約 258,869 件
https://w.atwiki.jp/sosclannad9676/pages/16.html
涼宮ハルヒの憂鬱とは著者「谷川 流」による非日常学園コエディという認識が一般的である。 角川スニーカー文庫より、2003年6月から刊行された。イラスト担当はいとうのいぢ。 涼宮ハルヒが設立した学校非公式クラブSOS団のメンバーを中心に展開する、「ビミョーに非日常系学園ストーリー」であり、物語は、主人公である男子高校生キョンの視点から一人称形式で進行。 『涼宮ハルヒの憂鬱』は第8回スニーカー大賞を受賞している。その後、一部加筆訂正され、書店に並んだ。 2005年9月にはツガノガクによる漫画版が『月刊少年エース』にて連載開始。2006年4月よりテレビアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』が独立UHF局をはじめとする各局で放送された。2009年4月よりテレビアニメが2006年版の回に新作を加えて放送された。劇場版アニメーション映画『涼宮ハルヒの消失』は2010年2月6日より公開された。 全9巻におよび、刊行されており、1巻 憂鬱、2巻 溜息、3巻 退屈、4巻 消失、5巻 暴走、6巻 動揺、7巻 陰謀、8巻 憤慨、9巻 分裂、10巻 驚愕(前)11巻 驚愕(後)の順でタイトルが微妙に異なる。 長らく、発売延期(未定)となっていた驚愕は、2011年5月25日に2冊同時発売される。・・・予定である。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/3419.html
「・・・・・・・・・・なんでよ?あたしのこと嫌いなの?」 ハルヒが泣いている・・・・いつもの笑顔からは想像も出来ない泣き顔 俺はハルヒを悲しませてしまったのか、あの太陽のような笑顔を守ってやれないのか 「そんなことない!好きだ!・・・・でも今は・・・・・・」 俺がハルヒと付き合い始めてから早1ヶ月。変わったことと言えば毎日一緒に登校してるってことと、日曜日の勉強会が午前になって午後からはデートになったってことぐらいだ ・・・・・・そうそう、どうでもいいことかもしれんが俺にはうれしい変化がもう1つあった。ハルヒのポニーテール仕様率の異常なまでの上昇だ。髪をバッサリ切ってしまう前のポニーの長さには到底届かない、言うなればチョンマゲのようなポニーだが、そこがまた可愛い!抱きしめたくなる衝動に駆られるね、正直言って・・・・・・・俺って変態だな 「・・・・・・・って有希は言うんだけど、みくるちゃんはね・・・・・ってあんた聞いてるの?」 「ん?あぁ聞いてるぞ。で朝比奈さんは何て言ったんだ?」 「なんだ、聞いてたんだ。間抜けな顔してたから回想にでも浸ってたのかと思ったわ」 するどいな・・・・・やっぱり心が読めるんじゃないか? 「なんだかんだ言ってもキョンはあたしの話を聞いててくれるから大好きよ!」 コラ!登校中にそんな大声で「大好き」発言するんじゃありません・・・・・・はぁ、周りの目が痛いぞ 「別にいいじゃない、付き合ってることなんて皆知ってるんだから」 ハルヒのとんでもパワーは今でも健在。古泉の機関の推測である、俺と付き合えば力も消えるってのは大外れで長門曰く増大したそうだ。その証拠がこの「皆知ってるんだから」である 話は遡ること1ヶ月前・・・・・・ 「よう!キョン・・・・・お、嫁も一緒か」 空気の読めない男No.1(俺予想)の谷口・・・・・うわぁ、ハルヒがトマトだ 「だだだだだだだ誰が誰の嫁よ!ぶっ殺すわよ」 言ってることは連続殺人鬼並なのに顔がニヤケてますよ 「いて!蹴るこたぁないだろ・・・・・だって付き合ってるんだろ?」 「あれ?谷口。お前、何でそのこと知ってるんだ?俺は誰にも言ってないぞ?・・・・・・ってまさかハルヒ、皆に言いふらしたのか?」 「そんな非人道的なことあたしがすると思う?」 いや、朝比奈さんに強制わいせつしてるが、あれは人道的行為なのか?他にも挙げたらキリがねぇ 「何ブツブツ言ってるのよ!とにかくあたしは、言いふらしたりなんかしてないわ」 「だよな・・・・スマン、ハルヒ。疑ったりして」 「べ、別にあんたが謝る必要なんてないわよ・・・・あたしを好きでいてくれればそれで・・・・」 「・・・・・・・・・・ハルヒ」 「・・・・・・・・・・えぇっと・・・・・・・・俺、先行っていいか?」 谷口は相当イライラしてるみたいなんだが・・・・・正直スマンかった 「いや待て。誰から聞いたんだ?その付き合ってること」 「・・・・・・ん?そういえばそうだな。特定の誰かから聞いたって訳でもねぇし」 「はぁ?誰からも聞いてないのに知ってる?なんじゃそりゃ」 「いやぁ、俺も不思議なんだが自然とそう思ってたよ」 「不思議?!」 あぁ、ハルヒの目が輝いてる・・・・谷口、ご愁傷様 「ちょっと谷口!その話詳しく聞かせなさいよ」 谷口はネクタイを掴まれて・・・・カツアゲされてるみたいで可哀想で助けてやりたいのは山々なんだが確認しとかないとかけないことも出来たしな 「ハルヒ、先行くぞ」 ・・・・・・不思議となれば俺の言葉も耳に入らないのか?まぁ先行くか 「・・・・・ふんふん、なるほどね。キョンはどう思う?ってあれ、キョンは?」 「先行ったみたいだぞ」 「何で言わないのよ!この役立たず!」 「いてー!蹴るなよ・・・・・殴るのもなしだって」 「長門、いるかー」 「・・・・・・・・・・・・・・・何?」 なんか朝は三点リーダーが多いな・・・・・長門も朝は苦手なのかな? しかし、こんな朝早くから団室にいるなんて、流石長門だな 「ちょっと聞きたいことがあるんだが、いいか?」 「・・・・・・・・・・・・・・・いい」 やっぱり機嫌悪くないか?昼休みでもいいんだが・・・・ 「・・・・・・・・・怒ってなどいない・・・・・・・・・早く話して」 やっぱり怒ってねぇ?微妙に目が恐いんだが・・・・・ 「そのことについては情報統合思念体も把握している。涼宮ハルヒの力によるもの」 まぁ、想像はしていたが・・・・・で、何でそうなったんだ 「情報統思念体の見解によると、涼宮ハルヒはあなたと恋愛関係にあることを世間に知られることで、あなたを他の女に取られることを防止したと思われる」 「なるほどね・・・・そんな可愛い一面もあるんだな」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 ・・・・恐いから睨まないでください 「で、なんでそのことを俺に教えてくれなかったんだ?」 「現実、事実を捻じ曲げた情報の書き換えはなく、また時間が経てば現状と同状態になると予測されたため」 「なるほどな・・・・納得したよ。ありがとよ」 「・・・・・・いい」 「・・・・・・でね、そしたら今度は有希が・・・・・って聞いてる?」 「聞いてるって、長門がなんだって?」 「フフフ・・・・・・やっぱりキョンはキョンね」 「どういう意味だ、それ?」 「そのまんまの意味よ!」 ・・・・・・・・わけわからんぞ、それ 俺とハルヒのラブラブっぷりは自分で言うの変だが常軌を逸している そのことが顕著に現れるのは授業中と団活中、それにデート中だ 「・・・・・・・・・」 授業中はずっと後ろから視線を感じる。まぁ後ろからって時点で視線の元はハルヒで間違いないんだが・・・・・それにしてもこの席順、変わらないな 「・・・・・・・・・何見てんだ?」 「キョンの背中って案外大きいのね。頼りになりそうね」 「そうかい、そりゃぁどうも」 授業中だというのに、こんな惚気た会話をしてて、よく自分が恥ずかしくないよな しかし、この学校の教師はどうなってるんだ?これだけハルヒとお喋りしてるっていうのに注意の一つもしてこやしない ・・・・・・もしかして、またトンデモパワーで「ラブラブ遮蔽シールド」とか張ってるんじゃないだろうな・・・・・いや、ハルヒならやりかねん まぁこのくらいは許せる範囲なんだが、やっかいなのが団活中だ 授業中にいちゃいちゃ出来ないのが不満なのか放課後の団活ではその不満を爆発させる 「ねぇ~キョン~・・・・キョン~・・・・・・」 だー!耳元でそんな甘い声で囁くな!!理性よ頑張れ!! 指定席だったデスクトップの置いてある団長席は今はただのパソコン台に成り下がり、ハルヒは俺の隣に座って、俺を弄ったり古泉とのボードゲームを観戦したり俺を弄ったり雑誌を読んだり俺を弄ったりノートパソコンでネットの世界にダイブしたり俺を弄ったり俺を弄ったり・・・・ つまり何だ・・・・・俺の理性を崩壊させたいだけなのかもしれん。こいつの悪戯心にはまいるよ。こんなこと毎日されてたら理性なんてあったもんじゃないぞ まぁデートの様子なんて実況しなくてもわかるだろうし、実況なんてしたくもねぇ いわゆる唯のバカップルってことだ そんなハルヒもバカップルっぷりを唯一振舞わないのが土曜、つまり今日の不思議探索のときだ クジでの組み合わせ決めで、俺はてっきり毎回ハルヒと2人きりになるとばかり思っていたんだがそうではないらしい。きちんと確率論に則った結果が毎回提示される ここぞとばかりにハルヒパワーじゃないのか?こういうところで力を発揮して欲しいね 「大丈夫。わたしがさせない」 ・・・・・・・・・・長門?! ・・・・・・・・・偶然だよな? 偶然なのかハルヒパワーなのか情報操作なのか規定事項かはしらんが今日の午前のペアはハルヒとだった。でも何かが違った。しいていうなら風邪をひいたハルヒってところか?いつもの猪突猛進さがないというか「キョンとね!じゃぁ行くわよ!」と言って手でも引っ張っていくと思ったんだが・・・・・そういえば付き合い始めてからはペアになるの初めてだな なんだかしおらしいハルヒをつれて街中をぶらぶら・・・・傍から見ればただのデートなんだが、いつのまにか例の川沿いを歩いていた なんかハルヒも元気がないことだしベンチで一休みするか 「なぁ・・・・今日のお前、元気がないな」 「そ、そんなことないわよ!いつも通りよ」 「・・・・・・・・そうか、ならいいが」 「・・・・・・・・・ねぇ、キョン。あたし達って付き合い始めてから1ヵ月経ったわよね?」 「ん?あぁそうだな」 「キスもたくさんしたわよね?」 「・・・・・まぁ・・・・・・・・・・したな」 「あたしのこと愛してる?」 「そりゃぁ勿論愛してるぞ」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・そう」 何が言いたいんだ?やっぱり何処か変だ。少しどころではない。大分おかしい 「キョン・・・・・探索が終ったら家に来て」 「家って・・・・・・・ハルヒの家か?」 「うん」 「そうか・・・・・・・・わかった、行くよ」 「ありがとう・・・・・もう時間ね。皆の所に戻るわよ」 おかしい。おかしいことに間違いはないのだが・・・・・それにしても直接家に呼び出すなんて、よっぽど大事な話があるに違いない・・・・・・・別れ話なんて勘弁だぜ? 「さて、涼宮さんがいなくなりましたので・・・・・大事な話があります」 「お前の、その「大事な話」とやらはどうせ俺を巻き込む事態なんだろ?」 「何故そう思われるのですか?」 「この面子で話し合うことなんざ、どうせ俺が疲れる仕組みになってるに違いない」 「まぁとりあえず話だけでも・・・・」 午前のおかしなハルヒは朝比奈さんを引き連れて午後もおかしなまま2人で人ごみへと消えていった。つまり俺のペアは長門に古泉だ 俺たちはいつもの喫茶店の前で別れる振りをして再度入店した。なんでもこの店は機関のものらしく、聞かれたくない話を存分に出来るらしい。 「端的に申し上げますと、今朝のペア決めで凉宮さんとあなたがペアになられたとき閉鎖空間が発生しました」 なんだと?閉鎖空間ってあの閉鎖空間か?ハルヒがストレスを感じてたってことか? 「いえ、今回はそのような理由ではなく、また通常の閉鎖空間ではないようです。僕は機関からの報告を受けただけで実際に見ていないので詳しいことは分からないのですが、閉鎖空間内を覗ける長門さんに、ここは説明を任せます」 「了解した」 長門はそんなことも出来たのか・・・ 「通常の閉鎖空間と違う点は2つ。1つは空間範囲の狭さと拡大する気配がないこと。2つめは神人の活発な活動が認められない」 あの神人が活発に破壊活動をしていない?想像も出来んな・・・ 「神人は出現してから約3時間の間、ただうずくまって座っているだけ。破壊活動もしなければ身動きすらしない」 「そんな神人が出たのか・・・で機関はどうするんだ?」 「えぇ、そのことなのですが・・・・触らぬ神に祟りなしとも言います。しかし放っておけば何時までも閉鎖空間は消えませんし、何時拡大を始めるかもわかりません」 「そうか・・・・・・で俺はどうすればいいんだ?」 「そうですね・・・・なにか涼宮さんについて変わったこととかはありませんでしたか?」 「変わったところと言えば・・・・・どこか元気がなかったぞ」 「元気がない・・・・落ち込んでいるのでしょうか?」 「そのような感情の観測はなされていない・・・・言うなれば・・・不安になってる?」 不安?ハルヒが・・・本当か、それ 「宇宙人、嘘つかな~い」 長門・・・・キャラ変わってるぞ 「さて、これからどうしましょうか。僕としては探索が終ってからでも充分対策がとれると思うのですが・・・・どうです、長門さん」 「問題ない。探索終了後わたしのマンションで検討会を実施する」 そうかい。頑張ってくれよ 「何を言っているのですか。