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残酷な神々のテーゼ(後編) ◆RsQVcxRr96 キャロは走りながら考え込んでいた。 自分の隣を走っているのは同僚であるスバルの姉、ギンガ・ナカジマ。 一時は機動六課に出向していた事もあり、顔馴染みの存在ではあった。 だからこそ再会した時は本当に安心したし、心の底から嬉しかった。 しかし、そんな安心できる時間はすぐに終わってしまった。 突然の襲撃――そして逃避行。 正直キャロの精神は再び疲弊しかけていた。 それでもここまで必死に折れそうな心を懸命に支えてきている。 道すがらギンガは同行者のインテグラル卿について話をした。 インテグラル卿が死ねば、アーカードという化け物を止める術がなくなる事。 そうなればますます悲惨な状況になる事。 だから何としてもインテグラル卿を救わねばならない事。 ギンガがキャロに話した内容はそのような事だった。 (吸血鬼、アーカード……) 聞けば聞くほど恐ろしい化け物だ。 先程の電撃を放つ男も恐ろしいが、アーカードも同等の強さらしい。 桁違いな化け物が2人、いや実際はもっといるだろう。 そんな中で自分は何ができるのだろうか。 答えが出る訳でもなくキャロは今度の事を考えて、一層悩んでしまう。 「あれは、川!」 ギンガの声を聞いて目を前方へ向けると、確かに川が見えた。 今目指している場所はHELLSING本部。 インテグラルが勝手知ったる場所であり、そこなら治療ができるかもという事で目的地に定めていた。 つまりここで西へ進路を向け、橋を渡る必要がある。 「急がないとインテグラル卿が……行くわよキャロ!」 「え、あ……はい」 キャロは的確な判断を下して道を示してくれるギンガが少し羨ましかった。 それに比べて自分は何ができるのだろうと、知らず知らずのうちに自身を顧みてしまう。 自分がしている事と言えば、インテグラル卿のデイパックを背負ってギンガの後に遅れないように付いて行く事ぐらいだ。 なんだか少し情けないような気もした。 でも今はここが自分の居場所。 だからこそ全力で守りたい。 自分のポジションはフルバック――素早く動いて仲間の支援をするポジション。 全て機動六課で学んできた事だ。 今は十分に力になれなくても、自分にできる限りの事は頑張ろう。 キャロは心の中でそういう風に折り合いをつける事にした。 しかし神は残酷だった。 「――ッ! トライシールド!!」 「プ、プロテクション!!」 「――!!」 突然の襲撃だった。 天より漆黒の鎧を身につけた人物が手持ちの刃を振り落とし舞い降りてきた。 避ける間など無かった。 二人にできた事は咄嗟に防御魔法を展開する事だけだった。 刃と防御魔法が鎬を削り、程なく漆黒の戦士が反動を付けて少し離れた場所に着地した。 幸い今の間で直撃だけは免れたが、ギンガもキャロも今の攻防で相手の実力が並々ならぬ事を実感していた。 このままでは三人とも無事では済まない。 「キャロ、なんとか一瞬でいいからあいつの攻撃に耐えて。その隙をついて私が吹っ飛ばす」 「分かりました。やってみます」 即興で出されたギンガの提案は綱渡りのようなものだった。 だが二人に悩んでいる時間はない。 もう既に相手は攻撃の準備を終えたようだった。 ――DRILL―― ――TORNADO―― ――SPINNIG ATTACK―― 「プロテクション!!」 敵の攻撃は先程とは違って回転しながらのキックで、威力も上がっていた。 だがキャロも負けてはいない。 若干の猶予があったため先程とは違ってしっかりと防御魔法を展開する事ができた。 そのおかげでキャロ一人でも奇跡的に一瞬の均衡を生み出す事に成功していた。 (よし、これでギンガさんが敵に一撃を与えれば……) おそらく敵の注意は自分のみに向いているだろうとキャロは確信していた。 つまり今は攻撃を仕掛けるには絶好の機会だ。 やっとギンガさんの助けになれる、自分の居場所を守る事ができる。 キャロはすぐに来るその瞬間は待ち望んだ。 ――しかし…… (な、なんで!?) 時間にしては数秒にもなっていない。 だがギンガが攻撃を仕掛けるには十分な時間のはずだ。 それなのにまだギンガの攻撃はない。 もう防御魔法を維持するのも限界だというのに、何も起こらない。 「キャァ――ッ!!」 程なく防御魔法は破られて、キャロは地面に身体を打ちつけながら二転三転した。 対して漆黒の戦士にほとんどダメージはなく、無慈悲にも手に持った刃をキャロに向けていた。 二人の距離は僅か数歩というものだった。 (ギンガさん……なんで……) キャロの心を埋め尽くすのはただそれだけ。 あそこでギンガが攻撃を与えていたならば、勝っていたのは自分達のはずだった。 いったい何が起こったのだろう。 心中に浮かぶ疑問に答えを求めて、キャロは傷ついた身体を動かして後ろを向いた。 「え?」 後ろ、つまり川べりには誰もいなかった。 慌てて周囲を見渡しても、ギンガの姿は見つけられなかった。 「うそ……?」 今度は痛む身体を起こして周囲をぐるりと見渡してみる。 やはりどこを見てもギンガの姿はどこにもなかった。 そしてキャロはもう一ついなくなっている人物に気付いた。 「インテグラル卿も……いない?」 ギンガに加えてインテグラルの姿もまたどこにもなかった。 今ここにいるのはキャロと素性の知れない襲撃者だけだった。 それ以外には誰もいない。 (なんで……なんで、ギンガさんとインテグラル卿が――!?) そこでキャロは先程ギンガが言っていた事を思い出した。 曰く、アーカードを止めるためにもインテグラル卿は絶対に守り通さなければならないと。 そして現状キャロは一人取り残されて、ギンガとインテグラルの姿はない。 つまりは―― ――ギンガはキャロを囮にしてインテグラルと共に逃げた。 そんな考えがキャロの頭をよぎった。 キャロはその考えをすぐに否定しようとした。 でも、それなら、なぜギンガとインテグラルがいないのか説明できない。 少なくとも数秒前までは確かにいたはずだ。 ではいなくなったのはその直後。 折しもキャロが必死で襲撃者の攻撃を防いでいる時だ――ギンガの提案に従って。 (そんな……そんな……ギンガさんは、ギンガさんは――!!) もしも何かあったなら念話なり掛け声なりあるはずだ。 それもなくて忽然と姿を消したという事は、やはり―― 「――私を囮にして……インテグラル卿を守るために、逃げた?」 確かに目の前の人物は二人掛かりでも勝てるかどうか不安な敵だ。 それなら優先順位を考えて囮で気を引いて、その間に守るべきインテグラ卿と安全な場所まで逃げる。 