかかることに対処しなければ。入学早々歩くお花畑なんてあだ名に変えられたくも無いしな。それならばまだキョンと呼ばれるほうがマシッてもんだろう。等と考えつつ、ついにその時間がやってきてしまった。 SOS団などと言う俺がいてもいなくても変わらないような、特に何をする訳でもないような、そもそも部活としての意味が見出せないような、そんな部活が終わった今、決心して俺は教室の前に立ち、呼吸を整えた後一気にドアを開けた。そこで待っていたのはクラス一の美人と認めてやっても良く、さらには性格まで美貌に伴った谷口曰くAA+とランク付けされるクラス委員長、朝倉だった。 正直もう既に話など耳に入っていなかった。前置きが幾らあろうと無かろうと、俺を嵌める為に呼び出したのならいずれ告白タイムが始まる。勿論偽りのだがな。俺がすべき事はただ一点。朝倉に悪事を唆した張本人、恐らくこの教室に潜んでいる谷口か国木田の存在を露にする事だ。どこだ、どこにいる…?幾ら馬鹿でも掃除用具入れの中なんてありきたりな場所にはいるまい。…そう理論立てている時だった。 妙な事に気づいた。朝倉の長々とした前置きはどうにもこの場所、この状況には不似合いなのだ。適当にしか聞いていなかったが、涼宮についてどう思ってるかなんて言って話し始めたかと思えば、人間の行動心理について聞いたり、距離を置いた場所から経済について説いてみたりと、まるで自分が人類の観察者のつもりであるかのように話しているようだ。そんなことに気づけたのはやはり…四六時中思い浮かべたくも無いが、古泉のせいか。 スタンド使いは惹かれあう…もしや。 ついには組織がどうの、上がどうのと頓珍漢な事を喋りだし、ああ、これは確実に普通じゃないなと思った次の瞬間耳に飛び込んできたその言葉を俺はしっかりと聞き取った。 「あなたを殺して、涼宮ハルヒの出方を見る。」 ありのまま今起こった事を話そう。その言葉を発したかと思ったら次の瞬間ナイフを手にした朝倉が俺の胸を目掛けて飛び込んできた。何を言っているのか理解できないとは思うが、俺もこんなことをされるとは思っていなかった。 危機一髪。昨日の一件があるまでの俺ならば確実にその刃は心臓に付き立てられていた事だろうな。 そうならなかったのはこの教室に入ってから今まで警戒を怠らなかった為だ。…しかしこの後はどうする。 今の初撃は避けられたとはいえ、状況は1ミリすら良くなってなどいない。バランスを崩して派手に転んだ朝倉は何事も無かったかのように立ち上がり、再度俺の方に身を向けて完全にロックオンしている。 こういう絶体絶命の状況に陥った場合、次に何をすればいいのか?俺は解っている。俺が親父に教えられた唯一つの、我が家系の伝統的な戦いの発想法。それは… 逃げる、だ!! 「無駄よ。」 さっき通ってきた入り口はあろうことか、明らかに地球上には無い物で塞がれてしまっている。触るとダメージはないが、とにかく“反発”する力だけを備えた壁のようだ。 「何も知らないあなたに何を説明しても時間の無駄だけど、どうせ最期だから教えてあげるわ。今のはアーティチュードによる情報改竄能力。これで入り口の座標に“反発する壁”を書き込んだの。その結果がこれよ。」 「何?アーティチュードは長門のスタンド……あっ!しまった!」 なんてことだ。黙っていれば俺がスタンド使いであることを気づかれずに済んだのに。…いやまて、この状況で俺の能力からすれば知られても知られなくても同じか。…というのは全くの見当違いだった。俺がスタンド使いである事を朝倉は知ってしまった。その為朝倉は一瞬で俺から距離をとった。 「あなたも…スタンド使いだったとはね。気づかずに返り討ちを喰らうところだったわ、危ない危ない。」 そうだ。スタンドを自分の意思で出せないとはいえ、それさえ相手に知られなければブラフが通る。これはチャンスだ。 「チッ。もう少しで巧くいくところだったんだがな。」 とさらにハッタリを掛けてみる、するとどうだ。さっきまで俺を殺そうと躍起になっていた少女は罠に掛かったネズミのように戦意を無くしている。 まず俺の能力をどうやって見極めてやろうかなどと考えているのだろうな。そんな大層な能力、さらっさら無いんだが。さあて、次はどんな大層な能力名でも言って惑わせてやろうか。…そう考えていると。 「…へぇ、…なぁんだ。あなた、まだ自分のスタンドが目覚めてないスタンド使いだったのね。無駄に気張って損しちゃった。」 例えるなら悪戯が母親にばれてしまった餓鬼の心情といったところか。完全に図星を突かれた俺は一瞬よろめきそうになった。 「なっ、何を根拠にそんな事を!」 「う・し・ろ。」 振り返ってみるとそこにいたのは。ドレッドのヘアスタイルのようにコイル状の鋼鉄の束が頭部に張り付いたような出で立ちのクリーチャー。その目元はさながら照準器のようだ。そして腕を組み、ただ観察だけしているだけのような…これはスタンド!しかしどういうことだ?スタンドは基本的に一人一能力のはず。 涼宮のスタンドが幾ら万能なスタンド製造機だとしても、そのルールは曲げられないと聞いたが。 「アーティチュードは私を“創りあげた”スタンド。私達インターフェースはアーティチュードと共にあるの。融合体と言えば理解できるかしら?…厳密にはちょっと違うんだけどね。私たちはアーティチュードを自己の能力として振舞える。…でもそれは本来の持ち主以下に制限がかかるから私にとっては“使えない”の。 …そこで私が“自分のスタンドを手に入れるための起爆剤として一度アーティチュードを捨て去って得た”のがこのスタンド。名前はシャッフルデイズよ。私はあなたのように人を騙すのは得意じゃないから、正直に教えてあげるわ。シャッフルデイズの能力は相手のコピー。一度捨てたアーティチュードの能力は使えなくなる代わりに、姿、性格、そして精神をそれぞれ個別にコピーできるの。どうしてこんな学校にこんな性格の良い、美人がいると思う?…全てはあなたに近づき易くするためよ。」 成る程出来すぎていると思った。朝倉のような普段真面目で成績優秀で気の利く美人(谷口基準でAA+)がこんなパッとしない学校に来るはずが無い。近くにある進学校に余裕で入学できるレベルなのだから。 「そしてこの、精神のコピーこそがシャッフルデイズの最高の能力。精神を知る事、それはつまりその人自身となる事と同義。その人が考えている事は全て筒抜けって事。例えば…あなたがあの子に対して少なからず好意を持っていることもね。クスクス。」 くっ、あの子って誰だよ、なんて突っ込んでやりたいがそれも全て筒抜けだと考えると言い返す気力も削がれる。なんせ打開の案すらバレバレなのだから何かを考える事すら朝倉が言うとおり、“無駄”になる。クソッ、腹の立つ言葉だな。 朝倉は、朝、顔を洗った後寝癖を直すように、靴を履くときに靴べらで足を宛がうように、極自然な動作でナイフを構えなおし、今度こそ俺を殺そうと飛び掛ってきた。 三択──ひとつだけ選びなさい ①ハンサムなキョンは突如アイディアがひらめく ②仲間が来て助けてくれる ③かわせない。現実は非情である 「③よ。負けて死になさい!」 死ぬ寸前には全ての動作がスローに見えると聞いたことがある。ナイフを突き立てられて絶命するまでの時間が何十倍にも引き延ばされて、苦痛も同じように何十倍にも膨れ上がる。だからこそ俺は目を固く瞑った。自分の死は死ぬ瞬間まで実感したくなかったからだ。ああ、俺は死ぬのか…まだまだ青春時代を充分に満喫できちゃいないというのに。…父さん、母さん、そして妹よ、すまん。 しかしいつまでたっても俺の身体を貫くはずのナイフの感触が無い。こっちは断末魔の叫びの一つや二つくらいは用意していたと言うのに。…と、こんな状況でいつまでも冷静ぶるのもやめていいだろう。スローな世界が徐々に速度を取り戻した頃、俺は自分が生きているのか死んでしまったのかを確かめるために、 ついに目を見開いた。 答え ―② 答え② 答え② 「な…がと?」 そこにいたのは元文芸部員、現SOS団員、そして正体は宇宙人の長門有希であった。そしてその20mほど向こうには顔を思いっきり殴られたシャッフルデイズと朝倉がぶっ倒れている。 「…せっかく貸し与えられたアーティチュードも、使い方が荒ければ大きく痕跡を残す、だから私に気づかれる。ならば初めからアーティチュードを用いる必要は無い。なぜなら物理的な手法の延長上でしか無いから。私へも与えられたアーティチュードによって容易に解除できる。…あなたの限界は所詮こんなもの。 私のバックアップでしかないあなたには無理な細工。」 ダメージが足に来ているのか、がくがくと震えながら立ち上がる朝倉。アーティチュードについてようやく解ってきた…アーティチュードとはこいつらの親玉のスタンドってことだ。しかし朝倉はそれを自分用に作り直した、シャッフルデイズへとスタンドを作り変えている。いくら長門がアーティチュードの扱いに長けていると言っても…! 「長門、気をつけろ!朝倉はアーティチュードとやらを作り変えた、“コピーする”スタンドを持ってるんだ。触れられたら最後、姿や性格のコピーはどうでもいいとして、精神をコピーされて思考が全部読み取られてしまう!そうなったら勝ち目は薄い!」 「……理解。そしてその能力は一度消去しなければ新たなコピーが不可能、という制限があると推測。でなければあなたの発言を邪魔している筈。」 「いらない勘違いは避けて欲しいものね。私がキョン君の語りを放っておいたのは、どのみち息の根を止める事になるからよ。…順番が狂っちゃったけどね!」 そう言うと同時に間合いを取って、どこから出したのか大量にナイフを長門目掛けて投げてきやがった。 「長門!!」 その俺の声は激しい金属音によってかき消された。俺の心配は無碍に終わったようだ。長門は涼しい顔で全てのナイフを弾き返しているのだ。朝倉は人間離れした動きで翻弄しながら絶え間なくナイフを投げ続け、長門はその人間離れした手の速さで全てのナイフを叩き落す。その光景を見て、ああ、この二人は確かに人間ではないのだなと心から感じた。 しかし拮抗していたように見えた戦いの空気が一瞬にして変わる。長門が急に振り向いたと思ったら俺を蹴り飛ばし、 「なッ、何をする…」 その瞬間俺が元々いた場所には無数のナイフが降り注いだ。そう、朝倉は無力な俺を狙う事こそ最良の方法だと気づいたのだ。その思惑は正しかった。俺に降るナイフから護る為には長門は迎撃する機会を完全に失う事になる。結果、スタミナが続く限りナイフを止め続ける羽目になるのだ。 「長門…もう、いいよ…」 俺が、俺さえいなければ、こんな荷物が無ければ、長門は勝つ事も難しくなかっただろう。しかし今はどうだ、避け切れなかったナイフが長門の身体を切り刻み、辺りには血だまりが幾つも出来ている。 「問題ない。」 とは言うものの、その言葉と苦悶の表情とは全く結びつかない。 「ダメ押しにもう一本。」 あらゆるものを書き換える能力、アーティチュード。無数のナイフを作り出すだけが能では無かった。朝倉が最後に選んだ武器、それは杭だった。かつてイエス・キリストの死刑に使われたものより遥かに大きく、まるで電信柱を持ってきてそのまま突き刺したような光景が目の前に広がった。その刺された対象とは誰か?それは言うまでも無い事だ…。 「あっははは!邪魔者はこれで消えたわ!…さぁてキョン君、あなたも長門有希の後をすぐに追わせてあげるからね?」 万事休す。絶体絶命。対抗できる力は朝倉の前に散った。