約 258,871 件
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/5840.html
涼宮ハルヒの共学 何か胸騒ぎがする それもものすごくイヤなヤツが ゆっくりと窓の外を流れる見慣れた景色を眺めながら 俺は安易に単独行動をしてしまった 相変わらず行き当たりばったりの自分の行動力を悔んでいた 俺は今、鶴屋家差し回しの車の助手席に乗っていた 運転しているのはあまりよく顔を知らない、鶴屋家の使用人だった これが新川さんならば ものの1分もかからずに到着できるぐらいの近距離なのだが 鶴屋家の運転手さんはひたすらゆっくりと まるでリムジンでも運転するような丁寧さで車を走らせていた 鶴屋邸から長門のマンションまでは車ならそう遠い距離ではない なだらかな下り坂を下りていると、見慣れたレンガ造りのマンションが見えてきた もうすぐだぞ長門 ハルヒに古泉、朝比奈さん 早くみんなの顔が見たくて焦る 横道に逸れてしばらく走れば長門のマンションの入り口だ 少し安心してシートに座り直すと突然 全体にフィルターでもかけたように、長門のマンションがぼやけだした ????? これはいったい? 運転手さんもその状況に気付いたようで 「あれ?」とつぶやいてブレーキを踏んだ その直後だった バアーン! 激しい音がして車のボンネットに何かが叩きつけられた 思わず自分の顔を両手で覆ってしまう 狭い道なのでそんなにスピードが出ていなかったこと 既にブレーキを踏んでいたこともあって ボンネットに叩きつけられてそのままゴロンと転がり落ちたその物体を車は跳ね飛ばさずに済んだ 慌ててドアを開けて外に飛び出した俺の前で倒れていたのは 北高のセーラー服を着て髪に黄色いリボンを巻いている女子 短いスカートがまくれ上がり、死んだようにピクリとも動かないそれは・・・ 涼宮ハルヒだった ハルヒ? 何でお前がこんな所にいるんだ? どこから落ちてきたんだお前??? 話は少しだけ過去にさかのぼる 俺たちが無事に2年生に進級し 我がSOS団は無謀にも新入部員募集などという不届きなイベントを繰り広げていた ハルヒの豪放磊落というのか、それとも傍若無人というのか 相変わらずコイツを現す四字熟語には不自由しないある日 部室にいつもいるはずのメンバーが一人足りないことに気付いたのもやっぱりハルヒだった SOS団の初期メンバーでもあり、唯一のまともな文芸部員で 元眼鏡っ子で無口で色白の薄幸の美少女、しかしその実態は この銀河を統括する統合情報思念体が調査のために派遣した対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインターフェイスである(ちょっと一息) 要するに宇宙人が作ったアンドロイドの長門有希が欠席していた 慌てて長門に電話をかけるハルヒ 古泉も朝比奈さんも不安な表情で俺の顔を見ていた 「キョン!行くわよ!」 ああもちろんだとも 言われなくてもそうするさ あの長門が発熱して寝込むなんてあり得ない いや、あるとしたら理由ははっきりしている 例の天蓋領域とやらの侵略がまた始まったのだ メイド姿の朝比奈さんを大急ぎで着替えさせ 長門を除くSOS団一行は、足音も激しく北高を後にした 先頭をずんずん歩く団長の後を、俺たちが一団になって追いかける かわいそうな朝比奈さんはなかなか追いつけずにフゥフゥと息を荒げているが それでも泣き事などは全く言わない 朝比奈さんにもこの異常事態は十分分かっているはず そんな朝比奈さんの携帯がプルルルと鳴った 走りながら携帯を開いた朝比奈さんは小声でボソボソと話していたが すぐに電話を俺に渡してきた 「キョン君、電話です・・・」 ん?俺にですか? いぶかしく思いながらも携帯を受け取って何ですかと聞く 「ああキョンくん?ごめんだよっ忙しい所を! キョンくんの番号を知らないんでみくるにかけたわけさっ 手短に用件だけ言うね あのさ、例の超合金があったろう?うっとこの山に埋まってたヤツさ あれが今日なくなってるんだよっ!使用人が見つけたんだけど どうしようかなって思ってたんだけどさっ キョンくんにまずは連絡した方がいいと思って」 例の超合金?まさかオーパーツの事ですか? 「そうだよっ!あれあれ でも様子が変なんだよねっ 土蔵の鍵は開いてたけど別に壊された形跡もないし 他の物には一切手も触れてないみたいだしさっ 最初からあれだけを狙ってたような感じなのさっ だから警察に届ける前にキョンくんに知らせたってわけだ」 分かりました、俺がすぐ行きます その・・・警察に届けるのは少し待ってもらえますか? 「うん!いいよっ!最初からそのつもりだったからさっ」 俺は電話を切って朝比奈さんに返し 古泉に話しかけた ちょっと気になるんで鶴屋さんの家に行くから長門の事を頼む 「緊急事態ですか?」 いやまだ分からん それを確かめてくる 「僕もご一緒しましょうか?」 いやお前はハルヒと一緒にいてくれ まだ何が起こるか分からんし 起こるとしたらまずは長門の所だ 「分かりました。何かあったらすぐに連絡を下さい」 もちろんさ おいハルヒ 「あ?」 ちょっと俺は後から行くから 「どうしたの?」 ちょっと野暮用だよ すぐに合流するから 「あんた!有希よりも大事な急用なの?」 そんなことはない 長門も心配だけど、もしかしたら関係があることかもしれないから 「1人で大丈夫なの?」 ああ ちょっと見てくるだけだ 鶴屋さんの所だから1時間で往復できる それまで長門をよろしく頼む 「ふーん。よし分かったわ、早く行ってきなさい」 おいハルヒ 「何よ?」 SOS団を頼んだぞ 「あったりまえじゃないの!バカじゃないの?」 頼むぞ 「キョン!早く戻ってきてね」 思い返せば、このハルヒの一言もまた、何かの予感をしていたのだろうか 珍しく眉を伏せて、今駆け下りてきた道をまた走り出した俺の背中を見つめていた アップダウンの多いこの街の地形にもずいぶん慣れたつもりだったが イレギュラーな出来事にはすぐには対応できない 北高までの登り道を半分ほど登り、途中で折れてまっすぐ行った所にある 相変わらず犯罪的なお屋敷の長い塀を回り込み ようやく鶴屋邸の玄関に着いた時には俺の息は上がり、びっしょりと汗をかいていた 「ごめんねーこんな時に電話しちゃってさ、長門っちが熱出してるんだって?大 丈夫かなー」 俺はハアハアと荒い息をつきながら、とりあえず状況を聞いた 「さっき話したとおりなんだけどさっ、犯人はまるで最初からそれだけを狙って たみたいなんだよねっ。他の物には手も触れてないし、何であんなものに興味 があったのかなー」 鶴屋さんに案内されて、鶴屋家先祖代々の貴重な品が眠っている大きな土蔵の前に立った。 「何も動かしてないよっ、全部そのままにしてあるからっ」 確かに鶴屋さんの言うとおり、一見しただけでは泥棒が入った後とは思えない 乱雑に積み上げられた木箱やつづらなどがこじ開けられた形跡はなかった しかし入口付近にある小さな木箱だけが開けられていた 目撃者とかいなかったんですか? 「うん、使用人に聞いてみたんだけど、このあたりはあんまり誰もうろうろしな いからさ、鍵はおやっさんの金庫の中だし、おやっさんは夜まで帰って来ない から、誰かが鍵を持ち出す事もないと思うのさっ」 俺はしばらく考えたのちに鶴屋さんに頼んだ 心当たりはない事もないんですが、今はまだ話せないです でももしかしたら、何かの手がかりが見つかるかもしれないんで 俺が戻るまでは警察には知らせないでもらえますか? 「うん、分かったよっ!」 じゃあ後で電話します 必ず今日中に連絡入れますから 「うん。キョンくん」 はい? 「ハルにゃんをよろしくねっ!」 は? 「ハルにゃんはああ見えてもすっごく心配性なんだよっ みんなが元気でいられるように、ハルにゃんは必死なんだ そんなハルにゃんを元気にさせてあげられるのはキョンくんだけなんだからさっ」 はい 「頼んだにょろっ!」 いきなりの鶴屋さんの不思議発言だが この人にはある程度の予知能力のようなものが備わっているみたいだ 顔は明るく笑っているが、口調は真剣だった それが分かるので、俺も正直に答えた しばらく現場の状況をざっと確認してから、俺は鶴屋邸を後にした だんだん悪い胸騒ぎがしてくる 犯人は明らかにオーパーツだけを狙っている そしてオーパーツを狙うってことは、それがどんな機能を持っているかが分かっているはず そんな犯人の心当たりと言えば・・・ 長門が危ない 俺は直感的にそう思った 長門を寝込ませて力を封じ、その隙にオーパーツを使ってとんでもない事をやらかそうとしている そんな事をしそうな輩は地球上にそんなに多くはいない 俺はあの奇妙な長い髪をした不気味な少女 周防九曜の事を思い出していた さっき駆け上ってきた道を再び走り出してしばらく ようやく鶴屋邸の長い塀を抜けて住宅地を走っていると 人気の少ない交差点に止まっていたシルバーのワンボックスカーが静かに俺に近寄ってきた ただ長門のマンションに急ぐことだけを考えて他に頭脳が回らなかった俺は そのワンボックスカーが目の前に停まってスライドドアが開くまで、まさか自分の身に危険が迫っているとはよもや考えてもいなかった (同時刻、別の場所で) 「有希!有希!起きてるの?ねえ有希!開けてってば!」 涼宮ハルヒは鉄製のドアをガンガン叩き、近所迷惑な大声でわめいていた 玄関のオートロックの暗唱番号はあらかじめ聞いておいたものの、ドアを開けるには鍵が必要だ ドアを叩きながらわめくハルヒと、その横でオロオロする朝比奈さん そして少し遅れて古泉がエレベーターから出てきた 「今日は本当の緊急事態です、事情を説明して管理人から鍵を借りて来ました」 「古泉くん、早く開けて!」 古泉が長門の部屋の鍵を開け、ハルヒを先頭にドッとなだれ込んだ 「有希!有希!いるの?」 いつもの居間には長門の姿はなく、ハルヒは迷わずに奥の和室の襖を開けた そこには長門がいた ちゃんと布団を敷いて、静かに眠っている 「有希!大丈夫?熱はどうなの?ちゃんと薬飲んだ?」 「・・・・・・・問題ない、一過性のもの。寝てれば治る」 「みくるちゃん」 「ハイっ!」 「氷枕とか何でもいいから探して来て。それと古泉くん、もっとたくさん布団出 して」 「承知しました」 「有希、どうなの?つらくない?」 「・・・・・・・」 長門は力なく横たわったまま、布団の胸の部分だけが静かに上下している すぐに古泉が何枚かの布団を引っ張り出し、小さな長門に積み上げた 朝比奈さんはビニール袋に冷蔵庫の氷を詰め、濡らしたタオルも持ってきた 「有希、しっかりしなさいね。みんなここにいるから」 長門は薄く目を開き、ゆっくりと左右を見た 「・・・・・・」 その仕草でハルヒはすぐに、長門が探しているものを理解したようだ 「キョンならすぐに来るわ。ちょっと寄り道してるだけだから」 「・・・危険・・・彼が危険・・・」 「有希?」 「・・・・・・行かないと」 「有希!ダメよ動いちゃ!キョンはすぐに来るから もうしばらく寝てなさい!」 「・・・・・・」 長門は無理やり体を起こそうとしたが、すぐに力なく崩れ落ち ハルヒの手で再び寝かされた 「古泉くん、どう思う?」 「かなりの高熱ですね、救急車を呼んでもいいのじゃないでしょうか?」 「そうね、みくるちゃん、119番して」 朝比奈さんが居間にとって返し、受話器を持ち上げてプッシュボタンを押した (再びキョンの時間に) 俺のすぐ脇に停車したワンボックスカーのスライドドアが開き 声を上げる暇もなく、何本かの腕が俺を車内に引きずり込んだ 何事かをわめこうとしたがすぐに口をタオルのようなもので抑えられた 精一杯の抵抗のつもりで肘を張って暴れてみるが、その腕は誰にも当たらなかった 「じっとしてな。危害は加えん。ただちょっとおとなしくしてくれたらいいんだ」 俺の足がまだ空中にあるうちに車は再び走り始め、その後でスライドドアが閉められた 何だ?この展開は? 誘拐?この俺が誘拐だと? 今年の冬に朝比奈さんが誘拐されかけた、あのおぞましい経験がよみがえっていた まさかこの俺が誘拐されるとは? 俺に押し付けられたタオルはただの猿轡で 麻酔薬がしみこませられたりはしていない 走っている車の外の景色がすさまじい速さで流れていく その時、ドバーンと大きな音がして、俺は前方に投げ出された 前の座席のシートに叩きつけられ、肺じゅうの空気が一気に絞り出された 車の足元にゴロゴロと力なく転がっていると、2回目の衝撃が来た 今度は後ろから何かが追突し、俺を襲った誰かの足に体当たりした 「村上だけ残れ、後は出て応戦しろ」 誰かのそんな声が聞こえ、再びスライドドアが開いた 俺は座席の足元にうずくまり、外の様子が全く理解できない 苦労して起き上がろうとすると、誰かに頭を押さえつけられた 「いいからじっとしてろ」 ドスのきいた声でそう言われ、固い靴の底で頭をグリグリと転がされる いったいどうなってるんだ? この状況は? アドレナリンが強烈に噴出する頭の中で必死で考える 俺は誘拐されかけていた その車に何かが衝突した そして何人かが飛び出して行った ようやく自体が飲み込めてくる 俺を誘拐するグループと言えば心当たりは少ない いつぞや朝比奈さんを誘拐してカーチェイスをした時の連中だ と言うことは、衝突した車に乗っているのは俺を助けようとしてくれている連中 まさか? 混乱する状況を必死でまとめようとしていると、突然外から声が聞こえた 「彼を放しなさい!」 この声は・・・やっぱり・・・ 俺を見張るように言われていた村上と名乗る男がすかさず反応した 固い金属の棒のようなものを俺の後頭部に押し当て 「動くとこのガキを撃つぞ」 撃つってまさかおい 俺の頭に突きつけられているのは・・・銃? 外からの声はさらに続く 「撃ちたいのならお好きにどうぞ。でもその後どうなるかを理解していますか ?こちらも武装はしています。彼を守るためなら発砲は辞しません」 「くそっ」 村上という男は俺の頭を引きずり上げ、おかげで俺は外の情景を見ることができた 開け放たれたドアの前に立っているのは 予想通り古泉の所属する機関のグループ そのリーダー格と思われるスーツ姿の美しい女性 森園生さんだった やはりあの時の艶然とした微笑でひたと村上に視線を据え その手に持っているのは拳銃だった 「撃たないのですか?」 俺の頭を鷲づかみにしている村上の手はぶるぶると面白いように震えている やはりこんなチンピラと森さんでは全く格が違う 森さんは無造作に車内に踏み込んで来て村上の銃を奪い取った 最後の抵抗とばかりに村上は手を振り上げるが すさまじい笑みを浮かべたままの森さんは軽くその手を捻り グギッという鈍い音とともに村上を車の外に投げ飛ばした 合気道か何かの奥義なのか、右手で拳銃を構えたままで 森さんは村上を一瞬で気絶させてしまった 「さあ早く、まずは脱出です」 森さんに手を取られて俺は必死で車から降りた 車3台による壮絶な衝突事故の現場で、数人が取っ組み合いをしていた おそらくこいつらは機関のメンバーと、そして俺を誘拐しようとした橘京子の所属する集団だろう 多丸兄弟とおぼしき2人もいた 「ひとまず鶴屋邸へ」 そう言って森さんは俺の手を取ったままで走り出す 俺より速い森さんの俊足に必死でついて行ったが、すぐに俺の背後でダアーンと鋭い銃声が響いた 俺の耳元を熱い空気がかすめ、1発の銃弾が森さんの背中に命中した もんどりうって森さんは倒れ、俺も釣られてゴロゴロと地面を転がった も、森さん! 倒れ込んだ2人の後ろからタタタタと駆けてくる足音が聞こえる 俺は起き上がろうと必死でもがく 森さんは倒れたままピクリとも動かない 迫る足音が目前に迫った時、頭上から鋭い声がした 「ちょい待ち!そこまでなのさっ!」 それは鶴屋さんの声だった 事故の音を聞きつけたのか、それとも銃声を聞いたのか まだ北高の制服を着たままの鶴屋さんが走って来る賊をにらみつけていた 追いかけてきた2人は鶴屋さんを見てピタリと足を止めた 「ここで騒ぎを起こすとはいい度胸だね、それなりの覚悟はしてるのかなっ? それとも私を知らないにょろか?」 「・・・・・・」 「車は放っといていいからさっさと失せた方が身のためだよっ すぐに警察がやってくるのさっ」 男2人は顔を見合わせていたが、やがて来た方に走って逃げた ようやく起き上がった俺の目に、新たに近づく人影が見えた 「あなたも早く逃げるがいいさっ」 その人は機関の人間、新川さんだった 「すでに全員撤退の指示は出しました 森の様子を見たいのですが」 「じゃああんただけ許そうっか ここに置いとくわけにもいかないしね うちまで運ぶの手伝って」 鶴屋さんと俺、そして新川さんの3人で、動かない森さんを担いで運んだ ようやく鶴屋邸に入り、新川さんがすぐに処置を始めた すでにパトカーのサイレンが狂ったように走り回っている 新川さんは森さんのスーツの上着を脱がせ、無造作にブラウスも引きちぎった 森さんの真っ白な柔肌がむき出しになり、 おびただしい出血とともにむごたらしい傷跡が・・・・・・残っていない 森さんは防弾チョッキを身に着けていた 上着とブラウスを簡単に突き破った銃弾だが、防弾チョッキにはかなわなかった 平べったく潰れた銃弾は紺色の繊維質に阻まれて 森さんの素肌は青いアザができているだけだった 「ただの打撲ですね、もしくは骨にヒビが入った程度でしょう」 すぐに森さんが大きく息を吐き、意識を取り戻した 「無事・・・でしたか」 すみません森さん 俺のせいでこんなことに 新川さんに助け起こされた森さんは 透き通るような微笑を浮かべたままで言った 「大丈夫です。万一に備えてありますから 私たちはあなたと涼宮さんを守るためならいつでも覚悟はできています さあ、もうここには用はないはずです 涼宮さんを守ってあげて下さい 古泉とともに・・・」 分かりました 俺が立ち上がると森さんは最後にこう言った 「涼宮さんはあんな性格だからあなたにはまだ理解できないでしょうけど、 あなたをとても頼りにしているはずです 今あなたと離れて一番心細いのは涼宮さんです 早く行ってあげて下さい そして、大事にしてあげて下さい」 ちょっとドキッとする森さんの言葉だったが 今はその意味について深く考えている場合ではない 鶴屋さんと森さん、そして新川さんに頭を下げると、俺は走り出そうとした 「ちょい待ちキョンくん!うっとこの車に乗っていくといい さっきみたいなことはもうないと思うけどね、でもその方が早いからさっ」 鶴屋さんはてきぱきと使用人に指示を出し 森さんを部屋に運ぶことと車を用意すること そしてさっきの銃撃戦についてきつく緘口令を言い渡した 玄関の前に現れた高級車に乗せられた俺はもう一度鶴屋さんに頭を下げた 「キョンくん、ハルにゃんをよろしくねっ! それと・・・言っていいのかどうか分からないけどね・・・ ハルにゃん、結構いろんな事知ってるよっ」 えっ? 「みんなの事だよ 何か不思議な事がめがっさ起こってるって ハルにゃんの知らない所で みんなが何かしてるんだろうなって」 本当ですか?鶴屋さん? 「後は直接確かめたらいいさっ!ハルにゃんにねっ!」 鶴屋さんはそう言ってドアを閉め、車は走り出した (再び同時刻、別の場所で) 「涼宮さんっ」 「どうしたのみくるちゃん?」 「電話が・・・電話が通じません・・・」 「ん?それはどういうことでしょう?」 古泉が素早く立ち上がり、朝比奈さんから受話器を受け取った 通話ボタンを押しても発信音がしない 「これは・・・?」 その時、部屋の中が一瞬真っ黒になり、まるで夜の闇のようになった 部屋の内外で聞こえていた雑音も消え、長門の部屋は沈黙に閉ざされた 「ふわぁぁぁっ」 「ななな何よこれは?古泉くん?どういう事?」 