実に合理的な考えだ。 しかしキャロには信じられなかった。 あのギンガが自分に対してそんな事を相談もせずに行うなど信じられない、いや信じたくなかった。 だからキャロはこの場で唯一答えを返してくれそうな人物へ問いかけた。 「あの、私の後ろにいた二人は?」 問いかけられた漆黒の戦士は黙ったままだった。 表情は隠れていて全く分からない。 一緒にいるだけで不気味な存在だった。 今まで出会った危険な人物とはまた違ったものがあった。 だからこそほんの少し期待したのだが、それは外れだったようだ。 「倒れていた女と、紫髪の女なら――」 「え!?」 どういう風の吹きまわしか不意に答えが返ってきた。 キャロは返ってくる答えを大人しく待ちわびる。 「君と対峙した時に――」 キャロはその答えを待つ。 その答えが自分の望む答えであると信じて、最悪な答えでないと信じて。 「逃げられたよ」 「え?」 『逃げられた』と目の前の敵は言った。 ここで敵が嘘を言う理由はないだろう。 どうせこのままでは自分は殺されてしまうのだろうから。 つまり今言われた事は紛れもなく真実。 それが意味する事は疑いの余地もない真実。 そう言葉の通りの意味だ。 ――ギンガ・ナカジマはインテグラル卿を守るためにキャロ・ル・ルシエを囮にして逃げた。 そうただそれだけだ。 つまりギンガにしてみれば、ある程度親交のあった自分よりもここで初めて会ったインテグラル卿の方を優先した。 そうただそれだけのことだ。 合理的に考えれば、これからの事を考えれば、そうなるのだろう。 でも! でも!! でも!!! 言葉にできない激情が胸の奥で暴れ回る。 自分はただ居場所を守りたかっただけだ。 だからこそ必死で頑張ったのに、この仕打ちだ。 相手の言い分も頭では分かる、でも心が受け付けない。 「つまり、私は捨て石……また捨てられたんだ……」 強大な力を持っていたために部族を追放された。 その後も管理局ではその力のせいで厄介者扱いをずっと受けてきた。 でも、それもフェイトに救われて終わったはずだった。 そう、こんな所にさえ連れて来られなかったら、ずっと自分の居場所はあそこだったはずだ。 それなのに、それなのに、それなのに!!! 「ごめん。すぐに楽にするから」 自分に掛けられる声に気付いて顔を上げると、そこには刃を振り翳す敵の姿があった。 あの刃が振り下ろされれば、ここで終わる。 何もかも、全て、嬉しかった事も苦しかった事も悲しかった事も楽しかった事も終わる。 「イヤ」 そんなのは嫌だった。 こんな仕打ちはあまりにも理不尽ではないか。 認めたくなかった、信じたくなかった。 こんな心に虚しさが残ったまま死ぬのは嫌だった。 金髪の青年に殺されかけた時はあっさり生を諦められたのに、今は生を諦める事が出来ない。 「イヤ、こんな所で死にたくない……」 「さようなら」 「――――――――ッ!!!!」 神は残酷だった。 ▼ ▼ ▼ 「ハァ、ハァ、ハァ」 川沿いに建てられた小屋で一人の青年が疲れた身体を癒していた。 相川始だ。 A-7から南下して始はカリスの姿のまま川まで来ると、川越えのためにドラゴンフライフロートを使用した。 まずは市街地に行く前に目指したのは人が集まりそうな駅だ。 そのために回り道をする気はなくカードの力で飛行能力を得ると、一路駅を目指すはずだった。 そこでカリスは眼下を走る3人組を見つけた。 見たところ走ってきた方角から駅から逃れてきた可能性が高い。 そう判断すると、目標を眼下の3人組に変更した。 見敵必殺。 栗原親子の元へ戻るためには手段は選んでいられなかった。 ドラゴンフライフロートを解除して、重力に従ってカリスアローで斬りかかった。 しかし予想外な事に3人の内2人は不思議な力を使って、カリスの攻撃は防がれてしまった。 何の力もない一般人と思っていたばかりに、カリスは少々焦った。 ならばと、2枚のカードをラウズして『スピニングアタック』で決着をつける事にした。 1回目の攻防からこれで十分だと踏んでの選択だった。 結果は予想外の事もあったが、こちらが勝った。 幼い少女を手に掛ける事に微かな気兼ねがあったが、目的のためには仕方なかった。 そして刃を振り落として自分の手は血に染まるはずだった。 そうなるはずだった。 「いったい、あれは何だったんだ!?」 それはカリスアローを振り落とそうとした時だった。 その瞬間、カリスは言い知れぬ雰囲気を感じていた。 そして本能が叫んだ――不味いと。 バトルファイトを勝ち抜いてきて得た勘が離れろと警告していた。 カリスは本能に従って、止めを刺さずにあの場から離れる事にした。 何が原因かは薄らと分かっていた。 少女の手に中にあった何かが光っていた。 それは怪しげな光だった。 おそらく原因はあれだろう。 「ひとまずは身体を休めた方がいいかな」 あの場から離れて始が休息に選んだのがこの小屋だ。 今はカリスの姿ではなく、相川始の姿だ。 ずっとカリスに変身したままの方が便利ではあるが、それではAPが尽きてしまう。 一度変身を解けば次の変身まで1時間待たなければいけない事も数時間前に把握した。 つまり後1時間はカリスへは変身できない。 もっともジョーカーへの変身はできるかもしれないが、何か制限があるかもしれない。 文字通り奥の手として滅多な事では使わない方がよさそうだ。 「1時間か」 次に動くまであと1時間。 戦士はしばしの休息に入った。 【1日目 早朝】 【現在地 D-6 川沿いの小屋】 【相川始@魔法少女リリカルなのは マスカレード】 【状況】健康、1時間変身不能(カリス) 【装備】ラウズカード(ハートのA~10)@魔法少女リリカルなのは マスカレード 【道具】支給品一式、ランダム支給品×1 【思考】 基本:栗原親子の元へ戻るために優勝を目指す。 1.とりあえず変身できるようになるまで休息する。 2.見つけた参加者は全員殺す(アンデットもしくはそれと思しき者は優先的に殺す) 3.川を辿って市街地を目指す。 4.あるのならハートのJ、Q、Kがほしい。 【備考】 ※参戦時期はACT.5以前。なのは達の事は名前のみ天音より聞いた事がある(かもしれない)程度です。 ※自身にかけられた制限にある程度気づきました。 ※首輪を外す事は不可能だと考えています。 ※「他のアンデットが封印されると、自分はバトルファイト勝者となるのではないか」という推論を立てました。 ※相川始本人の特殊能力により、アンデットが怪人体で戦闘した場合、その位置をおおよそ察知できます。 ▼ ▼ ▼ キャロは一人だった。 なぜあの時、死ななかったのか理由は分からない。 でも今は生きている。 