これが運命だとしたら、俺は何の為に生まれてきたのだ。死ぬために生きるとはどっかの偉い奴が言った言葉だが、それは結局のところ人生に充分満足した人間が発した言葉にすぎず、本来生きられるであるはずの時間から3/4がマイナスされてしまう俺にはそんな言葉なんぞ理解したくも無い。しかし目の前にある現実はなんだ。ナイフを量産する朝倉、一切スタンドを出せない俺。そして長門は杭に貫かれて……いない!? 「名づけるならば……コズミック・トラベル……あらゆるものを“強化”するスタンド……このナイフの「切れ味」を強化した……」 朝倉のシャッフルデイズの全体的に黒を基調としたカラーリングに対し、長門のコズミック・トラベルは白銀を基調とし、キャップを深く被った中に見える眼光は非常に鋭い。ジャンパーを羽織ったアーティストをモチーフとした筋骨隆々のスタンド、それがコズミック・トラベルだ。 その手に持つナイフは絹を引き裂くかのように、竹を割るかのように、鉄杭を真っ二つに裂き長門の身体を貫かせなかった。 「へぇ…あなたも“自分の”スタンドに目覚めたのね…見た限りではたった今、奇跡的に発現しましたって感じね!そんな軟弱なスタンド、私の敵ではないわ!」 しかし朝倉の指摘は間違いだった。 「……硬性を強化。あなたのナイフはこの木製の机にすら刺さらない。」 そう言って机を盾にするだけで雨の如きナイフの嵐は机に弾かれて山積みになっていく。 「ルーキーの癖に生意気よ。これならどう?」 またも鉄杭を作りだし、軽く投げ飛ばす朝倉。 「血中に含まれる塩分の金属腐食効果を強化。」 長門はそう言うと腕から滴り落ちていた血液の雫を飛んでくる鉄杭に向かって浴びせる。するとどうだ、 巨大な鉄柱は極小隕石が地表に到達することなく燃え尽きるように、長門の目の前ギリギリで鉄の粉と化して消えていったのだ。 しかし。 「発想はまずまず。でも残念、そっちは囮。」 安心したのも束の間、朝倉の急接近を許してしまった長門は朝倉のスタンドに掴まえられてしまった。コピーするスタンド、シャッフルデイズに。 「全てはこの一瞬の為だったのよ!私のオリジナル、長門有希!!…フフフ、あなたのスタンドに滲み出ている強大な精神力、それをコピーすることで私はあなたを上回れる!…シャッフルデイズの完成によってね!」 「なに…を……」 首根っこを掴んだまま持ち上げるシャッフルデイズの身体が眩く光る。長門のコズミック・トラベルがこれをやっとのことで弾き飛ばした頃には。 ソレは、完成していた…。 「うふふ…シャッフルデイズPt.2と名づけるわ。長門有希!あなたによって完成されたこのスタンドに最早欠点は存在しないわ!この“スタンドをコピーする”スタンドにはね!!」 スタンドとは精神力の顕れであり、その大きさに伴った能力を持つ。ひょっとしたら朝倉のスタンドは元々此れほどまでに多様なコピーを可能とする能力を持っていなかったのではないだろうか。精神力を更新してはスタンドを際限なく進化させ、その末出来上がったのが…今俺の瞳に移る漆黒のコズミック・トラベルなのだ。完成したシャッフルデイズ、いやシャッフルデイズPt.2はあろうことか、コズミック・トラベルそのものに形態を変化させた。それが形容ごときの模写ではないって事は容易に解ってしまった。 朝倉のコズミック・トラベルと長門のコズミック・トラベルが対峙する。武器の強化は防具の強化により結局同条件のために拮抗してしまい、勝負が付かないからあえて自己のスタンド同士を戦わせる事を選んだのだろう。単純に身体能力を強化すれば後はスタンドの純粋な性能差で勝負が決まる。これこそが、戦闘能力として成長前のアーティチュードに劣るシャッフルデイズの妥当であり正当なスタンドバトルなのだ…。 先に動いたのは朝倉だった。一動作ごとに「無駄」と言い捨てながら猛ラッシュを浴びせる。これに対し長門は冷静に受け流して対処する。ああ、嫌な予感はしていたともさ。もしも朝倉のシャッフルデイズのコピー能力が、自己に対しての上書きではなく貼り付けだったとしたら?…もしそうならコズミック・トラベルのパワーを1とすると、シャッフルデイズがいくらパワーがなかろうとかならず1を超過する。つまり同じ能力、同じ攻撃方法である時点でパワーが下回る長門のスタンドには勝ち目がないのだ。 それが確証されたのは長門がスタンドもろとも吹っ飛ばされた時だ。 「長門ッ!」 異質な空間に響き渡る叫び声に返事をするかのように体勢を立て直す長門。 「長門!やっぱり朝倉の能力は…」 駆け寄ろうとした俺を長門は黙って右手で制した。 「朝倉涼子のスタンド、シャッフルデイズPt2はコピーした情報を、コートを着るかのように貼り付ける。それを今の攻防で理解した。」 その通りだ。だからこそこのままでは俺達に勝ち目は…無い。 「理解が早いのは結構。でも解決に繋がらせられないんじゃあ、…無駄よねぇ。」 そう言いながら新たにナイフを構える朝倉。 「あなたはあなたのスタンドで殺してあげる。もちろん直接切り刻んであげるわ。 だって、あなたのスタンドでこのナイフがどれだけ殺傷能力を強化できたのか楽しみで、ただ投げつけて終わりだなんて勿体無さすぎるわ。」 最早快楽殺人鬼のような笑顔しかそこには残っていなかった。 「じゃあ、死んで。」 長門を助けようと必死に足を動かそうとしても全く動かなかった。それは朝倉の表情からの、生まれて初めて感じた、吐き気を催すような邪悪が俺を蝕んだからだ。情けない事に、大の大人直前、しかも男という性別にある俺はただ、ナイフが長門の身体に刺さるのを見届けるしかなかったのだ。 しかし凶刃が長門の身体に突き立てられてからもただただ滑稽な姿を晒していたかと言えばそうではない。それ以前に、この大惨事は回避されたのだから。…結論を言ってしまおう。 “さっきまでそこにいた長門の姿は幻影だった。” 「なっ…?!一体どうやって幻を?何故あなたが私の背後にいる!?何故私は身動きが取れないのよおおおおおっ!!!」 尋常ではない朝倉の呻きにも似た叫びに、長門はこう答えた。 「私のバックアップであるあなたがこれしきの事を自分の演算処理能力で解けないなんて、ただ愚かさを誇張しているだけだとは思わない?」 「くっ…質問に質問で返すなんて低脳な人間のやることよ。」 もうただの罵倒にしか聞こえないが。 「……質問には答える。まずはあなたが私と誤認した幻影の正体。私は眼鏡のレンズにコズミック・トラベルを使い、“集光度”を強化した。……それはまるでスクリーンに映像を投影するように、砂埃の舞い上がる空間に私の姿を映し出すのは非常に容易だった。レンズはあの時あなたがいた場所に設置した 。あなたを焦点にちょうど同じ距離後ろに私がいた。それにすら気づかないのはあなたが自分の力に酔っていたから。これが今あなたの背後を取っている理由。そしてあなたが動けない理由は…。」 長門が指差す方向にあった朝倉のスタンド、コズミック・トラベルをコピーしたシャッフルデイズの容姿は微妙に変わっていた。 「私のスタンドは自分自身を強化する事は出来ない。しかしコピーされたスタンドならば…?」 成る程、これはコズミック・トラベルから進化した新たなスタンドなのか! 「そう。名づけるならば“サイコ・トラベル”。朝倉涼子は私のスタンドの取扱い方法を、コピーの段階で手に入れてはいるが、この私さえ知らないサイコ・トラベルの取扱い方法は持ち得ていない。だから動かせない。」 「シ…シャッフルデイズッ!コピーを解除しなさ…」 「遅い。」 哀れ、朝倉はスタンドと共に殴り飛ばされていた。 「げほっ、長門有希!ただそれだけの事で私に勝てると思うなッ…!!解除してしまえばこれしきの事!」 「あなたの敗因は3つ。インターフェースならば誰でも扱えるアーティチュードで罠を張った事。私に劣る演算能力で私に勝負を挑んできた事。そして最後に… …あなたは私を怒らせた。」 朝倉はようやくスタンドを解放して反撃準備をするが、コズミック・トラベルの容赦ないラッシュには無意味だった。 『アァアラララララララララララララララララララララララララアアアァァーーー!!!』 コズミック・トラベルが繰り出す拳は正確に朝倉の顔を、身体を、そしてスタンドを殴りつける。やがて戦意の欠片すら無くなった朝倉は足元から光の泡となって消えていく。 「よ、良かった…わね、キョン君…。長門、さんのおかげで…命拾いして。でもこれで終わった訳じゃないわ……長門さんだって…私のように考え方を“改める”時が…来るかもしれない。…情報統合思念体に創られた存在である限り…。」 朝倉は最後にそういい残し、やがて完全に消滅した。 「……完了。」 という言葉と同時に倒れる衝撃音。 「長門ッ!大丈夫か!?」 今度こそ長門の元へ駆け寄ることができた。長門の身体には朝倉の容赦ないナイフの雨により痛々しい程に傷が付けられている。 「この怪我…」 「私の身体の修復は後回し。先にこの部屋を元に戻す。」 そう言うと身動き一つせずコズミック・トラベルを戻したかと思ったら、教室が異質な世界に変わっていった過程を逆再生するかのように元通りに戻っていったのだ。…コズミック・トラベルを出している間はアーティチュードを使えない、だから一旦コズミック・トラベルを仕舞った。これは紛れもなくアーティチュードによるもの。能力は…“物質を別の物質に作り変える”…なのか? 「身体の修復ってのも、そのアーティチュードがやってくれるのか?」 抱き起こした長門は一言、 「そう。」 とだけ言ったのだが、すぐに何かに気づいたようで、何やら顔をぺたぺたと触って確認している。 「どうした?」 「…眼鏡の再構成を忘れた。」 ああ、朝倉戦で投影機代わりに使ったあの眼鏡か。この教室が元通りになる時に巻き込まれたのだろう。 「してない方が可愛いと思うぞ。俺、眼鏡属性なんて無いし。」 「…メガネゾクセイとは何の能力?」 「妄言だ。なんでもない、気にしないでくれ。」 「…そう。」 丁度その時だった。まるで漫画のような絶妙なタイミングでこの教室に侵入してくる生徒がいるとはッ…。 「WAッWAッWAッ忘れ物~ッ………なッ!?」 …谷口だ。…そして俺と、俺が抱きかかえる長門の姿を見てから一言。 「……………すまんッ!ごゆっくり~~~ッ!!!」 ……十中八九、逢引の現場と誤認して去っていきやがったな…いや、この状況を見れば、そう考えるのも当然だろう。誰だってそー思う。俺もそー思う。 「はぁ~あ、どうすっかな…これから。」 「問題ない。あの男子生徒はスタンド使いではない。」 いや、そういう意味ではなく。 「朝倉涼子の事なら私が対処しておく。」 …もういいや。 【情報統合思念体:アーティチュード:遠隔自動操縦型】 破壊力-なし スピード-なし 射程距離-∞ 持続力-∞ 精密動作性-A 成長性-E(完成) 能力:あらゆる情報を書き換える。 ①原子情報を書き換えれば全く異なる物質すら作り出すことが可能。 ②情報統合思念体とはこのスタンド能力によって生み出され、存在させられている。 故にスタンド体でもある。 ③同様の手段でTFEIを数体創り、能力を貸し与え、 涼宮ハルヒの観察のために地球に送り込んだが、 このせいでスタンドエネルギーをかなり消費してしまった。 (それでもその他の有機物の創造と情報改竄がこれ以上出来なくなるだけの制限。) これによりTFEIに貸し与えられた能力も本来のものより性能が落ちる。 (その際スタンド像は現れない。) ④情報統合思念体の目的は成長性の閉塞を解消する事である。 ダメージのフィードバック:なし 【朝倉涼子:シャッフルデイズ:中距離型】 シャッフルデイズ(Pt.1) 破壊力-C スピード-C 射程距離-30m 持続力-C 精密動作性-E 成長性-A 能力:触れた相手の精神、性格、容姿をコピーする。 ①コピーする箇所はそれぞれ個別に設定でき、 これを使ってキョンに接触しやすい性格と容姿をコピーしたものと思われる。 ②精神をコピーすればその人間の動作すら手に取るように解る。 シャッフルデイズPt.2 能力:触れた相手のスタンドをコピーする。 スタンドを目覚めさせるに至った長門の精神をコピーしたことで、自身のスタンドをも進化させた。 制限としては一度に一スタンドのみのコピー。 ダメージのフィードバック:部位相応 【長門有希:コズミック・トラベル:近距離型】 破壊力-A スピード-A 射程距離-2m 持続力-A 精密動作性-A 成長性-B 能力:触れたものを強化、または進化させる能力。 ①対象は物質でも、生物でも、スタンドでも可能。 ②特性、身体的な能力、基本的な能力についてを強化できるが、 一度には一つの対象に対して何か一つしか強化できない。 (スタンドの能力を強化すれば、第三者の能力は強化できない。) ③自分、またはコズミック・トラベル自身を殴る事は出来ない。 ダメージのフィードバック:部位相応 【キョン:スタンド名不明:型不明】 能力:不明 =To Be Continued