もちろんあなたにも参加してもらいますよ」 いや、俺はちょっと用事が・・・・ 「世界とその用事とどちらが大事なのですか?」 そりゃぁハルヒも大事だが世界が終ってしまえば元も子もないか・・・・ 「わかったよ」 「わかっていただけてよかったです。では探索終了後、1度別れる振りをして長門さんのマンションに集合ということで」 「はいよ」 「了解した」 「では探索に参りましょうか」 「今日の探索は終了!解散!」 ハルヒの一声で今日の探索とは名ばかりの活動も終了し俺も帰宅する振りを 「さ、行くわよ」 そうでした。呼び出し喰らっていましたね しかし古泉にも言われたとおり世界のほうが優先されるべきなんだろうな・・・・世界崩壊の原因が目の前にいるとは 「あぁ、そのことなんだが。スマン、実は用事があってな」 「・・・・・・なによ、あたしより優先すべきことなの?」 「まぁそういうことだ」 「その優先することってなんなのよ!」 しまったな、言い訳を考えてなかった。まさか本当のことを言うわけにもいかないし、かと言ってハルヒに俺の考えた嘘が通じるとも思えないし・・・・・ 「黙り込んじゃって、ますます怪しいわ」 しょうがない。本当のことを全部言うわけにはいかんが・・・・ 「実は長門の家に呼ばれてるんだ」 「・・・・・え、有希?」 「・・・・・・・なんであたしより有希なのよ」 え?俺の目の錯覚か・・・・ハルヒの大きな目から1滴、2滴と大粒の涙が滴り落ちてゆく 「あたしより有希なの?・・・・・・・・あたしのこと嫌いになっちゃったの?」 「違う!そんなんじゃない・・・・・ハルヒのことは好きだ!」 「そんなの嘘よ!もういい!!」 そう吐き捨てたハルヒは走っていってしまった。こんなの常識的に考えて追いかけるだろ?世界なんて二の次だ 「みっみっミラクル~み~くルンルン!」 「発信者:古泉一樹(グループ:SOS団)」 そう俺の携帯のディスプレイが表示している。いいタイミングだな 「・・はぁ・・・・はぁ・・・・・古泉か?」 「ええ。緊急事態です。閉鎖空間が急速に拡大し始めました」 まぁそうだろうな・・・・・あんなにハルヒが怒って泣いていたんだ 「はぁ・・はぁ・・・・・そうか・・・・・はぁ・・・・悪いが俺は行けそうにない・・・・はぁ・・・・はぁ・・・・理由は・・・・・・・・・・後で」 「なんとなく状況は察しました。世界崩壊の危機を脱っすることが出来ましたらそのとき・・・では」 話のわかる仲間を持つと助かるぜ 「・・・・・・なんであたしの部屋に入ってきてるのよ」 「おまえが来いって言ったんだろ?」 ・・・・なんてのは嘘で夢中で追いかけてたらハルヒの部屋まで来ちまった 「だってあんたは有希のところに行くんでしょ!」 「いや違うそれは・・・・」 「それは何よ!だいたいあんたはいっつも有希やみくるちゃんばっか見てデレデレしちゃって、あたしのことなんてちっとも見てないじゃない」 「なに言ってるんだ!俺はしっかりお前のこと見てるぞ!」 「・・・・・・そんなの嘘よキョンはあたしのことを見守っててはくれないわ」 「いいや、嘘じゃねぇ!お前のことを守って見せる」 「そんな約束いつまで続くかなんてわからないじゃない!」 「約束する。いつまでもおまえのこと見守っててやる!」 「・・・・・・?!ちょっとキョン、それって」 「俺は世界とハルヒを天秤に掛けてもハルヒをとる!何があってもハルヒを守ってみせる!」 「・・・・・・・・・・本当」 「あぁ、本当だ」 「・・・・・・・・まぁいいわ。今回は信じてあげる」 はぁ、よかった・・・・ってそういえば古泉たちは大丈夫なのだろうか 本当にハルヒの方の天秤をとったわけなんだが・・・・ 「・・・・・・ねぇ、キョン。知ってる?」 何がだ? 「今ね、この家にいるのキョンとあたしだけなのよ?」 そ、それは拙くないか?男と女が二人っきり・・・・・ 「別に拙くなんかないわよ。あんたさっき自分で言ったこと忘れたの?」 さっき言ったこと・・・・なんのことだ? 「はぁ?あんた覚えてないの?あたしを一生・・・・・・まぁいいわ、キョンはやっぱりキョンね」 ・・・・・・・・なんのこっちゃ 「ここは再構築世界とかじゃないよな?」 「えぇ、おそらくは・・・・ですよね?長門さん」 「そう」 ハルヒを泣かしてしまうという事件もようやく一段落ついたその日の深夜、ようやく長門のマンションに来れた。本当はもっと早く来るつもりだったんだが、泣き疲れたハルヒは俺を抱きかかえたまま寝てしまった 別に腕の中から逃げてこられなくはなかったんだが・・・・・気持ちよさそうな顔だったから、つい見とれていこの時間だ 「・・・・・・・・可愛い寝顔だな」 「!?・・・・・Zzz・・・・」 あぁ、こいつ起きてやがる・・・・顔が真っ赤だ 「お前、起きてるだろ」 「・・・・・なんでわかったのよ」 「そりゃぁいつでも見守ってるからな」 「・・・・・・・・キョン」 「そういやぁ親はどうしたんだ?」 「・・・・・あんた雰囲気ってものを知らないの?」 「なんのことだ?」 「はぁ・・・・・・親は親戚の結婚式に行って夜まで帰らな・・・・ってもうこんな時間じゃない!何で起こさないのよ!!」 「可愛い寝顔だったからつい・・・・」 「バカこといってる場合じゃないわよ、本当に帰ってきちゃう。キョン、早く帰る支度して!」 別に「あたしの彼氏よ」とか紹介されてもいいんだが・・・・ 「バカいってないでさっさと帰る!!」 ってな具合に家を追い出されてしまった 「そうか・・・・じゃぁ、今回の種明かしをしてもらおうか」 「種明かし・・・・ですか。結論から言いますと、男には女の気持ちはわからない・・・・でしょうか」 全然結論になってないぞ、古泉。ちゃんと説明しろよ 「僕も男ですし、今回の騒動は長門さんにご説明をお願いいたします」 「了解した」 長門って、その台詞多いな・・・・・ 「凉宮ハルヒが不安になっていな要素はたった1つ。あなたとの関係」 「俺との関係?」 「凉宮ハルヒがあなたにしようとした行為によってあなたとの関係が壊れることを危惧し、その葛藤の中で例の閉鎖空間を発生させた模様」 行為?行為ってなんだ? 「・・・・鈍感」 「いやぁ、あなたがそこまで鈍感とは」 「・・・・・わるかったな」 ハルヒが俺としようとしたことぐらい俺にだってわかるさ。付き合って1ヶ月、キスも充分した、愛してる。でも気づくのが遅かったな。スマン、ハルヒ。やっぱり女の考えてることは男には到底わからないものなのさ・・・・・でもちゃんとわかるように努力はするよ 「・・・・な、なによ!じろじろ見て」 「いいや、別に。俺はただお前を見守ってるだけだ」 「・・・・・・・あんた、よくそんな恥ずかしい台詞が言えるわね」 お互い様だろ 「そんなに見られてたら答え合わせに集中できないじゃない!」 今日は土曜探索の翌日、日曜日だ。予定通り午前中はハルヒと勉強会中・・・・と言っても、もう終るんだがな 「・・・・うん、よし。今日はこれでおしまいね。お疲れ様」 「お疲れ、ハルヒ。いつもありがとな・・・・・午後はどこにデートに行きたい?」 「・・・・・あたしの家に来ない?」 ・・・・・・親に紹介でもするのか? 「んとね・・・今日も家に誰もいないのよ」 「それってまさか・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・バカ」 good end… 「いやぁ今回は出番が結構ありましたね」 「いっぱい喋った。ユッキーがんばった」 「あのー・・・・・わたしは?」 作者「空気乙wwwwwwwwwwwwwwwwwwww」 「貴様、【禁則事項】で【禁則事項】して【禁則事項】するぞ!」 作者「アッー!!」 bad end…
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/5107.html
季節はもう秋。 空模様は冬支度を始めるように首を垂れ、 風はキンモクセイの香りと共に頬をそっと撫でていく。 彼女は夏に入る前に切った髪がその風に乱れて 思いの外、伸びているのに時の流れを感じている。 夏休みから学園祭まで一気に進んでいた時計の針は 息切れをしたかのように歩を緩め、 学校全体が熱を冷ますようにこれまでと変わらない日常という空気を 堅く静かに進めていく―――― 「腹減ってんのか?」 腑抜けた声と間抜け面。 「何言ってんのよ?」 「いや、随分沈んでるからひょっとしてダイエット中で 朝飯でも抜いてんのかと思ってな。飴食うか?」 「うっさいわね!大体、私みたいな若くて可愛い女の子にはそんなもの全っ然必要ないの。 飴は一応、貰っとくけど。」 「はいはい、自分で言いますか。まぁ、お前は人一倍食い意地張ってるしな。」 「あんた、馬鹿なだけならまだしも的外れでデリカシーも無いなんて駄目にも程があるわ。」 「お前だけには言われたくないという突っ込みどころ満載だな、おい。」 「あぁ!!もう、うっさいわね!」 こんなんじゃ頬杖つく腕も痺れてくる。 「私にだって考え事の一つや二つくらいあるのよ。 秋はパーッとしたイベントが少なくて嫌になるわ。」 「考え事ね…まぁ、学園祭からここまでずっと勉強ばっかりだからな。 俺もパーッとやりたい気持ちはあるが、遊んでばかりもいられないだろ? 俺達は学生で学生の本分は勉強だからな。」 「そのくせしてろくな成績も取れないあんたは何なのよ?」 なかなか痛い所を突いてくるね、ハルヒ。 「なんか面白い大事件でも起きないかしら。」 おいおい、勘弁してくれ。そうそう大事件が起きてたら繊細な俺の身が持たん。 この1年半、こんな他愛無いやり取りをこの2人は 何回繰り返してきただろう? 彼も彼女も気付いてないのかもしれない。 いや、気付いていても今の2人は口に出しはしないだろう。 この言葉の交換が、この時間の共有が何よりも特別なものである事を。 何も変わらない、宇宙人も未来人も超能力者も現れない事に 辟易し、言葉さえも忘れたような彼女の灰色の日常に 彼が優しく彩りを添えてくれた事を。 まぁ、付け合わせの人参くらいにはなってるかもね、 等と彼女はまた素直じゃない答えを返すだろう―――― 必殺!ペンで背中を串刺しの刑!! 「いって!!!!」 凍り付いた。 クラス中の奴らが見つめてくる中、黒板で世界史を解説中だった教師は 「どうした?」と切り出し、俺はうやむやに誤魔化し何とか切り抜ける。 そして、次は後ろに座っているこの馬鹿を訊問しようとした時、 「ねぇ、キョン!昼休みに一回部室に行ってから学校抜け出すわよ。 あんたもついてきなさい。これは団長命令よ。」 相変わらずだが、唐突過ぎて意味がわからん。 「何言ってんだ。大体…」 「黙りなさい。」 前の教師と後ろの団長様から同時に最終宣告。 4限目が終わるとすぐハルヒは俺のネクタイを掴みペットの如く、 部室まで引きずっていった。痛い、苦しい、離せ。 「あら?有希。昼休みもここで本を読んでるなんてもうお昼食べたの?」 「俺も昼飯の時間なんだけど…」 「……読書週間。」 「ん?」 「本日より2週間、読書の力によって平和な文化国家を形成するという目的の元、 出版社、図書館、マスメディア等の公的機関より本を読む事を推奨されている。」 何となく聞いた事はあるが、意識した事も実行した事もほとんどないあれだな。 大体それ、普段の長門と変わらんじゃないか。 それになんかお前が言うと宇宙国家建設の標語みたいだぞ。 「有希は読書って訳ね。まぁ、良いわ。でもね、秋は読書だけじゃないわ。 閃きというか、さすが私はSOS団団長として目の付け所が違うと思うのよね。」 というか、ここは本来文芸部の部室だから長門の意見に従うべきだ。 だが、ハルヒはパソコンの電源を入れながらいつもの太陽のような笑顔になっていた。 「次は何を思い付いたんだ?お前は。」 「ふっふっふっ…ハロウィンよ!!小さい頃、読んだ絵本には 魔人、ドラキュラ、フランケンシュタイン、魔女、 黒猫、コウモリ、ゾンビ、黒魔術なんかが出てきて 事件と謎の匂いがプンプンする話だったわ。 という訳で今週はハロウィン調査を開始するの。 ハロウィンってまずはコスプレから始まるのよね。 だからまずは全員どんなコスプレにするかパソコンで調べないと!!」 おいおい…今週はSOS団全員でコスプレかよ。 「へぇ~、ハロウィンではお菓子を配るのね。ついでに秋の味覚も集めちゃおうかしら?」 それはもう美味いもん食いたいって方がメインになってないか。 頼むからとめてくれ、長門…駄目だ、こりゃ…興味を持っちまった。 そういえばお前もヒューマノイドなんちゃらの割には食欲は凄いタイプだったな。 「ハロウィンパーティーですか、面白いアイデアですね。」 いつからいたんだよ、古泉。 そして顔が近いんだよ。あまりニヤケてるとカボチャにしてくりぬくぞ。 「じゃあ、決定ね。古泉君、みくるちゃんと あとせっかくのパーティーだから鶴屋さんにも伝えといてくれる? 受験勉強の邪魔でなければって。」 邪魔に決まってんだろ。 それに案の定、パーティーメインになってるじゃないか。 「わかりました。」 「じゃあ行くわよ、キョン」 やれやれ。 ケルト民族のハロウィン祭ではひとつの大きな篝(かがり)火から 村の家々に火を分け合う事でお互いを共通の絆を持つ一つに繋がった輪としている。 SOS団にとってその絆は涼宮ハルヒという大きな篝火を中心にして出来たものだろう。 しかし1人だけ、彼だけは言わば彼女という篝火にとって種火とも言える存在。 どちらがどちらを照らしているのだろうか? 優しく暖め合う事もあれば、全てを燃やし尽くしてしまう事もある。 