それだけで今は十分だった。 これから何をするのか今は考えられない。 ただ心に少し空洞ができた。 そんな事をキャロは考えていた。 キャロは知らない。 自分に支給されたもう一つのものの正体に。 その名は『スケィス』 巫器(アバター)と言われる憑神鎌<死の恐怖> このスケィスが正にキャロに死が迫った時に起動しかけた。 その時の力にカリスは本能的に回避を選択したのだ。 しかし結局スケィスは機動しなかった。 なぜか。 巫器を起動させるのには所有者が心に何らかの喪失を抱え、それに伴う強靭な意志を発揮しなければならない。 起動には心の虚が必要なのだ。 つまり先の出来事においてキャロには心の虚が足りなかったという事だ。 親しい間柄と言ってもスバルの姉で頼りになる人というのがキャロのギンガに対する大体の印象だ。 直前にバルディッシュの喪失、インテグラルの瀕死があっても、後一歩キャロの心の虚になり得るには足りなかった。 だがもしもそれに足り得る出来事が起こったのならば、その時はおそらく起動するだろう。 その時まで灰色の球体は静かに待つ。 まるで姫を守る騎士のように。 【1日目 早朝】 【現在地 D-7 川の畔】 【キャロ・ル・ルシエ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】 【状態】疲労(大)、魔力消費(中)、脇腹に切り傷・左太腿に貫通傷(応急処置済み)、茫然自失、ギンガへの不審感 【装備】憑神鎌(スケィス)@.hack//Lightning 【道具】支給品一式×2、『かいふく』のマテリア@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、葉巻のケース 【思考】 基本:殺し合いを止める。殺し合いに乗っている人がいたら保護する。 1:……何も考えられない。 2:仲間を探し合流する。 [備考] ※別の世界からきている仲間がいる事に気付いていません。 ※憑神鎌(スケィス)のプロテクトは外れておらず、待機形態のままです。 【憑神鎌(スケィス)@.hack//Lightning】 巫器(アバター。SSでは呼称未登場)の第一相<死の恐怖>。 ロストロギアによって構成された、エリオの用いる術式不明の大鎌型デバイス。 通常は全プログラムに強固なプロテクトが掛けられており、セットアップも、名前以外のデータを閲覧する事も不可能。 ただし、持ち主が心に何らかの喪失を抱え、それが齎す強靭な意志を発揮した時に初めてその力を起動させる。 以降はプロテクトが解除され、起動もデータ提示も普通に可能となる。 腕には禍々しいラインを持ったガントレットが装着され、それによって憑神鎌の重量は、限りなく持ち主に最適化される。 普通に切り裂くだけでも絶大な威力を発揮するが、その他にも以下のスキルを使用可能。 ショット……手のひらから魔力弾を発射する。連射可能。 死ヲ刻ム影……通称データドレイン。魔力結合に干渉・改竄する能力を持った必殺技。 ▼ ▼ ▼ 「ヤハハハ、さてもうそろそろいいだろう」 半壊状態の駅員詰所に居座るのは、それに似つかわしくない神だった。 エネルは自身のデイパックから時計を取り出して時間を確かめた。 先程宣告した刻限から5分経っていた。 エネルがゲームと称して5分間待つと言ったのは、もちろん文字通りの意味もあるが別の意味もあった。 それは休息だ。 さすがにあれだけ力を使えば多少は疲れる。 それに加減が分からないのも要らぬ疲れを生む原因だった。 つまり少しだけゆっくりと休む時間が欲しかったのだ。 「それにしても……」 ふと眼下の矢車の変わり果てた姿を少し目に入る。矢車の姿は悲惨だった。 胸にはクロスミラージュごと鉄の矛がボロボロの状態で刺さっている。 幾度となく浴びせた電撃で鉄の矛が耐えられなくなった結果だ。 すぐに興味を無くしてエネルは心網で捉えた動きを考えていた。 あの3人は病院がある南に向かうと思っていたが、意に反して北へと向かった。 そして川まで行ったところで新たな者と接触があった。 何があったかは分からないが、その内2人がその場から離脱していった。 少しして残った二人もまた別れた。 如何せん心網の範囲が制限されているせいか、はっきりとは分からなかったので確信は持てない。 だがあの3人が北へ向かったのは確かだ。 そうは言っても北は自分が来た方角だ。 そこへ戻ってもいまいち面白くないような気がする。 (さて、悩むな) 【1日目 早朝】 【現在地 E-7 半壊した駅員詰所】 【エネル@小話メドレー】 【状態】疲労(小) 【装備】ジェネシスの剣@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使 【道具】支給品一式、ランダム支給品1~3 【思考】 基本:主催者も含めて皆殺し、この世界を支配する。 1:どこへ行こうか。(どこへ向かうかは後続の書き手にお任せします) 【備考】 ※黎明の終わり際に駅にてエール・トールが放たれました。近くにいたら見えたかもしれません。 ▼ ▼ ▼ HELLSINNG本部。 少し前に最凶の吸血鬼が訪れたこの場所に新たな訪問者が現れた。 数は二人。 紫の髪に茶色の制服を着た少女と、全身に火傷を負っている女性。 あの場から忽然と姿を消したはずのギンガとインテグラルであった。 ギンガはインテグラルを背負いながら、あの時の事を思い出していた。 キャロは期待通り敵の攻撃をきちんと防いでくれた。 次は自分の番だと思って走りだそうとしたその時、ある光景を目にしてしまった。 それは川べり付近に倒れていたインテグラが今にも川に落ちそうになる瞬間だった。 インテグラルが一度目の攻防の際に振り払われて、背中からずり落ちて川べりで止まっているのは見た。 あの位置なら落ちないと思っていたが、運悪く落下の衝撃で目を覚ましたようだった。 さらにふらつく身体を無理に動かそうとして、バランスを崩して落ちる間際まで陥っていた。 (危ない!) そう思った瞬間には身体はインテグラルの方へ走り出していた。 ギンガはインテグラルを引き寄せたらすぐさま戻るつもりだった。 しかし事態は最悪な方向へ転がってしまった。 あろう事か、助けに入った自分もインテグラに引きずられる形でバランスを崩してしまったのだ。 あとは二人とも川に落ちて、今になってやっとこさ岸に上がれたという訳だ。 不幸中の幸いか、目の前に目的地があったのは僥倖だった。 だが、それでもギンガの心は晴れない。 (キャロ……ごめんなさい……) 恐らくキャロは殺されているだろう。 自分の不注意のせいで。 そうだ。 また自分のミスで仲間を危険な目に遭わせてしまった。 