古泉が口を開くよりも早く、暗闇に何かが浮かび上がった ぼんやりとした影はすぐに凝集し始め、やがて4つの人間の形を作った 素早く古泉が前に出て、ハルヒと朝比奈さん、そして眠っている長門をかばうように立った いつものニヒルな笑顔の面影は全くない 古泉のこめかみからタラリと汗が流れ落ちた 現れた4人はもちろん あの時突然出現した集団だった 「・・・・・・・・・ここは・・・・・・暗い・・・・・・気持ちが悪い」 いち早く口を開いたのは周防九曜だった 実体化するが早いか、長門が寝ている和室に踏み込み、ひたと視線を長門に据えた 「かわいそうな寝顔・・・・・・こんな世に生まれなければ、1人の姫として暮らせたものを・・・・・」 「それ以上近づかないで下さい」 古泉が素早く割って入る 「周防さん、まずは話し会いましょう」 そう声をかけたのは4人組のリーダー、勝手に神に祭り上げられてしまった佐々木だった 「・・・・・・かわいそう・・・食べてあげたい・・・・・・」 周防九曜は長門から視線を放さずにそうつぶやき 他のメンバーの横に戻った 「ちょ、ちょ、ちょっと何なのよあんたら どうやってここに入って来たのよ?」 「お久しぶりです涼宮さん、いつぞやは突然現れてすみませんでした あれ?キョンは?」 「まずは私の質問に答えなさいよ 無礼でしょう?」 「ごめんなさい。実は私たちにもよく分からないんです 周防さんが突然ここに行かないとって言って 何かに運ばれてきたみたいなの」 「全然説明になってないわよ あんたたちいったい何者なの?」 ハルヒが鋭い視線で闖入者たちを睨みつける 穴でも開けてしまいそうなぐらいの激しい視線だった 「私が代わりに説明するわ」 そう言ったのは古泉と敵対する組織の一員、橘京子だった 「周防さんはね、時が満ちたと言っているの つまり我々と佐々木さんの力があなたたちのものを上回る 今日のいま、この場所で何かが起こると」 「あわわわ・・・・・・」 あたふたする朝比奈さんをかばいながら、ハルヒは口から泡を飛ばして叫んだ 「ふざけんじゃないわよっ!ここはあんたたちがいる場所じゃないの! 見て分かるでしょう、病人がいるのよ! さっさと出ていきなさいっ!!」 「ふん・・・まるでボス猿みたいだな」 そう口を尖らせてうそぶくこの男は 朝比奈さんの組織と対立している未来人組織から派遣されてきた 自称藤原という男だった 「ボ、ボ・・・・・・」 古泉がハルヒの横に立った 「涼宮さん、今怒ってしまえば向こうの思い通りになります ここはひとまず冷静に、まずは話を聞きましょう」 「古泉くん、悪いけどね あたしは人の家に土足で踏み込んでくる野蛮人の話なんか聞く耳持ってないの」 ハルヒは両の拳を握りしめている 最初は誰に殴りかかろうかと品定めしているようだ 「・・・・・・あなたは・・・汚ない・・・」 「何ですって?」 「その顔、その声、全てが汚らしい・・・・・・」 「ハァ???」 ハルヒは最初にぶちのめす相手を決めたようだ 握り拳を振り上げて周防九曜に突進しようとした 慌てて古泉が止めに入る 「古泉くん!放しなさい!」 「涼宮さん、ひとまず落ち着きましょう」 古泉はハルヒを無理やり引きずって闖入者から少し遠ざけ 声を潜めて囁いた 「・・・僕たちの戦力はいささか不足しています 全員揃うまではとにかく様子を見ましょう 今のところは、何が目的でやって来たのかも分かりませんので」 「古泉くん」 「はい」 「あんた、何か知ってるのね」 「何かと申しますと?」 「私の知らない事よ こいつらが何者で、何が目的なのかをね」 「それを説明してくれる方が現れるまで、ここは1つ、穏便に」 「キョンの事ね」 「はい」 「・・・・・・分かったわ」 ハルヒはようやく拳を緩め、闖入者たちと対峙した 「んで、話を聞こうじゃないの」 「ようやく落ち付いてくれましたか やはり調査通りの人ですね、あなたは」 橘京子が楽しそうに言った 「実は私たちにもまだここに来た理由は分からないのです こちらの周防さんが言った通り、まもなくここで何かが始まります それを確かめるために来たのです」 「それでは全然説明になっていませんね 皆さんのやっている事は明らかな住居不法侵入です 警察を呼ばれたくなかったら、今すぐ退散すべきです ここには病人がいます、わきまえて下さい」 「・・・・・・来る」 「何が?」 「・・・・・・終わりの世界が来る・・・・・・それは私たちを待っている・・・・・・もうすぐ」 ハルヒがまたブチ切れそうになった 「もう我慢できないわ!今すぐここを出ていきなさい!さもないと」 「お待たせしましたー」 突然部屋につむじ風が巻き起こり、目を開けてられないほどになった 激しい旋風はあたりをなぎ払い、全てを持ち上げてぐるぐると回転した 「あひゃぁあああーっ!」 朝比奈さんのか弱い悲鳴とともに、全てが吸い込まれていった (再びキョンの世界) 俺を乗せた鶴屋家の車は静々と走り、やがて長門のマンションが見えてきた頃 視界が急にぼやけてきた 長門の高級マンションがぼんやりかすみ、俺は目をごしごしこすった 「おかしいですね」 運転していた鶴屋家の男性がそう言ってブレーキを踏んだ直後、激しい音がして車のボンネットに何かが叩きつけられた 見慣れた水色のセーラー服、そんな気がした セーラー服はボンネットの上を弾んで転がり落ち、急ブレーキをかけた車の前方に倒れた ハルヒ! 俺はドアをもぎ取るように開け、車から飛び出した 予想した通り、空から降って来たのは涼宮ハルヒだった いったいどこから落ちてきたのか、まさか長門の部屋のある7階から落ちたのか? 急いでハルヒを助け起こし、その顔を覗き込んだ 「ったあぁーっ」 見ると車のボンネットは大きく凹んでいる 7階かどうかは分からないが、かなりの高さから落ちてきたようだ 運転していた男性も、車から降りてハルヒを見ていた おいハルヒしっかりしろ 何が起こったんだ? ハルヒはしばらく目を白黒させていたが、ようやく焦点が定まってきたのか、俺に気付いて大声を上げた 「キョン!キョンじゃないの!どうやってここに来たの?」 えらい元気そうだなハルヒ 車をこれだけ凹ませるほどの高さから落下したのに 何かのフォースでも働かせたのかそれともただ尻が異常に固いのか どうやって来たのかは俺が聞きたいぞハルヒ いったい何で空から降ってきたんだ? 「空から?え?あれ?ここはどこなのよ?有希の部屋じゃないの?」 おいハルヒ 長門の部屋でいったい何が起こったんだ? 長門はどうなんだ?体の具合は? それに朝比奈さんと古泉は? 「そうだ!キョン!大変よ!有希が・・・変な4人組が入ってきて それからあの、あの子が入ってきて」 もういいぞハルヒ とにかく長門の部屋に行こう 長門が心配だ 他のみんなもな 俺はハルヒを抱き起こして立ち上がった 鶴屋家の運転手にとりあえず帰ってもらう事にして、ボンネットの件は後で謝りに行くからと伝えた そして振り向くと・・・ ??? 空から降ってきたハルヒを抱き起こし、とにかく長門の部屋に入ろうと、玄関があるはずの場所に駆け込むんだ俺だが マンションの入り口には何もなかった 玄関もなければオートロックの操作盤もない というかマンション自体が消えてなくなっていた レンガ造りの高級マンションがそっくりそのまま消えてなくなっていた 「ちょっとキョン、これどうなってるの?」 どうって、俺にも分からん 落ちつけ俺、よく考えろ マンションがあったはずの平面には全く何もなく、むき出しの地面だけが広がっていた 向こう側にあるはずの、シャミセンを拾った空き地がここからそのまま見えた どうなってるんだこれは ハルヒの手を掴んだまま、強引にマンションがあったはずの空間に踏み込んでみた やっぱりか 予想通りだ 俺とハルヒの前にはぐんにゃりした白い壁が立ちはだかった マンションが消えてなくなったわけじゃないんだ 誰かがここにバリヤーを張っているんだ それはお前かハルヒ? 「はあ?私が何でこんなことするのよ?」 すまんハルヒ ちょっと考え中だ 俺はハルヒの手を放し、ダッシュで突入を試みた チリチリと小さな火花のようなものが散り、俺の体は押し戻された 痛みも衝撃もなく、ただやんわり跳ね返された 「キョン、これって・・・前のあれかしら?」 ああ あれに近いものだ お前の仕業じゃないとしたら こんな事ができるのは他には・・・ けっこうたくさんいるな 「ちょっとキョン」 何だよもう 今考え事してるんだから 「キョン!」 ああ? 「ちゃんと説明しなさい! あんたが何か知ってることぐらい、あたしにはお見通しなんですからね! あんたはこんなに不思議な物が目の前に現れても、顔色ひとつ変えないじゃないの! 何か知ってるんでしょう?包み隠さず全て話しなさい」 さっきの鶴屋さんの声が耳によみがえる ハルヒはいろいろ知ってるっていうのか 今ここで説明するしかないのか ついに切り札を出すしかないのか 今ほどここに古泉がいてほしいと思ったことはなかった あいつのアドバイスが聞きたい しかしハルヒ、説明してる暇はないぞ 早く長門の部屋に行かないと 「だから説明しなさいって言ってるのよ! 有希がおかしくなったことにも関係あるんでしょう? あの4人組の事だって」 4人組だと? あいつらに会ったのか? あいつらが来てるのか? 「そうよ あの4人組が来て 髪の長い女が私に汚いとか言い出して ブン殴ってやろうと思ったら急に空に放り投げられたのよ! ああムカつくわーあいつったら」 待て待てハルヒ ちょっと整理させてくれ 俺と別れた後であいつらに会ったのか? それとも長門のマンションに入った後か? 「入ってからよ 有希がひどい熱だったから氷枕と布団たくさん用意して 救急車を呼ぼうとしたら電話が通じなくて どうしたんだろうと思った時に入ってきたのよ ドアも開けずに土足で入ってきて ねえキョン、あいつらいったい何なのよ?」 おいハルヒ あいつらの目的とか何か聞かなかったのか? 「聞いたけど全然意味分からないわよあんなの」 思い出せハルヒ あいつらは何と言ってたんだ? 「どうでもいい事ばっかりよ」 いいから思い出せハルヒ! 「何よもうキョンってば・・・ちょっと待って 周防とかいう女が他のヤツらを連れてきたとか言ってたわ 時が満ちたとか、今から何かが始まるとか 終わりの世界がどうとか言って、そしたら・・・ そうだ!あの子が来たのよ!」 あの子って誰だ? また他の人間が来たのか? 「そうよ!思い出したわ。あの新入生よ! 新入部員候補の1年女子よ」 はあ? 何だと? 「新入部員候補の中に小柄な女の子がいたでしょう?あの巻き毛の子」 ああそんなのがいたな確かに 何となく不思議な印象だったな 覚えてるぞ しかし何でその子が来たんだ あいつらの仲間なのか? まさかスパイだとか? 「分からないけどたぶん違うと思う 来たのは別々だったし、あいつらも驚いた顔してたから」 その時突然 俺の背中に鳥肌が立った ものすごく嫌な予感がした おいハルヒ 良く聞け その1年女子は何か持っていなかったか? 「何かって?」 金属の細長い棒みたいなものだ ピカピカ光ってるヤツだ 「そこまで覚えてないわよ! その子が出てきた途端に部屋に嵐が起こって、気がついたら外に放り出されてたんだから」 待て待て待て待て くっそう古泉に会いたい 俺はどうもこういう複雑な事態には対処できない あいつの的確な状況分析がとても恋しい 「そうだ」 何だハルヒ 何か思い出したのか? 「お2人にはまだ登場してほしくないからって聞こえたような気がする」 お2人?そう言ったのか?その新入生は? 「違うかもしれないけどそう聞こえた」 お2人って事はもしかして・・・ 俺はハルヒの肩を抱いたままで後ろを振り返った 目の前にあるマンションはすでに消滅していたが 後ろの景色も違うものに変わっていた いやちょっと違うぞ 景色はさっきと一緒だが何か空気の匂いが違う それにこの不思議な色はいったい何だ・・・? 何だか安心感を与えてくれるような落ち着いたベージュの空 そよとの風も吹かず、じっとりとしているが不快ではない この空は覚えているぞ ハルヒといっしょにあいつが飛ばされたとしたら この空を作り出したのは この閉鎖空間を作ったのは やっぱりお前か 佐々木・・・・・・ 「申し訳ないキョン 今はまだ君たちをあそこに入れるわけにはいかないようだ」 リンク名 その2に続く
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/6525.html
涼宮ハルヒの遡及Ⅱ …… …… …… ああ、なんだ集合時間より一時間は早く着いたぞ。 いつもは二十分近くかかる駅前までだが、空から一直線に来ればこんなに早いんだな。なんせ五分とかからなかった。 と言うかアクリルさんの飛ぶスピードが速いんだろう。 などと諦観している俺がいる。 「ふうん。あの時計で短針が九、長針が十二になるまでにハルヒって子が来るのね」 「ええまあ……」 「とりあえず待ちましょう」 「それはいいんですけど、『さくら』さん……」 「何?」 「俺たち、注目を集めてるんですが……」 そう。うんざりしている俺とあくまであっけらかんとしているアクリルさんの周りには得体の知れないものを見る目をした人だかりができているのである。 「何で?」 「……ここはさくらさんが本来住む世界じゃありませんからね……『魔法』は認知されていないんです……」 「あ、そう言えばそうだったわね。でも安心して。それじゃ――」 ん? 何だ? アクリルさん、左手を開いて翳しているし……って! その手から強烈な光が発せられる! うぉい! ただでさえパニック寸前の雰囲気満々なざわめきが沸き起こっているのに追い打ちかけますか!? 「心配いらないわよ。この魔法はメモリーリウィンド、簡単に言えば記憶を除去する魔法……じゃないか、記憶を巻き戻す魔法、の方が適切かな?」 アクリルさんが説明を終えると同時に光が止む。 刹那、人だかりは、「あれ? 何してたんだっけ?」「わたしは……」と呟きながら、まるで何事もなかったかのように四散していった。 って、これは……? 「んまあ、さすがに人の記憶を操作する、なんて真似はそうそうできるもんじゃないからね。一応、そういう魔法がないわけでもないけどそれは催眠術や傀儡術に近いものがあって『覚める』と何の意味もなさないのよ。だから今のは記憶を前の記憶まで戻す魔法だったの。とりあえず、あたしたちが現れた時間前まで、ね」 な、なるほど……あれ? でも、同じ光を見ていた俺はどうして記憶がなくならなかったんです? 「ふふっ。今の人たちはあたしだけを見たのかしら?」 あ、そうですね。俺も見てますよね。 「そういうこと。記憶巻き戻し対象はあくまで『あたしとキョンくんを見た人』。なら、キョンくんが影響を受けないのは当然でしょ」 相変わらず魔法ってのは凄い力だ。できることとできないことがあるのは仕方ないとしても通常、普通の人が持つ能力からすれば格段にできることが多いんだからな。 はてさて、そんなちょっとした異常事態も文字通り、何事もなかったことにしたアクリルさんと俺は、ただただ待ちぼうけである。 そりゃまあ仕方ないことで集合時間よりも一時間早く着けば当然の成り行きとしか言いようがない。 「ん~~~まだ二十分はあるわね」 背伸びしながらアクリルさんが呟いております。 ううむ……やっぱ背伸びをするとさらにその豊満な丸みを帯びたものが強調されますな…… しかも山吹色のノースリーブシャツの脇からなかなか素晴らしい光景が垣間見えて目のやり場に困りますがな。うぉ? ひょっとしてノーブラってやつか? あ、臍も見えている。なるほど、胸が大きいと下に生地が収まり切らないってことか。 ヘアカラーが黒になっているとまったく違う印象を受けるもんだ。と言うか、あのヘアカラーが異質過ぎるんだろう。 などとアクリルさんは全く気付かないのだが、劣情に浸っていた俺の至福のひとときを吹き飛ばす音響が響いたのはこの時だった。 着信、古泉一樹。 ん? 何だ? どうした? 「もしもし?」 『おはようございます。古泉です』 お前はどこぞのニュースキャスターか? 『いえ、まずは挨拶を、と思ったものですから。それよりもお聞きしたいことがあります』 何だ? 『あなたの隣におられる方はどちら様ですか? 確認したところ、朝比奈さんも長門さんもご存知ない方ですし、佐々木さんでもありませんよね?』 ん? ああ、この人は……って、お前らもう来てるのか? 集合時間までまだ二十分はあるぞ? いつもこんなに早いのか? 『そんなことはどうでもいいです。それよりもあなたの隣の人の方が問題です』 は? 何でだ? 『……涼宮さんももうこちらにいらっしゃってるのですが……』 古泉の声はなんとも触らぬ神に祟りなしっぽい口調だな。 あーてことは…… 俺はこめかみにでっかい困った汗を浮かべて、 ううむ……確かに背後からなんだか無言のプレッシャーに等しいどす黒いオーラを感じているような気がする…… 「えっとだな古泉……ハルヒにこう言ってくれないか……?」 『僕の声が届くと思えないのですが?』 まるっきり暗君の弑逆を決意した冷徹な奸臣のような声だぞ、おい。 『で?』 「分かった分かった。じゃあハルヒに替ってくれ。俺から話す」 『……分かりました』 古泉の返事を聞いて待つことしばし。 『……ふーん……あんたなんかでもナンパが成功するのね……』 第一声が思いっきり嵐の前の静けさなのですが? 五分後に雷付き暴風雨が来るのが解っていながら家に居ればいいのに血迷って雨具を持たずに外出した三分後の心境とはこのことだ。 しかしまあ今回は後ろめたくなる理由はどこにもない。あるはずがない。 って、今回“は”って何だ。俺は一度たりともそんな後ろめたいことをした覚えはない、はずだ。 「あー勘違いするなハルヒ。別にこの人はナンパした人じゃない。それよりも早くこっちに来いよ。この人はお前にも会いたいって言ってるんだ」 『あたしは別に会いたいと思わないわ』 だから違うって。何、勘違いしてやがる。 って、待て待てツッコミを入れるのは後にしておかないと、向こうがぶつ切りするかもしれないんだ。その前に用件を伝えないと。 つーわけで俺は捲し立てるように言った。 「違うって。この人は蒼葉さんの友達だ」 『――!!』 受話器の向こうかでもはっきり分かった。ハルヒの奴、驚嘆に絶句しやがったな。 「そう言えば、あの時はお互いによく顔は見えなかったっけ」 「うん。それに今日は髪の色も違ってたから本当に分からなかったんです」 アクリルさんの涼やかな笑顔の感想にハルヒがはしゃぐ笑顔で相槌をうっている。 場所はいつもの喫茶店、ではなく、駅前にあるカラオケボックスの一室。 なぜこんな場所に居るかと言うと、ハルヒが異世界人とじっくり話をしたい、と言うのが一番の理由だからだ。宇宙人、未来人、超能力者に関して言えば、んなもん、部室でできるし、部室にはよほどのことがない限り、俺たち以外はいない訳だから他人の目を気にする必要はどこにもない。 しかし、異世界人であるアクリルさんはそうはいかないんだ。学校に行く、という手もないこともないがそれではここから到着までの時間が馬鹿にならん。 となれば少しでも早くハルヒの望みを叶えてやろうと思えば、周囲に気遣いのいらない俺たち以外は誰も来ない防音設備の整った場所が必要となる。 それがこのカラオケボックスってことさ。 「あと蒼葉さんとはゆっくり話す機会はありませんでしたし、今回のチャンスは逃すわけにはいきません」 ううむ。ハルヒの丁寧語というものはなんとも新鮮でかつ、どことなく違和感が溢れまくっている。 まあ仕方ないよな。普段のこいつは遠慮という言葉からは一番遠いところに居る奴だ。生徒会長は勿論、軽音楽部の諸先輩方々にさえ無遠慮な言葉遣いなんだからな。 だいたい、先輩の朝比奈さんに対して『みくるちゃん』なんて言ってる時点で常識に照らし合わせて論外としか言いようがない。 「ん~~~別にそんな大したことでもないと思うんだけど……」 「そんなことないです! だって異世界ですよ異世界! あたしたちはどうやったって今現在は異世界に行く手段がないし、来てもらわない限り会えないんですから! それに今回はさくらさんは時間制限がありそうなトラブルでこっちに来たわけじゃないんでしょ? だったら、ゆっくり話したいんです!」 ふむ。異世界に行く手段がない、という常識をわきまえていることはどこかホッとするぞ。 「分かったわ。別に時間制限がないわけでもないけど慌てるほどでもないし。で、あたしに異世界……というか、あたしが住んでる世界の何を聞きたいの?」 アクリルさんが降参を表現した笑みを浮かべてハルヒの提案を受けて入れている。 「ありがとうございます! それじゃ――」 300W増しの輝く笑顔でハルヒは取材を始めた。 涼宮ハルヒの遡及Ⅲ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/480.html
