約 334,416 件
https://w.atwiki.jp/churuyakofu/pages/191.html
前の話へ 次の話へ あらすじ アリス、霖之助に協力してもらって日本人形を作成。 完成のお礼に料理を振舞う(作ったのはアリスの人形)。 霖之助への好意を自覚した。 「ご馳走様。実に美味しかったよ」 「はい、お粗末さまでした」 食事が終わった後も2人の会話は途切れることはない。話題は主に今日完成した人形について。 どこどこが大変だった、あそこは割りとスムーズに行ったとアリスが語り、 その割には良くできていた、流石高名な人形遣いだと霖之助がほめる。 会話は収まる所を知らず、むしろさらにヒートアップしていく。 霖之助が人形を手に取って、細かい箇所を指で示しながら語り出し、アリスも霖之助の真横に腰を下ろして手元を覗き込む。 その状態で霖之助の講釈を聞いているうち、いつのまにか霖之助にしなだれかかるような体勢になっていることに気付く。 そのときアリスが感じたのは、拒絶でも喜びでもなく、驚きだった。 話に夢中だったとはいえ、自分がここまで無防備に他人に近寄っていることに。そしてその相手が男性であることに。 しかしその変化は忌避する類のものではない。むしろなんとなく心地よさを感じる変化と言えた。 こうなると気になってくるのは霖之助がどう思っているのかである。 こっそり様子を伺うが、霖之助のほうは気にした様子もなく口を動かし続けている。 別に霖之助を誘惑するつもりはない。 好意を抱いていることに間違いはないが、まだ積極的にどうこうなりたいというほどに強いものでもない。 それでも自分は女性で、彼は男性だ。こんなに近くに居るというのに、本当になんとも思っていないのだろうか。 そもそも自分から通っていたとはいえ、ここ数週間の間に何度も2人きりになることがあった。 それなのに、一度も自分はそういう目で見られなかったのか。 自分もついさっきまでそういう目で見ていなかったことを完全に棚に上げているが、まあそこはご愛嬌。 とにかく、ちょっとだけ女としてのプライドが傷ついたアリスだった。 「おや、もうこんな時間か」 気付けば日はすっかり落ち、辺りはすっかり闇の帳が落ちていた。 「普段なら帰るよう促すところだが……」 そう言いつつ立ち上がった霖之助は、ちょっと待っていたまえと言い残して奥に引っ込む。 戻ってきた霖之助の手には酒瓶とお猪口が2つ握られていた。 「これは霊夢の略奪から運よく逃れた一品でね。折角のお祝いだし、今日飲んでしまおう」 霖之助としても、完成した人形を褒めるだけでは物足りない。 優秀な弟子を労うべく、縁側に出て月見酒と洒落込むことになった。 「僕はこうして月を肴にちびちびとやるのが好きでね。 魔理沙なんかは『酒は豪快に飲んで豪快に酔うもんだぜ』などと言って風情を楽しむということをしない。 その点、君は繊細さで言うと魔理沙とは比べ物にならないし、きっと理解してくれると思うんだが」 乾杯、と杯を軽く合わせ、注がれた酒を少し口に含む。 普段余り酒を飲まないアリスでも、なんとなく良い酒なのだろうとわかった。 「これって結構いいお酒じゃないの? 私より他にお酒の事がよくわかる相手がいると思うんだけど」 「構わないさ。君は僕にとっていわば弟子のようなものだ。頑張った弟子にご褒美を上げるのも師匠の義務というものだよ」 「そう、そこまで言われちゃ断るのも失礼ね。ありがたく頂くわ」 先ほどまでとは打って変わってほとんど会話はなかったが、アリスも霖之助もこの雰囲気を楽しんでいた。 杯を開けては互いに酒を注ぐ。月を眺め、風の音を聞き、ちびりちびりと酒を味わう。 たしかにこれは良い。じんわりとなんともいえない心地よさが広がっていく。 「霖之助さん」 「うん?」 「ありがとう。今日は最高の一日だわ」 月を眺めながらそうささやく。 白い肌は酒のせいかうっすらと上気し、月明かりを受けて神秘的なまでに美しい。 そして何よりも、その微笑みがとても綺麗で、思わず我を忘れて見とれていた。 (参ったな・・・) 自分は当の昔に枯れ果てている。そう思っていたが、 (僕の中にも、まだ男としての感性が残っていたとはね・・・) そんなことは、自分の勝手な思い込みに過ぎなかったようだ。 前の話へ 次の話へ
https://w.atwiki.jp/churuyakofu/pages/195.html
前の話へ 次の話へ あらすじ 少しずつ縮むアリスと霖之助の距離。 それに嫉妬した魔理沙が爆発、それでも朴念仁な霖之助に今度はアリスがキレる。 皆自分の気持ちが整理できなくなっていた。 アリスが飛び出していった香霖堂。 霖之助は魂が抜けたような顔をして座り込んでいた。 思い出すのはアリスの言葉。 ―――自分が何をしたのか、なんで魔理沙が泣いてるのか、悩んで悩んで悩みぬきなさい!――― かつては、自分がすでに男としては枯れているものと思っていた。 だが、アリスと触れ合ううちにそれは自分の思い込みだと気付いた。いや、アリスが気付かせてくれたのだ。 ……魔理沙の顔が頭に浮かぶ。 小さいころは甘えん坊だった。 年の割りに賢かった。 魔法を志してからは父親とそりが合わず、自分が何度も仲裁に入った。 自分が霧雨の家を出てからも縁は切れていない。 研究に行き詰ればここに来て一言二言口をこぼし、帰っていく。 うまくいったら嬉しそうに自慢しにくる。 店のものを持っていく代わりに差し入れをもらうことも多い。 料理を振舞ってくれることもしゅっちゅうだ。 ここまでなら仲の良い兄妹と言っても差し支えないだろう。 だが、 ―――安心しろ。香霖を好きになる物好きな女がいなくても私がもらってやるぜ――― ―――貰い手がなかったらよろしく頼むぜ――― こんなことは兄妹同士で言ったりしない。 なのに、本気に取ったことは一度もなかった。 自分に見せる彼女をそのまま彼女の本質だと思って疑いもせず、ただの軽口と切って捨てた。 どんなに年が経っても、言葉遣いや表面上の性格が変わっても、魔理沙は魔理沙だったというのに。 小さいころのまま、甘えん坊で寂しがりやな女の子だったのに。 今ならわかる。彼女が軽口に見せかけて、その裏でどれだけの緊張と不安を押し殺していたのか。 「最低だな……」 「ええ、本当にね」 独り言に対する、ありえないはずの返答。 こんなことをするのは一人しかいない。 「見ていたのかい……? 紫」 「ええ、あの人形遣いがここに通うようになってからさっきの顛末までずっと」 背後に気配を感じる。スキマから上半身を出して話しかけているのだろう。 「いまさら覗いていたことをどうこう言う気もないが……情けないところを見られてしまったね」 「そうね。さっきのはちょっといただけなかったわ」 ふぅ、とため息を吐く。 手厳しいことだが、今はその率直な物言いが心地よい。 「それで? あなたはどうするつもりかしら?」 「どう……か」 「まさかここまで来て選べないなんて事は言わないでしょうね? 事態をここまでこじらせたのは間違いなくあなたの責任。ならこの問題はあなたが片をつけないといけない」 「そう……そうだね。わかってはいるつもりさ」 わかっている。