そしてこれは最早取り返しのつかない事だ。 神は残酷だ。 この会場の夜は明けた。 だがギンガの中ではまだ夜明けは来ていなかった。 【1日目 早朝】 【現在地 D-5 HELLSING本部前】 【ギンガ・ナカジマ@魔法妖怪リリカル殺生丸】 【状態】顔面に打撲(小)、疲労(大)、キャロへの罪悪感、ずぶ濡れ 【装備】コルト・ガバメント(7/7)@魔法少女リリカルなのは 闇の王女 【道具】支給品一式×2、ゼクトバックル(ホッパー)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、ランダム支給品0~2(確認済) 【思考】 基本:この殺し合いを止め、プレシアを逮捕する。 1:HELLSING本部にてインテグラの治療を行う。 2:インテグラを護衛し、アーカードを捜索する。 3:できる事なら誰も殺したくはない。 4:可能ならば、六課の仲間達(特にスバル)とも合流したい。 【備考】 ※なのは(A s)、フェイト(A s)、はやて(A s)、クロノの4人が、過去から来た事、また一部の参加者はパラレルワールドから来た人間である事に気付きました。 ※「このバトルロワイアルにおいて有り得ない事は何一つない」という持論を持ちました。 ※制限に気がつきました。 ※インテグラがいなくなった後のアーカードに恐怖を抱き始めました。 ※アーカードを暴走させないためにも何としてもインテグラを守るつもりです。 【インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング@NANOSING】 【状態】疲労(中)、全身に軽い火傷、ずぶ濡れ、気絶中 【装備】なし 【道具】なし 【思考】 基本:この殺し合いを止め、プレシアを叩きのめす。 1:気絶中。 2:地図上のHELLSING本部に向かう。 3:アーカードと合流し、指揮下に置く。 4:できる事なら犠牲は最小限に留めたいが、向かってくる敵は殺す。 【備考】 ※同行しているギンガが自分の知るミッドチルダに住む人間ではない事、一部の参加者はパラレルワールドから来た人間である事を把握しました。 ※アーカードは参加者に施されているであろう制限の外にあると思っています。 【矢車想@仮面ライダーカブト 死亡】 【残り51人】 ※E-7の駅にある駅員詰所は半壊状態になりました。(駅そのものへの被害は軽微) ※矢車の死体は黒焦げで胸に鉄の矛を刺したままE-7の駅(半壊した駅員詰所)に放置されています。 ※クロスミラージュ@魔法少女リリカルなのはStrikerS(矢車の胸ポケットの中)は鉄の矛に貫かれて破壊されました。 Back 残酷な神々のテーゼ(前編) 時系列順で読む Next 光が紡ぐ物語 投下順で読む Next 遠い声、遠い出会い 相川始 Next タイムラグは30分(前編) エネル Next タイムラグは30分(前編) インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング Next 誇りの剣 ギンガ・ナカジマ Next 誇りの剣 キャロ・ル・ルシエ Next 勇気のアイテム(前編) 矢車想 GAME OVER
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残酷な神々のテーゼ(前編) ◆RsQVcxRr96 駆ける、駆ける、駆ける―― 右手に影を作る林を見つつ、左手に淡々と流れる川を見つつ、黒き鎧の戦士は駆ける。 相川始――今は仮面ライダーカリスへと変身している青年は市街地を目指してただ駆ける。 駆けながらカリスは少し前に起きた事について考えていた。 ここに転送されてすぐさま殺し合いに乗る事を決意した。 全ては元の世界に帰るため、栗原遥香と天音を守るために。 その決意の元に襲撃を行った後、始はカリスへの変身を解いた。 理由はカードを使う際に消費するAPだ。 カリスに変身した時点での初期AP値は7000。 そして3枚のカードでスピニングダンスを発動させた際には合計で3600を消費して、残りのAPは3400だ。 半分以上を消費したので、ここは変身を一度解いてAPの回復を図って改めて変身しようと思った。 しかし問題が発生した。 一度変身を解いた後、再び変身するのに一定の時間が必要となっていたのだ。 迂闊な事をしたと我が身を呪いつつも待つ事1時間。 それだけの時間を空ければ再び変身できる事が分かった。 こうしてカリスは感じ取ったアンデッドの気配を辿って市街地へと向かう。 神の見えざる手に引き寄せられるように…… ▼ ▼ ▼ 走る、走る、走る―― 右も左も林に囲まれている中でスズメバチのゼクトロゴを左肩に施したマントを羽織ったスーツ姿の男が走る。 矢車想――パーフェクト・ミッションを志す青年は市街地を目指してただ走る。 電撃を放つ神と名乗る不遜な輩と蛇柄ジャケットを着た狂気の輩、完全調和を乱す二人の不協和音との戦闘。 一瞬の隙をつき撤退を選択して矢車は南へと進路を選んだ。 あの場では仕方なかったとはいえ、小さな子供をあのような危険人物の元へ置いてきた事に心が痛まない訳がなかった。 だが過ぎた事を悩むより、まずは仲間集めが先決だ。 そのためにも矢車は人が集まりそうな市街地を目的地に選んだのだ。 自分の支給品は用途不明のカードとゼクトバックル。 今の自分では使い様がないものだ。 改めて支給品の内容に落胆しつつもカードは念のため胸のポケットに入れ、ベルトはバッグに入れたまましておく。 そして不意に視界が開けた。 地図によると林を抜け平野に出たらしい。 視線の先には微かに建物――駅が見える。 もしかしたらパーフェクト・ミッションに賛同する仲間がいるのではと思い、矢車は進路を駅に向ける。 神の見えざる手に引き寄せられるように…… ▼ ▼ ▼ 進む、進む、進む―― 右手に淡々と流れる川を見つつ、左手に影を作る林を見つつ、雷を宿す神は気ままにただ進む。 エネルが追いかけるのは川原で起き上がり際に目にした青年。 あろう事か神に向かって舌打ちをして逃げ去った不届き者にエネルは神の裁きを下すべきだと断じた。 南に向かったのを確認すると、あとは付かず離れず心網で位置を確かめつつ追いかける。 ふと自分の行く先に新たに3人の意識がある事に気付いた。 しかも前を行く獲物はそこへ向かっているらしい。 エネルは新たな贄が集う駅を次の目的地に定める。 厳然たる神の意志の赴くままに…… ▼ ▼ ▼ トントンとドアを叩く音と「戻ったぞ」と呼びかける声が向こうから響いてくる。 ギンガが特に返事をする間もなくドアは開かれて、インテグラルが部屋に入ってきた。 