あの閉鎖空間から帰還して数日たったある日のこと・・・ キョン「ん、なんかとなりが騒がしいな」 授業中に突然、なにかを叩きつけたような音がとなりから響いてきた。 ハルヒ「ねえキョン!なんか面白そうなことが起きてるんじゃない?」 後ろからハルヒがオレに耳打ちしてくる。 キョン「スズメバチかなんかが教室に入ってきてパニックになってるだけじゃねえか?」 ハルヒ「アンタってホント夢がないのね」 ハルヒはそういうと視線を窓の外に移した。つられてオレもなにげなく外を見ると・・・!? キョン「なんだありゃ!?」 オレは自分の目を疑った。なんと、ガタイのいい白人がとなりのクラスの窓から 飛び降りていったのだ。一体なにが起きたんだ・・・!? ハルヒ「ちょっとキョン!今の見た!?」 キョン「・・・お前も見たのか?」 ハルヒ「今飛び降りてったの、たぶん外人よね!?なにやら事件のニオイがするわ! キョン、ちょっと一緒にきなさい!」 キョン「一緒にってお前、今授業中・・」 ハルヒ「先生!キョンが気分悪いっていってるから保健室につれていきます!」 ハルヒが一方的に言い放つと、オレの手を引きずって廊下に出た。 大学を出たばかりの英語教師は問題児の扱いに免疫がないらしく、 黙ってうなずくだけであった。 まあ、たとえベテラン教師だとしてもハルヒを持て余すだろうが。 オレたちが廊下に出ると、同時に一人の男子学生がとなりのクラスから出てきた。 ハルヒ「ん?彼はたしか4組の・・・範馬刃牙君、だったっけ?」 エピローグ(´・ω・`) いろいろあって、SOS団は大幅に団員が増えた。 まずは4組のバキだ。彼の本性は地下格闘技トーナメントのチャンプということだが、 ハルヒにとってはただの気弱な高校生らしい。 ちょっと前にバキが不良にからまれているところをハルヒが助けたことがきっかけで、 彼はSOS団員となった。 彼は不思議な力を使えるわけではないが、なんせ地上最強の高校生である。 この前閉鎖空間が大量発生したときは、古泉の頼みで神人退治に駆り出されていた。 しまいには彼の父親まで出てきて素手で神人を殴り殺したらしいが、そのことはハルヒには秘密だ。 次に1組の烈海王だ。長門のクラスメートである。 彼もただの高校生ではなく、その肩書きは中国拳法界最高位である海王の名前の継承者である。 駅前のデパートの本屋で買い物をしているときに長門と知り合ったらしい。 その直後暴漢に襲われた彼だが、薬で眠らされた彼を、長門がなんと 一晩中守っていたらしい。そのことを恩に感じた彼は川の上を走り回った挙句、 SOS団入りすることになった。
https://w.atwiki.jp/haruhi_sm/pages/20.html
短編・涼宮ハルヒ 1
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5969.html
涼宮ハルヒの切望Ⅷ―side H K― そこにはあたしが、ううんあたしたちが望む光景があった。 あたしの手をどこか感慨深げに、それでいて少し震えてつかんでいるキョンを正面に捉えている。 彼の足もまた、しっかりと部室の床を踏みしめていた。 戻ってきた…… 戻ってこられたんだ…… あたしの全身も感激に打ち震えている。 しばし見つめ合うあたしとキョン。 いつもならこんなことには決してならないんだろうけど。 でもこの雰囲気になれば次の展開はこうなって当然なの。 「キョン!」「ハルヒ!」 呼び合いながらあたしたちは抱擁し合う。 お互い強く深く力を込めて。 「このバカ……どこ行ってたのよ……」 「すまねえ……お前に迷惑かけちまって……」 抱きしめ合いながら、嬉し涙を浮かべているのに悪態付いてるあたしだけど、それでもキョンには本当のあたしの気持ちが届いていることが理解できる謝罪の言葉が聞こえてくる。 それが心から嬉しい。 キョンに向けられている有希、古泉くん、みくるちゃんの視線はあたしも嬉しい。 安堵、慈しみ、喜び。 この三つの視線は全部、あたしと同じ気持ち。SOS団は異体同心一蓮托生。それを再認識できて嬉しかった。 みんなキョンのことを本当に心配してくれていた。 それがあたしの感動をより一層大きくさせてくれる。 その余韻に浸ることしばし。 と言うか、ずっとこうしていたいくらいなんだけど―― 『感動の再会のところ悪いけど、一つ、留意してほしいことがあるの』 なんとなく少し遠いマイクでしゃべっているような声があたしの左後ろから聞こえてきて、反射的に、でもちょっとゆっくりと肩越しに振り向いてあたしは思わず目を見開いた。 うそ……まさか…… キョンと再会した感動とはまったく別の感情であたしの全身が震える。 端的に言うなら驚嘆もしくは愕然。 だって、そこにその人がいるなんて信じられないんだから…… でも絶対に忘れられない人だったから…… そこにはなんとなくノイズ走りまくりの古いテレビの画面みたいな感じで、去年の文化祭の時の有希みたいな恰好を、魔女っ子ファッションの少女に見える女性がいた。 「キョン……もしかして、あんたが行っていた世界って……」 「まあ、な……おかげでこっちの世界に帰してもらえたって気がしないでもない……」 言って苦笑を浮かべるキョン。後ろ頭も掻いている。 「あ……」 『もう悠長に話している時間はないから用件だけ言うわ。それに前も言ったとおり、私と、そして彼女のことは忘れちゃっていいから。んで説明は魔法の知識に抜きん出ている彼女にしてもらうね』 あたしが呼びかけようとして、しかし彼女は少し名残惜しそうな笑顔を浮かべていたけど遮って、 って、彼女? 誰のこと? 「ハルヒ……反対側だ……」 キョンの声もなぜか震えている。この震えはどちらかと言えば呆然に近いわね…… 信じられないものを見るような感じのもの。 と言う訳であたしは視線を今度は右後ろに移す。 そこには、 「えっ!?」 あたしが思わず声をあげてしまうのは無理ないってもんよ! だって、そこにもノイズ画像で一人、女の人が佇んでいたし! それもみくるちゃん張りに起伏にとんだプロポーションもさることながら、そのヘアカラーは筆舌しがたいものがあるわよ! いやまあ言葉にすれば簡単なんだけど実際、こんな色に染める人なんていないだろうってくらい鮮やかな桃色なんだもん! 「言っておくがハルヒ……あの人のあの髪の色は地毛らしいからあんまり好奇の視線を向けん方がいいぞ……」 キョンの何とも言えない苦渋に満ちた感じの注釈が聞こえてきたし。それも小声って。 ふと前を見てみれば、古泉くんとみくるちゃんは絶句しているみたいだし、有希は無表情に見えるけどどこかその漆黒の瞳がいつもより丸みを帯びている。 そりゃそうよね。あたしだっていまだに事態が飲み込めないんだもん。 『今、あたしたちがお互いに見えるのはこの異次元召喚術の魔力余波だから。でもそれは本当にしばらくの間。その余波がなくなればお互い見えなくなるわ。なんせ存在する世界が違う訳だからね。一時的にこの世界とあたしたちの世界が鏡を隔てて繋がっていると思ってもらえばいいのかしら。ちなみにこの場合の鏡は次元断層って意味よ』 異次元とか召喚術とか魔力て。なんか桃色の髪と魔女っ子マントスタイルがあいまって見た目通りの人なのかな? 「向こうの世界だと常識なんだよ。実際に俺も体験してしまったから今のあの人の言葉を穿って見れん」 「そうなの?」 キョンの苦笑にきょとんと返すあたし。 『キョンくん』 「あ、はい」 桃色の髪の人がキョンに呼びかける。 んで、なんかよく分からない理論を交えて説明しているんだけど…… 『――って、あら? どうやらここまでで限界みたいね。あたしたちから見えるあなたたちが急激に薄れていくから、そっちでもあたしたちが見えなくなってきたんじゃない? でもまあいいわ。言いたいことは全部言えたから』 「ちょ、ちょっと待ってください! 今の話本当なんですか!?」 あっけらかんと話を終えようとする桃色の髪の人にキョンが焦った声あげてるし。 んまあ、彼女の説明に意味不明な単語と理論は混ざっていたことはさておき、あたしにも彼女が言った意味が何かは理解できたわ。 と言うか何でそれで焦らなきゃいけないのよ。別に今までと変わんないじゃない。 『え? あなたたち、そういう関係なの? なぁんだ。だったら確かに変わんないと言えば変わんないか』 「認めんで下さい!」 『そうは言うけどさ。あれ以外にこっちにキョンくんを送れる方法なかったし仕方ないじゃない。それとも何? あたしたちの世界で生きられると思ってるの? あの取り乱した様子を見るとそうは思えなかったけど』 「うぐ……」 ぷぷっ、向こうで何やったのキョン? 「う、うるせえ! 単にこっちの世界に帰りたいって泣き叫んだだけだ! 悪いか!」 『まあそうなるのは仕方ないわよ。あたしも経験あるしね』 キョンの居直り言葉を聞いて桃色の髪の人が苦笑を浮かべている。 そっか。んじゃあからかっちゃ悪いわね。たぶん、あたしも元の世界に戻れないとなったら取り乱すだろうし。 「今回のことは感謝する」 有希が毅然と切り出した。 あ、そういえばそうよね。この人たちの協力がなかったならキョンはこっちに戻れなかったんだから。 『いいわよ。お互い様だから。私たちだってあなたたちの協力がなかったら彼をこっちに戻せなかったもの。それに私たちは以前、その二人に救われたことあったし、そのお礼の一環でしかないわ』 ――!! 「待って!」 あたしは思わず呼びとめた。 「あたしは――あたしは!」 悲壮感を漂わせたあたしは消えゆく二人に言葉になっていない言葉をかけるしかできなかった。 だって、あのことはあたしの所為なんだし…… 『事の真相は全部キョンくんから聞いた』 え……? 『でも同じことでしょ? 彼があなたのことを教えたから、あなたは世界創造を止めてくれた。もし彼が教えなかったらあなたは気づくことができなくて私たちの世界は崩壊してた。ならやっぱり私と私たちの世界を救ってくれたのはあなたたち二人。違う?』 『だからあたしたちの気持ちは変わらない。これまでもこれからもあなたたちへの感謝は忘れないわ』 こんな風に言われてもやっぱりあたしの中では彼女たちへの贖罪の気持ちが消えない。 ただ、なんとなく肩の重荷が少し軽くなった気がする。 それはどうして? と問われても答えられないんだけど。 『じゃあね――』 最後に二人がとびっきりの微笑みを浮かべると同時に、音もなく二人の姿はまるでこの部室に溶け込むかのように薄くなっていく。やがて目に見えなくなったとき、なぜか部室にさらさら流れる細いガラスのような結晶が降っているような幻覚が見えた気がしたと思ったら、二人の余韻すらもこの場から消滅した気がした―― ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ さて、ここからは後日談になる。 俺はこっちの世界に戻ってきて、昨日までとにかく色々な人に頭を下げて回った。しかもその度に俺の頭を押さえつけていたのは愛想笑いを浮かべて常に俺の横にいたハルヒだ。 当日は二年五組と鶴屋さん。 んでSOS団には土曜日に全員奢りという詫びを入れさせられた。つっても、これはいつもと変わらんか。 そして翌週水曜日。その日の放課後、おそらくは詳しい説明を聞けるであろう人物への元へととにかく急いだ。 なんでも今回の件で三日ほどのメンテナンスが必要になったとかでそいつは昨日と今日、学校を休んでいたから。実は土曜日も無理して来ていたらしい。 その証拠に昼食後、あっさり帰宅したもんな。 おっと俺は別にハルヒに聞かれたくなかったから急いだわけじゃないぜ。 と言うか、ハルヒはもう、俺がジョン・スミスで、長門が宇宙人で、朝比奈さんが未来人で、古泉が超能力者だってことを知ってしまっているんだ。 てな訳で、俺が部室に急いだ理由は単に逸る気持ちを抑えられなかった、ただそれだけだ。 なんたって最大の謎はまだ残されたままだったからな。 が、文芸部室に入って、朝比奈さんの生着替えを目撃してしまったものだから、朝比奈さんの悲鳴が外に漏れないように急いでドアを閉めて廊下で待つことしばし。 ひ、久しぶりだったのと事の真相を知りたかった探究心が勝ってしまっていたんだよ! ノックしなかったのは単に忘れていただけだ! 「ど、どうぞ……」 う、ううん……部室からまだ恥じらった声が聞こえましたね…… 俺は多少、後ろ暗い気持ちでドアをくぐる。 むろん、そこには朝比奈さんがまだ少し頬を赤く染められて困った顔して佇んでいらっしゃいました。 いや本当にすみません。 「いえ……あたしこそ鍵もかけずに……」 などと言う謝り合いの会話を交わした後、俺は目的の人物の傍に行った。 「今回の出来事は情報統合思念体の終末派が目論んだこと」 で、近づいた途端、普段は挨拶するまで物言わぬ文芸部長にしてSOS団の読書係はハードカバーから目もあげずに切り出してきたんだ。しかし何とも言えん寒々とした雰囲気はいったい何なのか? まあ今はいいか。とりあえず真面目に話をしておきたいからな。 「終末派だと? 確かお前から聞いたのは主流派、急進派、穏健派、革新派、折衷派、思索派ではなかったか? 終末派なんて初めて聞いたぜ」 「わたしも最近知った。今回のことで情報統合思念体が教えてくれた」 なぜお前に知らされなかったんだ? 「必要無かったから」 いやそれを言ったら身も蓋もないだろう。まあ確かにお前の任務はハルヒの監視であり、ハルヒの護衛だから…… って、最近って言ったよな? 知ったのはいつだ!? 「あなたが異世界に飛ばされた翌日」 なんとまあ、と言うことは今はその派閥を知っておく必要ができたってことだ。 「終末派は情報統合思念体の中でも異質。意味に齟齬を生むかもしれないが生命体が持つ根本的な感情が欠けた存在」 思念体を生命体と表現するのはまあ確かに変な感じはする。だが長門は俺に解るように説明するためにあえて使ったんだ。 「以前、説明した通り、我々情報統合思念体は派閥の志はどうあれ、自律進化を目的としている。それがわたし、朝倉涼子、喜緑江美里がこの地に存在する理由。主張は違うが皆、自律進化を念頭に置いている。それだけは同じ意志」 朝倉はもういないがな。 「しかし終末派は自律進化を放棄した意思。よってその思考は自らが滅ぶことしか念頭にない。そしてそれは生命体すべてが持っている思考とは真逆に位置するもの」 なるほどな。確かに俺たち人間は誰しも死にたくないと願い生きることに対して執着する。それは長門の親玉もそうなのだろう。放っておけば滅びの一途を辿るなら、藁に縋ってでもなんとか生き長らえる方法を模索するのは当然ってことだ。なんと言っても命の有無は別にして『生きている者』だからな。 つまり、終末派ってのは死にたがりの連中だ。自殺志願者と言っても過言じゃないかもしれん。 「涼宮ハルヒが世界を滅亡させれば自分たちも滅びることができる。だからあなたを別の世界へと追いやった。正確には別の世界ではなく次元断層に放り込んだ。なぜなら彼らも自らの意思を持って異なる世界には行くことができないから」 何で俺なんだ? 「あなたは涼宮ハルヒにとっての鍵。鍵がなくなればその扉に意味はない。扉は我々にとって新しい自律進化への道筋をつけるための指針」 そりゃまあ鍵のない扉なんて意味ないだろうな。鍵がなきゃ扉を付ける必要なんざないわけで…… って、まさか! 「その通り。鍵=あなたがいない世界では涼宮ハルヒは何も意味がないと考えた。だから滅亡の危機に瀕した。そしてこれが終末派の狙い」 う、ううん……なあ世界、本当にそれでいいのか? それも今の『世界』ってのは全宇宙を指しての『世界』なんだぜ? そんな、俺にはとっても理解できそうにない広大な世界が俺なんぞに振り回されてるなんて思いっきり理不尽としか思えんぞ。 と言うか、何で俺は次元断層に放り込まれただけで済んだんだよ。今のハルヒに世界を滅亡させたいなら俺の命を奪う方が早くないか? 現実に朝倉もそうやろうとしたんだぜ。 「次元断層に放り込んだ時点で有機生命体はほどなくその生命活動を完全停止する。だから生きていても死んでいても大差ない」 そ、そうですか……さらっととんでもないことを言う。 てっきり終末派とやらが情けをかけたのかとも考えたんだが全然違うらしいな。と言うか全く逆じゃないか。 ったく、死にたいなら自分だけ逝けっての。無関係の連中を巻き込むんじゃねえよ。 「土曜日にあなたと涼宮ハルヒが口論になったことを利用した。それゆえわたしも涼宮ハルヒの力によって一時的にあなたが消失した、と誤解した」 なるほどな。確かに俺はハルヒが『あんたの顔なんて見たくない』と聞いただけで『どこかへ消えてしまえばいい』という言葉聞いていないんだ。もっとも、あの言葉を意訳すれば『あたしの前から消えなさい』と受け取れないこともないわけでそれが長門を誤解させてしまったんだ。 「なあ、ひょっとして俺はこれからも朝倉や、今回の奴みたいな連中に襲われたりするのか?」 「大丈夫」 ここで初めて長門は視線を俺に向けた。その瞳には珍しく強い決意の炎が燃えている。 「わたしがさせない」 なんとも頼もしい言葉だね。しかしだな。言っておくが俺だって、お前やハルヒ、朝比奈さんを守りたいと思っているぜ。もちろん古泉もだ。 「そう」 長門がミクロ単位で頷き、そして続けてきた。 「わたしからも聞きたいことがある」 どうにもさっきの寒々とした雰囲気は完全に消え失せてしまったようである。 いったいさっきのは何だったんだ? 「頭髪が桃色の異世界有機体が言ったことは本当?」 って、ああ、あの言葉か。 「いやまあ……たぶん本当なんだろうぜ……」 俺は苦虫をつぶした顔をした。 そう言えば、どうして俺が戻ってこれたのかの詳細な説明がまだだったな。 それを今、少しだけ説明させてもらう。 まあ何だ。あの二人は召喚魔法を利用してこっちの世界と向こうの世界を一時的に連結させたんだ。 それはハルヒ、長門、朝比奈さん、古泉にあの二人の立ち位置が関係している。 俺を中心に長門が俺の真後ろ、ハルヒが俺の正面に立ち、あとの四人が中心から俺とハルヒ(長門でもいいぞ)の間隔で60度ずつずれて立つとどうなるか分かるかい? まあ答えを言ってしまえば正三角形を二つ重ねて丸で囲んだ形、すなわち六芒星魔方陣だ。これは二つの世界を隔てていたとしても効果があるとのこと。 なぜなら向こうの世界では召喚術を用いるときに使う呪紋だそうで主に悪魔や魔獣とかいう地底世界にいる輩を呼び出すものらしい。 んで、六芒星魔方陣は地底世界と地上世界を繋ぐ扉ということだ。 この理屈をあの二人は応用したんだ。 もっとも同一世界じゃなく異世界間なわけだから通常の召喚術で成功するはずがなかった。 ところが、あの時、俺とハルヒの持っていた小石が二つの世界を繋げていた。そして俺の予想通りで、異世界への扉を開くトリガーの力を持つSOS団のエンブレムと、異世界との境界線が著しく弱くなっている文芸部室の超空間とを利用してハルヒが無意識に、しかし一心に願ったからこそ、あの小石を通じて俺の元へと線を繋げることができたんだ。まあいくらハルヒでもそこまでが限界だったんだがな。んであの魔石を作ったのと魔力を吹き込んだのはあの二人だ。それがマジで呼応したらしい。つーことはあの二人は人間の身でありながら、その力を次元断層にまで及ぼせるってことか? まあそれくらいの力は持っているみたいだったが…… んで、その線が召喚の伏線になったんだ。 後は『同一意志』が『異空間に入り込んで』線を確認し、その線を利用して『空間を越えて』、向こうからも『道を繋ぎ』、召喚させるために『扉を開いた』って経過だ。 つまり、あの二人が使った魔法はテレポテーションと召喚術の合体魔法。 