彼女にとって本気で喧嘩をしたのは彼だけなのかもしれない。 彼女にとって本気で誰かを愛したのも彼だけなのかもしれない。 坂道をボールのように転がる。 街はパステルカラーに染まり上がり、何だか切な~い秋の午後。 女の子と2人で授業をサボって昼休みに学校を抜け出す。 そんな甘酸っぱい青春の背徳感。 ただ相手は… 「ちょっとキョン!!聞いてんの!?」 …こいつだ。 「有希はやっぱりキャラ的に魔女よね。 みくるちゃんは猫耳とタイツで黒猫ね。 小泉君はドラキュラなんてどうかしら?」 「あぁ…良いんじゃないか」 「あんたは…」 「俺もやんのか!?」 「あったり前でしょ!!あんたはそうね…カボチャで良いわ。」 なんで俺だけ野菜なんだよ…。 「鶴屋さんはいたずら好きの幽霊って感じね。 私は何にしようかしら…」 ……魔人 「誰が魔人よ?誰が!!」 …口に出ちまったか。 「私は、うん、まずは私の家に行きましょう!!」 お~い、一人で納得すんな。 はい現在、場面は飛びまして、 ハルヒの家のリビングで待機中です、どうぞ。 ご両親は仕事かなんかかね?誰もいない。 魔人が一人でドタバタ暴れる音だけが響く。 「キョン!!」 やれやれ、今度はなんだ… 「ちょっとこっち来て。」 「どうした?」 「棚の上にあるカボチャを取って欲しいのよ。」 「棚にカボチャ?」 「仮装用のカボチャよ。」 なんでそんなもんが家にあるんだよ…ほれ。 手持ち無沙汰だからとりあえずハルヒについてくか。 「次は私の…ちょっとここで待ってなさい。」 「ん?どうした?」 「いいから!!」 ハッハ~ン、この扉がハルヒの部屋だな。 「お邪魔しま~す。」 「ちょっと!!やめなさい!!」 あら?意外と綺麗で可愛い部屋。 もうちょっとエイリアンのポスター的なもんとかあるのかと思ってたが… おいおい、熊のぬいぐるみって柄じゃないだろ。 「何、人の部屋をジロジロ見てんのよ!?」 「いや、意外と可愛い部屋だな。」 「バッカじゃないの!!座ってなさいよ!大人しくしてなかったら死刑だからね!!」 「ハルヒはこの熊に名前とか付けてるのか?」 枕が飛んできた。 あ、ちょっと良い匂い。 あれ?メールが来てる。 From:朝比奈さん タイトル:ハロウィンパーティーの件 本文:了解で~すヽ(=^゚ω゚)^/ 楽しみにしてますO(≧▽≦)O あと、鶴屋さんと私もお菓子と秋の味覚を用意しますね♪ダキ♪(●´Д`人´Д`●)ギュッ♪ ところで今回はどんな衣装になるんでしょうか~?・・・( ̄. ̄;)エット( ̄。 ̄;)アノォ( ̄- ̄;)ンー 楽しみですか朝比奈さん、いつもよりもっと際どいコスプレさせられるんですよ… From:古泉 タイトル:無題 本文:今朝まで発生していた閉鎖空間も消えてくれて、 機関も僕もあなたにはいつも感謝しきりです。 お礼といっては何ですが、僕と機関から 今回のハロウィンパーティーに幾分かの差し入れを出します。 涼宮さんの事はあなたにお任せします。 では、頑張って下さいねp|  ̄∀ ̄ |q ファイトッ!! 古泉、お前は絵文字なんか使うな、気持ち悪い。 「お~い、ハルヒ。朝比奈さんと古泉からメール来てるぞ~。 鶴屋さんと3人、お菓子とか用意してくれるってよ。」 「さすがSOS団の役員だわ、あんたみたいな雑用係とは違うわね。」 「そりゃ悪うございました。」 「人の枕で雑魚寝するな!!」 良い匂いだったぞ、ハルヒd( ̄◇ ̄)b グッ♪ 秋の空というものはどうにもうつろいやすいもので それを人の心に例えたりもしますが、雨には気持ちもしょげるもの。 夕方になり降り出した雨は雨脚を強め、街をオレンジ色から灰色に変えていく。 やたらスモークチーズの香り漂うSOS団の部室では 3人が三者三様の時間を過ごしています。 朝比奈みくるは妙な沈黙に耐えられなかったのであろう… お茶を2人に差し出しながら話し掛けてきました。 彼らがいない時にこうやって会話を交わすのは慣れないものです。 「涼宮さんとキョンくんのいない部室って静かですね。」 「そうですね。こういう部室も嫌いではありませんが、やはり物足りないですね。 ところで鶴屋さんはどこへ?」 「チーズに合う飲み物が必要とかでどこかへ行ってしまいました。」 「それは危険な香りがしますね。」 その時、大きな足音が聞こえたと思うと勢いを付けて扉が開きました。 「お待った~!!」 鶴屋さんでしたか。 「おっや~、あの2人はまっだ帰ってきてないっかな~? ま~たどっかでイチャついてんのかね~?」 「鶴屋さん、それ…」 「あぁ、ワインっさ!」 「だ、大丈夫なんですか~?受験前に。」 「めがっさ美味しいにょろ!まっ息抜き♪息抜き♪まずは軽く一杯。」 息抜きの範疇を超えてますね。 「遅いですね~涼宮さんとキョンくん…」 と、音も立てずに静かに扉が開くと雨でずぶ濡れの彼が1人で立っていました。 非常に嫌な予感がしますね。 「あれ?涼宮さんは?」 「分からん…」 「ハルヒ…重い…」 「あんたは雑用係なんだから文句言わずに歩く!」 やれやれ…どんな衣装が入ってるんだ、この鞄。 「次はどうするんだ?」 「次はお菓子ね。鶴屋さんやみくるちゃんや古泉君が 用意するって言っててもそこは私達も負けられないわ。」 そこは負けとけ。向こうは組織ぐるみだ。 「おいおい、そんなに派手にやる訳にはいかんだろ。 特に朝比奈さんや鶴屋さんは受験生にも関わらず付き合ってくれてんだ。 邪魔になったら迷惑掛かるだろ?」 「分かってるわよ。あんた、相変わらずノリ悪いわね~。 大変なのはみくるちゃんの様子見てれば分かるわよ。 だから今日だけでも派手にパーッとやって鬱憤を晴らすのよ。」 それはお前の鬱憤じゃないのか、ハルヒ。 「大体だな、お前は計画性が無さ過ぎるぞ。 期末テストもあるのに授業サボるなんて俺にとっちゃ死活問題だしな。 それに最近はこの前の中間テストもプラスして 親からのプレッシャーも日毎に増す今日この頃だ。 今日も帰って補習しなきゃ間に合わん。 それをお前はいきなりハロウィンパーティーだとか訳が…」 っておい、いきなり立ち止まるな! かのイギリスの文豪シェイクスピアは戯曲「リア王」においてこのような話を残しています。 リア王は隠居する為に国を分割し、彼の3人の娘に分け与えようとします。 彼は3人の娘の自分に対する想いを確かめる為に「言葉」を求めました。 長女と次女は甘く優しい言葉を投げかけ、国の割譲を約束されますが、 三女だけは「何もない」と答え、王の逆鱗に触れ、 婚約者と共に国を追い出されてしまいます。 しかし、女王となった長女と次女は永遠に愛すという誓いを立て 国を与えて隠居した父を邪魔者として追放します。 言葉というものはなんと脆いものなのでしょうか? 三女は父の苦難を耳にし、涙を流し、行方不明の王を探すために四方八方、手を尽くします。 「行動は時に言葉よりも雄弁である。」 彼女の言葉は想いとは裏腹で素直さに欠ける時もありますが、 いつも彼と共にいるというその行動そのものが彼女の想いを何よりも雄弁に語っています。 彼は今、目の前にいるおてんばなお姫様の心の奥底にある真の想いに 気付いているのでしょうか? 「そんなにやりたくないの?」 ん? 「キョンはそんなに皆と一緒にいるのが嫌?」 嫌とは言ってないが… 「分かった……じゃあ、止める。」 は? 「皆には私から連絡しとくからキョンも帰っていいわよ。」 出たよ…なんちゅう我が儘だ、おい。 「おい!ハルヒちょっと…」 「離して…」 「いや、お前なぁ…」 「帰りたければ帰ればいいでしょ!!」 ……頬に落ちた一滴の水は雨だったのだろうか、ハルヒの涙だったのだろうか――― 「私は付き合いだけで無理して皆とここにいる訳じゃありません!!」 朝比奈さんの怒号が響く。 「ごめんなさい…」 「なんでキョンくん、そんな事言ったんですか!? いい加減、涼宮さんの気持ちに気付いてあげて下さい!! 涼宮さんは私達の為というよりもキョンくんの為に きっとこのハロウィンパーティーをやろうって言ったんですよ!」 …俺の為? 「涼宮さん、キョンくんが最近、成績の事とかで悩んでるってずっと気にしてたんです。 だから涼宮さん、部室にいる時に一人でキョンくんの為に解説用のノートや 一緒に期末テストの勉強する為のスケジュール作ったりして、 来週からはスパルタで行くから今週くらいはキョンくんと 何か息抜き出来る事して気持ちを晴らして 羽を伸ばしておこうって言ってたんです!」 「あ~ぁ、今回はやっちゃったね~!キョンくん。」 鶴屋さんまで… 「ふぅ~…すみません、どうやら急なバイトが入ってしまったようです。」 古泉が椅子から立ち上がりながら俺を睨む。 「まぁ正確には涼宮さんらしく、団長の責務として団員の世話まで しっかりやらないといけないから大変だ、とおっしゃってましたが。 あなたの悩みは彼女の悩みでもあるんですよ。」 どういう事だ? 「まだ分からないんですか? 彼女からすれば何故、自分に相談してくれないのか? 悩みがあるなら共有してくれないのか?とね。 あなたに涼宮さんをお任せしたのは失敗でしたかね…。 では、失礼。」 すまん…古泉。 「今回はあなたの落ち度。謝罪すべき。」 ………。 妖精はいたずら好き。 かくれんぼなんかはお手の物。 彼は傘も差さずに雨の中を走り回って探してる。 でも、彼女は見つからない――― 「くそっ…あいつ一体どこにいやがるんだ…」 携帯に電話を掛けてもメールをしてもハルヒからの返事は一向に来ない。 あいつの家にも公園にも駅にも喫茶店にもハルヒが行きそうな所は 全て当たってみたが影も形も見当たらない。 街中を走り回ったせいか、足がもつれてこけてしまった。 街を行き交う人達の視線が痛い。 「はぁ…何やってんだ、俺は…。」 泥だらけになった服を払いながら涙が出てきた。 今日ほど自分が情けなくなった日はない…。 ハルヒの想いや悩みにいつも鈍感で一緒に騒いで楽しければ それで良いという距離感が崩れるのが怖かったのかもしれない。 ただそれは滑稽な道化に収まって楽をしていただけだ。 俺はあいつを傷つけて黙って見ていただけの 卑怯な臆病者だ。 もう一度学校に戻ろうと歩いていたその時、 目の前に一台の車が止まった。 「お久しぶりです」 「あ…森さん?」 「時間がありませんので説明は車の中で致します。 一刻の猶予もありません。お乗り下さい。」 え?という暇もなく、車に押し込まれた。 「これで体をお拭き下さい。」 今日はスーツ姿だが、時にメイドだったり、 森さんの本職は一体何なんだろうか? 手渡されたタオルで体を拭きながら諸々の事情を聞こうとしたのだが、 それは先に森さんの言葉に遮られた。 「事情を説明する前に一言。これは機関からの言伝ではなく、 私個人としての意見です。」 と、バックミラー越しに鋭い視線を投げかけられた。 「話は古泉から伺っております。 涼宮ハルヒを監視している機関として必然的にあなたの事も知る事になるのですが、 率直に申し上げますと、あなたは男として失格です。」 厳しっ! 「あなたは女性の言動の裏にある本当の想いに鈍感過ぎます。 それは意識してのものなのか、無意識なのかは分かりませんが 結果的に女性を傷つけるものとして私は断じて許せません。 彼女は、涼宮ハルヒは常にあなたの傍にいて、 あなたを心の底から慕っています。 あなたの想いもありますので必ずしも彼女の想いに応えろとは言いません。 しかし、のらりくらりと逃げるような真似をして 彼女を裏切り傷つけるような行為は同じ女として 怒りを禁じ得ません。」 突き刺さる…。というか森さん、キャラ変わってない? こんなにドSキャラだったっけ? 「では、ここから本題に入らせて頂きます。」 …とことん凹まされた…また涙出てきそ。 「涼宮ハルヒは今、この世界には存在していません。」 は? 「簡単に申し上げますと現在、涼宮ハルヒは 閉鎖空間の中に閉じ篭っているという言い方が出来ます。 私達、機関の活動は涼宮ハルヒの精神的な動揺から発生する 閉鎖空間の平定にあり、その閉鎖空間内において あなたもご覧になった事がある神人の討伐を行っていたのですが、 つい先刻よりその閉鎖空間内に機関の人間が 誰一人入る事が出来なくなっています。 閉鎖空間内にいた人間もことごとく追い出されています。 現在、発生している閉鎖空間はこれまでのものとは全く異質で 形も歪な空間です。」 「それは以前、俺とハルヒの2人だけで行ったのと同じものですか?」 「似てはいますが、それともまた違うものです。 ただ自らの存在以外を全て拒絶している空間のようです。」 「それだと今の俺は一番拒絶されそうな…」 と言いかけた所で再び森さんの鋭い視線が突き刺さる。 「良いですか?今、機関の人間を総動員して解決に当たっていますが、 このままだと世界中の人間だけが消えてしまう危険性があります。 申し訳ありませんが、あなたにはまた協力を要請する事になった次第です。 目的地につきましたので詳しくはそこで。 傘をどうぞ。」 その場所はさっき俺とハルヒが喧嘩をした駅前の広場だった。 そして、そこには真顔の古泉に長門と朝比奈さんも来ていた。 「お待ちしていましたよ。」 すまんな、古泉。 「情報統合思念体は混乱している。 現在の涼宮ハルヒは有機生命体の持つ全ての感情を 強い力で衝突させ、爆発を起こしかけている。 本来、情報統合思念体にとって感情とはエラーと認識されるもの。 それが処理出来ないほどの量と質で埋め尽くされている。 