ここは地図で言うとE-7にある駅。 その駅に備え付けられている駅員の詰所のような場所にいる。 殺生丸にあの場を任せたギンガ・ナカジマとインテグラルは気絶したキャロを連れてここへ避難してきた。 そして本当なら後から殺生丸もここへ合流するはずだった。 でもあれから殺生丸は来る事はなかった。 ギンガの心を不安にさせるのは駅に着くまでに見たあの魔力光。 遠目から見ても軽くSランクをも凌駕する程の威力だという事は分かった。 そんな戦闘を経て未だにここへ来ないという事は…… これ以上は推測にすぎない。 ギンガは自分にそう言い聞かせて顔を上げる。 「どうでした?」 「いや、さっぱりだ」 今ギンガ達がいるのは駅員の詰所、その奥に設置されている休憩所だ。 事務的な仕事を行う詰所とは壁で仕切られて、内装も寛げるようなものになっている。 キャロはここに着いてからできる限りの処置は施してソファーに寝かせているが、まだ目を覚ましてはいない。 でも見た目は良くなったし、どうにか大丈夫そうだ。 妹のスバルの同僚で、今では出頭中の自分の同僚でもある心優しき召喚士、キャロ・ル・ルシエ。 ここに来てから幸運にも再会できた親しい知り合い。 ギンガは目の前で仲間の無事が確認できて安心する。 だがその一方で殺生丸がまだ現れる様子はない。 先程も周囲の偵察を兼ねてインテグラルが出ていたが、結果は先の通りだ。 本当なら戦闘力のある自分が行くべきなのだが、キャロが目覚めた時に知り合いが傍にいた方がいいというインテグラルの提案に押し留められてしまった。 それに殺生丸の事を気に掛けて精神的に張り詰めていた自分を気遣ってくれての提案だったのかとも思う。 インテグラルの言外の心遣いに感謝の気持ちを抱くが、本当はどうなのだろう。 たぶん聞いても答えてくれないようなので勝手にそう思っておく事にした。 そのおかげで気持ちも幾分か整理する時間ができた。 ――恐らく殺生丸さんはここには来ない。 それがギンガの出した答えだ。 あれ程の威力、恐らくは決着をつけるために放った技なのであろう。 それならば放った両人共が無事である確率は低い。 直に肌で感じた二人の強さは異常だった。 だからこそあれほどの威力を繰り出しておいて二人が共に無事だという光景が思い浮かべにくかった。 それにもうひとつは未だに殺生丸がここに来ていない事。 それこそ対面したのも会話したのも僅かな間でしかなかったが、それでも彼の誇りの高さは雰囲気から感じ取れた。 誇り高い彼が約束を違えるなど余程の事だろう。 だからこれらの事は殺生丸さんの死を可能性として突きつけてくる。 「――ッ!!」 部屋中に壁を叩いた音が響く。 感情が高ぶり、思わず突発的な行動をしたギンガをインテグラルは黙って見ていた。 ギンガは殺生丸が死んだなんて信じたくなかった。 しかし待てども姿は見えず、それはつまり彼の―― 「ん、うぅ……」 不意にギンガでもインテグラルでもない声が聞こえた。 まだ幼い少女の声だ。 そんな声を発する人物がギンガのすぐそばにいた。 「……ギンガ、さん?」 「キャロ!!」 目覚めの声を上げたのは今まで気を失っていたキャロ。 ギンガは安堵の感情と共にキャロを抱きしめる。 幼い身でよく頑張ったという想いをこめて。 「あ、あの、ギンガさん。えっと、私、いったい……」 「ええ、実は――」 キャロにこれまでの事を説明しようとした時だった。 壁の向こうから音――ドアが開く音が聞こえてきた。 それはつまり誰かがドアを開けてここに入ってきているという事だ。 「インテグラル卿、キャロを頼みます」 「私が確かめてきてもいいぞ」 「いえ。まだ友好的な人物か分かりませんし、万が一の時に備えて私が行ったほうがいいでしょう」 「分かった。気をつけろよ」 「え、あの、ギンガさん?」 「ごめんキャロ。少し待っていて」 そう言い残すとギンガはデイバッグの中からコルト・ガバメントを取り出す。 45口径の大型拳銃、非殺傷設定など存在しない質量兵器。 ギンガとしてはできれば撃ちたくないが、それでも覚悟だけは決めておかなければならないだろう。 このドアの向こうにいるのが殺生丸ならどんなに良い事か。 でももしも殺し合いに乗っている者なら…… ギンガは不安と期待が相混ぜになる感情を胸にして、静かにドアの向こうへと進んで行った。 ▼ ▼ ▼ ギンガがドアを閉める音と共に休憩室には静寂の帳が下りる。 でもすぐにそれは幼い召喚士の言葉によって破られる。 「あの、初めまして。時空管理局古代遺物管理部機動六課所属キャロ・ル・ルシエ三等陸士です。 ……えっと、あなたは?」 「英国国教騎士団『HELLSING』局長、サー・インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシングだ。 話はギンガから聞いている。それで早速で悪いが、これが何か分かるか」 そう言ってインテグラルがキャロに差し出したのは赤い3つの点が印象的な灰色の球体。 キャロのデイパックに入っていた支給品だ。 ギンガとインテグラルは若干の申し訳なさを感じながらもキャロが気絶している間に彼女の持ち物を確認していた。 その時に見つけたのが正体不明の球体だった。 最初はインテグラルにも支給されていたマテリアかとも思ったが、どうやら違ったらしい。 すぐに球体から魔力を感じ取ったギンガはこれがデバイスだと気付いた。 しかしこの球体はデバイスだと分かったのはいいが、起動させる術が結局分からなかった。 そこでこれの支給主であるキャロに目覚めたら尋ねる事にしたのだ。 「……すいません。私にもよく分からないんです」 「そうかい」 しかし持ち主のキャロも球体の正体は分からなかった。 だからこそもう一つの支給品であるバルディッシュをパートナーとして選んだのだ。 自身の恩人であり保護者であるフェイト・T・ハラオウンのデバイス。 そちらの方が得体の知れないデバイスよりも遥かに信用できた。 「あ!?」 そこでキャロはようやくバルディッシュが手元にない事に気付いた。 自分の記憶は金髪の青年に襲われて弾き飛ばされて気絶したところで途切れている。 たぶんその後に助けられた事は明白だが、バルディッシュはおそらくあそこに放置したままだろう。 自身の力不足からフェイトのデバイスを無くしてしまった事にキャロは深い罪悪感を覚えた。 でも一縷の望みをかけてインテグラルに聞いてみようと心が動いた。 もしかしたら回収してくれているかもしれないという望みを抱いて。 「あ、あの、インテグラルさん!」 「ん? なんだい?」 「私を助けてくれた時に――」 しかしキャロの言葉はそこで途切れた。 