俺を元の世界に飛ばすためにテレポテーションを使い、呼び出すために召喚魔法を使ったってことだ。 ただ、確か胡散臭い本によれば六芒星魔方陣はもっと何か書いてあった気がするし、あんな小さいものじゃなかったはずなんだ、なんて考えたのだが、結構ガックリくる答えをあの二人は言ってくれた。 何の魔力も持たないごく普通の一般人に属する俺くらいなら簡易魔法陣で充分なんだってよ。複雑な魔法陣を利用するものは呼び出すモノが強力な魔力を持っていたり力があったりする場合でそれを服従させるためにより複雑な.呪紋が必要になるって説明だった。 なんかえらく馬鹿にされた気分だったぜ。 で、長門が聞いてきた俺が受けた留意事項というやつなんだが…… ああ分かったよ! 言うさ! たぶん、『召喚術』って言葉が出た時点で想像できたとは思うが、あの術には『呼ばれた側』は『呼んだ側』に絶対服従してしまうというルールがあるんだ。 言っておくが校則とか条例とか六法なんて甘っちょろい文面法律なんかじゃないぜ。あんなもの罰則とか罰金さえ気にしなければいくらでも破ることはできるんだ。まあできれば破りたくはないがな。 ところが今回の場合、なんだか潜在意識とか深層心理の部分で逆らえないんだ。 逆らうことにあからさまなセーフティーがかかってしまってる。これがどうい意味か分かるか? 俺はハルヒにこっちに呼ばれた扱いになったんだ。 もうお分かりだよな。 そうだよ。俺はハルヒの本気でやることなすこと命令することに愚痴は言えても行動としてはまったく逆らえなくなったんだ。 パンを買ってきて、と言われれば条件反射のように行ってしまうし、ジュースを買ってきて、と言われれば迷わず販売機へ向かう。 弁当を盗み食いされたときは「いいじゃない! 団長命令よ!」と言われてしまったときになぜか押し黙ってしまったんだ。 ったく、これはいったいどういう冗談なんだ。 というか冗談じゃないから始末が悪い。 何? それじゃ今までとあんまり変わらないんじゃないか、だと。 ……ま、まあ確かにそうと言われればそうかもしれんが……って、そうじゃなくて! 「それについては対処可能」 え? 長門、今何て? 「手を出して」 ええっと、ひょっとして傍若無人な鬼団長の文字通り走狗と成り果てたワタシめを救ってくださるのですか? 長門大明神様。 「あなたの体面に対情報操作用遮蔽スクリーンを展開させる。今、あなたに起こっている現象は涼宮ハルヒの力ではなく、召喚術の情報によるもの。だから対処可能」 ああ長門さまが女神に見えまする。 俺はうれし涙をあからさまに流しつつ、腕まくりをしようとして、 「遅れてごっめ~~~ん! みんな揃ってる~~~?」 とっても明るい挨拶とともに豪快にドアを開ける音が俺の行動を自制させてくれました。 ふぅ……危ない危ない…… ま、まあ処置は後からしてもらおう。 「まだ古泉が来てないぞ」 という訳で俺は努めて平静を装ってハルヒに声をかける。 「あらそうなの? じゃあ古泉くんが来てからにしないとね」 「何をだ?」 「ふっふうん♪ お楽しみに♡」 言って上機嫌な笑顔のまま、ハルヒは団長席にドカッと腰を落とす。 しかしまあ、こいつの『お楽しみに』ってのはたいてい俺にとっては碌でもないことなのだから、できればこのまま古泉が現れん方が―― 「どうも遅れてすみません。ちょっと掃除に手間がかかりまして」 って、もう来るか? で、毎度毎度常套句で申し訳ないが、先述通り『俺にとっては碌でもない』ハルヒの『お楽しみに』だが、やっぱり俺にとっては碌でもないことになったのである。 しかも今回は完全に俺のみだ。SOS団の他の団員には何も被害が及ばないたくらみだったんだ。 「あ、よし! じゃあ全員揃ったところでミーティングを始めるわよ!」 言ってハルヒがいつも通り団長席の椅子に仁王立ちに―― ならない? 机の前に来て口を開く。 「さて、今回はキョンがあたしたちに多大な迷惑をかけました! それも異世界の人たちを巻き込んでという犯罪に等しいくらいの迷惑を!」 うぐ……俺の所為じゃなくてお前に関わったばっかりに俺は目をつけられただけなのに…… 「ですが、今回はキョンのことは不問にします! だってキョンも反省してるでしょうから!」 へいへい分かりましたよ。もうそれでようござんす。 どうせ反論したってこいつは聞く耳持たないし、他の奴らは擁護してくれん。 「しかぁし! その中で今回、あたしとSOS団はとある人物によって大変救われました! その功績を讃えて、かの人物に我がSOS団の特別役職を進呈したいと思います!」 はあ? まさかあの二人の魔法使いにか? 言っておくが再会する可能性は完璧に極めてしまったくらい低くなったぞ。なんたってお前がそれを認識してしまったからな。となれば自由に行き来できる可能性は限りなくゼロになったってことだ。 まあ仕方ないjか。 長門に言われたらしいからな。 俺をこの世界に戻してくれた確率が奇跡を超越した偶然によるものだってよ。それにあの人にも言われたことをハルヒが受けれてしまっているんだ。 下手をすればすべての異世界へ行くことができなくなってしまったんじゃないか? などと心の中で呟いている俺を尻目にハルヒは、どこからともなくいつもの赤い腕章と油性のマジックペンを取り出してキュッキュッとなにやら書いている。 しばしの沈黙。 俺はだるそうに、古泉は無意味にニヤケながら、朝比奈さんは少し戸惑い気味に、んで、長門もハードカバーから目をあげてハルヒを見つめている。 そして、 振り返ったハルヒの表情には炎天下の真夏を思わせる赤道直下の笑顔が浮かんでいた。 バンとどうにも俺に突きつけているように見えるのだが、その腕章にはこう書かれていた。 『団長代理』 何で俺に突きつけているのか分からんが一つだけ分かっていることがある。それは俺に対してのものじゃないということだ。 「キョン、これ何て読む?」 「『だんちょうだいり』だろ? で、それを誰に進呈するんだ?」 「あら? 自分だとは思わなかったの?」 思う訳ないだろ。お前はさっき言ってたじゃないか。『俺が迷惑をかけた』って。 そんな奴にお前がそんな重大な役職を与えるとは思えん。むしろ雑用係からも降格させられるんじゃないかとビクビクしていたくらいだ。 「ふっふうん。ずいぶん殊勝な態度ね。でもまあその心意気は買ってあげるわ。今回は降格人事なしにしてあげる」 ありがたいこって。 「これはね! 有希に進呈します!」 「わたし?」 珍しく長門が疑問形の声を漏らしたぞ。 「そうよ。今回の有希の行動は、あたしとSOS団に対して多大な貢献をもたらしたわ。だからこれを受け取ってほしいの。有希がいなかったら、ううん、有希の冷静な判断と多才な知識がなかったらキョンはこっちに帰ってこれなかったかもしれない」 ハルヒが珍しく慈しむような、それでいて感謝している柔和な笑みを浮かべているだと!? 「そう……」 返事を返した長門はハルヒが差し出した腕章を静かに受け取った。 「さてキョン! よく聞きなさい! この『団長代理』がどんな役職かを!』 何で俺にだけ言うんだよ。だいたいSOS団の役職なら古泉と朝比奈さんにも効力を及ぼすんだろ? 「何言ってんの。古泉くんとみくるちゃんは注意しなくてもちゃんと聞いているから大丈夫なの。でも、あんたは話半分も聞いてないじゃない」 いや聞いているぞ。ただ単に聞き流しているだけで。 「この『団長代理』って役職はね」 という俺のツッコミは無視してハルヒは得意満面の笑みで続けた。 「団長のあたしと同じ権限を持つってこととよ! 分かる? SOS団を指揮してもいいってこと! 当然、あんたに命令するのもOK! まあそれでもあたしの命令の方が優先だけどね!」 だから何で俺だけに言うんだって―― って、今、何つった!? 「ん? どうしたのよ? 何か変な顔になってるわよ」 「変な顔は余計だ。今、長門にお前と同じ権限を持たせるって言わなかったか!?」 「言ったわよ。だって、今回の有希の行動は本来、あたしがしなくちゃいけないことだったんだから。でも、あたしは動転してほとんど何もできなかった。だから今後、そういう事態に陥った時に、ましてやあたしがその場にいなかったときに陣頭指揮する人が必要じゃない。それを有希にやってもらいたいって思うのは当然でしょ」 ハルヒの説明を終えて、俺は即座に長門に視線を移した。 そこには『団長代理』という腕章をやわらかく握りしめるいつも通り無為無表情の彼女が佇んでいるわけだが…… 「……」 「……」 この三点リーダは俺と長門のものだ。 しかし意味合いは全然違う。 俺は長門の涼やかな漆黒の瞳の奥に潜む感情に気付いてしまったからだ。そして俺の長門に対する洞察力が間違っていなければその瞳はこう言ってやがるのである。 『対情報操作用遮蔽スクリーンの展開を中止する』 「……」 「……」 再び、同じ三点リーダ沈黙で、しかしその内に秘めたる思惑はまったく違う感情で見つめ合う俺と長門。 が、先に瞳を逸らしたのは長門の方だ。 んで、 「分かった。『団長代理』の職、了承する」 なんとも珍しくはっきりした声で決意表明をしてくれる。 しかもなんとなくその声色にはどことなく、俺に対してほくそ笑んでいるような気さえしたんだ。 「ありがとう! 有希! これであたしのSOS団もまた安泰よ!」 ハルヒの歓喜の声に古泉と朝比奈さんの拍手が重なり、俺だけが暗澹たる気分を底なしの深淵の底へと沈めていた。 そうさ。長門は気付いたんだ。ハルヒの言葉が何を意味するかを。 ハルヒには本気で『為る』と思えばそれを現実にしてしまうはた迷惑な能力があるわけで、しかも『俺に命令するのもOK』と言ったんだ。 つまり、『団長代理』という肩書は見せかけではなく、俺は召喚術の後遺症で長門の命令にも絶対服従という責務を負ってしまったことになる。 という訳で長門の奴は対情報操作用遮蔽スクリーンを展開の中止を決断するに至ったんだ。 やれやれ。俺の心の平穏は何処に行っちまったんだ。これなら向こうの世界で暮らした方がマシだったんじゃないか? などと考える俺に、 「こらキョン! あなたも有希に拍手を送りなさいよ! なんたって晴れの儀式なんだからね!」 「祝福して」 ハルヒと長門の声が届く。 で、俺は今、二人に絶対服従の身なわけだから、ハルヒの命を受け盛大な拍手を送った後、長門に祝福のスピーチをかましたのである。 何? どんなスピーチだったかだと? むろん禁則事項だ。とても人に言えるものではない。 なぜなら語彙が乏しくてあまり気の利いた話になっていなかったかもしれんから内心忸怩たる思いを抱いたからな。 そうだ。内容はともかく周りの雰囲気がどうなったかくらいは言っておこう。 そのスピーチの後、ハルヒの機嫌が妙に悪くなり、しかし長門はある程度満足げな表情を浮かべて、朝比奈さんはガタガタ震え出し、古泉の携帯に緊急連絡が入ったんだったかな。 んで、俺は必死にハルヒのご機嫌取りに奮闘したのである。 まあ概ねSOS団の普段とそうは変わらんが。 な、君もそう思うだろ? 涼宮ハルヒの切望(完)
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/546.html
キョン(今日はSOS団市内不思議探索パトロールの日だ。) ハルヒ「」くじ引きで分けるから引いて。」 キョン(そして俺はハルヒと当たっちまった。) ハルヒ「行くわよ。キョン。絶対不思議探してね皆。」 探索中 キョン「ハルヒ。不思議って言ってもどうやって探すんだ」 ハルヒ「普通に探すの。こんな事もわからないの?」 キョン(御前としての普通って何だよ。) 6時間後 キョン(やっと終わったぜ。) ハルヒ「今日の市内不思議探索パトロールはこれにて終了!!」 キョン(ようやく帰宅できるぜ。この事が待ちどうしかったよ。) ハルヒ「あれ?雷落ちてるじゃない。早めに帰らないとね。」 キョン「おい、ハルヒ。ちょっと涙目になってるけど雷怖いのか?」 ハルヒ「当たり前じゃない・・・あっさっきの無しね。忘れなきゃ死刑だから。」 キョン「忘れられるか。ハルヒも可愛い所あるな。」 ハルヒ「忘れてよ。じゃあ元々可愛くないわけ?デパート寄るからキョンも付いて来て。」 キョン「はいはい。(断ったらどうなるかわからないからな)」 ハルヒ「おいしそうな物があれば絶対買うからね。勿論あんたのお金で。」 キョン「俺の金でかよ。」 ハルヒ「当たり前じゃない。あんたも神聖な団長様にお金を使わない賢い人になりなさい。」 キョン「はいはい。で?何を買えばいいんだ?」 ハルヒ「ノートパソコン買ってくれたらうれしいけど。食材でいいわ。」 1時間後 キョン(疲れた。重い。買いすぎだ、あいつ。) ハルヒ「向こうのソフトクリームでも買ってきて。」 キョン「俺もほとんど金残ってないぞ。買うなら自分で買えよ。」 ハルヒ「しょうがないわね。」サッ キョン「待てハルヒ。俺の財布を返せ。」 ハルヒ「はい。返すわよ。でももう買っちゃったけどね。それよりあんたも食べなさい。」 キョン「ハァ?何で俺も食わないといけないんだ?自分で食えよ。」 ハルヒ「団長の言ってる事が聞けないの?聞かないと死刑だからね。」 キョン「分かったよ。食えばいいんだろ?食えば。」 帰り道 ハルヒ「感謝しなさいよ。団長様が付いて来てあげたんだから。」 キョン(御前が勝手に連れてきたんだろうが。俺の金がなくなったじゃねえか。) ハルヒ「なんか頭がクラクラするわね。昨日から調子悪かったし。」 キョン「おいおい、大丈夫か?ハルヒ。」 ハルヒ「大丈夫よ・・・朝少し熱あった・・だけ・よ・・・」バタッ キョン「おいハルヒ、大丈夫か。(なんとかキャッチには成功できた。)」 ハルヒ「大丈夫・・・」 キョン(ひとまずコイツの家に連れて行かないとな。) ハルヒの家 ハルヒ「何勝手に人の家入ってんのよ・・・出て行きなさい・・・」 キョン「何強がってるんだよ、熱あるじゃねえか。」 ハルヒ「熱なんてないわよ・・でも少しだけ一緒にいて・・」 キョン(正直コイツの家に行きたくなかったがまあ38度もあればしょうがないな。) ハルヒ「ああ、しんどすぎて死んじゃうわ・・・」 キョン「ハルヒ、寝るなよ(俺どうすればいいんだろ。)」 1時間後 ハルヒ「ううん・・あれ?キョン、人の布団で勝手に寝ないで。殴ってやる」 キョン「いてぇ、何すんだよ。そうか、俺寝てたのか」 ハルヒ「ちょっとキョン、あたしの日記み、見た?」 キョン「日記って何の事だ?ああ、これね。見たけど何か文句あんのか?」 ハルヒ「ううっ、勝手に人の日記を見るんじゃないわよ。」 キョン「ハ・・ハルヒ、何泣いてんだよ。俺が何かしたか?」
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/5077.html
電気を付けたら部屋が明るくなりました、みたいないつも通りの放課後。俺はいつも通り占領もとい借りられた文芸室に足を運んだ。にしても太陽もたまには休めばいいのにどうしてここ最近晴天続きなんだ。 真夏の太陽を恨みながらドアを開けると、そこにはチューリップの花のように可憐なメイドがのんびりお茶を沸かしてい・・・なかった。 ただ部室の真ん中で怯えた朝比奈さんが団長様に気圧されていた。 ハルヒ「だから答えてちょうだい!どうやって瞬間的に私の前に姿を現せたのよ!?」 みくる「あうあうあうあうあう」 ハルヒはなんで怒っているんだ?いや、というより爆発寸前の太陽ような笑顔だな。それに「不思議を見つけた」みたいな楽しさを感じる・・・まさか。 少し会話(というより恐喝)を思い出そう。朝比奈さんが突然姿を現した、だと。しかもハルヒの目の前で。 俺が頭痛を感じていると古泉が営業スマイルのまま近寄ってきた。 古泉「事態は深刻です」 なら深刻そうな顔をしろ、仮面か? 古泉「これは失礼。しかし涼宮さんの前ではこの顔でなくてはなりません」 そういやそうだったな。ある程度の事情は察したが状況を詳しく説明してくれ。 古泉「僕にもよくわかりません。僕がここに来たころにはすでにああいう感じでした。」 そうかい。とりあえず止めるためにハルヒのところへ行った。 キョン「ハルヒ、何があったか知らんが少し落ち着け」 ハルヒ「あんたは黙ってて!みくるちゃん、教えなさい!」 みくる「・・・」 まあ予想はしていたが相手にされなかったわけだ。馬の耳に念仏とはこのために作られた言葉なんだと感心した。 古泉「まあこんな感じです。僕が止めても無駄でした。」 無意味に近づいてきた役に立たない超能力者を無視し、部室のすみにいる無口な宇宙人の所へ行った。 長門は椅子に座ったまま、相変わらず俺が一生読まなそうなぶ厚い本を読んでいた。俺が話しかけようとした時長門が顔を上げてこちらを見た。 長門「対処法が見つからない。」 実は俺の耳に耳せんを付けていたため聞き間違えました、というわけはなくそのつぶやきをはっきりと聞いた。 長門「現在の涼宮ハルヒの力が今までより強まっている。おそらくとても興味をそそがれる不思議を発見したから。」 ハルヒの声がうるさくて聞き取りづらかったがこんなところか。 キョン「でなんで対処法がないんだ?眠らせて記憶を消せば」 と言いかけて当たり前のように非現実的な事を話す自分に落胆した。 長門「今彼女は朝比奈みくるの不思議について知りたがっている。それを邪魔する事象を物理的にも精神的にも排除する。」 ということは今のあいつにはとんでも能力が効かないということか? 長門「そう」 ん?じゃあなんで朝比奈さんはすぐに暴露しないんだ。その「排除」は「朝比奈さんの暴露への抵抗」には適用されないのか、と珍しく難しいことを思い付いた。 長門「朝比奈みくるは彼女の信頼下にある。ゆえに傷つけるような行動をしたくないのだと思われる。」 暴れん坊将軍も逃げ出すようなこの光景を見てよく言えるな、とは口には出せない。 おや?見つめつづければ吸い込まれそうな長門の眼に、わずかだが懇願の光が見える。まさかな。 とそこへ古泉がまた近寄ってきた。顔が近いぞ離れろ。 古泉「これは失礼。このまま放っておくと未来人について明らかになるのは間違いないでしょう。」 キョン「一応聞いておくが、ハルヒが秘密を知るとどうなるんだ?」 古泉「自覚のない神が覚醒します。」 キョン「わけわからん。」 AAでも張りたいぐらいだ。30文字以内で答えよ。 長門「AAとは何か知らないが、端的にいえば力の暴走。彼女の中の常識が塗り替えられ、世界が彼女の思うがままになる。」 さすが長門、どこぞのイケメンと違い頼りになる。 しかしそれは厄介だな。そんなことができれば本当に世界がSOS団になってしまう。 長門「あなたの心も操作される。」 キョン「まじめに対策しないとまずいことだな。」 さてとあの闘牛をどうにかしないと。いやフクラミのではないぞ。 長門「そうなれば私とあなたが結ばれない。」ボソ 長門が小さい声でなにかをつぶやいた。もう一度確認したら、なんでもない、と返され読書に戻ってしまった。 まあさほど重要なことではなさそうだから、今は事態の鎮静化をしよう。 ふとハルヒ達の方に目をやると みくる「キャアアア!」 キョン「うおおぅ!」 急に朝比奈さんが俺に抱き着いてきた。とうとう愛の告白を受けてしまったか、と妄想を一瞬だけ広げた。一瞬だぞ。 現実に戻ると朝比奈さんが眼に涙をためて、俺に助けを求めてきたことを察する。とそこへ宇宙人からも危惧される人物が作曲中のベートーベンみたいな顔で近寄ってきた。朝比奈さんはあわてて俺の後ろへ移動して震えていた。うーんかわいらしい。 ハルヒ「キョン!そこをどきなさい!」 キョン「絶対断る」 ハルヒ「じゃあ横に移動しなさい!」 ここでからかってみることにした。いや動かないよりマシだろ。 キョン「わかった。」 ハルヒ「わかればよろしい。」 キョン「ほらよ。」 俺は体の向きを変えずに長門の方に移動した。すると朝比奈さんが一緒に移動した。 ハルヒ「み~く~る~ちゃ~ん!」 そして今度はいらいらした顔でどなった。その後も俺を巻き込んで大声を浴びせ続けた。 みくる「キョンくん」 小さな声が後ろから聞こえた。なんですか朝比奈さん。礼なら後でしてください。 みくる「それもありますけど、違います、テヘ。」 