これは自分が答えを出さないといけない問題だ。 そんなことは痛いほどわかっているのに、それでも自分の気持ちははっきりしていない。 情けなくて腹立たしくて自分を殴りつけたい心境だが、そんなことをしても何にもならない。 「一つ……簡単に済ませるほうがあるわよ?」 その言葉が耳に届くと同時に、両肩に重みを感じる。 しなだれかかって来た紫は、霖之助の耳元でさらに言葉をつむぐ。 「私を選んでくれたら、全部きれいに収めてあげる。 私の持つありとあらゆる力を持って、元の鞘に必ず戻してあげる。八雲の名において誓うわ。 ……そのかわり、私をあなたのものにして」 それは、抗いがたい甘美な誘惑。 確かに、彼女の能力を持ってすればこの問題はすぐにでも解決するだろう。 しかも幻想郷最高の妖怪を伴侶に持つ。これ以上の名誉は幻想郷に存在しない。 だが、その選択はありえない。 「君にそこまで言ってもらえるとは光栄だが、受けるわけにはいかないな」 「あら、やっぱり? まああなたならそういうと思っていたけど」 そういうと、紫はあっさり霖之助から離れた。 「じゃあ、しっかり考えて答えを出すことね。 この八雲紫を振った男が生半可なことをしたら、永劫許さないからそのつもりでね」 「紫、君は……」 彼女なりに励ましてくれたのか。それとも……。 そんな思いがよぎった瞬間、唇を指で押さえられた。 「変なこと考えるんじゃないの。それじゃあね霖之助。頑張りなさい」 そういい残して、紫はスキマに戻っていった。 「ああ、もちろんだ。ありがとう、八雲紫――」 さあ、ここからは自分の仕事。 ――紫の自室にて―― 「はぁ……私も完全には悪役にはなりきれないのね……」 たったいま香霖堂から戻ってきた紫。 霖之助が考えたとおり、彼女も霖之助に淡い思いを抱いていた。 そんな彼女がアリスの接近を許したのは、ひとえに楽観と自信が原因だった。 客観的に見て自分は美人だと思う。 妖怪や人間を問わず言い寄る男はいくらでもいた。 だから焦る必要はない。 アリスのような1000年も生きていない小娘に自分が遅れをとることなどありえない。 そう思って放置していた。 もっと早く、自分から積極的に動いていればこんな事態にならなかったであろうことも知らず。 気付けば女にあれだけなびかなかった霖之助がアリスと懇意になっていた。 そのときにはもう手遅れで、なまじ明晰な頭脳を持つだけに、自分にはもうチャンスが訪れないことを理解してしまった。 これは自分の自業自得。 相手を侮り、自惚れていた自分の落ち度。 だから、泣くのはこの一回きりだ。 ぎゅっと目を瞑る。目じりにたまっていた涙は頬を伝い、ぽろぽろとこぼれ落ちた。 だがそのまま落とすことはしない。涙の落ちる先にスキマを開き、回収する。 自分の式は優秀だ。涙の跡でもあれば簡単になにがあったか察してしまうだろう。 いや、おそらくはもう気付いているのだろうが。 さあ、もうすぐ式の式が食事の時間を伝えに来るだろう。 それまでには、悲しみも後悔も心の奥に封じ込めてしまわないと。 「藍さま。まだ紫さまをお呼びに行かなくていいんですか?」 「もう少し、もう少しだけ待ってくれ橙」 妖怪は精神的な病に弱い。つまり心の傷の治りが遅いということだ。 たとえ霖之助がどんな答えを出したとしても、今現在人間の魔理沙や元人間のアリスはそう長くないうちに立ち直ることだろう。 だが妖怪の紫はそうはいかない。表には出さなくても、10年、20年、いやもっと長く心の痛みは残る。 だから今は、もう少しだけそっとしておきたい。 その日、マヨヒガの夕食はいつもより少しだけ遅かったという。 前の話へ 次の話へ
https://w.atwiki.jp/churuyakofu/pages/193.html
前の話へ 次の話へ あらすじ 霖之助の協力のもと日本人形を完成させたアリス 次は一人で作ろうと自宅に篭るが、霖之助にフラグを立てられていたため、寂しくなって香霖堂へ。 なんだかんだでめでたく毎日通うことになりました。 スー……、パタン。 霖之助にあてがわれた部屋に荷物を置きにあがったアリス。 廊下から見えないように襖を閉めると、糸が切れた人形のように崩れ落ちる。 「はぁぁぁぁぁぁぁぁ……」 畳に腰を下ろして両手を突き、大きく息を吐く。 本来陶磁器のように白い肌は首まで真っ赤に染まっていた。 心臓はここで一生分働きつくしてやると言わんばかりに回転数を上げ、手足はいまだに軽く震えている。 (あれは反則にも程があるわよ……!) 叫びだしたくなるほどに昂ぶる感情を抑え、アリスは先ほどのことを思い出す。 『ありがとう。また来てくれて嬉しいよ』 ただでさえ受け入れられたことが嬉しくて頭が煮立っている所だというのに、そんなことを言われた日にはもう声も出せなくなってしまう。 真っ白な頭の中とは正反対の真っ赤な顔で、カク……カク……と壊れた人形のように首を縦に振り、転びそうになるのを何とかこらえて部屋に辿り着いた。 訝しがられたかも知れないが、取り繕うことなど不可能だ。 スキマと閻魔と花の妖怪と亡霊の姫に同時に喧嘩を売って無傷で生還するくらい無理だ。 霖之助の笑顔が頭から、言葉が耳から離れない。 上海と蓬莱を呼び寄せて力いっぱい抱きしめる。 「~~~~~~~っ」 声にならない叫びと共に畳の上を転げ回るアリス。その顔はこれ以上ないほどにやけまくっている。 来てくれて嬉しい。 来てくれて嬉しい。 来 て く れ て 嬉 し い! それはつまり、霖之助もアリスに会いたかったということだ。 それもあの朴念仁がわざわざ口に出して思いを伝えるほどに。 期待しすぎてはいけないと理性が警鐘を鳴らそうとするが、このくらい自惚れたって構わないだろうと黙らせる。 いつまでも悶え続けるアリスが再び霖之助と顔を合わせられる程に落ち着くのは、相当後になりそうだった。 一方の霖之助は、部屋から聞こえてくる妙な音に首をひねっていた。 前の話へ 次の話へ
https://w.atwiki.jp/churuyakofu/pages/192.html
前の話へ 次の話へ あらすじ 香霖堂で和服に興味を持ったアリス。 霖之助に教わりつつ日本人形を完成させる。 ささやかな祝宴。双方にフラグ? ここ最近、アリス=マーガトロイドの生活は非常に充実していた。 新しい技術に出会った。 習得するために努力を続けた。 その成果は自分の予想をずっと上回るものとなった。 まだまだ反復し体に覚えさせなくてはならないが、自分を成長させるためならそれすらも喜びと言える。 なのに、 「はぁ……」 口から漏れるのはため息ばかりだった。 数日前に日本人形を完成させたアリス。 生まれて初めて作ったそれは、商品として見ても申し分のない完成度であり、アリスにとって師といえる霖之助も太鼓判を押してくれた。 とはいえ、まだまだ基本を修めたばかり。和と洋の技術を融合させるには至らない。 今は続いて2体目の製作に取り掛かっているところである。 1体目に比べ作業は順調そのもの。 不満などあるはずがないのだが、気がつけば手を止めて物思いにふけっている。 「……私がこんなに寂しがりやだとは思ってなかったわね」 所変わってここは香霖堂。 