キャロの言葉を遮ったのは衝撃。 最初は光――目を焼き尽くすほどの閃光が視覚を麻痺させる。 次は音――耳を突き破るような轟音が聴覚を麻痺させる。 次は振動――身体中を走るような衝撃が一瞬触覚を麻痺させる。 次は味――衝撃で口の中を切ったのか血の味が味覚を麻痺させる。 最後は臭い――今まで嗅いだ事もないような臭いが嗅覚を麻痺させる。 キャロは彼方から襲来したものに突如として五感を蹂躙されてしまった。 それは一瞬で圧倒的だった。 (え? でも、この臭いって……) キャロは記憶を掘り起こしていく。 どこかでこれと似たような臭いを嗅いだ……でも、その時はもっと微かだったような気がする。 程なくしてその正体に心当たりがつく。 肉を焼く臭いに似ているのだ。 それも――火傷をした時に微かに鼻を突く臭いに似ていた。 その事実に思い至った時にはもうキャロの五感は正常に戻りつつあった。 まだ薄らとぼやける視界には本当なら休憩室が飛び込んでくるはずだった。 「ひぃっ!!」 だが目に入ってきた光景は異常だった。 少し前まではキャロはソファーに座り、インテグラルは窓際で様子を見ているという構図だった。 確かにキャロは今でもソファーにきちんと座っている。 しかし一方のインテグラルは―― 「え、い……ああ、ひっ……」 黒焦げという表現が正しいのだろうか。 いささか表現が過剰かもしれないが、それは断じて夏の日焼けレベルの肌の焼き加減ではなかった。 インテグラルの姿は見るも無残なものだった。 長いブロンドヘアーは焦げて縮れる部分が目立ち、綺麗に着こなしていた黒スーツは焦げてボロボロになってきた。 そして褐色の肌は今までにも増して濃くなっていた。 「そ、そんな、インテグラル……さん?」 キャロとて時空管理局に勤める者として、それなりの経験を積んできたつもりだった。 悲惨な現場も命が危うい戦闘も何度か経験してきた。 だが今キャロの目の前に広がる光景はそんなものとは次元が違った。 最初にアリサに行われた首輪爆破による絶望感は大事な人を想う事によって押し止める事ができた。 でもこの状況はキャロの健気な決意をも砕くような悲惨なものだった。 そして、それに拍車をかけるのが凶行を為した人物の存在だ。 「ヤハハハハハ! 娘よ、運がいいな。私は二人とも殺す気だったのだからな」 上半身裸、背中には奇妙な太鼓を背負い、無闇にテンションが高い傍若無人の雰囲気を漂わせる男。 スカイピアの絶対君主にして唯一神である神・エネル。 新たな意識を感知したエネルが駅を見つけたのは数分前の事だった。 エネルが遠目から窓の向こうを見る限り、そこにいる獲物は危険が迫っている事に全く気付いていないようだった。 自分が追っていた青年がそこへ向かっているのは既に把握済み。 エネルは神の裁きを下すべく手頃な距離まで近づくと、右手を雷へと変化させた。 ――神の裁き『エール・トール』 発動は一瞬。 本来なら天より地に走る雷は神の右手から駅に放たれた。 狙った箇所は窓、そしてそこから見える部屋の中の贄だ。 エネルは神の裁きが無慈悲に駅を、そして中にいる人を蹂躙するのを眺めた。 そして惨劇の場に降臨すべく、その場に赴いたのだった。 「ほう、これは良い剣だな。貰っておこうか」 エネルは倒れるインテグラルに近づくと、その近くにある剣に興味を示した。 美麗な彫刻が施されている真っ赤な刃を持つ剣にエネルは二度三度振るう。 「あ、ああ、いやぁ……」 その奇抜な出で立ちにも増してキャロが心に刻んだのは「恐怖」だ。 エネルから感じられる底知れぬ雰囲気。 それが恐怖とは気づかぬままにキャロはエネルに怯える。 そしてその感情が臨界点を超えるのに時間はかからなかった。 「イヤァァァアアア――――――ッッ!!!」 ▼ ▼ ▼ 「なるほど。では矢車さんは殺し合いには乗っていないんですね」 「ああ、そうだ。俺が目指すのはパーフェクト・ミッションだからな」 ギンガが謎の人物に気付いて探りに行くと、そこには一人の青年がいた。 エネルから逃れて駅で人集めをしようとしていた矢車想だ。 最初はお互い正体が分からずに物陰で牽制し合う形になったが、元来どちらもこのデスゲームに立ち向かう同士だ。 それに方やZECTの一部隊を任される隊長、方や陸士108部隊の捜査官。 どちらも優秀な指揮官ゆえにお互いの意図を分かりあうのには、そう時間は要らなかった。 軽い自己紹介を終えてギンガは矢車に好印象を抱いていた。 少々自信家な所が心配だが、クールで仲間を何よりも大切にする気質が見え隠れする。 あと、やたらとパーフェクト・ミッションの事を話す時は熱が込められていたような気もする。 「あ、矢車さん。ここに来る途中で他の参加者に――ッ!!」 前触れなしの轟音と衝撃。 それが駅舎を襲い、ギンガと矢車はしばらくの間言葉を失った。 さらに部屋の電球はその一瞬で全て眩しく光って、次の瞬間には粉々に砕け散っていた。 何が起こったのか分からないまま二人がさらなる襲撃に備えて構えていると―― 「イヤァァァアアア――――――ッッ!!!」 「しまった! キャロ!」 キャロの悲鳴が聞こえた瞬間、ギンガは自身の判断の甘さを悔やんだ。 気絶から回復したばかりのキャロと一般人のインテグラを長く放置しておくのは危険だと分かっていたはずだ。 それなのに突然の事態に僅かながらも動揺して二人の安全が頭から抜けていた。 もし何かあったら取り返しのつかない失態だ。 「今の悲鳴は!」 「仲間のです!」 横目で見ると矢車も事態を察知して並走していた。 この状況を見て行動を共にしてくれた事にギンガは心強さを覚えた。 駅員の詰所はその構造上外へ繋がるドアと休憩所へ繋がるドアが少し離れている。 しかし距離があると言ってもそれほど長い訳ではない。 すぐさま休憩所に繋がるドアの元に辿りつく事ができた。 先に着いたのは僅差で矢車だった。 そして矢車がドアノブへ手をかけた瞬間―― 「――ぇ?」 後ろから来ていたギンガの目に信じられないような光景が飛び込んできた。 ギンガの目に移るのはスーツ姿の矢車の背中だ。 そこに鮮やかな紅い血を存分に纏わりつかせた3本の矛先を生やしていた。 「矢車、さん……」 「――ガァ!!」 一拍置かれて矢車の苦しげな呼吸音が聞こえる。 朧気ながらギンガは事態の把握に努めようとしていた。 だが分かる事はドアの向こうから鋭利な三又の矛で矢車がドアごと貫かれているという事だけだ。 矢車のデイパックが床に落ちた音が虚しく聞こえる。 それ以上は頭が働いてくれなかった。 「――ァァァガアアア――――ッッッ!!!」 その思考を再び動かしたのは、またしても外からの変化だった。 