と舌をだしてウインクした。効果は抜群だー! とそこにトビラを開ける音がした。 この部屋内には団員が揃っているはずだ。鶴屋さんかな、しかしそれはそれで困るが。 キイイ そこに見えたのは朝比奈さんである。 俺と目があった直後朝比奈さんは弥生人が生きた恐竜に出会ったみたいな顔をしたまま扉を閉めた。ってなんで朝比奈さんが二人いる? みくる「あの時の私だ」 ん?ということはあなたは未来の朝比奈さん? みくる「正確にはえ~と3日後です。なぜここに来るように言われたかわ知らないんです。」 ではせめてこの後起こることはわかりますよね?ハルヒに生返事をしながら、震える小猫の答えを待った。 みくる「私は掃除当番での仕事で遅れて部室に来たんです。で部室に行く途中で鶴屋さんに会いました。」 あながち俺の予想は外れてなかったんだなぐへぇ。 ハルヒ「キョン!私が大人しい内にどきなさい!」 襟首を引っ張っといてよく言えるな。あっ朝比奈さん、俺の服を引っ張るのは嬉しいですが服が伸びてしまいますよ。 なにやら外が暗くなってきた。あれ天気予報じゃ晴天白日のはずだが。 みくる「あっすいません。で私と鶴屋さんで部室に行ったんです。で最初に私が入ろうとしてすぐに気づいたんです。」 襟首にかかる力がふいに消えたからようやく応答できる。 キョン「朝比奈さんがもう一人いることですね。」 みくる「そうです。で私が二人で図書室に行くよう頼んだんです。鶴屋さんは突然のお願いを承諾してくれました。」 ふと止められる気のない目覚まし時計のようなハルヒの声のベクトルが別のほうに向いてることに気づいた。 ハルヒ「今の会話にあった『キカン』て何よ!怪しいわね、電話の内容的に『機関』て書くんでしょ!教えなさい古泉くん!さもないと」 なんか部室のトビラの前で副団長の権利が云々と話を続けているが、それ以前になぜ古泉が新たな犠牲者に?その解答はすぐ隣の椅子から聞こえた。 長門「古泉一樹はおとりになっている。その間に朝比奈みくるから情報を聞き入れて。」 なるほどな、二人ともありがとよ。では朝比奈さん続けてください。 みくる「えーと図書室に着いた頃に黒い雲が雨を降らしました。夕立みたいな感じです。」 言い終わらぬ内に雨が降ってきた。たしかに夕立だな。 だが俺は言葉に表せられない不安がよぎる。この風景はいつぞやの冬の遭難と似ている。 ふと俺は長門を見た。長門は外の雨、いや雲を見上げている。その眼に僅かな不安を感じたのは多分俺だけだ。 みくる「キョンくん。キョンくん!聞いてますか!?」 キョン「すいません、ぼーっとしてました。」 みくる「もう。しばらく図書室で私たちは勉強してました。でも勉強中に未来から指令がきて、すぐに私は鶴屋さんを連れて部室に戻りました。」 朝比奈さんがぷっくりと頬を膨らませている。急所に当たったー!効果は抜群だー! ショックで廃人になりかけた俺に長門が手を引いてきた。両手に花だぜ。 長門「情報統合思念体にアクセスできない。」 キョン「なんだと。」 長門は冗談を言わない奴だ。とすればまさか今の状況は。 長門「冬の遭難時と似ている。私や涼宮ハルヒ、朝比奈みくるは能力を使用できない。」 さっきの予感はこれか。しかも学校でかよ。下手すりゃ一般人に被害が出るじゃねえか。 俺が打開策を考えようとしたところで後ろから猪が襲ってきた。 ハルヒ「なーにみくるちゃんや有希を誘惑してんのよバカキョン!離れなさい!」 いきなり横に突き飛ばすな。ベクトルを操作する力の開発なんて受けてない俺は倒されるがままに朝比奈さんの体に俯せで倒れた。 いてて大丈夫ですか朝比奈さん。て何顔を赤くしてるんです?俺は倒れる直前に手を床の方に突き出して覆いかぶさらないようにしましたよ?ん、なんで床がこんなに柔らかいんだ?・・・て キョン「柔らかい!?ゲフッ!」 あれーおれいまはらをけられたきがするぞ。しかもあさひなさんに。 ハルヒ「いい加減にしなさい!」 キョン「事故だ!過失だ!冤罪だ!」 ハルヒ「過失でも立派な犯罪じゃない!」 それもそうだ。とりあえずハルヒ裁判官に無罪を説得するために腰を上げると そこは部室じゃなかった。山の頂上付近の石をご想像してもらえるとありがたい。妙にゴツイ石や岩が辺りに広がっている。CGではない、その証拠に石を持ち上げてみたが重い。 一瞬で風景が変わっている。WHY? まあ唯一の救いは団員が全員すぐ近くにいることだ。朝比奈さんは倒れたまま、てか気絶してないか? にしてもここはどこだ?いつぞやのかまどうまの時と似ている気がするが。 長門「そう」 いつも通りの長門の反応にほっとした時、ガンッと言う音がすぐ後ろの方で聞こえた。俺は地面から物理法則を無視した物体が湧いてきたか、と考えながら振り返ると そこに赤い装飾をまとった大きめの石を両手で持っている古泉がいた。そしてそのすぐ下の床に倒れているハルヒ。 キョン「古泉!!」 俺は我を忘れて古泉の胸倉を掴み押し倒した。馬乗りになり、奴の顔を殴り飛ばそうとしたところで誰かに腕をつかまれた。顔を上げるとそこには長門がいた。 長門「彼の行動は正しい。」 キョン「友達を石で殴ることが正しいのかよ!」 長門「聞いて。」 長門の眼にほんのわずかだが水の膜ができている。そんな目をしないでくれ。俺は長門の言うことを聞くことにした。 長門「まず涼宮ハルヒに超現象を知覚されてはいけない。これは彼女が認識し興味を持たれてはいけないことを示す。」 つまりこの空間を記憶に残される前に気を失わせる必要があったんだな。 長門「私は古泉一樹に涼宮ハルヒを殴り気絶させるよう指示した。古泉一樹は最初拒絶したが、私の考えを理解したと思われる。指示通りに動いた。」 そうなのか。だが同時に俺は聞かなければならないことができた。 長門「私という個体は、あなたに彼を恨んでほしくないと願う。」 承知した。だがな長門 キョン「石で殴るというのは理解できん。俺たちは部員で友達だ。それに他の二人はともかく長門は人間にはできないことをするのは簡単だろ。」 なんで宇宙的マジックで傷つけずに気を失わせなかった、と言いかけて俺は思い出した。長門は言っていた、冬の遭難の時と似ていると。 長門「私や涼宮ハルヒの能力は今失われている。彼女をおとなしくするには絶好の機会だった。だが同時に穏便な方法で処理できなかった。」 事情は察した。だがこれだけは確認させてくれ。おまえはハルヒを傷つけるのになにも感じなかったか? 俺は立ち上がって長門の顔を凝視した。長門は俺の眼を10秒見つめた後ハルヒの方を向き、電波話以外では滅多に動かない口でたった6文字をつぶやいた。 「ごめんなさい」 俺は長門の両肩に手を置いた。俺の中を安堵と喜びが走り回った。なぜか?長門が人間らしい感情を少しずつだが着実に持ち始めていることに決まっているじゃないか。 長門の顔を見た。若干驚きの顔をしていたが嫌そうな顔をしていなかった。 みくる「ふぁぁ。皆さんおはようございます。」 俺は瞬間的に長門から離れた、いやまた何か誤解を受けるのは嫌だからな。やあ朝比奈さんおはようございます。 みくる「あわわわわ!てなんですか、ここどこですか~!?」 ブーン ずいぶん懐かしいセリフを聞いたが、今はこの状況を打破する方法を考えなければならない。 ブーン 古泉「ようやく落ち着いてもらえたようですね。押し倒された時別の意味で興奮しましたがそれはともかく、いやいやすいません。」 キョン「おまえに謝られてもちっともさっぱり全然お世辞にしか聞こえない、不思議!」 古泉「今のは聞こえなかったことにしておきましょう。とりあえず状況を整理しましょう」 みくる「ひゃあ!涼宮さんが倒れてる!キョンくんキョンく~ん!」 古泉「ここでは異能力を使えない。この空間の創造主は少なくとも涼宮さんではない。なぜなら彼女の意志で作られたのなら、気絶前と気絶後で何かしらの変化が」 みくる「キョンくん!古泉くん!長門さん!」 俺たちは見事にスルースキルを発動しつつ、古泉の話を聞いていた。 ブーン さっきから遠くで聞こえる虫の音がしつこいなあ。 古泉「あなたが僕にうっとおしそうな顔をするのは珍しいですね。どうしたんですか?」 いや珍しいことではないだろ。だが今は違う。 キョン「さっきから虫の音がうるさいんだよ。殺虫剤カモーン。」 古泉「それは変ですね。この空間には人間以外入れないはずですが。」 みくる「なんで皆さん無視するんですか~!私の言うこと聞かないとミンチにしてやりますよ~」 古泉「長門さんは虫の音が聞こえましたか?」 長門「聞こえない。だが向こうに」 みくる「私泣きますよー!」 古泉「聞こえませんか、僕もです。」 キョン「待て長門。今なんて言った?」 長門「聞こえない、と言った。」 違う、そのあとだ。よく聞こえなかった。 長門「向こうに何かいる。」 俺たちは長門の見ている方向を凝視した。そこには 「ブーンブーンブーン」 擬音語を言葉にしたような音を出す、どこかで見た気がするAAが空を飛んでいた。 あれはなんだ、敵か? 古泉「どうもそのようですね。そして同時に倒さなければならないでしょう。」 キョン「だがどうやって倒すんだ?」 ブーンという声が突然大きくなってくるとともにそいつも大きくなってきた。つまり キョン「接近してきてる。みんな逃げろ!」 俺たちはあてもなく走った、俺は倒れているハルヒをおんぶしながら。意識のない人間は重いと聞いたことがあるが、ハルヒは軽かった。 AA「時間の果てまでブーン!」 よくわからないことを叫んだかと思ったら、奴はいつのまにか俺たちの頭上10mにいた。 奴の大きさはこの距離で一般男性の平均身長ぐらいはありそうだ。 長門「あれは生物ではない。」 なぜそんなことがわかる? 長門「今までの経験と言語化できない決定」 無理矢理訳すと『女の勘』ということか。だが生物でないならなんだ。 長門「わからない」 古泉「僕の方にも質問してくださいよ、のけものみたいじゃないですか。」 空気と化した朝比奈さんよりはマシだろうよ。セリフがあるのとセリフすらないのはかなり違うぞ。 古泉「思うに長門さん、あれはゲームの敵と同じようなものではないでしょうか。あれに殺意を感じません。」 キョン「なるほどな。だとするとプログラムに従って動いてるんだな。」 となるとプログラマーがいることになる。だが疑問がある。 キョン「なんでこんなことをするんだ?危害を加えたいならさっさと攻撃すればいいのに。」 古泉「僕にもわかりません。」 言い忘れたが、話している間も俺たちは常に奴の動きを見ている。て誰に言ってんだ俺。 ん?なんかさっきよりも奴が近づいてないか? 古泉「このまま待機してても拉致があきません。少し刺激を与えましょう。」 と言いながら古泉は大きめの石を拾い奴に石を投げ付けたが、奴はその石から逃げるように体を曲げた。そして落下してくる石は俺の眼の前でだんだん大きく キョン「あぶね!古泉気をつけろ!」 長門「彼に石をあてないでもらいたい。」 古泉「すいません二人とも。」 古泉は観音様にお願いするかのように謝罪した。あとで缶コーヒーをおごれ。 古泉「いやです。ですがわかったことがあります。あれは石をあてられたくないようです。みんなで石をあてましょう。」 ほういい度胸してんな、あとで覚えてろ。とりあえず古泉の提案に生返事して、奴に石を当てることにした。 ――あれからおよそ30分―― 結論からいうと、全然当たらない。 長門「あれとの距離はおよそ8m。当たらない距離ではない。」 古泉「ですが当たりません。困ったものです。」 キョン「どっか高台はないのか」 古泉「辺りを見ればわかりますがそんなところはありません。」 おまえはいつでもスマイルだな、奴もそうだが。 古泉「一度あれと話してみたいです。」 長門「あれは生物ではないから有機生命体の言語を理解できるか困難。」 長門、冗談と本気を区別できるようになったら人間として完璧だから頑張れ。 長門「そう。」 俺達は休憩することにした。だがハルヒでないほうの神は俺たちをいじめたいらしい。俺の顔の右5cmを何かが火花を散らしながら正面から通過した。その直後にパーンなんて音がした。まるで花火のような キョン「朝比奈さん!なにやってんですか!?」 気づけば正面約十mの位置で朝比奈さんは鬼のような形相をしていた。しかもロケット花火をセットしていた、オレタチニムケテ。 みくる「ひどいですみんな。私が見えてないかのようにふるまって。グスッ」 キョン「朝比奈さん!別に無視してたわけではないんです!」 古泉「そうですよ。僕たちは空気を見てるんですから。」 キョン「バカヤロウ!んなこと言ったら」 みくる「私なんてどーせ役立たずで雑用係のロリロリメイドでしかないんだ、うわーん!」 朝比奈さんは泣きながら俺たちに向けてロケット花火を打ち続けた。ていうかどこに花火を持ってたんだ?それ以前になぜもっている?。 俺たちはとにかく逃げ回った。朝比奈さんはようしゃなく打ち続けている。 とにかく花火をなんとかしなくては、と考えた時ふと打倒朝比奈さん策を思い付いた。それは石を花火に投げつけ、ひるんだところで朝比奈さんを止める。完璧だろ。 俺は足元に落ちてる石を発射前の花火に向かって投げた。石は花火に当たると、上の方をむいて転んだ。朝比奈さんが方向を直そうと花火に近づいたとき、花火は無意味な方向へ発射された。 古泉「よくやってくれましたキョンくん。」 ん?なんのことだ?今から俺は朝比奈さんを止めに入るのだが。 古泉「えっ、まさか偶然だとは思いませんでした。感服です。」 なんだ、と思い上空を見た、いや正確には地面から8m上の空間を見た。 例の奴が赤く点滅していた。その後粉々に砕けて消えた。そういうことか、俺SUGEEEEEE! 長門「空間が壊れ始めている。この空間から脱出する。」 キョン「力は戻ったのか?」 長門は無言でうなずいた、口の両端をナノ単位で上に向けながら。 長門「今回はあなたのおかげ。私の見込んだ通りの人。」 キョン「俺はそんなすごい人じゃないぞ」 長門「・・・・大好き」 キョン「えっ・・・・」 古泉「とりあえず脱出しましょう。長門さんお願いします。」 長門「・・・KY。わかった。」 なんだこのとてつもなく不安な感じは。なにか重要な問題を忘れたような。まあ気のせいだろ。 長門「△*■Μэ⑲㏄∑¥∴」 キョン「なあ古泉。さっきから聞こえる爆音はなんだ?」 古泉「この付近で火山でも噴火してるのでしょう。」 長門「∂◎#@キョン・古泉・ハルヒ・長門・朝比奈」 朝比奈さん?あっ キョン「長門!ストップ!」 遅かった。俺たちは部室に戻っていた。ハルヒ・長門・古泉・俺は部室の机に隠れるように帰還、朝比奈さんは・・・ 俺は朝比奈さんを止めようとしたがもう遅い。朝比奈さんがセットした花火はいきよいよく放たれ、部室の窓を破っていった。 ――その後――――― ハルヒ「キョン、今日あたし何してた?」 あの後長門が朝比奈さんを眠らせ、情報操作を行った。 ガラスは割れなかったことにし、ハルヒは部室の机でうたた寝していたことにした。 ハルヒの傷も治した。未来の朝比奈さんは時間転移でどこかに行った。なにしに来たんだろう。 部室から出た直後に、今回の事をほとんど知らない朝比奈さんに会った。で今団員全員で帰路についてるわけだ。夕焼けがきれいだな。 キョン「椅子にもたれてグースカ寝てたじゃないか」 ハルヒ「あーもー一生の不覚よ!キョン、今日は夜も部活するわよ!」 冗談じゃない。俺にも休息をだな。 古泉「いいんじゃないですか?このまま放置したら閉鎖空間が発生してしまいます。」 キョン「だまれイエスマン。今日は疲れたんだ。」 ハルヒ「なんで疲れてるのか知らないけどわかったわよ。ところでさ。」 ん、珍しく声を小さくしてどうした?愛の告白なら喜んで受け入れるぞ。 ハルヒ「バカキョン!そんなんじゃないわ!私の頭に傷はない?」 キョン「別にないが。」 顔が真っ赤だぞ、とは言わなかった。 ハルヒ「・・・・・・そうよね、夢よね。」ボソッ キョン「なんか言ったか?」 ハルヒ「別に。」 さてお別れの交差点に入ったので俺たちは解散した。今日は朝比奈さんの黒い部分が見えたからよし。だがそれよりももっと印象に残ったのが 「・・・・大好き」 自分の顔が熱をおびるのがよくわかった。 俺は家に着くとまず顔を洗った。俺が夕飯を待ちわびるべく部屋に戻ったところで、妹が電話の子機を持って追いかけてきた。 キョン「誰からだ?」 妹「長門さーん」 キョン「・・・そうか」 妹「キョンくん顔赤いよーどうしたのー」 俺は妹を部屋の外へ放り投げたのち子機を耳にあてた。 キョン「長門か?」 長門「・・・そう。今から私の家へ来てもらいたい。あなたに今回の事件で聞いてもらいたいことがある。では。」 電話が切れた。さて健全な男子学生ならどう反応したらいいのかね。告白(?)された後に家に呼びだされるという状況に。 ―――数十分後――― 俺は長門の家の前に着いた。恐る恐るインターホンに指を乗せた。家に呼び出されたのはあくまであの件について聞くためだ、俺は自分にそう言い聞かせながらインターホンを押した。 「おーともなーいせかーいにーまーいお」 呼び鈴なのだろう、歌が途切れると長門の声が 「やあこんばんは。2時間ぶりですかね。」 なんで古泉がいるんだ。俺は安堵と残念感を同時に味わいつつ キョン「そう」 と無口な宇宙人のまね事で答えた。 古泉「おそらく僕とあなたの用件は同じはずです。鍵は空いてます、入ってください。」 キョン「なんで開けっ放しなんだよ。」 インターホンが沈黙したのだろう、返答はなかった。 俺はとりあえず中に入って長門達の下へ歩いた。 長門は俺を見ると顔を俯かせた。 長門「座った。」 古泉「長門さん、『座って』ですよ。」 長門「間違えただけ。」 長門は緊張してるのだろうか?珍しい。 俺達3人がONLY ONEインザハウスな机を挟んで腰を下ろすと長門が口を開いた。 長門「今から話すことは情報統合思念体の調査結果である。情報の伝達に齟齬が発生するかもしれない、実際コミュニケーションとは」 キョン「あー長門。知識豊富なのはよくわかってるから今回の事件について教えてくれ。」 長門「そう。キョンが言うなら。」 えっ?長門が俺のことをあだ名で読んだだと。 古泉「顔が赤いですよ?とうとう僕のあなたへの愛に気づいてもらえましたか。」 キョン「断じてそれはないしそっちの趣味も一切さっぱりからっきしないぞ。」 長門「二人とも聞いて。」 長門は全て話した。まずあの空間と物体の作成者は、冬の遭難時の犯人と同じだそうだ。 動機はまさにヒトラーが民主主義を唱えるかのようなものだった。 長門「彼らの目的はない。動機は『退屈』だったから。ただ彼らの言いたいことを我々は完全に解析できていないからなんともいえない。」 前回はハローの代わりに吹雪を降らしてきた。今度は退屈しのぎに数人を異空間射撃ゲームかよ。何考えてんだかさっぱりわからん。 そして朝比奈さんがなぜ未来から来たのか。どうも未来の一組織が情報統合思念体の急進派と手を組んでいたらしい。 長門「涼宮ハルヒにあえて未来人を認識させることで、どのような変化が表れるかを調べていた。朝比奈みくるはその組織に騙されていた。ちなみに今は急進派及びその組織は厳正な処分を下されている。」 朝比奈さんが図書室でされた指令は、急進派が捕まった後正規の組織が指示したもののようだ。 ん?だが疑問が残る。その疑問を代弁するかのように超能力者は言った。 古泉「未来人や急進派はあの頭の愉快な思念体の行動を知らなかったのでしょうか?彼らの目的は彼女の変化の観察ですよね?邪魔が入るとわかってたら計画自体に意味がありません。」 長門「それについては情報統合思念体も困惑している。もしかしたら彼らは未来人にすら認知されない行動力を持っているのかもしれない。」 奴らがその思念体と手を組んで空間に閉じ込められた状況を観察した、という可能性はないのか? 長門「ありえない。あれと会話することも困難であるのに、計画を立てることは不可能。」 キョン「あまりに馬鹿にされる思念体に全俺が泣いた。」 長門「あなたは一人しか・・・ジョーク?」 キョン「よく気づいた。」 ――――その後―――― 古泉「では用も済みました。僕はこれで失礼します。」 古泉は帰った。長門の告白は気になるが俺も帰ることに 長門「・・・・」 帰ろうした俺の腕の裾に小さな力がかかった。振り向くとそこにはハムスターをつまみあげるように裾をつかむ長門が俺の目をじっと見つめていた。そして長門の顔が少し赤い。 俺たちは時間の経つのを忘れたかのように見つめ合った。顔に熱を感じる。ああ今なら認めるぜ、今まで自分の心から逃げてきたからな。 キョン「・・長門。」 長門「・・・有希と呼んで欲しい」 キョン「・・・有・・希」 長門「・・・キョン」 俺はいつのまにか長門を抱きしめていた。長門も俺の腰に腕をまいていた。 おっ長門、いや有希の胸から鼓動をはっきり感じた。こいつは宇宙人なんかじゃない。それに俺は言った、冗談と本気を区別できたら完璧だと。 「おまえは人間と変わらない、いや人間なんだ。」 「・・・異能力をもってるけど、いいの?」 「この世界では当たり前なんだ。気にするな。」 「・・・そう。」 「そうだ。おまえは人間で、俺の『彼女』になるんだ。」 「・・・・なら二つだけ約束して欲しい。」 「なんだ?俺にできることならいいぞ。」 「あなたにしかできない。まず私のことを呼ぶ時『おまえ』ではなく『有希』と呼んで。」 「ああ。」 「もうひとつは・・・私の事を支えて欲しい、いつまでも。」 「もちろんだ!じゃあ俺からも一つ。いつまでも俺を支えてくれ、有希。」 「・・もちろん。」 「有希。大好きだ。」 俺たちは口づけを交わした。 あの後俺はすぐに家に帰った。お互いに何を話せばいいかわからなくなったからだ。今となっては名残惜しい。 ―――次の日―――― 放課後俺たち団員は1+1=2というぐらい当たり前のように部室に集まった。 俺は古泉とスピードをし、朝比奈さんはなぜかナースになっていた。ハルヒいわく、風通しがいいのだそうだ。実際そうらしいので特に異論はなかった。無口な少女はいつものぶ厚い本ではなく、俺でも読めるレベルの恋愛小説を読んでいた。ハルヒ?あいつはいつもの通りだ。 ハルヒ「なんか昨日から変なことを考えるのよね。」 今日ハルヒの様子はずっと変だった。何か考え事をしていたのだ。なんだ、今度は危ない水着を朝比奈さんに着せるつもりか?「風通しがいいのよ」とか言って。 ハルヒ「させたいけど違うわよ!なんか古泉くんに石で殴られた、てのを考えちゃうのよ。まさかそんなことあるわけないとはわかってるんだけど。」 みくる「えっ・・・」 古泉「僕がそんな恐れ多いことをするわけないじゃぎゃッ!」 古泉よ、慌てすぎで舌噛むなんて入れ歯を装備したライオンより滑稽だぞ。 ハルヒ「てなわけで古泉くん。悪いんだけど今日だけ副団長の活動停止を行うわ。帰って。明日からはいつも通りのあたしになるから。」 古泉「・・・わかりました。ではみなさんまた明日お会いしましょう。」 そういやあいつに落とし前をつけるのを忘れていた。明日にしよう。 さて古泉が帰ったから朝比奈さんでも誘ってトランプでも ハルヒ「ちょうどいいわ、キョン!ここらへんではっきりしてもらいましょうか!」 キョン「なにをだ」 ハルヒ「なにって・・その・・・あんたが誰を好きなのかを・・」 そんなことか。見れば朝比奈さんや読者中の少女も俺を見ている。ハルヒには悪いが速答させてもらう。 「俺は有希の彼氏だ。」 ―――完―――
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/3609.html
ここは部室。 いるのは長門と古泉と俺。 いつもよりちょっと笑顔が偽者臭い古泉と会話をしている俺は今日も深い溜息をついた。 「またかよ」 閉鎖空間。 3年に進級した今もそんなものが発生しようとは疑問しか湧いてこない。 その理由は古泉によると俺だけが知らない等と言いおった。イジメかよ。 最近じゃ2人きりの活動も少なくないからな。勉強とか勉強とか・・・ 周りは冷やかしたりするがハルヒは恋人じゃないっての。間違ってもそんな関係になるばずがない。 まぁとにかくハルヒと過ごす時間が一番多いのは俺だから最近のご機嫌なハルヒを見る限り大丈夫と思っていたのだが・・ 「では、よろしく頼みます」 「何をだよ」 「涼宮さんのこと です」 そう言って古泉は立ち去っていった。バイト乙。 ・・・って他人事じゃないんだけどな。 俺はまた溜息をついて椅子にぐにゃりと座る。 しばらくうなだれていると突然後ろから声がした 「これ」 「ぅおっ・・・長門!?」 「あなたに」 そういって差し出されたのは四角いケース。 「必要な時だけ、使って。」 「・・・これは?」 「性能は保証する。宇宙人と発明家の太鼓判付き」 そう言って長門は椅子に戻った。突っ込みぐらいさせてくれよな。 俺は恐る恐る箱を開けて中身を見る。 眼鏡だった。 かけてみようかと思った矢先にハルヒと朝比奈さんが戻ってきたので眼鏡ケースはバッグに入れた。 ハルヒはやっぱり朝比奈さんで遊んでいたようだ。やれやれ・・・ 卒業した後も律儀に部室に顔を覗かせる朝比奈さんには平伏するね。 活動が終わった後、俺はハルヒと共に帰り道を歩む。 厳密には帰り道ではない。これから俺の家に行って勉強するのだ。 テストの赤点対策から始まり、宿題、試験勉強、 そして今は受験勉強と、俺はハルヒと勉強するのは日常生活の1部になっていた。 今では毎日ハルヒと勉強している気がする。ハルヒ曰く「教える側の方が勉強になるのよっ」だそうだ。 まぁやる気が無い日というのも実は存在して、話をしたりゲームをしたりする日もあるんだがな。 勉強も一段落ついてハルヒの「ちょっと休憩!」の声がかかった。 ハルヒは俺の布団にもたれて寝てしまった。ちょっとは状況を考えてほしい。 俺の苦労や悩みを何も知らないんだろうな、こいつは。 お互い様か? そこで俺は鞄の中のケースに気が付いた。そういえば眼鏡貰ったんだったな。 ケースを開けて眼鏡をかけてみた。おお、結構見やすい。 視力は良い方だと思っていたが、そんな俺でも更に見やすくなったぞ。 ハルヒの寝顔もばっちり見える。教科書の文字も読みやすいな。 しばらく眼鏡で遊んでいると下に敷かれていた紙に目がいった。眼鏡拭きではないようだ。 紙を広げてみると、見覚えのある整った字が目に入った。 左 不快指数 右 愉快指数 ・・・なんだコレは。 どうみても普通の眼鏡ですよ長門さん。 それに不快指数って気温と湿度の組み合わせで決まる人体の感ずる不快の程度のことだよな? と思いながらはずしてもう一度見ると耳にかける部分にスイッチらしきものを見つけた。 カチリ、と押してみる。もう一度眼鏡をかけてみる。やっぱり何も変わらない。 まぁ勉強するには最適の眼鏡かもな。 「キョン。どうしたのその眼鏡」 げぇっ。ハルヒが起きよった。 「お前はもう少し寝て・・・ろ!?」 「なによその言い方!どういう意味よ!!」 正直俺はそれどころではなかった。 視界の隅に異変が起きたからだ。 73 49 左目のレンズに数字が出てきた。 しかもハルヒは気づいていない。と思ったら気づいたらハルヒが目の前にいた。近いって。 「キョン!聞いてるの!?」 いかん。とにかくハルヒをなだめなくては。そこで俺は思いついた。 あのわかりにくい10文字の説明文でもレンズに出てきた数字を見ればすぐに推理できる。 「ハルヒ。お前の寝顔はなかなか可愛かったぞ。」 「!?」 55 61 なるほどね。長門。いいものを用意してくれたな。 今ならわけのわからん太鼓判にも納得できるぜバーロー。 「はは、冗談だけどな」 「それであんたからかってるつもり!?しかも人の寝顔見るなんて趣味が悪いわよ。」 68 43 どうやら”からかい”はうまくいった様だ。 それにしてもこいつめ、人の部屋で勝手に寝顔晒しておいてなにを言うか。 ・・・しかしここはとりあえず謝っておこう。 俺はすごいもんを手に入れたのだからな。こいつの評価は530000だ。 「すまんな。なんか気分が穏やかになってみただけだ」 「なにそれ。気持ち悪い」 嫌そうな顔を見せるハルヒ。でも内心はそんなに嫌ではないらしいな。 今日は古泉にも苦労させちまったみたいだしな。 俺はその後かつてないほど真面目に勉強し、お茶を持ってきたり軽食を持ってきたり とにかく思いつく限りの気が利く行為をハルヒにしてやった。 ハルヒは「今日のあんた変!」等と言ったが、数字は嘘をつかなかった。 35 90 ああ、こいつももっと素直に喜べばいいのに。 内心はちゃんと嬉しいんじゃないか。何故隠す必要があるんだ。 こいつの感情表現は素直な方だと思っていたのに、今までもこうやって嬉しさを隠していた時があるのかと思うと実にもったいない。 でもいくらか不安になっているということはやっぱり俺を疑っているのは本当だということか・・? ・・・当然といえば当然かな。 そろそろ時間だな。ハルヒを送っていく時間だ。 俺達は自転車に乗って夜の道を進んでいる。 「なんか今日は時間がたつのが早いわね。あんたのせいよ」 「知らん。日によって気分はころころ変わるもんだ。 それはおまえが一番良く知ってるだろう。」 「じゃあ今日はどんな気分だったのよ」 ・・・・ここで俺は詰まった。ここで本当のことを言ったら当然地雷だろうな。 でもハルヒを本当に喜ばせてみたい。なんて言えばいいんだろう。 ハルヒを見ると言葉に詰まった俺を見てちょっと不安そうな顔をしている。 不安の数値がちょっとずつ上がっている。そんなに不安か?何故そんなに不安なんだ。 赤信号の前で止まり、もう一度ハルヒを見る。 「だから、そういう気分だったんだ。」 「そう」 71 50 ・・・・やっぱりはぐらかすのは損なんだな。でもこれは多分いつもの俺だ。 数字に惑わされちゃだめだよな。 自転車が進む音と風を切る音が聞こえる。 ちょっと心地よくなってきたところでハルヒの家に着いた 「明日遅刻しないでよ。」 「ああ。・・・あーハルヒ。今日も、あー、お疲れさん」 「なによそれ」 「だから、お疲れさん。明日も頼むぜ。」 「何よ改まって。当たり前でしょ。」 58 62 ちょっとはましになったか・・・。でもこれで俺も古泉も、他の2人もちょっとは安泰か。 今までの数値が気になるところだな。まぁ今更どうしようもないんだがな。 あれから数日経った。 俺は長門に貰ったハルヒのご機嫌測定器のおかげで順調な毎日を過ごしていた。 某新世界の神と某皇帝の息子も言っていたように、武器は知らねばならない。 俺なりに調べてみたところ、どうやらあの眼鏡はハルヒ専用らしい。 なので谷口を見ても長門を見ても何も起こらなかった。 あとハルヒが視界に入っていないと数字が出てこない。後姿はOKのようだ。 電池は長門曰く1年は持つらしい。流石というべきか。 そうして俺はこの眼鏡を、特にハルヒと勉強している時は絶対につけるようになった。 なんせ眼鏡としての本来の機能も抜群だからな。 次第に学校でも勉強中につけるようになり、そしてついに部室でも付けるようになった。 気が付けば殆ど1日つけている気がする。 ハルヒは思ったより不安を抱えているらしく、全体で見ると不安の数値の方が高い。 驚いたのは俺と会話している時のハルヒは数字が常に変動しているということだ。 古泉と会話している時も、朝比奈さんをいじくっている時も、愉快数値の方が上回っているのに俺だけはまるでシーソーのようにぐらぐらしている。 そんなに俺の反応が怖いのか? むしろどちらかといえば俺がお前の反応にいつもビクビクする側だと思っていたのに。 俺は若干の疑問を抱えつつ、ちょっと優越な日々を過ごしていた。 「長門。いいもんをありがとな。」 「そう」 そんなある日の昼休みの部室で、俺は改めて長門に礼を言った。 いつもなら返事をした後読書に戻るはずなのだが、長門は顔を上げて俺を見た。 「・・・」 見詰め合っているのも変なので俺が話を切り出す。 「どうした。俺の顔に何かついているのか?」 「眼鏡」 そうだな。何かついているとしたら眼鏡だな。流石長門 ・・・じゃなくて。 「ああ、今もつけさせて貰っている。なんせ便利なもんでな・・・」 「・・・」 「長門?」 「・・・使いすぎないほうがいい」 長門は表情を一切変えずに、要はいつもと同じ調子で言った。 そのはずなのにその一言は何故か俺のどこかを突き刺した感覚がした。 「あ、ああ。そりゃ他人の心を覗くなんてのぁあんまり良くないとは思ってるが・・」 「・・・そう」 「いやすまん。これからは気をつける。」 そう言って俺は眼鏡をはずした。 遠くの景色がほんのわずかにぼやけたが、やはり肉眼で見るのが一番いいな。 ここで予鈴のチャイムが鳴った。俺は教室に戻ろうと思ったが長門がまだこっちを見ている。 「長門?ひょっとしてまだ何かあったか。」 「・・・」 「無いなら教室戻ろうぜ」 「・・・情報の」 「・・・?」 「伝達に、齟齬が発生する。よって、伝えることは不可能。」 そう言って長門は本を閉じた。 それがジョークかどうかは最後までわからなかった。 俺は急いで教室に戻って授業を受ける。その次の休み時間のことである。 「キョン。今日はSOS団の活動は中止よ」 「おお、やっと休みになったか。流石団長様だ。団員の心疲れをわかっていらっしゃる。」 「何言ってんの?SOS団は休みだけどあんたは違うわよ。」 「は?」 「あんたには放課後ちょっと付き合ってもらうから。 ふふん、大丈夫よ。単純なあんたなら絶対に喜ぶことだから。」 そう言って不適な笑みを浮かべるハルヒ。なんて恐ろしい。 そういう誘い文句で地獄を見たことが何度あると思ってるんだ。 くそっ。眼鏡をかけて来ればよかったぜ。 「何で俺なんだ」 「だから喜びなさいって言ってるじゃないの。」 だめだこりゃ。 気が付いたら放課後になり、俺はハルヒに手を引っ張られて昇降口を出ていた。 手首ではなく手を掴むようになったのはいいんだがなんか周りの視線が痛い。また勘違いされるぞ。 そんな俺の焦りも知らず学校の裏に歩いていくハルヒに俺は何も言わず引きずられるのみであった。 連れてこられたのは人の気配の無い駐車場。 こんなところに俺を連れてきて何をしようというのだ。ちなみに俺は眼鏡をかけていない。 ハルヒを見ると鞄をごそごそ探っている。俺をちらりと見てはまたにやりと笑う。 「キョン、これ、なんだか分かる?」 ハルヒは鞄からそのブツを取り出して俺に質問をしてきた。 「分かる」 「そうじゃなくて、これは何って聞いてるの」 「だから見りゃ分かる。若葉マークだ。」 そう、初心者マークの通称だな。特に自動車免許の・・・ まさかな、と思う間もなくハルヒは目の前にあった車にそれを貼り付けた。 おいおいお前・・・ 「そう!驚いたでしょ。これ、あたしん家の車だから大丈夫よ。教師の目なんてちょろいちょろい。」 「いつのまに免許取ったんだ!?」 「取ってないわよ。まだ通ってる途中よ。」 「思いっきり違反じゃねーか!」 「事故んなきゃいーのよ。ゴタゴタ言わずにさっさと乗りなさい。」 そう言ってハルヒは車に乗り込みエンジンをかけた。 薄いベージュの軽車。車に乗り込みシートベルトをつけたりミラーを確認したりする姿が初々しい。 俺は仕方なく助手席に乗り込んだ。すごく変な気分だ。 「どこに行くつもりだ」 「そんなこと聞いてどうすんのよ。」 質問に質問で返された。この理不尽さには慣れつつあるがやはり虫の居所が変わるのは実感できるな。 「どこに行くかもわからん車に乗れるか。降りるぞ」 「ダメ! ・・・わかったわよ。車で30分ぐらいのとこ!これでいいでしょ!」 良くない と言いたいが、多分今日のためにハルヒはいろいろ準備をしたのかもしれない。 車を借りるのだってそれなりに苦労するんじゃないか。 そんなことをいろいろ考えてまたやれやれと言う余裕が出来た頃には車は学校から出発していた。 車の中での会話がちょっとぎこちなかったから昨日やったところの復習というということで、俺は車の中で昨日やった問題をハルヒに出題してみた。 ここで俺は鞄から問題集を出すついでに例の眼鏡をかけた。 ハルヒは運転中なわけで俺がいくらハルヒを見ても気づかれにくいので好都合だ。 62 75 ・・・・・・。 こいつは何がこんなに嬉しくて何がこんなに不満なんだ。これから行く場所にもよるが・・・ 正直ハルヒの様子を見てるともっと楽しいのかと思ったので意外だ。 もしかしたら俺が車に乗るときに言った言葉が突き刺さったのか? いやまさかな。 数字だけじゃ何も分からない。むしろ数字が分かるからこそ分からなくなる。なんという矛盾。 ハルヒを分かろうとすればするほど泥沼にはまっていく気がしてならない。 元々ハルヒを理解するなんて無理だって最初にあった日からわかっていたのにな。 こいつのおかげで高校生活における俺のテンプレートは皆無さ。 あえていうなら・・・ 「次の問題まだ?いつまでボーっとしてんのよ。」 俺は気づいたら自分の世界に浸っていたらしい。 信号待ちでこちらを見たハルヒはそれなりに心配してるような、呆れているような顔つきだ。 俺は慌ててページをパラパラとめくる。お前が即答できそうにも無い問題を探すのは結構苦労するんだよ。 そうやって車に乗って30分が経過した。ハルヒはまだ走り続けている。 俺は少し酔ってしまったので問題を出すのは一旦やめようと提案した。それよりもな・・・ 「おい、本当にどこにいくつもりなんだ。いつになったら着くんだ」 「もうちょっとなんだから辛抱しなさい。」 そう言いいながらも焦らずに運転するハルヒに苛立つ。 しかし苛立ちのなかにどこか心地よさを感じている気がして、俺は悶々とした気分になった。 ハルヒの運転が心地よかったせいもあるな。免許もとって無いのにどうしてお前は上手に車を操れるんだ。 ・・・ダメだ。今日も1日学校で疲れたせいだろう、リラックスした俺は寝てしまっていた。 オレンジ掛かった光と心地よい音楽に誘われて俺は目を覚ました。 ここはどこだ?日陰の駐車場か。それにしては周りに何も無いな・・。 時間を見たら学校を出発してから1時間半。これじゃ帰りは夜だな。 ハルヒは・・・と思って運転席を見ると椅子を倒して本をアイマスクにしているハルヒがいた。 この状況から察するに、着いたけど俺が起きないから音楽をかけてついでに本を読んでいるうちに眠くなって寝てしまった、か? いや待てそれはおかしい。・・・ってそういえば眼鏡かけてねぇ。寝るときは確かにかけていた筈なのに。 少し探した後、はっと気づいた。俺はハルヒの顔に乗っかっている本を奪い取った。 「やっぱりこいつは・・・」 ハルヒの顔には俺のメガネがまぁ見事にはまっていたというべきか。 ゆすって起こそうとしたが、俺は体が硬直する感じがした。ついでに唾を飲み込む音が聞こえた。 ・・・本当にこいつの寝顔はかわいいな。これだけは評価せねば。 本を取ったおかげで目を覚ましたハルヒは寝てしまったことを思い出すのに0,6秒の時間を費やしたのち、 「あんた授業中も寝てたくせに何で寝てんのよ!」 と叫んだ。おはようかそれに代わる挨拶なんて俺は期待してないからおkだ。 「俺の眼鏡を返せ。ハルヒ」 「あ、そうね。あんた眼鏡をかけたまま寝るんじゃないわよ。」 何でそれをお前に言われなくちゃならんのだ。 俺たちは車を降りて、ハルヒ先導による道案内で目的地に向かうことになった。歩くのかよ。 さりげなく確認したところ、当然ハルヒは眼鏡をかけても何も起こらなかったらしい。 ただ見やすかったのでそれをつけて本を読んでいるうちに寝てしまったと。なるほどね。 ちなみに車で50分くらいでここに着いたんだと。なにが車で30分だ。 ということは俺は着いてからも40分寝てたということになるな。 俺は最後までその疑問を口にすることはなかった。わざわざ聞くほど大した疑問じゃないからな。 何故40分も待っていてくれたのか、なんてね。 ハルヒも寝ていたのだから考えるだけ無駄だろう。 ちょっと歩いたらここがどこなのかはすぐに分かった。 いやすでに風の匂いでわかっていた。ここは海だ。 俺の手をひっぱるハルヒは散歩中に言うことを聞かない犬のようだった。 片手でなんとか俺は眼鏡をかけてハルヒの後姿を捉えた。 54 88 なんというか、俺はほっとした。 