情報統合思念体にとって自らの存在を消去し得る 触れる事は危険且つ、不可能な領域として認識した。 だから、あなたに任せる。」 そんなでっかい事になってるのかよ…。 「キョンくん…さっきは怒鳴ったりしてごめんなさい… でも、キョンくんにしか涼宮さんを助ける事は出来ないと思うの。 キョンくんの素直な気持ちをちゃんと伝えて、お願い。」 くぅ~…とうとう覚悟を決めるしかないのか、こりゃ。 「では、ここからが閉鎖空間の入り口です。 僕らはこれより先には進めません。 ですが、あなたならきっと大丈夫です。 いえ、あなたにしか出来ません。」 わかりました…いってきます…。 彼女は魔法の国に迷い込んだお姫様。 お菓子をくれなきゃいたずらするぞ。 普段はおてんば、はねっかえりでも 一人でいるのは怖くなる。 昔、絵本で読んだお話を決して忘れちゃいけないよ。 いつも助けてくれるのは白馬に乗った王子様――― 一瞬、雷に打たれたような衝撃が身体中を突き抜けると そこは幾度か見た灰色の空間だった。 ただ、土砂降りの雨が降っていた。 雷鳴も轟くその空間はこれまで知っていたものとは まるで違うものだった。 「なんだ、こりゃ?ハルヒはどこだ?」 叫んでみた。 「来たは良いもののどこに行って何をすれば良いかさっぱり分からんぞ。」 もう一度叫ぼうとした時だった。 「馬鹿!!!」 ハルヒ!? 「どこだ!?ハルヒ!!」 「馬鹿!うっさい!黙れ!このすっとこどっこい!! なんで追いかけて来ないのよ!?このアホ!間抜け面!唐変木!」 ありとあらゆる罵声が雷鳴と共に鳴り響いている。 助けに来てどやされるとはな…。 声の方角からすると喧嘩して離ればなれになった方角だな。 声を頼りに走ると近くの公園に辿り着いた。 しばらく走ってみてわかったのだが、ところどころ街が破壊されている。 しかし、どうやらあの神人というのはいないようだ。 いや…その代わり屋根付きベンチの上で魔人が仁王立ちしていた。 「遅刻!罰金!」 やれやれ… 「これでも結構、急いで走ったんだぞ。」 「全くこんなに暗くなって雨が降ってきたんじゃ 身動きも取れやしないわ。携帯も通じないし。」 こいつ、ひょっとしてここが閉鎖空間って事に気が付いてないのか? 「お前ずっとここにいたのか?」 「別に私がどこにいようと関係ないでしょ!?」 「ハルヒ…」 俺はハルヒの肩に手を置いた。 細い肩だ。 「何よ?何すんのよ?」 「そんなびしょびしょに濡れてたら風邪引くだろ? タオルで拭くんだよ。」 ハルヒの柔らかい髪の毛はくしゃくしゃに 顔は真っ赤になっている。 「ふん…まぁ、タオルを持ってくるなんて あんたにしちゃ上出来ね。」 ありがと、森さん。 その時ふと、ハルヒの肩が震えてるのを感じた。 あぁ~…そうか…そうだよな。 「ハルヒ……ごめんな。」 ぼつりと口をついて出た言葉がハルヒの顔を曇らせた。 そこからハルヒは俺の服にしがみついて 堰を切ったように大声で泣き出した。 そうだ…こいつだってこんな所にひとりぼっちにされたら 寂しいし、怖いだろう。 喧嘩して怒ったのと同じ分だけ悲しかっただろう。 俺の為に色んな事考えて色んな事してくれた分だけ 突き放された時はショックだったろう。 俺はハルヒをありったけの力を込めて抱き締めた。 俺は本当に大馬鹿者だ…。 もうこいつを離しちゃ駄目だ。 ごめんな、ハルヒ…。 そして…ありがとう、ハルヒ……。 その時、耳元で雷鳴のような大きな音が響いた。 「……プッ……クックッ……ハッ…ハッハッ!!」 そうだ、俺達は昼休みに学校を抜け出してから何も食べてなかった。 「ハッハッ!!ハルヒ、お前、腹の音!」 「あんたもでしょうが!キョン!」 お互い、赤面しながら笑い合った。 「腹減ってんのか?」 笑い過ぎて涙が出てきた。 「飴食うか?」 2人で飴を舐めながら俺は次の問題を考えていた。 閉鎖空間から抜け出さないといけない、 ハルヒにどう説明しようか等々。 とりあえず2人で歩いて閉鎖空間の入り口に戻ろうと 傘を差して屋根の下から出ると さっきまでの大雨と雷が嘘のように晴れ上がっていた。 「秋雨ってやつね。秋の天気は変わりやすいから。」 あれ?閉鎖空間から抜け出してる?なんでだ? 灰色じゃない。オレンジ色の夕陽が眩しい。 とりあえず足は自然と学校へと向かっていた。 「あぁ~…ハルヒ。その…なんだ… 今週はさ…思いっきりハロウィンパーティーやろうぜ。」 飴のようなキラキラした瞳でこっちを見つめている。 「あ、あとな…ちょっと頼み事があるんだが、 勉強を…教えてくれ。 今度の期末テストはお前の力を借りんとヤバそうだ。」 ハルヒは夕陽よりも眩しい笑顔で笑っている。 「しょうがないわね!その代わり! 今回はいつもより更にスパルタで行くわよ!」 「おう、ありがと!」 「な、何がありがとうよ! SOS団の団長として団員の世話は当然の仕事よ!」 嵐来りて大暴れ。 上へ下への大騒ぎ。 嵐は去りて一番星。 誓いを立てて手を繋ぎ、 夢か現か幻か。 「ではこれより!SOS団ハロウィンパーティーを始めます!!」 結局、部室では時間が遅いと言う事で急遽、鶴屋さん宅で お菓子と秋の味覚を取り揃えたあまりにも 豪華なパーティーを催す事になった。 長門はひたすら食ってるな。 なんか高そうなワイン付き。 だけど良いんですか、鶴屋さんのご両親。 娘さん、ワインで酔っ払って暴れてますよ。 朝比奈さんの胸揉みまくってるし。 コスプレはと言うと 長門は魔女、朝比奈さんは黒猫、古泉はドラキュラ、鶴屋さんは幽霊、俺はカボチャ…。 団長様はというと、超が付くほどのミニスカートを履いた妖精らしい。 おいハルヒ、パンツ見えてるぞ。 「今回もあなたに助けられましたね。」 「まぁ、今回は俺が原因でもあるからな。 色々すまんかったな、古泉。」 「いえ。初めに話を聞いた時は機関で拘束して 拷問にでも掛けようかと思いましたがね。」 お前が言うと冗談に聞こえないんだよ…。 「で、涼宮さんとは付き合う事になったんですか?」 せっかくの美味い飯が喉に詰まっちまうじゃねぇか! 「ば、馬鹿言うなよ!」 「おや?今回もキスしたんじゃないんですか?」 「しとらん!」 「それは……また森さんが怒りますよ。」 ギクッ! 「キョ~ン!」 「なんだ?」 「あんた、美味しそうなもん食べてんじゃないのよ。」 「やらんぞ。自分で取れ。」 「ケチ!うりゃ!」 「おい、取るなよ。」 「だって私、この付け合わせの甘い人参、好きなんだも~ん。」 やれやれ…。 「じゃあ、お世話になりました~!」 「良いって事さ~!今度はクリスマスだね!」 「おやすみなさ~い!」 宴もたけなわ、か。 来週からはしばらく勉強漬けの日々だな。 「では、僕もこのへんで。」 「…同じく。」 武士? 「わたひもおうひにかえりまひゅ~。」 酔い過ぎです、朝比奈さん。 「では、涼宮さんを家まで送り届けて下さいね。」 ニヤケ顔がいつもの倍になってんぞ。 「キョン!」 「はいはい。」 「はい、は一回。」 「はぁ~い。」 彼は一つ決めました。 はっきりさせておかなきゃいけない事がある。 試験が終わったクリスマス、 ちゃんと彼女に素直な想いを伝えよう、と。 冬も間近な秋の夜。 空に浮かぶ星達は遠い遠い所から 歩く2人を照らします。 彼女はくしゃみをしています。 彼はそっと服を着せ、彼女の手を取り歩きます。 照れて言葉も交わさずに。 まだまだ臆病な2人には ただただ優しく光を照らしましょう。 The End 涼宮ハルヒの教科書へ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/6529.html
涼宮ハルヒの遡及Ⅵ 「ちょっとキョン! 何がどうなったのよ!?」 「んなこと俺が知るか! と言うかこの状況を何とかしないと冷静に考えられるわけないだろ!」 などと大声で叫び合う俺たちの周囲は、巨大なバッタの大群に囲まれてしまっていて逃げ道もねえ! しかし、こいつらの俺たちの見る目は食料としてではない。まあそれは当然だな。バッタは草食だ。肉には興味がないはずだ。 もっとも、だからと言って俺たちのことを見逃してくれるような気は毛頭無さそうで、明らかにその複眼は敵意で満ちている。 「どうやって切り抜けるのよ……?」 「俺も教えてほしいくらいだ……」 くそ……古泉たちはどこに行っちまいやがったんだ……? 妙な緊張感が場を支配する。ただし、少しでも動きを見せようものなら、あっという間にその沈黙は破られ、これだけの巨体でしかもバッタの習性が失われていないとするならば、間違いなくその脚力の餌食になることだろう。この大きさが相手であれば人間の方が虫けらでしかない。 もちろん、この数が相手じゃさっきの俺の妙な力は使えんぞ。どうすりゃいい? が、 「バーストクラッシュ!」 んな!? いきなり、あたかも天から聞こえてきたかのような咆哮に俺たちを取り囲んでいたバッタたちが周辺ごとド派手に爆発して砕け散っていく! しかも一体一体なんかじゃない! まとめて吹き飛んだんだ! い、いったい何が…… 「キョン見て!」 驚嘆に叫ぶや否や、ハルヒが無理矢理俺を上に向かせる。 そこには……って、え!? 俺も驚愕に目を見張った。 なぜなら俺たちの頭上に一人、人がいたからだ。 「まったく……今度はいきなり場面が転換したし……」 むろん、それはこの場に登場してくれることに越したことがない人物。と言うか居てくれたことがありがたい。 そしてハルヒも昼間とはやや恰好が違っていようと本来の彼女の姿を知っている。 「さくらさん!」 ハルヒが歓喜の声を上げた。 どうやらアクリルさんだけがハルヒの力の影響下からは外れているらしい。 この辺りはこの人が異世界人で助かった。ハルヒの手の中にある世界とは別の世界から来ているだけあって例外なのだろう。 なんせ『場面が変わった』って言ったからな。 でなけりゃ今頃、俺たちはどうなってたか……考えるだけでも寒気が走っちまう。 あー……てことは動いたのは俺たちじゃなくて長門、古泉、朝比奈さんの方か。 てことは三人はあの場所ごと、別のところに飛ばされたってことだよな。 「で、原因は何なの? 解ったんでしょ?」 「え、ええ……まあ……」 アクリルさんの問いに俺はなんとも困った表情で言い淀むしかなかった。 もっとも、今回の相手がアクリルさんで良かったと思うのはこういうときなんだよ。 ハルヒが目の前にいても堂々と話ができるというか…… ――聞こえる? 今、念波で繋いだから。これならキョンくんも心で思うだけであたしと会話できるわよ―― という訳だ。さすがは魔法使い。テレパシーもお手の物ってことだ。 ――……手短に話してくんない? 思ったことはダダ漏れになってるから―― は、はい! 実はですね、かくかくしかじかで…… ――なるほどね。解ったわ。それじゃあとにかく他の三人と合流するのが先決ね―― って、んなことできるんですか!? ――もちろん。あのナガトって子が言ってたでしょ。あたしからあの子の『存在形態パターンの残留痕跡を感じる』って。つまり、あの子の匂いをあたしが辿ればいいのよ。あと、あたしがこっちの世界に来れたのもこれが理由―― と言うと? ――あたしは向こうの世界でキョンくんを一度おんぶしてる。その時にあなたから移った匂い=存在形態パターンの残留痕跡があたしに残っていた。その匂いを辿ってこっちの世界にテレポートしたってことよ。んで蒼葉が来なかった理由もこれ。蒼葉とキョンくんには一度も接触がなかったからあたしじゃないと来れなかったってことね―― そ、そうですか……もうほんと何でもアリだな…… ――くすっ、前も言ったけど『本当に』何でもアリって訳じゃないからね。あたしにだってできることとできないことがあるわよ。たとえば死んだ者を生き返らせることはできないし、生命体じゃないものの再構成はできない。あと、前みたいにあたしたちだけじゃキョンくんを元の世界に戻すことができない、とか。案外、できないことの方が多いかもね―― あ……云われてみれば確かに…… 「ちょっとキョン!」 とと、なんだハルヒか。どうした? いきなり割ってきて。 「はぁ? 割ってきたって何よ? 別にあんたとさくらさん、話してなかったじゃない。あたしが声をかけたのはあんたがさくらさんの質問に答えずに黙り込んだからよ」 あ――! 確かにそうだ。俺はずっと考え込むように下を向いていたし、俺とアクリルさんは目を合わせてもいない。なのに『割ってきた』という表現は確かに間違いだ。 「えっと、だな……ハルヒ、それは何と言うか……」 俺は答えに窮した。まさか素直に、 「今、あたしとキョンくんはテレパシーで会話してたから、って、だけ」 と言う訳にもいかんし……って、さくらさん!? 「ん? 別にいいんじゃない? だってハルヒさんもあたしが魔法使うってこと知ってるんだし、伏せる意味なんてないじゃない」 い、いやまあ……確かにそうなんですけど何と言うか…… 「テレパシーですって!? さくらさん! それ、魔法を使えなくても、前に蒼葉さんから貰ったあの石が無くても交信可能なの!?」 ほらやっぱりな。ハルヒが目を爛々と輝かせるのは目に見えていたさ。だから、それをハルヒが『常識』として認知するのがはっきり言って怖いんだが…… って、おい! 俺は無視かよ!? などと心の中でツッコミを入れる俺の眼前では、ハルヒとアクリルさんが何やら俺には聞こえない会話を交わしている。 ハルヒの奴、実にいい笑顔だな―― って、何を感慨に浸っている俺! 「キョン! あんただけ何、こんな面白いことを独り占めしようとしてんのよ! こういうことはみんなで分かち合うもんよ!」 