突然矢車の身体が青白く光ったと思えば、もうそこには以前の矢車の面影はなかった。 それはまるで雷の直撃を受けたかのようだった。 「ヤハハハ! まさか貴様だったか。これは幸先がいい」 矢車の向こうを見ると、さっきの攻撃のせいかドアは完膚なきまでに焼け落ちていた。 そしてそこには矢車を死に至らしめた本人の姿があった。 上半身裸で背中には太鼓を背負った奇妙な出で立ち。 「な……に、もの……だ……」 「私は神。神・エネルだ。」 「神、だと……!? お前、は……」 「また会ったな、青海人」 「神など、と……随分と、大層な名前だ、な……俺達が、恐れるとでも……思って、いるのか」 「──人は“神”を恐れるのではない……恐怖こそが、“神”なのだ」 矢車はエネルの返答に薄れゆく意識の中で底知れぬ脅威を感じていた。 そして一方ギンガは悟ってしまった――今の自分では目の前の男には敵わないという事に。 それは人が生まれながらに持っている野生の勘によるものだったのかもしれない。 エネルと名乗った自称神はあの殺生丸と対峙した金髪の青年と同質、もしかしたらそれ以上の存在かもしれない。 ギンガは死を覚悟した。 彼我の戦力差は絶望的なまでに圧倒的だった。 例え今この手にブリッツキャリバーがあったところで勝てる気がしなかった。 それを本能的にギンガは心の奥底で感じていた。 だが死は訪れなかった。 「女よ、ゲームをしようか」 「……ゲーム?」 「そうだ。私は5分間ここにいよう。その間にできるだけ遠くに逃げたらいい。 せいぜい私に追いつかれないようにしろよ」 ギンガはエネルの意図が全く理解できなかった。 言い換えれば気まぐれとも取れるこの提案に不気味さすら感じていた。 その不気味さゆえにギンガは動けずにいた。 大人しく逃げた方がいいのか、決死の覚悟で立ち向かう方がいいのか。 どちらかが正しいのかなどギンガには判断が付けられなかった。 その迷いを感じたのか、矢車は消える意識の中でギンガに声をかけた。 「ギン、ガ……」 「矢車、さん!?」 「パーフェクト・ミッションを……パーフェクト・ハーモニーを……頼んだぞ」 「え、しかし――」 「いけぇぇぇ!!! ギンガァァァ!!!」 その叫びが転機となったのか、ギンガは走り出していた。 矢車の足元に落ちているデイパックを擦れ違い様に回収して、エネルと矢車を一瞥すると休憩所に入った。 外から見て分かっていたが、キャロもインテグラも生きていた。 インテグラルは全身に軽い火傷を負っていたが、胸は上下していて生きているのが分かる。 不慣れな制限下での雷化と、窓に当たった事で幾分威力が和らいだ事。 この二つがインテグラの命を取り留めていた。 一方キャロには外傷が見当たらないが、ひどく怯えていた。 まずはキャロを立ち直らせる事が先決だった。 「キャロ! キャロ!!」 「――あ、ギンガさん……」 「今すぐここを離れる。早く!」 「え、は、はい!」 未だ事態の推移に追い付いていないようだが、時間はあまりない。 ギンガはインテグラルを背負い、混乱気味のキャロを連れてエネルが破壊した壁の穴から外へ出た。 最後に後ろを振り向くと、ギンガと矢車の目が合った。 しかしお互い何も言わずにギンガ達はこの場に別れを告げた。 後に残ったのは調和を乱す傍若無人な神と調和を重んじる心優しき青年だけであった。 ▼ ▼ ▼ Back 闇とリングとデッキの決闘者 時系列順で読む Next 残酷な神々のテーゼ(後編) Back 虚 投下順で読む Back 最初からクライマックスなのか!? 相川始 Back 駆け抜ける不協和音 矢車想 Back 駆け抜ける不協和音 エネル Back 童子切丸は砕けない(後編) インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング Back 童子切丸は砕けない(後編) ギンガ・ナカジマ Back 童子切丸は砕けない(後編) キャロ・ル・ルシエ
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#ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (f残酷なる闇.png)残酷なる闇【ざんこくなるやみ】 (残子、深遠なる闇、イリス、他多数) #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (残酷なる闇_歩行.png) 恍惚なる闇と恍惚なる闇子の妹で、兄や姉をロリ化したような外見の少女。 発明や拳銃が得意な描写が多く、研究が趣味。 年齢と容姿に似合わず、名前通りの残酷な行為をすることがある。 性格面は厨二病な部分があり、上記の行為もこの性格から来ていることが多い。 よく娘様やダークネスⅢ、リナックス、ハーナスと共に行動するが、 彼女達より若干年上に見えるためかたまに疎外感を覚えることもある様子。 なお、何故だか失禁ネタの標的にされる。 「双子姫シリーズ」では本名をイリスとして登場。 関連キャラ 恍惚なる闇:兄 恍惚なる闇子:姉 ダーク残酷なる闇:ダーク版 ダーエロ:発明関連で絡む ダークネスⅢ:仲良し 娘様:仲良し ダークブロウ:実験の影響により誕生 カテゴリ:魔王軍
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「リュウ!どうしたんだ!!血迷ったのか!」 「そうよ、私達仲間でしょ?」 合体ロボ、ザンゴットVから1組の男女の声が聞こえる。 裏切りでもあったのだろうか、必死に仲間に声をかけているようだ。 「うるせぇ……リア充爆発しろ」 合体ロボに向かい合うメカに搭乗するリュウと呼ばれた男は、目の前のコクピットをカタカタと捜査した。 刹那、メカの上部から砲台がせり上がってくる。そして…… 壮大な音とともに放たれる、砲撃。それはまっすぐ向かいのロボへと向かい、着弾。 後、起こる大音量、爆炎、それに伴う突風。 2人の男女は断末魔をあげる間もなく、塵と化した。 【ザンゴット1のパイロット(男)@ギャグマンガ日和 死亡確認】 【ザンゴット2のパイロット@ギャグマンガ日和 死亡確認】 仲間の壮絶な最期にも目をくれず、リュウはメカを発進させる。 世の中のリア充(とりわけアベック)を皆殺しにするために 同時にこんな世の中にした野田総理に復讐するために。 【一日目・0時48分/日本・三重】 【ザンゴット3パイロット・リュウ@ギャグマンガ日和】 【状態】憎しみの炎をたぎらせている、健康 【装備】ザンゴット3 【道具】支給品一式 【思考】基本:リア充(主にアベック)及び野田総理を殺す 1:リア充爆発しろ