今日も今日とて、店主の霖之助は読書に没頭……してはいなかった。 なにかやることがある訳ではない。いつもどおりに椅子に腰掛け、いつもの姿勢で本を開く。 後はいつものとおりに本の世界にのめり込むだけなのだが、気がつけば店の扉に目をやり、本をめくる手は止まっている。 「いったい何を期待しているんだろうね……僕は」 ここ最近、森近霖之助の生活は非常に充実していた。 同じ趣味を持つ仲間に出会った。 自分の持つものを惜しげもなく伝授した。 教え子は全幅の信頼を寄せてくれるばかりか、想像以上の成長を見せてくれた。 すぐに自分など追い抜いていくだろうが、それすらも楽しみにしている自分がいる。 なのに、 「ふぅ……」 口から漏れるのはため息ばかりだった。 最初の人形が完成して以来、アリスは1度も香霖堂に訪れていない。 自分ひとりの力で2体目を完成させたい。いつもいつも霖之助を頼るわけにはいかない。 純粋な向上心から霖之助にそう言ったアリスだが、すぐにどうにも落ち着かない自分に気付いた。 霖之助に助言を請い、そのまま香霖堂で人形を作っていたときを思い出す。 会話こそほとんどなかったが、どこか暖かさと安らぎを感じていた。 別に毎日香霖堂で過ごしたわけではない。自宅で人形を作る時間も決して短くはなかった。 それなのに、たった数日霖之助に会っていないだけなのに、心に穴が開いたように感じられてならない。 今まで普通に生活してきた家の中がやけに広かった。 「うー……」 テーブルに頬を押し付けて唸ってみるが、そんなことで気が紛れるわけもない。 香霖堂に行きたい。それは間違いないのだがどうにも踏み出せない。 霖之助に呆れられるのが怖いのだ。 ―――君はもう少し意志が強いと思っていたんだけどね――― そんな台詞が頭をよぎるだけで全身が凍りついたような錯覚すら覚える。 実際には彼がそんなことを言うはずはないとわかっているのだが、万が一を考えると二の足を踏んでしまうのである。 ここ2日ほどそんな葛藤を繰り返していたのだが、 「あーもうやめやめ! 自力で頑張るったって、こんなんじゃいい人形ができっこないわ!」 ついに限界がきたようだ。 霖之助がどうこう言い出しても押し切ってやろう。 そもそも自分がこんなことで悩むようになったのは霖之助の責任だ。 責任がある以上霖之助にはこのもやもやを取り払う義務がある。 理不尽なようだが、ぐるぐると考えることに疲れたアリスはそのことに気付かない。 「見てなさい!私だって我侭言いたいときくらいあるんだから!」 「……着いた」 勢いのままに香霖堂の前まで来てしまったが、ここまで来ると多少冷静にもなる。 大丈夫よアリス。この前まで普通に話していたじゃない。拒絶されることなんてありえないからそんなに心臓バクバク言わせてんじゃないわよ。 大きく深呼吸を2回。よし、少なくとも顔には出さなくてすむだろう。あとは淡々と、しかし強気で押し切るのみ。 バタン 店の戸を開く音が来客を知らせてきた。だが今回の訪問者は自分の望んでいる人ではないだろう。 何しろ、彼女はもうしばらくは家から出てこないと言ったのだから。 そんなことを考えつつ顔を上げた霖之助が見たものは、 「いらっしゃ・……い……?」 「お久しぶりね、霖之助さん」 来るはずのない、されど待ち焦がれた人形遣いの姿だった。 完全に意表を衝かれ、動かなくなる霖之助。 アリスはアリスで、さっきまでの強気はどこへやら。 「何で来たんだい?」 とか言われやしないかと気が気ではない。 2人の間に沈黙が降りる。 真顔で行われるにらめっこに、先に耐えられなくなったのはアリスだった。 先手必勝とばかりに言葉がつむがれていく。 「その、まだ2体目は完成したわけじゃないんだけどね。なんていうか今まで事あるごとに相談してたから一人で篭ってると しっくり来なくて。そりゃ私も『自力で完成させるまで助言は請わないから!』なんていった手前ここに来るのはちょっと 気が進まなかったんだけど、そもそも私の目的は人形作りの技術を身につけることであって、一人で人形を完成させるの はその手段に過ぎないわけ。だから調子が出ないのに意地張って作業を停滞させるくらいなら、当初の方針を少しくらい 曲げてでも、目的を達成するために有効な手段をとるのは悪いことではないでしょ? 言っとくけど別に霖之助さんがいな くて寂しいなとかそういうんじゃないから。環境を変えたせいで調子が出なかったのを何とかしようと思ってここに 来ただけだから。あとここのほうが家よりはかどるなら家で作業する必要はないわよね。これから毎日朝から夕暮れまで 通わせてもらうわ。言っとくけどあくまで作業効率のためよ。 本当は夕方とは言わず夜まで居たいところだけど、前に霖之助さんが心配してくれたし、暗くなる前には帰ることにして おくから。もちろんただとは言わないわ。家事は人形たちにさせるし、料理は私が作ってあげる。 霖之助さんも読書に集中できるし、私は魔理沙や紫や霊夢と違って霖之助さんの邪魔はしないから悪い条件じゃ ないでしょ?というかもうそのつもりで用意してきたから空いてる部屋に荷物置かせてもらうわよ」 本人はいたって冷静なつもりだが、誰がどう見てもいつものアリスには見えない。 おまけにごまかそうとして逆に本音がちらほら漏れている。 そもそも普段自分がこんなにまくし立てたりはしないことに気付いていないあたり、アリスもかなりテンパっているようだ。 そんなアリスを呆然と眺める霖之助。 反応が返ってこないことで再び不安になるアリス。 なんで何も言ってこないのよ。 唐突過ぎて驚いているのかしら? それとも呆れられた? 自分から来ないと言い出して連絡もしなかったくせに今度は毎日来るとか言い出したのは拙かったかな。 でも理屈としてはおかしいところはないはずよね……いやでも……。 ええい! なんでも良いから早く何とか言いなさいよ! 緊張のあまりすでに足元の感覚すらなくなっている。 ほんの数秒が永遠のように感じられて気が遠くなりそうだ。 一方の霖之助はというと、普段と違うアリスに戸惑ってはいたものの、要はまた足しげく通ってくれるのだなと結論付けることにした。 「わかった。そういうことなら協力することもやぶさかじゃないよ。 奥に入って突き当たりを左の部屋が空いているから好きにしたまえ」 一瞬その言葉が理解できずに固まるアリス。頭の中で霖之助の言葉がゆっくりと翻訳されていく。 好きにしたまえ → 部屋を使っても構わない → 毎日通ってきてもいい! そこまで理解した瞬間、アリスの頭の中で数万人のミニアリスが一斉に諸手を天に向かって突き上げ、大歓声が響き渡った。 おもわず自分まで叫びそうになるが、ここまで喜んでいるのを気取られるのも恥ずかしい。 落ち着け。声を上ずらせるな。後一言、一言だけ返せば部屋で思い切り喜べる。 「そそ、そう? よかった。じゃあ勝手に使わせてもら、もらうわね」 多少噛んでしまったが問題ない。この心境でここまで抑えられれば上出来だ。さあ早く部屋に。もう平静を装うのは限界だ。 だがここで奥に上がろうとするアリスに霖之助が声をかける。 「ああ、アリス」 ビクッと肩が震える。 いったいこれ以上何があると言うのか。話なら後でするからもう開放してほしい。 それともやっぱりダメと言われるのだろうか。 いい加減爆発しそうな心臓の鼓動を感じながら振り返ったアリスが見たものは、 「ありがとう。また来てくれて嬉しいよ」 心の底から嬉しくたまらない、そんな霖之助の笑顔だった。 前の話へ 次の話へ