理由はどうであれ、ハルヒが本当に楽しそうにしている様子は俺にとっても救いだからな。 「ハルヒ。急ぎすぎだろ。もっとゆっくり歩け」 「あーもう、しょうがないわね」 海辺の茂みを俺たちは歩いていった。 太陽はもう水平線に届こうとしている ハルヒはどんどん先へ進み、道は岩場独自のゴツゴツとしたものへと代わる。 もうどれくらい歩いたんだろう。 無言で進んでいくうちに数メートル先を歩くハルヒが立ち止まった。 「ここよ」 ここって言われてもな・・・。 そこから見える風景はなんともいい難いものだった。 岩場と岩場の間にちょっと広い砂浜がある。僻地であまり人が来ないせいか聊か綺麗に見える。 「どう?なかなかでしょ。教習中に走った道があの道路でね、通った時にここがちょこっと見えたからもしやと思ったけど、 やっぱりあたしの勘はあたしを裏切らないわね。」 「俺はお前の勘によく裏切られているんだが」 俺の適切なツッコミをやはり無視してハルヒは手を広げた。 「ここ、素敵でしょ!」 そんな楽しそうに言ってくれるなよな。どんなに疲れてても首が縦に動いちまう。 34 82 「ここね、今度SOS団で来ようと思ってるの」 「どうやって来るんだ。お前の車は軽だろ」 「普通に詰めれば5人ぐらい乗れるわよ。ほんとにあんたは硬いわね。」 俺は常識に則った発言を心がけているはずなんだが。 ちょっと座りやすい場所を見つけてハルヒは腰を下ろした。 倣うように俺も隣に座り込む。丁度空がオレンジ掛かってきたようだ。 「・・・でね、夕焼けがこんな風に綺麗に見えるようになるまで皆で遊ぶのよ。 もちろん不思議探索も兼ねるわよ。ここの近隣は自然なままだからまだ人に知られざる謎が・・」 ハルヒのトークは止まらない。こいつとしゃべってるとネタが尽きない。これは一種の才能じゃないか? 俺の突っ込みだって負けちゃ居ないけどな。 実はもしハルヒがこんなことを言い出したらこう言ってやろう、みたいな予習はしているからな。教科書が無い予習なのに結構楽しい。 「ほら見て、キョン。水平線に夕日が映ってなかなか綺麗じゃない。」 そんなもん言われんでもわかっている。俺だってこんな光景滅多に見れんのだよ。 夕日が沈む様をしばらく無言で眺める。 ちょっと涼しくなったところでふと風が俺たちを強く吹きつけた。 ハルヒはスカートを押さえていたつもりのようだが残念だったね。白だ。 俺が鉄壁の表情を取り繕ってるのに安心したのか知らないが、ふっと息を吐く音が聞こえた。 「さっすがは海よね。この空気が違うわよね。」 ハルヒが独り言のように絶賛している。俺は・・・しょうがないので答えてやるとする。 「ハルヒ。空気を一番大事に使う時はどんな時かわかるか。」 「はぁ?」 「それは空気を吸う時じゃなくて読むときなんだぜ。」 「なにそれ。意味わかんない。あたしはいつだって空気読めてるわよ。」 空気の読めない奴に自覚なんてないのさ。多分だがな。それにしても・・・ 「そもそもどうして今日ここに来たんだ。」 気になっていた質問をぶつけてみた。 ちょっとは心境揺らぐかなと思ったがそうでもなかったのはちょっと残念だ。 「だから今度ここにSOS団で来るって言ったでしょ。その下見に決まってんじゃない。」 眼鏡をちらりと確認。いかん、イライラ値が増えている。 「お前が選んだにしてはいい場所なんじゃないのかここは。」 ハルヒを見る。映し出された数値の変化は俺の思い通りにはいかなかった。 何故? さらに目を細めたその瞬間に俺はハルヒに眼鏡をとられた。 「おい・・!」 「あんたに眼鏡は似合わないわよ。」 ハルヒはなんとも言いがたい表情になっていた。 「勢いにしても酷い言いようだな。」 「あんたが眼鏡をかける時は最低でも勉強する時だけでいいのよ。 こんな綺麗な景色は裸眼で見なきゃダメよ。」 俺にはわかる。これは口実だろう。 なんとなくだが、やっぱり俺の考えていることはハルヒに筒抜けなんだろうと俺は感じた。 「あんた最近、あたしのこと品定めするような目つきで見てない?」 ハルヒは前を見ている、と思う。俺も前を見ていてハルヒの顔がよく見えないからな。 おまけに眼鏡も取られてハルヒの数値もわからないときた。 「丁度あんたが眼鏡を使い始めた時期からよ。なんか目つきがやらしいのよ。 こそこそチラ見してるのばれてないとでも思ったの?」 「思った。」 ハルヒが今どれくらいの数値なのかが気になったが、わかっても無駄なんだろうと俺は思った。 結局俺にあれを上手く使いこなすのは無理なのだろう。 ハルヒのご機嫌メーターは最初を除いて一度だって俺の思い通りにはいかなかったのだからな。 すまんな長門。 ハルヒは顔を伏せて「ほんとに・・バカ・・・」とか呟いている。 俺は困るばかりである。 バカというのはいつもの聞きなれた罵倒だからいいとして、なぜハルヒは黙り込む必要があるのだろうか。 こいつらしくもない。疲れているわけでもなさそうだ。 眼鏡のことで気を悪くしたから?それもそうだがその前から閉鎖空間が出たといらない報告も受けている。最近はどうなのだろうか。 いやまずこの空気をどうにかしないと。空気は読むもんだぜとさっき俺自身で言っただろうに。 でもなんて言えばいいんだ。気まずい空気を一瞬で浄化できる魔法の言葉・・・ 俺に思いつくはずがない。だいたいそんな言葉は存在しない。そういうことにしておこう。 結局どうすることもできず溜息をつこうと思ったのだが、先に隣から溜息が聞こえた。 ハルヒがいつのまにか顔をあげてこっちを見ていた。ちょっと睨みが効いている。 「何考えてんのよ」 第3者から見れば挑発しているような言動のハルヒ。 しかし俺にとってはこの睨みは良い心のスパイスだったりする。 「別に、なーんも。」 いつぞと同じ返し方をしてしまった。多分ハルヒは怒るだろう。 お前のこと考えてた、なんて本当のことを言うわけにもいかないけどな。 「あっそう。あんたの相手するのも疲れたし、もう帰るわよ。」 そう言って俺の手を掴んで立ち上がるハルヒ。 怒ったというよりは呆れたような表情をしている気がして、俺は少し・・・ほんの少し動揺した。 だから俺はハルヒの手を逆に掴んで、もう一度座るように促した。 「せっかくだから太陽が完全に沈むまでいたらどうだ。」 って言ってももうほとんど沈んでいるんだがな。 それでもハルヒは 「しょうがないわね。」 と言ってまた腰を下ろした。手を掴んだままで。 いやこれは俺が掴んでいるのか?もうこの際どうでもいいか。 夕日が沈んだ後も、俺たちはしばらく手を繋いだまま海を見ていた。 軽く会話を交わしながら見た海は何故かは知らんがしばらく忘れそうにもない。 俺達が帰りの車に乗った頃にはもうすっかり暗くなっていた。 どうやらハルヒは俺の家まで送ってくれるようで、なんかムズ痒い気分だ。 「お前さ、最近いろいろと不安になってないか。」 隣で丁寧に運転するハルヒにそれとなく聞いてみる。聞くんなら今日だ、と心のどこかで俺が言ったからな。 「いきなり何よ。あたしが不安になるわけないでしょ。」 そう言うだろうと思ったさ。閉鎖空間を量産しておきながらよく真顔で言えるもんだ。 さっきだって憂鬱モードに入っていたくせに、もしかしたらこういうことを言われた時に返す言葉を用意しているのか。お前は。 俺みたいに。 「進路の事か?SOS団の事か?それとも今日の晩飯か?」 ひょっとしたら俺のことか?なんて心の中で呟いてみる。それはないよな。 そこで信号が都合よく赤になり、ハルヒは車を停止して俺を見て大きく溜息をついた。 「・・・そうね。ここら辺の通りにも結構レストランがあるみたいだし、今度来る時は晩御飯つきがいいわね。 その方が楽しいしね。来週までにここらでいいとこ調べておきなさいよ。キョン。」 「何で俺が」 「わかった?」 ハルヒはこちらを睨んでいる。きっとこの信号はハルヒの思い通りなんだろう。だから、 「・・へいへい、わかりましたよ。」 と俺が返事したとたんに青になるんだよな。 ほら、やっぱり。 ハルヒが俺の話をうまくかわしたとに気づいた時は俺の家が見えていた頃だった。 なんだかこのまま帰ってはいけない気がしてならない。 車がゆるやかに停止する。何故俺はこんなに不安になってるんだ。 「着いたわよ。運賃は取らないでおいてあげるから感謝しなさい。」 「何で無免許運転の共犯にさせられた俺が感謝しなきゃいけないんだ。」 「ごちゃごちゃ言わないの。じゃあね、明日遅刻しないでよ。」 そう言ってハルヒは手を振った。しかし車を降りようとドアに手を掛けたところでもう一声がかけられた。 「それと、あんたも早く免許とりなさいよ。」 暗くてハルヒの表情がよくわからない。 それでも、俺はこの一言にかなりの意味が込められているのではないかと思った。 いや、そうに違いない・・・ こちらをちらちらと見ているハルヒに俺は語りかけた。 「ああ、必ずとるから、それまで待っててくれないか。」 今日も借りができちまったからな。 「何それ。あと何年待てばいいのよ。」 お前はそんな笑い方もできるのかよ。こんな時に限ってそれは反則だ。 「さぁな、近いうち・・・かな。」 そういえば俺は何の話をしていたんだっけ 「ちゃんと保障してくれなきゃダメよ。」 そして俺は何をしようとしている。止まらないんだが。 ドアを開けようとしていた筈の手はハルヒの手に添えられ、俺は顔を近づけて・・・。ってマジか。 男のエスだがイドだかってのはこういう時に働くものなのかね。 これじゃまるで安いドラマの1シーンみたいじゃないか。 手の甲に接吻なんて柄じゃない筈なのにな。 ・・・ハルヒは黙ってしまった。 今頃湧いてきた羞恥心を必死に押さえつける。 保障印としては上出来だろう?なんて言葉が喉まで上がってきてはそのまま落下していった。 車のエンジン音が唸り続ける中で、やっとハルヒの声が耳に届いた。 「・・・待ってあげるから。」 俺はハルヒと恋人関係にない。間違ってもそうなるはずがない。 そうなる必要がないからだ。俺はそう思っていたし、ハルヒもそうだと思い込んでいた。 互いに分かり合いすぎた。時間を共有し過ぎた。 鈍感だと言われるたびに心の中で”鈍感なフリをしているだけだ”と不満を言っていた。 ハルヒの気持ちも、俺が惹かれていく先もわかっていたからだ。 でもここへきて、進路を考える時期になってハルヒが不安になっていた事に俺は気が付かなかった。 あいつが俺にわからないように隠していたとしても、気が付かなかった時点で結局俺は鈍感なのだ。 「免許、明日までに取るから。」 「勝手にしなさい。」 何かが割れる音が響いた。 そのときの俺は全く気が付かなかったらしい。 俺はハルヒが帰った後も、格好いい口説き文句をずっと考えていた。 あれから数日経った。 文芸部室ことSOS団の部室。 俺はしばらく考えた結果長門に眼鏡を返すことにした。 普通に眼鏡として使っても良かったのだがどうも気が進まない。 あの日家に帰った後机の引き出しに入れたままのご機嫌測定値だったが、今日になってやっと処分を決めたというわけだ。 ところが一つ問題が発生してしまった。 今日の朝になるまで気が付かなかったのかが悔やまれる。 「長門、眼鏡貸してくれてありがとうな。結局俺には使いこなせなかったよ。」 「そう」 「というより、必要なかったんだ。それに気づいただけでも十分だった。」 「・・・」 「で、眼鏡なんだが・・・その・・・壊れちまった。すまん。」 朝、ケースの違和感に気づいて開けてみたら見事に割れていた。 記憶を手繰り寄せて考えてみればすぐ分かるが、割れたのはあの時しかない。 「別にいい」 長門はそう言って俺から眼鏡を受け取った。俺は思わずまた謝ろうと頭を下げたが長門は 「大丈夫」 と言って例の高速呪文を唱えた。 薄々分かっていたが壊れた眼鏡を直すことなんて長門にとっては朝飯前なんだろうな。 「もう一度 使う?」 そう言って眼鏡を差し出してくる長門。 俺は断ろうかと思ったのだが長門の表情を見て踏みとどまった。 冗談をいう時の表情とはまた違う。俺が断るのをわかっていて聞いてる ・・って取っても大丈夫なんじゃないかと思わせる些細な視線。なにかを理解しているのは間違いなさそうだ。 なのでここはあえて乗ってみることにしよう。 「そうだな。もう一度だけ使わせてもらおうかな。」 長門は「そう」と言っただけだった。 俺はとりあえずかけてみようと思い、スイッチを入れて顔の高さまで持ってきたところで ばーん と勢い良く部室の扉が開いた。団長様がおいでなすったようだ。 途中で見つけたんだろうか、朝比奈さんも連れている。 いつものようにハルヒは団長席に座り朝比奈さんにお茶をせがむ。 俺はそのまま外に出ようとしたところでハルヒに呼び止められた。 「その眼鏡は何?」 「前のは度が合わなかったんでな。長門に頼んで新しいのを譲ってもらった。」 「ふーん、そう。」 本音を言えば数値が気になるから眼鏡をかけたい・・・が、やっぱりここは引くべきだろう。 「俺に眼鏡はお気に召さないんだっけ?」 「別にもういいわよ・・・」 やっぱりお気に召さなかったらしい。 いかんな。また古泉に苦労をさせてしまいそうだ。 いや、古泉がどうとかは関係ないんだ。 俺自身が・・・ 「ちょ・・っと・・・・。・・っ・・・ 何すんのよバカッ!」 椅子が派手な音をたてて俺は床に転げてしまった。 なんだよ。ちょっとキスしてやろうと思っただけなのに。 「そういう問題じゃないのよ!煩悩!ヘンタイ!」 なんか知らんがここ数日そういう衝動が襲ってくるのだよ。すまんね・・・ ああ、いかん。結構怒ってるな・・・ 俺はどさくさに紛れて眼鏡をかけることにした。 ところが・・・ 「おい・・・眼鏡、また壊れてるぞ。」 眼鏡は綺麗にヒビが入っていた。机の上にあったので俺が倒れこんだ時のものではない。 ちょっと考えれば理由はすぐに察せるな。長門もこうなるのがわかってたんだろう。 まったく、ハルヒは幸せもんだぜ。 そんな奴の想い人になっちまった俺もな。 「あんたに主導権を渡すのはまだ早いんだから!」 ああ、そりゃまだ仮免ということか。 こうして結局俺は免許をとりきっていない。 それが生涯続いたとしても俺はこんなに心地よい気分なのだろうか。 ---end---
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/813.html
ハルヒ「いやっほー!!!みくるちゃん、行くわよー!」 みくる「あ、はーい」 古泉「この暑さだと言うのに元気ですね、涼宮さんは」 キョン「お前は泳がないのか?」 古泉「自分はちょっと準備しなければいけないので失礼」 古泉は微笑みながら海の家に向かって歩き出した 俺はビーチパラソルの下で本を読んでいる長門を見た つーか、わざわざ海まで来て読書なんだ? まぁ、海に来たからって泳がないと妖怪・わかめ野郎に襲われるって訳じゃないんだし・・・ 長門「・・・・・」 キョン「泳がないのか?」 長門「・・・・・あとで」 キョン「そうか・・・俺もそろそろ行くか」 俺は海に向かって歩き出した と、急な話だが我がSOS団は海に来たのである 話は3日前になる …………… ………… ……… …… … ハルヒ「急だけど3日後に海に行くわよ!」 いつもの喫茶店でハルヒは言った 今日はパトロールと緊急ミーティングの為、全員喫茶店にいるのだ ハルヒは本当に急なことを言い出すから困る 俺は自然に溜息をついた 古泉はアメリカ人みたいなお手上げのポーズをしている 朝比奈さんは目が点になっている 長門は・・・いつもどうりだな 誰もハルヒに質問しないから俺は仕方がなく聞いた キョン「何故だ?」 ハルヒ「特に理由なんて無いわよ」 キョン「海なら行っただろ?あの孤島で泳いだりしたじゃないか」 ハルヒ「あら、海に2回行ったらいけないって法律でもあるわけ?」 確かに、そんな法律なんてない もし、あったとしたら日本の偉い人はなにやってんだと思う ハルヒは本当に理由など無く、SOS団で海に行きたいだけなのだ キョン「まて、皆の予定とかあるだろ?」 古泉「その日なら僕は空いていますよ」 みくる「あ、あの~、私も大丈夫ですよ」 長門「・・・・・コクリ」 ハルヒ「決定!3日後に行くわよ!」 ちょっと待て、俺の事情とかは無視か? ハルヒ「どうせ暇でしょ?」 まぁ、その日は何もすることが無いので暇だ ハルヒ「車は従兄弟のおじさんが出してくれるからそこらへんは大丈夫よ!」 みくる「も、もし良かったら、お弁当でも作ってきましょうか?」 ハルヒ「さっすがみくるちゃん!気が利くね!」 朝比奈さんがお弁当を作ってくれるなんてこんなレアなイベントは無いぞ 古泉「僕はビーチパラソルとか色々持ってきましょう」 長門「・・・・・ビニールシート」 ハルヒ「うんうん、流石SOS団ね!」 海に行くことが決定し、緊急ミーティングは終った そして、いつものくじ引きをしてパトロール 赤い印が付いている爪楊枝を引いたのは 俺、古泉、長門 そして無印の爪楊枝を引いたのは ハルヒ、朝比奈さんだ キョン「お前の仕業じゃないのか?」 古泉「今回は僕の仕業じゃないですよ ただ単に皆で海に行きたいだけじゃないですか?」 なんだ、てっきり機関のヤツが協力しているのかと思った 古泉「最近では閉鎖空間の数も減りましたし、そんな事をする必要が無いのですよ」 古泉は微笑みながら言った 結局、何も不思議なことが無いままパトロールは終わった ハルヒ「今日は解散!集合時間とかはメールでするからね」 古泉「じゃ、これで」 みくる「さようなら~」 長門「・・・・・フリフリ」(手を振っている) 俺は自転車置き場に行き、家に帰った 帰り道に妹にバレないようするにはどうすればいいのかと考えていた ―――そして3日後――― ハルヒ「遅いじゃない!もう9時15分よ!」 集合時間の9時30分には間に合ってるからいいじゃないか てか、なんで皆こんなに早いのか? もしかして、メールで早めに来るように連絡しあっているのか?・・・まさかな ハルヒ「キョン!海の家で皆にジュース奢りなさいよ」 キョン「わかったよ」 いつもの事だからなれた・・・ってなれていいのか? 自問自答しならがハルヒの従兄弟のおじさんの車に乗った …………… ………… ……… …… … そして今に至るのだ ハルヒ「ちょっとキョン!遅いじゃない!」 ハルヒと朝比奈さんはビーチボールで遊んでいた みくる「はぁい、キョン君」 ポーンッと朝比奈さんからのパス・・・ハルヒが居なければ周りから見るとカップルに見えてるだろうに とボールを取ろうとした瞬間 ハルヒ「隙あり!」 キョン「うぉあっ」 ザッバーン あれだ、海に行ったらお約束と言ってもいいのか? キョン「な、何しやがるっ!」 ハルヒ「隙を見せたあんたが悪いのよ!」 技名は知らんがハルヒは急に俺を投げたのだ おかげで海水飲んじまったじゃねぇか 俺とハルヒが言い争っている間に朝比奈さんが みくる「あ、あれって・・・」 キョン「・・・・・ん?」 俺は目を細め、朝比奈さんが見ている方向に目をやった まぁ、アレだ、まさか本当にこんな状況があるなんて考えもしなかった ハルヒ「さ、サメよ!!!」 ジョーズだか何だけ知らないがサメ注意報など聞いていないぞ 俺と朝比奈さんとハルヒは猛ダッシュで逃げようとしたその時 みくる「あうぅ~」(ピシッ) どうやら足を攣ったらしい キョン「あ、朝比奈さん!!!」 みくる「ふ、ふぇえ~ん」 誰もがダメだと思ったその時 ザッバーン 古泉「あれ?驚きました?」 サメの正体は古泉だったのだ 古泉「まさか、こんなに驚くとは思いませんでしたよ」 サメに変装・・・とは言っても背びれとか着けてるだけなんだけどな ハルヒ「ちょ・・・古泉君!?び、ビックリしたじゃない!」 みくる「もう・・・ヒック・・・ダメかと思いました・・・ヒック」 キョン「大丈夫ですか?」 と、俺はすぐに朝比奈さんに駆け寄った 古泉め、朝比奈さんを泣かした代償は大きいぞ ハルヒ「古泉君!バツとして皆に焼きトウモロコシ奢りなさいよ!」 古泉「そこらへんは覚悟していましたよ」 そこらへんも計算していたんだな ハルヒ「ん・・・そろそろお昼の時間ね」 なんで分かるのかは置いといて・・・いいのか? 