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今日は12月23日。 …… 時は夕刻。俺は最寄りの店へと寄っていた。いろんな人形やぬいぐるみを手にとり凝視する俺。 「おいおいキョン、まさかお前にそんな少女趣味があったとはなあ…正直失笑もんだぜ!!」 はてはて、特にこいつは影が薄いキャラ設定でもなかったはずだが…俺はこいつの気配に 今の今まで気づかなかった。ここ最近ハルヒの閉鎖空間云々といった騒ぎに巻き込まれず、 温和な日々が続いていたせいだとでもいうのか?すっかり外的要因を感知する能力が衰えていた。 「外的要因??キョン、そりゃあんまりじゃねーか?俺はお前の親友だろ?」 悪友といったほうが正しいような気もするが。とりあえず、少女趣味云々イミフなことを言うヤツは放置に限る。 「あーあー、さっきのは悪かったって!あれだろ?妹ちゃんにやるクリスマスプレゼント探してたんだろ??」 わかってるんじゃねーか…ったく、別に俺がからかわれるのには構わないんだけどな。 そういうことを鶏が朝一番に鳴くようなレベルの大声で言うなと… もし側に俺の知人がいたら、こいつはどう責任をとるつもりだったんだ。 「だから悪かったって言ってるだろ…マジごめんって。」 まあ、わかればいいさ。謝ってる相手に追い打ちをかけるほど俺は畜生ではない。 「ところで谷口、お前はこんなとこで何やってんだ?」 「単にジュース買いにきたってだけだぜ。」 ジュース程度なら外で自販機がいくらでもあるだろうが。なぜ、いちいちこんなデパートに? 「おいおいキョン、外のこんな暑さをみてそんなこと言うのか?冷房のきいた店に涼みに来たってのも兼ねて、 ついでにジュースを買いにきたってだけだ。別におかしくもなんともねーだろ?」 なるほど、筋は通ってる。 「しっかし、冬至だってんのに夏みたいに暑いとか、 いよいよ地球もオシマイだよな。地球温暖化もくるとこまで来たってわけだ。」 …こればかりは同意しておく。実は、今年は12月に入ってずっとこの調子なのだ。何がって? もちろん地球気温のことだ。炭素税、クリーン開発メカニズム、国内排出証取引、排出権取引、直接規制による CO2削減義務、気候変動枠組条約、京都議定書…数えればきりがない。それくらい俺たちは現代社会等で 温暖化対策を強く教わってきたし、各国もそれなりの規模で取り組んできたはずだ。 にもかかわらずこのザマである。 もはや、これでは人間の努力の範疇を超えてしまっているではないか。…そもそもである。 人間ごときが地球規模レベルの変革を推進できるという考え自体が…傲慢だったというのであろうか。 …まあしかし、こればかりは俺たち一個人、ましてや一高校生にどうこうできるレベルではない。 つまり、谷口含む俺たち地球人は…。この苦い現実を受け入れ、生きていくしかないということである。 …… しばらくして、ようやく妹へのプレゼントを買うことができた。 用事を済ませた俺は、谷口と一緒にデパートをあとにしたんだが…その直後だったか。 「?」 違和感が襲う。足に力が入らない。 …… なぜ…俺は宙に浮いているんだ? …?? 空に舞ったあと、物体はどうなる?誰もがわかるように、ただ地球の中心に向かって 落下するだけだ。不変の真理である万有引力の法則に基づき、俺は地面へと強く打ちつけられた。 …どれだけ時間が経過したのだろう。俺は目を覚ました。どうやら気を失っていたようだ…証拠に、 いまだに地面に打ち付けた衝撃で頭がグラグラする。打ちどころが悪ければ…まさか死んでたのか俺は。 …… 一体何が起こった??わけもわからず、俺は必死にさっきの事象を思い出そうとする。 しかし、それは叶わなかった。思い出すとか以前の問題だった。目の前に広がる光景以外…考えられなかったから。 「…なんだってんだ…?これは…?」 周辺道路に亀裂がはしってたり陥没してるのはなぜだ??さっきまで俺たちがいたデパートが… 跡形もなく崩れ去ってるのはなぜだ??…なぜ、ありえない形で看板に人が突き刺さってる?? あそこで転がっているのは何だ…?!体の一部か?遠くから…煙や火の手があがってんのはなぜだ?? 視覚で物事を把握した途端に、今度は聴覚が冴えてくる。 「助け…」 ?! 「ひ、火を消してくれえええええええええええ!!!!」 「だ、誰か!!」 「ああ…あああ…!!!!!」 「私の子供が…っ!!瓦礫の下敷きに!!!」 「うわああああ痛いよおおおお!!!」 何を騒いでるのだこの人たちは? 「ちょ…おい、ま、待ってくれ…何だこの状況は」 聴覚で物事を把握した途端に、今度は嗅覚が冴えてくる。 「う…!」 異臭に鼻をふさぐ。この臭いは…腐臭である。 一体何の…? …… にん…げん…? 視覚、聴覚、嗅覚が正常に機能して 初めて俺はこの場所で何が起こったのか…それを思い出した。 「こんな地震見たことねえぞ…!?」 そう、さきほどこの地域全域で地震が起こったのだ…それも、考えられないくらいの強い地震が…!! これまでの経験上、一度も地震に遭ったことがないのでなんとも言い難いが…震度やマグニチュードで言えば 関東大震災や阪神淡路大震災の比ではないのではないか…!??直感でそう思った。 根拠はあった。でなければ、縦型の地震とはいえ、人間が空に舞うなど絶対ありえないだろう…? …… まさかこんな事態に見舞われようとは、一体誰が予測できる??先程までの俺や谷口はそんなこと微塵も… ?そういえば谷口はどうなったんだ? 俺は辺りを眺める。おかしい、地震があったとき確かに谷口は俺と一緒にいたんだ… それなら、ヤツは気絶してる俺を叩き起こしたり、惨状を見て発狂したり、取り乱したり… とにかく、俺に存在感を示すに決まってるんだ…あいつはそんなヤツだ。しかし、その気配はない。 認めたくなかった。それが意味するところを、それだけは絶対認めたくなかった。 最悪の状況を回避してくれることをひたすら信じ、俺は必死に辺りを見回した。 ふと、数10メートル先に瓦礫に埋もれている人間を確認できた。 ぴくりとも動かないことから、おそらく死んでいるのだろう。そしてその人間の服に、俺は見覚えがある。 考えが途切れた 「ははっ…嘘だよな…おい、嘘だよな?」 側まで近付いてみて疑念が確信に変わった ケガをしてたっていい、瀕死だっていい、 とにかく生きてさえいりゃよかった 死んでさえいなけりゃよかった …… 「谷口よお…お前だけは殺しても死なねー男だと思ってたのによぉ…」 …ッ!! 「あ…ぁあ…あ、うああああああああああああああああああああああああああああああああああ ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」 その雄たけびが状況ゆえに発狂した奇声だったのか、友人を亡くしたことに対する怒声だったのか、 今にも崩壊しそうな自我を守るための悲鳴だったのか。今の俺には判断のしようがなかった。 というか、どうでもよかった。何もかもがどうでもよかった。 …… 「はははっ…」 俺は笑っていた。俺がさっきまで一緒にいたであろうヤツに 『外的要因を感知する能力が衰えていた。』と言ったことを思い出していたからだ…っ。 「さすがに…こんな大地震まで感知できるわけねえよ…っ」 皮肉とはこういうことをいうのだろうか。 それからどれだけの時間が経ったのだろうか。相変わらず、目の前には無残な光景が広がっており 悲鳴は絶えない。だが…どういうわけだ?理不尽にも、俺はこの状況に慣れつつあった。 例えば、ずっと暗闇の中で暮らしていれば、微量な光でも辺りを察知できるよう目は慣れてくるものだ。 ずっと大音量でイヤホンから音をたれ流していれば、耳はそれに順応するものだ。 同じことが起こっていた…それも、俺の全感覚を通じて。 落ち着きを取り戻した俺は、ようやく他のことに考えを回せる余裕をもった。次の瞬間、ある人物が脳裏をよぎった。 「…ハルヒ!!」 そうだ、ハルヒは一体どうなったんだ??まさかっ、死んじゃいないよな…?? 先程の谷口を思い浮かべ、俺は背筋に寒気が走った。すぐさまハルヒのもとにかけつけよう…ッ!! そう決心しようとした矢先に、大事なことを思い出した。 「…そういや、あいつは無意識のうちに願望を実現できる能力をもってんだよな…。」 ご察知の通り、涼宮ハルヒは自身の願望を実現させる能力を有している…それも無意識のうちに。 であるからして、ハルヒはとりあえずは無事だという結論に至った。人間危険な状況に臨めば誰しも 反射的に防衛反応をとる。ゆえに ハルヒが死ぬなんてことはまずありえないはずだ。 かく言う俺も、地震で宙に投げ出され地面に激突する際、確かに受け身をとっていた。…無意識のうちに。 わずかだが、今思い起こすとそういう記憶がある。 【ハルヒは無事だ】 そう納得した、いや、違う、納得したかったのは、実は他に理由がある。 それは…家族のことが気がかりだったからだ。ハルヒのほうが助かっているであろう根拠はあっても こっちは、生きている保証などどこにもないからだ…!! 「家に戻ろう…!!」 俺はすくんだ足をたちあがらせ、一目散へと自宅へ走り出した。 …… 自宅に着くまで時間はかからなかった。なぜなら、一々遠回りをせず、ほぼ直進してここまで来れたからである。 なぜ直進してこれたのか?障害物が見当たらなかったからである。いや、本来そこにあったはずのものが 瓦解消滅してしまった、という言い方のほうが適切であろう。その障害物とは何か?民家や塀のことである。 言わずもがな、住宅街はほぼ全壊していた。第二次世界大戦下で東京大空襲を経験した祖父から、 その様子を聞いたことがあったが…まさにそれがこの状況なのではないか?唯一の相違点は、今回は地震なため 空襲とは違い、そこまで火災があったわけではない。ないが、もはやそういう比較は意味を成さない。 