あーハルヒの奴、本当に嬉しそうだな。光が弾けて大爆発してもまだ後から後から湧いてきそうなはちきれんばかりの笑顔だ。 「分かった分かった。じゃあ、さくらさんがお前にも言ったと思うが、これから長門、古泉、朝比奈さんと合流しようぜ」 「へ? どうやって?」 言ってなかったんですか!? さくらさん! 「言ってないわよ。だって、さっきのテレパシーは『キョンくんとこうやって話してたの』くらいの説明しかしてないし。あっそうそう、もう一つ、『これも魔法使いかそういった能力者じゃないとできない』って付け加えておいたから」 「何よキョン。ひょっとしてまだあたしに隠していることがあるの?」 いやぁ別に何も隠していませんよハルヒさん。ですから、そのにんまりした悪企み視線をぶつけないでください。 結構、心臓に悪いんで。 って! 「えっ!?」 俺とハルヒが驚嘆の声を上げたのは当然だ。なんたって―― 「説明の必要はないわよ。論より証拠。ハルヒさん、キョンくんの手をしっかり握って。あたしはあなたの手をしっかり握るから。絶対に離しちゃ駄目よ。離してしまうと今度は三人バラバラになる可能性があるんだから」 そう、アクリルさんがにこやかに告げると同時に、彼女を中心に、いきなり光が俺たちの周りに駆け廻り、円を作ったんだ。 しかも勢いを加速させながら回転し続けているし、その振動が地面を伝わって俺たちの全身を包み込んでいる。 こ、この現象は……!? 「何? 何なの?」 ハルヒが珍しく狼狽している。まあ仕方がない。いきなりこんな超常現象が起これば、たとえ、普段から望んでいたとしても、いざ、現実になれば誰だって驚くに決まっている。 「空間移動魔法よ。ナガトさんの匂いを辿って、そっちに行くから。さ、早くキョンくんの手を握って」 「は、はい!」 言って、ハルヒは俺の手を強く握る。 「ほらキョン! あんたもしっかり握りなさい! 離すんじゃないわよ!」 「お、おう!」 なんたってアクリルさんが結構物騒なことを言ったからな。もし、アクリルさんが、いや、アクリルさんだけじゃない、長門、古泉、朝比奈さんとだって逸れてしまうのは絶対にまずいだろう。なんせ俺が有している力は集団でかかってこられると何の役にも立たんからな。 くそ、ハルヒは俺になんて中途半端な力を付けやがる。 「じゃあ行くわよ!」 アクリルさんが吼えると同時に光度と円を駆けるスピードの勢いが増す! そしてその高度が光の柱となって俺たちの周りに立ち上ったんだ! そのまま左手人差し指を天に向け、 「テレポテーション!」 アクリルさんが声を上げた刹那、俺はなんだか目の前が光に包まれ、体が光に溶け込むような錯覚を感じた。 ……さて、俺たちは首尾よく長門、古泉、朝比奈さんと合流できたわけだが…… 「キョ、キョンくぅん……!」 「なっ!?」 いきなり、朝比奈さんが泣きながら抱きついてきたのである。 あ、朝比奈さん……周りを見ましょうね周りを…… などと苦笑を受けべて心の中で思ってみても、もちろんどうにもならないのである。どうにもならないのだが…… 「ギンプロデクション!」 俺たちの周囲を空間ごと震わす大爆撃音! もっともそれはアクリルさんが創り出した透明感あふれる淡い光のドーム型障壁によって俺たちにはまったく被害は及ばない! まあ、この爆撃のおかげでハルヒ火山の噴火からは免れたことだけは確かだな。 ささ、今のうちですよ、朝比奈さん。名残惜しいのは俺も同じですが、離れましょう。 「そ、そうですね……」 小声で呟き二人は離れる。 そんな俺たちを見ることすら、ハルヒが忘れてしまうことが眼前で起こっているのである。 「何あれ?」 多少のシリアス感はあるものの、どちらかと言えばあまり緊張感を感じられないアクリルさんが問いかけたのはハルヒに、だ。 その視線は、長門がスターリングインフェルノを振るいながら、古泉が赤いエネルギー球をぶつけながら攻撃している、ティラノザウルスとプテラノドンを足して、凶悪にぬめり輝く牙を存分に見せつける体長10mほどの見るからに堅そうな漆黒の鱗に包まれた……そうだな、こう表現するしかないだろう。 『空飛ぶ怪獣』を数匹捉えているのである。それも上空には大軍でいるように見えるのだが…… 「あ、えと……あたしが今作ってるストーリーに出てくる敵キャラ……」 「ふうん。なるほど、センスは悪くないわね。確かに凶悪で強そうよ」 「そ、そうかな?」 アクリルさんが笑顔で感想を述べられて、ハルヒがまんざらでもない表情を浮かべている。 って、そんな場合か? などと心中でツッコミを入れる俺も実はあまり危機感を感じていない。 「で、あんなのがあとどれだけいるの?」 アクリルさんが悠然と問いかける。 「ううん……一応、ミクル、イツキ、ユキに一人当たり十匹から二十匹は担当してもらってその上に君臨するボスキャラを三人で協力して倒してもらうつもりだから合わせて五十匹プラス一、ここに見えてる分と他には一匹ってところです」 「了解」 頷いて、アクリルさんが戦場へと歩み出る。 おや? この結界術が消えない? 「ねね、ひょっとしてさくらさんが戦うの?」 まあそうだろうな。でなきゃ俺たちをここに残す訳がない。しかも俺たちはあの人の結界術に守られている。完全に観客に徹していられるぞ。 「うん! これはいいわね! ミクルが負傷して戦線離脱! ピンチに陥ったイツキとユキの援軍として異世界からキョンから事情を聴いた援軍が訪れる! もう急展開ってやつよ!」 「え? ということはあたし、危ないことしなくていいんですかぁ?」 あのー朝比奈さん? あなたは主人公のはずなのですが? なのにその晴れやかな笑顔はどうかと。 というか、何の伏線もなしにストーリーの中の『俺』が異世界人と知り合うのもなんだかなぁ。 「理由付なんて後から何とでもなるわよ! だいたい少年誌だと売れている漫画家になればなるほど、伏線を無視したり、無かったことにしたりして行き当たりばったりでストーリーを作っていることが多いんだから!」 いや、それは多分に偏見が混ざっていると思うぞ。何よりお前が一番伏線無視して行き当たりばったりだろ。 しかしまあ朝比奈さんが傷つく姿は見たくありませんからミクルの戦線離脱はある意味、理想の展開だろうか。 もちろん、長門や古泉のことも心配だが、あの二人は勇猛果敢に立ち向かう役割の方が似合っている気がするのでこの際、頑張ってもらうでよしとしよう。 すまん、長門、古泉。 もっとも、それはアクリルさんがいるから思えることなんだ。 なんて思ってる間に、アクリルさんが地を蹴って、宙を駆けるように舞う! 「スターダストエクスプロージョン!」 と、同時にあの、銀河を駆ける数多の流星を彷彿とさせる広範囲粉砕魔法を発動させる! さすがに体長十メートルだけあって、全て吹っ飛ぶという訳にはいかんが、そうだな、十匹は吹っ飛んだ! で、いったん、着地して、古泉と長門の前に立つ。 「これはこれは」 「頼もしい助っ人」 古泉は会心の笑顔で、長門はいつも通りの至極冷静な表情で呟いたのではなかろうか。後ろ姿だから確認はできんがそれくらいの確信を持てる声色だったしな。 「さぁて、一気に片付けるわよ!」 再び、上空の怪獣を睨みつける古泉、長門、アクリルさん。 おそらく三人には勝利を確信した笑顔が浮かんでいるはずである。 「セカンドレイド!」 怪獣の口から撃ってくる妙に赤紫の炎を全身で纏った赤いエネルギー球をバリアにして宙を舞いながら流れるように接近しつつ、勢いに頭髪を風圧になびかせる古泉が懐に飛び込んで放ったエネルギー球が一匹の翼竜を粉砕すれば、 「……」 三匹ほどの翼竜に、これまた宙に浮き、見事な誘導を仕掛ける避け方でわざと囲まれた長門がスターリングインフェルノを新体操選手のリボンよろしく、どこか見惚れてしまう手さばきで振りかざす。 刹那、翼竜たちが漆黒の闇に喰われて消滅する。 で、もう一人、 「アルゲイルフォルス!」 アクリルさんが開放した、あたかもマグマのような業火の孔雀がまた一匹、翼竜を飲み込んでいるんだ。 もちろん、翼竜たちが攻撃していない訳じゃない。 しかし、この三人の動きに対応するにはその巨体が邪魔しているのだろうか、捉えることができないんだ。それにしても古泉と長門の攻撃力が上がっているような気がする。なんたってアクリルさんが戦線に加わるまでの攻撃では翼竜一匹すら三人がかりでかかって行かないと倒せなかったんだからな。それがいきなり一人一匹は確実に素早く一撃で倒せている。これもアクリルさんが何かしたのだろうか。三人の前では五十匹という数がそんなに多くないように見えなくもない。 まあ、もっとも、 「ひぇぇぇぇぇぇぇ!」 「うぐ……」「ん……」 朝比奈さんが頭を抱え込んでしゃがみ込み、俺は右手を、ハルヒは両手を目の前にかざしてしまうほどの対峙の余波が俺たちを襲ってくるんだがな。 アクリルさんの結界術の中にいるから、ダメージはまったくないが、踏ん張らなきゃならんほどの多少、強めの風圧は来るし、地響きを引き起こすほどの振動もある。周囲がどうなってるかは瞳に飛び込んでくるわけだから言わずもがなってやつだ。 ……こんな凄い状況下に、あいつらはいるのか……? 戦慄を覚えずにはいられん。 「ねえキョン」 「何だ?」 「とんでもないわね、この臨場感」 「まあそうだな。なんたって夢でも幻でもない。今、現実に目の前で起こっているわけだからな。おっと心配するな。確かにお前がこの世界を創り出したが、今回は別の異世界を存亡の危機に立たせている訳じゃないらしい。さくらさんがそう言ってた」 古泉からはこの世界は広がらないと聞いているし、表現はされてなかったが、俺はアクリルさんからそう聞かされていた。 そんな俺の言葉に、どこか安心したのか、ハルヒが笑顔を浮かべて聞いてくる。 「この凄さをあたしに表現できると思う?」 なんか場違いな会話だが、ま、それはそれだけ俺たちがあの三人を、いや、正確にはアクリルさんを信じてるってことだ。俺たちを守ってくれているのは勿論、古泉、長門を決して危ない目に合わせないってな。その確信を持つことができる表情をあの人はしていた。 「お前ならできるさ。いや、これ以上のとてつもないものを表現できると思うぜ」 「ふふっ、ありがとうキョン。そう言ってもらえると嬉しいわ。ますます創作意欲が湧いてくるってもんよ」 それはいいが、頼むから今後は紙の上だけにしてくれよ。今度、俺たちが巻き込まれた時は助っ人がいるとは限らんからな。 勝ち気いっぱいの笑顔を浮かべるハルヒに苦笑を浮かべる俺。 「どうやらボスのお出ましのようですよ」 ん? 古泉がすぐそばに立ってやがる。よく見ればその反対側には長門も。もちろん結界の外ではあるんだがな。 もちろん、アクリルさんは俺たちの正面だ。 てことは、あの五十匹は片付いたってことか!? すげえ! 「さくらさんのおかげですよ。本当に助かりました。あれだけの数を一人で三分の二は倒してしまったのですからね」 だろうな。あの人のとんでもない強さは俺も向こうの世界で目の当たりにした。 なんせ攻撃属性の水中生物相手に水中で、それも百匹以上を一人で俺ともう一人を守りながら殲滅させてたし、怪獣付野盗の巣窟を秒殺した御方だ。 しかも、お前の云う《神人》をたった一人で数えきれないほどの数を吹っ飛ばした蒼葉さんよりも戦闘力があるってことらしいからな。ひょっとしたら今回の翼竜数程度じゃ数の内に入っていないのかもしれん。 「……今の話は初めて聞きましたよ? あの《神人》を……たった一人で滅ぼせる方がおられたのですか……?」 古泉が愕然たる表情を浮かべているが、 「すまん……だが、この話は勘弁してくれ……重い出来事を思い出してしまう……もっとも、それは背負っていかなきゃならんことなんだがな……」 「だよね……」 俺とハルヒは沈痛の表情を浮かべて俯くしかできない。そんな俺たちの様子に、古泉はさらに何かを聞こうとしていたみたいだが、俺たちの心中を察してくれて、それ以上は聞いてこなかった。 ちなみにハルヒはあの世界の青白い巨人のことを知っているので傍にいようが、古泉とこの話をしていようが問題にならん。名前については古泉が話したしな。 代わりに視線を再び前方へと向ける。 見れば、大地を揺るがせながら何か山みたいなものが地平線の彼方からのように近づいてきつつあったのである。 涼宮ハルヒの遡及Ⅶ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/499.html