https://w.atwiki.jp/mustnotsearch/pages/2405.html
登録タグ グロ 動画 危険度3 映画 検索するべき言葉 黙読注意 アフリカの原住民による槍を使った狩猟の映像が出てくる。 目に槍が刺さって血まみれになりながら崩れ落ちるゾウや取り囲まれて大量の槍を突き刺されるカバなどはなかなかショッキング。 『グレートハンティング』というモンド映画のために撮影された映像だがそのためだけに原住民を雇い動物を死なせたやらせ映像という説もあり人間の残酷さについて考えさせられる。 分類:グロ 危険度:3 コメント この検索ワードでそんな動画出るのか…なんでやねん -- 名無しさん (2018-06-12 10 19 44) 人間が一番強い動物なんだよ…… -- 名無しさん (2018-06-23 20 34 49) 日頃から狩りをするハイエナやライオンの心は潔白だというのか>説明文 -- 名無しさん (2018-09-22 22 18 59) ↑生きるための狩猟と見世物を一緒にしてはいけない(戒め) -- 名無しさん (2018-09-22 23 23 20) 後半の文はあくまで邪推でしかないし…印象操作かな? -- 名無しさん (2020-01-28 12 46 49) 生きるためのことだし仕方ないだろ -- 名無しさん (2020-02-14 12 38 06) これで人間の残酷さを考えるのw そういうことしたいならウールの件とかもっと他にあるのになんでよりにもよって動物的な部分から考えにゃならんのだ -- 名無しさん (2020-04-12 17 53 20) 狩りを効率的にやるためには弱点である目を狙ったり逃げないように取り囲んだりするのは当たり前だし惨くもなんともない -- 名無しさん (2020-04-12 17 54 15) 今はYouTubeでアフリカの部族 狩りって検索したら見れますよ -- 名無しさん (2020-05-08 21 42 07) カバ強くて草 -- 名無しさん (2020-06-23 18 55 50) ワードがかっこいい -- 名無しさん (2020-07-25 09 21 49) RPGとかのゲームっぽいワードでショッキングな映像が出てくるというのがまさに検いけらしいというか… -- 名無し (2020-09-10 23 03 41) ↑3 カバは強いぞ。普通に考えて「やっと」成功した部分しか映像化してないだろうしおそらく自分らの被害も尋常じゃないだろうにな…そういう意味でも残酷だわ -- 名無しさん (2020-09-10 23 14 36) 怖いな -- 名無しさん (2020-09-11 00 16 30) デュエルの話かな(無垢) -- アなる (2020-09-11 02 35 46) 今まで原始人が生き残る姿を想像できなかったけど、これ見たら生き残れた姿が鮮明に想像できた。 -- おいでぇ (2021-03-26 17 59 46) でも殺してる数で言えば蚊のほうが多かった気がする。 -- ナイル (2021-05-19 18 09 11) タグ 群馬の日常やめやw -- 名無しさん (2021-07-03 00 18 46) 集団で襲いかかる人間が動物にとって一番恐ろしいだろうな。 -- ゲーム太郎 (2021-10-21 20 36 45) ハイハイ、ブッシュミートね。※ガチでその辺のライオンとか喰うらしい💧 -- アユラ (2022-09-22 08 21 19) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/churuyakofu/pages/190.html
前の話へ 次の話へ あらすじ アリス、霖之助から和裁について教わる。 和裁の技術を習得すべく、日本人形を作り始めた。 アドバイスを求めるうち、興味の主体が徐々に霖之助に移っていく。 「で・・・できたーっ!」 若い女性の声が響き渡るここは魔法の森、アリス=マーガトロイドの自宅。 声の主アリスは先ほどから完成した人形を頭上に掲げ、どこぞの厄神の如くくるくると回っている。 喜ぶのも当然、今回作成した人形は今まで作ってきたものとは作り方がかなり異なる日本人形である。 基本となる人形の体は何とかなったが、慣れていないせいか和服の作成に苦労した。 その分、喜びもひとしおと言うわけだ。 「今日はお祝いね! 久しぶりにフルコースでも作ろうかしら? あーうれしー!」 たっぷり30分は喜び続けたアリス。そろそろ料理に取り掛かろうと考えたところでふと気付いた。 「霖之助さんにも見てもらわないとね……!」 新しい人形を嬉しそうに抱きしめつつ、つぶやくアリス。 実際、今回の人形作りでは霖之助に随分と世話になった。霖之助のアドバイスがなければ到底完成しなかっただろう。 「見てもらうだけっていうのもなんだし、お礼もしないとね……よし!」 「こんにちわ、霖之助さん!」 「ああ、いらっしゃい。人形作りは順調かい?」 「ふっふっふ……これを見なさい!」 アリスの差し出した人形を手に取り、目を丸くする霖之助。 「すごいな……とても初めて作ったとは思えないよ」 「でしょう? 我ながら上手くできたと思ったのよ!」 えっへん! と胸を張るアリス。 「ふむ……いやたいしたものだよ。よく頑張ったねアリス。おめでとう」 そう言って体を乗り出し、アリスの頭を撫でる。 「あ……ありがとう……」 さっきまでの勢いはどこへやら、アリスは顔を赤らめて俯いてしまう。しかしその顔は照れ笑いで本当に嬉しそうだ。 「わざわざ見せに来てくれたのかい?」 「ええ、霖之助さんがいなかったら完成しなかったもの。霖之助さんに見せないなんてありえないわ!」 本当に嬉しいのであろう、いつもよりテンションの高いアリスを見て霖之助も顔を綻ばせる。 「そういうわけで、今日はお礼とお祝いをかねて夕御飯をご馳走するわね!」 「僕は自分の知識を自慢しただけで、大したことはしていないよ。 と言っても、折角作ってくれるというのを断るのも失礼だ。お願いするとしよう」 「任せて! といっても、作るのはほとんど人形だけどね」 と、軽く舌を出すアリス。 (初めて会ったときはこんな表情をする子だとは思わなかったな……) そう思う霖之助だが、口から出たのは違う言葉だった。 「そういえば君は家事を人形にさせているんだったね。折角だし、人形たちが料理するところを見ててもいいかい?」 「……霖之助さんらしいわね。別に見られて困るものでもないし、いくらでもどうぞ。私は代わりに店番をしておくから」 本当は料理を人形に任せて霖之助と話がしたかったアリスだが、お礼をしに来た手前そんな我侭は言えない。 話すのは料理を食べながらでもできるか、とここは引き下がることにした。 