双方とも言葉にできないくらいひどかったのは間違いないんだからな…。 民家はまるでダンプカーに押しつぶされたかのごとく、見事なまでに原型を失っている。 瓦礫の下から人間の手や足が覗いている。悲鳴やわけのわからない奇声があちこちからこだましている。 一歩一歩、歩くごと血を流し横たわってる死体…なれば、考えざるをえない。同じ境遇で生き残ってる俺は… 一体どこまで運がよかったのか…? 地獄絵図 しばらくして…俺は見つけた。 荒廃してて庭だったかどうか識別できない…そんな場所で、俺は倒れてる少女を見つけた。 「おい!しっかりしろ!大丈夫か!?」 すぐさま妹のもとにかけよる 「きょ、キョン君…」 凄惨な光景には見慣れていたはずだったが…さすがに、肉親の肢体のあちこちから出血させられてる姿を見て、 平然としていられるはずがない…っ!いや、ある意味平然としていたのかもしれない俺は。あまりのショックに。 「今、止めてやるからな!!」 …血のことだ。 俺はもっていたハンカチやティッシュ、そして次々にちぎった着ていた服を布代わりに、 とにかく俺は妹に応急処置を施した。しかし…あまりに傷が深すぎて…出血が止まらない…ッ 「くそ!!何で止まんねーんだよ!?!?」 自分は無力だと実感する。本当に自分は無力だと実感する。兄のくせに俺は…! 妹のために何もしてやれないのか!?このまま何もしてやれないまま…妹は死んでいくのか!? …そうだ!!ハルヒに!!ハルヒに会えばいい!!ハルヒに会って妹の生存を望ませれば 妹は助かる!!よし、今すぐにハルヒをここに連れてきて 「おにい…ちゃん………」 !! 妹が何かをしゃべろうとしてることに気付いた。 「しゃべるな!!これ以上の出血はシャレになんねーんだぞ!?」 「もう…ながくない…よ。なんかね…さっきから意識が…消えそうだったり…」 「なら、尚更しゃべるんじゃねえ!!死ぬぞ!!」 「だか…ら。最後に…言わ…せて」 妹が最後の力を振り絞って何かを言わんとしていることがわかった。もはやその声はかすれ声そのもので、 読唇術でも使わない限り音声を完璧に把握できない…そう言っても過言ではないほど、事態は深刻なものに なっていた。俺は全身全霊をもってその言葉に耳を傾けた。決して、決して聞き逃さないように…! 「いま…ま…で」 …… 「あり…が…、……………………………」 その後、妹が口を開くことは二度となかった。どうやら、俺のかばんの中に入ってるぬいぐるみは 用無しになっちまったらしい。生きていて、そしていつものように笑顔を見せるお前に渡したかった。 …そういえばお前、最後の最後で俺のこと お兄ちゃんってちゃんと呼んでくれたんだな…はは…なんだかな。 こぼれきれないほどの涙が 目から氾濫する …… しばらくして、俺は放心状態のまま家をうろついた。そこで俺は…親父とおふくろを発見した。 しかし…すでに息はない。 …… 追い打ちとはこういうことを言うのか 俺の自我は 崩 壊 し た ナ ゼ コ ン ナ コ ト ニ ナ ッ タ ? リピート機能がついた壊れたレコーダーのごとく 延々と脳内から再生される片言 いつまでも、延々と ただその機械は 一定の行動を繰り返すだけだった …しばらくして、その輪廻から俺を解放してくれたのはある声だった。ある声といっても、 そこら中で聞こえてる悲鳴や轟音ではない。不思議なことに、その声は俺の脳内だけで鳴っているようだった。 これが幻聴というやつか?ついに俺も気が狂ってしまったか。まあ、こればかりはもうどうしようもないじゃないか。 これで狂わない人間など、もはやそいつは人間ではない。 しかし、その声がどこかで聞き覚えのあるように思えるのは…どういうわけだ? 『…けて……た……て…!』 何回も聞くうちに、しだいに何を言っているのか…聞き取れるようになっていた。 『助けて!キョン!助けて!!』 …確かにこう聞こえた。 …… これは…ハルヒの声…??どういうわけかはわからんが、俺の脳内にこだまするこの声は… ハルヒのものか!?ハルヒが俺に…助けを求めてるのか!? 例の特別な能力のおかげでハルヒの安否については大丈夫だろうと踏んでいた俺だったが… まさか、俺に助けを求めるほど事態が窮してたとでもいうのか!? 「くそお!!」 壁に拳を殴りつける。友人が死に、家族も死んだ…その上、ハルヒも死なせるのか…? 「これ以上誰も死なせてたまるか…!」 気がつけば俺は飛び出していた。どこにいるのかすらわからない涼宮ハルヒの行方を追って… いたるところを探し続けた。ハルヒの家、公園、商店街、広場…正しくはその跡を。 いずれの場所にもハルヒは見当たらなかった。一体ハルヒはどこに…!? っ!! 地面がまだ少し揺れている…余震はまだ収まっちゃいないってのか。とりあえず、この周辺がどうなってるのか 把握する必要がある。かといって、余震があることがわかった今、闇雲に歩き回るのは危険だが…そうだ、 携帯で地震速報を見ればいいわけか…!?あまりのショックの連続で、すっかり携帯電話の存在を 忘却してしまっていた。ついでにこれで…長門にも連絡しておくか…。とりあえず、 あいつなら力になってくれるはずだ!ハルヒにもその後かけよう…! …? どういうわけだ…??電話もメールも…できない? 特に壊れた様子もない。にもかかわらず 主要機能が総じてシャットアウトしてしまっている…?? くそッ!!これじゃ一体どうしろってんだ!? …… いかん…落ちつけ…。状況が状況だ。今ハルヒを放って発狂するわけにはいかない…。 「…それならラジオはどうだ?何とかなるんじゃないか?」 俺は側にあった倒壊しきった民家に立ち入り、ラジオを探した。 …ああ、わかってる。非常識極まりない行動だってことは…おまけに、見つかるかどうかもわからない。 だが、今の俺には何か一つでもいいから自分を安心できる材料が欲しかったんだろうな。 「ぁ…」 今思えばそれは必然ともいえる光景だった。誰かが屋根の下敷きとなっている。 生きてる気配は感じられなかった。 …… 俺は黙祷を捧げた… 一体何人の人が、この震災で命を落としたのであろうか…? これだけの地震だ。死傷者数・行方不明者数は過去最悪になっていてもおかしくない…。 右往左往しているうちにラジオが見つかった。この状態で見つかったのだから、ほとんど奇跡に近い。 もっとも、それが奇跡だと実感できる精神的余裕は、今の俺にはなかった。 …さっそく電源を入れる。 「~~~~~~~~~~~~~~」 しかし ガーガー雑音が鳴るだけで、一切音声は聞き取れなかった。 やりきれない思いが爆発しそうになる。どういうわけかはわからないが、 なぜかラジオまでもが機能しないらしい。…どうして!?どうして機能しない…!!? …… とにかくダメだとわかった今、自力でハルヒを探す他ない。…しかし、ハルヒはどこにいるというんだ?? 落ち着いて考えてみる。 …… 俺は賭けにでた。 「ハルヒ!!」 ようやくハルヒを見つけた…旧校舎近くで。よくよく考えりゃ、ハルヒが一番いそうな場所だからな…。 「キョン…無事だったのね…よかった…。」 「?どうしたハルヒ、大丈夫か??」 異様なくらいハルヒに元気がないのが見てとれる。いや、元気がないとかそういう問題ではない。 体を震わせて何かに脅えている…そんな感じだ。ライオンがシマウマを見て逃げ出すなんてことは 天変地異でも起こりえないことだが、今のハルヒは、まさにそのライオンに置き換えることができる。 …… 見た限り、ハルヒはケガなど身体的外傷を負っている様子はない。どうやら、顔が青いのは そのせいではないらしい。…さすが能力様様と言ったところか。とりあえず、ハルヒは無事だ…! そのことがわかり、俺は安心した。ということは、原因は精神的なものか…?そりゃ、この光景を見れば… いたるところに生徒の屍が転がっている。 …… 幸いなのが、今日が日曜だったということ…、もしこれが平日だったならば… 今俺たちが見ているこの光景は、今よりずっと杜撰だったのであろうか…? …わざわざ日曜だというのに学校に出向き、先程まで懸命に汗を流していたはずの彼ら。 まさかこれほどの規模の地震に遭うとは…ついさっき生きてる時は想像もしてなかったはずだ…ッ。 俺は…、彼らに静かに…黙祷を捧げた。 最悪の事態 ハルヒが精神を病むのも当然だろう。 しかし、ハルヒの様子がおかしいのは…どうもそれだけが原因には俺には思えなかった。 凄惨な光景のみで具合を悪くしているのだとしたら、俺もそうである。いくら見慣れたといえど、 あんな光景は二度と見たくもないし思い出したくもない。いまだに背筋がゾッとする… だが、ハルヒは何か俺のそれとは違う。うまく説明できないが…とにかくそんな気がする。 考えてみれば、ハルヒが無意識のうちに願望を実現できるっていうのは事実だ。仮に、この光景のせいで 気分を害しているのだとしたら、ハルヒは無意識のうちに…これを見たくないと思うはず。…ならば、 極論を言えば、ここにある死体ともども消滅させることだってハルヒには…造作もないはずだ。 「ハルヒ、お前…本当にどうしたんだ…?」 なるべく刺激しないように、かつ精一杯の優しい口調で、俺はハルヒに語りかけてみた。 「あ…あたしは…、自分自身が怖い…っ」 予想外の返答が返ってきた。 …自分自身?? 「ハルヒ、そりゃ一体どういう…」 気付けばハルヒは泣いていた。 「もう…あたし、どうしたらいいか……って、キョン!?」 あまりに不憫すぎるその挙動を見たせいか、気付いたときには俺は、ハルヒを抱きしめていた。 …普段の俺ならこんな言動はまずありえない。それくらいに、事態はやばかった。 …何がハルヒをここまで追い詰めているのかはわからない。だが… とりあえず、今は少しでもこいつを安心させてあげたい…とにかくその一心からでた行動だった。 「キョン…あたし…あたしは……」 ? その瞬間だった。俺の視界が真っ暗になったのだ。目をつむってもないのに真っ暗になるとは 一体どういうわけだ?俺が今立ってハルヒを抱きしめてる感覚はあるから、気絶したとか そういうわけではないらしい。日が暮れて夜になったからか?いや、それもおかしい。 まるで、辺りが黒いカーテンにでも覆われたのではないか?と言っていいくらい…何一つ周りは見えなかった。 確かに、地震で街灯などといった光源体は破損しているかもしれない。しかし、空に星さえ見えないというのは どう説明すればいいんだ??第一、急に真っ暗になったことを考慮すると…とてもではないが、 単に日が沈んだとかそういう問題でもない。…じゃあ、この状況は一体何だ…? 「キョン…どうして真っ暗に…??」 「……」 ただ確実に言えることは、これが異常事態以外の何物でもない、ということである。 …… まあ、あのとてつもない地震からして、すでに異常事態なわけだが…。 ふと冷静に考えてみる。そもそもあんな地震、いくら日本が地震大国と言えどそうそうあるようなものじゃない。 第一震度からして桁違いだし異常すぎる。それに、小さな地震ならともかく大震災レベルともなれば普通は… もっと警告なり何だのあってもよかったはずだろ…!?東海大地震や第二次関東大震災のごとくな…!! もちろん、俺たちの住む地域でこんな地震が起こるなんて噂…聞いたことがない。一回も聞いたことがない…! それすらなく、俺たちは…突発的にこの一連の大惨事に巻き込まれた。 もしかしてこの暗闇と地震は…何か関係あるのだろうか…? !! そんなことを考えてる余裕もなくなった。あたりが冷えだした…それも急激に。 わけがわからない。本当、何がどうなってるんだ??地震に暗闇に、 そしてこの極寒…まともな思考の人間なら、今頃発狂していてもおかしくはない。 そうはならないのが、俺がハルヒたちとともに、これまでいろんな修羅場をくぐってきた慣れというもんなのか…? 「これから一体どうなっちゃうんだろう…??」 身震いするハルヒ…。もっとも、この震えは寒さからくるものであって さっきまでの原因不明の震えとは性質が異なるみたいだが… ッ!? いかん、気温の低下に拍車がかからねえ…!普通に氷点下下回ってんじゃねーかこれ?! いや、もはやそういう次元でもないらしい。なんせ、今にも意識がとびそうなんだからな…ッ! …… いや、ダメだ…!今ここで倒れたら…ハルヒはどうなるんだ…!!? …… 俺は今まで以上に強く、強くハルヒを抱きしめていた。ただ体を密着させるだけで… この極寒に勝てるほどの熱を出せるとは、到底思わない。…だが!!今の俺にはそうする他なかった…っ 「守ってね……あたしを。」 会話はそこで終了した いつのまにか 俺は意識を失っていた 暗闇を彷徨っていた