涼宮ハルヒ無題1 涼宮ハルヒ無題3 涼宮ハルヒの停学 涼宮ハルヒの改竄 涼宮ハルヒの入学 涼宮ハルヒの異変 涼宮ハルヒの悲調 花嫁消失 ハルヒの想い 世界の終わりに 涼宮ハルヒの赤面 ‐ 涼宮ハルヒの羨望 ‐ ハルヒの実験 涼宮ハルヒの秘密 プリンとケーキ 星に願いを 涼宮ハルヒの猛暑 涼宮ハルヒの結婚前夜 涼宮ハルヒの泥酔 長すぎる10分間 涼宮ハルヒの願望 涼宮ハルヒの憂鬱キョンとハルヒの絆 10月8日、曇りのち雨 閃光のハルヒ 涼宮ハルヒの預かり物 涼宮ハルヒのデート騒ぎ? それは誤解で勘違い 何よりも宝物 超能力 涼宮ハルヒの計算 涼宮ハルヒの嫉妬 ミニチュアハルヒ ベル 3点セット 涼宮ハルヒのネコ にわか雨の訪問者 ハルヒの寝言 涼宮ハルヒの独善(シュール・BadEnd?) 涼宮ハルヒの情熱 涼宮ハルヒの出産 あの日からの願い Amemorywithouttheend 涼宮ハルヒの日記 涼宮ハルヒの小説 ただの人間 ヒント キョンの死…そして 悩みの種 続く空 涼宮ハルヒの仮入部 はい、メガネon 【時のパズル~迷いこんだ少女~】 涼宮ハルヒの後悔 (BadEnd) 涼宮ハルヒの恋心 涼宮ハルヒの誤解 涼宮ハルヒの出会い 缶コーヒー、ふたつ LOST 恋の病・恋の熱 ステビア(ステビオシド) お祭りの後で 涼宮ハルヒの場合 彼岸花(微グロ・微鬱・BadEnd注意) loveandmusic もう一つのサムデイ・イン・ザ・レイン 初めてのデート すれ違いの恋 涼宮ハルヒの恋人 最初のデート 涼宮ハルヒのX-FILES 本の虫 サムデイ・イン・ザ・レイン(WhileKyonwassleeping) alongwrongway wishuponastar ~涼宮ハルヒがデスノートを拾ったら~ (Bad End) いじっぱり 甘えん坊モード キョンになっちゃった 眠れない夜とイタズラ電話 敬愛のキス fundamentallove やすらぎ 白い天使 サムナンビュリズム 涼宮ハル○の憂鬱 涼宮ハルヒはしあわせ(BadEnd注意) 浴衣とお祭り 言えないよ 愛のかたち 渋皮やさしく剥いたなら 涼宮ハルヒのライバル クリスマスプレゼント 教科書と嫉妬 涼宮ハルヒの告白 完全ウリジナルストーリー 涼宮ハルヒの労い
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/3348.html
「あなたもいっその事、この状況を楽しんでみては?」 断る。俺は気が狂おうとも冷静でいるべきキャラなんだよ。 「キョン君~!これどうやって止めるんですか~?ひえぇ~~~」 ハンドルを離さないと止まりませんよ。それがコーヒーカップというものでしょう。 「こんな古い・・・いえ、珍しいアトラクションは初めて体験するもので・・・とめてぇ~~~」 む・・・?あいつら・・・ハルヒに長門、何回目だよそのジェットコースター。 「キョン!このジェットコースターは素晴らしいわ。なんたって何度乗っても飽きないんだもの!」 あぁ、どうしてこうも俺からは日常がはるか彼方へ遠ざかっていくのか・・・やれやれ。 ここがどこかって?見りゃ分かる、遊園地だ。 遊園地でハメを外すのがそんなに恥ずかしいかって?そんな訳あるはずがないだろう。 俺だって、ここが普通の遊園地ならそりゃある程度箍(たが)を外して遊びまくるさ。 しかし残念なことにここの遊園地は“普通”などではない。 この遊園地は──ハルヒの夢の世界なのだ。 古泉が言うにはここ最近のハルヒの退屈度の進行が原因なんだとさ。 その退屈をどうにかするってのが課題じゃなかったのか。と聞けば 「えぇ、仰るとおりです。 ただ今まで退屈による不満で発生する閉鎖空間で判断してたんですが・・・ここ最近は全く発生していなかったんですよ。 言い訳に聞こえるかもしれませんが・・・その不満をこういった形で発散させるということは、何か涼宮さんに変化が起こりつつあるのかもしれません。」 不満が原因でたまたま見てしまったこの面白おかしい(俺には面白くもなんともないが)夢を現実にすりかえようとしている最中なのだと。 哀れ世界。俺が世界なら確実にビッグバン起こして怒りをぶつけてるところだ。 もちろんそのまま放っておくわけにはいかない。 が。もうすでに現実世界とほぼ融合しているために、ハルヒに向かって「これは夢だ!」なんて無理やり理解させてしまえば現実世界もろとも完全崩壊の恐れ。 もう今更なんだが・・・本当なんでもありだな、ハルヒ。 解決策はといえばハルヒに自力で夢だと気づいてもらうこと。 そんなこと超簡単だろう?と思うだろう? 考えても見てくれ。俺たちが夢を見ているとき、その状態で今起こっていることは夢なんだ!と気づけたことが何回あった? つまりはそういうことである。 それに、覚めた後にはありえない夢だったと気づけても、夢を見ている最中には可笑しいなんてこれっぽっちも思わないだろう? そう。だからこそハルヒは乗るたびにコースの変わるそのジェットコースターに一つも疑問を持っていない。 ちなみに朝になるまで待てば自然に起きるだろう、なんて解決策は真っ先に断たれたぜ? さっきも言ったが、もう現実とごっちゃになりかけ。現実の時間概念は今のハルヒには作用しない。(長門談) どうにかハルヒに自力で夢だと気づいてもらう必要がある。 運が悪ければこの世界はこの遊園地の敷地内だけになり、5人は一生をここで終えなければならなくなるのだ。 だからな、みんな。遊ぶのもいいがもう少し真剣に考えてくれないだろうか。 時間がかかればかかるほどこの世界の侵食は進み、元に戻れるかは困難になるって言ったのはお前だぞ、長門。 ・・・その長門はハルヒと33回目のジェットコースターを楽しんでいるが。 「いや~、参りましたね。」 あのな古泉。笑顔でゴーカートをさんざ楽しんできて「参った」なんて、普通の人間なら言わないぜ。 「フフ。でもこんな経験、多分二度とできないと思いますよ?」 無人のカートが勝負相手になってくれるゴーカートなんざ、二度も三度も楽しみたくはないね。 朝比奈さんは・・・今度はメリーゴーラウンドか。白馬にお姫様のように座る姿が美しい。 ハルヒ、どうせ創るならなら売店も組み込んで創ってほしかったぜ。ここにカメラが無いのが非常に惜しい。 まぁカメラが存在しようと現実世界には持ち帰れないだろうという答えに3秒で到達したので諦めるが。 しかしよく逃げないもんだな。あれ。 「メリーゴーラウンドって文献でしか見たこと無いんですけど、本物の馬なんて使ってるんですね~。私、びっくりしました~。」 ・・・どうしよう。本当のメリーゴーラウンドがどんなものなのか教えた方がよろしくないか? アトラクションは全自動。俺たち5人以外誰もいない。ついでに出口も存在しない。 もはや牢獄と言ったほうがいいだろう、これは。 なんて考えながらジェットコースターに目をやると、それはもう何回転すればゴールに着くのか分からないような渦の塊になっていた。 多分そろそろジェットコースターに飽きるだろう。 さぁて、どうやってハルヒに夢と気づいてもらうか。 古泉と2人、バイキング形式で従業員のいないレストランフロアに入り、栄養を取りつつ頭を働かせる。 無人ゴーカートを見ても、タイヤのついたコーヒーカップを見ても、実物仕様のメリーゴーラウンドを見ても、 変幻自在のコースを持つジェットコースターを見ても何も疑問に思わないんだぜ? どうすればいいんだよ。 「逆に考えればいいんですよ。この世界は涼宮さんの退屈による不満で創られた世界。 ならば楽しませればいいのですよ。」 誰が? 「勿論──あなたですよ。」 気が滅入る。ハルヒと2人で本物の殺人鬼が出てきそうなお化け屋敷に行ったり、 宇宙まで届いてそうなクレイジータワーに乗ったり、高速回転中の観覧車に乗らなければならんのか? その前にショック死すると思うぜ、俺。 「それもそうですね。あなたが死んでしまっては元も子もない。」 笑顔で物騒なことを言うな。 「失礼。ですが・・・少しばかり危機が迫っているのかもしれません。周りを見てください。」 いつのまにか夕日が差していることに気づく。 「説明していただこうか?」 笑顔のまま溜息をついた後、こんなことを喋りだす古泉。 「このまま夜になれば、恐らくあちらのホテルに泊まることとなるのでしょう。」 指差す方を見てみると、敷地の中央に聳え立つ豪華なホテルがそこにあった。 「夢の世界で眠りにつく。ということはです。」 普通の人間ならば寝て夢を見て、起きれば現実世界。だが・・・ 「次に目を覚ました時、完全にこの世界は固定されてしまうことでしょう。」 ・・・どうすればいい? 隣に置いてあったリーフレットの束からチケットを取り出す古泉。 「ふぅ、やはりありましたね。」 それは一体何なんだ。何故お前は既に知っているかのようにそれを手に取ったんだ? 「これはちょっとした賭けでしたよ。いえ、むしろ涼宮さんの賭けと思った方がよろしいかと。 今は僕が探し当てましたが、これは僕がいなくても必ずあなたの元に現れたはずです。」 さぁ、とそれ以上何も言わずチケットを俺の手に押し込む古泉。 ───── ────────── ─────────────── やれやれ。ようやく現実世界に戻ってこれたわけだが。 ああいった面白おかしな世界もまぁ全く楽しくなかったと言えば嘘になるが・・・ あれから数日。今日は何度目になるのか忘れたがいまだ皆勤賞のSOS団不思議探索の日だ。 あれから結局どうなったかって?古泉も聞いてきたが特に何もないのだ。 あの後、手にしたチケットを見てみるとそこにはディナー招待券と書かれていた。 ハルヒと食事をしてご機嫌を取れってことか。しかしどうやって誘うべきか・・・ とベンチに座って考えていたら不意に後ろに現れたハルヒに奪い取られてしまったのだ。 一部始終を語るとすれば・・・次の通りだ。 「何のチケットと睨めっこしてるのよ。一人で楽しもうなんて、そうはいかないんだから! なになに・・・?・・・ディナー券?」 あぁ、一緒にどうかと思ったんだが。 「ふーん・・・まぁ、行ってあげてもいいわよ?このままじゃ券も勿体無いしね。 でも、他の3人はどうするの?食事。」 夢の中では少しは気を回せる性格なんだな、お前。・・・それはともかく。 「古泉たちなら別のチケットで他のレストランで食事中だ、今頃は。」 こんな誤魔化しかたでバレやしないかとは思ったが、流石夢世界ハルヒ。些細なことは疑問にはならない頭のようだ。 ・・・もしかしたら分かっているもののあえて気づかないフリをしてるのかもしれんが。 着いたレストランはそれは豪華なレストランだった。 やはり人は誰もいなかったが。 チケットに書かれていた席には既に料理が並べられている。 「演出かしら?斬新だわ。」 と一人納得してしまうハルヒ。 今さっき出来たばかりの料理のようで、全く冷めていないようだ。 さぁ料理を食べようとさっさと席に着くハルヒと俺。 何故そんなことを言ってしまったのか?と自問すれば、このままでは何も進展しないぞと思ったんだろうな、俺は。 ハルヒに現実に戻ってもらうために、こんなことを口にしてしまったのだ。 「なぁ、ハルヒ。今日だけじゃなく、いつかまた2人で遊びに来たいな。 最近出来た海辺のテーマパークとか結構評判いいらしいぜ?・・・どうだろうか?」 次の瞬間、俺はまたもベッドの中にいた。 夢だったのかといえば確かに夢だった。 時間は・・・明日にはなっていなかった。紛れも無く今日の明朝であり、登校前のバタバタしなくてはならない時間までまだ3時間程余裕がある。 携帯を確認してみると3件、すなわち、古泉、長門、朝比奈さんから1件ずつ着信が入っていた。 おかしな事を言っていると自覚するが、その着信によってあれが夢だったと確信できたのだ。 「まぁ、何があったのかは知りませんが、とにかくあなたには感謝しっぱなしです。今回もありがとうございました。」 よせよ。俺はただハルヒと飯を食っただけだ。・・・いや、食うことは出来なかったが。 あぁ、しまったな・・・あの料理食べてからにすりゃ良かったな。勿体無いことをしたもんだ。 「ところで今日の活動は涼宮さんから聞いていますか?」 いいや?どうせ今日もいつもの通り、なんのプランも無いまま街をうろつくだけだろう? 「そうでしたか。いえ、それなら涼宮さんから直接聞いたほうが良さそうです。丁度・・・ほら、やってきましたよ。」 何のことだろうか。相変わらずハルヒはこの団員1号の俺には連絡をよこさないことが多い。 「あら、珍しいわねキョン。今日も遅刻してくるのかと思ったのに。」 ここ5連続で俺の奢りだったからな。たまには早く来ておいて誰かに奢ってもらうのがいいだろう。 ・・・それよりも。 「今日は何をするんだ?俺以外全員知っているようだが何も聞いていないぞ、俺は。」 「あれ?言ってなかったかしら。手頃な場所にいるからまた伝えるの忘れちゃってたわ。まぁ、たまにはこんなこともあるでしょう。」 いや、いっつもだろう。 「そんなことよりこれよ!ほら、みんな1枚ずつ取って取って!」 なになに・・・?シーサイドテーマパーク・・・? 遊園地のチケット・・・か。なるほどね。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/4981.html