「いいのかい? 別に店は閉めても構わないんだが・・・」 「お礼をしに来て店に迷惑をかけるわけにもいかないでしょう? いいから今日は私に任せなさい!」 胸を張るアリス。 そこまで言われては無理に断るのも悪い、という結論に達し、霖之助は人形たちとともに台所に引っ込んでいった。 「ああは言ったけど……お客さんなんて来ないじゃない……」 張り切って店番を始めたアリスだったが、店内には見事なまでに閑古鳥が鳴き続けていた。 こんなことなら店を閉めてもらってもよかったかな……。いやいや、まだお客さんが来ないと決まったわけじゃない。 そんなことを考えていると、店の扉が開く音が聞こえた。 正直待ちくたびれていたが、店番を引き受けた以上疲れを見せるわけにはいかない。 「いらっしゃいまs「おーっす香霖!」」 渾身のいらっしゃいませをさえぎって入ってきたのは、自称普通の魔法使い、霧雨魔理沙だった。 「あれ? 何でアリスが店番してるんだ? 香霖はどこ行った?」 「……まあいいわ。説明してあげる」 どっと疲れが出たのを感じつつ、律儀にこれまでの経緯を説明するアリス。 「と言うわけで、今は代わりに店番してるの」 「なんだなんだ、人が研究で篭ってる隙にこそこそと。そういう時は一言教えてくれるのが人情ってもんだぜ」 「あんたが来なかったんでしょうが……」 「で、いま気合の入った料理作ってんだろ? こりゃ晩飯が楽しみだ」 「話聞きなさいよ……。ていうか、あんたの分まで作ってるわけないでしょうが」 「薄情なやつだな全く。まあいい、今日は退散しとくぜ」 「珍しいわね……。強引に奪ってでも食べそうなものなのに」 「お前は私を何だと思ってんだ? 今日は仕入れに来たんだよ。まだ研究の目途がたってないからな」 そう言って店内を漁りだす魔理沙。 「じゃ、香霖とよろしくやってな」 「ちょっと待ちなさい」 そのまま出て行こうとする魔理沙を引き止める。 「お、ご馳走してくれる気になったのか?」 「んなわけないでしょうが。あんた商品持っていくならお金払いなさいよ」 「香霖から聞いてないのか? 私は借りてるだけだから代金はいらないんだぜ?」 「あんた私や紅魔館だけじゃなくてここでもそんなことしてたの!? とにかく今は私が店番してるんだから、きっちり代金は請求するわよ!」 「よう、香霖。邪魔してるぜ」 「ああ、霖之助さん? 今ちょっと魔理沙と売買の神聖さについて話してるから……」 と言いつつ台所のほうを振り合えるが、霖之助の姿など影も形もない。 「引っかかったな! 甘いぜアリスーーーーぅぅぅぅ……」 その隙を突いて箒で飛び出す魔理沙。 あっけにとられたアリスが我に帰ったときには、その姿は遥か彼方に消え去っていた。 「まったく魔理沙ときたら! 霖之助さんももっと厳しく言わないと駄目よ!?」 「言って聞くような相手なら苦労はしないんだけどね」 さっきから憤りっぱなしのアリスに対し、霖之助は既に諦めているらしく、苦笑しながら料理を食べ続ける。 結局店番を放りだしてまで魔理沙を追いかけるわけにもいかず、見逃す結果となってしまった。 アリスとしては憤懣やるかたないが、店主がこれではアリスが怒っていても仕方ない。 「それにしても美味しい料理だ。洋食はよくわからないが、人形に遠隔操作させてこれなら君自身の手料理はもっと美味し いんだろうね」 「まあ、自分で作れないものを人形を介して作れはしないわね」 「それはいいことを聞いた。是非君自身が作った料理を食べてさせて欲しいね」 一瞬、『僕のために味噌汁を……』という台詞が頭に浮かんで顔が熱くなる。 (まあ実際は好奇心で言っているんだろうけど……) かと思えば、そう思った途端に顔の熱は消え、少し寂しさを感じる。 (……参ったわね) どうやら自分は、自分が思っている以上にこの男に好意を抱いているようだ。 前の話へ 次の話へ
https://w.atwiki.jp/churuyakofu/pages/194.html
前の話へ 次の話へ あらすじ 霖之助の協力のもと日本人形を完成させたアリス 次は一人で作ろうと自宅に篭るが、いつの間にか霖之助にフラグを立てられていたらしく寂しくなって香霖堂へ。 なんだかんだでめでたく毎日通うことになり、ひたすら悶えるアリスだった。 アリスが毎日香霖堂へ通いつめるようになって数日、そろそろ生活のリズムも定まってきた。 朝は夜明けともに起床。サンドイッチなど簡単な朝食を作ってバスケットに押し込み、身だしなみを整えて香霖堂へ。 霖之助も朝は早いのでアリスが来るころには起きている。挨拶を交わしつつ奥の座敷にあがりこむ。 持ってきた朝食を2人で平らげ、食後はのんびりと霖之助が淹れてくれた紅茶を味わう。 本当は自分が淹れてあげたいのだが、『このくらいはさせてくれ』と言われては無碍に断るわけにもいかない。 使った食器を仲良く台所で並んで片付け、霖之助が店の部分を、アリスが住居部分の掃除を行う。 このとき服が汚れてはいけないからと割烹着に三角巾を借りるのだが、日本人離れした顔の割りに良く似合う。 一段落したら霖之助は店番。アリスは客の邪魔にならない場所に椅子を置いて人形作りに取り掛かる。 紅白の巫女や瀟洒なメイド、竹林の師弟に白玉楼の庭師などが来店するが、 これら頻繁に訪れる客にはすでにアリスが霖之助に師事していることを説明済みのため、特にどうこう言われることはない。 日が西に傾き始めれば夕食の用意を始める。 アリスの専門は洋食だが、霖之助が和食を好むため教わりながら作ることも多い。 かつてアリスが語った通り、彼女の腕前は人形たちより数段上だった。夜雀のように店でも開けば大盛況間違いないだろう。 2人で存分に舌鼓を打つと暗くならないうちに自宅に戻る。 人形作りの道具は全て香霖堂に置いてあるため、帰宅してからはスペルカードや人形の操作について研究し、早めに就寝する。 何の不満もない幸福な生活。強いて言えばいっそ香霖堂に住み込んでしまいたいが、それはまだ早いだろう。 自分も霖之助も人間に比べてずっと長く生きる。焦らなくて良い。むしろ親密になっていく過程をじっくり味わおう。 自分の人生はいまから絶頂期に入るのだ。 ……そう、思っていた。 「いやー疲れた疲れた。やっと研究が形になったぜ」 そう言いながら入ってきたのは、最近めっきり足が遠のいていた黒白の魔法使い、霧雨魔理沙だった。 「おや、久しぶりだね魔理沙。だいたい2ヶ月ぶりかな?」 「あ~、そういやこの前来たときは会わなかったんだよな。あの時は口やかましい奴がいたからなあ」 「口やかましくて悪かったわね」 どうやら部屋の隅に居たためか気付かれなかったようだ。人がいないと思って好き勝手なことを言う悪友に声をかける。 「うおっと、今日もいたのかアリス。和裁だか白菜だか知らんが、お前ならもう香霖なんかに教わることはないだろうに」 「なんかとはなんだなんかとは」 「そうよ失礼な。言っとくけど霖之助さんの腕前は相当なものよ? だいたい、あんたも裁縫くらい覚えなさいよ。一応仮にも生物学上女の範疇に引っかかってんでしょ?」 「ひどいぜ。