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第二章 断絶 週のあけた月曜日。あたしは不機嫌オーラをばらまきながら登校した。 半径5メートル以内に人がいないのがわかる。 教室に入り、誰も座っていない前の席を睨む。 二年生になっても変わらないこの位置関係に怒りを覚えたのは初めてだ。 あいつを見ていなければいけないなんて。 幸いなことに今日は席替えがある。 入学してからずっと続いていた偶然が途切れることを祈った。 遅刻ギリギリにあいつが教室に入ってくる。 席に鞄をおろして声をかけてくる。 「土曜日はすまなかった」 無視。 「今度からはちゃんと行くからさ」 無視。 「……?おーい」 無視。 ため息をつくとキョンは前を向き、岡部が入って来た。 授業中はイライラしっぱなしでろくに話も聞いていなかったけど 学校の授業なんて余裕よ、余裕。 こんなのもわからないなんて本当にキョンはバカよね。 待ちに待った席替え。 あたしは窓際一番後ろ。 キョンは廊下側一番前。 教室はパニック寸前だった。 ……この程度のことで騒がないでよ。 キョンを谷口のバカと国木田が慰めている。キョンは憮然と、と言うか唖然としている。 キョンは鞄を持つと教室をでた。 掃除を終わらせ我がSOS団部室へ向かう。 扉を開けるとそこには古泉君と有希とみくるちゃんと…… キョンがいた。 あたしの我慢は限界に近づいている。 あたしたちに嘘ついてまでデートしてたやつがのうのうと 『あたしたち』といようとする。 「キョン」 「何だ?」 普段と全く変わらない様子についに切れた。 「なんでここにいるの」 「いちゃ悪いのか?」 「ここはSOS団の部室よ」 「それが?」 「あたしたちに嘘ついて、SOS団の用事を放って、デートしたやつに ここにいる資格はないわ」 怪訝な顔をするキョン。 「ちょっと、ま……」 もうこれ以上聞きたくない。 『『出てけ!』』 ”四重奏”とともに古泉君につかみあげられて廊下に引っ張られるキョン。 ほかの四人も我慢の限界だったみたい。 「おい、ちょっと待てって。話を……」 鈍い音がしてキョンが黙る。 やけにニコヤかな古泉君が部室に入って鍵を閉めた。 改めて部室内を見渡すとみんなの怒り具合がわかる。 古泉君はボードゲームを出してなかったし、 湯のみも有希と古泉君の分しか出てない。 「はい、みんな注目!邪魔者も出てったところで次回の不思議探索について ミーティングを行います」 ここでいったん間。 「今度の土曜日十時に街に集合よ。遅れたら、罰金だから!」 空気が一瞬重くなる。 「罰金=キョン」の方程式が成り立っているみたいだ。 「そうですね。そっちの方がいいでしょう」 古泉君がいつものように朗らかに同意する。 「はい、お茶です」 それから他愛もない談笑で時が過ぎ、有希が本を閉じてあたしたちは下校する。 そのときあたしは廊下にあるものを見つけた。 「ねえ、古泉君」 「何でしょう?」 笑って答えながら、古泉君もあたしと同じ場所を見ている。 「どのくらい強くあいつを殴ったの?」 転々と跡を残しているそれは……。 「見た通りだと思いますよ」 そう、それは血だった。 <幕間2> 朝、学校についてハルヒに土曜日のことについて謝ったが無視された。 悪いことしたな、とは思ったけどここまでひどい扱いを受けるとは。 そのことに少なからずへこんでいて、授業には全く身が入らん。 わかんねえ……、ってつぶやいたら後ろのハルヒに鼻で笑われたような気がする。 俺が何をしたってんだ。 席替えがあった。どうせハルヒの前だろうって思ってたんだが 何が起きたのか、一番遠いところに座るはめになった。 ……ざわざわしすぎだお前ら。 偶然だろ、席替えなんて。 国木田と谷口がどうやら慰めてくれてるらしいがそんなことは気にならなかった。 とりあえず部室に行ってほかのやつらに話でも聞こうか。 と思ったんだが、みんなの反応がなんか――というか、ものすごく――よそよそしい。 古泉はボードゲームを誘ってこないし、朝比奈さんは俺にお茶を入れてくれない。 長門に至っては怒りの視線をぶつけてくる。 ……はげるって。ストレスで。 しばらくして掃除当番だったハルヒが入って来た。 こっちを見てものすごく不快そうな顔をする。 そして訳の分からん難癖を付けてきやがった。 「ここはSOS団の部室よ」 ってそれくらい知ってるさ。なんで俺がいちゃいけないんだ? ……。 土曜日?デート? ああ、『あれ』か。『あれ』を見られてたのか。 そりゃ、事情を知らなきゃ怒るだろうな。 とりあえず説明しようと口を開いた俺を……。 古泉がつかんで廊下に投げ飛ばしていた。 長門にまで「出てけ」って言われたのは正直きつい。 もう一度説明しようとした俺を古泉が思いっきり殴る。 壁に頭をぶつけて意識が遠ざかる。 気づくと部室内では次の土曜日のことを話していた。 こうなったら最終手段かな。 痛む頭を抑えて俺は学校を後にした。 終章
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雪山で遭難した冬休みも終わり3学期に突入し、気付けばもうすぐ学年末テストの時期になった なのに相変わらず、この部屋で古泉とボードゲームに興じている俺ははたから見ればもともと余裕のある秀才か、ただのバカか2つにひとつだろう どちらなのかは言わなくてもわかるだろ? 先程、俺と古泉に世界一うまいお茶を煎れてくれた朝比奈さんもテスト勉強をしている 未来人なんだから問題を知ることぐらい容易であるように思えるがその健気さも彼女の魅力の一つだ この部屋の備品と化している長門も今日はまだ見ていない 最近はコンピューター研にいることが多いようで遅れて来ることもしばしばだ 観察はどうした?ヒューマノイド・インターフェイス 「最近涼宮さんに変化が訪れていると思いませんか?」 わざわざ軍人将棋なんてマイナーなものを持ってきやがった、いつものにやけ面がもう勝てないと踏んだのか口を開いた 「その台詞、前にも聞いたぞ、今度はなんだ?」 半ば勝ちが決まったゲームの駒をすすめながらこたえる 「いや、失礼。表現があまりよくなかったようですね。あなたが最近…というかクリスマスイブ以降、長門さんに無意識に目がいくようになったのを目ざとく最初に見つけたのは涼宮さんです。」 「質問の答えになってない」 俺の言葉は自分で思ったよりぶっきらぼうだったらしく古泉は微笑のなかで眉をひそめた 「最後まで聞いてください。あなたには話していませんでしたが、それ以来閉鎖空間の頻度が少しだけあがっているのです」 「ほお、それで?」 聞き役に撤するのは得意ではないが、ここは言葉を続けさせるべきだろう 「あなたが長門さんを気にするのを涼宮さんは気に入らないのですよ」 にやけ面が含み笑いを取り入れ、いつもの数倍は苛立つ顔になる あまり続きを聞きたくなくなったので手元のボードゲームの勝ちを決めることにした 「あなたも、もし僕が朝比奈さんと仲睦まじげに話していたらイライラするでしょう?…それとも、この例えは涼宮さんの方が的確でしたか?」 やめろ、古泉 忘れたかった記憶が戻ってきそうだ 「ありません」 勝ちが決まったゲームを投了するのはいささか不快だが話を終わらせる手段はこれしか見つからなかった 「投了ですか?確実に負けたと思っていましたが、あなたには何手先が見えたんです?」 今しか見えていないさ 話を中断する理由がほしかっただけだ とも言えないので俺は黙ってお茶を飲むことに集中した うん、うますぎる 「そんなことはどうでもいいですね、今回は僕の勝ちです」 そう言いながら古泉は対戦成績表に丸をつける ながら丸付けか、小学校の教師ならやりそうだ 「では話を戻しましょうか」 思わずお茶を吹き出しそうになるがもったいないことこのうえない しかし、ごまかしたと一瞬でも油断した俺がバカだった 俺がバカなのは冒頭で述べたばかりなのでいまさらだが 「涼宮さん風に言うと、一種の精神病ですね、彼女はまさに今その状態です」 やめろ、そこまで記憶がさかのぼると閉鎖空間での悪夢を思い出す そんな俺の危惧を知ってか知らずか古泉は続ける 「閉鎖空間から涼宮さんと二人で戻って来れたのですからあなたもまんざらでもないのでしょう?」 …近くに44オートマグがあったなら自分の頭を打ち抜いていただろう 銃刀法に感謝しろ、古泉 「おやおや、そんな顔をするなんて予想外でした。続きを話すのが少し億劫になってきましたね」 そんなことを言いながらもちっとも表情を崩さない古泉に殺意すらおぼえた どういう言葉で殺意を表してやろうか考えていると、いつものようにどでかい音をたてて我らが団長が飛び込んできた 「やっほー!みんないる?」 銀河系の星達がすべてちりばめられたような笑顔を振りまきながら入ってきたハルヒ やばいな、これは何かろくでもないことを思いついた時の顔だ 「…あれ?有希はまだ来てないの?」 寡黙な宇宙人の指定席であるパイプイスに目をおき、疑問をなげかける 「長門なら、多分コンピ研じゃないか?」 疑問にこたえたのは俺だった 朝比奈さんはハルヒのお茶を煎れに行ってしまったし、古泉は微笑を浮かべるだけなので自動的にこたえるのが俺の役割になっていた 「ふぅん、じゃああたし連れ戻してくるから、それまでに会議の準備しといて」 それだけ言うとハルヒはスピードスケートの清水のようなスタートダッシュで駆け出した やれやれ、おっとこれは禁句だったか だが、口に出してはいないので大目にみることにしよう やれやれ、また会議か 時期的に今度は春休みか? 「あなたの席はここ一年ずっと涼宮さんの前でしたよね?」 急に何の脈絡もないような話を振ってきた古泉 「ああ、そうだ」 「それは恐らく、彼女が望んだからそうなったのです。涼宮さんはあなたのそばにいたいのです」 指で前髪を遊ばせながら古泉が語る 誉め言葉ではないがこういう仕草がこいつにはむかつくほど似合う 「単刀直入に言います。涼宮さんと付き合ってみてはいかがですか?」 いつもの糸のようなが見開かれ、その視線は真っすぐ俺の目を見ている どうしてお前の真面目な顔はこうも不気味なんだ 「お断わりだ、付き合う付き合わないは人に言われてどうこうの問題じゃないだろ」 俺がそう言うと古泉は口をへの字には曲げてはいたが、顔に笑みを戻した 「そうですね、失礼しました。それではあなたにお任せしますよ」 だから付き合わないと言っているだろう 任せるもへちまもあったもんじゃない 「たっだいま~!」 話が終わるのを見計らったようなタイミングでハルヒが長門をともない戻ってくる ハルヒは朝比奈さんの煎れたお茶を飲み干すとこう叫んだ 「我がSOS団は春休み、花見をするわよ!」 第1章