俺達は長門が居るビーチパラソルに戻り、朝比奈さんが作った弁当を食べる事にした みくる「あんまり自信ないですけど・・・」 いやいや、何言ってるんですか 例え、塩と片栗粉を間違えたオニギリでも美味しいに決まっていますよ ハルヒ「いっただっきまーす」 キョン「いただきます!」 長門「・・・・・いただきます」 みくる(ドキドキ) 俺は可愛らしいタコさんウィンナーを食べた 見た目は普通だが味は格別 フランス人が食べたらきっと腰を抜かすだろうと思うぐらいに美味い、美味すぎる キョン「とても美味しいですよ」 みくる「キョン君、ありがとう」 朝比奈さんは見るものすべてを悩殺する位の笑顔で俺に言った 死ぬ前に食べたい物は? と聞かれたら即答で答えるね 朝比奈さんが作った弁当だと しばらくして、古泉が焼きトウモロコシを持って来た 古泉「あ、ズルイですよ 先に食べるなんて」 みくる「ご苦労様です、お茶飲みますか?」 古泉「ありがとうございます」 憎い、憎いぜ古泉・・・ ハルヒ「本当に美味しいわよ、みくるちゃん」 みくる「ふふ・・・ありがとう」 長門「・・・・・」 こいつは無表情でパクパクと食べている・・・こいつには味覚とかあるのかと考えてみたがやっぱりやめる 楽しい会話もしながら俺達は昼飯を食べた ハルヒ「さ、ジャンケンよ!負けた人がアイス買ってきてね」 みくる「ま、負けませんよ~」 古泉「じゃ、僕はグーを出しますね」 長門「・・・・・コクリ」 キョン(嫌な予感がするぜ・・・) ハルヒ「じゃーんっけーん」 全員「ホイッ!」 ……… …… … 結果は俺の負け・・・まぁ、予測していたがな 俺は海の家に向かって歩いていると後ろから ハルヒ「ちょっと待ちなさいよ」 ハルヒが小走りで来た 何故だ? ハルヒ「あんたが何味を選んでくるのかが心配だったのよ」 おいおい、俺のセンスが悪いみたいな言い方だな 少しばかり歩いて、海の家に到着 ハルヒ「おじさーん、オレンジ3つとミルク2つね」 おじさん「まいど! おや、お二人お似合いだね」(ニヤニヤ) 冗談でもやめてくれ・・・と思いたいのだが、何故か満更でもなかった ハルヒ「何ニヤニヤしてんのよ」 キョン「そう言うお前も顔真っ赤だぞ?」 ハルヒ「ち、違うわよ! ひ、日焼けよ、そう、日焼けよ!」 変に強調すると逆に怪しいぞ ハルヒ「さ、戻るわよ」 ハルヒはアイスを受け取り先に歩いた なんだ、コレがツンデレってヤツなのか? キョン「お、おい ちょっと待てよ」 俺が行こうとした瞬間 おじさん「ま、頑張るんだよ」(ニヤニヤ) 俺は無視してハルヒを追った ハルヒ「はい、みくるちゃん、ユキ」 ハルヒはオレンジ味のアイスを渡した キョン「ほれ、古泉」 古泉「どうもすみませんね・・・ところで涼宮さんと何かありました?」 キョン「・・・なぜわかる?」 古泉「おや? 冗談で言ったつもりなんですが・・・」 しまった、墓穴掘ってしまった キョン「おい、アイス返せ」 古泉「食べかけですがいいのですか?」 俺は溜息をついた 古泉「ふふ・・・涼宮さんを見ていれば分かりますよ」 お前はハルヒの何なんだ? 古泉「ま、とりあえず頑張ってください」 何をだ ドイツもコイツもまったく・・・ ハルヒ「さて、休憩もしたところだし皆で泳ぐわよ!」 長門も泳ぐ気になったのか、本を閉じて皆とビーチボールで遊んでいる 古泉「いきますよ、朝比奈さん」 みくる「あ、はい」 古泉「そーっれ!」 古泉の投げたボールそこそこ早い やらせるか! キョン「とぁーっ!」 俺が飛び込み、朝比奈さんをかばおうとしたその時 古泉「マッガーレ」 ハルヒ・キョン「すごっ!」 なんと古泉が投げたボールが曲がったのだ その曲がったボールは長門に向かって行った が、長門は何も変わりなくキャッチ 流石だぜ長門 ハルヒ「古泉君!どうやったの?ぜひ教えてほしいわ」 何故か古泉は俺に向かってウィンクした 気色悪いぜ キョン「長門大丈夫か?」 長門「平気」 キョン「だろうな・・・」 長門「彼の行動は予測できた」 キョン「何故だ?」 長門「・・・・・・・・秘密」 古泉とはいったいどんな関係なんだ? と考えていたその時、ボールが俺の顔面に飛んできた ハルヒ「今のが戦場だったらあんた死んでいたわよ!」 ありえん、絶対にありえん もしあったとしても曲がり角を曲がったらパンを銜えた少女が・・・(以下略 とりあえず、それぐらいここが戦場だと言う確立は極めて低いのだ キョン「やれやれ・・・」 時間はあっという間にすぎ、もう夕方だ 楽しい時間は早く感じ、嫌な時間は遅く感じることをしみじみ思った ハルヒ「キョン、そっち持って」 ハルヒはビニールシートを片付けていた 古泉「結構焼けましたが・・・どうです、似合ってますか?」 俺は華麗に無視し、ハルヒを手伝った ハルヒ「さて、荷物も片付いたことだし・・・みくるちゃん、夏と言ったら何?」 みくる「え、あ、う、うーん・・・スイカですか?」 ハルヒ「スイカもいいけど、やっぱり花火でしょ!」 ハルヒはバックから花火セットを出した あらかじめ準備していたみたいだな 古泉「お、花火ですか いいですね」 キョン「おい、長門 花火やったことあるか?」 長門「・・・ない」 キョン「そうか、結構楽しいぞ」 長門「・・・そう」 なんだか長門の目が輝いて見えたのは気のせいか、気のせいではないのか ビーチパラソルやら色んな物を片付けているうちに日が落ちてもう夜だ ハルヒ「じゃ、花火するわよ!」 長門「・・・」 長門は花火をじぃっと見てる キョン「これに火を点けるんだよ」 長門「わかった」 長門は線香花火に火を点けてじぃっと見ている 古泉「花火に興味があるようですね、長門さん」 キョン「長門だってそれぐらいあるだろ」 古泉「そうですね」 当たり前だ 長門だって好奇心とかあるだろ ハルヒ「ちょっとキョン、古泉君!これ持って!」 ハルヒは両手に花火を持ってはしゃぎながら言った キョン「やけにハイテンションだな」 古泉「純粋に楽しいからじゃないですか?」 みくる「本当に嬉しそうですね」 未来には花火なんてあるんですか? みくる「ふふ、言うと思いますか?」 朝比奈さんは指を唇に当てて言った ぶっちゃけ可愛いです ハルヒ「コラーッ!キョン、デレデレしないでさっさと来なさーい!」 俺は仕方がなく歩いていった 正直足が痛い ちょっと遊びすぎたか しばらく皆で花火で遊んだ ハルヒはねずみ花火を俺に向かって投げてくるし 長門は線香花火を見ているだけだし 古泉は俺を見てみぬフリ 朝比奈さんはオロオロしている シュルルル... パン! キョン「うぉあ!」 ハルヒはケラケラ笑っている キョン「ちょ、ちょっとノドが渇いたからジュース買ってくる」 ねずみ花火から逃げていたからノドがカラカラだ ハルヒ「あ、私も行く 皆何か飲む?」 古泉「お任せします」 みくる「あ、私もお任せします」 長門「・・・・・」 何だ、ハルヒが奢ってやるのか? ハルヒ「あんたが奢るのよ」 俺は財布と相談したが・・・大丈夫だ 俺達が花火しているところから自動販売機まで少し距離がある 100mぐらい歩いた時だった ハルヒ「ねぇ、楽しかった?」 キョン「あぁ、普通に楽しかったぜ 水着とか見れたしな」 ハルヒ「へ、変態」 俺だって健全な男だ ハルヒ「で・・・どうだったのよ?」 キョン「ん、何がだ?」 ハルヒ「・・・ずぎ・・・」 キョン「はっきり言わんと聞こえんぞ?」 ハルヒ「・・・・・水着似合ってた?」 キョン「あぁ、最高に似合っていたぞ ナンパされないのが不思議だ」 我ながら何言ってんだ 事実だけどな ハルヒ「ば、バカ・・・」 しばらく沈黙が流れ、自動販売機に到着し、適当にジュースを買った キョン「おい、持ってやるからジュース渡せ」 ハルヒ「べ、別に大丈夫よ!」 ハルヒは何故かムキになって全部持っている キョン「無理すんなって」 ハルヒ「大丈夫だって言ってるでしょ!」 キョン「お、おい!」 俺はハルヒの方に手を置き、振り向かせた カランカラン... ハルヒが持っているジュースが落ち、目が合う ハルヒ「・・・・・」 キョン「・・・・・」 鼓動が徐々に早くなっていく・・・ 心臓の音と波の音しか聞こえない ドクン...ドクン...ドクン... ハルヒの顔が真っ赤になっている 多分、俺も真っ赤だな ハルヒ「きょ、キョン・・・」 キョン「・・・・・な、何だ」 変な汗が出ているのが分かる ハルヒ「じ、実は・・・」 こ、この状況は何なんだ? もしかして・・・ ハルヒ「私・・・キョンの事が・・・・」 その時だった 大砲を撃った様な音が聞こえた ヒュ~・・・ドーン! 打ち上げ花火だ 近くの公園でやっているらしい ハルヒ「わぁ~ キレイ・・・」 俺とハルヒはしばらく打ち上げ花火を見ていた ハルヒはまるで、カレーに肉を入れ忘れていていたかのように ハルヒ「あ、ジュース忘れていたわ! い、急ぐわよ、キョン!」 ハルヒは慌ててジュースを拾い 走って行った 結局ハルヒは何が言いたかったんだろう・・・ まさか・・・な 俺はハルヒを追いかけるように走った 古泉「また何かありましたか?」 キョン「・・・何もねーよ」 古泉「ふふ、そうですか」 コイツ分かっているな ムカツク野郎だ キョン「長門、花火はどうだった?」 長門「・・・ユニーク」 どうやら長門は花火に興味をもったらしいな 長門「・・・・・またやりたい」 そうか、やりたかったらいつでも言え 協力してやるぜ ハルヒ「車が来たから帰るわよー!」 ハルヒの従兄弟のおじさんの車が来たようだ ハルヒ「早く来ないと置いて行っちゃうわよー!」 はいはい、今すぐ行きますよ 俺は急いで車に向かった そうだ、ハルヒ 今度来るときはカメラでも持っていこうぜ あと、鶴屋さん、谷口、国木田とか誘って行こうぜ 大勢で行った方が楽しいだろ? おまけで妹とシャミセンも連れて行ってもいいぜ それと、あの時、何を言おうとしたか ちゃんと言ってくれよ 俺は車から見える夜景を見ながらそう思った ~ Fin ~
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/6533.html
涼宮ハルヒの遡及Ⅹ 迫りくる怪鳥の群れを捉えて俺は愕然としている。 いや俺だけじゃなくて、長門とアクリルさんを除く全員がだ。 ざっとした数を予想すれば……見えてるだけでも千できくのか……暗黒の空の下、向こうの風景がまったく見えんぜ……あの大軍を相手にして三十分だと……? 暗澹なんて言葉じゃ生温い。絶望と言う言葉はこんな時に使うものなんだろう、ということを実感させられる。 なんせ、さっきのハルヒの大技が使えないからな。なぜなら朝比奈さんはエネルギーチャージのために戦線に参加できないからだ。 「古泉一樹」 「何ですか?」 「あなたは彼と涼宮ハルヒと朝比奈みくるの護衛を。その赤いエネルギーがシールドの役割を果たすはず。迎撃はわたしと彼女が受け持つ」 「了解しました。ご武運を――」 振り向くことなく指示を出す長門に頷く古泉。 「す、涼宮さん!」 次に声を発したのは、やや涙声ではあったが意を決した感がある朝比奈さんだ。 「えっと、ミクルミサイルってどうやれば発射されるんですかっ?」 そうか、確かにそれはハルヒにしか分からない。どうやら朝比奈さんは自分に内蔵されている兵器を受け入れることにしたようだ。 「そ、それは……」 まさか考えてない、なんて言わないだろうな? 「違うわよ! もちろん考えてはいたわ! でも本当に発射されるの!?」 「発射されなきゃ俺たちは全滅だ。だが長門もさくらさんも俺も古泉も朝比奈さんも発射されると信じてる」 「キョン? 何で……?」 どうしてそんなことを聞く必要がある? んなもん答えは分かり切ったことなんだぜ。 俺はハルヒの手をぐっと握り、真剣な眼差しでハルヒの大きな瞳の奥を見つめた。 「みんな、お前を信じてるからだよ。現に超級グレートカイザーイナヅマジャイアントSOSアタックは発動した。ならお前が信じているならミクルミサイルも発動する」 「キョン……」 ハルヒがわずかにうつむき、俺たちはそんなハルヒの次の句を待っている。 「分かったわ……」 待ったのは刹那のような永遠の時間。 ハルヒが静かに呟き、そして次の瞬間、 「みくるちゃん! ミクルミサイルの発射ポーズを教えるわよ!」 大声を張り上げると同時にハルヒの瞳には先ほどまでの困惑の色は消え失せ、いつもの勝ち気いっぱいの300W増しの輝きが戻っていた。 そして、それが怪鳥の大群と長門、アクリルさんペアとの戦闘開始の合図でもあったのである。 俺たちを守る古泉の赤いエネルギー球を猛烈な衝撃が襲い続けてくる。 ハルヒは朝比奈さんを、俺は二人を守る形で抱きしめ、ただひたすら朝比奈さんのミサイル充電が終わるのを待っている。 その朝比奈さんは両膝をそろえて膝で立ち、胸のところで腕を十文字に組み瞳を伏せ、ただただ集中しているようである。 もし片膝を立てたポーズでは中身が見えてしまうから、なんて思ったなら大間違いだ。おそらくそんなことは朝比奈さんは勿論、俺も含めた全員が意識しちゃいない。はっきり言ってしまえば今この場面ではどうでもいい。 古泉もまたエネルギー球を消すまいと瞳を伏せ、精神を集中させている。 その外側では―― 「ライツオブグローリー!」 「……」 アクリルさんと長門が大軍をものともせず、とまでは言わないが、四方八方から襲ってくる怪鳥の突撃をかわし、しかし攻撃もしている。 アクリルさんからは目が眩むばかりのほとんどバズーカー砲と言っていいような眩く輝く光線が放たれ、長門からはスターリングインフェルノを振るうたびに説明のしようがない魔力が怪鳥を飲み込んでいる。 数はわずかながら減ってはいるようだが、それでも減っている内には入らないだろう。 「まずいですね……朝比奈さんの充電が間に合うかどうか、というところでしょうか……」 間に合わない、というよりはマシな言い回しだな古泉。 「クールドラグーン!」 今度はアクリルさんが連射可能の、氷の銛を連続で打ち出し、長門は相変わらず無表情で無言のまま、竜巻の刃を発生させている。 「堪えてくれよ古泉……それと何もできなくてスマン……」 「ふふっ、もちろんご期待に添えるよう努力しますよ。僕としてもかけがえのない大切な仲間を失いたくありませんので」 「古泉くん……」 ハルヒが珍しくか細い声を漏らしている。 …… …… …… なんだろうな、この感覚。前に味わった感覚と似てないか…… 俺とハルヒは歯がゆくもただ見ているしかできず、周りに頼りっぱなしで自己嫌悪に陥りそうになった……そう……蒼葉さんと初めて出会ったあの時と…… 俺は思わず思いっきりかぶりを振った。 「どうされました?」 「何でもない……本当にすまない古泉……」 「本当にどうされたんですか? 心配いりませんよ。僕は必ずあなた方を守り通します」 さわやかな笑顔を向けてくるんだが、その頬から滴る汗がお前の状況を知らせているんだよ。 くそ……何か、俺にも何かできることがないのか…… 「キョン! 痛いって!」 「あ……スマン……」 どうやらいつの間にか俺はハルヒを抱きしめる腕に力を入れ過ぎていたらしい。 「あんた……あの時と同じことを考えたでしょ……」 「ハルヒ?」 「だって、あたしも同じだもん……ただ見ているだけしかできなかったあの時……結局、あたしたちは蒼葉さんの手助けをできなかった……」 重く黙り込む俺とハルヒ。 そんな俺たちの耳が捉えたのはアクリルさんのとある言葉だ。 「ナガトさん、確かあなたの設定は悪の『魔法使い』、だったわよね?」 「そう」 ふと見れば、二人が背中合わせで宙を佇んでいて、気が付けば怪鳥たちが攻撃の隙を窺うべく、俺たちを取り囲んで膠着状態にあった。 どうやら長門とアクリルさんの想像以上の力に闇雲に攻撃しても無駄だと悟ったようだ。 「じゃあさ、さっき、あたしが撃ったライツオブグローリーかアルゲイルフォルスをコピーできない? なんか途中から見覚えのある魔法ばっかりだったし、アレってあたしのをコピーしたんだよね?」 「インプット済み。なぜなら魔法使いの設定を持つわたしにとってあなたは最高の模範。途中から、わたしは残された自身の力を魔法のプログラミング化に専念させていた。よって少なくともあなたが使用した魔法であれば使うことが可能、今は攻撃手段としても用いている。故に発動までにやや間が開いている。それは発動キーワードを呟いているため」 「魔法のプログラミング化って……んなことできるのはあたしたちの世界だと世紀の大天才魔工科学者・蒼葉だけよ……とんでもない話ね……って、ということはあなた自身の力は完全に尽きてしまったってこと?」 なんだと!? 「そう。しかし、あなたのおかげで『魔法』を駆使できるため戦闘に支障はない。ところでわたしにとってはアオバなる人物の方が信じられない。魔法、言い換えて意図的に超常現象を発生させる力のプログラミング化は人という有機生命体の器量をはるかに超える技術。それをできるとは考えられない」 「そうなの? あたしはそんなに深く考えたこと無かったし、蒼葉ならそれくらいやりそうなもんだと思ってた節があったから気にしてなかったけど。でもまあいいわ。それよりも、ちょっとした提案があるんだけどいい?」 「了解した」 ふぅ……アクリルさんと長門の様子を見れば、長門はなんとかなるようだ。本気で怖くなったぞ。 おっと、この場合の『怖くなった』は俺たちの危機が増大したからってことじゃない。長門の身が危うくなったことに対してだ。なんせあの雪山の一件があるからな。 「あたしはアルゲイルフォルスを使う。あなたはライツオブグローリーを。んで呪文の詠唱の最後の一句だけどあたしと合わせてこう言って」 ……? アクリルさんが何かを長門に伝えているのだが、はっきり言って俺には理解不能の言葉だった。 ひょっとして、カオスワーズってやつか? 「理解した」 「ん! なら行くわよ! これならこいつらでも半分は吹っ飛ばせるはず!」 ……なんだと!? この数の半分を吹き飛ばせる魔法……!? などと驚嘆している俺の眼前では、アクリルさんが烈火のオーラを、長門が黄金色のオーラを立ち昇らせている。 そして、まるで合わせ鏡のように二人同時に振りかぶり…… って! この魔法は! 『グレイトフルサンライズフェニックス!』 アクリルさんと、そして長門がハモって声を荒げると同時に二人から目が眩むばかりの強烈な光を放つ、そうだ! あの不死鳥が飛び立ったんだ! つか、長門が何でその魔法の名前を知ってるんだ!? 金色の不死鳥の羽ばたきが一瞬にして怪鳥の大群をなぎ払っていく! だが待て! あの魔法は……! 脳裏に浮かんだのは蒼葉さんが力尽きて崩れたあのシーンだ。絶対に忘れるわけにはいかない俺とハルヒの大罪…… 「ふぅ……どうやら楽になったわね。半分以上いなくなったわよ」 「確かに」 が、アクリルさんと長門のあっけらかんとした声が聞こえてきたのでどこかホッとした。 「よかった……もう、二度とあんなことは繰り返したくなかったもんね……」 ハルヒも安堵のため息をついてやがるぜ。そりゃそうだ。俺たちの考えたことは同じだ。 「そう言えば、ナガトさんはどうして今の魔法の名前、知ってたの? あれって蒼葉が考えた名前なんだけど、確か、ナガトさんは蒼葉に直接会ったことないんだよね?」 なんか場違いな会話だ。 しかしまあ、今の魔法の破壊力のおかげで怪鳥がさらに躊躇したからな。 「わたしは前にアオバなる人物がこの魔法を使ったところを目撃してる。だから知っていた」 あ……そういや長門は見てたんだったな……なるほど……そういうことか…… 「ふうん。凄いわね。異世界が視えるなんて。どんな目を持ってたら視えるのかしら。あたしはただひたすら蒼葉のことを祈るしかなかったんだけど」 「世界の連結が断たれていなかったから」 「ああ、そういうこと」 って、分かるんですか!? 今の説明で!? 「うん。でもまあ言葉にしにくいから詳細は省くけどね。それよりもナガトさん、もう一発いける?」 「問題ない」 などと物騒な会話を交わし、再びアクリルさんと長門が生み出した光の不死鳥は残りの怪鳥を壊滅させるのだった。 涼宮ハルヒの遡及ⅩⅠ