こんなに可憐な美少女を捕まえて」 「可憐だと自称するなら、せめて言葉遣いくらい何とかするべきね」 「善処するぜ。んで、まだ香霖にアドバイスもらいにこんな埃臭い所に通ってるわけか。お前も物好きだよなあ」 「別にアドバイスはもらってないわよ。とりあえず一人で作り上げて、何ができて何ができないのか確認するつもりだから」 流れるように掛け合いを続ける2人を眺め、本当に仲が良いなと微笑みつつ口を挟む霖之助。 「この前は一人で作ることにこだわる必要はないとか言ってたような気がするんだが、気のせいだったかな」 「気のせいね。ダメよ霖之助さん、人の話はちゃんと聞かないと。それとも私に話しかけてもらえなくて寂しいのかしら?」 「あれだけ根掘り葉掘り聞き出そうとしていた君がパッタリと質問しなくなったからね。なんとなくしっくり来ないだけさ」 「人間正直が一番って聞いたことがあるわよ?」 「それなら人妖の僕には当てはまらないな」 「ああ言えばこう言う……」 「君がそれを言うのかい?」 今度は魔理沙が2人の会話を眺める。 (……こいつらこんなに軽口叩き合うほど仲良かったか?) 少なくとも前に2人の会話を見たときはもっとよそよそしかった筈だ。 なのに、今の会話からはなんとなく甘い雰囲気すら漂っているように思える。 「何でお前らそんなに仲良くなってるんだ?」 霖之助はアリスとの会話を一時中断、魔理沙の質問に答える。 「そりゃ毎日顔を合わせてれば嫌でも相手のことを理解するようになるさ」 「あら、霖之助さんは私のことなんか分かりたくないって言うわけ?」 「今のは言葉のアヤというか極端な例えを提示しただけだよ。いくら僕でも嫌いな相手に部屋まで貸すほど酔狂じゃない」 「あ~、待て待て待て!」 放っておけばすぐに2人で話を進める。なんとなく自分が蚊帳の外のように思えてイライラする。 おまけに聞き捨てならないことが聞こえた。 「毎日顔を合わせて部屋を借りてる? いつからアリスはここに引っ越してきたんだ?」 「いや、別に住んでるわけじゃないよ。ただ、最初に日本人形を作ってるときは事あるごとに質問しに来てたからね。 ほとんどうちで作ってたせいか体がこっちに順応してしまったらしい。 今では一人で閉じこもっているよりここで作ったほうがはかどるんだそうだ。 部屋は人形作りの道具や材料の置き場所として提供しているだけさ」 「……ふーん……つまり通い妻か。香霖にそんな甲斐性があったとはなぁ?」 「「通っ……!?」」 アリスだけならまだしも、霖之助までそろって顔が赤くなる。 これが他のやつならニヤニヤとしつこいくらい笑ってやるところだが、今回ばかりはそうはいかない。 自分がからかったのは認めるが、その反応はなんだ。 自分がいくら好意を匂わせても歯牙にもかけなかったくせに。 ストレートに伝えても、回りくどくほのめかしても全く動じなかったくせに。 だから、 「……なんでだよ」 気がつけば、不満が口からあふれ出して止まらなくなっていた。 「なんで!? なんでアリスなんだよ!? ついこの前まで赤の他人だったのに! その他大勢の客の一人でしかなかったくせに!! 私のほうがずっと昔から香霖の近くにいたんだ! 実家で修行してるときも! この店を建てたときも! 私が実家から出てった時だって! 途中でふらっと出てきたくせに私の場所を取らないでくれよ! そこはお前の場所じゃない!! 今までもこれからも死ぬまでずっと! 香霖に一番近いところにいるのは私なんだ!!! 他のやつに取られるなんで耐えられないんだ!!! だから……だからっ……」 「……魔理沙」 声が詰まって俯いてしまった魔理沙になんと言って良いか分からず、霖之助はただ名前を呼んだ。 ビクッと肩を震わせ、顔を上げた魔理沙の両目は、今にも涙が溢れそうになっていた。 「……う……うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」 耐えられなくなったのだろう。魔理沙は箒をつかむと、叫びながら香霖堂から飛び出していった。 「魔理沙……」 こちらはアリス。 考えたこともなかった。いつも自分勝手で人の迷惑を顧みないあの魔理沙がこんなに取り乱すことがあるなんて。 魔理沙は強いわけではなかった。弱い自分を一生懸命隠して、それを他人に絶対に悟らせないようにしていただけなのだ。 気付かなかった? 違う。気付こうともしなかった。 思えば霊夢は魔理沙の内面をなんとなく察していたような節がある。だからこそ、魔理沙と上手くやっているのだろう。 「……やれやれ」 そんなアリスの思考は、もう一人の当事者によって中断することになった。 「霖之助さん……」 「驚かせてしまったようだね。だいぶ成長したようだが、あの子もまだまだ子供のようだ」 なぜ……そんなに落ち着いているんだろう? 「多分、父か兄が取られて悔しいような気分なんだろう。しばらくそっとしておけばまた元気に……」 パァン! 「あなた……本気でそんなこと言ってんの……?」 考えるより先に、全力で目の前の男を張り飛ばしていた。 ずれた眼鏡を直すことすら忘れているのだろう、呆然としてこちらを見ている霖之助にさらに苛立ちを増す。 「朴念仁だとは思ってたけどここまで救いようがないとは思ってなかったわよ! お父さんが取られた!? お兄さんが取られた!? ふざけんじゃないわよ! そんなことで女の子が、あの魔理沙が! あそこまで取り乱すわけがないでしょうが! 人の感情に疎いのも大概にしなさいよ!」 ああ、さっきの魔理沙と同じことをしてる。 どこかで冷静な自分がささやくが、止められない。 「他人の気持ちなんて気にならないような顔をして! 気にならないんじゃないわ。分からないのよ! 勝手にああだろう、こうだろうって結論付けて、それを疑いもしない。 普段なら笑って済ませてあげるけどね、今回だけは絶対許さない! 自分が何をしたのか、なんで魔理沙が泣いてるのか、悩んで悩んで悩みぬきなさい! それが分かるまではそのとぼけた顔を見せないでちょうだい!」 そう言い残すと、アリスもまた香霖堂から出て行ってしまった。 「荷物……置きっぱなしだったなあ……まあいいか……」 怒鳴り散らして出てはきたが、少し言い過ぎたかもしれない。 そもそも魔理沙の内面を見ようとしていなかったのは自分も同罪だ。 それなのに自分だけは分かっていたような言い方。 自己嫌悪で足が止まりそうになるが、それを押し込めてでもやるべきことが残っている。 とにかく足を進めるアリスが辿り着いたのは、魔理沙の家の前だった。 大きくノックするが、返事はない。 それでも、今の魔理沙が他の誰かのところに転がり込むことは考えられない。 深呼吸して、家の中の魔理沙にも聞こえるよう声を上げる。 「魔理沙……いるんでしょう?」 「まずは謝っておくわ……。 そんなつもりはなかったけど、結果として私はあなたから霖之助さんを奪おうとしている。 しかもあなたが研究でいない間にこそこそとね。 卑怯といわれても構わない。それだけのことをした自覚はあるもの」 やはり返事はない。だが間違いなく聞いているはずだ。 そして、アリスは決定的な言葉を口にする。 「それでもこれだけははっきりさせておくわ。 私は霖之助さんが好き。