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4.窮地 ハルヒが倒れてから6日が経った。 長門によると、決戦は明日の13時前後らしい。 「13時5分の前後10分間」 これが長門の予測だった。長門には本当に頭が上がらないな。 これが終わったら図書館&古本屋ツアーだ。ハルヒに文句は言わせん。 明日にはハルヒに会える。 俺はそう思っていた。 世の中上手く行かないもんだ。 いや、俺がこいつらの存在を忘れていたのが悪いのかもな。 今、俺の目の前で、朝比奈さん(みちる)誘拐犯、橘京子が微笑んでいる。 「ああ、早く病院行かなきゃならんな」 とりあえず何も見なかったことにしよう。 「んもうっ、待ってくださいよ!」 何か言ってるな。聞こえん。 「涼宮さんのことですよ!」 「……ハルヒだと?」 佐々木じゃないのか。 「ふぅ、やっと止まってくれた」 足を止めて橘を見る。正直、関わりたくはない相手だ。 ハルヒは大丈夫だ、明日には目覚めるさ。 そう思っても、こいつがハルヒの名前を口に出すと反応せざるを得ない。 信用は絶対にできないが。 「で、ハルヒがどうした。サッサと言え」 「あなたは涼宮さんが明日目覚めると思ってるんでしょう」 何でこいつがそんなことを知ってるか、何て今更どうでもいい。 『機関』と同じような組織だ。調べる伝手なんかいくらでもあるんだろう。 しかし、何で今更俺にそんなことを言ってくるんだ? ハルヒがこのまま情報生命素子とやらに乗っ取られるのは、こいつらにとっても不都合なはずだ。 こいつらに俺たちを邪魔する理由は思い当たらない。 まだ邪魔しに来たと決まったわけではないが。 「それがどうした。お前には関係ない」 「そんな言い方酷い。……まあ、それはいいですけど。 それより、涼宮さんは明日になっても目覚めない、と言ったらどうしますか?」 何を言っているんだこいつは。ハルヒが明日目覚めない? 長門は明日、ハルヒの情報生命素子を消去すると言い切った。 こいつと長門、俺がどちらを信じるかなんてことは言うまでもない。 「あ、信じてないでしょう。無理もないか。今は伝えるだけでいいです。 明日、涼宮さんは目覚めません。手遅れになる前に手を打たないと」 「お前が未来人だとは思わなかった」 まともに相手してやる気はない。だが、こんな予言めいたことを言う理由は気になる。 「まさか。未来人ならこんなはっきり明日のことは言わないはず」 それは確かにそうだ。未来のことをはっきり言うのは禁則事項らいしからな。 「まあ、簡単に気が変わるとは思ってなかったけど……」 簡単でも複雑でも、俺がお前らに協力することはねぇよ。 「いつまでそう言っていられるかしら? まあいいわ、またすぐに会うことになるんだから」 そう言うと、笑顔のままひらひらと手を振って去っていった。 何しに来たんだ? 俺を不安に陥れようとしたなら大失敗だぜ。 しばらく悩んだ俺は、古泉の携帯に電話してみた。 あいつらの行動とその目的を機関が把握しているか確認したくなったからだ。 電話が通じるところにいない可能性が高い。 だが、予想に反して携帯は通じた。 『もしもし』 ……俺は思わず携帯を離してまじまじと見てしまった。 かけ間違えたか? 出たのは女性だった。 『もしもし? 大丈夫です、これは古泉の携帯で間違いありません』 受話器から聞こえてくる声で俺は冷静になった。 驚かせてくれたな、古泉め。 「その声は森さんですか?」 電話越しでも聞き覚えのある声は、完璧なメイドにして怒らせると恐ろしい機関のエージェント、森さんだった。 『はい、お久しぶりです。古泉が閉鎖空間にいるときと就寝時、機関の人間の内 あなた方がご存じの人間がこの携帯を預かることになっています』 なるほど。いつでも連絡が取れるようにという機関の配慮だろう。 「ああ、すみません、びっくりしてしまって。それで、用件なんですが……」 『橘京子があなたと接触したことですね』 ……やれやれ、さすがにわかっていたのか。俺は尾行でもされているのか? 『結果的には尾行になりますが、目的はあなたの安全です。今は緊急事態ですから』 森さんはあっさり認めた。 『それに、橘京子の方にももちろん監視がついています。 今回あなたと接触しようとしていることも掴んでいました』 本当にやれやれだ。そこまでわかっていたなら教えておいてくれてもいいだろうが。 機関も未来人同様、秘密主義をモットーとしているのか? 「で、あいつは何で俺のところに来たんですか? ハルヒが目覚めないなんて戯言をほざいていましたが」 『……そんなことを言っていたようですね』 ん? この言い方だと今の俺たちの会話で初めて知ったようだが? 知らなかったのかよ おい! これが古泉相手なら嫌味の2つや3つ言ってやりたくなるが、相手は森さんなので素直に聞く。 「把握されてなかったんですか」 『申し訳ございません。我々としましても何とか把握したいとは思っていたのですが、 不自然な邪魔ばかり入りまして』 不自然な邪魔? 『ええ、おそらくは人外の、と言っていいと思います』 人外ってことは…… 「宇宙的な力で邪魔されたと言うことですか」 あっちにも長門たちとは別の宇宙人がいたからな。 『証拠があるわけではありませんが、そのように推測しております』 そりゃ、普通の人間が太刀打ちはできないよな。 『橘京子の発言について、こちらもこれから検討に入ります。 周防九曜は監視をすり抜けて活動しています。何かあるかもしれません。 事実だとすると時間がなさ過ぎます。急がないと』 周防の活動、と聞いて寒気が走った。橘の警告。まさか何かたくらんでやがるのか。 だが、俺は長門を信じる。古泉がらみで今回は機関も信じてやってもいい。 絶対に、何とかなる。 病院に着くと、ハルヒの母親がいた。 初日に会って以来、俺は初めてあった。 ほとんど午前中に来ているらしい。 1日中ついていると言い張ったらしいが、病院の方でなだめたと聞いた。 長門が1日ついていることは隠しているらしい。 「あなたがキョンくんでしょ」 いきなり言われて戸惑った。 「あ、はい、そうですが……」 「いつも娘がお世話になってるみたいね。ありがとう」 「えっ いえ、そんなことは……」 一体ハルヒは家で俺のことをどういう風に話しているんだろう。 「こんなにお友達が心配しているの1週間も起きないなんて……」 ハルヒ母は、悲しげな目をハルヒに向けて言った。 特に異常はないが何故か目覚めない、そう聞かされているはずだ。 原因がわからないのでますます不安になるだろう。 「中学のときだったら、お見舞いに来てくれる友達なんていなかったと思うの」 ハルヒを見つめながら独り言のようにハルヒ母は続ける。 「それが今はずっとついてくれているお友達がこんなにいるものね。この子は幸せ物だわ。 ──あんまりお友達に心配かけてないで、早く起きなさい、ハルヒ」 言いながら涙目のハルヒ母を見て、俺は何も言えなかった。 本当のことを知らされないってのも辛い物だよな。 ハルヒ、お袋さんも心配してるぜ。頑張ってくれ。 そのとき、ドアがバタンと大きな音を立てて開いた。 おいここは病院だぞ。こんなドアの開け方をする奴はハルヒ1人で十分だ。 「きょ、キョンくん!! た、たた大変です!!!!」 「朝比奈さん!?」 朝比奈さんがこんなドアの開け方をするなんて珍しい、というかありえねえ。 何かあったのは顔を見れば一目瞭然だ。これ以上ないくらい焦っている。 「な、長門さんが、長門さんが……!!!」 大きな目からボロボロ涙をこぼし始めた朝比奈さんは、それ以上説明できなくなってしまった。 「落ち着いてください、長門がどうしたんですか?」 聞いても既に号泣してしまっている朝比奈さんは何も説明してくれない。 「長門はどこにいるんですか? とりあえず案内してください」 そう言うと朝比奈さんは泣きながらうなずいて病室の外に出て行ったので、俺もついていくことにした。 「お騒がせしてすみません、失礼します」 ハルヒ母に頭を下げると、病室を後にした。 ここまで来て、長門に何があった!? 「すみません、落ち着いたらでいいから説明してくれると嬉しいんですが」 泣きじゃくりながら俺を案内する朝比奈さんに聞いてみた。 無理っぽいけどな。 俺の中の不安がだんだん形になってくる。 『明日、涼宮さんは目覚めません』 橘の言葉がよみがえってきた。くそっ あいつらが何かしやがったんじゃないだろうな。 「うっ ぐすっ……す、涼宮さんのお母さんが、みえたんです、だから席を外して……」 泣きじゃくりながら何とか説明をし始めたところで、ハルヒの病室とは少し離れた部屋に着いた。 ドアを開けると、ベッドに長門が寝ていた。休憩しているのか? いや、そんなわけはない。だったら朝比奈さんが泣き出すわけがない。 「そ、そしたら……ぐすっ……突然、長門さんが……た、倒れて」 状況は把握した。だが、長門が倒れる? 過去に長門が倒れたのときには必ず関わってる奴がいやがった。 雪山のとき。そして今年の春。 「畜生、あいつか……」 情報統合思念体が「天蓋領域」と名付けたやつ。 いまいち、というか全然何考えてるかわからない存在だ。 長門の親玉にすらわからないんだ、俺になんかわかるはずもない。 あいつらにも、長門がいないとハルヒを助けられないことくらいはわかってると思うが。 だったら何故? 「わ、わたし、何もできなくて……ぐすっ 長門さんが、大変なのに……」 朝比奈さんが泣いている。 泣かないでください、俺も同じです。 何もできねぇよ、畜生! 何とかしないと……どうする? 焦って思考がまとまらない。 長門──情報統合思念体によるインターフェース。 二度と会いたくないが、朝倉がいたらこの際代わりに頼りたいくらいだ。 朝倉? そうか! 俺は携帯を取り出して古泉に電話をかけた。 『もしもし』 今度は古泉が出た。 「古泉か。長門が倒れた」 時間があまりない。単刀直入に話す。 『ええ、聞いています。僕も今そちらに向かっているところです』 「原因は天蓋領域か」 『おそらく。周防九曜の動きが全くつかめていません。何かしたのではないかと』 やはりな。 「そこでだな、今気がついたんだが、喜緑さんに連絡を取れないかと思ったんだが」 この際喜緑さんじゃなてく、他のインターフェースでもいい。 機関は複数のTFEIとコンタクトを取っている、と言っていた。 長門以外の宇宙人でも、長門と同じことができるはずだ。 「情報統合思念体の派閥が違っても、ハルヒの今の状態が面白くないのは同じなはずだ。 情報生命素子とやらを何とかするのに異論はないはずだろ」 俺は古泉に言った。 『それに気付くとはさすがですね』 嫌味かよ。 『いえいえ、純粋に賞賛の言葉ですよ。ですが、残念ながら無理です』 「無理? 何でだよっ!」 電話越しに突っかかる。目の前にいたら襟首を掴んでいるところだ。 