「ねぇ、キョン。ゲームで1upキノコとかあるじゃない。」 「ああ。」 「『1人増える』ってどんな感じなのかなぁ?」 「……。」 「増えるといってもドッペルゲンガーみたいに同時に存在してるわけじゃないじゃない? 自分が死ぬともう1回、って感じで自分が出てくるわけでしょ?それってどういう現象かなぁ?」 「……。古泉、パス。」 「え……、長門さんお願いします。」 「……あ「お茶のお水汲んできますね!」さひ……。」 「そもそも最初は『3人』で始まってるじゃない? 自分『3人』って何?」 「涼宮ハルヒが1人増えた。」 「なんですと!?!? いったい何食ったんだ!?」 「1upキノコ。1人増えたことによって今4人いる。」 「なんだよその1upキノコって、おい4人!?」 「ミスしても大丈夫。」 「『ミス』にも引っかかるし、『大丈夫』にも突っ込み所があるな。」 「ああん! もう! また穴に落ちたわ! あと100機は欲しいところね!」 「とりあえず1upキノコで自分が増えるのは納得したわ。」 「どうやったら納得できたんだよ。」 「自分の死体はどうなるの?」 「……。」 「敵のキノコにぶつかったくらいで死ぬのも納得いかないわね。」 「毒キノコなんだろ……。触ったくらいで死んでしまう猛毒の。」 「納得できないけどまあいいわ。それより自分の死体よ!」 「1upキノコが納得できて猛毒が納得できないのかよ! 死体? 古泉任せた。」 「長門さん、どうぞ。」 「……待ってわたしが水汲みに行く、いつもお茶を淹れてもらっているお礼。」 「いいえ! これはあたしの役目なんです!」 「……………………………………………………。」 「…………長門、そんなに俺を見つめるな。そうだな、死体が生き返ってスタート位置にワープするんだろ。」 「納得できないわ! ワープできるならとっとと敵のボスの所まで行きなさいよ!」 「知るか!」 「問題発生。」 「どうした? 死体が歩き出したか?」 「違う。待機中の3人の涼宮ハルヒが実体を得た。」 「な!? それは非常にまずいんじゃないのか!?」 「幸い3人とも意識はなく、閉鎖空間で寝ている。今頃古泉一樹が驚いていると思われる。」 「神人が暴れているのか。」 「涼宮ハルヒにとって死体と2人目以降の存在について納得のいく答えが見つかった。もう収まるはず。」 「あいつ以外誰も納得できない答だな。」 「んー、穴が死体で埋まって平坦になれば楽なのに~。」 「あいつら絶対おかしいわ。」 「ゲームだからな。おかしいのはお前だ。」 「だって垂直跳びで身長の3倍以上の高さを跳べるのよ!? 身長が170cmとして、えと510cm、5mの高さ跳べるのよ!? それだけじゃないわ! 5mどころか、うん100m以上の高さからちゃんと着地して、 何事もなかったかのように走りだせるのよ!」 「お前にぴったりのゲームがある。あとで貸してやる。」 「あ、ありがと。それはともかく、なんであんなに高さ関連に強いわけ!?」 「えーとだな、そう! ドクター中○が発明した靴があるだろ? あれだ。あれを履いているんだ。」 「あのジャンピングシューズ!? うそよ! ありえない! だってあたしあれ買ってみたけどジャンプどころか転んで捻挫しただけだったわ! とんでもない不良品よ!」 「買ったのかよ。……それはいつの話だ?」 「小学生のころ。」 「だからだ。今は改良されている。しかもプロが履いているからな。」 「!」 「情報の伝達に齟齬が生じるかもしれない。でも聞いて。 ドクター○松がノーベル物理学賞にノミネートされた。」 「オーケイ! アイシー! アンダスタン! わかった! 悪いがノミネートを削除してくれ。」 「大丈夫。すでに削除済み。」 「長門、愛してるよ。」 「もっと冷静な時に言って欲しい。」 「くぉらぁ! このクソ主人公!!! なんで膝の高さから落ちて死ぬのよ! 根性見せなさい!!」 「キョン、ゲーム機まで貸してくれてるのに言うのはなんだけど、なにあのゲーム!? あそこまでひ弱な主人公初めて見たわ! 」 「ああ、史上最弱の主人公として有名なゲームだ。」 「最弱過ぎ! スタートして1秒で死んだわ!」 「それを考えると100m落ちても無事な髭オヤジの方がいいだろ?」 「そうね。少なくとも現実世界の人間より弱い主人公よりマシだわ。 それより聞いて! さらに不思議なことがあるの!」 「……キノコを食べると大きくなることか? 花を食べると火の玉が出せるようになることか?」 「……それも不思議ね。170cmの人が2倍の身長に。340cm! ちょっとどういうこと!?」 「しまった。……おい長門!急いでどこへ行く!?」 「朝比奈みくるとお茶の水汲み。」 「そうか、手伝おう!」 「ちょっとキョン! キョン!! ……古泉くん、あなたならわかるわよね? どうしてキノコを食べると大きくなるのか。」 「そ、そうですね。キノコといった菌類や植物には解明が進んでいない部分が多くて 今でも新種発見や、新しい薬効成分が見つかったりするそうです。 大きくなったり火の玉が吐けるキノコや花が存在してもおかしくありません。」 「さすがは古泉くん! と、言いたい所だけどさすがに骨格は変わらないんじゃない?」 「いえ、大人を子供にする『APTX4869』という薬がありまして…」 「本当!?」 「よろしくお願いします。」 「わかった。wせdrftgyふじこlp」 「子供の古泉くんってかわいかったですね♪」 「……。」 「ふう。長門さん、ありがとうございます。まさか小学生になるとは……なぜか睨まれているんですが?」 「また穴……。あたし、もしかしてヘタクソ?」 「この前聞くのを忘れてたわ。ちょっとキョン! 聞いてる!?」 「ああ、当然だ。だから朝比奈さんも一緒に聞いてください。長門、お前もだ。」 「なんで鍵を閉めるんですか~~!?」 「何やってるの? で、キョン! 100mの高さから落ちて無事な主人公がなんで穴に落ちて死ぬのよ?」 「古泉。」 「長門さん。」 「……………。」 「え、えっと涼宮さんお願いします。」 「あたし!? んーと、あれ? キョン! あたしの質問よ!」 「正直わからん。古泉任せた。」 「長門さんお願いします。」 「あたし、長門さんならわかるんじゃないかなって思うんですけど。」 「え、有希わかるの!?」 「……………………………………………………………………………………………………らぴゅた。」 「! だからさすがに助からないのね!? さっすが有希!!」 「すまん長門! 俺たちが悪かった!」 「ごめんなさい! あたしが調子に乗ってました。ごめんなさい!」 「お願いしますよ長門さん。早く機嫌直してください。」 「なんでもおごってやるから早くこの落ちてきたロボットを何とかしてくれ!!!!」 「あと申し訳ないんですがあの天空の城も何とかして欲しいんですが……」 「ここは上空1万m、この穴に落ちたら命はない。……あぁ、ミスった! ダメ! 緊張するわ!」 「ねぇ、キョン……。人の命ってお金で買えるのかなぁ……。」 「なんだ、えらく深い話じゃないか。」 「今まであんまり意識してなかったけど、ちょっと気になってきて……。」 「そうだな、病院や薬が買えるとかで金持ちと貧乏人の寿命の差が出てきてる事を考えると、 金で命は買えると言えるかもしれん。」 「それって寿命を買ってるわけじゃない? そうじゃなくて命そのものってどうかな?」 「う~ん、クローン技術はある意味金で命を買ってると言えるかもしれんな。」 「その費用って金貨100枚くらい?」 「…………真剣に考えてた俺がバカだった。コイン100枚で1upって話じゃねぇか!!!」 「重要な話よ! あの巨大な金貨なら十分価値があるわ!」 「ハルヒよ、あれはデフォルメだ。実サイズだと画面2ドット分がせいぜいだ。わかるか?」 「ええ!? ちが……うの……?」 「なんでショック受けてんだよ。」 「あれだけ大きい金貨だと人間とか買えるのかな、と思ったんだけど……。クローンなんてもっと無理よね……。」 「えらく問題発言だぞ。それは。」 「金の価格が暴騰している。」 「そうきたか……。」 「昨日と比べ3倍の値段がついている。経済はもちろん、半導体機器製造にも影響が出るのは間違いない。 このままでは弱小国の破綻や戦争が勃発し世界が崩壊する可能性がある。」 「閉鎖空間じゃなくても世界を危機に陥れることができるのか……。」 「でも任せて。情報操作は得意。佐渡島の金脈を復活させた。あと石見銀山に金の鉱脈を追加した。 埋蔵量は現在地球上にある金の量の倍。」 「………。」 「…………ちが……うの……?」 「……違うな…。」 「うわwww無限増殖wwwキタコレwwwww」 『緊急事態。待機中の涼宮ハルヒが増え始めた。』 「……ハルヒめ、とうとう気づいたか!」 『このまま増えすぎると閉鎖空間を内側から破るかもしれない。 だからあなたに待機中の涼宮ハルヒの有機情報連結の解除の許可を求めたい。』 「俺に!?」 『あなたは彼女の鍵。早く、許可を。』 「えらく信頼されているな。だが『急いで! 許可を!』な、えっと長門?」 『早く! 時間がない!』 「落ち着け、大丈夫だ。倍々ゲームでなくて1人ずつ増えてるだろ?」 『……増えている事には変わりない。』 「今何人だ?」 『125人目、126人目、!! 全員消えた。』 「長門は知らないだろうが、裏ワザに『無限増殖』ってのがあるんだ。 だが『無限』といいつつもなんだかコンピューターの関係で 126人以上はマイナス扱いで死んだらゲームオーバーになるんだ。」 『恐らく2進数の補数によるマイナス表現と思われる。』 「さすがだな、長門。……まあいつでも相談してくれ。少しでも力になりたい。」 『感謝する。あなたに負担ばかりかけていて申し訳ない。……ひとつお願いがある。』 「なんだ?」 『涼宮ハルヒが遊んでいるゲームの内容が知りたい。詳しく教えて欲しい。』 「ああ、お安い御用だ。今度の土曜日に俺んちに来てくれ。同じのがあるぞ。」 『ぜひお邪魔したい。』 「タイムオーバーまで無限増殖。どれくらい増えたかしら♪ !!! なんでゲームオーバーなのよ!!! あんだけ1up、1upって言ってたじゃない!!」 「ねぇ、キョン……。生物って神秘よね。ちゃんと寿命があってそれまでに子孫を残す。 細胞分裂には限界があって、その限界を超えてしまった細胞はもう分裂しない。 でもそのルールから外れて細胞分裂するものは癌となってその生命体自体を殺すの。」 「………無限増殖しすぎてゲームオーバーになったんだな?」 「………なんでわかったのよ?」 「みんな一度は通る道だからな。どうせどっかのサイトみて試したんだろ? 注意書きなかったか?」 「あとで見た。もっとわかりやすく書くべきだわ。」 「でもやり方がわかったんだろ? カウントして増やせばいいじゃないか。」 「3時間やって成功したのは1回こっきりよ……。キョン! あんた出来るの?」 「ああ、百発百中じゃないがそれなりの成功率だと思うな。」 「教えなさい!」 「へっ?」 「やり方教えなさいよ! いいわ、今度の土曜日にあんたの家に行くわ。決定!!」 「なっ! 俺の都合は無視かよ!」 「なに? どうせ暇してるんでしょ? それとも何か都合が悪いことでもあるの?」 「い、いや…。そうだ朝比奈さん! ついでに俺んちに来ませんか? 長門、古泉、お前らもどうだ!?」 「了解。」 「あ、有希……」 「いいいですね。さすが団長、たまにはレクレーションでテレビゲームというのもいいアイディアだと思いますよ。」 「あの~あたしテレビゲームはよくわからないんですが……。」 「大丈夫ですよ! すぐ覚えれますよ。」 「ん~~~っんん、いいわ! キョンの家に朝9時集合よ!」 「9時!?」 「古泉、今日はなんで俺の味方してくれたんだ?」 「いえ、長門さんが本当に人を殺しそうな視線を送ってきたので……。」 「……すまん、長門。」 「……………………………………いい。」 「……すまん。」 「5分前に来たのに最後なんですね……。さすがにキョンくんも迷惑じゃないですか?」 「みくるちゃん、最後なのはまだ顔を洗ってるキョンよ。」 「おふたりが早く来すぎてドタバタしたせいだと伺っていますが?」 「そうよ有希、1時間前に来るのはご家族にも迷惑よ!」 「……着いたのは同時のはず。」 「そこでジャンプ! そう、ちょっとずらして。で、もう一回ジャンプ!」 「! 出来た! 出来たわ!! いい感じよキョン! もうコツは掴んだわ!!」 「う~ん、さすがに最終面は難しいわね。そろそろストックがなくなってきたわ。」 「おい、ハルヒ、「うっさい! いま話しかけんな!」…。」 「うそ、ゲームオーバー!? もう一回…。」 「おいハルヒ。ハルヒ~。ハルハル~~。」 「シャミがなついてるのはキョンくんと有希ちゃんだけなんだよー。ずるいよー。」 「ねこさんいいなぁ。いいなぁ。」 「長門さんの番ですよ。」 「うりゃーーーー!! よしスター出現!!」 「あがり。」 「また長門の勝ちだな。まさかトランプの裏表の特徴を全部記憶しているとか?」 「全部ではない。汚れや傷のあるものだけ。」 「まじかよ……。」 「では次はトランプ以外のゲームをやりましょうか?」 「うぉ!? どこにそのボードゲームを隠してたんだ!?」 「よっしゃー!! クリアー!!! やった!! やったわキョン! あれ?」 「あなたはずるい。わたしのプレイ時間がなくなった。」 「長門、あのゲームは面白いか?」 「ユニーク。20年以上の前のゲームにしてはハイクオリティ。」 「そうか。クリアできたか?」 「正規ルートはクリアした。だがまだ全部終わっていない。」 「全部?」 「マイナス面。」 「そ、そうか。」 「あー!! 何回やっても何回やってもエアーマンが倒せないわ!! キョンに電話しよ!」 スーパーハルヒ 完
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/2966.html