今までに出会った誰よりもね。 だから誰にも渡したくはない。例えあなたや他の誰かに恨まれたとしても。 あなたはどうなの? こうして一人で閉じこもって泣いてるだけなの? 失いたくないなら、奪われたくないなら……立ち上がりなさい。 それができないなら、あなたの思いは所詮その程度のものだったということになるわ。 どういう結果になるかはまだ分からないけど、あなたの想いが本物なら、また私の前に立ちふさがりなさい。 ……待ってるから」 勝手なことを言っている。謝っているのか喧嘩を売っているのか分かったものじゃない。 魔理沙にはすまないと思う。それは間違いない。 それでも霖之助を失うのは嫌だ。 ……自分は一体何がしたいのか。 霖之助に怒鳴ったのも意味が分からない。魔理沙の方を向いて欲しいわけではないのに、魔理沙の気持ちを考えろなどと。 とにかく、自分も気持ちを整理する必要があるだろう。 アリスが遠ざかる足音が聞こえる。 声は聞こえていた。 だが、答える気にはならなかった。 自分がいない間に霖之助を取ろうとするアリス。 自分の気持ちになんて気付こうともしてくれなかったのに、知り合ったばかりのアリスといちゃついてた香霖。 2人とも大嫌いだ。 そして、そんなことを考えている自分はもっと大嫌いだ。 ベッドにうずくまったまま、とにかく今は何もしたくなかった。 前の話へ 次の話へ
https://w.atwiki.jp/churuyakofu/pages/197.html
前の話へ あらすじ 裁縫を通じて惹かれあうアリスと霖之助。 それに納得がいかない魔理沙。三角関係がこじれにこじれた。 一足先に霖之助が立ち直り、アリスと魔理沙が続いた。 「……」 最近ここまでひとつのことを考え続けたことがあっただろうか。 自分に好意を寄せる2人の少女、アリスと魔理沙。 魔理沙とは彼女が物心ついたときからの付き合いだ。 人前では常に明るく振舞い、陰で血のにじむような努力を続ける少女。 自惚れかも知れないが、彼女の支えになってきた自信はあるし、そのことを誇りに思う。 アリスとはつい最近一気に距離が縮まった。 皮肉屋で素直じゃないが、思いやりのある優しい少女。 ここ1ヶ月ほどの、彼女がいる生活はとても充実していた。 どちらかが選ばれ、どちらかは選ばれない。 残酷なようだが、2人とも幸せにするなんて言っても彼女たちは納得しないし、そんな都合の良いことは口が裂けてもいえない。 審判を下すのは自分だ。理屈ではなく、2人のうちどちらと生きていきたいのか、自らの感情を問う。 そして、その答えはすでに出ていた。 「入るわよ」 「じゃまするぜ」 件の2人が店に訪れる。 「用件はもうわかっているよな?」 「はっきり聞かせて頂戴。あなたの口からね」 「……ああ」 2人の顔を交互に見つめる。 もう一度だけ、目を閉じて心に浮かぶ少女の顔を確認する。 心臓はこれ以上ないほど早鐘を打ち、手のひらは汗がじっとりにじんでいる。 だが、逃げ出すわけにはいかない。 「……魔理沙」 2人の反応は異なる。 魔理沙はさらに顔を険しくし、アリスは唇をかみ締め、顔をそらす。 ああ、おそらく2人はわかっている。次に続く言葉を。 「すまない。僕は君を選ぶことはできなかった」 目を閉じ、息を吐く。 ―――ああ、やはりそうか――― 覚悟はしていた。予想もしていた。 なのに、面と向かって言われると想像以上に堪える。いっそ崩れ落ちてしまいたいくらいだ。 それでも、今度ばかりは取り乱すわけにはいかない。 「はあ~あ、やっぱりな」 「やはりわかっていたんだね」 「まあな。何歳からの付き合いだと思ってんだ? 香霖の考えなんてお見通しだぜ」 「……」 「なに辛気臭い顔してんだよ全く。あれだけ女っ気がなかった香霖がこんな良い女に言い寄られるなんて金輪際ないぜ。 それも2人同時にだ。もっと喜べよ」 「魔理沙……」 今度はアリス。 なんともいえない顔をしている彼女にも声をかける。 「お前も同じだよアリス。たった今想いが通じたんじゃないか。笑わないなんてそれこそ私に対して失礼だぜ」 自分自身よくこんなに口が回ると思う。 多分、ごまかしているだけなんだろうが。 「さて、そうと決まればこんなとこに用はないな。若い2人に任せて退散させてもらうぜ」 「……ああ」 「じゃあな香霖。これでアリス泣かしたら許さないぜ」 さあ、一刻も早く外へ出よう。取り繕うのはもう限界だ。 そして店には2人が残る。 しばらく沈黙が続き、それをアリスが破った。 「霖之助さん」 「なんだい?」 「これでよかったの? 本当に私でいいの?」 その表情からは喜びを見て取ることはできない。 魔理沙のことが気になっているのだろう。 「ああ。いつものように理屈でどうのこうのとは考えなかった。 僕が店にいて、その傍らにいて欲しいのが誰か。それを考えたとき、真っ先に浮かんだのが君だったんだ」 「……そう」 そうしてまた続く沈黙。 「ねえ」 「うん?」 「今日は帰ることにするわ。まだ気持ちの整理ができなくて。 あ、嬉しくないわけじゃないの。でも、まだ素直に喜べないから……」 「ああ。急ぐ必要はないさ」 そうして店を出ようとするアリスの背中に声をかける。 「そうだ、一つ伝えないといけないことがあった。 次に君が来たときには、是非とも渡したいものがあるんだ。 ……待っているよ」 香霖堂を飛び出した魔理沙は、とにかくスピードを上げて箒を飛ばしていた。 歯はきつく食いしばられ、目は前を見ていない。 山から一本だけ突き出た大木。それに向かって突っ込んでいくが、顔を伏せている魔理沙は気付かない。 あわや激突かと思われた瞬間、魔理沙は目の前に開かれたスキマに飛び込んでいった。 気がつけば、布団の中にいた。 見覚えのない部屋。一体ここはどこだろうと思った瞬間、声をかけられる。 「危ないわね全く。自殺なんかされたら霖之助さんが悲しむわよ」 「……お前か、紫」 「ええ、久しぶりね」 「……見てやがったのか」 「もちろん、一部始終をね」 「それで? 惨めな私をあざ笑いに連れてきたってのか?」 「命の恩人に失礼なことね。それに、私にはあなたを笑うことはできないわよ」 「……」 その言葉を聴いてなんとなく察する。 「で、その大量のつまみと酒はなんだ?」 「わかってるんでしょ? こういうときは呑んで呑んで呑みまくるものよ」 「……まあいいや。どうせ呑むつもりだったしな。ここか家かが違うだけだ」 「そうそう。じゃあ乾杯ね。」 それから数十分後。 「随分呑んだわねえ」 「なあ~にまだまだこれからよお~」 2人で次々瓶を開け、気付けばすでにかなりの量を飲んでいた。 そろそろ溜め込んだものを吐き出させようと、紫は魔理沙の本心を尋ねる。 「で、どうなの? まさかすっぱり諦めきれたわけじゃないんでしょ? 言いたいことがあるなら吐き出してしまいなさいな」 少し目を左右にやる魔理沙。酔いはやや醒めたらしく、迷いつつもぽつぽつと話し始めた。 「最初はさ……あいつらが憎くて仕方なかったんだ。 私のいない間にこそこそしやがって……って。 でも段々、自分に対する後悔のほうが大きくなってくのがわかったんだ。 何でもっと積極的に行かなかったんだろう。 