『今朝から、機関が把握しているTFEIと連絡が取れなくなりました。 原因は長門さんと同じと思われます』 「なんだって?」 つまり情報統合思念体製インターフェースは、すべて活動停止に追いやられているってことか。 『そういうことです。長門さんは、最後まで動いていました。 状況はわかっているようでしたし、注意する、と言ってくださっていたのですが……』 なんてこった。長門は気がついていたのか。 気がついて、何とかしようと努力してダメだった。 まるで1年前のあのときのように。 また何も言わずに1人で抱えてたのかよ、長門! 『あなたには言うなと言われていましたが、状況が状況ですので。それでは、後ほど』 電話が切れた。 ちょっとショックだった。俺に隠したかったのか? 「違いますよぉ」 いつの間にか泣きやんでいた朝比奈さんが、まだ涙の浮かぶ目で俺を見て言った。 「長門さんは今のキョンくんに、涼宮さんだけを心配していて欲しかったんです」 そんなこと言われたって、この状態で長門を心配するなっていうほうが無理だ。 「長門さんはキョンくんに余計な心配かけたくなかっただけなんです」 言いたいことはわからないでもない。 それでも、やはりショックは抜けなかった。 そりゃ、俺は何もできないが、少しは頼って欲しかったよ、長門。 「すみません、少し頭冷やしてきます」 なんと言っていいかわからず、俺は部屋から逃げ出した。 外に出ると、古泉が到着したところだった。 「どうしたんです? わざわざ出迎えてくれるとは」 俺を見つけると、古泉が声をかけてきた。 「そんなわけないだろ。頭冷やしに出てきただけだ」 「あなたがショックを受けているのはわかりますよ」 古泉が真顔で言った。 「僕だってそうですから」 お前も? 少なくともお前は長門から話を聞いていただろうが。 「いえ、ただ一言『注意する』とだけ。具体的に何が起こっているかは何も聞いていません」 そうか。やはり1人で何とかしようとしていたのか。 「しかし、今回は正真正銘の緊急事態です。 長門さんはこちらの唯一のカードにして切り札だった。それを奪われたわけですからね」 その通りだ。長門がいなきゃ、ハルヒは助からない。 意識が戻っても、既に中身は違う人間だ。実際、どういう人間になるのかもわからない。 そんなことは絶対に避けなければ駄目だ。 「俺たちはどうすりゃいい?」 古泉に聞いた。こいつなら、何かいい案を出してくれるかもしれない。 だが、古泉は首を横に振った。 「機関の上の方は恐慌状態ですよ。こちらは何の手も打てないのですから」 そりゃそうだろう。機関と言っても、所詮はただの人間の集まりだ。 「でも、少なくとも僕たちは諦めるわけにはいきません」 いつになく真剣な目で古泉は俺を見つめた。 この『僕たち』というのはSOS団のことだ。 「そうだな、諦めるわけにはいかねぇよな」 ──俺たちだけは、な。 5.選択へ
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最近キョンの様子がおかしい。 何だろう、私に隠しごとがあるような。特に理由があるわけではないけど、なんとなくそんな気がするの。こういう時は直接聞くに限る。 「ねえ、キョン。私に隠しごとしているでしょ」 キョンは一ノ谷から駆け下りる源義経を見た平家のように動揺している。 「いきなり何を言い出すんだ。別に何もねえよ。」 「正直に言いなさい」 「母が次の中間テストで成績が悪かったら予備校に行けってうるさくてな。成績が悪かったらどうしようかと思い、憂鬱なのさ。」 「ふうん。あんたは勉強の仕方が効率悪いのよ。そう言えば来週数学の小テストがあったわね。今度、私が指導してあげるわ。」 「ああ、頼む。」 「ところでキョン。最近どう。元気にしてるの。」 どうもこうも、授業中も放課後もいっつもおまえの前にいるだろ。俺が元気かどうかなんて言わんでもわかるだろ」 「私の知らないところで変わった経験をしたとか、宇宙人が歩いていたとかそういうのはないわけ。普段、しっかり周りに目を配っていたら1つや2つ見つけられるはずよ。あんたそれでもSOS団の団員なの」 「あのな。ハルヒ。そんな体験がごろごろ転がっているわけないだろ。」 私はキョンが一瞬動揺したのを見逃さなかった。 「おまえこそ変な体験をしたことはあるのかよ」 「うーん。そうね。」 心当たりがないわけではない。私だって1つぐらい奇妙な体験をしたことがある。でも、言わなかった。 「まあ、いいわ。不思議な出来事は簡単には見つけられないの。ありふれた日常でもじっくり目を懲らすと転がっていたりするものよ。常に気を引き締めて周りに気を配りなさい。わかったわね。」 キョンは「やれやれ」とでも言いたそうな顔をしていた。 不思議な体験ねえ。もうあれから4年も経つのか。 放課後、いつも通り部室に行く。 部室に入ると、キョンと有希が何かを話していた。キョンは私が部屋に入ってきた途端、話をやめ椅子に座り、有希は私を一瞥してから、本を開ける。何を話し ていたんだろう。みくるちゃんはメイド姿でお茶くみをしている。私は机に座りパソコンに電源をつける。そしてお茶を飲み、メールとホームページのカウン ターをチェックしてからネットサーフィンをする。宇宙人も超能力者もいない、不思議で奇怪な体験も存在しない。SOS団を結成してもうすぐ1年。毎日繰り返されるSOS団的日常。けどそれはそれで楽しかった。そういえば最近のキョンの様子がなにか変なのよね。ここ数日ずっと感じる違和感。予備校の話は本当なんだろうけど、他にも何か隠しているわね。キョンが私に隠さなければいけないことってなんだろう。 と考えていると古泉君が部室に入ってきた。 「どうも、遅れてすみません。」 そうして、団員全員が揃った。 揃ったから何もする訳でもないのだが。私は今日明日に適当な記念日がないかネットで調べたりしていたが「日本気象協会創立記念日」とか「長良川鵜飼開きの 日」とかばっかりでイベントができそうな記念日も見つからなかった。まあいいわ。来週にはビックイベントをしないといけないしね。 キョンは部室を出て行ていく。三者面談があるらしい。 三者面談というのは、先生と生徒とその保護者の3人で進路のこととかを話し合うというくだらない行事で、2年生は5月のゴールデンウィーク明けから実施されている。 しかし暇だわ。なんかすることないのかしら。 そういえば、朝比奈ミクルの冒険DVDの仕上げをしようと思っていたんだわ。キョンがいないし丁度いいわ。DVDのジャケットを決めるためみくるちゃんの写真を何枚かピックアップして画面に表示させる。どれがいいかしら。このメイド服も色っぽいけど、かえるの写真も意外にいけるわね。 「古泉君、あなたはどれがいいと思う?参考までに聞いてあげるわ。」 古泉君が画面を覗きこむ。 「そうですね」 その時ドアが開いた。 「何やってんだ。」 キョンだった。 キョンは不機嫌そうな顔をしている。それを見た古泉君は微笑しながらパソコンから離れていく。 「写真を見ていただけよ。あんたこそ面談じゃなかったの。」 「前の人が長引いていて、まだ順番が回ってこないようだったから部室に戻って来たんだ。」 「そう。」 「で、何やってたんだ。」 キョンがパソコンを見る。隠し通してもよかったが、変に勘ぐられるのもなんだから全部正直に言ってやった。 「そんなもんいつ作ったんだ。俺は知らんぞ。」 「あんたがいない間に作ったのよ」 キョンは古泉君を一瞬睨み、私に 「DVDの発売はまずいだろ。」 「なんで?」 「そんなもん、発売してみろ。あっという間に広がってしまう。朝比奈さんの日常生活に支障が出るだろ。とにかく駄目だ。」 「あんたがなんと言おうと発売するわ。あの映画はSOS団全員で作り上げた汗と涙の結晶。後世に残す芸術作品だわ。みくるちゃんだって承諾しているわ。」 みくるちゃんは捨てられた子犬のような目でキョンを見てぶるぶると首を横に振る。 「だめだ。朝比奈さんも嫌がっているじゃないか。朝比奈さんはグラビアアイドルでも、おまえのおもちゃでもないんだ。だいたい、なんで映画と関係のないセクシー映像が必要なんだ。何がSOS団全員で作り上げた汗と涙の結晶だ。DVD化に俺は参加していないし、そもそもやることするら聞いていない。」 みくるちゃんのことになるとムキになるキョンをみて私も腹立ってきた。 「いちいちうるさいわね。私が発売するって言ったら発売するの。みくるちゃんは私のおもちゃよ。みくるちゃんに決定権なんてないわ。とにかく売り出すのよ。」 キョンの顔がみるみる内に赤くなる。 「こんな“くそ”映画、売り出す価値もない。」 かっちんときた。“くそ”映画。 「ふざけんな。SOS団の総力をあげて作り上げた映画に対して“くそ”はないわ。でてけ!!!」 キョンは部屋を出て行った。 なんなの。あいつ。 椅子に座り、パソコン画面を眺めた。 あー、むかつく。映画作りはあんなに協力的だったのに。“くそ”映画はないでしょ。 キョンは映画作りは楽しくなかったのかしら。 「涼宮さん」 振り返ると心配そうな顔で古泉君が私をみていた。 「彼も本心から映画を罵倒した訳ではないと思いますよ。彼の映画作りに対する情熱は涼宮さんにも負けず劣らぬものでした。にもかかわらずその映画のDVD化の話が自分の知らないところで進んでいたらどう思うでしょうか。」 私はパソコンの画面の方向に目線を向け、返事はしなかった。 「涼宮さん。彼は強情で意地っ張りです。彼は楽しいことでも「楽しい」と声に出しません。素直じゃないんです。彼も反省していると思うのですが、素直に謝ることができない人間なんです。ですから」 古泉君は言いにくそうに言葉を選んで話していた。 「わかってるわよ。」 古泉君の言うとおり。本当にあいつは頑固なんだから。仕方ないわね。私が謝るしかないわね。 しばらくしてキョンが部室に戻ってきた。面談が終わったようだ。 「ハルヒ。」 「何よ。」 「すまなかった。」 「そう。うん。」 ぱたん。有希が本を閉じた。有希が本を閉じる音はSOS団活動終了の合図になっていた。世の中にはタイミングというものがある。いくらこれをしようと考えていてもタイミングを逃してしまうとどうしょうもない。私もキョンに内緒でDVDを作ろうとしたことを謝ろうと思っていたが、どうもそのタイミングを逃してしまった。と、都合のいい理屈をつけてごまかす自分が情けない。謝ろうとは思っているんだけど。結局いつもうやむやになってしまう。 下校はいつも通り。私とみくるちゃんが先頭。後に有希。最後尾にキョンと古泉君がいる。有希のマンションの前でみんなと別れた。 たしかに私も悪かったわ。団員を仲間はずれにするなんて団長として失格ね。明日はちゃんと謝ろう。はあ。大きなため息が自然とでた。 と、ここで私は数学の参考書を学校においてきたことに気づく。宿題は小テストの日までにやればよくまだ余裕があるけど、キョンに教える前に一通り問題を解こうと思っていたんだった。仕方ない。私は学校に引き返えした。 私が有希のマンション前を通ろう としたとき、私はさっき別れたばかりのキョンを見た。あいつも忘れものかしら。このタイミングを逃してはいけない。今度こそ。ちゃんと謝ろう。私は小走り でキョンに近づき、声をかけようとした。しかし、キョンの行き先が学校でないと分かりやめた。キョンは有希のマンションに入っていく。え。どういうこと。 なんでキョンがマンションに。 