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残酷なる闇【ざんこくなるやみ】 (残子、深遠なる闇、イリス、他多数) 恍惚なる闇と恍惚なる闇子の妹で、兄や姉をロリ化したような外見の少女。 発明や拳銃が得意な描写が多く、研究が趣味。 年齢と容姿に似合わず、名前通りの残酷な行為をすることがある。 性格面は厨二病な部分があり、上記の行為もこの性格から来ていることが多い。 よく娘様やダークネスⅢ、リナックス、ハーナスと共に行動するが、 彼女達より若干年上に見えるためかたまに疎外感を覚えることもある様子。 なお、何故だか失禁ネタの標的にされる。 「双子姫シリーズ」では本名をイリスとして登場。 関連キャラ 恍惚なる闇:兄 恍惚なる闇子:姉 ダーク残酷なる闇:ダーク版 ダーエロ:発明関連で絡む ダークネスⅢ:仲良し 娘様:仲良し ダークブロウ:実験の影響により誕生 カテゴリ:魔王軍
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TITLE 残酷な天使のテーゼ(おに・裏譜面) 詳細 [#more] 残酷な天使のテーゼ(裏譜面) バージョン((太字は初出)) ジャンル 難易度 最大コンボ数 天井スコア 初項 公差 AC12増-14 iOS br;AR アニメ ★×8 423 br;COLOR(#069) 386 br;COLOR(#666) 346 1052270点 +連打 750点 170点 COLOR(#ff3300){真打モード} COLOR(#ff3300){1055120点} COLOR(#ff3300){2420点} - AC15.1.0 Wii5SP br;Wii U1DL br;PS Vita1SP br;PS4 1 br;NS1 br;PTB br;NS2 br;RC 1049580点 740点 208点 PS Vita1亜SP #21345;通動畫 br;音樂 COLOR(#ff3300){真打} COLOR(#ff3300){1002800点} COLOR(#ff3300){2300点} - AC16.1.0 アニメ 998280点 2360点 - Xbox1 アニメ 1002510点 2370点 - 譜面構成・攻略 [#capture] BPMは約80-129。 連打秒数目安・・・約2.120秒 ゴーゴータイム前は★×7適正者でも捌けるような複合が多い。ここでコンボを落としていてはクリアは絶望的。 達人譜面の場合ゴーゴーに入った後は休みがなく、複雑な複合が多く出てくる。 ゴーゴータイムに含まれる複合は面をはさむたびに縁を叩く手が逆になるものが多い。BPMが遅く、叩けるようになるとかなり役に立つ。BPMが遅い為、分業などでゴリ押しも可能だが、精度が崩れやすく非推奨。 表譜面と違い、ゴーゴー前の連打がない。約2秒程度の連打1ヶ所だけ(普通譜面除く)だが、その割に若干天井スコアが高い。106万点には全良+約12.1打/秒以上で到達できる。 新筐体にて最大天井スコアが下げられた。 表譜面同様、分岐判定はかなり甘く、普通譜面でのフルコンボは不可能。そのため、難易度表記は達人譜面でのクリア難易度と思われる。普通譜面は表譜面より難易度が低く実質★×5程度だが、上記の通り分岐判定が甘いので、この譜面に回ってしまったのであれば残念ながらレベル適性とは言えない。 普通譜面に創聖のアクエリオンのゴーゴータイムの譜面の引用が見られる。 達人譜面の平均密度は、約5.16打/秒。 その他 [#other] 楽曲情報は表譜面を参照。 アニメ曲初の1人用裏譜面&裏譜面初の譜面分岐。また、両譜面とも譜面分岐が付くのも初めてである。 版権曲の為か、CSへの裏譜面収録はことごとく見送られてきたが、Wii5にてようやく収録されることとなった。AC12増量版の初登場からおよそ3年かかってのCS移植である。 かんたん ふつう むずかしい おに/裏譜面 #fold (オート動画(Wii5)){{{ #fold (COLOR(#909){達人譜面}){{ videoプラグインエラー 正しいURLを入力してください。 }} #fold (COLOR(#069){玄人譜面}){{ videoプラグインエラー 正しいURLを入力してください。 }} #fold (COLOR(#666){普通譜面}){{ videoプラグインエラー 正しいURLを入力してください。 }} }}} コメント [#comment] COLOR(#3333ff){このページを初めてご利用になる方は、必ず[[コメント時の注意 当Wikiでのルール#comment]]に目を通してからコメントをするようにしてください。} 譜面 [#score] ~ attachref(eva_x.png,nolink);
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ダウンロード 祭りページ ※steam2003製 ゲーム紹介 いわゆる雪道ゲー。 スクリーンショット タイトル画面 戦闘はタイミングよくボタンを押すアクション要素ありの自作戦闘 よくわからん異世界の割には協力者がいっぱいいますね 行く先には様々な強敵が立ちはだかる 感想など 戦闘演出凝ってて育成もかなり楽しめる雪道ゲー -- 名無しさん (2023-09-30 08 19 15) 名前 コメント
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残酷な天使のテーゼ 自己紹介 ルミナスの泉 My White Ribbon メリディンの祈り 放課後_ロマンス 教育的指導! ワタシ☆LOVEな☆オトメ! 聖ナル wktkノ星 ニーハイ・エゴイスト 恋をゲームにしないで! 術式は誰かのために 飛行実習~Learn To Fly~ La*La*La ラボリューション TANTEI☆ラプソディ Dearセンパイ♡〜メンバー自己紹介ソング~ 未来が私を待っている 倍速恋愛時計 気球にのってどこまでも(唱歌) Triangle Wave(カバー曲) オペラファンタジア(カバー曲) アキハバラブ(カバー曲) 遥かなる時空の旅人(カバー曲) 残酷な天使のテーゼ(RAM RIDER×アフィリア・サーガ・イースト) Dearセンパイ♡〜メンバー自己紹介ソング~(14人ver.) オレシカ
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