涼宮ハルヒの悲調 ●第一部 何をしていたか思い出すのに、しばらく時間を要した。 やがて目を開けるのを忘れていたことに気づく。 カーテン越しの世界から、濁った光が溶け出している。 そういえばずっと雨だなあ、と口に出すと、ベッドで寝息を立てる朝比奈さんが何か呟いた。 ――何をしているんだろう。思い出したはずなのに、また忘れている。 SOS団が一週間前に解散した。理由は一つ。ハルヒが死んだ、それだけだ。 この事態を飲み込むのは、酒に弱い俺が飲み慣れない日本酒をゲロするよりも早かったが、それで爽快、というわけにはいかなかった。 うすぼんやりとした哀しみはここの所続く雨みたいに降りしきる。 積もることはない。薄い涙の膜が脳みそを綺麗にコーティングしてるみたいだ。 うすぼんやりのままだ。たぶんずっと、おそらくだが。 死んだ次の日、俺たちは――旧・SOS団員は――部室に集まった。 あいつのつけていたコロンの匂いがした。あいつの座った椅子があった。あいつの描きかけの下手糞な絵が。あいつのバニー服が。 誰も何も言わなかった。風が吹いて、カーテンが揺れた。古泉が口を開いた。 「彼女が……涼宮さんが亡くなったことによる影響は……ありません。彼女は死ぬ直前、自らの能力を最大限に利用し――書き換えていたのです」 「……どういうことだ?」 「この世界がこのまま続く、ということですよ。あえて言うなら、僕は普通の人間に戻りました。朝比奈さんはこれからの未来を抹消されていて……いや、どう説明すべきでしょうか? つまり……」 「あたしは、未来人ではなくなった……ってことです。本部とも連絡は取れなくなってました」 「そういうことです。彼女の”本部”も、僕の”機関”も、いずれは自然消滅するでしょう」 結局そのお偉方が何をしていたのか、俺は知ることもできんわけか。それはいいが、じゃあ長門はどうなるんだ? まさか―― 「ええ、そのまさかです。彼女は人間になりました。ありえないことですが……創造主がそう望んだんですから」 改めてハルヒの恐ろしさに気づいた。古泉曰くの「神いわゆるゴッド」とはこういうやつなのだ。 強情で意地っ張りで負けず嫌い。ギリシャ神話に加えて欲しいぐらいだ。 しかし、そう望んだ……とは。 「彼女は……この世界が続くことを願ったのです」 「……」 血液がものすごく遅く流れているのがわかる。俺は力を失って、団長の椅子に座り込んだ。 ありがとよ、ハルヒ……? でもな、意味がねえ。お前の力とやらはまるっきり役立たずだ。 お前がいないんじゃさ。 翌日にSOS団は解散した。 誰も止める者もいなかったし、止めようとも思わなかった。 全校朝会などが開かれて、ハルヒの死は大変に痛ましい出来事だと力説する校長。泣く女子。 俺は曖昧に顔を歪めてみたりもした。それだけだった。 本当に悲しいと涙が出ないらしい。 いつか堰が切れる日が、怖くて仕方がない。 ある雨の日、朝比奈さんは俺を呼び出した。 「もう、あたし、キョン君と仲良くしてもいいみたいなの……だ、だから……」 「朝比奈さん……」 俺たちは急速に近づいた。全校生徒が羨む美女だ。俺は幸せ者だっただろう。 だが。いつだって、ハルヒの顔は脳裏にちらついていた。 彼女と薄暗い部屋でセックスに耽っていても、ハルヒは俺の心の片隅に、確実にいた。 盲目的に俺は彼女を欲した。呼び名も「朝比奈さん」から「みくる」に変わり、彼女も俺を名前で呼ぶ。 ただただ、お互いがお互いを求めていた。何度も何度も交わり、全てを忘れた。 ――そうか。忘れたかったのか。 気づいても俺は求め続けた。 俺は長門とも関係を持った。長門は朝比奈さんと違い奥手だったが、それでも一緒にいるだけで落ち着けた。 放課後、「文芸部」になった部室。オレンジが眩しい部屋の中でキスをした。長門の唇は震えていた。 ふと部屋の隅に置かれたダンボールが目に入る。「団長」と書かれた腕章。 それは長すぎる、短すぎる時間。俺は長門に意識を戻した。 忘れたフリをした、という嘘。 長門の、時折漏らす噛み殺したような喘ぎ声だけが耳に入っていたはずなのに……確かに聞いていた。 「バカキョン!」 「! ……?」 「……どうかした?」 「い、いや……何でもない」 俺は貪欲に長門を欲した。暗がりでも長門の肌は白く透き通っていた。 忘れたいだけ、という真実。動かない。 雨の音は絶え間なく鼓膜を揺らしている。それは紛れもない悲調。 俺は、やはりハルヒの影を忘れることはできない。 ハルヒとは何の関係もなかった。ただ一度キスを……それも夢の中で。 でも、それでも、俺は唇の感触を忘れられない。驚いた顔も。髪の匂いも。温もりも。 その全てが愛おしかった。告白するが、俺はあの一度きりのキスのとき、どうしようもなくハルヒが愛しかった。 ずっとこうしていたいと思ったし、世界がどうなろうと関係なかった。 ただ俺とハルヒがいた。 ●第二部 11月になった。ハルヒが死んでからもう5ヶ月だ。 死んですぐの時には、「なあに、すぐに忘れられるさ」と思っていた。でも違った。俺は未だにハルヒの影を引き摺って生きている。 2ヶ月ほど経って俺は学校になかなか行かなくなった。いや、学校だけじゃない。家にもいたくなくなった。朝比奈さんも長門も一人暮らしだし、俺が望めばいくらでも寝床を提供してくれたので、しまいには家にも帰らなくなった。 やがて、俺は学校を辞めた。俺だけじゃない。朝比奈さんも、長門も、連れ立ってやめてしまった。 俺が二人と関係を持っていることをお互いに知ったときも、怒ったり嘆いたりしなかった。俺と朝比奈さんと長門は同棲を始めた。 そしてひたすら求め合い、堕ちてゆくのみだった。朽ち果てた精神が音もなく崩れた。俺達は生きて死んでいるも同然だった。 忘れたフリをして生き延びた。時間だけ過ぎて俺達を照らした。 ――ハルヒ、俺を笑うか? 季節は、もうすぐ冬になる。 初めて雪が降った日だ。古泉から連絡があった。 「お久しぶりです。元気でしたか?」 「……ああ。お前も元気そうだな」 「ええ、おかげさまで」 「そうか……で?」 「はい?」 「何か用があるんだろ?」 「……ええ。実は、部室を整理していたら……MDを見つけました」 「MD……?」 「ええ。涼宮さんの残したものです」 胸の辺りがぎゅっと締め付けられるような感覚に襲われた。眩暈がして、俺は座り込んだ。 そうか。あいつはいたんだ、確かに。他人の口からハルヒの名を聞くのは久々だった。 「大丈夫ですか?」 「……ああ。そのMDというのは」 「ええ、それが……あなたに宛てたメッセージです」 メッセージだと……? あいつが? 俺に? 何だって言うんだ……? 「何だっていうのかは知りません。僕も聞いていませんから。ただ、『キョンへ』と、そう書かれています」 「……」 俺は古泉に送ってもらうよう頼み、電話を切った。 その場に座り込んで、タバコを燻らしたけれど、落ち着くことはない。 ふとやわらかい感触が背中に重なった。 「どうしたの……?」 風呂上りの朝比奈さんが俺の首に抱きつく。嗅ぎ慣れた石鹸の香りがした。 彼女の吐息が耳にかかって、そうしてまた俺は眠たくなる。 「有希は……?」 「今買い物に行ってるわ……今日もカレーだって」 「俺は好きだな、あいつのカレー」 「ふふ、あたしも」 彼女が俺のうなじに舌を這わせているときも、ハルヒのMDの件は俺の脳みそにこびりついて取れやしない。 思い出すと涙が出そうで、俺は朝比奈さんの胸に顔をうずめた。 そのMDはすぐに届いた。 今は二人とも出かけている。俺一人だ。今、聞くしかない。 「このMDは、涼宮さんが病床に伏せている時に録音されたものです。最後に学校に来たときに部室に隠していかれたものと思われます」 古泉はそう言った。あいつは病気の体をおして部室に来て、そしてこのMDを―― 場面が想像できて、俺は気分が重くなった。俺のためにハルヒが。 ふと、「ああ、悲しいんだな」と気づいた。 俺はMDデッキの再生ボタンに手をかけた。 ゆっくりと、当時には掠れてしまっていたハルヒの、それでもどこか優しい、あの声が流れ出した。 ●第三部 ハルヒの声が止み、MDプレイヤーは耳につく機械的な音で止まった。 俺は涙をぬぐうことをすっかり忘れていて、頬がうすら涼しくも感じるほどだった。 灰色に腫れてむくんだ空から数多の雨粒が落ち、窓に当たって騒いでいる。 その音だけが充満して息苦しい部屋で、俺はさめざめと泣いた。 次の日も雨だったが、かまわず俺はハルヒの墓参りに向かった。 なかなか大きい墓だった。墓標には「涼宮ハルヒ」の文字が燦然と輝いてやがる。 立派なもんだ。金持ちだったからな、あいつは。 俺はお前に渡すものがある。笑わずに受け取ってくれ。頼む。 俺は、昨夜一晩かけて捻り出した思いを綴った手紙を墓前に添え、その場を後にした。 生活は変わっていった。俺も朝比奈さんも長門もいつしか勉強を始め、三人そろって同じ大学に入学した。 やはりみんな、このままの生活を続けるのはいけないと感じていたのだろう。 大学生活も俺たちは存分に楽しんだ。が、恋愛だけはしなかった。 卒業後、それぞれが別の仕事についたが、帰る家は同じだ。いつも長門の作る料理の匂いは俺たちを待っている。 俺は小説家になり、朝比奈さんはモデルになった。長門は専業主婦だ。 なかなかお似合いだろ? 朝比奈さんなんか写真集まで出して、タレント、女優もやってやがる。 俺はといえば小説家だ。何本か書店に並んでるぜ。新進気鋭の売れっ子だよ。 長門は料理の腕をめきめき上げて、家事全般をこなせるいい嫁になった。 だが、俺たちは俺たちの中ですごしていった。結婚するわけじゃない。俺たちはおそらく一生このままだと思う。 このままでいいと思った。そう願った。 せっかく願ってやってんだから、ハルヒ、お前俺たちの願いをかなえてくれ。お前なら簡単だろう? だからさ、頼んだぜ? なあ神様。 ●Per sempre 暗くもなく、明るくもない。 窓を隔てた灰色から漏れる光が、この部屋の唯一の光源だ。 俺はそっと瞼を閉じる。瞳に映る黒、黒、黒。 いや――そうか。瞳の裏には、いつだってその笑顔があった。 忘れたことはない。この50年のうちに起こった幾多の出来事、そのいつだって俺は目を瞑り、その笑顔を思い出していた。 忘れたことはない。共にすごした二人が先に逝ってしまったときも。 忘れたことはない。俺一人、明かりのない部屋の中で静かに聴く雨音……いつだってその笑顔は俺の中にいた。 MDデッキを持ち出す。お前も、よくがんばってくれた。再生ボタンに手をかけ、目を瞑る。 やがて声が流れ出し、俺は深い哀感に駆られるだけ―― 「キョン、聴いてるかしら? 聴いてなかったらぶん殴るわよ! ……聴いてるわね? あたしはたぶん……たぶんそのときには死んでると思うわ。ま、まあ、生きてたら物凄い恥ずかしいけどね! そのときは知らないフリをしてね? しなさいよ絶対! それからキョン以外の人が聴いてたら……今すぐ止めなさい! 団長命令よ! ……ごほん。ええと……そう……キョン。キョンには、伝えなきゃならないことがあるわ。 ううん……あたし……ね、キョンのことが……好きだった。たまらなく好きだったの。今更だけどさ。 あんたが一緒にSOS団を作ってくれたとき、あたしすごい嬉しかった。 まあ、強引にあんたを連れ込んだってのもあるけどね。そこは気にしなくていいわ。 あんたと過ごす一日一日が、あたしは……げほげほっ……ごほっ……ごめん。あたしは……ああもう、何をしゃべったらいいのかしらね? あたし……キョンと出会えて良かった。キョンだけじゃない、有希やみくるちゃんや古泉君とかと出会えて良かった。 でもね、キョン、あたしはやっぱりキョンが一番好きだった。気づいてた? ずっと好きだったの。どうしようもないくらいに。 でも……断られたらどうしようって……あたし、こう見えて臆病なんだ……あ、今笑ったでしょ! 笑うな! ……だから、今言うわ。キョン……愛してる。あ……ごめんね、こんな形で。あたし、メールとか電話で告白する人嫌いなんだけど、まあMDで告白する人はいないだろうから大目に見なさい! ……ごめんね、キョン……死にたくないよ……あたし、まだキョンと一緒にいたい。たくさん遊びたかったし、遊ばなくてもいいからずっとキョンと一緒にいたかった。 この際だから言うけど……あたし、前にキョンと校庭で、その……キスする夢を見たことがあるの。ば、馬鹿にしないでよね! ……嬉しかったんだから。 あの朝、キョンがあたしの髪型を『似合ってるぞ』って言ってくれた時、あたし泣きそうだった。嬉しくて仕方なかったの。 あたし……だめ……涙が止まらないよ……好き……キョン…… ……ぐす………………すん…………………… ……でもね、あたし、幸せ者だわ……キョンが好きなままで死ねる。 幸せ者のままで死ねるから、幸せ者だわ…………ごほっげほっ………… …………キョン、もうさよならだわ……キョン、あたしのこと忘れないでいてくれる? 10年経って20年経って、お爺さんになっても。ずっとあたしを覚えていてね……。 キョン、大好き。じゃあね……」 耳に障る機械音でMDは静かに、止まった。 さよなら。忘れない。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/6012.html
涼宮ハルヒの遡及 どうもご無沙汰してます。 『涼宮ハルヒの異界』、『涼宮ハルヒの切望―side K―』、『涼宮ハルヒの切望―side H―』の作者です。今回はこのシリーズの完結編をお送りさせて頂きます。 『戸惑・完成ゲーム』、『DQ6』、『YU-NO』、『涼宮ハルヒちゃんの憂鬱01』等のネタが含まれていますが、どこか分かったてもスルーよろしくです。分からなかった方はニコ動かようつべで探ると分かるかも。 このたびは、賛否両論のオリジナルキャラクターが登場する、当シリーズを、最後までお付き合いくださり、心より感謝申し上げます。 では、どうぞ。 涼宮ハルヒの遡及Ⅰ 涼宮ハルヒの遡及Ⅱ 涼宮ハルヒの遡及Ⅲ 涼宮ハルヒの遡及Ⅳ 涼宮ハルヒの遡及Ⅴ 涼宮ハルヒの遡及Ⅵ 涼宮ハルヒの遡及Ⅶ 涼宮ハルヒの遡及Ⅷ 涼宮ハルヒの遡及Ⅸ 涼宮ハルヒの遡及Ⅹ 涼宮ハルヒの遡及ⅩⅠ 涼宮ハルヒの遡及ⅩⅡ 涼宮ハルヒの遡及ⅩⅢ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/2727.html
乙女ハルヒ日記1 乙女ハルヒ日記2 乙女ハルヒ日記3