なんか有希の家に行く用事があったのかしら。いや、でも変だわ。それならどうして私たちがマンションの前を通った時、直接マンションに入らなかったの。まるで、SOS団の誰かに知られたらまずいことでもあるような行動。すっごく嫌な予感がした。でもそれは、実は去年のクリスマスからうすうす感じていたそんな恐怖だった。 オートロックのドアが開きキョンは中へと消えていく。 私は坂を登るのをやめ、家路についた。キョンはいつから、有希のことを思うようになったんだろう。いや、まだ決まった訳じゃないしね。そう自分に言い聞かせる。 なぜか胸が締め付けられる。なんで私はこんな気持ちになるのだろう。はじめて自分の気持ちを気づいた。いや正直に言うわ。本当はずっと気づいていたの。気づいていたけど気づかないふりをしていた。私はキョンが好きだった。 翌日の放課後、部室に行くと誰も来ていなかった。定位置に座り本を読む有希を除いて。 「他のみんなは来てないの。」 「……」 私は椅子に座り、パソコンの電源をつけた。 「キョン達はまだなのかしら。遅いわね、何やってるのかしら。」 パソコンのファンの音が部屋に鳴り響いた。 「ねえ、有希」 「……」 「有希ってどんな本読むの?」 「いろいろ」 「好きなジャンルとかあるでしょ。」 「特に」 「恋愛小説とかは読むの」 「たまに」 「そういえば、有希のタイプの人ってどんな人なのよ」 「……」 「やさしい人、頼りになる人?」 「……」 「古泉君みたいな人は?やさしいし、しっかりしてそうじゃない」 「彼はとても立派。」 「そう。じゃあキョンは?あいつは気が利かないし頼りないけど。」 「……」 有希は何も言わず本に目を落とした。 私が何を言うか思案しているとドアが開く。キョンだった。 「よう」 私はネットサーフィンに忙しいふりをする。 古泉君とみくるちゃんはなかなか来ない。 無音が続いた。 私は心に決めていた。キョンに気持ちを伝えよう。もしかしたら迷惑かもしれない。 でも、私はこの気持ちを自分の中だけにしまい込むことはできそうにない。キョンが有希を選ぶならそれでいい。 とにかく私の気持ちを伝えたかった。2人きりになったときに言おう。学校帰り、みんなが解散した後が狙い目かしら。 沈黙を破るように扉が開く。 「遅れてすみません。面談がありまして。」 古泉君が入ってきた。 みくるちゃんも今頃、面談をしているのかしら。ちなみに私もこれから面談だ。 「そうそう、明日、土曜日は不思議探索ツアーをするから。北口駅9時集合ね。」 キョンの表情が曇る。 「いきなり言われても困るぞ。」 「何言ってんの。団長命令は絶対よ。参加しなさい。」 キョンはまだ怒っているのかしら。 「そうですね。やりましょう。最近やっていませんでしたから楽しみです。」 そう言ったのは古泉君。それを聞いたキョンは古泉君を一瞬睨みつけたが、承諾した。 私は部屋を出る。今日は三者面談の時間だからだ。 面談が終わり、部室に戻る。扉を開けようとしたとき中から声が聞こえてきた。キョンの声だ。 「どういうつもりだ。なんでOKしたんだ。明日の朝9時集合だと。あほか。」 「涼宮さんが集まると言っているんです。仕方ないでしょう。」 「俺たちは忙しいんだ。やらなきゃいけないことだってたくさんある。そんな暇つぶしにつきあっている暇はない。たまには断ってやってもいいだろう。」 「まあ、いいじゃないですか。」 「どうしておまえはハルヒの言うことをそうほいほい肯定するんだ。朝比奈さんも何か言ってやってください。」 「えーと、その、まあ。涼宮さんが決めたことだから仕方ないと思います。」 「やれやれ」 私はその場に立ちすくんだ。帰ろうかな。ドアノブに手をかけた状態で静止し続ける訳にもいかず扉を開ける。 キョンと古泉君はオセロの真っ最中だった。とりあえず椅子に座り、パソコンに電源を入れ、起動を待ちながら頭の中で整理する。 「俺たちは忙しいんだ。」キョンの言葉がフラッシュバックする。なにが忙しいよ。有希の家に行くのが忙しいっていうの。 それに古泉君とみくるちゃんまで。 みんなはSOS団の活動を楽しんでいる。そう思っていた。いや、楽しんでいるかどうかなんて考えもしなかった。 世界中どこにでもある平凡な毎日。不思議も何もない日常。そんな日常を変えようと必死でがんばってきた。世界一面白いクラブを作ろうとそう誓った。 SOS団は世界一面白いクラブだろうか。楽しいと感じていたのは私だけだったのかもしれない。 「そうそう。」 私は思い出したように言った。 「急用を思い出したわ。明日の活動は中止だから」 キョンも古泉君もみくるちゃんも、一瞬表情が変わった。有希までも読書を中断してこっちを見ている。 そんな顔をされるとこっちまで不安になってくるじゃない。 「安心しなさい。また近いうちに活動をするから。」 「楽しみにしています。」 古泉君が笑顔で言った。気を遣ってくれたのかもしれない。 「すみません。ちょっとバイトがありまして。帰らせていただきます。」 古泉君は突然そう言うと部室を去った。 そうこうしているうちに下校時間になる。パタン。 私は考えた。SOS団の団員は私のことをどう思っているのかしら。SOS団のことをどう思っているのだろうか。 今まで「みんながSOS団の活動を楽しんでいるか」なんて考えたこともなかった。 私は誰よりも面白い高校生活を送ろうと思った。世界で一番楽しいクラブを作ろうと思った。そして、そうなるように行動したつもり。 でも、それは私の自己満足だったのかもしれない。この1年私は1人で盛り上がり1人で空回っていたのだろうか。 宇宙人も未来人も異世界人もでてこない平凡な日々。SOS団ってなんなんだろう。SOS団なんてやめようかな。 キョンやみんなと映画を作った日が懐かしい。徹夜で映画の編集作業をしてくれたキョン。 今はSOS団の活動より、有希と一緒にいる方が楽しいのかな。 脱力。という言葉がぴったり合う。私は何もしたくはなかった。テレビを見ても音楽を聴いても、上の空だった。そうして何もせず休日は過ぎ去った。 月曜日。よっぽど学校を休もうかと考えたが、学校には行くことにした。始業時間ぎりぎりに学校に行き、休み時間を告げるチャイムが鳴ればすぐに教室を出た。授業は頭には入らず、ずっと雲を眺めていた。 放課後、部室に行くことにする。団長が無断欠席するわけにはいかないし。 部室に入ると誰も来ていない。いつも部屋の隅で本を読んでいる有希さえ来ていない。有希の座っている椅子に手紙が置いてある。 涼宮ハルヒ様へ 明朝体で書かれた字は有希が書いた字で間違いない。私は手紙の封を切った。中には一枚の紙があり、そこにはこう書かれていた。 私の家に来られたし。 なんだろう。果たし状?なわけないか。私に何か話しでもあるのかしら。 私は、椅子に座り誰か来るのを待ったが、だれも来なかった。5分と経たないうちにだれもいない部室に1人でいることに耐え切れずへやから飛び出した。気が進まないけど仕方がない。私は有希の家に向かう。 有希の家に行きインターフォンを鳴らす。 ドアが開き、有希が出てきた。 「入って」 私は伏魔殿に入るかのごとくおそるおそる中に入る。家の中は暗かった。前が見えないぐらい真っ暗なのだ。まだ外は明るい。不自然というか、意図的に暗くしたとしか思えない。 「こっち」 明かりもつけず真っ暗な廊下をまっすぐ歩く有希を追って中へ進む。手から汗が噴き出した。真っ暗なリビングに入ったとき、 パパン 轟音がなり、部屋の明かりが突然ついた。 え。 「ハルヒ。今までありがとう。」 クラッカーを持ったキョンがいた。 「これからもよろしくお願いします。」 と古泉君。 「おめでとうございます」 みくるちゃん。 つくえの上にはケーキや料理がところ狭しと並んでいた。 中央に陣取っている巨大ケーキには、 祝SOS団結成1周年 と書かれている。部屋は飾り付けをしていて、お祝いムード一色。リオデジャネイロのカーニバルに負けないほど賑やかな部屋だった。 このサプライズパーティーについて古泉君が説明してくれた。 「いつも涼宮さんが楽しいイベントを企画して、僕たちを先導してくださっていました。おかげで僕たちはいつも楽しませてもらっています。涼宮さんには感謝しきれません。ですから、SOS団結成一周年の今日ぐらいは役割を交代して、僕たち団員が団長を驚かせようと考えたわけです。 料理は朝比奈さんと長門さんが担当しました。ケーキも含めてみんな手作りですよ。僕たち男2人は部屋の飾りを担当しました。実を言うと、ここ数日、SOS団の活動が終わった後、涼宮さんに内緒で長門さんの家に集まって準備をしていたんです。休日返上でした。正直、涼宮さんが土曜日に不思議探索をやると言ったときにはどうしようかと思いましたよ。」 さらに古泉君は私にしか聞こえないような小さな声で言う。 「ちなみにこのパーティーを発案したのは彼です。」 古泉君は普段の2割増の微笑を浮かべていた。 饒舌な古泉君に対して、キョンは私に話しかけてくることさえしなかったが、時折私の顔色をうかがいたいのか、ちらちら見てくる。 私はあふれる笑みを抑えることが できなかった。無理もないわね。ここ数日感じていた違和感。胸のつかえが一気にとれたんだから。ここ数日キョンの様子がおかしかった理由。キョンが有希の 家に行った訳。不思議探検の実施を嫌がったことも、今ならわかる。理由はたった1つだったのだ。 もちろんSOS団結成一周年のことを私も忘れていた訳ではない。以前から盛大に祝おうと考えていた。けど最近立て続けに起こった出来事のせいでイベントをやる気持ちも失せていたのだ。 私はみんなに言った。 「みんな、ありがとう。」 私は緩んだ顔を引き締める。 「実を言うと、私は一度だけSOS団を解散しようと思ったことがあるの。私は世界一面白い仲間と世界一面白い活動をしようそう思ってこの団を作ったの。でも本当にそうなんだろうかって。宇宙人も未来人もやってこない。別に不思議な出来事もおきない。SOS団の活動もどこにでもある日常なんじゃないかって。 けど私はそう考えた自分を恥ずかしく思うわ。みんなに申し訳ない。SOS団は間違いなく世界一の団体。だって世界一のメンバーが集まっているんだもの。 みんなと出会えて本当によかった。本当にありがとう。 みんな、これからも私についてきなさい。今まで以上に盛り上げるわよ。 そうよ、常に前年を上回らなければいけないもの。 みんな覚悟しなさい。明日から激務が待っているから。」 その後、ケーキに1本のローソクを立て、ハッピーバースディを歌い、みんなで一緒に息を吹きかけ火を消した。そして乾杯してからみくるちゃんと有希の手料理に舌鼓をうつ。 有希は小さい体でよくこれだけ食べられると関心するぐらいもりもりもり食べ、みくるちゃんはメイド姿じゃないけど、ぱたぱたと動き回っていた。つくえにのりきらないほどの料理をみんなで平らげ、食後は古泉君が持ってきたツイスターやジェンガで盛り上がった。 日が沈み暗くなり私たちは解散し た。私は1人夜道を歩いている。暖かくなったといってもまだ夜は肌寒い。私は1つの決心をしていた。キョンにちゃんと気持ちを伝えよう。キョンが有希の家 に向かう姿をみて自分の気持ちに気づかされた。あれは杞憂だったが、今後心配が具現化するとも限らない。もうあんな気持ちにはしたくない。私はキョンが好 きなのだ。たぶんあいつだって。 私は携帯をポケットから取り出した。キョンと会って話をするために。