貰い手がなかったら頼むなんて軽口でごまかして、そんなんで香霖が気付いてくれるわけないって知ってたのに。 まだ私は大人になってないから、もっと大人にならないと香霖とは釣り合わないからって、 本気になるときを『今』から『いつか』にすり替えてた。 そんなことをしているうちに、『今』本気になってるアリスが香霖を動かし始めたんだ。 気がついた時にはもう手遅れで、香霖はすっかり私の方を向いてなかった」 その言葉に思うところはあったが、今はとにかく聞き手に徹する。 「なんで『いつか』なんて考えてたのかなあ。チャンスなんかいくらでもあったはずなのに。 やりたいこともいっぱいあったんだぜ。 唐突に『愛してるぜ』とか言って香霖を赤面させたり、 新しい料理を覚えて『おいしいよ』って言わせたり。 祭に2人で手をつないで出かけたり、 花見や月見でのんびり酒を酌み交わしたりもしたかった。 同じ布団で寝て、香霖の腕を枕にして。寒いからぴったりくっついて『これで寒くないぜ』ってささやいたり。 つい何ヶ月か前まで、手を伸ばせば届いたかも知れなかったのに、今じゃもう届かないんだ。 どんなに泣き喚いても、力づくで奪い取っても、それは私が欲しかった香霖じゃない。 ……私を一番愛してくれる香霖じゃないんだ……」 そこまで言うと、魔理沙は肩を震わせて俯いてしまった。 自分もこの子と同じだ。 その気持ちは手に取るようによくわかる。 だから、魔理沙の頭を優しく胸に抱いた。 「泣いたっていいのよ。あなたはまだ若いんだから。 こういうときは、泣いて泣いて全部吐き出しなさい。 そうして成長していけばいいの」 そう言いながら魔理沙の頭を撫でる。 「うっ……ぐっ……うわああああああああああああああ!」 いちど決壊してしまえば、もうあとは吐き出すだけ。 爪のあとが残るほど強く紫を抱きしめ、魔理沙はいつまでも泣きじゃくっていた。 2日が経過した。 しかし、まだアリスはやってこない。 (もう少し時間がかかるのかもな……) そんなことを考えつつ、霖之助は先ほど届いた文文。新聞の号外を開く。 その目に飛び込んできたのはこんな記事だった。 『熱愛発覚! 香霖堂店主森近霖之助と、七色の人形遣いアリス=マーガトロイド!』 同じころ、アリスもその記事を目にしていた。 つい先ほど、この新聞を作った本人、射命丸文が直接渡しに来たのだ。 「この号外はあなたが見なくちゃダメなんです! 今回情報をくれた人から頼まれたんですから!」 何が言いたいのか良くわからなかったが、どの道今は何も手につかない。 まあ気を紛らわすくらいのことはできるだろう。 そう思って新聞を開いた瞬間、アリスの頭は一気に覚醒した。 新聞の内容を要約するとこうだ。 『いつものようにネタを探していたところ、急遽取材の申し込みがあった。 渡りに船とその人物にあえば、なにやら人知れず咲いた恋があったとのこと。 しかもそれが有名な魔法の森に住む2人、森近霖之助とアリス=マーガトロイドと聞けば、 これは記事にせざるを得ないと判断した』 その後は2人の馴れ初めについて記されている。 情報提供者の名前を見ると、こう書いてあった。 『霧雨 魔理沙』 「……ここまでお見通しってわけね」 どこまでも世話焼きなやつだ。 自分が失恋した直後だというのに、アリスが魔理沙のことを気にして動けなくなることまで考えていたのか。 ここまでされては、自分も腐っているわけにはいかない。 人の恋路を勝手にばらすのは不届き千万だが、背中を押されたのも事実だ。 この記事を見た読者が押し寄せる前に、霖之助の下へ。 バタン! 勢いよく戸が開く音を聞きつけて目をやると、ここ2日待ち焦がれた少女の姿があった。 「……見た?」 何を、とは聞かない。 「ああ。全くあの子らしいな」 「そうね。私もようやく覚悟が決まったわ」 2人で笑いあう。どちらかといえば苦笑に近い笑みだったが。 「それでは僕の思いを伝える前に、この前話したものを渡そう」 そう言って奥に引っ込む霖之助。 戻ってきた霖之助の手に乗せられていたのは紙の包み。 「開けてごらん」 言われるがままに包みを開く。 出てきたのは、非常に細かな刺繍が施され、生地も糸も高級な品を使用した『振袖』であった。 「これを……私に?」 「ああ。……それは僕の、母の形見なんだよ」 「え?」 目を丸くするアリスを眺めつつ、話を続ける。 「僕が人間と妖怪のハーフということは知っているだろう? 人間だったのは母のほうでね。それなりの良家の一人娘だったらしい。 父は母が僕を身ごもったあと、親族たちに追われ、今は行方知れずだ。 母は妖怪の子を宿したために家を勘当されたそうなんだが、そのとき母親、 つまり僕の祖母からこの振袖を渡されたそうだ。 祖母も曾祖母から譲り受けたもので、母が嫁に行くときに着せたかったそうだが、 今話したような事情でそれも適わなくなってしまった。 だからせめて、まだ見ぬ孫が女なら孫に、男ならその伴侶となる女性に受け継いで欲しい、とね。 この話を聞いたのは母が他界する直前だった。もう何十年も前の話さ」 「……そんな大事な物を私がもらうわけには「アリス」」 軟らかくアリスの発言をさえぎる霖之助。 「僕と君が、初めて和服について語った時の内容は、まだ覚えているかい?」 当然忘れてなどいない。 確か、和服は着る人間が代わっても大丈夫なように厳密な採寸をしない。 そしてその理由は 「……あ」 大事な着物を、子へ、孫へ。 何年も何年も大事にしてきた着物だからこそ、それを授けることによって、 相手に愛情の深さを伝えるのだ。 「……」 言葉もないアリスに、霖之助が声をかける。 「その着物以上に大切なものは、僕の店にもない。値打ちの問題ではなく、ね。 これが僕の答えだ。 ……受け取ってくれるかい?」 ともすればあふれそうになる涙を必死に抑える。 今は泣くときじゃない。笑うときだ。 そうしてアリスは霖之助に応える。 「はいっ!」 その顔は、見るもの全てを魅了する最高の笑顔だった。 魔法の森の入り口に存在する店、香霖堂。 そこを訪れた客に、店の名物は何かと問えば、皆が口をそろえてこう言った。 それは、いつ見ても仲睦まじい銀髪と金髪の夫婦である、と 了 前の話へ おまけ
https://w.atwiki.jp/monochrome-colorful/pages/18.html
登場人物 用語辞典
https://w.atwiki.jp/xjac2o4/pages/17.html
経常利益率が高いことを、目にしてる解消よく観察してみましょう。そうした会社の社員が必ずしも幸せそうに見えずに、良噂を聞かないのは私だと思わないでしょうか? これは型エンジンが株主の為に経営しているからになりません。株式公開することは1つのステータスであり、精巧な頭と思う人がいるかもしれません。ところがIPOするようになってまるでバーゲンセールように上場記号が出現しました。 上場企業のステータスが今行ってしまった時代がありません。昔は資本金1,000万円を用意しなくてはならなかった株式会社も、今では1の資本金で作れるようになり、株式会社のステータスもすっかりなくなってしまったのです。